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特表2023-504523疾患処置に使用するための大環状分子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-03
(54)【発明の名称】疾患処置に使用するための大環状分子
(51)【国際特許分類】
   C07D 498/22 20060101AFI20230127BHJP
   A61K 31/5386 20060101ALI20230127BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230127BHJP
【FI】
C07D498/22 CSP
A61K31/5386
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533150
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(85)【翻訳文提出日】2022-08-01
(86)【国際出願番号】 US2020062859
(87)【国際公開番号】W WO2021113339
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】62/943,098
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/015,937
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】516221454
【氏名又は名称】ターニング・ポイント・セラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Turning Point Therapeutics,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ロジャーズ,エバン ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】ウン,ジェイン
(72)【発明者】
【氏名】グエン,ビビアン
(72)【発明者】
【氏名】ジャイ,ダヨン
(72)【発明者】
【氏名】デン,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ツイ,ジンロン ジェイ
【テーマコード(参考)】
4C072
4C086
【Fターム(参考)】
4C072AA03
4C072AA06
4C072BB04
4C072BB06
4C072BB07
4C072CC05
4C072CC12
4C072EE07
4C072FF11
4C072GG07
4C072UU01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB22
4C086GA13
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
(57)【要約】
本本発明は、あるキラルジアリール大環状誘導体、それを含む医薬組成物および癌の処置におけるその使用方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】
〔式中、
各RおよびRは独立してH、重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、単環または二環式ヘテロアリール、-OR、-OC(O)R、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CNまたは-NOであるか;またはRおよびRはそれらが結合している炭素原子と一体となってC-Cシクロアルキルを形成し;ここで、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールおよび単環または二環式ヘテロアリールにおける各水素原子は独立して場合により重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、-OR、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OC(=N)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CNまたは-NOで置換されており;
各RおよびR3’は独立してH、重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、単環または二環式ヘテロアリール、-OR、-OC(O)R、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CNまたは-NOであり、ここで、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、単環または二環式ヘテロアリールにおける各水素原子は独立して場合により重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、-OR、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OC(=N)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CNまたは-NOで置換されているか;またはRおよびR3’はそれらが結合している炭素原子と一体となってC-Cシクロアルキルを形成し;ここで、C-Cシクロアルキルにおける各水素原子は独立して場合により重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、-OR、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OC(=N)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CNまたは-NOで置換されており;
各RおよびRは独立して水素、重水素、ハロゲン、-OR、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OC(=N)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRC(=N)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-C(=N)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CN、-NO、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環または二環式ヘテロアリールであり、ここで、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、単環または二環式ヘテロアリール、C-Cシクロアルキルまたは5~8員ヘテロシクロアルキルにおける各水素原子は独立して場合により重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、-OR、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OC(=N)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CNまたは-NOで置換されており;
はH、重水素またはC-Cアルキルであり、ここで、C-Cアルキルにおける各水素原子は独立して場合により重水素、ハロゲン、-OR、-SRまたは-NRで置換されており;
各Rは独立して水素または重水素であり;
各R、R、R、R、RおよびRは独立してH、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールおよび5~7員ヘテロアリールからなる群から選択され;そして
nは0、1、2または3である。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
nが0または1である、請求項1の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
nが0である、請求項1または2の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
nが1である、請求項1または2の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
式II
【化2】
を有する、請求項1~3の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
式IIa
【化3】
を有する、請求項1~3または5の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
式III
【化4】
を有する、請求項1、2または4の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
式IIIa
【化5】
を有する、請求項1、2、4または7の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
各RおよびRが、存在するとき、独立してH、重水素、C-CアルキルであるかまたはRおよびRが、それらが結合している炭素原子と一体となって、C-Cシクロアルキルを形成する、請求項1~8の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
各RおよびR3’が独立してH、重水素、C-CアルキルであるかまたはRおよびR3’が、それらが結合している炭素原子と一体となって、C-Cシクロアルキルを形成する、請求項1~9の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
各R3’がHまたは重水素である、請求項1~10の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
各RがHまたは重水素である、請求項1~11の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
がフルオロである、請求項1~12の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項14】
がHである、請求項1~13の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項15】
各RがHである、請求項1~14の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項16】
【化6】
からなる群から選択される、請求項1の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項17】
請求項1~16の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩および所望により少なくとも1個の希釈剤、担体または添加物を含む、医薬組成物。
【請求項18】
癌を処置する方法であって、そのような処置を必要とする対象に請求項1~16の何れかの少なくとも1個の化合物またはその薬学的に許容される塩の有効量を投与することを含む、方法。
【請求項19】
対象がヒトである、請求項18の方法。
【請求項20】
対象における癌の処置用医薬の製造における、請求項1~16の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、あるジアリール大環状誘導体、それを含む医薬組成物および癌の処置におけるその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
タンパク質キナーゼは、細胞成長、増殖および生存の重要なレギュレーターである。遺伝的および後成的改変が癌細胞で蓄積され、悪性過程を駆動するシグナル伝達経路の異常活性化に至る。Manning, G. et al., Science 2002, 298, 1912-1934。これらのシグナル伝達経路の薬理学的阻害は、標的化癌治療のための有望な介入機会を示す。Sawyers, C., Nature 2004, 432, 294-297。
【0003】
未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)は、白血球チロシンキナーゼ(LTK)と共に、受容体チロシンキナーゼのインスリン受容体(IR)スーパーファミリー内に分類される。ALKは主に中枢および末梢神経系で発現され、神経系の正常な発達および機能における役割の可能性が示唆される。Pulford, K. et al., Cell Mol. Life Sci. 2004, 61, 2939。ALKは、最初は、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)細胞株におけるt(2;5)(p23;q35)染色体転座に起因する融合遺伝子によりコードされる、融合タンパク質、NPM(ヌクレオフォスミン)-ALKとして発見された。Morris, S.W. et al., Science 1994, 263, 1281。20を超える別個のALK転座パートナーが、ALCL(60~90%発生率)、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍(IMT、50~60%)、非小細胞肺癌(NSCLC、3~7%)、結腸直腸癌(CRC、0~2.4%)、乳癌(0~2.4%)およびその他の癌を含む多くの癌で発見されている。Grande, E. et al., Mol. Cancer Ther. 2011, 10, 569-579。ALK-融合タンパク質は細胞質に位置し、ALKとの融合パートナーは、ALKキナーゼ機能の構成的活性化を生ずるコイル-コイル相互作用を介する融合タンパク質の二量体化またはオリゴマー化に役割を有する。Bischof, D. et al., Mol. Cell Biol., 1997, 17, 2312-2325。棘皮動物微小管関連タンパク質様4(EML4)遺伝子およびALK遺伝子の一部を構成するEML4-ALKは、最初にNSCLCで発見され、高度に発癌性であり、トランスジェニックマウスで肺腺癌を引き起こすことが判明した。Soda, M. et al., Nature 2007, 448, 561-566。ALKの発癌性点変異は、神経芽腫の家族性および散発性症例何れでも生ずる。Mosse, Y. P. et al., Nature 2008, 455, 930-935。ALKは、造血、固形および間葉性腫瘍における重要な役割のため、癌治療介入の魅力的な分子標的である。Grande, supra。
【0004】
1994年に未分化大細胞リンパ腫細胞株においてNPM(ヌクレオフォスミン)-ALK融合遺伝子が最初に発見されて以来(Morris SW, et al Science. 1994; 263(5151):1281-4)、ALKの改変は、未分化大細胞リンパ腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、汎発性大B細胞リンパ腫、NSCLC、腎髄質癌、腎細胞癌、乳癌、結腸癌、漿液性卵巣癌および食道扁平上皮細胞癌を含む広範な癌タイプで発見されている(Hallberg B, et al Nat Rev Cancer. 2013;13(10):685-700)。ALK+ NSCLC患者における発癌性ALK融合体ターゲティングの、化学療法を超える臨床的利益により、クリゾチニブが完全通常承認されるに至った(Malik SM, et al Clin Cancer Res. 2014;20(8):2029-34.)。しかしながら、クリゾチニブ処置に対する耐性が、平均7.3~10.9カ月以内に生じた。耐性機構は、ALK遺伝子増幅、キナーゼドメインにおける獲得変異、バイパスシグナル伝達、EMTおよびCNS転移を含む(Katayama R, et al Clin Cancer Res. 2015;21(10):2227-35)。より強力な第二世代ALK阻害剤セリチニブ、アレクチニブおよびブリガチニブが、初期にはクリゾチニブ耐性を克服するのに有効であるが、患者は、最終的にこれら阻害剤でも同様に再発する。進行後生検検体の分析は、各ALK阻害剤がALK耐性変異の別個のスペクトラムと関連し、ALK G1202Rが、第一世代および第二世代ALK阻害剤の共通耐性変異であることを示す(Gainor JF, et al Cancer Discov. 2016 Oct;6(10):1118-1133)。ALK G1202R、G1202del、D1203N、S1206Y/CおよびE1210Kを含むソルベントフロント変異は、第二世代ALK阻害剤処置後顕著に増加し、特にブリガチニブは生検した7名の耐性患者で最大71%ソルベントフロント変異を有した(Gainor JF, et al Cancer Discov. 2016 Oct;6(10):1118-1133)。
【0005】
ALK+癌を有する患者のための現在の処置パラダイムは、連続的ALK標的化治療で処置することである。第三世代ALK阻害剤ロルラチニブは、以前にALK阻害剤で失敗した患者で臨床活性を示し、ALK陽性転移NSCLC患者に対してクリゾチニブおよび少なくとも1個の他のALK阻害剤処置の後に承認された(Shaw A, et al J. Clin Oncol 2019, 37:1370-1379)。しかしながら、複合変異が、1種を超えるALK TKI処置の後、新規課題として出現した。20中7サンプル(35%)がロルラチニブ処置後複合ALK変異を有し、例えばロルラチニブは、複合ゲートキーパーおよびソルベントフロント変異ALK L1196M/G1202Rに対してもはや活性ではない(Yoda S., et al Cancer Discovery 2018, 8(6):714-729)。
【0006】
軟骨内骨化は、器官形成中の胚軟骨性骨格の置き換えおよび長骨の成体の高さが達成されるまでの成長の両者をもたらす過程である。線維芽細胞増殖因子(FGF)/FGF受容体(FGFR)シグナル伝達は、軟骨内骨化過程における成長板の進展および維持に極めて重要な役割を有する(Xie Y 2014)。FGFおよびFGFRにおけるミスセンス変異は、軟骨内骨化障害を伴う複数の遺伝的骨格疾患を引き起こし得る。FGFR3の活性化変異は、生児出生の中で小人症の最も一般的な形態である軟骨無形成症を引き起こす(Samsa WE 2017)。FGFR3変異を有するヒトの成長板は、軟骨細胞柱が破壊され、肥大型軟骨細胞の数が減っている。FGFR1およびFGFR2は、進展中に、成長板形成を含む、多くの必須のかつ大部分冗長な役割を有する。FGFR2-欠損胚は、肢芽を形成できない(Ornitz DM 2015)。さらに、軟骨細胞におけるFGFR1の過発現は、関節の癒着をもたらす。マウスにおけるFGFR1およびFGFR2両方の欠失は、増殖軟骨細胞数の減少を伴い、成長板の長さの減少を引き起こした(Karuppaiah K 2016)。それ故に、FGFRを超える選択性は、特に小児集団に対する、良好な安全性プロファイルの重要なパラメータである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それ故に、幅広い範囲にわたる耐性変異、特にALK G1202Rなどのソルベントフロント変異およびALK L1196M/G1202Rなどの複合変異に対して強力な活性を示す、次世代ALK阻害剤を開発する新たな要望がある。さらに、このようなALK阻害剤がFGFRを超える選択性を示すことに対する要望がある。あるキラルジアリール大環状化合物が、本発明において、この有利な活性プロファイルを有することが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
概要
ある態様において、本発明は、式
【化1】
【0009】
〔式中、
【0010】
各RおよびRは独立してH、重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、単環または二環式ヘテロアリール、-OR、-OC(O)R、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CNまたは-NOであるか;またはRおよびRはそれらが結合している炭素原子と一体となってC-Cシクロアルキルを形成し;ここで、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールおよび単環または二環式ヘテロアリールにおける各水素原子は独立して場合により、重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、-OR、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OC(=N)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CNまたは-NOで置換されており;
【0011】
各RおよびR3’は独立してH、重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、単環または二環式ヘテロアリール、-OR、-OC(O)R、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CNまたは-NOであり、ここで、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、単環または二環式ヘテロアリールにおける各水素原子は独立して場合により重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-C ハロアルキル、-OR、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OC(=N)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CNまたは-NOで置換されているか;またはRおよびR3’はそれらが結合している炭素原子と一体となってC-Cシクロアルキルを形成し;ここで、C-Cシクロアルキルにおける各水素原子は独立して場合により重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、-OR、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OC(=N)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CNまたは-NOで置換されているか;または両R3’は一体となって二価基-(CR)-を形成し;
【0012】
各RおよびRは独立して水素、重水素、ハロゲン、-OR、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OC(=N)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRC(=N)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-C(=N)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CN、-NO、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環または二環式ヘテロアリールであり、ここで、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、単環または二環式ヘテロアリール、C-Cシクロアルキルまたは5~8員ヘテロシクロアルキルにおける各水素原子は独立して場合により重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、-OR、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OC(=N)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CNまたは-NOで置換されており;
【0013】
はH、重水素またはC-Cアルキルであり、ここで、C-Cアルキルにおける各水素原子は独立して場合により重水素、ハロゲン、-OR、-SRまたは-NRで置換されており;
【0014】
各Rは独立して水素または重水素であり;
【0015】
各RおよびRは独立してH、重水素、ハロゲン、-CN、-OR、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環または二環式ヘテロアリールであるかまたはRおよびRは、それらが結合している炭素と一体となってC-Cシクロアルキルまたは4~6員ヘテロシクロアルキルを形成するかまたはRおよびRはそれらが結合している炭素と一体となって環外エチレン基を形成し、ここで、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、4~6員ヘテロシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、環外エチレン基または単環または二環式ヘテロアリールの各水素原子は場合によりハロゲン、-N、-CN、-OR、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OC(=N)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)ORまたは-P(O)ORで置換されており;
【0016】
各R、R、R、R、RおよびRは独立してH、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールおよび5~7員ヘテロアリールからなる群から選択され;
【0017】
mは1または2であり;そして
【0018】
nは0、1、2または3である。〕
【0019】
の化合物またはその薬学的に許容される塩に関する。
【0020】
他の態様において、本発明は、式
【化2】
【0021】
〔式中、
【0022】
各RおよびRは独立してH、重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、単環または二環式ヘテロアリール、-OR、-OC(O)R、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CNまたは-NOであるか;またはRおよびRはそれらが結合している炭素原子と一体となってC-Cシクロアルキルを形成し;ここで、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールおよび単環または二環式ヘテロアリールにおける各水素原子は独立して場合により重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、-OR、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OC(=N)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CNまたは-NOで置換されており;
【0023】
各RおよびR3’は独立してH、重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、単環または二環式ヘテロアリール、-OR、-OC(O)R、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CNまたは-NOであり、ここで、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、単環または二環式ヘテロアリールにおける各水素原子は独立して場合により重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、-OR、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OC(=N)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CNまたは-NOで置換されているか;またはRおよびR3’はそれらが結合している炭素原子と一体となってC-Cシクロアルキルを形成し;ここで、C-Cシクロアルキルにおける各水素原子は独立して場合により重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、-OR、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OC(=N)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CNまたは-NOで置換されており;
【0024】
各RおよびRは独立して水素、重水素、ハロゲン、-OR、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OC(=N)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRC(=N)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-C(=N)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CN、-NO、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環または二環式ヘテロアリールであり、ここで、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、単環または二環式ヘテロアリール、C-Cシクロアルキルまたは5~8員ヘテロシクロアルキルにおける各水素原子は独立して場合により重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、-OR、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OC(=N)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CNまたは-NOで置換されており;
【0025】
はH、重水素またはC-Cアルキルであり、ここで、C-Cアルキルにおける各水素原子は独立して場合により重水素、ハロゲン、-OR、-SRまたは-NRで置換されており;
【0026】
各Rは独立して水素または重水素であり;
【0027】
各R、R、R、R、RおよびRは独立してH、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールおよび5~7員ヘテロアリールからなる群から選択され;そして
【0028】
nは0、1、2または3である。〕
【0029】
の化合物またはその薬学的に許容される塩に関する。
【0030】
式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩のある態様において:
【0031】
各RおよびRは独立してHまたはC-Cアルキルであり;
【0032】
各RおよびR3’は独立してHまたはC-Cアルキルであるか;またはRおよびR3’はそれらが結合している炭素原子と一体となってC-Cシクロアルキルを形成し;
【0033】
各RおよびRは独立して水素またはハロゲンであり;
【0034】
はHまたはC-Cアルキルであり;
【0035】
各Rは水素であり;そして
【0036】
nは0または1である。
【0037】
式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩のある態様において:
【0038】
各RおよびRは独立してHまたはC-Cアルキルであり;
【0039】
各RおよびR3’は独立してHまたはC-Cアルキルであるか;またはRおよびR3’はそれらが結合している炭素原子と一体となってC-Cシクロアルキルを形成し;
【0040】
各RおよびRは独立して水素またはハロゲンであり;
【0041】
はHであり;
【0042】
各Rは水素であり;そして
【0043】
nは0または1である。
【0044】
式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩のある態様において:
【0045】
各RおよびRは独立して水素またはメチルであり;
【0046】
各RおよびR3’は独立して水素またはメチルであるか;またはRおよびR3’はそれらが結合している炭素原子と一体となってシクロプロピルを形成し;
【0047】
各RおよびRは独立して水素またはフッ素であり;
【0048】
は水素であり;
【0049】
各Rは水素であり;そして
【0050】
nは0または1である。
【0051】
式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩のある態様において、式II、IIa、IIIまたはIIIaの構造を有する。
【0052】
他の態様において、本発明は、式II
【化3】
【0053】
の化合物またはその薬学的に許容される塩に関する。
【0054】
他の態様において、本発明は、式IIa
【化4】
【0055】
の化合物またはその薬学的に許容される塩に関する。
【0056】
他の態様において、本発明は、式III
【化5】
【0057】
の化合物またはその薬学的に許容される塩に関する。
【0058】
他の態様において、本発明は、式IIIa
【化6】
【0059】
の化合物またはその薬学的に許容される塩に関する。
【0060】
他の態様において、本発明は、記載する態様の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩および所望により少なくとも1個の希釈剤、担体または添加物を含む、医薬組成物を提供する。
【0061】
他の態様において、本発明は、癌を処置する方法であって、そのような処置を必要とする対象に記載する態様の何れかの少なくとも1個の化合物またはその薬学的に許容される塩の有効量を投与することを含む、方法を提供する。
【0062】
他の態様において、本発明は、癌の処置用医薬の製造における、記載する態様の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0063】
他の態様において、本発明は、癌の処置のための、記載する態様の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0064】
他の態様において、本発明は、対象における癌の処置に使用するための、開示する態様の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0065】
他の態様において、本発明は、ALK受容体チロシンキナーゼを阻害する方法であって、そのようなキナーゼの1以上を含む細胞と、記載する態様の何れかの少なくとも1個の化合物またはその薬学的に許容される塩および/または少なくとも1個の本発明の医薬組成物の有効量を接触させることを含み、ここで、接触がインビトロ、エクスビボまたはインビボである、方法を提供する。
【0066】
本発明のさらなる実施態様、特性および利点は、次の詳細な記載および本発明の実施をとおして明らかとなる。本発明の化合物は、次の番号付けした項の何れかにおいて実施態様として記載されていることがある。ここに記載する実施態様の何れも、実施態様が互いに矛盾しない限り、ここに記載する任意の他の実施態様と組み合わせて使用され得ることは理解される。
【0067】
1. 式I
【化7】
【0068】
〔式中、
【0069】
各RおよびRは独立してH、重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、単環または二環式ヘテロアリール、-OR、-OC(O)R、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CNまたは-NOであるか;またはRおよびRはそれらが結合している炭素原子と一体となってC-Cシクロアルキルを形成し;ここで、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールおよび単環または二環式ヘテロアリールにおける各水素原子は独立して場合により重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、-OR、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OC(=N)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CNまたは-NOで置換されており;
【0070】
各RおよびR3’は独立してH、重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、単環または二環式ヘテロアリール、-OR、-OC(O)R、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CNまたは-NOであり、ここで、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、単環または二環式ヘテロアリールにおける各水素原子は独立して場合により重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、-OR、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OC(=N)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CNまたは-NOで置換されているか;またはRおよびR3’はそれらが結合している炭素原子と一体となってC-Cシクロアルキルを形成し;ここで、C-Cシクロアルキルにおける各水素原子は独立して場合により重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、-OR、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OC(=N)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CNまたは-NOで置換されており;
【0071】
各RおよびRは独立して水素、重水素、ハロゲン、-OR、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OC(=N)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRC(=N)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-C(=N)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CN、-NO、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環または二環式ヘテロアリールであり、ここで、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、単環または二環式ヘテロアリール、C-Cシクロアルキルまたは5~8員ヘテロシクロアルキルにおける各水素原子は独立して場合により重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、-OR、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OC(=N)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CNまたは-NOで置換されており;
【0072】
はH、重水素またはC-Cアルキルであり、ここで、C-Cアルキルにおける各水素原子は独立して場合により重水素、ハロゲン、-OR、-SRまたは-NRで置換されており;
【0073】
各Rは独立して水素または重水素であり;
【0074】
各R、R、R、R、RおよびRは独立してH、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールおよび5~7員ヘテロアリールからなる群から選択され;そして
【0075】
nは0、1、2または3である。〕
【0076】
の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【0077】
2. nが0または1である、項1の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【0078】
3. nが0である、項1または2の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【0079】
4. nが1である、項1または2の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【0080】
5. 式II
【化8】
【0081】
を有する、項1~3の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩。
【0082】
6. 式IIa
【化9】
【0083】
を有する、項1~3の何れかまたは5の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【0084】
7. 式III
【化10】
【0085】
を有する、項1、2または4の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩。
【0086】
8. 式IIIa
【化11】
【0087】
を有する、項1、2、4または7の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩。
【0088】
9. 各RおよびRが、存在するとき、独立してH、重水素、C-CアルキルであるかまたはRおよびRが、それらが結合している炭素原子と一体となって、C-Cシクロアルキルを形成する、先の項の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩。
【0089】
10. 各RおよびR3’が独立してH、重水素、C-CアルキルであるかまたはRおよびR3’が、それらが結合している炭素原子と一体となって、C-Cシクロアルキルを形成する、先の項の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩。
【0090】
11. 各R3’がHまたは重水素である、先の項の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩。
【0091】
12. 各RがHまたは重水素である、先の項の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩。
【0092】
13. Rがフルオロである、先の項の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩。
【0093】
14. RがHである、先の項の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩。
【0094】
15. 各RがHである、先の項の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩。
【0095】
16.
【化12】
【0096】
からなる群から選択される、項1の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【0097】
17. 先の項の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩および所望により少なくとも1個の希釈剤、担体または添加物を含む、医薬組成物。
【0098】
18. 癌、疼痛、神経疾患、自己免疫性疾患または炎症を処置する方法であって、そのような処置を必要とする対象に項1~16の何れかの少なくとも1個の化合物またはその薬学的に許容される塩の有効量を投与することを含む、方法。
【0099】
19. 疾患が癌である、項18の方法。
【0100】
20. 対象がヒトである、項18または19の方法。
【0101】
21. 疾患がALKにより介在される癌である、項18~20の何れかの方法。
【0102】
22. 疾患が遺伝子改変ALKにより介在される癌である、項18~21の何れかの方法。
【0103】
23. 疾患がALK遺伝子をコードするタンパク質のフラグメントおよびNPM、EML4、TPR、TFG、ATIC、CLTC1、TPM4、MSN ALO17およびMYH9からなる群から選択される遺伝子によりコードされるタンパク質のフラグメントを含む融合タンパク質により介在される癌である、項18~22の何れかの方法。
【0104】
24. 融合タンパク質がALK遺伝子をコードするタンパク質のフラグメントおよびEML4遺伝子によりコードされるタンパク質のフラグメントを含む、項23の方法。
【0105】
25. 遺伝子改変ALKがEML4-ALK融合タンパク質である、項23の方法。
【0106】
26. EML4-ALK融合タンパク質が野生型タンパク質である、項25の方法。
【0107】
27. EML4-ALK融合タンパク質が少なくとも1個の耐性変異を含む、項25の方法。
【0108】
28. EML4-ALK融合タンパク質がL1196M、G1202R、C1156Y、D1203N、G1202欠失、E1210K、S1206C、F1174C、F1174L、F1174S、F1174V、F1245C、G1269A、G1269S、I1171N、L1152P、L1152R、L1198F、R1275Q、S1206R、T1151-L1152insT、T1151M、V1180Lおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1個の変異を含む、項25の方法。
【0109】
29. EML4-ALK融合タンパク質がE1210K/D1203N、E1210K/S1206C、L1198F/C1156Y、L1198F/G1202R、L1198F/L1196M、L1196M/G1202R、L1198F/C1156Y、G1202R/G1269AおよびG1202R/G1269A/L1204Vからなる群から選択される変異組み合わせを含む、項25の方法。
【0110】
30. 疾患がALCL、NSCLC、神経芽腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、成人腎細胞癌、小児腎細胞癌、乳癌、ER乳癌、結腸腺癌、神経膠芽腫、多形神経膠芽腫、未分化甲状腺癌、胆管癌、卵巣癌、胃腺癌、結腸直腸癌、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、血管肉腫、類上皮型血管内皮腫、肝内胆管癌、甲状腺乳頭癌、スピッツ腫瘍、肉腫、星状細胞腫、脳低悪性度神経膠腫、乳腺分泌癌、乳腺相似癌、急性骨髄性白血病、先天性中胚葉腎腫、先天性線維肉腫、Ph様急性リンパ芽球性白血病、甲状腺癌腫、皮膚黒色腫、頭頚部扁平上皮細胞癌、小児神経膠腫CML、前立腺癌、肺扁平上皮癌腫、卵巣漿液性嚢胞腺癌、去勢抵抗性前立腺癌、ホジキンリンパ腫ならびに漿液性および明細胞子宮内膜癌からなる群から選択される癌である、項18~29の何れかの方法。
【0111】
31. 癌の処置用医薬の製造における、項1~16の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩の使用。
【0112】
32. 癌の処置のための、項1~16の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩の使用。
【0113】
33. 疾患がALKにより介在される癌である、項31または32の使用。
【0114】
34. 疾患が遺伝子改変ALKにより介在される癌である、項31~33の何れかの使用。
【0115】
35. 疾患がALK遺伝子をコードするタンパク質のフラグメントおよびNPM、EML4、TPR、TFG、ATIC、CLTC1、TPM4、MSN ALO17およびMYH9からなる群から選択される遺伝子によりコードされるタンパク質のフラグメントを含む融合タンパク質により介在される癌である、項31~35の何れかの使用。
【0116】
36. 融合タンパク質がALK遺伝子をコードするタンパク質のフラグメントおよびEML4遺伝子によりコードされるタンパク質のフラグメントを含む、項35の使用。
【0117】
37. 遺伝子改変ALKがEML4-ALK融合タンパク質である、項35の使用。
【0118】
38. EML4-ALK融合タンパク質が野生型タンパク質である、項37の使用。
【0119】
39. EML4-ALK融合タンパク質が少なくとも1個の耐性変異を含む、項37の使用。
【0120】
40. EML4-ALK融合タンパク質がL1196M、G1202R、C1156Y、D1203N、G1202欠失、E1210K、S1206C、F1174C、F1174L、F1174S、F1174V、F1245C、G1269A、G1269S、I1171N、L1152P、L1152R、L1198F、R1275Q、S1206R、T1151-L1152insT、T1151M、V1180Lおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1個の変異を含む、項37の使用。
【0121】
41. EML4-ALK融合タンパク質がE1210K/D1203N、E1210K/S1206C、L1198F/C1156Y、L1198F/G1202R、L1198F/L1196M、L1196M/G1202R、L1198F/C1156Y、G1202R/G1269AおよびG1202R/G1269A/L1204Vからなる群から選択される変異組み合わせを含む、項37の使用。
【0122】
42. 癌がALCL、NSCLC、神経芽腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、成人腎細胞癌、小児腎細胞癌、乳癌、ER乳癌、結腸腺癌、神経膠芽腫、多形神経膠芽腫、未分化甲状腺癌、胆管癌、卵巣癌、胃腺癌、結腸直腸癌、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、血管肉腫、類上皮型血管内皮腫、肝内胆管癌、甲状腺乳頭癌、スピッツ腫瘍、肉腫、星状細胞腫、脳低悪性度神経膠腫、乳腺分泌癌、乳腺相似癌、急性骨髄性白血病、先天性中胚葉腎腫、先天性線維肉腫、Ph様急性リンパ芽球性白血病、甲状腺癌腫、皮膚黒色腫、頭頚部扁平上皮細胞癌、小児神経膠腫CML、前立腺癌、肺扁平上皮癌腫、卵巣漿液性嚢胞腺癌、去勢抵抗性前立腺癌、ホジキンリンパ腫ならびに漿液性および明細胞子宮内膜癌からなる群から選択される、項31~41の何れかの使用。
【0123】
43. ALK受容体チロシンキナーゼを阻害する方法であって、そのようなキナーゼの1以上を含む細胞と、項1~16の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩および/または項1~16の何れかの化合物を含む少なくとも1個の医薬組成物の有効量を接触させることを含み、ここで、接触がインビトロ、エクスビボまたはインビボである、方法。
【0124】
44. 対象における癌の処置に使用するための、項1~16の何れかの化合物。
【0125】
45. 疾患がALKにより介在される癌である、項44の化合物。
【0126】
46. 疾患が遺伝子改変ALKにより介在される癌である、項44または45の化合物。
【0127】
47. 疾患がALK遺伝子をコードするタンパク質のフラグメントおよびNPM、EML4、TPR、TFG、ATIC、CLTC1、TPM4、MSN ALO17およびMYH9からなる群から選択される遺伝子によりコードされるタンパク質のフラグメントを含む融合タンパク質により介在される癌である、項44~46の何れかの化合物。
【0128】
48. 融合タンパク質がALK遺伝子をコードするタンパク質のフラグメントおよびEML4遺伝子によりコードされるタンパク質のフラグメントを含む、項47の化合物。
【0129】
49. 遺伝子改変ALKがEML4-ALK融合タンパク質である、項47の化合物。
【0130】
50. EML4-ALK融合タンパク質が野生型タンパク質である、項49の化合物。
【0131】
51. EML4-ALK融合タンパク質が少なくとも1個の耐性変異を含む、項49の化合物。
【0132】
52. EML4-ALK融合タンパク質がL1196M、G1202R、C1156Y、D1203N、G1202欠失、E1210K、S1206C、F1174C、F1174L、F1174S、F1174V、F1245C、G1269A、G1269S、I1171N、L1152P、L1152R、L1198F、R1275Q、S1206R、T1151-L1152insT、T1151M、V1180Lおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1個の変異を含む、項49の化合物。
【0133】
53. EML4-ALK融合タンパク質がE1210K/D1203N、E1210K/S1206C、L1198F/C1156Y、L1198F/G1202R、L1198F/L1196M、L1196M/G1202R、L1198F/C1156Y、G1202R/G1269AおよびG1202R/G1269A/L1204Vからなる群から選択される変異組み合わせを含む、項49の化合物。
【0134】
54. 癌がALCL、NSCLC、神経芽腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、成人腎細胞癌、小児腎細胞癌、乳癌、ER乳癌、結腸腺癌、神経膠芽腫、多形神経膠芽腫、未分化甲状腺癌、胆管癌、卵巣癌、胃腺癌、結腸直腸癌、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、血管肉腫、類上皮型血管内皮腫、肝内胆管癌、甲状腺乳頭癌、スピッツ腫瘍、肉腫、星状細胞腫、脳低悪性度神経膠腫、乳腺分泌癌、乳腺相似癌、急性骨髄性白血病、先天性中胚葉腎腫、先天性線維肉腫、Ph様急性リンパ芽球性白血病、甲状腺癌腫、皮膚黒色腫、頭頚部扁平上皮細胞癌、小児神経膠腫CML、前立腺癌、肺扁平上皮癌腫、卵巣漿液性嚢胞腺癌、去勢抵抗性前立腺癌、ホジキンリンパ腫ならびに漿液性および明細胞子宮内膜癌からなる群から選択される、項44~53の何れかの化合物。
【図面の簡単な説明】
【0135】
図1A】G1202R変異と共にEML4-ALK融合体を有するBa/F3細胞由来異種移植腫瘍を担持するマウスにおける異種移植腫瘍モデルの腫瘍体積を示す。(●)媒体;(■)化合物1(2mg/kg BID);(▲)化合物1(5mg/kg BID);(▼)化合物1(10mg/kg BID);(○)化合物2(3mg/kg BID);(△)化合物2(10mg/kg BID);(◆)ロルラチニブ(5mg/kg)。
【0136】
図1B】G1202R変異と共にEML4-ALK融合体を有するBa/F3細胞由来異種移植腫瘍を担持するマウスの体重を示す。(●)媒体;(■)化合物1(2mg/kg BID);(▲)化合物1(5mg/kg BID);(▼)化合物1(10mg/kg BID);(○)化合物2(3mg/kg BID);(△)化合物2(10mg/kg BID);(◆)ロルラチニブ(5mg/kg)。
【0137】
図2A】L1198F/G1202R変異と共にEML4-ALK融合体を有するBa/F3細胞由来異種移植腫瘍を担持するマウスにおける異種移植腫瘍モデルの腫瘍体積を示す。(●)媒体;(■)化合物1(2mg/kg BID);(▲)化合物1(5mg/kg BID);(▼)化合物1(10mg/kg BID);(◆)ロルラチニブ(5mg/kg)。
【0138】
図2B】L1198F/G1202R変異と共にEML4-ALK融合体を有するBa/F3細胞由来異種移植腫瘍を担持するマウスの体重を示す。(●)媒体;(■)化合物1(2mg/kg BID);(▲)化合物1(5mg/kg BID);(▼)化合物1(10mg/kg BID);(◆)ロルラチニブ(5mg/kg)。
【0139】
図3A】L1196M/G1202R変異と共にEML4-ALK融合体を有するBa/F3細胞由来異種移植腫瘍を担持するマウスにおける異種移植腫瘍モデルの腫瘍体積を示す。(●)媒体;(○)化合物1(0.6mg/kg BID);(■)化合物1(2mg/kg BID);(▲)化合物1(5mg/kg BID);(▼)化合物1(10mg/kg BID);(◆)ロルラチニブ(5mg/kg)。
【0140】
図3B】L1196M/G1202R変異と共にEML4-ALK融合体を有するBa/F3細胞由来異種移植腫瘍を担持するマウスにおける体重を示す。(●)媒体;(○)化合物1(0.6mg/kg BID);(■)化合物1(2mg/kg BID);(▲)化合物1(5mg/kg BID);(▼)化合物1(10mg/kg BID);(◆)ロルラチニブ(5mg/kg)。
【0141】
図4】10mg/kg BIDの化合物1で処置したマウスにおける、ALK融合体のY1282/1283およびY1604でのリン酸化阻害およびALK融合発現レベル減少を示す。対照として、アクチンの発現レベルは化合物1処置により影響されなかった。
【0142】
図5】L1196M/G1202R変異と共にEML4-ALK融合体を有するBa/F3細胞由来異種移植腫瘍を担持するマウスにおける、0.6mg/kg、2mg/kgまたは5mg/kgの化合物1投与2時間または12時間後の、化合物の遊離血漿濃度の関数としてのALK融合体のリン酸化阻害を示す。
【発明を実施するための形態】
【0143】
詳細な記載
本発明をさらに記載する前に、本発明は、記載する特定の実施態様に、それらが当然かわり得るため、限定されないことは理解されるべきである。またここで使用する用語は、特定の実施態様を記載する目的のためだけであり、本発明の範囲が添付する特許請求の範囲によってのみ限定されるため、限定を意図しないことも理解されるべきである。
【0144】
他に定義されない限り、ここで使用する全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者により共通して理解されるのと同じ意味を有する。ここに記載する全ての特許、出願、公開された出願およびその他刊行物は、引用により全体として本明細書に包含させる。このセクションに記載する定義がここに引用により包含する特許、出願またはその他刊行物に示される定義に反するかまたはその他矛盾するとき、このセクションに示す定義が、引用によりここに包含する定義より優先する。
【0145】
ここでおよび添付する特許請求の範囲で使用する単数表現は、文脈から明確に否定されない限り、複数の対象を含む。さらに、特許等の記載は、あらゆる任意の要素を除外するように作成し得ることは留意されるべきである。すなわち、この記載は、請求項の要素の引用に関連して「単独で」、「のみ」などの排他的用語の使用または「否定的」な限定に対する優先性の根拠として役立つことを意図する。
【0146】
ここで使用する用語「含む」、「包含する」および「含有する」は、その開放的、非限定的意味で使用される。
【0147】
記載をより簡潔にするために、ここに記載する量的表現の一部は、用語「約」で修飾されていない。用語「約」が明示的に使用されているか否かに拘わりなく、ここに示す全ての量は正確な示された値を意味しまたそのような示された値の実験および/または測定条件による等価および近似値を含む、当分野における通常の技術に基づき合理的に推察されるそのような示す値の近似値も意味することは理解される。収率がパーセンテージで示されるとき、そのような収率は物質の質量をいい、それについて、収率は、特定の化学量論条件下で同物質で得られ得る、最大量に関して示される。パーセンテージとして示される濃度は、異なって示されない限り、質量比をいう。
【0148】
他に示されているときを除き、本実施態様の方法および技術は、一般に当分野で周知の慣用方法に従いかつ本明細書をとおして引用しかつ記載する一般的およびより具体的な種々参考文献に記載されるとおり、実施される。例えば、Loudon, Organic Chemistry, Fourth Edition, New York: Oxford University Press, 2002, pp. 360-361, 1084-1085; Smith and March, March's Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure, Fifth Edition, Wiley-Interscience, 2001参照。
【0149】
ここに記載する化合物の化学名は、一般に市販のACD/Name 2014(ACD/Labs)またはChemBioDraw Ultra 13.0(Perkin Elmer)を使用して導いている。
【0150】
明瞭にするために別の実施態様に記載された本発明のある特性を、一つの実施態様において組み合わせて提供し得ることも理解される。逆に、簡潔さのために、一つの実施態様において記載した本発明の種々特性を、別々にまたはあらゆる適当な下位の組み合わせで提供し得ることも理解される。可変基により表される化学基に関する実施態様の全ての組み合わせは、そのような組み合わせが安定な化合物(すなわち、単離し、特徴づけしかつ生物活性の試験ができる化合物)である化合物を包含する限り、あたかも一つ一つのそのような組み合わせが個別に明示的に開示されているかのように、本開示によって具体的に包含され、ここに開示される。さらに、可変基を記載する実施態様において列記された化学基の全ての下位の組み合わせも、あたかも一つ一つのそのような下位の組み合わせが個別に明示的に開示されているかのように、本開示によって具体的に包含され、ここに開示される。
【0151】
定義
ここで使用する用語「アルキル」は、所望により分岐しており、1~20炭素原子を含む、炭素原子の鎖をいう。ある実施態様において、アルキルは、有利にC-C12、C-C10、C-C、C-C、C-C、C-CおよびC-Cを含む、長さが限定されたものであり得ることはさらに理解される。説明として、C-C、C-C、C-CおよびC-Cなどを含むこのような特に長さが限定されたアルキル基は、「低級アルキル」とも称され得る。説明的アルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどを含むが、これらに限定されない。アルキルは、置換されていても置換されていなくてもよい。典型的置換基は、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロ、カルボニル、オキソ、(=O)、チオカルボニル、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、ニトロおよびアミノを含むかまたはここに提供する種々の実施態様に記載されるとおりである。「アルキル」は、上に記載したものなどの他の基と一体となって、官能化アルキルを形成し得ることは理解される。例として、ここに記載する「アルキル」基と「カルボキシ」基の組み合わせは、「カルボキシアルキル」基と称され得る。他の非限定的例は、ヒドロキシアルキル、アミノアルキルなどを含む。
【0152】
ここで使用する用語「アルケニル」は、所望により分岐しており、2~20炭素原子を含み、また少なくとも1個の炭素-炭素二重結合(すなわち、C=C)も含む、炭素原子の鎖を含む。ある実施態様において、アルケニルは、有利にC-C12、C-C、C-C、C-C、C-CおよびC-Cをむ、長さが限定されたものであり得ることは理解される。説明として、C-C、C-C、C-CおよびC-Cを含む、このような特に長さが限定されたアルケニル基は、低級アルケニルと称され得る。アルケニルは、アルキルについて記載したとおりまたはここに提供する種々の実施態様に記載されるとおり、置換されていなくても置換されていてもよい。説明的アルケニル基は、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-、2-または3-ブテニルなどを含むが、これらに限定されない。
【0153】
ここで使用する用語「アルキニル」は、所望により分岐しており、2~20炭素原子を含み、また少なくとも1個の炭素-炭素三重結合(すなわち、C≡C)も含む、炭素原子の鎖を含む。ある実施態様において、アルキニルは、有利にC-C12、C-C、C-C、C-C、C-CおよびC-Cを含む長さが限定されたものであり得ることは理解される。説明として、C-C、C-C、C-CおよびC-Cを含む、このような特に長さが限定されたアルキニル基は、低級アルキニルと称され得る。アルキニルは、アルキルについて記載したとおりまたはここに提供する種々の実施態様に記載されるとおり、置換されていなくても置換されていてもよい。説明的アルキニル基は、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-、2-または3-ブチニルなどを含むが、これらに限定されない。
【0154】
ここで使用する用語「アリール」は、完全共役パイ電子系を有する、6~12炭素原子の全炭素単環式または縮合多環式基をいう。ある実施態様において、アリールは、有利にC-C10アリールなどのサイズが限定されたものであり得ることは理解される。説明的アリール基は、フェニル、ナフチレニルおよびアントラセニルを含むが、これらに限定されない。アリール基は、アルキルについて記載したとおりまたはここに提供する種々の実施態様に記載されるとおり、置換されていなくても置換されていてもよい。
【0155】
ここで使用する用語「シクロアルキル」は、全炭素5員/6員または6員/6員縮合二環式環または多環縮合環(「縮合」環系は、系の各環が系の他の環と炭素原子の隣接対を共有することを意味する)基または環の1以上が1以上の二重結合を含み得るが、シクロアルキルが完全共役パイ電子系を含まない、5~7員ヘテロ環式環に縮合した5員または6員シクロアルキルなどのヘテロ環式などの他の基に縮合した炭素環式環を含む、3~15員全炭素単環式環をいう。ある実施態様において、シクロアルキルは、有利にC-C13、C-C、C-CおよびC-Cなどのサイズが限定されたものであり得ることは理解される。シクロアルキルは、アルキルについて記載したとおりまたはここに提供する種々の実施態様に記載されるとおり、置換されていなくても置換されていてもよい。説明的シクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、アダマンチル、ノルボロニル、ノルボルネニル、9H-フルオレン-9-イルなどを含むが、これらに限定されない。図で示すシクロアルキル基の説明的例は、適切に結合した部分の形で、次のものを含む。
【化13】
【0156】
ここで使用する用語「ヘテロシクロアルキル」は、少なくとも1個の環原子が窒素、酸素または硫黄などのヘテロ原子であり、残りの環原子が炭素原子である3~12環原子の環を有する単環式または縮合環基をいう。ヘテロシクロアルキルは、所望により1、2、3または4ヘテロ原子を含み得る。ヘテロシクロアルキル基は、他のヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリール基などの他の基に縮合してよい。ヘテロシクロアルキルは、窒素への二重結合(例えば、C=NまたはN=N)を含む1以上の二重結合を有してもよいが、完全共役パイ電子系を含まない。ある実施態様において、ヘテロシクロアルキルは、有利に3~7員ヘテロシクロアルキル、5~7員ヘテロシクロアルキル、3-、4-、5-または6員ヘテロシクロアルキルなどのサイズが限定されたものであり得ることは理解される。ヘテロシクロアルキルは、アルキルについて記載したとおりまたはここに提供する種々の実施態様に記載されるとおり、置換されていなくても置換されていてもよい。説明的ヘテロシクロアルキル基は、オキシラニル、チアナリル、アゼチジニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、ピロリジニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、1,4-ジオキサニル、モルホリニル、1,4-ジチアニル、ピペラジニル、オキセパニル、3,4-ジヒドロ-2H-ピラニル、5,6-ジヒドロ-2H-ピラニル、2H-ピラニル、1,2,3,4-テトラヒドロピリジニルなどを含むが、これらに限定されない。図で示すヘテロシクロアルキル基の説明的例は、適切に結合した部分の形で、次のものを含む。
【化14】
【0157】
ここで使用する用語「ヘテロアリール」は、窒素、酸素および硫黄から選択される、1個、2個、3個または4個の環ヘテロ原子を含み、残りの環原子が炭素原子である5~12環原子を含み、また完全共役パイ電子系を有する、単環式または縮合環基をいう。ある実施態様において、ヘテロアリールは、有利に3~7員ヘテロアリール、5~7員ヘテロアリールなどなどのサイズが限定されたものであり得ることは理解される。ヘテロアリールは、アルキルについて記載したとおりまたはここに提供する種々の実施態様に記載されるとおり、置換されていなくても置換されていてもよい。説明的ヘテロアリール基は、ピロリル、フラニル、チオフェニル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、キノリニル、イソキノリニル、プリニル、テトラゾリル、トリアジニル、ピラジニル、テトラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、チエニル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンズチアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンズイソチアゾリルおよびカルバゾロイルなどを含むが、これらに限定されない。図で示すヘテロアリール基の説明的例は、適切に結合した部分の形で、次のものを含む。
【化15】
【0158】
ここで使用する「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」は、-OH基をいう。
【0159】
ここで使用する「アルコキシ」は、-O-(アルキル)または-O-(非置換シクロアルキル)基をいう。代表例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシなどを含むが、これらに限定されない。
【0160】
ここで使用する「アリールオキシ」は、-O-アリールまたは-O-ヘテロアリール基をいう。代表例は、フェノキシ、ピリジニルオキシ、フラニルオキシ、チエニルオキシ、ピリミジニルオキシ、ピラジニルオキシなどなどを含むが、これらに限定されない。
【0161】
ここで使用する「メルカプト」は、-SH基をいう。
【0162】
ここで使用する「アルキルチオ」は、-S-(アルキル)または-S-(非置換シクロアルキル)基をいう。代表例は、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ、シクロプロピルチオ、シクロブチルチオ、シクロペンチルチオ、シクロヘキシルチオなどを含むが、これらに限定されない。
【0163】
ここで使用する「アリールチオ」は、-S-アリールまたは-S-ヘテロアリール基をいう。代表例は、フェニルチオ、ピリジニルチオ、フラニルチオ、チエニルチオ、ピリミジニルチオなどを含むが、これらに限定されない。
【0164】
ここで使用する「ハロ」または「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素をいう。
【0165】
ここで使用する「シアノ」は、-CN基をいう。
【0166】
用語「オキソ」は、カルボニル酸素をいう。例えば、オキソで置換されたシクロペンチルは、シクロペンタノンである。
【0167】
ここで使用する「結合」は、共有結合をいう。
【0168】
用語「置換」は、特定した基または部分が1以上の置換基を有することを意味する。用語「非置換」は、特定した基が置換基を有しないことを意味する。用語「置換」が、構造系を記載するために使用されるとき、置換は、該系におけるあらゆる原子価により許容される位置で生じ得る。ある実施態様において、「置換」は、特定した基または部分が1個、2個または3個の置換基を有することを意味する。他の実施態様において、「置換」は、特定した基または部分が1個または2個の置換基を有することを意味する。さらに他の実施態様において、「置換」は、特定した基または部分が1個の置換基を有することを意味する。
【0169】
ここで使用する「場合により」または「所望により」は、その後に記載される事象または状況が、起こってもよいが、起こらなくてもよいことを意味し、この記載は、該事象または状況が起こる場合および起こらない場合を含む。例えば、「ここで、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環または二環式ヘテロアリールにおける各水素原子は独立して場合によりC-Cアルキルで置換されている」は、アルキルが、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環または二環式ヘテロアリールの何れかに、各アルキル基の水素原子の置き換えにより存在してよいが、存在しなくてもよいことを意味し、この記載は、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環または二環式ヘテロアリールがアルキル基で置換されている状況およびC-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環または二環式ヘテロアリールがアルキル基で置換されていない状況を含む。
【0170】
ここで使用する「独立して」は、その後に記載される事象または状況が、他の類似の事象または状況に対して、独自の関係を保つことを意味する。例えば、いくつかの等価な水素基が状況において記載される他の基で場合により置換されている状況において、「独立して場合により」の使用は、該基の水素原子の個々が他の基で置換されていてよく、水素原子の各々を置き換える基は同一でも異なってもよいことを意味する。または例えば、複数の基が存在し、その全てが一連の可能なものから選択できるとき、「独立して」の使用は、これら基の各々が、あらゆる他の基とは別に一連の可能なものから選択でき、該状況で選択された基は同一でも異なってもよいことを意味する。
【0171】
ここで使用する用語「それらが結合している炭素原子と一体となって」は、同じ炭素原子に結合する2個の置換基(例えば、RおよびR)が、C-Cシクロアルキルなどの請求項に定義する基を形成することを意味する。特に、用語「それらが結合している炭素原子と一体となって」は、例えば、RおよびRおよびそれらが結合している炭素原子がC-Cシクロアルキルを形成するならば、形成された環は同じ炭素原子に結合することを意味する。例えば、ここに記載する実施態様に関連して使用される用語「RおよびRはそれらが結合している炭素原子と一体となってC-Cシクロアルキルを形成する」は、次に示す化合物を含む。
【化16】
【0172】
ここで、上記スピロ環式環は、ある実施態様において定義されるとおり、場合により置換されていてよい。
【0173】
ここで使用する用語「薬学的に許容される塩」は、医薬で使用され得るカウンターイオンである塩をいう。一般に、S.M. Berge, et al., “Pharmaceutical Salts,” J. Pharm. Sci., 1977, 66, 1-19参照。好ましい薬学的に許容される塩は、薬理学的に有効でありかつ過度の毒性、刺激またはアレルギー性応答なく対象の組織と接触するのに適するものである。ここに記載する化合物は、十分に酸性の基、十分に塩基性の基、両タイプの官能基または1を超える各タイプを含み得て、それに応じて、多数の無機または有機塩基および無機および有機酸と反応して、薬学的に許容される塩を含む。このような塩は:
【0174】
(1)遊離塩基の親化合物と塩酸、臭化水素酸、硝酸、リン酸、硫酸および過塩素酸などの無機酸または酢酸、シュウ酸、(D)または(L)リンゴ酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸またはマロン酸などの有機酸の反応により得られ得る酸付加塩;または
【0175】
(2)親化合物に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオンまたはアルミニウムイオンにより置き換えられたとき;またはエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリメタミン、N-メチルグルカミンなどの有機塩基と配位したとき形成される塩
を含む。
【0176】
薬学的に許容される塩は当業者に周知であり、あらゆるこのような薬学的に許容される塩が、ここに記載する実施態様に関連して意図され得る。薬学的に許容される塩の例は、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、一水素-リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-二酸塩、ヘキシン-1,6-二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、メチルスルホン酸塩、プロピルスルホン酸塩、ベシル酸塩、キシレンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩およびマンデル酸塩を含む。他の適当な薬学的に許容される塩の一覧は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th Edition, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1985に見ることができる。
【0177】
塩基性窒素を含む式I~IIIAの化合物について、薬学的に許容される塩は、当分野で利用可能な何らかの適当な方法、例えば、遊離塩基の塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、硝酸、ホウ酸、リン酸などの無機酸または酢酸、フェニル酢酸、プロピオン酸、ステアリン酸、乳酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、イセチオン酸、コハク酸、吉草酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ピラノシジル酸、例えばグルクロン酸またはガラクツロン酸、アルファ-ヒドロキシ酸、例えばマンデル酸、クエン酸または酒石酸、アミノ酸、例えばアスパラギン酸またはグルタミン酸、芳香族酸、例えば安息香酸、2-アセトキシ安息香酸、ナフトエ酸またはケイ皮酸、スルホン酸、例えばラウリルスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸またはエタンスルホン酸などの有機酸またはここに例として挙げた酸のあらゆる適合性の混合物および本テクノロジーの通常の技術レベルに鑑みて、等価または許容される代替と見なされるあらゆる他の酸およびそれらの混合物での処理により、調製され得る。
【0178】
本発明は、式I~IIIAの化合物の薬学的に許容されるプロドラッグおよびそのような薬学的に許容されるプロドラッグを用いる処置方法にも関する。用語「プロドラッグ」は、対象への投与後、インビボで加溶媒分解または酵素切断などの化学的または生理学的過程を介してまたは生理学的条件下(例えば、生理学的pHに曝されたプロドラッグは式I~IIIAの化合物に変換される)で、本化合物を生ずる指定化合物の前駆を意味する。「薬学的に許容されるプロドラッグ」は、非毒性、生物学的に忍容性および他の点で対象への投与に生物学的に適する、プロドラッグである。適当なプロドラッグ誘導体の選択および調製のための説明的方法は、例えば、 “Design of Prodrugs”, ed. H. Bundgaard, Elsevier, 1985に記載される。
【0179】
本発明はまた、式I~IIIAの化合物の薬学的に活性な代謝物および本発明の方法におけるこのような代謝物の使用に関する。「薬学的に活性代謝物」は、式I~IIIAの化合物またはその塩の体内での代謝の薬理学的に活性な産物を意味する。化合物のプロドラッグおよび活性代謝物は、当分野で知られるまたは利用可能な日常的技術を使用して決定され得る。例えば、Bertolini et al., J. Med. Chem. 1997, 40, 2011-2016; Shan et al., J. Pharm. Sci. 1997, 86 (7), 765-767; Bagshawe, Drug Dev. Res. 1995, 34, 220-230; Bodor, Adv. Drug Res. 1984, 13, 255-331; Bundgaard, Design of Prodrugs (Elsevier Press, 1985); and Larsen, Design and Application of Prodrugs, Drug Design and Development (Krogsgaard-Larsen et al., eds., Harwood Academic Publishers, 1991)参照。
【0180】
ここに記載するあらゆる式は、その構造式の化合物ならびにある変形または形態を表す。例えば、ここに示す式は、ラセミ体または1以上のエナンチオマー、ジアステレオマーまたは幾何異性体またはそれらの混合物を含むことを意図する。さらに、ここに記載するあらゆる式はまたこのような化合物の水和物、溶媒和物もしくは多形またはそれらの混合物をいうことも意図される。例えば、記号
【化17】
を含む構造式により記載される化合物は、記号
【化18】
が結合している炭素原子について両方の立体異性体を含む、特に結合
【化19】
の両方が
【化20】
の意味に含まれることは認識される。例えば、ある例示的実施態様において、ここに提供するある化合物は、式
【化21】
【0181】
により表され、この式は、関連する炭素原子で両立体化学的配置を有する化合物、特に本例では
【化22】
【0182】
および各RおよびR3’の定義によって、他の立体化学的組み合わせを含むことは理解される。
【0183】
ここに示すあらゆる式はまた化合物の標識されていない形態および同位体標識された形態を表すことも意図される。同位体標識された化合物は、1以上の原子が選択した原子質量または質量数を有する原子で置き換えられている以外、ここに示す式により表される構造を有する。本発明の化合物に取り込まれ得る同位体の例は、それぞれH、H、11C、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、36Clおよび125Iなどの水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、塩素およびヨウ素の同位体を含む。このような同位体標識された化合物は、代謝研究(好ましくは14C)、反応速度論研究(例えばHまたはH)、薬物または基質組織分布アッセイを含む検出もしくは造影技術[例えば陽電子放出断層撮影(PET)または単光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)]または対象の放射性処置に有用である。さらに、重水素(すなわち、H)などの重い同位体での置換は、大きな代謝安定性に起因するある治療利点、例えばインビボ半減期延長または必要投与量減少を提供し得る。同位体標識された本発明の化合物およびそのプロドラッグは、一般に、同位体標識されていない試薬を容易に入手可能な試薬に置き換えて、スキームに開示のまたは下記実施例および製造の方法により実施することにより製造できる。
【0184】
ここで使用する「ALK」は、白血球チロシンキナーゼ(LTK)と共に、受容体チロシンキナーゼのインスリン受容体(IR)スーパーファミリーに属する、未分化リンパ腫キナーゼをいう。ALKは、ALK遺伝子、ALK遺伝子から転写された対応するmRNA、対応するmRNAの翻訳のタンパク質産物およびALKの一部とNPM、EML4、TPR、TFG、ATIC、CLTC1、TPM4、MSN、ALO17、MYH9などを含むが、これらに限定されない他の遺伝子または遺伝子産物の再配列または融合が関与する前記の各々をいうことは認識される。さらに、「ALK」は、上記のとおり、ALK阻害剤での処置に対する獲得耐性機構をもたらし得る、ALK遺伝子経口Kタンパク質における変異をいうことは認識される。ALK変異は、再配列または融合パートナー、例えばEML4、NPMなどの性質に必ずしも依存せず、変異は、例えば、ALK再配列または融合タンパク質のALK部分に生ずるミスセンス変異、挿入または欠失であり得ることは認識される。変異部位の例は、L1196、L1198、G1202、D1203、S1206、T1151、L1152、E1210、F1174、C1156、I1171、V1180、F1245、G1269、R1275などおよびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。ALK変異の例は、L1196M、G1202R、C1156Y、D1203N、G1202欠失、E1210K、S1206C、F1174C、F1174L、F1174S、F1174V、F1245C、G1269A、G1269S、I1171N、L1152P、L1152R、L1198F、R1275Q、S1206R、T1151-L1152insT、T1151M、V1180Lなどおよびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。多重ALK変異の例は、E1210K/D1203N、E1210K/S1206C、L1198F/C1156Y、L1198F/G1202R、L1198F/L1196M、L1196M/G1202R、L1198F/C1156Y、G1202R/G1269A、G1202R/G1269A/L1204Vなどを含むが、これらに限定されない。
【0185】
ここで使用する用語「癌」は、ALCL、NSCLC、神経芽腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、成人腎細胞癌、小児腎細胞癌、乳癌、ER乳癌、結腸腺癌、神経膠芽腫、多形神経膠芽腫、未分化甲状腺癌、胆管癌、卵巣癌、胃腺癌、結腸直腸癌、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、血管肉腫、類上皮型血管内皮腫、肝内胆管癌、甲状腺乳頭癌、スピッツ腫瘍、肉腫、星状細胞腫、脳低悪性度神経膠腫、乳腺分泌癌、乳腺相似癌、急性骨髄性白血病、先天性中胚葉腎腫、先天性線維肉腫、Ph様急性リンパ芽球性白血病、甲状腺癌腫、皮膚黒色腫、頭頚部扁平上皮細胞癌、小児神経膠腫CML、前立腺癌、肺扁平上皮癌腫、卵巣漿液性嚢胞腺癌、去勢抵抗性前立腺癌、ホジキンリンパ腫ならびに漿液性および明細胞子宮内膜癌を含むが、これらに限定されない。
【0186】
代表的実施態様
ある実施態様において、各RおよびRは独立してH、重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、単環または二環式ヘテロアリール、-OR、-OC(O)R、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CNまたは-NOであり、ここで、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールおよび単環または二環式ヘテロアリールにおける各水素原子は、独立して場合により重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、-OR、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OC(=N)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CNまたは-NOにより置換されている。ある実施態様において、RおよびRは、それらが結合している炭素原子と一体となって、C-Cシクロアルキルを形成する。ある実施態様において、各RおよびRは、存在するとき、独立してH、重水素、C-Cアルキルである。
【0187】
ある実施態様において、各RおよびR3’は独立してH、重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、単環または二環式ヘテロアリール、-OR、-OC(O)R、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CNまたは-NOであり、ここで、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、単環または二環式ヘテロアリール、における各水素原子は、独立して場合により重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、-OR、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OC(=N)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CNまたは-NOにより置換されている。ある実施態様において、RおよびR3’は、それらが結合している炭素原子と一体となって、C-Cシクロアルキルを形成し、ここで、C-Cシクロアルキルにおける各水素原子は、独立して場合により重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、-OR、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OC(=N)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CNまたは-NOにより置換されている。ある実施態様において、各RおよびR3’は独立してH、重水素、C-Cアルキル。ある実施態様において、RおよびR3’は、それらが結合している炭素原子と一体となって、C-Cシクロアルキルを形成する。ある実施態様において、各R3’はHまたは重水素。ある実施態様において、両R3’は一体となって二価基-(CR)-を形成し、ここで、mが1または2である。
【0188】
ある実施態様において、各RおよびRは独立して水素、重水素、ハロゲン、-OR、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OC(=N)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRC(=N)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-C(=N)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CN、-NO、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールまたは単環または二環式ヘテロアリールであり、ここで、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリール、単環または二環式ヘテロアリール、C-Cシクロアルキルまたは5~8員ヘテロシクロアルキルにおける各水素原子は、独立して場合により重水素、ハロゲン、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、-OR、-OC(O)R、-OC(O)NR、-OC(=N)NR、-OS(O)R、-OS(O)、-OS(O)NR、-OS(O)NR、-SR、-S(O)R、-S(O)、-S(O)NR、-S(O)NR、-NR、-NRC(O)R、-NRC(O)OR、-NRC(O)NR、-NRS(O)R、-NRS(O)、-NRS(O)NR、-NRS(O)NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-PR、-P(O)R、-P(O)、-P(O)NR、-P(O)NR、-P(O)OR、-P(O)OR、-CNまたは-NOにより置換されている。ある実施態様において、各RはHまたは重水素。ある実施態様において、Rはフルオロである。
【0189】
ある実施態様において、RはH、重水素またはC-Cアルキルであり、ここで、C-Cアルキルにおける各水素原子は、独立して場合により重水素、ハロゲン、-OR、-SRまたは-NRにより置換されている。ある実施態様において、RはHである。
【0190】
ある実施態様において、各Rは独立して水素または重水素。ある実施態様において、RはHである。
【0191】
ある実施態様において、各R、R、R、R、RおよびRは独立してH、重水素、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルキニル、C-Cシクロアルキル、3~7員ヘテロシクロアルキル、C-C10アリールおよび5~7員ヘテロアリールからなる群から選択される。
【0192】
ある実施態様において、nは0、1、2または3である。ある実施態様において、nは0または1である。ある実施態様において、nが0である。ある実施態様において、nが1である。
【0193】
以下は、式I~IIIAの化合物の説明的実施態様を表す。
【表1】
【表2】
【表3】
【0194】
当業者は、ここに挙げたまたは説明した種(species)は網羅的ではなく、これら定義した用語の範囲内のさらなる種も選択し得ることを認識する。
【0195】
医薬組成物
処置目的で、ここに記載する化合物を含む医薬組成物は、さらに1以上の薬学的に許容される添加物を含み得る。薬学的に許容される添加物は、非毒性であり、かつ他の点で対象への投与に生物学的に適当である物質である。このような添加物は、ここに記載する化合物の投与を促進し、活性成分と適合性である。薬学的に許容される添加物の例は、安定化剤、滑沢剤、界面活性剤、希釈剤、抗酸化剤、結合剤、着色剤、増量剤、乳化剤または味覚修飾剤を含む。好ましい実施態様において、本発明の医薬組成物は無菌組成物である。医薬組成物は、既知のまたは当業者に利用可能となる混合技術を使用して、調製され得る。
【0196】
無菌組成物も本発明により意図され、そのような組成物を管轄する国または地域の当局の規制に従う組成物を含む。
【0197】
ここに記載する医薬組成物および化合物は、種々の剤形の製剤について当分野で知られる慣用法により、
適当な医薬溶媒または担体中の溶液、エマルジョン、懸濁液または分散体としてまたは固体担体と共に丸剤、錠剤、ロゼンジ剤、坐剤、サシェ剤、糖衣錠剤、顆粒剤、散剤、再構成用粉末剤またはカプセル剤として製剤化され得る。本発明の医薬組成物は、経口、非経腸、直腸、経鼻、局所もしくは眼経路などの適当な送達経路または吸入により投与され得る。好ましくは、組成物は、静脈内または経口投与用に製剤化され得る。
【0198】
経口投与に関して、本発明の化合物は、錠剤もしくはカプセル剤などの固体形態または溶液、エマルジョンまたは懸濁液として提供され得る。経口組成物を調製するために、本発明の化合物を、例えば、1日約0.1mg~1gまたは1日約1mg~50mgまたは1日約50~250mgまたは1日約250mg~1gの投与量をもたらすよう製剤化され得る。経口錠剤は、希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、甘味剤、風味剤、着色剤および防腐剤などの適合性の薬学的に許容される添加物と混合した活性成分を含み得る。適当な不活性充填剤は、炭酸ナトリウムおよび炭酸カルシウム、リン酸ナトリウムおよびリン酸カルシウム、ラクトース、デンプン、糖、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトールなどを含む。液体経口添加物の例は、エタノール、グリセロール、水などを含む。デンプン、ポリビニル-ピロリドン(PVP)、デンプングリコール酸ナトリウム、微結晶セルロースおよびアルギン酸は崩壊剤の例である。結合剤は、デンプンおよびゼラチンを含み得る。滑沢剤は、存在するならば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクであり得る。所望により、錠剤を、消化管での吸収を遅らせるためにモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの材料でコーティングしてよくまたは腸溶性コーティングでコーティングしてよい。
【0199】
経口投与用カプセルは、硬および軟ゼラチンカプセルを含む。硬ゼラチンカプセルを調製するため、活性成分を、固体、半固体または液体希釈剤と混合し得る。軟ゼラチンカプセルは、活性成分と水、油、例えばピーナツ油またはオリーブ油、液体パラフィン、短鎖脂肪酸モノおよびジグリセリド混合物、ポリエチレングリコール400またはプロピレングリコールの混合により調製され得る。
【0200】
経口投与液体は、懸濁液、溶液、エマルジョンまたはシロップの形であってよくまたは使用前に水または他の適当な媒体で再構成するための凍結乾燥されたまたは乾燥製品として提供されてよい。このような液体組成物は、所望により薬学的に許容される添加物、例えば懸濁化剤(例えば、ソルビトール、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲルなど);非水性媒体、例えば、油(例えば、アーモンド油または分画ココナッツ油)、プロピレングリコール、エチルアルコールまたは水;防腐剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチルまたはプロピルまたはソルビン酸);湿潤剤、例えばレシチン;および、所望により、風味剤または着色剤を含み得る。
【0201】
静脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内または皮下経路を含む非経腸使用のために、本発明の薬剤は、適切なpHおよび等張に緩衝化された無菌水溶液もしくは懸濁液または非経腸的に許容される油に提供され得る。適当な水性媒体は、リンゲル液および等張塩化ナトリウムを含む。このような形態は、アンプルまたは使い捨て注射デバイス単位投与形態、適切な用量を引き抜き得るバイアルなどの多回投与形態または注射用製剤の調製に使用できる固体形態または前濃縮物で提供され得る。説明的点滴用量は、数分~数日の範囲の期間にわたり、医薬担体と混合した薬物約1~1000μg/kg/分の範囲である。
【0202】
経鼻、吸入または経口投与について、本発明医薬組成物を、例えば、適当な担体も含む噴霧製剤を使用して投与し得る。本発明組成物は、坐剤として直腸投与用に製剤化され得る。
【0203】
局所適用について、本発明の化合物は、好ましくはクリーム剤または軟膏剤または局所投与に適する類似媒体として製剤化される。局所投与に関して、本発明化合物を、媒体に対して約0.1%~約10%濃度の薬物で医薬担体と混合し得る。本発明の薬剤を投与する他の方法は、経皮送達を行うためのパッチ製剤を利用し得る。
【0204】
ここで使用する用語「処置する」または「処置」は、「予防的」および「治癒的」処置両方を含む。「予防的」処置は、疾患、疾患症状または医学的状態の進展の遅延、出現し得る症状の抑制または疾患もしくは症状の進展または再発のリスクの低減を示すことを意味する。「治癒的」処置は、既存の疾患、症状または状態の重症度の低減または悪化の抑制を含む。故に、処置は、既存の疾患症状の軽減または予防、さらなる症状が生じることを予防、症状の根柢の全身性の原因の軽減または予防、障害または疾患の阻止、例えば、障害または疾患の進展停止、障害または疾患の緩和、障害または疾患の退縮誘導、疾患または障害の原因の状態の緩和または疾患または障害の症状停止を含む。
【0205】
用語「対象」は、このような処置を必要とする哺乳動物患者、例えば、ヒトをいい、または、獣医適用の場合、実験動物、農業用または家庭用動物であり得る。ある実施態様において、対象はヒトであり得る。ある実施態様において、対象は、イヌまたはネコなどの獣医使用のための家庭用動物であり得る。ある実施態様において、対象は、ウシ、ブタ、ウマなどの農業用動物であり得る。ある実施態様において、対象は、齧歯類(例えばマウス、ラットなど)、霊長類(例えばアカゲザルなど)、イヌなどの実験動物であり得る。
【0206】
疾患の例は、癌、疼痛、神経疾患、自己免疫性疾患および炎症を含む。癌は、例えば、肺癌、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肝細胞癌、腎細胞癌、胃および食道胃癌、神経膠芽腫、頭頸部癌、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍および未分化大細胞リンパ腫を含む。疼痛は、例えば、癌疼痛、化学療法処置による疼痛、神経痛、傷害による疼痛または他の源を含む、あらゆる源または病因による疼痛を含む。自己免疫性疾患は、例えば、関節リウマチ、シェーグレン症候群、I型糖尿病およびルーパスを含む。神経疾患の例は、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症およびハンチントン病を含む。炎症性疾患の例は、アテローム性動脈硬化症、アレルギーおよび感染または傷害による炎症を含む。
【0207】
ある態様において、本発明の化合物および医薬組成物は、特にチロシン受容体キナーゼ、特にALK、より具体的にここに記載する1以上の変異を有するALKを標的とする。故に、これら化合物および医薬組成物を使用して、ALK活性を予防、逆転、遅延または阻害できる。好ましい実施態様において、処置方法の標的は癌である。他の実施態様において、方法は、肺癌、特に非小細胞肺癌の処置法である。
【0208】
本発明の阻害方法において、「有効量」は、標的タンパク質の阻害に十分な量を意味する。このような標的調節の測定は、下記のものなどの日常的な分析方法により実施され得る。このような調節は、インビトロアッセイを含む多様な状況で有用である。このような方法において、細胞は、好ましくはALKの上方制御、特に特にここに記載する1以上の変異を有するALKによりシグナル伝達異常を有する癌細胞である。
【0209】
ある実施態様において、式I~IIIaのあらゆる化合物に関するここに記載する使用および方法は、ALKにより介在されるまたはALKと、NPM、EML4、TPR、TFG、ATIC、CLTC1、TPM4、MSN、ALO17、MYH9などを含むが、これらに限定されない他の遺伝子または遺伝子産物の再配列または融合により介在される癌の処置のためであり得る。ある実施態様において、式I~IIIaのあらゆる化合物に関するここに記載する使用および方法は、ALKまたはALKと、NPM、EML4、TPR、TFG、ATIC、CLTC1、TPM4、MSN、ALO17、MYH9などを含むが、これらに限定されない他の遺伝子または遺伝子産物の再配列または融合により介在され、ALK再配列または融合タンパク質のALK部分に生ずるミスセンス変異、挿入または欠失などの少なくとも1個の変異を有する癌であって、変異部位がL1196、L1198、G1202、D1203、S1206、T1151、L1152、E1210、F1174、C1156、I1171、V1180、F1245、G1269、R1275などおよびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、癌の処置のためであり得る。
【0210】
ある実施態様において、式I~IIIaのあらゆる化合物に関するここに記載する使用および方法は、ALKにより介在されるまたはALKと、NPM、EML4、TPR、TFG、ATIC、CLTC1、TPM4、MSN、ALO17、MYH9などを含むが、これらに限定されない他の遺伝子または遺伝子産物の再配列または融合により介在され、ALK再配列または融合タンパク質のALK部分に生ずるミスセンス変異、挿入または欠失などの少なくとも1個の変異を有する癌であって、ここで、ALK変異がL1196M、G1202R、C1156Y、D1203N、G1202欠失、E1210K、S1206C、F1174C、F1174L、F1174S、F1174V、F1245C、G1269A、G1269S、I1171N、L1152P、L1152R、L1198F、R1275Q、S1206R、T1151-L1152insT、T1151M、V1180Lなどおよびそれらの組み合わせである、癌の処置のためであり得る。ある実施態様において、式I~IIIaのあらゆる化合物に関するここに記載する使用および方法は、ALKにより介在されるまたはALKと、NPM、EML4、TPR、TFG、ATIC、CLTC1、TPM4、MSN、ALO17、MYH9などを含むが、これらに限定されない他の遺伝子または遺伝子産物の再配列または融合により介在され、ALK再配列または融合タンパク質のALK部分に生ずるミスセンス変異、挿入または欠失などの少なくとも1個の変異を有する癌であって、変異がE1210K/D1203N、E1210K/S1206C、L1198F/C1156Y、L1198F/G1202R、L1198F/L1196M、L1196M/G1202R、L1198F/C1156Y、G1202R/G1269AおよびG1202R/G1269A/L1204Vから選択される多重ALK変異である、癌の処置のためであり得る。
【0211】
本発明の処置方法において、「有効量」は、そのような処置を必要とする対象に、一般に所望の治療利益をもたらすのに十分な量または用量を意味する。本発明の化合物の有効量または用量は、日常的因子、例えば、投与または薬物送達の方法または経路、薬剤の薬物動態、感染の重症度および経過、対象の健康状態、病状および体重および処置医師の判断を考慮して、モデリング、用量漸増または臨床治験などの日常的方法により確認できる。用量の例は、1日約0.1mg~1gまたは1日約1mg~50mgまたは1日約50~250mgまたは1日約250mg~1gの範囲である。総投与量を、単一または分割投与量単位(例えば、BID、TID、QID)で与えてよい。
【0212】
対象の疾患が改善し始めたら、用量を、予防的または維持処置に調節し得る。例えば、投与量または投与頻度または両者を、症状の関数として、所望の治療または予防効果が維持されるレベルまで低減し得る。当然、症状が適切なレベルまで軽減したら、処置を中止してよい。しかしながら、対象は、何らかの症状の再発に基づき、長期に間欠的処置を必要とし得る。対象はまた長期処置を基本として、慢性処置も必要とし得る。
【0213】
薬物組み合わせ
ここに記載する本発明化合物を、ここに記載する疾患および障害の処置において、1以上のさらなる活性成分と組み合わせて医薬組成物または方法において使用し得る。さらに、さらなる活性成分は、意図する疾患標的の治療の有害作用を軽減する他の治療または薬剤を含む。このような組み合わせは、有効性増大、他の疾患症状軽減、1以上の副作用低減または本発明化合物の必要用量減少に役立ち得る。さらなる活性成分を、本発明の化合物と別の医薬組成物で投与してよくまたは本発明の化合物と共に単一医薬組成物に入れてよい。さらなる活性成分は、本発明の化合物の投与と同時に、前にまたは後に投与し得る。
【0214】
組み合わせ薬剤に含まれるさらなる活性成分は、ここに記載する疾患および障害の処置に有効であることが知られるまたは発見されるものであり、該疾患と関連する他の標的に対して活性であるものを含む。例えば、本発明の組成物および製剤ならびに処置方法は、さらに他の薬物または医薬、例えば、標的疾患または関連症状もしくは状態の処置または緩和に有用な他の活性剤を含み得る。癌適応症について、さらなるこのような薬剤は、キナーゼ阻害剤、例えばEGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ、ゲフィチニブ)、Raf阻害剤(例えば、ベムラフェニブ)、VEGFR阻害剤(例えば、スニチニブ)、ALK阻害剤(例えば、クリゾチニブ)標準化学療法剤、例えばアルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、白金薬物、有糸分裂阻害剤、抗体、ホルモン治療またはコルチコステロイドを含むが、これらに限定されない。疼痛適応について、適当な組み合わせ剤は、抗炎症剤、例えばNSAIDを含む。本発明の医薬組成物は、さらに、このような活性剤の1以上を含んでよく、処置方法は、さらにこのような活性剤の1以上の有効量の投与を含んでよい。
【0215】
化学合成
本発明の方法で有用な化学物質を、ここで、下記一般的製造についての説明的合成スキームおよびその後の具体例を参照して記載する。当業者は、ここでの種々の化合物を得るために、最終的に所望の置換基が所望の生成物を得るのに適切な保護をしてまたはせずに、反応スキームの遂行をとおして担持されるように、出発物質を適切に選択し得ることを認識する。あるいは、最終的に所望の置換基の代わりに、反応スキームをとおして担持され得る適当な基を用い、適切であれば、所望の置換基に置換することが必要であるかまたは望まれる可能性があり得る。さらに、当業者は、下記スキームに示す返還が、特定のペンダント基の官能性に適合性である、あらゆる順番で実施され得ることを認識する。
【0216】
略語
ここで記載する実施例は、当業者に知られる次の略語を用いて記載されるものを含むが、これらに限定されない、材料物質を使用する。
【表4】

【実施例
【0217】
比較例
比較例1および2を、2018年12月18日出願の国際PCT出願PCT/US2018/066159に対応する、国際PCT公開WO2019126122に記載のとおり、製造した。
【表5】
【0218】
実施例1:一般的方法A
tert-ブチル{1-[2-(クロロメチル)-4-フルオロフェノキシ]-2-メチルプロパン-2-イル}カルバメート(A-1)の調製
【化23】
【0219】
工程1:A-1-1(259mg、1.52mmol)の無水DMF(7.35mL)溶液に、NaH(鉱油中60%、91.3mg、2.28mmol)を、アルゴン下、0℃で加えた。反応物を撹拌し、1時間温めた。反応物を0℃に冷却し、A-1-2を加えた。反応物を撹拌し、温度を50℃に上げ、18時間撹拌した。飽和NHCL(水性5mL)で0℃で反応停止させ、激しく撹拌した。水(25mL)を加え、DCM(3×25mL)で抽出した。合わせた有機層を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。フラッシュカラムクロマトグラフィー(12gシリカ、ISCO、0~50%EAのヘキサン溶液)により、A-1-3(267mg、51%収率)を得た。
【0220】
工程2:A-1-3(267mg、0.782mmol)の無水THF(3.9mL)溶液に、LiBH(34mg、1.56mmol)を0℃で加えた。反応物を18時間撹拌し、温度が環境まで上昇した。水(5mL)および2M NaOH(1mL)で反応停止させ、次いでDCM(3×10mL)で抽出した。合わせた有機層を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。フラッシュカラムクロマトグラフィー(12gシリカ、ISCO、0~50%EAのヘキサン溶液でELSD検出を使用)により、A-1-4(29.3mg、12%収率)を得た。
【0221】
工程3:A-1-4(29.3mg、93.5μmol)のDCM(1mL)溶液に、ヒューニッヒ塩基(36.2mg、280.5μmol、48.8μL)を加えた。反応物を0℃に冷却し、メシルクロライド(13.9mg、121.5μmol、9.4μL)を加えた。反応物を、18時間かけて温度を0~22℃に上昇させて撹拌した。0℃で2M HCL(水性)(1mL)で反応停止させた。水およびDCM(各5mL)で希釈し、層を分離し、水層をDCM(2×5mL)で抽出した。合わせた有機層を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。フラッシュカラムクロマトグラフィー(12gシリカ、ISCO、0~50%EAのHex溶液)により、A-1(25.2mg、75.9μmol、81%収率)を得た。
【0222】
実施例2:一般的方法B
tert-ブチル[(1-{[2-(クロロメチル)-4-フルオロフェノキシ]メチル}シクロプロピル)メチル]カルバメート(A-2)の製造
【化24】
【0223】
工程1:A-1-1(100mg、587.7μmol)、A-2-1(118.2mg、587.7μmol)およびPPh(231.2mg、881.6μmol)の無水DCM(403.14μL)溶液に、0℃でDIAD(190.2mg、940.4μmol、184.6μL)を撹拌しながら加えた。混合物を18時間撹拌し、RTに温めた。フラッシュカラムクロマトグラフィー(ISCO、12gシリカ、0~50%酢酸エチルのヘキサン溶液)により、A-2-2(163.1mg、433.3μmol、73.7%収率)を得た。
【0224】
工程2:化合物A-2を、一般的方法Aに従い、工程2でB-1-2から出発して、製造した。
【0225】
化合物A-3を、一般的方法Bに従い製造した
【0226】
化合物A-5、A-6、A-7およびA-8を、一般的方法Bに従い製造した
【0227】
実施例3:一般的方法C
tert-ブチル(1-((2-(クロロメチル)-4-フルオロフェノキシ)メチル)シクロプロピル)カルバメート(A-4)の製造
【化25】
【0228】
化合物A-4を、一般的方法Cに従い製造した
【0229】
工程1. A-4-1(500mg、2.67mmol)のDCM(12.25mL)溶液に、トリエチルアミン(811mg、8.0mmol、1.12mL)を加えた。混合物を0℃に冷却し、p-トルエンスルホニルクロライド(TosCl、611mg、3.2mmol)およびDMAP(6.5mg、53μmol)を加えた。反応物を22℃に温め、18時間撹拌した。水(15mL)およびDCM(10mL)を加え、有機層を分離した。水層をDCM(2×10mL)で抽出し、NaSOで乾燥させ、減圧下濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(ISCO系、シリカ24g、0~30%酢酸エチルのヘキサン溶液)により、A-4-2(608mg、1.78mmol、67%)を得た。
【0230】
工程2. A-1-1(100mg、588μmol)のDMF(3.00L)溶液に、炭酸セシウム(479mg、1.5mmol)およびA-4-2(200mg、588mol)を加えた。混合物を70℃で17時間撹拌した。反応混合物を冷却し、DCM(5mL)で希釈し、シリンジフィルターで濾過し、減圧下濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(12gシリカ、ISCO、0~80%酢酸エチルのヘキサン溶液)により、A-4-3(47mg、138μmol、23%収率)を得た。
【0231】
工程3. A-4-3(47mg、138μmol)の無水THF(3.9mL)溶液に、0℃でLiBH(9mg、415μmol)を加えた。反応物を22℃に温め、21時間撹拌した。反応物を0℃に冷却し、2M NaOH(3mL)および水(3mL)で反応停止させ、次いでDCM(3×5mL)で抽出した。合わせた有機層を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させたおよび減圧下濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(12gシリカ、ISCO、0~12.5%メタノールのジクロロメタン溶液)により、A-4-4(37.1mg、119μmol、86%収率)を得た。
【0232】
工程4. A-4-4(37.1mg、120μmol)のDCM(1mL)溶液に、メシルクロライド(20.5mg、179μmol、14μL)を加えた。反応物を0℃に冷却し、ヒューニッヒ塩基(46mg、357μmol、62μL)を加えた。反応物をゆっくり22℃に温め、71時間撹拌した。反応物を-20℃に冷却し、2M HCL(水性)(2mL)で反応停止した。水およびDCM(各2mL)で希釈し、層を分離し、水層をDCM(2×5mL)で抽出した。合わせた有機層を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。フラッシュカラムクロマトグラフィー(12gシリカ、ISCO、0~40%酢酸エチルのヘキサン溶液)により、A-4(25.2mg、75.9μmol、75%収率)を得た。
【表6】
【0233】
実施例4:一般的方法D
エチル5-クロロ-6-ヒドロキシ-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボキシラート(B)の製造
【化26】
【0234】
工程1. B-1(150g、1.44mol、143mL、1.00当量)およびB-1A(104g、1.73mol、105mL、1.20当量)のテトラヒドロフラン(3.00L)溶液に、水素化ナトリウム(80.7g、2.02mol、60.0%純度、1.40当量)を、ゆっくり、0℃で、30分間にわたり、窒素下で加えた。その間温度を0℃未満に維持した。反応混合物を0℃で12時間撹拌した。白色固体の形成が観察され、メチルtert-ブチルエーテル(2.00L)を加え、濾過し、フィルターケーキを減圧下乾燥させて、粗製B-2(283g、粗製)を明黄色固体として得た。
【0235】
工程2. B-2A(165g、1.06mol、1.00当量)のDMF(3.00L)溶液に、炭酸セシウム(624g、1.91mol、1.80当量)およびB-2(279g、1.91mol、1.80当量)を加えた。混合物を110℃で12時間撹拌した。反応混合物を水(3.00L)で希釈し、塩酸(5.00M,1.80L)を、混合物にゆっくり、20℃で加え、得られた沈殿固体を濾過し、メチルアルコール(300mL)で洗浄した。フィルターケーキを減圧下濃縮して、粗製B-3(162g、609mmol、57.4%収率、89.3%純度)を黄色固体として得た。
【0236】
工程3. B-3(100g、375mmol、1.00当量)を、オキシ塩化リン(300mL)に加えた。混合物を110℃で12時間撹拌した。反応混合物を溶媒が除去され、生成物が沈殿するまで減圧下濃縮した。残留物を氷水(1.00L)で希釈し、濾過して、溶媒を除去した。次いで、フィルターケーキをジクロロメタン(2.00L)に溶解し、水(2.00L)を加えた。有機相を分離し、塩水(300mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下濃縮して、B-4(64.0g、213mmol、56.7%収率、85.0%純度)を灰色固体として得た。
【0237】
工程4. 三塩化アルミニウム(752g、5.64mol、308mL、5.00当量)を、一度に無水ジクロロエタン(4.90L)に加え、混合物を、窒素下、20℃で10分間撹拌し、次いでB-4(324g、1.13mol、1.00当量)を、混合物に5等分して加えた。混合物を20℃で24時間撹拌した。反応混合物を塩酸(5.00M、2.00L)を0℃で加えて反応停止させ、水(1.00L)で希釈し、次いで酢酸エチル(3.00L×3)で抽出した。合わせた有機層を水(2.00L)および塩水(1.00L×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下濃縮して、粗製生成物B(280g、920mmol、81.6%収率、79.4%純度)を灰色固体として得た。
【0238】
実施例5:一般的方法E
化合物エチル(3S)-3-(ジフルオロメチル)-3,4-ジヒドロ-2H-ピラゾロ[1,2]ピリミド[2,4-d][1,4]オキサジン-6-カルボキシラート(C)の製造
【化27】
【0239】
工程1:C-1(5.00g、22.1mmol、1.00当量)のDCM(120mL)溶液に、ピリジン(2.80g、35.4mmol、2.85mL、1.60当量)およびトリフルオロ酢酸無水物(7.48g、26.5mmol、4.37mL、1.20当量)を、-20℃で加えた。混合物を-20℃~0℃で5時間撹拌した。反応混合物を30℃で減圧下濃縮して、溶媒を除去した。残留物を水(50.0mL)で希釈し、石油エーテル/酢酸エチル=10:1(50.0mL×3)で抽出した。合わせた有機層を塩水(30.0mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下濃縮して、残留物をえた。残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、石油エーテル/酢酸エチル=1/0~50/1)で精製して、C-2(6.70g、16.8mmol、76.2%収率、90.0%純度)を明黄色油として得た。
【0240】
工程2. C-2(0.50g、1.40mmol、1.00当量)のジオキサン(5.00mL)溶液に、(4-メトキシフェニル)メタンアミン(229mg、1.67mmol、216μL、1.20当量)およびトリエチルアミン(169mg、1.67mmol、233μL、1.20当量)を加えた。混合物を90℃で12時間撹拌した。反応混合物を水(30.0mL)で希釈し、酢酸エチル(20.0mL×2)で抽出した。合わせた有機層を塩水(15.0mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下濃縮して、残留物を得た。残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、石油エーテル/酢酸エチル=50/1~10/1)で精製して、C-3(0.35g、1.01mmol、72.3%収率、99.5%純度)を明黄色油として得た。
【0241】
工程3. C-3(3.35g、9.70mmol、1.00当量)のテトラヒドロフラン(34.0mL)溶液に、テトラブチルアンモニウムフルオライドのテトラヒドロフラン溶液(1.00M、9.70mL、1.00当量)を加えた。混合物を20℃で2時間撹拌した。反応混合物を20℃で水(80.0mL)で反応停止させ、酢酸エチル(50.0mL×2)で抽出した。合わせた有機層を塩水(50.0mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下濃縮して、残留物を得た。残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、石油エーテル/酢酸エチル=30/1~10/1)で精製して、C-4(2.10g、8.99mmol、92.7%収率、99.0%純度)を明黄色油として得た。
【0242】
工程4. C-4(2.60g、11.2mmol、1.00当量)のジメチルスルホキシド(50.0mL)溶液に、フッ化カリウム(1.63g、28.1mmol、658μL、2.50当量)およびB(2.74g、11.2mmol、1.00当量)を加えた。混合物を120℃で3時間撹拌した。反応混合物を水(300mL)で希釈し、酢酸エチル(50.0mL×3)で抽出した。合わせた有機層を塩水(50.0mL×3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下濃縮して、残留物を得た。残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、石油エーテル/酢酸エチル=10/1~2/1)で精製して、化合物C-5(1.00g、1.83mmol、16.3%収率、80.3%純度)を黄色油として得た。
【0243】
工程5. C-5(1.00g、2.28mmol、1.00当量)のジメチルスルホキシド(70.0mL)溶液に、炭酸セシウム(2.97g、9.12mmol、4.00当量)を加えた。混合物を25℃で2時間撹拌した。反応混合物を水(300mL)で希釈し、酢酸エチル(50.0mL×3)で抽出した。合わせた有機層を塩水(100mL×3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下濃縮して、C-6(0.75g、1.43mmol、62.9%収率、80.0%純度)を黄色固体として得た。
【0244】
工程6. C-6(0.51g、1.22mmol、1.00当量)をトリフルオロ酢酸(10.0mL)に加えた。混合物を70℃で4時間撹拌した。反応混合物を減圧下濃縮して、残留物を得た。残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、石油エーテル/酢酸エチル=10/1~1/1)で精製して、C(0.27g、862μmol、70.8%収率、96.0%純度)を灰色固体として得た。
【0245】
実施例6:一般的方法F
(4S)-4-(ジフルオロメチル)-8-フルオロ-13,13-ジメチル-3,4,13,14-テトラヒドロ-6H-18,1-(メテノ)[1,4]オキサジノ[3,4-i]ピラゾロ[4,3-f][1,4,8,10]ベンズオキサトリアザシクロトリデシン-15(12H)-オン(1)の製造
【化28】
【0246】
工程1:A-1(R=Cl、25.2mg、75.95μmol)を、室温でDMF(0.5mL)に溶解した。CsCO(65.55mg、201.18μmol)、続いてC(20mg、67.06μmol)を加えた。混合物22℃で18時間撹拌した。反応物をDCM(5mL)で希釈し、冷却した。溶液を濾過し、濾液を減圧下濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(ISCO、12g、20~80%酢酸エチルのヘキサン溶液)により、1-1(23.4mg、39.42μmol、59%収率)を得た。
【0247】
工程2:1. 1-1(23.4mg、39.42μmol)のTHF(1mL)、2mLのエタノール(2mL)およびメタノール(1mL)の溶液に、環境温度で水性LiOH(2M、2mL)を加えた。混合物を22℃で36時間撹拌した。-20℃に冷却し、次いで水性HCl溶液(2.0M、2.1mL)で酸性pHまで反応停止させた。混合物を水(10mL)で希釈し、DCM(3×10mL)で抽出した。合わせた有機層を塩水で洗浄し、次いでNaSOで乾燥させた。塩を濾過し、濾液を減圧下濃縮し、高真空下乾燥させた。粗製物をさらに精製することなく直接使用し、定量的収率と仮定した。2. 粗製物を無水DCM(2mL)に溶解し、HCl/4M ジオキサン(4M、2mL)を加えた。混合物を45分間、22℃で撹拌し、次いで減圧下濃縮乾固し、続いて高真空処理した。得られた粗製物をさらに精製することなく直接使用し、定量的収率と仮定した。3. 無水DCM(1.90mL)、続いてヒューニッヒ塩基(50.93mg、394.05μmol、68.64μL)およびFDPP(22.71mg、59.11μmol)を一度に加えた。反応混合物を18時間撹拌し、次いで2M NaCO溶液(5mL)で反応停止させた。混合物を5分間撹拌し、次いでDCM(3×10mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をNaSOで乾燥させ、減圧下濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(ISCO系、シリカ12g、0~10%メタノールのジクロロメタン溶液)により、化合物1(10.8mg、24.14μmol、61.26%収率、3工程)を得た。
【0248】
化合物2~8を、一般的方法Fに従い、それぞれ出発物質A-2~A-8と化合物Bで製造した。
【表7】
【表8】
【0249】
実施例7:生物アッセイ
インビトロアッセイ
材料および方法
生化学的キナーゼアッセイ方法
生化学的キナーゼアッセイを、参考文献(Anastassiadis T, et al Nat Biotechnol. 2011, 29, 1039)に記載の方法に従い、Reaction Biology Corporation(Malvern, PA)で実施した。特異的キナーゼ/基質対と必要な補因子を、反応緩衝液(20mM Hepes pH7.5、10mM MgCl、1mM EGTA、0.02%Brij35、0.02mg/ml BSA、0.1mM NaVO、2mM DTT、1%DMSO)中で調製した。化合物を反応液に加え、約20分後、ATP(Sigma, St. Louis MO)および33P ATP(Perkin Elmer, Waltham MA)の混合物を、最終濃度10μMで加えた。室温で120分間反応させ、続いて反応物をP81イオン交換濾紙(Whatman Inc., Piscataway, NJ)にスポットした。非結合ホスフェートを、濾紙を0.75%リン酸で徹底的に洗浄して除去した。不活性酵素含有対照反応からのバックグラウンドを減じた後、キナーゼ活性データを、媒体(ジメチルスルホキシド)反応と比較した、試験サンプル中の残存キナーゼ活性パーセントとしてあらわした。IC50値およびカーブフィットを、Prism(GraphPadソフトウェア)を使用して得た。
【0250】
細胞株および細胞培養:
結腸直腸細胞株KM 12(内因性TPM3-TRK融合遺伝子担持)を、NCIから得た。急性骨髄性細胞株KG-1(内因性OP2-FGFR1融合遺伝子担持)を、ATCCから得た。
【0251】
クローニングおよび安定なBa/F3細胞株作製
EML4-ALK遺伝子(バリアント1)野生型、G1202R、G1202R/L1196M、G1202R/L1198F、G1202R/C1156YおよびL1196M/L1198FをGenScriptで合成し、pCDH-CMV-MCS-EF1-Puroプラスミド(System Biosciences, Inc)にクローン化した。Ba/F3 EML4-ALK野生型、G1202R、G1202R/L1196M、G1202R/L1198F、G1202R/C1156Y、L1196M/L1198F、L1198F/C1156Y、G1202R/G1269AおよびG1202R/G1269A/L1204Vを、Ba/F3細胞を、EML4-ALK野生型、G1202R、G1202R/L1196M、G1202R/L1198F、G1202R/C1156Y、L1196M/L1198F L1198F/C1156Y、G1202R/G1269AまたはG1202R/G1269A/L1204Vを含むレンチウイルスで形質導入することにより作製した。安定な細胞株を、ピューロマイシン処理、続いてIL-3離脱により選択した。簡潔には、5×10 Ba/F3細胞を、8μg/mL 硫酸プロタミン存在下レンチウイルス上清で形質導入した。形質導入細胞を、その後、IL3含有培地RPMI1640+10%FBSの存在下、1μg/mL ピューロマイシンで選択した。10~12日間選択後、生存細胞を、さらにIL3非依存的成長について選択した。
【0252】
細胞増殖アッセイ:
2000細胞/ウェルを、384ウェル白色プレートに24時間播種し、次いで化合物で72時間(37℃、5%CO)処理した。細胞増殖を、製造者のプロトコールに従いCellTiter-GloルシフェラーゼベースATP検出アッセイ(Promega)を使用して測定した。IC50決定を、GraphPad Prismソフトウェア(GraphPad, Inc., San Diego, CA)を使用して実施した。
【0253】
細胞キナーゼリン酸化アッセイの免疫ブロッティング
半分の1000細胞(Ba/F3 EML4-ALK WTまたはG1202R)/ウェルを、24ウェルプレートに24時間播種し、次いで化合物で4時間処理した。処理後細胞を集め、10mM EDTA、1×Haltプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤(Thermo Scientific)添加RIPA緩衝液(50mM Tris、pH7.4、150mM NaCl、1%NP-40、0.5%デオキシコール酸、0.1%SDS)に溶解した。タンパク質ライセート(約20μg)を、4~12%Bolt Bis-Trisプレキャストゲルで、MESランニング緩衝液(Life Technologies)を用いて分散させ、Trans-Blot Turbo Transfer System(Bio-Rad)を使用してニトロセルロース膜に移し、リン酸化ALK(Y1282/1283)(Cell Signaling Technology)、ALK(Y1604)、総ALK(Cell Signaling Technology)、アクチン(Cell Signaling Technology)をターゲティングする抗体で検出した。抗体は、概して一夜、4℃で穏やかに振盪しながらインキュベートし、続いて洗浄し、適切なHRP-コンジュゲート二次抗体とインキュベートした。膜を、化学発光基質と5分間、室温でインキュベートした(SuperSignal West Femto, Thermo Scientific)。化学発光像をC-DiGit Imaging System(LI-COR Biosciences)で獲得した。化学発光バンドの相対密度を、LICORのImage Studio Digitsにより定量した。
【0254】
溶解度試験
1.035mL リン酸緩衝液(PB)(pH7.4)の一定量を、1.5mLチューブ中、2.07mgの試験化合物(2mg・mL-1上限溶解度決定)に加えた。混合物を10分間超音波処理し、室温で8時間以上ローターで回転させた。回転後、チューブを10分間超音波処理し、13000rpmで15分間遠心分離した。0.3mLの上清を0.6mLチューブに移し、5分間回転後濯ぐために廃棄し、次いで約0.6mLの残存上清を濯いだチューブに移し、13000rpmで15分間再び遠心分離した。全遠心分離後の上清を適切に希釈し、LC-MS/MS分析のために移し、標準曲線を7濃度レベル(2、4、10、20、40、100および200μg・mL-1)で構築し、PB中の検体の定量に使用した。
【0255】
肝臓ミクロソーム安定性試験
1. 貯蔵および作業溶液の調製
【0256】
試験化合物貯蔵溶液を、1.07mgを測り、0.261mLのDMSOに溶解して、10mM濃度を達成することにより調製した。試験化合物の作業溶液を、貯蔵溶液をDMSOを使用して希釈し、300μMの濃度とすることにより調製した。
【0257】
2. インキュベーション
【0258】
アッセイを、96ウェルマイクロタイタープレートで実施した。各ウェルで、反応混合物(25μL)は、3.3mM MgClで緩衝化したpH7.4、100mM リン酸カリウム中、最終濃度1μMで試験化合物、0.5mg/mL 肝臓ミクロソームタンパク質および1mM NADPHを含んだ。混合物を、デュプリケートで37℃で0分間、15分間、30分間または60分間インキュベートし、150μLの停止溶液(アセトニトリルと0.1%ギ酸)と内部標準(正ESIモードのためのブセチン)を、各反応ウェルに加えて、反応を停止させた。次いでプレートを密封し、4℃で15分間、4000rpmで遠心分離した。得られた上清を、試験化合物のLC-MS/MS分析のために新鮮なプレートに移した。ベラパミルを陽性対照として使用して、アッセイ系を検証した。
【0259】
3. LC-MS/MS分析
【0260】
全サンプルを、Shimadzu LC-20AD LCポンプ系に接続したAB Sciex API 4000装置を使用して、LC-MS/MSで分析した。分析サンプルを、Waters Atlantis T3 dC18逆相HPLCカラム(20mm×2.1mm)を流速0.5mL/分で使用して分離した。移動相は、0.1%ギ酸の水溶液(溶媒A)および0.1%ギ酸のアセトニトリル溶液(溶媒B)からなった。
【0261】
4. 計算
【0262】
代謝の程度を、初期濃度と比較した試験化合物の消失に基づき計算した。試験化合物の初期クリアランス速度を、片対数%残存化合物対時間の線形回帰プロットを使用して計算した。次いで、線形回帰プロットの消失速度定数(負の傾斜に等しい)を使用して、次の式を使用して、t1/2および内因性クリアランス(CLint)を計算した:
k=-傾斜
1/2=0.693/k
CLint=k/Cタンパク質
【0263】
ここで、Cタンパク質(mg/mL)は、インキュベーション系のミクロソームタンパク質濃度である。内因性クリアランス決定のこの方法は、試験化合物濃度が、化合物のその代謝酵素に対するミカエリス-メンテン定数よりはるかに低いとの仮説をもたらす。
【0264】
インビボ試験
免疫不全マウスにおける皮下異種移植モデル
雌SCID/Beigeマウス(5~8週齢)をCharles River Laboratoryから得て、HEPA濾過換気ラックのInnovive IVC使い捨てケージで、齧歯類餌および水は自由に摂取で飼育した。50%マトリゲル(Corning, Inc)を添加した100μL無血清中の約5百万細胞を、マウスの右脇腹領域に皮下インプラントした。腫瘍サイズおよび体重を指定日に測定した。腫瘍サイズを電子ノギスで測定し、腫瘍体積を長さ*幅*0.5の積として計算した。マウスを、腫瘍体積が約100~200mmに達したとき、腫瘍サイズにより、処置群に無作為化した。化合物1または2を、予定したスキームおよび用量で経口投与した。媒体を陰性対照として使用した。ロルラチニブを、有効性評価の参照として使用した。腫瘍成長阻害(TGI)を次のとおり計算した:TV>TVであるならば、TGI=100%×(1-(TVt-TV)/(CV-CV));TV<TVであるならば、TGI=100%×(2-TV/TV);ここでTVは処置開始時の処置群の平均腫瘍体積であり、TVは処置終了時の処置群の平均腫瘍体積であり、CVは処置開始時の媒体対照群の平均腫瘍体積であり、CVは処置終了時の媒体対照群の平均腫瘍体積であった。100%より大きいTGIは、腫瘍退行を示す。統計学的分析を、GraphPad Prism 8.4.0を使用して実施し、p<0.05を統計的有意差と見なした。
【0265】
インビボ薬力学的試験のための腫瘍処理および免疫ブロッティング
異種移植腫瘍担持マウスを人道的に塗擦し、腫瘍を摘出し、液体窒素で瞬間冷凍し、-80℃で保存した。凍結腫瘍サンプルを、4℃で1×細胞溶解緩衝液(Cell Signaling Technologies)で処理して、タンパク質を抽出した。SDS負荷サンプルを、4×LDSサンプル緩衝液および10×還元剤(Life Technologies, Inc)をタンパク質ライセートに加えて調製した。腫瘍SDSタンパク質サンプルをSDS-PAGEで処理し、ウサギ抗リン酸化ALK Y1282/1283、ウサギ抗リン酸化ALK Y1604、ウサギ抗ALKおよびマウス抗アクチン抗体(Cell Signaling Technologies)と免疫ブロットした。免疫ブロットからのシグナルを、LI-CORからのC-DiGit Blot Scannerで検出し、シグナル強度をImage Studio Digitソフトウェア(LI-COR)を使用して定量した。
【0266】
マウス薬物動態試験
試験品の媒体溶液調製
【0267】
1Lの媒体溶液(0.5%CMCおよび1.0%Tween 80)を調製するために、10gのTween 80を1Lビン中の985mLの水と混合した。混合物を、Tween 80が完全に溶解するまで撹拌した。撹拌を続けながら、5gのCMCを、きわめてゆっくり溶液に分散させた。撹拌を、全CMCが溶解するまで続け、これには数時間かかるはずである。得られた媒体溶液を4℃で保存した。
【0268】
PK血液サンプル処理および生物分析方法
【0269】
化合物を媒体溶液に懸濁し、マウスに選択用量レベルの化合物の単回用量を経口投与した。血液サンプルを、規定したタイムテーブルに沿ってK2-EDTA含有チューブに集め、続いて穏やかに混合して、抗凝血剤の分散を確実にした。血液サンプルを集め、混合した直後、氷に載せた。次いで、サンプルを4℃で10分間、5,000RPMで遠心分離した。血漿を、予めラベルしたチューブに集め、LC-MS/MSで分析するまで-80℃で保管した。
【0270】
インビトロ結果
ALKおよび変異体ALKに対する酵素キナーゼ活性
化合物を、Reaction Biology Corporationで酵素キナーゼ触媒活性アッセイでALKおよび変異体ALKに対して試験した。結果を表1に示す。化合物1(「Cpd 1」)および化合物2(「Cpd 2」)は各々強力なキナーゼ阻害性活性を、ALKおよび変異体ALKにIC50<10nMで示した。
【表9】

【0271】
抗細胞増殖活性
化合物を、EML4-ALKおよびEML4-ALK G1202Rで操作したBa/F3細胞およびまたTPM3-TRKA融合を有するKM12細胞およびOP2-FGFR1融合を有するKG-1細胞で細胞増殖アッセイで試験した。結果を表2に要約した。
【表10】

【0272】
比較例1および2も、抗細胞増殖活性で評価した。結果を表2-Aに要約する。
【表11】


【表12】

【0273】
変異体ALKで操作したBa/F3細胞の抗細胞増殖
化合物を、EML4-ALK野生型(WT)および変異体ALKで操作したBa/F3細胞で細胞増殖アッセイで試験した。結果を表3および3-Aに要約した。
【表13】
【0274】
EML4-ALK野生型(WT)および変異体ALKで操作したBa/F3細胞における化合物1と既知キナーゼ阻害剤の対照比較を表3-Aに示す。
【表14】

【0275】
溶解度
溶解度をpH7.4で試験し、結果を表4に要約した。
【表15】
【0276】
肝臓ミクロソーム安定性
肝臓ミクロソーム安定性を試験し、結果を表5に要約した。
【表16】

【0277】
インビボ結果
マウスPK
マウスPKを決定し、結果を表6に要約した。
【表17】

【0278】
EML4-ALK G1202R融合を有するBa/F3細胞由来異種移植腫瘍に対する化合物1および2の効果
EML4-ALK G1202R融合を有するBa/F3細胞由来腫瘍を担持するSCID/Beigeマウスを、接種8日後、8マウス/群の7群に無作為化し、それぞれ媒体BID、2mg/kg化合物1 BID、5mg/kg化合物1 BID、10mg/kg化合物1 BID、3mg/kg化合物2 BID、10mg/kg化合物2 BIDおよび5mg/kgロルラチニブBIDで処置した。腫瘍体積対時間データを、図1Aに平均±semで示す。処置7日後、化合物1処置は、それぞれ2mg/kg、5mg/kgおよび10mg/kg BIDの用量で、64%、120%および200%のTGIで腫瘍成長を阻害するかまたは腫瘍退行をもたらした;比較として、ロルラチニブは、5mg/kg BIDで154%のTGIで腫瘍成長を阻害した。化合物1の効果の腫瘍体積に対する統計評価は、混合効果モデル、続いて事後テューキー多重比較検定を使用する、媒体処置群、2mg/kg、5mg/kg、10mg/kg BIDの化合物1処置群およびロルラチニブ処置群を含んだ。EML4-ALK G1202R融合を有するこのモデルに対する化合物1の有効性は10日目までに検出可能となり始め、全3用量レベルで化合物1で処置された群の腫瘍体積は、処置最終日まで媒体処置群より有意に小さい(15日目、化合物1 2mg/kg対媒体でp=0.0007および化合物1 5mg/kgまたは10mg/kg対媒体でp<0.0001)。EML4-ALK G1202R融合を有するこのモデルで、接種後13日、14日、15日の10mg/kg化合物 BID処置群のロルラチニブ処置群より有意に小さい腫瘍体積により示されるとおり、5mg/kgロルラチニブでの処置より、10mg/kg化合物1 BIDでの処置は、より有効であった(13日目および14日目p<0.0001、15日目p=0.0003)。
【0279】
体重対時間データを、図1Bに平均±semで示す。7日間処置後、2mg/kg、5mg/kg、10mg/kgの化合物1 BIDで処置した群で体重減少はなかった。体重に対する化合物1の効果の統計評価は、混合効果モデル、続いて事後テューキー多重比較検定を使用する、媒体処置群、2mg/kg、5mg/kg、10mg/kg BIDの化合物1処置群およびロルラチニブ処置群を含んだ。2mg/kg化合物1 BID処置群の体重は、接種後13日目、14日目、15日目に媒体処置群より有意に高かった(13日目p=0.0012、14日目p=0.0001、15日目p<0.0001)。5mg/kg化合物1 BID処置群の体重は、接種後13日目、14日目、15日目に媒体処置群より有意に高かった(13日目p=0.0392、14日目p=0.0126、15日目p=0.0048)。10mg/kg化合物 BID処置群の体重は、接種後13日目、14日目に媒体処置群より有意に高かった(13日目p=0.0495、14日目p=0.0250)。
【0280】
処置7日後、化合物2処置は、それぞれ3mg/kgおよび10mg/kg BIDの用量で、51%および77%のTGIで腫瘍成長を阻害した;一方ロルラチニブは、5mg/kg BIDで154%のTGIで腫瘍成長を阻害した。化合物2の効果の腫瘍体積に対する統計評価は、混合効果モデル、続いて事後テューキー多重比較検定を使用する、媒体処置群、3mg/kgおよび10mg/kg BIDでの化合物2処置群およびロルラチニブ処置群を含んだ。腫瘍成長阻害に対する化合物2の効果は、3mg/kg用量レベルで13日目(p=0.0019対媒体)および10mg/kg用量レベルで10日目(p=0.0396対媒体)までに検出可能となり始めた。15日目、処置最終日、化合物2処置群の腫瘍体積は、媒体処置群より有意に小さかった(化合物2 3mg/kg対媒体でp=0.0272;化合物2 10mg/kg対媒体でp=0.0052)。
【0281】
7日間処置後、3mg/kgおよび10mg/kg BIDの化合物2で処置した群で体重減少はなかった。化合物2の効果の体重に対する統計評価は、混合効果モデル、続いて事後テューキー多重比較検定を使用する、媒体処置群、3mg/kgおよび10mg/kg BIDでの化合物2処置群およびロルラチニブ処置群を含んだ。3mg/kg化合物2 BID処置群の体重は、接種後13日目、14日目、15日目に媒体処置群より有意に高かった(13日目p=0.0282、14日目p=0.0229、15日目p=0.0043)。10mg/kg化合物2 BID処置群の体重は、接種後13日目、14日目、15日目に媒体処置群より有意に高かった(13日目p=0.0017、14日目p=0.0009;15日目p=0.0003)。
【0282】
EML4-ALKL1198F/G1202R融合を有するBa/F3細胞由来異種移植腫瘍に対する化合物1の効果
EML4-ALKL1198F/G1202R融合を有するBa/F3細胞由来腫瘍を担持するSCID/Beigeマウスを、接種後7日目に10マウス/群の5群に無作為化し、それぞれ媒体BID、2mg/kg化合物1 BID、5mg/kg化合物1 BID、10mg/kg化合物1 BIDおよび5mg/kgロルラチニブBIDで処置した。腫瘍体積対時間データを、図2Aに平均±semで示す。処置7日後、化合物1処置は、2mg/kg、5mg/kgおよび10mg/kg BIDの全3用量レベルで200%のTGIの完全腫瘍退行をもたらした。化合物1で処置した全3群の腫瘍は、接種後14日目の試験終了時完全退行を示した。EML4-ALKL1198F/G1202R融合を有するこのモデルにおける化合物1の阻害性活性は、7日間処置後5mg/kg BIDで31%のTGIと腫瘍成長の阻害がはるかに低い程度であったロルラチニブよりはるかに良好であった。腫瘍体積に対する化合物1の効果の統計評価を、二元配置反復測定ANOVA、続いて事後テューキー多重比較検定を使用して実施した。化合物1の全3用量レベルでの処置群の腫瘍体積は、接種後10日目、12日目、13日目、14日目、媒体処置群より有意に小さかった(10日目、12日目、13日目または14日目、化合物1 2mg/kg、5mg/kgまたは10mg/kg対媒体でp<0.0001)。さらに、化合物1の全3用量レベルでの処置群の腫瘍体積は、接種後10日目、12日目、13日目、14日目、ロルラチニブ処置群より有意に小さかった(10日目、12日目、13日目または14日目、化合物1 2mg/kg、5mg/kgまたは10mg/kg対ロルラチニブでp<0.0001)。
【0283】
体重対時間データを、図2Bに平均±semで示す。7日間処置後、2mg/kg、5mg/kg、10mg/kgの化合物1 BIDで処置した群で体重減少はなかった。体重に対する化合物1の効果の統計評価を、二元配置反復測定ANOVA、続いて事後テューキー多重比較検定を使用して実施した。2mg/kg化合物1 BID処置群の体重は、接種後10日目、12日目、13日目、14日目に媒体処置群より有意に高かった(10日目p=0.0478、12日目p=0.0044、13日目p=0.0008、14日目p=0.0013)。5mg/kg化合物1 BID処置群の体重は、接種後12、13日目、14日目に媒体処置群より有意に高かった(12日目p=0.0308、13日目p=0.0056、14日目p=0.0050)。10mg/kg化合物 BID処置群の体重は、接種後10日目、12日目、13日目に媒体処置群より有意に高かった(10日目p=0.0390、12日目p=0.0048、13日目p=0.0119)。
【0284】
EML4-ALKL1196M/G1202R融合を有するBa/F3細胞由来異種移植腫瘍に対する化合物1の効果
EML4-ALKL1196M/G1202R融合を有するBa/F3細胞由来腫瘍を担持するSCID/Beigeマウスを、接種後7日目に8マウス/群の6群に無作為化し、それぞれ媒体BID、0.6mg/kg化合物1 BID、2mg/kg化合物1 BID、5mg/kg化合物1 BID、10mg/kg化合物1 BIDおよび5mg/kgロルラチニブBIDで処置した。腫瘍体積対時間データを、図3Aに平均±semで示す。処置7日後、化合物1処置は、それぞれ0.6mg/kg、2mg/kg、5mg/kgおよび10mg/kg BIDの用量レベルで19%、44%、83%および200%のTGIをもたらした;一方ロルラチニブは、7日間処置後、5mg/kg BIDで18%のTGIで腫瘍成長を阻害した。腫瘍体積に対する化合物1の効果の統計評価を、混合効果モデル、続いて事後テューキー多重比較検定を使用して実施した。0.6mg/kg化合物1 BIDまたは5mg/kgロルラチニブ BID処置群の腫瘍成長は、7日間処置後媒体処置群と有意には異ならなかった(14日目媒体対ロルラチニブまたは化合物1 0.6mg/kgでp>0.05)。2mg/kg、5mg/kgおよび10mg/kg BIDの化合物1は、EML4-ALKL1196M/G1202R融合を有するこのモデルで有効性を示した。7日間処置後、化合物1の2mg/kg、5mg/kgまたは10mg/kg BID処置群の腫瘍体積は、媒体処置群より有意に小さかった(14日目、化合物1 2mg/kg対媒体でp=0.0013、化合物1 5mg/kg対媒体でp=0.0001、化合物1 10mg/kg対媒体でp<0.0001)。さらに、7日間処置後、化合物1の2mg/kg、5mg/kgまたは10mg/kg BID処置群における腫瘍体積は、ロルラチニブ処置群より有意に小さかった(14日目、化合物1 2mg/kg対ロルラチニブでp=0.0070、化合物1 5mg/kg対ロルラチニブでp=0.0018、化合物1 10mg/kg対ロルラチニブでp<0.0001)。
【0285】
体重対時間データを、図3Bに平均±semで示す。7日間処置後、2mg/kg、5mg/kg、10mg/kgの化合物1 BIDで処置した群で体重減少はなかった。体重に対する化合物1の効果の統計評価を、混合効果モデル、続いて事後テューキー多重比較検定を使用して実施した。0.6mg/kg化合物1 BID処置群の体重は、接種後12、13日目、14日目に媒体処置群より有意に高かった(12日目p=0.0005、13日目p=0.0163、14日目p=0.0011)。2mg/kg化合物1 BID処置群の体重は、接種後14日目、媒体処置群より有意に高かった(14日目p=0.0391)。5mg/kg化合物1 BID処置群の体重は、接種後10日目、12日目、13日目、14日目に媒体処置群より有意に高かった(10日目p=0.0413、12日目p=0.0018、13日目p<0.0001、14日目p=0.0011)。10mg/kg化合物 BID処置群の体重は、媒体処置群と有意には異ならなかった(10日目、12日目、13日目および14日目、p>0.05)。
【0286】
EML4-ALKL1196M/G1202R融合を有するBa/F3細胞由来異種移植腫瘍におけるALK融合タンパク質のリン酸化に対する化合物1の効果
化合物1の薬力学的効果を、EML4-ALKL1196M/G1202R融合を有するBa/F3細胞由来異種移植腫瘍で、10mg/kg化合物単回経口投与後評価した。投与2時間後、腫瘍サンプルを、媒体または化合物1処置マウスから、各処置3マウスで取得した。サンプルを処理し、免疫ブロッティングし、結果を図4に示す。Y1282/1283およびY1604でのALK融合のリン酸化レベルは、媒体処置マウスと比較して、化合物1処置マウスからのサンプルでいずれも減少していた。ALK融合発現のレベルも、媒体処置マウスと比較して、化合物1処置マウスからのサンプルで減少していた。対照として、アクチンの発現レベルは化合物1処置により影響されなかった。
【0287】
図5は、0.6mg/kg、2mg/kgまたは5mg/kg化合物1投与後、2時間または12時間後のインビボALKリン酸化レベルを示す。各用量で、リン酸化レベルは、2時間で対照と比較して有意に減少したが、12時間では最高用量でのみ減少が示された。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】