IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーニング インコーポレイテッドの特許一覧

特表2023-504491薄型ウェハの振動・環境絶縁用チャンバ
<>
  • 特表-薄型ウェハの振動・環境絶縁用チャンバ 図1A
  • 特表-薄型ウェハの振動・環境絶縁用チャンバ 図1B
  • 特表-薄型ウェハの振動・環境絶縁用チャンバ 図2
  • 特表-薄型ウェハの振動・環境絶縁用チャンバ 図3
  • 特表-薄型ウェハの振動・環境絶縁用チャンバ 図4
  • 特表-薄型ウェハの振動・環境絶縁用チャンバ 図5
  • 特表-薄型ウェハの振動・環境絶縁用チャンバ 図6
  • 特表-薄型ウェハの振動・環境絶縁用チャンバ 図7
  • 特表-薄型ウェハの振動・環境絶縁用チャンバ 図8
  • 特表-薄型ウェハの振動・環境絶縁用チャンバ 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-03
(54)【発明の名称】薄型ウェハの振動・環境絶縁用チャンバ
(51)【国際特許分類】
   G01B 9/02 20220101AFI20230127BHJP
【FI】
G01B9/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022532626
(86)(22)【出願日】2020-12-01
(85)【翻訳文提出日】2022-08-01
(86)【国際出願番号】 US2020062634
(87)【国際公開番号】W WO2021113194
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】62/942,947
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】フランコヴィッチ,ジョン ウェストン
(72)【発明者】
【氏名】リー,クリストファー アラン
(72)【発明者】
【氏名】ミレッキア,マシュー ロナルド
【テーマコード(参考)】
2F064
【Fターム(参考)】
2F064EE05
2F064KK01
(57)【要約】
本明細書に記載の測定キャビティは、第1の開放端及び第2の開放端を有する円筒形チャンバと、円筒形チャンバの第1の開放端を覆う第1のキャップ及び円筒形チャンバの第2の開放端を覆う第2のキャップと、円筒形チャンバ内に配置され、円筒形チャンバに結合されるウェハホルダと、を備える。第1のキャップ及び第2のキャップは円筒形チャンバを密封し、第1のキャップが第2のキャップに剛結合されている。円筒形チャンバは、測定キャビティにおける60Hzの印加力Fに対する伝達率が10分の1以下となるように設定された質量m、剛性k、及び減衰定数cを有し、測定キャビティが300Hz超の固有振動数を有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の開放端及び第2の開放端を有する円筒形チャンバと、
前記円筒形チャンバの前記第1の開放端を覆う第1のキャップ及び前記円筒形チャンバの前記第2の開放端を覆う第2のキャップであって、前記第1のキャップ及び前記第2のキャップが前記円筒形チャンバを密封し、前記第1のキャップが前記第2のキャップに剛結合されている、第1のキャップ及び第2のキャップと、
前記円筒形チャンバ内に配置され、前記円筒形チャンバに結合されるウェハホルダであって、60Hzの印加力Fに対して第1の伝達率|x/F|を有するウェハホルダと、
を備える測定キャビティであって、
前記円筒形チャンバは、前記測定キャビティにおける60Hzの前記印加力Fに対する第2の伝達率|x/F|が、前記第1の伝達率|x/F|の10分の1以下となるように設定された質量m、剛性k、及び減衰定数cを有し、
前記測定キャビティが300Hz超の固有振動数を有している、測定キャビティ。
【請求項2】
前記第1のキャップ、前記第2のキャップ、又は、前記第1のキャップ及び前記第2のキャップの両方が、1以上の干渉測定又は光学測定を行うことができる参照光学系を備える、請求項1記載の測定キャビティ。
【請求項3】
前記第1のキャップ及び前記第2のキャップが、1以上の干渉測定又は光学測定を行うことができる参照光学系を備える、請求項2記載の測定キャビティ。
【請求項4】
前記参照光学系が、ベゼル内に取り付けられたガラス基板を備える、請求項2又は3記載の測定キャビティ。
【請求項5】
前記ウェハホルダが前記円筒形チャンバに剛結合されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の測定キャビティ。
【請求項6】
前記ウェハホルダが、ウェハの第1の面及び第2の面に接触することなく該ウェハを保持するように構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の測定キャビティ。
【請求項7】
前記円筒形チャンバが、前記第1のキャップの第1の表面と前記第2のキャップの第1の表面との間に隙間を設けている、請求項1~6のいずれか1項に記載の測定キャビティ。
【請求項8】
前記円筒形チャンバが、アルミニウム系の基板やステンレス鋼で形成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の測定キャビティ。
【請求項9】
前記第1のキャップ及び前記第2のキャップが、互いを変形させない構成で取り付けられている、請求項1~8のいずれか1項に記載の測定キャビティ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の測定キャビティを備える干渉計。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、2019年12月3日を出願日とする米国仮特許出願62/942,947号の米国特許法第119条(e)に基づく優先権の利益を主張するものであり、そのすべての内容は参照することによって本明細書の一部をなすものとする。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、概して光学計測に関し、より詳細にはフィゾー(Fizeau)干渉計における薄型ウェハの振動・環境絶縁用の装置に関する。
【背景技術】
【0003】
干渉計は、参照面からの反射光と被検面からの反射光の間に生じる干渉縞を利用して、様々な種類の光学部品の表面を高精度に測定することができる。このような装置として、様々な光学面、特に比較的大きな直径を持つ球面や平面の測定に使用することができるフィゾー干渉計がある。
【0004】
特に、薄型大径のウェハは、床の振動や気流、音響、温度、湿度などの外部からの影響を受けやすい。しかし、一部の産業では、ウェハの測定にサブナノメータの解像度が求められる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、振動力や環境からの力から薄型ウェハを絶縁する干渉計が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示される第1の態様による測定キャビティは、第1の開放端及び第2の開放端を有する円筒形チャンバと、円筒形チャンバの第1の開放端を覆う第1のキャップ及び円筒形チャンバの第2の開放端を覆う第2のキャップと、円筒形チャンバ内に配置され、円筒形チャンバに結合されるウェハホルダと、を備える。第1のキャップ及び第2のキャップは円筒形チャンバを密封し、第1のキャップが第2のキャップに剛結合されている。ウェハホルダは、60Hzの印加力Fに対して第1の伝達率|x/F|を有する。円筒形チャンバは、測定キャビティにおける60Hzの印加力Fに対する第2の伝達率|x/F|が、第1の伝達率|x/F|の10分の1以下となるように設定された質量m、剛性k、及び減衰定数cを有し、測定キャビティが300Hz超の固有振動数を有している。
【0007】
本明細書に開示される第2の態様による測定キャビティは、第1のキャップ、第2のキャップ、又は、第1のキャップ及び第2のキャップの両方が、1以上の干渉測定又は光学測定を行うことができる参照光学系を備える、第1の態様に係る測定キャビティを含む。
【0008】
本明細書に開示される第3の態様による測定キャビティは、第1のキャップ及び第2のキャップが、1以上の干渉測定又は光学測定を行うことができる参照光学系を備える、第1又は第2の態様に係る測定キャビティを含む。
【0009】
本明細書に開示される第4の態様による測定キャビティは、参照光学系が、ベゼル内に取り付けられたガラス基板を備える、第1~第3の態様のいずれかに係る測定キャビティを含む。
【0010】
本明細書に開示される第5の態様による測定キャビティは、ベゼルが金属で形成されている、第4の態様に係る測定キャビティを含む。
【0011】
本明細書に開示される第6の態様による測定キャビティは、ベゼルが円筒形チャンバに剛結合されている、第4又は第5の態様に係る測定キャビティを含む。
【0012】
本明細書に開示される第7の態様による測定キャビティは、ベゼルが円筒形チャンバにボルト留めされている、第6の態様に係る測定キャビティを含む。
【0013】
本明細書に開示される第8の態様による測定キャビティは、エポキシによってベゼル内にガラス基板を密封する、第4~第7の態様のいずれかに係る測定キャビティを含む。
【0014】
本明細書に開示される第9の態様による測定キャビティは、ウェハホルダが円筒形チャンバに剛結合されている、上記の態様のいずれかに係る測定キャビティを含む。
【0015】
本明細書に開示される第10の態様による測定キャビティは、ウェハホルダが円筒形チャンバに1つ以上のばねを介して結合されている、第1~第8の態様のいずれかに係る測定キャビティを含む。
【0016】
本明細書に開示される第11の態様による測定キャビティは、ウェハホルダが、ウェハの第1の面及び第2の面に接触することなく該ウェハを保持するように構成されている、上記の態様のいずれかに係る測定キャビティを含む。
【0017】
本明細書に開示される第12の態様による測定キャビティは、第1のキャップが第2のキャップに締め付けによって剛結合されている、上記の態様のいずれかに係る測定キャビティを含む。
【0018】
本明細書に開示される第13の態様による測定キャビティは、第1のキャップが第2のキャップに1つ以上のボルトを介して剛結合されている、第1~第11の態様のいずれかに係る測定キャビティを含む。
【0019】
本明細書に開示される第14の態様による測定キャビティは、円筒形チャンバが、第1のキャップの第1の表面と第2のキャップの第1の表面との間に隙間を設けている、上記の態様のいずれかに係る測定キャビティを含む。
【0020】
本明細書に開示される第15の態様による測定キャビティは、円筒形チャンバが、金属又は金属系の基板で形成されている、上記の態様のいずれかに係る測定キャビティを含む。
【0021】
本明細書に開示される第16の態様による測定キャビティは、円筒形チャンバが、アルミニウム系の基板やステンレス鋼で形成されている、上記の態様のいずれかに係る測定キャビティを含む。
【0022】
本明細書に開示される第17の態様による測定キャビティは、第1のキャップ及び第2のキャップが、互いを変形させない構成で取り付けられている、上記の態様のいずれかに係る測定キャビティを含む。
【0023】
本明細書に開示される第18の態様によれば、干渉計は、上記の態様のいずれかに係る測定キャビティを備えている。
【0024】
第19の態様によれば、干渉計は、第1のキャップ及び第2のキャップのいずれか一方から測定を行う、第18の態様に係る干渉計を含む。
【0025】
第20の態様によれば、干渉計は、第1のキャップ及び第2のキャップのいずれか一方から測定を行う複式干渉計である、第18の態様に係る干渉計を含む。
【0026】
以下の詳細な説明において、さらなる特徴及び利点を記載する。下記のさらなる特徴及び利点は、当業者であれば、ある程度はその説明からただちに理解するであろうし、あるいは、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付の図面を含む本明細書に記載の実施形態を実施することによって理解するであろう。
【0027】
上述の概略的な説明及び以下の詳細な説明はいずれも、種々の実施形態を説明するものであり、特許請求する主題の性質及び特徴を理解するための概観又は枠組みを提供することを意図するものであることを理解されたい。また、添付の図面は、種々の実施形態のさらなる理解のために添付するものであり、本明細書に組み込まれ、その一部をなすものとする。図面は、本明細書に記載の種々の実施形態を例示的に示すものであり、以下の詳細な説明と合わせて、特許請求する主題の原理及び作用を説明するためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1A】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る測定キャビティを備える複式干渉計の図
図1B】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る測定キャビティの図であり、測定キャビティ内に干渉縞を生成させる複数の反射を示す図
図2】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る、ウェハを中に入れた状態の測定キャビティの断面図
図3】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る測定キャビティのキャップの形態をとることができる光学参照の上面図
図4】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る測定キャビティの断面図であり、ウェハを中に入れてばね装着式ウェハホルダで保持した状態を示す図
図5】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る測定キャビティの上面図であり、ウェハホルダが見えるように第1のキャップを外した状態を示す図
図6】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る測定キャビティの質量を変化させた場合の伝達率(Y軸)を周波数(X軸,単位:ヘルツ(Hz))の関数で示したボード線図
図7】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る測定キャビティの剛性を変化させた場合の伝達率(Y軸)を周波数(X軸,単位:ヘルツ(Hz))の関数で示したボード線図
図8】本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る測定キャビティの減衰性を変化させた場合の伝達率(Y軸)を周波数(X軸,単位:ヘルツ(Hz))の関数で示したボード線図
図9】ウェハマウント単体と、ウェハマウントを本明細書に図示、説明する1つ以上の実施形態に係る測定キャビティに入れた状態の伝達率(Y軸)を周波数(X軸,単位:ヘルツ(Hz))の関数で示したボード線図
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、添付の図面に例示される種々の実施形態について詳細に説明する。図面全体を通して、同一又は類似の箇所は、可能な限り同一の参照番号を用いて示す。
【0030】
本明細書において、「約(about)」ある特定の値以上、「約」ある特定の値~「約」他の特定の値、又は、「約」該他の特定の値以下、という形で範囲を表現する場合がある。このような表現で範囲を表す場合、ある特定の値以上、ある特定の値~他の特定の値、又は、該他の特定の値以下、を含む他の実施形態が存在する。同様に、ある値の前に「約」をつけてその値を近似値として表現する場合、その特定の値自身によって構成される他の実施形態も存在することが理解されるであろう。また、各範囲の両端点が、互いに相関する意味とともに互いに独立した意味も有していることも理解されるであろう。
【0031】
本明細書において、方向性のある用語(例えば、「上へ(up)」、「下へ(down)」、「右(right)」、「左(left)」、「前(front)」、「後(back)」、「上(top)」、「下(bottom)」など)は、図面を参照したものに過ぎず、絶対的な向きを意味することを意図するものではない。
【0032】
特に明記しない限り、本明細書に記載のいかなる方法も、各ステップ(工程)を特定の順序で実施することを要請していると解釈されることを意図するものではなく、また、いかなる装置に関しても、特定の向きを要請すると意図するものではない。したがって、方法クレームにおいてそのステップの順序を実際に記載している場合、又は、各ステップが特定の順序に限定される旨の記載が請求の範囲又は発明の詳細な説明において他に明確になされている場合、又は、装置の構成要素の特定の並び順又は特定の向きを記載している場合を除き、順序や向きが推測されることは、いかなる点においても意図していない。これは、各ステップの並び、操作の流れ、構成要素の並び順、又は構成要素の向きについての論法の問題、文法的な構成又は句読点から導き出される通俗的な意味、本明細書に記載の実施形態の数又は種類など、解釈の根拠となり得るあらゆる非明示的事項に対して該当する。
【0033】
本明細書において、「a」、「an」、及び「the(その/前記)」で示す単数形は、文脈上明らかにそうでない場合を除き、対応する複数形に対する言及も包含するものとする。したがって、例えば、ある構成要素を冠詞「a」で導く表現は、文脈上明らかにそうでない場合を除き、その構成要素を2つ以上有する態様も包含する。
【0034】
また、「で形成される(formed from)」という用語は、「を備える(comprises)」、「~から実質的になる(consists essentially of)」、「からなる(consists of)」のうちの1つ以上を意味することができる。例えば、ある構成要素が特定の材料「で形成される」場合、当該構成要素は、特定の材料を備える、本質的に特定の材料のみからなる、特定の材料のみからなる、のいずれであってもよい。
【0035】
図1Aは、種々の実施形態に係る干渉計10を示す図である。図1Aに示す干渉計10は、ウェハ106の互いに反対側の面である第1の面16と第2の面18とを測定するための上側干渉計12と下側干渉計14とを備える複式干渉計である。なお、図1Aでは、干渉計10を、第1の面16及び第2の面18からウェハ106を測定するように構成された複式干渉計として示しているが、ウェハ106を一面から測定する単式の干渉計を含む他の種類の干渉計も企図することができる。さらに、本明細書では、干渉計10を使用してウェハ106を測定することが記載されているが、干渉計12,14を伝播する帯域の周波数を伝達しない材料で作られているか、又は上記帯域の周波数が規則性を持って伝達され得ない十分な散乱性を有する、任意の不透明な被検部品の測定に、干渉計10を使用できることが企図されている。
【0036】
上側干渉計12は、第1の照明器22を備える。第1の照明器22は、コヒーレントな第1の測定ビーム46を出力するための通常の光源26と、ビームシェイパ30と、を備えることができる。下側干渉計14は、第2の照明器24を備える。第2の照明器24は、コヒーレントな第2の測定ビーム48を出力するための通常の光源28と、ビームシェイパ32と、を備えることができる。例えば、光源26,28は、半導体ダイオードレーザとすることができ、ビームシェイパ30,32は、測定ビーム46,48の配光を変化させるためのビームエキスパンダとビームコンディショナとを備えることができる。
【0037】
上側干渉計12内では、第1の測定ビーム46が、第1のシャッタ34を通って第1のビームスプリッタ38まで伝播し、第1のビームスプリッタ38で、第1の測定ビーム46が第1の測定アーム42内に導かれる(例えば、伝達される)。下側干渉計14内では、第2の測定ビーム48が、第2のシャッタ36を通って第2のビームスプリッタ40まで伝播し、第2のビームスプリッタ40で、第2の測定ビーム48が第2の測定アーム44内に導かれる(例えば、伝達される)。一方の干渉計12,14からの光が他方の干渉計14,12からの光と混じり合うことを防ぐため、第1のシャッタ34及び第2のシャッタ36の開閉を共通のプロセッサ/コントローラ100によって調整して、第1の測定ビーム46及び第2の測定ビーム48のうちいずれか一方の伝播を交互に遮断することができる。第1のビームスプリッタ38及び第2のビームスプリッタ40は、振幅分割型又は偏光型の、ペリクルビームスプリッタ、ビームスプリッタキューブ、又はビームスプリッタプレートの形態をとることができる。
【0038】
測定アーム42は、ハウジング51内に二重機能光学系50を備える。測定アーム44は、ハウジング53内に二重機能光学系52を備える。二重機能光学系50,52は、ウェハ106の照明と結像の両方に寄与するものである。二重機能光学系50,52の照明機能によって、ウェハ106の互いに反対側の面16,18の形状に公称上概ね一致するように、測定ビーム46,48の各波面のサイズ調整や成形を行うことができる。
【0039】
図1Bに示すように、第1の測定アーム42は第1のキャップ206をさらに備えており、第1のキャップ206は、第1の測定ビーム46の一部を参照ビーム62として反射するための第1の参照面58を有する参照光学系(例えば、フィゾーウェッジ(Fizeau wedge))を備えている。第2の測定アーム44は第2のキャップ208をさらに備えており、第2のキャップ208は、第2の測定ビーム48の一部を参照ビーム64として反射するための第2の参照面60を有する参照光学系(例えば、フィゾーウェッジ)を備えている。参照光学系は、干渉計12,14を伝播する帯域の周波数を伝達するように選択される。なお、本明細書の種々の実施形態においては、第1のキャップ206及び第2のキャップ208が参照光学系を備えるものとして説明するが、いくつかの実施形態では、参照光学系がキャップから独立していてもよいことが企図されている。一方、測定ビーム46,48の残りの部分は第1のキャップ206及び第2のキャップ208を伝播し、この測定ビーム46,48の残りの部分のさらに一部が第1のキャップ206及び第2のキャップ208を横切って、被検体ビーム66,68としてウェハ106の互いに反対側の面16,18から反射される。
【0040】
被検体ビーム66は、参照面58で参照ビーム62と合成され、第1の面16と参照面58との間の差異を表す干渉縞(図示せず)を形成する。また、被検体ビーム68は、参照面60で参照ビーム64と合成され、第2の面18と参照面60との間の差異を表す干渉縞(図示せず)を形成する。
【0041】
反射された被検体ビーム66及び参照ビーム62は共に、測定アーム42内を共通の光路に沿ってビームスプリッタ38まで伝播し、そこでビーム66及びビーム62の少なくとも一部が上側干渉計12の記録アーム78に導かれる(例えば、反射される)。同様に、反射された被検体ビーム68及び参照ビーム64は共に、測定アーム44内を共通の光路に沿ってビームスプリッタ40まで伝播し、そこでビーム68及びビーム64の少なくとも一部が下側干渉計14の記録アーム80に導かれる(例えば、反射される)。
【0042】
再び図1Aを参照すると、記録アーム78内では、第1の参照面58に形成された干渉縞がカメラ86の検出面82に結像する。同様に、記録アーム80内では、第2の参照面60に形成された干渉縞がカメラ88の検出面84に結像する。検出面82,84は、ウェハ106の互いに反対側の面16,18を包含する視野全域のビーム強度を測定するための検出アレイを備えることができる。二重機能光学系50,52は、検出面82,84への参照画像の形成に寄与することができる。ただし、カメラ86,88が、参照画像の検出面82,84上への結像に対してサイズ変更などの仕上げを行うための結像光学系74,76を備えてもよく、あるいは結像光学系74,76に連結されていてもよい。
【0043】
図1A及び図1Bにおいて、第1のキャップ206と第2のキャップ208とは、円筒形チャンバ204によって物理的に相互接続されて、測定キャビティ200を形成している。測定キャビティ200は、2つの参照面58,60が画定する光学参照キャビティ108の全体としての完全性を保護、保全するものである。そして、種々の実施形態において、これに加えて、測定キャビティは、ウェハ106を環境からの力や振動力から絶縁する。図2に、測定キャビティ200の一例を示す。具体的には、図2は、ウェハ106を中に入れた状態の測定キャビティ200の断面図である。
【0044】
図2に示すように、測定キャビティ200内へのウェハ106の固定は、円筒形チャンバ204内に配置、結合されるウェハホルダ202によって行われる。円筒形チャンバ204は、第1の開放端と、第1の開放端の反対側にある第2の開放端と、を有している。そして、円筒形チャンバ204の第1の開放端を第1のキャップ206が覆い、円筒形チャンバ204の第2の開放端を、第2のキャップ208が覆っている。種々の実施形態において、第1のキャップ206及び第2のキャップ208は、円筒形チャンバ204を密封するものである。
【0045】
種々の実施形態において、円筒形チャンバ204は、金属又は金属系の基板で形成される。例えば、円筒形チャンバ204を、アルミニウム系の基板やステンレス鋼で形成してもよい。測定キャビティの内部を外部から絶縁できるものであれば、他の材料も考えられる。なお、図2に示す実施形態では、円筒形チャンバ204が、ウェハホルダ202を支持するリップを備えているが、いくつかの実施形態では、円筒形チャンバ204の内部を、第1の開放端から第2の開放端まで直線的で平坦な壁で画定することができる。他の構成も可能であるとともに企図されており、円筒形チャンバ204の特定の用途に基づいて他の構成を選択することができる。
【0046】
種々の実施形態において、第1のキャップ206は、第2のキャップ208に剛結合される。第1のキャップ206と第2のキャップ208とを剛結合することにより、第1のキャップと第2のキャップとの間の適切な位置関係が維持されるため、これらのキャップをフィゾー光学系及び参照面として利用することが可能となるとともに、以下に詳述するように、誤差の低減と解像度の向上も実現できる。いくつかの実施形態では、円筒形チャンバ204は、第1のキャップ206の参照面58と第2のキャップ208の参照面60との間に隙間を設けるものである。例えば、図2に示すように、第1のキャップ206と第2のキャップ208を、円筒形チャンバ204の対応する端部にそれぞれ接触させて、参照面58と参照面60との間の距離を一定に保つことができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、円筒形チャンバ204以外の機械的構造を使用して、参照面58と参照面60との間に隙間が設けられる。例えば、2つ以上のスペーサピン(図示せず)を使用して、参照面58と参照面60との間に隙間を画定してもよい。スペーサピンなどの機械的構造は、インバー(Invar)などの熱的に安定した材料で形成することができる。各スペーサピンは、円筒形チャンバ204の凹部を貫通し、第1のキャップ206及び第2のキャップ208に接触することができる。運動学的に見ると、第1のキャップ206と第2のキャップ208とを剛結合することにより、参照面58と参照面60とが、あたかも1つの物体の一部であるかのように同じ動きをすることが約束される。つまり、何らかの動きが2つの参照面58,60の一方に影響を与える場合には、それがいかなる動きであっても、2つの参照面60,58の他方にも同様の影響を与える。種々の実施形態において、参照面58と参照面60との間の隙間は、実質的に均一(例えば、参照面全域における隙間のばらつきが10μm未満)である。
【0048】
種々の実施形態において、第1のキャップ206と第2のキャップ208との剛結合がどのような形で行われる場合でも、フィゾー光学系に歪みを生じさせることがないよう、第1のキャップ206及び第2のキャップ208は、キャップ相互の応力が低いか又はゼロである構成となっている。種々の実施形態において、第1のキャップ206及び第2のキャップ208の相対的な構成は、これに起因する第1のキャップ206及び第2のキャップ208の変形が10μm未満に抑えられるものである。いくつかの実施形態では、第1のキャップ206と第2のキャップ208とは、互いを変形させない構成で取り付けられる。
【0049】
上述のように、種々の実施形態において、第1のキャップ206、第2のキャップ208、又は、第1のキャップ206及び第2のキャップ208の両方が、1以上の干渉測定又は光学測定を行うことができる参照光学系を備えている。参照光学系がフィゾー光学系である場合、第1のキャップ206及び第2のキャップ208は、一面がその反対側の面に対して約1度の角度を有するくさび形となり得る。この角度は、傾斜面からの反射がカメラに戻って、被検体ビームや参照ビームと干渉してしまうことがないような角度に設定される。なお、参照光学系の設計として他の設計を採用することもでき、光学測定をウェハ106の一面又は両面から行ってもよいことを理解されたい。
【0050】
種々の実施形態において、キャップの少なくとも一部を、ガラスなどの光学的に透明な材料で形成することができる。図2に示す実施形態などのいくつかの実施形態では、第1のキャップ206及び/又は第2のキャップ208の全体をガラス基板とし、キャップ全体を光学参照とすることができる。いくつかの実施形態では、図3に示すように、光学参照300が、ベゼル304などの環状ハウジング内に取り付けられたフィゾーウェッジ302を備えることができる。エポキシ系などの接着剤を使用して、フィゾーウェッジ302をベゼル304内に固定することができる。
【0051】
ベゼル304は、アルミニウム又はステンレス鋼などの金属で形成するか、又は、フィゾーウェッジ302を所定の位置に剛性的に保持して円筒形チャンバ204との間に密封状態を作ることが十分に可能な他の材料で形成することができる。種々の実施形態において、ベゼル304を、円筒形チャンバ204に剛結合し、接着剤又はボルトで所定の位置に固定することができる。例えば、ベゼル304の穴306に、ボルト402(図4に図示)を貫通させて、光学参照300を円筒形チャンバ204(図3に不図示)に固定してもよい。
【0052】
第1のキャップ206及び第2のキャップ208の全体がガラス基板で形成され、ベゼル304を有してないために円筒形チャンバ204にボルト留めすることができない実施形態などの種々の実施形態では、エポキシ系などの接着剤を使用して、第1のキャップ206及び/又は第2のキャップ208を円筒形チャンバ204に結合することができる。ただし、種々の実施形態において、ウェハ106の挿入時や取り出し時などに、第1のキャップ206及び第2のキャップ208の一方又は両方を円筒形チャンバ204から取り外すことができるように、いくつかの実施形態では、第1のキャップ206及び/又は第2のキャップ208を円筒形チャンバ204に対して着脱可能に密封装着することもできる。例えば、第1のキャップ206が円筒形チャンバ204の第1の開放端を覆うように、そして、第2のキャップ208が第2の開放端を覆うように、第1のキャップ206及び第2のキャップ208をそれぞれ配置して、所定の位置に締め付けなどの方法で固定することができる。
【0053】
再び図2を参照すると、いくつかの実施形態では、Oリングなどのエラストマーシールやろう付けなどの金属シールなどのガスケット210を各キャップと円筒形チャンバ204との間に配置して、測定キャビティ200の気密性を確保する。理論に束縛されるものではないが、チャンバを気密にすることで、ウェハ106に対する気流の影響を低減又は排除することができるとともに、ウェハ106の音響絶縁を行うこともできる。なお、測定キャビティ200を気密にすることで、温度や湿度の変動によってウェハ106に与えられる影響を低減することもできる。
【0054】
図2図4、及び図5に示すように、ウェハ106は、ウェハホルダ202によって位置決めされる。ウェハホルダ202は、円筒形チャンバ204に剛結合されてもよく、又は減衰材を介在させて円筒形チャンバ204に結合されてもよい。例えば、ウェハホルダ202を、円筒形チャンバ204にボルト又は接着で留めることができる。あるいは、図4及び図5に示すように、ウェハホルダ202を、1つ以上のばね404を介して円筒形チャンバ204に結合させてもよい。
【0055】
図4及び図5に示す実施形態では、ウェハホルダ202は、1つ以上のアクチュエータ406及びばね404を介して円筒形チャンバ204に結合されている。アクチュエータ406及びばね404によって、ウェハホルダ202を円筒形チャンバ204に対して上昇させる、下降させる、又は傾斜させるといった特定の実施形態に応じた動作をさせることが可能となる。ばね404によって、第2のキャップ208に取り付けられたV字部408にアクチュエータを接触させた状態に維持する復帰力が得られる。種々の実施形態において、ばねの剛性を変化させることにより、円筒形チャンバ204からウェハホルダ202、ひいてはウェハ106に伝わる力の減衰性や伝達率を変化させることができる。
【0056】
ウェハホルダ202は、ウェハ106が入るように構成された1つ以上のウェハマウント410をさらに備える。図5に示す実施形態では、これらのウェハマウント410によって、ウェハ106を測定キャビティ200内に固定する3点支持を形成している。しかしながら、ウェハホルダ202及び/又はウェハマウント410が他の構成を有し得ることが企図されている。例えば、いくつかの実施形態では、ウェハホルダ202がウェハ106の第1の面16及び第2の面18に接触しないようにウェハホルダ202を構成することができ、又は、例えば、エアベアリングを使用してウェハ106の位置決めをする実施形態のように、単にウェハ106が定められた範囲から出ないようにウェハホルダ202を構成することもできる。また、いくつかの実施形態では、ウェハホルダ202は、ウェハ106をできるだけ覆い隠さない構成とされる。ウェハマウント410及びウェハホルダ202として具体的にどのような構成が採用されるかにかかわらず、種々の実施形態において、ウェハ106は、測定キャビティ200内に「自由状態(free state)」又は「半自由状態(quasi-free state)」で配置される。換言すれば、ウェハ106の第1の面16及び第2の面18が、ウェハホルダ202などの他の構造体に装着されたり、接触したり、押圧されたりすることはない。
【0057】
再び図1Aを参照すると、ウェハ106を測定ビーム46,48の一部で照明して測定を行う間、ウェハ106の互いに反対側の面16,18とキャップ206,208の参照面58,60との間の間隔や傾きを一定に保つべく、ウェハ106は、あたかも測定キャビティ200の一部となるかのように、測定キャビティ200に取り付けられる。これにより、測定キャビティ200全体に作用する外乱から、上側干渉計12および下側干渉計14の中に形成される干渉縞が受ける影響が、最小限に抑えられる。またさらに、少なくとも一方のキャップ(例えば、第1のキャップ206)が、対応する測定アーム(例えば、図1Aの測定アーム42)のその他の部分から切り離されている。例えば、測定アーム42のハウジング51が、第1のキャップ206との間に直接の物理的接続を持たず、測定キャビティ200の一部として装着される第1のキャップ206から独立した状態にある。その代わり、測定アーム42のハウジング51は、フランジ120とカラー122とを介して基部124に取り付けられる。基部124は、好ましくは、(例えば、花崗岩の厚板又は鋼板などのように)上側干渉計12を環境外乱から絶縁できる程度の大きな質量を有している。ただし、測定キャビティ200は、カラー126を介して測定アーム44のハウジング53には接続され、測定アーム44のハウジング53は、フランジ128を介して基部124に接続されている。一方のキャップ206(及び、ひいては、一方の光学参照)をその測定アーム42のその他の部分から切り離すことによって、2つのキャップ206,208が、測定アーム42,44のうち自身が対応しない方の測定アームに付随する、自身を対象とするものではない動きや移動などの外乱の影響を受けることがない。測定キャビティ200を一方の測定アーム42から隔絶することにより、2つの参照面58,60の間の間隔や相対的な傾きを一定に保つために測定キャビティ200が満たすべき構造上の要件を抑えることができる。なお、いくつかの実施形態では、測定キャビティ200を、測定アーム42,44の両方から切り離すことができることが企図されている。
【0058】
理論に束縛されるものではないが、環境中の共振周波数によって、光学的な要素(第1のキャップ206及び第2のキャップ208を含む)、ウェハ106、又はその両方に非接触振動が誘起される場合があると考えられる。したがって、種々の実施形態において、測定キャビティ200は、振動伝達を低減又は最小化するように設計されている。具体的には、サブナノメータ精度でのウェハ106の測定を実現するため、種々の実施形態において、測定キャビティ200は、ウェハ106の固有振動数に基づいた、伝達されうる帯域の周波数を低減又は遮断するように特別に設計される。
【0059】
外部環境からの振動(vibration)は、時間に依存する力(例えば、振動力(oscillating force))として、干渉計10に伝達されるとともに、干渉計10を介して測定キャビティ200にも伝達される。このような力は、第1のキャップ206及び/又は第2のキャップ208に対して相対的にウェハ106を動かす場合があるため、ウェハ106の第1の面16及び第2の面18で行われる測定の解像度に悪影響を及ぼすものである。また、このようなウェハ106の動きによって、位置合わせや、第1の面16と参照面58との間の間隔、第2の面18と参照面60との間の間隔が影響を受けかねない。従って、測定キャビティ200内への振動力の伝達や測定キャビティ200を通過する振動力の伝達は、最小限に抑えることが望ましい。
【0060】
あるシステム内における力の伝達率|x/F|を、質量、剛性、減衰の関数で表すと、次式(1)が得られる:
【数1】

式中、mはシステムの質量、kはシステムの剛性、cはシステムの粘性減衰、Fは外部からシステムに加えられる加振力(例えば、外部の振動に伴う力など。「印加力(input force)」とも呼ぶ)の大きさ、wはシステムに加えられる外力の周波数、xはシステムの光軸方向(例えば、図1A及び図1Bに示すY軸方向)の変位量である。
【0061】
種々の実施形態において、光学部品(例えば、キャップ206,208、フィゾーウェッジ302など)及び/又はウェハ106に対する外乱の影響を低減するために、上述の技法に加えて、測定キャビティ200は大きな質量を有している。測定キャビティ200の質量mによって、測定キャビティ200の固有振動数を変化させて、測定キャビティ200を加振する(振動させる)ために必要なエネルギー(力)の量を高めることができる。
【0062】
図6は、式(1)のボード線図(Bode plot)であり、測定キャビティの質量が、大きさF、変位量xの印加力の伝達率に与える影響を、印加力の周波数wの関数で示す図である。ここで、特に注目すべきは、300mmウェハの固有振動数に相当するとともに、米国の標準電力周波数でもある60Hzの周波数を持つ印加力の伝達率である。つまり、建物内の電力によって、測定キャビティ200内の300mmウェハに振動を誘起するのに十分な振動印加力が発生してしまう恐れがある。よって、測定キャビティの干渉測定の解像度を向上させるためには、60Hzの周波数を持つ印加力の抑制が重要な設計目標となる。
【0063】
図6では、測定キャビティの質量を変化させて伝達率を算出した。図6に示すように、質量を1倍から8倍に増大させると、60Hzの印加力の伝達率が、約1.00E-05(1.00×10-5)から約1.00E-06(1.00×10-6)に低下する。また、質量を増大させると、システムの固有振動数(図6に示す鋭いピークの周波数に相当し、測定キャビティ内で最も効率的に伝達される力の周波数を表す)も低下することがわかる。したがって、種々の実施形態において、測定キャビティは、60Hzの印加力の伝達率を少なくとも10分の1に低下させる効果のある質量を有するものとする。種々の実施形態において、測定キャビティの固有振動数が300Hzを上回るとともに、測定キャビティの質量がウェハホルダ202単体の質量の10倍を上回るように、測定キャビティの質量が選択される。
【0064】
上記の式(1)に示すように、システムの剛性も印加力の伝達率に影響を与える。図7は、式(1)に基づく計算に従って、測定キャビティの剛性が、大きさF、変位量xの印加力の伝達率に与える影響を、印加力の周波数wの関数で示したボード線図である。図7では、測定キャビティの剛性を変化させて伝達率を算出した。図7に示すように、質量を増大させた場合と同様に、剛性を高くすると周波数60Hzの印加力の伝達率が低下する。ただし、剛性を高くしても、システムの固有振動数は変化しなかった。したがって、種々の実施形態において、測定キャビティ200は、60Hzの印加力の伝達率を少なくとも10分の1に低下させる効果のある剛性を有するものとする。種々の実施形態において、測定キャビティの固有振動数が300Hzを上回るように、測定キャビティの剛性が選択される。
【0065】
システムの減衰性も印加力の伝達率に影響を与える。図8は、式(1)に基づく計算に従って、測定キャビティの減衰定数cが、大きさF、変位量xの印加力の伝達率に与える影響を、印加力の周波数wの関数で示したボード線図である。図8では、測定キャビティの減衰定数cを変化させて伝達率を算出した。図8に示すように、減衰定数cを大きくしても、固有振動数以外の周波数での伝達率には影響がなく、60Hzでは効果がなかった。
【実施例
【0066】
測定キャビティの機能性能を示すために、代表的な測定キャビティ200とこれに内蔵されるウェハホルダ202とを比較した。測定キャビティ200は、質量を50kg、一次固有振動数を約450Hzとし、剛性が1×10N/mとなるように設計した。このようなキャビティを使用しないウェハホルダ(マウント)202単体では、質量が1kg、一次共振周波数が300Hz、剛性が4×10N/mであった。図9に、これらの数値例と式(1)を用いて得られたボード線図を示す。図9は、ウェハホルダ202と測定キャビティ200の相対伝達率を比較した図である。問題の周波数60Hzでは、ウェハホルダ(マウント)202を測定キャビティ200内に入れることで、伝達率が4桁(10,000分の1に)低下した。また、システムの固有振動数も7分の1に低下した。なお、比較に当たり、減衰率は一定とし、計算上0.01に設定した。
【0067】
したがって、種々の実施形態において、測定キャビティ200の質量、剛性、及び/又は減衰定数は、測定キャビティ200の外部で発生した印加力が測定キャビティ200内を伝達する際の伝達率を抑えるように選択される。そのような印加力の例としては、床の振動や、電気ノイズ、音響ノイズなどが挙げられる。また、種々の実施形態において、測定キャビティ200は気密性をさらに有しており、これにより、ウェハ106に対する気流の影響を抑え、ウェハ106を音響絶縁する。測定キャビティ200が上述の特徴を有することにより、さらに、温湿度の変動がウェハ106に与える影響を低減することができる。したがって、本明細書の種々の実施形態によって、解像度が向上した光学測定を実現可能な測定キャビティが提供される。
【0068】
いくつかの実施形態では、ウェハホルダは、60Hzの印加力Fに対して第1の伝達率|x/F|を有し、円筒形チャンバは、測定キャビティが60Hzの印加力に対して第2の伝達率|x/F|を有するように設定された質量m、剛性k、及び減衰定数cを有し、測定キャビティが300Hz超の固有振動数を有する場合に、第2の伝達率|x/F|は、第1の伝達率|x/F|の3分の1以下、5分の1以下、10分の1以下、又は20分の1以下である。
【0069】
当業者であれば、特許請求の範囲に記載の主題の趣旨及び範囲から逸脱しない範囲で、本明細書に記載の実施形態に種々の変形及び変更を加えることができることが明らかであろう。したがって、本明細書に記載の種々の実施形態の変形及び変更が添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲を逸脱することがない限り、そのような変形及び変更も本明細書の範囲に含まれることが意図されている。
【0070】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0071】
実施形態1
第1の開放端及び第2の開放端を有する円筒形チャンバと、
前記円筒形チャンバの前記第1の開放端を覆う第1のキャップ及び前記円筒形チャンバの前記第2の開放端を覆う第2のキャップであって、前記第1のキャップ及び前記第2のキャップが前記円筒形チャンバを密封し、前記第1のキャップが前記第2のキャップに剛結合されている、第1のキャップ及び第2のキャップと、
前記円筒形チャンバ内に配置され、前記円筒形チャンバに結合されるウェハホルダであって、60Hzの印加力Fに対して第1の伝達率|x/F|を有するウェハホルダと、
を備える測定キャビティであって、
前記円筒形チャンバは、前記測定キャビティにおける60Hzの印加力Fに対する第2の伝達率|x/F|が、前記第1の伝達率|x/F|の10分の1以下となるように設定された質量m、剛性k、及び減衰定数cを有し、
前記測定キャビティが300Hz超の固有振動数を有している、測定キャビティ。
【0072】
実施形態2
前記第1のキャップ、前記第2のキャップ、又は、前記第1のキャップ及び前記第2のキャップの両方が、1以上の干渉測定又は光学測定を行うことができる参照光学系を備える、実施形態1記載の測定キャビティ。
【0073】
実施形態3
前記第1のキャップ及び前記第2のキャップが、1以上の干渉測定又は光学測定を行うことができる参照光学系を備える、実施形態2記載の測定キャビティ。
【0074】
実施形態4
前記参照光学系が、ベゼル内に取り付けられたガラス基板を備える、実施形態2又は3記載の測定キャビティ。
【0075】
実施形態5
前記ベゼルが金属で形成されている、実施形態4記載の測定キャビティ。
【0076】
実施形態6
前記ベゼルが前記円筒形チャンバに剛結合されている、実施形態4又は5記載の測定キャビティ。
【0077】
実施形態7
前記ベゼルが前記円筒形チャンバにボルト留めされている、実施形態6記載の測定キャビティ。
【0078】
実施形態8
エポキシによって前記ベゼル内に前記ガラス基板を密封する、実施形態4~7のいずれか1つに記載の測定キャビティ。
【0079】
実施形態9
前記ウェハホルダが前記円筒形チャンバに剛結合されている、実施形態1~8のいずれか1つに記載の測定キャビティ。
【0080】
実施形態10
前記ウェハホルダが前記円筒形チャンバに1つ以上のばねを介して結合されている、実施形態1~8のいずれか1つに記載の測定キャビティ。
【0081】
実施形態11
前記ウェハホルダが、ウェハの第1の面及び第2の面に接触することなく該ウェハを保持するように構成されている、実施形態1~10のいずれか1つに記載の測定キャビティ。
【0082】
実施形態12
前記第1のキャップが前記第2のキャップに締め付けによって剛結合されている、実施形態1~11のいずれか1つに記載の測定キャビティ。
【0083】
実施形態13
前記第1のキャップが前記第2のキャップに1つ以上のボルトを介して剛結合されている、実施形態1~11のいずれか1つに記載の測定キャビティ。
【0084】
実施形態14
前記円筒形チャンバが、前記第1のキャップの第1の表面と前記第2のキャップの第1の表面との間に隙間を設けている、実施形態1~13のいずれか1つに記載の測定キャビティ。
【0085】
実施形態15
前記円筒形チャンバが、金属又は金属系の基板で形成されている、実施形態1~14のいずれか1つに記載の測定キャビティ。
【0086】
実施形態16
前記円筒形チャンバが、アルミニウム系の基板やステンレス鋼で形成されている、実施形態15記載の測定キャビティ。
【0087】
実施形態17
前記第1のキャップ及び前記第2のキャップが、互いを変形させない構成で取り付けられている、実施形態1~16のいずれか1つに記載の測定キャビティ。
【0088】
実施形態18
実施形態1~17のいずれか1つに記載の測定キャビティを備える干渉計。
【0089】
実施形態19
前記第1のキャップ及び前記第2のキャップのいずれか一方から測定を行う、実施形態18に記載の干渉計。
【0090】
実施形態20
前記第1のキャップ及び前記第2のキャップのいずれか一方から測定を行う複式干渉計である、実施形態18又は19に記載の干渉計。
【符号の説明】
【0091】
10 干渉計
12 上側干渉計
14 下側干渉計
16 第1の面
18 第2の面
22 第1の照明器
24 第2の照明器
26,28 光源
30,32 ビームシェイパ
34 第1のシャッタ
36 第2のシャッタ
38 第1のビームスプリッタ
40 第2のビームスプリッタ
42 第1の測定アーム
44 第2の測定アーム
46 第1の測定ビーム
48 第2の測定ビーム
50,52 二重機能光学系
51,53 ハウジング
58 第1の参照面
60 第2の参照面
62,64 参照ビーム
66,68 被検体ビーム
74 結像光学系
78,80 記録アーム
82,84 検出面
86,88 カメラ
100 プロセッサ/コントローラ
106 ウェハ
108 光学参照キャビティ
120,128 フランジ
122,126 カラー
124 基部
200 測定キャビティ
202 ウェハホルダ
204 円筒形チャンバ
206 第1のキャップ
208 第2のキャップ
210 ガスケット
300 光学参照
302 フィゾーウェッジ
304 ベゼル
306 穴
402 ボルト
404 ばね
406 アクチュエータ
408 V字部
410 ウェハマウント
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-09-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1A
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1A
【国際調査報告】