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特表2023-504437遠心管、遠心アダプタ、PRP含有薬剤を生成する機械、および使い捨てPRP手動生成キット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-03
(54)【発明の名称】遠心管、遠心アダプタ、PRP含有薬剤を生成する機械、および使い捨てPRP手動生成キット
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/02 20060101AFI20230127BHJP
   A61J 1/05 20060101ALI20230127BHJP
   A61J 1/10 20060101ALI20230127BHJP
【FI】
A61M1/02 180
A61J1/05 351B
A61J1/10 330A
A61M1/02 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022532013
(86)(22)【出願日】2020-11-30
(85)【翻訳文提出日】2022-07-27
(86)【国際出願番号】 IB2020061274
(87)【国際公開番号】W WO2021111274
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】102019000022947
(32)【優先日】2019-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521491495
【氏名又は名称】プロメテウス エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】デッラ ラジョーネ,リカルド
(72)【発明者】
【氏名】ミケランジェリ,アリス
(72)【発明者】
【氏名】メノッツィ,ヴァレンティーナ
【テーマコード(参考)】
4C047
4C077
【Fターム(参考)】
4C047AA11
4C047CC01
4C077BB04
4C077DD13
4C077DD17
4C077DD24
4C077EE01
4C077KK04
4C077NN03
(57)【要約】
本発明は、分離容器(1)、ベンチ遠心分離機の遠心分離ステーション用アダプタ装置(2)と、多血小板血漿を含有する薬剤の生成装置(85)に関する。本発明は、さらに、多血小板血漿の手動生成方法、および該容器および該装置を利用可能な薬剤の手動生成方法に関する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンチ遠心分離機用の試験管(11)と、
キャップ(18)と、
チューブ(14)と、
を備える無菌の分離容器(1)であって、
前記試験管(11)は、対応する円錐底部(12)と、前記円錐底部(12)とは反対側にある第1開口(19)と、を有し、
前記試験管(11)は、対応する第1ハウジング(81)を内部に画定し、
キャップ(18)は、前記試験管(11)の前記第1開口(19)と係合可能であり、
前記キャップ(18)は、貫通孔である第1孔、第2孔、第3孔と、該第1孔および該第2孔を閉鎖するよう、それぞれに係合する第1無針コネクタおよび第2無針コネクタ(15,16)と、該第3孔に係合するフィルタ(17)と、を有し、
前記キャップ(18)が前記第1開口(19)に係合した際、対応する圧搾空気弁が前記試験管(11)から離間して配置されるよう、前記第1無針コネクタおよび前記第2無針コネクタ(15,16)のそれぞれが配置され、
前記対応する圧搾空気弁が閉まる際、前記第1無針コネクタおよび/または前記第2無針コネクタ(15,16)を通過した液体と併せて、微生物学的なフィルタ処理が施された空気みが通過できるよう、前記フィルタ(17)は、0.4ピコメートル以下の大きさを有する細孔を有しており、
前記キャップ(18)が前記第1開口(19)に係合した際、対応する端末部(13)とともに、前記チューブ(14)が第1ハウジング(81)の内部に配置されるよう、チューブ(14)は、前記第1無針コネクタ(15)の位置で、前記キャップ(18)から形成されており、
前記端末部は、前記キャップ(18)から離間し、前記試験管(11)の前記円錐底部(12)側に配置された対応する終端を有し、
前記第1無針コネクタ(15)および前記チューブ(14)を介して前記試験管(11)に液体が導入された際にベンチュリ効果を得て、前記分離容器(1)に収容した際に沈殿粒子と上澄み液とが再び混ざるように、前記チューブ(14)の前記端末部は、対応する端末に向かってテーパー状になっている、ことを特徴とする、分離容器(1)。
【請求項2】
円筒状の外観を有する筒状壁(21)と、
底壁と、
を備え、
前記筒状壁(21)は、長手方向に延びる対応する軸(23)を有し、前記筒状壁の第1端(24)側に開口する第2ハウジング(22)を、内部で画定し、
前記第2ハウジング(22)は、軸(23)に対する水平面に沿って測定した場合、対応する最大幅(L2)以上の、対応する最大長さ(L1)を有し、
前記筒状壁(21)は、前記軸(23)をまたいで反対側にある、対応する第1長手部および対応する第2長手部(25,26)において、一定の第1厚み(S1)を有し、
前記長手壁は、前記軸(23)をまたいで反対側にある、対応する第3長手部および対応する第4長手部(27,28)において、一定かつ前記第1厚み(S1)よりも小さい、対応する厚み(S2)を有し、
前記底壁は、前記筒状壁(21)の第2長手壁(29)において、前記第2ハウジング(22)を閉じ、
前記アダプタ装置(2)は、ベンチ遠心分離機の円筒状のステーションにおける、対応する第2長手端に挿入可能であり、挿入されると、前記第1長手部および前記第2長手部(25,26)間の前記第2ハウジング(22)内に、遠心分離機用試験管(11)を収容する、あるいは、前記第2ハウジング(22)内に、液体を収容する医療用袋を収容することができ、
前記遠心分離機用試験管(11)は、前記最大幅(L2)よりも小さな寸法を有し、遠心分離時、前記試験管(11)が前記第1長手部および前記第2長手部(25,26)の間に留まるような寸法を有し、
前記医療用袋は、少なくとも一部が満たされている場合、収容時に、前記第3長手部および前記第4長手部(27,28)から延出する程度の寸法を有する、ことを特徴とする、ベンチ遠心分離機の遠心分離ステーション用のアダプタ装置(2)。
【請求項3】
多血小板血漿を含有する薬剤を生成する、無菌の生成装置(85)であって、
生物学的液体を収容する第1医療用袋(4)と、
第3無針コネクタ(41)と、
支持要素(43)と、
を備え、
前記第1医療用袋(4)は、互いに対向する対応する第1壁および対応する第2壁を有し、対応する第3ハウジングを内部に画定し、該第3ハウジングは、前記第1医療用袋(4)の第2開口(42)側に開口し、
前記第3無針コネクタ(41)は、対応する圧搾空気弁が前記第3ハウジングから離間して設けられるよう、前記第2開口(42)内に配置して係合され、
前記支持要素(43)は、
生体吸収性を有する素材、好ましくは、多孔性を有する素材からなる第1支持層と、
前記第1層に配置された、第2の生体吸収性を有する素材からなる第2層と、
を有し、
前記第2の生体吸収性を有する素材は、高分子からなるスポンジ、または、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、コラーゲン、および/または、キトサン、およびそれらの組合わせからなる群から選択される物質であり、
前記医療用支持は、前記第3ハウジング内に収容され、前記第1壁に接する前記第1層および前記第2壁に接する前記第2層とともに配置される、ことを特徴とする、生成装置(85)。
【請求項4】
生物学的液体を収容する第2医療用袋(3)と、
請求項1に記載の、無菌の分離容器(1)と、
無菌の流体閉回路(5)と、
無菌の第1手動収容・注入医療装置(6)と、
を備える、多血小板血漿の手動生成を目的とした使い捨てキットであって、
前記第2医療用袋(3)は、互いに対向する、対応する第2の壁対と、第4無針コネクタ(31)と、を有し、対応する第4ハウジングを内部に画定し、該第4ハウジングは、前記第2医療用袋(3)の第3開口(32)側に開口し、前記第4無針コネクタ(31)は、対応する圧搾空気弁が前記第4ハウジングから離間して設けられるよう、前記第3開口(32)内に配置して係合され、
前記流体閉回路(5)は、
第1流体導管(51)と、
流体分岐と、
第3流体部(56)と、
を備え、
前記第1流体導管(51)は、前記対応する圧搾空気弁を加圧するため、無針コネクタに流体接続可能な第1注入口(52)と、第1放出口と、を有し、
前記第1流体導管(51)は、前記第1注入口(52)から前記第1放出口への第1方向(V1)のみに、液体を流すことができ、
前記流体分岐は、前記第1方向(V1)に対して、前記第1流体導管(51)の下流側に配置され、
前記分岐は、単一の第2方向(V2)のみに流体を流すことのできる第2流体導管(53)を備え、該第2方向(V2)は、前記第1方向(V1)と一致し、前記対応する圧搾空気弁を加圧するための無針コネクタに流体接続された、対応する第2の放出口(54)に向かう方向であり、
前記第3流体部(56)は、対応する第3放出口から、あるいは、該第3放出口に向かう方向である、対応する双方向(V3,V4)に流すことが可能であり、
前記第1注入口(52)は、前記第4無針コネクタ(31)と係合可能な、対応するコネクタ(57)を備え、前記第4無針コネクタ(31)は、係合した際、前記対応する圧搾空気弁を加圧して、前記第2医療用袋(3)を前記第1流体回路に流体接続する、ことを特徴とする、多血小板血漿の手動生成を目的とした使い捨てキット。
【請求項5】
無菌の、第2手動収容・注入医療装置と、
無菌であって、抗凝固剤で満たされた、第3手動収容・注入医療装置と、
前記第2手動収容・注入医療装置および前記第3手動収容・注入医療装置を互いに接続し、前記第2手動収容・注入医療装置に抗凝固剤を導入可能な、雌-雌型水圧式コネクタと、
をさらに備える、ことを特徴とする、請求項4に記載の、多血小板血漿の手動生成を目的とした使い捨てキット。
【請求項6】
多血小板血漿の手動生成のための、再利用可能な遠心分離キットであって、
請求項2に記載した一対のアダプタ装置(2)と、
生物学的液体を収容する第3医療用袋と、
請求項1に記載の分離容器(1)と、
を備え、
前記一対のアダプタ装置(2)は互いに同一のものであり、
前記第3医療用袋の寸法は、前記一対のアダプタ装置のうち、一つのアダプタ装置において、前記第3医療用袋が、前記第2ハウジング(22)の前記第3長手部および前記第4長手部から延出する程度の寸法である、ことを特徴とする、遠心分離キット。
【請求項7】
薬剤の手動生成を目的とした、使い捨てキットであって、
請求項3に記載の、薬剤生成装置(85)と、
請求項5および6に記載の、多血小板血漿の手動生成を目的とした使い捨てキットと、
任意にゲル化剤と、
を備える、ことを特徴とする使い捨てキット。
【請求項8】
多血小板血漿の手動生成方法であって、
工程A)生物学的液体を収容するための前記第2医療用袋(3)に、患者から採取した血液を収容し、それに抗凝固剤を加えて、遠心分離させることで、前記第2医療用袋(3)の底部に沈殿した赤血球の沈殿物(33)とその他の上澄み液(34)とを得ることと、
工程B)前記対応する圧搾空気弁を加圧する無針コネクタに流体接続可能な第1注入口(52)と、第1放出口と、を有する第1流体部であって、前記注入口から前記放出口に向かう第1方向にのみ流体を流すことができる第1流体導管(51)と、前記第1方向に対して、第1流体部の下流側に配置される流体分岐であって、前記第1方向と一致し、前記対応する圧搾空気弁を加圧するための無針コネクタに流体接続可能な対応する第2の放出口(54)に向かう、単一の第2方向のみに流すことができる第2流体部を備える流体分岐と、対応する第3放出口から、あるいは該第3放出口に向かって双方向に流すことができる第3流体部と、を備える閉流路であって、無菌の閉流路を準備することと、
工程C)前記第1注入口(52)を前記第2医療用袋(3)に、前記第2の放出口(54)を、請求項1に記載の無菌の分離容器(1)に、そして前記第3放出口を液体用の前記第1手動収容・注入医療装置(6)に流体接続することと、
工程D)前記第1手動収容・注入医療装置(6)に収容するため、前記第1手動収容・注入医療装置(6)を前記第3放出口に接続しつつ、前記第2医療用袋(3)から前記第1手動収容・注入医療装置(6)を介して第1上澄み液(34)を抽出すること、
工程E)前記第1上澄み液(34)を前記分離容器(1)へ移動させるため、収容された前記第1上澄み液(34)を、前記第3放出口に接続された前記第1手動収容・注入医療装置(6)を介して、前記閉流路に注入することと、
工程F)前記分離容器(1)を前記第2の放出口(54)から流体的に切り離すことと、
工程G)前記分離容器(1)に収容された前記第1上澄み液(34)を遠心分離し、血小板の沈殿物と、小血小板血漿からなる第2上澄み液と、を得ることと、
工程H)前記対応する圧搾空気弁を加圧するため、液体用の第4手動収容・注入医療装置を前記第2無針コネクタ(16)に流体接続し、前記分離容器(1)を反転させ、前記第4手動収容・注入医療装置を介して前記第2上澄み液を回収し、前記第2上澄み液を収容し、さらに前記分離容器(1)を反転させ、前記第4手動収容・注入医療装置を介して、収容した第2上澄み液の所定の一部を注入し、前記分離容器(1)に含まれる第3液体を得ることと、
工程I)前記第4収容・注入医療装置を前記第2無針コネクタ(16)から切り離し、前記分離容器(1)の前記第1無針コネクタ(15)に、第5手動収容・注入医療装置を流体接続させることと、
工程L)前記第1無針コネクタ(15)に接続された前記第5手動収容・注入医療装置を介して、前記第3液体を前記分離容器(1)から回収し、前記第3液体を再度注入し、沈殿物中の血小板と前記第3液体中の血小板を再度混合するため、ベンチュリ効果を得ることと、
工程M)沈殿物が消失し、対応する血小板が均一に浮遊する多血小板血漿が得られるまで工程L)を繰り返し、前記血漿を前記第5手動収容・注入医療装置に収容することと、
を含む、ことを特徴とする、多血小板血漿の手動生成方法
【請求項9】
工程N)多血小板血漿を準備することと、
工程O)請求項3に記載の薬剤生成装置(85)の第3ハウジング内に、任意に凝固剤を添加しつつ、前記多血小板血漿を手動で注入することと、
工程P)好ましくは、前記支持要素(43)と、第1壁および第2壁の間にある第3ハウジング内に注入・収容された前記機多血小板血漿とを加圧することで、前記薬剤生成装置(85)の前記支持要素(43)内で前記多血小板血漿を均一に分布させることと、
を含む、ことを特徴とする、多血小板血漿を含有する薬剤の手動生成方法。
【請求項10】
前記多血小板血漿を準備する工程N)は、
請求項8に記載した方法で得た前記多血小板血漿を準備することと、
前記分離容器(1)の前記第1無針コネクタ(15)から、前記第4手動収容・注入医療装置を流体で切り離すことと、
を含み、
前記多血小板血漿を注入する工程O)は、
サブ工程O1)前記第4手動収容・注入医療装置を、前記薬剤の生成装置(85)の前記第3無針コネクタ(41)に、流体接続することと、
サブ工程O2)任意に凝固剤を添加しつつ、前記第3無針コネクタ(41)に接続された前記第4手動収容・注入医療装置を介して、前記多血小板血漿を前記第3ハウジングに注入することと、
を含む、ことを特徴とする、請求項9に記載の、多血小板血漿を含有する薬剤の手動生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚損傷や、骨軟骨性病態、関節性病態等の治療、特に、組織の再生に利用される薬剤を生成する方法および手段における技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
血液製剤を、生体吸収性を有する、適切なバイオマテリアルと組み合わせることにより、薬剤を得る。患者自身の血液から生成される場合、必要とされるタイミングに合わせて、治療対象の患者から血液を採取して生成される。血液製剤に含まれるものとしては、多血小板血漿(血小板)があり、頭文字をとってPRPとも呼ばれる。PRPは、血液を遠心分離して、増殖因子を高濃度に凝集することによって得られる。このため、効率よく細胞再生が行われる。当然、PRPは、PRPを得る前の血漿濃度と比較して、高い血小板濃度を有する。一般的には、4倍~6倍、好ましくは、6倍~9倍程度高い濃度を有する。PRPを得るには、1回の血液遠心分離を含む工程を実施する。遠心分離によって、底に沈殿した赤血球(あるいは複数の赤血球)と、可変組織を有する上澄み部が得られる。赤血球の沈殿物周辺における第1領域では、上澄み部の血小板濃度は高く、第1領域よりも上の第2領域では、血小板濃度は低くなる。したがって、第2領域(血小板濃度は低い)から上澄み部を回収し、破棄したうえで、上澄み部を第1領域から回収し、PRPを得る。赤血球が混ざることなく、可能な限り多くのPRPを得ることが必要である。実際、赤血球が薬剤に残ってしまうと、相対有効性において、マイナスの影響が出てしまう。そのため、PRPの採取を容易にする目的で、血液を入れる遠心分離用の容器(試験管またはバイアル瓶)に、対応する垂直断面において狭窄部を設けてもよい。狭窄部の位置における、赤血球の沈殿物と第1領域の境界では、通常の組成に近しい組成を有している血液を、正確な量で採取することが求められる。あるいは、PRPを得るために、2回の連続した遠心分離を含む工程を実施してもよい。第1段階において、第1無菌容器を使用し、採取した血液を遠心分離させ、底に溜まった赤血球と赤血球を含まない第1上澄み部とを回収する。その後、別の無菌容器で、第1上澄み部を遠心分離させることで、血小板を底に溜め、小血小板血漿(「PPP」)である第2上澄み部を回収する。そして、採取した血液全体の10%に相当する量のPPPを、底に沈んだ血小板に加え、血小板を再懸濁し、多血小板血漿を得る。多血小板血漿では、無菌状態を維持しながら、多くの血小板が、可能な限り均一に分布している。これは、無菌空気の層流が発生したヒュームフード下で、実験用ピペットを使って容器を開けることで、または密閉した容器を力強く振ることで、実現可能となる。最終的な状態では、得られたPRPは、均質ではないが、血小板凝集塊となっている。結果的に、これによって得られる薬剤は、同質の応用性・有用性が見込めるわけではない。また、ヒュームフード下での再懸濁に関して言えば、全ての病棟、クリニック、動物病院が、ヒュームフードを利用できるわけでない。
【0003】
医療分野では、「無針コネクタ」と呼ばれるコネクタが知られている。このコネクタは、医療用採取・収容装置および液体用の手動収容・注入医療装置の間に配置することができ、両装置を互いに無菌状態に保ちながら、流体接続させることができる。両装置のうち、第1の装置は、生物学的液体(血液、血漿、尿等)あるいは薬液(生理食塩水、薬理学系等)を採取・収容する医療用容器であってもよい。収容・注入装置は、シリンダ(62)とピストン(61)とを有するシステムと、それらを接続する手段と、一般的には無針シリンジと、を備え得る。無針コネクタの長手方向の第1端は、医療用採取・収容装置の開口部に係合し、内部に対応する長手軸を有するチャネルを画定し、その第2端には圧搾空気弁を備える。圧搾空気弁は、それ自体の軸に対して、長手方向に弾性的に変形可能な要素からなる。コネクタは、長手方向の第2端が自由端となっている場合、弁がチャネルを遮断し、液体の通過や空気伝達などを防ぐよう、構成される。無針コネクタはまた、無針コネクタの長手方向第2端が手動収容・注入医療装置の接続手段に係合している場合、弁が加圧されて、チャネルが開き、液体が流れるように、構成される。
【0004】
上述の遠心分離工程は、ベンチ遠心分離機で行われる。該装置は、(遠心分離時の負荷の均衡をとるため)少なくとも2つの遠心分離ステーションを備える。ステーションには、ベンチ遠心分離機用の容器が挿入され、該容器は、一般的には、試験管やバイアル瓶であり、任意に対応するキャップを有する。
【0005】
一般的に、PRPを含む薬剤を得るためには、PRPをゲル化剤と混合する。こうして得られたゲルは、任意に、「スキャフォールド」とも呼ばれる、生体吸収性および多孔性を有する材料からなる支持層によって支持されていてもよい。これにより、薬剤の局所投与が容易になる。
【0006】
以上より、薬剤生成手段および方法に関して、PRPを含む薬剤を手動で生成するにあたっては、血小板を均一に分布させること、PRPの無菌状態を保つためのヒュームフード下での作業を必要としないこと、また、高価な設備を必要とせず、簡単な方法で薬剤を生成できることが求められる。さらに、特に重要なこととして、生成されたPRP、ひいては、PRPを用いて生成された薬剤の汚染リスクを可能な限り最小限にすることが求められている。特に、カルシウム塩を添加し、PRPをゲル化させるために、少なくとも30分程度培養したのち、ゲル状の薬剤を得る場合、こうしたリスクを最小限にとどめておく必要がある。仮に、こうした工程が、密閉空間ではなく、無菌ではない環境で行われた場合、異物や微生物によるPRPの汚染リスクが高くなるためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、多血小板血漿を含有する薬剤の生成手段および方法における、上述のリスクの低減・回避にある。
【0008】
特に、本発明の目的は、ヒュームフード下での作業を必要とすることなく、外部からの汚染を防ぎながら、また、コストを上昇させることなく、既知のタイプの実験用遠心分離機を使用しながら、血小板が均一に再懸濁されたPRPを生成できること、ひいては、PRPを含む薬剤も生成できることにある。また、本発明のさらなる目的は、流体回路や容器を開けてしまうことで引き起こされ得る、いかなる汚染を回避するため、無菌状態の流体閉回路を利用しつつ、PRP、ひいてはPRPを含む薬剤を得るための手段および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの目的は、本明細書に添付の請求項1、請求項2、請求項3、請求項8、および請求項9にそれぞれ記載された、分離容器、ベンチ遠心分離機の遠心分離ステーション用のアダプタ装置、多血小板血漿を含有する薬剤の生成装置、、多血小板血漿の手動生成方法、および薬剤の手動生成方法によって、達成される。
【0010】
本発明では、上述の既知のPRP生成工程、ひいては、PRPを含む薬剤の生成にも活用される、一般的なベンチ遠心分離機を用いることができる。本発明によれば、閉回路において、汚染が防止された条件下でPRPおよび薬剤を生成することが可能であることは、明らかである。したがって、ヒュームフードを必要としない。
【0011】
なお、本発明によれば、アダプタ装置により、採取した血液を、採取した血液が収容される、生物学的液体を回収するための医療用袋に直接入れて、遠心分離することができる。したがって、アダプタ装置によって、本発明に係る、多血小板血漿の手動生成方法における工程A)および工程G)の両方を実施することができる。この時、遠心分離時に袋が損傷することを防ぎ、遠心分離によって分離した血液成分を再混合することができる。なお、分離容器、および本発明に係る、多血小板血漿の手動生成方法における工程L)において、ベンチュリ効果により、対応する沈殿物中の血小板を均一に再懸濁することができ、均質な溶液を得ることができる。
【0012】
本発明によって得た組成と、既知のPRP生成手段および方法によって得た組成と、を比較した。その結果、本発明で抽出された血小板のパーセンテージおよび濃縮率は、既知の手段によって得られたものよりも高いことが分かった。また、塊の形成を完全に防ぎながらも、高い血小板濃度が得られることが分かった。特に、本発明の使い捨てキットによって、血液全体に対して、白血球を96%、赤血球を98%~100%除去しながら、70%~95%の血小板を、6倍~8倍の濃度で回収できた。これは、過剰かつ有害な炎症反応のリスクを低減するにあたり、非常に重要である。
【0013】
本明細書において、本発明は、手動生成の方法に関するものであるため、「流体的に接続する」、「流体的に切り離す」、「流体的な切り離し」、「注入」、「抽出」、および「回収」の表現が記載されている場合、それらは、それぞれ、「流体的に手動で接続する」、「流体的に手動で切り離す」、「流体的な手動切り離し」、「手動注入」、「手動抽出」および「手動回収」を示すことを理解されたい。さらに、明示はしないが、「医療用袋」と記載されている場合、医療用袋は、生物学的液体を収容するためのものである。この医療用袋は、PVCからなる壁を有することが好ましい。
【0014】
分離容器、アダプタ装置、多血小板血漿を含有する薬剤の生成装置に関する、非制限的かつ好ましい実施形態、そして本発明における多血小板血漿の手動生成方法および薬剤の手動生成方法に関する実施形態といった、本発明における特徴を、添付の表および図面を参照して、説明する。図面は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明に係るベンチ遠心分離機の遠心分離ステーション用のアダプタ装置を示す斜視図である。
図2図2は、図1のアダプタ装置を上から見た図である。
図3図3は、本発明に係る分離容器を示す側面図である。
図4図4は、本発明に係る分離容器を示す斜視図である。
図5図5は、多血小板血漿(PRP)を含有する薬剤の生成装置を模式的に示す正面図である。
図6図6は、本発明に係る方法を実行するにあたり利用される、生物学的液体を収容するための医療用袋を模式的に示す正面図である。
図7図7は、本発明に係るPRP生成方法における複数の工程を模式的に例示するための、正面図である。
図8図8は、本発明に係るPRP生成方法における複数の工程を模式的に例示するための、正面図である。
図9図9は、本発明に係るPRP生成方法における複数の工程を模式的に例示するための、正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照すると、符号(1)は、本発明に係る分離容器を、符号(2)は、本発明に係るベンチ遠心分離機の遠心分離ステーション用のアダプタ装置を、そして、符号(85)は、本発明に係る、多血小板血漿(PRP)を含有する薬剤の生成装置を、それぞれ示している。
【0017】
ベンチ遠心分離機用の試験管(11)と、
キャップ(18)と、
チューブ(14)と、
を備える無菌の分離容器(1)であって、
試験管(11)は、対応する円錐底部(12)と、円錐底部(12)とは反対側にある第1開口(19)と、を有し、
試験管(11)は、対応する第1ハウジング(81)を内部に画定し、
キャップ(18)は、試験管(11)の第1開口(19)と係合可能であり、
キャップ(18)は、貫通孔である第1孔、第2孔、第3孔と、該第1孔および該第2孔を閉鎖するよう、それぞれに係合する第1無針コネクタおよび第2無針コネクタ(15,16)と、該第3孔に係合するフィルタ(17)と、を有し、
キャップ(18)が第1開口(19)に係合した際、対応する圧搾空気弁(不図示)が試験管(11)から離間して配置されるよう、第1無針コネクタおよび第2無針コネクタ(15,16)のそれぞれが配置され、
対応する圧搾空気弁が閉まる際、第1無針コネクタおよび/または第2無針コネクタ(15,16)を通過した液体と併せて、微生物学的なフィルタ処理が施された空気みが通過できるよう、フィルタ(17)は、0.4ピコメートル以下の大きさを有する細孔を有しており、
キャップ(18)が第1開口(19)に係合した際、対応する端末部(13)とともに、チューブ(14)が第1ハウジング(81)の内部に配置されるよう、チューブ(14)は、第1無針コネクタ(15)の位置で、キャップ(18)から形成されており、
端末部は、キャップ(18)から離間し、試験管(11)の円錐底部(12)側に配置された対応する終端を有し、
第1無針コネクタ(15)およびチューブ(14)を介して試験管(11)に液体が導入された際にベンチュリ効果を得て、分離容器(1)に収容した際に沈殿粒子と上澄み液とが再び混ざるように、チューブ(14)の端末部は、対応する端末に向かってテーパー状になっている、
ことを特徴とする。
【0018】
全血から最初に遠心分離された第1上澄み液から工程を開始する。分離容器は、遠心分離によって、血小板の沈殿物と、小血小板血漿からなる第2上澄み液を得るのに適している。さらに、容器(1)は、ベンチュリ効果によって、血小板の対応する沈殿物と、第2上澄み液の一部とを、沈殿物が消滅するまで、再混合することができる。(本発明に係る、多血小板血漿の手動生成方法における工程L)および工程M)参照)。ここで、分離容器(1)は、ベンチュリ効果により、同様に、他の沈殿物を再混合できることも留意されたい。
【0019】
出願者が実験で明らかにしたところによれば、チューブ(14)がテーパー部を有していない、あるいは、対応する終端が、試験管(11)の円錐底部(12)で、キャップ(18)から離間されて設けられていない、あるいは、試験管(11)の底部が円錐形状ではない、といったような、分離容器(1)とは異なる特徴と備えた容器が、PRP生成のために使用された場合、その成果物としてのPRPは、血小板凝集塊を有さず、したがって、薬剤の生成には適さないことが分かった。無論、キャップ(18)は、試験管(11)の第1開口(19)に係合すると、液体や外部からの空気を通さないよう、構成される。
【0020】
ベンチ遠心分離機の遠心分離ステーション用のアダプタ装置(2)は、
円筒状の外観を有する筒状壁(21)と、
底壁と、
を備え、
筒状壁(21)は、長手方向に延びる対応する軸(23)を有し、筒状壁の第1端(24)側に開口する第2ハウジング(22)を、内部で画定し、
第2ハウジング(22)は、軸(23)に対する水平面に沿って測定した場合、対応する最大幅(L2)以上の、対応する最大長さ(L1)を有し、
筒状壁(21)は、軸(23)をまたいで反対側にある、対応する第1長手部および対応する第2長手部(25,26)において、一定の第1厚み(S1)を有し、
長手壁は、軸(23)をまたいで反対側にある、対応する第3長手部および対応する第4長手部(27,28)において、一定かつ第1厚み(S1)よりも小さい、対応する厚み(S2)を有し、
底壁は、筒状壁(21)の第2長手壁(29)において、第2ハウジング(22)を閉じる、
ことを特徴とする。
【0021】
アダプタ装置(2)は、ベンチ遠心分離機の円筒状のステーションにおける、対応する第2長手端に挿入可能であり、挿入されると、第1長手部および第2長手部(25,26)間の第2ハウジング(22)内に、遠心分離機用試験管(11)を収容する、あるいは、第2ハウジング(22)内に、生物学的液体を収容する医療用袋(3)を収容することができる。遠心分離機用試験管(11)は、最大幅(L2)よりも小さな寸法を有し、遠心分離時、試験管(11)が第1長手部および第2長手部(25,26)の間に留まるような寸法を有する。医療用袋は、少なくとも一部が満たされている場合、収容時に、第3長手部および第4長手部(27,28)から延出する程度の寸法を有する。生物学的液体を収容するための医療用袋は、中身が入っていない状態では略四角形の平面形状を有しているものとし、袋の縦と横の寸法は、第2ハウジング(22)の深さおよび長さ(L1)に相当するものとする。
【0022】
第1長手部および第2長手部(25,26)は、軸(23)を挟んで、円形冠部の弧に一致する、相対的な部であり、そのため、遠心分離時に試験管(11)を保持するのに適している。この円弧形状は、3度~175度、好ましくは、50度で延出しているため、有利である。
【0023】
ベンチ遠心分離機の遠心分離ステーション用のアダプタ装置(2)によって、液体を収容する第2医療用袋(3)に入れた血液等の組成物を、遠心分離することができる。この時、血液の採取時から、血液を医療用袋(3)に収容し、それを第2ハウジング(22)に設置することで遠心分離を行うため、組成物の汚染を引き起こし得る、液体の移し替えを行う必要がないことは明らかである。これは、血液を扱う場合、そしてこの血液が、PRP、ひいては、多血小板血漿を含有する薬剤を生成するのに使われる場合に、特に重要である。また、無論、アダプタ装置(2)によって、本発明の分離容器(1)が備える遠心分離機用試験管(11)を、第1長手部および第2長手部(25,26)間の第2ハウジング(22)内に設置することができる。これによって、液体を収容する医療用袋に入った組成物(例えば、血液)や、分離容器(1)の遠心分離機用試験管(11)内の、さらなる組成物(例えば、第2医療用袋に入れた血液を遠心分離して、その血液の遠心分離によって得た第1上澄み部)を遠心分離する際、引き続き、同じ遠心分離ステーションおよび同じアダプタ装置を使用することができる。
【0024】
底壁は、軸(23)に対して、すなわち、筒状壁(21)に対して、垂直であることが好ましい。第2ハウジング(22)は、好ましくは、軸(23)を通る、対応する対称面を有する。
【0025】
本発明に係る、多血小板血漿を含有する薬剤を生成する、生成装置(85)は、無菌であり、
生物学的液体を収容する第1医療用袋(4)と、
第3無針コネクタ(41)と、
支持要素(43)(好ましくは平面状)と、
を備え、
第1医療用袋(4)は、互いに対向する対応する第1壁および対応する第2壁を有し、対応する第3ハウジングを内部に画定し、該第3ハウジングは、第1医療用袋(4)の第2開口(42)側に開口し、
第3無針コネクタ(41)は、対応する圧搾空気弁が第3ハウジングから離間して設けられるよう、第2開口(42)内に配置して係合され、
支持要素(43)は、
生体吸収性を有する素材、好ましくは、多孔性を有する素材からなる第1支持層と、
第1層に配置された、第2の生体吸収性を有する素材からなる第2層と、
を有し(好ましくは、以上からなり)、
第2の生体吸収性を有する素材は、高分子からなるスポンジ、または、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、コラーゲン、および/または、キトサン、およびそれらの組合わせからなる群から選択される物質であり、
医療用支持は、第3ハウジング内に収容され、第1壁に接する第1層および第2壁に接する第2層とともに配置される、
ことを特徴とする。
【0026】
よって、第1支持層は、重合体スキャフォールドをなし、3Dプリントによって得られる点で有利である。これにより、多孔性を有する場合、それぞれの孔の相対厚みおよび寸法を制御することができる。例えば、0.2ミリメートル~2ミリメートル、好ましくは、0.5ミリメートル~1ミリメートルに孔の寸法を設定できる点で有利である。
【0027】
特に、第1層が多孔性を有する場合、孔がなく、通気性を有さない層と比べても、減成し、空気を通すため、傷の治りを早める。また、格子状であることによっても、再生プロセス時の細胞の成長を理想的にサポートできる。
【0028】
好ましい実施形態において、第1支持層は、5ピコメートル~500ピコメートル、好ましくは、5ピコメートル~350ピコメートル、より好ましくは、150ピコメートルの厚みを有する。なお、第1層が、0.2ミリメートル~2ミリメートル、好ましくは、0.5ミリメートル~1ミリメートルの孔を有し、対応する厚みが150ピコメートルである場合、後述する薬剤の手動生成方法を実施することにより得られる、生体吸収性を有する第2素材およびPRPの混合物を支持、および/または、保持することができる。これにより、第1層から分離して混ざることが回避できる。生体吸収性を有する第1素材、好ましくは、多孔性を有する素材は、ポリカプロラクトン(PLC)、乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ乳酸(PLA)、NYLON680、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリエステルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、およびポリスルホン(PSU)であってもよい。好ましい実施形態において、生体吸収性を有する第1素材は、ポリ乳酸(PLA)である。
【0029】
第2層の対応する厚みは、1ミリメートル~10ミリメートル、好ましくは、1ミリメートル~5ミリメートルである。好ましくは、第2層は、高分子からなるスポンジからなり、好ましくは、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、コラーゲン、および/または、キトサン、およびそれらの組合わせからなる群から選択される物質からなる。より好ましくは、該物質はゼラチンであり、豚皮ゼラチンであると有利である。これは、PRPの吸収が容易で、裂傷部への薬剤投与後、成長因子が徐々に放出されるためである。高分子からなるスポンジの対応する多孔度が、40%~60%、好ましくは、45%~55%の場合、有利となる。これにより、高分子からなるスポンジが、PRPをより均一に吸収し、分布させることができる。その結果、最終的な薬剤中の血小板濃度の高さを維持しながら、PRPが高い均一性で分布した薬剤を得ることができ、また、患者から採取する血液量を少量に抑えることができる。
【0030】
PRPの生成においては、無菌手段が必要となることから、汚染のリスクがないPRP系薬剤を得ることのできる、多血小板血漿の手動生成のための使い捨てキットは、特に有効である。
【0031】
使い捨てキットは、
生物学的液体を収容する第2医療用袋(3)と、
本発明に係る、無菌の分離容器(1)と、
無菌の流体閉回路(5)と、
無菌の第1手動収容・注入医療装置(6)と、
を備え、
第2医療用袋(3)は、互いに対向する、対応する第2の壁対と、第4無針コネクタ(31)と、を有し、対応する第4ハウジングを内部に画定し、該第4ハウジングは、第2医療用袋(3)の第3開口(32)側に開口し、第4無針コネクタ(31)は、対応する圧搾空気弁が第4ハウジングから離間して設けられるよう、第3開口(32)内に配置して係合され、
流体閉回路(5)は、
第1流体導管(51)と、
流体分岐と、
第3流体部(56)と、
を備え、
第1流体導管(51)は、対応する圧搾空気弁を加圧するため、無針コネクタに流体接続可能な第1注入口(52)と、第1放出口と、を有し、
第1流体導管(51)は、第1注入口(52)から第1放出口への第1方向(V1)のみに、液体を流すことができ、
流体分岐は、第1方向(V1)に対して、第1流体導管(51)の下流側に配置され、
分岐は、単一の第2方向(V2)のみに流体を流すことのできる第2流体導管(53)を備え、該第2方向(V2)は、第1方向(V1)と一致し、対応する圧搾空気弁を加圧するための無針コネクタに流体接続された、対応する第2の放出口(54)に向かう方向であり、
第3流体部(56)は、対応する第3放出口から、あるいは、該第3放出口に向かう方向である、対応する双方向(V3,V4)に流すことが可能であり、
第1注入口(52)は、第4無針コネクタ(31)と係合可能な、対応するコネクタ(57)を備え、第4無針コネクタ(31)は、係合した際、対応する圧搾空気弁を加圧して、第2医療用袋(3)を第1流体回路に流体接続する、
ことを特徴とする。
【0032】
第1注入口(52)は、ルアーロック式のコネクタ(57)、つまり、無針コネクタと係合可能な、対応するねじ切りを有するコネクタを備えていてもよく、これにより、対応する圧搾空気弁を加圧してもよい。第1流体導管(51)は、分岐の上流側に、分岐と連続して配置された第1単動式流体弁(59)を有利に備える。第2流体導管(53)は、第2の放出口(54)の上流側に、第2の放出口(54)と連続して配置された第1単動式流体弁(50)を有利に備える。
【0033】
実施形態によれば、図示しないが、使い捨てキットは、無菌の、第2手動収容・注入医療装置と、無菌であって、抗凝固剤で満たされた、第3手動収容・注入医療装置と、第2手動収容・注入医療装置および第3手動収容・注入医療装置を互いに接続し、第2手動収容・注入医療装置に抗凝固剤を導入可能な、雌-雌型水圧式コネクタと、をさらに備えることが好ましい。
【0034】
本発明の好ましい実施形態は、多血小板血漿の手動生成のための、再利用可能な遠心分離キットに関し、該キットは、
本発明に係る、一対のアダプタ装置(2)と、
生物学的液体を収容する第3医療用袋と、
本発明に係る、さらなる分離容器(1)と、
を備え、
一対のアダプタ装置(2)は、ベンチ遠心分離機の遠心分離ステーション専用のものであるとともに、互いに同一のものであり、
第3医療用袋の寸法は、一対のアダプタ装置(2)のうち、一つのアダプタ装置において、第3医療用袋が、第2ハウジング(22)の第3長手部から第4長手部に延出する程度の寸法である。
ことを特徴とする。
【0035】
第3医療用袋は、適切に中身が入れられ、再利用可能なキットの、2つのアダプタ装置(2)のうちの一方に設置されると、本発明に係る、多血小板血漿の手動生成方法における工程A)以降において、第2医療用袋(3)とは反対側に取り付けられて、使用される。明らかであるように、2つのアダプタ装置(2)は、回転軸をまたいで、互いに向かい合う、2つの異なる遠心分離ステーションに挿入され、血液を収容した第2医療用袋(3)は、2つのアダプタ装置のうちの一方の第2ハウジング(22)に挿入される。第2医療用袋(3)の血液量と均衡を保てる程度の、適切な量の液体が入った第3医療用袋は、2つのアダプタ装置のもう片方の第2ハウジング(22)に挿入される。本発明に係る別の分離容器(1)は、適切に中身が入れられ、再利用可能なキットの2つのアダプタ装置(2)のうち一方(の第2ハウジング22)に設置されると、該方法の工程G)の間、第1上澄み液(34)の入った分離容器(1)と均衡をとるように、反対側に設置される。ここで、第1分離容器(1)が、再利用可能な遠心分離キットの、もう一方のアダプタ装置の第2ハウジング(22)に設置される。これにより、本発明に係る、多血小板血漿の手動生成方法における工程A)および工程G)が実施される。なお、第2医療用袋(3)および第3医療用袋(3)は、両方とも、液体で少なくとも一部が満たされ、ベンチ遠心分離機の円筒状のステーションに直接設置されていても、円筒状のステーションに適切に保持されない場合がある。この場合、第2医療用袋(3)に対して、遠心分離により赤血球が適切に分離されない可能性がある。
【0036】
対応する好ましい実施形態において、本発明は、薬剤の手動生成を目的とした使い捨てキットに関する。該使い捨てキットは、本発明に係る薬剤の生成装置(85)と、本発明に係る多血小板血漿の手動生成を目的とした使い捨てキットと、ゲル化剤、好ましくは、グルコン酸カルシウムや塩化カルシウムといったカルシウム塩、より好ましくは、グルコン酸カルシウムと、を備える。
【0037】
多血小板血漿の手動生成方法は、
工程A)生物学的液体を収容するための第2医療用袋(3)に、患者から採取した血液を収容し、それに抗凝固剤を加えて、遠心分離させることで、第2医療用袋(3)の底部に沈殿した赤血球の沈殿物(33)とその他の上澄み液(34)とを得ることと、
工程B)対応する圧搾空気弁を加圧する無針コネクタに流体接続可能な第1注入口(52)と、第1放出口と、を有する第1流体部であって、注入口から放出口に向かう第1方向にのみ流体を流すことができる第1流体導管と、第1方向に対して、第1流体部の下流側に配置される流体分岐であって、第1方向と一致し、対応する圧搾空気弁を加圧するための無針コネクタに流体接続可能な対応する第2の放出口(54)に向かう、第2方向のみに流すことができる第2流体部を備える流体分岐と、対応する第3放出口から、あるいは該第3放出口に向かって双方向に流すことができる第3流体部と、を備える閉流路であって、無菌の閉流路を準備することと、
工程C)第1注入口(52)を第2医療用袋(3)に接続することと(対応する圧搾空気弁を加圧することで、第4無針コネクタ(31)によって接続することは明らかである)、第2の放出口(54)を、本発明に係る無菌の分離容器(1)に接続することと(対応する圧搾空気弁を加圧することで、第2無針コネクタ(16)によって接続することが好ましい)、第3放出口を液体用の第1手動収容・注入医療装置(6)に流体接続することと、
工程D)第1手動収容・注入医療装置(6)に収容するため、第1手動収容・注入医療装置(6)を第3放出口に接続しつつ、第2医療用袋(3)から第1手動収容・注入医療装置(6)を介して第1上澄み液(34)を抽出することと、(図8を参照のこと。湾曲した矢印により、第1上澄み液(34)の流路を示す。)
工程E)第1上澄み液(34)を分離容器(1)へ移動させるため、収容された第1上澄み液(34)を、第3放出口に接続された第1手動収容・注入医療装置(6)を介して、閉流路に注入することと、(図9を参照のこと。湾曲した矢印により、第1上澄み液(34)の流路を示す。)
工程F)分離容器(1)を第2の放出口(54)から流体的に切り離すことと、
工程G)分離容器(1)に収容された第1上澄み液(34)を遠心分離し、血小板の沈殿物と、小血小板血漿(PPP)からなる第2上澄み液と、を得ることと、
工程H)対応する圧搾空気弁を加圧するため、液体用の第4手動収容・注入医療装置を第2無針コネクタ(16)に流体接続し、分離容器(1)を反転させ、第4手動収容・注入医療装置を介して第2上澄み液を回収し、第2上澄み液を収容し、さらに分離容器(1)を反転させ、第4手動収容・注入医療装置を介して、収容した第2上澄み液の所定の一部を注入し、分離容器に含まれる第3液体を得ることと、
工程I)第4収容・注入医療装置を第2無針コネクタ(16)から切り離し、分離容器(1)の第1無針コネクタ(15)に、第5手動収容・注入医療装置を流体接続させることと、
工程L)第1無針コネクタ(15)に接続された第5手動収容・注入医療装置を介して、第3液体を分離容器(1)から回収し、第3液体を再度注入し、沈殿物中の血小板と第3液体中の血小板を再度混合するため、ベンチュリ効果を得ることと、
工程M)沈殿物が消失し、対応する血小板が均一に浮遊する多血小板血漿が得られるまで工程L)を繰り返し、血漿を第5手動収容・注入医療装置に収容することと、
を含む。
【0038】
本発明に係る、ベンチ遠心分離機の遠心分離ステーションのアダプタ装置2に第2医療用袋3を挿入した後、また、ベンチ遠心分離機の遠心分離ステーションにアダプタ装置(2)を挿入した後、上述のPRPの手動生成方法における工程A)を実施可能であるとする。
【0039】
さらに、第1長手部および第2長手部(25,26)の間の、アダプタ装置(2)の第2ハウジング(22)に、分離容器(1)を挿入した後、そして、遠心分離ステーションのうち、一方の遠心分離ステーションにアダプタ装置(2)を挿入した後、工程G)を実行することができる。なお、第2ハウジング(22)内に、遠心分離機用の試験管、つまり、分離容器(1)である試験管を収容可能である。
【0040】
さらに、使い捨てPRP手動生成キット内の無菌の流体閉回路において、多血小板血漿の手動生成方法における工程B)を実行できる点は、特筆すべき事項である。流体回路(5)は、工程B)について記載した事項に相当する特徴を有する。したがって、使い捨てPRP手動生成キットによって、工程B)、工程C)、および工程D)を実行することができる。さらに、再利用可能な遠心分離キットによって、該方法の工程A)および工程G)を実行することができる。各工程では、第3医療用袋および分離容器(1)を、均衡を保つ重りとしても利用している。なお、工程H)では、遠心分離によって得られる、多数のその他の沈殿物とは違い、血小板沈殿物の特性を考慮すると、分離容器(1)を反転させた際、血小板沈殿物は、底から離れない。これにより、反転させた状態で第2上澄み液を回収すれば、第2上澄み液全体が回収できることになる。チューブ(14)のテーパー状の端末部(13)によって、工程L)では、ベンチュリ効果を得ることができ、さらに、分離容器(1)を開けることなく、血小板を効果的にかつ均一に再懸濁させることができる。
【0041】
第4手動収容・注入医療装置は、無針コネクタと流体接続されていれば、前段階で使用された第1収容・注入医療装置(6)と同様のものであってもよい。第5手動収容・注入医療装置は、第4手動収容・注入医療装置と同様のものであってもよいが、ベンチュリ効果を高めるため、第4手動収容・注入医療装置とは異なる、より小さい容積を有したものであるほうが好ましい。
【0042】
本発明に係る、多血小板血漿を含有する薬剤の手動生成方法は、
工程N)多血小板血漿を準備することと、
工程O)本発明に係る薬剤生成装置(85)の第3ハウジング内に、任意に凝固剤を添加しつつ、多血小板血漿を手動で注入することと、
工程P)好ましくは、支持要素(43)と、第1壁および第2壁の間にある第3ハウジング内に注入・収容された機多血小板血漿とを加圧することで、薬剤生成装置(85)の支持要素(43)内で多血小板血漿を均一に分布させることと、
を含む。
【0043】
工程P)は分布に関する工程であり、これによって、少量のPRPが広範囲にわたって、均一に分布している薬剤を得ることができ、PRPが広い損傷部をカバーできるようになる。
【0044】
多血小板血漿を準備する工程N)において、本発明に係る、多血小板血漿の手動生成方法によって得た多血小板血漿を準備することが好ましい。この場合、収集にあたって第5医療機器が使用され、多血小板血漿を注入する工程O)は、以下のサブ工程を含むこととなる。
サブ工程O1)第5手動収容・注入医療装置を薬剤生成装置(85)の第3無針コネクタ(41)に流体接続すること
サブ工程O2)多血小板血漿を、第3無針コネクタ(41)に接続された第5手動収容・注入医療装置を介して、第3ハウジングに注入すること
【0045】
薬剤の手動生成方法によって、薬剤の入ったパッケージ(図示しない)を直接得ることができる点も、重要であると言える。これにより、薬剤生成直後の使用が想定されていない場合も、追加の包装工程を回避することができる。該パッケージには、包装と、包装内の薬剤とが含まれている。薬剤には、多血小板血漿と、支持要素(43)とが含まれている。ここで、支持要素(43)は、生体吸収性および多孔性を有する、第1素材からなる第1支持層と、生体吸収性を有する第2素材からなり、第1層に配置される第2支持層と、を備える。生体吸収性を有する第2素材は、高分子からなるスポンジ、またはアルギン酸ナトリウム、ゼラチン、コラーゲン、および/または、キトサン、およびそれらの組合わせからなる群から選択される物質である。ここで、多血小板血漿は、生体吸収性を有する第2素材に分散されており、第2層は、第1層に配置されている。パッケージは、生物学的液体を収容するための、好ましくはPVCからなる医療用袋であって、互いに向かい合う、対応する第1壁および対応する第2壁を有し、対応するハウジングを内部に画定すること、第1層は、第1壁に接触していること、第2層は、第2内壁に接触していること、そしてハウジングは、医療用袋の開口側に開口すること、を特徴とする。ここで、対応する圧搾空気弁が医療用袋のハウジングから離間して配置されるように、無針コネクタが配置される。生成装置(85)、支持要素(43)、第1層および第2層、そして、生体吸収性を有する第1素材および第2素材について既述した好ましい実施形態は、該パッケージにも適用可能である。
【0046】
ここで説明した要素の寸法の一部は、あくまで例示である。生物学的液体を収容するための医療用袋は、70ミリリットルの容積を有する、対応するハウジングを備えていてもよく、本発明に係るアダプタ装置(2)に導入し、遠心分離にかける際は、60ミリリットルまで内容物を収容してもよい。
【0047】
その結果、本発明に係る分離容器(1)での遠心分離で使用する試験管(11)の対応する長さを、40~160ミリメートル、より好ましくは、60ミリメートル~95ミリメートルとする。また、対応する第1開口(19)の直径を、20ミリメートル~60ミリメートル、より好ましくは、28ミリメートル~50ミリメートルとする。あるいは、チューブ(14)の対応する長さを、37ミリメートル~157ミリメートル、より好ましくは、57ミリメートル~92ミリメートル、対応する最大直径を、1ミリメートル~6ミリメートル、より好ましくは、3ミリメートル~4ミリメートル、テーパー状の終端における最小直径、つまり、チューブ(14)の端部の孔の直径を、0.1ミリメートル~3ミリメートル、好ましくは、0.5ミリメートル~1.5ミリメートルとする。
【0048】
チューブ(14)の終端から円錐底部(12)までの距離は、0.5ミリメートル~38ミリメートルとすると有利であり、より好ましくは、1ミリメートル~16ミリメートルとする。
【0049】
ここまでに説明した事項は、あくまで非制限的な例示であり、以下の請求項に示す本発明の範囲に含まれる、技術的・機能的変形が存在し得ることは、理解されるところである。
図1
図2
図3
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図5
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図8
図9
【国際調査報告】