(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-03
(54)【発明の名称】三環式含窒素化合物の非晶質及びその用途
(51)【国際特許分類】
C07D 491/044 20060101AFI20230127BHJP
A61K 31/4353 20060101ALI20230127BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230127BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20230127BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20230127BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230127BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230127BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230127BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20230127BHJP
A61P 15/10 20060101ALI20230127BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20230127BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230127BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20230127BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230127BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230127BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20230127BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230127BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230127BHJP
【FI】
C07D491/044 CSP
A61K31/4353
A61P9/00
A61P3/06
A61P3/00
A61P29/00
A61P1/16
A61P1/16 101
A61P9/10
A61P9/12
A61P15/10
A61P7/02
A61P3/10
A61P7/06
A61P27/02
A61P35/00
A61P31/12
A61P17/00
A61P1/16 105
A61P31/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022531562
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(85)【翻訳文提出日】2022-07-25
(86)【国際出願番号】 CN2020132104
(87)【国際公開番号】W WO2021104421
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】201911201723.7
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520384965
【氏名又は名称】▲広▼▲東▼▲東▼▲陽▼光▲薬▼▲業▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 新▲業▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ ▲亮▼
(72)【発明者】
【氏名】▲單▼ 岳峰
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲曉▼▲軍▼
【テーマコード(参考)】
4C050
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050AA07
4C050BB07
4C050CC19
4C050EE01
4C050FF03
4C050GG03
4C050HH04
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB22
4C086MA02
4C086MA05
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZA42
4C086ZA45
4C086ZA54
4C086ZA55
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZC33
4C086ZC35
(57)【要約】
三環式含窒素化合物の非晶質、上記非晶質を含む医薬組成物、及び患者のFXRにより媒介される疾患を予防、治療又は軽減するための薬物の製造における上記非晶質又は上記医薬組成物の用途に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される化合物の非晶質であって、実質的に
図1に示すようなX線粉末回折パターンを有する非晶質。
【化1】
【請求項2】
式(I)で表される化合物の非晶質であって、92.26℃±3℃のガラス転移温度を有する非晶質。
【化2】
【請求項3】
実質的に
図2に示すような示差走査熱量測定パターンを有する、請求項2に記載の非晶質。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の非晶質と、薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、補助剤又はそれらの組み合わせとを含む、医薬組成物。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の非晶質又は請求項4に記載の医薬組成物の、患者のFXRにより媒介される疾患を予防、治療又は軽減する薬物の製造における用途。
【請求項6】
前記FXRにより媒介される疾患は、心脳血管疾患、脂質代謝異常関連疾患、メタボリックシンドローム、過剰増殖性疾患、線維症、炎症性疾患又は肝臓及び胆嚢と関係する疾患である、請求項5に記載の用途。
【請求項7】
前記心脳血管疾患は、アテローム性動脈硬化症、急性心筋梗塞、静脈閉塞性疾患、門脈圧亢進症、肺高血圧、心不全、末梢動脈閉塞性疾患、性機能不全、脳卒中又は血栓症であり、
前記メタボリックシンドロームは、インスリン抵抗性、高血糖、高インスリン血症、脂肪酸又はグリセロールの血中濃度の上昇、高脂血症、肥満症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、X症候群、糖尿病合併症、アテローム性動脈硬化症、高血圧、急性貧血、好中球減少症、脂質代謝異常、II型糖尿病、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病網膜症、脂質異常症、又は糖尿病及び異常に高い肥満度指数の合併症であり、
前記過剰増殖性疾患は、肝細胞癌、結腸腺腫、ポリポージス、結腸腺癌、乳癌、膜腺癌、バレット食道癌及び他の形態の胃腸管又は肝臓腫瘍性疾患であり、
前記線維症、炎症性疾患又は肝臓及び胆嚢と関係する疾患は、非アルコール性脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝炎、胆汁うっ滞、肝線維症、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、進行性家族性胆汁うっ滞症、嚢胞性線維症、薬物誘発性胆管損傷、胆石、肝硬変、B型肝炎、皮膚腺疾患、アルコールによる肝硬変、胆道閉鎖、胆石症、結腸炎、新生児黄疸、核黄疸又は腸内細菌異常増殖である、請求項6に記載の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、出願日が2019年11月29日である中国特許出願第201911201723.7号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、薬物の技術分野に属し、三環式含窒素化合物の非晶質及びその用途に関し、具体的には、2-((5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロフェニル)イソオキサゾール-4-イル)メトキシ)-10H-スピロ[ベンゾ[6,7]オキセピン[3,2-b]ピリジン-11,1’-シクロプロパン]-7-カルボン酸(式(I)で表される化合物)の非晶質及びその用途に関し、さらに上記非晶質を含む医薬組成物に関する。上記非晶質又は上記医薬組成物は、患者のFXRにより媒介される疾患を予防、治療又は軽減するために用いられる。
【背景技術】
【0003】
ファルネソイドX受容体(FXR)は、核ホルモン受容体スーパーファミリーの一員であり、主に肝臓、腎臓及び腸において発現する(Seolら、Mol.Endocrinol(1995)、9:72-85、Formanら、Cell(1995)、81:687-693)。それは、レチノイドX受容体(RXR)と形成されたヘテロダイマーとして機能し、標的遺伝子プロモーターの応答エレメントに結合することにより遺伝子の転写を調節する。FXR-RXRヘテロダイマーは、最も高い親和性で逆向き反復配列-1(IR-1)応答エレメントに結合し、ここで、コンセンサスアクセプター(consensus receptor)に結合する六量体が1つのヌクレオチドによって分離される。FXRは、胆汁酸(コレステロール代謝の最終産物)により活性化され、(Makishimaら、Science(1999)、284:1362-1365、ParksらScience(1999)、284: 1365-1368、Wangら、MoI.Cell.(1999)、3:543-553)、胆汁酸は、コレステロールの異化を抑制するために用いられる(Urizarら、(2000)J.Biol.Chem.275:39313-393170)。
【0004】
FXRは、コレステロールホメオスタシス、トリグリセリド合成及び脂肪生成の重要な調節因子である(Crawley、Expert Opinion Ther. Patents(2010)、20:1047-1057)。脂質代謝異常、肥満、ビタミンD-関連疾患、腸疾患、薬物による副作用及び肝炎を治療するための標的のほか(Crawley、Expert Opinion Ther. Patents(2010)、20:1047-1057)、FXRは、さらに肝胆疾患、慢性肝炎、非アルコール性脂肪肝(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、胆汁うっ滞、肝線維症、肝硬変、B型肝炎、代謝性疾患、脂質代謝疾患、炭水化物代謝疾患、心血管代謝疾患、アテローム性動脈硬化症、II型糖尿病及び糖尿病合併症の治療標的とすることができる(Frank G. Schaapら、Journal of Medicinal Chemistry(2005)、48:5383-5402)。
【0005】
特許出願WO2018024224及びCN107686486には、FXR活性調節剤として使用できる三環式含窒素化合物及びその製造方法並びに応用が開示されており、具体的には、化合物7、即ち、2-((5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロフェニル)イソオキサゾール-4-イル)メトキシ)-10H-スピロ[ベンゾ[6,7]オキセピン[3,2-b]ピリジン-11,1’-シクロプロパン]-7-カルボン酸という化合物(式(I)で表される化合物)が開示されている。しかしながら、該特許出願には、該化合物の具体的なミクロ構造が開示されていない。
【化1】
【0006】
本分野で公知のように、薬物の結晶多形は、薬物研究において一般的な現象であり、薬物の品質に影響する重要な要因である。同じ薬物でも、結晶形によって、外観、溶解度、融点、溶出度、生物学的有効性等が大きく異なる可能性があり、薬物の安定性、生物学的利用率及び治療効果等の面に異なる影響を与える可能性がある。したがって、薬物開発において、薬物の結晶多形の問題は、全面的に考慮すべきである。
【0007】
非晶質は、物質結晶多形現象の1つの形態であり、非晶質状態である。非晶質薬物の様々な物理化学的性質及び臨床薬効特徴は、常に一般的な結晶質薬物と異なる。本分野で公知のように、水溶性が低い薬物の生物学的利用率は、それを塩又は非晶質形態に変換することにより向上させることができるが、多くの物質の非晶質形態が不安定であり、非晶質状態で利用される薬物が少ないため、薬物が安定した非晶質状態で利用されるための研究は、同様に重要な意味を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2018024224号
【特許文献2】中国公告特許第107686486号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Seolら、Mol.Endocrinol(1995)、9:72-85
【非特許文献2】Makishimaら、Science(1999)、284:1362-1365
【非特許文献3】Parksら、Science(1999)、284: 1365-1368
【非特許文献4】Wangら、MoI.Cell.(1999)、3:543-553
【非特許文献5】Urizarら、(2000)J.Biol.Chem.275:39313-393170
【非特許文献6】Crawley、Expert Opinion Ther. Patents(2010)、20:1047-1057
【非特許文献7】Frank G. Schaapら、Journal of Medicinal Chemistry(2005)、48:5383-5402
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、2-((5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロフェニル)イソオキサゾール-4-イル)メトキシ)-10H-スピロ[ベンゾ[6,7]オキセピン[3,2-b]ピリジン-11,1’-シクロプロパン]-7-カルボン酸の非晶質及びその医薬組成物を提供し、上記非晶質又は医薬組成物は、良好な薬理学的性質(例えば、良好な薬物動態学的性質)を有し、かつその安定性等の性質も明らかに改善されているため、製薬可能性が高い。
【課題を解決するための手段】
【0011】
具体的には、本発明は、式(I)で表される化合物の非晶質及びその医薬組成物、並びに患者のFXRにより媒介される疾患を予防、治療又は軽減するための薬物の製造における上記非晶質又は上記医薬組成物の用途に関する。本発明に係る非晶質は、溶媒和物形態、例えば水和物形態であってもよい。
【0012】
一形態において、本発明は、式(I)で表される化合物の非晶質を提供する。
【化2】
【0013】
いくつかの実施形態において、前記非晶質は、実質的に
図1に示すようなX線粉末回折パターンを有する。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記非晶質は、92.26℃±3℃のガラス転移温度を有する。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記非晶質は、実質的に
図2に示すような示差走査熱量測定パターンを有する。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記非晶質が150°Cに加熱された場合に、その熱重量分析曲線は、0.409%の重量損失を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記非晶質は、実質的に
図3に示すような熱重量分析曲線図を有する。
【0018】
一形態において、本発明は、本発明に係る非晶質と、薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、補助剤又はそれらの組み合わせとを含む医薬組成物をさらに提供する。
【0019】
別の形態において、本発明は、さらに、前記式(I)の化合物の非晶質又は前記医薬組成物の、患者のFXRにより媒介される疾患を予防、治療又は軽減する薬物の製造における用途に関し、さらに、前記用途は、ヒト又は動物に本発明に係る非晶質又は前記医薬組成物を有効治療用量で投与することを含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、本発明に係るFXRにより媒介される疾患は、心脳血管疾患、脂質代謝異常関連疾患、メタボリックシンドローム、過剰増殖性疾患、線維症、炎症性疾患又は肝臓及び胆嚢と関連する疾患である。
【0021】
他のいくつかの実施形態において、本発明に係る心脳血管疾患は、アテローム性動脈硬化症、急性心筋梗塞、静脈閉塞性疾患、門脈圧亢進症、肺高血圧、心不全、末梢動脈閉塞性疾患、性機能不全、脳卒中又は血栓症である。
【0022】
他のいくつかの実施形態において、本発明に係るメタボリックシンドロームは、インスリン抵抗性、高血糖、高インスリン血症、脂肪酸又はグリセロールの血中濃度の上昇、高脂血症、肥満症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、X症候群、糖尿病合併症、アテローム性動脈硬化症、高血圧、急性貧血、好中球減少症、脂質代謝異常、II型糖尿病、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病網膜症、脂質異常症又は糖尿病及び異常に高い肥満度指数の合併症である。
【0023】
他のいくつかの実施形態において、本発明に係る過剰増殖性疾患は、肝細胞癌、結腸腺腫、ポリポージス、結腸腺癌、乳癌、膜腺癌、バレット食道癌及び他の形態の胃腸管又は肝臓腫瘍性疾患である。
【0024】
他のいくつかの実施形態において、本発明に係る線維症、炎症性疾患又は肝臓及び胆嚢と関係する疾患は、非アルコール性脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝炎、胆汁うっ滞、肝線維症、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、進行性家族性胆汁うっ滞症、嚢胞性線維症、薬物誘発性胆管損傷、胆石、肝硬変、B型肝炎、皮膚腺疾患、アルコールによる肝硬変、胆道閉鎖、胆石症、結腸炎、新生児黄疸、核黄疸又は腸内細菌異常増殖である。
【0025】
一態様において、本発明は、患者のFXRにより媒介される疾患を予防、治療又は軽減する方法に関し、本発明に係る非晶質又は前記医薬組成物を薬学的に許容される有効量で患者に投与することを含む。
【0026】
別の態様において、本発明は、前記式(I)の化合物の非晶質又は前記医薬組成物を使用して患者のFXRにより媒介される疾患を予防、治療又は軽減することに関する。
【0027】
別の態様において、本発明は、さらに式(I)で表される化合物の非晶質の製造方法に関する。
【0028】
本発明に係る非晶質の製造方法に使用される溶媒は、特に限定されず、出発原料をある程度溶解し、かつその性質に影響を与えない任意の溶媒は、いずれも本発明に含まれる。なお、本分野の多くの類似の変更、同等置換、又は本発明に説明されたものと等しい溶媒、溶媒の組み合わせ、及び溶媒を合わせる様々な比率は、いずれも本発明の範囲内に含まれると見なされる。本発明は、各反応工程で使用される好ましい溶媒を与える。
【0029】
本発明に係る非晶質の製造試験は、実施例の部分で詳細に説明する。同時に、本発明は、上記非晶質の活性測定試験、例えば薬物動態学試験、安定性試験及び吸湿性試験等を提供する。試験結果から分かるように、本発明に係る式(I)で表される化合物の非晶質は、生物活性が高く、かつ安定性が高く、医薬用途に適する。具体的には、本発明に係る非晶質は、より優れた薬物動態学的性質を有し、例えば、より高い暴露量を有する。
【0030】
吸湿性の特徴の説明及び吸湿性の質量増加の定義(中国薬局方2015年版、付録9103、薬物吸湿性試験のガイドライン、試験条件:25℃±1℃、相対湿度80%±2%)は、下表で説明するとおりである。
【0031】
吸湿性特徴の説明及び吸湿性重量増加の定義
【表1】
【0032】
本発明に係る非晶質は、高湿度の影響を受けて潮解しにくく、薬物として容易に長期保存することができる。
【0033】
定義及び一般的な用語
特に断りのない限り、本発明に使用される全ての技術及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明に係る全ての特許及び公開出版物は、引用により全体として本発明に組み込まれている。本発明の実践又は測定において、本発明の上記類似又は同様の任意の方法及び物質を使用することができるが、本発明に説明されたのは好ましい方法、装置及び物質である。
【0034】
「非晶質」又は「非晶質形態」とは、三次元空間に非周期的に配置されている粒子(分子、原子、イオン)によって形成された物質を指し、鋭いピークを有さない散乱X線粉末回折パターンを特徴とする。非晶質は、固体物質の特殊な物理的形態であり、その局所的な規則的な構造特徴は、結晶型物質とは密接に関連していることを意味している。物質の非晶質形態は、本分野で知られている多くの方法により得ることができる。このような方法は、急冷法、逆溶媒凝集法、ボールミル法、噴霧乾燥法、凍結乾燥法、湿式造粒法及び固体分散体技術等を含むが、これらに限定されない。
【0035】
「溶媒」とは、物質(典型的には液体)であって、他の物質(典型的には固体)を完全に又は部分的に溶解することができる物質をいう。本発明の実施に用いられる溶媒は、水、酢酸、アセトン、アセトニトリル、ベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、1,4-ジオキサン、エタノール、酢酸エチル、ブタノール、t-ブチルアルコール、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、ギ酸、ヘプタン、ヘキサン、イソプロパノール、メタノール、メチルエチルケトン、メシチレン、ニトロメタン、ポリエチレングリコール、プロパノール、ピリジン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、それらの混合物等を含むが、それらに限定されるものではない。
【0036】
「逆溶媒」とは、生成物(又は生成物の前駆体)の溶媒からの沈殿を促進する流体を意味する。逆溶媒は、低温ガス、又は化学反応により沈殿を促進する流体、又は溶媒中の生成物の溶解度を低下させる流体を含み得る。それは、溶媒と同じ液体であるが、異なる温度のものであってもよく、溶媒と異なる液体であってもよい。
【0037】
「溶媒和物」とは、表面、格子内、又は表面及び格子内に、溶媒を有する化合物を意味し、上記溶媒は、水、酢酸、アセトン、アセトニトリル、ベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、1,4-ジオキサン、エタノール、酢酸エチル、ブタノール、t-ブチルアルコール、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、ギ酸、ヘプタン、ヘキサン、イソプロパノール、メタノール、メチルエチルケトン、メチルピロリドン、メシチレン、ニトロメタン、ポリエチレングリコール、プロパノール、ピリジン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン及びそれらの混合物等であってもよい。溶媒和物の1つの具体例は、水和物であり、表面、格子内、又は表面及び格子内の溶媒は、水である。物質の表面、格子内、又は表面及び格子内において、水和物は、水以外の他の溶媒を有してもよいし、有していなくてもよい。
【0038】
非晶質は、例えば、X線粉末回折(XRPD)、赤外線吸収スペクトル法(IR)、示差走査熱量測定法(DSC)、熱重量分析法(TGA)、核磁気共鳴法、ラマンスペクトル及び走査型電子顕微鏡(SEM)等の様々な技術手段により同定することができる。
【0039】
示差走査熱量測定(DSC)は、手順制御下で、継続的に加熱又は降温することにより、試料と不活性参照物(通常はα-Al2O3)との間のエネルギー差の温度に伴う変化を測定する技術である。いくつかの実施形態において、本発明に係る非晶質の特徴は、ガラス状転移のDSCパターンを有することであり、それは実質的に本発明の図面に提供されたDSCパターンに示すとおりである。また、DSCパターンに試験誤差があって、異なる機器及び異なる試料によるDSCパターンのピーク位置及びピーク値は、わずかに異なる可能性があるため、上記DSC吸熱ピークのピーク位置又はピークの数値は、絶対的なものと見なすことができない。本試験に用いられる装置の状況に従い、吸熱ピークの許容誤差は±3℃である。
【0040】
ガラス状転移とは、非晶質物質の高弾性状態とガラス状態との間の転移を意味し、該物質の固有の性質であり、それに対応する転移温度は、ガラス転移温度(Tg)であり、非晶質物質の重要な物理的性質の1つである。ガラス転移は、分子運動に関連する現象であるため、ガラス転移温度(Tg)は、主に物質の構造に依存し、試験の詳細等に対して相対的に感受性が低い。いくつかの実施例において、本発明に係る非晶質のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定法(DSC)により測定され、その特徴は、92.26℃のガラス転移温度を有することである。本発明の試験に用いられる装置の状況に従い、ガラス転移温度の許容誤差は±3℃である。
【0041】
熱重量分析(TGA)は、手順制御下で、物質の質量の温度に伴う変化測定する技術であり、結晶中の溶媒の喪失又は試料の昇華、分解の過程を検出することに適し、結晶中に結晶水又は結晶化溶媒が含まれることを推測することができる。TGA曲線が示す質量変化は、試料の調製及び装置等の多くの因子に依存し、異なる機器及び異なる試料による、TGAによって検出される質量変化は、わずかに異なる。本試験に用いられる装置の状況に従い、質量変化の許容誤差は±0.1℃である。
【0042】
「実質的に図に示すような」という用語とは、X線粉末回折パターン又はDSCパターンにおける少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%のピークがその図に表示されることを意味する。
【0043】
明細書で使用するとき、スペクトル及び/又はグラフに示すデータについて言及する場合、用語「ピーク」は、当業者がバックグラウンドノイズに起因しないと認識する特徴をいう。
【0044】
本発明の文脈において、「約」、「おおよそ」等の語句が用いられているか否かにかかわらず、与えられた値又は範囲の10%以内に、好ましくは5%以内、特に1%以内を意味する。或いは、当業者にとって、「約」又は「おおよそ」という用語は、平均値の許容可能な標準誤差の範囲内にあることを意味する。値Nを有する数が開示される場合、N+/-1%、N+/-2%、N+/-3%、N+/-5%、N+/-7%、N+/-8%又はN+/-10%以内の値を有する任意の数が明示的に開示され、ここで、「+/-」とは、プラス又はマイナスを意味する。
【0045】
本発明において「室温」とは、約10℃から約40℃の温度を意味する。いくつかの実施例において、「室温」とは、約20℃から約30℃の温度を意味し、他のいくつかの実施例において、「室温」とは、20℃、22.5oC、25oC、27.5oC等を意味する。
【0046】
本発明に係る非晶質の医薬組成物、製剤、投与及び用途
本発明の医薬組成物は、式(I)で表される化合物の非晶質と、薬学的に許容される担体、補助剤、又は賦形剤とを含むことを特徴とする。本発明の医薬組成物における化合物の非晶質の量により、患者のFXRにより媒介される疾患を効果的で検出可能に治療することができる。
【0047】
本発明に説明されるように、本発明の薬学的に許容される組成物は、薬学的に許容される担体、補助剤、又は賦形剤をさらに含み、本発明に使用されるこれらは、特定の目標剤形に適する任意の溶媒、希釈剤、又は他の液体賦形剤、分散剤又は懸濁剤、界面活性剤、等張化剤、増粘剤、乳化剤、防腐剤、固体結合剤又は潤滑剤等のいずれかを含む。文献In Remington: The Science and Practice of Pharmacy、21st edition、2005、ed. D.B. Troy、Lippincott Williams & Wilkins、Philadelphia、and Encyclopedia of Pharmaceutical Technology、eds. J. Swarbrick and J. C. Boylan、1988-1999、Marcel Dekker、New York、の記載と本明細書の内容を組み合わせば、薬学的に許容される組成物の製剤に使用可能な種々の担体及びそれらの公知の製造方法が明らかになる。いずれかの望ましくない生物学的効果を生じたり、薬学的に許容される組成物の他のいずれかの成分とは有害な方式で相互作用したりするような、任意通常の担体媒質が本発明の化合物又はその非晶質に適合しない場合を除いて、それらの用途が本発明の範囲に含まれる。
【0048】
本発明に係る非晶質は、活性成分として、通常の薬物配合技術による薬物担体と共に混合物において均一に結合することができる。担体は、投与、例えば、経口又は非経口(静脈内を含む)に必要な製剤の形態に応じて、種々の形態をとることができる。経口投与剤形の組成物を製造する場合、任意の通常の薬物媒体を使用することができ、例えば、経口液状製剤、例えば、懸濁液、エリキシル剤及び溶液を製造する場合、水、エチレングリコール、油、アルコール、芳香剤、防腐剤、着色剤等を使用することができ、あるいは、経口固形製剤、例えば粉末、硬カプセル剤、軟カプセル剤及び錠剤を製造する場合、例えばデンプン、糖、微結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤等を使用し、固体経口製剤は、液体薬剤より好ましい。
【0049】
投与が容易であるため、錠剤及びカプセルが最も有利な経口投薬単位形態であり、この場合には、固形薬物担体が明らかに使用される。必要であれば、標準的な水溶液又は非水溶液技術により錠剤をコーティングすることができる。このような組成物及び製剤は、少なくとも0.1%の活性成分を含有すべきである。当然のことながら、これらの組成物における活性成分の百分率を変更することができ、かつ該百分率は、単位重量の約2%~約60%の間で容易に変化することができる。該活性成分は、例えば液滴又は噴霧剤として経鼻内投与することができる。
【0050】
上記錠剤、丸剤、カプセル剤等は、結合剤(例えばトラガカントゴム、アラビアゴム、トウモロコシデンプン又はゼラチン)、賦形剤(例えばリン酸二カルシウム)、崩壊剤(例えばトウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸)、潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム)、及び甘味剤(例えばスクロース、ラクトース又はサッカリン)を含んでもよい。投薬単位形態がカプセルである場合には、それは、上記種類の材料の他に、液体担体(例えば脂肪油)を含んでもよい。
【0051】
様々な他の材料でコーティングとするか又は上記投薬単位の物理形態を変更することができる。例えば、錠剤は、シェラック、糖又は両者でコーティングすることができる。シロップ剤又はエリキシル剤は、上記活性成分の他に、甘味剤としてスクロース、防腐剤としてメチルパラベン又はプロピルパラベン、染料及び(サクランボ又はオレンジ味の)調味剤を含んでもよい。
【0052】
眼科用製剤、眼軟膏、散剤、溶液等も、本発明の範囲内であることが企図されている。
【0053】
本発明に係る非晶質は、非経口に投与してもよい。水中で界面活性剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)と適当に混合して、これらの活性物質の溶液又は懸濁液を調製することができる。グリセロール、液状ポリエチレングリコール及びそれらの混合物、並びにオイルの中で、分散剤を調製することもできる。通常の保存及び使用条件下では、これらの製剤は、微生物の増殖を防止するために防腐剤を含む。
【0054】
注射用途に適する医薬品の形態は、滅菌水溶液又は分散剤、即時に滅菌注射液又は分散剤を調製するための滅菌粉末を含む。いずれの場合にも、上記医薬品の形態は、滅菌され、かつ注射しやすい形態で存在する流体でなければならない。それは、製造及び保存の条件下では安定でなければならず、かつ細菌や真菌のような微生物の汚染作用から保護される条件で保存しなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液状ポリエチレングリコール)、それらに好適な混合物、及び植物油を含む溶媒又は分散媒であってよい。
【0055】
任意の適切な投与方法で哺乳動物、特にヒトに有効量の本発明に係る非晶質を提供することができる。例えば、経口、直腸、局所、非経口、目、肺、鼻等による投与方法を用いることができる。剤型は、錠剤、トローチ、分散剤、懸濁液、溶液剤、カプセル剤、乳剤、軟膏、エアゾール等を含む。
【0056】
本発明の非晶質、医薬組成物又はその組み合わせの治療有効量は、治療対象体の種、体重、年齢及び個々の状態、治療される障害又は疾患又はその重症度に依存する。通常の技能を有する医者、臨床医又は獣医は、上記障害又は疾患を予防、治療するか又は上記障害又は疾患の進行を阻害するのに必要な活性成分の各々の有効量を容易に決定することができる。
【0057】
本発明の化合物又はその非晶質を用いて本発明に係るFXRにより媒介される疾患を治療又は予防する際、本発明の化合物又はその非晶質を、動物体重1キログラムあたり約0.1ミリグラム~約100ミリグラムを日用量として、好ましくは、1日の単回用量として、又は1日に2~6回の分割用量として、又は持続放出形態で投与する場合、一般に満足な結果が得られる。大部分の大型哺乳動物に対しては、総日用量は約1.0ミリグラム~約1000ミリグラムであり、好ましくは、約1ミリグラム~約50ミリグラムである。70キログラムの成人の場合には、総日用量は、一般に約7ミリグラム~約350ミリグラムである。この投薬量計画は、最適の治療効果を得るために調整することができる。
【0058】
本発明に係る非晶質又はその医薬組成物は、患者のFXRにより媒介される疾患を予防、対処、治療又は軽減することができ、特に非アルコール性脂肪肝(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肥満症、高トリグリセリド血症、アテローム性動脈硬化症、慢性肝内胆汁うっ滞症、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、進行性家族性胆汁うっ滞症(PFIC)、薬物誘発性胆管損傷、胆石、肝硬変、B型肝炎、皮膚腺疾患、アルコールによる肝硬変、嚢胞性線維症、胆道閉鎖、胆石症、肝線維症、脂質代謝異常、アテローム性動脈硬化症、II型糖尿病、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病網膜症、末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)、結腸炎、新生児黄疸、核黄疸、静脈閉塞性疾患、門脈圧亢進症、メタボリックシンドローム、急性心筋梗塞、急性脳卒中、血栓症、高コレステロール血症、腸内細菌異常増殖、勃起機能不全、胃腸管腫瘍性疾患及び肝臓腫瘍性疾患等を効果的に治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】本発明の実施例1の方法で製造した式(I)で表される化合物の非晶質のX線粉末回折(XRPD)パターンである。
【
図2】本発明の実施例1の方法で製造した式(I)で表される化合物の非晶質の示差走査熱量測定(DSC)パターンである。
【
図3】本発明の実施例1の方法で製造した式(I)で表される化合物の非晶質の熱重量分析(TGA)図である。
【
図4】式(I)で表される化合物の非晶質の、本発明の実施例3の第(1)の方法による高温条件での安定性試験過程におけるX線粉末回折変化図を示す。
【
図5】式(I)で表される化合物の非晶質の、本発明の実施例3の第(2)の方法による高湿条件下での安定性試験過程におけるX線粉末回折変化図を示す。
【
図6】式(I)で表される化合物の非晶質の本発明の実施例3の第(3)の方法による光照射条件での安定性試験過程におけるX線粉末回折変化図を示す。
【
図7】本発明の実施例1の方法で製造した式(I)で表される化合物の非晶質の動的水分吸着(DVS)パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、実施例の態様によって本発明をさらに説明するが、本発明は、上記実施例の範囲内に限定されるものではない。
【0061】
本発明に使用されるX線粉末回折分析方法は、以下のとおりである。Empyrean回折装置でCu-Kα放射(45KV、40mA)を使用してX線粉末回折パターンを得る。単結晶シリコン試料ホルダ上で粉末状試料から薄層にし、回転試料ステージに置き、3°~60°の範囲内で0.0167°ステップサイズで分析する。Data Collectorソフトウェアでデータを収集し、High Score Plusソフトウェアでデータを処理し、Data Viewerソフトウェアでデータを読み取る。
【0062】
本発明に使用される示差走査熱量測定(DSC)分析方法は、熱分析コントローラ付きのTAQ2000モジュールを用いて示差走査熱量測定を行うことである。データを収集し、TA Instruments Thermal Solutionsソフトウェアを用いて分析する。おおよそ1~5mgの試料を正確に計量してカバー付きの特製アルミニウムるつぼに入れ、線形加熱装置を用いて10℃/分で加熱し、室温から約300℃まで試料を分析する。使用中、DSCセルを、乾燥窒素を用いてパージする。
【0063】
本発明に使用される熱重量分析(TGA)分析方法は、以下のとおりである。熱分析コントローラ付きのTAQ500モジュールを用いて熱重量分析を行う。データを収集し、TA Instruments Thermal Solutionsソフトウェアを用いて分析する。約10~30mgの試料を白金るつぼに入れ、線形加熱装置を用いて10℃/分で加熱し、室温から約300℃まで試料を分析する。使用中、DSCセルを、乾燥窒素を用いてパージする。
【0064】
具体的な実施方法
式(I)で表される2-((5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロフェニル)イソオキサゾール-4-イル)メトキシ)-10H-スピロ[ベンゾ[6,7]オキセピン[3,2-b]ピリジン-11,1’-シクロプロパン]-7-カルボン酸という化合物の具体的な合成方法は、中国特許出願CN107686486の実施例9を参照する。
【実施例】
【0065】
実施例1 式(I)化合物の非晶質
1.非晶質の製造
室温で2-((5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロフェニル)イソオキサゾール-4-イル)メトキシ)-10H-スピロ[ベンゾ[6,7]オキセピン[3,2-b]ピリジン-11,1’-シクロプロパン]-7-カルボン酸という化合物(201.5mg)を100mLの一口フラスコに加え、次に自製の水酸化ナトリウム(133.8mg、3.34mmol)の水(30.0mL)溶液を加え、65oCに加熱し、固体が完全に溶解すると、40oCまで降温し、自製の希塩酸(4.74mmol、15.0mL)溶液を滴下し、滴下した後、pH値が2~3であると測定し、加熱を停止し、室温まで自然冷却し、かつ3時間撹拌し晶析させ、吸引濾過し、濾過ケーキを水(3.0mL×3)で洗浄し、60oCで6時間真空乾燥して、白色固体(1.41g、92.2%)を得た。
【0066】
2.非晶質の同定
(1)EmpyreanによるX線粉末回折(XRPD)分析同定:Cu-Kα放射を使用したが、そのX線粉末回折パターンは、実質的に
図1に示すとおりである。
【0067】
(2)TAQ2000による示差走査熱量(DSC)の分析同定:走査速度は10℃/分であり、上記非晶質は、92.26℃のガラス転移温度を有し、許容誤差は±3℃である。本実施例の方法で製造された非晶質の示差走査熱量測定パターンは、実質的に
図2に示すとおりである。
【0068】
(3)TAQ500による熱重量損失(TGA)の分析同定:昇温速度は10°C/分であり、重量損失は0.409%であり、許容誤差は±0.1%のである。本実施例の方法で製造された非晶質の熱重量分析図は、実質的に
図3に示すとおりである。
【0069】
実施例2 本発明に係る非晶質の薬物動態学試験
本発明に係る式(I)で表される化合物(2-((5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロフェニル)イソオキサゾール-4-イル)メトキシ)-10H-スピロ[ベンゾ[6,7]オキセピン[3,2-b]ピリジン-11,1’-シクロプロパン]-7-カルボン酸という化合物)の非晶質をカプセルに充填し、経口投与した。
【0070】
8~12kgの雄性Beagle犬に5mg/kgの供試試料を経口投与し、各群に3匹の動物がある。投与後0.25、0.5、1.0、2.0、4.0、6.0、8.0及び24hの時点で採血する。試料濃度に基づいて適切な範囲の標準曲線を確立し、AB SCIEX API4000型LC-MS/MSを使用し、MRMモードで血漿サンプル中の供試試料の濃度を測定し、かつ定量分析を行う。薬物濃度-時間曲線に基づいて、WinNonLin 6.3ソフトウェアにより非コンパートメントモデルを用いて薬物動態パラメータを計算する。試験結果を表1に示す。
【0071】
表1 本発明に係る非晶質の薬物動態学試験データ
【表2】
試験結論:
表1から分かるように、本発明に係る非晶質は、Beagleイヌ体内での暴露量が大きく、良好な薬物動態学的性質を有する。
【0072】
実施例3 本発明に係る非晶質の安定性試験
(1)高温試験:適量の供試品をフラット秤量瓶に入れ、5mm以下の厚さの薄層に広げ、60℃の温度で30日間静置し、5、10、30日目にサンプリングし、試料の色の変化を観察し、HPLCで試料の純度を測定し、X線粉末回折で構造を分析し、その高温試験X線粉末回折の変化は、実質的に
図4に示すとおりである。
【0073】
(2)高湿試験:適量の供試品をフラット秤量瓶に入れ、5mm以下の厚さの薄層に広げ、25℃、RH 90%±5%の条件で30日間静置し、5、10、30日目にサンプリングし、試料の色の変化を観察し、HPLCで試料の純度を測定し、X線粉末回折で構造を分析し、その高湿試験X線粉末回折の変化は、実質的に
図5に示すとおりである。
【0074】
(3)光照射試験:適量の供試品をフラット秤量瓶に入れ、5mm以下の厚さの薄層に広げ、光照射試験用箱内に入れ、開口したままに、照度4500±500lx、紫外光≧0.7w/m
2の条件で30日間静置し、5、13、30日目にサンプリングし、試料の色の変化を観察し、HPLCで試料の純度を測定し、X線粉末回折で構造を分析し、その光照射試験のX線粉末回折の変化は、実質的に
図6に示すとおりである。
【0075】
安定性試験における供試品の外観及び化学純度の変化状況を表2に示す。
【0076】
【0077】
試験結論:
高温、高湿及び光照射条件で、本発明に係る非晶質の外観、化学純度及び結晶型は、いずれも明らかに変化せず、安定性が高く、医薬用途に適する。
【0078】
実施例4 本発明に係る非晶質の吸湿性試験
適量の供試品に対して、動的水分吸着装置を用いてその吸湿性を測定する。試験結果を
図7に示す。試験結果によれば、本発明に係る非晶質は、相対湿度が80%の条件下で、平衡になった際の重量増加が2%より小さく、吸湿性質量増加の定義の標準によれば、低吸湿性である。即ち、本発明に係る非晶質は、容易に高湿度の影響を受けて潮解することがない。
【0079】
以上で述べた内容は、本発明の構想の基本的な説明であり、本発明の技術手段に基づいて行われた任意の等価変換は、いずれも本発明の保護範囲に属すべきである。
【0080】
本明細書の説明において、参照用語「一実施例」、「いくつかの実施例」、「例」、「具体的な例」又は「いくつかの例」等の説明は、該実施例又は例を組み合わせて説明された具体的な特徴、構造、材料又は特性が本発明の少なくとも1つの実施例又は例に含まれることを意味する。本明細書において、上記用語の例示的な表現は、必ずしも同一の実施例又は例に限定されるものではない。かつ、説明された具体的な特徴、構造、材料又は特性は、いずれか1つ又は複数の実施例又は例において適切に組み合わせることができる。また、互いに矛盾しない限り、当業者であれば、本明細書で説明された異なる実施例又は例、及び異なる実施例又は例の特徴を結合するか又は組み合わせることができる。
【0081】
以上、本発明の実施例を例示し、説明したが、理解できるように、上記実施例は、例示的なものに過ぎず、本発明を限定するものと理解すべきではなく、当業者であれば、本発明の範囲内で上記実施例に対して変更、修正、置換、変形を行うことができる。
【国際調査報告】