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特表2023-504607細胞バイオマス産生のための担体およびそれを含む細胞培養デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-06
(54)【発明の名称】細胞バイオマス産生のための担体およびそれを含む細胞培養デバイス
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20230130BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20230130BHJP
【FI】
C12M1/00 C
C12N1/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022530207
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(85)【翻訳文提出日】2022-06-07
(86)【国際出願番号】 CN2020136665
(87)【国際公開番号】W WO2021129472
(87)【国際公開日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】62/953,575
(32)【優先日】2019-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522203329
【氏名又は名称】セスコ バイオエンジニアリング カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン、キン-ミン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA08
4B029AA21
4B029BB11
4B029CC10
4B029GB09
4B065AA93X
4B065BD40
4B065CA44
(57)【要約】
【要約】
本発明は、ネットまたはメッシュの複数の層によって作られる3次元の多孔性増殖表面(担体)、特に、層をロールすることによるカラムタイプ固定ベッド、または、担体をスタックもしくはランダムに配置してパックすることによる他の形状の固定ベッドを形成可能であり、細胞培養表面を強化するために開示される共に細胞培養の層のための充填ベッドを形成し、細胞増殖後の細胞回収を促進し、多層ネット/メッシュ構造の周囲の培養および細胞回収中の粒子の解放の可能性が最低限であり、したがって、細胞産生を増加させるファブリックの大きい寸法および面積を請求し開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネット/メッシュ構造単位を備える細胞培養のための担体であって、前記ネット/メッシュ構造単位は、
複数の第1経度線および複数の第1緯度線を交差させることによって形成される複数の第1メッシュを有する少なくとも1つの第1ネット/メッシュフィルムであって、生体適合性および親水性を有する第1ネット/メッシュフィルムと、
複数の第2経度線および複数の第2緯度線を交差させることによって形成される複数の第2メッシュを有する少なくとも1つの第2ネット/メッシュフィルムであって、前記第1ネット/メッシュフィルムに平行であり、前記第1ネット/メッシュフィルムの下または上に配置される第2ネット/メッシュフィルムと
を含む、細胞培養のための担体。
【請求項2】
前記ネット/メッシュ構造単位は、2層の前記第1ネット/メッシュフィルムおよび1層の前記第2ネット/メッシュフィルムを含み、前記第2ネット/メッシュフィルムは、前記2層の前記第1ネット/メッシュフィルムの間に、または、前記2層の前記第1ネット/メッシュフィルムの上に、または、前記2層の前記第1ネット/メッシュフィルムの下に配置される、請求項1に記載の細胞培養のための担体。
【請求項3】
前記ネット/メッシュ構造単位は、少なくとも3層の前記第1ネット/メッシュフィルムおよび1層の前記第2ネット/メッシュフィルムを含み、前記第2ネット/メッシュフィルムは、任意の2層の前記第1ネット/メッシュフィルムの間に、または、前記3層の前記第1ネット/メッシュフィルムの上に、または、前記3層の前記第1ネット/メッシュフィルムの下に配置される、請求項1に記載の細胞培養のための担体。
【請求項4】
前記第1ネット/メッシュフィルムの材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含み、前記第2ネット/メッシュフィルムの材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはナイロンを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の細胞培養のための担体。
【請求項5】
前記第1ネット/メッシュフィルムは、親水性表面処理したネット/メッシュ材料であり、前記第2ネット/メッシュフィルムは、支持ネット/メッシュ材料である、請求項1から4のいずれか一項に記載の細胞培養のための担体。
【請求項6】
前記第1メッシュのいずれか1つの開口は、30μm~800μmであり、前記第2メッシュのいずれか1つの開口は、1mm~5mmである、請求項1から5のいずれか一項に記載の細胞培養のための担体。
【請求項7】
前記担体の種類は、前記ネット/メッシュ構造単位をカールすることによる1または複数のカラム、前記複数のネット/メッシュ構造単位を順にラミネートすることによる1または複数のカラム、または、前記ネット/メッシュ構造単位をランダムに配置してパックすることによるスタックボディである、請求項1から6のいずれか一項に記載の細胞培養のための担体。
【請求項8】
前記第1ネット/メッシュフィルムおよび前記第2ネット/メッシュフィルムの周囲の縁は、熱プレス、超音波、または接着剤処理によって共にシールされる、請求項1から7のいずれか一項に記載の細胞培養のための担体。
【請求項9】
前記第1ネット/メッシュフィルムの前記第1メッシュの開口は、完全にまたは部分的に同一である、請求項1から8のいずれか一項に記載の細胞培養のための担体。
【請求項10】
前記第2ネット/メッシュフィルムの前記第2メッシュの開口は完全にまたは部分的に同一である、請求項1から9のいずれか一項に記載の細胞培養のための担体。
【請求項11】
前記第1経度線のいずれか、前記第1緯度線のいずれか1つは、50μm~500μmの幅であり、前記第2経度線のいずれか1つ、または、前記第2緯度線のいずれか1つは、100μm~1000μmの幅である、請求項1から10のいずれか一項に記載の細胞培養のための担体。
【請求項12】
前記第1経度線のいずれか1つ、前記第1緯度線のいずれか1つは、50μm~250μmの幅であり、前記第2経度線のいずれか1つ、または、前記第2緯度線のいずれか1つは、250μm~500μmの幅である、請求項1から11のいずれか一項に記載の細胞培養のための担体。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の細胞培養のための担体、および、細胞培養のための前記担体を配置する培養チャンバを備える細胞培養デバイス。
【請求項14】
前記ネット/メッシュ構造単位はカールされて、前記培養チャンバ内に置かれる1または複数のカラムを形成するか、または、多数の前記ネット/メッシュ構造単位は、順にラミネートされて、前記培養チャンバ内に置かれる1または複数のカラムを形成するか、または、多数の前記ネット/メッシュ構造単位はランダムに配置またはパックされて、前記培養チャンバ内に置かれるスタックボディを形成する、請求項13に記載の細胞培養デバイス。
【請求項15】
前記ネット/メッシュ構造単位は、2または3層の前記ネット/メッシュフィルムおよび1層の前記第2ネット/メッシュフィルムを含み、前記第2ネット/メッシュフィルムは、任意の2層の前記第1ネット/メッシュフィルム間に、前記第1ネット/メッシュフィルムのすべての層の上に、または、前記第1ネット/メッシュフィルムのすべての層の下に配置される、請求項13に記載の細胞培養デバイス。
【請求項16】
前記第1ネット/メッシュフィルムの材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含み、前記第2ネット/メッシュフィルムの材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはナイロンを含む、請求項13から15のいずれか一項に記載の細胞培養デバイス。
【請求項17】
前記第1ネット/メッシュフィルムは、親水性表面処理したネット/メッシュ材料であり、前記第2ネット/メッシュフィルムは、支持ネット/メッシュ材料である、請求項13から16のいずれか一項に記載の細胞培養デバイス。
【請求項18】
前記第1メッシュのいずれか1つの開口は、30μm~800μmであり、前記第2メッシュのいずれか1つの開口は、1mm~5mmである、請求項13から17のいずれか一項に記載の細胞培養デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2019年12月25日に出願された、「バイオマス産生のための細胞培養マトリックス」と題する米国仮特許出願第62/953,575号の利益を主張し、その開示は参照によってここに組み込まれる。
本発明は細胞培養担体の分野、特に、真核細胞のバイオマス産生のための細胞培養担体の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオテクノロジの急速な進歩に伴い、原核細胞または真核細胞のための任意の細胞培養技術がますます重要になってきている。一般に、真核細胞は増殖が遅く、せん断応力および汚染による損傷の影響を受けやすい。真核細胞の多数は足場依存性であり、接着および増殖するための増殖表面を必要とする。この種類の真核細胞培養に対応するために、増殖表面を有する様々な担体が開発されてきた。現在もっとも利用可能な担体は、デキストラン系材料から作られる円滑表面担体、ポリウレタンまたはポリエチレンテレフタレートから作られる多孔性マトリックス、および、ポリスルホンまたは酢酸セルロースから作られる中空ファイバなどの半透過性膜である。しかしながら、それらの担体からの細胞の採集は時間がかかり、汚染の影響を受けやすく、特に多孔性構造を有する担体では、不可能に近いことが多い。従って、足場依存性細胞のためのスケールアップは、遅く、労働集約的で、高価なプロセスであった。これに起因して、この細胞採集の問題を解決し得る培養担体を開発する強い必要性がある。
【0003】
足場依存性細胞のための担体には、主に2つの主要なタイプがあり、微粒子円滑表面担体(非多孔性または無孔性)および多孔性担体を含む。円滑表面は、大きい増殖表面の面積をそれ自体に与えず、従って、接着される細胞の数および増殖が限定される。他方、多孔性担体は、細胞を収容するための少なくとも1つの3次元キャビティを提供する。担体の多孔性はまた、通気、撹拌、および供給によって生じるせん断応力との間接的な接触から細胞を保護する細胞足場のための追加の表面積を生じさせる。しかしながら、多孔性担体から細胞を採集する作業は非常に困難であることが多い。細胞回収が可能な第1多孔性担体は、ポリエステル不織布ファブリックによって作られるBioNOC(登録商標)II担体(CESCO(登録商標) Bioengineering Co., Ltd.)である。多孔性BioNOC(登録商標)II担体からの細胞回収の能力は、ファイバを平面上に水平方向に積層して熱プレスして、ファイバ間の開口の形態がすべて同一方向を向く多層構造を形成する(これにより、孔がランダムの出口方向を有するマトリックス内のチャネルとしての形態である他の多孔性材料より細胞遊離が実現しやすくなる)ことによって形成される孔に起因する。しかしながら、特に細胞回収について、BioNOC(登録商標)II担体の設計にはいくつかの欠点がある。1.ファイバをランダムに積層することによって形成される孔は、数ミクロンから数百ミクロンの不規則な孔サイズを有する20以上の多層構造を生じさせる。ファイバの層が20より多いことによる物理的障害に起因して、細胞遊離は平坦な表面ほど簡単でない。2.ファイバが細胞回収プロセス中に容易に解放され、収集された細胞で汚染される。3.これらのファイバは細胞と同様の寸法を有するので、細胞からの分離がより困難である。プロセス中の単離費用および細胞の損失により、細胞産生分野におけるBioNOC(登録商標)II担体の適用が妨げられる。上の欠点は、特に、それらの細胞自体が生物学的産物の対象である場合に、特定の適用を限定する、または、製造コストを増加させる。
【0004】
バイオテクノロジおよび遺伝子工学における革新的な発展により、タンパク質製薬、サイトカイン、モノクローナル抗体、ウイルス産物、ワクチン、核酸、酵素、ならびに、細胞および/または組織などの細胞産物に対する大きい市場の需要が生じた。したがって、これらの産物の需要により、効率的かつ経済的な産生方法に対する必要性が増加し続けている。
【0005】
哺乳類細胞などの真核細胞は、高い品質および量の効果的なタンパク質または細胞産物を提供することについて、もっとも人気がある。哺乳類細胞の培養は、ワクチン、遺伝子改変タンパク質、医薬品および他の細胞産物を産生するために、長い間使用されてきた。一般に、真核細胞は、足場依存性、足場非依存性、またはその両方であり得る。足場依存性細胞は、所望の細胞産物を固定する、成熟させる、産生するために増殖表面を必要とする。足場依存性細胞の例は、真核幹細胞、間葉系幹細胞、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞である。リンパ球などの真核細胞、いくつかの組み換え細胞、および、いくつかの癌細胞は、「足場非依存性」細胞であり、懸濁液において増殖できる。その種類に関係なく、培養における大部分の真核細胞は、以下の特徴を共通に有し、これらの特徴は、効率的な増殖表面および培養デバイスの設計において重要な役割を有する。
【0006】
足場依存性細胞を増殖表面に付着させることは、細胞の生存にとって重要であり、従来の単層培養または担体および/またはマイクロキャリアシステムを用いた培養を含むがこれらに限定されないすべての種類の培養技法の基本である。足場依存性細胞の増殖は、好適な増殖表面への接着の後にのみ生じることができるので、細胞接着を促進する表面および培養手順を使用することが重要である。細胞接着は、タンパク質などの付着因子を培養表面に吸着させること、細胞を培養増殖表面に接触させること、細胞を細胞接着に好適な処理済み表面に付着させること、接着または付着した細胞を、これらの細胞が別の表面増殖細胞に接触する(すなわち、「接触阻害」)まで、増殖表面全体に広げて複製することを含む。
【0007】
生存可能な足場依存性細胞の培養のために、培養は、適切な培養増殖表面または担体、培養される細胞の種類に特異的な培養培地を循環させるための機構、および、細胞増殖を支持して維持するための十分な気体の供給を有する適切な通気を必要とする。細胞を培養するための複数の異なる手段がある。それらは、酸素が必要に応じて追加されるが培養中に栄養が補充されないバッチシステム、栄養および酸素が監視され必要に応じて補充される供給バッチシステム、ならびに、栄養および廃棄産物が監視され、新鮮培地の継続的な補充により制御される灌流システムである。
【0008】
当技術分野において現在知られている培養担体には複数の種類がある。例えば、デキストラン系(例えば、Cytodex I、DEAEデキストラン、およびCytodex III、ブタコラーゲン被覆デキストラン;米国Cytiva社、旧GE Healthcare Life Sciences)または被覆ポリスチレン系(例えば、米国SoloHill社)マイクロキャリア。マイクロキャリアは典型的には非常に小さく、約50~250マイクロメートルの直径を有するが、より大きい、または、より小さいサイズのマイクロキャリアが使用されてきた(1992年5月19日にHu et al.に発行された米国特許第5,114,855号)。第2の種類の細胞培養担体は、セラミックから作られた多孔性マトリクス材料、ポリウレタンフォーム、または、ポリエチレンテレフタレート(PET)から作られたファブリック、または、PLGA、コラーゲン、キトサンからの生分解性材料を含む。
【0009】
細胞培養担体はまた、表面の多孔性に従って分類され得る。例えば、非多孔性または無孔性、および多孔性担体がある。多孔性担体は、より大きい表面対体積比、および、隔離された細胞に対する保護を提供するので、多孔性担体は一般に、非多孔性担体より有利である。その多孔性の性質に起因して、これらの担体は、増殖表面内において複数の3次元キャビティを形成し、従って、細胞付着を最大化し、また、供給および/または採集プロセス中の通気、撹拌、および衝撃の結果生じるせん断応力によって除去および/または損傷されないように細胞を保護する。
【0010】
当技術分野において現在利用可能な多くの細胞培養システムは、多孔性および/または非多孔性もしくは無孔性であるマイクロキャリアを採用する。現在利用可能なマイクロキャリアビードなど、これらのマイクロキャリアは、足場依存性細胞産生システムにおいて使用される。これらのマイクロキャリアは、攪拌機器および/または通気能力と併せて使用される必要がある。しかしながら、マイクロキャリアシステムの共通の問題は、細胞培養を維持するために必要な攪拌アクションが細胞を損傷させる、または、更には殺傷し、それにより、培養システムの効率および所望の細胞産物の産生を減少させ得ることである。
【0011】
マイクロキャリアシステムはまた、イオン交換ゲル、デキストラン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、または、コラーゲン系材料からできている小さい球において製造され得る。これらの材料は、細胞との適合性、撹拌へのレジリエンス、および、増殖培地に懸濁されるマイクロキャリアを維持し得る比重について選択された。マイクロキャリアは一般に、すべての細胞に栄養および空気を平等に分配することを確実にするために、容器内で穏やかに攪拌されながら、増殖培地懸濁液に保持される。マイクロキャリアシステムは現在、大規模細胞培養のためにもっとも好適なシステムとみなされる。なぜなら、もっとも高い表面対体積比を有し、細胞に対して栄養を等しく分配することを可能にするからである。
【0012】
それにもかかわらず、現在のマイクロキャリア培養システムは深刻な欠点を有する。これらの欠点は、培養中の攪拌および通気によって生じる高いレベルのせん断力にさらされることに起因する、高い費用、および、高い細胞死亡率を含む。もっとも一般に使用されるマイクロキャリアは、多孔性の非剛性デキストランを支持マトリックスとして利用する。圧縮可能マトリックスは、マイクロキャリアが撹拌リアクタにおいて衝突するときに、マイクロキャリアおよび付着した細胞に対する潜在的な損傷を低減すると考えられる(Microcarrier Cell Culture: Principles and Methods, Pharmacia Fine Chemicals, Uppsala, Sweden, pages 5-33 (1981))。しかしながら、これらの多孔性マイクロキャリアはまた、細胞産物を保持において深刻な欠点を有し、増殖因子および培地からの他の成分の吸着をもたらす(Butler, M., "Growth Limitations in Microcarrier Cultures", Adv. Biochem. Eng./Biotech. 4:57-84 (1987))。
【0013】
1991年5月14日にNilsson et al.に発行された米国特許第5,015,576号は、非水溶性の固体、液体、または、気体キャビティ生成化合物をマトリクス材料の水溶液に追加することによって、キャビティを囲む粒子を作ることに関する。非水溶性分散培地における分散によって粒子を形成した後に、マトリックスは、冷却、共有結合架橋、または重合によって水に不溶性となる。キャビティ生成化合物は洗浄され、その後、粒子は、任意選択的に粒子の誘導体化後に、ゲルろ過プロセス、疎水性クロマトグラフィ、または、アフィニティクロマトグラフィにおいてイオン交換体として使用され得る。粒子はまた、足場依存性細胞を培養するためのマイクロキャリアとして使用され得る。
【0014】
1995年1月31日にKimura et al.に発行された米国特許第5,385,836号は、細胞培養中の動物細胞付着のための、または、動物細胞の固定化のための担体に関する。この担体は、キトサンを含む混合物の形態の細胞接着剤材料で多孔性基板をコーティングすることによって産生される。多孔性基板は、不織布ファブリックの網目に、シルクフィブロイン、ゼラチン、およびキトサンを含むバインダ樹脂を浸透させることによって調製される不織布ファブリックである。コーティングは、シルクフィブロインおよびゼラチンをキトサンの酸性水溶液に追加して不織布ファブリックをコーティングし、コーティングされた不織布ファブリックを乾燥させ、乾燥した不織布ファブリックをアルカリで処理してキトサンを不溶性にすることによって調製された溶液に不織布ファブリックを接触させることによって実行される。
【0015】
1996年10月15日にMutsakis et al.に発行された米国特許第5,565,361号は、バイオリアクタにおける細胞の培養および増殖を強化するための細胞付着方法を用いる静止混合要素を有するバイオリアクタに関する。バイオリアクタは、ハウジングおよび静止混合要素を有し、混合要素および栄養組成物に細胞を付着させることによって、付着した細胞が増殖および分裂することを可能にする。静止混合要素およびバイオリアクタは、ステンレス鋼またはチタンなどの、皺が付いた、または編まれた金網材料などの多孔性の繊維質シート材料を有し、培養される細胞の付着のための最大の表面積を提供するために、ファイバの高さおよび直径の寸法は予め定められている。
【0016】
1998年4月14日にKatinger et al.に発行された米国特許第5,739,021号は、非水溶性無機賦形剤、および、ポリエチレンおよびポリプロピレンから選択されたポリオレフィンバインダを用いた生体触媒のための多孔性担体に関し、細胞が通過して孔内で増殖することを可能にする開孔を有する。密度は1g/cm以上である。
【0017】
2001年4月10日にHillegas et al.に発行された米国特許第6,214,618号は、ビードの表面に官能基を有する軽く架橋されたスチレンコポリマーコアからできたビードを形成することによってマイクロキャリアビードを作成し、塩基および酸性溶液でマイクロキャリアビードを洗浄して、ビードを細胞培養のために適合させる方法に関する。マイクロキャリアビードはまた、ビードを細胞培養に適合させるために塩基および酸性溶液において洗浄されたトリメチルアミンの外部を有するスチレンコポリマーコアからできていることがあり得る。
【0018】
上記の技術において細胞培養のための様々な担体が教示されているが、いずれの担体も、3次元培養における高い細胞密度、容易な細胞回収、および、採集細胞と共にいかなる粒子も解放されないことの要件をカバーすることができない。
【発明の概要】
【0019】
これらの担体の欠点を克服するべく、我々の水溶液は、第1に、ファイバの代わりにネットまたはメッシュを担体のベースとして使用し、第2に、ネット/メッシュのシートを使用して、ネット/メッシュを積層して不織布ファブリック担体、すなわち、BioNOC(登録商標)II担体の構造を模倣し、第3に、熱、超音波または接着剤によって多層ネット/メッシュ構造を囲む縁をシールしてファブリックのいかなる解放も回避し、第4に、ネット/メッシュの複数の層をカラムまたは他の定義された形状または構造にロールまたはスタックまたはパック(ランダムに配置)して、固定ベッド培養システム、特に、TideMotion(登録商標)培養機構を有するBelloCell(登録商標)およびTideCell(登録商標)システムにおける固定ベッドとして機能させ、TideMotion(登録商標)培養機構の定義は、多孔性マトリックス上/内で増殖する細胞を育てるための栄養および酸素を運ぶために、ならびに、廃棄物および過剰な二酸化炭素を多孔性マトリックスから除去するために、多孔性マトリックスを有する固定ベッドを断続的に浸漬および浮上させることによる培養方法を意味する。この設計では、不織布ファブリック担体に対する複数の利点を提供する。1.各層における孔(開口)形状および孔(開口)サイズが一貫している。2.ネットまたはメッシュの複数の層からできているシートは、スタックされ、またはロールされ、またはランダムに配置してパックされ、または他のフォーマットにされることにより、充填ベッドバイオリアクタにおけるマトリックスベッドを構築し、高細胞密度細胞培養および細胞回収を可能にする。3.不織布ファブリック担体より、担体からの細胞解放を促進し得る層の数が低減され得る。4.ネットまたはメッシュは頑丈であり、特にネット構造の周囲がシールされた後に、不織布より粒子またはファイバを解放しにくい。5.ネット/メッシュのヤーン直径は細胞より遥かに大きく、ネット/メッシュからの解放に起因して任意の粒子が生成された場合にろ過を通じて細胞から容易に分離され得る。6.ネット/メッシュ構造の複数の層を用いてロールまたはスタックまたはランダムに配置してパックすることによるマトリックスベッドは、特に、TideCell(登録商標)またはBelloCell(登録商標)システムに適用するとき、細胞増殖のための表面積を最大化し得る。結果として、担体の新規の設計を通じて、粒子解放の可能性が少ない、高細胞密度培養および高収量の細胞産生を実現できる。
【0020】
本発明は一般に、シートまたはストリップから作られた細胞培養増殖表面および構造、ならびに、ネットまたはメッシュの複数の層を教示し、これにより、足場依存性細胞の培養の効率を著しく改善し、細胞を増殖表面から回収する。より具体的には、本発明は、新規の増殖表面および構造、ならびにそれを製造する方法を教示する。本発明は、細胞付着および細胞増殖を最大化し、細胞密度を増加させ、細胞回収を強化し、上記増殖表面から粒子が解放されることを回避する、細胞を培養するための新規の増殖表面および構造を請求し開示する。従って、本発明による適用の独自の細胞培養増殖表面、構造、および方法は、既存の技術の欠点および欠陥を治癒し、細胞産生適用のための細胞/組織培養を実現可能にする。
【0021】
本発明は、一貫した孔構造を有する多層のネットまたはメッシュによって形成される新規の担体構造および各層の寸法を教示する。ネットまたはメッシュの層は、大きい寸法を有し得、これにより、単一の固定ベッドユニットを形成するようにロールまたはスタックする。または、ネットまたはメッシュの層は、小さい寸法を有し得、それらの担体の小さいピースを画定された狭い空間に配置して固定ベッドを形成する。ネットメッシュから解放されるファイバまたは粒子を防止または低減するために、多層ネット/メッシュ構造の周囲は、熱プレス、長音波プレス、または接着剤によってシールされる。ネット/メッシュファブリックから作られるシートの寸法は、固定ベッドのサイズに応じて、1cm×20cm~10m~100mであり得る。より正確には、ネット/メッシュファブリックによって作られるシートの寸法は、3cm×50cm~2m×20mであり得る。マトリックスベッドはまた、細胞培養ネット/メッシュの複数の層をスペーサネット/メッシュの層と組み合わせることによって、同一の構造を有する担体の小さいピースを用いてランダムに配置してパックすることによって形成し得る。固定ベッド空間上に配置するための小さい寸法を有する場合、ネット/メッシュファブリックによって作られるシートの寸法は、0.3cm~1cm×0.5cm~10cmであり得る。より正確には、ネット/メッシュファブリックによって作られるシートの寸法は、0.5cm~1cm×1cm~5cmであり得る。ネットまたはメッシュの定義は以下の通りである。メッシュ(ネットファブリックとも称される)は多くの場合、ネットの開いた外観およびヤーン間の間隔を特徴とする、間隔を空けた多数の穴を有するファブリックとして定義される。それはニット、織られた、押し出された、または、ノット(ネット)の構成であり得、ニット、レース、またはクローシェファブリックを含む様々な構成で利用可能である。
【0022】
織られたファブリック以外に、不織布ファブリックの定義は、化学的、機械的、熱、または溶剤処理によって共に結合された、ステープルファイバ(短い)および長いファイバ(連続して長い)から作られたファブリック様材料である。
【0023】
ネット/メッシュは、細胞付着および増殖を可能にする生体適合性および親水性を有するように表面処理される。ネット/メッシュの外表面は、大きい孔寸法、大きい壁厚を有し、かつ、表面処理の要件を有する、または有しないネット/メッシュの層を有する。これは主に、培地または空気が処理済みネット/メッシュの層間を自由に流れることを可能にするスペーサとして機能する。多層ネット/メッシュ構造は、細胞培養ネット/メッシュの複数の層およびスペーサネット/メッシュの層をスタックすることによって作られるシートを用いてロールすることによって大きいマトリックスベッドを形成し得る。ロールまたはスタック前のシートの寸法は、固定ベッドのサイズに応じて、1cm×20cm~10m×100mであり得る。より正確には、ロールまたはスタック前にネット/メッシュファブリックによって作られるシートの寸法は、3cm×50cm~2m×20mであり得る。マトリックスベッドはまた、細胞培養ネット/メッシュの複数の層をスペーサネット/メッシュの層と組み合わせることによって、同一の構造を有する担体の小さいピースを用いてランダムに配置してパックすることによって形成し得る。ネット/メッシュのシートは、0.3cm~1cm×0.5cm~10cm、より好ましくは、0.5cm~1cm×1cm~5cmの小さいサイズを有し得る。シートについての経度線または緯度線としてのヤーンは、50μm~1000μm、好ましくは50μm~500μmの幅を有し得る。ヤーンは、その幅が細胞の寸法(約5μm~20μm)より遥かに大きいので、フィルタによって培養細胞から容易に分離される。断面図から、シートについての経度線または緯度線としての1つのヤーンの形状は、円、楕円または長方形であり得るが、これに限定されない。したがって、ヤーンのサイズは、本発明において示される寸法または幅であり得る。ネット/メッシュ構造の複数の層をロールし、スタックし、または、ランダムに配置してパックし、固定ベッドバイオリアクタのための固定ベッドを形成した後に、構造は、BelloCell(登録商標)またはTideCell(登録商標)などのTideMotion(登録商標)システムにおける最良の適用である。細胞培養の機構は、断続的に固定ベッドを培養培地に浸漬し、固定ベッドを培養培地から浮上させることによって行われる。TideMotion(登録商標)培養機構に起因して、培養培地は、固定ベッドから除かれ、新鮮な空気が固定ベッドに入ることが可能になり得る。従って、細胞増殖のための最大の表面積が実現され得る。
【0024】
当技術分野において現在知られている、細胞培養プロセスの大きい重要性、および、担体システムの欠陥の両方に鑑み、本発明は、3次元高細胞密度における細胞培養を可能にし得る培養担体システムを教示し請求する。それは、培養容器またはバイオリアクタ内の培養培地の自由な流れを促進するために割り当てられ得る。担体システムの独自の特性は、任意の粒子が非細胞ソースから解放される可能性を最低限に抑えた、細胞培養後の細胞または組織の採集を促進し得る。細胞より大きい壁直径に起因して、ネットまたはメッシュから生成された任意の粒子も、単にろ過を通じて容易に除去され得る。したがって、本発明による細胞培養増殖表面および構造は、既存技術の欠点および欠陥を治癒する。
【0025】
本発明は、細胞を培養することに好適で大規模な細胞または組織の採集に従う効率的かつ新規の増殖表面および構造、ならびに、その製造方法を提供する。本発明の目的は、開口寸法と一貫している、より一貫した性能のための細胞接着および増殖を支持することが可能な新規の細胞培養増殖表面を提供すること、BelloCell(登録商標)およびTideCell(登録商標)などのTideMotion(登録商標)細胞培養システムなどの充填ベッドシステムと統合することによって細胞培養表面の面積を最大化し得る細胞培養増殖表面を提供すること、培養が完全した後に組織または細胞集団の採集を促進することが可能な細胞培養増殖表面を提供すること、ならびに、細胞培養および細胞採集中に非細胞関連粒子を解放する確率を最低限に抑えた細胞培養増殖表面を提供することを含むが、これらに限定されない。
【0026】
本発明は、天然または人工ポリマー材料、特にポリエチレンテレフタレート(PET)を有するネットまたはメッシュから作られた3次元多孔性増殖表面を教示し、細胞培養表面を強化し、細胞固定化を促進し、細胞増殖を促進し、表面構造の完全性を維持するために開示され、任意の人工粒子を解放することなく細胞回収を可能にし、従って、細胞産生を増加させる。
【0027】
従って、細胞培養のための担体はネット/メッシュ構造単位を含む。ネット/メッシュ構造単位は、複数の第1経度線および複数の第1緯度線を交差させることによって形成された複数の第1メッシュを有する少なくとも第1ネット/メッシュフィルム(第1ネット/メッシュフィルムは生体適合性および親水性である)と、複数の第2経度線および複数の第2緯度線を交差させることによって形成される複数の第2メッシュを有する少なくとも第2ネット/メッシュ(第2ネット/メッシュフィルムは、第1ネット/メッシュフィルムと平行であり、第1ネット/メッシュフィルムの下または上に配置される)とを含む。
【0028】
好ましくは、ネット/メッシュ構造単位は、2層の第1ネット/メッシュフィルムおよび1層の第2ネット/メッシュフィルムを含み、第2ネット/メッシュフィルムは、2層の第1ネット/メッシュフィルムの間に、または、2層の第1ネット/メッシュフィルムの上に、または、2層の第1ネット/メッシュフィルムの下に配置される。
【0029】
好ましくは、ネット/メッシュ構造単位は、少なくとも3層の第1ネット/メッシュフィルムおよび1層の第2ネット/メッシュフィルムを含み、第2ネット/メッシュフィルムは、任意の2層の第1ネット/メッシュフィルム間に、または、3層の第1ネット/メッシュフィルム上に、または、3層の第1ネット/メッシュフィルムの下に配置される。
【0030】
好ましくは、第1ネット/メッシュフィルムの材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含み、第2ネット/メッシュフィルムの材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはナイロンを含む。
【0031】
好ましくは、第1メッシュの任意の1つの開口(孔寸法)は、30μm~800μmであり、第2メッシュの任意の1つの開口(孔寸法)は、1mm~5mmである。
【0032】
好ましくは、第1ネット/メッシュフィルムは、親水性表面処理を有するネット/メッシュ材料であり、第2ネット/メッシュフィルムは、支持ネット/メッシュ材料である。
【0033】
好ましくは、担体の種類は、ネット/メッシュ構造単位をカールすることによる1または複数のカラム、複数のネット/メッシュ構造単位を順にラミネートすることによる1または複数のカラム、または、ネット/メッシュ構造単位をランダムに配置してパックすることによるスタックボディである。
【0034】
好ましくは、第1ネット/メッシュフィルムおよび第2ネット/メッシュフィルムの周囲の縁は、熱プレス、超音波または接着剤処理によって共にシールされる。
【0035】
好ましくは、第1ネット/メッシュフィルムの第1メッシュの開口(孔寸法)は完全に、または部分的に同一である。
【0036】
好ましくは、第2ネット/メッシュフィルムの第2メッシュの開口(孔寸法)は、完全に、または部分的に同一である。
【0037】
好ましくは、第1経度線のいずれか1つ、第1緯度線のいずれか1つは、50μm~500μmの幅であり、第2経度線のいずれか1つ、または、第2緯度線のいずれか1つは、100μm~1000μmの幅である。
【0038】
好ましくは、第1経度線のいずれか1つ、第1緯度線のいずれか1つは、50μm~250μmの幅であり、第2経度線のいずれか1つ、または、第2緯度線のいずれか1つは、250μm~500μmの幅である。
【0039】
従って、細胞培養デバイスは、細胞培養のための担体、および、細胞培養のための担体を配置する培養チャンバを備える。細胞培養のための担体は、複数の第1経度線および複数の第1緯度線を交差させることによって形成された複数の第1メッシュを有する少なくとも第1ネット/メッシュフィルム(第1ネット/メッシュフィルムは生体適合性および親水性である)と、複数の第2経度線および複数の第2緯度線を交差させることによって形成される複数の第2メッシュを有する少なくとも第2ネット/メッシュ(第2ネット/メッシュフィルムは、第1ネット/メッシュフィルムと平行であり、第1ネット/メッシュフィルムの下または上に配置される)とを含む。
【0040】
より好ましくは、本発明による新規の増殖表面は、細胞付着および増殖のための30μm~800μmの開口を有する少なくとも1つの層の表面処理PETネット/メッシュを含むネットまたはメッシュの複数の層と、共にロール、スタック、またはパックして充填ベッドバイオリアクタ、特にBelloCell(登録商標)および/またはTideCell(登録商標)バイオリアクタにおいてマトリックスベッドを形成するために、担体の層の間の栄養および空気の交換を促進するスペーサである、好ましくはポリプロピレンまたはナイロンである1mm~5mmの開口を有する処理済みまたは非処理のネット/メッシュの層とからできている。表面処理されたPETネット/メッシュの複数の層は、ネット/メッシュの厚さ、および/または、細胞培養および細胞回収の容易性に応じて、少なくとも1つの層から、最大で10以上の層であり得る。本発明の担体が、ロール、スタック、またはパックの形態であり、充填ベッドを形成するとき、および、それらをBelloCell(登録商標)またはTideCell(登録商標)細胞培養システムに適用するとき、バイオマス産生の最大の結果に寄与する。これは、TideCell(登録商標)細胞培養システムが、培養培地について断続的に培養担体を浸漬し培養担体を浮上させるためのTideMotion(登録商標)と呼ばれる培養機構を利用することに起因する。TideMotion(登録商標)細胞培養機構の下で、ロール、スタック、またはパックなどのパックされたベッドの密集パッケージでも、酸素がマトリックスベッドに入ることを可能にし、細胞を溺れさせない。他の細胞培養バイオリアクタは、そのような高密集パッケージ状態下で、細胞を培養する能力を有しない。従って、現在の発明は、BelloCell(登録商標)またはTideCell(登録商標)システムと組み合わせるとき、性能に関して最大の結果を有し得る。これらおよび他の実施形態は開示される、または、以下の詳細な説明から明らかである、または、それらに包含される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
例として与えられる以下の図は、説明される任意の特定の実施形態に本発明を限定することを意図するものではない。説明は、参照によって本明細書に組み込まれる添付の図と併せて理解され得る。
図1】本発明におけるネット/メッシュの2つの層によって作られる本発明の新規の担体構造を示す展開拡大概略図である。
図2】本発明におけるネット/メッシュの3つの層によって作られる本発明の新規の担体構造を示す展開拡大概略図である。
図3】本発明におけるネット/メッシュの4つの層によって作られる本発明の新規の担体構造を示す展開拡大概略図である。
図4】本発明における、熱プレス、長音波プレス、または接着剤によって周囲がシールされた、本発明の新規の担体構造を示す上面概略図である。
図5】本発明の単一のロール担体構造を示す概略側面図である。
図6】本発明の複数のロール担体構造を示す概略側面図である。
図7】本発明の複数のスタック担体構造を示す概略側面図である。
図8】本発明における、ネット/メッシュの3つの2層シートを有する本発明の新規担体を示す拡大断面概略図である。
図9】本発明における、ネット/メッシュの3つの3層シートを有する本発明の新規担体を示す拡大断面概略図である。
図10】本発明における、ネット/メッシュの3つの4層シートを有する本発明の新規担体を示す拡大断面概略図である。
図11】本発明のロール担体構造を有する培養担体システムを示す部分立体図である。
図12】本発明のランダムに配置された担体構造を有する培養担体システムを示す部分立体概略図である。
図13】本発明における、密集した3次元構造を形成する担体における間葉系幹細胞増殖を示す、部分微視的拡大上面概略図である。
図14】本発明における、密集した3次元構造を形成する担体における間葉系幹細胞増殖を示す。
図15】本発明における、細胞採集後に残った細胞を観察するために1層を剥離することにより担体を示す。
図16】本発明における、細胞採集後に残った細胞を観察するために1層を剥離することにより担体を示す。
図17】本発明における、細胞採集後のBelloCell(登録商標)容器における担体からの細胞カウントおよび回収率を列挙する表である。
図18】本発明における細胞を含む採集ブロスからの粒子カウントの結果を列挙する表である。これらおよび他の実施形態は、以下の詳細な説明において説明される、および/または、それらから明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は、ネット/メッシュの複数の層から作られる3次元多孔性増殖表面を教示し、細胞培養表面を強化し、細胞固定化を促進し、効率的な細胞回収を可能にし、粒子解放を低減し、それにより細胞または生物学的な産生を増加させるために開示される。本発明は更に、多孔性および3次元構造を生じさせることによって表面積を増加させ、細胞付着を促進するために表面を処理し、細胞増殖および増殖を促進し、任意の従来の細胞培養デバイスに増殖表面を配置する段階を含む、真核細胞のための増殖表面を修飾する方法を教示する。増殖表面は、細胞増殖を可能にし、トリプシン/EDTA、プロテアーゼ、コラゲナーゼおよび/またはDNAseを追加することによって細胞/組織集団を解放して、培養完全後に単一の細胞を取得する。
【0043】
例として与えられる、以下の詳細な説明は、説明される任意の特定の実施形態に本発明を限定することを意図するものではない。詳細な説明は、参照によって本明細書に組み込まれる添付の図と併せて理解され得る。上記を不必要に限定することを望まないが、以下では、特定の好ましい実施形態に関して本発明を開示するものとする。本発明による実施形態は、真核細胞培養、特に、動物細胞および/または哺乳類細胞に好適である。本発明は、とりわけ、細胞増殖が完了した後に採集が容易であり得る足場依存性細胞を培養するのに好適な新規の増殖表面および構造を教示する。
【0044】
本発明による新規の増殖表面は、支持および空間のためのネットまたはメッシュの層を含むネット/メッシュの複数の層、および、細胞付着および細胞増殖のための1または複数のネットまたはメッシュの組み合わせからできている。細胞増殖のためのネットまたはメッシュの層は、細胞増殖のための要件に応じて、少なくとも1つの層(図1)、2つの層(図2)、3つの層(図3)またはより多くの層であり得る。
【0045】
図1は、本発明の新規の担体構造を示し、構造はネット/メッシュの2つの層からできている。もっとも上の1つの層は、30μm~800μmのより小さい開口サイズからできている。最下層は、1mm~5mmのより大きい開口サイズでできている。最上層は、ポリエチレンテレフタレートなどの、表面処理が容易な材料からできている。最下層は、マトリックスベッドの構築中にスペーサおよびサポータとして機能し得る剛性のポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、ポリエチレン(PE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはナイロンなど任意の材料でできている。ネット/メッシュのもっとも上の1つの層は、生体適合性および親水性を有するように表面処理され、これにより、細胞付着および増殖を促進し得る。マトリックスベッドを構築するときにスペーサとして機能するネット/メッシュの最下層は、機能に影響しない処理であっても、任意の処理を必要としない。さらに、2層ネット/メッシュ構造全体の周囲は、熱プレス、長音波プレス、または接着剤によってシールされ、ネットファイバおよび粒子の解放を更に防止または低減する。
【0046】
図1に示されるように、担体または担体構造100はネット/メッシュ構造単位30を含む。ネット/メッシュ構造単位30は、複数の第1経度線101および複数の第1緯度線102を交差させることによって形成される複数の第1メッシュ11を有する少なくとも第1ネット/メッシュフィルム10(第1ネット/メッシュフィルム10は生体適合性かつ親水性である)と、複数の第2経度線201および複数の第2緯度線202を交差させることによって形成される複数の第2メッシュ21を有する少なくとも第2ネット/メッシュフィルム20(第2ネット/メッシュフィルム20は、第1ネット/メッシュフィルム10と平行であり、第1ネット/メッシュフィルム10の下または上に配置される)とを含む。一実施形態において、第2メッシュ21の開口(孔寸法)は、第1メッシュ11の開口(孔寸法)より大きい。さらに、多数の第1メッシュ11は、第1経度線101および第1緯度線102の両方に垂直な開口方向を有する。多数の第2メッシュ21は、第2経度線201および第2緯度線202の両方に垂直な開口方向を有する。
【0047】
図2は、2層の第1ネット/メッシュフィルム10および1層の第2ネット/メッシュフィルム20を含み得る3層のネット/メッシュによって作られる新規の担体構造を示す。図2は、もっとも上の2つの層が、30μm~800μmのより小さい開口サイズでてきていて、最下層が、1mm~5mmのより大きい開口サイズでできていることを示す。もっとも上の2つの層は、ポリエチレンテレフタレートなどの、表面処理が容易な材料からできている。最下層は、マトリックスベッドの構築中にスペーサおよびサポータとして機能し得る剛性のポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはナイロンなど任意の材料でできている。ネット/メッシュのもっとも上の2つの層は、生体適合性および親水性を有するように表面処理されて、これにより、細胞付着および増殖を促進し得る。マトリックスベッドを構築するときにスペーサとして機能するネット/メッシュの最下層は、機能に影響しない処理であっても、任意の処理を必要としない。さらに、3層ネット/メッシュ構造全体の周囲は、熱プレス、長音波プレス、または接着剤によってシールされ、ネットファイバおよび粒子の解放を更に防止または低減する。
【0048】
図2において、第2ネット/メッシュフィルム20は、第1ネット/メッシュフィルム10の2つの層の下に配置されるが、本発明において限定されない。第2ネット/メッシュフィルム20は、第1ネット/メッシュフィルム10の2つの層の間または上に配置され得る。
【0049】
図3は、3層の第1ネット/メッシュフィルム10および1層の第2ネット/メッシュフィルム20を含み得る4層のネット/メッシュによって作られる新規の担体構造を示す。もっとも上の3つの層は、30μm~800μmのより小さい開口サイズからできている。最下層は、1mm~5mmのより大きい開口サイズでできている。もっとも上の3つの層は、ポリエチレンテレフタレートなどの、表面処理が容易な材料からできている。最下層は、マトリックスベッドの構築中にスペーサおよびサポータとして機能し得る剛性のポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはナイロンなど任意の材料でできている。ネット/メッシュのもっとも上の3つの層は、生体適合性および親水性を有するように表面処理されて、これにより、細胞付着および増殖を促進し得る。マトリックスベッドを構築するときにスペーサとして機能するネット/メッシュの最下層は、機能に影響しない処理であっても、任意の処理を必要としない。4層構造の周囲は、熱プレス、長音波プレス、または接着剤によってシールされ、ネットファイバおよび粒子の解放を更に防止または低減する。
【0050】
図3において、第2ネット/メッシュフィルム20は、第1ネット/メッシュフィルム10の3つの層の下に配置されるが、本発明において限定されない。第2ネット/メッシュフィルム20は、第1ネット/メッシュフィルム10の任意の2つの層の間に、または、第1ネット/メッシュフィルム10の3つの層の上に配置され得る。
【0051】
加えて、設計要件を満たすために、第1ネット/メッシュフィルム10の第1メッシュ11の開口(孔寸法)は、第1経度線101の各々と、第1緯度線102の各々との間の間隔を調節することによって、完全にまたは部分的に同一であり得る。第2経度線201および第2緯度線202を調節する助けにより、第2メッシュ20の第2メッシュ21も同様である。さらに、本発明における経度線または緯度線としてのヤーンの直径が細胞より遥かに長いことにより、細胞から分離するように容易にフィルタリングされ得る。一実施形態において、ネット/メッシュ構造のヤーンの幅は、5~20μmである細胞直径より遥かに大きい、50μm~1000μmであり得る、または正確には、100μm~500μmであり得る。従って、ネット/メッシュ構造から落ちさえする任意のヤーンは、任意の好適なフィルタ手段によって、細胞から容易に分離される。図4に示されるように、第1ネット/メッシュフィルム10の周囲の縁、および、第2ネット/メッシュフィルム20の周囲の縁は、熱プレス、超音波、または接着剤処理によって共にシールされ、周囲の開口は、図4における熱プレス処理に起因する溶けた材料で満たされる。そのような手法により、細胞採集中にネット/メッシュ構造から解放される不要なファイバまたは粒子を防止または低減し得る。
【0052】
剛性支持(第2ネット/メッシュフィルム20)、例えば、ポリプロピレンまたはナイロンによって作られたネットまたはメッシュは、細胞増殖ネット/メッシュの上または下の多孔性の1つの層であり、担体が共にロールされ(図5および図6)またはスタックされ(図7)バイオリアクタ(例えば、BelloCell(登録商標)またはTideCell(登録商標)バイオリアクタ)内に充填ベッドを形成するときに支持して間隔を空ける(図5図6図7)ためのものである。
【0053】
図5は、本発明の新規の担体構造を示し、マトリックスベッドは、多層ネット/メッシュ構造単位30をカラムにロールしてマトリックスベッド200を形成することによって構築され得、一方、最下層のネット/メッシュは、各構造間のスペーサとして機能して、細胞培養中に培養培地または酸素が自由に流れることを可能にする。しかしながら、そのようなカラムは本発明に限定されない。図6は、複数のロールしたネット/メッシュ構造単位30を配置することによって構築されるマトリックスベッド210を示す。図7は、本発明の新規の増殖表面構造を示し、マトリックスベッド300は、容器において本発明の担体(ネット/メッシュ構造単位30)をスタックすることによって構築され得、担体は、マトリックスベッド300を形成できる任意の形状、または、好ましくは2cm×2cm~2m~2mのサイズの寸法を有するシートに切断される。しかしながら、別の実施形態において、マトリックスベッドは、図12に示されるもののような多くのネット/メッシュ構造単位30をランダムに配置してパックすることによって構築され得る。
【0054】
図8は、3つの2層シートのネット/メッシュを有する本発明の新規の担体を示す拡大断面概略図である。図1および図8を参照すると、図8は、ロールまたはスタックまたはランダムに配置してパックしてバイオリアクタにおいてマトリックスベッドを形成した後の新規の担体構造の微視的図を示す。担体は、1層の親水性ネット/メッシュ(第1ネット/メッシュフィルム10)およびスペーサとしての1層の非処理ネット/メッシュ(第2ネット/メッシュフィルム20)によって作られる。スペーサのためのネット/メッシュは、より大きい直径を有し、培養培地、溶液、空気が自由に通過することを可能にし得る。
【0055】
図9は、3つの3層シートのネット/メッシュを有する本発明の新規の担体を示す拡大断面概略図である。図2および図9を参照すると、図9は、ロールまたはスタックまたはランダムに配置してパックしてバイオリアクタにおいてマトリックスベッドを形成した後の新規の担体構造の微視的図を示す。担体は、2層の親水性ネット/メッシュ(第1ネット/メッシュフィルム10)およびスペーサとしての1層の非処理ネット/メッシュ(第2ネット/メッシュフィルム20)によって作られる。スペーサのためのネット/メッシュは、より大きい直径を有し、培養培地、溶液、空気が自由に通過することを可能にし得る。
【0056】
図10は、3つの4層シートのネット/メッシュを有する本発明の新規の担体を示す拡大断面概略図である。図3および図10を参照すると、図10は、ロールまたはスタックまたはランダムに配置してパックしてバイオリアクタにおいてマトリックスベッドを形成した後の新規の担体構造の微視的図を示す。担体は、3層の親水性ネット/メッシュ(第1ネット/メッシュフィルム10)およびスペーサとしての1層の非処理ネット/メッシュ(第2ネット/メッシュフィルム20)によって作られる。スペーサのためのネット/メッシュは、より大きい直径を有し、培養培地、溶液、空気が自由に通過することを可能にし得る。
【0057】
細胞培養のネットまたはメッシュ(第1ネット/メッシュ構造フィルム10)は、表面処理が容易である、任意の天然または人工ポリマー、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)によって作られる。ネット/メッシュが開口部の正確で一貫した寸法を有することに起因して、より良い一貫した性能で培養を改善し得る。再び図1図2および図3を参照すると、第1ネット/メッシュフィルム10のネット/メッシュ11は、第1経度線101および第1緯度線102の両方に対して垂直の開口方向にある。同様に、第2ネット/メッシュフィルム20のネット/メッシュ21は、第2経度線201および第2緯度線202の両方に対して垂直の方向に開いている。従って、第1ネット/メッシュフィルム10のネット/メッシュ11の開口方向が第2ネット/メッシュフィルム20のネット/メッシュ12と一貫していることは、細胞培養および一貫したプリフォーメーション(preformation)にとって有益である。ネットまたはメッシュの複数の層上の開口が同一方向を向いていることに起因して、増殖表面からの細胞遊離および回収が促進され得る。細胞増殖層および非細胞増殖支持層の両方を組み合わた多層ネット/メッシュ構造は任意で、ファイバおよび粒子解放を防止または低減するために、熱プレス、超音波、または接着剤処理によって、構造の周囲でシールされる。
【0058】
細胞増殖(第1ネット/メッシュフィルム10)のための多孔性構造内の開口(孔寸法)は、30μm~800μmの範囲であり得る。より好ましくは、第1ネット/メッシュフィルム10の開口(孔寸法)は、50μm~200μmの範囲であり得る。支持ネット/メッシュ(第2ネット/メッシュフィルム20)内の開口(孔寸法)は、1mm~10mmの範囲であり得る。より好ましくは、第2ネット/メッシュフィルム20の開口(孔寸法)は、2mm~5mmの範囲であり得る。
【0059】
本発明による担体は、最大表面積を提供して、細胞付着、細胞接着、細胞増殖、および、細胞除去の容易性を促進し、それにより、最大細胞密度、ひいては最大細胞産物を提供する。
【0060】
本発明の新規増殖表面は、本発明に従う限り、任意のサイズ、形状、形態、構造、または幾何学的構成であり得る。本発明の増殖表面は、パレット、ストリップ、シート、または任意の3次元構造など、任意の好適な形態であり得る。一実施形態において、増殖表面は、ロールされたカラム(図5に示されるマトリックスベッド200)または複数のカラム(図6に示されるマトリックスベッド210)を形成するシート(ネット/メッシュ構造単位30)の形態であり、培養タンク、培養容器またはバイオリアクタ内に配置される。例えば、TideCell(登録商標)またはBelloCell(登録商標)バイオリアクタである。ネットまたはメッシュの層は、より大きい寸法を有し、これにより、担体の小さいピースを制限され画定された領域に配置して固定ベッドを形成する代わりに、ロールして単一の固定ベッドユニットを形成する。ロールの前にネット/メッシュファブリックによって作られるシートの寸法は、固定ベッドのサイズに応じて、1cm(高さ)×20cm(幅)~10m×100mであり得る。より正確には、ネット/メッシュファブリックによって作られるシートの寸法は、3cm(高さ)×50cm(幅)~2m(高さ)×20m(幅)であり得る。
【0061】
別の実施形態において、増殖表面は、スタックされてカラムまたは複数のカラム(図7に示されるマトリックスベッド300)を形成するシート(ネット/メッシュ構造単位30)の形態であり、培養タンク、培養容器、またはバイオリアクタ内に配置される。例えば、TideCell(登録商標)またはBelloCell(登録商標)バイオリアクタである。ネットまたはメッシュの層は、より大きい寸法を有し、これにより、担体の小さいピースを制限され画定された領域に配置して固定ベッドを形成する代わりに、スタックして単一の固定ベッドユニットを形成する。スタックの前にネット/メッシュファブリックによって作られるシートの寸法は、固定ベッドの寸法および形状に応じて、1cm×1cmの正方形、または、直径1cmの円形、から、2m×2m、または、直径2mの円形、または、任意の他の形状および寸法であり得る。より好ましくは、ネット/メッシュファブリックによって作られるシートの寸法は、5cm×5cm、または、直径5cmの円~0.5m×0.5m、または、直径0.5mの円形であり得る。
【0062】
本発明の担体がロールの形態であるとき、および、担体をTideCell(登録商標)細胞培養システムに適用するとき、バイオマス産生の最大の結果に寄与し得る。これは、TideCell(登録商標)細胞培養システムが、培養培地について断続的に培養担体を浸漬し培養担体を浮上させるためのTideMotion(登録商標)と呼ばれる培養機構を利用することに起因する。TideMotion(登録商標)細胞培養機構の下で、ロール、スタック、またはパックなどのパックされたベッドの密集パッケージでも、酸素がマトリックスベッドに入ることを可能にし、細胞を溺れさせない。他の細胞培養バイオリアクタは、そのような高密集パッケージ状態下で、細胞を培養する能力を有しない。従って、現在の発明は、BelloCell(登録商標)またはTideCell(登録商標)システムと組み合わせるとき、細胞培養の性能に関して最大の結果を有し得る。
【0063】
当業者であれば、増殖表面の特定の特徴は、その性能に影響を有し得ることを理解するであろう。表面特性、担体密度、サイズ、毒性、および剛性などの担体または表面の特徴は増殖表面の性能、ひいては、特に細胞密度および細胞産物の全体的な産生に関して、細胞培養の性能に影響を与え得る。具体的には、増殖表面の孔のサイズは、細胞の性能に影響し得る。当業者であれば、知られている任意の増殖表面孔サイズが好適であると理解するが、孔サイズは、好ましくは、30マイクロメートル~800マイクロメートルの範囲である。
【0064】
細胞培養は、大部分の真核細胞、より具体的には動物細胞、より具体的には哺乳類細胞をカバーし得る。例えば、線維芽細胞、骨髄からの間葉系幹細胞、Wharton's Jellyからの間葉系幹細胞、脂肪組織からの脂肪由来間葉系幹細胞などである。
【0065】
細胞増殖後、細胞は、トリプシン処理、または、コラゲナーゼ、AccuMAX、Accutase、TrypLEなど他の酵素処理を通じて、従来の細胞回収手順によって、本発明の増殖表面から容易に除去および回収できる。
【0066】
例1 材料調製
【0067】
この例は、発明の多孔性構造上での細胞増殖を説明する。材料および方法:3mm×3mmのグリッド寸法を有するPPネットを調製した。200μm×200μmのグリッド寸法を有するPETネットを調製した。ネットのサイズは、43cm長×3cm幅であった。2層のPETネットをPPネットの上に配置し、次に、シートをロールして、約4cm直径および3cm高さのカラム(図5に示されるマトリックスベッド200)を形成した。カラムは、BelloCell(登録商標)容器(CESCO(登録商標)Bioengineering Co., Ltd.)内に配置し、25~35kGyの範囲の線量のガンマ線で殺菌した(図11に示される)。カラムにロールした後の微視的構造を図9に示す。カラムにロールする前に、2層のPETネットおよび1層のPPネットが、熱、超音波、または接着剤によって、周囲の縁でシールされ、囲まれた周囲を形成したことに留意されたい。
【0068】
例2 細胞培養
【0069】
ヒトのWharton's Jellyから単離された間葉系幹細胞(MSC)を調製し、100ml培養培地中の合計MSC3×10個の細胞を、本発明の担体を備えたBelloCell(登録商標)容器に入れ、3時間播種した。播種効率が90%より上であることをチェックした後に、400mlの新鮮培養培地を追加して、培養培地の合計体積を500mlとした。その後、BioNOC(登録商標)をBelloStage(登録商標)3000マシン(CESCO(登録商標)Bioengineering Co., Ltd.)に設置し、アップレート:1mm/秒、T_H:10秒、ダウンレート:1mm/秒、B_H:37℃および5%CO2で30分のパラメータで動作させた。細胞増殖を4日目および8日目にチェックした。細胞増殖が培養密度に到達したと確認した後に、8日目に細胞採集を行った。
【0070】
本発明における担体の種類は、図12に示される複数のネット/メッシュ構造単位をランダムに配置してパックすることによって構成されるスタックパックであり得る。図12は、本発明のランダムに配置された担体構造を有する培養担体システムを示す部分立体概略図である。図12において、ネット/メッシュ構造単位30はストリップであり得、培養チャンバ400にランダムに配置またはパックされ、細胞培養のためのBelloCell(登録商標)容器においてマトリックスベッドを形成する。
【0071】
図13は、密集した3次元構造を形成する担体において増殖する間葉系幹細胞を示す。担体は、2層のPETネット(メッシュ)および1層のPPネット(メッシュ)によって構築される。図2および図13を参照すると、例示的な担体構造は、2層のPETネット/メッシュおよび1層のPPネット/メッシュによって構成され、第2ネット/メッシュフィルムのネット/メッシュ21は、第1ネット/メッシュフィルムのネット/メッシュ11より大きい。微視的図において、細胞の増殖を提供するべく、ネット/メッシュ21内に示される2つのネット/メッシュ11があり得る。図14は、密集した3次元構造を形成する担体における間葉系幹細胞増殖を示す。担体は、3層のPETネット(メッシュ)および1層のPPネット(メッシュ)によって構築される。図3および図14を参照すると、例示的な担体構造は、3層のPETネット/メッシュおよび2層のPPネット/メッシュによって構成され、3つの重複した第1ネット/メッシュフィルムは、顕微鏡観察下において、図12より暗く見える。
【0072】
図15は、細胞採集後に残った細胞を観察するために1つの層を剥離することによって担体を示す。ここで、担体は、2層のPETネット/メッシュおよび1層のPPネット/メッシュによって構築される。図2および図15を参照すると、細胞採集後、PETネット/メッシュ上には残った細胞が観察されない。図16は、細胞採集後に残った細胞を観察するために1つの層を剥離することによって担体を示す。ここで、担体は、3層のPETネット/メッシュおよび1層のPPネット/メッシュによって構築された。図3および図16を参照すると、細胞採集後のいくつかの限定された領域で、少ない細胞外マトリックスおよび細胞が観察された。
【0073】
例3:細胞/組織の解放
【0074】
細胞増殖がコンフルエンスに到達した後に、増殖表面をD‐PBSで3回洗浄し、次に、増殖表面をトリプシン/EDTAに5分間浸漬した。トリプシン/EDTA溶液は、細胞解離の前に破棄した。BelloCell(登録商標)容器上でタップおよび振とうを行い、細胞を強制的に解離するために、増殖表面をBelloCell(登録商標)容器に衝突させ、次に、D‐PBSで洗浄した。タップ/振とうおよび洗浄サイクルは、3回繰り返した。すべての採集が収集され、遠心分離され、再懸濁され、全体の細胞数および生存率をチェックした。細胞採集後の結果を図17に示す。データは、細胞密度が、4cm(直径)×3cm(高さ)のサイズの2層(グループ1)および3層(グループ2)のPETネット構造を有するBelloCell(登録商標)容器あたり9×10個以上の細胞に到達できることを示す。増殖表面上の染色された細胞をチェックすることによって回収率を推定した。全体的な細胞生産性を推定することによって、BelloCell(登録商標)マトリックスベッド空間を満たすまでマトリックスベッドが増加した場合、細胞生産性は、BelloCell(登録商標)容器あたり8×10個の細胞以上に到達し得る。BelloCell(登録商標)容器におけるBioNOC(登録商標)II担体とは対照的に、わずか約2×10個の細胞が、約70~80%の回収率で取得され得る(データは示されない)。本発明の担体により、細胞生産性について合計で4倍の増加に到達できる。さらに、図18に示される細胞採集後に、人工粒子が観察されなかった。粒子解放の課題に介して、14,000を超えるファイバが、細胞採集後にBioNOC(登録商標)II担体を有する1つのBelloCell(登録商標)容器において見られた。BelloCell(登録商標)容器におけるBioNOC(登録商標)II担体から生成された粒子と比較して、本発明の担体では、粒子除去のための余分な下流のプロセスは必要ない。
【0075】
従って、本発明における細胞培養のための担体システムは、異なるネット/メッシュにおける複数のネット/メッシュ構造によって構成される3次元多孔性構造を有する。これらのネット/メッシュフィルムは、一貫した方向に開口を有し、それにより、細胞増殖の表面を強化し、細胞足場を改善し、細胞採集を有利にし、バイオマス産生を改善する。さらに、以前の不織布材料の担体と比較して、本発明における担体構造は、余分な粒子産生、製造コスト、および時間浪費の可能性を低減し得る。
図1
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図4
図5
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【国際調査報告】