(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-06
(54)【発明の名称】ラクツロースからガラクトオリゴ糖を調製するための方法
(51)【国際特許分類】
C12P 19/14 20060101AFI20230130BHJP
A23L 33/125 20160101ALI20230130BHJP
A61K 31/702 20060101ALI20230130BHJP
A61K 38/00 20060101ALI20230130BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230130BHJP
A61K 31/70 20060101ALI20230130BHJP
A61K 35/741 20150101ALI20230130BHJP
A61K 31/202 20060101ALI20230130BHJP
C12N 15/56 20060101ALN20230130BHJP
C12N 9/38 20060101ALN20230130BHJP
A23C 9/00 20060101ALN20230130BHJP
【FI】
C12P19/14 Z ZNA
A23L33/125
A61K31/702
A61K38/00
A61P37/08
A61K31/70
A61K35/741
A61K31/202
C12N15/56
C12N9/38
A23C9/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022532813
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(85)【翻訳文提出日】2022-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2020084190
(87)【国際公開番号】W WO2021110709
(87)【国際公開日】2021-06-10
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505310426
【氏名又は名称】フリースランドカンピーナ ネーデルランド ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カオ、リンキウ
【テーマコード(参考)】
4B001
4B018
4B050
4B064
4C084
4C086
4C087
4C206
【Fターム(参考)】
4B001AC03
4B001AC25
4B001BC99
4B001EC07
4B018MD31
4B018ME02
4B018ME14
4B018MF12
4B050DD01
4B050LL02
4B050LL05
4B064AF04
4B064CA21
4B064CB07
4B064DA01
4B064DA10
4C084AA02
4C084BA44
4C084MA02
4C084MA52
4C084NA05
4C084ZB131
4C084ZC212
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA04
4C086EA00
4C086EA01
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA06
4C086ZB13
4C086ZC21
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC30
4C087CA09
4C087MA02
4C087MA52
4C087NA05
4C087ZB13
4C087ZC21
4C087ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA05
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA05
4C206ZB13
4C206ZC21
4C206ZC75
(57)【要約】
ガラクトオリゴ糖調製物を調製するためのプロセスであって、プロセスは、ラクツロース含有飼料をパピリオトレマ・テレストリス(Papiliotrema terrestris)に由来するβ-ガラクトシダーゼに接触させる工程を含む。得られたガラクトオリゴ糖は、GOSに関連するアレルギーに罹患している対象、及び乳糖不耐症の対象に容認できるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラクトオリゴ糖調製物を調製するためのプロセスであって、ラクツロース含有飼料をパピリオトレマ・テレストリス(Papiliotrema terrestris)に由来するβ-ガラクトシダーゼ(EC3.2.1.23)と接触させる工程を含むプロセス。
【請求項2】
前記β-ガラクトシダーゼが、パピリオトレマ・テレストリス(Papiliotrema terrestris)株MM13-F2171(アクセッション番号:NITE BP-02177)又はAPC-6431(アクセッション番号:NITE BP-02178)に由来するものである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記β-ガラクトシダーゼが、配列番号1、2、3若しくは4のいずれかによるアミノ酸配列、又は配列番号1、2、3若しくは4のいずれかと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、なお更により好ましくは少なくとも97%、及び最も好ましくは少なくとも98%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ラクツロース含有飼料が、40~58重量%のラクツロース、好ましくは45~55重量%のラクツロース、最も好ましくは50~55重量%のラクツロースを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記ラクツロース含有飼料のpHが、3.5~6.5、好ましくは4.5~6.0、及び最も好ましくは5~5.5の範囲である、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記β-ガラクトシダーゼが、1~20LU/グラムのラクツロース、好ましくは1~10LU/グラムのラクツロース、より好ましくは2~8LU/グラムのラクツロース、及び最も好ましくは3~6LU/グラムのラクツロースの濃度で使用される、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
50~75℃、好ましくは約63~73℃、最も好ましくは65~70℃の範囲の温度で、前記ラクツロースを前記β-ガラクトシダーゼと反応させる、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセスによって得られるガラクトオリゴ糖調製物。
【請求項9】
ラクトースを臨床的に含まず、乾燥物を基準として、ラクツロース以外のガラクトオリゴ糖を30~60重量%、好ましくは40~60重量%含む、ガラクトオリゴ糖調製物。
【請求項10】
乾燥物を基準として、ラクツロース及び単糖の混合物を40~70重量%、好ましくは40~60重量%含む、請求項9に記載のガラクトオリゴ糖調製物。
【請求項11】
バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)又はアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)に由来するβ-ガラクトシダーゼを使用してラクトースをトランスガラクトシル化することによって得られたGOS調製物に対する過敏症に罹患していることが分かっている、又は罹患する機会が増大している対象のために栄養組成物中で使用するための、請求項8~10のいずれか一項に記載のガラクトオリゴ糖調製物。
【請求項12】
乳糖不耐症に罹患していることが分かっている、又は罹患する機会が増大している対象のために栄養組成物中で使用するための、請求項8~10のいずれか一項に記載のガラクトオリゴ糖調製物。
【請求項13】
請求項8~10のいずれか一項に記載のガラクトオリゴ糖調製物、並びにタンパク質源、プロバイオティクス、LC-PUFA及び炭水化物からなる群から選択される少なくとも1種の更なる成分を含む栄養組成物。
【請求項14】
前記組成物が、少なくとも18ヵ月、好ましくは少なくとも24ヵ月、更により好ましくは少なくとも3歳、及び最も好ましくは少なくとも13歳の成人及び小児による摂取に好適な、請求項13に記載の栄養組成物。
【請求項15】
請求項8~12のいずれか一項に記載のガラクトオリゴ糖調製物、又は請求項13若しくは14に記載のガラクトオリゴ糖調製物を含む栄養組成物を、対象に投与することを含む、前記対象のガラクトオリゴ糖調製物に対する過敏症を少なくとも部分的に防止するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラクトオリゴ糖(GOS)に関連するアレルギーに罹患している対象、及び乳糖不耐症を有する対象に容認可能なGOSの調製に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のGOSは、ガラクトース単位の鎖及び末端のグルコース単位を含み、β-ガラクトシダーゼによって触媒される連続的なトランスガラクトシル化反応によって発生する。GOS構成成分のいくつかは、ヒトの母乳及びウシの初乳中に天然に存在するものである。典型的なGOS調製物は、二糖から六糖を主に含んでいる。
【0003】
腸内のビフィズス菌の増殖を刺激し、通常の腸通過をサポートし、自然の生体防御に寄与し、ミネラルの吸収を亢進し、免疫機能を刺激し、炎症を低下させる能力を含む、GOSの様々な生理機能が報告されている。GOSは、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、及び他の腸内細菌の増殖を促進するプレバイオティクス効果のため、特別な注目を集めてきた。それにより、GOSは、調製粉乳、ラクトバチルス属(Lactobacillus)で発酵させた飲料、ヨーグルト、ジュース及びドリンクに一般的に使用されている。これらのGOS含有食品のいくつかは、日本の消費者庁によって特定保健用食品として承認されており、GOSは米国食品医薬品局によって一般的に安全と認められている(GRAS:Generally Recognized As Safe)物質として承認されている(GRAS通知;GRN 233、236、285、286、334、484、489、495、518、及び569)。
【0004】
GOSは、従来、ラクトース含有飼料にβ-ガラクトシダーゼを接触させることによって製造する。得られたGOSは、ラクトースを含む、重合(DP)の程度が異なるガラクトオリゴ糖の混合物である。世界中の3歳以上の人口の大部分が乳糖不耐症に悩まされており、ラクトース含有組成物を摂取したときに、腹痛、腹部膨満感、下痢、ガス、及び悪心が生じる可能性がある。従来のGOSにはラクトースが含有されており、これによってこれらの症状が引き起こされる可能性がある。従って、ラクトースを含有しないGOSを産生する必要がある。従来のGOSからラクトースを除去することによってこの問題を解決することは、実行可能な選択肢ではない。なぜならば、ラクトースの除去には、ラクトース加水分解酵素(ラクターゼ)を使用することが必要であり、このことは、ラクトースを加水分解するだけでなく、他のGOS構成成分も加水分解してしまい、これによってGOSの機能が失われるためである。
【0005】
従来のGOSを産生するために使用されるβ-ガラクトシダーゼ酵素は、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)、クルイベロマイセス・マルシアヌス(Kluyveromyces marxianus)、クルイベロマイセス・フラギリス(Kluyveromyces fragilis)、スポロボロマイセス・シングラリス(Sporobolomyces singularis)、及びラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)などの多くの微生物中で産生されるものである。β-ガラクトシダーゼは、それらの三次元構造に差異があり、これによってグリコシド結合の立体選択的及び位置選択的構成が生じる。例えば、アスペルギルス属(Aspergillus)に由来する真菌性β-ガラクトシダーゼは、主にβ1-6結合を生じさせる(従って、主にβ1-6結合を含むGOS調製物が得られ、これを「6’-GOS」と称し得る)が、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)に由来する細菌性β-ガラクトシダーゼは、主にβ1-4結合を生じさせる(主にβ1-4結合を含むGOS調製物が得られ、これを「4’-GOS」とも称し得る)。更に、B.サーキュランス(B.circulans)によって産生されるβ-ガラクトシダーゼは、特に強力なトランスガラクトシル化活性を有する。その結果、B.サーキュランス(B.circulans)によって調製されたGOSが世界中で販売されている。このGOSが市場に導入されて以降(1999)、約1億人以上の乳児が、B.サーキュランス(B.circulans)によって調製されたGOSを含有する調製粉乳を摂取している。GRASの現状がFDAに認知されているため、このGOSは安全な成分であることが証明されている。しかしながら、過去数年間に、GOSに関連するアレルギーの少数のごく稀なケース(百万人に約2人)が東南アジアで報告されている。研究では、GOSに存在する特定のオリゴ糖構造が、極めて感受性のある対象にアレルギー反応を及ぼす可能性があることが示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、乳糖不耐症に罹患している対象、及びバチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)のβ-ガラクトシダーゼ、又はアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)のβ-ガラクトシダーゼによって得られる従来のGOSに対するアレルギー反応に罹患している対象に、忍容性が良好なGOS調製物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、ラクツロース含有飼料を微生物パピリオトレマ・テレストリス(Papiliotrema terrestris)に由来するβ-ガラクトシダーゼに接触させることによってGOS調製物を産生することを含む本発明によって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
前述した「パピリオトレマ・テレストリス(Papiliotrema terrestris)」という微生物の名称は、「クリプトコッカス・パピリオトレマ・テレストリス(Cryptococcus Papiliotrema terrestris)」である。従って、「クリプトコッカス・テレストリス(Cryptococcus terrestris)(C.テレストリス)(C.terrestris)」及び「パピリオトレマ・テレストリス(Papiliotrema terrestris)(P.テレストリス)(P.terrestris)」という名称は、同一の生物を指す。
【0009】
「P.テレストリス(P.terrestris)に由来するβ-ガラクトシダーゼ」とは、パピリオトレマ・テレストリス(Papiliotrema terrestris)に分類される微生物(野生型株又は変異菌株のいずれか)によって産生されるβ-ガラクトシダーゼ酵素、又はパピリオトレマ・テレストリス(Papiliotrema terrestris)に分類される微生物(野生型株又は変異菌株のいずれか)由来のβ-ガラクトシダーゼ遺伝子を使用する遺伝子工学的手順によって得られるβ-ガラクトシダーゼ酵素を意味する。従って、「パピリオトレマ・テレストリス(Papiliotrema terrestris)に由来するβ-ガラクトシダーゼ」という用語はまた、パピリオトレマ・テレストリス(Papiliotrema terrestris)から得られるβ-ガラクトシダーゼ遺伝子(又はその改変遺伝子)が導入されている宿主微生物によって産生される組み換え酵素を包含する。
【0010】
得られたGOS調製物は、還元末端にグルコース残基ではなくフルクトースを有するという点で、ラクトースから製造される従来のGOSとは異なるものである。従って、このラクツロース由来のGOSをfGOSとも称する。このfGOSは、臨床的にラクトースを含まず、ラクトース以外のオリゴ糖とラクトースの割合が少なくとも10であることを意味する。好ましくは、本発明のプロセスによって得られるfGOSは、ラクトースを実質的に含まず、微量以上のものを含有しない、即ち、乾燥物を基準としてラクトースが1重量%以下、より好ましくは0.5重量%、及び最も好ましくは0.1重量%以下であることを意味する。最も好ましい実施形態では、本発明によって得られるfGOSは、ラクトースをいずれも含有しない。更に、本発明によるプロセスにより、乾燥物を基準として、ガラクトオリゴ糖を30~60重量%、好ましくは40~60重量%含有する、ラクツロース又は単糖を除去する任意の精製工程又は濃縮工程のないfGOS調製物を得ることができる。このオリゴ糖の含有量には、ラクツロースが含まれないが、ラクツロース以外のDP2オリゴ糖が含まれる。このfGOS調製物の他の成分は、主にラクツロース及び単糖(フルクトース、ガラクトース、グルコース)からなる。
【0011】
ラクツロースからGOSを産生することは、先行技術から公知である。例えば、C.Guerrero et al.,Food Chemistry 138(2013)2225-2232には、3種の異なる供給源に由来するβ-ガラクトシダーゼを使用して、ラクトース及びラクツロースからGOSを産生することが記載されている。ラクツロースからのGOSの収率は、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)由来のβ-ガラクトシダーゼで最大となり、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)由来のβ-ガラクトシダーゼで最小となったことが判明した。ラクトースから出発したときは逆であることが判明し、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)由来のβ-ガラクトシダーゼで最大の収率が得られ、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)由来のβ-ガラクトシダーゼで最小の収率が得られた。
【0012】
以下の実施例に示すように、P.テレストリス(P.terrestris)由来のβ-ガラクトシダーゼは、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)由来のβ-ガラクトシダーゼよりも、ラクツロースからGOSを産生するのに更により適していることが判明した。更に、本発明のプロセスによって得られるfGOS調製物は、対象の(IgE媒介性)アレルギー反応を減少させる。換言すれば、このfGOS調製物は、GOSに関連するアレルギーのうちの少なくとも1種類、即ち、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)由来のβ-ガラクトシダーゼによって産生されたGOS、及び/又はアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)由来のβ-ガラクトシダーゼによって産生されたGOSによって引き起こされるアレルギーに罹患している対象に投与したときに、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)又はアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)由来のβ-ガラクトシダーゼによって産生されたGOS調製物と比較すると、アレルギー反応の減少が誘発される。より詳細には、本発明によるfGOS調製物により、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)又はアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)由来のβ-ガラクトシダーゼによって得られたGOS調製物と比較したときに、対象のプリックテスト及び/又は対象から単離した血液試料で実施する好塩基球活性化試験のスコアが減少する。また、fGOS調製物はラクトースを臨床的に含まないため、乳糖不耐症に罹患している対象でも忍容性が良好である。
【0013】
従って、本発明はまた、本発明によるfGOS調製物又は前記fGOS調製物を含む栄養組成物を対象に投与することを含む、前記対象のGOS調製物に対する過敏症を少なくとも部分的に防止する方法に関する。対象は哺乳動物であり、特にヒトである。対象は、あらゆる年齢であってよいが、好ましくは少なくとも18ヵ月、好ましくは少なくとも24ヵ月、更により好ましくは少なくとも3歳(36ヵ月)、及び最も好ましくは少なくとも13歳である。希少なGOSに関連するアレルギーは、18ヵ月以下の年齢の対象では報告されておらず、一般に2歳未満では乳糖不耐症が発生しない。4’-GOS及び/又は6’-GOSに関連するアレルギーが東南アジア(例えばシンガポール、日本)で局地的に発生し、アジア人の集団内に乳糖不耐症が多い点から、対象は(東南)アジア出身であることが好ましい。
【0014】
fGOS調製物の製造に使用されるβ-ガラクトシダーゼ酵素は、それ自体が米国特許出願公開第2019-119662号明細書により公知である(PCT特開2016/089001号公報に由来する)。国際公開第2019/002304号パンフレットでは、この低アレルギー性GOSを産生するための酵素の使用が開示されている。この低アレルギー性GOSは、従来のラクトース飼料から得られるものであるため、ラクトース不耐症の対象に健康上の問題を引き起こす可能性がある。
【0015】
fGOS調製物は、栄養組成物の形態で対象に投与することができる。そのような栄養組成物は、(i)本発明のプロセスによって得られるfGOS調製物、及び(ii)タンパク質源、プロバイオティクス、脂質源、及び炭水化物からなる群から選択される少なくとも1つの更なる成分を含む。本明細書で使用する場合、栄養組成物は、固体、液体、又は気体のどのような状態であっても栄養上の目的で消化管に入ってくる、あらゆる組成物又は製剤を指す。従って、栄養組成物は、食料品又は飲料品であってよい。本発明による栄養組成物の例には、調製粉乳、成長ミルク(Growing Up Milk:GUM)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)で発酵させた飲料、ヨーグルト、栄養補助食品、及び栄養強化剤がある。
【0016】
栄養組成物中に存在してもよいタンパク質源の例としては、乳清タンパク質(例えば、乳清タンパク質濃縮物若しくは乳清タンパク質分離物)、カゼイン(例えば、ミセルカゼイン分離物)、乳タンパク質濃縮物若しくは乳タンパク質分離物、及び/又は大豆タンパク質などの植物性タンパク質が挙げられる。好ましい一実施形態では、タンパク質源は、低アレルギー性又は非アレルギー性タンパク質源である。タンパク質源には、アレルギー反応を誘導しない食物タンパク質、より詳細には牛乳タンパク質に不耐性の対象に投与することができるタンパク質加水分解物が含まれる。そのようなタンパク質加水分解物の例には、10,000Da未満の分子量を有する加水分解残基を含有する加水分解乳清タンパク質、及び最大で3000Daのペプチドを含むカゼイン加水分解産物がある。栄養組成物中に存在してもよい炭水化物源の例には、ショ糖などの二糖、グルコースなどの単糖、及びマルトデキストリン、デンプン、並びにプレバイオティクス効果を有する炭水化物源がある。ラクトースの存在が好ましくないことは明らかである。栄養組成物中に存在してもよい脂質源の例には、トリ、ジ、及びモノグリセリド、リン脂質、スフィンゴ脂質、脂肪酸及びエステル又はそれらの塩がある。脂質は、動物由来、植物由来、微生物由来又は合成由来であってよい。特に興味深いのは、γリノレン酸(GLA)、ジホモγリノレン酸(DHGLA)、アラキドン酸(AA)、ステアリドン酸(SA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ドコサペンタエン酸(DPA)及び共役リノール酸(CLA)などの多価不飽和脂肪酸(PUFA)である。CLAは、小児の湿疹及び呼吸器疾患からの保護に重要なものである。このことは、特にCLAのシス-9、トランス-11、及びシス-12異性体に関係している。好適な植物性脂質源としては、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり油、ココナッツ油、パーム油、パーム核油、大豆油等が挙げられる。好適な動物由来の脂質源の例としては、乳脂、例えば、無水乳脂(AMF)、クリーム等が挙げられる。好ましい実施形態では、乳脂と植物由来の脂質との組み合わせが使用される。栄養組成物は、プロバイオティクスを更に含んでもよい。本発明の文脈では、「プロバイオティクス」という用語は、プロバイオティクス細菌株を指す。プロバイオティクス細菌は、当技術分野において公知である。適切には、プロバイオティクス細菌は遺伝子改変されていない。好適なプロバイオティクス細菌としては、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacteria)(例えば、B.ブレーベ(B.breve)、B.ロンガム(B.longum)、B.インファンティス(B.infantis)、B.ビフィダム(B.bifidum))、ラクトバチルス属(Lactobacillus)(例えば、L.アシドフィルス(L.Acidophilus)、L.パラカセイ(L.paracasei)、L.ジョンソニイ(L.johnsonii)、L.プランタルム(L.plantarum)、L.ロイテリ(L.reuteri)、L.ラムノサス(L.rhamnosus)、L.カゼイ(L.casei)、L.ラクチス(L.lactis))、及びストレプトコッカス属(Streptococcus)(例えば、S.サーモフィルス(S.thermophilus))の細菌が挙げられる。B.ブレーベ(B.breve)及びB.ロンガム(B.longum)は、特に好ましいプロバイオティクスである。好適なB.ブレーベ(B.breve)株は、例えば、健康なヒトの乳児の糞便から単離してもよい。プレバイオティクスとプロバイオティクスとの組み合わせは、「シンバイオティクス」とも称される。プロバイオティクスは、任意の好適な濃度、適切には、本発明の文脈における治療的有効量、即ち「治療するのに有効な量」で組成物中に存在してもよい。適切には、プロバイオティクスは、組成物の乾燥重量g当たり102~10e13cfu、適切には105~1012cfu/g、最も適切には107~1010cfu/gの量で本組成物中に含まれる。更に、栄養組成物は、ビタミン、酸化防止剤、ミネラル、遊離アミノ酸、ヌクレオチド、タウリン、カルニチン及びポリアミンなどの1種以上の従来の微量の成分が含有されていてもよい。好適な酸化防止剤の例には、BHT、パルミチン酸アスコルビル、ビタミンE、α及びβカロチン、ルテイン、ゼアキサンチン、リコピン並びにリン脂質がある。
【0017】
本発明のプロセスに使用されるβ-ガラクトシダーゼは、国際公開第2019/002304号パンフレットに広範に開示されている。このβ-ガラクトシダーゼは、パピリオトレマ・テレストリス(Papiliotrema terrestris)株MM13-F2171、又はその変異株M2及びM6から得ることができる。変異株(M2及びM6)は、紫外線処理による変異誘発によってパピリオトレマ・テレストリス(Papiliotrema terrestris)株MM13-F2171から得ることができる。パピリオトレマ・テレストリス(Papiliotrema terrestris)株MM13-F2171及びM2は、下記に記載するような寄託所に寄託されており、容易に入手することができる。
<パピリオトレマ・テレストリス(Papiliotrema terrestris)株MM13-F2171>
寄託所:特許微生物寄託センター、製品評価技術基盤機構(〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8、部屋番号122)。識別参照:クリプトコッカス・テレストリス(Cryptococcus terrestris)MM13-F2171。寄託日:2015年12月10日。アクセッション番号:NITE BP-02177;
<パピリオトレマ・テレストリス(Papiliotrema terrestris)株M2>
寄託所:特許微生物寄託センター、製品評価技術基盤機構(〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8、部屋番号122)。識別参照:クリプトコッカス・テレストリス(Cryptococcus terrestris)APC-6431。寄託日:2015年12月10日。アクセッション番号:NITE BP-02178
【0018】
従って、一実施形態では、本発明で使用される酵素は、パピリオトレマ・テレストリス(Papiliotrema terrestris)株MM13-F2171(アクセッション番号:NITE BP-02177)又はAPC-6431(アクセッション番号:NITE BP-02178)に由来するものである。更なる実施形態では、酵素は、配列番号1、2、3若しくは4のいずれかによるアミノ酸配列、又は配列番号1、2、3若しくは4のいずれかと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、なお更により好ましくは少なくとも97%、及び最も好ましくは少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。
【0019】
米国特許出願公開第2019-119662号明細書には、パピリオトレマ属(Papiliotrema)微生物に由来する変異株から産生される3種類のβ-ガラクトシダーゼ(変異株酵素1、2、及び3)と、決定されたそれらのアミノ酸配列とが記載されている。これら3つのβ-ガラクトシダーゼ酵素は、その遺伝子配列から推定される、野生型株酵素の全長アミノ酸配列の部分的な配列を有していることが判明した(野生型株酵素を配列番号1に示す)。具体的には、これらの変異酵素は、説明のために「変異株酵素1」と称する、野生型株酵素の全長アミノ酸配列のN末端の130個のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列を有する変異酵素(配列番号2を参照されたい)であり、説明のために「変異株酵素2」と称する、野生型株酵素の全長アミノ酸配列のN末端の136個のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列を有する変異酵素(配列番号3を参照されたい)であり、及び「変異株酵素3」と称する、野生型株酵素の全長アミノ酸配列のN末端の141個のアミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列を有する変異酵素(配列番号4を参照されたい)である。「同等のアミノ酸配列」という用語は、この場合、参照アミノ酸配列(即ち、配列番号1~4のいずれか1つのアミノ酸配列)と部分的に異なるが、この差異がタンパク質の機能(β-ガラクトシダーゼ活性)に実質的に影響を及ぼすことがないアミノ酸配列を意味する。従って、同等のアミノ酸配列のポリペプチド鎖を有する酵素は、β-ガラクトシダーゼ活性を示す。「アミノ酸配列が部分的に異なる」という用語は、典型的に、アミノ酸配列を含む1個~数個(例えば、最大で3、5、7、若しくは10個)のアミノ酸の欠失若しくは置換、又は1個~数個(例えば、最大で3、5、7、若しくは10個)のアミノ酸の付加、挿入、若しくはそれらの組み合わせによって引き起こされるアミノ酸配列の変異(改変)を意味する。アミノ酸配列の差異は、β-ガラクトシダーゼ活性が維持される限り許容可能である(活性はある程度変動し得る)。この条件が満たされる限り、アミノ酸配列の差異の位置は特に制限されるものでなく、差異は複数の位置に生じ得る。「複数の」という用語は、例えば、全アミノ酸の約20%未満、好ましくは約15%未満、より好ましくは約10%未満、更により好ましくは約5%未満、及び最も好ましくは約1%未満に相当する数を意味する。より具体的には、同等のタンパク質は、例えば、参照アミノ酸配列と、約80%以上、好ましくは約85%以上、より好ましくは約90%以上、いっそうより好ましくは約95%以上、更により好ましくは約97%以上、及び最も好ましくは約99%以上の同一性を有する。アミノ酸配列の差異は、複数の位置に生じ得る。同等のタンパク質は、β-ガラクトシダーゼ活性に必須でないアミノ酸残基に保存的アミノ酸置換を生じさせることによって得られることが好ましい。「保存的アミノ酸置換」という用語は、あるアミノ酸残基を特性の類似した側鎖を有する別のアミノ酸残基で置換することを意味する。アミノ酸残基は、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、及びヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸及びグルタミン酸)、無荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、及びシステイン)、無極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、及びトリプトファン)、β分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、及びイソロイシン)、並びに芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びヒスチジン)などのそれらの側鎖に従って、いくつかのファミリーに分類される。保存的アミノ酸置換は、1つのファミリー内のアミノ酸残基間の置換であることが好ましい。2つのアミノ酸配列、又は2つの核酸配列(以下、「2つの配列」という用語は、2つの配列のいずれかを表すために使用する)間の同一性(%)は、次の手順によって判断することができる。まず、2つの配列を最適に比較するために、2つの配列をアライメントする(例えば、第2の配列に対して最適にアライメントするように、第1の配列にギャップを導入してもよい)。第1の配列内の特定の位置の分子(アミノ酸残基又はヌクレオチド)と、第2の配列内の対応する位置の分子が互いに同一である場合、その位置の分子は同一であると定義される。2つの配列間の同一性は、2つの配列によって共有される同一の位置の数の関数である(即ち、同一性(%)=100×同一の位置の数/全体の位置の数)。2つの配列のアライメントを最適化するのに必要なギャップの数及び大きさを考慮に入れることが好ましい。2つの配列間における同一性の判断についての更なる情報は、国際公開第2019/002304号パンフレットの17頁11行目から18頁7行目にわたって言及されている。
【0020】
上記に記載されるアミノ酸配列を有する本発明のプロセスに使用される酵素はまた、遺伝子工学技術によって調製されてもよい。例えば、適切な宿主細胞(例えば、大腸菌(Escherichia coli))を、本酵素をコードするDNAで形質転換し、形質転換体に発現したタンパク質を回収することによって、本酵素を調製する。回収されたタンパク質は、必要に応じて使用目的に従って処理される。こうして組み換えタンパク質として得られた酵素は、様々な改変を受けてもよい。例えば、任意のペプチド又はタンパク質に結合した組み換えタンパク質で構成される酵素は、酵素をコードするDNAが他の適切なDNAと共に挿入されているベクターを使用して、組み換えタンパク質を産生することによって得ることができる。加えて、糖鎖及び/又は脂質の付加、N末端又はC末端のプロセシングを生じさせる改変を行ってもよい。これらの改変によって、例えば、組み換えタンパク質の抽出、精製の単純化、又は生物学的機能の付加が可能となる。米国特許出願公開第2019-119662号明細書に記載されているように、本発明のプロセスに使用される酵素は、有利なことに、遺伝子が外来分子として存在するように、P.テレストリス(P.terrestris)に由来するβ-ガラクトシダーゼ(EC3.2.1.23)をコードする組み換えDNAが導入された形質転換体によって産生される。形質転換体は、前述したベクターを使用して形質移入又は形質転換によって調製されることが好ましい。宿主細胞は、発現し得る酵素が存在する限り、特に制限されるものではなく、例えば、バチルス(Bacillus)属細菌(例えば、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)等)、乳酸菌(例えば、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)等)、他の細菌(例えば、エシェリキア属(Escherichia)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)等)、酵母菌(例えば、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、クリベロマイセス属(Kluyveromyces)、カンジダ属(Candida)、トルラ属(Torula)、トルロプシス属(Torulopsis)、ピキア属(Pichia)、シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)等)、及び糸状菌(真菌類)(例えば、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)及びアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)などのアスペルギルス属(Aspergillus)真菌、ペニシリウム属(Penicillium)真菌、トリコデルマ属(Trichoderma)真菌、フザリウム属(Fusarium)真菌等)から選択することができる。
【0021】
本発明によるプロセスは、約50~75℃、より好ましくは約63~73℃、より好ましくは約65~70℃の好ましい温度で、ラクツロース含有飼料をβ-ガラクトシダーゼと接触させることを含む。
【0022】
ラクツロース含有飼料は、40~58重量%のラクツロース、より好ましくは45~55重量%のラクツロース、最も好ましくは50~55重量%のラクツロースを含む水性ラクツロースシロップであることが好ましい。ラクツロース含有飼料のpHは、3.5~6.5、より好ましくは4.5~6.0、及び最も好ましくは5~5.5の範囲であることが好ましい。pHは、クエン酸緩衝液などの食品グレードの緩衝液によって、好ましくは0.5mM~10mMの濃度で調整することができる。酵素は、1~20LU/グラムのラクツロース、より好ましくは1~10LU/グラムのラクツロース、更により好ましくは、2~8LU/グラムのラクツロース、及び最も好ましくは3~6LU/グラムのラクツロースの好ましい濃度で使用する。反応温度及び反応時間に応じて、それよりも低い又は高い濃度を使用することもできる。高い反応温度及び/又は長い反応時間によって、低い酵素濃度が可能となる。
【0023】
酵素は、粉末形態(例えば、凍結乾燥、真空乾燥、又は噴霧乾燥させる)又は液体形態(例えば、リン酸緩衝溶液、トリアタノールアミン緩衝溶液、トリス塩酸緩衝溶液、又はGOOD緩衝溶液中に溶解させる)で使用することができる。ある特定の実施形態では、酵素を固定化形態で使用する。酵素を固定化する様々な方法は、当技術分野において公知である。典型的には、それらには、共有結合によって、物理吸着(電荷間相互作用若しくはファン・デル・ワールス相互作用)によって、ゲル封入によって、又はそれらの組み合わせによってβ-ガラクトシダーゼが固定化される多孔質担体が含まれる。加えて、CLEC(架橋化酵素結晶)又はCLEA(架橋化酵素縮合体)などの担体を含まない固定化酵素を適用することもできる。操作が容易であり、反応混合物に漏出しないことから、酵素の直接的な共有結合を促進する担体が好ましい。固体担体の例としては、活性化アクリルポリマー、好ましくは官能化ポリメタクリレートマトリックスがある。例えば、ヘキサメチレンアミノ官能化ポリメタクリレートマトリックス(Sepabeads)、又はEupergit C 250Lのような微孔性アクリル系エポキシ活性化樹脂を使用することができる。固定化酵素を使用することによって、GOS合成のいくつかの連続的なバッチ(「サイクル」)を含む、反復バッチ操作システムが可能となる。酵素を再利用することもでき、半連続操作と酵素の複数回の再利用とが可能となる。
【0024】
本発明のプロセスから得られるfGOSは、従来の方法、例えば、ナノ濾過又は連続的疑似移動床(SSMB)を使用して単離及び精製することができる。
【実施例】
【0025】
実験では、以下の供給源のβ-ガラクトシダーゼを使用した。
アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)(ラクターゼ 14 DS、元天野エンザイム)、
アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)(Tolerase 100、元DSM)
アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)(Biolactase F、元Kerry Bioscience)
パピリオトレマ・テレストリス(Papiliotrema terrestris)(β-ガラクトシダーゼ PT、元天野エンザイム)
【0026】
一般的な反応条件は次の通りであった。ラクツロース35グラムを、0.01Mのクエン酸ナトリウム緩衝液35グラム(pH6.5)に添加した。続いて、酵素を10mの水に溶解させて添加し、反応を初期化した。大部分の酵素で20ラクトース単位(LU)/グラムのラクツロースを使用した。しかしながら、使用した一般的な反応条件では活性が低かったため、ラクターゼ 14 DS及びTolerase 100は、200ラクトース単位(LU)/グラムのラクツロース濃度で使用した。オービタルシェーカーを備え、サーモスタットで50℃に調温されたウォーターバスに反応混合物を入れた。反応の48時間後に、1.5%の1M HClを添加することによって反応をクエンチし、続いて95℃で30分間加熱した。
【0027】
反応混合物のfGOS含有量を、HPLC(ThermoFisher Scientific Dionex type ICS 3000)により、個々の糖のピーク面積の割合に基づいて分析した。fGOS含有量は、以下の式によって計算した:
fGOS含有量(%、ds)=100%-ガラクトース%-グルコース%-ラクトース%-ラクツロース%-フルクトース%。
【0028】
異なる酵素によって得られたfGOS含有量を表1にまとめた。表1は、パピリオトレマ・テレストリス(Papiliotrema terrestris)から得られた酵素が、C.Guerrero et al.によれば最良の酵素であるアスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)由来のβ-ガラクトシダーゼよりもはるかに高い収率が得られたことを示している。
【0029】
ラクツロースの2つの基本単位、即ちフルクトース及びガラクトース間の割合を、酵素の性能の指標として使用する。この割合が≦1である場合は、達成されるfGOS含有量が、反応時間を延長してもそれ以上増加させることができないことを意味する。なぜならば、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)由来のβ-ガラクトシダーゼの場合のように、基質又は形成されたfGOSのみを加水分解することしかできないからである。P.テレストリス(P.terrestris)由来のβ-ガラクトシダーゼの場合、フルクトース/ガラクトースの割合は2を上回るが、このことは、fGOSの収率が、反応時間を延長することによって更に最適化することができることを示唆している。
【0030】
【0031】
HPLCクロマトグラムでは、パピリオトレマ・テレストリス(Papiliotrema terrestris)由来の酵素によって産生されたfGOSは、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)由来の酵素によって産生されたfGOSと比較して、はるかに多くのピークが示された。オリゴ糖の構造の多様性は、腸内の異なるビフィズス菌の栄養上のニーズ、及び病原体に結合するための囮となる機能を果たすのに非常に重要なものである。従って、本発明のプロセスに由来するfGOSは、より高い栄養価を有するものと思われる。
【0032】
異なる酵素によって形成されたfGOSの重合度(DP)を表2にまとめた。ラクツロースと、ラクツロースによって形成された他のDP2 fGOS構成成分を区別することができないため、各酵素毎にfGOSとラクツロースとを足した含有量の合計を示している。ラクツロース自体が消化されない(プレバイオティクス)糖であるため、ラクツロースとfGOSを分ける必要がない。P.テレストリス(P.terrestris)酵素による実験では、fGOS+ラクツロース含有量は約85%である。対照的に、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)酵素から得られるfGOS+ラクツロースは、35%未満であるが、これは、おそらく高い単糖含有量によって示されるそれら固有の高い加水分解活性によるものである。
【0033】
【0034】
P.テレストリス(P.terrestris)による実験を、基質としてラクトースを用いて繰り返した。結果を表3に示す。(ラクツロースから得られた)fGOSのDP2含有量は、ラクトースから得られたGOSのDP2含有量よりも著しく高いことを示している。乳児の結腸内でB.ブレーベ(B.breve)などの乳児型ビフィズス菌の増殖を選択的に促進することができるため、このDP2のfGOS構成成分の高さは、乳児の腸内細菌叢に有利となり得る。
【0035】
【配列表】
【国際調査報告】