(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-03
(54)【発明の名称】合成ガスを軽質オレフィンへ変換するためのナノ構造鉄系触媒の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 37/03 20060101AFI20230127BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20230127BHJP
B01J 35/02 20060101ALI20230127BHJP
B01J 37/18 20060101ALI20230127BHJP
B01J 23/78 20060101ALI20230127BHJP
B01J 23/889 20060101ALI20230127BHJP
B01J 27/138 20060101ALI20230127BHJP
C07C 1/12 20060101ALI20230127BHJP
C07C 11/04 20060101ALI20230127BHJP
C07C 11/06 20060101ALI20230127BHJP
C07C 11/08 20060101ALI20230127BHJP
C07C 1/04 20060101ALI20230127BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230127BHJP
【FI】
B01J37/03 B
B01J37/08
B01J35/02 H
B01J37/18
B01J23/78 M
B01J23/889 M
B01J27/138 M
C07C1/12
C07C11/04
C07C11/06
C07C11/08
C07C1/04
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533069
(86)(22)【出願日】2020-12-03
(85)【翻訳文提出日】2022-08-01
(86)【国際出願番号】 SG2020050717
(87)【国際公開番号】W WO2021112768
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】10201911595T
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508305029
【氏名又は名称】エージェンシー フォー サイエンス, テクノロジー アンド リサーチ
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】オン シーウェイ ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】チェン ルエイ
(72)【発明者】
【氏名】ポー チー コック
(72)【発明者】
【氏名】チャン ジエ
(72)【発明者】
【氏名】水上 範貴
(72)【発明者】
【氏名】泉 良範
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 博之
(72)【発明者】
【氏名】ボーグナ アルマンド
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
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4H006BE20
4H006BE40
4H006BE41
4H039CA30
4H039CL35
(57)【要約】
本発明に係る鉄系触媒の準備方法は、鉄塩を含む溶液を界面活性剤と混合し、混合物を生成し、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表で第3族から第7族および第9族から第11族の遷移金属元素、ランタノイド、およびそれら元素の組み合わせからなる群から選択される元素の塩を含む塩基性塩溶液を、前記混合物に加え、前記沈殿物を焼成し、鉄系触媒を生成することを含み、前記鉄系触媒は、前記塩基性塩の前記元素の少なくとも一部を含む。本発明は、さらに、上記方法で準備されたナノサイズ鉄系触媒と、ナノサイズ鉄系触媒を用いた軽質オレフィンの製造プロセスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノサイズ鉄系触媒の製造方法であって、
i)鉄塩を含む溶液を界面活性剤と混合し、混合物を生成し、
ii)アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表で第3族から第7族および第9族から第11族の遷移金属元素、ランタノイド、およびそれら元素の組み合わせからなる群から選択される元素の塩を含む塩基性塩の溶液を、前記混合物に加え、沈殿物を生成し、
iii)前記沈殿物を焼成し、前記鉄系触媒を生成することを含み、前記鉄系触媒は、前記塩基性塩の前記元素の少なくとも一部を含む、方法。
【請求項2】
前記塩基性塩の溶液は、水酸化物、炭酸塩、または重炭酸塩アニオンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記塩基性塩は、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記塩基性塩は、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、またはそれらの組み合わせである、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記添加ステップでは、鉄元素と前記塩基性塩の前記元素とのモル比を1:2から1:10とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(i)の前記溶液は、周期表で第3族から第7族または第9族から第11族の遷移金属とは独立して選択される遷移金属の少なくとも1つまたは複数の追加の塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記遷移金属は、Ni、Mn、Mg、Ca、La、Co、Li、K、Ce、またはそれらの組み合わせである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記遷移金属の塩は、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、塩化物、フッ化物、臭化物、ヨウ化物、リン酸塩、ピロリン酸塩、過塩素酸塩、およびそれらの混合物からなる群から選択されるアニオンを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記遷移金属の塩は、Mn(NO
3)
2またはNi(NO
3)
2である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
ステップi)の前記溶液は、遷移金属元素と鉄とのモル比が1:8から1:100である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記添加ステップ(ii)は、さらに、前記混合物にケイ酸塩を導入し、前記ケイ酸塩の存在下で前記鉄系触媒を沈殿させ、それにより前記ケイ酸塩に支持された鉄系触媒を生成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ケイ酸塩は、1または複数の2~5個の炭素原子のアルコキシ基を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ケイ酸塩は、オルトケイ酸テトラエチルである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記添加ステップでは、鉄元素と前記ケイ酸塩とのモル比を1:5から1:15とする、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
ステップii)から得られた沈殿した前記混合物は、焼成前に洗浄されない、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記鉄塩は、2価の鉄塩または3価の鉄塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記鉄塩は、硝酸塩、塩化物、フッ化物、臭化物、ヨウ化物、リン酸塩、ピロリン酸塩および過塩素酸塩からなる群から選択されるアニオンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記鉄塩は、3価の硝酸鉄である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記界面活性剤は、イオン性界面活性剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記界面活性剤は、第4級アンモニウム界面活性剤である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記界面活性剤は、臭化セチルトリメチルアンモニウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
鉄と前記界面活性剤とのモル比が1:0.5から1:2である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記焼成ステップは、400℃から600℃の温度で1から3時間行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
ナノサイズの鉄系触媒であって、
a)ナノサイズの前記触媒の全体の重量の5~99wt.%の鉄と、
b)ナノサイズの前記触媒の全体の重量の1~50wt.%の、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表で第3族から第7族および第9族から第11族の遷移金属の元素、およびランタノイドからなる群から選択され、鉄ではない金属の、金属酸化物と、を含み、
ナノサイズの前記触媒の直径は、2~50nmである、鉄系触媒。
【請求項25】
前記金属は、前記触媒の全体の重量の4~50wt.%の量で存在する、請求項24に記載の鉄系触媒。
【請求項26】
ナノサイズの前記触媒は、スピネル結晶相を有する、請求項24に記載の鉄系触媒。
【請求項27】
前記スピネル相の触媒の化学式が、FeM
2O
4である、請求項26に記載の鉄系触媒。
【請求項28】
前記触媒は、さらに周期表で第3族から第7族および第9族から第11族の遷移金属の元素を含む、請求項24に記載の鉄系触媒。
【請求項29】
前記遷移金属と鉄との重量比は、1:5から1:200である、請求項24に記載の鉄系触媒。
【請求項30】
前記触媒は、さらにSiO
2マトリックスを含む、請求項24に記載の鉄系触媒。
【請求項31】
さらにハロゲン酸化物を含む、請求項24に記載の鉄系触媒。
【請求項32】
前記ハロゲン酸化物は、前記触媒の重量に対して、約0.1~50wt.%の量で存在する、請求項31に記載の鉄系触媒。
【請求項33】
請求項1~23のいずれか1項に記載の方法で準備された、請求項24から32のいずれか1項に記載の鉄系触媒。
【請求項34】
軽質オレフィンの製造プロセスであって、
i)請求項24から33のいずれか1項に記載の前記触媒を活性化させるため、1または2以上の炭素酸化物と水素とを含むガスの存在下で、前記触媒を加熱し、
ii)1または2以上の炭素酸化物と水素とを含むガス流体と、ステップi)の前記活性化された触媒を接触させ、部分的または完全に前記1または2以上の炭素酸化物を前記軽質オレフィンへ変換する、ステップを含み、
前記軽質オレフィンは、2から4個の炭素原子を含み、
メタンは、実質的に前記軽質オレフィンに含まれない、または、前記軽質オレフィンの20%未満を構成する、プロセス。
【請求項35】
ステップii)の前記ガス流体の前記炭素酸化物は、実質的に二酸化炭素である、請求項34に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<援用記載>
本願は、2019年12月3日にシンガポールに出願された特許出願No.10201911595Tに基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【0002】
本発明は、軽質オレフィンの選択性および収率を最適化可能なナノサイズ鉄系触媒を準備する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
フィッシャー・トロプシュ合成は、一般に、長鎖炭化水素を生成するための原料として使用するCOおよびH2を用いた一連の化学プロセスを指す。これらのプロセスは、通常、Co、Fe、Ru、さらにNiおよびReベースの触媒にて行われ、これらは、必要に応じてゼオライトに取り込まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のプロセスで得られる触媒は、主に、パラフィンおよび/またはガソリン生成物由来のものを生成し、例えば、C2、C3、および/またはC4オレフィン等の軽質オレフィンの収率低下を招いていた。
【0005】
近年では、Feを用いたダイレクトFischer-Tropsch to olefin(FTO)プロセスが、他の材料と比較し安価であることから注目を集めている。特に金属元素を含む鉄系触媒は、例えば、活性部位の分散、より高速な活性化、メタンの抑制や、炭化水素生成物のオレフィン性の改善等の、様々な特性を示す。
【0006】
典型的には、鉄系触媒への金属の組み込みは、初期含侵技術により行われる。この際、金属元素とFeとの重量比は、例えば約1:20と比較的低い。
さらに、上述の金属カチオンを除去するため、追加の洗浄ステップが必要となる場合がある。FTOのための高効率な鉄系触媒は、軽質オレフィンの選択性が高いことおよびCH4の選択性が低いことが要求される。しかしながら、従来の鉄系触媒は、主に、パラフィンおよび/またはガソリン生成物由来のものを生成することしかできない。
【0007】
このため、1または1以上の上述の欠点を克服または改善する触媒及び触媒の準備方法が求められている。本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、高効率なFTOのための鉄系触媒のワンポット合成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、ナノサイズの鉄系触媒を準備する方法を提供し、前記方法は、i)鉄塩を含む溶液を界面活性剤と混合し、混合物を生成し、ii)アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表で第3族から第7族および第9族から第11族の遷移金属元素、ランタノイド、およびそれら元素の組み合わせからなる群から選択される元素の塩を含む塩基性塩溶液を、前記混合物に加え、沈殿物を生成し、iii)前記沈殿物を焼成し、鉄系触媒を生成し、前記鉄系触媒は、前記塩基性塩の前記元素の少なくとも一部を含む。
【0009】
上述の方法は、塩基性塩溶液を用いたナノサイズFe触媒を生成するワンポット共沈方法を含む。さらに、前記共沈方法は、多量(例えば、触媒の全体の重量の少なくとも約10%)のアルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表で第3族から第7族または第9族から第11族の遷移金属の元素、ランタノイド、およびそれら元素の組み合わせを、前記触媒に含ませるまたは含侵させてもよい。
【0010】
また、理論に縛られることなく、上述の方法による触媒の生成では、驚くべきことに、特有の鉄系スピネル結晶相を有するナノサイズ触媒を得る。これは、塩基性塩溶液中の金属により促進されている可能性がる。ナノサイズ触媒の広域X線吸収微細構造(EXAFS)分析から、ナノサイズ触媒は、Fe2O3またはFe3O2のいずれでもない鉄ベースの層を形成していることが示されている。塩基性塩の元素は、鉄相に組み込まれ、焼成触媒の独自のスピネル相をもたらすと考えられる。また、焼成ステップは、前記スピネル結晶相の形成を促進すると考えられる。さらに、前記スピネル相は、Fe5C2を生成する浸炭ステップを促進し得る。
【0011】
また、理論に縛られることなく、触媒における促進材となる金属の高い含有率(例えば、触媒の全体の重量の少なくとも約10%)およびスピネル結晶相は、触媒の特性を改善する可能性がある。さらに、上述の鉄系触媒は、フィッシャー・トロプシュ反応による、一酸化炭素または二酸化炭素を軽質オレフィンへ変換する触媒活性を高める可能性がある。さらに、本明細書に記載のプロセスの間における二酸化炭素の変換は、少なくとも、50molC%であることが分かった。
【0012】
驚くべきことに、本明細書に記載の方法は、沈殿した触媒を洗浄なしで空気中で直接焼成することができる。このため、前記従来の溶融/沈殿したFe触媒を生成する方法と比較して、環境への影響を低くすることができる。
【0013】
一酸化炭素及び二酸化炭素ガスの変換の向上により、前記方法により得られた触媒は、メタンおよび長鎖パラフィンよりも2~4個の炭素原子を含む軽質オレフィンの選択性を示し得る。さらに、本明細書に記載のプロセス中におけるメタンの選択性は、生成ガス流体の5%未満であった。
【0014】
他の一態様は、ナノサイズ鉄系触媒に係り、前記ナノサイズ鉄系触媒は、ナノサイズ触媒の全体の重量の5~99wt.%の鉄と、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表で第3族から第7族および第9族から第11族の遷移金属の元素、およびランタノイド、からなる群から選択される1~50wt.%の金属の酸化物と、を含み、前記金属は鉄ではなく、前記ナノサイズ触媒の直径は、2~50nmである。前記触媒は、本明細書に記載の方法で準備されてもよい。
【0015】
その他の態様では、軽質オレフィンを製造するプロセスを提供し、前記プロセスは、i)本明細書に記載の前記触媒を活性化させるため、1または2以上の炭素酸化物と水素とを含むガスの存在下で、前記触媒を加熱し、ii)1または2以上の炭素酸化物と水素とを含むガス流体と、ステップ(i)の前記活性化された触媒を接触させ、部分的または完全に前記1または2以上の炭素酸化物を前記軽質オレフィンへ変換する、ステップを含み、前記軽質オレフィンは、2から4個の炭素原子を含み、メタンは、実質的に前記軽質オレフィンに含まれない、または、前記軽質オレフィンの20%未満を構成する。
【0016】
さらに、本明細書に記載のプロセスにより得られたガス流体の一酸化炭素濃度は、1%未満である。さらに、前記プロセスにおける2~4個の炭素のオレフィンの収率は、5~40%の間であった。生成ガスのC2からC4炭化水素の分布は、少なくとも35%であった。特に、少なくとも85mol%の生成ガスは、2~4の炭素原子を含むオレフィンであった。
【0017】
<定義>
本明細書で使用される以下の単語および用語は、以下に示されて意味を有する。
【0018】
本明細書における「促進される(promoted)」とは、追加の金属イオンの存在下における、触媒活性の活性化または触媒の触媒特性の有意な変化を指す。当該金属イオンは、好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表で第3族から第7族または第9族から第11族の遷移金属の元素、または、ランタノイド、およびそれら元素の組み合わせからなる群から選択される。「促進(プロモーション)」および「促進剤(プロモーター)」も同様の意味を有する。
【0019】
本明細書における「スピネル結晶相」とは、一般組成AB2X4型の鉱物を指す。AB2X4は、立方細密充填で配置されたXアニオン(一般的に酸素および硫黄を含む第16族元素)と、八面体および四面体のいくつかまたはすべての格子点を占有するカチオンAおよびBと、を含み、立方(等方)晶系で結晶化している。
【0020】
本明細書における「軽質オレフィン」とは、2~4個の炭素原子を含むオレフィンまたはアルケンを指す。軽質オレフィンは、すなわち、メチレン、プロペンおよび/またはブテンを指し得してもよい。すなわち、ブテンは、but-1-ene,(2Z)-but-2-ene,(2E)-but-2-ene、および2-methylprop-1-eneを含んでもよい。「実質的に」は、「完全に」を除外するものではない。Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まない場合がある。必要に応じて、「実質的に」との用語は、本発明の定義から省略される場合がある。
【0021】
特に明記されていない限り、「含む」および「備える」との用語、及びそれらの文法上の活用形は、引用された要素を含むが、追加されまたは引用されていない要素を含む場合もあり、「オープン」または「包括的」に表すことを意図している。
【0022】
本明細書における成分の濃度における「約(About)」は、典型的には、記載された値の+/-5%、より典型的には、記載された値の+/-4%、より典型的には、記載された値の+/-3%、より典型的には、記載された値の+/-2%、さらに、より典型的には、記載された値の+/-1%、さらに、より典型的には、記載された値の+/-0.5%を指す。
【0023】
本明細書を通して、特定の実施形態は範囲形式で示され得る。範囲形式での説明は、単に便宜上および簡潔に表現するためのものであり、開示された範囲は柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、すべての可能な下位の範囲と当該範囲内の個々の数値を具体的に開示しているとみなされるべきである。例えば、1~6の範囲は下位の範囲である1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6、等の下位の範囲、および当該範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を具体的に開示しているとみなされるべきである。
【0024】
これは範囲の幅によらず、適用される。
【0025】
特定の実施形態も、本明細書において広範かつ一般的に記載され得る。
より狭い種、および一般的な開示に含まれる下位の属のグループもまた、開示の一部となる。すなわち、これは、除去された題材が本明細書に具体的に記載されているかどうかによらず、属から任意の主題を除去する但し書きまたは否定の限定を伴う実施形態の一般的な開示を含む。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の詳細な説明は本質的には単なる例示であり、本発明または本明細書および本発明の用途を限定することを意図するものではない。さらに、本発明の前述の背景または以下の詳細な説明に提示された理論に限定されない。例示的に、電気化学セル電極用の炭化複合材料の非限定的な実施形態が開示される。
【0027】
本明細書に開示されるナノサイズの鉄系触媒を準備する方法は、鉄塩を含む溶液を界面活性剤と混合し、混合物を生成し、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表で第3族から第7族および第9族から第11族の遷移金属元素、ランタノイド、およびそれら元素の組み合わせからなる群から選択される元素の塩を含む塩基性塩溶液を、前記混合物に加え、沈殿物を生成し、前記沈殿物を焼成し、鉄系触媒を生成し、前記鉄系触媒は、前記塩基性塩の前記元素の少なくとも一部を含んでもよい。
【0028】
前記元素は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表で第3族から第7族または第9族から第11族の遷移金属元素、ランタノイド、およびそれら元素の組み合わせからなる群から選択されてもよい。前記アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、およびセシウムからなる群から選択されてもよい。前記アルカリ土類金属は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、およびバリウムからなる群から選択されてもよい。第3族元素は、スカンジウムおよびイットリウムからなる群から選択されてもよい。第4族元素は、チタン、ジルコニウム、およびハフニウムからなる群から選択されてもよい。第5族元素は、バナジウム、ニオブおよびタンタルからなる群から選択されてもよい。第6族元素は、クロム、モリブデンおよびタングステンからなる群から選択されてもよい。第7族元素は、マンガン、テクネチウムおよびレニウムからなる群から選択されてもよい。第9族元素は、コバルト、ロジウムおよびイリジウムからなる群から選択されてもよい。第10族元素は、ニッケル、パラジウムおよび白金からなる群から選択されてもよい。第11族元素は、銅、銀および金からなる群から選択されてもよい。ランタノイドは、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマニウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムおよびルテチウムからなる群から選択されてもよい。
【0029】
一実施形態では、塩基性塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む。好ましい実施形態では、塩基性塩は、アルカリ金属を含む。より好ましい実施形態では、塩基性塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、またはそれら元素の組み合わせを含む。最も好ましい実施形態では、塩基性塩は、ナトリウム塩を含む。
【0030】
塩基性塩は、水酸化物、炭酸塩または、重炭酸塩アニオンを含んでいてもよい。一実施形態では、塩基性塩は、水酸化物アニオンを含む。好ましい実施例では、塩基性塩は、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、または、それらの組み合わせを含む。
【0031】
さらに、促進剤金属を含む塩基性塩の追加は、鉄系触媒の沈殿物の生成をもたらす場合があり、そして、前記鉄系触媒への促進剤の含侵を可能にし得る。驚くべきことに、上述の方法で得られた触媒は、促進材金属の高い含有率(例えば、触媒の全体の重量の少なくとも約10%)を有し、そして、スピネル結晶相を有する。さらに有益なことに、これらの特性は、フィッシャー・トロプシュ反応を介して一酸化炭素または二酸化炭素を軽質オレフィンに変換するための鉄触媒の活性を高め、メタンよりも軽質オレフィンへの良好な選択性を促進することが見出された。
【0032】
一実施形態では、ステップii)により得られた沈殿混合物は、ステップiii)の前に洗浄されない。さらに、洗浄ステップを経ていない沈殿混合物は、アルカリ金属促進剤の高い含有率(例えば、触媒の全体の重量の少なくとも約10%)を有することが見出された。
【0033】
添加ステップでは、鉄元素と塩基性塩の元素とのモル比で、約1:2から1:25、好ましくは、約1:2から1:20、または約1:2から1:18、または約1:2から1:16、または約1:2から1:15、または約1:2から1:14、または約1:2から1:13、または約1:2から1:12、または約1:2から1:11、または約1:2から1:10、または約1:3から1:10、より好ましくは、約1:4から1:10としてもよい。一実施形態では、鉄元素と塩基性塩の元素とのモル比は約1:3.8である。
【0034】
ステップ(i)の溶液は、遷移金属のさらに少なくとも1つまたは複数の追加の塩を含んでいてもよく、それぞれは、周期表で第3族から第7族または第9族から第11族の遷移金属から独立して選択される。これは、さらに、アルカリ金属および少なくとも1つの追加の遷移金属を含む促進された鉄触媒を生成し得る。
【0035】
第3族元素は、スカンジウムおよびイットリウムからなる群から選択されてもよい。第4族元素は、チタン、ジルコニウム、およびハフニウムからなる群から選択されてもよい。第5族元素は、バナジウム、ニオブおよびタンタルからなる群から選択されてもよい。第6族元素は、クロム、モリブデンおよびタングステンからなる群から選択されてもよい。第7族元素は、マンガン、テクネチウムおよびレニウムからなる群から選択されてもよい。第9族元素は、コバルト、ロジウムおよびイリジウムからなる群から選択されてもよい。第10族元素は、ニッケル、パラジウムおよび白金からなる群から選択されてもよい。第11族元素は、銅、銀および金からなる群から選択されてもよい。
一実施形態では、遷移金属は、ニッケル、マンガン、マグネシウム、カルシウム、ランタン、コバルト、リチウム、カリウム、セシウム、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましい実施形態では、遷移金属は、ニッケルまたはマンガンである。より好ましい実施形態では、遷移金属はマンガンである。
【0036】
遷移金属塩は、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、塩化物、フッ化物、臭化物、ヨウ化物、リン酸塩、ピロリン酸塩、過塩素酸塩、およびそれらの混合物からなる群から選択されるアニオンを含んでいてもよい。一実施形態では、遷移金属塩は、硝酸塩アニオンを含む。
【0037】
好ましい実施形態では、遷移金属塩は、Mn(NO3)2、Ni(NO3)2、またはそれらの混合物を含む。より好ましい実施形態では、遷移金属塩は、Mn(NO3)2、を含む。理論に縛られることなく、遷移金属塩を添加することで、遷移金属を鉄系触媒へ導入することできる。さらに、得られた触媒は、FTOプロセス中に軽質オレフィンに対して改善された選択性を示し得る。
【0038】
ステップi)の溶液は、遷移金属と鉄とのモル比で、約1:5から1:200、好ましくは約1:5から1:180、または約1:5から1:160、または約1:5から1:140、または約1:5から1:120、または約1:5から1:100、または約1:8から1:100、または約1:9から1:100、であり、より好ましくは約1:9から1:99としてもよい。
【0039】
一実施形態では、遷移金属はニッケルであり、ニッケルと鉄とのモル比は、約1:50から1:200、または約1:50から1:180、または約1:50から1:160、または約1:50から1:140、または約1:50から1:120、または約1:60から1:120、または約1:70から1:120、または約1:80から1:120、または約1:90から1:110、であり、より好ましくは約1:100である。
【0040】
他の実施形態では、遷移金属はニッケルであり、マンガンと鉄とのモル比は、約1:1から1:50、または約1:1から1:40、または約1:1から1:30、または約1:1から1:20、または約1:1から1:18、または約1:1から1:16、または約1:1から1:14、または約1:1から1:12、または約1:2から1:12、または約1:3から1:12、または約1:4から1:12、または約1:5から1:12、または約1:6から1:12、または約1:8から1:12、または約1:8から1:10、であり、より好ましくは約1:9である。
【0041】
添加ステップii)では、さらに混合物にケイ酸塩を導入し、ケイ酸塩の存在下で前記鉄系触媒を沈殿させ、それによりケイ酸塩に支持された鉄系触媒を生成してもよい。
【0042】
理論に縛られることなく、SiO2マトリックスは、ケイ酸塩の加水分解によって生成されてもよい。さらに、前記SiO2マトリックスは、促進剤として作用してもよく、また、ケイ酸塩に支持された鉄系触媒の特性安定性を改善し得る。ケイ酸塩は、2~15個の炭素原子、好ましくは、2~12個の炭素原子、2~10個の炭素原子、または2~8個の炭素原子、または2~6個の炭素原子、または2~5個の炭素原子、を含む1または複数のアルコキシ基を含んでいてもよい。一実施形態では、ケイ酸塩は、オルトケイ酸テトラエチルである。添加ステップは、鉄元素と前記ケイ酸塩とのモル比で、約1:1から1:50、または約1:1から1:45、または約1:1から1:40、または約1:1から1:35、または約1:1から1:30、または約1:1から1:25、または約1:1から1:20、または約1:1から1:18、または約1:1から1:16、または約1:1から1:15、または約1:1から1:12、または約1:2から1:12、としてもよいし、より好ましくは、約1:5から1:12としてもよい。一実施形態では、鉄元素と前記ケイ酸塩とのモル比は、1:5から1:15である。好ましい実施形態では、鉄元素と前記ケイ酸塩とのモル比は、約1:12である。
【0043】
鉄塩は、2価の鉄塩または3価の鉄塩であってもよい。一実施形態では、鉄塩は3価の鉄塩である。
【0044】
鉄塩は、硝酸塩、塩化物、フッ化物、臭化物、ヨウ化物、リン酸塩、ピロリン酸塩および過塩素酸塩からなる群から選択されるアニオンを含んでもよい。一実施形態では、鉄塩は、硝酸アニオンを含む。
【0045】
好ましい実施形態では、鉄塩は、3価の硝酸鉄である。
【0046】
界面活性剤は、イオン性界面活性剤であってもよい。界面活性剤は、ハロゲン化物、スルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩およびカルボン酸塩からなる群から選択されるアニオンを含んでいてもよい。一実施形態では、界面活性剤は、ハロゲン化物アニオンを含む。好ましい実施形態では、界面活性剤は、フッ化物、塩化物、臭化物またはヨウ化物アニオンを含む。より好ましい実施形態では、界面活性剤は臭化物アニオンを含む。
【0047】
好ましくは、界面活性剤は、第4級アンモニウム界面活性剤であってもよい。より好ましくは、界面活性剤は、臭化セトリモニウムであってもよい。
【0048】
理論に縛られることなく、界面活性剤に存在するハロゲンアニオンは、鉄系触媒の促進剤として作用し得る。ハロゲンアニオンはNiの水素化を抑制し、オレフィンの選択性を高める効果を有することが見出された。ハロゲンアニオンはFe(CO)5をFe5C2(例えば、FTOの活性炭化物相)に還元し、そして、鉄系触媒の動的相変化中に重要な役割を果たし得ることが見出された。鉄と界面活性剤とのモル比は、約1:0.5から1:15、または約1:0.5から1:12、または約1:0.5から1:10、または約1:0.5から1:8、または約1:0.5から1:6、または約1:0.5から1:4、または約1:0.5から1:2、であってもよく、またはより好ましくは約1:1であってもよい。
【0049】
理論に縛られることなく、鉄と界面活性剤との比は、沈殿した触媒の粒子サイズに影響する場合がある。粒子サイズは、CO/CO2変換、および製品の選択性に影響する場合がある。さらに、驚くべきことに、本明細書に記載の鉄と界面活性剤との比は、所望の生成物(すなわち軽質オレフィン)に対してより良好な選択性を達成する適切な粒子サイズを導く場合があることを見出した。
【0050】
本明細書に記載の方法は、さらに沈殿したナノサイズ触媒を回収し、空気中で沈殿したナノサイズ触媒を乾燥させることを含んでいてもよい。
【0051】
沈殿したナノサイズ触媒の回収は、遠心分離および/またはろ過によって実施されてもよい。
【0052】
焼成ステップは、約300℃から600℃、または約350℃から600℃、または約400℃から600℃、または約450℃から600℃、または約500℃から600℃、または約500℃から580℃、または約500℃から560℃の温度で実施されてもよく、またはより好ましくは、500℃から550℃の温度で実施されてもよい。
【0053】
焼成ステップは、約1~10時間、または約1~8時間、または約1~6時間、または約1~5時間、または約1~4時間、または約1~3時間、または約1~2時間、で実施されてもよく、より好ましくは、約2時間実施されてもよい。
【0054】
焼成ステップで得られた混合物は、さらに洗浄されてもよい。さらに、過剰の界面活性剤は、洗浄ステップで除去されてもよい。理論に縛られることなく、高い含有量の界面活性剤(例えば、Br)により、CO2変換プロセスに影響を与える、鉄から酸化鉄への酸化を防ぎ得る。
【0055】
さらに、本明細書に記載の方法によって得られるナノサイズFe触媒は、軽質オレフィンの選択性を向上させる性能を与えることが示され、さらに、高い触媒活性と組み合わされた場合には、1回のパス当たりの軽質オレフィンの収率が最大化されるため、鉄系FTOは商業的に好適に適用され得る。
【0056】
さらに、スピネル結晶相を有するナノサイズ触媒は、一酸化炭素または二酸化炭素から軽質オレフィン、特に、2~4個の炭素原子を有する軽質オレフィンへの変換効率を、従来の触媒に対して、最大で24mol.C%の改善をし得ることが示された。収率の改善は、ナノサイズ触媒の結晶スピネル相に起因すると考えられる。
【0057】
一実施形態では、ナノサイズ鉄系触媒の製造方法を提供する。前記方法は、硝酸鉄および臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)を純水中で混合することから始まる。溶液から鉄を沈殿させるため、NaOH溶液が用いられる。その後、沈殿物は洗浄なしで回収され、空気中で、550℃で2時間焼成される。この方法では、一度の沈殿にて、約4~5nmサイズのNa促進ナノ粒子が生成され、焼成ステップでNaカチオンを洗浄するステップが不要となる。このため、より高い軽質オレフィン(C2~C4)選択性および収率を提供することが可能となる。
【0058】
その他の実施形態では、本発明は、Xにより促進されたナノサイズ鉄系触媒の製造方法を提供する。ここで、Xは、Ni、Mn、Mg、Ca、La、Co、Li、K、Ce、またはそれらの組み合わせである。前記方法は、硝酸鉄、Xの塩、および臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)を純水に混合することから開始される。溶液から鉄とXとを沈殿させるため、NaOH溶液を用いる。その後、沈殿物は洗浄なしで回収され、空気中で、500℃以上で少なくとも2時間焼成される。この方法では、一度の沈殿にて、約4~5nmサイズのX促進ナノ粒子が生成され、焼成ステップでXカチオンを洗浄する工程が不要となる。このため、より高い軽質オレフィン(C2~C4)選択性および収率を提供することが可能となる。
【0059】
また、その他の実施形態では、Xにより促進、または促進されていない、支持されたナノサイズ鉄系触媒の製造方法を提供する。ここで、Xは、Ni、Mn、Mg、Ca、La、Co、Li、K、Ceまたはそれらの組み合わせである。
前記方法は、硝酸鉄、Xによる促進が必要である場合にはXの塩、および臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)を純水に混合することから開始される。溶液から鉄とXとを沈殿させるため、NaOH溶液を用いる。シリカマトリックスを形成するため、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を添加する。その後、沈殿物は洗浄なしで回収され、空気中で、500℃以上で少なくとも2時間焼成される。この方法では、一度の沈殿にて、約4~5nmサイズのX促進ナノ粒子が生成され、焼成ステップでNaカチオンを洗浄する工程が不要となる。このため、より高い軽質オレフィン(C2~C4)選択性、収率、および安定性を提供することが可能となる。
【0060】
本明細書に記載のナノサイズ鉄系触媒は、ナノサイズ触媒の全体の重量に対して、5~99wt.%の鉄;およびアルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表で第3族から第7族および第9族から第11族の遷移金属の元素、およびランタノイドからなる群から選択される1~50wt.%の金属の酸化物を含み、前記金属は鉄ではなく、前記ナノサイズ触媒の直径は、2~50nmである。
【0061】
さらに、本明細書に記載の鉄系触媒は、フィッシャー・トロプシュ反応による、一酸化炭素または二酸化炭素を軽質オレフィンへ変換する触媒活性を高めることを見出した。特に、鉄系触媒は、メタンよりも軽質オレフィンに対して良好な選択性を示し、さらに、全体としてより高いガスから軽質オレフィンへの変換を示した。
【0062】
理論に縛られることなく、触媒活性の改善は、鉄系触媒のスピネル結晶相とともに、多量の促進剤金属が起因していると考えられる。これらの触媒特性は、触媒の性能を改善するために相乗的に作用していると考えられる。
【0063】
ナノサイズ触媒の直径は、約2nmから50nm、約2nmから約5nm、約2nmから約10nm、約2nmから約20nm、約5nmから約10nm、約5nmから約20nm、約5nmから約50nm、約10nmから約20nm、約10nmから約50nm、または約20nmから約50nmであってもよい。
【0064】
金属は、触媒の全体の重量に対して、4~50wt.%または約4~45wt.%、または約4~40wt.%、または約4~35wt.%、または約4~30wt.%、または約4~25wt.%、または約4~20wt.%、または約4~15wt.%、または約4~12wt.%、または約4~10wt.%の量が存在していてもよく、より好ましくは、触媒の全体の重量に対して、約10wt.%の量が存在していてもよい。
【0065】
理論に縛られることなく、従来の含有量と比較し、触媒は多量(~10wt.%)の金属を触媒中に保持してもよい。さらに、促進剤として多量の金属を保持することで、工業的な合成の間における、さらなる廃水処理(例えば、洗浄ステップ)を回避することができるため、FTO技術のコスト分析において重要な役割を果たす可能性がある。
【0066】
ナノサイズ触媒は、スピネル結晶相を有していてもよい。スピネル結晶相を有する触媒の化学式は、化学式FeM2O4を含んでいてもよい。ここで、金属Mはアルカリ金属であってもよい。金属Mはナトリウムであってもよい。
【0067】
ナノサイズ触媒は、周期表で第3族から第7族または第9族から第11族なる群から選択される遷移金属元素をさらに含んでいてもよい。一実施形態では、遷移金属は、第7族または第10族なる群から選択される。好ましい実施形態では、遷移金属はニッケルまたはマンガンである。
【0068】
ナノサイズ触媒における遷移金属と鉄との重量比は、約1:5から1:200であってもよく、好ましくは、約1:5から1:180、または約1:5から1:160、または約1:5から1:140、または約1:5から1:120、または約1:5から1:100または約1:9から1:100であり、より好ましくは、約1:9から1:99である。
【0069】
ナノサイズ触媒は、さらにハロゲン酸化物を含んでいてもよい。一実施形態では、ハロゲンは臭素である。
【0070】
ハロゲン酸化物は、触媒の重量に対して、約0.1から50wt.%、または約0.1から45wt.%、または約0.1から40wt.%、または約0.1から35wt.%、または約0.1から30wt.%、または約0.1から25wt.%、または約0.1から20wt%のハロゲンが存在していてもよい。
【0071】
鉄系触媒は、
図4に示すような広域X線吸収微細構造分析スペクトラムを示す場合がある。鉄系触媒は、
図10に示すようなX線回折図を示す場合がある。
【0072】
ナノサイズ触媒は、さらに、SiO2マトリックスを含んでいてもよい。
【0073】
本明細書に記載されたナノサイズ触媒は、上述の方法で準備されてもよい。
【0074】
本明細書に記載された軽質オレフィンの製造プロセスは、i)上述のように、前記触媒を活性化させるため、1または2以上の炭素酸化物と水素とを含むガスの存在下で、前記触媒を加熱し、ii)1または2以上の炭素酸化物と水素とを含むガス流体と、ステップi)の前記活性化された触媒とを接触させ、部分的または完全に前記1または2以上の炭素酸化物を前記軽質オレフィンへ変換する、ステップを含み、前記軽質オレフィンは、2個から4個の炭素原子を含み、メタンは、実質的に前記軽質オレフィンに含まれない、または、前記軽質オレフィンの20%未満を構成する。
【0075】
さらに、このプロセスは、現在開示された触媒において、炭素酸化物から炭化水素へ高い変換効率(例えば、少なくとも50molC%)を達成し得る。さらに、本明細書に記載されたプロセスによる二酸化炭素の変換は、少なくとも20molC%であってもよく、または少なくとも30molC%、または少なくとも40molC%、または少なくとも50molC%であってもよい。
【0076】
特に、本明細書に記載された触媒は、パラフィンよりも短鎖オレフィンであることが好ましく、特に、軽質オレフィンは、2~4個の炭素原子を含む。このような軽質オレフィンは、現在開示された鉄系ゼオライト触媒を用いて、メタンから選択的に生成される。開示されたプロセスにおける鉄系ゼオライト触媒の高い変換効率と選択性は、炭素酸化物から軽質オレフィンの生成を特に活性化する鉄ナノ粒子のスピネル相によるものと考えられる。
【0077】
炭素酸化物は、一酸化炭素(CO)または二酸化炭素(CO2)であってもよい。一実施形態では、ステップii)のガス流体における炭素酸化物は、実質的に二酸化炭素である。
【0078】
ステップi)は、約200℃~350℃、または約200℃~340℃、または約220℃~300℃、または約230℃~300℃、または約240℃~300℃、または約250℃~300℃、または約260℃~300℃、または約270℃~300℃、または約280℃~300℃の温度で実施されてもよく、より好ましくは、約290℃である。
【0079】
ステップii)は、約200℃~450℃、または約220℃~450℃、または約240℃~450℃、または約260℃~450℃、または約280℃~450℃、または約300℃~450℃、または約300℃~420℃、または約300℃~400℃、または約320℃~400℃、または約330℃~400℃の温度で実施されてもよく、より好ましくは、約330℃~390℃である。ステップi)は、約5~30bar、または約5~25bar、または約5~20bar、または約5~15bar、または約5~10barの圧力で行われてもよく、より好ましくは、約10barである。
【0080】
ステップii)は、約5~50bar、または約5~45bar、または約5~40bar、または約5~35bar、または約5~30bar、または約5~25bar、または約10~25bar、または約15~25barの圧力で行われてもよく、より好ましくは、約20barである。
【0081】
ステップii)におけるガス流体の空間速度は、約1500ml/g.hから5000ml/g.h、または約1500ml/g.hから4500ml/g.h、または約1500ml/g.hから4000ml/g.h、または約1500ml/g.hから3500ml/g.h、または約1500ml/g.hから3000ml/g.h、または約1500ml/g.hから2500ml/g.hであってもよく、または、より好ましくは約2000ml/g.hから2500ml/g.hである。
【0082】
ガスにおける水素と1または複数の炭素酸化物との比は、約4:1から1:3、または約3:1から1:3、または約2:1から1:3、または約2:1から1:2であってもよく、より好ましくは約1:1である。
【0083】
さらに、本明細書に記載のプロセスから得られる生成物流体におけるメタンの収率は、生成物ガス流体の15%未満、または10%未満、または好ましくは5%未満であってもよい。加えて、生成物ガス流体における一酸化炭素濃度は、12%未満、または10%未満、または8%未満、または5%未満、または1%未満であってもよい。
【0084】
さらに、本明細書に記載のプロセスによって得られる生成物ガス流体において2から4個の炭素原子を有するオレフィンの収率は、5mol%未満、または5~90%の間、または5~85%の間、または5~80%の間、または5~75%の間、または5~70%の間、または5~65%の間、または5~60%の間、または5~55%の間、または5~50%の間、または5~45%の間、または少なくとも5~40%の間であってもよい。
【0085】
生成物ガスにおけるC2からC4炭化水素の分布は、少なくとも20mol%、または少なくとも25mol%、または少なくとも30mol%、または少なくとも35%であってもよい。このうち、少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85mol%は、2から4個の炭素原子を含むオレフィンである。
【0086】
一実施形態では、本明細書に記載された準備方法は、例えばFe(NO3)3等の鉄塩を、例えば臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)等の界面活性剤とともに、脱イオンH2Oに混合し、よく混合された溶液を得ることから始まる。続いて、例えばNaOH等のアルカリ塩基が、溶液において鉄を沈殿させるために用いられる。沈殿物は、550℃で2時間焼成する前に、遠心分離や空気中で乾燥させることで回収される。次に、酸化鉄触媒は、炭化鉄を得るため、合成ガスで、10bar、290℃で24時間活性化され、炭化鉄を得る。導入プロトコルは、H2/CO=1の合成ガスを流しながら370℃、20barで触媒の特性を追跡することにより観察された。高い活性(>90Cmol.%COの変換効率)を観測したところで、温度および/またはH2/CO比は、軽質オレフィン収率が最大化されるように調整される。
【0087】
その他の実施例では、ナノサイズ鉄系触媒の製造方法は、例えばFe(NO3)3等の鉄塩と、例えばMn(NO3)2等の促進剤塩と、を、例えばCTAB等の界面活性剤とともに、脱イオンH2Oに混合し、よく混合された溶液を得ることから始まる。続いて、例えばNaOH等のアルカリ塩基が、溶液において鉄を沈殿させるために用いられる。沈殿物は、500℃で5時間焼成する前に、遠心分離や空気中で乾燥させることで回収される。次に、鉄酸化触媒は、炭化鉄を得るため、合成ガスで、10bar、290℃で24時間活性化され、炭化鉄を得る。導入プロトコルは、H2/CO=1の合成ガスを流しながら370℃、20barで触媒の特性を追跡することにより観察された。高い活性(>90Cmol.%COの変換効率)を観測したところで、温度および/またはH2/CO比は、軽質オレフィン収率が最大化されるように調整される。
【0088】
その他の実施形態では、本明細書に記載された準備方法は、例えばFe(NO3)3等の鉄塩を、例えばCTAB等の界面活性剤とともに、脱イオンH2Oに混合し、よく混合された溶液を得ることから始まる。続いて、例えばNaOH等のアルカリ塩基が、溶液において鉄を沈殿させるために用いられる。例えばSiO2等の構造促進剤が、沈殿物の懸濁液中のオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)の加水分解により、導入される。沈殿物550℃で2時間焼成する前に、遠心分離や空気中で乾燥させることで回収される。続いて、酸化鉄触媒は、炭化鉄を得るため、合成ガスで、10bar、290℃で24時間活性化され、炭化鉄を得る。導入プロトコルは、H2/CO=1の合成ガスを流しながら370℃、20barで触媒の特性を追跡することにより観察された。高い活性(>90Cmol.%COの変換効率)を観測したところで、温度および/またはH2/CO比は、軽質オレフィン収率が最大化されるように調整される。さらに、ナノサイズ鉄系触媒は、従来の溶融したFe触媒よりも明らかな改善が示されていることが分かった。これは、軽質オレフィンの製品選択性を促進する、ナノ粒子の性質と、高い含有量のアルカリ金属(特にNa)を含有することとが貢献していると考えられる。適切な指示材料の使用は、ナノモルフォロジーの維持およびその高い活性を可能にし得る。特に、本明細書に記載の方法で得られる前述の触媒を用いたCO変換は、驚くべきことに、導入プロトコルによれば、>95Cmol.%に達することを見出した。
【0089】
さらに、水性ガスシフト(WGS)反応は、元々備わったH2/COモル比を調整する特性を発揮するため、本明細書に記載されているように、典型的に同等のモル濃度のCOとH2とからなる未処理の合成ガスは、直接ナノサイズFe触媒によって変換され得る。そのため、原料のH2/CO比は、高い比と調整する必要がなく、運用コストの削減につながる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
添付の図は、以下の説明とともに明細書に援用され、明細書の一部を構成する。これらの図は、様々な実施形態を説明し、本実施形態による種々の原理及び利点を説明するために提供されている。
【0091】
図1は、本願明細書に記載されたナトリウム促進ナノサイズ鉄系触媒を準備する方法を説明するためのフローチャートである。
【0092】
図2aおよび
図2bは、NaOH中のFe(NO)
3)
3沈殿物により準備された鉄-ナトリウム触媒の透過型電子顕微鏡写真である。
図1aは、鉄-ナトリウム触媒のマクロロッド状構造を示し、
図1bはFeナノ粒子の拡大図である。マクロ構造は、約4~5nmのサイズのより微細なFeナノ粒子によって構成されている。
【0093】
図3は、2つの方法で準備された鉄-ナトリウムのX線解析パターンである。FeNa触媒のスピネル相のピークは、(*)によって示されている。第1の方法は、エージングなしで室温にて触媒を準備することを含み(上側の波形)、第2の方法は、70℃で16時間エージングして触媒を準備することを含む(下側の波形)。エージングなしで準備された触媒(第1の方法)は、スピネル相およびヘマタイト相の両方のピークが観測され、触媒は、ヘマタイト相およびスピネル相の混合物で生成されていることが示されている。エージングありで準備された触媒(第2の方法)は、スピネル相のピークが観察され、スピネル相が支配的であることが示されている。これは、高温とエージングとで準備を行うことで選択的にスピネス層を形成できることを示している。
【0094】
図4は、鉄-ナトリウム触媒の広域X線吸収微細構造(EXAFS)のスペクトルを示す。矢印で示されているように、本明細書に記載された方法により準備されたFeNa触媒のスペクトルは、Fe-Fe配位のFe
2O
3およびFe
3O
4のスペクトルで典型的に見られるピークのショルダーが欠けていることが示されている。これは、FeNaスペクトルの位相が一般的なヘマタイトでもマグネタイトでもないことを示唆している。
【0095】
図5a~5dは、鉄-ナトリウム触媒のエネルギー分散型X線分析(EDS)のマップを示す。マップは、鉄、臭素、ナトリウムおよび酸素の良好な分散を示している。元素の分散のリファレンスとして、酸素のEDSマップが提供されている。
【0096】
図6は、鉄-ナトリウム触媒中の臭素に対応するピークのX線光電子分光(XPS)を示す。結合エネルギー(Binding Energy)は、臭素が臭素酸イオンの形で存在することを示唆している。
【0097】
図7a~7eは、鉄-ナトリウム-マンガン触媒のエネルギー分散型X線分析(EDS)のマップであり、鉄、ナトリウムおよびマンガンの分散を示している。
元素の分散のリファレンスとして、酸素のマップが提供されている。
図8a~8eは、鉄-ナトリウム-ニッケル触媒の電子線分散型X線分析のマップであり、鉄、臭素、ナトリウムおよびニッケルの分散を示している。元素の分散のリファレンスとして、酸素のマップが提供されている。
【0098】
図9は、90wt.%のシリカマトリックスに分散した鉄-ナトリウムナノ粒子触媒の透過型電子顕微鏡写真を示す。
図10は、FeNa
2O
4のシミュレーションパターンと比較したFeNaパターンのX線回折(XRD)の回折パターンを示す。
【実施例】
【0099】
本発明の非限定的な実施例は、特定の実施例を参照することでさらに詳細に説明される。これは、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
本発明の非限定的な実施例は、特定の実施例を参照することによってさらに詳細に説明される。これは、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0100】
次の頭字語と記号との意味は以下の通りである。
GHSV:ガスの1時間ごとの空間速度(Gas hourly space velocity)
TOS:流体にさらされた時間(Time on Stream)
LO:軽質オレフィン
O:オレフィン
P:パラフィン
CNT:カーボンナノチューブ(Carbon Nanotube)
CNF:カーボンナノファイバ(Carbon Nanofibre)
【0101】
<実施例1 Na促進Fe触媒>
Na促進Fe触媒(FeNa)は、10.81gのFe(N03)3・9H2Oを10g臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)とともに、400mlの脱イオン化H2Oと混合し、均質な溶液とすることで準備された。次に、80mlの脱イオン化H2O中の4gのNaOHは、溶液中の鉄を沈殿させるために使用された。遠心分離により沈殿物を回収する前に、懸濁液は、室温で5分間エージングされた。促進剤としてNaを残すため、沈殿物の洗浄は行わなかった。その後、550℃で2時間の焼成の前に、沈殿物は乾燥された。Na促進されたFeNa触媒の収率は、約10wt.%であった。
【0102】
FeNa触媒は、固定層反応器に移動され、H2を流しながら還元した。合成ガスの比H2/CO=1、10bar、290℃で24時間合成ガスを流すプロトコルが、触媒の活性化に用いられた。最後に、導入ピリオドは、370℃、20barでH2/CO=1の合成ガスを2,000ml/g.h.の空間速度で流しながら、触媒の特性を追跡することにより観察された。高い活性(>90Cmol.%COの変換効率)を観測したところで、温度および/またはH2/CO比は、軽質オレフィン収率が最大化されるように調整された。
【0103】
図2は、ここで準備されたFeNa触媒のTEM画像であり、ナノ粒子は、ロッド状の形状を形成するように凝集している(
図2aを参照)。ロッド状の形状の個々の粒子は、
図2bで観察できる。
図3は、FeNa触媒のX線解析パターンを示す。主な相は、鉄をベースとするスピネル相である。EXAFSによる追跡調査では、Fe
2O
3およびFe
3O
4のスペクトルと比較し、Fe-Fe配位のピークが欠けていることが示唆されている(
図4を参照)。これは、鉄ベースの相の構造が、一般的なヘマタイトでもマグネタイトでもないことを示唆している。
【0104】
FeNa触媒の構成は、EDSによって特定され、得られたカラーのマップは、触媒中の元素の均一な分散を示した(
図5を参照)。
図6は、FeNaのBrのXPSスペクトルを示し、結合エネルギーは、Brは、触媒中で臭素酸塩の形で存在し、H
2による還元プロセスの間に臭化物に還元される可能性があることを示唆している。還元された臭化物の形態は、触媒がフィッシャー・トロプシュ反応で用いられた場合に、Fe
5C
2の形成を促進することができると考えられる。
【0105】
表1は、370℃、20bar、H2/CO=1、ガスの1時間ごとの空間速度(GHSV)が2,000ml/g.hの条件の導入ピリオドにおけるFeNaの特性を示している。表1のデータによれば、触媒は、C2-C4軽質オレフィンへの高い選択性を示しつつ、CH4への低い選択性を示した。最適な導入により、軽質オレフィンへの高い選択性を保持しつつ、触媒の高い活性を達成することができる。表1に370℃、20bar、H2/CO=1、ガスの1時間ごとの空間速度(GHSV)が2,000ml/g.hの条件の触媒導入におけるFeNa、FeNa-Ni、およびFeNa-Mnの特性を示す。
【0106】
【0107】
表2は、350℃、20bar、H2/CO=1、およびGHSVが2000ml/g.hの条件の導入ピリオドにおけるFeNaの特性を示している。活性は完全なCO変換に近い状態に最大化されつつ、CH4への選択性が最小化されている。C2-C4のかなりの部分も、高いオレフィン性で得られている。FeNa触媒は、パスごとに良好な軽質オレフィン収率とするため、オレフィンの選択性も適度に維持される。
【0108】
表1は、350℃、20bar、H2/CO=1、およびGHSVが2,000ml/g.h.の条件におけるFeNa触媒の特性を示している。
【0109】
【0110】
表3は、記載の方法で準備されたFeNa触媒(一列目)と、その他の報告されたNa促進を含む触媒(二列目から四列目)の特性比較を示している。比較例である触媒は、焼成なしで、合成ガス反応の前にH2環境下で還元させてNa促進されたFe触媒を炭素ベース支持層へ浸漬させる従来法にて準備された。比較例は、利用可能なうち最も高いナトリウム促進を有する比較触媒で作られている。本明細書に記載された方法で準備されたFeNa触媒は、他の触媒と比較し、高い合成ガス変換活性及びオレフィン性を示すことがわかる。表3は、当技術分野における他のNa促進触媒と、FeNa触媒と、の特性比較を示す。
【0111】
【0112】
<実施例2 Mn促進FeNa触媒の準備>
Mn促進FeNa(FeNa-Mn)触媒は、9.73gのFe(NO3)3・9H2O、および0.67gのMn(NO3)2・4H2Oを10gのCTABとともに、400mlの脱イオン化H2Oと混合し、均質な溶液とすることで準備された。次に、80mlの脱イオン化H2O中の4gのNaOHは、溶液中の鉄を沈殿させるために使用された。遠心分離により沈殿物を回収する前に、懸濁液は、室温で5分間エージングされた。促進剤としてNaを残すため、沈殿物の洗浄は行わなかった。その後、550℃で2時間の焼成の前に、沈殿物は乾燥された。Na促進されたFeNa-Mn触媒の収率は、約10wt.%で、FeのMnへの比は約9であった。
【0113】
FeNa-Mn触媒は、固定層反応器に移動され、H2を流しながら還元した。合成ガスの比H2/CO=1、10bar、290℃で24時間合成ガスを流すプロトコルが、触媒の活性化に用いられた。最後に、導入ピリオドは、370℃、20barでH2/CO=1の合成ガスを2,000ml/g.h.の空間速度で流しながら、触媒の特性を追跡することにより観察された。高い活性(>90Cmol.%COの変換効率)を観測したところで、温度および/またはH2/CO比は、軽質オレフィン収率が最大化されるように調整された。
【0114】
図7は、FeNa-Mn触媒を構成する元素のEDS同定とマッピングとを示している。画像では、Fe、Na、およびMn、さらに、酸化物の形で存在する含有酸素が、良好な分散および均一な分布をしていることが示されている。表1は、FeNaと比較した場合のFeNa-Mnの特性が示されている。Mn促進は、C2-C4炭化水素への選択性およびオレフィン性をさらに向上させつつ、CH
4およびC5+への選択性を低下させている。
【0115】
<実施例3 ニッケル促進FeNa触媒の準備および特性>
Ni促進FeNa(FeNa-Ni)触媒は、10.70gのFe(NO3)3・9H2Oおよび0.078gNi(NO3)2・6H2Oを、10gCTABとともに、400mlの脱イオン化H2Oと混合し、均質な溶液とすることで準備された。次に、80mlの脱イオン化H2O中の4gのNaOHは、溶液中の鉄を沈殿させるために使用された。遠心分離により沈殿物を回収する前に、懸濁液は、室温で5分間エージングされた。促進剤としてNaを残すため、沈殿物の洗浄は行わなかった。その後、550℃で2時間の焼成の前に、沈殿物は乾燥された。Na促進されたFeNa-Ni触媒は、約10wt.%で、FeのNiへの比は約99であった。
【0116】
FeNa-Ni触媒は、固定層反応器に移動され、H2を流しながら還元した。合成ガスの比H2/CO=1、10bar、290℃で24時間合成ガスを流すプロトコルが、触媒の活性化に用いられた。最後に、導入ピリオドは、370℃、20barでH2/CO=1の合成ガスを2,000ml/g.h.の空間速度で流しながら、触媒の特性を追跡することにより観察された。高い活性(>90Cmol.%COの変換効率)を観測したところで、温度および/またはH2/CO比は、軽質オレフィン収率が最大化されるように調整された。
【0117】
図8は、FeNa-Ni触媒を構成する元素のEDS同定とマッピングとを示している。画像では、Fe、Na、およびNi、さらに、酸化物の形で存在する含有酸素が、良好な分散および均一な分布をしていることが示されている。表1は、370℃、20bar、H
2/CO=1、GHSVが2,000ml/g.hの条件の導入におけるFeNa-Niの特性を示している。Niの添加は、非常に短鎖の炭化水素を生成させる傾向があるため、C5+フラクションを犠牲にしてC2-C4フラクションに対する選択性を向上でき、また、主にCOおよびH
2のメタネーションに有効である。この点から、FeNa触媒のオレフィン性と合わせることで、軽質オレフィンの選択性をより高めることができると考えられる。
【0118】
<実施例4 FeNa触媒の特性>
FeNa触媒は、10.81gのFe(NO3)3・9H2Oを10gのCTABとともに、400mlの脱イオン化H2Oと混合し、均質な溶液とすることで準備された。次に、80mlの脱イオン化H2O中の4gのNaOHは、溶液中の鉄を沈殿させるために使用された。遠心分離により沈殿物を回収する前に、懸濁液は、室温で5分間エージングされた。促進剤としてNaを残すため、沈殿物の洗浄は行わなかった。その後、550℃で2時間の焼成の前に、沈殿物は乾燥された。Na促進されたFeNa-Mn触媒の収率は、約10wt.%であった。
【0119】
FeNa触媒は、固定層反応器に移動され、H2を流しながら還元した。合成ガスの比H2/CO=1、10bar、290℃で24時間合成ガスを流すプロトコルが、触媒の活性化に用いられた。最後に、導入ピリオドは、330℃、20barでH2/CO=1の合成ガスを12,000ml/g.h.の空間速度で流しながら、触媒の特性を追跡することにより観察された。178時間後に、高い活性(>78Cmol.%COの変換効率)を達成し、活性の失活の兆候は見られなかった。
【0120】
表4は、330℃、20bar、H2/CO=1およびGHSVが12,000ml/g.h.の条件におけるFeNaの特性を示している。表4のデータは、触媒の活性が高まり、高いGHSV下で約80Cmol%のCO変換を達成したことを示している。176時間のTOSの後も活性は維持される。
【0121】
表2は、330℃、20bar、H2/CO=1、およびGHSVが12,000ml/g.hの条件下におけるFeNa触媒の特性を示している。
【0122】
【0123】
<実施例5 支持された触媒>
支持されたFeNa(s-FeNa)触媒は、1.08gのFe(NO3)3・9H2Oを、1gのCTABとともに、40mlの脱イオン化H2Oと混合し、均質な溶液とすることで準備された。次に、8mlの脱イオン化H2O中の0.4gのNaOHは、溶液中の鉄を沈殿させるために使用された。92.86mlのメタノールの7.14mlのオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を滴下して導入し、SiO2支持マトリクスを形成した後に、懸濁液は、室温で5分間エージングされた。遠心分離により沈殿物を回収する前に、最終混合物は、室温で12時間エージングされた。促進剤としてNaを残すため、沈殿物の洗浄は行わなかった。その後、550℃で2時間の焼成の前に、沈殿物は乾燥された。これにより約1wt.%のNa促進された鉄系触媒を得た。
【0124】
s-FeNa触媒は、固定層反応器に移動され、H2を流しながら還元した。合成ガスの比H2/CO=1、10bar、290℃で24時間合成ガスを流すプロトコルが、触媒の活性化に用いられた。最後に、導入ピリオドは、330℃、20barでH2/CO=1の合成ガスを12,000ml/g.h.の空間速度で流しながら、触媒の特性を追跡することにより観察された。442時間後に高い活性(>74Cmol.%COの変換効率)を達成し、活性の失活の兆候は見られなかった。
【0125】
図9は、ナノ粒子がSiO
2マトリックス全体に分散しているs-FeNaのTEM画像を示している。マトリックスは、ナノ粒子を安定化させ、粒子の移動および焼結に対する抵抗となる。Error! Reference source not found,330℃、20bar、H
2/CO=1、GHSVが12,000ml/g.hの条件おけるs-FeNaの特性を示している。触媒がSiO
2の支持機能を有することで、軽質オレフィンを一定の収率とし74Cmol.%で作用させつつ、442時間以上安定させることができた。
【0126】
表5は、330℃、20bar、H2/CO=1、GHSVが12,000ml/g.hの条件におけるs-FeNaの特性を示している。
【0127】
【0128】
<実施例6 CO2からオレフィンへの変換>
CO2からオレフィンへの変換における触媒の特性を決定するため、本明細書に記載の方法にて、FeNa触媒を準備および焼成した。続いて、焼成したFeNa触媒は、Dl水で洗浄され、40kNでペレット化した。250~500pmの粒子を得るため、ペレットをふるいにかけた。続いて、炭化ケイ素と体積比1:1で混合した後に、1gのFeNa触媒を固定床反応器に導入した。H2中で580℃で6時間、大気圧、空間速度2000ml/(g.h)で還元を実行した。H2/COの比を2としたCOおよびH2中で、300℃で4時間、10barg、空間速度2000ml/(g.h)で活性化を実行した。H2/COの比を3としたCOおよびH2中で、350℃、15barg、空間速度5500ml/(g.h)でCO2反応を実行した。CO2からオレフィン変換に係るFeNa触媒の触媒特性が測定された。関連する実験データを表6に示す。
【0129】
表6は、CO2からオレフィン変換に係るFeNa触媒の触媒特性を示し、CO2の変換をX(CO2)で示し、S(CH4)およびS(CO)の変換は、それぞれCH4およびCOに対する選択性である。
【0130】
【0131】
表6の結果から、本明細書に記載された方法により準備されたFeNa触媒は、C2-C4中のオレフィンの割合が非常に高く、CH4およびCOの選択性が比較的に低くしつつ、46%のCO2変換で、10.8%の軽質オレフィン収率を達成したことを示している。これらの予備的な結果に続き、さらに、オレフィンの収率を改善するための更なる最適化を行ってもよい。
【0132】
<実施例7 触媒性能に対するBr含有の影響>
二酸化炭素の変換における触媒中の臭素の影響を調査するため、本明細書に記載された方法で準備された未洗浄のFeNa触媒のバッチは、COの高い変換が達成されるまで、COフィッシャー・トロプシュオレフィン製造で、まずテストされた。続いて、触媒は、CO2のフィッシャー・トロプシュ変換でテストされた。結果を下記の表7に示す。
【0133】
表7では、COおよびCO2フィッシャー・トロプシュ変換のFeNa触媒の特性を示す。
【0134】
【0135】
未洗浄のFeNa触媒では、COによる完全な活性化の後、11.2%の軽質オレフィン収率を達成できることが見出された。FeNa触媒は、C2-C4中のオレフィンを高い割合とし、また、CH4を低く保ちつつ、39%のCO2変換を有する。しかしながら、FeNa触媒は、わずかに高いCO選択性を有する。
【0136】
COとそれに続くCO2変換のための、焼成されているが未洗浄のFeNa触媒における結果は、洗浄されている焼結された触媒を用いた実施例6の結果と類似している。焼結の後に洗浄されたFeNaは、過剰なBrが除去されているものと考えられる。CO反応の間、反応からの副生成物としての水も、過剰なBrを除去すると考えられる。
【0137】
上記で得られた同様の結果は、COフィッシャー・トロプシュ反応中に副生成物として生成される水によって、Brが浸出する可能性があることを示している。また、Brは、触媒の初期活性化中に役割を果たすことを示唆しているが、触媒が定常状態に達した後は必須ではないことも示唆している。表7から、LO収率は、CO2フロー下では低いが、しかしながら、さらに低い変換(39%CO2変換vs.97%CO変換)を考慮すると、実際には、FeNa触媒はCO2下では軽質オレフィンの選択性がより高い。したがって、CO反応による未洗浄のFeNa触媒の活性化により、触媒は良好な性能を達成した。
【0138】
<産業上の利用可能性>
本明細書に記載の方法は、フィッシャー・トロプシュ反応に用いられるナトリウム促進ナノサイズ鉄系触媒のワンポット合成を可能にする。特に、本明細書に記載の準方法で準備された鉄触媒は、メタンへの水素化を最小限に抑え、一酸化炭素及び二酸化炭素から軽質オレフィンへの選択的な変換に用いられる。そして、本明細書で準備された鉄-ナトリウムナノサイズ触媒を触媒としたフィッシャー・トロプシュ反応から生成された軽質オレフィンは、燃料及び潤滑油として使用される。
さらに、本明細書に記載されたNa促進鉄の準備方法は、工業スケールで、選択的なFeNa触媒の準備のため簡易にスケールアップすることができる。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノサイズ鉄系触媒の製造方法であって、
i)鉄塩を含む溶液を界面活性剤と混合し、混合物を生成
するステップ(i)と、
ii)アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表で第3族から第7族および第9族から第11族の遷移金属元素、ランタノイド、およびそれら元素の組み合わせからなる群から選択される元素の塩を含む塩基性塩の溶液を、前記混合物に加え、沈殿物を生成
するステップ(ii)と、
iii)前記沈殿物を焼成し、前記鉄系触媒を生成する
ステップ(iii)と、を含み、前記鉄系触媒は、前記塩基性塩の前記元素の少なくとも一部を含む、方法。
【請求項2】
前記塩基性塩の溶液は、水酸化物、炭酸塩、または重炭酸塩アニオンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記塩基性塩は、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記塩基性塩は、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、またはそれらの組み合わせである、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記
ステップ(ii)の添加ステップでは、鉄元素と前記塩基性塩の前記元素とのモル比を1:2から1:10とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(i)の前記溶液は、周期表で第3族から第7族または第9族から第11族の遷移金属とは独立して選択される遷移金属の少なくとも1つまたは複数の追加の塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記遷移金属は、Ni、Mn、Mg、Ca、La、Co、Li、K、Ce、またはそれらの組み合わせである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記遷移金属の塩は、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、塩化物、フッ化物、臭化物、ヨウ化物、リン酸塩、ピロリン酸塩、過塩素酸塩、およびそれらの混合物からなる群から選択されるアニオンを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記遷移金属の塩は、Mn(NO
3)
2またはNi(NO
3)
2である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップ
(i)の前記溶液は、遷移金属元素と鉄とのモル比が1:8から1:100である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前
記ステップ(ii)
の添加ステップは、さらに、前記混合物にケイ酸塩を導入し、前記ケイ酸塩の存在下で前記鉄系触媒を沈殿させ、それにより前記ケイ酸塩に支持された鉄系触媒を生成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ケイ酸塩は、1または複数の2~5個の炭素原子のアルコキシ基を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ケイ酸塩は、オルトケイ酸テトラエチルである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記添加ステップでは、鉄元素と前記ケイ酸塩とのモル比を1:5から1:15とする、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記ステップ
(ii)から得られた沈殿した前記混合物は、焼成前に洗浄されない、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記鉄塩は、2価の鉄塩または3価の鉄塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記鉄塩は、硝酸塩、塩化物、フッ化物、臭化物、ヨウ化物、リン酸塩、ピロリン酸塩および過塩素酸塩からなる群から選択されるアニオンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記鉄塩は、3価の硝酸鉄である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記界面活性剤は、イオン性界面活性剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記界面活性剤は、第4級アンモニウム界面活性剤である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記界面活性剤は、臭化セチルトリメチルアンモニウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
鉄と前記界面活性剤とのモル比が1:0.5から1:2である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記
ステップ(iii)の焼成ステップは、400℃から600℃の温度で1から3時間行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
ナノサイズの鉄系触媒であって、
a)ナノサイズの前記触媒の全体の重量の5~99wt.%の鉄と、
b)ナノサイズの前記触媒の全体の重量の1~50wt.%の、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表で第3族から第7族および第9族から第11族の遷移金属の元素、およびランタノイドからなる群から選択され、鉄ではない金属の、金属酸化物と、を含み、
ナノサイズの前記触媒の直径は、2~50nmである、鉄系触媒。
【請求項25】
前記金属は、前記触媒の全体の重量の4~50wt.%の量で存在する、請求項24に記載の鉄系触媒。
【請求項26】
ナノサイズの前記触媒は、スピネル結晶相を有する、請求項24に記載の鉄系触媒。
【請求項27】
前記スピネル
結晶相の触媒の化学式が、FeM
2O
4である、請求項26に記載の鉄系触媒。
【請求項28】
前記触媒は、さらに周期表で第3族から第7族および第9族から第11族の遷移金属の元素を含む、請求項24に記載の鉄系触媒。
【請求項29】
前記遷移金属と鉄との重量比は、1:5から1:200である、請求項24に記載の鉄系触媒。
【請求項30】
前記触媒は、さらにSiO
2マトリックスを含む、請求項24に記載の鉄系触媒。
【請求項31】
さらにハロゲン酸化物を含む、請求項24に記載の鉄系触媒。
【請求項32】
前記ハロゲン酸化物は、前記触媒の重量に対して、約0.1~50wt.%の量で存在する、請求項31に記載の鉄系触媒。
【請求項33】
請求項1~23のいずれか1項に記載の方法で準備された、請求項24から32のいずれか1項に記載の鉄系触媒。
【請求項34】
軽質オレフィンの製造プロセスであって、
i)請求項24から33のいずれか1項に記載の前記触媒を活性化させるため、1または2以上の炭素酸化物と水素とを含むガスの存在下で、前記触媒を加熱
するステップi)と、
ii)1または2以上の炭素酸化物と水素とを含むガス流体と、
前記ステップi)の前記活性化された触媒を接触させ、部分的または完全に前記1または2以上の炭素酸化物を前記軽質オレフィンへ変換する
ステップii)と、を含み、
前記軽質オレフィンは、2から4個の炭素原子を含み、
メタンは、実質的に前記軽質オレフィンに含まれない、または、前記軽質オレフィンの20%未満を構成する、プロセス。
【請求項35】
前記ステップii)の前記ガス流体の前記炭素酸化物は、実質的に二酸化炭素である、請求項34に記載のプロセス。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0092
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0092】
図2aおよび
図2bは、NaOH中のFe(NO)
3)
3沈殿物により準備された鉄-ナトリウム触媒の透過型電子顕微鏡写真である。
図2aは、鉄-ナトリウム触媒のマクロロッド状構造を示し、
図2bはFeナノ粒子の拡大図である。マクロ構造は、約4~5nmのサイズのより微細なFeナノ粒子によって構成されている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0108
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0108】
表2は、350℃、20bar、H2/CO=1、およびGHSVが2,000ml/g.h.の条件におけるFeNa触媒の特性を示している。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0121
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0121】
表4は、330℃、20bar、H2/CO=1、およびGHSVが12,000ml/g.hの条件下におけるFeNa触媒の特性を示している。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0125
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0125】
図9は、ナノ粒子がSiO
2マトリックス全体に分散しているs-FeNaのTEM画像を示している。マトリックスは、ナノ粒子を安定化させ、粒子の移動および焼結に対する抵抗となる。
表5は、330℃、20bar、H
2/CO=1、GHSVが12,000ml/g.hの条件おけるs-FeNaの特性を示している。触媒がSiO
2の支持機能を有することで、軽質オレフィンを一定の収率とし74Cmol.%で作用させつつ、442時間以上安定させることができた。
【手続補正6】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】