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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-03
(54)【発明の名称】電磁グリッパ
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20230127BHJP
【FI】
B25J15/08 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533155
(86)(22)【出願日】2020-12-01
(85)【翻訳文提出日】2022-07-14
(86)【国際出願番号】 EP2020084069
(87)【国際公開番号】W WO2021110653
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】19213371.8
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520299072
【氏名又は名称】コンプ-アクト・エスエイ
【氏名又は名称原語表記】KOMP-ACT SA
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】フレミング・ロス
(72)【発明者】
【氏名】ジュファー・マルセル
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707ET08
3C707EW07
(57)【要約】
ステータ(2)と、リニアベアリング(8)を介してステータ(2)に移動可能に結合された一対の可動グリッパと、を含むグリッパ機構(1)であって、ステータは、ハウジング(4)と、ハウジング(4)内に装着された永久磁石(3)と、を含み、可動グリッパ(19)は、支持部分(9)と、支持部分(9)に装着されたコイル(11)と、支持部分(9)に結合されたグリッパフィンガ(10)と、を含み、コイル(11)は、ステータに対する可動グリッパの変位を作動させるために、永久磁石(3)の磁場と反対の磁場を生成するように構成されている、グリッパ機構。グリッパ機構は、ステータ(2)および可動グリッパ(19)の一方に装着された少なくとも第1の永久磁石(18)と、ステータ(2)および可動グリッパ(19)の他方に装着された相補的軟磁性材料部分または磁石と、を含み、可動グリッパを可動グリッパ(19)の閉鎖位置または開放位置の少なくとも一方に磁気でロックするように構成された、少なくとも1つの磁気ロック機構(7)をさらに含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ(2)と、リニアベアリング(8)を介して前記ステータ(2)に移動可能に結合された一対の可動グリッパと、を含むグリッパ機構(1)であって、前記ステータは、ハウジング(4)と、前記ハウジング(4)内に装着された永久磁石(3)と、を含み、各可動グリッパ(19)は、支持部分(9)と、前記支持部分(9)に装着されたコイル(11)と、前記支持部分(9)に結合されたグリッパフィンガ(10)と、を含み、前記コイル(11)は、前記ステータに対する前記可動グリッパの変位を作動させるために、前記永久磁石(3)の磁場と反対の磁場を生成するように構成され、前記グリッパ機構は、前記ステータ(2)および前記可動グリッパ(19)それぞれの一方に装着された第1の永久磁石(18)と、前記ステータ(2)および前記可動グリッパ(19)それぞれの他方に装着された相補的軟磁性材料部分または磁石と、を含み、前記可動グリッパを前記可動グリッパ(19)の閉鎖位置または開放位置の少なくとも一方に磁気でロックするように構成された、少なくとも1つの磁気ロック機構(7)をさらに含む、グリッパ機構。
【請求項2】
前記磁気ロック機構(7)は、前記可動グリッパが開放位置および閉鎖位置の両方で磁力によって保持されるように配置された第2の永久磁石(18)を含む、請求項1に記載のグリッパ機構。
【請求項3】
前記可動グリッパおよび前記ステータは、前記開放位置および/または前記閉鎖位置において前記可動グリッパと前記ステータとの間の当接の位置にスペーサ要素を含み、前記スペーサ要素は、前記永久磁石と前記相補的軟磁性材料部分または磁石との間の磁場ギャップを維持するように構成されている、請求項1に記載のグリッパ機構。
【請求項4】
前記磁気ロック機構の前記第1の永久磁石(18)は、前記可動グリッパの並進運動方向(D)において前記可動グリッパ(19)間の実質的に中央に位置付けられている、請求項1に記載のグリッパ機構。
【請求項5】
前記可動グリッパ(19)は、前記ステータハウジング(4、4a、4b)に装着された前記永久磁石と相補的な強磁性部分(15a、15b)を含む、請求項4に記載のグリッパ機構。
【請求項6】
前記ステータ(2)は、ハウジング外側部分(4a)を含み、前記第2の永久磁石(18)の少なくとも1つは、前記ステータ(2)の前記ハウジング外側部分(4a)および前記可動グリッパの端部の一方に装着され、少なくとも1つの前記相補的軟磁性材料部分または磁石は、前記ハウジング外側部分(4a)および前記可動グリッパの前記端部の他方に装着されている、請求項1に記載のグリッパ機構。
【請求項7】
前記永久磁石(3)は、前記可動グリッパの変位方向に平行な平面で見た前記永久磁石の長さまたは高さよりも実質的に小さい厚さ(W)を有する実質的に平坦な形状を有し、前記厚さは、前記変位方向(D)に平行な前記平面に直交する方向(T)に測定されたものである、請求項1に記載のグリッパ機構。
【請求項8】
前記永久磁石(3)は、実質的に平坦な矩形の形状を有する、請求項7に記載のグリッパ機構。
【請求項9】
前記ステータ(2)は、前記ハウジングの外側対向側面に装着された軟磁性材料の電機子外側部分(5a)を含む磁気回路電機子(5)を含み、前記電機子外側部分と前記永久磁石(3)との間にエアギャップが形成され、その中で前記可動グリッパの前記コイル(11)が位置付けられて変位する、請求項1に記載のグリッパ機構。
【請求項10】
前記電機子外側部分は、実質的に同じサイズ以上の前記永久磁石に面する表面積を有する、請求項9に記載のグリッパ機構。
【請求項11】
前記電機子外側部分は、実質的に平坦で薄い部分である、請求項10に記載のグリッパ機構。
【請求項12】
前記永久磁石は、前記一対の可動グリッパ(19)の前記コイル(11)間の中央に位置付けられ、前記永久磁石の極N-Sが、前記可動グリッパの並進運動方向(D)と実質的に平行な方向に配置されている、請求項1に記載のグリッパ機構。
【請求項13】
各可動グリッパの前記コイル(11)は、前記可動グリッパの並進運動方向における長さ(L1)を有し、これは、前記永久磁石(3)の前記可動グリッパの並進運動方向における長さよりも短く、好ましくは、前記可動グリッパの並進運動方向における前記長さ(L1)は、前記永久磁石(3)の前記可動グリッパの並進運動方向における前記長さの70%未満、より好ましくは60%未満である、請求項1に記載のグリッパ機構。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
本発明は、構成要素を把持および解放するために機械に装着されるグリッパ機構に関する。グリッパは、特に、例えば構成要素の組み立てのために、物体を選び出し配置するためのロボットアームまたは他の移動プラットフォームに装着され得る。
【0002】
グリッパ機構は、構成要素の組み立てのための自動化された製造プロセスにおいて広く使用されており、典型的には、構成要素を選び出し配置するために、移動ロボットアームまたは移動テーブルもしくはスライド上に装着される。空気圧式および電磁式の両方のグリッパ機構が知られている。多くの用途において、グリッパを搬送する可動機械要素の高い加速および減速を可能にするために、コンパクトで軽量なグリッパ機構を有することが望ましい。グリッパ機構の信頼性と耐久性は、製造プロセスにおける機械のダウンタイムのコストが高いという観点からも重要である。設置およびメンテナンスの容易さも、コスト削減を確実にする重要な要素である。グリッパ機構の性能、特に作動速度も重要である。また、エネルギー消費量の削減もますます求められている。
【0003】
多くのグリッパ機構は空気圧作動に基づいているが、これらは一般に、特に製造プロセスの変更が必要である、例えば種々の部品への調整が必要とされる場合には、柔軟性を欠いている。この点に関して、電磁的に作動するグリッパシステムは、一般に、より便利であるが、従来の電磁グリッパ機構は、所望の要件、特に、低重量、コンパクトさ、信頼性、制御およびメンテナンスの容易さ、ならびに低いエネルギー消費量の組み合わせを満たさない。多くの電磁グリッパシステムにおいて、欠点の1つは、動作中のグリッパモータの加熱と、高性能適用のための冷却システムの必要性である。
【0004】
前述したことを考慮して、本発明の目的は、信頼性が高く、高い作動速度および低いエネルギー消費量を有する、グリッパ機構を提供することである。
【0005】
軽量でコンパクトなグリッパ機構を提供することが有利である。
【0006】
制御が容易なグリッパ機構を提供することが有利である。
【0007】
設置およびメンテナンスが容易なグリッパ機構を提供することが有利である。
【0008】
本発明の目的は、請求項1に記載のグリッパ機構を提供することによって達成されている。従属クレームは、本発明の種々の有利な特徴を記載する。
【0009】
本明細書には、ステータと、リニアベアリングを介してステータに移動可能に結合された一対の可動グリッパと、を含むグリッパ機構が開示される。ステータは、ハウジングと、ハウジング内に装着された永久磁石と、を含む。可動グリッパは、支持部分と、支持部分に装着されたコイルと、支持部分に結合されたグリッパフィンガと、を含む。コイルは、ステータに対する可動グリッパの変位を作動させるために、永久磁石の磁場と反対の磁場を生成するように構成される。グリッパ機構は、ステータおよび可動グリッパの一方に装着された少なくとも第1の永久磁石と、ステータおよび可動グリッパの他方に装着された相補的軟磁性材料部分または磁石と、を含み、可動グリッパを可動グリッパの閉鎖位置または開放位置の少なくとも一方に磁気でロックするように構成された、少なくとも1つの磁気ロック機構をさらに含む。
【0010】
有利な実施形態では、磁気ロック機構は、可動グリッパが開放位置および閉鎖位置の両方で磁力によって保持されるように配置された少なくとも第2の永久磁石を含む。
【0011】
有利な実施形態では、可動グリッパおよびステータは、開放位置および/または閉鎖位置において可動グリッパとステータとの間の当接の位置にスペーサ要素を含み、このスペーサ要素は、前記永久磁石と前記相補的軟磁性材料部分または磁石との間の磁場ギャップを維持するように構成される。
【0012】
有利な実施形態では、磁気ロック機構の少なくとも1つの永久磁石は、可動グリッパの並進運動方向において可動グリッパ間の実質的に中央に位置付けられる。
【0013】
有利な実施形態では、可動グリッパは、ステータハウジングに装着された永久磁石に相補的な強磁性部分を含む。
【0014】
有利な実施形態では、少なくとも1つの前記永久磁石は、ステータのハウジング外側部分および可動グリッパの端部の一方に装着され、少なくとも1つの前記相補的軟磁性材料部分または磁石は、ハウジング外側部分および可動グリッパの端部の他方に装着される。
【0015】
有利な実施形態では、永久磁石は、可動グリッパの変位方向に平行な平面で見た永久磁石の長さまたは高さよりも実質的に小さい厚さを有する実質的に平坦な形状を有し、この厚さは、変位方向に平行な前記平面に直交する方向に測定される。
【0016】
有利な実施形態では、永久磁石は、実質的に平坦で実質的に矩形の形状を有する。
【0017】
有利な実施形態では、ステータは、ハウジングの外側対向側面に装着された軟磁性材料の電機子外側部分を含む磁気回路電機子を含み、電機子外側部分と永久磁石との間にエアギャップが形成され、その中で可動グリッパのコイルが位置付けられて変位する。
【0018】
有利な実施形態では、電機子外側部分は、実質的に同じサイズ以上の永久磁石に面する表面積を有する。
【0019】
有利な実施形態では、電機子外側部分は、実質的に平坦で薄い部分である。
【0020】
有利な実施形態では、永久磁石は、一対の可動グリッパのコイル間の中央に位置付けられ、永久磁石の極N-Sは、可動グリッパの並進運動方向と実質的に平行な方向に配置される。
【0021】
有利な実施形態では、各可動グリッパのコイルは、可動グリッパの並進運動方向における長さを有し、これは、永久磁石の可動グリッパの並進運動方向における長さよりも短く、好ましくは70%未満、より好ましくは60%未満である。
【0022】
本発明のさらなる目的および有利な特徴は、特許請求の範囲、および添付図面に関連する本発明の実施形態の以下の詳細な説明から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1a】本発明の一実施形態によるグリッパ機構の斜視図である。
図1b】本発明の一実施形態によるグリッパ機構の斜視断面図である。
図2】本発明の一実施形態によるグリッパ機構の斜視分解図である。
図3a】開放位置で示された、本発明の一実施形態によるグリッパ機構の斜視部分分解図である。
図3b】閉鎖位置で示された、本発明の一実施形態によるグリッパ機構の斜視部分分解図である。
図4a】外側ハウジング部分が分解された本発明の一実施形態によるグリッパ機構の斜視図である。
図4b】外側ハウジング部分および片側の可動グリッパを除去した本発明の一実施形態によるグリッパ機構の斜視図である。
図4c】本発明の一実施形態によるグリッパ機構の可動グリッパの斜視図である。
図5a】本発明の一実施形態によるグリッパ機構のロック機構の簡略概略図である。
図5b】本発明の一実施形態によるグリッパ機構のロック機構の簡略概略図である。
図6】本発明の一実施形態によるグリッパ機構のロック機構の斜視図である。
【0024】
図面を参照すると、本発明の一実施形態に係るグリッパ機構1は、ステータ2と、ベアリング8を介してステータ2に移動可能に装着された一対の可動グリッパ19と、を含む。ベアリング8は、可動グリッパ19をステータ2に対して並進運動Dで案内するように配置されている。有利な実施形態では、ベアリング8は、線形のボールまたはローラーベアリングの形態であってよい。しかしながら、他の実施形態では、ベアリングは、低摩擦材料を含むスライドベアリング、または潤滑スライドベアリングであってもよい。「ベアリング」という用語は、把持力が高いほど、典型的には、グリッパ機構を大きくすべきであるため、グリッパ機構のサイズおよび要求される把持力に応じて、互いに近接して、または離間した関係で、配置され得る、1つ以上のベアリングを意味することが意図されている。
【0025】
ステータ2は、一対の可動グリッパ19の間に配置された永久磁石3を含む。永久磁石3は、両方のグリッパに共通のステータ構成要素を形成する。可動グリッパ19は、開放位置と閉鎖位置との間でそれぞれ反対の方向に直線的に移動する。
【0026】
永久磁石は、有利には、本質的に、平坦なプレート、例えば矩形のプレートの形態であってよく、プレート形状の長さL1または高さH1よりも実質的に小さい厚さWを有し、厚さWは、ステータ2に対する可動グリッパ19の並進運動または移動方向Dに直交する方向Tに見たものである。永久磁石3は、可動グリッパの移動方向Dに垂直な磁束を発生する一対の極N-Sを有する。このように、永久磁石3は、可動グリッパ19間の実質的に中央に配置され、永久磁石3の主平面は、可動グリッパの移動方向Dに実質的に平行である。
【0027】
ステータ2は、永久磁石3を支持する中央部分4bと、この中央部分4bの両側に位置付けられた可動グリッパ19を囲む外側部分4aと、を含むハウジング4を含む。中央部分4bの支持フレーム部分16は、永久磁石3を機械的に支持する。ハウジング4は、ベアリング8の静止部分8aを支持するためのベアリング部分17をさらに含む。ハウジング中央部分4bおよび外側部分4aは、非磁性材料で作られ得る。
【0028】
ステータ2は、強磁性または軟磁性材料で作られた磁気回路電機子5をさらに含み、これは、可動グリッパ19の横方向外側でハウジング外側部分4aに装着された少なくとも一対の電機子横方向外側部分5aを有し、電機子外側部分5は、可動グリッパ19の支持部分9を通過する磁力線を有する磁気回路を、永久磁石3と共に形成する。電機子外側部分5aは、永久磁石と実質的に同じか、またはそれよりも大きなサイズを有し得る。電機子外側部分5aは、永久磁石3に面し、可動グリッパ19の活動的部分が変位するエアギャップをそれらの間に形成する。
【0029】
可動グリッパ19はコイル11を含み、これは、可動グリッパ19を移動させるためにグリッパ機構1の作動中にコイルを通る電流を駆動する電気回路(図示せず)に接続されるように構成される。コイル11は、可動グリッパの支持部分9、例えば、特に支持部分9のコイル装着キャビティ13に装着される。支持部分9は、永久磁石3と磁気回路電機子5との間に形成されたエアギャップ内を並進運動可能である、実質的に平坦なプレート形状の構成要素を形成することができ、支持部分9内のコイルは、永久磁石の高さH1に匹敵するか、またはほぼ同等とすることができる、高さHを有する。(並進運動方向Dに見た)支持部分9の長さLは、永久磁石3の長さL1よりも短いが、永久磁石3の長さの半分よりも長い。支持部分の長さLは、永久磁石3の長さから可動グリッパの最大変位の振幅を差し引いた長さに対応することが好ましい。これにより、コイル11が、常に永久磁石3と磁気回路電機子5との間に形成されるエアギャップ内にあり、常に永久磁石3とオーバーラップして最大の磁力相互作用を確保することが確実となる。
【0030】
可動グリッパは、支持部分9と一体的に形成されるか、または別々に形成されて支持部分9に組み立てられる、グリッパフィンガ10、またはグリッパフィンガ用の固定具(以下では概して「グリッパフィンガ」と呼ぶ)を、さらに含む。グリッパフィンガは、特にハウジング4の下端部の下方に突出していてもよいが、特定の用途では、グリッパによって保持される構成要素へのアクセスを可能にするオリフィスを有するハウジングまたは保護ケージ内にグリッパフィンガを有することも可能である。支持部分9は、ベアリング8の可動部分8bを支持するためのベアリング部分14をさらに含む。
【0031】
グリッパフィンガ10は、図示した実施形態では実質的に矩形のブロックとして概略的に示されているが、実際の適用におけるグリッパフィンガの形状は、選び出される構成要素の形状に適合されるものとする。有利な実施形態では、グリッパフィンガまたはグリッパフィンガの一部は、取り扱う物体に応じて形状または材料を変更するために、取り外し可能、および別のグリッパフィンガまたは一部によって交換可能である。これにより、例えば、硬さ、摩擦および他の表面特性に関して、関連する適用のための様々な表面材料を改変することも可能である。図示された実施形態では、グリッパフィンガは、互いに対して直接接触しているものとして閉鎖位置で示されているが、適用に応じて、「閉鎖」位置にあるグリッパフィンガは、ギャップによって分離されてもよいことに留意されたい。多くの適用において、把持機能は、グリッパフィンガを互いに向かって移動させて、それらの間に、取り扱う物体をクランプすることによって達成される。しかしながら、本発明の範囲内では、グリッパフィンガは、グリッパフィンガを、例えば、物体のオリフィスまたはキャビティ内に挿入することで、離間させることによって、物体を把持することが可能である。
【0032】
可動グリッパ19を開放位置と閉鎖位置との間で変位させるために、コイル11に電流が注入され、グリッパが作動時に存在する位置でエアギャップ内の磁場と反対である磁場を生成する。グリッパが開放位置にあるときにコイル11を横切る磁場は、可動グリッパ支持部分9の位置およびエアギャップに対する実質的にプレート形状の永久磁石3の極N-Sの配置により、グリッパが閉鎖位置にあるときにコイルを横切る磁場と概ね反対である。グリッパを開放位置から閉鎖位置に移動させ、閉鎖位置から開放位置に戻すために、コイル内の電流の方向を反転させる。
【0033】
可動グリッパ19は、ラックアンドピニオンのような機械システムによって、または可動グリッパが等しい振幅および速度のそれぞれ反対の方向に移動することを確実にするように構成されたリンクアームによって、相互接続され得る。
【0034】
しかしながら、変形例では、可動グリッパは、それらの間に機械的リンク機構を設けることなく、独立して制御され得る。
【0035】
本発明の実施形態によるグリッパ機構は、可動グリッパ19を、物体を取り扱うための把持位置(例えば閉鎖位置)に維持するように配置された少なくとも1つの磁気ロック7、7a、7bをさらに含む。有利な実施形態では、グリッパ機構は、可動グリッパが開放位置と閉鎖位置の両方で磁力によって受動的に保持されるように、少なくとも第2の磁気ロック7a、7bを含み、それによって、開放位置から閉鎖位置およびその逆の、可動グリッパの変位は、生成される磁場の方向に応じて一方向または反対方向においてコイル11に電流を注入することによって行われる。
【0036】
開放および/または閉鎖位置では、コイル内の電流は、スイッチが切られるか、または作動中よりも低い振幅に設定される。
【0037】
これにより、有利には、低いエネルギー消費量を有し、特に少量の熱損失を生じる、グリッパ機構が提供され、その結果、特にコンパクトで軽量なグリッパ機構を提供することができる。
【0038】
高い把持力を必要とする取り扱い機能においては、グリッパ要素に作用する磁気ロックの受動的な磁力は、可動グリッパ19のコイルに電流を注入することによって提供される電磁力によって補足することができる。
【0039】
磁気ロックは、有利には、ハウジング4または可動グリッパ19に装着された永久磁石18a、18bを含むことができ、それによって、可動グリッパまたはハウジングの他方は、強磁性もしくは軟磁性材料15a、15bを、または変形例では永久磁石を、含む。
【0040】
第1の実施形態では、磁気ロック7aは、例えば図2および図6に示すように、ハウジング4の中央部分4bに装着された永久磁石18と、可動グリッパ支持部分19に装着された関連する強磁性材料15aと、を含む。
【0041】
第2の実施形態では、磁気ロック7bは、図2図3a、図3bおよび図4a~図4cに示すように、永久磁石18と、ハウジングの外側部分4aまたは可動グリッパ支持部分9の外側エッジに装着された関連する強磁性材料15bと、を含む。変形例では、磁気ロック機構は、ロック機構によって生成される磁力に応じて、ハウジングの外側部分4aおよび内側部分4bの両方に配置される磁気ロックが存在するように、前述したものの組み合わせを含むことができる。
【0042】
有利な実施形態では、ステータおよび可動グリッパは、スペーサ要素21を含み、これは、完全ロック位置および/または完全開放位置で、ギャップが、永久磁石18と磁気ロック機構7の軟磁性材料15a、15bとの間に形成されることを確実にする。ギャップは、図5aに概略的に示すように、エアギャップまたは非磁性材料のインサート21によって形成することができる。変形例では、スペーサ要素は、例えば図6に示すように、永久磁石18に接触する磁性材料で形成された突起21であってもよく、これにより、減少した接触表面積が、グリッパと永久磁石との間の磁力を減少させる。
【0043】
スペーサ要素21は、有利には、克服するのに高い電磁力を必要とするであろう、過度に高いピーク磁気ロック力を回避することを可能にする。
【0044】
前述したように、磁気ロック機能は、可動グリッパを互いに閉鎖した位置ではなく開放(離間)位置に受動的に維持するように構成することができる。変形例では、図5a、図5bに概略的に示すように、可動グリッパを開放位置および閉鎖位置の両方で受動的に維持するように磁気ロック機能を構成することができる。
【0045】
図2図4cに示される実施形態では、ハウジング外側部分4aまたは可動グリッパ19の外側端部に装着された磁気ロック7、7a、7bを形成する永久磁石18および関連する強磁性要素15bは、可動グリッパが閉鎖位置にあるときに、磁気要素18、15bが互いに、直接またはスペーサ要素21を介して接触するように構成される。
【0046】
完全開放位置と完全閉鎖位置の両方で磁気ロック機能を有する一実施形態では、可動グリッパ19の変位移動は、可動グリッパが閉鎖位置にあるときに、磁気要素18、15bがハウジングの一端部で互いに接触し、可動グリッパが開放位置にあるときに、磁気要素18、15bが、ハウジングの反対端部で互いに、直接またはスペーサ要素21を介して接触するように、構成される。
【0047】
一実施形態では、永久磁石18は、外側ハウジング部分4aの端壁に装着された強磁性キャップまたはU字形強磁性要素22に装着される。U字形強磁性要素の役割は、ロック要素の周囲で、より連続的な磁力を増加させ、生成することである。
【0048】
〔参照符号のリスト〕
グリッパ機構1
ステータ2
永久磁石3
磁気回路電機子5
電機子横方向(外側)部分5a
ハウジング4
外側部分4a
中央(内側)部分4b
支持フレーム部分16
ベアリング部分17
ベアリング8
固定部分8a
可動部分8b
可動グリッパ19
支持部分9
コイル装着キャビティ13
コイル11
グリッパフィンガ10
グリッパインサート(交換可能、図示せず)
ベアリング部分14
磁気ロック7
中央磁気ロック7a
外側磁気ロック7b
永久磁石18
相補的磁気ロック部分15a、15b(強磁性/軟磁性材料または永久磁石)
スペーサ要素21
強磁性電機子22
【0049】
〔実施の態様〕
(1) ステータ(2)と、リニアベアリング(8)を介して前記ステータ(2)に移動可能に結合された一対の可動グリッパと、を含むグリッパ機構(1)であって、前記ステータは、ハウジング(4)と、前記ハウジング(4)内に装着された永久磁石(3)と、を含み、各可動グリッパ(19)は、支持部分(9)と、前記支持部分(9)に装着されたコイル(11)と、前記支持部分(9)に結合されたグリッパフィンガ(10)と、を含み、前記コイル(11)は、前記ステータに対する前記可動グリッパの変位を作動させるために、前記永久磁石(3)の磁場と反対の磁場を生成するように構成され、前記グリッパ機構は、前記ステータ(2)および前記可動グリッパ(19)それぞれの一方に装着された第1の永久磁石(18)と、前記ステータ(2)および前記可動グリッパ(19)それぞれの他方に装着された相補的軟磁性材料部分または磁石と、を含み、前記可動グリッパを前記可動グリッパ(19)の閉鎖位置または開放位置の少なくとも一方に磁気でロックするように構成された、少なくとも1つの磁気ロック機構(7)をさらに含む、グリッパ機構。
(2) 前記磁気ロック機構(7)は、前記可動グリッパが開放位置および閉鎖位置の両方で磁力によって保持されるように配置された第2の永久磁石(18)を含む、実施態様1に記載のグリッパ機構。
(3) 前記可動グリッパおよび前記ステータは、前記開放位置および/または前記閉鎖位置において前記可動グリッパと前記ステータとの間の当接の位置にスペーサ要素を含み、前記スペーサ要素は、前記永久磁石と前記相補的軟磁性材料部分または磁石との間の磁場ギャップを維持するように構成されている、実施態様1に記載のグリッパ機構。
(4) 前記磁気ロック機構の前記第1の永久磁石(18)は、前記可動グリッパの並進運動方向(D)において前記可動グリッパ(19)間の実質的に中央に位置付けられている、実施態様1に記載のグリッパ機構。
(5) 前記可動グリッパ(19)は、前記ステータハウジング(4、4a、4b)に装着された前記永久磁石と相補的な強磁性部分(15a、15b)を含む、実施態様4に記載のグリッパ機構。
【0050】
(6) 前記ステータ(2)は、ハウジング外側部分(4a)を含み、前記第2の永久磁石(18)の少なくとも1つは、前記ステータ(2)の前記ハウジング外側部分(4a)および前記可動グリッパの端部の一方に装着され、少なくとも1つの前記相補的軟磁性材料部分または磁石は、前記ハウジング外側部分(4a)および前記可動グリッパの前記端部の他方に装着されている、実施態様1に記載のグリッパ機構。
(7) 前記永久磁石(3)は、前記可動グリッパの変位方向に平行な平面で見た前記永久磁石の長さまたは高さよりも実質的に小さい厚さ(W)を有する実質的に平坦な形状を有し、前記厚さは、前記変位方向(D)に平行な前記平面に直交する方向(T)に測定されたものである、実施態様1に記載のグリッパ機構。
(8) 前記永久磁石(3)は、実質的に平坦な矩形の形状を有する、実施態様7に記載のグリッパ機構。
(9) 前記ステータ(2)は、前記ハウジングの外側対向側面に装着された軟磁性材料の電機子外側部分(5a)を含む磁気回路電機子(5)を含み、前記電機子外側部分と前記永久磁石(3)との間にエアギャップが形成され、その中で前記可動グリッパの前記コイル(11)が位置付けられて変位する、実施態様1に記載のグリッパ機構。
(10) 前記電機子外側部分は、実質的に同じサイズ以上の前記永久磁石に面する表面積を有する、実施態様9に記載のグリッパ機構。
【0051】
(11) 前記電機子外側部分は、実質的に平坦で薄い部分である、実施態様10に記載のグリッパ機構。
(12) 前記永久磁石は、前記一対の可動グリッパ(19)の前記コイル(11)間の中央に位置付けられ、前記永久磁石の極N-Sが、前記可動グリッパの並進運動方向(D)と実質的に平行な方向に配置されている、実施態様1に記載のグリッパ機構。
(13) 各可動グリッパの前記コイル(11)は、前記可動グリッパの並進運動方向における長さ(L1)を有し、これは、前記永久磁石(3)の前記可動グリッパの並進運動方向における長さよりも短く、好ましくは、前記可動グリッパの並進運動方向における前記長さ(L1)は、前記永久磁石(3)の前記可動グリッパの並進運動方向における前記長さの70%未満、より好ましくは60%未満である、実施態様1に記載のグリッパ機構。
図1a
図1b
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図6
【国際調査報告】