IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ノルディック・ビオサイエンス・エー/エスの特許一覧

特表2023-504458IV型コラーゲンのプロテアーゼ媒介分解を測定するネオエピトープ特異的アッセイ
<>
  • 特表-IV型コラーゲンのプロテアーゼ媒介分解を測定するネオエピトープ特異的アッセイ 図1
  • 特表-IV型コラーゲンのプロテアーゼ媒介分解を測定するネオエピトープ特異的アッセイ 図2
  • 特表-IV型コラーゲンのプロテアーゼ媒介分解を測定するネオエピトープ特異的アッセイ 図3
  • 特表-IV型コラーゲンのプロテアーゼ媒介分解を測定するネオエピトープ特異的アッセイ 図4
  • 特表-IV型コラーゲンのプロテアーゼ媒介分解を測定するネオエピトープ特異的アッセイ 図5
  • 特表-IV型コラーゲンのプロテアーゼ媒介分解を測定するネオエピトープ特異的アッセイ 図6
  • 特表-IV型コラーゲンのプロテアーゼ媒介分解を測定するネオエピトープ特異的アッセイ 図7
  • 特表-IV型コラーゲンのプロテアーゼ媒介分解を測定するネオエピトープ特異的アッセイ 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-03
(54)【発明の名称】IV型コラーゲンのプロテアーゼ媒介分解を測定するネオエピトープ特異的アッセイ
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20230127BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20230127BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230127BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230127BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230127BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230127BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230127BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230127BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20230127BHJP
【FI】
C07K16/18
G01N33/574 A ZNA
G01N33/53 D
A61P35/00
A61P35/04
A61P37/04
A61K45/00
A61K39/395 U
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022532094
(86)(22)【出願日】2020-12-03
(85)【翻訳文提出日】2022-07-29
(86)【国際出願番号】 EP2020084432
(87)【国際公開番号】W WO2021110818
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】1917819.3
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.BRIJ
(71)【出願人】
【識別番号】503259129
【氏名又は名称】ノルディック・ビオサイエンス・エー/エス
【氏名又は名称原語表記】NORDIC BIOSCIENCE A/S
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】ウィルムセン,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】イェンセン,クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】カルスダル,モルテン,エー.
【テーマコード(参考)】
4B064
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA20
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA14
4C084AA17
4C084NA05
4C084ZB021
4C084ZB022
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB261
4C084ZB271
4C084ZC412
4C085AA14
4C085BB12
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA70
4H045BA71
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA51
4H045FA71
4H045GA26
(57)【要約】
IV型コラーゲンのプロテアーゼ媒介分解を測定するアッセイ、及び、T細胞許容性腫瘍微小環境を有する癌患者を同定するためのそのバイオマーカーの可能性が記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)を有するペプチドを特異的に認識し、それと結合するモノクローナル抗体。
【請求項2】
前記モノクローナル抗体は、N-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)を有する合成ペプチドに対抗して産出させたモノクローナル抗体である、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項3】
前記抗体は、N-末端アミノ酸配列XMGNTGPTGAV(配列番号2)[ここでXはアミノ酸を表す。]を有するペプチドを特異的に認識しないか、または、それと結合しない、請求項1又は請求項2に記載のモノクローナル抗体。
【請求項4】
前記抗体は、N-末端アミノ酸配列GNTGPTGAV(配列番号3)を有するペプチドを特異的に認識しないか、または、それと結合しない、前記請求項のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体。
【請求項5】
前記抗体は、N-末端アミノ酸配列MGQTGPTGAV(配列番号4)を有するペプチドを特異的に認識しないか、または、それと結合しない、前記請求項のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体。
【請求項6】
前記抗体は、N-末端アミノ酸配列QGNTGPTGAV(配列番号6)を有するペプチドを特異的に認識しないか、または、それと結合しない、前記請求項のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体。
【請求項7】
前記抗体は、N-末端アミノ酸配列MGNSGPTGAV(配列番号5)を有するペプチドを特異的に認識しないか、または、それと結合しない、前記請求項のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体。
【請求項8】
癌患者が免疫療法に反応するか否かを識別する方法であって、前記方法は、N-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)を有するペプチドの存在を検出することを含む。
【請求項9】
癌患者の生存転帰を予測する方法であって、前記方法は、N-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)を有するペプチドの存在を検出することを含む。
【請求項10】
当該方法は、イムノアッセイであり、患者から得られた生体液試料をN-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)を有するペプチドを特異的に認識し、それと結合するモノクローナル抗体と接触させること、及び、前記モノクローナル抗体と試料中のペプチドとの間の結合を検出することを含む、請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記検出は定量的である、請求項9または請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記イムノアッセイは競合イムノアッセイである、請求項8乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記モノクローナル抗体は、N-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)を有する合成ペプチドに対抗して産出させたモノクローナル抗体である、請求項8乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体は、N-末端アミノ酸配列XMGNTGPTGAV(配列番号2)[ここでXはアミノ酸を表す。]を有するペプチドを特異的に認識しないか、または、それと結合しない、請求項8乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体は、N-末端アミノ酸配列GNTGPTGAV(配列番号3)を有するペプチドを特異的に認識しないか、または、それと結合しない、請求項8乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体は、N-末端アミノ酸配列MGQTGPTGAV(配列番号4)を有するペプチドを特異的に認識しないか、または、それと結合しない、請求項8乃至15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記抗体は、N-末端アミノ酸配列QGNTGPTGAV(配列番号6)を有するペプチドを特異的に認識しないか、または、それと結合しない、請求項8乃至16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記抗体は、N-末端アミノ酸配列MGNSGPTGAV(配列番号5)を有するペプチドを特異的に認識しないか、または、それと結合しない、請求項8乃至17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記患者は、メラノーマ、乳癌、大腸癌、胃癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、卵巣癌、前立腺癌、及び、膵臓癌から選ばれる癌であると診断された患者である、請求項8乃至18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記患者はメラノーマ、好ましくは転移性メラノーマである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記方法は、前記ペプチドの量を、正常な健常者に関連する値および/または免疫療法に反応した癌患者から得られた値と相関させることを、さらに含む、請求項8、請求項10乃至20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記方法は、存在するペプチドが高レベルである患者に対して免疫療法を適用することを、さらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記免疫療法は、少なくとも一つの免疫チェックポイント阻害剤を含む、請求項8乃至22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記免疫チェックポイント阻害剤はイピリムマブである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
N-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)を有するペプチドを特異的に認識し、それと結合するモノクローナル抗体、及び、下記のうち少なくとも1つ:
- ストレプトアビジンを被覆したウエルプレート;
- N-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)を有するC-末端ビオチニル化ペプチド;
- N-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)を有する較正ペプチド;
- 抗体ビオチニル化キット;
- 抗体HRP標識化キット;
- 抗体放射標識化キット;及び、
- アッセイ視覚化キット
を含むアッセイキット。
【請求項26】
前記モノクローナル抗体は、N-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)を有する合成ペプチドに対抗して産出させたモノクローナル抗体である、請求項25に記載のアッセイキット。
【請求項27】
前記抗体は、N-末端アミノ酸配列XMGNTGPTGAV(配列番号2)[ここでXはアミノ酸を表す。]を有するペプチドを特異的に認識しないか、または、それと結合しない、請求項25又は請求項26に記載のアッセイキット。
【請求項28】
前記抗体は、N-末端アミノ酸配列GNTGPTGAV(配列番号3)を有するペプチドを特異的に認識しないか、または、それと結合しない、請求項25乃至27のいずれか一項に記載のアッセイキット。
【請求項29】
前記抗体は、N-末端アミノ酸配列MGQTGPTGAV(配列番号4)を有するペプチドを特異的に認識しないか、または、それと結合しない、請求項25乃至28のいずれか一項に記載のアッセイキット。
【請求項30】
前記抗体は、N-末端アミノ酸配列QGNTGPTGAV(配列番号6)を有するペプチドを特異的に認識しないか、または、それと結合しない、請求項25乃至29のいずれか一項に記載のアッセイキット。
【請求項31】
前記抗体は、N-末端アミノ酸配列MGNSGPTGAV(配列番号5)を有するペプチドを特異的に認識しないか、または、それと結合しない、請求項25乃至30のいずれか一項に記載のアッセイキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、T細胞許容性腫瘍微小環境(T-cell permissive tumor microenvironment)の癌患者を同定することが可能な、IV型コラーゲンのプロテアーゼ媒介分解を測定するアッセイ及びそのバイオマーカーに関する。
【0002】
緒言
免疫チェックポイント阻害剤を用いる免疫療法は、永続的反応の機会を与えることによって癌治療に革命をもたらした(引用1)。免疫チェックポイント阻害剤の処置には、抗CTLA-4、抗PD1及び抗PD-L1として、細胞傷害性Tリンパ球を再活性化して腫瘍細胞を排除することができる抗体が関連する。しかし、これらの免疫チェックポイント阻害剤が臨床的に成功しているにもかかわらず、癌患者の下位群のうち一部しか長期生存の恩恵を有していない。したがって、誤った治療及び有害事象を回避するために、免疫チェックポイント阻害剤療法に反応する癌患者を同定することができる非侵襲性バイオマーカーを同定することが重要である。予測バイオマーカーを同定するためには、反応及び耐性に影響を及ぼすいくつかの因子を理解することが不可欠である。
【0003】
免疫チェックポイント療法に対する人の反応と相関する、治療を受ける前の患者の3つの異なる免疫プロファイルが同定されている(引用2)。臨床反応は、免疫炎症性腫瘍型(immune-inflamed tumor type)の患者において、最も頻繁に起こる。これは、腫瘍細胞近傍の腫瘍微小環境においてCD4及びCD8発現T細胞が存在していることを特徴とする。免疫排除表現型(The immune-excluded phenotype)は、免疫細胞が存在していることを特徴とするが、それらは周囲の間質に保持され、T細胞浸潤を阻止する。免疫砂漠表現型(immune-desert phenotype)では、腫瘍実質または間質のいずれにも、T細胞は存在しない。免疫排除表現型または免疫砂漠表現型を有する患者は、免疫チェックポイント阻害剤療法にほとんど反応しないため、免疫炎症性腫瘍型を同定するバイオマーカーは非常に有用な予測ツールとなり得る。効率的な癌免疫療法のためには、T細胞が活性化され、腫瘍微小環境に動員される(これは免疫炎症表現型(“ホット腫瘍”)の特徴である。(引用3))ことが重要である。
【0004】
細胞外マトリックス(ECM)の組成は、T細胞の位置及び移動に影響を及ぼすことが示されており、免疫療法に対する耐性において重要な役割を有することが認められている(引用4-7)。本発明者らは以前に、過剰なIII型コラーゲン形成(線維形成)を反映する血清学的バイオマーカーPRO-C3及びマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)-9分解IV型コラーゲンを反映するバイオマーカーC4Mが、免疫チェックポイント阻害に対する不良な反応に関連することを示した(引用8)。これに加えて、C4Mは様々な癌患者で上昇している(引用9、10)。
【0005】
興味深いことに、T細胞はまた、侵襲的挙動を誘導するプロテアーゼを、T細胞内に発現する(引用11、12)。遊走するT細胞はMMP及びセリンプロテアーゼ(グランザイムB)を分泌し、経路上にある基底膜を通過して下層の組織に入ることが示されている(引用11、13-15)。
【発明の概要】
【0006】
IV型コラーゲンは基底膜の主成分であるため、本発明者らは、循環から腫瘍微小環境へのT細胞遊走が関与して、特定のプロテアーゼ生成IV型コラーゲン断片が、癌患者の循環に放出されると仮定した。したがって、これらのIV型コラーゲン断片は、免疫チェックポイント阻害剤の治療に反応するT細胞許容性腫瘍微小環境を有する癌患者を同定するバイオマーカーの可能性を有し得る。本発明者らは、これより、IV型コラーゲンのプロテアーゼ媒介性分解のネオエピトープを標的とする競合的電気化学発光イムノアッセイ(ECLIA)を開発し、そのレベルが、免疫チェックポイント阻害剤イピリムマブでの治療に成功した転移性メラノーマ患者由来の血清において上昇していることを示した。可能性をさらに評価するために、このバイオマーカーを異なる種類の癌の患者の血清でも評価した。バイオマーカーはまた、癌、特に膵管腺癌の癌患者の生存の予後を提示するために使用することができる。
【0007】
したがって、第1の態様では、本発明は、N-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)を有するペプチド(本明細書では標的ペプチドまたはC4aa1355とも称する)を特異的に認識して結合するモノクローナル抗体に関する。このペプチド配列は、セリンプロテアーゼ(例えばグランザイムB)またはマトリックスメタロプロテイナーゼ(例えば、MMP-9)などのアミノ酸F1354とM1355との間の切断を引き起こすプロテアーゼによる、IV型コラーゲンα2鎖の消化によって生成されたネオエピトープを表す。
【0008】
好ましくは、前記モノクローナル抗体は、XMGNTGPTGAV(配列番号2)である前記N-末端アミノ酸配列の伸長物を認識しないか、または、それと特異的に結合せず、配列中、Xは任意のアミノ酸である。好ましくは、XはFである。好ましくは、前記モノクローナル抗体は、前記N-末端アミノ酸配列の切り詰め物、特にGNTGPTGAV(配列番号3)であるペプチド、を認識しないか、または、それと特異的に結合しない。好ましくは、前記モノクローナル抗体は、MGQTGPTGAV(配列番号4)、MGNSGPTGAV(配列番号5)および/またはQGNTGPTGAV(配列番号6)である前記N-末端アミノ酸配列の変異型を認識しないか、または、それと特異的に結合しない。
【0009】
好ましくは、N-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)に対する前記抗体の親和性と、伸長したN-末端アミノ酸配列FMGNTGPTGAV(配列番号7)に対する前記抗体の親和性の比は、少なくとも10対1、より好ましくは少なくとも50対1、少なくとも100対1、少なくとも500対1、少なくとも1,000対1、少なくとも10,000対1、少なくとも100,000対1、または少なくとも1,000,000対1である。
【0010】
好ましくは、N-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)に対する前記抗体の親和性と、切り詰めたN-末端アミノ酸配列GNTGPTGAV(配列番号3)に対する前記抗体の親和性の比は、少なくとも10対1、より好ましくは少なくとも50対1、少なくとも100対1、少なくとも500対1、少なくとも1,000対1、少なくとも10,000対1、少なくとも100,000対1、または少なくとも1,000,000対1である。
【0011】
好ましくは、N-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)に対する前記抗体の親和性と、変異したN-末端アミノ酸配列MGQTGPTGAV(配列番号4)に対する前記抗体の親和性の比は、少なくとも10対1、より好ましくは少なくとも50対1、少なくとも100対1、少なくとも500対1、少なくとも1,000対1、少なくとも10,000対1、少なくとも100,000対1、または少なくとも1,000,000対1である。
【0012】
好ましくは、N-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)に対する前記抗体の親和性と、変異したN-末端アミノ酸配列MGNSGPTGAV(配列番号5)に対する前記抗体の親和性の比は、少なくとも10対1、より好ましくは少なくとも50対1、少なくとも100対1、少なくとも500対1、少なくとも1,000対1、少なくとも10,000対1、少なくとも100,000対1、または少なくとも1,000,000対1である。
【0013】
好ましくは、N-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)に対する前記抗体の親和性と、変異したN-末端アミノ酸配列QGNTGPTGAV(配列番号6)に対する前記抗体の親和性の比は、少なくとも10対1、より好ましくは少なくとも50対1、少なくとも100対1、少なくとも500対1、少なくとも1,000対1、少なくとも10,000対1、少なくとも100,000対1、または少なくとも1,000,000対1である。
【0014】
N-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)に特異的に結合するモノクローナル抗体は、当技術分野で公知の任意の適切な技術によって作製することができる。例えば、モノクローナル抗体は、アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)を有する合成ペプチドに対抗して、例えば、配列MGNTGPTGAV(配列番号1)からなり、任意に免疫原性担体タンパク質(キーホールリンペットヘモシアニンなど)に連結されていてもよい合成ペプチドで、げっ歯類(または他の適切な哺乳動物)を免疫し、単一の抗体産生細胞を単離及びクローニングし、得られたモノクローナル抗体をアッセイして、それらが所望の特異性を有することを確定にするといったことにより、産生され得る。N-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)に特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するための例示的なプロトコルを以下に記載する。
【0015】
好ましくは、モノクローナル抗体またはその断片は、好ましくは、以下から選択される1つ以上の相補性決定領域(CDR)を含んでいてもよい。
CDR-L1:KSSQSLLYSDGKTYLN(配列番号8)
CDR-L2:LVSKLDS(配列番号9)
CDR-L3:WQGTHFVT(配列番号10)
CDR-H1:TYNIGVG(配列番号11)
CDR-H2:HIWYNDIKYYNTALKS(配列番号12)
CDR-H3:LRPDSFDY(配列番号13)
【0016】
好ましくは、抗体またはその断片は、上記のCDR配列の少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、または6つを含む。
【0017】
好ましくは、モノクローナル抗体またはその断片は、以下のCDR配列を含む軽鎖可変領域を有する。
CDR-L1:KSSQSLLYSDGKTYLN(配列番号8)
CDR-L2:LVSKLDS(配列番号9)及び
CDR-L3:WQGTHFVT(配列番号10)
【0018】
好ましくは、モノクローナル抗体またはその断片は、CDR間のフレームワーク配列を含む軽鎖を有し、前記フレームワーク配列は、以下の軽鎖配列のCDR間のフレームワーク配列と実質的に同一である、または実質的に類似している(CDRは太字及び下線で示され、フレームワーク配列は斜体で示される)。
【0019】
【化1】
【0020】
好ましくは、モノクローナル抗体またはその断片は、以下のCDR配列を含む重鎖可変領域を有する。
CDR-H1:TYNIGVG(配列番号11)
CDR-H2:HIWYNDIKYYNTALKS(配列番号12)及び
CDR-H3:LRPDSFDY(配列番号13)
【0021】
好ましくは、モノクローナル抗体またはその断片は、CDR間のフレームワーク配列を含む重鎖を有し、前記フレームワーク配列は、以下の軽鎖配列のCDR間のフレームワーク配列と実質的に同一である、または実質的に類似している(CDRは太字及び下線で示され、フレームワーク配列は斜体で示される)。
【0022】
【化2】
【0023】
本明細書において、抗体のCDRs間に存在するフレームワークのアミノ酸配列は、もしそれらが、他の抗体のCDRs間に存在するフレームワークのアミノ酸配列に対し、少なくとも70%、80%、90%、または少なくとも95%の類似性または同一性を有する場合には、当該他の抗体のCDRs間に存在するフレームワークのアミノ酸配列と実質的に同一のもの、または実質的に類似するものである。類似または同一のアミノ酸は、連続していてもよいし、非連続であってもよい。
【0024】
フレームワーク配列は、1つ以上のアミノ酸の置換、挿入および/または欠失を含んでいてもよい。アミノ酸置換は、置換されたアミノ酸が元のアミノ酸と類似する化学的性質を有することを意味する保存的な置換であってもよい。当業者は、どのアミノ酸が類似する化学的性質を共有しているのか理解しているであろう。例えば、アミノ酸の以下のグループは、大きさ、帯電性、極性等の点で、類似する化学的性質を共有している:グループ1 Ala、Ser、Thr、Pro、Gly;グループ2 Asp、Asn、Glu、Gln;グループ3 His、Arg、Lys;グループ4 Met、Leu、Ile、Val、Cys;グループ5 Phe、Thy、Trp。
【0025】
CLUSTALプログラムのようなプログラムは、アミノ酸配列を比較するために用いることができる。このプログラムは、アミノ酸配列を比較して、いずれかの適切な配列内に空間を挿入することによって、最適なアラインメントを見つけ出す。最適なアラインメントのために、アミノ酸の同一性又は類似性(同一性に加えて、アミノ酸タイプの保存性)を計算することが可能である。BLASTxのようなプログラムは、類似する配列の最も長い区間を整列し、適合する部位に値を割り振る。このようにして対比を得ることが可能であり、それぞれ異なるスコアをもち、類似性がある幾つかの領域が発見される。本発明において、この2つのタイプの分析を用いることが考えられる。同一性又は類似性は、好ましくはフレームワーク配列の全長に亘って計算される。
【0026】
特定の好ましい実施形態では、モノクローナル抗体またはその断片は、軽鎖可変領域配列:
【0027】
【化3】
【0028】
(CDRは太字及び下線であり、斜体がフレームワーク配列である)
および/または重鎖可変領域配列:
【0029】
【化4】
【0030】
(CDRは太字及び下線であり、斜体がフレームワーク配列である)
を含み得る。
【0031】
第2の態様では、本発明は、癌患者が免疫療法に反応するか否かを識別する方法に関し、前記方法は、患者から得られた試料中の、N-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)を有するペプチドの存在を検出することを含む。試料は、好ましくは生体液試料、特にヒト生体液試料である。
【0032】
好ましくは、免疫療法は、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤を含む。免疫チェックポイント阻害剤は、免疫応答を開始するために活性化(または不活性化)される必要があるいくつかの免疫細胞上にある分子を標的とする。これらのチェックポイントタンパク質には、PD-1、PD-L1及びCTLA-4が含まれる。免疫チェックポイント阻害剤は、これらの分子のいずれか1つ以上を標的とすることができる。免疫チェックポイント阻害剤には、イピリムマブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、セミプリマブまたはそれらの組み合わせが含まれる。好ましくは、免疫チェックポイント阻害剤は、イピリムマブのように、CTLA-4を標的とし得る。あるいは、免疫チェックポイント阻害剤は、例えばペンブロリズマブ、ニボルマブおよび/またはセミプリマブのように、PD-1を標的とし得る。あるいは、免疫チェックポイント阻害剤は、例えばアテゾリズマブ、アベルマブまたはデュルバルマブのように、PD-L1を標的とし得る。好ましくは、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤を用いる免疫療法は、イピリムマブを投与することを含む。
【0033】
好ましくは、方法はイムノアッセイである。より好ましくは、方法は、対象から得られた生体液試料を、本発明の第1の態様に係るモノクローナル抗体と接触させること、及びモノクローナル抗体と試料中のペプチドとの間の結合を検出することを含む。
【0034】
第2の態様に係る方法は、第1の態様のモノクローナル抗体を利用するものであり、したがって、第2の態様の好ましい実施形態は、第1の態様の好ましい実施形態の上記の考察から明らかである。
【0035】
好ましくは、検出は定量的である。したがって、当該方法は、モノクローナル抗体と試料中のペプチドとの間で結合する量を検出及び決定することを含み得る。
好ましくは、イムノアッセイは競合イムノアッセイである。
好ましくは、イムノアッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)または電気化学発光イムノアッセイ(ECLIA)である。好ましくは、ELISAは競合ELISAである。好ましくは、ECLIAは競合ECLIAである。
【0036】
生体液試料は、血液、血清、血漿、尿、または細胞もしくは組織培養物から得た上清であってもよいが、これらに限定されるものではない。好ましくは、生体液は、血清または血漿、最も好ましくは血清である。
【0037】
第2の態様の方法では、試料は、癌と診断された患者から得られる。癌は転移性であり得る。癌は、好ましくは、メラノーマ、乳癌、大腸癌、胃癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、卵巣癌、前立腺癌、または膵管腺癌を含む膵臓癌から選択される。好ましくは、患者はメラノーマ、特に転移性メラノーマを有する。
【0038】
この方法は、検出されたペプチドの量を、正常な健常者に関連する値、および/または免疫療法に臨床的に反応した癌患者、例えば、治療後に生存期間の延長、腫瘍の縮小、および/または症状の改善があった患者から得られた値と相関させることをさらに含み得る。ペプチドのレベルの上昇は、被験者が免疫炎症性腫瘍型を有し、したがって免疫療法に反応性であることを示し得る。
【0039】
本明細書で使用される用語“正常な健常者に関連する値、および/または免疫療法に臨床的に反応した癌患者から得られた値”は、健康である、すなわち癌を有しないと考えられる被験者について上記の方法により決定される標準化された量、および/または、癌を有することが既知であって、免疫療法、好ましくは免疫チェックポイント阻害剤の治療に臨床的に反応し、例えば腫瘍の大きさの縮小、症状の改善、および/またはより長い全生存期間があった被験者について、上記の方法により決定される標準化された量を意味する。
【0040】
第2の態様に係る方法のいくつかの実施形態では、N-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)を有するIV型コラーゲンペプチドのエピトープに特異的なモノクローナル抗体の結合量は、1つまたは複数の所定のカットオフ値と相関する。
【0041】
本明細書において、「カットオフ値」は、免疫チェックポイント阻害剤を用いる免疫療法に反応する高い可能性を示すと統計的に決定される結合量を意味する。患者の試料において統計的カットオフ値以上となるバイオマーカーの結合の測定値は、腫瘍の大きさの縮小、症状の改善、および/またはより長い全生存期間によって示される、免疫療法への反応の存在または見込み、好ましくは免疫チェックポイント阻害剤による免疫療法への反応の存在または見込みが、少なくとも70%の確率、好ましくは少なくとも80%の確率、好ましくは少なくとも85%の確率、より好ましくは少なくとも90%の確率、最も好ましくは少なくとも95%の確率であることに対応し得る。「カットオフ値」は、癌と診断され免疫療法に反応した患者から得られた結果と、同じ癌と診断されたが免疫療法に反応しなかった患者から得られた結果とを比較することによって算出することができる。
【0042】
N-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)に特異的なモノクローナル抗体の結合の測定された量が、癌患者、特に同じ種類の癌の患者において測定された上位3/4のレベル(Q2+Q3+Q4)にある場合、これは、患者が免疫チェックポイント阻害剤による治療に反応する可能性が高いことを示す。
【0043】
N-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)に特異的なモノクローナル抗体の結合した量の所定のカットオフ値は、10.0~20.0ng/mLの範囲内であり得る。好ましくは、N-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)に特異的なモノクローナル抗体の結合した量の所定のカットオフ値は、少なくとも14.5ng/mLである。これに関して、統計学的分析の使用を通じて、少なくとも14.5ng/mL以上となるN-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)に特異的なモノクローナル抗体が結合した測定された量が、免疫療法、好ましくは免疫チェックポイント阻害剤を用いる免疫療法に反応する可能性が高い患者であると判定してよいことが見出された。少なくとも14.5ng/mLの統計的カットオフ値とすることによって、本発明の方法を利用して、免疫療法に対する反応を高レベルの信頼性で予測することが可能である。特に、少なくとも14.5ng/mL以上は、免疫療法に反応する可能性が高いメラノーマを有する患者であると判定してよい。このような統計的カットオフ値を適用することは、独立型診断アッセイをもたらすので特に有利である。すなわち、それは、診断での結論に到達するために、免疫療法に反応したことが既知である健常な個体および/または患者、好ましくは免疫チェックポイント阻害剤による治療に反応した患者のいずれかと直接的な比較をする必要性を排除する。結論的な予測を促進することは、患者がより早い段階で治療に反応する可能性をもたらし、これによりひいては生存の全確率を改善し、および/または入院のリスクを低減することができる。
【0044】
方法は、存在するペプチドが高レベルであると判定された対象に対して免疫療法を施すことをさらに含み得る。
【0045】
第3の態様において、本発明は、N-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)を有するペプチドを特異的に認識し、それと結合するモノクローナル抗体、及び、下記のうち少なくとも1つ:
- ストレプトアビジンを被覆したウエルプレート;
- N-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)を有するC-末端ビオチニル化ペプチド;
- N-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)を有する較正ペプチド;
- 抗体ビオチニル化キット;
- 抗体HRP標識化キット;
- 抗体放射標識化キット;及び、
- アッセイ視覚化キット
を含むアッセイキットに関する。
【0046】
キットは、免疫療法、好ましくは免疫チェックポイント阻害剤を用いる治療に反応する癌患者を同定するのに使用され得る。
イムノアッセイキットは、第2の態様の方法を実施するのに適しており、第1の態様のモノクローナル抗体を含み、したがって、第3の態様の好ましい実施形態は、第1の態様及び第2の態様の好ましい実施形態の上記の論考から明らかであろう。
【0047】
第4の態様では、本発明はまた、癌と診断された、ペプチドC4-aa1355のレベルが上昇していることが既知である患者を免疫療法で治療する方法に関する。好ましくは、免疫療法は、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤を含む。本明細書において、「ペプチドC4-aa1355の上昇したレベル」は、正常な健常人コントロールおよび/または癌と診断されたが免疫療法、特に免疫チェックポイント阻害剤に反応しなかった患者で検出される量よりも顕著に高次のペプチドの量を指す。
【0048】
癌は転移性であり得る。癌は、好ましくはメラノーマ、乳癌、大腸癌、胃癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、卵巣癌、前立腺癌、または膵管腺癌を含む膵臓癌から選択される。好ましくは、患者はメラノーマ、特に転移性メラノーマを有する。
【0049】
第5の態様では、本発明はまた、癌患者の生存転帰を予測する方法に関し、前記方法は、N-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)を有するペプチドの存在を検出することを含む。
【0050】
好ましくは、方法はイムノアッセイである。より好ましくは、当該方法は、対象から得られた生体液試料を、本発明の第1の態様に係るモノクローナル抗体と接触させること、及びモノクローナル抗体と試料中のペプチドとの間の結合を検出することを含む。
【0051】
第5の態様による方法は、第1の態様のモノクローナル抗体を利用するものであり、したがって、第5の態様の好ましい実施形態は、第1の態様の好ましい実施形態の上記の考察から明らかである。
【0052】
好ましくは、検出は定量的である。したがって、この方法は、モノクローナル抗体と試料中のペプチドとの間で結合する量を検出及び決定することを含み得る。
好ましくは、イムノアッセイは競合イムノアッセイである。
好ましくは、イムノアッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)または電気化学発光イムノアッセイ(ECLIA)である。好ましくは、ELISAは競合ELISAである。好ましくは、ECLIAは競合ECLIAである。
【0053】
生体液試料は、血液、血清、血漿、尿、または細胞もしくは組織培養物から得た上清であってもよいが、これらに限定されるものではない。好ましくは、生体液は、血清または血漿、最も好ましくは血清である。
【0054】
第2の態様の方法では、試料は、癌と診断された患者から得られる。癌は、好ましくは、メラノーマ、乳癌、大腸癌、胃癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、卵巣癌、前立腺癌、または膵管腺癌を含む膵臓癌から選択される。好ましくは、患者は膵臓癌、より好ましくは膵管腺癌を有する。
【0055】
この方法は、検出されたペプチドの量を、正常な健常者に関連する値、および/または癌患者、例えば同じ癌と診断された患者から得られた値と相関させることをさらに含んでいてもよい。N-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)に特異的なモノクローナル抗体の結合の測定された量が、癌患者、特に同じ種類の癌の患者において測定されるレベルの上位または下位の四分位(Q1またはQ4)にある場合、これは、その患者が予後不良及び死亡リスクの増加を有する可能性が高いことを示す。N-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)に特異的なモノクローナル抗体の結合の測定された量が、癌患者、特に同じ種類の癌を有する患者において測定されるレベルの中間四分位(Q2+Q3)にある場合、これは、その患者の死亡リスクが低いことを示す。
【0056】
本明細書で使用される用語“正常な健常者に関連する値、および/または癌患者から得られた値”は、健常であると考えられる、すなわち癌を有しない被験者について、上記の方法により決定された標準化された量、および/または癌を有することが既知である被験者について上記の方法により決定された標準化された量を意味する。
【0057】
第5の態様に係る方法のいくつかの実施形態では、N-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)を有するIV型コラーゲンペプチドのエピトープに特異的なモノクローナル抗体の結合量は、1つまたは複数の所定のカットオフ値と相関させる。
【0058】
本明細書において、「カットオフ値」は、死亡のリスクの低下を示すと統計的に決定される結合量を意味する。患者サンプルにおけるバイオマーカー結合の統計的カットオフ値の範囲内となる測定値は、
死亡のリスクの低下が、少なくとも70%の確率、好ましくは少なくとも80%の確率、好ましくは少なくとも85%の確率、より好ましくは少なくとも90%の確率、最も好ましくは少なくとも95%の確率であることに対応し得る。「カットオフ値」は、癌と診断され、かつ、生存期間が既知の患者から得られた結果を比較することによって算出することができる。
【0059】
定義
本明細書で使用される用語“ペプチド”及び“ポリペプチド”は、同義に使用される。
【0060】
本明細書で使用される用語“モノクローナル抗体”は、全抗体と、その断片であって全抗体の結合特異性を保持するもの、例えばFabフラグメント、F(ab')2フラグメント、単鎖Fvフラグメント、または当業者に公知の他のそのような断片の両方を指す。よく知られているように、全抗体は、典型的には、2つの同一のポリペプチド鎖群が対をなす”Y字形”構造を有し、対をなす要素のそれぞれは、1つの”軽”鎖と1つの”重”鎖とから構成される。軽鎖及び重鎖のそれぞれのN-末端領域は可変領域を含み、重鎖および軽鎖のそれぞれのC-末端部分は定常領域を構成する。可変領域は、3つの相補性決定領域(CDRs)を含んでおり、それらは主に抗原認識の原因となる。定常領域は、抗体が免疫系の細胞および分子を動員することを可能にする。結合特異性を保持する抗体フラグメントは、少なくともCDRsと、可変領域の残部のうち結合特異性を保持するために十分な部分とを含む。
【0061】
本発明においては、モノクローナル抗体は、当該技術分野で公知のいかなる定常領域を含んでいてもよい。ヒト定常軽鎖は、カッパおよびラムダ軽鎖に分類される。定常重鎖は、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、またはイプシロンに分類され、IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEとしての抗体のアイソタイプをそれぞれ定義する。IgGアイソタイプは、IgG1、lgG2、IgG3およびIgG4を含むいくつかのサブクラスを有するが、これに限定されるものではない。前記モノクローナル抗体は、好ましくは、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4のいずれかうちの1つを含むIgGアイソタイプに属するものであってもよい。
【0062】
抗体のCDRは、kabatら(引用19)により記載されているような当該技術分野で公知の方法を用いて決定することができる。抗体は、それらの例に記載されるように、B細胞クローンから生成させることができる。抗体のアイソタイプは、ヒトIgM、IgGまたはIgAアイソタイプまたはヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4サブクラスに特異的なELISAによって決定することができる。生成された抗体のアミノ酸配列は、標準的な手法を用いて決定することができる。例えば、RNAを細胞から単離し、逆転写によりcDNAを生成するために使用することができる。次いで、当該cDNAを、当該抗体の重鎖および軽鎖を増幅するプライマーを用いてPCR処理する。例えば、全てのVH(可変重鎖)配列についてのリーダー配列に特異的なプライマーを、あらかじめ決定されているアイソタイプの定常領域に位置する配列に結合するプライマーと共に使用することができる。軽鎖は、カッパ鎖またはラムダ鎖の3’末端に結合するプライマーを、VカッパまたはVラムダのリーダー配列にアニールするプライマーと共に用いて増幅することができる。全長の重鎖および軽鎖を生成し、配列決定することができる。
【0063】
本明細書で使用される用語“C-末端”は、ポリペプチドの末端、すなわちポリペプチドのC-側の終末にあることを指し、その一般的な方向に意味するものと解釈されるべきではない。同様に、用語“N-末端”は、ポリペプチドの末端、すなわちポリペプチドのN-側の終末にあることを指す、その一般的な方向に意味するものと解釈されるべきではない。
【0064】
本明細書で使用される用語“競合イムノアッセイ”は、試料中に存在する標的ペプチド(もしあれば)が、抗体の結合について既知の量のペプチドの標的(例えば、固定されている基質に結合しているか、または標識されている)と競合するイムノアッセイを指し、これは当業者に公知の技術である。
【0065】
本明細書で使用される用語“ELISA”(酵素結合免疫吸着アッセイ)は、試料中に存在する標的ペプチド(もしあれば)を、西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼなどの酵素に連結された抗体を使用して、検出するイムノアッセイを指す。次いで、酵素の活性を、測定可能な生成物を生成する基質とのインキュベーションによって評価する。これにより、試料中の標的ペプチドの存在および/または量を検出および/または定量することができる。ELISAは、当業者に公知の技術である。
【0066】
本明細書で使用される用語“ECLIA”(電気化学的に結合した免疫吸着アッセイ)は、試料中に存在する標的ペプチド(もしあれば)を、SULFO-Tagシステムなどの電気化学発光標識に結合した抗体を使用して、検出するイムノアッセイを指す。電気を試料に印加すると、電気化学発光標識によって発光する。次いで、光の強度を測定して、試料中の標的ペプチドを定量する。これにより、試料中の標的ペプチドの存在および/または量を検出および/または定量することができる。ECLIAは、当業者に公知の技術である。
【0067】
本明細書で使用される用語“結合した量”は、モノクローナル抗体と標的ペプチドとの間の結合の定量化を指し、前記定量化は、生体液試料中の標的ペプチドの測定値を較正曲線と比較することによって決定され、較正曲線は、既知の濃度の標的ペプチドの標準試料を使用して作成される。本明細書で開示された、N-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)を有する標的ペプチドを生体液中で測定する特異的アッセイにおいては、N-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)を有する較正ペプチド(そして、これは特に、アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)からなるペプチドであってもよい)の既知濃度の標準試料を使用して、較正曲線が作成される。生体液試料中で測定された値を較正曲線と比較して、試料の標的ペプチドの実際の量を決定する。
【0068】
本明細書で使用される用語“免疫療法”は、癌の治療において免疫系を人工的に刺激する方法を指す。T細胞エンゲージャー、CAR T細胞療法、サイトカイン及び免疫チェックポイント阻害剤を含む、いくつかの異なる種類の免疫療法があるが、これらに限定されない。好ましくは、免疫療法は、イピリムマブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、セミプリマブまたはそれらの組み合わせなどの少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含む。好ましくは、免疫チェックポイント阻害剤はイピリムマブである。
【0069】
本明細書で使用される用語“C4-aa1355”または“C4G”は、アミノ酸F1354とM1355との間の切断を引き起こすプロテアーゼによって産生されるN-末端アミノ酸配列MGNTGPTGAV(配列番号1)を有する、VI型コラーゲンα2鎖ネオエピトープペプチドを指す。好ましくは、プロテアーゼは、セリンプロテアーゼ、例えばグランザイムB、またはMMP-9のようなマトリックスメタロプロテイナーゼである。
【0070】

本発明は、これより以下の図を参照して、以下の実施例で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1図1は、C4-aa1355モノクローナル抗体の特異性を示す。 競合C4-aa1355 ECLIAにおけるモノクローナル抗体の反応性を、A)選択ペプチド(MGNTGPTGAV(配列番号1))、伸長したペプチド(FMGNTGPTGAV(配列番号7))、切り詰めたペプチド(GNTGPTGAV(配列番号3))、ナンセンス選択ペプチド(LLARDFEKNY(配列番号18))、及びナンセンスコーティングペプチド(LLARDFEKNY-K-ビオチン)、ならびに(B)選択ペプチド(MGNTGPTGAV(配列番号1))、及び非選択ペプチド1(MGQTGPTGAV(配列番号4))、2(MGNSGPTGAV(配列番号5))及び3(QGNTGPTGAV(配列番号6))に対して試験した。%B/B0:Bは、試料ウェルの強度(xng/mlペプチドでのOD)に等しく、B0は、最大強度(0ng/mlペプチドでのOD)に等しい。
図2図2は、MMP-9またはグランザイムBを用いたIV型コラーゲンα2鎖のタンパク質分解を示す。 IV型コラーゲンα2鎖を、MMP-9(A)またはグランザイムB(GzB)(B)を用いて72時間インキュベートし、次いでC4-aa1355 ECLIAレベルを測定した。
図3図3は、転移性メラノーマ患者における血清C4-aa1355レベルを示す。 ベースライン及びイピリムマブ治療の3週間後の血清のC4-aa1355レベル(n=41)である。血清レベルを、ウィルコクソンのマッチ-ペア順位検定を使用して比較した。
図4図4は、全生存期間のカプラン・マイヤー解析を示す。 イピリムマブで治療された転移性メラノーマ患者の全生存期間を、C4-aa1355については、治療前レベルが上側の四分位(Q2+Q3+Q4)内であった者と、下側の四分位(Q1)(カットオフ値:14.5ng/ml)内であった者とで対比(A)、一方、C4Mについては、治療前レベルが上側の四分位(Q4)内であった者と、下側の四分位(Q1+Q2+Q3)(カットオフ値:35.0ng/ml)内であった者とで対比(B)。ログランク検定を使用して生存曲線間の差を決定し、p<0.05のp値を統計学的に有意とみなした。
図5図5は、転移性メラノーマ患者におけるC4-aa1355レベルとC4Mレベルとの間の相関を示す。 ピアソンの相関分析を実施して、イピリムマブで治療した転移性メラノーマから得た治療前血清中のC4-aa1355とC4Mレベルとの間の関係を記述した(n=54)。
図6図6は、癌患者及び健常人コントロールにおける血清中C4-aa1355レベルを示す。 A)健常人コントロール(n=40)、乳癌(n=13)、大腸癌(CRC)(n=7)、胃癌(n=9)、非小細胞肺癌(NSCLC)(n=12)、小細胞肺癌(SCLC)(n=7)、メラノーマ(n=7)、卵巣癌(n=10)、膵臓癌(n=2)及び前立腺癌(n=13)における血清中C4-aa1355レベルである。群を、ダンの多重比較のために調整されたクルスカル-ワリス検定を用いて比較した。B)健常人コントロール(n=40)から得た血清中のC4-aa1355レベルを、対応の無いマン-ホイットニー検定を用いて癌患者の組み合わせ群(n=80)と比較した。黒い横線は、2回測定された患者の中央値を表す。C)ピアソンの相関分析を実施して、癌患者の組み合わせ群から得た血清中におけるC4-aa1355レベルとC4Mレベルとの間の関係を記述した(n=80)。
図7図7は、初期及び後期の段階の膵管腺癌(PDAC)に係る血清C4G(C4-aa1355)のレベルを示す。p<0.05
図8図8は、25パーセンタイル及び75パーセンタイル(Q1+Q4対Q2+Q3)での群化(2分法)によって、ベースラインでのC4G(C4-aa1355)に関連する全生存期間(OS)を評価するためのカプラン・マイヤープロットを示す。
【実施例
【0072】
様々な実施形態が、以下の実施例において記載及び開示されている。それらの実施例は、本開示の理解を助けるために提示されており、いかなる場合であっても以下に述べるクレームで特定された発明の範囲を限定するために解釈すべきではない。以下に述べる実施例は、記述された実施形態をどのように作り、使用するのかについての完全な開示及び記述を当業者に提供するように提示されており、本開示を限定することを意図するものではなく、また、後述の実験が実施された全ての又は唯一の実験であることを意味することを意図するものでもない。用いた数値(例えば、量、温度など)について正確さを確保するために努力したが、実験的な誤差及び偏差が多少あることを考慮すべきである。別途示さない限り、部は重量部、分子量は重量平均分子量、温度はセ氏、及び、圧力は大気圧または大気圧付近である。
【0073】
材料及び方法
実験に使用したすべての試薬は、特に明記しない限り、メルク(Whitehouse Station, NJ, USA)及びシグマアルドリッヒ(St. Louis, MO, USA)製の標準化学物質であった。
【0074】
質量分析によるペプチド同定
ヒト胎盤由来のIV型コラーゲン(シグマアルドリッヒ、カタログ番号C5533)を、37℃で24時間及び72時間、10:1の比でタンパク質分解消化し、次いで、質量分析まで-80℃で保存した。
【0075】
試料1μg(100μlの50mMのTris、150mMのNaCl、pH7.5の緩衝液中の消化または未消化コラーゲンに対応する)を56℃で30分間、10mMのジチオスレイトールによって還元し、室温の暗所で60分間、40mMのヨードアセトアミドによってアルキル化した。全ての残留ヨードアセトアミドを室温で5分間、10mMのジチオスレイトールによってクエンチした。試料を37℃のシェーカーで16時間、Lys-C(ワコーケミカルズ、カタログ番号125-05061)を用い、酵素:基質比を1:20として消化した。1%ギ酸を含む1MのNaCl 100μlを消化物に添加した後、これらを30kDaのフィルタ(パル ライフサイエンス、カタログ番号OD030C34)に通してGAGを除去し、逆相Vydac UltraMicro Spin C18カラム(ハーヴァード アパラタス、カタログ番号74-7206)を製造業者の指示に従って使用し、脱塩した。非標的質量分析は、Easy nano-LC 1000システム(サーモフィッシャー サイエンティフィック)を備えた四重極オービトラップ ベンチトップ質量分析計、QExactive(サーモ サイエンティフィック)で行った。分離は、2μmの粒子(サーモフィッシャー サイエンティフィック)が充填された75μm×25cmのAcclaim Pepmap(商標)RSLC C18キャピラリーカラムで行った。+2000Vのスプレー電圧を、脱溶媒のために275℃の加熱イオン移動設定で使用した。オンライン逆相分離は、300nl/分の流速を使用して行い、線形の二値勾配85分を使用した。勾配は溶媒B 3%で開始し、4分間行い、次いで64分で溶媒B 35%になり、その後5分で溶媒B 45%になる。最後に、有機溶媒濃度を5分で90%まで上げ、7分間90%に維持した。MSスキャン(400~1200m/z)を、200m/z、1×10自動利得制御(AGC)目標、及び最大イオン注入時間100msで、70,000の分解能に設定したOrbitrap質量分析計で記録した。MSに続いて、2×10の強度の閾値、2m/zの単離の幅及び動的な排除が30秒間可能になった15個の最も強力な多重荷電イオンに対して17,500の分解能でデータ依存衝突誘起解離MS/MSスキャンを行った。発見データからの同定を、ホモ サピエンス プロテオーム(UniProtプロテオームID UP000005640)をProteome Discoverer 2.1ソフトウェア(サーモフィッシャー サイエンティフィック)と共に使用して行った。処理ワークフローは、以下のノードからなっていた:スペクトル前処理用スペクトルセレクタ(前駆体質量範囲:300~30000Da;S/N閾値:1.5)、Sequest-HT検索エンジン(タンパク質データベース:上記参照;酵素:Lys-C(半);最大;逃した切断部位:2;ペプチドの長さの範囲6~144アミノ酸;前駆体の質量許容度:10ppm;フラグメント質量許容度:0.02Da;静的修飾:システインカルバミドメチル化;及びペプチド検証のためのPercolator(ペプチドq値に基づいてFDR<1%)。結果をフィルタリングして、少なくとも1つのユニークなペプチドを有するマスタータンパク質のみを保持し、最節約原理に従ってタンパク質のグループ化を可能にした。無標識定量(LFQ)のために、各タンパク質について上位3つのペプチドの合計を取って、タンパク質の強度を反映させた。ペプチド強度を、Proteome Discoverer 2.1(ThermoFisher Scientific)で開発された独自のアルゴリズムを使用して定量した。
【0076】
ペプチドの選択
質量分析によって同定された、IV型コラーゲン由来の各ペプチドのN-末端及びC末端からの最初の6アミノ酸を、プロテアーゼ生成ネオエピトープとみなした。プロテアーゼ生成配列を、Uniprot/Swiss-Protデータベースと共にNPS@:Network Protein Sequence Analysisを使用して他のヒトのタンパク質及び種との相同性について分析した(引用16)。切断部位F1354↓M13551355MGNTGPTGAV1364)からのアミノ酸配列C末端は、ヒトIV型コラーゲンα2鎖に固有であることが見出され、抗体産生のための標的として選択された。モノクローナル抗体産生のために使用される合成ペプチド及びIV型コラーゲンのプロテアーゼ媒介分解(C4-aa1355)を測定するECLIAの技術的評価をジェンスクリプトから購入し、表1に示した。
【0077】
【表1】
【0078】
標的配列を、選択ペプチドとして使用した(MGNTGPTGAV(配列番号1))。免疫原性ペプチド(MGNTGPTGAV-GGC-KLH)は、正しい連結を確実にするために、間にグリシン残基及びシステイン残基を付加して、選択ペプチドをキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)担体タンパク質に共有結合的に連結することによって生成した。ビオチン化ペプチド(MGNTGPTAV-K-ビオチン)をコーティングペプチドとして用いた。伸長したペプチド(FMGNTGPTGAV(配列番号7))、切り詰めたペプチド(GNTGPTGAV(配列番号3))、ナンセンス選択ペプチド(LLARDFEKNY(配列番号18))及びナンセンスコーティングペプチド(LLARDFEKNY-K-ビオチン)を含めることによって、抗体の特異性を試験した。類似の配列を有する他のECMタンパク質に対する潜在的な交差反応性を試験するために、N-末端から1つ目(QGNTGPTGAV(配列番号6))、3つ目(MGQTGPTGAV(配列番号4))、または4つ目(MGNSGPTGAV(配列番号5))のいずれかの位置に1つのアミノ酸ミスマッチを伴う3つのペプチドを、特異性試験に含めた。抗体特異性を、2倍希釈ペプチドのシグナル阻害のパーセンテージとして計算した。
【0079】
モノクローナル抗体の産生及びクローンの特徴づけ
6~7週齢の雌Balb/Cマウスを、安定した力価レベルが得られるまで、隔週で繰り返し、100μgの免疫原性ペプチド(MGNTGPTGAV-GGC-KLH)をStimune Immunogenicアジュバント(サーモフィッシャー、カタログ番号7925000)と共に含有する200μlの乳化抗原で皮下免疫した。最も高い抗体価を有するマウスを4週間休養させ、次いで、免疫原性ペプチドを用いて腹腔内に追加免疫した。3日後、脾細胞を単離し、マウスSP2/0ミエローマ細胞と融合させて、既述のようにハイブリドーマ細胞を作成した(引用17)。ハイブリドーマ細胞を96ウェルマイクロタイタープレート内で培養し、限界希釈を使用してモノクローナル増殖を確保した。ストレプトアビジン被覆マイクロタイタープレート(ロッシュ、カタログ番号11940279)でビオチン化コーティングペプチドを使用する予備的な競合ELISAにおいて、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマ細胞から得た上清を、選択ペプチド及びヒト血清試料に対する反応性についてスクリーニングした。選択ペプチドに対して最良の反応性を有するクローンを、製造者の説明書に従ってプロテインGカラム(GEヘルスケア ライフ サイエンス、カタログ番号17-0404-01)を使用して精製した。
【0080】
C4-aa1355 ECLIAプロトコル
アッセイの開発中、抗体及びコーティングペプチドの最適なインキュベーション緩衝液、時間、温度、及び濃度が決定され、最終的な競合C4-aa1355 ECLIAプロトコルは以下の通りであった:MSD GOLD 96ウェル・ストレプトアビジン・プレコーティング・プレート(メソ スケール ディスカバリー、カタログ番号L15SA-1)を、150μl/ウェルのブロッキング緩衝液(ウシ血清アルブミン(BSA)(5%w/v)及びブロニドックス(0.36%v/v)、8g/LのNaCl、pH7.4を含む10mMのリン酸緩衝生理食塩水(PBS))用いて、暗所で振とう(300rpm)しながら、20℃で60分間インキュベートした。アッセイ緩衝液(BSA(1%w/v)、Tween-20(0.1%w/v)及びブロニドックス(0.36%v/v)を含む50mMのPBS、8g/LのNaCl、pH7.4)に溶解して2ng/ml濃度とした、25μl/ウェルのビオチン化コーティングペプチドを、プレートにコーティングし、暗所で振とう(750rpm)しながら、20℃で60分間インキュベートした。次に、25μl/ウェルの選択ペプチド、アッセイ対照または予め希釈した血清/血漿試料(1:2)を添加した後、アッセイ緩衝液で希釈した25μl/ウェルのSULFO-TAG(MSD GOLD SULFO-TAG NHS-Ester Conjugation、メソ スケール ディスカバリー、カタログ番号R31AA-1)標識モノクローナル抗体を、最終濃度が25ng/mlとなるように直ちに添加し、プレートを暗所で振とう(300rpm)しながら、4℃で20時間インキュベートした。すべてのインキュベーション工程の後、プレートを洗浄緩衝液(20mMのTris、50mMのNaCl、pH7.2)で3回洗浄した。最後に、150μl/ウェルのMSD GOLD Read Buffer(メソ スケール ディスカバリー、カタログ番号R92TG-2)を添加し、Sector Imager 6000(メソ スケール ディスカバリー)で、2分以内に直ちにプレートを読み取った。SULFO-TAGによって、電気が印加されたときに発光することが可能となり、MSD Discovery Workbench 4.0ソフトウェアを使用して、発光データを分析した。分析物の濃度は、4パラメトリックカーブ適合モデルを使用して計算した。
【0081】
C4-aa1355アッセイの技術的評価
検出の下限は、バックグラウンドの平均プラス標準偏差の2.5倍を使用して、10回の独立したアッセイ実行から決定した。検出の上限は、最高濃度における選択ペプチドの逆較正濃度マイナス標準偏差の2.5倍を使用して、10回の同じアッセイ実行から決定した。アッセイ内及びアッセイ間の変動は、標準の曲線線形範囲全体をカバーする濃度での全く同一な、7つの試料の10回の独立したアッセイ実行によって決定した。試料は、アッセイ緩衝液中に異なる量の選択のペプチドを含む4つの試料、及び健常なヒトの3つの異なる血清試料からなっていた。アッセイ内の変動をプレート内の平均変動係数(CV%)として計算し、アッセイ間の変動を10プレート間の平均CV%として計算した。アッセイの直線性を決定するために、ヒト血清試料(n=3)またはEDTA血漿試料(n=3)の2倍希釈を行い、直線性を未希釈試料の回収率として計算した。分析物の安定性をヒト血清の4回の反復凍結/解凍サイクル(各サイクルでn=3)によって試験し、分析物の回収率を、第1のサイクルを基準として計算した。さらに、4℃または20℃で24時間または48時間インキュベートしたヒト血清試料(各時点でn=3)によって検体安定性を試験し、-20℃で保存した試料を基準として回収率を計算した。低/高含量のビオチン(3.0/9.0ng/ml)、高脂質血(1.5/5.0mg/ml)及びヘモグロビン(2.5/5.0mg/ml)を血清試料に添加することによって干渉を試験し、血清試料を参照として、回収率を計算した。
【0082】
インビトロでのIV型コラーゲンの切断
組換えIV型コラーゲンα2鎖(マイビオソース)及びMMP-9(ジオット、カタログ番号G04MP09C)またはグランザイムB(GzB)(アブカム、カタログ番号ab168093号)を、それぞれMMP緩衝液(50mMのTris-HCl、150nMのNaCl、10mMのCaCl、10μMのZnCl、0.05%Brij35、pH7.5)またはGzB緩衝液(50mMのTris、150mMのNaCl、pH7.5)中、10:1(10μgのIV型コラーゲン及び1μgのプロテアーゼ)で、37℃で72時間インキュベートし、次いで分析まで-80℃で保存した。カルボキシメチル化トランスフェリンのMMP-9またはGzBによる消化をポジティブコントロールとして含め、MMP緩衝液添加MMP-9単独、及びGzB緩衝液添加GzB単独をネガティブコントロールとして含めた。MMP-9及びGzBの活性は、クーマシーブルー染色によって確認された(データは示さず)。
【0083】
C4-aa1355アッセイの臨床的検証
インフォームドコンセントを得た後、デンマークのHerlev病院、及びAarhus University病院において標準治療としてイピリムマブ(3mg/kg体重)で治療したステージIVのメラノーマ患者(n=54)から血清試料を収集した。この研究は、1975年のヘルシンキ宣言に従って、デンマークの首都圏倫理委員会(H-2-2012-058)によって承認された。血清試料をベースライン及び第1の治療の3週間後(治療の第2の投与前)に収集した。
【0084】
他の癌患者の血清試料を、商業ベンダーであるアステランド バイオサイエンス(米国ミシガン州デトロイト)から入手した。その試料は、乳癌(n=13)、大腸癌(CRC)(n=7)、胃癌(n=9)、非小細胞肺癌(NSCLC)(n=12)、小細胞肺癌(SCLC)(n=7)、メラノーマ(n=7)、卵巣癌(n=10)、膵臓癌(n=2)及び前立腺癌(n=13)を含んでいた。健常人コントロール(n=40)からの血清試料を、商業ベンダーであるバレイ バイオメディカル(米国バージニア州ウィンチェスタ)から取得した。それらの試料は、インフォームドコンセント、及び、ヘルシンキ宣言に従った適切な機関の調査審査委員会による承認の後、収集した。
【0085】
新たに開発されたバイオマーカーC4-aa1355と比較するために、C4Mを癌患者からの血清試料中で評価した。C4M競合ELISAは、IV型コラーゲンのMMP-9媒介分解のネオエピトープに特異的であり、ノルディック ビオサイエンス(ハーレフ、デンマーク)によって製造されたモノクローナル抗体に基礎づけられた、十分に特徴付けられたアッセイであり、測定は、製造業者の仕様書に従って実施した(引用18)。
【0086】
統計学的分析
ウィルコクソンのマッチ-ペア符号付き順位検定を用いて、ベースライン時のメラノーマ患者におけるバイオマーカーレベルを第3週と比較した。カプラン-マイヤー生存曲線を使用して、メラノーマ患者の全生存期間(OS)を分析し、C4-aa1355については、治療前レベルが上側の四分位(Q2+Q3+Q4)内であった者と下側の四分位(Q1)内であって者とで対比し、C4Mについては、治療前レベルが上側の四分位(Q4)であった者と下側の四分位(Q1+Q2+Q3)であった者とで対比した。
【0087】
異なる癌患者由来の血清試料中のC4-aa1355のレベルを、ダンの多重比較のために調整されたクルスカル-ワリス検定を用いて、健常人コントロールと比較した。健常人コントロールを、対応の無いマン-ホイットニー検定を用いて癌患者の組み合わせ群と比較した。ピアソンの相関分析を実施して、転移性メラノーマ及び癌患者の組み合わせ群から得た各々の血清中におけるC4-aa1355とC4Mレベルとの間の関係を記述した。p<0.05のp値を統計学的に有意とみなした。グラフ化及び統計分析は、GraphPad Prism version 7(グラフパド ソフトウエア、カリフォルニア州、米国)を用いて行った。
【0088】
結果
新規C4-aa1355アッセイの特異性
モノクローナル抗体の特異性を、新規の競合C4-aa1355 ECLIAにおいて試験した。選択ペプチドは用量依存的な様式でシグナルを阻害したが、伸長されたペプチド、切り詰められたペプチド、及びナンセンス選択ペプチドは、シグナルを阻害しなかった(図1A)。ナンセンスビオチン化ペプチドを使用したとき、シグナルは認められなかった(図1A)。選択ペプチドとの対比において1つのアミノ酸ミスマッチのみがあるペプチドに対する反応性を試験した場合、0~30ng/mlのペプチド濃度で反応性は検出されなかったが、非選択ペプチド2は最高濃度においてシグナルを65%まで阻害した(図1B)。まとめると、これらのデータは、モノクローナル抗体が選択ペプチド上のネオエピトープに対して高度に特異的であることを示唆している。
【0089】
MMP-9によるIV型コラーゲンのタンパク質分解
C4-aa1355抗体/アッセイがプロテアーゼ生成IV型コラーゲンネオエピトープを認識したことを確認するために、C4-aa1355を非消化IV型コラーゲン、MMP-9消化IV型コラーゲン及びGzB消化IV型コラーゲンで測定した。図2に示すように、C4-aa1355は、MMP-9消化試料及びGzB消化試料でのみ検出可能であったが、未消化(プロテアーゼなし)試料ではいずれのレベルも検出されず、抗体がプロテアーゼ生成ネオエピトープに特異的であることを示した。
【0090】
C4-aa1355アッセイの技術的評価
C4-aa1355 ECLIAアッセイの技術的性能を、表2にまとめた異なる技術的検証ステップを通して、さらに評価した。アッセイの検出範囲は0.6~832ng/mlであった。アッセイ内及びアッセイ間の変動は、それぞれ6%及び8%であり、それぞれ10%台及び15%台とされる許容基準を下回った。直線性は、未希釈から1:4希釈まで検出され、希釈回収率は、血清及びEDTA血漿についてそれぞれ94%及び106%であった。4回の凍結/解凍サイクル後、血清中分析物の回収率は96%であった。ヒトの血清を4℃または20℃で48時間長期保存した後、分析物の回収率はそれぞれ122%及び109%であった。干渉は、脂質またはヘモグロビンの含量が高いまたは低い血清から検出されず、回収率は92~111%の範囲であった。低含量のビオチンは分析物に干渉しなかったが、高含量のビオチンは干渉し、それぞれ回収率は94%及び71%であった。回収率の許容基準は、100±20%以内であった。まとめると、これらの結果は、C4-aa1355 ECLIAは技術的に堅牢なアッセイであることを示している。
【0091】
【表2】
【0092】
イピリムマブ治療した転移性メラノーマ患者におけるC4-aa1355アッセイの臨床評価
C4-aa1355のバイオマーカー可能性を評価するために、ベースライン時及びイピリムマブ治療の3週間後に、転移性メラノーマ患者から得た血清中のC4-aa1355を測定した。バイオマーカーのレベルを対応させると、C4-aa1355のレベルは、処置の3週間後にわずかに上昇した(p=0.090)(図3)。
【0093】
次に、C4-aa1355バイオマーカーと生存転帰との間の関連性をカプラン・マイヤー曲線によって評価した。C4-aa1355の高いベースラインレベル(Q2+Q3+Q4)は、低いレベル(Q1)と比較して、より長い全生存期間(OS)と有意に関連していた(p=0.040)(図4A)。OS中央値は、バイオマーカーが高い患者では646日間であったのに対して、バイオマーカーが低い患者では290日間であった。
【0094】
C4-aa1355及びC4MバイオマーカーはIV型コラーゲン上の2つの異なるプロテアーゼ生成ネオエピトープを測定するので、C4MとOSとの間の関連も評価した。C4Mに関するこれらの知見は以前に発表されているが(引用8)、54人の患者において測定されたC4Mの結果を図4Bに示す。C4Mバイオマーカーについては、高いベースラインのレベル(Q4)は、低いレベル(Q1+Q2+Q3)と比較して、より短いOSと有意に関連していた(p=0.005)(図4B)。興味深いことに、2つのバイオマーカーは、転帰に対して正反対の関連性を示した。
【0095】
さらに、ベースライン時点での転移性メラノーマ患者におけるC4-aa1355レベルとC4Mレベルとの間の相関を調べた。C4-aa1355とC4Mとは相関しなかった(r=0.021、p=0.883)(図5)。
【0096】
他の癌患者におけるC4-aa1355アッセイの臨床評価
C4-aa1355のバイオマーカー可能性をさらに評価するために、乳癌、CRC、胃癌、NSCLC、SCLC、メラノーマ、卵巣癌、膵臓癌または前立腺癌のいずれかである異なる癌患者から得た血清、及び健常人コントロールから得た血清で測定した。患者の各群において、C4-aa1355バイオマーカーレベルの患者間変動(図6A)が認められた。健常人コントロールのC4-aa1355レベルの中央値を癌患者の各群と比較すると、有意差は認められなかった(図6A)。しかしながら、健常人コントロールのC4-aa1355を癌患者の組み合わせ群と比較すると、C4-aa1355レベルは、健常人コントロール(12.0ng/ml)と比較して癌患者(14.8ng/ml)において有意に上昇した(p=0.006)(図6B)。
第1の集団に示されるように、これらの癌患者におけるC4-aa1355及びC4Mレベルは相関していなかった(r=0.197、p=0.080)(図6C)。
【0097】
ベースライン時点で測定された血清C4-aa1355(C4G)は、化学療法で治療された膵管腺癌(PDAC)患者の転帰を予測する。
C4-aa1355(C4G)を、膵管腺癌(PDAC)を有する40人の患者に由来する治療前血清試料において測定した。全ての患者は、デンマークのBIOPAC研究「膵臓癌患者におけるBIOmarkers」(NCT03311776)から提供された。患者は、2008年12月から2017年9月までにかけて、デンマークの6つの病院から集められた。PDAC患者は、組織学的に確認された腫瘍を有していた。PDAC患者は、国のガイドライン(www.gicancer.dk)に従って様々な種類の化学療法で治療された。研究は、デンマーク健康研究倫理広域委員会の勧告に従って実施した。BIOPACプロトコルは、デンマーク保健研究倫理広域委員会(VEK ref. KA-20060113)及びデータ保護庁(j.nr.2006-41-6848)によって承認された。被験者全員から、ヘルシンキ宣言第8版に従って書面によるインフォームドコンセントを得た。診断時または手術前に血液試料を得た。試料を、血液について国内で承認された標準的な操作手順(www.herlevhospital.dk/biopac.dk)に従って処理した。患者からの血清試料及び臨床データを、将来に備えて収集した。血清試料は、盲検で測定した。
【0098】
結果を疾患の病期に従って図7に示す。C4-aa1355は、PDACの後期段階の患者から得た血清において、初期段階と比べて有意に低かった(マン-ホイットニー検定、p値=0.0132)。ベースライン及びPDACにおける全生存期間(OS)でのC4-aa1355との関連の可能性を評価した。「極端」なC4-aa1355レベル(<25パーセンタイル+>75パーセンタイル、すなわち四分位1及び四分位4、Q1+Q4)の群を定義するために25パーセンタイル及び75パーセンタイルのカットポイントを使用し、カプラン・マイヤー解析により、「非極端」なC4-aa1355レベルの患者(>25パーセンタイルから<75パーセンタイル、Q2+Q3)は、改善された全生存期間を有することが分かった(図8)。単変量コックス回帰分析はこれを支持しており、「極端でない」C4-aa1355レベルにある患者のサブグループにおいて、死亡のリスクの減少を示した(表3)。さらに、多変量コックス回帰分析は、C4-aa1355の予測値が病期とは無関係であることを示した。
【0099】
【表3】
【0100】
考察及び結論
IV型コラーゲンのプロテアーゼ媒介分解によって生成されたネオエピトープ(C4-aa1355)の非侵襲的測定を可能にする堅牢で特異的な競合ECLIAが開発され、検証されている。これらのメラノーマ患者におけるC4-aa1355の高いベースラインレベルは、免疫チェックポイント阻害剤の処置に対する臨床反応(より長い全生存期間)と関連していた。対照的に、C4Mの高いベースラインレベルは、より短い全生存期間と関連していた。これらの試料のC4-aa1355レベルとC4Mレベルは、相関していなかった。C4-aa1355及びC4Mは両方ともIV型コラーゲンのネオエピトープを測定するが、2つの異なる部位において測定する。そして興味深いことに、これらのデータは、これらの異なる切断産物が2つの異なる病理学的事象の間に放出され、ベースラインで測定した場合に、一方は良好な転帰に関連し、一方は不良な転帰に関連することを示唆している。さらに、免疫チェックポイント阻害剤の処置の3週間後、ベースラインと比較して、転移性メラノーマ患者由来の血清の中に、わずかに上昇したレベルのC4-aa1355が検出された。
【0101】
C4-aa1355がこれらのメラノーマ患者における免疫チェックポイント阻害剤の処置に対する臨床反応と関連するという知見は、C4-aa1355アッセイが、処置に反応するT細胞許容性腫瘍微小環境を有する癌患者を同定するために、免疫腫瘍学的設定におけるバイオマーカー能力を有することを示している。C4-aa1355は、循環から下層の間質へのプロテアーゼ媒介性T細胞移行を反映し得る。逆に、C4Mは不良な反応性と関連しており、これは、C4Mが腫瘍活性及び反応性間質と関連性があることを示唆する以前の所見(引用8-10)を裏付けている。
【0102】
興味深いことに、この研究は、1つのタイプのIV型コラーゲンネオエピトープ断片(C4M)が腫瘍形成に関連し、別のタイプのIV型コラーゲンネオエピトープ断片(C4-aa1355)がT細胞浸潤に関連することを示しており、そのことは、病理学的特異的ネオエピトープを測定する価値があり、ただ単に総タンパク質を測定するのではないことを裏付けている。
【0103】
C4-aa1355は、メラノーマ以外の他の癌型においても上昇しており、バイオマーカーが他の適応症における可能性を有することを示唆している。さらに、これらの癌患者において、C4-aa1355とC4Mレベルとの間に、やはり相関は存在せず、これらのバイオマーカーが腫瘍微小環境の病理学的に別個の態様を反映することを検証した。
【0104】
C4-aa1355は、初期段階の膵管腺癌(PDAC)の患者において上昇していることが見出された。さらに、マーカーC4-aa1355極端なレベルにある患者(すなわち、第1または第4の四分位)は、全生存率が低下することが見出された。
【0105】
知る限りにおいて、これは、IV型コラーゲンの、このような特異的プロテアーゼ媒介分解(C4-aa1355)が癌におけるバイオマーカーの可能性を有し、免疫チェックポイント阻害剤療法に対する反応に関連することを示す、最初の研究である。
【0106】
[参考文献]
1.サリンジャーC、フュレダー T、プルーサー M、ヘラー G、ミュラウアー L、ホェラー Cほか。
免疫チェックポイント阻害剤を用いる癌治療のレビュー:現在の概念、期待、制限、および落とし穴
Wiener Klinische Wochenschrift 2018.
2.チェン DS、メルマン I。
癌免疫の要素と癌免疫調節ポイント
Nature [インターネット] 2017; 541(7637):321-30。 http://www.nature.com/doifinder/10.1038/nature21349から入手可能
3.トルイーロ JA、スワイス RF、バオ R、ルーク JJ。
T細胞炎症性腫瘍と非T細胞炎症性腫瘍:癌免疫療法薬の開発と併用療法の選択のための概念的枠組み
Cancer Immunology Research. 2018;
4.サーモン H、フランシスケウィッチ K、ダモット D、デュー・ノジャン MC、ヴァリディア P、トラウトマン Aほか。
マトリックスアーキテクチャはT細胞のヒト肺腫瘍の間質への優先的な局在化と移行を規定する
Journal of Clinical Investigation. 2012; 122(3):899-910.
5.ニッセン NI、カルスダル M、ウィルムセン N。
コラーゲンおよび反応性間質における癌関連線維芽細胞、および、癌生態との関係
Journal of Experimental and Clinical Cancer Research. 2019.
6.チャクラバルシー A、カーン L、ベンスラー NP、ボーズ P、ディカーバラ DD。
TGF-β関連の細胞外マトリックス遺伝子は癌関連の線維芽細胞を免疫回避および免疫療法の失敗に結び付ける
Nature Communications. 2018;
【0107】
7.マリアタサン S、ターリー SJ、ニクルス D、カスティリオーニ A、ユエン K、ワン Yほか。
TGFβはT細胞の排除に寄与することにより、PD-L1阻害する腫瘍の反応を減弱する。
Nature. 2018;
8.ジェンセン C、マドセン DH、ハンセン M、シュミット H、スベイン IM、カルスダル MAほか。
細胞外マトリックスに由来する非侵襲性バイオマーカーは、転移性メラノーマ患者における免疫チェックポイント阻害(抗CTLA-4)への反応に関連する。
Journal for Immuno Therapy of Cancer. 2018;
9.キーレット SN、サンツ-パンプローナ R、ブリックス S、リーミン DJ、カルスダル MA、モレノ V。
過剰なコラーゲン代謝回転産物は、大腸癌の進行中に放出され、転移性大腸癌患者の血清で上昇する。
Scientific Reports [インターネット]. 2016;6(1):30599.
http://www.nature.com/articles/srep30599から入手可能
10.ベイガー CL、ウィルムセン N、リーミン DJ、スミス V、カルスダル MA、ドーナン Dほか。
血清中で測定されたコラーゲン分解産物は、卵巣癌と乳癌の患者を健常人コントロールから区別することができる:予備研究
Cancer Biomarkers. 2015;15(6):783-8.
11.プラカシュ MD、ムノズ MA、ジェイン R、トン PL、コスキネン A、レグナー Mほか。
グランザイムBは、基底膜の再構築を介して細胞傷害性リンパ球の遊出を促進する。
Immunity. 2014;
12.サンピエール Y、ポトワロスキ EF。
細胞外マトリックス分解のT細胞制御
Developmental Immunology. 2000;
【0108】
13.エル-シャブラウィ Y、ウォルチ A、ヘルマン J、エガー G、フォスター CS。
選択的メタロプロテイナーゼ2および9阻害剤によるMMP依存性走化性の阻害および実験的自己免疫性ブドウ膜炎の改善
Journal of Neuroimmunology. 2004;
14.レパート D、ハウザー SL、キシヤマ JL、アン S、ゼン L、ゴーツラ EJ
エイコサノイドによるT細胞のマトリックスメタロプロテイナーゼ依存性遊走の刺激
FASEB Journal. 1995;
15.エドスパー K、バッセ PH、ゴールドファーブ RH、アルバートソン P。
細胞傷害性リンパ球のマトリックスメタロプロテイナーゼは、腫瘍の浸潤と免疫調節に影響を与える
Cancer Microenvironment. 2011.
16.コンベット C、ブランシェ C、ジオジョン C、デレアージュ G。
NPS@:ネットワークタンパク質配列分析
Trends in biochemical sciences. 2000 Mar;25(3):147-50.
17.ゲフター ML、マーガリーズ DH、シャーフ MD。
マウスミエローマ細胞のポリエチレングリコール促進ハイブリダイゼーションのための簡単な方法
Somatic Cell Genetics. 1977;3(2):231-6.
18.サンド JM、ラルセン L、ホガボアム C、マルチネス F、ハン M、ラルセン MRほか。
IV型コラーゲンアルファ1鎖およびアルファ3鎖のMMP媒介分解は、実験的および臨床的な線維症における基底膜のリモデリングを反映している―2つの新規バイオマーカーアッセイの検証
PLoS ONE. 2013;8(12).
19.カバット,E.A.、T.T.ウー、H.M.ペリー、K.S.ゴッテスマンおよびC.フォラー(1987)。
免疫学的対象のタンパク質の配列
アメリカ合衆国保健社会福祉省、メリーランド州ベセスダ、1ページ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
2023504458000001.app
【国際調査報告】