(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-03
(54)【発明の名称】少なくとも1つの実験室試料容器を収容して温度調節するサーマルブロック、形成方法及びシミュレーション方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20230127BHJP
B01L 7/00 20060101ALI20230127BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20230127BHJP
G01N 1/44 20060101ALI20230127BHJP
【FI】
C12M1/00 A
B01L7/00
G01N1/28 J
G01N1/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022532618
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(85)【翻訳文提出日】2022-05-31
(86)【国際出願番号】 EP2020084235
(87)【国際公開番号】W WO2021110728
(87)【国際公開日】2021-06-10
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501186645
【氏名又は名称】エッペンドルフ・ソシエタス・エウロパエア
【氏名又は名称原語表記】Eppendorf SE
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】マルテ キルシュ-レスナー
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン デュル
(72)【発明者】
【氏名】エンネル タッシュ
(72)【発明者】
【氏名】トーレ ヘッパー
(72)【発明者】
【氏名】マヌエル ペトツォルト
【テーマコード(参考)】
2G052
4B029
4G057
【Fターム(参考)】
2G052AA28
2G052AB20
2G052AD06
2G052AD26
2G052AD46
2G052DA06
2G052DA26
2G052EB11
2G052EB12
2G052GA09
2G052GA28
2G052GA29
2G052HA17
2G052HA19
2G052HC04
2G052HC17
2G052HC22
2G052HC44
2G052JA04
2G052JA06
2G052JA08
4B029AA23
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4B029CC01
4B029GA03
4B029GB02
4B029GB04
4G057AD04
(57)【要約】
本発明は、実験室温度調節容器内、特にPCRサーマルサイクラー内で、少なくとも1つの実験室試料容器を収容して温度調節するためのサーマルブロックに関するものであって、サーマルブロックは、金属を含む材料を使用して付加製造方法を用いて形成されている。本発明は、さらに、サーマルブロックを形成する方法及び本発明に基づいて形成すべきサーマルブロックの物理的特性をシミュレートするためのコンピュータ実装される方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実験室温度調節装置内、特にPCRサーマルサイクラー内で、少なくとも1つの実験室試料用器を収容して温度調節するためのサーマルブロックにおいて、
サーマルブロックが、金属を含む材料を使用して、付加製造方法を用いて形成されている、ことを特徴とするサーマルブロック。
【請求項2】
多数の実験室試料用器を収容して温度調節するための、付加製造方法を用いて形成された多数の試料容器収容部を有している、請求項1に記載のサーマルブロック。
【請求項3】
ベースプレートを有し、前記ベースプレートの第1のプレート側が、温度調節装置と熱的に結合するように整えられており、かつ前記第1のプレート側に対向する第2のプレート側が、多数の実験室試料用器を収容して温度調節するための、付加製造方法を用いて形成された多数の試料容器収容部と一体的に結合されており、この多数の試料容器収容部が、特に矩形の格子内に配置されている、請求項1又は2に記載のサーマルブロック。
【請求項4】
付加製造方法を用いて形成された少なくとも1つの試料容器収容部を有し、前記試料容器収容部がカップ形状に、特に少なくとも部分的に中空円錐形状に、形成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載のサーマルブロック。
【請求項5】
試料容器収容部が、好ましくは、実験室試料用器を収容するための開口部と、前記開口部に対向する基部セクションとを有し、前記基部セクションがプレートセクションと一体的に結合されており、かつ付加製造方法を用いて形成されており、基部セクションの材料の体積が、ベースセクションから始まって上方へ向かって減少している、請求項2から4のいずれか1項に記載のサーマルブロック。
【請求項6】
ベースセクション及びそれと結合された試料容器収容部を有し、前記試料容器収容部が試料容器を収容するための開口部及び開口部とベース部分との間に配置された壁セクションを有し、前記壁セクションの内側が、試料容器収容部内に配置されている実験室試料用器と熱的に結合するように整えられており、特に前記壁セクションが下方の壁部分セクションを有し、その材厚が、その上方に配置されている壁部分セクションの材厚よりも大きい、請求項1から5のいずれか1項に記載のサーマルブロック。
【請求項7】
水平に配置された平面に対して平行に延びるベースプレート及びそれと結合された、少なくとも2つの隣接する試料容器収容部を有し、平面に対して平行に延びる少なくとも1つ、又は正確に1つの結合セクションが、少なくとも2つの隣接する試料容器収容部の間に、特に複数の、あるいはすべての直接隣接する試料容器収容部の間に、設けられている、請求項1から6のいずれか1項に記載のサーマルブロック。
【請求項8】
結合セクションとベースプレートとの間にから空間が存在しており、かつこの結合セクションがベースプレートと直接結合されていない、請求項7に記載のサーマルブロック。
【請求項9】
結合セクションとベースプレートとの間にから空間が存在しておらず、かつ/又はこの結合セクションがベースプレートと直接結合されている、請求項7に記載のサーマルブロック。
【請求項10】
アルミニウム又はアルミニウム合金を含む細粒から、付加製造方法を用いて一体的に形成されている、請求項1から9のいずれか1項に記載のサーマルブロック。
【請求項11】
付加製造方法を用いて形成された後に、後処理方法によって、特に加熱、コーティング、研磨及び/又は切削加工によって、加工されている、請求項1から10のいずれか1項に記載のサーマルブロック。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のサーマルブロックを有する実験室器具、特にPCRサーマルサイクラー。
【請求項13】
実験室温度調節器具内、特にPCRサーマルサイクラー内で実験室試料容器を収容して温度調節する、サーマルブロックを形成する方法であって、
付加製造方法を用いてサーマルブロックを形成する、
ステップを有する、方法。
【請求項14】
付加製造方法を用いて形成されたサーマルブロックを後処理方法により、特に加熱、コーティング、研磨及び/又は切削加工によって、後処理する、
ステップを有する、請求項13に記載のサーマルブロックを形成する方法。
【請求項15】
実験室温度調節器具内で、特にPCRサーマルサイクラーで、実験室試料容器を収容して温度調節するために用いられ、かつ少なくとも1つの構造パラメータにしたがって、コンピュータ制御される付加製造方法によって形成可能な、サーマルブロックの形状構造を計算する方法であって、サーマルブロックの形状構造が、少なくとも1つの構造パラメータによって定義可能であり、以下のステップを有する:
・少なくとも1つの構造パラメータを変化させ;
・前記少なくとも1つの構造パラメータにしたがってサーマルブロックの少なくとも1つのセクションを通る熱流をシミュレートするシミュレーション方法を実施し;
・シミュレーション方法にしたがって少なくとも1つの構造パラメータを選択し、かつ、それに続いてこのように構造的に定められたサーマルブロックを付加製造ために、前記少なくとも1つの構造パラメータを準備する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの実験室試料容器、特に多数の実験室試料容器を実験室温度調節装置、特にPCRサーマルサイクラー内に収容して温度調節するサーマルブロックに関する。本発明は、さらに、サーマルブロックを形成する方法及び本発明に基づいて形成すべきサーマルブロックの物理的特性をシミュレートするためのコンピュータ実装される方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のサーマルブロックは、特にPCR(polymerase chain reaction、ポリメラーゼ連鎖反応)用に定められたサーマルサイクラー内で使用される。サーマルサイクラーは実験室温度調節装置であって、それにおいて液状の試料が温度サイクル内で所定の温度レベルへ加熱もしくは冷却される。温度コントロール(温度調節)するために、通常、ペルティエ素子が使用され、そのペルティエ素子がブロック下側と熱的に結合されている。その場合に1つの温度サイクルは、少なくとも2つ、PCRの場合には大体において2つあるいは3つの温度段階からなり、それらはあらかじめ定められたプロトコルに基づいて調節されて、所望の期間の間維持される。所望の結果を得るため、特にDNA又はDNAシーケンスを倍増させるために、温度サイクルが相前後して多数回繰り返される。PCRの場合においては、温度サイクルの典型的な温度レベルは、55℃、70℃及び95℃である。特殊な倍増反応のために最適な温度レベルは、上述した3つの温度値からずれることがあり得る。最適な温度レベルは、サーマルブロック内に温度勾配が形成されることにより求められるので、同時にサーマルブロック内に温度レベルの変化が発生する。温度レベルの最適な温度は、たとえばPCRの場合においては、-他の必要とされる最適な温度レベルと組み合わせて-複製される製品の最大の収量をもたらす、温度である。
【0003】
サーマルサイクラーもしくはサーマルブロックの効率は、特に、温度レベルを維持する正確さにおいて査定される。たとえば、サーマルブロック内で多数の同一の試料がそれぞれ1つの実験室試料容器内で同時に温度調節される場合に、多くの場合において、各実験室試料容器、たとえばPCRプレートのしかるべき試料収容部内で、同一の温度が、特に同じ期間の間、正確に調節されることが、望ましい。この目標設定において、サーマルブロックにおいて作用する温度調節装置の与えられた熱出力もしくは冷却出力において、サーマルブロック内にできる限り均質な温度分布が同時に得られることが、必要である。サーマルブロック内の温度不均質性についての既知の源は、サーマルブロックの側方の端縁領域であって、それらはブロック中心よりも強く、側方から周囲温度にさらされる。サーマルブロックが下から平面的にペルティエ素子によって温度調節される場合に、端縁領域の試料容器収容部内で測定された温度は、ブロック中央の試料容器収容部内で測定された温度からずれる。したがっていくつかのサーマルサイクラーメーカーは、端縁領域内に配置された付加的な温度調節装置をもって作業し、その温度調節装置によって周囲効果を補償しようとしている。それによって該当するサーマルサイクラーの形成と保守にそれに応じた付加費用が生じる。
【0004】
良好な温度均質性は、さらに、サーマルブロックのすべての領域内で必要な熱流が可能にされ、かつ特にサーマルブロックの端縁領域内でも、効率的な温度調節が支援される場合に、得られる。さらに、周囲温度の影響は、サーマルブロックができる限り高い固有の熱容量を有している場合に、減少される。これらの要請は、中実の金属、典型的にはアルミニウムからなるサーマルブロックによって満たされ、その中で試料容器収容部、そして他の所望の外的な形状も、切削する形成方法によって形成される。この種のブロックの中実の構造は、高い固有の熱容量と均質性をもたらす。他方で、高い固有の熱容量は、温度レベルの低速の変化及びそれに伴って、サーマルブロックによって実施されるサイクリックな温度調節プログラムの長いプロセス全体の期間とより高いエネルギ消費ももたらす。したがって切削する形成方法は、さらに、ブロック構造の最適化の可能性を制限する。
【0005】
シルバーブロックを形成するための代替的な方法は、まず、電気めっきによって試料容器収容部を形成し、その試料容器収容部が他のステップにおいてそれぞれ銀からなるベースプレートと半田付けされる。より機能的な、材料を節約するブロック構造が、結果である。本出願の出願人が妥当な時間内で求めたように、この種のシルバーブロックによって急速な温度変化が得られる。しかし形成ステップの多数は、特にエラー源でもあるので、この種の形成は、比較的煩雑である。
【0006】
サーマルブロックに対する他の要請は、充分な機械的負荷耐性である。サーマルサイクラーは、典型的なやり方で、押圧プレートを使用しており、その押圧プレートによって試料容器が上から試料容器収容部内へ、そしてサーマルブロックに対して押圧される。それによって、各試料容器がそれぞれの試料容器収容部の内側と完全に接触することが保証され、それによって、サーマルブロックによって収容されるすべての試料の均質な温度調節が可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、できる限り均質な温度分布を有する効率的なサーマルブロックとそれを形成して最適化する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこれらの課題を、請求項1に記載のサーマルブロック、請求項13に記載のそれを形成する方法及び請求項15に記載のサーマルブロックの適切な形状構造を計算する方法によって解決する。
【0009】
本発明についての開発作業の枠内において、驚くべきことに、サーマルブロックの熱的特性に対する要請だけでなく、付加的に、サーマルブロックの必要な機械的負荷耐性も付加製造方法によって実現されることが、見いだされた。付加製造方法によって形成されたサーマルブロックは、利点を提供し、統合された構築方法が材料を節約する構築方法と組み合わせ可能であって、それがさらに必要とされる充分な機械的負荷耐性を提供する。
【0010】
本発明の文脈において、「一体的に結合」又は「統合的に結合」というのは、サーマルブロックの2つの互いに一体的/統合的に結合されたセクションが、金属を含む材料を使用して、唯一の付加製造方法によって形成されていることを、意味する。特にこのように一体的に形成する場合に、これらのセクションは、接合部品として別に形成されて、その後-特に他の方法ステップにおいて-接合により結合されるものではない。構成部品の一体的な形成は、一般的に、インテグラル方式としても知られており、それに対して種々の接合パートナーの接合により構成部品を形成することは、ディフェレンシャル方式として知られている。
【0011】
付加製造方法は、しばしば、細粒の材料を層から層に加工することに基づいている。それによりもたらされる表面構造と体積構造に基づいて、付加製造方法において形成されるサーマルブロックは、付加的でない方法において、たとえば切削する形成方法、ガルバニック方法あるいは鋳造方法において形成されたサーマルブロックから、常に一義的に区別可能である。
【0012】
好ましくは、サーマルブロックを形成するための付加製造方法として、選択的なレーザー溶融(英語:Selective Laser Melting SLM)が使用される。同様に好ましくは、サーマルブロックを形成する付加製造方法として、電子ビーム溶融が使用される。
【0013】
選択的レーザー溶融(SLM)の場合には、粉末形状の材料(金属、混合材料)を局所的に溶融させるためにレーザーが使用される。その場合にレーザーは、粉末を充填された平面の点上へコンピュータ制御で向けられ、それらの点は3Dモデルによって定められる。このプロセスは、3D-CADデータベースデータを層モデル内へ分配することによって開始され、それらの層はたとえば10と100マイクロメートルの間の厚みであって、その場合に各層の2Dモデルが作成される。このデータベースフォーマットは、習慣的なSTLデータベースであり、それが、大体において層ベースの3Dプリント又はステレオリソグラフィ-テクノロジーのために使用される。その場合にこのデータベースは、データベース準備のためのソフトウェアパケットによってロードされて、パラメータ、値及び場合によっては支持構造をマシンデータとして割り当てる。これらのマシンデータは、製品、すなわちサーマルブロックを作成するために、SLMマシンによって実装される。選択的レーザー溶融する場合に、噴霧された細かい金属粉末の薄い層が、コーティング機構を使用してベースプレート、通常は金属、の上に均一に分配されて、そのベースプレートが垂直(Z)軸方向に移動する。これは、厳しく管理された不活性ガス雰囲気を有するチャンバ内で行われる。このモデルが、層から層に作成される。部品幾何学配置の各2Dディスクが、連続的又は脈動する高出力レーザービームを用いてそれぞれの層の内部の粉末が選択的に溶融されることにより、かつその下に位置する層と共に溶融される。レーザーエネルギは、固体の金属を形成するために、粒子の完全な溶融(溶接)を可能にするのに、強度的に充分である。このプロセスは、部品ができあがるまで、層から層へ繰り返される。チャンバの領域内に、材料放出プラットフォーム、建造プラットフォーム及びレーキ部材があって、そのレーキ部材により新しい粉末が建造プラットフォームにわたって移動される。本発明に係るサーマルブロックを形成するため、もしくは本発明に係る形成方法を実施するために適した商業的なSLMマシンは、独国、82152クライリングのEOS GmbH,Electro Optical Systemを介して入手できる。その場合にこの企業は、その際に使用されるSLMをDMLS(Direct Metal Laser Sintering)と称している。
【0014】
実際の文献においては、「選択的レーザー溶融」の概念の代わりに、一部では、「選択的レーザー焼結」の概念が同意味で使用される。焼結は、固体の材料物質を、完全に液状化まで溶融することなしに、熱及び/又は圧力を用いて圧縮して成形するプロセスである。選択的にレーザー溶融する場合には、一般的に、粒状の材料が完全に溶融されることを前提としている。本発明の明細書の枠内では、2つの概念は、それと異なることがはっきりと明らかにされない限りにおいて、同一の方法を同意義で表している;その場合にここでは、SLM又はSLSの概念はそれぞれ、一体性、したがって形成すべきサーマルブロックの一体的構造を保証するために、細粒の材料が部分的又は完全に溶融される、方法を表すものとしている。しかしまた、本発明に係るサーマルブロックを形成する方法が、1つ又は複数のステップを有し、そのステップの間にまだ完全にできあがっていない、もしくはまだ完全に形づくられていないサーマルブロックが、それぞれの形成段階において高温で処理されて、それによってサーマルブロックあるいはサーマルブロックの少なくともいくつかのセクションの部分的又はほぼ完全な溶融に達することも、可能かつ効果的である。特に加熱の程度によって、できあがったサーマルブロックの材料の多孔性を調節し、もしくは制御することができる。
【0015】
好ましくはサーマルブロックは、1つ、複数又は多数の試料容器収容部を有しており、それらは金属を含む材料を使用して付加製造方法を用いて互いに結合して、かつ/又はベースセクションもしくはベースプレートと一体的に結合して形成されている。好ましくは、サーマルブロックを形成する方法は、付加製造方法を用いて1つ、複数又は多数の試料容器収容部を一体的に互いに結合して、かつ/又は一体的にベースセクションもしくはベースプレートと結合して形成するステップを有している。試料容器収容部がベースセクションもしくはベースプレート上に自由に立つ場合、したがって互いに支持されない場合に、付加的な方法による一体的な形成は、特に効果的となる。というのは、一体的な形成によって、ベースセクションと試料容器収容部との間の移行領域内に個々の材料非均質性が発生することがないからであって、それは、たとえばまずコンポーネントとしてのベースセクションと試料容器収容部を別々に形成して、その後結合する、2段階の形成方法において可能となり得る。一体的な形成の場合の均質な材料移行によって、サーマルブロックの熱伝達特性は、たとえばまえもってシミュレーション方法によって求められているような、モデルが有する特性に特に確実に相当する。
【0016】
試料容器収容部は、温度調節装置と、サーマルブロックの適用において通常、試料容器収容部内に配置されている試料容器内に含まれる各試料との間の熱交換を可能にするために用いられる。そのために各試料容器収容部は、接触セクションを備えた内側を有しており、その接触セクションによって試料容器収容部内に配置されている試料容器が接触される。できる限り迅速に温度調節するために、したがって制御して目標温度に加熱又は冷却するために、できる限り大きい熱交換面積が望ましいので、接触セクションは、できる限り大面積にしなければならない。他方で、本発明の基礎となる調査によって、試料容器の加熱は、試料容器の、接触部分に対向する内側も液状の試料によって接触される場合に、そしてその限りにおいてのみ、温度調節率に比例して上昇することが、明らかにされており、その場合に「対向する」というのは、特に接触セクションの面に対して垂直に対向することを、意味している。熱流は、容器壁に対して垂直の場合にもっとも効率的であり、したがって容器壁は大体においてできる限り薄く形成されている。調査は、また、サーマルブロックの適用者は、通常、試料容器内の典型的な充填高さを使用し、それが特に、通常、試料容器の最大の充填能力よりもずっと低いことを、考慮した。PCRにおいては、しばしば、25μl、70μl、100μl、150μlの体積を有する試料が使用される。接触セクションのこの下方の部分(試料容器のそれに対向する内側はこの収容位置において液状の試料によって接触される)は、ここでは充填高さセクションとも称され、-一方で接触セクションの上方の部分(試料容器のそれに対向する内側は、この収容位置においては液状の試料によって接触されない)は、からセクションと称される。
【0017】
試料容器が規定に基づいてサーマルブロックの試料容器収容部内に配置されている場合に、迅速な熱伝達の目的のために、接触セクションの高さを、試料容器の典型的な充填高さよりも大きく寸法設計することは、必要ないことが明らかにされている。さらに、効率的な熱伝達のために充填高さセクションを、充分に大きい熱伝達横断面を用いてサーマルブロックのベースセクションもしくはベースプレートの下側(第1の側)と結合すると、好ましいことが明らかにされており、それは特に試料容器収容部の、充填高さセクションの、特にまた下方の終端セクションの、充分に大きい材厚によって得られる。からセクションは、試料容器内に配置されている試料の温度調節に効率的に寄与しないので、原理的に、このからセクションの温度調節を省くことができる。同時に、からセクション内の試料容器収容部の寸法を小さく抑えて、それによってこの寸法領域の不必要な温度調節-及びそれに伴って不必要なエネルギ消費と温度調節期間の延長-を回避すると、あるいは言い換えると、試料容器収容部の寄生熱容量を除去すると、好ましいことが明らかにされている。
【0018】
サーマルブロックは、好ましくはベースセクションを有し、その上に1つ又は複数もしくは多数の試料容器収容部が配置され、特に一体的に結合されている。ベースセクションは、好ましくはサーマルブロックのプレートセクションであり、もしくは特に実質的に直方体形状かつ特にフラットな、プレートである。プレートの高さは、好ましくは試料容器収容部の高さよりも小さい。プレートセクションは、上側と下側を有している。このプレートは、ベースプレートとも称される。
【0019】
試料容器収容部は、好ましくは列と行に、特に矩形の格子配置で、配置されており、その場合に格子の交点には、好ましくは垂直の長手軸を中心とする回転対称の試料容器収容部の中心が位置している。矩形の格子配置は、ここでは特に格子と称され、その格子は規則的に、同一の矩形の、特に方形の基本形状を有する格子セルから構築されている。格子配置は、好ましくはSBS標準に相当し、これについては以下でさらに説明する。試料容器収容部(かつ/又は好ましい格子配置)の数は、8(2x4)、16(2x8又は4x4)、32(4x8)又は64(8x8又は4x16)とすることもできる。格子配置は、さらにSBS準拠の格子配置の部分領域に、たとえば8x12格子点を有するSBS格子配置の半分に、相当することができ、したがって48格子点を有している。格子配置と試料容器収容部は、好ましくは、たとえば以下で説明するように、標準試料容器が試料容器収容部内に配置可能であるように、整えられ、かつ特に成形されている。格子配置は、必ずしも矩形である必要はなく、特に個々の格子セルの幾何学配置は矩形である必要はない。それは、原則的に、構造化された、あるいは構造化されていない格子に相当することができる。
【0020】
典型的な試料容器は、特に、PCRに適したものである。多くは、使い捨てプラスチック容器である。それは、カバーキャップを有する、あるいはもたない、個別容器であっても、あるいはマルチ容器、特にマイクロタイタープレートであってもよい。後者は、好ましくはPCRに適しており、かつこの場合においてPCRプレートと称される。
【0021】
個別容器は、典型的なやり方で0.1ml、0.2ml又は0.5mlの最大充填容積を有しており、原則的に10μmと2mlの間の充填容積が可能である。好ましくは充填容積は、10μlと200μlの間にある。サーマルブロック内に収容するための個別容器は、好ましくは側方の外壁を(そして内壁も)有しており、それらは円錐形状に延びて、それによってサーマルブロック内への挿入と取り出しが問題なく可能であり、かつそれに伴ってこの領域内で効率的な熱伝達を行うことができる。この領域は、特に熱伝達のための接触セクションを有している。個別容器の底は、選択的に特に以下の形状を有することができる:F底(フラット底)、C底(最小の面取りされた角部を有するフラットな底)、V底(円錐状に互いに近づく底)及びU底(U字状の凹部)。
【0022】
マルチ容器、特にマイクロタイタープレートもしくはPCRプレートは、好ましくは標準試料容器である。この種のマイクロタイタープレートもしくはPCRプレートは、互いに絶縁された多くの小凹部(キャビティ、英語:wells)を列と行内に有しているので、矩形の格子配置が生じる。正確な寸法(長さx幅x高さ)は、Society for Biomolecular Screening (SBS)の推奨に基づくANSI標準によれば127.76mmx85、48mmx14.35mmである(SBS標準“ANSI/SBS4-2004”)。マイクロタイタープレートもしくはPCRプレートは、は、標準に基づいて種々のフォーマットを有することができ、すべては同一の底面上で、かつ一部は可変の高さを有する(凹部の数、格子配置、典型的なmlの充填容積):6.2x3、2-5;12.3x4、2-4;24.4x6、0.5-3;48.6x8、0.5-1.5;96.8x12、0.1-0.3;384.16x24、0.03-0.1;1536.32x48、0.005-0.015;3456.48x72、0.001-0.005。標準に基づかない、他のフォーマットも使用することができる。サーマルブロック内に収容するための小凹部も、好ましくは側方の外壁を(そして内壁も)有し、それらは円錐形状に延びており、したがってサーマルブロック内への挿入と取り出しが問題なく可能であり、かつそれに伴ってこの領域内で効率的な熱伝達を行うことができる。この領域は、特に熱伝達のための接触セクションを有している。小凹部の底は、選択的に特に以下の形状を有することができる:F底(フラット底)、C底(最小の面取りされた角部を有するフラットな底)、V底(円錐状に互いに近づく底)及びU底(U字状の凹部)。
【0023】
本発明の記述の枠内で「上」及び「下」という記載は、通常、重力の方向に関するものである。というのは、試料容器は規定に基づいて液状の試料で満たされており、それがベースセクションの水平の保管を必要とするので、各試料容器収容部の中央の長手軸は垂直に配置されているからである。サーマルブロックの前側又は前方の側と称されるのは、サーマルブロックが規定どおりに実験室容器内、特にPCRサーマルサイクラー内に組み込まれている場合に、実験室容器の前側へ向けられている、-特にユーザーが実験室器具の前で作業する場合に、前方へ向かってユーザーへ向けられている-、側であり、サーマルブロックの後ろ側又は後方の側と称されるのは、サーマルブロックが規定に基づいて実験室器具内、特にPCRサーマルサイクラー内に組み込まれている場合に、実験室器具の後ろ側へ向いた側-特にユーザーが実験室器具の前で作業する場合に、ユーザーから離れるように後方へ向けられている、側である。同様に、サーマルブロックの「左側」と「右側」は、規定どおりに組み込まれたサーマルブロックを有する実験室器具の前に位置し、かつそれを「左から右へ」見る、ユーザーの視点から定められる。サーマルブロックの、あるいはその構成要素の下側は、その第1の側とも称され、この側に対向する、サーマルブロック又はその構成要素の上方の側は、その第2の側とも称される。
【0024】
ベースセクション又はベースプレートは、好ましくは以下で挙げる形態特徴の少なくとも1つをもって形成され、特に付加的に形成される。少なくとも1つの試料容器収容部が、付加製造方法において、特にこの形成方法の中断なしで、形成されていると、効果的である。しかしまた、ベースセクション又はベースプレートが、別々に、付加的な形成方向又は他の形成方法によって、たとえば鋳造方法、切削方法あるいはガルバニック方法によって、形成されることも、可能かつ効果的でもある。
【0025】
ベースプレートは、1つ又は複数の温度調節装置と熱的に結合するように整えられた第1のプレート側と、その第1のプレート側と対向する第2のプレート側とを有しており、その第2のプレート側は好ましくは、多数の実験室試料用器を収容して温度調節するための多数の試料容器収容部と一体的に結合されている。第1のプレート側は、好ましくは平面的であって、少なくとも1つの移行横断面積を有しており、その移行横断面積が、ベースプレートと少なくとも1つの試料容器収容部との移行部である。ベースプレートは、少なくとも1つの開口部及び/又は少なくとも1つの切り抜き及び/又は少なくとも1つの突出セクションを有しており、その場合に後者は、平面的な第1又は第2の側から張り出すことができる。プレートの純粋に平面的な側からのこの種の異なりは、それが所望の熱分布に用いられる場合、特にそれが試料容器収容部の均質な温度分布、特に試料容器収容部の接触セクションの等しい温度調節に用いられる場合に、設けることができる。
【0026】
ベースプレートは、好ましくは、それぞれ互いに対して垂直に、長さl、幅b及び高さhを有しており、それらはデカルト座標の軸線x、y、zに沿ってさらに詳しく説明するために、x/l、y/b、z/hにしたがって方向づけすることができる。ベースプレートの長さと幅は、好ましくは次のように、すなわちベースプレートの上方においてしかるべき試料容器収容部内に標準試料容器が配置可能であるように、寸法設計されている。長さの好ましい寸法は、50mmから260mmの間、あるいは60mmから160mmの間であり、幅の好ましい寸法は、40mmから180mmの間、あるいは60mmから120mmの間である。高さの好ましい寸法は、1.0mmから15.0mmの間、あるいは0.3mmから0.8mmの間である。長さ、幅及び/又は高さは、実質的に直方体形状のベースプレートの、場合によっては存在する側方の突出部が考慮されないように測定されるか、あるいは寸法が、x軸に沿ったベースプレートの最大の広がりとして(lを測定するため)、y軸に沿ったベースプレートの最大の広がりとして(bを測定するため)あるいはz軸に沿ったベースプレートの最大の広がりとして(hを測定するため)定められるように、測定される。
【0027】
好ましくは、サーマルブロックは1つ、複数又は多数の試料容器収容部を有しており、それらは金属を含む材料を使用して付加製造方法を用いて互いに結合され、かつ/又はベースセクションもしくはベースプレートと一体的に結合されて、形成されている。好ましくは、サーマルブロックを形成する方法は、1つ、複数又は多数の試料容器収容部を付加製造方法を用いて一体的に互いに結合し、かつ/又はベースセクションもしくはベースプレートと一体的に結合して、形成するステップを有している。
【0028】
好ましくは、サーマルブロックは、複数の(2以上)あるいは多数(6以上)の試料容器を有しており、それらは特に、サーマルブロックのベースプレートの平面的な第1の側に対して平行に延びる平面に沿って特に並べて配置されている。試料容器収容部の上方の端部に設けられた、試料容器収容部の好ましくは円形の開口部は、好ましくはすべてサーマルブロックのベースプレートの平面的な第1の側に対して平行である。試料容器収容部は、好ましくは、行と列を有する矩形の格子内に配置されている。
【0029】
試料容器収容部は、好ましくは、以下で挙げる形態特徴の少なくとも1つをもって形成され、特に付加的に形成される。好ましくは、少なくとも1つの試料容器収容部が付加製造方法において、特に一体的かつ/又は特にこの形成方法の中断なしで、形成されている。好ましくは少なくとも2つの試料容器収容部が、付加製造方法において、特に一体的かつ/又はこの形成方法の中断なしで、形成されている。好ましくはベースセクション、特にベースプレート及び少なくとも1つの試料容器収容部が、付加製造方法によって一体的かつ/又は特にこの形成方法の中断なしで、形成されている。
【0030】
しかしまた、少なくとも1つの試料容器収容部が別に、付加製造方法あるいは他の形成方法によって、たとえば鋳造方法、切削方法又はガルバニック方法によって、形成されることも、可能かつ効果的である。試料容器収容部は、個々に、あるいは複数の試料容器をグループで一体的に形成することができ、あるいはすべての試料容器収容部を一体的な構成部品として共通に形成することができる。その場合に好ましくは、少なくとも1つの試料容器収容部は、その形成後に、-個々に、グループで、あるいは構成部品全体として-、ベースセクションと結合される。ベースセクションが、付加的な形成によって、少なくとも1つの別に形成された試料容器収容部に接合されることが、可能かつ効果的である。その場合に、少なくとも1つの試料容器収容部の材料が溶融されて、それに続いてベースセクションの第1の材料層が接合され、そのベースセクションがその後順次構築されることが、可能である。また、少なくとも1つの試料容器収容部が別に形成されたベースセクションに付加的な形成によって接合されることも、可能かつ効果的である。
【0031】
試料容器収容部は、好ましくは、試料容器セクションを収容するために用いられる内部容積を有している。試料容器の試料容器セクションを収容位置内に収容することによって、試料容器と試料容器収容部との間に接触が形成される。この接触は、試料容器収容部の接触セクションの接触面を介して行われる。内部容積は、好ましくは少なくとも1つの収容壁によって包囲されており、かつ特に少なくとも1つの収容壁もしくは試料容器収容部の内側によって画成されている。収容壁は、機能的に2つ以上の壁セクションに分割することができる。
【0032】
試料容器収容部は、好ましくは中央の長手軸Aを有しており、それに沿って試料容器収容部が延びている。長手軸Aは、ベースセクションもしくはベースプレートの、好ましくは平面的な第2の側又は第2の側の平面的なセクションに対して、好ましくは垂直に延びている。試料容器収容部は、この長手軸Aに関して好ましくは回転対称に形成されており-これは、従来技術において一般的である。しかしまた、試料容器収容部がこの長手軸Aに関して好ましくは回転非対称に形成されることも、可能かつ効果的である。
【0033】
試料容器収容部は、好ましくは、下方の終端セクションを有しており、それを介して試料容器収容部がベースセクションもしくはベースプレートと結合されており、特に一体的に結合されている。この下方の終端セクションは試料容器収容部の、壁セクションの下方に配置されている容積領域、特に試料容器収容部の基部セクションとすることができ、あるいは面とすることができる。下方の終端セクションの構成要素であり、かつ同様に試料容器収容部とベースセクションもしくはベースプレートとの間の移行横断面積もしくは結合を形成するこの面は、好ましくは円形であるが、他の形状を有することもできる。この下方の終端セクションは、接触セクションを含まず、特に完全でも、割合部分でもないことによって、定めることができる。
【0034】
試料容器収容部は、好ましくは壁セクションを有しており、それが特に実質的もしくは大部分、下方の終端セクションの上方に配置されている。試料容器収容部は、好ましくは上方の終端セクションを有しており、それが特に開口セクションであって、それが特に壁セクションの上方に配置されている。この壁セクションは、好ましくは円錐状に成形されており、その場合にその円錐は、上から下へ向かって細くなる。壁セクションは、特に、試料容器収容部の内部容積を画成する、長手軸Aに沿った試料容器のセクションとして定めることができ、その内側は円錐形状である。下方の終端セクションは特に、試料容器収容部の内側容積も画成する、試料容器収容部のセクションを含むことができ、その内側は円錐状ではない。壁セクションは、好ましくは、回転軸A(長手軸A)を中心に回転対称に延びる、中空円錐のセクションとして成形されている。それによって相補的に円錐形状に成形された試料容器が簡単に挿入され、かつ取り出される。
【0035】
壁セクションは、好ましくは第1の下方の壁部分セクションを有しており、それが接触セクションの一部を形成し、特に接触セクションの下方のセクションを形成し、かつ、特に長手軸Aに沿って見て、下方の終端セクションの上方に位置し、かつ特に第2の上方の壁部分セクションの下方に位置する。下方の壁部分セクションは、好ましくは充填高さセクションである。壁セクションは、好ましくは、接触セクションの構成要素を含まない、少なくとも1つの第2の上方の壁部分セクションを有する。上方の壁部分セクションは、好ましくはからセクションである。下方の壁部分セクションは、上方の壁部分セクションよりも大きい厚みを有することによって、定義することができる。上述した厚みは、それぞれ壁セクションに沿って一定である必要はない。好ましくは、下方の壁部分セクションの厚みは、長手軸Aに沿って見て、下方の終端セクションに対する間隔が減少するにつれて、増大する。下方の壁部分セクションは、試料容器収容部の基部セクションとすることができ、その基部セクションが下方へ向かって拡幅し、もしくは下方の終端領域の方向に拡幅し、もしくは、長手軸Aに対して垂直に見て、増大する横断面を有している。この拡幅によって、特に、ベースセクションと試料容器収容部との間により大きい熱流が可能になり、かつさらにベースセクションに対する試料容器収容部の配置が支持される。下方の壁部分セクションは、基部セクションの構成要素となることができる。
【0036】
試料容器収容部は、好ましくは上方の終端セクションを有しており、それが壁セクションと結合されており、特に一体的に結合されている。上方の終端セクションは、好ましくは開口セクションであって、それが上方へ向けられた、好ましくは円形の開口部を有しており、それを通して試料容器が試料容器収容部内へ導入される。
【0037】
下方の終端セクションの高さは、0.0と5.0mmの間、好ましくは0.0と3.0mmの間、かつ好ましくは0.0と1.5mmの間とすることができる。
【0038】
壁セクションの高さは、0.0と15.0mmの間、好ましくは0.0と10.0mmの間、かつ好ましくは0.0と8.0mmの間とすることができる。
【0039】
壁セクションの第1の壁部分セクションの高さは、0.0と15.0mmの間、好ましくは0.0と10.0mmの間、かつ好ましくは0.0と8.0mmの間とすることができる。
【0040】
壁セクションの第2の壁部分セクションの高さは、0.0と15.0mmの間、好ましくは0.0と10.0mmの間、かつ好ましくは0.0と8.0mmの間とすることができる。第2の部分セクションの高さは、第1の部分セクションの高さを上回ることができ、あるいはそれを下まわることができ、あるいは同じとすることができる。
【0041】
上方の終端セクションの高さは、0.0と5.0mmの間、好ましくは0.0と3.0mmの間、かつ好ましくは0.0と1.5mmの間とすることができる。
【0042】
高さは、上述した値のそれぞれとすることもでき、あるいは少なくともそれより小さい又はそれより大きい値とすることができ、一方で、それぞれ他の値は排除することができ、あるいは上述したすべての値を除外することができる。
【0043】
従来のサーマルブロックにおいては、すべての試料容器収容部もしくは-フライス加工されたサーマルブロックの場合に-、試料容器収容部を有するすべてのブロックセクションは、等しく形成されており、特に等しく成形されて、同一の形状でベースセクションに配置されている。付加製造方法によって、試料容器収容部の各セクションはそれぞれ要請に応じて個別に構成され、特に成形されることが、可能になる。付加製造方法によって、さらに、各試料容器収容部がそれぞれ要請に応じて個別に構成されること、あるいは所定のグループの試料容器収容部が個別に構成され、特に成形され、それによって同じグループ内の試料容器収容部が同じ形状を有し、かつ/又は同じ形状でベースセクションに配置されることが、可能になる。「個別に構成される」というのは、試料容器収容部が、他の試料容器収容部とは異なるように成形されており、かつ/又は少なくとも他のように成形された基部セクションをもってベースセクションに配置されていること、あるいは1つのグループの試料容器収容部が、他のグループの試料容器収容部とは異なるように成形されており、かつ/又は少なくとも他のように成形された基部セクションによってベースセクションに配置されていることを、意味している。
【0044】
特に複数の試料容器収容部が、特に矩形の格子配置内に、並べて配置されている場合に、以下のそれぞれ好ましい形態が生じる:
好ましくは端縁側の試料容器収容部は、端縁側でない試料容器収容部とは異なるように成形され、特に試料容器収容部配置の中央内側領域内で試料容器収容部とは異なるように成形されている。好ましくは配置の角部に位置決めされた試料容器収容部は端縁側の試料容器収容部及び/又は非端縁側の試料容器収容部とは異なるように成形されている。端縁側に配置されているというのは、ベースセクションの、特に矩形のベースプレートの、端縁に配置されており、かつしたがってそこにおいて、試料容器収容部配置の中央の内部領域内で、端縁側でなく、中央に配置されている試料容器収容部よりも、隣接する試料容器収容部が少ない、試料容器収容部である。好ましくは端縁側の試料容器収容部の下方の終端セクションは、非端縁側の試料容器収容部の下方の終端セクションとは異なるように成形されており、特に試料容器収容部配置の内部領域内の試料容器収容部の下方の終端セクションとは異なるように成形されている。好ましくは、配置の角部内に位置決めされている試料容器収容部の下方の終端セクションは、端縁側の試料容器収容部の下方の終端セクションとは、かつ/又は非端縁側の試料容器収容部の下方の終端セクションとは、異なるように成形されている。
好ましくは、端縁側の試料収容部の壁セクションは、非端縁側の試料容器収容部の壁セクションとは異なるように成形され、特に試料容器収容部配置の内部領域内の試料容器収容部の壁セクションとは異なるように成形されている。好ましくは、配置の角部に位置決めされている試料容器収容部の壁セクションは、端縁側の試料容器収容部の壁セクションとは、かつ/又は非端縁側の試料容器収容部の壁セクションとは、異なるように成形されている。形態が異なることによって、サーマルブロックの熱流もしくは熱容量は、サーマルブロック内の位置にしたがって影響を受ける。
【0045】
好ましくは、端縁側の試料容器収容部の下方の終端セクションは、非端縁側の試料容器収容部の下方の終端セクションよりも大きい体積もしくは大きい寸法を有し、特に試料容器収容部配置の内部領域内の試料容器収容部の下方の終端部分よりも大きい体積もしくは大きい寸法を有している。好ましくは、配置の角部に位置決めされている試料容器収容部の下方の終端セクションは、端縁側の試料容器収容部の下方の終端セクションよりも、かつ/又は非端縁側の試料容器収容部の下方の終端セクションよりも、大きい体積もしくは大きい寸法を有している。この形態によって、端縁領域は大体においてずっと低い周囲温度の影響を受けることにより、特にサーマルブロックの端縁領域内で、上述した試料容器収容部内への熱流と熱容量が異なるように構成される。
【0046】
1つ、複数又はすべての試料容器収容部の下方の終端セクションは、好ましくは、少なくとも部分的に、試料容器収容部の、特に壁セクションの、上方のセクションから始まって、ベースセクションまで下方へ向かって拡幅するように、成形されている。このように定められた基部セクションは、試料容器収容部と壁セクションとの間のより大きい熱流を可能にし、それによって基部セクションを有する試料容器収容部は、基部セクションなしの試料容器収容部よりも急速に温度調節される。さらに、基部セクションは、ベースセクションにおける試料容器収容部の位置を、機械的な作用に対して補強する。
【0047】
基部セクションは、好ましくは円錐形状に成形されており、その場合に長手軸Aを通って延びる垂直の横断面、特に基部セクションの外側の、長手軸Aを通って延びる垂直の各横断面は、まっすぐな線として成形することができるが、まっすぐでない線として、特に凹状に、成形することもできる。
【0048】
試料容器収容部は、好ましくはカップ形状であり、すなわちその場合に試料容器収容部は、上方へ向いた開口部を有するカップのように、形成される。
【0049】
サーマルブロックの1つの試料容器収容部、複数の試料容器収容部又はすべての試料容器収容部は、その壁セクション又は下方の終端セクションのみによって、ベースセクションと結合することができ、特にベースセクションの上方-及び特に上方の終端セクションの下方-に水平に延びる、隣接する試料容器収容部を結合する結合セクションは設けられていない。この種の試料容器収容部は、支えなしで立つとも称される。
【0050】
上方の終端セクション内で、複数の、あるいはすべての試料容器収容部は穴あきプレートによって結合することができ、その場合に穴あきプレートの穴内にそれぞれ試料容器収容部もしくはその上方の終端セクション又はその開口部を配置することができる。
【0051】
この種の配置の試料容器収容部は、支えなしで立つとは称されない。というのは1つ(複数)の結合部材、ここでは穴あきプレート、を介して互いに支持し合うからである。
【0052】
好ましくは、サーマルブロックはベースセクションと試料容器セクションとを有しており、その場合に後者内には少なくとも1つの試料容器収容部が配置されている。ベースセクション及び/又は試料容器セクションは、好ましくは実質的に直方体形状であり、それは特にベースセクションが直方体形状のプレートの形を有することができるからであり、かつ特に試料容器セクションの試料容器収容部が実質的に直方体形状の領域を形成するからである。ベースセクションと試料容器セクションは、特に実質的に移行領域の内部で互いに結合することができ、その移行領域は、平面として-移行平面と称する-形成することができ、あるいは、たとえば種々の試料容器収容部がベースセクションの種々の高さで始まっていることにより、プレート形状の移行領域として、形成することができる。また、サーマルブロックがベースセクションをもたず、試料容器セクションによって形成されることも、可能であって、その試料容器収容部は結合セクションによって結合され、特に隣接する試料容器収容部の間に水平に延びて、それらを結合する結合セクションにより、特に隣接する試料容器収容部の下方の終端セクション及び/又は壁セクション及び/又は上方の終端セクションの間に水平に延びて、それらを結合する結合セクションによって、結合されている。これらの結合セクションは、特に、試料容器収容部を結合する格子ネットワークあるいは少なくとも1つの穴あきプレートの構成要素とすることができ、その穴あきプレートの穴を通して試料容器収容部が延び、かつそれと結合されている。しかし、上述した結合セクションは、サーマルブロックがベースセクションを有している場合でも、設けることができる。
【0053】
試料容器セクションは、少なくとも1つ又は複数の結合セクションを有しており、それらが隣接する試料容器収容部を結合する。これらの結合セクションは、特に、隣接する試料容器収容部の間に水平に延びて、それらを結合する結合セクションであり、特に隣接する試料容器収容部の下方の終端セクション及び/又は壁セクション及び/又は上方の終端セクションの間に水平に延びて、それらを結合する結合セクションである。これらの結合セクションは、特に、試料容器収容部を結合する格子ネットワーク又は少なくとも1つの穴あきプレートの構成要素とすることができ、その穴を通して試料容器収容部が延びて、かつそれと結合されている。しかし、上述した結合セクションは、サーマルブロックがベースセクションを有している場合でも、設けることができる。
【0054】
特に複数の試料容器収容部が互いに並べて配置され、かつ、特に隣接する試料容器収容部の矩形の格子配置において、試料容器セクションを形成する場合に、それぞれ好ましい以下の形態が生じる:
【0055】
直接隣接する試料容器収容部の間、特に直接隣接する複数又はすべての試料容器収容部の間に、少なくとも1つ、あるいは正確に1つの結合セクションを設けることができる。試料容器収容部の矩形の格子内で、格子の1行内で互いに連続するそれぞれ2つの試料容器収容部が、直接隣接するものであり、かつ格子の1列内で互いに連続するそれぞれ2つの試料容器収容部が、直接隣接するものである。しかしまた、対角線状に隣接する試料容器収容部の間、特に対角線状に隣接する複数又はすべての試料容器収容部の間に、少なくとも1つ、あるいは正確に1つの結合セクションを設けることもできる。2つの試料容器収容部の間に他の試料容器収容部が存在する場合には、最初の2つの試料容器収容部は隣接していることにはならない。
【0056】
隣接する試料容器収容部を結合する結合セクションとベースセクションの間に、特にそこの、この試料容器収容部の長手軸によって形成される平面内、したがって特に結合セクションの下方に、から空間を設けることができる。この結合セクションは、特に、ベースセクションと直接結合することはできず-結合セクションは試料容器収容部を介してベースセクションと間接的に結合される。この場合において、結合セクションは、結合セクションのまわりを流れる周囲空気の対流を介して試料容器収容部の冷却に寄与する。したがってこの結合セクションもしくはこの構造は、より熱い試料容器収容部を冷却し、かつサーマルブロック内の均質性を改良するのに、適している。最適な熱引き出しを定める、構造パラメータは、結合セクションもしくは構造の厚み及び、ベースセクションに対するもしくはベースプレートに対する結合セクションもしくは構造の間隔、特に最小間隔、結合セクションの寸法及び/又は表面である。試料容器収容部の間の結合セクションもしくは構造の他の利用は、個別場合において構成部品に必要な安定性と強度を与えることができることである。その場合に結合セクションもしくは構造は、構成部品重心からできる限り離隔し、したがってより小さく、かつ/又はより薄く設計することができる。他の利点は、ここでは小さい構造の熱的な影響が比較的小さいことである。熱は、最初に試料収容部を通って流れなければならず、したがって構造を温めるのは最後である。
【0057】
また、隣接する試料容器収容部を結合する結合セクションとベースセクションとの間、そこの特に、試料容器収容部の長手軸によって形成される、特に結合セクションの下方の平面内に、から空間が設けられないことも、可能かつ効果的である。結合セクションは、ベースセクションと直接結合することができる。この場合において、結合セクションは、温度調節装置を用いて試料容器収容部を加熱もしくは温度調節するためにも用いられる。これは、試料容器セクションもしくはサーマルブロックの複数の、あるいは多くの結合セクション又はすべての結合セクションについて当てはめることができる。この配置は、より熱い間隙から熱が試料量器収容部へ案内され、したがって均質性を向上させることができる、という効果を有している。ここでは構造パラメータは、結合セクションの厚み、その寸法及び/又はその表面及び取りつけの一般的な形状、たとえば可変の直径をもって面取りし、可変の角度をもって三角にすることである。
【0058】
試料容器収容部の壁セクション、特に下方の壁セクション及び/又は上方の壁セクションは、異なる厚みを有することができる。試料容器収容部の材厚を個別に厚くすることができる:材厚の個別の変化は、正しく選択された場合に、サーマルブロックの均質性とスピードに正の作用を有する。壁セクションの個別の厚み、試料容器収容部の寸法及び/又は表面は、サーマルブロックの最適化可能な構造パラメータである。
【0059】
隣接する試料容器収容部を結合する結合セクションは、ウェブ形状、特にプレート形状とすることができる。プレートは、厚み、外側輪郭及びメイン平面によって特徴づけられており、そのメイン平面は水平に、したがってx-y平面に対して平行に延びることができ、あるいはx-y平面に対して垂直かつz軸に対して平行に延びることができる。厚みと外側輪郭が、サーマルブロックの最適化可能な構造パラメータである。
【0060】
結合セクションは、1つ又は複数の切り抜き及び/又は開口部及び/又は突出部を有することができ、あるいは格子形状及び/又は多孔であることができる。このようにして、結合セクションの熱を案内する特性が調節される。
【0061】
試料容器収容部のための1つ又は複数の基部セクションの利用及び/又は隣接する試料容器収容部の間の結合セクションの利用並びにサーマルブロックの構造を定める構造パラメータの変化は、以下の進歩的考えを実現する:付加製造方法を用いて、温度調節装置と試料との間の熱伝導に正の影響を有する場所だけで、材料が構築される。機械的頑丈さと安定性を保証するための付加的な構造及び、サーマルブロック、温度調節装置及び周囲の間の密閉に用いられる構造は、ここでは例外を示すことができる。
【0062】
試料容器収容部は、内部容積を有しており、それが特に試料容器収容部の底壁の内側から始まって長手軸Aに沿ってある区間にわたってその開口部まで延びている。この区間は、試料容器収容部の深さと称される。好ましくは、サーマルブロックの試料容器収容部の開口部は、共通の平面内に位置し、かつ好ましくは複数の、あるいはすべての試料容器収容部がそれぞれ等しい深さを有している。しかしまた、1つ又は複数の試料容器収容部の、特に端縁側の試料容器収容部の深さが、非端縁側の試料容器収容部のそれよりも大きいことが、可能かつ効果的である。より大きい深さを有する試料容器収容部の内部容積は、特により深く、かつ特にベースセクション内へ延びることができる。それによって、端縁領域内で熱伝達を改良することができ、かつ均質性を向上させることができる。試料容器収容部の深さは、サーマルブロックの最適化可能な構造パラメータである。
【0063】
ベースセクションもしくはベースプレートが厚みの異なる領域を有することが、可能かつ効果的である。ベースプレート上に付加的な材料を所望に位置決めすることによって、局所的な熱容量を調節して、サーマルブロックの均質性を向上させることができる。同様に、ベースセクションもしくはベースプレートを局所的に切り抜くことによって、熱容量をさらに低下させることができる。これが、スピードと均質性を改良することができる。様々な厚みの領域の厚みと外側輪郭が、サーマルブロックの最適化可能な構造パラメータである。
【0064】
サーマルブロックは、好ましくは収容フレーム及び/又はシールフレームを有しており、それがサーマルブロックを特にベースプレートに対して、もしくはx-y平面に対して平行に一周している。付加製造方法のデザインの自由によって、シールフレーム/収容フレームをベースプレートと組み合わせて、熱容量をさらに低下させることもできる。
【0065】
温度調節装置は、好ましくはサーマルブロックと冷却ボディの間に配置され、かつ固定手段、特にねじ、によってこれらのコンポーネントが互いに圧接される。付加製造方法によって、さらに、支持構造、特に格子構造が、複雑でなく統合されており、それらはベースセクションもしくはベースプレートの上方に配置されており、かつ特にベースセクションと試料容器収容部の開口部の平面との間に延びることができ、かつ、上述したコンポーネントが固定される場合に、結合力を吸収する。
【0066】
付加製造方法によって、サーマルブロックの複雑な構造が実現される。好ましくは、サーマルブロックは、平面的な下方の側と少なくとも1つ又は複数の試料容器セクションとを備えた、少なくとも1つ又は複数のベースプレートを有している。試料容器セクションは、試料容器収容部の間に1つ又は複数の切り抜き及び/又は開口部及び/又は突出部を有することができ、あるいは多孔であることができる。1つ又は複数あるいは各試料容器収容部は、1つ又は複数の切り抜き及び/又は開口部及び/又は突出を有することができ、あるいは多孔であることができる。このようにして結合セクションの熱伝導特性が調節される。
【0067】
好ましくは、サーマルブロックは、ベースセクションと少なくとも1つの試料容器収容部が付加製造方法によって形成されており、好ましくは一体的に形成されていることにより、付加製造方法を用いて形成されていることを、特徴としている。
【0068】
付加製造方法によって、-通常、データモデルとしてバーチャルに存在する-サーマルブロックを所望の方向から形成することが、可能であって、付加的な形成を必ずしもサーマルブロックの下方の端部から始める必要はない。バーチャルなモデルを回転させて、回転した位置から、付加的な形成の水平の形成層を定めることにより、原則的に、サーマルブロックをその下側からその上側の方向へ形成するのではなく、他の方向から形成することが、可能である。たとえばサーマルブロックは、その上側からその下側の方向に、あるいは左側から右側の方向に、あるいいは前側からその後ろ側の方向に、形成することができる。形成の方向の選択は、形成が効率的に実施できることに依存しており、場合によってはサーマルブロックの所望の構造が場合によっては定められた方向からのみ形成されることにも、依存している。
【0069】
好ましくはサーマルブロックは、最初にサーマルブロックのベースセクションが付加製造方法によって形成されて、次に少なくとも1つの試料容器収容部が付加製造方法によって形成され、特にベースセクションの形成と少なくとも1つの試料容器収容部の-特に第1の層の-形成との間で付加製造方法が中断されることなしに、付加製造方法によって形成されていることを、特徴としている。
【0070】
しかしまた、最初に少なくとも1つの試料容器収容部が付加製造方法によって
形成されて、次にサーマルブロックのベースセクションが付加製造方法によって形成されることにより、特に少なくとも1つの試料容器収容部の形成とベースセクションの-特に第1の層の-形成との間で付加製造方法が中断されることなしに、サーマルブロックが付加製造方法によって形成されていることも、可能かつ効果的である。
【0071】
少なくとも1つの試料容器収容部及び/又はベースセクションが付加製造方法において、特にこの形成方法の中断なしで、形成されていることが、効果的である。しかしまた、少なくとも1つの試料容器収容部及び/又はベースセクションが別々に、付加製造方法又は他の形成方法により、たとえば鋳造方法、切削方法又はガルバニック方法によって、形成されることも、可能かつ効果的である。
【0072】
試料容器収容部は個々に、あるいは複数の試料容器収容部をグループで形成することができ、あるいはすべての試料容器収容部を一体的な構成部品として形成することができる。その場合に、少なくとも1つの試料容器収容部がその形成後に、-個別に、グループで、あるいは構成部品全体として-ベースセクションと結合されると、効果的である。好ましくはベースセクションは、付加的な形成によって少なくとも1つの試料容器収容部に接合される。その場合に、少なくとも1つの試料容器収容部の材料が溶融され、それによって次にベースセクションの第1の材料層が接合され、その後ベースセクションが逐次構築されることが、可能である。
【0073】
サーマルブロックを有する実験室器具は、好ましくは(PCR)サーマルサイクラーである。サーマルブロックを有する実験室器具がサーマルミキサーであることも可能である。サーマルブロック及び/又はサーマルブロックを有する実験室器具は、実験室自動機、特に液状の試料を高流量処理するための実験室ピペット処理自動機(Liquid Handling Automat)の一部とすることができる。
【0074】
サーマルサイクラーは、少なくとも1つの試料を時間的に次々とあらかじめ定められた温度に調節して、あらかじめ定められた期間の間この温度段階に保持することができる、器具である。この温度制御のシーケンスは、周期的である。すなわちあらかじめ定められた温度サイクル、したがって少なくとも2つの温度段階の連続が繰り返し実施される。この方法は特に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施するために用いられる。これに関連して、サーマルサイクラーは、しばしばPCRブロックとも称される。サーマルサイクラー、特にサーマルサイクラーの処理装置は、好ましくはサーマルブロックを有している。サーマルブロックは、熱伝導する材料、大体において金属を含む材料又は金属、特にアルミニウム又は銀からなる試料ホルダである。試料ホルダは、接触側を有しており、その接触側がサーマルサイクラーの少なくとも1つの加熱/冷却装置、特にペルティエ素子と接触する。サーマルサイクラー、特にサーマルサイクラーの処理装置は、少なくとも1つの閉ループ制御回路を備えた閉ループ制御装置を有しており、その閉ループ制御回路に操作部材として少なくとも1つの加熱/冷却装置が、そして測定部材として少なくとも1つの温度測定装置が対応づけられている。閉ループ制御装置を用いて、温度段階の温度が閉ループ制御される。サーマルサイクラーの、特にサーマルサイクラーの処理装置の、冷却ボディは、サーマルサイクラーのセクションを冷却するため、特にペルティエ素子を冷却するために用いられる。サーマルサイクラー、特にサーマルサイクラーの処理装置は、他の加熱及び/又は冷却部材を有することができる。好ましくはサーマルサイクラー、特にサーマルサイクラーの処理装置は、タイミング装置を有しており、そのタイミング装置によって温度サイクルを調節する時間的なパラメータが制御可能である。
【0075】
「thermal mixing device」とも称される、サーマルミキサーは、温度調節された試料を運動させるため、特に複数の成分を有する実験室試料を混合するために、用いられる。サーマルミキサー、特にその処理装置は、特に振動する運動を実施するように整えることができる。サーマルミキサー、特にその処理装置は、特に運動を駆動する駆動装置を有し、特に、混合処理を調節する時間的パラメータを制御することができる、タイミング装置を有し、かつ特に少なくとも1つの加熱/冷却装置及び少なくとも1つの閉ループ制御回路を備えた閉ループ制御装置を有しており、その閉ループ制御回路に操作部材として少なくとも1つの加熱/冷却装置が、そして測定部材として少なくとも1つの温度測定装置が対応づけられている。少なくとも1つの実験室試料の器具制御される処理は、サーマルミキサーにおいては混合処理に相当し、少なくとも1つの試料がその混合処理を受ける。
【0076】
サーマルブロックは、好ましくは、温度センサのための収容部を有している。温度センサは、好ましくはサーマルブロックのベースプレートの上方に配置されているので、サーマルブロックの駆動中、センサに作用する温度は、どちらかと言うと試料の内部の温度に相当する。従来のように形成されたサーマルブロックにおいては、温度センサは、大体においてベースプレートと直接熱接触して、もしくは直接ベースプレート上に配置されている;それによって、センサにおける目標温度は、大体において試料内よりもずっと早く達成されるので、場合によっては周期における遅延が考慮されなければならない。
【0077】
サーマルブロックの均質性のテストは、種々の方法で求めることができる。1つの可能性は、検定済みの温度センサをサーマルブロックの種々の位置決めされた試料容器収容部に取りつけ、かつサーマルブロックの駆動中に均質性を、たとえばサーマルブロックにおける温度の平均値の標準偏差として求めることにある。他の可能性は、サーマルブロックの種々の位置決めされた試料容器収容部内で同一のPCR反応を行わせ、かつ各試料容器内の複製された生成物の収量を定めることにある。他の可能性は、均質性をシミュレーション方法から求めることにあって、それにおいて本発明に基づいて形成されたサーマルブロックの温度分布が、本発明に基づいて形成されたサーマルブロックのデータモデルを用いて計算される。サーマルブロックの温度分布の均質性を定めるのに適した方法が、www.eppendorf.deを介して得られる、2011年12月のEppendorf APPLICATION NOTE No.244に記述されている。
【0078】
サーマルブロックの温度調節の速度は、既知の一定の加熱出力においてサーマルブロック内に所望の温度上昇がどのくらいの長さ続くか、あるいは既知の一定の加熱出力においてあらかじめ定められた期間の間サーマルブロックが加熱された場合に、どのように温度差が生じるかを求めることによって、求めることができる。サーマルブロックの温度調節の速度を定めるのに適した方法が、www.eppendorf.deを介して得られる、Eppendorf APPLICATION NOTE No.274に記述されている。
【0079】
サーマルブロックの付加的な形成は、細粒状の材料から出発しており、その材料は好ましくは金属を含み、好ましくはアルミニウムあるいは銀又はチタンを含んでいる。セラミックの材料も可能である。非金属の、あるいは他の、たとえば炭化ケイ素又は炭素もしくはグラファイトを含む-あるいはそれからなる-材料が可能である。
【0080】
本発明は、また、サーマルブロックを形成する方法に関するものであって、そのサーマルブロックは実験室温度調節器具内、特にPCRサーマルサイクラー内で実験室試料容器を収容して温度調節するために用いられるものであって:*好ましくは金属を含む細粒に基づいて、付加製造方法を用いてサーマルブロックを形成するステップを有している。
【0081】
本発明は、サーマルブロックの形状構造を計算するための方法(以下においては「シミュレーション方法とも称される」)にも関するものであって、そのサーマルブロックは実験室温度調節器具、特にPCRサーマルサイクラー内で実験室試料容器を収容して温度調節するために用いられ、かつ、コンピュータ制御される、少なくとも1つの構造パラメータに依存する付加製造方法によって形成可能であり、その場合にサーマルブロックの形状構造は、少なくとも1つの構造パラメータによって定義可能であって、以下のステップを有する:
【0082】
*少なくとも1つの構造パラメータを変化させる;
*少なくとも1つの構造パラメータにしたがってサーマルブロックの少なくとも1つのセクションを通る熱流をシミュレートするためにシミュレーション方法を実施する;
*シミュレーション方法にしたがって、形成すべきサーマルブロックを定める少なくとも1つの構造パラメータを選択し、かつ特にこの少なくとも1つの構造パラメータを、次にこのように構造的に定められたサーマルブロックを付加的に形成するために提供する。
【0083】
シミュレーション方法を実施するのに適した構造パラメータは、本発明についての以下の説明に含まれており、あるいはサーマルブロックの好ましい構造的な形態についての説明から直接導き出すことができる。シミュレーション方法は、商業的に得られるソフトウェア、たとえばFinite-Elemente-Softwareを用いて実施することができる。特に米国、ペンシルバニアのAnsys Inc.社のANSYSが適している。
【0084】
好ましい実施形態において、サーマルブロックは、以下の形成方法に基づいて形成されたことを特徴としている;サーマルブロックを形成するための本発明に係る方法の好ましい実施形態も同じステップを特徴としている:
-好ましくは付加製造方法又は他の方法を用いて、ベースセクションもしくはベースプレートを形成する;
-付加的に加工すべき細粒の材料をベースセクションもしくはベースプレートと一体的に結合するために、特にベースセクション又はベースプレートの一番上の層を-特に局所的に-溶融しながら、ベースセクションもしくはベースプレートの上方に少なくとも1つの試料容器収容部を付加的に形成し、その場合にベースセクション又はベースプレートの一番上の層は、好ましくは同じ材料を有し、あるいは同じ材料からなる。
-選択的なステップ:*付加的に形成するステップの前に:形成すべきサーマルブロックと共に使用するために設けられた温度調節装置、特にペルティエ素子をベースセクションもしくはベースプレートと、そして好ましくは冷却ボディとも、結合することによって、スタック複合体を形成し、*その後:ベースセクションもしくはベースプレート上の温度分布の均質性を測定し、その場合にこの均質性は、温度調節装置、特にペルティエ素子の個別の形態、特に温度調節装置のその面にわたる熱移送の均質性の結果であり、特に1つ複数の温度調節装置に冷却ボディを個別に形成及び/又は取りつけた結果であり、特に温度調節装置を、特に、たとえばグラファイト伝熱パッドのような、熱伝導媒体を用いてベースセクションもしくはベースプレートと個別に熱結合する結果であり、特に制御装置による温度調節装置の電子制御及び/又は電圧供給の結果であり、特に、サーマルブロック(もしくはベースセクションと温度調節装置)が規定どおりに実験室器具内に配置されている場合に、実験室器具、特にサーマルサイクラーの1つ/複数の構成部品(これらの構成部品は、ベースセクションがはめ込まれたフレームとすることができる)に対する、ベースセクションもしくはベースプレートと結合された温度調節装置の空間的な配置に基づく結果である。
【0085】
サーマルブロックが付加製造方法によって形成された後に、そのサーマルブロックがさらに加工されており、もしくは形成方法の枠内でさらに加工されることが、可能かつ効果的である。後処理の可能かつ好ましいステップは、特に互いに独立しており、あるいは組み合わされている:
【0086】
*付加製造方法を用いて形成されたサーマルブロックを、特にその材料の溶融温度を越えて、加熱し;あるいは冷却する;
*付加製造方法を用いて形成されたサーマルブロックを、特に浸漬浴又はスプレイによって、コーティングする;
*付加製造方法によって形成されたサーマルブロックを切削表面加工、特にフライス加工、研磨する;
【0087】
この種の後処理ステップによって、特に以下の表面が平滑化される:付加製造方法によって認識される表面多孔性もしくは粗さを有する表面:温度調節装置、特にペルティエ素子との熱接触を改良するために、ベースセクション又はベースプレートの下側:試料容器、特にその外側との熱接触を改良するために、試料容器収容部の内側。
【0088】
本発明に係るサーマルブロックは、その形成の特徴によって特徴づけることができる。本発明の枠内においてサーマルブロックを形成する本発明に係る方法が1つ又は複数のステップによって記述される限りにおいて、これらのステップがサーマルブロックを構造的に特徴づける場合に、これらのステップは容易にサーマルブロックを構造的に記述する特徴と考えられる。サーマルブロックあるいはその構成部分の付加製造が、サーマルブロックを特徴づける。というのはこのサーマルブロックは、この特別な種類の形成によって、その表面及び/又はその体積の多孔性を有するからである。
【0089】
サーマルブロックを形成するための本発明に係る方法は、この明細書の枠内において特にこの方法のステップによって記述される。サーマルブロックがこの明細書の枠内において構造的な特徴によって記述され、たとえば隣接する試料容器収容部の間に設けられた、ベースセクションの上方に位置する支持構造によって特徴づけられている限りにおいて、そこから直接、サーマルブロックを形成するための本発明に係る方法のステップが導き出され、たとえばサーマルブロックを形成する方法は、試料容器収容部と共に上述した支持構造も付加的に形成するステップを有している。
【0090】
本発明に係るサーマルブロックとそれを形成するための本発明に係る方法の他の好ましい形態が、図面及びその説明と関連した、実施例についての以下の説明から明らかにされる。実施例の同一の構成部品は、これについて他の説明がなされず、あるいは文脈から異なることが生じない限りにおいて、実質的に同一の参照符号によって特徴づけられる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【
図1】
図1は、第1の実施例に基づいて、本発明に係るサーマルブロックを形成する、本発明に係る方法の実施例を、図式的に示している。
【
図2a】
図2aは、第1の実施例に基づいて、本発明に係るサーマルブロックをカメラ遠近法で再現して示している。
【
図2b】
図2bは、第2の実施例に基づいて、本発明に係るサーマルブロックをカメラ遠近法で再現して示している。
【
図3a】
図3aは、サーマルサイクラーのフレーム内に配置された、
図2bに基づくサーマルブロックを示している。
【
図3b】
図3bは、フレーム内に配置された
図2bのサーマルブロックを、斜め前からと、斜め後ろから示している。
【
図4a】
図4aは、第2の実施例に基づいて、本発明に係るサーマルブロックの一部を斜視図で示している。
【
図4b】
図4bは、第3の実施例に基づいて、本発明に係るサーマルブロックの一部を斜視図で示している。
【
図4c】
図4cは、第4の実施例に基づいて、本発明に係るサーマルブロックの一部を正面図で示している。
【
図4d】
図4dは、第5の実施例に基づいて、本発明に係るサーマルブロックの一部を正面図で示している。
【
図5a】
図5aは、第6の実施例に基づいて、本発明に係るサーマルブロックの一部を斜視図で示している。
【
図5b】
図5bは、第7の実施例に基づいて、本発明に係るサーマルブロックの一部を斜視図で示している。
【
図6a】
図6aは、第8の実施例に基づいて、本発明に係るサーマルブロックの一部を側方の横断面図で示している。
【
図6b】
図6bは、第9の実施例に基づいて、本発明に係るサーマルブロックの一部を側方の横断面で示している。
【
図7a】
図7aは、第2の実施例に基づいて、本発明に係るサーマルブロックの一部を側方の横断面図で示している。
【
図7b】
図7bは、第3の実施例に基づいて、本発明に係るサーマルブロックの一部を側方の横断面で示している。
【
図8a】
図8aは、第10の実施例に基づいて、本発明に係るサーマルブロックの一部を斜視図で示しており、その場合にこの一部は、本発明に係るサーマルブロックの形状構造をシミュレートし、もしくは計算するための方法の例を実施するためのモデルとして用いられる。
【
図8b】
図8bは、計算された熱イメージを示しており、それは、
図8aに示すサーマルブロックの一部とそれにおいて存在する熱分布を側方の横断面図で示しており、その熱分布は、サーマルブロックの形状構造をシミュレートし、もしくは計算するための本発明に係る方法の例において生じるものである。
【
図9a】
図9aは、計算された熱イメージを示しており、それは、第11の実施例に基づく本発明に係るサーマルブロックの一部と、それにおいて存在する熱分布を側方の横断面図で示しており、その熱分布はサーマルブロックの形状構造をシミュレートし、もしくは計算するための本発明に基づく方法の例において生じるものである。
【
図9b】
図9bは、計算された熱イメージを示しており、それは、第12の実施例に基づく本発明に係るサーマルブロックの一部と、それにおいて存在する熱分布を側方の横断面図で示しており、その熱分布は、サーマルブロックの形状構造をシミュレートし、もしくは計算するための本発明に係る方法の例において生じるものである。
【
図10a】
図10aは、実施例に基づいて、サーマルブロックを形成するための方法を図式的に示している。
【
図10b】
図10bは、実施例に基づいて、サーマルブロックの形状構造を計算するための方法を図式的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0092】
図1は、本発明に係るサーマルブロック1を形成するための、本発明に係る方法100の実施例を図式的に示している。この方法において、サーマルブロックを形成するための付加製造方法として選択的レーザー溶融(英語:Selective Laser Melting: SLM)が使用される。その場合に、粉末形状の材料6、たとえばアルミニウム細粒、特にEOSアルミニウムAlSi10Mg、をローカルに溶融するためにレーザービーム5が使用される。その場合に、独国82152 クライリングのEOSGmbH、Electro Optical System社を介して得られる、器具EOS M290を使用することができる。その場合にレーザーは、コンピュータ制御されて、粉末を充填した平面6の3Dモデルによって前もって定められた点上へ向けられる。
【0093】
プロセスは、3D-CADデータファイルを、たとえば各層が10と100マイクロメートルの間の厚みを有する層モデル内へ分配することによって開始され(図示せず)、その場合に各層の2Dイメージが形成される。このデータファイルフォーマットは、多くの層ベースの3Dプリント又はステレオリソグラフィーテクノロジーのために使用される、習慣的なSTLデータファイルである。その場合にこのデータファイルが、データファイル前処理するためのソフトウェアパケットによってロードされて、それが機械データとしてのパラメータ、値及び場合によっては支持構造を指定する。この機械データが、製品であるサーマルブロックを形成するために、SLM機械によって実装される。
【0094】
ここで例として説明される方法100において、霧化された細かい金属粉末の薄い層がコーティング機構を使用して基礎プレート(図示せず)上に粉末を充填された層6,通常は金属、として均一に分配され、その基礎プレートが垂直(Z)軸で移動する。これは、好ましくはチャンバ(図示せず)内で行われ、そのチャンバは特に厳しく管理された不活性ガス雰囲気を有している。レーザー及び/又はベースプレートが、x-y平面内で横方向に移動されて、それによってサーマルブロックの、この平面内で形成すべきセクションが生成される。サーマルブロックは、層毎に形成される。部分幾何学配置の各2Dディスクが、それぞれの層の内部の粉末及びその下に位置する層と共に連続的又は脈動する高出力レーザービームを用いて選択的な溶融によって溶融される。レーザーエネルギは、好ましくは粉末の完全な溶融(溶接)を可能にし、それによって固体の金属を形成するために、強度的に充分である。このプロセスは、部品ができあがるまで、層から層へ繰り返される。チャンバの領域内に材料出力プラットフォーム(図示せず)、建造プラットフォーム(図示せず)及びレーキ部材(図示せ)が存在しており、そのレーキ部材によって建造プラットフォームにわたって新しい粉末が移動される。
【0095】
図1に示すように、まずステップAにおいて、ベースセクション2が加工され、特に付加的に形成される。このベースセクション2は、ここでは直方形の平坦なベースプレート2である。ベースセクションは、あらかじめ形成された構成部品として、たとえば鋳造かつ/又はフライス加工された構成部品として、準備することもできる。ステップBとCにおいては、並んで自由に立つように配置された試料容器収容部4を有する試料容器セクション3が逐次かつ層毎に付加的に形成される。すべての試料容器収容部4は、サーマルブロック1の第1の実施例において、原理的に同一に成形されている。その場合に、この実施例において示されるサーマルブロックの試料容器収容部もしくはベースプレートにおいて、視覚的に検査する場合に、付加製造方法に起因する表面粒化もしくは粗さが存在することが、検出される。ステップDにおいて、サーマルブロック1は形成されているが、粉末形状の残留材料7がまだ試料容器セクション3の直方形の領域内で試料容器収容部4の間-及びその中-に配置されている。ステップEにおいて、残留材料7が除去されて、付加的に形成されたサーマルブロック1が個々に存在する。
【0096】
他のステップFにおいて、サーマルブロック1をさらに後処理することができる。好ましくはベースプレートの下側が、たとえばフライス加工によって平滑化され、同様に好ましくは、試料容器収容部4の中空円錐形状のセクションの内側が平滑化される。
【0097】
実施例に示される、アルミニウム合金からなるサーマルブロックを形成するために使用される商業的なSLM機械は、いわゆるEOS M290であって、粉末形状の初期材料はEOSアルミニウムAlSi10Mgである。
【0098】
図2aは、原理的にサーマルブロック1の形状に相当する、付加的に形成されたサーマルブロック11の写真を再現している。サーマルブロック11は、付加的に形成された平坦な直方体形状のベースプレート12を有しており、そのベースプレートは、そのベースプレート12と一体的に結合された試料容器収容部14を得るために、付加的な方法の間層毎に高くされる。ベースプレート12は、12の穴12aを有しており、それらはベースプレート12の主要平面に対して垂直にこのベースプレートを通って延びている。これらの穴は、固定ねじを収容するために用いられる。穴12aは、付加製造によって、あるいは付加的に形成されたサーマルブロックを穴あけを用いて後処理することによって、形成することができる。
【0099】
試料容器収容部14は、それぞれ同一に成形されている。それらはカップ形状を有している。カップの底は、それぞれベースプレート12によって形成される。カップ壁は、中空円錐形状である。中空円錐は開放しており、かつ上へ向かって(正のz方向)拡幅する。中空円錐は、ベースプレート12の主要平面に対して垂直となる軸線Aに対して回転対称に形成されている。軸線Aは、中空円錐に沿ってその対称中心を通って延びている。すべての試料容器収容部14の開口部は、すべてそれぞれ同一平面内に配置されている。これは、標準準拠のマイクロタイタープレートもしくはPCRプレートを収容することができるようにするための、標準配置である。上述したSBS標準を参照するよう指示する。しかし、試料容器収容部の高さは、原理的に様々であることができ、特に2つ、複数あるいはすべての試料容器収容部14の開口部が異なる高さにあってもよい。
【0100】
サーマルブロック11は、全体で96の試料容器収容部を有しており、それらは規則的な矩形の格子内に並べて配置されている。この格子の格子セルは、それぞれ正方形である。この格子配置は、SBS標準ANSI SLAS1-2004(R2012)(そこのセクション4.1と
図1を参照、8列及び12行を有する)に基づく96のマイクロタイタープレートの格子配置に相当する。
【0101】
図2aと2bには、それぞれラインLが示されており、それに関してデカルト座標が示されており、そのz軸はラインLの位置においてこのラインに対して平行に延びている。
図2a、2b(
図3aも)の表示が写真に基づくものであるので、試料容器収容部の軸線Aは互いに平行でないように見えるが、実際においてはそうなる。
図2a、2b、3aの表示は、アイソメトリックではない。
【0102】
図2bは、付加的に形成されたサーマルブロック21の写真の再現である。サーマルブロック21は、付加的に形成された、平坦な直方体形状のベースプレート22を有しており、それらは、ベースプレート22と一体的に結合された試料容器収容部24を得るために、付加的な方法の間層から層へ高くされている。ベースプレート22の主要平面は、図においてx-y平面に対して平行に延びている。
【0103】
このサーマルブロック21は、サーマルブロック11に比較して付加構造22a、22b、22c、23aを有しており、それらは、サーマルブロック21の同一の形成プロセス内で付加的に形成されている。ベースプレート22は付加構造22a、22b、22cを有している:ベースプレートは、すべての試料容器収容部のまわりを一周する、上へ向かって延びるウェブ22aを有する。これが、ベースプレート22の上側と共に槽を形成し、その中ですべての試料容器収容部24が位置決めされている。さらに、ベースプレート22の上側が補強構造22b、22cを有しており、それらは、サーマルブロック21をサーマルサイクラー(
図3bを参照)の取りつけ位置に固定するために用いられ、かつ、ベースプレートが基礎、たとえばベースプレートの下方に配置すべきペルティエ素子(図示せず)の冷却ボディに螺合及び/又は挟持される場合に、固定の力を吸収して、ベースプレート上に分配する。ベースプレートから上方へ張り出す補強形状は、(x-y平面で見て)クロス形状に形成されており、かつその中心に穴を有し、それらの穴がベースプレート22の主要平面に対して垂直にベースプレートを通って延びている。これらの穴は、固定ねじを収容するために用いられる。これらの穴は、付加的な形成によって、あるいは付加的に形成されたサーマルブロックを穴あけにより後処理することによって、形成することができる。
【0104】
上述した付加構造の1つ、複数又はすべては、原則的に本発明に係る各サーマルブロックにおいて設けることができる。
【0105】
試料容器収容部24は、それぞれ同一に成形されている。形状は、
図2aの試料容器収容部14に相当する。サーマルブロック11とは異なり、サーマルブロック21は、補強構造23aを有しており、その補強構造はここではベースプレートの完全に上方に、かつここではベースプレートなしで直接接触するように付加的もしくは試料容器セクション(23)と一体的かつ特にベースプレート22とも一体的に形成されている。
【0106】
補強構造23aは、全部で172の結合ウェブを有しており、それらを介して各試料容器収容部14が少なくとも1つの隣接する試料容器収容部14と一体的に結合されている。これら172の結合ウェブのうち、8*11=88がそれぞれx軸線もしくはベースプレートの第1の長手側に対して平行に延びており、かつこれら172の結合ウェブのうちの7*12=84がそれぞれy軸もしくはベースプレートの第2の長手側に対して平行に延びている。格子配置の全部で2*8+2*10=36の端縁側の試料容器収容部は、それぞれ2つの結合ウェブを介して隣接する試料容器収容部と一体的に結合されており、格子配置の6*10=60の内側に位置する試料容器収容部は、それぞれ4つの結合ウェブを介して隣接する試料容器収容部と一体的に結合されている。
【0107】
n行とm列からなる矩形の格子内に配置されている、全部でn*mの試料容器収容部を有するサーマルブロックから始まって、この実施例の補強構造23aの結合ウェブの好ましい配置は、以下のように抽象化される:この補強構造は、全部でn
*(m-1)+(n-1)
*mの結合ウェブを有しており、それらを介して各試料容器収容部が少なくとも1つの隣接する試料容器収容部と一体的に結合されている。これらのn
*(m-1)+(n-1)
*mの結合ウェブのうち、数n
*(m-1)の結合ウェブが、それぞれx軸もしくはベースプレートの第1の長手側に対して平行に延びており、かつこれら172の結合ウェブのうちの数(n-1)
*mがそれぞれy軸もしくはベースプレートの第2の長手側に対して平行に延びている。格子配置の全部で2
*n+2
*(m-1)の端縁側の試料容器収容部は、それぞれ2つの結合ウェブを介して隣接する試料容器収容部と一体的に結合されており、格子配置の(n-2)
*(m-2)の内側に位置する試料容器収容部は、それぞれ4つの結合ウェブを介して隣接する試料容器収容部と一体的に結合されている。
図2bと3a内に完全に示されるサーマルブロックについて、それぞれn=8、m=12である。
【0108】
補強構造23aの結合ウェブ(
図2bと3b)は、たとえば、
図4aと7aにさらに詳しく示されるように、成形し、かつ配置することができる。それらは、代替的に、それぞれ
図4b、4c、4d、7bにさらに正確に示されるように、成形し、かつ配置することができる。補強構造の結合ウェブは、ここでは軸xとy軸に対して平行に配置されているが、代替的及び/又は付加的にそれとは異なる推移で、たとえば、x軸もしくはy軸に対して90°とは異なる角度、特に45°の角度を有する(「対角線配置」とも称される)、ラインに対して平行に、設けることもできる。
【0109】
図3aは、サーマルサイクラーのフレーム29内に配置されている、
図2bに基づくサーマルブロック21を示している。
【0110】
図3bは、同一のサーマルサイクラー80を2回、一回は斜め前から、そして一回は斜め後ろから、斜視図で示している。左に示す正面図において、サーマルブロック91が見られ、そのサーマルブロックは、
図3aに示すフレーム29に相当するフレーム99内に配置されている。サーマルサイクラーの揺動カバーが、正面図においては開放した状態で示されており、背面図においてはこの揺動カバーは閉鎖されている。
【0111】
図3cに示すサーマルサイクラー80は、揺動カバー82を有しており、その揺動カバーはカバー82に揺動可能に配置されたカバーグリップ81を有しており、それを用いてユーザーがカバー82を開放/閉鎖することができ、またロック/アンロックすることもできる。
【0112】
完全にロックされた状態において、カバー内に配置されている加熱可能な押圧プレート83が、サーマルブロック84の試料容器収容部内に配置されている、1つ/複数の試料容器へ圧接力をもたらす。実施例に図示されているサーマルブロックは、その寿命全体の間損傷なしに圧力に耐えるために、すべて充分に安定している。
【0113】
サーマルブロック84として、ここで図の実施例において記述される、本発明に係る各サーマルブロックを用いることができる。サーマルブロック84は、その下側(見えない)において、ペルティエ素子と平面的に接触する。ペルティエ素子の下側も、金属の冷却ボディ又は他の冷却室と熱的に接触し、それによって、温度調節(閉ループ制御される加熱/冷却)の際にペルティエ素子が発生する排熱を周囲へ逃がすことができる。サーマルブロック84、ペルティエ素子、冷却ボディ及び場合によってはこれらのコンポーネントの間に配置されている、熱を伝達する媒体及び/又は構成部品の熱を伝達する面の均一な熱的接触を保証するために、サーマルブロック84、ペルティエ素子、冷却ボディ及び場合によってはそれらの間に配置されている、熱を伝達する媒体及び/又は構成部品は、固定システムによって互いに圧接されており、それがサーマルブロック84へ恒久的な圧力をもたらす。実施例に示されるサーマルブロックはすべて、その寿命が続く間損傷なしにこの恒久的な圧力に耐えるために、充分に安定している。
【0114】
サーマルサイクラー80は、電子的な制御装置(図示せず)によって制御される。この制御装置は、特にマイクロプロセッサと制御ソフトウェア(それぞれ図示せず)を有している。このサーマルサイクラーは、エネルギ供給もしくはデータ交換のための、種々のインターフェイスを有している:イーサネット(登録商標)85、ネット86、モードスイッチ87、CANout88、CANin89。保守フラップ91とタイププレート92も示されている。サーマルサイクラー80は、ここではタッチスクリーンと操作部材を備えた操作フィールド90を有する、ユーザーインターフェイス装置を介して、ユーザーによって操作可能かつ特にプログラミング可能である。サーマルサイクラーは、ユーザーによってパラメータ調節を介してプログラミングされ、もしくは、所望の温度調節プロトコルを自動的に実施させるために、制御装置のメモリに記憶されている適切なプログラムがユーザーによって選択される。この種の温度調節プロトコルにおいて、サーマルサイクラー80のサーマルブロック84は、温度サイクルにしたがって逐次もしくは周期的に温度調節される。この種の温度調節プロトコルは、特に、液体の溶液内にある物質の複製を実施するため、特にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施するために、用いられる。その場合にサーマルブロックの1つ、複数あるいはすべての試料容器収容部内に個別容器又は-それに応じて-試料プレート(マイクロタイタープレートもしくはPCRプレート)を配置することができ、その中に所定の体積の液体溶液(又は種々のこの種の溶液)が含まれる。サーマルサイクラーは次のように、すなわちこれらの個別容器の各々、もしくはこれらの試料容器収容部の各々が温度調節サイクルの各温度段階の間できる限り同一の温度で温度調節されるように、駆動可能である。本発明に係るサーマルブロックは、好ましくは、その試料容器収容部の各々が温度調節サイクルの各温度段階の間できる限り同一の温度で温度調節されるように、成形され、かつ形成されている。そのために、特にサーマルブロックの一体的な形成と特にその、補強構造もしくは温度調節構造を有する特別な形態が用いられる。
【0115】
補強構造と称されるのは、サーマルブロックを機械的に安定させる、サーマルブロックの構造である。温度調節構造と称されるのは、サーマルブロック内もしくはその中に配置されている試料容器内で所望の熱伝達もしくは所望の温度分布を達成し、もしくは最適化する、サーマルブロックの構造である。補強構造は、温度調節構造として用いることもでき、かつその逆も同様である。補強構造もしくは温度調節構造は、構造パラメータによって一義的に定めることができる。このようにして、構造パラメータ及びそれに伴ってサーマルブロックの形状は、本発明に係るシミュレーション方法もしくはサーマルブロック84の形状構造を計算するための、本発明に係る方法において求め、もしくは最適化することができる。
【0116】
図4aは、サーマルブロック21の一部を斜視図で示している。そこで、符号「1」でマークされた領域内に結合セクションもしくは補強構造23aの結合ウェブ25が見られ、それが2つの隣接する試料容器収容部24を互いに結合し、かつそれらと一体的に形成されている。これら1つもしくは複数の結合ウェブ25は、補強構造として、かつ同時に温度調節構造として用いられる。シミュレーション方法によって、特に、結合ウェブ25を用いて特に隣接する試料容器の間で熱が分配可能であることが、明らかにされた。これらの結合ウェブは、ベースプレートと直接は結合されていない。それらは、周囲との熱交換が行われることによって、試料容器収容部から熱を引き出す。この効果は、結合ウェブの表面大きさに伴って増大する。したがってこれらの結合ウェブは、より熱い試料容器収容部を冷却し、かつサーマルブロック内の温度均質性を改良するのに、適している。最適な熱伝達、特に最適な熱引き出しのための構造パラメータは、特に結合ウェブの厚みであり、かつベースプレートに対する構造の最小の間隔である。
【0117】
試料容器収容部の間のこれらの結合ウェブの他の利用は、それがサーマルブロックに必要な安定性と強度を与えることである。結合ウェブ25は、ここでは、サーマルブロックの重心からできるだけ遠く離隔しており、したがってより小さくかつ/又はより薄く設計することができる。他の利点は、ここでは小さい結合ウェブの熱的影響が比較的小さいことである。熱は、まず、試料容器収容部を通って流れなければならず、したがって結合ウェブ25を加熱するのは最後になる。
【0118】
製造設計する場合に、好ましくは、オーバーハングの幾何学配置に、3Dプリントのために許容される構築角度が設けられるように(通常、角度>30-45°)、留意される。
【0119】
図4bは、サーマルブロック21’の一部を斜視図で示しており、それは、結合ウェブの形状と位置を別にして、サーマルブロック21と同様に構築されている。そこで、符号「2」によってマークされた領域内に、結合セクションもしくは補強構造23aの結合ウェブ26が見られ、それが2つの隣接する試料容器収容部24を互いに結合し、かつそれらと一体的に形成されている。これら1つもしくは複数の結合ウェブ26は、補強ウェブとして、かつ同時に温度調節ウェブとして用いられる。
【0120】
試料容器収容部24の間の結合ウェブ26は、ここではベースプレート22とも結合されている。それが、より熱い間隙からの熱が試料容器収容部へ案内され、したがって温度均質性を増大させることができる、という効果を有している。構造パラメータは、ここでは、結合の厚み及び一般的な形状である(可変の直径をもって面取りされ、可変の角度をもって角張り/三角形状である:
図4c内の結合ウェブ26’と
図4dの結合ウェブ26”を参照)。
【0121】
図5aは、サーマルブロック31の一部を斜視図で示している。サーマルブロック31の試料容器収容部24a、24b、24c、24d、24eと24fの、角部に位置するもの(24a)、もしくは端縁に位置するもの(24b、24c、24d、24e)と内側に位置するもの(24f)は、ここでは基部セクション27を有しており、それらはそれぞれ異なるように形成されている。特に、角部に位置する試料容器収容部24aの基部セクション27は、端縁に位置するもの(24b、24c、24d、24e)の基部セクション27及び内側に位置する試料容器収容部(24f)よりも大きい寸法を有している。特に端縁に位置する試料容器収容部24b、24c、24d、24eの基部セクション27は、内側に位置する試料容器収容部24fの基部セクション27よりも大きい寸法を有している。これは特に、x-y平面に対して垂直の平面内で見て、基部セクションの曲げ半径によって得られ、それは、角部に位置する試料容器収容部24aについて、角部に位置しない他の試料容器収容部についてよりも大きい。サーマルブロックの4つの角部領域の1つが示されているが、すべてが同様に形成されている。シミュレーションベースで最適化するための可能な構造パラメータは、特に寸法及び/又は1つの基部セクション又は複数あるいはすべての基部セクションの曲げ半径である。
【0122】
図5bは、第7の実施例に基づく本発明に係るサーマルブロックの一部を斜視図で示している。ここでは基部セクションの代わりに、実質的に中空円錐状の試料容器収容部の材厚が変化している。特に角部に位置する試料容器収容部は、端縁に位置するもの24b’、24c’、24d’及び内側に位置する試料容器収容部24f’よりも大きい材厚を有している。特に端縁に位置する試料容器収容部24b、24c、24d、24eは、内側に位置する試料容器収容部24fよりも大きい材厚を有している。試料容器収容部の材厚を個別に厚くすることにより、かつそれによって熱の流れを個別に変化させることができることにより、サーマルブロックの均質性とスピードに正の作用を与えることができる。シミュレーションベースで最適化するための可能な構造パラメータは、特にサーマルブロックの個々の、複数のあるいはすべての試料容器収容部の材厚である。
【0123】
図6aは、第8の実施例に基づいて、本発明に係るサーマルブロックの一部を側方の横断面で示している。特にベースプレート42のセクション及び特に試料収容部44が見られ、その中に円錐状の試料容器49(あるいは外壁の少なくとも円錐形状のセクションを有する試料容器)が挿入されており、その試料容器が試料容器収容部40の内側と熱的-物理的に接触している。特に、下側の終端セクションもしくは基部セクション44aと中空円錐形状の上方の壁セクション44bが示されている。試料容器収容部40は、上方の壁セクション44b内で、下方の終端セクションもしくは基部セクション44a内よりも小さい材厚を有しており、ここでは試料容器収容部44の内側容積もその基部セクション内へ延びている。試料容器収容部44は、ここでは長手軸Aに対して回転対称に形成されている。上述した高さと厚みが、構造パラメータである。
【0124】
図6bは、第9の実施例に基づいて、本発明に係るサーマルブロックの一部を側方の横断面で示している。特にベースプレート52のセクション及び特に試料容器収容部54が見られ、その中に円錐形状の試料容器49が挿入可能であって、それによってこの試料容器を試料容器収容部40の円筒状の内側と熱的-物理的に接触させることができる。試料容器収容部50は、ここでは長手軸Aに対して回転対称に形成されている。特に、下方の終端セクションもしくは基部セクション54aと中空円錐形状の上方の壁セクション54bが示されている。試料容器収容部40は、上方の壁セクション54b内で、下方の終端セクションもしくは基部セクション54a内よりも小さい材厚を有しており、ここでもその基部セクション内へ試料容器収容部54の内側容積が延びている。
【0125】
試料容器収容部54は、上方の壁セクション54b内に、異なる材厚を有する少なくとも2つの領域54b’、54”を有しているので、壁の全部で3つの特徴的な壁部分セクションが生じる:基部セクション54a内に、下方の壁部分セクション54_1が認識可能であり、それは、-長手軸Aに沿って平均して-概して他の壁部分セクション54_2、54_3よりも大きい材厚を有している。中央の壁部分セクション54_2の材厚は、ここでは実質的に一定であり、かつ下方の壁部分セクション54_1内の材厚よりも小さいが、上方の壁部分セクション54_3内の厚みよりも大きい。壁部分セクションの外側の間の移行は、好ましくはエッジなしであるが、段階的及び/又はエッジありでもよい。内側においては、壁部分セクションは、長手方向において連続的に上方へ向かって、開放する円錐の形状に従う。これらの壁部分セクションは、共通の充填高さセクションとしての目的を満たし、壁部分セクション54_3は、ずっと上で説明したように、からセクションとしての目的を満たす。上述した高さと厚みが、構造パラメータである。
【0126】
図7aは、ベースプレート22と試料容器収容部24とを有する、サーマルブロック21の一部を側方の横断面図で示している。結合ウェブ25は、隣接する試料容器収容部24を結合しており、かつ付加製造に基づいてそれらと一体的に結合されている。結合ウェブ25は、ベースプレート22と直接結合されておらず、むしろから空間25’によってベースプレートから分離されている。試料容器収容部24の全体高さはHであり、下方の壁セクション24aの高さはh1、上方の壁セクション24bの高さはh2、結合ウェブ25の最大の高さはh3、結合ウェブ25の最小の高さはh4である。これらの高さは、それぞれ長手軸Aに沿って測定されている。結合ウェブの厚みは、結合ウェブ25の面に対して垂直に、ここではy軸に沿って、測定される。結合ウェブ25は、それぞれエッジなしで隣接する試料容器収容部24の外壁へ移行しており、結合ウェブ25の厚みは、特にこの移行領域内で-しかしそこだけでなく-変化し、特にそこで増大することができる。上述した高さと厚みが、構造パラメータである。好ましくはh3>=0.5
*H、特にh3<=Hである。好ましくはh4=0.5
*h3(この値は、h3の好ましくは±5%の領域を有する)、h3<=0.5
*H、h3<=0.3
*H、h3>=0.1
*Hである。結合ウェブの上方のエッジは、好ましくは、平面B内に、あるいはその下方に平行に、延びており、その平面内にはサーマルブロックの試料容器収容部24の開口部も配置されている。結合ウェブ25の主要平面(したがって2つの最大の面)は、ベースプレート22の主要平面に対して垂直、ここでは平面z-xあるいは(
図7aには示されていない)平面z-yに対してて平行に、延びている。結合ウェブの下方のエッジは、x軸に沿って2つの側から結合ウェブの中心線Cの方向へ立ち上がっており、その中心線は長手軸Aに対して平行に延びている。この下端縁の、互いに近づくように延びる2つのセクションが角度αで出合い、その場合に好ましくは90°<=α<=180°、好ましくは110°<=α<=160°である。上述した高さ、厚み及び角度αが、構造パラメータである。
【0127】
図7bは、ベースプレート22と試料容器収容部24とを有する、サーマルブロック21の一部を側方の横断面図で示している。結合ウェブ26が隣接する試料容器収容部24を結合しており、かつ加算的形成に基づいてそれらと一体的に結合されている:結合ウェブは、さらに、ベースプレート22と直接かつ一体的に結合されている。試料容器収容部24の全体高さはHであり、下方の壁セクション24aの高さはh1、上方の壁セクション24nの高さはh2、結合ウェブ26の最大の高さはh3であり、結合ウェブ26の最小の高さはh4である。これらの高さは、それぞれ長手軸Aに沿って測定されている。結合ウェブの厚みは、結合ウェブ26の面に対して垂直に、ここではy軸に沿って、測定される。結合ウェブ26は、それぞれエッジなしに、隣接する試料容器収容部24の外壁へ、かつ/又はベースプレート22へ移行しており、結合ウェブ26の厚みは、特にこの移行領域内で-しかし必ずしもそこだけではなく-変化しており、特にそこで増大している。ここで挙げた高さと厚みが、構造パラメータである。好ましくはh3>=0.5
*H、特にh3<=Hである。好ましくはh4=0.5
*h3(この値は好ましくはh3の±5%の領域を有する)、h3<=0.5
*H、h3<=0.3
*H、h3>=0.1
*Hである。結合ウェブの下方のエッジは、好ましくはベースプレート22の上側に接して延びている。結合ウェブ26の主要面(したがって2つの最大の面)は、ベースプレート22の主要平面に対して垂直に、ここでは平面z-xに対して、あるいは(
図7aには示されていない)平面z-yに対して平行に、延びている。結合ウェブは、ここでは、結合ウェブ26の上方のエッジと平面Bとの間にから空間を有している。結合ウェブの上方のエッジは、x軸に沿って2つの側から結合ウェブの中心線Cの方向に下降し、その中心線は長手軸Aに対して平行に延びている。この上端縁の2つの互いに近づくように延びるセクションが角度αで出合い、その場合に好ましくは90°<=α<=180°、好ましくは110°<=α<=160°である。ここで挙げた高さ、厚み及び角度αが、構造パラメータである。
【0128】
図8aは、第10の実施例に基づいて、本発明に係るサーマルブロック101の一部を斜視図で示しており、その場合にこの部分は、本発明に係るサーマルブロックの形状構造をシミュレートし、もしくは計算するための例としての方法を実施するために用いられる。これらの計算は、ここでは、バージョン2019R1と2019R2のANSYSを用いて実施された。図は、計算に用いられる、最初に空気を充填したユニットセル(boundary box)を、サーマルブロックの格子形状の試料容器収容部の内部領域内で示しており-端縁領域内ではユニットセルの構造は、好ましくは異なる。金属の試料容器収容部103の形状は、ここではサーマルブロック1と似せて示されているが、その場合に試料容器収容部は上方へ向かって、ベースプレート102に対して平行に延びるプレート106によって結合されており、そのプレートはそれ自体が穴あきプレートであって、その穴内へ試料容器収容部の開口部が連通している。本発明に係るサーマルブロックの形状構造をシミュレートし、もしくは計算するための方法を実施するための仮定が、そこに示されている:試料容器収容部内に円錐状の形状を有するプラスチック容器が配置されており、そのプラスチック容器が試料容器収容部の内側に物理的かつ熱的に接触する。プラスチック容器内には、所定の充填高さまで水がある。ベースプレートの下側に、5、208Wを有する一定の熱流が作用する。
【0129】
図8bは、計算された熱イメージを示しており、それが側方の横断面図において
図8aに基づくサーマルブロック101の部分とそれにおいて存在する熱分布を示しており、その熱分布は、サーマルブロックの形状構造をシミュレートもしくは計算するための本発明に基づく例としての方法において生じる。下方の終端領域b1内で、平面x-yに対して平行に最大の温度の幅広い広がりが生じることが、認識できる。したがってこの領域には、温度調節速度を高め、もしくは最大にするために、金属の基部セクションを設けることができる。水面の上方に位置するセクションb2は、同様に著しく加熱される(からセクション):しかしそこには試料は配置されていないので、この熱は利用されない。しかしからからセクションは、各回とも温度調節されなければならない。したがって好ましくは、試料容器収容部の寸法は、からセクション内で減少され、もしくは最小にされる。これは、すでに示したように、材厚の減少により、あるいはこのセクションを局所的に薄くし、あるいは多孔にすることによって行うことができる。それによってサーマルブロックの「寄生」熱容量が減少され、それによってサーマルブロックはより迅速に温度調節される。
【0130】
図9aは、計算された熱イメージを示しており、それは、側方の横断面図において、第11の実施例に基づく本発明に係るサーマルブロック111の部分とそれにおいて存在する熱分布を示しており、その熱分布は、サーマルブロックの形状構造をシミュレートもしくは計算するための本発明に係る、例としての方法において生じる。試料容器収容部113と熱イメージは、
図8a、8bのそれと同様である。温度調節制御の枠内で測定のための電子的な開ループ制御もしくは閉ループ制御装置によって利用される、サーモセンサ114が、ここでは位置P0においてベースプレート112に直接配置されている。
図9bは、
図9aに対して修正された、サーマルブロック112'の配置を示しており、それにおいて付加的な構造として、ベース115が、ベースプレート112’から上方へ張り出す垂直の隆起部として形成されている。もたらされる熱イメージとの比較によって、ベース115の上側が最大の温度の領域から張り出して、あまり強く加熱されない領域内へ連通し、その領域の温度は、むしろ水の試料s内の温度に似ることが、明らかになる。この種の配置において、さらに信頼でき、かつより正確な電子的温度閉ループ制御が実現される。温度制御の枠内で測定のために電子的な開ループ制御もしくは閉ループ制御装置によって利用される、サーモセンサ114’は、
図9bにおいてはベースプレートの上方の位置P1においてベース115に配置されている。
【0131】
上で挙げた例の試料容器収容部と補強構造もしくは温度調節構造の特徴は、唯一のサーマルブロック内でも組み合わされる。ここに図示されない、組み合わせ可能又は別々の、本発明に係るnのサーマルブロックにおける好ましい他の特徴は、それぞれ以下のものである:
a.試料容器収容部の段付きの深さ:端縁側の試料容器収容部は、内側に位置する試料容器収容部に比較して異なる試料容器収容部の深さを有することができる。この1つ/複数の深さは、構造パラメータとなり得る。
b.ベースプレートの厚みを個別に増す:ベースプレート上に付加的な材料を重ねて位置決めすることにより、局所的な熱容量を調節して、均質性を向上させることができる。そのためにベースプレートは、少なくとも2つの異なるプレート領域を有し、それらがそれぞれ異なる(一定又は平均的な)プレート領域厚みを有している。プレート領域の大きさ(体積、面の広がり)とプレート領域厚みは、構造パラメータとなり得る。
c.ベースプレートの個別の切り抜き:ベースプレートを局所的に切り抜くことによって、熱量量をさらに下げることができる。これが、スピードと均質性を向上させることができる。そのためにベースセクションもしくはベースプレートは、少なくとも1つ、2つ又は複数もしくは多数の切り抜きを有している。これらはそれぞれ異なる(一定又は平均的な)切り抜き深さを有することができる。切り抜きの大きさ(体積、面の広がり)及び切り抜き深さは、構造パラメータとなり得る。
d.加算的方法のデザインが自由であることにより、サーマルブロックのシールフレーム/収容フレームもベースプレートと組み合わせて、熱容量をさらに低下させることができる。
e.ベースプレートに最適に配置され、もしくは分配される格子構造を設けることを介して結合力を吸収することによる、固定構造、固定スリーブ-固定ウェブ/固定ベースの熱的影響の減少。固定構造は、特にサーマルサイクラー内にサーマルブロックを固定するために用いられる。
【0132】
図10aは、実験室温度調節装置内に、特にPCRサーマルサイクラー内に、実験室試料用器を収容して温度調節するための、サーマルブロックを形成する方法を図式的に示しており、方法は以下のステップを有する:
・付加製造方法を用いてサーマルブロックを形成する(201);
・付加製造方法を用いて形成されたサーマルブロックを、後処理方法により、特に加熱、コーティング、研磨及び/又は切削加工によって、後処理する(202)。
【0133】
図10bは、サーマルブロックの形状構造を計算する方法を図式的に示しており、そのサーマルブロックは、実験室温度調節装置内、特にPCRサーマルサイクラー内で実験室試料用器を収容して温度調節するために用いられ、かつ付加製造方法によって形成可能であり、その場合にサーマルブロックの形状構造は、実施例に基づいて、構造パラメータにより定義可能であり、実施例は以下のステップを有する:
・少なくとも1つの構造パラメータを変化させる(301);
・少なくとも1つの構造パラメータにしたがって、サーマルブロックの少なくとも1つのセクションを通る熱流をシミュレートするシミュレーション方法を実施する(302);
・このように構造的に定められたサーマルブロックを付加製造ために、シミュレーション方法にしたがって少なくとも1つの構造パラメータを選択する(303)。
【0134】
同一のサーマルサイクラー内又は他の商業的に得られるサーマルサイクラー(メーカー:独国、Eppendorf AG)内に組み込まれた他のサーマルブロックに比較して、3Dプリントによって形成されたサーマルブロック21(”MC X50 3D-Block)の速度利点(最大の加熱率もしくは冷却率)は、比較実験において以下のように生じる:
【表1】
【国際調査報告】