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特表2023-504582生物学的物質の同定及び/又はトレーサビリティを提供するための方法及び組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-03
(54)【発明の名称】生物学的物質の同定及び/又はトレーサビリティを提供するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/63 20060101AFI20230127BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20230127BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20230127BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20230127BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230127BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230127BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230127BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230127BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20230127BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20230127BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20230127BHJP
   G16B 30/00 20190101ALI20230127BHJP
【FI】
C12N15/63 Z
C12Q1/6876 Z ZNA
C12Q1/6869 Z
C12N7/01
C12N5/10
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N15/11 Z
C12Q1/686 Z
C12M1/34 Z
G16B30/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022556695
(86)(22)【出願日】2020-11-26
(85)【翻訳文提出日】2022-07-22
(86)【国際出願番号】 CA2020051622
(87)【国際公開番号】W WO2021102579
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】62/940,587
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522206434
【氏名又は名称】インデックス バイオシステムズ インク.
【氏名又は名称原語表記】INDEX BIOSYSTEMS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】ボルグ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】フリードバーグ ジェレミー エヌ.
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB01
4B029BB20
4B029FA15
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA18
4B063QQ05
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR62
4B063QS05
4B063QS10
4B063QS14
4B063QS28
4B063QX01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA87X
4B065AA95X
4B065AB01
4B065BA01
4B065CA23
4B065CA46
(57)【要約】
生物学的物質の同定及び/又はトレーサビリティを提供するための方法及び組成物を本明細書において提供する。特定の実施形態では、生物学的実体のゲノムDNAにおける少なくとも1つの特有識別子配列の配列を決定するステップと、ゲノムDNAにおける特有識別子配列の存在を立証し、特有識別子配列の配列をデータベースと比較して特有性を確認することにより、生物学的実体の同定を検証するステップと、生物学的実体から生物学的物質を生産した妥当性の指標を提供するステップと、特有識別子配列をデータベースのデータベースエントリに入力し、特有識別子配列を同定及び/又は追跡情報と関連づけるステップとを含み、これによって、特有識別子配列を読み取り、対応するデータベースエントリを取得して同定及び/又は追跡情報を得ることにより、トレーサビリティを提供する、方法を提供する。また、生物学的物質の同定及び/又はトレーサビリティを提供するためのオリゴヌクレオチド、カセット及び組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的物質を同定するための方法であって、
前記生物学的物質由来のゲノムDNAを含む試料を、受領又は提供するステップと、
前記生物学的物質由来のゲノムDNA内の少なくとも1つのDNA特有識別子配列を増幅し、前記DNA特有識別子配列をシーケンシングするステップと、
データベースにおいて前記DNA特有識別子配列を検索し、前記DNA特有識別子配列と対応するデータベースエントリを取得するステップであって、前記データベースエントリによって生物学的物質の同定及び/又は追跡情報を提供する、ステップと
を含む、前記方法。
【請求項2】
生物学的物質が、植物由来物質、真菌由来物質、動物由来物質、ウイルス由来物質、又は細菌由来物質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
生物学的物質のトレーサビリティを提供するための方法であって、
生物学的実体のゲノムDNA内の少なくとも1つのDNA特有識別子配列の配列を決定するステップと、
前記ゲノムDNAにおける前記DNA特有識別子配列の存在を立証し、前記DNA特有識別子配列の配列をデータベースと比較して前記DNA特有識別子配列が前記データベースにおいて未だ使用されていないことを確認することにより、前記生物学的実体の同定を検証するステップと、
前記生物学的実体から生物学的物質を生産することの妥当性の指標を提供するステップであって、前記生物学的物質が、前記生物学的実体由来のゲノムDNAを含む、ステップと、
少なくとも1つの前記DNA特有識別子配列の配列をデータベースの前記データベースエントリに入力し、前記DNA特有識別子配列を前記生物学的物質の同定及び/又は追跡情報と関連づけるステップと
を含み、これによって、前記生物学的物質における前記DNA特有識別子配列を読み取り、対応する前記データベースエントリを取得して前記生物学的物質の前記同定及び/又は追跡情報を提供することにより、前記生物学的物質のトレーサビリティを提供する、前記方法。
【請求項4】
少なくとも1つのDNA特有識別子配列を生物学的実体のゲノムDNA内に挿入するステップ、又は生物学的実体のゲノムDNA内の既に存在する識別子配列を遺伝子編集により修飾して、前記生物学的実体の前記ゲノムDNA内にDNA特有識別子配列を生成するステップをさらに含み、これによって、前記生物学的実体の同定をもたらす、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
生物学的実体のゲノムDNA内への挿入のための少なくとも1つのDNA特有識別子配列を用意するステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
生物学的物質が、植物由来物質、真菌由来物質、動物由来物質、ウイルス由来物質、又は細菌由来物質を含む、請求項3~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
生物学的実体が、植物細胞、真菌細胞、動物細胞、ウイルス又は細菌細胞を含む、請求項3~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
生物学的実体から生物学的物質を生産するステップが、前記生物学的実体を増殖させるステップを含む、請求項3~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
DNA特有識別子配列が、DNA特有識別子配列のランダム化したプール由来のものである、請求項3~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
生物学的物質におけるDNA特有識別子配列を読み取り、対応するデータベースエントリを取得するステップが、
前記生物学的物質由来のゲノムDNAを含む試料を、受領又は提供するステップと、
前記生物学的物質由来のゲノムDNA内の少なくとも1つのDNA特有識別子配列を増幅し、前記DNA特有識別子配列をシーケンシングするステップと、
前記DNA特有識別子配列をデータベースと比較し、前記DNA特有識別子配列と対応する前記データベースエントリを取得するステップであって、前記データベースエントリによって前記生物学的物質の同定及び/又は追跡情報を提供する、ステップと
を含む、請求項3~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
DNA特有識別子配列が、ゲノムDNAの遺伝子間領域内に挿入した特有のヌクレオチド配列を含む、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
DNA特有識別子配列が、最大約1500ntの長さ、最大約1000ntの長さ、約200nt~約600ntの長さ、約200nt~約400ntの長さ、又は約400nt~約600ntの長さの配列を含む、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
DNA特有識別子配列が、前記DNA特有識別子配列のPCR増幅、前記DNA特有識別子配列のシーケンシング、又はこの両方のための1又は2以上のプライマーアニーリング配列に隣接する、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
生物学的物質が、食品を含む、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
データベースエントリの同定及び/又は追跡情報が、生物学的物質のサプライチェーン情報を含む、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
データベースエントリの同定及び/又は追跡情報が、生物学的物質の出所情報を含む、請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
データベースエントリの同定及び/又は追跡情報が、栽培者、地域、バッチ、ロット、日付、若しくは他の関連するサプライチェーン情報、又はこれらの任意の組合せを含む、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
DNA特有識別子配列のPCR増幅、DNA特有識別子配列のシーケンシング、又はこの両方のための1又は2以上のプライマーアニーリング配列に隣接するDNA特有識別子配列を含むカセットを、ゲノムDNA内に組み入れる、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
DNA特有識別子配列が、最大約1500ntの長さ、最大約1000ntの長さ、約200nt~約600ntの長さ、約200nt~約400ntの長さ、又は約400nt~約600ntの長さの核酸配列のランダム化したプールに由来するランダム配列である、請求項1~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
DNA特有識別子配列のPCR増幅、DNA特有識別子配列のシーケンシング、又はこの両方のための1又は2以上のプライマーアニーリング配列に隣接するDNA特有識別子配列を含む、オリゴヌクレオチド。
【請求項21】
DNA特有識別子配列が、最大約1500ntの長さ、最大約1000ntの長さ、約200nt~約600ntの長さ、約200nt~約400ntの長さ、又は約400nt~約600ntの長さのランダム配列を含む、請求項20に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項22】
請求項20又は21に記載のオリゴヌクレオチドを含むカセット。
【請求項23】
請求項20若しくは21に記載のオリゴヌクレオチド又は請求項22に記載のカセットをそのゲノム内に組み入れた細胞若しくはウイルス。
【請求項24】
DNA特有識別子配列をそのゲノム内に組み入れた細胞又はウイルス。
【請求項25】
DNA特有識別子配列をそのゲノムDNAの遺伝子間領域内に組み入れた、請求項23又は24に記載の細胞又はウイルス。
【請求項26】
細胞が、植物細胞、真菌細胞、動物細胞、又は細菌細胞である、請求項23~25のいずれかに記載の細胞若しくはウイルス。
【請求項27】
DNA特有識別子配列、
DNA特有識別子配列のランダム化したプール、
請求項20若しくは21に記載のオリゴヌクレオチド、
請求項22に記載のカセット、
DNA特有識別子配列を増幅及び/若しくはシーケンシングするための1若しくは2以上のプライマー対、
緩衝液、
ポリメラーゼ、又は
請求項1~19のいずれかに記載の方法を実施するための説明書
のいずれか1又は2以上を含む
キット。
【請求項28】
生物学的物質を同定する方法であって、
コンピュータデバイスにおいて、既知の生物学的物質から抽出したDNA特有識別子配列(DUID)を受領するステップと、
前記コンピュータデバイスにおいて、複数のDUIDをそれぞれの生物学的物質情報と関連づけて記憶するDUIDデータベースを検索して、受領した前記DUIDと適合させるステップと、
前記DUIDデータベースの検索により、受領した前記前記DUIDと適合させることができなかった場合、前記DUIDデータベースに、受領した前記DUIDを、既知の前記生物学的物質と関連する生物学的物質情報と関連づけて記憶するステップと、
受領した前記DUID及び既知の前記生物学的物質と関連する情報を前記DUIDデータベースに記憶するステップの後に、前記コンピュータデバイスにおいて、未知の生物学的物質から抽出したクエリDUIDを受領するステップと、
前記コンピュータデバイスにおいて、前記DUIDデータベースを検索して、受領した前記クエリDUIDと適合させるステップと、
前記DUIDの検索により、受領した前記クエリDUIDと適合させることができた場合、受領した前記クエリDUIDに応答して、前記クエリDUIDと適合するDUIDと関連づけて記憶した生物学的情報を返すステップと
を含む、前記方法。
【請求項29】
DUIDデータベースを検索して、受領したDUIDと適合させるステップが、
前記DUIDデータベースを検索して、受領した前記DUIDと完全に適合させるステップと、
完全な適合が見出されない場合、受領した前記DUIDとほぼ適合する前記DUIDデータベースに記憶したDUIDに対してアラインメント/同一性検索を実施するステップと
を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
DUIDデータベースを検索して、クエリDUIDと適合させるステップが、
DUIDデータベースを検索して、クエリDUIDと完全に適合させるステップと、
完全な適合が見出されない場合、前記クエリDUIDとほぼ適合する前記DUIDデータベースに記憶したDUIDに対してアラインメント/同一性検索を実施するステップと
を含む、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
検索により、クエリDUIDとほぼ適合させることができた場合、前記クエリDUIDを、前記クエリDUIDとほぼ適合するDUIDと関連づけて記憶するステップ
をさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
生物学的物質を同定するためのコンピュータシステムであって、
命令を実行することが可能なプロセシングユニット、及び
前記プロセシングユニットで実行した場合、請求項28~31のいずれかに記載の方法を実施するように前記コンピュータシステムを構成する、命令を記憶するメモリユニット
を備える、前記コンピュータシステム。
【請求項33】
その上に命令を記憶したコンピュータ可読メモリであって、コンピュータシステムのプロセシングユニットで実行した場合、請求項28~31のいずれかに記載の方法を実施するように前記システムを構成する、前記コンピュータ可読メモリ。
【請求項34】
生物学的物質を同定するための方法であって、
前記生物学的物質由来のゲノムDNAを含む試料を受領又は提供するステップと、
前記生物学的物質由来の前記ゲノムDNA内の少なくとも1つのDNA特有識別子配列を増幅し、前記DNA特有識別子配列をシーケンシングするステップと、
前記DNA特有識別子配列に記憶した前記生物学的物質の同定及び/又は追跡情報を復号又は解読するステップと
を含む、前記方法。
【請求項35】
生物学的物質のトレーサビリティを提供するための方法であって、
生物学的実体のゲノムDNA内の少なくとも1つのDNA特有識別子配列の配列を決定するステップと、
前記ゲノムDNAにおける前記DNA特有識別子配列の存在を立証し、前記DNA特有識別子配列に記憶した同定及び/又は追跡情報を復号又は解読して前記DNA特有識別子配列を立証することにより、前記生物学的実体の同定を検証するステップと、
前記生物学的実体から生物学的物質を生産した妥当性の指標を提供するステップであって、前記生物学的物質が、前記生物学的実体由来のゲノムDNAを含む、ステップと
を含み、これによって、前記生物学的物質における前記DNA特有識別子配列を読み取り、前記DNA特有識別子配列に記憶した情報を復号又は解読して前記生物学的物質の同定及び/又は追跡情報を提供することにより、前記生物学的物質のトレーサビリティを提供する、前記方法。
【請求項36】
生物学的物質を同定する方法であって、
コンピュータデバイスにおいて、未知の生物学的物質から抽出したDNA特有識別子配列(DUID)を受領するステップと、
前記DNA特有識別子配列に記憶した未知の前記生物学的物質の同定及び/又は追跡情報を復号又は解読するステップと
を含む、前記方法。
【請求項37】
DNA特有識別子配列を含むカセットであって、前記DNA特有識別子配列が、前記DNA特有識別子配列の増幅、前記DNA特有識別子配列のシーケンシング、又はこの両方のための、少なくとも1つの5’プライマーアニーリング配列、及び少なくとも1つの3’プライマーアニーリング配列に隣接する、前記カセット。
【請求項38】
DNA特有識別子配列が、ネステッドPCRによりDNA特有識別子配列の増幅が可能となるように、2つの5’プライマーアニーリング配列、及び2つの3’プライマーアニーリング配列に隣接する、請求項37に記載のカセット。
【請求項39】
2つの5’プライマーアニーリング配列が部分的にオーバーラップしているか、2つの3’プライマーアニーリング配列が部分的にオーバーラップしているか、又はこの両方である、請求項38に記載のカセット。
【請求項40】
DNA特有識別子配列のシーケンシングのための、前記DNA特有識別子配列に対して5’に位置するシーケンシングプライマーアニーリング配列をさらに含む、請求項37~39のいずれかに記載のカセット。
【請求項41】
シーケンシングプライマーアニーリング配列が、2つの5’プライマーアニーリング配列間に位置する、請求項40に記載のカセット。
【請求項42】
シーケンシングプライマーアニーリング配列が、2つの5’プライマーアニーリング配列の一方又は両方と少なくとも部分的にオーバーラップする、請求項41に記載のカセット。
【請求項43】
2つの5’プライマーアニーリング配列が、部分的にオーバーラップし、シーケンシングプライマーアニーリング配列の少なくとも一部分が、前記オーバーラップに位置する、請求項41に記載のカセット。
【請求項44】
カセット配列が、最大約1500ntの長さ、最大約1000ntの長さ、約200nt~約600ntの長さ、約200nt~約400ntの長さ、又は約400nt~約600ntの長さである、請求項37~43のいずれかに記載のカセット。
【請求項45】
プライマーアニーリング配列が、標的生物学的実体のゲノムに天然に存在しない、請求項37~44のいずれかに記載のカセット。
【請求項46】
請求項37~45のいずれかに記載の複数のカセットを含む組成物であって、各カセットが、同一のプライマーアニーリング配列を含み、各カセットが、ランダム化したDNA特有識別子配列を含む、前記組成物。
【請求項47】
請求項40~43のいずれかに記載の複数のカセットを含む組成物であって、各カセットが、同一のプライマーアニーリング配列、及び同一のシーケンシングプライマーアニーリング配列を含み、各カセットが、ランダム化したDNA特有識別子配列を含む、前記組成物。
【請求項48】
生物学的物質のトレーサビリティを提供するための方法であって、
少なくとも1つのDNA特有識別子配列を生物学的実体のゲノムDNA内に挿入して、前記生物学的物質の調製において使用するステップ
を含む、前記方法。
【請求項49】
DNA特有識別子配列を、請求項37~45のいずれかに記載のカセットとして挿入する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
生物学的実体のゲノムDNA内の少なくとも1つのDNA特有識別子配列の配列を決定するステップをさらに含む、請求項48又は49に記載の方法。
【請求項51】
ゲノムDNAにおけるDNA特有識別子配列の存在を立証し、前記DNA特有識別子配列の配列をデータベースと比較して前記DNA特有識別子配列が前記データベースにおいて未だ使用されていないことを確認することにより、生物学的実体の同定を検証するステップをさらに含む、請求項48~50のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
生物学的実体から生物学的物質を生産するステップであって、前記生物学的物質が、前記生物学的実体由来のゲノムDNAを含む、ステップ、及び/又は
前記生物学的実体から前記生物学的物質を生産することの妥当性の指標を提供するステップであって、前記生物学的物質が、前記生物学的実体由来のゲノムDNAを含む、ステップ
をさらに含む、請求項48~51のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
少なくとも1つのDNA特有識別子配列の配列をデータベースエントリに入力し、前記DNA特有識別子配列を生物学的実体及び/又は生物学的物質の同定及び/又は追跡情報と関連づけるステップをさらに含む、請求項48~52のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
生物学的実体及び/又は生物学的物質におけるDNA特有識別子配列を読み取り、対応するデータベースエントリを取得して前記生物学的実体及び/又は前記生物学的物質の同定及び/又は追跡情報を提供することにより、前記生物学的実体及び/又は前記生物学的物質のトレーサビリティを提供するステップ
をさらに含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
請求項20~21のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド、又は請求項22、37~44及び45のいずれかに記載のカセットを含むプラスミド若しくは発現ベクター。
【請求項56】
目的の生産物のトレーサビリティを提供するための方法であって、
前記目的の生産物由来の試料を受領又は提供するステップであって、前記試料が、前記目的の生産物の一部であるか、前記目的の生産物と混合されているか、又はさもなければ前記目的の生産物と関連する生物学的物質由来のゲノムDNAを含む、ステップと、
前記生物学的物質由来のゲノムDNA内の少なくとも1つのDNA特有識別子配列を増幅し、前記DNA特有識別子配列をシーケンシングするステップと、
データベースにおいて前記DNA特有識別子配列を検索し、前記DNA特有識別子配列と対応するデータベースエントリを取得するステップであって、前記データベースエントリによって前記目的の生産物の同定及び/又は追跡情報を提供する、ステップと
を含む、前記方法。
【請求項57】
生物学的物質を、目的の生産物に導入又は追加するステップであって、前記生物学的物質が、少なくとも1つのDNA特有識別子配列を、このゲノム物質の一部として含む、ステップを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
データベースエントリの同定及び/又は追跡情報が、目的の生産物のサプライチェーン情報を含む、請求項56又は57に記載の方法。
【請求項59】
目的の生産物が、食品、農産物、医薬品、小売製品、織物、物品、化学物質、又は別のサプライチェーン品目を含む、請求項56~58のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、生物学的物質の同定及び/又は追跡に関する。より詳細には、本発明は、核酸を使用する生物学的物質の同定及び/又は追跡のための方法及び薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
食品システムの流通効率及び生産高は、前例のないレベルに達した。この発展は、コスト削減及び多様性の形で公衆に大きな利益をもたらしているが、公衆衛生、産業及び技術革新に対してリスクとなる重大な欠陥が残存している。トレーサビリティは、このような課題を効率的に運営し、管理するための主要な技術のうちの1つである。
【0003】
現在の食品及び飲料のトレーサビリティシステムの限界は、汚染(contamination)イベントによって主に露呈されている。このようなイベントが生じた場合、影響された生産物を出所(source-of-origin)まで追跡するのに数カ月かかり得る。クローン的に増殖させた生産物では、これらが遺伝的変異を欠くため、出所の同定に対するさらなる課題が加えられ得る。また、既存のトレーサビリティ・ベストプラクティスを、サプライチェーン全体で順守することが求められるため、転換され、品目を混合した生産物は、出所の同定に対して問題となり得る。このような生産物を迅速かつ廉価に追跡する能力における欠陥は、消費者の安全に対する顕著なリスクを提起し、出資者にとって重大な経済的損失を生じさせ、結果として、影響を受ける産業の評価に対して深刻な損害となっている。
【0004】
2015年に、世界保健機関(WHO)は、食品媒介疾患の世界的負担を推定する10年に及ぶ構想を完了した。この構想により、「...食品媒介疾患の世界的負担...は、2010年には3,300万DALY(95%UI、2,500万~4,600万DALY)であり、食品媒介疾患による負担の40%が、5歳未満の小児におけるものであった」(p.11)ことが明らかになった(WHO, Foodborne Disease Burden Epidemiology Reference Group. 2015. WHO Estimates of the Global Burden of Foodborne Diseases. Retrieved from https://academicanswers.waldenu.edu/faq/73164)。DALYは、障害調整生存年数の略語である。これは、健康的な生活が失われた年数であると考えられ得る。この調査により作成された推定は、データの欠落により十分ではなかった。調査監視及び研究室の能力の改善が、さらに正確な推定に必要とされるものとして認められていた。調査監視の必要性は、発生源帰属調査団(SATF)によりさらに明らかとされた。
【0005】
SATFは、この構想のために委任された多数の専門調査団に属する。これらの指令は、疾患伝播に対する特定の帰属点の作用を推定することであった。図1(出典WHO、2015, p.101)では、主な帰属点を例示する(WHO, Foodborne Disease Burden Epidemiology Reference Group. 2015. WHO Estimates of the Global Burden of Foodborne Diseases. Retrieved from https://academicanswers.waldenu.edu/faq/73164)。この調査の準拠集団であるFERGは、この調査目的のために、最も単純な帰属点が伝播鎖の末端、すなわち、ヒトとの接触であると判定した。この単純性は、既存のトレーサビリティ事例の限界の特性である。また、FERGは、リスク管理のためには他の帰属点、例えば、一次生産が、さらに適切であり得ることを認める(p.100)(WHO, Foodborne Disease Burden Epidemiology Reference Group. 2015. WHO Estimates of the Global Burden of Foodborne Diseases. Retrieved from https://academicanswers.waldenu.edu/faq/73164)。FERGは、貯蔵所レベルの帰属に対する調査監視を望ましいものとして同定する。
【0006】
食品及び飲料のサプライチェーンにおける食品トレーサビリティのための現代の技術は、栽培者の収穫により、又は生産施設内で典型的に始まる。生産物は、ケースレベルで追跡することが多く、ケースは、多くの品目を含む。物理的バーコードを各品目に貼付する場合もある。グローバルトレードアイテム番号(GTIN)及びグローバルロケーション番号(GLN)は、ケースと理想的に関連する。出荷梱包シリアル番号(SSCC)は、パレット、すなわち、ケースの収集毎に作成し得る。このようなトレーサビリティ技術は、標準により典型的に規定し、生鮮食品では、これはGS1標準であることが多い。パレットによってサプライチェーンを進行するため、バーコード上に見出される上述の識別子は、重大追跡イベント(CTE)について記録されたキーデータ要素(KDE)と組み合わせて使用する。CTEには、栽培者から梱包業者/出荷業者に対して生産物の配置を記載する場合がある。各サプライチェーン出資者が生産物を追跡可能であるべきことを示唆する、一般に使用される格言「one-step forward and one-step back(一進一退)」が存在する。残念ながら、この要件は、多くの点で不適切であることが判明した。
【0007】
食品品目が販売点に達すると、これは、異なる生産者の他の品目に転換されているか又はこれらと混じり合っている場合、例えば、フルーツサラダのような場合がある。多くは、品目が元々のケース、又は、品目レベルの識別子から分離すると、生産者まで品目を遡ることが不可能であることが多い。最近のロメインレタスにおける感染症の大流行に見られるように、出所情報を有しなかったため、大部分が米国南西部において生産されていても、調査者が汚染源を特定するのに1カ月以上かかった(FDA, 2019, p. 1)(FDA. (2019). Investigation Summary: Factors Potentially Contributing to the Contamination of Romaine Lettuce Implicated in the Fall 2018 Multi-State Outbreak of E. coli O157:H7. Retrieved from https://www.fda.gov/media/120722/download )。結果として、FDAは、「... 葉物野菜が潜在的リコール又は感染症の大流行に関与する場合、全葉物野菜サプライチェーンに、トレーサビリティ・ベストプラクティス及び最先端技術を採用して、農場から食卓へのキーデータ要素の迅速、正確かつ容易なアクセスを確実とする」よう促した(FDA, 2019, p. 8)(FDA. (2019). Investigation Summary: Factors Potentially Contributing to the Contamination of Romaine Lettuce Implicated in the Fall 2018 Multi-State Outbreak of E. coli O157:H7. Retrieved from https://www.fda.gov/media/120722/download )。この感染症の大流行と関連するコストは、未だに補償されていない。しかし、汚染イベントは、他にも周知である。
【0008】
2006年以来のホウレンソウのリコールは、26州において5件の死亡及びおよそ200件の致命的な病気と関連していた。これにより、およそ5億ドルの経済的損失が生じた(GS1, 2013, p. 3)(GS1 US. (2013). Integrated Traceability in Fresh Foods: Ripe Opportunity for Real Results. Retrieved from https://www.gs1us.org/DesktopModules/Bring2mind/DMX/Download.aspx?Command=Core_Download&EntryId=598)。さらに一般には、「...食品を媒介する病気が1年に4,800万人に影響し、毎年1,520億ドルの医療費を米国が負担することとなるため、政府機関はまた、最近の食品リコールの健康及び経済的影響に対する懸念を示した」(GS1, 2013, p. 2)(GS1 US. (2013). Integrated Traceability in Fresh Foods: Ripe Opportunity for Real Results. Retrieved from https://www.gs1us.org/DesktopModules/Bring2mind/DMX/Download.aspx?Command=Core_Download&EntryId=598)。種子から販売までの追跡として理解することが可能な全チェーントレーサビリティは、リコールされた生産物の総量を、Frontera Produce社のコリアンダーのリコールのケースの12%に削減することが見出された。McKinsey社は、リコールの精度における25%の向上により、生鮮食品産業にとって毎年2億5,000万~2億7,500万ドルの節減となることを見出した(GS1, 2013, p. 10)(GS1 US. (2013). Integrated Traceability in Fresh Foods: Ripe Opportunity for Real Results. Retrieved from https://www.gs1us.org/DesktopModules/Bring2mind/DMX/Download.aspx?Command=Core_Download&EntryId=598)。
【0009】
全チェーントレーサビリティは、品目レベルの同定の効率的な形態を欠いており、出所についての保証を欠いていた。品目レベルの同定のための既存の方法は、物理的焼付け(レーザー)、無線周波数識別子(RFID)及びバーコーディング、すなわち、外部の物理的識別子に典型的に依存する。このような技術と関連するスケーリングの課題が、なお存在する。各品目は、物理的識別子を必要とし、この生産と関連するコストがかかる。加えて、これらの使用に内在する読取りエラーのリスク及び/又は悪質な改ざんのリスク、例えば、ステッカーが剥がれ落ちるか又は除去されるリスクが存在する。
【0010】
食品汚染、例えば、食品供給に影響する大腸菌(E. coli)及び/又はサルモネラ菌(salmonella)汚染は、公衆衛生に対する脅威であり、汚染源(複数可)を同定し、食い止めるための迅速な措置が非常に望ましい。食品供給において生産物のトレーサビリティを増強するための信頼でき、コスト効率が高く、及び/又は迅速な戦略に対する、当分野において長年にわたる満たされない必要性が存在する。生物学的実体及び/又は生物学的物質のトレーサビリティは、農業及び食品産業において望ましいだけでなく、それらを含むか又はそれらに由来する、生物学的実体及び/又は生物学的物質を扱う多種多様な産業及び分野においても求められている。
【0011】
生物学的実体及び/又は生物学的物質の同定及び/又はトレーサビリティを提供するための代替的、追加的及び/又は改良した方法及び/又は組成物が望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】WHO, Foodborne Disease Burden Epidemiology Reference Group. 2015. WHO Estimates of the Global Burden of Foodborne Diseases. Retrieved from https://academicanswers.waldenu.edu/faq/73164
【非特許文献2】FDA. (2019). Investigation Summary: Factors Potentially Contributing to the Contamination of Romaine Lettuce Implicated in the Fall 2018 Multi-State Outbreak of E. coli O157:H7. Retrieved from https://www.fda.gov/media/120722/download
【非特許文献3】GS1 US. (2013). Integrated Traceability in Fresh Foods: Ripe Opportunity for Real Results. Retrieved from https://www.gs1us.org/DesktopModules/Bring2mind/DMX/Download.aspx?Command=Core_Download&EntryId=598
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
生物学的物質の同定及び/又はトレーサビリティを提供するための方法及び組成物を本明細書において提供する。特定の実施形態では、本明細書に記載する方法において、生物学的実体から生産され、これに由来するゲノムDNAを含む、生物学的実体及び/又は生物学的物質を含む、生物学的実体及び/又は生物学的物質の同定及び/又はトレーサビリティを提供するために、生物学的実体のゲノム内に外因的に導入する、特有の識別子配列(本明細書においてDNA特有識別子配列[DNA unique identifier sequence]とも呼ぶ)を利用し得る。特定の実施形態では、特有識別子配列は、配列のランダム化したプール由来であり得る。特定の実施形態では、データベースは、対応する同定及び/又は追跡情報との特有識別子配列の関連を維持し得る。また、生物学的物質の同定及び/又はトレーサビリティの提供における使用のための、1又は2以上の特有識別子配列を含む、オリゴヌクレオチド構築物及びカセットを本明細書において提供する。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチド構築物及び/又はカセットは、特有識別子配列(複数可)の増幅、特有識別子配列(複数可)のシーケンシング、又はこの両方のためであり得る、プライマーアニーリング配列(複数可)の特定の配列を含み得る。特定の実施形態では、本明細書において記載する方法及び組成物は、食品トレーサビリティを提供するために使用してもよく、例えば、汚染イベントにおける迅速な対応及び/又は食品のリコールが可能となり得る。
【0014】
実施形態では、生物学的物質を同定するための方法であって、
生物学的物質由来のゲノムDNAを含む試料を受領又は提供するステップと、
生物学的物質由来のゲノムDNA内の少なくとも1つのDNA特有識別子配列を増幅し、DNA特有識別子配列をシーケンシングするステップと、
データベースにおいてDNA特有識別子配列を検索し、DNA特有識別子配列と対応するデータベースエントリを取得するステップであって、データベースエントリによって生物学的物質の同定及び/又は追跡情報を提供する、ステップと
を含む、方法を本明細書において提供する。
【0015】
上の方法の別の実施形態では、生物学的物質は、植物由来物質(plant-based material)、真菌由来物質(fungus-based material)、動物由来物質(animal-based material)、ウイルス由来物質(virus-based material)、又は細菌由来物質(bacterial-based material)を含み得る。
【0016】
特定の実施形態では、生物学的物質は、真菌由来物質を含み得る。特定の実施形態では、生物学的物質は、酵母を含み得る。特定の実施形態では、酵母は、胞子形成していてもよい(すなわち、生物学的物質は、酵母胞子を含み得る)。特定の実施形態では、酵母は、同定及び/又は追跡が望ましい生産物、例えば、食品成分又は食品生産物に追加、混合、又はさもなければ関連し得る。
【0017】
別の実施形態では、生物学的物質のトレーサビリティを提供するための方法であって、
生物学的実体のゲノムDNA内の少なくとも1つのDNA特有識別子配列の配列を決定するステップと、
ゲノムDNAにおけるDNA特有識別子配列の存在を立証し、DNA特有識別子配列の配列をデータベースと比較してDNA特有識別子配列がデータベースにおいて未だ使用されていないことを確認することにより、生物学的実体の同定を検証するステップと、
生物学的実体から生物学的物質を生産することの妥当性の指標を提供するステップであって、生物学的物質が、生物学的実体由来のゲノムDNAを含む、ステップと、
少なくとも1つのDNA特有識別子配列の配列をデータベースのデータベースエントリに入力し、DNA特有識別子配列を生物学的物質の同定及び/又は追跡情報と関連づけるステップと
を含み、これによって、生物学的物質におけるDNA特有識別子配列を読み取り、対応するデータベースエントリを取得して生物学的物質の同定及び/又は追跡情報を提供することにより、生物学的物質のトレーサビリティを提供する、方法を本明細書において提供する。
【0018】
上の方法の別の実施形態では、方法は、少なくとも1つのDNA特有識別子配列を生物学的実体のゲノムDNA内に挿入するステップ、又は生物学的実体のゲノムDNA内の既に存在する識別子配列を遺伝子編集により修飾して、生物学的実体のゲノムDNA内にDNA特有識別子配列を生成するステップをさらに含み、これによって、この同定を実現し得る。
【0019】
1又は2以上の上の方法のいずれかのさらに別の実施形態では、方法は、生物学的実体のゲノムDNA内への挿入のための少なくとも1つのDNA特有識別子配列を用意するステップをさらに含み得る。
【0020】
1又は2以上の上の方法のいずれかのなお別の実施形態では、生物学的物質は、植物由来物質、真菌由来物質、動物由来物質、ウイルス由来物質、又は細菌由来物質を含み得る。
【0021】
1又は2以上の上の方法のいずれかのさらに別の実施形態では、生物学的実体は、植物細胞、真菌細胞、動物細胞、ウイルス又は細菌細胞を含み得る。
【0022】
1又は2以上の上の方法のいずれかの別の実施形態では、生物学的物質、生物学的実体、又はこの両方は、真菌由来物質、又は真菌細胞を含み得る。特定の実施形態では、生物学的物質、生物学的実体、又はこの両方は、酵母を含み得る。特定の実施形態では、酵母は、胞子形成していてもよい(すなわち、酵母胞子を含み得る)。
【0023】
1又は2以上の上の方法のいずれかのなお別の実施形態では、生物学的実体から生物学的物質を生産するステップは、生物学的実体を増殖させるステップを含み得る。
【0024】
1又は2以上の上の方法のいずれかの別の実施形態では、DNA特有識別子配列は、DNA特有識別子配列のランダム化したプール由来であり得る。
【0025】
1又は2以上の上の方法のいずれかのさらに別の実施形態では、生物学的物質におけるDNA特有識別子配列を読み取り、対応するデータベースエントリを取得するステップは、
生物学的物質由来のゲノムDNAを含む試料を受領又は提供するステップと、
生物学的物質由来のゲノムDNA内の少なくとも1つのDNA特有識別子配列を増幅し、DNA特有識別子配列をシーケンシングするステップと、
DNA特有識別子配列をデータベースと比較し、DNA特有識別子配列と対応するデータベースエントリを取得するステップであって、データベースエントリによって生物学的物質の同定及び/又は追跡情報を提供する、ステップと
を含み得る。
【0026】
1又は2以上の上の方法のいずれかのなお別の実施形態では、DNA特有識別子配列は、ゲノムDNAの遺伝子間領域内に挿入した特有のヌクレオチド配列を含み得る。
【0027】
1又は2以上の上の方法のいずれかのさらに別の実施形態では、DNA特有識別子配列は、最大約1500ntの長さ、最大約1000ntの長さ、約200nt~約600ntの長さ、約200nt~約400ntの長さ、又は約400nt~約600ntの長さの配列を含み得る。
【0028】
1又は2以上の上の方法のいずれかの別の実施形態では、DNA特有識別子配列は、DNA特有識別子配列のPCR増幅、DNA特有識別子配列のシーケンシング、又はこの両方のための1又は2以上のプライマーアニーリング配列に隣接し得る。
【0029】
1又は2以上の上の方法のいずれかのさらに別の実施形態では、生物学的物質は、食品を含み得る。
【0030】
1又は2以上の上の方法のいずれかのなお別の実施形態では、データベースエントリの同定及び/又は追跡情報は、生物学的物質のサプライチェーン情報を含み得る。特定の実施形態では、サプライチェーン情報は、食品、農業、医薬、小売、織物、物品、化学物質、又は生物学的物質が関連し得る他のサプライチェーン品目のサプライチェーン情報を含み得る。
【0031】
1又は2以上の上の方法のいずれかの別の実施形態では、データベースエントリの同定及び/又は追跡情報は、生物学的物質の出所情報を含み得る。
【0032】
1又は2以上の上の方法のいずれかのさらに別の実施形態では、データベースエントリの同定及び/又は追跡情報は、栽培者、地域、バッチ、ロット、日付、若しくは他の関連するサプライチェーン情報、又はこれらの任意の組合せを含み得る。
【0033】
1又は2以上の上の方法のいずれかのなお別の実施形態では、DNA特有識別子配列のPCR増幅、DNA特有識別子配列のシーケンシング、又はこの両方のための1又は2以上のプライマーアニーリング配列に隣接するDNA特有識別子配列を含み得るカセットを、ゲノムDNA内に組み入れ得る。
【0034】
1又は2以上の上の方法のいずれかの別の実施形態では、DNA特有識別子配列は、最大約1500ntの長さ、最大約1000ntの長さ、約200nt~約600ntの長さ、約200nt~約400ntの長さ、又は約400nt~約600ntの長さの核酸配列のランダム化したプールに由来するランダム配列であり得る。
【0035】
別の実施形態では、DNA特有識別子配列のPCR増幅、DNA特有識別子配列のシーケンシング、又はこの両方のための1又は2以上のプライマーアニーリング配列に隣接するDNA特有識別子配列を含む、オリゴヌクレオチドを本明細書において提供する。
【0036】
上のオリゴヌクレオチドの別の実施形態では、DNA特有識別子配列は、最大約1500ntの長さ、最大約1000ntの長さ、約200nt~約600ntの長さ、約200nt~約400ntの長さ、又は約400nt~約600ntの長さのランダム配列を含み得る。
【0037】
別の実施形態では、本明細書に記載する1又は2以上のオリゴヌクレオチドのいずれかを含む、カセットを本明細書において提供する。
【0038】
なお別の実施形態では、本明細書に記載する1若しくは2以上のオリゴヌクレオチドのいずれか又は本明細書に記載する1若しくは2以上のカセットのいずれかをそのゲノム内に組み入れた、細胞又はウイルスを本明細書において提供する。
【0039】
別の実施形態では、DNA特有識別子配列をそのゲノム内に組み入れた、細胞又はウイルスを本明細書において提供する。
【0040】
上の細胞又はウイルスのいずれかの別の実施形態では、DNA特有識別子配列を細胞又はウイルスのゲノムDNAの遺伝子間領域内に組み入れ得る。
【0041】
上の細胞又はウイルスのいずれかのなお別の実施形態では、細胞は、植物細胞、真菌細胞、動物細胞、又は細菌細胞であり得る。
【0042】
別の実施形態では、細胞は、真菌細胞、例えば、酵母細胞であり得る。
【0043】
別の実施形態では、
DNA特有識別子配列、
DNA特有識別子配列のランダム化したプール、
本明細書に記載する1若しくは2以上のオリゴヌクレオチドのいずれか、
本明細書に記載する1若しくは2以上のカセットのいずれか、
DNA特有識別子配列を増幅及び/若しくはシーケンシングするための1若しくは2以上のプライマー対、
緩衝液、
ポリメラーゼ、又は
本明細書に記載する1若しくは2以上の方法のいずれかを実施するための説明書
のいずれか1又は2以上を含む、キットを本明細書において提供する。
【0044】
別の実施形態では、生物学的物質を同定する方法であって、
コンピュータデバイスにおいて、既知の生物学的物質から抽出したDNA特有識別子配列(DUID)を受領するステップと、
コンピュータデバイスにおいて、複数のDUIDをそれぞれの生物学的物質情報と関連づけて記憶するDUIDデータベースを検索して、受領したDUIDと適合させるステップと、
DUIDデータベースの検索により、受領したDUIDと適合させることができなかった場合、DUIDデータベースに、受領したDUIDを、既知の生物学的物質と関連する生物学的物質情報と関連づけて記憶するステップと、
受領したDUID及び既知の生物学的物質と関連する情報をDUIDデータベースに記憶するステップの後に、コンピュータデバイスにおいて、未知の生物学的物質から抽出したクエリDUIDを受領するステップと、
コンピュータデバイスにおいて、DUIDデータベースを検索して、受領したクエリDUIDと適合させるステップと、
DUIDの検索により、受領したクエリDUIDと適合させることができた場合、受領したクエリDUIDに応答して、クエリDUIDと適合するDUIDと関連づけて記憶した生物学的情報を返すステップと
を含む、方法を本明細書において提供する。
【0045】
上の方法の別の実施形態では、DUIDデータベースを検索して、受領したDUIDと適合させるステップは、
DUIDデータベースを検索して、受領したDUIDと完全に適合させるステップと、
完全な適合が見出されない場合、受領したDUIDとほぼ適合するDUIDデータベースに記憶したDUIDに対してアラインメント/同一性検索を実施するステップと
を含み得る。
【0046】
1又は2以上の上の方法のいずれかのなお別の実施形態では、DUIDデータベースを検索して、クエリDUIDと適合させるステップは、
DUIDデータベースを検索して、クエリDUIDと完全に適合させるステップと、
完全な適合が見出されない場合、クエリDUIDとほぼ適合するDUIDデータベースに記憶したDUIDに対してアラインメント/同一性検索を実施するステップと
を含み得る。
【0047】
1又は2以上の上の方法のいずれかのさらに別の実施形態では、方法は、
検索により、クエリDUIDとほぼ適合させることができた場合、クエリDUIDを、クエリDUIDとほぼ適合するDUIDと関連づけて記憶するステップ
をさらに含み得る。
【0048】
別の実施形態では、生物学的物質を同定するためのコンピュータシステムであって、
命令を実行することが可能なプロセシングユニット、及び
プロセシングユニットで実行した場合、本明細書に記載する1又は2以上の方法のいずれかを実施するようにコンピュータシステムを構成する、命令を記憶するメモリユニット
を含む、コンピュータシステムを本明細書において提供する。
【0049】
別の実施形態では、その上に命令を記憶したコンピュータ可読メモリであって、コンピュータシステムのプロセシングユニットで実行した場合、本明細書に記載する1又は2以上の方法のいずれかを実施するようにシステムを構成する、コンピュータ可読メモリを本明細書において提供する。
【0050】
別の実施形態では、生物学的物質を同定するための方法であって、
生物学的物質由来のゲノムDNAを含む試料を受領又は提供するステップと、
生物学的物質由来のゲノムDNA内の少なくとも1つのDNA特有識別子配列を増幅し、DNA特有識別子配列をシーケンシングするステップと、
DNA特有識別子配列に記憶した生物学的物質の同定及び/又は追跡情報を復号又は解読するステップと
を含む、方法を本明細書において提供する。
【0051】
別の実施形態では、生物学的物質のトレーサビリティを提供するための方法であって、
生物学的実体のゲノムDNA内の少なくとも1つのDNA特有識別子配列の配列を決定するステップと、
ゲノムDNAにおけるDNA特有識別子配列の存在を立証し、DNA特有識別子配列に記憶した同定及び/又は追跡情報を復号又は解読してDNA特有識別子配列を立証することにより、生物学的実体の同定を検証するステップと、
生物学的実体から生物学的物質を生産することの妥当性の指標を提供するステップであって、生物学的物質が、生物学的実体由来のゲノムDNAを含む、ステップと
を含み、これによって、生物学的物質におけるDNA特有識別子配列を読み取り、DNA特有識別子配列に記憶した情報を復号又は解読して生物学的物質の同定及び/又は追跡情報を提供することにより、生物学的物質のトレーサビリティを提供する、方法を本明細書において提供する。
【0052】
なお別の実施形態では、生物学的物質を同定する方法であって、
コンピュータデバイスにおいて、未知の生物学的物質から抽出したDNA特有識別子配列(DUID)を受領するステップと、
DNA特有識別子配列に記憶した未知の生物学的物質の同定及び/又は追跡情報を復号又は解読するステップと
を含む、方法を本明細書において提供する。
【0053】
別の実施形態では、DNA特有識別子配列を含むカセットであって、DNA特有識別子配列が、DNA特有識別子配列の増幅、DNA特有識別子配列のシーケンシング、又はこの両方のための、少なくとも1つの5’プライマーアニーリング配列、及び少なくとも1つの3’プライマーアニーリング配列に隣接する、カセットを本明細書において提供する。
【0054】
上のカセットの別の実施形態では、DNA特有識別子配列は、ネステッドPCRによりDNA特有識別子配列の増幅が可能となるように、2つの5’プライマーアニーリング配列、及び2つの3’プライマーアニーリング配列に隣接し得る。
【0055】
1又は2以上の上のカセットのいずれかのなお別の実施形態では、2つの5’プライマーアニーリング配列が部分的にオーバーラップし得るか、2つの3’プライマーアニーリング配列が部分的にオーバーラップし得るか、又はこの両方であり得る。
【0056】
1又は2以上の上のカセットのいずれかのなお別の実施形態では、カセットは、DNA特有識別子配列のシーケンシングのための、DNA特有識別子配列に対して5’に位置するシーケンシングプライマーアニーリング配列をさらに含み得る。
【0057】
1又は2以上の上のカセットのいずれかのさらに別の実施形態では、シーケンシングプライマーアニーリング配列は、2つの5’プライマーアニーリング配列間に位置し得る。
【0058】
1又は2以上の上のカセットのいずれかの別の実施形態では、シーケンシングプライマーアニーリング配列は、2つの5’プライマーアニーリング配列の一方又は両方と少なくとも部分的にオーバーラップし得る。
【0059】
1又は2以上の上のカセットのいずれかのさらに別の実施形態では、2つの5’プライマーアニーリング配列は、部分的にオーバーラップしてもよく、シーケンシングプライマーアニーリング配列の少なくとも一部分は、オーバーラップに位置し得る。
【0060】
1又は2以上の上のカセットのいずれかの別の実施形態では、カセット配列は、最大約1500ntの長さ、最大約1000ntの長さ、約200nt~約600ntの長さ、約200nt~約400ntの長さ、又は約400nt~約600ntの長さであり得る。
【0061】
1又は2以上の上のカセットのいずれかのなお別の実施形態では、プライマーアニーリング配列は、標的生物学的実体のゲノムに天然に存在していなくてもよい。
【0062】
別の実施形態では、本明細書に記載する1又は2以上のカセットのいずれかのうちの複数を含む組成物であって、各カセットが、同一のプライマーアニーリング配列を含み、各カセットが、ランダム化したDNA特有識別子配列を含む、組成物を本明細書において提供する。
【0063】
なお別の実施形態では、本明細書に記載する1又は2以上のカセットのいずれかのうちの複数を含む組成物であって、各カセットが、同一のプライマーアニーリング配列、及び同一のシーケンシングプライマーアニーリング配列を含み、各カセットが、ランダム化したDNA特有識別子配列を含む、組成物を本明細書において提供する。
【0064】
さらに別の実施形態では、生物学的物質のトレーサビリティを提供するための方法であって、
少なくとも1つのDNA特有識別子配列を生物学的実体のゲノムDNA内に挿入して、生物学的物質の調製において使用するステップ
を含む、方法を本明細書において提供する。
【0065】
上の方法の別の実施形態では、DNA特有識別子配列を、本明細書に記載する1又は2以上のカセットのいずれかとして挿入し得る。
【0066】
1又は2以上の上の方法のいずれかの別の実施形態では、方法は、生物学的実体のゲノムDNA内の少なくとも1つのDNA特有識別子配列の配列を決定するステップをさらに含み得る。
【0067】
1又は2以上の上の方法のいずれかの別の実施形態では、方法は、ゲノムDNAにおけるDNA特有識別子配列の存在を立証し、DNA特有識別子配列の配列をデータベースと比較してDNA特有識別子配列がデータベースにおいて未だ使用されていないことを確認することにより、生物学的実体の同定を検証するステップをさらに含み得る。
【0068】
1又は2以上の上の方法のいずれかのなお別の実施形態では、方法は、
生物学的実体から生物学的物質を生産するステップであって、生物学的物質が、生物学的実体由来のゲノムDNAを含む、ステップ、及び/又は
生物学的実体から生物学的物質を生産することの妥当性の指標を提供するステップであって、生物学的物質が、生物学的実体由来のゲノムDNAを含む、ステップ
をさらに含み得る。
【0069】
1又は2以上の上の方法のいずれかのなお別の実施形態では、方法は、少なくとも1つのDNA特有識別子配列の配列をデータベースエントリに入力し、DNA特有識別子配列を生物学的実体及び/又は生物学的物質の同定及び/又は追跡情報と関連づけるステップをさらに含み得る。
【0070】
1又は2以上の上の方法のいずれかのさらに別の実施形態では、方法は、
生物学的実体及び/又は生物学的物質におけるDNA特有識別子配列を読み取り、対応するデータベースエントリを取得して生物学的実体及び/又は生物学的物質の同定及び/又は追跡情報を提供することにより、生物学的実体及び/又は生物学的物質のトレーサビリティを提供するステップ
をさらに含み得る。
【0071】
別の実施形態では、本明細書に記載する1若しくは2以上のオリゴヌクレオチド、又は1若しくは2以上のカセットのいずれかを含む、プラスミド又は発現ベクターを本明細書において提供する。
【0072】
さらに別の実施形態では、目的の生産物のトレーサビリティを提供するための方法であって、
目的の生産物由来の試料を受領又は提供するステップであって、試料が、目的の生産物の一部であるか、これと混合、又はさもなければ関連する生物学的物質由来のゲノムDNAを含む、ステップと、
生物学的物質由来のゲノムDNA内の少なくとも1つのDNA特有識別子配列を増幅し、DNA特有識別子配列をシーケンシングするステップと、
データベースにおいてDNA特有識別子配列を検索し、DNA特有識別子配列と対応するデータベースエントリを取得するステップであって、データベースエントリによって目的の生産物の同定及び/又は追跡情報を提供する、ステップと
を含む、方法を本明細書において提供する。
【0073】
上の方法の別の実施形態では、方法は、本明細書に記載する1若しくは2以上の生物学的物質又は1若しくは2以上の生物学的実体のいずれかを、目的の生産物に導入又は追加するステップであって、生物学的物質又は実体が、本明細書に記載する少なくとも1つのDNA特有識別子配列を、このゲノム物質の一部として含む、ステップを含み得る。
【0074】
1又は2以上の上の方法のいずれかのさらに別の実施形態では、データベースエントリの同定及び/又は追跡情報は、目的の生産物のサプライチェーン情報を含み得る。
【0075】
1又は2以上の上の方法のいずれかのなお別の実施形態では、目的の生産物は、食品、農産物、医薬品、小売製品、織物、物品、化学物質、又は別のサプライチェーン品目を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0076】
このような及び他の特徴は、次の説明及び添付の図面を考慮することにより、さらに理解されることとなる。
図1】世界保健機関(WHO)により、その2015年の報告において同定された伝達経路を示す図である(出典WHO, 2015, p.101)。
図2】DUID配列を含む本明細書に記載するカセットの例、及び実施例1に記載するこの生成を示す図である。示す配列は、配列番号1である。
図3】実施例1に記載するDUIDシステムの例となるプロセスの全体像を示す図である。
図4】実施例1に記載するDUIDシステムプロセスの同定段階の例を示す図である。
図5】実施例1に記載するDUIDシステムプロセスの検証段階の例を示す図である。
図6】実施例1に記載するDUIDシステムプロセスの読取り段階の例を示す図である。
図7】本明細書に記載するDUIDシステム及びプロセスの別の例を示す図である。
図8】DUID及びデータベース/レジストリを使用して生物学的実体のトレーサビリティを提供する、本明細書に記載するDUIDシステム及びプロセスの別の例を示す図である。
図9】DUID配列及びデータベース/レジストリを使用してデータベースから生物学的物質の同定及び/又は追跡情報を得る、本明細書に記載するDUIDシステム及びプロセスのなお別の例を示す図である。
図10】追跡及び/又は同定情報を記憶するDUIDを使用して生物学的実体のトレーサビリティを提供する、本明細書に記載するDUIDシステム及びプロセスの別の例を示す図である。
図11】追跡及び/又は同定情報を記憶するDUID配列を使用して生物学的物質の同定及び/又は追跡情報を得る、本明細書に記載するDUIDシステム及びプロセスの別の例を示す図である。
図12】追跡及び/又は同定情報を記憶するDUID配列を使用して生物学的物質の同定及び/又は追跡情報を得る、本明細書に記載するDUIDシステム及びプロセスの別の例を示す図である。
図13】UID(特有識別子)配列を含む本明細書に記載するカセット設計のさらなる例を示す図である。図13(a)は、二重プライマー設計を示し、13(b)は、単一プライマー設計を示し、13(c)は、独立型設計を示す。
図14】実施例2に記載する370pbのDUID構築物2つのマップを示す図である。A)PCR及びqPCR増幅のためのDUID構築物設計である。構築物は、370pbである。このDUID構築物は、フォワードプライマー2つ及びリバースプライマー2つを含む。2つの識別子(ID1及びID2)が存在する。ID1は、PCR増幅に理想的である。ID2は、qPCR増幅に理想的である。B)ループ介在等温増幅(LAMP)及びPCRのためのDUID構築物の設計である。このマップは、PCRとLAMPの両方のためのプライマーを含む。
図15】実施例2に記載するエンドポイントPCRによる、酵母ゲノムDNAにおけるYCp-DUIDの検出を示す図である。PCR増幅は、(A)YCp-DUIDベクター、(B)BY4743から抽出したgDNA、及び(C)YCp-DUIDベクターにより形質転換した酵母株BY4743を鋳型として、DUIDリコールプライマーとともに使用して実施した。反応は、(1)100ng、(2)10ng、(3)1ng、(4)100pg、(5)10pg、(6)1pg、(7)100fg及び(8)10fgのインプット量で連続希釈したDNA鋳型を使用して実施し、GeneRuler(商標)100bp Plus Ready-to-use Ladderを標準として用いて1%のアガロースゲル上で分離した。
図16】実施例2に記載する酵母全DNA抽出物におけるDUIDの検出を示す図である。50ng~500agの範囲に及ぶYCpベクターの連続10倍希釈物に対して、定量的リアルタイムPCRを実施し、MS Excelを使用して標準曲線(青色のライン)を作成するために使用した。YCp-DUIDベクターにより形質転換したBY4743に由来するDNAを使用する類似のqPCR実験の結果をプロットし(オレンジ色のバー)、標準曲線値と比較して酵母バイオマスにおけるDUIDの検出を定量した。
図17】実施例2にさらに記載するように、DUIDのバージョン、その起源、及びDUIDと相互作用させるためのサブシーケンスプロトコルを同定する手段として機能する、識別子配列にわたる相同性の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
生物学的物質の同定及び/又はトレーサビリティを提供するための方法及び組成物を本明細書において記載する。実施形態及び実施例は、当業者を対象とする例示的目的のために提供し、制限することは全く意図していないことが理解される。
【0078】
生物学的物質の同定及び/又はトレーサビリティを提供するための方法及び組成物を本明細書において提供する。特定の実施形態では、本明細書に記載する方法では、生物学的実体から生産され、これに由来するゲノムDNAを含む、生物学的実体及び/又は生物学的物質を含む、生物学的実体及び/又は生物学的物質の同定及び/又はトレーサビリティを提供するために生物学的実体のゲノム内に外因的に導入(すなわち、挿入/組込み)され得る、特有の識別子配列(本明細書においてDNA特有識別子配列とも呼ぶ)を利用し得る。特定の実施形態では、本明細書に記載する戦略では、同定及び/又はトレーサビリティを提供する核酸、例えば、DNAの耐久性及び複製能により利益を得得る。特定の実施形態では、特有識別子配列は、配列のランダム化したプール由来であり得る。特定の実施形態では、データベースは、対応する同定及び/又は追跡情報との特有識別子配列の関連を維持し得る。
【0079】
また、生物学的物質の同定及び/又はトレーサビリティの提供における使用のための1又は2以上の特有識別子配列を含む、オリゴヌクレオチド構築物及びカセットを本明細書において提供する。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチド構築物及び/又はカセットは、特有識別子配列(複数可)の増幅、特有識別子配列(複数可)のシーケンシング、又はこの両方のためであり得る、プライマーアニーリング配列(複数可)の特定の配列を含み得る。特定の実施形態では、プライマーアニーリング配列(複数可)の配列は、本明細書に記載するように、例えば、同定イベントにおいて適合度の増強及び/又はエラーの減少をもたらし得る、意図しない及び/又はオフターゲット増幅及び/又はシーケンシングイベントを減少させるように設計し得る。
【0080】
特定の実施形態では、本明細書に記載する方法及び組成物は、食品トレーサビリティを提供するために使用してもよく、例えば、汚染イベントにおける迅速な対応及び/又は食品のリコールが可能となり得る。食品汚染、例えば、食品供給に影響する大腸菌及び/又はサルモネラ菌汚染は、公衆衛生に対する脅威であり、汚染源(複数可)を同定し、食い止めるための迅速な措置が非常に望ましい。食品供給において生産物のトレーサビリティを増強するための信頼でき、コスト効率が高く、及び/又は迅速な戦略に対する、当分野において長年にわたる満たされない必要性が存在する。本明細書に記載する戦略では、出所から消化、さらにはその先への食品システムにおけるトレーサビリティを提供し得る。生物学的実体及び/又は生物学的物質のトレーサビリティは、農業及び食品産業において望ましいだけでなく、それらを含むか又はそれらに由来する、生物学的実体及び/又は生物学的物質を扱う多種多様な産業及び分野においても求められている。したがって、食品の安全に加えて、食品/種子の安全保障における適用、IP追跡、認証(例えば、種子協会、Kosher、Halal等)、GMOの同定及び/若しくは特性評価、並びに/又は貿易金融のリスクの減少も本明細書において検討する。
【0081】
特定の実施形態では、食品生産物又は成分(例えば、フルーツ及び野菜、又は細胞を含む他の食料等)は、同定及び/又はトレーサビリティを提供するために、本明細書に記載する特有識別子配列(複数可)を、これらの少なくとも一部の細胞においてゲノムの一部として含み得る。他の実施形態では、本明細書に記載する特有識別子配列(複数可)は、細胞を含む1又は2以上の生物学的実体又は生物学的物質のゲノムの一部であってもよく、生物学的実体又は生物学的物質は、同定及び/又は追跡が望ましい1又は2以上の生産物に追加、混合、又はさもなければ関連し得る。例として、特定の実施形態では、本明細書に記載する1又は2以上の特有識別子配列を、1又は2以上の安定に導入された人工染色体(複数可)の一部として含む、食品として安全な酵母細胞は、これらの同定及び/又はトレーサビリティを提供するために、1又は2以上の食品生産物又は食品成分に追加又は混合し得る。
【0082】
同定及び/又はトレーサビリティの提供のための方法
特定の実施形態では、生物学的物質又は生物学的実体の同定及び/又はトレーサビリティの提供のための方法を本明細書において提供する。このような方法では、特有識別子配列を利用してこのような同定及び/又はトレーサビリティを達成し得る。典型的には、目的の生物学的実体、例えば、農作物(例えば、ホウレンソウ)は、遺伝子修飾して、特有識別子配列をこのゲノムに組み入れ得る。非限定的かつ例示的な例としては、ホウレンソウ植物の細胞を遺伝子修飾して、特有識別子配列の後の増幅及び/又はシーケンシングのための1又は2以上のプライマーアニーリング配列に隣接する特有識別子配列を含むカセットを、ホウレンソウ細胞ゲノム内の遺伝子間部位又はゲノムの他の無害な部位に組み入れ得る。特有識別子配列の配列は、公知のものであり得るか、又はランダム化したプール由来であって組込み後に引き続いて決定してもよく、また、データベース又はレジストリに入力及び記録し得る。次いで、細胞を使用して、1又は2以上のホウレンソウ作物を栽培/繁殖させてもよく、ホウレンソウ作物に適切な同定及び/又は追跡情報(例えば、出所、バッチ/ロット情報、栽培者/生産者、地域、日付、供給業者、及び/又は目的の他の任意のサプライチェーン情報)を、対応する特有識別子配列と関連するデータベース又はレジストリに記録し得る。データベースエントリは、サプライチェーンイベントの進行(すなわち、収穫、供給業者への出荷、販売等)に従って更新してもよい。ホウレンソウ作物を使用して、生物学的物質、例えば、食料品店において販売するための袋詰めのホウレンソウ又はサラダを生産し得る。汚染又は食品を媒介する病気のイベント又は疑いが出た場合には、疑われるホウレンソウ又はサラダの試料を得てもよく、これからゲノムDNAを得、このゲノムDNAを解析して、特有識別子配列が存在するか否か(すなわち、このホウレンソウが、このシステムにより追跡するホウレンソウであるか否か)を判定し得る。そうであった場合は、特有識別子配列をシーケンシングしてヌクレオチド配列を決定してもよく、このヌクレオチド配列を使用して、データベース又はレジストリのクエリを作成することにより、関連するデータベースエントリを取得して同定及び/又は追跡情報を提供し、これにより、汚染されたホウレンソウ又はサラダのリコールが容易となり得る。当然のことながら、上のホウレンソウの例は、例示目的のために提供し、本明細書に記載する方法は、多種多様な同定及び/又はトレーサビリティの選択肢を、多種多様な生物学的実体及び/又は生物学的物質のために、多種多様な適用において提供するために使用し得る。
【0083】
実施形態では、生物学的物質を同定するための方法であって、
生物学的物質由来のゲノムDNAを含む試料を受領又は提供するステップと、
生物学的物質由来のゲノムDNA内の少なくとも1つのDNA特有識別子配列を増幅し、DNA特有識別子配列をシーケンシングするステップと、
データベースにおいてDNA特有識別子配列を検索し、DNA特有識別子配列と対応するデータベースエントリを取得するステップであって、データベースエントリによって生物学的物質の同定及び/又は追跡情報を提供する、ステップと
を含む、方法を本明細書において提供する。
【0084】
このような方法の実施形態を示すフローチャートを図9に示す。
【0085】
当然のことながら、生物学的物質は、目的の適する任意の生物学的物質を一般に含み得る。生物学的物質は、生物学的実体を含むか若しくはこれからなる物質を含むか若しくはこれからなり得るか、或いは生物学的実体から生産されるか若しくは由来する物質又は生物学的実体由来のゲノム核酸(すなわち、ゲノムDNA)を含む他の任意の好適な目的の物質を含むか若しくはこれからなり得る。特定の実施形態では、生物学的物質は、植物由来物質、真菌由来物質、動物由来物質、ウイルス由来物質、又は細菌由来物質を含むか又はこれからなり得る。例として、特定の実施形態では、生物学的物質は、植物又は他の生物学的実体を含むか、これからなるか又はこれから生産される食品又は飲料を含むか又はこれからなってもよく、この場合、食品又は飲料は、生物学的実体由来のゲノムDNAを含む。特定の実施形態では、生物学的物質は、例えば、レタス、ホウレンソウ若しくは他の葉物野菜、又はこの生物学的物質を含むか、これからなるか若しくはこれから生産される食品生産物を含むか又はこれからなり得る。
【0086】
本明細書に記載する方法の特定の実施形態では、目的の生物学的物質(例えば、同定が望ましい生物学的物質)由来のゲノム核酸(すなわち、生物学的実体がDNAに基づくゲノムを有する場合のゲノムDNA)を含む試料を受領又は提供し得る。試料は、ゲノムDNAを容易に使用し得るように精製又は部分的に精製した形態で受領又は提供し得るか、或いはそのまま(すなわち、食品生産物の試料として)又は別の粗製若しくは前駆形態として提供してもよく、これは、含まれるゲノムDNAを後のステップにおいて容易に使用し得るように1又は2以上のさらなる処理又は精製ステップに供し得る。特定の実施形態では、ゲノム核酸の精製及び/又は単離のための適する任意の標準技術を試料調製に使用し得ることを検討する。
【0087】
特定の実施形態では、例として、核酸(例えば、ゲノム)の単離、精製、及び/又は抽出の1又は2以上のステップは、後のステップのための試料調製の一部として実施し得る。DNAの単離又は抽出は、例えば、試料からDNAを得るための1又は2以上のステップを含み得る。特定の実施形態では、DNAの単離又は抽出は、細胞の破砕(例えば、溶解)(例えば、物理的ステップ(複数可)、超音波処理、又は化学的処理により)、界面活性剤を使用する膜除去、任意で、プロテアーゼによるタンパク質除去、及びアルコール(例えば、エタノール(低温)又はイソプロパノール)を使用するDNA沈殿を含み得る。したがって、DNA沈殿物は、遠心分離により得られ得る。特定の実施形態では、DNAse酵素は、当業者に認識されるように、キレート剤を使用することにより阻害され得る。特定の実施形態では、細胞及びヒストンタンパク質は、プロテアーゼを使用するか、酢酸ナトリウム若しくは酢酸アンモニウムにより沈殿させるか又はDNA沈殿前のフェノール・クロロホルム抽出により除去し得る。本明細書における教示を尊重する当業者は、望ましい試料調製、並びに/又はゲノム核酸の単離、精製及び/若しくは抽出のための多種多様な技術が利用可能であることを理解するであろう。
【0088】
本明細書に記載する方法の特定の実施形態では、生物学的実体/生物学的物質のゲノム内に挿入又は組み込まれた特有識別子配列(生物学的実体がRNAに基づくゲノムを有するような特定の実施形態では、特有識別子配列は、DNAというよりもRNAであり得ることが理解されるが、便宜上、本明細書では、DNA特有識別子配列、DUIDと呼ぶ)は、増幅してもよい。
【0089】
特定の実施形態では、ゲノム内への組込みは、天然染色体内への組込みを含み得る。特定の実施形態では、ゲノム内への組込みは、ゲノム内への人工染色体の安定な導入を含むことができ、人工染色体は、セントロメア配列を有し、天然ゲノム物質とともに遺伝性である。以下の実施例2では、例えば、酵母に人工染色体を使用する例を記載する。
【0090】
このような増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるもののような、本明細書における教示を尊重する当業者に公知の適する任意の増幅技術を一般に使用して実施し得る。特定の実施形態では、本明細書にさらに詳細に記載するように、増幅する特有識別子配列は、ゲノムにおいて、増幅及び/又はシーケンシングのためのプライマーアニーリング配列を伴い得る。特定の実施形態では、本明細書にさらに詳細に記載するように、プライマーアニーリング配列は、ネステッドPCRによる増幅が可能となるように選択及び配置され、これにより、意図しない増幅又はオフターゲット増幅の尤度が減少し得る。
【0091】
特定の実施形態では、PCRに基づく手法を増幅のために使用し得る。PCR増幅は、フォワード及びリバースプライマーを含んでもよく、この場合、プライマーは、増幅する目的の核酸配列の末端方向の5‘及び3’領域に対して相補性(又は実質的に相補性)であり得る。特異的プライマーアニーリング配列に対するフォワード及びリバースプライマーは、当業者に公知の適する任意の手法により生成し得る。このような手法の例は、例えば、参照により本明細書に組み入れるDieffenbach CW, Dveksler GS. 1995. PCR primer: a laboratory manual, New York, NY: Cold Spring Harbor Laboratory Press; New England Biolabs Inc., 2007-08 Catalog & Technical Referenceに見出され得る。特定の実施形態では、生物学的情報の読取りにおいて、PCRプライマーは、相互に独立的に動作し得るフォワード及びリバースプライマーの複数のセットを含み得る。特定の実施形態では、他のプライマーへのアクセスは管理され得る一方、一部のプライマーの同一性は、種々の団体が、要望に応じて、種々の領域及び/又は核酸配列情報に容易にアクセス可能となり得るように、提供又は分配し得る。
【0092】
本明細書に記載する方法の特定の実施形態では、特有識別子配列、例えば、DNA特有識別子配列(DUID)は、同定の目的のために生物学的実体のゲノム内に外因的に導入した、適する任意の核酸配列を含み得る。一般には、特有識別子配列は、生物学的実体のゲノム型(DNA又はRNA)に適合するようにDNA又はRNAのいずれかであり得る。当然のことながら、例えば、植物のような多くの生物学的実体のゲノムは2本鎖であるため、特有識別子配列は2本鎖形態のゲノムに典型的に見出される。したがって、特定の実施形態では、本明細書における特有識別子配列に言及する場合(例えば、識別子配列のシーケンシングを記載する場合等)、要望に応じて又は適宜、2本鎖構築物のいずれかの鎖又はこの両鎖への言及として解釈され得ることが理解される。
【0093】
特定の実施形態では、特有識別子配列は、特有識別子配列に加えて1又は2以上の機能性エレメントを含む、カセット又はこのような他の構築物内に組み入れ得る。特定の実施形態では、カセットは、DNA特有識別子配列のPCR増幅、DNA特有識別子配列のシーケンシング、又はこの両方のための1又は2以上のプライマーアニーリング配列に隣接する特有識別子配列を含み得る。当然のことながら、プライマーアニーリング配列は、例えば、このようなプライマーアニーリング配列にアニーリングしてポリメラーゼにより重合を開始させるように1又は2以上のプライマーを設計又は選択し得るような、公知のヌクレオチド配列を有する核酸の所定の配列又は領域を指し得る。典型的には、プライマーアニーリング配列は、目的の生物学的実体のゲノムにおいて特有であることによって、意図しない増幅又はオフターゲット増幅を減少又は除去するように選択する。特定の実施形態では、特有識別子配列は、例えば、特定の増幅のために選択される公知の所定の配列であり得るか、又は本明細書に詳細に記載するように、引き続いて決定され、データベースに記録され得る、核酸配列のランダム化したプールに由来するランダム配列であり得る。特定の実施形態では、特有識別子配列、又は特有識別子配列を含むカセットは、最大約1500ntの長さ、最大約1000ntの長さ、約200nt~約600ntの長さ、約200nt~約400ntの長さ、若しくは約400nt~約600ntの長さのサイズ、又は任意のサイズを有するか、若しくはこのような任意の2つのサイズ間の部分範囲に及び得る。当然のことながら、特有識別子配列が長いほど、プールにおいて、より特有な配列を生成可能であり、重複のリスクを減少させることが可能となり得る。さらに、特有識別子配列における同定情報の符号化又は暗号化が望ましい実施形態では、長さが長いことにより、例えば、比較的より多くの情報の記憶、及び/又はより複雑な暗号化若しくは符号化スキームの使用が可能となり得る。したがって、本明細書において言及するような合理的な長さを維持することによって、より信頼でき及び/又は迅速な増幅及び/又はシーケンシングを実施でき、及び/又はコストを比較的削減し得る。
【0094】
特定の実施形態では、特有識別子配列は、最大約1500ntの長さ、最大約1000ntの長さ、約200nt~約600ntの長さ、約200nt~約400ntの長さ、又は約400nt~約600ntの長さの配列を含み得る。特定の実施形態では、特有識別子配列は、例えば、約20bpの長さのように比較的短くてもよい。当然のことながら、特定の実施形態では、特有識別子配列のサイズは、特定の実行及びこの所望のパラメータに適するように選択され得る。特定の実施形態では、特有識別子配列は、約20nt~約1500ntのサイズ、又はこの間の任意のサイズを有するか、若しくはこれに含まれる任意の部分範囲に及び得る。
【0095】
特定の実施形態では、特有識別子配列は、例えば、ランダムなプールから得ることができ、妥当性についてスクリーニングしてもよく(例えば、特有性についてスクリーニングし、望ましくない配列モチーフを回避するためにスクリーニングする)、又は合理的に設計し得る(例えば、特有性のために設計し、望ましくない配列モチーフを回避するために設計する)。
【0096】
特定の実施形態では、DNA特有識別子配列は、DNA特有識別子配列のPCR増幅、DNA特有識別子配列のシーケンシング、又はこの両方のための1又は2以上のプライマーアニーリング配列に隣接し得る。
【0097】
特定の実施形態では、DNA特有識別子配列のPCR増幅、DNA特有識別子配列のシーケンシング、又はこの両方のための1又は2以上のプライマーアニーリング配列に隣接するように特有識別子配列をカセットに形成するか、又はさもなければゲノム核酸内に導入若しくは挿入し得ることを検討する。適するカセット及び構成の例を本明細書にさらに詳細に記載する。特定の実施形態では、カセットは、プラスミド、ベクター、又は生物学的実体のゲノム内へのカセットの挿入/組入れ/組込みにおける使用に適する、このような他の担体内に組み入れ得る。
【0098】
当然のことながら、本明細書における教示を尊重する当業者に公知の任意の適する遺伝子修飾技術は、生物学的実体のゲノム内への特有識別子配列、又は特有識別子配列を含むカセット/ベクターの導入/挿入/組入れ/組込みのために使用し得る。また、当然のことながら、遺伝子修飾技術は、使用する特有識別子配列又はカセット/ベクター、及び修飾する特定の生物学的実体に基づいて選択され得る。植物、動物、真菌、細菌、及びウイルスを含む、多種多様な生物学的実体のゲノム修飾のための技術は周知であり、本明細書に記載する特有識別子配列を外因的に導入するように容易に構成し得る。
【0099】
例として、本明細書における教示を尊重する当業者は、生物体内にDNAを組み入れるためのベクターを認識し、これは、分子生物学の公知の原理に従って設計し得る。このようなベクターは、例えば、生物体のゲノム内に目的のDNA配列を安定に導入するように設計し得る。特定の実施形態では、ベクターは、例えば、ウイルス起源であるか又はこれに由来し得る。生物体が植物である場合、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)に媒介される目的のDNAの組入れを、植物内への導入に使用し得ることを検討する。本明細書における教示を尊重する当業者は、他のいくつかの形質転換方法、例えば、中でも弾道的方法すなわちパーティクルガン法を認識し、これは、目的の特定の適用に基づき、要望に応じて又は適宜、適応させ得る。特定の実施形態では、遺伝子送達システムは、目的の配列を宿主生物体のゲノム内に導入又は挿入し得るように、遺伝子工学原理に基づいて使用し得る。例として、実施形態では、トランスポゾンシステムを使用して、例えば、微生物、動物細胞、又は植物細胞であり得る、宿主のゲノム内に挿入し得る(Insect Molecular Biology (2007), 16(1), 37-47, Plant Physiology Preview. 2007, DOI: 10.1104/pp.107.111427, the American Society of Plant Biologists; research on production of lactoferrin from transformed silkworms and functionality thereof, the Ministry of Agriculture and Forestry, 2005)。特定の実施形態では、目的の1又は2以上のDNA断片又は成分を宿主のゲノム内に挿入することが可能な、分子生物学及び/又は遺伝子工学の分野において適する任意の方法を使用し得る(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるTransgenic Plants Methods and Protocols., Methods in Molecular Biology 2019, Editors: Kumar, Sandeep, Barone, Pierluigi, Smith, Michelle, ISBN 978-1-4939-8778-8を参照)。
【0100】
特有識別子配列を含む生物学的物質又は生物学的実体の同定が望ましい特定の実施形態では、特有識別子配列の配列は、シーケンシングにより決定し得る。当然のことながら、特有識別子配列は、本明細書における教示を尊重する当業者に公知の適する任意のシーケンシング技術により一般にシーケンシングし得る。特定の実施形態では、シーケンシングにおいて、ゲノム核酸内の特有識別子配列に結合するシーケンシングプライマーアニーリング配列の包含又は使用が役立ち得る。例えば、特有識別子配列を含むカセット内に組み入れ得る、このようなシーケンシングプライマーアニーリング配列の例を本明細書に詳細に記載する。
【0101】
特定の実施形態では、シーケンシングは、本明細書における教示を尊重する当業者に公知の適する任意のシーケンシング技術を使用して実施してもよく、この技術は、使用する特定の適用及び/又は構成に基づいて選択され得る。特定の実施形態では、シーケンシングは、DNA(又はRNA)の分子におけるヌクレオチド塩基の順序を決定するための適する任意のシーケンシング方法により実施し得る。シーケンシング方法の例としては、例えば、マクサム・ギルバートシーケンシング、チェーンターミネーション法、ダイターミネーターシーケンシング、自動DNAシーケンシング、インビトロでのクローニング増幅、合成による並列シーケンシング、ライゲーションによるシーケンシング、サンガーシーケンシング、例えば、マイクロ流体サンガーシーケンシング及びハイブリダイゼーションによるシーケンシングが、例えば挙げられ得る。
【0102】
特定の実施形態では、生物学的物質の特有識別子配列の配列を決定すると、この配列を使用して、適切な同定及び/又は追跡情報と対となるか又はさもなければ関連する特有識別子配列のコレクションを含むデータベース(本明細書においてレジストリとも呼ぶ)を検索するためのクエリを作成し得る。適合するデータベースエントリが見出された場合、データベースエントリを取得することにより、目的の生物学的物質の同定及び/又は追跡情報を提供し得る。このような方法では、生物学的物質の適切な同定及び/又は追跡情報を特定してもよく、例えば、食品リコール又は他の措置のようなイベントを知らせるために使用し得る。
【0103】
別の実施形態では、生物学的物質のトレーサビリティを提供するための方法であって、
生物学的実体のゲノムDNA内の少なくとも1つのDNA特有識別子配列の配列を決定するステップと、
ゲノムDNAにおけるDNA特有識別子配列の存在を立証し、DNA特有識別子配列の配列をデータベースと比較してDNA特有識別子配列がデータベースにおいて未だ使用されていないことを確認することにより、生物学的実体の同定を検証するステップと、
生物学的実体から生物学的物質を生産することの妥当性の指標を提供するステップであって、生物学的物質が、生物学的実体由来のゲノムDNAを含む、ステップと、
少なくとも1つのDNA特有識別子配列の配列をデータベースのデータベースエントリに入力し、DNA特有識別子配列を生物学的物質の同定及び/又は追跡情報と関連づけるステップと
を含み、これによって、生物学的物質におけるDNA特有識別子配列を読み取り、対応するデータベースエントリを取得して生物学的物質の同定及び/又は追跡情報を提供することにより、生物学的物質のトレーサビリティを提供する、方法を本明細書において提供する。
【0104】
このような方法の実施形態を示すフローチャートを図8に示す。
【0105】
当然のことながら、生物学的実体は、目的の適する任意の生物学的実体を一般に含み得る。生物学的実体は、細胞(すなわち、植物細胞、真菌細胞、動物細胞、又は細菌細胞)又は1若しくは2以上の細胞を含む種子若しくは組織、又はウイルス、又は生物体、例えば、植物、動物、若しくは真菌、又はこれらの任意の部分を含むか又はこれからなり得る。特定の実施形態では、生物学的実体は、植物細胞、真菌細胞、動物細胞、ウイルス又は細菌細胞を含み得る。生物学的実体を遺伝子修飾して特有識別子配列を組み入れる場合は、生物学的実体は、細胞又はウイルスを典型的に含んでもよく、これにより遺伝子修飾後に増殖させて、挿入した特有識別子配列をそれぞれ含む生物学的実体をさらに生産し得る。
【0106】
特定の実施形態では、検証するステップは、生物学的実体のゲノムDNA内の特有識別子配列の存在を立証し、及び/又はこの配列を決定し、及び/又は特有識別子配列がデータベースにおいて未だ使用されていない(すなわち、未だこれまでにデータベースエントリと関連していない新たな配列である)かどうかを判定するために実施し得る。検証が成功する(すなわち、特有識別子配列が適切に挿入され、データベースに対して特有である)場合、特定の実施形態では、特有識別子配列のデータベースエントリをデータベースに作成してもよく(これは、適切な同定及び/又は追跡情報と関連してもよく、継続的に更新してもよい)、生物学的実体から生物学的物質を生産することの妥当性の指標を、関心を有する団体、例えば、栽培者、農家、又は次いで生物学的物質を生産若しくは栽培し得る他の農業関係者に提供し得る。
【0107】
このような方法では、生物学的物質のトレーサビリティは、対応するデータベースエントリを取得して同定及び/又は追跡情報を得るために使用し得る、生物学的物質の特有識別子配列を読み取る(すなわち、シーケンシングする)ことにより提供し得る。
【0108】
特定の実施形態では、本明細書に記載する方法は、少なくとも1つのDNA特有識別子配列を生物学的実体のゲノムDNA内に挿入するステップ、又は生物学的実体のゲノムDNA内の既に存在する識別子配列を遺伝子編集により修飾して、生物学的実体のゲノムDNA内にDNA特有識別子配列を生成するステップをさらに含み、これによって、この同定を実現し得る。
【0109】
さらに別の実施形態では、本明細書に記載する方法は、生物学的実体のゲノムDNA内への挿入のための少なくとも1つのDNA特有識別子配列を用意するステップをさらに含み得る。特定の実施形態では、DNA特有識別子配列は、本明細書においてさらに記載する配列のランダム化したプールとして用意し得る。
【0110】
当然のことながら、特定の実施形態では、本明細書に記載する方法では、同定及び/又はトレーサビリティを提供するためにゲノム内に組み入れた、単一の特有識別子配列を利用し得るか又は2若しくは3以上の識別子配列を使用し得ることを検討する。
【0111】
特定の実施形態では、特有識別子配列は、特有識別子配列のランダム化したプール由来であり得る。挿入した特有識別子配列の同一性は、挿入(すなわち、形質転換又は遺伝子修飾)が達成されるまで判定しなくてもよい。このような方法では、関心を有する団体に特有識別子配列のランダム化したプールを提供してもよく、1、2又は3以上の特有識別子配列(複数可)がゲノムに挿入されるように目的の生物学的実体の遺伝子修飾を実施し得ることを検討する。遺伝子修飾プロセス後に、挿入した特有識別子配列(複数可)をシーケンシングして、挿入した特有識別子配列(複数可)のヌクレオチド配列を決定し得る。特有識別子配列の典型的長さが、ランダム化したプール内に多数の異なる配列を生成するよう十分に長くなるように典型的に選択され得ることを考慮すると、2つの異なる団体が同一の特有識別子配列を挿入する統計学的尤度は、極めて低い可能性を有する。したがって、このような方法では、特定の実施形態において、本明細書に記載する方法の同定及び/又はトレーサビリティにより利益を得ようと努める多くの異なる団体に、目的の生物学的実体への挿入のために、同一又は類似のランダム化した配列プール由来の試料を提供することを検討する。このような方法では、特定の実施形態において、プロセスを合理化してもよく、及び/又はコストを削減し得ることを検討する。
【0112】
本明細書に記載する方法のさらに別の実施形態では、生物学的物質におけるDNA特有識別子配列を読み取り、対応するデータベースエントリを取得するステップは、
生物学的物質由来のゲノムDNAを含む試料を受領又は提供するステップと、
生物学的物質由来のゲノムDNA内の少なくとも1つのDNA特有識別子配列を増幅し、DNA特有識別子配列をシーケンシングするステップと、
DNA特有識別子配列の配列をデータベースと比較し、DNA特有識別子配列と対応するデータベースエントリを取得するステップであって、データベースエントリによって生物学的物質の同定及び/又は追跡情報を提供する、ステップと
を含み得る。
【0113】
特定の実施形態では、特有識別子配列(複数可)を、生物学的実体のゲノム内の実質的に無害な部位に挿入し得る(すなわち、遺伝子発現又は表現型に実質的に影響しない可能性を有する)ことを検討する。例えば、特定の実施形態では、特有識別子配列(複数可)を、ゲノムDNAの1又は2以上の遺伝子間領域(複数可)に挿入し得ることを検討する。
【0114】
特定の実施形態では、データベース又はレジストリに記録される同定及び/又は追跡情報は、生物学的物質のサプライチェーン情報を含み得る。特定の実施形態では、データベースの同定及び/又は追跡情報は、生物学的物質の出所情報を含み得る。特定の実施形態では、データベースの同定及び/又は追跡情報は、栽培者、地域、バッチ、ロット、日付、若しくは他の関連するサプライチェーン情報、又はこれらの任意の組合せを含み得る。本明細書における教示を尊重する当業者は、多様な同定及び/又は追跡情報を認識し、これをデータベースに含んでもよく、要望に応じて又は特定の適用に適するように選択し得る。特定の実施形態では、既存のサプライチェーン追跡における特徴、例えば、バーコード又はロット若しくはバッチ番号は、例えば、データベースに含み得る。特定の実施形態では、地理的地域、日付、購買者、農家、ロット、サブロット、収穫、バッチ、他のDUID有効生産物、生物体、契約上の義務、認証、近隣の産業及び商業、センサーデータ、気候データ、又はこれらの任意の組合せのような情報をデータベースに含有/記憶し得る。
【0115】
別の実施形態では、生物学的物質を同定する方法であって、
コンピュータデバイスにおいて、既知の生物学的物質から抽出したDNA特有識別子配列(DUID)を受領するステップと、
コンピュータデバイスにおいて、複数のDUIDをそれぞれの生物学的物質情報と関連づけて記憶したDUIDデータベースを検索して、受領したDUIDと適合させるステップと、
DUIDデータベースの検索により、受領したDUIDと適合させることができなかった場合、DUIDデータベースに、受領したDUIDを、既知の生物学的物質と関連する生物学的物質情報と関連づけて記憶するステップと、
受領したDUID及び既知の生物学的物質と関連する情報をDUIDデータベースに記憶するステップの後に、コンピュータデバイスにおいて、未知の生物学的物質から抽出したクエリDUIDを受領するステップと、
コンピュータデバイスにおいて、DUIDデータベースを検索して、受領したクエリDUIDと適合させるステップと、
DUIDの検索により、受領したクエリDUIDと適合させることができた場合、受領したクエリDUIDに応答して、クエリDUIDと適合するDUIDと関連づけて記憶した生物学的情報を返すステップと
を含む、方法を本明細書において提供する。
【0116】
このような方法の実施形態を示すフローチャートを図7に示す。この図では、DNA特有識別子配列は、(例示におけるDUID~DuID4)は、既知の生物学的物質から抽出(すなわち、読取り、判定、又はシーケンシング)し、コンピュータデバイスに提供する。コンピュータデバイスは、複数のDUIDを、それぞれの生物学的物質情報と関連づけて記憶するDUIDデータベース(すなわち、DuIDデータストア)を検索して、受領した受領したDUID4と適合させるために使用する。DUIDデータベースの検索により、受領したDUIDと適合させることができなかった場合、DUIDデータベースに、受領したDUID(DuID4)を、既知の生物学的物質と関連する生物学的物質情報(すなわち、生産者4情報)と関連づけて記憶し、これにより、DUID及び生物学的物質のデータベースにおける登録が可能となる。次いで、関心を有する団体に登録成功の通知を提供し、生物学的実体/物質の増殖を進めて生物学的物質、例えば、食品生産物を生産することを認可し得る。受領したDUID及び既知の生物学的物質と関連する情報のDUIDデータベースにおける記憶後に、未知の生物学的物質(すなわち、目的の生物学的物質、例えば、汚染が疑われる食品生産物)から抽出(すなわち、例えば、シーケンシングによる読取り)したクエリDUIDを、コンピュータデバイスにおいて受領してもよく、DUIDデータベースの検索を実施して、受領したクエリDUIDと適合させ得る。DUIDデータベースの検索により、受領したクエリDUIDと適合させることができた場合、クエリDUIDと適合するDUIDと関連づけて記憶した生物学的情報が、受領したクエリDUIDに応答して返される可能性を有し、これにより生物学的物質の追跡及び/又は同定情報が提供され、この情報を、例えば、食品リコール等に対応するために使用し得る。
【0117】
別の実施形態では、DUIDデータベースを検索して、受領したDUIDと適合させるステップは、
DUIDデータベースを検索して、受領したDUIDと完全に適合させるステップと、
完全な適合が見出されない場合、受領したDUIDとほぼ適合するDUIDデータベースに記憶したDUIDに対してアラインメント/同一性検索を実施するステップと
を含み得る。
【0118】
なお別の実施形態では、DUIDデータベースを検索して、クエリDUIDと適合させるステップは、
DUIDデータベースを検索して、クエリDUIDと完全に適合させるステップと、
完全な適合が見出されない場合、クエリDUIDとほぼ適合するDUIDデータベースに記憶したDUIDに対してアラインメント/同一性検索を実施するステップと
を含み得る。
【0119】
当然のことながら、核酸配列が使用されるため、増殖中に特有識別子配列の配列変異の可能性が存在する場合があり、並びに/又は増幅及び/若しくはシーケンシングエラーが生じ得る。したがって、特定の実施形態では、このようなアラインメント/同一性検索を実施して、ほぼ又は非常に類似して適合するエントリが存在し得るかどうかを同定し得る。このようなアラインメント/同一性/類似性評価を実施するための多様な配列比較アルゴリズムが存在し(例えば、NCBIから入手可能なBLASTツールを参照)、本明細書における教示を尊重する当業者は、特定の適用に適するように、要望に応じて適切なアルゴリズムを選択又は適応させることが可能である。
【0120】
さらに別の実施形態では、本明細書に記載する方法は、
検索により、クエリDUIDとほぼ適合させることができた場合、クエリDUIDを、クエリDUIDとほぼ適合するDUIDと関連づけて記憶するステップ
をさらに含み得る。
【0121】
このような方法では、データベースは、例えば、配列変異が同定された等の場合、更新し得る。
【0122】
別の実施形態では、生物学的物質を同定するためのコンピュータシステムであって、
命令を実行することが可能なプロセシングユニット、及び
プロセシングユニットで実行した場合、本明細書に記載する1又は2以上の方法のいずれかを実施するようにコンピュータシステムを構成する命令を記憶するメモリユニット
を含む、コンピュータシステムを本明細書において提供する。
【0123】
別の実施形態では、その上に命令を記憶したコンピュータ可読メモリであって、コンピュータシステムのプロセシングユニットで実行した場合、本明細書に記載する1又は2以上の方法のいずれかを実施するようにシステムを構成する、コンピュータ可読メモリを本明細書において提供する。
【0124】
別の実施形態では、生物学的物質を同定するための方法であって、
生物学的物質由来のゲノムDNAを含む試料を受領又は提供するステップと、
生物学的物質由来のゲノムDNA内の少なくとも1つのDNA特有識別子配列を増幅し、DNA特有識別子配列をシーケンシングするステップと、
DNA特有識別子配列に記憶した生物学的物質の同定及び/又は追跡情報を復号又は解読するステップと
を含む、方法を本明細書において提供する。
【0125】
このような方法の実施形態は、同定及び/又は追跡情報をデータベースに記憶せずに、代わりに情報を特有識別子配列それ自体において符号化(暗号化又は非暗号化)し得ることを除いて、データベース又はレジストリを利用する本明細書に記載する実施形態に類似し得る。情報を核酸配列に記憶するための手法は、当分野において公知であり、デジタルデータストレージにおける0及び1ビットと同様にA、T、G、Cヌクレオチドの使用を典型的に含み得る。情報を記憶/符号化/暗号化するための手法の例は、例えば、Clelland, C., Risca, V. & Bancroft, C. Hiding messages in DNA microdots. Nature 399, 533-534 (1999) doi:10.1038/21092(参照により本明細書に組み入れる)に見出され得る。
【0126】
このような方法の実施形態を示すフローチャートを図11に示す。
【0127】
特定の実施形態では、特有識別子配列を、キーを符号化するために使用し得ることを検討し、キーは、追跡及び/又は同定情報と関連づけてデータベースに記憶するものである。したがって、データベースにおけるDUIDの記憶及びデータベースにおけるDUIDの検索に本明細書において言及する場合、直接的(すなわち、特有識別子配列それ自体の主要核酸配列の記憶及び検索)及び間接的(すなわち、特有識別子配列の主要核酸配列からのキーの取得、及びデータベースに記憶し、データベースを検索するキーの使用)選択肢の両方を包含するものと考えられ得ることが理解される。本明細書における教示を尊重する当業者は、使用し得る多様な組合せを認識し、このすべてを本明細書において包含することを意図する。
【0128】
別の実施形態では、生物学的物質のトレーサビリティを提供するための方法であって、
生物学的実体のゲノムDNA内の少なくとも1つのDNA特有識別子配列の配列を決定するステップと、
ゲノムDNAにおけるDNA特有識別子配列の存在を立証し、DNA特有識別子配列に記憶した同定及び/又は追跡情報を復号又は解読してDNA特有識別子配列を立証することにより、生物学的実体の同定を検証するステップと、
生物学的実体から生物学的物質を生産することの妥当性の指標を提供するステップであって、生物学的物質が、生物学的実体由来のゲノムDNAを含む、ステップと
を含み、これによって、生物学的物質におけるDNA特有識別子配列を読み取り、DNA特有識別子配列に記憶した情報を復号又は解読して生物学的物質の同定及び/又は追跡情報を提供することにより、生物学的物質のトレーサビリティを提供する、方法を本明細書において提供する。
【0129】
このような方法の実施形態を示すフローチャートを図10に示す。
【0130】
このような方法の実施形態は、同定及び/又は追跡情報をデータベースに記憶せずに、代わりに情報を特有識別子配列それ自体において符号化(暗号化又は非暗号化)し得ることを除いて、データベース又はレジストリを利用する本明細書に記載する実施形態に類似し得る。情報を核酸配列に記憶するための手法は、当分野において公知であり、デジタルデータストレージにおける0及び1ビットと同様にA、T、G、Cヌクレオチドの使用を典型的に含み得る。情報を記憶/符号化/暗号化するための手法の例は、例えば、Clelland, C., Risca, V. & Bancroft, C. Hiding messages in DNA microdots. Nature 399, 533-534 (1999) doi:10.1038/21092(参照により本明細書に組み入れる)に見出され得る。
【0131】
なお別の実施形態では、生物学的物質を同定する方法であって、
コンピュータデバイスにおいて、未知の生物学的物質から抽出したDNA特有識別子配列(DUID)を受領するステップと、
DNA特有識別子配列に記憶した未知の生物学的物質の同定及び/又は追跡情報を復号又は解読するステップと
を含む、方法を本明細書において提供する。
【0132】
このような方法の実施形態を示すフローチャートを図12に示す。
【0133】
さらに別の実施形態では、生物学的物質のトレーサビリティを提供するための方法であって、
少なくとも1つのDNA特有識別子配列を生物学的実体のゲノムDNA内に挿入して、生物学的物質の調製において使用するステップ
を含む、方法を本明細書において提供する。
【0134】
上の方法の別の実施形態では、DNA特有識別子配列は、本明細書に記載する1又は2以上のカセットのいずれかとして挿入し得る。
【0135】
1又は2以上の上の方法のいずれかの別の実施形態では、方法は、生物学的実体のゲノムDNA内の少なくとも1つのDNA特有識別子配列の配列を決定するステップをさらに含み得る。
【0136】
1又は2以上の上の方法のいずれかの別の実施形態では、方法は、ゲノムDNAにおけるDNA特有識別子配列の存在を立証し、DNA特有識別子配列の配列をデータベースと比較してDNA特有識別子配列がデータベースにおいて未だ使用されていないことを確認することにより、生物学的実体の同定を検証するステップをさらに含み得る。
【0137】
1又は2以上の上の方法のいずれかのなお別の実施形態では、方法は、
生物学的実体から生物学的物質を生産するステップであって、生物学的物質が、生物学的実体由来のゲノムDNAを含む、ステップ、及び/又は
生物学的実体から生物学的物質を生産することの妥当性の指標を提供するステップであって、生物学的物質が、生物学的実体由来のゲノムDNAを含む、ステップ
をさらに含み得る。
【0138】
1又は2以上の上の方法のいずれかのなお別の実施形態では、方法は、少なくとも1つのDNA特有識別子配列の配列をデータベースエントリに入力し、DNA特有識別子配列を生物学的実体及び/又は生物学的物質の同定及び/又は追跡情報と関連づけるステップをさらに含み得る。
【0139】
1又は2以上の上の方法のいずれかのさらに別の実施形態では、方法は、
生物学的実体及び/又は生物学的物質におけるDNA特有識別子配列を読み取り、対応するデータベースエントリを取得して生物学的実体及び/又は生物学的物質の同定及び/又は追跡情報を提供することにより、生物学的実体及び/又は生物学的物質のトレーサビリティを提供するステップ
をさらに含み得る。
【0140】
オリゴヌクレオチド構築物、カセット、プラスミド、ベクター、細胞、及びキット
別の実施形態では、特有識別子配列を含むカセットであって、特有識別子配列が、DNA特有識別子配列の増幅、DNA特有識別子配列のシーケンシング、又はこの両方のための、少なくとも1つの5’プライマーアニーリング配列、及び少なくとも1つの3’プライマーアニーリング配列に隣接する、カセットを本明細書において提供する。
【0141】
当然のことながら、特定の実施形態では、このようなカセットは、本明細書に記載する1又は2以上の方法のいずれかにおける使用のためのものであり得る。
【0142】
カセットの特定の実施形態では、DNA特有識別子配列は、ネステッドPCRによりDNA特有識別子配列の増幅が可能となるように、2つの5’プライマーアニーリング配列、及び2つの3’プライマーアニーリング配列に隣接し得る。特定の実施形態では、ネステッド設計は、例えば、リコール適合度を向上させるために使用し得る。カセットのなおさらなる実施形態では、2つの5’プライマーアニーリング配列が部分的にオーバーラップし得るか、2つの3’プライマーアニーリング配列が部分的にオーバーラップし得るか、又はこの両方であり得る。カセットのなおさらなる実施形態では、カセットは、DNA特有識別子配列のシーケンシングのための、DNA特有識別子配列に対して5’に位置するシーケンシングプライマーアニーリング配列をさらに含み得る。カセットのまたさらなる実施形態では、シーケンシングプライマーアニーリング配列は、2つの5’プライマーアニーリング配列間に位置し得る。カセットのさらなる実施形態では、シーケンシングプライマーアニーリング配列は、2つの5’プライマーアニーリング配列の一方又は両方と少なくとも部分的にオーバーラップし得る。カセットのまたさらなる実施形態では、2つの5’プライマーアニーリング配列は、部分的にオーバーラップしてもよく、シーケンシングプライマーアニーリング配列の少なくとも一部分は、オーバーラップに位置し得る。カセットのさらなる実施形態では、カセット配列は、最大約1500ntの長さ、最大約1000ntの長さ、約200nt~約600ntの長さ、約200nt~約400ntの長さ、又は約400nt~約600ntの長さであり得る。
【0143】
本明細書に記載するカセットの実施形態及びこの生成のためのプロセスの実施例を図2に示し、この場合、カセットは、ランダム化配列のオリゴヌクレオチドのプールを使用して生成し得る。オリゴヌクレオチドのランダム化したプールは、市販のものを入手するか、又は要望に応じて合成し得る。これらは、例えば、酵素重合若しくはライゲーションにより構築するか、又は化学的に合成し得る。ランダムオリゴヌクレオチド断片は、例えば、カラム分離により精製して、ほぼ同一又は類似のサイズ(例えば、示した実施例では約300nt~400ntのサイズ)の断片を単離することができ、カセット内に挿入し得る。多種多様な異なる特有識別子配列を含むカセットのプール(すなわち、一部の実施例では約10)を生成し得る。カセットは、プライマーアニーリング配列(すなわち、プライマー結合部位)及び少なくとも1つのシーケンシングプライマーアニーリング配列(すなわち、シーケンシングプライマー結合部位)を、図2に示す構成のように、DUIDの増幅及び/又はシーケンシングが可能となるのに適する配列で含み得る。プライマー及びシーケンシング部位を宿主ゲノムに対して検証して、天然の増幅が存在しないことを立証し得る。必要に応じて、種々の生物体又は種々のゲノムのための種々のプライマーを有するカセットを利用し得る。カセットは、制限酵素アレイ部位を含むことができ、例えば、挿入カセット担体プラスミド又はベクターの形態で形成し得る。特定の実施形態では、カセットは、約500bpの長さであってもよく、例えば、約1200bpのサイズのプラスミド又は担体ベクター内に形成し得る。
【0144】
当然のことながら、カセットのプライマーアニーリング配列は、例えば、このようなプライマーアニーリング配列にアニーリングしてポリメラーゼにより重合を開始させるように1又は2以上のプライマーを設計又は選択し得るような、公知のヌクレオチド配列を有する核酸の所定の配列又は領域を指し得る。プライマーアニーリング配列は、特有識別子配列の増幅、特有識別子配列のシーケンシング、又はこの両方のために使用し得る。
【0145】
図13は、UID(特有識別子)配列を含む、本明細書に記載するカセット設計のさらなる例を示す。図13(a)は、二重プライマー設計を示し、13(b)は、単一プライマー設計を示し、13(c)は、独立型設計を示す。図13(a)の二重プライマー挿入カセット設計では、示す実施形態において、制限酵素アレイ、5’「プライマーA」領域、及び5’「プライマーB」領域(この場合、5’シーケンシングプライマーにより、「プライマーA」及び「プライマーB」領域の間に及ぶ領域においてアニーリングし得る)の後、平滑末端ライゲーション部位を含む。次に、示すように、UID領域(例えば、可変bpランダムDNA又は別の識別子配列)を形成し、CAS9PAM部位を形成してもよい。平滑末端ライゲーション部位が続き、次いで、3’「プライマーB」領域、及び3’「プライマーA」領域の後、制限酵素アレイを形成する。図13(b)の単一プライマー挿入カセット設計では、示す実施形態において、制限酵素アレイ、5’「プライマーA」領域(この場合、5’シーケンシングプライマーによりアニーリングし得る)の後、平滑末端ライゲーション部位を含む。次いで、示すように、UID領域(例えば、可変bpランダムDNA又は別の識別子配列)を形成し、CAS9PAM部位を形成してもよい。平滑末端ライゲーション部位が続き、次いで、3’「プライマーB」領域の後、制限酵素アレイを形成する。図13(c)では、独立型挿入カセット設計の実施形態を示し、これは、示すように、制限酵素アレイ、UID領域(例えば、可変bpランダムDNA又は別の識別子配列)、任意で形成するCAS9PAM部位、及び制限酵素アレイを含む。
【0146】
図13に示すように、多種多様なカセット設計を検討する。カセットは、例えば、既存のエレメント、サイズ及び増幅効率に関して異なり得る。プライマー対が存在するかどうかに応じて(図13(A)~(C)を参照)、全カセットサイズは変化し得る。例えば、個々のプライマー対を除去する場合、全カセットサイズは縮小し得る(例えば、特定の実施形態では約40bp)。当然のことながら、特定の実施形態では、UIDの増幅効率は、プライマー対除去の結果として低下し得る。例えば、二重プライマー設計では、プライマーの任意の順列を増幅に使用してもよく、これにより単一プライマー対設計に見出されるものではなく4つの可能な多様性が付与される。また、当然のことながら、特定の実施形態では、カセットサイズの縮小により、例えば、意図しない作用が生じる可能性が低下し得る。特定の実施形態では、任意のCAS9PAM部位を使用して、例えば、形質転換生物体の後代におけるUID配列のCRISPRに基づく効率的な編集を可能とし得る。カセット設計からすべてのプライマーを除去する特定の実施形態では、CAS9PAM部位を用意してもよいことを検討し、この場合、特定の実施形態では、DNA分解/ライゲーション技術を使用する場合等、CAS9PAM部位によって、例えば、独立型カセットが宿主ゲノムDNAから完全に構成されることが可能となる。特定の実施形態では、UID配列は、長さが可変であり得る。特定の実施形態では、レジストリ及び新たに挿入したUIDに存在するUIDにおける任意の衝突のチェックを含む検証ステップを実施する場合は特に、例えば、短いUID配列であっても安全に使用し得ることを検討する。
【0147】
本明細書に記載するカセットのなお別の実施形態では、プライマーアニーリング配列は、標的生物学的実体のゲノムに天然に存在していなくてもよい。このような方法では、意図しない及び/又はオフターゲット増幅及び/又はシーケンシングを減少又は回避し得る。
【0148】
別の実施形態では、本明細書に記載する1又は2以上のカセットのいずれかのうちの複数を含む組成物であって、各カセットが、同一のプライマーアニーリング配列を含み、各カセットが、ランダム化したDNA特有識別子配列を含む、組成物を本明細書において提供する。このような組成物は、本明細書に記載する配列のランダム化したプールの例を表し得る。
【0149】
なお別の実施形態では、本明細書に記載する1又は2以上のカセットのいずれかのうちの複数を含む組成物であって、各カセットが、同一のプライマーアニーリング配列、及び同一のシーケンシングプライマーアニーリング配列を含み、各カセットが、ランダム化したDNA特有識別子配列を含む、組成物を本明細書において提供する。このような組成物は、本明細書に記載する配列のランダム化したプールの例を表し得る。
【0150】
別の実施形態では、本明細書に記載する1若しくは2以上のオリゴヌクレオチドのいずれか又は本明細書に記載する1若しくは2以上のカセットのいずれかを含む、プラスミド、発現ベクター又は他の1本鎖若しくは2本鎖オリゴヌクレオチド構築物を本明細書において提供する。
【0151】
別の実施形態では、本明細書に記載する1又は2以上のオリゴヌクレオチドのいずれかを含むカセットを本明細書において提供する。
【0152】
なお別の実施形態では、本明細書に記載する1若しくは2以上のオリゴヌクレオチドのいずれか又は本明細書に記載する1若しくは2以上のカセットのいずれかをそのゲノム内に組み入れた、細胞又はウイルスを本明細書において提供する。別の実施形態では、特有識別子配列をそのゲノム内に組み入れた、細胞又はウイルスを本明細書において提供する。本明細書に記載する細胞又はウイルスのいずれか別の実施形態では、特有識別子配列は、細胞又はウイルスのゲノム核酸の遺伝子間領域内に組み入れ得る。細胞又はウイルスのいずれかのなお別の実施形態では、細胞は、植物細胞、真菌細胞、動物細胞、又は細菌細胞であり得る。
【0153】
別の実施形態では、
DNA特有識別子配列、
DNA特有識別子配列のランダム化したプール、
本明細書に記載する1若しくは2以上のオリゴヌクレオチドのいずれか、
本明細書に記載する1若しくは2以上のカセットのいずれか、
DNA特有識別子配列を増幅及び/若しくはシーケンシングするための1若しくは2以上のプライマー対、
緩衝液、
ポリメラーゼ、又は
本明細書に記載する1若しくは2以上の方法のいずれかを実施するための説明書
のいずれか1又は2以上、或いはこれらの任意の組合せを含むキットを本明細書において提供する。
【0154】
さらに別の実施形態では、目的の生産物のトレーサビリティを提供するための方法であって、
目的の生産物由来の試料を受領又は提供するステップであって、試料が、目的の生産物の一部であるか、これと混合、又はさもなければ関連する生物学的物質由来のゲノムDNAを含む、ステップと、
生物学的物質由来のゲノムDNA内の少なくとも1つのDNA特有識別子配列を増幅し、DNA特有識別子配列をシーケンシングするステップと、
データベースにおいてDNA特有識別子配列を検索し、DNA特有識別子配列と対応するデータベースエントリを取得するステップであって、データベースエントリによって目的の生産物の同定及び/又は追跡情報を提供する、ステップと
を含む、方法を本明細書において提供する。
【0155】
上の方法の別の実施形態では、方法は、本明細書に記載する1若しくは2以上の生物学的物質又は1若しくは2以上の生物学的実体のいずれかを、目的の生産物に導入又は追加するステップであって、生物学的物質又は実体が、本明細書に記載する少なくとも1つのDNA特有識別子配列を、このゲノム物質の一部として含む、ステップを含み得る。
【0156】
1又は2以上の上の方法のいずれかのさらに別の実施形態では、データベースエントリの同定及び/又は追跡情報は、目的の生産物のサプライチェーン情報を含み得る。
【0157】
1又は2以上の上の方法のいずれかのなお別の実施形態では、目的の生産物は、食品、農産物、医薬品、小売製品、織物、物品、化学物質、又は別のサプライチェーン品目を含み得る。
【実施例1】
【0158】
食品トレーサビリティを提供するための例となるDUIDシステム
この実施例では、本明細書においてDNA特有識別子(DUID)システムと呼ぶ、例となる食品トレーサビリティシステムの実施形態を記載する。この実施例では、DNA配列の耐久性及び複製能を利用して、生物体の核ゲノム内に特有識別子を安全に符号化する。これまでに記載されている方法により生物体のDNA内に同定する情報を符号化することによって、トレーサビリティにおける詳細な情報が、サプライチェーンにわたって提供され得る。特には、DUIDシステムは、
1.標的生物体の遺伝形質に影響せずにDNAレベルの集団同定を安全に達成する能力、
2.DUIDと参照情報との間の論理的関係性を構築する能力、
3.生産物を出所まで追跡するのにかかる時間を数カ月から約1日まで削減する能力、
4.生産物の出所とサプライチェーンを通じた最終的経路の両方の迅速な同定を実現する能力、
5.有益な情報を医療従事者及び産業監視役に提供する能力、
6.食品サプライチェーンの安定性、透明性、及び効率における消費者及び産業の信頼を育成する能力、並びに/又は
7.会員の協会における義務を施行するための機構、及び食品生産物の知的所有権を支援する能力
を有し得る。
【0159】
特定の実施形態では、例えば、DUIDシステムを使用して、食品システム出資者の監視能力を顕著に増強し得ることを検討する。本明細書に記載するDUIDシステムによって、トレーサビリティを提供することに加えて、帰属点についての伝統的思考が、トップダウンではなくボトムアップに覆され得る。本明細書に記載するこのような手法は、サプライチェーン強化の向上が当たり前となっていることを考慮すると、特に望ましい場合がある。本明細書に記載するDUIDシステムは、サプライチェーンを通じて一般にどこからでも、必要に応じて約1日以内に出所トレーサビリティの実質的保証を提供し得る。システムは、生物体の複製可能かつ安定な細胞特性により利益を得ることができ、後代を生成する場合、結果として、限界コストがゼロに近づき得る。伝統的追跡システムにおける経済的コスト及び改ざん及び/又は不正のリスクは非常に高く、悪質な活動の法的意味は顕著となり得る。本明細書に記載するDUIDシステムは、例えば、集団の後代が元々の識別子の部分を維持するような興味深い方法で編集することができる。また、DUIDは、例えば、最近消費された食品を同定するために、ヒト排泄物を検査することを望み得る医療従事者により利用され得る。
【0160】
上述の集団レベルの同定が、法的取決めへのさらなる言及を含んでいてもよいことを検討する。例として、生産物のIP所有者が、増殖する物質を、例えば、特定の栽培者及び/又は地域に意図的に関連づけ得ることを検討する。伝統的全チェーントレーサビリティ技術と組み合わせた集団レベルの遺伝子同定により、生産物の移動に対する注目すべきレベルの管理が可能となり得る。例えば、種々の有害生物に耐性となるように遺伝子改変したホウレンソウ植物種を考えられたい。DUIDシステムを使用して、検出におけるコストを顕著に削減し得る。コスト削減に加えて、DUIDシステムは、例えば、IP追跡のための接触点の集中を実現するレジストリとしての役割を果たし得る。
【0161】
多くの生物体は、規制されている。例えば、植物種は、麻薬の前駆体であり得る。このような生物体は、特定の実施形態では、例えば、認可された合法的組織と密接に関連することにより利益を得得る。したがって、このような場合は、本明細書に記載する戦略により利益を得得ることを検討する。
【0162】
例として、カナダにおける大麻の規制を考えられたい。大麻植物の生産及び流通、並びにこれらの繁殖物質は規制されている。特定の実施形態では、例えば、許可された大麻生産者が、DUIDをこれらの生産物内に含有させてもよく、これを使用して規制に役立て得ることを検討する。特定の実施形態では、このようなDUIDは、大麻を他の何かと(すなわち、例えば、食用生産物中に)混合する複雑な場合であっても、大麻の同定及び/又は追跡による規制に有用であり得る。
【0163】
別の例では、ホウレンソウ栽培者協会を考えられたい。特定の実施形態では、ホウレンソウを栽培及び販売するために、協会の会員権を必要とし得る。特定の実施形態では、このような繁殖物質が、DUID準備済の植物に由来し得ることを検討する。次いで、例えば、ランダム監査を小売レベルで行って、販売されるすべてのホウレンソウが公認であることを確実とし得る。
【0164】
DUIDシステム:
DUIDシステムは、例えば、生産物同定、DUID検証、DUID読取り、及び後続の生産物集団の追跡を包含し得る。これは、すべてのDUIDデータの中央レジストリとしても機能し得る。
【0165】
次の実施例では、DUIDプラットフォームは、アクター、ビジネスサービス、タスク、イベント、及びシステムのコレクションを含み得る。アクターは、ビジネスサービス及びタスクを実行又は誘発し得る。システム及びビジネスサービスは、これらにより生じるイベントに関して理解され得る。イベントは、食品生産物の追跡状態に直接関連し得る。
【0166】
アクター:例として、FDA(アクター)の消費者安全担当官(アクター)は、DUIDプラットフォーム(アクター)が、供給された目的の有機物質からDUIDを読み取る試行(ビジネスサービス)を要求し得る。アクターは、DUIDプラットフォームのエンジンである。アクターは、システム、機関、及び/又は個人であり得る。これらは、イベントを誘発し、ビジネスサービスに要求し得る。また、アクターは、タスクを実行し得る。次のリストでは、アクターの一部の例を提供するが、これは、例示目的を意図する非包括的リストである。
- DUIDプラットフォーム
DUIDレジストリ
DUID API
分析化学者
微生物学者
DNAシーケンサー
- 生産者
植物学者
CFO
トレーサビリティソフトウェア
- 栽培者
食品安全責任者
企業資源計画システム
- 梱包業者/出荷業者
トラックドライバー
経営者
CEO
- 小売業者
食品安全責任者
CFO
相談役
- 政府規制当局
消費者安全担当官
管理官
- 保険業者
引受人
査定員
【0167】
ビジネスサービス:例として、消費者安全担当官(アクター)及び読取り完了の成功(ビジネスサービス)の確証/承認時に、読取り(イベント)をレジストリ(システム)に記録し得る。ビジネスサービスは、最終的にイベントを生じ得る、重要なプロセス及びタスクを包含し得る。このようなサービスは、それを誘発するために存在する以前の特定のいかなる状況をも必要としない点で、ステートレスであるように設計し得る。これらは、完了を成功させるために特定のイベントが生じたことを指示し得る。いずれの場合でも、ビジネスサービスは、システムを利用し得るが、最も典型的には、一部のヒトの関与を含む。例として、特定の実施形態では、これは、アクターにより要求又は誘発されるはずである。また、ビジネスサービスは、例えば、検証(ビジネスサービス)→検証(イベント)のように、これらにより生じるイベントと同様に指定し得る。
【0168】
システム:例として、読取り(イベント)がレジストリ(システム)に記録されると、ストリームプロセッサ(システム)は、レジストリから新たに作成されたリードを読み取ることができ(イベント)、これを確証/承認されたリスナー(システム)に放送し得る。リスナーのうちの1人は、生産物の商標所有者(アクター)に使用される通知ダッシュボードを更新し得る。他方で、システムは、他のシステムと、又はさもなければヒトに操作されるクライアントと相互作用するのみであり得る。換言すれば、システムは、典型的に、デジタルシステムであり得る。DUIDプラットフォームにおけるシステムの例は、APIであり得る。APIでは、プラットフォーム境界の外部で操作する承認されたアクターにインターフェースを公開し得る。システムの別の例は、DUIDレジストリ(すなわち、データベース)であってもよく、これは、すべてのDUIDデータのための持続的なデータストアとして機能し得る。レジストリは、外部のアクターに直接公開しなくてもよい。
【0169】
イベント:例として、読取り(ビジネスサービス)を、FDA(アクター)の消費者安全担当官(アクター)により要求し得る。承認/確証後、ビジネスサービスにより、読取りの成功(イベント)が生じ得る。イベントは、ビジネスサービス及びシステムの結果を指し得る。イベントは、DUIDと関連させて典型的に記録する。つまり、生物体は、ビジネスサービスにより同定、検証又は読取り、内部又は外部のシステムにより追跡し得る。次の表では、この実施例における各イベント、並びにこの種々のビジネスサービス、アクター、システム及びタスクに対する関係性の概要を示す。
【0170】
【表1】
【0171】
記載するように、DUIDプラットフォームは、この実施例では、種々のアクター、ビジネスサービス、イベント、システム及び/又はタスクを包含し得る。このような成分はすべて、特定のプロセスフローに従い得る。この節では、例示的フローを詳細に記載する。このようなプロセスの例示に使用する図表では、BPMN2.0表記法を使用する(BPMN2.0-https://www.omg.org/spec/BPMN/2.0/PDF;この全体を参照により本明細書に組み入れる)。この図表は、以下にさらに詳細に記載する図において利用可能である。
【0172】
プロセス概説:
図3では、この実施例のDUIDエコシステムの例となるプロセスの全体的見解を記載する。
【0173】
プロセス開始:
例となるプロセスを開始する前に、サービス規約に関する適切な取決めが導入されていると予想し得る。これは、本人確認(KYC、know-your-customer)の検証、例えば、所有権の証明、合法的組織の同定、及び支払を含み得る。KYC要件に加えて、顧客は、管理ダッシュボードを介してユーザーアクセスロール及び他のシステム/アカウント設定を特定することが可能となり得る。
【0174】
プライマー及びシーケンシング部位の生成
これは、プロセスから独立的に生じ得る進行中/実行中のタスクであり得る。DUIDプライマーの開発は、例えば、顧客の宿主生物体要件、若しくはR&D努力、又はこの両方に依存し得る。既存の使用可能なプライマーを、同定ビジネスサービスに使用し得る。
【0175】
同定:
同定ビジネスサービスは、図4に詳細に見ることができる。このビジネスサービスの物的生産は、生物体の形質転換において生産者に使用し得る、DNA配列に基づくカセットであり得る。この活動において展開し得る2つのシナリオが存在し得る。
【0176】
第1に、既存のカセットが存在する場合、標準的CRISPR及び/又は関連技術を使用して、既存の識別子の部分を修飾し得ることを検討する。例えば、既存の識別子を地理的地域にマッピングしている場合、配列の末端のわずかな塩基を編集し得る。この編集は、さらに特定の情報、例えば、プロセシング後の予想形質転換状態にマッピングし得る。これが完了すると、同定イベントが誘発され得る。
【0177】
既存のカセットが存在しない場合は、これを生成し得る。このようなプロセスについての詳細のために、図2を参照されたい。図2に示すように、カセットは、ランダム化配列のオリゴヌクレオチドのプールを使用して生成し得る。オリゴヌクレオチドのランダム化したプールは、市販のものを入手するか、又は要望に応じて合成し得る。これらは、例えば、酵素重合若しくはライゲーションにより構築し得る。ランダムオリゴヌクレオチド断片は、例えば、カラム分離により精製して、ほぼ同一又は類似のサイズ(例えば、示した実施例では約300nt~400ntのサイズ)の断片を単離することができ、カセット内に挿入し得る。多種多様な異なる特有識別子配列を含むカセットのプール(すなわち、一部の実施例では約10)を生成し得る。カセットは、プライマーアニーリング配列(すなわち、プライマー部位)及び少なくとも1つのシーケンシングプライマーアニーリング配列(すなわち、シーケンシング部位)を、図2に示す構成のように、DUIDの増幅及び/又はシーケンシングが可能となるのに適する配列で含み得る。プライマー及びシーケンシング部位を宿主ゲノムに対して検証して、天然の増幅が存在しないことを立証し得る。必要に応じて、種々の生物体又は種々のゲノムのための種々のプライマーを有するカセットを利用し得る。カセットは、制限酵素アレイ部位を含むことができ、例えば、挿入カセット担体プラスミドの形態で提供され得る。特定の実施形態では、カセットは、約500bpの長さであってもよく、例えば、約1200bpのサイズのプラスミド又は担体ベクター内に形成し得る。
【0178】
カセットが完成すると、同定イベントを誘発することができ、カセットは、顧客に送られ得る。顧客は、典型的には、生産者、例えば、農産業における栽培者である。生産者は、適する形質転換及び再生産技術を使用して、ゲノム内に挿入したカセットを今や含む目的の生物体を再生産し得る。次いで生産者は、形質転換した生物学的実体由来のゲノムDNAの試料を少なくとも含む検証パッケージを生成することができ、これは次いで、返送され得る。
【0179】
検証:
検証パッケージを受領し、要求者を確証し、承認をチェックした後、検証プロセスが開始し得る。図5では、検証プロセスの例の概要を示す。DUIDは、次について検証し得る。
- 宿主核ゲノムへの安定な組込み
DUIDは、全DNA抽出物から容易に増幅し得る。
DUID配列は、DUIDカセットから予測可能な仕様の範囲内で回復可能であり得る。
- 特有値妥当性
値がレジストリに既に存在する場合、形質転換イベントは破棄し得る。
- 組込みのコピー数
DUIDの2つ以上のコピーが存在する形質転換イベントは、破棄し得る(一部の実施例では、2つ以上のDUIDを使用し得ることも検討するが)。
- 組込みの位置
DUIDは、非コード/遺伝子間領域を標的として、天然コード領域に影響する挿入の可能性を低下させ得る。
また、DUIDの位置を特定の染色体及び染色体腕にマッピングし得る。
- 非発現評価
DUIDの任意のRNA発現が存在する場合、形質転換イベントは、破棄し得る。
【0180】
DUIDは、プライマーの両方のセットにより独立的に増幅することができ(この場合、例えば、図2の例のように2つ以上のセットを使用する)、ランダムIDをシーケンシングし得る。特定の実施形態では、このプロセスを3回反復して、シーケンシングエラーを軽減し得る。検証ビジネスサービスは、それぞれのカセット検証ステップについて成功又は失敗の段階的フローを利用し得る。特定の実施形態では、これにより、検証のコストが削減され得る。失敗が生じた場合は、結果を記録し得る。各配列検証が成功した場合は、結果を記録することができ、リコール検査が開始し得る。
【0181】
特定の実施形態では、このようなリコールシミュレーションは、種々の環境状態への目的の有機物質の導入を含み得る。このような環境により、有機物質の変動が生じる場合があり、これは引き続いて読取りビジネスサービスに渡され得る。この実施例では、次の4つすべての平行検査のうちのいずれかが生じ得る。
- 全体が新鮮な環境
- 全体が乾燥した環境
- 模擬GI酸環境
これにより、物質の消化をシミュレーションし得る。
ふん便からの潜在的リコールをシミュレーションし得る。
- UV電離放射線環境
これにより、太陽光、又は他の食品加工滅菌技術、例えば、ガンマ線照射若しくはeビーム滅菌への有機物質の曝露をシミュレーションし得る。
【0182】
このような検査が完了すると、生成した有機物質は、読取りビジネスサービスに独立的に渡され、これを誘発し得る。読取りビジネスサービスの後、すべての結果を記録し得る。このような環境状態検査に由来する、すべての有機物質が成功裏に読み取られて、検証が成功裏に完了しなくてはならないことはなく、このような判定は、例えば、個々の場合に応じて行い得る。
【0183】
事後検証:
検証結果に応じて、多数の潜在的アウトフローが存在し得る。検証が承認不可であった場合、DUIDサービスは終了する場合があり、適切な団体を通知し得る。配列検証検査のうちの1つが失敗した場合、事後審査に進み得る。事後審査では、失敗の原因の同定を試行し得る。2つの結果(カセットエラー又は形質転換エラー)が存在し得るが、この原因に応じて、フローにより、同定ビジネスサービスの再試行が誘発されるか、又は生産者から形質転換の再試行が要求され得る。
【0184】
検証ビジネスサービスの結果が検証イベントである場合、DUIDレジストリ(すなわち、データベース)は、適切な情報により更新され得る。また、このイベントは、繁殖認可メッセージ又は通知を誘発することができ、これは、生産者に受領され得る。次いで、これによって、栽培者が物質を生産及び繁殖させることが推進される場合があり、次いで、この栽培者は、通常通りビジネスを継続し得る。
【0185】
事前読取りサプライチェーン活動
本明細書に記載するように、残りのサプライチェーンは、通常通りビジネスを続け得る。しかし、サプライチェーン出資者は、DUIDをこれらの既存のプロセスに組み込む選択肢を有し得る。彼らが組み込まないことを選択する場合は、DUIDの存在により、少なくとも、出所トレーサビリティが提供され得る。特定の実施形態では、DUIDを既存のバーコードに組み込み得ることを検討する。特定の実施形態では、DUIDの特有識別子(UID)部分が、本質的には、そのヌクレオチド(A、T、G、C)により特徴づけられる文字列であり得ることに注意されたい。特定の実施形態では、明確な読取りを必要としない場合、彼らは、独自のデータ取得技術(例えば、バーコーディング)を使用して、このDUID準備済生物体を独立的に追跡し得る。これにより、未確認の追跡イベントが生じ得る。
【0186】
読取りイベントを必要とする場合、当該の出資者は、読取りビジネスサービスに要求を送信し得る。この実施例では、2種類の要求が存在し得る。一方は必須である場合があり、他方は随意であり得る。読取りパッケージの内容は、この種類に依存し得る。例えば、読取り要求が必須である場合、例えば、特定の日付の有機物質試料等、出資者の要件を満たすために応えるべき特定の要件が存在し得る。
【0187】
読取り:
読取りビジネスサービスは、図6に詳細に示す。他のビジネスサービスと同様に、承認を直ちにチェックし得る。大抵は、読取りパッケージは、各種の有機物質を含み得る。この物質に応じて、精製及び/又は増幅を行い得る。プライマーを検出した場合、シーケンシング(及び一部の場合、UID復号ステップ)が開始し得る。プライマーを検出しなかった場合、結果及び失敗を記録する。
【0188】
UIDがシーケンシング及び/又は復号されると、すべての適するデータをDUIDレジストリ内に見出す試行が行われ得る。特定の場合では、DUIDがレジストリに見出されない場合があることが想定され、このような場合では、事後審査を行い得る。この審査では、エラーの原因を見出すことを試行し得る。他方では、DUIDを見出した場合、結果を記録することができ、読取りイベントを作成し得る。
【0189】
また、特定の実施形態では、認可されたインテグレーションパートナー、例えば、FDAが、読取りビジネスサービスに要求し得る可能性がある。一部の管轄権は、例えば、トレーサビリティデータの共有を必要とし得る、規制を有し得る。
【0190】
読取り後
読取りビジネスサービス完了後、読取りデータパッケージを生成し、要求している出資者に返し得る。読取りパッケージは、これまでのすべての追跡イベント、検証結果、及びプライマーデータを含み得る。これは、第1にDUIDの使用を必要とする契約上の義務も含み得る。これは、関与する各団体のKYC情報を含み得る。
【0191】
支援システム:
この実施例のDUIDの全体的見解の図表上に記述する2つの支援システムが存在し得る。これらのいずれも、全プロセスに対して不可欠な役割を果たすとは言えないが、代わりに、DUIDレジストリのインターフェース及びプロセッサとして機能し得る。
【0192】
API:APIは、DUIDレジストリのインターフェースとして機能し得る。これにより、認可されたインテグレーション団体が、認可されたデータにアクセスすることが可能となり得る。一部の場合では、彼らは、このデータを修飾することが可能となり得る。上記のユーザーアクセスロールを参照されたい。
【0193】
ストリームプロセッサ:ストリームプロセッサは、レジストリからリアルタイムで読み取り、結果として機能性を誘発し得る。例えば、承認不可のアクターが読取りビジネスサービスを要求した場合、例えば、DUID所有者に自動的に通知され得る。
【0194】
したがって、この実施例では、本明細書において提供する教示に従って使用し得るDUIDシステム、方法、及び組成物の実施形態を詳細に記載する。当然のことながら、この実施例は、当業者を対象とする例示目的のために提供し、制限することは意図しない。
【実施例2】
【0195】
酵母種への安定なDUIDの組込み
酵母種への安定なDUIDの組込み
この実施例では、酵母種へのDUIDの安定な組込みを記載する。
【0196】
酵母種への安定なDUIDの組込みのための方法及び材料
概説:
この実施例では、DNA配列に基づく特有識別子(DUID)を設計し、モデル生物体である酵母に組込み、検証する手法を記載する。このような技術は、実験用酵母株と産業用酵母株の両方の使用を含む。本発明の方法では、トレーサビリティの活動について、ゲノムへのDUIDの組込みの有用性及び有効性を検証する。このような分子生物学的実験方法は、以下を含む。
1.DUID、DUIDベクター及びDUIDプライマーのインシリコでの設計
2.酵母セントロメアプラスミド(YCp)による安定なゲノム組込みのための方法
3.天然酵母染色体への挿入による安定なゲノム組込みのための方法
4.DUID組込みの検証のための方法
5.DUIDシグナル検出のための方法及びシグナル検出限界
【0197】
このような方法が、原栄養株を含む広範な研究及び産業用酵母株に適用可能であることを検討する。YCp手法によって、ベクター骨格内に構築したセントロメア配列の紡錘体結合を通じた、独立的染色体としてのDUID構築物の細胞及び核操作によるゲノムの組込みが可能となる。天然酵母染色体への挿入では、ゲノムにおける通常のコード能及び遺伝子の発現への干渉を最小限とするために、4つのゲノム部位を選択した。このような部位は、遺伝子が典型的に発現抑制される場合に異質染色質として一般に考えられるサブテロメア領域、及び陽性対照として作用する低いコード能を有する真性染色質領域を含んだ。天然酵母染色体への挿入の手法では、1)形質転換体の選択のための抗生物質耐性を保有するプラスミドと、選択された標的部位に隣接する相同領域に隣接するDUIDを含む線状断片との同時形質転換、並びに2)特定のガイドRNA(gRNA)、及びCas9分解標的PAM部位の鋳型として作用する特定の相同修復鋳型(HRT)を使用して、組込み部位において標的とするCRISPRに基づく方法に着目する。
【0198】
構築物及びベクターの設計及び開発
DUID構築物の設計
図14は、370pbのDUID構築物2つのマップを示す。A)PCR及びqPCR増幅のためのDUID構築物の設計である。構築物は、370pbである。このDUID構築物は、フォワードプライマー2つ及びリバースプライマー2つを含む。2つの識別子(ID1及びID2)が存在する。ID1は、PCR増幅に理想的である。ID2は、qPCR増幅に理想的である。B)ループ介在等温増幅(LAMP)及びPCRのためのDUID構築物の設計である。このマップは、PCRとLAMPの両方のためのプライマーを含む。伝統的増幅設計決定を除いて、CRISPRに基づくシステムを使用してDUID構築物配列の編集及び検出が可能となる任意のCAS PAM部位である、ピンク色の特徴に注意されたい。このようなPAM部位により、組み込まれたDUID構築物の編集が可能となり得る。
【0199】
図17は、本明細書に記載するレジストリマッピング例に対するIDを示す。図は、単純化した例を示すことに注意されたく、全DUID配列が典型的に、表に示すもの程短くはないことを検討する。
【0200】
この例では、データベース内にID配列の2つ以上のアラインメントは存在しない。この例では、ID配列は常に、単一DUID構築物に特有であるが、単一DUID構築物は、複数のID配列を有し得る。しかし、ID配列は、他のDUID配列に対して相同な切片を、この内に1又は2以上有し得る。DUID構築物にわたって使用し得る配列は、DUID構築物内に存在し得るが、IDそれ自体は特有でなければならず、延いては、DUIDも特有であることを検討する。ID配列内に任意の数のDUIDにわたる相同切片を有する、この設計決定によって、DUIDのバージョン管理が多数の方法により可能となり得る。
【0201】
相同ID切片の例-3つのDUIDにわたる一相同切片:
-複数の識別子にわたる相同配列を有することが望ましい場合がある、いくつかの理由が存在する。一部の場合では、識別子は、この識別子と関連するバージョンを作成する目的のために相同配列を有し得る。識別子のバージョンを管理する能力により、DUIDと相互作用する方法を伝える関連プロトコルをユーザーが参照することが可能となり得る。例えば、特定のバージョンのDUID識別子は、暗号法の文脈において、内部に公開キーを含むことができ、これによりDUIDとの引き続く相互作用が、ある程度有意義に伝えられ得る。他の場合では、相同配列は、例えば、この識別子を最初に作成したシステム又は実体を参照し得る。次の表は、このような相同切片を有する3つのDUIDを示し、このような例となるDUIDの例では、1:10は相同であり、11:50は特有である。
【0202】
【表2】
【0203】
YCp及び同時形質転換
同時形質転換手順に使用したプラスミドは、酵母セントロメアベクターYCp41Kであった(Taxis & Knop, 2006)。組込みのための4つの標的部位:Chr6のサブテロメア領域及び染色体2の真性染色質領域を同定した(別表C)。このような部位を標的とする線状断片は、それぞれの組込み部位に隣接する領域に対して相同な75ntの領域に隣接するDUIDを含んだ(図14)。各組込み部位のための的確な線状断片配列は、別表Dに列挙する。このような断片は、Twist Bioscience社(https://www.twistbioscience.com/)により、ともに線状断片として合成され、pRS41Kベクター(https://bip.weizmann.ac.il/plasmid/pics/106.jpg)及びpRS42K(https://bip.weizmann.ac.il/plasmid/pics/109.jpg)内に挿入した。
【0204】
同時形質転換のための線状DUID断片の生成
相同組換え(HR)のための線状DNA断片を、Twist Bioscience社により鋳型として生成された線状断片を使用してPCRによって生成した。生成した特定の断片については、以下の「同時形質転換」の別表Aを参照されたい。Twist Bioscience社により搭載されたpRS41K-Chr6及びpRS41K-Euchを使用した。HR断片を生成するのに使用したプライマーはそれぞれ、Chr6標的領域では、Chr6_DUID F及びDUID-synthR、Euch標的領域では、EuchDUID F及びDUID-synthRであった(別表A)。PCR反応組成物(表2)及び反応条件(表3)は、以下に詳述する。
【0205】
【表3】
【0206】
【表4】
【0207】
プライマーを検証し、アニーリング温度を反応用量20μLにより最適化した。HR線状組込み断片の生成では、2×50μLの反応を実施し、Qiagen社のPCR精製キット(https://www.qiagen.com/ie/shop/pcr/qiaquick-pcr-purification-kit/)を使用して生産物を精製した。精製したDNA断片を溶出緩衝液(10mMのTris-Cl、pH8.5)50μLで溶出した。1%のアガロースゲル上で5μLの電気泳動を実行することにより生産物を立証した。
【0208】
CRISPRベクター及びHRT生成
Krogerus et al., 2019に記載のように、TDH3pにより発現するCAS9、gRNAの発現を駆動するSNR52p、及びハイグロマイシンに対する選択のためのhygRを含むプラスミドpCC-036を使用して、CRISPR実験を実施した。Benchlingソフトウェア(https://www.benchling.com/)を使用して、標的組込み部位のそれぞれについて3つのgRNAを設計した。gRNA配列を含むプライマー(別表B)を、pCC-036を鋳型として使用するPCR反応において使用した。反応組成物及び条件は、以下に概要を示す(表3及び表4)。このようなPCR反応物を大腸菌に形質転換した。プラスミドを形質転換体から単離し、シーケンシングすることによりスクリーニングして正しいクローンを確認した(図14及び別表B)。gRNAクローンをChr6では1つ(Chr6_2)及びEuchでは2つ(Euch_1;Euch_2)構築した。プライマーは、両プライマーの中央における変異と部分的にオーバーラップ(両端の約8~10bpは非オーバーラップ)するように設計し、Zheng, et al., 2004のプロトコルに従ってPCRを実施した。
【0209】
【表5】
【0210】
【表6】
【0211】
プライマーを検証し、アニーリング温度を、反応用量20μLを使用して最適化した。組込みでは、5×50μLの反応を行った後、ベクターをHindIII及びBamHI(NEB社)により分解した。DNAは、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールを使用して精製した後、0.1Mの酢酸アンモニウム及びグリコーゲンの存在下でエタノール沈殿を行った。DNAをヌクレアーゼ不含水30μLに再懸濁した。増幅は、1%のアガロースゲル上で5μLの電気泳動を実行することにより立証した。
【0212】
【表7】
【0213】
【表8】
【0214】
PCRの後、1%のアガロースゲル上で10μLの電気泳動を実行した(PhusionによるSDM DNAの収率は低い)。反応容量30μL中PCR増幅産物10μLのDpnI(NEB社)分解を一晩37℃で実施して、メチル化鋳型DNAを線状化した。別の10μLをゲル上で分離し、次いで、5μLを大腸菌に形質転換した。12のコロニー及び配列に対してミニプレップを実施した。
【0215】
酵母形質転換:
YCp-DUIDベクターの形質転換
Mertenes et al. 2017に記載のように、酢酸リチウムに基づく標準的な酵母形質転換プロトコルを使用して、CRISPRプラスミドと修復鋳型の両方を標的株に形質転換し、下記のように完了した。
1.酵母を一晩、YPD2%増殖培地100mLに30℃で、OD約0.7~0.8に増殖させた。
2.次いで、酵母細胞培養物を遠心分離し(3000rpmで3分)、滅菌水で1回洗浄し、細胞を0.1Mの酢酸リチウム溶液200μL中に再懸濁した。
3.室温で10分のインキュベーション後、細胞培養物50μLを、プラスミド500ng、PLI 300μL(142Mのポリエチレングリコール、0.12Mの酢酸リチウム、0.01MのTris(pH7.5)及び0.001MのEDTA)及びサケ精子DNA(1mg.mL-1)5μLと混合した。DNAを含まない陰性対照(滅菌水)形質転換を平行して実施した。
4.酵母懸濁液を42℃で30分間インキュベートした。
5.細胞を遠心分離し(3000rpmで3分)、新たなYPD2%に再懸濁した。その後、30℃で一晩のインキュベーション1回の間に細胞を回復させた。
6.酵母懸濁液200μLをYPD+G418 300μg/mL上に播種した後、30℃で2日インキュベートした。また、200μLを、抗生物質を含まないYPD上に播種して、このような処置の後に細胞生存率を確認した。
【0216】
同時形質転換
この方法は、Bernardi et al., 2019に記載のように、酢酸リチウムによるコンピテント細胞の生成の後、エレクトロポレーションを使用するDNA形質転換を含んだ。
【0217】
【表9】
【0218】
同時形質転換のステップ
1.細胞をYPD 100mL中で振盪しながら、所望の増殖相に(増殖曲線又はODに基づいて)増殖させた。
2.中間対数増殖期(OD600=0.7~0.8)で細胞を回収した。培養物を遠沈させて、上清を廃棄した。
3.沈殿物を滅菌水で1回洗浄した。培養物を遠沈させて上清を廃棄し、0.1Mの酢酸リチウム/10mMのDTT/10mMのTE溶液(TrisHCl:EDTA=10:1)25mLに再懸濁した。培養物を室温で1時間インキュベートした。培養物を遠沈させて、上清を廃棄した。
4.注意:凝集株を扱う場合、10分ごとに数回チューブを確実に反転させて、細胞がチューブの底に定着することを防ぎたい。
5.沈殿物を氷冷した蒸留滅菌水25mLで洗浄し、培養物を4℃で遠沈させて、上清を除去した。ステップは反復した(合計2回の洗浄の間)。
6.沈殿物を氷冷ソルビトール10mLで洗浄し、4℃で遠沈させて、上清を除去した。沈殿物を氷冷ソルビトール100μLに再懸濁した。
7.細胞懸濁液100μLを形質転換に使用した。
8.形質転換DNA 15μL(pRS41K[YCpプラスミド]1μg+線状DUID断片1μg;モル比1:10;及びモル比1:20)を細胞懸濁液と混合し、氷上で5分間インキュベートした。
9.細胞懸濁液を0.1cmのキュベットにおいて1.8kVでエレクトロポレーションした。
10.冷却ソルビトール1mLをエレクトロポレーションのキュベットに加え、細胞懸濁液と混合した。懸濁液を、YPD 300μLを有するチューブに移した。
11.注意:抗生物質マーカーを使用する場合、懸濁液を30℃で3時間インキュベートして、抗生物質の発現を生じさせたい。*抗生物質をこの培養物に加えてはならない。その細胞が、抗生物質耐性をもたらすプラスミドをまだ発現していないため、この追加によって、すべての細胞が殺傷される。*
12.形質転換した培養物100μLを選択的(YPD+300mg/LのG418)プレート上に播種し、30℃で5日間インキュベートしてコロニーを出現させた。
13.また、形質転換した培養物を、いかなるマーカー/抗生物質をも有しないYPDプレート上に播種して、細胞が生きていることを確実とした。
【0219】
CRISPRベクター及びHRTによる形質転換
Mertens, et al., 2019に記載のように、酢酸リチウムに基づく標準的な酵母形質転換プロトコルを使用して、CRISPRプラスミドと修復鋳型の両方を標的株に形質転換した。以下に記載するこのプロトコルは、標準的形質転換手順に基づき、この場合、LiOAc溶液による処置によって細胞をコンピテントとした後、細胞をDNA分子(プラスミド及び修復鋳型)及び担体DNA(サケ精子DNA)とともにインキュベートし、その後、熱ショックを与えてDNAを吸収させる。回復後、細胞をハイグロマイシン上に播種して、すべての非形質転換細胞に対して選択する。ハイグロマイシンを有しないYPDへの播種では、形質転換手順に従って細胞の増殖が示され、例えば、手順それ自体では、細胞は殺傷されなかった。HRTを有しないCRISPRプラスミドの形質転換では、DSBが修復されないため、細胞が殺傷されるはずであり、これにより、CRISPRプラスミドの機能の成功が確認され、Cas9が発現し、gRNAがCas9のゲノムを標的とすることを意味する。CRISPRプラスミドとHRTとによる形質転換では、DSBが修復され、細胞増殖が助けられるはずである。
【0220】
プラスミドpCC-036_Chr6_2/Chr6_HRT及びpCC-036_Euch_1/Euch-HRTは、酵母株S288c、バーモント及びフレンチセゾンに形質転換したDNA分子のそれぞれの組合せであった。次のプロトコルを使用した。
1.酵母をYPD5mL中30℃、200rpmで一晩増殖させた後、予備培養物1mLをYPD50mLに移し、さらに4時間インキュベートした(30℃、200rpm)。
2.次いで、酵母細胞培養物を遠心分離し(3000rpmで3分)、細胞を0.1Mの酢酸リチウム溶液200μL中に再懸濁した。
3.室温で10分のインキュベーション後、細胞培養物50μLをプラスミド500ngと混合し、この場合、対応するsgRNAを、HRT DNA5~25μg(調整プロトコル)、PLI300μL(142Mのポリエチレングリコール、0.12Mの酢酸リチウム、0.01MのTris(pH7.5)及び0.001MのEDTA)及びサケ精子DNA(1mg.mL-1)5μLの有り無し両方でクローニングした。
4.42℃で30分間インキュベートした。
5.細胞を遠心分離し(3000rpmで3分)、新たなYPDに再懸濁した後、30℃で一晩細胞を回復させた。
6.酵母懸濁液200μL容量を、300mg/Lのハイグロマイシンを含むYPD上に播種した後、30℃で3~5日インキュベートした。
【0221】
形質転換体のスクリーニング
ゲノムDNA抽出プロトコル
1.YPD+G418(300mg/L)上で同時形質転換プレートをプレート複製する。
2.主要プレートを1分割あたり4~8コロニーに分割する。コロニーを、YPD3mLを有する滅菌チューブ内にかき集め、30℃で振盪しながら一晩増殖させる。
3.2mLのスクリューキャップチューブに培養物2mLを沈殿させる。
4.MQ水1mLで1回洗浄する。
5.崩壊緩衝液(2%のTX-100、1%のSDS、100mMのNaCl、100mMのTris pH7.5)200μLに再懸濁する。
6.ガラスビーズ200μL及びフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール200μLを加える。
7.強で3分間ボルテックスする。
8.最速で5分間、遠心分離する。
9.最上水層を清潔な微量遠心チューブに移す。
10.100%のEtOH 1mLを加え、反転により混合する。
11.最速で3分間遠心分離する。
12.エタノールをデカントし、沈殿物を乾燥させ、1×TE400μLに再懸濁する。
13.1mg/mLのRNaseA30μLを加える。
14.37℃で5分間インキュベートする。
15.4Mの酢酸アンモニウム10μL及び100%のEtOH1mLを加える。反転により混合する。
16.最速で3分間、遠心分離する。沈殿物を70%のEtOH 1mLで洗浄し、乾燥させる。
17.水100μLに再懸濁する。
【0222】
組込み体の同定及び形質転換体のPCRスクリーニング:
上記のように単離したgDNAは、標的組込み部位に隣接するHRTの相同領域の上流及び下流の特定の領域においてゲノムDNAを結合させるプライマーを使用するPCR反応のための鋳型として作用した(プライマー詳細については別表Aを参照;反応組成物及び条件は、以下の表9及び10に概要を示す)。Chr2上の真性染色質標的組込み部位では、プライマーEuch_SeqF/Rを使用し、Chr6サブテロメア異質染色質標的組込み部位では、プライマーChr6_SeqF/Rを使用した。このようなプライマーにより、組込み部位にいかなる挿入をも有しないgDNAから約600bpのDNA断片を得た。組込みにより、この断片サイズは、約970bpに増大する。対照は、いかなるgDNA鋳型をも有しない反応物を含み、gDNAは、非形質転換株(S288c/BY4743等)から単離した。PCR反応物は、GeneRuler 100bp Plus分子量マーカーを使用するゲル電気泳動により分離して、生成したDNA断片のサイズを確認した。
【0223】
組込み体が確認されると、一方は組込み断片の外部でゲノムを結合させ、もう一方は形質転換断片内で結合するPCRプライマーによって正しい組込みが検証された。このようなプライマーにより、組込みが正しい標的部位で生じた場合は、DNA断片を得、組込みが生じなかった場合は、DNA断片は得られない。
【0224】
組込み確認と検証アッセイの両方により生成されたDNA断片は、組込みを確認するための配列である。
【0225】
【表10】
【0226】
【表11】
【0227】
PCRの後、反応物10μLを1%のアガロースゲル(1×TAE、SYBR Safe核酸染色を含む)上で分離した。
【0228】
挿入コピー数及び位置の確認
親及び組込み体に対してWGSを実施して、挿入コピー数を確認し、任意のオフターゲット組込みイベントの存在を同定した。ショートリード(Illumina社)及びロングリード(PacBio社)シーケンシングデータを組み合わせて、親及び形質転換の両株のゲノムを構築する。このような2つの手法の組合せにより、組込み体の全体的ゲノム構造が形成され、このため、複数の挿入が生じたか又は任意のオフターゲット組込みイベントが存在したかどうかを同定する。組込み体(複数可)及び親株(複数可)の全ゲノムは、これまでに記載されているように(Preiss et al., 2018)、Genome Quebec(Montreal、Canada)によりシーケンシングする。簡潔には、DNAは、単離し、Illumina社及びPacBio社による適用のためのライブラリ構築の鋳型として使用する。シーケンシングリードは、FastQC(バージョン0.11.5)により品質解析し(Andrews, 2010)、Trimmomatic(バージョン0.36)によりトリミング及びフィルタする(Bolger, Lohse, & Usadel, 2014)。リードは、サッカロミセス・セレビシエ(S. cerevisiae)S288c(R64-2-l)参照ゲノムに対して、SpeedSeq(0.1.0)を使用してアラインメントする(Chiang et al., 2015)。アラインメントの質は、QualiMap(2.2.1)により評価する(Garcia-Alcalde et al., 2012)。アラインメントしたリードに対して、FreeBayes(1.1.0-46-g8d2b3a0l)を使用して、バリアント解析を実施する(Garrison & Marth, 2012)。すべての株のバリアントは、同時に呼び出される(複数試料)。バリアント解析の前に、SAMtools(1.2)によって、アラインメントを最小MAPQ50にフィルタする(Li et al., 2009)。バリアントのアノテーション及び作用予測を、SnpEff(1.2)により実施する(Cingolani et al., 2012)。染色体及び遺伝子のコピー数の変動を、Control-FREEC(11.0)による適用範囲に基づいて推定する(Boeva et al., 2012)。統計学的に有意なコピー数の変動は、ウィルコクソンの順位和検定を使用して同定する(p<0.05)。適用範囲中央値及び10,000bpを超える異型接合SNP数のウインドウは、BEDTools(2.26.0)により計算し(Quinlan & Hall, 2010)、Rにより可視化する。
【0229】
液滴デジタルPCRを使用する組込み体におけるDUIDの発現の判定
試料内の分子の絶対数の定量が可能となる液滴デジタルPCR(ddPCR)を使用する。これにより、コピー数又は低発現遺伝子の定量が特に可能となる。手順は、酵母からのgDNA不含RNAの単離の後、cDNA合成及び最終的にpRS41K-Euchプラスミド有り無し両方によるS288cの生成を含み、組込み体株をYPD中に三つ組で増殖させる。RNAを一般に使用されるホット酸フェノール法により抽出し(COLLART AND OLIVIERO 2001)、NanoDrop 2000C分光光度計(NanoDrop Technologies Inc.社)により定量する。RNA試料をRapidOut DNA Removal Kit(Thermo Fisher社)で処理し、DNA夾雑を検査し、Agilent 2100バイオアナライザを使用して質を評価する。RNA(1試料あたり1000ng)を使用し、High Capacity cDNA Reverse Transcriptionキット(Applied BioSystems社)を使用してcDNAを生成する。
【0230】
このような試料と希釈したpRS41K-Euchとを、ゲルフ大学のGenomics FacilityにおいてddPCR解析に供する。このような試料と「無鋳型対照」とを、すべての反応に対してddPCR EvaGreen Supermix(乳化が可能となる)と、DUID、GAT3(低発現対照)及びACT1(高発現対照)のためのqPCRプライマーとを使用するddPCR反応における鋳型として使用する。ナノリットルサイズの液滴をAutoDGTM Instrument(Bio-Rad社)上に生成し、次いで、C1000 Touchサーマルサイクラー(Bio-Rad社)を使用してPCR増幅を実施した。PCRサイクリングの後、ddPCRプレートをBio-Rad社のQX200 Droplet Readerにより読み取り、QuantaSoft Analysis Proソフトウェアバージョン1.0.596(Bio-Rad Laboratories社)を使用してデータを解析する。
【0231】
LOD/LOQ解析のプロトコル:
gDNA単離プロトコルを使用して調製したgDNAを挿入のスクリーニングに使用した。ベクターは、アンピシリンの存在下で増殖させたDH5αK12培養物から、QiaQuickミニプレップキットを使用して調製した。
【0232】
標準的PCRプロトコル
プライマー:S288C DUID F及びR
希釈系列:100ng、10ng、1ng、100pg、10pg、1pg、100fg、10fg、1fg、100ag
【0233】
【表12】
【0234】
【表13】
【0235】
PCRの後、反応物10μLを1%のアガロースゲル(1×TAE、SYBR Safe核酸染色を含む)上で分離した。
【0236】
定量的PCR(qPCR)プロトコル:
qPCR反応は、ゲルフ大学AAC Genomics FacilityによりSensiFAST Hi-ROX SYBR Master Mixを使用してStepOnePlus Real-Time PCRシステムにおいて実施する。qPCRサイクリング条件は、表12に記載する。解析は、Applied Biosystems社のStepOnePlusソフトウェアを使用して完了した。gDNAは、上記のgDNA単離プロトコルを使用して調製した。対照DUIDベクターは、アンピシリンの存在下で増殖させたDH5αK12培養物から、QiaQuickミニプレップキットを使用して調製した。
【0237】
次のプライマーを使用し、希釈系列にわたってプラスミドとYCp酵母gDNA試料の両方に対して増幅を実施した。
プライマー:S288C DUIDqPCR F及びR
希釈系列:100ng、10ng、1ng、100pg、10pg、1pg、100fg、10fg、1fg、100ag
【0238】
結果及び考察
形質転換の検証:
DUIDは、YCpベクターにより酵母株(BY4743)ゲノムに安定に形質転換した。上記のように、形質転換酵母を培養し、ゲノムDNAを抽出した。Stable integration Cingolani P, Platts A, Wang le L, Coon M, Nguyen T, Wang L, Land SJ, Lu X, Ruden DM.単一ヌクレオチド多型の作用をアノテートし、予測するためのプログラムであるSnpEff:キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster fly)株のゲノムのSNP(w1118; iso-2; iso-3, Austin. 2012 Apr-Jun;6(2):80-92. doi: 10.4161/fly.19695. PMID: 22728672; PMCID: PMC3679285.on)を、エンドポイントPCR(図15、B1~B3)及びqPCR(図16)により立証した。DUID構築物に隣接するDUIDリコールプライマーを使用するPCR増幅のエンドポイント解析により、YCp-DUIDベクター(図15A)と、YCp-DUIDベクターにより形質転換した細胞由来の酵母ゲノムDNA抽出物(図15C)の両方についての確かな増幅がもたらされた。100pg~100ngの量のYCp-DUIDベクターを鋳型として使用した場合(図15Aレーン1~4)、DUID増幅を示す370bpのバンドを明確に視認することができ、一方、非形質転換BY4743ゲノムDNAを有する、任意のインプットDNA量によっては、検出可能な増幅は存在しなかった(図15Bレーン1~8)。YCp-DUIDベクターにより形質転換した細胞から単離した全DNAを使用する類似のアッセイによって、1~100ngの範囲のインプットDNAの確かな増幅が生じるとともに100pgのインプットDNAから非常にかすかなシグナルが検出されたことにより(図15Cレーン1~4)、1細胞あたり1~2コピーで存在し、コピー数が染色体の特徴のそれを反映するDUIDを、酵母gDNA単離物において標準的エンドポイントPCR手順を使用して容易に検出可能であることが示された。
【0239】
図15は、エンドポイントPCRによる、酵母ゲノムDNAにおけるYCp-DUIDの検出を示す。PCR増幅は、(A)YCp-DUIDベクター、(B)BY4743から抽出したgDNA、及び(C)YCp-DUIDベクターにより形質転換した酵母株BY4743を鋳型として、DUIDリコールプライマーとともに使用して実施した。反応は、(1)100ng、(2)10ng、(3)1ng、(4)100pg、(5)10pg、(6)1pg、(7)100fg及び(8)10fgのインプット量で連続希釈したDNA鋳型を使用して実施し、GeneRuler(商標)100bp Plus Ready-to-use Ladderを標準として用いて1%のアガロースゲル上で分離した。
【0240】
LOD/LOQ解析
精製YCp-DUIDベクターの連続10倍希釈物を使用して、定量的リアルタイムPCRを実施し(図16)、このようなアッセイでは、すべての測定した濃度においてDUID増幅を検出し、これにより、500agの低濃度までDUIDを確実に同定することが可能であることが示された。MS Excelを使用して平均Cq値対既知のDNAインプット濃度をプロットすることにより標準曲線を作成した。この標準曲線に基づいて、Rを0.9993として、105.5%のプライマー効率で計算し(Agilent QPCR Standard Curve to Slope Efficiency calculator, https://www.chem.agilent.com/store/biocalculators/calcSlopeEfficiency.jsp?_requestid=1116919を使用して計算した)、これにより、反応効率が、高品質qPCR解析に許容される標準以内であったことが示された(https://www.gene-quantification.de/roche-rel-quant.pdf)。YCp-DUIDにより形質転換したBY4743から単離したDNAを使用した類似のqPCRアッセイにより、DUIDが、全酵母DNA50ngにおいて検出可能であり、平均Cq値が29.02であったことが示された。このCq値は、上記の標準曲線に対してプロットした(図3;オレンジ色のバー)。このような結果によって、DUIDリコール方法により、酵母細胞培養マトリックスからDUIDを増幅可能であることが検証される。
【0241】
このような結果により、以下が実証された。
1.DUIDの設計に成功し、酵母に安定に形質転換することができる。
2.トレーサビリティの目的のために、標準的エンドポイントPCRとqPCRの両技術により、生物学的マトリックスからDUIDをリコールすることができる。
【0242】
図16は、酵母全DNA抽出物におけるDUIDの検出を示す。50ng~500agの範囲に及ぶYCpベクターの連続10倍段階希釈物に対して、定量的リアルタイムPCRを実施し、MS Excelを使用して標準曲線(青色のライン)を作成するために使用した。YCp-DUIDベクターにより形質転換したBY4743に由来するDNAを使用する類似のqPCR実験の結果をプロットし(オレンジ色のバー)、標準曲線値と比較して酵母バイオマスにおけるDUIDの検出を定量した。
【0243】
【表14】
【0244】
【表15】
【0245】
別表C:相同組換え構築物
相同組換えにおける使用のための相同腕を含む全部の配列
酵母染色体組込み部位
ChrII:809650..809799
【0246】
左相同腕:
ACACAAACTGGCGTAGAAGGGGAAACGGAAATAGGGTCTGACGAGGAAGATAGCATAGAGGACGAGGGAAGCAGC (配列番号47)
【0247】
右相同腕:
AGTGGAGGAAATAGTACGACAGAAAGACTAGTACCACACCAGCTGAGGGAACAAGCAGCCAGACATATAGGAAAA (配列番号48)
【0248】
ChrVI:261123..261272
【0249】
左相同腕:
TGGAGTTGCAAAAAACAAGGGAAAGGAAAATCAATCAAATTAGAATTAAGGTTTTTTTTGGACAGTGCAGCGTCA (配列番号49)
【0250】
右相同腕:
ATGCGCACGTAATGGCTTCGAAGAAAAAAAGAAGGCAAATACAATGAAGCTGAGATCTTGTTTTATCATGAGGGG (配列番号50)
【0251】
ChrXIV:764201..764350
【0252】
左相同腕:
CAAATAAATTAGGCTCATAACCGTAATTTTATTCGAGACATTTTTGGTTACTTCAAAATATTGTTATTATATAAA (配列番号51)
【0253】
右相同腕:
GATCATATAAAGTTCTTGGACAAGATTGGATACATTTAGTTTTATTTTTGAAAATCACAAAGATGAAACAAAATA (配列番号52)
【0254】
【表16】
【0255】
S288c
【0256】
【表17】
【0257】
【表18】
【0258】
s288c-染色体2
ACACAAACTGGCGTAGAAGGGGAAACGGAAATAGGGTCTGACGAGGAAGATAGCATAGAGGACGAGGGAAGCAGCGCTGATGGTTTAGGCGTACACGAGATCCTGGTTCAACGCGCTGCAAACCTACCCTGCTCCAAACTGCTGTTCAACGCCACTCTAACTGGCAGGCAAATTATTAGTTTCTAAGTTCCCCAGGTGCTGAAGAGCAGTCATTCAACGCCCTCAGATCATCCCGGCAAGTTGGCTGGCGCGTTTGTCCGGAGGATCGTGTCGTACAACAACCATCTGACTATCAACCCTCCaggCGTATAGAGCGGGTCATCGATGCGCTCAGGGAACAACAACGATAGGCCTGCGGCTGGTCACCATCGGGAAGTTTTGCTGGAGATCTGCTGCTGTAGGaggTCTCTACAGCCAAACGACCAGACCAAGTGCATTTCCAGGGAGTGGAGGAAATAGTACGACAGAAAGACTAGTACCACACCAGCTGAGGGAACAAGCAGCCAGACATATAGGAAAA (配列番号57)
【0259】
s288c-染色体6
TGGAGTTGCAAAAAACAAGGGAAAGGAAAATCAATCAAATTAGAATTAAGGTTTTTTTTGGACAGTGCAGCGTCAGCTGATGGTTTAGGCGTACACGAGATCCTGGTTCAACGCGCTGCAAACCTACCCTGCTCCAAACTGCTGTTCAACGCCACTCTAACTGGCAGGCAAATTATTAGTTTCTAAGTTCCCCAGGTGCTGAAGAGCAGTCATTCAACGCCCTCAGATCATCCCGGCAAGTTGGCTGGCGCGTTTGTCCGGAGGATCGTGTCGTACAACAACCATCTGACTATCAACCCTCCaggCGTATAGAGCGGGTCATCGATGCGCTCAGGGAACAACAACGATAGGCCTGCGGCTGGTCACCATCGGGAAGTTTTGCTGGAGATCTGCTGCTGTAGGaggTCTCTACAGCCAAACGACCAGACCAAGTGCATTTCCAGGGATGCGCACGTAATGGCTTCGAAGAAAAAAAGAAGGCAAATACAATGAAGCTGAGATCTTGTTTTATCATGAGGGG (配列番号58)
【0260】
s288c-染色体14
CAAATAAATTAGGCTCATAACCGTAATTTTATTCGAGACATTTTTGGTTACTTCAAAATATTGTTATTATATAAAGCTGATGGTTTAGGCGTACACGAGATCCTGGTTCAACGCGCTGCAAACCTACCCTGCTCCAAACTGCTGTTCAACGCCACTCTAACTGGCAGGCAAATTATTAGTTTCTAAGTTCCCCAGGTGCTGAAGAGCAGTCATTCAACGCCCTCAGATCATCCCGGCAAGTTGGCTGGCGCGTTTGTCCGGAGGATCGTGTCGTACAACAACCATCTGACTATCAACCCTCCaggCGTATAGAGCGGGTCATCGATGCGCTCAGGGAACAACAACGATAGGCCTGCGGCTGGTCACCATCGGGAAGTTTTGCTGGAGATCTGCTGCTGTAGGaggTCTCTACAGCCAAACGACCAGACCAAGTGCATTTCCAGGGGATCATATAAAGTTCTTGGACAAGATTGGATACATTTAGTTTTATTTTTGAAAATCACAAAGATGAAACAAAATA (配列番号59)
【0261】
バーモント
【0262】
【表19】
【0263】
【表20】
【0264】
バーモント-染色体2
ACACAAACTGGCGTAGAAGGGGAAACGGAAATAGGGTCTGACGAGGAAGATAGCATAGAGGACGAGGGAAGCAGCACTCTCCCATTAGTCGGCAGCACGTTCGCCAGTAATTACCGGAGACAGAAAAATCTCGGAACAGTTTATCCGCAATTCTGAGGAAATCGTCGTCCGCAAGCTCCGTGCACAGCTAGTAGTAGTCTCCGGTGCGGGGGGGGGCGGAGTGGTCTCCCACGATACGACGTTGTCTAGATACGTACCCACCTCGCTGTGTGCTCTCTGGCTATCTGAACGTCCACTCCAGAaggGGCCCTATCAGTACAGCAGTCATAGCCGCACACAAGTCCAACGTCCCCCAAACCTCCTGACCACGCAGTCGCCACCGGCGCAGACACTATTTCTCGTaggTTCATTCTCTCGCCAGCACTTGTCGGAACAAAGCGGTCTTAGTGGAGGAAATAGTACGACAGAAAGACTAGTACCACACCAGCTGAGGGAACAAGCAGCCAGACATATAGGAAAA (配列番号64)
【0265】
バーモント-染色体6
TGGAGTTGCAAAAAACAAGGGAAAGGAAAATCAATCAAATTAGAATTAAGGTTTTTTTTGGACAGTGCAGCGTCAACTCTCCCATTAGTCGGCAGCACGTTCGCCAGTAATTACCGGAGACAGAAAAATCTCGGAACAGTTTATCCGCAATTCTGAGGAAATCGTCGTCCGCAAGCTCCGTGCACAGCTAGTAGTAGTCTCCGGTGCGGGGGGGGGCGGAGTGGTCTCCCACGATACGACGTTGTCTAGATACGTACCCACCTCGCTGTGTGCTCTCTGGCTATCTGAACGTCCACTCCAGAaggGGCCCTATCAGTACAGCAGTCATAGCCGCACACAAGTCCAACGTCCCCCAAACCTCCTGACCACGCAGTCGCCACCGGCGCAGACACTATTTCTCGTaggTTCATTCTCTCGCCAGCACTTGTCGGAACAAAGCGGTCTTATGCGCACGTAATGGCTTCGAAGAAAAAAAGAAGGCAAATACAATGAAGCTGAGATCTTGTTTTATCATGAGGGG (配列番号65)
【0266】
バーモント-染色体14
CAAATAAATTAGGCTCATAACCGTAATTTTATTCGAGACATTTTTGGTTACTTCAAAATATTGTTATTATATAAAACTCTCCCATTAGTCGGCAGCACGTTCGCCAGTAATTACCGGAGACAGAAAAATCTCGGAACAGTTTATCCGCAATTCTGAGGAAATCGTCGTCCGCAAGCTCCGTGCACAGCTAGTAGTAGTCTCCGGTGCGGGGGGGGGCGGAGTGGTCTCCCACGATACGACGTTGTCTAGATACGTACCCACCTCGCTGTGTGCTCTCTGGCTATCTGAACGTCCACTCCAGAaggGGCCCTATCAGTACAGCAGTCATAGCCGCACACAAGTCCAACGTCCCCCAAACCTCCTGACCACGCAGTCGCCACCGGCGCAGACACTATTTCTCGTaggTTCATTCTCTCGCCAGCACTTGTCGGAACAAAGCGGTCTTGATCATATAAAGTTCTTGGACAAGATTGGATACATTTAGTTTTATTTTTGAAAATCACAAAGATGAAACAAAATA (配列番号66)
【0267】
フレンチセゾン
【0268】
【表21】
【0269】
【表22】
【0270】
フレンチ-染色体2
ACACAAACTGGCGTAGAAGGGGAAACGGAAATAGGGTCTGACGAGGAAGATAGCATAGAGGACGAGGGAAGCAGCGCGTACAATGCCCTGAAGAATTACTTCCGTACTGGAAGCGGATAGCACCAGACTGTAAGCTAACGAACGCCTGTTTGAGGCTCAGTCTGCTAAATTGGAACCGCGTCGCTCCTAGGCATATTTTGGTGAAAGCACTCTGCCCAAAAGCCTGTAGAATTCCGGACCGACGCTCTCTTCACTCGAAGATTCCGGGTAAGAAGTTTCAGCCAGGGCTGTCTCCATTAGAAaggAGCGGGTCATCGAAAGGTTACGTTGGTTGTATCTGATTAGACGGTAGACATCCAGCTCATCTCTGATTACTAAAGTTCTCCGCCGCTCCATCGGGCGaggTACAGCCAAACGACCAAGTGCCAAGTGCATTTCCAGGGAGAGTGGAGGAAATAGTACGACAGAAAGACTAGTACCACACCAGCTGAGGGAACAAGCAGCCAGACATATAGGAAAA (配列番号71)
【0271】
フレンチ-染色体6
TGGAGTTGCAAAAAACAAGGGAAAGGAAAATCAATCAAATTAGAATTAAGGTTTTTTTTGGACAGTGCAGCGTCAGCGTACAATGCCCTGAAGAATTACTTCCGTACTGGAAGCGGATAGCACCAGACTGTAAGCTAACGAACGCCTGTTTGAGGCTCAGTCTGCTAAATTGGAACCGCGTCGCTCCTAGGCATATTTTGGTGAAAGCACTCTGCCCAAAAGCCTGTAGAATTCCGGACCGACGCTCTCTTCACTCGAAGATTCCGGGTAAGAAGTTTCAGCCAGGGCTGTCTCCATTAGAAaggAGCGGGTCATCGAAAGGTTACGTTGGTTGTATCTGATTAGACGGTAGACATCCAGCTCATCTCTGATTACTAAAGTTCTCCGCCGCTCCATCGGGCGaggTACAGCCAAACGACCAAGTGCCAAGTGCATTTCCAGGGAGATGCGCACGTAATGGCTTCGAAGAAAAAAAGAAGGCAAATACAATGAAGCTGAGATCTTGTTTTATCATGAGGGG (配列番号72)
【0272】
フレンチ-染色体14
CAAATAAATTAGGCTCATAACCGTAATTTTATTCGAGACATTTTTGGTTACTTCAAAATATTGTTATTATATAAAGCGTACAATGCCCTGAAGAATTACTTCCGTACTGGAAGCGGATAGCACCAGACTGTAAGCTAACGAACGCCTGTTTGAGGCTCAGTCTGCTAAATTGGAACCGCGTCGCTCCTAGGCATATTTTGGTGAAAGCACTCTGCCCAAAAGCCTGTAGAATTCCGGACCGACGCTCTCTTCACTCGAAGATTCCGGGTAAGAAGTTTCAGCCAGGGCTGTCTCCATTAGAAaggAGCGGGTCATCGAAAGGTTACGTTGGTTGTATCTGATTAGACGGTAGACATCCAGCTCATCTCTGATTACTAAAGTTCTCCGCCGCTCCATCGGGCGaggTACAGCCAAACGACCAAGTGCCAAGTGCATTTCCAGGGAGGATCATATAAAGTTCTTGGACAAGATTGGATACATTTAGTTTTATTTTTGAAAATCACAAAGATGAAACAAAATA (配列番号73)
【0273】
1又は2以上の例示的実施形態を例として記載している。特許の範囲に定義する本発明の範囲を逸脱することなく、多数の変形及び変更をなすことが可能であることが当業者に理解される。
【0274】
(参考文献)
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【0275】
本明細書及び本明細書のいずれかにおいて引用する、すべての参考文献は、その全体を参照により本明細書に組み込む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【配列表】
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【国際調査報告】