(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-03
(54)【発明の名称】投与ガイダンスアルゴリズムのための自己ベンチマーキング
(51)【国際特許分類】
A61M 5/168 20060101AFI20230127BHJP
G16H 20/17 20180101ALI20230127BHJP
【FI】
A61M5/168 500
G16H20/17
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533127
(86)(22)【出願日】2020-12-03
(85)【翻訳文提出日】2022-07-28
(86)【国際出願番号】 EP2020084440
(87)【国際公開番号】W WO2021110823
(87)【国際公開日】2021-06-10
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ベントスン, ヘンリク
(72)【発明者】
【氏名】アラドッティル, ティナ ビョーク
(72)【発明者】
【氏名】マハムディ, ゼイナブ
(72)【発明者】
【氏名】モヘビ, アリ
(72)【発明者】
【氏名】ソープ, ジュリア ローズマリー
【テーマコード(参考)】
4C066
5L099
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC01
4C066LL30
4C066QQ24
4C066QQ61
4C066QQ72
4C066QQ82
5L099AA25
(57)【要約】
1つ以上の代替治療ガイダンスアルゴリズムから出力されたアドバイスを、治療転帰の観点から現在の実際の治療と比較する、ベンチマーキング手法が採用される。現在の戦略の治療転帰は、実際のBG転帰に反映されるか、またはプロファイル化される。代替アルゴリズムにより生成された用量アドバイスに対する治療転帰は、患者特異的モデルに基づいている。2つの転帰セットを直接的に比較するか、または特定の転帰にペナルティを課すか、もしくは報酬を与える加重の組み合わせとして性能スコアを使用することができる。統計検定は、蓄積された結果(ペアの転帰またはスコア)に適用されて、アルゴリズムがユーザの現在の投与戦略または代替戦略よりも優れているかどうかを決定することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖尿病を治療するためのクエリー対象に対する投与ガイダンスの推奨を提供するための計算システムであって、前記システムが、1つ以上のプロセッサと、メモリと、を含み、前記メモリが、
-前記1つ以上のプロセッサによって実行されるときに、現在の投与ガイダンスアルゴリズム(DGA)に対して1つ以上の代替DGAを評価およびベンチマークする方法を実施する命令であって、前記命令が、
a)第1のデータセットを取得する工程であって、時間的経過にわたって取られ、それによって血糖履歴(BGH)を確立する、前記クエリー対象の複数のグルコース測定値を含み、前記複数のグルコース測定値における各それぞれのグルコース測定値が、
(i)血糖(BG)値と、
(ii)前記時間的経過中のどの時点で前記それぞれのグルコース測定が行われたかを表す対応する血糖タイムスタンプと、を含む、第1のデータセットを取得する工程と、
b)第2のデータセットを取得する工程であって、前記クエリー対象のインスリン用量イベント履歴(IH)を含み、前記IHが、前記時間的経過のすべてまたは一部分の間に、少なくとも1つの用量イベントを含み、前記少なくとも1つの用量イベントの各用量イベントが、
(i)インスリン投与量と、
(ii)前記時間的経過中のどの時点で前記それぞれの用量イベントが発生したかを表す対応する用量イベントタイムスタンプと、を含む、第2のデータセットを取得する工程と、
c)少なくともBGHに基づいて、代替用量推奨を計算するように適合された1つ以上の代替DGAを取得する工程と、
d)BGHおよび所定の時間に注射されたインスリンの量に基づいて、BG応答をモデル化するために適合された前記クエリー対象に対する生理学的モデル(PM)を取得する工程と、
e)所与の代替DGAについて、前記現在のDGAに従って実施される最近の用量イベントに対応し、対応する測定されたBG治療転帰をもたらす工程であって、
i)代替用量推奨を決定し、
ii)前記PMを利用して、対応する代替BG治療転帰を計算し、
iii)前記代替BG治療転帰を、前記測定されたBG治療転帰に対して比較およびベンチマークする工程と、
f)前記所与の代替DGAについての前記ベンチマークがベンチマーク基準の所与のセットを超える場合に、前記所与の代替DGAを前記現在のDGAに置き換えることを提案/作成する工程と、を含む、命令を含む、計算システム。
【請求項2】
所与の代替DGAについて、
-時間的経過にわたって実施される複数の用量イベントについて、複数の代替BG治療転帰を、前記対応する測定されたBG治療転帰に対して比較およびベンチマークする工程が実施される、請求項1に記載の計算システム。
【請求項3】
-特定の状態を表す識別子に従って、複数の代替BG治療転帰を比較、ベンチマーク、および置換する工程が実施される、請求項2に記載の計算システム。
【請求項4】
前記特定の状態が、特定のイベントおよび/または特定の期間である、請求項3に記載の計算システム。
【請求項5】
-1つ以上の代替DGAについて1つ以上の代替BG治療転帰を比較およびベンチマークする工程が、統計検定を使用して実施される、請求項1~4のいずれか一項に記載の計算システム。
【請求項6】
-複数のDGAについて、比較およびベンチマークする工程が、実施される、請求項1~5のいずれか一項に記載の計算システム。
【請求項7】
前記命令が、
-所与の現在の用量推奨について、
(i)前記PMを利用して、前記用量推奨について計算されたBG治療転帰を計算し、
(ii)前記測定されたBG治療転帰と前記計算されたBG治療転帰との間の差として、偏差BG転帰を計算するさらなる工程と、
-所与の代替DGAについての前記対応する代替BG治療転帰について、前記代替BG治療転帰および前記偏差BG転帰の合計として、補正された代替BG治療転帰を計算するさらなる工程と、を含み、
前記補正された代替BG治療転帰が、前記比較およびベンチマークする工程で利用される、請求項1~6のいずれか一項に記載の計算システム。
【請求項8】
置換された現在のDGAが、新しい代替DGAになる、請求項1~7のいずれか一項に記載の計算システム。
【請求項9】
前記DGAが、速効型インスリンのボーラス量の計算に適合されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の計算システム。
【請求項10】
前記DGAが、長時間作用型または超長時間作用型インスリンの用量推奨の計算に適合されており、各DGAが、用量滴定レジメンにおける所与の攻撃性レベルを表す、請求項1~8のいずれか一項に記載の計算システム。
【請求項11】
前記命令が、
g)前記現在のDGAを利用して、現在の用量推奨を決定するさらなる工程を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の計算システム。
【請求項12】
ディスプレイを備えたスマートフォンを備え、前記ディスプレイが、DGAの提案された置換を表示するように制御されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の計算システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、糖尿病に対するインスリン治療の管理において、患者および医療従事者を支援するためのシステムおよび方法に関する。特定の態様では、本発明は、1つ以上の代替案の間の最も性能が高く、最も適切な用量推奨アルゴリズム/戦略を識別するのに役立つ、糖尿病管理システムでの使用に適したシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真性糖尿病(DM)は、高血糖につながるインスリン分泌障害および様々な程度の末梢インスリン抵抗性である。2型真性糖尿病は、正常な生理的インスリン分泌の進行性の妨害を特徴とする。健康な個体では、膵β細胞による基礎インスリン分泌が連続的に起こり、食間で長期間にわたって定常グルコースレベルを維持する。健康な個体では、食事に応じて初期の第1相スパイクでインスリンが急速に放出され、2~3時間後に基礎レベルに戻る長時間のインスリン分泌が続く、食事による分泌もある。何年も制御不良な高血糖が続くと、複数の健康上の合併症を引き起こす可能性がある。真性糖尿病は、世界中の早期罹患率および死亡率の主な原因の1つである。
【0003】
血糖/血漿グルコースの効果的な制御は、これらの合併症の多くを予防または遅延させることができるが、一度確立されるとそれらを元に戻すことができない可能性がある。したがって、糖尿病の合併症を予防するための努力において良好な血糖コントロールを達成することは、1型および2型糖尿病の治療における主要な目標である。インスリン薬剤治療レジメンを施すために、調節可能なステップサイズ、ならびに生理学的パラメータ推定および所定の空腹時血糖標的値を用いるスマートタイトレータが開発されている。
【0004】
糖尿病には多くの非インスリン治療選択肢が存在するが、疾患が進行するにつれて、最も確実な反応は通常インスリンによるものである。糖尿病は、進行性β細胞喪失に関連しているため、多くの患者、特に長期にわたる疾患を有する者は、高血糖の程度(例えば、HbA1c≧8.5%)により、別の薬剤が十分な利益をもたらす可能性が低いため、最終的にインスリンに移行する必要がある。
【0005】
理想的なインスリンレジメンは、インスリン分泌の生理学的プロファイルを可能な限り模倣することを目的とする。インスリンプロファイルには、継続的な基礎分泌および食後の食事による急上昇という2つの主要な要素がある。基礎分泌は一晩中および空腹時のグルコースを制御し、一方、食事による急上昇は食後高血糖を制御する。
【0006】
発症時期および作用期間に基づき、注射可能製剤は、基礎(長時間作用型類似体[例えば、インスリンデテミルおよびインスリングラルギン]および超長時間作用型類似体[例えば、インスリンデグルデック])、および中間作用型インスリン[例えば、イソファンインスリンなど]、および食事(速効型類似体[例えば、インスリンアスパルト、インスリングルリジン、およびインスリンリスプロ])に大別される。前混合型インスリン製剤には、基礎および食事インスリン成分の両方が組み込まれる。
【0007】
推奨されるインスリンレジメンには、(1)複数回注射レジメン:1日1回または2回の長時間作用型インスリンによる食事前の速効型インスリン、(2)食事の前に1日1回または2回の前混合型類似体またはヒト前混合型インスリン、および(3)1日1回または2回の中間型または長時間作用型インスリンなど様々なものがある。
【0008】
アルゴリズムを使用して、糖尿病患者に推奨されるインスリン用量および治療アドバイスを生成することができる。しかしながら、所与の患者にとって、いくつかの関連する用量推奨アルゴリズムが関連し得、最良のガイダンスを提供するアルゴリズムを選択することは、困難であり得る。
【0009】
それに対応して、本発明の目的は、いくつかの代替案の間の最も性能が高く、最も適切な用量推奨アルゴリズムを識別するのに役立つ、糖尿病管理システムでの使用に適したシステムおよび方法を提供することである。
【0010】
しかしながら、こうしたアルゴリズムによって提供されるアドバイスの質は、現実世界の設定において制御が困難な多くの要因に依存する。これには、ユーザの個人プロファイル、行動、アドヒアランス、および空腹時血糖値(FBG)、グルコースプロファイル指標(GPI)、またはアンビュラトリーグルコースプロファイル(AGP)などのパラメータの変動が含まれる。データ入力の品質は、アルゴリズムの品質にさらに影響を与え、例えば、グルコースデータは、血糖値モニター(BGM)または連続グルコースモニター(CGM)の正確さおよび正しい使用に依存する。
【0011】
この現実世界のデータ、治療アドヒアランス、デバイス使用、およびその他の不可避的な妨害の不完全な性質はすべて、アルゴリズム品質を劣化させ、そのため、提供される治療アドバイスは正しくない場合があり、これにより、代替用量推奨アルゴリズムの性能を評価およびベンチマークすることが困難になる。
【0012】
上記に関して、現実世界の設定で制御および定量化が困難な多くの要因によって影響された現実世界のデータの性質を考慮に入れたシステムおよび方法を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の開示では、上記の目的のうちの1つ以上に対処する、または例示的な実施形態の説明と同様に下記の開示から明らかな目的に対処する、実施形態および態様が説明される。
【0014】
要約すると、問題に対する提案の解決策は、任意の治療ガイダンスアルゴリズムから出力されたアドバイスを、治療転帰の観点で現在の実際の治療と比較する、ベンチマーキング手法を採用することである。治療転帰は、インスリン摂取後のユーザのグルコースプロファイルに基づくユーザの実際の用量について、ならびに実際のグルコースプロファイル、用量の変化、および患者特異的モデルを使用して推定された代替プロファイルに基づいてアルゴリズムで生成された用量アドバイスについて計算され得る。2つの転帰セットを直接的に比較するか、または特定の転帰にペナルティを課すか、もしくは報酬を与える加重の組み合わせとして性能スコアを使用してもよい。統計検定は、蓄積された結果(ペアの転帰またはスコア)に適用されて、アルゴリズムがユーザの現在の投与戦略または代替戦略よりも優れているかどうかを決定することができる。
【0015】
自己ベンチマーキングアルゴリズムは、インスリン用量およびグルコースレベルという2つの重要なデータ入力に依存する。ユーザの実際の用量は、用量データを捕捉するために、接続された薬剤送達ペンまたはペンアタッチメントを使用して手動で入力または自動的に記録され得る。CGM用のデバイスは、インスリン用量の摂取後を含む、グルコースレベルを記述するデータを提供する。この情報は、任意の治療ガイダンスアルゴリズムによって生成される既知の用量とともに、グルコース応答に対する用量の変化(実際のものからアドバイスされたもの)の影響、したがって、治療転帰の代替セットを遡及的に推定するために使用され得る。コンテキスト、ライフスタイル、または行動要因に関する追加情報は、アルゴリズムの性能が全体的および特定の状態(例えば、特定の時刻、身体活動のレベル、食事サイズなど)の両方について評価できるように、接続されたデバイスまたはセンサー(例えば、携帯電話、ウェアラブルバイオセンサー)からさらに収集されて、結果にラベルを付けることができる。
【0016】
このアプローチでは、代替アルゴリズムは、ユーザの現在の治療に対するその優越性が頑健であることが実証された後にのみ、ユーザにアドバイスを送ることができる。したがって、アルゴリズムは、それが良好に実施できる場合にのみ実施し、より安全でより有効な治療アドバイスをもたらす。
【0017】
したがって、本発明の第1の態様では、糖尿病を治療するためのクエリー対象(患者)に対する投与ガイダンスの推奨を提供するための計算システムが提供される。システムは、1つ以上のプロセッサと、1つ以上のプロセッサによって実行されるときに、現在の投与ガイダンスアルゴリズム(DGA)に対して1つ以上の代替DGAを評価およびベンチマークする方法を実施する命令が記憶されているメモリと、を含む。
【0018】
命令は、第1のデータセットおよび第2のデータセットを取得する工程を含む。第1のデータセットは、時間的経過にわたって取られ、それによって血糖履歴(BGH)を確立する、クエリー対象の複数のグルコース測定値であって、複数のグルコース測定値における各それぞれのグルコース測定値が、(i)血糖(BG)値と、(ii)時間的経過中のどの時点でそれぞれのグルコース測定が行われたかを表す対応する血糖タイムスタンプと、を含む、複数のグルコース測定値を含む。第2のデータセットは、クエリー対象のインスリン用量イベント履歴(IH)であって、IHが、時間的経過のすべてまたは一部分の間に、少なくとも1つの用量イベントを含み、少なくとも1つの用量イベントの各用量イベントが、(i)投与量と、(ii)時間的経過中のどの時点でそれぞれの用量イベントが発生したかを表す対応する用量イベントタイムスタンプとを含む、インスリン用量イベント履歴(IH)を含む。
【0019】
命令は、現在のDGAと、少なくともBGHに基づいて、代替用量推奨を計算するように適合された1つ以上の代替DGAと、BGHおよび所定の時間に注射されたインスリンの量に基づいて、BG応答をモデル化するために適合されたクエリー対象に対する生理学的モデル(PM)と、を取得するさらなる工程を含む。あるいは、より高度なDGAを利用して、用量推奨を計算する際にIHデータをまた利用してもよい。
【0020】
所与の代替DGAについて、現在の用量戦略に従って実施される最近(例えば、最新)の用量イベントに対応して、命令は、(i)代替用量推奨を決定し、(ii)PMを利用して、代替BG治療転帰を計算し、ならびに(iii)代替BG治療転帰を、測定されたBG治療転帰に対して比較およびベンチマークするさらなる工程を含む。所与のDGAについてのベンチマークがベンチマーク基準の所与のセットを超える場合に、命令は、所与の代替DGAを現在のDGAに置き換えることを提案または実装するさらなる工程を含む。その後、以前の現在のDGAは、新しい代替DGAになり得る。
【0021】
このようにして、所与の投与ガイダンスツールが現在の戦略に対する優越性を示すと、ベンチマーキングアルゴリズムによって、または性能に関するフィードバックに基づいてユーザによって自動的に、最良の性能のツールを選択し、有効にすることができる。
【0022】
注目すべきは、実際の現在の戦略に関する知識は、本発明の実施に必須ではなく、患者が毎朝固定ボーラスを摂取するだけの「戦略なし」でさえあり得ることである。対応すると、本発明の文脈において、用語「現在のDGA」は、それ自体がアルゴリズムとして特徴付けることがほとんどできないような単純な戦略も網羅していると理解されるべきである。実際に、このような単純な初期の「戦略」がより性能の高いDGAに置き換えられると、現在のDGAは、「現実の」DGAになる。しかしながら、初期の単純な戦略については、現在のDGAに関する知識は、本発明の実施に必須ではない。
【0023】
命令は、現在のDGAを取得する工程を含み得、現在のDGAを利用して、現在の用量推奨を決定するさらなる工程を含み得る。現在のDGAは、少なくともBGHに基づいて用量推奨を計算するように適合され得る。
【0024】
用語「治療転帰」は、その後のBG転帰が、用量推奨が実際に患者によって注射されたことを反映する、つまり、「用量イベント」は注射イベントを表すと予想されることを示す。
【0025】
現在および1つ以上の代替用量推奨アルゴリズムからの転帰を比較することは、典型的には、BG転帰(実際の転帰、または計算された転帰)が、患者の所与の治療目標に関連してどのように機能するかを決定し、次いで結果をベンチマークすることである。急速作用型インスリンのボーラス投与については、ほとんどの場合、BG転帰は、食事後の患者のBGを反映し、治療標的は通常、所望のBG範囲である。BG転帰は、例えば、食事後の所与の期間内に測定/計算された最大(または最小)のBG値を表す単純なBG値の形態であってもよく、または曲線部分の領域の形態であってもよい。単純な形態で、BG転帰は、食事後の所与の時点について決定/計算された単一のBG値によって表される。別の方法として、BG転帰は、連続的(または準連続的)BG測定(例えば、皮膚に取り付けられたCGMデバイスによる)、および代替物に対応する計算された転帰プロファイルによって決定されてもよく、これにより、最大値/最小値の両方を決定することができ、ならびに曲線分析を実施することができる。
【0026】
BGメーターまたはCGMデバイスにより、システムがスマートフォンなどのメインコンピューティングユニットへのデータのワイヤレス送信を介して、BG値を自動的に取得することが可能になるように、用量イベントデータがまた、用量ログ機能を備えた薬剤送達装置によって自動的に取得され得る。
【0027】
ベンチマーキングは、転帰の異なる態様、例えば、決定/計算される最大および最小のBG値、または患者が治療標的範囲外にいる時間などを組み込み得る。一部の転帰は、例えば、目標範囲を下回るBG値など、あまり望ましくないものとして過大加重され得る。
【0028】
各代替DGAについて、比較およびベンチマークする工程は、例えば、直近の週または月、例えば、過去2週間または先月などの所与の期間のすべての用量イベントに対応する、所与の期間の対応する測定されたBG治療転帰に対する複数の代替BG治療転帰に対して実施され得る。
【0029】
得られた履歴データセットを使用して、ユーザの現在の用量戦略を各代替物と比較する統計検定(例えば、比率t検定)を適用することができる。データセットが十分に大きくなると、ユーザの現在の戦略に対するいくつかのアルゴリズムの統計的に有意な優越性が、統計検定の結果、例えば、比率t検定の有意なp値に反映されることになる。
【0030】
比較およびベンチマークする工程は、特定のコンテキスト状態を表す識別子に従って、複数の代替BG治療転帰に対して実施されてもよく、これにより、ベンチマークは、例えば、食事のタイプ、1日の期間、活動を伴う期間、または病気を伴う期間など、指定された状態に基づいて結果をフィルタリングすることができる。識別子は、患者によって手動で入力されるか、または自動的に収集されてもよく、例えば、運動または病気を反映する体温および心拍数は、スマートウォッチなどの着用型デバイスによって提供されてもよい。このようにして、特定のコンテキスト状態下において優れた性能を発揮する代替DGAを識別し、実装することができる。
【0031】
例示的な実施形態では、所与の現在の用量推奨について、命令は、(i)PMを利用して、用量推奨に対する計算されるBG治療転帰を計算するさらなる工程、および(ii)測定されたBG治療転帰と計算されたBG治療転帰との間の差として、偏差BG転帰を計算するさらなる工程を含む。このようにして、PMに組み込まれていないすべての未知のパラメータが、測定されたBG値、例えば、食事、行動、習慣、病気、ストレスにどの程度寄与したかを推定することができる。所与の代替DGAについての対応する代替BG治療転帰について、補正された代替BG治療転帰は、代替BG治療転帰および偏差BG転帰の合計として計算され得、これらはその後、比較およびベンチマークする工程で利用され得、これは、代替DGAのための「レベルプレイフィールド」を提供する。
【0032】
上記で、減算し、および付加する工程が所与の順序で開示されているが、本開示は、工程が任意の順序で実施され得ることを包含する。
【0033】
比較およびベンチマークすることは、典型的には、各用量イベント後に繰り返され、更新され得る。
【0034】
上述の実施例では、DGAは、急速作用型インスリンのボーラス量の計算に適合されるが、本発明のさらなる態様では、DGAは、長時間作用型または超長時間作用型インスリンの用量推奨の計算に適合される。こうしたセットアップでは、各DGAは、用量滴定レジメンにおいて所与の攻撃性レベルを提供するように設計されてもよく、これにより、患者は、所望の滴定レベルにより速く、かつより効率的に到達し、維持することができる。
【0035】
滴定レジメンについては、アルゴリズムは、従来、患者が朝に手動で摂取した空腹時BG値の形態であった、滴定グルコース値(TGL)を表す値の形態でのBG入力に基づいてもよい。あるいは、TGL値は、CGMデータに基づいて決定され得る。例えば、1日のTGLは、対応する日のBG値にわたって予め決定された時間量、例えば60、120、または180分のスライディングウィンドウについて最も低いBG平均として決定され得る。
【0036】
以下の本発明の実施形態は、図面を参照しながら説明される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、投与ガイダンスの推奨を提供するシステムの第1の実施形態のプロセスおよび特徴のフローチャートを示している。
【
図2】
図2は、一連の用量イベントに対して、複数の代替BG転帰がどのように計算されるかを示している。
【
図3】
図3は、偏差分析を使用して、補正された代替BG転帰を計算する方法を、図形式で示している。
【
図4】
図4は、現在の投与戦略について、代替BG転帰の性能スコアをBG転帰に対して統計的に検定する方法を示している。
【
図5A-5B】
図5Aおよび
図5Bは、代替アルゴリズムのモデル出力をそれぞれ現在の治療戦略で示している。
【
図6A-6B】
図6Aおよび
図6Bは、4時間の食後間隔で、それぞれシミュレーションされたCGM時系列を示している。
【発明を実施するための形態】
【0038】
全体として、推奨されるインスリン用量を生成することによって、糖尿病を有する患者を助ける、糖尿病投与ガイダンスシステムが提供されている。こうしたシステムでは、所与のアルゴリズムを使用して、BGおよびインスリン投与履歴に基づいて、糖尿病患者のための推奨インスリン用量および治療アドバイスが生成されるが、多くの他の要因が、所与のインスリン用量の投与から生じるBG転帰に影響を与える。それに応じて、所与の患者に対して現在使用されているアルゴリズムは、必ずしも最良かつ最も有効なアドバイスを提供しない場合がある。上記により詳細に開示されるように、問題に対する提案の解決策は、代替治療ガイダンスアルゴリズムから出力されたアドバイスを、治療転帰の観点で現在の実際の治療と比較する、ベンチマーキング手法を採用することである。
【0039】
本質的に、そのようなシステムは、クライアントおよびオペレーティングシステムの形態で相互作用するシステムと組み合わせて使用される本発明の主要な態様であるバックエンドエンジン(「エンジン」)を含む。
【0040】
クライアントは、エンジンの観点から投与ガイダンスを要求するソフトウェア構成要素である。クライアントは、必要なデータ(例えば、CGMデータ、インスリン用量データ、患者パラメータ)を収集し、エンジンからの投与ガイダンスを要求する。次にクライアントは、エンジンから応答を受信する。
【0041】
小規模なローカルスケールでは、エンジンは、所与のユーザのスマートフォン上でアプリとして直接的に実行されてもよく、したがって、クライアントおよびエンジンの両方を含む自己完結型アプリケーションであってもよい。あるいは、システムセットアップは、クラウドベースの大規模な糖尿病管理システムの一部として使用されるように適合されたバックエンドエンジンとして実装されるように設計されてもよい。このようなクラウドベースのシステムにより、エンジンを常に最新の状態にすることができ(例えば、患者のスマートフォンなどで完全に稼働するアプリベースのシステムとは対照的に)、機械学習および人工知能などの高度な方法を実装することができるか、またデータをより大きな「デジタルヘルス」設定で他のサービスと組み合わせて使用することができる。こうしたクラウドベースのシステムは、用量推奨に対する大量の患者の要求を理想的には処理することになる。
【0042】
「完全」エンジンは、すべてのコンピューティング態様を担当するように設計され得るが、エンジンをローカルバージョンとクラウドバージョンに分割して、患者に近い投与ガイダンスシステムをクラウドコンピューティングへの依存とは無関係に実行することができるようにすることが望ましい場合がある。例えば、クライアントアプリを介してユーザが投与ガイダンスの要求を行うと、その要求がエンジンに送信され、用量推奨が返される。こうした用量推奨は、現在使用されているアルゴリズムによって計算されるものに対応するか、またはベンチマーキング分析後に有効化された代替アルゴリズムによって計算され得る。クラウドアクセスが利用できない場合、クライアントアプリは、現在のアルゴリズムを使用して用量推奨計算を実行する。ユーザのアプリ設定によっては、ユーザに通知が行われる場合、または行われない場合がある。
【0043】
図1を見ると、ベンチマーキングプロセスの概要が示されている。示される実施形態では、システムは、BGデータのストリームを、クライアントアプリがインストールされたユーザのスマートフォンに無線で送信するCGMデバイス、ならびにユーザのスマートフォンに用量イベントデータを無線で送信する、用量ログ記録およびデータ伝送能力を有するペン型薬剤送達装置(例えば、両方ともNovo Nordisk A/Sによって提供される、FlexTouch(登録商標)ペンに取り付けられたDialoq(登録商標)デバイス)を備える。ユーザが投与ガイダンスの要求を行うと、アプリクライアントは、エンジン(電話またはクラウドで実行する)に連絡し、薬剤送達装置を使用して、次のインスリン用量を設定および摂取する際にユーザが使用する用量推奨を返却する。要求がクラウドエンジンに送信されると、例えば、所定の期間についてのBGデータおよび用量ログなど、必要なすべてのデータが、要求とともに送信され得る。ベンチマーキング中に実施される分析のタイプに応じて、期間は、数週間から数ヶ月の場合があり得る。あるいは、履歴データは、クラウドに保存されてもよく、アプリクライアントは、最新のまだ送信されていないデータのみを送信する。
【0044】
ユーザがインスリンの投与量を、基礎型のインスリンかボーラス型のインスリンかにかかわらず、摂取することを望む場合、ユーザ、はアプリを起動し、最初に最新のデータが利用可能かどうかを調べる。スマートフォンは、BGデータが自動的に更新されるCGMデバイスと連続的に通信してもよいが、ほとんどの場合(Dialoq(登録商標)デバイスに関して)、アプリは、最新の用量イベントデータがスマートフォンに送信されることを確実にするために、用量記録デバイスを手動で起動するようにユーザに促す。データが利用できない場合、アプリは、ユーザが、例えば、ストリップベースのBGメーターによって決定されるBG値などの、データを手動で入力することを可能にし得る。データが更新されると、投与ガイダンス要求が、エンジン(アプリ内またはクラウド内に組み込まれている)に送信され得る。
【0045】
新しい用量をユーザに提案する前に、システムは、メモリに記憶された1つ以上の代替DGAに対して、現在実行中の投与ガイダンスアルゴリズム(DGA)のベンチマーキングを実施する。所与の過去の期間(例えば、4週間)について、ログ記録デバイスによって記録される各用量イベント(用量注射を表すものとみなされる)について、および各代替DGAについて、代替用量推奨が決定される。続いて、BG履歴(BGHデータおよび所与の時間に注射されたインスリンの量)に基づいてBG応答をモデル化するために適合された患者の生理学的モデル(PM)を使用して、代替BG治療転帰プロファイルが計算される。
【0046】
さらに、各用量イベント(すなわち、推定される注入インスリン量)について、PMを使用して、予想されるBG治療転帰を計算し、これにより、測定されたBG治療転帰と予想されるBG治療転帰との間の差としての偏差BG値の計算が可能になる。このようにして、PMに組み込まれていないすべての未知のパラメータ(障害)が、測定されたBG値、例えば、食事、行動、習慣、病気、ストレスにどの程度寄与したかを推定することができる。その後、所与の代替DGAについての対応する代替BG治療転帰プロファイルについて、補正された代替BG治療転帰プロファイルは、代替BG治療転帰および偏差BG値の合計として計算され得、これらはその後、比較およびベンチマークする工程で利用され得、これは、代替DGAのための「レベルプレイフィールド」を提供する(
図2を参照)。
【0047】
より具体的には、
図3は、生理学的モデル(PM)によって決定されるインスリンベースの入力として、実現および実際に測定されたBG転帰(CGM)がどのようにモデル化され得るかを示しており、BG転帰に影響を与える他のすべての入力は、例えば、食事、ストレス、疾患、身体活動、インスリンモデル不完全性などの「障害」として分類される。偏差分析では、現在の用量推奨(Ins)からのPMベースの寄与はCGM転帰から減算され、代替用量推奨(Ins
a)からのPMベースの寄与は、補正された代替BG転帰(CGM
a)を計算するために追加される。
【0048】
過去のBGおよび用量イベントデータが、アプリまたはクラウドに記憶されているのと同様に、以前に計算された補正された代替BG治療転帰がまた、これらの計算が新しいイベントに対してのみ実施される必要があるように記憶されている可能性がある。
【0049】
次の工程として、性能を比較することによって、ベンチマーキングおよび評価を実施する(
図4を参照されたい)。各新しい用量イベントについて、各用量戦略(現在およびすべての代替例)に対して生成された治療転帰〔X
1,X
2,...X
M〕を使用して、悪い結果にペナルティを課し、および/または望ましい結果に報いる、加重性能スコア、S=λ
1X
1+λ
2X
2+...+λ
MX
Mを計算する。コンテキストデータ(例えば、時刻、食事サイズ、活動レベル)がまた、用量イベント用に記憶され得る。得られた履歴データセットを使用して、ユーザの現在の用量戦略を各代替物と比較する統計検定を適用する。比較は、コンテキストデータを使用する全用量履歴またはそのサブセットのいずれかについて、指定された状態に基づいて結果をフィルタリングすることができる。データセットが十分に大きくなると、ユーザの現在の戦略に対するいくつかのアルゴリズムの統計的に有意な優越性が、統計検定の結果に反映されることになる。例えば、現在の治療を1つの代替アルゴリズムのみと比較する場合に、比率t検定を使用することができる。現在の治療が複数の代替アルゴリズムと比較される場合、事後多重比較を伴うANOVA検定が使用され得る。
【0050】
1つ以上のDGAがユーザの現在の戦略に対する優越性を示すと、最高の性能を発揮するDGAは、ベンチマーキングアルゴリズムによって自動的に選択され、性能に関するフィードバックに基づいてユーザによって有効にされ、これにより、アプリはユーザの要求の結果として新しい推奨された用量サイズを計算し、および表示することができる。多数のコンピューティングが「舞台裏」で行われる場合があるが、ユーザは、要求に対するほぼ瞬時の応答を体験する必要がある。
【実施例】
【0051】
本発明の以下の態様では、非常に単純なセットアップを使用して例示する。
【0052】
注目すべきは、実際の現在の戦略に関する知識は、本発明の実施に必須ではなく、患者が毎朝固定ボーラスを摂取するだけの「戦略なし」でさえあり得ることである。ベンチマーキングアルゴリズムは、新しいアルゴリズム(例えば、アルゴリズムX)を、患者が既に使用している方法と比較するためのフレームワークを提供する。現在の戦略のグルコース出力値、したがってその治療転帰を知るだけで十分である。アルゴリズムXと組み合わせた患者の現在の戦略の出力、およびその出力は、ベンチマーキングを実行するのに十分である。
【0053】
アルゴリズムXは、以下の式を有するボーラス計算機である:
【数1】
式中、
Ins
a=アルゴリズムXを使用して計算されたボーラスサイズ(IU)
CHO=炭水化物
CIR=炭水化物とインスリンの比率
ISF=インスリン効果値
CGM
premeal=連続グルコースモニタリングを使用して食前に測定されたグルコース
CGM
target=目標グルコースレベル
【0054】
間質性グルコースに対するボーラスインスリンの効果の生理学的モデル(PM):
【数2】
式中、
K
2=-40mg/dl/IU
T
2=50分
【0055】
上記の生理学的モデルは、ラプラスドメインにおける単純な線形モデルの例である。モデルの入力は、ボーラスインスリン用量であり、モデルの出力は、ボーラスインスリンによって引き起こされる間質性グルコース(IG)の変化であるIGInsである。IGInsは、インスリンによる間質性グルコースの減少を反映する偏差変数であるため、陰性値を有する。
【0056】
時間ドメインにおけるモデルの出力は、
【数3】
の逆ラプラス変換である、
【数4】
自動的に生成された説明(
図3を参照)であり、以下のように計算される:
【数5】
IG
Ins(t)は、時系列である。
【0057】
第2のアームでは、
図3のInsは、患者が取るボーラスインスリンであり、現在の戦略を使用して決定される(計算される)。Insに対する同じ生理学的モデルを使用して、InsによるIGの(時間領域)モデル化された偏差変化は、以下のように計算される:
【数6】
【0058】
以下の例では、アルゴリズムXの偏差分析、および上記のモデルを使用した現在の戦略を示している(
図3を参照)。
【0059】
1日目について、アルゴリズムXが、Ins
a=10単位の朝のボーラス用量を計算したと仮定した場合、現在の戦略は、1日目と同じ朝食について、Ins=8単位の朝のボーラス用量を計算した。前のセクションのモデルを使用して、
【数7】
およびIG
Ins(t)の4時間の食後の時系列は、
図5Aに示すグラフのように見える。ボーラスは、時間=0で注入される。現在の戦略のモデル出力は、
図5Bに示されている。
【0060】
4時間の食後間隔について測定されたCGM(
図3を参照)は、
図6Aに示される時系列を有する。
【0061】
CGM
a(
図3を参照)は、
図3の偏差分析を使用したアルゴリズムXについてのシミュレーションされた4時間後のグルコースプロファイルであり、
【数8】
として計算される。CGM
a(t)は、
図6Bに示す時系列形状を有する。
【0062】
ベンチマーキングアルゴリズムは、治療転帰、〔X
1,X
2,X
3〕をCGM(t)およびCGM
a(t)から計算し、これは、現在の戦略およびアルゴリズムXを使用して計算されたボーラスインスリンにそれぞれ対応している。統計検定のその後の適用は、以下の統計計算例でより詳細に示され、かつ説明されており、ここで、2つの治療方法に対する3つの治療転帰が比較される。
【表1】
【表2】
【0063】
各新しい用量イベントについて、各用量方法(現在およびアルゴリズムX)に対して生成された治療転帰〔X1,X2,X3〕を使用して、悪い結果にペナルティを課し、および望ましい結果に報いる、加重性能スコア、S=exp(λ1X1+λ2X2+λ3X3を計算する。
【0064】
範囲内の時間%は、望ましい転帰であり、低血糖の時間%および血糖変動は、不良な転帰である。λ1=1、およびλ2=λ3=-1。各用量イベントについて、加重性能スコアが以下のように計算される。
【0065】
現在の戦略について:S
current=exp(1×X
1-1×X
2-1×X
3)、
アルゴリズムXについて:S
X=exp(1×X
1-1×X
2-1×X
3)、
【表3】
【0066】
性能比率についての比率t検定:
帰無仮説:
【数9】
代替仮説:
【数10】
のいずれかを意味する、
【数11】
【0067】
患者は、2つのケースで現在の戦略を続ける:
1)検定は、帰無仮説を否定しない
2)検定は、
【数12】
を有する、帰無仮説を否定する(代替仮説は真である)。
【0068】
次の場合に、患者は、アルゴリズムXに切り替える。
検定は、
【数13】
を有する、帰無仮説を否定する(代替仮説は真である)。
検定の工程1:すべての
【数14】
値を、それらの対数に変換する。
検定の工程2:yの平均が、ゼロ(帰無仮説)と等しいか、またはゼロ(代替仮説)と異なっているかを調べるために、
【数15】
の1サンプルt検定が実施される。
【0069】
【0070】
結果は、p値<0.05が、帰無仮説が否定されたことを示し、すなわち、yの平均が0とは異なることを意味することを示している。これはまた、比率、
【数16】
が、1とは異なることを示す。
【数17】
のciは、yの平均のciの対数であり、これは、〔1.0037 1.1169〕である。信頼の下限および上限
【数18】
の間隔は、1より大きく、1を含まず、これは、統計的にS
X>S
currentであることを意味する。そのため、患者は、朝のボーラスを計算するためにアルゴリズムXに切り替える。
【0071】
コンテキストラベルはまた、性能が信頼できる状態の特定のセットを認識するために適用され得る。例えば、朝のイベントに対応する性能スコアのサブセットが、例えば、上記の例に示されているように、ユーザと比較してアルゴリズムの性能が大幅に優れている場合、アルゴリズムは、これらの同じ条件下でアドバイスを提供することが可能であり得る。利用可能なデータと最終的に比較することが不可能である場合、ユーザは、追加の入力を求められる場合がある。これには、例えば、食事サイズの推定が含まれ得る。これらのコンテキストラベル(識別子)は、ベンチマーキングアルゴリズムセットアップに既に含まれているデバイス(例えば、接続されたインスリンペンからのタイムスタンプ)、ユーザの携帯電話、ならびにウェアラブルバイオセンサーなどの他の接続されたデバイス(例えば、アクティビティトラッカーからの身体活動に関する情報)から収集され得る。
【0072】
患者が、選択された投与ガイダンスツールがユーザの現在の投与戦略に対してベンチマークされる、投与ガイダンスツール(アルゴリズム/アプリ)の使用を開始し、およびユーザの現在の戦略(例えば、公式のADAガイドライン)に対する優位性を確実にすることを望む場合、以下のセットアップが適用される場合がある。
【0073】
開始時に、ベンチマーキングがバックグラウンドで実行されている間、投与ガイダンスツールによって提案された代替用量は、ユーザに伝達されない。例えば、2週間などの一定期間の後、ベンチマーキングによって、新しい用量戦略が、ユーザの現在の用量戦略に対して、安全かつ有効であり、かつ優れていることが示された場合、それを有効化し、実行することができ、すなわち、より良い性能の代替DGAに基づいて、用量の提案がユーザに伝達される。例えば、投与ガイダンスツールが以前にベンチマークされた基礎となる生理学的モデルの変化に起因して、用量戦略の変化が必要な場合、投与ガイダンスツールは、無効化され、更新されたユーザモデルに対して投与ガイダンスツールが有効化されるまで、「セーフモード」が起動される。セーフモードは、ユーザの以前の戦略、または公式のADAガイドラインなどの保存的投与戦略である可能性がある。
【0074】
本発明は、非一時的コンピュータ可読記憶媒体に埋め込まれたコンピュータプログラム機構を備え、CD-ROM、DVD、磁気ディスク記憶装置製品、USBキー、または任意の他の非一時的コンピュータ可読データもしくはプログラム記憶装置製品上に記憶される、コンピュータプログラム製品として実装され得る。
【0075】
本発明の多くの修正および変形を、当業者に明らかであるように、その趣旨および範囲を逸脱することなく行うことができる。本明細書に記載される特定の実施形態は、例証としてのみ提供される。本発明およびその実用的用途の原理を最もよく説明するために実施形態を選択して説明したが、それにより、特定の用途に適した様々な修正を用いて、当業者が本発明および様々な実施形態を最良に利用できるようになる。本発明は、添付の特許請求の範囲の条件と、そのような請求の範囲が適用されるあらゆる等価物によってのみ限定される。
【0076】
例えば、偏差分析よりもアルゴリズム線量に対する応答を推定する別の方法として、「正味効果」分析が使用されてもよい。この方法では、血糖の変動は、いくつかの「既知の」入力およびいくつかの「未知の」入力から生じると想定されている。既知の入力は、我々がその特定の患者に対して指定した、インスリン-グルコース伝達関数の生理学的モデルである。未知の入力はすべて、直接的にモデル化できない変動源であるが、デコンボリューションまたは移動地平線推定を使用した血糖に対するそれらの効果を推定することができる。
dG1/dt=f(患者が実際に摂取したインスリン、t)+w(t)、
ここで、fは、個人識別されたインスリンモデル(既知の入力)である。W(t)は、未知の入力、例えば、ストレス、疾患、食事、身体活動、インスリンモデルの不完全性などの影響である。現在のコンテキストにおける適用では、食事はまた、患者が炭水化物を数えて、食事モデルのアルゴリズムに与えることを我々が望まないため、未知の入力である。
【0077】
正味効果、すなわち、w^(t)が推定される場合、アルゴリズムによってアドバイスされたインスリン用量を患者が摂取する場合のグルコース変動が推定される。
dG2/dt=f(アルゴリズムが提案するインスリン、t)+w^(t)
次に、CUSUM検定を使用して、G1およびG2の治療転帰を比較する。ここで、所望の治療転帰を抽出することができ、アルゴリズムのアドバイスによる患者の決定の性能を比較することができる。
【0078】
比率t検定の代替は、任意の変化検出またはイベント検出技術であり得る。我々が検出したいイベントは、患者自身の決定に対するアルゴリズムのアウトパフォーマンスである。1つのオプションは、累積合計変更検出(CUSUM)であり、これは、突発的ではなく段階的な検出に最適であるためである。
【国際調査報告】