(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-03
(54)【発明の名称】照明器のアイセーフティ部品の機械的完全性を監視するための装置
(51)【国際特許分類】
H05B 47/105 20200101AFI20230127BHJP
【FI】
H05B47/105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022532050
(86)(22)【出願日】2020-11-16
(85)【翻訳文提出日】2022-06-27
(86)【国際出願番号】 SG2020050664
(87)【国際公開番号】W WO2021107862
(87)【国際公開日】2021-06-03
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522211759
【氏名又は名称】エイエムエス センサーズ シンガポール プライヴェット リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ams Sensors Singapore Pte. Ltd.
【住所又は居所原語表記】7000 Ang Mo Kio Avenue 5, #05-00, Singapore 569877, Singapore
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハビエル ミゲル サンチェス
【テーマコード(参考)】
3K273
【Fターム(参考)】
3K273PA09
3K273QA36
3K273SA20
3K273SA31
3K273SA50
3K273TA03
3K273TA05
3K273TA15
3K273TA28
3K273TA36
3K273TA41
3K273UA21
(57)【要約】
照明器のアイセーフティ部品の機械的完全性を監視するための装置が開示されている。この装置は、照明器の動作中にアイセーフティ部品における光音響効果を感知し、感知された光音響効果を表す信号を出力するように動作可能なセンサと、プロセッサとを含んでいる。このプロセッサは、センサからの信号を監視し、信号が、アイセーフティ部品の機械的完全性を示す予め定められた許容範囲から外れた少なくとも1つのパラメータを含んでいるかどうかを決定し、前記少なくとも1つのパラメータが前記予め定められた許容範囲から外れ、これにより、機械的完全性の喪失が示されるということの決定に応じて安全措置を開始するように動作可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明器のアイセーフティ部品の機械的完全性を監視するための装置であって、前記装置は、
照明器の動作中にアイセーフティ部品における光音響効果を感知し、感知された光音響効果を表す信号を出力するように動作可能なセンサと、
プロセッサと、を含み、
前記プロセッサは、
前記センサからの信号を監視し、
前記信号が、前記アイセーフティ部品の機械的完全性を示す予め定められた許容範囲から外れた少なくとも1つのパラメータを含んでいるかどうかを決定し、
前記少なくとも1つのパラメータが前記予め定められた許容範囲から外れ、これにより、機械的完全性の喪失が示されるということの決定に応じて安全措置を開始するように動作可能である、装置。
【請求項2】
前記センサは、前記光音響効果によって形成された音波を感知するように構成されている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記装置は、前記音波の信号対雑音比を改善するように構成されたフォノニック構造をさらに含む、請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記センサからの前記信号に基づいて前記照明器内の環境条件の変化を検出するようにさらに動作可能である、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記照明強度を変更するための命令を前記照明器に送信することによって、前記安全措置を開始するように動作可能である、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記照明を中止させるための命令を前記照明器に送信することによって、前記安全措置を開始するように動作可能である、請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
前記センサは、マイクロフォンを含む、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
前記装置は、増幅器、フィルタ、ロックイン検出器、および許容範囲検出器のうちの1つまたは複数をさらに含む、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
照明器であって、
少なくとも1つのエミッタと、
前記少なくとも1つのエミッタとユーザとの間にシールドを提供するアイセーフティ部品と、
請求項1から8までのいずれか1項記載の装置と、を含んでいる、照明器。
【請求項10】
前記照明器は、少なくとも1つのエミッタのうちの少なくとも1つから出力される光を予め定められた周波数で変調するように構成された変調器をさらに含み、前記プロセッサは、前記センサからの信号を監視する場合に、ロックイン検出方式および/またはゲート型検出方式において予め定められた周波数を使用するように動作可能である、請求項9記載の照明器。
【請求項11】
前記少なくとも1つのエミッタは、照明エミッタを含み、前記センサは、前記照明エミッタの動作から結果として生じる光音響効果を感知するように動作可能である、請求項9または10記載の照明器。
【請求項12】
前記少なくとも1つのエミッタは、監視エミッタを含み、前記センサは、前記監視エミッタの動作から結果として生じる光音響効果を感知するように動作可能である、請求項9から11までのいずれか1項記載の照明器。
【請求項13】
前記センサは、前記アイセーフティ部品における前記光音響効果を直接的に感知するように配置されている、請求項9から12までのいずれか1項記載の照明器。
【請求項14】
前記センサは、導波路または他の媒体を介して入力を受信することによって、前記アイセーフティ部品における前記光音響効果を間接的に感知するように配置されている、請求項9から12までのいずれか1項記載の照明器。
【請求項15】
前記少なくとも1つのエミッタは、レーザーを含む、請求項9から14までのいずれか1項記載の照明器。
【請求項16】
前記アイセーフティ部品は、ガラス基板および/またはディフューザを含む、請求項9から15までのいずれか1項記載の照明器。
【請求項17】
デバイスであって、請求項1から8までのいずれか1項記載の装置または請求項9から16までのいずれか1項記載の照明器を含んでいる、デバイス。
【請求項18】
照明器のアイセーフティ部品の機械的完全性を監視するための方法であって、前記方法は、
前記照明器の動作中に前記アイセーフティ部品において感知された光音響効果を表す信号をセンサから取得するステップと、
前記信号を監視するステップと、
前記信号が、前記アイセーフティ部品の機械的完全性を示す予め定められた許容範囲から外れた少なくとも1つのパラメータを含んでいるかどうかを決定するステップと、
前記少なくとも1つのパラメータが前記予め定められた許容範囲から外れ、これにより、機械的完全性の喪失が示されるということの決定に応じて安全措置を開始するステップと、を含む方法。
【請求項19】
人工ニューラルネットワークを使用して、前記予め定められた許容範囲を確立するステップをさらに含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
非一時的コンピュータ可読媒体であって、少なくとも1つのプロセッサに請求項18または19記載の方法を実行させるために格納されたプログラム命令を有する、非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照明器の眼に安全な部品(以下アイセーフティ部品とも称する)の機械的完全性を監視するための装置および方法に関する。本開示は、装置を組み込んだ照明器、および照明器を組み込んだ装置にも関する。
【0002】
開示の背景
顔認識および世界向けの用途のために三次元感知方式を使用する傾向が現在ある。このような感知システムは、撮像すべき対象を光で照らす照明を必要とし、多くは高出力レーザーを使用している。このレーザーが適切な光学モジュール内に適正にパッケージされている場合、それは眼に安全なものである。しかしながら、このモジュールの完全性が損なわれると、照明器はもはや眼に安全ではなくなる可能性があり、その場合には、アイセーフティ機構をトリガーさせるインターロックが必要となる。
【0003】
これまで、照明器モジュールの完全性は、カバー光学系からのフォトダイオードの後方反射や、カバー光学系上に酸化インジウムスズ(ITO)層を使用し、ITO層の容量またはDC直流抵抗を測定することで評価されてきた。
【0004】
より具体的には、コーティングされたカバー光学系における亀裂から生じる静電容量の変化を感知するために容量性センサが使用され、そのことが今度は、眼の損傷につながる可能性がある。ただし、非常に短いパルス(>100MHz)で照明器内のレーザーを駆動するための(例えば最大3Aの)大電流の存在は、ITO層の静電容量に関連する小さな値(典型的には約1pF)の測定を極めて困難にする。
【0005】
導電性ITO層が設けられているカバー光学系の完全性を検査するために、抵抗センサのDC抵抗率を検査することは可能である。ただし、導電性ITO層は、照明のフィールド外にある必要があり、そのため、コーティングされていないカバー光学系の部分に対する何らかの損傷は感知されない可能性がある。加えて、DC抵抗率測定の使用は、特にDC閾値読み出しが使用されている場合、電磁干渉(EMI)に起因する自然な高ノイズ環境によって損なわれる可能性がある。
【0006】
したがって本開示の目的は、上記問題のうちの1つまたは複数に対処する、または少なくとも有用な代替手段を提供する、照明器のアイセーフティ部品の機械的完全性を監視するための装置および方法を提供することである。
【0007】
概要
一般に、本開示は、カバー光学系の機械的特性をプローブするために光音響効果を利用し、これによって、照明される領域におけるアイセーフティ部品の完全性を直接監視することによって、上記の問題を克服することを提案するものである。
【0008】
本開示の1つの態様によれば、照明器のアイセーフティ部品の機械的完全性を監視するための装置が提供され、該装置は、
照明器の動作中にアイセーフティ部品における光音響効果を感知し、感知された光音響効果を表す信号を出力するように動作可能なセンサと、
プロセッサと、を含み、該プロセッサは、以下のように動作可能であり、すなわち、
センサからの信号を監視し、
信号が、アイセーフティ部品の機械的完全性を示す予め定められた許容範囲外に外れた少なくとも1つのパラメータを含んでいるかどうかを決定し、
少なくとも1つのパラメータが予め定められた許容範囲外に外れ、これにより、機械的完全性の喪失が示されるということの決定に応じて安全措置を開始するように動作可能である。
【0009】
したがって、本開示の実施形態は、照明器のアイセーフティ部品の機械的完全性を監視するための装置を提供し、この装置は、アイセーフティ部品自体の機械的変化に応じて光音響信号が変化したときにトリガーされるセーフティインターロックを提供するために使用することができる。この光音響効果は、アイセーフティ部品を通過する照明器からの光信号によって生成されるので、本装置は、光が通過するアイセーフティ部品の正確な部分を監視し、これにより、アイセーフティ部品がクリティカルな状態にある正確な部位における媒体の機械的完全性がプローブされる。これは、クリティカルなアイセーフティ部品に近いが、共存していない領域からの電気信号をプローブすることによって、任意の監視が実行される従来技術のシステムとは対照的である。加えて、本開示の態様により、光音響シグナリングを介して照明器における窓の完全性の継続的な監視が可能となる。
【0010】
いくつかの実施形態では、光音響効果は、直接的にエミッタの動作から結果として生じるため、光音響効果は、エミッタの動作と同期する。したがって、エミッタがパルス制御されている場合、光音響効果も、明確に定義された検出窓内でパルス状の信号を生成する。別の実施形態では、光音響効果は、エミッタの継続的動作から生じ得る。いくつかの実施形態では、エミッタの周波数は、周波数の範囲を掃引するために、または特定の周波数をプローブするために変調することができる。
【0011】
したがって、本開示の態様は、3D感知用途のために構成された照明器に存在するものなどのアイセーフティ部品の機械的完全性を監視し、完全性の喪失に応じて安全措置を開始し、それによってセーフティインターロックを提供する装置を提供する。
【0012】
センサは、光音響効果によって形成された音波を感知するように構成されてよい。
【0013】
フォノニック構造は、音波の信号対雑音比を改善するように構成されてよい。換言すれば、フォノニック構造は、光音響効果によって生成される信号を、アイセーフティ部品自体において、またはアイセーフティ部品からセンサに至る経路において増強することができる。いくつかの実施形態では、フォノニック構造は、アイセーフティ部品の中、上部、上方、近傍、周囲に設けてもよいし、あるいはアイセーフティ部品と組み合わせるように設けてもよい(すなわち、フォノニック構造は、アイセーフティ部品を形成する構造とは別個であってもよいし、アイセーフティ部品を形成する構造に統合されてもよい)。
【0014】
プロセッサは、センサからの信号に基づいて照明器内の環境条件の変化を検出するようにさらに動作可能であってよい。
【0015】
プロセッサは、照明強度を変更するための命令を照明器に送信することによって、安全措置を開始するように動作可能であってよい。
【0016】
プロセッサは、照明を中止するための命令を照明器に送信することによって、安全措置を開始するように動作可能であってよい。したがって、装置は、照明器の自動電力制御のために構成されてもよい。
【0017】
センサは、少なくとも1つのマイクロフォンを含むことができる。
【0018】
本装置は、増幅器、フィルタ、ロックイン検出器、および許容範囲検出器のうちの1つまたは複数をさらに含むことができる。
【0019】
本開示の第2の態様によれば、以下を含んでいる照明器、すなわち
少なくとも1つのエミッタと、
少なくとも1つのエミッタとユーザとの間にシールドを提供するアイセーフティ部品と、
本開示の第1の態様による装置と、を含んでいる照明器が提供される。
【0020】
この照明器は、少なくとも1つのエミッタのうちの少なくとも1つから出力される光を予め定められた周波数で変調するように構成された変調器をさらに含むことができ、ここで、プロセッサは、センサからの信号を監視する場合に、ロックイン検出方式および/またはゲート型検出方式において予め定められた周波数を使用するように動作可能である。
【0021】
少なくとも1つのエミッタは、照明エミッタを含むことができ、センサは、照明エミッタの動作から結果として生じる光音響効果を感知するように動作可能である。
【0022】
少なくとも1つのエミッタは、監視エミッタを含むことができ、センサは、監視エミッタの動作から結果として生じる光音響効果を感知するように動作可能である。
【0023】
センサは、アイセーフティ部品における光音響効果を直接的に感知するように配置されていてよい。
【0024】
センサは、導波路または他の媒体を介して入力を受信することによって、アイセーフティ部品における光音響効果を間接的に感知するように構成されていてよい。
【0025】
少なくとも1つのエミッタは、レーザーを含むことができる。
【0026】
アイセーフティ部品は、ガラス基板および/またはディフューザを含むことができる。
【0027】
照明器は、パッケージまたはモジュール内に設けられていてもよい。これらのパッケージまたはモジュールは、気密型もしくは密閉型であってもよい。密閉型パッケージは、自身に含まれる、光音響信号が通過する流体(例えば気体)が明確に定義されており、それによって、何らかの漏れまたは浸入を光音響信号における変化によって検出することができる。
【0028】
プロセッサは、パッケージ/モジュール内に含まれてもよいし、または外部に、例えば、照明器が組み込まれるデバイスのどこか他の場所に設けられてもよい。外部プロセッサが使用される場合、少なくともセンサおよびエミッタと通信するように構成される。
【0029】
センサ(例えばマイクロフォン)は、迅速な応答と良好な信号品質とを保証するために、アイセーフティ部品の上またはその近傍に配置されてもよい。センサは、アイセーフティ部品の一部に(例えばディフューザまたはガラス基板上)に設けられていてもよく(すなわち、所定の位置に固定されていてもよく)、センサからの電気信号をパッケージの縁部に転送し、側壁に沿ってプロセッサおよび/またはエミッタが配置されている基板に転送するための金属線路が設けられていてもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、センサまでの経路に沿って光音響信号強度を最大化するために、フォノニックフィルタまたは音響フィルタが(例えば、アイセーフティ部品上またはパッケージ内のどこか他の場所に)設けられてもよい。
【0031】
センサは、安全措置のための増幅、フィルタリング、ロックイン検出、閾値検出、およびシグナリング出力の機能を実行するために、例えば他の部品と共に一般的な集積回路(IC)に、または特定用途向け集積回路(ASIC)に設けられてもよい。
【0032】
本開示の第3の態様によれば、本開示の第1の態様による装置または本開示の第2の態様による照明器を含んでいるデバイスが提供される。
【0033】
本開示の第4の態様によれば、照明器のアイセーフティ部品の機械的完全性を監視するための方法が提供され、該方法は、
照明器の動作中にアイセーフティ部品において感知された光音響効果を表す信号をセンサから取得するステップと、
信号を監視するステップと、
信号が、アイセーフティ部品の機械的完全性を示す予め定められた許容範囲から外れた少なくとも1つのパラメータを含んでいるかどうかを決定するステップと、
少なくとも1つのパラメータが予め定められた許容範囲から外れ、これにより、機械的完全性の喪失が示されるということの決定に応じて安全措置を開始するステップと、を含む。
【0034】
本方法は、予め定められた許容範囲(例えば閾値)を確立するステップをさらに含むことができる。
【0035】
予め定められた許容範囲は、照明器内またはその外部(例えばホストデバイス内)に設けてもよいコントローラによって確立可能であってよい。
【0036】
予め定められた許容範囲は、メモリに格納されている、かつ/または較正ステップ中に定義された予め定められた値に基づくものであってよい。予め定められた値は、1つ以上のパラメータを含むことができ、これらのパラメータは、較正ステップ中に調整されてよい。例えばパラメータは、信号振幅、信号周波数、または信号波長を含むことができる。
【0037】
予め定められた許容範囲は、人工ニューラルネットワーク(ANN)を使用して確立されてもよい。
【0038】
本開示の第5の態様によれば、少なくとも1つのプロセッサに、本開示の第4の態様による方法を実行させるために格納されたプログラム命令を有する非一時的コンピュータ可読媒体が提供される。
【0039】
上述したように、従来技術のシステムには、小さな値の測定に関連する問題を有する傾向があり、監視される領域が、放出され、潜在的に損傷を与え得る光が通過する領域と同じではないという事実が存在する。
【0040】
そのような公知のシステムと比較して、本明細書に開示している照明器のアイセーフティ部品の機械的完全性を監視するための本装置は、以下の利点を有している。すなわち、
1.光音響効果がエミッタ自体の使用によって生成されるので、エミッタによって照明される領域を正確に探ることができる(これは安全上重要である)。
2.アイセーフティ部品自体(すなわちガラス窓)の機械的状態を監視することができる。
3.例えば、ロックイン検出方式からの狭幅な帯域幅と明確に定義された時間窓とによる監視のため、ノイズに強くできる。
4.エミッタの励起周波数にのみ敏感である(すなわち、眼の安全性に関する懸念を生じさせ得る信号が、眼の安全性を検査するために監視される効果をもたらす信号でもある)。
5.照明器パッケージの内部種を監視するために(例えば、漏れもしくは侵入を検出するために)使用することができる。
【0041】
最後に、本明細書に開示されている照明器のアイセーフティ部品の機械的完全性を監視するための本装置は、少なくとも、照明器の通常の動作下で存在する光音響効果を利用して、主要な関心領域におけるアイセーフティ部品の機械的完全性の表示を提供するという、新規のアプローチを利用している。
【0042】
発明を実施するための形態
以下では、本開示のいくつかの実施形態を、添付の図面を参照しながら単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本開示による照明器と装置とを備えたデバイスを示すブロック図である。
【
図2】
図1の照明器のアイセーフティ部品の機械的完全性を監視するための方法を示したフローチャートである。
【
図3】本開示による第1の照明器の概略的側面図である。
【
図4】本開示による第2の照明器の概略的側面図である。
【
図5】本開示による第3の照明器の概略的側面図である。
【
図6】本開示による第4の照明器の概略的側面図である。
【
図7】
図1の照明器の動作中に生成される種々の信号を示すタイミング線図である。
【0044】
好適な実施の形態の詳細な説明
一般的に言及すれば、本開示は、窓が損傷しているかどうかを監視するための手段として、カバーガラスまたは窓を通過する光の光音響効果に起因する通常望ましくない信号を利用する、照明器のアイセーフティ部品の機械的完全性を監視するための方法および装置を提供するものである。
【0045】
解決手段のいくつかの例は、添付の図面に示されている。
【0046】
図1には、本開示による、照明器106を有するデバイス112と、該照明器106のアイセーフティ部品110の機械的完全性を監視するための装置100とのブロック図が示されている。デバイス112は、例えば、携帯電話、タブレット、ラップトップ、ウォッチ、または他のコンピューティングデバイスであってよい。
【0047】
この装置100は、マイクロフォンの形態のセンサ102とプロセッサ104とを含む。センサ102は、照明器106の動作中にアイセーフティ部品110内の光音響効果を感知し、感知した光音響効果を表す信号を出力するように動作可能である。プロセッサ104は、以下のように動作可能であり、すなわち、センサ102からの信号を監視し、信号が、アイセーフティ部品110の機械的完全性を示す予め定められた許容範囲から外れた少なくとも1つのパラメータを含んでいるかどうかを決定し、少なくとも1つのパラメータが予め定められた許容範囲から外れ、これにより、機械的完全性の喪失が示されるということの決定に応じて安全措置を開始するように動作可能である。
【0048】
安全措置は、照明の強度を変更する(例えば強度を安全レベルまで低下させる)または照明を中止するための命令を照明器106に送信することを含むことができる。安全措置は、例えば、照明器106の波長を変更することができ、または照明を継続的なものからパルス状のものに切り替えることができる。
【0049】
照明器106は、エミッタ108ならびにアイセーフティ部品110を含む。このアイセーフティ部品110は、エミッタ108とユーザ(図示せず)との間にシールドを提供するように構成されている。アイセーフティ部品110は、ディフューザおよび/または透明窓(例えばカバーガラス)を含むことができる。
【0050】
プロセッサ104は、照明器106の外側に示されているが、照明器106内に組み込まれていてもよく、例えば、センサ102および/またはエミッタ108を有する集積回路(IC)上に設けられていてもよい。
【0051】
図2には、アイセーフティ部品110の機械的完全性を監視するための、プロセッサ104によって実行されてよい方法200が示されている。本方法200は、照明器106の動作中にアイセーフティ部品110において感知された光音響効果を表す信号をセンサ102から取得するステップ202と、信号を監視するステップ204とを含む。さらなるステップ206は、信号が、アイセーフティ部品110の機械的完全性を示す予め定められた許容範囲から外れた少なくとも1つのパラメータを含んでいるかどうかを決定するステップを含む。後続するステップ208は、少なくとも1つのパラメータが予め定められた許容範囲から外れ、これにより、機械的完全性の喪失が示されるということの決定に応じて安全措置を開始するステップを含む。
【0052】
本方法は、さらに、予め定められた許容範囲(例えば閾値)を確立することを含むことができる。この予め定められた許容範囲は、照明器内またはその外部(例えばホストデバイス内)に設けてもよいコントローラによって確立可能であってよい。
【0053】
予め定められた許容範囲は、以下のような形態、すなわち、予め定められた値までの形態、予め定められた値を下回る形態、予め定められた値の間の形態であってよい。
【0054】
予め定められた許容範囲は、メモリに格納されている、かつ/または較正ステップ中に定義された予め定められた値に基づくものであってよい。予め定められた値は、1つ以上のパラメータを含むことができ、これらのパラメータは、較正ステップ中に調整されてよい。例えばパラメータは、信号振幅、信号周波数、または信号波長を含むことができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、予め定められた許容範囲は、人工ニューラルネットワーク(ANN)を使用して確立することができる。
【0056】
図3には、本開示による第1の(開放型)照明器300の概略的側面図が示されている。この第1の照明器300は、照明器106と同様の構造を有し、基板304上に取り付けられたマイクロフォンの形態のセンサ302を含んでいる。垂直共振器型面発光レーザー(VCSEL)の形態のエミッタ306も、基板304上に取り付けられており、ディフューザ308およびガラス窓310を通って光312を放出するように配置されている。ディフューザ308とガラス窓310とが一緒になって、アイセーフティ部品110を形成している。
【0057】
図示されていないが、(
図1のプロセッサ104と同様の)プロセッサが、センサ302およびエミッタ306と通信可能に設けられている。
【0058】
使用において、センサ302は、照明器300の動作中に(例えば、エミッタがレーザパルスを放出するときに)、ディフューザ308および/またはガラス窓310内の光音響効果を感知し、この感知した光音響効果を表す信号をプロセッサに出力するように動作可能である。プロセッサは、以下のように動作可能であり、すなわち、センサ302からの信号を監視し、信号が、ディフューザ308および/またはガラス窓310の機械的完全性を示す予め定められた許容範囲から外れた少なくとも1つのパラメータを含んでいるかどうかを決定し、少なくとも1つのパラメータが予め定められた許容範囲から外れ、これにより、機械的完全性の喪失が示されるということの決定に応じて安全措置を開始するように動作可能である。上記のように、安全措置は、照明の強度を変更するか(例えば、強度を安全レベルまで低下させる)、または照明を中止するための命令を照明器300に送信することを含み得る。
【0059】
図4には、本開示による第2の(閉鎖型)照明器400の概略的側面図が示されている。この第2の照明器400は、第1の照明器300と同様であり、したがって同じ参照符号は、同様の特徴を示すために含まれている。したがって、
図3に関連して上述した部品に対して付加的に、第2の照明器400は、基板304とガラス窓310との間に側壁402を含んだパッケージまたはモジュール内に収容されている。したがって、第2の照明器400は、気密型もしくは密閉型で封止されていてもよく、自身に含まれ得る流体(例えば気体)が明確に定義されている。この場合、センサ302は、流体が自身を通過した後、ディフューザおよび/またはガラス窓310内で生成された光音響信号を感知し、それによって、何らかの漏れもしくは浸入(例えば水または他の流体)を光音響信号における変化によって検出することができる。
【0060】
図5には、本開示による第3の(別の)照明器500の概略的側面図が示されている。この第3の照明器500は、第2の照明器400と同様であり、したがって同じ参照符号は、同様の特徴を示すために含まれている。ただし、基板304に取り付けられた
図4のセンサ302の代わりに、
図5では、センサ302が、ガラス窓310を取り囲む表面に取り付けられている。したがって、このセンサ302は、アイセーフティ部品に直接接触して取り付けられてよい。他の実施形態では、センサ302は、ディフューザ308に直接接触して取り付けられてもよい。両方のケースでは、センサ302は、迅速な応答および良好な信号品質を保証するためにアイセーフティ部品の上もしくはその近傍に配置されている。
図5には示されていないが、金属線路または他の電気的コネクタ(例えばワイヤ)が、センサ302からの電気信号を照明パッケージの縁部に転送し、側壁402に沿ってエミッタ(および場合によってはプロセッサ)が配置されている基板304に転送するために設けられていてもよい。
【0061】
図6には、本開示による第4(別の)照明器600の概略的側面図が示されている。この第4の照明器600は、第3の照明器500と同様であり、したがって、同じ参照符号は、同様の特徴を示すために含まれている。しかしながら、この場合は、センサ302から基板304への電気信号のためのパスを提供する金属線路(すなわちコネクタ)602が示されている。このようにして、センサ302は、感知された光音響効果を表す信号を出力し、この信号を、センサ302からの信号を監視するためのプロセッサに送信する。上記で説明したように、プロセッサは、信号が、ガラス窓310の機械的完全性を示す予め定められた許容可範囲から外れた少なくとも1つのパラメータを含んでいるかどうかを決定する。プロセッサは、少なくとも1つのパラメータが予め定められた許容範囲から外れているという決定に応じて安全措置も開始し、これにより、機械的完全性の喪失が示される。例えば、プロセッサは、アイセーフティ部品の完全性が喪失した場合のさらなる照明を防止するために、エミッタ306に電力を遮断するためのトリガーを送信することができる。
【0062】
図7には、
図1の照明器106の動作中に生成される種々の信号を示すタイミング線
図700が示されている。照明器300,400,500および600も同様に動作することができることを理解されたい。このタイミング線
図700は、時間を表すx軸と、信号の振幅/強度を表すy軸とを含む。線図は説明のみを目的としているため、任意の単位(AU)が示されている。示されている波形は、光信号強度702、光音響信号振幅704、ゲート光音響信号振幅706、ノイズ信号振幅708、および検出ゲート信号振幅710を表し、これらは純粋に例示であり、これらの波形の他の形状が実際のデバイスに存在してもよい。
【0063】
タイミング線
図700は、エミッタからのパルスレーザ光信号702を示す。これは、結果として光信号702がアイセーフティ部品を通過するときに光音響効果を介して生成される光音響信号704を生じさせる(これにより媒体中の光吸収に続いて音波が形成される)。光音響信号704は、アイセーフティ部品内を伝搬し、側壁および包含する媒体も透過する。したがって、光音響信号704は、アイセーフティ部品上か、または照明器内のいずれかの場所に設けられたセンサによって感知される。本実施形態では、アイセーフティ部品における光音響信号704の透過から生じる、ゲート型光音響信号706として示される光音響信号704の一部を分離するようにタイミングを合わせた検出ゲート信号710の生成によるゲート型検出方法が使用される。したがって、センサによって感知されるゲート型光音響信号706は、検出ゲート信号710と光音響信号704との積である。加えて、
図7に示されているように、ノイズ信号708も存在する。
【0064】
本実施形態では、エミッタは、所与の用途に適した予め定められた波長を有することになり、これは、アイセーフティ部品における吸光度のために同調されることはない。したがって光音響信号704は、アイセーフティ部品の共振周波数になりそうな可能性は低い。したがって、光音響信号704は比較的小さくてもよく、結果として生じるゲート型光音響信号706も同様に小さい。
【0065】
図7に示されているように、ゲート型光音響信号706は、光音響信号704に時間的に遅延される。これは単に、媒体中の音の速度の結果であり、したがって、検出ゲート信号710についてのパラメータを容易に決定させ得る。しかしながら、
図7に示されているような検出ゲート信号710を使用する代わりに、光音響信号704と完全に重なる検出ゲート信号710を使用することも可能である。
【0066】
光音響信号704またはゲート型光音響信号706を監視することによって、アイセーフティ部品の機械的完全性を検査することが可能である。音波は構造的な欠陥に対して非常に敏感であるため、エミッタを使用しながらいつでもアイセーフティ部品の状態を観察することが可能である。
【0067】
いくつかの実施形態では、第2のエミッタが、監視すべき光音響信号を生成する目的のためだけに設けられていてもよい。このようにして、光音響信号の感知をより容易にするために、第2のエミッタを、アイセーフティ部品の共振周波数に同調させることができる。
【0068】
実験では、本開示による照明器は、約3Aの電流を使用して約2Wの強度を有し、これは、アイセーフティ部品の機械的完全性を表す感知可能な信号を生成するものであった。いくつかの用途では、15Aまでの電流が使用されてよく、これは、監視可能でかつアイセーフティ部品の完全性が感知された場合に、強力なエミッタのシャットダウンをトリガーするために使用することができる明らかに感知可能な信号を提供する。
【0069】
センサは、標準的なマイクロフォンを含むことができるが、1~10V/Paまでの感度を達成するために、特注のマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)ベースのマイクロフォンが使用されてもよい。
【0070】
図示されていないが、フォノニック構造は、音波の信号対雑音比を改善するために提供されてもよい。
【0071】
したがって、本開示の例は、光音響効果を利用して、照明器具用のアイセーフティ部品の機械的特性をプローブし、アイセーフティ部品の完全性を監視し、変化が生じた場合に、エミッタのシャットダウンなどの安全措置を実行する、方法および装置を提供する。
【0072】
本開示の実施形態は、例えば、ゲーム、産業、教育、自動車(例えば、ドライバー監視用)および他の産業における3D感知(例えば、飛行時間(ToF)、パターンまたはステレオアプローチを使用)または拡張現実のための目の前の世界および正面に向けられる照明器を含む多くの異なる用途に採用することができる。
【符号の説明】
【0073】
100 装置
102 センサ
104 プロセッサ
106 照明器
108 エミッタ
110 アイセーフティ部品
112 デバイス
200 方法
202 ステップ1
204 ステップ2
206 ステップ3
208 ステップ4
300 第1の(開放型)照明器
302 センサ
304 基板
306 エミッタ
308 ディフューザ
310 ガラス窓
312 レーザービーム
400 第2の(閉鎖型)照明器
402 側壁
500 第3の(さらなる)照明器
600 第4の(別の)照明器
602 接続部
700 信号線図
702 光信号強度
704 光音響信号振幅
706 ゲート型光音響信号振幅
708 ノイズ振幅
710 検出ゲート信号振幅
【0074】
当業者であれば、前述の説明および添付の特許請求の範囲において、「上方」、「に沿って」、「側方」などの位置用語が、添付の図面に示されているような概念図を参照して作られていることを理解するであろう。これらの用語は、参照を容易にするために使用されているが、性質の限定を意図したものではない。したがって、これらの用語は、添付の図面に示されている向きにあるときの物体を指すものと理解されるべきである。
【0075】
本開示は、上述の好適な実施形態に関して説明されてきたが、これらの実施形態は例示にすぎず、特許請求の範囲もこれらの実施形態に限定されないことを理解すべきである。当業者であれば、本開示に鑑みて修正および代替を行うことが可能であり、それらは添付の特許請求の範囲に含まれるものと思慮する。本明細書に開示もしくは図示された各特徴は、単独で、あるいは本明細書に開示もしくは図示された他の特徴と任意に適切に組み合わせて、任意の実施形態に組み込むことができるものである。
【0076】
参考文献
本開示に関連するさらなる背景情報を以下に掲載する。
1.「光音響感知技術の応用(Applications of photoacoustic sensing techniques)」A.C.Tam,Reviews of Modern Physics,Vol.58,No.2,p.381-431 (1986)
2.「光音響分光法(PAS)アプリケーション用最適化制御型MEMSマイクロフォン(Optimization Controlity MEMS Microphone for Photoacoustic Spectroscopy (PAS) Applications)」10.1117/12.597136, Pedersen et al. (2005).
3.https://phys.org/news/2019-01 -technology-lasers-transmit-audible-messages.html
4.「光熱および音響科学技術、生命および地球科学における発展(Progress in Photothermal and Acoustic Science and Technology, Life and Earth Sciences)」A.Mandelis and P.Hess, SPIE (1997).
5.「低コストの光音響撮像システムによる表面クラック感知(Surface crack detection with low-cost photoacoustic imaging system)」https://doi.org/10.14716/iitech.v9i1.1506。
【国際調査報告】