IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パロス バイオ インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特表-神経変性障害に対する遺伝子療法 図1
  • 特表-神経変性障害に対する遺伝子療法 図2
  • 特表-神経変性障害に対する遺伝子療法 図3
  • 特表-神経変性障害に対する遺伝子療法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-03
(54)【発明の名称】神経変性障害に対する遺伝子療法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20230127BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20230127BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20230127BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20230127BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20230127BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20230127BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230127BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230127BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20230127BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230127BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230127BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
C12N15/86 Z
C12N15/861 Z
C12P21/02 C
A61P25/00
A61P25/28
A61K35/761
A61K35/76
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022532043
(86)(22)【出願日】2020-11-25
(85)【翻訳文提出日】2022-07-20
(86)【国際出願番号】 US2020062394
(87)【国際公開番号】W WO2021108686
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】62/942,059
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/004,422
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
2.WINDOWS
(71)【出願人】
【識別番号】522211531
【氏名又は名称】パロス バイオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ギャノン キンバリー エス.
(72)【発明者】
【氏名】グーレ マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ハケット ニール アール.
【テーマコード(参考)】
4B064
4C087
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA15
4C087ZA16
4C087ZC41
4C087ZC54
(57)【要約】
本開示は、神経変性障害の治療のための核酸発現カセットに関する。アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、ピック病、レヴィ小体認知症、記憶喪失、認知障害、及び軽度の認知障害などの神経変性障害を治療する方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号36、配列番号37、配列番号38、もしくは配列番号39に示す、または、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号36、配列番号37、配列番号38、もしくは配列番号39に対して少なくとも95%の配列同一性を有しかつ前記のそれぞれによってコードされる同じポリペプチドをコードする、単離ポリヌクレオチドであって、天然に存在しない、前記単離ポリヌクレオチド。
【請求項2】
配列番号37に示すヌクレオチド配列を有する、請求項1に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項3】
配列番号39に示すヌクレオチド配列を有する、請求項1に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項4】
(I)プレセニリン1をコードするポリヌクレオチドであって、
(a)配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号36、配列番号37、配列番号38、もしくは配列番号39に示すポリヌクレオチド;または
(b)配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号36、配列番号37、配列番号38、もしくは配列番号39に対して、少なくとも95%の同一性を有するポリヌクレオチド
のいずれか1つを含む、前記ポリヌクレオチドと;
(II)プレセニリン1をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結された1つ以上の調節要素と
を含む、核酸発現カセット。
【請求項5】
前記調節要素のうち1つがコザック翻訳開始シグナルである、請求項4に記載の核酸発現カセット。
【請求項6】
前記コザック翻訳開始シグナルが、配列番号5に示すポリヌクレオチドを含む、請求項5に記載の核酸発現カセット。
【請求項7】
前記調節要素のうち1つがクロマチンインスレーター配列である、請求項4~6のいずれか1項に記載の核酸発現カセット。
【請求項8】
前記クロマチンインスレーター配列が、配列番号4に示すポリヌクレオチドを含む、請求項7に記載の核酸発現カセット。
【請求項9】
前記調節要素のうち1つがニューロン特異的プロモーターである、請求項4~8のいずれか1項に記載の核酸発現カセット。
【請求項10】
前記ニューロン特異的プロモーターが、(i)配列番号2に示すポリヌクレオチド;(ii)配列番号3に示すポリヌクレオチド;(iii)配列番号2もしくは配列番号3の機能的断片;または(iv)(i)、(ii)、もしくは(iii)に対して少なくとも95%の同一性を有するポリヌクレオチドを含む、請求項9に記載の核酸発現カセット。
【請求項11】
前記調節要素のうち1つ以上が、mRNA安定性要素から独立して選択される、請求項4~10のいずれか1項に記載の核酸発現カセット。
【請求項12】
前記mRNA安定性要素が、(i)配列番号9、配列番号10、配列番号11に示すポリヌクレオチド;(ii)配列番号9、配列番号10、または配列番号11に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチドを含む、請求項11に記載の核酸発現カセット。
【請求項13】
前記mRNA安定性要素が、プレセニリン1をコードするポリヌクレオチドのオープンリーディングフレームの3’またはポリアデニル化シグナルの5’に位置する、請求項11に記載の核酸発現カセット。
【請求項14】
第1及び第2のmRNA安定性要素を含む、請求項13に記載の核酸発現カセットであって、前記第1のmRNA安定性要素が、プレセニリン1をコードするポリヌクレオチドのオープンリーディングフレームの3’に位置し、前記第2のmRNA安定性要素が、ポリアデニル化シグナルの5’に位置する、前記核酸発現カセット。
【請求項15】
プレセニリン1をコードするポリヌクレオチドが、配列番号37に示すポリヌクレオチドである、請求項4~14のいずれか1項に記載の核酸発現カセット。
【請求項16】
プレセニリン1をコードするポリヌクレオチドが、配列番号39に示すポリヌクレオチドである、請求項4~14のいずれか1項に記載の核酸発現カセット。
【請求項17】
請求項4~16のいずれか1項に記載の核酸発現カセットを含むベクター。
【請求項18】
ウイルスベクターである、請求項17に記載のベクター。
【請求項19】
前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、またはアデノウイルスベクターである、請求項18に記載のベクター。
【請求項20】
AAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVDJ、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2/1、AAV2/5、AAV2/6、AAV2/7、AAV2/8、AAV2/9、AAV2/rh10、AAV2/11、またはAAV2/12である、請求項19に記載のベクター。
【請求項21】
a.CAGプロモーター、プレセニリン-1プロモーター、ユビキチンCプロモーター、CBAプロモーター、シナプシン-1プロモーター、PGKプロモーター、及びEF1αプロモーターから選択されるプロモーターであって、以下と機能的に連結される、プロモーター;
b.配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号36、配列番号37、配列番号38、もしくは配列番号39から選択されるプレセニリン-1コード配列、または前記PSEN-1コード配列のいずれかに対して少なくとも95%の同一性を有し、野生型PSEN-1アミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド;ならびに
c.ヒト成長ホルモンポリアデニル化配列及びウサギβ-グロビンポリアデニル化配列から選択されるポリアデニル化配列
を含む、請求項19または20に記載のベクター。
【請求項22】
ヒトベータグロビンイントロン(野生型または合成のいずれか)またはマウス微小ウイルスのイントロンから選択されるイントロンをさらに含み、前記イントロンが前記プロモーターと前記PSEN-1コード配列との間に位置する、請求項21に記載のベクター。
【請求項23】
a.配列番号41のヌクレオチド1~141もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号41のヌクレオチド237~1200もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号41のヌクレオチド1221~1786もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号41のヌクレオチド1899~3299もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号41のヌクレオチド3330~3806もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、及び配列番号41のヌクレオチド4553~4693もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列;
b.配列番号42のヌクレオチド1~141もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号42のヌクレオチド237~1323もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号42のヌクレオチド1344~1909もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号42のヌクレオチド1983~3416もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号42のヌクレオチド3447~3923もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、及び配列番号42のヌクレオチド4554~4694もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列;
c.配列番号43のヌクレオチド1~141もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号43のヌクレオチド237~890もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号43のヌクレオチド911~1476もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号43のヌクレオチド1550~2983もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号43のヌクレオチド3014~3490もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、及び配列番号43のヌクレオチド4553~4694もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列;
d.配列番号44の、ヌクレオチド1~141もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、ヌクレオチド237~1415もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、ヌクレオチド1436~2001もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、ヌクレオチド2075~3508もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、ヌクレオチド3539~4015もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、及びヌクレオチド4500~4640もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列;
e.配列番号45のヌクレオチド1~141もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号45のヌクレオチド237~664もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号45のヌクレオチド684~1249もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号45のヌクレオチド1323~2756もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号45のヌクレオチド2787~3263もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、及び配列番号45のヌクレオチド4533~4673もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列;
f.配列番号46のヌクレオチド1~141もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号46のヌクレオチド237~684もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号46のヌクレオチド705~1270もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号46のヌクレオチド1344~2777もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号46のヌクレオチド2808~3284もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、及び配列番号46のヌクレオチド4554~4695もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列;または
g.配列番号47のヌクレオチド1~105もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号47のヌクレオチド113~766もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号47のヌクレオチド776~867もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号47のヌクレオチド881~2311もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号47のヌクレオチド2319~2367もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、及び配列番号47のヌクレオチド2386~2526もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列
を含む、請求項22に記載のベクター。
【請求項24】
配列番号41~47のいずれか1つのヌクレオチド配列、または配列番号41~47のいずれか1つに対して95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項23に記載のベクター。
【請求項25】
プレセニリン1をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結された前記調節要素が、
(i)コザック翻訳開始シグナル;
(ii)ニューロン特異的プロモーター;
(iii)クロマチンインスレーター配列;
(iv)プレセニリン1をコードするポリヌクレオチドのオープンリーディングフレームの3’に位置するmRNA安定性要素;及び
(v)ポリアデニル化シグナルの5’に位置するmRNA安定性要素
を含む、請求項4~16のいずれか1項に記載の核酸発現カセット。
【請求項26】
コザック翻訳開始シグナルが、配列番号5に示すポリヌクレオチドを含み、
クロマチンインスレーター配列が、配列番号4に示すポリヌクレオチドを含み、
プレセニリン1をコードするポリヌクレオチドのオープンリーディングフレームの3’に位置するmRNA安定性要素が、配列番号9または配列番号10に示すポリヌクレオチドを含み、
ポリアデニル化シグナルの5’に位置する、少なくとも1つのmRNA安定性要素が、配列番号11に示すポリヌクレオチドを含み、
ニューロン特異的プロモーターが、配列番号2または配列番号3に示すポリヌクレオチドを含む、
請求項25に記載の核酸発現カセット。
【請求項27】
プレセニリン1をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーターが、遍在性プロモーターである、請求項4~6のいずれか1項に記載の核酸発現カセット。
【請求項28】
請求項17~24のいずれか1項に記載のベクターを、その必要のある対象に投与することを含む、神経変性疾患、障害、または病態を治療する方法。
【請求項29】
神経変性疾患、障害、または病態が、アルツハイマー病、家族性アルツハイマー病(FAD)、プレセニリン1(PSEN-1)媒介FAD、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、ピック病、レヴィ小体認知症、記憶喪失、認知障害、または軽度の認知障害である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
請求項17~24のいずれか1項に記載のベクターを、その必要のある対象に投与することを含む、家族性アルツハイマー病(FAD)またはプレセニリン1(PSEN-1)媒介FADを治療する方法。
【請求項31】
プレセニリン1タンパク質を生成する方法であって、
配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号36、配列番号37、配列番号38、もしくは配列番号39に示す最適化ポリヌクレオチドを含むベクターで、または配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号36、配列番号37、配列番号38、もしくは配列番号39に対して、少なくとも95%の同一性を有し、前記のそれぞれによってコードされる同じポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターによって、宿主細胞を形質転換すること;ならびに
プレセニリン1タンパク質の発現を可能にする条件下及び時間で前記細胞を培養することであって、宿主細胞における、前記最適化ポリヌクレオチドによってコードされるプレセニリン1タンパク質の発現が、宿主細胞における、野生型ポリヌクレオチドによってコードされるプレセニリン1タンパク質の発現レベルよりも高く、それにより、プレセニリン1タンパク質を生成する、前記培養すること
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)のもと、2019年11月29日に出願された米国特許出願第62/942,059号及び2020年4月2日に出願された米国特許出願第63/004,422号の優先権の利益を主張するものであり、いずれもその内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の組み込み
添付の配列表の資料は、本明細書において参照により本出願に組み込まれる。添付の配列表のテキストファイル、名称「APRES1110_2WO_Sequence_Listing.txt」(105kb)は、2020年11月24日に作成された。このファイルには、Windows OSを使用するコンピューターでMicrosoft Wordを使用してアクセスすることができる。
【0003】
技術分野
本開示は、概して神経変性障害に対する遺伝子療法に関し、より具体的には、治療遺伝子の送達のためのポリヌクレオチド及び発現カセットに関する。特定の実施形態では、治療遺伝子はプレセニリン-1である。
【背景技術】
【0004】
背景情報
アルツハイマー病(AD)はアルツハイマーとも呼ばれ、神経変性認知症の主因である慢性神経変性疾患である。症状として、記憶障害、言語障害、失見当識、気分変動、意欲減退、ならびに家族及び社会からの逃避のような他の行動障害が挙げられる。身体機能が徐々に失われ、最終的には死に至る。この疾患は10年超にわたり持続する可能性があるものの、診断後3~9年が平均余命である。
【0005】
この疾患は、主に脳内でのアミロイド斑の局在及びニューロンの神経原線維変性といった多様な神経病理学的特徴に付随して発生する。この疾患の病因は複雑だが、AD症例の約10%に、常染色体優性形質として遺伝する家族性のものが現れる。このような遺伝型ADには、少なくとも4種の異なる遺伝子が存在しており、その変異体のいくつかは、この疾患に対する遺伝的感受性を付与する。アポリポタンパク質E(ApoE)遺伝子のσ4(Cys112Arg)対立遺伝子多型は、晩年に発症した症例の相当数においてADと関連していた。65歳以前に発症した家族性症例のごく一部は、21番染色体上のβ-アミロイド前駆体タンパク質(APP)遺伝子の突然変異に関連していた。近年、染色体14q24.3上に、早発型AD症例の多数に関連する第3の遺伝子座が同定された。遺伝性の早発型ADの大部分(70~80%)は、14番染色体と対応し、タンパク質プレセニリン-1(PS1)内の20超の異なるアミノ酸置換の1つに起因するとみられる。頻度は低いものの、1番染色体上の同様のADリスク遺伝子座は、タンパク質プレセニリン-2(PS-2、PS-1と高相同性)をコードしている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、神経変性障害の治療のための、プレセニリン-1(PSEN-1)をコードするポリヌクレオチド及び核酸発現カセットに関する。
【0007】
いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号12(アイソフォームX1)または配列番号14(アイソフォームX2)のいずれかに示す天然に存在するヒトプレセニリン-1アミノ酸配列をコードする、単離cDNAまたはハイブリッドゲノム/cDNAを提供し、当該単離cDNAまたはハイブリッドゲノム/cDNAは、天然に存在するPSEN-1 X1アイソフォームのコード配列(配列番号15)またはPSEN-1 X2アイソフォームのコード配列(配列番号13)に対応するcDNAと比較して、少なくとも25%の許容コドンにコドン最適化変更を含む。本実施形態のいくつかの態様では、単離cDNAまたはハイブリッドゲノム/cDNAのPSEN-1コード配列において、どの非許容コドンも改変されない。本実施形態のいくつかの態様では、単離cDNAまたはハイブリッドゲノム/cDNAは、PSEN-1コード配列の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはすべての許容コドンにコドン最適化変更を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号12(アイソフォームX1)または配列番号14(アイソフォームX2)のいずれかに示す天然に存在するヒトプレセニリン-1アミノ酸配列をコードする、単離cDNAまたはハイブリッドゲノム/cDNAを提供し、当該単離cDNAまたはハイブリッドゲノム/cDNAは、20個以下のCpGジヌクレオチドを含む。これは、それぞれがPSEN1オープンリーディングフレームに23個のCpGジヌクレオチドを有する配列番号1または配列番号13と比較して減少している。これらの実施形態において、配列番号1または配列番号13に存在する任意のCpGジヌクレオチドの置換は、シトシンまたはグアニンのいずれか(または両方)を、遺伝暗号の冗長性により、置換されたヌクレオチドを含有するコドンによってコードされるアミノ酸を改変しない別のヌクレオチドに置換することにより行われる必要がある。換言すれば、CpGジヌクレオチドの除去に利用されるどのヌクレオチド置換も、配列番号1または配列番号13によってコードされるアミノ酸配列を保存している必要がある。これらの実施形態のいくつかの態様では、単離cDNAまたはハイブリッドゲノム/cDNAは、配列番号1または配列番号13に存在するCpGジヌクレオチドを、15個未満、12個未満、10個未満、9個未満、8個未満、7個未満、6個未満、5個未満、4個未満、3個未満、1個含むか、またはまったく含まない。これらの実施形態のいくつかの態様では、CpGジヌクレオチドの数が減少している単離cDNAまたは人工遺伝子において、配列番号1または配列番号13に存在するすべての非許容コドンが保存されている。
【0009】
いくつかの実施形態では、単離cDNAまたはハイブリッドゲノム/cDNAは、配列番号1または配列番号13に存在する少なくとも25%の許容コドンにコドン最適化変更を含み、20個以下のCpGジヌクレオチドを含む。これらの実施形態のいくつかの態様では、単離cDNAまたはハイブリッドゲノム/cDNAは、PSEN-1コード配列の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはすべての許容コドンにコドン最適化変更を含む。これらの実施形態のいくつかの態様では、単離cDNAまたはハイブリッドゲノム/cDNAは、CpGジヌクレオチドを、15個未満、12個未満、10個未満、9個未満、8個未満、7個未満、6個未満、5個未満、4個未満、3個未満、1個含むか、またはまったく含まない。これらの実施形態のいくつかの態様では、CpGジヌクレオチドの数が減少している単離cDNAまたは人工遺伝子において、配列番号1または配列番号13に存在するすべての非許容コドンが保存されている。
【0010】
いくつかの実施形態では、本開示は、1)配列番号1及び配列番号13のcDNAの生成に使用される、2つの選択的スプライスドナー部位を有する天然に存在するPSEN-1エキソン3の少なくとも一部または全部;2)イントロン3の部分が、スプライスアクセプター部位を含む、天然に存在するPSEN-1イントロン3の少なくとも一部;ならびに3)選択的スプライスドナー部位の使用により、配列番号12(アイソフォームX1)及び配列番号14(アイソフォームX2)両方の発現についてコードできるヌクレオチド配列を含む、ハイブリッドゲノム/cDNAを提供し、当該ハイブリッドゲノム/cDNAは、a)70%未満の天然に存在するPSEN-1イントロン3を含み、b)70%未満の天然に存在するPSEN-1イントロン4を含み、c)天然に存在するPSEN-1イントロン5、6、7、8、または9の少なくとも1つを欠失し、及び/またはd)4.4kb長未満である。これらの実施形態のいくつかの態様では、配列番号12(アイソフォームX1)または配列番号14(アイソフォームX2)のいずれかに示す天然に存在するヒトプレセニリン-1アミノ酸配列をコードする、ハイブリッドゲノム/cDNAの一部は、天然に存在するPSEN-1 X1アイソフォームのコード配列(配列番号15)またはPSEN-1 X2アイソフォームのコード配列(配列番号13)に対応するcDNAと比較して、少なくとも25%の許容コドンにコドン最適化変更を含む。これらの実施形態のいくつかの態様では、配列番号12(アイソフォームX1)または配列番号14(アイソフォームX2)のいずれかに示す天然に存在するヒトプレセニリン-1アミノ酸配列をコードする、ハイブリッドゲノム/cDNAは、ヌクレオチド配列全体で50個未満のCpGジヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ハイブリッドゲノム/cDNAは、PSEN-1コード配列に20個未満のCpGジヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ハイブリッドゲノム/cDNAは、配列番号15または配列番号13において、少なくとも30%の許容コドンにコドン最適化変更、ヌクレオチド配列全体で50個未満のCpGジヌクレオチド、PSEN-1コード配列に20個未満のCpGジヌクレオチドを含み、配列番号1または配列番号13のどの非許容コドンにも変更がない。本段落に示すいずれかの態様のいくつかのさらに具体的な変形例では、ハイブリッドゲノム/cDNAは、ヌクレオチド配列全体で、CpGジヌクレオチドを、40個未満、30個未満、20個未満、15個未満、12個未満、10個未満、9個未満、8個未満、7個未満、6個未満、5個未満、4個未満、3個未満、1個含むか、またはまったく含まない。本段落に示すいずれかの態様のいくつかのさらに具体的な変形例では、ハイブリッドゲノム/cDNAは、PSEN-1コード領域に、CpGジヌクレオチドを、15個未満、12個未満、10個未満、9個未満、8個未満、7個未満、6個未満、5個未満、4個未満、3個未満、1個含むか、またはまったく含まない。本段落に示すいずれかの態様のいくつかのさらに具体的な変形例では、ハイブリッドゲノム/cDNAは、配列番号15または配列番号13のPSEN-1コード配列の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはすべての許容コドンにコドン最適化変更を含む。
【0011】
本明細書に記載されるのは、いくつかの実施形態では、配列番号6、配列番号7、もしくは配列番号8に示す単離ポリヌクレオチド、または配列番号6、配列番号7、もしくは配列番号8に対して少なくとも95%の同一性を有するポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、単離cDNAまたはハイブリッドゲノム/cDNAは、配列番号6(cDNA)、配列番号7(cDNA)、または配列番号8(ハイブリッドゲノム/cDNA)であるか、あるいは配列番号6、配列番号7、または配列番号8に対して少なくとも95%の同一性を有し、配列番号6、配列番号7、または配列番号8それぞれと同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、配列番号6、配列番号7、または配列番号8に対して少なくとも95%の同一性を有し、配列番号6、配列番号7、または配列番号8それぞれと同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、そこに存在する非許容コドンを維持し、(1)そこに存在するすべての最適化コドンを維持するか、または(2)その中の1つ以上の最適化コドンが、同じアミノ酸をコードしかつ最適化されている他のコドンで置換されている。
【0012】
本明細書に記載されるのは、いくつかの実施形態では、配列番号36、配列番号37、配列番号38、もしくは配列番号39に示す単離ポリヌクレオチド、または配列番号36、配列番号37、配列番号38、もしくは配列番号39に対して少なくとも95%の同一性を有し、配列番号36、配列番号37、配列番号38、及び配列番号39のそれぞれによってコードされる同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドである。これらの実施形態のいくつかの態様では、配列番号36、配列番号37、配列番号38、もしくは配列番号39に対して少なくとも95%の同一性を有するポリヌクレオチドは、配列番号36、配列番号37、配列番号38、及び配列番号39と同じアミノ酸配列をコードし、そこに存在する非許容コドンを維持し、(1)そこに存在するすべての最適化コドンを維持するか、または(2)その中の1つ以上の最適化コドンが、同じアミノ酸をコードしかつ最適化されている他のコドンで置換されている。これらの実施形態のいくつかの態様では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号36である。これらの実施形態のいくつかの態様では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号37である。これらの実施形態の別の態様では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号38である。これらの実施形態の別の態様では、単離ポリヌクレオチドは、配列番号39である。
【0013】
ある特定の実施形態では、本開示は、上記に示すプレセニリン1をコードするcDNAまたはハイブリッドゲノム/cDNAポリヌクレオチドのいずれかを含む核酸発現カセットを提供する。
【0014】
ある特定の実施形態では、核酸発現カセットは、5’AAV逆方向末端反復配列(ITR)をコードする配列、任意のエンハンサーを有するプロモーター、プレセニリン1をコードするポリヌクレオチド、及び3’AAV ITRを含む。ある特定の実施形態では、核酸発現カセットは、全長AAV5’逆方向末端反復(ITR)及び全長3’ITRを含む。ある特定の実施形態では、核酸発現カセットは、D配列及び末端分解部位(trs)が欠失している5’ITRの短縮型(ΔITRと称される)を含む(X.S.Wang,et al.,J Mol Biol 250:573-580,1995;X.S.Wang,et al.,J Virol 70:1668-1677,1996);C.Ling et al.,J Virol.Jan 2015,89(2)952-961;DOI:10.1128/JVI.02581-14)。ある特定の実施形態では、ITRは、カプシドのAAV起源とは異なる起源から選択される。例えば、AAV2 ITRは、選択された細胞受容体、標的組織、またはウイルス標的に対して特定の有効性を有するAAVカプシドでの使用に合わせて選択することができる。ある特定の実施形態では、AAVカプシドは、AAV9に由来する。一実施形態では、AAV2由来のITR配列、またはその欠失型(ΔITR)であるが、他のAAV源由来のITRを選択することができる。ITRの起源が、あるAAV血清型由来であり、AAVカプシドが別のAAV血清型由来である場合、得られたベクターを偽型と称する場合がある。ある特定の実施形態では、ITR及びカプシドは、AAV9由来である。ある特定の実施形態では、ITRは、一本鎖または自己相補的AAVベクター由来である。ある特定の実施形態では、ITRは、発現カセットの一部であり得るが、別の実施形態では、ITRは、発現カセットをクローニングするベクターの一部であり得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、1つ以上の調節要素は、配列番号5に示すポリヌクレオチド、または配列番号5に対して少なくとも80%の配列同一性を有するヌクレオチド配列などのコザック翻訳開始シグナルを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、1つ以上の調節要素が、配列番号4に示すポリヌクレオチド、または配列番号4に対して少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列などのクロマチンインスレーター配列を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、1つ以上の調節要素が、プロモーターを含む。これらの実施形態のいくつかの態様では、プロモーターはニューロン特異的プロモーターである。ニューロン特異的プロモーターは、(i)配列番号2に示すポリヌクレオチド;(ii)配列番号3に示すポリヌクレオチド;(iii)配列番号2もしくは配列番号3の機能的断片;または(iv)(i)、(ii)、もしくは(iii)に対して少なくとも95%の同一性を有するポリヌクレオチドを含み得る。これらの実施形態の別の態様では、プロモーターは、CAG(配列番号23)、CBA(配列番号24)、UBC(配列番号25)、PGK(配列番号26)、PKC、EF1a(配列番号27)、GUSB、CMV(配列番号28)、NSE(配列番号29)、PDGF、デスミン、MCK、MeCP2(配列番号30)、GFAP(配列番号31)、CaMKII、またはMBPから選択される。
【0018】
いくつかの実施形態では、1つ以上の調節要素は、少なくとも1つのmRNA安定性要素を含む。少なくとも1つのmRNA安定性要素は、(i)配列番号9、配列番号10、配列番号11に示すポリヌクレオチド;(ii)配列番号9、配列番号10、配列番号11の機能的バリアント;または(iii)(i)もしくは(ii)に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチドを含み得る。これらの実施形態のいくつかの態様では、核酸発現カセットは、PSEN1をコードするポリヌクレオチドのオープンリーディングフレームの5’に位置するmRNA安定性要素;及びポリアデニル化シグナルの3’に位置するmRNA安定性要素を含む。ある特定の実施形態では、核酸発現カセットは、1つ以上のポリアデニル化エンハンサー要素、例えば、ヒト成長ホルモン(hGH)ポリアデニル化シグナル配列、ウサギベータ-グロビン(rBG)ポリアデニル化シグナル配列、SV40ポリアデニル化シグナル配列、またはウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル配列などを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、1つ以上の調節要素は、後根神経節でのコードされるPSEN-1の発現を抑制するためのマイクロRNA(「miRNA」または「miR」)結合部位を1つ、2つ、または3つ含む。マイクロRNAは19~25ヌクレオチドの非コードRNAであり、miRNA結合部位に結合して、核酸分子の安定性を低下させるか、または翻訳を阻害することにより、遺伝子発現を下方制御する。これらの実施形態のいくつかの態様では、各miRNA結合部位は、以下のmiRNA:miRNA-1914、miR1181、miR3918、miR939、miR324、miR650、MiR29C、またはmiR2277のいずれかの結合部位から独立して選択される。これらの実施形態のいくつかの態様では、miRNA結合部位(複数可)は、ウイルスゲノムのコード配列に対して3’側に位置する。
【0020】
他の実施形態は、本明細書で提供される核酸発現カセットを含むベクターを提供する。ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、またはアデノウイルスベクターなどのウイルスベクターであり得る。AAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVDJ、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15、AAV16、AAV2/1、AAV2/5、AAV2/6、AAV2/7、AAV2/8、AAV2/9、AAV2/rh10、AAV2/11、またはAAV2/12であり得る。
【0021】
本明細書に記載されるベクターは、偽型ベクターであり得る。偽型化は、ベクターの標的細胞集団を調整するメカニズムを提供する。偽型ベクターは、あるベクターのゲノム、例えば、あるAAV血清型のゲノムを、第2のベクター、例えば、第2のAAV血清型のカプシド内に含む。レンチウイルスベクターは、ラブドウイルス小胞性口内炎ウイルス(VSV)血清型(インディアナ株及びチャンディプラ株)、狂犬病ウイルス(例えば、様々なEvelyn-Rokitnicki-Abelseth(ERA)株及び攻撃ウイルス標準(CVS))、リッサウイルスモコラウイルス、狂犬病関連ウイルス、小胞性口内炎ウイルス(VSV)、モコラウイルス(MV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、狂犬病ウイルス糖タンパク質(RV-G)、糖タンパク質B型(FuG-B)、FuG-Bのバリアント(FuG-B2)、またはモロニーマウス白血病ウイルス(MuLV)に由来するエンベロープ糖タンパク質をもつ偽型であり得る。ウイルスは、1つ以上のニューロンまたは細胞群の形質導入のために偽型化される場合がある。
【0022】
他の実施形態では、(i)上記に示すプレセニリン1をコードするcDNAまたはハイブリッドゲノム/cDNAポリヌクレオチドのいずれか;(ii)コザック翻訳開始シグナル;(iii)ニューロン特異的プロモーター;(iv)クロマチンインスレーター配列;(v)少なくとも1つのmRNA安定性要素;または(v)それらの任意の組み合わせを含む、核酸発現カセットを提供する。これらの実施形態のいくつかの態様では、核酸発現カセットは、(i)上記に示すプレセニリン1をコードするcDNAまたはハイブリッドゲノム/cDNAポリヌクレオチドのいずれか;(ii)コザック翻訳開始シグナル;(iii)ニューロン特異的プロモーター;(iv)クロマチンインスレーター配列;及び(v)少なくとも1つのmRNA安定性要素をそれぞれ含む。これらの実施形態のより具体的な態様では、コザック翻訳開始シグナルは、配列番号5に示すポリヌクレオチドを含み、クロマチンインスレーター配列は、配列番号4に示すポリヌクレオチドを含み、少なくとも1つのmRNA安定性要素は、配列番号9、配列番号10、配列番号11に示すポリヌクレオチド、またはそれらの任意の組み合わせを含み、ニューロン特異的プロモーターは、配列番号2または配列番号3に示すポリヌクレオチドを含む。
【0023】
本明細書に記載されるのは、核酸発現カセットまたはベクターを、その必要のある対象に投与することを含む、神経変性疾患、障害、または病態を治療する方法である。いくつかの実施形態では、神経変性疾患、障害、または病態は、アルツハイマー病、後部皮質萎縮症(PCA)、ロゴペニック型進行性失語症(lvPPA)、海馬温存AD、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、ピック病、レヴィ小体認知症、失語型AD、行動障害(「前頭」)型AD、遂行機能障害型、記憶喪失、認知障害、または軽度の認知障害である。
【0024】
本明細書に記載されるのは、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号36、配列番号37、配列番号38、もしくは配列番号39に示す最適化ポリヌクレオチド、または配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号36、配列番号37、配列番号38、もしくは配列番号39に対して少なくとも95%の同一性を有し、前述のそれぞれによってコードされる同じポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、あるいはプレセニリン1最適化ポリヌクレオチドをコードするベクターで宿主細胞を形質転換し、プレセニリン1タンパク質の発現を可能にする条件下及び時間で細胞を培養することを含む、プレセニリン1タンパク質を生成する方法である。いくつかの態様では、宿主細胞における、最適化ポリヌクレオチドによってコードされるプレセニリン1タンパク質の発現レベルが、宿主細胞における、野生型ポリヌクレオチドによってコードされるプレセニリン1タンパク質の発現レベルよりも高く、それによりプレセニリン1タンパク質を生成する。
【0025】
本明細書に記載の様々な実施形態の特性の1つ、一部、または全部を組み合わせて、本発明の他の実施形態を形成できるものと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】CMVプロモーターの制御下で、様々なコドン最適化型のプレセニリン-1コード配列を含む構築物を有するHEK293細胞から発現するプレセニリン-1タンパク質の量、ならびに野生型プレセニリン-1コード配列からの量を示す棒グラフである。アスタリスク「*」は、統計的有意差を示す(p<0.05、一元配置分散分析後、テューキーの多重比較検定)。
図2】CAGプロモーター(配列番号37のPSEN1コード配列を含有するCAG-v1.5;配列番号39のPSEN1コード配列を含有するCAGv3.0)によって発現が誘導される、様々なコドン最適化型のプレセニリン-1コード配列を含む構築物を有するHEK293細胞から発現するプレセニリン-1タンパク質の量、ならびにCAGプロモーターによって誘導される野生型プレセニリン-1コード配列(配列番号15)からの量を示す棒グラフである。アスタリスク「*」は、野生型プレセニリン1と比較した統計的有意差を示す(p<0.05、一元配置分散分析後、テューキーの多重比較検定)。
図3】PSEN1にC410YまたはG206A突然変異のいずれかを有する、家族性アルツハイマー病(FAD)患者由来の線維芽細胞において、NotchΔEのNICDへの切断により測定されるガンマセクレターゼ活性を示す棒グラフである。空のベクター(「NotchΔE+空」)、またはガンマセクレターゼ阻害剤DAPTの存在下もしくは非存在下での、PSEN1をコードする配列番号37を含有するベクター(「NotchΔE+hPSENvl.5」)を線維芽細胞に形質転換し、NICDのレベルを測定した。アスタリスク「**」は、空のベクターと比較した統計的有意差を示す(p<0.01、一元配置分散分析後、テューキーの多重比較検定)。
図4】PSEN1にC410Y突然変異を有する、家族性アルツハイマー病(FAD)患者由来の線維芽細胞における、空のベクター(「空」)またはPSEN1をコードする配列番号37を含有するベクター(「pAT028」)のいずれかによる形質転換後のAβ40生成のレベルを示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
本発明は、プレセニリン-1などの最適化治療遺伝子をコードする最適化ポリヌクレオチド及び発現カセットを使用すると、野生型配列と比較して治療遺伝子の発現レベルを増加させ、神経変性障害の治療に用いるための遺伝子療法を提供できるという独創的な発見に基づく。
【0028】
本発明の組成物及び方法を記載するにあたり、記載される特定の組成物、方法、及び条件は変更することができるため、本発明は、そのような組成物、方法、及び実験条件に限定されないものと理解されるべきである。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用される用語は特定の実施形態の記載のみを目的としており、限定を意図しないものと理解されるべきである。
【0029】
本明細書で言及される刊行物、特許、及び特許出願はすべて、個別の刊行物、特許、または特許出願がそれぞれ具体的かつ個別に参照により本明細書に組み込まれた場合と同様に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0030】
定義
特に具体的な定義のない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語はすべて、当業者(例えば、細胞培養、分子遺伝学、及び生化学)に共通して理解されているものと同じ意味を有すると解釈されるものとする。本明細書に記載するものと同様または同等であるいかなる方法及び材料も本発明の実施または試験に使用することができるが、この改変例及び変形例は本開示の趣旨及び範囲内に包含されると理解されることになる。ここでは好ましい方法及び材料について記載する。
【0031】
本明細書で使用される場合、数値または範囲の文脈における「約」という用語は、文脈がより限定された範囲を必要としない限り、列挙または特許請求される数値または範囲の±10%を意味する。さらに、「約」という用語は、1つ以上の数または数範囲に関連して使用される場合、範囲内の数すべてを包含する当該数すべてを指し、示された数値の上下の境界を拡張することによってその範囲が変更されることを理解する必要がある。端点による数値範囲の列挙には、その範囲内及びその範囲内の任意の範囲に包含される数すべて、例えば、その小数部を含む整数が含まれる(例えば、1~5という列挙には、1、2、3、4、及び5に加え、その小数、例えば、1.5、2.25、3.75、4.1などが含まれる)。
【0032】
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈によって特に明示されない限り、複数形も包含することを意図する。さらに、「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」という用語、またはそれらの変形は、詳細な説明及び/または特許請求の範囲のいずれかで使用される場合に限り、そのような用語は、「含む(comprising」という用語と類似する方法で包括的であることを意図する。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈によって特に明示されない限り、複数の指示対象物を包含することに留意されたい。したがって、例えば「タンパク質」に関する言及は、1つ以上のタンパク質への言及であり、当業者などに公知であるその同等物を含む。
【0033】
本明細書で使用される場合、定義または記載される、品目、組成物、装置、方法、プロセス、システムなどの構成要素を参照する、「含む(comprising)」、「含む(comprise)」、または「含まれた(comprised)」という用語、及びそれらの変形は、包括的または非限定的であることを意図し、追加の要素を許容することにより、定義または記載される、品目、組成物、装置、方法、プロセス、システムなどが、指定されるその構成要素、または必要に応じてその同等物を包含すること、また他の構成要素を含むことができ、かつ定義される品目、組成物、装置、方法、プロセス、システムなどの範囲/定義の範囲内であることを示す。
【0034】
「AAVベクター」とは、AAV-1、AAV-2、AAV-3、AAV-4、AAV-5、AAV6などを含むがこれらに限定されない、アデノ随伴ウイルス血清型に由来するベクターを意味する。AAVベクターは、1種以上のAAV野生型遺伝子の全体または一部、好ましくはrep及び/またはcap遺伝子を欠失していてもよいが、機能的な隣接ITR配列を保持する。機能的ITR配列は、AAVビリオンのレスキュー、複製、及びパッケージングに必要である。したがって、本明細書でAAVベクターは、ウイルスの複製及びパッケージングの際にcisに要求されるそれらの配列(例えば、機能的ITR)を少なくとも含むものと定義される。機能的なレスキュー、複製、及びパッケージングのために配列が提供される限り、ITRは野生型ヌクレオチド配列である必要はなく、例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失、または置換により改変されていてもよい。
【0035】
制御要素は、哺乳動物細胞において機能するように選択される。得られる構築物は、機能的に連結された構成要素を含有しており、機能的なAAV ITR配列と結合されている(5’及び3’)。「アデノ随伴ウイルス逆方向末端反復」または「AAV ITR」とは、AAVゲノムの両端に存在することが当技術分野で認められている領域を意味し、DNA複製の起点として、及びウイルスのパッケージングシグナルとしてcisで共に機能する。AAV ITRは、AAV repコード領域と共に、2つの隣接ITR間に挿入されたヌクレオチド配列からの効率的な削除及びレスキュー、ならびに哺乳動物細胞ゲノムへの組み込みを提供する。AAV ITR領域のヌクレオチド配列は公知である。本明細書で使用される場合、「AAV ITR」は、必ずしも野生型ヌクレオチド配列を含むとは限らず、例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失、または置換により改変されていてもよい。加えて、AAV ITRは、AAV-1、AAV-2、AAV-3、AAV-4、AAV-5、AAV6などを含むがこれらに限定されない、いくつかのAAV血清型のいずれに由来してもよい。さらに、AAVベクター内の選択されたヌクレオチド配列に隣接する5’及び3’のITRは、意図される通りに機能する、すなわち、宿主細胞ゲノムまたはベクターからの対象となる配列の削除及びレスキューを可能にし、AAV Rep遺伝子産物が細胞に存在する場合に、レシピエント細胞ゲノムへの異種配列の組み込みを可能にする限り、同じAAV血清型または分離株と必ずしも同一である必要も、それに由来する必要もない。加えて、AAV ITRは、AAV-1、AAV-2、AAV-3、AAV-4、AAV5、AAV6などを含むがこれらに限定されない、いくつかのAAV血清型のいずれに由来してもよい。さらに、AAV発現ベクター内の選択されたヌクレオチド配列に隣接する5’及び3’のITRは、意図される通りに機能する、すなわち、宿主細胞ゲノムまたはベクターからの対象となる配列の削除及びレスキューを可能にし、AAV Rep遺伝子産物が細胞に存在する場合に、レシピエント細胞ゲノムへのDNA分子の組み込みを可能にする限り、同じAAV血清型または分離株と必ずしも同一である必要も、それに由来する必要もない。
【0036】
「野生型」及び「天然」という用語は、本明細書で同義に使用され、自然界に存在する形態の物質(例えば、ポリヌクレオチド、ヌクレオチド配列、タンパク質など)を指す。本明細書で使用される「野生型プレセニリン-1コード配列」という用語は、配列番号15に示すポリヌクレオチド配列を意味する。
【0037】
本明細書で使用される「ハイブリッドゲノム/cDNA」という用語は、タンパク質(例えば、ヒトプレセニリン-1)をコードする天然に存在しないヌクレオチド配列を意味し、タンパク質のコード配列が、1つ以上の非コードイントロン配列によって中断される。
【0038】
本明細書で使用される「非許容コドン」という用語は、同じアミノ酸配列をコードする、対応する対象ヌクレオチド配列において変更されない、参照ヌクレオチド配列に存在するコドンを意味する。配列番号15の非許容コドンを下線で示す。
【0039】
本明細書で使用される「許容コドン」という用語は、非許容コドンではない、参照ヌクレオチド配列に存在するコドンを意味する。許容コドンは、同じアミノ酸配列をコードする、対応する対象ヌクレオチド配列において、同じアミノ酸をコードする異なるコドンに変更される場合がある。
【0040】
「最適化コドン」という用語は、表2または表3に示すコドンを意味する。対象ヌクレオチド配列中のコドンは、参照配列中の対応するコドンが、同じアミノ酸をコードする異なるコドンに置換される場合に「最適化された」と呼ばれ、表1または表2に示すコドンから選択される。
【0041】
「コドン最適化変更」という用語は、参照配列中の許容コドンを、表2から選択される、同じアミノ酸をコードするコドンで置換することを意味する。いくつかのアミノ酸については、複数の最適化コドンが存在する(表2を参照)。明確性を目的として、「コドン最適化変更」という用語は、参照配列に存在する最適化コドンを、表1に示す同じアミノ酸をコードする異なる最適化コドンで置換することを含む。
【0042】
PSEN1遺伝子のエキソン及びイントロンは、GenBank参照配列番号NG_007386を参照して、以下のように同定することができる。エキソン1はヌクレオチド5037~5113からなり;イントロン1はヌクレオチド5,114~16,324からなり;エキソン2はヌクレオチド16,325~16,406からなり;イントロン2はヌクレオチド16,407~16,496からなり;エキソン3はヌクレオチド16,497~16,636からなり;イントロン3はヌクレオチド16,637~39,326からなり;エキソン4はヌクレオチド39,327~39,577からなり;イントロン4はヌクレオチド39,578~42,095からなり;エキソン5はヌクレオチド42,096~42,237からなり;イントロン5はヌクレオチド42,238~55,382からなり;エキソン6はヌクレオチド55,383~55,450からなり;イントロン6はヌクレオチド55,451~61,173からなり;エキソン7はヌクレオチド61,174~61,394からなり;イントロン7はヌクレオチド61,395~66,560からなり;エキソン8はヌクレオチド66,561~66,659からなり;イントロン8はヌクレオチド66,660~74,915からなり;エキソン9はヌクレオチド74,916~75,002からなり;イントロン9はヌクレオチド75,003~80,298からなり;エキソン10はヌクレオチド80,299~80,472からなり;イントロン10はヌクレオチド80,473~85,655からなり;エキソン11はヌクレオチド85,656~85,776からなり;イントロン11はヌクレオチド85,775~87,663からなり;エキソン12はヌクレオチド87,664~92,222からなる。
【0043】
「CpGジヌクレオチド」という用語は、参照ヌクレオチド配列中でのヌクレオチド配列CGの任意の出現を意味する。
【0044】
「自己相補的AAV」とは、組換えAAV核酸配列が保持するコード領域が、分子内二本鎖DNA鋳型を形成するように設計された構築物を指す。感染時に、第2の鎖の細胞媒介性の合成を待機するのではなく、scAAVの2つに分かれた相補的な部分が会合して、即座に複製及び転写されるように準備された1つの二本鎖DNA(dsDNA)単位を形成する。例えば、D M McCarty et al,“Self-complementary recombinant adeno-associated virus(scAAV)vectors promote efficient transduction independently of DNA synthesis”,Gene Therapy,(August 2001),Vol 8,Number 16,Pages 1248-1254を参照のこと。自己相補的AAVについては、例えば、米国特許第6,596,535号;同第7,125,717号:及び同第7,456,683号に記載されており、それぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0045】
本明細書で使用される場合、「機能的に連結される(operably linked)」、「機能的な連結」、「機能的に連結される(operatively linked)」、またはそれらの文法上の等価表現は、遺伝子要素、例えば、タンパク質をコードするポリヌクレオチドまたはRNA、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化配列などの要素が、意図された方法で機能することを可能にするような関係にある並置を指す。例えば、プロモーター配列及び/またはエンハンサー配列を含み得る調節要素は、調節要素がコード配列の転写開始を補助する場合、コード領域に機能的に連結されている。この機能的関係が維持されている限り、調節要素とコード領域との間に介在する残基が存在していてもよい。
【0046】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、「または」という用語は、特に内容が明示されない限り、概して、「及び/または」を含む意味で用いられる。
【0047】
参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列に関する「同一性パーセント(%)」は、配列をアラインメントし、必要に応じてギャップを導入して、最大の配列同一性パーセントを達成した後に、参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列中の核酸またはアミノ酸と同一である候補配列中の核酸またはアミノ酸の比率であると定義される。核酸またはアミノ酸の配列同一性パーセントの決定を目的としたアラインメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、またはMegalignソフトウェアなどの公共のコンピューターソフトウェアを使用して、当業者の能力の範囲内である様々な方法で行うことができる。当業者であれば、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含め、配列のアラインメントに適するパラメーターを決定することができる。例えば、配列同一性パーセント値は、配列比較コンピュータープログラムBLASTを使用して生成することができる。例示として、所与の核酸またはアミノ酸配列Bに対する、それとの、またはそれと比較して(to,with,or against)、所与の核酸またはアミノ酸配列Aの配列同一性パーセント(あるいは、所与の核酸またはアミノ酸配列Bに対する、それとの、またはそれと比較してある特定の配列同一性パーセントを有する所与の核酸またはアミノ酸配列Aと表現することができる)は、以下のように計算される:
100×(分率X/Y)
ここでのXは、配列アラインメントプログラム(例えば、BLAST)のAとBとのアラインメントにおいて、そのプログラムによって、完全一致として採点されたヌクレオチドまたはアミノ酸の数であり、Yは、Bの総核酸数である。核酸またはアミノ酸配列Aの長さが核酸またはアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、Bに対するAの配列同一性パーセントは、Aに対するBの配列同一性パーセントと等しくならないことが理解されよう。
【0048】
本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチドまたは遺伝子発現」という用語は、核酸配列またはポリヌクレオチドがDNA鋳型から(mRNAまたは他のRNA転写物などへ)転写されるプロセス、及び/または転写されたmRNAが、それに続いて、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に翻訳されるプロセスを指す。転写物及びコードされたポリペプチドは、「ポリヌクレオチドまたは遺伝子産物」と総称される場合がある。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、発現には真核細胞でのmRNAのスプライシングを含み得る。「ポリヌクレオチドまたは遺伝子発現」及び「発現」という用語は、文脈によって特に明示されない限り、同義に使用することができる。
【0049】
本明細書で使用される場合、「プレセニリン-1」という用語は、PSEN1遺伝子によってコードされるタンパク質を意味する。プレセニリン1は、プレセニリン複合体の4つのコアタンパク質の1つであり、ガンマセクレターゼを含め、細胞内のいくつかのタンパク質の制御性タンパク質分解事象を媒介する。ガンマセクレターゼは、ベータ-アミロイド前駆体タンパク質からのベータアミロイドの生成に強く関与すると考えられており、ベータアミロイドの蓄積はアルツハイマー病の発症に関連している。選択的スプライシングに基づいて、PSEN1遺伝子によってコードされるプレセニリン-1には2つの形態がある。ヒトの優勢形態は、467アミノ酸のアイソフォームX1である。別の形態は、463アミノ酸のアイソフォームX2である。プレセニリン-1、プレセニリン2(PSEN2)、及びアミロイド前駆体タンパク質(APP)は主として、常染色体優性型の早発型アルツハイマー病に関連している。
【0050】
本明細書で使用される「プロモーター」という用語は、ポリヌクレオチド配列の特異的転写を開始させるために必要である、細胞の合成機構または誘導される合成機構によって認識されるDNA配列であると定義される。「構成的」プロモーターとは、遺伝子産物をコードするかまたは特定するポリヌクレオチドと機能的に連結された場合に、細胞のほとんどまたはすべての生理的条件下で、その遺伝子産物を細胞内で生成させるヌクレオチド配列である。「誘導性」プロモーターとは、遺伝子産物をコードするかまたは特定するポリヌクレオチドと機能的に連結された場合に、そのプロモーターに対応する誘導物質が細胞内に存在する場合のみ、実質的にその遺伝子産物を細胞内で生成させるヌクレオチド配列である。「組織特異的」プロモーターとは、遺伝子をコードするかまたは特定するポリヌクレオチドと機能的に連結された場合に、細胞がそのプロモーターに対応する組織型の細胞である場合のみ、実質的にその遺伝子産物を細胞内で生成させるヌクレオチド配列である。代わりに、異種制御配列を用いてもよい。有用な異種制御配列として、概ね、哺乳動物遺伝子またはウイルス遺伝子をコードする配列に由来するものが挙げられる。例として、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター、CAG、神経細胞プロモーター、ドーパミン-1受容体及びドーパミン-2受容体のプロモーター、SV40初期プロモーター、マウス乳癌ウイルスLTRプロモーター;アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP);単純ヘルペスウイルス(HSV)プロモーター、CMV最初期プロモーター領域(CMVIE)などのサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、合成プロモーター、ハイブリッドプロモーターなどが挙げられるが、これらに限定されない。加えて、マウスのメタロチオネイン遺伝子などの非ウイルス遺伝子に由来する配列もまた、本明細書で使用される。そのようなプロモーター配列は、例えば、Stratagene(San Diego,Calif.)から市販されている。本発明の目的として、異種プロモーター及び他の制御要素の両方、例えば、CNS特異的プロモーター及び誘導性プロモーター、エンハンサーなどが特に有用である。異種プロモーターの例として、CMVプロモーターが挙げられる。CNS特異的プロモーターの例として、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、及びニューロン特異的エノラーゼ(NSE)の遺伝子から単離されたものが挙げられる。
【0051】
本明細書で使用される場合、「調節要素」という用語は、単独で、または1つ以上の追加の調節要素と共に、ポリヌクレオチドまたは遺伝子の発現に影響を及ぼすかまたは調整する遺伝子要素またはポリヌクレオチドを指す。調節要素は、ポリヌクレオチドもしくは遺伝子の発現を促進すること、ポリヌクレオチドもしくは遺伝子の発現を増加させること、ポリヌクレオチドもしくは遺伝子の発現を減少させること、及び/または特定の細胞型もしくは組織において選択的なポリヌクレオチドもしくは遺伝子の発現を与えることができる。調節要素は、ポリヌクレオチドまたは遺伝子の発現に時間的及び/または空間的に影響を及ぼすか、または調整することができる。本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチドまたは遺伝子の発現を調節する」、「ポリヌクレオチドまたは遺伝子の発現に影響を及ぼす」、または「ポリヌクレオチドまたは遺伝子の発現を調整する」という用語は、ポリヌクレオチドもしくは遺伝子の発現を増加させること、ポリヌクレオチドもしくは遺伝子の発現を減少させること、及び/または選択的なポリヌクレオチドもしくは遺伝子の発現を与えることを指す。「ポリヌクレオチドまたは遺伝子の発現を調節すること」、「ポリヌクレオチドまたは遺伝子の発現に影響を及ぼすこと」、または「ポリヌクレオチドまたは遺伝子の発現を調整すること」は、時間的及び/または空間的な調節を指すことがある。
【0052】
本明細書で「導入遺伝子」は、細胞または生物への導入を意図するかまたは導入されたポリヌクレオチドまたは核酸を指して利便に使用される。導入遺伝子として、ポリペプチドまたはタンパク質をコードする遺伝子などの任意の核酸が挙げられる。
【0053】
ポリヌクレオチド配列の文脈で使用される場合、「バリアント」という用語は、野生型遺伝子に関連するポリヌクレオチド配列を包含し得る。この定義には、例えば、「対立遺伝子」、「スプライス」、「種」、または「多型」のバリアントも含まれ得る。スプライスバリアントは、参照分子と顕著な同一性を有する場合があるが、mRNAのプロセシング中のエキソンの選択的スプライシングに起因して、ポリヌクレオチド数が増減するのが一般的である。対応するポリペプチドは、追加の機能的ドメインまたはドメインの欠失を有し得る。種バリアントは、種ごとに異なるポリヌクレオチド配列である。本発明において特に有用なものは、野生型遺伝子産物のバリアントである。バリアントは、核酸配列の少なくとも1つの突然変異により生じる可能性があり、改変mRNA、または構造もしくは機能が改変される場合と改変されない場合があるポリペプチドをもたらし得る。所与の天然遺伝子または組換え遺伝子は、対立遺伝子型をもたないか、1つまたは多数もつ場合がある。バリアントを生じさせる一般的な突然変異的変更は、概してヌクレオチドの自然な欠失、付加、または置換に起因する。この種の変更はそれぞれ、単独で、または他のものと組み合わせて、所与の配列に1回以上発生する場合がある。
【0054】
範囲:本開示の全体を通じて、本発明の様々な態様を、範囲形式で提示することができる。範囲形式による記載は、単に便宜上かつ簡潔性のためであって、本発明の範囲に対する不変の限定と解釈されるべきではないと理解すべきである。したがって、ある範囲の記載は、その範囲内におけるすべての可能な部分範囲のほか、個々の数値も明確に開示されているとみなされるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲のほか、その範囲内の個々の数、例えば、1、2、2.1、2.2、2.7、3、4、5、5.5、5.75、5.8、5.85、5.9、5.95、5.99及び6も、明確に開示されているとみなされるべきである。これは範囲の幅とは関係なく適用される。
【0055】
本開示は、アルツハイマー病、ならびに他の神経変性の疾患、障害、及び病態を有する対象を治療するための組成物及び方法を提供する。特定の態様では、本開示は、治療を必要とする対象にプレセニリン-1(PSEN1)遺伝子をコードするポリヌクレオチドを提供することによる遺伝子療法を企図する。アルツハイマー病(AD)は、脳の神経変性疾患の最も一般的な形態である。ADの病理学的特徴として、異常なタウタンパク質からなる、対らせん状細線維の神経細胞内蓄積と、神経突起斑におけるβ-アミロイドペプチド(Aβ)の細胞外沈着が挙げられる。臨床上、ADは発症年齢に基づいて、早発型AD(EOAD;65歳未満)と遅発型AD(LOAD;65歳超)という2つの表現型に分類することができる。そのうち、LOADは、全世界でよくみられる形態である。全AD症例のうちEOADの割合は5%~10%である。プレセニリン1(PSEN1)、プレセニリン2(PSEN2)、及びアミロイド前駆体タンパク質(APP)は主として、常染色体優性型のEOADに関連している。遺伝的要因以外に、突然変異は環境に関連している。遺伝的環境的相互作用は、発症年齢、神経病理学的パターン、及び疾患期間の変動によって起こり得る。
【0056】
PSEN1及びPSEN2は、γ-セクレターゼの触媒中心を構成する膜貫通タンパク質PS1及びPS2をそれぞれコードしており、新興のクラスである非従来型の膜内切断プロテアーゼ(I-CLiP)を構成する、初期に発見されたメンバーである。活性型γ-セクレターゼは、PS1またはPS2と、ニカストリン(NCT)、前咽頭欠損タンパク質1(APH1)、及びプレセニリンエンハンサー2(PEN2)で構成される多タンパク質複合体である。遷移状態類似体γ-セクレターゼ阻害剤がPS1に結合すること、ならびにタンパク質分解にとって重要なアスパラギン酸残基をPS1が欠失するとγ-セクレターゼ活性が消失することなどの実験的証拠により、プレセニリンが酵素複合体の活性部位を保持することが確認された。
【0057】
PS1及びPS2はγ-セクレターゼ複合体の一部として、細胞シグナル伝達に必須の役割を果たす。PS2は、膜貫通ドメイン中の多数のI型膜タンパク質を切断して、対応する細胞内ドメインを放出させ、遺伝子発現に影響を及ぼすことができる。アミロイド前駆体タンパク質(APP)は、β-セクレターゼ(BACE1)とγ-セクレターゼの連続作用によって処理され、37~46アミノ酸を範囲とする長さの異なるアミロイド-ベータペプチド(Aβ)を生成する。γ-セクレターゼによるAPP C末端断片(APP-CTF)の切断はまた、APP細胞内ドメイン(AICD)を放出させる。これは、ADの主要な遺伝的決定因子である脳のApoE発現の調節、及びコレステロール代謝に関与することが近年発見された。加えて、PS1は、γ-セクレターゼ活性を調整するタンパク質と相互作用することが示されており、その対象は増えつつある。
【0058】
核酸組成物
したがって、本開示は、天然に存在するヒトプレセニリン-1をコードし、一部またはすべての許容コドンのみのコドン最適化、CpGジヌクレオチドの減少、または両方のPSEN-1アイソフォームの発現を可能にするドナー/アクセプタースプライス部位の存在のうち1つ以上を特徴とする、単離cDNAまたはハイブリッドゲノム/cDNA;前述及び追加の調節要素を含む核酸発現カセット;そのような発現カセットを含むベクター;このようなベクターを含む組成物;ならびに前述のいずれかを利用する、アルツハイマー病などの神経変性障害の遺伝子療法のための方法を提供する。理論に束縛されるものではないが、本明細書に開示される核酸発現カセットは、それを必要とする患者、例えばアルツハイマー病患者において、天然型または変異型のPSEN-1と比較して、PSEN-1発現の増加及び改善をもたらすと考えられる。したがって、低用量の発現カセットまたはその発現カセットを含むベクターでPSEN-1タンパク質の発現を増加させることができる。
【0059】
一実施形態では、上記に示すプレセニリン1をコードするcDNAまたはハイブリッドゲノム/cDNAポリヌクレオチドのいずれか、及びプレセニリン1をコードするポリヌクレオチドと機能的に連結される1つ以上の調節要素を含む、核酸発現カセットを提供する。
【0060】
ポリヌクレオチドまたは遺伝子発現を調整する、またはそれに影響を及ぼす任意の遺伝子要素は、調節要素であってよく、例えば、これには、プロモーター、エンハンサー、クロマチンインスレーター、強弱のコザックシグナル配列及び内部リボソーム侵入部位などの翻訳開始配列、mRNA安定性配列、スプライシング及び切断などのmRNAプロセシングに影響を及ぼす配列、mRNAの核外輸送及び/またはmRNA保持に影響を及ぼす配列、翻訳後応答要素、イントロンなどの非コード配列、ポリA配列、リプレッサー、サイレンサー、ターミネーターなどが挙げられる。調節要素は、転写レベル、転写後レベル、翻訳レベル、またはそれらの任意の組み合わせでポリヌクレオチドまたは遺伝子の発現を調整するように機能することができる。調節要素は、例えば、RNA転写物の生成速度を増加させること、生成されるRNAの安定性を増加させること、RNA転写物からのタンパク質の合成速度を増加させること、RNA分解を防止すること、及び/またはRNA安定性を増加させてタンパク質合成を促進することができる。
【0061】
本明細書で使用される発現カセットは、プロモーター及びポリA配列を適切に含み得る。特定の好ましい実施形態では、発現カセットは、プロモーター、ポリA配列、及びmRNA安定性要素を含み得る。特に好ましい発現カセットは、CAGプロモーター、コザック、コドン最適化PSEN1(許容のみ)、mRNA安定性要素、及びポリAを含み得る。特に好ましい発現カセットは、配列番号23、配列番号5、配列番号6、配列番号9、及び配列番号34を含み得る。ある特定の実施形態では、好ましいベクターは、ITRに囲まれ、AAV9またはAAVrh10カプシドにパッケージングされたAAVを含み得る。
【0062】
本明細書に記載の核酸発現カセットは、例えば、転写レベル、転写後レベル、及び翻訳レベルを含め、任意の段階でポリヌクレオチドまたは遺伝子発現を調節または調整する調節要素を含み得る。調節要素は、ポリヌクレオチドもしくは遺伝子の発現を複数のレベルで調節もしくは調整するか、またはポリヌクレオチドもしくは遺伝子の発現を調節または調整するために複数の方法で機能することができる。したがって、調節要素は、任意の機能、または上記に記載する機能の任意の組み合わせを有し得る。例えば、調節要素は、mRNAを安定化する要素として機能し、翻訳を調整、すなわち増加または減少させることができる。さらに別の例として、調節要素は、転写開始を調整し、mRNAの安定性を調整することができる。調節要素はまた、ポリヌクレオチドまたは遺伝子の発現を調整する優勢な機能を有し、ポリヌクレオチドまたは遺伝子の発現を増加または減少させる1つ以上の追加機能を有し得る。調節要素は、他の調節要素内に位置するか、またはそれと重複する配列を含んでもよく、この他の調節要素とは、ポリヌクレオチドまたは遺伝子の発現の調整に際して、同じかもしくは異なる機能を有するか、または同じかもしくは異なる段階でポリヌクレオチドもしくは遺伝子の発現を調整するものである。
【0063】
調節要素は、コードまたは非コードのDNA配列に由来することができる。非コードDNAに由来する調節要素は、遺伝子と関連付けることができ、例えば、上流配列、イントロン、3’及び5’非翻訳領域(UTR)、及び/または下流領域などの遺伝子に存在し得る。本明細書で使用される場合、核酸を指すときの「上流」という用語は、別の配列に対して5’側を意味し、「下流」という用語は、別の配列に対して3’側を意味する。「上流」という用語は、文脈によって特に明示されない限り、相互に相対的な配列の位置を指すときの「5’」という用語と同義に使用することができる。「下流」という用語は、文脈によって特に明示されない限り、相互に相対的な配列の位置を指すときの「3’」という用語と同義に使用することができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、非コードDNA配列に由来する調節要素は、遺伝子と関連付けされず、例えば、遺伝子中に存在しない場合がある。調節要素が由来するゲノム領域は、機能的に連結されるポリヌクレオチドが由来するゲノム領域とは異なる可能性がある。いくつかの実施形態では、調節要素は、機能的に連結されるポリヌクレオチド(例えば、内因性遺伝子または内因型の異種遺伝子に由来するcDNAなど)のゲノム領域または位置に対して、遠位のゲノム領域または位置に由来する。いくつかの実施形態では、調節要素は、イントロン配列を含む。イントロン配列は、任意の遺伝子に由来する配列を含み得る。いくつかの実施形態では、イントロン配列は、機能的に連結されるポリヌクレオチドが由来するゲノム領域に由来する。例えば、本明細書に記載の核酸発現カセットは、ポリヌクレオチドに対応する内因性遺伝子か、またはcDNAの形態でポリヌクレオチドを生じさせた内因性遺伝子からのイントロンを含み得る。別の例として、本明細書に記載の核酸発現カセットは、ポリヌクレオチドに対応しないか、またはポリヌクレオチドを生じさせない内因性遺伝子からのイントロンを含み得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、1つ以上の調節要素が、配列番号5に示すポリヌクレオチドなどのコザック翻訳開始シグナルを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の調節要素が、配列番号4に示すポリヌクレオチドなどのクロマチンインスレーター配列を含む。
【0066】
コザック配列:5’UTRには、概して、リボソームによって認識され、リボソームが結合して翻訳を開始できるような配列が含まれる。翻訳開始の例示的な配列として、コザック開始シグナル配列が挙げられる。本明細書で使用される場合、「コザック開始シグナル配列」、「コザックコンセンサス配列」、及び「コザック配列」という用語は、文脈によって特に明示されない限り、同義に使用することができる。下記に記載されるように、コザック開始シグナル配列は部分的に5’UTRに位置し、AUG翻訳開始コドン自体及びAUG開始コドンの直後または下流のヌクレオチドを含み得ることを当業者は理解されよう。
【0067】
mRNAの翻訳開始は通常、リボソームによって認識されるATGコドンで発生する。翻訳が開始されるATGコドンは、mRNA配列に存在する最初のATG開始コドンではない場合がある。コザック配列と呼ばれるモチーフは、翻訳開始をATGコドンに誘導することができる。コザックコンセンサス配列は、5’-(gcc)gccRccAUGG-3として定義され、式中、下線のあるAUGは翻訳開始コドンを示し、大文字は保存された塩基を示し、「R」は、アデニンの頻度が高いプリンの存在を示し、小文字は、変更できる位置の最も一般的な塩基を示し、配列(gcc)は、意義不明のものである。これらの特徴に加えて、他の位置及び特徴が翻訳の開始に寄与する可能性がある。強弱のコザック配列が記載されており、強いコザックコンセンサス配列は、翻訳開始に最適であると考えられる上記の特徴を含み、弱いコザックコンセンサス配列は、強いコザックコンセンサス配列から逸脱するまたはそれとは異なる特徴を含む。mRNAから合成されるタンパク質の量は、コザック配列の強度に依存し得る。例えば、AUG翻訳開始コドンのすぐ上流のCCACC(配列番号5)配列は、CCACCとは異なる配列と比較して、翻訳開始の速度を増加させることができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される核酸発現カセットは、コザック翻訳開始シグナルを含む。コザック翻訳開始シグナルは、翻訳開始AUGコドンのすぐ上流または5’に位置し得る。強いコザック配列である任意のコザックコンセンサス配列を使用することができる。いくつかの実施形態では、コザック翻訳開始シグナルは、配列番号5に示す配列を含む。
【0069】
プロモーター:プロモーターは、ベクターゲノム設計内の主要なcis作用要素であり、発現の全体的な強度に加え、細胞特異性を規定することができる。したがって、ある特定の実施形態では、プロモーターはニューロン特異的プロモーターである。ニューロン特異的プロモーターは、神経細胞におけるポリヌクレオチドまたは治療遺伝子の選択的発現を提供することができる。特定の細胞型に制限または限定された選択的発現は、例えば、望ましくない場合が多く、副作用をもたらす可能性があるオフターゲット効果を防止または低減することができる。本明細書で使用される場合、「選択的発現」とは、非神経細胞と比較して、ニューロン中、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、及びその間の任意の数または範囲で高い発現を指す。いくつかの実施形態では、非神経細胞では発現がない。
【0070】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸発現カセットのニューロン特異的プロモーターは、任意の細胞型で発現を誘導できるプロモーターによって提供される発現と比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、及びその間の任意の数または範囲で高い発現を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸発現カセットのニューロン特異的プロモーターは、1種以上の非神経細胞型で発現を誘導できるプロモーターによって提供される発現と比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、及びその間の任意の数または範囲で高い発現を提供する。
【0071】
任意のニューロン特異的プロモーターを、本明細書で提供される核酸発現カセットで使用することができる。例示的なプロモーターとして、ソマトスタチン(SST;配列番号2)遺伝子プロモーター、神経ペプチドY(NPY;配列番号3)プロモーター、アルファ-カルシウム/カルモジュリンキナーゼ2Aプロモーター、シナプシンIプロモーター(例えば、配列番号46のヌクレオチド273~684)、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)(例えば、配列番号29)、ドーパミン作動性受容体1(Drd1a)プロモーター、チューブリンアルファIプロモーター、GFAPプロモーター(例えば、配列番号31)、及びその公知のバリエーション(例えば、gfaABC(1)D)などが挙げられる。また、ハイブリッドプロモーターを使用することもできる。ハイブリッドプロモーターは、複数の遺伝子に由来するプロモーター配列を含むプロモーターである。プロモーターは、例えば、ヒト、アカゲザル、マウス、ラット、及びニワトリを含む、あらゆる種に由来し得る。ニューロン特異的プロモーターは、(i)配列番号2に示すポリヌクレオチド;(ii)配列番号3に示すポリヌクレオチド;(iii)配列番号2もしくは配列番号3の機能的断片;または(iv)(i)、(ii)、もしくは(iii)に対して少なくとも95%の同一性を有するポリヌクレオチドを含み得る。これらの実施形態の別の態様では、プロモーターは、CAG、CBA、UBC、PKC、EF1a、GUSB、CMV、NSE、PDGF、デスミン、MCK、MeCP2、GFAP、CaMKII、またはMBPを含む。
【0072】
ヒト伸長因子1αサブユニット(EF1α)(例えば、配列番号27、または配列番号44のヌクレオチド237~1415)、前初期サイトメガロウイルス(CMV)(例えば、配列番号28)、ニワトリβ-アクチン(CBA)(例えば、配列番号24、または配列番号43のヌクレオチド237~890)及びその誘導体CAG(配列番号23または配列番号40)、βグルクロニダーゼ(GUSB)、ユビキチンC(UBC)(例えば、配列番号25、または配列番号42のヌクレオチド237~1323)、ホスホグリセリン酸キナーゼ1(PGK)(例えば、配列番号26)、さらには天然のPSEN-1プロモーター(例えば、配列番号41のヌクレオチド237~1200)などの構成的プロモーターをほとんどの組織での発現を促進するために使用することができる。概して、CBA及びCAGは構成的プロモーターの中でも強く発現を促進するが、約1.7kbという大きさは、CMV(約0.8kb)またはEF1α(約1.2kb)と比較して、AAVなどのパッケージング制約のあるベクターでの使用が制限される。GUSBまたはUBCプロモーターは、それぞれ378bp及び403bpという小さいサイズで遍在性の遺伝子発現を提供できるが、CMVまたはCBAプロモーターよりもかなり弱い。したがって、その発現に影響を及ぼすことなくサイズを縮小するための構成的プロモーターの改変が追求されており、CBh(約800bp)及びminiCBA(約800bp)などの例は、選択された組織において同等か、さらに高い発現を促進することができる。
【0073】
器官内、例えば脳、中枢神経系などの特定の細胞型に発現を制限する場合、プロモーターは、この特異性を媒介するために使用することができる。例えば、神経系内で、ニューロン、アストロサイト、またはオリゴデンドロサイトに発現を制限するためにプロモーターが使用されてきた。ニューロンにおいて、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーターは、遍在性プロモーターよりも強度の発現を誘導するが、サイズが2.2kbであるため、小型ベクターでの使用に限定される。加えて、血小板由来成長因子B鎖(PDGF-β)、シナプシン(Syn)、及びメチル-CpG結合タンパク質2(MeCP2)(例えば、配列番号30)プロモーターは、NSEよりも低レベルでニューロン特異的発現を誘導できるが、それぞれサイズが1.4kb、470bp、及び229bpであるため、サイズが限定されるベクターに適している。アストロサイトにおいて、680bp長の短縮型[gfaABC(l)D]グリア線維性酸性タンパク質(GFAP、2.2kb)プロモーターは、GFAPプロモーターと同じアストロサイト特異性で高レベルの発現を付与することができる。このグリア細胞に発現が制限されるミエリン塩基性タンパク質(MBP)プロモーターの選択によって、オリゴデンドロサイトの標的化も達成することができる(Gray SJ,et al.,Optimizing promoters for recombinant adeno-associated virus-mediated gene expression in the peripheral and central nervous system using self-complementary vectors.Hum Gene Ther.2011;22:1143-1153)。
【0074】
組織特異的プロモーターは、目的とする細胞または組織に発現を限定するという利点をもたらす。しかしながら、低レベルの発現及び/またはサイズの大きさにより、その使用が限定される場合がある。強度の弱さを補うために、CMV由来などのエンハンサー要素を追加することにより発現レベルを高めることができる。
【0075】
マイクロRNA結合部位:いくつかの実施形態では、1つ以上の調節要素は、後根神経節におけるコードされたPSEN-1の発現を抑制するためのマイクロRNA(「miRNA」または「miR」)結合部位を1つ、2つ、または3つ含む。マイクロRNAは19~25ヌクレオチドの非コードRNAであり、miRNA結合部位に結合して、核酸分子の安定性を低下させるか、または翻訳を阻害することにより、遺伝子発現を下方制御する。これらの実施形態のいくつかの態様では、各miRNA結合部位は、以下のmiRNA:miRNA-1914、miR1181、miR3918、miR939、miR324、miR650、MiR29C、またはmiR2277のいずれかの結合部位から独立して選択される。これらの実施形態のいくつかの態様では、miRNA結合部位(複数可)は、mRNA安定性要素に対して3’側に位置する。
【0076】
内因性miRNAは、それらの正確な相補的標的配列が発現カセットに組み込まれている場合、導入遺伝子の発現を標的外にするか、または阻害することができる。抑制のレベルは、in vitroで、発現カセット内の標的配列の数と相関する。in vivo試験では、神経細胞特異的miR-124標的配列の4つのコピーを含む操作されたレンチウイルスベクターをマウスの脳に注入すると、PGK誘導性導入遺伝子の発現標的からニューロンが外れ、アストロサイトのみになった(Colin A.et al.,Engineered lentiviral vector targeting astrocytes in vivo.Glia.2009 Apr 15;57(6):667-79)。内因性miRNAは、それぞれの結合部位が小さく、組み合わせることができ、発現を制限する能力が強固であるため、導入遺伝子細胞の特異性を得るのに有益な手段である。
【0077】
mRNA安定性要素:例示的なmRNA安定性要素として、MALAT1 mRNA安定性要素、HBA1、HBA2、リポキシゲナーゼ、アルファ(I)コラーゲン、及びチロシンヒドロキシラーゼ3’UTRのCリッチ安定性要素、例えば、3’UTRのAUリッチ要素(ARE)などが挙げられる。mRNA安定性要素は、例えば、発現及び核保持要素であり得る。mRNA安定性要素は、mRNAの分解を防止するか、または減少させることができる。例えば、mRNA安定性要素が含まれる場合、mRNA安定性要素を含まない核酸発現カセットと比較して、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約99%、及びその間の任意の数または範囲で、mRNAの分解を減少させることができる。一実施形態では、mRNAの分解がない。mRNAの分解を防止するか、または減少させる任意の配列は、mRNA安定性要素であり得る。mRNA安定性要素は、核酸発現カセットの任意の位置に配置することができる。例えば、mRNA安定性要素は、ポリヌクレオチドのオープンリーディングフレームに対して3’側、及びポリアデニル化部位の前または5’側に配置することができる。別の例として、mRNA安定性要素は、ポリヌクレオチドのオープンリーディングフレームに対して3’側、及びポリアデニル化部位に対して3’側に配置することができる。さらに別の例として、mRNA安定性要素は、ポリヌクレオチドのオープンリーディングフレームに対して5’側に配置することができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、mRNA安定性要素は、(i)配列番号9に示すポリヌクレオチド;(ii)その機能的バリアント;または(iii)(i)もしくは(ii)に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、mRNA安定性要素は、配列番号9に対して、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、及びその間の任意の数または範囲の同一性を有するポリヌクレオチドを含む。
【0079】
したがって、ある特定の実施形態では、少なくとも1つのmRNA安定性要素は、(i)配列番号9、配列番号10、配列番号11に示すポリヌクレオチド;(ii)配列番号9、配列番号10、配列番号11の機能的バリアント;または(iii)(i)もしくは(ii)に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチドを含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、本明細書に包含される核酸発現カセットは、(i)配列番号10に示すポリヌクレオチド;(ii)その機能的バリアント;または(iii)(i)もしくは(ii)に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチドを含むmRNA安定性要素を含む。いくつかの実施形態では、mRNA安定性要素は、配列番号10に対して、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、及びその間の任意の数または範囲の同一性を有するポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、(i)配列番号10に示すポリヌクレオチド;(ii)その機能的バリアント;または(iii)(i)もしくは(ii)に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチドを含むmRNA安定性要素は、PSEN1または他の治療遺伝子をコードするポリヌクレオチドのオープンリーディングフレームの5’に位置する。
【0081】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸発現カセットは、(i)配列番号11に示すポリヌクレオチド;(ii)その機能的バリアント;または(iii)(i)もしくは(ii)に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチドを含むmRNA安定性要素を含む。いくつかの実施形態では、mRNA安定性要素は、配列番号11に対して、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、及びその間の任意の数または範囲の同一性を有するポリヌクレオチドを含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、mRNA安定性要素は、配列番号10に対して、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、及びその間の任意の数または範囲の同一性を有するポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、(i)配列番号10に示すポリヌクレオチド;(ii)その機能的バリアント;または(iii)(i)もしくは(ii)に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチドを含むmRNA安定性要素は、PSEN1または他の治療遺伝子をコードするポリヌクレオチドのオープンリーディングフレームの5’に位置する。
【0083】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸発現カセットは、(i)配列番号11に示すポリヌクレオチド;(ii)その機能的バリアント;または(iii)(i)もしくは(ii)に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチドを含むmRNA安定性要素を含む。いくつかの実施形態では、mRNA安定性要素は、配列番号11に対して、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、及びその間の任意の数または範囲の同一性を有するポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、(i)配列番号11に示すポリヌクレオチド;(ii)その機能的バリアント;または(iii)(i)もしくは(ii)に対して少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチドを含むmRNA安定性要素は、PSEN1ヌクレオチド配列のオープンリーディングフレームの5’に位置する。
【0084】
これらの実施形態のいくつかの態様では、核酸発現カセットは、PSEN1をコードするポリヌクレオチドのオープンリーディングフレームの5’に位置するmRNA安定性要素;及びポリアデニル化シグナルの3’に位置するmRNA安定性要素を含む。
【0085】
ポリアデニル化シグナル:ある特定の実施形態では、核酸発現カセットは、1つ以上のポリアデニル化エンハンサー要素、例えば、ヒト成長ホルモン(hGH;配列番号33;配列番号41のヌクレオチド3330~3806)ポリアデニル化シグナル配列、ウサギベータ-グロビン(rBG;配列番号34または35;配列番号47のヌクレオチド2139~2367)ポリアデニル化シグナル配列、SV40ポリアデニル化シグナル配列、またはウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル配列などを含む。転写物のポリアデニル化は、核外輸送、翻訳、及びmRNAの安定性にとって重要である。したがって、転写物のポリアデニル化効率は、導入遺伝子の発現にとって重要である。ポリ(A)テールには、ポリ(A)結合タンパク質(PABP)の結合部位が含まれる。このタンパク質は他の因子と協働して、mRNAの輸送、安定性、分解、及び翻訳に影響を及ぼす。ポリ(A)テールに結合したPABPは、mRNAの5’キャップに結合した翻訳開始因子などのタンパク質とも相互作用する場合がある。この相互作用により、転写物の環状化が引き起こされ、続いて翻訳の開始が進行する。さらに、リボソームの再生を引き起こすことにより、効率的な翻訳を可能にする。ポリ(A)テールの存在は通常、翻訳の誘発を助ける一方、その不在または除去は、mRNAのエキソヌクレアーゼ媒介性の分解に至ることが多い。ポリアデニル化自体は、転写物の3’-UTR内の配列によって制御される。このような配列は、細胞質ポリアデニル化要素(CPE)を含み、これは、ポリアデニル化の活性化と抑制の両方に寄与するウリジンリッチ配列である。CPE結合タンパク質(CPEB)は、様々な応答を誘発するために、多様な他のタンパク質と組み合わされてCPEに結合する。
【0086】
クロマチンインスレーター配列:ある特定の実施形態では、核酸発現カセットは、クロマチンインスレーター配列をさらに含み得る。遺伝子をクロマチンにパッケージングすると、遺伝子は細胞の転写機構に接近できなくなり、遺伝子発現がほとんどまたは全く生じなくなる可能性がある。クロマチンインスレーターは、配列が凝集して転写不活性なクロマチンになることを防止することができる。核酸発現カセットにクロマチンインスレーター配列を組み入れると、ポリヌクレオチドを接近可能な状態に維持し、転写を可能にすることができる。任意のクロマチンインスレーターを、本明細書で提供される核酸発現カセットに使用することができる。例示的なクロマチンインスレーター配列として、CTCFインスレーター、ジプシーインスレーター、及びβ-グロビン遺伝子座が挙げられる。あらゆる種のクロマチンインスレーター配列を使用でき、種には、哺乳動物及び非哺乳動物ならびに脊椎動物及び非脊椎動物が含まれる。一例として、ヒトベータグロビン遺伝子座HS4由来のクロマチンインスレーター配列を使用することができる。クロマチンインスレーター配列の他の例として、ニワトリ及びショウジョウバエ由来の配列が挙げられる。クロマチンインスレーター配列は、配列番号4に示すポリヌクレオチド、配列番号4の機能的バリアント、または配列番号4に対して少なくとも95%の同一性を有するポリヌクレオチドを含み得る。クロマチンインスレーター配列は、参照配列の機能、及びそれが関連する配列の転写不活性なクロマチンへの凝集を防止する能力が維持されている限り、配列番号4に対して、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、及びその間の任意の数または範囲の同一性を含み得る。
【0087】
転写終結領域:組換え構築物または発現カセットの転写終結領域は、終止コドン及び転写ターミネーター配列を含む下流の調節領域である。使用することができる転写終結領域は、転写開始領域と相同であり得るか、対象となるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと相同であり得るか、または異種であり得る(すなわち、別の起源に由来する)。転写終結領域は、天然に存在するものでも、全体的または部分的に合成されたものでもよい。転写終結領域をコードする3’非コード配列は、組換え構築物または発現構築物に提供されてもよく、開始領域を得た遺伝子の3’領域に由来するか、または異なる遺伝子に由来してもよい。多数の終結領域が公知であり、由来する同じ属及び種、ならびに異なる属及び種の両方に利用すると、多様な宿主において十分に機能する。終結領域はまた、好ましい宿主に固有の様々な遺伝子に由来し得る。終結領域は通常、特定の特性のためではなく、利便性のために選択される。
【0088】
本明細書で提供される核酸発現カセットの調節要素及びポリヌクレオチドは、任意の方法で組み合わせることができる。いくつかの実施形態では、核酸発現カセットは、プレセニリン1をコードするポリヌクレオチドを含み、当該ポリヌクレオチドは、(I)配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号36、配列番号37、配列番号38、もしくは配列番号39に示すポリヌクレオチド;または(III)(I)もしくは(II)に対して少なくとも95%の同一性を有するポリヌクレオチドのうちいずれか1つを含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号36、配列番号37、配列番号38、または配列番号39に対して、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%、及びその間の任意の数または範囲の同一性を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸発現カセットは、プレセニリン1をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結された1つ以上の調節要素をさらに含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の調節要素が、ニューロン特異的プロモーターを含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、核酸発現カセットは、(i)コザック翻訳開始シグナル;(ii)クロマチンインスレーター配列;(iii)少なくとも1つのmRNA安定性要素;または(iv)それらの任意の組み合わせをさらに含み、1つ以上の調節要素が、ニューロン特異的プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、コザック翻訳開始シグナルは、配列番号5に示すポリヌクレオチドを含み、クロマチンインスレーター配列は、配列番号4に示すポリヌクレオチドを含み、少なくとも1つのmRNA安定性要素は、配列番号9、配列番号10、配列番号11、またはそれらの任意の組み合わせに示すポリヌクレオチドを含み、ニューロン特異的プロモーターは、配列番号2または配列番号3に示すポリヌクレオチドを含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、配列番号9を含むmRNA安定性要素は、PSEN1をコードするポリヌクレオチドのオープンリーディングフレームの3’及びポリアデニル化シグナルの5’に位置し、配列番号10を含むmRNA安定性要素は、PSEN1をコードするポリヌクレオチドのオープンリーディングフレームの5’に位置し、配列番号11を含むmRNA安定性要素は、PSEN1をコードするポリヌクレオチドのオープンリーディングフレームの3’に位置する。
【0091】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される核酸発現カセットは、(a)プレセニリン1をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結された1つ以上の調節要素であって、当該ポリヌクレオチドが、(I)配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号36、配列番号37、配列番号38、もしくは配列番号39に示すポリヌクレオチド;(II)(I)に対して少なくとも95%の同一性を有するポリヌクレオチドのうちいずれか1つを含み、1つ以上の調節要素が、配列番号2または配列番号3に示すポリヌクレオチドを含むニューロン特異的プロモーターを含む、調節要素;(b)配列番号5に示すポリヌクレオチドを含むコザック翻訳開始シグナル;(c)配列番号4に示すポリヌクレオチドを含むクロマチンインスレーター配列;及び(d)配列番号9、配列番号10、配列番号11、またはそれらの任意の組み合わせに示すポリヌクレオチドを含む少なくとも1つのmRNA安定性要素を含む。
【0092】
他の実施形態は、(i)上記に示すプレセニリン1をコードするcDNAまたはハイブリッドゲノム/cDNAポリヌクレオチドのいずれか;(ii)コザック翻訳開始シグナル;(iii)ニューロン特異的プロモーター;(iv)クロマチンインスレーター配列;(v)少なくとも1つのmRNA安定性要素;またはそれらの組み合わせを含む核酸発現カセットを提供する。コザック翻訳開始シグナルは、配列番号5に示すポリヌクレオチドを含み、クロマチンインスレーター配列は、配列番号4に示すポリヌクレオチドを含み、少なくとも1つのmRNA安定性要素は、配列番号9、配列番号10、配列番号11、またはそれらの任意の組み合わせに示すポリヌクレオチドを含み、ニューロン特異的プロモーターは、配列番号2または配列番号3に示すポリヌクレオチドを含み得る。
【0093】
コドン最適化
コドン最適化を利用して、異種遺伝子発現のためのタンパク質発現を増強することができる。コドン最適化は遺伝子最適化の方法であり、合成遺伝子配列において、特定の生物の「コドン使用パターン」に一致するように配列を変更する。例えば、特定の生物の特定のアミノ酸配列の発現を最適化するために、その生物により「最も使用頻度の高いコドン」を(アミノ酸の縮重コドンの一覧から)選択する。使用される優先コドンのリストについては、表2を参照のこと。コドン最適化時、コードされたアミノ酸配列は同じままであるが、アミノ酸配列をコードするDNA配列は異なり、その生物に最適化されている。したがって、本開示は、本明細書に記載の組成物及び方法での使用に適した、コドン最適化プレセニリン-1(PSEN1)をコードするポリヌクレオチドを提供する。コドン最適化PSEN1は、表2に示す1つ以上の最適化コドンを含む、全長ハイブリッドゲノム/cDNA(例えば、配列番号8)を含み得る。ある特定の実施形態では、配列番号1を含むPSEN-1ポリヌクレオチドは、表2に示す1つ以上の最適化コドンを含む。ある特定の実施形態では、コドン最適化プレセニリン-1(PSEN1)をコードするポリヌクレオチドは、配列番号6として示される。ある特定の実施形態では、コドン最適化プレセニリン-1(PSEN1)をコードするポリヌクレオチドは、配列番号6として示される。ある特定の実施形態では、コドン最適化プレセニリン-1(PSEN1)をコードするポリヌクレオチドは、配列番号37として示される。ある特定の実施形態では、コドン最適化プレセニリン-1(PSEN1)をコードするポリヌクレオチドは、配列番号38として示される。ある特定の実施形態では、コドン最適化プレセニリン-1(PSEN1)をコードするポリヌクレオチドは、配列番号39として示される。
【0094】
ベクター
「ベクター」とは、ポリヌクレオチドを含むかまたはポリヌクレオチドと会合する、高分子または高分子の会合であり、細胞へのポリヌクレオチドの送達を媒介するために使用することができる。ベクターの例として、プラスミド、ウイルスベクター、リポソーム、及び他の遺伝子送達ビヒクルが挙げられる。ベクターは、ベクター複製のための1つ以上の要素を含み得る。ベクターは、ベクター複製のための1つ以上の要素を欠失するように操作することができる。
【0095】
核酸発現カセット及び/またはポリヌクレオチドを細胞のゲノムに組み込むベクターの能力に関して、ベクターは、組み込みベクターでも非組み込みベクターでもあり得る。組み込みベクターまたは非組み込みベクターのいずれかを使用して、ポリヌクレオチドが含まれた核酸発現カセットを送達することができる。ベクターの例として、(a)線状オリゴヌクレオチド及び環状プラスミド;ヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、及び細菌人工染色体(BACまたはPAC)などの人工染色体;エピソームベクター;トランスポゾン(例えば、PiggyBac)を含む、核酸ベクターなどの非ウイルスベクター;ならびに(b)レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、及びAAVベクターなどのウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。ウイルスは、核酸の送達に関していくつかの優位性があり、それには、特定の標的細胞または組織に対する高い感染性及び/または指向性が含まれる。いくつかの実施形態では、ウイルスは、1つ以上のポリヌクレオチドを含む核酸分子または核酸発現カセットを送達するために使用される。
【0096】
いくつかの実施形態では、ベクターはウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、またはアデノウイルスベクターである。本明細書で提供される核酸発現カセットを含むベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、またはアデノウイルスベクターなどのウイルスベクターであり得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、AAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVDJ、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15、AAV16、AAV2/1、AAV2/5、AAV2/6、AAV2/7、AAV2/8、AAV2/9、AAV2/rh10、AAV2/11、もしくはAAV2/12、一本鎖AAV(ssAAV)ベクター、または自己相補的AAV(scAAV)ベクターである。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、ハイブリッドまたはキメラAAV血清型である。
【0098】
いくつかの実施形態では、AAVベクターは、a)CAGプロモーター、プレセニリン-1プロモーター、ユビキチンCプロモーター、CBAプロモーター、シナプシン-1プロモーター、PGKプロモーター、及びEF1αプロモーターから選択されるプロモーターであって、以下と機能的に連結される、プロモーター、b)配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号36、配列番号37、配列番号38、もしくは配列番号39から選択されるプレセニリン-1コード配列、または前述のPSEN-1コード配列のいずれかに対して少なくとも95%の同一性を有し、野生型PSEN-1アミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド;ならびにc)ヒト成長ホルモンポリアデニル化配列及びウサギβ-グロビンポリアデニル化配列から選択されるポリアデニル化配列を含む。これらの実施形態のいくつかの態様では、AAVベクターは、プロモーターとPSEN-1コード配列との間に、ヒトベータグロビンイントロン(野生型または合成のいずれか)またはマウス微小ウイルスのイントロンから選択されるイントロンをさらに含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、AAVベクターは、以下を含む:
a.配列番号41のヌクレオチド1~141もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号41のヌクレオチド237~1200もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号41のヌクレオチド1221~1786もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号41のヌクレオチド1899~3299もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号41のヌクレオチド3330~3806もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号41のヌクレオチド4553~4693もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列;
b.配列番号42のヌクレオチド1~141もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号42のヌクレオチド237~1323もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号42のヌクレオチド1344~1909もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号42のヌクレオチド1983~3416もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号42のヌクレオチド3447~3923もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号42のヌクレオチド4554~4694もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列;
c.配列番号43のヌクレオチド1~141もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号43のヌクレオチド237~890もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号43のヌクレオチド911~1476もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号43のヌクレオチド1550~2983もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号43のヌクレオチド3014~3490もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号43のヌクレオチド4553~4694もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列;
d.配列番号44の、ヌクレオチド1~141もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、ヌクレオチド237~1415もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、ヌクレオチド1436~2001もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、ヌクレオチド2075~3508もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、ヌクレオチド3539~4015もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、ヌクレオチド4500~4640もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列;
e.配列番号45のヌクレオチド1~141もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号45のヌクレオチド237~664もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号45のヌクレオチド684~1249もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号45のヌクレオチド1323~2756もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号45のヌクレオチド2787~3263もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号45のヌクレオチド4533~4673もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列;
f.配列番号46のヌクレオチド1~141もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号46のヌクレオチド237~684もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号46のヌクレオチド705~1270もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号46のヌクレオチド1344~2777もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号46のヌクレオチド2808~3284もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号46のヌクレオチド4554~4695もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列;または
g.配列番号47のヌクレオチド1~105もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号47のヌクレオチド113~766もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号47のヌクレオチド776~867もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号47のヌクレオチド881~2311もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号47のヌクレオチド2319~2367もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列、配列番号47のヌクレオチド2386~2526もしくはそれに対して少なくとも95%の同一性を有する配列。
【0100】
いくつかの実施形態では、AAVベクターは、a)配列番号41のヌクレオチド1~141、237~1200、1221~1786、1899~3299、3330~3806、及び4553~4693;b)配列番号42のヌクレオチド1~141、237~1323、1344~1909、1983~3416、3447~3923、及び4554~4694;c)配列番号43のヌクレオチド1~141、237~890、911~1476、1550~2983、3014~3490、及び4553~4694;d)配列番号44のヌクレオチド1~141、237~1415、1436~2001、2075~3508、3539~4015、及び4500~4640;e)配列番号45のヌクレオチド1~141、237~664、684~1249、1323~2756、2787~3263、及び4533~4673;e)配列番号46のヌクレオチド1~141、237~684、705~1270、1344~2777、2808~3284、及び4554~4695;またはf)配列番号47のヌクレオチド1~105、113~766、776~867、881~2311、2319~2367、及び2386~2526を含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、AAVベクターは、配列番号41~47のいずれか1つのヌクレオチド配列、または配列番号41~47のいずれか1つに対して95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0102】
AAVベクターに関する上記の実施形態において、指定された範囲のヌクレオチドに対する配列の同一性が100%未満である場合、当該配列は同様の機能を提供する(例えば、機能的ITR対である;PSEN-1コード配列の発現を誘導できる機能的プロモーターである;機能的イントロンである;野生型PSEN-1と同じアミノ酸配列をコードする;または機能的ポリアデニル化配列である)はずであることを当業者は理解されよう。
【0103】
本明細書で企図される、体細胞の遺伝子療法のための技術として、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、AAV、ヘルパー依存性アデノウイルス系、ハイブリッドアデノウイルス系、単純ヘルペス、ポックスウイルス、レンチウイルス、及びエプスタインバーウイルス)、ならびに非ウイルス系、例えば、物理的系(裸のDNA、DNA撃ち込み、エレクトロポレーション、流体力学、超音波、及びマグネトフェクション)及び化学的系(カチオン性脂質、異なるカチオン性ポリマー、及び脂質ポリマー)を介した送達が挙げられる。
【0104】
ウイルス遺伝子療法ベクターまたは遺伝子送達ベクターは、再現可能に及び/または安定して増殖され、高力価に精製される能力;標的化送達を媒介する(例えば、別の箇所への広範なベクターの伝搬、すなわちオフターゲット送達のない、対象となる組織または器官へ特異的にポリヌクレオチドを送達する)能力;有害な副作用またはオフターゲット効果を誘発せずに、遺伝子送達及び/またはポリヌクレオチド発現を媒介する能力を有し得る。
【0105】
「AAV」という用語は、アデノ随伴ウイルスの略語であり、ウイルス自体またはその誘導体を指して使用される場合がある。この用語は、特に規定のない限り、すべての血清型、亜型、及び天然型と組換え型の両方を包含する。「rAAV」という略語は、組換えアデノ随伴ウイルスを指し、組換えAAVベクター(または「rAAVベクター」)のように称することもある。「AAV」という用語は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、rh10、及びそれらのハイブリッド、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、霊長類AAV、非霊長類AAV、及びヒツジAAVを含む。様々な血清型のAAVのゲノム配列、ならびに天然の末端反復(TR)、Repタンパク質、及びカプシドサブユニットの配列は、当技術分野において公知である。このような配列は、文献またはGenBankなどの公開データベースで閲覧することができる。本明細書で使用される「rAAVベクター」は、AAV起源のものではないポリヌクレオチド配列(すなわち、AAVと異種のポリヌクレオチド)、通常は細胞の遺伝子形質転換の対象となる配列を含むAAVベクターを指す。一般に、異種ポリヌクレオチドには、少なくとも1つ、概して2つのAAV逆方向末端反復配列(ITR)が両側にある。「rAAVベクター」という用語は、rAAVベクター粒子とrAAVベクタープラスミドの両方を包含する。rAAVベクターは、一本鎖(ssAAV)または自己相補的(scAAV)のいずれかであり得る。「AAVウイルス」または「AAVウイルス粒子」または「rAAVベクター粒子」は、少なくとも1つのAAVカプシドタンパク質と、カプシド封入されるポリヌクレオチドrAAVベクターで構成されるウイルス粒子を指す。粒子が異種ポリヌクレオチド(すなわち、哺乳動物細胞に送達しようとするポリヌクレオチドまたは核酸発現カセットなどの、野生型AAVゲノム以外のポリヌクレオチド)を含む場合、通常それは、「rAAVベクター粒子」または単に「rAAVベクター」と称される。したがって、そのようなベクターはrAAV粒子内に含有されるので、rAAV粒子の生成には、必然的にrAAVベクターの生成が含まれる。
【0106】
大型ポリヌクレオチドの発現にとっては、ベクターまたはウイルス発現ベクターのクローニング能力が特に課題となる可能性がある。例えば、AAVベクターのパッケージング容量は通常約4.8kb、レンチウイルスの容量は通常約8kb、アデノウイルスの容量は通常約7.5kb、アルファウイルスの容量は通常約7.5kbである。ウイルスによっては、パッケージング容量がそれより大きい可能性があり、例えば、ヘルペスウイルスの容量は30kbを超え、ワクシニアの容量は約25kbであり得る。遺伝子療法にAAVを使用する優位性として、病原性が低いこと、宿主ゲノムへの組み込み頻度が極めて少ないこと、及び分裂細胞と非分裂細胞に感染できることが挙げられる。
【0107】
非病原性パルボウイルスである、いくつかの血清型のAAVが、遺伝子送達を目的として操作されており、そのいくつかは、ある特定の組織または細胞型に対して指向性を有することが公知である。様々な遺伝子療法用途に使用されるウイルスは、複製欠損性であるか、または対象もしくは宿主において低毒性及び低病原性であるように操作することができる。このようなウイルス系ベクターは、ウイルスゲノムからコード領域の全部または一部を削除し、ベクターゲノムのウイルスカプシドへのパッケージングまたはベクター核酸(例えば、DNA)の宿主クロマチンへの組み込みなどの機能に必要とされるインタクトな配列(例えば、逆方向末端反復配列)を残すことにより得ることができる。例えば、ポリヌクレオチドを含む核酸発現カセットを、ウイルス骨格(ウイルス遺伝子を欠失する改変または操作されたウイルス骨格など)にクローニングすることができ、追加ベクター(例えば、パッケージングベクター)と組み合わせて使用して、例えば、同時トランスフェクトすると、組換えウイルスベクター粒子を生成することができる。
【0108】
場合によっては、in vivoまたはin vitroで、核酸発現カセットを細胞、細胞型、または組織に送達するために使用されるAAVベクターまたはAAVウイルス粒子、すなわちビリオンは、複製欠損性である。場合によっては、AAVウイルスは、ヘルパー因子の存在下でのみビリオンを複製及び生成できるように操作または遺伝子改変されている。
【0109】
いくつかの実施形態では、核酸発現カセットは、AAVまたは組換えAAV(rAAV)による送達に合わせて設計される。いくつかの実施形態では、核酸発現カセットは、レンチウイルスまたはレンチウイルスベクターを使用して送達される。いくつかの実施形態では、大型のポリヌクレオチド、すなわち、AAVのクローニング能力を超える遺伝子は、好ましくは、レンチウイルスまたはレンチウイルスベクターを使用して送達される。
【0110】
核酸発現カセットは、最適化された治療用レトロウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクターによる送達に合わせて設計することができる。レトロウイルスベクターは、左側(5’)LTR;ウイルスのパッケージング及び/または核内輸送を支援する配列、すなわち少なくとも1つの調節要素、任意選択でレンチウイルスRev応答要素(RRE);任意選択でプロモーターまたはその活性部分;1つ以上の調節要素に機能的に連結されたポリヌクレオチド;任意選択でインスレーター;ならびに右側(3’)レトロウイルスLTRを含むレンチウイルスベクターであり得る。レンチウイルスベクターはまた、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節要素(WPRE)などの転写後調節要素を含み得る。レンチウイルスベクターは、自己不活化(SIN)レンチウイルスベクターであり得る。例えば、第2世代、第3世代、及び第4世代のパッケージング系を含め、任意の好適なパッケージング系をレンチウイルスベクターとともに使用することができる。レンチウイルスベクターは偽型化することができる。例えば、小胞性口内炎ウイルス(VSV)、狂犬病ウイルス、リッサウイルス、モコラウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ラッサ熱ウイルス(LFV)、レトロウイルス、モロニーマウス白血病ウイルス(MuLV)、フィロウイルス、パラミクソウイルス、麻疹ウイルス、ニパウイルス、オルトミクソウイルスなどからの糖タンパク質を含め、任意のエンベロープ糖タンパク質を偽型化に使用することができる。レンチウイルスベクターを偽型化して、指向性を改変することができる。例えば、偽型化により、神経細胞を含め、任意の細胞型を標的にすることができる。
【0111】
治療方法
神経変性疾患、障害、または病態を治療する方法は、その必要のある対象に本明細書に記載の核酸発現カセットを投与することを含む。本明細書で提供される核酸発現カセットを用いて、任意の神経変性疾患、障害、または病態を治療することができる。いくつかの実施形態では、神経変性疾患、障害、または病態は、アルツハイマー病、家族性アルツハイマー病、散発性アルツハイマー病、遅発型アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、前頭側頭葉変性症、ピック病、レヴィ小体認知症、記憶喪失、認知障害、または軽度の認知障害である。他の例示的な神経変性疾患、障害、または病態として、タウオパチー、原発性年齢関連タウオパチー(PART)、慢性外傷性脳症(CTE)、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、17番染色体に連鎖する前頭側頭型認知症パーキンソニズム(FTDP-17)、筋萎縮性側索硬化症/パーキンソニズム認知症複合(ALS-PDC、リティコ・ボディグ病)、神経節膠腫、神経節細胞腫、髄膜血管腫症、脳炎後パーキンソニズム、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)、鉛脳症、結核性硬化症、パントテン酸キナーゼ関連神経変性症、シヌクレイノパチー、パーキンソン病、多系統萎縮症(MSA)、神経軸索ジストロフィー、パーキンソン様疾患、パーキンソニズム、プリオン病、運動ニューロン疾患、認知症、伝染性海綿状脳症、主に中枢神経系を障害する全身性萎縮症、トリヌクレオチドリピート障害、タンパク質異常、アミロイドーシス、神経セロイドリポフスチン症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、外傷性脳損傷、脳卒中、自閉症スペクトラム障害(ASD)、うつ病、不安、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、統合失調症、注意欠陥多動障害(ADHD)、双極性障害、強迫性障害(OCD)、人格障害、疼痛などが挙げられる。
【0112】
家族性アルツハイマー病(FAD)または早発型家族性アルツハイマー病(EOFAD)は、通常、65歳以前(通常は50~65歳)と定義される早期に発症する希少形態のアルツハイマー病である。FADは常染色体優性突然変異により遺伝する。FADの発症に関与するとして、3種の遺伝子の突然変異が確認されているほか、他の遺伝子について研究されている。本明細書で使用される場合、「FAD」とは、プレセニリン1(PSEN-1)、プレセニリン2(PSEN-2)、及びアミロイド前駆体タンパク質(APP)をコードする、これら3つの遺伝子のいずれかの突然変異によって引き起こされるアルツハイマー病を指す。「PSEN-1媒介FAD」は、PSEN-1遺伝子の突然変異によって引き起こされるFADのみを指すことを意図する。
【0113】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療」、「療法」、「治療的」などの用語は、望ましい薬理学的効果及び/または生理学的効果を得ることを指し、これには、進行を緩和、遅延、または緩徐化すること、影響または症状を軽減すること、疾患または障害の発症を阻害、改善すること、疾患、障害、または病状に関して有益または望ましい結果(治療上の利益及び/または予防上の利益など)を得ることが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される「治療」は、哺乳動物、特にヒトにおける疾患のあらゆる治療を包含し、それには、(a)疾患を阻害する、すなわち、その発症を阻止すること、及び(b)疾患を緩和する、すなわち、疾患の退縮を引き起こすことが挙げられる。治療上の利益には、治療されている基礎疾患の根絶または改善が含まれる。また、治療上の利益は、対象が依然として基礎疾患を患っている場合があるものの、対象に改善が見られるような、基礎疾患に関連する1種以上の生理学的症状の根絶または改善をもって達成される。本開示の方法は、任意の哺乳動物または他の動物で使用することができる。場合によって、治療は症状を軽減または停止することができる。予防的効果として、疾患もしくは病態の出現を遅延もしくは解消すること、疾患もしくは病態の症状の発症を遅延もしくは解消すること、疾患もしくは病態の進行を緩徐化する、停止する、もしくは逆転させること、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0114】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、本明細書に開示される方法を実施する任意の個体または患者を指す。「対象」という用語は、「個体」または「患者」という用語と同義に使用することができる。対象はヒトであり得るが、当業者には理解されているように、対象は動物であってもよい。したがって、齧歯類(マウス、ラット、ハムスター、及びモルモットを含む)、ネコ、イヌ、ウサギ、家畜(ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタなどを含む)、及び霊長類(サル、チンパンジー、オランウータン、及びゴリラを含む)などの哺乳動物を含め、他の動物も対象の定義に包含される。
【0115】
本明細書で提供されるベクターは、神経変性疾患、障害、または病態の治療に有効な量で投与することができる。「有効量」または「治療有効量」という用語は、本明細書で定義される疾患治療を含むがこれに限定されない意図される用途に十分に作用する、本明細書に記載の組成物の量を指す。治療有効量は、意図される治療用途(in vivo)、または治療される対象及び病状、例えば、対象の体重及び年齢、病状の重症度、投与方法などに応じて変更でき、当業者が容易に決定することができる。この用語はまた、標的細胞に特定の反応を誘発する用量に対しても適用される。具体的な用量は、選択された特定の組成物、準拠すべき投与レジメン(他の化合物との併用投与かを問わない)、投与のタイミング、投与される組織、及び搭載される物理的送達系に応じて異なることになる。投与できる例示的なAAVベクター用量として、約10ゲノムコピー(GC)/kg、10GC/kg、10GC/kg、10GC/kg、10GC/kg、10GC/kg、10GC/kg、1010GC/kg、1011GC/kg、1012GC/kg、1013GC/kg、1014GC/kg。及びその間の任意の数または範囲が挙げられるが、それより多いまたは少ない用量を使用することができる。
【0116】
核酸発現カセットは、任意の好適な方法またはベクターによって送達することができる。例示的な方法として、頭蓋内注射、定位注射、及び静脈内注射が挙げられる。いくつかの実施形態では、核酸発現カセットは、ウイルスベクターとして送達される。
【0117】
本明細書に記載の手順には、特に記載のない限り、当技術分野の範囲内である、化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA、遺伝学、免疫学、細胞生物学、細胞培養、及びトランスジェニック生物学の従来技術を用いる。(例えば、Maniatis,et al.,Molecular Cloning,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1982);Sambrook,et al.,(1989);Sambrook and Russell,Molecular Cloning,3rd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(2001);Ausubel,et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(including periodic updates)(1992);Glover,DNA Cloning,IRL Press,Oxford(1985);Russell,Molecular biology of plants:a laboratory course manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1984);Anand,Techniques for the Analysis of Complex Genomes,Academic Press,NY(1992);Guthrie and Fink,Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology,Academic Press,NY(1991);Harlow and Lane,Antibodies,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1988);Nucleic Acid Hybridization,B.D.Hames & S.J.Higgins eds.(1984);Transcription And Translation,B.D.Hames & S.J.Higgins eds.(1984);Culture Of Animal Cells,R.I.Freshney,A.R.Liss,Inc.(1987);Immobilized Cells And Enzymes,IRL Press(1986);B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);the treatise,Methods In Enzymology,Academic Press,Inc.,NY);Methods In Enzymology,Vols.154 and 155,Wu,et al.,eds.;Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology,Mayer and Walker,eds.,Academic Press,London(1987);Handbook Of Experimental Immunology,Volumes I-IV,D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.(1986);Riott,Essential Immunology,6th Edition,Blackwell Scientific Publications,Oxford(1988);Fire,et al.,RNA Interference Technology From Basic Science to Drug Development,Cambridge University Press,Cambridge(2005);Schepers,RNA Interference in Practice,Wiley-VCH(2005);Engelke,RNA Interference(RNAi):The Nuts & Bolts of siRNA Technology,DNA Press(2003);Gott,RNA Interference,Editing,and Modification:Methods and Protocols(Methods in Molecular Biology),Human Press,Totowa,N.J.(2004);及びSohail,Gene Silencing by RNA Interference:Technology and Application,CRC(2004)を参照)。
【0118】
組成物及び方法をさらに以下で詳細に記載する。本明細書に示す実施例は、そこでの多数の改変及び変形が当業者にとって明らかであるため、例示目的のみであると意図される。
【0119】
本明細書で使用される用語は、概して、本明細書に記載の組成物及び方法の文脈内、ならびに各用語が使用される特定の文脈において、当技術分野における通常の意味を有する。組成物及び方法の記載に関して、追加のガイダンスを医師に提供するために、いくつかの用語を以下で具体的に定義した。
【0120】
本明細書内で言及される特許、特許出願、及び他の科学文書または技術文書はすべて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書に例示的に記載される実施形態は、本明細書に具体的に開示されるまたは具体的に開示されない、任意の1つの要素または複数の要素、1つの限定または複数の限定がない状態で適切に実施することができる。したがって、例えば、本明細書の各事例において、「含む」、「から本質的になる」、及び「からなる」という用語はいずれも、通常の意味を保持しつつ、他の2つの用語のいずれとも置き換え可能である。本明細書で用いられる用語及び表現は、限定ではなく説明に関する用語として使用され、そのような用語及び表現の使用にあたり、提示及び記載される特徴またはその一部のいかなる等価物も排除することを意図しないが、本発明が特許請求する範囲内で、種々の改変が可能であるものと理解される。したがって、実施形態によって本発明を具体的に開示してきたが、本明細書で開示される任意の特徴、概念の改変及び変形を当業者は用いることができ、そのような改変及び変形は、本明細書及び添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内であるとみなされるものと理解されるべきである。
【0121】
本明細書で、範囲、例えば、温度範囲、時間範囲、または組成もしくは濃度の範囲が示されるときはいつでも、中間範囲及び部分範囲のすべて、ならびに所与の範囲に包含される個別値のすべてが本開示に包含される。本明細書の記載に包含される任意の部分範囲、または範囲内もしくは部分範囲内の個別値を、本明細書の態様から除外できるものと理解されよう。本明細書の記載に包含される任意の要素または工程を、特許請求される組成物または方法から除外できるものと理解されよう。
【0122】
加えて、本発明の特徴または態様が、マーカッシュ群または他の代替となる群に関して記載されている場合、それによってマーカッシュ群または他の群の任意の個々の構成要素または構成要素の部分群に関しても本発明が記載されているものと当業者は理解されよう。
【0123】
以下に提示するのは、考察した用途に企図されるプレセニリン1をコードする治療用ポリヌクレオチドについて記載する実施例である。以下は、本発明の実施形態をさらに例示するため、例証目的のみで提供され、上記の広義の用語に記載された本発明の範囲を限定する意図はない。それらは、使用される可能性のある一般的なものであるが、当業者に公知である他の手順、方法論、または技術を代わりに使用してもよい。
【実施例
【0124】
実施例1
本実施例は、コドン最適化によるヒトプレセニリン1(PSEN1)cDNAの改変について記載する。
【0125】
ヒトプレセニリン1遺伝子の天然のcDNA配列(PSEN1;GenBankアクセッション番号NM_000021.4、配列番号1)は以下(配列の項)に示す。このコード配列は配列番号1において下線で示されている。配列番号1に存在するコード配列をコドンに分割し、非許容コドンを下線で示し、配列番号15に再掲する。タンパク質自体をコードするオープンリーディングフレームは、ヌクレオチド(nt)213~1616に対応する。このmRNAの注目すべき要素は、長鎖5’非翻訳配列(212nt)と長鎖3’非翻訳配列(4012nt)である。nt213の開始コドンの前には、CTCCAという弱いコザック翻訳開始シグナルがあり、+1と定義されるAUG開始コドンのA残基と比較して、-3位のA残基が欠失している。
【0126】
天然のPSEN1 cDNA(配列番号1)をコドン最適化によって改変した。タンパク質をコードするDNA配列をタンパク質配列に影響を及ぼさない方法で変更する、いくつかのコドン最適化方法を使用することができる。コドン最適化では、細胞内のコドン使用頻度または同種tRNAレベルの存在量の統計的調査に基づいて優先コドンを特定する。
【0127】
配列番号6は、許容される同義コドンの変更のみを可能にするという追加の制約をもつ改変コドン最適化によって生成された、コドン最適化PSEN1 cDNAである。許容性は、関連する種の同じタンパク質をコードするDNA配列の比較によって決定した。例えば、関連する種すべてにおいてコドン選択が同じであれば、このコドン変更が許容されないことを意味する。したがって、変更を許容するコドンのみを、優先同義コドンに改変する。
【0128】
配列番号6は、n=11の霊長類cDNAのオープンリーディングフレーム(表1)に基づいて生成した。このcDNA配列はGenBankから入手し、CLUSTAL OMEGAファシリティ(ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalo/)を使用してアラインメントした。PSEN1のヒトcDNAにある467のコドンのうち、267は11種すべての間で一定であった。これらを、変更を許容できないコドンとして指定し、配列番号6において保存した。
【0129】
(表1)霊長類PSEN1 cDNAのオープンリーディングフレーム
【0130】
変更が許容される残りのコドンについては、ヒト遺伝子においてコドン選択の偏りがある位置に同義コドンを選択した。
【0131】
工程1:ヒトcDNAを採取した。11種の霊長類にわたり保存されている267のコドンすべてを許可する。表2の規則に従って許容コドンを変更した。
【0132】
(表2)優先最適化コドン
【0133】
実施例2
本実施例は、CpGジヌクレオチドの除去によるヒトプレセニリン1(PSEN1)cDNAの改変について記載する。
【0134】
哺乳動物のDNAには、CpGジヌクレオチドの選択的メチル化が存在する。これはクロマチンタンパク質の動員に影響を及ぼし、さらにはそれが遺伝子発現に影響を及ぼす。加えて、ウイルス感染の除外を目的とした、新たに導入されたDNAに対する自然免疫応答がある。この自然免疫応答は、非メチル化CpGジヌクレオチドを認識するtoll様受容体9(TLR9)により媒介される。
【0135】
配列番号7では、遺伝暗号の冗長性を利用して、PSEN1 cDNA中のCpGジヌクレオチドが完全に除去されている。天然cDNAでは24個あるCpGジヌクレオチドの数がゼロに減少した。CpGジヌクレオチドを除去すると、例えば、AAVなどのウイルスベクターの認識、及び抗原提示細胞によるポリヌクレオチドの認識を抑制し、遺伝子療法に対する免疫応答を減少させ、それによりポリヌクレオチド発現を延長し、免疫抑制療法の必要性を低減することができる。しかしながら、非許容コドンすべてを維持しながら、同時にCpGジヌクレオチドすべてを除去することは不可能であった。したがって、配列番号7には、その配列に下線で示す6つの非許容コドンへの変更が含まれる。
【0136】
配列番号36では、遺伝暗号の冗長性を利用して、いずれの非許容コドンも変更せずに、PSEN1 cDNA中のCpGジヌクレオチドが可能な限り除去されている。この構築物では、天然cDNAでは24個あるCpGジヌクレオチドの数が5に減少した。
【0137】
実施例3
本実施例は、ゲノム配列の組み入れによるヒトプレセニリン1(PSEN1)cDNAの改変について記載する。
【0138】
以前の遺伝子療法構築物は、外因性または人工のイントロンを発現カセットに導入していた。例えば、臨床試験に使用される多数のAAVベクターは、ニワトリベータアクチン遺伝子とウサギベータグロビン遺伝子との人工ハイブリッドイントロンを含むCAGプロモーターを使用している。
【0139】
配列番号8は、mRNA前駆体をスプライシング機構に誘導し、それによって核外輸送及び全体的なmRNAレベルを増強することを意図したハイブリッドゲノム/cDNA PSEN1遺伝子配列である。配列番号8は、エキソン2、イントロン2、エキソン3、イントロン3、エキソン4、イントロン4と、それに続くcDNA形態のタンパク質コード遺伝子の残部を含む、短縮ゲノム型PSEN1を表す。イントロン3と4は、例えば、AAV遺伝子導入ベクターに挿入するには大きすぎるため、内側で短縮される。理論に束縛されるものではないが、概してスプライシング因子はイントロンの末端付近に結合するため、内側の欠失はスプライシングを妨害しない。
【0140】
重要な点として、PSEN1 mRNAには2つの形態が存在し、1つは467アミノ酸長の最も豊富なタンパク質をコードし、別の形態(X2)は463アミノ酸型のプレセニリン1をコードする。12nt隔てたイントロン3の起点に2つのスプライスドナーが存在する。この位置での選択的スプライシングにより、4つのアミノ酸の欠失が異なるタンパク質をコードする異なるmRNAになる。この選択的スプライシングの意義は未知だが、アイソフォームX2は広範囲の霊長類にわたって発見されている(例えば、マーモット:Gen Bank参照番号XP_027787309.1プレセニリン-1アイソフォーム及びXP_027787310.1プレセニリン-1アイソフォームX2)。これは、いくつかの生理学的意義を示唆している。
【0141】
配列番号8は、選択的スプライシングによるアイソフォームX1及びX2の生成を可能にするイントロン4の重要な特徴を用いて設計された。理論に束縛されるものではないが、配列番号8は両方のアイソフォームを発現するため、天然PSEN1遺伝子によって得られる全範囲の生理学的効果を提供する。
【0142】
実施例4
本実施例は、ニューロン特異的プロモーター配列の同定について記載する。
【0143】
ニューロンでのAβ蓄積を防止するには、PSEN1の発現がニューロンに特異的に限定されるべきである。以前に報告されたニューロン特異的発現を伴うAAV遺伝子療法ベクターには、ニューロン特異的エラスターゼ及びシナプシン1プロモーターが含まれていた。
【0144】
複数の細胞型からRNA-Seqデータを利用可能であり、高度に発現したニューロン特異的遺伝子に関して、偏りのない検索が可能となった(web.stanford.edu/group/barres_lab/brain_rnaseq.htmlを参照)。内皮細胞に対する神経細胞の発現比が高い遺伝子を同定し、ニューロンの発現レベルの低下により分類した。次に、遺伝子を手動で検査して、有用性を制限する可能性のある交絡因子(例えば、母体発現/複数の転写開始部位)をもつ候補を除外した。この方法によって、新規の高度発現したニューロン特異的プロモーター配列を2つ(配列番号2及び配列番号3)同定した。
【0145】
配列番号2は、転写開始部位を基準として-407から+73までの480塩基対(bp)断片のヒトソマトスタチン遺伝子(SST)を含む。アカゲザル由来のSSTプロモーターの使用については、レンチウイルス遺伝子導入に関連してレポーターポリヌクレオチドのニューロン特異的発現を誘導する約300bpの断片が以前に報告されている。
【0146】
配列番号3は、ヒト神経ペプチドY(NPY)プロモーターのmRNA開始部を基準として-952から+48までの1000bpセグメントを含む。この配列は、脳内で極めて特異的な発現パターンをもたらす。
【0147】
実施例5
本実施例は、ポリヌクレオチド発現を増加させるための調節要素について記載する。
【0148】
HS4と呼ばれるヒトベータグロビン遺伝子座由来の配列番号4は、クロマチンインスレーター配列として機能することができる。これは、レンチウイルス遺伝子導入ベクターに関連して、導入されたポリヌクレオチドの継続的な発現を確実にするために使用されてきた。
【0149】
配列番号5は、コザック翻訳開始シグナルである。これを使用して、PSEN1遺伝子の天然mRNAの弱い非コンセンサスコザックシグナルを置換することができる。
【0150】
配列番号4及び/または配列番号5は、本明細書に記載の要素及び特徴のいずれかと組み合わせて核酸発現カセットに使用することができる。例えば、配列番号4及び/または配列番号5は、配列番号6、配列番号7、または配列番号8に示す合成PSEN1 cDNA配列のいずれか1つを含む核酸発現カセットに使用することができる。核酸発現カセットは、配列番号2または配列番号3のニューロン特異的プロモーターのいずれか1つをさらに含み得る。加えて、核酸発現カセットは、mRNAの安定性を与えること、またはmRNAの転写及びプロセシングを増強することにより、mRNA発現を増強する、以下(実施例6)に記載の配列番号9、配列番号10、または配列番号11に示す配列のいずれか1つ、または配列番号9、配列番号10、及び配列番号11のいずれかの組み合わせを含み得る。
【0151】
実施例6
本実施例は、mRNAに安定性を付与すること、またはmRNAの転写及びプロセシングを増強することにより、ポリヌクレオチド発現を増強する調節配列について記載する。
【0152】
配列番号9は、mRNAの安定性を付与する発現及び核保持要素である。発現及び核保持要素は、mRNAの末端ポリアデニル化配列と複合的な二次構造を作り、それによって3’から5’への分解を阻害することによりmRNAを安定化する。理論に束縛されるものではないが、オープンリーディングフレームの後ろでポリアデニル化部位の前にこの配列を挿入すると、プロモーターmRNAの安定性が得られることになる。
【0153】
配列番号10は、天然PSEN1 cDNAの3’非コード配列に対応する。理論に束縛されるものではないが、3’非翻訳配列は、mRNAの転写及びプロセシングを増強し、それによりポリヌクレオチドまたは遺伝子の発現を増強する重要な要素を含む場合がある。配列番号10の一部または全体を、任意のプレセニリンコード配列の5’末端に付加して、発現レベルを増強することができる。
【0154】
配列番号11は、天然PSEN1 cDNAの5’非コード配列に対応する。理論に束縛されるものではないが、5’非翻訳配列は、mRNAの安定性を増強し、それによりポリヌクレオチドまたは遺伝子の発現を増強する重要な要素を含み得る。配列番号11の一部または全体を、任意のプレセニリンをコードする配列の3’末端に付加して、発現レベルを増強することができる。
【0155】
配列番号9、配列番号10、及び配列番号11は、任意の組み合わせで、本明細書に記載の核酸発現カセットに使用することができる。配列番号9、配列番号10、配列番号11、または配列番号9、配列番号10、及び配列番号11の任意の組み合わせを含む核酸発現カセットは、本明細書に記載の要素及び特徴の組み合わせのいずれかを有し得る。例えば、配列番号9、配列番号10、配列番号11、または配列番号9、配列番号10、及び配列番号11の任意の組み合わせを含む発現カセットは、配列番号6、配列番号7、または配列番号8に示す合成PSEN1 cDNA配列のいずれか1つを含み得る。核酸発現カセットは、配列番号2または配列番号3のニューロン特異的プロモーターのいずれか1つをさらに含み得る。核酸発現カセットはまた、配列番号4、配列番号5、またはその両方など、ポリヌクレオチド発現を増加させる、さらなる調節要素を含み得る。
【0156】
実施例7
本実施例は、プレセニリン1(PSEN1)発現カセットの設計について記載する。
【0157】
配列番号2~11に示す配列を含め、本明細書に記載の任意の要素及び特徴を組み合わせて、プレセニリン1発現カセットに組み込むことができる。例えば、核酸発現カセットは、PSEN1をコードする配列番号6、配列番号7、または配列番号8に示す合成cDNA配列のいずれか1つを含み得る。合成cDNAのいずれか1つの発現を、ヒトソマトスタチン(SST)遺伝子に由来する配列番号2またはヒト神経ペプチドY(NPY)プロモーターに由来する配列番号3のニューロン特異的プロモーターによって誘導することができる。
【0158】
上記に記載する合成cDNA配列及びプロモーター配列のいずれかを有する核酸発現カセットは、ポリヌクレオチド発現を増加させる要素のいずれかをさらに含んでもよく、例えば、これには、配列番号4のクロマチンインスレーター配列、配列番号5のコザックコンセンサス配列、配列番号9のmRNA安定性要素、天然PSEN1 cDNAに由来する配列番号10の3’非コード配列、天然PSEN1 cDNAに由来する配列番号11の5’非コード配列、またはこれらの要素の任意の組み合わせが挙げられる。要素の選択は、例えば、目的とする発現レベルに基づいたものであり得る。例えば、発現レベルは、細胞型またはニューロンが存在する脳の領域によって異なる可能性があり、これを、例えば、mRNAの転写、プロセシング、安定性、及び/または翻訳など、遺伝子発現の任意の段階に影響を及ぼす調節要素の組み入れまたは除外についての指針または基準として使用することができる。
【0159】
核酸発現カセットを、例えば、ウイルスベクターに組み込むことができる。例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、及びアデノウイルスベクターを含め、任意のウイルスベクターを使用することができる。
【0160】
実施例8
本実施例は、2つの異なるコドン最適化PSEN-1構築物の合成、及び各構築物からのプレセニリン1タンパク質の発現、ならびに野生型PSEN-1コード配列を含む構築物からの発現について記載する。
【0161】
コドン最適化ヒトプレセニリン1をコードする構築物は、霊長類配列にわたって可変であるコドンでのみ、野生型PSEN-1をコードするcDNA配列に変更を加えることにより設計した。野生型PSEN-1 cDNA配列には、11種の霊長類配列にわたって保存される267のコドンが含まれている(配列番号15に下線で示すコドンを参照)。これらの非許容コドンは、変更せず残した。野生型cDNAの残り200の許容コドンを、最適化の対象とみなした。
【0162】
1つの構築物(v2.0)について、保存的コドン変更(小文字の34コドン)を実施し、配列番号38を構築した。フェニルアラニン、チロシン、システイン、ヒスチジン、アスパラギン、リジン、アスパラギン酸、及びグルタミン酸に翻訳されるコドンの場合、霊長類で同等に使用される2つの異なるコドンのみがこれらのアミノ酸をコードしているため、天然の野生型PSEN-1 cDNAコドンを保存した。グルタミンをコードするコドンについては、CAGを優先した。イソロイシンをコードするコドンについては、ATAコドンをATCに変更し、天然配列に存在する場合はATCまたはATTのいずれかを維持した。メチオニン(ATG)及びトリプトファン(TGG)をコードするコドンは変更しなかった。プロリン、トレオニン、及びアラニンをコードするコドンについては、グアニン(G)で終わるすべてのコドンを、シトシン(C)で終わる冗長なコドンに変更した。バリン及びグリシンをコードするコドンについては、チミン(T)またはアデニン(A)で終わるすべてのコドンを、それぞれシトシン(C)またはグアニン(G)で終わる冗長なコドンに変更した。AGG、AGA、CGC、CGG、AGT、AGC、TCC、TCT、TCA、TTG、CTC、及びCTGのコドンは変更せず残した。CGTコドンはCGCに変更した;CGAコドンはCGGに変更した;TCGコドンはTCCに変更した;TTAコドンはTTGに変更した;CTTコドンはCTCに変更した;CTAコドンはCTGに変更した。
【0163】
別の構築物(v1.5)について、天然配列と比較して、より多くのコドン変更(小文字の138コドン)を実施し、配列番号37を構築した。この構築物では、トリプトファン、システイン、及びメチオニンに翻訳されるコドンで天然コドンを保存した。グルタミンをコードするコドンについては、CAA選択コドンをCAGに変更した。イソロイシンをコードするコドンについては、ATA及びATT選択コドンをATCに変更した。プロリンをコードするコドンについては、選択コドンをCCCまたはCCTに変更した。トレオニンをコードするコドンについては、選択コドンをACCまたはACAに変更した。アラニンをコードするコドンについては、選択コドンをGCCまたはGCTに変更した。シトシン(C)で終わらないグリシンをコードするコドンを、シトシン(C)で終わる冗長なコドンに変更した。バリンをコードするコドンについては、GTGを優先した。AGCコドンは、変更せず残した。アスパラギン酸をコードするコドンについては、選択コドンをGATまたはGACに変更した。グルタミン酸をコードするコドンについては、GAAまたはGAGを優先した。フェニルアラニンをコードするコドンについては、TTTコドンをTTCに変更した。ヒスチジンをコードするコドンについては、CATコドンをCACに変更した。リジンをコードするコドンについては、AAA選択コドンをAAGに変更した。ロイシンをコードするコドンについては、ほとんどの選択コドンをCTGに変更した。アスパラギンをコードするコドンについては、AATコドンをAACに変更した。アルギニンをコードするコドンについては、AGAを優先したが、AGG及びCGGコドンも使用した。セリンをコードするコドンについては、AGCを優先したが、選択コドンでTCC及びTCTも使用した。チロシンをコードするコドンについては、TATコドンをTACに変更した。
【0164】
PSEN-2.0、PSEN-1.5、及び野生型PSEN-1コード配列のそれぞれを、個別にクローニングベクターpCMV6-XL5(Origene,Rockville,MD)にクローニングした。得られた構築物(WT(pAT001)、v1.5(pAT010)、及びv2.0(pAT012))をHEK293細胞にトランスフェクトして、プレセニリン1発現に対するコドン最適化の効果を決定した。トランスフェクション後48時間で293細胞を採取し、300μLのRIPA緩衝液(50mM塩基/Tris-HCl、150mM塩化ナトリウム、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、1%Nonidet P-40代替品に、cOmplete(商標),Mini,EDTAフリープロテアーゼ阻害カクテル,Sigma Aldrichを添加)を使用して溶解し、上清を回収した。THERMO SCIENTIFIC(商標)PIERCE(商標)BCA(商標)タンパク質アッセイを製造元の指示に従って使用して、各試料の総タンパク質濃度を測定した。
【0165】
細胞溶解物中のヒトプレセニリン1(PS1)タンパク質を検出するELISAを、RayBio(登録商標)ヒトプレセニリン1 ELISAキットを使用して実施した。非トランスフェクト293細胞を使用して、希釈直線性(DL)及び添加回収(SR)を評価し、細胞溶解物とこのELISAキットとの適合性を試験した。表3は、細胞溶解物が、許容される希釈直線性(1:250~1:1000)及び添加回収を呈することを示している。
【0166】
(表3)希釈直線性及び添加回収
【0167】
トランスフェクトした293細胞溶解物中のヒトプレセニリン1(PS1)タンパク質を検出するELISAを、RayBio(登録商標)ヒトプレセニリン1 ELISAキットを使用して実施した。技術的な複製を、製造元の指示に従って1:1000希釈で実行した。表4及び図1は、プラスミドpAT010をトランスフェクトすると、PS1発現が天然配列と比較した場合に2.5倍増加したことを示している。
【0168】
(表4)トランスフェクトした293細胞溶解物におけるPS1発現
【0169】
実施例9
本実施例は、別のコドン最適化PSEN-1コード配列について記載する。
【0170】
構築物v3.0(配列番号39)では、野生型PSEN-1コード配列に存在するコドンと比較して、終止コドンと同様に、140の許容コドン(小文字で示す)を変更した。メチオニン(ATG)及びトリプトファン(TGG)をコードするコドンは変更しなかった。グルタミン(Q)をコードするコドンについては、許容コドンをすべてCAGに変更した。イソロイシン(I)をコードするコドンについては、許容コドンをすべてATCに変更した。プロリン(P)をコードするコドンについては、許容コドンをすべてCCCに変更した。トレオニン(T)をコードするコドンについては、許容コドンをすべてACCに変更した。アラニン(A)をコードするコドンについては、許容コドンをすべてGCCに変更した。グリシン(G)をコードするコドンについては、許容コドンをすべてGGCに変更した。バリン(V)をコードするコドンについては、許容コドンをすべてGTGに変更した。アスパラギン酸(D)をコードするコドンについては、許容コドンをすべてGACに変更した。グルタミン酸(E)をコードするコドンについては、許容コドンをすべてGGCに変更した。フェニルアラニン(F)をコードするコドンについては、許容コドンをすべてTTCに変更した。ヒスチジン(H)をコードするコドンについては、許容コドンをすべてCACに変更した。リジン(K)をコードするコドンについては、許容コドンをすべてAAGに変更した。ロイシン(L)をコードするコドンについては、許容コドンをすべてCTGに変更した。アスパラギン(N)をコードするコドンについては、許容コドンをすべてACCに変更した。アルギニン(R)をコードするコドンについては、AGGからCGGに変更したコドン307を除いて、許容コドンをすべてAGAに変更した。セリン(S)をコードするコドンについては、許容コドンをすべてAGCに変更した。チロシン(Y)をコードするコドンについては、許容コドンをすべてTACに変更した。
【0171】
実施例10
本実施例は、2つの異なるコドン最適化PSEN-1コード配列からCAGプロモーターによって誘導されるPSEN1の、野生型PSEN1コード配列と比較した相対的発現レベルについて記載する。
【0172】
アンピシリン抗生物質耐性遺伝子をカナマイシン耐性遺伝子に置き換えることによって、プラスミドpAAV-CAG-MCS(Vector Biolabs)を改変した。その中のCAGプロモーターの配列は配列番号40に示されており、配列番号23に対して98%の配列同一性を有する。次に、配列番号39(「CAG-v3.0」;pAT029)、配列番号37(「CAG-v1.5」;pAT024)いずれかのPSEN-1コード配列、または野生型PSEN-1コード配列(配列番号15;「CAG天然型」;pAT022)を改変プラスミドに挿入し、それらのプラスミドを使用してHEK293細胞にトランスフェクトし、プレセニリン1発現に対するコドン最適化の効果を決定した。トランスフェクション後48時間で293細胞を採取し、300μLのRIPA緩衝液(50mM塩基/Tris-HCl、150mM NaCl、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、1%Nonidet P-40代替品に、cOmplete(商標),Mini,EDTAフリープロテアーゼ阻害カクテル,Sigma Aldrichを添加)を使用して溶解し、上清を回収した。THERMO SCIENTIFIC(商標)PIERCE(商標)BCA(商標)タンパク質アッセイを製造元の指示に従って使用して、各試料の総タンパク質濃度を測定した。
【0173】
細胞溶解物中のヒトプレセニリン1(PS1)タンパク質を検出するELISAを、RayBio(登録商標)ヒトプレセニリン1 ELISAキットを使用して実施した。技術的な複製を、製造元の指示に従って1:40希釈で実行した。データは両側t検定を使用して分析した。図2は、コドン最適化された配列番号37または39を含むプラスミドを用いてトランスフェクトすると、野生型コード配列と比較した場合にPS1発現の増加がもたらされたこと、及び配列番号37含有プラスミドからのPSEN-1発現のレベルが、野生型コード配列からの発現よりも統計的有意な増加を示したこと(アスタリスクp<0.05で示す)を表す。配列番号39含有プラスミドからのPSEN-1発現は、野生型コード配列と比較して、発現が増加する傾向を示した(p=0.100)。
【0174】
要約すると、ニューロンでの目的とする発現レベルに応じて、コドン最適化、CpGジヌクレオチドの除外、ならびにゲノム配列、ニューロン特異的プロモーター配列、及び遺伝子発現の任意の段階、例えば、mRNA転写、プロセシング、安定性、及び/または翻訳などを増強する他の調節要素の組み入れに基づき、合成cDNA配列を組み合わせることができる。上記に記載の要素のうち、タンパク質生成に対して相対的に小さい影響を及ぼし得る一部または全部を細胞型、神経細胞の位置、及び他の要因に応じて組み合わせることにより、ポリヌクレオチド発現を増強する複数のモードを組み合わせると、核酸発現カセットまたはベクター分子からの発現を相対的に大きく増加させることができる。
【0175】
実施例11
本実施例は、FAD患者の線維芽細胞のガンマセクレターゼ活性に対する、コドン最適化PSEN-1ヌクレオチド配列の効果について記載する。
【0176】
PSEN1のC410YまたはG206A突然変異を有する家族性アルツハイマー病(FAD)患者からの初代皮膚線維芽細胞に、空の非コードプラスミド(pAAV-CAG-MCS-KanR)または配列番号37のヒトコドン最適化プレセニリン-1(hPSEN1v1.5)のいずれかを含む、Notch1断片(Notch1ΔE)をコードするプラスミドをエレクトロポレーションした。
【0177】
実施例10に記載されるように、アンピシリン耐性遺伝子をカナマイシン耐性遺伝子に置き換えて、cDNAプラスミドpAAV-CAG-MCS(Vector Biolabs)を改変し、得られるプラスミドpAAV-CAG-MCS-KanRを作成した。得られるプラスミドpAAV-CAG-MCS-KanRは、対照として使用するか、またはさらに改変して、コドン最適化ヒトプレセニリン1コード配列(配列番号37)を組み入れ、機能的ガンマ-セクレターゼ活性を評価した。Notch1ΔEプラスミドは、ヒトNotch1の膜貫通ドメイン及び一部の細胞内ドメインをコードするが、Notch1の細胞外ドメイン全体を欠失している。細胞内部で、Notch1ΔEはガンマ-セクレターゼによって切断される。これを切断断片NICDに対する抗体特異性により検出することができる(Cell Signaling、#4147)。ガンマ-セクレターゼ活性は、公知のガンマ-セクレターゼ阻害剤DAPT(Sigma-Aldrich、D5942)で阻害することができる。
【0178】
コドン最適化構築物が機能的であるかどうかを決定するために、NICDをhPSEN1v1.5(3μg)での処理後に測定し、2つのPSEN1病原性突然変異(C410YまたはG206A)のうち1つを含有するFAD患者線維芽細胞における非コードプラスミドと比較した。エレクトロポレーションの24時間後に線維芽細胞の一部をDAPT阻害剤に曝露し、トランスフェクション後48時間で採取し、100μLのRIPA緩衝液(50mM塩基/Tris-HCl、150mM NaCl、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、1%Nonidet P-40代替品に、cOmplete(商標),Mini,EDTAフリープロテアーゼ阻害カクテル,Sigma Aldrichを添加)を使用して溶解し、上清を回収した。THERMO SCIENTIFIC(商標)PIERCE(商標)BCA(商標)タンパク質アッセイを製造元の指示に従って使用して、各試料の総タンパク質濃度を測定した。
【0179】
技術的複製からの総タンパク質溶解物を、製造元の指示に従ってニトロセルロース膜に電気転写した。細胞溶解物中の切断されたNotch(NICD)を検出するためのウエスタンブロットは、推奨条件を使用して実施した。図3は、配列番号37を含有するプラスミドのトランスフェクションにより、C410Y及びG206A両方のPSEN1変異型線維芽細胞において、非コード構築物(空)と比較した場合にNICDが増加したことを示している。
【0180】
実施例12
本実施例は、FAD患者の線維芽細胞のAβ40レベルに対する、コドン最適化PSEN-1ヌクレオチド配列の効果について記載する。
【0181】
機能的ガンマ-セクレターゼ活性を評価するために、PSEN1にC410Y突然変異を有する家族性アルツハイマー病(FAD)患者からの初代皮膚線維芽細胞に、アミロイド前駆体タンパク質(APP)C99断片をコードするプラスミド、及びそれぞれ上記に記載する、非コード空プラスミド(pAAV-CAG-MCS-KanR)またはコドン最適化ヒトプレセニリン1コード配列pAT028(配列番号37)を含有する同様のプラスミドのいずれかをエレクトロポレーションした。細胞内部で、C99がガンマ-セクレターゼによって順次切断され、さまざまな長さのAβペプチドが生成された後、これを細胞培養培地に放出する。
【0182】
コドン最適化構築物の機能性を決定するために、上記のプラスミドを用いた細胞のエレクトロポレーションに続いて、細胞培養培地中のAβ40を測定した。トランスフェクション後48時間で細胞培養培地を回収し、MSD ELISAを用いてAβ40について分析した。データは両側t検定を使用して分析した。図4は、配列番号37を含有するプラスミドのトランスフェクションにより、C410Y FAD線維芽細胞において、非コード構築物(空)と比較した場合に、Aβ40生成が増加し、統計的有意となる傾向(p=0.23)を表すことを示している。
【0183】
実施例13
本実施例は、本発明の部分的にコドン最適化されたPSEN-1コード配列を含む種々のAAVベクターの合成について記載する。
【0184】
本発明のPSEN-1コード配列を含有するAAVウイルスベクターを調製するために、本発明者らは、上記に記載するpAAV-CAG-MCS-KanRプラスミドからCAGプロモーターを除去し、様々な発現カセットでそれを置き換えた。各発現カセットには、配列番号37のPSEN-1コード配列及びポリアデニル化配列に機能的に連結された異なるプロモーターを組み込んだ。加えて、これらのカセットにはさらに、プロモーターとPSEN-1コード配列との間にヒトベータグロビンイントロン;ヒトベータグロビンイントロンとPSEN-1コード配列との間にあるHAタグ(対象での使用前に除去することができる);ポリアデニル化配列に続く、ヒト成長ホルモンまたはアルブミンのいずれかのゲノムのスタッファー配列を組み込んだ。これらの発現カセットのそれぞれの配列及びそれらに隣接するAAV2 ITR(改変pAAV-CAG-MCS-KanRプラスミドにすでに存在する)を配列番号41~46に示す。
【0185】
自己相補的AAVベクターの生成では、pAAV-CAG-MCS-KanRの5’AAV2 ITRを、発現カセットの挿入前に改変する。この構築物の発現カセットには、CBAプロモーター、マウス微小ウイルスのイントロン、対象での使用前に除去できるHAタグ、配列番号37、及びウサギβ-グロビンポリアデニル化配列を組み込んだ。挿入される改変pAAV-CAG-MCS-KanRプラスミドからの改変5’及び天然3’AAV2 ITRを含むこの発現カセットの配列を配列番号47に示す。
【0186】
発現カセットを含有する、得られるベクターゲノムプラスミドのそれぞれを、トリプルプラスミドトランスフェクション法(Xiao and Samulski,J Virol 72:2224-2232,1998)を使用した組換えAAVベクターの作成に使用した。この方法では、対象となる血清型に特異的なAAV血清型特異的rep及びcapプラスミド、ならびにベクターゲノムDNAプラスミドを使用したが、第3のプラスミドで必須Ad遺伝子を供給することによりAd感染の使用を除外した。付着性HEK293細胞のマルチプラスミド一過性トランスフェクションは、rAAV生成に広く使用されている方法であり(Grimm et al.,Hum Gene Ther 9:2745-2760,1998;Matsushita et al.,Gene Ther 5:938-945,1998)、組換えAAVベクターの作成に使用することができる。AAV粒子は、pH約7.4の、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中、または0.001%プルロニック酸(F-68)を添加した、10mMリン酸ナトリウムと180mM NaCl中で調製することができる。
【0187】
配列
配列番号1
>NM_000021.4ホモサピエンスプレセニリン1(PSEN1)、転写バリアント1、mRNA。下線はコード配列

配列番号2
>ヒトSSTプロモーター

配列番号3
>ヒトNPYプロモーター

配列番号4
>HS4クロマチンインスレーター

配列番号5
>コザックコンセンサス配列
ccacc

配列番号6
>許容される非優先コドンをすべて高優先同義コドンに変更したヒトPSEN1。小文字は変更したコドン:

配列番号7
>CpGジヌクレオチドをすべて除去し、許容コドンをすべて高優先同義コドンに変更し、CpGジヌクレオチドを除去した結果、非許容コドンの一部が変更された、合成PSEN1 cDNA。小文字は変更したコドン;小文字かつ下線は、変更された非許容コドン。

配列番号8
>ゲノム/cDNAハイブリッドPSEN1遺伝子

配列番号9
>MALAT1 mRNA安定性要素

配列番号10
>天然PSEN1 RNA由来の3’隣接配列

配列番号11
>天然PSEN1 mRNA由来の5’隣接配列

配列番号12
>XP_011535274.1ヒトプレセニリン-1アイソフォームX1[467アミノ酸]

配列番号13
>ヒトPSEN1 463アミノ酸アイソフォームX2の遺伝子(cDNA)(GenBank NM_007318.3)

配列番号14
>プレセニリン-1アイソフォームX2[463アミノ酸]

配列番号15
>プレセニリン-1アイソフォームX1コード配列。下線は非許容コドン

一本鎖AAV2の逆方向末端反復(ITR)
配列番号16
nc_001401.2、nt1~145及び4535~4679
>左側ITR

配列番号17
>右側ITR

自己相補的AAV2の逆方向末端反復
配列番号18
>左側ITR

配列番号19
>右側ITR

イントロン
配列番号20
>MVM NC_001510.1、マウス微小ウイルスのイントロンnt2312~2403

配列番号21
>ハイブリッドアデノウイルスSD/IgG SA;ac_000008.1アデノウイルス5型トリプレットリーダー、nt573~758、及びnc_000078.6ハツカネズミ株c57bl/6j nt115158736~115158695

配列番号22
>hBGイントロン、キメラcmvプロモーター601~734、cmvイントロン1 1263~1294、続いてベータ-グロビン遺伝子のイントロンii。イントロンの3’末端は、ベータグロビン遺伝子のエキソン3の最初の20ヌクレオチドと融合される。

プロモーター
配列番号23
>CAG lt727518.1、nt3074~4750

配列番号24
>CBA nc_006273.2、nt175625~175294、及びGenBankアクセッション番号x00182.1、nt280~540。

配列番号25
>UBC d63791 nt3553~4729

配列番号26
>PGK nc_000086.7 106186725~106187235

配列番号27
>Ef1a j04617.1 nt379~1560

配列番号28
>CMV

配列番号29
>ドブネズミニューロン特異的エノラーゼ遺伝子ab038993.1、nt1023~2715に類似するNSE

配列番号30
>MeCP2 nc_000086.7 nt-677~+56、マウスmecp2メチルcpg結合タンパク質2

配列番号31
>GFAP nc_000017.11 nt-1991-0、ホモサピエンスグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)

配列番号32
タグ
>HA

ポリアデニル化シグナル
配列番号33
>hGH ng_011676.1 nt6537~7013

配列番号34
>rBG ah001222.2、nt1623~1749

配列番号35
>rBG ah001222.2、nt1690~1745

配列番号36
許容コドンのみを改変することにより、最大数のCpGジヌクレオチドを除去した合成PSEN1 cDNA。変更したコドンを小文字で示す。

配列番号37
hPSEN1v1.5。ある特定の許容コドンを高優先同義コドンに変更したPSEN1。変更したコドンを小文字で示す。

配列番号38
hPSEN1v2.0。ある特定の許容コドンを高優先同義コドンに変更したPSEN1。変更したコドンは小文字である。

配列番号39
hPSEN1v3.0。許容コドンを高優先同義コドンに変更したPSEN1。変更したコドンは小文字である。

配列番号40
pAT029、pAT024、及びpAT022に使用されるCAGプロモーター

配列番号41
AAV2 ITR(1~141、4553~4693)、プレセニリン1プロモーター(下線237~1200)、合成ヒトベータ-グロビンイントロン(1221~1786)、HAタグ(1866~1898)、コドン最適化ヒトプレセニリン1v1.5(大文字、配列番号37、1899~3299)、ヒト成長ホルモンポリアデニル化配列(3330~3806)、及びアルブミンゲノム配列(3810~4522)を含有する、AAV生成用発現カセット。

配列番号42
AAV2 ITR(1~141、4554~4694)、ユビキチンCプロモーター(下線237~1323)、合成ヒトベータ-グロビンイントロン(1344~1909)、HAタグ(1989~2015)、コドン最適化ヒトプレセニリン1v1.5(大文字、配列番号37、1983~3416)、ヒト成長ホルモンポリアデニル化(3447~3923)、及びヒト成長ホルモンゲノム配列(3924~4523)を含有する、AAV生成用発現カセット。

配列番号43
AAV2 ITR(1~141、4554~4694)、CBAプロモーター(下線237~890)、合成ヒトベータ-グロビンイントロン(911~1476)、HAタグ(1556~1582)、コドン最適化ヒトプレセニリン1v1.5(大文字、配列番号37、1550~2983)、ヒト成長ホルモンポリアデニル化(3014~3490)、及びヒト成長ホルモンゲノム配列(3014~3491)を含有する、AAV生成用発現カセット。

配列番号44
AAV2 ITR(1~141、4500~4640)、EF-1アルファプロモーター(下線237~1415)、合成ヒトベータ-グロビンイントロン(1436~2001)、HAタグ(2081~2107)、コドン最適化ヒトプレセニリン1v1.5(大文字、配列番号37、2075~3508)、ヒト成長ホルモンポリアデニル化(3539~4015)、及びヒト成長ホルモンゲノム配列(4016~4469)を含有する、AAV生成用発現カセット。

配列番号45
AAV2 ITR(1~141、4533~4673)、PGKプロモーター(下線237~663)、合成ヒトベータ-グロビンイントロン(684~1249)、HAタグ(1329~1355)、コドン最適化ヒトプレセニリン1v1.5(大文字、配列番号37、1323~2756)、ヒト成長ホルモンポリアデニル化(2787~3263)、及びヒト成長ホルモンゲノム配列(3264~4502)を含有する、AAV生成用発現カセット。

配列番号46
AAV2 ITR(1~141、4554~4694)、シナプシン1プロモーター(下線237~684)、合成ヒトベータ-グロビンイントロン(705~1270)、HAタグ(1350~1376)、コドン最適化ヒトプレセニリン1v1.5(大文字、配列番号37、1344~2777)、ヒト成長ホルモンポリアデニル化(2808~3284)、及びヒト成長ホルモンゲノム配列(3285~4523)を含有する、AAV生成用発現カセット。

配列番号47
天然及び改変AAV2 ITR(1~105、2386~2526)、CBAプロモーター(下線113~766)、マウス微小ウイルスのイントロン(776~867)、HAタグ(884~910)、コドン最適化ヒトプレセニリン1v1.5(大文字、配列番号37、881~2311)、ウサギベータ-グロビンポリアデニル化配列(2319~2367)を含有する、自己相補的AAV生成用発現カセット。
【0188】
本開示を通じてなされた、特許、特許出願、特許刊行物、雑誌、書籍、論文、ウェブコンテンツなどの他の文書に対する参照及び引用はすべて、目的を問わず、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0189】
上記の実施例において、本発明の特定の実施形態に関する具体的な詳細を参照して本発明を説明してきたが、改変例及び変形例は本発明の趣旨及び範囲内に包含されるものと理解されよう。したがって、本発明は以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-01-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2023504448000001.app
【国際調査報告】