(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-03
(54)【発明の名称】生体磁性マイクロスフェア及びその製造方法と使用
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20230127BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230127BHJP
C07K 1/22 20060101ALN20230127BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20230127BHJP
C07K 7/00 20060101ALN20230127BHJP
【FI】
G01N33/543 541A
G01N33/53 D
C07K1/22
C07K14/47
C07K7/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022532163
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(85)【翻訳文提出日】2022-07-22
(86)【国際出願番号】 CN2020132171
(87)【国際公開番号】W WO2021104435
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】201911209156.X
(32)【優先日】2019-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010346903.0
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520037016
【氏名又は名称】康碼(上海)生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】KANGMA-HEALTHCODE (SHANGHAI) BIOTECH CO., LTD
【住所又は居所原語表記】BUILDING 12, 118 FURONGHUA ROAD, PUDONG NEW AREA, SHANGHAI 201321,PEOPLE’S REPUBLIC OF CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クオ、ミン
(72)【発明者】
【氏名】シュイ、リーチオン
(72)【発明者】
【氏名】ユイ、シュエ
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA15
4H045CA40
(57)【要約】
本発明は、生体磁性マイクロスフェアを提供し、当該生体磁性マイクロスフェアは、磁性マイクロスフェア本体を含み、前記磁性マイクロスフェア本体の外表面には、線状主鎖及び分岐鎖を有するポリマーを少なくとも1種有し、前記線状主鎖の一端が磁性マイクロスフェア本体の外表面に固定され、ポリマーの他端は磁性マイクロスフェア本体の外表面から遊離し、前記生体磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端には、ビオチンが連結されている。されに、当該生体磁性マイクロスフェアに対する改良、及び製造方法と使用を提供する。当該生体磁性マイクロスフェアは操作使用しやすく、溶液中に迅速に分散し及び迅速に凝集することができ、高速遠心機などの大型実験設備を使用する必要がなく、用途が広く、またビオチンを介して選択性のある精製媒体(例えばアビジン、アフィニティタンパク質、ポリペプチド/タンパク質タグなど)と連結することができ、一般的に、大規模にタンパク質(抗体系物質を含むがそれらに限定されない)などの標的物質の分離精製に使応用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性マイクロスフェア本体を含む生体磁性マイクロスフェアであって、前記磁性マイクロスフェア本体の外表面には、少なくとも1種の線状主鎖及び分岐鎖を有するポリマーを有し、前記線状主鎖の一端が磁性マイクロスフェア本体の外表面に固定され、ポリマーの他端は磁性マイクロスフェア本体の外表面から遊離し、前記生体磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端には、ビオチン又はビオチン類似体が連結されている、ことを特徴とする生体磁性マイクロスフェア。
【請求項2】
前記ポリマーの分岐鎖末端には、連結要素を介して精製媒体が連結されており、前記連結要素は、前記ビオチン又はビオチン類似体を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の生体磁性マイクロスフェア。
【請求項3】
前記精製媒体は、アビジン型タグ、ポリペプチド型タグ、タンパク質型タグ、抗体型タグ、抗原型タグ、又はそれらの組み合わせを含有し、
好ましくは、前記アビジン型タグは、アビジン、ビオチンと結合可能なアビジン類似体、ビオチン類似体と結合可能なアビジン類似体、又はそれらの組み合わせであり、
より好ましくは、前記生体磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端にはビオチンが連結されており、前記精製媒体はアビジンであり、且つ前記アビジンとの間でアフィニティ複合体の結合作用を形成し、
より好ましくは、前記アビジンは、ストレプトアビジン、変性ストレプトアビジン、ストレプトアビジン類似体、又はそれらの組み合わせであり、
好ましくは、前記ポリペプチド型タグは、CBPタグ、ヒスチジンタグ、C-Mycタグ、FLAGタグ、Spotタグ、Cタグ、Aviタグ、Stregタグ、WRHPQFGG配列を含むタグ、WRHPQFGGの変体配列を含むタグ、RKAAVSHW配列を含むタグ、RKAAVSHWの変体配列を含むタグ、及びそれらの組み合わせから選択されるいずれか一つのタグ又はその変体であり、
好ましくは、前記タンパク質型タグは、アフィニティタンパク質、SUMOタグ、GSTタグ、MBPタグ、又はそれらの組み合わせから選択されるいずれか一つのタグ又はその変体であり、より好ましくは、前記アフィニティタンパク質は、プロテインA、プロテインG、プロテインL、変性プロテインA、変性プロテインG、変性プロテインL、及びそれらの組み合わせから選択される、ことを特徴とする請求項2に記載の生体磁性マイクロスフェア。
【請求項4】
前記精製媒体は、アフィニティ複合体を含む連結要素によって前記ポリマーの分岐鎖末端に連結され、
好ましくは、前記ビオチン又はビオチン類似体は、アフィニティ複合体作用によってアビジン又はアビジン類似体に連結され、前記精製媒体は、前記アビジン又はアビジン類似体に直接又は間接的に連結され、
より好ましくは、前記精製媒体は、アビジン型タグ-精製媒体共有結合複合体によって前記ポリマーの分岐鎖末端のビオチン又はビオチン類似体に連結され、アビジン型タグによってビオチン又はビオチン類似体との間にアフィニティ複合体の連結要素を形成し、
さらに好ましくは、前記精製媒体は、アビジン-精製媒体共有結合複合体によって前記ポリマーの分岐鎖末端のビオチン又はビオチン類似体と、アフィニティ複合体の連結要素を形成する、ことを特徴とする請求項2又は3のいずれか1項に記載の生体磁性マイクロスフェア。
【請求項5】
前記精製媒体と前記ポリマーの分岐鎖の末端と連結方式は、共有結合、超分子相互作用、連結要素、又はそれらの組み合わせであり、
好ましくは、前記共有結合は、動的共有結合であり、さらに好ましくは、前記動的共有結合は、イミン結合、アシルヒドラゾン結合、ジスルフィド結合、又はそれらの組み合わせを含み、
好ましくは、前記超分子相互作用は、配位結合、アフィニティ複合体相互作用、静電吸着、水素結合、π-πオーバーラップ作用、疎水性相互作用、及びそれらの組み合わせから選択され、
より好ましくは、前記アフィニティ複合体相互作用は、ビオチン-アビジン相互作用、ビオチン類似体-アビジン相互作用、ビオチン-アビジン類似体相互作用、ビオチン類似体-アビジン類似体相互作用から選択される、ことを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の生体磁性マイクロスフェア。
【請求項6】
前記ビオチン又はビオチン類似体と結合したアビジンをさらに含み、ここで、前記ビオチン又はビオチン類似体は、前記アビジンとの間にアフィニティ複合体の結合作用を形成し、好ましくは、前記アビジンは、ストレプトアビジン、変性ストレプトアビジン、ストレプトアビジン類似体、又はそれらの組み合わせである、ことを特徴とする請求項1に記載の生体磁性マイクロスフェア。
【請求項7】
前記アビジン又はアビジン類似体と連結したアフィニティタンパク質をさらに含む、ことを特徴とする請求項6に記載の生体磁性マイクロスフェア。
【請求項8】
前記磁性マイクロスフェア本体のサイズは、0.1μm、0.15μm、0.2μm、0.25μm、0.3μm、0.35μm、0.4μm、0.45μm、0.5μm、0.55μm、0.6μm、0.65μm、0.7μm、0.75μm、0.8μm、0.85μm、0.9μm、0.95μm、1μm、1.5μm、2μm、2.5μm、3μm、3.5μm、4μm、4.5μm、5μm、5.5μm、6μm、6.5μm、7μm、7.5μm、8μm、8.5μm、9μm、9.5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、55μm、60μm、65μm、70μm、75μm、80μm、85μm、90μm、95μm、100μm、150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm、450μm、500μm、550μm、600μm、650μm、700μm、750μm、800μm、850μm、900μm、950μm、1000μmのいずれか一つの粒子径スケール又はいずれか2つの粒子径スケールの間の範囲から選択され、前記直径サイズは平均値であり、
好ましくは、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.1~10μmから選択され、
好ましくは、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.2~6μmから選択され、
好ましくは、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.4~5μmから選択され、
好ましくは、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.5~3μmから選択され、
好ましくは、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.2~1μmから選択され、
好ましくは、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.5~1μmから選択され、
好ましくは、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は1μm~1mmから選択され、
好ましくは、前記磁性マイクロスフェア本体の平均直径は、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、950nm、1000nmであり、偏差は±20%であり、より好ましくは±10%である、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の生体磁性マイクロスフェア。
【請求項9】
前記ポリマーの線状主鎖は、ポリオレフィン主鎖又はアクリル系ポリマー主鎖であり、
好ましくは、前記ポリマーの線状主鎖は、ポリオレフィン主鎖であり、且つアクリル系ポリマーの主鎖から提供され、
より好ましくは、前記アクリル系ポリマーのモノマー単位が、アクリル酸、アクリル酸塩、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸塩、メタクリル酸エステルのいずれか一つ、又はそれらの組み合わせである、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の生体磁性マイクロスフェア。
【請求項10】
前記ポリマーの分岐鎖は、官能基に基づく共有結合によってビオチン又はビオチン類似体に共有結合し、
好ましくは、前記官能基に基づく共有結合とは、官能基が共有結合に関与することによって形成される共有結合を意味し、ここで、前記官能基は、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基の塩形態、アミノ基の塩形態、ギ酸エステル基、又は前記官能基の組み合わせを指す、ことを特徴とする請求項1に記載の生体磁性マイクロスフェア。
【請求項11】
前記ポリマーの線状主鎖は、前記磁性マイクロスフェア本体の外表面に直接的に、又は連結基を介して間接的に共有結合している、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の生体磁性マイクロスフェア。
【請求項12】
前記磁性マイクロスフェア本体は、SiO
2で被覆された磁性材料であり、
好ましくは、前記磁性材料は、鉄酸化物、鉄化合物、鉄合金、コバルト化合物、コバルト合金、ニッケル化合物、ニッケル合金、マンガン酸化物、マンガン合金、又はそれらの組み合わせであり、
より好ましくは、前記磁性材料は、Fe
3O
4、γ-Fe
2O
3、窒化鉄、Mn
3O
4、FeCrMo、FeAlC、AlNiCo、FeCrCo、ReCo、ReFe、PtCo、MnAlC、CuNiFe、AlMnAg、MnBi、FeNiMo、FeSi、FeAl、FeSiAl、BaO・6Fe
2O
3、SrO・6Fe
2O
3、PbO・6Fe
2O
3、GdO、又はそれらの組み合わせである、ことを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の生体磁性マイクロスフェア。
【請求項13】
請求項1に記載の生体磁性マイクロスフェアの製造方法であって、
(1)アミノ化シランカップリング剤を利用して磁性マイクロスフェア本体に対して化学修飾を行い、アミノ基を磁性マイクロスフェア本体の外表面に導入して、アミノ基修飾磁性マイクロスフェアAを形成させるステップであって、
前記磁性マイクロスフェア本体は、SiO
2で被覆された磁性材料であるステップと、
(2)カルボキシル基とアミノ基との間の共有結合反応を利用してアクリル酸分子を前記磁性マイクロスフェアAの外表面に共有結合的にカップリングさせ、炭素-炭素二重結合を導入して、炭素-炭素二重結合含有磁性マイクロスフェアBを形成させるステップと、
(3)架橋剤を加えない条件で、炭素-炭素二重結合の重合反応を利用し、アクリル系モノマー分子を重合させ、得られたアクリル系ポリマーは線状主鎖と官能基を含む分岐鎖とを有し、ポリマーは線状主鎖の一端によって磁性マイクロスフェアBの外表面に共有結合的にカップリグされ、アクリル酸系ポリマー修飾の磁性マイクロスフェアCを形成させるステップと、
(4)前記ポリマーの分岐鎖に含まれる官能基により、ビオチン又はビオチン類似体をポリマーの分岐鎖末端に共有結合的にカップリングさせて、前記生体磁性マイクロスフェアを得るステップと、を含む製造方法。
【請求項14】
請求項2~5のいずれか1項に記載の生体磁性マイクロスフェアの製造方法であって、
(1)アミノ化シランカップリング剤を利用して磁性マイクロスフェア本体に対して化学修飾を行い、アミノ基を磁性マイクロスフェア本体の外表面に導入して、アミノ基修飾の磁性マイクロスフェアAを形成させるステップであって、
前記磁性マイクロスフェア本体は、SiO
2で被覆された磁性材料であるステップと、
(2)カルボキシル基とアミノ基との間の共有結合反応を利用してアクリル酸分子を前記磁性マイクロスフェアAの外表面に共有結合的にカップリングさせ、炭素-炭素二重結合を導入して、炭素-炭素二重結合含有磁性マイクロスフェアBを形成させるステップと、
(3)架橋剤を加えない条件で、炭素-炭素二重結合の重合反応を利用して、アクリル系モノマー分子を重合させ、得られたアクリル系ポリマーは線状主鎖と官能基を含む分岐鎖とを有し、ポリマーは線状主鎖の一端によって磁性マイクロスフェアBの外表面に共有結合的にカップリングされ、アクリル系ポリマー修飾磁性マイクロスフェアCを形成させるステップと、
(4)前記ポリマーの分岐鎖に含まれる官能基により、ビオチン又はビオチン類似体をポリマーの分岐鎖末端に共有結合的にカップリングさせて、ビオチン又はビオチン類似体で修飾された生体磁性マイクロスフェアDを得るステップと、
(5)精製媒体を前記生体磁性マイクロスフェアDにおける前記ポリマーの分岐鎖末端のビオチン又はビオチン類似体に連結させて、精製媒体が結合された前記生体磁性マイクロスフェアを得るステップと、を含み、
好ましくは、アビジン又はアビジン類似体と精製媒体の共有結合複合体をポリマーの分岐鎖末端に結合させ、前記ビオチン又はビオチン類似体と前記アビジン又はアビジン類似体との間にアフィニティ複合体の結合作用を形成させて、精製媒体付き前記生体磁性マイクロスフェアを得、
独立して任意に、(6)磁石で生体磁性マイクロスフェアを沈降させ、液相を除去し、洗浄するステップを含み、
独立して任意に、前記アビジン又はアビジン類似体と精製媒体の共有結合複合体との交換を含む、製造方法。
【請求項15】
請求項7に記載の生体磁性マイクロスフェアの製造方法であって、
好ましくは、前記生体磁性マイクロスフェアの製造方法は、
(1)アミノ化シランカップリング剤を利用して磁性マイクロスフェア本体に対して化学修飾を行い、アミノ基を磁性マイクロスフェア本体の外表面に導入して、アミノ基修飾の磁性マイクロスフェアAを形成させるステップであって、前記磁性マイクロスフェア本体は、SiO
2で被覆された磁性材料であるステップと、
(2)カルボキシル基とアミノ基との間の共有結合反応を利用してアクリル酸分子を前記磁性マイクロスフェアAの外表面に共有結合的にカップリングさせ、炭素-炭素二重結合を導入して、炭素-炭素二重結合含有磁性マイクロスフェアBを形成させるステップと、
(3)架橋剤を加えない条件で、炭素-炭素二重結合の重合反応を利用して、アクリル系モノマー分子を重合させ、得られたアクリル系ポリマーは線状主鎖と官能基を含む分岐鎖とを有し、ポリマーは線状主鎖の一端によって磁性マイクロスフェアBの外表面に共有結合的にカップリングされ、アクリル系ポリマー修飾の磁性マイクロスフェアCを形成させるステップと、
(4)前記ポリマーの分岐鎖に含まれる官能基により、ビオチンをポリマーの分岐鎖末端に共有結合的にカップリングさせて、ビオチン修飾生体磁性マイクロスフェアDを得るステップと、
(5)アビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体Eをポリマーの分岐鎖末端に連結させ、ビオチンとアビジンとの間にアフィニティ複合体の結合作用を形成させて、アフィニティタンパク質が結合された前記生体磁性マイクロスフェアを得るステップと、を含み、
独立して任意に、(6)磁石で前記生体磁性マイクロスフェアを沈降させ、液相を除去し、洗浄するステップを含み、
独立して任意に、前記アビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体Eの交換を含む、製造方法。
【請求項16】
請求項1~12のいずれか1項に記載の生体磁性マイクロスフェアのタンパク質系物質の分離・精製における使用であって、
好ましくは、前記生体磁性マイクロスフェアの抗体系物質の分離・精製における使用であり、
前記精製媒体は、アフィニティ複合体を含む連結要素によって前記ポリマーの分岐鎖末端に連結される場合、前記使用は選択的に生体磁性マイクロスフェアの再生使用をさらに含む、使用。
【請求項17】
請求項2~5又は7のいずれか1項に記載の生体磁性マイクロスフェアの抗体系物質の分離・精製における使用であって、前記精製媒体はアフィニティタンパク質であり、
好ましくは、前記アフィニティタンパク質は、ビオチン-アビジン-アフィニティタンパク質の方式でポリマーの分岐鎖に連結され、
好ましくは、前記抗体系物質は、抗体、抗体断片、抗体融合タンパク質、抗体断片融合タンパク質を含み、
前記アフィニティタンパク質は、アフィニティ複合体を含む連結要素によって前記ポリマーの分岐鎖末端に連結される場合、前記使用は選択的に生体磁性マイクロスフェアの再生使用をさらに含み、即ちアフィニティタンパク質の交換後の再利用を含む、ことを特徴とする使用。
【請求項18】
生体磁性マイクロスフェアであって、磁性マイクロスフェア本体を含み、前記磁性マイクロスフェア本体の外表面には、少なくとも1種の線状主鎖及び分岐鎖を有するポリマーを有し、前記線状主鎖の一端が磁性マイクロスフェア本体の外表面に固定され、ポリマーの他端は磁性マイクロスフェア本体の外表面から遊離し、前記磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端には、ビオチンが連結されており、さらにアフィニティ複合体の結合作用によってアビジンに連結される、ことを特徴とする生体磁性マイクロスフェア。
【請求項19】
磁性マイクロスフェア本体を含む生体磁性マイクロスフェアであって、前記磁性マイクロスフェア本体の外表面には、少なくとも1種の線状主鎖及び分岐鎖を有するポリマーを有し、前記線状主鎖の一端が磁性マイクロスフェア本体の外表面に固定され、ポリマーの他端は磁性マイクロスフェア本体の外表面から遊離し、前記磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端には、精製媒体が連結されており、前記精製媒体は、アビジン型タグ、ポリペプチド型タグ、タンパク質型タグ、抗体型タグ、抗原型タグ、及びそれらの組み合わせから選択され、
好ましくは、前記アビジン型タグは、アビジン、ビオチンと結合可能なアビジン類似体、ビオチン類似体と結合可能なアビジン類似体、又はそれらの組み合わせであり、
より好ましくは、前記アビジンは、ストレプトアビジン、変性ストレプトアビジン、ストレプトアビジン類似体、又はそれらの組み合わせであり、
好ましくは、前記ポリペプチド型タグは、CBPタグ、ヒスチジンタグ、C-Mycタグ、FLAGタグ、Spotタグ、Cタグ、Aviタグ、Stregタグ、WRHPQFGG配列を含むタグ、WRHPQFGGの変体配列を含むタグ、RKAAVSHW配列を含むタグ、RKAAVSHWの変体配列を含むタグ、又はそれらの組み合わせのいずれか一つのタグ又はその変体から選択され、前記Stregタグは、WSHPQFEK及びその変体を含み、
好ましくは、前記タンパク質型タグは、アフィニティタンパク質、SUMOタグ、GSTタグ、MBPタグ、又はそれらの組み合わせから選択されるいずれか一つのタグ又はその変体であり、より好ましくは、前記アフィニティタンパク質は、プロテインA、プロテインG、プロテインL、変性プロテインA、変性プロテインG、変性プロテインL、及びそれらの組み合わせのいずれかの一つタグ又はその変体から選択され、
より好ましくは、前記磁性マイクロスフェア本体の外表面には、少なくとも1種の線状主鎖及び分岐鎖を有するポリマーを有し、前記線状主鎖の一端が磁性マイクロスフェア本体の外表面に共有結合的に固定され、ポリマーの他端は磁性マイクロスフェア本体の外表面から遊離し、前記磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端には、アフィニティタンパク質が連結されており、さらに好ましくは、前記アフィニティタンパク質とポリマーの線状主鎖との間の分岐鎖骨格にアフィニティ複合体の結合作用が存在し、更に好ましくは、前記アフィニティタンパク質は、プロテインA、プロテインG、プロテインL、変性プロテインA、変性プロテインG、変性プロテインL、及びそれらの組み合わせから選択される、ことを特徴とする生体磁性マイクロスフェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は出願日が2019年11月30日である中国特許出願201911209156X及び出願日が2020年04月28日である中国特許出願2020103469030の優先権を主張する。本願は上記中国特許出願の全文を引用する。
【0002】
本発明は生化学の技術分野に属し、具体的には、生体磁性マイクロスフェアとその製造方法及び使用に関するものである。
【背景技術】
【0003】
タンパク質(抗体、抗体断片又はその融合タンパク質を含むがそれらに限定されない)の分離精製は、生物薬製造プロセスにおける重要な下流工程であり、分離精製の効果及び効率はタンパク質薬物の品質及び生産コストに直接影響する。タンパク質精製に対して、精製カラムや精製マイクロスフェア担体として、アガロースゲルなどの材料が一般的に使用される。従来技術において、抗体系物質(例えば抗体分子、抗体断片又はその融合タンパク質)に対する分離精製は、生産技術者は主にプロテインA(略称:Protein A)親和吸着カラムで発酵液又は反応液中の抗体分子を分離精製する。プロテインAカラムでは、担体に固定されたプロテインAが抗体分子Fc端の特異部位と特異的に結合することにより、抗体を溶液から特異的に効率よく分離することを実現する。現在一般的に使用されるプロテインAカラムにおける担体も主にアガロースゲルなどの材料を採用する。
【0004】
ゲル系材料の三次元多孔質構造は材料の比表面積を向上させることに有利であり、それにより精製媒体(例えば固定されたプロテインA)を結合できる部位を増加させ、標的タンパク質(抗体を含む)に対する特異的結合量を向上させる。担体材料の三次元多孔質構造はタンパク質(抗体を含む)結合部位の数を大幅に向上させることができるが、担体内部の多孔質構造はタンパク質が溶出する時にタンパク質の滞留時間を増加させ、担体内部のいくつかの不連続空間又は死角はタンパク質が材料内部から溶出することを阻害し、滞留割合を増加させる。タンパク質と結合する部位を担体の外表面のみに固定すると、タンパク質生成物が材料の内部に入ることを回避し、溶出時のタンパク質の滞留時間及び滞留割合を大幅に減少させることができるが、担体の外表面のみを利用すると、担体の比表面積が大幅に低下し、タンパク質の結合部位数が大幅に低下し、精製効率が低下する。
【0005】
ポリマーは高分子化合物であり、モノマー分子を重合することにより形成することができる。活性部位を有するモノマー分子を用いて重合を行い、重合生成物は大量の活性部位を大量に含むことができ、活性部位の数を大幅に向上させ、これらの活性部位により、さらに対応する結合部位を形成し又は導入することができる。ポリマーの種類及び構造は様々であり、分子鎖が互いに架橋して形成した網状構造を有し、単一の線状分子鎖の線状構造を有し、複数の分岐鎖を有する分岐構造(例えば分岐型、ツリー状、櫛状、ハイパーブランチ構造などの構造)を有し、異なる構造タイプのポリマーは異なる分野においてそれぞれ広く使用される。
【0006】
従来技術において、タンパク質分離精製に用いられる精製カラムでは、主に共有結合方式を用いて精製媒体を固定する。プロテインAを精製媒体とし、抗体系物質を精製するためのプロテインAカラムを例とし、抗体、抗体断片、又はその融合タンパク質などの分離精製に用いられるプロテインAカラムにおいては、主に共有結合方式を用いてプロテインAを固定し、C末端のシステインによってプロテインAを担体に共有結合する。共有結合方式は精製媒体(例えばプロテインA)が担体に強固に固定されることを保証することができるが、精製カラム(例えばプロテインAカラム)を複数回使用した後、精製媒体(例えばプロテインA)の結合性能が低下し、精製効果が低下する。そのため、比較的高い精製効率及び品質を保証するために、操作者は親和性クロマトグラフィーカラムにおけるフィラーを全部交換する必要があり、当該過程は消耗品の使用量が大きいだけでなく、且つ大量の人工及び時間を消耗し、精製コストが高いことを引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は生体磁性マイクロスフェアを提供し、標的物質、特にタンパク質系物質(抗体系タンパク質を含むがそれらに限定されない)の分離・精製に用いることができ、ハイスループットで標的物質を結合することができるだけでなく、溶出時の標的物質の滞留割合を効果的に低減することができ、さらに精製媒体(例えばアフィニティタンパク質)を便利に交換することができ、高速、ハイスループット、再利用、再生使用可能である特徴を有し、さらに標的物質の精製コストを大幅に低減することができる。例えば、アフィニティタンパク質を精製媒体として用いる場合、抗体系タンパク質の精製コストを大幅に低減することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1.本発明の第1の態様は、生体磁性マイクロスフェアを提供し、前記生体磁性マイクロスフェアは、磁性マイクロスフェア本体を含み、前記磁性マイクロスフェア本体の外表面には、少なくとも1種の線状主鎖及び分岐鎖を有するポリマーを有し、前記線状主鎖の一端が磁性マイクロスフェア本体の外表面に固定され、ポリマーの他端は磁性マイクロスフェア本体の外表面から遊離し、前記生体磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端には、ビオチン又はビオチン類似体が連結されている。前記ビオチン又はビオチン類似体は、精製媒体とすることができるだけでなく、連結要素としてさらに他のタイプの精製媒体と連結することもできる。
【0009】
前記生体磁性マイクロスフェアは、ビオチン磁性マイクロスフェア又はビオチン磁気ビーズとも呼ばれる。
【0010】
前記「~に固定」とは、前記線状主鎖が共有結合の方式で磁性マイクロスフェア本体の外表面「に固定される」ことを指す。
【0011】
さらに、前記線状主鎖は直接方式で前記磁性マイクロスフェア本体の外表面に共有結合的に固定され、又は連結基(連結要素)を介して間接方式で前記磁性マイクロスフェア本体の外表面に共有結合的に固定される。
【0012】
さらに、前記ポリマーの分岐鎖の数は複数であり、好ましくは、少なくとも3つである。
好ましい一形態では、前記磁性マイクロスフェア本体のサイズは、0.1μm、0.15μm、0.2μm、0.25μm、0.3μm、0.35μm、0.4μm、0.45μm、0.5μm、0.55μm、0.6μm、0.65μm、0.7μm、0.75μm、0.8μm、0.85μm、0.9μm、0.95μm、1μm、1.5μm、2μm、2.5μm、3μm、3.5μm、4μm、4.5μm、5μm、5.5μm、6μm、6.5μm、7μm、7.5μm、8μm、8.5μm、9μm、9.5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、55μm、60μm、65μm、70μm、75μm、80μm、85μm、90μm、95μm、100μm、150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm、450μm、500μm、550μm、600μm、650μm、700μm、750μm、800μm、850μm、900μm、950μm、1000μmのいずれか一つの粒子径スケール又はいずれか2つの粒子径スケールの間の範囲から選択され、前記直径サイズとは平均値である。
【0013】
好ましい一形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.1~10μmから選択される。
【0014】
好ましい一形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.2~6μmから選択される。
【0015】
好ましい一形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.4~5μmから選択される。
【0016】
好ましい一形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.5~3μmから選択される。
【0017】
好ましい一形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.2~1μmから選択される。
【0018】
好ましい一形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.5~1μmから選択される。
【0019】
好ましい一形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は1μm~1mmから選択される。
【0020】
好ましい一形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、950nm、1000nmであり、偏差は±20%であり、より好ましくは±10%である。
【0021】
好ましい一形態では、前記ポリマーの主鎖は、ポリオレフィン主鎖、又はアクリル系ポリマー主鎖である。前記アクリル系ポリマーの定義については、「名詞及び用語」の部分を参照されたい。好ましい一形態では、前記ポリオレフィン主鎖は、同時にアクリル系ポリマー主鎖である(即ち、前記ポリマーの線状主鎖は、ポリオレフィン主鎖であり、且つアクリル系ポリマーの主鎖から提供される)。
【0022】
好ましい一形態では、前記アクリル系ポリマーのモノマー単位が、好ましくはアクリル酸、アクリル酸塩、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸塩、メタクリル酸エステルなどのアクリル系モノマー分子のいずれの一つか、又はそれらの組み合わせから選択される。前記アクリル系ポリマーは、上記モノマーのいずれかを重合することにより得られてもよく、上記モノマーの対応する組み合わせを共重合することにより得られてもよい。
【0023】
好ましい一形態では、前記ポリマーの分岐鎖は、官能基に基づく共有結合によってビオチン又はビオチン類似体に共有結合し、ビオチン又はビオチン類似体をポリマーの分岐鎖末端に共有結合する。生体磁性マイクロスフェアの外表面におけるポリマー分子の分岐鎖に含まれる官能基とビオチン又はビオチン類似体との共有結合反応により得ることができる。ここで、前記官能基の好ましい一実施形態は特異的結合部位(定義は具体的な実施形態の「名詞と用語」の部分を参照)である。
【0024】
前記官能基に基づく共有結合とは、官能基が共有結合に関与することによって形成される共有結合を意味する。好ましくは、前記官能基は、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基の塩形態、アミノ基の塩形態、ギ酸エステル基、又は前記官能基の組み合わせである。前記カルボキシル基の塩形態の好ましい一形態は、ナトリウム塩形式であり、例えばCOONaであり、前記アミノ基の塩形態の好ましい形態は、無機塩形態であってもよく、有機塩形態であってもよく、塩酸塩、フッ化水素酸塩などの形態を含むがこれらに限定されない。前記「官能基の組み合わせ」とは、一つの磁性マイクロスフェアの外表面の全てのポリマー分子の全ての分岐鎖を指し、異なる官能基の関与に基づいて共有結合を形成することができる。ビオチンを例とし、即ち一つのビオチン磁性マイクロスフェアの外表面の全てのビオチン分子はそれぞれ異なる官能基と共有結合することができるが、一つのビオチン分子は一つの官能基のみと連結することができる。
【0025】
好ましい一形態では、前記ポリマーの線状主鎖は、前記磁性マイクロスフェア本体の外表面に直接的に、又は連結基を介して間接的に共有結合している。
【0026】
好ましい一形態では、前記磁性マイクロスフェア本体は、SiO2で被覆された磁性材料である。代わりに、SiO2は自身で活性部位を有するシランカップリング剤であってもよい。
【0027】
好ましい一形態では、前記磁性材料は、鉄酸化物、鉄化合物、鉄合金、コバルト化合物、コバルト合金、ニッケル化合物、ニッケル合金、マンガン酸化物、マンガン合金のいずれか、又は組み合わせから選択される。
【0028】
さらに、好ましくはFe3O4、γ-Fe2O3、窒化鉄、Mn3O4、FeCrMo、FeAlC、AlNiCo、FeCrCo、ReCo、ReFe、PtCo、MnAlC、CuNiFe、AlMnAg、MnBi、FeNiMo)、FeSi、FeAl、FeSiAl、MO・6Fe2O3、GdOのいずれか一つ、又はそれらの組み合わせであり、ここで、前記Reは希土類元素であり、前記MはBa、Sr、Pbであり、即ち、前記MO・6Fe2O3はBaO・6Fe2O3、SrO・6Fe2O3又はPbO・6Fe2O3である。
【0029】
2.本発明の第2の態様は生体磁性マイクロスフェアを提供し、本発明の第1の態様で提供される前記生体磁性マイクロスフェアに基づいて、前記ビオチン又はビオチン類似体は連結要素としてさらに精製媒体に連結している。即ち、前記ポリマーの分岐鎖末端は、連結要素を介して精製媒体に連結しており、且つ前記連結要素は、前記ビオチン又はビオチン類似体を含む。
【0030】
前記精製媒体は、アビジン型タグ、ポリペプチド型タグ、タンパク質型タグ、抗体型タグ、抗原型タグ、又はそれらの組み合わせを含有してもよいが、これらに限定されない。
【0031】
好ましい一形態では、前記アビジン型タグは、アビジン、ビオチンと結合可能なアビジン類似体、ビオチン類似体と結合可能なアビジン類似体、又はそれらの組み合わせである。
【0032】
好ましい一形態では、前記生体磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端にはビオチンが連結されており、前記精製媒体はアビジンであり、且つ前記アビジンとの間でアフィニティ複合体の結合作用を形成する。
【0033】
前記アビジンは、ストレプトアビジン、変性ストレプトアビジン、ストレプトアビジン類似体、又はそれらの組み合わせであってもよいが、これらに限定されない。
【0034】
好ましい一形態では、前記ポリペプチド型タグは、CBPタグ、ヒスチジンタグ、C-Mycタグ、FLAGタグ、Spotタグ、Cタグ、Aviタグ、Stregタグ、WRHPQFGG配列を含むタグ、WRHPQFGGの変体配列を含むタグ、RKAAVSHW配列を含むタグ、RKAAVSHWの変体配列を含むタグ、又はそれらの組み合わせのいずれか一つのタグ又はその変体から選択される。前記Stregタグは、WSHPQFEK及びその変体を含む。
【0035】
好ましい一形態では、前記タンパク質型タグは、アフィニティタンパク質、SUMOタグ、GSTタグ、MBPタグ、及びそれらの組み合わせいずれかのタグ又はその変体から選択される。
【0036】
好ましい一形態では、前記アフィニティタンパク質は、プロテインA、プロテインG、プロテインL、変性プロテインA、変性プロテインG、変性プロテインL、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0037】
好ましい一形態では、前記抗体型タグは、抗体、抗体の断片、抗体の一本鎖、一本鎖の断片、抗体融合タンパク質、抗体断片の融合タンパク質のいずれか、いずれかの誘導体、又はいずれかの変体である。
【0038】
好ましい一形態では、前記抗体型タグは、抗タンパク質抗体である。
好ましい一形態では、前記抗体型タグは、抗蛍光タンパク質抗体である。
好ましい一形態では、前記抗体型タグは、ナノ抗体である。
好ましい一形態では、前記抗体型タグは、抗タンパク質のナノ抗体である。
好ましい一形態では、前記抗体型タグは、抗蛍光タンパク質のナノ抗体である。
好ましい一形態では、前記抗体型タグは、抗緑色蛍光タンパク質又はその変異体のナノ抗体である。
好ましい一形態では、前記抗体型タグは、Fc断片である。
【0039】
前記精製媒体と前記ビオチン又は前記ビオチン類似体との連結方式は、共有結合、非共有結合(例えば、超分子相互作用)、連結要素、又はそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0040】
好ましい一形態では、前記共有結合は、動的共有結合であり、さらに好ましくは、前記動的共有結合は、イミン結合、アシルヒドラゾン結合、ジスルフィド結合、又はそれらの組み合わせを含む。
【0041】
好ましい一形態では、前記超分子相互作用は、配位結合、アフィニティ複合体相互作用、静電吸着、水素結合、π-πオーバーラップ作用、疎水性相互作用、又はそれらの組み合わせである。
【0042】
前記生体磁性マイクロスフェアの好ましい一形態では、前記精製媒体は、アフィニティ複合体を含む連結要素によって前記ポリマーの分岐鎖末端に連結される。
【0043】
好ましい一形態では、前記アフィニティ複合体相互作用は、ビオチン-アビジン相互作用、ビオチン類似体-アビジン相互作用、ビオチン-アビジン類似体相互作用、ビオチン類似体-アビジン類似体相互作用から選択される。
【0044】
好ましい一形態では、前記ビオチン又はビオチン類似体は、アフィニティ複合体作用によってアビジン又はアビジン類似体に結合し、前記精製媒体は、前記アビジン又はアビジン類似体に直接又は間接的に結合する。
【0045】
好ましい一形態では、前記精製媒体は、アビジン型タグ-精製媒体共有結合複合体によって前記ポリマーの分岐鎖末端のビオチン又はビオチン類似体に連結し、アビジン型タグによって前記ビオチン又はビオチン類似体との間にアフィニティ複合体の連結要素を形成し、さらに好ましい一形態では、前記精製媒体は、アビジン-精製媒体共有結合複合体によって、前記ポリマーの分岐鎖末端のビオチン又はビオチン類似体と、アフィニティ複合体の連結要素を形成する。
【0046】
3.本発明の第3の態様は生体磁性マイクロスフェアを提供し、本発明の第1の態様により提供される前記生体磁性マイクロスフェアに基づいて、さらに、前記ビオチン又はビオチン類似体は連結要素として、さらにアフィニティ複合体結合作用によってアビジン又はアビジン類似体に連結されている。
【0047】
前記生体磁性マイクロスフェアは、アビジン磁性マイクロスフェア又はアビジン磁気ビーズとも呼ばれる。
【0048】
前記アビジン又はアビジン類似体は、精製媒体とすることができるだけでなく、連結要素としてさらに他のタイプの精製媒体と連結することもできる。ここで、前記ビオチン又はビオチン類似体と前記アビジン又はアビジン類似体との間にアフィニティ複合体の結合作用を形成する。
【0049】
好ましい一形態では、本発明の第1の態様に提供される前記生体磁性マイクロスフェアに基づいて、さらに、前記ビオチンに結合するアビジンを含む。ここで、ビオチンとアビジンとの間にアフィニティ複合体の結合作用を形成する。即ち、前記生体磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端にはビオチンが連結されており、前記精製媒体はアビジンであり、且つ前記アビジンとの間でアフィニティ複合体の結合作用を形成する。
【0050】
好ましい一形態では、前記アビジンは、ストレプトアビジン、変性ストレプトアビジン、ストレプトアビジン類似体のいずれか1個、又はそれらの組み合わせである。
【0051】
4.本発明の第4の態様は生体磁性マイクロスフェアを提供し、本発明の第3の態様に提供される前記生体磁性マイクロスフェアに基づいて、さらに、前記アビジン又はアビジン類似体に連結しているアフィニティタンパク質を含む。このとき、ビオチン又はビオチン類似体、アビジン又はアビジン類似体は、いずれも連結要素として両者の間にアフィニティ複合体の結合作用を形成し、前記アフィニティタンパク質は、精製媒体とすることができるだけでなく、連結要素とすることもでき、好ましくは精製媒体とする。
【0052】
前記生体磁性マイクロスフェアは、アフィニティタンパク質磁性マイクロスフェア又はアフィニティタンパク質磁気ビーズとも呼ばれる。
【0053】
好ましい一形態では、本発明の第2の態様に提供される前記生体磁性マイクロスフェアに基づいて、前記精製媒体はアフィニティタンパク質であり、前記生体磁性マイクロスフェアはさらに前記アフィニティタンパク質に連結されているアビジンと、前記アビジンに結合されているビオチンとを含み、前記ビオチンは前記ポリマーの分岐鎖に連結されており、ここで、精製媒体は連結要素によって前記ポリマーの分岐鎖に連結し、前記連結要素にはビオチンとアビジンとによって形成されたアフィニティ複合体が含まれる。
【0054】
好ましい一形態では、前記アフィニティタンパク質は、プロテインA、プロテインG、プロテインLのいずれか1個、又はそれらの変性タンパク質である。
【0055】
5.本発明の第5の態様は、本発明の第1の態様に提供される前記生体磁性マイクロスフェアの製造方法(
図3を参照)を提供し、当該方法は下記のステップを含む。
【0056】
(1)磁性マイクロスフェア本体に対して化学修飾を行い、アミノ基を磁性マイクロスフェア本体の外表面に導入して、アミノ基修飾磁性マイクロスフェアAを形成させ、前記磁性マイクロスフェア本体がSiO2で被覆された磁性材料である場合、前記カップリング剤は、好ましくはアミノ化シランカップリング剤である。
【0057】
好ましい一形態では、カップリング剤を利用して磁性マイクロスフェア本体に対して化学修飾を行う。
【0058】
前記磁性マイクロスフェア本体がSiO2で被覆された磁性材料である場合、シランカップリング剤を利用して磁性マイクロスフェア本体に対して化学修飾を行うことができる。前記シランカップリング剤は、好ましくはアミノ化シランカップリング剤である。
【0059】
(2)カルボキシル基とアミノ基との間の共有結合反応を利用してアクリル酸分子を前記磁性マイクロスフェアAの外表面に共有結合的にカップリングさせ、炭素-炭素二重結合を導入して、炭素-炭素二重結合含有磁性マイクロスフェアBを形成させる。
【0060】
(3)架橋剤を加えない条件で、炭素-炭素二重結合の重合反応を利用して、アクリル系モノマー分子(例えばアクリル酸ナトリウム)を重合させ、得られたアクリル系ポリマーは線状主鎖と官能基を含む分岐鎖とを有し、ポリマーは線状主鎖の一端によって磁性マイクロスフェアBの外表面に共有結合され、アクリル系ポリマー修飾磁性マイクロスフェアCを形成させる。
【0061】
前記アクリル系モノマー分子、ポリマー分岐鎖の官能基の定義については、「名詞及び用語」の部分を参照されたい。
【0062】
好ましくは、前記官能基は、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、メルカプト基、ギ酸塩、アンモニウム、カルボキシル基の塩形態、アミノ基の塩形態、ギ酸エステル基、又は前記官能基の組み合わせである。前記「官能基の組み合わせ」とは、一つの磁性マイクロスフェアの外表面の全てのポリマーの全ての分岐鎖に含まれる官能基を指し、その種類は、1種又は1種以上であってもよい。第1の形態で定義された「官能基の組み合わせ」の意味とは合致する。
【0063】
また好ましくは、前記官能基は特異的結合部位である。
【0064】
(4)前記ポリマーの分岐鎖に含まれる官能基により、ビオチン又はビオチン類似体をポリマーの分岐鎖末端に共有結合的にカップリングさせて、ビオチン又はビオチン類似体に結合された生体磁性マイクロスフェアD(ビオチン磁性マイクロスフェア)を得る。
【0065】
6.本発明の第6の態様は、本発明の第2の態様に提供される前記生体磁性マイクロスフェアの製造方法を提供し、当該方法は下記のステップを含む。
【0066】
(i)請求項1に記載の前記生体磁性マイクロスフェアを提供するステップであって、第5の態様のステップ(1)から(4)で製造することができる。
【0067】
(ii)精製媒体を前記生体磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端のビオチン又はビオチン類似体に連結させ、精製媒体が結合された生体磁性マイクロスフェアを得るステップ。
【0068】
7.本発明の第7の態様は、本発明の第2の態様に提供される前記生体磁性マイクロスフェアの製造方法を提供し、当該方法は下記のステップを含む。
【0069】
(i)請求項1に記載の前記生体磁性マイクロスフェアを提供するステップであって、第5の態様のステップ(1)から(4)で製造することができる。
【0070】
(ii)アビジン又はアビジン類似体と精製媒体との共有結合複合体(例えば、アビジン-精製媒体共有結合複合体)を精製媒体提供用の原料として、それをポリマーの分岐鎖末端に結合させ、前記ビオチン又はビオチン類似体と前記アビジン又はアビジン類似体との間にアフィニティ複合体の結合作用を形成させて、精製媒体付き生体磁性マイクロスフェアを得るステップ。
【0071】
独立して任意に、(6)磁石で生体磁性マイクロスフェアを沈降させ、液相を除去し、洗浄するステップを含む。
【0072】
独立して任意に、前記精製媒体の交換を含み、前記アビジン又はアビジン類似体と精製媒体との共有結合複合体を交換することによって実現することができる。
【0073】
8.本発明の第8の態様は、本発明の第4の態様に提供される前記生体磁性マイクロスフェアの製造方法(例として
図3を参照)を提供し、当該方法は下記のステップを含む。
【0074】
(1)磁性マイクロスフェア本体に対して化学修飾を行い、アミノ基を磁性マイクロスフェア本体の外表面に導入して、アミノ基修飾磁性マイクロスフェアAを形成させ、前記磁性マイクロスフェア本体がSiO2で被覆された磁性材料である場合、前記カップリング剤は、好ましくはアミノ化シランカップリング剤である。
【0075】
好ましい一形態では、カップリング剤を利用して磁性マイクロスフェア本体に対して化学修飾を行う。
【0076】
前記磁性マイクロスフェア本体がSiO2で被覆された磁性材料である場合、シランカップリング剤を利用して磁性マイクロスフェア本体に対して化学修飾を行うことができる。このとき、前記シランカップリング剤は、好ましくはアミノ化シランカップリング剤である。
【0077】
(2)カルボキシル基とアミノ基との間の共有結合反応を利用してアクリル酸分子を前記磁性マイクロスフェアAの外表面に共有結合的にカップリングさせ、炭素-炭素二重結合を導入して、炭素-炭素二重結合含有磁性マイクロスフェアBを形成させる。
【0078】
(3)架橋剤を加えない条件で、炭素-炭素二重結合の重合反応を利用し、アクリル系モノマー分子(例えばアクリル酸ナトリウム)を重合させ、得られたアクリル系ポリマーは線状主鎖と官能基を含む分岐鎖とを有し、ポリマーは線状主鎖の一端によって磁性マイクロスフェアBの外表面に共有結合され、アクリル系ポリマー修飾磁性マイクロスフェアCを形成する。
【0079】
前記官能基の好ましい一実施形態は、特異的結合部位である。
【0080】
前記官能基の他の好ましい形態は、上記第1の態様と合致する。
【0081】
(4)前記ポリマーの分岐鎖に含まれる官能基により、ビオチンを共有結合的にカップリングさせて、ビオチン修飾生体磁性マイクロスフェアD(ビオチン磁性マイクロスフェア)を得る。
【0082】
(5)ビオチンとアビジンとの特異的結合作用によって、アビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体Eをポリマーの分岐鎖末端に結合させ、ビオチンとアビジンとの間にアフィニティ複合体の結合作用を形成させて、生体磁性マイクロスフェアFを得る(前記生体磁性マイクロスフェアFは、アフィニティタンパク質に結合するため、アフィニティタンパク質磁性マイクロスフェアである)。
【0083】
独立して任意に、(6)磁石で生体磁性マイクロスフェアFを沈降させ、液相を除去し、洗浄するステップを含む。
【0084】
さらに独立して任意に、(7)前記アビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体Eを交換するステップを含む。
【0085】
9.本発明の第9の態様は、タンパク質系物質の分離・精製における本発明の第1から第4の態様に記載の前記生体磁性マイクロスフェアの使用を提供する。
【0086】
好ましい一形態では、抗体系物質の分離・精製における前記生体磁性マイクロスフェアの使用である。
【0087】
前記抗体系物質は、抗体、抗体断片のタンパク質類物質を指し、抗体、抗体断片、抗体融合タンパク質、抗体断片融合タンパク質を含むがこれらに限定されない。
【0088】
前記精製媒体が、アフィニティ複合体を含む連結要素によって前記ポリマーの分岐鎖末端に連結される場合、前記使用はさらに選択的に生体磁性マイクロスフェアの再生使用を含み、即ち精製媒体の交換後再利用を含む。
【0089】
10.本発明の第10の態様は、生体磁性マイクロスフェアの抗体系物質の分離・精製における本発明の第1から第4の態様に記載の使用、特に抗体、抗体断片、抗体融合タンパク質、抗体断片融合タンパク質の分離・精製における使用を提供する。
【0090】
前記精製媒体はアフィニティタンパク質である。
【0091】
好ましい一形態では、前記アフィニティタンパク質は、ビオチン-アビジン-アフィニティタンパク質の方式でポリマーの分岐鎖に連結する。
【0092】
前記アフィニティタンパク質が、アフィニティ複合体を含む連結要素によって前記ポリマーの分岐鎖末端に連結される場合(例えば、第4の態様に記載の生体磁性マイクロスフェア)、前記使用はさらに選択的に生体磁性マイクロスフェアの再生使用を含み、即ちアフィニティタンパク質の交換後再利用を含む。
【0093】
11.本発明の第11の態様は、生体磁性マイクロスフェアを提供する。前記磁性マイクロスフェア本体の外表面には、少なくとも1種の線状主鎖及び分岐鎖を有するポリマーを有し、前記線状主鎖の一端が磁性マイクロスフェア本体の外表面に固定され、ポリマーの他端は磁性マイクロスフェア本体の外表面から遊離し、前記磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端には、精製媒体が連結されており、前記精製媒体は、アビジン型タグ、ポリペプチド型タグ、タンパク質型タグ、抗体型タグ、抗原型タグ、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0094】
好ましい一形態では、前記アビジン型タグは、アビジン、ビオチンと結合可能なアビジン類似体、ビオチン類似体と結合可能なアビジン類似体、又はそれらの組み合わせである。
【0095】
好ましい一形態では、前記アビジンは、ストレプトアビジン、変性ストレプトアビジン、ストレプトアビジン類似体、又はそれらの組み合わせである。
【0096】
好ましい一形態では、前記ポリペプチド型タグは、CBPタグ、ヒスチジンタグ、C-Mycタグ、FLAGタグ、Spotタグ、Cタグ、Aviタグ、Stregタグ、WRHPQFGG配列を含むタグ、WRHPQFGGの変体配列を含むタグ、RKAAVSHW配列を含むタグ、RKAAVSHWの変体配列を含むタグ、又はそれらの組み合わせのいずれかのタグ及びその変体から選択される。前記Stregタグは、WSHPQFEK又はその変体を含む。
【0097】
好ましい一形態では、前記タンパク質型タグは、アフィニティタンパク質、SUMOタグ、GSTタグ、MBPタグ、及びそれらの組み合わせのいずれかのタグ又はその変体から選択される。
【0098】
好ましい一形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の外表面には、少なくとも1種の線状主鎖及び分岐鎖を有するポリマーを有し、前記線状主鎖の一端が磁性マイクロスフェア本体の外表面に共有結合的に固定され、ポリマーの他端は磁性マイクロスフェア本体の外表面から遊離し、前記磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端には、アフィニティタンパク質が連結されている。
【0099】
好ましくは、さらに、前記アフィニティタンパク質とポリマーの線状主鎖との間の分岐鎖骨格にアフィニティ複合体の結合作用が存在する。
【0100】
より好ましくは、前記アフィニティタンパク質は、プロテインA、プロテインG、プロテインL、変性プロテインA、変性プロテインG、変性プロテインL、又はそれらの組み合わせから選択される。
【発明の効果】
【0101】
本発明の主な利点及び積極的な効果は下記を含む。
【0102】
本発明の核心の一つは生体磁性マイクロスフェアの構造にあり、磁性マイクロスフェア本体の外表面に、線状主鎖含有ポリマー分子が共有結合的に固定され、これらのポリマー分子はさらに大量の機能化された分岐鎖を有し、前記機能化された分岐鎖に精製媒体(ビオチン、アビジン、アフィニティタンパク質、ポリペプチドタグ、タンパク質タグなどを含むがこれらに限定されない)が連結される。上記構造により、生体磁性マイクロスフェアの外表面に大量のポリマー線状主鎖側端に吊り下げられた精製媒体を提供して、従来の網状構造による高い滞留割合を回避するだけでなく、比表面積の制限を克服して大量の標的物質(例えば抗体)結合部位を提供することができる。ここで、精製媒体の種類は、精製する物質の種類に応じて選択することができる。精製媒体がアフィニティ複合体の形式で、非共有結合の強い相互作用によってポリマーの分岐鎖に連結される場合、さらに、精製媒体(例えばアフィニティタンパク質)とポリマー線状主鎖との間の分岐鎖骨格にはアフィニティ複合体の結合作用がさらに存在することができ、それによって精製媒体(例えば親タンパク質)は容易に交換できる。分離・精製される標的物質が抗体系タンパク質である場合、精製媒体は通常はアフィニティタンパク質である。磁性マイクロスフェアの製造及び原理部分の説明を結合して理解されたい。
【0103】
本発明の核心は、さらに上記生体磁性マイクロスフェア構造の構築過程(製造方法)にあり、外表面の化学修飾により、磁気ビーズの外表面(生体磁性マイクロスフェア本体の外表面)に複数の結合部位を提供し、続いて磁気ビーズの外表面の単一の結合部位にポリマー分子を共有結合し、ポリマー分子は線状主鎖の一端によって磁気ビーズの外表面の単一の結合部位に共有結合し、線状主鎖に沿って大量の側分岐鎖が分布され、側分岐鎖に新生の結合部位が携帯され、それにより結合部位の複数倍、数十倍、百倍、数百倍、さらに千倍の拡大を実現し、さらに具体的な精製要求に基づいてポリマー分岐鎖の新生結合部位に特定の精製媒体を連結して、対応する特定標的分子(特に生化学分子であり、抗体系タンパク質分子を含むがこれらに限定されない)の捕捉を実現する。また、生体磁性マイクロスフェアの単一の結合部位は、1本の線状ポリマー主鎖のみに共有結合することができるだけでなく、2本又は複数本の線状主鎖に共有結合することもでき、鎖堆積を引き起こして滞留割合を増大させないことが好ましい。
【0104】
好ましくは、一つの結合部位は1本の線状主鎖のみを引き出し、このとき線状主鎖に大きな活動空間を提供することができる。
【0105】
また好ましくは、1つの結合部位は2本の線状主鎖のみを引き出し、できるだけ線状主鎖に大きな活動空間を提供する。
【0106】
本発明の主な利点及び積極的な効果はさらに下記を含む:
(1)本発明の構造設計は、大量の分岐鎖特殊構造を携帯するポリマーによって磁性マイクロスフェア表面を被覆して、比表面積の制限を克服して大量の精製媒体結合部位を提供し、磁性マイクロスフェア表面に結合可能な精製媒体の数を複数倍、十複数倍、数十倍、百倍、数百倍、さらに千倍に拡大し、さらにハイスループットで標的物質との結合を実現し、好ましい標的物質はタンパク質系物質である。生体磁性マイクロスフェアが効率的に標的物質(例えば、標的タンパク質であり、抗体、抗体断片、又はその融合タンパク質を含むがそれらに限定されない)を混合系から磁性マイクロスフェアに捕捉させ、ハイスループットの結合を実現し、即ちハイスループットの分離を実現する。
【0107】
(2)ポリマー鎖自体の柔軟性を利用することができ、ポリマー鎖は反応精製混合系において柔軟に揺動することができ、精製媒体の活動空間を拡大させ、タンパク質に対する捕捉速度及び結合量を増大させ、標的物質の迅速で十分な結合を促進し、高効率、ハイスループットを実現する。
【0108】
(3)本発明の構造設計は、生体磁性マイクロスフェアが溶出する時に精製された標的物質(例えば、標的タンパク質であり、抗体、抗体断片、又はその融合タンパク質を含むがそれらに限定されない)の効率的な溶出を実現することができ、標的物質の滞留時間と滞留割合を効果的に減少させ、高効率と高収率を実現する。精製媒体はポリマーの分岐鎖末端に連結することができ、一つの方面では、ポリマーの構造は網状構造を形成せず、分岐鎖の堆積を引き起こさず、不連続空間と死角の発生を回避することができ、従来の網状構造による高滞留時間と高滞留割合を回避することができる。もう一つの方面では、ポリマーの分岐鎖はさらに空間間隔の作用を果たし、精製媒体を混合系に十分に分布させ、磁性マイクロスフェア表面及びポリマーの内部骨格から離れ、標的物質を捕捉する効率を増大させるだけでなく、さらに後続の溶出ステップの際に、標的物質の滞留時間及び滞留割合を効果的に減少させ、ハイスループット、高効率、高割合の分離を実現する。本発明の構造設計は線状主鎖の高い柔軟性を利用することができるだけでなく、また分岐鎖数の高倍率増幅の優位性を兼ね備え、高レート、ハイスループットの結合、高効率、高比率(高収率)の分離をよりよく実現する。
【0109】
(4)本発明の生体磁性マイクロスフェアの精製媒体(例えばアフィニティタンパク質)はアフィニティ複合体の方式により、非共有の強い結合力で磁気ビーズ外表面のポリマー分岐鎖末端に連結され、精製媒体(例えばアフィニティタンパク質)を更新、交換する必要がある場合、容易、迅速に精製媒体をマイクロスフェアから溶出させ、新たな精製媒体と再結合することができ、磁性マイクロスフェアの精製性能を迅速に回復させ、生体磁性マイクロスフェアを複数回再生して使用することができ、それにより分離精製コストを低減させる。
【0110】
(5)本発明の生体磁性マイクロスフェアは操作・使用がやすい。標的物質を結合した磁性マイクロスフェアを系から分離する時、操作しやすく、小さな磁石を利用するだけで磁性マイクロスフェアの凝集状態と位置を効率的に操作することができ、磁性マイクロスフェアが溶液における高速分散又は高速沈殿を実現して、標的物質(例えば抗体)の分離・精製を簡単で、迅速にさせ、高速遠心機などの大型実験設備を使用する必要がなく、分離・精製コストを大幅に低減させる。
【0111】
(6)本発明で提供される生体磁性マイクロスフェアは、用途が広く、精製媒体が選択可能性を有する。具体的な精製基質の種類に応じて、磁性マイクロスフェアシステムに柔軟に対応する精製媒体を搭載し、特定の標的分子(特にタンパク質系物質)の捕捉を実現することができる。例えば、ターゲット的にアフィニティタンパク質を選択し、一般的に、大規模に抗体、抗体断片、又はその融合タンパク質を含むがこれらに限定されない抗体系物質の分離・精製に使用する。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【
図1】本発明の第1の態様に提供される生体磁性マイクロスフェアの構造概略図である。ここで、磁性マイクロスフェア本体は、SiO
2で被覆されたFe
3O
4を例とし、且つビオチンを精製媒体として示す。図において、ポリマー分子数(4個)は簡明で模式的なものであるだけであり、磁性マイクロスフェアの外表面のポリマー分子数が4個に限定されることを意味するものではなく、製造過程における各原料の含有量に基づいて制御及び調整することができる。同様に、線状主鎖側端に吊り下げられた分岐鎖の数は、例示のみを目的としており、本発明のポリマー分子の側分岐鎖の数を制限することを意図するものではない。
【
図2】本発明の第4の態様に提供される生体磁性マイクロスフェアの構造概略図である。プロテインAを精製媒体として示し、プロテインAは「ビオチン-アビジン-プロテインAの方式」によってブラシ状構造の分岐鎖末端に結合される。ここで、生体磁性マイクロスフェア本体は、SiO
2で被覆されたFe
3O
4を例とする。図において、ポリマー分子数と主鎖側末端の分岐鎖数は、単に例示であり、本発明のポリマー分子の側分岐鎖の数を限定するものではない。
【
図3】本発明の第4の態様に提供される生体磁性マイクロスフェアの製造方法のフローチャートである。ここで、アミノ基修飾磁性マイクロスフェアAから生体磁性マイクロスフェアDまでの製造過程は第5の態様に提供される生体磁性マイクロスフェアの製造方法に対応する。
【
図4】生体磁性マイクロスフェアD(ビオチン磁気ビーズ)はプロテインA-eGFP-アビジンと結合する前と結合した後の実験結果である。RFU値測定の結果で、1回インキュベートした。生体外タンパク質合成システムによってプロテインA-eGFP-アビジン(SPA-eGFP-アビジン)を製造し、IVTT反応後の上清(IVTT上清と略記する)を得て、生体磁性マイクロスフェアDと結合する前と結合した後、溶液RFU値の変化を比較する。2種類のプロテインA-eGFP-アビジンにおいて、ここで、番号1に対応するアビジンはStreptavidinであり、番号2に対応するアビジンはTamvavidin2である。「Total」は結合前のIVTT上清RFU値(生体磁性マイクロスフェア処理前)に対応し、「Supernatant」は結合後のIVTT上清RFU値(生体磁性マイクロスフェア処理後)に対応する。
【
図5】生体磁性マイクロスフェアF(プロテインA磁気ビーズ)を製造する実験結果を示す。RFU値の測定結果であり、プロテインA-eGFP-アビジンは飽和結合した。生体磁性マイクロスフェアDを、繰り返してプロテインA-eGFP-アビジンを発現するIVTT反応後に得られた溶液(IVTT上清と略記)と結合させ、プロテインA-eGFP-アビジンで飽和結合された生体磁性マイクロスフェアFを得る。ここで、1に対応するアビジンはStreptavidinであり、2に対応するアビジンはTamvavidin2であり、supernatantは生体磁性マイクロスフェアで処理されていないIVTT上清に対応し、Flow-through1(フロースルー1)、Flow-through2(フロースルー2)、Flow-through3(フロースルー3)はそれぞれ磁性マイクロスフェアが連続的にアビジン-プロテインAとインキュベート(捕捉結合)し、溶出(脱結合放出)を3回に対応し、毎回同じ由来、同じ使用量のIVTT上清を用い、順次得られたフロースルー1、2、3である。
【
図6】生体磁性マイクロスフェアFが抗体を分離精製する実験結果であり、生体磁性マイクロスフェアFにおけるアビジンはStreptavidinである。生体磁性マイクロスフェアFは抗体IgG溶液とインキュベートした後に溶出し、抗体IgGを抗体溶液から捕捉して分離し、溶出して溶出液に放出し、対応する精製抗体含有溶出液の変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)試験結果である。ここで、レーン1、2、3、4はそれぞれSPA-磁性マイクロスフェアのカラムベッド体積が2マイクロリットル、6マイクロリットル、18マイクロリットル、54マイクロリットルである時の抗体溶出バンドに対応し、レーン5は陽性対照である市販の生工生物工学(上海)株式会社(以下、生工社を略称する)Protein Aアガロースのカラムの体積が7.5マイクロリットルの抗体溶出バンドである。ここで、MはMarker分子量マークーに対応する。
【
図7】生体磁性マイクロスフェアFの繰り返し使用の実験結果であり、生体磁性マイクロスフェアFにおけるアビジンはStreptavidinである。生体磁性マイクロスフェアFは抗体溶液とインキュベート(抗体結合)、洗浄、溶出(抗体放出)を行い、3回繰り返し、溶出液に対してSDS-PAGE電気泳動試験を行う結果である。ここで、レーン1、2、3、4はそれぞれSPA-磁性マイクロスフェアのカラムベッド体積が2マイクロリットル、6マイクロリットル、18マイクロリットル、54マイクロリットルである時の抗体溶出バンドに対応し、レーン5は陽性対照である市販の生工生物工学(上海)株式会社(以下、生工社を略称する)Protein Aアガロースのカラムの体積が7.5マイクロリットルの抗体溶出バンドである。ここで、MはMarker分子量マークーに対応する。
【
図8】生体磁性マイクロスフェアの再生実験結果であり、プロテインA-eGFP-Tamvavidin2を採用する蛍光相対値の測定結果であり。生体磁性マイクロスフェアDを繰り返してプロテインA-eGFP-アビジンのIVTT反応後に得られた溶液と結合し、プロテインA-eGFP-アビジンに飽和結合された生体磁性マイクロスフェアF(1)を得た。続いて当該プロテインA-eGFP-アビジンを生体磁性マイクロスフェアDから溶出し、2回目に当該生体磁性マイクロスフェアDを新鮮なプロテインA-eGFP-アビジンのIVTT反応後に得られた溶液と結合し、2回目にプロテインA-eGFP-アビジンに飽和結合された生体磁性マイクロスフェアF(2)を得た。上記ステップを繰り返して3回目にプロテインA-eGFP-アビジンに飽和結合された生体磁性マイクロスフェアF(3)を得た。ここで、supernatantは生体磁性マイクロスフェアで処理されていないIVTT上清に対応し、フロースルー1(Flow-through1)、フロースルー2(Flow-through2)、フロースルー2(Flow-through3)はそれぞれ磁性マイクロスフェアが連続的にアビジン-プロテインAと3回インキュベートし、毎回同じのIVTT上清(新しものを取る)を用い、順次得られたフロースルー1、2、3である。
【
図9】生体磁性マイクロスフェアの再生及び再生後に抗体を分離精製する実験結果である。プロテインA-eGFP-Tamvavidin2を採用した。プロテインA-eGFP-アビジンに飽和結合された生体磁性マイクロスフェアFを変性緩衝液で溶出し、溶出されたプロテインA-eGFP-アビジンを含む溶出液に対してSDS-PAGE試験を行った。レーン1、2、3はそれぞれ1回目に飽和結合された後に溶出し、2回目に飽和結合された後に溶出し、3回目に飽和結合された後に溶出し、それぞれ生体磁性マイクロスフェアFから溶出されたプロテインA-eGFP-アビジンを含む溶出液のバンドを示す。レーン4は、3回目に再生した生体磁性マイクロスフェアFと市販の牛新生児血清とをインキュベートした後、溶出バッファーで溶出した精製抗体タンパク質のバンドを示す。ここで、MはMarker分子量マークーに対応する。
【
図10】生体磁性マイクロスフェアG(Protein G磁気ビーズ、プロテインG磁気ビーズ)のプロテインGに対する担持量の試験結果であり、RFU値の測定結果である。生体磁性マイクロスフェアDとプロテインG-eGFP-アビジンのIVTT上清を3回インキュベートし、プロテインG-eGFP-アビジンに飽和結合された生体磁性マイクロスフェアGを得た。ここで、Supernatantは生体磁性マイクロスフェアで処理されていないIVTT上清に対応し、3回のインキュベートによりそれぞれ対応するフロースルー、即ちFT1(フロースルー1)、FT2(フロースルー2)、FT3(フロースルー3)を得た。
【
図11】生体磁性マイクロスフェアG(Protein G磁気ビーズ)による抗体の分離精製の実験結果である。生体磁性マイクロスフェアGは抗体IgG溶液とインキュベートした後に溶出し、抗体IgGを抗体溶液から捕捉して分離し、溶出して溶出液に放出し、対応する精製抗体含有溶出液はSDS-PAGE試験を行った。ここで、MはMarker分子量マークーに対応する。
【
図12】生体磁性マイクロスフェアH(antiEGFPナノ抗体付き磁気ビーズ)のeGFPタンパク質と結合するRFU値測定結果である。生体磁性マイクロスフェアHとeGFPタンパク質のIVTT上清とをインキュベートし、eGFPタンパク質を結合した。ここで、Totalは生体磁性マイクロスフェアで処理されていないIVTT上清に対応し、Flow-throughは1回インキュベートしたフロースルーと対応する。
【
図13】生体磁性マイクロスフェアH(antiEGFP磁気ビーズ)によるeGFPタンパク質の分離精製の実験結果である。生体磁性マイクロスフェアHはeGFPタンパク質溶液とインキュベートした後に溶出し、eGFPタンパク質を原液から捕捉して分離し、溶出して溶出液に放出し、対応する精製eGFPタンパク質を含む溶出液のSDS-PAGE試験結果である。ここで、MはMarker分子量マークーに対応する。
【発明を実施するための形態】
【0113】
以下は具体的な実施形態及び実施例を参照し、本発明をさらに説明し、同時に図面を参照してください。理解すべきものとして、これらの実施例は本発明を説明するだけで本発明の範囲を限定するものではない。以下の実施例において具体的な条件を明記しない実験方法は、優先的に、上記具体的な実施形態に基づいて案内された条件に基づき、続いて通常の条件、例えば「Sambrookら、分子クローニング:実験室マニュアル(New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)」、「無細胞タンパク質合成実験マニュアル」「Edited by Alexander S. Spirin and James R. Swartz. Cell-free protein synthesis:methods and protocols[M].2008」などの文献に記載された実験条件や、製造メーカが提案した条件に従う。
【0114】
特に説明しない限り、本発明において使用されるパーセンテージと部は、重量パーセンテージと重量部を指す。
【0115】
特に説明しない限り、本発明の実施例で使用される材料及び試薬は、すべて市販の製品である。
【0116】
本発明における温度単位は特に説明しない限り、いずれも摂氏度(℃)である。
【0117】
ヌクレオチド及び/又はアミノ酸配列表
SEQ ID No:1、プロテインAのヌクレオチド配列、長さは873塩基である。
SEQ ID No:2、tamavidin2のヌクレオチド配列、長さは423塩基である。
SEQ ID No:3、mEGFPのヌクレオチド配列、長さは714塩基である。
SEQ ID No:4、プロテインG抗体結合部位のヌクレオチド配列、長さは585塩基である。
SEQ ID No:5、抗eGFP抗体のアミノ酸配列、長さは117アミノ酸である。
SEQ ID No:6、mScarletのヌクレオチド配列、長さは693塩基である。
【0118】
名詞及び用語
以下は本発明が採用する部分関連する「名詞」、「用語」の意味についての解析又は説明であり、本発明をよりよく理解するためである。対応する解析又は説明は本発明の全文に適用し、下記にも適用し、上記にも適用する。本発明において引用文献に関する場合、関連用語、名詞、フレーズの引用文献における定義も併せて引用されるが、本発明における定義と矛盾する場合は、本発明における定義に準じる。引用文献中の定義が本発明中の定義と矛盾する場合、引用された成分、物質、組成物、材料、体系、配合、種類、方法、設備などに影響を与えるものではないことは、引用文献中で特定された内容に準ずる。
【0119】
磁気ビーズ:微小な粒径を有する強磁性又は強磁性化される可能なマイクロスフェアは、磁気ビーズと記述することもでき、直径サイズは0.1μm~1000μmが好ましい。本発明の磁気ビーズの例は、磁性マイクロスフェアA、磁性マイクロスフェアB、磁性マイクロスフェアC、生体磁性マイクロスフェアD(ビオチン磁気ビーズ)、生体磁性マイクロスフェアF(プロテインA磁気ビーズ)、生体磁性マイクロスフェアG(プロテインG磁気ビーズ)、生体磁性マイクロスフェアH(antiEGFPナノ抗体付き磁気ビーズ)、生体磁性マイクロスフェアK(抗体磁気ビーズ)を含むがそれらに限定されない。
【0120】
磁性マイクロスフェア本体:修飾された部位を有する磁気ビーズ(結合可能な部位を有する磁性マイクロスフェア)である。例えば、シリカ被覆磁性材料粒子、より具体的にはアミノ化されたシリカ被覆磁性材料粒子である。
【0121】
磁性マイクロスフェアA:アミノ基修飾磁性マイクロスフェアである。
【0122】
磁性マイクロスフェアB:炭素-炭素二重結合を有する磁性マイクロスフェアである。
【0123】
磁性マイクロスフェアC:アクリル系ポリマー修飾磁性マイクロスフェアである。
【0124】
ビオチンビーズ:ビオチン又はビオチン類似体が結合された磁気ビーズであり、アビジン型タグ付き物質に特異的に結合することができる。その利点は、標的タンパク質をアビジン又はアビジンのタンパク質変異体で標識した後、融合タンパク質の方式で一体化発現することができ、使用方式が簡便である。ビオチンマイクロスフェアとも呼ばれる。ここのビオチン又はビオチン類似体は、精製媒体とすることができ、連結要素とすることもできる。
【0125】
生体磁性マイクロスフェアD:ビオチン又はビオチン類似体が結合された磁性マイクロスフェアであり、ビオチン磁気ビーズである。ここのビオチンは、精製媒体とすることができ、連結要素とすることもできる。
【0126】
アビジンビーズ:アビジン又はアビジン類似体が結合された磁気ビーズである。ビオチン型タグ付き物質に特異的に結合することができる。アビジン磁性マイクロスフェアとも呼ばれる。
【0127】
生体磁性マイクロスフェアF:プロテインAが結合された磁性マイクロスフェアであり、プロテインA磁気ビーズである。ビオチン修飾生体磁性マイクロスフェアDとアビジン-プロテインA共有結合複合体Eとが結合して得られる。
【0128】
アフィニティタンパク質磁気ビーズ:アフィニティタンパク質が結合された磁性マイクロスフェアであり、抗体類物質の分離精製に用いることができる。アフィニティタンパク質マイクロスフェアとも呼ばれる。
【0129】
生体磁性マイクロスフェアG:プロテインGが結合された磁性マイクロスフェアであり、プロテインG磁気ビーズである。例えば、ビオチン修飾生体磁性マイクロスフェアDとアビジン-プロテインG共有結合複合体とが結合して得られる。
【0130】
生体磁性マイクロスフェアK:抗体型タグが結合された磁気ビーズである。それに特異的に結合可能な標的物質の分離精製に用いることができる。抗体磁性マイクロスフェア又は抗体磁気ビーズとも呼ばれる。
【0131】
ナノ抗体磁気ビーズ:ナノ抗体が結合された磁気ビーズである。それに特異的に結合可能な標的物質の分離精製に用いることができる。ナノ抗体磁性マイクロスフェアとも呼ばれる。
【0132】
生体磁性マイクロスフェアH:ナノ抗体磁気ビーズであり、ナノ抗体antiEGFPが結合された磁性マイクロスフェアである(antiEGFP磁気ビーズ)。アビジン-antiEGFP共有結合複合体とが結合して得られる。
【0133】
ポリマー:本発明では広義にはオリゴマー及び高分子を含み、少なくとも3つの構造単位を有し、又は分子量が少なくとも500Daである(前記分子量は適切な特徴付け方式、例えば数平均分子量、重量平均分子量、粘度平均分子量を採用することができる)。
【0134】
ポリオレフィン鎖:炭素原子のみによって共有結合してなるヘテロ原子を含まないポリマー鎖を指す。本発明では、櫛状構造におけるポリオレフィン主鎖、例えば、アクリル系ポリマーの線状主鎖が主に関与する。
【0135】
アクリル系ポリマー:-C(COO-)-C-単位構造を有するホモポリマー又はコポリマーを指し、前記共重合体の共重合形態は特に制限されず、線状主鎖及び計量された側基COO-を提供することができることが好ましく、前記アクリル系ポリマーの線状主鎖には、ヘテロ原子が含まれていてもよい。ここで、炭素-炭素二重結合には、重合反応の進行を妨げない限り、他の置換基、例えば、メチル置換基(-CH3C(COO-)-C-に対応)が存在していてもよい。ここで、COO-の存在形式は-COOHであってもよく、塩形式(例えばナトリウム塩)であってもよく、ギ酸エステルの形式(好ましくはギ酸アルキルエステルであり、例えばギ酸メチル-COOCH3、ギ酸エチル-COOCH2CH3、ギ酸ヒドロキシエチル-COOCH2CH2OH)などであってもよい。-C(COO-)-C-単位構造の具体的な構造形式は、-CH(COOH)-CH2-、-CH(COONa)-CH2-、-MeC(COOH)-CH2-、-MeC(COONa)-CH2-、-CH(COOCH3)-CH2-、-CH(COOCH2CH2OH)-CH2-、-MeC(COOCH3)-CH2-、-MeC(COOCH2CH2OH)-CH2-などのいずれか、又は任意の組み合わせを含むがそれらに限定されない。ここで、Meはメチル基である。1つのポリマー分子の線状主鎖には、1種のみの上記単位構造が含まれていてもよいし(ホモポリマーに対応)、2種又は2種以上の単位構造が含まれていてもよい(コポリマーに対応)。
【0136】
アクリル系モノマー分子:上記アクリル系ポリマーの合成に用いられるモノマー分子であり、C(COO-)=Cの基本構造を有し、例えば、CH(COOH)=CH2、CH(COONa)=CH2、CH3C(COOH)=CH2、CH3C(COONa)=CH2、CH(COOCH3)=CH2、CH(COOCH2CH2OH)=CH2、CH3C(COOCH3)=CH2、CH3C(COOCH2CH2OH)=CH2などが挙げられる。
【0137】
分岐鎖:本発明では、分岐点に連結し、独立した末端を有する鎖である。本発明における分岐鎖、側分岐鎖は同じ意味を有し、交換して使用することができる。本発明において、分岐鎖とは、ポリマーの線状主鎖に結合する側鎖又は側基を意味し、分岐鎖の長さ、大きさは特に制限されず、カルボキシル基、水酸基、アミノ基などの短い分岐鎖であってもよいし、原子数の多い長い分岐鎖であってもよい。分岐鎖の構造は特に限定されず、直鎖状であってもよく、分岐構造を有するものであってもよい。分岐鎖は、他の側鎖や側基を含んでいてもよい。分岐鎖の数、長さ、大きさ、再分岐の程度などの構造的特徴は、できるだけ網状構造を形成しなく、分岐鎖の堆積を招くことなく滞留割合を増大させないようにすることが好ましく、この場合には線状主鎖の柔軟な揺動を円滑に発揮することができる。
【0138】
分岐骨格:分岐骨格は、骨格原子が共有結合又は非共有結合の方式で順次連結されたものであり、分岐鎖末端からポリマーの主鎖に順次連結されている。分岐鎖骨格によって、ポリマー末端の官能基がポリマーの主鎖に連結されている。分岐鎖骨格と主鎖との交差点は、即ち分岐鎖を引き出す分岐点である。例えば、精製媒体とポリマー線状主鎖との間の分岐鎖骨格は、アフィニティタンパク質を精製媒体とする例では、ポリマーの分岐鎖末端のアフィニティタンパク質は、アビジン、ビオチン、プロピレンジアミン残基(-NH-CH2CH2CH2-NH-)、カルボニル基(カルボキシル基がアミド化反応した残基)を順次に介してポリマーのポリオレフィン主鎖に連結することができる。
【0139】
分岐鎖末端は、全ての分岐鎖の末端を含む。線状主鎖に対しては、磁性マイクロスフェア本体に固定された一端のほか、線状主鎖の他端は必ず一つの分岐点に連結されるため、本発明の「分岐鎖末端」の範囲に広く含まれる。したがって、本発明の磁性マイクロスフェア本体の外表面に連結されたポリマーは、少なくとも1つの分岐点を有する。
【0140】
ポリマー分岐鎖の官能基:反応活性を有し、又は活性化された後に反応活性を有し、他の原料の反応性基と共有結合反応を直接に発生することができ、又は活性化された後に他の原料の反応性基と共有結合反応を発生し、さらに共有結合を生成して連結することを意味する。ポリマー分岐鎖の官能基は、好ましい一実施形態が特異的結合部位である。
【0141】
直接連結方式とは、スペーサ原子を介さずに直接相互作用を起こす連結方式である。前記相互作用の形式は、共有結合方式、非共有結合方式、又はそれらの組み合わせ方式を含むがそれらに限定されない。
【0142】
間接連結方式は、少なくとも一つの連結要素を介して形成された連結方式であり、この場合少なくとも一つのスペーサ原子に関する。前記連結要素は、連結ペプチド、アフィニティ複合体連結などを含むがそれらに限定されない。
【0143】
固定、~に固定する、~が固定される、~に固定されるなどの「固定」方式は、共有結合の結合方式を指す。
【0144】
付き、~が連結される、~に連結する、~と連結する、結合、捕捉、キャプチャーなどの「連結」/「結合」方式は、特に限定されず、共有結合方式、非共有結合方式などの方式を含むがこれらに限定されない。
【0145】
共有結合方式:共有結合で直接結合する方式である。前記共有結合方式は動的共有結合方式を含むがこれに限定されず、前記動的共有結合方式とは、動的共有結合の直接結合方式である。
【0146】
共有結合:アミド結合、エステル結合などの一般的な共有結合のほか、可逆性を有する動的共有結合も含む。前記共有結合には、動的共有結合が含まれる。動的共有結合は可逆性を有する化学結合であり、イミド結合、ヒドラゾン結合、ジスルフィド結合、又はそれらの組み合わせを含むがそれらに限定されない。化学分野の技術者はその意味を理解することができる。
【0147】
非共有結合方式:配位結合、アフィニティ複合体相互作用、静電吸着、水素結合、π-πオーバーラップ作用、疎水性相互作用などの超分子相互作用を含むがそれらに限定されない。
【0148】
超分子相互作用:配位結合、アフィニティ複合体相互作用、静電吸着、水素結合、π-πオーバーラップ作用、疎水性相互作用、及びそれらの組み合わせを含むがそれらに限定されない。
【0149】
連結要素は、連結基とも呼ばれ、2つ又は2つ以上の非隣接基を連結するための要素を意味し、少なくとも1つの原子を含む。前記連結要素と隣接基との間の連結方式は、特に限定されず、共有結合方式、非共有結合方式などの方式を含むがそれらに限定されない。前記連結要素の内部連結方式は、特に限定されず、共有結合方式、非共有結合方式などの方式を含むがそれらに限定されない。
【0150】
共有連結要素:連結要素の一端から他端までのスペーサ原子の間はいずれも共有結合方式で連結される。
【0151】
特異的結合部位:本発明において、前記特異的結合部位とは、ポリマー分岐鎖上の結合機能を備えた基又は構造部位であり、当該基又は構造部位はある特定の標的物質に対する特異的認識、結合機能を備え、特異的結合は配位、錯合、静電気力、ファンデルワールス力、水素結合、共有結合などの結合作用又は他の相互作用によって実現することができる。
【0152】
共有結合複合体:共有結合により直接又は間接的に連結して得られた化合物であり、共有結合物とも呼ばれる。
【0153】
アビジン-精製媒体共有結合複合体:共有結合方式で連結された化合物であり、一端がアビジン、他端が精製媒体であり、両者は共有結合を介して直接連結され、又は共有連結要素を介して間接的に連結される。
【0154】
アビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体E:アフィニティタンパク質を精製媒体とするアビジン-精製媒体共有結合複合体であり、又はアビジン-アフィニティタンパク質複合体Eと呼ばれ、共有結合の方式で連結された化合物であり、一端がアビジン、他端がアフィニティタンパク質であり、両者は共有結合で直接連結され、又は共有結合連結基を介して間接的に連結される。前記共有結合連結方式は、共有結合、連結ペプチドなどを含むがこれらに限定されない。例えば、ストレプトアビジン-プロテインA複合体、ストレプトアビジン-プロテインAの融合タンパク質、ストレプトアビジン-増強型緑色蛍光タンパク質-プロテインAの融合タンパク質(Protein A-eGFP-Streptavidin)、Protein A-eGFP-Tamvavidin2、Protein G-eGFP-アビジン融合タンパク質、Protein G-eGFP-Tamvavidin2などである。
【0155】
アフィニティ複合体:2つ又は2つ以上の分子が特異的な結合作用により、極めて強い親和力により形成される非共有結合性複合体であり、例えば、ビオチン(又はビオチン類似体)とアビジン(又はアビジン類似体)との相互作用による複合体である。ビオチンとアビジンとのアフィニティ複合体の結合方式は、当業者に周知である。
【0156】
精製基質は、標的物質とも呼ばれ、混合系から分離されるものである。本発明における精製基質は特に制限されないが、精製基質がタンパク質系物質(この場合、標的タンパク質ともいう)であることが好ましい。
【0157】
精製媒体は、精製基質と特異的に結合することができ、それにより精製基質を捕捉し、さらに精製基質を混合系から分離することができる。本発明のポリマーの分岐鎖末端に連結された精製媒体は、精製基質と結合する機能を有する機能要素である。精製媒体が共有結合方式で隣接基に連結される場合、精製基質と結合する機能を有する官能基と表現する。
【0158】
アフィニティタンパク質:標的タンパク質と特異的に結合し、且つ比較的高い親和結合力を有するものであり、例えば、プロテインA、プロテインG、プロテインL、変性プロテインA、変性プロテインG、変性プロテインLなどが挙げられる。
【0159】
プロテインA:Protein A、42kDaの表面タンパク質であり、最初に黄色ブドウ球菌の細胞壁に発見される。それはspa遺伝子によってコードされ、その調節がDNAトポロジー構造、細胞浸透圧及びArlS-ArlRと呼ばれる二成分システムによって制御される。免疫グロブリンと結合する能力のため、生化学分野に関する研究に用いられている。抗体Fcと特異的に結合することができ、主に抗体精製に用いられ、任意の市販品から選択することができる。本発明でいわゆる「Protein A」、「SPA」、及び「プロテインA」は交換可能である。
【0160】
プロテインG:Protein G、免疫グロブリン結合タンパク質であって、C群とG群連鎖球菌で発現され、プロテインAと類似するが、異なる結合特異性を有する。それは65kDa(G148プロテインG)及び58kDa(C40プロテインG)の細胞表面タンパク質であり、抗体又はある機能タンパク質と特異的に結合することにより、主に抗体精製に用いられ、任意の市販品から選択することができる。
【0161】
プロテインL:Protein L、kappa(κ)軽鎖を含む抗体に特異的に結合するものに限られる。ヒト及びマウスでは、ほとんどの抗体分子はκ軽鎖と残りのλ軽鎖を含む。主に抗体精製に用いられ、任意の市販品から選択することができる。
【0162】
ビオチン:biotin、アビジンと結合することができ、且つ結合力が強く、特異性に優れる。
【0163】
アビジン:avidin、ビオチンと結合することができ、且つ結合力が強く、特異性に優れ、例えばストレプトアビジン(Streptavidin、SAと略称する)、その類似体(例えばTamvavidin2、Tam2と略称する)、その変性生成物、その変異体などである。
【0164】
ビオチン類似体とは、アビジンと「アビジン-ビオチン」に類似する特異的結合を形成し得る非ビオチン分子であり、好ましくはポリペプチド又はタンパク質であり、例えばIBA社が開発したStrep-tag[登録商標]シリーズで使用されるWSHPQFEK配列を含むポリペプチド(例えばStrep[登録商標]II、Twin-Strep-tag[登録商標]など)、及び類似のWNHPQFEK配列を含むポリペプチドである。WNHPQFEKは、WSHPQFEKの変異配列とみなすことができる。
【0165】
アビジン類似体とは、アビジンと「アビジン-ビオチン」に類似する特異的結合を形成し得る非アビジン分子であり、好ましくはポリペプチド又はタンパク質である。前記アビジン類似体は、アビジンの誘導体、アビジンの相同性物質(ホモログ)、アビジンの変体などを含むがこれらに限定されない。前記アビジン類似体は、例えばTamavidin1、Tamavidin2などである(文献:FEBS Journal,2009,276,1383-1397を参照)。
【0166】
ビオチン型タグ:前記ビオチン型タグは、ビオチン、アビジンと結合可能なビオチン類似体、アビジン類似体と結合可能なビオチン類似体、及びそれらの組み合わせの単位を含む。ビオチン型タグは、アビジン、アビジン類似体、又はその組み合わせに特異的に結合することができる。そのため、アビジン型タグで標識されたタンパク質系物質を分離精製することができるがこれらに限定されない。
【0167】
アビジン型タグ:前記アビジン型タグは、アビジン、ビオチンと結合可能なアビジン類似体、ビオチン類似体と結合可能なアビジン類似体、及びそれらの組み合わせの単位を含む。アビジン型タグは、ビオチン、ビオチン類似体、又はその組み合わせに特異的に結合することができる。そのため、ビオチン型タグで標識されたタンパク質系物質を分離精製することができるがこれらに限定されない。
【0168】
ポリペプチド型タグ:本発明のポリペプチド型タグとは、ポリペプチドタグ又はポリペプチドタグの誘導体を含むタグである。前記ポリペプチド型タグは、アミノ酸単位で構成されたポリペプチド構造のタグであり、前記アミノ酸は天然アミノ酸であってもよく、非天然アミノ酸であってもよい。
【0169】
タンパク質型タグ:本発明のタンパク質型タグは、タンパク質タグ又はタンパク質タグの誘導体を含むタグである。前記タンパク質型タグは、アミノ酸単位で構成されたタンパク質構造のタグであり、前記アミノ酸は天然アミノ酸であってもよく、非天然アミノ酸であってもよい。
【0170】
抗体型タグ:本発明の抗体型タグとは、抗体系物質を含むタグであり、抗原などの標的物質に特異的に結合することができる。前記抗体型タグの例として、さらにeGFPタンパク質に特異的に結合できるantiEGFPナノ抗体を含む。
【0171】
抗原型タグ:本発明の抗原型タグとは、抗原系物質を含むタグであり、抗体系物質に特異的に結合できる。
【0172】
ペプチドとは、2つ又は2つ以上のアミノ酸がペプチド結合で連結された化合物である。本発明において、ペプチドとペプチドセグメントは同等の意味を有し、交換して使用することができる。
【0173】
ポリペプチドは、10~50個のアミノ酸で構成されるペプチドである。
【0174】
タンパク質は、50個以上のアミノ酸で構成されるペプチドである。融合タンパク質もタンパク質である。
【0175】
ポリペプチドの誘導体、タンパク質の誘導体:本発明に係るいずれかのポリペプチド又はタンパク質は、特別な説明がない限り(例えば具体的な配列を指定する)、その誘導体も含むと理解すべきである。前記ポリペプチドの誘導体、タンパク質の誘導体は、少なくともC端含有タグ、N端含有タグ、C端及びN端含有タグを含む。ここで、C端はCOOH端を指し、N端はNH2端を指し、当業者はその意味を理解する。前記タグはポリペプチドタグであってもよく、タンパク質タグであってもよい。いくつかのタグの例として、ヒスチジンタグ(一般的に少なくとも5個のヒスチジン残基を含み、例えば6×His、HHHHHH、また例えば、8×Hisタグである)、Glu-Glu、c-mycエピトープ(EQKLISEEDL)、FLAG[登録商標]タグ(DYKDDDDK)、プロテインC(EDQVDPRLIDGK)、Tag-100(EETARFQPGYRS)、V5エピトープラベル(V5 epitope、GKPIPNPLLGLDST)、VSV-G(YTDIEMNRLGK)、Xpress(DLYDDDDK)、ヘマグルチニン(hemagglutinin、YPYDVPDYA)、β-ガラクトシダーゼ(β-galactosidase)、チオレドキシン(thioredoxin)、ヒスチジン部位チオレドキシン(His-patch thioredoxin)、IgG結合ドメイン(IgG-binding domain)、インテイン-キチン結合ドメイン(intein-chitin binding domain)、T7遺伝子10(T7 gene 10)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(glutathione-S-transferase、GST)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、マルトース結合タンパク質(maltose binding protein、MBP)などを含むがそれらに限定されない。
【0176】
タンパク質系物質とは、本発明において、広義にはポリペプチド又はタンパク質断片を含む物質である。例えば、ポリペプチド誘導体、タンパク質誘導体、糖タンパク質などもタンパク質系物質の範囲に含まれる。
【0177】
抗体、抗原:本発明に係る抗体、抗原は、特に説明しない限り、そのドメイン、サブユニット、断片、一本鎖、一本鎖断片、変体を含むことを理解すべきである。例えば、「抗体」に関して、特に説明しない限り、その断片、重鎖、軽鎖が欠失した重鎖(例えばナノ抗体)、相補決定領域(CDR)などを含む。例えば、「抗原」に関して、特に説明しない限り、さらにエピトープ(epitope)、エピトープペプチドを含む。
【0178】
抗体系物質とは、本発明において、抗体-抗原特異的結合作用を発生できるものであれば、抗体、抗体の断片、抗体の一本鎖、一本鎖の断片、抗体融合タンパク質、抗体断片の融合タンパク質など、及びその誘導体と変体を含むがこれらに限定されない。
【0179】
抗原系物質とは、本発明においては、当業者に知られている抗原、及び抗原機能を発揮し、抗体系物質に特異的に結合する物質を含むがこれらに限定されない。
【0180】
抗タンパク質抗体:あるタンパク質と特異的に結合できる抗体を指す。
【0181】
抗蛍光タンパク質のナノ抗体:ある蛍光タンパク質と特異的に結合できるナノ抗体を指す。
【0182】
相同性(homology)は、特に説明しない限り、少なくとも50%の相同性を有するものを指し、好ましくは少なくとも60%の相同性、より好ましくは少なくとも70%の相同性、より好ましくは少なくとも75%の相同性、より好ましくは少なくとも80%の相同性、より好ましくは少なくとも85%の相同性、より好ましくは少なくとも90%の相同性であり、また例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の相同性である。説明対象として、例えば、本発明の説明書に言及したΩ配列の相同配列が挙げられる。ここの相同性は配列上の類似性を意味し、数値上は類似性(identity)と等価であってもよい。
【0183】
ホモログとは、相同性配列を有する物質を指し、相同体とも呼ばれる。
【0184】
「変体」、variantは、異なる構造(微小変異を行うことを含むがこれに限定されるものではない)を有するが、本来の機能又は性能を保持又は基本的に保持できる物質を指す。前記変体は、核酸変体、ポリペプチド変体、タンパク質変体を含むがこれらに限定されない。関連する変体を取得する方式は、構造ユニットの組換え、削除又は欠失、挿入、シフト、置換などを含むがこれらに限定されない。前記変体は、修飾された生成物、遺伝子改造生成物、融合生成物などを含むがこれらに限定されない。遺伝子改造生成物を得るために、遺伝子改造を行う方式は、遺伝子組換え(遺伝子組換え生成物に対応)、遺伝子削除又は欠失、挿入、シフト、塩基置換などを含むがそれらに限定されない。遺伝子変異生成物は、遺伝子変異体とも呼ばれ、遺伝子改造生成物の一種類に属する。前記変体の好ましい一形態は、ホモログである。
【0185】
修飾された生成物:化学修飾生成物、アミノ酸修飾物、ポリペプチド修飾物、タンパク質修飾物などを含むがそれらに限定されない。前記化学修飾生成物は有機化学、無機化学、高分子化学などの化学合成方法を用いて改造された生成物である。修飾方法としては、イオン化、塩化、脱塩化、錯化、解錯化、キレート化、解キレート化、付加反応、置換反応、除去反応、挿入反応、酸化反応、還元反応、翻訳後修飾などの修飾方法が挙げられ、具体的には、酸化、還元化、メチル化、脱メチル化、アミノ化、カルボキシル化、硫化などの修飾方法が挙げられる。
【0186】
「変異体」、mutantは、本発明において特に説明しない限り、本来の機能又は性能を保持又は基本的に保持できる変異生成物を指し、変異部位の数に特に制限はない。前記変異体は遺伝子変異体、ポリペプチドの変異体、タンパク質の変異体を含むがこれらに限定されない。変異体は、変体の一種である。関連する変異体を取得する方式は、構造ユニットの組換え、削除又は欠失、挿入、シフト、置換などを含むがこれらに限定されない。遺伝子の構造単位は塩基であり、ポリペプチド及びタンパク質の構造単位はアミノ酸である。遺伝子変異のタイプは、遺伝子削除又は欠失、挿入、シフトコード、塩基置換などを含むがこれらに限定されない。
【0187】
「変性」生成物は、本発明の誘導体、修飾された生成物、遺伝子改造生成物、融合生成物などを含むがこれらに限定されず、本来の機能又は性能を保持することができ、またその機能又は性能を最適化、変更することができる。
【0188】
溶出液(標的タンパク質を例とする):標的タンパク質を溶出するものであり、溶出した後、標的タンパク質は溶出液に存在する。
【0189】
洗浄液(標的タンパク質を例とする):不純物タンパク質を溶出するものであり、溶出した後、不純物タンパク質は洗浄液によって運び去られる。
【0190】
結合力:結合能力であり、例えば磁性マイクロスフェアとあるタンパク質の結合能力である。
【0191】
親和性作用力:濃度勾配の異なる基質溶液を用い、磁性マイクロスフェアが50%の基質のみを結合する場合の基質濃度である。
【0192】
IVTT:In vitro transcription and translation、生体外転写と翻訳システムであり、即ち無細胞タンパク質合成系である。無細胞タンパク質合成系は、外来の標的mRNA又はDNAをタンパク質合成テンプレートとし、人工制御によってタンパク質合成に必要な基質及び転写、翻訳関連タンパク質因子などの物質を追加し、標的タンパク質の合成を実現することができる。本発明の無細胞タンパク質合成系は特に制限されず、酵母細胞抽出物、大腸菌細胞抽出物、哺乳動物細胞抽出物、植物細胞抽出物、昆虫細胞抽出物に基づく無細胞タンパク質合成系のいずれか又は任意の組み合わせであってもよい。
【0193】
本発明において、「翻訳関連酵素」、translation-related enzymes(TRENs)とは、核酸テンプレートからタンパク質生成物の合成過程に必要な酵素物質を意味し、翻訳過程に必要な酵素に限定されるものではない。核酸テンプレート:遺伝テンプレートとも呼ばれ、タンパク質合成テンプレートとする核酸配列を指し、DNAテンプレート、mRNAテンプレート及びそれらの組み合わせを含む。
【0194】
フロースルー:磁気ビーズと標的タンパク質を含む系とをインキュベートした後に収集された清液であり、そのうち磁気ビーズに捕捉されない残りの標的タンパク質を含む。例えば、実施例2では、アビジン-アフィニティタンパク質の複合体を含む溶液を、アフィニティカラムに加え、カラムを通過した後に出た溶液であり、例えばフロースルー1、フロースルー2及びフロースルー3は、それぞれ1回目に流出した溶液、2回目に流出した溶液及び3回目に流出した溶液を示す。
【0195】
RFUは、相対蛍光単位値(Relative Fluorescence Unit)である。
【0196】
eGFP:増強型緑色蛍光タンパク質(enhanced green fluorescence protein)である。本発明において、前記eGFPは広く野生型及びその変体を含み、野生型及びその変異体を含むがそれらに限定されない。
【0197】
mEGFP:eGFPのA206K変異体である。
【0198】
「任意に」は、本発明の技術的解決手段を実現できることを選択基準として、あってもなくてもよいことを示す。本発明において、「任意の方式」とは、本発明の技術思想を適用すれば、本発明を実施することができることを示す。
【0199】
本発明において、「好ましい(例えば、prefer、preferable、preferably、preferredなど)」、「好ましくは」、「より好ましい」、「さらに好ましい」、「最も好ましい」などの好ましい実施形態は、発明の範囲や保護範囲を何ら限定するものではなく、本発明の範囲や実施形態を限定するものではなく、いくつかの実施形態を例示したに過ぎない。
【0200】
本発明の説明において、「好ましい一つ」、「好ましい一形態」、「好ましい一実施形態」、「好ましい一例」、「好ましい例」、「好ましい一実施方式では」、「いくつかの好ましい例では」、「いくつかの好ましい形態では」、「~が好ましい」、「好ましい」、「好ましくは」、「より好ましい」、「より好ましく」、「さらに好ましい」、「最も好ましい」などの好ましい形態、及び「一実施形態」、「一形態」、「例示」、「具体例」、「例が挙げられる」、「例として」、「例えば」、「例」、「など」などの模式的な列挙方式は、同様に発明の範囲及び保護範囲に対するいかなる意味での制限を構成せず、且つ各形態に説明された具体的な特徴は本発明の少なくとも一つの具体的な実施形態に含まれる。本発明において、各形態で説明された具体的な特徴はいずれかの一つ又は複数の具体的な実施形態において適切な形態で結合することができる。本発明において、各好ましい形態に対応する技術的特徴又は技術的解決手段は任意の適切な形態で結合することができる。
【0201】
本発明において、「それらの任意の組み合わせ」とは、数的には「1より大きい」、範囲的には「いずれか1つを選択してもよいし、又は少なくとも2つからなるグループを選択してもよい」。
【0202】
本発明において、「一つ又は複数」、「一種又は複種」など「1又は複数」の説明は、「少なくとも一つ」、「少なくとも一種」、「それらの組み合わせ」、「又はその組み合わせ」、「及びその組み合わせ」、「又はその任意の組み合わせ」、「及びその任意の組み合わせ」などと同じ意味を有し、交換して使用することができ、数量が「1」又は「1以上」に等しいことを示す。
【0203】
本発明において、「又は/及び」を採用し、「及び/又は」は「任意に一つ又はその組み合わせ」ことを表し、その少なくとも一つを示す。
【0204】
本発明に記載の「通常」、「常規」、「一般」、「常に」、「往往」などの方式で説明された従来の技術的手段は、いずれも本発明の内容の参考として引用され、特に説明しない限り、本発明の一部の技術的特徴の好ましい一形態と見なすことができ、且つ注意すべきことは、発明の範囲及び保護範囲に対するいかなる意味での制限を構成しないことである。
【0205】
本発明に言及された全ての文献及びそれらの文献から直接又は間接的に引用された文献は、いずれも本出願において参考として引用され、各文献が単独で参考として引用されるようである。
【0206】
理解すべきものとして、本発明の範囲内において、本発明の上記各技術的特徴と以下(実施例に限定されるものを含むがそれらに限定されない)に具体的に説明される各技術的特徴との間はいずれも互いに組み合わせることができ、それにより新たな又は好ましい技術的解決手段を構成し、本発明を実施することができるだけである。紙面の都合上、そのすべてを繰り返すことはしない。
【0207】
1.本発明の第1の態様は、生体磁性マイクロスフェアを提供し、前記生体磁性マイクロスフェアは、磁性マイクロスフェア本体を含み、前記磁性マイクロスフェア本体の外表面には、線状主鎖及び分岐鎖を有するポリマーを少なくとも1種有し、前記線状主鎖の一端が磁性マイクロスフェア本体の外表面に固定され、ポリマーの他端は磁性マイクロスフェア本体の外表面から遊離し、前記磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端には、ビオチン又はビオチン類似体が連結されている。
【0208】
本発明の第1の態様の生体磁性マイクロスフェアは、ビオチン磁性マイクロスフェア又はビオチン磁気ビーズとも呼ばれる。
【0209】
前記生体磁性マイクロスフェアの典型的な構造を
図1に示す。
【0210】
前記ビオチン又はビオチン類似体は、精製媒体とすることができるだけでなく、連結要素としてさらに他のタイプの精製媒体と連結することもできる。
【0211】
現在一般的に使用されるゲル系多孔質材料、例えばアガロース系に比べて、大部分の市販マイクロスフェアはアガロース系材料を採用する。多孔質材料は豊富な細孔構造を有し、それにより大きな比表面積を提供し、精製基質に高い結合量を提供するが、それに応じて、タンパク質を吸着又は溶出する時に、タンパク質分子が多孔質材料内部の複雑な細孔通路に追加的に進入又は脱出する必要があり、より多くの時間がかかり、また滞留しやすい。それに比べて、本発明の提供する標的タンパク質捕捉用の結合部位は生体磁性マイクロスフェアの外表面空間のみを利用し、且つ吸着及び溶出を行う時、複雑な網状通路を経る必要がなく、溶出液に直接放出することができ、それにより溶出時間を大幅に低減させ、溶出効率を向上させ、滞留割合を低減させ、精製収率を向上させる。
【0212】
1.1.磁性マイクロスフェア本体
本発明において、前記磁性マイクロスフェア本体の体積は任意の実行可能な粒径サイズであってもよい。
【0213】
比較的小さい粒子サイズは、磁性マイクロスフェアが混合系において懸濁することを実現することに役立ち、タンパク質生成物とより十分に接触し、タンパク質生成物の捕捉効率及び結合率を向上させる。いくつかの好ましい態様では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径サイズは、0.1μm、0.15μm、0.2μm、0.25μm、0.3μm、0.35μm、0.4μm、0.45μm、0.5μm、0.55μm、0.6μm、0.65μm、0.7μm、0.75μm、0.8μm、0.85μm、0.9μm、0.95μm、1μm、1.5μm、2μm、2.5μm、3μm、3.5μm、4μm、4.5μm、5μm、5.5μm、6μm、6.5μm、7μm、7.5μm、8μm、8.5μm、9μm、9.5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、55μm、60μm、65μm、70μm、75μm、80μm、85μm、90μm、95μm、100μm、150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm、450μm、500μm、550μm、600μm、650μm、700μm、750μm、800μm、850μm、900μm、950μm、1000μmから選択されるいずれの一つの粒子径スケール又はいずれのの2つの粒子径スケール(偏差は±25%、±20%、±15%、±10%であってもよい)の間の範囲である。特に説明がない限り、前記直径サイズとは平均サイズを指す。
【0214】
前記磁性マイクロスフェア本体の体積は任意の実行可能な粒径サイズであってもよい。
【0215】
いくつかの好ましい形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.1~10μmから選択される。
【0216】
いくつかの好ましい形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.2~6μmから選択される。
【0217】
いくつかの好ましい形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.4~5μmから選択される。
【0218】
いくつかの好ましい形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.5~3μmから選択される。
【0219】
いくつかの好ましい形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.2~1μmから選択される。
【0220】
いくつかの好ましい形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.5~1μmから選択される。
【0221】
いくつかの好ましい形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の平均直径は、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、950nm、1000nmから選択され、前記近似数は±25%、±20%、±15%、±10%であってもよい。
【0222】
いくつかの好ましい形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は1μm~1mmから選択される。
【0223】
いくつかの好ましい形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は、例えば1μm、10μm、100μm、200μm、500μm、800μm、1000μmであり、偏差範囲は±25%、±20%、±15%、±10%である。
【0224】
異なる磁性材料は異なるタイプの活性化部位を提供することができ、精製媒体と結合する方式の違いを生成することができ、且つ磁石で分散及び沈降する能力も異なり、また精製基質タイプに対して選択性を生成することができる。
【0225】
磁性マイクロスフェア本体、及び磁性マイクロスフェア本体を含む磁性マイクロスフェアは、印加磁場の作用で迅速に位置決め、ガイド及び分離することができる一方、表面変性又は化学重合などの方法によって磁性マイクロスフェア表面に複数の活性機能基、例えば水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、アミノ基などを付与することができ、また、磁性マイクロスフェアは共有結合又は非共有結合の方式によって抗体、DNAなどの生物活性物質を結合することができる。
【0226】
いくつかの好ましい形態では、前記磁性マイクロスフェア本体は、SiO2で被覆された磁性材料である。ここで、SiO2被覆層は自身に活性部位を持つシランカップリング剤を含んでもよい。
【0227】
いくつかの好ましい形態では、前記磁性材料は、鉄化合物(例えば鉄酸化物)、鉄合金、コバルト化合物、コバルト合金、ニッケル化合物、ニッケル合金、マンガン酸化物、マンガン合金、亜鉛酸化物、ガドリニウム酸化物、クロム酸化物、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0228】
いくつかの好ましい形態では、前記鉄酸化物は、例えばマグネタイト(Fe3O4)、マグヘマイト(γ-Fe2O3)又は前記2種類の酸化物の組み合わせであり、好ましくは四酸化三鉄である。
【0229】
いくつかの好ましい形態では、前記磁性材料は、Fe3O4、γ-Fe2O3、窒化鉄、Mn3O4、AlNi(Co)、FeCrMo、FeAlC、AlNiCo、FeCrCo、ReCo、ReFe、PtCo、MnAlC、CuNiFe、AlMnAg、MnBi、FeNi(Mo)、FeSi、FeAl、FeNi(Mo)、FeSiAl、BaO・6Fe2O3、SrO・6Fe2O3、PbO・6Fe2O3、GdO及びそれらの組み合わせから選択される。ここで、前記Reは希土類元素であるレニウムである。
【0230】
1.2.大量の分岐鎖末端を提供するポリマー構造
前記磁性マイクロスフェア本体の外表面には、線状主鎖及び分岐鎖を有するポリマーを少なくとも1種有し、前記線状主鎖の一端が磁性マイクロスフェア本体の外表面に固定され、ポリマーの他端は磁性マイクロスフェア本体の外表面から遊離する。
【0231】
前記「~に固定する」とは、共有結合の方式で磁性マイクロスフェア本体の外表面「に固定される」ことを指す。
【0232】
いくつかの好ましい形態では、前記ポリマーは、前記磁性マイクロスフェア本体の外表面に直接的に、又は連結要素を介して間接的に共有結合されている。
【0233】
前記ポリマーは線状主鎖を有し、この場合、ポリマーは線状主鎖の高い柔軟性を有するだけでなく、また分岐鎖数の高倍率増幅利点を有し、高レートやハイスループットの結合、高効率、高比率(高収率)の分離をよりよく実現することができる。
【0234】
本発明の磁性マイクロスフェアについて、ポリマーの一端が磁性マイクロスフェア本体の外表面に共有結合され、全ての分岐鎖と全ての官能基を含む残りの端がいずれも溶液に溶解され、磁性マイクロスフェア本体の外部空間に分布され、分子鎖が十分に伸びて揺動することができ、分子鎖が溶液中の他の分子と十分に接触することができ、さらに標的タンパク質の捕捉を強化することができる。標的タンパク質を磁性マイクロスフェアから溶出する時、標的タンパク質を磁性マイクロスフェアの拘束から直接脱出させ、溶出液に直接入れる。磁性マイクロスフェア本体の外表面に物理的に巻き付けられ又は磁性マイクロスフェア本体と一体に形成されたポリマーに比べて、このような線状主鎖によって一端が共有結合で固定されたポリマー(いくつかの好ましい形態において単一の一本のポリマー線状主鎖を共有結合で固定し、他のいくつかの好ましい形態において主鎖固定端から2又は3本の線状主鎖が共有結合的に引き出される)は分子鎖のスタッキングを効果的に低減することができ、分子鎖が溶液における伸展及び揺動を強化し、標的タンパク質に対する捕捉を強化し、溶出時の標的タンパク質の滞留割合及び滞留時間を低減する。
【0235】
1.2.1.本発明により提供される生体磁性マイクロスフェアのポリマーの主鎖
いくつかの好ましい形態では、前記線状主鎖は、ポリオレフィン主鎖、又はアクリル系ポリマー主鎖である。
【0236】
他のいくつかの好ましい形態では、前記ポリマーの線状主鎖は、アクリル系ポリマー主鎖である。ポリオレフィン主鎖(線状主鎖は炭素原子のみ)であってもよいし、線状主鎖にヘテロ原子を含んでいてもよい(ヘテロ原子は非炭素原子)。
【0237】
いくつかの好ましい形態では、前記ポリマーの主鎖はポリオレフィン主鎖である。前記アクリル系ポリマーのモノマー単位が、アクリル酸、アクリル酸塩、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸塩、メタクリル酸エステルなどのアクリル系モノマー分子、又はそれらの組み合わせである。前記アクリル系ポリマーは、上記モノマーのいずれかを重合することにより得られてもよく、上記モノマーの適宜組み合わせを共重合することにより得られてもよい。
【0238】
いくつかの好ましい形態では、前記ポリマーの線状主鎖はポリオレフィン主鎖である。具体的には、例えば、ポリオレフィン主鎖は、アクリル酸、アクリル酸塩、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸塩、メタクリル酸エステル系モノマーのいずれか一つの重合物に提供された主鎖であり、又はそれらの組み合わせの重合生成物に提供された主鎖(その共重合物に提供された主鎖)であり、又は上記モノマーが重合に関与して形成される共重合物の主鎖である。上記モノマーを組み合わせた重合生成物としては、例えば、アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル-メタクリル酸ヒドロキシエチル共重合体(MMA-HEMA共重合体)、アクリル酸-アクリル酸ヒドロキシプロピル共重合体などが挙げられる。上記モノマーが重合に関与して形成される共重合体としては、例えば、無水マレイン酸-アクリル酸共重合体が挙げられる。
【0239】
いくつかの好ましい形態では、前記線状主鎖は、ポリオレフィン主鎖であり、且つアクリル系ポリマーの主鎖から提供される。
【0240】
いくつかの好ましい形態では、前記線状主鎖は、アクリル系ポリマー主鎖である。
【0241】
他のいくつかの好ましい形態では、前記ポリマーの主鎖は、アクリル系ポリマー主鎖である。ポリオレフィン主鎖(主鎖は炭素原子のみ)であってもよく、主鎖にヘテロ原子(ヘテロ原子:非炭素原子)を含んでもよい。
【0242】
他のいくつかの好ましい形態では、前記ポリマーの主鎖が、ポリオレフィンブロックを含むブロック共重合体主鎖、例えば、ポリエチレングリコール-b-ポリアクリル酸共重合体(アクリル系共重合体の範囲に属する)である。線状主鎖の柔軟な揺動を円滑に発揮し、分岐鎖堆積を招くことがなく、滞留時間又は/及び割合を増大させることがないことが好ましい。
【0243】
他のいくつかの好ましい形態では、前記ポリマーの主鎖が重縮合型主鎖である。前記重縮合型主鎖とは、モノマー分子又はオリゴマー同士の重縮合反応により形成され得る線状主鎖を意味する。前記縮重合型主鎖は、ホモ型であってもよく、共重合型であってもよい。例えば、ポリペプチド鎖、ポリアミノ酸鎖などである。具体的には、例えば、ε-ポリリジン鎖、α-ポリリジン鎖、γ-ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸鎖など、アスパラギン酸/グルタミン酸共重合体などが挙げられる。
【0244】
磁性マイクロスフェア本体の外表面の一つの結合部位が共有結合できる線状主鎖の数は1つ又は複数であってもよい。
【0245】
いくつかの好ましい形態では、磁性マイクロスフェア本体の外表面の一つの結合部位は、1本の線状主鎖のみを引き出し、線状主鎖に大きな活動空間を提供することができる。
【0246】
他のいくつかの好ましい形態では、磁性マイクロスフェア本体の外表面の一つの結合部位は、2本の線状主鎖のみを引き出し、できるだけ線状主鎖に大きな活動空間を提供する。
【0247】
ポリマーの主鎖は、一端が磁気ビーズの外表面(生体磁性マイクロスフェアの外表面)に共有結合され、全ての分岐鎖と全ての機能基を含む残りの端がいずれも溶液に溶解され、磁気ビーズの外部空間に分布され、分子鎖が十分に伸びて揺動することができ、それにより分子鎖が溶液中の他の分子と十分に接触することができ、さらに標的タンパク質に対する捕捉を強化することができる。標的タンパク質を磁気ビーズから溶出する時、標的タンパク質を磁気ビーズの拘束から直接解放させ、溶出液に直接入れる。磁気ビーズの外表面に物理的に巻き付けられ又は磁気ビーズと一体に形成されたポリマーに比べて、ここで提供された線状主鎖の一端によって共有結合的に固定されたポリマー(最も好ましくは単一の1本のポリマー線状主鎖が共有結合的に固定され、また好ましくは主鎖固定端に2又は3本の線状主鎖が共有結合的に引き出される)は分子鎖のスタッキングを効果的に低減することができ、分子鎖が溶液における伸展及び揺動を強化し、標的タンパク質に対する捕捉を強化し、溶出時の標的タンパク質の滞留割合及び滞留時間を低減する。
【0248】
1.2.2.本発明により提供される生体磁性マイクロスフェアのポリマー分岐鎖
前記分岐鎖の数は磁性マイクロスフェア本体の大きさ、ポリマーの骨格構造タイプ、ポリマーの磁性マイクロスフェア本体の外表面における鎖密度(特に分岐鎖密度)などの要因に関連する。
【0249】
ポリマー分岐鎖の数は複数であり、少なくとも3つである。側分岐鎖の数は磁性マイクロスフェアの大きさ、ポリマー主鎖の長さ、ポリマー主鎖に沿う側分岐鎖の線密度に関連し、ポリマーが磁性マイクロスフェアの外表面における鎖密度などの要因に関連する。ポリマー分岐鎖の数は、原料の仕込み比を制御することにより制御することができる。
【0250】
前記分岐鎖型ポリマーは、少なくとも3つの分岐鎖を有する。
【0251】
それぞれの分岐鎖末端は、それぞれ独立に精製媒体と結合しているか、結合していない。
【0252】
分岐鎖末端に精製媒体が結合されている場合には、各分岐鎖末端がそれぞれ独立して精製媒体に直接に結合されていてもよいし、連結要素を介して間接的に結合されていてもよい。
【0253】
分岐鎖末端に精製媒体が結合される場合、精製媒体の数は1つまたは複数であってもよい。
【0254】
いくつかの好ましい形態では、1分子の前記分岐鎖型ポリマーは少なくとも3つの精製媒体と結合する。
【0255】
1.3.ビオチン又はビオチン類似体の結合方式
前記ビオチン又はビオチン類似体が前記ポリマーの分岐鎖末端に連結される方式は特に限定されない。
【0256】
前記ビオチン又はビオチン類似体が前記ポリマーの分岐鎖末端に連結される方式は、共有結合、超分子相互作用、又はそれらの組み合わせを含むがそれらに限定されない。
【0257】
いくつかの好ましい形態では、前記共有結合は、動的共有結合であり、さらに好ましくは、前記動的共有結合は、イミン結合、アシルヒドラゾン結合、ジスルフィド結合、又はそれらの組み合わせを含む。
【0258】
いくつかの好ましい形態では、前記超分子相互作用は、配位結合、アフィニティ複合体相互作用、静電吸着、水素結合、π-πオーバーラップ作用、疎水性相互作用、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0259】
いくつかの好ましい形態では、前記ポリマーの分岐鎖は、官能基に基づく共有結合によってビオチン又はビオチン類似体に共有結合し、ビオチン又はビオチン類似体をポリマー分岐鎖末端に共有結合するものである。生体磁性マイクロスフェアの外表面におけるポリマー分子の分岐鎖に含まれる官能基とビオチン又はビオチン類似体との共有結合反応により得ることができる。ここで、前記官能基の好ましい実施形態の一つは特異的結合部位(定義は具体的な実施形態の「名詞と用語」の部分を参照)である。
【0260】
前記官能基に基づく共有結合とは、官能基が共有結合に関与することによって形成される共有結合を意味する。好ましくは、前記官能基は、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基の塩形態、アミノ基の塩形態、ギ酸エステル基、又は前記官能基の組み合わせである。前記カルボキシル基の塩形態の好ましい形態の一つは、ナトリウム塩形式であり、例えばCOONaであり、前記アミノ基の塩形態の好ましい形態は無機塩形態であってもよく、有機塩形態であってもよく、塩酸塩、フッ化水素酸塩などの形態を含むがこれらに限定されない。前記「官能基の組み合わせ」とは、一つの磁性マイクロスフェアの外表面の全てのポリマー分子の全ての分岐鎖を指し、異なる官能基に基づいて共有結合の形成に関与することができる。ビオチンを例とし、即ち一つのビオチン磁性マイクロスフェアの外表面の全てのビオチン分子はそれぞれ異なる官能基と共有結合することができるが、一つのビオチン分子は一つの官能基のみと結合することができる。
【0261】
2.本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様に提供される前記生体磁性マイクロスフェアに基づいて、前記ビオチン又はビオチン類似体は連結要素としてさらに精製媒体に連結している生体磁性マイクロスフェアを提供する。即ち、前記ポリマーの分岐鎖末端は、連結要素を介して精製媒体に連結しており、前記連結要素は、ビオチン又はビオチン類似体を含む。
【0262】
精製媒体(purification element)
精製媒体は、混合系から標的物質を特異的に捕捉する機能性要件であり、即ち前記精製媒体と分離精製される標的物質分子との間に特異的な結合を行うことができる。捕捉された標的物質分子は適切な条件で溶出して放出され、それにより分離精製の目的を実現する。
【0263】
前記精製媒体はタンパク質類物質を標的物質とする場合、標的タンパク質自体又は標的タンパク質に携帯される精製タグと、互いに特異的な結合作用を形成することができる。したがって、標的タンパク質精製タグに用いることができる物質は、いずれも精製媒体の選択可能な方式とすることができ、精製媒体として用いられるペプチド又はタンパク質は、標的タンパク質における精製タグの選択可能な方式とすることができる。
【0264】
2.1.精製媒体のタイプ
前記精製媒体は、アビジン型タグ、ポリペプチド型タグ、タンパク質型タグ、抗体型タグ、抗原型タグ、又はそれらの組み合わせを含有してもよいが、これらに限定されない。
【0265】
好ましい一形態では、前記アビジン型タグは、アビジン、ビオチンと結合可能なアビジン類似体、ビオチン類似体と結合可能なアビジン類似体、又はそれらの組み合わせである。
【0266】
いくつかの好ましい形態では、前記精製媒体は、アビジン、ビオチン又はその類似体と結合可能なアビジン類似体、ビオチン、アビジン又はその類似体と結合可能なビオチン類似体、アフィニティタンパク質、抗体、抗原、DNA、又はそれらの組み合わせである。
【0267】
いくつかの好ましい形態では、前記生体磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端にはビオチンが連結されており、前記精製媒体はアビジンであり、且つ前記アビジンとの間でアフィニティ複合体の結合作用を形成する。
【0268】
いくつかの好ましい形態では、前記アビジンは、ストレプトアビジン、変性ストレプトアビジン、ストレプトアビジン類似体のいずれか、又はそれらの組み合わせである。
【0269】
前記アビジン類似体は、例えばtamavidin 1、tamavidin 2などである。Tamavidin1及びTamavidin2は、Yamamotoらが2009年に発見したビオチン結合能力を有するタンパク質であり(Takakura Y et al.Tamavidins:Novel avidin-like biotin-binding proteins from the Tamogitake mushroom[J].FEBS Journal,2009,276,1383-1397)、それらはストレプトアビジンと類似の強いビオチン親和性を有する。Tamavidin2の熱安定性はストレプトアビジンより優れ、そのアミノ酸配列は関連データベースから検索することができ、例えばUniProt B9A0T7であり、またコドン変換、最適化プログラムによって最適化してDNA配列を得ることもできる。
【0270】
前記ビオチン類似体は、例えばWSHPQFEK配列又はその変体配列、WRHPQFGG配列又はその変体配列、などである。
【0271】
いくつかの好ましい形態では、前記精製媒体は、ポリペプチドタグ、タンパク質タグ又はその組み合わせである。
【0272】
いくつかの好ましい形態では、前記精製媒体はアフィニティタンパク質である。
【0273】
前記アフィニティタンパク質の例として、プロテインA、プロテインG、プロテインL、変性プロテインA、変性プロテインG、変性プロテインLなどを含むがそれらに限定されない。
【0274】
前記抗体、抗原の定義は用語部分を参考し、そのドメイン、サブユニット、断片、重鎖、軽鎖、一本鎖断片(例えばナノ抗体、軽鎖が欠失した重鎖、重鎖可変領域、相補決定領域など)、エピトープ(epitope)、エピトープペプチド、前記いずれかの変体、などを含むがそれらに限定されないことを理解すべきである。
【0275】
いくつかの好ましい形態では、前記ポリペプチド型タグは、CBPタグ、ヒスチジンタグ、C-Mycタグ、FLAGタグ、Spotタグ、Cタグ、Aviタグ、WSHPQFEK配列を含むタグ、WSHPQFEKの変体配列を含むタグ、WRHPQFGG配列を含むタグ、WRHPQFGGの変体配列を含むタグ、RKAAVSHW配列を含むタグ、RKAAVSHWの変体配列を含むタグ、又はそれらの組み合わせから選択されるいずれかのタグ又はその変体である。
【0276】
いくつかの好ましい形態では、前記タンパク質タグは、アフィニティタンパク質、SUMOタグ、GSTタグ、MBPタグ、又はそれらの組み合わせから選択されるいずれかのタグ又はその変体であり、より好ましくは、前記アフィニティタンパク質は、プロテインA、プロテインG、プロテインL、変性プロテインA、変性プロテインG、変性プロテインL、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0277】
いくつかの好ましい形態では、前記抗体型タグは、抗体、抗体の断片、抗体の一本鎖、一本鎖の断片、抗体融合タンパク質、抗体断片の融合タンパク質のいずれか、いずれかの誘導体、又はいずれかの変体である。
【0278】
いくつかの好ましい形態では、前記抗体型タグは、抗タンパク質の抗体である。
いくつかの好ましい形態では、前記抗体型タグは、抗蛍光タンパク質の抗体である。
いくつかの好ましい形態では、前記抗体型タグは、ナノ抗体である。
いくつかの好ましい形態では、前記抗体型タグは、抗タンパク質のナノ抗体である。
いくつかの好ましい形態では、前記抗体型タグは、抗蛍光タンパク質のナノ抗体である。
いくつかの好ましい形態では、前記抗体型タグは、抗緑色蛍光タンパク質又はその変異体の抗体である。
いくつかの好ましい形態では、前記抗体型タグは、Fc断片である。
【0279】
2.2.精製媒体の担持方式
前記精製媒体が前記ビオチン又はビオチン類似体に連結される方式は特に制限されない。
【0280】
前記精製媒体が前記ビオチン又はビオチン類似体に連結される方式は、共有結合、非共有結合(例えば、超分子相互作用)、連結要素、又はそれらの組み合わせを含むがそれらに限定されない。
【0281】
いくつかの好ましい形態では、前記共有結合は、動的共有結合であり、さらに好ましくは、前記動的共有結合は、イミン結合、アシルヒドラゾン結合、ジスルフィド結合、又はそれらの組み合わせを含む。
【0282】
いくつかの好ましい形態では、前記超分子相互作用は、配位結合、アフィニティ複合体相互作用、静電吸着、水素結合、π-πオーバーラップ作用、疎水性相互作用、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0283】
前記生体磁性マイクロスフェアのいくつかの好ましい形態では、前記精製媒体は、アフィニティ複合体を含む連結要素によって前記ポリマーの分岐鎖末端に連結される。
【0284】
いくつかの好ましい形態では、前記ビオチン又はビオチン類似体は、アフィニティ複合体作用によってアビジン又はアビジン類似体に結合し、前記精製媒体は、前記アビジン又はアビジン類似体に直接又は間接的に結合する。
【0285】
いくつかの好ましい形態では、前記アフィニティ複合体相互作用は、ビオチン-アビジン相互作用、ビオチン類似体-アビジン相互作用、ビオチン-アビジン類似体相互作用、ビオチン類似体-アビジン類似体相互作用から選択される。
【0286】
いくつかの好ましい形態では、アフィニティ複合体の選択基準は、特異性に優れ、親和力が強く、さらに化学的に結合可能な部位を提供し、それによってアフィニティ複合体をポリマー分岐鎖末端に共有結合されることができ、又は化学修飾された後に磁性マイクロスフェア本体の外表面、例えば外表面の結合部位、線形ポリマーの主鎖末端、分岐鎖型ポリマーの分岐鎖末端に共有結合されることができることである。例えば、ビオチン又はその類似体とアビジン又はその類似体、抗原及び抗体などからの物質の組み合わせである。
【0287】
ロード方式に動的共有結合、超分子相互作用(特にアフィニティ複合体相互作用)を含む場合、可逆的なロード方式を形成し、精製媒体は一定の条件で分岐鎖末端からアンロードすることができ、さらに更新又は交換を行う。
【0288】
精製媒体の更新は、磁性マイクロスフェアの再生に対応し、更新前後の精製媒体の種類は同じである。
【0289】
精製媒体の交換は、磁性マイクロスフェアの変更に対応し、交換前後の精製媒体の種類が異なる。
【0290】
いくつかの好ましい形態では、前記精製媒体はアビジンであり、さらに前記アビジンと結合するビオチンを含み、ここでビオチンは連結要素とし、ビオチンとアビジンとの間はアフィニティ複合体の結合作用を形成する。
【0291】
いくつかの好ましい形態では、前記精製媒体はアフィニティタンパク質であり、さらに前記アフィニティタンパク質と連結するアビジン、及び前記アビジンと結合するビオチンを含み、ここで、ビオチンとアビジンとの間にアフィニティ複合体の結合作用を形成し、アフィニティ複合体を連結要素とする。
【0292】
いくつかの好ましい形態では、前記生体磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端に、順次にビオチン、アビジン、精製媒体が連結される。さらに好ましい一形態では、前記精製媒体は抗体又は抗原である。前記アビジンと精製媒体との連結方式は、共有結合、非共有結合、連結要素、又はそれらの組み合わせを含むがそれらに限定されない。
【0293】
いくつかの好ましい形態では、前記精製媒体は、核酸、オリゴヌクレオチド、ペプチド核酸、核酸アプタマー、デオキシリボ核酸、リボ核酸、ロイシンファスナー、ヘリックスターンヘリックスモチーフ、ジンクフィンガーモチーフ、ビオチン、抗ビオチンタンパク質、ストレプトアビジン、抗ハプテン抗体など、それらの組み合わせを含む連結要素によって生体磁性マイクロスフェアのポリマー分岐鎖末端に連結されるが、これらに限定されない。無論、前記連結要素は、二本鎖核酸構造体、ダブルヘリックス、ホモハイブリッド又はヘテロハイブリッド(DNA-DNA、DNA-RNA、DNA-PNA、RNA-RNA、RNA-PNA又はPNA-PNAから選択されるホモハイブリッド又はヘテロハイブリッド)、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0294】
2.3.精製媒体の作用機構
精製媒体が前記反応精製混合系における標的分子を捕捉する作用力は、共有結合、超分子相互作用、その組み合わせを含むがそれらに限定されないものから選択される。
【0295】
いくつかの好ましい形態では、前記アフィニティ複合体相互作用は、ビオチン-アビジン相互作用、ビオチン類似体-アビジン相互作用、ビオチン-アビジン類似体相互作用、ビオチン類似体-アビジン類似体相互作用から選択される。
【0296】
いくつかの好ましい形態では、前記標的物質は、ビオチン-アビジン結合力、Stregタグ-アビジン結合力、アビジン-アフィニティタンパク質結合力、ヒスチジンタグ-金属イオン親和力、抗体-抗原結合力、又はそれらの組み合わせの作用力方式によって前記生体磁性マイクロスフェアのポリマー分岐鎖末端に結合される。前記Stregタグは、主にIBA社が開発したアビジン又はその類似体と特異的結合作用を形成するペプチドタグを含むがそれらに限定されず、通常WSHPQFEK配列又はその変体配列を含む。
【0297】
2.4.精製媒体の再生と再利用
精製媒体がアフィニティ複合体、動的共有結合などの可逆方式によって本発明の生体磁性マイクロスフェアのポリマー分岐鎖末端に連結される場合、適切な条件で、精製媒体をポリマー分岐鎖末端から溶出し、さらに新たな精製媒体を再結合することができる。
【0298】
アフィニティ複合体相互作用がビオチンとストレプトアビジンとの間のアフィニティ複合体作用力を例とする。
【0299】
ビオチンとストレプトアビジンとの間の極めて強い親和力は、典型的なアフィニティ複合体の結合作用であり、一般的な非共有結合作用より強く、同時に共有結合作用より弱く、それにより精製媒体を磁気ビーズ外表面のポリマー分岐鎖末端に強固に結合させることができるだけでなく、また精製媒体を交換する必要がある時にストレプトアビジンをビオチンの特異的結合部位から溶出することにより精製媒体の同期離脱を実現することができ、さらに新たなアビジン-精製媒体共有結合複合体(例えばストレプトアビジンタグ付き精製媒体)の活性化部位を解放し、それにより磁気ビーズ精製性能の高速回復を実現し、標的物質(例えば抗体)の分離精製コストを大幅に低減させる。精製媒体が修飾された生体磁性マイクロスフェアを溶出し、アビジン-精製媒体共有結合複合体を除去し、それによりビオチン又はビオチン類似体で修飾された生体磁性マイクロスフェアを再取得する過程は、ビオチン磁性マイクロスフェアの再生と呼ばれる。再生されたビオチン磁性マイクロスフェアは、放出されたビオチン活性部位を有し、アビジン-精製媒体共有結合複合体を再結合することができ、精製媒体で修飾された生体磁性マイクロスフェアを再び得て(生体磁性マイクロスフェアの再生に対応する)、新鮮な精製媒体を提供することができ、新たな標的物質結合部位を提供する。これにより本発明のビオチン磁性マイクロスフェアを再生して使用することができ、即ち精製媒体を交換して再利用することができる。
【0300】
2.4.精製基質(好ましくはタンパク質系物質)
本発明の精製基質とは、本発明の磁性マイクロスフェアが捕捉して分離される物質であり、本発明の磁性マイクロスフェアと特異的に結合することができる精製媒体であれば特に限定されるものではない。
【0301】
前記精製基質がタンパク質系物質である場合、精製基質は標的タンパク質とも呼ばれる。
【0302】
2.4.1.標的タンパク質中の精製タグ
前記標的タンパク質に精製タグを携帯しなくてもよく、この場合、標的タンパク質自体は磁性マイクロスフェアにおける精製媒体に捕捉されるべきである。例えば、「標的タンパク質、精製媒体」が「抗体、抗原」、「抗原、抗体」、「アビジン又はその類似体、ビオチン又はその類似体」などの組み合わせである場合がある。
【0303】
いくつかの好ましい形態では、前記標的タンパク質は精製タグを付き、前記精製タグは前記精製媒体と特異的に結合することができる。一つの標的タンパク質分子では、前記精製タグの数は1つ、2つ又は複数であり、精製タグが2つ以上含まれる場合、精製タグの種類は、1種、2種又は複種である。なお、タグのアミノ酸配列が異なる限り、異なる種類のタグとみなす。
【0304】
前記標的タンパク質における精製タグは、ヒスチジンタグ、アビジン、アビジン類似体、Stregタグ(WSHPQFEK配列又はその変体を含むタグ)、WRHPQFGG配列又はその変体を含むタグ、RKAAVSHW配列又はその変体を含むタグ、FLAGタグ又はその変体、Cタグ及びその変体、Spotタグ及びその変体、GSTタグ及びその変体、MBPタグ及びその変体、SUMOタグ及びその変体、CBPタグ及びその変体、HAタグ及びその変体、Aviタグ及びその変体、アフィニティタンパク質、抗体系タグ、抗原系タグ、及びそれらの組み合わせを含むが上記のタグのグループに限定されない。またUS6103493B2、US10065996B2、US8735540B2、US20070275416A1に開示された精製タグから選択することができ、Stregタグ及びその変体を含むがそれらに限定されない。
【0305】
前記精製タグはN-末端又はC-末端によって融合することができる。
【0306】
前記ヒスチジンタグは、一般的に少なくとも5つのヒスチジン残基を含み、例えば5×Hisタグ、6×Hisタグ、8×Hisタグなどである。
【0307】
オクタペプチドWRHPQFGGは、コアストレプトアビジン(core streptavidin)と特異的に結合することができる。
【0308】
Stregタグは、アビジン又はその類似体と特異的結合作用を形成することができ、前記StregタグにWSHPQFEK又はその変体を含む。例えば、WSHPQFEK-(XaaYaaWaaZaa)n-WSHPQFEKであり、ここで、Xaa、Yaa、Waa、Zaaはそれぞれ独立していずれかのアミノ酸であり、XaaYaaWaaZaaは少なくとも1つのアミノ酸を含み、且つ(XaaYaaWaaZaa)nは少なくとも4つのアミノ酸を含み、ここで、nは1~15から選択され(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15)、(XaaYaaWaaZaa)nの具体例としては、(G)8、(G)12、GAGA、(GAGA)2、(GAGA)3、(GGGS)2、(GGGS)3が挙げられる。Stregタグとしては、例えば、WSHPQFEK、WSHPQFEK-(GGGS)n-WSHPQFEK、WSHPQFEK-GGGSGGGSGGSA-WSHPQFEK、SA-WSHPQFEK-(GGGS)2GGSA-WSHPQFEK、WSHPQFEK-GSGGG-WSHPQFEK-GL-WSHPQFEK、GGSA-WNHPQFEK-GGGSGSGGSA-WSHPQFEK-GS、GGGS-WSHPQFEK-GGGSGGGSGGSA-WSHPQFEKなどが挙げられる。
【0309】
前記FLAGタグの配列はDYKDDDDKである。FLAGタグの変体配列としては、例えば、DYKDHD-G-DYKDHD-I-DYKDDDDKが挙げられる。
【0310】
前記Spotタグの配列は、PDRVRAVSHWSSである。
【0311】
前記Cタグには、EPEA配列が含まれる。
【0312】
前記GSTタグとは、グルタチオンS-トランスフェラーゼタグを意味する。
【0313】
前記MBPタグとは、マルトース結合タンパク質タグである。
【0314】
前記SUMOタグは、既知の小分子ユビキチン様修飾タンパク質(Small ubiquitin-like modifier)であり、ユビキチン(ubiquitin)類ポリペプチド鎖スーパーファミリーの重要なメンバーの1つである。一次構造において、SUMOとユビキチンは18%の相同性を有するが、両者の三次構造及びその生物学的機能は十分に類似する。
【0315】
前記CBPタグの配列は、KRRWKKNFIAVSAANRFKKISSSGALである。
【0316】
前記HAタグの配列は、YPYDVPDYAである。
【0317】
前記Aviタグは、既知の15個のアミノ酸残基で構成される小タグであり、この小タグはビオチンリガーゼBirAに特異的に識別される。
【0318】
抗体類タグは、抗体の完全な構造(完全な抗体)、ドメイン、サブユニット、断片、重鎖、軽鎖、一本鎖断片(例えばナノ抗体、軽鎖が欠失した重鎖、重鎖可変領域、相補決定領域など)を含むがそれらに限定されない。
【0319】
抗原類タグは、抗原の完全な構造(完全な抗原)、ドメイン、サブユニット、断片、重鎖、軽鎖、一本鎖断片(例えばエピトープなど)などを含むがそれらに限定されない。
【0320】
いくつかの好ましい形態では、前記標的タンパク質のN末端又はC末端に1つの精製タグが連結され、又は両端にいずれも精製タグが連結される。
【0321】
本部分に記載の各種の精製タグは、いずれも本発明の磁性マイクロスフェアにおける精製媒体の候補とすることができる。
【0322】
2.4.2.標的タンパク質のタイプ
前記標的タンパク質は天然タンパク質又はその改造生成物であってもよく、人工合成配列であってもよい。前記天然タンパク質の由来は特に制限されず、真核細胞、原核細胞、病原体を含むがそれらに限定されなく、そのうち真核細胞の由来は、哺乳動物細胞、植物細胞、酵母細胞、昆虫細胞、線虫細胞、及びその組み合わせを含むがそれらに限定されなく、前記哺乳動物細胞の由来は、マウス源(ラット、マウス、モルモット、ゴールデンゴーファー、ハムスターなどを含む)、ウサギ源、サル源、ヒト源、豚源、羊源、ウシ源、犬源、ウマ源などを含むがそれらに限定されない。前記病原体は、ウイルス、クラミジア、マイコプラズマなどを含む。前記ウイルスは、HPV、HBV、TMV、コロナウイルス、ロタウイルスなどを含む。
【0323】
前記標的タンパク質のタイプは、ポリペプチド(本発明中の「標的タンパク質」は広義にポリペプチドを含む)、蛍光類タンパク質、酵素及び対応する酵素原、抗体、抗原、免疫グロブリン、ホルモン、コラーゲン、ポリアミノ酸、ワクチンなど、上記いずれかのタンパク質の一部のドメイン、上記いずれかのタンパク質のサブユニット又は断片、及び上記いずれかのタンパク質の変体を含むがそれらに限定されない。前記「上記いずれかのタンパク質のサブユニット又は断片」は、「前記いずれかのタンパク質の一部のドメイン」のサブユニット又は断片を含む。前記「上記いずれかのタンパク質の変体」は、「上記いずれかのタンパク質の一部のドメイン、上記いずれかのタンパク質のサブユニット又は断片」の変体を含む。前記「上記いずれかのタンパク質の変体」は、上記いずれかのタンパク質の変異体を含むがこれらに限定されない。本発明において、他の位置の連続する2つ又は2つ以上の「上記」の状況、意味は同様に説明する。
【0324】
前記標的タンパク質の構造は、完全な構造であってもよく、対応する一部のドメイン、サブユニット、断片、二量体、多量体、融合タンパク質、糖タンパク質などから選択することもできる。不完全な抗体構造としては、例えば、ナノ抗体(軽鎖が欠失した重鎖抗体、VHH、重鎖抗体の完全な抗原結合能力を保持している)、重鎖可変領域、相補決定領域(CDR)などが挙げられる。
【0325】
例えば、本発明に記載の生体外タンパク質合成システムが合成可能な標的タンパク質は、以下のいずれかのタンパク質、任意の組み合わせ方式の融合タンパク質、任意の組み合わせ方式の組成物から選択されるがそれらに限定されない。つまり、ルシフェラーゼ(例えばホタルルシフェラーゼ)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、増強緑色蛍光タンパク質(eGFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、アンモニアアシルtRNA合成酵素、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、カタラーゼ(Catalase、例えばマウスカタラーゼ)、アクチン、抗体、抗体の可変領域(例えば抗体の一本鎖可変領域、scFV)、抗体の一本鎖及びその断片(例えば抗体の重鎖、ナノ抗体、抗体の軽鎖)、α-アミラーゼ、エンテロバクターA、C型肝炎ウイルスE2糖タンパク質、インスリン及びその前駆体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、インターフェロン(インターフェロンαAなどのインターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγを含むがそれらに限定されない)、インターロイキン(インターロイキン-1β、インターロイキン2、インターロイキン12など)、リゾチーム、血清アルブミン(ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミンを含むがそれらに限定されない)、トランスサイレチン、チロシナーゼ、キシラナーゼ、β-ガラクトシダーゼ(β-galactosidase、LacZ、例えば大腸菌β-ガラクトシダーゼ)など、前記いずれかのタンパク質の部分ドメイン、前記いずれかのタンパク質のサブユニット又は断片、又は前記いずれかの変体(前記定義のように、前記変体は変異体を含み、例えばルシフェラーゼ変異体、eGFPの変異体が挙げられ、前記変体はさらにホモログであってもよい)。前記アンモニアアシルtRNA合成酵素としては、例えば、ヒトリジン-tRNA合成酵素(lysine-tRNA synthetase)、ヒトロイシン-tRNA合成酵素(leucine-tRNA synthetase)などが挙げられる。前記グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼとしては、例えば、シロイヌナズナグリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ、glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenaseが挙げられる。また、特許文献CN109423496Aを参照することができる。前記任意の組み合わせ方式の組成物は、前記いずれかのタンパク質を含んでもよく、前記任意の組み合わせ方式の融合タンパク質を含んでもよい。
【0326】
いくつかの好ましい形態では、GFP、eGFP、mScarletなどの1つ、又はその類似物質、又はその変異体などの蛍光特性を有する標的タンパク質を用いて前記生体外タンパク質合成系のタンパク質合成能力を評価する。
【0327】
前記標的タンパク質の応用分野は、生体医薬、分子生物、医学、体外検出、医療診断、再生医学、生物工学、組織工学、幹細胞工学、遺伝子工学、ポリマー工学、表面工学、ナノ工学、化粧品、食品、食品添加剤、栄養剤、農業、飼料、生活用品、洗濯、環境、化学染色、蛍光標識などの分野を含むがそれらに限定されない。
【0328】
2.4.3.標的タンパク質を含む混合系
本発明の磁性マイクロスフェアは、標的タンパク質をその混合系から分離するために用いることができる。前記標的タンパク質は、精製の目的がこの組成物を得るためであり、又はこの組成物の形態が精製の要求を満たすことができれば、1種の物質に限定されず、複数の物質の組み合わせであってもよい。
【0329】
標的タンパク質を含む混合系は特に制限されず、本発明の磁性マイクロスフェアの精製媒体は標的タンパク質と特異的に結合することができればよく、一般的には、前記精製媒体は混合系における標的タンパク質以外の他の物質との特異的結合又は非特異的結合作用が存在しないことも必要である。
【0330】
本発明の実施例において、前記標的タンパク質を含有する混合系は天然由来であってもよく、人工構築又は得られた混合系であってもよい。
【0331】
例えば、市販血清から特定タンパク質を分離精製することができる。
【0332】
例えば、生体外タンパク質合成系の反応後の系から標的タンパク質を分離することができる。
【0333】
前記生体外タンパク質合成系の具体的な一実施形態は、さらに、例えばWO2016005982A1に記載された大腸菌に基づく無細胞タンパク質合成系を含むがそれらに限定されない。本発明の他の引用文献は、その直接及び間接引用文献に記載された小麦胚芽細胞、ウサギ網状赤血球、サッカロマイセス・セレビシエ、ピキア・パストリス、クルイベロマイセス・マルシアナスに基づく生体外無細胞タンパク質合成系を含むがそれらに限定されず、いずれも本発明の生体外タンパク質合成系の実施形態として本発明に組み込まれる。例えば、文献「Lu,Y.Advances in Cell-Free Biosynthetic Technology.Current Developments in Biotechnology and Bioengineering,2019,Chapter 2,23-45」の部分「2.1 Systems and Advantages」の第27~28頁に引用された文献に記載された生体外無細胞タンパク質合成系を含むがそれらに限定されず、いずれも本発明を実施する生体外タンパク質合成系とすることができる。例えば、(本発明と矛盾しない限り、以下の文献及びその参考文献をその全体及びすべての目的のために引用する)文献CN106978349A、CN108535489A、CN108690139A、CN108949801A、CN108642076A、CN109022478A、CN109423496A、CN109423497A、CN109423509A、CN109837293A、CN109971783A、CN109988801A、CN109971775A、CN110093284A、CN110408635A、CN110408636A、CN110551745A、CN110551700A、CN110551785A、CN110819647A、CN110845622、CN110938649A、CN110964736A、CN111378706A、CN111378707A、CN111378708A、CN111718419A、CN111748569A、CN2019107298813、CN2019112066163、CN2018112862093(CN111118065A)、CN2019114181518、CN2020100693833、CN2020101796894、CN202010269333X、CN2020102693382及びその引用文献に記載されている無細胞タンパク質合成系、DNAテンプレートの構築及び増幅方法は、本発明の生体外タンパク質合成系、本発明のDNAテンプレートの構築及び増幅方法を実施するために使用することができる。
【0334】
前記生体外タンパク質合成系の細胞抽出物の由来細胞は特に制限されず、前記標的タンパク質を生体外発現することができればよい。従来技術に開示された原核細胞抽出物、真核細胞抽出物(好ましくは酵母細胞抽出物であり、より好ましくはクルイベロミセス・ラクチスであってもよい)由来の生体外タンパク質合成系に適用する外因性タンパク質、又は細胞内合成に適用する原核細胞系、真核細胞系(好ましくは酵母細胞系であり、より好ましくはクルイベロミセス・ラクチス系であってもよい)の内因性タンパク質は、いずれも本発明の生体外タンパク質合成系を用いて合成することができ、又は本発明により提供される生体外タンパク質合成系を用いて合成することを試みる。
【0335】
前記生体外タンパク質合成系の好ましい一形態は、IVTT系である。IVTT反応を行った後の液(IVTT反応液と記す)は、発現した標的タンパク質の他に、IVTT系に残存する反応原料、特に細胞抽出物由来の各種因子(例えばリボソーム、tRNA、翻訳関連酵素、開始因子、延長因子、終止因子など)を含む。前記IVTT反応液は、磁気ビーズと結合するための標的タンパク質を提供することができる一方、さらに標的タンパク質の分離効果を検証するための混合系を提供することができる。
【0336】
3.本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様に提供される前記生体磁性マイクロスフェアに基づいて、さらに、前記ビオチン又はビオチン類似体は連結要素として、さらにアフィニティ複合体結合作用によってアビジン又はアビジン類似体に連結している生体磁性マイクロスフェアを提供する。
【0337】
本発明の第3の態様の生体磁性マイクロスフェアは、アビジン磁性マイクロスフェア又はアビジン磁気ビーズとも呼ばれる。
【0338】
前記アビジン又はアビジン類似体は、精製媒体とすることができるだけでなく、連結要素としてさらに他のタイプの精製媒体と連結することもできる。ここで、前記ビオチン又はビオチン類似体と前記アビジン又はアビジン類似体との間にアフィニティ複合体の結合作用を形成する。
【0339】
いくつかの好ましい形態では、本発明の第1の態様に提供される前記生体磁性マイクロスフェアに基づいて、さらに、前記ビオチンに結合するアビジンを含む。ここで、ビオチンとアビジンとの間にアフィニティ複合体の結合作用を形成する。即ち、前記磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖の末端にはビオチンが連結されており、前記精製媒体はアビジンであり、且つ前記アビジンとの間でアフィニティ複合体の結合作用を形成する。
【0340】
いくつかの好ましい形態では、前記アビジンは、ストレプトアビジン、変性ストレプトアビジン、ストレプトアビジン類似体のいずれか、又はそれらの組み合わせである。
【0341】
4.本発明の第4の態様は、本発明の第3の態様に提供される前記生体磁性マイクロスフェアに基づいて、さらに、前記アビジン又はアビジン類似体に連結しているアフィニティタンパク質を含む生体磁性マイクロスフェアを提供する。このとき、ビオチン又はビオチン類似体、アビジン又はアビジン類似体は、いずれも連結要素として両者の間にアフィニティ複合体の結合作用を形成し、前記アフィニティタンパク質は、精製媒体とすることができるだけでなく、連結要素とすることができ、好ましくは精製媒体とする。
【0342】
本発明の第4の態様の生体磁性マイクロスフェアは、アフィニティタンパク質磁性マイクロスフェア又はアフィニティタンパク質磁気ビーズとも呼ばれる。
【0343】
前記生体磁性マイクロスフェアの典型的な構造は
図2に示す。
【0344】
いくつかの好ましい形態では、本発明の第2の態様に提供される前記生体磁性マイクロスフェアに基づいて、前記精製媒体はアフィニティタンパク質であり、前記生体磁性マイクロスフェアはさらに前記アフィニティタンパク質に連結しているアビジンと、前記結合力に結合しているビオチンとを含み、ここで、精製媒体は連結要素によって前記ポリマーの分岐鎖末端に連結しており、前記連結要素にはビオチンとアビジンとによって形成されたアフィニティ複合体を含む。
【0345】
いくつかの好ましい形態では、前記アフィニティタンパク質は、プロテインA、プロテインG、プロテインLのいずれか、又はそれらの変性タンパク質である。対応する生体磁性マイクロスフェアは、それぞれプロテインA磁性マイクロスフェア又はプロテインA磁気ビーズ、プロテインG磁性マイクロスフェア又はプロテインG磁気ビーズ、プロテインL磁性マイクロスフェア又はプロテインL磁気ビーズなどと呼ばれる。
【0346】
本発明の第4の様態に提供される生体磁性マイクロスフェアは、ビオチン-アビジン-アフィニティタンパク質の連結方式を例として、アフィニティタンパク質を磁気ビーズ外表面のポリマー分岐鎖末端に強固に結合させることができるだけでなく、またアフィニティタンパク質を交換する必要がある時にアビジン(例えばストレプトアビジン)をビオチンの特異的結合部位から溶出することによりアフィニティタンパク質の同期離脱を実現することができ、さらに新たなアビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体E(例えばストレプトアビジンタグ付きアフィニティタンパク質)の活性化部位を再結合することができ、それにより磁気ビーズ精製性能の迅速な回復を実現し、抗体分離精製コストを大幅に低減させる。アフィニティタンパク質が修飾された生体磁性マイクロスフェアを溶出し、アビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体Eを除去し、それによりビオチンで修飾された生体磁性マイクロスフェアを再取得する過程は、ビオチン磁性マイクロスフェアの再生と呼ばれる。再生されたビオチン磁性マイクロスフェアは放出されたビオチン活性部位を有し、アビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体Eを再結合することができ、再びアフィニティタンパク質で修飾された生体磁性マイクロスフェアF(生体磁性マイクロスフェアFの再生に対応する)を得て、新鮮なアフィニティタンパク質を提供し、新たな抗体結合部位を提供することができ。これにより本発明のビオチン磁性マイクロスフェアを再生して使用することができ、即ちアフィニティタンパク質を交換して再利用することができる。
【0347】
5.本発明の第5の態様は、本発明の第1の態様に提供される生体磁性マイクロスフェアの製造方を提供する。
【0348】
5.1.第1の態様に提供される生体磁性マイクロスフェアの製造及び原理
本発明の第1の態様に提供されるのは、ビオチン又はビオチン類似体で修飾されるビオチン磁性マイクロスフェアである。
【0349】
ビオチンが修飾される場合を例とする。
第1の態様に提供される生体磁性マイクロスフェアは、SiO2で被覆された磁気ビーズ(市販又は自製)を提供し、SiO2を活性化修飾し、ポリマーをSiO2に共有結合し(ポリマーは線状主鎖の一端によってSiO2に共有結合され、且つポリマー主鎖に沿って大量の側分岐鎖が分布される)、ビオチンをポリマーの分岐鎖末端に共有結合されるステップにより製造される。説明すべきものとして、上記ステップは完全に孤立することを要求せず、2つ又は3つのステップを1つのステップに統合することを許可し、例えば、活性化されたシリカで被覆された磁気ビーズ(市販又は自製)を直接提供することができる。SiO2を活性化修飾するステップは、例えば、本発明により提供される第5から8の態様に記載の生体磁性マイクロスフェアの製造方法のステップ(1)である。ポリマーがSiO2に共有結合するステップは、例えば本発明により提供される第5から第8の態様に記載の生体磁性マイクロスフェアの製造方法のステップ(2)、(3)である。ビオチンがポリマー分岐鎖末端に共有結合されるステップは、例えば本発明により提供される第5から第8の態様に記載の生体磁性マイクロスフェアの製造方法のステップ(4)である。
【0350】
前記生体磁性マイクロスフェアは、(1)磁性マイクロスフェア本体を提供又は製造し、前記磁性マイクロスフェア本体の外表面に反応性基R1を有するステップと、(2)前記反応性基R1の上に線状主鎖と多数の分岐鎖を有するポリマーが連結され、前記線状主鎖の一端は前記反応性基R1と共有結合されるステップと、(3)前記分岐鎖の末端にビオチン又はビオチン類似体を連結するステップにより製造することができる。
【0351】
SiO2で被覆された磁性材料を磁性マイクロスフェア本体とすることを例とし、前記生体磁性マイクロスフェアは、(1)SiO2で被覆された磁性マイクロスフェア(市販又は自製)を提供し、SiO2の活性化修飾を行って反応性基R1を生成するステップと、(2)反応性基R1で重合反応を行い(例えばアクリル酸又はアクリル酸ナトリウムをモノマー分子とする)、線状主鎖及び多数の分岐鎖を有し、且つ前記分岐鎖の末端に機能基F1を有するポリマーを生成するステップと、(3)分岐鎖末端の官能基F1にビオチン又はビオチン類似体を結合するステップとによって製造することができる。このとき、磁性マイクロスフェア本体に共有結合されたポリマーは、線状主鎖を有し、線状主鎖の一端が反応性基R1に共有結合され、且つポリマー主鎖に沿って大量の側分岐鎖が分布される。
【0352】
5.2.典型例
典型的な前記生体磁性マイクロスフェアの製造方法(
図3を参照)であって、以下のステップを含む。
【0353】
ステップ(1):磁性マイクロスフェア本体を提供し、磁性マイクロスフェア本体に対して化学修飾を行い、アミノ基を磁性マイクロスフェア本体の外表面に導入し、アミノ基修飾磁性マイクロスフェアAを形成する。
【0354】
いくつかの好ましい形態では、カップリング剤を利用して磁性マイクロスフェア本体に対して化学修飾を行う。
【0355】
いくつかの好ましい形態では、前記シランカップリング剤は、アミノ化シランカップリング剤である。
【0356】
いくつかの好ましい形態では、前記磁性マイクロスフェア本体がSiO2で被覆された磁性材料であり、シランカップリング剤を利用して磁性マイクロスフェア本体に対して化学修飾を行う。前記シランカップリング剤は、いくつかの好ましい形態ではアミノ化シランカップリング剤である。
【0357】
ステップ(2):カルボキシル基とアミノ基との間の共有結合反応を利用してアクリル酸分子を前記磁性マイクロスフェアAの外表面に共有結合し、炭素-炭素二重結合を導入し、炭素-炭素二重結合含有磁性マイクロスフェアBを形成する。
【0358】
ステップ(3):炭素-炭素二重結合の重合反応を利用し、アクリル系モノマー分子(例えばアクリル酸ナトリウム)を重合し、得られたアクリル系ポリマーは分岐鎖型ポリマーであり、線状主鎖と官能基F1を含む分岐鎖を有し、ポリマーは線状主鎖の一端によって磁性マイクロスフェアBの外表面に共有結合され、アクリル系ポリマーで修飾される磁性マイクロスフェアCを形成する。このステップは、架橋剤を加えない条件で行うことができる。
【0359】
前記アクリル系モノマー分子、ポリマー分岐鎖の官能基の定義については、「名詞及び用語」の部分を参照されたい。
【0360】
いくつかの好ましい形態では、前記官能基F1は、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、メルカプト基、ギ酸塩、アンモニウム、カルボキシル基の塩形態、アミノ基の塩形態、ギ酸エステル基、又は前記官能基の組み合わせであり、前記「官能基の組み合わせ」とは、1つの磁性マイクロスフェアの外表面の全てのポリマーの全ての分岐鎖に含まれる官能基を指し、その種類は、1種又は1種以上であってもよい。第1の形態で定義された「官能基の組み合わせ」の意味は一貫する。
【0361】
他のいくつかの好ましい形態では、前記官能基は特異的結合部位である。
【0362】
ステップ(4):前記ポリマーの分岐鎖に含まれる官能基F1により、ビオチン又はビオチン類似体をポリマーの分岐鎖末端に共有結合し、ビオチン又はビオチン類似体が結合された生体磁性マイクロスフェア(ビオチン磁性マイクロスフェア)を得る。製造された生体磁性マイクロスフェアにおいて、アクリル系ポリマー(ポリアクリル酸骨格を有する)によってビオチンを結合できる大量の部位を提供する。
【0363】
5.3.具体的な実施形態
前記ビオチン磁性マイクロスフェアを製造する具体的な実施形態は以下のとおりである。
【0364】
具体的には、アクリル系ポリマーが線状主鎖と多数の分岐鎖を提供することを例とし、本発明は以下の具体的な実施形態を提供する。シリカで被覆された四酸化三鉄磁性ビーズを生体磁性マイクロスフェアの本体とし、まずカップリング剤3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES、CAS:919-30-2、アミノ化カップリング剤であり、シランカップリング剤であり、より具体的にはアミノ化シランカップリング剤である)を利用してシリカで被覆された四酸化三鉄磁性ビーズに対して化学修飾を行い、アミノ基を磁気ビーズの外表面に導入し、SiO2に対する活性化修飾を完了し、アミノ基修飾磁性マイクロスフェアAを得る。続いてカルボキシル基とアミノ基との間の共有結合反応を利用して固定化分子(1つの炭素炭素二重結合と1つの反応性基カルボキシル基とを提供するアクリル酸分子)を磁気ビーズの外表面に共有結合し、それにより炭素-炭素二重結合を磁気ビーズの外表面に導入し、炭素-炭素二重結合を含む磁性マイクロスフェアBを得る。続いて炭素-炭素二重結合の重合反応を利用してアクリル系モノマー分子(例えばアクリル酸ナトリウム)の重合を行い、重合反応を行うと同時に重合生成物を磁気ビーズの外表面に共有結合し、SiO2にポリマーを連結する(共有結合方式)ことを完了し、アクリル系ポリマー修飾磁性マイクロスフェアCを得る。ここの固定化分子はアクリル酸分子であり、1つの固定化分子は1つのポリマー分子のみを引き出し、同時に1つのポリマー線状主鎖のみを引き出す。モノマー分子としてアクリル酸ナトリウムを例にとると、重合生成物はポリアクリル酸ナトリウムであり、その主鎖は線状のポリオレフィン主鎖であり、且つ主鎖に沿って複数の側分岐鎖COONaが共有結合され、分岐鎖に含まれる官能基もCOONaである。ここの重合反応は、N、N’-メチレンビスアクリルアミド(CAS:110-26-9)などの架橋剤を使用せず、分子鎖同士が網状重合体に架橋されることを回避し、架橋剤を加えない条件で重合生成物に線状主鎖を発生させる。分子鎖が相互に架橋して網状ポリマーになると、多孔質構造を形成し、標的タンパク質の溶出効率に影響を与える。
【0365】
いくつかの好ましい形態では、磁性マイクロスフェアBを製造する時に用いられるアクリル酸の使用量は0.002~20mol/Lである。
【0366】
いくつかの好ましい形態では、磁性マイクロスフェアCを製造する時に用いられるアクリル酸ナトリウムの使用量は0.53~12.76mol/Lである。
【0367】
前記生体磁性マイクロスフェアの外表面は、アミノ化以外の他の活性化修飾方式を採用することができる。例えば、上記アミノ化された生体磁性マイクロスフェア(アミノ基修飾磁性マイクロスフェアA)は、さらに酸無水物又は他の修飾分子と反応することができ、それにより生体磁性マイクロスフェアの外表面にカルボキシル化又は他の活性化方式の化学修飾を実現する。
【0368】
前記固定化分子は、ポリマーの主鎖を磁気ビーズの外表面に共有結合して固定した小分子である。固定化小分子は特に制限されず、その一端が磁気ビーズの外表面に共有結合され、他端が単独重合反応又は共重合反応又は重縮合反応を含む重合反応を開始することができ、又は他端がポリマーの線状主鎖末端を共重合結合することができればよい。
【0369】
前記固定化分子は、鎖の堆積及び/又は滞留率の増加を伴わない限り、1本のポリマー線状主鎖のみが引き出されてもよいし、2本以上のポリマー線状主鎖が引き出されてもよい。好ましくは、1つの固定化分子は1つのポリマー分子のみを引き出し、且つ1本のポリマー線状主鎖のみを引き出す。
【0370】
いくつかの好ましい形態では、前記固定化分子は、鎖の堆積及び/又は滞留率の増加を伴わない限り、1本のポリマー線状主鎖のみが引き出されてもよいし、2本以上のポリマー線状主鎖が引き出されてもよい。好ましくは、1つの固定化分子は1つのポリマー分子のみを引き出し、且つ1本のポリマー線状主鎖のみを引き出す。
【0371】
他のいくつかの好ましい形態では、重合のモノマー単位である前記アクリル系モノマー分子が、アクリル酸、アクリル酸塩、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸塩、メタクリル酸エステル系モノマーのいずれか又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0372】
本発明の他の実施形態として、前記アクリル系ポリマーは、他のポリマーで代替することができる。選択の基準は、形成されたポリマーは1本の線状主鎖を有し、主鎖に沿って大量の側分岐鎖を分布し、且つ側分岐鎖に機能基を携帯して後続の化学修飾に用いることができ、即ち磁気ビーズ外表面の結合部位に対して、ポリマー線状主鎖側端に分布された分岐鎖によって大量の機能基を提供することである。例えば、ε-ポリリジン鎖、α-ポリリジン鎖、γ-ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸鎖、アスパラギン酸/グルタミン酸共重合体などが挙げられる。
【0373】
上記ポリマーの他の代替形態のポリマー分子を前記生体磁性マイクロスフェアの外表面に導入する方法は下記である。ポリマー代替物の化学構造及びその側分岐鎖活性基のタイプに基づいて、適切な生体磁性マイクロスフェアの外表面の活性化修飾方式、固定化分子の種類、モノマー分子タイプを選択し、適切な化学反応を行って大量の分岐鎖に位置する活性基を生体磁性マイクロスフェアの外表面に導入する。
【0374】
アクリル系ポリマー分子(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム線状分子鎖)を磁気ビーズの外表面に共有結合した後、分岐鎖末端の官能基で活性化部位を提供し、又はビオチン又はビオチン類似体分子を連結する前に、反応の必要に応じて、ポリマー分子の分岐鎖官能基を活性化することができ、それに反応活性を備えさせ、活性化部位を形成する。3-プロパンジアミンをポリマー分岐鎖の活性部位(各モノマーアクリル系単位構造は一つの活性部位を提供することができる)に共有結合し、新たな官能基(アミノ基)を形成し、続いてカルボキシル基とアミノ基との間のアミド化共有結合反応を利用してビオチン又はビオチン類似体分子をポリマー分岐鎖末端の新たな機能基に共有結合し、ビオチン又はビオチン類似体がポリマーの分岐鎖末端に共有結合することを完成する。ビオチンを精製媒体とする例として、ビオチン修飾生体磁性マイクロスフェアDを得て、一つのビオチン分子は一つの特異的結合部位を提供することができる。ポリマー分岐鎖の官能基がCOONaであることを例とし、この場合にアクリル酸ナトリウムを用いてモノマー分子とし、1,3-プロパンジアミンと共有結合反応を行う前に、まずカルボキシル基活性化を行うことができ、従来のカルボキシル基活性化方法、例えばEDC・HClとNHSを加える方法を用いることができる。
【0375】
5.3.1.アクリル系ポリマー修飾磁性マイクロスフェアの製造
磁性マイクロスフェアAの製造:シリカで被覆された四酸化三鉄磁性マイクロスフェアの水溶液に対し、無水エタノールで磁性マイクロスフェアを洗浄し、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES、カップリング剤)のエタノール溶液を加え、反応し、洗浄し、磁性マイクロスフェアの外表面に大量のアミノ基を導入する。
【0376】
磁性マイクロスフェアBの製造:アクリル酸の水溶液に、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を加えてカルボキシル基活性化を行い、活性化後に磁性マイクロスフェアAを含む水溶液に加える。アクリル酸における活性化されたカルボキシル基と磁性マイクロスフェア外表面のアミノ基は共有結合(アミド結合)を形成し、磁性マイクロスフェアの外表面に大量の炭素-炭素二重結合を導入する。
【0377】
磁性マイクロスフェアCの製造:磁性マイクロスフェアBにアクリル系モノマー分子の水溶液を加え、開始剤を添加し、炭素-炭素二重結合の重合反応を行う。アクリル系モノマー分子における炭素-炭素二重結合と磁性マイクロスフェア表面の炭素-炭素二重結合は開結合重合を行い、アクリル系ポリマー分子は共有結合で磁性マイクロスフェアの外表面に連結され、ここで、アクリル系ポリマーはカルボキシル系官能基を含み、前記カルボキシル系官能基は、カルボキシル基、ギ酸塩、ギ酸エステルなどの形式で存在していてもよい。好ましい一形態では、ギ酸ナトリウムの形式で存在し、この場合に例えばアクリル酸ナトリウム又はメタクリル酸ナトリウムをモノマー分子とする。他の好ましい一形態では、ギ酸エステルの形式で存在し、この場合に例えばアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを用いてモノマー分子とする。ギ酸塩及びギ酸エステルはカルボキシル基によって活性化された後に比較的良好な反応活性を得ることができる。
【0378】
5.3.2.ビオチン修飾生体磁性マイクロスフェアDの製造
磁性マイクロスフェアCの溶液:1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)とN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を加えて、マイクロスフェア外表面のポリマー分子側分岐鎖のカルボキシル基系官能基をカルボキシル基活性化した後、プロピレンジアミンの水溶液を加えてカップリング反応を行い、アクリル系ポリマー分子の側分岐鎖カルボキシル基位置にプロピレンジアミンをグラフトして、ポリマー側分岐鎖の官能基をカルボキシル基からアミノ基に変換する。
【0379】
ビオチンの水溶液:1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩とN-ヒドロキシスクシンイミドとを加え、ビオチン分子におけるカルボキシル基を活性化し、続いて磁性マイクロスフェアCを含む水溶液に加え、磁性マイクロスフェアCの外表面のポリマーの側分岐鎖の新生官能基(アミノ基)の位置にビオチンを共有結合的にカップリングさせ、アクリル系ポリマーの多数の側分岐鎖にそれぞれビオチン分子が連結された生体磁性マイクロスフェアDを得る。
【0380】
5.3.3.好ましい例
いくつかの好ましい形態では、上記生体磁性マイクロスフェアDの製造方法は以下のとおりである。
【0381】
まず、0.5~1000mL(20%、v/v)のシリカで被覆された四酸化三鉄磁性マイクロスフェアの水溶液を量り取り、無水エタノールで磁性マイクロスフェアを洗浄し、10~300mLの3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES、CAS:919-30-2)のエタノール溶液(5%~50%、v/v)を上記洗浄後の磁性マイクロスフェアに加え、2~72時間反応させ、無水エタノールと蒸留水で磁性マイクロスフェアを洗浄し、アミノ基修飾磁性マイクロスフェアAを得る。
【0382】
1.0×10-4~1molのアクリル酸を取り、pH4~6の溶液Xに加え(溶液X:終濃度0.01~1mol/Lの2-モルホリノエタンスルホン酸(CAS:4432-31-9)、0.1~2mol/LのNaCl水溶液)、0.001~0.5molの1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl、CAS:25952-53-8)及び0.001~0.5molのN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS、CAS:6066-82-6)を加え、3~60min反応させる。上記溶液を0.5~50mLの磁性マイクロスフェアAが混合されたpH7.2~7.5のPBS緩衝溶液に加え、1~48時間反応し、蒸留水で磁性マイクロスフェアを洗浄し、炭素-炭素二重結合で修飾された磁性マイクロボールBを得る。
【0383】
0.5~50mLの磁性マイクロボールBを取り、0.5~200mLの5%~30%(w/v)アクリル酸ナトリウム溶液を加え、さらに10μL~20mLの2%~20%(w/v)過硫酸アンモニウム溶液及び1μL~1mLのテトラメチルエチレンジアミンを加え、3~60分間反応させた後に蒸留水で磁性マイクロスフェアを洗浄し、ポリアクリル酸ナトリウムで修飾された磁性マイクロスフェアCを得る。
【0384】
0.5~50mLの磁性マイクロスフェアCを取ってpH4~6の溶液Xに移行し、0.001~0.5molの1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)と0.001~0.5molのN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を加え、3~60min反応させる。続いて0.0001~1molの1,3-プロパンジアミンを溶解したpH7.2~7.5のPBS緩衝溶液を加え、1~48時間反応させる。蒸留水で洗浄した後にPBS緩衝溶液を加え、磁性マイクロスフェアCにおけるポリマー側分岐鎖のCOONaをアミノ官能基に変換し、溶液Xに1.0×10-6~3.0×10-4molのビオチンを秤取し、2.0×10-6~1.5×10-3molの1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩と2.0×10-6~1.5×10-3molのN-ヒドロキシスクシンイミドを加え、3~60min反応させる。続いて上記洗浄後の磁性マイクロスフェア溶液に加え、1~48時間反応させ、蒸留水で洗浄した後にビオチン修飾磁性マイクロスフェアDを得る。
【0385】
5.4.本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様に提供される生体磁性マイクロスフェアをアビジン又はアビジン類似体と反応して得られる生体磁性マイクロスフェアを提供する。
【0386】
6.本発明の第6の態様は、本発明の第2の態様に提供される生体磁性マイクロスフェアの製造方法を提供し、この方法は、(i)請求項1に記載の生体磁性マイクロスフェアを提供するステップであって、第5の態様のステップ(1)から(4)で製造することができるステップと、(ii)精製媒体を前記生体磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端のビオチン又はビオチン類似体に連結するステップと、を含む。
【0387】
いくつかの好ましい形態では、前記生体磁性マイクロスフェアは、下記のステップによって製造される。ステップ(1)から(4)は、第5の態様と同じであり、ステップ(5)は、精製媒体を前記生体磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端のビオチンに連結する。
【0388】
7.本発明の第7の態様は、本発明の第2の態様に提供される生体磁性マイクロスフェアの製造方法を提供し、この方法は、(i)請求項1に記載の生体磁性マイクロスフェアを提供するステップであって、第5の態様のステップ(1)から(4)で製造することができるステップと、(ii)アビジン又はアビジン類似体と精製媒体との共有結合複合体を精製媒体提供用の原料として、それをポリマーの分岐鎖末端に結合し、前記ビオチン又はビオチン類似体と前記アビジン又はアビジン類似体との間にアフィニティ複合体の結合作用を形成し、精製媒体付き生体磁性マイクロスフェアを得るステップと、を含む。
【0389】
独立して任意に、(6)磁石で生体磁性マイクロスフェアを沈降し、液相を除去し、洗浄するステップを含み、
独立して任意に、前記精製媒体の交換を含み、適当な条件で前記アビジン又はアビジン類似体と精製媒体との共有結合複合体を溶出することによって実現することができる。
【0390】
いくつかの好ましい形態では、前記生体磁性マイクロスフェアは、下記の5つのステップによって製造される。ステップ(1)~(4)は、第5の形態と同じであり、ステップ(5)は、上記のステップ(ii)と同じである。
【0391】
8.本発明の第8の態様は、本発明の第4の態様に提供される生体磁性マイクロスフェアの製造方法を提供する。
【0392】
本発明の第4の態様は、アフィニティタンパク質磁性マイクロスフェアを提供する。
【0393】
本発明の第4の態様に提供される生体磁性マイクロスフェアは、第1の態様に提供される生体磁性マイクロスフェアを原料とし、さらにアビジン又はその類似体とアフィニティタンパク質との共有結合複合体を結合して得られ、ビオチン又はその類似体とアビジン又はその類似体との間のアフィニティ複合体作用により、アフィニティ複合体を前記生体磁性マイクロスフェアのポリマー分岐鎖に担持する。
【0394】
好ましい一形態では、本発明の第4の態様に提供される生体磁性マイクロスフェアは、本発明の第1の態様に提供される生体磁性マイクロスフェアを原料とし、さらにアビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体Eを結合して得られる。
【0395】
アビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体E:アビジン-アフィニティタンパク質複合体Eとも呼ばれ、共有結合の方式で連結された複合体であり、一端がアビジン又はその類似体、他端がアフィニティタンパク質であり、両者は共有結合で直接連結され、又は共有結合連結要素で間接的に連結される。前記共有結合連結基は、共有結合、連結ペプチドなどを含む。アビジン-アフィニティタンパク質複合体Eとして、例えば、ストレプトアビジンを有するアフィニティタンパク質が挙げられ、ここで、アフィニティタンパク質としては、プロテインA、プロテインG及び/又はプロテインLなどが挙げられるがこれらに限定されない。アビジン-アフィニティタンパク質複合体Eとしては、さらに、ストレプトアビジン-プロテインA複合体、ストレプトアビジン-プロテインAの融合タンパク質、ストレプトアビジン-増強型緑色蛍光タンパク質-プロテインAの融合タンパク質(Protein A-eGFP-Streptavidin)、Protein A-eGFP-Tamavidin2、Protein A-eGFP-Tamavidin1などが挙げられ、ここで、eGFPは広義にeGFPの変異体を含み、Streptavidinはストレプトアビジンであり、Tamavidin1とTamavidin2はいずれもアビジン類似体である。
【0396】
アビジンはビオチンと特異的に結合し、アフィニティ複合体を形成する。上記アビジンとビオチンとのアフィニティ複合体の結合作用は他のアフィニティ複合体の結合作用で代替することができ、同様にアフィニティタンパク質を交換した後に再利用する効果を実現することができる。ただし、アビジンとビオチンが提供するアフィニティ複合体作用はより好ましい。これは両者の間の特異性が高く、親和力が強く、且つビオチンはアビジンとの結合ドメインに加え、さらに結合可能なカルボキシル基を1つ増加し、またアビジンはアフィニティタンパク質と融合タンパク質に製造しやすいためである。
【0397】
アフィニティ複合体の選択基準:特異性が優れ、親和力が強く、さらに化学的に結合可能な部位を1つ提供し、それによってポリマー分岐鎖末端に共有結合することができ、又は化学修飾された後にポリマーの分岐鎖末端に共有結合することができる。
【0398】
8.1.製造過程
いくつかの実施形態において、上記第5の態様に製造された生体磁性マイクロスフェア(ビオチン磁性マイクロスフェア)に基づいて以下のステップ(5)を行い、アフィニティタンパク質を精製媒体とする磁性マイクロスフェアシステムを得る。
【0399】
ステップ(5):アビジン又はアビジン類似体とアフィニティタンパク質との共有結合複合体(例えばアビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体E)を結合する。ビオチン又はその類似体とアビジン又はその類似体との間の特異的結合作用により、前記共有結合複合体(例えばアビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体E)をポリマーの分岐鎖末端に結合し、ビオチン又はその類似体とアビジン又はその類似体との間にアフィニティ複合体の結合作用を形成し、アフィニティタンパク質磁性マイクロスフェアを得る。
【0400】
例えば、アビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体E(例えば、ストレプトアビジン付きアフィニティタンパク質であり、ここで、アフィニティタンパク質はプロテインA、プロテインG又は/及びプロテインLなどから選択されるがこれらに限定されない)を、ビオチン修飾生体磁性マイクロスフェアDの系に添加し、ビオチンとアビジン(例えばストレプトアビジン)との間の極めて強い特異性親和力を利用し、アフィニティタンパク質を磁気ビーズ外表面のポリマー分岐鎖末端に非共有結合し、抗体系物質の分離精製に使用可能なアフィニティタンパク質修飾磁気ビーズを得て、アフィニティタンパク質を精製媒体とし、標的タンパク質を捕捉するための結合部位を提供する。
【0401】
8.2.製造過程の例
本発明の第4の態様に提供される生体磁性マイクロスフェアは、ビオチン-アビジン-アフィニティタンパク質の方式で前記ポリマーの分岐鎖末端に連結されることを例とし、以下のステップにより製造することができる。
【0402】
(1)磁性マイクロスフェア本体に対して化学修飾を行い、アミノ基を磁性マイクロスフェア本体の外表面に導入し、アミノ基修飾磁性マイクロスフェアAを形成し、前記磁性マイクロスフェア本体がSiO2で被覆された磁性材料である場合、前記カップリング剤は、好ましくはアミノ化シランカップリング剤である。
【0403】
好ましい一形態では、カップリング剤を利用して磁性マイクロスフェア本体に対して化学修飾を行う。
【0404】
前記磁性マイクロスフェア本体がSiO2で被覆された磁性材料である場合、シランカップリング剤を利用して磁性マイクロスフェア本体に対して化学修飾を行うことができる。このとき、前記シランカップリング剤は、好ましくはアミノ化シランカップリング剤である。
【0405】
(2)カルボキシル基とアミノ基との間の共有結合反応を利用してアクリル酸分子を前記磁性マイクロスフェアAの外表面に共有結合し、炭素-炭素二重結合を導入し、炭素-炭素二重結合含有磁性微小球Bを形成する。
【0406】
(3)架橋剤を加えない条件で、炭素-炭素二重結合の重合反応を利用し、アクリル系モノマー分子(例えばアクリル酸ナトリウム)を重合し、得られたアクリル系ポリマー鎖は線状主鎖と官能基を含む分岐鎖とを有し、ポリマーは線状主鎖の一端によって磁性マイクロスフェアBの外表面に共有結合され、アクリル系ポリマー修飾磁性マイクロスフェアCを形成する。
【0407】
前記官能基の好ましい一実施形態は特異的結合部位である。
【0408】
前記官能基の他の好ましい態様は、上記第1の態様と一致する。
【0409】
(4)前記ポリマーの分岐鎖に含まれる官能基により、ビオチンを共有結合し、ビオチン修飾生体磁性マイクロスフェアDを得る。
【0410】
(5)ビオチンとアビジンとの特異的結合作用によって、アビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体Eをポリマーの分岐鎖末端に結合し、ビオチンとアビジンとの間にアフィニティ複合体の結合作用を形成し、アフィニティタンパク質で修飾された生体磁性マイクロスフェアを得る(生体磁性マイクロスフェア)。
【0411】
独立して任意に、(6)磁石でアフィニティタンパク質磁性マイクロスフェアを沈降し、液相を除去し、洗浄するステップを含む。
【0412】
さらに独立して任意に、(7)前記アビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体Eを交換し、適切な条件で前記アビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体Eを溶出することによって実現することができるステップを含む。
【0413】
8.3.生体磁性マイクロスフェア:アビジン-プロテインAが結合された生体磁性マイクロスフェアFの製造
(アフィニティタンパク質が結合された生体磁性マイクロスフェアF、プロテインAで修飾された生体磁性マイクロスフェアF、プロテインAで修飾された磁性マイクロスフェア)
【0414】
アビジン-プロテインA結合複合体E(例えば、Protein A-eGFP-Streptavidin、Protein A-eGFP-Tamvavidin2)の融合タンパク質溶液に、ビオチン修飾生体磁性マイクロスフェアDを加え、混合してインキュベートする。アビジン(例えばStreptavidin又はTamvavidin2)とビオチンとの特異的に結合により、Protein Aを生体磁性マイクロスフェアDの外表面のポリマー分岐鎖の末端基に固定し、アビジン-プロテインAが結合された生体磁性マイクロスフェアFを得る。得られた生体磁性マイクロスフェアF構造において、アクリル酸重合体の側分岐鎖はビオチン-アビジン-プロテインAのアフィニティ複合体構造を含み、生体素端により共有結合的にポリマーの線状主鎖分岐点に連結され、ビオチンとアビジンとの間にアフィニティ複合体の非共有結合の強い特異性結合作用を形成し、アビジンとプロテインAとの間は共有結合で連結され、アビジンとプロテインAとの間に蛍光ラベルを挿入することができ、さらに他の連結ペプチドを挿入することができる。
【0415】
ここで、アビジン-プロテインAの融合タンパク質、例えばProtein A-eGFP-Streptavidin融合タンパク質とProtein A-eGFP-Tamvavidin2融合タンパク質は、いずれもIVTT反応により生体外無細胞タンパク質合成を行って得ることができる。この時、前記生体磁性マイクロスフェアDはIVTT反応後に得られた上清と混合し、生体磁性マイクロスフェアDの外表面のビオチンと溶液中のアビジン融合タンパク質との間の特異性結合作用により、アフィニティープロテインAの結合を実現する。
【0416】
8.4.前記生体磁性マイクロスフェアの外表面のアフィニティタンパク質結合量は以下の方法により確定することができる(蛍光タンパク質eGFP標識を例とする)。
【0417】
まず、アフィニティタンパク質の溶液と磁気ビーズとの結合反応が終了した後、アフィニティタンパク質が結合した生体磁性マイクロスフェアを磁石で吸着し、沈降させる。その後、液相を分離収集し、フロースルーと記す。この場合、液相中のアフィニティタンパク質濃度が減少する。生体磁性マイクロスフェアに結合する前後のIVTT反応で得られた上清における蛍光タンパク質eGFP蛍光値の変化値を測定することにより、生体磁性マイクロスフェアに結合された蛍光タンパク質eGFPの蛍光強度を算出し、アフィニティタンパク質濃度を換算して得る。フロースルー中のアフィニティタンパク質濃度が、生体磁性マイクロスフェアとのインキュベートの前のIVTT溶液中のアフィニティタンパク質濃度と比べて、基本的に変化しない場合は、生体磁性マイクロスフェアのアフィニティタンパク質に対する吸着が飽和傾向にあり、対応する蛍光タンパク質eGFPの蛍光値が顕著に変化しないことを意味する。eGFPタンパク質の純品を採用し、蛍光値とeGFPタンパク質濃度の標準曲線を確立し、それにより生体磁性マイクロスフェアに結合されたアビジン-アフィニティタンパク質(例えば:ストレプトアビジン-プロテインA)の含有量、濃度を測定した。
【0418】
プロテインAで修飾された生体磁性マイクロスフェアを用いて抗体の分離精製を行う時に、以下の方法により抗体結合量を算出することができる(ウシ血清抗体を例とする)。プロテインAで修飾された磁気ビーズをウシ血清抗体の溶液(例えば生体外タンパク質合成系を用いて抗体を発現して取得し又は市販して取得する)とインキュベートし、反応が終了した後、溶出緩衝液を用いてウシ血清抗体を磁気ビーズから溶出し、分離して得られたウシ血清抗体は溶出液に存在する。Bradford法を用いて溶出液中のウシ血清アルブミンの濃度を測定する。同時にBSAを標準タンパク質として、マイクロプレートリーダーテストを行い、標準タンパク質を参照として、精製抗体のタンパク質濃度を算出することができ、さらに分離精製の収量、収率を算出する。
【0419】
8.5.生体磁性マイクロスフェアの再生:精製媒体の交換(アフィニティタンパク質をプロテインAとする例)
プロテインAの溶出と交換:アビジンを溶出すると同時にプロテインAの同期脱離を実現し、したがって、アビジン-プロテインAの交換でもある。
【0420】
例えば、プロテインAで修飾された生体磁性マイクロスフェアFに変性緩衝液(尿素及びドデシル硫酸ナトリウムを含む)を加え、95℃の金属浴でインキュベートし、生体磁性マイクロスフェアDにおけるビオチンと結合するアビジン-プロテインAの融合タンパク質(例えば、SPA-eGFP-Tamvavidin2)を溶出し、再生された生体磁性マイクロスフェアD(ポリマー分岐鎖末端のビオチンの結合部位を放出する)を取得し、続いて再生された生体磁性マイクロスフェアDに新鮮なアビジン-プロテインAの融合タンパク質を含有する溶液(例えばSPA-eGFP-Tamvavidin2のIVTT反応後の上清)を添加し、放出された生体磁性マイクロスフェアDのビオチン結合部位に新たなアビジン-プロテインA(例えば、SPA-eGFP-Tamvavidin2)を再結合させ、ビオチンとアビジン(例えばTamvavidin2)との間に非共有結合の特異的結合作用を新たに形成し、それによりプロテインAの交換を実現し、再生された生体磁性マイクロスフェアFを得る。
【0421】
9.磁性マイクロスフェアの位置制御
本発明の第1から第4の態様に記載の生体磁性マイクロスフェア(生体磁性マイクロスフェアD及び生体磁性マイクロスフェアFを含むがそれらに限定されない)を得た後、磁石を利用して磁性マイクロスフェアを沈降し、液相を除去し、吸着された雑タンパク質又は/及び他の不純物を洗浄して除去することができる。
【0422】
磁性マイクロスフェアのサイズ及びポリマーの化学パラメータと構造パラメータを制御することにより、前記磁性マイクロスフェアは液相に安定的に懸濁することができ、2日又はさらにより長い時間内に沈降しない。また、攪拌を続けない条件で、液状系に安定に懸濁することができる。磁性マイクロスフェアは数ミクロンひいては1ミクロン以下のナノサイズに制御することができる一方、磁性マイクロスフェア外表面のポリマーのグラフト密度を調整することができ、さらにポリマー自体の親水性、構造タイプ、流体力学半径、鎖長さ、分岐鎖数、分岐鎖長さなどの特徴を調整することができ、それにより磁性マイクロスフェアシステムが系における懸濁性能をよりよく制御し、磁性マイクロスフェアシステムと生体外タンパク質合成反応混合系との十分な接触を実現する。一つの好ましい前記磁性マイクロスフェアのサイズは約1マイクロメートルである。
【0423】
10.本発明の第9の態様は、本発明の第1から第4の態様に記載の生体磁性マイクロスフェアのタンパク質系物質の分離精製における使用を提供する。
【0424】
好ましい一形態では、前記生体磁性マイクロスフェアの抗体系物質の分離精製における使用である。
【0425】
前記抗体系物質の定義は用語部分を参照する。
【0426】
本発明は、特に前記生体磁性マイクロスフェアの抗体、抗体断片、抗体融合タンパク質、抗体断片融合タンパク質の分離精製における使用を提供する。
【0427】
前記精製媒体は、アフィニティ複合体を含む連結要素によって前記ポリマーの分岐鎖末端に連結される場合、前記使用はさらに生体磁性マイクロスフェアの再生使用を含み、即ち精製媒体の交換後再利用を含む。
【0428】
11.本発明の第10の態様は、本発明の第2の態様又は第4の態様に記載の生体磁性マイクロスフェアの抗体系物質の分離精製における使用、特に抗体、抗体断片、抗体融合タンパク質、抗体断片融合タンパク質の分離精製における使用を提供する。
【0429】
前記精製媒体はアフィニティタンパク質である。
【0430】
好ましくは、前記アフィニティタンパク質は、ビオチン-アビジン-アフィニティタンパク質の方式でポリマーの分岐鎖に連結する。
【0431】
前記アフィニティタンパク質は、アフィニティ複合体を含む連結要素によって前記ポリマーの分岐鎖末端に連結される場合(例えば、第4の態様に記載の生体磁性マイクロスフェア)、前記使用はさらに生体磁性マイクロスフェアの再生使用を含み、即ちアフィニティタンパク質の交換後再利用を含む。
【0432】
この使用の生体磁性マイクロスフェアにおいて、アフィニティタンパク質とポリマーの線状主鎖との間の分岐鎖骨格にアフィニティ複合体の結合作用が存在し、この時に任意にアフィニティタンパク質の交換を行った後に再利用することができ、前記生体磁性マイクロスフェアは再生して使用することができる。好ましくは、アフィニティタンパク質とポリマーの線状主鎖との間の分岐鎖骨格にビオチン-アビジンのアフィニティ複合体結合作用が存在し、即ちアフィニティタンパク質はビオチン-アビジン-アフィニティタンパク質の方式でポリマー分岐鎖に連結され、この時に生体磁性マイクロスフェアはアビジン-アビジンの溶出によって交換することもできる。
【0433】
12.本発明の第11の態様は、生体磁性マイクロスフェアを提供する。前記磁性マイクロスフェア本体の外表面には、線状主鎖及び分岐鎖を有するポリマーを少なくとも1種有し、前記線状主鎖の一端が磁性マイクロスフェア本体の外表面に固定され、ポリマーの他端は磁性マイクロスフェア本体の外表面から遊離し、前記磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端には、精製媒体が連結されており、前記精製媒体は、アビジン型タグ、ポリペプチド型タグ、タンパク質型タグ、抗体型タグ、抗原型タグ、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0434】
好ましい一形態では、前記アビジン型タグは、アビジン、ビオチンと結合可能なアビジン類似体、ビオチン類似体と結合可能なアビジン類似体、又はそれらの組み合わせである。
【0435】
好ましい一形態では、前記アビジンは、ストレプトアビジン、変性ストレプトアビジン、ストレプトアビジン類似体、又はそれらの組み合わせである。
【0436】
好ましい一形態では、前記ポリペプチド型タグは、CBPタグ、ヒスチジンタグ、C-Mycタグ、FLAGタグ、Spotタグ、Cタグ、Aviタグ、Stregタグ、WRHPQFGG配列を含むタグ、WRHPQFGGの変体配列を含むタグ、RKAAVSHW配列を含むタグ、RKAAVSHWの変体配列を含むタグ、又はそれらの組み合わせから選択されるいずれかのタグ又はその変体であり、前記Stregタグは、WSHPQFEK及びその変体を含む。
【0437】
好ましい一形態では、前記タンパク質型タグは、アフィニティタンパク質、SUMOタグ、GSTタグ、MBPタグ、及びそれらの組み合わせから選択されるいずれかのタグ及びその変体である。
【0438】
好ましい一形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の外表面には、線状主鎖及び分岐鎖を有するポリマーを少なくとも1種有し、前記線状主鎖の一端が磁性マイクロスフェア本体の外表面に共有結合的に固定され、ポリマーの他端は磁性マイクロスフェア本体の外表面から遊離し、前記磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端には、アフィニティタンパク質が連結されている。
【0439】
好ましくは、さらに、前記アフィニティタンパク質とポリマーの線状主鎖との間の分岐鎖骨格にアフィニティ複合体の結合作用が存在する。
【0440】
より好ましくは、前記アフィニティタンパク質は、プロテインA、プロテインG、プロテインL、変性プロテインA、変性プロテインG、変性プロテインL、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0441】
下記実施例2~6の生体外無細胞タンパク質合成方法に用いられる生体外タンパク質合成系(IVTT系)は、9.78mMのpH8.0トリスヒドロキシメチルアミノメタン塩酸(Tris-HCl)、80mMの酢酸カリウム、5mMの酢酸マグネシウム、1.8mMのヌクレオシド三リン酸混合物(アデニンヌクレオシド三リン酸、グアニンヌクレオシド三リン酸、シトシンヌクレオシド三リン酸及びウラシルヌクレオシド三リン酸であり、それぞれのヌクレオシド三リン酸の濃度は1.8mMである)、0.7mMのアミノ酸混合物(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、セリン、チロシン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン及びヒスチジンであり、各アミノ酸濃度は0.1mMである)、15mMのグルコース、320mMのマルトデキストリン(グルコース単位計算でモル濃度は約52mg/mLである)、24mMのリン酸三カリウム、2%(w/v)のポリエチレングリコール8000の成分(いずれも最終濃度)を含み、最後に50体積%の細胞抽出物(具体的には酵母細胞抽出物、より具体的にはクルイベロミセス・ラクチス細胞抽出物)を添加する。
【0442】
ここで、前記クルイベロミセス・ラクチス抽出物に内因性発現のT7 RNAポリメラーゼが含まれる。前記クルイベロミセス・ラクチス抽出物は以下の方式で改造される。クルイベロミセス・ラクチス株ATCC8585に基づく改造菌株を採用し、CN109423496Aに記載の方法によって、T7 RNAポリメラーゼをコードする遺伝子をクルイベロミセス・ラクチスのゲノムに統合し、改造菌株を取得し、それにT7 RNAポリメラーゼを内在性で発現させ、改変菌株で細胞原料を培養し、続いて細胞抽出物を製造する。クルイベロミセス・ラクチス細胞抽出物の製造過程は従来技術手段を採用し、CN109593656A記載の方法を参照して製造する。製造ステップは概略的に言えば、以下を含む。発酵培養されたクルイベロミセス・ラクチス細胞の適量の原料を提供し、液体窒素で細胞を急速冷凍し、細胞を破砕し、遠心して上清を収集し、細胞抽出物を得ることができる。得られたクルイベロミセス・ラクチス細胞抽出物中の蛋白濃度は20~40mg/mLである。
【0443】
IVTT反応:上記生体外タンパク質合成系に15ng/μLのDNAテンプレート(コードされたタンパク質に蛍光標識が含まれる)を加え、生体外タンパク質合成反応を行い、均一に混合した後に25~30℃環境に置いて反応し、反応時間は6~18hである。前記DNAテンプレートによってコードされたタンパク質を合成し、前記タンパク質を含むIVTT反応液を得る。紫外吸収法を用いてRFU値を測定し、その濃度とRFU値の標準曲線を結合し、前記タンパク質の含有量を算出することができる。
【0444】
実施例1 バイオ磁性マイクロスフェアの製造(ビオチンに結合)
シリカで被覆された磁性マイクロスフェアの製造(磁性マイクロスフェア本体、磁気ビーズ、ガラスビーズとも呼ばれる)
20gのFe3O4マイクロスフェアを310mLのエタノールと125mLのとの混合溶媒に入れ、45mLの28%(wt)アンモニア水を加え、22.5mLのオルトケイ酸エチルを滴下し、室温で24h撹拌して反応させ、反応後にエタノールと水で洗浄した。異なる粒径(約1μm、10μm、100μm)の四酸化三鉄マイクロスフェアを原料として、得られたガラスビーズの粒径サイズを制御した。前記異なる粒径の四酸化三鉄マイクロスフェアは従来の技術的手段によって製造することができる。
【0445】
得られた磁性マイクロスフェアは、精製媒体や連結要素-精製媒体を修飾するための基材として用いられるため、磁性マイクロスフェア本体とも呼ばれる。
【0446】
得られた磁性マイクロスフェアは、磁性コアを有し、磁力作用によって位置制御を行うことができ、移動、分散、沈降などの操作を実現し、従って広義の磁気ビーズである。
【0447】
得られた磁性マイクロスフェアは、シリカの被覆層を有するため、ガラスビーズとも呼ばれ、磁性コアがポリマー、精製媒体、生体外タンパク質合成系の各成分、核酸テンプレート、タンパク質発現産物などの成分又は画分に対する吸着を低減することができる。
【0448】
数回の実験結果から見ると、磁性マイクロスフェアの粒径は約1μmである時、懸濁しやすい性、懸濁の持続性、及びタンパク質に対する結合効率はいずれも最も高いことがわかった。IVTT反応液を用いて標的タンパク質の混合系を提供し、標的タンパク質に対する結合効率は、磁性マイクロスフェアの粒径が約1μmである場合、粒径10μmに比べて50%以上を高めることができ、粒径10μmに比べて80%以上を高めることができる。
【0449】
シリカで被覆された磁性マイクロスフェアで以下のステップによりビオチン磁気ビーズを製造した。
【0450】
まず、50mLのシリカで被覆された四酸化三鉄磁性マイクロスフェア(磁性マイクロスフェアの粒径は約1μmである)の水溶液を量り取り、その固形分は20%(v/v)であり、磁石で磁性マイクロスフェアを沈降させ、液相を除去し、毎回60mLの無水エタノールで磁性マイクロスフェアを洗浄し、合計5回洗浄した。100mLの過剰の3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES、CAS:919-30-2)のエタノール溶液(25%、v/v)を上記洗浄後の磁性マイクロスフェアに加え、50℃の水浴で48時間機械的に撹拌し、その後70℃の水浴で2時間機械的に撹拌し、磁石で磁性マイクロスフェアを沈降させ、液相を除去し、毎回60mLの無水エタノールで磁性マイクロスフェアを洗浄し、合計2回洗浄し、続いて毎回60mLの蒸留水で磁性マイクロスフェアを洗浄し、洗浄を3回繰り返し、磁性マイクロスフェアAを得た。
【0451】
次に、0.01molのアクリル酸を採取して100mLの溶液X(溶液X:終濃度が0.1mol/Lの2-モルホリノエタンスルホン酸(CAS:4432-31-9)、0.5mol/LのNaCl水溶液)に加え、0.04molの1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(CAS:25952-53-8)と0.04molのN-ヒドロキシスクシンイミド(CAS:6066-82-6)を加え、室温で撹拌して均一に混合し、撹拌して15min反応させ、NaHCO3固体粉末で溶液のpHを7.2に調整し、pH調整後の上記溶液を10mLの磁性マイクロスフェアAが添加された100mLのPBS緩衝溶液に加え、30℃の水浴で20時間機械的に撹拌し、磁石で磁性マイクロスフェアを沈降させ、液相を除去し、毎回60mLの蒸留水で磁性マイクロスフェアを洗浄し、洗浄を6回繰り返し、磁性マイクロスフェアBを得た。
【0452】
第三、1mLの磁性マイクロスフェアBを取り、12mLの15%(w/v)のアクリル酸ナトリウム溶液を加え、450μLの10%の過硫酸アンモニウム溶液と45μLのテトラメチルエチレンジアミンを加え、室温で30分間反応させ、磁石で磁性マイクロスフェアを沈降させ、液相を除去し、毎回10mLの蒸留水で磁性マイクロスフェアを洗浄し、合計6回洗浄し、磁性マイクロスフェアC(アクリル系ポリマーで修飾された磁性マイクロスフェアC)を得た。
【0453】
第四、合成された磁性マイクロスフェアCを10mLの溶液Xに移し、0.004molの1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩と0.004molのN-ヒドロキシスクシンイミドを加え、室温で撹拌して均一に混合し、撹拌して15min反応させ、磁石で生体磁性マイクロスフェアを沈降し、液相を除去し、毎回10mLの蒸留水で3回洗浄し、4.0×10-4molの1,3-プロパンジアミンを10mLのPBS緩衝溶液に溶解し、洗浄した磁性マイクロスフェアに添加し、30℃の水浴で20時間機械的に撹拌し、磁石で磁性マイクロスフェアを沈降し、液相を除去し、毎回10mLの蒸留水で6回洗浄し、10mLのPBS緩衝溶液を添加し、2.5×10-4molのビオチンを秤量し、10mLの溶液Xを加え、さらに1.0×10-3molの1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩と0.001molのN-ヒドロキシスクシンイミドを加え、室温で均一に撹拌し、撹拌して15min反応させ、NaHCO3固体粉末で溶液のpHを7.2に調整し、上記洗浄した10mLのPBS緩衝溶液を含む磁性マイクロスフェアに加え、30℃の水浴で20時間機械的に撹拌し、磁石で磁性マイクロスフェアを沈降させ、液相を除去し、毎回10mLの蒸留水で10回洗浄し、ビオチン修飾生体磁性マイクロスフェアルDを得た。
【0454】
実施例2 アビジン-プロテインAと結合する生体磁性マイクロスフェアF(アフィニティタンパク質と結合する生体磁性マイクロスフェアF)の製造(プロテインAを精製媒体とし、ビオチン-アビジンのアフィニティ複合体を連結要素とする)
【0455】
2.1 Protein A-eGFP-アビジン融合タンパク質の合成
融合タンパク質Protein A-eGFP-Streptavidin及びProtein A-eGFP-Tamvavidin2の三段遺伝子で構成されたDNA配列をそれぞれ構築した。
【0456】
ここで、Protein A(プロテインA)は、配列がStaphylococcus Aureusから由来し、SPAと略称される。SPAのアミノ酸配列は全長が516アミノ酸残基であり、その37~327位のアミノ酸を選択して融合タンパク質構築に用いられる遺伝子配列とし、即ちSPAの抗体結合ドメインである。当該配列を最適化プログラムで最適化した後、ヌクレオチド配列を得て、SEQ ID NO.:1に示す。
【0457】
Tamvavidin2は、アビジン類似体であり、ビオチンに結合する能力を持つタンパク質である。Yamamotoらは、2009年に、それはストレプトアビジンと類似する非常に強いビオチン親和力を持ち、また熱安定性がストレプトアビジンより優れていることを見出した(2009_FEBS_Yamanomo T_Tamavidins--novel avidin-like biotin-binding proteins from the Tamogitake mushroom、翻訳:Tamogitake由来の新規アビジン様ビオチン結合タンパク質)。
【0458】
Tamavidin2のアミノ酸配列は関連データベースから検索することができ、例えばUniProt B9A0T7であり、それが合計141個のアミノ酸残基を含み、コドン変換、最適化プログラムによる最適化でDNA配列を得て、最適化後のヌクレオチド配列は例えばSEQ ID NO.:2に示す。
【0459】
また、本実施例に係る増強型蛍光タンパク質eGFPのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO.:3に示され、eGFPのA206K変異体であり、mEGFPとも呼ばれる。
組換えPCR法を採用してProtein A-eGFP-Streptavidin及びProtein A-eGFP-Tamvavidin2の2つの融合タンパク質のDNAテンプレートをそれぞれ構築した。続いて生体外無細胞タンパク質合成方法を採用して2つの融合タンパク質Protein A-eGFP-Streptavidin及びProtein A-eGFP-Tamvavidin2をそれぞれ得た。既に開示された生体外無細胞タンパク質合成方法を採用し、特許文献CN201610868691.6、WO2018161374A1、KR20190108180A、CN108535489Bなどを参照した。SPA-eGFP-Streptavidin、SPA-eGFP-Tamavidin2をそれぞれIVTT系で表現した。一般的には、IVTT系に細胞抽出物(ゲノム統合表現のRNAポリメラーゼを含む)、DNAテンプレート、エネルギー系(例えば、ホスホクレアチン-ホスホクレアチンキナーゼ系)、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン、ポリエチレングリコールなどの成分を加え、28~30℃で反応を行った。8~12時間後に反応を終了した。得られたIVTT反応液には、DNAテンプレートに対応するProtein A-eGFP-アビジン融合タンパク質が含まれた。
Protein A-eGFP-Streptavidin及びProtein A-eGFP-Tamvavidin2のIVTT反応液をそれぞれ得た。
【0460】
SPA-eGFP-Streptavidin(
図4の「1」に対応)、SPA-eGFP-Tamavidin2(
図4の「2」に対応)をそれぞれIVTT系で表現し、合成されたタンパク質のRFU値を測定し、その結果を
図4の「total」に示す。
【0461】
Protein A-eGFP-Streptavidin及びProtein A-eGFP-Tamavidin2のIVTT反応液を4000rpm、4°Cで10分間遠心分離し、上清を保留した。IVTT上清と表記する。
【0462】
2.2 プロテインAに結合した生体磁性マイクロスフェアFの製造
得られた2つの融合タンパク質Protein A-eGFP-Streptavidin及びProtein A-eGFP-TamavidinのIVTT上清を、それぞれ実施例1で得られた生体磁性マイクロスフェアDとともに1時間インキュベートし、上記の方法に基づいて生体磁性マイクロスフェアFにおける融合タンパク質の含有量をそれぞれ測定し、2つの融合タンパク質の結合能力の強弱を比較した。結果は
図4「supernatant」に示す。
【0463】
30μLの10%(v/v)生体磁性マイクロスフェアDの懸濁液をピペットで取り、結合/洗浄緩衝液(10mMのNa2HPO4、pH 7.4、2mMのKH2PO4、140mMのNaCl、2.6mMのKCl)で3回洗浄した。
【0464】
2mLのアビジン-プロテインA融合タンパク質を含有するIVTT上清を取り、上記生体磁性マイクロスフェアDと4℃の条件で1時間回転インキュベートし、結合されていない清液を収集し、即ちフロースルーであり、このステップを3回繰り返し、3回の異なるフロースルーを得た。即ち同一ロットの生体磁性マイクロスフェアDは連続的にアビジン-プロテインAと3回インキュベートした。毎回2mLのステップ2.1に記載のIVTT上清を用い、対応する毎回取得したフロースルーは順序に応じて番号1、2、3と記した。蛍光光度法を採用してIVTT上清と前記3回フロースルーのeGFP蛍光値を検出し、結果は
図5に示すように、励起波長(Ex)は488nmであり、発光波長(Em)は507nmである。3回のフロースルーのRFU値がIVTT上清のRFU値に近くことは、生体磁性マイクロスフェアDがアビジン-アフィニティープロテインAに対する結合が飽和傾向にあると説明し、対応するRFU値は以下の表1に示す。
【0465】
【0466】
生体磁性マイクロスフェアDに結合したSPA-eGFP-Streptavidin、SPA-eGFP-Tamvavidin2のRFU値をそれぞれ以下の表2と3に示す。ここで、Streptavidinに対して、1回目の結合は既に生体磁性マイクロスフェアDのプロテインA結合量を飽和させる。Tamvavidin2に対して、2回目の結合後、生体磁性マイクロスフェアDのプロテインA結合量はほぼ飽和に達する。1回目の結合量は、上清中のタンパク質量から、フロースルー1中のタンパク質量を差し引いて算出し、2回目の結合量は、上清中のタンパク質量から、フロースルー2中のタンパク質量を差し引いて算出し、3回目の結合量は、上清中のタンパク質量から、フロースルー3中のタンパク質量を差し引いて算出し、下記表2、表3に示す。ここで、結合力はProtein A融合タンパク質/生体磁性マイクロスフェアDを指し、質量と体積の比率で、単位(mg/mL)である。
【0467】
【0468】
【0469】
蛍光値とタンパク質の質量濃度の標準曲線に基づいて毎回結合のタンパク質濃度を算出し、インキュベーション体積(2mL)に基づいて毎回結合の総タンパク質量を算出する。
精製されたeGFPから作成した標準曲線に基づいて、推定されたeGFPのRFU値がタンパク質量濃度に換算する式は以下のとおりである。
【0470】
【0471】
式中、Xはタンパク質の質量濃度(μg/mL)であり、YはRFU蛍光示数であり、MはeGFPの分子量(26.7kDa)であり、NはSPA-eGFP-Streptavidinの分子量(77.3kDa)又はSPA-eGFP-Tamvavidin2の分子量(79.4kDa)である。
【0472】
測定されたRFU蛍光数値を代入することにより、標的タンパク質SPA-eGFP-Streptavidin又はSPA-eGFP-Tamvavidin2の質量濃度(μg/mL)を換算することができる。
【0473】
ここで、アビジン-プロテインA融合タンパク質のIVV上清、フロースルーのRFU値はYであり、Yの数値を上記公式に代入し、得られたXは対応する融合タンパク質の質量濃度であり、プロテインA溶液の体積を乗算し、アビジン-プロテインA融合タンパク質の総タンパク質量を得ることができる。IVTT上清中のアビジン-プロテインAのタンパク質量からフロースルー中のアビジン-プロテインAのタンパク質量を減算し、得られた差は即ち生体磁性マイクロスフェアに結合されたアビジン-プロテインAのタンパク質量Wである。Wを磁性マイクロスフェアのカラムベッド体積で割り、単位体積あたりの磁性マイクロスフェアに結合するアビジン-プロテインA融合タンパク質の質量を算出し、即ち結合力であり、単位はmg/mLである。
【0474】
本実施例で使用したのは30μLの10%(v/v)生体磁性マイクロスフェアD懸濁液であるため、1mLの100%生体磁性マイクロスフェアDの結合量に換算して表2、表3に示す。ここで、Tamvavidin2と生体磁性マイクロスフェアDとの結合力はStreptavidinよりやや強い。
【0475】
実施例3 プロテインAで修飾された生体磁性マイクロスフェアFによる血清抗体精製
体積の異なるSPA-eGFP-Streptavidin融合タンパク質が結合した生体磁性マイクロスフェアを、1mLの牛新生児血清と4℃で1時間回転インキュベートし、続いて1mLの結合/洗浄緩衝液で3回洗浄し、毎回4℃で10分間回転インキュベートした。100μLの0.1M pH2.8のグリシンで抗体を溶出し、溶出した抗体は溶出液中に存在し、10分の1体積(10μL)の1M pH8.0のTris-HClを溶出液中にで直ちに加えた。生工社製のProtein Aアガロースカラムを対照とした(カタログ番号C600957-0005)。
【0476】
40μLの溶出液を取って10μLの5×SDSサンプルバッファー(還元剤を含まない)を加え、95℃で10分間金属浴した後、SDS-PAGE電気泳動検出を行い、検出結果を
図6に示す。
【0477】
図6から分かるように、6μlのカラムベッド体積のSPA-eGFP-Streptavidin融合タンパク質が結合した生体磁性マイクロスフェアを用い、市販製品より優れた分離精製効果を得ることができる。
【0478】
溶出後の生体磁性マイクロスフェアを1mLの結合/洗浄緩衝液で3回洗浄し、上記抗体とのインキュベート、洗浄、溶出のステップを繰り返し、即ち1回目の抗体インキュベートした後に、洗浄し、溶出し、結合した抗体を放出し、再びプロテインAで修飾した磁性マイクロスフェアを得て、再び抗体とのインキュベート、洗浄、溶出を行い、さらに再びプロテインAで修飾した磁性マイクロスフェアを得て、続いて3回目にインキュベート、洗浄、溶出を行った。生体磁性マイクロスフェアを合計で抗体と3回インキュベートした後、3回目の抗体とインキュベートした後に得られた抗体含有溶出液40μLを取り、10μLの5×サンプルバッファー(還元剤を含まない)を加え、95℃で10分間金属浴した後、SDS-PAGE電気泳動検出を行い、検出結果を
図7に示す。
【0479】
図6及び
図7から分かるように、SPA-eGFP-Streptavidinが結合した生体磁性マイクロスフェアFは繰り返して複数回利用することができ、抗体とのインキュベートし、抗体を溶出した後、2回目、3回目に再びウシ血清とインキュベートし、いずれもウシ血清中の抗体を抽出することができ、且つ全体的な効果は生工社製のProtein Aアガロース磁気ビーズより劣ることはない。6μLのカラムベッド体積に対して、本発明はさらにより高い効果を有する。本発明に提供されたアフィニティタンパク質(ここではプロテインA)が結合した生体磁性マイクロスフェアFは複数回繰り返して使用することができる。
【0480】
実施例4 生体磁性マイクロスフェアDとアフィニティ複合体E(アビジン-プロテインA)との結合のリサイクル性
【0481】
4.1 インキュベーション
SPA-eGFP-Tamvavidin2が結合した生体磁性マイクロスフェアFのインキュベーション製造:
50μLの10%生体磁性マイクロスフェアD懸濁液(体積は5μL)を取って2mLの結合/洗浄緩衝液で3回洗浄した後、2mLのSPA-eGFP-Tamvavidin2のIVTT上清を加え、4℃で1時間回転インキュベートし、上清を廃棄し(上清を収集してフロースルー1を得た)、SPA-eGFP-Tamvavidin2を含む新鮮なIVTT上清を繰り返し加え、4℃で1時間回転インキュベートし、上清を廃棄し(上清を収集してフロースルー2を得た)、3回目にSPA-eGFP-Tamvavidin2を含む新鮮なIVTT上清を加え、4℃で1時間回転インキュベートし、上清を廃棄した(上清を収集してフロースルー3を得た)。SPA-eGFP-Tamvavidin2のIVTT上清と3回のフロースルーのRFU値を測定し、上記式に基づいて溶液中のSPA-eGFP-Tamvavidin2の残り含有量を算出し、結果を
図8及び表4に示す。
【0482】
精製されたeGFPから作成した標準曲線に基づいて、推定されたeGFPのRFU値がタンパク質量濃度に換算する計算式は以下のとおりである。
【0483】
【0484】
式中、Xはタンパク質の質量濃度(μg/mL)であり、YはRFU蛍光示数であり、MはeGFPの分子量(26.7kDa)であり、NはSPA-eGFP-Tamvavidin2の分子量(79.4kDa)である。
【0485】
測定されたRFU蛍光値を計算式に代入することにより、標的タンパク質SPA-eGFP-Tamvavidin2の質量濃度(μg/mL)を得ることができる。例えば、Yの値が1330.3である場合、上記計算式により対応するX値は247.6と算出され、表4に示す。
【0486】
4.2 溶出及び交換
アビジン-アフィニティタンパク質複合体E:SPA-eGFP-Tamvavidin2を溶出して交換した。
【0487】
生体磁性マイクロスフェアFを2mLの結合/洗浄緩衝液で3回洗浄した後、200μLの変性緩衝液(1MのUrea及び10%SDS)を加え、95℃の金属浴に置いて10分間インキュベートし、生体磁性マイクロスフェアに結合されたアビジン-プロテインAを溶出した。この溶出液を20μL取り、5μLの5×SDSサンプルバッファーを添加した後、SDS-PAGE電気泳動測定を行い、
図9に示すようなレーン1のバンドを得た。溶出した生体磁性マイクロスフェアDを2mLの結合/洗浄緩衝液で3回洗浄し、1回目に再生した生体磁性マイクロスフェアDを得、磁性マイクロスフェアの外表面におけるポリマー分岐鎖のビオチンの結合部位が放出された。
【0488】
4.3 2回目のインキュベーション(再生)
上記SPA-eGFP-Tamvavidin2のインキュベーション及び当該アビジン-プロテインAの溶出過程を繰り返し、生体磁性マイクロスフェアFの1回目の再生、即ちアビジン-プロテインAの1回目の交換を実現した。1回目に再生した生体磁性マイクロスフェアDはSPA-eGFP-Tamvavidin2と結合し、対応するIVTT上清と3回のフロースルーのRFU値を測定し、表5のデータを得た。溶出した生体磁性マイクロスフェアDを2mLの結合/洗浄緩衝液で3回洗浄し、12回目に再生した生体磁性マイクロスフェアDを得た。
【0489】
4.4 3回目のインキュベーション(2回目の再生)
再び上記SPA-eGFP-Tamvavidin2のインキュベーション及び当該アビジン-プロテインAの溶出過程を繰り返し、生体磁性マイクロスフェアFの2回目の再生、即ちアビジン-プロテインAの2回目の交換を実現した。2回目に再生した生体磁性マイクロスフェアDはSPA-eGFP-Tamvavidin2と結合し、対応するIVTT上清と2回のフロースルーのRFU値を測定し、表6のデータを得た。表4~6において、結合力はProtein A融合タンパク質/生体磁性マイクロスフェアDを指し、質量と体積の比率で、単位(mg/mL)である。
【0490】
【0491】
【0492】
【0493】
再生された生体磁性マイクロスフェアDがプロテインA-eGFP-アビジンと再結合する能力を測定した。
【0494】
初めて得られた生体磁性マイクロスフェアDは1回目にSPA-eGFP-Tamvavidin2を飽和結合し、1回目に再生された生体磁性マイクロスフェアDは2回目にSPA-eGFP-Tamvavidin2を飽和結合し、2回目に再生された生体磁性マイクロスフェアDは3回目にSPA-eGFP-Tamvavidin2を飽和結合し、それぞれ変性緩衝液でタンパク質を溶出し、それぞれSPA-eGFP-Tamvavidin2を含有する3回の溶出液を収集し、SDS-PAGEを行った。結果を
図9に示す。レーン1、2、3は、それぞれ1回目、2回目、3回目にプロテインA-eGFP-アビジンを飽和結合する後に、それぞれ初めて得られた生体磁性マイクロスフェアF、1回目に再生された生体磁性マイクロスフェアF、2回目に再生された生体磁性マイクロスフェアFからタンパクを溶出し、得られたSPA-eGFP-Tamvavidin2を含む3回の溶出液の電気泳動バンドを代表する。
【0495】
4.5 再生された生体磁性マイクロスフェアFによるウシ血清抗体の結合能力の測定
3回目に生体磁性マイクロスフェアDをSPA-eGFP-Tamvavidin2で飽和結合した後、2回目に再生された生体磁性マイクロスフェアFを取得した。得られた2回目に再生された生体磁性マイクロスフェアFに2mLの牛新生児血清(市販品、下記と同じ)を加えて4℃で1時間回転インキュベートし、上清を廃棄した(上清を収集してフロースルー1を得た)後、再び2mLの牛新生児血清を加えて4℃で1時間回転インキュベートし、上清を廃棄した(上清を収集してフロースルー2を得た)。1mLの結合/洗浄緩衝液で3回洗浄し、毎回4℃で10分間回転インキュベートした。ウシ血清抗体を100μLの0.1M pH 2.8のグリシン溶液で溶出し(抗体は磁性マイクロスフェアにおけるプロテインA端と結合)、溶出したウシ血清抗体溶液に1/10体積(即ち10μL)の1M pH 8.0のTris-HCl溶液を直ちに加え、110μLの溶出液を得た。
【0496】
40μLの溶出液を取って10μLの5×SDSサンプルバッファー(還元剤がない)を加え、95℃で10分間金属浴した後、SDS-PAGE電気泳動検出を行い、検出結果を
図9に示す。
図7、
図9及び表6の実験結果から分かるように、生体磁性マイクロスフェアDはSPA-eGFP-Tamvavidin2との結合は再生可能性を有し、本発明に提供された生体磁性マイクロスフェアFは再生可能に使用されることができる。また、変性液を添加して加熱処理するステップは、生体磁性マイクロスフェアの結合効率に影響を与えない。
【0497】
実施例5 プロテインAが結合した生体磁性マイクロスフェアGの製造(プロテインGを精製媒体とし、ビオチン-アビジンのアフィニティ複合体を連結要素とする)
【0498】
5.1 ProteinG-eGFP-アビジン融合タンパク質の合成(アビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体E)
実施例2の方法を用いて、ProteinG-eGFP-Tamvavidin2融合タンパク質を合成し、ProteinG-eGFP-Tamvavidin2融合タンパク質を含むIVTT反応液、IVTT上清を順次製造した。
【0499】
まず三段遺伝子配列を含むProteinG-eGFP-Tamvavidin2融合タンパク質のDNA配列を構築した。ここで、「eGFP」セグメント及び「Tamvavidin2」セグメントのヌクレオチド配列は実施例2と同様であり、それぞれSEQ ID No.:3、SEQ ID No.:2であった。ここで、「ProteinG」セグメントのヌクレオチド配列(SEQ ID No.:4)は、G群連鎖球菌属(Streptococcus sp.group G)から、その抗体結合部位の遺伝子配列を選択した。
【0500】
組換えPCR法を採用してProteinG-eGFP-Tamvavidin2融合タンパク質のDNAテンプレートを構築した。RCA法を用いて生体外増幅を行った。前記指示された生体外無細胞タンパク質合成方法(具体的にはクルイベロミセス・ラクチスに基づく細胞抽出物を採用した)を採用してProteinG-eGFP-Tamvavidin2融合タンパク質を合成した。
【0501】
IVTT反応を行い、ProteinG-eGFP-Tamvavidin2融合タンパク質を含むIVTT反応液、IVTT上清を順次得た。
【0502】
5.2 プロテインGが結合した生体磁性マイクロスフェアGの製造
30μLの10%(v/v)実施例1で得られたビオチン修飾生体磁性マイクロスフェアDをピペットで取り、結合/洗浄緩衝液(10mMのNa2HPO4、pH 7.4、2mMのKH2PO4、140mMのNaCl、2.6mMのKCl)で3回洗浄した。
【0503】
2mLのProteinG-eGFP-Tamvavidin2融合タンパク質を含有するIVTT上清を取り、上記生体磁性マイクロスフェアDと4℃の条件で1時間回転インキュベートし、フロースルーである清液を収集し、フロースルーにはマイクロスフェアに結合されていない残りの融合タンパク質が含まれ、このステップを3回繰り返し、毎回新なIVTT上清を生体磁性マイクロスフェアDとインキュベートし、3回の異なるフロースルーを得た。即ち同一ロットの生体磁性マイクロスフェアDは連続的にIVTT上清におけるProteinG-eGFP-Tamvavidin2融合タンパク質と3回インキュベートした。毎回2mLのステップ5.1に得たIVTT上清を用い、対応する3回取得したフロースルーは順次にフロースルー1(FT1)、フロースルー2(FT2)、フロースルー3(FT3)と記した。蛍光光度法を採用してIVTT上清と前記3回フロースルーのeGFP蛍光値(RFU値で計量)を検出し、結果は
図10に示す。
【0504】
フロースルーのRFU値はIVTT上清のRFU値に近くことは、生体磁性マイクロスフェアDがProteinG-eGFP-Tamvavidin2融合タンパク質に対する結合が飽和傾向にあると説明し、対応するRFU値は以下の表7に示す。1回目の結合量は、上清中のタンパク質量から、フロースルー1中のタンパク質量を差し引いて算出し、2回目の結合量は、上清中のタンパク質量から、フロースルー2中のタンパク質量を差し引いて算出し、3回目の結合量は、上清中のタンパク質量から、フロースルー3中のタンパク質量を差し引いて算出した。ProteinG-eGFP-Tamvavidin2融合タンパク質の濃度は、実施例2の方法を用いて、以下の式により算出した。
【0505】
【0506】
式中、XはProteinG-eGFP-Tamvavidin2融合タンパク質の質量濃度(μg/mL)であり、YはRFU蛍光示数であり、MはeGFPの分子量(26.7kDa)であり、NはProteinG-eGFP-Tamvavidin2融合タンパク質の分子量である。
【0507】
【0508】
ここで、結合力は磁気ビーズに結合したProteinG融合タンパク質の質量と使用した磁気ビーズ体積である。
【0509】
上記生体磁性マイクロスフェアDとProteinG融合タンパク質を含有するIVTT上清とをインキュベートする過程により、アフィニティ複合体(ビオチン-アビジン)連結方式によりProtein Gが結合された生体磁性マイクロスフェアGを得て、ProteinG磁気ビーズとも記す。
【0510】
5.3.Protein G磁気ビーズ精製血清抗体(IgG抗体を標的タンパク質とする)
体積の異なるProteinG-eGFP-Tamvavidin2融合タンパク質が結合したProtein G磁気ビーズを、1mLの牛新生児血清と4℃で1時間回転インキュベートし、続いて1mLの結合/洗浄緩衝液で洗浄し(3回)、毎回4℃で10分間回転インキュベートした。100μLの0.1M pH2.8のグリシンで抗体を溶出し、10分の1体積(10μL)の1M pH8.0のTris-HClを溶出液中にで直ちに加えた。溶出液中のIgG抗体純度をSDS-PAGEにより測定した結果を
図11に示す。グレースケール値に基づいて定量分析を行い、純度が95%より大きい。
【0511】
実施例6 ナノ抗体anti-eGFPが結合した生体磁性マイクロスフェアHの製造(ナノ抗体anti-eGFPを精製媒体とし、ビオチン-アビジンのアフィニティ複合体を連結要素とする)
【0512】
6.1.antiEGFP-mScarlet-アビジン融合タンパク質(antiEGFP-mScarlet-Tamvavidin2融合タンパク質、ナノ抗体の融合タンパク質)の合成
実施例2の方法を用いて、antiEGFP-mScarlet-Tamvavidin2融合タンパク質を合成し(antiEGFP融合タンパク質と略記し、分子量59kDa)、antiEGFP-mScarlet-Tamvavidin2融合タンパク質を含むIVTT反応液、IVTT上清を順次製造した。
【0513】
まず三段遺伝子配列を含むantiEGFP-mScarlet-Tamvavidin2融合タンパク質のDNA配列を構築した。
【0514】
ここで、「Tamvavidin2」セグメントのヌクレオチド配列は実施例2と同様であり、SEQSEQ ID No.:2を参照する。
【0515】
ここで、antiEGFPはアミノ酸配列が例えばSEQ ID No.:5に示すナノ抗体である。
【0516】
ここで、mScarletは明るい赤色蛍光タンパク質であり、対応するヌクレオチド配列はSEQ ID No.:6である。
【0517】
組換えPCR法を採用してantiEGFP-mScarlet-Tamvavidin2融合タンパク質のDNAテンプレートを構築した。RCA法を用いて体外増幅を行った。前記指示された生体外無細胞タンパク質合成方法を採用してantiEGFP-mScarlet-Tamvavidin2融合タンパク質を合成した。
【0518】
IVTT反応を行い、antiEGFP-mScarlet-Tamvavidin2融合タンパク質を含むIVTT反応液、IVTT上清を順次得た。
【0519】
6.2 ナノ抗体anti-eGFPが結合した生体磁性マイクロスフェアHの製造
30μLの10%(v/v)実施例1で得られた生体磁性マイクロスフェアDをピペットで取り、結合/洗浄緩衝液(10mMのNa2HPO4、pH 7.4、2mMのKH2PO4、140mMのNaCl、2.6mMのKCl)で3回洗浄した。
【0520】
2mLのantiEGFP-mScarlet-Tamvavidin2融合タンパク質を含有するIVTT上清(RFU値2400)を取り、上記生体磁性マイクロスフェアDと4℃の条件で1時間回転インキュベートし、清液を収集し、それはフロースルー(RFU値1700)であった。フロースルーにはマイクロスフェアに結合されていない残りの融合タンパク質が含まれた。RFU値の測定条件は、励起波長(Ex)は569nmであり、発光波長(Em)は593nmであった。
【0521】
上記生体磁性マイクロスフェアDと前記antiEGFP融合タンパク質を含有するIVTT上清とをインキュベートする過程により、インキュベートされた磁気ビーズはアフィニティ複合体(ビオチン-Tamvavidin2)連結方式によりナノ抗体anti-eGFPと結合し、生体磁性マイクロスフェアHと記し、antiEGFP磁気ビーズ(ナノ抗体磁気ビーズ)とも記す。
【0522】
6.3.antiEGFP磁気ビーズのeGFPタンパク質と結合する担持量の測定(eGFPを標的タンパク質とし、eGFP過剰)
30μLの10%(w/v)の本実施例6.2.で製造したantiEGFP磁気ビーズをピペットで取り、結合/洗浄緩衝液で3回洗浄し、使用に備えた。
【0523】
2mLのeGFPタンパク質のIVTT反応液(DNAテンプレートにおけるeGFPをコードするヌクレオチド配列はSEQ ID No.:3に示す)を取り、その蛍光値を測定し、Totalの蛍光値と記した。これを前記洗浄した3μLのantiEGFP磁気ビーズと混合し、1時間回転インキュベートし、磁気ビーズと結合していない上清をFlow-throughと記し、その蛍光値を測定した。表8の蛍光値測定結果に基づいて、eGFPの計算式を利用して対応するeGFPタンパク質の量を得て、得られたantiEGFP磁気ビーズの担持量が17.7mg/mL(ミリリットル当たりのantiEGFP磁気ビーズと結合するeGFPタンパク質の質量)であると計算した。
【0524】
【0525】
6.4.antiEGFP磁気ビーズによるeGFPタンパク質の精製効率(eGFPを標的タンパク質とし、磁気ビーズ過剰)
本実施例6.2で製造したantiEGFP磁気ビーズを取り、結合/洗浄緩衝液で3回洗浄し、使用に備えた。
【0526】
1mLのeGFPタンパク質のIVTT反応液(DNAテンプレートにおけるeGFPをコードするヌクレオチド配列はSEQ ID No.:3に示す)を取り、その蛍光値を測定し、Totalと記した。これを過剰のantiEGFP磁気ビーズと混合し、1時間回転インキュベートし、清液を収集し、Flow-throughと記し、その蛍光値を測定した。磁気ビーズを1mLの結合/洗浄緩衝液で2回洗浄し、毎回4℃で10分間回転インキュベートし、得られた洗浄液をそれぞれWashing1、Washing2と記し、それぞれの蛍光値を測定した。インキュベートされた磁気ビーズは標的タンパク質eGFPと結合した。上記各蛍光値の測定結果を
図12及び表9に示す。結果により、本方案で得られた抗eGFPの磁気ビーズはeGFPタンパク質と効果的に結合し、それを溶出することができる。IVTT上清及びフロースルーの蛍光値に基づいて、上記1時間インキュベートした後、antiEGFP磁気ビーズの標的タンパク質eGFPに対する結合効率が98.2%であると計算して得た。
【0527】
【0528】
100μLの0.1M pH2.8のグリシン溶出液で抗体を溶出し、10分の1体積(10μL)の1M pH8.0のTris-HClを溶出液中に直ちに加えた。溶出液の蛍光値を測定し、Elutionと記し、SDS-PAGEで純度を調べたところ、
図13に示すように、純度は約95%であった。
【0529】
なお、上述したのは本発明の好適な実施例の一部であり、本発明は上述した実施例の内容に限定されない。当業者であれば、本発明の技術的解決手段の概念範囲内又はその指導、示唆で、様々な変化及び変更が可能であり、行われたいずれの同等の技術的効果を有する変化及び変更は、いずれも本発明の保護範囲内にある。
【0530】
【0531】
【0532】
【0533】
【手続補正書】
【提出日】2022-09-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は出願日が2019年11月30日である中国特許出願201911209156X及び出願日が2020年04月28日である中国特許出願2020103469030の優先権を主張する。本願は上記中国特許出願の全文を引用する。
【0002】
本発明は生化学の技術分野に属し、具体的には、生体磁性マイクロスフェアとその製造方法及び使用に関するものである。
【背景技術】
【0003】
タンパク質(抗体、抗体断片又はその融合タンパク質を含むがそれらに限定されない)の分離精製は、生物薬製造プロセスにおける重要な下流工程であり、分離精製の効果及び効率はタンパク質薬物の品質及び生産コストに直接影響する。タンパク質精製に対して、精製カラムや精製マイクロスフェア担体として、アガロースゲルなどの材料が一般的に使用される。従来技術において、抗体系物質(例えば抗体分子、抗体断片又はその融合タンパク質)に対する分離精製は、生産技術者は主にプロテインA(略称:Protein A)親和吸着カラムで発酵液又は反応液中の抗体分子を分離精製する。プロテインAカラムでは、担体に固定されたプロテインAが抗体分子Fc端の特異部位と特異的に結合することにより、抗体を溶液から特異的に効率よく分離することを実現する。現在一般的に使用されるプロテインAカラムにおける担体も主にアガロースゲルなどの材料を採用する。
【0004】
ゲル系材料の三次元多孔質構造は材料の比表面積を向上させることに有利であり、それにより精製媒体(例えば固定されたプロテインA)を結合できる部位を増加させ、標的タンパク質(抗体を含む)に対する特異的結合量を向上させる。担体材料の三次元多孔質構造はタンパク質(抗体を含む)結合部位の数を大幅に向上させることができるが、担体内部の多孔質構造はタンパク質が溶出する時にタンパク質の滞留時間を増加させ、担体内部のいくつかの不連続空間又は死角はタンパク質が材料内部から溶出することを阻害し、滞留割合を増加させる。タンパク質と結合する部位を担体の外表面のみに固定すると、タンパク質生成物が材料の内部に入ることを回避し、溶出時のタンパク質の滞留時間及び滞留割合を大幅に減少させることができるが、担体の外表面のみを利用すると、担体の比表面積が大幅に低下し、タンパク質の結合部位数が大幅に低下し、精製効率が低下する。
【0005】
ポリマーは高分子化合物であり、モノマー分子を重合することにより形成することができる。活性部位を有するモノマー分子を用いて重合を行い、重合生成物は大量の活性部位を大量に含むことができ、活性部位の数を大幅に向上させ、これらの活性部位により、さらに対応する結合部位を形成し又は導入することができる。ポリマーの種類及び構造は様々であり、分子鎖が互いに架橋して形成した網状構造を有し、単一の線状分子鎖の線状構造を有し、複数の分岐鎖を有する分岐構造(例えば分岐型、ツリー状、櫛状、ハイパーブランチ構造などの構造)を有し、異なる構造タイプのポリマーは異なる分野においてそれぞれ広く使用される。
【0006】
従来技術において、タンパク質分離精製に用いられる精製カラムでは、主に共有結合方式を用いて精製媒体を固定する。プロテインAを精製媒体とし、抗体系物質を精製するためのプロテインAカラムを例とし、抗体、抗体断片、又はその融合タンパク質などの分離精製に用いられるプロテインAカラムにおいては、主に共有結合方式を用いてプロテインAを固定し、C末端のシステインによってプロテインAを担体に共有結合する。共有結合方式は精製媒体(例えばプロテインA)が担体に強固に固定されることを保証することができるが、精製カラム(例えばプロテインAカラム)を複数回使用した後、精製媒体(例えばプロテインA)の結合性能が低下し、精製効果が低下する。そのため、比較的高い精製効率及び品質を保証するために、操作者は親和性クロマトグラフィーカラムにおけるフィラーを全部交換する必要があり、当該過程は消耗品の使用量が大きいだけでなく、且つ大量の人工及び時間を消耗し、精製コストが高いことを引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は生体磁性マイクロスフェアを提供し、標的物質、特にタンパク質系物質(抗体系タンパク質を含むがそれらに限定されない)の分離・精製に用いることができ、ハイスループットで標的物質を結合することができるだけでなく、溶出時の標的物質の滞留割合を効果的に低減することができ、さらに精製媒体(例えばアフィニティタンパク質)を便利に交換することができ、高速、ハイスループット、再利用、再生使用可能である特徴を有し、さらに標的物質の精製コストを大幅に低減することができる。例えば、アフィニティタンパク質を精製媒体として用いる場合、抗体系タンパク質の精製コストを大幅に低減することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1.本発明の第1の態様は、生体磁性マイクロスフェアを提供し、前記生体磁性マイクロスフェアは、磁性マイクロスフェア本体を含み、前記磁性マイクロスフェア本体の外表面には、少なくとも1種の線状主鎖及び分岐鎖を有するポリマーを有し、前記線状主鎖の一端が磁性マイクロスフェア本体の外表面に固定され、ポリマーの他端は磁性マイクロスフェア本体の外表面から遊離し、前記生体磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端には、ビオチン又はビオチン類似体が連結されている。前記ビオチン又はビオチン類似体は、精製媒体とすることができるだけでなく、連結要素としてさらに他のタイプの精製媒体と連結することもできる。
【0009】
前記生体磁性マイクロスフェアは、ビオチン磁性マイクロスフェア又はビオチン磁気ビーズとも呼ばれる。
【0010】
前記「~に固定」とは、前記線状主鎖が共有結合の方式で磁性マイクロスフェア本体の外表面「に固定される」ことを指す。
【0011】
さらに、前記線状主鎖は直接方式で前記磁性マイクロスフェア本体の外表面に共有結合的に固定され、又は連結基(連結要素)を介して間接方式で前記磁性マイクロスフェア本体の外表面に共有結合的に固定される。
【0012】
さらに、前記ポリマーの分岐鎖の数は複数であり、好ましくは、少なくとも3つである。
好ましい一形態では、前記磁性マイクロスフェア本体のサイズは、0.1μm、0.15μm、0.2μm、0.25μm、0.3μm、0.35μm、0.4μm、0.45μm、0.5μm、0.55μm、0.6μm、0.65μm、0.7μm、0.75μm、0.8μm、0.85μm、0.9μm、0.95μm、1μm、1.5μm、2μm、2.5μm、3μm、3.5μm、4μm、4.5μm、5μm、5.5μm、6μm、6.5μm、7μm、7.5μm、8μm、8.5μm、9μm、9.5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、55μm、60μm、65μm、70μm、75μm、80μm、85μm、90μm、95μm、100μm、150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm、450μm、500μm、550μm、600μm、650μm、700μm、750μm、800μm、850μm、900μm、950μm、1000μmのいずれか一つの粒子径スケール又はいずれか2つの粒子径スケールの間の範囲から選択され、前記直径サイズとは平均値である。
【0013】
好ましい一形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.1~10μmから選択される。
【0014】
好ましい一形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.2~6μmから選択される。
【0015】
好ましい一形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.4~5μmから選択される。
【0016】
好ましい一形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.5~3μmから選択される。
【0017】
好ましい一形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.2~1μmから選択される。
【0018】
好ましい一形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.5~1μmから選択される。
【0019】
好ましい一形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は1μm~1mmから選択される。
【0020】
好ましい一形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、950nm、1000nmであり、偏差は±20%であり、より好ましくは±10%である。
【0021】
好ましい一形態では、前記ポリマーの主鎖は、ポリオレフィン主鎖、又はアクリル系ポリマー主鎖である。前記アクリル系ポリマーの定義については、「名詞及び用語」の部分を参照されたい。好ましい一形態では、前記ポリオレフィン主鎖は、同時にアクリル系ポリマー主鎖である(即ち、前記ポリマーの線状主鎖は、ポリオレフィン主鎖であり、且つアクリル系ポリマーの主鎖から提供される)。
【0022】
好ましい一形態では、前記アクリル系ポリマーのモノマー単位が、好ましくはアクリル酸、アクリル酸塩、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸塩、メタクリル酸エステルなどのアクリル系モノマー分子のいずれの一つか、又はそれらの組み合わせから選択される。前記アクリル系ポリマーは、上記モノマーのいずれかを重合することにより得られてもよく、上記モノマーの対応する組み合わせを共重合することにより得られてもよい。
【0023】
好ましい一形態では、前記ポリマーの分岐鎖は、官能基に基づく共有結合によってビオチン又はビオチン類似体に共有結合し、ビオチン又はビオチン類似体をポリマーの分岐鎖末端に共有結合する。生体磁性マイクロスフェアの外表面におけるポリマー分子の分岐鎖に含まれる官能基とビオチン又はビオチン類似体との共有結合反応により得ることができる。ここで、前記官能基の好ましい一実施形態は特異的結合部位(定義は具体的な実施形態の「名詞と用語」の部分を参照)である。
【0024】
前記官能基に基づく共有結合とは、官能基が共有結合に関与することによって形成される共有結合を意味する。好ましくは、前記官能基は、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基の塩形態、アミノ基の塩形態、ギ酸エステル基、又は前記官能基の組み合わせである。前記カルボキシル基の塩形態の好ましい一形態は、ナトリウム塩形式であり、例えばCOONaであり、前記アミノ基の塩形態の好ましい形態は、無機塩形態であってもよく、有機塩形態であってもよく、塩酸塩、フッ化水素酸塩などの形態を含むがこれらに限定されない。前記「官能基の組み合わせ」とは、一つの磁性マイクロスフェアの外表面の全てのポリマー分子の全ての分岐鎖を指し、異なる官能基の関与に基づいて共有結合を形成することができる。ビオチンを例とし、即ち一つのビオチン磁性マイクロスフェアの外表面の全てのビオチン分子はそれぞれ異なる官能基と共有結合することができるが、一つのビオチン分子は一つの官能基のみと連結することができる。
【0025】
好ましい一形態では、前記ポリマーの線状主鎖は、前記磁性マイクロスフェア本体の外表面に直接的に、又は連結基を介して間接的に共有結合している。
【0026】
好ましい一形態では、前記磁性マイクロスフェア本体は、SiO2で被覆された磁性材料である。代わりに、SiO2は自身で活性部位を有するシランカップリング剤であってもよい。
【0027】
好ましい一形態では、前記磁性材料は、鉄酸化物、鉄化合物、鉄合金、コバルト化合物、コバルト合金、ニッケル化合物、ニッケル合金、マンガン酸化物、マンガン合金のいずれか、又は組み合わせから選択される。
【0028】
さらに、好ましくはFe3O4、γ-Fe2O3、窒化鉄、Mn3O4、FeCrMo、FeAlC、AlNiCo、FeCrCo、ReCo、ReFe、PtCo、MnAlC、CuNiFe、AlMnAg、MnBi、FeNiMo)、FeSi、FeAl、FeSiAl、MO・6Fe2O3、GdOのいずれか一つ、又はそれらの組み合わせであり、ここで、前記Reは希土類元素であり、前記MはBa、Sr、Pbであり、即ち、前記MO・6Fe2O3はBaO・6Fe2O3、SrO・6Fe2O3又はPbO・6Fe2O3である。
【0029】
2.本発明の第2の態様は生体磁性マイクロスフェアを提供し、本発明の第1の態様で提供される前記生体磁性マイクロスフェアに基づいて、前記ビオチン又はビオチン類似体は連結要素としてさらに精製媒体に連結している。即ち、前記ポリマーの分岐鎖末端は、連結要素を介して精製媒体に連結しており、且つ前記連結要素は、前記ビオチン又はビオチン類似体を含む。
【0030】
前記精製媒体は、アビジン型タグ、ポリペプチド型タグ、タンパク質型タグ、抗体型タグ、抗原型タグ、又はそれらの組み合わせを含有してもよいが、これらに限定されない。
【0031】
好ましい一形態では、前記アビジン型タグは、アビジン、ビオチンと結合可能なアビジン類似体、ビオチン類似体と結合可能なアビジン類似体、又はそれらの組み合わせである。
【0032】
好ましい一形態では、前記生体磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端にはビオチンが連結されており、前記精製媒体はアビジンであり、且つ前記アビジンとの間でアフィニティ複合体の結合作用を形成する。
【0033】
前記アビジンは、ストレプトアビジン、変性ストレプトアビジン、ストレプトアビジン類似体、又はそれらの組み合わせであってもよいが、これらに限定されない。
【0034】
好ましい一形態では、前記ポリペプチド型タグは、CBPタグ、ヒスチジンタグ、C-Mycタグ、FLAGタグ、Spotタグ、Cタグ、Aviタグ、Stregタグ、WRHPQFGG(SEQ ID No:7)配列を含むタグ、WRHPQFGG(SEQ ID No:7)の変体配列を含むタグ、RKAAVSHW(SEQ ID No:8)配列を含むタグ、RKAAVSHW(SEQ ID No:8)の変体配列を含むタグ、又はそれらの組み合わせのいずれか一つのタグ又はその変体から選択される。前記Stregタグは、WSHPQFEK(SEQ ID No:9)及びその変体を含む。
【0035】
好ましい一形態では、前記タンパク質型タグは、アフィニティタンパク質、SUMOタグ、GSTタグ、MBPタグ、及びそれらの組み合わせいずれかのタグ又はその変体から選択される。
【0036】
好ましい一形態では、前記アフィニティタンパク質は、プロテインA、プロテインG、プロテインL、変性プロテインA、変性プロテインG、変性プロテインL、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0037】
好ましい一形態では、前記抗体型タグは、抗体、抗体の断片、抗体の一本鎖、一本鎖の断片、抗体融合タンパク質、抗体断片の融合タンパク質のいずれか、いずれかの誘導体、又はいずれかの変体である。
【0038】
好ましい一形態では、前記抗体型タグは、抗タンパク質抗体である。
好ましい一形態では、前記抗体型タグは、抗蛍光タンパク質抗体である。
好ましい一形態では、前記抗体型タグは、ナノ抗体である。
好ましい一形態では、前記抗体型タグは、抗タンパク質のナノ抗体である。
好ましい一形態では、前記抗体型タグは、抗蛍光タンパク質のナノ抗体である。
好ましい一形態では、前記抗体型タグは、抗緑色蛍光タンパク質又はその変異体のナノ抗体である。
好ましい一形態では、前記抗体型タグは、Fc断片である。
【0039】
前記精製媒体と前記ビオチン又は前記ビオチン類似体との連結方式は、共有結合、非共有結合(例えば、超分子相互作用)、連結要素、又はそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0040】
好ましい一形態では、前記共有結合は、動的共有結合であり、さらに好ましくは、前記動的共有結合は、イミン結合、アシルヒドラゾン結合、ジスルフィド結合、又はそれらの組み合わせを含む。
【0041】
好ましい一形態では、前記超分子相互作用は、配位結合、アフィニティ複合体相互作用、静電吸着、水素結合、π-πオーバーラップ作用、疎水性相互作用、又はそれらの組み合わせである。
【0042】
前記生体磁性マイクロスフェアの好ましい一形態では、前記精製媒体は、アフィニティ複合体を含む連結要素によって前記ポリマーの分岐鎖末端に連結される。
【0043】
好ましい一形態では、前記アフィニティ複合体相互作用は、ビオチン-アビジン相互作用、ビオチン類似体-アビジン相互作用、ビオチン-アビジン類似体相互作用、ビオチン類似体-アビジン類似体相互作用から選択される。
【0044】
好ましい一形態では、前記ビオチン又はビオチン類似体は、アフィニティ複合体作用によってアビジン又はアビジン類似体に結合し、前記精製媒体は、前記アビジン又はアビジン類似体に直接又は間接的に結合する。
【0045】
好ましい一形態では、前記精製媒体は、アビジン型タグ-精製媒体共有結合複合体によって前記ポリマーの分岐鎖末端のビオチン又はビオチン類似体に連結し、アビジン型タグによって前記ビオチン又はビオチン類似体との間にアフィニティ複合体の連結要素を形成し、さらに好ましい一形態では、前記精製媒体は、アビジン-精製媒体共有結合複合体によって、前記ポリマーの分岐鎖末端のビオチン又はビオチン類似体と、アフィニティ複合体の連結要素を形成する。
【0046】
3.本発明の第3の態様は生体磁性マイクロスフェアを提供し、本発明の第1の態様により提供される前記生体磁性マイクロスフェアに基づいて、さらに、前記ビオチン又はビオチン類似体は連結要素として、さらにアフィニティ複合体結合作用によってアビジン又はアビジン類似体に連結されている。
【0047】
前記生体磁性マイクロスフェアは、アビジン磁性マイクロスフェア又はアビジン磁気ビーズとも呼ばれる。
【0048】
前記アビジン又はアビジン類似体は、精製媒体とすることができるだけでなく、連結要素としてさらに他のタイプの精製媒体と連結することもできる。ここで、前記ビオチン又はビオチン類似体と前記アビジン又はアビジン類似体との間にアフィニティ複合体の結合作用を形成する。
【0049】
好ましい一形態では、本発明の第1の態様に提供される前記生体磁性マイクロスフェアに基づいて、さらに、前記ビオチンに結合するアビジンを含む。ここで、ビオチンとアビジンとの間にアフィニティ複合体の結合作用を形成する。即ち、前記生体磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端にはビオチンが連結されており、前記精製媒体はアビジンであり、且つ前記アビジンとの間でアフィニティ複合体の結合作用を形成する。
【0050】
好ましい一形態では、前記アビジンは、ストレプトアビジン、変性ストレプトアビジン、ストレプトアビジン類似体のいずれか1個、又はそれらの組み合わせである。
【0051】
4.本発明の第4の態様は生体磁性マイクロスフェアを提供し、本発明の第3の態様に提供される前記生体磁性マイクロスフェアに基づいて、さらに、前記アビジン又はアビジン類似体に連結しているアフィニティタンパク質を含む。このとき、ビオチン又はビオチン類似体、アビジン又はアビジン類似体は、いずれも連結要素として両者の間にアフィニティ複合体の結合作用を形成し、前記アフィニティタンパク質は、精製媒体とすることができるだけでなく、連結要素とすることもでき、好ましくは精製媒体とする。
【0052】
前記生体磁性マイクロスフェアは、アフィニティタンパク質磁性マイクロスフェア又はアフィニティタンパク質磁気ビーズとも呼ばれる。
【0053】
好ましい一形態では、本発明の第2の態様に提供される前記生体磁性マイクロスフェアに基づいて、前記精製媒体はアフィニティタンパク質であり、前記生体磁性マイクロスフェアはさらに前記アフィニティタンパク質に連結されているアビジンと、前記アビジンに結合されているビオチンとを含み、前記ビオチンは前記ポリマーの分岐鎖に連結されており、ここで、精製媒体は連結要素によって前記ポリマーの分岐鎖に連結し、前記連結要素にはビオチンとアビジンとによって形成されたアフィニティ複合体が含まれる。
【0054】
好ましい一形態では、前記アフィニティタンパク質は、プロテインA、プロテインG、プロテインLのいずれか1個、又はそれらの変性タンパク質である。
【0055】
5.本発明の第5の態様は、本発明の第1の態様に提供される前記生体磁性マイクロスフェアの製造方法(
図3を参照)を提供し、当該方法は下記のステップを含む。
【0056】
(1)磁性マイクロスフェア本体に対して化学修飾を行い、アミノ基を磁性マイクロスフェア本体の外表面に導入して、アミノ基修飾磁性マイクロスフェアAを形成させ、前記磁性マイクロスフェア本体がSiO2で被覆された磁性材料である場合、前記カップリング剤は、好ましくはアミノ化シランカップリング剤である。
【0057】
好ましい一形態では、カップリング剤を利用して磁性マイクロスフェア本体に対して化学修飾を行う。
【0058】
前記磁性マイクロスフェア本体がSiO2で被覆された磁性材料である場合、シランカップリング剤を利用して磁性マイクロスフェア本体に対して化学修飾を行うことができる。前記シランカップリング剤は、好ましくはアミノ化シランカップリング剤である。
【0059】
(2)カルボキシル基とアミノ基との間の共有結合反応を利用してアクリル酸分子を前記磁性マイクロスフェアAの外表面に共有結合的にカップリングさせ、炭素-炭素二重結合を導入して、炭素-炭素二重結合含有磁性マイクロスフェアBを形成させる。
【0060】
(3)架橋剤を加えない条件で、炭素-炭素二重結合の重合反応を利用して、アクリル系モノマー分子(例えばアクリル酸ナトリウム)を重合させ、得られたアクリル系ポリマーは線状主鎖と官能基を含む分岐鎖とを有し、ポリマーは線状主鎖の一端によって磁性マイクロスフェアBの外表面に共有結合され、アクリル系ポリマー修飾磁性マイクロスフェアCを形成させる。
【0061】
前記アクリル系モノマー分子、ポリマー分岐鎖の官能基の定義については、「名詞及び用語」の部分を参照されたい。
【0062】
好ましくは、前記官能基は、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、メルカプト基、ギ酸塩、アンモニウム、カルボキシル基の塩形態、アミノ基の塩形態、ギ酸エステル基、又は前記官能基の組み合わせである。前記「官能基の組み合わせ」とは、一つの磁性マイクロスフェアの外表面の全てのポリマーの全ての分岐鎖に含まれる官能基を指し、その種類は、1種又は1種以上であってもよい。第1の形態で定義された「官能基の組み合わせ」の意味とは合致する。
【0063】
また好ましくは、前記官能基は特異的結合部位である。
【0064】
(4)前記ポリマーの分岐鎖に含まれる官能基により、ビオチン又はビオチン類似体をポリマーの分岐鎖末端に共有結合的にカップリングさせて、ビオチン又はビオチン類似体に結合された生体磁性マイクロスフェアD(ビオチン磁性マイクロスフェア)を得る。
【0065】
6.本発明の第6の態様は、本発明の第2の態様に提供される前記生体磁性マイクロスフェアの製造方法を提供し、当該方法は下記のステップを含む。
【0066】
(i)請求項1に記載の前記生体磁性マイクロスフェアを提供するステップであって、第5の態様のステップ(1)から(4)で製造することができる。
【0067】
(ii)精製媒体を前記生体磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端のビオチン又はビオチン類似体に連結させ、精製媒体が結合された生体磁性マイクロスフェアを得るステップ。
【0068】
7.本発明の第7の態様は、本発明の第2の態様に提供される前記生体磁性マイクロスフェアの製造方法を提供し、当該方法は下記のステップを含む。
【0069】
(i)請求項1に記載の前記生体磁性マイクロスフェアを提供するステップであって、第5の態様のステップ(1)から(4)で製造することができる。
【0070】
(ii)アビジン又はアビジン類似体と精製媒体との共有結合複合体(例えば、アビジン-精製媒体共有結合複合体)を精製媒体提供用の原料として、それをポリマーの分岐鎖末端に結合させ、前記ビオチン又はビオチン類似体と前記アビジン又はアビジン類似体との間にアフィニティ複合体の結合作用を形成させて、精製媒体付き生体磁性マイクロスフェアを得るステップ。
【0071】
独立して任意に、(6)磁石で生体磁性マイクロスフェアを沈降させ、液相を除去し、洗浄するステップを含む。
【0072】
独立して任意に、前記精製媒体の交換を含み、前記アビジン又はアビジン類似体と精製媒体との共有結合複合体を交換することによって実現することができる。
【0073】
8.本発明の第8の態様は、本発明の第4の態様に提供される前記生体磁性マイクロスフェアの製造方法(例として
図3を参照)を提供し、当該方法は下記のステップを含む。
【0074】
(1)磁性マイクロスフェア本体に対して化学修飾を行い、アミノ基を磁性マイクロスフェア本体の外表面に導入して、アミノ基修飾磁性マイクロスフェアAを形成させ、前記磁性マイクロスフェア本体がSiO2で被覆された磁性材料である場合、前記カップリング剤は、好ましくはアミノ化シランカップリング剤である。
【0075】
好ましい一形態では、カップリング剤を利用して磁性マイクロスフェア本体に対して化学修飾を行う。
【0076】
前記磁性マイクロスフェア本体がSiO2で被覆された磁性材料である場合、シランカップリング剤を利用して磁性マイクロスフェア本体に対して化学修飾を行うことができる。このとき、前記シランカップリング剤は、好ましくはアミノ化シランカップリング剤である。
【0077】
(2)カルボキシル基とアミノ基との間の共有結合反応を利用してアクリル酸分子を前記磁性マイクロスフェアAの外表面に共有結合的にカップリングさせ、炭素-炭素二重結合を導入して、炭素-炭素二重結合含有磁性マイクロスフェアBを形成させる。
【0078】
(3)架橋剤を加えない条件で、炭素-炭素二重結合の重合反応を利用し、アクリル系モノマー分子(例えばアクリル酸ナトリウム)を重合させ、得られたアクリル系ポリマーは線状主鎖と官能基を含む分岐鎖とを有し、ポリマーは線状主鎖の一端によって磁性マイクロスフェアBの外表面に共有結合され、アクリル系ポリマー修飾磁性マイクロスフェアCを形成する。
【0079】
前記官能基の好ましい一実施形態は、特異的結合部位である。
【0080】
前記官能基の他の好ましい形態は、上記第1の態様と合致する。
【0081】
(4)前記ポリマーの分岐鎖に含まれる官能基により、ビオチンを共有結合的にカップリングさせて、ビオチン修飾生体磁性マイクロスフェアD(ビオチン磁性マイクロスフェア)を得る。
【0082】
(5)ビオチンとアビジンとの特異的結合作用によって、アビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体Eをポリマーの分岐鎖末端に結合させ、ビオチンとアビジンとの間にアフィニティ複合体の結合作用を形成させて、生体磁性マイクロスフェアFを得る(前記生体磁性マイクロスフェアFは、アフィニティタンパク質に結合するため、アフィニティタンパク質磁性マイクロスフェアである)。
【0083】
独立して任意に、(6)磁石で生体磁性マイクロスフェアFを沈降させ、液相を除去し、洗浄するステップを含む。
【0084】
さらに独立して任意に、(7)前記アビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体Eを交換するステップを含む。
【0085】
9.本発明の第9の態様は、タンパク質系物質の分離・精製における本発明の第1から第4の態様に記載の前記生体磁性マイクロスフェアの使用を提供する。
【0086】
好ましい一形態では、抗体系物質の分離・精製における前記生体磁性マイクロスフェアの使用である。
【0087】
前記抗体系物質は、抗体、抗体断片のタンパク質類物質を指し、抗体、抗体断片、抗体融合タンパク質、抗体断片融合タンパク質を含むがこれらに限定されない。
【0088】
前記精製媒体が、アフィニティ複合体を含む連結要素によって前記ポリマーの分岐鎖末端に連結される場合、前記使用はさらに選択的に生体磁性マイクロスフェアの再生使用を含み、即ち精製媒体の交換後再利用を含む。
【0089】
10.本発明の第10の態様は、生体磁性マイクロスフェアの抗体系物質の分離・精製における本発明の第1から第4の態様に記載の使用、特に抗体、抗体断片、抗体融合タンパク質、抗体断片融合タンパク質の分離・精製における使用を提供する。
【0090】
前記精製媒体はアフィニティタンパク質である。
【0091】
好ましい一形態では、前記アフィニティタンパク質は、ビオチン-アビジン-アフィニティタンパク質の方式でポリマーの分岐鎖に連結する。
【0092】
前記アフィニティタンパク質が、アフィニティ複合体を含む連結要素によって前記ポリマーの分岐鎖末端に連結される場合(例えば、第4の態様に記載の生体磁性マイクロスフェア)、前記使用はさらに選択的に生体磁性マイクロスフェアの再生使用を含み、即ちアフィニティタンパク質の交換後再利用を含む。
【0093】
11.本発明の第11の態様は、生体磁性マイクロスフェアを提供する。前記磁性マイクロスフェア本体の外表面には、少なくとも1種の線状主鎖及び分岐鎖を有するポリマーを有し、前記線状主鎖の一端が磁性マイクロスフェア本体の外表面に固定され、ポリマーの他端は磁性マイクロスフェア本体の外表面から遊離し、前記磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端には、精製媒体が連結されており、前記精製媒体は、アビジン型タグ、ポリペプチド型タグ、タンパク質型タグ、抗体型タグ、抗原型タグ、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0094】
好ましい一形態では、前記アビジン型タグは、アビジン、ビオチンと結合可能なアビジン類似体、ビオチン類似体と結合可能なアビジン類似体、又はそれらの組み合わせである。
【0095】
好ましい一形態では、前記アビジンは、ストレプトアビジン、変性ストレプトアビジン、ストレプトアビジン類似体、又はそれらの組み合わせである。
【0096】
好ましい一形態では、前記ポリペプチド型タグは、CBPタグ、ヒスチジンタグ、C-Mycタグ、FLAGタグ、Spotタグ、Cタグ、Aviタグ、Stregタグ、WRHPQFGG(SEQ ID No:7)配列を含むタグ、WRHPQFGG(SEQ ID No:7)の変体配列を含むタグ、RKAAVSHW(SEQ ID No:8)配列を含むタグ、RKAAVSHW(SEQ ID No:8)の変体配列を含むタグ、又はそれらの組み合わせのいずれかのタグ及びその変体から選択される。前記Stregタグは、WSHPQFEK(SEQ ID No:9)又はその変体を含む。
【0097】
好ましい一形態では、前記タンパク質型タグは、アフィニティタンパク質、SUMOタグ、GSTタグ、MBPタグ、及びそれらの組み合わせのいずれかのタグ又はその変体から選択される。
【0098】
好ましい一形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の外表面には、少なくとも1種の線状主鎖及び分岐鎖を有するポリマーを有し、前記線状主鎖の一端が磁性マイクロスフェア本体の外表面に共有結合的に固定され、ポリマーの他端は磁性マイクロスフェア本体の外表面から遊離し、前記磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端には、アフィニティタンパク質が連結されている。
【0099】
好ましくは、さらに、前記アフィニティタンパク質とポリマーの線状主鎖との間の分岐鎖骨格にアフィニティ複合体の結合作用が存在する。
【0100】
より好ましくは、前記アフィニティタンパク質は、プロテインA、プロテインG、プロテインL、変性プロテインA、変性プロテインG、変性プロテインL、又はそれらの組み合わせから選択される。
【発明の効果】
【0101】
本発明の主な利点及び積極的な効果は下記を含む。
【0102】
本発明の核心の一つは生体磁性マイクロスフェアの構造にあり、磁性マイクロスフェア本体の外表面に、線状主鎖含有ポリマー分子が共有結合的に固定され、これらのポリマー分子はさらに大量の機能化された分岐鎖を有し、前記機能化された分岐鎖に精製媒体(ビオチン、アビジン、アフィニティタンパク質、ポリペプチドタグ、タンパク質タグなどを含むがこれらに限定されない)が連結される。上記構造により、生体磁性マイクロスフェアの外表面に大量のポリマー線状主鎖側端に吊り下げられた精製媒体を提供して、従来の網状構造による高い滞留割合を回避するだけでなく、比表面積の制限を克服して大量の標的物質(例えば抗体)結合部位を提供することができる。ここで、精製媒体の種類は、精製する物質の種類に応じて選択することができる。精製媒体がアフィニティ複合体の形式で、非共有結合の強い相互作用によってポリマーの分岐鎖に連結される場合、さらに、精製媒体(例えばアフィニティタンパク質)とポリマー線状主鎖との間の分岐鎖骨格にはアフィニティ複合体の結合作用がさらに存在することができ、それによって精製媒体(例えば親タンパク質)は容易に交換できる。分離・精製される標的物質が抗体系タンパク質である場合、精製媒体は通常はアフィニティタンパク質である。磁性マイクロスフェアの製造及び原理部分の説明を結合して理解されたい。
【0103】
本発明の核心は、さらに上記生体磁性マイクロスフェア構造の構築過程(製造方法)にあり、外表面の化学修飾により、磁気ビーズの外表面(生体磁性マイクロスフェア本体の外表面)に複数の結合部位を提供し、続いて磁気ビーズの外表面の単一の結合部位にポリマー分子を共有結合し、ポリマー分子は線状主鎖の一端によって磁気ビーズの外表面の単一の結合部位に共有結合し、線状主鎖に沿って大量の側分岐鎖が分布され、側分岐鎖に新生の結合部位が携帯され、それにより結合部位の複数倍、数十倍、百倍、数百倍、さらに千倍の拡大を実現し、さらに具体的な精製要求に基づいてポリマー分岐鎖の新生結合部位に特定の精製媒体を連結して、対応する特定標的分子(特に生化学分子であり、抗体系タンパク質分子を含むがこれらに限定されない)の捕捉を実現する。また、生体磁性マイクロスフェアの単一の結合部位は、1本の線状ポリマー主鎖のみに共有結合することができるだけでなく、2本又は複数本の線状主鎖に共有結合することもでき、鎖堆積を引き起こして滞留割合を増大させないことが好ましい。
【0104】
好ましくは、一つの結合部位は1本の線状主鎖のみを引き出し、このとき線状主鎖に大きな活動空間を提供することができる。
【0105】
また好ましくは、1つの結合部位は2本の線状主鎖のみを引き出し、できるだけ線状主鎖に大きな活動空間を提供する。
【0106】
本発明の主な利点及び積極的な効果はさらに下記を含む:
(1)本発明の構造設計は、大量の分岐鎖特殊構造を携帯するポリマーによって磁性マイクロスフェア表面を被覆して、比表面積の制限を克服して大量の精製媒体結合部位を提供し、磁性マイクロスフェア表面に結合可能な精製媒体の数を複数倍、十複数倍、数十倍、百倍、数百倍、さらに千倍に拡大し、さらにハイスループットで標的物質との結合を実現し、好ましい標的物質はタンパク質系物質である。生体磁性マイクロスフェアが効率的に標的物質(例えば、標的タンパク質であり、抗体、抗体断片、又はその融合タンパク質を含むがそれらに限定されない)を混合系から磁性マイクロスフェアに捕捉させ、ハイスループットの結合を実現し、即ちハイスループットの分離を実現する。
【0107】
(2)ポリマー鎖自体の柔軟性を利用することができ、ポリマー鎖は反応精製混合系において柔軟に揺動することができ、精製媒体の活動空間を拡大させ、タンパク質に対する捕捉速度及び結合量を増大させ、標的物質の迅速で十分な結合を促進し、高効率、ハイスループットを実現する。
【0108】
(3)本発明の構造設計は、生体磁性マイクロスフェアが溶出する時に精製された標的物質(例えば、標的タンパク質であり、抗体、抗体断片、又はその融合タンパク質を含むがそれらに限定されない)の効率的な溶出を実現することができ、標的物質の滞留時間と滞留割合を効果的に減少させ、高効率と高収率を実現する。精製媒体はポリマーの分岐鎖末端に連結することができ、一つの方面では、ポリマーの構造は網状構造を形成せず、分岐鎖の堆積を引き起こさず、不連続空間と死角の発生を回避することができ、従来の網状構造による高滞留時間と高滞留割合を回避することができる。もう一つの方面では、ポリマーの分岐鎖はさらに空間間隔の作用を果たし、精製媒体を混合系に十分に分布させ、磁性マイクロスフェア表面及びポリマーの内部骨格から離れ、標的物質を捕捉する効率を増大させるだけでなく、さらに後続の溶出ステップの際に、標的物質の滞留時間及び滞留割合を効果的に減少させ、ハイスループット、高効率、高割合の分離を実現する。本発明の構造設計は線状主鎖の高い柔軟性を利用することができるだけでなく、また分岐鎖数の高倍率増幅の優位性を兼ね備え、高レート、ハイスループットの結合、高効率、高比率(高収率)の分離をよりよく実現する。
【0109】
(4)本発明の生体磁性マイクロスフェアの精製媒体(例えばアフィニティタンパク質)はアフィニティ複合体の方式により、非共有の強い結合力で磁気ビーズ外表面のポリマー分岐鎖末端に連結され、精製媒体(例えばアフィニティタンパク質)を更新、交換する必要がある場合、容易、迅速に精製媒体をマイクロスフェアから溶出させ、新たな精製媒体と再結合することができ、磁性マイクロスフェアの精製性能を迅速に回復させ、生体磁性マイクロスフェアを複数回再生して使用することができ、それにより分離精製コストを低減させる。
【0110】
(5)本発明の生体磁性マイクロスフェアは操作・使用がやすい。標的物質を結合した磁性マイクロスフェアを系から分離する時、操作しやすく、小さな磁石を利用するだけで磁性マイクロスフェアの凝集状態と位置を効率的に操作することができ、磁性マイクロスフェアが溶液における高速分散又は高速沈殿を実現して、標的物質(例えば抗体)の分離・精製を簡単で、迅速にさせ、高速遠心機などの大型実験設備を使用する必要がなく、分離・精製コストを大幅に低減させる。
【0111】
(6)本発明で提供される生体磁性マイクロスフェアは、用途が広く、精製媒体が選択可能性を有する。具体的な精製基質の種類に応じて、磁性マイクロスフェアシステムに柔軟に対応する精製媒体を搭載し、特定の標的分子(特にタンパク質系物質)の捕捉を実現することができる。例えば、ターゲット的にアフィニティタンパク質を選択し、一般的に、大規模に抗体、抗体断片、又はその融合タンパク質を含むがこれらに限定されない抗体系物質の分離・精製に使用する。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【
図1】本発明の第1の態様に提供される生体磁性マイクロスフェアの構造概略図である。ここで、磁性マイクロスフェア本体は、SiO
2で被覆されたFe
3O
4を例とし、且つビオチンを精製媒体として示す。図において、ポリマー分子数(4個)は簡明で模式的なものであるだけであり、磁性マイクロスフェアの外表面のポリマー分子数が4個に限定されることを意味するものではなく、製造過程における各原料の含有量に基づいて制御及び調整することができる。同様に、線状主鎖側端に吊り下げられた分岐鎖の数は、例示のみを目的としており、本発明のポリマー分子の側分岐鎖の数を制限することを意図するものではない。
【
図2】本発明の第4の態様に提供される生体磁性マイクロスフェアの構造概略図である。プロテインAを精製媒体として示し、プロテインAは「ビオチン-アビジン-プロテインAの方式」によってブラシ状構造の分岐鎖末端に結合される。ここで、生体磁性マイクロスフェア本体は、SiO
2で被覆されたFe
3O
4を例とする。図において、ポリマー分子数と主鎖側末端の分岐鎖数は、単に例示であり、本発明のポリマー分子の側分岐鎖の数を限定するものではない。
【
図3】本発明の第4の態様に提供される生体磁性マイクロスフェアの製造方法のフローチャートである。ここで、アミノ基修飾磁性マイクロスフェアAから生体磁性マイクロスフェアDまでの製造過程は第5の態様に提供される生体磁性マイクロスフェアの製造方法に対応する。
【
図4】生体磁性マイクロスフェアD(ビオチン磁気ビーズ)はプロテインA-eGFP-アビジンと結合する前と結合した後の実験結果である。RFU値測定の結果で、1回インキュベートした。生体外タンパク質合成システムによってプロテインA-eGFP-アビジン(SPA-eGFP-アビジン)を製造し、IVTT反応後の上清(IVTT上清と略記する)を得て、生体磁性マイクロスフェアDと結合する前と結合した後、溶液RFU値の変化を比較する。2種類のプロテインA-eGFP-アビジンにおいて、ここで、番号1に対応するアビジンはStreptavidinであり、番号2に対応するアビジンはTamvavidin2である。「Total」は結合前のIVTT上清RFU値(生体磁性マイクロスフェア処理前)に対応し、「Supernatant」は結合後のIVTT上清RFU値(生体磁性マイクロスフェア処理後)に対応する。
【
図5】生体磁性マイクロスフェアF(プロテインA磁気ビーズ)を製造する実験結果を示す。RFU値の測定結果であり、プロテインA-eGFP-アビジンは飽和結合した。生体磁性マイクロスフェアDを、繰り返してプロテインA-eGFP-アビジンを発現するIVTT反応後に得られた溶液(IVTT上清と略記)と結合させ、プロテインA-eGFP-アビジンで飽和結合された生体磁性マイクロスフェアFを得る。ここで、1に対応するアビジンはStreptavidinであり、2に対応するアビジンはTamvavidin2であり、supernatantは生体磁性マイクロスフェアで処理されていないIVTT上清に対応し、Flow-through1(フロースルー1)、Flow-through2(フロースルー2)、Flow-through3(フロースルー3)はそれぞれ磁性マイクロスフェアが連続的にアビジン-プロテインAとインキュベート(捕捉結合)し、溶出(脱結合放出)を3回に対応し、毎回同じ由来、同じ使用量のIVTT上清を用い、順次得られたフロースルー1、2、3である。
【
図6】生体磁性マイクロスフェアFが抗体を分離精製する実験結果であり、生体磁性マイクロスフェアFにおけるアビジンはStreptavidinである。生体磁性マイクロスフェアFは抗体IgG溶液とインキュベートした後に溶出し、抗体IgGを抗体溶液から捕捉して分離し、溶出して溶出液に放出し、対応する精製抗体含有溶出液の変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)試験結果である。ここで、レーン1、2、3、4はそれぞれSPA-磁性マイクロスフェアのカラムベッド体積が2マイクロリットル、6マイクロリットル、18マイクロリットル、54マイクロリットルである時の抗体溶出バンドに対応し、レーン5は陽性対照である市販の生工生物工学(上海)株式会社(以下、生工社を略称する)Protein Aアガロースのカラムの体積が7.5マイクロリットルの抗体溶出バンドである。ここで、MはMarker分子量マークーに対応する。
【
図7】生体磁性マイクロスフェアFの繰り返し使用の実験結果であり、生体磁性マイクロスフェアFにおけるアビジンはStreptavidinである。生体磁性マイクロスフェアFは抗体溶液とインキュベート(抗体結合)、洗浄、溶出(抗体放出)を行い、3回繰り返し、溶出液に対してSDS-PAGE電気泳動試験を行う結果である。ここで、レーン1、2、3、4はそれぞれSPA-磁性マイクロスフェアのカラムベッド体積が2マイクロリットル、6マイクロリットル、18マイクロリットル、54マイクロリットルである時の抗体溶出バンドに対応し、レーン5は陽性対照である市販の生工生物工学(上海)株式会社(以下、生工社を略称する)Protein Aアガロースのカラムの体積が7.5マイクロリットルの抗体溶出バンドである。ここで、MはMarker分子量マークーに対応する。
【
図8】生体磁性マイクロスフェアの再生実験結果であり、プロテインA-eGFP-Tamvavidin2を採用する蛍光相対値の測定結果であり。生体磁性マイクロスフェアDを繰り返してプロテインA-eGFP-アビジンのIVTT反応後に得られた溶液と結合し、プロテインA-eGFP-アビジンに飽和結合された生体磁性マイクロスフェアF(1)を得た。続いて当該プロテインA-eGFP-アビジンを生体磁性マイクロスフェアDから溶出し、2回目に当該生体磁性マイクロスフェアDを新鮮なプロテインA-eGFP-アビジンのIVTT反応後に得られた溶液と結合し、2回目にプロテインA-eGFP-アビジンに飽和結合された生体磁性マイクロスフェアF(2)を得た。上記ステップを繰り返して3回目にプロテインA-eGFP-アビジンに飽和結合された生体磁性マイクロスフェアF(3)を得た。ここで、supernatantは生体磁性マイクロスフェアで処理されていないIVTT上清に対応し、フロースルー1(Flow-through1)、フロースルー2(Flow-through2)、フロースルー2(Flow-through3)はそれぞれ磁性マイクロスフェアが連続的にアビジン-プロテインAと3回インキュベートし、毎回同じのIVTT上清(新しものを取る)を用い、順次得られたフロースルー1、2、3である。
【
図9】生体磁性マイクロスフェアの再生及び再生後に抗体を分離精製する実験結果である。プロテインA-eGFP-Tamvavidin2を採用した。プロテインA-eGFP-アビジンに飽和結合された生体磁性マイクロスフェアFを変性緩衝液で溶出し、溶出されたプロテインA-eGFP-アビジンを含む溶出液に対してSDS-PAGE試験を行った。レーン1、2、3はそれぞれ1回目に飽和結合された後に溶出し、2回目に飽和結合された後に溶出し、3回目に飽和結合された後に溶出し、それぞれ生体磁性マイクロスフェアFから溶出されたプロテインA-eGFP-アビジンを含む溶出液のバンドを示す。レーン4は、3回目に再生した生体磁性マイクロスフェアFと市販の牛新生児血清とをインキュベートした後、溶出バッファーで溶出した精製抗体タンパク質のバンドを示す。ここで、MはMarker分子量マークーに対応する。
【
図10】生体磁性マイクロスフェアG(Protein G磁気ビーズ、プロテインG磁気ビーズ)のプロテインGに対する担持量の試験結果であり、RFU値の測定結果である。生体磁性マイクロスフェアDとプロテインG-eGFP-アビジンのIVTT上清を3回インキュベートし、プロテインG-eGFP-アビジンに飽和結合された生体磁性マイクロスフェアGを得た。ここで、Supernatantは生体磁性マイクロスフェアで処理されていないIVTT上清に対応し、3回のインキュベートによりそれぞれ対応するフロースルー、即ちFT1(フロースルー1)、FT2(フロースルー2)、FT3(フロースルー3)を得た。
【
図11】生体磁性マイクロスフェアG(Protein G磁気ビーズ)による抗体の分離精製の実験結果である。生体磁性マイクロスフェアGは抗体IgG溶液とインキュベートした後に溶出し、抗体IgGを抗体溶液から捕捉して分離し、溶出して溶出液に放出し、対応する精製抗体含有溶出液はSDS-PAGE試験を行った。ここで、MはMarker分子量マークーに対応する。
【
図12】生体磁性マイクロスフェアH(antiEGFPナノ抗体付き磁気ビーズ)のeGFPタンパク質と結合するRFU値測定結果である。生体磁性マイクロスフェアHとeGFPタンパク質のIVTT上清とをインキュベートし、eGFPタンパク質を結合した。ここで、Totalは生体磁性マイクロスフェアで処理されていないIVTT上清に対応し、Flow-throughは1回インキュベートしたフロースルーと対応する。
【
図13】生体磁性マイクロスフェアH(antiEGFP磁気ビーズ)によるeGFPタンパク質の分離精製の実験結果である。生体磁性マイクロスフェアHはeGFPタンパク質溶液とインキュベートした後に溶出し、eGFPタンパク質を原液から捕捉して分離し、溶出して溶出液に放出し、対応する精製eGFPタンパク質を含む溶出液のSDS-PAGE試験結果である。ここで、MはMarker分子量マークーに対応する。
【発明を実施するための形態】
【0113】
以下は具体的な実施形態及び実施例を参照し、本発明をさらに説明し、同時に図面を参照してください。理解すべきものとして、これらの実施例は本発明を説明するだけで本発明の範囲を限定するものではない。以下の実施例において具体的な条件を明記しない実験方法は、優先的に、上記具体的な実施形態に基づいて案内された条件に基づき、続いて通常の条件、例えば「Sambrookら、分子クローニング:実験室マニュアル(New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)」、「無細胞タンパク質合成実験マニュアル」「Edited by Alexander S. Spirin and James R. Swartz. Cell-free protein synthesis:methods and protocols[M].2008」などの文献に記載された実験条件や、製造メーカが提案した条件に従う。
【0114】
特に説明しない限り、本発明において使用されるパーセンテージと部は、重量パーセンテージと重量部を指す。
【0115】
特に説明しない限り、本発明の実施例で使用される材料及び試薬は、すべて市販の製品である。
【0116】
本発明における温度単位は特に説明しない限り、いずれも摂氏度(℃)である。
【0117】
ヌクレオチド及び/又はアミノ酸配列表
SEQ ID No:1、プロテインAのヌクレオチド配列、長さは873塩基である。
SEQ ID No:2、tamavidin2のヌクレオチド配列、長さは423塩基である。
SEQ ID No:3、mEGFPのヌクレオチド配列、長さは714塩基である。
SEQ ID No:4、プロテインG抗体結合部位のヌクレオチド配列、長さは585塩基である。
SEQ ID No:5、抗eGFP抗体のアミノ酸配列、長さは117アミノ酸である。
SEQ ID No:6、mScarletのヌクレオチド配列、長さは693塩基である。
【0118】
名詞及び用語
以下は本発明が採用する部分関連する「名詞」、「用語」の意味についての解析又は説明であり、本発明をよりよく理解するためである。対応する解析又は説明は本発明の全文に適用し、下記にも適用し、上記にも適用する。本発明において引用文献に関する場合、関連用語、名詞、フレーズの引用文献における定義も併せて引用されるが、本発明における定義と矛盾する場合は、本発明における定義に準じる。引用文献中の定義が本発明中の定義と矛盾する場合、引用された成分、物質、組成物、材料、体系、配合、種類、方法、設備などに影響を与えるものではないことは、引用文献中で特定された内容に準ずる。
【0119】
磁気ビーズ:微小な粒径を有する強磁性又は強磁性化される可能なマイクロスフェアは、磁気ビーズと記述することもでき、直径サイズは0.1μm~1000μmが好ましい。本発明の磁気ビーズの例は、磁性マイクロスフェアA、磁性マイクロスフェアB、磁性マイクロスフェアC、生体磁性マイクロスフェアD(ビオチン磁気ビーズ)、生体磁性マイクロスフェアF(プロテインA磁気ビーズ)、生体磁性マイクロスフェアG(プロテインG磁気ビーズ)、生体磁性マイクロスフェアH(antiEGFPナノ抗体付き磁気ビーズ)、生体磁性マイクロスフェアK(抗体磁気ビーズ)を含むがそれらに限定されない。
【0120】
磁性マイクロスフェア本体:修飾された部位を有する磁気ビーズ(結合可能な部位を有する磁性マイクロスフェア)である。例えば、シリカ被覆磁性材料粒子、より具体的にはアミノ化されたシリカ被覆磁性材料粒子である。
【0121】
磁性マイクロスフェアA:アミノ基修飾磁性マイクロスフェアである。
【0122】
磁性マイクロスフェアB:炭素-炭素二重結合を有する磁性マイクロスフェアである。
【0123】
磁性マイクロスフェアC:アクリル系ポリマー修飾磁性マイクロスフェアである。
【0124】
ビオチンビーズ:ビオチン又はビオチン類似体が結合された磁気ビーズであり、アビジン型タグ付き物質に特異的に結合することができる。その利点は、標的タンパク質をアビジン又はアビジンのタンパク質変異体で標識した後、融合タンパク質の方式で一体化発現することができ、使用方式が簡便である。ビオチンマイクロスフェアとも呼ばれる。ここのビオチン又はビオチン類似体は、精製媒体とすることができ、連結要素とすることもできる。
【0125】
生体磁性マイクロスフェアD:ビオチン又はビオチン類似体が結合された磁性マイクロスフェアであり、ビオチン磁気ビーズである。ここのビオチンは、精製媒体とすることができ、連結要素とすることもできる。
【0126】
アビジンビーズ:アビジン又はアビジン類似体が結合された磁気ビーズである。ビオチン型タグ付き物質に特異的に結合することができる。アビジン磁性マイクロスフェアとも呼ばれる。
【0127】
生体磁性マイクロスフェアF:プロテインAが結合された磁性マイクロスフェアであり、プロテインA磁気ビーズである。ビオチン修飾生体磁性マイクロスフェアDとアビジン-プロテインA共有結合複合体Eとが結合して得られる。
【0128】
アフィニティタンパク質磁気ビーズ:アフィニティタンパク質が結合された磁性マイクロスフェアであり、抗体類物質の分離精製に用いることができる。アフィニティタンパク質マイクロスフェアとも呼ばれる。
【0129】
生体磁性マイクロスフェアG:プロテインGが結合された磁性マイクロスフェアであり、プロテインG磁気ビーズである。例えば、ビオチン修飾生体磁性マイクロスフェアDとアビジン-プロテインG共有結合複合体とが結合して得られる。
【0130】
生体磁性マイクロスフェアK:抗体型タグが結合された磁気ビーズである。それに特異的に結合可能な標的物質の分離精製に用いることができる。抗体磁性マイクロスフェア又は抗体磁気ビーズとも呼ばれる。
【0131】
ナノ抗体磁気ビーズ:ナノ抗体が結合された磁気ビーズである。それに特異的に結合可能な標的物質の分離精製に用いることができる。ナノ抗体磁性マイクロスフェアとも呼ばれる。
【0132】
生体磁性マイクロスフェアH:ナノ抗体磁気ビーズであり、ナノ抗体antiEGFPが結合された磁性マイクロスフェアである(antiEGFP磁気ビーズ)。アビジン-antiEGFP共有結合複合体とが結合して得られる。
【0133】
ポリマー:本発明では広義にはオリゴマー及び高分子を含み、少なくとも3つの構造単位を有し、又は分子量が少なくとも500Daである(前記分子量は適切な特徴付け方式、例えば数平均分子量、重量平均分子量、粘度平均分子量を採用することができる)。
【0134】
ポリオレフィン鎖:炭素原子のみによって共有結合してなるヘテロ原子を含まないポリマー鎖を指す。本発明では、櫛状構造におけるポリオレフィン主鎖、例えば、アクリル系ポリマーの線状主鎖が主に関与する。
【0135】
アクリル系ポリマー:-C(COO-)-C-単位構造を有するホモポリマー又はコポリマーを指し、前記共重合体の共重合形態は特に制限されず、線状主鎖及び計量された側基COO-を提供することができることが好ましく、前記アクリル系ポリマーの線状主鎖には、ヘテロ原子が含まれていてもよい。ここで、炭素-炭素二重結合には、重合反応の進行を妨げない限り、他の置換基、例えば、メチル置換基(-CH3C(COO-)-C-に対応)が存在していてもよい。ここで、COO-の存在形式は-COOHであってもよく、塩形式(例えばナトリウム塩)であってもよく、ギ酸エステルの形式(好ましくはギ酸アルキルエステルであり、例えばギ酸メチル-COOCH3、ギ酸エチル-COOCH2CH3、ギ酸ヒドロキシエチル-COOCH2CH2OH)などであってもよい。-C(COO-)-C-単位構造の具体的な構造形式は、-CH(COOH)-CH2-、-CH(COONa)-CH2-、-MeC(COOH)-CH2-、-MeC(COONa)-CH2-、-CH(COOCH3)-CH2-、-CH(COOCH2CH2OH)-CH2-、-MeC(COOCH3)-CH2-、-MeC(COOCH2CH2OH)-CH2-などのいずれか、又は任意の組み合わせを含むがそれらに限定されない。ここで、Meはメチル基である。1つのポリマー分子の線状主鎖には、1種のみの上記単位構造が含まれていてもよいし(ホモポリマーに対応)、2種又は2種以上の単位構造が含まれていてもよい(コポリマーに対応)。
【0136】
アクリル系モノマー分子:上記アクリル系ポリマーの合成に用いられるモノマー分子であり、C(COO-)=Cの基本構造を有し、例えば、CH(COOH)=CH2、CH(COONa)=CH2、CH3C(COOH)=CH2、CH3C(COONa)=CH2、CH(COOCH3)=CH2、CH(COOCH2CH2OH)=CH2、CH3C(COOCH3)=CH2、CH3C(COOCH2CH2OH)=CH2などが挙げられる。
【0137】
分岐鎖:本発明では、分岐点に連結し、独立した末端を有する鎖である。本発明における分岐鎖、側分岐鎖は同じ意味を有し、交換して使用することができる。本発明において、分岐鎖とは、ポリマーの線状主鎖に結合する側鎖又は側基を意味し、分岐鎖の長さ、大きさは特に制限されず、カルボキシル基、水酸基、アミノ基などの短い分岐鎖であってもよいし、原子数の多い長い分岐鎖であってもよい。分岐鎖の構造は特に限定されず、直鎖状であってもよく、分岐構造を有するものであってもよい。分岐鎖は、他の側鎖や側基を含んでいてもよい。分岐鎖の数、長さ、大きさ、再分岐の程度などの構造的特徴は、できるだけ網状構造を形成しなく、分岐鎖の堆積を招くことなく滞留割合を増大させないようにすることが好ましく、この場合には線状主鎖の柔軟な揺動を円滑に発揮することができる。
【0138】
分岐骨格:分岐骨格は、骨格原子が共有結合又は非共有結合の方式で順次連結されたものであり、分岐鎖末端からポリマーの主鎖に順次連結されている。分岐鎖骨格によって、ポリマー末端の官能基がポリマーの主鎖に連結されている。分岐鎖骨格と主鎖との交差点は、即ち分岐鎖を引き出す分岐点である。例えば、精製媒体とポリマー線状主鎖との間の分岐鎖骨格は、アフィニティタンパク質を精製媒体とする例では、ポリマーの分岐鎖末端のアフィニティタンパク質は、アビジン、ビオチン、プロピレンジアミン残基(-NH-CH2CH2CH2-NH-)、カルボニル基(カルボキシル基がアミド化反応した残基)を順次に介してポリマーのポリオレフィン主鎖に連結することができる。
【0139】
分岐鎖末端は、全ての分岐鎖の末端を含む。線状主鎖に対しては、磁性マイクロスフェア本体に固定された一端のほか、線状主鎖の他端は必ず一つの分岐点に連結されるため、本発明の「分岐鎖末端」の範囲に広く含まれる。したがって、本発明の磁性マイクロスフェア本体の外表面に連結されたポリマーは、少なくとも1つの分岐点を有する。
【0140】
ポリマー分岐鎖の官能基:反応活性を有し、又は活性化された後に反応活性を有し、他の原料の反応性基と共有結合反応を直接に発生することができ、又は活性化された後に他の原料の反応性基と共有結合反応を発生し、さらに共有結合を生成して連結することを意味する。ポリマー分岐鎖の官能基は、好ましい一実施形態が特異的結合部位である。
【0141】
直接連結方式とは、スペーサ原子を介さずに直接相互作用を起こす連結方式である。前記相互作用の形式は、共有結合方式、非共有結合方式、又はそれらの組み合わせ方式を含むがそれらに限定されない。
【0142】
間接連結方式は、少なくとも一つの連結要素を介して形成された連結方式であり、この場合少なくとも一つのスペーサ原子に関する。前記連結要素は、連結ペプチド、アフィニティ複合体連結などを含むがそれらに限定されない。
【0143】
固定、~に固定する、~が固定される、~に固定されるなどの「固定」方式は、共有結合の結合方式を指す。
【0144】
付き、~が連結される、~に連結する、~と連結する、結合、捕捉、キャプチャーなどの「連結」/「結合」方式は、特に限定されず、共有結合方式、非共有結合方式などの方式を含むがこれらに限定されない。
【0145】
共有結合方式:共有結合で直接結合する方式である。前記共有結合方式は動的共有結合方式を含むがこれに限定されず、前記動的共有結合方式とは、動的共有結合の直接結合方式である。
【0146】
共有結合:アミド結合、エステル結合などの一般的な共有結合のほか、可逆性を有する動的共有結合も含む。前記共有結合には、動的共有結合が含まれる。動的共有結合は可逆性を有する化学結合であり、イミド結合、ヒドラゾン結合、ジスルフィド結合、又はそれらの組み合わせを含むがそれらに限定されない。化学分野の技術者はその意味を理解することができる。
【0147】
非共有結合方式:配位結合、アフィニティ複合体相互作用、静電吸着、水素結合、π-πオーバーラップ作用、疎水性相互作用などの超分子相互作用を含むがそれらに限定されない。
【0148】
超分子相互作用:配位結合、アフィニティ複合体相互作用、静電吸着、水素結合、π-πオーバーラップ作用、疎水性相互作用、及びそれらの組み合わせを含むがそれらに限定されない。
【0149】
連結要素は、連結基とも呼ばれ、2つ又は2つ以上の非隣接基を連結するための要素を意味し、少なくとも1つの原子を含む。前記連結要素と隣接基との間の連結方式は、特に限定されず、共有結合方式、非共有結合方式などの方式を含むがそれらに限定されない。前記連結要素の内部連結方式は、特に限定されず、共有結合方式、非共有結合方式などの方式を含むがそれらに限定されない。
【0150】
共有連結要素:連結要素の一端から他端までのスペーサ原子の間はいずれも共有結合方式で連結される。
【0151】
特異的結合部位:本発明において、前記特異的結合部位とは、ポリマー分岐鎖上の結合機能を備えた基又は構造部位であり、当該基又は構造部位はある特定の標的物質に対する特異的認識、結合機能を備え、特異的結合は配位、錯合、静電気力、ファンデルワールス力、水素結合、共有結合などの結合作用又は他の相互作用によって実現することができる。
【0152】
共有結合複合体:共有結合により直接又は間接的に連結して得られた化合物であり、共有結合物とも呼ばれる。
【0153】
アビジン-精製媒体共有結合複合体:共有結合方式で連結された化合物であり、一端がアビジン、他端が精製媒体であり、両者は共有結合を介して直接連結され、又は共有連結要素を介して間接的に連結される。
【0154】
アビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体E:アフィニティタンパク質を精製媒体とするアビジン-精製媒体共有結合複合体であり、又はアビジン-アフィニティタンパク質複合体Eと呼ばれ、共有結合の方式で連結された化合物であり、一端がアビジン、他端がアフィニティタンパク質であり、両者は共有結合で直接連結され、又は共有結合連結基を介して間接的に連結される。前記共有結合連結方式は、共有結合、連結ペプチドなどを含むがこれらに限定されない。例えば、ストレプトアビジン-プロテインA複合体、ストレプトアビジン-プロテインAの融合タンパク質、ストレプトアビジン-増強型緑色蛍光タンパク質-プロテインAの融合タンパク質(Protein A-eGFP-Streptavidin)、Protein A-eGFP-Tamvavidin2、Protein G-eGFP-アビジン融合タンパク質、Protein G-eGFP-Tamvavidin2などである。
【0155】
アフィニティ複合体:2つ又は2つ以上の分子が特異的な結合作用により、極めて強い親和力により形成される非共有結合性複合体であり、例えば、ビオチン(又はビオチン類似体)とアビジン(又はアビジン類似体)との相互作用による複合体である。ビオチンとアビジンとのアフィニティ複合体の結合方式は、当業者に周知である。
【0156】
精製基質は、標的物質とも呼ばれ、混合系から分離されるものである。本発明における精製基質は特に制限されないが、精製基質がタンパク質系物質(この場合、標的タンパク質ともいう)であることが好ましい。
【0157】
精製媒体は、精製基質と特異的に結合することができ、それにより精製基質を捕捉し、さらに精製基質を混合系から分離することができる。本発明のポリマーの分岐鎖末端に連結された精製媒体は、精製基質と結合する機能を有する機能要素である。精製媒体が共有結合方式で隣接基に連結される場合、精製基質と結合する機能を有する官能基と表現する。
【0158】
アフィニティタンパク質:標的タンパク質と特異的に結合し、且つ比較的高い親和結合力を有するものであり、例えば、プロテインA、プロテインG、プロテインL、変性プロテインA、変性プロテインG、変性プロテインLなどが挙げられる。
【0159】
プロテインA:Protein A、42kDaの表面タンパク質であり、最初に黄色ブドウ球菌の細胞壁に発見される。それはspa遺伝子によってコードされ、その調節がDNAトポロジー構造、細胞浸透圧及びArlS-ArlRと呼ばれる二成分システムによって制御される。免疫グロブリンと結合する能力のため、生化学分野に関する研究に用いられている。抗体Fcと特異的に結合することができ、主に抗体精製に用いられ、任意の市販品から選択することができる。本発明でいわゆる「Protein A」、「SPA」、及び「プロテインA」は交換可能である。
【0160】
プロテインG:Protein G、免疫グロブリン結合タンパク質であって、C群とG群連鎖球菌で発現され、プロテインAと類似するが、異なる結合特異性を有する。それは65kDa(G148プロテインG)及び58kDa(C40プロテインG)の細胞表面タンパク質であり、抗体又はある機能タンパク質と特異的に結合することにより、主に抗体精製に用いられ、任意の市販品から選択することができる。
【0161】
プロテインL:Protein L、kappa(κ)軽鎖を含む抗体に特異的に結合するものに限られる。ヒト及びマウスでは、ほとんどの抗体分子はκ軽鎖と残りのλ軽鎖を含む。主に抗体精製に用いられ、任意の市販品から選択することができる。
【0162】
ビオチン:biotin、アビジンと結合することができ、且つ結合力が強く、特異性に優れる。
【0163】
アビジン:avidin、ビオチンと結合することができ、且つ結合力が強く、特異性に優れ、例えばストレプトアビジン(Streptavidin、SAと略称する)、その類似体(例えばTamvavidin2、Tam2と略称する)、その変性生成物、その変異体などである。
【0164】
ビオチン類似体とは、アビジンと「アビジン-ビオチン」に類似する特異的結合を形成し得る非ビオチン分子であり、好ましくはポリペプチド又はタンパク質であり、例えばIBA社が開発したStrep-tag[登録商標]シリーズで使用されるWSHPQFEK(SEQ ID No:9)配列を含むポリペプチド(例えばStrep[登録商標]II、Twin-Strep-tag[登録商標]など)、及び類似のWNHPQFEK配列(SEQ ID No:10)を含むポリペプチドである。WNHPQFEK(SEQ ID No:10)は、WSHPQFEK(SEQ ID No:9)の変異配列とみなすことができる。
【0165】
アビジン類似体とは、アビジンと「アビジン-ビオチン」に類似する特異的結合を形成し得る非アビジン分子であり、好ましくはポリペプチド又はタンパク質である。前記アビジン類似体は、アビジンの誘導体、アビジンの相同性物質(ホモログ)、アビジンの変体などを含むがこれらに限定されない。前記アビジン類似体は、例えばTamavidin1、Tamavidin2などである(文献:FEBS Journal,2009,276,1383-1397を参照)。
【0166】
ビオチン型タグ:前記ビオチン型タグは、ビオチン、アビジンと結合可能なビオチン類似体、アビジン類似体と結合可能なビオチン類似体、及びそれらの組み合わせの単位を含む。ビオチン型タグは、アビジン、アビジン類似体、又はその組み合わせに特異的に結合することができる。そのため、アビジン型タグで標識されたタンパク質系物質を分離精製することができるがこれらに限定されない。
【0167】
アビジン型タグ:前記アビジン型タグは、アビジン、ビオチンと結合可能なアビジン類似体、ビオチン類似体と結合可能なアビジン類似体、及びそれらの組み合わせの単位を含む。アビジン型タグは、ビオチン、ビオチン類似体、又はその組み合わせに特異的に結合することができる。そのため、ビオチン型タグで標識されたタンパク質系物質を分離精製することができるがこれらに限定されない。
【0168】
ポリペプチド型タグ:本発明のポリペプチド型タグとは、ポリペプチドタグ又はポリペプチドタグの誘導体を含むタグである。前記ポリペプチド型タグは、アミノ酸単位で構成されたポリペプチド構造のタグであり、前記アミノ酸は天然アミノ酸であってもよく、非天然アミノ酸であってもよい。
【0169】
タンパク質型タグ:本発明のタンパク質型タグは、タンパク質タグ又はタンパク質タグの誘導体を含むタグである。前記タンパク質型タグは、アミノ酸単位で構成されたタンパク質構造のタグであり、前記アミノ酸は天然アミノ酸であってもよく、非天然アミノ酸であってもよい。
【0170】
抗体型タグ:本発明の抗体型タグとは、抗体系物質を含むタグであり、抗原などの標的物質に特異的に結合することができる。前記抗体型タグの例として、さらにeGFPタンパク質に特異的に結合できるantiEGFPナノ抗体を含む。
【0171】
抗原型タグ:本発明の抗原型タグとは、抗原系物質を含むタグであり、抗体系物質に特異的に結合できる。
【0172】
ペプチドとは、2つ又は2つ以上のアミノ酸がペプチド結合で連結された化合物である。本発明において、ペプチドとペプチドセグメントは同等の意味を有し、交換して使用することができる。
【0173】
ポリペプチドは、10~50個のアミノ酸で構成されるペプチドである。
【0174】
タンパク質は、50個以上のアミノ酸で構成されるペプチドである。融合タンパク質もタンパク質である。
【0175】
ポリペプチドの誘導体、タンパク質の誘導体:本発明に係るいずれかのポリペプチド又はタンパク質は、特別な説明がない限り(例えば具体的な配列を指定する)、その誘導体も含むと理解すべきである。前記ポリペプチドの誘導体、タンパク質の誘導体は、少なくともC端含有タグ、N端含有タグ、C端及びN端含有タグを含む。ここで、C端はCOOH端を指し、N端はNH2端を指し、当業者はその意味を理解する。前記タグはポリペプチドタグであってもよく、タンパク質タグであってもよい。いくつかのタグの例として、ヒスチジンタグ(一般的に少なくとも5個のヒスチジン残基を含み、例えば6×His、HHHHHH、また例えば、8×Hisタグである)、Glu-Glu、c-mycエピトープ(EQKLISEEDL、SEQ ID No:25)、FLAG[登録商標]タグ(DYKDDDDK、SEQ ID No:19)、プロテインC(EDQVDPRLIDGK、SEQ ID No:26)、Tag-100(EETARFQPGYRS、SEQ ID No:27)、V5エピトープラベル(V5 epitope、GKPIPNPLLGLDST、SEQ ID No:28)、VSV-G(YTDIEMNRLGK、SEQ ID No:29)、Xpress(DLYDDDDK、SEQ ID No:30)、ヘマグルチニン(hemagglutinin、YPYDVPDYA、SEQ ID No:24)、β-ガラクトシダーゼ(β-galactosidase)、チオレドキシン(thioredoxin)、ヒスチジン部位チオレドキシン(His-patch thioredoxin)、IgG結合ドメイン(IgG-binding domain)、インテイン-キチン結合ドメイン(intein-chitin binding domain)、T7遺伝子10(T7 gene 10)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(glutathione-S-transferase、GST)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、マルトース結合タンパク質(maltose binding protein、MBP)などを含むがそれらに限定されない。
【0176】
タンパク質系物質とは、本発明において、広義にはポリペプチド又はタンパク質断片を含む物質である。例えば、ポリペプチド誘導体、タンパク質誘導体、糖タンパク質などもタンパク質系物質の範囲に含まれる。
【0177】
抗体、抗原:本発明に係る抗体、抗原は、特に説明しない限り、そのドメイン、サブユニット、断片、一本鎖、一本鎖断片、変体を含むことを理解すべきである。例えば、「抗体」に関して、特に説明しない限り、その断片、重鎖、軽鎖が欠失した重鎖(例えばナノ抗体)、相補決定領域(CDR)などを含む。例えば、「抗原」に関して、特に説明しない限り、さらにエピトープ(epitope)、エピトープペプチドを含む。
【0178】
抗体系物質とは、本発明において、抗体-抗原特異的結合作用を発生できるものであれば、抗体、抗体の断片、抗体の一本鎖、一本鎖の断片、抗体融合タンパク質、抗体断片の融合タンパク質など、及びその誘導体と変体を含むがこれらに限定されない。
【0179】
抗原系物質とは、本発明においては、当業者に知られている抗原、及び抗原機能を発揮し、抗体系物質に特異的に結合する物質を含むがこれらに限定されない。
【0180】
抗タンパク質抗体:あるタンパク質と特異的に結合できる抗体を指す。
【0181】
抗蛍光タンパク質のナノ抗体:ある蛍光タンパク質と特異的に結合できるナノ抗体を指す。
【0182】
相同性(homology)は、特に説明しない限り、少なくとも50%の相同性を有するものを指し、好ましくは少なくとも60%の相同性、より好ましくは少なくとも70%の相同性、より好ましくは少なくとも75%の相同性、より好ましくは少なくとも80%の相同性、より好ましくは少なくとも85%の相同性、より好ましくは少なくとも90%の相同性であり、また例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の相同性である。説明対象として、例えば、本発明の説明書に言及したΩ配列の相同配列が挙げられる。ここの相同性は配列上の類似性を意味し、数値上は類似性(identity)と等価であってもよい。
【0183】
ホモログとは、相同性配列を有する物質を指し、相同体とも呼ばれる。
【0184】
「変体」、variantは、異なる構造(微小変異を行うことを含むがこれに限定されるものではない)を有するが、本来の機能又は性能を保持又は基本的に保持できる物質を指す。前記変体は、核酸変体、ポリペプチド変体、タンパク質変体を含むがこれらに限定されない。関連する変体を取得する方式は、構造ユニットの組換え、削除又は欠失、挿入、シフト、置換などを含むがこれらに限定されない。前記変体は、修飾された生成物、遺伝子改造生成物、融合生成物などを含むがこれらに限定されない。遺伝子改造生成物を得るために、遺伝子改造を行う方式は、遺伝子組換え(遺伝子組換え生成物に対応)、遺伝子削除又は欠失、挿入、シフト、塩基置換などを含むがそれらに限定されない。遺伝子変異生成物は、遺伝子変異体とも呼ばれ、遺伝子改造生成物の一種類に属する。前記変体の好ましい一形態は、ホモログである。
【0185】
修飾された生成物:化学修飾生成物、アミノ酸修飾物、ポリペプチド修飾物、タンパク質修飾物などを含むがそれらに限定されない。前記化学修飾生成物は有機化学、無機化学、高分子化学などの化学合成方法を用いて改造された生成物である。修飾方法としては、イオン化、塩化、脱塩化、錯化、解錯化、キレート化、解キレート化、付加反応、置換反応、除去反応、挿入反応、酸化反応、還元反応、翻訳後修飾などの修飾方法が挙げられ、具体的には、酸化、還元化、メチル化、脱メチル化、アミノ化、カルボキシル化、硫化などの修飾方法が挙げられる。
【0186】
「変異体」、mutantは、本発明において特に説明しない限り、本来の機能又は性能を保持又は基本的に保持できる変異生成物を指し、変異部位の数に特に制限はない。前記変異体は遺伝子変異体、ポリペプチドの変異体、タンパク質の変異体を含むがこれらに限定されない。変異体は、変体の一種である。関連する変異体を取得する方式は、構造ユニットの組換え、削除又は欠失、挿入、シフト、置換などを含むがこれらに限定されない。遺伝子の構造単位は塩基であり、ポリペプチド及びタンパク質の構造単位はアミノ酸である。遺伝子変異のタイプは、遺伝子削除又は欠失、挿入、シフトコード、塩基置換などを含むがこれらに限定されない。
【0187】
「変性」生成物は、本発明の誘導体、修飾された生成物、遺伝子改造生成物、融合生成物などを含むがこれらに限定されず、本来の機能又は性能を保持することができ、またその機能又は性能を最適化、変更することができる。
【0188】
溶出液(標的タンパク質を例とする):標的タンパク質を溶出するものであり、溶出した後、標的タンパク質は溶出液に存在する。
【0189】
洗浄液(標的タンパク質を例とする):不純物タンパク質を溶出するものであり、溶出した後、不純物タンパク質は洗浄液によって運び去られる。
【0190】
結合力:結合能力であり、例えば磁性マイクロスフェアとあるタンパク質の結合能力である。
【0191】
親和性作用力:濃度勾配の異なる基質溶液を用い、磁性マイクロスフェアが50%の基質のみを結合する場合の基質濃度である。
【0192】
IVTT:In vitro transcription and translation、生体外転写と翻訳システムであり、即ち無細胞タンパク質合成系である。無細胞タンパク質合成系は、外来の標的mRNA又はDNAをタンパク質合成テンプレートとし、人工制御によってタンパク質合成に必要な基質及び転写、翻訳関連タンパク質因子などの物質を追加し、標的タンパク質の合成を実現することができる。本発明の無細胞タンパク質合成系は特に制限されず、酵母細胞抽出物、大腸菌細胞抽出物、哺乳動物細胞抽出物、植物細胞抽出物、昆虫細胞抽出物に基づく無細胞タンパク質合成系のいずれか又は任意の組み合わせであってもよい。
【0193】
本発明において、「翻訳関連酵素」、translation-related enzymes(TRENs)とは、核酸テンプレートからタンパク質生成物の合成過程に必要な酵素物質を意味し、翻訳過程に必要な酵素に限定されるものではない。核酸テンプレート:遺伝テンプレートとも呼ばれ、タンパク質合成テンプレートとする核酸配列を指し、DNAテンプレート、mRNAテンプレート及びそれらの組み合わせを含む。
【0194】
フロースルー:磁気ビーズと標的タンパク質を含む系とをインキュベートした後に収集された清液であり、そのうち磁気ビーズに捕捉されない残りの標的タンパク質を含む。例えば、実施例2では、アビジン-アフィニティタンパク質の複合体を含む溶液を、アフィニティカラムに加え、カラムを通過した後に出た溶液であり、例えばフロースルー1、フロースルー2及びフロースルー3は、それぞれ1回目に流出した溶液、2回目に流出した溶液及び3回目に流出した溶液を示す。
【0195】
RFUは、相対蛍光単位値(Relative Fluorescence Unit)である。
【0196】
eGFP:増強型緑色蛍光タンパク質(enhanced green fluorescence protein)である。本発明において、前記eGFPは広く野生型及びその変体を含み、野生型及びその変異体を含むがそれらに限定されない。
【0197】
mEGFP:eGFPのA206K変異体である。
【0198】
「任意に」は、本発明の技術的解決手段を実現できることを選択基準として、あってもなくてもよいことを示す。本発明において、「任意の方式」とは、本発明の技術思想を適用すれば、本発明を実施することができることを示す。
【0199】
本発明において、「好ましい(例えば、prefer、preferable、preferably、preferredなど)」、「好ましくは」、「より好ましい」、「さらに好ましい」、「最も好ましい」などの好ましい実施形態は、発明の範囲や保護範囲を何ら限定するものではなく、本発明の範囲や実施形態を限定するものではなく、いくつかの実施形態を例示したに過ぎない。
【0200】
本発明の説明において、「好ましい一つ」、「好ましい一形態」、「好ましい一実施形態」、「好ましい一例」、「好ましい例」、「好ましい一実施方式では」、「いくつかの好ましい例では」、「いくつかの好ましい形態では」、「~が好ましい」、「好ましい」、「好ましくは」、「より好ましい」、「より好ましく」、「さらに好ましい」、「最も好ましい」などの好ましい形態、及び「一実施形態」、「一形態」、「例示」、「具体例」、「例が挙げられる」、「例として」、「例えば」、「例」、「など」などの模式的な列挙方式は、同様に発明の範囲及び保護範囲に対するいかなる意味での制限を構成せず、且つ各形態に説明された具体的な特徴は本発明の少なくとも一つの具体的な実施形態に含まれる。本発明において、各形態で説明された具体的な特徴はいずれかの一つ又は複数の具体的な実施形態において適切な形態で結合することができる。本発明において、各好ましい形態に対応する技術的特徴又は技術的解決手段は任意の適切な形態で結合することができる。
【0201】
本発明において、「それらの任意の組み合わせ」とは、数的には「1より大きい」、範囲的には「いずれか1つを選択してもよいし、又は少なくとも2つからなるグループを選択してもよい」。
【0202】
本発明において、「一つ又は複数」、「一種又は複種」など「1又は複数」の説明は、「少なくとも一つ」、「少なくとも一種」、「それらの組み合わせ」、「又はその組み合わせ」、「及びその組み合わせ」、「又はその任意の組み合わせ」、「及びその任意の組み合わせ」などと同じ意味を有し、交換して使用することができ、数量が「1」又は「1以上」に等しいことを示す。
【0203】
本発明において、「又は/及び」を採用し、「及び/又は」は「任意に一つ又はその組み合わせ」ことを表し、その少なくとも一つを示す。
【0204】
本発明に記載の「通常」、「常規」、「一般」、「常に」、「往往」などの方式で説明された従来の技術的手段は、いずれも本発明の内容の参考として引用され、特に説明しない限り、本発明の一部の技術的特徴の好ましい一形態と見なすことができ、且つ注意すべきことは、発明の範囲及び保護範囲に対するいかなる意味での制限を構成しないことである。
【0205】
本発明に言及された全ての文献及びそれらの文献から直接又は間接的に引用された文献は、いずれも本出願において参考として引用され、各文献が単独で参考として引用されるようである。
【0206】
理解すべきものとして、本発明の範囲内において、本発明の上記各技術的特徴と以下(実施例に限定されるものを含むがそれらに限定されない)に具体的に説明される各技術的特徴との間はいずれも互いに組み合わせることができ、それにより新たな又は好ましい技術的解決手段を構成し、本発明を実施することができるだけである。紙面の都合上、そのすべてを繰り返すことはしない。
【0207】
1.本発明の第1の態様は、生体磁性マイクロスフェアを提供し、前記生体磁性マイクロスフェアは、磁性マイクロスフェア本体を含み、前記磁性マイクロスフェア本体の外表面には、線状主鎖及び分岐鎖を有するポリマーを少なくとも1種有し、前記線状主鎖の一端が磁性マイクロスフェア本体の外表面に固定され、ポリマーの他端は磁性マイクロスフェア本体の外表面から遊離し、前記磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端には、ビオチン又はビオチン類似体が連結されている。
【0208】
本発明の第1の態様の生体磁性マイクロスフェアは、ビオチン磁性マイクロスフェア又はビオチン磁気ビーズとも呼ばれる。
【0209】
前記生体磁性マイクロスフェアの典型的な構造を
図1に示す。
【0210】
前記ビオチン又はビオチン類似体は、精製媒体とすることができるだけでなく、連結要素としてさらに他のタイプの精製媒体と連結することもできる。
【0211】
現在一般的に使用されるゲル系多孔質材料、例えばアガロース系に比べて、大部分の市販マイクロスフェアはアガロース系材料を採用する。多孔質材料は豊富な細孔構造を有し、それにより大きな比表面積を提供し、精製基質に高い結合量を提供するが、それに応じて、タンパク質を吸着又は溶出する時に、タンパク質分子が多孔質材料内部の複雑な細孔通路に追加的に進入又は脱出する必要があり、より多くの時間がかかり、また滞留しやすい。それに比べて、本発明の提供する標的タンパク質捕捉用の結合部位は生体磁性マイクロスフェアの外表面空間のみを利用し、且つ吸着及び溶出を行う時、複雑な網状通路を経る必要がなく、溶出液に直接放出することができ、それにより溶出時間を大幅に低減させ、溶出効率を向上させ、滞留割合を低減させ、精製収率を向上させる。
【0212】
1.1.磁性マイクロスフェア本体
本発明において、前記磁性マイクロスフェア本体の体積は任意の実行可能な粒径サイズであってもよい。
【0213】
比較的小さい粒子サイズは、磁性マイクロスフェアが混合系において懸濁することを実現することに役立ち、タンパク質生成物とより十分に接触し、タンパク質生成物の捕捉効率及び結合率を向上させる。いくつかの好ましい態様では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径サイズは、0.1μm、0.15μm、0.2μm、0.25μm、0.3μm、0.35μm、0.4μm、0.45μm、0.5μm、0.55μm、0.6μm、0.65μm、0.7μm、0.75μm、0.8μm、0.85μm、0.9μm、0.95μm、1μm、1.5μm、2μm、2.5μm、3μm、3.5μm、4μm、4.5μm、5μm、5.5μm、6μm、6.5μm、7μm、7.5μm、8μm、8.5μm、9μm、9.5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、55μm、60μm、65μm、70μm、75μm、80μm、85μm、90μm、95μm、100μm、150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm、450μm、500μm、550μm、600μm、650μm、700μm、750μm、800μm、850μm、900μm、950μm、1000μmから選択されるいずれの一つの粒子径スケール又はいずれのの2つの粒子径スケール(偏差は±25%、±20%、±15%、±10%であってもよい)の間の範囲である。特に説明がない限り、前記直径サイズとは平均サイズを指す。
【0214】
前記磁性マイクロスフェア本体の体積は任意の実行可能な粒径サイズであってもよい。
【0215】
いくつかの好ましい形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.1~10μmから選択される。
【0216】
いくつかの好ましい形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.2~6μmから選択される。
【0217】
いくつかの好ましい形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.4~5μmから選択される。
【0218】
いくつかの好ましい形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.5~3μmから選択される。
【0219】
いくつかの好ましい形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.2~1μmから選択される。
【0220】
いくつかの好ましい形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.5~1μmから選択される。
【0221】
いくつかの好ましい形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の平均直径は、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、950nm、1000nmから選択され、前記近似数は±25%、±20%、±15%、±10%であってもよい。
【0222】
いくつかの好ましい形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は1μm~1mmから選択される。
【0223】
いくつかの好ましい形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は、例えば1μm、10μm、100μm、200μm、500μm、800μm、1000μmであり、偏差範囲は±25%、±20%、±15%、±10%である。
【0224】
異なる磁性材料は異なるタイプの活性化部位を提供することができ、精製媒体と結合する方式の違いを生成することができ、且つ磁石で分散及び沈降する能力も異なり、また精製基質タイプに対して選択性を生成することができる。
【0225】
磁性マイクロスフェア本体、及び磁性マイクロスフェア本体を含む磁性マイクロスフェアは、印加磁場の作用で迅速に位置決め、ガイド及び分離することができる一方、表面変性又は化学重合などの方法によって磁性マイクロスフェア表面に複数の活性機能基、例えば水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、アミノ基などを付与することができ、また、磁性マイクロスフェアは共有結合又は非共有結合の方式によって抗体、DNAなどの生物活性物質を結合することができる。
【0226】
いくつかの好ましい形態では、前記磁性マイクロスフェア本体は、SiO2で被覆された磁性材料である。ここで、SiO2被覆層は自身に活性部位を持つシランカップリング剤を含んでもよい。
【0227】
いくつかの好ましい形態では、前記磁性材料は、鉄化合物(例えば鉄酸化物)、鉄合金、コバルト化合物、コバルト合金、ニッケル化合物、ニッケル合金、マンガン酸化物、マンガン合金、亜鉛酸化物、ガドリニウム酸化物、クロム酸化物、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0228】
いくつかの好ましい形態では、前記鉄酸化物は、例えばマグネタイト(Fe3O4)、マグヘマイト(γ-Fe2O3)又は前記2種類の酸化物の組み合わせであり、好ましくは四酸化三鉄である。
【0229】
いくつかの好ましい形態では、前記磁性材料は、Fe3O4、γ-Fe2O3、窒化鉄、Mn3O4、AlNi(Co)、FeCrMo、FeAlC、AlNiCo、FeCrCo、ReCo、ReFe、PtCo、MnAlC、CuNiFe、AlMnAg、MnBi、FeNi(Mo)、FeSi、FeAl、FeNi(Mo)、FeSiAl、BaO・6Fe2O3、SrO・6Fe2O3、PbO・6Fe2O3、GdO及びそれらの組み合わせから選択される。ここで、前記Reは希土類元素であるレニウムである。
【0230】
1.2.大量の分岐鎖末端を提供するポリマー構造
前記磁性マイクロスフェア本体の外表面には、線状主鎖及び分岐鎖を有するポリマーを少なくとも1種有し、前記線状主鎖の一端が磁性マイクロスフェア本体の外表面に固定され、ポリマーの他端は磁性マイクロスフェア本体の外表面から遊離する。
【0231】
前記「~に固定する」とは、共有結合の方式で磁性マイクロスフェア本体の外表面「に固定される」ことを指す。
【0232】
いくつかの好ましい形態では、前記ポリマーは、前記磁性マイクロスフェア本体の外表面に直接的に、又は連結要素を介して間接的に共有結合されている。
【0233】
前記ポリマーは線状主鎖を有し、この場合、ポリマーは線状主鎖の高い柔軟性を有するだけでなく、また分岐鎖数の高倍率増幅利点を有し、高レートやハイスループットの結合、高効率、高比率(高収率)の分離をよりよく実現することができる。
【0234】
本発明の磁性マイクロスフェアについて、ポリマーの一端が磁性マイクロスフェア本体の外表面に共有結合され、全ての分岐鎖と全ての官能基を含む残りの端がいずれも溶液に溶解され、磁性マイクロスフェア本体の外部空間に分布され、分子鎖が十分に伸びて揺動することができ、分子鎖が溶液中の他の分子と十分に接触することができ、さらに標的タンパク質の捕捉を強化することができる。標的タンパク質を磁性マイクロスフェアから溶出する時、標的タンパク質を磁性マイクロスフェアの拘束から直接脱出させ、溶出液に直接入れる。磁性マイクロスフェア本体の外表面に物理的に巻き付けられ又は磁性マイクロスフェア本体と一体に形成されたポリマーに比べて、このような線状主鎖によって一端が共有結合で固定されたポリマー(いくつかの好ましい形態において単一の一本のポリマー線状主鎖を共有結合で固定し、他のいくつかの好ましい形態において主鎖固定端から2又は3本の線状主鎖が共有結合的に引き出される)は分子鎖のスタッキングを効果的に低減することができ、分子鎖が溶液における伸展及び揺動を強化し、標的タンパク質に対する捕捉を強化し、溶出時の標的タンパク質の滞留割合及び滞留時間を低減する。
【0235】
1.2.1.本発明により提供される生体磁性マイクロスフェアのポリマーの主鎖
いくつかの好ましい形態では、前記線状主鎖は、ポリオレフィン主鎖、又はアクリル系ポリマー主鎖である。
【0236】
他のいくつかの好ましい形態では、前記ポリマーの線状主鎖は、アクリル系ポリマー主鎖である。ポリオレフィン主鎖(線状主鎖は炭素原子のみ)であってもよいし、線状主鎖にヘテロ原子を含んでいてもよい(ヘテロ原子は非炭素原子)。
【0237】
いくつかの好ましい形態では、前記ポリマーの主鎖はポリオレフィン主鎖である。前記アクリル系ポリマーのモノマー単位が、アクリル酸、アクリル酸塩、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸塩、メタクリル酸エステルなどのアクリル系モノマー分子、又はそれらの組み合わせである。前記アクリル系ポリマーは、上記モノマーのいずれかを重合することにより得られてもよく、上記モノマーの適宜組み合わせを共重合することにより得られてもよい。
【0238】
いくつかの好ましい形態では、前記ポリマーの線状主鎖はポリオレフィン主鎖である。具体的には、例えば、ポリオレフィン主鎖は、アクリル酸、アクリル酸塩、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸塩、メタクリル酸エステル系モノマーのいずれか一つの重合物に提供された主鎖であり、又はそれらの組み合わせの重合生成物に提供された主鎖(その共重合物に提供された主鎖)であり、又は上記モノマーが重合に関与して形成される共重合物の主鎖である。上記モノマーを組み合わせた重合生成物としては、例えば、アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル-メタクリル酸ヒドロキシエチル共重合体(MMA-HEMA共重合体)、アクリル酸-アクリル酸ヒドロキシプロピル共重合体などが挙げられる。上記モノマーが重合に関与して形成される共重合体としては、例えば、無水マレイン酸-アクリル酸共重合体が挙げられる。
【0239】
いくつかの好ましい形態では、前記線状主鎖は、ポリオレフィン主鎖であり、且つアクリル系ポリマーの主鎖から提供される。
【0240】
いくつかの好ましい形態では、前記線状主鎖は、アクリル系ポリマー主鎖である。
【0241】
他のいくつかの好ましい形態では、前記ポリマーの主鎖は、アクリル系ポリマー主鎖である。ポリオレフィン主鎖(主鎖は炭素原子のみ)であってもよく、主鎖にヘテロ原子(ヘテロ原子:非炭素原子)を含んでもよい。
【0242】
他のいくつかの好ましい形態では、前記ポリマーの主鎖が、ポリオレフィンブロックを含むブロック共重合体主鎖、例えば、ポリエチレングリコール-b-ポリアクリル酸共重合体(アクリル系共重合体の範囲に属する)である。線状主鎖の柔軟な揺動を円滑に発揮し、分岐鎖堆積を招くことがなく、滞留時間又は/及び割合を増大させることがないことが好ましい。
【0243】
他のいくつかの好ましい形態では、前記ポリマーの主鎖が重縮合型主鎖である。前記重縮合型主鎖とは、モノマー分子又はオリゴマー同士の重縮合反応により形成され得る線状主鎖を意味する。前記縮重合型主鎖は、ホモ型であってもよく、共重合型であってもよい。例えば、ポリペプチド鎖、ポリアミノ酸鎖などである。具体的には、例えば、ε-ポリリジン鎖、α-ポリリジン鎖、γ-ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸鎖など、アスパラギン酸/グルタミン酸共重合体などが挙げられる。
【0244】
磁性マイクロスフェア本体の外表面の一つの結合部位が共有結合できる線状主鎖の数は1つ又は複数であってもよい。
【0245】
いくつかの好ましい形態では、磁性マイクロスフェア本体の外表面の一つの結合部位は、1本の線状主鎖のみを引き出し、線状主鎖に大きな活動空間を提供することができる。
【0246】
他のいくつかの好ましい形態では、磁性マイクロスフェア本体の外表面の一つの結合部位は、2本の線状主鎖のみを引き出し、できるだけ線状主鎖に大きな活動空間を提供する。
【0247】
ポリマーの主鎖は、一端が磁気ビーズの外表面(生体磁性マイクロスフェアの外表面)に共有結合され、全ての分岐鎖と全ての機能基を含む残りの端がいずれも溶液に溶解され、磁気ビーズの外部空間に分布され、分子鎖が十分に伸びて揺動することができ、それにより分子鎖が溶液中の他の分子と十分に接触することができ、さらに標的タンパク質に対する捕捉を強化することができる。標的タンパク質を磁気ビーズから溶出する時、標的タンパク質を磁気ビーズの拘束から直接解放させ、溶出液に直接入れる。磁気ビーズの外表面に物理的に巻き付けられ又は磁気ビーズと一体に形成されたポリマーに比べて、ここで提供された線状主鎖の一端によって共有結合的に固定されたポリマー(最も好ましくは単一の1本のポリマー線状主鎖が共有結合的に固定され、また好ましくは主鎖固定端に2又は3本の線状主鎖が共有結合的に引き出される)は分子鎖のスタッキングを効果的に低減することができ、分子鎖が溶液における伸展及び揺動を強化し、標的タンパク質に対する捕捉を強化し、溶出時の標的タンパク質の滞留割合及び滞留時間を低減する。
【0248】
1.2.2.本発明により提供される生体磁性マイクロスフェアのポリマー分岐鎖
前記分岐鎖の数は磁性マイクロスフェア本体の大きさ、ポリマーの骨格構造タイプ、ポリマーの磁性マイクロスフェア本体の外表面における鎖密度(特に分岐鎖密度)などの要因に関連する。
【0249】
ポリマー分岐鎖の数は複数であり、少なくとも3つである。側分岐鎖の数は磁性マイクロスフェアの大きさ、ポリマー主鎖の長さ、ポリマー主鎖に沿う側分岐鎖の線密度に関連し、ポリマーが磁性マイクロスフェアの外表面における鎖密度などの要因に関連する。ポリマー分岐鎖の数は、原料の仕込み比を制御することにより制御することができる。
【0250】
前記分岐鎖型ポリマーは、少なくとも3つの分岐鎖を有する。
【0251】
それぞれの分岐鎖末端は、それぞれ独立に精製媒体と結合しているか、結合していない。
【0252】
分岐鎖末端に精製媒体が結合されている場合には、各分岐鎖末端がそれぞれ独立して精製媒体に直接に結合されていてもよいし、連結要素を介して間接的に結合されていてもよい。
【0253】
分岐鎖末端に精製媒体が結合される場合、精製媒体の数は1つまたは複数であってもよい。
【0254】
いくつかの好ましい形態では、1分子の前記分岐鎖型ポリマーは少なくとも3つの精製媒体と結合する。
【0255】
1.3.ビオチン又はビオチン類似体の結合方式
前記ビオチン又はビオチン類似体が前記ポリマーの分岐鎖末端に連結される方式は特に限定されない。
【0256】
前記ビオチン又はビオチン類似体が前記ポリマーの分岐鎖末端に連結される方式は、共有結合、超分子相互作用、又はそれらの組み合わせを含むがそれらに限定されない。
【0257】
いくつかの好ましい形態では、前記共有結合は、動的共有結合であり、さらに好ましくは、前記動的共有結合は、イミン結合、アシルヒドラゾン結合、ジスルフィド結合、又はそれらの組み合わせを含む。
【0258】
いくつかの好ましい形態では、前記超分子相互作用は、配位結合、アフィニティ複合体相互作用、静電吸着、水素結合、π-πオーバーラップ作用、疎水性相互作用、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0259】
いくつかの好ましい形態では、前記ポリマーの分岐鎖は、官能基に基づく共有結合によってビオチン又はビオチン類似体に共有結合し、ビオチン又はビオチン類似体をポリマー分岐鎖末端に共有結合するものである。生体磁性マイクロスフェアの外表面におけるポリマー分子の分岐鎖に含まれる官能基とビオチン又はビオチン類似体との共有結合反応により得ることができる。ここで、前記官能基の好ましい実施形態の一つは特異的結合部位(定義は具体的な実施形態の「名詞と用語」の部分を参照)である。
【0260】
前記官能基に基づく共有結合とは、官能基が共有結合に関与することによって形成される共有結合を意味する。好ましくは、前記官能基は、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基の塩形態、アミノ基の塩形態、ギ酸エステル基、又は前記官能基の組み合わせである。前記カルボキシル基の塩形態の好ましい形態の一つは、ナトリウム塩形式であり、例えばCOONaであり、前記アミノ基の塩形態の好ましい形態は無機塩形態であってもよく、有機塩形態であってもよく、塩酸塩、フッ化水素酸塩などの形態を含むがこれらに限定されない。前記「官能基の組み合わせ」とは、一つの磁性マイクロスフェアの外表面の全てのポリマー分子の全ての分岐鎖を指し、異なる官能基に基づいて共有結合の形成に関与することができる。ビオチンを例とし、即ち一つのビオチン磁性マイクロスフェアの外表面の全てのビオチン分子はそれぞれ異なる官能基と共有結合することができるが、一つのビオチン分子は一つの官能基のみと結合することができる。
【0261】
2.本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様に提供される前記生体磁性マイクロスフェアに基づいて、前記ビオチン又はビオチン類似体は連結要素としてさらに精製媒体に連結している生体磁性マイクロスフェアを提供する。即ち、前記ポリマーの分岐鎖末端は、連結要素を介して精製媒体に連結しており、前記連結要素は、ビオチン又はビオチン類似体を含む。
【0262】
精製媒体(purification element)
精製媒体は、混合系から標的物質を特異的に捕捉する機能性要件であり、即ち前記精製媒体と分離精製される標的物質分子との間に特異的な結合を行うことができる。捕捉された標的物質分子は適切な条件で溶出して放出され、それにより分離精製の目的を実現する。
【0263】
前記精製媒体はタンパク質類物質を標的物質とする場合、標的タンパク質自体又は標的タンパク質に携帯される精製タグと、互いに特異的な結合作用を形成することができる。したがって、標的タンパク質精製タグに用いることができる物質は、いずれも精製媒体の選択可能な方式とすることができ、精製媒体として用いられるペプチド又はタンパク質は、標的タンパク質における精製タグの選択可能な方式とすることができる。
【0264】
2.1.精製媒体のタイプ
前記精製媒体は、アビジン型タグ、ポリペプチド型タグ、タンパク質型タグ、抗体型タグ、抗原型タグ、又はそれらの組み合わせを含有してもよいが、これらに限定されない。
【0265】
好ましい一形態では、前記アビジン型タグは、アビジン、ビオチンと結合可能なアビジン類似体、ビオチン類似体と結合可能なアビジン類似体、又はそれらの組み合わせである。
【0266】
いくつかの好ましい形態では、前記精製媒体は、アビジン、ビオチン又はその類似体と結合可能なアビジン類似体、ビオチン、アビジン又はその類似体と結合可能なビオチン類似体、アフィニティタンパク質、抗体、抗原、DNA、又はそれらの組み合わせである。
【0267】
いくつかの好ましい形態では、前記生体磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端にはビオチンが連結されており、前記精製媒体はアビジンであり、且つ前記アビジンとの間でアフィニティ複合体の結合作用を形成する。
【0268】
いくつかの好ましい形態では、前記アビジンは、ストレプトアビジン、変性ストレプトアビジン、ストレプトアビジン類似体のいずれか、又はそれらの組み合わせである。
【0269】
前記アビジン類似体は、例えばtamavidin 1、tamavidin 2などである。Tamavidin1及びTamavidin2は、Yamamotoらが2009年に発見したビオチン結合能力を有するタンパク質であり(Takakura Y et al.Tamavidins:Novel avidin-like biotin-binding proteins from the Tamogitake mushroom[J].FEBS Journal,2009,276,1383-1397)、それらはストレプトアビジンと類似の強いビオチン親和性を有する。Tamavidin2の熱安定性はストレプトアビジンより優れ、そのアミノ酸配列は関連データベースから検索することができ、例えばUniProt B9A0T7であり、またコドン変換、最適化プログラムによって最適化してDNA配列を得ることもできる。
【0270】
前記ビオチン類似体は、例えばWSHPQFEK配列(SEQ ID No:9)又はその変体配列、WRHPQFGG配列(SEQ ID No:7)又はその変体配列、などである。
【0271】
いくつかの好ましい形態では、前記精製媒体は、ポリペプチドタグ、タンパク質タグ又はその組み合わせである。
【0272】
いくつかの好ましい形態では、前記精製媒体はアフィニティタンパク質である。
【0273】
前記アフィニティタンパク質の例として、プロテインA、プロテインG、プロテインL、変性プロテインA、変性プロテインG、変性プロテインLなどを含むがそれらに限定されない。
【0274】
前記抗体、抗原の定義は用語部分を参考し、そのドメイン、サブユニット、断片、重鎖、軽鎖、一本鎖断片(例えばナノ抗体、軽鎖が欠失した重鎖、重鎖可変領域、相補決定領域など)、エピトープ(epitope)、エピトープペプチド、前記いずれかの変体、などを含むがそれらに限定されないことを理解すべきである。
【0275】
いくつかの好ましい形態では、前記ポリペプチド型タグは、CBPタグ、ヒスチジンタグ、C-Mycタグ、FLAGタグ、Spotタグ、Cタグ、Aviタグ、WSHPQFEK(SEQ ID No:9)配列を含むタグ、WSHPQFEK(SEQ ID No:9)の変体配列を含むタグ、WRHPQFGG(SEQ ID No:7)配列を含むタグ、WRHPQFGG(SEQ ID No:7)の変体配列を含むタグ、RKAAVSHW(SEQ ID No:8)配列を含むタグ、RKAAVSHW(SEQ ID No:8)の変体配列を含むタグ、又はそれらの組み合わせから選択されるいずれかのタグ又はその変体である。
【0276】
いくつかの好ましい形態では、前記タンパク質タグは、アフィニティタンパク質、SUMOタグ、GSTタグ、MBPタグ、又はそれらの組み合わせから選択されるいずれかのタグ又はその変体であり、より好ましくは、前記アフィニティタンパク質は、プロテインA、プロテインG、プロテインL、変性プロテインA、変性プロテインG、変性プロテインL、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0277】
いくつかの好ましい形態では、前記抗体型タグは、抗体、抗体の断片、抗体の一本鎖、一本鎖の断片、抗体融合タンパク質、抗体断片の融合タンパク質のいずれか、いずれかの誘導体、又はいずれかの変体である。
【0278】
いくつかの好ましい形態では、前記抗体型タグは、抗タンパク質の抗体である。
いくつかの好ましい形態では、前記抗体型タグは、抗蛍光タンパク質の抗体である。
いくつかの好ましい形態では、前記抗体型タグは、ナノ抗体である。
いくつかの好ましい形態では、前記抗体型タグは、抗タンパク質のナノ抗体である。
いくつかの好ましい形態では、前記抗体型タグは、抗蛍光タンパク質のナノ抗体である。
いくつかの好ましい形態では、前記抗体型タグは、抗緑色蛍光タンパク質又はその変異体の抗体である。
いくつかの好ましい形態では、前記抗体型タグは、Fc断片である。
【0279】
2.2.精製媒体の担持方式
前記精製媒体が前記ビオチン又はビオチン類似体に連結される方式は特に制限されない。
【0280】
前記精製媒体が前記ビオチン又はビオチン類似体に連結される方式は、共有結合、非共有結合(例えば、超分子相互作用)、連結要素、又はそれらの組み合わせを含むがそれらに限定されない。
【0281】
いくつかの好ましい形態では、前記共有結合は、動的共有結合であり、さらに好ましくは、前記動的共有結合は、イミン結合、アシルヒドラゾン結合、ジスルフィド結合、又はそれらの組み合わせを含む。
【0282】
いくつかの好ましい形態では、前記超分子相互作用は、配位結合、アフィニティ複合体相互作用、静電吸着、水素結合、π-πオーバーラップ作用、疎水性相互作用、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0283】
前記生体磁性マイクロスフェアのいくつかの好ましい形態では、前記精製媒体は、アフィニティ複合体を含む連結要素によって前記ポリマーの分岐鎖末端に連結される。
【0284】
いくつかの好ましい形態では、前記ビオチン又はビオチン類似体は、アフィニティ複合体作用によってアビジン又はアビジン類似体に結合し、前記精製媒体は、前記アビジン又はアビジン類似体に直接又は間接的に結合する。
【0285】
いくつかの好ましい形態では、前記アフィニティ複合体相互作用は、ビオチン-アビジン相互作用、ビオチン類似体-アビジン相互作用、ビオチン-アビジン類似体相互作用、ビオチン類似体-アビジン類似体相互作用から選択される。
【0286】
いくつかの好ましい形態では、アフィニティ複合体の選択基準は、特異性に優れ、親和力が強く、さらに化学的に結合可能な部位を提供し、それによってアフィニティ複合体をポリマー分岐鎖末端に共有結合されることができ、又は化学修飾された後に磁性マイクロスフェア本体の外表面、例えば外表面の結合部位、線形ポリマーの主鎖末端、分岐鎖型ポリマーの分岐鎖末端に共有結合されることができることである。例えば、ビオチン又はその類似体とアビジン又はその類似体、抗原及び抗体などからの物質の組み合わせである。
【0287】
ロード方式に動的共有結合、超分子相互作用(特にアフィニティ複合体相互作用)を含む場合、可逆的なロード方式を形成し、精製媒体は一定の条件で分岐鎖末端からアンロードすることができ、さらに更新又は交換を行う。
【0288】
精製媒体の更新は、磁性マイクロスフェアの再生に対応し、更新前後の精製媒体の種類は同じである。
【0289】
精製媒体の交換は、磁性マイクロスフェアの変更に対応し、交換前後の精製媒体の種類が異なる。
【0290】
いくつかの好ましい形態では、前記精製媒体はアビジンであり、さらに前記アビジンと結合するビオチンを含み、ここでビオチンは連結要素とし、ビオチンとアビジンとの間はアフィニティ複合体の結合作用を形成する。
【0291】
いくつかの好ましい形態では、前記精製媒体はアフィニティタンパク質であり、さらに前記アフィニティタンパク質と連結するアビジン、及び前記アビジンと結合するビオチンを含み、ここで、ビオチンとアビジンとの間にアフィニティ複合体の結合作用を形成し、アフィニティ複合体を連結要素とする。
【0292】
いくつかの好ましい形態では、前記生体磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端に、順次にビオチン、アビジン、精製媒体が連結される。さらに好ましい一形態では、前記精製媒体は抗体又は抗原である。前記アビジンと精製媒体との連結方式は、共有結合、非共有結合、連結要素、又はそれらの組み合わせを含むがそれらに限定されない。
【0293】
いくつかの好ましい形態では、前記精製媒体は、核酸、オリゴヌクレオチド、ペプチド核酸、核酸アプタマー、デオキシリボ核酸、リボ核酸、ロイシンファスナー、ヘリックスターンヘリックスモチーフ、ジンクフィンガーモチーフ、ビオチン、抗ビオチンタンパク質、ストレプトアビジン、抗ハプテン抗体など、それらの組み合わせを含む連結要素によって生体磁性マイクロスフェアのポリマー分岐鎖末端に連結されるが、これらに限定されない。無論、前記連結要素は、二本鎖核酸構造体、ダブルヘリックス、ホモハイブリッド又はヘテロハイブリッド(DNA-DNA、DNA-RNA、DNA-PNA、RNA-RNA、RNA-PNA又はPNA-PNAから選択されるホモハイブリッド又はヘテロハイブリッド)、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0294】
2.3.精製媒体の作用機構
精製媒体が前記反応精製混合系における標的分子を捕捉する作用力は、共有結合、超分子相互作用、その組み合わせを含むがそれらに限定されないものから選択される。
【0295】
いくつかの好ましい形態では、前記アフィニティ複合体相互作用は、ビオチン-アビジン相互作用、ビオチン類似体-アビジン相互作用、ビオチン-アビジン類似体相互作用、ビオチン類似体-アビジン類似体相互作用から選択される。
【0296】
いくつかの好ましい形態では、前記標的物質は、ビオチン-アビジン結合力、Stregタグ-アビジン結合力、アビジン-アフィニティタンパク質結合力、ヒスチジンタグ-金属イオン親和力、抗体-抗原結合力、又はそれらの組み合わせの作用力方式によって前記生体磁性マイクロスフェアのポリマー分岐鎖末端に結合される。前記Stregタグは、主にIBA社が開発したアビジン又はその類似体と特異的結合作用を形成するペプチドタグを含むがそれらに限定されず、通常WSHPQFEK配列又はその変体配列を含む。
【0297】
2.4.精製媒体の再生と再利用
精製媒体がアフィニティ複合体、動的共有結合などの可逆方式によって本発明の生体磁性マイクロスフェアのポリマー分岐鎖末端に連結される場合、適切な条件で、精製媒体をポリマー分岐鎖末端から溶出し、さらに新たな精製媒体を再結合することができる。
【0298】
アフィニティ複合体相互作用がビオチンとストレプトアビジンとの間のアフィニティ複合体作用力を例とする。
【0299】
ビオチンとストレプトアビジンとの間の極めて強い親和力は、典型的なアフィニティ複合体の結合作用であり、一般的な非共有結合作用より強く、同時に共有結合作用より弱く、それにより精製媒体を磁気ビーズ外表面のポリマー分岐鎖末端に強固に結合させることができるだけでなく、また精製媒体を交換する必要がある時にストレプトアビジンをビオチンの特異的結合部位から溶出することにより精製媒体の同期離脱を実現することができ、さらに新たなアビジン-精製媒体共有結合複合体(例えばストレプトアビジンタグ付き精製媒体)の活性化部位を解放し、それにより磁気ビーズ精製性能の高速回復を実現し、標的物質(例えば抗体)の分離精製コストを大幅に低減させる。精製媒体が修飾された生体磁性マイクロスフェアを溶出し、アビジン-精製媒体共有結合複合体を除去し、それによりビオチン又はビオチン類似体で修飾された生体磁性マイクロスフェアを再取得する過程は、ビオチン磁性マイクロスフェアの再生と呼ばれる。再生されたビオチン磁性マイクロスフェアは、放出されたビオチン活性部位を有し、アビジン-精製媒体共有結合複合体を再結合することができ、精製媒体で修飾された生体磁性マイクロスフェアを再び得て(生体磁性マイクロスフェアの再生に対応する)、新鮮な精製媒体を提供することができ、新たな標的物質結合部位を提供する。これにより本発明のビオチン磁性マイクロスフェアを再生して使用することができ、即ち精製媒体を交換して再利用することができる。
【0300】
2.4.精製基質(好ましくはタンパク質系物質)
本発明の精製基質とは、本発明の磁性マイクロスフェアが捕捉して分離される物質であり、本発明の磁性マイクロスフェアと特異的に結合することができる精製媒体であれば特に限定されるものではない。
【0301】
前記精製基質がタンパク質系物質である場合、精製基質は標的タンパク質とも呼ばれる。
【0302】
2.4.1.標的タンパク質中の精製タグ
前記標的タンパク質に精製タグを携帯しなくてもよく、この場合、標的タンパク質自体は磁性マイクロスフェアにおける精製媒体に捕捉されるべきである。例えば、「標的タンパク質、精製媒体」が「抗体、抗原」、「抗原、抗体」、「アビジン又はその類似体、ビオチン又はその類似体」などの組み合わせである場合がある。
【0303】
いくつかの好ましい形態では、前記標的タンパク質は精製タグを付き、前記精製タグは前記精製媒体と特異的に結合することができる。一つの標的タンパク質分子では、前記精製タグの数は1つ、2つ又は複数であり、精製タグが2つ以上含まれる場合、精製タグの種類は、1種、2種又は複種である。なお、タグのアミノ酸配列が異なる限り、異なる種類のタグとみなす。
【0304】
前記標的タンパク質における精製タグは、ヒスチジンタグ、アビジン、アビジン類似体、Stregタグ(WSHPQFEK配列(SEQ ID No:9)又はその変体を含むタグ)、WRHPQFGG配列(SEQ ID No:7)又はその変体を含むタグ、RKAAVSHW(SEQ ID No:8)配列又はその変体を含むタグ、FLAGタグ又はその変体、Cタグ及びその変体、Spotタグ及びその変体、GSTタグ及びその変体、MBPタグ及びその変体、SUMOタグ及びその変体、CBPタグ及びその変体、HAタグ及びその変体、Aviタグ及びその変体、アフィニティタンパク質、抗体系タグ、抗原系タグ、及びそれらの組み合わせを含むが上記のタグのグループに限定されない。またUS6103493B2、US10065996B2、US8735540B2、US20070275416A1に開示された精製タグから選択することができ、Stregタグ及びその変体を含むがそれらに限定されない。
【0305】
前記精製タグはN-末端又はC-末端によって融合することができる。
【0306】
前記ヒスチジンタグは、一般的に少なくとも5つのヒスチジン残基を含み、例えば5×Hisタグ、6×Hisタグ、8×Hisタグなどである。
【0307】
オクタペプチドWRHPQFGG(SEQ ID No:7)は、コアストレプトアビジン(core streptavidin)と特異的に結合することができる。
【0308】
Stregタグは、アビジン又はその類似体と特異的結合作用を形成することができ、前記StregタグにWSHPQFEK(SEQ ID No:9)又はその変体を含む。例えば、WSHPQFEK-(XaaYaaWaaZaa)n-WSHPQFEK(SEQ ID No:11)であり、ここで、Xaa、Yaa、Waa、Zaaはそれぞれ独立していずれかのアミノ酸であり、XaaYaaWaaZaaは少なくとも1つのアミノ酸を含み、且つ(XaaYaaWaaZaa)n
(SEQ ID No:12)は少なくとも4つのアミノ酸を含み、ここで、nは1~15から選択され(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15)、(XaaYaaWaaZaa)n
(SEQ ID No:12)の具体例としては、(G)8、(G)12、GAGA、(GAGA)2、(GAGA)3、(GGGS)2、(GGGS)3が挙げられる。Stregタグとしては、例えば、WSHPQFEK(SEQ ID No:9)、WSHPQFEK-(GGGS)n-WSHPQFEK(SEQ ID No:13)、WSHPQFEK-GGGSGGGSGGSA-WSHPQFEK(SEQ ID No:14)、SA-WSHPQFEK-(GGGS)2GGSA-WSHPQFEK(SEQ ID No:15)、WSHPQFEK-GSGGG-WSHPQFEK-GL-WSHPQFEK(SEQ ID No:16)、GGSA-WNHPQFEK-GGGSGSGGSA-WSHPQFEK-GS(SEQ ID No:17)、GGGS-WSHPQFEK-GGGSGGGSGGSA-WSHPQFEK(SEQ ID No:18)などが挙げられる。
【0309】
前記FLAGタグの配列はDYKDDDDK(SEQ ID No:19)である。FLAGタグの変体配列としては、例えば、DYKDHD-G-DYKDHD-I-DYKDDDDK(SEQ ID No:20)が挙げられる。
【0310】
前記Spotタグの配列は、PDRVRAVSHWSS(SEQ ID No:21)である。
【0311】
前記Cタグには、EPEA(SEQ ID No:22)配列が含まれる。
【0312】
前記GSTタグとは、グルタチオンS-トランスフェラーゼタグを意味する。
【0313】
前記MBPタグとは、マルトース結合タンパク質タグである。
【0314】
前記SUMOタグは、既知の小分子ユビキチン様修飾タンパク質(Small ubiquitin-like modifier)であり、ユビキチン(ubiquitin)類ポリペプチド鎖スーパーファミリーの重要なメンバーの1つである。一次構造において、SUMOとユビキチンは18%の相同性を有するが、両者の三次構造及びその生物学的機能は十分に類似する。
【0315】
前記CBPタグの配列は、KRRWKKNFIAVSAANRFKKISSSGAL(SEQ ID No:23)である。
【0316】
前記HAタグの配列は、YPYDVPDYA(SEQ ID No:24)である。
【0317】
前記Aviタグは、既知の15個のアミノ酸残基で構成される小タグであり、この小タグはビオチンリガーゼBirAに特異的に識別される。
【0318】
抗体類タグは、抗体の完全な構造(完全な抗体)、ドメイン、サブユニット、断片、重鎖、軽鎖、一本鎖断片(例えばナノ抗体、軽鎖が欠失した重鎖、重鎖可変領域、相補決定領域など)を含むがそれらに限定されない。
【0319】
抗原類タグは、抗原の完全な構造(完全な抗原)、ドメイン、サブユニット、断片、重鎖、軽鎖、一本鎖断片(例えばエピトープなど)などを含むがそれらに限定されない。
【0320】
いくつかの好ましい形態では、前記標的タンパク質のN末端又はC末端に1つの精製タグが連結され、又は両端にいずれも精製タグが連結される。
【0321】
本部分に記載の各種の精製タグは、いずれも本発明の磁性マイクロスフェアにおける精製媒体の候補とすることができる。
【0322】
2.4.2.標的タンパク質のタイプ
前記標的タンパク質は天然タンパク質又はその改造生成物であってもよく、人工合成配列であってもよい。前記天然タンパク質の由来は特に制限されず、真核細胞、原核細胞、病原体を含むがそれらに限定されなく、そのうち真核細胞の由来は、哺乳動物細胞、植物細胞、酵母細胞、昆虫細胞、線虫細胞、及びその組み合わせを含むがそれらに限定されなく、前記哺乳動物細胞の由来は、マウス源(ラット、マウス、モルモット、ゴールデンゴーファー、ハムスターなどを含む)、ウサギ源、サル源、ヒト源、豚源、羊源、ウシ源、犬源、ウマ源などを含むがそれらに限定されない。前記病原体は、ウイルス、クラミジア、マイコプラズマなどを含む。前記ウイルスは、HPV、HBV、TMV、コロナウイルス、ロタウイルスなどを含む。
【0323】
前記標的タンパク質のタイプは、ポリペプチド(本発明中の「標的タンパク質」は広義にポリペプチドを含む)、蛍光類タンパク質、酵素及び対応する酵素原、抗体、抗原、免疫グロブリン、ホルモン、コラーゲン、ポリアミノ酸、ワクチンなど、上記いずれかのタンパク質の一部のドメイン、上記いずれかのタンパク質のサブユニット又は断片、及び上記いずれかのタンパク質の変体を含むがそれらに限定されない。前記「上記いずれかのタンパク質のサブユニット又は断片」は、「前記いずれかのタンパク質の一部のドメイン」のサブユニット又は断片を含む。前記「上記いずれかのタンパク質の変体」は、「上記いずれかのタンパク質の一部のドメイン、上記いずれかのタンパク質のサブユニット又は断片」の変体を含む。前記「上記いずれかのタンパク質の変体」は、上記いずれかのタンパク質の変異体を含むがこれらに限定されない。本発明において、他の位置の連続する2つ又は2つ以上の「上記」の状況、意味は同様に説明する。
【0324】
前記標的タンパク質の構造は、完全な構造であってもよく、対応する一部のドメイン、サブユニット、断片、二量体、多量体、融合タンパク質、糖タンパク質などから選択することもできる。不完全な抗体構造としては、例えば、ナノ抗体(軽鎖が欠失した重鎖抗体、VHH、重鎖抗体の完全な抗原結合能力を保持している)、重鎖可変領域、相補決定領域(CDR)などが挙げられる。
【0325】
例えば、本発明に記載の生体外タンパク質合成システムが合成可能な標的タンパク質は、以下のいずれかのタンパク質、任意の組み合わせ方式の融合タンパク質、任意の組み合わせ方式の組成物から選択されるがそれらに限定されない。つまり、ルシフェラーゼ(例えばホタルルシフェラーゼ)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、増強緑色蛍光タンパク質(eGFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、アンモニアアシルtRNA合成酵素、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、カタラーゼ(Catalase、例えばマウスカタラーゼ)、アクチン、抗体、抗体の可変領域(例えば抗体の一本鎖可変領域、scFV)、抗体の一本鎖及びその断片(例えば抗体の重鎖、ナノ抗体、抗体の軽鎖)、α-アミラーゼ、エンテロバクターA、C型肝炎ウイルスE2糖タンパク質、インスリン及びその前駆体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、インターフェロン(インターフェロンαAなどのインターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγを含むがそれらに限定されない)、インターロイキン(インターロイキン-1β、インターロイキン2、インターロイキン12など)、リゾチーム、血清アルブミン(ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミンを含むがそれらに限定されない)、トランスサイレチン、チロシナーゼ、キシラナーゼ、β-ガラクトシダーゼ(β-galactosidase、LacZ、例えば大腸菌β-ガラクトシダーゼ)など、前記いずれかのタンパク質の部分ドメイン、前記いずれかのタンパク質のサブユニット又は断片、又は前記いずれかの変体(前記定義のように、前記変体は変異体を含み、例えばルシフェラーゼ変異体、eGFPの変異体が挙げられ、前記変体はさらにホモログであってもよい)。前記アンモニアアシルtRNA合成酵素としては、例えば、ヒトリジン-tRNA合成酵素(lysine-tRNA synthetase)、ヒトロイシン-tRNA合成酵素(leucine-tRNA synthetase)などが挙げられる。前記グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼとしては、例えば、シロイヌナズナグリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ、glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenaseが挙げられる。また、特許文献CN109423496Aを参照することができる。前記任意の組み合わせ方式の組成物は、前記いずれかのタンパク質を含んでもよく、前記任意の組み合わせ方式の融合タンパク質を含んでもよい。
【0326】
いくつかの好ましい形態では、GFP、eGFP、mScarletなどの1つ、又はその類似物質、又はその変異体などの蛍光特性を有する標的タンパク質を用いて前記生体外タンパク質合成系のタンパク質合成能力を評価する。
【0327】
前記標的タンパク質の応用分野は、生体医薬、分子生物、医学、体外検出、医療診断、再生医学、生物工学、組織工学、幹細胞工学、遺伝子工学、ポリマー工学、表面工学、ナノ工学、化粧品、食品、食品添加剤、栄養剤、農業、飼料、生活用品、洗濯、環境、化学染色、蛍光標識などの分野を含むがそれらに限定されない。
【0328】
2.4.3.標的タンパク質を含む混合系
本発明の磁性マイクロスフェアは、標的タンパク質をその混合系から分離するために用いることができる。前記標的タンパク質は、精製の目的がこの組成物を得るためであり、又はこの組成物の形態が精製の要求を満たすことができれば、1種の物質に限定されず、複数の物質の組み合わせであってもよい。
【0329】
標的タンパク質を含む混合系は特に制限されず、本発明の磁性マイクロスフェアの精製媒体は標的タンパク質と特異的に結合することができればよく、一般的には、前記精製媒体は混合系における標的タンパク質以外の他の物質との特異的結合又は非特異的結合作用が存在しないことも必要である。
【0330】
本発明の実施例において、前記標的タンパク質を含有する混合系は天然由来であってもよく、人工構築又は得られた混合系であってもよい。
【0331】
例えば、市販血清から特定タンパク質を分離精製することができる。
【0332】
例えば、生体外タンパク質合成系の反応後の系から標的タンパク質を分離することができる。
【0333】
前記生体外タンパク質合成系の具体的な一実施形態は、さらに、例えばWO2016005982A1に記載された大腸菌に基づく無細胞タンパク質合成系を含むがそれらに限定されない。本発明の他の引用文献は、その直接及び間接引用文献に記載された小麦胚芽細胞、ウサギ網状赤血球、サッカロマイセス・セレビシエ、ピキア・パストリス、クルイベロマイセス・マルシアナスに基づく生体外無細胞タンパク質合成系を含むがそれらに限定されず、いずれも本発明の生体外タンパク質合成系の実施形態として本発明に組み込まれる。例えば、文献「Lu,Y.Advances in Cell-Free Biosynthetic Technology.Current Developments in Biotechnology and Bioengineering,2019,Chapter 2,23-45」の部分「2.1 Systems and Advantages」の第27~28頁に引用された文献に記載された生体外無細胞タンパク質合成系を含むがそれらに限定されず、いずれも本発明を実施する生体外タンパク質合成系とすることができる。例えば、(本発明と矛盾しない限り、以下の文献及びその参考文献をその全体及びすべての目的のために引用する)文献CN106978349A、CN108535489A、CN108690139A、CN108949801A、CN108642076A、CN109022478A、CN109423496A、CN109423497A、CN109423509A、CN109837293A、CN109971783A、CN109988801A、CN109971775A、CN110093284A、CN110408635A、CN110408636A、CN110551745A、CN110551700A、CN110551785A、CN110819647A、CN110845622、CN110938649A、CN110964736A、CN111378706A、CN111378707A、CN111378708A、CN111718419A、CN111748569A、CN2019107298813、CN2019112066163、CN2018112862093(CN111118065A)、CN2019114181518、CN2020100693833、CN2020101796894、CN202010269333X、CN2020102693382及びその引用文献に記載されている無細胞タンパク質合成系、DNAテンプレートの構築及び増幅方法は、本発明の生体外タンパク質合成系、本発明のDNAテンプレートの構築及び増幅方法を実施するために使用することができる。
【0334】
前記生体外タンパク質合成系の細胞抽出物の由来細胞は特に制限されず、前記標的タンパク質を生体外発現することができればよい。従来技術に開示された原核細胞抽出物、真核細胞抽出物(好ましくは酵母細胞抽出物であり、より好ましくはクルイベロミセス・ラクチスであってもよい)由来の生体外タンパク質合成系に適用する外因性タンパク質、又は細胞内合成に適用する原核細胞系、真核細胞系(好ましくは酵母細胞系であり、より好ましくはクルイベロミセス・ラクチス系であってもよい)の内因性タンパク質は、いずれも本発明の生体外タンパク質合成系を用いて合成することができ、又は本発明により提供される生体外タンパク質合成系を用いて合成することを試みる。
【0335】
前記生体外タンパク質合成系の好ましい一形態は、IVTT系である。IVTT反応を行った後の液(IVTT反応液と記す)は、発現した標的タンパク質の他に、IVTT系に残存する反応原料、特に細胞抽出物由来の各種因子(例えばリボソーム、tRNA、翻訳関連酵素、開始因子、延長因子、終止因子など)を含む。前記IVTT反応液は、磁気ビーズと結合するための標的タンパク質を提供することができる一方、さらに標的タンパク質の分離効果を検証するための混合系を提供することができる。
【0336】
3.本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様に提供される前記生体磁性マイクロスフェアに基づいて、さらに、前記ビオチン又はビオチン類似体は連結要素として、さらにアフィニティ複合体結合作用によってアビジン又はアビジン類似体に連結している生体磁性マイクロスフェアを提供する。
【0337】
本発明の第3の態様の生体磁性マイクロスフェアは、アビジン磁性マイクロスフェア又はアビジン磁気ビーズとも呼ばれる。
【0338】
前記アビジン又はアビジン類似体は、精製媒体とすることができるだけでなく、連結要素としてさらに他のタイプの精製媒体と連結することもできる。ここで、前記ビオチン又はビオチン類似体と前記アビジン又はアビジン類似体との間にアフィニティ複合体の結合作用を形成する。
【0339】
いくつかの好ましい形態では、本発明の第1の態様に提供される前記生体磁性マイクロスフェアに基づいて、さらに、前記ビオチンに結合するアビジンを含む。ここで、ビオチンとアビジンとの間にアフィニティ複合体の結合作用を形成する。即ち、前記磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖の末端にはビオチンが連結されており、前記精製媒体はアビジンであり、且つ前記アビジンとの間でアフィニティ複合体の結合作用を形成する。
【0340】
いくつかの好ましい形態では、前記アビジンは、ストレプトアビジン、変性ストレプトアビジン、ストレプトアビジン類似体のいずれか、又はそれらの組み合わせである。
【0341】
4.本発明の第4の態様は、本発明の第3の態様に提供される前記生体磁性マイクロスフェアに基づいて、さらに、前記アビジン又はアビジン類似体に連結しているアフィニティタンパク質を含む生体磁性マイクロスフェアを提供する。このとき、ビオチン又はビオチン類似体、アビジン又はアビジン類似体は、いずれも連結要素として両者の間にアフィニティ複合体の結合作用を形成し、前記アフィニティタンパク質は、精製媒体とすることができるだけでなく、連結要素とすることができ、好ましくは精製媒体とする。
【0342】
本発明の第4の態様の生体磁性マイクロスフェアは、アフィニティタンパク質磁性マイクロスフェア又はアフィニティタンパク質磁気ビーズとも呼ばれる。
【0343】
前記生体磁性マイクロスフェアの典型的な構造は
図2に示す。
【0344】
いくつかの好ましい形態では、本発明の第2の態様に提供される前記生体磁性マイクロスフェアに基づいて、前記精製媒体はアフィニティタンパク質であり、前記生体磁性マイクロスフェアはさらに前記アフィニティタンパク質に連結しているアビジンと、前記結合力に結合しているビオチンとを含み、ここで、精製媒体は連結要素によって前記ポリマーの分岐鎖末端に連結しており、前記連結要素にはビオチンとアビジンとによって形成されたアフィニティ複合体を含む。
【0345】
いくつかの好ましい形態では、前記アフィニティタンパク質は、プロテインA、プロテインG、プロテインLのいずれか、又はそれらの変性タンパク質である。対応する生体磁性マイクロスフェアは、それぞれプロテインA磁性マイクロスフェア又はプロテインA磁気ビーズ、プロテインG磁性マイクロスフェア又はプロテインG磁気ビーズ、プロテインL磁性マイクロスフェア又はプロテインL磁気ビーズなどと呼ばれる。
【0346】
本発明の第4の様態に提供される生体磁性マイクロスフェアは、ビオチン-アビジン-アフィニティタンパク質の連結方式を例として、アフィニティタンパク質を磁気ビーズ外表面のポリマー分岐鎖末端に強固に結合させることができるだけでなく、またアフィニティタンパク質を交換する必要がある時にアビジン(例えばストレプトアビジン)をビオチンの特異的結合部位から溶出することによりアフィニティタンパク質の同期離脱を実現することができ、さらに新たなアビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体E(例えばストレプトアビジンタグ付きアフィニティタンパク質)の活性化部位を再結合することができ、それにより磁気ビーズ精製性能の迅速な回復を実現し、抗体分離精製コストを大幅に低減させる。アフィニティタンパク質が修飾された生体磁性マイクロスフェアを溶出し、アビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体Eを除去し、それによりビオチンで修飾された生体磁性マイクロスフェアを再取得する過程は、ビオチン磁性マイクロスフェアの再生と呼ばれる。再生されたビオチン磁性マイクロスフェアは放出されたビオチン活性部位を有し、アビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体Eを再結合することができ、再びアフィニティタンパク質で修飾された生体磁性マイクロスフェアF(生体磁性マイクロスフェアFの再生に対応する)を得て、新鮮なアフィニティタンパク質を提供し、新たな抗体結合部位を提供することができ。これにより本発明のビオチン磁性マイクロスフェアを再生して使用することができ、即ちアフィニティタンパク質を交換して再利用することができる。
【0347】
5.本発明の第5の態様は、本発明の第1の態様に提供される生体磁性マイクロスフェアの製造方を提供する。
【0348】
5.1.第1の態様に提供される生体磁性マイクロスフェアの製造及び原理
本発明の第1の態様に提供されるのは、ビオチン又はビオチン類似体で修飾されるビオチン磁性マイクロスフェアである。
【0349】
ビオチンが修飾される場合を例とする。
第1の態様に提供される生体磁性マイクロスフェアは、SiO2で被覆された磁気ビーズ(市販又は自製)を提供し、SiO2を活性化修飾し、ポリマーをSiO2に共有結合し(ポリマーは線状主鎖の一端によってSiO2に共有結合され、且つポリマー主鎖に沿って大量の側分岐鎖が分布される)、ビオチンをポリマーの分岐鎖末端に共有結合されるステップにより製造される。説明すべきものとして、上記ステップは完全に孤立することを要求せず、2つ又は3つのステップを1つのステップに統合することを許可し、例えば、活性化されたシリカで被覆された磁気ビーズ(市販又は自製)を直接提供することができる。SiO2を活性化修飾するステップは、例えば、本発明により提供される第5から8の態様に記載の生体磁性マイクロスフェアの製造方法のステップ(1)である。ポリマーがSiO2に共有結合するステップは、例えば本発明により提供される第5から第8の態様に記載の生体磁性マイクロスフェアの製造方法のステップ(2)、(3)である。ビオチンがポリマー分岐鎖末端に共有結合されるステップは、例えば本発明により提供される第5から第8の態様に記載の生体磁性マイクロスフェアの製造方法のステップ(4)である。
【0350】
前記生体磁性マイクロスフェアは、(1)磁性マイクロスフェア本体を提供又は製造し、前記磁性マイクロスフェア本体の外表面に反応性基R1を有するステップと、(2)前記反応性基R1の上に線状主鎖と多数の分岐鎖を有するポリマーが連結され、前記線状主鎖の一端は前記反応性基R1と共有結合されるステップと、(3)前記分岐鎖の末端にビオチン又はビオチン類似体を連結するステップにより製造することができる。
【0351】
SiO2で被覆された磁性材料を磁性マイクロスフェア本体とすることを例とし、前記生体磁性マイクロスフェアは、(1)SiO2で被覆された磁性マイクロスフェア(市販又は自製)を提供し、SiO2の活性化修飾を行って反応性基R1を生成するステップと、(2)反応性基R1で重合反応を行い(例えばアクリル酸又はアクリル酸ナトリウムをモノマー分子とする)、線状主鎖及び多数の分岐鎖を有し、且つ前記分岐鎖の末端に機能基F1を有するポリマーを生成するステップと、(3)分岐鎖末端の官能基F1にビオチン又はビオチン類似体を結合するステップとによって製造することができる。このとき、磁性マイクロスフェア本体に共有結合されたポリマーは、線状主鎖を有し、線状主鎖の一端が反応性基R1に共有結合され、且つポリマー主鎖に沿って大量の側分岐鎖が分布される。
【0352】
5.2.典型例
典型的な前記生体磁性マイクロスフェアの製造方法(
図3を参照)であって、以下のステップを含む。
【0353】
ステップ(1):磁性マイクロスフェア本体を提供し、磁性マイクロスフェア本体に対して化学修飾を行い、アミノ基を磁性マイクロスフェア本体の外表面に導入し、アミノ基修飾磁性マイクロスフェアAを形成する。
【0354】
いくつかの好ましい形態では、カップリング剤を利用して磁性マイクロスフェア本体に対して化学修飾を行う。
【0355】
いくつかの好ましい形態では、前記シランカップリング剤は、アミノ化シランカップリング剤である。
【0356】
いくつかの好ましい形態では、前記磁性マイクロスフェア本体がSiO2で被覆された磁性材料であり、シランカップリング剤を利用して磁性マイクロスフェア本体に対して化学修飾を行う。前記シランカップリング剤は、いくつかの好ましい形態ではアミノ化シランカップリング剤である。
【0357】
ステップ(2):カルボキシル基とアミノ基との間の共有結合反応を利用してアクリル酸分子を前記磁性マイクロスフェアAの外表面に共有結合し、炭素-炭素二重結合を導入し、炭素-炭素二重結合含有磁性マイクロスフェアBを形成する。
【0358】
ステップ(3):炭素-炭素二重結合の重合反応を利用し、アクリル系モノマー分子(例えばアクリル酸ナトリウム)を重合し、得られたアクリル系ポリマーは分岐鎖型ポリマーであり、線状主鎖と官能基F1を含む分岐鎖を有し、ポリマーは線状主鎖の一端によって磁性マイクロスフェアBの外表面に共有結合され、アクリル系ポリマーで修飾される磁性マイクロスフェアCを形成する。このステップは、架橋剤を加えない条件で行うことができる。
【0359】
前記アクリル系モノマー分子、ポリマー分岐鎖の官能基の定義については、「名詞及び用語」の部分を参照されたい。
【0360】
いくつかの好ましい形態では、前記官能基F1は、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、メルカプト基、ギ酸塩、アンモニウム、カルボキシル基の塩形態、アミノ基の塩形態、ギ酸エステル基、又は前記官能基の組み合わせであり、前記「官能基の組み合わせ」とは、1つの磁性マイクロスフェアの外表面の全てのポリマーの全ての分岐鎖に含まれる官能基を指し、その種類は、1種又は1種以上であってもよい。第1の形態で定義された「官能基の組み合わせ」の意味は一貫する。
【0361】
他のいくつかの好ましい形態では、前記官能基は特異的結合部位である。
【0362】
ステップ(4):前記ポリマーの分岐鎖に含まれる官能基F1により、ビオチン又はビオチン類似体をポリマーの分岐鎖末端に共有結合し、ビオチン又はビオチン類似体が結合された生体磁性マイクロスフェア(ビオチン磁性マイクロスフェア)を得る。製造された生体磁性マイクロスフェアにおいて、アクリル系ポリマー(ポリアクリル酸骨格を有する)によってビオチンを結合できる大量の部位を提供する。
【0363】
5.3.具体的な実施形態
前記ビオチン磁性マイクロスフェアを製造する具体的な実施形態は以下のとおりである。
【0364】
具体的には、アクリル系ポリマーが線状主鎖と多数の分岐鎖を提供することを例とし、本発明は以下の具体的な実施形態を提供する。シリカで被覆された四酸化三鉄磁性ビーズを生体磁性マイクロスフェアの本体とし、まずカップリング剤3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES、CAS:919-30-2、アミノ化カップリング剤であり、シランカップリング剤であり、より具体的にはアミノ化シランカップリング剤である)を利用してシリカで被覆された四酸化三鉄磁性ビーズに対して化学修飾を行い、アミノ基を磁気ビーズの外表面に導入し、SiO2に対する活性化修飾を完了し、アミノ基修飾磁性マイクロスフェアAを得る。続いてカルボキシル基とアミノ基との間の共有結合反応を利用して固定化分子(1つの炭素炭素二重結合と1つの反応性基カルボキシル基とを提供するアクリル酸分子)を磁気ビーズの外表面に共有結合し、それにより炭素-炭素二重結合を磁気ビーズの外表面に導入し、炭素-炭素二重結合を含む磁性マイクロスフェアBを得る。続いて炭素-炭素二重結合の重合反応を利用してアクリル系モノマー分子(例えばアクリル酸ナトリウム)の重合を行い、重合反応を行うと同時に重合生成物を磁気ビーズの外表面に共有結合し、SiO2にポリマーを連結する(共有結合方式)ことを完了し、アクリル系ポリマー修飾磁性マイクロスフェアCを得る。ここの固定化分子はアクリル酸分子であり、1つの固定化分子は1つのポリマー分子のみを引き出し、同時に1つのポリマー線状主鎖のみを引き出す。モノマー分子としてアクリル酸ナトリウムを例にとると、重合生成物はポリアクリル酸ナトリウムであり、その主鎖は線状のポリオレフィン主鎖であり、且つ主鎖に沿って複数の側分岐鎖COONaが共有結合され、分岐鎖に含まれる官能基もCOONaである。ここの重合反応は、N、N’-メチレンビスアクリルアミド(CAS:110-26-9)などの架橋剤を使用せず、分子鎖同士が網状重合体に架橋されることを回避し、架橋剤を加えない条件で重合生成物に線状主鎖を発生させる。分子鎖が相互に架橋して網状ポリマーになると、多孔質構造を形成し、標的タンパク質の溶出効率に影響を与える。
【0365】
いくつかの好ましい形態では、磁性マイクロスフェアBを製造する時に用いられるアクリル酸の使用量は0.002~20mol/Lである。
【0366】
いくつかの好ましい形態では、磁性マイクロスフェアCを製造する時に用いられるアクリル酸ナトリウムの使用量は0.53~12.76mol/Lである。
【0367】
前記生体磁性マイクロスフェアの外表面は、アミノ化以外の他の活性化修飾方式を採用することができる。例えば、上記アミノ化された生体磁性マイクロスフェア(アミノ基修飾磁性マイクロスフェアA)は、さらに酸無水物又は他の修飾分子と反応することができ、それにより生体磁性マイクロスフェアの外表面にカルボキシル化又は他の活性化方式の化学修飾を実現する。
【0368】
前記固定化分子は、ポリマーの主鎖を磁気ビーズの外表面に共有結合して固定した小分子である。固定化小分子は特に制限されず、その一端が磁気ビーズの外表面に共有結合され、他端が単独重合反応又は共重合反応又は重縮合反応を含む重合反応を開始することができ、又は他端がポリマーの線状主鎖末端を共重合結合することができればよい。
【0369】
前記固定化分子は、鎖の堆積及び/又は滞留率の増加を伴わない限り、1本のポリマー線状主鎖のみが引き出されてもよいし、2本以上のポリマー線状主鎖が引き出されてもよい。好ましくは、1つの固定化分子は1つのポリマー分子のみを引き出し、且つ1本のポリマー線状主鎖のみを引き出す。
【0370】
いくつかの好ましい形態では、前記固定化分子は、鎖の堆積及び/又は滞留率の増加を伴わない限り、1本のポリマー線状主鎖のみが引き出されてもよいし、2本以上のポリマー線状主鎖が引き出されてもよい。好ましくは、1つの固定化分子は1つのポリマー分子のみを引き出し、且つ1本のポリマー線状主鎖のみを引き出す。
【0371】
他のいくつかの好ましい形態では、重合のモノマー単位である前記アクリル系モノマー分子が、アクリル酸、アクリル酸塩、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸塩、メタクリル酸エステル系モノマーのいずれか又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0372】
本発明の他の実施形態として、前記アクリル系ポリマーは、他のポリマーで代替することができる。選択の基準は、形成されたポリマーは1本の線状主鎖を有し、主鎖に沿って大量の側分岐鎖を分布し、且つ側分岐鎖に機能基を携帯して後続の化学修飾に用いることができ、即ち磁気ビーズ外表面の結合部位に対して、ポリマー線状主鎖側端に分布された分岐鎖によって大量の機能基を提供することである。例えば、ε-ポリリジン鎖、α-ポリリジン鎖、γ-ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸鎖、アスパラギン酸/グルタミン酸共重合体などが挙げられる。
【0373】
上記ポリマーの他の代替形態のポリマー分子を前記生体磁性マイクロスフェアの外表面に導入する方法は下記である。ポリマー代替物の化学構造及びその側分岐鎖活性基のタイプに基づいて、適切な生体磁性マイクロスフェアの外表面の活性化修飾方式、固定化分子の種類、モノマー分子タイプを選択し、適切な化学反応を行って大量の分岐鎖に位置する活性基を生体磁性マイクロスフェアの外表面に導入する。
【0374】
アクリル系ポリマー分子(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム線状分子鎖)を磁気ビーズの外表面に共有結合した後、分岐鎖末端の官能基で活性化部位を提供し、又はビオチン又はビオチン類似体分子を連結する前に、反応の必要に応じて、ポリマー分子の分岐鎖官能基を活性化することができ、それに反応活性を備えさせ、活性化部位を形成する。3-プロパンジアミンをポリマー分岐鎖の活性部位(各モノマーアクリル系単位構造は一つの活性部位を提供することができる)に共有結合し、新たな官能基(アミノ基)を形成し、続いてカルボキシル基とアミノ基との間のアミド化共有結合反応を利用してビオチン又はビオチン類似体分子をポリマー分岐鎖末端の新たな機能基に共有結合し、ビオチン又はビオチン類似体がポリマーの分岐鎖末端に共有結合することを完成する。ビオチンを精製媒体とする例として、ビオチン修飾生体磁性マイクロスフェアDを得て、一つのビオチン分子は一つの特異的結合部位を提供することができる。ポリマー分岐鎖の官能基がCOONaであることを例とし、この場合にアクリル酸ナトリウムを用いてモノマー分子とし、1,3-プロパンジアミンと共有結合反応を行う前に、まずカルボキシル基活性化を行うことができ、従来のカルボキシル基活性化方法、例えばEDC・HClとNHSを加える方法を用いることができる。
【0375】
5.3.1.アクリル系ポリマー修飾磁性マイクロスフェアの製造
磁性マイクロスフェアAの製造:シリカで被覆された四酸化三鉄磁性マイクロスフェアの水溶液に対し、無水エタノールで磁性マイクロスフェアを洗浄し、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES、カップリング剤)のエタノール溶液を加え、反応し、洗浄し、磁性マイクロスフェアの外表面に大量のアミノ基を導入する。
【0376】
磁性マイクロスフェアBの製造:アクリル酸の水溶液に、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を加えてカルボキシル基活性化を行い、活性化後に磁性マイクロスフェアAを含む水溶液に加える。アクリル酸における活性化されたカルボキシル基と磁性マイクロスフェア外表面のアミノ基は共有結合(アミド結合)を形成し、磁性マイクロスフェアの外表面に大量の炭素-炭素二重結合を導入する。
【0377】
磁性マイクロスフェアCの製造:磁性マイクロスフェアBにアクリル系モノマー分子の水溶液を加え、開始剤を添加し、炭素-炭素二重結合の重合反応を行う。アクリル系モノマー分子における炭素-炭素二重結合と磁性マイクロスフェア表面の炭素-炭素二重結合は開結合重合を行い、アクリル系ポリマー分子は共有結合で磁性マイクロスフェアの外表面に連結され、ここで、アクリル系ポリマーはカルボキシル系官能基を含み、前記カルボキシル系官能基は、カルボキシル基、ギ酸塩、ギ酸エステルなどの形式で存在していてもよい。好ましい一形態では、ギ酸ナトリウムの形式で存在し、この場合に例えばアクリル酸ナトリウム又はメタクリル酸ナトリウムをモノマー分子とする。他の好ましい一形態では、ギ酸エステルの形式で存在し、この場合に例えばアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを用いてモノマー分子とする。ギ酸塩及びギ酸エステルはカルボキシル基によって活性化された後に比較的良好な反応活性を得ることができる。
【0378】
5.3.2.ビオチン修飾生体磁性マイクロスフェアDの製造
磁性マイクロスフェアCの溶液:1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)とN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を加えて、マイクロスフェア外表面のポリマー分子側分岐鎖のカルボキシル基系官能基をカルボキシル基活性化した後、プロピレンジアミンの水溶液を加えてカップリング反応を行い、アクリル系ポリマー分子の側分岐鎖カルボキシル基位置にプロピレンジアミンをグラフトして、ポリマー側分岐鎖の官能基をカルボキシル基からアミノ基に変換する。
【0379】
ビオチンの水溶液:1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩とN-ヒドロキシスクシンイミドとを加え、ビオチン分子におけるカルボキシル基を活性化し、続いて磁性マイクロスフェアCを含む水溶液に加え、磁性マイクロスフェアCの外表面のポリマーの側分岐鎖の新生官能基(アミノ基)の位置にビオチンを共有結合的にカップリングさせ、アクリル系ポリマーの多数の側分岐鎖にそれぞれビオチン分子が連結された生体磁性マイクロスフェアDを得る。
【0380】
5.3.3.好ましい例
いくつかの好ましい形態では、上記生体磁性マイクロスフェアDの製造方法は以下のとおりである。
【0381】
まず、0.5~1000mL(20%、v/v)のシリカで被覆された四酸化三鉄磁性マイクロスフェアの水溶液を量り取り、無水エタノールで磁性マイクロスフェアを洗浄し、10~300mLの3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES、CAS:919-30-2)のエタノール溶液(5%~50%、v/v)を上記洗浄後の磁性マイクロスフェアに加え、2~72時間反応させ、無水エタノールと蒸留水で磁性マイクロスフェアを洗浄し、アミノ基修飾磁性マイクロスフェアAを得る。
【0382】
1.0×10-4~1molのアクリル酸を取り、pH4~6の溶液Xに加え(溶液X:終濃度0.01~1mol/Lの2-モルホリノエタンスルホン酸(CAS:4432-31-9)、0.1~2mol/LのNaCl水溶液)、0.001~0.5molの1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl、CAS:25952-53-8)及び0.001~0.5molのN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS、CAS:6066-82-6)を加え、3~60min反応させる。上記溶液を0.5~50mLの磁性マイクロスフェアAが混合されたpH7.2~7.5のPBS緩衝溶液に加え、1~48時間反応し、蒸留水で磁性マイクロスフェアを洗浄し、炭素-炭素二重結合で修飾された磁性マイクロボールBを得る。
【0383】
0.5~50mLの磁性マイクロボールBを取り、0.5~200mLの5%~30%(w/v)アクリル酸ナトリウム溶液を加え、さらに10μL~20mLの2%~20%(w/v)過硫酸アンモニウム溶液及び1μL~1mLのテトラメチルエチレンジアミンを加え、3~60分間反応させた後に蒸留水で磁性マイクロスフェアを洗浄し、ポリアクリル酸ナトリウムで修飾された磁性マイクロスフェアCを得る。
【0384】
0.5~50mLの磁性マイクロスフェアCを取ってpH4~6の溶液Xに移行し、0.001~0.5molの1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)と0.001~0.5molのN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を加え、3~60min反応させる。続いて0.0001~1molの1,3-プロパンジアミンを溶解したpH7.2~7.5のPBS緩衝溶液を加え、1~48時間反応させる。蒸留水で洗浄した後にPBS緩衝溶液を加え、磁性マイクロスフェアCにおけるポリマー側分岐鎖のCOONaをアミノ官能基に変換し、溶液Xに1.0×10-6~3.0×10-4molのビオチンを秤取し、2.0×10-6~1.5×10-3molの1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩と2.0×10-6~1.5×10-3molのN-ヒドロキシスクシンイミドを加え、3~60min反応させる。続いて上記洗浄後の磁性マイクロスフェア溶液に加え、1~48時間反応させ、蒸留水で洗浄した後にビオチン修飾磁性マイクロスフェアDを得る。
【0385】
5.4.本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様に提供される生体磁性マイクロスフェアをアビジン又はアビジン類似体と反応して得られる生体磁性マイクロスフェアを提供する。
【0386】
6.本発明の第6の態様は、本発明の第2の態様に提供される生体磁性マイクロスフェアの製造方法を提供し、この方法は、(i)請求項1に記載の生体磁性マイクロスフェアを提供するステップであって、第5の態様のステップ(1)から(4)で製造することができるステップと、(ii)精製媒体を前記生体磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端のビオチン又はビオチン類似体に連結するステップと、を含む。
【0387】
いくつかの好ましい形態では、前記生体磁性マイクロスフェアは、下記のステップによって製造される。ステップ(1)から(4)は、第5の態様と同じであり、ステップ(5)は、精製媒体を前記生体磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端のビオチンに連結する。
【0388】
7.本発明の第7の態様は、本発明の第2の態様に提供される生体磁性マイクロスフェアの製造方法を提供し、この方法は、(i)請求項1に記載の生体磁性マイクロスフェアを提供するステップであって、第5の態様のステップ(1)から(4)で製造することができるステップと、(ii)アビジン又はアビジン類似体と精製媒体との共有結合複合体を精製媒体提供用の原料として、それをポリマーの分岐鎖末端に結合し、前記ビオチン又はビオチン類似体と前記アビジン又はアビジン類似体との間にアフィニティ複合体の結合作用を形成し、精製媒体付き生体磁性マイクロスフェアを得るステップと、を含む。
【0389】
独立して任意に、(6)磁石で生体磁性マイクロスフェアを沈降し、液相を除去し、洗浄するステップを含み、
独立して任意に、前記精製媒体の交換を含み、適当な条件で前記アビジン又はアビジン類似体と精製媒体との共有結合複合体を溶出することによって実現することができる。
【0390】
いくつかの好ましい形態では、前記生体磁性マイクロスフェアは、下記の5つのステップによって製造される。ステップ(1)~(4)は、第5の形態と同じであり、ステップ(5)は、上記のステップ(ii)と同じである。
【0391】
8.本発明の第8の態様は、本発明の第4の態様に提供される生体磁性マイクロスフェアの製造方法を提供する。
【0392】
本発明の第4の態様は、アフィニティタンパク質磁性マイクロスフェアを提供する。
【0393】
本発明の第4の態様に提供される生体磁性マイクロスフェアは、第1の態様に提供される生体磁性マイクロスフェアを原料とし、さらにアビジン又はその類似体とアフィニティタンパク質との共有結合複合体を結合して得られ、ビオチン又はその類似体とアビジン又はその類似体との間のアフィニティ複合体作用により、アフィニティ複合体を前記生体磁性マイクロスフェアのポリマー分岐鎖に担持する。
【0394】
好ましい一形態では、本発明の第4の態様に提供される生体磁性マイクロスフェアは、本発明の第1の態様に提供される生体磁性マイクロスフェアを原料とし、さらにアビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体Eを結合して得られる。
【0395】
アビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体E:アビジン-アフィニティタンパク質複合体Eとも呼ばれ、共有結合の方式で連結された複合体であり、一端がアビジン又はその類似体、他端がアフィニティタンパク質であり、両者は共有結合で直接連結され、又は共有結合連結要素で間接的に連結される。前記共有結合連結基は、共有結合、連結ペプチドなどを含む。アビジン-アフィニティタンパク質複合体Eとして、例えば、ストレプトアビジンを有するアフィニティタンパク質が挙げられ、ここで、アフィニティタンパク質としては、プロテインA、プロテインG及び/又はプロテインLなどが挙げられるがこれらに限定されない。アビジン-アフィニティタンパク質複合体Eとしては、さらに、ストレプトアビジン-プロテインA複合体、ストレプトアビジン-プロテインAの融合タンパク質、ストレプトアビジン-増強型緑色蛍光タンパク質-プロテインAの融合タンパク質(Protein A-eGFP-Streptavidin)、Protein A-eGFP-Tamavidin2、Protein A-eGFP-Tamavidin1などが挙げられ、ここで、eGFPは広義にeGFPの変異体を含み、Streptavidinはストレプトアビジンであり、Tamavidin1とTamavidin2はいずれもアビジン類似体である。
【0396】
アビジンはビオチンと特異的に結合し、アフィニティ複合体を形成する。上記アビジンとビオチンとのアフィニティ複合体の結合作用は他のアフィニティ複合体の結合作用で代替することができ、同様にアフィニティタンパク質を交換した後に再利用する効果を実現することができる。ただし、アビジンとビオチンが提供するアフィニティ複合体作用はより好ましい。これは両者の間の特異性が高く、親和力が強く、且つビオチンはアビジンとの結合ドメインに加え、さらに結合可能なカルボキシル基を1つ増加し、またアビジンはアフィニティタンパク質と融合タンパク質に製造しやすいためである。
【0397】
アフィニティ複合体の選択基準:特異性が優れ、親和力が強く、さらに化学的に結合可能な部位を1つ提供し、それによってポリマー分岐鎖末端に共有結合することができ、又は化学修飾された後にポリマーの分岐鎖末端に共有結合することができる。
【0398】
8.1.製造過程
いくつかの実施形態において、上記第5の態様に製造された生体磁性マイクロスフェア(ビオチン磁性マイクロスフェア)に基づいて以下のステップ(5)を行い、アフィニティタンパク質を精製媒体とする磁性マイクロスフェアシステムを得る。
【0399】
ステップ(5):アビジン又はアビジン類似体とアフィニティタンパク質との共有結合複合体(例えばアビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体E)を結合する。ビオチン又はその類似体とアビジン又はその類似体との間の特異的結合作用により、前記共有結合複合体(例えばアビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体E)をポリマーの分岐鎖末端に結合し、ビオチン又はその類似体とアビジン又はその類似体との間にアフィニティ複合体の結合作用を形成し、アフィニティタンパク質磁性マイクロスフェアを得る。
【0400】
例えば、アビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体E(例えば、ストレプトアビジン付きアフィニティタンパク質であり、ここで、アフィニティタンパク質はプロテインA、プロテインG又は/及びプロテインLなどから選択されるがこれらに限定されない)を、ビオチン修飾生体磁性マイクロスフェアDの系に添加し、ビオチンとアビジン(例えばストレプトアビジン)との間の極めて強い特異性親和力を利用し、アフィニティタンパク質を磁気ビーズ外表面のポリマー分岐鎖末端に非共有結合し、抗体系物質の分離精製に使用可能なアフィニティタンパク質修飾磁気ビーズを得て、アフィニティタンパク質を精製媒体とし、標的タンパク質を捕捉するための結合部位を提供する。
【0401】
8.2.製造過程の例
本発明の第4の態様に提供される生体磁性マイクロスフェアは、ビオチン-アビジン-アフィニティタンパク質の方式で前記ポリマーの分岐鎖末端に連結されることを例とし、以下のステップにより製造することができる。
【0402】
(1)磁性マイクロスフェア本体に対して化学修飾を行い、アミノ基を磁性マイクロスフェア本体の外表面に導入し、アミノ基修飾磁性マイクロスフェアAを形成し、前記磁性マイクロスフェア本体がSiO2で被覆された磁性材料である場合、前記カップリング剤は、好ましくはアミノ化シランカップリング剤である。
【0403】
好ましい一形態では、カップリング剤を利用して磁性マイクロスフェア本体に対して化学修飾を行う。
【0404】
前記磁性マイクロスフェア本体がSiO2で被覆された磁性材料である場合、シランカップリング剤を利用して磁性マイクロスフェア本体に対して化学修飾を行うことができる。このとき、前記シランカップリング剤は、好ましくはアミノ化シランカップリング剤である。
【0405】
(2)カルボキシル基とアミノ基との間の共有結合反応を利用してアクリル酸分子を前記磁性マイクロスフェアAの外表面に共有結合し、炭素-炭素二重結合を導入し、炭素-炭素二重結合含有磁性微小球Bを形成する。
【0406】
(3)架橋剤を加えない条件で、炭素-炭素二重結合の重合反応を利用し、アクリル系モノマー分子(例えばアクリル酸ナトリウム)を重合し、得られたアクリル系ポリマー鎖は線状主鎖と官能基を含む分岐鎖とを有し、ポリマーは線状主鎖の一端によって磁性マイクロスフェアBの外表面に共有結合され、アクリル系ポリマー修飾磁性マイクロスフェアCを形成する。
【0407】
前記官能基の好ましい一実施形態は特異的結合部位である。
【0408】
前記官能基の他の好ましい態様は、上記第1の態様と一致する。
【0409】
(4)前記ポリマーの分岐鎖に含まれる官能基により、ビオチンを共有結合し、ビオチン修飾生体磁性マイクロスフェアDを得る。
【0410】
(5)ビオチンとアビジンとの特異的結合作用によって、アビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体Eをポリマーの分岐鎖末端に結合し、ビオチンとアビジンとの間にアフィニティ複合体の結合作用を形成し、アフィニティタンパク質で修飾された生体磁性マイクロスフェアを得る(生体磁性マイクロスフェア)。
【0411】
独立して任意に、(6)磁石でアフィニティタンパク質磁性マイクロスフェアを沈降し、液相を除去し、洗浄するステップを含む。
【0412】
さらに独立して任意に、(7)前記アビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体Eを交換し、適切な条件で前記アビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体Eを溶出することによって実現することができるステップを含む。
【0413】
8.3.生体磁性マイクロスフェア:アビジン-プロテインAが結合された生体磁性マイクロスフェアFの製造
(アフィニティタンパク質が結合された生体磁性マイクロスフェアF、プロテインAで修飾された生体磁性マイクロスフェアF、プロテインAで修飾された磁性マイクロスフェア)
【0414】
アビジン-プロテインA結合複合体E(例えば、Protein A-eGFP-Streptavidin、Protein A-eGFP-Tamvavidin2)の融合タンパク質溶液に、ビオチン修飾生体磁性マイクロスフェアDを加え、混合してインキュベートする。アビジン(例えばStreptavidin又はTamvavidin2)とビオチンとの特異的に結合により、Protein Aを生体磁性マイクロスフェアDの外表面のポリマー分岐鎖の末端基に固定し、アビジン-プロテインAが結合された生体磁性マイクロスフェアFを得る。得られた生体磁性マイクロスフェアF構造において、アクリル酸重合体の側分岐鎖はビオチン-アビジン-プロテインAのアフィニティ複合体構造を含み、生体素端により共有結合的にポリマーの線状主鎖分岐点に連結され、ビオチンとアビジンとの間にアフィニティ複合体の非共有結合の強い特異性結合作用を形成し、アビジンとプロテインAとの間は共有結合で連結され、アビジンとプロテインAとの間に蛍光ラベルを挿入することができ、さらに他の連結ペプチドを挿入することができる。
【0415】
ここで、アビジン-プロテインAの融合タンパク質、例えばProtein A-eGFP-Streptavidin融合タンパク質とProtein A-eGFP-Tamvavidin2融合タンパク質は、いずれもIVTT反応により生体外無細胞タンパク質合成を行って得ることができる。この時、前記生体磁性マイクロスフェアDはIVTT反応後に得られた上清と混合し、生体磁性マイクロスフェアDの外表面のビオチンと溶液中のアビジン融合タンパク質との間の特異性結合作用により、アフィニティープロテインAの結合を実現する。
【0416】
8.4.前記生体磁性マイクロスフェアの外表面のアフィニティタンパク質結合量は以下の方法により確定することができる(蛍光タンパク質eGFP標識を例とする)。
【0417】
まず、アフィニティタンパク質の溶液と磁気ビーズとの結合反応が終了した後、アフィニティタンパク質が結合した生体磁性マイクロスフェアを磁石で吸着し、沈降させる。その後、液相を分離収集し、フロースルーと記す。この場合、液相中のアフィニティタンパク質濃度が減少する。生体磁性マイクロスフェアに結合する前後のIVTT反応で得られた上清における蛍光タンパク質eGFP蛍光値の変化値を測定することにより、生体磁性マイクロスフェアに結合された蛍光タンパク質eGFPの蛍光強度を算出し、アフィニティタンパク質濃度を換算して得る。フロースルー中のアフィニティタンパク質濃度が、生体磁性マイクロスフェアとのインキュベートの前のIVTT溶液中のアフィニティタンパク質濃度と比べて、基本的に変化しない場合は、生体磁性マイクロスフェアのアフィニティタンパク質に対する吸着が飽和傾向にあり、対応する蛍光タンパク質eGFPの蛍光値が顕著に変化しないことを意味する。eGFPタンパク質の純品を採用し、蛍光値とeGFPタンパク質濃度の標準曲線を確立し、それにより生体磁性マイクロスフェアに結合されたアビジン-アフィニティタンパク質(例えば:ストレプトアビジン-プロテインA)の含有量、濃度を測定した。
【0418】
プロテインAで修飾された生体磁性マイクロスフェアを用いて抗体の分離精製を行う時に、以下の方法により抗体結合量を算出することができる(ウシ血清抗体を例とする)。プロテインAで修飾された磁気ビーズをウシ血清抗体の溶液(例えば生体外タンパク質合成系を用いて抗体を発現して取得し又は市販して取得する)とインキュベートし、反応が終了した後、溶出緩衝液を用いてウシ血清抗体を磁気ビーズから溶出し、分離して得られたウシ血清抗体は溶出液に存在する。Bradford法を用いて溶出液中のウシ血清アルブミンの濃度を測定する。同時にBSAを標準タンパク質として、マイクロプレートリーダーテストを行い、標準タンパク質を参照として、精製抗体のタンパク質濃度を算出することができ、さらに分離精製の収量、収率を算出する。
【0419】
8.5.生体磁性マイクロスフェアの再生:精製媒体の交換(アフィニティタンパク質をプロテインAとする例)
プロテインAの溶出と交換:アビジンを溶出すると同時にプロテインAの同期脱離を実現し、したがって、アビジン-プロテインAの交換でもある。
【0420】
例えば、プロテインAで修飾された生体磁性マイクロスフェアFに変性緩衝液(尿素及びドデシル硫酸ナトリウムを含む)を加え、95℃の金属浴でインキュベートし、生体磁性マイクロスフェアDにおけるビオチンと結合するアビジン-プロテインAの融合タンパク質(例えば、SPA-eGFP-Tamvavidin2)を溶出し、再生された生体磁性マイクロスフェアD(ポリマー分岐鎖末端のビオチンの結合部位を放出する)を取得し、続いて再生された生体磁性マイクロスフェアDに新鮮なアビジン-プロテインAの融合タンパク質を含有する溶液(例えばSPA-eGFP-Tamvavidin2のIVTT反応後の上清)を添加し、放出された生体磁性マイクロスフェアDのビオチン結合部位に新たなアビジン-プロテインA(例えば、SPA-eGFP-Tamvavidin2)を再結合させ、ビオチンとアビジン(例えばTamvavidin2)との間に非共有結合の特異的結合作用を新たに形成し、それによりプロテインAの交換を実現し、再生された生体磁性マイクロスフェアFを得る。
【0421】
9.磁性マイクロスフェアの位置制御
本発明の第1から第4の態様に記載の生体磁性マイクロスフェア(生体磁性マイクロスフェアD及び生体磁性マイクロスフェアFを含むがそれらに限定されない)を得た後、磁石を利用して磁性マイクロスフェアを沈降し、液相を除去し、吸着された雑タンパク質又は/及び他の不純物を洗浄して除去することができる。
【0422】
磁性マイクロスフェアのサイズ及びポリマーの化学パラメータと構造パラメータを制御することにより、前記磁性マイクロスフェアは液相に安定的に懸濁することができ、2日又はさらにより長い時間内に沈降しない。また、攪拌を続けない条件で、液状系に安定に懸濁することができる。磁性マイクロスフェアは数ミクロンひいては1ミクロン以下のナノサイズに制御することができる一方、磁性マイクロスフェア外表面のポリマーのグラフト密度を調整することができ、さらにポリマー自体の親水性、構造タイプ、流体力学半径、鎖長さ、分岐鎖数、分岐鎖長さなどの特徴を調整することができ、それにより磁性マイクロスフェアシステムが系における懸濁性能をよりよく制御し、磁性マイクロスフェアシステムと生体外タンパク質合成反応混合系との十分な接触を実現する。一つの好ましい前記磁性マイクロスフェアのサイズは約1マイクロメートルである。
【0423】
10.本発明の第9の態様は、本発明の第1から第4の態様に記載の生体磁性マイクロスフェアのタンパク質系物質の分離精製における使用を提供する。
【0424】
好ましい一形態では、前記生体磁性マイクロスフェアの抗体系物質の分離精製における使用である。
【0425】
前記抗体系物質の定義は用語部分を参照する。
【0426】
本発明は、特に前記生体磁性マイクロスフェアの抗体、抗体断片、抗体融合タンパク質、抗体断片融合タンパク質の分離精製における使用を提供する。
【0427】
前記精製媒体は、アフィニティ複合体を含む連結要素によって前記ポリマーの分岐鎖末端に連結される場合、前記使用はさらに生体磁性マイクロスフェアの再生使用を含み、即ち精製媒体の交換後再利用を含む。
【0428】
11.本発明の第10の態様は、本発明の第2の態様又は第4の態様に記載の生体磁性マイクロスフェアの抗体系物質の分離精製における使用、特に抗体、抗体断片、抗体融合タンパク質、抗体断片融合タンパク質の分離精製における使用を提供する。
【0429】
前記精製媒体はアフィニティタンパク質である。
【0430】
好ましくは、前記アフィニティタンパク質は、ビオチン-アビジン-アフィニティタンパク質の方式でポリマーの分岐鎖に連結する。
【0431】
前記アフィニティタンパク質は、アフィニティ複合体を含む連結要素によって前記ポリマーの分岐鎖末端に連結される場合(例えば、第4の態様に記載の生体磁性マイクロスフェア)、前記使用はさらに生体磁性マイクロスフェアの再生使用を含み、即ちアフィニティタンパク質の交換後再利用を含む。
【0432】
この使用の生体磁性マイクロスフェアにおいて、アフィニティタンパク質とポリマーの線状主鎖との間の分岐鎖骨格にアフィニティ複合体の結合作用が存在し、この時に任意にアフィニティタンパク質の交換を行った後に再利用することができ、前記生体磁性マイクロスフェアは再生して使用することができる。好ましくは、アフィニティタンパク質とポリマーの線状主鎖との間の分岐鎖骨格にビオチン-アビジンのアフィニティ複合体結合作用が存在し、即ちアフィニティタンパク質はビオチン-アビジン-アフィニティタンパク質の方式でポリマー分岐鎖に連結され、この時に生体磁性マイクロスフェアはアビジン-アビジンの溶出によって交換することもできる。
【0433】
12.本発明の第11の態様は、生体磁性マイクロスフェアを提供する。前記磁性マイクロスフェア本体の外表面には、線状主鎖及び分岐鎖を有するポリマーを少なくとも1種有し、前記線状主鎖の一端が磁性マイクロスフェア本体の外表面に固定され、ポリマーの他端は磁性マイクロスフェア本体の外表面から遊離し、前記磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端には、精製媒体が連結されており、前記精製媒体は、アビジン型タグ、ポリペプチド型タグ、タンパク質型タグ、抗体型タグ、抗原型タグ、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0434】
好ましい一形態では、前記アビジン型タグは、アビジン、ビオチンと結合可能なアビジン類似体、ビオチン類似体と結合可能なアビジン類似体、又はそれらの組み合わせである。
【0435】
好ましい一形態では、前記アビジンは、ストレプトアビジン、変性ストレプトアビジン、ストレプトアビジン類似体、又はそれらの組み合わせである。
【0436】
好ましい一形態では、前記ポリペプチド型タグは、CBPタグ、ヒスチジンタグ、C-Mycタグ、FLAGタグ、Spotタグ、Cタグ、Aviタグ、Stregタグ、WRHPQFGG(SEQ ID No:7)配列を含むタグ、WRHPQFGG(SEQ ID No:7)の変体配列を含むタグ、RKAAVSHW(SEQ ID No:8)配列を含むタグ、RKAAVSHW(SEQ ID No:8)の変体配列を含むタグ、又はそれらの組み合わせから選択されるいずれかのタグ又はその変体であり、前記Stregタグは、WSHPQFEK(SEQ ID No:9)及びその変体を含む。
【0437】
好ましい一形態では、前記タンパク質型タグは、アフィニティタンパク質、SUMOタグ、GSTタグ、MBPタグ、及びそれらの組み合わせから選択されるいずれかのタグ及びその変体である。
【0438】
好ましい一形態では、前記磁性マイクロスフェア本体の外表面には、線状主鎖及び分岐鎖を有するポリマーを少なくとも1種有し、前記線状主鎖の一端が磁性マイクロスフェア本体の外表面に共有結合的に固定され、ポリマーの他端は磁性マイクロスフェア本体の外表面から遊離し、前記磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端には、アフィニティタンパク質が連結されている。
【0439】
好ましくは、さらに、前記アフィニティタンパク質とポリマーの線状主鎖との間の分岐鎖骨格にアフィニティ複合体の結合作用が存在する。
【0440】
より好ましくは、前記アフィニティタンパク質は、プロテインA、プロテインG、プロテインL、変性プロテインA、変性プロテインG、変性プロテインL、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0441】
下記実施例2~6の生体外無細胞タンパク質合成方法に用いられる生体外タンパク質合成系(IVTT系)は、9.78mMのpH8.0トリスヒドロキシメチルアミノメタン塩酸(Tris-HCl)、80mMの酢酸カリウム、5mMの酢酸マグネシウム、1.8mMのヌクレオシド三リン酸混合物(アデニンヌクレオシド三リン酸、グアニンヌクレオシド三リン酸、シトシンヌクレオシド三リン酸及びウラシルヌクレオシド三リン酸であり、それぞれのヌクレオシド三リン酸の濃度は1.8mMである)、0.7mMのアミノ酸混合物(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、セリン、チロシン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン及びヒスチジンであり、各アミノ酸濃度は0.1mMである)、15mMのグルコース、320mMのマルトデキストリン(グルコース単位計算でモル濃度は約52mg/mLである)、24mMのリン酸三カリウム、2%(w/v)のポリエチレングリコール8000の成分(いずれも最終濃度)を含み、最後に50体積%の細胞抽出物(具体的には酵母細胞抽出物、より具体的にはクルイベロミセス・ラクチス細胞抽出物)を添加する。
【0442】
ここで、前記クルイベロミセス・ラクチス抽出物に内因性発現のT7 RNAポリメラーゼが含まれる。前記クルイベロミセス・ラクチス抽出物は以下の方式で改造される。クルイベロミセス・ラクチス株ATCC8585に基づく改造菌株を採用し、CN109423496Aに記載の方法によって、T7 RNAポリメラーゼをコードする遺伝子をクルイベロミセス・ラクチスのゲノムに統合し、改造菌株を取得し、それにT7 RNAポリメラーゼを内在性で発現させ、改変菌株で細胞原料を培養し、続いて細胞抽出物を製造する。クルイベロミセス・ラクチス細胞抽出物の製造過程は従来技術手段を採用し、CN109593656A記載の方法を参照して製造する。製造ステップは概略的に言えば、以下を含む。発酵培養されたクルイベロミセス・ラクチス細胞の適量の原料を提供し、液体窒素で細胞を急速冷凍し、細胞を破砕し、遠心して上清を収集し、細胞抽出物を得ることができる。得られたクルイベロミセス・ラクチス細胞抽出物中の蛋白濃度は20~40mg/mLである。
【0443】
IVTT反応:上記生体外タンパク質合成系に15ng/μLのDNAテンプレート(コードされたタンパク質に蛍光標識が含まれる)を加え、生体外タンパク質合成反応を行い、均一に混合した後に25~30℃環境に置いて反応し、反応時間は6~18hである。前記DNAテンプレートによってコードされたタンパク質を合成し、前記タンパク質を含むIVTT反応液を得る。紫外吸収法を用いてRFU値を測定し、その濃度とRFU値の標準曲線を結合し、前記タンパク質の含有量を算出することができる。
【0444】
実施例1 バイオ磁性マイクロスフェアの製造(ビオチンに結合)
シリカで被覆された磁性マイクロスフェアの製造(磁性マイクロスフェア本体、磁気ビーズ、ガラスビーズとも呼ばれる)
20gのFe3O4マイクロスフェアを310mLのエタノールと125mLのとの混合溶媒に入れ、45mLの28%(wt)アンモニア水を加え、22.5mLのオルトケイ酸エチルを滴下し、室温で24h撹拌して反応させ、反応後にエタノールと水で洗浄した。異なる粒径(約1μm、10μm、100μm)の四酸化三鉄マイクロスフェアを原料として、得られたガラスビーズの粒径サイズを制御した。前記異なる粒径の四酸化三鉄マイクロスフェアは従来の技術的手段によって製造することができる。
【0445】
得られた磁性マイクロスフェアは、精製媒体や連結要素-精製媒体を修飾するための基材として用いられるため、磁性マイクロスフェア本体とも呼ばれる。
【0446】
得られた磁性マイクロスフェアは、磁性コアを有し、磁力作用によって位置制御を行うことができ、移動、分散、沈降などの操作を実現し、従って広義の磁気ビーズである。
【0447】
得られた磁性マイクロスフェアは、シリカの被覆層を有するため、ガラスビーズとも呼ばれ、磁性コアがポリマー、精製媒体、生体外タンパク質合成系の各成分、核酸テンプレート、タンパク質発現産物などの成分又は画分に対する吸着を低減することができる。
【0448】
数回の実験結果から見ると、磁性マイクロスフェアの粒径は約1μmである時、懸濁しやすい性、懸濁の持続性、及びタンパク質に対する結合効率はいずれも最も高いことがわかった。IVTT反応液を用いて標的タンパク質の混合系を提供し、標的タンパク質に対する結合効率は、磁性マイクロスフェアの粒径が約1μmである場合、粒径10μmに比べて50%以上を高めることができ、粒径10μmに比べて80%以上を高めることができる。
【0449】
シリカで被覆された磁性マイクロスフェアで以下のステップによりビオチン磁気ビーズを製造した。
【0450】
まず、50mLのシリカで被覆された四酸化三鉄磁性マイクロスフェア(磁性マイクロスフェアの粒径は約1μmである)の水溶液を量り取り、その固形分は20%(v/v)であり、磁石で磁性マイクロスフェアを沈降させ、液相を除去し、毎回60mLの無水エタノールで磁性マイクロスフェアを洗浄し、合計5回洗浄した。100mLの過剰の3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES、CAS:919-30-2)のエタノール溶液(25%、v/v)を上記洗浄後の磁性マイクロスフェアに加え、50℃の水浴で48時間機械的に撹拌し、その後70℃の水浴で2時間機械的に撹拌し、磁石で磁性マイクロスフェアを沈降させ、液相を除去し、毎回60mLの無水エタノールで磁性マイクロスフェアを洗浄し、合計2回洗浄し、続いて毎回60mLの蒸留水で磁性マイクロスフェアを洗浄し、洗浄を3回繰り返し、磁性マイクロスフェアAを得た。
【0451】
次に、0.01molのアクリル酸を採取して100mLの溶液X(溶液X:終濃度が0.1mol/Lの2-モルホリノエタンスルホン酸(CAS:4432-31-9)、0.5mol/LのNaCl水溶液)に加え、0.04molの1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(CAS:25952-53-8)と0.04molのN-ヒドロキシスクシンイミド(CAS:6066-82-6)を加え、室温で撹拌して均一に混合し、撹拌して15min反応させ、NaHCO3固体粉末で溶液のpHを7.2に調整し、pH調整後の上記溶液を10mLの磁性マイクロスフェアAが添加された100mLのPBS緩衝溶液に加え、30℃の水浴で20時間機械的に撹拌し、磁石で磁性マイクロスフェアを沈降させ、液相を除去し、毎回60mLの蒸留水で磁性マイクロスフェアを洗浄し、洗浄を6回繰り返し、磁性マイクロスフェアBを得た。
【0452】
第三、1mLの磁性マイクロスフェアBを取り、12mLの15%(w/v)のアクリル酸ナトリウム溶液を加え、450μLの10%の過硫酸アンモニウム溶液と45μLのテトラメチルエチレンジアミンを加え、室温で30分間反応させ、磁石で磁性マイクロスフェアを沈降させ、液相を除去し、毎回10mLの蒸留水で磁性マイクロスフェアを洗浄し、合計6回洗浄し、磁性マイクロスフェアC(アクリル系ポリマーで修飾された磁性マイクロスフェアC)を得た。
【0453】
第四、合成された磁性マイクロスフェアCを10mLの溶液Xに移し、0.004molの1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩と0.004molのN-ヒドロキシスクシンイミドを加え、室温で撹拌して均一に混合し、撹拌して15min反応させ、磁石で生体磁性マイクロスフェアを沈降し、液相を除去し、毎回10mLの蒸留水で3回洗浄し、4.0×10-4molの1,3-プロパンジアミンを10mLのPBS緩衝溶液に溶解し、洗浄した磁性マイクロスフェアに添加し、30℃の水浴で20時間機械的に撹拌し、磁石で磁性マイクロスフェアを沈降し、液相を除去し、毎回10mLの蒸留水で6回洗浄し、10mLのPBS緩衝溶液を添加し、2.5×10-4molのビオチンを秤量し、10mLの溶液Xを加え、さらに1.0×10-3molの1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩と0.001molのN-ヒドロキシスクシンイミドを加え、室温で均一に撹拌し、撹拌して15min反応させ、NaHCO3固体粉末で溶液のpHを7.2に調整し、上記洗浄した10mLのPBS緩衝溶液を含む磁性マイクロスフェアに加え、30℃の水浴で20時間機械的に撹拌し、磁石で磁性マイクロスフェアを沈降させ、液相を除去し、毎回10mLの蒸留水で10回洗浄し、ビオチン修飾生体磁性マイクロスフェアルDを得た。
【0454】
実施例2 アビジン-プロテインAと結合する生体磁性マイクロスフェアF(アフィニティタンパク質と結合する生体磁性マイクロスフェアF)の製造(プロテインAを精製媒体とし、ビオチン-アビジンのアフィニティ複合体を連結要素とする)
【0455】
2.1 Protein A-eGFP-アビジン融合タンパク質の合成
融合タンパク質Protein A-eGFP-Streptavidin及びProtein A-eGFP-Tamvavidin2の三段遺伝子で構成されたDNA配列をそれぞれ構築した。
【0456】
ここで、Protein A(プロテインA)は、配列がStaphylococcus Aureusから由来し、SPAと略称される。SPAのアミノ酸配列は全長が516アミノ酸残基であり、その37~327位のアミノ酸を選択して融合タンパク質構築に用いられる遺伝子配列とし、即ちSPAの抗体結合ドメインである。当該配列を最適化プログラムで最適化した後、ヌクレオチド配列を得て、SEQ ID NO.:1に示す。
【0457】
Tamvavidin2は、アビジン類似体であり、ビオチンに結合する能力を持つタンパク質である。Yamamotoらは、2009年に、それはストレプトアビジンと類似する非常に強いビオチン親和力を持ち、また熱安定性がストレプトアビジンより優れていることを見出した(2009_FEBS_Yamanomo T_Tamavidins--novel avidin-like biotin-binding proteins from the Tamogitake mushroom、翻訳:Tamogitake由来の新規アビジン様ビオチン結合タンパク質)。
【0458】
Tamavidin2のアミノ酸配列は関連データベースから検索することができ、例えばUniProt B9A0T7であり、それが合計141個のアミノ酸残基を含み、コドン変換、最適化プログラムによる最適化でDNA配列を得て、最適化後のヌクレオチド配列は例えばSEQ ID NO.:2に示す。
【0459】
また、本実施例に係る増強型蛍光タンパク質eGFPのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO.:3に示され、eGFPのA206K変異体であり、mEGFPとも呼ばれる。
組換えPCR法を採用してProtein A-eGFP-Streptavidin及びProtein A-eGFP-Tamvavidin2の2つの融合タンパク質のDNAテンプレートをそれぞれ構築した。続いて生体外無細胞タンパク質合成方法を採用して2つの融合タンパク質Protein A-eGFP-Streptavidin及びProtein A-eGFP-Tamvavidin2をそれぞれ得た。既に開示された生体外無細胞タンパク質合成方法を採用し、特許文献CN201610868691.6、WO2018161374A1、KR20190108180A、CN108535489Bなどを参照した。SPA-eGFP-Streptavidin、SPA-eGFP-Tamavidin2をそれぞれIVTT系で表現した。一般的には、IVTT系に細胞抽出物(ゲノム統合表現のRNAポリメラーゼを含む)、DNAテンプレート、エネルギー系(例えば、ホスホクレアチン-ホスホクレアチンキナーゼ系)、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン、ポリエチレングリコールなどの成分を加え、28~30℃で反応を行った。8~12時間後に反応を終了した。得られたIVTT反応液には、DNAテンプレートに対応するProtein A-eGFP-アビジン融合タンパク質が含まれた。
Protein A-eGFP-Streptavidin及びProtein A-eGFP-Tamvavidin2のIVTT反応液をそれぞれ得た。
【0460】
SPA-eGFP-Streptavidin(
図4の「1」に対応)、SPA-eGFP-Tamavidin2(
図4の「2」に対応)をそれぞれIVTT系で表現し、合成されたタンパク質のRFU値を測定し、その結果を
図4の「total」に示す。
【0461】
Protein A-eGFP-Streptavidin及びProtein A-eGFP-Tamavidin2のIVTT反応液を4000rpm、4°Cで10分間遠心分離し、上清を保留した。IVTT上清と表記する。
【0462】
2.2 プロテインAに結合した生体磁性マイクロスフェアFの製造
得られた2つの融合タンパク質Protein A-eGFP-Streptavidin及びProtein A-eGFP-TamavidinのIVTT上清を、それぞれ実施例1で得られた生体磁性マイクロスフェアDとともに1時間インキュベートし、上記の方法に基づいて生体磁性マイクロスフェアFにおける融合タンパク質の含有量をそれぞれ測定し、2つの融合タンパク質の結合能力の強弱を比較した。結果は
図4「supernatant」に示す。
【0463】
30μLの10%(v/v)生体磁性マイクロスフェアDの懸濁液をピペットで取り、結合/洗浄緩衝液(10mMのNa2HPO4、pH 7.4、2mMのKH2PO4、140mMのNaCl、2.6mMのKCl)で3回洗浄した。
【0464】
2mLのアビジン-プロテインA融合タンパク質を含有するIVTT上清を取り、上記生体磁性マイクロスフェアDと4℃の条件で1時間回転インキュベートし、結合されていない清液を収集し、即ちフロースルーであり、このステップを3回繰り返し、3回の異なるフロースルーを得た。即ち同一ロットの生体磁性マイクロスフェアDは連続的にアビジン-プロテインAと3回インキュベートした。毎回2mLのステップ2.1に記載のIVTT上清を用い、対応する毎回取得したフロースルーは順序に応じて番号1、2、3と記した。蛍光光度法を採用してIVTT上清と前記3回フロースルーのeGFP蛍光値を検出し、結果は
図5に示すように、励起波長(Ex)は488nmであり、発光波長(Em)は507nmである。3回のフロースルーのRFU値がIVTT上清のRFU値に近くことは、生体磁性マイクロスフェアDがアビジン-アフィニティープロテインAに対する結合が飽和傾向にあると説明し、対応するRFU値は以下の表1に示す。
【0465】
【0466】
生体磁性マイクロスフェアDに結合したSPA-eGFP-Streptavidin、SPA-eGFP-Tamvavidin2のRFU値をそれぞれ以下の表2と3に示す。ここで、Streptavidinに対して、1回目の結合は既に生体磁性マイクロスフェアDのプロテインA結合量を飽和させる。Tamvavidin2に対して、2回目の結合後、生体磁性マイクロスフェアDのプロテインA結合量はほぼ飽和に達する。1回目の結合量は、上清中のタンパク質量から、フロースルー1中のタンパク質量を差し引いて算出し、2回目の結合量は、上清中のタンパク質量から、フロースルー2中のタンパク質量を差し引いて算出し、3回目の結合量は、上清中のタンパク質量から、フロースルー3中のタンパク質量を差し引いて算出し、下記表2、表3に示す。ここで、結合力はProtein A融合タンパク質/生体磁性マイクロスフェアDを指し、質量と体積の比率で、単位(mg/mL)である。
【0467】
【0468】
【0469】
蛍光値とタンパク質の質量濃度の標準曲線に基づいて毎回結合のタンパク質濃度を算出し、インキュベーション体積(2mL)に基づいて毎回結合の総タンパク質量を算出する。
精製されたeGFPから作成した標準曲線に基づいて、推定されたeGFPのRFU値がタンパク質量濃度に換算する式は以下のとおりである。
【0470】
【0471】
式中、Xはタンパク質の質量濃度(μg/mL)であり、YはRFU蛍光示数であり、MはeGFPの分子量(26.7kDa)であり、NはSPA-eGFP-Streptavidinの分子量(77.3kDa)又はSPA-eGFP-Tamvavidin2の分子量(79.4kDa)である。
【0472】
測定されたRFU蛍光数値を代入することにより、標的タンパク質SPA-eGFP-Streptavidin又はSPA-eGFP-Tamvavidin2の質量濃度(μg/mL)を換算することができる。
【0473】
ここで、アビジン-プロテインA融合タンパク質のIVV上清、フロースルーのRFU値はYであり、Yの数値を上記公式に代入し、得られたXは対応する融合タンパク質の質量濃度であり、プロテインA溶液の体積を乗算し、アビジン-プロテインA融合タンパク質の総タンパク質量を得ることができる。IVTT上清中のアビジン-プロテインAのタンパク質量からフロースルー中のアビジン-プロテインAのタンパク質量を減算し、得られた差は即ち生体磁性マイクロスフェアに結合されたアビジン-プロテインAのタンパク質量Wである。Wを磁性マイクロスフェアのカラムベッド体積で割り、単位体積あたりの磁性マイクロスフェアに結合するアビジン-プロテインA融合タンパク質の質量を算出し、即ち結合力であり、単位はmg/mLである。
【0474】
本実施例で使用したのは30μLの10%(v/v)生体磁性マイクロスフェアD懸濁液であるため、1mLの100%生体磁性マイクロスフェアDの結合量に換算して表2、表3に示す。ここで、Tamvavidin2と生体磁性マイクロスフェアDとの結合力はStreptavidinよりやや強い。
【0475】
実施例3 プロテインAで修飾された生体磁性マイクロスフェアFによる血清抗体精製
体積の異なるSPA-eGFP-Streptavidin融合タンパク質が結合した生体磁性マイクロスフェアを、1mLの牛新生児血清と4℃で1時間回転インキュベートし、続いて1mLの結合/洗浄緩衝液で3回洗浄し、毎回4℃で10分間回転インキュベートした。100μLの0.1M pH2.8のグリシンで抗体を溶出し、溶出した抗体は溶出液中に存在し、10分の1体積(10μL)の1M pH8.0のTris-HClを溶出液中にで直ちに加えた。生工社製のProtein Aアガロースカラムを対照とした(カタログ番号C600957-0005)。
【0476】
40μLの溶出液を取って10μLの5×SDSサンプルバッファー(還元剤を含まない)を加え、95℃で10分間金属浴した後、SDS-PAGE電気泳動検出を行い、検出結果を
図6に示す。
【0477】
図6から分かるように、6μlのカラムベッド体積のSPA-eGFP-Streptavidin融合タンパク質が結合した生体磁性マイクロスフェアを用い、市販製品より優れた分離精製効果を得ることができる。
【0478】
溶出後の生体磁性マイクロスフェアを1mLの結合/洗浄緩衝液で3回洗浄し、上記抗体とのインキュベート、洗浄、溶出のステップを繰り返し、即ち1回目の抗体インキュベートした後に、洗浄し、溶出し、結合した抗体を放出し、再びプロテインAで修飾した磁性マイクロスフェアを得て、再び抗体とのインキュベート、洗浄、溶出を行い、さらに再びプロテインAで修飾した磁性マイクロスフェアを得て、続いて3回目にインキュベート、洗浄、溶出を行った。生体磁性マイクロスフェアを合計で抗体と3回インキュベートした後、3回目の抗体とインキュベートした後に得られた抗体含有溶出液40μLを取り、10μLの5×サンプルバッファー(還元剤を含まない)を加え、95℃で10分間金属浴した後、SDS-PAGE電気泳動検出を行い、検出結果を
図7に示す。
【0479】
図6及び
図7から分かるように、SPA-eGFP-Streptavidinが結合した生体磁性マイクロスフェアFは繰り返して複数回利用することができ、抗体とのインキュベートし、抗体を溶出した後、2回目、3回目に再びウシ血清とインキュベートし、いずれもウシ血清中の抗体を抽出することができ、且つ全体的な効果は生工社製のProtein Aアガロース磁気ビーズより劣ることはない。6μLのカラムベッド体積に対して、本発明はさらにより高い効果を有する。本発明に提供されたアフィニティタンパク質(ここではプロテインA)が結合した生体磁性マイクロスフェアFは複数回繰り返して使用することができる。
【0480】
実施例4 生体磁性マイクロスフェアDとアフィニティ複合体E(アビジン-プロテインA)との結合のリサイクル性
【0481】
4.1 インキュベーション
SPA-eGFP-Tamvavidin2が結合した生体磁性マイクロスフェアFのインキュベーション製造:
50μLの10%生体磁性マイクロスフェアD懸濁液(体積は5μL)を取って2mLの結合/洗浄緩衝液で3回洗浄した後、2mLのSPA-eGFP-Tamvavidin2のIVTT上清を加え、4℃で1時間回転インキュベートし、上清を廃棄し(上清を収集してフロースルー1を得た)、SPA-eGFP-Tamvavidin2を含む新鮮なIVTT上清を繰り返し加え、4℃で1時間回転インキュベートし、上清を廃棄し(上清を収集してフロースルー2を得た)、3回目にSPA-eGFP-Tamvavidin2を含む新鮮なIVTT上清を加え、4℃で1時間回転インキュベートし、上清を廃棄した(上清を収集してフロースルー3を得た)。SPA-eGFP-Tamvavidin2のIVTT上清と3回のフロースルーのRFU値を測定し、上記式に基づいて溶液中のSPA-eGFP-Tamvavidin2の残り含有量を算出し、結果を
図8及び表4に示す。
【0482】
精製されたeGFPから作成した標準曲線に基づいて、推定されたeGFPのRFU値がタンパク質量濃度に換算する計算式は以下のとおりである。
【0483】
【0484】
式中、Xはタンパク質の質量濃度(μg/mL)であり、YはRFU蛍光示数であり、MはeGFPの分子量(26.7kDa)であり、NはSPA-eGFP-Tamvavidin2の分子量(79.4kDa)である。
【0485】
測定されたRFU蛍光値を計算式に代入することにより、標的タンパク質SPA-eGFP-Tamvavidin2の質量濃度(μg/mL)を得ることができる。例えば、Yの値が1330.3である場合、上記計算式により対応するX値は247.6と算出され、表4に示す。
【0486】
4.2 溶出及び交換
アビジン-アフィニティタンパク質複合体E:SPA-eGFP-Tamvavidin2を溶出して交換した。
【0487】
生体磁性マイクロスフェアFを2mLの結合/洗浄緩衝液で3回洗浄した後、200μLの変性緩衝液(1MのUrea及び10%SDS)を加え、95℃の金属浴に置いて10分間インキュベートし、生体磁性マイクロスフェアに結合されたアビジン-プロテインAを溶出した。この溶出液を20μL取り、5μLの5×SDSサンプルバッファーを添加した後、SDS-PAGE電気泳動測定を行い、
図9に示すようなレーン1のバンドを得た。溶出した生体磁性マイクロスフェアDを2mLの結合/洗浄緩衝液で3回洗浄し、1回目に再生した生体磁性マイクロスフェアDを得、磁性マイクロスフェアの外表面におけるポリマー分岐鎖のビオチンの結合部位が放出された。
【0488】
4.3 2回目のインキュベーション(再生)
上記SPA-eGFP-Tamvavidin2のインキュベーション及び当該アビジン-プロテインAの溶出過程を繰り返し、生体磁性マイクロスフェアFの1回目の再生、即ちアビジン-プロテインAの1回目の交換を実現した。1回目に再生した生体磁性マイクロスフェアDはSPA-eGFP-Tamvavidin2と結合し、対応するIVTT上清と3回のフロースルーのRFU値を測定し、表5のデータを得た。溶出した生体磁性マイクロスフェアDを2mLの結合/洗浄緩衝液で3回洗浄し、12回目に再生した生体磁性マイクロスフェアDを得た。
【0489】
4.4 3回目のインキュベーション(2回目の再生)
再び上記SPA-eGFP-Tamvavidin2のインキュベーション及び当該アビジン-プロテインAの溶出過程を繰り返し、生体磁性マイクロスフェアFの2回目の再生、即ちアビジン-プロテインAの2回目の交換を実現した。2回目に再生した生体磁性マイクロスフェアDはSPA-eGFP-Tamvavidin2と結合し、対応するIVTT上清と2回のフロースルーのRFU値を測定し、表6のデータを得た。表4~6において、結合力はProtein A融合タンパク質/生体磁性マイクロスフェアDを指し、質量と体積の比率で、単位(mg/mL)である。
【0490】
【0491】
【0492】
【0493】
再生された生体磁性マイクロスフェアDがプロテインA-eGFP-アビジンと再結合する能力を測定した。
【0494】
初めて得られた生体磁性マイクロスフェアDは1回目にSPA-eGFP-Tamvavidin2を飽和結合し、1回目に再生された生体磁性マイクロスフェアDは2回目にSPA-eGFP-Tamvavidin2を飽和結合し、2回目に再生された生体磁性マイクロスフェアDは3回目にSPA-eGFP-Tamvavidin2を飽和結合し、それぞれ変性緩衝液でタンパク質を溶出し、それぞれSPA-eGFP-Tamvavidin2を含有する3回の溶出液を収集し、SDS-PAGEを行った。結果を
図9に示す。レーン1、2、3は、それぞれ1回目、2回目、3回目にプロテインA-eGFP-アビジンを飽和結合する後に、それぞれ初めて得られた生体磁性マイクロスフェアF、1回目に再生された生体磁性マイクロスフェアF、2回目に再生された生体磁性マイクロスフェアFからタンパクを溶出し、得られたSPA-eGFP-Tamvavidin2を含む3回の溶出液の電気泳動バンドを代表する。
【0495】
4.5 再生された生体磁性マイクロスフェアFによるウシ血清抗体の結合能力の測定
3回目に生体磁性マイクロスフェアDをSPA-eGFP-Tamvavidin2で飽和結合した後、2回目に再生された生体磁性マイクロスフェアFを取得した。得られた2回目に再生された生体磁性マイクロスフェアFに2mLの牛新生児血清(市販品、下記と同じ)を加えて4℃で1時間回転インキュベートし、上清を廃棄した(上清を収集してフロースルー1を得た)後、再び2mLの牛新生児血清を加えて4℃で1時間回転インキュベートし、上清を廃棄した(上清を収集してフロースルー2を得た)。1mLの結合/洗浄緩衝液で3回洗浄し、毎回4℃で10分間回転インキュベートした。ウシ血清抗体を100μLの0.1M pH 2.8のグリシン溶液で溶出し(抗体は磁性マイクロスフェアにおけるプロテインA端と結合)、溶出したウシ血清抗体溶液に1/10体積(即ち10μL)の1M pH 8.0のTris-HCl溶液を直ちに加え、110μLの溶出液を得た。
【0496】
40μLの溶出液を取って10μLの5×SDSサンプルバッファー(還元剤がない)を加え、95℃で10分間金属浴した後、SDS-PAGE電気泳動検出を行い、検出結果を
図9に示す。
図7、
図9及び表6の実験結果から分かるように、生体磁性マイクロスフェアDはSPA-eGFP-Tamvavidin2との結合は再生可能性を有し、本発明に提供された生体磁性マイクロスフェアFは再生可能に使用されることができる。また、変性液を添加して加熱処理するステップは、生体磁性マイクロスフェアの結合効率に影響を与えない。
【0497】
実施例5 プロテインAが結合した生体磁性マイクロスフェアGの製造(プロテインGを精製媒体とし、ビオチン-アビジンのアフィニティ複合体を連結要素とする)
【0498】
5.1 ProteinG-eGFP-アビジン融合タンパク質の合成(アビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体E)
実施例2の方法を用いて、ProteinG-eGFP-Tamvavidin2融合タンパク質を合成し、ProteinG-eGFP-Tamvavidin2融合タンパク質を含むIVTT反応液、IVTT上清を順次製造した。
【0499】
まず三段遺伝子配列を含むProteinG-eGFP-Tamvavidin2融合タンパク質のDNA配列を構築した。ここで、「eGFP」セグメント及び「Tamvavidin2」セグメントのヌクレオチド配列は実施例2と同様であり、それぞれSEQ ID No.:3、SEQ ID No.:2であった。ここで、「ProteinG」セグメントのヌクレオチド配列(SEQ ID No.:4)は、G群連鎖球菌属(Streptococcus sp.group G)から、その抗体結合部位の遺伝子配列を選択した。
【0500】
組換えPCR法を採用してProteinG-eGFP-Tamvavidin2融合タンパク質のDNAテンプレートを構築した。RCA法を用いて生体外増幅を行った。前記指示された生体外無細胞タンパク質合成方法(具体的にはクルイベロミセス・ラクチスに基づく細胞抽出物を採用した)を採用してProteinG-eGFP-Tamvavidin2融合タンパク質を合成した。
【0501】
IVTT反応を行い、ProteinG-eGFP-Tamvavidin2融合タンパク質を含むIVTT反応液、IVTT上清を順次得た。
【0502】
5.2 プロテインGが結合した生体磁性マイクロスフェアGの製造
30μLの10%(v/v)実施例1で得られたビオチン修飾生体磁性マイクロスフェアDをピペットで取り、結合/洗浄緩衝液(10mMのNa2HPO4、pH 7.4、2mMのKH2PO4、140mMのNaCl、2.6mMのKCl)で3回洗浄した。
【0503】
2mLのProteinG-eGFP-Tamvavidin2融合タンパク質を含有するIVTT上清を取り、上記生体磁性マイクロスフェアDと4℃の条件で1時間回転インキュベートし、フロースルーである清液を収集し、フロースルーにはマイクロスフェアに結合されていない残りの融合タンパク質が含まれ、このステップを3回繰り返し、毎回新なIVTT上清を生体磁性マイクロスフェアDとインキュベートし、3回の異なるフロースルーを得た。即ち同一ロットの生体磁性マイクロスフェアDは連続的にIVTT上清におけるProteinG-eGFP-Tamvavidin2融合タンパク質と3回インキュベートした。毎回2mLのステップ5.1に得たIVTT上清を用い、対応する3回取得したフロースルーは順次にフロースルー1(FT1)、フロースルー2(FT2)、フロースルー3(FT3)と記した。蛍光光度法を採用してIVTT上清と前記3回フロースルーのeGFP蛍光値(RFU値で計量)を検出し、結果は
図10に示す。
【0504】
フロースルーのRFU値はIVTT上清のRFU値に近くことは、生体磁性マイクロスフェアDがProteinG-eGFP-Tamvavidin2融合タンパク質に対する結合が飽和傾向にあると説明し、対応するRFU値は以下の表7に示す。1回目の結合量は、上清中のタンパク質量から、フロースルー1中のタンパク質量を差し引いて算出し、2回目の結合量は、上清中のタンパク質量から、フロースルー2中のタンパク質量を差し引いて算出し、3回目の結合量は、上清中のタンパク質量から、フロースルー3中のタンパク質量を差し引いて算出した。ProteinG-eGFP-Tamvavidin2融合タンパク質の濃度は、実施例2の方法を用いて、以下の式により算出した。
【0505】
【0506】
式中、XはProteinG-eGFP-Tamvavidin2融合タンパク質の質量濃度(μg/mL)であり、YはRFU蛍光示数であり、MはeGFPの分子量(26.7kDa)であり、NはProteinG-eGFP-Tamvavidin2融合タンパク質の分子量である。
【0507】
【0508】
ここで、結合力は磁気ビーズに結合したProteinG融合タンパク質の質量と使用した磁気ビーズ体積である。
【0509】
上記生体磁性マイクロスフェアDとProteinG融合タンパク質を含有するIVTT上清とをインキュベートする過程により、アフィニティ複合体(ビオチン-アビジン)連結方式によりProtein Gが結合された生体磁性マイクロスフェアGを得て、ProteinG磁気ビーズとも記す。
【0510】
5.3.Protein G磁気ビーズ精製血清抗体(IgG抗体を標的タンパク質とする)
体積の異なるProteinG-eGFP-Tamvavidin2融合タンパク質が結合したProtein G磁気ビーズを、1mLの牛新生児血清と4℃で1時間回転インキュベートし、続いて1mLの結合/洗浄緩衝液で洗浄し(3回)、毎回4℃で10分間回転インキュベートした。100μLの0.1M pH2.8のグリシンで抗体を溶出し、10分の1体積(10μL)の1M pH8.0のTris-HClを溶出液中にで直ちに加えた。溶出液中のIgG抗体純度をSDS-PAGEにより測定した結果を
図11に示す。グレースケール値に基づいて定量分析を行い、純度が95%より大きい。
【0511】
実施例6 ナノ抗体anti-eGFPが結合した生体磁性マイクロスフェアHの製造(ナノ抗体anti-eGFPを精製媒体とし、ビオチン-アビジンのアフィニティ複合体を連結要素とする)
【0512】
6.1.antiEGFP-mScarlet-アビジン融合タンパク質(antiEGFP-mScarlet-Tamvavidin2融合タンパク質、ナノ抗体の融合タンパク質)の合成
実施例2の方法を用いて、antiEGFP-mScarlet-Tamvavidin2融合タンパク質を合成し(antiEGFP融合タンパク質と略記し、分子量59kDa)、antiEGFP-mScarlet-Tamvavidin2融合タンパク質を含むIVTT反応液、IVTT上清を順次製造した。
【0513】
まず三段遺伝子配列を含むantiEGFP-mScarlet-Tamvavidin2融合タンパク質のDNA配列を構築した。
【0514】
ここで、「Tamvavidin2」セグメントのヌクレオチド配列は実施例2と同様であり、SEQSEQ ID No.:2を参照する。
【0515】
ここで、antiEGFPはアミノ酸配列が例えばSEQ ID No.:5に示すナノ抗体である。
【0516】
ここで、mScarletは明るい赤色蛍光タンパク質であり、対応するヌクレオチド配列はSEQ ID No.:6である。
【0517】
組換えPCR法を採用してantiEGFP-mScarlet-Tamvavidin2融合タンパク質のDNAテンプレートを構築した。RCA法を用いて体外増幅を行った。前記指示された生体外無細胞タンパク質合成方法を採用してantiEGFP-mScarlet-Tamvavidin2融合タンパク質を合成した。
【0518】
IVTT反応を行い、antiEGFP-mScarlet-Tamvavidin2融合タンパク質を含むIVTT反応液、IVTT上清を順次得た。
【0519】
6.2 ナノ抗体anti-eGFPが結合した生体磁性マイクロスフェアHの製造
30μLの10%(v/v)実施例1で得られた生体磁性マイクロスフェアDをピペットで取り、結合/洗浄緩衝液(10mMのNa2HPO4、pH 7.4、2mMのKH2PO4、140mMのNaCl、2.6mMのKCl)で3回洗浄した。
【0520】
2mLのantiEGFP-mScarlet-Tamvavidin2融合タンパク質を含有するIVTT上清(RFU値2400)を取り、上記生体磁性マイクロスフェアDと4℃の条件で1時間回転インキュベートし、清液を収集し、それはフロースルー(RFU値1700)であった。フロースルーにはマイクロスフェアに結合されていない残りの融合タンパク質が含まれた。RFU値の測定条件は、励起波長(Ex)は569nmであり、発光波長(Em)は593nmであった。
【0521】
上記生体磁性マイクロスフェアDと前記antiEGFP融合タンパク質を含有するIVTT上清とをインキュベートする過程により、インキュベートされた磁気ビーズはアフィニティ複合体(ビオチン-Tamvavidin2)連結方式によりナノ抗体anti-eGFPと結合し、生体磁性マイクロスフェアHと記し、antiEGFP磁気ビーズ(ナノ抗体磁気ビーズ)とも記す。
【0522】
6.3.antiEGFP磁気ビーズのeGFPタンパク質と結合する担持量の測定(eGFPを標的タンパク質とし、eGFP過剰)
30μLの10%(w/v)の本実施例6.2.で製造したantiEGFP磁気ビーズをピペットで取り、結合/洗浄緩衝液で3回洗浄し、使用に備えた。
【0523】
2mLのeGFPタンパク質のIVTT反応液(DNAテンプレートにおけるeGFPをコードするヌクレオチド配列はSEQ ID No.:3に示す)を取り、その蛍光値を測定し、Totalの蛍光値と記した。これを前記洗浄した3μLのantiEGFP磁気ビーズと混合し、1時間回転インキュベートし、磁気ビーズと結合していない上清をFlow-throughと記し、その蛍光値を測定した。表8の蛍光値測定結果に基づいて、eGFPの計算式を利用して対応するeGFPタンパク質の量を得て、得られたantiEGFP磁気ビーズの担持量が17.7mg/mL(ミリリットル当たりのantiEGFP磁気ビーズと結合するeGFPタンパク質の質量)であると計算した。
【0524】
【0525】
6.4.antiEGFP磁気ビーズによるeGFPタンパク質の精製効率(eGFPを標的タンパク質とし、磁気ビーズ過剰)
本実施例6.2で製造したantiEGFP磁気ビーズを取り、結合/洗浄緩衝液で3回洗浄し、使用に備えた。
【0526】
1mLのeGFPタンパク質のIVTT反応液(DNAテンプレートにおけるeGFPをコードするヌクレオチド配列はSEQ ID No.:3に示す)を取り、その蛍光値を測定し、Totalと記した。これを過剰のantiEGFP磁気ビーズと混合し、1時間回転インキュベートし、清液を収集し、Flow-throughと記し、その蛍光値を測定した。磁気ビーズを1mLの結合/洗浄緩衝液で2回洗浄し、毎回4℃で10分間回転インキュベートし、得られた洗浄液をそれぞれWashing1、Washing2と記し、それぞれの蛍光値を測定した。インキュベートされた磁気ビーズは標的タンパク質eGFPと結合した。上記各蛍光値の測定結果を
図12及び表9に示す。結果により、本方案で得られた抗eGFPの磁気ビーズはeGFPタンパク質と効果的に結合し、それを溶出することができる。IVTT上清及びフロースルーの蛍光値に基づいて、上記1時間インキュベートした後、antiEGFP磁気ビーズの標的タンパク質eGFPに対する結合効率が98.2%であると計算して得た。
【0527】
【0528】
100μLの0.1M pH2.8のグリシン溶出液で抗体を溶出し、10分の1体積(10μL)の1M pH8.0のTris-HClを溶出液中に直ちに加えた。溶出液の蛍光値を測定し、Elutionと記し、SDS-PAGEで純度を調べたところ、
図13に示すように、純度は約95%であった。
【0529】
なお、上述したのは本発明の好適な実施例の一部であり、本発明は上述した実施例の内容に限定されない。当業者であれば、本発明の技術的解決手段の概念範囲内又はその指導、示唆で、様々な変化及び変更が可能であり、行われたいずれの同等の技術的効果を有する変化及び変更は、いずれも本発明の保護範囲内にある。
<付記>
本開示は、以下の態様を含む。
<項1>
磁性マイクロスフェア本体を含む生体磁性マイクロスフェアであって、前記磁性マイクロスフェア本体の外表面には、少なくとも1種の線状主鎖及び分岐鎖を有するポリマーを有し、前記線状主鎖の一端が磁性マイクロスフェア本体の外表面に固定され、ポリマーの他端は磁性マイクロスフェア本体の外表面から遊離し、前記生体磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端には、ビオチン又はビオチン類似体が連結されている、ことを特徴とする生体磁性マイクロスフェア。
<項2>
前記ポリマーの分岐鎖末端には、連結要素を介して精製媒体が連結されており、前記連結要素は、前記ビオチン又はビオチン類似体を含む、ことを特徴とする項1に記載の生体磁性マイクロスフェア。
<項3>
前記精製媒体は、アビジン型タグ、ポリペプチド型タグ、タンパク質型タグ、抗体型タグ、抗原型タグ、又はそれらの組み合わせを含有し、
好ましくは、前記アビジン型タグは、アビジン、ビオチンと結合可能なアビジン類似体、ビオチン類似体と結合可能なアビジン類似体、又はそれらの組み合わせであり、
より好ましくは、前記生体磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端にはビオチンが連結されており、前記精製媒体はアビジンであり、且つ前記アビジンとの間でアフィニティ複合体の結合作用を形成し、
より好ましくは、前記アビジンは、ストレプトアビジン、変性ストレプトアビジン、ストレプトアビジン類似体、又はそれらの組み合わせであり、
好ましくは、前記ポリペプチド型タグは、CBPタグ、ヒスチジンタグ、C-Mycタグ、FLAGタグ、Spotタグ、Cタグ、Aviタグ、Stregタグ、WRHPQFGG配列を含むタグ、WRHPQFGGの変体配列を含むタグ、RKAAVSHW配列を含むタグ、RKAAVSHWの変体配列を含むタグ、及びそれらの組み合わせから選択されるいずれか一つのタグ又はその変体であり、
好ましくは、前記タンパク質型タグは、アフィニティタンパク質、SUMOタグ、GSTタグ、MBPタグ、又はそれらの組み合わせから選択されるいずれか一つのタグ又はその変体であり、より好ましくは、前記アフィニティタンパク質は、プロテインA、プロテインG、プロテインL、変性プロテインA、変性プロテインG、変性プロテインL、及びそれらの組み合わせから選択される、ことを特徴とする項2に記載の生体磁性マイクロスフェア。
<項4>
前記精製媒体は、アフィニティ複合体を含む連結要素によって前記ポリマーの分岐鎖末端に連結され、
好ましくは、前記ビオチン又はビオチン類似体は、アフィニティ複合体作用によってアビジン又はアビジン類似体に連結され、前記精製媒体は、前記アビジン又はアビジン類似体に直接又は間接的に連結され、
より好ましくは、前記精製媒体は、アビジン型タグ-精製媒体共有結合複合体によって前記ポリマーの分岐鎖末端のビオチン又はビオチン類似体に連結され、アビジン型タグによってビオチン又はビオチン類似体との間にアフィニティ複合体の連結要素を形成し、
さらに好ましくは、前記精製媒体は、アビジン-精製媒体共有結合複合体によって前記ポリマーの分岐鎖末端のビオチン又はビオチン類似体と、アフィニティ複合体の連結要素を形成する、ことを特徴とする項2又は3のいずれか1項に記載の生体磁性マイクロスフェア。
<項5>
前記精製媒体と前記ポリマーの分岐鎖の末端と連結方式は、共有結合、超分子相互作用、連結要素、又はそれらの組み合わせであり、
好ましくは、前記共有結合は、動的共有結合であり、さらに好ましくは、前記動的共有結合は、イミン結合、アシルヒドラゾン結合、ジスルフィド結合、又はそれらの組み合わせを含み、
好ましくは、前記超分子相互作用は、配位結合、アフィニティ複合体相互作用、静電吸着、水素結合、π-πオーバーラップ作用、疎水性相互作用、及びそれらの組み合わせから選択され、
より好ましくは、前記アフィニティ複合体相互作用は、ビオチン-アビジン相互作用、ビオチン類似体-アビジン相互作用、ビオチン-アビジン類似体相互作用、ビオチン類似体-アビジン類似体相互作用から選択される、ことを特徴とする項2~4のいずれか1項に記載の生体磁性マイクロスフェア。
<項6>
前記ビオチン又はビオチン類似体と結合したアビジンをさらに含み、ここで、前記ビオチン又はビオチン類似体は、前記アビジンとの間にアフィニティ複合体の結合作用を形成し、好ましくは、前記アビジンは、ストレプトアビジン、変性ストレプトアビジン、ストレプトアビジン類似体、又はそれらの組み合わせである、ことを特徴とする項1に記載の生体磁性マイクロスフェア。
<項7>
前記アビジン又はアビジン類似体と連結したアフィニティタンパク質をさらに含む、ことを特徴とする項6に記載の生体磁性マイクロスフェア。
<項8>
前記磁性マイクロスフェア本体のサイズは、0.1μm、0.15μm、0.2μm、0.25μm、0.3μm、0.35μm、0.4μm、0.45μm、0.5μm、0.55μm、0.6μm、0.65μm、0.7μm、0.75μm、0.8μm、0.85μm、0.9μm、0.95μm、1μm、1.5μm、2μm、2.5μm、3μm、3.5μm、4μm、4.5μm、5μm、5.5μm、6μm、6.5μm、7μm、7.5μm、8μm、8.5μm、9μm、9.5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、55μm、60μm、65μm、70μm、75μm、80μm、85μm、90μm、95μm、100μm、150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm、450μm、500μm、550μm、600μm、650μm、700μm、750μm、800μm、850μm、900μm、950μm、1000μmのいずれか一つの粒子径スケール又はいずれか2つの粒子径スケールの間の範囲から選択され、前記直径サイズは平均値であり、
好ましくは、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.1~10μmから選択され、
好ましくは、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.2~6μmから選択され、
好ましくは、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.4~5μmから選択され、
好ましくは、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.5~3μmから選択され、
好ましくは、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.2~1μmから選択され、
好ましくは、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.5~1μmから選択され、
好ましくは、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は1μm~1mmから選択され、
好ましくは、前記磁性マイクロスフェア本体の平均直径は、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、950nm、1000nmであり、偏差は±20%であり、より好ましくは±10%である、ことを特徴とする項1~7のいずれか1項に記載の生体磁性マイクロスフェア。
<項9>
前記ポリマーの線状主鎖は、ポリオレフィン主鎖又はアクリル系ポリマー主鎖であり、
好ましくは、前記ポリマーの線状主鎖は、ポリオレフィン主鎖であり、且つアクリル系ポリマーの主鎖から提供され、
より好ましくは、前記アクリル系ポリマーのモノマー単位が、アクリル酸、アクリル酸塩、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸塩、メタクリル酸エステルのいずれか一つ、又はそれらの組み合わせである、ことを特徴とする項1~8のいずれか1項に記載の生体磁性マイクロスフェア。
<項10>
前記ポリマーの分岐鎖は、官能基に基づく共有結合によってビオチン又はビオチン類似体に共有結合し、
好ましくは、前記官能基に基づく共有結合とは、官能基が共有結合に関与することによって形成される共有結合を意味し、ここで、前記官能基は、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基の塩形態、アミノ基の塩形態、ギ酸エステル基、又は前記官能基の組み合わせを指す、ことを特徴とする項1に記載の生体磁性マイクロスフェア。
<項11>
前記ポリマーの線状主鎖は、前記磁性マイクロスフェア本体の外表面に直接的に、又は連結基を介して間接的に共有結合している、ことを特徴とする項1~10のいずれか1項に記載の生体磁性マイクロスフェア。
<項12>
前記磁性マイクロスフェア本体は、SiO
2
で被覆された磁性材料であり、
好ましくは、前記磁性材料は、鉄酸化物、鉄化合物、鉄合金、コバルト化合物、コバルト合金、ニッケル化合物、ニッケル合金、マンガン酸化物、マンガン合金、又はそれらの組み合わせであり、
より好ましくは、前記磁性材料は、Fe
3
O
4
、γ-Fe
2
O
3
、窒化鉄、Mn
3
O
4
、FeCrMo、FeAlC、AlNiCo、FeCrCo、ReCo、ReFe、PtCo、MnAlC、CuNiFe、AlMnAg、MnBi、FeNiMo、FeSi、FeAl、FeSiAl、BaO・6Fe
2
O
3
、SrO・6Fe
2
O
3
、PbO・6Fe
2
O
3
、GdO、又はそれらの組み合わせである、ことを特徴とする項1~11のいずれか1項に記載の生体磁性マイクロスフェア。
<項13>
項1に記載の生体磁性マイクロスフェアの製造方法であって、
(1)アミノ化シランカップリング剤を利用して磁性マイクロスフェア本体に対して化学修飾を行い、アミノ基を磁性マイクロスフェア本体の外表面に導入して、アミノ基修飾磁性マイクロスフェアAを形成させるステップであって、
前記磁性マイクロスフェア本体は、SiO
2
で被覆された磁性材料であるステップと、
(2)カルボキシル基とアミノ基との間の共有結合反応を利用してアクリル酸分子を前記磁性マイクロスフェアAの外表面に共有結合的にカップリングさせ、炭素-炭素二重結合を導入して、炭素-炭素二重結合含有磁性マイクロスフェアBを形成させるステップと、
(3)架橋剤を加えない条件で、炭素-炭素二重結合の重合反応を利用し、アクリル系モノマー分子を重合させ、得られたアクリル系ポリマーは線状主鎖と官能基を含む分岐鎖とを有し、ポリマーは線状主鎖の一端によって磁性マイクロスフェアBの外表面に共有結合的にカップリグされ、アクリル酸系ポリマー修飾の磁性マイクロスフェアCを形成させるステップと、
(4)前記ポリマーの分岐鎖に含まれる官能基により、ビオチン又はビオチン類似体をポリマーの分岐鎖末端に共有結合的にカップリングさせて、前記生体磁性マイクロスフェアを得るステップと、を含む製造方法。
<項14>
項2~5のいずれか1項に記載の生体磁性マイクロスフェアの製造方法であって、
(1)アミノ化シランカップリング剤を利用して磁性マイクロスフェア本体に対して化学修飾を行い、アミノ基を磁性マイクロスフェア本体の外表面に導入して、アミノ基修飾の磁性マイクロスフェアAを形成させるステップであって、
前記磁性マイクロスフェア本体は、SiO
2
で被覆された磁性材料であるステップと、
(2)カルボキシル基とアミノ基との間の共有結合反応を利用してアクリル酸分子を前記磁性マイクロスフェアAの外表面に共有結合的にカップリングさせ、炭素-炭素二重結合を導入して、炭素-炭素二重結合含有磁性マイクロスフェアBを形成させるステップと、
(3)架橋剤を加えない条件で、炭素-炭素二重結合の重合反応を利用して、アクリル系モノマー分子を重合させ、得られたアクリル系ポリマーは線状主鎖と官能基を含む分岐鎖とを有し、ポリマーは線状主鎖の一端によって磁性マイクロスフェアBの外表面に共有結合的にカップリングされ、アクリル系ポリマー修飾磁性マイクロスフェアCを形成させるステップと、
(4)前記ポリマーの分岐鎖に含まれる官能基により、ビオチン又はビオチン類似体をポリマーの分岐鎖末端に共有結合的にカップリングさせて、ビオチン又はビオチン類似体で修飾された生体磁性マイクロスフェアDを得るステップと、
(5)精製媒体を前記生体磁性マイクロスフェアDにおける前記ポリマーの分岐鎖末端のビオチン又はビオチン類似体に連結させて、精製媒体が結合された前記生体磁性マイクロスフェアを得るステップと、を含み、
好ましくは、アビジン又はアビジン類似体と精製媒体の共有結合複合体をポリマーの分岐鎖末端に結合させ、前記ビオチン又はビオチン類似体と前記アビジン又はアビジン類似体との間にアフィニティ複合体の結合作用を形成させて、精製媒体付き前記生体磁性マイクロスフェアを得、
独立して任意に、(6)磁石で生体磁性マイクロスフェアを沈降させ、液相を除去し、洗浄するステップを含み、
独立して任意に、前記アビジン又はアビジン類似体と精製媒体の共有結合複合体との交換を含む、製造方法。
<項15>
項7に記載の生体磁性マイクロスフェアの製造方法であって、
好ましくは、前記生体磁性マイクロスフェアの製造方法は、
(1)アミノ化シランカップリング剤を利用して磁性マイクロスフェア本体に対して化学修飾を行い、アミノ基を磁性マイクロスフェア本体の外表面に導入して、アミノ基修飾の磁性マイクロスフェアAを形成させるステップであって、前記磁性マイクロスフェア本体は、SiO
2
で被覆された磁性材料であるステップと、
(2)カルボキシル基とアミノ基との間の共有結合反応を利用してアクリル酸分子を前記磁性マイクロスフェアAの外表面に共有結合的にカップリングさせ、炭素-炭素二重結合を導入して、炭素-炭素二重結合含有磁性マイクロスフェアBを形成させるステップと、
(3)架橋剤を加えない条件で、炭素-炭素二重結合の重合反応を利用して、アクリル系モノマー分子を重合させ、得られたアクリル系ポリマーは線状主鎖と官能基を含む分岐鎖とを有し、ポリマーは線状主鎖の一端によって磁性マイクロスフェアBの外表面に共有結合的にカップリングされ、アクリル系ポリマー修飾の磁性マイクロスフェアCを形成させるステップと、
(4)前記ポリマーの分岐鎖に含まれる官能基により、ビオチンをポリマーの分岐鎖末端に共有結合的にカップリングさせて、ビオチン修飾生体磁性マイクロスフェアDを得るステップと、
(5)アビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体Eをポリマーの分岐鎖末端に連結させ、ビオチンとアビジンとの間にアフィニティ複合体の結合作用を形成させて、アフィニティタンパク質が結合された前記生体磁性マイクロスフェアを得るステップと、を含み、
独立して任意に、(6)磁石で前記生体磁性マイクロスフェアを沈降させ、液相を除去し、洗浄するステップを含み、
独立して任意に、前記アビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体Eの交換を含む、製造方法。
<項16>
項1~12のいずれか1項に記載の生体磁性マイクロスフェアのタンパク質系物質の分離・精製における使用であって、
好ましくは、前記生体磁性マイクロスフェアの抗体系物質の分離・精製における使用であり、
前記精製媒体は、アフィニティ複合体を含む連結要素によって前記ポリマーの分岐鎖末端に連結される場合、前記使用は選択的に生体磁性マイクロスフェアの再生使用をさらに含む、使用。
<項17>
項2~5又は7のいずれか1項に記載の生体磁性マイクロスフェアの抗体系物質の分離・精製における使用であって、前記精製媒体はアフィニティタンパク質であり、
好ましくは、前記アフィニティタンパク質は、ビオチン-アビジン-アフィニティタンパク質の方式でポリマーの分岐鎖に連結され、
好ましくは、前記抗体系物質は、抗体、抗体断片、抗体融合タンパク質、抗体断片融合タンパク質を含み、
前記アフィニティタンパク質は、アフィニティ複合体を含む連結要素によって前記ポリマーの分岐鎖末端に連結される場合、前記使用は選択的に生体磁性マイクロスフェアの再生使用をさらに含み、即ちアフィニティタンパク質の交換後の再利用を含む、ことを特徴とする使用。
<項18>
生体磁性マイクロスフェアであって、磁性マイクロスフェア本体を含み、前記磁性マイクロスフェア本体の外表面には、少なくとも1種の線状主鎖及び分岐鎖を有するポリマーを有し、前記線状主鎖の一端が磁性マイクロスフェア本体の外表面に固定され、ポリマーの他端は磁性マイクロスフェア本体の外表面から遊離し、前記磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端には、ビオチンが連結されており、さらにアフィニティ複合体の結合作用によってアビジンに連結される、ことを特徴とする生体磁性マイクロスフェア。
<項19>
磁性マイクロスフェア本体を含む生体磁性マイクロスフェアであって、前記磁性マイクロスフェア本体の外表面には、少なくとも1種の線状主鎖及び分岐鎖を有するポリマーを有し、前記線状主鎖の一端が磁性マイクロスフェア本体の外表面に固定され、ポリマーの他端は磁性マイクロスフェア本体の外表面から遊離し、前記磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端には、精製媒体が連結されており、前記精製媒体は、アビジン型タグ、ポリペプチド型タグ、タンパク質型タグ、抗体型タグ、抗原型タグ、及びそれらの組み合わせから選択され、
好ましくは、前記アビジン型タグは、アビジン、ビオチンと結合可能なアビジン類似体、ビオチン類似体と結合可能なアビジン類似体、又はそれらの組み合わせであり、
より好ましくは、前記アビジンは、ストレプトアビジン、変性ストレプトアビジン、ストレプトアビジン類似体、又はそれらの組み合わせであり、
好ましくは、前記ポリペプチド型タグは、CBPタグ、ヒスチジンタグ、C-Mycタグ、FLAGタグ、Spotタグ、Cタグ、Aviタグ、Stregタグ、WRHPQFGG配列を含むタグ、WRHPQFGGの変体配列を含むタグ、RKAAVSHW配列を含むタグ、RKAAVSHWの変体配列を含むタグ、又はそれらの組み合わせのいずれか一つのタグ又はその変体から選択され、前記Stregタグは、WSHPQFEK及びその変体を含み、
好ましくは、前記タンパク質型タグは、アフィニティタンパク質、SUMOタグ、GSTタグ、MBPタグ、又はそれらの組み合わせから選択されるいずれか一つのタグ又はその変体であり、より好ましくは、前記アフィニティタンパク質は、プロテインA、プロテインG、プロテインL、変性プロテインA、変性プロテインG、変性プロテインL、及びそれらの組み合わせのいずれかの一つタグ又はその変体から選択され、
より好ましくは、前記磁性マイクロスフェア本体の外表面には、少なくとも1種の線状主鎖及び分岐鎖を有するポリマーを有し、前記線状主鎖の一端が磁性マイクロスフェア本体の外表面に共有結合的に固定され、ポリマーの他端は磁性マイクロスフェア本体の外表面から遊離し、前記磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端には、アフィニティタンパク質が連結されており、さらに好ましくは、前記アフィニティタンパク質とポリマーの線状主鎖との間の分岐鎖骨格にアフィニティ複合体の結合作用が存在し、更に好ましくは、前記アフィニティタンパク質は、プロテインA、プロテインG、プロテインL、変性プロテインA、変性プロテインG、変性プロテインL、及びそれらの組み合わせから選択される、ことを特徴とする生体磁性マイクロスフェア。
【0530】
【0531】
【0532】
【0533】
【0534】
【0535】
【0536】
【0537】
【0538】
【0539】
【0540】
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性マイクロスフェア本体を含む生体磁性マイクロスフェアであって、前記磁性マイクロスフェア本体の外表面には、少なくとも1種の線状主鎖及び分岐鎖を有するポリマーを有し、前記線状主鎖の一端が磁性マイクロスフェア本体の外表面に固定され、ポリマーの他端は磁性マイクロスフェア本体の外表面から遊離し、前記生体磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端には、ビオチン又はビオチン類似体が連結されている、ことを特徴とする生体磁性マイクロスフェア。
【請求項2】
前記ポリマーの分岐鎖末端には、連結要素を介して精製媒体が連結されており、前記連結要素は、前記ビオチン又はビオチン類似体を含む、
又は
前記ビオチン又はビオチン類似体と結合したアビジンをさらに含み、ここで、前記ビオチン又はビオチン類似体は、前記アビジンとの間にアフィニティ複合体の結合作用を形成し、好ましくは、前記アビジンは、ストレプトアビジン、変性ストレプトアビジン、ストレプトアビジン類似体、又はそれらの組み合わせである、又は
好ましくは、前記アビジン又はアビジン類似体と連結したアフィニティタンパク質をさらに含む、又は
前記ポリマーの分岐鎖は、官能基に基づく共有結合によってビオチン又はビオチン類似体に共有結合し、
所望により、前記官能基に基づく共有結合とは、官能基が共有結合に関与することによって形成される共有結合を意味し、ここで、前記官能基は、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基の塩形態、アミノ基の塩形態、ギ酸エステル基、又は前記官能基の組み合わせを指す、ことを特徴とする請求項1に記載の生体磁性マイクロスフェア。
【請求項3】
前記精製媒体は、アビジン型タグ、ポリペプチド型タグ、タンパク質型タグ、抗体型タグ、抗原型タグ、又はそれらの組み合わせを含有し、
好ましくは、前記アビジン型タグは、アビジン、ビオチンと結合可能なアビジン類似体、ビオチン類似体と結合可能なアビジン類似体、又はそれらの組み合わせであり、
より好ましくは、前記生体磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端にはビオチンが連結されており、前記精製媒体はアビジンであり、且つ前記アビジンとの間でアフィニティ複合体の結合作用を形成し、
より好ましくは、前記アビジンは、ストレプトアビジン、変性ストレプトアビジン、ストレプトアビジン類似体、又はそれらの組み合わせであり、
好ましくは、前記ポリペプチド型タグは、CBPタグ、ヒスチジンタグ、C-Mycタグ、FLAGタグ、Spotタグ、Cタグ、Aviタグ、Stregタグ、WRHPQFGG
(SEQ ID No:7)配列を含むタグ、WRHPQFGG
(SEQ ID No:7)の変体配列を含むタグ、RKAAVSHW
(SEQ ID No:8)配列を含むタグ、RKAAVSHW
(SEQ ID No:8)の変体配列を含むタグ、及びそれらの組み合わせから選択されるいずれか一つのタグ又はその変体であり、
好ましくは、前記タンパク質型タグは、アフィニティタンパク質、SUMOタグ、GSTタグ、MBPタグ、又はそれらの組み合わせから選択されるいずれか一つのタグ又はその変体であり、より好ましくは、前記アフィニティタンパク質は、プロテインA、プロテインG、プロテインL、変性プロテインA、変性プロテインG、変性プロテインL、及びそれらの組み合わせから選択される、ことを特徴とする請求項2に記載の生体磁性マイクロスフェア。
【請求項4】
前記精製媒体は、アフィニティ複合体を含む連結要素によって前記ポリマーの分岐鎖末端に連結され、
好ましくは、前記ビオチン又はビオチン類似体は、アフィニティ複合体作用によってアビジン又はアビジン類似体に連結され、前記精製媒体は、前記アビジン又はアビジン類似体に直接又は間接的に連結され、
より好ましくは、前記精製媒体は、アビジン型タグ-精製媒体共有結合複合体によって前記ポリマーの分岐鎖末端のビオチン又はビオチン類似体に連結され、アビジン型タグによってビオチン又はビオチン類似体との間にアフィニティ複合体の連結要素を形成し、
さらに好ましくは、前記精製媒体は、アビジン-精製媒体共有結合複合体によって前記ポリマーの分岐鎖末端のビオチン又はビオチン類似体と、アフィニティ複合体の連結要素を形成する、ことを特徴とする請求項2又は3のいずれか1項に記載の生体磁性マイクロスフェア。
【請求項5】
前記精製媒体と前記ポリマーの分岐鎖の末端と連結方式は、共有結合、超分子相互作用、連結要素、又はそれらの組み合わせであり、
好ましくは、前記共有結合は、動的共有結合であり、さらに好ましくは、前記動的共有結合は、イミン結合、アシルヒドラゾン結合、ジスルフィド結合、又はそれらの組み合わせを含み、
好ましくは、前記超分子相互作用は、配位結合、アフィニティ複合体相互作用、静電吸着、水素結合、π-πオーバーラップ作用、疎水性相互作用、及びそれらの組み合わせから選択され、
より好ましくは、前記アフィニティ複合体相互作用は、ビオチン-アビジン相互作用、ビオチン類似体-アビジン相互作用、ビオチン-アビジン類似体相互作用、ビオチン類似体-アビジン類似体相互作用から選択される、ことを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の生体磁性マイクロスフェア。
【請求項6】
前記磁性マイクロスフェア本体のサイズは、0.1μm、0.15μm、0.2μm、0.25μm、0.3μm、0.35μm、0.4μm、0.45μm、0.5μm、0.55μm、0.6μm、0.65μm、0.7μm、0.75μm、0.8μm、0.85μm、0.9μm、0.95μm、1μm、1.5μm、2μm、2.5μm、3μm、3.5μm、4μm、4.5μm、5μm、5.5μm、6μm、6.5μm、7μm、7.5μm、8μm、8.5μm、9μm、9.5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、55μm、60μm、65μm、70μm、75μm、80μm、85μm、90μm、95μm、100μm、150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm、450μm、500μm、550μm、600μm、650μm、700μm、750μm、800μm、850μm、900μm、950μm、1000μmのいずれか一つの粒子径スケール又はいずれか2つの粒子径スケールの間の範囲から選択され、前記直径サイズは平均値であり、
好ましくは、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.1~10μmから選択され、
好ましくは、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.2~6μmから選択され、
好ましくは、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.4~5μmから選択され、
好ましくは、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.5~3μmから選択され、
好ましくは、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.2~1μmから選択され、
好ましくは、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は0.5~1μmから選択され、
好ましくは、前記磁性マイクロスフェア本体の直径は1μm~1mmから選択され、
好ましくは、前記磁性マイクロスフェア本体の平均直径は、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、950nm、1000nmであり、偏差は±20%であり、より好ましくは±10%である、ことを特徴とする請求項1~
5のいずれか1項に記載の生体磁性マイクロスフェア。
【請求項7】
前記ポリマーの線状主鎖は、ポリオレフィン主鎖又はアクリル系ポリマー主鎖であり、
好ましくは、前記ポリマーの線状主鎖は、ポリオレフィン主鎖であり、且つアクリル系ポリマーの主鎖から提供され、
より好ましくは、前記アクリル系ポリマーのモノマー単位が、アクリル酸、アクリル酸塩、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸塩、メタクリル酸エステルのいずれか一つ、又はそれらの組み合わせである、ことを特徴とする請求項1~
6のいずれか1項に記載の生体磁性マイクロスフェア。
【請求項8】
前記ポリマーの線状主鎖は、前記磁性マイクロスフェア本体の外表面に直接的に、又は連結基を介して間接的に共有結合している、
好ましくは、前記磁性マイクロスフェア本体は、SiO
2
で被覆された磁性材料であり、
より好ましくは、前記磁性材料は、鉄酸化物、鉄化合物、鉄合金、コバルト化合物、コバルト合金、ニッケル化合物、ニッケル合金、マンガン酸化物、マンガン合金、又はそれらの組み合わせであり、
更により好ましくは、前記磁性材料は、Fe
3
O
4
、γ-Fe
2
O
3
、窒化鉄、Mn
3
O
4
、FeCrMo、FeAlC、AlNiCo、FeCrCo、ReCo、ReFe、PtCo、MnAlC、CuNiFe、AlMnAg、MnBi、FeNiMo、FeSi、FeAl、FeSiAl、BaO・6Fe
2
O
3
、SrO・6Fe
2
O
3
、PbO・6Fe
2
O
3
、GdO、又はそれらの組み合わせである、
ことを特徴とする請求項1~
7のいずれか1項に記載の生体磁性マイクロスフェア。
【請求項9】
請求項1に記載の生体磁性マイクロスフェアの製造方法であって、
(1)アミノ化シランカップリング剤を利用して磁性マイクロスフェア本体に対して化学修飾を行い、アミノ基を磁性マイクロスフェア本体の外表面に導入して、アミノ基修飾磁性マイクロスフェアAを形成させるステップであって、
前記磁性マイクロスフェア本体は、SiO
2で被覆された磁性材料であるステップと、
(2)カルボキシル基とアミノ基との間の共有結合反応を利用してアクリル酸分子を前記磁性マイクロスフェアAの外表面に共有結合的にカップリングさせ、炭素-炭素二重結合を導入して、炭素-炭素二重結合含有磁性マイクロスフェアBを形成させるステップと、
(3)架橋剤を加えない条件で、炭素-炭素二重結合の重合反応を利用し、アクリル系モノマー分子を重合させ、得られたアクリル系ポリマーは線状主鎖と官能基を含む分岐鎖とを有し、ポリマーは線状主鎖の一端によって磁性マイクロスフェアBの外表面に共有結合的にカップリグされ、アクリル酸系ポリマー修飾の磁性マイクロスフェアCを形成させるステップと、
(4)前記ポリマーの分岐鎖に含まれる官能基により、ビオチン又はビオチン類似体をポリマーの分岐鎖末端に共有結合的にカップリングさせて、前記生体磁性マイクロスフェアを得るステップと、を含む製造方法。
【請求項10】
請求項2~5のいずれか1項に記載の生体磁性マイクロスフェアの製造方法であって、
(1)アミノ化シランカップリング剤を利用して磁性マイクロスフェア本体に対して化学修飾を行い、アミノ基を磁性マイクロスフェア本体の外表面に導入して、アミノ基修飾の磁性マイクロスフェアAを形成させるステップであって、
前記磁性マイクロスフェア本体は、SiO
2で被覆された磁性材料であるステップと、
(2)カルボキシル基とアミノ基との間の共有結合反応を利用してアクリル酸分子を前記磁性マイクロスフェアAの外表面に共有結合的にカップリングさせ、炭素-炭素二重結合を導入して、炭素-炭素二重結合含有磁性マイクロスフェアBを形成させるステップと、
(3)架橋剤を加えない条件で、炭素-炭素二重結合の重合反応を利用して、アクリル系モノマー分子を重合させ、得られたアクリル系ポリマーは線状主鎖と官能基を含む分岐鎖とを有し、ポリマーは線状主鎖の一端によって磁性マイクロスフェアBの外表面に共有結合的にカップリングされ、アクリル系ポリマー修飾磁性マイクロスフェアCを形成させるステップと、
(4)前記ポリマーの分岐鎖に含まれる官能基により、ビオチン又はビオチン類似体をポリマーの分岐鎖末端に共有結合的にカップリングさせて、ビオチン又はビオチン類似体で修飾された生体磁性マイクロスフェアDを得るステップと、
(5)精製媒体を前記生体磁性マイクロスフェアDにおける前記ポリマーの分岐鎖末端のビオチン又はビオチン類似体に連結させて、精製媒体が結合された前記生体磁性マイクロスフェアを得るステップと、を含み、
好ましくは、アビジン又はアビジン類似体と精製媒体の共有結合複合体をポリマーの分岐鎖末端に結合させ、前記ビオチン又はビオチン類似体と前記アビジン又はアビジン類似体との間にアフィニティ複合体の結合作用を形成させて、精製媒体付き前記生体磁性マイクロスフェアを得、
独立して任意に、(6)磁石で生体磁性マイクロスフェアを沈降させ、液相を除去し、洗浄するステップを含み、
独立して任意に、前記アビジン又はアビジン類似体と精製媒体の共有結合複合体との交換を含む、製造方法。
【請求項11】
請求項
2に記載の生体磁性マイクロスフェアの製造方法であって、
好ましくは、前記生体磁性マイクロスフェアの製造方法は、
(1)アミノ化シランカップリング剤を利用して磁性マイクロスフェア本体に対して化学修飾を行い、アミノ基を磁性マイクロスフェア本体の外表面に導入して、アミノ基修飾の磁性マイクロスフェアAを形成させるステップであって、前記磁性マイクロスフェア本体は、SiO
2で被覆された磁性材料であるステップと、
(2)カルボキシル基とアミノ基との間の共有結合反応を利用してアクリル酸分子を前記磁性マイクロスフェアAの外表面に共有結合的にカップリングさせ、炭素-炭素二重結合を導入して、炭素-炭素二重結合含有磁性マイクロスフェアBを形成させるステップと、
(3)架橋剤を加えない条件で、炭素-炭素二重結合の重合反応を利用して、アクリル系モノマー分子を重合させ、得られたアクリル系ポリマーは線状主鎖と官能基を含む分岐鎖とを有し、ポリマーは線状主鎖の一端によって磁性マイクロスフェアBの外表面に共有結合的にカップリングされ、アクリル系ポリマー修飾の磁性マイクロスフェアCを形成させるステップと、
(4)前記ポリマーの分岐鎖に含まれる官能基により、ビオチンをポリマーの分岐鎖末端に共有結合的にカップリングさせて、ビオチン修飾生体磁性マイクロスフェアDを得るステップと、
(5)アビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体Eをポリマーの分岐鎖末端に連結させ、ビオチンとアビジンとの間にアフィニティ複合体の結合作用を形成させて、アフィニティタンパク質が結合された前記生体磁性マイクロスフェアを得るステップと、を含み、
独立して任意に、(6)磁石で前記生体磁性マイクロスフェアを沈降させ、液相を除去し、洗浄するステップを含み、
独立して任意に、前記アビジン-アフィニティタンパク質共有結合複合体Eの交換を含む、製造方法。
【請求項12】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の生体磁性マイクロスフェアのタンパク質系物質の分離・精製における使用であって、
好ましくは、前記生体磁性マイクロスフェアの抗体系物質の分離・精製における使用であり、
前記精製媒体は、アフィニティ複合体を含む連結要素によって前記ポリマーの分岐鎖末端に連結される場合、前記使用は選択的に生体磁性マイクロスフェアの再生使用をさらに含む、使用。
【請求項13】
請求項2~5
のいずれか1項に記載の生体磁性マイクロスフェアの抗体系物質の分離・精製における使用であって、前記精製媒体はアフィニティタンパク質であり、
好ましくは、前記アフィニティタンパク質は、ビオチン-アビジン-アフィニティタンパク質の方式でポリマーの分岐鎖に連結され、
好ましくは、前記抗体系物質は、抗体、抗体断片、抗体融合タンパク質、抗体断片融合タンパク質を含み、
前記アフィニティタンパク質は、アフィニティ複合体を含む連結要素によって前記ポリマーの分岐鎖末端に連結される場合、前記使用は選択的に生体磁性マイクロスフェアの再生使用をさらに含み、即ちアフィニティタンパク質の交換後の再利用を含む、ことを特徴とする使用。
【請求項14】
生体磁性マイクロスフェアであって、磁性マイクロスフェア本体を含み、前記磁性マイクロスフェア本体の外表面には、少なくとも1種の線状主鎖及び分岐鎖を有するポリマーを有し、前記線状主鎖の一端が磁性マイクロスフェア本体の外表面に固定され、ポリマーの他端は磁性マイクロスフェア本体の外表面から遊離し、前記磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端には、ビオチンが連結されており、さらにアフィニティ複合体の結合作用によってアビジンに連結される、ことを特徴とする生体磁性マイクロスフェア。
【請求項15】
磁性マイクロスフェア本体を含む生体磁性マイクロスフェアであって、前記磁性マイクロスフェア本体の外表面には、少なくとも1種の線状主鎖及び分岐鎖を有するポリマーを有し、前記線状主鎖の一端が磁性マイクロスフェア本体の外表面に固定され、ポリマーの他端は磁性マイクロスフェア本体の外表面から遊離し、前記磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端には、精製媒体が連結されており、前記精製媒体は、アビジン型タグ、ポリペプチド型タグ、タンパク質型タグ、抗体型タグ、抗原型タグ、及びそれらの組み合わせから選択され、
好ましくは、前記アビジン型タグは、アビジン、ビオチンと結合可能なアビジン類似体、ビオチン類似体と結合可能なアビジン類似体、又はそれらの組み合わせであり、
より好ましくは、前記アビジンは、ストレプトアビジン、変性ストレプトアビジン、ストレプトアビジン類似体、又はそれらの組み合わせであり、
好ましくは、前記ポリペプチド型タグは、CBPタグ、ヒスチジンタグ、C-Mycタグ、FLAGタグ、Spotタグ、Cタグ、Aviタグ、Stregタグ、WRHPQFGG
(SEQ ID No:7)配列を含むタグ、WRHPQFGG
(SEQ ID No:7)の変体配列を含むタグ、RKAAVSHW
(SEQ ID No:8)配列を含むタグ、RKAAVSHW
(SEQ ID No:8)の変体配列を含むタグ、又はそれらの組み合わせのいずれか一つのタグ又はその変体から選択され、前記Stregタグは、WSHPQFEK
(SEQ ID No:9)及びその変体を含み、
好ましくは、前記タンパク質型タグは、アフィニティタンパク質、SUMOタグ、GSTタグ、MBPタグ、又はそれらの組み合わせから選択されるいずれか一つのタグ又はその変体であり、より好ましくは、前記アフィニティタンパク質は、プロテインA、プロテインG、プロテインL、変性プロテインA、変性プロテインG、変性プロテインL、及びそれらの組み合わせのいずれかの一つタグ又はその変体から選択され、
より好ましくは、前記磁性マイクロスフェア本体の外表面には、少なくとも1種の線状主鎖及び分岐鎖を有するポリマーを有し、前記線状主鎖の一端が磁性マイクロスフェア本体の外表面に共有結合的に固定され、ポリマーの他端は磁性マイクロスフェア本体の外表面から遊離し、前記磁性マイクロスフェアのポリマーの分岐鎖末端には、アフィニティタンパク質が連結されており、さらに好ましくは、前記アフィニティタンパク質とポリマーの線状主鎖との間の分岐鎖骨格にアフィニティ複合体の結合作用が存在し、更に好ましくは、前記アフィニティタンパク質は、プロテインA、プロテインG、プロテインL、変性プロテインA、変性プロテインG、変性プロテインL、及びそれらの組み合わせから選択される、ことを特徴とする生体磁性マイクロスフェア。
【国際調査報告】