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特表2023-504460癌の治療におけるBI853520の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-03
(54)【発明の名称】癌の治療におけるBI853520の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/506 20060101AFI20230127BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230127BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230127BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20230127BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230127BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230127BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230127BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20230127BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20230127BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230127BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20230127BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230127BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230127BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230127BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230127BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230127BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20230127BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P1/18
A61P1/04
A61P11/00
A61P13/12
A61P13/08
A61P15/00
A61P35/02
A61P13/10
A61P1/16
A61P25/00
A61P43/00 105
A61P17/00
A61P21/00
A61K45/00
A61K31/519
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022532106
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(85)【翻訳文提出日】2022-05-30
(86)【国際出願番号】 CN2020132244
(87)【国際公開番号】W WO2021104454
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】201911191139.8
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202011287049.1
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522196582
【氏名又は名称】▲應▼世生物科技(南京)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】王 在▲チ▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 江▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】江 君
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 宝袁
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZC202
4C084ZC412
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086CB09
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC20
4C086ZC41
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、KRAS変異を伴う腫瘍を治療する方法に関し、この方法では、化合物2-フルオロ-5-メトキシ-4-[(4-(2-メチル-3-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-4-オキシ)-5-トリフルオロメチル-ピリミジン-2-イル)アミノ]-N-(1-メチル-ピペリジン-4-イル)ベンズアミドまたはその薬学的に許容される塩が、単独で投与され、またはKRAS阻害剤および/またはMEK阻害剤と併用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
KRAS変異を伴う腫瘍を治療するための医薬品の調製における、化合物またはその薬学的に許容される塩の使用であって、
前記の化合物の構造が
【化1】
である、使用。
【請求項2】
前記の腫瘍が、膵臓癌、結腸直腸癌、肺癌、腎癌、胃癌、前立腺癌または卵巣癌である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記のKRAS変異が、G12A、G12C、G12D、G12R、G12S、G12V、G13C、G13D、G13V、Q61K、Q61L、Q61RまたはQ61H変異である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記のKRAS変異が、G12C、G12D、G13C、またはQ61K変異である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記の腫瘍が、1)KRAS G12C変異を伴う肺癌、結腸直腸癌または膵臓癌;2)KRAS G12D、KRAS G12V、KRAS G13DまたはKRAS Q61H変異を伴う急性髓細胞性白血病;3)KRAS G12C、KRAS G12D、KRAS G12R、KRAS G12V、KRAS G13DまたはKRAS Q61H変異を伴う膀胱癌;4)KRAS G12CまたはKRAS G12V変異を伴う乳癌;5)KRAS G12C、KRAS G12D、KRAS G12VまたはKRAS G13D変異を伴う子宮頸癌;6)KRAS G12RまたはKRAS Q61K変異を伴う胆管癌;7)KRAS G12A、KRAS G12C、KRAS G12DまたはKRAS G13D変異を伴う結腸直腸癌;8)KRAS G12D変異を伴う食道癌;9)KRAS G12C、KRAS G12D、KRAS G12S、KRAS G12V、KRAS G13DまたはKRAS Q61H変異を伴う胃癌;10)KRAS G12D変異を伴う神経膠芽腫;11)KRAS G12C、KRAS G12DまたはKRAS G13D変異を伴う肝癌;12)KRAS G12A、KRAS G12D,KRAS G12S、KRAS G12V、KRAS G13C、KRAS G13D、KRAS Q61KまたはKRAS Q61L変異を伴う肺癌;13)KRAS G12C、KRAS G12D、KRAS G12R、KRAS G13D、KRAS Q61K、KRAS Q61LまたはKRAS Q61R変異を伴う黒色腫;14)KRAS G12C変異を伴う中皮腫;15)KRAS G12R、KRAS G12V、KRAS Q61LまたはKRAS G13C変異を伴う卵巣癌;16)KRAS G12A、KRAS G12D、KRAS G12R、KRAS G12V、KRAS G13CまたはKRAS Q61H変異を伴う膵臓癌;17)KRAS G12D、KRAS G12RまたはKRAS G12V変異を伴う前立腺癌;18)KRAS G12C、KRAS G12DまたはKRAS G12V変異を伴う腎癌;19)KRAS G13CまたはKRAS Q61H変異を伴う肉腫;20)KRAS G12V、KRAS Q61KまたはKRAS Q61R変異を伴う甲状腺癌;21)KRAS G12A、KRAS G12R、KRAS G12S、KRAS G12V、KRAS Q61LまたはKRAS Q61R変異を伴う精巣癌;22)KRAS G12D変異を伴う胸腺腫;或いは、23)KRAS G12A、KRAS G12C、KRAS G12D、KRAS G12S、KRAS G12V、KRAS G13C、KRAS G13D、KRAS G13V、KRAS Q61HまたはKRAS Q61L変異を伴う子宮癌である、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記の薬学的に許容される塩が酒石酸塩である、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記の医薬品が、KRAS阻害剤と併用し、好ましくは有効量のKRAS阻害剤と併用する、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記のKRAS阻害剤が、BI 1701963、JNJ-74699157、MRTX1257、MRTX849、AMG510、またはそれらの薬学的に許容される塩であり、前記のAMG510の構造が、
【化2】
である、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記のKRAS阻害剤が、AMG510またはその薬学的に許容される塩である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記の腫瘍が、KRAS変異を伴う肺癌、結腸直腸癌または膵臓癌である、請求項7に記載の使用。
【請求項11】
前記のKRAS変異がG12C変異である、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記の医薬品が、MEK阻害剤と併用し、好ましくは有効量のMEK阻害剤と併用する、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記のMEK阻害剤が、トラメチニブ、コビメチニブ、ビニメチニブ、セルメチニブ、PD-325901、TAK-733、またはそれらの薬学的に許容される塩である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記のMEK阻害剤が、トラメチニブまたはコビメチニブである、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記の腫瘍が、KRAS変異を伴う肺癌、結腸直腸癌または膵臓癌である、請求項12~14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記のKRAS変異がG12C変異である、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
有効量の化合物またはその薬学的に許容される塩を被験者に投与することを含む、KRAS変異を伴う腫瘍を治療する方法であって、
前記の化合物の構造は、
【化3】
である、KRAS変異を伴う腫瘍を治療する方法。
【請求項18】
前記の腫瘍が、膵臓癌、結腸直腸癌、肺癌、腎癌、胃癌、前立腺癌または卵巣癌である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記のKRAS変異が、G12A、G12C、G12D、G12R、G12S、G12V、G13C、G13D、G13V、Q61K、Q61L、Q61RまたはQ61H変異である、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記のKRAS変異が、G12C、G12D、G13CまたはQ61K変異である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記の腫瘍が、1)KRAS G12C変異を伴う肺癌、結腸直腸癌または膵臓癌;2)KRAS G12D、KRAS G12V、KRAS G13DまたはKRAS Q61H変異を伴う急性髓細胞性白血病;3)KRAS G12C、KRAS G12D、KRAS G12R、KRAS G12V、KRAS G13DまたはKRAS Q61H変異を伴う膀胱癌;4)KRAS G12CまたはKRAS G12V変異を伴う乳癌;5)KRAS G12C、KRAS G12D、KRAS G12VまたはKRAS G13D変異を伴う子宮頸癌;6)KRAS G12RまたはKRAS Q61K変異を伴う胆管癌;7)KRAS G12A、KRAS G12C、KRAS G12DまたはKRAS G13D変異を伴う結腸直腸癌;8)KRAS G12D変異を伴う食道癌;9)KRAS G12C、KRAS G12D、KRAS G12S、KRAS G12V、KRAS G13DまたはKRAS Q61H変異を伴う胃癌;10)KRAS G12D変異を伴う神経膠芽腫;11)KRAS G12C、KRAS G12DまたはKRAS G13D変異を伴う肝癌;12)KRAS G12A、KRAS G12D,KRAS G12S、KRAS G12V、KRAS G13C、KRAS G13D、KRAS Q61KまたはKRAS Q61L変異を伴う肺癌;13)KRAS G12C、KRAS G12D、KRAS G12R、KRAS G13D、KRAS Q61K、KRAS Q61LまたはKRAS Q61R変異を伴う黒色腫;14)KRAS G12C変異を伴う中皮腫;15)KRAS G12R、KRAS G12V、KRAS Q61LまたはKRAS G13C変異を伴う卵巣癌;16)KRAS G12A、KRAS G12D、KRAS G12R、KRAS G12V、KRAS G13CまたはKRAS Q61H変異を伴う膵臓癌;17)KRAS G12D、KRAS G12RまたはKRAS G12V変異を伴う前立腺癌;18)KRAS G12C、KRAS G12DまたはKRAS G12V変異を伴う腎癌;19)KRAS G13CまたはKRAS Q61H変異を伴う肉腫;20)KRAS G12V、KRAS Q61KまたはKRAS Q61R変異を伴う甲状腺癌;21)KRAS G12A、KRAS G12R、KRAS G12S、KRAS G12V、KRAS Q61LまたはKRAS Q61R変異を伴う精巣癌;22)KRAS G12D変異を伴う胸腺腫;或いは、23)KRAS G12A、KRAS G12C、KRAS G12D、KRAS G12S、KRAS G12V、KRAS G13C、KRAS G13D、KRAS G13V、KRAS Q61HまたはKRAS Q61L変異を伴う子宮癌である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記の方法が、被験者に有効量のKRAS阻害剤を投与することをさらに含む、請求項17~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記のKRAS阻害剤が、BI 1701963、JNJ-74699157、MRTX1257、MRTX849、AMG510、またはそれらの薬学的に許容される塩であり、前記のAMG510の構造が、
【化4】
である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記のKRAS阻害剤が、AMG510またはその薬学的に許容される塩である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記の腫瘍が、KRAS変異を伴う肺癌、結腸直腸癌または膵臓癌である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記の腫瘍が、KRAS G12C変異を伴う膵臓癌である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記の化合物、またはその薬学的に許容される塩が、KRAS阻害剤と同時に、交互に、または順次に投与される、請求項22~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記の方法が、被験者に有効量のMEK阻害剤を投与することをさらに含む、請求項17~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記のMEK阻害剤が、トラメチニブ、コビメチニブ、ビニメチニブ、セルメチニブ、PD-325901、TAK-733、またはそれらの薬学的に許容される塩である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記のMEK阻害剤が、トラメチニブまたはコビメチニブである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記の腫瘍が、KRAS変異を伴う肺癌、結腸直腸癌または膵臓癌である、請求項28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記の腫瘍が、KRAS G12C変異を伴う膵臓癌、KRAS G12C変異を伴う結腸直腸癌またはKRAS Q61K変異を伴う肺癌である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記の化合物、またはその薬学的に許容される塩が、KRAS阻害剤と同時に、交互に、または順次に投与される、請求項28~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記の薬学的に許容される塩が酒石酸塩である、請求項17に記載の方法。
【請求項35】
a)被験者の癌に由来する組織サンプルにKRAS変異があるかどうかを評価すること;および
b)癌にKRAS変異がある場合は、有効量の化合物またはその薬学的に許容される塩を被験者に投与すること
を含むKRAS変異を伴う腫瘍を治療する方法であって、
前記の化合物の構造は、
【化5】
である、KRAS変異を伴う腫瘍を治療する方法。
【請求項36】
c)癌がKRAS変異を特徴としない場合、FAK阻害剤以外の抗癌剤を投与することをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
化合物またはその薬学的に許容される塩と、
KRAS阻害剤と
を含む医薬組成物であって、
前記の化合物の構造は、
【化6】
である、医薬組成物。
【請求項38】
前記のKRAS阻害剤が、BI 1701963、MRTX849、AMG510、またはそれらの薬学的に許容される塩であり、前記のAMG510の構造は、
【化7】
である、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記のKRAS阻害剤が、AMG510またはその薬学的に許容される塩である、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
化合物、またはその薬学的に許容される塩と、
MEK阻害剤と
を含む医薬組成物であって、
前記の化合物の構造は、
【化8】
である、医薬組成物。
【請求項41】
前記のMEK阻害剤が、トラメチニブ、コビメチニブ、ビニメチニブ、セルメチニブ、PD-325901、TAK-733、またはそれらの薬学的に許容される塩である、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記のMEK阻害剤が、トラメチニブまたはその薬学的に許容される塩である、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
前記の薬学的に許容される塩が酒石酸塩である、請求項37~42のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項44】
KRAS変異を伴う腫瘍を治療するための医薬品の調製における、化合物またはその薬学的に許容される塩と、KRAS阻害剤またはMEK阻害剤との使用であって、前記の化合物の構造は、
【化9】
である、使用。
【請求項45】
KRAS阻害剤またはMEK阻害剤と併用してKRAS変異を伴う腫瘍を治療する医薬品の調製における、化合物またはその薬学的に許容される塩の使用であって、前記の化合物の構造は、
【化10】
である、使用。
【請求項46】
化合物またはその薬学的に許容される塩と併用してKRAS変異を伴う腫瘍を治療する医薬品の調製における、KRAS阻害剤またはMEK阻害剤の使用であって、前記の化合物の構造は、
【化11】
である、使用。
【請求項47】
前記のKRAS阻害剤またはMEK阻害剤が、請求項8または請求項13で定義された通りである、請求項44~46のいずれか一項に記載の使用。
【請求項48】
前記の変異が、請求項3または請求項4で定義された通りであり、前記の腫瘍が、請求項5で定義された通りである、請求項44~46のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬化学の分野に属する。具体的に、本発明は、KRAS変異を伴う腫瘍を治療するための医薬品の調製における化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
Ras遺伝子ファミリーは、細胞シグナル伝達に関与する低分子量GTPaseをコードする。Ras遺伝子における変異は、それを恒常的に活性化状態にして、細胞外シグナルがない場合に不適切な細胞内シグナル伝達を引き起こす可能性がある。シグナル伝達は細胞の成長と分裂につながるため、調節不全のRasシグナル伝達は、最終的に腫瘍と癌の形成につながる可能性がある。Ras遺伝子は、KRAS遺伝子によってコードされるKRAS(Kirstenラット肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログ)タンパク質を含むRasスーパーファミリータンパク質をコードする。
【0003】
KRAS遺伝子の変異は、膵臓癌、肺癌、結腸直腸癌、胆嚢癌、甲状腺癌、および胆管癌によく見られる。一般的に、上皮成長因子受容体(EGFR)TKIは、これらの癌の治療に使用される。KRAS変異は、上皮成長因子受容体(EGFR)TKI標的療法に対する腫瘍の反応の予測マーカーであることが報告された。最も一般的なKRAS変異は、エクソン2のコドン12と13で発生する。他の稀な変異は、エクソン3のコドン59と61で発生する。研究によると、コドン12、13または61でのKRAS変異により、Rasタンパク質の活性形態をより長時間維持し、EGFR経路の過剰活性化につながることが明らかになった。したがって、コドン12、13または61にKRAS変異を持つ患者は、チロシンキナーゼ阻害剤治療に対する反応がよくない。さらに、KRASにおけるコドン12または13での変異は、抗EGFRモノクローナル抗体療法に反応しない患者の強力な予測指標であることが示されており、例えば、転移性結腸直腸癌(mCRC)および肺癌のためのERBITUX.RTM(セツキシマブ;ImClone Systems Inc.,ニューヨーク、米国)およびVECTIBIX.RTM(パニツムマブ、Amgen、サウザンドオークス、カリフォルニア州、米国)を含む特定の癌性疾患の治療に用いられる。Massarelli et al.,KRAS Mutation is an Important Predictor of Resistance to Therapy with Epidermal Growth Factor Receptor Tyrosine Kinase Inhibitors in Non-Small Cell Lung Cancer,CLIN CANCER RES.,13(10):2890-2896(2007);Amado et al.,Wild-type KRAS is Required for Panitumumab Efficiency in Patients with Metastatic Colorectal Cancer,J.CLIN ONCOL,26(10):1626-1634(2008);Van Cutsem et al.,KRAS Status and Efficacy in the First-Line Treatment of Patients with Metastatic Colorectal Cancer(mCRC) Treated with FOLFIRI with or without Cetuximab:The CRYSTAL Experience,J CLIN ONCOL,26(15S):May 20 Supplement,Abstract 2(2008);Baker et al.,Evaluation of Tumor Gene Expression and KRAS Mutations in FFPE Tumor Tissue as Predictors of Response to Cetuximab in Metastatic Colorectal Cancer,J CLIN ONCOL, 26(15S):May 20 Supplement,Abstract 3512 (2008);Van Zakowski et al.,Reflex Testing of Lung Adenocarcinomas for EGFR and KRAS Mutations:The Memorial Sloan-Kettering Experience,J.CLIN ONCOL,26(15S):May 20 Supplement,Abstract 22031(2008)。
【0004】
したがって、KRAS変異を伴う癌の治療法を見出す必要がある。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、本発明は、KRAS変異を伴う腫瘍を治療するための医薬品の調製における、化合物またはその薬学的に許容される塩の使用を提供し、ここで、前記の化合物は、2-フルオロ-5-メトキシ-4-[(4-(2-メチル-3-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-4-オキシ)-5-トリフルオロメチル-ピリミジン-2-イル)アミノ]-N-(1-メチル-ピペリジン-4-イル)ベンズアミド(以下「化合物」と呼ばれ、「BI853520」とも呼ばれ、WO2010058032を参照)であり、前記の化合物の構造は以下のとおりである。
【0006】
【化1】
【0007】
前記の化合物は、KRAS変異を伴う腫瘍において特に効果的であった(実施例1を参照)。さらに、前記の化合物は、KRAS阻害剤またはマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)阻害剤と併用して効力を増加させ、長期性および持続性の腫瘍退縮をもたらすことが見出された(実施例2および3を参照)。
【0008】
オプションとして、前記の腫瘍は、膵臓癌、結腸直腸癌、肺癌、腎癌、胃癌、前立腺癌または卵巣癌である。
【0009】
オプションとして、前記のKRAS変異は、G12A、G12C、G12D、G12R、G12S、G12V、G13C、G13D、G13V、Q61K、Q61L、Q61RまたはQ61H変異である。
オプションとして、前記のKRAS変異は、G12C、G12D、G13CまたはQ61K変異である。
【0010】
オプションとして、前記の腫瘍は、1)KRAS G12C変異を伴う肺癌、結腸直腸癌または膵臓癌;2)KRAS G12D、KRAS G12V、KRAS G13DまたはKRAS Q61H変異を伴う急性髓細胞性白血病;3)KRAS G12C、KRAS G12D、KRAS G12R、KRAS G12V、KRAS G13DまたはKRAS Q61H変異を伴う膀胱癌;4)KRAS G12CまたはKRAS G12V変異を伴う乳癌;5)KRAS G12C、KRAS G12D、KRAS G12VまたはKRAS G13D変異を伴う子宮頸癌;6)KRAS G12RまたはKRAS Q61K変異を伴う胆管癌;7)KRAS G12A、KRAS G12C、KRAS G12DまたはKRAS G13D変異を伴う結腸直腸癌;8)KRAS G12D変異を伴う食道癌;9)KRAS G12C、KRAS G12D、KRAS G12S、KRAS G12V、KRAS G13DまたはKRAS Q61H変異を伴う胃癌;10)KRAS G12D変異を伴う神経膠芽腫;11)KRAS G12C、KRAS G12DまたはKRAS G13D変異を伴う肝癌;12)KRAS G12A、KRAS G12D,KRAS G12S、KRAS G12V、KRAS G13C、KRAS G13D、KRAS Q61KまたはKRAS Q61L変異を伴う肺癌;13)KRAS G12C、KRAS G12D、KRAS G12R、KRAS G13D、KRAS Q61K、KRAS Q61LまたはKRAS Q61R変異を伴う黒色腫;14)KRAS G12C変異を伴う中皮腫;15)KRAS G12R、KRAS G12V、KRAS Q61LまたはKRAS G13C変異を伴う卵巣癌;16)KRAS G12A、KRAS G12D、KRAS G12R、KRAS G12V、KRAS G13CまたはKRAS Q61H変異を伴う膵臓癌;17)KRAS G12D、KRAS G12RまたはKRAS G12V変異を伴う前立腺癌;18)KRAS G12C、KRAS G12DまたはKRAS G12V変異を伴う腎癌;19)KRAS G13CまたはKRAS Q61H変異を伴う肉腫;20)KRAS G12V、KRAS Q61KまたはKRAS Q61R変異を伴う甲状腺癌;21)KRAS G12A、KRAS G12R、KRAS G12S、KRAS G12V、KRAS Q61LまたはKRAS Q61R変異を伴う精巣癌;22)KRAS G12D変異を伴う胸腺腫;または、23)KRAS G12A、KRAS G12C、KRAS G12D、KRAS G12S、KRAS G12V、KRAS G13C、KRAS G13D、KRAS G13V、KRAS Q61HまたはKRAS Q61L変異を伴う子宮癌である。
【0011】
オプションとして、前記の薬学的に許容される塩は酒石酸塩である。
【0012】
オプションとして、前記の医薬品は、KRAS阻害剤と併用され、さらに有効量のKRAS阻害剤と併用される。
【0013】
オプションとして、前記のKRAS阻害剤は、BI 1701963、JNJ-74699157、MRTX1257、MRTX849、AMG510、またはそれらの薬学的に許容される塩であり、前記のAMG510の構造は以下のとおりである。
【0014】
【化2】
【0015】
オプションとして、前記のKRAS阻害剤は、AMG510またはその薬学的に許容される塩である。
【0016】
オプションとして、前記の腫瘍は、KRAS変異を伴う肺癌、結腸直腸癌または膵臓癌である。
【0017】
オプションとして、前記のKRAS変異はG12C変異である。
【0018】
オプションとして、前記の医薬品は、MEK阻害剤と併用され、さらに有効量のMEK阻害剤と併用される。
【0019】
オプションとして、前記のMEK阻害剤は、トラメチニブ、コビメチニブ、ビニメチニブ、セルメチニブ、PD-325901、TAK-733、またはそれらの薬学的に許容される塩。
【0020】
オプションとして、前記のMEK阻害剤は、トラメチニブまたはコビメチニブである。
【0021】
オプションとして、前記の腫瘍は、KRAS変異を伴う肺癌、結腸直腸癌または膵臓癌である。
【0022】
オプションとして、前記のKRAS変異はG12C変異である。
【0023】
別の態様では、本発明は、有効量の化合物またはその薬学的に許容される塩を被験者に投与することを含む、KRAS変異を伴う腫瘍を治療する方法を提供し、ここで、前記の化合物の構造は以下のとおりである。
【0024】
【化3】
【0025】
オプションとして、前記の腫瘍は、膵臓癌、結腸直腸癌、肺癌、腎癌、胃癌、前立腺癌または卵巣癌である。
【0026】
オプションとして、前記のKRAS変異は、G12A、G12C、G12D、G12R、G12S、G12V、G13C、G13D、G13V、Q61K、Q61L、Q61RまたはQ61H変異である。
【0027】
オプションとして、前記のKRAS変異は、G12C、G12D、G13CまたはQ61K変異である。
【0028】
オプションとして、前記の腫瘍は、1)KRAS G12C変異を伴う肺癌、結腸直腸癌または膵臓癌;2)KRAS G12D、KRAS G12V、KRAS G13DまたはKRAS Q61H変異を伴う急性髓細胞性白血病;3)KRAS G12C、KRAS G12D、KRAS G12R、KRAS G12V、KRAS G13DまたはKRAS Q61H変異を伴う膀胱癌;4)KRAS G12CまたはKRAS G12V変異を伴う乳癌;5)KRAS G12C、KRAS G12D、KRAS G12VまたはKRAS G13D変異を伴う子宮頸癌;6)KRAS G12RまたはKRAS Q61K変異を伴う胆管癌;7)KRAS G12A、KRAS G12C、KRAS G12DまたはKRAS G13D変異を伴う結腸直腸癌;8)KRAS G12D変異を伴う食道癌;9)KRAS G12C、KRAS G12D、KRAS G12S、KRAS G12V、KRAS G13DまたはKRAS Q61H変異を伴う胃癌;10)KRAS G12D変異を伴う神経膠芽腫;11)KRAS G12C、KRAS G12DまたはKRAS G13D変異を伴う肝癌;12)KRAS G12A、KRAS G12D,KRAS G12S、KRAS G12V、KRAS G13C、KRAS G13D、KRAS Q61KまたはKRAS Q61L変異を伴う肺癌;13)KRAS G12C、KRAS G12D、KRAS G12R、KRAS G13D、KRAS Q61K、KRAS Q61LまたはKRAS Q61R変異を伴う黒色腫;14)KRAS G12C変異を伴う中皮腫;15)KRAS G12R、KRAS G12V、KRAS Q61LまたはKRAS G13C変異を伴う卵巣癌;16)KRAS G12A、KRAS G12D、KRAS G12R、KRAS G12V、KRAS G13CまたはKRAS Q61H変異を伴う膵臓癌;17)KRAS G12D、KRAS G12RまたはKRAS G12V変異を伴う前立腺癌;18)KRAS G12C、KRAS G12DまたはKRAS G12V変異を伴う腎癌;19)KRAS G13CまたはKRAS Q61H変異を伴う肉腫;20)KRAS G12V、KRAS Q61KまたはKRAS Q61R変異を伴う甲状腺癌;21)KRAS G12A、KRAS G12R、KRAS G12S、KRAS G12V、KRAS Q61LまたはKRAS Q61R変異を伴う精巣癌;22)KRAS G12D変異を伴う胸腺腫;または23)KRAS G12A、KRAS G12C、KRAS G12D、KRAS G12S、KRAS G12V、KRAS G13C、KRAS G13D、KRAS G13V、KRAS Q61HまたはKRAS Q61L変異を伴う子宮癌である。
【0029】
オプションとして、前記の方法は、被験者に有効量のKRAS阻害剤を投与することをさらに含む。
【0030】
オプションとして、前記のKRAS阻害剤は、BI 1701963、JNJ-74699157、MRTX1257、MRTX849、AMG510、またはそれらの薬学的に許容される塩であり、前記のAMG510の構造は以下のとおりである。
【0031】
【化4】
【0032】
オプションとして、前記のKRAS阻害剤は、AMG510またはその薬学的に許容される塩である。
【0033】
オプションとして、前記の腫瘍は、KRAS変異を伴う肺癌、結腸直腸癌または膵臓癌である。
【0034】
オプションとして、前記の腫瘍は、KRAS G12C変異を伴う膵臓癌である。
【0035】
オプションとして、前記の腫瘍は、KRAS G12C変異を伴う結腸直腸癌である。
【0036】
オプションとして、前記の化合物またはその薬学的に許容される塩は、KRAS阻害剤と同時に、交互に、または順次に投与される。
【0037】
オプションとして、前記の方法は、被験者に有効量のMEK阻害剤を投与することをさらに含む。
【0038】
オプションとして、前記のMEK阻害剤は、トラメチニブ、コビメチニブ、ビニメチニブ、セルメチニブ、PD-325901、TAK-733、またはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0039】
オプションとして、前記のMEK阻害剤は、トラメチニブまたはコビメチニブである。
【0040】
オプションとして、前記の腫瘍は、KRAS変異を伴う肺癌、結腸直腸癌または膵臓癌である。
【0041】
オプションとして、前記の腫瘍は、KRAS G12C変異を伴う膵臓癌、KRAS G12C変異を伴う結腸直腸癌、またはKRAS Q61K変異を伴う肺癌である。
【0042】
オプションとして、前記の化合物またはその薬学的に許容される塩は、KRAS阻害剤と同時に、交互に、または順次に投与される。
【0043】
オプションとして、前記の薬学的に許容される塩は酒石酸塩である。
【0044】
別の態様では、本発明は、
a)被験者の癌に由来する組織サンプルにKRAS変異があるかどうかを評価すること;および
b)癌にKRAS変異がある場合は、有効量の化合物またはその薬学的に許容される塩を被験者に投与すること
を含むKRAS変異を伴う腫瘍を治療する方法であって、
前記の化合物の構造は以下のとおりである方法を提供する。
【0045】
【化5】
【0046】
オプションとして、c)癌がKRAS変異を特徴としない場合、FAK阻害剤以外の抗癌剤を投与することをさらに含む。
【0047】
別の態様では、本発明は、化合物またはその薬学的に許容される塩と、KRAS阻害剤とを含む医薬組成物を提供し、ここで、前記の化合物の構造式は以下の通りである。
【0048】
【化6】
【0049】
オプションとして、前記のKRAS阻害剤は、BI 1701963、MRTX849、AMG510、またはそれらの薬学的に許容される塩であり、前記のAMG510の構造は以下のとおりである。
【0050】
【化7】
【0051】
オプションとして、前記のKRAS阻害剤は、AMG510またはその薬学的に許容される塩である。
【0052】
別の態様では、本発明は、化合物またはその薬学的に許容される塩と、MEK阻害剤とを含む医薬組成物を提供し、前記の化合物の構造式は以下の通りである。
【0053】
【化8】
【0054】
オプションとして、前記のMEK阻害剤は、トラメチニブ、コビメチニブ、ビニメチニブ、セルメチニブ、PD-325901、TAK-733、またはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0055】
オプションとして、前記のMEK阻害剤は、トラメチニブまたはその薬学的に許容される塩である。
【0056】
オプションとして、前記の薬学的に許容される塩は酒石酸塩である。
【0057】
別の態様では、本発明は、KRAS変異を伴う腫瘍を治療するための医薬品の調製における、化合物またはその薬学的に許容される塩と、KRAS阻害剤またはMEK阻害剤との使用を提供し、前記の化合物の構造は、
【0058】
【化9】
である。
【0059】
別の態様では、本発明は、KRAS阻害剤またはMEK阻害剤と併用してKRAS変異を伴う腫瘍を治療する医薬品の調製における、化合物またはその薬学的に許容される塩の使用を提供し、前記の化合物の構造は、
【0060】
【化10】
である。
【0061】
別の態様では、本発明は、化合物またはその薬学的に許容される塩と併用してKRAS変異を伴う腫瘍を治療する医薬品の調製における、KRAS阻害剤またはMEK阻害剤の使用を提供し、前記の化合物の構造は、
【0062】
【化11】
である。
【0063】
別の態様では、本発明は、KRAS変異を伴う腫瘍を治療するための以下の化合物、或いはKRAS阻害剤またはMEK阻害剤、或いはそれらの組み合わせを提供する。前記の化合物の構造は、
【0064】
【化12】
である。
【0065】
オプションとして、前記のKRAS阻害剤またはMEK阻害剤は本明細書で定義された通りであり、前期の変異は本明細書で定義された通りであり、前記の腫瘍は本明細書で定義された通りである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1図1は、化合物の抗腫瘍効果を示し、膵臓癌細胞MIA PaCa-2(G12C変異)、肺癌細胞Calu-6(Q61K変異)とHCC-461(G12D変異)および卵巣癌細胞TOV-21G(G13C変異)のヌードマウス異種移植モデルにおいて、50mg/kgの投与量で1日1回投与された場合の化合物の腫瘍増殖阻害(TGI,%)を示す。
図2図2は、膵臓癌細胞MIA PaCa-2のヌードマウス異種移植モデルにおける腫瘍増殖動態を示し、膵臓癌細胞MIA PaCa-2のヌードマウス異種移植モデルにおいて、異なる試験群の抗腫瘍効果を示す(実施例2)。試験群は、それぞれ、ブランク対照群;25mg/kgの投与量で1日1回投与される化合物群;10mg/kgの投与量で1日1回投与されるAMG510群;および、25mg/kgの投与量で1日1回化合物が投与され、10mg/kgの投与量で1日1回AMG510が投与される化合物とAMG510との併用投与群である。
図3図3は、膵臓癌細胞MIA PaCa-2のヌードマウス異種移植モデルにおける動物の11日目の腫瘍体積(mm)を示し、膵臓癌細胞MIA PaCa-2のヌードマウス異種移植モデルにおいて、異なる試験群の抗腫瘍効果を示す(実施例2)。試験群は、それぞれ、ブランク対照群;25mg/kgの投与量で1日1回投与される化合物群;10mg/kgの投与量で1日1回投与されるAMG510群;および、25mg/kgの投与量で1日1回化合物が投与され、10mg/kgの投与量で1日1回AMG510が投与される化合物とAMG510との併用投与群である。
図4図4は、肺癌細胞Calu-6のヌードマウス異種移植モデルにおける平均腫瘍体積(mm)を示し、肺癌細胞Calu-6のヌードマウス異種移植モデルにおいて、異なる試験群の抗腫瘍効果を示す(実施例3)。試験群は、それぞれ、ブランク対照群;50mg/kgの投与量で1日1回投与される化合物群;0.125mg/kgの投与量で1日1回投与されるトラメチニブ群;および、50mg/kgの投与量で1日1回化合物が投与され、0.125mg/kgの投与量で1日1回トラメチニブが投与される化合物とトラメチニブとの併用投与群である。
図5図5は、結腸直腸癌CO-04-0070のヌードマウス異種移植モデルにおける腫瘍増殖動態を示し、結腸直腸癌CO-04-0070のヌードマウス異種移植モデルにおいて、異なる試験群の抗腫瘍効果を示す(実施例4)。試験群は、それぞれ、ブランク対照群;25mg/kgの投与量で1日1回投与される化合物群;30mg/kgの投与量で1日1回投与されるAMG510群;および、25mg/kgの投与量で1日1回化合物が投与され、30mg/kgの投与量で1日1回AMG510が投与される化合物とAMG510との併用投与群である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
また、本発明は、KRAS変異を伴う腫瘍を治療するための医薬品の調製における、化合物またはその薬学的に許容される塩の使用に関する。さらに、本発明は、被験者に有効量の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、KRAS変異を伴う腫瘍を治療する方法に関する。
【0068】
本明細書で使用される「KRAS」という用語は、RAS遺伝子ファミリーに属するタンパク質であるKirstenラット肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログを指し、固有のGTPアーゼ活性を有する低分子量Gタンパク質をコードし、アポトーシス、増殖および分化を含む複数の経路に関与する下流エフェクターの活性化に寄与する。
【0069】
本明細書において、「KRAS変異」という用語は、KRASにおける突然変異、すなわち、野生型KRASのアミノ酸配列における1つまたは複数の変化を指す。KRASの変異は、内因性GTPase活性の喪失につながる可能性があり、したがって細胞増殖シグナル伝達の調節不全につながる可能性がある。一部の実施形態において、KRASは、コドン12、13、59および61から選択される1つまたは複数の位置で変異を起こす。一部の実施形態において、KRASは、G12、G13、S17、P34、A59およびQ61から選択される1つまたは複数のアミノ酸の位置で変異を起こす。一部の実施形態において、KRASは、G12C、G12S、G12R、G12F、G12L、G12N、G12A、G12D、G12V、G13C、G13S、G13D、G13V、G13P、S17G、P34S、A59E、A59G、A59T、Q61K、Q61L、Q61RおよびQ61Hから選択される1つまたは複数のアミノ酸の位置で変異を起こす。一部の実施形態において、KRASは、G12、G13、A59、Q61、K117およびA146から選択される1つまたは複数のアミノ酸の位置で変異を起こす。一部の実施形態において、KRASは、G12C、G12R、G12S、G12A、G12D、G12V、G13C、G13R、G13S、G13A、G13D、G13V、A59E、A59G、A59T、Q61K、Q61L、Q61R、Q61H、K117N、K117R、K117E、A146P、A146TおよびA146Vから選択される1つまたは複数のアミノ酸の位置で変異を起こす。一部の実施形態において、KRASは、G12、G13、A59およびQ61から選択される1つまたは複数のアミノ酸の位置で変異を起こす。一部の実施形態において、KRASは、G12C、G12R、G12S、G12A、G12D、G12V、G13C、G13R、G13S、G13A、G13D、A59E、A59G、A59T、Q61K、Q61L、Q61RおよびQ61Hから選択される1つまたは複数のアミノ酸の位置で変異を起こす。一部の実施形態において、KRASは、G12、G13およびD153から選択される1つまたは複数のアミノ酸の位置で変異を起こす。一部の実施形態において、KRASは、G12A、G12C、G12D、G12V、G12S、G13DおよびD153Vから選択される1つまたは複数のアミノ酸の位置で変異を起こす。一部の実施形態において、KRASは、G12C、G12SおよびD153Vから選択される1つまたは複数のアミノ酸の位置で変異を起こす。
【0070】
一部の実施形態において、KRAS変異は、G12A、G12C、G12D、G12R、G12S、G12V、G13C、G13D、G13V、Q61K、Q61L、Q61RまたはQ61Hで起こる。一部の実施形態において、KRAS変異は、G12C、G12D、G13CまたはQ61Kで起こる。
【0071】
患者から癌細胞を取得する従来の診断方法により、癌がKRAS変異を有するかどうかを決定する。これらの方法としては、生検、血液検査、および他の診断方法が挙げられるが、これらに限定されない。これらの方法により、組織サンプル、循環腫瘍細胞、または癌の特徴を有する生体分子(例えば循環核酸)などの癌細胞のサンプルを得る。次いで、KRAS変異が癌細胞に存在するかどうかを決定する。
【0072】
KRAS変異を特徴づける方法、例えば、KRAS遺伝子またはその発現(例えば、DNA、mRNA)の検出、配列決定、分析には、KRAS核酸増幅および/または視覚化が含まれる。KRAS遺伝子またはその発現を検出するために、当技術分野の従来の方法によって被験者から核酸を単離することができる。次いで、単離された核酸を増幅(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えば、直接PCR、定量的リアルタイムPCR、逆転写酵素PCRなどによる)、リガーゼ連鎖反応、自動継続配列複製(self-sustaining sequence replication)、転写増幅システム、Q-ベータレプリカーゼなど)および視覚化(例えば、増幅中の核酸の標識、挿入化合物/色素への曝露、プローブによる)することができる。KRASのコドン12および13の変異を検出する別の方法としては、THERASCREEN(商標)、KRAS変異検出キット(DxS Limited、Manchester、UK)を購入することである。KRAS変異を検出する他の方法は、DetmerらのUS20180223377およびHuangらのUS20180036304に開示されており、その全ての教示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0073】
本発明の別の実施形態は、前記の化合物またはその薬学的に許容される塩がMEK阻害剤と併用されることである。
【0074】
本明細書で使用される「MEK」という用語は、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ、セリン-スレオニンキナーゼを指し、タンパク質および細胞機能の調節に関与する細胞内シグナルの伝達を媒介する。ここで、前記の機能は、膜、細胞内および細胞間のプロセス、ならびに形質転換、増殖/成長、分化、生存および死に関連する。
【0075】
本明細書で使用される「MEK阻害剤」という用語は、MEK依存性細胞シグナル伝達/機能を減少/低下させ、MEK関連腫瘍細胞の増殖/成長を減少/低下させる化合物または薬剤を指す。MEK阻害剤の例としては、トラメチニブ、コビメチニブ、ビニメチニブ、セルメチニブ、PD-325901、TAK-733、またはそれらの薬学的に許容される塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0076】
本明細書で使用される「KRAS阻害剤」という用語は、KRAS活性(例えば、GTPアーゼ活性)を減少/低下させ、KRAS関連のアポトーシス、増殖および分化の低下をもたらす化学物質または医薬品を指す。KRAS阻害剤の例としては、BI 1701963、JNJ-74699157、MRTX1257、MRTX849、AMG510、またはそれらの薬学的に許容される塩が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、KRAS阻害剤の例としては、BI1701963、MRTX849、AMG510またはそれらの薬学的に許容される塩が含まれるが、これらに限定されない。前記のBI1701963は、ドイツのベーリンガーインゲルハイムによって開発され、米国臨床試験データベース(ClinicalTrials.gov)の登録番号がNCT04111458である。前記のMRTX849は、米国のバイオテクノロジー企業Miratiによって開発され、米国臨床試験データベースの登録番号がNCT03785249である。前記のAMG510の構造は次のとおりである。
【0077】
【化13】
【0078】
前記の化合物、またはその薬学的に許容される塩は、MEK阻害剤(またはKRAS阻害剤)と同時に、交互に、または順次に投与される。
【0079】
前記の化合物またはその薬学的に許容される塩は、他の抗増殖剤または抗癌療法と併用して、腫瘍を治療することができる。前記の抗増殖剤または抗癌療法としては、手術、放射線療法(ガンマ線、中性子線放射線療法、電子線放射線療法、陽子線療法、近接照射療法、全身放射線同位体を含むがこれらに限定されない)、内分泌療法、生物学的反応修飾薬(インターフェロン、インターロイキン、および腫瘍壊死因子(TNF)を含むがこれらに限定されない)、温熱療法および凍結療法、副作用を軽減する医薬品(例えば制吐剤)、ならびにその他の承認された化学療法剤が挙げられる。
【0080】
前記の化合物およびその薬学的に許容される塩は、単独で、またはMEK阻害剤またはKRAS阻害剤と併用して、KRAS変異腫瘍を治療することができる。本明細書で使用される「KRAS変異腫瘍」という用語は、KRAS変異を有する腫瘍を指す。KRAS変異は、内因性GTPase活性の喪失、および/または細胞増殖シグナル伝達の調節不全を引き起こす。一部の実施形態において、前記の腫瘍は、結腸直腸癌、膵臓癌、腎癌、肺癌、肝癌、乳癌、前立腺癌、消化管癌、腹膜癌、黒色腫、子宮内膜癌、卵巣癌、子宮頸癌、子宮癌、膀胱癌、神経膠芽腫、転移性脳腫瘍、唾液腺癌、甲状腺癌、脳癌、リンパ腫、骨髄腫および頭頸部癌からなる群から選択される。一部の実施形態において、前記の腫瘍は、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、肝細胞癌、結腸癌、子宮内膜癌および肝細胞癌からなる群から選択される。一部の実施形態において、前記の腫瘍は、結腸直腸癌、前立腺癌、乳癌、肺癌、子宮内膜癌、多発性骨髄腫、膵臓癌、腎癌および神経膠芽細胞腫からなる群から選択される。一部の実施形態において、前記の腫瘍は、非小細胞肺癌、膵臓癌および神経膠芽細胞腫からなる群から選択される。一部の実施形態において、前記の腫瘍は、非小細胞肺癌である。一部の実施形態において、KRAS変異腫瘍は、膵臓癌、結腸直腸癌、肺癌、腎癌、胃癌、前立腺癌、卵巣癌、乳癌、脳癌、膀胱癌、子宮頸癌、食道癌、肝癌、甲状腺癌、精巣癌、子宮癌、胸腺瘤、肝細胞癌、頭頸部癌、胆管癌、神経芽細胞腫、黒色腫、神経膠芽腫、リンパ腫、白血病、急性髓細胞性白血病、黒色腫、中皮腫、肉腫、傍神経節腫、骨肉腫、胚細胞腫瘍、または中皮腫である。一部の実施形態において、KRAS変異腫瘍は、膵臓癌、結腸直腸癌、肺癌、腎癌、胃癌、前立腺癌または卵巣癌である。
【0081】
一部の実施形態において、KRAS変異腫瘍の具体的な例としては、1)KRAS G12C変異を伴う肺癌、結腸直腸癌または膵臓癌;2)KRAS G12D、KRAS G12V、KRAS G13DまたはKRAS Q61H変異を伴う急性髓細胞性白血病;3)KRAS G12C、KRAS G12D、KRAS G12R、KRAS G12V、KRAS G13DまたはKRAS Q61H変異を伴う膀胱癌;4)KRAS G12CまたはKRAS G12V変異を伴う乳癌;5)KRAS G12C、KRAS G12D、KRAS G12VまたはKRAS G13D変異を伴う子宮頸癌;6)KRAS G12RまたはKRAS Q61K変異を伴う胆管癌;7)KRAS G12A、KRAS G12C、KRAS G12DまたはKRAS G13D変異を伴う結腸直腸癌;8)KRAS G12D変異を伴う食道癌;9)KRAS G12C、KRAS G12D、KRAS G12S、KRAS G12V、KRAS G13DまたはKRAS Q61H変異を伴う胃癌;10)KRAS G12D変異を伴う神経膠芽腫;11)KRAS G12C、KRAS G12DまたはKRAS G13D変異を伴う肝癌;12)KRAS G12A、KRAS G12D,KRAS G12S、KRAS G12V、KRAS G13C、KRAS G13D、KRAS Q61KまたはKRAS Q61L変異を伴う肺癌;13)KRAS G12C、KRAS G12D、KRAS G12R、KRAS G13D、KRAS Q61K、KRAS Q61LまたはKRAS Q61R変異を伴う黒色腫;14)KRAS G12C変異を伴う中皮腫;15)KRAS G12R、KRAS G12V、KRAS Q61LまたはKRAS G13C変異を伴う卵巣癌;16)KRAS G12A、KRAS G12D、KRAS G12R、KRAS G12V、KRAS G13CまたはKRAS Q61H変異を伴う膵臓癌;17)KRAS G12D、KRAS G12RまたはKRAS G12V変異を伴う前立腺癌;18)KRAS G12C、KRAS G12DまたはKRAS G12V変異を伴う腎癌;19)KRAS G13CまたはKRAS Q61H変異を伴う肉腫;20)KRAS G12V、KRAS Q61KまたはKRAS Q61R変異を伴う甲状腺癌;21)KRAS G12A、KRAS G12R、KRAS G12S、KRAS G12V、KRAS Q61LまたはKRAS Q61R変異を伴う精巣癌;22)KRAS G12D変異を伴う胸腺腫;または23)KRAS G12A、KRAS G12C、KRAS G12D、KRAS G12S、KRAS G12V、KRAS G13C、KRAS G13D、KRAS G13V、KRAS Q61HまたはKRAS Q61L変異を伴う子宮癌が挙げられる。
【0082】
一部の実施形態において、本発明における前記の化合物またはその薬学的に許容される塩は、MEK阻害剤(例えば、トラメチニブ、コビメチニブ、ビニメチニブ、セルメチニブ、PD-325901、TAK-733、特にトラメチニブ)と併用され、KRAS変異を伴う肺癌、大腸癌または膵臓癌の治療に用いられる。KRAS変異は、前記の変異のいずれかであってもよい。一実施形態において、KRAS変異はG12C変異である。
【0083】
一部の実施形態において、前記の化合物またはその薬学的に許容される塩は、KRAS阻害剤(例えば、BI 1701963、MRTX849およびAMG510であり、特にAMG510である)と併用され、KRAS変異を伴う肺癌、結腸直腸癌または膵臓癌の治療に用いられる。KRAS変異は、前記の変異のいずれかであってもよい。一実施形態において、KRAS変異はG12C変異である。
【0084】
本明細書において、「薬学的に許容される」という用語は、毒性がなく、生物学的に許容可能であり、被験者への投与に適していることを意味する。
【0085】
本明細書において、「薬学的に許容される塩」という用語は、毒性がなく、生物学的に許容され、個体への投与に適している塩を指す。前記の化合物の薬学的に許容される塩は、毒性がなく、生物学的に許容され、被験者への投与に適している酸付加塩であり、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、硝酸塩などの無機酸と前記の化合物によって形成される酸付加塩;および、ギ酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、および式HOOC-(CH-COOH(nは0~4)などのアルカン-ジカルボン酸と形成される塩などの有機酸と前記の化合物によって形成される酸付加塩が含まれるが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩は、当技術分野で周知の従来の方法によって得られる。例えば、アミンなどの十分な塩基性を持つ化合物を、生理学的に許容される陰イオンを提供する適切な酸と反応させることによって得ることができる。一部の実施形態において、前記の塩は酒石酸塩である。
【0086】
本明細書において、「被験者」という用語は、哺乳動物および非哺乳動物を指す。哺乳動物とは、哺乳類の任意のメンバーを意味し、ヒト;チンパンジー、他の類人猿、サル種などの非ヒト霊長類;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどの農場動物;ウサギ、イヌ、ネコなどの家畜;ラット、マウス、モルモットなどのげっ歯類などの実験動物;などが含まれるが、これらに限定されない。非哺乳動物の例として、トリなどが含まれるが、これらに限定されない。「被験者」という用語は、特定の年齢や性別を意味するものではない。一部の実施形態では、被験者はヒトである。
【0087】
本明細書で使用される「治療」という用語は、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを指す。この効果は、以下の1つ以上の部分的または実質的に達成する効果を含む治療的な効果であり得る。例えば、疾患、病症または症候群の程度の部分的または全体的な減軽、疾患に関連する臨床症状または指標の改善、或いは疾患、病症または症候群の進行を遅延、抑制または低下する可能性である。
【0088】
本明細書において、「有効量」という用語とは、疾患または病症の重症度、持続時間、進行または発症を軽減または改善すること、疾患または病症の退行を引き起こすこと、または症状の再発や進行を遅延させること、ならびに他の治療法の治療効果を増強または改善することに十分な化合物(またはその薬学的に許容される塩)、MEK阻害剤および/またはKRAS阻害剤の量を指す。被験者に投与される化合物(またはその薬学的に許容される塩)、MEK阻害剤および/またはKRAS阻害剤の正確な量は、例えば、所定の医薬品または化合物、医薬製剤、投与経路、疾患、病症、治療される被験者または宿主の身分などの様々な要因に依存するが、当業者は通常通り決定することができる。たとえば、有効量の決定は、細胞増殖の程度、重症度、およびタイプにも依存する。当業者は、これらおよび他の要因に基づいて適切な投与量を決定することができる。他の治療薬と同時投与される場合、例えば、抗癌剤と同時投与される場合、他の治療薬の「有効量」は、使用される医薬品の種類に依存する。適切な投与量は、承認された治療薬では知られているが、当業者は、被験者の病症、治療される病症の種類、および前記の化合物またはその薬学的に許容される塩の量に応じて調整することができる。量が明記されていない場合、その量を仮定する必要がある。前記の化合物またはその薬学的に許容される塩の有効投与量は、10μg~2000mgの範囲であり得る。これらの実施例は非制限的である。MEK阻害剤およびKRAS阻害剤の有効量は、当業者に知られている。
【0089】
化合物またはその薬学的に許容される塩は、任意の適切な投与方法によって投与することができる。適切な方法には、被験者への経口、経腸、非経口、静脈内、筋肉内または皮下投与が含まれる。
【0090】
したがって、前記の化合物またはその薬学的に許容される塩は、不活性希釈剤または吸収性食用担体などの薬学的に許容される担体と共に経口投与することができる。それらは、ハードシェルまたはソフトシェルを有するゼラチンカプセルに封入するか、錠剤に打錠するか、または患者の食品と直接混合することができる。経口投与の場合、前記の化合物またはその薬学的に許容される塩は、1つまたは複数の賦形剤と組み合わせて、摂取可能な錠剤、口腔内錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤またはウエハー(wafer)剤として使用することができる。これらの製剤には、有効量の前記化合物が含まれている。
【0091】
錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤などには、例えば、トラガカント、アカシア、コーンスターチまたはゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;コーンスターチ、ジャガイモ澱粉、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;または、ショ糖、果糖、乳糖、アスパルテームなどの甘味剤;または矯味剤をさらに含んでもよい。
【0092】
また、前記の化合物は、注入または注射によって静脈内または腹腔内に投与される。前記の化合物の溶液は、任意選択で無毒の界面活性剤と混合して、水で調製することができる。
【0093】
注射または注入のための例示的な医薬剤形としては、滅菌水溶液、分散液、或いは滅菌注射・注入可能な溶液または分散液の即時調製に適する有効成分を含む滅菌粉末が含まれる。なお、最終的な剤形は、製造および保管の条件下で、無菌であり、流動性があり、且つ安定しているものである。
【0094】
無菌の注射可能な溶液は、必要に応じて上記の他の成分とともに、必要な量の前記化合物を適切な溶媒に混合して、濾過、滅菌することによって調製される。無菌の注射可能な溶液を調製するための無菌粉末について、好ましい調製方法は、活性成分および滅菌濾過後の他の所望の成分からなる粉末を生成する、真空乾燥および凍結乾燥の技術であってもよい。
【0095】
治療に必要な化合物の量は、選択される特定の塩だけでなく、投与経路、治療される疾患の性質、および患者の年齢や状態によっても変化する可能性があり、最終的に主治医または臨床医の裁量に決定される。一般的に、投与量は、1日あたり約0.1から約50mg/kg体重の範囲であってもよい。
【0096】
必要な投与量は、単回投与量、または適切な間隔での投与のための分割投与量である。
【0097】
本明細書で使用される「FAK阻害剤」という用語は、哺乳動物、特にヒトに適しているFAKの有効的な阻害剤を指す。
【0098】
実施例
以下、実施例により本発明をさらに説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためのみに使用され、本発明の範囲を限定するものではない。
【0099】
以下の実施例における具体的な条件を明記しない実験方法は、このタイプの反応の通常の条件に従って、または製造業者によって提案された条件に従って実施することができる。
【0100】
以下の実施例で使用される実験材料および試薬は、特に明記しない限り、市販されているものである。
【0101】
実施例で使用される略語の意味は以下の通りである。
ATCC アメリカンタイプカルチャーコレクション
CO 二酸化炭素
d 日
FCS ウシ胎仔血清
kg キログラム
l リットル
mg ミリグラム
ml ミリリットル
mm 立方ミリメートル
PBS リン酸緩衝生理食塩水
RPMI 1640 RPMI 1640培地
p.o. 経口投与
qd/QD 毎日
TGI 腫瘍増殖阻害
【0102】
抗腫瘍研究のための汎用的な異種移植モデル:
本研究は、KRAS変異を有するヒト癌細胞のヌードマウス異種移植モデルを使用した。
【0103】
無胸腺メスBomTac:約6週齢のNMRI-Foxn1nuマウスをデンマークのTaconicから購入した。動物室に到着した後、アッセイの前に、マウスを少なくとも3日間新しい環境に順応させた。これらの動物は、標準条件下(温度:21.5±1.5℃、湿度:55+10%)で飼育され、各群に5匹のマウスがいた。標準食およびオートクレーブ処理した水道水を自由に給餌した。首領域に皮下移植されたDatamarsT-IS 8010 FDX-BトランスポンダーとLabMaxII固定リーダーを使用してそれぞれのマウスを識別した。ケージカードには、試験番号、動物識別番号、化合物と用量レベル、投与経路、およびアッセイ全体にわたる動物の投与スケジュールが示された。
【0104】
皮下腫瘍を確立するために、トリプシン処理によって、KRAS変異を有するヒト癌細胞を収集し、遠心分離し、洗浄し、氷冷PBS+5%FCSおよび成長因子減少マトリゲル(1:1)に細胞濃度1×10細胞/mlで懸濁した。次に、2.5×10~1×10細胞を含む100μlの細胞懸濁液をヌードマウスの右側腹部に皮下注射した(マウスあたり1部位)。
【0105】
投与する化合物を1M HClに懸濁させ、0.5%ヒドロキシエチルセルロースで希釈し、強制経口投与針を通して胃内に毎日投与した。投与量は10mL/Kgであった。
【0106】
腫瘍の直径は、週に3回(月曜日、水曜日および金曜日)ノギスで測定された。各腫瘍の体積[単位:mm]は、「腫瘍の体積=長さ×直径×π/6」の式に従って算出された。治療の副作用をモニタリングするために、マウスの異常を毎日チェックし、週に3回(月曜日、水曜日および金曜日)体重を測定した。研究完了の時(治療開始から約3週間後)に動物を殺処分した。なお、研究において、腫瘍壊死または2000mmを超える腫瘍を有する動物は、倫理的理由により予定より早く殺処分された。
【0107】
アッセイ完了時に、腫瘍体積および体重パラメーターを統計して評価を行った。絶対腫瘍体積および体重の変化率(1日目の初期体重を基準)を使用した。ノンパラメトリックアプローチを使用し、観測数、中央値、最小値、および最大値を算出した。治療効果を簡単に説明するために、各治療群Tの腫瘍体積の中央値および対照群Cの腫瘍体積の中央値を使用して、1日目からd日目までのTGIを算出した。
【0108】
相対腫瘍体積(T/C):
【0109】
【数1】
【0110】
1日目からd日目までのTGI:
【0111】
【数2】
【0112】
ここで、
、T=アッセイ開始1日目の対照群と治療群の腫瘍体積の中央値
、C=d日目アッセイ完了時の対照群と治療群の腫瘍体積の中央値
【0113】
片側下降ウィルコクソン検定を使用して、試験化合物の各用量を対照群と比較し、腫瘍体積の減少を治療効果とし、体重減少を副作用とした。Bonferroni-Holmに従って、腫瘍体積(有効性パラメーター)のP値を複数回で比較および調整したが、体重(忍容性パラメーター)のP値は、起こりうる副作用を見落とさないように調整しなかった。有意水準はα=5%に固定された。0.05未満のp値(調整済み)は、群間で統計的に有意な差を示すと見なされ、0.05≦p値<0.10であると、指標となる差と見なされた。統計的評価は、ソフトウェアパッケージSASバージョン9.2(SAS Institute Inc.,米国ノースカロライナ州)およびProc StatXactバージョン8.0(Cytel Software、米国マサチューセッツ州)を使用して実行された。
【0114】
実施例1:異種移植モデルにおける前記化合物の抗腫瘍活性研究
この研究は、一般的な異種移植モデルにおける抗腫瘍研究に記載された手順に従った。
このアッセイで使用された細胞株はATCCから得られ、膵臓癌細胞MIA PaCa-2(G12C突然変異)、肺癌細胞Calu-6(Q61K突然変異)およびHCC-461(G12D突然変異)、ならびに卵巣癌細胞TOV-21G(G13C突然変異)を含む(図1)。BI RCV GmbH&CoKG基準に従ってマスターセルバンクおよびワーキングセルバンク(WCB)を設立した。以下の培地を使用して、T175組織培養フラスコで細胞を増殖させた。
MIA PaCa-2:10%の熱不活化ウシ胎児血清、1%の非必須アミノ酸および1%のピルビン酸ナトリウムを補充したDMEM+Glutamax。
TOV-21G:1.5g/Lの炭酸水素ナトリウムを含むMCDB 105培地を、15%の熱不活化FCSを含む培地199と、1:1の比率で混合した。
Calu-6:MEM+1%NEAA+1%ピルビン酸ナトリウム+1%Glutamax+10%FCS。
HCC-461:RPMI-1640/GlutaMAX、10%FCS。
【0115】
37℃および5%COの加湿空気中で細胞を培養した。8×10細胞/ml~12×10細胞/mlの濃度で培養物を維持した。腫瘍モデルを確立するための各細胞の接種数は、MIA PaCa-2(1×10)、TOV-21G(5×10)、Calu-6(2.5×10)、およびHCC-461(5×10)である。
【0116】
5つの独立した実験を実施した。各実験において、各群の10匹または12匹の担癌マウスを、それぞれブランク製剤または前記の化合物のいずれかで治療した。腫瘍体積の中央値が約50~100mmに達した際に治療を開始し、2~4週間後に終了した。治療群の前記化合物を0.5%ヒドロキシエチルセルロースに懸濁し、50mg/kgの投与量で毎日投与し、対照群は0.5%ヒドロキシエチルセルロースのみで治療した。
【0117】
50mg/kgの前記化合物で1日1回治療した後、膵臓癌細胞MIA PaCa-2、肺癌細胞Calu-6およびHCC-461、ならびに卵巣癌細胞TOV-21GのTGIの範囲は、93%~104%(p<0.0001)であった(図1)。
【0118】
実施例2:MIA PaCa-2細胞株異種移植モデルにおける前記の化合物およびKRAS阻害剤の抗腫瘍研究。
この研究は、一般的な異種移植モデルにおける抗腫瘍研究に記載された手順に従った。
KRAS G12C変異を有するヒト膵臓癌MIA PaCa-2細胞は、ATCCから得られた。BI RCV GmbH&Co KG基準に従ってマスターセルバンク(MCB)およびワーキングセルバンク(WCB)を設立した。各アッセイで使用した細胞は、WCB 16.10.2006(Lab Tontsch-Grunt)またはWCB 11.02.2009(Lab Hirt)から入手した。細胞は、10%の熱不活化ウシ胎児血清、1%の非必須アミノ酸および1%のピルビン酸ナトリウムを添加したDMEM+Glutamaxを含むT175組織培養フラスコで増殖させた。37℃、5%COの加湿空気中で細胞を培養した。1×10細胞/ml~3×10細胞/mlの濃度で培養物を維持した。
【0119】
各群4匹の担癌マウスは、ブランク対照群(0.5%ヒドロキシエチルセルロースで治療)、前記化合物群(0.5%ヒドロキシエチルセルロースに懸濁し、25mg/kgの投与量で毎日投与)、AMG510(KRAS阻害剤)群(0.5%ヒドロキシエチルセルロースに懸濁し、10mg/kgの投与量で毎日投与)、および前記化合物(0.5%ヒドロキシエチルセルロースに懸濁し、25mg/kgの投与量で毎日投与)とAMG510(0.5%ヒドロキシエチルセルロースに懸濁し、10mg/kgの投与量で毎日投与)との併用群でそれぞれ治療された。腫瘍体積の中央値が約200mmに達した際に治療を開始し、11日間の連続投与後、12日目に投与を中止し、マウスの腫瘍増殖を継続して観察した。
【0120】
25mg/kgの前記化合物と10mg/kgのAMG510との併用群において、腫瘍は100%消失した(図2および図3)。
【0121】
KRAS G12C変異を有する膵臓癌MIA PaCa-2細胞モデルにおいて、前記の化合物とKRAS阻害剤との併用は、良好な相乗効果を示した。
【0122】
実施例3:Calu-6細胞株異種移植モデルにおける前記の化合物およびMEK阻害剤の抗腫瘍研究。
この研究は、一般的な異種移植モデルにおける抗腫瘍研究に記載された手順に従った。
KRAS Q61K変異を有するヒト肺癌Calu-6細胞は、ATCCから得られた。BI RCV GmbH&Co KG基準に従ってマスターセルバンク(MCB)およびワーキングセルバンク(WCB)を設立した。各アッセイで使用した細胞は、WCB 16.10.2006(Lab Tontsch-Grunt)またはWCB 11.02.2009(Lab Hirt)から入手した。細胞は、MEM+1%NEAA+1%ピルビン酸ナトリウム+1%Glutamax+10%FCSを培地として含むT175組織培養フラスコで培養した。37℃、5%COの加湿空気中で細胞を培養した。2.5×10細胞/mlの濃度で培養物を維持した。
【0123】
各群10匹の担癌マウスは、ブランク対照群(0.5%ヒドロキシエチルセルロースで治療)、前記化合物群(0.5%ヒドロキシエチルセルロースに懸濁し、50mg/kgの投与量で毎日投与)、トラメチニブ(MEK阻害剤)群(0.5%ヒドロキシエチルセルロースに懸濁し、0.125mg/kgの投与量で毎日投与)、および前記化合物(0.5%ヒドロキシエチルセルロースに懸濁し、50mg/kgの投与量で毎日投与)とAMG510(0.5%ヒドロキシエチルセルロースに懸濁し、0.125mg/kgの投与量で毎日投与)との併用群でそれぞれ治療された。腫瘍体積の中央値が約200mmに達した際に治療を開始し、腫瘍体積が1000mmを超えた際に治療を中止した。
【0124】
50mg/kgの前記化合物と0.125mg/kgのトラメチニブとの併用群において、腫瘍体積は有意に減少した(図4)。
【0125】
KRAS Q61K変異を有する肺癌Calu-6細胞モデルにおいて、前記の化合物とMEK阻害剤との併用は、良好な相乗効果を示した。
【0126】
実施例4:CO-04-0070(KRAS G12C変異)皮下異種移植モデルにおける前記の化合物およびKRAS阻害剤の抗腫瘍研究。
【0127】
6~8週齢のBALB/cヌードマウスは、Beijing Vital River Laboratory Animal Technology社から購入した。動物室に到着した後、アッセイの前に、マウスを少なくとも3日間新しい環境に順応させた。動物は標準条件(温度:20~26℃、湿度:40~70%)下、各群あたり5匹で飼育された。ケージカードには、ケージ内の動物の量、性別、系統、受領日、投与スケジュール、実験番号、群、およびアッセイの開始日が示された。すべてのケージ、マット、飲料水は使用前に滅菌された。ケージ、飼料、飲料水は週に2回交換された。アッセイの動物は、耳タグによって識別された。
【0128】
ヒト由来の結腸直腸癌CO-04-0070モデルは、もともと、臨床手術中に切除された腫瘍サンプルに由来した。手術で切除された腫瘍サンプルについては、次世代シーケンシング技術で突然変異と遺伝子発現のシーケンシングを行った後、腫瘍組織を20~30mmに切断し、数匹のマウスに接種した。順調に成長した腫瘍組織を切除し、その後の蘇生のために液体窒素で凍結保存した。
【0129】
継代の命名法は、腫瘍サンプルをヌードマウスに接種した後、P0世代とし、引き続きP1世代とし、その以降同様にして、蘇生された標本はFPと名付けられた。このアッセイで使用された腫瘍組織はFP3世代であった。20~30mmのCO-04-0070 FP3腫瘍組織塊を各マウスの右背中に皮下接種し、腫瘍を成長させた。平均腫瘍体積が約112mmに達したときに、ランダムに群分けして投与を実施した(表1)。
【0130】
表1. アッセイ動物の群分けおよび投与スケジュール
【0131】
【表1】
【0132】
各群の担癌マウスは、ブランク対照群(0.5%ヒドロキシエチルセルロースで治療)、AMG510(KRAS阻害剤)群(0.5%ヒドロキシエチルセルロースに懸濁し、30mg/kgの投与量で毎日投与)、および前記化合物(0.5%ヒドロキシエチルセルロースに懸濁し、25mg/kgの投与量で毎日投与)とAMG510(0.5%ヒドロキシエチルセルロースに懸濁し、30mg/kgの投与量で毎日投与)との併用群でそれぞれ治療された。
【0133】
アッセイは、腫瘍の成長が抑制、遅延または治癒されたかどうかを指標とした。週に2回ノギスで腫瘍の直径を測定した。腫瘍体積の計算式は次のとおりである。V=0.5a×b、ここで、aとbはそれぞれ腫瘍の長径と短径を表す。
【0134】
化合物の抗腫瘍効果は、TGI(%)または腫瘍増殖率T/C(%)によって評価された。
TGI(%)は腫瘍増殖阻害率を反映する。TGI(%)の計算:
TGI(%)=[1-(ある処理群における投与終了時の平均腫瘍体積-この処理群における投与開始時の平均腫瘍体積)/(ブランク対照群における治療終了時の平均腫瘍体積-ブランク対照群における治療開始時の平均腫瘍体積)]×100%。
腫瘍増殖率T/C(%)は、以下のように計算された。
T/C(%)=Ti/Vi×100
ここで、Viは、ある測定における溶媒対照群の平均腫瘍体積であり、Tiは、同一測定における投与群の平均腫瘍体積である。
アッセイの後、腫瘍重量を測定し、T/Cweightの百分率を算出した。TweightとCweightは、それぞれ投与群と溶媒対照群の腫瘍重量を表す。
【0135】
統計分析には、各群の各時点での腫瘍体積の平均値および標準誤差(SEM)が含まれる。投与開始21日目のデータに基づいて統計分析を行い、群間の差異を評価した。複数の群間の比較では、一元配置分散分析法(One-Way ANOVA)を使用して分析した。F値に有意差があった場合、Games-Howell法で検定した。すべてのデータ分析はSPSS17.0を使用して実行され、p<0.05は有意差があると見なされた。
【0136】
アッセイの結果:
投与開始後21日目に、ブランク対照群における担癌マウスの腫瘍体積は、1,388mmに達した。ブランク対照群と比較して、群2、群3、群4の動物の腫瘍体積は、それぞれ978mm(T/C=66.89%、TGI=35.34%、p=0.04)、436mm(T/C=31.38%、TGI=74.63%、p=0.001)、および91mm(T/C=6.57%、TGI=101.65%、p=0.001)であり、いずれも腫瘍抑制効果があった(図5)。KRAS G12C突然変異を伴う結腸直腸癌のCO-04-0070モデルにおいて、化合物とKRAS阻害剤AMG510の組み合わせは、良好な相乗効果を示した。
【0137】
KRAS G12C変異を有する結腸直腸癌のCO-04-0070モデルにおいて、前記の化合物とKRAS阻害剤AMG510との併用は、良好な相乗効果を示した。
【0138】
本出願で引用されたすべての参考文献(文献参考文献、公開された特許、公開された特許出願、および係属中の特許出願を含む)の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。特に他の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当技術分野で一般に知られているのと同じ意味を有する。本明細書で開示されているすべての要件は、任意に組み合わせることができる。
【0139】
本明細書で開示されている各要件は、同じ、同等、または類似の目的を果たす代替要件に置き換えることができる。したがって、特に明記されていない限り、開示されている各要件は、一連の同等または類似の要件の例にすぎない。
【0140】
上記の説明から、当業者は、本発明の本質的な特徴を容易に確認することができ、本発明の精神および範囲から逸脱することなく本発明の様々な変更および修正を行い、それらを様々な応用および条件に適合させることができる。したがって、他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-05-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
KRAS変異を伴う腫瘍を治療するための医薬品の調製における、化合物またはその薬学的に許容される塩の使用であって、
前記の化合物の構造が
【化1】
である、使用。
【請求項2】
前記の腫瘍が、膵臓癌、結腸直腸癌、肺癌、腎癌、胃癌、前立腺癌または卵巣癌である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記のKRAS変異が、G12A、G12C、G12D、G12R、G12S、G12V、G13C、G13D、G13V、Q61K、Q61L、Q61RまたはQ61H変異である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記のKRAS変異が、G12C、G12D、G13C、またはQ61K変異である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記の腫瘍が、1)KRAS G12C変異を伴う肺癌、結腸直腸癌または膵臓癌;2)KRAS G12D、KRAS G12V、KRAS G13DまたはKRAS Q61H変異を伴う急性髓細胞性白血病;3)KRAS G12C、KRAS G12D、KRAS G12R、KRAS G12V、KRAS G13DまたはKRAS Q61H変異を伴う膀胱癌;4)KRAS G12CまたはKRAS G12V変異を伴う乳癌;5)KRAS G12C、KRAS G12D、KRAS G12VまたはKRAS G13D変異を伴う子宮頸癌;6)KRAS G12RまたはKRAS Q61K変異を伴う胆管癌;7)KRAS G12A、KRAS G12C、KRAS G12DまたはKRAS G13D変異を伴う結腸直腸癌;8)KRAS G12D変異を伴う食道癌;9)KRAS G12C、KRAS G12D、KRAS G12S、KRAS G12V、KRAS G13DまたはKRAS Q61H変異を伴う胃癌;10)KRAS G12D変異を伴う神経膠芽腫;11)KRAS G12C、KRAS G12DまたはKRAS G13D変異を伴う肝癌;12)KRAS G12A、KRAS G12D,KRAS G12S、KRAS G12V、KRAS G13C、KRAS G13D、KRAS Q61KまたはKRAS Q61L変異を伴う肺癌;13)KRAS G12C、KRAS G12D、KRAS G12R、KRAS G13D、KRAS Q61K、KRAS Q61LまたはKRAS Q61R変異を伴う黒色腫;14)KRAS G12C変異を伴う中皮腫;15)KRAS G12R、KRAS G12V、KRAS Q61LまたはKRAS G13C変異を伴う卵巣癌;16)KRAS G12A、KRAS G12D、KRAS G12R、KRAS G12V、KRAS G13CまたはKRAS Q61H変異を伴う膵臓癌;17)KRAS G12D、KRAS G12RまたはKRAS G12V変異を伴う前立腺癌;18)KRAS G12C、KRAS G12DまたはKRAS G12V変異を伴う腎癌;19)KRAS G13CまたはKRAS Q61H変異を伴う肉腫;20)KRAS G12V、KRAS Q61KまたはKRAS Q61R変異を伴う甲状腺癌;21)KRAS G12A、KRAS G12R、KRAS G12S、KRAS G12V、KRAS Q61LまたはKRAS Q61R変異を伴う精巣癌;22)KRAS G12D変異を伴う胸腺腫;或いは、23)KRAS G12A、KRAS G12C、KRAS G12D、KRAS G12S、KRAS G12V、KRAS G13C、KRAS G13D、KRAS G13V、KRAS Q61HまたはKRAS Q61L変異を伴う子宮癌である、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記の薬学的に許容される塩が酒石酸塩である、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記の医薬品が、KRAS阻害剤と併用し、好ましくは有効量のKRAS阻害剤と併用する、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記のKRAS阻害剤が、BI 1701963、JNJ-74699157、MRTX1257、MRTX849、AMG510、またはそれらの薬学的に許容される塩であり、前記のAMG510の構造が、
【化2】
である、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記のKRAS阻害剤が、AMG510またはその薬学的に許容される塩である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記の腫瘍が、KRAS変異を伴う肺癌、結腸直腸癌または膵臓癌である、請求項7に記載の使用。
【請求項11】
前記のKRAS変異がG12C変異である、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記の医薬品が、MEK阻害剤と併用し、好ましくは有効量のMEK阻害剤と併用する、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記のMEK阻害剤が、トラメチニブ、コビメチニブ、ビニメチニブ、セルメチニブ、PD-325901、TAK-733、またはそれらの薬学的に許容される塩である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記のMEK阻害剤が、トラメチニブまたはコビメチニブである、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記の腫瘍が、KRAS変異を伴う肺癌、結腸直腸癌または膵臓癌である、請求項12~14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記のKRAS変異がG12C変異である、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
化合物またはその薬学的に許容される塩と、
KRAS阻害剤と
を含む医薬組成物であって、
前記の化合物の構造は、
【化3】
である、医薬組成物。
【請求項18】
前記のKRAS阻害剤が、BI 1701963、MRTX849、AMG510、またはそれらの薬学的に許容される塩であり、前記のAMG510の構造は、
【化4】
である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記のKRAS阻害剤が、AMG510またはその薬学的に許容される塩である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
化合物、またはその薬学的に許容される塩と、
MEK阻害剤と
を含む医薬組成物であって、
前記の化合物の構造は、
【化5】
である、医薬組成物。
【請求項21】
前記のMEK阻害剤が、トラメチニブ、コビメチニブ、ビニメチニブ、セルメチニブ、PD-325901、TAK-733、またはそれらの薬学的に許容される塩である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記のMEK阻害剤が、トラメチニブまたはその薬学的に許容される塩である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記の薬学的に許容される塩が酒石酸塩である、請求項17~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
KRAS変異を伴う腫瘍を治療するための医薬品の調製における、化合物またはその薬学的に許容される塩と、KRAS阻害剤またはMEK阻害剤との使用であって、前記の化合物の構造は、
【化6】
である、使用。
【請求項25】
KRAS阻害剤またはMEK阻害剤と併用してKRAS変異を伴う腫瘍を治療する医薬品の調製における、化合物またはその薬学的に許容される塩の使用であって、前記の化合物の構造は、
【化7】
である、使用。
【請求項26】
化合物またはその薬学的に許容される塩と併用してKRAS変異を伴う腫瘍を治療する医薬品の調製における、KRAS阻害剤またはMEK阻害剤の使用であって、前記の化合物の構造は、
【化8】
である、使用。
【請求項27】
前記のKRAS阻害剤またはMEK阻害剤が、請求項8または請求項13で定義された通りである、請求項24~26のいずれか一項に記載の使用。
【請求項28】
前記の変異が、請求項3または請求項4で定義された通りであり、前記の腫瘍が、請求項5で定義された通りである、請求項24~26のいずれか一項に記載の使用。
【国際調査報告】