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特表2023-504456相互相関を使用したエラーベクトル振幅の決定
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-03
(54)【発明の名称】相互相関を使用したエラーベクトル振幅の決定
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/15 20150101AFI20230127BHJP
   H04L 27/26 20060101ALI20230127BHJP
【FI】
H04B17/15
H04L27/26 410
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022532087
(86)(22)【出願日】2020-11-24
(85)【翻訳文提出日】2022-05-30
(86)【国際出願番号】 US2020061951
(87)【国際公開番号】W WO2021113117
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】16/701,964
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502391840
【氏名又は名称】テラダイン、 インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】セリアン、 スコット ケー.
(57)【要約】
例示の方法は、自動テスト機器(automatic test equipment、ATE)を使用してエラーベクトル振幅を決定する。この方法は、第1のシンボルエラーベクトルを生成するために第1の受信機で受信したデータを復調することであって、各第1のシンボルエラーベクトルは、信号空間ダイヤグラム上の事前定義されたポイントと、第1の受信機が受信したデータの少なくとも一部に基づいて生成された信号空間ダイヤグラム上の第1の測定ポイントとの間の差を表す、復調することと、第2のシンボルエラーベクトルを生成するために第2の受信機で受信したデータを復調することであって、各第2のシンボルエラーベクトルは、信号空間ダイヤグラム上の事前定義されたポイントと、第2の受信機が受信したデータの少なくとも一部に基づいて生成された信号空間ダイヤグラム上の第2の測定ポイントとの間の差を表す、復調することと、第1のシンボルエラーベクトル及び第2のシンボルエラーベクトルに基づいて、データのエラーベクトル振幅を決定することと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動テスト機器(automatic test equipment、ATE)を使用して実行されるエラーベクトル振幅を決定する方法であって、
前記ATEの第1の受信機でテスト対象デバイス(device under test、DUT)からデータを受信することと、
第1のシンボルエラーベクトルを生成するために前記第1の受信機で受信した前記データを復調することであって、各第1のシンボルエラーベクトルは、信号空間ダイヤグラム上の事前定義されたポイントと、前記第1の受信機が受信した前記データの少なくとも一部に基づいて生成された前記信号空間ダイヤグラム上の第1の測定ポイントとの間の差を表す、復調することと、
前記ATEの第2の受信機で前記DUTから前記データを受信することであって、前記第2の受信機は前記第1の受信機とは異なる、受信することと、
第2のシンボルエラーベクトルを生成するために前記第2の受信機で受信した前記データを復調することであって、各第2のシンボルエラーベクトルは、前記信号空間ダイヤグラム上の前記事前定義されたポイントと、前記第2の受信機が受信した前記データの少なくとも一部に基づいて生成された前記信号空間ダイヤグラム上の第2の測定ポイントとの間の差を表す、復調することと、
前記第1のシンボルエラーベクトルと前記第2のシンボルエラーベクトルとに基づいて前記データの前記エラーベクトル振幅を決定することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記データは変調された信号を含み、
前記データの前記エラーベクトル振幅を決定することは、前記第1のシンボルエラーベクトルと前記第2のシンボルエラーベクトルとを相互相関させることを含み、
前記相互相関させることによって、前記第1の受信機又は前記第2の受信機の少なくとも1つによって生成された前記データへの少なくともいくつかのエラー寄与が除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくともいくつかのエラー寄与は無相関ノイズを含み、
前記無相関ノイズの少なくとも一部は、第1の受信機及び第2の受信機の両方に共通ではない前記ATEの1つ又は複数のコンポーネントに起因する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のシンボルエラーベクトルと前記第2のシンボルエラーベクトルとを相互相関させることは、第1のシンボルエラーベクトルと第2のシンボルエラーベクトルのペアごとに、前記第1のシンボルエラーベクトルの1つのベクトルに、対応する第2のシンボルエラーベクトルの共役ベクトルを乗算することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記データの前記エラーベクトル振幅を決定することは、
(a)シンボルに対応する前記信号空間ダイヤグラム上のポイントに対して、前記第1のシンボルエラーベクトルのうちの第1のシンボルエラーベクトルと前記第2のシンボルエラーベクトルのうちの第2のエラーベクトルとを相互相関させて結果を生成することと、
(b)前記相互相関させることの結果を総計に加算することと、
(c)前記データの複数のバーストに対して動作(a)と(b)を繰り返し、それによって前記複数のバーストのそれぞれに続いて前記総計を増加させることと、
(d)前記総計を前記複数のバーストの数で除算して、前記信号空間ダイヤグラム上の前記ポイントの平均を生成することと、
(e)前記平均の平方根を決定して、前記信号空間ダイヤグラム上の前記ポイントのコンポーネントエラーベクトル振幅を取得することと、
(f)前記コンポーネントエラーベクトル振幅と前記信号空間ダイヤグラム上の他のポイントの他のコンポーネントエラーベクトル振幅の二乗平均平方根を決定して、前記データの前記エラーベクトル振幅を取得することと
を含む動作を実行することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のシンボルエラーベクトルは、前記データの第1のバーストに基づいて前記ポイントに対して生成されたシンボルエラーベクトルを含み、
前記第2のシンボルエラーベクトルは、前記データの前記第1のバーストに基づいて前記ポイントに対して生成されたシンボルエラーベクトルを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ又は複数の処理装置は、デジタル信号プロセッサを含み、
異なる相互相関演算が、前記デジタル信号プロセッサで実行されている異なる非同期スレッドで同時に実行される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記データは、1つ又は複数の完全な又は部分的なデータパケットを含み、
前記1つ又は複数の完全な又は部分的なデータパケットは、前記第1の受信機及び前記第2の受信機のトリガ動作と同時に前記DUTによって生成される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記データは、複数のキャリア信号を有するデジタル変調信号を含み、エラーベクトル振幅が、前記複数のキャリア信号のそれぞれについて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の受信機及び前記第2の受信機で受信した前記データは、直交周波数分割多重(orthogonal frequency-division multiplexing、OFDM)変調されたデータストリームのサブキャリアに由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記エラーベクトル振幅は、前記OFDM変調されたデータストリームの各サブキャリアに対して決定される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記DUTからの前記データは、テストチャネルから前記データを受信して前記データを前記第1の受信機及び前記第2の受信機のそれぞれに送信するスプリッタを介して、前記第1の受信機及び前記第2の受信機で受信される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記データの前記エラーベクトル振幅は、前記ATEのコンポーネント又は信号の少なくとも1つからの無相関ノイズに少なくとも部分的に基づいており、
前記コンポーネント又は信号の少なくとも1つは、前記第1の受信機及び前記第2の受信機に共通ではない、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記信号空間ダイヤグラム上の前記事前定義されたポイントは、前記信号空間ダイヤグラム上の理想的なポイントを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記信号空間ダイヤグラム上の前記事前定義されたポイントは、前記信号空間ダイヤグラム上の推定ポイントを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
自動テスト機器(automatic test equipment、ATE)であって、
テスト対象デバイス(device under test、DUT)からデータを受信する第1の受信機と、
前記DUTから前記データを受信する第2の受信機と、
1つ又は複数の処理装置と
を含み、
前記1つ又は複数の処理装置は、
第1のシンボルエラーベクトルを生成するために前記第1の受信機で受信した前記データを復調することであって、各第1のシンボルエラーベクトルは、信号空間ダイヤグラム上の事前定義されたポイントと、前記第1の受信機が受信した前記データの少なくとも一部に基づいて生成された前記信号空間ダイヤグラム上の第1の測定ポイントとの間の差を表す、復調することと、
第2のシンボルエラーベクトルを生成するために前記第2の受信機で受信した前記データを復調することであって、各第2のシンボルエラーベクトルは、前記信号空間ダイヤグラム上の前記事前定義されたポイントと、前記第2の受信機が受信した前記データの少なくとも一部に基づいて生成された前記信号空間ダイヤグラム上の第2の測定ポイントとの間の差を表す、復調することと、
前記第1のシンボルエラーベクトルと前記第2のシンボルエラーベクトルとに基づいて前記データの前記エラーベクトル振幅を決定することと
を含む動作を実行する、自動テスト機器(ATE)。
【請求項17】
前記データは変調信号を含み、
前記データの前記エラーベクトル振幅を決定することは、前記第1のシンボルエラーベクトルと前記第2のシンボルエラーベクトルとを相互相関させることを含み、
前記相互相関させることによって、前記第1の受信機又は前記第2の受信機の少なくとも1つによって生成された前記データへの少なくともいくつかのエラー寄与が除去される、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記少なくともいくつかのエラー寄与は無相関ノイズを含み、
前記無相関ノイズの少なくとも一部は、第1の受信機及び第2の受信機の両方に共通ではない前記ATEの1つ又は複数のコンポーネントに起因する、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記第1のシンボルエラーベクトルと前記第2のシンボルエラーベクトルとを相互相関させることは、第1のシンボルエラーベクトルと第2のシンボルエラーベクトルのペアごとに、前記第1のシンボルエラーベクトルの1つのベクトルに、対応する第2のシンボルエラーベクトルの共役ベクトルを乗算することを含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記データの前記エラーベクトル振幅を決定することは、
(a)シンボルに対応する前記信号空間ダイヤグラム上のポイントに対して、前記第1のシンボルエラーベクトルのうちの第1のシンボルエラーベクトルと前記第2のシンボルエラーベクトルのうちの第2のエラーベクトルを相互相関させて結果を生成することと、
(b)前記相互相関させることの結果を総計に加算することと、
(c)前記データの複数のバーストに対して動作(a)と(b)を繰り返し、それによって前記複数のバーストのそれぞれに続いて前記総計を増加させることと、
(d)前記総計を前記複数のバーストの数で除算して、前記信号空間ダイヤグラム上の前記ポイントの平均を生成することと、
(e)前記平均の平方根を決定して、前記信号空間ダイヤグラム上の前記ポイントのコンポーネントエラーベクトル振幅を取得することと、
(f)前記コンポーネントエラーベクトル振幅と前記信号空間ダイヤグラム上の他のポイントの他のコンポーネントエラーベクトル振幅の二乗平均平方根を決定して、前記データの前記エラーベクトル振幅を取得することと
を含む動作を実行することを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項21】
前記第1のシンボルエラーベクトルは、前記データの第1のバーストに基づいて前記ポイントに対して生成されたシンボルエラーベクトルを含み、
前記第2のシンボルエラーベクトルは、前記データの前記第1のバーストに基づいて前記ポイントに対して生成されたシンボルエラーベクトルを含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記1つ又は複数の処理装置は、デジタル信号プロセッサを含み、
異なる相互相関演算が、前記デジタル信号プロセッサで実行されている異なる非同期スレッドで同時に実行される、請求項20に記載のシステム。
【請求項23】
前記データが1つ又は複数の完全な又は部分的なデータパケットを含み、
前記1つ又は複数の完全な又は部分的なデータパケットは、前記第1の受信機及び前記第2の受信機のトリガ動作と同時に前記DUTによって生成される、請求項16に記載のシステム。
【請求項24】
前記データは、複数のキャリア信号を有するデジタル変調信号を含み、エラーベクトル振幅が、前記複数のキャリア信号のそれぞれについて決定される、請求項16に記載のシステム。
【請求項25】
前記第1の受信機及び前記第2の受信機で受信した前記データは、直交周波数分割多重(orthogonal frequency-division multiplexing、OFDM)変調されたデータストリームのサブキャリアに由来する、請求項16に記載のシステム。
【請求項26】
前記エラーベクトル振幅は、前記OFDM変調されたデータストリームの各サブキャリアについて決定される、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記DUTからの前記データは、テストチャネルから前記データを受信して前記データを前記第1の受信機及び前記第2の受信機のそれぞれに送信するスプリッタを介して、前記第1の受信機及び前記第2の受信機で受信される、請求項16に記載のシステム。
【請求項28】
前記データの前記エラーベクトル振幅は、前記ATEのコンポーネント又は信号の少なくとも1つからの無相関ノイズに少なくとも部分的に基づいており、
前記コンポーネント又は信号の少なくとも1つは、前記第1の受信機及び前記第2の受信機に共通ではない、請求項16に記載のシステム。
【請求項29】
前記信号空間ダイヤグラム上の前記事前定義されたポイントは、前記信号空間ダイヤグラム上の理想的なポイントを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項30】
前記信号空間ダイヤグラム上の前記事前定義されたポイントは、前記信号空間ダイヤグラム上の推定ポイントを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項31】
1つ又は複数の処理装置によって実行可能な命令を記憶する1つ又は複数の非一時的機械可読記憶媒体であって、前記命令は、
第1のシンボルエラーベクトルを生成するために自動テスト機器(automatic test equipment、ATE)の第1の受信機でテスト対象デバイス(DUTから受信したデータを復調することであって、各第1のシンボルエラーベクトルは、信号空間ダイヤグラム上の事前定義されたポイントと、前記第1の受信機が受信した前記データの少なくとも一部に基づいて生成された前記信号空間ダイヤグラム上の第1の測定ポイントとの間の差を表す、復調することと、
第2のシンボルエラーベクトルを生成するために前記DUTから前記ATEの第2の受信機で受信した前記データを復調することであって、各第2のシンボルエラーベクトルは、前記信号空間ダイヤグラム上の前記事前定義されたポイントと、前記第2の受信機が受信した前記データの少なくとも一部に基づいて生成された前記信号空間ダイヤグラム上の第2の測定ポイントとの間の差を表す、復調することと、
前記第1のシンボルエラーベクトルと前記第2のシンボルエラーベクトルとに基づいて前記データの前記エラーベクトル振幅を決定することと
を含む動作を実行する、1つ又は複数の非一時的機械可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、相互相関を使用してエラーベクトル振幅を決定するためのシステムの例について説明する。
【背景技術】
【0002】
テストシステムは、マイクロプロセッサやメモリチップなどの電子デバイスの動作をテストするように構成されている。テストには、デバイスに信号を送信し、その応答に基づいてデバイスがそれらの信号にどのように反応したかを判定することが含まれ得る。例えば、テストは、集積回路(integrated circuit、IC)などのデバイスにテスト信号を送信すること、及びデバイスから戻る無線周波数(radio frequency、RF)信号を受信することを含み得る。RF信号は、デバイスが許容できるパフォーマンスを示しているかどうかを判定するために処理される。エラーベクトル振幅(error vector magnitude、EVM)は、テストシステムの信号品質の尺度である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
例示の方法は、自動テスト機器(automatic test equipment、ATE)を使用してエラーベクトル振幅を決定する。動作には、ATEの第1の受信機でテスト対象デバイス(device under test、DUT)からデータを受信すること、及び第1の受信機で受信したデータを復調して第1のシンボルエラーベクトルを生成することが含まれ、各第1のシンボルエラーベクトルは、信号空間ダイヤグラム上の事前定義されたポイントと、第1の受信機が受信したデータの少なくとも一部に基づいて生成された信号空間ダイヤグラム上の第1の測定ポイントとの間の差を表す。動作には、ATEの第2の受信機でDUTからデータを受信することも含まれ、第2の受信機は第1の受信機とは異なり、第2の受信機で受信したデータを復調して第2のシンボルエラーベクトルを生成し、各第2のシンボルエラーベクトルは、信号空間ダイヤグラム上の事前定義されたポイントと、第2の受信機が受信したデータの少なくとも一部に基づいて生成された信号空間ダイヤグラム上の第2の測定ポイントとの間の差を表す。エラーベクトル振幅は、第1のシンボルエラーベクトル及び第2のシンボルエラーベクトルに基づいてデータについて決定される。
【0004】
この方法は、第1の受信機、第2の受信機、及び方法に含まれる例示的な動作を実行するための1つ又は複数の処理装置を含むATEを使用して実行することができる。方法に含まれる例示的な動作は、1つ又は複数の非一時的機械可読記憶媒体に記憶された1つ又は複数の処理装置によって実行可能な命令を使用して実装できる。
【0005】
方法、ATE、又は機械可読記憶媒体に記憶された命令は、単独で又は組み合わせて、以下の特徴のうちの1つ又は複数を含み得る。
【0006】
受信データには、変調信号が含まれ得る。データのエラーベクトル振幅を決定することは、第1のシンボルエラーベクトルと第2のシンボルエラーベクトルとを相互相関させることを含み得る。相互相関させることは、第1の受信機又は第2の受信機の少なくとも1つによって生成されたデータへの少なくともいくつかのエラー寄与を除去する。少なくともいくつかのエラー寄与には、無相関ノイズが含まれ得る。無相関ノイズの少なくとも一部は、第1の受信機と第2の受信機の両方に共通ではないATEの1つ又は複数のコンポーネントに起因する可能性がある。第1のシンボルエラーベクトルと第2のシンボルエラーベクトルとを相互相関させることは、第1のシンボルエラーベクトルと第2のシンボルエラーベクトルのペアごとに、第1のシンボルエラーベクトルに第2のシンボルエラーベクトルの共役ベクトルを乗算することを含み得る。
【0007】
データのエラーベクトル振幅を決定することは、(a)シンボルに対応する信号空間ダイヤグラム上のポイントに対して、第1のシンボルエラーベクトルのうちの第1のシンボルエラーベクトルと第2のシンボルエラーベクトルのうちの第2のエラーベクトルを相互相関させて結果を生成することと、(b)相互相関させることの結果を総計に加算することと、(c)データの複数のバーストに対して動作(a)と(b)を繰り返し、それによって複数のバーストのそれぞれに続いて総計を増加させることと、(d)総計を複数のバーストの数で除算して、信号空間ダイヤグラム上のポイントの平均を生成することと、(e)平均の平方根を決定して、信号空間ダイヤグラム上のポイントのコンポーネントエラーベクトル振幅を取得することと、(f)コンポーネントエラーベクトル振幅と信号空間ダイヤグラム上の他のポイントの他のコンポーネントエラーベクトル振幅の二乗平均平方根を決定して、データのエラーベクトル振幅を取得することと、を含む動作を実行することを含み得る。第1のシンボルエラーベクトルは、データの第1のバーストに基づいてポイントに対して生成されたシンボルエラーベクトルを含み得、第2のシンボルエラーベクトルは、データの第1のバーストに基づいてポイントに対して生成されたシンボルエラーベクトルを含み得る。
【0008】
1つ又は複数の処理装置は、デジタル信号プロセッサを含み得る。異なる相互相関演算は、デジタル信号プロセッサで実行されている異なる非同期スレッドで同時に実行され得る。受信データには、1つ又は複数の完全な又は部分的なデータパケットが含まれ得る。1つ又は複数の完全な又は部分的なデータパケットは、第1の受信機及び第2の受信機のトリガ動作と同時にDUTによって生成され得る。
【0009】
受信データは、複数のキャリア信号を有するデジタル変調信号を含み得る。エラーベクトル振幅は、複数のキャリア信号のそれぞれについて決定することができる。第1の受信機及び第2の受信機で受信したデータは、直交周波数分割多重(orthogonal frequency-division multiplexing、OFDM)変調されたデータストリームのサブキャリアからのものであり得る。エラーベクトル振幅は、OFDM変調データストリームの各サブキャリアについて決定できる。
【0010】
DUTからのデータは、テストチャネルからデータを受信し、データを第1の受信機及び第2の受信機のそれぞれに送信するスプリッタを介して、第1の受信機及び第2の受信機で受信することができる。データのエラーベクトル振幅は、少なくとも部分的に、ATEのコンポーネント又は信号の少なくとも1つからの無相関ノイズに基づくことができる。コンポーネント又は信号の少なくとも1つは、第1の受信機と第2の受信機に共通ではない場合がある。
【0011】
信号空間ダイヤグラム上の事前定義されたポイントには、信号空間ダイヤグラム上の理想的なポイントが含まれ得る。信号空間ダイヤグラム上の事前定義されたポイントには、信号空間ダイヤグラム上の推定ポイントが含まれ得る。
【0012】
本発明の概要セクションを含む、本明細書で説明されている特徴の2つ以上を組み合わせて、本明細書で具体的に説明されていない実装形態を形成することができる。
【0013】
本明細書で説明されているテストシステム及びプロセスの少なくとも一部は、1つ又は複数の非一時的機械可読記憶媒体に記憶されている命令を1つ又は複数の処理装置で実行することによって構成又は制御することができる。非一時的機械可読記憶媒体の例には、読み取り専用メモリ、光ディスクドライブ、メモリディスクドライブ、及びランダムアクセスメモリが含まれる。本明細書で説明されているテストシステム及びプロセスの少なくとも一部は、1つ又は複数の処理装置及び1つ又は複数の処理装置によって実行可能で様々な制御動作を実行することができる命令を記憶するメモリからなるコンピューティングシステムを使用して構成又は制御され得る。
【0014】
1つ又は複数の実装形態の詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載されている。他の特徴及び利点は、説明、図面及び請求項から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本明細書で説明されている技術を実装することができる例示的なテストシステムのコンポーネントのブロック図である。
図2】例示的なテスト器具のコンポーネントのブロック図である。
図3】信号空間ダイヤグラムの例である。
図4】複数のチャネルからのエラーベクトルを相互相関させることによってエラーベクトル振幅を決定するための例示的なプロセスに含まれる例示的な動作を含むフローチャートである。
図5】本明細書で説明されている技術を実装するための例示的なマルチスレッドデジタル信号プロセッサのコンポーネントのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
異なる図における同様の参照番号は、同様の要素を示す。
【0017】
本明細書で説明されているのは、相互相関(cross-correlation、Xcorr)を使用してエラーベクトル振幅の測定値を決定するように構成された自動テスト機器(ATE)などのテストシステムの例示的な実装形態である。これに関して、集積回路(integrated circuit、IC)又は他のチップレベルのコンポーネントなどのテスト対象デバイス(device under test、DUT)に対してATEによって実行されるテストの中には、DUTの信号特性のテストがある。一実装形態では、ATEには複数のチャネルが含まれ、対応するDUTをテストするためにそれぞれ1つある。しかしながら、ATEの個々のチャネルを使用して、チャネルのノイズフロアよりも低いノイズレベルを持つDUTで正確なノイズ測定を行うことはできない。ノイズには、チャネル上の不要な不規則性、障害、信号、又はその他の干渉が含まれる。各チャネルには、電源、クロック、チャネルに接続されているその他の回路構成など、様々なソースからのノイズが含まれている。チャネル上のDUTから受信した無線周波数(radio frequency、RF)信号などの信号のノイズレベルがチャネルのノイズフロアよりも低い場合、DUTからの信号を正確に測定できないため、テスト又はその他の目的に使用することができない。したがって、本明細書で説明されているテストシステムは、ATEの2つの異なるチャネルで同じ信号を受信し、それらの信号を相互相関させるように構成されている。
【0018】
2つのチャネルのノイズレベルに関して、ノイズには相関ノイズと無相関ノイズの組み合わせが含まれる。相関ノイズには、例えば、共通の電源から発生するノイズ、共通のクロックから発生するノイズなど、両方のチャネルに共通のノイズが含まれる。無相関ノイズには、例えば、両方のチャネルに共通ではないノイズを含むがこれらに限定されないランダムノイズが含まれる。いくつかの例では、無相関ノイズには、増幅器、シンセサイザークロックなどの個々のチャネルに固有のソースから生成されたノイズが含まれる。一般に、相関ノイズと無相関ノイズは、互いに区別したり、単一チャネルでのDUT信号のノイズ寄与と区別したりすることはできない。ただし、多数のデータバーストにわたって2つのチャネルからの信号の相互相関を実行すると、無相関ノイズのレベルが低下し、2つのチャネルの相関ノイズのみが残る。使用されるデータバーストが多いほど、チャネル上の無相関ノイズがより大きく減少する。チャネルのノイズレベルを下げることにより、相互相関なしで個別にはDUTから発生するノイズとチャネルのノイズを区別できないチャネルを使用して、テストを実行できる。
【0019】
エラーベクトル振幅(EVM)は、DUTが参照コンステレーションに整列するシンボルをどれだけ正確に送信できるかを示す尺度であり、したがって、DUTの変調品質を表す性能指数である。EVM測定値は、信号の品質を示す。本明細書で説明されている技術では、EVM測定は2つの異なるATEチャネルからの信号の相互相関に基づいており、その結果、個々のATEチャネルのノイズフロアを下回るエラー寄与についてEVMを決定できる。
【0020】
例示的な実装形態では、ATEは、DUTからデータを受信するための第1の受信機と、DUTから同じデータを受信するための第2の受信機とを含む。例えば、データは、RF信号を使用して送信され得る。例えば、DUTはRF信号を送信する。その信号は、完全な又は部分的な変調されたデータパケットを含む変調信号である。RF信号スプリッタは2つのチャネルより先にあり、各チャネルに同じ信号を提供することができる。デジタル信号プロセッサ(digital signal processor、DSP)などの1つ又は複数の処理装置は、第1のシンボルエラーベクトルを生成するために第1の受信機で受信したデータを復調することであって、各第1のシンボルエラーベクトルは、信号空間ダイヤグラム上の理想的なポイントなどの事前定義されたポイントと、第1の受信機が受信したデータの少なくとも一部に基づいて生成された信号空間ダイヤグラム上の第1の測定ポイントとの間の差を表す、復調することと、第2のシンボルエラーベクトルを生成するために第2の受信機で受信したデータを復調することであって、各第2のシンボルエラーベクトルは、信号空間ダイヤグラム上の理想的なポイントなどの事前定義されたポイントと、第2の受信機が受信したデータの少なくとも一部に基づいて生成された信号空間ダイヤグラム上の第2の測定ポイントとの間の差を表す、復調することと、を含む動作を実行する命令を実行するように構成され得る。1つ又は複数の処理装置は、第1のシンボルエラーベクトル及び第2のシンボルエラーベクトルを相互相関させることにより、第1のシンボルエラーベクトル及び第2のシンボルエラーベクトルに基づいて、データのEVMを決定する。相互相関させることは、第1の受信機又は第2の受信機の少なくとも1つが受信したデータへの無相関ノイズなどの少なくともいくつかのエラー寄与を除去する。
【0021】
図1は、本明細書で説明されている技術を実装するために使用できる例示的なATE10のコンポーネントを示している。図1で、破線は、概念的に、システムのコンポーネント間の潜在的な信号パスを表している。
【0022】
ATE10は、テストヘッド12及び制御システム13を含む。制御システムは、本明細書で説明されているような1つ又は複数のマイクロプロセッサ又は他の適切な処理装置から構成されるコンピューティングシステムを含み得る。デバイスインタフェースボード(device interface board、DIB)15は、テストヘッド12に接続され、ATEによってテストされている、又はテストされる予定のDUT11などの1つ又は複数のDUTへの機械的及び電気的インタフェースを含むプリント回路基板(printed circuit board、PCB)を含む。電圧を含む電力は、DIB内の1つ又は複数の導管を介してDIBに接続されたDUTに流され得る。
【0023】
図1の例では、DIB15は、電気的及び機械的に、テストヘッド12に接続している。DIBは、ピン、導電性トレース、又はDUTが接続することができる電気的及び機械的接続の他のポイントを含み得るサイト19を含む。RF信号などのテスト信号と応答信号、及びその他の信号は、テストチャネルを介してDUTとテスト器具の間のサイトにわたって通過する。DIB15はまた、とりわけ、テスト器具、サイト19に接続されたDUT、及び他の回路構成の間で信号をルーティングするためのコネクタ、導電性トレース及び回路構成を含み得る。
【0024】
制御システム13は、テストヘッドに含まれるコンポーネントと通信して、テストを制御する。例えば、制御システム13は、テストプログラムセットをダウンロードしてテストヘッド内の器具16A~16Nをテストすることができる。テスト器具は、1つ又は複数の処理装置及び他の回路構成を含み得るハードウェア装置を含む。テスト器具16A~16Nは、テストプログラムセットを実行してテスト器具と通信するDUTをテストすることができる。制御システム13はまた、テストヘッド内のテスト器具に、指示、テストデータ、及び/又はテスト器具によって使用可能な他の情報を送信して、DIBにインタフェース接続されたDUT上で適切なテストを実行することができる。いくつかの実装形態では、この情報は、コンピュータ又は他のタイプのネットワークを介して、又は直接電気経路を介して送信され得る。いくつかの実装形態では、この情報はローカルエリアネットワーク(LAN)又はワイドエリアネットワーク(WAN)を介して送信され得る。
【0025】
一例では、テストプログラムは、DUTに提供するテストフローを生成する。テストフローは、例えば、DUTからの応答を引き出すためのテスト信号を出力するように書き込まれる。前述のように、テスト信号とDUTからの応答にはRF信号が含まれ得る。
【0026】
図1の例では、ATE10は、複数のテスト器具16A~16Nを含み、それらのそれぞれは、必要に応じて、テスト及び/又は他の機能の1つ又は複数を実行するように構成され得る。4つのテスト器具のみが示されているが、システムは、テストヘッド12の外側にあるものを含む、任意の適切な数のテスト器具を含むことができる。いくつかの実装形態では、各テスト器具は、例えば、制御システムによって提供されるデータに基づいてDUTをテストするために、及びDUTからデジタル又はRF応答信号を受信するために、デジタル又はRF信号を出力するように構成され得る。異なるテスト器具が、異なるタイプのテストを実行するように構成され得、及び/又は異なるDUTをテストするように構成され得る。例えば、テスト器具は、RFテスト信号をDUTに送信し、RF応答信号をDUTから受信するためのRFテスト器具16Bを含み得る。受信信号には、テスト信号に基づくRF応答信号、及び/又はテスト信号によって促されていない(例えば、テスト信号に応じたものではない)DUTから発信される信号が含まれ得る。いくつかの実装形態では、DUT、DIB、及びテスト信号と応答信号が送信されるテスト器具インタフェースの間に、同軸ワイヤなどの導電体が存在してもよい。
【0027】
RF信号を含む信号は、複数のテストチャネル又は他の導電性媒体を介してDUTとの間で送受信され得る。いくつかの例では、テストチャネルは、信号がテスト器具からDUTに送信され、信号がDUTから受信される、1つ又は複数の物理的な伝送媒体を含み得る。物理的伝送媒体には、電気導体のみ、又は光導体と組み合わせたもの、無線伝送媒体、又は光導体と無線伝送媒体の両方が含まれ得るが、これらに限定されない。いくつかの例では、テストチャネルは、信号が1つ又は複数の物理的伝送媒体を介して送信される周波数の範囲を含み得る。テストチャネルには、DIB上の導電性トレースを含めるか、電気的に接続することができる。テストチャネルには、信号を受信及びデジタル化するためのテスト器具上のハードウェアも含まれ得る。
【0028】
いくつかの例では、ATE10は、テスト器具テストチャネル21をDIB15に接続する接続インタフェース18を含む。接続インタフェース18は、テスト器具とDIB15との間で信号をルーティングするためのコネクタ20又は他のデバイスを含み得る。例えば、接続インタフェースは、そのようなコネクタが取り付けられている1つ又は複数の回路基板又は他の基板を含み得る。テストチャネルに含まれる導体は、接続インタフェースとDIBを介してルーティングできる。
【0029】
図2は、RFテスト器具26に焦点を合わせた、ATE10などのテストシステム25のコンポーネントの例示的な実装形態を示すブロック図である。RFテスト器具26は、RFテスト器具16Bの実装形態であり得る。この例では、RFテスト器具26は、テストシステムのチャネルを介して、DIB30上のDUT29からのRF信号を受信し、RFテスト器具26に含まれる異なるチャネル32及び33に2つの同一のRF信号を出力するように構成されたRFスプリッタ28を含む。チャネル32は、受信機35及びデジタイザ36を含み、チャネル33は、受信機39及びデジタイザ40を含む。この例では、受信機はチャネルの一部であり得、RF信号を受信することができる任意のハードウェアを含む。各受信機35及び39は、同じRF信号を受信し、そのRF信号をそれぞれのデジタイザ36及び40に出力する。各デジタイザ36及び40は、各受信機によって導入されたノイズを含む、チャネルによって導入された相関ノイズ及び無相関ノイズの両方を含む、RF信号を表すデジタルデータを生成及び出力する。
【0030】
この例では、テストシステム25は、図1にも示されているDSP42を含む。この例では、DSP42はマルチスレッドである。DSP42は、各チャネルからデータを受信し、デジタルデータを復調する。データの復調には、データから信号空間の理想的なポイントと実際のポイントを計算し、信号空間ダイヤグラム上の理想的なポイントと信号空間ダイヤグラム上の実際の測定ポイントとの差を表すシンボルエラーベクトルを生成することが含まれる。例示的な信号空間ダイヤグラムには、RF信号を使用して送信されたシンボルのグラフィック表現が含まれている。これに関して、デジタル変調された信号は、正弦波キャリアをデータ信号と混合することにより、正弦波キャリア信号を使用して情報を符号化する。データ信号は、キャリア信号の振幅、位相角、又は振幅と位相角の両方を変更して、変調信号を生成する。変調信号には、振幅値と位相値の組み合わせが含まれる。振幅値と位相値のこの組み合わせは、データの1つ又は複数のビットを表すシンボルを表すことができる。これらのシンボルは、信号空間ダイヤグラム上のポイントに対応している。信号空間ダイヤグラム上の各ポイントの位置は、その対応するシンボルに関連付けられた振幅と位相角に基づいている。例えば、図3の例示の信号空間ダイヤグラム45に示すように、4ビットシンボルを表すポイントは、同相(I)及び直交(Q)複素平面を表す2次元グラフ上に配置される。この例では、各ポイントはその平面内のシンボルの理想的な位置を表している。しかし、他の例では、各ポイントは平面内の理想的なポイントの推定位置を表し得る。
【0031】
DSP42が受信データを復調すると、DSPは、信号空間ダイヤグラム上のデータで表される「0001」などのシンボルの位置を識別する。場合によっては、データによって表されるシンボルの位置が、理想的な参照信号空間ダイヤグラム上のそのシンボルの位置と一致しない。例えば、データによって表されるシンボル(0001)は、信号空間ダイヤグラム上のポイント46に配置できる。理想的なポイント47と測定ポイント46の間の差はエラーを構成し、これは、データの基になっているRF信号のノイズが原因である可能性がある。このエラーは、信号空間ダイヤグラムの最も近い所定のポイントを基準にして決定することができる。エラーベクトル49は、所定のポイントと測定されたポイントとの間のこの位置の差を表す。したがって、信号空間ダイヤグラムを使用して、エラーベクトルは測定信号のエラーを表す。
【0032】
上記のように、測定信号のエラーの原因には、相関ノイズと無相関ノイズが含まれる。無相関ノイズによって生成されるエラーを減らすために、同じシンボルの同じ信号からのエラーベクトルを相互相関させることができる。一例では、エラーベクトルを相互相関させることは、第1のシンボルエラーベクトルと第2のシンボルエラーベクトルのペアごとに、第1のシンボルエラーベクトルに第2のシンボルエラーベクトルの共役ベクトルを乗算することを含む。相互相関させることは、EVMに対する無相関ノイズの影響を低減する。以下で説明するように、同じシンボルを表す複数の、例えば、10、100、又は1000個のデータバーストのエラーベクトルは、この方法で処理できる。一般に、相互相関するエラーベクトルが多いほど、エラーの減少が大きくなる。しかしながら、いくつかの例では、ノイズを連続的に低減するには、指数関数的に多くのエラーベクトルが必要になる。一例では、5デシベルのノイズ低減を達成するために、10バーストのデータが必要になる場合がある。その後、更に5デシベルのノイズ低減を実現するには、100バーストのデータが必要になり得る。次に、更に5デシベルのノイズリダクションを実現するには、1000バーストのデータなどが必要になり得る。他の例では、これは当てはまらない場合がある。
【0033】
相互相関は、相関複素ベクトルを無相関複素ベクトルから分離する。これに関して、2つの信号の相互相関は、2つの信号の相関成分の推定値を提供する。2つの同一の信号、つまり相関信号の相互相関により、その信号の振幅の2乗が得られる。2つの無相関信号の相互相関により、別の無相関(一見ランダムな)信号が生成される。複合信号、例えば、相関と無相関の合計成分を含む信号からの相互相関結果を平均すると、信号の非相関(ランダム)成分の平均はゼロになる傾向があるので、その信号の相関成分の振幅の推定値が得られる。複素信号に対して実行される相互相関は、振幅のみを返し、フェーズ情報は失われる。
【0034】
以下は、EVM相互相関の数学的原理を示している。
:複素平面で表された受信機チャネル1による信号キャプチャからのシンボルエラーベクトル
:複素平面で表された受信機チャネル2による信号キャプチャからのシンボルエラーベクトル
DUT:複素平面で表されたDUTからのシンボルエラーベクトル
rcv1:複素平面で表された受信機チャネル1からのシンボルエラーベクトル
rcv2:複素平面で表された受信機チャネル2からのシンボルエラーベクトル
【0035】
全てのエラーベクトルeは、ゼロ平均で、無相関のランダムな構成である。各エラーベクトル振幅の分散は、σDUT 、σrcv1 及びσrcv2 で表される。「無相関」は、これらのエラーベクトル間の実数部と虚数部の交雑組み合わせがゼロ平均になることを意味し、ここで、「Re」は、下記相互相関の各ベクトルEの実数成分を指し、「Im」は虚数成分を指す:
E(Re(eDUT)・Re(ercv1))=E(Im(eDUT)・Im(ercv1))=E(Re(eDUT)・Im(ercv1))=E(Im(eDUT)・Re(ercv1))=0
E(Re(eDUT)・Re(ercv2))=E(Im(eDUT)・Im(ercv2))=E(Re(eDUT)・Im(ercv2))=E(Im(eDUT)・Re(ercv2))=0
E(Re(ercv1)・Re(ercv2))=E(Im(ercv1)・Im(ercv2))=E(Re(ercv1)・Im(ercv2))=E(Im(ercv1)・Re(ercv2))=0
【0036】
当然の結果として、これらのエラーベクトル間の共役射影の交雑組み合わせもゼロベクトル平均になる:
E(eDUT・ercv1)=E(eDUT ・ercv1 )=E(eDUT・ercv1 )=E(eDUT ・ercv1)=0
E(eDUT・ercv2)=E(eDUT ・ercv2 )=E(eDUT・ercv2 )=E(eDUT ・ercv2)=0
E(ercv1・ercv2)=E(ercv1 ・ercv2 )=E(ercv1・ercv2 )=E(ercv1 ・ercv2)=0
【0037】
両方のキャプチャからのエラーベクトル間の相互相関演算は次のとおりである:
E(e・e )=E((eDUT+ercv1)・(eDUT+ercv2
=E(eDUT・eDUT +ercv1・eDUT +eDUT・ercv2 +ercv1・ercv2
=E(eDUT・eDUT )+E(ercv1・eDUT )+E(eDUT・ercv2 )+E(ercv1・ercv2
=E(eDUT・eDUT )=σDUT
【0038】
したがって、相互相関演算は、各受信機チャネルからの無相関ノイズを含む、無相関エラー寄与を漸近的に除去する。
【0039】
本明細書で説明されているシステムでは、復調プロセスの出力は、1つ又は複数の信号空間ポイントであり、それが理想的な1つ又は複数の信号空間ポイントから差し引かれると、複素値が生成される。2つの受信機を使用して共通のDUT信号を測定する場合、相互相関推定を使用して、無相関ノイズエラーをDUTエラー測定から除去することができる。
【0040】
図4は、複数のATEチャネルを介してDUTから受信された信号に基づいてEVMを決定するための例示的なプロセス50を示すフローチャートである。プロセス50は、変調されたRF信号をATEに提供するためのDUTの構成及び制御(51)を含む。信号は、ATEのチャネルを介して送信することができ、DUTに送信される刺激又はテスト信号に応じたものであり得る。この例では、2つの受信機がDUTから同じ信号を受信するように構成されている(52)。前に説明したように、DUTからの信号は、チャネル内の受信機の前に配置されているRFスプリッタを使用して複製できる。RF信号のデータはデジタル化され(53)、結果として得られるデジタルデータは、(54)でDSPに提供されDSPによって受信される。RF信号によって表されるデータは、1つ又は複数の完全な又は部分的なデータパケットを含み得る。1つ又は複数の完全な又は部分的なデータパケットは、第1の受信機及び第2の受信機のトリガ動作と同時にDUTによって生成され得る。DSPは、動作55から63を実行して信号のEVM結果を生成するように構成されている。
【0041】
動作には、第1の受信機で受信したデータを復調(55)して、第1のシンボルエラーベクトルを生成することが含まれる。前述のように、各第1のシンボルエラーベクトルは、信号空間ダイヤグラム上の事前定義されたポイントと、第1の受信機が受信したデータの少なくとも一部に基づいて生成された信号空間ダイヤグラム上の第1の測定ポイントとの間の差を表す。この動作には、第2の受信機で受信したデータを復調して(56)、第2のシンボルエラーベクトルを生成することも含まれる。前述のように、各第2のシンボルエラーベクトルは、信号空間ダイヤグラム上の事前定義されたポイントと、第2の受信機が受信したデータの少なくとも一部に基づいて生成された信号空間ダイヤグラム上の第2の測定ポイントとの間の差を表す。第1の受信機と第2の受信機が受信したデータは、信号空間ダイヤグラム上の同じ1つ又は複数のシンボルを表す同じデータである。データには、相関ノイズと無相関ノイズの両方が含まれる。相互相関は、EVMの結果から無相関のノイズ成分を低減又は除去するために実行される。
【0042】
動作57は、第1の受信機からのデータに基づいて生成された第1のシンボルエラーベクトルと、第1の受信機からのデータに基づいて生成された第2のシンボルエラーベクトルとを相互相関させることを含む。これに関して、第1のシンボルエラーベクトルは、データの第1のバーストに基づいてポイントに対して生成されたシンボルエラーベクトルを含み、第2のシンボルエラーベクトルは、データの第1のバーストに基づいてポイントに対して生成されたシンボルエラーベクトルを含む。相互相関は信号空間ダイヤグラム上のポイントに対するものであり、シンボルエラーベクトルがそのポイントを基準にしているためである。相互相関の結果は、コンピュータのメモリに記憶されている総計に加算される(59)。総計は、同じシンボルを表す複数のデータバーストの相互相関値の合計を表す。例えば、プロセス50の一部として、DUTは、それぞれが同じ1つ又は複数のシンボルを表す複数のデータバーストを直列に出力することができる。各データバーストは、動作52~59に従って処理され得、そのための相互相関結果は、コンピュータメモリに記憶された総計に加算される。
【0043】
同じ1つ又は複数のシンボルの全てのデータバーストが処理されていない場合(58)、フローは動作52に戻る。そこで、次のバーストを表すデータは、前述のように、第1の受信機及び第2の受信機によって受信される。いくつかの例では、動作52~59は、数十回、数百回、数千回、又はそれ以上繰り返され得る。動作52~59が繰り返されるたびに、総計の値が増加する。前述のとおり、本明細書で説明するように相互相関及び処理されるエラーベクトルが多いほど、より多くの無相関ノイズがEVM結果から除去され得る。
【0044】
同じ1つ又は複数のシンボルの全てのデータバーストが処理された後(58)、フローは動作60に進む。動作60は、総計を複数のバーストの数で除算して、平均シンボルエラーを生成する。例えば、同じシンボルを表す一連のバーストの数が100の場合、総計を100で割って平均を算出する。動作61は、平均シンボルエラーの平方根を決定する。平均の平方根は、シンボルの平均推定EVMを構成する。システムのEVMを取得するために、各シンボルの推定EVMが考慮される。
【0045】
より具体的には、システムのEVMを取得するために、動作62は、信号空間ダイヤグラム上の他のシンボルのコンポーネントエラーベクトル振幅及び他のコンポーネントエラーベクトル振幅の二乗平均平方根(root-mean-square、RMS)を決定する。言い換えると、動作62は、信号空間ダイヤグラム45のポイント47などのシンボルの平均推定EVMの二乗平均平方根、及びポイント64、65などの他の全てのシンボル又は他のシンボルのセットの平均推定EVMの二乗平均平方根を決定する。次に、EVMの結果が出力される(63)。例えば、EVMの結果は、図1の制御システムなどのコンピューティングシステムのモニタに表示できる。一例では、DUTがテストに合格するか失敗するかを判断するために、EVMの結果がATEソフトウェアによって指定された限度と比較される。
【0046】
いくつかの実装形態では、第1及び第2の受信機が受信したデータは、複数のキャリア信号を有する変調信号を含む。例えば、第1の受信機及び第2の受信機で受信したデータは、直交周波数分割多重(OFDM)変調されたデータストリームのサブキャリアからのものであり得る。これらの実装形態では、エラーベクトル振幅は、複数のサブキャリア信号のそれぞれについて決定される。例えば、エラーベクトル振幅は、OFDM変調されたデータストリームの各サブキャリアについて決定され得る。
【0047】
いくつかの実装形態では、DSP42は、異なるスレッドを同時期に、例えば同時に実行するように構成されている。一例では、DSP上で実行される異なる非同期スレッド上で、異なる相互相関演算が同時に実行され得る。これを図5に概念的に示す。そこで、デジタルデータは、図2のDSPと同じであり得るDSP65において、図2のデジタイザと同じであり得るデジタイザ66及び67から受信される。データは、モジュール69を介して、DSP上で実行されている複数のスレッド70に分配される。いくつかの実装形態では、DSP65で実行されるスレッドの数は、複数のバーストの数と等しくなり得る。つまり、各バーストからのデータは、個別のスレッドによって処理され得る。いくつかの実装形態では、これが当てはまらない場合がある。例えば、データバーストの数はスレッドの数の倍数である可能性がある。2つ以上のスレッドによって実行される処理の少なくとも一部は同時であり得る。示されるように、各スレッドは、対応する受信機用の復調器71及び72と相互相関モジュール74とを含む。各相互相関の結果が加算及び記憶されて、総計が生成される(75)。総計をバースト数で除算して、平均を生成する(76)。この例では、各信号空間ポイントの平均が合計され(77)、結果の合計の平方根が決定され(78)、EVMが取得される(79)。
【0048】
いくつかの実装形態では、相互相関は、共通のチャネルカード上にある2つの受信機チャネル上で、又は別個の(例えば、個別の)チャネルカード上にある2つの受信機チャネルで実行され得る。テスターのアーキテクチャによっては、後者(別個のチャネルカードの受信機)の相関ノイズが前者よりも少ない場合がある。例えば、図2を参照すると、チャネル32は1つのチャネルカード上にあり得、チャネル33は異なる個別のチャネルカード上にあり得る。この例のチャネルカードは、異なる、及び/又は個別のハードウェアを使用して実装されているため、同じチャネルカードに実装されている同じチャネルに比べて無相関ノイズの量が増える可能性がある。したがって、本明細書で説明されている技術を使用して、同じチャネルカード上の2つのチャネルを使用して生成される対応するノイズ低減と比較して、追加のノイズ低減を提供することができる。
【0049】
本明細書で説明されている技術は、上記のように、チップレベルのデバイスに実装することができる。本明細書で説明されている技術は、システムレベルテスト、すなわちシステムレベルでのテストを実行するときにも実施することができる。
【0050】
本明細書で説明されているテストシステム及びプロセスの全部又は一部、並びにそれらの様々な修正は、1つ又は複数の非一時的機械可読記憶媒体内など、1つ又は複数の情報キャリアに実体として具体化された1つ又は複数のコンピュータプログラムを使用する制御システム13などの、1つ又は複数のコンピュータによって少なくとも部分的に構成又は制御され得る。コンピュータプログラムは、コンパイルされるか解釈される言語を含んで、いかなる形式のプログラミング言語でも書くことができ、そしてそれは、スタンドアロンプログラムとして、又は、モジュール、パーツ、サブルーチン若しくはコンピューティング環境での使用に適した他のユニットとして、ということを含んで、いかなる形式でも展開することができる。コンピュータプログラムは、1台のコンピュータ上で、又は、1つのサイトにあるか又は複数のサイト全体に分散されネットワークによって相互接続される複数のコンピュータ上で実行されるように展開することができる。
【0051】
本明細書で説明されているテストシステム及びプロセスの構成又は制御に関連するアクションは、本明細書に記載の動作の全て又は一部を制御又は実行するために1つ又は複数のコンピュータプログラムを実行する1つ又は複数のプログラム可能なプロセッサによって実行できる。テストシステム及びプロセスの全て又は一部は、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)及び/又はASIC(特定用途向け集積回路)又は器具のハードウェアにローカライズされた組み込みマイクロプロセッサ(複数可)などの専用ロジック回路構成によって構成又は制御できる。
【0052】
コンピュータプログラムの実行に適しているプロセッサには、例えば、汎用及び専用の両方のマイクロプロセッサ、及び任意の種類のデジタルコンピュータの任意の1つ又は複数のプロセッサが含まれる。一般に、プロセッサは、読み取り専用ストレージ領域又はランダムアクセスストレージ領域、或いはその両方から命令とデータを受信する。コンピュータの要素には、命令を実行するための1つ又は複数のプロセッサと、命令及びデータを格納するための1つ又は複数の記憶域デバイスが含まれる。一般に、コンピュータはまた、磁気や光磁気ディスク、若しくは光ディスクなどの、データを記憶するための大容量記憶装置などの1つ又は複数の機械可読記憶媒体を、含んでいるか、又は、そこからデータを受信するか、若しくはそこにデータを転送するか、若しくはその両方を行うために、動作可能に結合されている。コンピュータプログラムの命令及びデータを具体化するのに適した非一時的機械可読記憶媒体には、例えば、EPROM(消去可能なプログラマブル読み取り専用メモリ)、EEPROM(電気的消去可能なプログラム可能読み取り専用メモリ)、及びフラッシュ記憶域デバイスなどの、半導体記憶領域デバイス、内蔵ハードディスク又はリムーバブルディスクなどの磁気ディスク、光磁気ディスク、並びに、CD-ROM(コンパクトディスク読み取り専用メモリ)及びDVD-ROM(デジタル多用途ディスク読み取り専用メモリ)を含む、あらゆる形態の不揮発性記憶領域が含まれる。
【0053】
説明されている異なる実装形態の要素は、具体的に以前に記載されていない他の実装形態を形成するために組み合わせることができる。要素は、それらの動作又は一般的なシステムの動作に悪影響を与えることなく、前述のシステムから除外することができる。更に、本明細書で説明されている機能を実行するために、様々な個別の要素を1つ又は複数の個々の要素に組み合わせることができる。
【0054】
本明細書で具体的に説明されていない他の実装形態も、以下の請求項の範囲内である。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】