(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-03
(54)【発明の名称】アシル化された活性薬剤並びに代謝異常及び非アルコール性脂肪性肝疾患の治療のためのそれらの使用の方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/222 20060101AFI20230127BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230127BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20230127BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230127BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20230127BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20230127BHJP
【FI】
A61K31/222
A61P1/16
A61P3/04
A61P3/10
A61P3/06
A23L33/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533470
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(85)【翻訳文提出日】2022-07-28
(86)【国際出願番号】 US2020063281
(87)【国際公開番号】W WO2021113620
(87)【国際公開日】2021-06-10
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519397987
【氏名又は名称】フラッグシップ パイオニアリング イノベーションズ ブイ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ケイシー, ジョン パトリック ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ベリー, デイビッド アーサー
(72)【発明者】
【氏名】ブリッグス, ティモシー エフ.
(72)【発明者】
【氏名】バックビンダー, レナード
(72)【発明者】
【氏名】キム, ミ-ジョン
(72)【発明者】
【氏名】リャン, アンナ
【テーマコード(参考)】
4B018
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018MD10
4B018ME01
4B018ME03
4B018ME04
4B018ME14
4C206AA01
4C206AA02
4C206DB04
4C206DB58
4C206KA01
4C206MA01
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4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA70
4C206ZA75
4C206ZC33
4C206ZC35
(57)【要約】
アシル化された活性薬剤(例えば、アシル化されたヒドロキシ安息香酸)、それらを含む組成物、それらを含む単位剤形、及び、例えば、代謝異常若しくは非アルコール性脂肪性肝疾患を治療するための、又は代謝マーカー若しくは非アルコール性脂肪性肝疾患マーカーを調節するためのそれらの使用の方法が本明細書に開示される。本発明は、アシル化されたヒドロキシ安息香酸、その薬学的に許容できる塩、及びそのエステル、並びにそのようなアシル化されたヒドロキシ安息香酸、その薬学的に許容できる塩、又はそのエステルを含む医薬組成物、栄養補助食品、及び食品製品を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも0.5gの式(I)の化合物:
【化22】
又はその薬学的に許容できる塩を含む単位剤形(式中:
nは、1、2、3、4、又は5であり;
各R
1は、独立に、H、アルキル、又はアシルであり;且つ
R
2は、H又はアルキルであり;
但し、前記化合物が少なくとも1つの脂肪酸アシルを含むことを条件とする)。
【請求項2】
nが2である、請求項1に記載の単位剤形。
【請求項3】
前記化合物が、式(IA)の化合物:
【化23】
又はその薬学的に許容できる塩である、請求項1に記載の単位剤形。
【請求項4】
各R
1が、独立に、アシルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の単位剤形。
【請求項5】
各R
1が、独立に、短鎖脂肪酸アシルである、請求項4に記載の単位剤形。
【請求項6】
前記化合物が
【化24】
又はその薬学的に許容できる塩である、請求項1に記載の単位剤形。
【請求項7】
少なくとも1gの活性薬剤を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の単位剤形。
【請求項8】
少なくとも2gの活性薬剤を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の単位剤形。
【請求項9】
10g以下の前記活性薬剤を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の単位剤形。
【請求項10】
9g以下の前記活性薬剤を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の単位剤形。
【請求項11】
8g以下の前記活性薬剤を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の単位剤形。
【請求項12】
7g以下の前記活性薬剤を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の単位剤形。
【請求項13】
6g以下の前記活性薬剤を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の単位剤形。
【請求項14】
5g以下の前記活性薬剤を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の単位剤形。
【請求項15】
食品添加物単位剤形、医薬単位剤形、又は栄養補助食品単位剤形である、請求項1~14のいずれか一項に記載の単位剤形。
【請求項16】
一人分の食品製品である食品添加物単位剤形である、請求項15に記載の単位剤形。
【請求項17】
医薬単位剤形である、請求項15に記載の単位剤形。
【請求項18】
栄養補助食品単位剤形である、請求項15に記載の単位剤形。
【請求項19】
代謝マーカー又は非アルコール性脂肪性肝疾患マーカーを調節する方法であって、有効量の活性薬剤を、それを必要とする対象に投与することを含み、前記活性薬剤が、アシル化されたヒドロキシ安息香酸、その薬学的に許容できる塩、又はそのエステルである方法。
【請求項20】
代謝マーカーを調節するためのものである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記代謝マーカーが肥満障害に関するものである、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記代謝マーカーが、II型糖尿病、糖尿病前症、インスリン抵抗性、代謝症候群、高コレステロール血症、又は高脂血症に関するものである、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項23】
非アルコール性脂肪性肝疾患マーカーを調節するためのものである、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
代謝異常又は非アルコール性脂肪性肝疾患を治療する方法であって、有効量の活性薬剤を、それを必要とする対象に投与することを含み、前記活性薬剤が、アシル化されたヒドロキシ安息香酸、又はその薬学的に許容できる塩、又はそのエステルである方法。
【請求項25】
代謝異常を治療するためのものである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記代謝異常が肥満障害である、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
前記代謝異常が、II型糖尿病、糖尿病前症、インスリン抵抗性、代謝症候群、高コレステロール血症、又は高脂血症である、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項28】
非アルコール性脂肪性肝疾患を治療するためのものである、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記対象が、非アルコール性脂肪性肝炎を患っているか、又は非アルコール性脂肪性肝炎と診断されている、請求項24又は28に記載の方法。
【請求項30】
肝線維症を治療又は減少させる、請求項24、28、及び29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
それを必要とする対象においてグルコース若しくはインスリン耐性を改善するか、コレステロールレベルを低下させるか、血糖レベルを低下させるか、又は健康体重を維持する方法であって、前記対象に、有効量の活性薬剤を、それを必要とする対象に投与することを含み、前記活性薬剤が、アシル化されたヒドロキシ安息香酸、その薬学的に許容できる塩、又はそのエステルである方法。
【請求項32】
耐糖能を改善するものである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
インスリン耐性を改善するものである、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
血糖レベルを低下させるものである、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記投与工程の前に、前記血糖レベルが上昇している、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
コレステロールレベルを低下させるものである、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記コレステロールレベルが総コレステロールレベルである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記コレステロールレベルが血清LDLレベルである、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記対象が、II型糖尿病、糖尿病前症、インスリン抵抗性、代謝症候群、又は高コレステロール血症を患っているか、又はそのリスクがある、請求項31~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
総脂肪パーセンテージ、細胞脂肪過多、ボディマス指数、体重増加の速度、腹部脂肪量、白色脂肪と褐色脂肪の比、脂質生成のレベル、又は脂肪貯蔵のレベルが、前記投与工程の後で減少する、請求項19~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
総脂肪パーセンテージ、細胞脂肪過多、ボディマス指数、腹部脂肪量、又は白色脂肪と褐色脂肪の比が、前記投与工程の後で減少する、請求項19~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記対象が過体重である、請求項19~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記対象が肥満を患っている、請求項19~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記対象が、重度肥満、病的肥満、又は超肥満を患っている、請求項19~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記対象が、少なくとも25kg/m
2のボディマス指数を有する、請求項19~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記対象が、少なくとも28kg/m
2のボディマス指数を有する、請求項19~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記対象が、少なくとも30kg/m
2のボディマス指数を有する、請求項19~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記対象が、少なくとも35kg/m
2のボディマス指数を有する、請求項19~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記対象が、少なくとも45kg/m
2のボディマス指数を有する、請求項19~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
インスリン、GLP-1、又はPYYのレベルが、前記対象への前記活性薬剤の投与の後で増加する、請求項19~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
血糖又はヘモグロビンA1cのレベルが、前記対象への前記活性薬剤の投与の後で低下する、請求項19~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記耐糖能が、前記対象への前記活性薬剤の投与の後で増加する、請求項19~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記対象の血液中のアラニントランスアミナーゼのレベルを、前記投与工程の前の前記対象の血液中のアラニントランスアミナーゼのレベルに対して少なくとも1%低下させる、請求項19~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記対象の血液中のアスパラギン酸トランスアミナーゼのレベルを、前記投与工程の前の前記対象の血液中のアスパラギン酸トランスアミナーゼのレベルに対して少なくとも1%低下させる、請求項19~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記対象の肝重量を、前記投与工程の前の前記対象の肝重量に対して少なくとも1%減少させる、請求項19~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記対象がヒトである、請求項19~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記対象がネコ又はイヌである、請求項19~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記活性薬剤を前記対象に経口投与することを含む、請求項19~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記対象への経口投与の後に、前記活性薬剤が、前記対象の消化管内で切断可能である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
切断時に、前記活性薬剤が少なくとも1種の脂肪酸を放出する、請求項19~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記脂肪酸が短鎖脂肪酸である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記短鎖脂肪酸が、酢酸、プロピオン酸、又は酪酸である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記短鎖脂肪酸が酢酸である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記活性薬剤がゲンチジン酸を含む、請求項19~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記活性薬剤が、式(I)の化合物:
【化25】
又はその薬学的に許容できる塩である、請求項19~60のいずれか一項に記載の方法(式中:
nは、1、2、3、4、又は5であり;
各R
1は、独立に、H、アルキル、又はアシルであり;且つ
R
2は、H又はアルキルであり;
但し、前記化合物が少なくとも1つの脂肪酸アシルを含むことを条件とする)。
【請求項66】
nが2である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記化合物が、式(IA)の化合物:
【化26】
又はその薬学的に許容できる塩である、請求項65又は66に記載の方法。
【請求項68】
各R
1が、独立に、アシルである、請求項65~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
各R
1が、独立に、短鎖脂肪酸アシルである、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記化合物が
【化27】
又はその薬学的に許容できる塩である、請求項69に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物及びその医薬的使用の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満発生率の増加は、西欧諸国において広がっており、ごく最近途上国でも同様である。肥満は、心血管疾患及びII型糖尿病などの重大な併存疾患と関連している。肥満外科手術は肥満の公知の治療であるが、この治療は費用がかかり危険である。薬理学的介入は、典型的には、効能があまりなく、多くの場合有害事象を伴う。
【0003】
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、最も一般的な形態の慢性肝臓疾患の1つであり、米国において推定で12%~25%の人々を冒している。NAFLDの主な特徴は、肝臓内の脂肪蓄積(脂肪症)である。NAFLDにおいて、脂肪蓄積は過度のアルコール摂取と関連していない。
【0004】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は進行した形態のNAFLDである。NASHは肝臓炎症という特徴があり、それは瘢痕化及び不可逆な肝損傷に進行し得る。最も重度な場合、NASHは肝硬変及び肝不全に進行し得る。
【0005】
代謝異常を管理すること並びに/又はNAFLD及びNASHを治療することに有用な方法及び組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、アシル化されたヒドロキシ安息香酸、その薬学的に許容できる塩、及びそのエステル、並びにそのようなアシル化されたヒドロキシ安息香酸、その薬学的に許容できる塩、又はそのエステルを含む医薬組成物、栄養補助食品、及び食品製品を提供する。
【0007】
一態様において、本発明は、少なくとも0.5gの式(I)の化合物:
【化1】
又はその薬学的に許容できる塩を含む単位剤形を提供する(式中:
nは、1、2、3、4、又は5であり;
各R
1は、独立に、H、アルキル、又はアシルであり;且つ
R
2は、H又はアルキルであり;
但し、化合物が少なくとも1つの脂肪酸アシルを含むことを条件とする)。
【0008】
いくつかの実施形態において、nは2である。いくつかの実施形態において、化合物は、式(IA)の化合物:
【化2】
又はその薬学的に許容できる塩である。
【0009】
いくつかの実施形態において、各R
1は、独立に、アシルである。いくつかの実施形態において、各R
1は、独立に、短鎖脂肪酸アシルである。いくつかの実施形態において、化合物は
【化3】
又はその薬学的に許容できる塩である。
【0010】
いくつかの実施形態において、単位剤形は、少なくとも1g(例えば少なくとも2g)の活性薬剤を含む。いくつかの実施形態において、単位剤形は、10g以下(例えば、9g以下、8g以下、7g以下、6g以下、又は5g以下)の活性薬剤を含む。いくつかの実施形態において、単位剤形は、0.5~10g(例えば、1~10g、2~10g、3~10g、4~10g、5~10g、6~10g、7~10g、8~10g、9~10g、0.5~9g、1~9g、2~9g、3~9g、4~9g、5~9g、6~9g、7~9g、8~9g、0.5~8g、1~8g、2~8g、3~8g、4~8g、5~8g、6~8g、7~8g、0.5~7g、1~7g、2~7g、3~7g、4~7g、5~7g、6~7g、0.5~6g、1~6g、2~6g、3~6g、4~6g、5~6g、0.5~5g、1~5g、2~5g、3~5g、4~5g、0.5~4g、1~4g、2~4g、3~4g、0.5~3g、1~3g、2~3g、0.5~2g、1~2g、又は0.5~1g)の活性薬剤を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、単位剤形は、食品添加物単位剤形、医薬単位剤形、又は栄養補助食品単位剤形である。いくつかの実施形態において、単位剤形は、一人分の食品製品である食品添加物単位剤形である。いくつかの実施形態において、単位剤形は医薬単位剤形である。いくつかの実施形態において、単位剤形は栄養補助食品単位剤形である。
【0012】
別の態様において、本発明は、代謝マーカー又は非アルコール性脂肪性肝疾患マーカーを調節する方法であって、有効量の活性薬剤を、それを必要とする対象に投与することを含み、活性薬剤が、アシル化されたヒドロキシ安息香酸、その薬学的に許容できる塩、又はそのエステルである方法を提供する。
【0013】
いくつかの実施形態において、方法は代謝マーカーを調節するためのものである。いくつかの実施形態において、代謝マーカーは肥満障害に関するものである。いくつかの実施形態において、代謝マーカーは、II型糖尿病、糖尿病前症、インスリン抵抗性、代謝症候群、高コレステロール血症、又は高脂血症に関するものである。
【0014】
いくつかの実施形態において、方法は、非アルコール性脂肪性肝疾患マーカーを調節するためのものである。
【0015】
別の態様において、本発明は、代謝異常又は非アルコール性脂肪性肝疾患を治療する方法であって、有効量の活性薬剤を、それを必要とする対象に投与することを含み、活性薬剤が、アシル化されたヒドロキシ安息香酸、又はその薬学的に許容できる塩、又はそのエステルである方法を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態において、方法は代謝異常を治療するためのものである。いくつかの実施形態において、代謝異常は肥満障害である。いくつかの実施形態において、代謝異常は、II型糖尿病、糖尿病前症、インスリン抵抗性、代謝症候群、高コレステロール血症、又は高脂血症である。
【0017】
いくつかの実施形態において、方法は非アルコール性脂肪性肝疾患を治療するためのものである。いくつかの実施形態において、対象は、非アルコール性脂肪性肝炎を患っているか、又は非アルコール性脂肪性肝炎と診断されている。
【0018】
いくつかの実施形態において、方法は、肝線維症を治療するか、又は減少させる。
【0019】
別の態様において、本発明は、それを必要とする対象におけるグルコース又はインスリン耐性を改善する方法、コレステロールレベルを低下させる方法、血糖レベルを低下させる方法、又は健康体重を維持する方法であって、対象に、有効量の活性薬剤を、それを必要とする対象に投与することを含み、活性薬剤が、アシル化されたヒドロキシ安息香酸、その薬学的に許容できる塩、又はそのエステルである方法を提供する。
【0020】
いくつかの実施形態において、対象は、II型糖尿病、糖尿病前症、インスリン抵抗性、代謝症候群、又は高コレステロール血症を患っている。
【0021】
いくつかの実施形態において、方法は耐糖能を改善するものである。いくつかの実施形態において、方法はインスリン耐性を改善するものである。いくつかの実施形態において、方法は血糖レベルを低下させるものである(例えば、血糖レベルは投与工程の前に上昇している)。いくつかの実施形態において、方法はコレステロールレベルを低下させるものである。いくつかの実施形態において、方法は健康体重を維持するものである。いくつかの実施形態において、対象は、投与工程の前に25以上のBMIを有する。いくつかの実施形態において、対象は、投与工程の後に25未満のBMIを有する。
【0022】
いくつかの実施形態において、コレステロールレベルは総血中コレステロールレベルである。いくつかの実施形態において、対象は、投与工程の前に、240mg/dL以上の総血中コレステロールレベルを有する。いくつかの実施形態において、対象は、投与工程の後に、240mg/dL未満(例えば200mg/dL未満)の総血中コレステロールレベルを有する。いくつかの実施形態において、コレステロールレベルは血清LDLレベルである。いくつかの実施形態において、対象は、投与工程の前に、160mg/dL以上の血清LDLレベルを有する。いくつかの実施形態において、対象は、投与工程の後に、160mg/dL未満(例えば130mg/dL未満)の血清LDLレベルを有する。
【0023】
いくつかの実施形態において、総脂肪パーセンテージ、細胞脂肪過多(cellular adiposity)、ボディマス指数、体重増加の速度、腹部脂肪量、白色脂肪と褐色脂肪の比、脂質生成のレベル、又は脂肪貯蔵のレベルは、投与の工程の後に低下する。いくつかの実施形態において、総脂肪パーセンテージ、細胞脂肪過多、ボディマス指数、腹部脂肪量、又は白色脂肪と褐色脂肪の比は、投与の工程の後に低下する。
【0024】
いくつかの実施形態において、対象は過体重である。いくつかの実施形態において、対象は肥満を患っている。いくつかの実施形態において、対象は、重度肥満、病的肥満、又は超肥満を患っている。いくつかの実施形態において、対象は、少なくとも25kg/m2のボディマス指数を有する。いくつかの実施形態において、対象は、少なくとも28kg/m2のボディマス指数を有する。いくつかの実施形態において、対象は、少なくとも30kg/m2のボディマス指数を有する。いくつかの実施形態において、対象は、少なくとも35kg/m2のボディマス指数を有する。いくつかの実施形態において、対象は、少なくとも45kg/m2のボディマス指数を有する。
【0025】
いくつかの実施形態において、インスリン、GLP-1、又はPYYのレベルは、対象への活性薬剤の投与の後に増加する。いくつかの実施形態において、血糖又はヘモグロビンA1cのレベルは、対象への活性薬剤の投与の後に低下する。いくつかの実施形態において、耐糖能は、対象への活性薬剤の投与の後に増加する。
【0026】
いくつかの実施形態において、方法は、対象の血液中のアラニントランスアミナーゼのレベルを、投与工程の前の対象の血液中のアラニントランスアミナーゼのレベルに対して少なくとも1%低下させる。いくつかの実施形態において、方法は、対象の血液中のアスパラギン酸トランスアミナーゼのレベルを、投与工程の前の対象の血液中のアスパラギン酸トランスアミナーゼのレベルに対して少なくとも1%低下させる。いくつかの実施形態において、方法は、対象の肝重量を、投与工程の前の対象の肝重量に対して少なくとも1%減少させる。
【0027】
いくつかの実施形態において、対象はヒトである。いくつかの実施形態において、対象はネコ又はイヌである。
【0028】
いくつかの実施形態において、方法は、活性薬剤を対象に経口投与することを含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、対象への経口投与の後に、活性薬剤は、対象の消化管内で切断可能である。いくつかの実施形態において、切断時に、活性薬剤は少なくとも1種の脂肪酸を放出する。
【0030】
いくつかの実施形態において、脂肪酸は短鎖脂肪酸である。いくつかの実施形態において、短鎖脂肪酸は、酢酸、プロピオン酸、又は酪酸である。いくつかの実施形態において、短鎖脂肪酸は酢酸である。
【0031】
いくつかの実施形態において、活性薬剤はゲンチジン酸を含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、活性薬剤は、式(I)の化合物:
【化4】
又はその薬学的に許容できる塩である(式中:
nは、1、2、3、4、又は5であり;
各R
1は、独立に、H、アルキル、又はアシルであり;且つ
R
2は、H又はアルキルであり;
但し、化合物が少なくとも1つの脂肪酸アシルを含むことを条件とする)。
【0033】
いくつかの実施形態において、nは2である。
【0034】
いくつかの実施形態において、化合物は、式(IA)の化合物:
【化5】
又はその薬学的に許容できる塩である。
【0035】
いくつかの実施形態において、各R1は、独立に、アシルである。
【0036】
いくつかの実施形態において、各R1は、独立に、短鎖脂肪酸アシルである。
【0037】
いくつかの実施形態において、化合物は、
【化6】
又はその薬学的に許容できる塩である。
【0038】
本発明のあらゆる方法のいくつかの実施形態において、活性薬剤は、少なくとも1g(例えば少なくとも2g)の活性薬剤の投与量で投与される。いくつかの実施形態において、活性薬剤は、10g以下(例えば、9g以下、8g以下、7g以下、6g以下、又は5g以下)の活性薬剤の投与量で投与される。いくつかの実施形態において、活性薬剤は、0.5~10g(例えば、1~10g、2~10g、3~10g、4~10g、5~10g、6~10g、7~10g、8~10g、9~10g、0.5~9g、1~9g、2~9g、3~9g、4~9g、5~9g、6~9g、7~9g、8~9g、0.5~8g、1~8g、2~8g、3~8g、4~8g、5~8g、6~8g、7~8g、0.5~7g、1~7g、2~7g、3~7g、4~7g、5~7g、6~7g、0.5~6g、1~6g、2~6g、3~6g、4~6g、5~6g、0.5~5g、1~5g、2~5g、3~5g、4~5g、0.5~4g、1~4g、2~4g、3~4g、0.5~3g、1~3g、2~3g、0.5~2g、1~2g、又は0.5~1g)の活性薬剤の投与量で投与される。
【0039】
定義
本明細書で使用される用語「アシル」は、式-C(O)-Rの化学置換基を表し、式中、Rは、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、若しくはヘテロアリールアルキルであるか;又はRは-C(O)-と組み合わさって脂肪酸アシルを形成する。任意選択で置換されているアシルは、各基Rに関して本明細書に記載される通り任意選択で置換されているアシルである。アシルの非限定的な例としては、脂肪酸アシル(例えば短鎖脂肪酸アシル、例えばアセチル)がある。
【0040】
本明細書で使用される用語「アシル化された活性薬剤」は、エステル結合により連結された2つ以上の薬剤を含む化合物を表す。アシル化された活性薬剤の非限定的な例としてはアシル化されたヒドロキシ安息香酸がある。
【0041】
本明細書で使用される用語「アシル化されたヒドロキシ安息香酸」は、式(I)の化合物:
【化7】
又はその薬学的に許容できる塩を表す
(式中
nは、1、2、3、4、又は5であり;
各R
1は、独立に、H、アルキル、又はアシルであり;且つ
R
2は、H又はアルキルであり;
但し、化合物が少なくとも1つのアシル(例えば脂肪酸アシル)を含むことを条件とする)。
【0042】
アシル化されたヒドロキシ安息香酸の非限定的な例としては、1又は2つのフェノール性ヒドロキシルが独立にアシルにより置換されているゲンチジン酸がある。
【0043】
本明細書で使用される用語「アシルオキシ」は、式-ORの化学置換基を表し、式中、Rはアシルである。任意選択で置換されているアシルオキシは、アシルに関して本明細書に記載される通り任意選択で置換されているアシルオキシである。
【0044】
本明細書で使用される用語「アルコール酸素原子」は、アルコール酸素原子の1つの原子価が第1の炭素原子と結合し、別の原子価が第2の炭素原子と結合し、第1の炭素原子がsp3-混成炭素原子であり、第2の炭素原子がsp3-混成炭素原子又はカルボニル基のsp2-混成炭素原子である、二価酸素原子を指す。
【0045】
本明細書で使用される用語「アルカノイル」は、式-C(O)-Rの化学置換基を表し、式中、Rはアルキルである。任意選択で置換されているアルカノイルは、アルキルに関して本明細書に記載される通り任意選択で置換されているアルカノイルである。
【0046】
本明細書で使用される用語「アルコキシ」は、式-ORの化学置換基を表し、式中、Rは特記されない限りC1~6アルキル基である。任意選択で置換されているアルコキシは、アルキルに関して本明細書に定義される通り任意選択で置換されているアルコキシ基である。
【0047】
本明細書で使用される用語「アルケニル」は、1、2、又は3つの炭素-炭素二重結合を含む非環式一価直鎖又は分岐鎖炭化水素基を表す。アルケニルは、非置換である場合、特記されない限り2~22個の炭素を有する。特定の好ましい実施形態において、アルケニルは、非置換である場合、2~12個の炭素原子(例えば1~8個の炭素)を有する。アルケニル基の非限定的な例としては、エテニル、プロパ-1-エニル、プロパ-2-エニル、1-メチルエテニル、ブタ-1-エニル、ブタ-2-エニル、ブタ-3-エニル、1-メチルプロパ-1-エニル、2-メチルプロパ-1-エニル、及び1-メチルプロパ-2-エニルがある。アルケニル基は、アルキルに関して本明細書に定義される通り任意選択で置換され得る。
【0048】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、非置換である場合、特記されない限り1~22個の炭素(例えば1~20個の炭素)を有する非環式直鎖又は分岐鎖飽和炭化水素基を指す。特定の好ましい実施形態において、アルキルは、非置換である場合、1~12個の炭素(例えば1~8個の炭素)を有する。アルキル基は、メチル;エチル;n-及びiso-プロピル;n-、sec-、iso-及びtert-ブチル;ネオペンチルなどにより例示され、原子価が許す限り、アルコキシ;アシルオキシ;アルキルスルフェニル;アルキルスルフィニル;アルキルスルホニル;アミノ;アリール;アリールオキシ;アジド;シクロアルキル;シクロアルコキシ;ハロ;ヘテロシクリル;ヘテロアリール;ヘテロシクリルアルキル;ヘテロアリールアルキル;ヘテロシクリルオキシ;ヘテロアリールオキシ;ヒドロキシ;ニトロ;チオアルキル;チオアルケニル;チオアリール;チオール;シリル;シアノ;オキソ(=O);チオ(=S);及びイミノ(=NR’)(式中、R’は、H、アルキル、アリール、又はヘテロシクリルである)からなる群から独立に選択される1、2、3個の、又は2個以上の炭素のアルキル基の場合、4個以上の置換基により任意選択で置換され得る。置換基のそれぞれは、それ自体、非置換でも、原子価が許す限り、各それぞれの基に関して本明細書で定義される非置換の置換基により置換されていてもよい。
【0049】
本明細書で使用される用語「アルキルスルフェニル」は、式-S-(アルキル)の基を表す。任意選択で置換されているアルキルスルフェニルは、アルキルに関して本明細書に記載される通り任意選択で置換されているアルキルスルフェニルである。
【0050】
本明細書で使用される用語「アルキルスルフィニル」は、式-S(O)-(アルキル)の基を表す。任意選択で置換されているアルキルスルフィニルは、アルキルに関して本明細書に記載される通り任意選択で置換されているアルキルスルフィニルである。
【0051】
本明細書で使用される用語「アルキルスルホニル」は、式-S(O)2-(アルキル)の基を表す。任意選択で置換されているアルキルスルホニルは、アルキルに関して本明細書に記載される通り任意選択で置換されているアルキルスルホニルである。
【0052】
本明細書で使用される用語「アリール」は、1又は2つの芳香環を有する単環式、二環式、又は多環式炭素環系を表す。アリール基は6~10個の炭素原子を含み得る。非置換炭素環式アリール基内の全原子は炭素原子である。炭素環式アリール基の非限定的な例としては、フェニル、ナフチル、1,2-ジヒドロナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、フルオレニル、インダニル、インデニルなどがある。アリール基は、非置換でも、アルキル;アルケニル;アルコキシ;アシルオキシ;アミノ;アリール;アリールオキシ;アジド;シクロアルキル;シクロアルコキシ;ハロ;ヘテロシクリル;ヘテロアリール;ヘテロシクリルアルキル;ヘテロアリールアルキル;ヘテロシクリルオキシ;ヘテロアリールオキシ;ヒドロキシ;ニトロ;チオアルキル;チオアルケニル;チオアリール;チオール;シリル;及びシアノからなる群から独立に選択される1、2、3、4、又は5個の置換基により置換されていてもよい。置換基のそれぞれは、それ自体、非置換でも、各それぞれの基に関して本明細書に定義される非置換の置換基により置換されていてもよい。
【0053】
本明細書で使用される用語「アリールアルキル」は、アリール基により置換されたアルキル基を表す。任意選択で置換されているアリールアルキルは、アリール及びアルキル部分が、本明細書に記載される通り個別の基として任意選択で置換され得るアリールアルキルである。
【0054】
本明細書で使用される用語「アリールオキシ」は基-ORを表し、式中、Rはアリールである。アリールオキシは、任意選択で置換されているアリールオキシであり得る。任意選択で置換されているアリールオキシは、アリールに関して本明細書に記載される通り任意選択で置換されているアリールオキシである。
【0055】
本明細書で使用される用語「カルボニル」は二価の基-C(O)-を指す。
【0056】
本明細書で使用される用語「カルボキシラート」は、基-COOH又はその薬学的に許容できる塩を表す。
【0057】
本明細書で使用される表現「Cx~y」は、名前がその表現の直後に来る基が、非置換である場合、合計でx~y個の炭素原子を含むことを示す。基が複合基(例えばアリールアルキル)である場合、Cx~yは、名前がその表現の直後に来る部分が、非置換である場合、合計でx~y個の炭素原子を含むことを示す。例えば、(C6~10-アリール)-C1~6-アルキルは、アリール部分が、非置換である場合合計で6~10個の炭素原子を含み、アルキル部分が、非置換である場合合計で1~6個の炭素原子を含む基である。
【0058】
本明細書で使用される用語「シクロアルキル」は、特記されない限り、3~10個の炭素を有する環式アルキル基(例えばC3~C10シクロアルキル)を指す。シクロアルキル基は、単環式でも、二環式でもあり得る。二環式シクロアルキル基はビシクロ[p.q.0]アルキルタイプであり得て、その場合、p及びqのそれぞれは、独立に、1、2、3、4、5、6、又は7であり、但し、pとqの和が、2、3、4、5、6、7、又は8であることを条件とする。或いは、二環式シクロアルキル基は、架橋シクロアルキル構造、例えば、ビシクロ[p.q.r]アルキルを含み得るが、その場合、rは、1、2、又は3であり、p及びqのそれぞれは、独立に、1、2、3、4、5、又は6であり、但し、pとqとrの和が、3、4、5、6、7、又は8であることを条件とする。シクロアルキル基はスピロ環式基、例えばスピロ[p.q]アルキルであり得て、その場合、p及びqのそれぞれは、独立に、2、3、4、5、6、又は7であり、但し、pとqの和が、4、5、6、7、8、又は9であることを条件とする。シクロアルキルの非限定的な例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、1-ビシクロ[2.2.1.]ヘプチル、2-ビシクロ[2.2.1.]ヘプチル、5-ビシクロ[2.2.1.]ヘプチル、7-ビシクロ[2.2.1.]ヘプチル、及びデカリニルがある。シクロアルキル基は、非置換でも、アルキル;アルケニル;アルコキシ;アシルオキシ;アルキルスルフェニル;アルキルスルフィニル;アルキルスルホニル;アミノ;アリール;アリールオキシ;アジド;シクロアルキル;シクロアルコキシ;ハロ;ヘテロシクリル;ヘテロアリール;ヘテロシクリルアルキル;ヘテロアリールアルキル;ヘテロシクリルオキシ;ヘテロアリールオキシ;ヒドロキシ;ニトロ;チオアルキル;チオアルケニル;チオアリール;チオール;シリル;シアノ;オキソ(=O);チオ(=S);イミノ(=NR’)(式中、R’は、H、アルキル、アリール、又はヘテロシクリルである)からなる群から独立に選択される1、2、3、4、又は5個の置換基により置換されていてもよい(例えば任意選択で置換されているシクロアルキル)。置換基のそれぞれは、それ自体、非置換でも、各それぞれの基に関して本明細書で定義される非置換の置換基により置換されていてもよい。
【0059】
本明細書で使用される用語「シクロアルコキシ」は基-ORを表し、式中、Rはシクロアルキルである。任意選択で置換されているシクロアルコキシは、シクロアルキルに関して本明細書に記載される通り任意選択で置換されているシクロアルコキシである。
【0060】
本明細書で使用される用語「上昇した血糖レベル」は、130mg/dLより高い、対象(例えば、II型糖尿病、糖尿病前症、又はインスリン抵抗性を患っている対象)の空腹時血糖レベル又は食事後2時間での180mg/dLより高い対象の血糖レベル(例えば、II型糖尿病、糖尿病前症、又はインスリン抵抗性を患っている対象)を指す。或いは、用語「上昇した血糖レベル」は、II型糖尿病、糖尿病前症、又はインスリン抵抗性を患っていない対象の、100mg/dLより高い空腹時血糖レベルを指す。或いは、用語「上昇した血糖レベル」は、II型糖尿病、糖尿病前症、又はインスリン抵抗性を患っていない対象の、食事後2時間での140mg/dLより高い血糖レベルを指す。70mg/dL~130mg/dLの空腹時血糖レベルは、対象(例えば、II型糖尿病、糖尿病前症、又はインスリン抵抗性を患っている対象)の正常な空腹時血糖レベルと考えられる。70mg/dL~100mg/dLの空腹時血糖レベルは、II型糖尿病、糖尿病前症、又はインスリン抵抗性を患っていない対象の正常な空腹時血糖レベルと考えられる。血糖レベルは、当技術分野に公知である方法を利用して測定できる。
【0061】
本明細書で使用される用語「エステル結合」は、アルコール又はフェノール性酸素原子と、さらに炭素原子に結合しているカルボニル基との間の共有結合を指す。
【0062】
本明細書で使用される用語「脂肪酸」は、短鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸、超長鎖脂肪酸、又はその不飽和アナログ、又はそのフェニル置換アナログを指す。短鎖脂肪酸は1~6個の炭素原子を含み、中鎖脂肪酸は7~13個の炭素原子を含み、長鎖脂肪酸は14~22個の炭素原子を含む。脂肪酸は、飽和でも不飽和でもあり得る。不飽和脂肪酸は、1、2、3、4、5、又は6個の炭素-炭素二重結合を含む。好ましくは、不飽和脂肪酸中の炭素-炭素二重結合はZ立体化学を有する。
【0063】
本明細書で使用される用語「脂肪酸アシル」は、ヒドロキシル基が原子価に置き換えられている脂肪酸を指す。
【0064】
本明細書で使用される用語「脂肪酸アシルオキシ」は基-ORを指し、式中、Rは脂肪酸アシルである。
【0065】
本明細書で使用される用語「ハロゲン」は、臭素、塩素、ヨウ素、及びフッ素から選択されるハロゲンを表す。
【0066】
本明細書で使用される用語「健康体重」は、正常な体重範囲と認められているボディマス指数(BMI)範囲を指す。例えば、世界保健機関(World Health Organization)及びU.S.Center for Disease Controlは、18.5kg/m2~25kg/m2未満のBMI範囲をヒトの正常な体重範囲と認めている。世界保健機関(World Health Organization)及びU.S.Center for Disease Controlは、ヒトに関して25kg/m2~30kg/m2未満のBMI範囲を「過体重」と、30kg/m2以上のBMI範囲を「肥満」と認めている。過体重のヒトは、25kg/m2~30kg/m2未満のBMIを有するものである。肥満のヒトは、30kg/m2以上のBMIを有するものである。
【0067】
本明細書で使用される用語「ヘテロアリール」は、単環式の5、6、7、若しくは8員環系、又は縮合若しくは架橋二環式、三環式、若しくは四環式環系を表す;環系は、窒素、酸素、及び硫黄からなる群から独立に選択される1、2、3、又は4つのヘテロ原子を含み;且つ、環の少なくとも1つは芳香環である。ヘテロアリール基の非限定的な例としては、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、フリル、イミダゾリル、インドリル、イソインダゾリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、プリニル、ピロリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、キナゾリニル、キノリニル、チアジアゾリル(例えば、1,3,4-チアジアゾール)、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、テトラゾリル、ジヒドロインドリル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリルなどがある。用語二環式、三環式、及び四環式ヘテロアリールは、上述の少なくとも1つのヘテロ原子を有する少なくとも1つの環及び少なくとも1つの芳香環を含む。例えば、少なくとも1つのヘテロ原子を有する環は、1、2、又は3つの炭素環、例えば、アリール環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、シクロペンタン環、シクロペンテン環、又は別の単環式複素環に縮合し得る。縮合ヘテロアリールの例としては、1,2,3,5,8,8a-ヘキサヒドロインドリジン;2,3-ジヒドロベンゾフラン;2,3-ジヒドロインドール;及び2,3-ジヒドロベンゾチオフェンがある。ヘテロアリールは、アルキル;アルケニル;アルコキシ;アシルオキシ;アリールオキシ;アルキルスルフェニル;アルキルスルフィニル;アルキルスルホニル;アミノ;アリールアルコキシ;シクロアルキル;シクロアルコキシ;ハロゲン;ヘテロシクリル;ヘテロシクリルアルキル;ヘテロアリール;ヘテロアリールアルキル;ヘテロシクリルオキシ;ヘテロアリールオキシ;ヒドロキシル;ニトロ;チオアルキル;チオアルケニル;チオアリール;チオール;シアノ;=O;-NR2(式中、各Rは、独立に、水素、アルキル、アシル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールである);-COORA(式中、RAは、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールである);及び-CON(RB)2(式中、各RBは、独立に、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールである)からなる群から独立に選択される1、2、3、4、又は5個の置換基により任意選択で置換され得る。置換基のそれぞれは、それ自体、非置換でも、各それぞれの基に関して本明細書で定義される非置換の置換基により置換されていてもよい。
【0068】
本明細書で使用される用語「ヘテロアリールアルキル」は、ヘテロアリール基により置換されているアルキル基を表す。任意選択で置換されているヘテロアリールアルキルのヘテロアリール及びアルキル部分は、それぞれヘテロアリール及びアルキルに関して記載されている通り任意選択で置換されている。
【0069】
本明細書で使用される用語「ヘテロアリールオキシ」は、構造-ORを指し、式中、Rはヘテロアリールである。ヘテロアリールオキシは、ヘテロアリールに関して定義されている通り任意選択で置換され得る。
【0070】
本明細書で使用される用語「ヘテロシクリル」は、縮合又は架橋4、5、6、7、又は8員環を有し、特記されない限り、環系が、窒素、酸素、及び硫黄からなる群から独立に選択される1、2、3、又は4つのヘテロ原子を含む単環式、二環式、三環式、又は四環式非芳香環系を表す。非芳香族5員ヘテロシクリルは0又は1つの二重結合を有し、非芳香族6及び7員のヘテロシクリル基は0~2つの二重結合を有し、非芳香族8員ヘテロシクリル基は0~2つの二重結合及び/又は0若しくは1つの炭素-炭素三重結合を有する。ヘテロシクリル基は、特記されない限り、1~16個の炭素原子の炭素数を有する。特定のヘテロシクリル基は、9個までの炭素原子の炭素数を有し得る。非芳香族ヘテロシクリル基としては、ピロリニル、ピロリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ホモピペリジニル、ピペラジニル、ピリダジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニイル(isoxazolidiniyl)、モルホリニル、チオモルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、チアゾリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ジヒドロチエニル、ピラニル、ジヒドロピラニル、ジチアゾリルなどがある。用語「ヘテロシクリル」は、1つ以上の炭素及び/又はヘテロ原子が単環式環の2つの隣接していない員と架橋する架橋多環式構造を有する複素環式化合物、例えば、キヌクリジン、トロパン、又はジアザ-ビシクロ[2.2.2]オクタンも表す。用語「ヘテロシクリル」は、上記複素環のいずれかが、1、2、又は3つの炭素環、例えば、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、シクロペンタン環、シクロペンテン環、又は別の複素環に縮合している二環式、三環式、及び四環式基を含む。縮合ヘテロシクリルの例としては、1,2,3,5,8,8a-ヘキサヒドロインドリジン;2,3-ジヒドロベンゾフラン;2,3-ジヒドロインドール;及び2,3-ジヒドロベンゾチオフェンがある。ヘテロシクリル基は、非置換でも、アルキル;アルケニル;アルコキシ;アシルオキシ;アルキルスルフェニル;アルキルスルフィニル;アルキルスルホニル;アリールオキシ;アミノ;アリールアルコキシ;シクロアルキル;シクロアルコキシ;ハロゲン;ヘテロシクリル;ヘテロシクリルアルキル;ヘテロアリール;ヘテロアリールアルキル;ヘテロシクリルオキシ;ヘテロアリールオキシ;ヒドロキシル;ニトロ;チオアルキル;チオアルケニル;チオアリール;チオール;シアノ;=O;=S;-NR2(式中、各Rは、独立に、水素、アルキル、アシル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールである);-COORA(式中、RAは、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールである);及び-CON(RB)2(式中、各RBは、独立に、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールである)からなる群から独立に選択される1、2、3、4、又は5つの置換基により置換されていてもよい。
【0071】
本明細書で使用される用語「ヘテロシクリルアルキル」は、ヘテロシクリル基により置換されたアルキル基を表す。任意選択で置換されているヘテロシクリルアルキルのヘテロシクリル及びアルキル部分は、それぞれヘテロシクリル及びアルキルに関して記載される通り任意選択で置換されている。
【0072】
本明細書で使用される用語「ヘテロシクリルオキシ」は、構造-ORを指し、式中、Rはヘテロシクリルである。ヘテロシクリルオキシは、ヘテロシクリルに関して記載される通り任意選択で置換され得る。
【0073】
本明細書で使用される用語「ヒドロキシ安息香酸」は、以下の構造の化合物:
【化8】
又はその薬学的に許容できる塩を表す
(式中
nは、1、2、3、4、又は5であり;
各R
1は、独立に、H又はアルキルであり;且つ
R
2は、H又はアルキルである)。
【0074】
ヒドロキシ安息香酸の非限定的な例としてはゲンチジン酸がある。R2がアルキルである場合、化合物は「エステル」である。
【0075】
本明細書において互換的に使用される用語「ヒドロキシル」及び「ヒドロキシ」は-OHを表す。アシルにより置換されたヒドロキシルはアシルオキシである。保護されたヒドロキシルは、水素原子がO保護基に置き換えられたヒドロキシルである。
【0076】
本明細書で使用される用語「代謝マーカー」は、代謝異常の存在、非存在、又はリスクの観察可能な指標(indicative)を指す。代謝マーカーのレベルは、肥満状態と直接又は逆に相関し得る。代謝マーカーの非限定的な例は、総脂肪パーセンテージ、細胞脂肪過多、体重増加の速度、腹部脂肪量、皮下脂肪量、鼠径部脂肪量、精巣上体脂肪量、白色脂肪と褐色脂肪の比、コレステロール[例えば、高密度リポタンパク質(HDL)又は低密度リポタンパク質(LDL)]レベル、及び中性脂肪のレベルである。いくつかの実施形態において、代謝マーカーは、総脂肪パーセンテージ、細胞脂肪過多、体重増加の速度、腹部脂肪量、白色脂肪と褐色脂肪の比、コレステロール[例えば、高密度リポタンパク質(HDL)又は低密度リポタンパク質(LDL)]レベル、及び中性脂肪のレベルである。総脂肪パーセンテージは、ボディマス指数を使用して評価できる。腹部脂肪は、腹囲の測定により評価できる。白色脂肪と褐色脂肪の比は、例えば、Chen et al.,Nat.Commun.,7:11420に記載の技法及び方法を使用するmiRNA-92aレベルの測定;例えば、Gerngross et al.,J.Nucl.Med.,58:1104-1110,2017に記載の技法及び方法を使用する18F-フルデオキシグルコース陽電子放出断層撮影/コンピュータ断層撮影;例えば、Chen et al.,J.Nucl.Med.,54:1584-1587,2013に記載される技法及び方法を使用する磁気共鳴画像法により評価できる。
【0077】
本明細書で使用される用語「調節すること」は、そのような測定に関して当技術分野に公知である技法及び方法を使用して測定された、対象におけるマーカーのレベルの観察可能な変化を指す。対象におけるマーカーレベルを調節することは、投与の前に対して少なくとも1%(例えば、投与の前に対して少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは少なくとも98%又はそれ以上;例えば、投与の前に対して100%まで)の変化をもたらし得る。いくつかの実施形態において、調節することは、対象におけるマーカーのレベルを増加させることである。対象におけるマーカーレベルを増加させることは、投与の前に対して少なくとも1%(例えば、投与の前に対して少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは少なくとも98%又はそれ以上;例えば、投与の前に対して100%まで)の増加をもたらし得る。他の実施形態において、調節することは、対象におけるマーカーのレベルを減少させることである。対象におけるマーカーレベルを減少させることは、投与の前に対して少なくとも1%(例えば、投与の前に対して少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは少なくとも98%、又はそれ以上;例えば、投与のために対して100%まで)の減少をもたらし得る。本明細書に記載される組成物を投与する工程の後に対象においてパラメーターが増加又は減少する(又は低下する)実施形態において、増加又は減少は、投与の後のある範囲の時間内(例えば、6時間、24時間、3日、1週又はそれ以上以内に)起こり得るか、且つ/又は検出可能であり得て、1回以上の投与後に(例えば、対象の投与レジメンの一部として、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上の投与後に)起こり得るか、且つ/又は検出可能であり得る。
【0078】
本明細書で使用される用語「非アルコール性脂肪性疾患マーカー」は、非アルコール性脂肪性疾患(例えば非アルコール性脂肪性肝炎)の存在又は非存在の観察可能な指標を表す。非アルコール性疾患マーカーのレベルは、非アルコール性病態と直接又は逆に相関し得る。非アルコール性疾患マーカーの非限定的な例は、アラニントランスアミナーゼレベル(ALT)、アスパラギン酸トランスアミナーゼレベル(AST)、γ-グルタミルトランスフェラーゼレベル、肝重量、及び線維化マーカーである。アラニントランスアミナーゼレベル、アスパラギン酸トランスアミナーゼレベル、γ-グルタミルトランスフェラーゼレベル、及び線維化マーカーは、当技術分野に公知である方法を利用して対象由来の血液試料中に測定できる。非アルコール性脂肪性疾患マーカーは、非侵襲性試験、画像化方法、及び生検を使用して評価できる。肝線維症は、肝生検により侵襲的に、又は、或いは、非侵襲的方法、例えば、血清マーカーの複合スコア/アルゴリズム(Fibrotest、Hepatscore、Fibrometet FIB-4スコア、NAFLDD線維化スコア)、若しくはトランジェントエラストグラフィー、磁気共鳴エラストグラフィー、音響放射力インパルス、及び超音波検査を含む画像化技法により評価できる(Almpanis,Z.,Annals of Gastroenterology,29:1-9,2016)。BAATは、非アルコール性脂肪性肝疾患(例えば、非アルコール性脂肪性肝炎)に関する対象の評価のために肝生検から利益を得るだろう対象を特定するのに使用できる全体的な臨床スコアである。BAATは、ボディマス指数、年齢、ALT、及び血清中性脂肪を合わせるものである。さらに、音響放射力インパルスを使用して肝臓の硬さを測定できるが、それは線維化スコアリングと相関する。磁気共鳴画像法(MRI)も、肝臓密度及び肝臓脂肪分率を特定するために使用される;肝臓の硬さは、MRエラストグラフィーにより測定できる(Neuman et al.,J.Pharm.Pharm.Sci.,19:8-24,2016)。
【0079】
本明細書で使用される用語「オキソ」は、二価酸素原子を表す(例えば、オキソの構造は=Oと示され得る)。
【0080】
本明細書で使用される用語「医薬組成物」は、薬学的に許容できる賦形剤と共に製剤され、哺乳動物の疾患の治療のための治療レジメンの一部として政府規制当局の認可により製造又は販売される、本明細書に記載される化合物を含む組成物を表す。医薬組成物は、例えば、単位剤形(例えば、錠剤、カプセル、カプレット、ジェルキャップ、又はシロップ)での経口投与用に;外用投与用に(例えば、クリーム、ゲル、ローション、又は軟膏として);静脈内投与用に(例えば、粒状塞栓(particulate emboli)を含まず、静脈内使用に好適な溶媒系における滅菌溶液として);又は本明細書に記載されるあらゆる他の製剤において製剤できる。
【0081】
本明細書で使用される用語「薬学的に許容できる塩」は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応など無しにヒト及び動物の組織と接触して使用するのに好適で、妥当なベネフィット/リスク比に釣り合う塩を表す。薬学的に許容できる塩は当技術分野に周知である。例えば、薬学的に許容できる塩は、Berge et al.,J.Pharmaceutical Sciences 66:1-19,1977及びPharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use(Eds.P.H.Stahl and C.G.Wermuth),Wiley-VCH,2008中に記載されている。塩は、本明細書に記載される化合物の最終的な単離及び精製の間にインサイチュでも、遊離塩基基を好適な有機酸と反応させることにより別にも調製できる。代表的な酸付加塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、硫酸水素塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などがある。代表的なアルカリ又はアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど並びにアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンなどがあるがこれらに限定されない非毒性のアンモニウム、四級アンモニウム、及びアミンカチオンがある。
【0082】
本明細書で使用される用語「フェノール性酸素原子」は、フェノール性酸素原子の1つの原子価が第1の炭素原子に結合し、別の原子価が第2の炭素原子に結合し、第1の炭素原子がベンゼン環内のsp2-混成炭素原子であり、第2の炭素原子がsp3-混成炭素原子又はsp2-混成炭素原子である、化合物の構造内の二価酸素原子を指す。
【0083】
本明細書で使用される用語「保護基」は、ヒドロキシ、アミノ、又はカルボニルを、化学合成の間の1つ以上の望ましくない反応に参加することから保護するように意図された基を表す。本明細書で使用される用語「O保護基」は、ヒドロキシ又はカルボニル基を、化学合成の間の1つ以上の望ましくない反応に参加することから保護するように意図された基を表す。本明細書で使用される用語「N保護基」は、窒素含有(例えばアミノ又はヒドラジン)基を、化学合成の間の1つ以上の望ましくない反応に参加することから保護するように意図された基を表す。通常使用されるO及びN保護基は、参照により本明細書に組み込まれるGreene,“Protective Groups in Organic Synthesis,”3rd Edition(John Wiley & Sons,New York,1999)に開示されている。例示的なO及びN保護基としては、アルカノイル、アリーロイル、又はカルバミル基、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ピバロイル、t-ブチルアセチル、2-クロロアセチル、2-ブロモアセチル、トリフルオロアセチル、トリクロロアセチル、フタリル、o-ニトロフェノキシアセチル、α-クロロブチリル、ベンゾイル、4-クロロベンゾイル、4-ブロモベンゾイル、t-ブチルジメチルシリル、トリ-iso-プロピルシリルオキシメチル、4,4’-ジメトキシトリチル、イソブチリル、フェノキシアセチル、4-イソプロピルペヘノキシアセチル(isopropylpehenoxyacetyl)、ジメチルホルムアミジノ、及び4-ニトロベンゾイルなどがある。
【0084】
カルボニル含有基を保護する例示的なO保護基としては、アセタール、アシラール、1,3-ジチアン、1,3-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、及び1,3-ジチオランがあるが、これらに限定されない。
【0085】
他のO保護基としては、置換アルキル、アリール、及びアリール-アルキルエーテル(例えば、トリチル;メチルチオメチル;メトキシメチル;ベンジルオキシメチル;シロキシメチル;2,2,2,-トリクロロエトキシメチル;テトラヒドロピラニル;テトラヒドロフラニル;エトキシエチル;1-[2-(トリメチルシリル)エトキシ]エチル;2-トリメチルシリルエチル;t-ブチルエーテル;p-クロロフェニル、p-メトキシフェニル、p-ニトロフェニル、ベンジル、p-メトキシベンジル、及びニトロベンジル);シリルエーテル(例えば、トリメチルシリル;トリエチルシリル;トリイソプロピルシリル;ジメチルイソプロピルシリル;t-ブチルジメチルシリル;t-ブチルジフェニルシリル;トリベンジルシリル;トリフェニルシリル;及びジフェニメチルシリル(diphenymethylsilyl);カーボネート(例えば、メチル、メトキシメチル、9-フルオレニルメチル;エチル;2,2,2-トリクロロエチル;2-(トリメチルシリル)エチル;ビニル、アリル、ニトロフェニル;ベンジル;メトキシベンジル;3,4-ジメトキシベンジル;及びニトロベンジル)があるが、これらに限定されない。
【0086】
他のN保護基としては、アラニン、ロイシン、フェニルアラニンなどの保護又は未保護D、L、又はD,L-アミノ酸などの不斉補助剤;スルホニル含有基、例えば、ベンゼンスルホニル、p-トルエンスルホニルなど;カルバマート形成基、例えば、ベンジルオキシカルボニル、p-クロロベンジルオキシカルボニル、p-メトキシベンジルオキシカルボニル、p-ニトロベンジルオキシカルボニル、2-ニトロベンジルオキシカルボニル、p-ブロモベンジルオキシカルボニル、3,4-ジメトキシベンジルオキシカルボニル、3,5-ジメトキシベンジルオキシカルボニル、2,4-ジメトキシベンジルオキシカルボニル、4-メトキシベンジルオキシカルボニル、2-ニトロ-4,5-ジメトキシベンジルオキシカルボニル、3,4,5-トリメトキシベンジルオキシカルボニル、1-(p-ビフェニリル)-1-メチルエトキシカルボニル、α,α-ジメチル-3,5-ジメトキシベンジルオキシカルボニル、ベンズヒドリルオキシカルボニル、t-ブチルオキシカルボニル、ジイソプロピルメトキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、エトキシカルボニル、メトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、2,2,2,-トリクロロエトキシカルボニル、フェノキシカルボニル、4-ニトロフェノキシカルボニル、フルオレニル-9-メトキシカルボニル、シクロペンチルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、フェニルチオカルボニルなど、アリール-アルキル基、例えば、ベンジル、トリフェニルメチル、ベンジルオキシメチルなど、及びトリメチルシリルなどのシリル基があるが、これらに限定されない。有用なN保護基は、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、ピバロイル、t-ブチルアセチル、アラニル、フェニルスルホニル、ベンジル、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、及びベンジルオキシカルボニル(Cbz)である。
【0087】
本明細書で使用される用語「対象」は、対象由来の試料の当技術分野に公知である臨床試験と共に又は無しに、資格のある専門家(例えば、医師又は診療看護師)により決定される通り疾患、障害、又は病態を患っているか、又はそのリスクがあるヒト又は非ヒト動物(例えば哺乳動物)を表す。疾患、障害、及び病態の非限定的な例としては、本明細書に記載される代謝異常がある。
【0088】
本明細書で使用される用語「チオアルケニル」は、基-SRを表し、式中、Rはアルケニルである。任意選択で置換されているチオアルケニルは、アルケニルに関して本明細書に記載される通り任意選択で置換されているチオアルケニルである。
【0089】
本明細書で使用される用語「チオアルキル」は、基-SRを表し、式中、Rはアルキルである。任意選択で置換されているチオアルキルは、アルキルに関して本明細書に記載される通り任意選択で置換されているチオアルキルである。
【0090】
本明細書で使用される用語「チオアリール」は、基-SRを表し、式中、Rはアリールである。任意選択で置換されているチオアリールは、アリールに関して本明細書に記載される通り任意選択で置換されているチオアリールである。
【0091】
本明細書で使用される「治療」及び「治療すること」は、疾患、障害、又は病態を改善し、良くし、安定化し、予防し、又は治癒する目的の対象の医療管理を指す。この用語は、積極的治療(疾患、障害、又は病態を改善することを対象とする治療);原因治療(関連する疾患、障害、又は病態の原因を対象とする治療);待期療法(疾患、障害、又は病態の症状の緩和のために設計された治療);予防的治療(関連する疾患、障害、又は病態の発生を最低限にするか、又は部分的若しくは完全に阻害することを対象とする治療);及び支持的治療(別の療法を補うために利用される治療)を含む。
【0092】
本明細書に記載される化合物は、特に記載がない限り、同位体濃縮された化合物(例えば重水素化された化合物)、互変異性体、並びに全立体異性体及び配座異性体(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー、E/Z異性体、アトロプ異性体など)、並びにそのラセミ体及びエナンチオマー若しくはジアステレオマーの異なる比率の混合物、又は上記形態のいずれかの混合物、並びに塩(例えば、薬学的に許容できる塩)を包含する。
【0093】
本発明の他の特徴及び利点は、図面、詳細な説明、及び特許請求の範囲から明らかだろう。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【
図1A-1B】C57BL/6マウスの平均体重を経時的に示すチャートである。マウスは9個のコホートに分けられ、低脂肪餌又は高脂肪餌のいずれかを与えられた。LFDコホート中のマウスは低脂肪餌を与えられ、残りのコホート中のマウスは、高脂肪餌のみ(HFD)又は凡例中に示される追加成分と共に高脂肪餌を与えられた。
図1Bに示されるように、低脂肪餌又は化合物3を補った高脂肪餌のいずれかを与えられたマウスは、試験終了時に(第84日)高脂肪餌対照群に対して統計的に有意な体重減少を示した(p<0.05)。高脂肪餌を与えられ、セマグルチドにより処置されたマウスも、試験終了時に(第84日)高脂肪餌対照群に対して統計的に有意な体重減少を示した(p<0.05)。
図1Bにおいて、
*は、第10日~第66日でHFDに対してp<0.05を示し(n=9~12);
**は、第10日~第84日でHFDに対してp<0.05を示す(n=9~12)。
【
図1C-1D】同じC57BL/6マウスコホートによる摂餌量を経時的に示すチャートである。
図1C中のチャートは、試験の第80日で終了する。
図1D中のチャートは、試験全体(84日)のデータを与える。
【
図1E-1F】は、同じC57BL/6マウスコホートで測定された全血グルコースレベルを経時的に示すチャートである。
図1E中のチャートは試験の第80日で終了する。
図1F中のチャートは、試験全体(84日)のデータを与える。
【
図2A-2B】[
図2A]試験の第80日のC57BL/6マウスのグルコース負荷試験におけるグルコース負荷後のグルコースレベルを示すチャートである。 [
図2B]C57BL/6マウスのグルコース負荷試験で測定されたグルコース曲線下面積(AUC)を示すチャートである。アスタリスクは、HFDコホートに対する測定基準の統計的に有意な(p<0.05)減少を示す。
【
図3A-3B】[
図3A]試験の第72日のC57BL/6マウスのインスリン負荷試験におけるインスリン負荷後のグルコースレベルを示すチャートである。 [
図3B]C57BL/6マウスのインスリン負荷試験で測定されたグルコース曲線下面積(AUC)を示すチャートである。アスタリスクは、HFDコホートに対する測定基準の統計的に有意な(p<0.05)減少を示す。
【
図4A-4B】[
図4A]試験の第58日のC57BL/6マウスの空腹時グルコースレベルを示すチャートである。アスタリスクは、HFDコホートに対する測定基準の統計的に有意な(p<0.05)減少を示す。 [
図4B]試験の第58日のC57BL/6マウスの空腹時コレステロールレベルを示すチャートである。アスタリスクは、HFDコホートに対する測定基準の統計的に有意な(p<0.05)減少を示す。
【
図4C-4D】[
図4C]試験の第58日のC57BL/6マウスの空腹時高密度リポタンパク質(HDL)レベルを示すチャートである。アスタリスクは、HFDコホートに対する測定基準の統計的に有意な(p<0.05)減少を示す。 [
図4D]試験の第58日のC57BL/6マウスの空腹時低密度リポタンパク質(LDL)レベルを示すチャートである。アスタリスクは、HFDコホートに対する測定基準の統計的に有意な(p<0.05)減少を示す。
【
図4E】試験の第58日のC57BL/6マウスの空腹時中性脂肪レベルを示すチャートである。アスタリスクは、HFDコホートに対する測定基準の統計的に有意な(p<0.05)減少を示す。
【
図5A-5B】[
図5A]試験終了時のC57BL/6マウスの血清ALTレベルを示す棒グラフである。 [
図5B]試験終了時のC57BL/6マウスの血清ASTレベルを示す棒グラフである。
【
図6A-6B】[
図6A]試験終了時のC57BL/6マウスの非空腹時血清総コレステロールレベルを示す棒グラフである。 [
図6B]試験終了時のC57BL/6マウスの非空腹時血清総中性脂肪レベルを示す棒グラフである。
【
図6C-6D】[
図6C]試験終了時のC57BL/6マウスの非空腹時血清総HDLレベルを示す棒グラフである。 [
図6D]試験終了時のC57BL/6マウスの非空腹時血清総LDLレベルを示す棒グラフである。
【
図7A-7B】[
図7A]試験終了時のC57BL/6マウスの肝臓中性脂肪レベルを示す棒グラフである。 [
図7B]試験終了時のC57BL/6マウスの肝臓コレステロールレベルを示す棒グラフである。
【
図7C】試験終了時のC57BL/6マウスの肝重量を示す棒グラフである。
【
図8A-8B】[
図8A]試験終了時のC57BL/6マウスの皮下脂肪体重量(fat pad weight)を示す棒グラフである。 [
図8B]試験終了時のC57BL/6マウスの精巣上体脂肪体重量を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0095】
本発明は、アシル化された活性薬剤(例えば、アシル化されたヒドロキシ安息香酸、その薬学的に許容できる塩、又はそのエステル)、それらを含む組成物(例えば単位剤形として)、及び対象の代謝マーカーを調節する方法又は対象の代謝異常を治療する方法を提供する。理論により拘束されることは望まないが、本発明のアシル化された活性薬剤は、対象の微生物叢と共同で、又はその代わりに作用すると考えられる。
【0096】
本明細書に記載される通り、本発明の化合物は、意外にも、代謝マーカーを調節するか、又は代謝異常(例えば、肥満、II型糖尿病、糖尿病前症、インスリン抵抗性、代謝症候群、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化、又は高脂血症)を治療する優れた活性をインビボで示すことが観察された。驚くべきことに、アシル化されたヒドロキシ安息香酸(例えばジアセチルゲンチジン酸)の対象への投与が、対象が高脂肪食を摂取する場合でも、体重減少を誘導し、コレステロールレベルを低下させ、血糖レベルを低下させ、グルコース及びインスリン耐性を改善できることが見出された。驚くべきことに、アシル化されたヒドロキシ安息香酸(例えばジアセチルゲンチジン酸)の投与が、特定の他のアシル化された活性薬剤及びペプチド性のGLP-1ミミック(例えばセマグルチド)の投与に対して優れた活性を生み出すことが見出された。
【0097】
アシル化された活性薬剤の成分(例えば、ヒドロキシ安息香酸、例えばゲンチジン酸と組み合わせた短鎖脂肪酸アシル(例えばアセチル))は相乗的に作用して、例えば、アシル化された活性薬剤を受け取る対象の消化管内の加水分解時に、代謝マーカーを調節し得る。アシル化された活性薬剤の成分(例えば、ヒドロキシ安息香酸、例えばゲンチジン酸と組み合わせた短鎖脂肪酸アシル(例えばアセチル))は相乗的に作用して、例えば、アシル化されたヒドロキシ安息香酸(例えばジアセチルゲンチジン酸)を受け取る対象の消化管内の加水分解時に代謝異常を治療し得る。
【0098】
好都合には、本明細書に開示されるアシル化された活性薬剤は、優れた官能特性(例えば嗜好性)を有し得る。個別の成分(例えば、ヒドロキシ安息香酸、例えばゲンチジン酸と組み合わせた短鎖脂肪酸アシル(例えばアセチル))があまり望ましくない官能特性(例えば嗜好性)を示し得るので、これは、重要な利点を与える。改善された官能特性は経口投与を容易にし、高単位用量(例えば0.5g以上の単位用量)の送達に特に好都合である。
【0099】
アシル化された活性薬剤
本明細書に開示されるアシル化された活性薬剤は、アシル化されたヒドロキシ安息香酸、その薬学的に許容できる塩、又はそのエステルであり得る。
【0100】
アシル化されたヒドロキシ安息香酸は、例えば式(I)の化合物:
【化9】
又はその薬学的に許容できる塩であり得る
(式中、
nは、1、2、3、4、又は5であり;
各R
1は、独立に、H、アルキル、又はアシルであり;且つ
R
2は、H又はアルキルであり;
但し、化合物が少なくとも1つのアシル(例えば脂肪酸アシル)を含むことを条件とする)。
【0101】
アシル化されたヒドロキシ安息香酸は、例えば式(IA)の化合物:
【化10】
又はその薬学的に許容できる塩であり得る(式中、各R
1及びR
2は、独立に、アシル化されたヒドロキシ安息香酸に関して本明細書に記載される通りである)。
【0102】
アシル化されたヒドロキシ安息香酸の非限定的な例としてはゲンチジン酸があり、1又は2つのフェノール性ヒドロキシルが、独立に、アシルにより置換されている。例えば、アシル化されたヒドロキシ安息香酸は、例えば、
【化11】
又はその薬学的に許容できる塩であり得る。
【0103】
アシル化されたヒドロキシ安息香酸のいずれかを含む医薬組成物も本発明に含まれる。アシル化されたヒドロキシ安息香酸のいずれかを含む栄養補助食品も本発明に含まれる。アシル化されたヒドロキシ安息香酸のいずれかを含む食品製品も本発明に含まれる。
【0104】
方法
本明細書に記載されるアシル化された活性薬剤を使用して、それを必要とする対象の代謝異常又は非アルコール性脂肪性肝疾患が治療され得る。追加的に又はその代わりに、本明細書に記載されるアシル化された活性薬剤を使用して、それを必要とする対象における代謝マーカー又は非アルコール性脂肪性肝疾患マーカーが調節され得る。追加的に又はその代わりに、本明細書に記載されるアシル化された活性薬剤(例えば、アシル化されたヒドロキシ安息香酸、又はその薬学的に許容できる塩、又はそのエステル、例えば化合物3)を使用して、それを必要とする対象においてグルコース若しくはインスリン耐性が改善され、コレステロールレベル(好ましくは、LDLレベル)が低下し、又は血糖レベルが低下し得る。好都合には、コレステロールレベル(好ましくは、LDLレベル)の低下は、例えば、アシル化された活性薬剤を投与されない対象に対して、アシル化された活性薬剤(例えば、アシル化されたヒドロキシ安息香酸、又はその薬学的に許容できる塩、又はそのエステル、例えば化合物3)を投与された対象の冠動脈性心疾患の発生率を低下させ得る。コレステロールレベル(例えば、LDLレベル)と冠動脈性心疾患の発生率との関係は当技術分野に充分に認識されている(例えば、21 C.F.R.§101.75)。追加的に又はその代わりに、本明細書に記載されるアシル化された活性薬剤(例えば、アシル化されたヒドロキシ安息香酸、又はその薬学的に許容できる塩、又はそのエステル、例えば化合物3)を使用して、対象の健康体重が維持され得る。典型的には、健康体重は、25未満のボディマス指数に相当する。
【0105】
西洋型食事-高脂肪及び精製された炭水化物-は、肥満並びに代謝症候群、II型糖尿病、糖尿病前症、インスリン抵抗性、高コレステロール血症、及び高脂血症のリスクをもたらす体重増加と関連する。これらの食事の摂取は、脂肪組織及び肝臓中の脂肪の蓄積をもたらし得る。これにより、腸内マイクロバイオームの変化及び代謝異常と関連するマーカーの上昇がもたらされ得る。高感受性個体において、これらの食事により推進される変化は完全な糖尿病につながり得る。II型糖尿病は心血管疾患及び眼病を起こし得るが、それらは失明、末梢血管不全、心臓病、及び早期の死亡をもたらし得る。食事の変化は、ディスバイオシスと称される腸内マイクロバイオームの変化とも相関する。腸内ディスバイオシスを矯正することは、体重減少及び耐糖能の改善をもたらし得るが、それは、長期的に、不健康な食事の有害な効果の多くを妨げることが期待され得る。短鎖脂肪酸(SFCA)などのヒト腸内マイクロバイオームの代謝産物は、ヒト宿主に対して好都合な代謝効果を生み出し得る。いくつかの場合に、これらの分子は、短鎖脂肪酸受容体に結合することにより作用し得る。他の場合では、ペルオキシソーム増殖剤-活性化剤受容体γ(peroxisome proliferator-activator receptor gamma)(PPAR-γ)などの機構又はヒストンデアセチラーゼ(HDAC)の阻害により、利益が生み出され得る。
【0106】
それを必要とする対象の代謝異常を治療する方法は、アシル化された活性薬剤(例えば、アシル化された活性薬剤を含む医薬組成物又は機能性食品組成物)を、それを必要とする対象に投与することを含み得る。いくつかの実施形態において、アシル化された活性薬剤の成分(例えば、ヒドロキシ安息香酸、例えばゲンチジン酸と組み合わせた短鎖脂肪酸アシル(例えばアセチル))は相乗的に作用して、それを必要とする対象の代謝異常を治療し得る。
【0107】
代謝異常の非限定的な例としては、肥満、代謝症候群、II型糖尿病、糖尿病前症、インスリン抵抗性、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化、及び高脂血症がある。
【0108】
それを必要とする対象における代謝マーカーを調節する方法は、アシル化された活性薬剤(例えば、アシル化された活性薬剤を含む医薬組成物又は機能性食品組成物)を対象に投与することを含み得る。いくつかの実施形態において、アシル化された活性薬剤の成分(例えば、ヒドロキシ安息香酸、例えばゲンチジン酸と組み合わせた短鎖脂肪酸アシル(例えばアセチル))は相乗的に作用して、それを必要とする対象における代謝マーカーを調節し得る。
【0109】
それを必要とする対象におけるグルコース若しくはインスリン耐性を改善する方法、コレステロールレベルを低下させる方法、又は血糖レベルを低下させる方法は、アシル化された活性薬剤(例えば、アシル化された活性薬剤を含む医薬組成物又は機能性食品組成物)を対象に投与することを含み得る。いくつかの実施形態において、アシル化された活性薬剤の成分(例えば、ヒドロキシ安息香酸、例えばゲンチジン酸と組み合わせた短鎖脂肪酸アシル(例えばアセチル))は相乗的に作用して、それを必要とする対象における代謝マーカーを調節し得る。対象(例えば、それを必要とする対象)の健康体重を維持する方法は、アシル化された活性薬剤(例えば、アシル化された活性薬剤を含む医薬組成物又は機能性食品組成物)を対象に投与することを含み得る。いくつかの実施形態において、アシル化された活性薬剤の成分(例えば、ヒドロキシ安息香酸、例えばゲンチジン酸と組み合わせた短鎖脂肪酸アシル(例えばアセチル))は相乗的に作用して、それを必要とする対象における代謝マーカーを調節し得る。対象は、投与工程の前に、25を超えるBMIを有し得る。
【0110】
代謝マーカーの非限定的な例としては、肥満、II型糖尿病、糖尿病前症、インスリン抵抗性、代謝症候群、高コレステロール血症、及び高脂血症のマーカーがある。肥満マーカーとしては、例えば、総脂肪パーセンテージ、細胞脂肪過多、ボディマス指数、体重増加の速度、腹部脂肪量、皮下脂肪量、鼠径部脂肪量、精巣上体脂肪量、白色脂肪と褐色脂肪の比、脂質生成のレベル、及び脂肪貯蔵のレベルがある。それを必要とする対象への投与時に、本明細書に記載されるアシル化された活性薬剤は、総脂肪パーセンテージ、細胞脂肪過多、ボディマス指数、体重増加の速度、腹部脂肪量、白色脂肪と褐色脂肪の比、脂質生成のレベル、又は脂肪貯蔵のレベルを減少させ得る。II型糖尿病、糖尿病前症、インスリン抵抗性、代謝症候群、高コレステロール血症、及び高脂血症のマーカーとしては、例えば、インスリンレベル、GLP-1レベル、PYYレベル、血糖レベル、ヘモグロビンA1cレベル、耐糖能レベル、コレステロール(例えば、HDL又はLDL)レベル、及び血中中性脂肪レベルがある。それを必要とする対象への投与時に、本明細書に記載されるアシル化された活性薬剤は、インスリンレベル、GLP-1レベル、又はPYYレベルを増加させ得る。追加的に又はその代わりに、それを必要とする対象への投与時に、本明細書に記載されるアシル化された活性薬剤は、血糖レベル又はヘモグロビンA1cレベルを低下させ得る。追加的に又はその代わりに、それを必要とする対象への投与時に、本明細書に記載されるアシル化された活性薬剤は、対象の耐糖能を増加させ得る。追加的に又はその代わりに、それを必要とする対象への投与時に、本明細書に記載されるアシル化された活性薬剤は、血中コレステロール(例えば、LDL)レベルを低下させ得る。追加的に又はその代わりに、それを必要とする対象への投与時に、本明細書に記載されるアシル化された活性薬剤は、血中中性脂肪レベルを低下させ得る。いくつかの実施形態において、アシル化された活性薬剤の成分(例えば、ヒドロキシ安息香酸、例えばゲンチジン酸と組み合わせた短鎖脂肪酸アシル(例えばアセチル))は相乗的に作用して、例えば、アシル化された活性薬剤を受け取る対象の消化管内の加水分解時に、代謝マーカーを調節し得る。
【0111】
いくつかの実施形態において、方法は、対象を、健康体重範囲内に維持する。いくつかの実施形態において、対象が過体重又は肥満である場合、方法は、対象の体重を、例えば健康体重範囲に減少させる。
【0112】
いくつかの実施形態において、方法は、対象の総脂肪パーセンテージを、投与工程の前の対象の総脂肪パーセンテージに対して少なくとも1%(例えば、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、又は90%、例えば99%まで)減少させる。いくつかの実施形態において、方法は、対象の細胞脂肪過多を、投与工程の前の対象の細胞脂肪過多に対して少なくとも1%(例えば、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、又は90%、例えば99%まで)減少させる。いくつかの実施形態において、方法は、対象のボディマス指数を、投与工程の前の対象のボディマス指数に対して少なくとも1%(例えば、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%;例えば、60%、70%、又は80%まで)減少させる。いくつかの実施形態において、方法は、対象の体重増加の速度を、投与工程の前の対象の体重増加の速度に対して少なくとも1%(例えば、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は少なくとも98%以上;例えば99%又は100%まで)減少させる。いくつかの実施形態において、方法は、対象の白色脂肪と褐色脂肪の比を、投与工程の前の対象の白色脂肪と褐色脂肪の比に対して少なくとも1%(例えば、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、又は90%、例えば99%まで)減少させる。いくつかの実施形態において、方法は、対象の脂質生成のレベルを、投与工程の前の対象の脂質生成のレベルに対して少なくとも1%(例えば、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は少なくとも98%以上;例えば99%又は100%まで)減少させる。いくつかの実施形態において、方法は、対象の脂肪貯蔵のレベルを、投与工程の前の対象の脂肪貯蔵のレベルに対して少なくとも1%(例えば、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は少なくとも98%以上;例えば99%又は100%まで)減少させる。いくつかの実施形態において、方法は、対象の血中コレステロール(例えば、LDL)レベルを、投与工程の前の対象の血中コレステロール(例えば、LDL)レベルに対して少なくとも1%(例えば、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、又は60%;例えば、70%、80%、又は90%まで)減少させる。いくつかの実施形態において、方法は、対象のヘモグロビンA1cレベルを、投与工程の前の対象のヘモグロビンA1cレベルに対して少なくとも1%(例えば、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、又は60%;例えば、70%、80%、又は90%まで)減少させる。いくつかの実施形態において、方法は、対象の血中中性脂肪レベルを、投与工程の前の対象の血中中性脂肪レベルに対して少なくとも1%(例えば、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、又は60%;例えば、70%、80%、又は90%まで)減少させる。
【0113】
いくつかの実施形態において、方法は、対象のインスリンレベルを、投与工程の前の対象のインスリンレベルに対して少なくとも1%(例えば、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は少なくとも98%以上;例えば99%又は100%まで)増加させる。いくつかの実施形態において、方法は、対象のGLP-1レベルを、投与工程の前の対象のGLP-1レベルに対して少なくとも1%(例えば、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は少なくとも98%以上;例えば99%又は100%まで)増加させる。いくつかの実施形態において、方法は、対象のPYYレベルを、投与工程の前の対象のPYYレベルに対して少なくとも1%(例えば、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は少なくとも98%以上;例えば99%又は100%まで)増加させる。いくつかの実施形態において、方法は、対象の耐糖能を、投与工程の前の対象の耐糖能に対して少なくとも1%(例えば、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は少なくとも98%以上;例えば99%又は100%まで)増加させる。いくつかの実施形態において、方法は、対象の空腹時血糖レベルを、投与工程の前の対象の空腹時血糖レベルに対して少なくとも1%(例えば、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、又は40%;例えば50%まで)低下させる。いくつかの実施形態において、方法を、対象の上昇した空腹時血糖レベルを正常な空腹時血糖レベルに低下させる。
【0114】
本明細書に記載されるマーカーは、当技術分野に公知である方法を利用して測定され得る。例えば、耐糖能は、MedlinePlus(medlineplus.gov)に記載される経口グルコース負荷試験(OGTT)を使用して評価できる。この試験では、対象は所定量のグルコース(典型的には75gのグルコース)を含む液体を飲み、次いで、血糖値が、グルコース投与後の15分、30分、60分、90分、120分、150分、及び180分で測定される。インスリン感受性は、例えばFarrnnini and Mari,J.Hypertens.,16:895-906,1998に記載される通り、インスリンクランプを使用して測定できる。脂質生成は、例えばRabol et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.,108:13705-13709,2011に記載される通り、肝臓デノボ脂質生成試験を使用して測定できる。この試験は、重水素標識された水の投与の間の、血漿超低密度リポタンパク質中性脂肪(VLDL)への重水素の組込みを評価するものである。
【0115】
本明細書に開示されるアシル化された活性薬剤は、それを必要とする対象の非アルコール性脂肪性肝疾患(例えば、線維化を伴う/又は伴わない非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、脂肪肝、進行性線維化を伴うNASH)を治療する方法に使用され得る。追加的に又はその代わりに、本明細書に開示されるアシル化された活性薬剤は、それを必要とする対象の非アルコール性脂肪性肝疾患(例えば、非アルコール性脂肪性肝炎)マーカーを調節する方法に使用され得る。
【0116】
典型的には、NAFLD、例えばNASHを治療する方法又はNAFLDマーカー、例えばNASHマーカーを調節する方法は、それを必要とする対象(例えば、NAFLD、例えばNASHと診断されたか、又は患っている対象)への、本明細書に開示されるアシル化された活性薬剤の投与を含む。いくつかの実施形態において、アシル化された活性薬剤の成分(例えば、ヒドロキシ安息香酸、例えばゲンチジン酸と組み合わせた短鎖脂肪酸アシル(例えばアセチル))は相乗的に作用して、それを必要とする対象のNAFLD(例えば、NASH)を治療し得る。特定の実施形態において、アシル化された活性薬剤の成分(例えば、ヒドロキシ安息香酸、例えばゲンチジン酸と組み合わせた短鎖脂肪酸アシル(例えばアセチル))は相乗的に作用して、それを必要とする対象のNAFLDマーカーを調節し得る。
【0117】
いくつかの実施形態において、方法は、対象の血液中のアラニントランスアミナーゼのレベルを、投与工程の前の対象の血液中のアラニントランスアミナーゼのレベルに対して少なくとも1%(例えば、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は少なくとも98%以上;例えば99%又は100%まで)低下させる。本明細書に開示される特定の方法は、対象の血液中のアラニントランスアミナーゼのレベルを、対象(例えばヒト)にとって正常と考えられるレベルに低下させ得る;ヒト血液中のアラニントランスアミナーゼの正常なレベルは、典型的には7~56単位/Lである。特定の実施形態において、方法は、対象の血液中のアスパラギン酸トランスアミナーゼのレベルを、投与工程の前の対象の血液中のアスパラギン酸トランスアミナーゼのレベルに対して少なくとも1%(例えば、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は少なくとも98%以上;例えば99%又は100%まで)低下させる。本明細書に開示される特定の方法は、対象の血液中のアスパラギン酸トランスアミナーゼのレベルを、対象(例えばヒト)にとって正常であると考えられるレベルに低下させ得る;ヒト血液中のアスパラギン酸トランスアミナーゼの正常なレベルは、典型的には10~40単位/Lである。特定の実施形態において、方法は、対象の肝重量を、投与工程の前の対象の肝重量に対して少なくとも1%減少させる。
【0118】
医薬組成物及び機能性食品組成物
本明細書に開示される活性薬剤(例えば、アシル化されたヒドロキシ安息香酸、又はその薬学的に許容できる塩、又はそのエステル)は、インビボの投与に好適な生物学的に適合性のある形態でのヒト対象への投与のために医薬組成物又は機能性食品組成物に製剤され得る。医薬組成物及び機能性食品組成物は、典型的には、本明細書に記載される活性薬剤及び生理的に許容できる賦形剤(例えば、薬学的に許容できる賦形剤)を含む。機能性食品組成物は、例えば、本明細書に開示される活性薬剤(例えば、化合物3などのアシル化されたヒドロキシ安息香酸、その薬学的に許容できる塩、又はそのエステル)を含む栄養補助食品又は食品製品であり得る。
【0119】
本明細書に記載される活性薬剤は、遊離酸/塩基の形態、塩、双性イオンの形態、又は溶媒和物としても使用できる。全ての形態は本発明の範囲内にある。活性薬剤、塩、双性イオン、溶媒和物、又はその医薬組成物若しくは機能性食品組成物は、当業者により理解される通り、選択される投与経路に応じて種々の形態で対象に投与され得る。本明細書に記載される活性薬剤は、例えば、経口、非経口、頬側、舌下、鼻腔内、直腸、パッチ、ポンプ、又は経皮投与により投与され得て、医薬組成物又は機能性食品組成物はそれに応じて製剤される。非経口投与としては、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、経上皮、鼻腔内、肺内、髄腔内、直腸、及び外用の投与様式がある。非経口投与は、選択された期間にわたる連続的な注入によってもよい。
【0120】
ヒト使用のために、本明細書に開示される活性薬剤は、単独でも、意図される投与経路及び標準的な医薬慣例に関して選択される医薬品又は機能性食品担体と混合されても投与できる。そのため、本発明に従って使用するための医薬組成物及び機能性食品組成物は、本明細書に開示される活性薬剤の、薬学的に使用できる調製物への加工を促進する賦形剤及び補助剤を含む1種以上の生理的に許容できる担体を使用して従来の方法で製剤できる。
【0121】
本開示は、1種以上の生理的に許容できる担体を含み得る医薬組成物及び機能性食品組成物も含む。本発明の医薬組成物又は機能性食品組成物の製造時に、有効成分は、典型的には、賦形剤と混合され、賦形剤により希釈され、又は例えば、カプセル、分包、紙、若しくは他の容器の形態の担体内に包み込まれる。賦形剤が希釈剤として作用する場合、それは、固体、半固体、又は液体材料(例えば生理食塩水)であってよく、それは、有効成分のビヒクル、担体、又は媒体として作用する。そのため、組成物は、錠剤、散剤、ロゼンジ剤、分包、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ剤、並びにソフト及びハードゼラチンカプセルの形態であり得る。当技術分野に公知である通り、希釈剤の種類は、意図される投与経路に応じて変わり得る。生じた組成物は、追加の作用物質、例えば保存剤を含み得る。機能性食品組成物は、経腸的(例えば、経口的)に投与され得る。機能性食品組成物は、機能性食品経口製剤(例えば、錠剤、散剤、ロゼンジ剤、分包、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ剤、又はソフト又はハードゼラチンカプセル)、食品添加物(例えば、21 C.F.R.§170.3に定義される食品添加物)、食品製品(例えば、21 C.F.R.§105.3に定義される特別用途食品)、又は栄養補助食品[例えば、活性薬剤が、例えば、21 U.S.C.§321(ff)に定義される栄養成分である場合]であり得る。活性薬剤は、機能性食品用途において、及び食品添加物又は食品製品として使用できる。本発明の活性薬剤を含む組成物の非限定的な例は、バー、ドリンク、シェイク、パウダー、添加剤、ゲル、又はチュー(chew)である。
【0122】
賦形剤又は担体は、投与の様式及び経路に基づいて選択される。好適な医薬担体並びに医薬製剤に使用するための医薬的必需物は、この分野における周知の参照テキストであるRemington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Ed.,Gennaro,Ed.,Lippencott Williams & Wilkins(2005)及びUSP/NF(米国薬局方及び国民医薬品集)に記載されている。好適な賦形剤の例は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギナート、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、及びメチルセルロースである。製剤は、さらに、滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱油;湿潤剤;乳化剤及び懸濁化剤;保存剤、例えば、ヒドロキシ安息香酸メチル及びプロピル;甘味剤;並びに着香剤を含み得る。他の例示的な賦形剤は、Handbook of Pharmaceutical Excipients,6th Edition,Rowe et al.,Eds.,Pharmaceutical Press(2009)に記載されている。
【0123】
これらの医薬組成物及び機能性食品組成物は、従来の方法で、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、湿式粉砕(levigating)、乳化、カプセル化、封入、又は凍結乾燥プロセスにより製造できる。当技術分野に周知である製剤の製造方法は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Ed.,Gennaro,Ed.,Lippencott Williams & Wilkins(2005)及びEncyclopedia of Pharmaceutical Technology,eds.J.Swarbrick and J.C.Boylan,1988-1999,Marcel Dekker,New Yorkに見出される。適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。そのような組成物の製剤及び調製は、医薬製剤及び機能性食品製剤の当業者に周知である。製剤を調製する際に、活性薬剤を粉砕して、他の成分と合わせる前に適切な粒径を与えることができる。活性薬剤が実質的に不溶性である場合、それを、200メッシュ未満の粒径に粉砕できる。活性薬剤が実質的に水溶性である場合、粒径を粉砕により調整して、製剤中で、例えば約40メッシュの実質的に均一な分布を与えることができる。
【0124】
用量
本明細書に記載される方法に使用される活性薬剤、又はその薬学的に許容できる塩若しくはプロドラッグ、又はその医薬組成物若しくは機能性食品組成物の用量は、多くの因子、例えば、活性薬剤の薬力学的性質;投与様式;受容者の年齢、健康、及び体重;症状の性質及び程度;治療の頻度、及び併用療法がある場合その種類;並びに治療される対象における活性薬剤のクリアランス率に依存して変わり得る。当業者は、上記因子に基づいて適切な用量を決定できる。本明細書に記載される方法に使用される活性薬剤は、最初に好適な用量で投与され得て、それは臨床反応により必要に応じて調整され得る。一般に、本明細書に開示される活性薬剤の好適な1日量は、治療効果を生み出すのに有効な最低投与量である活性薬剤の量だろう。そのような有効な投与量は、一般的に上述の因子に依存するだろう。
【0125】
本明細書に開示される活性薬剤は、対象に、単回投与でも反復投与でも投与され得る。反復投与が投与される場合、投与量は、例えば、1~24時間、1~7日、又は1~4週間互いから分離され得る。活性薬剤はスケジュールに従って投与され得るか、又は活性薬剤は所定のスケジュールなしに投与され得る。特定の対象にとって、具体的な投与レジーム(dosage regimes)が、個別の必要性及び組成物を投与するか、又は組成物の投与を監督する人の専門的判断に従って経時的に調整されるべきであることが理解されるべきである。
【0126】
活性薬剤は単位剤形で提供され得る。いくつかの実施形態において、単位剤形は経口単位剤形(例えば、錠剤、カプセル剤、懸濁剤、液体溶液、粉末、結晶、ロゼンジ剤、分包、カシェ剤、エリキシル剤、シロップなど)又は食品製品一人分(例えば、活性薬剤は食品添加物又は栄養成分として含まれ得る)であり得る。特定の実施形態において、単位剤形は、本明細書に開示されるアシル化された活性薬剤の投与用に設計されるが、ここで、投与されるアシル化された活性薬剤の総量は、0.1g~10g(例えば、0.5g~9g、0.5g~8g、0.5g~7g、0.5g~6g、0.5g~5g、0.5g~1g、0.5g~1.5g、0.5g~2g、0.5g~2.5g、1g~1.5g、1g~2g、1g~2.5g、1.5g~2g、1.5g~2.5g、又は2g~2.5g)である。他の実施形態において、アシル化された活性薬剤は、1日あたり0.1g~10g(例えば、0.5g~9g、0.5g~8g、0.5g~7g、0.5g~6g、0.5g~5g、1日あたり0.5g~1g、1日あたり0.5g~1.5g、1日あたり0.5g~2g、1日あたり0.5g~2.5g、1日あたり1g~1.5g、1日あたり1g~2g、1日あたり1g~2.5g、1日あたり1.5g~2g、1日あたり1.5g~2.5g、又は1日あたり2g~2.5g)又はそれ以上の割合で摂取される。担当医は、最終的に、適切な量及び投与計画を決定し、本明細書に開示される有効量の活性薬剤は、例えば、本明細書に記載されるアシル化された活性薬剤のいずれかの、例えば0.5g~10g(例えば、0.5~5g)の総1日用量であり得る。或いは、用量は、対象の体重を使用して計算できる。好ましくは、1日用量は5g/日を超え、活性薬剤の用量は、1日あたり2又は3回の投与事象にわたり分割され得る。
【0127】
本発明の方法において、複数の投与量の本明細書に開示される活性薬剤が対象に投与される期間は変わり得る。例えば、いくつかの実施形態において、活性薬剤の投与量が、対象に、1~7日;1~12週間;又は1~3か月である期間にわたり投与される。他の実施形態において、活性薬剤は、対象に、例えば、4~11か月又は1~30年である期間にわたり投与される。さらに他の実施形態において、本明細書に開示される活性薬剤は、対象に、症状の発症時に投与される。これらの実施形態のいずれにおいても、投与される活性薬剤の量は、投与の期間の間に変わり得る。活性薬剤が毎日投与される場合、投与は、例えば、1日あたり1、2、3、又は4回起こり得る。
【0128】
製剤
本明細書に記載される活性薬剤は、単位剤形で、薬学的に許容できる希釈剤、担体、又は賦形剤と共に対象に投与され得る。投与は、対象が症状を示す前に始まり得る。
【0129】
本発明に使用される本明細書に開示される活性薬剤又はその医薬組成物若しくは機能性食品組成物の例示的な投与経路としては、経口、舌下、頬側、経皮、皮内、筋肉内、非経口、静脈内、動脈内、頭蓋内、皮下、眼窩内、心室内、髄腔内、腹腔内、鼻腔内、吸入、及び外用投与がある。活性薬剤は、望ましくは、生理的に許容できる担体(例えば薬学的に許容できる担体)と共に投与される。本明細書に記載される障害の治療のために製剤される本明細書に記載される活性薬剤の医薬製剤も本発明の一部である。いくつかの好ましい実施形態において、本明細書に開示される活性薬剤は対象に経口投与される。
【0130】
経口投与用の製剤
本発明により企図される医薬組成物及び機能性食品組成物は、経口投与用に製剤されたもの(「経口単位剤形」)を含む。経口単位剤形は、例えば、錠剤、カプセル、液体の溶液若しくは懸濁液、粉末、又は液体若しくは固体結晶の形態であり得て、それは、有効成分を、生理的に許容できる賦形剤(例えば薬学的に許容できる賦形剤)との混合物中に含む。これらの賦形剤は、例えば、不活性な希釈剤又は充填剤(例えば、スクロース、ソルビトール、糖、マンニトール、微結晶性セルロース、バレイショデンプンを含むデンプン、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、又はリン酸ナトリウム);造粒剤及び崩壊剤(例えば、微結晶性セルロースを含むセルロース誘導体、バレイショデンプンを含むデンプン、クロスカルメロースナトリウム、アルギナート、又はアルギン酸);結合剤(例えば、スクロース、グルコース、ソルビトール、アラビアゴム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デンプン、アルファ化デンプン、微結晶性セルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、又はポリエチレングリコール);並びに滑沢剤、流動促進剤、及び粘着防止剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、シリカ、水添植物油、又はタルク)であり得る。他の生理的に許容できる賦形剤(例えば薬学的に許容できる賦形剤)は、着色剤、着香剤、可塑剤、保水剤、緩衝剤などであり得る。
【0131】
経口投与用の製剤は、チュアブル錠として、有効成分が不活性な固体希釈剤(例えば、バレイショデンプン、ラクトース、微結晶性セルロース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、又はカオリン)と混合されているハードゼラチンカプセルとして、又は有効成分が、水若しくは油媒体、例えば、落花生油、流動パラフィン、若しくはオリーブ油と混合されているソフトゼラチンカプセルとしても呈され得る。粉末、粒質物(granulates)、及びペレットは、錠剤及びカプセルの項で上述された成分を使用して、例えば、ミキサー、流動床装置、又は噴霧乾燥装置を使用する従来の方法で調製され得る。
【0132】
経口使用のための制御放出組成物は、原薬の溶出及び/又は拡散を制御することにより実薬を放出するように構成され得る。いくつかの戦略のいずれも、制御放出及び目標とする血漿濃度対時間プロファイルを得るために遂行され得る。一例において、制御放出は、種々の製剤パラメーター並びに、例えば、様々な種類の制御放出組成物及びコーティングを含む成分の適切な選択により得られる。例としては、単一又は複数単位錠剤又はカプセル組成物、油溶液、懸濁液、乳液、マイクロカプセル、ミクロスフェア、ナノ粒子、パッチ、及びリポソームがある。特定の実施形態において、組成物は、生分解性、pH、及び/又は温度感受性ポリマーコーティングを含む。
【0133】
溶出又は拡散制御放出は、活性薬剤の錠剤、カプセル、ペレット、若しくは粒質物製剤の適切なコーティングにより、又は活性薬剤を適切なマトリックスに組み込むことにより達成できる。制御放出コーティングは、上述のコーティング物質、並びに/又は、例えば、シェラック、蜜蝋、グリコワックス(glycowax)、水添ヒマシ油、カルナバワックス、ステアリルアルコール、ステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、グリセロールパルミトステアレート、エチルセルロース、アクリル樹脂、dl-ポリ乳酸、酪酸酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセテート、ビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリメタクリラート、メチルメタクリラート、2-ヒドロキシメタクリラート、メタクリラートハイドロゲル、1,3ブチレングリコール、エチレングリコールメタクリラート、及び/若しくはポリエチレングリコールの1種以上を含み得る。制御放出マトリックス製剤において、マトリックス材料は、例えば、水和されたメチルセルロース、カルナバワックス及びステアリルアルコール、カーボポール934、シリコーン、トリステアリン酸グリセリル、メチルアクリラート-メチルメタクリラート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、並びに/又はハロゲン化フルオロカーボンも含み得る。
【0134】
本発明の活性薬剤及び組成物が経口投与のために組み込まれ得る液体形態としては、水溶液、好適に風味をつけたシロップ、水性又は油懸濁液、及び食用油、例えば、綿実油、ゴマ油、ヤシ油、又は落花生油を有する風味をつけた乳液、並びにエリキシル及び類似の医薬及び機能性食品ビヒクルがある。
【0135】
頬側投与用の製剤
頬側又は舌下投与のための用量は、典型的には、必要に応じ、単回投与あたり0.1~500mgである。実際には、医師が、個別の対象に最も好適な実際の投与レジメンを決定し、用量は、特定の対象の年齢、体重、及び応答により変わる。上記用量は平均的な場合の例示であるが、より高い又はより低い用量に値する(merited)個別の場合が存在し、そのようなものは本発明の範囲内にある。
【0136】
頬側投与では、組成物は、従来の方法で製剤された錠剤、ロゼンジ剤などの形態をとり得る。ネブライザー及び液体噴霧装置及び液体流体力学(EHD)エアゾール装置による使用に好適な液体薬物製剤は、典型的には、本明細書に開示される活性薬剤を、薬学的に許容できる担体と共に含むだろう。好ましくは、薬学的に許容できる担体は、液体、例えば、アルコール、水、ポリエチレングリコール、又はペルフルオロカーボンである。任意選択で、別の材料が加えられて、本明細書に開示される活性薬剤の液剤又は懸濁剤のエアゾール特性が変更され得る。望ましくは、この材料は、液体、例えば、アルコール、グリコール、ポリグリコール、又は脂肪酸である。エアゾール装置における使用に好適な液体薬物溶液又は懸濁液を製剤する他の方法は当業者に公知である(例えば、それぞれが参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,112,598号明細書及び米国特許第5,556,611号明細書を参照されたい)。
【0137】
鼻腔内又は吸入投与用の製剤
活性薬剤は、鼻腔内投与用にも製剤され得る。鼻腔内投与用の組成物は、簡便には、エアゾール剤、点滴剤、ゲル剤、及び散剤としても製剤され得る。製剤は、単一又は多投与量形態で提供され得る。点滴器又はピペットの場合、投薬は、対象が、適切な所定体積の液剤又は懸濁剤を投与することにより達成され得る。スプレーの場合、これは、例えば、定量噴霧スプレーポンプにより達成され得る。
【0138】
活性薬剤は、特に吸入による気道への、鼻腔内投与を含むエアゾール投与用にさらに製剤され得る。鼻腔内又は吸入投与用の活性薬剤は、一般的に、例えばおよそ5ミクロン以下の小さい粒径を有するだろう。そのような粒径は、当技術分野に公知である手段により、例えば微粉化により得られ得る。有効成分は、好適な噴射剤、例えば、クロロフルオロカーボン(CFC)、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、又はジクロロテトラフルオロエタン、若しくは二酸化炭素、又は他の好適なガスによる加圧されたパックで提供される。エアゾールは、簡便には、界面活性剤、例えばレシチンも含み得る。薬物の投与量は、定量バルブ(metered valve)により制御され得る。或いは、有効成分は、ドライパウダーの形態、例えば、好適な粉末基剤、例えば、ラクトース、デンプン、並びにデンプン誘導体、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリビニルピロリジン(PVP)中の活性薬剤のパウダーミックスで提供され得る。粉末担体は、鼻腔内でゲルを形成するだろう。粉末組成物は、単位投与量形態、例えば、例えばゼラチンのカプセル若しくはカートリッジ又はそこから粉末が吸入器により投与され得るブリスターパック中に呈され得る。
【0139】
エアゾール製剤は、典型的には、生理的に許容できる水性又は非水性溶媒中の活性物質の溶液又は微細な懸濁液を含み、通常、単一又は多投与量で、滅菌された形態で、霧化装置と共に使用するためのカートリッジ又はレフィルの形態をとり得る密封容器内に呈される。或いは、密封容器は、単位分注装置、例えば、使用後に廃棄されることが意図される単回投与鼻腔内吸入器又は定量バルブを備えたエアゾールディスペンサーであり得る。単位剤形がエアゾールディスペンサーを含む場合、それは噴射剤を含むだろうが、それは、圧縮ガス、例えば、圧縮空気又は有機噴射剤、例えば、フルオロクロロ炭化水素であり得る。エアゾール単位剤形は、ポンプアトマイザーの形態もとり得る。
【0140】
非経口投与用の製剤
本発明の方法に使用するための本明細書に記載される活性薬剤は、本明細書に記載される通り薬学的に許容できる非経口(例えば、静脈内又は筋肉内)製剤で投与できる。医薬製剤は、また、従来の非毒性で薬学的に許容できる担体及び補助剤を含む単位剤形又は製剤中で非経口(静脈内、筋肉内、皮下など)投与され得る。特に、非経口投与に好適な製剤としては、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、及び製剤を意図される受容者の血液と等張性にする溶質を含み得る水性及び非水性滅菌注射液;並びに懸濁化剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性滅菌懸濁液がある。例えば、そのような組成物を調製するために、本明細書に開示される活性薬剤は、非経口的に許容できる液体ビヒクル中に溶解又は懸濁され得る。利用され得る許容できるビヒクル及び溶媒の中には、水、適切な量の塩化水素酸、水酸化ナトリウム、又は好適な緩衝剤の添加により好適なpHに調整された水、1,3-ブタンジオール、リンゲル液、及び等張性塩化ナトリウム溶液がある。水性製剤は、1種以上の保存剤、例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、エチル、又はn-プロピルを含み得る。非経口製剤に関する追加の情報は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国薬局方-国民医薬品集(USP-NF)に見出され得る。
【0141】
非経口製剤は、USP-NFにより非経口投与に好適であると特定された5つの一般的種類の調製物のいずれでもあり得る:
(1)「薬物注射」:原薬(例えば、本明細書に開示される活性薬剤又はその溶液)である液体調製物;
(2)「注射用薬物」:薬物注射としての非経口投与のために適切な滅菌ビヒクルと合わされる乾燥固体としての原薬(例えば、本明細書に開示される活性薬剤);
(3)「薬物注射用乳液」:好適な乳液媒体に溶解又は分散される原薬(例えば、本明細書に開示される活性薬剤)の液体調製物;
(4)「薬物注射用懸濁液」:好適な液体媒体に懸濁される原薬(例えば、本明細書に開示される活性薬剤)の液体調製物;及び
(5)「注射用懸濁液用薬物」:薬物注射用懸濁液としての非経口投与のために適切な滅菌ビヒクルと合わされる乾燥固体としての原薬(例えば、本明細書に開示される活性薬剤)。
【0142】
非経口投与用の例示的な製剤としては、好適には界面活性剤、例えばヒドロキシプロピルセルロースと混合された水中に調製された活性薬剤の溶液がある。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、DMSO、及びアルコールを含むか又は含まないこれらの混合物中に、並びに油中に調製することもできる。通常の貯蔵及び使用条件下で、これらの調製物は、微生物の成長を防ぐ保存剤を含み得る。好適な製剤の選択及び調製のための従来の手順及び成分は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Ed.,Gennaro,Ed.,Lippencott Williams & Wilkins(2005)及び2013年に発行された米国薬局方:国民医薬品集(USP 36 NF31)に記載されている。
【0143】
非経口投与用の製剤は、例えば、賦形剤、滅菌水、若しくは塩水、ポリアルキレングリコール、例えば、ポリエチレングリコール、植物由来の油、又は水素化ナプタレン(napthalenes)を含み得る。生体適合性、生分解性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー、又はポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーを使用して、活性薬剤又は活性薬剤内の生物活性薬剤の放出が制御され得る。他の潜在的に有用な、活性薬剤の非経口送達系としては、エチレン-酢酸ビニルコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、埋込型輸液系、及びリポソームがある。吸入用の製剤は、賦形剤、例えばラクトースを含み得るか、又は例えば、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、グリココーレート及びデオキシコーレートを含む水溶液であり得るか、又は点鼻剤の形態で、若しくはゲルとしての投与用の油性溶液であり得る。
【0144】
非経口製剤は、活性薬剤の迅速な放出用にも、持続/延長放出用にも製剤できる。活性薬剤の非経口放出用の例示的な製剤としては、水溶液、再構成用散剤、共溶媒溶液、油/水乳液、懸濁液、油性溶液、リポソーム、ミクロスフェア、及びポリマー性ゲルがある。
【0145】
アシル化された活性薬剤の調製
アシル化された活性薬剤は、当技術分野に公知である合成方法及び反応条件を使用して調製され得る。最適な反応条件及び反応時間は、使用される反応物により変わり得る。特記されない限り、溶媒、温度、圧力、及び他の反応条件は当業者により選択され得る。
【0146】
エステル調製戦略1番(アシル化)
【化12】
スキーム1において、フェノール化合物、nが1~15の整数を表す化合物1が、アシル化剤、化合物2により、適切な溶媒中で、任意選択で触媒の存在下で処理される。好適な触媒としては、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリメチルアミンなどがある。触媒は、化合物2に対して0.01~1.1当量の範囲の量で使用できる。好適な溶媒としては、塩化メチレン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、トルエン、これらの組合せなどがある。反応温度は、-10℃から使用される溶媒の沸点の範囲である;反応完了時間は1~96時間の範囲である。好適なアシル化剤としては、塩化アシル、フッ化アシル、臭化アシル、対称的かどうかは問わないカルボン酸無水物がある。好適なアシル化剤は、カルボン酸と、EDC又はEEDQなどの活性化試薬との事前の反応によりインサイチュでも生成され得る。アシル化剤は、化合物1に対して0.5~15当量の範囲の量で使用できる。
【0147】
生成物、化合物3は、当業者に公知である方法により精製できる。
【0148】
エステル調製戦略2番(アシル化)
いくつかの場合に、フェノール化合物1は、エステル形成の過程で未反応のままであることが必要な官能基Yを含み得る。この場合、フェノール化合物中の官能基Yをアシル化から保護することが適切である。この官能基は、アミノ基又はヒドロキシル基又は不安定な水素がヘテロ原子に結合している他の官能基であり得る。そのようなフェノールエステルは、スキーム2に従って調製できる。
【化13】
【0149】
スキーム2工程1において、化合物1、保護が必要な不安定な水素を有する官能基Yを含むフェノール化合物は、BOC無水物、ベンジオキシカルボニル(benzyoxycarbonyl)クロリド、FMOCクロリド、臭化ベンジルなどの保護試薬により、適切な溶媒中で、任意選択で触媒の存在下で処理されて、化合物2スキーム2が提供される。化合物2は、当業者に公知である方法により精製できる。
【0150】
スキーム2工程2において、化合物2は、アシル化剤、化合物3により、適切な溶媒中で、任意選択で触媒の存在下で処理される。好適な触媒としては、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリメチルアミンなどがある。触媒は、化合物2に対して0.01~1.1当量の範囲の量で使用できる。好適な溶媒としては、塩化メチレン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、トルエン、これらの組合せなどがある。反応温度は、-10℃から使用される溶媒の沸点の範囲である;反応完了時間は1~96時間の範囲である。好適なアシル化剤としては、塩化アシル、フッ化アシル、臭化アシル、対称的であるかどうかを問わないカルボン酸無水物がある。好適なアシル化剤は、カルボン酸と、EDC又はEEDQなどの活性化試薬との事前の反応により、インサイチュでも生成され得る。アシル化剤は、化合物3に対して0.5~15当量の範囲の量で使用できる。化合物4は、当業者に公知である方法により精製できる。
【0151】
スキーム2工程3において、化合物4は、保護基PGを切断する条件に付される。
【0152】
BOC保護基の場合、化合物4の保護基は酸性条件下で除去されて、本発明の化合物5が与えられる。好適な酸としては、トリフルオロ酢酸、塩化水素酸、p-トルエンスルホン酸などがある。
【0153】
FMOC保護基の場合、化合物4の保護基は塩基性条件下で除去されて、本発明の化合物5が与えられる。好適な塩基としては、ピペリジン、トリエチルアミンなどがある。好適な溶媒としては、DMF、NMP ジクロロメタンなどがある。FMOC基は、DMFなどの好適な溶媒中のテトラブチルアンモニウムフルオリド三水和物による処理によるなど、非塩基性条件下でも除去される。FMOC基は、接触水素化によっても除去される。水素化のための好適な触媒としては、炭素担持10%パラジウム及び酢酸パラジウム(II)などがある。水素化のための好適な溶媒としては、DMF、エタノールなどがある。
【0154】
ベンジルオキシカルボニル又はベンジル保護基の場合、化合物4の保護基は水素化により除去されて、化合物5が与えられる。水素化のための好適な触媒としては、炭素担持10%パラジウム及び酢酸パラジウムなどがある。水素化のための好適な溶媒としては、DMF、エタノール、メタノール、酢酸エチルなどがある。生成物、化合物5は、当業者に公知である方法により精製できる。
【0155】
エステル調製戦略3番(アシル化)
【化14】
スキーム3工程1において、化合物1、保護を必要とする不安定な水素を有する官能基Yを含むアシル化合物は、BOC無水物、ベンジオキシカルボニルクロリド、FMOCクロリド、臭化ベンジルなどの保護試薬により、適切な溶媒中で、任意選択で触媒の存在下で処理されて、化合物2スキーム3が与えられる。化合物2は、当業者に公知である方法により精製できる。
【0156】
スキーム3工程2において、化合物2は、塩化チオニル、オキシ塩化リン、EDC又はEEDQなどの活性化試薬により処理されて、活性化されたアシル化合物3が生じる。
【0157】
スキーム3工程3において、フェノール化合物4は、活性化されたアシル化合物3により、適切な溶媒中で、任意選択で触媒の存在下で処理される。好適な触媒としては、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリメチルアミンなどがあり、化合物5が生じる。触媒は、化合物3に対して0.01~1.1当量の範囲の量で使用できる。好適な溶媒としては、塩化メチレン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、トルエン、これらの組合せなどがある。反応温度は、-10℃から使用される溶媒の沸点の範囲である;反応完了時間は1~96時間の範囲である。活性化されたアシル化合物3は、化合物4に対して0.5~15当量の範囲の量で使用できる。
【0158】
スキーム3工程4において、化合物5は、上記スキーム2に表される、保護基PGを切断するように設計された条件に付される。生成物、化合物6は、当業者に公知である方法により精製できる。
【0159】
エステル調製戦略4番(求核アルキル化)
【化15】
スキーム4工程1において、Rが芳香族部分又は非芳香族環式若しくは非環式部分を表すクロロホルマート化合物、化合物1は、適切な溶媒中で、R1が1つ以上の保護されたヒドロキシル基により任意選択で置換されているアルキル基を表し、Xが、任意選択でクロリドなどの1つ以上の対イオンにより配位されるCu、Zn、Mgなどの金属を表す有機金属化合物、化合物2により処理される。好適な溶媒としては、塩化メチレン、THF、アセトニトリル、トルエン、ジエチルエーテル、これらの組合せなどがある。反応温度は、-10℃から使用される溶媒の沸点の範囲である;反応完了時間は1~96時間の範囲である。生成物、化合物3は、当業者に公知である方法により精製できる。
【0160】
化合物1は、対応するアルコール又はポリオール化合物から、当業者によく知られている標準的な方法により調製できる。
【0161】
化合物2が、1つ以上の保護されたアルコール基により任意選択で置換されている場合、脱保護は、上記スキーム2に表される方法により達成される。
【0162】
当技術分野に公知であり、以下の実施例に表される方法による最初の生成物のさらなる修飾を利用して、さらなる本発明の化合物が調製され得る。
【0163】
エステル調製戦略5番(アシル化)
【化16】
スキーム5工程1において、化合物1、アシル化されるヒドロキシル基を含むアシル化合物は、臭化ベンジルなどの保護試薬により、適切な溶媒中で、任意選択で触媒の存在下で処理されて、化合物2スキーム5が与えられる。化合物2は、当業者に公知である方法により精製できる。
【0164】
スキーム5工程2において、化合物2は、アシル化剤により、適切な溶媒中で、任意選択で触媒の存在下で処理される。好適な触媒としては、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリメチルアミンなどがある。触媒は、化合物2に対して0.01~1.1当量の範囲の量で使用できる。好適な溶媒としては、塩化メチレン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、トルエン、これらの組合せなどがある。反応温度は-10℃から使用される溶媒の沸点の範囲である;反応完了時間は1~96時間の範囲である。好適なアシル化剤としては、塩化アシル、フッ化アシル、臭化アシル、対称的であるかどうかを問わないカルボン酸無水物がある。好適なアシル化剤は、カルボン酸と、EDC又はEEDQなどの活性化試薬との反応により、インサイチュでも生成され得る。アシル化剤は、化合物1に対して0.5~15当量の範囲の量で使用できる。
【0165】
スキーム5工程3において、化合物3は保護基PGを切断する条件に付される。ベンジル保護基の場合、化合物3の保護基は水素化により保護されて、化合物4が与えられる。水素化のための好適な触媒としては、炭素担持10%パラジウム及び酢酸パラジウムなどがある。水素化のための好適な溶媒としては、DMF、エタノール、メタノール、酢酸エチルなどがある。生成物、化合物4は、当業者に公知である方法により精製できる。
【0166】
スキーム5工程4において、化合物4は、塩化チオニル、オキシ塩化リン、EDC又はEEDQなどの活性化試薬により処理されて、活性化されたアシル化合物5が生じる。
【0167】
スキーム5工程5において、Rが芳香族又は脂肪族の環式又は非環式コアを表すポリ-ヒドロキシル化合物、化合物6は、活性化されたアシル化合物5により、適切な溶媒中で、任意選択で触媒の存在下で処理される。好適な触媒としては、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリメチルアミンなどがあり、化合物5が生じる。触媒は、化合物3に対して0.01~1.1当量の範囲の量で使用できる。好適な溶媒としては、塩化メチレン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、トルエン、これらの組合せなどがある。反応温度は、-10℃から使用される溶媒の沸点の範囲である;反応完了時間は1~96時間の範囲である。活性化されたアシル化合物5は、化合物6に対して0.5~15当量の範囲の量で使用できる。
【0168】
生成物、化合物7は、当技術分野に公知である方法により精製できる。
【0169】
以下の実施例は本発明を説明するものとする。それらは、決して本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0170】
実施例1.例示的なアシル化された活性薬剤の調製
化合物1
【化17】
6つの反応を並行して実施した。ミリセチン(330g、1.04mol、1.0当量)のAc
2O(2L)溶液に、AcONa(681g、8.30mol、8.0当量)を加えた。懸濁液を80℃で6時間撹拌した。TLC(石油エーテル/酢酸エチル=2/1、R
f=0.7)は反応が完了したことを示した。6つの反応物を後処理のために合わせた。反応溶液を氷水(30L)に注ぎ、2時間撹拌すると沈殿物を与え、それを濾過により回収した。粗生成物を酢酸エチル(10L)により25℃で1時間トリチュレートした。懸濁液を濾過し、フィルターケーキを減圧下で乾燥させると、化合物1(2.0kg、収率56.4%)を白色の固体として与えた。
1H NMR:(400MHz,CDCl
3)δ 7.62(s,2H),7.34(d,J=2.0Hz,1H),6.88(d,J=3.2Hz,1H),2.44(s,3H),2.37(s,3H),2.35(s,3H),2.34(s,3H),2.33(s,6H)ppm.
【0171】
化合物2
【化18】
D-タガトース(200g、1.11mol、1.0当量)のピリジン(1.6L)溶液に、Ac
2O(1.13kg、11.1mol、1.04L、10当量)を、-10℃で、N
2下で滴加した。添加の後に、懸濁液を25℃で16時間撹拌した。TLC(石油エーテル/酢酸エチル=2/1、R
f=0.45)は反応が完了したことを示した。反応溶液を氷水(5.0L)に注ぎ、次いでEtOAc(3.0L、2.0L)で抽出した。合わせた有機層を、HCl(1.0M、1.0L×2)、ブライン(1.0L)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮すると残渣を与えた。残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO
2、石油エーテル/酢酸エチル=10/1~1/1)により精製すると、化合物2(100g、256mmol、収率23.1%)を白色の固体として与えた。
1H NMR:(400MHz,CDCl
3)δ 5.47(d,J=3.6Hz,1H),5.35(dd,J=10.4,3.2Hz,1H),5.22-5.29(m,1H),4.80(d,J=12.0Hz,1H),4.42(d,J=12.0Hz,1H),4.11(dd,J=11.2,6.0Hz,1H),3.51(t,J=10.8Hz,1H),2.17(s,3H),2.14(s,3H),2.06(s,3H),2.03(s,3H),2.01(s,3H)ppm.
【0172】
化合物3
【化19】
5つの反応を並行して実施した。ピリジン(3.0L)中のゲンチセート(500g、3.24mol、1.0当量)の懸濁液に、Ac
2O(729g、7.14mol、668mL、2.2当量)を、-10℃で、N
2下で滴加した。懸濁液を25℃で16時間撹拌した。TLC(石油エーテル/酢酸エチル=3/1、R
f=0.5)は反応が完了したことを示した。5つの反応物を後処理のために合わせた。反応溶液を氷水混合物(7.0L)に注ぎ、次いでEtOAc(3.0L、2.0L)で抽出した。合わせた有機層を1M HCl(2.0L)で2回洗浄した。次いで、有機相をブライン(2.0L)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮すると残渣を与えた。残渣をMTBE(3体積)により25℃で2時間トリチュレートした。懸濁液を濾過し、フィルターケーキを回収し、減圧下で乾燥させると、化合物3(2.0kg、8.40mol、収率51.8%)を白色の固体として与えた。
1H NMR:(400MHz,DMSO-d
6)δ 13.9(s,1H),7.67(d,J=2.8Hz,1H),7.41(dd,J=8.4,2.8Hz,1H),7.25(d,J=8.8Hz,1H),2.28(s,3H),2.25(s,3H)ppm.
【0173】
化合物4
【化20】
D-キシロース(500g、3.33mol、1.0当量)のAc
2O(4L)溶液に、AcONa(273g、3.33mol、1.0当量)を加えた。添加後に、生じた懸濁液を80℃で6時間撹拌した。TLC(石油エーテル/酢酸エチル=5/1、R
f=0.75)は反応が完了したことを示した。4つの並行した反応物を後処理のために合わせた。反応溶液を氷水(30L)に注ぎ、2時間撹拌した。充分な固体が沈殿し、濾過により回収した。残渣を、H
2O(10.0L)により25℃で3時間トリチュレートした。懸濁液を濾過し、フィルターケーキを回収し、減圧下で乾燥させると、化合物4(2.0kg、収率47.2%)を白色の固体として与えた。
1H NMR:(400MHz,CDCl
3)δ 5.71(d,J=7.2Hz,1H),5.20(t,J=8.0Hz,1H),4.97-5.05(m,2H),4.14(dd,J=12.0,4.8Hz ,1H),3.53(q,J=12.0Hz,1H),2.11(s,3H),2.06(s,3H),2.05(s,6H)ppm.
【0174】
化合物5
【化21】
8つの反応を並行して実施した。クェルセチン(300g、992mmol、1.00当量)のピリジン(1.60L)溶液に、酢酸アセチル(1.52kg、14.9mol、1.39L、15.0当量)を0℃で滴加した。添加後に、混合物を25℃で16時間撹拌した。TLC(ジクロロメタン/メタノール=10/1、R
f=0.63)は、クェルセチンの完全な消費を示した。8つの反応混合物を合わせ、氷水(w/w=1/1、24.0L)に注ぎ、1時間撹拌した。懸濁液を濾過すると、黄色の固体を与えた。固体を真空下で乾燥させ、別のバッチの化合物5(300g)と合わせた。合わせた粗生成物をMeCN(10.0L)に溶解させ、65℃に加熱した。EtOH(12.0L)を65℃で滴加し、次いで、懸濁液を65℃で1時間撹拌した。白色固体が形成し、濾過した。フィルターケーキをEtOH(2.00L)ですすぎ、回収して、真空下で乾燥させると(40℃、-0.09MPa)、化合物5(2005g、3.91mol、全体の収率39.3%)を白色の固体として与えた。
1H NMR(400MHz,CDCl
3):δ 7.68-7.73(m,2H),7.33-7.36(m,2H),6.87(d,J=2.0Hz,1H),2.43(s,3H),2.33-2.34(m,12H)ppm.
【0175】
実施例2.マウス脂肪細胞脂肪分解アッセイ
マウス3T3-L1細胞をATCCから得て、10%新生仔ウシ血清(NCS)及びペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)を含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で、37℃で、5%CO2を有するインキュベーター内で培養した。いったん細胞がコンフルエントになると、それらを組織培養処理済み96ウェルプレートに播種した。次いで、10%ウシ胎児血清、P/S、IBMX、デキサメタゾン、及びインスリンを含むDMEMを使用することにより、分化を開始させた。14日間の分化の後、細胞を、対象とする化合物により処理した。処理の24時間後、細胞生存率を、PromegaのCellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assayを使用して評価し、脂肪分解を、ZenBioのLipolysis Assay Kitを使用して決定した。どの処理も、細胞生存率に対して著しい作用を有さなかった(DMSO対照の90%超)。
【0176】
【0177】
表1は、遊離脂肪酸及びグリセロールの放出を減少させた化合物を列記する(+、++、又は+++)。白色脂肪組織の脂肪分解速度は、インスリン抵抗性及び脂肪肝を含む代謝機能不全と関連する。脂肪細胞の脂肪分解を低下させる化合物は、インスリン感受性の改善及び脂肪肝の減少を含む代謝機能を改善し得て、そのため、糖尿病(例えば、糖尿病前症又はII型糖尿病)、肥満、及び高脂血症を有する対象の転帰を改善し得る。
【0178】
実施例3.マウス筋細胞脂肪分解アッセイ
細胞をATCCから得て、20%ウシ胎児血清及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で、37℃で、5%CO2を有するインキュベーター内で培養した。いったん細胞がコンフルエントになると、それらを組織培養処理済み96ウェルプレートに播種した。翌日に、2%ウマ血清と共にDMEMを含む培地を使用して分化を開始させた。いったん細胞が完全に分化すると、それらを、表2に列記される化合物により処理した。
【0179】
【0180】
表2は、グリセロールの放出を減少させたものを含む試験された化合物を列記する(+、++、又は+++)。筋中性脂肪の脂肪分解速度は、インスリン抵抗性及び脂肪肝を含む代謝機能不全と関連する。脂肪細胞の脂肪分解を低下させる化合物は、インスリン感受性の改善及び脂肪肝の減少を含む代謝機能を改善し得て、そのため、糖尿病(例えば、糖尿病前症又はII型糖尿病)肥満、及び高脂血症を有する患者の転帰を改善し得る。
【0181】
実施例4.代謝異常のためのアシル化されたヒドロキシ安息香酸のインビボ評価
本明細書に開示されるアシル化された活性薬剤は、代謝マーカーの調節において、及び代謝異常の治療に有用であり得る。本明細書に開示されるアシル化された活性薬剤は、また、NAFLDマーカーの調節において、及びNAFLD(例えばNASH)の治療に有用であり得る。本実施例は、例示的なアシル化された活性薬剤、化合物3及び4が対象の体重減少を誘導し、代謝マーカーを改善する(例えば、耐糖能を改善する)能力を示す。
【0182】
C57BL/6マウスを、表3に列記される通り9つのコホートに分けた。
【0183】
【0184】
動物は、試験全体で、餌及び飲料水に自由にアクセスできた。動物を定期的に体重測定し、餌及び飲料水消費をモニターした。血漿及び糞便試料を、試験の開始時及び試験開始後42日で回収した。さらなる血液を、空腹マウスから試験開始後58日に採取した。インスリン負荷試験を試験開始後72又は73日に実施した。およそ4時間の絶食後に、0.5単位/kgインスリンを腹腔内投与した。血液を、インスリン負荷前(t=0)及びインスリン負荷後t=15、30、60、90、及び120分で回収した。経口グルコース負荷試験を試験開始後79又は80日に実施した。およそ4時間の絶食後、2g/kgグルコースを強制経口投与した。血液を、インスリン負荷前(t=0)及びグルコース負荷後t=15、30、60、90、及び120分で回収した。試験終了時に、体重、摂餌量、血糖、血清ALTレベル、血清ASTレベル、血清コレステロール(総コレステロール、HDL、及びLDLレベル)、血清中性脂肪レベル、肝臓中性脂肪レベル、肝臓コレステロールレベル、肝重量、皮下を全マウスで測定した。
【0185】
これらの試料及び試験を使用して、疾患メーカー(makers)を測定した。
【0186】
本試験の結果を、
図1A、1B、1C、1D、1E、1F、2A、2B、3A、3B、4A、4B、4C、4D、4E、5A、5B、6A、6B、6C、6D、7A、7B、7C、8A、及び8Bに表す。
【0187】
図1A、1B、1C、1D、1E、及び1Fは、HFD+化合物3コホートの動物が、高脂肪餌を与えられているにもかかわらず、著しい食欲抑制なしに、体重減少したことを示す。HFD+化合物3コホートの動物の体重は、LFDコホートの動物の体重と区別がつかなかった。
【0188】
図2A及び2Bは、HFD+化合物3コホートの動物の耐糖能がHFDのみのコホートの動物の耐糖能を超えることを示す。
【0189】
図3A及び3Bは、HFD+化合物3コホートの動物のインスリン耐性がHFDのみのコホートの動物のインスリン耐性を超えることを示す。
【0190】
図4A、4B、4C、4D、及び4Eは、試験の第58日の試験された動物の、それぞれ、空腹時グルコースレベル、空腹時コレステロールレベル、空腹時高密度リポタンパク質(HDL)レベル、空腹時低密度リポプロプテイン(lipoproptein)(LDL)レベル、及び空腹時中性脂肪レベルを示す。これらの図中の1つのアスタリスクは、HFDのみコホートに対する試験コホートの代謝マーカーレベルの統計的に有意な低下の観察を示す。特に、
図4A、4B、及び4Dは、本発明の化合物が、HFDのみコホートと比べた場合、空腹時グルコース、コレステロール、及びLDLレベルを低下させることができることを示す。
【0191】
図5A及び5Bは、試験終了時の試験された動物の血清ALT及びASTレベルを示す。アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)は肝臓酵素である。ALT及びASTの上昇したレベルは代謝症候群及び肝臓創傷などの病状と関連している。そのため、
図5A及び5Bは、HFD+化合物3コホートの動物が、HFD対照群の動物に対して著しく改善した肝機能を有したことを示す。
【0192】
図6A、6B、6C、及び6Dは、LFDコホートの動物に対して、HFDコホートの動物における総コレステロールレベルが上昇したことを表す。これらの図は、HFD+化合物3コホートの動物が、試験終了時に、HFDコホートの動物に対して著しく改善した総コレステロール及びLDLレベルを有したことも示す。
【0193】
図7A、7B、及び7Cは、試験されたマウス由来の肝臓の特性を与える。肝重量、中性脂肪レベル、及びコレステロールレベルは、肝機能及び脂質代謝を示す。
【0194】
図8A及び8Bは、LFD及びHFD+化合物3コホートのマウスが、HFD対照コホートのマウスより著しく低い(p<0.05)脂肪蓄積を有したことを表す。
【0195】
本試験の結果は、例示的なアシル化された活性薬剤(例えばアシル化されたヒドロキシ安息香酸、例えば化合物3)が、対象の体重減少を誘導し、代謝マーカー(例えば、耐糖能、インスリン耐性、及びコレステロールレベル)を改善できることを示す。
【0196】
他の実施形態
記載される発明の種々の改変体及び変形体は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱せずに当業者に明らかであろう。本発明は、具体的な実施形態に関連して説明されてきたが、請求項に記載される本発明が、そのような具体的な実施形態に不当に限定されるべきでないことが理解されるべきである。実際に、当業者に明らかである、本発明を実施するための記載される方式の種々の改変体は、本発明の範囲内にあるものとする。
【0197】
他の実施形態は特許請求の範囲の中にある。
【国際調査報告】