IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ モルシドの特許一覧 ▶ エコール ノルマル シュペリウール ドゥ リヨンの特許一覧 ▶ ユニベルシテ クロード ベルナール リヨン プルミエの特許一覧 ▶ サントゥル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック − セーエヌエールエスの特許一覧

特表2023-504485蛍光性ベータラクタマーゼ基質および関連する検出方法
<>
  • 特表-蛍光性ベータラクタマーゼ基質および関連する検出方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-03
(54)【発明の名称】蛍光性ベータラクタマーゼ基質および関連する検出方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 477/00 20060101AFI20230127BHJP
   C07D 501/16 20060101ALI20230127BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20230127BHJP
【FI】
C07D477/00
C07D501/16 CSP
A61K49/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022532582
(86)(22)【出願日】2020-11-30
(85)【翻訳文提出日】2022-08-01
(86)【国際出願番号】 EP2020083976
(87)【国際公開番号】W WO2021105512
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】19306540.6
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522213993
【氏名又は名称】モルシド
(71)【出願人】
【識別番号】514077888
【氏名又は名称】エコール ノルマル シュペリウール ドゥ リヨン
(71)【出願人】
【識別番号】511196870
【氏名又は名称】ユニベルシテ クロード ベルナール リヨン プルミエ
(71)【出願人】
【識別番号】513015441
【氏名又は名称】サントゥル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック - セーエヌエールエス
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE - CNRS
【住所又は居所原語表記】3,rue Michel Ange,F-75016 Paris 16,France
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】アスロ,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ボーディ,マチュ
(72)【発明者】
【氏名】グルナデル,カンタン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェリエ,シャルリ
【テーマコード(参考)】
4C050
4C085
【Fターム(参考)】
4C050KA05
4C050KB05
4C050KB13
4C050KB16
4C050KC04
4C050KC07
4C085HH11
4C085KA27
4C085KB56
(57)【要約】
本発明は、β-ラクタマーゼ型酵素活性の検出のためのプローブに関する。特に、本発明は、触媒活性β-ラクタマーゼの存在を検出するための新規な蛍光性発生基質およびそのような基質を使用する検出方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】

ここで:
-Wは-O-または-NR13-であり、R13はC-Cアルキルまたは水素原子であり;
-Rは、式(I)に存在する-C(O)-WR結合の切断後に得られるHWRが、フルオロフォアのクラス、好ましくは励起状態で分子内陽子移動をもたらすフルオロフォアのクラスに属するようなものであり;
-R、RおよびRは次のいずれかのように定義される:
○ RはC-Cアルキルであり、RはC-Cアルキルまたは水素原子であり、RはC-Cアルキルであるか;
○ または、RはC-Cアルキルまたは水素原子であり、RとRとが互いに結合され、RからRへの方向で-(CH-Y-(CH-鎖を形成し、
● YはO、NR14、N(R14 またはSであり、好ましくはNR14またはN(R14 であり、
● p=0、1、2、3、4または5、
● q=0または1、
● r=0、1、2、3、4または5、
● p+q+r=3、4、5、または6、
● それぞれのR14は独立に、水素原子、C-Cアルキル、アミノ保護基、または-(L)-GPを表し、qは0または1に等しく、Lは結合アームであり、GPは親水性基であるか;
○ または、RはC-Cアルキルであり、RとRとが互いに結合し、それらが結合する炭素原子と共に脂肪族炭素環を形成し;
-RとRとは同一であるか、または異なっており、それぞれ独立して、水素原子、C-Cアルキル、またはC-C10アリールを表し;
-Rは、水素原子、またはC-CアルキルおよびC-Cアルコキシから選択される基であり;
-Rは、水素原子を表し;
-Vは、酸素原子または硫黄原子を表し;
-nは0または1であり;
-Zは-S-、-SO-、または-CR10-であり;RおよびR10は同一であるか、または異なっており、それぞれ独立して、水素原子またはC-Cアルキルを表し;
-QはH、カチオンまたはR16であり、ここでR16はC-Cアルキルであり、任意にアリールまたはO-(CO)-Rで置換され、Rは独立してH、C-CアルキルおよびC-Cシクロアルキルから選択され;
-R11はオルガニル基、オルガニルアミノ基、オルガニルオキシ基、またはオルガニルチオ基であり、
-Xは結合、または
【化2】

から選択される基を表す。
【請求項2】
式(Ia)である、請求項1に記載の化合物(I):
【化3】

ここで、R、R、R、R、R、R、R、R、R11、Q、W、XおよびVは、請求項1に定義されるとおりである。
【請求項3】
式(Ib)である、請求項1に記載の化合物(I):
【化4】

ここで、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、Q、W、XおよびVは、請求項1に定義されるとおりである。
【請求項4】
は1つ以上の芳香環を含む芳香族基を含み、これは任意に置換されており、環は窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子、から選択される1つ以上のヘテロ原子、および/またはC=Oカルボニルの形態の1つ以上の炭素原子を含み得ることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物(I)。
【請求項5】
WRは式(A1)に記載の芳香族基-ORであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物(I):
【化5】

ここで:
-Xは酸素原子であり、Xは-NH、-OH、-SH、C-C20アルキル、C-C24アリール、C-Cアルケニル、-O-(C-C20アルキル)、-O-フェニル、-NH-(C-C20アルキル)、-NH-フェニル、-S-(C-C20アルキル)、または-S-(C-C24アリール基)であり、前記アルキル、アリール、アルケニル、およびフェニルの基は任意に置換されているか;
または、Xは窒素原子を表し、CH、O、S、NまたはNHを表すXに結合され、任意で置換されているC-C24ヘテロアリールを形成しているか、のいずれかであり;

【化6】

はC-C24アリールまたはC-C24のヘテロアリールを表し、これは任意で置換されており、例えば、フェニル基、ナフチル基、および:
【化7】

の中から選択され
前記基は任意で置換されており;
はS、OまたはNRdを表し、Rdは水素原子またはC-Cアルキル基を表し;
好ましくは、-ORはアリールオキシ種であり、好ましくは、以下の好ましい構造(A2)、(A3)または(A4)の1つに対応する:

【化8】

ここで、
○ Tは-NH-C(O)-、-S-、-O-、-NH-、-N(C-C20アルキル)-または-N(C-C24アリール)-であり;
○ Reは水素原子または-CNもしくは-COORhなどの電子求引基であり、RhはC-Cアルキル基を表すか、またはReは-CONRiRjであり、RiおよびRjは、同一であるか、または異なっており、RiおよびRjは水素原子もしくはC-Cアルキル基を表すか、またはReは-CF、C-Cアルケニル、またはヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールおよびアルケニルは任意に置換されており;
○ Rfは水素原子、塩素、臭素、ヨウ素またはフッ素原子、-OH、- NH、-NRkRI、-NHRkまたは-ORkであり、RkおよびRIは、同一であるか、または異なっており、RkおよびRIは、それぞれ独立して、C-Cアルキル基を表し;
○ または、ReおよびRfは、それぞれ互いに結合して、4または5員を含む炭化水素鎖を形成し、飽和または不飽和であり、置換されているか、または非置換であり、N、SおよびOの中から選択される1つ以上のヘテロ原子によって隔てられていてもよく;
○ Rgは、水素原子、Br、Cl、IまたはF原子であり;

【化9】

ここで、
○ T’は-NH、-OH、C-C24アリール基、C-Cアルキル基、-SH、-NHR’g、-OR’g、-NR’gRh’、-SR’g、または任意に置換されたC-Cアルケニル基、またはヘテロアリールであり、R’gおよびRh’は同一であるか、または異なっており、C-Cアルキル基またはC-C24アリール基を表し;
○ R’eは水素原子または-CNもしくは-COOR’iなどの電子求引基であり、R’iはC-Cアルキル基を表すか、またはR’eは-CONR’jR’kであり、R’jおよびR’kは、同一であるか、または異なっており、水素原子、もしくはC-Cアルキル基を表すか、またはR’eは-CF、もしくは2-オキサゾリル、2-チアゾリル、2-イミダゾリル、2-ベンゾイミダゾリル、4-ピリミジノン-2-イルもしくはキナゾリノン-2-イル基である;
○ R’fは水素原子、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素原子、-OH、-NH、-NR’IR’m、またはOR’Iであり、R’IおよびR’mは、同一であるか、または異なっており、C-Cアルキル基を表し;
○ またはR’eおよびR’fはそれぞれ互いに結合して、4または5員を含む炭化水素鎖を形成し、飽和または不飽和であり、置換されているか、または非置換であり、N、SおよびOの中から選択される1つ以上のヘテロ原子によって隔てられていてもよく;

【化10】

ここで、
-X’は酸素原子であり、X’は-NH、-OH、-SH、C-C20アルキル、C-C24アリール、C-Cアルケニル、-O-(C-C20アルキル)、-O-フェニル、-NH-(C-C20アルキル)、-NH-フェニル、-S-(C-C20アルキル)、または-S-(C-C24アリール基)であり、前記アルキル基、アリール基、アルケニル基、およびフェニル基は、任意に置換されているか;
または、Xは窒素原子を表し、CH、O、S、NまたはNHを表すXに結合され、任意で置換されているC-C24ヘテロアリールを形成しているか、のいずれかであり;

【化11】

は、任意で置換されているC-C10アリールまたはC-C10ヘテロアリールを表す。
【請求項6】
R1は、フルオレセイン(ローダミンおよびロドールを含む)、クマリン(7-アミノ-および7-ヒドロキシ-クマリンを含む)、シアニン、フェノキサジンおよびアクリジノンからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物(I)。
【請求項7】
11が、C-Cアルキル、C-Cヘテロアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、5~10個の環原子を有するヘテロシクリル、5~10個の環原子を有するC-C10アリール、C-C16アラルキル、およびNR’’R’’’から選択され;
前記アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリールおよびアラルキルは、独立して、オキソ、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cヘテロアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cハロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロシクリル、C-C10アリール、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、-OH、-NR’’R’’’、-NO、-CN、-O-(CO)-R、および-(CO)-Rから選択される1つ以上の置換基で任意に置換されていてもよく;
それぞれのRは、独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルコキシおよび-NR’’R’’’から独立して選択され、
それぞれのR’’およびR’’’はHおよびC-Cアルキルから独立して選択されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物(I)。
【請求項8】
式(Ic)である、請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物(I):
【化12】

ここで、R、R11、Z、Q、Xおよびnは請求項1~7のいずれか1項に定義されるとおりであり、Yは-CH-、-NR14-、または-N(R14 -を表し、それぞれのR14は独立に、水素原子、C-Cアルキル、アミノ保護基、または-(L)-GPを表し、qは0または1に等しく、Lは結合アームであり、GPは親水性基である。
【請求項9】
式(Id)である、請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物(I):
【化13】

ここで、R、R11、XおよびQは前記請求項1から8のいずれか1項に定義されるとおりであり、Yは請求項8に定義されるとおりである。
【請求項10】
式(Ie)である、請求項1~8のいずれか1項に記載の化合物(I):
【化14】

ここで、R、R、R10、R11、XおよびQは請求項1~8のいずれか1項に定義されるとおりであり、Yは請求項8に定義されるとおりである。
【請求項11】
以下の工程を含む、β-ラクタマーゼをin vitroまたはex vivoで検出するための方法:
-分析する試料を請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物(I)に接触するように置くこと、
-C(=V)とNRとの間の共有結合を開裂させ、続いて-C(O)-WRを開裂させて、結合し、HWRの放出をもたらすことによる蛍光沈殿物の形成を可能にするために、適切な条件を適用すること、
-蛍光沈殿物の定量的分析または定性的分析、
-蛍光沈殿物の定量的分析または定性的分析を試料中のβ-ラクタマーゼの有無と相関させる。
【請求項12】
以下の工程を含む、抗生物質耐性菌をin vitroまたはex vivoで検出するための方法:
-分析する試料を請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物(I)に接触するように置くこと、
-C(=V)とNRとの間の共有結合を開裂させ、続いて-C(O)-WRを開裂させて、結合し、HWRの放出をもたらすことによる蛍光沈殿物の形成を可能にするために、適切な条件を適用すること、
-蛍光沈殿物の定量的分析または定性的分析、
-蛍光沈殿物の定量的分析または定性的分析を試料中の抗生物質耐性細菌の有無と相関させる。
【請求項13】
請求項1~10に記載の化合物を含む、β-ラクタマーゼを検出するためのキット。
【請求項14】
請求項1~10に記載の化合物を含む、β-ラクタマーゼを検出するための装置。
【請求項15】
ヒトにおけるβ-ラクタマーゼのin vivo検出のための、請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物(I)。
【請求項16】
式(II)の化合物:
【化15】

ここで:
-R、R、R、R、R、R、R、R11、Z、n、Q、XおよびVは請求項1から10のいずれか1項に定義されるとおりであり、
-R12は、水素原子またはアミン官能保護基を表す。
【請求項17】
以下の工程を含む、請求項1~10に記載の式(I)の化合物の調製方法:
-R12は水素原子を表す、請求項16に記載の化合物(II)の実施;
-式(III)の化合物の実施
【化16】

ここで、Rは請求項1から10のいずれか1項に定義されるとおりであり、Mは脱離基を表し、好ましくはハロゲン原子、特にCl、イミダゾリル基、トリアゾリル基、およびパラ-ニトロフェノキシから選択され、より好ましくは、Mはパラ-ニトロフェノキシルを表す:
-前記化合物(II)の化合物(III)への付加反応によって化合物(I)を得ること。
【請求項18】
Xは
【化17】

であり、以下の工程を含む、請求項1~10に記載の式(I)の化合物の調製方法:
-次の式の化合物(VII)の実施:
【化18】

-式(VIII)の化合物の実施
【化19】

-および、前記化合物(VII)と化合物(VIII)との反応によって化合物(I)を得ること、
ここで、R、R、R、R、R、R、R、R、V、R11、Q、W、Z、およびnは請求項1~10のいずれか1項に定義されるとおりであり、LGは脱離基を表し、好ましくはハロゲンおよびトリフルオロメタンスルホナートから選択される。
【請求項19】
Xは
【化20】

であり、以下の工程を含む、請求項1~10に記載の式(I)の化合物の調製方法:
-次の式の化合物(VII)の実施:
【化21】

-式(X)の化合物の実施
【化22】

-および、前記化合物(VII)と化合物(IX)との反応によって化合物(I)を得ること、
ここで、R、R、R、R、R、R、R、R、V、R11、Q、W、Z、およびnは請求項1~10のいずれか1項に定義されるとおりであり、LGは脱離基を表し、好ましくはハロゲンおよびトリフルオロメタンスルホナート(トリフラート)から選択され、R15はOHを表し、または各R15が互いに結合し、それらが結合するB原子と共に、5~10個の環原子を有する複素環を形成する。
【請求項20】
Xは
【化23】

であり、以下の工程を含む、請求項1~10に記載の式(I)の化合物の調製方法:
-次の式の化合物(VII)の実施
【化24】

-式(X)の化合物の実施
【化25】

-前記化合物(VII)と化合物(X)とを反応させて化合物(VII)を得ること、
ここで、R、R、R、R、R、R、R、R、V、R11、Q、W、Z、およびnは請求項1~10のいずれか1項に定義されるとおりであり、LGは脱離基を表し、好ましくはハロゲンおよびトリフルオロメタンスルホナート(トリフラート)から選択される、R15はOHを表し、または各R15が互いに結合し、それらが結合するB原子と共に、5~10個の環原子を有する複素環を形成する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、β-ラクタマーゼ型酵素活性の検出のためのプローブに関する。特に、本発明は、触媒活性β-ラクタマーゼの存在を検出するための新規な蛍光性基質およびそのような基質を使用する検出方法に関する。
[背景技術]
β-ラクタム抗生物質は、その構造にβ-ラクタム環を含有する周知のクラスの抗生物質である。しかし、細菌は、抗生物質のβ-ラクタム環の加水分解を促進する酵素であるβラクタマーゼを産生することによって、これらの抗生物質に対する耐性を獲得する傾向があり、これにより、薬剤を無効にすることができる。細菌耐性は、世界的な問題となっている。抗生物質耐性菌の中で、カルバペネム系薬剤に対して耐性を獲得するものは現在治療ができないとされている。実際に病院では、それらを保有する患者がこの感染症で死亡する確率は50%である。
【0002】
従って、このような状況において、β-ラクタム抗生物質に耐性である細菌を同定するために、β-ラクタマーゼ活性、特にカルバペネマーゼ活性を検出することが有用である。
【0003】
プローブによって発せられる蛍光の捕捉によるこの活性の検出は、プローブによる単純な吸収(simple absorption)の間の白色光残留物の収集よりもはるかに感度の高い方法であり、すなわち、検出閾値は、はるかに低い。蛍光発光の検出は実施が非常に容易であり、その結果、蛍光分子は、生命科学にとって非常に魅力的なツールである。例えば、ESIPT(「励起状態分子内陽子移動」)と呼ばれる励起状態における分子内陽子移動をもたらすフルオロフォアのクラスは、特に、a) Ormson, S.M., et al. Progress in Reaction Kinetics (1994) 19, 45-91; b) Legourrierec, D., et al. Progress in Reaction Kinetics (1994), 19, 211-275; and c) Zhao, 1., Ji, S.,Chen, Y., Guo, H., & Yang, P. (2012)に記載されている。励起状態分子内陽子移動(ESIPT):光物理学的な原理から蛍光分子プローブおよび発光材料における新しいクロモフォアおよび適用の開発まで。Physical Chemistry Chemical Physics, 14 (25), 8803。ESIPT現象として特定のフェノール化合物中に見出される上昇した蛍光の第一の解釈は、Weller(サリチル酸メチルについて:Weller, A. (1961). Fast Reactions of Excited MoIecuIes. Progress in Reaction Kinetics and Mechanism 1, 187)、ならびにHellerおよびWilliams(ヒドロキシフェニルベンゾオキサゾールについて:Heller A., et Williams, D.L., 1. Phys. Chem. (1970) 74, 4473-4480)に起因し得る。
【0004】
ESIPTフルオロフォアのクラスは、従来のフルオロフォアと比較してその優れた特性のために、生命科学の研究者にとって特に魅力的である。ESIPTフルオロフォアの非常に優れた特性は以下の通りである:
(a)大きなストークスシフトはしばしば130nmを超え、250nmの値に達することができ、これは、検出の感度を最大にする器具選択を可能にする;これは細胞および組織の構成要素による自己蛍光から逃れること/自己蛍光を無視することによる;
(b)固体状態(すべての既知のフルオロフォアの中でまれな特性である)において、輝く蛍光を発光するフルオロフォアを設計する能力。この最後の特性は、拡散によって引き起こされる最小限の希釈で、活性化部位で高強度シグナルを生成することを可能にする;
(c)組織の透明性が最大である、赤色または近赤外線(600~850nm)を発するESIPTフルオロフォアを設計する能力;このようなフルオロフォアを使用するプローブはまた、生きている動物におけるイメージングに特に適している;そして最後に、
(d)ESIPTフルオロフォアのヒドロキシルが含む水素原子を、化学的または生化学的分析対象物に関して特異的な反応性を有する置換基であって、この置換基の開裂が蛍光の出現を引き起こす置換基に置き換えることによって、蛍光を発しない基質を設計する能力。
【0005】
蛍光の産生をもたらす基質の使用による酵素活性の検出方法の感度レベルは、(i)光退色速度、(ii)その産生部位での蛍光シグナルの蓄積の程度(したがって、当該部位からの拡散速度、およびフルオロフォアが沈殿するか否かを知るという問題)、(iii)基質が機能する実際の消光(extinguishing)/点灯(lighting)モード(非形質転換基質の蛍光によるバックグラウンドの欠如)、および(iv)励起スペクトルおよび発光スペクトルスタッキング(ベースラインでのそれらの分離が最も好ましい構成である;上記のa)の点を参照のこと)の程度、に密接に関連する。(iv)の点は非常に特に重要なものである。なぜならば、ベースラインでの完全な分離が(全ての可能な波長でフルオロフォアを励起するための)光源用のフィルターの非常に広い選択の機会を提供するからであり、しかし、さらにより重要なことは、(フルオロフォアによって発せられた全ての波長から来る光子を収集するための)検出器用のフィルターの非常に広い選択の機会を提供するからである。(iv)の点はまた、確立されたフルオロフォアで遭遇する頻繁に起こる問題である組織自己蛍光(天然フルオロフォアの弱いストークスシフトを特徴とする)による検出方法の妨害を最小限に抑える。確立されたフルオロフォアは、ほとんどがそれ自体は弱いストークスシフトを示す。
【0006】
ESIPTフルオロフォアの重要なクラスの中で、ジクロロ-HPQ(6-クロロ-2-(5-クロロ-2-ヒドロキシフェニル)-4(3H)-キナゾリノン;CAS番号:28683-92-3)は、それが水性/生理学的媒体に完全に不溶性である一方で、固体状態では高い蛍光性であり、さらに溶液中ではなく固体状態においてのみであることを考慮すると、特に興味深い。
【0007】
β-ラクタマーゼを検出するためのいくつかのプローブが開発されている。しかし、これらのプローブは、非常に高価であるか、またはその産生部位での蛍光シグナルの高度の蓄積を保証しない。実際には、遺伝子型検出(β-ラクタマーゼメッセンジャーRNAのPCR)が、細菌耐性を検出するために、現在の診断業界に好まれているようであるが、高いコストおよび長い分析時間を生じさせるため、批判されるべきである。
【0008】
このような状況において、β-ラクタマーゼ活性、特にカルバペネマーゼ活性を検出することができる改善されたプローブを提供することが有用であろう。
【0009】
本発明の目的の1つは、水性媒体中で安定であり、非蛍光性、または放出されたフルオロフォアがそれ自体の蛍光性である波長とは大きく異なった波長における穏やかな蛍光性でとどまり、しかし、小蛍光分子を含む追跡分子にフラグメント化するためにβ-ラクタマーゼと迅速に反応する、新規なβ-ラクタマーゼ基質を提案することである。
【0010】
[概要]
本発明は第一に、式(I)の化合物に関する。
【0011】
【化1】
【0012】
ここで:
-Wは-O-または-NR13-であり、R13はC-Cアルキルまたは水素原子であり;
-Rは、式(I)に存在する-C(O)-WR結合の切断後に得られるHWRが、フルオロフォアのクラス、好ましくは励起状態で分子内陽子移動をもたらすフルオロフォアのクラスに属するようなものであり;
-R、RおよびRは次のいずれかのように定義される:
○ RはC-Cアルキルであり、RはC-Cアルキルまたは水素原子であり、RはC-Cアルキルであるか;
○ または、RはC-Cアルキルまたは水素原子であり、RとRとが互いに結合され、RからRへの方向で-(CH-Y-(CH-鎖を形成し、
● YはO、NR14、N(R14 またはSであり、好ましくはNR14またはN(R14 であり、
● p=0、1、2、3、4または5、
● q=0または1、
● r=0、1、2、3、4または5、
● p+q+r=3、4、5、または6、
● それぞれのR14は独立に、水素原子、C-Cアルキル、アミノ保護基、または-(L)-GPを表し、qは0または1に等しく、Lは結合アームであり、GPは親水性基であるか;
○ または、RはC-Cアルキルであり、RとRとが互いに結合し、それらが結合する炭素原子と共に脂肪族炭素環を形成し;
-RとRとは同一であるか、または異なっており、それぞれ独立して、水素原子、C-Cアルキル、またはC-C10アリールを表し;
-Rは、水素原子、またはC-CアルキルおよびC-Cアルコキシから選択される基であり;
-Rは、水素原子を表し;
-Vは、酸素原子または硫黄原子を表し;
-nは0または1であり;
-Zは-S-、-SO-、または-CR10-であり;RおよびR10は同一であるか、または異なっており、それぞれ独立して、水素原子またはC-Cアルキルを表し;
-QはH、カチオンまたはR16であり、ここでR16はC-Cアルキルであり、任意にアリールまたはO-(CO)-Rで置換され、Rは独立してH、C-CアルキルおよびC-Cシクロアルキルから選択され;
-R11はオルガニル基、オルガニルアミノ基、オルガニルオキシ基、またはオルガニルチオ基であり、
-Xは結合、または
【0013】
【化2】
【0014】
から選択される基を表す。
【0015】
出願人らは、以下の特性を有するβ-ラクタマーゼ基質の系統を開発した:
-強力な蛍光を発生させることによる、拡張スペクトラムβ-ラクタマーゼ(ESBL)メンバーの活性、またはカルバペネマーゼの活性に対する迅速な応答;
-酵素変換時における、酵素活性部位でのシグナル保持のユニークな特性が認識された「ELF97アルコール」を含むフルオロフォア、好ましくはESIPTフルオロフォアの放出;及び
-標的酵素活性の非存在下では、大部分または完全に非蛍光性であり、したがって、有利なシグナル対バックグラウンド比を介して検出感度を最大にする。
【0016】
したがって、本発明による化合物(I)は、蛍光の発生によるβ-ラクタマーゼ活性の存在を明らかにする。
【0017】
より特に、プローブが標的β-ラクタマーゼ酵素に遭遇する前は見えず、したがって「ステルスプローブ」と呼ばれ得る。しかしながら、それが前記酵素によって化学的に修飾される場合(β-ラクタム環の加水分解開環)、それはカスケード反応を介して断片化し、検出可能なフルオロフォアを放出する。プローブは3つの分子成分を含む:i)自己不溶性スペーサーであり、ii)標的酵素の基質の役割を果たすセファロスポリンまたはカルバペネム基を一端に有し、および、iii)前記断片化によってHWRとして放出される場合、フルオロフォアのクラスに属するWR1基を他端に有する。
【0018】
本発明におけるスペーサーの選択肢は対応する分子プローブに2つの実質的な利点を提供する:(a)WR1とのその化学結合が自然加水分解に対して安定であり、したがって、フルオロフォアの放出および偽陽性シグナルの生成に対して安定であり、そして(b)セファロスポリンまたはカルバペネムユニットとのその化学結合はカルバメートの性質のものであり、加水分解安定性を保証するだけでなく、結合の小さなサイズが、酵素による十分な分子認識を保証し、したがって、効率的な代謝回転速度を保証するため、非常に重要なものである。
【0019】
環化のためにスペーサーを予備組織化する2つの方法は、-N-C(V)-O-基のα炭素上に2つのアルキル置換基を導入すること(または炭素環を形成すること)からなるか、またはヘテロシクリル環中に窒素基-N-C(V)-O-とそのα炭素との間の結合を含めることからなり、断片化処理を促進する。
【0020】
したがって、本発明は、本特許出願において記載された変異体はその実施の有無にかかわらず、生細胞分析(細菌)を含むin vitro診断試験におけるβ-ラクタマーゼまたはカルバペネマーゼ活性の検出のための、式(I)の化合物に関する。本発明による式(I)の化合物はまた、動物において、in vivoでβ-ラクタマーゼを検出するために使用され得る。従って、本発明はまた、ヒトにおけるβ-ラクタマーゼのin vivo検出のための、本発明による式(I)の化合物に関する。
【0021】
より特に、本発明は、in vitroまたはex vivoで、β-ラクタマーゼ活性の存在を検出するための方法に関し、以下の工程を含む。
-分析する試料を化合物(I)と接触するように置くこと
-C(=V)とNRとの間の共有結合を開裂させ、続いて-C(O)-WRを開裂させて、結合し、HWRの放出をもたらすことによる蛍光沈殿物の形成を可能にするために、適切な条件を適用すること、
-蛍光沈殿物の定量的分析または定性的分析、
-蛍光沈殿物の定量的分析または定性的分析を試料中のβ-ラクタマーゼの有無との相関。
【0022】
C(=V)とNRとの間の共有結合を開裂させ、続いて-C(O)-WRを開裂させて、結合し、スペーサーの環化後にHWRの放出をもたらすことによる、本発明による式(I)の化合物を使用して得ることができる沈殿物は強い蛍光性であり、一方で、対応する式(I)の化合物は、穏やかに蛍光性であるか、または全く蛍光性ではない。本発明による化合物は、オフ/オンモードに従って作動し、したがって、リードアウト前に過剰のプローブを洗い流す必要なし(「無洗浄アッセイ」)で、この酵素活性のプロービングを可能にするβ-ラクタマーゼ基質である。従って、本発明による化合物は酵素が存在しない場合(オフモード)、蛍光性ではないか、または穏やかに蛍光性であるが、β-ラクタマーゼ酵素の存在下では化合物は断片化され、検出され得るフルオロフォアを放出する(オンモード)。
【0023】
特に、本発明による検出方法は、生理学的条件において、特にpH7.4に緩衝された水性媒体中で、実施することができる。
【0024】
本発明はまた、式(I)の化合物の合成における中間体である式(II)の化合物に関する:
【0025】
【化3】
【0026】
ここで:
-R、R、R、R、R、R、R、R11、Z、n、Q、X、およびVは化合物(I)に対して定義されるとおりであり、
-R12は、水素原子またはアミン官能保護基を表す。
【0027】
本発明はまた、以下の工程を含む化合物(I)の調製方法に関する:
-本明細書で定義される化合物(II)の実施
-式(III)の化合物の実施
【0028】
【化4】
【0029】
ここでRは化合物(I)に対して定義されるとおりであり、Mは脱離基を表し、好ましくはハロゲン化物原子、特にCl、イミダゾリル基、トリアゾリル基、およびパラ-ニトロフェノキシルから選択され、好ましくは、Mはパラ-ニトロフェノキシルを表す。
【0030】
-前記化合物(II)の化合物(III)への付加反応によって化合物(I)を得ること。
【0031】
本発明による種々の化合物は、少なくとも別段の限定がない限り、可能な全ての光学異性体形態で見出すことができ、場合によっては、全ての割合で混合物の形態として見出すことができる。特定の実施形態によれば、不斉炭素原子を含む本発明による化合物はラセミ形態で見出され、ほぼ等しい割合でR体およびS体として見出される。別の実施形態によれば、本発明の式(I)化合物はジアステレオマーまたはエナンチオマーのいずれかであり、80%を超える、または95%を超えるジアステレオマーまたはエナンチオマーの過剰率で、または純粋な異性体形態であり、すなわち、99%を超えるジアステレオマーまたはエナンチオマーの過剰率で、異性体富化形態で見出すことができる。
【0032】
化合物は、古典的な分離技術、例えば、光学活性な酸または塩基を用いたラセミ塩の分別晶析法(その原理は周知であるか、または最も頻繁であり、キラル相または非キラル相での古典的なクロマトグラフィー技術である)によって、ジアステレオマーまたはエナンチオマー中で富化された形態で単離することができる。
【0033】
適用可能であれば、本発明による化合物は、塩、特に塩酸塩、酢酸塩、ヒドロトリフルオロ酢酸塩、ナトリウム塩、またはアンモニウム塩の形態で見出すことができる。
【0034】
本発明をより詳細に説明する。最初に、使用される特定の用語を定義する。
【0035】
[詳細な説明]
〔定義〕
「脂肪族複素環」とは、本発明の文脈において、置換されているかまたは置換されていない飽和環であって、3~20員、好ましくは5~10員、さらに好ましくは5、6、7または8員を含み、O、NまたはSなどの少なくとも1つのヘテロ原子を含むものであると理解される。
【0036】
「脂肪族炭素環」とは、本発明の文脈において、置換されているかまたは置換されていない飽和環であって、炭素原子のみで構成される3~30員、好ましくは5~10員、さらに好ましくは5、6、7または8員を含むものであると理解される。
【0037】
「アルキル」とは、本発明の文脈において、直鎖または分岐鎖であり得る飽和炭化水素鎖であると理解される。好ましくは、アルキルという用語は特に明記しない限り、少なくとも、1~12個の炭素原子、好ましくは1~6個の炭素原子を含むアルキル基、特にアルキル(C-C)基を指す。メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、およびtert-ブチルは、(C-C)アルキル基(1~4個の炭素原子を有するアルキル)の例である。
【0038】
「アルキレン」とは、2価のアルキル基であると理解される。
【0039】
「ヘテロアルキル」とは、本発明の文脈において、1~6個の炭素原子、ならびに、O、N、SiおよびSからなる群から選択される1~3個のヘテロ原子からなる直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖であると理解される。窒素および硫黄原子は任意に酸化されてもよく、窒素ヘテロ原子は任意に4級化されてもよい。ヘテロ原子O、NおよびSはヘテロアルキル基の任意の内部位置に、またはアルキル基に結合された分子の残りの部分の位置に配置されてもよい。
【0040】
「アリール」とは、単環、二環または多環式環であり、特に明記しない限り、少なくとも5~24員、5~20員、5~15員であり、好ましくは単結合および二重結合の変更を含み、少なくとも1つの芳香環を含む、不飽和炭化水素であると理解される。任意のアリール基の例として、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニルおよびシンナミル基を挙げることができる。アリールという用語はまた、1H-フェナレン-1-オン(CAS番号548-39-0)のように、構成炭素の1つが-C(O)カルボキシの形態で見出される、単環、二環または多環で、不飽和の、炭化水素環を含む。
【0041】
「アリーレン」とは、2価アリール基であると理解される。
【0042】
「ヘテロアリール」とは、特に明記しない限り、少なくとも5~24員、好ましくは6~20員、より好ましくは6~15員を含み、炭素環に組み込まれた、酸素、窒素または硫黄原子の中から選択される少なくとも1つの芳香族基および少なくとも1つのヘテロ原子を含む、単環、二環または多環の炭素環式環であると理解される。ヘテロアリール基の例として、2-、3-または4-ピリジニル、2-または3-フルオイル、2-または3-チオフェニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソオキサゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、テトラゾリル、チアダゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、ピリダジニル、インドリル、オキサニル、4(1H)-キノリノニル、ジベンゾチオフェニル、ジベンゾフラニルおよび9H-カルバゾリルを挙げることができる。ヘテロアリールという用語はまた、4(3H)-ピリミジノニル、4(3H)-キナゾリノニル、または4(1H)-キノリノンなどの、構成炭素原子の1つがカルボキシ-C(O)の形態で見出される前記基を含む。
【0043】
さらなる明記なしに基が置換されているとされている場合、これは、特に、塩素、臭素、ヨウ素またはフッ素原子、シアノ、アルキル、トリフルオロアルキル、トリフルオロメチル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアクリアミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル基の中から選択される、1つまたはいくつかの置換基によって置換されていることを意味し、前記基自体が置換され得ることを意味する。これらの置換基の定義に使用される用語は、当業者によって通常認識されるものである。
【0044】
「アルコキシ」および「アリールオキシ」とは、本発明の文脈において定義されるアルキルおよびアリールを有する-O-アルキルおよび-O-アリール基とそれぞれ理解される。
【0045】
「ハロアルキル」とは、少なくとも1個の水素原子がハロゲン原子によって置換されている、飽和した直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖と理解される。
【0046】
「β-ラクタマーゼ」とは、β-ラクタム環を開くための、β-ラクタムの加水分解を触媒する能力を有する、β-ラクタマーゼ酵素であると理解される。
【0047】
「β-ラクタム」とは、4員環状アミドであると理解される。
【0048】
古典的には、用語「アルケニル」は直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を指し、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含み、特に明記しない限り、2~20個の炭素原子、好ましくは2~6個の炭素原子が存在している。
【0049】
本発明の文脈において、用語「アルケニレン」は2価アルケニル基を指す。
【0050】
用語「アルキニル」は直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を指し、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含み、特に明記しない限り、2~12個の炭素原子、好ましくは2~6個の炭素原子が存在している。
【0051】
「アルキニレン」とは、2価アルキニル基であると理解される。
【0052】
「結合アーム」とは、化合物の2つの部分を共有結合で連結する2価の基であると理解される。
【0053】
「オルガニル基」とは、任意の有機置換基であると理解され、機能型に関わらず、炭素原子に、前記オルガニル基を化合物に結合するために使用される1つの遊離原子価を有する。
【0054】
「オルガニルチオ基」とは、任意の有機置換基であると理解され、機能型に関わらず、硫黄原子に、前記オルガニル基を化合物に結合するために使用される1つの遊離原子価を有する
「オルガニルオキシ基」とは、任意の有機置換基であると理解され、機能型に関わらず、酸素原子に、前記オルガニル基を化合物に結合するために使用される1つの遊離原子価を有する。
【0055】
「オルガニルアミノ基」とは、任意の有機置換基であると理解され、機能型に関わらず、窒素原子に、前記オルガニル基を化合物に結合するために使用される1つの遊離原子価を有する。
【0056】
「親水性基(water-solubilizing group)」または「親水性基(hydro solubilizing group)」とは、水性媒体に対するプローブの溶解性を改善することを可能にする親水性基であると理解され、特に、親水性基を水素原子で置換することのみで、それと異なるプローブに関する。特に、前記親水性基は、プローブの静電的特性を改変することができる。
【0057】
本明細書中で使用される場合、用語「保護基」は、分子中の再生した官能基または他の官能基を攻撃しない、容易に入手可能な試薬によって選択的に除去され得る、化学的置換基を指す。適切な保護基は、当技術分野で公知であり、開発され続けている。適切な保護基は、例えば、Wutzら("Greene's Protective Groups in Organic Synthesis, Fourth Edition," Wiley- Interscience, 2007)に見出すことができる。Wutzら(696~927ページ)によって記載されているようなアミノ基の保護のための保護基が、特定の実施形態において使用される。アミノ保護基の代表的な例としては、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、アセチル(Ac)、カルボキシベンジル基(Cbz)、ベンジル基(Bn)、アリル、およびトリフルオロアセチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
「蛍光」は、分子が所与の波長の光によって励起されることで、より長い波長の光を発光する特性である。蛍光は、フルオロフォアと入射光子との相互作用の結果もたらされる現象である。この方法は励起とも呼ばれる。光子の吸収の結果、フルオロフォア中の電子の、その基本状態からより高いエネルギーレベルへの移行がもたらされる。その後、電子は光子を放出することによって、その元のレベルに戻る。この過程を蛍光発光と呼ぶ。そのとき、フルオロフォアは、吸収された光子の波長よりも長い波長の光を発光する。これは、励起状態の寿命期間中にエネルギーが散逸するために、発光された光子のエネルギーが吸収された光子のエネルギーよりも小さくなるという事実に単純に起因する。これは、特許出願WO 2004/058787に与えられた定義である。
【0059】
本発明による化合物(I)は、β-ラクタマーゼによって触媒される化学反応、特に加水分解、の間に別の物質に変換されるので、「β-ラクタマーゼ基質」と呼ばれる。水性媒体中でのこのような反応の間に、化合物(I)(「プローブ」とも呼ばれる)は標的β-ラクタマーゼの作用下で切断され、これはプローブの断片化をもたらすが、これには、高度に不溶性であり、およびその場で沈殿する化合物の形成が含まれる;固体状態の採用の際に、適切な波長の光によって励起される場合、強い蛍光を発し始める。
【0060】
本発明の文脈における「スペーサー」は化合物(I)のフラグメントであり、これは一端に、ii)標的酵素の基質の役割を果たすβ-ラクタム基を有し、そして他端に、iii)前記フラグメント化によってHWRとして放出される場合に、フルオロフォアのクラス、より具体的に固体フルオロフォアのクラスに属するWR1基を有する。
【0061】
〔式(I)の化合物〕
本発明は、式(I)の化合物に関する。
【0062】
【化5】
【0063】
ここで:
-Wは-O-または-NR13-であり、R13はC-Cアルキルまたは水素原子であり;
-Rは、式(I)に存在する-C(O)-WR結合の切断後に得られるHWRが、フルオロフォアのクラス、好ましくは励起状態で分子内陽子移動をもたらすフルオロフォアのクラスに属するようなものであり;
-R、RおよびRは次のいずれかのように定義される:
○ RはC-Cアルキルであり、RはC-Cアルキルまたは水素原子であり、RはC-Cアルキルであるか;
○ または、RはC-Cアルキルまたは水素原子であり、RとRとが互いに結合され、RからRへの方向で-(CH-Y-(CH-鎖を形成し、
● YはO、NR14、N(R14 またはSであり、好ましくはNR14またはN(R14 であり、
● p=0、1、2、3、4または5、
● q=0または1、
● r=0、1、2、3、4または5、
● p+q+r=3、4、5、または6、
● それぞれのR14は独立に、水素原子、C-Cアルキル、アミノ保護基、または-(L)-GPを表し、qは0または1に等しく、Lは結合アームであり、GPは親水性基であるか;
○ または、RはC-Cアルキルであり、RとRとが互いに結合し、それらが結合する炭素原子と共に脂肪族炭素環を形成し;
-RとRとは同一であるか、または異なっており、それぞれ独立して、水素原子、C-Cアルキル、またはC-C10アリールを表し;
-Rは、水素原子、またはC-CアルキルおよびC-Cアルコキシから選択される基であり;
-Rは、水素原子を表し;
-Vは、酸素原子または硫黄原子を表し;
-nは0または1であり;
-Zは-S-、-SO-、または-CR10-であり;RおよびR10は同一であるか、または異なっており、それぞれ独立して、水素原子またはC-Cアルキルを表し;
-QはH、カチオンまたはR16であり、ここでR16はC-Cアルキルであり、任意にアリールまたはO-(CO)-Rで置換され、Rは独立してH、C-CアルキルおよびC-Cシクロアルキルから選択され;
-R11はオルガニル基、オルガニルアミノ基、オルガニルオキシ基、またはオルガニルチオ基であり、
-Xは結合、または
【0064】
【化6】
【0065】
から選択される基を表す。
【0066】
特定の実施形態において、化合物(I)は、式(Ia)のものである:
【0067】
【化7】
【0068】
ここで、R、R、R、R、R、R、R、R、R11、Q、W、XおよびVは、化合物(I)に対して定義されるとおりである。
【0069】
別の実施形態では、化合物(I)は、式(Ib)のものである:
【0070】
【化8】
【0071】
ここで、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、Q、W、XおよびVは、化合物(I)に対して定義されるとおりである。
【0072】
式(Ib)の化合物は、カルバペネマーゼ活性を検出するのに特に有用である。
【0073】
基は、-C(O)-WR結合の切断後に放出された、HWRに対応する得られた蛍光沈殿物がフルオロフォアのクラスに属するように選択され、好ましくは励起状態における分子内陽子移動(ESIPT)をもたらすフルオロフォアのクラスに属するように選択される。
【0074】
ESIPTフルオロフォアは、100nmを超え、しばしば200nmに近づくストークスシフトを示す。全てのESIPTフルオロフォアがアルキル化されるか、アシル化されるか、またはそうでなければ機能化されて、そのフェノール種のWH基が励起状態の陽子の分子内移動を引き起こす場合、全てのESIPTフルオロフォアは100nmを超えるストークスシフトに対応する蛍光のこの発光を失う。この機能化は、照射による励起の間水素原子の移動を防止し、従って、陽子移動法に特徴的な蛍光の放出を防止する。
【0075】
式(I)の化合物のカルバメート基または尿素基へのHWRの組み込みは、陽子移動を妨げる。分子内陽子移動は、したがって、-C(O)-WR結合の切断後に得られる基を使用して起こり得る。
【0076】
最も頻繁には、R基はフェニル基に対応し、置換されていないか、または置換されているか、および/または、窒素のようなヘテロ原子を含むことも可能であり、1個以上の不飽和の炭素環と併合されているフェニル基に対応する。WがOの場合、-ORのフェノキシ誘導体は、基質に結合していない場合、ESIPTクラスのフルオロフォアに属するその陽子化した形態のHO-Rフェノリック誘導体に対応する。
【0077】
特に、明細書WO2013/045854、WO2014/020285、およびWO2015/197981を参照することができ、これらは、本発明において使用され得るこのようなESIPTフルオロフォアの例を提供する。
【0078】
好ましくは、Rは、1つ以上の芳香環を含む芳香族基を含み、置換されているか、または非置換であり、当該環は窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子、から選択される1つ以上のヘテロ原子、および/またはC=Oカルボニルの形態の1つ以上の炭素原子を含むことが可能である。
【0079】
WRは式(A1)に記載の芳香族-ORであってもよい。
【0080】
【化9】
【0081】
ここで:
-Xは酸素原子であり、Xは-NH、-OH、-SH、C-C20アルキル、C-C24アリール、C-Cアルケニル、-O-(C-C20アルキル)、-O-フェニル、-NH-(C-C20アルキル)、-NH-フェニル、-S-(C-C20アルキル)、または-S-(C-C24アリール基)であり、前記アルキル、アリール、アルケニル、およびフェニルの基は任意に置換されているか;
または、Xは窒素原子を表し、CH、O、S、NまたはNHを表すXに結合され、任意で置換されているC-C24ヘテロアリールを形成しているか、のいずれかであり;
【0082】
【化10】
【0083】
はC-C24アリールまたはC-C24のヘテロアリールを表し、これは任意で置換され、例えば、フェニル基、ナフチル基、および:
【0084】
【化11】
【0085】
の中から選択され
前記基は任意で置換されており;
はS、OまたはNRdを表し、Rdは水素原子またはC-Cアルキル基を表す。
【0086】
有利には、-ORはアリールオキシ種であり、好ましくは、以下の好ましい構造(A2)、(A3)または(A4)の1つに対応する:
【0087】
【化12】
【0088】
ここで、
○ Tは-NH-C(O)-、-S-、-O-、-NH-、-N(C-C20アルキル)-または-N(C-C24アリール)-であり;
○ Reは水素原子または-CNもしくは-COORhなどの電子求引基であり、RhはC-Cアルキル基を表すか、またはReは-CONRiRjであり、RiおよびRjは、同一であるか、または異なっており、RiおよびRjは水素原子もしくはC-Cアルキル基を表すか、またはReは-CF、C-Cアルケニル、またはヘテロアリールであり、前記ヘテロアリールおよびアルケニルは任意に置換されており;
○ Rfは水素原子、塩素、臭素、ヨウ素またはフッ素原子、-OH、- NH、-NRkRI、-NHRkまたは-ORkであり、RkおよびRIは、同一であるか、または異なっており、RkおよびRIは、それぞれ独立して、C-Cアルキル基を表し;
○ または、ReおよびRfは、それぞれ互いに結合して、4または5員を含む炭化水素鎖を形成し、飽和または不飽和であり、置換されているか、または非置換であり、N、SおよびOの中から選択される1つ以上のヘテロ原子によって隔てられていてもよく;
○ Rgは、水素原子、Br、Cl、IまたはF原子であり;
【0089】
【化13】
【0090】
ここで、
○ T’は-NH、-OH、C-C24アリール基、C-Cアルキル基、-SH、-NHR’g、-OR’g、-NR’gRh’、-SR’g、または任意に置換されたC-Cアルケニル基、またはヘテロアリールであり、R’gおよびRh’は同一であるか、または異なっており、C-Cアルキル基またはC-C24アリール基を表し;
○ R’eは水素原子または-CNもしくは-COOR’iなどの電子求引基であり、R’iはC-Cアルキル基を表すか、またはR’eは-CONR’jR’kであり、R’jおよびR’kは同一であるか、または異なっており、水素原子、もしくはC-Cアルキル基を表すか、またはR’eは-CF、もしくは2-オキサゾリル、2-チアゾリル、2-イミダゾリル、2-ベンゾイミダゾリル、4-ピリミジノン-2-イルもしくはキナゾリノン-2-イル基である;
○ R’fは水素原子、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素原子、-OH、-NH2、-NR’IR’m、またはOR’Iであり、R’IおよびR’mは同一であるか、または異なっており、C-Cアルキル基を表し;
○ またはR’eおよびR’fはそれぞれ互いに結合して、4または5員を含む炭化水素鎖を形成し、飽和または不飽和であり、置換されているか、または非置換であり、N、SおよびOの中から選択される1つ以上のヘテロ原子によって隔てられていてもよく;
【0091】
【化14】
【0092】
ここで、
-X’は酸素原子であり、X’は-NH、-OH、-SH、C-C20アルキル、C-C24アリール、C-Cアルケニル、-O-(C-C20アルキル)、-O-フェニル、-NH-(C-C20アルキル)、-NH-フェニル、-S-(C-C20アルキル)、または-S-(C-C24アリール基)であり、前記アルキル基、アリール基、アルケニル基、およびフェニル基は、任意に置換されているか;
または、Xは窒素原子を表し、CH、O、S、NまたはNHを表すXに結合され、任意で置換されているC-C24ヘテロアリールを形成しているか、のいずれかであり;
【0093】
【化15】
【0094】
は、任意で置換されているC-C10アリールまたはC-C10ヘテロアリールを表す。
【0095】
式(A1)~(A4)において、置換基が任意で置換されていてもよいと言及された場合、置換基は1個以上の置換基で任意に置換されていてもよい。1個以上の置換基は、好ましくは、ハロゲン化物、-CN、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cアルコキシ、C-C10シクロアルキル、C-C10アリール、C-C10ヘテロアリール、C-C24ヘテロシクロアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、ヒドロキシ、オキソ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル基から選択され、前記シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルはハロゲン化物、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cアルコキシ、オキソ、-NH、-NH(C-Cアルキル)、または-N(C-Cアルキル)によって置換され得る。
【0096】
本発明の特定の実施形態によれば、WR1は、以下の式(A5)または(A6)のうちの1つに応答する-OR1を有する芳香族基である:
【0097】
【化16】
【0098】
このようなフルオロフォア(A6については約170nmである)、またはHPQの任意のアナログの非常に大きなストークスシフトは、プローブの優れた感度に寄与し、そして放出されたフルオロフォアを、分析が行われる生物学的試料に由来し得る天然の蛍光から容易に区別可能なものにする。
【0099】
一実施形態によれば、R1は、フルオレセイン(ローダミンおよびロドールを含む)、クマリン(7-アミノ-および7-ヒドロキシ-クマリンを含む)、シアニン、フェノキサジンおよびアクリジノンからなる群から選択される。
【0100】
本発明の一実施形態によれば、Rは(C-C)アルキルであり、Rは(C-C)アルキルまたは水素原子であり、Rは(C-C)アルキルである。別の実施形態によれば、R、RおよびRは同一または異なっていても、(C-C)アルキル基を表し、例えば、メチルまたはエチルを表す。具体的な実施形態によれば、R=R=R=-CHである。
【0101】
別の実施形態によれば、RはC-Cアルキルであり、RおよびRは互いに結合されて、それらに結合している原子と共に、脂肪族炭素環を形成している。例えば、RおよびRは互いに結合され、m=3、4、5、または6である-(CH)m-鎖を形成している。
【0102】
有利には、Rは水素原子またはC-Cアルキルであり、好ましくは水素原子であり、RおよびRは互いに結合し、RからRへの方向で-CHCH-Y-CH-鎖を形成し、Yは-CH-、-NR14-、またはN(R14 -を表し、R14は水素原子または-(L)-GPを表し、qは0または1と等しく、Lは結合アームであり、GPは親水性基(hydro solubilizing group)である。
【0103】
具体的な実施形態では、RはC-Cアルキルまたは水素原子であり、RとRとが互いに結合され、RからRへの方向で-(CH-Y-(CH-鎖を形成し、
● YはO、NR14、N(R14 またはSであり、好ましくはNR14またはN(R14 であり、
● p=0、1、2、3、4または5、
● q=0または1、
● r=0、1、2、3、4または5、
● p+q+r=3、4、5、または6、
● それぞれのR14は独立に、水素原子、C-Cアルキル、アミノ保護基、または-(L)-GPを表し、qは0または1に等しく、Lは結合アームであり、GPは親水性基である。
【0104】
例えば、RとRとが互いに結合され、RからRへの方向で-(CH-Y-(CH-鎖を形成し、
● YはNR14またはN(R14
● p=2、3、4または5、
● q=1、
● r=0、1、2、3、4または5、
● p+q+r=3、4、5、または6、ならびに
● それぞれのR14は独立に、水素原子、C-Cアルキル、アミノ保護基、または-(L)-GPを表し、qは0または1に等しく、Lは結合アームであり、GPは親水性基である、または
とRとが互いに結合され、RからRへの方向で-(CH-Y-(CH-鎖を形成し、
● p=2、3、4または5、
● q=0、
● r=0、1、2、3、4または5、
● p+q+r=3、4、5、または6。
【0105】
具体的な実施形態において、YはN(R14 であり、正電荷はN原子上にあり、したがって、アンモニウムである。この場合、対イオンが存在する。対イオンは、ハロゲン化物、トリフルオロ酢酸、および酢酸からなる群から選択することができる。
【0106】
具体的な実施形態において、q=1およびLは結合アームであり、特に、-(L)m-(L)m-(L’)m’-アーム(ピぺラジン方向->GP基):
-LおよびL’、同一または異なっており、-O-、-NH-、-N(C-C)アルキル)-、-N(フェニル)-、-N(アリール)-、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-OC(O)-O-、-NHC(O)-O-、-OC(O)-NH-、-NHC(O)-NH-、-S-、-SOC-、-N=N-、-NHC(O)-および-CONH-の中から選択される;
-Lは次の2価の基から選択される:(C-C20)アルキレン、(C-C20)アルケニレン、(C-C20)アルキニレン、(C-C24)アリーレン、(C-C44)アルキルアリーレン、(C-C44)アルケニルアリーレン、(C-C44)アルキニルアリーレン、(C-C44)アルキルシクロアルキレン、(C-C44)アルケニルシクロアルキレン、(C-C44)アルキニルシクロアルキレン、(C-C44)アルキルヘテロシクロアルキレン、(C-C44)アルケニルヘテロシクロアルキレン、(C-C44)アルキニルヘテロシクロアルキレン;前記基はトリアゾール基によって隔てられるか、または終了し、置換されていることまたは非置換であることが可能であり、特に、(C-C10)アルコキシ、(C-C10)アルキル、(C-C10)アリール、アミド、イミド、ホスフィド、ニトリド、(C-C10)アルケニル、(C-C10)アルキニル、及び-OHの中から選択される1つ以上の置換基によって、置換されていることまたは非置換であることが可能であり;および
m、m’及びm、同一または異なっており、これらは0または1と等しい。
【0107】
Lアームは、存在する場合、ピペラジンからGP基を伸長するために、または合成の理由のために選択される。好ましい一実施形態によれば、Lは、-(L)m-(L)m-(L’)m’を表し、L=-C(O)-、m=m=1、m’=1または0であり、ならびに、LおよびL’は上述に定義されるとおりである。特に、Lは-C(O)-(CH-L-を表し、pは1、2、3または4と等しく、L3はトリアゾール基であり、特に、1H-1、2、3トリアゾール基である。
【0108】
GPは親水性基である。親水性基の例として、水溶液中で荷電種を形成することができる基を挙げる。水溶性GP基の例として、
-アミン(第1級、第2級、第3級、または第4級)、アミジン、グアニジン、またはテトラゾールの中から選択されるF1官能基;
-特に、アンモニウム、カルボン酸塩、スルホン酸塩またはリン酸塩の型の基である、F2カチオン性またはアニオン性官能基;
-これらのF1および/またはF2官能基の1つ以上を含む基;
-ポリエチレングリコール;
-グルコース、ガラクトースおよびマンノースのような糖または多糖類;
-ポリリジン、ポリアルギニン、TATペプチドなどのペプチド基、ならびに
-アミノ酸
を挙げる。
【0109】
アミン官能基の例として、-NH、-NH(C-C)アルキル、およびジアルキルアミンを挙げ、アルキル基は同一または異なっており、1~4個の炭素原子を含む。
【0110】
環化のためにスペーサーを予備組織化するこれらの2つの方法は、-N-C(V)-O-基のα炭素上に2つのアルキル置換基を導入すること(もしくは炭素環を形成すること)、またはヘテロシクリル環中に窒素-N-C(V)-O-基とそのα炭素との間の結合を含めることのいずれかからなり、脱モル化方法(immolation process)を促進する。
【0111】
一実施形態によれば、RおよびRは同一であり、水素原子を表す。一実施形態によれば、Rは水素原子、またはメチルのような(C-C)alyl基、および、好ましくは水素原子を表す。
【0112】
一実施形態によれば、R、RおよびRは、それぞれ、水素原子を表す。
【0113】
Xは、結合、または
【0114】
【化17】
【0115】
から選択される基を表す。
【0116】
本発明の場合、二重結合は任意の構成(ZまたはE)を有することができる。一実施形態によれば、Xは結合、または
【0117】
【化18】
【0118】
から選択される基を表し、好ましくはXは結合である。
【0119】
11が、C-Cアルキル、C-Cヘテロアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、5~10個の環原子を有するヘテロシクリル、5~10個の環原子を有するC-C10アリール、C-C16アラルキル、および-NR’’R’’’から選択され;前記アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリールおよびアラルキルは、独立して、オキソ、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cヘテロアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cハロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロシクリル、C-C10アリール、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、-OH、-NR’’R’’’、-NO、-CN、-O-(CO)-R、および-(CO)-Rから選択される1つ以上の置換基で任意に置換されていてもよく;それぞれのRは、独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルコキシおよび-NR’’R’’’から独立して選択され、それぞれのR’’およびR’’’はHおよびC-Cアルキルから独立して選択される。
【0120】
好ましくは、R11はC-Cアルキル、NR’’R’’’、およびC-Cヘテロアルキルから選択され、前記アルキルおよびヘテロアルキルは、オキソ、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、C-C10のアリール、C-Cヘテロアルキル、-O-(CO)-R、および-OHから独立に選択される1つ以上の置換基で任意に置換されており;RはHおよびC-Cアルキルから選択されており、ならびに、R’’およびR’’’はHおよびC-Cアルキルから独立して選択され、より好ましくはR11
【0121】
【化19】
【0122】
から選択される。
【0123】
カチオンQは、Na、K、Li、NH4から選択できる。
【0124】
特定の実施形態によれば、ZはSであり、nは1である。別の特定の実施形態によれば、Zは-CR10-であり、nは0であり;RおよびR10は同一または異なっており、互いに独立して、水素原子またはC-Cアルキルを表す。
【0125】
特定の実施形態によれば、化合物(I)は、式(Ic)のものである:
【0126】
【化20】
【0127】
ここで、R、R11、Z、Q、n、X、およびY、ならびにnは、式(I)の化合物に対して定義されるとおりである。
【0128】
特定の実施形態によれば、化合物(I)は、式(Id)のものである:
【0129】
【化21】
【0130】
ここで、R、R11、Q、X、およびYは、式(I)の化合物に対して定義されるとおりである。
【0131】
式(Id)の化合物は、式(Id’)、(Id’’)または(Id’’’)であり得る:
【0132】
【化22】
【0133】
式(I)の化合物に対して定義されるとおりである。
【0134】
式(Id)の化合物は、以下の化合物から選択することができる:
【0135】
【化23】

【0136】
特定の実施形態によれば、化合物(I)は、式(Ie)のものである:
【0137】
【化24】
【0138】
ここで、R、R、R10、R11、Q、XおよびYは、式(I)の化合物に対して定義されるとおりである。
【0139】
式(Ie)の化合物は、式(Ie’)、(Ie’’)または(Ie’’’)であり得る:
【0140】
【化25】
【0141】
ここで、Yは式(I)の化合物に対して定義されるとおりである。
【0142】
式(Ie)の化合物は、以下の化合物から選択することができる:
【0143】
【化26】

【0144】
一実施形態によれば、式(I)の化合物において:
-Wは-O-であり;
-Rは、式(I)に存在する-C(O)-OR結合の切断後に得られるHORのようなものである。HORはフルオロフォアのクラス、好ましくは励起状態で分子内陽子移動をもたらすフルオロフォアのクラスに属し、-ORが式(A1)の基に対応するようなものである:
【0145】
【化27】
【0146】
ここで:
-Xは酸素原子であり、Xは-NH、-OH、-SH、C-C20アルキル、C-C24アリール、C-Cアルケニル、-O-(C-C20アルキル)、-O-フェニル、-NH-(C-C20アルキル)、-NH-フェニル、-S-(C-C20アルキル)、または-S-(C-C24アリール基)であり、前記アルキル、アリール、アルケニル、およびフェニルの基は任意に置換されているか;
または、Xは窒素原子を表し、CH、O、S、NまたはNHを表すXに結合され、任意で置換されているC-C24ヘテロアリールを形成しているか、のいずれかであり;
【0147】
【化28】
【0148】
はC-C24アリールまたはC-C24のヘテロアリールを表し、これは任意で置換され、例えば、フェニル基、ナフチル基、および:
【0149】
【化29】
【0150】
の中から選択され
前記基は任意で置換されており;
はS、OまたはNRdを表し、Rdは水素原子またはC-Cアルキル基を表し;
-R、RおよびRは次のように定義される:
はC-Cアルキルまたは水素原子であり、RとRとが互いに結合され、RからRへの方向で-(CH-Y-(CH-鎖を形成し、
● YはO、NR14、N(R14 またはSであり、好ましくはNR14またはN(R14 であり、
● p=0、1、2、3、4または5、
● q=0または1、
● r=0、1、2、3、4または5、
● p+q+r=3、4、5、または6、
● それぞれのR14は独立に、水素原子、C-Cアルキル、アミノ保護基、または-(L)-GPを表し、qは0または1に等しく、Lは結合アームであり、GPは親水性基であるか;
-RとRとは同一であるか、または異なっており、それぞれ独立して、水素原子、C-Cアルキル、またはC-C10アリールを表し;
-Rは、水素原子、またはC-CアルキルおよびC-Cアルコキシから選択される基であり;
-Rは、水素原子を表し;
-nは0または1であり;
-Zは-S-、または-CR10-であり;RおよびR10は同一であるか、または異なっており、それぞれ独立して、水素原子またはC-Cアルキルを表し;
-QはH、またはカチオンであり、
11が、C-Cアルキル、C-Cヘテロアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、5~10個の環原子を有するヘテロシクリル、5~10個の環原子を有するC-C10アリール、C-C16アラルキルから選択され;
前記アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリールおよびアラルキルは、独立して、オキソ、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cヘテロアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cハロアルキル、5~10個の環原子を有するヘテロシクリル、C-C10アリール、5~10個の環原子を有するヘテロアリール、-OH、-NR’’R’’’、-NO、-CN、および-(CO)-Rから選択される1つ以上の置換基で任意に置換されていてもよく;
それぞれのRは、独立して、H、C-Cアルキル、C-Cアルコキシおよび-NR’’R’’’から独立して選択され、
それぞれのR’’およびR’’’はHおよびC-Cアルキルから独立して選択され、
-Xは結合、または
【0151】
【化30】
【0152】
から選択される基を表す。
【0153】
〔式の化合物(II)〕
本発明はまた、式(II)の化合物に関する:
【0154】
【化31】
【0155】
ここで:
-R、R、R、R、R、R、R、R11、Z、n、Q、XおよびVは化合物(I)に対して定義されるとおりであり、
-R12は、水素原子またはアミン官能保護基を表す。
【0156】
式(II)の化合物はアミン官能保護基による式(I)の化合物の合成中間体である。アミン官能保護基は、例えば、Organic Synthesis, Greene T.W. et Wuts P.G.N., ed. John Wiley and Sons, 2006に記載された保護基、およびKocienski P.J., 1994, Georg Thieme Verlagに記載された保護基などの保護基であると理解される。
【0157】
一実施形態によれば、R12はアミン官能保護基である。例えば、R12は、tert-ブトキシカルボニル(Boc)基、フルオロフェニルメトキシカルボニル(Fmoc)基、アリールオキシカルボニル(Alloc)基、または2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル(Troc)基などのアリール基またはカルバメート基の中から選択されるアミン官能保護基を表す。
【0158】
特定の実施形態によれば、R12は水素原子を表す。
【0159】
特定の実施形態において、式(II)の化合物は式(IIa)のものである:
【0160】
【化32】
【0161】
ここで、R、R、R、R、R、R、R11、Q、X、およびYは式(I)の化合物に対して定義されるとおりであり、R12は式(II)の化合物に対して定義されるとおりである。
【0162】
別の特定の実施形態では、式(II)の化合物が式(IIb)のものである:
【0163】
【化33】
【0164】
ここで、R、R、R、R、R、R、R、R10,11、Q、X及びYは式(I)の化合物に対して定義されるとおりであり、R12は式(II)の化合物に対して定義されるとおりである。
【0165】
有利には、式(II)の化合物は式(IIc)のものである:
【0166】
【化34】
【0167】
ここで、R11、Z、Q、n、XおよびYは、式(I)の化合物に対して定義されとおりであり、R12は式(II)の化合物に対して定義されるとおりである。
【0168】
特定の実施形態において、式(II)の化合物は式(IId)のものである:
【0169】
【化35】
【0170】
ここで、R11、Q、XおよびYは式(I)の化合物に対して定義されるとおりであり、R12は式(II)の化合物に対して定義されるとおりである。
【0171】
別の特定の実施形態では、式(II)の化合物は式(IIe)のものである:
【0172】
【化36】
【0173】
ここで、R11、Q、XおよびYは式(I)の化合物に対して定義されるとおりであり、R12は式(II)の化合物に対して定義されるとおりである。
【0174】
〔式(I)の化合物の調製方法〕
本発明はまた、以下の工程を含む式(I)の化合物の調製方法に関する:
-化合物(II)の実施;
-式(III)の化合物の実施:
【0175】
【化37】
【0176】
ここで、Rは化合物(I)に対して定義されるとおりであり、Mは脱離基を表し、好ましくはハロゲン原子、特にCl、イミダゾリル基、トリアゾリル基、およびパラ-ニトロフェノキシから選択され、より好ましくは、Mはパラ-ニトロフェノキシルを表し、
-前記化合物(II)の化合物(III)への付加反応によって化合物(I)を得ること。
【0177】
-前記化合物(II)の化合物(III)への付加反応によって化合物(I)を得ること
この方法は、Xが結合である場合に特に適している。
【0178】
一実施形態によれば、化合物(II)の化合物(III)への付加反応は、R12が水素原子である化合物(II)を用いて実施される。
【0179】
別の実施形態によれば、R12が水素原子ではない化合物(II)が入手可能であり、化合物(II)のアミン官能基を脱保護する工程は、化合物(II)を化合物(III)に付加して、R12=Hなどの化合物(II)を得る反応の前に実行される。
【0180】
V=Oの場合、化合物(II)は、以下の工程に従って有利に得ることができる:
-次式の化合物(V)の実施:
【0181】
【化38】
【0182】
-式の化合物(VI)の実施
【0183】
【化39】
【0184】
-化合物(VI)を化合物(V)に付加反応させて化合物(II)を得、ここで、R、R11、Q、XおよびZは本発明の文脈において定義される通りであり、Kは、脱離基、特にハロゲン、特に塩素、またはイミダゾリル基もしくはパラ-ニトロフェニル基を表す。
【0185】
特定の実施形態によれば、式(V)の化合物は、式(Va)の化合物である:
【0186】
【化40】
【0187】
ここで、R、R11、Q、Z、XおよびKは、発明の文脈において定義されるとおりである。
【0188】
別の特定の実施形態によれば、式(V)の化合物は、式(Vb)のものである:
【0189】
【化41】
【0190】
ここで、R、R、R10、R11、Q、XおよびKは、発明の文脈において定義されるとおりである。
【0191】
本発明はまた、Xが
【0192】
【化42】
【0193】
である場合の式(I)の化合物の調製方法に関する。この場合、化合物は、当業者に周知の反応である薗頭カップリング反応を用いて調製することができる。この方法は、以下のステップを含むことができる:
-次の式(VII)の化合物の実施:
【0194】
【化43】
【0195】
-式(VIII)の化合物の実施
【0196】
【化44】
【0197】
-および、前記化合物(VII)と化合物(VIII)との反応によって化合物(I)を得ること、
ここで、R、R、R、R、R、R、R、R、V、R11、Q、W、Z、およびnは本発明の文脈上において定義されるとおりであり、LGは脱離基を表し、好ましくはハロゲンおよびトリフルオロメタンスルホナート(トリフラート)から選択される。
【0198】
この方法は、パラジウム触媒および銅助触媒のような標準条件を用いて実施することができる。
【0199】
本発明はまた、Xが
【0200】
【化45】
【0201】
である場合の式(I)の化合物の調製方法に関する。この場合、化合物は、当業者に周知の反応である鈴木カップリング反応を用いて調製することができる。この方法は、以下のステップを含むことができる:
-次の式(VII)の化合物の実施:
【0202】
【化46】
【0203】
-式(IX)の化合物の実施
【0204】
【化47】
【0205】
-および、前記化合物(VII)と化合物(IX)との反応によって化合物(I)を得ること、
ここで、R、R、R、R、R、R、R、R、V、R11、Q、W、Z、およびnは本発明の文脈上において定義されるとおりであり、LGは脱離基を表し、好ましくはハロゲンおよびトリフルオロメタンスルホナート(トリフラート)から選択される、各R15はOHを表し、または各R15が互いに結合し、それらが結合するB原子と共に、5~10個の環原子を有する複素環を形成する。互いに結合しているR15基の例には、ピナコール、カテコール、およびメチルイミノジアセテートが含まれる。
【0206】
この方法は、パラジウム触媒および塩基のような標準条件で実施することができる。
【0207】
本発明はまた、Xが
【0208】
【化48】
【0209】
である場合の式(I)の化合物の調製方法に関する。この場合、化合物は、当業者に周知の反応である鈴木カップリング反応を用いて調製することができる。この方法は、以下のステップを含むことができる:
-下記式(VII)の化合物の実施
【0210】
【化49】
【0211】
-式(X)の化合物の実施
【0212】
【化50】
【0213】
-および、前記化合物(VII)と化合物(X)との反応によって化合物(I)を得ること、
ここで、R、R、R、R、R、R、R、R、V、R11、Q、W、Z、およびnは本発明の文脈上において定義されるとおりであり、LGは脱離基を表し、好ましくはハロゲンおよびトリフルオロメタンスルホナート(トリフラート)から選択され、R15はOHを表し、または各R15が互いに結合し、それらが結合するB原子と共に、5~10個の環原子を有する複素環を形成する。互いに結合しているR15基の例には、ピナコール、カテコール、およびメチルイミノジアセテートが含まれる。
【0214】
この方法は、パラジウム触媒および塩基のような、標準条件で実施することができる。
【0215】
式(X)の化合物は、三重結合のhdroborationによって式(VIII)の化合物から得ることができる。式(X)の化合物中の二重結合は、EまたはZであり得る。
【0216】
〔β-ラクタマーゼの存在の検出〕
本発明はまた、以下の工程を含む、β-ラクタマーゼをin vitroまたはex vivo検出のための方法に関する:
-分析する試料を化合物(I)に接触するように置くこと、
-C(=V)とNRとの間の共有結合を開裂させ、続いて-C(O)-WRを開裂させて、結合し、HWRの放出をもたらすことによる蛍光沈殿物の形成を可能にするために、適切な条件を適用すること、
-蛍光沈殿物の定量的分析または定性的分析、
-蛍光沈殿物の定量的分析または定性的分析を試料中のβ-ラクタマーゼの有無と相関させること。
【0217】
本発明はまた、以下の工程を含む、抗生物質耐性菌をin vitroまたはex vivoで検出するための方法に関する:
-分析する試料を化合物(I)に接触するように置くこと、
-C(=V)とNRとの間の共有結合を開裂させ、続いて-C(O)-WRを開裂させて、結合し、HWRの放出をもたらすことによる蛍光沈殿物の形成を可能にするために、適切な条件を適用すること、
-蛍光沈殿物の定量的分析または定性的分析、
-蛍光沈殿物の定量的分析または定性的分析を試料中の抗生物質耐性細菌の有無と相関させること。
【0218】
本発明はまた、化合物(I)を含む、β-ラクタマーゼを検出するためのキットに関する。
【0219】
本発明はまた、化合物(I)を含む、β-ラクタマーゼを検出するための装置に関する。好ましくは、前記装置はin-vitro診断医療装置(IVD)である。
【0220】
一実施形態によれば、β-ラクタマーゼはカルバペネマーゼである。
【0221】
本発明はまた、以下の工程を含む、カルバペネマーゼをin vitroまたはex vivoで検出するための方法に関する:
-分析する試料を化合物(I)に接触するように置くこと、
-C(=V)とNRとの間の共有結合を開裂させ、続いて-C(O)-WRを開裂させて、結合し、HWRの放出をもたらすことによる蛍光沈殿物の形成を可能にするために、適切な条件を適用すること、
-蛍光沈殿物の定量的分析または定性的分析、
-蛍光沈殿物の定量的分析または定性的分析を試料中のカルバペネマーゼの有無と相関させること。
【0222】
本発明による式(I)の化合物はまた、in vivo、動物またはヒトにおいてβ-ラクタマーゼを検出するために使用されてもよい。
【0223】
式(I)の化合物の投与は、例えば、静脈内または腹腔内注入によって、または経皮的に、溶液中に当該分子を含む噴霧を使用することによって完了することができる。
【0224】
式(I)の化合物の蛍光の分析は、蛍光または落射蛍光タイプの断層撮影技術を用いて、イメージングチャンバ内で行うことができる。
【0225】
本発明はまた、本発明による化合物(I)の手段によって、in vitroまたはex vivoにおいて、β-ラクタマーゼの存在を検出するための方法に関する。
【0226】
試料は、ヒト、動物、植物または微生物に由来する任意の適切な生物学的試料であり得る。ヒトまたは動物に由来する試料の場合、これは特に生物学的流体の試料、特に全血、血清、血漿、尿、組織試料、または単離された細胞の試料であってもよく、特に、細胞培地の試料であってもよい。植物由来の試料の場合、これは、植物抽出物、真菌または藻類の抽出物、生細胞の抽出物であってもよく、特に細胞培地の抽出物であってもよい。試料が植物を直接含むことも可能である。微生物由来の試料の場合、微生物は細菌、ウイルス、真菌または酵母であってもよく、微生物相であってもよい。試料は、微生物、または後者の抽出物、または微生物が培養された培地さえも直接含んでもよい。全ての場合において、試料は、プローブの存在下に置かれる前に、そのまま使用され得るか、または当業者に周知の濃縮した種の、または培養した種の調製物に供され得る。
【0227】
化合物または蛍光沈殿物の分析は、
-蛍光沈殿物を、蛍光沈殿物の吸収波長で光を生成することができる光源に暴露する工程、および
-得られた沈殿物の蛍光を検出するステップ、を含むことができる。
【0228】
分析はまた、蛍光の検出するステップに続いて、前記蛍光沈殿物によって提供されるシグナルに基づいて分析試料を選別するステップを含んでもよい。選別された試料は、微生物培養物のディッシュのような空間で分離された微生物のコロニーであり得る。選別された試料はまた、微生物の生体分子またはコロニーのいずれかを含む、小さな物体、液体、固体、ゼラチン状または不均一な組成物であり得る。いくつかの試料について並行して検知が行われる場合、選別は、例えば、フローサイトメトリーまたはデジタルミリ流体またはマイクロ流体装置のような、発光した蛍光を代表する光学シグナルに従って選別することができる装置内で運動するように設定された試料の流れを転換することによって行うことができる。
【0229】
本発明は、β-ラクタマーゼの活性を、フルオロフォア、好ましくはESIPTフルオロフォアを使用する蛍光イメージングによってアクセス可能にする。有利なことに、自然分解による(すなわち、生理学的媒体中の標的β-ラクタマーゼの非存在における)バックグラウンドノイズは観察されなかった。プローブ自体はわずかに蛍光性であるか、または全く蛍光性ではなく、特に、検出/イメージング機器が設定されるフルオロフォア繊維の発光波長において蛍光性である。したがって、プローブはオン/オフモードで機能し、最大感度を有する分析の開発に使用することができる。
【0230】
本発明によるプローブは、生命科学におけるいくつかの高感度な適用について興味深い。特に:(1)寒天プレート上の細菌コロニーによって発現されるβ-ラクタマーゼ活性の高収率標的化(コロニーの分析);(2)生物学的液体中のβ-ラクタマーゼのin vitro検出(血液学およびその他);(3)フローサイトメトリー中の単純な細胞のレベルでのβ-ラクタマーゼ活性の可視化;(4)培養細胞中の細胞内β-ラクタマーゼの検出(共焦点蛍光顕微鏡法);(5)β-ラクタマーゼの(組織レベルでの)組織化学的検出;および最後に(6)動物全体のin vivoイメージ、の点である。
【0231】
したがって、本発明によるβ-ラクタマーゼ基質としての式(I)の化合物は、多数の潜在的用途を有する。これらの適用の例は、細菌コロニーの分析の設計を含む。これらは、現在、寒天皿(ペトリ皿)上で実施され、ここで、3,000個までのコロニーがマルチウェルディッシュに含まれるウェルのような分けられた区画にそれらを能動的に分離する必要なく、識別され得る。したがって、(1)目的の病原系統を細菌系統群の中から同定することを可能にする臨床試料に関する試験を設計すること、および(2)古典的な細菌宿主(しばしば商業的)によって発現された自己産生タンパク質のバンクの大規模並行試験を完了すること、が可能である。このタンパク質の収集は、特定の目的のタンパク質を含むと理解することができ、例えば、特定のβ-ラクタム基に対して選択性を有するβ-ラクタマーゼ、またはβ-ラクタムを加水分解するβ-ラクタマーゼを含むと理解することができる。特に、β-ラクタマーゼまたは酵素の指向進化法の分野では、容易に10を超える非常に多数のタンパク質変異体をふるい分けるための効果的かつ高感度の分析が強く求められている。本発明によるプローブの適用は、寒天溶液がディッシュに注がれるか、またはそれ自体がゲル化する前に、寒天溶液中に溶解することによって、最も容易に想像することができる。代替として、基質はコロニーに導入される前に、フィルターの浸漬によってコロニーと培養される。本発明によるプローブがこのようなコロニーの分析に寄与する主な利点は、フルオロフォアのその場での沈殿であり;これにより、蛍光シグナルの希釈が非常に低減され、これにより、長いインキュベーション期間が可能になり、したがって、分析の感度が高くなる。ジクロロ-HPQ(約140nm)またはHPQの任意のアナログの非常に大きなストークスシフトは誤って推定されるべきではなく;また、それは優れた感度に寄与し、そして発光した蛍光は生物学的試料に由来し得る天然の蛍光から容易に識別可能である。
【0232】
本発明によるプローブは、肉眼で見える蛍光イメージング、すなわち生物全体にも使用することができる。この場合、プローブは、目的の活性に到達するために細胞壁を貫通する。
【0233】
添付の図面に関連する例は、限定的な方法ではなく、本発明を例示することができる。
【0234】
〔実施例〕
〔実施例1:化合物15の合成〕
【0235】
【化51】
【0236】
(ELF-97)
乾燥EtOH(20mL)中のアントラニルアミド(2.000g、11.7mmol、1.0当量)の溶液を、5-クロロサリチルアルデヒド(1.831g、11.7mmol、1.0当量)で処理し、当該混合物を30分間還流する。次に、パラ-トルエンスルホン酸(PTSA)(40mg、0.234mmol、0.02当量)を添加し、還流をさらに1時間続ける。当該反応混合物を室温に下げ、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン(DDQ)(2.678g、11.8mmol、1.01当量)で少しずつ処理する。撹拌を一夜続ける。得られた粗懸濁液を濾過し、濾過ケーキをEtOHで2回、およびジエチルエーテルで2回洗浄する。ELF-97(3.41g、11.11mmol、95%)を明るいベージュ色の粉末として得、さらに精製することなく後の工程で使用する。
【0237】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ (ppm) = 13.38 (s, 1H), 12.64 (s, 1H), 8.29 (s, 1H), 8.10 (s,1H), 7.88 (q, J =7.8 Hz, 2H), 7.49 (d, J =7.6 Hz,1H), 7.05 (d, J = 8.8 Hz, 1H)
スペクトルデータは文献値(M. Prost, L. Canaple, J. Samarut, J. Hasserodt. Tagging Live Cells that Express Specific Peptidase Activity with Solid-State Fluorescence. ChemBioChem 2014, 15, 1413-1417)に従う。
【0238】
(化合物4)
トルエン(50mL)中の2-アミノメチルピペリジン(1)(3.0g、26.3mmol、1.0当量)の溶液を無水フタル酸(3.89g、26.3mmol、1.0当量)で少しずつ処理し、続いてトリエチルアミン(550μL、3.95mmol、0.15当量)を滴下する。混合物を、Dean-Stark装置を用いて2時間還流する。混合物を濾過し、濾液を減圧下で乾燥状態まで減らす。生成物2(5.42g、22.2mmol、85%)を淡黄色固体として得、さらに精製することなく次の工程で使用する。
【0239】
化合物2(5.42g、22.2mmol、1.0当量)の氷冷エタノール溶液(45mL)を、炭酸カリウム(3.99g、28.9mmol、1.3当量)、ヨウ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(820mg、2.2mmol、0.10当量)、および臭化アリール(2.50mmL、28.9mmol、1.3当量)で処理する。冷却浴を除去し、混合物を36時間撹拌する。反応が完了したことを検証し、混合物をセライトのパッド上で濾過し、濾液を減圧下で乾燥状態まで蒸発させた。油状残渣をEtOAcに溶解し、NHClの飽和水溶液で洗浄し、2層を分離し、有機相を飽和NHCl水溶液で2回洗浄する。合わせた水相をEtOAcで3回抽出する。合わせた有機相は、NaSOで乾燥させ、濾過して、乾燥状態まで蒸発させる。粗油をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(PE/EtOAc 80/20~60/40v/v)により精製して、3(3.582g、12.6mmol、57%)を淡黄色油として得る。
【0240】
1H -NMR (300 MHz, CDCl3): δ (ppm) = 7.89-7.82 (m, 2H), 7.75-7.68 (m, 2H), 3.68 (d, J = 4 Hz, 2H), 3.13-3.05 (m, 1H), 2.98-2.88 (m, 1H), 2.64-2.54 (m, 1H), 1.87-1.78 (m, 1H), 1.76-1.68 (m, 1H), 1.63-1.54 (m, 1H), 1.45-1.34 (m, 2H), 1.30-1.15 (m, 1H)。
【0241】
13C-NMR (75 MHz, CDCl3): δ (ppm) = 168.4, 133.7, 131.9, 123.0, 55.5, 46.4, 43.4, 30.6, 26.1, 24.1.
HRMS: ESI: [M+H] + m/z found 245.1290, calc. 245.1290.
iPrOH/HO 6/1v/v(175ml)中の3(3.582g、12.6mmol、1.0当量)の氷冷溶液を水素化ホウ素ナトリウム(665mg、17.58mmol、5.0当量)で少しずつ処理する。冷却を除去し、混合物を室温で一晩(o/n)撹拌する。次いで、濃HClを用いてpHを1に調整する。得られた混合物を濾過し、濾液を80℃に2時間加熱する。イソプロピルアルコールを減圧下で除去し、得られた水溶液をジエチルエーテルで5回洗浄し、2M NaOH水溶液で塩基性にし、ジエチルエーテルで抽出する。合わせた有機抽出物をNaSOで乾燥させ、濾過し、乾燥状態まで蒸発させ、4を淡黄色油(1.939g、12.6mmol、定量収率)として得る。
【0242】
1H -NMR (300 MHz, CDCl3): δ (ppm) = 5.99-5.86 (m, 1H), 5.24-5.13 (m, 2H),3.41(ddt, J = 14 Hz, J = 6Hz, J = 1.5 Hz, 1H), 3.04-2.90 (m,3H), 2.74 (dd, J = 13 Hz, J = 3 Hz, 1H), 2.21 (tt, J = 9.6 Hz, J = 3.3H, 2 Hz), 1.80-1.71 (m, 1H), 1.68-1.43 (m, 2H), 1.39-1.25 (m, 3H).
13C -NMR (75 MHz, CDCl3): δ (ppm) = 157.34, 134.50, 117.71, 58.62, 56.29, 51.90, 42.31, 28.85, 24.92, 23.58.
【0243】
【化52】
【0244】
HRMS: ESI : [M+H] + m/z found 155.1543, calc. 155.1548.
(化合物6)
-20℃のHO/MeOH(20mL、1/1v/v)中の7-アミノセファロスポラン酸(5)(2.000g、7.345mmol、1.0当量)の溶液を、10M NaOH(2mL)で処理し、得られた混合物を-20℃で30分間撹拌する。濃HClでpHを3に調整する。次に、温度を0℃にし、こうして形成された淡黄色沈殿を濾別し、MeOH、アセトン、およびエーテルで洗浄し、次いで乾燥させる。所望のアルコール6がオフホワイトの粉末として得られる(1.451mg、6.302mmol、86%)。
【0245】
1H -NMR (300 MHz, DMSO): δ (ppm) = 4.83 (AB system, Δμ = 59 Hz, J = 5 Hz, 2H), 4.21 (AB system, Δμ =17 Hz, J = 13 Hz, 2H), 3.52 (AB system, Δμ = 26 Hz, J =18 Hz, 2H).
スペクトルデータは、文献値(S. Desgranges, C. C. Ruddle, L. P. Burke, T. M. McFadden, J. E. O’Brien, D. Fitzgerald-Hughes, H. Humphreys, T. P. Smyth, M. Devocelle. β-Lactam-host defence peptide conjugates as antibiotic prodrug candidates targeting resistant bacteria. RSC Advances 2012, 2, 2480)に従う。
【0246】
PE(30mL)中のベンゾフェノンヒドラゾン(8)(4.906g、25.00mmol、1.0当量)の溶液を酸化水銀(II)(25.469g、25.25mmol、1.01当量)で処理し、得られた混合物を室温で6時間、昼光排除下で撹拌する。得られた紫色混合物を濾過して水銀含有残渣を除去し、得られた溶液を減圧下で蒸発させる。標的試薬ジアゾジフェニルメタン9(4.570g、23.53mmol、94%)を含有する紫色の液体をEtOAc(15mL)に溶解し、さらに精製することなく次の工程で迅速に使用する。
【0247】
ジメチルアセトアミド(DMAC)中の化合物6(5.000g、21.72mmol、1.0当量)の溶液(80mL)を、ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(BSA)(13.3mL、54.29mmol、2.5当量)で処理し、得られた混合物を室温で30分間撹拌する。透明な溶液を-30℃に冷却し、2-チオフェンアセチルクロリド(3.48mL、28.23mmol、1.3当量)を滴下して添加しる。得られた混合物を-20℃で2時間撹拌し、氷水上に注ぎ、EtOAcで抽出する。合わせた有機相をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、それらの体積を減圧下で80mlに調整する。溶液を0℃に冷却し、紫色になるまで、EtOAc中の上記ジアゾジフェニルメタン9溶液(4.429g、22.80mmol、1.05当量)で処理する。得られた溶液の体積を真空下で減少させた後、ペンタン溶液(300mL)に滴下し、それにより淡黄色固体の沈殿を生じる。後者を濾別し、二重に保護された生成物10(3.957g、7.601mmol、2段階にわたって35%)を得る。
【0248】
1H -NMR (300 MHz, CDCl3): δ (ppm) = 9.23-9.12 (m, 1H), 7.54-7.46 (m, 11H), 7.01-6.88 (m, 3H), 5.89-5.67 (m, 1H), 5.20-5.02 (m, 2H), 4.21 (d, J = 4 Hz, 1H), 3.78 (s, 2H), 3.62 (s, 1H), 2.95 (s, 1H), 2.79 (s, 1H).
スペクトルデータは、文献値(S. Desgranges, C. C. Ruddle, L. P. Burke, T. M. McFadden, J. E. O’Brien, D. Fitzgerald-Hughes, H. Humphreys, T. P. Smyth, M. Devocelle. β-Lactam-host defence peptide conjugates as antibiotic prodrug candidates targeting resistant bacteria. RSC Advances 2012, 2, 2480)に従う。
【0249】
【化53】
【0250】
(化合物15)
DCM(50mL)中のアルコール10(1.000g、1.921mmol、1.0当量)の氷冷溶液を、4-ニトロフェニルクロロホルメート(775mg、3.842mmol、2.0当量)、ピリジン(155μL、1.921mmol、1.0当量)および4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(24mg、0.192mmol、0.1当量)で処理する。室温で2時間撹拌した後、水洗し、NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮する。粗残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EtOAc 70/30)により精製して、所望の炭酸塩11を淡黄色固体(685mg、0.999mmol、52%)として得る。
【0251】
1H -NMR (300 MHz, CDCl3): δ (ppm) = 8.26 (d, J = 9 Hz, 2H), 7.43 (d, J = 7 Hz, 2H), 7.40-7.23 (m, 11H), 7.03-6.98 (m, 1H), 6.96 (d, J = 11 Hz, 2H), 6.65 (d, J = 9 Hz, 1H), 5.89 (dd, J = 9 Hz, J = 5 Hz, 1H), 5.26 (d, J = 13 Hz, 1H), 5.04-4.95 (m, 2H), 3.84 (s, 2H), 3.52 (AB system, Δμ = 55 Hz, J = 19 Hz, 2H)。
【0252】
スペクトルデータは、文献値(S. Desgranges, C. C. Ruddle, L. P. Burke, T. M. McFadden, J. E. O’Brien, D. Fitzgerald-Hughes, H. Humphreys, T. P. Smyth, M. Devocelle. β-Lactam-host defence peptide conjugates as antibiotic prodrug candidates targeting resistant bacteria. RSC Advances 2012, 2, 2480)に従う。
【0253】
DCM(2mL)中の溶液11(100mg、0.146mmol、1.0当量)を第1級アミン4(25mg、0.160mmol、1.2当量))で処理し、撹拌混合物を氷浴中で冷却した後、DIPEA(127μL、0.729mmol、5.0当量)を添加する。5分後、氷浴を除去し、溶液を30℃で一晩撹拌する。次に、飽和NaCO(2回)及びNaHCO(2回)の水溶液を使用して混合物を洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させる。得られた粗油をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH、99/1v/v)により精製して、所望のカルバメート12を黄色油(39mg、0.056mmol、38%)として得る。
【0254】
1H -NMR (300 MHz, CDCl3): δ (ppm) = 7.57-7.48 (m, 1H), 7.42-7.22 (m, 11H), 7.09-6.84 (m, 3H), 5.94-5.75 (m, 1H), 5.25-4.94 (m, 3H), 3.94-3.63 (m, 2H), 3.49-3.12 (m, 4H), 3.04-2.74 (m, 2H), 2.53-1.98 (m, 4H), 1.81-1.37 (m, 6H).
ESI : [M+H] +m/z found 701.2, calc. 701.2.
乾燥DCM(1.5mL)中の溶液12(39mg、0.056mmol、1.0当量)に、1,3-ジメチルバルビツール酸(DMBA)(43mg、0.278mmol、5.0当量)を添加し、得られた混合物をアルゴンフラックスを用いて脱気した後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)Pd(PPh(1mg、0.0006mmol、0.01当量)で処理する。反応の完了後(典型的には約4時間)、当該反応混合物を乾燥状態まで蒸発させ、シリカゲルクロマトグラフィー(DCM/MeOH、99/1v/v)により精製して、所望の第2級アミン13を黄色油として得る(15mg、0.023mmol、41%)。
【0255】
1H -NMR (300 MHz, CDCl3): δ (ppm) = 7.46-7.17 (m, 10H), 7.04-6.84 (m, 2H), 5.53-5.32 (m, 1H), 5.08-4.92 (m, 1H), 4.30-4.03 (m, 1H), 4.00-3.88 (m, 2H), 3.79-3.71 (m, 2H), 3.55-3.40 (m, 2H), 3.40-2.85 (m, 4H), 2.85-2.59 (m, 1H), 1.88-1.45 (m, 6H)。
【0256】
ESI: [M+H] + m/z found 661.2, calc. 661.2.
乾燥DCM(1mL)中のELF-97(7mg、0.023mmol、1.0当量)の氷冷懸濁液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(20μL、0.113mmol、5.0当量)を、アルゴン雰囲気で滴下し、続いて乾燥DCM(1mL)中のトリホスゲン(20mg、0.068mmol、3.0当量)の溶液を添加する。混合物を0℃で1時間撹拌し、室温で一晩撹拌する。翌朝、揮発性物質を液体-窒素トラップに捕捉しながら、減圧下で乾燥状態まで減らす。後者の含有物は、その後のエタノール性ヒドロキシドナトリウムの添加によって破壊される)。得られたELF-97のクロロギ酸塩(固体残渣)を、さらに精製することなく、次の工程で使用する。
【0257】
乾燥DCM(1mL)中の上記で調製したELF-97のクロロホルメート(1.0当量)の氷冷懸濁液に、アルゴン下で、第2級アミン13の透明な溶液(15mg、0.023mmol、1.0当量)を滴下する。撹拌を0℃でさらに30分間続け、次いで室温で一晩続ける。当該反応混合物を飽和NaHCOで3回洗浄し、有機相をNaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させる。粗生成物シリカゲルカラムクロマトグラフィー(PE/EtOAc、8/2v/v)により精製して、所望の保護されたプローブ14をオフホワイトの固体(12mg、0.012mmol、53%)として得る。
【0258】
ESI: [M+H]+ m/z found 992.0, calc. 992.3。
【0259】
乾燥DCM(1mL)中の氷冷溶液14(12mg、0.012mmol、1.0当量)を、TFA(500μL、過剰)およびアニソール(7.2μg、0.66mmol、5.5当量)で滴下処理する。撹拌した混合物は室温に温められ、質量分析によってモニターして完了点を決定する(1~2時間)。全ての不揮発性を減圧下で除去する。粗残渣を分取による精製に供する。凍結乾燥後に、目的化合物15を白色粉末(1.5mg、0.0018mmol、15%)として得るためのHPLC(ACN/HO 0/100~50/50v/v)。
【0260】
ESI: [M+H] + m/z found 826.3, calc. 826.1.
〔実施例2:化合物15の蛍光の検出〕
化合物15の蛍光をβ-ラクタマーゼの有無で評価した。試験は、マイクロウェルプレート(75μM、37℃、10U.mL-1)中でのインキュベーション/化学反応によって行った。蛍光をプレート蛍光光度計によって経時的に測定した。得られた結果を図1に示す。
【0261】
結果は、本発明による化合物が蛍光(蛍光発生プローブ)を発することによってβ-ラクタマーゼ活性を検出することができることを示す。β-ラクタマーゼの存在下で、化合物15は加水分解され、これは化合物の断片化、および強い蛍光を発する小蛍光分子(ELF 97)の放出をもたらす。しかしながら、酵素活性の非存在下では、2時間にわたって蛍光の変化は観察されず、したがって、(生理学的な)インキュベーション培地中のプローブ15の安定性を証明した。
【0262】
〔実施例3:化合物25の合成〕
【0263】
【化54】
【0264】
メタノール(20mL)中のアルデヒド16の氷冷溶液(1g、4.3mmol)に、水素化ホウ素ナトリウム(1当量、4.3mmol、164mg)を添加した。溶液を0℃で20分間撹拌した後、アセトン(2mL)を添加した。揮発性物質を減圧下で除去し、スライド残基を酢酸エチル/水(50mL/20mL)に溶解した。混合物を分液漏斗に移し、水相を除去し、有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過して、実質的に純粋な形態の粗アルコール17を黄色の淡色固体として得た。
【0265】
粗アルコール17を無水DCM(20mL)に溶解し、p-ニトロフェニルクロロホルメート(1.05当量、912mg)を添加した。フラスコを氷浴中に置き、ピリジン(2当量、8.6mmol、0.7mL)を滴下した。次いで、当該反応物を室温で16時間撹拌し、次いでジエチルエーテルで希釈し、セライト上で濾過した。得られた溶液にセライト(20g)を添加し、溶媒を減圧下で除去した。セライト吸着粗混合物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル8:2)に供して、活性炭酸塩18(1.06g、2.67mmol、2段階にわたり62%)を淡黄色固体として得た。
【0266】
1H -NMR (300 MHz, CDCl3): δ (ppm) = 8.35 - 8.16 (m, 2H), 7.85 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.43 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.41 - 7.33 (m, 2H), 5.31 (s, 2H), 1.35 (s, 12H).
【0267】
【化55】
【0268】
無水ジクロロメタン(5mL)中のN-メチル-N’-アリル-アミノメチルピペリジン19(1.0当量、0.89mmol、240mg)の溶液に、カーボネート19(1.05当量、0.93mmol、373mg)および炭酸カリウム(5当量、4.45mmol、615mg)を添加した。MS(M+H20=530.4)によって判定される反応の完了時に、当該反応混合物を石油エーテルおよびジエチルエーテルの1:1混合物(15mL)で希釈し、セライトを通して濾過し、セライトを100mLのPE/EtO 1:1混合物でリンスした。濾液を減圧下で濃縮して、実質的に純粋なカルバメート20を黄淡色固体として生じ、これを次の工程に直接使用した。代替的には、これはキャラクタリゼーションのための溶離剤としてEtOを用いるシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって精製され得る。
【0269】
20: 1H -NMR (300 MHz, CDCl3): δ (ppm) = 7.79 (d, J = 7.7 Hz, 2H), 7.35 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 5.94 - 5.58 (m, 1H), 5.25 - 4.96 (m, 4H), 3.81 - 3.02 (m, 8H), 2.97 (s, 3H), 2.70 (brm, 2H), 2.39 (brm, 1H), 1.44 (s, 9H), 1.33 (s, 12H).。
【0270】
クルード20を丸底フラスコに入れ、1,3-ジメチルバルビツール酸(3当量、2.67mmol、416mg)を添加し、続いてDCM(8mL)を添加した。当該溶液をアルゴンで10分間パージし、Pd(PPh(1mol%、10mg)を添加し、当該混合物を室温で、アルゴン下で、20~60分間撹拌した。MSによって判定された反応の完了後、溶媒を蒸発させ、21を含有する粗混合物を、次の工程におけるさらなる精製と共に使用した。
【0271】
ELF-97(1.3当量、1.157mmol、355mg)をアルゴン下の丸底フラスコに入れ、続いてトリホスゲン(1.3当量、1.157mmol、343mg)およびDCM(10mL)を入れた。溶液を0℃に冷却し、ピリジン(6当量、0.43mL)を滴下した。氷浴を除去し、溶液を室温で20分間撹拌した。揮発性物質を減圧下で除去し、DCM(5mL)を添加し、揮発性物質を減圧下で再び除去した。得られた固体ELFクロルホルメートをDCM(5mL)中に懸濁し、前記フラスコを氷浴中で冷却し、粗生成物21(1当量、0.89mmol)をDCM(10mL)溶液中に添加し、続いてDIPEA(3当量、0.47mL)を添加した。MS中で21が検出されなくなるまで当該反応物を室温で3時間撹拌した。次いで、当該反応物をEtO中で希釈し、0℃に冷却した後、静置した。NaHCO水溶液(10mL)を添加した。当該混合物を分液漏斗に移し、有機相を水およびブラインで連続的に洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。固形残渣をEtOに部分的に溶解し、2.5w/w%のトリエチルアミンで前処理したシリカパッドを通して濾過して、過剰な未反応ELF-97を除去し、シリカをEtO(200mL)でリンスした。次いで、当該溶液を減圧下で濃縮し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤DCM/EtO 1:0~3:7)に供して、純粋なボロネート22をガラス状の黄淡色固体として得た(536.6mg、0.65mmol、73%)(M+H 22=822.4)。
【0272】
22: 1H -NMR (300 MHz, CDCl3): δ (ppm) = 8.27 - 8.20 (m, 1H), 8.01 - 7.88 (m, 1H), 7.76 (appt, J = 7.5 Hz, 1H), 7.70 (d, J = 1.9 Hz, 2H), 7.39 - 7.26 (m, 4H), 7.18 - 7.01 (m, 1H), 5.23 - 4.76 (m, 2H), 4.70 - 4.37 (m, 1H), 4.20 - 3.81 (m, 3H), 3.70 (m, 1H), 3.38 - 3.11 (m, 2H), 3.13 - 2.68 (m, 6H), 1.46 (m, 9H), 1.39 - 1.26 (m, 12H)。
【0273】
【化56】
【0274】
アリール-ピナコール-ボロン酸エステルを中間体23とカップリングさせるための、公開された条件(Chem. Eur. J. 2020, 26, 3647-3652)を用いて、化合物22をエノールトリフラート23とカップリングさせることができ、化合物24を与え、これを上記の参考文献に記載された条件で脱保護して化合物25を与えることができる。
【0275】
〔実施例4:化合物32の合成〕
【0276】
【化57】
【0277】
トリソプロピルアセチレン26(1当量、20mmol、3.64g)を乾燥丸底フラスコにアルゴン下で入れ、無水THF(40ml)で溶解した。フラスコを-78℃に置き、n-BuLi(1.5当量、30mmol)を10分かけて滴下し、その後、フラスコを0℃に30分間置いた。次いで、パラホルムアルデヒド(当量、3g)を1つの陽子イオン中に添加し、当該反応物を室温で14時間撹拌した。当該混合物を0℃に冷却し、飽和NHCl水溶液を添加した。EtOで抽出し、水、ブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、減圧下で濃縮した。粗油をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(EP/EtO 1:0~1:1)にかけて、無色の油として純粋なアルコール27(3.3g、15.5mmol、77%)を得た。
【0278】
27: 1H -NMR (300 MHz, CDCl3): δ (ppm) = 4.30 (d, J = 5.6 Hz, 2H), 1.07 (s, 21H).
アルコール27(3.3g、15.5mmol、1当量)を無水DCM(30mL)に溶解し、p-ニトロフェニルクロロホルメート(1.05当量、3.29g)を添加した。フラスコを氷浴中に置き、ピリジン(2.5当量、38.75mmol、3.2mL)を滴下した。その後、室温で16時間撹拌した後、ジエチルエーテルで希釈し、セライトでろ過し、EtOでリンスした。溶媒を減圧下で留去し、当該粗混合物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤EP/CHCl 1:0~0:1)に供し、活性炭-ボロン酸塩28(5.56g、14.7mmol、95%)を無色油として得た。
【0279】
28: 1H -NMR (300 MHz, CDCl3): δ (ppm) = 8.42 - 8.18 (m, 2H), 7.45 - 7.34 (m, 2H), 4.85 (d, J = 5.4 Hz, 2H), 1.07 (s, 21H).
【0280】
【化58】
【0281】
無水ジクロロメタン(5mL)中のN-メチル-N’-アリル-アミノメチルピペリジン19(1.0当量、0.868mmol、233mg)の溶液に、カーボネート28(1.1当量、0.96mmol、362mg)および炭酸カリウム(5当量、4.4mmol、621mg)を添加した。MS(M+H29=508.7)によって判定される反応の完了の際に、当該反応混合物を石油エーテルおよびジエチルエーテルの1:1混合物(15mL)で希釈し、セライト上で濾過し、セライトを100mLのPE/Et2O 1:1混合物でリンスした。濾液を減圧下で濃縮して、実質的に純粋なカルバメート29を淡黄色油として生じ、これを次の工程に直接使用した。
【0282】
粗カルバメート29を丸底フラスコに入れ、1,3-ジメチルバルビツール酸(3当量、2.6mmol、406mg)を添加し、続いてDCM(8mL)を添加した。当該溶液をアルゴンで10分間パージし、Pd(PPh(1mol%、10mg)を添加し、当該混合物を、室温で、アルゴン下で20~60分間撹拌した。並行して、実施例3のように、ELF-97(1.3当量、1.13mmol、347mg)をトリホスゲン(1.3当量、1.13mmol、335mg)およびピリジン(6当量、5mmol、0.41mL)と反応させ、DCM中で連続的に蒸発/溶解させた後、氷冷めっき浴中のDCM(10mL)中に置くことによって、ELF クロロホルメートを調製した。MSによって判定される脱アリル化反応の完了後、脱アリル化された29を含有する溶液をDCM中のELFクロロホルメートの冷溶液上にカニューレ挿入し、フラスコをDCM(2+2mL)で2回リンスした。当該反応は室温で14時間撹拌し、氷浴中に置き、EtO(50mL)で希釈し、飽和NaHCO水溶液(20mL)を添加した。30をEtOで抽出し、有機相を水、ブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。EtN-含浸シリカパッド上での最初の濾過を行い、続いてシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(DCM/EtO 0:1~1:0)による、実施例3のように、当該粗混合物の精製は、純粋な30をガラス状の無色固体をもたらした(456mg、0.57mmol、67%、3工程)。(M+H 30=799.3)。
【0283】
30: 1H -NMR (300 MHz, CDCl3): δ (ppm) = 8.32 - 8.17 (m, 1H), 8.02 (d, J = 2.7 Hz, 1H), 7.72 (pseudoq, J = 2.5, 2.1 Hz, 2H), 7.56 - 7.45 (m, 1H), 7.25 - 7.08 (m, 1H), 4.79 - 4.29 (m, 3H), 4.26 - 3.58 (m, 5H), 3.36 - 2.70 (m, 7H), 1.48 (s, 9H), 1.05 (s, 21H).
純粋な30(0.47mmol、376mg)をフラスコに入れ、工業グレードのTHF(15mL)に溶解し、氷浴中に置いた。次に、TBAFの溶液(1MのTHF溶液、1.02当量、479μL)を滴下し、反応物を室温で16時間撹拌した。フラスコを氷浴中に置き、飽和NaHCO水溶液(10ml)を滴下した。31をEtOで抽出し、水分、ブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー(DCM/EtO 0:1~1:0)による粗混合物の精製は、純粋な31を無色のガラス状固体(294mg、0.46mmol、95%)をもたらした。(M+H 31=644.3)。
【0284】
31: 1H -NMR (300 MHz, CDCl3): δ (ppm) = 1H NMR (300 MHz, Chloroform-d) δ 8.28 - 8.16 (m, 1H), 8.02 - 7.89 (m, 1H), 7.80 - 7.63 (m, 2H), 7.54 -7.43 (m, 1H), 7.25 - 7.12 (m, 1H), 4.87 - 4.35 (m, 3H), 4.33 - 3.54 (m, 4H), 3.31 - 3.10 (m, 1H), 3.10 - 2.68 (m, 6H), 2.46 - 2.22 (m, 1H), 1.47 (s, 9H).
【0285】
【化59】
【0286】
化合物31は、Pd/Cu共触媒を用いた薗頭カップリングを受けて、実施例3のように、脱保護されることで化合物32を生じることができる、カップリングされた中間体を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0287】

図1
【国際調査報告】