(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-06
(54)【発明の名称】産生系
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20230130BHJP
C12N 15/115 20100101ALI20230130BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230130BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20230130BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230130BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20230130BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230130BHJP
A61K 35/763 20150101ALI20230130BHJP
C12N 7/01 20060101ALN20230130BHJP
A61K 48/00 20060101ALN20230130BHJP
【FI】
C12N15/113 Z
C12N15/115 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/86 Z
C12N5/10
A61K35/761
A61K35/76
A61K35/763
C12N7/01
A61K48/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526764
(86)(22)【出願日】2020-11-11
(85)【翻訳文提出日】2022-07-07
(86)【国際出願番号】 GB2020052873
(87)【国際公開番号】W WO2021094752
(87)【国際公開日】2021-05-20
(32)【優先日】2019-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】306034996
【氏名又は名称】オックスフォード バイオメディカ(ユーケー)リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ファーリー,ダニエル
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA23
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA05
4C084NA20
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA20
(57)【要約】
本発明は、関心対象のヌクレオチドとトリプトファンRNA結合減衰タンパク質(TRAP)結合部位とを含み、コザック配列を含んでもよい核酸配列に関し、前記TRAP結合部位は、コザック配列および/または関心対象のヌクレオチドのATG開始コドンと重複する。本発明はさらに、関心対象のヌクレオチドとコザック配列とを含む核酸配列であって、前記コザック配列は、トリプトファンRNA結合減衰タンパク質(TRAP)結合部位の一部を含む核酸配列に関する。本発明はさらに、関心対象のヌクレオチドとTRAP結合部位を含む核酸配列であって、TRAP結合部位が前記関心対象のヌクレオチドの開始コドンATGの一部を含み、またはATG開始コドンがTRAP結合部位の一部を含む、核酸配列に関する。本発明はさらに、関心対象のヌクレオチドと、トリプトファンRNA結合減衰タンパク質(TRAP)に対する結合部位と、多重クローニング部位と、コザック配列とを含む核酸配列であって、前記多重クローニング部位は、TRAP結合部位の3’KAGN2-3反復と重複しているか、またはTRAP結合部位の3’KAGN2-3反復に対して下流かつコザック配列の上流に位置する、核酸配列に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
関心対象のヌクレオチドとトリプトファンRNA結合減衰タンパク質(TRAP)結合部位とを含む核酸配列であって、
(i)前記TRAP結合部位は前記関心対象のヌクレオチドの開始コドンATGと重複する;および/または
(ii)前記核酸配列はコザック配列も含み、前記TRAP結合部位は前記コザック配列と重複する、
核酸配列。
【請求項2】
関心対象のヌクレオチドとTRAP結合部位とを含む核酸配列であって、
(i)前記TRAP結合部位は前記関心対象のヌクレオチドの前記開始コドンATGの一部を含み、もしくはATG開始コドンは前記TRAP結合部位の一部を含む;および/または
(ii)前記核酸配列はコザック配列も含み、前記コザック配列は前記TRAP結合部位の一部を含む、
核酸配列。
【請求項3】
前記関心対象のヌクレオチドが前記TRAP結合部位またはその一部に機能的に連結されている、請求項1または2に記載の核酸配列。
【請求項4】
前記TRAP結合部位またはその一部が、前記関心対象のヌクレオチドの翻訳がウイルスベクター産生細胞において抑制されるように、トリプトファンRNA結合減衰タンパク質と相互作用することができる、先行する請求項のいずれかに記載の核酸配列。
【請求項5】
前記関心対象のヌクレオチドが、前記トリプトファンRNA結合減衰タンパク質を欠如する標的細胞中で翻訳される、先行する請求項のいずれかに記載の核酸配列。
【請求項6】
前記TRAP結合部位またはその一部が配列KAGN2-3の複数の反復を含む、先行する請求項のいずれかに記載の核酸配列。
【請求項7】
前記TRAP結合部位またはその一部が配列KAGN2の複数の反復を含む、先行する請求項のいずれかに記載の核酸配列。
【請求項8】
前記TRAP結合部位またはその一部が配列KAGN2の少なくとも6つの反復を含む、先行する請求項のいずれかに記載の核酸配列。
【請求項9】
前記TRAP結合部位またはその一部が配列KAGN2-3の少なくとも8つの反復を含む、先行する請求項のいずれかに記載の核酸配列。
【請求項10】
KAGNNN反復の数が1またはそれ未満である、請求項9に記載の核酸配列。
【請求項11】
前記TRAP結合部位またはその一部が配列KAGN2の少なくとも8~11の反復を含む、先行する請求項のいずれかに記載の核酸配列。
【請求項12】
前記TRAP結合部位またはその一部が配列KAGN2-3の11の反復を含み、KAGNNN反復の数が3またはそれ未満である、先行する請求項のいずれかに記載の核酸配列。
【請求項13】
前記コザック配列および/または開始コドンが前記TRAP結合部位のまたはその一部の3’末端と重複する、先行する請求項のいずれかに記載の核酸配列。
【請求項14】
前記コザック配列および/または開始コドンが前記TRAP結合部位のまたはその一部の3’末端KAGNN反復と重複する、請求項13に記載の核酸配列。
【請求項15】
前記コザック配列が配列RNNATG(配列番号125)またはRVVATG(配列番号28)を含む、先行する請求項のいずれかに記載の核酸配列。
【請求項16】
前記重複するコザック配列および/または開始コドンおよびTRAP結合部位またはその一部が、配列番号29~33のいずれか1つを含む、先行する請求項のいずれかに記載の核酸配列。
【請求項17】
前記核酸配列が、配列番号34~37、69~92または108~112の任意の1つ、好ましくは配列番号114)を含む、先行する請求項のいずれかに記載の核酸配列。
【請求項18】
前記核酸配列が配列番号34または配列番号35の1つを含む、請求項17に記載の核酸配列。
【請求項19】
転写開始部位/プロモーターの末端からTRAP結合部位のまたはその一部の開始までの距離が1~33ヌクレオチド長である、先行する請求項のいずれかに記載の核酸配列。
【請求項20】
転写開始部位/プロモーターの末端からTRAP結合部位のまたはその一部の開始までの距離が1~12ヌクレオチド長である、先行する請求項のいずれかに記載の核酸配列。
【請求項21】
前記TRAP結合部位またはその一部が、II型制限酵素部位、好ましくはSapI制限酵素部位を欠如する、先行する請求項のいずれかに記載の核酸配列。
【請求項22】
前記核酸配列が、前記TRAP結合部位またはその一部の上流に5’リーダー配列を含む、先行する請求項のいずれかに記載の核酸配列。
【請求項23】
前記リーダー配列が、非コードEF1αエクソン1領域に由来する配列を含む、請求項22に記載の核酸配列。
【請求項24】
前記リーダー配列が、配列番号25または配列番号26で定義される配列を含む、請求項23に記載の核酸配列。
【請求項25】
前記配列が、配列内リボソーム進入部位(IRES)を含む、先行する請求項のいずれかに記載の核酸配列。
【請求項26】
前記配列が、配列内リボソーム進入部位(IRES)とTRAP結合部位またはその一部との間にスペーサー配列を含む、請求項25に記載の核酸配列。
【請求項27】
前記スペーサーが0から30ヌクレオチド長である、請求項26に記載の核酸配列。
【請求項28】
前記スペーサーが15ヌクレオチド長である、請求項27に記載の核酸配列。
【請求項29】
前記スペーサーが、前記TRAP結合部位またはその一部の3’末端および前記関心対象のヌクレオチドの下流開始コドンから3または9ヌクレオチドである、請求項26~28のいずれか一項に記載の核酸配列。
【請求項30】
前記スペーサーが配列番号38~44の任意の1つで定義される配列を含み、好ましくは前記スペーサーが配列番号39で定義される配列を含む、請求項26~29のいずれか一項に記載の核酸配列。
【請求項31】
前記関心対象のヌクレオチドが治療効果を生じさせる、先行する請求項のいずれかに記載の核酸配列。
【請求項32】
前記核酸配列がRRE配列またはその機能的代替物をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の核酸配列。
【請求項33】
前記核酸配列がベクター導入遺伝子発現カセットである、先行する請求項のいずれかに記載の核酸配列。
【請求項34】
前記TRAP結合部位のまたはその一部の前記3’末端KAGNN反復が、少なくとも前記開始コドンATGの最初のヌクレオチドと重複する、先行する請求項のいずれかに記載の核酸配列。
【請求項35】
前記TRAP結合部位のまたはその一部の前記3’末端KAGNN反復が、前記開始コドンATGの最初の2つのヌクレオチドと重複する、請求項34に記載の核酸配列。
【請求項36】
前記TRAP結合部位のまたはその一部の前記3’末端KAGNN反復が、コアコザック配列内の前記開始コドンATGの最初のヌクレオチドと重複する、請求項34に記載の核酸配列。
【請求項37】
前記核酸配列が、配列番号114または配列番号116で定義される配列を含む、請求項34~36のいずれか一項に記載の核酸配列。
【請求項38】
請求項1~37または67~92のいずれか一項に記載の核酸配列を含むウイルスベクター。
【請求項39】
前記ウイルスベクターが、1より多くの関心対象のヌクレオチドを含み、少なくとも1つの関心対象のヌクレオチドが、請求項1~12のいずれかに定義されるTRAP結合部位またはその一部に機能的に連結されている、請求項38に記載のウイルスベクター。
【請求項40】
前記ウイルスベクターが、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルスまたはバキュロウイルスに由来する、請求項38または請求項39に記載のウイルスベクター。
【請求項41】
前記ウイルスベクターがレンチウイルスに由来し、好ましくは前記ウイルスベクターがHIV-1、HIV-2、SIV、FIV、BIV、EIAV、CAEVまたはビスナレンチウイルスに由来する、請求項40に記載のウイルスベクター。
【請求項42】
ウイルスベクターの産生のために必要とされる成分をコードする核酸配列の組を含むウイルスベクター産生系であって、前記ウイルスベクターのRNAゲノムが、請求項1~37または67~92のいずれかに記載の核酸配列を含む、ウイルスベクター産生系。
【請求項43】
前記ウイルスベクターが、レトロウイルス、アデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルスに由来し、好ましくは、前記ウイルスベクターがレトロウイルスベクターであり、前記ウイルスベクター産生系が、GagおよびPolタンパク質、前記トリプトファンRNA結合減衰タンパク質、およびEnvタンパク質、またはこれらの機能的代替物をコードする核酸配列を含む、請求項42に記載のウイルスベクター産生系。
【請求項44】
前記ウイルスベクター産生系が、revまたはその機能的代替物をコードする核酸配列をさらに含む、請求項43に記載のウイルスベクター産生系。
【請求項45】
前記ウイルスベクターがレンチウイルスに由来する、好ましくは前記ウイルスベクターがHIV-1、HIV-2、SIV、FIV、BIV、EIAV、CAEVまたはビスナレンチウイルスに由来する、請求項42~44のいずれかに記載のウイルスベクター産生系。
【請求項46】
請求項1~37または67~92のいずれかに記載の核酸配列を含む、請求項42~45のいずれかに記載のウイルスベクター産生系において使用するためのDNA構築物。
【請求項47】
前記トリプトファン-RNA結合減衰タンパク質をコードする核酸配列を含む、請求項42~45のいずれかに記載のウイルスベクター産生系において使用するためのDNA構築物。
【請求項48】
請求項46または請求項47に記載のDNA構築物と、GagおよびPolタンパク質をコードするDNA構築物と、Envタンパク質またはその機能的代替物をコードするDNA構築物とを含む、請求項42~45のいずれかに記載のウイルスベクター産生系において使用するためのDNA構築物の組であって、好ましくは、前記DNA構築物の組が、rev配列またはその機能的代替物をコードするDNA構築物をさらに含む、DNA構築物の組。
【請求項49】
請求項1~37または67~92のいずれかに記載の核酸配列、請求項42~45のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または請求項446~48のいずれかに記載のDNA構築物を含むウイルスベクター産生細胞。
【請求項50】
前記細胞が、トリプトファン-RNA結合減衰タンパク質をコードするベクターで一過性に形質移入される、請求項49に記載のウイルスベクター産生細胞。
【請求項51】
前記細胞が、トリプトファン-RNA結合減衰タンパク質を安定に発現する、請求項49に記載のウイルスベクター産生細胞。
【請求項52】
請求項1~37または67~92のいずれかに記載の核酸配列、請求項42~45のいずれかに記載のウイルスベクター産生系または請求項46~48のいずれかに記載のDNA構築物をウイルスベクター産生細胞中に導入することと、前記ウイルスベクターの産生に適した条件下で前記産生細胞を培養することと、を含む、ウイルスベクターを産生するための方法。
【請求項53】
請求項49~51のいずれかに記載のウイルスベクター産生細胞を使用して、または請求項52に記載の方法によって、請求項42~45のいずれかに記載のウイルスベクター産生系によって産生されるウイルスベクター。
【請求項54】
請求項1~37または67~92のいずれかに記載の核酸配列を含む、請求項53に記載のウイルスベクター。
【請求項55】
レトロウイルス、アデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルスに由来する、請求項53または請求項54に記載のウイルスベクター。
【請求項56】
レンチウイルスに由来する、請求項55に記載のウイルスベクター。
【請求項57】
HIV-1、HIV-2、SIV、FIV、BIV、EIAV、CAEVまたはビスナレンチウイルスに由来する、請求項56に記載のウイルスベクター。
【請求項58】
請求項38~41または53~57のいずれか一項に記載のウイルスベクターによって形質導入された細胞。
【請求項59】
医学における使用のための、請求項38~41もしくは53~57のいずれかに記載のウイルスベクターまたは請求項58に記載の細胞。
【請求項60】
関心対象のヌクレオチドを必要とする標的部位に前記関心対象のヌクレオチドを送達するための医薬の調製のための、請求項38~41もしくは53~57のいずれかに記載のウイルスベクターまたは請求項58に記載の細胞の使用。
【請求項61】
請求項38~41もしくは53~57のいずれかに記載のウイルスベクターまたは請求項58に記載の細胞を、これを必要とする対象に投与することを含む処置の方法。
【請求項62】
薬学的に許容され得る、担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせて、請求項38~41もしくは53~57のいずれかに記載のウイルスベクターまたは請求項58に記載の細胞を含む薬学的組成物。
【請求項63】
核酸結合部位に機能的に連結されたときに関心対象のヌクレオチドの翻訳がウイルスベクター産生細胞において抑制されるように相互作用することができる核酸結合部位および/または核酸結合タンパク質を同定する方法であって、レポーター遺伝子に機能的に連結された前記核酸結合部位および前記核酸結合タンパク質の両方を含む細胞におけるレポーター遺伝子の発現を分析することを含む、方法。
【請求項64】
前記レポーター遺伝子が蛍光タンパク質をコードする、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
ウイルスベクター産生細胞において関心対象のヌクレオチド(NOI)の翻訳を抑制する方法であって、請求項1~37または67~92のいずれか一項に定義される核酸配列、およびトリプトファン-RNA結合減衰タンパク質(TRAP)をコードする核酸配列を前記ウイルスベクター産生細胞中に導入することを含み、前記TRAPは前記TRAP結合部位またはその一部に結合し、それにより前記NOIの翻訳を抑制する、方法。
【請求項66】
真核生物のベクター産生細胞におけるウイルスベクター力価を増加させる方法であって、前記真核生物のベクター産生細胞中に請求項42~45のいずれか一項に記載のウイルスベクター産生系およびトリプトファン-RNA結合減衰タンパク質(TRAP)をコードする核酸配列を導入することを含み、前記TRAPは前記TRAP結合部位またはその一部に結合し、前記NOIの翻訳を抑制し、それにより、TRAP結合部位を有しないウイルスベクターと比較してウイルスベクター力価を増加させる、方法。
【請求項67】
関心対象のヌクレオチドと、トリプトファンRNA結合減衰タンパク質(TRAP)に対する結合部位と、多重クローニング部位と、コザック配列とを含む核酸配列であって、前記多重クローニング部位は、前記TRAP結合部位の3’KAGN
2~3反復と重複しているか、または前記TRAP結合部位の3’KAGN
2~3反復に対して下流かつ前記コザック配列の上流に位置する、核酸配列。
【請求項68】
前記核酸配列が配列番号45~58の任意の1つを含む、請求項67に記載の核酸配列。
【請求項69】
前記核酸配列が配列番号52~58の任意の1つを含む、請求項68に記載の核酸配列。
【請求項70】
前記核酸配列が、配列番号52、配列番号55または配列番号58の任意の1つを含む、請求項69に記載の核酸配列。
【請求項71】
前記核酸配列がプロモーター-5’UTR領域をさらに含む、請求項1~37または67~70のいずれか一項に記載の核酸配列。
【請求項72】
前記TRAP結合部位もしくはその一部およびコザック配列または前記TRAP結合部位、多重クローニング部位およびコザック配列が、前記プロモーター-5’UTR領域の5’UTR内に位置する、請求項71に記載の核酸配列。
【請求項73】
前記プロモーター-5’UTR領域がイントロンをさらに含み、好ましくは前記イントロンが前記TRAP結合部位またはその一部の上流にある、請求項71または請求項72に記載の核酸配列。
【請求項74】
前記プロモーター-5’UTR領域が、前記5’UTR内に異種イントロンを含む操作されたプロモーターである、請求項71~73のいずれか一項に記載の核酸配列。
【請求項75】
ウイルスベクターのRNAゲノムをコードする核酸配列であって、前記ウイルスベクターの前記RNAゲノムが、請求項1~37または67~74のいずれか一項に記載の核酸配列を含む、核酸配列。
【請求項76】
前記核酸配列がウイルスベクターのRNAゲノム内に含まれる、請求項1~37または67~74のいずれかに記載の核酸配列。
【請求項77】
前記核酸配列がウイルスベクターの前記RNAゲノムをコードするヌクレオチド配列に機能的に連結されている、請求項1~37または67~74のいずれか一項に記載の核酸配列。
【請求項78】
前記ウイルスベクターの前記RNAゲノム中の主要スプライスドナー部位が不活性化されている、請求項75~77のいずれか一項に記載の核酸配列または請求項43~45のいずれか一項に記載のウイルスベクター産生系。
【請求項79】
前記ウイルスベクターの前記RNAゲノム中の、前記主要スプライスドナー部位と前記主要スプライスドナー部位に対して3’の潜在的スプライスドナー部位とが不活性化されており、好ましくは前記潜在的スプライスドナー部位が前記主要スプライスドナー部位に対して3’の第1の潜在的スプライスドナー部位である、請求項78に記載の核酸配列またはウイルスベクター産生系。
【請求項80】
前記潜在的スプライスドナー部位が前記主要スプライスドナー部位の6ヌクレオチド以内にある、請求項75に記載の核酸配列またはウイルスベクター産生系。
【請求項81】
前記主要スプライスドナー部位および潜在的スプライスドナー部位が変異または欠失されている、請求項78~80のいずれか一項に記載の核酸配列またはウイルスベクター産生系。
【請求項82】
前記スプライス部位の不活性化前の前記ウイルスベクターの前記RNAゲノムをコードする前記ヌクレオチド配列が、配列番号94、96、97、102、103および/または106のいずれかに示される配列を含む、請求項78~81のいずれか一項に記載の核酸配列またはウイルスベクター産生系。
【請求項83】
前記ウイルスベクターの前記RNAゲノムをコードする前記ヌクレオチド配列が、配列番号94、96、97、102、103および/または106のいずれかに示される配列に対して変異または欠失を有する配列を含む、請求項78~82のいずれか一項に記載の核酸配列またはウイルスベクター産生系。
【請求項84】
前記ウイルスベクターの前記RNAゲノムをコードする前記ヌクレオチド配列が、不活性化されなければ配列番号94のヌクレオチド13および14に対応するヌクレオチドの間に切断部位を有する不活性化された主要スプライスドナー部位を含む、請求項78~83のいずれか一項に記載の核酸配列またはウイルスベクター産生系。
【請求項85】
不活性化前の前記主要スプライスドナー部位の前記ヌクレオチド配列が、配列番号97に示される配列を含む、請求項78~84のいずれか一項に記載の核酸配列またはウイルスベクター産生系。
【請求項86】
不活性化前の前記潜在的スプライスドナー部位の前記ヌクレオチド配列が、配列番号103に示される配列を含む、請求項79~85のいずれか一項に記載の核酸配列またはウイルスベクター産生系。
【請求項87】
前記ウイルスベクターの前記RNAゲノムをコードする前記ヌクレオチド配列が、不活性化されなければ配列番号94のヌクレオチド17および18に対応するヌクレオチドの間に切断部位を有する不活性化された潜在的スプライスドナー部位を含む、請求項79~86のいずれか一項に記載の核酸配列またはウイルスベクター産生系。
【請求項88】
前記ウイルスベクターの前記RNAゲノムをコードする前記ヌクレオチド配列が、配列番号95、98、99、100、101、104、105および/または107のいずれかに示される配列を含む、請求項78~87のいずれか一項に記載の核酸配列またはウイルスベクター産生系。
【請求項89】
前記ウイルスベクターの前記RNAゲノムをコードする前記ヌクレオチド配列が、配列番号102に示される配列を含まない、請求項78~88のいずれか一項に記載の核酸配列またはウイルスベクター産生系。
【請求項90】
前記ウイルスベクターの前記RNAゲノムの前記主要スプライスドナー部位および潜在的スプライスドナー部位からのスプライシング活性が抑制または除去される、請求項78~89のいずれか一項に記載の核酸配列またはウイルスベクター産生系。
【請求項91】
前記ウイルスベクターの前記RNAゲノムの前記主要スプライスドナー部位および潜在的スプライスドナー部位からのスプライシング活性が、形質移入された細胞においてまたは形質導入された細胞において抑制または除去される、請求項78~90のいずれか一項に記載の核酸配列またはウイルスベクター産生系。
【請求項92】
前記ウイルスベクターがレンチウイルスに由来する、請求項67~91のいずれか一項に記載の核酸配列またはウイルスベクター産生系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルスベクターの産生に関する。より具体的には、本発明は、ウイルスベクター産生細胞における、ウイルスベクターによってコードされる関心対象のヌクレオチドの翻訳の改変に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子治療は、疾患を処置するための遺伝物質の使用を広く含む。遺伝子治療には、欠陥遺伝子(例えば、変異を有する遺伝子)を有する細胞における欠陥遺伝子の機能的コピーの補充、不適切に機能する遺伝子の不活性化および新しい治療用遺伝子の導入が含まれる。
【0003】
治療用遺伝物質は、核酸の導入を可能にするためにベクターを使用して宿主の標的細胞中に組み込まれ得る。このようなベクターは、一般に、ウイルスおよび非ウイルスカテゴリーに分けることができる。
【0004】
ウイルスは、ウイルスの複製サイクルの一環としてウイルスの遺伝物質を宿主の標的細胞中に自然に導入する。操作されたウイルスベクターは、関心対象のヌクレオチド(NOI)または導入遺伝子の標的細胞への送達を可能にするために、この能力を利用する。今日まで、多くのウイルスが遺伝子治療のためのベクターとして操作されてきた。これらには、レトロウイルス、アデノウイルス(AdV)、アデノ随伴ウイルス(AAV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)およびワクシニアウイルスが含まれる。
【0005】
NOIを運搬するための改変に加えて、ウイルスベクターは、典型的には、複製欠損であるようにさらに操作される。したがって、組換えベクターは標的細胞に直接感染することができるが、さらなる世代の感染性ビリオンを産生することはできない。他の種類のウイルスベクターは、癌細胞内でのみ条件的に複製能を有し得、毒性導入遺伝子またはプロ酵素をさらにコードし得る。
【0006】
レトロウイルスベクターは、様々な遺伝性障害に対する治療法として開発されており、現在、臨床試験において有望性が高まっている(例えば、Galy,A.and A.J.Thrasher(2010)Curr Opin Allergy Clin Immunol 11(6):545-550;Porter,D.L.,B.L.Levine,M.Kalos,A.Bagg and C.H.June(2011)N Engl J Med 365(8):725-733;Campochiaro,P.A.(2012)Gene Ther 19(2):121-126;Cartier,N.,S.Hacein-Bey-Abina,C.C.Bartholomae,P.Bougneres,M.Schmidt,C.V.Kalle,A.Fischer,M.Cavazzana-Calvo and P.Aubourg(2012)Methods Enzymol 507:187-198;Sadelain,M.,I.Riviere,X.Wang,F.Boulad,S.Prockop,P.Giardina,A.Maggio,R.Galanello,F.Locatelli and E.Yannaki(2010)Ann N Y Acad Sci 1202:52-58;DiGiusto,D.L.,A.Krishnan,L.Li,H.Li,S.Li,A.Rao,S.Mi,P.Yam,S.Stinson,M.Kalos,J.Alvarnas,S.F.Lacey,J.K.Yee,M.Li,L.Couture,D.Hsu,S.J.Forman,J.J.Rossi and J.A.Zaia(2010)Sci Transl Med 2(36):36ra43およびSegura MM,M.M.,Gaillet B,Garnier A.(2013)Expert opinion in biological therapy)。
【0007】
このようなベクターの重要な例としては、ガンマ-レトロウイルスベクター系(MMLVに基づく)、霊長類レンチウイルスベクター系(HIV-1に基づく)および非霊長類レンチウイルスベクター系(EIAVに基づく)が挙げられる。
【0008】
逆遺伝学によって、大きな異種配列(約10kb)をコードするベクターが適切なDNA配列での哺乳動物細胞の形質移入によって産生され得るように、これらのウイルスをベースとするベクターを大幅に操作することが可能になった(Bannert,K.(2010)Caister Academic Press:347-370に概説されている。)。
【0009】
研究段階におけるレトロウイルスベクターの操作および使用は、典型的には、例えばGFPまたはlacZをコードするレポーター遺伝子ベクターの産生を含む。これらの臨床に無関係なベクターの力価は、通常、未精製採集材料1mL当たり1×106~1×107形質導入単位(TU/mL)の領域にある。この材料のさらなる濃縮および精製は、1×1010TU/mLを超えるワーキングストックを達成することができる。しかしながら、治療に関連するNOIをコードするベクターの産生は、これらのレポーターベクターと比較して、実質的に低下した力価をもたらすことが多い。
【0010】
この影響に関与している可能性があるいくつかの要因が存在する。
【0011】
1.治療用ゲノムのサイズ。レトロウイルスによって極めて大きなゲノムをパッケージングすることができるが、逆転写および/または組み込み工程はサイズが増大するにつれて効率がより低くなると考えられている。
【0012】
2.ベクターゲノムRNAの安定性。これは、NOI中の予測されない不安定要素の存在によって低減され得る。
【0013】
3.ベクターゲノムRNA内での最適を下回るヌクレオチド使用。野生型ウイルスゲノムは、しばしば、ある種のヌクレオチドの偏りを有する(例えば、HIV-1はATに富む)。ベクターゲノムはATの豊富さがより低い傾向があり、これはパッケージングおよび/または成熟後工程に影響を及ぼし得る。
【0014】
4.ウイルスベクター産生細胞におけるNOIの発現。(過剰)発現されたタンパク質は、ベクタービリオンの集合および/または感染性に対して間接的または直接的な効果を有し得る。
【0015】
ウイルスベクター産生細胞内での、NOIによってコードされるタンパク質の発現は、治療用ベクターの力価に悪影響を及ぼし得ることが経験的に示されている(国際公開第2015/092440号に記載)。
【0016】
NOIによってコードされるタンパク質(関心対象のタンパク質、POI)のベクタービリオン中への組み込みも、ベクター粒子の下流プロセシングに影響を及ぼし得、例えば、膜貫通POIをコードするNOIは、ウイルスベクタービリオン中の膜貫通タンパク質の高い表面発現をもたらし、ビリオンの物理的特性を潜在的に変化させ得る。さらに、この組み込みは、送達部位で患者の免疫系にPOIを提示し得、これはインビボでの治療遺伝子の形質導入および/または長期発現に悪影響を及ぼし得る。NOIは、産生、精製、回収および免疫原性に影響を及ぼし得る望ましくない二次タンパク質または代謝産物の産生も誘導し得るので、これを最小限に抑えることが望ましい。
【0017】
標的細胞中でのNOIの効果的な発現を維持しながら、ウイルスベクター産生細胞中でのNOIの発現を抑制する能力も望ましい。どのような機構が用いられるとしても、ウイルスベクター粒子の集合の「自然の」経路とその結果生じる機能性は妨げられてはならない。ビリオン中にパッケージングされるウイルスベクターゲノム分子は必然的にNOI発現カセットをコードしなければならないので、これは簡単ではない。換言すれば、ベクターゲノム分子およびNOI発現カセットは機能的に連結されているので、NOI発現カセットの改変は、細胞内でベクターゲノム分子を産生する能力に対して悪影響を及ぼし得る。例えば、NOI発現カセットを抑制するために物理的転写ブロック(例えば、TetRリプレッサー系)を使用すると、立体障害によってベクターゲノム分子の産生も阻害される可能性が高い。さらに、制御機構の改変はまた、ビリオンの成熟および放出後のベクターゲノム分子の機能性に(すなわち、標的細胞の形質導入の誘導に関して)悪影響を与えてはならない。例えば、レトロウイルスベクターゲノムRNA分子は、逆転写および組み込みの過程が可能でなければならず、NOI発現カセットに対するいかなる改変も、形質導入過程におけるこれらの工程を妨げてはならない。
【0018】
ウイルスベクター産生細胞内でのNOI発現の抑制は、さらなる利点を提示し得る。NOI発現がベクター産生細胞の生存率の低下をもたらす場合、その抑制は、大きな細胞数を必要とする大規模での製造に利益をもたらし得る。細胞死による細胞残屑の低減は、未精製ベクター採集材料内の不純物も低減させる。ベクタープラットフォーム(すなわち、同じベクター系内にコードされた異なる治療遺伝子)の処理、精製および濃縮を標準化することができる可能性がある、すなわち、ウイルスベクター産生細胞内で発現される唯一の異種遺伝子がベクター産生のために必要とされる遺伝子であれば、治療用ベクターのプラットフォーム全体に対して下流処理をより容易に最適化することができ、ベクター調製物の極めて類似した物理的仕様がもたらされるであろう。インビボでの得られたベクターに対する免疫応答の変動性および得られたベクターの毒性を最小化し得、これは標的細胞中でのより持続的な治療的NOI発現をもたらし得る。
【0019】
産生細胞中でのNOIの発現を制限する組織特異的プロモーターは、この問題に対する可能な解決策であるが、これらのプロモーターの漏出性(leakiness)は、有害なレベルの導入遺伝子タンパク質をもたらし得る。しかしながら、構成的プロモーターを使用して、標的細胞中でのNOIのより大きく、より強固な発現を達成することができる。実際、このような強固な発現は、インビボでの有効性のために必要とされ得る。さらに、組織特異的プロモーターは、前臨床および臨床開発中に動物モデルを通じて、およびヒトへと治療用ベクター産物を観察した場合、予測可能性がより低いことがあり得る。
【0020】
国際公開第2015/092440号(参照により本明細書に組み入れられる)は、ウイルスベクター産生中にNOIの翻訳を抑制(導入遺伝子発現を抑制)し、これにより、NOIによってコードされるタンパク質の発現を抑制または防止するための、真核細胞培養物における異種翻訳制御系の使用を開示している。この系は、ベクター産生細胞系における導入遺伝子抑制(Transgene Repression In vector Production cell system)またはTRIP系と呼ばれる。1つの形態において、TRIP系は、導入遺伝子抑制を媒介するために、細菌trpオペロン調節タンパク質、トリプトファンRNA結合減衰タンパク質(TRAP)およびTRAP結合部位/配列(tbs)を利用する。驚くべきことに、この系の使用は、パッケージング可能なベクターゲノム分子の産生もベクタービリオンの活性も妨げず、標的細胞中でのNOIの長期発現を妨害しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Galy,A.and A.J.Thrasher(2010)Curr Opin Allergy Clin Immunol 11(6):545-550
【非特許文献2】Porter,D.L.,B.L.Levine,M.Kalos,A.Bagg and C.H.June(2011)N Engl J Med 365(8):725-733
【非特許文献3】Campochiaro,P.A.(2012)Gene Ther 19(2):121-126
【非特許文献4】Cartier,N.,S.Hacein-Bey-Abina,C.C.Bartholomae,P.Bougheres,M.Schmidt,C.V.Kalle,A.Fischer,M.Cavazzana-Calvo and P.Aubourg(2012)Methods Enzymol 507:187-198
【非特許文献5】Sadelain,M.,I.Riviere,X.Wang,F.Boulad,S.Prockop,P.Giardina,A.Maggio,R.Galanello,F.Locatelli and E.Yannaki(2010)Ann N Y Acad Sci 1202:52-58
【非特許文献6】DiGiusto,D.L.,A.Krishnan,L.Li,H.Li,S.Li,A.Rao,S.Mi,P.Yam,S.Stinson,M.Kalos,J.Alvarnas,S.F.Lacey,J.K.Yee,M.Li,L.Couture,D.Hsu,S.J.Forman,J.J.Rossi and J.A.Zaia(2010)Sci Transl Med 2(36):36ra43
【非特許文献7】Segura MM,M.M.,Gaillet B,Garnier A.(2013)Expert opinion in biological therapy
【非特許文献8】Bannert,K.(2010)Caister Academic Press:347-370
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、TRIP系を改善するために使用され得る、TRAPによる翻訳抑制のレベルの改善を可能にする、導入遺伝子mRNAに対して施される修飾に関する。本発明の改善された核酸配列は、例えば、以下の特徴を有し得る。
【0024】
1.EF1α遺伝子の第1の(非コード)エクソンに由来するヌクレオチドから構成される改善された5’UTRリーダー配列(tbsの上流)は、驚くべきことに、様々な構成的プロモーターからの5’UTRリーダー配列と比較して、TRAP-tbs複合体によって媒介される導入遺伝子発現の一貫してより低い「抑制された」レベルを可能にすることができることが示される。
【0025】
2.配列内リボソーム進入部位(IRES)とtbsの間に挿入された改善されたUTRまたは「スペーサー」配列は、驚くべきことに、倍数抑制および非抑制レベル(すなわち、TRAPなし)の両方を改善することが示される。
【0026】
3.tbsの3’末端と重複する変異型コザック配列は、驚くべきことに、TRAP-tbs複合体による導入遺伝子開始コドンの改善された閉塞をもたらすことが示される。
【0027】
4.tbsと導入遺伝子コザック配列(導入遺伝子開始コドン(ATG))との間の圧縮された、重複する多重クローニング部位を含む配列は、驚くべきことに、TRAPによって抑制された場合の低レベルの導入遺伝子発現を保持しながらクローニングを容易にすることができることが示される。
【0028】
5.tbsの3’末端の導入遺伝子開始コドンATGとの重複は、驚くべきことに、TRAP-tbs複合体による導入遺伝子開始コドンの改善された閉塞をもたらすことが示される。
【0029】
一局面において、本発明は、関心対象のヌクレオチドと、トリプトファンRNA結合減衰タンパク質(TRAP)結合部位と、コザック配列とを含む核酸配列であって、前記TRAP結合部位はコザック配列と重複する、核酸配列を提供する。
【0030】
別の局面において、本発明は、関心対象のヌクレオチドとコザック配列とを含む核酸配列であって、前記コザック配列は、トリプトファンRNA結合減衰タンパク質(TRAP)結合部位の一部を含む核酸配列を提供する。
【0031】
一局面において、本発明は、関心対象のヌクレオチド(導入遺伝子)とTRAP結合部位とを含む核酸配列であって、TRAP結合部位は導入遺伝子開始コドンATGの一部を含む、またはその逆である核酸配列を提供する。
【0032】
いくつかの態様において、関心対象のヌクレオチドは、TRAP結合部位またはその一部に機能的に連結されている。
【0033】
いくつかの態様において、関心対象のヌクレオチドの翻訳がウイルスベクター産生細胞において抑制されるように、TRAP結合部位またはその一部は、トリプトファンRNA結合減衰タンパク質と相互作用することができる。
【0034】
いくつかの態様において、関心対象のヌクレオチドは、トリプトファンRNA結合減衰タンパク質を欠如する標的細胞中で翻訳される。
【0035】
いくつかの態様において、TRAP結合部位またはその一部は、配列KAGN2-3の複数の反復を含む。
【0036】
いくつかの態様において、TRAP結合部位またはその一部は、配列KAGN2の複数の反復を含む。
【0037】
いくつかの態様において、TRAP結合部位またはその一部は、配列KAGN2の少なくとも6つの反復を含む。
【0038】
いくつかの態様において、TRAP結合部位またはその一部は、配列KAGN2-3の少なくとも8つの反復を含む。KAGNNN反復の数は、1またはそれ未満であり得る。
【0039】
いくつかの態様において、TRAP結合部位またはその一部は、配列KAGN2の少なくとも8~11の反復を含む。
【0040】
いくつかの態様において、TRAP結合部位またはその一部は配列KAGN2-3の11の反復を含み、KAGNNN反復の数は3またはそれ未満である。
【0041】
いくつかの態様において、コザック配列は、TRAP結合部位のまたはその一部の3’末端と重複する。コザック配列は、TRAP結合部位のまたはその一部の3’末端KAGNN反復と重複し得る。
【0042】
いくつかの態様において、前記コザック配列は、配列RNNATGを含む。
【0043】
いくつかの態様において、前記コザック配列は、配列RVVATGを含む。
【0044】
いくつかの態様において、前記重複するコザック配列およびTRAP結合部位またはその一部は、以下の配列:
(a)GAGATG;
(b)KAGVATG;
(c)KAGVVATG;
(d)KAGRVVATG;または
(e)KAGNRVVATG
の1つを含む。
【0045】
いくつかの態様において、前記核酸配列は、以下の配列:
(a)KAGCCGAGATG;
(b)KAGGCGAGCATG;
(c)KAGNGGAGCCATG;または
(d)KAGNNGAGACCATG
の1つを含む。
【0046】
いくつかの態様において、前記核酸配列は、以下の配列:
(a)KAGCCGAGATG;または
(b)KAGNGGAGCCATG
の1つを含む。
【0047】
いくつかの態様において、前記核酸配列は、配列番号69~92または108~112に示される配列を含む。
【0048】
いくつかの態様において、転写開始部位/プロモーターの末端からTRAP結合部位のまたはその一部の開始までの距離は34ヌクレオチド未満である。
【0049】
いくつかの態様において、転写開始部位/プロモーターの末端からTRAP結合部位のまたはその一部の開始までの距離は13ヌクレオチド未満である。
【0050】
いくつかの態様において、TRAP結合部位またはその一部は、II型制限酵素部位、好ましくはSapI制限酵素部位を欠如する。
【0051】
いくつかの態様において、前記核酸配列は、TRAP結合部位またはその一部の上流に5’リーダー配列を含む。リーダー配列は、非コードEF1αエクソン1領域に由来する配列を含み得る。リーダー配列は、配列番号25または配列番号26で定義される配列を含み得る。
【0052】
いくつかの態様において、前記核酸配列は、配列内リボソーム進入部位(IRES)を含む。前記核酸配列は、配列内リボソーム進入部位(IRES)とTRAP結合部位またはその一部との間にスペーサー配列を含み得る。スペーサーは、0~30ヌクレオチド長であり得る。スペーサーは、15ヌクレオチド長であり得る。
【0053】
いくつかの態様において、スペーサーは、TRAP結合部位またはその一部の3’末端および関心対象のヌクレオチドの下流開始コドンから3または9ヌクレオチドである。
【0054】
いくつかの態様において、スペーサーは配列番号38~44の任意の1つで定義される配列を含み、好ましくはスペーサーは配列番号38で定義される配列を含む。
【0055】
いくつかの態様において、関心対象のヌクレオチドは、治療効果を生じさせる。
【0056】
いくつかの態様において、核酸配列は、RRE配列またはその機能的代替物をさらに含む。
【0057】
いくつかの態様において、前記核酸配列はベクター導入遺伝子発現カセットである。
【0058】
いくつかの態様において、TRAP結合部位のまたはその一部の3’末端KAGNN反復は、少なくともATG開始コドンの最初のヌクレオチドと重複する。
【0059】
いくつかの態様において、TRAP結合部位のまたはその一部の3’末端KAGNN反復は、ATG開始コドンの最初の2つのヌクレオチドと重複する。
【0060】
いくつかの態様において、TRAP結合部位のまたはその一部の3’末端KAGNN反復は、本明細書において定義されるコアコザック配列内のATG開始コドンの最初のヌクレオチドと重複する。
【0061】
いくつかの態様において、核酸配列は、配列番号114または配列番号116で定義される配列を含む。
【0062】
さらなる局面において、本発明は、本発明の核酸配列を含むウイルスベクターを提供する。
【0063】
いくつかの態様において、ウイルスベクターは、1より多くの関心対象のヌクレオチドを含み、少なくとも1つの関心対象のヌクレオチドは、本明細書において定義されるTRAP結合部位またはその一部に機能的に連結されている。
【0064】
いくつかの態様において、ウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルスまたはバキュロウイルスに由来する。ウイルスベクターは、レンチウイルスに由来し得る。ウイルスベクターは、HIV-1、HIV-2、SIV、FIV、BIV、EIAV、CAEVまたはビスナレンチウイルスに由来し得る。
【0065】
さらなる局面において、本発明は、ウイルスベクターの産生のために必要とされる成分をコードする核酸配列の組を含むウイルスベクター産生系であって、ベクターゲノムは本発明の核酸配列を含む、ウイルスベクター産生系を提供する。ウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルスに由来し得る。
【0066】
いくつかの態様において、ウイルスベクターはレトロウイルスベクターであり、ウイルスベクター産生系は、GagおよびPolタンパク質、トリプトファンRNA結合減衰タンパク質、およびEnvタンパク質、またはこれらの機能的代替物をコードする核酸配列をさらに含む。
【0067】
いくつかの態様において、ウイルスベクター産生系は、revまたはその機能的代替物をコードする核酸配列をさらに含む。
【0068】
いくつかの態様において、ウイルスベクターはレンチウイルスに由来する。ウイルスベクターは、HIV-1、HIV-2、SIV、FIV、BIV、EIAV、CAEVまたはビスナレンチウイルスに由来し得る。
【0069】
さらなる局面において、本発明は、本発明の核酸配列を含む本発明のウイルスベクター産生系において使用するためのDNA構築物を提供する。
【0070】
さらなる局面において、本発明は、トリプトファン-RNA結合減衰タンパク質をコードする核酸配列を含む本発明のウイルスベクター産生系において使用するためのDNA構築物を提供する。
【0071】
さらなる局面において、本発明は、本発明のDNA構築物と、GagおよびPolタンパク質をコードするDNA構築物と、Envタンパク質またはその機能的代替物をコードするDNA構築物とを含む、本発明のウイルスベクター産生系において使用するためのDNA構築物の組を提供する。
【0072】
いくつかの態様において、DNA構築物の組は、rev配列またはその機能的代替物をコードするDNA構築物をさらに含む。
【0073】
さらなる局面において、本発明は、本発明の核酸配列と、本発明のウイルスベクター産生系または本発明のDNA構築物とを含むウイルスベクター産生細胞を提供する。
【0074】
いくつかの態様において、細胞は、トリプトファン-RNA結合減衰タンパク質をコードするベクターで一過性に形質移入される。細胞は、トリプトファン-RNA結合減衰タンパク質を安定に発現し得る。
【0075】
さらなる局面において、本発明は、本発明の核酸配列、本発明のウイルスベクター産生系または本発明のDNA構築物をウイルスベクター産生細胞中に導入することと、ウイルスベクターの産生に適した条件下で産生細胞を培養することとを含む、ウイルスベクターを産生するための方法を提供する。
【0076】
さらなる局面において、本発明は、本発明のウイルスベクター産生細胞を使用して、または本発明の方法によって、本発明のウイルスベクター産生系によって産生されたウイルスベクターを提供する。
【0077】
いくつかの態様において、ウイルスベクターは本発明の核酸配列を含む。
【0078】
いくつかの態様において、ウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルスに由来する。ウイルスベクターは、レンチウイルスに由来し得る。ウイルスベクターは、HIV-1、HIV-2、SIV、FIV、BIV、EIAV、CAEVまたはビスナレンチウイルスに由来し得る。
【0079】
さらなる局面において、本発明は、本発明のウイルスベクターによって形質導入された細胞を提供する。
【0080】
さらなる局面において、本発明は、医学において使用するための本発明のウイルスベクターまたは本発明の細胞を提供する。
【0081】
さらなる局面において、本発明は、関心対象のヌクレオチドを必要とする標的部位に関心対象のヌクレオチドを送達するための医薬の調製ための、本発明のウイルスベクターまたは本発明の細胞の使用を提供する。
【0082】
さらなる局面において、本発明は、本発明のウイルスベクターまたは本発明の細胞を、これを必要とする対象に投与することを含む処置の方法を提供する。
【0083】
さらなる局面において、本発明は、本発明のウイルスベクターまたは本発明の細胞を薬学的に許容され得る、担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせて含む薬学的組成物を提供する。
【0084】
さらなる局面において、本発明は、核酸結合部位に機能的に連結されたときに関心対象のヌクレオチドの翻訳がウイルスベクター産生細胞において抑制されるように相互作用することができる核酸結合部位および/または核酸結合タンパク質を同定する方法であって、レポーター遺伝子に機能的に連結された核酸結合部位および核酸結合タンパク質の両方を含む細胞におけるレポーター遺伝子の発現を分析することを含む、方法を提供する。
【0085】
いくつかの態様において、レポーター遺伝子は蛍光タンパク質をコードする。
【0086】
さらなる局面において、本発明は、ウイルスベクター産生細胞において関心対象のヌクレオチド(NOI)の翻訳を抑制する方法であって、本発明の核酸配列、およびトリプトファン-RNA結合減衰タンパク質(TRAP)をコードする核酸配列をウイルスベクター産生細胞中に導入することを含み、TRAPはTRAP結合部位またはその一部に結合し、それによりNOIの翻訳を抑制する、方法を提供する。
【0087】
さらなる局面において、本発明は、真核生物のベクター産生細胞におけるウイルスベクター力価を増加させる方法であって、真核生物のベクター産生細胞中に本発明のウイルスベクター産生系およびトリプトファン-RNA結合減衰タンパク質(TRAP)をコードする核酸配列を導入することを含み、TRAPはTRAP結合部位またはその一部に結合し、NOIの翻訳を抑制し、それにより、TRAP結合部位を有しないウイルスベクターと比較してウイルスベクター力価を増加させる、方法を提供する。
【0088】
さらなる局面において、本発明は、関心対象のヌクレオチドと、トリプトファンRNA結合減衰タンパク質(TRAP)に対する結合部位と、多重クローニング部位と、コザック配列とを含む核酸配列であって、前記多重クローニング部位は、TRAP結合部位の下流およびコザック配列の上流に位置する、核酸配列を提供する。
【0089】
いくつかの態様において、本発明の核酸配列は、プロモーターをさらに含む。TRAP結合部位もしくはその一部およびコザック配列またはTRAP結合部位、多重クローニング部位およびコザック配列は、プロモーターの5’UTR内に位置し得る。
【0090】
いくつかの態様において、プロモーターはイントロンをさらに含み、好ましくはイントロンはTRAP結合部位またはその一部の上流にある。プロモーターは、5’UTR内に異種イントロンを含む操作されたプロモーターであり得る。
【0091】
いくつかの態様において、本発明の核酸配列は、配列番号117、118または120~124のいずれかに示される配列を含む。
【0092】
さらなる局面において、本発明は、ウイルスベクターのRNAゲノムをコードする核酸配列であって、ウイルスベクターのRNAゲノムは、本明細書に記載の核酸配列を含む、核酸配列を提供する。
【0093】
いくつかの態様において、本明細書に記載される本発明の核酸配列は、ウイルスベクターのRNAゲノム内に含まれる。
【0094】
いくつかの態様において、本明細書に記載の本発明の核酸配列は、ウイルスベクターのRNAゲノムをコードするヌクレオチド配列に機能的に連結されている。
【0095】
本明細書に記載の本発明の核酸配列または本明細書に記載の本発明のウイルスベクター産生系のいくつかの態様において、ウイルスベクターのRNAゲノム中の主要スプライスドナー部位が不活性化されている。
【0096】
いくつかの態様において、ウイルスベクターのRNAゲノム中の、主要スプライスドナー部位と主要スプライスドナー部位に対して3’の潜在的スプライスドナー部位とが不活性化されている。
【0097】
いくつかの態様において、潜在的スプライスドナー部位は、主要スプライスドナー部位に対して3’の第1の潜在的スプライスドナー部位である。
【0098】
いくつかの態様において、前記潜在的スプライスドナー部位または配列は、主要スプライスドナー部位または配列の6ヌクレオチド以内にある。
【0099】
いくつかの態様において、主要スプライスドナー部位および潜在的スプライスドナー部位は、変異または欠失されている。
【0100】
いくつかの態様において、スプライス部位の不活性化前のウイルスベクターのRNAゲノムをコードするヌクレオチド配列は、配列番号94、96、97、102、103および/または106のいずれかに示される配列を含む。
【0101】
いくつかの態様において、ウイルスベクターのRNAゲノムをコードするヌクレオチド配列は、配列番号94、96、97、102、103および/または106のいずれかに示される配列に対して変異または欠失を有する配列を含む。
【0102】
いくつかの態様において、ウイルスベクターのRNAゲノムをコードするヌクレオチド配列は、不活性化されなければ配列番号94のヌクレオチド13および14に対応するヌクレオチドの間に切断部位を有する不活性化された主要スプライスドナー部位を含む。
【0103】
いくつかの態様において、不活化前の主要スプライスドナー部位のヌクレオチド配列は、配列番号97に示される配列を含む。
【0104】
いくつかの態様において、不活化前の潜在的スプライスドナー部位のヌクレオチド配列は、配列番号103に示される配列を含む。
【0105】
いくつかの態様において、ウイルスベクターのRNAゲノムをコードするヌクレオチド配列は、不活性化されなければ配列番号94のヌクレオチド17および18に対応するヌクレオチドの間に切断部位を有する不活性化された潜在的スプライスドナー部位を含む。
【0106】
いくつかの態様において、ウイルスベクターのRNAゲノムをコードするヌクレオチド配列は、配列番号95、98、99、100、101、104、105および/または107のいずれかに示される配列を含む。
【0107】
いくつかの態様において、ウイルスベクターのRNAゲノムをコードするヌクレオチド配列は、配列番号102に示される配列を含まない。
【0108】
いくつかの態様において、ウイルスベクターのRNAゲノムの主要スプライスドナー部位および潜在的スプライスドナー部位からのスプライシング活性は抑制または除去される。
【0109】
いくつかの態様において、ウイルスベクターのRNAゲノムの主要スプライスドナー部位および潜在的スプライスドナー部位からのスプライシング活性は、形質移入された細胞においてまたは形質導入された細胞において抑制または除去される。
【0110】
いくつかの態様において、ウイルスベクターはレンチウイルスに由来する。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【
図1】tbsの上流の5’UTR配列に対する改善の概要。導入遺伝子5’UTR内のtbs配列([KAGNN]x11)の上流に配置されたEF1α遺伝子エクソン1由来の5’リーダー配列の位置を示すための概略図。驚くべきことに、他のプロモーターからのリーダー配列と比較した場合、このようなリーダー配列の使用は、TRAP-tbs(ドーナツ形状によって表されているTRAP)による導入遺伝子の抑制の改善されたレベルをもたらすことが見出される。理論に拘束されることを望むものではないが、このようなリーダー配列は、リボソームスキャニングの阻害が最大化されるように、より安定なTRAP-tbs複合体を可能にすると推定される。
【
図2】tbsの下流の5’UTR配列に対する改善の概要。 A.多重クローニング部位(MCS)がtbsと導入遺伝子の開始コドンの間に挿入されているTRAP-tbs抑制性導入遺伝子カセットの5’UTRコード領域のDNA発現カセットを示すための概略図(TRAPはドーナツ形状によって表されている)。本発明は、tbsの末端KAGNN反復において/tbsの末端KAGNN反復上で始まり、導入遺伝子開始コドンの上流に最大5つのクローニング部位を含有する、好ましい重複する制限酵素部位を記載する。 B.tbsの3’KAGNN反復と大部分または部分的に重複するように、導入遺伝子のコザック配列をどのように配置することができるかを示すための概略図;そのようにすることにより、TRAP-tbs複合体内の主要な開始コドンを効果的に「隠す」ことができ、TRAP-tbs複合体内の主要な開始コドンを翻訳機構によりアクセスしにくいようにして、導入遺伝子発現のさらに低い「抑制された」レベルがもたらされる。 C.好ましい重複するtbsおよびコザックコンセンサス配列を要約する表。tbsの3’KAGNN反復が四角の枠で示されており、コアコザック配列が太字で示されている。
【
図3】天然のUTR配列を含有する様々な構成的プロモーターと比較した、L33改善型リーダー配列を使用した場合のTRAP-tbsによる増強された抑制。 A.GFP試験レポータープラスミドの構成を示す概略図。5’UTRは、異なるプロモーターが利用されたことを除いて同一のtbs配列およびその他の要素、ならびにtbsの上流の異なるリーダー配列を含んだ(これらは表IのパネルIに示されている)。mRNA中にはイントロン配列が存在しないので、イントロン含有EF1α(EF1a)およびUBCプロモーターは、それぞれ、それらの「短い」無イントロン対応物であるEFSおよびUBCと直接比較可能と考えられることに留意されたい(表Iのとおり)。34ntリーダーは、対照としてCMVプロモーター含有レポーター内に存在した(これは、TRAP-tbsによる100倍超の抑制を可能にすることが以前に示された)。他の構成的プロモーターは、天然のリーダー配列の他にいくつかの合成配列を含むリーダーを含有し、またはEF1αプロモーターのエクソン1に由来するL33改善型リーダー配列を有するように本研究において操作された。 B.それぞれ、pBlueScript(TRAPなし)またはpEF1α-TRAP(TRAP)のいずれかとのレポータープラスミドの同時形質移入によって、GFP発現の抑制されていないレベルまたは抑制されたレベルについてレポーターを試験した。形質移入されたHEK293T細胞(懸濁液、無血清)を形質移入の2日後にフローサイトメトリによって分析し、GFP発現スコア(%GFP×蛍光強度中央値)を得て、log-10変換した。チャート内のデータは、左から右へ一般的プロモーター強度(TRAPレベルなし)によって表示されており、偽形質移入された細胞(pBlueScriptのみ)または非形質移入細胞(UNT)と比較される。天然のリーダーがL33改善型リーダーと比較される各事例において、L33改善型リーダーは、TRAPの存在下で実質的により低いレベルのGFP発現を可能にし、TRAP-tbsによる抑制の10倍を超える改善を可能にする。多くの事例において、L33改善型リーダーを使用した場合、発現されたGFPの抑制されていないレベルもわずかに改善された。(標準偏差バー、n=3)。
【
図4】tbsとAAVベクターゲノム内の導入遺伝子カセットのコザック配列との間に挿入された多重クローニング部位(MCS)の設計および評価、ならびにTRAP-tbsによる導入遺伝子抑制に対する影響。 A.5’UTR-tbs配列とともに試験されたMCS変異型を示す概略図;7つの変異型は、NcoI部位を含まない2~4個のクローニング部位を含有し、ある特定のコザック配列の存在および導入遺伝子の第2のコドンの第1のヌクレオチドに依存する(したがって、必ずしもすべての導入遺伝子カセット中に存在しないことがあり得る)。MCS変異型レポーター構築物は、EFSプロモーターによって駆動され、L33改善型リーダーを含有したのに対して、「MCSなし」対照レポーター構築物は、CMVプロモーターによって駆動され、元の34ntリーダーを有した(L33改善型リーダーと同様に機能することが
図4に示されている)。scAAV2ベクターゲノムプラスミド(ITRは示さず)中に導入遺伝子カセットをクローニングした。 B.それぞれ、pBlueScript(TRAPなし)またはpEF1a-TRAP(TRAP)のいずれかとのレポータープラスミドの同時形質移入によって、GFP発現の抑制されていないレベルまたは抑制されたレベルについてレポーターAAVゲノムプラスミドを試験した。形質移入されたHEK293T細胞(懸濁液、無血清)を形質移入の2日後にフローサイトメトリによって分析し、GFP発現スコア(%GFP×蛍光強度中央値)を得て、log-10変換した。すべてのMCS変異型レポーターがTRAP-tbsによって約1000倍またはそれを超えて抑制され、導入遺伝子レベルを低下させることにおいて、7つの変異型のうちの6つが少なくとも10倍優れていた。さらに、変異型MCS2.1、MCS4.1およびMCS4.4は、TRAP-tbsが(非形質移入[UNT]と比較して)GFPレベルを検出の限界まで抑制することを可能にした。(標準偏差バー、n=3)。
【
図5】L33改善型リーダー、tbsおよび最適化された多重クローニング部位を有する5’UTRを有する異なる構成的プロモーターによって駆動される導入遺伝子カセットを使用した、TRAP-tbsによる一貫して強力な導入遺伝子抑制の実証。L33-tbs配列を含有するMCS2.1-GFPおよびMCS4.1-GFPscAAV2レポーターゲノムプラスミド中に種々の構成的プロモーターをクローニングした。それぞれ、pBlueScript(TRAPなし)またはpEF1α-TRAP(TRAP)のいずれかとのレポータープラスミドの同時形質移入によって、GFP発現の抑制されていないレベルまたは抑制されたレベルについてレポーターを試験した。形質移入されたHEK293T細胞(懸濁液、無血清)を形質移入の2日後にフローサイトメトリによって分析し、GFP発現スコア(%GFP×蛍光強度中央値)を得て、log-10変換した。データは、L33改善型リーダーおよび最適化されたMCS部位を同一のカセット中に組み込むことができ、広範囲の構成的プロモーターに関してTRAP-tbsによる高度の導入遺伝子抑制を可能にすることを実証している。実験全体にわたっての平均抑制レベルは約5000倍であった。(標準偏差バー、n=3)。
【
図6】tbsをATG開始コドンにより近接して配置するための、導入遺伝子5’UTR内でtbsの3’末端と重複する最適なコザック配列の同定。 A.(1または複数の)KAGNN反復が維持されるようにコザックがtbsの3’末端と重複するように配置されたコアコンセンサス「RVVATG」およびより広いコンセンサス「GNNRVVATG」に合致する、操作された変異型中のコザック配列の位置および配列を示す概略図。これにより、TRAP-tbs複合体内のATG開始コドンを「隠す」ことによって改善された導入遺伝子抑制レベル(+TRAP)を可能にするtbs-コザック接合変異型を同定するために、tbsをATG開始コドンにより近接して配置することが可能になる。コンセンサスコザック配列の維持は、導入遺伝子の非抑制レベル(TRAPなし)を高いレベルで保持することを可能にする(すなわち、ベクターを形質導入された細胞における発現のモデル化)。 B.それぞれ、pBlueScript(TRAPなし)またはpEF1α-TRAP(TRAP)のいずれかとのレポータープラスミドのHEK293T細胞中への同時形質移入によって、GFP発現の抑制されていないレベルまたは抑制されたレベルについてレポーターを試験した。形質移入された細胞を形質移入の2日後にフローサイトメトリによって分析し、GFP発現スコア(%GFP×蛍光強度中央値)を得て、log-10変換した。すべてのtbs-コザック接合変異型レポーターは、元の構成と比較して同一の、抑制されていないGFPレベルを維持した。変異型「0」、「2」および「3」は、元の構成と比較して、改善された抑制されたレベルを示した(標準偏差バー、n=3)。
【
図7-1】TRAP-tbsによりIRES依存性導入遺伝子のより良好な抑制を付与するための、IRESとtbs配列の間の改善されたスペーサー配列の特定。 A.スペーサー配列を試験する際の導入遺伝子カセットの構成を示す概略図。pCMV-ルシフェラーゼ-IRES-(スペーサー)-tbs-GFPレポーター構築物を設計し(表IIIを参照)、試験した。 B.元の[26nt]スペーサーまたは変異型[26nt]または2つのスペーサーの切断物を含有するレポーターを試験した。それぞれ、pBlueScript(TRAPなし)またはpEF1α-TRAP(TRAP)のいずれかとのレポータープラスミドのHEK293T細胞中への同時形質移入によって、GFP発現の抑制されていないレベルまたは抑制されたレベルについてレポーターを試験した。形質移入された細胞を形質移入の2日後にフローサイトメトリによって分析し、GFP発現スコア(%GFP×蛍光強度中央値)を得て、log-10変換した。本研究は、元のスペーサーと比較して改善された「ON」レベルおよび低減された「OFF」レベルを有する変異型として「元の[trunc-15nt]」スペーサーを明らかにした。 C.次いで、11xKAGNN反復tbsまたは8xKAGNN反復tbsのいずれかを有するレポーターとともに、tbsの3’末端および下流の導入遺伝子ATG開始コドンから9ntまたは3ntのいずれかの距離で「元の[trunc-15nt]」スペーサーを組み込んだ。GFP発現は、前述のように測定した。データは、改善された「元の[trunc-15nt]」スペーサーが、異なるtbs構成および主導入遺伝子ATG開始コドンへの近接性で使用され得ることを示している(標準偏差バー、n=3)。
【
図7-2】TRAP-tbsによりIRES依存性導入遺伝子のより良好な抑制を付与するための、IRESとtbs配列の間の改善されたスペーサー配列の特定。 A.スペーサー配列を試験する際の導入遺伝子カセットの構成を示す概略図。pCMV-ルシフェラーゼ-IRES-(スペーサー)-tbs-GFPレポーター構築物を設計し(表IIIを参照)、試験した。 B.元の[26nt]スペーサーまたは変異型[26nt]または2つのスペーサーの切断物を含有するレポーターを試験した。それぞれ、pBlueScript(TRAPなし)またはpEF1α-TRAP(TRAP)のいずれかとのレポータープラスミドのHEK293T細胞中への同時形質移入によって、GFP発現の抑制されていないレベルまたは抑制されたレベルについてレポーターを試験した。形質移入された細胞を形質移入の2日後にフローサイトメトリによって分析し、GFP発現スコア(%GFP×蛍光強度中央値)を得て、log-10変換した。本研究は、元のスペーサーと比較して改善された「ON」レベルおよび低減された「OFF」レベルを有する変異型として「元の[trunc-15nt]」スペーサーを明らかにした。 C.次いで、11xKAGNN反復tbsまたは8xKAGNN反復tbsのいずれかを有するレポーターとともに、tbsの3’末端および下流の導入遺伝子ATG開始コドンから9ntまたは3ntのいずれかの距離で「元の[trunc-15nt]」スペーサーを組み込んだ。GFP発現は、前述のように測定した。データは、改善された「元の[trunc-15nt]」スペーサーが、異なるtbs構成および主導入遺伝子ATG開始コドンへの近接性で使用され得ることを示している(標準偏差バー、n=3)。
【
図8】EF1αエクソン1配列に由来する2つの改善型リーダーの比較。切断型リーダー「L12」は、ヒトEF1α遺伝子由来のエクソン1を含むL33改善型リーダー配列に由来した(表I参照)。tbsとコザック配列の間にMCS2.1またはMCS4.1配列のいずれかを有する、scAAV2ベクターゲノムプラスミド内の6つの構成的プロモーター含有GFPレポーターカセット中に、L12改善型リーダーをクローニングした。それぞれ、pBlueScript(TRAPなし)またはpEF1α-TRAP(TRAP)のいずれかとのレポータープラスミドの同時形質移入によって、GFP発現の抑制されていないレベルまたは抑制されたレベルについてレポーターを試験した。形質移入されたHEK293T細胞(懸濁液、無血清)を形質移入の2日後にフローサイトメトリによって分析し、GFP発現スコア(%GFP×蛍光強度中央値)を得て、log-10変換した。データは、L12およびL33改善型リーダーが、TRAP-tbsによる完全な抑制を可能にし、GFPレベルをバックグラウンドレベルに抑制することを実証する。興味深いことに、GFPの「ON」(抑制されていない)レベルは、異なるプロモーターにおいてL12またはL33についてわずかに高く、これは、異なるプロモーターを有するTRIP系の利用を検討する場合に、L12またはL33のいずれかを選択することができるという点で柔軟性を許容し、その結果、ベクター産生中にTRAP-tbsによって達成される実質的なレベルの抑制を喪失せずに、TRAPの非存在下での(すなわちベクターを形質導入された細胞での)遺伝子発現レベルを最大化することができる。(標準偏差バー、n=3)。
【
図9】重複するtbs-コザック変異型を使用することによるAAVベクターゲノムプラスミドにおける導入遺伝子抑制の改善。L33またはL12改善型リーダー配列のいずれかをさらに含有するEFSまたはhuPGKプロモーターGFPレポーターカセットのいずれかに2つの「tbs-コザック」変異型(0および3)をクローニングした。重複していないtbs/コザック変異型も、EFS/huPGK-L33カセット中にクローニングした;これらはtbs-コザック領域においてのみ異なっていた(原型=[tbs]-ACA
GCCACCATG;HpaI変異型=[tbs-GAGTT]AAC
GCCACCATG)。それぞれ、pBlueScript(TRAPなし)またはpEF1α-TRAP(TRAP)のいずれかとのレポータープラスミドの同時形質移入によって、GFP発現の抑制されていないレベルまたは抑制されたレベルについてレポーターを試験した。形質移入されたHEK293T細胞(懸濁液、無血清)を形質移入の2日後にフローサイトメトリによって分析し、GFP発現スコア(%GFP×蛍光強度中央値)を得て、log-10変換した。データは、tbsをコザック配列と重複させることにより、重複していないtbs/コザック変異型と比較して、TRAPによる導入遺伝子発現の改善された抑制が可能になることを実証している。(標準偏差バー、n=3)。
【
図10-1】完全長EF1aプロモーターの状況でのTRAP媒介性導入遺伝子抑制の改善。 A.3つの「tbs-コザック」変異型(0,2,3)をEF1aプロモーターGFPレポーターカセット中にクローニングした。スプライシング後、リーダー配列は、L33配列(エクソン1)およびtbsのすぐ上流のエクソン2からの短い12nt配列を含む。 B.それぞれ、pBlueScript(TRAPなし)またはpEF1α-TRAP(TRAP)のいずれかとのレポータープラスミドの同時形質移入によって、GFP発現の抑制されていないレベルまたは抑制されたレベルについてレポーターを試験した。形質移入されたHEK293T細胞(懸濁液、無血清)を形質移入の2日後にフローサイトメトリによって分析し、GFP発現スコア(%GFP×蛍光強度中央値)を得て、log-10変換した。 C.GFP導入遺伝子カセットをHIV-1レンチウイルスベクターゲノム中にクローニングし、Bに記載されるように、GFP発現の抑制されていないレベルまたは抑制されたレベルについて試験した。データは、tbsをコザック配列と重複させることにより、TRAPによる導入遺伝子発現の改善された抑制が可能になることを実証する。(標準偏差バー、n=3)。
【
図10-2】完全長EF1aプロモーターの状況でのTRAP媒介性導入遺伝子抑制の改善。 A.3つの「tbs-コザック」変異型(0,2,3)をEF1aプロモーターGFPレポーターカセット中にクローニングした。スプライシング後、リーダー配列は、L33配列(エクソン1)およびtbsのすぐ上流のエクソン2からの短い12nt配列を含む。 B.それぞれ、pBlueScript(TRAPなし)またはpEF1α-TRAP(TRAP)のいずれかとのレポータープラスミドの同時形質移入によって、GFP発現の抑制されていないレベルまたは抑制されたレベルについてレポーターを試験した。形質移入されたHEK293T細胞(懸濁液、無血清)を形質移入の2日後にフローサイトメトリによって分析し、GFP発現スコア(%GFP×蛍光強度中央値)を得て、log-10変換した。 C.GFP導入遺伝子カセットをHIV-1レンチウイルスベクターゲノム中にクローニングし、Bに記載されるように、GFP発現の抑制されていないレベルまたは抑制されたレベルについて試験した。データは、tbsをコザック配列と重複させることにより、TRAPによる導入遺伝子発現の改善された抑制が可能になることを実証する。(標準偏差バー、n=3)。
【
図11】レンチウイルスベクター産生中に導入遺伝子を発現する異常にスプライシングされたmRNAは、MSD-2KOレンチウイルスベクターにおいては消失し、TRiP系を利用する場合にTRAPによって標的とされることが必要な導入遺伝子mRNAの量を低下させる。A EF1a-GFP導入遺伝子カセットをコードする「TRiP」レンチウイルスベクターゲノムの概略図であり、TRAP結合部位(tbs)がカセットの5’UTR内に配置されている(ベクター産生中のTRAPの供給は導入遺伝子発現レベルを低下させる)。MSD-2KOレンチウイルスベクターの産生中、完全長のスプライシングされていないパッケージング可能なvRNAおよび導入遺伝子mRNAが、レンチウイルスベクターカセット(i)から産生される細胞質RNAの主な形態である(導入遺伝子プロモーターが産生中に活性である場合)。しかしながら、標準的なレンチウイルスベクターゲノムにおけるMSDの雑多な活性は、導入遺伝子をコードし得るさらなる「異常な」スプライス生成物をもたらし(ii)、これは、内部導入遺伝子プロモーター、すなわち組織特異的プロモーターとは独立して起こり得る。(キー:Pro、プロモーター);5’Rからgagまでの領域は、パッケージング要素{Ψ}を含有する;msd、主要スプライスドナー;cppt、中央ポリプリン鎖;Int、イントロン;sd/sa、スプライスドナー/アクセプタ;GOI、関心対象の遺伝子;灰色の矢印は、第3世代レンチウイルスベクター産生中に産生された非スプライシングvRNAの割合を評価するためのフォワード{f}およびリバース{r}プライマーの位置を示す。転写後調節エレメント{PRE}は、明確にするために示されていない)。B EF1a-GFPカセットを含有する標準的なまたはMSD-2KOレンチウイルスベクターゲノムプラスミドを使用して、HEK293T細胞中でレンチウイルスベクターを産生し、GFP発現スコアを生成した(%GFP×MFI)。標準的なレンチウイルスベクター産生中に培養物中で産生されたGFPの総量と比較して、MSD-2KO改変は、TRAPの非存在下でさえ産生されたGFPの量を低下させるという実質的な効果(約5倍)を有した。したがって、TRAPの抑制効果は、MSD-2KOレンチウイルスベクターゲノムの使用によって増強され、培養物中のはるかにより低いレベルのGFPをもたらした。C 「野生型」HIV-1のステムループ2(SL2)領域の配列(NL4-3;現レンチウイルスベクターゲノム内の「標準」配列)が上に示されている。配列は、主要スプライスドナー部位(MSD:コンセンサス=CTGGT)および潜在的スプライスドナー部位(MSD部位自体が変異されているときに使用される(crSD:コンセンサス=TGAGT)を含む。スプライスドナー部位が使用される場合のスプライシングの位置のヌクレオチドは、太字および矢印によって特定されている。MSDおよびcrSD部位スプライシング活性の両方を消失させる4つの機能的MSD変異が記載されている:MSD-2KO、MSDおよびcrSD部位からの2つの「GT」モチーフを変異させる(およびほとんどの実施例で広く使用されている);MSD-2KOv2、MSDおよびcrSD部位の両方を消失させる変異も含む;MSD-2KOm5、一切のスプライスドナー部位を欠く完全に新しいステムループ構造を導入する;ならびにΔSL2、SL2配列を完全に欠失する。MSD-2KO、MSD-2KOv2およびMSD-2KOm5変異においてSL2配列に導入された置換は、小文字の斜字体で示されている。
【
図12】HIV-1ベースのレンチウイルスベクター内の主要スプライスドナー部位(MSD)からの異常なスプライシングの影響。HEK293T細胞中において+/-revで標準的な第3世代レンチウイルスベクターの産生を行い、産生後の細胞から全RNAを抽出した。2つのプライマーセットを使用して、全RNAをqPCR(SYBRグリーン)に供した:f+rTは、レンチウイルスベクター発現カセットから生成された総転写物を増幅し、f+rUSは非スプライシング転写物を増幅した;したがって、非スプライシングvRNA転写物対総vRNA転写物の割合を計算し、プロットした。データは、標準的な第3世代レンチウイルスベクター産生中の総vRNAに対する非スプライシングvRNAの割合が低く、内部導入遺伝子カセット(本事例では、異なるプロモーターおよびGFP遺伝子を含有する)に従って変動することを示し、さらに、この割合はrevの作用によって最小限に増加されるに過ぎない。
【
図13-1】懸濁(無血清)HEK293T細胞における重複するtbs-コザック変異型のTRAP媒介性導入遺伝子抑制を試験する。表IV中の重複するtbs-コザック変異型をpEF1a-GFPレポータープラスミド中にクローニングし、HEK293T細胞+/-pTRAP中に形質移入し、形質移入の2日後にフローサイトメトリを行った。A.+/-TRAPでGFP発現スコア(%GFP陽性×MFI)を求め、および倍数抑制値を求めて、プロットした。変異型がx軸に沿って示されており、3’tbs KAGNN反復とコアコザック配列の相対的重複に従ってグループ分けされている(「重複群」-KAGatg、KAGNatg)、KAGNNatg);KAGNNは黒い括弧によって表され、コアコザックヌクレオチドは灰色の線によって表されている。以下の重複群を比較する統計解析を実施した(重複群内の等分散はF検定によって確認された):両側T検定を用いると、倍数抑制は、KAGNatgに対してKAGatgが(*p=0.0293)、KAGNNatgに対してKAGNatgが(**p=0.00000482)、重複していないtbsに対してKAGNNatgが(***p=0.000259)、統計学的により大きかった。B.抑制されていないGFP発現スコアを最高から最低へ(左から右へ)プロットし、「G」変異型はより優れた「ON」(抑制されていない)レベルを有するので「G」変異型が「T」変異型より好ましいことを示すために、2つのKAGatg重複群変異型tbskzkV0.GおよびtbskzkV0.T(Aにおいてすべての変異型のなかで最大の抑制を示す)を強調表示した。
【
図13-2】懸濁(無血清)HEK293T細胞における重複するtbs-コザック変異型のTRAP媒介性導入遺伝子抑制を試験する。表IV中の重複するtbs-コザック変異型をpEF1a-GFPレポータープラスミド中にクローニングし、HEK293T細胞+/-pTRAP中に形質移入し、形質移入の2日後にフローサイトメトリを行った。A.+/-TRAPでGFP発現スコア(%GFP陽性×MFI)を求め、および倍数抑制値を求めて、プロットした。変異型がx軸に沿って示されており、3’tbs KAGNN反復とコアコザック配列の相対的重複に従ってグループ分けされている(「重複群」-KAGatg、KAGNatg)、KAGNNatg);KAGNNは黒い括弧によって表され、コアコザックヌクレオチドは灰色の線によって表されている。以下の重複群を比較する統計解析を実施した(重複群内の等分散はF検定によって確認された):両側T検定を用いると、倍数抑制は、KAGNatgに対してKAGatgが(*p=0.0293)、KAGNNatgに対してKAGNatgが(**p=0.00000482)、重複していないtbsに対してKAGNNatgが(***p=0.000259)、統計学的により大きかった。B.抑制されていないGFP発現スコアを最高から最低へ(左から右へ)プロットし、「G」変異型はより優れた「ON」(抑制されていない)レベルを有するので「G」変異型が「T」変異型より好ましいことを示すために、2つのKAGatg重複群変異型tbskzkV0.GおよびtbskzkV0.T(Aにおいてすべての変異型のなかで最大の抑制を示す)を強調表示した。
【
図14-1】最適な重複するtbs-コザック変異型を用いたイントロン含有プロモーターの改善された抑制。A.重複していないtbs-コザック変異型と比較して重複するtbs-コザック変異型の使用を例示するために使用される発現カセットの概略図。広く使用されているEF1aプロモーター配列は、広く使用されているCAGプロモーターと同様に、それ自体のイントロンを含有する(
図10および実施例5参照)。CAGプロモーターは、CMVエンハンサー、コアプロモーターおよびニワトリβ-アクチン遺伝子由来のエクソン1/イントロン配列およびウサギβ-グロビン遺伝子由来のスプライスアクセプタ/エクソン配列を含有する極めて強力な人工プロモーターである。本研究では、(エクソン1[L33]を含有する)EF1aプロモーター由来の「EF1a-INT」配列、EF1aイントロンおよびスプライスアクセプタのすべて、ならびにEF1aエクソン2由来の12ヌクレオチドをCAGプロモーター中にクローニングし、CAGエクソン/イントロン配列を置き換えた。「EF1a-INT」配列もCMVプロモーター構築物中にクローニングした。B.ウイルスベクター産生中の導入遺伝子発現をモデル化するために、懸濁(無血清)HEK293T細胞におけるGFP発現およびTRAPによる抑制について、構築物を評価した。GFP発現スコア(%GFP×MFI)を求めて、プロットし、TRAPの存在下で倍数抑制スコアも表記した。
【
図14-2】最適な重複するtbs-コザック変異型を用いたイントロン含有プロモーターの改善された抑制。A.重複していないtbs-コザック変異型と比較して重複するtbs-コザック変異型の使用を例示するために使用される発現カセットの概略図。広く使用されているEF1aプロモーター配列は、広く使用されているCAGプロモーターと同様に、それ自体のイントロンを含有する(
図10および実施例5参照)。CAGプロモーターは、CMVエンハンサー、コアプロモーターおよびニワトリβ-アクチン遺伝子由来のエクソン1/イントロン配列およびウサギβ-グロビン遺伝子由来のスプライスアクセプタ/エクソン配列を含有する極めて強力な人工プロモーターである。本研究では、(エクソン1[L33]を含有する)EF1aプロモーター由来の「EF1a-INT」配列、EF1aイントロンおよびスプライスアクセプタのすべて、ならびにEF1aエクソン2由来の12ヌクレオチドをCAGプロモーター中にクローニングし、CAGエクソン/イントロン配列を置き換えた。「EF1a-INT」配列もCMVプロモーター構築物中にクローニングした。B.ウイルスベクター産生中の導入遺伝子発現をモデル化するために、懸濁(無血清)HEK293T細胞におけるGFP発現およびTRAPによる抑制について、構築物を評価した。GFP発現スコア(%GFP×MFI)を求めて、プロットし、TRAPの存在下で倍数抑制スコアも表記した。
【発明を実施するための形態】
【0112】
ここで、本発明の様々な好ましい特徴および態様を非限定的な例として記載する。
【0113】
本発明の実施は、特に明記しない限り、当業者の能力の範囲内である化学、分子生物学、微生物学および免疫学の従来の技術を使用する。このような技術は文献で説明されている。例えば、J.Sambrook,E.F.Fritsch,and T.Maniatis(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Books 1-3,Cold Spring Harbor Laboratory Press;Ausubel,F.M.et al.(1995 and periodic supplements)Current Protocols in Molecular Biology,Ch.9,13,and 16,John Wiley&Sons,New York,NY;B.Roe,J.Crabtree,and A.Kahn(1996)DNA Isolation and Sequencing:Essential Techniques,John Wiley&Sons;J.M.Polak and James O’D.McGee(1990)In Situ Hybridization:Principles and Practice;Oxford University Press;M.J.Gait(ed.)(1984)Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;and,D.M.J.Lilley and J.E.Dahlberg(1992)Methods of Enzymology:DNA Structure Part A:Synthesis and Physical Analysis of DNA Methods in Enzymology,Academic Pressを参照されたい。これらの一般的なテキストの各々は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0114】
本開示は、本明細書に開示される例示的な方法および材料によって限定されず、本明細書に記載されるものと同様または同等の任意の方法および材料を、本開示の態様の実施または試験において使用することができる。数値範囲は、範囲を定義する数を含む。別段示されない限り、それぞれ、任意の核酸配列は5’から3’方向で左から右に書かれており、アミノ酸配列はアミノからカルボキシ方向で左から右に書かれている。
【0115】
値の範囲が与えられている場合、その範囲の上限と下限の間にある、文脈上明確に別段の指示がない限り下限の単位の10分の1までの各介在値も具体的に開示されることが理解される。記載された範囲内の任意の記載された値または介在する値と、その記載された範囲内の任意の他の記載された値または介在する値との間のより小さい各範囲は、本開示内に包含される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立して、その範囲に含まれてもよく、または除外されてもよく、より小さい範囲に一方の限界が含まれる、両方の限界が含まれない、または両方の限界が含まれる各範囲も、示された範囲内の任意の具体的に除外された限界に従うものとして、本開示内に包含される。記載された範囲が限界の一方または両方を含む場合には、含まれる限界の一方または両方を除外した範囲も本開示に含まれる。
【0116】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。
【0117】
本明細書で使用される「含む(comprising)」、「含む(comprises)」および「から構成される(comprised of)」という用語は、「含む(including)」、「含む(includes)」または「含有する(containing)」、「含有する(contains)」と同義であり、包括的または非限定的であって、追加の列挙されていないメンバー、要素または方法工程を排除しない。用語「含む(comprising)」、「含む(comprises)」および「から構成される(comprised of)」は、用語「からなる(consisting of)」も含む。
【0118】
本明細書において論述される刊行物は、本出願の出願日より前のそれらの開示のためにのみ提供される。本明細書中のいかなる記載も、このような刊行物が本明細書に添付されている特許請求の範囲に対する先行技術を構成することの承認として解釈されるべきではない。
【0119】
核酸配列
一局面において、本発明は、関心対象のヌクレオチドと、トリプトファンRNA結合減衰タンパク質(TRAP)結合部位と、コザック配列とを含む核酸配列であって、前記TRAP結合部位(tbs)はコザック配列と重複する、核酸配列を提供する。
【0120】
一局面において、本発明は、関心対象のヌクレオチド(導入遺伝子)と、トリプトファンRNA結合減衰タンパク質(TRAP)結合部位(tbs)とを含む核酸配列であって、TRAP結合部位は導入遺伝子開始コドンATGと重複する、核酸配列を提供する。
【0121】
別の局面において、本発明は、関心対象のヌクレオチドとコザック配列とを含む核酸配列であって、コザック配列は、トリプトファンRNA結合減衰タンパク質(TRAP)結合部位(tbs)の一部を含む核酸配列を提供する。
【0122】
一局面において、本発明は、関心対象のヌクレオチド(導入遺伝子)とTRAP結合部位とを含む核酸配列であって、TRAP結合部位(tbs)は導入遺伝子開始コドンATGの一部を含む、またはその逆である核酸配列を提供する。
【0123】
本発明のいくつかの態様において、関心対象のヌクレオチドは、tbsまたはその一部に機能的に連結されている。いくつかの態様において、関心対象のヌクレオチドは、TRAPを欠如する標的細胞において翻訳される。
【0124】
tbsまたはその一部は、関心対象のヌクレオチドの翻訳がウイルスベクター産生細胞において抑制または防止されるように、TRAPと相互作用することが可能であり得る。
【0125】
したがって、別の局面において、本発明は、ウイルスベクター産生細胞においてNOIの翻訳を抑制する方法であって、本発明の核酸配列、およびTRAPをコードする核酸配列をウイルスベクター産生細胞中に導入することを含み、TRAPはTRAP結合部位またはその一部に結合し、それによりNOIの翻訳を抑制する、方法を提供する。
【0126】
トリプトファンRNA結合減衰タンパク質(TRAP)
トリプトファンRNA結合減衰タンパク質(TRAP)は、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)において広く性質決定されている細菌タンパク質である。トリプトファンRNA結合減衰タンパク質(TRAP)は、転写減衰または翻訳制御機構のいずれかに関与することによって、trpEDCFBAオペロンから指示されるトリプトファン生合成を調節する(Gollnick,B.,Antson,and Yanofsky(2005)Annual Review of Genetics 39:47-68に概説されている)。
【0127】
その天然の状況において、TRAPは、3つの異なる機構によってトリプトファン生合成および輸送を調節する。
【0128】
1.trpEDCFBAオペロンの転写の減衰(Shimotsu H,K.M.,Yanofsky C,Henner DJ.(1986)Journal of Bacteriology 166:461-471)。
【0129】
2.trpEおよびtrpDシャイン-ダルガーノ封鎖ヘアピンの形成の促進(Yakhnin H,B.J.,Yakhnin AV,Babitzke P.(2001)Journal of Bacteriology 183(20):5918-5926)。
【0130】
3.trpGおよびyhaGリボソーム結合部位へのリボソームアクセスを遮断する(Yang M,d.S.A.,van Loon APGM,Gollnick P.(1995)Journal of Bacteriology 177:4272-4278)。
【0131】
バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)では、TRAPは単一の遺伝子(mtrB)によってコードされ、機能性タンパク質は、トロイド環として配置された11個の同一のサブユニットから構成される(Antson AA,D.E.,Dodson G,Greaves RB,Chen X,Gollnick P.(1999)Nature 401(6750):235-242)。TRAPは活性化されて、隣接するサブユニット間のポケット内の最大11分子のトリプトファンを結合することによってRNAと相互作用する。標的RNAは、この四級環構造の外側に巻き付けられる(Babitzke P,S.J.,Shire SJ,Yanofsky C.(1994)Journal of Biological Chemistry 269:16597-16604)。
【0132】
理論に拘束されることを望むものではないが、トリプトファン合成を感知および制御する天然の機構において、TRAPは、新たに合成されたRNAリーダー中の結合部位に結合することによって転写終結のレベルで作用すると理解される。これは、下流のrho非依存性ターミネーターが活性であるように、重複する抗ターミネーター配列を不安定化し、短いRNAのみの産生をもたらす。細菌内でトリプトファンが制限されている場合には、TRAP環はもはやそのRNA結合部位に結合することができない。したがって、抗ターミネーターが活性化され、転写がトリプトファン合成遺伝子オペロンに続く。TRAPは、翻訳レベルで作用することもできる:RNA転写物の5’-UTR中のTRAPの結合部位へのTRAPのトリプトファン依存的結合は、抗シャイン-ダルガーノ配列を開放し、これはシャイン-ダルガーノ配列と安定なステムを形成し、その結果、リボソームによる翻訳の開始が抑制される。最後に、TRAPがそのtbsに結合されている他の状況においては、40Sスキャニングリボソーム複合体が開始コドンに到達することができ、本来であればより安定で、より高い親和性の翻訳機構が直ちに形成するより前に40Sスキャニングリボソーム複合体を物理的に封鎖することによって翻訳開始を抑制することができる。
【0133】
細菌の遺伝子配列は哺乳動物細胞中での発現に最適でない可能性が高いので、TRAPオープンリーディングフレームは哺乳動物(例えば、ホモ・サピエンス(Homo sapiens))細胞中での発現のためにコドン最適化され得る。配列は、潜在的な不安定な配列およびスプライシング部位を除去することによっても最適化され得る。TRAPタンパク質上にC末端に発現されたHISタグの使用は、翻訳抑制に関して利益をもたらすようであり、使用されてもよい。このC末端HISタグは、真核細胞内でのTRAPの溶解性または安定性を改善し得るが、改善された機能的利益を排除することはできない。それにもかかわらず、HISタグ付きおよび非タグ付きTRAPはいずれも、導入遺伝子発現の堅固な抑制を可能にした。TRAP転写ユニット内のある特定のシス作用性配列も最適化され得る;例えば、EF1αプロモーターによって駆動される構築物は、一過性形質移入の状況において、CMVプロモーターによって駆動される構築物と比較して、TRAPプラスミドの低投入量でより良好な抑制を可能にする。
【0134】
一態様において、TRAPは細菌に由来する。
【0135】
本発明の一態様において、TRAPは、バチルス(Bacillus)種、例えばバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)に由来する。例えば、TRAPは、以下の配列を含み得る。
【0136】
MNQKHSSDFVVIKAVEDGVNVIGLTRGTDTKFHHSEKLDKGEVIIAQFTEHTSAIKVRGEALIQTAYGEMKSEKK(配列番号1)
本発明の好ましい態様において、配列番号1は、6個のヒスチジンアミノ酸でC末端にタグ付けされている(HIS×6タグ)。
【0137】
代替の態様において、TRAPは、アミノモナス・パウシボランス(Aminomonas paucivorans)に由来する。例えば、TRAPは、以下の配列を含み得る。
【0138】
MKEGEEAKTSVLSDYVVVKALENGVTVIGLTRGQETKFAHTEKLDDGEVWIAQFTEHTSAIKVRGASEIHTKHGMLFSGRGRNEKG(配列番号2)
代替の態様において、TRAPは、デスルホトマキュラム・ヒドロサーマル(Desulfotomaculum hydrothermale)に由来する。例えば、TRAPは、以下の配列を含み得る。
【0139】
MNPMTDRSDITGDYVVVKALENGVTIIGLTRGGVTKFHHTEKLDKGEIMIAQFTEHTSAIKIRGRAELLTKHGKIRTEVDS(配列番号3)
代替の態様において、TRAPは、バチルス・ステアロサーモフィルス(B.stearothermophilus)に由来する。例えば、TRAPは、以下の配列を含み得る。
【0140】
MYTNSDFVVIKALEDGVNVIGLTRGADTRFHHSEKLDKGEVLIAQFTEHTSAIKVRGKAYIQTRHGVIESEGKK(配列番号4)
代替の態様において、TRAPは、バチルス・ステアロサーモフィルスS72N(B.stearothermophilus S72N)に由来する。例えば、TRAPは、以下の配列を含み得る。
【0141】
MYTNSDFVVIKALEDGVNVIGLTRGADTRFHHSEKLDKGEVLIAQFTEHTSAIKVRGKAYIQTRHGVIENEGKK(配列番号5)
代替の態様において、TRAPは、バチルス・ハロデュランス(B.halodurans)に由来する。例えば、TRAPは、以下の配列を含み得る。
【0142】
MNVGDNSNFFVIKAKENGVNVFGMTRGTDTRFHHSEKLDKGEVMIAQFTEHTSAVKIRGKAIIQTSYGTLDTEKDE(配列番号6)
代替の態様において、TRAPは、カルボキシドサーマス・ハイドロゲノフォルマンス(Carboxydothermus hydrogenoformans)に由来する。例えば、TRAPは、以下の配列を含み得る。
【0143】
MVCDNFAFSSAINAEYIVVKALENGVTIMGLTRGKDTKFHHTEKLDKGEVMVAQFTEHTSAIKIRGKAEIYTKHGVIKNE(配列番号7)
一態様において、TRAPは、トリプトファンRNA結合減衰タンパク質遺伝子ファミリーmtrB(例えば、NCBIに保存されたドメインデータベース#cl03437を有するTrpBPスーパーファミリー)によってコードされる。
【0144】
好ましい態様において、TRAPは、6個のヒスチジンアミノ酸でC末端にタグ付けされている(HIS×6タグ)。
【0145】
好ましい態様において、TRAPは、配列番号1~7のいずれかと50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%の同一性を有し、機能的に連結されたNOIの発現がウイルスベクター産生細胞において改変されるように、例えば抑制または防止されるようにRNA結合部位と相互作用することができるアミノ酸配列を含む。
【0146】
好ましい態様において、TRAPは、配列番号1~7のいずれかと少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%または100%の同一性を有し、機能的に連結されたNOIの発現がウイルスベクター産生細胞において改変されるように、例えば抑制または防止されるようにRNA結合部位と相互作用することができるアミノ酸配列を含む。
【0147】
別の態様において、TRAPは、機能的に連結されたNOIの発現がウイルスベクター産生細胞において改変されるように、例えば抑制または防止されるように、RNA結合部位と相互作用することができるタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによってコードされ得る。例えば、TRAPは、配列番号1~7のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによってコードされ得る。
【0148】
本発明において使用するためのTRAPのすべての変異型、断片または相同体は、NOI(マーカー遺伝子であり得る)の翻訳がウイルスベクター産生細胞において抑制または防止されるように、本明細書に記載のTRAP結合部位に結合する能力を保持する。
【0149】
TRAP結合部位
「結合部位」という用語は、ある特定のタンパク質と相互作用することができる核酸配列として理解されるべきである。
【0150】
TRAPを結合することができるコンセンサスTRAP結合部位配列は、複数回(例えば、6、7、8、9、10、11、12回またはそれより多く)繰り返される[KAGNN]であり、このような配列は天然のtrpオペロン中に見出される。天然の状況では、時折、AAGNNが許容され、時折、さらなる「スペーシング」Nヌクレオチドが機能的配列をもたらす。インビトロ実験は、TRAP-RNA結合のために少なくとも6またはそれより多くのコンセンサス反復が必要とされることを実証している(Babitzke P,Y.J.,Campanelli D.(1996)Journal of Bacteriology 178(17):5159-5163)。したがって、好ましくは、一態様において、tbs内に6またはそれより多くの連続した[KAGN≧2]配列が存在し、KはDNA中のTまたはGおよびRNA中のUまたはGであり得る。
【0151】
RNA結合タンパク質としてのTRAPの場合、好ましくは、TRIP系は、少なくとも8つのKAGNN反復を含有するtbs配列と最大限に機能するが、7つの反復を使用して、依然として強固な導入遺伝子抑制を得ることができ、6つの反復を使用して、ベクター力価を救済することができるレベルまで導入遺伝子を十分に抑制することができる。KAGNNコンセンサス配列は、TRAP媒介性抑制を維持するために変更され得るが、好ましくは、選択された正確な配列は、非抑制状態において高レベルの翻訳を確実にするために最適化され得る。例えば、tbs配列は、TRAPの非存在下で(すなわち、標的細胞中で)mRNAの翻訳効率を妨害し得るスプライシング部位、不安定な配列またはステムループを除去することによって最適化され得る。所与のtbsのKAGNN反復の構成に関して、KAG反復間のN「スペーシング」ヌクレオチドの数は、好ましくは2である。しかしながら、少なくとも2つのKAG反復の間に2つより多くのNスペーサーを含有するtbsは許容され得る(インビトロ結合研究によって判断されたところ、3つのNを含有する反復の50%も機能的tbsをもたらし得る;Babitzke P,Y.J.,Campanelli D.(1996)Journal of Bacteriology 178(17):5159-5163)。実際、11×KAGNNtbs配列は、KAGNNN反復との最大3つの置き換えを許容し、TRAP結合と連携していくつかの潜在的に有用な翻訳遮断活性をなお保持することができることが示されている。
【0152】
本発明の一態様において、TRAP結合部位またはその一部は、配列KAGN≧2(例えば、KAGN2~3)を含む。したがって、疑義を避けるために、このtbsまたはその一部は、例えば、以下の反復配列:UAGNN、GAGNN、TAGNN、UAGNNN、GAGNNNまたはTAGNNNのいずれをも含む。
【0153】
「N」は配列中のその位置に任意のヌクレオチドを指定すると理解されるべきである。例えば、これはG、A、T、CまたはUであり得る。このようなヌクレオチドの数は、好ましくは2であるが、最大3個、例えば1、2または3個であり、11×反復tbsまたはその一部のKAG反復は、3つのスペーシングヌクレオチドによって隔てられ得、翻訳抑制をもたらすいくらかのTRAP結合活性をなお保持し得る。好ましくは、翻訳抑制をもたらす最大のTRAP結合活性を保持するために、11×反復tbsまたはその一部において1つ以下のN3スペーサーが使用されるであろう。
【0154】
別の態様において、tbsまたはその一部は、KAGN≧2の複数の反復(例えば、KAGN2~3の複数の反復)を含む。
【0155】
別の態様において、tbsまたはその一部は、配列KAGN2の複数の反復を含む。
【0156】
別の態様において、tbsまたはその一部は、KAGN≧2の少なくとも6つの反復(例えば、KAGN2~3の少なくとも6つの反復)を含む。
【0157】
別の態様において、tbsまたはその一部は、KAGN2の少なくとも6つの反復を含む。例えば、tbsまたはその一部は、KAGN2の6、7、8、9、10、11、12またはそれより多くの反復を含み得る。例えば、tbsまたはその一部は、配列番号8~19または22の任意の1つを含み得る。
【0158】
別の態様において、tbsまたはその一部は、KAGN≧2の少なくとも8つの反復(例えば、KAGN2~3の少なくとも8つの反復)を含む。例えば、tbsまたはその一部は、配列番号8、9、14~17、20~24の任意の1つを含み得る。
【0159】
好ましくは、tbsまたはその一部の中に存在するKAGNNN反復の数は、1またはそれより少ない。例えば、tbsまたはその一部は、配列番号8、9、14~17、19~24の任意の1つを含み得る。
【0160】
別の態様において、tbsまたはその一部は、KAGN≧2の11の反復(例えば、KAGN2~3の11の反復)を含む。好ましくは、このtbsまたはその一部の中に存在するKAGNNN反復の数は、3またはそれより少ない。例えば、tbsまたはその一部は、配列番号8、9、14、20~22の任意の1つを含み得る。
【0161】
別の態様において、tbsまたはその一部は、KAGN≧2の12の反復(例えば、KAGN2~3の12の反復)を含む。
【0162】
好ましい態様において、tbsまたはその一部は、KAGN2の8~11の反復(例えば、KAGN2の8、9、10または11の反復)を含む。例えば、tbsまたはその一部は、配列番号8、9、14~17、20~24の任意の1つを含み得る。
【0163】
一態様において、TRAP結合部位またはその一部は、配列番号8~24のいずれをも含み得る。
【0164】
例えば、TRAP結合部位またはその一部は、以下の配列のいずれかを含み得る。
【0165】
GAGUUUAGCGGAGUGGAGAAGAGCGGAGCCGAGCCUAGCAGAGACGAGUGGAGCU(配列番号8);または
GAGUUUAGCGGAGUGGAGAAGAGCGGAGCCGAGCCUAGCAGAGACGAGAAGAGCU(配列番号9)
「KAGN≧2の反復」とは、一般的なKAGN≧2(例えば、KAGN2~3)モチーフが繰り返されることを理解されたい。このモチーフの基準を満たす異なるKAGN≧2配列は、tbsまたはその一部を構成するために連結され得る。得られたtbsまたはその一部が、このモチーフの要件を満たすただ1つの配列の反復に限定されることは意図されていないが、この可能性は定義に含まれる。例えば、「KAGN≧2の6つの反復」には、以下の配列が含まれるが、これらに限定されない:
UAGUU-UAGUU-UAGUU-UAGUU-UAGUU-UAGUU(配列番号10);
UAGUU-UAGUU-GAGUU-UAGUU-GAGUU-UAGUU(配列番号11);
GAGUUU-GAGUU-GAGUU-GAGUUU-GAGUU-GAGUU(配列番号12)
および
UAGUUU-GAGUU-UAGUU-GAGUUU-UAGUU-GAGUU(配列番号13)
(ダッシュ記号は、ここでは、明確にするためのみに、反復の間に含まれている)。
【0166】
1つのKAGNNN反復と7つのKAGNN反復を含有する8反復tbsまたはその一部は、TRAP媒介性抑制活性を保持する。1つまたはそれより多くのKAGNNN反復を含有する8未満反復tbs配列またはその一部(例えば、7または6反復tbs配列またはその一部)は、より低いTRAP媒介性抑制活性を有し得る。したがって、8より少ない反復が存在する場合、tbsまたはその一部がKAGNN反復のみを含むことが好ましい。
【0167】
KAGNN反復コンセンサスにおいて使用するための好ましいヌクレオチドは以下のとおりである。
【0168】
・NNスペーサー位置の少なくとも1つにおけるピリミジン;
・NNスペーサー位置の第1におけるピリミジン;
・NNスペーサー位置の両方におけるピリミジン;
・K位置におけるG。
【0169】
NNスペーサー位置がAAである場合には、GはK位置で用いられることも好ましい(すなわち、TAGAAは、コンセンサス配列中の反復として使用されないことが好ましい)。
【0170】
「相互作用することができる」とは、核酸結合部位(例えば、tbsまたはその一部)が、細胞、例えば真核生物ウイルスベクター産生細胞において遭遇する条件下で、タンパク質、例えばTRAPに結合することができることと理解されるべきである。TRAPなどのRNA結合タンパク質とのこのような相互作用は、核酸結合部位(例えば、tbsまたはその一部)が機能的に連結されているNOIの翻訳の抑制または防止をもたらす。
【0171】
「機能的に連結された」とは、記載された成分が、その意図された様式で記載された成分が機能することを可能にする関係にあることと理解されるべきである。したがって、NOIに機能的に連結された本発明において使用するためのtbsまたはその一部は、TRAPがtbsまたはその一部に結合したときにNOIの翻訳が修飾されるように配置されている。
【0172】
所与のオープンリーディングフレーム(ORF)のNOI翻訳開始コドンの上流にTRAPと相互作用することができるtbsまたはその一部を配置することによって、そのORFに由来するmRNAの特異的な翻訳抑制が可能になる。tbsまたはその一部と翻訳開始コドンを隔てるヌクレオチドの数は、抑制の程度に影響を及ぼすことなく、例えば0~34個のヌクレオチドまで変動し得る。さらなる例として、TRAP結合部位またはその一部と翻訳開始コドンを隔てるために、0~13個のヌクレオチドが使用され得る。
【0173】
tbsまたはその一部は、マルチシストロニックmRNA中のNOIの翻訳を抑制するために、配列内リボソーム進入部位(IRES)の下流に配置され得る。実際、これは、tbsに結合したTRAPが40Sリボソームの通過を阻止し得るというさらなる証拠を提供する;IRESエレメントは、完全な翻訳複合体が形成される前に、CAP非依存的様式で40SリボソームサブユニットをmRNAに囲い込むように機能する(IRES翻訳開始に関する総説については、Thompson,S.(2012)Trends in Microbiology 20(11):558-566を参照)。したがって、TRIP系は、ウイルスベクターゲノムから発現された単一のmRNAからの複数のオープンリーディングフレームを抑制することが可能である。これは、複数の治療遺伝子をコードするベクターを作製する場合に、特にすべての導入遺伝子産物がベクターの力価にある程度悪影響を及ぼし得る場合に、TRIP系の有用な特徴である。
【0174】
一態様において、核酸配列は、IRESとtbsまたはその一部との間にスペーサー配列を含む。IRESは、「配列内リボソーム進入部位」という小見出しの下で本明細書に記載されるIRESであり得る。スペーサー配列は、0~30ヌクレオチド長、好ましくは15ヌクレオチド長であり得る。スペーサーは、配列番号38~44の任意の1つで定義された配列を含み得、好ましくは、スペーサーは、配列番号38で定義された配列を含む。
【0175】
一態様において、IRESとtbsまたはその一部との間のスペーサー配列は、tbsまたはその一部の3’末端およびNOIの下流開始コドンから3または9ヌクレオチドである。
【0176】
一態様において、tbsまたはその一部は、II型制限酵素部位を欠如する。好ましい態様において、tbsまたはその一部は、SapI制限酵素部位を欠如する。
【0177】
いくつかの態様において、核酸配列は、RRE配列またはその機能的代替物をさらに含む。
【0178】
いくつかの態様において、核酸配列はベクター導入遺伝子発現カセットである。
【0179】
重複するコザック配列およびTRAP結合部位
本発明者らは、驚くべきことに、重複しないtbsおよびコザック配列の使用と比較して、(重複するtbsおよびコザック配列を使用して;
図2Bおよび
図2Cを参照)tbsまたはその一部の3’末端内にコザック配列を「隠す」ことによって、抑制の改善されたレベルが達成され得ることを見出した。さらに、予想外に、試験した重複するコザックおよびtbs配列のすべてが効率的なレベルの翻訳開始を誘導した、すなわち、試験した重複配列は、TRAPの非存在下で非重複コザックおよびtbs配列と同様のレベルの導入遺伝子発現を提供した。理論に拘束されることを望むものではないが、抑制の改善されたレベルは、tbsまたはその一部がコザック配列と重複するときのTRAP-tbs複合体による導入遺伝子開始コドンの改善された閉塞を原因とし得る。
【0180】
「コザック配列」という用語は、翻訳開始部位としてリボソームによって認識される真核生物mRNA中のコンセンサス配列として理解されるべきである。コザック配列は、DNA中のATG開始(スタート)コドン(mRNAではAUG)を含む。真核生物mRNA中に存在する正確なコザック配列が翻訳開始の効率を決定する、すなわちある種のコザック配列は効率的な翻訳開始をもたらさない。
【0181】
完全なコザック配列は、典型的には、DNAについてはコンセンサス配列(gcc)gccRccATGGおよびRNAについてはコンセンサス配列(gcc)gccRccAUGGを有すると理解されており、ここで:小文字は、塩基が変化し得るこの位置で最も一般的な塩基を表し、大文字は、この位置における高度に保存された塩基を表し、「R」は、典型的にはプリン(すなわち、AまたはG)がこの位置で最適であることを表し、括弧内の配列(gcc)は重要性が不確かである。T/Uは、一般に、開始コドンの上流にあるコザック配列コンセンサスのすべての位置で最も好ましくないヌクレオチドである。
【0182】
完全なコザック配列の最初の3つの塩基の重要性は不確かであるので、コザック配列は、本明細書において「拡張コザック配列」と呼ばれるコンセンサス配列、すなわち、DNAについてはGNNRVVATGG(配列番号27)およびRNAについてはGNNRVVAUGGを有すると理解することもでき、「R」は配列中のその位置にプリン(すなわち、AまたはG)を指定すると理解されるべきであり、「V」はG、A、またはCからの任意のヌクレオチドを指定すると理解されるべきであり、「N」は配列中のその位置に任意のヌクレオチドを指定すると理解されるべきである。例えば、「N」は、G、A、T、CまたはUであり得る。位置-1の「R」および位置+3の「G」(ATGの「A」が位置0である)は、コザック強度の観点から最も重要な位置と考えられることに留意されたい。しかしながら、導入遺伝子配列中での位置+3の「G」の存在は、コードされているORFに依存するため、本明細書においては、+3位置は「コア」コザック配列の一部として考えられていない。
【0183】
完全なコザック配列の最初の6つの位置に見出される塩基は、それらの位置に任意の塩基を見出すことができるように変化する(上で(gcc)gccと表記)。したがって、完全なコザックコンセンサス配列は、上でRccAUGと表記される、低下した変動性を有する完全なコザック配列の一部からなる「コア」コザック配列を含有すると考えることができる。「コア」コザックコンセンサス配列は、本明細書では、mRNAについてはRVVAUGおよびDNAについてはRVVATGとして定義され、ここで「R」は配列中のその位置にプリン(すなわち、AまたはG)を指定すると理解されるべきであり、「V」はG、A、またはCからの任意のヌクレオチドを指定すると理解されるべきである。
【0184】
本発明の1つの好ましい態様において、コザック配列は、配列RVVATG(配列番号28)を含む;ここで、「R」は配列中のその位置にプリン(すなわち、AまたはG)を指定すると理解されるべきであり、「V」はG、A、またはCからの任意のヌクレオチドを指定すると理解されるべきである。
【0185】
本発明の一態様において、コザック配列は、配列RNNATG(配列番号125)を含む;ここで、「R」は配列中のその位置にプリン(すなわち、AまたはG)を指定すると理解されるべきであり、「N」は、G、A、T/UまたはCからの任意のヌクレオチドを指定すると理解されるべきであり、「T/U」の使用はTRAPの非存在下での発現の低下したレベルをもたらし得ることが認識される。
【0186】
いくつかの態様において、コザック配列は、TRAP結合部位のまたはその一部の3’末端KAGNN反復と重複する。したがって、コアコザック配列は、TRAP結合部位のまたはその一部の3’末端KAGNN反復と重複し得る。
【0187】
好ましい重複するtbsおよびコザックコンセンサス配列の要約を
図2Cに提供する。
【0188】
好ましい態様において、TRAP結合部位のまたはその一部の3’末端KAGNN反復は、コアコザック配列内のATGトリプレットの少なくとも最初の、または最初の2つのヌクレオチドと重複する。
【0189】
本明細書に記載されているように、本発明の一局面において、TRAP結合部位のまたはその一部の3’末端KAGNN反復は、関心対象のヌクレオチド(導入遺伝子ORF)のATG開始コドンと重複する。一局面において、TRAP結合部位のまたはその一部の3’末端KAGNN反復は、関心対象のヌクレオチド(導入遺伝子ORF)のATG開始コドンの最初の1つまたは2つと重複する。
【0190】
一局面において、重複するtbs-コザック配列は、コンセンサス配列KAGNNG(配列番号113)を有し得、ここで、「NN」は、コザック配列のATGトリプレット内の最初の2つのヌクレオチドである。
【0191】
コンセンサス配列は、KAGATG(配列番号114)であり得る;ここで、「K」は、GまたはT/Uのいずれかである。
【0192】
一局面において、重複するtbs-コザック配列は、
図2Cに示されるようにGAGATG(配列番号29)であり得る。
【0193】
一態様において、TRAP結合部位のまたはその一部の3’末端KAGNN反復は、関心対象のヌクレオチド内のATGトリプレットの第1のヌクレオチドと重複する。
【0194】
一局面において、配列は配列KAGNNTG(配列番号115)を含み得、ここで、第2の「N」はATGトリプレット内の第1のヌクレオチドである。コンセンサス配列は、KAGNATG(配列番号116)であり得る;ここで、「K」は、配列中のその位置でGまたはT/Uを指定すると理解されるべきであり、「N」は、G、A、T、UまたはCから、但し、好ましくは「V」、すなわちG、AまたはCからの任意のヌクレオチドを指定すると理解されるべきである。例えば、重複する配列は、
図2Cに示されるようにKAGVATG(配列番号30)であり得る。
【0195】
一態様において、本発明の核酸において使用するための重複するコザック配列およびTRAP結合部位またはその一部は、以下の配列:
(a)GAGATG(配列番号29);
(b)KAGVATG(配列番号30);
(c)KAGVVATG(配列番号31);
(d)KAGRVVATG(配列番号32);または
(e)KAGNRVVATG(配列番号33);
の1つを含み、
ここで、「K」はTまたはGであり得、「R」は配列中のその位置にプリン(すなわち、AまたはG)を指定すると理解されるべきであり、「V」はG、A、またはCからの任意のヌクレオチドを指定すると理解されるべきであり、「N」は配列中のその位置に任意のヌクレオチドを指定すると理解されるべきである。例えば、「N」は、G、A、T、C、またはUであり得る。
【0196】
一態様において、本発明の核酸配列は、以下の配列:
(a)GAGATG(配列番号29)もしくはKAGATG(配列番号114);
(b)KAGVATG(配列番号30);
(c)KAGVVATG(配列番号31);
(d)KAGRVVATG(配列番号32);または
(e)KAGNRVVATG(配列番号33);
の1つを含み、
ここで、「K」はTまたはGであり得、「R」は配列中のその位置にプリン(すなわち、AまたはG)を指定すると理解されるべきであり、「V」はG、A、またはCからの任意のヌクレオチドを指定すると理解されるべきであり、「N」は配列中のその位置に任意のヌクレオチドを指定すると理解されるべきである。例えば、「N」は、G、A、T、C、またはUであり得る。
【0197】
本発明の核酸において使用するための好ましい重複するtbsまたはその一部ならびにコンセンサス配列GAGATG(配列番号29)、KAGVATG(配列番号30)およびKAGVVATG(配列番号31)に対応するコアコザック配列(本明細書で定義されるKAGNNのコンセンサスtbs反復配列および本明細書で定義されるコンセンサス「コア」コザック配列RVVATGに基づく)は、以下を包含する。
【0198】
(a)GAGATG(配列番号29);
(b)GAGAATG(配列番号69);
(c)GAGCATG(配列番号70);
(d)GAGGATG(配列番号71);
(e)TAGAATG(配列番号72);
(f)TAGCATG(配列番号73);
(g)TAGGATG(配列番号74);
(h)GAGAAATG(配列番号75);
(i)GAGACATG(配列番号76);
(j)GAGAGATG(配列番号77);
(k)GAGCAATG(配列番号78);
(l)GAGCCATG(配列番号79);
(m)GAGCGATG(配列番号80);
(n)GAGGAATG(配列番号81);
(o)GAGGCATG(配列番号82);
(p)GAGGGATG(配列番号83);
(q)TAGAAATG(配列番号84);
(r)TAGACATG(配列番号85);
(s)TAGAGATG(配列番号86);
(t)TAGCAATG(配列番号87);
(u)TAGCCATG(配列番号88);
(v)TAGCGATG(配列番号89);
(w)TAGGAATG(配列番号90);
(x)TAGGCATG(配列番号91);
(y)TAGGGATG(配列番号92)。
【0199】
いくつかの態様において、核酸配列は、以下の配列:
(a)KAGCCGAGATG(配列番号34);
(b)KAGNGGAGCCATG(配列番号35);または
(c)KAGNNGAGACCATG(配列番号36);
(d)KAGGCGAGCATG(配列番号37);
の1つを含み、
ここで、「K」はTまたはGであり得、「N」は配列中のその位置に任意のヌクレオチドを指定すると理解されるべきである。例えば、これは、G、A、T、C、またはUであり得る。
【0200】
好ましくは、核酸配列は、以下の配列:
(a)KAGCCGAGATG(配列番号34);または
(b)KAGNGGAGCCATG(配列番号35);
の1つを含み、
ここで、「K」はTまたはGであり得、「N」は配列中のその位置に任意のヌクレオチドを指定すると理解されるべきである。例えば、これは、G、A、T、C、またはUであり得る。
【0201】
好ましい態様において、本発明の核酸配列は、重複するtbsおよびコザック配列:
GAGTTTAGCGGAGTGGAGAAGAGCGGAGCCGAGCCTAGCAGAGACGAGCCGAGATG(配列番号60)。
【0202】
NOIの翻訳の抑制または防止は、同等の時点で本発明の核酸配列の非存在下において発現される量と比較して、ウイルスベクター産生中に翻訳されるNOIの産物(例えばタンパク質)の量の変化として理解されるべきである。このような翻訳の変化は、NOIによってコードされるタンパク質の発現の抑制または防止を結果としてもたらす。
【0203】
一態様において、本発明の核酸配列は、関心対象のヌクレオチドの翻訳がウイルスベクター産生細胞において抑制または防止されるように、TRAPと相互作用することができる。
【0204】
ベクター作製中の任意の所与の時点でのNOIの翻訳は、ベクター作製中の同じ時点で本発明の核酸配列の非存在下において翻訳される量の90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%または0.1%に低減され得る。
【0205】
ベクター作製中の任意の所与の時点でのNOIの翻訳は、ベクター作製中の同じ時点で本発明の核酸配列の非存在下において翻訳される量の90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%または0.1%未満に低減され得る。
【0206】
本発明の文脈において、ベクター作製中の任意の所与の時点でのNOIの翻訳は、ベクター作製中の同じ時点で(本発明の核酸配列とは異なって)重複していないコザックおよびtbs配列を含む核酸配列の存在下において翻訳される量の90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%または0.1%に低減され得る。
【0207】
本発明の文脈において、ベクター作製中の任意の所与の時点でのNOIの翻訳は、ベクター作製中の同じ時点で(本発明の核酸配列とは異なって)重複していないコザックおよびtbs配列を含む核酸配列の存在下において翻訳される量の90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%または0.1%未満に低減され得る。
【0208】
NOIの翻訳を防止することは、翻訳の量を実質的に0に低減させることとして理解されるべきである。
【0209】
ベクター作製中の任意の所与の時点でのNOIからのタンパク質の発現は、ベクター作製中の同じ時点で本発明の核酸配列の非存在下において発現される量の90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%または0.1%に低減され得る。
【0210】
ベクター作製中の任意の所与の時点でのNOIからのタンパク質の発現は、ベクター作製中の同じ時点で本発明の核酸配列の非存在下において発現される量の90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%または0.1%未満に低減され得る。
【0211】
本発明の文脈において、ベクター作製中の任意の所与の時点でのNOIからのタンパク質の発現は、ベクター作製中の同じ時点で(本発明の核酸配列とは異なって)重複していないコザックおよびtbs配列を含む核酸配列の存在下において発現される量の90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%または0.1%に低減され得る。
【0212】
本発明の文脈において、ベクター作製中の任意の所与の時点でのNOIからのタンパク質の発現は、ベクター作製中の同じ時点で(本発明の核酸配列とは異なって)重複していないコザックおよびtbs配列を含む核酸配列の存在下において発現される量の90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%または0.1%未満に低減され得る。
【0213】
NOIからのタンパク質の発現を防止することは、発現されるタンパク質の量を実質的に0に低減させることとして理解されるべきである。
【0214】
NOIの翻訳の分析および/または定量のための方法は、当技術分野において周知である。
【0215】
溶解された細胞からのタンパク質産物は、クーマシーまたは銀染色による可視化を伴うSDS-PAGE分析などの方法を使用して分析され得る。あるいは、タンパク質産物は、該タンパク質産物を結合する抗体プローブを用いるウエスタンブロッティングまたは酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して分析され得る。無処置の細胞中のタンパク質産物は、免疫蛍光によって分析され得る。
【0216】
改善型リーダー配列
TRIP系を(異なる長さおよび組成の異なる天然の5’UTRを含有する)異なるプロモーターに適用する場合には、TRAPなしでの良好なレベルの発現も維持しながら、TRAPによる効率的な抑制を与えるために、プロモーター-UTR状況内にtbs配列を単に適用することが可能であることが望ましい。本研究の開始から、tbsが様々な構成的プロモーターの天然のUTR中に挿入されるときに、TRAP-tbsによって媒介される抑制の達成可能なレベルがどの程度であるかは公知でなかった。理想的には、天然の5’UTR配列によって誘導され得る抑制レベルの潜在的な変動性のいずれをも回避するために、選択されたプロモーターを改変する場合には、tbsとともに単一の保存された5’UTRリーダー配列を供給することができることが有利であろう。驚くべきことに、EF1αプロモーターの第1のエクソン(配列番号25)は、天然のリーダー配列を含む5’UTRリーダーと比較して、TRAPによる一貫して良好なレベルの導入遺伝子抑制を提供し、このリーダーは、TRAPの非存在下で良好なレベルの導入遺伝子発現も提供することが見出された。
【0217】
いくつかの態様において、核酸配列は、tbsまたはその一部の上流に5’リーダー配列を含む。リーダー配列は、TRAP結合部位またはその一部のすぐ上流にあり得る、すなわち、リーダー配列とTRAP結合部位またはその一部を隔てるさらなる配列は存在し得ない。5’リーダーがスプライシング事象に由来する場合には、エクソン/エクソン接合部からtbsまでの配列は最小の長さ(好ましくは≦12nt)に保たれるべきである。リーダー配列は、非コードEF1αエクソン1領域に由来する配列を含み得る。好ましい態様において、リーダー配列は、配列番号25、配列番号26または配列番号93で定義される配列を含む。
【0218】
多重クローニング部位
TRIP系の取り扱いやすさを改善するために、いくつかの異なる制限酵素(RE)の選択肢を介して、プロモーター-5’UTR-tbs配列を含有する発現カセット中にNOIを直接クローニングする能力、すなわち、tbsとコザック配列の間に多重クローニング部位(MCS)を組み込む能力を有することができることが望ましい(
図2Aを参照)。本発明者らは、いくつかの異なるMCSがTRIP系によって許容され得ること、すなわちMCSが使用されるときに導入遺伝子抑制が依然として得られることを実証した。5’UTRリーダー配列がTRAP媒介性抑制の程度を調節することができること、tbsのATG開始コドンへの近接が重要であること、および効率的な翻訳開始を確実にするために効率的なコザック配列がMCSおよびNOIの開始コドンとともにまたはそれらの間に維持されなければならないことを考えると、これは予想外であった。加えて、TRAP媒介性抑制を維持しながら使用され得るRE部位の数および/または組み合わせは予測することができなかった。
【0219】
このため、RVVATGの効率的なコアコザック配列も維持しながら、(tbsのATGへの近接性を保持するために)いくつかの(重複する)RE部位をtbsからATG開始コドンまで可能な限り短い距離で組み込むことができるように配列の「圧縮」が必要とされた。
【0220】
さらなる局面において、本発明は、関心対象のヌクレオチドと、本明細書に記載のtbsまたはその一部と、多重クローニング部位(MCS)と、本明細書に記載のコザック配列とを含む核酸配列であって、前記MCSは、tbsまたはその一部の下流かつコザック配列の上流に位置する、核酸配列を提供する。適切には、tbsまたはその一部およびコザック配列は重複しない。
【0221】
本明細書で使用される場合、「多重クローニング部位」は、互いに非常に近接したいくつかの制限酵素認識部位(制限酵素部位)を含有するDNA領域として理解されるべきである。一態様において、RE部位は、本発明で使用するためのMCSにおいて重複し得る。
【0222】
本明細書で使用される場合、「制限酵素部位」または「制限酵素認識部位」は、制限酵素によって認識される、4~8ヌクレオチド長のヌクレオチドの特定の配列を含有するDNA分子上の位置である。制限酵素は、特定のRE部位(すなわち、特定の配列)を認識し、RE部位内またはRE部位近傍のDNA分子を切断する。
【0223】
TRAPを結合することができるコンセンサスTRAP結合部位配列は、複数回(例えば、6、7、8、9、10、11、12回またはそれより多く)繰り返される[KAGNN]であり、ここで、Kは、DNAにおいてはTまたはGであり得、RNAにおいてはUまたはGであり得る。本発明の一態様において、TRAP結合部位またはその一部は、配列KAGN≧2(例えば、KAGN2~3)を含む。したがって、疑義を避けるために、このtbsまたはその一部は、例えば、以下の反復配列:UAGNN、GAGNN、TAGNN、UAGNNN、GAGNNNまたはTAGNNNのいずれをも含む。「N」は配列中のその位置に任意のヌクレオチドを指定すると理解されるべきである。例えば、これはG、A、T、CまたはUであり得る。このようなヌクレオチドの数は、好ましくは2であるが、最大3個、例えば1、2または3個であり、11×反復tbsまたはその一部のKAG反復は、3つのスペーシングヌクレオチドによって隔てられ得、翻訳抑制をもたらすいくらかのTRAP結合活性をなお保持し得る。好ましくは、翻訳抑制をもたらす最大のTRAP結合活性を保持するために、11×反復tbsまたはその一部において1つ以下のN3スペーサーが使用されるであろう。
【0224】
一態様において、核酸配列は、以下の配列:
(a)GAGCTCTAGAVVATG(配列番号45);
(b)GAGCTCGTCGACVATG(配列番号46);
(c)GAGCTCGAATTCGAAVVATG(配列番号47);
(d)GAGCTCTAGACGTCGACVATG(配列番号48);
(e)GAGCTCTAGAATTCGAAVVATG(配列番号49);
(f)GAGCTCTAGATATCGATRVVATG(配列番号50);
(g)KAGACTAGTACTTAAGCTTRVVATG(配列番号51);
(h)GAGCTCTAGACCATG(配列番号52);
(i)GAGCTCGTCGACCATG(配列番号53);
(j)GAGCTCGAATTCGAACCATG(配列番号54);
(k)GAGCTCTAGACGTCGACCATG(配列番号55);
(l)GAGCTCTAGAATTCGAACCATG(配列番号56);
(m)GAGCTCTAGATATCGATACCATG(配列番号57);または
(n)KAGACTAGTACTTAAGCTTACCATG(配列番号58);
の1つを含み、
ここで、「K」はTまたはGであり得、「R」は配列中のその位置にプリン(すなわち、AまたはG)を指定すると理解されるべきであり、「V」はG、A、またはCからの任意のヌクレオチドを指定すると理解されるべきである。
【0225】
一態様において、核酸配列は、以下の配列:
(a)GAGCTCTAGACCATG(配列番号52);
(b)GAGCTCGTCGACCATG(配列番号53);
(c)GAGCTCGAATTCGAACCATG(配列番号54);
(d)GAGCTCTAGACGTCGACCATG(配列番号55);
(e)GAGCTCTAGAATTCGAACCATG(配列番号56);
(f)GAGCTCTAGATATCGATACCATG(配列番号57);または
(g)KAGACTAGTACTTAAGCTTACCATG(配列番号58);
の1つを含み、
ここで、「K」はTまたはGであり得る。
【0226】
一態様において、核酸配列は、以下の配列:
(a)GAGCTCTAGACCATG(配列番号52);
(b)GAGCTCTAGACGTCGACCATG(配列番号55);または
(c)KAGACTAGTACTTAAGCTTACCATG(配列番号58);
の1つを含み、
ここで、「K」はTまたはGであり得る。
【0227】
好ましい態様において、本発明の核酸配列は、重複するtbs-MCS-コザック配列:
GAGTTTAGCGGAGTGGAGAAGAGCGGAGCCGAGCCTAGCAGAGACGAGAAGAGCTCTAGACCATG(配列番号61)
を含む。
【0228】
一態様において、NOIは、tbsまたはその一部に機能的に連結されている。
【0229】
一態様において、tbsまたはその一部は、NOIの翻訳がウイルスベクター産生細胞において抑制されるように、TRAPと相互作用することができる。
【0230】
一態様において、NOIは、TRAPを欠如する標的細胞において翻訳される。
【0231】
一態様において、tbsまたはその一部は、配列KAGN2~3の複数の反復を含む。
【0232】
一態様において、tbsまたはその一部は、配列KAGN2の複数の反復を含む。
【0233】
一態様において、tbsまたはその一部は、配列KAGN2の少なくとも6つの反復を含む。例えば、tbsまたはその一部は、配列番号8~19または22の任意の1つを含み得る。
【0234】
一態様において、tbsまたはその一部は、配列KAGN2~3の少なくとも8つの反復を含む。例えば、tbsまたはその一部は、配列番号8、9、14~17、20~24の任意の1つを含み得る。好ましくは、KAGNNN反復の数は、1またはそれ未満であり得る。例えば、tbsまたはその一部は、配列番号8、9、14~17、19~24の任意の1つを含み得る。
【0235】
一態様において、tbsまたはその一部は、配列KAGN2の少なくとも8~11の反復を含む。
【0236】
一態様において、tbsまたはその一部は、配列KAGN2~3の11の反復を含む。適切には、KAGNNN反復の数は3またはそれより少ない。例えば、tbsまたはその一部は、配列番号8、9、14、20~22の任意の1つを含み得る。
【0237】
一態様において、コザック配列は、配列RVVATG(配列番号28)を含む;ここで、「R」は配列中のその位置にプリン(すなわち、AまたはG)を指定すると理解されるべきであり、「V」はG、A、またはCからの任意のヌクレオチドを指定すると理解されるべきである。
【0238】
一態様において、コザック配列は、配列RNNATG(配列番号125)を含む;ここで、「R」は配列中のその位置にプリン(すなわち、AまたはG)を指定すると理解されるべきであり、「N」はG、A、T/UまたはCからの任意のヌクレオチドを指定すると理解されるべきである。
【0239】
一態様において、転写開始部位/プロモーターの末端からtbsのまたはその一部の開始までの距離は、34ヌクレオチド未満である。
【0240】
一態様において、転写開始部位/プロモーターの末端からtbsのまたはその一部の開始までの距離は、13ヌクレオチド未満である。
【0241】
一態様において、tbsまたはその一部は、II型制限酵素部位、好ましくはSapI制限酵素部位を欠如する。
【0242】
一態様において、核酸配列は、tbsまたはその一部の上流に5’リーダー配列を含む。リーダー配列は、TRAP結合部位またはその一部のすぐ上流にあり得る、すなわち、リーダー配列とTRAP結合部位またはその一部を隔てるさらなる配列は存在し得ない。
【0243】
一態様において、リーダー配列は、非コードEF1αエクソン1領域に由来する配列を含む。
【0244】
一態様において、リーダー配列は、配列番号25または配列番号26で定義される配列を含む。
【0245】
一態様において、核酸配列はIRESを含む。
【0246】
一態様において、核酸配列は、IRESとtbsまたはその一部との間にスペーサー配列を含む。
【0247】
一態様において、スペーサーは、0~30ヌクレオチド長である。
【0248】
一態様において、スペーサーは15ヌクレオチド長である。
【0249】
一態様において、スペーサーは、tbsまたはその一部の3’末端およびNOIの下流開始コドンから3または9ヌクレオチドである。
【0250】
一態様において、スペーサーは配列番号38~44の任意の1つで定義される配列を含み、好ましくはスペーサーは配列番号38で定義される配列を含む。
【0251】
一態様において、NOIは治療効果を生じさせる。
【0252】
一態様において、核酸配列は、RRE配列またはその機能的代替物をさらに含む。
【0253】
一態様において、核酸配列はベクター導入遺伝子発現カセットである。
【0254】
一態様において、本発明の核酸配列は、プロモーターをさらに含む。典型的には、プロモーターの転写は、得られたmRNA転写物中にコードされる5’UTRをもたらす。プロモーターは、当技術分野において公知であり、関心対象のヌクレオチドの発現を制御するのに適した任意のプロモーターであり得る。例えば、プロモーターは、EF1α、EFS、CMVまたはCAGであり得る。
【0255】
好ましい態様において、本明細書に記載の重複するtbsおよびコザック配列は、プロモーターの5’UTR内に位置し、5’UTRは、関連するプロモーター由来の天然配列を含み得、またはより好ましくは、5’UTRは、本明細書に記載の5’UTR配列から構成される。
【0256】
好ましい態様において、本明細書に記載のtbsとコザック配列の間に圧縮された/重複するMCSを含む配列は、前記5’UTR内に位置する。
【0257】
本明細書に記載の重複するtbsおよびコザック配列または本明細書に記載のtbsとコザック配列との間に圧縮された/重複するMCSを含む配列は、前記5’UTRの3’末端に位置し得る。
【0258】
好ましくは、5’UTRは、以下の配列:配列番号29~37、45~58、69~92および108~116のうちの1つを含む。より好ましくは、5’UTRは、配列番号29または配列番号108を含む。さらにより好ましくは、5’UTRは配列番号29を含む。
【0259】
プロモーター-5’UTR領域はイントロンを含み得る。イントロンは、天然のイントロンまたは異種イントロンであり得る。例えば、プロモーターは、EF1αまたはCAGであり得る。
【0260】
プロモーターは、イントロンを含まないウイルスベクターゲノム、例えばCMVにおいて典型的に使用されるプロモーターであり得る。
【0261】
好ましい態様において、プロモーター-5’UTR領域は、異種イントロンを含む人工の5’UTRを含むように操作されている。したがって、プロモーター-5’UTR領域は、異種エクソン-イントロン-エクソン配列を含有するように操作されており、mRNA転写物内にコードされる成熟5’UTRは、イントロンのスプライシングによる切り出しから生じる。プロモーター-5’UTR配列は、当技術分野において公知の方法を使用して操作され得る。例えば、プロモーターは、本明細書中に記載されているように操作され得る(実施例8を参照)。
【0262】
好ましくは、イントロンまたは異種イントロンのスプライシングによる切り出しから生じるその成熟mRNAからの導入遺伝子タンパク質の発現は、TRAPによって効率的に抑制される。適切には、イントロンまたは異種イントロンは、配列番号122のとおりのEF1αイントロン配列であり得る。
【0263】
イントロンまたは異種イントロンは、本明細書に記載の重複するtbsおよびコザック配列のまたは本明細書に記載のtbsとコザック配列との間にMCSを含む配列の上流、すなわち5’に位置し得る。
【0264】
5’UTRは、以下の配列(ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンキメラ5’UTR-イントロン、太字のエクソン配列(スプライシングされて一緒になり、5’UTRリーダーになる)):
CGGCGGGCGGGAACGTTGCCTTCGCCCCGTGCCCCGCTCCGCGCCGCCTCGCGCCGCCCGCCCCGGCTCTGACTGACCGCGTTACTCCCACAGGTGAGCGGGCGGGACGGCCCTTCTCCCTCCGGGCTGTAATTAGCGCTTGGTTTAATGACGGCTCGTTTCTTTTCTGTGGCTGCGTGAAAGCCTTAAAGGGCTCCGGGAGGGCCTTTGTGCGGGGGGGAGCGGCTCGGGGGGTGCGTGCGTGTGTGTGTGCGTGGGGAGCGCCGCGTGCGGCCCGCGCTGCCCGGCGGCTGTGAGCGCTGCGGGCGCGGCGCGGGGCTTTGTGCGCTCCGCGTGTGCGCGAGGGGAGCGCGGGCCGGGGGCGGTGCCCCGCGGTGCGGGGGGGCTGCGAGGGGAACAAAGGCTGCGTGCGGGGTGTGTGCGTGGGGGGGTGAGCAGGGGGTGTGGGCGCGGCGGTCGGGCTGTAACCCCCCCCTGGCACCCCCCTCCCCGAGTTGCTGAGCACGGCCCGGCTTCGGGTGCGGGGCTCCGTGCGGGGCGTGGCGCGGGGCTCGCCGTGCCGGGCGGGGGGTGGCGGCAGGTGGGGGTGCCGGGCGGGGCGGGGCCGCCTCGGGCCGGGGAGGGCTCGGGGGAGGGGCGCGGCGGCCCCGGAGCGCCGGCGGCTGTCGAGGCGCGGCGAGCCGCAGCCATTGCCTTTTATGGTAATCGTGCGAGAGGGCGCAGGGACTTCCTTTGTCCCAAATCTGGCGGAGCCGAAATCTGGGAGGCGCCGCCGCACCCCCTCTAGCGGGCGCGGGCGAAGCGGTGCGGCGCCGGCAGGAAGGAAATGGGCGGGGAGGGCCTTCGTGCGTCGCCGCGCCGCCGTCCCCTTCTCCATCTCCAGCCTCGGGGCTGCCGCAGGGGGACGGCTGCCTTCGGGGGGGACGGGGCAGGGCGGGGTTCGGCTTCTGGCGTGTGACCGGCGGCTTTAGAGCCTCTGCTAACCATGTTCATGCCTTCTTCTTTTTCCTACAGCTCCTGGGCAAA(配列番号121)
を含み得る。
【0265】
5’UTRは、以下の配列(EF1a5’UTR-イントロン、太字のエクソン配列(スプライシングされて一緒になり、5’UTRリーダーになる)):
CTTTTTCGCAACGGGTTTGCCGCCAGAACACAGGTAAGTGCCGTGTGTGGTTCCCGCGGGCCTGGCCTCTTTACGGGTTATGGCCCTTGCGTGCCTTGAATTACTTCCACCTGGCTGCAGTACGTGATTCTTGATCCCGAGCTTCGGGTTGGAAGTGGGTGGGAGAGTTCGTGGCCTTGCGCTTAAGGAGCCCCTTCGCCTCGTGCTTGAGTTGTGGCCTGGCCTGGGCGCTGGGGCCGCCGCGTGCGAATCTGGTGGCACCTTCGCGCCTGTCTCGCTGCTTTCGATAAGTCTCTAGCCATTTAAAATTTTTGATGACCTGCTGCGACGCTTTTTTTCTGGCAAGATAGTCTTGTAAATGCGGGCCAAGATCAGCACACTGGTATTTCGGTTTTTGGGGCCGCGGGCGGCGACGGGGCCCGTGCGTCCCAGCGCACATGTTCGGCGAGGCGGGGCCTGCGAGCGCGGCCACCGAGAATCGGACGGGGGTAGTCTCAAGCTGCCCGGCCTGCTCTGGTGCCTGGCCTCGCGCCGCCGTGTATCGCCCCGCCCTGGGCGGCAAGGCTGGCCCGGTCGGCACCAGTTGCGTGAGCGGAAAGATGGCCGCTTCCCGGCCCTGCTGCAGGGAGCACAAAATGGAGGACGCGGCGCTCGGGAGAGCGGGCGGGTGAGTCACCCACACAAAGGAAAAGGGCCTTTCCGTCCTCAGCCGTCGCTTCATGTGACTCCACGGAGTACCGGGCGCCGTCCAGGCACCTCGATTAGTTCTCCAGCTTTTGGAGTACGTCGTCTTTAGGTTGGGGGGAGGGGTTTTATGCGATGGAGTTTCCCCACACTGAGTGGGTGGAGACTGAAGTTAGGCCAGCTTGGCACTTGATGTAATTCTCCTTGGAATTTGCCCTTTTTGAGTTTGGATCTTGGTTCATTCTCAAGCCTCAGACAGTGGTTCAAAGTTTTTTTCTTCCATTTCAGGTGTCGTGAAAA(配列番号122)
を含み得る。
【0266】
一態様において、プロモーターは、配列(太字のエクソン配列(スプライシングされて一緒になり、5’UTRリーダーになる)、斜字体のtbsコンセンサス):
CGGCGGGCGGGAACGTTGCCTTCGCCCCGTGCCCCGCTCCGCGCCGCCTCGCGCCGCCCGCCCCGGCTCTGACTGACCGCGTTACTCCCACAGGTGAGCGGGCGGGACGGCCCTTCTCCCTCCGGGCTGTAATTAGCGCTTGGTTTAATGACGGCTCGTTTCTTTTCTGTGGCTGCGTGAAAGCCTTAAAGGGCTCCGGGAGGGCCTTTGTGCGGGGGGGAGCGGCTCGGGGGGTGCGTGCGTGTGTGTGTGCGTGGGGAGCGCCGCGTGCGGCCCGCGCTGCCCGGCGGCTGTGAGCGCTGCGGGCGCGGCGCGGGGCTTTGTGCGCTCCGCGTGTGCGCGAGGGGAGCGCGGGCCGGGGGCGGTGCCCCGCGGTGCGGGGGGGCTGCGAGGGGAACAAAGGCTGCGTGCGGGGTGTGTGCGTGGGGGGGTGAGCAGGGGGTGTGGGCGCGGCGGTCGGGCTGTAACCCCCCCCTGGCACCCCCCTCCCCGAGTTGCTGAGCACGGCCCGGCTTCGGGTGCGGGGCTCCGTGCGGGGCGTGGCGCGGGGCTCGCCGTGCCGGGCGGGGGGTGGCGGCAGGTGGGGGTGCCGGGCGGGGCGGGGCCGCCTCGGGCCGGGGAGGGCTCGGGGGAGGGGCGCGGCGGCCCCGGAGCGCCGGCGGCTGTCGAGGCGCGGCGAGCCGCAGCCATTGCCTTTTATGGTAATCGTGCGAGAGGGCGCAGGGACTTCCTTTGTCCCAAATCTGGCGGAGCCGAAATCTGGGAGGCGCCGCCGCACCCCCTCTAGCGGGCGCGGGCGAAGCGGTGCGGCGCCGGCAGGAAGGAAATGGGCGGGGAGGGCCTTCGTGCGTCGCCGCGCCGCCGTCCCCTTCTCCATCTCCAGCCTCGGGGCTGCCGCAGGGGGACGGCTGCCTTCGGGGGGGACGGGGCAGGGCGGGGTTCGGCTTCTGGCGTGTGACCGGCGGCTTTAGAGCCTCTGCTAACCATGTTCATGCCTTCTTCTTTTTCCTACAGCTCCTGGGCAAA[KAGN2-3]10-11(配列番号123)
を含む。
【0267】
一態様において、プロモーターは、配列(太字のエクソン配列(スプライシングされて一緒になり、5’UTRリーダーになる)、斜字体のtbsコンセンサス):
CTTTTTCGCAACGGGTTTGCCGCCAGAACACAGGTAAGTGCCGTGTGTGGTTCCCGCGGGCCTGGCCTCTTTACGGGTTATGGCCCTTGCGTGCCTTGAATTACTTCCACCTGGCTGCAGTACGTGATTCTTGATCCCGAGCTTCGGGTTGGAAGTGGGTGGGAGAGTTCGTGGCCTTGCGCTTAAGGAGCCCCTTCGCCTCGTGCTTGAGTTGTGGCCTGGCCTGGGCGCTGGGGCCGCCGCGTGCGAATCTGGTGGCACCTTCGCGCCTGTCTCGCTGCTTTCGATAAGTCTCTAGCCATTTAAAATTTTTGATGACCTGCTGCGACGCTTTTTTTCTGGCAAGATAGTCTTGTAAATGCGGGCCAAGATCAGCACACTGGTATTTCGGTTTTTGGGGCCGCGGGCGGCGACGGGGCCCGTGCGTCCCAGCGCACATGTTCGGCGAGGCGGGGCCTGCGAGCGCGGCCACCGAGAATCGGACGGGGGTAGTCTCAAGCTGCCCGGCCTGCTCTGGTGCCTGGCCTCGCGCCGCCGTGTATCGCCCCGCCCTGGGCGGCAAGGCTGGCCCGGTCGGCACCAGTTGCGTGAGCGGAAAGATGGCCGCTTCCCGGCCCTGCTGCAGGGAGCACAAAATGGAGGACGCGGCGCTCGGGAGAGCGGGCGGGTGAGTCACCCACACAAAGGAAAAGGGCCTTTCCGTCCTCAGCCGTCGCTTCATGTGACTCCACGGAGTACCGGGCGCCGTCCAGGCACCTCGATTAGTTCTCCAGCTTTTGGAGTACGTCGTCTTTAGGTTGGGGGGAGGGGTTTTATGCGATGGAGTTTCCCCACACTGAGTGGGTGGAGACTGAAGTTAGGCCAGCTTGGCACTTGATGTAATTCTCCTTGGAATTTGCCCTTTTTGAGTTTGGATCTTGGTTCATTCTCAAGCCTCAGACAGTGGTTCAAAGTTTTTTTCTTCCATTTCAGGTGTCGTGAAAA[KAGN2-3]10-11(配列番号124)
を含む。
【0268】
一態様において、プロモーターは、配列(tbs-kzkV0.G変異型を有するニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンキメラ5’UTR-イントロン、太字のエクソン配列(スプライシングされて一緒になり、5’UTRリーダーになる)、斜字体のtbskzkV0.G):
CGGCGGGCGGGAACGTTGCCTTCGCCCCGTGCCCCGCTCCGCGCCGCCTCGCGCCGCCCGCCCCGGCTCTGACTGACCGCGTTACTCCCACAGGTGAGCGGGCGGGACGGCCCTTCTCCCTCCGGGCTGTAATTAGCGCTTGGTTTAATGACGGCTCGTTTCTTTTCTGTGGCTGCGTGAAAGCCTTAAAGGGCTCCGGGAGGGCCTTTGTGCGGGGGGGAGCGGCTCGGGGGGTGCGTGCGTGTGTGTGTGCGTGGGGAGCGCCGCGTGCGGCCCGCGCTGCCCGGCGGCTGTGAGCGCTGCGGGCGCGGCGCGGGGCTTTGTGCGCTCCGCGTGTGCGCGAGGGGAGCGCGGGCCGGGGGCGGTGCCCCGCGGTGCGGGGGGGCTGCGAGGGGAACAAAGGCTGCGTGCGGGGTGTGTGCGTGGGGGGGTGAGCAGGGGGTGTGGGCGCGGCGGTCGGGCTGTAACCCCCCCCTGGCACCCCCCTCCCCGAGTTGCTGAGCACGGCCCGGCTTCGGGTGCGGGGCTCCGTGCGGGGCGTGGCGCGGGGCTCGCCGTGCCGGGCGGGGGGTGGCGGCAGGTGGGGGTGCCGGGCGGGGCGGGGCCGCCTCGGGCCGGGGAGGGCTCGGGGGAGGGGCGCGGCGGCCCCGGAGCGCCGGCGGCTGTCGAGGCGCGGCGAGCCGCAGCCATTGCCTTTTATGGTAATCGTGCGAGAGGGCGCAGGGACTTCCTTTGTCCCAAATCTGGCGGAGCCGAAATCTGGGAGGCGCCGCCGCACCCCCTCTAGCGGGCGCGGGCGAAGCGGTGCGGCGCCGGCAGGAAGGAAATGGGCGGGGAGGGCCTTCGTGCGTCGCCGCGCCGCCGTCCCCTTCTCCATCTCCAGCCTCGGGGCTGCCGCAGGGGGACGGCTGCCTTCGGGGGGGACGGGGCAGGGCGGGGTTCGGCTTCTGGCGTGTGACCGGCGGCTTTAGAGCCTCTGCTAACCATGTTCATGCCTTCTTCTTTTTCCTACAGCTCCTGGGCAAAGAGTTTAGCGGAGTGGAGAAGAGCGGAGCCGAGCCTAGCAGAGACGAGCCGAGATG(配列番号117)
を含む。
【0269】
一態様において、プロモーターは、配列(重複するtbsおよびコザック配列を有するEF1a5’UTR-イントロン(tbskzkV0.G変異型)、太字のエクソン配列(スプライシングされて一緒になり、5’UTRリーダーになる)、斜字体のtbskzkV0.G):
CTTTTTCGCAACGGGTTTGCCGCCAGAACACAGGTAAGTGCCGTGTGTGGTTCCCGCGGGCCTGGCCTCTTTACGGGTTATGGCCCTTGCGTGCCTTGAATTACTTCCACCTGGCTGCAGTACGTGATTCTTGATCCCGAGCTTCGGGTTGGAAGTGGGTGGGAGAGTTCGTGGCCTTGCGCTTAAGGAGCCCCTTCGCCTCGTGCTTGAGTTGTGGCCTGGCCTGGGCGCTGGGGCCGCCGCGTGCGAATCTGGTGGCACCTTCGCGCCTGTCTCGCTGCTTTCGATAAGTCTCTAGCCATTTAAAATTTTTGATGACCTGCTGCGACGCTTTTTTTCTGGCAAGATAGTCTTGTAAATGCGGGCCAAGATCAGCACACTGGTATTTCGGTTTTTGGGGCCGCGGGCGGCGACGGGGCCCGTGCGTCCCAGCGCACATGTTCGGCGAGGCGGGGCCTGCGAGCGCGGCCACCGAGAATCGGACGGGGGTAGTCTCAAGCTGCCCGGCCTGCTCTGGTGCCTGGCCTCGCGCCGCCGTGTATCGCCCCGCCCTGGGCGGCAAGGCTGGCCCGGTCGGCACCAGTTGCGTGAGCGGAAAGATGGCCGCTTCCCGGCCCTGCTGCAGGGAGCACAAAATGGAGGACGCGGCGCTCGGGAGAGCGGGCGGGTGAGTCACCCACACAAAGGAAAAGGGCCTTTCCGTCCTCAGCCGTCGCTTCATGTGACTCCACGGAGTACCGGGCGCCGTCCAGGCACCTCGATTAGTTCTCCAGCTTTTGGAGTACGTCGTCTTTAGGTTGGGGGGAGGGGTTTTATGCGATGGAGTTTCCCCACACTGAGTGGGTGGAGACTGAAGTTAGGCCAGCTTGGCACTTGATGTAATTCTCCTTGGAATTTGCCCTTTTTGAGTTTGGATCTTGGTTCATTCTCAAGCCTCAGACAGTGGTTCAAAGTTTTTTTCTTCCATTTCAGGTGTCGTGAAAAGAGTTTAGCGGAGTGGAGAAGAGCGGAGCCGAGCCTAGCAGAGACGAGCCGAGATG(配列番号118)
を含む。
【0270】
配列番号117に対応するスプライシングされた配列;太字の5’UTRリーダー配列、斜字体のtbskzkV0.G:
CGGCGGGCGGGAACGTTGCCTTCGCCCCGTGCCCCGCTCCGCGCCGCCTCGCGCCGCCCGCCCCGGCTCTGACTGACCGCGTTACTCCCACAGCTCCTGGGCAAAGAGTTTAGCGGAGTGGAGAAGAGCGGAGCCGAGCCTAGCAGAGACGAGCCGAGATG(配列番号119)
配列番号118に対応するスプライシングされた配列;太字の5’UTRリーダー配列、斜字体のtbskzkV0.G:
CTTTTTCGCAACGGGTTTGCCGCCAGAACACAGGTGTCGTGAAAAGAGTTTAGCGGAGTGGAGAAGAGCGGAGCCGAGCCTAGCAGAGACGAGCCGAGATG(配列番号120)
例示的な核酸配列
本発明の例示的な核酸配列を以下に示す。
【0271】
配列番号62-L33改善型リーダー、最適な(重複する)tbs([KAGNN]8)-コザック接合を含有する例示的な核酸配列1
CTTTTTCGCAACGGGTTTGCCGCCAGAACACAGGAGTTTAGCGGAGTGGAGAAGAGCGGAGCCGAGCCGAGATG
配列番号63-L33改善型リーダー、最適な(重複する)tbs([KAGNN]11)-コザック接合を含有する例示的な核酸配列2
CTTTTTCGCAACGGGTTTGCCGCCAGAACACAGGAGTTTAGCGGAGTGGAGAAGAGCGGAGCCGAGCCTAGCAGAGACGAGCCGAGATG
配列番号64-L12改善型リーダー、最適な(重複する)tbs([KAGNN]11)-コザックを含有する例示的な核酸配列3
CTTTTTCGCAACGAGTTTAGCGGAGTGGAGAAGAGCGGAGCCGAGCCTAGCAGAGACGAGCCGAGATG
配列番号65-イントロン含有5’UTRに対する例示的な核酸配列4、L33を含むスプライシングされたリーダー、最適な(重複する)tbs([KAGNN]11)-コザック接合をもたらす
CTTTTTCGCAACGGGTTTGCCGCCAGAACACAGGTGTCGTGAAAAGAGTTTAGCGGAGTGGAGAAGAGCGGAGCCGAGCCTAGCAGAGACGAGCCGAGATG
配列番号66-改善型スペーサー、最適な(重複する)tbs([KAGNN]8)-コザック接合を含有する例示的な核酸配列5
ATAGCAGAGACGGCTGAGTTTAGCGGAGTGGAGAAGAGCGGAGCCGAGCCGAGATG
配列番号67-L33改善型リーダーtbs([KAGNN]11)-MCS-コザックを含有する例示的な核酸配列6
CTTTTTCGCAACGGGTTTGCCGCCAGAACACAGGAGTTTAGCGGAGTGGAGAAGAGCGGAGCCGAGCCTAGCAGAGACGAGAAGAGCTCTAGACCATG
配列番号68-改善型スペーサー、tbs([KAGNN]11)-MCS-コザックを含有する例示的な核酸配列7
ATAGCAGAGACGGCTGAGTTTAGCGGAGTGGAGAAGAGCGGAGCCGAGCCTAGCAGAGACGAGAAGAGCTCTAGACCATG
一態様において、核酸配列は、配列番号62~68の任意の1つを含む。
【0272】
一態様において、核酸配列は、
(a)(i)配列番号25もしくは26;および/または
(ii)配列番号38~44の任意の1つ;
(b)配列番号10~13、15~19、23、24の任意の1つ;ならびに
(c)(i)配列番号29~36の任意の1つ、好ましくは配列番号34~36の任意の1つ;または
(ii)配列番号45~58の任意の1つ、好ましくは配列番号52~58の任意の1つ
を含む。
【0273】
一態様において、核酸配列は、
(a)配列番号25または26;
(b)配列番号10~13、16~19、23、24の任意の1つ;および
(c)配列番号29~36の任意の1つ、好ましくは配列番号34~36の任意の1つ
を含む。
【0274】
一態様において、核酸配列は、
(a)配列番号38~44の任意の1つ;
(b)配列番号10~13、16~19、23、24の任意の1つ;および
(c)配列番号29~36の任意の1つ、好ましくは配列番号34~36の任意の1つ
を含む。
【0275】
一態様において、核酸配列は、
(a)配列番号25または26;
(b)配列番号10~13、15~19、23、24の任意の1つ;および
(c)配列番号45~58の任意の1つ、好ましくは配列番号52~58の任意の1つ
を含む。
【0276】
一態様において、核酸配列は、
(a)配列番号38~44の任意の1つ;
(b)配列番号10~13、15~19、23、24の任意の1つ;および
(c)配列番号45~58の任意の1つ、好ましくは配列番号52~58の任意の1つ
を含む。
【0277】
関心対象のヌクレオチド
本発明の一態様において、関心対象のヌクレオチドは、TRAPを欠如する標的細胞において翻訳される。
【0278】
「標的細胞」は、その中でNOIを発現することが望ましい細胞として理解されるべきである。NOIは、本発明のウイルスベクターを用いて標的細胞中に導入され得る。標的細胞への送達は、インビボ、エクスビボまたはインビトロで行われ得る。
【0279】
好ましい態様において、関心対象のヌクレオチドは、治療効果を生じさせる。
【0280】
NOIは、治療的または診断的用途を有し得る。適切なNOIには、酵素、補助因子、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン、抗体、抗酸化分子、操作された免疫グロブリン様分子、一本鎖抗体、融合タンパク質、免疫共刺激分子、免疫調節分子、キメラ抗原受容体、標的タンパク質のトランスドメインネガティブ変異体、毒素、条件的毒素、抗原、転写因子、構造タンパク質、レポータータンパク質、細胞内局在化シグナル、腫瘍抑制タンパク質、成長因子、膜タンパク質、受容体、血管作動性タンパク質およびペプチド、抗ウイルスタンパク質およびリボザイム、ならびにこれらの誘導体(関連レポーター基を有する誘導体など)をコードする配列が含まれるが、これらに限定されない。NOIは、マイクロRNAもコードし得る。理論に拘束されることを望むものではないが、マイクロRNAのプロセシングはTRAPによって阻害されると考えられる。
【0281】
一態様において、NOIは、神経変性障害の処置において有用であり得る。
【0282】
別の態様において、NOIは、パーキンソン病の処置において有用であり得る。
【0283】
別の態様において、NOIは、ドーパミン合成に関与する1つの酵素または複数の酵素をコードし得る。例えば、酵素は、以下のうちの1つまたは複数であり得る:チロシンヒドロキシラーゼ、GTP-シクロヒドロラーゼIおよび/または芳香族アミノ酸ドーパデカルボキシラーゼ。3つすべての遺伝子の配列が入手可能である(それぞれ、GenBank(登録商標)受託番号X05290、U19523およびM76180)。
【0284】
別の態様において、NOIは、小胞モノアミン輸送体2(VMAT2)をコードし得る。代替の態様において、ウイルスゲノムは、芳香族アミノ酸ドーパデカルボキシラーゼをコードするNOIおよびVMAT2をコードするNOIを含み得る。このようなゲノムは、パーキンソン病の処置において、特にL-DOPAの末梢投与と併せて使用され得る。
【0285】
別の態様において、NOIは、治療用タンパク質または治療用タンパク質の組み合わせをコードし得る。
【0286】
別の態様において、NOIは、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、インターロイキン-1β(IL-1β)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、インスリン増殖因子-2、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C/VEGF-2、VEGF-D、VEGF-E、PDGF-A、PDGF-B、PDFG-AおよびPDFG-Bのヘテロ二量体およびホモ二量体からなる群から選択される1つまたは複数のタンパク質をコードし得る。
【0287】
別の態様において、NOIは、アンジオスタチン、エンドスタチン、血小板因子4、色素上皮由来因子(PEDF)、胎盤増殖因子、レスチン、インターフェロン-α、インターフェロン誘導性タンパク質、グロベータおよびチューブダウン-1、インターロイキン(IL)-1、IL-12、レチノイン酸、抗VEGF抗体またはその断片/変異型、例えばアフリベルセプト、トロンボスポンジン、VEGF受容体タンパク質、例えば米国特許第5,952,199号および米国特許第6,100,071号に記載されているもの、ならびに抗VEGF受容体抗体からなる群から選択される1つの抗血管新生タンパク質または複数の抗血管新生タンパク質をコードし得る。
【0288】
別の態様において、NOIは、NF-kB阻害剤、IL1β阻害剤、TGFβ阻害剤、IL-6阻害剤、IL-23阻害剤、IL-18阻害剤、腫瘍壊死因子αおよび腫瘍壊死因子β、リンホトキシンαおよびリンホトキシンβ、LIGHT阻害剤、αシヌクレイン阻害剤、タウ阻害剤、βアミロイド阻害剤、IL-17阻害剤、からなる群から選択される抗炎症性タンパク質、抗体またはタンパク質もしくは抗体の断片/変異型をコードし得る。
【0289】
別の態様において、NOIは、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)をコードし得る。
【0290】
別の態様において、NOIは、眼細胞内で通常発現されるタンパク質をコードし得る。
【0291】
別の態様において、NOIは、視細胞および/または網膜色素上皮細胞において通常発現されるタンパク質をコードし得る。
【0292】
別の態様において、NOIは、RPE65、アリール炭化水素相互作用受容体タンパク質様1(AIPL1)、CRB1、レシチンレチナールアセチルトランスフェラーゼ(LRAT)、視細胞特異的ホメオボックス(CRX)、レチナールグアニル酸シクラーゼ(cyclise)(GUCY2D)、RPGR相互作用タンパク質1(RPGRIP1)、LCA2、LCA3、LCA5、ジストロフィン、PRPH2、CNTF、ABCR/ABCA4、EMP1、TIMP3、MERTK、ELOVL4、MYO7A、USH2A、VMD2、RLBP1、COX-2、FPR、ハーモニン、Rabエスコートタンパク質1、CNGB2、CNGA3、CEP290、RPGR、RS1、RP1、PRELP、グルタチオン経路酵素およびオプチシンを含む群から選択されるタンパク質をコードし得る。
【0293】
他の態様において、NOIは、ヒト凝固第VIII因子または第IX因子をコードし得る。
【0294】
他の態様において、NOIは、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)、メチルマロニルCoAムターゼ、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、イソバレリルCoAデヒドロゲナーゼ、分岐鎖ケト酸デヒドロゲナーゼ複合体、グルタリルCoAデヒドロゲナーゼ、アセチルCoAカルボキシラーゼ、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、3メチルクロトニルCoAカルボキシラーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、カルバモイル-リン酸シンターゼアンモニア、オルニチントランスカルバミラーゼ、グルコシルセラミダーゼβ、αガラクトシダーゼA、グルコシルセラミダーゼβ、シスチノシン、グルコサミン(N-アセチル)-6-スルファターゼ、N-アセチル-α-グルコサミニダーゼ、N-スルホグルコサミンスルホヒドロラーゼ、ガラクトサミン-6スルファターゼ、アリールスルファターゼA、シトクロムB-245β、ABCD1、オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ、アルギニノコハク酸シンターゼ、アルギニノコハク酸リアーゼ(lysase)、アルギナーゼ1、アラニングリオキシル酸(glycoxhylate)アミノトランスフェラーゼ、ATP結合カセット、サブファミリーBメンバーを含む群から選択される、代謝に関与する1つのタンパク質または複数のタンパク質をコードし得る。
【0295】
他の態様において、NOIは、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)をコードし得る。一態様において、CARは抗5T4CARである。他の態様において、NOIは、B細胞成熟抗原(BCMA)、CD19、CD22、CD20、CD138、CD30、CD33、CD123、CD70、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、ルイスY抗原(LeY)、チロシン-プロテインキナーゼ膜貫通受容体(ROR1)、ムチン1、細胞表面結合(Muc1)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、内皮増殖因子受容体(EGFR)、インスリン、タンパク質チロシンホスファターゼ、非受容体タイプ22、インターロイキン2受容体、α、ヘリカーゼCドメイン1で誘導されるインターフェロン、ヒト上皮増殖因子受容体(HER2)、グリピカン3(GPC3)、ジシアロガングリオシド(GD2)、メシオテリン(mesiothelin)、小胞内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)をコードし得る。
【0296】
他の態様において、NOIは、ULBP1、2および3、H60、Rae-1a、b、g、d、MICA、MICBを含む群から選択されるNKG2Dリガンドに対するキメラ抗原受容体(CAR)をコードし得る。
【0297】
さらなる態様において、NOIは、SGSH、SUMF1、GAA、共通γ鎖(CD132)、アデノシンデアミナーゼ、WASタンパク質、グロビン、αガラクトシダーゼA、δ-アミノレブリン酸(ALA)シンターゼ、δ-アミノレブリン酸デヒドラターゼ(ALAD)、ヒドロキシメチルビラン(HMB)シンターゼ、ウロポルフィリノーゲン(URO)シンターゼ、ウロポルフィリノーゲン(URO)デカルボキシラーゼ、コプロポルフィリノーゲン(COPRO)オキシダーゼ、プロトポルフィリノーゲン(PROTO)オキシダーゼ、フェロケラターゼ、α-L-イズロニダーゼ、イズロン酸スルファターゼ、ヘパランスルファミダーゼ、N-アセチルグルコサミニダーゼ、ヘパラン-α-グルコサミニドN-アセチルトランスフェラーゼ、3N-アセチルグルコサミン6-スルファターゼ、ガラクトース-6-硫酸スルファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、N-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼ、β-グルクロニダーゼおよびヒアルロニダーゼをコードし得る。
【0298】
NOIに加えて、ベクターはまた、siRNA、shRNAまたは調節されたshRNAを含み得る、またはコードし得る。(Dickins et al.(2005)Nature Genetics 37:1289-1295,Silva et al.(2005)Nature Genetics 37:1281-1288)
適応症
本発明によるレトロウイルスベクターおよびAAVベクターを含むベクターは、国際公開第1998/05635号、国際公開第1998/07859号、国際公開第1998/09985号に列挙されている障害の処置において有用な1つまたはそれより多くのNOIを送達するために使用され得る。関心対象のヌクレオチドは、DNAまたはRNAであり得る。このような疾患の例を以下に示す:
サイトカインおよび細胞増殖/分化活性;免疫抑制または免疫刺激活性(例えば、ヒト免疫不全ウイルスによる感染を含む免疫不全を処置するため、リンパ球増殖の調節;癌および多くの自己免疫疾患を処置すること、ならびに移植拒絶を防止すること、または腫瘍免疫を誘導すること);造血の調節(例えば、骨髄性またはリンパ性疾患の処置);骨、軟骨、腱、靭帯および神経組織の成長を促進させること(例えば、創傷の治癒、熱傷、潰瘍および歯周疾患および神経変性の処置のため);卵胞刺激ホルモンの阻害または活性化(妊孕性の調節);走化性/ケモキネシス活性(例えば、特定の細胞型を損傷または感染の部位に動員するため);止血および血栓溶解活性(例えば、血友病および脳卒中を処置するために);抗炎症活性(例えば、敗血症性ショックまたはクローン病を処置するため);マクロファージ阻害活性および/またはT細胞阻害活性、したがって抗炎症活性;抗免疫活性(すなわち、炎症に関連しない応答を含む、細胞性および/または体液性免疫応答に対する阻害効果);マクロファージおよびT細胞が細胞外マトリックス成分およびフィブロネクチンに接着する能力の阻害、ならびにT細胞における上方制御されたfas受容体発現に応答する障害。
【0299】
癌、白血病、良性および悪性腫瘍の増殖、浸潤および拡散、血管新生、転移、腹水および悪性胸水貯留を含む悪性障害。
【0300】
関節リウマチを含む関節炎、過敏症、アレルギー反応、喘息、全身性エリテマトーデス、コラーゲン疾患および他の疾患を含む自己免疫疾患。
【0301】
動脈硬化症、アテローム硬化性心疾患、再灌流傷害、心停止、心筋梗塞、血管炎症性障害、呼吸窮迫症候群、心血管作用、末梢血管疾患、片頭痛およびアスピリン依存性抗血栓症、脳卒中、脳虚血、虚血性心疾患または他の疾患を含む血管疾患。
【0302】
消化性潰瘍、潰瘍性大腸炎、クローン病および他の疾患を含む胃腸管の疾患。
【0303】
肝線維症、肝硬変を含む肝疾患。
【0304】
フェニルケトン尿症PKU、ウィルソン病、有機酸血症、尿素サイクル障害、胆汁うっ滞、および他の疾患を含む遺伝性代謝障害。
【0305】
甲状腺炎または他の腺疾患、糸球体腎炎または他の疾患を含む腎臓および泌尿器の疾患。
【0306】
耳炎または他の耳鼻咽喉疾患、皮膚炎または他の皮膚疾患を含む耳、鼻および喉の障害。
【0307】
歯周疾患、歯周炎、歯肉炎または他の歯/口腔疾患を含む歯および口腔障害。
【0308】
精巣炎または精巣上体-精巣炎、不妊症、精巣外傷または他の精巣疾患を含む精巣疾患。
【0309】
胎盤機能障害、胎盤機能不全、習慣性流産、子癇、子癇前症、子宮内膜症および他の婦人科疾患を含む婦人科疾患。
【0310】
LCA10を含むレーバー先天黒内障(LCA)、後部ブドウ膜炎、中間部ブドウ膜炎、前部ブドウ膜炎、結膜炎、脈絡網膜炎、網膜ブドウ膜炎、視神経炎、開放隅角緑内障および若年性先天緑内障を含む緑内障、眼内炎症、例えば網膜炎または嚢胞様黄斑浮腫、交感性眼炎、強膜炎、網膜色素変性症、加齢黄斑変性(AMD)およびベスト病、ベスト卵黄様黄斑変性を含む若年性黄斑変性を含む黄斑変性、シュタルガルト病、アッシャー症候群、ドイン蜂巣状網膜ジストロフィー、ソービー(Sorby’s)黄斑ジストロフィー、若年性網膜分離症、錐体桿体ジストロフィー、角膜ジストロフィー、フックスジストロフィー、レーバー先天黒内障、レーバー遺伝性視神経症(LHON)、アディー症候群、小口病、変性眼底(fondus)疾患、眼外傷、感染によって引き起こされる眼炎症、増殖性硝子体網膜症、急性虚血性視神経症、例えば緑内障濾過手術後の過剰瘢痕、眼移植片に対する反応、角膜移植片拒絶、ならびに糖尿病性黄斑浮腫、網膜静脈閉塞、RLBP1関連網膜ジストロフィー、全脈絡膜萎縮および色覚異常などの他の眼疾患などの眼科学的障害。
【0311】
パーキンソン病、パーキンソン病の処置による合併症および/または副作用、AIDS関連認知症複合HIV関連脳症、デビック病、シデナム舞踏病、アルツハイマー病およびCNSの他の変性疾患、症状または障害、脳卒中、ポリオ後症候群、精神障害、脊髄炎、脳炎、亜急性硬化性全脳炎、脳脊髄炎、急性神経障害、亜急性神経障害、慢性神経障害、ファブリー病、ゴーシェ病、シスチン症、ポンペ病、異染性白質ジストロフィー、ウィスコット(Wiscott)アルドリッチ症候群、副腎白質ジストロフィー、ベータサラセミア、鎌状赤血球症、ギラン(Guillaim)・バレー症候群、シデナム舞踏病、重症筋無力症、偽脳腫瘍、ダウン症候群、ハンチントン病、CNS圧迫またはCNS外傷またはCNSの感染症、筋萎縮症およびジストロフィー、中枢および末梢神経系の疾患、症状または障害、筋萎縮性側索硬化症、脊髄筋萎縮症、脊髄および剥離損傷を含む運動ニューロン疾患を含む神経および神経変性障害。
【0312】
嚢胞性線維症、サンフィリポ(Sanfilipo)症候群A、サンフィリポ症候群B、サンフィリポ症候群C、サンフィリポ症候群D、ハンター症候群、ハーラー・シャイエ症候群、モルキオ症候群を含むムコ多糖症、アデノシンデアミナーゼ重症複合免疫不全(ADA-SCID)、X連鎖重症複合免疫不全、X連鎖慢性肉芽腫性疾患、ポルフィリン症、血友病A、血友病B、外傷後炎症、出血、凝固および急性期反応、悪液質、食欲不振、急性感染症、敗血症性ショック、感染性疾患、糖尿病、手術の合併症または副作用、骨髄移植または他の移植合併症および/または副作用、角膜、骨髄、器官、レンズ、ペースメーカー、天然または人工の皮膚組織などの天然または人工の細胞、組織および器官の移植の場合における移植片拒絶の予防および/または処置のために体液性および/または細胞性免疫応答を抑制または阻害するための、例えばウイルスキャリアによる感染またはAIDSを原因とする遺伝子治療の合併症および副作用などのその他の疾患および症状。
【0313】
siRNA、マイクロRNAおよびshRNA
ある特定の他の態様において、NOIはマイクロRNAを含む。マイクロRNAは、生物中で天然に産生される小さなRNAの非常に大きな群であり、その少なくとも一部は標的遺伝子の発現を調節する。マイクロRNAファミリーの創始メンバー(founding member)は、let-7およびlin-4である。let-7遺伝子は、虫の発育中に内因性のタンパク質コード遺伝子の発現を調節する、小さな、高度に保存されたRNA種をコードする。活性なRNA種は最初に約70ntの前駆体として転写され、これは転写後に成熟した約21nt形態へとプロセシングされる。let-7およびlin-4はいずれも、ダイサー酵素によってそれらの成熟形態へとプロセシングされるヘアピンRNA前駆体として転写される。
【0314】
NOIに加えて、ベクターはまた、siRNA、shRNAまたは調節されたshRNAを含み得る、またはコードし得る(Dickins et al.(2005)Nature Genetics 37:1289-1295,Silva et al.(2005)Nature Genetics 37:1281-1288)。
【0315】
二本鎖RNA(dsRNA)によって媒介される転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)は、外来遺伝子の発現を制御するための保存された細胞防御機構である。トランスポゾンまたはウイルスなどの要素のランダムな組み込みは、相同な一本鎖mRNAまたはウイルスゲノムRNAの配列特異的分解を活性化するdsRNAの発現を引き起こすと考えられる。このサイレンシング効果は、RNA干渉(RNAi)として知られている(Ralph et al.(2005)Nature Medicine 11:429-433)。RNAiの機構は、長いdsRNAの、約21~25ヌクレオチド(nt)RNAの二重鎖へのプロセシングを含む。これらの産物は、mRNA分解の配列特異的媒介因子である低分子干渉RNAまたはサイレンシングRNA(siRNA)と呼ばれる。分化した哺乳動物細胞では、30bp超のdsRNAがインターフェロン応答を活性化し、タンパク質合成および非特異的mRNA分解の停止をもたらすことが見出されている(Stark et al.,Annu Rev Biochem 67:227-64(1998))。しかしながら、この応答は、21ntのsiRNA二重鎖を使用することによって回避することができ(Elbashir et al.,EMBO J.Dec 3;20(23):6877-88(2001),Hutvagner et al.,Science.Aug 3,293(5531):834-8.Eupub Jul 12(2001))、培養された哺乳動物細胞において遺伝子機能を分析することを可能にする。
【0316】
NOIおよびポリヌクレオチド
本発明のポリヌクレオチドは、DNAまたはRNAを含み得る。本発明のポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖であり得る。遺伝暗号の縮重の結果として、多数の異なるポリヌクレオチドが同じポリペプチドをコードすることができることが当業者によって理解されるであろう。さらに、日常的な技術を使用して、本発明のポリペプチドがその中において発現されるべき任意の特定の宿主生物のコドン使用を反映するために、当業者は、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド配列に影響を及ぼさないヌクレオチド置換を行い得ることを理解されたい。
【0317】
ポリヌクレオチドは、当技術分野で利用可能な任意の方法によって修飾され得る。このような修飾は、本発明のポリヌクレオチドのインビボでの活性または寿命を増強するために行われ得る。
【0318】
DNAポリヌクレオチドなどのポリヌクレオチドは、組換え的に、合成的に、または当業者に利用可能な任意の手段によって作製され得る。DNAポリヌクレオチドなどのポリヌクレオチドはまた、標準的な技術によってクローニングされ得る。
【0319】
組換え手段を使用して、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)クローニング技術を使用して、一般に、より長いポリヌクレオチドが作製されるであろう。これは、クローニングすることが望まれる標的配列に隣接する(例えば、約15~30ヌクレオチドの)プライマーの対を作製すること、プライマーを動物またはヒト細胞から得られたmRNAまたはcDNAと接触させること、所望の領域の増幅をもたらす条件下でPCRを行うこと、増幅された断片を(例えば、反応混合物をアガロースゲルで精製することによって)単離すること、および増幅されたDNAを回収することを含む。プライマーは、増幅されたDNAを適切なベクター中にクローニングすることができるように、適切な制限酵素認識部位を含有するように設計され得る。
【0320】
主要スプライスドナー
RNAスプライシングは、5つの小さな核リボ核タンパク質(snRNP)から構成されるスプライソソームと呼ばれる大きなRNA-タンパク質複合体によって触媒される。イントロンとエクソンの間の境界は、プレmRNA内の特定のヌクレオチド配列によって印が付けられており、スプライシングが起こる場所を表す。このような境界は、「スプライス部位」と呼ばれる。「スプライス部位」という用語は、切断されるのにおよび/または別のスプライス部位に連結されるのに適していると真核細胞のスプライシング機構によって認識されることができるポリヌクレオチドを指す。
【0321】
スプライス部位は、プレmRNA転写物中に存在するイントロンの切除を可能にする。典型的には、5’スプライス境界は、「スプライスドナー部位」または「5’スプライス部位」と呼ばれ、3’スプライス境界は、「スプライスアクセプタ部位」または「3’スプライス部位」と呼ばれる。スプライス部位としては、例えば、天然に存在するスプライス部位、操作されたもしくは合成スプライス部位、カノニカルもしくはコンセンサススプライス部位、および/または非カノニカルスプライス部位、例えば潜在的スプライス部位が挙げられる。
【0322】
スプライスアクセプタ部位は、一般に、3つの別個の配列要素:分岐点または分岐部位、ポリピリミジン鎖およびアクセプタコンセンサス配列からなる。真核生物における分岐点コンセンサス配列は、YNYTRAC(ここで、Yはピリミジンであり、Nは任意のヌクレオチドであり、Rはプリンである)である。3’アクセプタスプライス部位コンセンサス配列は、YAG(Yはピリミジンである)である(例えば、Griffiths et al.,eds.,Modern Genetic Analysis,2nd edition,W.H.Freeman and Company,New York(2002)を参照)。3’スプライスアクセプタ部位は、典型的にはイントロンの3’末端に位置する。
【0323】
したがって、主要スプライスドナー部位は、本発明において使用するためのレンチウイルスベクターのRNAゲノムをコードするヌクレオチド配列において不活性化され得る。
【0324】
一局面において、本発明は、本明細書に記載されている本発明による核酸配列であって、該核酸配列はレンチウイルスベクターのRNAゲノム内に含まれ、レンチウイルスベクターのRNAゲノム内の主要スプライスドナー部位は不活性化されている、例えば変異または欠失されている、核酸配列も提供する。
【0325】
一局面において、本発明は、本明細書に記載されている本発明による核酸配列であって、該核酸配列はレンチウイルスベクターのRNAゲノムに機能的に連結されており、レンチウイルスベクターのRNAゲノム内の主要スプライスドナー部位は不活性化されている、例えば変異または欠失されている、核酸配列も提供する。
【0326】
一局面において、レンチウイルスベクターのRNAゲノムをコードするヌクレオチド配列であって、前記レンチウイルスベクターのRNAゲノム中の主要スプライスドナー部位は不活性化されている、例えば変異または欠失されている、ヌクレオチド配列が提供される。
【0327】
「カノニカルスプライス部位」または「コンセンサススプライス部位」という用語は互換的に使用され得、種間で保存されているスプライス部位を指す。
【0328】
真核生物RNAスプライシングにおいて使用される5’ドナースプライス部位および3’アクセプタスプライス部位のコンセンサス配列は、当技術分野において周知である。これらのコンセンサス配列は、イントロンの各末端にほぼ不変のジヌクレオチド:イントロンの5’末端にGTおよびイントロンの3’末端にAGを含む。
【0329】
カノニカルスプライスドナー部位コンセンサス配列は、(DNAの場合)AG/GTRAGT(ここで、Aはアデノシンであり、Tはチミンであり、Gはグアニンであり、Cはシトシンであり、Rはプリンであり、「/」は切断部位を示す。)であり得る。特に、例えばvRNAパッケージング領域内の二次構造などの他の制約が同じ配列に課されるウイルスゲノムにおいて、スプライスドナーが、このコンセンサスから逸脱し得ることは当技術分野において周知である。非カノニカルスプライス部位も当技術分野において周知であるが、カノニカルスプライスドナーコンセンサス配列と比較してまれに生じる。
【0330】
「主要スプライスドナー部位」とは、典型的にはウイルスベクターヌクレオチド配列の5’領域中に位置する天然のウイルスRNAパッケージング配列内にコードされ、組み込まれた、ウイルスベクターゲノム中の第1の(優位な(dominant))スプライスドナー部位を意味する。
【0331】
一局面において、レンチウイルスベクターのRNAゲノムをコードするヌクレオチド配列は、活性な主要スプライスドナー部位を含有しない、すなわち、スプライシングは、前記ヌクレオチド配列中の主要スプライスドナー部位から生じず、主要スプライスドナー部位からのスプライシング活性は除去されている。
【0332】
主要スプライスドナー部位は、レンチウイルスゲノムの5’パッケージング領域中に位置する。
【0333】
HIV-1ウイルスの場合には、主要スプライスドナーコンセンサス配列は(DNAの場合)TG/GTRAGTである(ここで、Aはアデノシンであり、Tはチミンであり、Gはグアニンであり、Cはシトシンであり、Rはプリンであり、「/」は切断部位を示す。)。
【0334】
本発明の一局面において、スプライスドナー領域、すなわち変異前に主要スプライスドナー部位を含むベクターゲノムの領域は、以下の配列:
GGGGCGGCGACTGGTGAGTACGCCAAAAAT(配列番号94)
を有し得る。
【0335】
本発明の一局面において、変異されたスプライスドナー領域は、配列:
GGGGCGGCGACTGCAGACAACGCCAAAAAT(配列番号95-MSD-2KO)
を含み得る。
【0336】
本発明の一局面において、変異されたスプライスドナー領域は、配列:
GGGGCGGCGAGTGGAGACTACGCCAAAAAT(配列番号104-MSD-2KOv2)
を含み得る。
【0337】
本発明の一局面において、変異されたスプライスドナー領域は、配列:
GGGGAAGGCAACAGATAAATATGCCTTAAAAT(配列番号105-MSD-2KOm5)
を含み得る。
【0338】
本発明の一局面において、修飾の前に、スプライスドナー領域は、以下の配列:
GGCGACTGGTGAGTACGCC(配列番号102)
を含み得る。
【0339】
この配列は、本明細書では「ステムループ2」領域(SL2)とも呼ばれる。この配列は、ベクターゲノムのスプライスドナー領域中にステムループ構造を形成し得る。本発明の一局面において、この配列(SL2)は、本明細書に記載の本発明によるヌクレオチド配列から欠失され得る。
【0340】
したがって、本発明は、SL2を含まないヌクレオチド配列を包含する。本発明は、配列番号102による配列を含まないヌクレオチド配列を包含する。
【0341】
本発明の一局面において、主要スプライスドナー部位は、以下のコンセンサス配列を有し得、ここで、Rはプリンであり、「/」は切断部位である:
TG/GTRAGT(配列番号96)
一局面において、Rはグアニン(G)であり得る。
【0342】
本発明の一局面において、主要スプライスドナーおよび潜在的スプライスドナー領域は、以下のコア配列を有し得、「/」は、主要スプライスドナーおよび潜在的スプライスドナー部位における切断部位である:
/GTGA/GTA(配列番号106)。
【0343】
本発明の一局面において、MSDを変異されたベクターゲノムは、主要スプライスドナーおよび潜在的スプライスドナー「領域」(配列番号106)中に少なくとも2つの変異を有し得、第1および第2の「GT」ヌクレオチドは、それぞれ主要スプライスドナーおよび潜在的スプライスドナーヌクレオチドのすぐ3’にある。
【0344】
本発明の一局面において、主要スプライスドナーコンセンサス配列はCTGGT(配列番号97)である。主要スプライスドナー部位は、配列CTGGTを含有し得る。
【0345】
一局面において、ヌクレオチド配列は、スプライス部位の不活性化の前に、配列番号94、96、97、102、103および/または106のいずれかに記載の配列を含む。
【0346】
一局面において、ヌクレオチド配列は、不活性化されなければ配列番号94のヌクレオチド13および14に対応するヌクレオチドの間に切断部位を有する不活性化された主要スプライスドナー部位を含む。
【0347】
本明細書に記載の本発明によれば、ヌクレオチド配列は、不活性な潜在的スプライスドナー部位も含有する。一局面において、ヌクレオチド配列は、主要スプライスドナー部位(の3’)に隣接する活性な潜在的スプライスドナー部位を含有しない、すなわち、隣接する潜在的スプライスドナー部位からスプライシングが生じず、潜在的スプライスドナー部位からのスプライシングが除去されている。
【0348】
「潜在的スプライスドナー部位」という用語は、通常はスプライスドナー部位として機能しない、または隣接配列の状況(例えば、近くの「好ましい」スプライスドナーの存在)のためにスプライスドナー部位としてより低い効率で利用されるが、隣接配列の変異(例えば、近くの「好ましい」スプライスドナーの変異)によってより効率的に機能するスプライスドナー部位になるように活性化され得る核酸配列を指す。
【0349】
一局面において、潜在的スプライスドナー部位は、主要スプライスドナーの3’の第1の潜在的スプライスドナー部位である。
【0350】
一局面において、潜在的スプライスドナー部位は、主要スプライスドナー部位の3’側に、主要スプライスドナー部位の6ヌクレオチド以内にある。好ましくは、潜在的スプライスドナー部位は、主要スプライスドナー切断部位の4または5、好ましくは4ヌクレオチド以内にある。
【0351】
本発明の一局面において、潜在的スプライスドナー部位は、コンセンサス配列TGAGT(配列番号103)を有する。
【0352】
一局面において、ヌクレオチド配列は、不活性化されなければ配列番号94のヌクレオチド17および18に対応するヌクレオチドの間に切断部位を有する不活性化された潜在的スプライスドナー部位を含む。
【0353】
本発明の一局面において、主要スプライスドナー部位および/または隣接する潜在的スプライスドナー部位は、「GT」モチーフを含有する。本発明の一局面において、主要スプライスドナー部位および隣接する潜在的スプライスドナー部位の両方が、変異されている「GT」モチーフを含有する。変異されたGTモチーフは、主要スプライスドナー部位および隣接する潜在的スプライスドナー部位の両方からのスプライス活性を不活性化し得る。このような変異の例は、本明細書では「MSD-2KO」と呼ばれる。
【0354】
一局面において、スプライスドナー領域は、以下の配列:
CAGACA(配列番号98)
を含み得る。
【0355】
例えば、一局面において、変異されたスプライスドナー領域は、以下の配列:
GGCGACTGCAGACAACGCC(配列番号99)
を含み得る。
【0356】
不活性化変異のさらなる例は、本明細書では「MSD-2KOv2」と呼ばれる。
【0357】
一局面において、変異されたスプライスドナー領域は、以下の配列:
GTGGAGACT(配列番号100)
を含み得る。
【0358】
例えば、一局面において、変異されたスプライスドナー領域は、以下の配列:
GGCGAGTGGAGACTACGCC(配列番号101)
を含み得る。
【0359】
例えば、一局面において、変異されたスプライスドナー領域は、以下の配列:
AAGGCAACAGATAAATATGCCTT(配列番号107)
を含み得る。
【0360】
一局面において、上記のステムループ2領域は、スプライスドナー領域から欠失され得、主要スプライスドナー部位および隣接する潜在的スプライスドナー部位の両方の不活性化をもたらす。このような欠失は、本明細書では「ΔSL2」と呼ばれる。
【0361】
主要スプライスドナー部位および隣接する潜在的スプライスドナー部位を不活性化するために、様々な異なるタイプの変異を核酸配列中に導入することができる。
【0362】
一局面において、変異は、スプライス領域中のスプライシング活性を消失または抑制するための機能的変異である。本明細書に記載のヌクレオチド配列は、配列番号94、96、97、102、103および/または106のいずれか中のヌクレオチドのいずれかに変異または欠失を含有し得る。
【0363】
適切な変異は当業者に公知であり、本明細書に記載されている。
【0364】
例えば、核酸配列中に点変異を導入することができる。本明細書で使用される「点変異」という用語は、単一のヌクレオチドへの任意の変化を指す。点変異には、例えば、欠失、トランジションおよびトランスバージョンが含まれ、タンパク質コード配列内に存在する場合、これらは、ナンセンス変異、ミスセンス変異、またはサイレント変異として分類することができる。「ナンセンス」変異は終止コドンを生成する。「ミスセンス」変異は、異なるアミノ酸をコードするコドンを生成する。「サイレント」変異は、タンパク質の機能を変化させない同一のアミノ酸または異なるアミノ酸のいずれかをコードするコドンを生成する。潜在的スプライスドナー部位を含む核酸配列中には、1つまたはそれより多くの点変異を導入することができる。例えば、潜在的スプライス部位を含む核酸配列は、その中に2つまたはそれより多くの点変異を導入することによって変異させることができる。
【0365】
スプライスドナー領域からのスプライシングの減衰を達成するために、主要スプライスドナーおよび潜在的スプライスドナー部位を含む核酸配列内のいくつかの位置に少なくとも2つの点変異を導入することができる。一局面において、変異は、スプライスドナー切断部位における4つのヌクレオチド内にあり得、カノニカルスプライスドナーコンセンサス配列では、これはA1G2/G3T4であり、「/」は切断部位である。特に、例えばvRNAパッケージング領域内の二次構造などの他の制約が同じ配列に課されるウイルスゲノムにおいて、スプライスドナー切断部位が、このコンセンサスから逸脱し得ることは当技術分野において周知である。G3T4ジヌクレオチドは、一般に、カノニカルスプライスドナーコンセンサス配列内の最も可変性が少ない配列であり、G3およびまたはT4への変異が最大の減衰効果を達成する可能性が最も高いことは周知である。例えば、HIV-1ウイルスベクターゲノム中の主要スプライスドナー部位については、これはT1G2/G3T4であり得、「/」は切断部位である。例えば、HIV-1ウイルスベクターゲノム中の潜在的スプライスドナー部位については、これはG1A2/G3T4であり得、「/」は切断部位である。さらに、(1または複数の)点変異は、スプライスドナー部位に隣接して導入することができる。例えば、点変異は、スプライスドナー部位の上流または下流に導入することができる。主要スプライスドナー部位および/または潜在的スプライスドナー部位を含む核酸配列が、その中に複数の点変異を導入することによって変異される態様において、点変異は、潜在的スプライスドナー部位の上流および/または下流に導入することができる。
【0366】
スプライス部位変異体の構築
本発明において使用するためのスプライス部位変異体は、様々な技術を使用して構築され得る。例えば、天然配列の断片への連結を可能にする制限部位に隣接する、変異配列を含有するオリゴヌクレオチドを合成することによって、変異は特定の遺伝子座に導入され得る。連結後、得られた再構築された配列は、所望のヌクレオチド挿入、置換または欠失を有する誘導体を含む。
【0367】
DNA配列の変更を可能にする他の公知の技術には、Gibsonアセンブリ、Golden-gateクローニングおよびIn-fusionなどの組換えアプローチが含まれる。
【0368】
あるいは、必要とされる置換、欠失または挿入に従って変更された特定のコドンを有する変更された配列を提供するために、オリゴヌクレオチド指向部位特異的(またはセグメント特異的)変異誘発手順が使用され得る。スプライス部位変異体の欠失または切断誘導体は、所望の欠失に隣接する便利な制限エンドヌクレアーゼ部位を利用することによっても構築され得る。
【0369】
制限に続いて、突出が埋められ、DNAが再連結され得る。
【0370】
上記の変更を行う例示的な方法は、Sambrook et al.(Molecular cloning:A Laboratory Manual,2d Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)によって開示されている。
【0371】
スプライス部位変異体は、PCR変異誘発、化学的変異誘発、強制的ヌクレオチド誤組み込みによる(例えば、Liao and Wise,1990)、またはランダムに変異誘発されたオリゴヌクレオチドの使用による(Horwitz et al.,1989)化学的変異誘発(Drinkwater and Klinedinst,1986)の技術を利用しても構築され得る。
【0372】
本発明は、レンチウイルスベクターヌクレオチド配列を産生するための方法であって、
(i)本明細書に記載のレンチウイルスベクターのRNAゲノムをコードするヌクレオチド配列を提供する工程;および
前記ヌクレオチド配列中の本明細書に記載の主要スプライスドナー部位および潜在的スプライスドナー部位を変異させる工程
を含む、方法も提供する。
【0373】
改変されたU1との組み合わせ
LV産生中および標的細胞中の両方で異常なスプライシング事象に関与する能力が低下しているため、MSDを変異されたレンチウイルスベクターは、遺伝子治療ベクターとして使用するために現在の標準的なレンチウイルスベクターよりも好ましい。しかしながら、本発明まで、MSDを変異されたベクターの産生は、HIV-1tatタンパク質(第1および第2世代レンチウイルスベクター)の供給に依存してきた、または(第3世代ベクターでは)MSDを変異させることのベクターRNAレベルに対する非安定化効果のために効率がより低かった。安全上の理由から、現在の第3世代LV系中にtatを「再導入」することは望まれず、または正当化されず、その結果、現在のところ、臨床使用が意図されるMSDを変異されたベクターの産生力価の低下に対する解決策は存在しない。
【0374】
本発明者らは、産生中にベクターゲノムRNAの5’パッケージング領域に結合するように指示される改変されたU1snRNAの共発現によって、MSDを変異された第3世代(すなわち、tat非依存性)LVが高力価に産生され得ることを示す。驚くべきことに、これらの改変されたU1snRNAは、5’R領域内の5’ポリAシグナルの存在とは独立した様式で、MSDを変異されたLVの産生力価を増強できることが示され、ポリアデニル化を抑制するための改変されたU1snRNAの他者の使用(いわゆるU1干渉、[Ui])を超える新規な機序を示している。驚くべきことに、改変されたU1snRNAをパッケージング領域の重要な配列に標的化すると、MSDを変異されたLVの力価の最大の増強が生じることが示される。本発明者らは、MSDを変異されたLVの力価の低下がより顕著でないような、および改変されたU1snRNAによるこのようなMSDを変異されたLV変異型の力価の増強が最大であるような、主要スプライスドナー領域内の新規配列変異も開示する。
【0375】
本発明者らは、驚くべきことに、内在性配列(スプライスドナー部位)をもはや標的とせず、vRNA分子内の配列を現在標的とするように改変された、U1snRNAをベースとする非コードRNAを共発現させることによって、レンチウイルスベクターの出力力価を増強できることを見出した。実施例において実証されているように、本発明者らは、前記改変されたU1snRNAによる、(主要スプライスドナーおよび潜在的スプライスドナー部位を含有する)主要スプライスドナー領域内に減衰変異を保有するレンチウイルスベクターの出力力価の相対的増強が、変異されていない主要スプライスドナー領域を含有する標準レンチウイルスベクターより大きいことを示す。
【0376】
実施例において実証されているように、主要スプライスドナー領域内の低下した力価をもたらす幅広い範囲の変異型(点変異、領域欠失および配列置き換え)を有するベクターゲノムが、改変されたU1snRNAと組み合わせて使用され得る。このアプローチは、改変されたU1snRNAをベクター産生中に他のベクター成分とともに共発現させることを含み得る。改変されたU1snRNAは、ベクターゲノムvRNA内の標的配列に相補的な異種配列で置き換えることによって、コンセンサススプライスドナー部位への結合が除去されるように設計される。本発明は、標的配列および相補性長、設計および発現の様式を含む、改変されたU1snRNAの様々な適用の様式および最適な特徴を記載する。
【0377】
本明細書に記載されている本発明の一局面において、ベクターは改変されたU1snRNAと組み合わせて使用され得る。これは、以下でさらに論述されている。
【0378】
スプライシングおよびポリアデニル化は、特に大部分のタンパク質をコードする転写物が複数のイントロンを含有する高等真核生物において、mRNA成熟のための重要な過程である。スプライシングのために必要とされるプレmRNA内の要素には、5’スプライスドナーシグナル、分岐点を取り囲む配列および3’スプライスアクセプタシグナルが含まれる。これらの3つの要素と相互作用するのはスプライソソームであり、U1snRNAを含む5つの核内低分子RNA(snRNA)および関連する核タンパク質(snRNP)によって形成される。U1snRNAはポリメラーゼIIプロモーターによって発現され、ほとんどの真核細胞中に存在する(Lund et al.,1984,J.Biol.Chem.,259:2013-2021)。ヒトU1snRNA(核内低分子RNA)は164nt長であり、4つのステムループからなる明確に定義された構造を有する(West,S.,2012,Biochemical Society Transactions,40:846-849)。U1snRNAは、その5’末端に、エクソン-イントロン接合部の5’スプライスドナー部位に広く相補的な短い配列を含有する。U1snRNAは、5’スプライスドナー部位への塩基対形成によって、スプライス部位選択およびスプライソソームアセンブリに関与する。スプライシング以外のU1snRNAの公知の機能は、3’末端mRNAプロセシングの調節にあり、初期ポリAシグナルでの未熟なポリアデニル化(ポリA)を抑制する。
【0379】
ヒトU1snRNA(核内低分子RNA)は164nt長であり、4つのステムループからなる明確に定義された構造を有する(
図1参照)。内因性非コードRNAであるU1snRNAは、イントロンスプライシングの初期段階中に、天然スプライスドナーアニーリング配列(例えば、5’-ACUUACCUG-3’)を介してコンセンサス5’スプライスドナー部位(例えば、5’-MAGGURR-3’、ここで、MはAまたはCであり、RはAまたはGである)に結合する。ステムループIは、ポリA抑制のために重要であることが示されているU1A-70Kタンパク質に結合する。ステムループIIはU1Aタンパク質に結合し、5’-AUUUGUGG-3’配列は、ステムループIVとともにU1snRNAプロセシングのために重要であるSmタンパク質に結合する。本明細書で定義されるように、本発明に従って使用するための改変されたU1snRNAは、天然のスプライスドナー標的化/アニーリング配列の部位においてベクターゲノムvRNA分子内の標的配列に相補的な異種配列を導入するように改変されている(
図1参照)。
【0380】
本明細書で使用される場合、「改変されたU1snRNA」、「再指示されたU1snRNA」、「再標的化されたU1snRNA」、「再目的化されたU1snRNA」および「変異体U1snRNA」という用語は、標的遺伝子のスプライシング過程を開始するために使用されるコンセンサス5’スプライスドナー部位配列(例えば、5’-MAGGURR-3’)にもはや相補的でないように改変されたU1snRNAを意味する。したがって、改変されたU1snRNAは、スプライスドナー部位配列(例えば、5’-MAGGURR-3’)にもはや相補的でないように改変されたU1snRNAである。代わりに、改変されたU1snRNAは、MSDを変異されたレンチウイルスベクターゲノム分子のパッケージング領域内に固有のRNA配列(標的部位)を有するヌクレオチド配列、すなわちvRNAのスプライシングと無関係な配列を標的とするまたはこれに相補的であるように設計される。MSDを変異されたレンチウイルスベクターゲノム分子のパッケージング領域内のヌクレオチド配列は、予め選択することができる。したがって、改変されたU1snRNAは、その5’末端がMSDを変異されたレンチウイルスベクターゲノム分子のパッケージング領域内のヌクレオチド配列に相補的であるように改変されたU1snRNAである。その結果、理論に拘束されることを望むものではないが、改変されたU1snRNAは、改変されたU1snRNAの5’末端の短い配列との標的部位配列の相補性に基づいて標的部位配列に結合し、これにより、vRNAを安定化させてMSDを変異されたレンチウイルスベクターの増加した出力ベクター力価をもたらすと考えられる。
【0381】
本明細書で使用される場合、「天然スプライスドナーアニーリング配列」および「天然スプライスドナーターゲティング配列」という用語は、イントロンのコンセンサス5’スプライスドナー部位に広く相補的である内因性U1snRNAの5’末端の短い配列を意味する。天然スプライスドナーアニーリング配列は、5’-ACUUACCUG-3’であり得る。
【0382】
本明細書で使用される場合、「コンセンサス5’スプライスドナー部位」という用語は、例えば配列5’-MAGGURR-3’を有する、スプライス部位選択において使用されるイントロンの5’末端のコンセンサスRNA配列を意味する。
【0383】
本明細書で使用される場合、「MSDを変異されたレンチウイルスベクターゲノム配列のパッケージング領域内のヌクレオチド配列」、「標的配列」および「標的部位」という用語は、改変されたU1snRNAを結合/アニーリングするための標的部位として予め選択された、MSDを変異されたレンチウイルスベクターゲノム分子のパッケージング領域内に特定のRNA配列を有する部位を意味する。
【0384】
本明細書で使用される場合、「MSDを変異されたレンチウイルスベクターゲノム分子のパッケージング領域」および「MSDを変異されたレンチウイルスベクターゲノム配列のパッケージング領域」という用語は、5’U5ドメインの先頭からgag遺伝子に由来する配列の末端までのMSDを変異されたレンチウイルスベクターゲノムの5’末端の領域を意味する。したがって、MSDを変異されたレンチウイルスベクターゲノム分子のパッケージング領域は、5’U5ドメイン、PBSエレメント、ステムループ(SL)1エレメント、SL2エレメント、SL3ψエレメント、SL4エレメントおよびgag遺伝子に由来する配列を含む。複製欠損ウイルスベクター粒子の産生を可能にするために、レンチウイルスベクター産生中に完全なgag遺伝子をゲノムにトランスで与えることは当技術分野において一般的である。トランスで与えられるgag遺伝子のヌクレオチド配列は、野生型ヌクレオチドによってコードされる必要はなく、コドン最適化され得る;重要なことは、トランスで与えられるgag遺伝子の主な属性は、gagおよびgagpolタンパク質をコードし、その発現を指示することである。したがって、レンチウイルスベクター産生中に完全なgag遺伝子がトランスで与えられる場合、「レンチウイルスベクターゲノム分子のパッケージング領域」という用語は、5’U5ドメインの先頭からSL3ψエレメントの「コア」パッケージングシグナルまでのMSDを変異されたレンチウイルスベクターゲノム分子の5’末端の領域、およびATGコドン(SL4内に存在する)からベクターゲノム上に存在する残りのgagヌクレオチド配列の末端までの天然のgagヌクレオチド配列を意味し得ることが当業者によって理解されよう。
【0385】
本明細書で使用される場合、「gag遺伝子に由来する配列」という用語は、ベクターゲノム中に存在し得る、例えば残存し得る、ATGコドンからヌクレオチド688に由来するgag遺伝子の任意の天然の配列を意味する(Kharytonchyk,S.et.al.,2018,J.Mol.Biol.,430:2066-79)。
【0386】
本明細書で使用される場合、「天然スプライスドナーアニーリング配列を包含するU1snRNAの最初の11ヌクレオチド内に異種配列を導入すること」、「3~11位の9つのヌクレオチド内に前記異種配列を導入すること」および「U1snRNAの5’末端の最初の11ヌクレオチド内に異種配列を導入すること」という用語は、U1snRNAの最初の11ヌクレオチドもしくは3~11位の9つのヌクレオチドの全部もしくは一部を前記異種配列で置き換えること、または前記異種配列と同じ配列を有するようにU1snRNAの最初の11ヌクレオチドもしくは3~11位の9つのヌクレオチドを改変することを含む。
【0387】
本明細書で使用される場合、「天然スプライスドナーアニーリング配列内に異種配列を導入すること」および「U1snRNAの5’末端の天然スプライスドナーアニーリング配列内に異種配列を導入すること」という用語は、天然スプライスドナーアニーリング配列の全部もしくは一部を前記異種配列で置き換えること、または前記異種配列と同じ配列を有するように天然スプライスドナーアニーリング配列を改変することを含む。
【0388】
本明細書で使用される場合、「レンチウイルスベクター力価を増強する」という用語は、「レンチウイルスベクター力価を増加させる」、「レンチウイルスベクター力価を回復させる」および「レンチウイルスベクター力価を改善する」を含む。
【0389】
したがって、一態様において、改変されたU1snRNAは、MSDを変異されたレンチウイルスベクターゲノム配列のパッケージング領域内のヌクレオチド配列に結合するように改変されている。
【0390】
いくつかの態様において、改変されたU1snRNAは、MSDを変異されたレンチウイルスベクターゲノムのパッケージング領域内のヌクレオチド配列に相補的な異種配列を導入するために、内因性U1snRNAと比較して5’末端において改変される。
【0391】
いくつかの態様において、改変されたU1snRNAは、MSDを変異されたレンチウイルスベクターゲノムのパッケージング領域内のヌクレオチド配列に相補的な異種配列を天然スプライスドナーアニーリング配列内に導入するために、内因性U1snRNAと比較して5’末端において改変される。
【0392】
改変されたU1snRNAは、天然スプライスドナーアニーリング配列を包含する配列を前記ヌクレオチド配列に相補的な異種配列で置き換えるために、内因性U1snRNAと比較して5’末端において改変され得る。
【0393】
改変されたU1snRNAは、改変されたU1snRNA変異型であり得る。本発明に従って改変されるU1snRNA変異型は、天然に存在するU1snRNA変異型、U1-70Kタンパク質結合を除去するステムループI領域内の変異を含有するU1snRNA変異型、またはU1Aタンパク質結合を除去するステムループII領域内の変異を含有するU1snRNA変異型であり得る。U1-70Kタンパク質結合を除去するステムループI領域内の変異を含有するU1snRNA変異型は、U1_m1またはU1_m2、好ましくはU1A_m1またはU1A_m2であり得る。
【0394】
いくつかの態様において、本明細書に記載の改変されたU1snRNAは、本明細書に記載のU1_256配列の主要なU1snRNA配列[クローバー葉](nt410~562)と少なくとも70%の同一性(適切な少なくとも75%、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性)を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、本発明の改変されたU1snRNAは、本明細書に記載のU1_256配列の主要なU1snRNA配列[クローバー葉](nt410~562)を含む。U1_256配列の主要なU1snRNA配列[クローバー葉](nt410~562)は以下のとおりである。
【0395】
GCAGGGGAGATACCATGATCACGAAGGTGGTTTTCCCAGGGCGAGGCTTATCCATTGCACTCCGGATGTGCTGACCCCTGCGATTTCCCCAAATGTGGGAAACTCGACTGCATAATTTGTGGTAGTGGGGGACTGCGTTCGCGCTTTCCCCTG.(配列番号131)
いくつかの好ましい態様において、天然スプライスドナーアニーリング配列を包含するU1snRNAの最初の11ヌクレオチドは、MSDを変異されたレンチウイルスベクターゲノムのパッケージング領域内のヌクレオチド配列に相補的な異種配列で全部または一部置き換えられ得る。適切には、U1snRNAの最初の11ヌクレオチドの1~11(適切には、2~11、3~11、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11)核酸が、MSDを変異されたレンチウイルスベクターゲノムのパッケージング領域内のヌクレオチド配列に相補的な異種配列で置き換えられる。
【0396】
いくつかの態様において、天然スプライスドナーアニーリング配列は、MSDを変異されたレンチウイルスベクターゲノムのパッケージング領域内のヌクレオチド配列に相補的な異種配列で全部または一部置き換えられ得る。適切には、天然スプライスドナーアニーリング配列の1~11(適切には、2~11、3~11、5~11、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11)核酸が、MSDを変異されたレンチウイルスベクターゲノムのパッケージング領域内のヌクレオチド配列に相補的な異種配列で置き換えられる。好ましい態様において、天然スプライスドナーアニーリング配列全体が、MSDを変異されたレンチウイルスベクターゲノムのパッケージング領域内のヌクレオチド配列に相補的な異種配列で置き換えられる、すなわち、天然スプライスドナーアニーリング配列(例えば5’-ACUUACCUG-3’)は、本明細書に記載の異種配列で完全に置き換えられる。
【0397】
いくつかの態様において、MSDを変異されたレンチウイルスベクターゲノムのパッケージング領域内のヌクレオチド配列に相補的な異種配列は、前記ヌクレオチド配列に対して相補性の少なくとも7つのヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、MSDを変異されたレンチウイルスベクターゲノムのパッケージング領域内のヌクレオチド配列に相補的な異種配列は、前記ヌクレオチド配列に対して相補性の少なくとも9つのヌクレオチドを含む。好ましくは、本発明で使用するための異種配列は、前記ヌクレオチド配列に対して相補性の15のヌクレオチドを含む。
【0398】
適切には、本発明において使用するための異種配列は、7~25(適切には、7~20、7~15、9~15、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25)のヌクレオチドを含み得る。
【0399】
適切には、本発明において使用するための異種配列は、25のヌクレオチドを含み得る。
【0400】
いくつかの態様において、MSDを変異されたレンチウイルスベクターゲノムのパッケージング領域内のヌクレオチド配列は、5’U5ドメイン、PBSエレメント、SL1エレメント、SL2エレメント、SL3ψエレメント、SL4エレメントおよび/またはgag遺伝子に由来する配列内に位置する。適切には、MSDを変異されたレンチウイルスベクターゲノムのパッケージング領域内のヌクレオチド配列は、SL1、SL2および/またはSL3ψエレメント内に位置する。いくつかの好ましい態様において、MSDを変異されたレンチウイルスベクターゲノムのパッケージング領域内のヌクレオチド配列は、SL1および/またはSL2エレメント内に位置する。いくつかの特に好ましい態様において、MSDを変異されたレンチウイルスベクターゲノムのパッケージング領域内のヌクレオチド配列は、SL1エレメント内に位置する。
【0401】
いくつかの態様において、MSDを変異されたレンチウイルスベクターゲノムのパッケージング領域内のヌクレオチド配列は、少なくとも7つのヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、MSDを変異されたレンチウイルスベクターゲノムのパッケージング領域内のヌクレオチド配列は、少なくとも9つのヌクレオチドを含む。適切には、MSDを変異されたレンチウイルスベクターゲノムのパッケージング領域内のヌクレオチド配列は、7~25(適切には、7~20、7~15、9~15、7、8、9、10、11、12、13、14または15)ヌクレオチドを含む。
【0402】
好ましくは、MSDを変異されたレンチウイルスベクターゲノムのパッケージング領域内のヌクレオチド配列は、15のヌクレオチドを含む。
【0403】
MSDを変異されたレンチウイルスベクターゲノムのパッケージング領域内のヌクレオチド配列への本明細書に記載の改変されたU1snRNAの結合は、本明細書に記載の改変されたU1snRNAの非存在下でのレンチウイルスベクター産生と比較して、レンチウイルスベクター産生中のレンチウイルスベクター力価を増強し得る。したがって、本明細書に記載の改変されたU1snRNAの存在下でのレンチウイルスベクターの産生は、本明細書に記載の改変されたU1snRNAの非存在下でのレンチウイルスベクター産生と比較してレンチウイルスベクター力価を増強する。レンチウイルスベクター力価の測定のための適切なアッセイは、本明細書に記載のとおりである。適切には、レンチウイルスベクターの産生は、前記改変されたU1snRNAの、gag、env、revおよびレンチウイルスベクターのRNAゲノムを含むベクター成分との同時発現を含む。レンチウイルスベクターのRNAゲノムは、MSD-2KORNAゲノムであり得る。いくつかの態様において、レンチウイルスベクター力価の増強は、機能的5’LTRポリA部位の存在下または非存在下において起こる。いくつかの態様において、本発明の改変されたU1snRNAによって媒介されるレンチウイルスベクター力価の増強は、ベクターゲノムの5’LTRにおけるポリA部位抑制から独立している。
【0404】
いくつかの態様において、MSDを変異されたレンチウイルスベクターゲノムのパッケージング領域内のヌクレオチド配列への本明細書に記載の改変されたU1snRNAの結合は、本明細書に記載の改変されたU1snRNAの非存在下でのレンチウイルスベクター産生と比較して、レンチウイルスベクター産生中のレンチウイルスベクター力価を少なくとも30%増加し得る。適切には、MSDを変異されたレンチウイルスベクターゲノムのパッケージング領域内のヌクレオチド配列への本明細書に記載の改変されたU1snRNAの結合は、本明細書に記載の改変されたU1snRNAの非存在下でのMSDを変異されたレンチウイルスベクター産生と比較して、産生中のMSDを変異されたレンチウイルスベクター力価を少なくとも35%(適切には、少なくとも40%、45%、50%、60%、70%、100%、150%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%、550%、600%、650%、700%、750%、800%、850%、900%、950%、1,000%、2,000%、5,000%、または10,000%)増加させ得る。
【0405】
本明細書に記載の改変されたU1snRNAは、(a)改変されたU1snRNAを結合するためのMSDを変異されたレンチウイルスベクターゲノムのパッケージング領域内の標的部位(予め選択されたヌクレオチド部位)を選択すること、および(b)U1snRNAの5’末端の天然スプライスドナーアニーリング配列(例えば5’-ACUUACCUG-3’)内に、工程(a)において選択された予め選択されたヌクレオチド部位に相補的な異種配列を導入することによって設計され得る。
【0406】
分子生物学における従来の技術を使用して、内因性U1snRNAの5’末端の天然スプライスドナーアニーリング配列(例えば5’-ACUUACCUG-3’)内にまたはそれに代えて標的部位に相補的な異種配列を導入することは、当業者の能力の範囲内である。一般的に言えば、適切な日常的方法には、特異的変異誘発または相同組換えによる置換が含まれる。
【0407】
分子生物学における従来の技術を使用して、標的部位に相補的な異種配列と同じ配列を有するように内因性U1snRNAの5’末端の天然スプライスドナーアニーリング配列(例えば5’-ACUUACCUG-3’)を改変することは、当業者の能力の範囲内である。例えば、適切な方法には、特異的変異誘発またはランダム変異誘発とそれに続く本明細書に記載の改変されたU1snRNAを与える変異の選択が含まれる。
【0408】
本明細書に記載の改変されたU1snRNAは、当技術分野で一般的に公知の方法に従って製造することができる。例えば、改変されたU1snRNAは、化学合成または組換えDNA/RNA技術によって製造することができる。
【0409】
一局面において、改変されたU1snRNAをコードするヌクレオチド配列は、異なるヌクレオチド配列上、例えば異なるプラスミド上に存在し得る。
【0410】
従来の分子および細胞生物学技術を使用して、本明細書に記載の改変されたU1snRNAをコードするヌクレオチド配列を細胞中に導入することは、当業者の能力の範囲内である。
【0411】
ベクター
本発明の別の局面は、本発明の核酸配列を含むウイルスベクターに関する。
【0412】
ベクターは、ある環境から別の環境への実体の移動を可能にする、または容易にするツールである。本発明によれば、例として、組換え核酸技術において使用されるいくつかのベクターは、核酸のセグメント(例えば、異種cDNAセグメントなどの異種DNAセグメント)などの実体を標的細胞中に導入することを可能にする。ベクターは、細胞内で異種核酸(DNAまたはRNA)を維持するという目的、またはDNAもしくはRNAのセグメントを含むベクターの複製もしくは核酸のセグメントによってコードされるタンパク質の発現を促進するという目的を果たし得る。
【0413】
本発明のベクターは、例えば、複製起点とともに提供され、前記ポリヌクレオチドの発現のためのプロモーターおよびプロモーターの調節因子とともに提供されてもよいウイルスベクターであり得る。ベクターは、1つまたはそれより多くの選択可能なマーカー遺伝子(例えば、ネオマイシン耐性遺伝子)および/または追跡可能なマーカー遺伝子(例えば、GFPをコードする遺伝子)を含有し得る。ベクターは、例えば、標的細胞を感染および/または形質導入するために使用され得る。
【0414】
本発明のベクターは、インビトロで適合性のある標的細胞中でNOIを複製するために使用され得る。したがって、本発明は、本発明のベクターを適合性のある標的細胞中にインビトロで導入すること、およびNOIの発現をもたらす条件下で標的細胞を増殖させることによってインビトロでタンパク質を作製する方法を提供する。タンパク質は、当技術分野において周知の方法によって標的細胞から回収され得る。適切な標的細胞には、哺乳動物細胞株および他の真核細胞株が含まれる。
【0415】
ベクターは発現ベクターであり得る。本明細書に記載の発現ベクターは、転写され得る配列を含有する核酸の領域を含む。したがって、mRNA、tRNAおよびrRNAをコードする配列は、この定義内に含まれる。好ましくは、発現ベクターは、標的細胞によるコード配列の発現を提供することができる制御配列に機能的に連結された本発明のポリヌクレオチドを含む。
【0416】
ウイルスベクター
本発明の一態様において、ベクターはウイルスベクターである。ウイルスベクターは、ベクター、ベクタービリオンまたはベクター粒子とも呼ばれ得る。
【0417】
一態様において、ウイルスベクターは、本明細書に記載のウイルスベクター産生系によって産生される。
【0418】
一態様において、ウイルスベクターは、1つより多くのNOIを含み、少なくとも1つのNOIは、本明細書に記載のtbsまたはその一部に機能的に連結されている。
【0419】
別の態様において、ウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルスまたはバキュロウイルスに由来する。
【0420】
本発明の抑制系は、任意のウイルスベクター系に対して有益であることが予想される。この系は、関心対象のヌクレオチドが、例えばウイルスベクター産生細胞に対してまたはビリオン集合の間に有害な作用を引き起こす特定の用途を見出すであろう。
【0421】
別の態様において、レトロウイルスは泡沫状ウイルスに由来する。
【0422】
別の態様において、レトロウイルスベクターはレンチウイルスに由来する。
【0423】
別の態様において、レンチウイルスベクターは、HIV-1、HIV-2、SIV、FIV、BIV、EIAV、CAEVまたはビスナレンチウイルスに由来する。
【0424】
ベクター力価
当業者は、ウイルスベクターの力価を決定するいくつかの異なる方法が存在することを理解するであろう。力価は、しばしば、形質導入単位/mL(TU/mL)として記載される。力価は、感染性粒子の数を増加させることによって、およびベクター調製物の比活性を増加させることによって増加させ得る。
【0425】
レトロウイルスおよびレンチウイルスベクター
本発明のレトロウイルスベクターは、任意の適切なレトロウイルスに由来し得る、または任意の適切なレトロウイルスから誘導可能であり得る。多数の異なるレトロウイルスが同定されている。例としては、マウス白血病ウイルス(MLV)、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)、マウス乳癌ウイルス(MMTV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、藤浪肉腫ウイルス(FuSV)、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)、FBRマウス骨肉腫ウイルス(FBRMSV)、モロニーマウス肉腫ウイルス(Mo-MSV)、エーベルソンマウス白血病ウイルス(A-MLV)、トリ骨髄細胞腫症ウイルス-29(MC29)およびトリ赤芽球症ウイルス(AEV)が挙げられる。レトロウイルスの詳細なリストは、Coffin et al.(1997)’’Retroviruses’’,Cold Spring Harbour Laboratory Press Eds:JM Coffin,SM Hughes,HE Varmus pp 758-763に見出すことができる。
【0426】
レトロウイルスは、2つのカテゴリー、すなわち「単純」および「複合」に大別され得る。レトロウイルスはさらに7つの群に分けられ得る。これらの群のうちの5つは、発癌能を有するレトロウイルスに相当する。残りの2つの群は、レンチウイルスおよびスプーマウイルスである。これらのレトロウイルスの総説は、Coffinら(1997)同書に提示されている。
【0427】
レトロウイルスおよびレンチウイルスのゲノムの基本構造は、ゲノムをパッケージングすることを可能にするパッケージングシグナル、プライマー結合部位、標的細胞ゲノム中への組み込みを可能にする組み込み部位、ならびにパッケージング成分をコードするgag/polおよびenv遺伝子-これらはウイルス粒子の集合に必要とされるポリペプチドである、がその間またはその中に位置する5’LTRおよび3’LTRなどの多くの共通の特徴を共有する。レンチウイルスは、HIVにおけるrev遺伝子およびRRE配列など、感染した標的細胞の核から細胞質への組み込まれたプロウイルスのRNA転写物の効率的な搬出を可能にするさらなる特徴を有する。
【0428】
プロウイルスでは、これらの遺伝子は、両端において、末端反復配列(LTR)と呼ばれる領域によって隣接されている。LTRは、プロウイルスの組み込みおよび転写を担う。LTRはエンハンサー-プロモーター配列としても機能し、ウイルス遺伝子の発現を制御することができる。
【0429】
LTR自体は、U3、RおよびU5と呼ばれる3つの要素に分けることができる同一の配列である。U3は、RNAの3’末端に固有の配列に由来する。RはRNAの両端で繰り返される配列に由来し、U5はRNAの5’末端に固有の配列に由来する。3つの要素のサイズは、異なるレトロウイルス間でかなり異なり得る。
【0430】
本発明の典型的なレトロウイルスベクターでは、複製のために必須の1つまたはそれより多くのタンパク質コード領域の少なくとも一部がウイルスから除去され得る。例えば、gag/polおよびenvは存在しなくてもよく、または機能しなくてもよい。これにより、ウイルスベクターが複製欠損となる。
【0431】
標的非分裂細胞を形質導入することができる、および/またはそのゲノムを宿主ゲノム中に組み込むことができる本明細書に記載の候補核酸結合配列を含むベクターを作製するために、ウイルスゲノムの一部はまた、ベクターゲノム内の調節制御領域およびレポーター遺伝子に機能的に連結された本明細書に記載の候補核酸結合配列をコードするライブラリーによって置き換えられ得る。
【0432】
レンチウイルスは、レトロウイルスというより大きな群の一部である。レンチウイルスの詳細なリストは、Coffin et al.(1997)’’Retroviruses’’,Cold Spring Harbour Laboratory Press Eds:JM Coffin,SM Hughes,HE Varmus pp 758-763)に見出すことができる。手短に言えば、レンチウイルスは、霊長類群と非霊長類群に分けることができる。霊長類レンチウイルスの例には、ヒト自己免疫不全症候群(AIDS)の原因因子であるヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびサル免疫不全ウイルス(SIV)が含まれるが、これらに限定されない。非霊長類レンチウイルス群には、原型「遅発性ウイルス」であるビスナ/マエディウイルス(VMV)の他に、関連するヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)およびウシ免疫不全ウイルス(BIV)が含まれる。
【0433】
レンチウイルス科は、レンチウイルスが分裂細胞および非分裂細胞の両方に感染する能力を有するという点でレトロウイルスとは異なる(Lewis et al(1992)EMBO J11(8):3053-3058およびLewis and Emerman(1994)J Virol 68(1):510-516)。対照的に、MLVなどの他のレトロウイルスは、例えば筋肉、脳、肺および肝臓組織を構成する細胞などの非分裂細胞またはゆっくりと分裂する細胞に感染することができない。
【0434】
レンチウイルスベクターは、本明細書で使用される場合、レンチウイルスから誘導可能な少なくとも1つの成分部分を含むベクターである。好ましくは、その成分部分は、ベクターが細胞に感染する、遺伝子を発現する、または複製される生物学的機構に関与する。
【0435】
レンチウイルスベクターは、霊長類レンチウイルス(例えば、HIV-1)または非霊長類レンチウイルスのいずれかに由来し得る。
【0436】
非霊長類レンチウイルスの例は、霊長類に自然に感染しないレンチウイルス科の任意のメンバーであり得、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、マエディビスナウイルス(MVV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)を含み得る。
【0437】
一般的に言えば、典型的なレトロウイルスベクター産生系は、必須のウイルスパッケージング機能からのウイルスゲノムの分離を含む。これらの成分は、典型的には、別個のDNA発現カセット(あるいは、プラスミド、発現プラスミド、DNA構築物または発現構築物として知られる)上で産生細胞に提供される。
【0438】
ベクターゲノムは、NOIを含む。ベクターゲノムは、典型的には、パッケージングシグナル(ψ)、中央ポリプリン鎖(cppt)、rev応答エレメント(RRE)NOIを有する内部発現カセットを必要とし、転写後エレメント(PRE)、典型的には中央ポリプリン鎖(cppt)、3’-ppuおよび自己不活型(SIN)LTRを必要とすることがある。R-U5領域は、ベクターゲノムRNAおよびNOImRNAの両方の正しいポリアデニル化、ならびに逆転写の過程に必要とされる。ベクターゲノムは、国際公開第2003/064665号に記載されているように、オープンリーディングフレームを含んでもよい。
【0439】
一局面において、ヌクレオチド配列は、ベクター産生のためのtat非依存性の系におけるレンチウイルスベクターでの使用に適し得る。本明細書に記載されるように、第3世代レンチウイルスベクターは、tat非依存性であり、本発明によるヌクレオチド配列は、第3世代レンチウイルスベクターの状況において使用され得る。本発明の一局面において、tatはレンチウイルスベクター産生系に提供されず、例えば、tatはトランスで提供されない。一局面において、本明細書に記載の細胞またはベクターまたはベクター産生系は、tatタンパク質を含まない。
【0440】
パッケージング機能には、gag/pol遺伝子およびenv遺伝子が含まれる。これらは、産生細胞によるベクター粒子の産生のために必要とされる。これらの機能をゲノムにトランスで提供することにより、複製欠損ウイルスの産生が容易になる。
【0441】
ガンマレトロウイルスベクターのための産生系は、典型的には、ゲノム、gag/polおよびenv発現構築物を必要とする3成分系である。HIV-1をベースとするレンチウイルスベクターのための産生系は、さらに、アクセサリー遺伝子revがトランスで提供されること、ベクターゲノムがrev応答配列(RRE)を含むことを必要とする。EIAVをベースとするレンチウイルスベクターは、オープンリーディングフレーム(ORF)が存在する場合、revを必要としない(国際公開第2003/064665号参照)。
【0442】
通常、ベクターゲノムカセット内にコードされる「外部」プロモーター(ベクターゲノムカセットを駆動する)および「内部」プロモーター(NOIカセットを駆動する)はいずれも、他のベクター系成分を駆動するプロモーターと同様に、強力な真核生物またはウイルスプロモーターである。このようなプロモーターの例としては、CMV、EF1α、PGK、CAG、TK、SV40およびユビキチンプロモーターが挙げられる。DNAライブラリーによって生成されるもの(例えば、JeTプロモーター)などの強力な「合成」プロモーターも、転写を駆動するために使用され得る。あるいは、転写を駆動するために、ロドプシン(Rho)、ロドプシンキナーゼ(RhoK)、錐体桿体ホメオボックス含有遺伝子(CRX)、神経網膜特異的ロイシンジッパータンパク質(NRL)、卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)、チロシンヒドロキシラーゼ、神経特異的神経特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター、星状膠細胞特異的グリア線維酸性タンパク質(GFAP)プロモーター、ヒトα1-アンチトリプシン(hAAT)プロモーター、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)、肝臓脂肪酸結合タンパク質プロモーター、Flt-1プロモーター、INF-βプロモーター、Mbプロモーター、SP-Bプロモーター、SYN1プロモーター、WASPプロモーター、SV40/hAlbプロモーター、SV40/CD43、SV40/CD45、NSE/RU5’プロモーター、ICAM-2プロモーター、GPIIbプロモーター、GFAPプロモーター、フィブロネクチンプロモーター、エンドグリンプロモーター、エラスターゼ-1プロモーター、デスミンプロモーター、CD68プロモーター、CD14プロモーターおよびB29プロモーターなどの組織特異的プロモーターが使用され得る。
【0443】
レトロウイルスベクターの産生は、これらのDNA成分による産生細胞の一過性形質移入、または成分が産生細胞ゲノム内に組み込まれている安定なプロデューサ細胞株(PCL)の使用のいずれかを含む(例えば、Stewart,H.J.,M.A.Leroux-Carlucci,C.J.Sion,K.A.MitrophanousおよびP.A.Radcliffe(2009)Gene Ther.16(6):805-814 Epub 2009 Mar 2005)。別のアプローチは、(その中にパッケージング成分が安定に組み込まれている)安定なパッケージング細胞を使用し、次いで必要に応じてベクターゲノムプラスミドに一過性に形質移入することである。本発明のウイルスベクターを作製するために、産生細胞はTRAPを発現することができなければならない。したがって、本発明の一態様において、産生細胞はTRAP構築物を安定に発現するであろう。本発明の別の態様において、産生細胞はTRAP構築物を一過性に発現する。本発明の別の態様において、産生細胞は、TRAP構築物を安定に発現し、また、TRAP構築物を一過性に発現する。
【0444】
TRIP系は主にレトロウイルスベクターを産生することに関して記載されているが、類似の戦略を他のウイルスベクターに適用することができることに留意されたい。
【0445】
本発明の一態様において、ウイルスベクターはEIAVに由来する。EIAVは、レンチウイルスの最も単純なゲノム構造を有し、本発明での使用に特に好ましい。gag/polおよびenv遺伝子に加えて、EIAVは3つの他の遺伝子:tat、revおよびS2をコードする。tatはウイルスLTRの転写活性化因子として作用し(Derse and Newbold(1993)Virology 194(2):530-536およびMaury et al(1994)Virology 200(2):632-642)、revはrev応答エレメント(RRE)を介してウイルス遺伝子の発現を調節し、調和させる(Martarano et al.(1994)J Virol 68(5):3102-3111)。これらの2つのタンパク質の作用機序は、霊長類ウイルスにおける類似の機序と広く類似していると考えられている(Martarano et al.(1994)J Virol 68(5):3102-3111)。S2の機能は未知である。さらに、膜貫通タンパク質の初めにenvコード配列へとスプライシングされるtatの第1のエクソンによってコードされるEIAVタンパク質、Ttmが同定されている。本発明の代替の態様において、ウイルスベクターはHIVに由来する:HIVは、S2をコードしない点でEIAVとは異なるが、EIAVとは異なって、vif、vpr、vpuおよびnefをコードする。
【0446】
「組換えレトロウイルスまたはレンチウイルスベクター」(RRV)という用語は、パッケージング成分の存在下で、標的細胞に感染することができるウイルス粒子中へのRNAゲノムのパッケージングを可能にするのに十分なレトロウイルス遺伝情報を有するベクターを指す。標的細胞の感染には、逆転写および標的細胞ゲノム中への組み込みが含まれ得る。RRVは、ベクターによって標的細胞に送達されるべき非ウイルスコード配列を担持する。RRVは、標的細胞内で感染性レトロウイルス粒子を産生するために独立した複製をすることができない。通常、RRVは、機能的gag/polおよび/もしくはenv遺伝子、ならびに/または複製のために必須の他の遺伝子を欠如する。
【0447】
好ましくは、本発明のRRVベクターは、最小ウイルスゲノムを有する。
【0448】
本明細書で使用される場合、「最小ウイルスゲノム」という用語は、関心対象のヌクレオチド配列を標的細胞に感染させ、形質導入し、送達するために必要とされる機能を付与するのに必須の要素を保持しながら、非必須要素を除去するようにウイルスベクターが操作されていることを意味する。この戦略のさらなる詳細は、国際公開第1998/17815号および国際公開第99/32646号に見出すことができる。最小のEIAVベクターは、tat、revおよびS2遺伝子を欠き、これらの遺伝子のいずれもが、産生系においてトランスで提供されない。最小HIVベクターは、vif、vpr、vpu、tatおよびnefを欠く。
【0449】
しかしながら、産生細胞内でベクターゲノムを産生するために使用される発現プラスミドは、産生細胞/パッケージング細胞中でのゲノムの転写を指示するためにレトロウイルスゲノムに機能的に連結された転写調節制御配列を含むであろう。これらの調節配列は、転写されるレトロウイルス配列に付随する天然の配列、すなわち5’U3領域であり得、または後述するように、別のウイルスプロモーター、例えばCMVプロモーターなどの異種プロモーターであり得る。いくつかのレンチウイルスベクターゲノムは、効率的なウイルス産生のために追加の配列を必要とする。例えば、特にHIVの場合、RRE配列が含まれ得る。しかしながら、RREの必要性(およびトランスで提供されるrevへの依存性)は、コドン最適化によって低減または除去され得る。この戦略のさらなる詳細は、国際公開第2001/79518号に見出すことができる。rev/RRE系と同じ機能を果たす別の配列も公知である。例えば、rev/RRE系の機能的類似体は、マソン・ファイザー・サルウイルス中に見出される。これは恒常的輸送エレメント(CTE)として知られており、感染した細胞中の因子と相互作用すると考えられるゲノム中のRRE型配列を含む。細胞因子は、rev類似体と考えることができる。したがって、CTEは、rev/RRE系の代替として使用され得る。公知であるまたは利用可能になる任意の他の機能的等価物が本発明に適切であり得る。例えば、HTLV-IのRexタンパク質がHIV-1のRevタンパク質を機能的に置き換えることができることも公知である。revおよびRREは、本発明の方法において使用するためのベクター中に存在しなくてもよく、または非機能的であってもよく、代替的なrevおよびRRE、または機能的に等価な系が存在し得る。
【0450】
SINベクター
本発明の方法において使用するためのベクターは、好ましくは、ウイルスエンハンサーおよびプロモーター配列が欠失されている自己不活型(SIN)構成において使用される。SINベクターを作製し、野生型ベクターと同様の有効性で、インビボ、エクスビボまたはインビトロで非分裂標的細胞に形質導入することができる。SINプロウイルス中の末端反復配列(LTR)の転写の不活性化は、vRNAの動員を防止するはずであり、複製能を有するウイルスの形成の可能性をさらに低下させる特徴である。これは、LTRの一切のシス作用効果を排除することによって、内部プロモーターからの遺伝子の調節された発現も可能にするはずである。
【0451】
例として、自己不活型レトロウイルスベクター系は、3’LTRのU3領域内の転写エンハンサーまたはエンハンサーおよびプロモーターを欠失させることによって構築されてきた。一連のベクター逆転写および組み込みの後、これらの変化は、5’および3’LTRの両方中に複製され、転写的に不活性な「プロウイルス」を産生する。しかしながら、このようなベクター中のLTRの内部の(1つまたは複数の)任意のプロモーターは依然として転写的に活性である。この戦略は、内部に配置された遺伝子からの転写に対するウイルスLTR中のエンハンサーおよびプロモーターの影響を排除するために使用されてきた。このような効果には、増加された転写または転写の抑制が含まれる。この戦略は、3’LTRからゲノムDNA中への下流転写を排除するためにも使用され得る。これは、一切の内因性癌遺伝子の偶発的活性化を防ぐことが重要であるヒト遺伝子治療において特に懸念される。Yu et al.,(1986)PNAS 83:3194-98;Marty et al.,(1990)Biochimie 72:885-7;Naviaux et al.,(1996)J.Virol.70:5701-5;Iwakuma et al.,(1999)Virol.261:120-32;Deglon et al.,(2000)Human Gene Therapy 11:179-90。SINレンチウイルスベクターは、米国特許第6,924,123号および米国特許第7,056,699号に記載されている。
【0452】
非複製レンチウイルスベクター
複製欠損レンチウイルスベクターのゲノムにおいて、gag/polおよび/またはenvの配列は、変異され得、非存在であり得、および/または非機能的であり得る。
【0453】
本発明の典型的なレンチウイルスベクターにおいては、ウイルス複製のために必須のタンパク質の1つまたはそれより多くのコード領域の少なくとも一部がベクターから除去され得る。これにより、ウイルスベクターが複製欠損となる。非分裂標的細胞を形質導入することができる、および/またはそのゲノムを標的細胞ゲノム中に組み込むことができるNOIを含むベクターを作製するために、ウイルスゲノムの一部は関心対象のヌクレオチド(NOI)によって置き換えることもできる。
【0454】
一態様において、レンチウイルスベクターは、国際公開第2006/010834号および国際公開第2007/071994号に記載されているような非組込み型ベクターである。
【0455】
さらなる態様において、ベクターは、ウイルスRNAを欠くまたは欠如する配列を送達する能力を有する。さらなる態様において、送達されるべきRNAのパッケージングを確実にするために、送達されるべきRNA上に位置する異種結合ドメイン(gagに対して異種)およびGagまたはGagPol上の同族結合ドメインを使用することができる。これらのベクターはいずれも、国際公開第2007/072056号に記載されている。
【0456】
アデノウイルスベクター
本発明の別の態様において、ベクターはアデノウイルスベクターであり得る。アデノウイルスは、RNA中間体を介して複製しない二本鎖の直鎖DNAウイルスである。それらの遺伝子配列に基づいて6つのサブグループに分けられる、アデノウイルスの50を超える異なるヒト血清型が存在する。
【0457】
アデノウイルスは、ヒトおよび非ヒト起源の幅広い範囲の細胞型のインビボ、エクスビボおよびインビトロでの形質導入が可能な、エンベロープを有さない二本鎖DNAウイルスである。これらの細胞には、気道上皮細胞、肝細胞、筋細胞、心筋細胞、滑膜細胞、初代乳腺上皮細胞および神経細胞などの有糸分裂後に最終分化した細胞が含まれる。
【0458】
アデノウイルスベクターは、非分裂細胞を形質導入することもできる。これは、肺上皮内の罹患した細胞が遅い回転速度を有する嚢胞性線維症などの疾患にとって極めて重要である。実際に、罹患した成人嚢胞性線維症患者の肺内への嚢胞性線維症輸送体(CFTR)のアデノウイルス媒介性導入を利用したいくつかの試験が進行中である。
【0459】
アデノウイルスは、遺伝子治療および異種遺伝子の発現のためのベクターとして使用されてきた。大きな(36kb)ゲノムは、最大8kbの外来挿入DNAを収容することができ、相補細胞株中で効率的に複製して、最大1012形質導入単位/mlの非常に高い力価を生成することができる。したがって、アデノウイルスは、初代非複製細胞における遺伝子の発現を研究するための最良の系の1つである。
【0460】
アデノウイルスゲノムからのウイルスの遺伝子または外来遺伝子の発現は、複製する細胞を必要としない。アデノウイルスベクターは、受容体によって媒介されるエンドサイトーシスによって細胞に侵入する。細胞内に入ると、アデノウイルスベクターが宿主染色体内に組み込まれることは稀である。代わりに、アデノウイルスベクターは、宿主核内で直鎖ゲノムとしてエピソーム的に(宿主ゲノムとは独立して)機能する。
【0461】
アデノ随伴ウイルスベクター
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、高い組み込み頻度を有し、非分裂細胞に感染することができるので、本発明において使用するための魅力的なベクター系である。このため、アデノ随伴ウイルス(AAV)は、哺乳動物細胞中への遺伝子の送達に有用である。AAVは、感染性について広い宿主域を有する。rAAVベクターの生成および使用に関する詳細は、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,139,941号および米国特許第4,797,368号に記載されている。
【0462】
組換えAAVベクターは、マーカー遺伝子およびヒト疾患に関与する遺伝子のインビトロ、エクスビボおよびインビボでの形質導入のために首尾よく使用されてきた。
【0463】
大きな搭載物(最大8~9kb)を効率的に組み込むことができる特定のAAVベクターが開発されている。1つのこのようなベクターは、AAV5キャプシドおよびAAV2 ITR(Allocca M,et al J.Clin Invest(2008)118:1955-1964)を有する。
【0464】
単純ヘルペスウイルスベクター
単純ヘルペスウイルス(HSV)は、神経細胞に自然に感染する、エンベロープを有する二本鎖DNAウイルスである。単純ヘルペスウイルス(HSV)は、外来DNAの大きな区画を収容することができ、このため、単純ヘルペスウイルス(HSV)はベクター系として魅力的であり、神経細胞への遺伝子送達のためのベクターとして使用されてきた(Manservigiet et al Open Virol J.(2010)4:123-156)。
【0465】
治療手順におけるHSVの使用は、株が溶菌サイクルを確立することができないように株を弱毒化することを必要とする。特に、HSVベクターがヒトにおける遺伝子治療のために使用される場合、ポリヌクレオチドは、好ましくは必須遺伝子中に挿入されるべきである。これは、ウイルスベクターが野生型ウイルスに遭遇すると、組換えによって野生型ウイルスへの異種遺伝子の導入が起こり得るためである。しかしながら、ポリヌクレオチドが必須遺伝子中に挿入されている限り、この組換え導入は、レシピエントウイルス中の必須遺伝子も欠失させ、複製能を有する野生型ウイルス集団内への異種遺伝子の「逸出」を防止するであろう。
【0466】
ワクシニアウイルスベクター
本発明のベクターは、MVAまたはNYVACなどのワクシニアウイルスベクターであり得る。ワクシニアベクターに対する代替物としては、ALVACとして知られる鶏痘またはカナリアポックスなどのトリポックスベクターおよびヒト細胞において感染し、組換えタンパク質を発現することができるが複製することができないこれらに由来する株が挙げられる。
【0467】
バキュロウイルスベクター
本発明のベクターは、バキュロウイルスベクターでもあり得る。哺乳動物細胞内でのコードされたNOIの発現を可能にするためのバキュロウイルスの改変は、当技術分野で周知である。これは、例えば、NOIの上流の哺乳動物プロモーターの使用によって達成することができる。
【0468】
複数のNOIをコードするベクター
一態様において、ベクターは、1つより多くのNOIを含み、1つまたはそれより多くのNOIは、本明細書に記載のtbsまたはその一部に機能的に連結されている。
【0469】
配列内リボソーム進入部位(IRES)
上述のように、本発明のベクターは、1つより多くのNOIを含み得る。これらのNOIを発現させるために、ベクターゲノム内に2つまたはそれより多くの転写単位、各NOIに対して1つが存在し得る。しかしながら、レトロウイルスベクターが遺伝的に単純に保たれていれば、レトロウイルスベクターは最も高い力価および最も強力な遺伝子発現特性を達成することは文献から明らかであり(国際公開第96/37623号;Bowtell et al.,1988 J.Virol.62,2464;Correll et al.,1994 Blood 84,1812;Emerman and Temin 1984 Cell 39,459;Ghattas et al.,1991 Mol.Cell.Biol.11,5848;Hantzopoulos et al.,1989 PNAS 86,3519;Hatzoglou et al.,1991 J.Biol.Chem 266,8416;Hatzoglou et al.,1988 J.Biol.Chem 263,17798;Li et al.,1992 Hum.Gen.Ther.3,381;McLachlin et al.,1993 Virol.195,1;Overell et al.,1988 Mol.Cell Biol.8,1803;Scharfman et al.,1991 PNAS 88,4626;Vile et al.,1994 Gene Ther 1,307;Xu et al.,1989 Virol.171,331;Yee et al.,1987 PNAS 84,5197)、したがって、ポリシストロン性メッセージ中の第2の(および後続の)コード配列の翻訳を開始するために配列内リボソーム進入部位(IRES)を使用することが好ましい(Adam et al 1991 J.Virol.65,4985)。
【0470】
レトロウイルスベクター中へのIRESエレメントの挿入は、レトロウイルス複製サイクルと適合的であり、単一のプロモーターからの複数のコード領域の発現を可能にする(Adam et al(上記);Koo et al(1992)Virology 186:669-675;Chen et al 1993 J.Virol 67:2142-2148)。IRESエレメントは、ピコルナウイルスの非翻訳5’末端中に最初に見出され、IRESエレメントは、ここでウイルスタンパク質のキャップ非依存性翻訳を促進する(Jang et al(1990)Enzyme 44:292-309)。RNA中のオープンリーディングフレームの間に位置する場合、IRESエレメントは、IRESエレメントにおけるリボソームの進入を促進し、続いて下流の翻訳の開始を促進することによって、下流のオープンリーディングフレームの効率的な翻訳を可能にする。
【0471】
IRESに関する総説は、MountfordおよびSmith(TIG May 1995 vol 11,No 5:179-184)によって提示されている。脳心筋炎ウイルス(EMCV)(Ghattas,I.R.,et al.,Mol.Cell.Biol.,11:5848-5859(1991);BiPタンパク質[Macejak and Sarnow,Nature 353:91(1991)];Drosophilaのアンテナペディア遺伝子(エクソンdおよびe)[Oh,et al.,Genes&Development,6:1643-1653(1992)]からのものの他、ポリオウイルス(PV)中のもの[Pelletier and Sonenberg,Nature 334:320-325(1988);Mountford and Smith,TIG 11,179-184(1985)も参照]を含む多数の異なるIRES配列が公知である。
【0472】
PV、EMCVおよび豚水疱病ウイルス由来のIRESエレメントは、レトロウイルスベクターにおいて以前から使用されている(上記のCoffinら)。
【0473】
「IRES」という用語は、IRESとして機能する、またはIRESの機能を改善する任意の配列または配列の組み合わせを含む。
【0474】
(1つまたは複数の)IRESは、ウイルス起源(EMCV IRES(配列番号59)、PV IRESまたはFMDV 2A様配列など)または細胞起源(FGF 2 IRES、NRF IRES、Notch 2 IRESまたはEIF4 IRESなど)であり得る。
【0475】
IRESが各ポリヌクレオチドの翻訳を開始することができるようにするために、IRESは、ベクターゲノム中のポリヌクレオチド間またはポリヌクレオチドより前に位置するべきである。
【0476】
プロモーター
NOIの発現は、プロモーター/エンハンサーおよび他の発現調節シグナルを含む制御配列を使用して制御され得る。原核生物プロモーターおよび真核細胞において機能的なプロモーターが使用され得る。組織特異的プロモーターまたは刺激特異的プロモーターが使用され得る。2つまたはそれより多くの異なるプロモーター由来の配列エレメントを含むキメラプロモーターも使用され得る。
【0477】
適切な促進配列は、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、レトロウイルスおよびサルウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムに由来するもの、またはアクチンプロモーター、EF1α、CAG、TK、SV40、ユビキチン、PGKもしくはリボソームタンパク質プロモーターなどの異種哺乳動物プロモーターに由来するものを含む強力なプロモーターである。あるいは、転写を駆動するために、ロドプシン(Rho)、ロドプシンキナーゼ(RhoK)、錐体桿体ホメオボックス含有遺伝子(CRX)、神経網膜特異的ロイシンジッパータンパク質(NRL)、卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)、チロシンヒドロキシラーゼ、神経特異的神経特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター、星状膠細胞特異的グリア線維酸性タンパク質(GFAP)プロモーター、ヒトα1-アンチトリプシン(hAAT)プロモーター、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)、肝臓脂肪酸結合タンパク質プロモーター、Flt-1プロモーター、INF-βプロモーター、Mbプロモーター、SP-Bプロモーター、SYN1プロモーター、WASPプロモーター、SV40/hAlbプロモーター、SV40/CD43、SV40/CD45、NSE/RU5’プロモーター、ICAM-2プロモーター、GPIIbプロモーター、GFAPプロモーター、フィブロネクチンプロモーター、エンドグリンプロモーター、エラスターゼ-1プロモーター、デスミンプロモーター、CD68プロモーター、CD14プロモーターおよびB29プロモーターなどの組織特異的プロモーターが使用され得る。
【0478】
遺伝子の転写は、エンハンサー配列をベクター中に挿入することによってさらに増加させ得る。エンハンサーは、相対的に配向および位置に非依存的である。しかしながら、複製起点の後期側(late side)(bp100~270)のSV40エンハンサーおよびCMV初期プロモーターエンハンサーなどの真核細胞ウイルス由来のエンハンサーを使用し得る。エンハンサーは、プロモーターに対して5’または3’の位置でベクター中にスプライシングされ得るが、好ましくはプロモーターから5’の部位に位置する。
【0479】
プロモーターは、適切な標的細胞における発現を確実にするためのまたは増加させるための特徴をさらに含むことができる。例えば、特徴は、保存された領域、例えば、PribnowボックスまたはTATAボックスであり得る。プロモーターは、ヌクレオチド配列の発現のレベルに影響を及ぼすための(維持する、増強する、または減少させるためなど)他の配列を含有し得る。適切な他の配列には、Sh1-イントロンまたはADHイントロンが含まれる。他の配列は、温度、化学的、光またはストレス誘導性要素などの誘導性要素を含む。また、転写または翻訳を増強するための適切な要素が存在し得る。
【0480】
組織特異的プロモーターを含む、導入遺伝子を駆動する構成的および/または強力なプロモーターが望ましい場合、特に、産生細胞における導入遺伝子タンパク質の発現がベクター力価の低下をもたらし、および/または導入遺伝子由来のタンパク質のウイルスベクター送達に起因してインビボで免疫応答を誘発する場合に、TRAP-tbs相互作用は、レトロウイルスベクターの産生のための導入遺伝子タンパク質抑制系に対する基礎を形成する上で有用であり得る。
【0481】
NOIの調節因子
レトロウイルスパッケージング/プロデューサ細胞株の生成およびレトロウイルスベクター産生を複雑にしている要因は、ある特定のレトロウイルスベクター成分およびNOIの恒常的発現は細胞傷害性であり、これらの成分を発現する細胞の死をもたらすので、ベクターを産生することができないことである。したがって、これらの成分(例えば、gag-polおよびVSV-Gなどのエンベロープタンパク質)の発現を調節することができる。他の非細胞傷害性ベクター成分、例えばrevの発現も、細胞に対する代謝的負荷を最小化するように調節することができる。したがって、本明細書に記載のベクター成分をコードするモジュール式構築物もしくはヌクレオチド配列および/または細胞は、少なくとも1つの調節エレメントを伴う細胞傷害性および/または非細胞傷害性ベクター成分を含み得る。本明細書で使用される場合、「調節エレメント」という用語は、関連する遺伝子またはタンパク質の発現に影響を及ぼす、増加または減少させることができる任意のエレメントを指す。調節エレメントには、遺伝子スイッチ系、転写調節エレメントおよび翻訳抑制エレメントが含まれる。
【0482】
哺乳動物細胞において遺伝子スイッチを生成するために、多くの原核生物調節因子系が改良されてきた。多くのレトロウイルスパッケージングおよびプロデューサ細胞株が、遺伝子スイッチ系(例えば、テトラサイクリンおよびクメート(cumate)誘導性スイッチ系)を使用して制御されており、これにより、ベクター産生時にレトロウイルスベクター成分の1つまたはそれより多くの発現をオンに切り替えることができる。遺伝子スイッチ系には、転写調節因子の(TetR)タンパク質群(例えば、T-Rex、Tet-OnおよびTet-Off)の遺伝子スイッチ系、転写調節因子のクメート誘導性スイッチ系群(例えば、CymRタンパク質)の遺伝子スイッチ系、およびRNA結合タンパク質(例えば、TRAP)を伴う遺伝子スイッチ系が含まれる。
【0483】
1つのこのようなテトラサイクリン誘導性の系は、T-REx(商標)系をベースとするテトラサイクリンリプレッサー(TetR)系である。例として、このような系では、テトラサイクリンオペレータ(TetO2)は、最初のヌクレオチドがヒトサイトメガロウイルス主要前初期プロモーター(hCMVp)のTATATAAエレメントの最後のヌクレオチドの3’末端から10bpであり、次いでTetR単独でリプレッサーとして作用することができるような位置に配置されている(Yao F,Svensjo T,Winkler T,Lu M,Eriksson C,Eriksson E.,1998,Hum Gene Ther;9:1939-1950)。このような系では、NOIの発現は、2コピーのTetO2配列がタンデムに挿入されたCMVプロモーターによって制御することができる。TetRホモ二量体は、誘導剤(テトラサイクリンまたはその類似体ドキシサイクリン[dox])の非存在下では、TetO2配列に結合し、上流CMVプロモーターからの転写を物理的に遮断する。存在する場合、誘導剤はTetRホモ二量体に結合し、TetRホモ二量体がもはやTetO2配列に結合できないようなアロステリック変化を引き起こし、遺伝子発現をもたらす。コドン最適化は翻訳効率を改善して、TetO2によって制御される遺伝子発現のより厳密な制御をもたらすことが見出されたので、TetR遺伝子はコドン最適化され得る。
【0484】
TRiP系は、国際公開第2015/092440号に記載されており、ベクター産生中に産生細胞におけるNOIの発現を抑制する別の方法を提供する。組織特異的プロモーターを含む、導入遺伝子を駆動する構成的および/または強力なプロモーターが望ましい場合、特に、産生細胞における導入遺伝子タンパク質の発現がベクター力価の低下をもたらし、および/または導入遺伝子由来のタンパク質のウイルスベクター送達に起因してインビボで免疫応答を誘発する場合に、TRAP結合配列(例えば、TRAP-tbs)相互作用は、レトロウイルスベクターの産生のための導入遺伝子タンパク質抑制系に対する基礎を形成する(Maunder et al,Nat Commun.(2017)Mar 27;8)。
【0485】
簡潔には、TRAP-tbs相互作用は翻訳ブロックを形成し、導入遺伝子タンパク質の翻訳を抑制する(Maunder et al,Nat Commun.(2017)Mar 27;8)。翻訳ブロックは、産生細胞においてのみ有効であり、したがって、DNAまたはRNAをベースとするベクター系を妨げない。TRiP系は、導入遺伝子タンパク質が、単また複シストロン性mRNA由来の組織特異的プロモーターを含む構成的および/または強力なプロモーターから発現される場合、翻訳を抑制することができる。導入遺伝子タンパク質の調節されない発現は、ベクター力価を低下させ、ベクター生成物の品質に影響を及ぼし得ることが実証されている。毒性または分子的負荷(molecular burden)の問題が細胞ストレスをもたらし得る場合;導入遺伝子由来のタンパク質のウイルスベクター送達に起因して、導入遺伝子タンパク質がインビボで免疫応答を誘発する場合;遺伝子編集導入遺伝子の使用が、オンターゲット/オフターゲット作用(affects)をもたらし得る場合;導入遺伝子タンパク質が、ベクターおよび/またはエンベロープ糖タンパク質の排除に影響を及ぼし得る場合には、一過性および安定なPaCL/PCLベクター産生系の両方に対する導入遺伝子タンパク質の抑制は、産生細胞がベクター力価の低下を防ぐために有益である。
【0486】
パッケージング配列
本発明の文脈内で利用される場合、「パッケージング配列」または「psi」と互換的に呼称される「パッケージングシグナル」という用語は、ウイルス粒子形成中にレトロウイルスRNA鎖のキャプシド形成のために必要とされる非コードシス作用配列に関して使用される。HIV-1では、この配列は、主要スプライスドナー部位(SD)の上流から少なくともgag開始コドンまで伸長する遺伝子座にマッピングされている。EIAVでは、パッケージングシグナルは、Gagの5’コーディング領域中にR領域を含む。
【0487】
本明細書で使用される場合、「伸長パッケージングシグナル」または「伸長パッケージング配列」という用語は、gag遺伝子中にさらなる伸長を有するpsi配列周囲の配列の使用を指す。これらの追加のパッケージング配列を含めることにより、ウイルス粒子中へのベクターRNAの挿入の効率を増加させ得る。
【0488】
ネコ免疫不全ウイルス(FIV)RNAキャプシド形成決定因子は、分離し、非連続的であり、ゲノムmRNAの5’末端の一方の領域(R-U5)およびgagの近位311nt内にマッピングされたもう一方の領域を含むことが示されている(Kaye et al.,J Virol.Oct;69(10):6588-92(1995)。
【0489】
偽型化
1つの好ましい局面において、本発明のウイルスベクターは偽型化されている。これに関して、偽型化は1つまたはそれより多くの利点を与えることができる。例えば、HIVベースのベクターのenv遺伝子産物は、CD4と呼ばれるタンパク質を発現する細胞のみに感染するようにこれらのベクターを制限する。しかし、これらのベクター中のenv遺伝子が他のエンベロープを有するウイルス由来のenv配列で置換されていれば、これらのベクターはより広い感染スペクトルを有し得る(Verma and Somia(1997)Nature 389(6648):239-242)。例として、研究者らは、VSV由来の糖タンパク質でHIVをベースとするベクターを偽型化した(Verma and Somia(1997)Nature 389(6648):239-242)。
【0490】
別の代替において、Envタンパク質は、変異体または操作されたEnvタンパク質などの改変されたEnvタンパク質であり得る。改変は、標的化能力を導入するために、または毒性を低減するために、または別の目的のために施されまたは選択され得る(Valsesia-Wittman et al 1996 J Virol 70:2056-64;Nilson et al(1996)Gene Ther 3(4):280-286;およびFielding et al(1998)Blood 91(5):1802-1809およびこれらに引用されている参考文献)。
【0491】
ベクターは、選択された任意の分子で偽型化され得る。
【0492】
VSV-G
ラブドウイルスである水疱性口内炎ウイルス(VSV)のエンベロープ糖タンパク質(G)は、ある特定のエンベロープを有するウイルスおよびウイルスベクタービリオンを偽型化することができることが示されているエンベロープタンパク質である。
【0493】
一切のレトロウイルスエンベロープタンパク質の非存在下でMoMLVベースのレトロウイルスベクターを偽型化するその能力は、Emi et al.(1991)Journal of Virology 65:1202-1207)によって最初に示された。国際公開第1994/294440号は、レトロウイルスベクターがVSV-Gで首尾よく偽型化され得ることを教示している。これらの偽型化されたVSV-Gベクターは、広範囲の哺乳動物細胞を形質導入するために使用され得る。より最近では、Abe et al.(1998)J Virol 72(8)6356-6361は、VSV-Gの添加によって非感染性レトロウイルス粒子を感染性にすることができることを教示している。
【0494】
Burns et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:8033-7)は、VSV-Gで首尾よくレトロウイルスMLVを偽型化し、これにより、その天然型のMLVと比較して変化した宿主域を有するベクターが得られた。VSV-Gで偽型化されたベクターは、哺乳動物細胞だけでなく、魚、爬虫類および昆虫に由来する細胞株にも感染することが示されている(Burnsら(1993)同上)。VSV-Gで偽型化されたベクターは、様々な細胞株に対して従来の両種指向性エンベロープよりさらに効率的であることも示されている(Yee et al.,(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:9564-9568,Emi et al.(1991)Journal of Virology 65:1202-1207)。VSV-Gタンパク質は、その細胞質尾部がレトロウイルスのコアと相互作用することができるので、特定のレトロウイルスを偽型化するために使用することができる。
【0495】
VSV-Gタンパク質などの非レトロウイルスの偽型化エンベロープを与えることは、感染性を失うことなくベクター粒子を高力価に濃縮できるという利点をもたらす(Akkina et al.(1996)J.Virol.70:2581-5)。おそらくは2つの非共有結合的に連結されたサブユニットからなるために、レトロウイルスエンベロープタンパク質は、明らかに超遠心分離中の剪断力に耐えることができない。サブユニット間の相互作用は、遠心分離によって破壊され得る。比較すると、VSV糖タンパク質は単一の単位から構成されている。したがって、VSV-Gタンパク質偽型化は潜在的な利点を提供することができる。
【0496】
国際公開第2000/52188号は、膜結合型ウイルスエンベロープタンパク質として水疱性口内炎ウイルス-Gタンパク質(VSV-G)を有する、安定したプロデューサ細胞株からの偽型化レトロウイルスベクターの作製を記載しており、VSV-Gタンパク質の遺伝子配列を提供している。
【0497】
ロスリバーウイルス
ロスリバーウイルスのエンベロープは、非霊長類レンチウイルスベクター(FIV)を偽型化するために使用されており、全身投与後に主に肝臓を形質導入した(Kang et al(2002)J Virol 76(18):9378-9388)。効率は、VSV-Gで偽型化されたベクターで得られたものより20倍大きく、肝毒性を示唆する肝酵素の血清レベルによって測定されたところ、より少ない細胞傷害性を引き起こしたことが報告された。
【0498】
バキュロウイルスGP64
バキュロウイルスGP64タンパク質は、臨床用途および商業用途のために必要とされる高力価ウイルスの大規模生産に使用されるウイルスベクターに関して、VSV-Gの代替物であることが示されている(Kumar M,Bradow BP,Zimmerberg J(2003)Hum Gene Ther.14(1):67-77)。VSV-Gで偽型化されたベクターと比較して、GP64で偽型化されたベクターは、類似の広い指向性および類似の天然の力価を有する。GP64発現は細胞を死滅させないので、GP64を構成的に発現する293Tベースの細胞株を作製することができる。
【0499】
代替エンベロープ
偽型EIAVに使用した場合に妥当な力価を与える他のエンベロープとしては、モコラ、狂犬病、エボラおよびLCMV(リンパ性脈絡髄膜炎ウイルス)が挙げられる。4070Aで偽型化されたレンチウイルスのマウスへの静脈内注入は、肝臓において最大の遺伝子発現をもたらした。
【0500】
ウイルスベクター産生系および細胞
本発明の別の局面は、ウイルスベクターの産生のために必要とされる成分をコードする核酸配列の組を含むウイルスベクター産生系であって、ベクターゲノム配列が本発明の核酸配列を含む、ウイルスベクター産生系に関する。
【0501】
「ウイルスベクター産生系」または「ベクター産生系」または「産生系」は、ウイルスベクター産生のために必要な成分を含む系として理解されるべきである。
【0502】
したがって、ベクター産生系は、ウイルスベクター粒子を作製するのに必要な成分をコードする核酸配列の組を含む。1つのこのような核酸配列は、TRAPをコードする遺伝子を含み得る。好ましい態様において、RNA結合タンパク質は細菌のTRAPである。
【0503】
本発明の一態様において、ウイルスベクターはレトロウイルスベクターであり、ウイルスベクター産生系は、GagおよびGag/Polタンパク質ならびにEnvタンパク質またはこれらの機能的代替物をコードする核酸配列と、本発明の核酸配列を含むベクターゲノム配列とをさらに含む。産生系は、Revタンパク質をコードする核酸配列および/またはTRAPをコードする核酸配列を含んでもよい。
【0504】
本発明のウイルスベクター産生系の別の態様において、ウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルスに由来する。
【0505】
別の態様において、ウイルスベクターはレンチウイルスに由来する。別の態様において、ウイルスベクターは、HIV-1、HIV-2、SIV、FIV、BIV、EIAV、CAEVまたはビスナレンチウイルスに由来する。
【0506】
本発明の別の局面は、真核生物のベクター産生細胞におけるウイルスベクター力価を増加させる方法であって、真核生物のベクター産生細胞中に本発明のウイルスベクター産生系およびTRAPをコードする核酸配列を導入することを含み、TRAPはTRAP結合部位またはその一部に結合し、NOIの翻訳を抑制し、それにより、TRAP結合部位を有しないウイルスベクターと比較してウイルスベクター力価を増加させる、方法に関する。
【0507】
本発明の別の局面は、本発明のウイルスベクター産生系において使用するためのDNA構築物に関する。このようなDNA構築物(例えば、プラスミド)は、本発明の核酸配列を含むベクターゲノム構築物を含み得る。
【0508】
本発明のさらなる局面は、TRAPをコードする核酸配列を含む本発明のウイルスベクター産生系において使用するためのDNA構築物に関する。
【0509】
本発明の別の局面は、本発明のDNA構築物と、GagおよびGag/Polタンパク質およびEnvタンパク質またはその機能的代替物をコードするDNA構築物とを含む、本発明のウイルスベクター産生系において使用するためのDNA構築物の組に関する。
【0510】
本発明の一態様において、DNA構築物の組は、TRAPをコードするDNA構築物をさらに含む。
【0511】
本発明の一態様において、DNA構築物の組は、Revタンパク質またはその機能的代替物をコードするDNA構築物をさらに含む。
【0512】
一態様において、ウイルスベクター産生系は、モジュール式核酸構築物(モジュール式構築物)を含む。モジュール式構築物は、レンチウイルスベクターの産生において使用される2つまたはそれより多くの核酸を含むDNA発現構築物である。モジュール式構築物は、レンチウイルスベクターの産生において使用される2つまたはそれより多くの核酸を含むDNAプラスミドであり得る。プラスミドは細菌プラスミドであり得る。核酸は、例えば、gag-pol、rev、env、ベクターゲノムをコードすることができる。さらに、パッケージングおよびプロデューサ細胞株の作製のために設計されたモジュール式構築物は、転写調節タンパク質(例えば、TetR、CymR)および/または翻訳抑制タンパク質(例えば、TRAP)および選択可能なマーカー(例えば、Zeocin(商標)、ハイグロマイシン、ブラストサイジン、ピューロマイシン、ネオマイシン耐性遺伝子)をコードすることをさらに必要とし得る。本発明において使用するための適切なモジュール式構築物は、欧州特許第3502260号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0513】
本発明に従って使用するためのモジュール式構築物は、1つの構築物上にレトロウイルス成分の2つまたはそれより多くをコードする核酸配列を含有するので、これらのモジュール式構築物の安全性プロファイルが検討されており、追加の安全性の特徴が構築物中に直接操作されている。これらの特徴には、レトロウイルスベクター成分の複数のオープンリーディングフレームに対するインスレーターの使用および/またはモジュール式構築物におけるレトロウイルス遺伝子の特異的な配向および配置が含まれる。これらの特徴を使用することにより、複製能を有するウイルス粒子を生成する直接的なリードスルーが防止されると考えられる。
【0514】
ウイルスベクター成分をコードする核酸配列は、モジュール式構築物中で逆および/または交互の転写配向であり得る。このため、ウイルスベクター成分をコードする核酸配列は、同じ5’から3’配向で提示されず、その結果、ウイルスベクター成分は、同じmRNA分子から産生されることができない。逆の配向とは、異なるベクター成分に対する少なくとも2つのコード配列が、「ヘッドトゥーヘッド」および「テールトゥーテール」転写配向で提示されることを意味し得る。これは、モジュール式構築物の一方の鎖上の1つのベクター成分、例えばenvに対するコード配列および反対側の鎖上の別のベクター成分、例えばrevに対するコード配列を提供することによって達成され得る。好ましくは、2つより多くのベクター成分に対するコード配列がモジュール式構築物中に存在する場合、コード配列の少なくとも2つは逆の転写配向で存在する。したがって、2つより多くのベクター成分に対するコード配列がモジュール式構築物中に存在する場合、各成分は、それが隣接する他のベクター成分に対する(1つまたは複数の)隣接コード配列のすべてに対して反対の5’から3’配向で存在するように配向され得る、すなわち、各コード配列に対して交互の5’から3’(または転写)配向が使用され得る。
【0515】
本発明に従って使用するためのモジュール式構築物は、以下のベクター成分:gag-pol、rev、env、ベクターゲノムのうちの2つまたはそれより多くをコードする核酸配列を含み得る。モジュール式構築物は、ベクター成分の任意の組み合わせをコードする核酸配列を含み得る。一態様において、モジュール式構築物は、
i)レトロウイルスベクターのRNAゲノムおよびrevまたはその機能的代替物;
ii)レトロウイルスベクターのRNAゲノムおよびgag-pol;
iii)レトロウイルスベクターのRNAゲノムおよびenv;
iv)gag-polおよびrevまたはその機能的代替物;
v)gag-polおよびenv;
vi)envおよびrevまたはその機能的代替物;
vii)レトロウイルスベクターのRNAゲノム、revまたはその機能的代替物、およびgag-pol;
viii)レトロウイルスベクターのRNAゲノム、revまたはその機能的代替物およびenv;
ix)レトロウイルスベクターのRNAゲノム、gag-polおよびenv;または
x)gag-pol、revもしくはその機能的代替物、およびenv、
をコードする核酸配列を含み得、
核酸配列は、逆のおよび/または交互の配向である。
【0516】
一態様において、レトロウイルスベクターを産生するための細胞は、上記i)~x)の組み合わせの任意の1つをコードする核酸配列を含み得、核酸配列は、同じ遺伝子座に位置しており、逆のおよび/または交互の配向にある。同じ遺伝子座は、細胞内の単一の染色体外遺伝子座、例えば単一のプラスミド、または細胞のゲノム内の単一の遺伝子座(すなわち、単一の挿入部位)を指し得る。細胞は、レトロウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクターを産生するための安定なまたは一過性の細胞であり得る。
【0517】
本発明の別の局面は、本発明の核酸配列、ウイルスベクター産生系またはDNA構築物の一部もしくは全部を含むウイルスベクター産生細胞に関する。
【0518】
「ウイルスベクター産生細胞」は、ウイルスベクターまたはウイルスベクター粒子を産生することができる細胞として理解されるべきである。ウイルスベクター産生細胞は、「プロデューサ細胞」または「パッケージング細胞」であり得る。ウイルスベクター系の1つまたはそれより多くのDNA構築物は、ウイルスベクター産生細胞内に安定に組み込まれ得る、またはエピソーム的に維持され得る。あるいは、ウイルスベクター系のすべてのDNA成分は、ウイルスベクター産生細胞中に一過性に形質移入され得る。さらに別の代替手段では、成分のいくつかを安定に発現する産生細胞が、残りの成分で一過性に形質移入され得る。
【0519】
TRAPをコードするDNA発現カセットは、ウイルスベクター産生細胞内に安定に組み込まれ得る、またはエピソーム的に維持され得る。あるいは、TRAPをコードするDNA発現カセットは、ウイルスベクター産生細胞中に一過性に形質移入され得る。
【0520】
したがって、本発明の一態様において、産生細胞はTRAP構築物を安定に発現するであろう。本発明の別の態様において、産生細胞はTRAP構築物を一過性に発現する。
【0521】
必要とされる抑制のレベルは、NOIに応じて変化し得るので、産生細胞において必要とされるTRAPのレベルも、NOIに依存し得る。したがって、いくつかの状況では、安定なおよび一過性のTRAP発現との組み合わせが所望され得る。安定な発現は、産生細胞中で継続的なレベルのTRAP発現を提供し得るのに対して、一過性発現は、より短期間の増大したレベルのTRAP発現を提供し得る。例えば、より問題のある/毒性の導入遺伝子の抑制には、ベクター産生時の既存のTRAP(例えば、安定な発現によって提供される)および高レベルのTRAPのいずれもが有益である可能性がある。
【0522】
このため、本発明の別の態様において、産生細胞は、TRAP構築物を安定に発現し、TRAP構築物を一過性にも発現する。一過性発現は、安定な発現によって提供されるより高いレベルのTRAP発現を短期間提供し得る。
【0523】
「安定な発現」とは、安定な発現を与える構築物からのTRAPの発現が長期間にわたって実質的に変化しないことを理解されたい。
【0524】
「一過性発現」とは、一過性発現を与える構築物からのTRAPの発現が長期間にわたって安定でないことを理解されたい。好ましくは、一過性発現を与えるTRAPをコードするポリヌクレオチドは、産生細胞ゲノム中に組み込まれず、産生細胞中でエピソーム的に維持されない。
【0525】
本明細書で使用される場合、「パッケージング細胞」という用語は、感染性ベクター粒子の産生のために必要な要素を含有するが、ベクターゲノムを欠く細胞を指す。典型的には、このようなパッケージング細胞は、ウイルスの構造タンパク質(gag、gag/polおよびenvなど)を発現することができる1つまたはそれより多くの発現カセットを含有する。
【0526】
プロデューサ細胞/パッケージング細胞は、任意の適切な細胞型であり得る。プロデューサ細胞は一般に哺乳動物細胞であるが、例えば昆虫細胞であることができる。
【0527】
本明細書で使用される場合、「プロデューサ/産生細胞」または「ベクターを産生する/ベクター産生細胞」という用語は、レトロウイルスベクター粒子の産生およびTRAPの発現のために必要なすべての要素を含有する細胞を指す。
【0528】
プロデューサ細胞は、安定なプロデューサ細胞株または一過性に誘導されたプロデューサ細胞株のいずれかであり得る。
【0529】
本発明の一態様において、エンベロープおよびヌクレオキャプシド、TRAP、ならびに存在する場合にはrevヌクレオチド配列はすべて、プロデューサ細胞および/またはパッケージング細胞中に安定に組み込まれる。しかしながら、これらの配列の任意の1つまたはそれより多くはエピソーム形態で存在することもでき、遺伝子発現はエピソームから起こり得るか、または産生細胞中に一過性に形質移入され得る。
【0530】
ベクター産生細胞は、組織培養細胞株などのインビトロで培養された細胞であり得る。適切な細胞株には、マウス線維芽細胞由来細胞株またはヒト細胞株などの哺乳動物細胞が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、ベクター産生細胞はヒト細胞株に由来する。
【0531】
一態様において、本発明のベクターは、その産生系として、NOIに機能的に連結された本発明の核酸配列を含むベクターゲノム、gag-pol成分、エンベロープおよびTRAPを発現する4つの転写単位を使用する。エンベロープ発現カセットは、VSV-Gなどの多数の異種エンベロープの1つを含み得る。rev成分も含まれてもよい。
【0532】
ウイルスベクター産生過程
本発明の別の局面は、本発明の核酸配列、ウイルスベクター産生系またはDNA構築物の一部もしくは全部をウイルスベクター産生細胞中に導入することと、ウイルスベクターの産生に適した条件下で産生細胞を培養することとを含む、ウイルスベクターを産生するための方法に関する。
【0533】
適切な「産生細胞」は、適切な条件下で培養された場合にウイルスベクターまたはウイルスベクター粒子を産生することができる細胞である。適切な「産生細胞」は、一般に、哺乳動物またはヒトの細胞、例えばHEK293T、HEK293、CAP、CAP-TまたはCHO細胞であるが、例えばSF9細胞などの昆虫細胞であり得る。
【0534】
産生細胞は、鳥類細胞、例えばEB66(登録商標)(Sigma)細胞でもあり得る。鳥類細胞は、ヒトおよび獣医学のウイルスベースのワクチン、例えばインフルエンザおよびニューカッスル病ウイルスワクチンの産生のために特に有用であり得る。
【0535】
核酸を産生細胞中に導入するための方法は、当技術分野において周知であり、以前に記載されている。
【0536】
一態様において、産生細胞はTRAPを含む。
【0537】
本発明の別の局面は、本発明のウイルスベクター産生系によって、本発明のウイルスベクター産生細胞を使用して、または本発明の方法によって産生されたウイルスベクターに関する。
【0538】
一態様において、ウイルスベクター粒子は、本発明の核酸配列を含む。ウイルスベクター粒子は、レトロウイルス、アデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルスに由来し得る。レトロウイルスベクター粒子は、レンチウイルスに由来し得る。レンチウイルスベクター粒子は、HIV-1、HIV-2、SIV、FIV、BIV、EIAV、CAEVまたはビスナレンチウイルスに由来し得る。
【0539】
レンチウイルスベクターを作製するための方法、特にレンチウイルスベクターの処理は、国際公開第2009/153563号に記載されている。
【0540】
本発明の別の局面は、本発明のウイルスベクターによって形質導入された細胞に関する。
【0541】
「ウイルスベクター粒子によって形質導入された細胞」は、ウイルスベクター粒子によって運ばれる核酸がその中に導入された細胞、特に標的細胞として理解されるべきである。
【0542】
使用
本発明の別の局面は、医学において使用するための本発明のウイルスベクターまたは本発明のウイルスベクターで形質導入された細胞もしくは組織に関する。
【0543】
本発明の別の局面は、医学における本発明のウイルスベクターまたは本発明のウイルスベクターで形質導入された細胞もしくは組織の使用に関する。
【0544】
本発明の別の局面は、関心対象のヌクレオチドを必要とする標的部位に関心対象のヌクレオチドを送達するための医薬を調製するための、本発明のウイルスベクター、本発明の産生細胞または本発明のウイルスベクターで形質導入された細胞もしくは組織の使用に関する。
【0545】
本発明のウイルスベクターまたは形質導入された細胞のこのような使用は、本明細書に記載されるように、治療目的または診断目的のためであり得る。
【0546】
治療用ベクター
レトロウイルス治療用ベクター
一態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、パーキンソン病を処置するためにドーパミン合成経路の3つの酵素をコードする3つの遺伝子を導入するために使用され得る。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。レトロウイルスベクターによって運ばれる遺伝子は、切断型のヒトチロシンヒドロキシラーゼ(TH*)遺伝子(THのフィードバック調節に関与するN末端の160アミノ酸を欠く)、ヒト芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)、およびヒトGTP-シクロヒドロラーゼ1(CH1)遺伝子を含み得る。3つの酵素は、3つの別々のオープンリーディングフレームでレトロウイルスベクターによってコードされ得る。あるいは、レトロウイルスベクターは、第1のオープンリーディングフレーム中のTHおよびCH1酵素と、第2のオープンリーディングフレーム中のAADC酵素との融合物をコードし得る。遺伝子の発現はCMVプロモーターによって駆動され得、発現カセットは1つまたはそれより多くのIRESエレメントを含み得る。レトロウイルスベクターは、脳の線条体中への直接注射によって投与され得る。
【0547】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、視細胞およびこれを支える網膜色素上皮(RPE)細胞に矯正のためのMYO7A遺伝子を導入し、それにより、アッシャー1B症候群に伴う視力の低下を減弱または逆転させるように設計された遺伝子治療製品として使用され得る。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。レトロウイルスベクターによって運ばれる遺伝子は、MYO7Aタンパク質をコードするMYO7AcDNA(長さが100mbを超える大きな遺伝子)である。大きなMYO7A遺伝子の発現は、CMVプロモーター、CMV/MYO7Aキメラプロモーターまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。レトロウイルスベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0548】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、矯正のためのATP結合カセット遺伝子ABCA4(ABCRとしても知られる)を視細胞に導入し、それによってシュタルガルト病をもたらす病態生理を減弱または逆転させるために使用され得る。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。レトロウイルスベクターによって運ばれる遺伝子は、ABCA4タンパク質をコードするABCA4cDNAである。ABCA4遺伝子の発現は、CMVプロモーター、視細胞特異的プロモーター、例えばロドプシンキナーゼまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。レトロウイルスベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0549】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、滲出型加齢黄斑変性(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫または網膜静脈閉塞を有する患者の眼における異常な血管成長および/もしくは血管漏出の再発を予防するように、ならびに/または萎縮型加齢黄斑変性(AMD)を有する患者の眼における異常な血管成長を予防するように設計された遺伝子治療製品として使用され得る。このレトロウイルスベクターは、アンジオスタチンおよび/またはエンドスタチンなどの1つまたは複数の抗血管新生タンパク質をコードする1つまたは複数の遺伝子を送達する。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。一態様において、レトロウイルスベクターは、網膜色素上皮細胞への送達のために配列内リボソーム進入部位(IRES)を利用してバイシストロン構成のヒトエンドスタチンおよびアンジオスタチン遺伝子を発現する(1つまたは複数の)抗血管新生遺伝子の発現は、CMV、RPE特異的プロモーター、例えば卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(より最近ではベストロフィンプロモーターとして知られている)によって、または代替のプロモーターによって駆動され得る。レトロウイルスベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0550】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、滲出型加齢黄斑変性(AMD)患者の眼の浮腫における異常な血管成長の再発を予防するように設計された遺伝子治療製品として使用され得る。このレトロウイルスベクターは、アンジオスタチンおよび/またはエンドスタチンなどの1つまたは複数の抗血管新生タンパク質をコードする1つまたは複数の遺伝子を送達する。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。一態様において、レトロウイルスベクターは、網膜色素上皮細胞への送達のために配列内リボソーム進入部位(IRES)を利用してバイシストロン構成のヒトエンドスタチンおよびアンジオスタチン遺伝子を発現する(1つまたは複数の)抗血管新生遺伝子の発現は、CMV、RPE特異的プロモーター、例えば卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(より最近ではベストロフィンプロモーターとして知られている)によって、または代替のプロモーターによって駆動され得る。レトロウイルスベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0551】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、移植前のドナー角膜への(1つまたは複数の)抗血管新生遺伝子の送達による血管新生の結果としての角膜移植片拒絶を予防するように設計された遺伝子治療製品として使用され得る。レトロウイルスベクターは、VSV-G、エボラまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。一態様において、レトロウイルスベクターは、角膜移植片へのエクスビボ送達のために配列内リボソーム進入部位(IRES)を利用してバイシストロン構成のヒトエンドスタチンおよびアンジオスタチン遺伝子などの(1つまたは複数の)抗血管新生遺伝子を発現する。レトロウイルスベクターはエクスビボで角膜移植片組織に適用され得、形質導入されたドナー組織も移植前に保存され得る。(1つまたは複数の)抗血管新生遺伝子の発現は、CMVプロモーターなどの構成的プロモーターによって駆動され得る。しかしながら、代替のプロモーターが使用され得ることも可能である。
【0552】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、滲出型加齢黄斑変性(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫または網膜静脈閉塞を有する患者の眼における異常な血管成長および/もしくは血管漏出の再発を予防するように、ならびに/または萎縮型加齢黄斑変性(AMD)を有する患者の眼における異常な血管成長を予防するように設計された遺伝子治療として使用され得る。このレトロウイルスベクターは、可溶性形態のfms様チロシンキナーゼをコードする遺伝子を送達する。(可溶性Flt-1)レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。可溶性Flt-1遺伝子の発現は、CMV、RPE特異的プロモーター、例えば卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(より最近ではベストロフィンプロモーターとして知られている)によって、または代替のプロモーターによって駆動され得る。レトロウイルスベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0553】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、滲出型加齢黄斑変性(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫または網膜静脈閉塞を有する患者の眼における異常な血管成長および/もしくは血管漏出の再発を予防するように、ならびに/または萎縮型加齢黄斑変性(AMD)を有する患者の眼における異常な血管成長を予防するように設計された遺伝子治療製品として使用され得る。このレトロウイルスベクターは、色素上皮由来因子タンパク質(PEDF)をコードする1つまたは複数の遺伝子を送達する。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。PEDF遺伝子の発現は、CMV、卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(より最近ではベストロフィンプロモーターとして知られている)などのRPE特異的プロモーターによって、または代替のプロモーターによって駆動され得る。レトロウイルスベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0554】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、滲出型加齢黄斑変性(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫または網膜静脈閉塞を有する患者の眼における異常な血管成長および/もしくは血管漏出の再発を予防するように、ならびに/または萎縮型加齢黄斑変性(AMD)を有する患者の眼における異常な血管成長を予防するように設計された遺伝子治療製品として使用され得る。このレトロウイルスベクターは、血管内皮増殖因子(VEGF)の阻害剤、例えば抗VEGF抗体もしくはその結合断片(例えばアフリベルセプト)、VEGF特異的アプタマー、もしくはVEGF受容体の可溶性形態を含むがこれに限定されないVEGF遮断ペプチドもしくはポリペプチドおよび/または血小板由来増殖因子(PDGF)の阻害剤、例えば抗PDGF抗体もしくはその結合断片、PDGF特異的アプタマー、もしくはPDGF受容体の可溶性形態を含むがこれに限定されないPDGF遮断ペプチドもしくはポリペプチドをコードする1つの遺伝子または複数の遺伝子を送達する。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。一態様において、レトロウイルスベクターは、網膜色素上皮細胞への送達のために配列内リボソーム進入部位(IRES)を利用してバイシストロン構成のVEGFの阻害剤およびPDGFの阻害剤を発現する。(1つまたは複数の)遺伝子の発現は、CMV、卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(より最近ではベストロフィンプロモーターとして知られている)などのRPE特異的プロモーターによって、または代替のプロモーターによって駆動され得る。レトロウイルスベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0555】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、矯正遺伝子卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)およびVMD2の疾患関連形態に対して特異的なマイクロRNA(miRNA)をコードするカセット、またはペリフェリン2をコードする矯正RDS遺伝子およびRDSの疾患関連形態に対して特異的なmiRNAをコードするカセットを網膜色素上皮細胞に導入し、それにより、ベスト病またはベスト卵黄様黄斑変性(BVMD)をもたらす病態生理を減弱または逆転させるために使用され得る。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。遺伝子の発現は、CMV、卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(より最近ではベストロフィンプロモーターとして知られている)などのRPE特異的プロモーターによって、または代替のプロモーターによって駆動され得る。レトロウイルスベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0556】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、矯正レチンアルデヒド結合タンパク質1遺伝子、RLBP1を網膜色素上皮細胞に導入し、それにより、RLBP1関連網膜ジストロフィーをもたらす病態生理を減弱または逆転させるために使用され得る。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。レトロウイルスベクターによって運ばれる遺伝子は、RLBP1タンパク質をコードするRLBP1cDNAである。RLBP1遺伝子の発現は、CMV、卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(より最近ではベストロフィンプロモーターとして知られている)などのRPE特異的プロモーターによって、または代替のプロモーターによって駆動され得る。レトロウイルスベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0557】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、緑内障を処置するように設計された遺伝子治療製品として使用され得る。このレトロウイルスベクターは、眼内圧を低下させるように作用するCOX-2および/またはプロスタグランジンF2α受容体(FPR)をコードする1つまたは複数の遺伝子を送達する。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。一態様において、レトロウイルスベクターは、眼の前房への送達のために配列内リボソーム進入部位(IRES)を利用してバイシストロン構成のCOX-2およびプロスタグランジンF2α受容体(FPR)遺伝子を発現する。(1つまたは複数の)遺伝子の発現は、CMVまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。レトロウイルスベクターは、経角膜注射によって投与され得る。
【0558】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、矯正ハーモニン遺伝子を導入して、アッシャー症候群1cをもたらす病態生理を減弱または逆転させるために使用され得る。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。レトロウイルスベクターによって運ばれる遺伝子は、ハーモニンタンパク質をコードするハーモニンcDNAである。ハーモニン遺伝子の発現は、CMVプロモーターまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。レトロウイルスベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0559】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、矯正Rabエスコートタンパク質1(REP1)遺伝子を導入して、全脈絡膜萎縮をもたらす病態生理を減弱または逆転させるために使用され得る。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。レトロウイルスベクターによって運ばれる遺伝子は、REP1タンパク質をコードするREP1cDNAである。REP1遺伝子の発現は、CMVプロモーターまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。レトロウイルスベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0560】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、(1つまたは複数の)矯正環状ヌクレオチド感受性チャネルベータ2(CNGB2)および/または環状ヌクレオチド感受性チャネルアルファ3(CNGA3)遺伝子を眼の中に導入して、色覚異常をもたらす病態生理を減弱または逆転させるために使用され得る。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。レトロウイルスベクターによって運ばれる(1つまたは複数の)遺伝子は、CNGB2および/またはCNGA3タンパク質をコードする(1つまたは複数の)CNGB2および/またはCNGA3遺伝子である。(1つまたは複数の)遺伝子の発現は、CMVプロモーターまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。レトロウイルスベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0561】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、矯正CEP290遺伝子を眼の中に導入して、レーバー先天黒内障(LCA)をもたらす病態生理を減弱または逆転させるために使用され得る。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。レトロウイルスベクターによって運ばれる遺伝子は、290kDaの中心体タンパク質をコードするCEP290遺伝子である。CEP290遺伝子の発現は、CMVプロモーターまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。レトロウイルスベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0562】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、矯正網膜色素変性症GTP加水分解酵素調節因子(RPGR)遺伝子を眼の中に導入して、x連鎖網膜色素変性症をもたらす病態生理を減弱または逆転させるために使用され得る。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。レトロウイルスベクターによって運ばれる遺伝子は、RPGRタンパク質をコードするRPGR cDNAである。RPGR遺伝子の発現は、CMVプロモーターまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。レトロウイルスベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0563】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、矯正レチノスキシン1(RS1)遺伝子を眼の中に導入して、x連鎖網膜分離症(retinochisis)をもたらす病態生理を減弱または逆転させるために使用され得る。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。レトロウイルスベクターによって運ばれる遺伝子は、RS1タンパク質をコードするRS1cDNAである。RS1遺伝子の発現は、CMVプロモーターまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。レトロウイルスベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0564】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、矯正網膜色素変性症1(RP1)遺伝子を眼の中に導入して、網膜色素変性症をもたらす病態生理を減弱または逆転させるために使用され得る。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。レトロウイルスベクターによって運ばれる遺伝子は、RP1タンパク質をコードするRP1cDNAである。RP1遺伝子の発現は、CMVプロモーター、視細胞特異的プロモーター、例えばロドプシンキナーゼまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。レトロウイルスベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0565】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、矯正網膜色素上皮特異的65kDaタンパク質(RPE65)遺伝子を導入して、レーバー先天黒内障(LCA)2型をもたらす病態生理を減弱または逆転させるために使用され得る。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。レトロウイルスベクターによって運ばれる遺伝子は、RPE65タンパク質をコードするRPE65cDNAである。RPE65遺伝子の発現は、CMV、卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(より最近ではベストロフィンプロモーターとして知られている)などのRPE特異的プロモーターによって、または代替のプロモーターによって駆動され得る。レトロウイルスベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0566】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、矯正ヒトプロリン/アルギニンリッチ末端ロイシンリッチリピートタンパク質(PRELP)遺伝子を導入して、滲出型加齢黄斑変性(AMD)、萎縮型AMD、糖尿病性黄斑浮腫または網膜静脈閉塞をもたらす病態生理を減弱または逆転させるために使用され得る。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。レトロウイルスベクターによって運ばれる遺伝子は、PRELPタンパク質をコードするPRELPcDNAである。PRELP遺伝子の発現は、CMV、卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(より最近ではベストロフィンプロモーターとして知られている)などのRPE特異的プロモーターによって、または代替のプロモーターによって駆動され得る。レトロウイルスベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0567】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、合成ミオシリン特異的miRNAをコードする核酸配列を眼の中に導入して、ミオシリンの発現をノックダウンすることによって若年性開放隅角緑内障をもたらす病態生理を減弱または逆転させるために使用され得る。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。合成ミオシリン特異的miRNAの発現は、CMVプロモーターまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。レトロウイルスベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0568】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、グルタチオン生合成経路からの(1つまたは複数の)律速酵素であるグルタミン酸-システインリガーゼ(GCL)および/もしくはグルタチオンシンセターゼ(GSS)、ならびに/または合成γ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)特異的miRNAをコードする核酸配列を眼の中に導入して、遺伝子増強および/またはノックダウンによって、網膜色素変性症をもたらす病態生理を減弱または逆転させるために使用され得る。レトロウイルスベクターは、例えば、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。(1つまたは複数の)GCLおよび/もしくはGSS遺伝子ならびに/または合成GGT特異的miRNAの発現は、CMVプロモーターまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。一態様において、レトロウイルスベクターは、1つまたは複数の配列内リボソーム進入部位(IRES)を利用してマルチシストロン構成の(1つまたは複数の)遺伝子および/または合成miRNAを発現し得る。レトロウイルスベクターは、眼の前房への直接送達によって投与され得る。
【0569】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、前頭側頭葉認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病などの神経変性障害、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの運動ニューロン障害を処置するように設計された遺伝子治療製品として使用され得る。このレトロウイルスベクターは、VEGF145、VEGF165もしくはVEGF189などのVEGF-Aアイソフォームであり得るまたはVEGF-B、VEGF-CもしくはVEGF-Dであり得るVEGFタンパク質をコードする遺伝子を送達し、このような遺伝子は神経保護効果を有する。レトロウイルスベクターは、狂犬病GまたはVSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。遺伝子の発現は、CMVまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。レトロウイルスベクターは、大きな筋肉群への直接注射によって、または髄腔内もしくは脳室内注射による脳脊髄液中への直接注射によって投与され得る。
【0570】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、嚢胞性線維症を処置するように設計された遺伝子治療製品として使用され得る。このレトロウイルスベクターは、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)をコードする遺伝子を送達する。レトロウイルスベクターは、インフルエンザ赤血球凝集素、センダイウイルスエンベロープFもしくはHN、エボラ、バキュロウイルスGP64または代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。遺伝子の発現は、CMVまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。レトロウイルスベクターは、鼻腔内に、ネブライザーの使用によって、または気管支肺胞洗浄液を介した肺内への直接送達によって投与され得る。
【0571】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、矯正N-スルホグルコサミンスルホヒドロラーゼ(SGSH)および/またはスルファターゼ修飾因子1(SUMF1)遺伝子(1つまたは複数)を脳内に導入して、サンフィリポ症候群Aをもたらす病態生理を減弱または逆転させるために使用され得る。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。レトロウイルスベクターによって運ばれる(1つまたは複数の)遺伝子は、SGSHタンパク質をコードするSGSHcDNAおよび/またはSUMF1タンパク質をコードするSUMF1遺伝子である。(1つまたは複数の)遺伝子の発現は、CMVプロモーターまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。一態様において、レトロウイルスベクターは、配列内リボソーム進入部位(IRES)を利用してバイシストロン構成のSGSHおよびSUMF1遺伝子を発現し得る。レトロウイルスベクターは、直接脳内注射によって投与され得る。
【0572】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、矯正酸性αグリコシダーゼ(GAA)遺伝子を大きな筋肉群および/または肺内に導入して、ポンペ病をもたらす病態生理を減弱または逆転させるために使用され得る。このレトロウイルスベクターは、GAAタンパク質をコードする遺伝子を送達する。レトロウイルスベクターは、インフルエンザ赤血球凝集素、センダイウイルスエンベロープFもしくはHN、エボラ、バキュロウイルスGP64、狂犬病G、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。遺伝子の発現は、CMVまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。レトロウイルスベクターは、(i)大きな筋肉群中への直接注射および/または(ii)鼻腔内に、ネブライザーの使用によって、もしくは気管支肺胞洗浄液を介した肺内への直接送達によって投与され得る。
【0573】
別の態様において、CD19特異的キメラ抗原受容体(CAR19)をコードする核酸配列で自己または同種T細胞を形質導入するために、本発明のレトロウイルスベクターがエクスビボで使用され得る。次いで、これらの形質導入されたT細胞は、CD19を発現する癌および白血病を処置するために対象中に注入される。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。CARをコードする核酸配列の発現は、EF1α、CMVまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。
【0574】
別の態様において、5T4特異的キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列で自己または同種T細胞を形質導入するために、本発明のレトロウイルスベクターがエクスビボで使用され得る。次いで、これらの形質導入されたT細胞は、5T4を発現する癌および白血病を処置するために対象中に注入される。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。5T4 CARをコードする核酸配列の発現は、EF1α、CMVまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。
【0575】
当業者に公知であるように、ある範囲の癌または白血病関連ポリペプチドに特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を生産することができる。任意の癌または白血病関連ポリペプチドに対して特異的なキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列で自己または同種T細胞を形質導入するために、本発明のレトロウイルスベクターがエクスビボで使用され得る。次いで、これらの形質導入されたT細胞は、CARが結合する癌または白血病関連ポリペプチドを発現する癌および白血病を処置するために対象中に注入される。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。CARをコードする核酸配列の発現は、EF1α、CMVまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。前記CARによって標的とされ得る適切な癌または白血病関連ポリペプチドには、以下のものが含まれるが、これらに限定されない:メソテリン、葉酸受容体α、免疫グロブリンのκ軽鎖、CD30、癌胎児性抗原(CEA)、CD138、ガングリオシドG2(GD2)、CD33、CD22、EGFRVIIIなどの上皮増殖因子受容体(EGFR)、IL-13Rα2、CD20、Her2などのErbB、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、ルイスY抗原および線維芽細胞活性化タンパク質(FAB)。
【0576】
別の態様において、疾患細胞、白血病細胞または癌性細胞上に発現されるペプチド-MHCに対して特異的なT細胞受容体(TCR)をコードする核酸配列で自己または同種T細胞を形質導入するために、本発明のレトロウイルスベクターがエクスビボで使用され得る。次いで、TCRが結合するペプチド-MHCの発現に関連する疾患、癌または白血病を処置するために、これらの形質移入されたT細胞は対象中に注入される。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。TCRをコードする核酸配列の発現は、EF1α、CMVまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。本発明のベクターによってコードされるTCRは、単鎖TCR(scTCR)または二量体TCR(dTCR)であり得る。当業者に公知であるように、適切なdTCRとしては、国際公開第2003/020763号に記載されているものが挙げられ、適切なscTCRとしては、国際公開第1999/018129号に記載されているものが挙げられる。この態様の特定の局面では、AIDs、白血病、ならびに骨髄腫および肉腫を含む癌を処置するために、TCRで形質移入されたT細胞が使用され得る。
【0577】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、共通γ鎖(CD132)をコードする遺伝子を導入して、x連鎖重症複合免疫不全症(SCID)を処置するために使用され得る。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。遺伝子の発現は、CMVプロモーターまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。本発明のレトロウイルスベクターは、骨髄幹細胞を形質導入するためにエクスビボで使用され得る。次いで、これらの形質導入された骨髄幹細胞は、疾患を処置するために対象中に注入することができる。
【0578】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、アデノシンデアミナーゼをコードする遺伝子を導入して、ADA重症複合免疫不全症(SCID)を処置するために使用され得る。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する由来する非複製性の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。遺伝子の発現は、CMVプロモーターまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。本発明のレトロウイルスベクターは、骨髄幹細胞を形質導入するためにエクスビボで使用され得る。次いで、これらの形質導入された骨髄幹細胞は、疾患を処置するために対象中に注入することができる。
【0579】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、WASタンパク質をコードする遺伝子を導入してウィスコット・アルドリッチ症候群(WAS)を処置するために使用され得る。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する由来する非複製性の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。遺伝子の発現は、CMVプロモーターまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。本発明のレトロウイルスベクターは、骨髄幹細胞を形質導入するためにエクスビボで使用され得る。次いで、これらの形質導入された骨髄幹細胞は、疾患を処置するために対象中に注入することができる。
【0580】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、野生型β-グロビン、野生型胎児グロビンおよび変異した「抗鎌状化」グロビンを含むいくつかのグロビンのうちの1つをコードする遺伝子を導入して鎌状赤血球症またはサラセミアを処置するために使用され得る。当業者に公知であるように、抗鎌状化グロビンの例には、国際公開第2014/043131号および国際公開第1996/009385号に記載されているものが含まれるが、これらに限定されない。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。遺伝子の発現は、CMVプロモーターまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。本発明のレトロウイルスベクターは、骨髄幹細胞を形質導入するためにエクスビボで使用され得る。次いで、これらの形質導入された骨髄幹細胞は、疾患を処置するために対象中に注入することができる。
【0581】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、矯正遺伝子、第VIII因子を肝臓、筋肉または脂肪細胞に導入して血友病Aを処置するために使用され得る。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する由来する非複製性の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。レトロウイルスベクターによって運ばれる遺伝子は第VIII因子である。第VIII因子遺伝子の発現は、CMVプロモーターまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。
【0582】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、矯正遺伝子、第IX因子を肝臓、筋肉または脂肪細胞に導入して血友病Bを処置するために使用され得る。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する由来する非複製性の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。レトロウイルスベクターによって運ばれる遺伝子は第IX因子である。第IX因子遺伝子の発現は、CMVプロモーターまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。
【0583】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、αガラクトシダーゼA(α-GAL A)をコードする遺伝子を導入してファブリー病を処置するために使用され得る。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。レトロウイルスベクターによって運ばれる遺伝子は、α-GAL Aタンパク質をコードするGLA cDNAである。該遺伝子の発現は、CMVプロモーターまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。本発明のレトロウイルスベクターは、造血CD34+幹細胞を形質導入するためにエクスビボで使用され得る。次いで、これらの形質導入された造血CD34+幹細胞は、疾患を処置するために対象中に注入することができる。
【0584】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、欠損した酵素をコードする遺伝子を導入してポルフィリン症の一形態を処置するために使用され得る。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。レトロウイルスベクターによって運ばれる遺伝子は、以下の表から選択される処置されるべきポルフィリン症のタイプに関連する欠損酵素をコードする遺伝子である。遺伝子の発現は、CMVプロモーターまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。
【0585】
【0586】
別の態様において、本発明のレトロウイルスベクターは、欠損した酵素をコードする遺伝子を導入してムコ多糖症の一形態を処置するために使用され得る。レトロウイルスベクターは、VSV-Gまたは代替のウイルスエンベロープタンパク質で偽型化され得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)に由来する非複製性の自己不活型最小レンチウイルスベクターである。レトロウイルスベクターによって運ばれる遺伝子は、以下の表から選択される処置されるべきムコ多糖症のタイプに関連する欠損酵素をコードする遺伝子である。遺伝子の発現は、CMVプロモーターまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。
【0587】
【0588】
レトロウイルス治療用ベクターの作製
本発明のレトロウイルスベクターは、4つのプラスミド:
(1)(1つまたは複数の)必要とされる導入遺伝子および本発明の核酸配列をコードする組換えレトロウイルスベクターゲノムプラスミド、
(2)合成レトロウイルスgag/pol発現プラスミド、
(3)例えばVSV-Gを発現し得るエンベロープ(env)発現プラスミド、および
(4)RNA結合タンパク質発現プラスミド
でのHEK293T細胞の一過性形質移入によって作製され得る。
【0589】
あるいは、HIVなどの本発明のレトロウイルスベクターは、5つのプラスミド:
(1)(1つまたは複数の)必要とされる導入遺伝子、本発明の核酸配列およびRRE配列をコードする組換えHIVベクターゲノムプラスミド、
(2)合成gag/pol発現プラスミド、
(3)例えばVSV-Gを発現し得るエンベロープ(env)発現プラスミド、
(4)RNA結合タンパク質発現プラスミド、ならびに
(5)REV発現プラスミド
でのHEK293T細胞の一過性形質移入によって作製され得る。
【0590】
あるいは、HIVなどの本発明のレトロウイルスベクターは、ウイルスベクターおよびTRAPの産生のために必要とされる成分をコードする少なくとも1つのモジュール式構築物によるHEK293T細胞の一過性形質移入によって作製され得、ウイルスゲノムは、本発明の核酸配列を含む。適切なモジュール式構築物には、欧州特許第3502260号明細書に記載されているものが含まれるが、これらに限定されない。
【0591】
あるいは、一過性形質移入系は、TRAPを安定に発現する細胞株を利用し得る。
【0592】
あるいは、本発明のレトロウイルスベクターは、(1)gag/pol、(2)envおよび(3)TRAP、ならびにHIVベクターの場合、Revを安定に発現するパッケージング細胞を使用することによって作製され得、必要とされる(1つまたは複数の)導入遺伝子および本発明の核酸配列をコードする組換えレトロウイルスベクターゲノムをコードするプラスミドは、HIVベクターの場合、RRE配列を含み、一過性形質移入によってこのような細胞中に導入される。
【0593】
あるいは、本発明のレトロウイルスベクターは、(1)gag/pol、(2)env、(3)TRAP、(4)必要とされる(1つまたは複数の)導入遺伝子および本発明の核酸配列をコードする組換えEIAVベクターゲノムを安定に発現するプロデューサ細胞中において産生され得る。
【0594】
あるいは、本発明のHIVベクターは、(1)gag/pol、(2)env、(3)TRAP、(4)必要とされる(1つまたは複数の)導入遺伝子、本発明の核酸配列およびRRE配列をコードする組換えHIVベクターゲノム、ならびに(5)REVを安定に発現するプロデューサ細胞中において産生され得る。
【0595】
AAV治療用ベクター
別の態様において、本発明のAAVベクターは、パーキンソン病を処置するためにドーパミン合成経路の3つの酵素をコードする3つの遺伝子を導入するために使用され得る。AAVベクターによって運ばれる遺伝子は、切断型のヒトチロシンヒドロキシラーゼ(TH*)遺伝子(THのフィードバック調節に関与するN末端の160アミノ酸を欠く)、ヒト芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)、およびヒトGTP-シクロヒドロラーゼ1(CH1)遺伝子を含み得る。3つの酵素は、3つの別々のオープンリーディングフレームでAAVベクターによってコードされ得る。あるいは、AAVベクターは、第1のオープンリーディングフレーム中のTHおよびCH1酵素と、第2のオープンリーディングフレーム中のAADC酵素との融合物をコードし得る。遺伝子の発現はCMVプロモーターによって駆動され得、発現カセットは1つまたはそれより多くのIRESエレメントを含み得る。AAVベクターは、脳の線条体中への直接注射によって投与され得る。
【0596】
別の態様において、本発明のAAVベクターは、視細胞およびこれを支える網膜色素上皮(RPE)細胞に矯正MYO7A遺伝子を導入し、それにより、アッシャー1B症候群に伴う視力の低下を減弱または逆転させるように設計された遺伝子治療製品として使用され得る。AAVベクターによって運ばれる遺伝子は、MYO7Aタンパク質をコードするMYO7AcDNA(長さが100mbを超える大きな遺伝子)である。大きなMYO7A遺伝子の発現は、CMVプロモーター、CMV/MYO7Aキメラプロモーターまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。AAVベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0597】
別の態様において、本発明のAAVベクターは、矯正のためのATP結合カセット遺伝子ABCA4(ABCRとしても知られる)を視細胞に導入し、それによってシュタルガルト病をもたらす病態生理を減弱または逆転させるために使用され得る。AAVベクターによって運ばれる遺伝子は、ABCA4タンパク質をコードするABCA4cDNAである。ABCA4遺伝子の発現は、CMVプロモーター、視細胞特異的プロモーター、例えばロドプシンキナーゼまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。AAVベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0598】
別の態様において、本発明のAAVベクターは、滲出型加齢黄斑変性(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫または網膜静脈閉塞を有する患者の眼における異常な血管成長および/もしくは血管漏出の再発を予防するように、ならびに/または萎縮型加齢黄斑変性(AMD)を有する患者の眼における異常な血管成長を予防するように設計された遺伝子治療製品として使用され得る。このAAVベクターは、アンジオスタチンおよび/またはエンドスタチンなどの1つまたは複数の抗血管新生タンパク質をコードする1つまたは複数の遺伝子を送達する。一態様において、AAVベクターは、網膜色素上皮細胞への送達のために配列内リボソーム進入部位(IRES)を利用してバイシストロン構成のヒトエンドスタチンおよびアンジオスタチン遺伝子を発現する(1つまたは複数の)抗血管新生遺伝子の発現は、CMV、RPE特異的プロモーター、例えば卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(より最近ではベストロフィンプロモーターとして知られている)によって、または代替のプロモーターによって駆動され得る。AAVベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0599】
別の態様において、本発明のAAVベクターは、移植前のドナー角膜への(1つまたは複数の)抗血管新生遺伝子の送達による血管新生の結果としての角膜移植片拒絶を予防するように設計された遺伝子治療製品として使用され得る。一態様において、AAVベクターは、角膜移植片へのエクスビボ送達のために配列内リボソーム進入部位(IRES)を利用してバイシストロン構成のヒトエンドスタチンおよびアンジオスタチン遺伝子などの(1つまたは複数の)抗血管新生遺伝子を発現する。AAVベクターはエクスビボで角膜移植片組織に適用され得、形質導入されたドナー組織も移植前に保存され得る。(1つまたは複数の)抗血管新生遺伝子の発現は、CMVプロモーターなどの構成的プロモーターによって駆動され得る。しかしながら、代替のプロモーターが使用され得ることも可能である。
【0600】
別の態様において、本発明のAAVベクターは、滲出型加齢黄斑変性(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫または網膜静脈閉塞を有する患者の眼における異常な血管成長および/もしくは血管漏出の再発を予防するように、ならびに/または萎縮型加齢黄斑変性(AMD)を有する患者の眼における異常な血管成長を予防するように設計された遺伝子療法として使用され得る。このAAVベクターは、可溶性形態のfms様チロシンキナーゼをコードする遺伝子を送達する。(可溶性Flt-1)。可溶性Flt-1遺伝子の発現は、CMV、RPE特異的プロモーター、例えば卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(より最近ではベストロフィンプロモーターとして知られている)によって、または代替のプロモーターによって駆動され得る。AAVベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0601】
別の態様において、本発明のAAVベクターは、滲出型加齢黄斑変性(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫または網膜静脈閉塞を有する患者の眼における異常な血管成長および/もしくは血管漏出の再発を予防するように、ならびに/または萎縮型加齢黄斑変性(AMD)を有する患者の眼における異常な血管成長を予防するように設計された遺伝子治療製品として使用され得る。このAAVベクターは、色素上皮由来因子タンパク質(PEDF)をコードする1つまたは複数の遺伝子を送達する。PEDF遺伝子の発現は、CMV、卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(より最近ではベストロフィンプロモーターとして知られている)などのRPE特異的プロモーターによって、または代替のプロモーターによって駆動され得る。AAVベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0602】
別の態様において、本発明のAAVベクターは、滲出型加齢黄斑変性(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫または網膜静脈閉塞を有する患者の眼における異常な血管成長および/もしくは血管漏出の再発を予防するように、ならびに/または萎縮型加齢黄斑変性(AMD)を有する患者の眼における異常な血管成長を予防するように設計された遺伝子治療製品として使用され得る。このAAVベクターは、血管内皮増殖因子(VEGF)の阻害剤、例えば抗VEGF抗体もしくはその結合断片(例えばアフリベルセプト)、VEGF特異的アプタマー、もしくはVEGF受容体の可溶性形態を含むがこれに限定されないVEGF遮断ペプチドもしくはポリペプチドおよび/または血小板由来増殖因子(PDGF)の阻害剤、例えば抗PDGF抗体もしくはその結合断片、PDGF特異的アプタマー、もしくはPDGF受容体の可溶性形態を含むがこれに限定されないPDGF遮断ペプチドもしくはポリペプチドをコードする1つの遺伝子または複数の遺伝子を送達する。一態様において、AAVベクターは、網膜色素上皮細胞への送達のために配列内リボソーム進入部位(IRES)を利用してバイシストロン構成のVEGFの阻害剤およびPDGFの阻害剤を発現する。(1つまたは複数の)遺伝子の発現は、CMV、卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(より最近ではベストロフィンプロモーターとして知られている)などのRPE特異的プロモーターによって、または代替のプロモーターによって駆動され得る。AAVベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0603】
別の態様において、矯正遺伝子卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)およびVMD2の疾患関連形態に対して特異的なマイクロRNA(miRNA)をコードするカセット、またはペリフェリン2をコードする矯正RDS遺伝子およびRDSの疾患関連形態に対して特異的なmiRNAをコードするカセットを網膜色素上皮細胞に導入し、それにより、ベスト病またはベスト卵黄様黄斑変性(BVMD)をもたらす病態生理を減弱または逆転させるために、本発明のAAVベクターが使用される。遺伝子の発現は、CMV、卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(より最近ではベストロフィンプロモーターとして知られている)などのRPE特異的プロモーターによって、または代替のプロモーターによって駆動され得る。AAVベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0604】
別の態様において、矯正レチンアルデヒド結合タンパク質1遺伝子、RLBP1を網膜色素上皮細胞に導入し、それにより、RLBP1関連網膜ジストロフィーをもたらす病態生理を減弱または逆転させるために、本発明のAAVベクターが使用され得る。AAVベクターによって運ばれる遺伝子は、RLBP1タンパク質をコードするRLBP1cDNAである。RLBP1遺伝子の発現は、CMV、卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(より最近ではベストロフィンプロモーターとして知られている)などのRPE特異的プロモーターによって、または代替のプロモーターによって駆動され得る。AAVベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0605】
別の態様において、本発明のAAVベクターは、緑内障を処置するように設計された遺伝子治療製品として使用され得る。このAAVベクターは、COX-2および/またはプロスタグランジンF2α受容体(FPR)をコードする1つまたは複数の遺伝子を送達する。一態様において、AAVベクターは、眼の前房への送達のために配列内リボソーム進入部位(IRES)を利用してバイシストロン構成のCOX-2およびプロスタグランジンF2α受容体(FPR)遺伝子を発現する。(1つまたは複数の)遺伝子の発現は、CMVまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。AAVベクターは、経角膜注射によって投与され得る。
【0606】
別の態様において、矯正ハーモニン遺伝子を導入して、アッシャー症候群1cをもたらす病態生理を減弱または逆転させるために、本発明のAAVベクターが使用され得る。AAVベクターによって運ばれる遺伝子は、ハーモニンタンパク質をコードするハーモニンcDNAである。ハーモニン遺伝子の発現は、CMVプロモーターまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。AAVベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0607】
別の態様において、本発明のAAVベクターは、矯正Rabエスコートタンパク質1(REP1)遺伝子を導入して、全脈絡膜萎縮をもたらす病態生理を減弱または逆転させるために使用され得る。AAVベクターによって運ばれる遺伝子は、REP1タンパク質をコードするREP1cDNAである。REP1遺伝子の発現は、CMVプロモーターまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。AAVベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0608】
別の態様において、(1つまたは複数の)矯正環状ヌクレオチド感受性チャネルベータ2(CNGB2)および/または環状ヌクレオチド感受性チャネルアルファ3(CNGA3)遺伝子を眼の中に導入して、色覚異常をもたらす病態生理を減弱または逆転させるために、本発明のAAVベクターが使用され得る。AAVベクターによって運ばれる(1つまたは複数の)遺伝子は、CNGB2および/またはCNGA3タンパク質をコードする(1つまたは複数の)CNGB2および/またはCNGA3遺伝子である。(1つまたは複数の)遺伝子の発現は、CMVプロモーターまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。AAVベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0609】
別の態様において、本発明のAAVベクターは、矯正CEP290遺伝子を眼の中に導入して、レーバー先天黒内障(LCA)をもたらす病態生理を減弱または逆転させるために使用され得る。AAVベクターによって運ばれる遺伝子は、290kDaの中心体タンパク質をコードするCEP290遺伝子である。CEP290遺伝子の発現は、CMVプロモーターまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。AAVベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0610】
別の態様において、本発明のAAVベクターは、矯正網膜色素変性症GTP加水分解酵素調節因子(RPGR)遺伝子を眼の中に導入して、x連鎖網膜色素変性症をもたらす病態生理を減弱または逆転させるために使用され得る。AAVベクターによって運ばれる遺伝子は、RPGRタンパク質をコードするRPGR cDNAである。RPGR遺伝子の発現は、CMVプロモーターまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。AAVベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0611】
別の態様において、本発明のAAVベクターは、矯正レチノスキシン1(RS1)遺伝子を眼の中に導入して、x連鎖網膜分離症(retinochisis)をもたらす病態生理を減弱または逆転させるために使用され得る。AAVベクターによって運ばれる遺伝子は、RS1タンパク質をコードするRS1cDNAである。RS1遺伝子の発現は、CMVプロモーターまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。AAVベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0612】
別の態様において、本発明のAAVベクターは、矯正網膜色素変性症1(RP1)遺伝子を眼の中に導入して、網膜色素変性症をもたらす病態生理を減弱または逆転させるために使用され得る。AAVベクターによって運ばれる遺伝子は、RP1タンパク質をコードするRP1cDNAである。RP1遺伝子の発現は、CMVプロモーター、視細胞特異的プロモーター、例えばロドプシンキナーゼまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。AAVベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0613】
別の態様において、本発明のAAVベクターは、矯正網膜色素上皮特異的65kDaタンパク質(RPE65)遺伝子を導入して、レーバー先天黒内障(LCA)2型をもたらす病態生理を減弱または逆転させるために使用され得る。AAVベクターによって運ばれる遺伝子は、RPE65タンパク質をコードするRPE65cDNAである。RPE65遺伝子の発現は、CMV、卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(より最近ではベストロフィンプロモーターとして知られている)などのRPE特異的プロモーターによって、または代替のプロモーターによって駆動され得る。AAVベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0614】
別の態様において、本発明のAAVベクターは矯正ヒトプロリン/アルギニンリッチ末端ロイシン、リッチリピートタンパク質(PRELP)遺伝子を導入して、滲出型加齢黄斑変性(AMD)、萎縮型AMD、糖尿病性黄斑浮腫または網膜静脈閉塞をもたらす病態生理を減弱または逆転させるために使用され得る。AAVベクターによって運ばれる遺伝子は、PRELPタンパク質をコードするPRELPcDNAである。PRELP遺伝子の発現は、CMV、卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(より最近ではベストロフィンプロモーターとして知られている)などのRPE特異的プロモーターによって、または代替のプロモーターによって駆動され得る。AAVベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0615】
別の態様において、本発明のAAVベクターは、合成ミオシリン特異的miRNAをコードする核酸配列を眼の中に導入して、ミオシリンの発現をノックダウンすることによって若年性開放隅角緑内障をもたらす病態生理を減弱または逆転させるために使用され得る。合成ミオシリン特異的miRNAの発現は、CMVプロモーターまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。AAVベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0616】
別の態様において、本発明のAAVベクターは、グルタチオン生合成経路からの(1つまたは複数の)律速酵素であるグルタミン酸-システインリガーゼ(GCL)および/もしくはグルタチオンシンセターゼ(GSS)、ならびに/または合成γ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)特異的miRNAをコードする核酸配列を眼の中に導入して、遺伝子増強および/またはノックダウンによって、網膜色素変性症をもたらす病態生理を減弱または逆転させるために使用され得る。(1つまたは複数の)GCLおよび/もしくはGSS遺伝子ならびに/または合成GGT特異的miRNAの発現は、CMVプロモーターまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。一態様において、AAVベクターは、1つまたは複数の配列内リボソーム進入部位(IRES)を利用してマルチシストロン構成の(1つまたは複数の)遺伝子および/または合成miRNAを発現し得る。AAVベクターは、眼の前房への直接送達によって投与され得る。
【0617】
別の態様において、本発明のAAVベクターは、前頭側頭葉認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病などの神経変性障害、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの運動ニューロン障害を処置するように設計された遺伝子治療製品として使用され得る。このAAVベクターは、VEGF145、VEGF165もしくはVEGF189などのVEGF-Aアイソフォームであり得るまたはVEGF-B、VEGF-CもしくはVEGF-Dであり得るVEGFタンパク質をコードする遺伝子を送達し、このような遺伝子は神経保護効果を有する。遺伝子の発現は、CMVまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。AAVベクターは、大きな筋肉群への直接注射によって、または髄腔内もしくは脳室内注射による脳脊髄液中への直接注射によって投与され得る。
【0618】
別の態様において、本発明のAAVベクターは、嚢胞性線維症を処置するように設計された遺伝子治療製品として使用され得る。このAAVベクターは、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)をコードする遺伝子を送達する。遺伝子の発現は、CMVまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。AAVベクターは、鼻腔内に、ネブライザーの使用によって、または気管支肺胞洗浄液を介した肺内への直接送達によって投与され得る。
【0619】
別の態様において、本発明のAAVベクターは、矯正N-スルホグルコサミンスルホヒドロラーゼ(SGSH)および/またはスルファターゼ修飾因子1(SUMF1)遺伝子(1つまたは複数)を脳内に導入して、サンフィリポ症候群Aをもたらす病態生理を減弱または逆転させるために使用され得る。AAVベクターによって運ばれる(1つまたは複数の)遺伝子は、SGSHタンパク質をコードするSGSH cDNAおよび/またはSUMF1タンパク質をコードするSUMF1遺伝子である。(1つまたは複数の)遺伝子の発現は、CMVプロモーターまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。一態様において、AAVベクターは、配列内リボソーム進入部位(IRES)を利用してバイシストロン構成のSGSHおよびSUMF1遺伝子を発現し得る。AAVベクターは、直接脳内注射によって投与され得る。
【0620】
別の態様において、本発明のAAVベクターは、矯正酸性αグリコシダーゼ(GAA)遺伝子を大きな筋肉群および/または肺内に導入して、ポンペ病をもたらす病態生理を減弱または逆転させるために使用され得る。このAAVベクターは、GAAタンパク質をコードする遺伝子を送達する。遺伝子の発現は、CMVまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。AAVベクターは、(i)大きな筋肉群中への直接注射によって、および/または(ii)鼻腔内に、ネブライザーの使用によって、もしくは気管支肺胞洗浄液を介した肺内への直接送達によって投与され得る。
【0621】
別の態様において、本発明のAAVベクターは、矯正遺伝子、第VIII因子を肝臓、筋肉または脂肪細胞に導入して血友病Aを処置するために使用され得る。AAVベクターによって運ばれる遺伝子は第VIII因子である。第VIII因子遺伝子の発現は、CMVプロモーターまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。
【0622】
別の態様において、本発明のAAVベクターは、矯正遺伝子、第IX因子を肝臓、筋肉または脂肪細胞に導入して血友病Bを処置するために使用され得る。AAVベクターによって運ばれる遺伝子は第IX因子である。第IX因子遺伝子の発現は、CMVプロモーターまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。
【0623】
別の態様において、本発明のAAVベクターは、欠損した酵素をコードする遺伝子を導入してポルフィリン症の一形態を処置するために使用され得る。AAVベクターによって運ばれる遺伝子は、以下の表から選択される処置されるべきポルフィリン症のタイプに関連する欠損酵素をコードする遺伝子である。遺伝子の発現は、CMVプロモーターまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。
【0624】
【0625】
別の態様において、本発明のAAVベクターは、欠損した酵素をコードする遺伝子を導入してムコ多糖症の一形態を処置するために使用され得る。AAVベクターによって運ばれる遺伝子は、以下の表から選択される処置されるべきムコ多糖症のタイプに関連する欠損酵素をコードする遺伝子である。遺伝子の発現は、CMVプロモーターまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。
【0626】
【0627】
別の態様において、本発明のAAVベクターは、滲出型加齢黄斑変性(AMD)患者の眼の浮腫における異常な血管成長の再発を予防するように設計された遺伝子治療製品として使用され得る。このAAVベクターは、アンジオスタチンおよび/またはエンドスタチンなどの1つまたは複数の抗血管新生タンパク質をコードする1つまたは複数の遺伝子を送達する。一態様において、AAVベクターは、網膜色素上皮細胞への送達のために配列内リボソーム進入部位(IRES)を利用してバイシストロン構成のヒトエンドスタチンおよびアンジオスタチン遺伝子を発現する(1つまたは複数の)抗血管新生遺伝子の発現は、CMV、RPE特異的プロモーター、例えば卵黄様黄斑ジストロフィー2(VMD2)プロモーター(より最近ではベストロフィンプロモーターとして知られている)によって、または代替のプロモーターによって駆動され得る。AAVベクターは、眼の硝子体切除後の直接網膜下注射によって投与され得る。
【0628】
別の態様において、本発明のAAVベクターは、前頭側頭葉認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病などの神経変性障害、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの運動ニューロン障害を処置するように設計された遺伝子治療製品として使用され得る。このAAVベクターは、VEGF145、VEGF165もしくはVEGF189などのVEGF-Aアイソフォームであり得るまたはVEGF-B、VEGF-CもしくはVEGF-Dであり得るVEGFタンパク質をコードする遺伝子を送達し、このような遺伝子は神経保護効果を有する。遺伝子の発現は、CMVまたは代替のプロモーターによって駆動され得る。AAVベクターは、脳室内注射または髄腔内注射を介して脊髄を浸す脳脊髄液中への直接注射によって投与され得る。
【0629】
処置の方法
本発明の別の局面は、本発明のウイルスベクターまたは本発明のウイルスベクターで形質導入された細胞を、該細胞を必要とする対象に投与することを含む処置の方法に関する。
【0630】
本明細書における処置という参照はすべて、治癒的、緩和的および予防的処置を含むが、本発明の文脈においては、予防するという参照が、より一般的に予防的処置に関連することを理解されたい。処置には、疾患進行の予防または遅延も含まれ得る。哺乳動物の処置が特に好ましい。ヒトおよび獣医学的処置の両方が本発明の範囲内である。
【0631】
一態様において、本発明のウイルスベクターまたはウイルスベクター粒子は、ワクチンとして使用するためのものであり得る。ワクチンは、例えば、ヒトまたは獣医用のウイルスをベースとするワクチン(例えば、インフルエンザおよびニューカッスル病ウイルスワクチン)であり得る。
【0632】
本発明は、ワクチンが導入遺伝子を保有する改変されたコンピテントウイルスをベースとする場合に特に有用であり得る。
【0633】
上述のように、鳥類の産生細胞は、ワクチンとして使用するためのウイルスベクターおよびウイルスベクター粒子の作製において使用され得る。
【0634】
薬学的組成物
本発明の別の局面は、本発明のウイルスベクターまたは本発明のウイルスベクターで形質導入された細胞もしくは組織を、薬学的に許容され得る担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせて含む薬学的組成物に関する。
【0635】
本発明は、遺伝子療法によって個体を処置するための薬学的組成物であって、治療有効量のベクターを含む薬学的組成物を提供する。薬学的組成物は、ヒトまたは動物の使用のためのものであり得る。
【0636】
組成物は、薬学的に許容され得る担体、希釈剤、賦形剤または補助剤を含み得る。薬学的担体、賦形剤または希釈剤の選択は、意図された投与経路および標準的な薬学の実務に関して行うことができる。薬学的組成物は、任意の適切な(1種または複数種の)結合剤、(1種または複数種の)潤滑剤、(1種または複数種の)懸濁化剤、(1種または複数種の)コーティング剤、(1種または複数種の)可溶化剤および標的部位へのベクターの進入を補助もしくは増加させ得る他の担体因子(例えば、脂質送達系など)を含み得る、または担体、希釈剤もしくは賦形剤に加えて含み得る。
【0637】
適切な場合、組成物は、吸入の任意の1つもしくは複数によって;坐剤もしくはペッサリーの形態で;ローション、溶液、クリーム、軟膏もしくは粉剤の形態で局所的に;皮膚用パッチ剤の使用によって;デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤を含有する錠剤の形態で経口的に、もしくは単独でもしくは賦形剤と混合したカプセルもしくは膣座薬で、もしくは香味料もしくは着色剤を含有するエリキシル剤、溶液もしくは懸濁液の形態で投与することができ、またはそれらは、非経口的に、例えば、陰茎海綿体内に、静脈内に、筋肉内に、頭蓋内に、眼内にもしくは皮下に注射することができる。非経口投与の場合、組成物は、他の物質、例えば溶液を血液と等張にするのに十分な塩または単糖類を含有し得る無菌水溶液の形態で最も適切に使用され得る。頬側または舌下投与の場合、組成物は、従来の様式で製剤化することができる錠剤または甘味入り錠剤の形態で投与され得る。
【0638】
本発明のベクターはまた、標的細胞または標的組織を必要とする患者に前記標的細胞または標的組織を導入する前に、エクスビボで標的細胞または標的組織を形質導入するために使用され得る。このような細胞の例は自己T細胞であり得、このような組織の例はドナー角膜であり得る。
【0639】
スクリーニングの方法
本発明の別の局面は、核酸結合部位に機能的に連結されたときに関心対象のヌクレオチドの翻訳がウイルスベクター産生細胞において抑制または防止されるように相互作用することができる核酸結合部位および/または同族の核酸結合タンパク質を同定する方法であって、レポーター遺伝子に機能的に連結された核酸結合部位および核酸結合タンパク質の両方を含む細胞におけるレポーター遺伝子の発現を分析することを含む、方法に関する。
【0640】
この方法は、本発明において有用な新規RNA結合タンパク質およびそれらの対応する結合部位の同定を可能にし得る。この方法はまた、公知のRNA結合タンパク質または結合部位の変異型の同定を可能にし得る。
【0641】
一態様において、本方法は、TRAPと相互作用する結合部位の同定を可能にする。
【0642】
別の態様において、本方法は、TRAPに結合することができる結合部位と相互作用する核酸結合タンパク質の同定を可能にする。
【0643】
一態様において、レポーター遺伝子は蛍光タンパク質をコードする。
【0644】
別の態様において、レポーター遺伝子は、陽性細胞増殖選択マーカー、例えばZeocin(商標)に対する細胞耐性を可能にするsh ble遺伝子産物をコードする。
【0645】
別の態様において、レポーター遺伝子は、陰性細胞増殖選択マーカー、例えばガンシクロビルの存在下で細胞死を引き起こすHSVチミジンキナーゼ遺伝子産物をコードする。
【0646】
改良された機能性についてTRAP結合部位(tbs)をスクリーニングする例は以下の通りであり得る。
【0647】
・配列KAGNNの8~11リピートまたはKAGNNおよびKAGNNNの合計8~11リピートを含む縮重DNAライブラリーを合成する。
【0648】
・GFPなどのレポーター遺伝子カセットの5’UTR内(好ましくはORFの12ヌクレオチド以内)でライブラリーをクローニングする。ライブラリーに連結されたレポーター遺伝子は、必要に応じて、レトロウイルスベクターゲノムおよび作製されたレトロウイルスベクターライブラリー中にクローニングされ得る。
【0649】
・ライブラリーに連結されたレポーター遺伝子カセットを細胞株中に安定に導入し(これは形質移入またはレトロウイルスベクター送達によって達成され得る)、単一クローンを単離する。
【0650】
・対照DNA(例えば、pBlueScript)またはTRAP発現プラスミドDNAを使用する並行した形質移入によってクローンをスクリーニングする。両シナリオにおけるレポーター遺伝子発現を測定し、高い非抑制レポーター遺伝子レベル(対照)および低い抑制されたレポーター遺伝子レベル(TRAP)を有するクローンを同定する。
【0651】
・候補クローンからの標的細胞ゲノムDNAからのtbs配列のPCR増幅および配列決定によってtbs配列を同定する。
【0652】
ここで、実施例によって本発明をさらに説明するが、実施例は当業者が本発明を実施するのを助ける役割を果たすことを意図しており、決して本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0653】
ポリヌクレオチド
本発明のポリヌクレオチドは、DNAまたはRNAを含み得る。本発明のポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖であり得る。遺伝暗号の縮重の結果として、多数の異なるポリヌクレオチドが同じポリペプチドをコードすることができることが当業者によって理解されるであろう。さらに、日常的な技術を使用して、本発明において使用するためのポリペプチドがその中において発現されるべき任意の特定の宿主生物のコドン使用を反映するために、当業者は、本発明において使用するためのポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド配列に影響を及ぼさないヌクレオチド置換を行い得ることを理解されたい。
【0654】
ポリヌクレオチドは、当技術分野で利用可能な任意の方法によって修飾され得る。このような修飾は、本発明のポリヌクレオチドのインビボでの活性または寿命を増強するために行われ得る。
【0655】
DNAポリヌクレオチドなどのポリヌクレオチドは、組換え的に、合成的に、または当業者に利用可能な任意の手段によって作製され得る。DNAポリヌクレオチドなどのポリヌクレオチドはまた、標準的な技術によってクローニングされ得る。
【0656】
組換え手段を使用して、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)クローニング技術を使用して、一般に、より長いポリヌクレオチドが作製されるであろう。これは、クローニングすることが望まれる標的配列に隣接する(例えば、約15~30ヌクレオチドの)プライマーの対を作製すること、プライマーを動物またはヒト細胞から得られたmRNAまたはcDNAと接触させること、所望の領域の増幅をもたらす条件下でポリメラーゼ連鎖反応を行うこと、増幅された断片を(例えば、反応混合物をアガロースゲルで精製することによって)単離すること、および増幅されたDNAを回収することを含む。プライマーは、増幅されたDNAを適切なベクター中にクローニングすることができるように、適切な制限酵素認識部位を含有するように設計され得る。
【0657】
タンパク質
本明細書で使用される場合、「タンパク質」という用語は、単鎖ポリペプチド分子の他、個々の構成ポリペプチドが共有結合または非共有結合手段によって連結されている複数ポリペプチド複合体を含む。本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」および「ペプチド」という用語は、モノマーがアミノ酸であり、ペプチドまたはジスルフィド結合を介して互いに結合されているポリマーを指す。
【0658】
変異型、誘導体、類似体、相同体および断片
本明細書で言及される特定のタンパク質およびヌクレオチドに加えて、本発明はまた、その変異型、誘導体、類似体、相同体および断片の使用も包含する。
【0659】
本発明の文脈において、任意の所与の配列の変異型は、残基の特定の配列(アミノ酸残基であるかまたは核酸残基であるかを問わない)が、問題のポリペプチドまたはポリヌクレオチドがその内因性機能の少なくとも1つを保持するように改変されている配列である。変異型配列は、天然に存在するタンパク質中に存在する少なくとも1つの残基の付加、欠失、置換、修飾、置き換えおよび/または変異によって得ることができる。
【0660】
本発明のタンパク質またはポリペプチドに関して本明細書で使用される「誘導体」という用語は、得られるタンパク質またはポリペプチドがその内因性機能の少なくとも1つを保持することを条件として、配列からのまたは配列への1つ(または複数)のアミノ酸残基の任意の置換、変異、修飾、置き換え、欠失および/または付加を含む。
【0661】
ポリペプチドまたはポリヌクレオチドに関して本明細書で使用される「類似体」という用語は、任意の模倣物、すなわち、その化学的化合物が模倣するポリペプチドまたはポリヌクレオチドの内因性機能の少なくとも1つを有する化学的化合物を含む。
【0662】
典型的には、改変された配列が必要とされる活性または能力を保持する限り、アミノ酸置換、例えば1、2または3から10または20個の置換が行われ得る。アミノ酸置換は、天然に存在しない類似体の使用を含み得る。
【0663】
本発明で使用されるタンパク質はまた、サイレント変化を生成し、機能的に等価なタンパク質をもたらすアミノ酸残基の欠失、挿入または置換を有し得る。意図的なアミノ酸置換は、内因性機能が保持される限り、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性および/または両親媒性の性質の類似性に基づいて行われ得る。例えば、負に帯電したアミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられ、正に荷電されたアミノ酸としては、リジンおよびアルギニンが挙げられ、同様の親水性値を有する非荷電極性頭部基を有するアミノ酸としては、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニンおよびチロシンが挙げられる。
【0664】
保存的置換は、例えば以下の表に従って行われ得る。第2列内の同じブロック内の、好ましくは第3列内の同じ行内のアミノ酸は、互いに置換され得る:
【0665】
【0666】
「相同体」という用語は、野生型アミノ酸配列および野生型ヌクレオチド配列と一定の相同性を有する実体を意味する。「相同性」という用語は、「同一性」と同じであると見ることができる。
【0667】
本文脈において、相同な配列は、対象配列と少なくとも50%、55%、65%、75%、85%または90%同一、好ましくは少なくとも95%または97%または99%同一であり得るアミノ酸配列を含むと解釈される。典型的には、相同体は、対象のアミノ酸配列と同じ活性部位などを含む。相同性は類似性(すなわち、類似の化学的特性/機能を有するアミノ酸残基)の観点で考えることができるが、本発明の文脈においては、配列同一性の観点で相同性を表すことが好ましい。
【0668】
本文脈において、相同な配列は、対象配列と少なくとも50%、55%、65%、75%、85%または90%同一、好ましくは少なくとも95%または97%または99%同一であり得るヌクレオチド配列を含むと解釈される。相同性は類似性の観点で考えることができるが、本発明の文脈においては、配列同一性の観点で相同性を表すことが好ましい。
【0669】
相同性比較は、眼によって、またはより一般的には、容易に利用可能な配列比較プログラムの助けを借りて行うことができる。これらの市販のコンピュータプログラムは、2つ以上の配列間でのパーセンテージ相同性または同一性を計算することができる。
【0670】
パーセンテージ相同性は、連続する配列にわたって計算され得る、すなわち、一方の配列を他方の配列と整列させ、一方の配列中の各アミノ酸を他方の配列中の対応するアミノ酸と一度に1残基ずつ直接比較する。これは「ギャップなし」アラインメントと呼ばれる。典型的には、このようなギャップなしアラインメントは、比較的少数の残基にわたってのみ行われる。
【0671】
これは極めて単純で一貫した方法であるが、例えば、挿入または欠失がなければ同一であった配列の対において、ヌクレオチド配列中の1つの挿入または欠失が、後続のコドンをアラインメントから除外させ得ることを考慮に入れることができず、したがって、全体的なアラインメントが行われるときに、パーセント相同性の大きな低下をもたらす可能性がある。その結果、ほとんどの配列比較方法は、全体的な相同性スコアを過度に引き下げずに、起こり得る挿入および欠失を考慮に入れた最適なアラインメントを生成するように設計されている。これは、局所的な相同性を最大化しようとするために配列アラインメント中に「ギャップ」を挿入することによって達成される。
【0672】
しかしながら、これらのより複雑な方法は、アライメントにおいて生じる各ギャップに「ギャップペナルティ」を割り当て、それにより、同じ数の同一のアミノ酸については、2つの比較される配列間でのより高い関連性を反映する、可能な限り少ないギャップを有する配列アライメントが、多くのギャップを有する配列アラインメントより高いスコアを達成する。ギャップの存在に対して比較的高いコストを課し、ギャップ内の各後続の残基に対してはより小さいペナルティを課す「アフィンギャップコスト」が典型的に使用されている。これは、最も一般的に使用されるギャップスコアリングシステムである。高いギャップペナルティは、当然ながら、より少ないギャップを有する最適化されたアラインメントを生じる。ほとんどのアラインメントプログラムでは、ギャップペナルティを修正することができる。しかしながら、配列比較のためにこのようなソフトウェアを使用する場合、初期設定値を使用することが好ましい。例えば、GCG Wisconsin Bestfitパッケージを使用する場合、アミノ酸配列に対する初期設定のギャップペナルティは、ギャップに対して-12、各伸長に対して-4である。
【0673】
したがって、最大パーセンテージ相同性の計算は、まず、ギャップペナルティを考慮に入れて、最適なアラインメントを生成することを必要とする。このようなアラインメントを実施するための適切なコンピュータプログラムは、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(University of Wisconsin,U.S.A.;Devereux et al.(1984)Nucleic Acids Research 12:387)である。配列比較を実施することができる他のソフトウェアの例には、BLASTパッケージ(Ausubel et al.(1999)同書-Ch.18)、FASTA(Atschul et al.(1990)J.Mol.Biol.403-410)および比較ツールのGENEWORKS一式が含まれるが、これらに限定されない。BLASTおよびFASTAはいずれも、オフラインおよびオンライン検索のために利用可能である(Ausubel et al.(1999)同書,pages 7-58~7-60を参照)。しかしながら、いくつかの用途では、GCG Bestfitプログラムを使用することが好ましい。BLAST 2 Sequencesと呼ばれる別のツールもまた、タンパク質およびヌクレオチド配列を比較するために利用可能である(FEMS Microbiol Lett(1999)174(2):247-50;FEMS Microbiol Lett(1999)177(1):187-8を参照)。
【0674】
最終的なパーセンテージ相同性は、同一性に関して測定することができるが、アラインメントプロセス自体は、典型的には、全か無かの対比較に基づいていない。代わりに、化学的類似性または進化的距離に基づいて各対比較にスコアを割り当てるスケール化された類似性スコア行列が一般に使用される。一般的に使用されるこのような行列の例は、プログラムのBLAST一式の初期設定の行列であるBLOSUM62行列である。GCG Wisconsinプログラムは、一般に、公開の初期設定値または提供される場合には特別の記号比較表のいずれかを使用する(さらなる詳細についてはユーザマニュアルを参照)。いくつかの用途では、GCGパッケージの公開の初期設定値、または他のソフトウェアの場合にはBLOSUM62などの初期設定行列を使用することが好ましい。
【0675】
ソフトウェアが最適なアラインメントを生成したら、パーセンテージ相同性、好ましくはパーセンテージ配列同一性を計算することが可能である。ソフトウェアは、典型的には、配列比較の一部としてこれを行い、数値結果を生成する。
【0676】
「断片」もまた変異型であり、この用語は、典型的には、機能的にまたは例えばアッセイにおいて関心のあるポリペプチドまたはポリヌクレオチドの選択された領域を指す。したがって、「断片」は、完全長ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの一部であるアミノ酸または核酸配列を指す。
【0677】
このような変異型は、部位特異的突然変異誘発などの標準的な組換えDNA技術を使用して調製され得る。挿入が行われる場合、挿入部位の両側の天然に存在する配列に対応する5’および3’隣接領域と共に挿入をコードする合成DNAが作製され得る。隣接領域は、配列が(1つまたは複数の)適切な酵素で切断され、合成DNAが切断物に連結され得るように、天然に存在する配列中の部位に対応する都合のよい制限部位を含有する。次いで、本発明に従ってDNAを発現させて、コードされたタンパク質を作製する。これらの方法は、DNA配列の操作のための当技術分野で公知の多数の標準的な技術の例示にすぎず、他の公知の技術も使用され得る。
【0678】
本発明のRNA結合タンパク質のすべての変異型、断片または相同体は、NOIの翻訳がウイルスベクター産生細胞において抑制または防止されるように、本発明の同族結合部位を結合する能力を保持する。
【0679】
本発明の結合部位のすべての変異型、断片または相同体は、NOIの翻訳がウイルスベクター産生細胞において抑制または防止されるように、同族RNA結合タンパク質を結合する能力を保持する。
【0680】
コドン最適化
本発明において使用されるポリヌクレオチド(ベクター産生系のNOIおよび/または成分を含む)は、コドン最適化され得る。コドン最適化は、国際公開第1999/41397号および国際公開第2001/79518号に以前に記載されている。異なる細胞では、特定のコドンの使用が異なる。このコドンバイアスは、細胞型における特定のtRNAの相対的存在量におけるバイアスに対応する。配列中のコドンが対応するtRNAの相対的存在量と合致するように調整されるように配列中のコドンを変化させることによって、発現を増加させることが可能である。同様に、対応するtRNAが特定の細胞型において稀であることが知られているコドンを意図的に選択することによって、発現を減少させることが可能である。したがって、さらなる程度の翻訳の制御が利用可能である。
【0681】
HIVおよび他のレンチウイルスを含む多くのウイルスは多数の稀なコドンを使用しており、これらを一般的に使用される哺乳動物コドンに対応するように変更することによって、関心対象の遺伝子、例えばNOIまたは哺乳動物プロデューサ細胞中のパッケージング成分の増加した発現を達成することができる。コドン使用表は、哺乳動物細胞の他、様々な他の生物について当技術分野で公知である。
【0682】
ウイルスベクター成分のコドン最適化には、いくつかの他の利点がある。ウイルスベクター成分の配列の変化により、プロデューサ細胞/パッケージング細胞中でのウイルス粒子の集合のために必要とされるウイルス粒子のパッケージング成分をコードするヌクレオチド配列からは、RNA不安定性配列(INS)が除外される。同時に、パッケージング成分のアミノ酸配列コード配列は、これらの配列によってコードされるウイルス成分が同一性を保つか、またはパッケージング成分の機能が損なわれないように少なくとも十分に類似するように保持される。レンチウイルスベクターにおいては、コドン最適化はまた、搬出のためのRev/RREの必要性も克服し、最適化された配列をRev非依存性にする。コドン最適化はまた、ベクター系内の異なる構築物間(例えば、gag-polおよびenvオープンリーディングフレームにおける重複領域間)での相同組換えを低減させる。したがって、コドン最適化の全体的な効果は、ウイルス力価の顕著な増加および改善された安全性である。
【0683】
一態様において、INSに関連するコドンのみがコドン最適化される。しかしながら、はるかに好ましい実用的な態様においては、配列は、いくつかの例外、例えば、gag-polのフレームシフト部位を包含する配列(下記参照)を除いて、配列の全体がコドン最適化される。
【0684】
gag-pol遺伝子は、gag-polタンパク質をコードする2つの重複するリーディングフレームを含む。両タンパク質の発現は、翻訳中のフレームシフトに依存する。このフレームシフトは、翻訳中でのリボソーム「翻訳スリップ」の結果として起こる。この翻訳スリップは、少なくとも部分的にはリボソームを失速させるRNA二次構造によって引き起こされると考えられる。このような二次構造は、gag-pol遺伝子中のフレームシフト部位の下流に存在する。HIVの場合、重複領域は、gagの始まりの下流のヌクレオチド1222(ヌクレオチド1はgagATGのAである)からgagの終わり(nt1503)まで伸びる。その結果、フレームシフト部位と2つのリーディングフレームの重複領域にまたがる281bp断片は、好ましくはコドン最適化されない。この断片を保持することにより、Gag-polタンパク質のより効率的な発現が可能になる。
【0685】
EIAVの場合、重複の開始はnt1262であると解されている(ヌクレオチド1はgagATGのAである)。重複の末端は1461bpにある。フレームシフト部位およびgag-pol重複が確実に保存されるようにするために、野生型配列がnt1156から1465まで保持されている。
【0686】
例えば、都合のよい制限部位を収容するために、最適なコドン使用からの誘導が行われ得、Gag-Polタンパク質中に保存的なアミノ酸変化が導入され得る。
【0687】
一態様において、コドン最適化は、低度に発現される哺乳動物遺伝子に基づく。第3の塩基、場合によっては第2の塩基および第3の塩基が変更され得る。
【0688】
遺伝暗号の縮重性のために、数多くのgag-pol配列が当業者によって達成され得ることが理解されるであろう。また、コドン最適化されたgag-pol配列を生成するための出発点として使用することができる記載された多くのレトロウイルス変異型が存在する。レンチウイルスのゲノムは極めて可変的であり得る。例えば、依然として機能的であるHIV-1の多くの準種が存在する。これはEIAVにも当てはまる。これらの変異型は、形質導入過程の特定の部分を強化するために使用され得る。HIV-1変異型の例は、Los Alamos National Security,LLCによって運営されているHIV Database、http://hiv-web.lanl.govに見出すことができる。EIAVクローンの詳細は、http://www.ncbi.nlm.nih.govに位置するNational Center for Biotechnology Information(NCBI)データベースに見出すことができる。
【0689】
コドン最適化されたgag-pol配列に対する戦略は、任意のレトロウイルスに関して使用することができる。コドン最適化されたgag-pol配列に対する戦略は、EIAV、FIV、BIV、CAEV、VMR、SIV、HIV-1およびHIV-2を含むすべてのレンチウイルスに適用される。さらに、この方法は、HTLV-1、HTLV-2、HFV、HSRVおよびヒト内在性レトロウイルス(HERV)、MLVおよび他のレトロウイルス由来の遺伝子の発現を増加させるために使用することができる。
【0690】
コドン最適化は、gag-pol発現をRev非依存性にすることができる。しかしながら、レンチウイルスベクターにおける抗revまたはRRE因子の使用を可能にするためには、ウイルスベクター生成系を完全にRev/RRE非依存性にすることが必要であろう。したがって、ゲノムも改変される必要がある。これは、ベクターゲノム成分を最適化することによって達成される。有利には、これらの改変はまた、プロデューサ細胞および形質導入された細胞の両方にすべての追加のタンパク質が存在しないより安全な系の産生をもたらす。
【0691】
表1は、KはTまたはGであり得、「R」は配列中のその位置にプリン(すなわち、AまたはG)を指定すると理解されるべきであり、「V」はG、A、またはCからの任意のヌクレオチドを指定すると理解されるべきであり、「N」は配列中のその位置に任意のヌクレオチドを指定すると理解されるべきである配列を示す。例えば、これはG、A、T、CまたはUであり得る。TRAP結合部位(tbs)配列または3’tbs配列は斜字体で示され、多重クローニング部位(MCS)は下線で示され、コザック配列は太字で示される。
【0692】
【実施例】
【0693】
実験の手順
DNAクローニング
標準的な分子クローニング技術によって発現構築物を作製した。典型的には、再合成(GeneArt)によってまたは短いオリゴアダプタによって挿入断片を作製し、制限酵素消化によってレポーター(GFP)プラスミド中に挿入して、表記構築物を作製した。弱毒化された大腸菌(E.coli)株の標準的な形質転換および増殖によってプラスミドDNAを作製した。
【0694】
接着性細胞の培養および形質移入
HEK293T細胞を接着様式での形質移入のために使用した-HEK293T細胞は、ウイルスベクター製造において典型的に使用され、したがって、それらの使用は、関連する文脈での導入遺伝子発現/抑制のモデルとなった。10%熱失活ウシ胎児血清(FBS)(Gibco)、2mML-グルタミン(Sigma)および1%非必須アミノ酸(NEAA)(Sigma)を補充した完全培地(ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Sigma))中、5%CO2中、37℃で細胞を維持した。
【0695】
0.175cm2容器面積あたりmL完全培地あたり3.5×105細胞でHEK293T細胞を播種し、およそ24時間後に、以下の質量比のプラスミドを使用して細胞を形質移入した:「+TRAP」=34.25ng/cm2のレポータープラスミド、34.25ng/cm2のpEF1α-TRAP1および68.5ng/cm2のpBluescript;「TRAPなし」=34.25ng/cm2のレポータープラスミドおよび102.8ng/cm2のpBluescript。形質移入は、製造業者のプロトコル(Life Technologies)に従ってFreeStyle無血清培地中でDNAをLipofectamine 2000CDと混合することによって媒介された。10mlの新鮮な無血清培地が形質移入培地を置き換える前に、約18時間後に酪酸ナトリウム(Sigma)を10mMの最終濃度まで5~6時間添加した。形質移入の約2日後に、GFP発現の分析のために細胞を採取した(またはルシフェラーゼ発現が示され、対照が含まれていた)。
【0696】
懸濁細胞培養および形質移入
HEK293T懸濁細胞を懸濁様式での形質移入のために使用した-HEK293T懸濁細胞は、ウイルスベクター製造において典型的に使用され、したがって、それらの使用は、関連する文脈での導入遺伝子発現/抑制のモデルとなった。振盪インキュベーター(190RPMに設定された25mm軌道)内で、5%CO2中、37℃で、Freestyle+0.1%CLC(Gibco)中において細胞を増殖させた。無血清培地中に8×105細胞/mLで細胞を播種し、24時間後に、以下の質量/mL(最終培養体積(cvol))比のプラスミドを用いて細胞を形質移入した:「+TRAP」=300ng/mLのレポータープラスミド、300ng/mLのpEF1a-TRAP1および600ng/mLのpBluescript;「TRAPなし」=300ng/mLのレポータープラスミドおよび900ng/mLのpBluescript。形質移入は、製造業者のプロトコル(Life Technologies)に従ってFreeStyle中でDNAをLipofectamine 2000CDと混合することによって媒介された。酪酸ナトリウム(Sigma)を約18時間後に10mMの最終濃度まで添加した。形質移入の約2日後に、GFP発現の分析のために細胞を採取した(またはルシフェラーゼ発現が示され、対照が含まれていた)。
【0697】
GFP発現アッセイ
Attune-NxT(Thermofisher)を用いてフローサイトメトリのために形質移入された細胞を調製し、GFP発現のパーセンテージおよび蛍光強度中央値(MFI)を測定した。各実験について、%GFPとMFI値を乗じて、相対GFP発現スコアを得た。GFP抑制のレベルを評価するために、このスコアをTRAP同時形質移入ありまたはなしの条件と比較した。
【0698】
ルシフェラーゼアッセイ
反復培養では、ウェルあたり添加された室温の100ulの1×Passive Lysis Buffer中で細胞をインキュベートした。細胞を室温で45分間インキュベートし、次いで、可溶化液を3×約30ulの一定分量に分割し、-80℃で凍結した。ルシフェラーゼアッセイのために、細胞可溶化液(PLB中)およびルシフェラーゼアッセイ試薬(LAR)を放置して解凍し、室温に平衡させた後、10ulの可溶化液を白色96ウェルプレートに形質移入した。MLXリーダーを使用して、12秒間の読み取り中に80ulのLAR/反応を使用してルシフェラーゼ活性をアッセイした。ルシフェラーゼ活性は、(合計蛍光単位/読み取り時間)を使用することによって算出した。
【0699】
[実施例1]
天然のプロモーター5’UTRリーダー配列と比較して、改善型リーダーを使用してTRAP-tbsによる普遍的に増強された抑制の実証。
【0700】
(異なる長さおよび組成の異なる天然の5’UTRを含有する)異なるプロモーターにTRIP系を適用する場合には、(TRAPなしでの)良好な「ON」レベルの発現も維持しながら、TRAPによる効率的な抑制を与えるために、プロモーター-UTR状況内にtbs配列を単に適用することが可能であることが望ましい。
【0701】
本研究の開始から、tbsが様々な構成的プロモーターの天然のUTR中に挿入されるときに、TRAP-tbsによって媒介される抑制の達成可能なレベルがどの程度であるかは公知でなかった。理想的には、天然の5’UTR配列によって誘導され得る抑制レベルの潜在的な変動性のいずれをも回避するために、選択されたプロモーターを改変する場合には、tbsとともに単一の保存された5’UTRリーダー配列を供給することができることが有利であろう。驚くべきことに、EF1αプロモーターの第1のエクソン(配列番号25)は、天然のリーダー配列を含む5’UTRリーダーと比較して、TRAPによる一貫して良好なレベルの導入遺伝子抑制を提供し、このリーダーは、TRAPの非存在下で良好な「ON」レベルの導入遺伝子発現も提供することが見出された(
図3)。
【0702】
本明細書で「L33改善型リーダー」と呼ばれるEF1αエクソンの最初の33ヌクレオチドは、tbsのすぐ上流に位置し、この配列は、以下のプロモーター:RSV、EF1α/EFS、ユビキチン/UBC、SV40、ヒトPGKおよびHSV TKの天然のリーダーの5’UTR全体を置き換えるために使用された(
図3A)。CMVについては、L33改善型リーダーは、本明細書において「原型リーダー」と呼ばれる、国際公開第2015/092440号で使用された原型の34ntリーダーと比較した。また、異種NotI部位でこれらのプロモーターの天然の5’UTR中にtbsを直接クローニングした(配列の詳細については表I-パネルI/IIを参照)。これらのGFPをコードする構築物をHEK293T細胞+/-TRAP発現プラスミド中に個々に同時形質移入し、GFP発現を形質移入の2日後にフローサイトメトリによって測定した。GFP発現スコア(%GFP陽性細胞×MFI)をフローサイトメトリデータから求めて、プロットした(
図3B)。
【0703】
データは、試験したすべての構成的プロモーターについて、L33改善型リーダーが天然の5’UTRリーダーを優れていたことを示す。TRAPの存在はすべてのtbs含有構築物に対して測定可能な抑制を媒介したが、達成された抑制のレベルは、L33改善型リーダーを含有するものと比較して、天然の5’UTR-tbs構築物についてはさほど良好ではなかった。さらに、L33改善型リーダーを含有する構築物についての(TRAPなしでの)発現の「ON」レベルは、一般に、天然の5’UTR-tbs構築物より高かった。L33改善型リーダーはCMVプロモーター中の原型リーダーと同等に機能し、原型リーダーおよびL33改善型リーダー構成の両方でTRAPによるより高いレベルの抑制が達成されることを示している。
【0704】
L33改善型リーダーを12ヌクレオチド(すなわち、EF1αエクソン1の最初の12ヌクレオチド)に短縮することによって本明細書において「L12改善型リーダー」と呼ばれる第2の改善型リーダーを作製し、tbsとコザック配列の間にMCS2.1またはMCS4.1配列(下記参照)のいずれかを有する6つの構成的プロモーター含有GFPレポーターカセットにクローニングした。それぞれ、pBlueScript(TRAPなし)またはpEF1α-TRAP(TRAP)のいずれかとのレポータープラスミドの同時形質移入によって、GFP発現の抑制されていないレベルまたは抑制されたレベルについてレポーターを試験した。形質移入されたHEK293T細胞(懸濁液、無血清)を形質移入の2日後にフローサイトメトリによって分析し、GFP発現スコア(%GFP×蛍光強度中央値)を得て、log-10変換した(
図8)。
【0705】
データは、L12改善型リーダーが、L33改善型リーダーと同様に機能して、TRAP-tbsによる完全な抑制を可能にし、GFPレベルをバックグラウンドレベルに抑制することを実証する。興味深いことに、GFPの「ON」(抑制されていない/TRAPなし)レベルは、用いられるプロモーターに応じて、L12またはL33についてわずかにより高かった。例えば、「ON」レベルは、EFS構築物ではL12についてより高かったが、huPGKではL33改善型リーダーが大きな「ON」レベルを与えた。
【0706】
これは、異なるプロモーターを有するTRIP系の利用を検討する場合に、L12またはL33のいずれかを選択することができるという点で柔軟性を許容し、その結果、ベクター産生中にTRAP-tbsによって達成される絶対的抑制がL12またはL33改善型リーダーのいずれかについて極めて良好であることを認識しながら、TRAPの非存在下での(すなわちベクターを形質導入された細胞中での)遺伝子発現レベルを最大化することができる。
【0707】
【0708】
表I:UTR-リーダー、tbsおよびMSC変異型配列
[パネルI]異なるプロモーターの5’UTR-tbs領域においてリーダーを試験し、改善型リーダーと比較した。サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターは、国際公開第2015/092440号(原型リーダー)に概説されている合成リーダー配列と共に以前に使用され、該合成リーダー配列は典型的にはTRAP-tbs複合体が導入遺伝子発現を100倍超抑制することを可能にする。試験したプロモーターは、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、伸長因子1α(EF1a)、ユビキチンC(UBC)、サルウイルス40(SV40)、(ヒト)ホスホグリセリン酸キナーゼ(huPGK)および単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ(hsvTK)であった。EF1aおよびUBC天然5’UTRはイントロンのスプライシングによる切り出しから生じ、これはスプライシングされた接合をもたらし、配列中では2つの太字のGGジヌクレオチドによって示されていることに留意されたい。本研究は翻訳レベル(TRAP-tbsによって調節される)での導入遺伝子の発現/抑制に焦点を当てているため、EF1aおよびUBCの「長い」プレmRNA内のイントロンはスプライシングされたmRNA中に存在しないので、EF1aおよびUBCの「長い」プレmRNA内のイントロンの存在は考慮されていないことにも留意すべきである。したがって、EF1aプロモーターはイントロンを欠く「短い」変異型(EFS)と直接比較可能であり、同様にUBCは「短い」UBCプロモーターと比較可能である。EF1aプロモーター(イントロン含有)との関連における本発明のさらなる変異型は、実施例5に記載されている。本研究において評価された構成的プロモーターは、天然のリーダー配列(下線)に続いてNotI部位を含むまでの合成配列を含む5’UTRリーダーを有し、NotI部位の直後にtbs配列が続いた。改善型リーダーL33およびL12は、EF1aプロモーターの第1のエクソンに由来する配列を含む。[パネルII]TRAP-tbsおよび半縮重tbsコンセンサス配列による導入遺伝子(GFP)抑制レベルに対するUTRリーダー配列の影響を比較するために本研究において主に使用されたtbs配列。[パネルIII]国際公開第2015/092440号において使用されたMCSなしと比較して、本研究において評価された多重クローニング部位配列を含む配列。下線が引かれた配列はtbsの3’末端を含み、斜字体で表示された配列は制限酵素(RE)部位を含み(tbsとコアコザック配列間の配列を最小限に抑えるために配列圧縮を可能にするため、いくつかはtbsおよび/または互いと重複する)、コアコザック配列は太字である。
【0709】
[実施例2]
最適なtbs-MCS-導入遺伝子構成の同定。
【0710】
TRIP系の取り扱いやすさ-特に商業化のために「キット」内での-を改善するために、いくつかの異なる制限酵素(RE)の選択肢、すなわち、多重クローニング部位(MCS)を介して、プロモーター-5’UTR-tbs配列を含有する発現カセット中に関心対象の導入遺伝子を直接クローニングする能力を有することができることが望ましい(
図2Aを参照)。しかしながら、5’UTRリーダー配列はTRAPによって媒介される抑制の程度を調節することができること、およびtbsのATG開始コドンへの近接が重要であることを考えると、TRAPによって媒介される抑制を維持しながらいくつのおよび/またはどのRE部位の組み合わせを使用することができるかについては、本研究の開始時には明らかではなかった。
【0711】
さらに、さらなる要件は、導入遺伝子の「ON」レベル(TRAPなし)が高いこと、すなわち効率的なコアコザック配列がMCSとATGの中または間に維持されなければならないことを確実にすることであった。これには、コンセンサスRVVATGの効率的なコアコザック配列も維持しながら、(tbsのATGへの近接性を保持するために)いくつかの(重複する)RE部位をtbsからATGまで可能な限り短い距離で組み込むことができるように配列の「圧縮」が必要であった。tbsと導入遺伝子(本事例ではGFP)のATGコドンとの間にクローニングされた7つのMCS変異型の設計を表I-パネルIII(配列;配列番号52~58)および
図4Aに報告する。変異型MCS2.1~MCS4.4は、tbsとATGコドンの間に比較的短い距離(<15nt)を確保しながら、tbsとコアコザック配列の間に徐々により多くの(重複する)RE部位を組み込む。すべての事例で、最後の1~2のリピート(KAGNN)のコンセンサスを乱すことなく、tbsの3’末端と重複するSacIまたはSpeI部位のいずれかを配置することが可能であった。NcoI部位が導入遺伝子コアコザック配列(ATGの下流のGに依存する)中に保持されている場合、MCS変異型は、2~4個のRE部位または3~5個のRE部位を導入した;観察されたいずれの差もtbsの上流の配列の影響によるものでないことを保証するために、この状況でMCSの一部として、また実施例1に記載のL33改善型リーダーを使用するEFSプロモーターという状況においても、すべてのMCS変異型にわたって、合計15のRE部位(NcoIを含めて16)を試験した。これらのGFPをコードするMCS変異型(scAAV2ベクターゲノムカセット内にクローニングされた)をHEK293T細胞+/-TRAP発現プラスミド中に個々に同時形質移入し、GFP発現を形質移入の2日後にフローサイトメトリによって測定した。GFP発現スコア(%GFP陽性細胞×MFI)をフローサイトメトリデータから求めて、プロットした(
図4B)。
【0712】
データは、tbsとATGコドンの間に(元のレポーターでは、tbsとATGは9ヌクレオチドによって隔てられている)MCSを含有しなかった(より強力なCMVプロモーターによって駆動される)元のレポーター構築物と同様のレベルまで、7つすべてのMCS変異型が抑制され得ることを特定する。重要なことに、7つの変異型のうち6つは、元のレポーター構築物と比較して、TRAPによるより良好な抑制を示し、変異型MCS2.1、MCS4.1およびMCS4.4は検出不能なレベルに抑制され、「ON」レベル(TRAPなし)には実質的に影響しなかった。
【0713】
MCS2.1およびMCS4.1変異型をさらに検証するために、L33改善型リーダーと共に構成的プロモーター(CMV、RSV、EFS、UBC、SV40、huPGKおよびHSVTK)をコードするscAAV2ベクターゲノムレポーター構築物にこれらの配列をクローニングした。これらのGFPをコードするレポーター構築物をHEK293T細胞+/-TRAP発現プラスミド中に個々に同時形質移入し、GFP発現を形質移入の2日後にフローサイトメトリによって測定した。GFP発現スコア(%GFP陽性細胞×MFI)をフローサイトメトリデータから求めて、プロットした(
図5)。
【0714】
データは、MCS2.1およびMCS4.1変異型が、利用されているプロモーターに関係なく、優れたTRIP抑制プロファイルを示すことを実証している。2つのMCS変異型のいずれかを含有する構築物の組にわたる平均抑制倍数は約5000倍であり、多くの構築物について、アッセイにおけるGFP検出の限界に近かった。
【0715】
[実施例3]
tbs-コザック接合の最適化。
【0716】
実施例2におけるMCS変異型の試験は、tbsの末端とATGコドンの間の配列状況もまた、TRAPによって達成される抑制の程度において役割を果たし得ることを実証した。また、(国際公開第2015/092440号における元の構成と比較して)抑制の改善されたレベルは、tbsの3’末端内にコザック配列を「隠す」ことによって達成され得ると仮定された(
図2Bを参照)。これを達成することができるためには、tbsの末端の1~2反復コンセンサス(KAGNN)がコザック配列と部分的に重複することが必ず必要であろう。
【0717】
4つのtbs-コザック変異型を設計し(表II-パネルI参照)、
図6Aに示すようにGFPレポーター構築物にクローニングした。変異型0、1および2は、(コンセンサスGNNRVVATGに一致する)拡張コザック配列は最後の2つのtbs反復配列と重複するのに対して、変異型3は最後のtbs反復配列のみと重複するように設計した。コザック配列が最終tbs反復配列の3ヌクレオチド下流にある(すなわち、重複なし)元のレポーターと共に、HEK293T細胞+/-TRAP発現プラスミド中にこれらの変異型を個々に同時形質移入し、形質移入の2日後にフローサイトメトリによってGFP発現を測定した。GFP発現スコア(%GFP陽性細胞×MFI)をフローサイトメトリデータから求めて、プロットした(
図6B)。
【0718】
scAAV2ベクターゲノム発現カセット内の2つの異なるプロモーター(EFSおよびhuPGK)と併せてこれらのtbs-コザック変異型のうちの2つを試験し、重複するtbs/コザック配列を有しないtbs含有カセットと比較した。これらのGFPレポーターベクターゲノムプラスミドをHEK293T細胞+/-TRAP発現プラスミド中に個々に同時形質移入し、GFP発現を形質移入の2日後にフローサイトメトリによって測定した。GFP発現スコア(%GFP陽性細胞×MFI)をフローサイトメトリデータから求めて、プロットした(
図9)。非重複tbs/コザック変異型(元の変異型およびtbsとコザックとの間にHpaI部位を含有する第2の変異型)は、50倍~100倍抑制することができたのに対して、新しいtbs-コザック変異型(tbs_V0およびtbs_V3)は、これの少なくとも10倍(500倍~3500倍)抑制された。これらのtbs-コザック変異型は、L33またはL12改善型リーダーをEFSまたはhuPGKプロモーターカセットのいずれかに使用した場合にも同様に機能した。重要なことに、新規変異型の「ON」レベル(TRAPなし)は、非重複tbs/コザック変異型と同様であり、新規変異型内のコザック配列が効率的な翻訳を指示するのに効果的であることを示した。
【0719】
データは、tbs-コザック変異型のすべてが同様のレベルの「ON」導入遺伝子発現が可能であったことを示しており、これらのコザック配列が効率的なレベルの翻訳開始を指示したことを示している。変異型1は、元のレポーター構成と比較すると、TRAPによる抑制が不十分であった(TRAPの存在下で、GFP発現のレベルが10倍高かった)。しかしながら、驚くべきことに、変異型0、2および3は、元の構成と比較してより低いレベルに抑制された。
【0720】
【0721】
表II:最適な3’tbs-コザック接合配列
[パネルI]上流のtbs配列の3’末端と重複するように設計された変異型コザック配列。主たる導入遺伝子ATG開始コドンがtbsの3’末端のKAGNN反復の9ヌクレオチド下流に配置されるように、すなわち重複が存在しないように、拡張コザック配列を配置した。主たる導入遺伝子ATG開始コドンを上流tbsにより近接して配置するために、効率的な拡張コザックコンセンサス配列(本明細書ではGNNRVVATGと定義される)も維持しながら、3’末端tbs反復のコンセンサスKAGNN反復が維持されるように4つの変異型を設計した。KAGNN反復配列は括弧内にあり、コザック配列は太字の大文字である。
【0722】
[実施例4]
バイシストロン性カセット中の導入遺伝子のより大きな倍数抑制を可能にするためのIRESとtbsの間の改善されたスペーサー配列の同定。
【0723】
国際公開第2015/092440号に報告された元のTRIP系では、IRESとORFの間にtbsを挿入することによって、TRAP-tbsパラダイムをIRES依存性導入遺伝子の抑制に適用できることが初めて実証された。この構成では、IRESの3’末端とtbsの間に26ヌクレオチドのスペーサーが含まれていた。
【0724】
本研究では、より良好なレベルの抑制を可能にするためにスペーサー配列が最適化され得ると仮定したため、多数のIRES-スペーサー-tbs-GFP変異型を構築した(表III-パネルIおよび
図7Aを参照)。これらの構築物はすべて、上流発現カセットを含む同一の5’UTR-ルシフェラーゼ配列も含有し、これは実験における形質移入効率をモニターするために使用した。スペーサー変異型は、元の26ヌクレオチドスペーサーまたはこのスペーサーの変異型のいずれかの切断物から構成され、15または10または5ヌクレオチド長に切断された。スペーサーを含まない最終的な変異型を作製した。レポーターを含有する元の26ヌクレオチドスペーサーと共に、HEK293T細胞+/-TRAP発現プラスミド中にこれらの変異型を個々に同時形質移入し、GFP発現を形質移入の2日後にフローサイトメトリによって測定した。GFP発現スコア(%GFP陽性細胞×MFI)をフローサイトメトリデータから求めて、プロットした(
図7B)。形質移入効率を評価するために、ルシフェラーゼ活性も測定した。
【0725】
データは、15、10および5ヌクレオチド長の元のスペーサーのスペーサー切断変異型が、「ON」レベル(TRAPなし)に影響を及ぼすことなく、元のスペーサーと比較してより低い抑制レベルを与えたことを示す。同じことは、変異型スペーサーに基づく10ヌクレオチドスペーサーについても当てはまった。したがって、改善されたスペーサー配列が同定された。
【0726】
下流のATGコドンにより近づけて(9ヌクレオチドから3ヌクレオチドに移動した)tbsを配置するという状況およびtbs配列中の11または8反復という状況において、最良のスペーサーの1つ(原型、15ヌクレオチドに切断)のさらなる検証を行った。これらのさらなる変異型の4つすべてが、原型スペーサーを含有する構成と比較して、TRAPによる改善された抑制プロファイルを与え(
図7C)、機能的であるが異なるtbs状況において他のスペーサーが利用され得ることを実証した。
【0727】
【0728】
表III:IRES-スペーサー-コザック配列
[パネルI]本研究で使用したIRESとtbs配列の間に使用した変異型スペーサー。国際公開第2015/092440号に概説されている「元の」スペーサー配列は、26ヌクレオチド長のものである。このスペーサー配列の変異型を作製した(変異型[26ヌクレオチド])。これらのスペーサーの両方の切断物を作製し、またスペーサーのない変異型も作製した。Original-[Trunc-15nt]スペーサーは、良好な「オン」レベル(すなわち、TRAPの非存在下)を維持しながら、最良のレベルの抑制を与えることが見出された。次いで、11xKAGNN反復または8xtbsKAGNN反復tbs配列のいずれかと、またtbsの3’末端から下流の導入遺伝子ATG開始コドンまでの距離が9ヌクレオチドから3ヌクレオチドに減少された変異型と組み合わせて、Original-[Trunc-15nt]スペーサーを使用した。斜字体の配列はEMCV IRES要素の3’末端を示し、変異型スペーサー配列は太字であり、tbsコンセンサスは通常の文字で示され、下流の導入遺伝子拡張コザック配列には下線が引かれている。
【0729】
[実施例5]
改善された重複するtbs-コザック変異型を完全長の、イントロン含有EF1aプロモーター中に組み込むこと。
【0730】
前記実施例は、重複するtbs-コザック変異型が、非重複tbs/コザック変異型と比較して抑制を改善することを示し、これは、EFSプロモーター(その組み込まれたイントロンを除去することによって切断されたEF1aプロモーター)の状況において実証された。tbs-コザック変異型が完全長EF1aプロモーター(すなわち、イントロンのスプライシングによる切り出し後)内で同様に「機能する」かどうかを評価するために、3つのtbs-コザック変異型(0、2、3)を、EF1aプロモーターを含有するGFPレポーターカセットにクローニングした(
図10A)。スプライシング後に、5’UTRは、エクソン1(すなわち、L33改善型リーダー)、エクソン2の最初のヌクレオチドを含む短い12ヌクレオチド配列、次いでtbs-コザック変異型配列(配列番号60)を含有する。tbsを含有しないレポーターと共に、懸濁液、無血清HEK293T細胞+/-TRAP発現プラスミド中にこれらのGFPレポータープラスミドを個々に同時形質移入し、GFP発現を形質移入の2日後にフローサイトメトリによって測定した。GFP発現スコア(%GFP陽性細胞×MFI)をフローサイトメトリデータから求めて、プロットした(
図10B)。さらに、(MSDおよびcrSDが不活化された、下記参照)HIV-1ベースのレンチウイルスベクターゲノムプラスミド中にこれらのtbs含有GFP発現カセットをクローニングし、懸濁液、無血清HEK293T細胞中で同様の実験を実施して、GFP発現スコアを得た(
図10C)。データは、実際に、重複するtbs-コザック変異型は、使用した非重複tbs/コザック変異型と比較して改善された導入遺伝子抑制をすることができたことを示す。
【0731】
[実施例6]
MSD-2KOレンチウイルスベクターは、異常なスプライシングの消失のために、産生中により少ない導入遺伝子タンパク質を産生する
レンチウイルスベクター産生中に異常なスプライシングを消失させることのさらなる利点は、導入遺伝子タンパク質産生をもたらす導入遺伝子をコードするmRNAの量を低下させることである。
【0732】
この研究の過程で、本発明者らは、予想外にも、SL2のスプライシング領域(パッケージングシグナルの一部)から内部スプライスアクセプタ部位までのスプライシングによる切り出しに起因して、ベクターゲノムカセットを駆動する「外部」(CMV)プロモーターから導入遺伝子をコードするmRNAが効果的に産生されることを見出した(
図11A)。これが起こる程度は、cpptと導入遺伝子ORF間の内部配列(すなわち、プロモーター-5’UTR配列)に依存する。導入遺伝子カセットにおけるEF1aプロモーター(極めて強力なスプライスアクセプタを含有する)の使用は、外部プロモーターに由来する全転写物の95%超においてMSDからの異常なスプライシングをもたらす(
図12)。標準またはMSD-2KOレンチウイルスベクター産生培養物における総GFP発現を比較することにより(
図11B)、本発明者らは、産生中に発現される導入遺伝子タンパク質の最大80%が異常なスプライス産物に由来することを示す。本発明者らは、MSD-2KO遺伝子型をTRiP系と組み合わせると、産生される導入遺伝子タンパク質の低下が増大することを見出した。
【0733】
図11Cは、MSDおよび下流に位置する潜在的スプライスドナーの両方を変異させる、MSD-2KOレンチウイルスベクターゲノムパッケージング領域の「MSD2KO」変異型のSL2ループに対する遺伝子改変を示している(該MSD2KO変異型は、
図11Bに示されるデータを作成するために利用された)。本発明者らはまた、3つの他のスプライスドナー領域変異体:[1]同じくMSDおよび潜在的ドナー配列内に2つの特異的変化を導入した「MSD2KOv2」、[2]SL2ループ全体を人工ステムループで置き換える「MSD2KOm5」、ならびに[3]完全なSL2欠失、したがってスプライスドナー領域全体(スプライシング領域とも呼ばれる)を除去する、を作製した。これらは独立して、異常なスプライシング活性を消失させることが示された。
【0734】
[実施例7]
tbsの3’末端KAGNN反復によってコアコザック配列を徐々により多く閉鎖することにより、TRAPによる導入遺伝子抑制は徐々に増大する。
【0735】
実施例3では、限定された数の重複するtbs-コザック変異型を作製し、非イントロン含有プロモーターであるEFSおよびhuPGKという状況で試験した。次いで、実施例5でのイントロンを含有する完全なEF1aプロモーターにおいてもこれらの変異型を試験し、この抑制困難なプロモーターが、重複するtbs-コザック変異型を使用することによって抑制され得ることを示した。
【0736】
tbsの3’末端KAGNN反復内にコアコザック配列を「隠す」ことによる改善されたTRAP抑制の原理をさらに例示するために、新しい変異型のパネルを設計した(表IV参照)。これらは、3つの「重複群」KAGatg(KAGNNコンセンサスは、コアコザックのATGと可能な限り重複する、すなわちコアコザックのATGの最初の2ヌクレオチドと重複する)、KAGNatg(KAGNNコンセンサスがコアコザックのATGの第1のヌクレオチドと重複する場合)およびKAGNNatg(KAGNNコンセンサスがコアコザックのATGと重複しない場合)によってコードされるすべての可能な変異型に基づいていた。(実施例3および5における最初の変異型tbs-kzkV0、tbs-kzkV1およびtbs-kzkV2は、これらの定義された群に含まれる)。「GT」ジヌクレオチドを生成したこれらの群内の任意の変異型は、これらが潜在的スプライスドナー部位を生成し得るという望ましくない可能性のために生成/評価されなかった。
【0737】
表IV:さらなる例示のために作製された重複するtbs-コザック変異型
望ましくない(潜在的な)スプライスドナー部位を生成し得る「GT」ジヌクレオチドを生じるものを除いて、KAGatgまたはKAGNatgまたはKAGNNatgのコンセンサスに関連する「重複群」に相当するすべての可能な変異型を作製した。明確にするためにここでは、最初の10個のKAGNN反復がコンセンサスとして提示されているが、主に配列番号8の最初の48ヌクレオチドであった。3’末端tbsKAGNNが、各変異型においてコードされるものとして提示されている(斜字体かつ括弧内)。コアコザックコンセンサスは太字であり、より広い拡張コザックコンセンサスの一部であるとして示される任意のヌクレオチドに下線が引かれている。
【0738】
【0739】
一般に、ほとんどの変異型は、RVVATGの好ましいコアコザックコンセンサスに一致したが、同時に、表記されたKAGNNtbsコンセンサスを含有することに制限される。これらの変異型はpEF1a-GFPレポータープラスミドにクローニングされたので、5’UTRはL33リーダー(エクソン1)に加えてエクソン2からの短い12ヌクレオチド配列を(そのイントロンのスプライシング後に)含有し、これは重複するtbs-コザック変異型を使用しなければ、TRAPによってより抑制されないことが実施例5で以前に示された。典型的にはレンチウイルスベクター(LV)の形質移入/産生を反映する条件下(例えば、酪酸ナトリウム誘導を含める)で、TRAP発現プラスミドありまたはなしで、これらの変異型で懸濁(無血清)HEK293T細胞を個別に形質移入し、典型的なLV回収時間(形質移入の2日後)にフローサイトメトリを行った。+/-TRAP条件に対して全体的なGFP発現スコアを求め(%GFP×MFI;ArbU)、次いで、倍数抑制値を求めて、
図13Aにプロットした。結果は、コアコザックコンセンサス配列が3’末端KAGNNtbs反復とより多く重複するほど、TRAP抑制のレベルがより向上することを実証している。各重複群の倍数差の統計解析(T検定)は、コアコザックが3’末端KAGNNtbs反復とより多く重複するほど抑制が有意に増加することを実証し、最高の抑制スコアは、開始コドンの2/3がKAGNN反復の一部を形成するKAGatg群から得られる。すべての重複変異型は、非重複tbs変異型と比較して、TRAPによる統計的により大きな導入遺伝子抑制をもたらした。
【0740】
図13Bでは、データをさらに層別化し、非抑制「オン」導入遺伝子レベルを最高から最低まで表示した。KAGatg重複群からの2つの変異型は、TRAP抑制に関してこれらの2つの最高の成績を示した変異型について、GAGatg変異型(tbskzkV0.G)が最高の「オン」レベルを与えたことを示すために強調表示されており、おそらくGAGatg変異型(tbskzkV0.G)はRVVATGのコアコザックコンセンサスに一致するのに対して、TAGatg(tbskzkV0.T)は一致しないからである。
【0741】
これらのデータはすべて、重複するtbs-コザック変異型は、重複していないtbs変異型と比較して、TRAP抑制を媒介することにおいてより効果的であり、好ましくは、tbs-コザック重複は、ベクターを形質導入された標的細胞における良好な「ON」導入遺伝子発現を確実にするために、RVVATGのコアコザックコンセンサスに一致するという一般原理を裏付けている。したがって、これらの新規tbs-コザック変異型の使用は、ウイルスベクター産生中のより効率的な導入遺伝子抑制を可能にし、前記導入遺伝子タンパク質活性がウイルスベクターの力価および/または活性に対して有害であれば、ウイルスベクター力価の増加を潜在的にもたらす。
【0742】
[実施例8]
イントロンを有する一般的なプロモーターのTRAP媒介性抑制を改善するための最適な重複するtbs-コザック変異型のさらなる使用。
【0743】
実施例5では、重複するtbs-コザック変異型の使用は、イントロンを含有する完全長EF1aプロモーターを使用した場合にTRAP媒介抑制を改善することが示された。遺伝子治療のためにウイルスベクターゲノムにおいて広く使用されている類似のプロモーター、例えばCAGプロモーターの場合、組み込まれたエクソン/イントロン配列の存在は、TRAP媒介性抑制の程度が「天然の」エクソン配列内の配列によって影響され得ることを意味する。TRAP媒介性抑制を改善するという観点からは、特にエクソン配列がスプライシング増強に関与している場合には(例えば、スプライスドナー部位に近接するスプライスエンハンサーエレメント)、エクソン配列を変化させることが自明でないこと、または実施可能でないことがあり得る。広く使用されているCAGプロモーターは、CMVエンハンサーエレメント、コアニワトリβ-アクチン遺伝子プロモーター-エクソン1-イントロン配列、およびウサギβ-グロビン遺伝子由来のスプライスアクセプタ-エクソン配列を含む。他の箇所において、本発明では、驚くべきことに、EF1aプロモーター(L33)由来のエクソン1は、TRAP媒介性抑制を改善するために、すべてのタイプのtbs変異型の上流で使用することができ、おそらく、安定なTRAP-tbs複合体の形成を補助する良好な配列状況を与えて、効率的な翻訳阻害を可能にすることができることが見出された。重複するtbs-コザック変異型は、EF1a(イントロン含有)およびイントロンを欠くいくつかの他のプロモーターの両方においてTRAP媒介性抑制を補助することが示された。
【0744】
本実施例では(
図14A参照)、[a]tbskzkV0.G変異型(他の実施例では変異型「0」とも呼ばれる)をCAGプロモーター(配列番号117)の「自然の」5’UTR領域内に配置し、[b]「自然の」イントロン含有5’UTR領域全体を、tbskzkV0.G変異型を有するEF1a5’UTR-イントロン領域(配列番号118)と交換することによって、CAGプロモーターからのTRAP媒介性抑制を改善することに、両方の特徴を適用した。対応するスプライシングされた配列を、それぞれ配列番号119および配列番号120として示す加えて、ウイルスベクターゲノムにおいてイントロンなしで通例使用されるプロモーター(本事例ではCMV)には、異種イントロンを含有する人工の5’UTRを付加することができ、その発現はTRAPによって効率的に抑制されることが例証によって以前に示されていた。具体的には、tbskzkV0.G変異型を有するEF1a5’UTR-イントロン領域(配列番号118)を有する5’UTRをCMVプロモーター状況で使用した。
【0745】
ウイルスベクター産生シナリオをモデル化して、懸濁(無血清)HEK293T細胞中での「ON」発現レベルおよびTRAP媒介性抑制の両方について、(GFPをコードする)これらのレポーター構築物を評価した。細胞をGFPレポータープラスミド+/-pTRAPで形質移入し、(典型的なウイルスベクター産生のとおりに)形質移入後に酪酸ナトリウムで培養物を誘導し、形質移入の約2日後に(すなわち、典型的なウイルスベクター採取点で)GFP発現について細胞を分析した。GFP発現スコア(%GFP陽性×MFI;ArbU)を作成し、プロットし(
図14B)、TRAP抑制スコアを表示した。これらのデータは、典型的なウイルスベクター産生細胞におけるTRAP媒介性発現が、tbskzkV0.G変異型を使用してCAGプロモーターから3倍~30倍改善され得ることを示す。さらに、データは、異なるプロモーター由来の「天然の」5’UTR領域配列を、tbsKzkV0.G変異型を有するイントロン含有EF1a5’UTRで置き換えることができ、実質的に改善されたTRAP媒介性抑制(30~40倍から100倍超)およびTRAPの非存在下での高遺伝子発現の維持(すなわち、ウイルスベクターを形質導入された標的細胞における発現をモデル化)の両方をもたらすことを示す。したがって、新規EF1a-5’UTR-イントロン-tbskzkV0.G配列は、標的細胞においてイントロンによって与えられる既知の利点(すなわち、増加した遺伝子発現)を異種プロモーターに付与するのに有用であり得、同時に、ウイルスベクター産生中の導入遺伝子タンパク質の効率的な抑制も可能にし、前記導入遺伝子タンパク質活性がウイルスベクター力価に対して有害である場合に、ウイルスベクター力価の増加をもたらす可能性がある。これは、他の重複するtbs-コザック配列とのEF1a-5’UTR-イントロン配列の使用にも当てはまる。
【0746】
上記明細書中で言及されたすべての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の記載された局面の様々な修正および変形が、本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者には明らかであろう。特定の好ましい態様に関連して本発明を説明してきたが、特許請求される発明はそのような特定の態様に不当に限定されるべきではないことを理解されたい。実際に、生化学およびバイオテクノロジーまたは関連分野の当業者に明らかな、本発明を実施するための記載された態様の様々な改変が、以下の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【配列表】
【国際調査報告】