(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-06
(54)【発明の名称】危険な突出物が低減された折りたたみカバー物品
(51)【国際特許分類】
C03C 17/34 20060101AFI20230130BHJP
C03C 21/00 20060101ALI20230130BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20230130BHJP
【FI】
C03C17/34 A
C03C21/00 101
B32B17/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533129
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(85)【翻訳文提出日】2022-06-08
(86)【国際出願番号】 CN2019122786
(87)【国際公開番号】W WO2021108998
(87)【国際公開日】2021-06-10
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512139847
【氏名又は名称】ショット グラス テクノロジーズ (スゾウ) カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT GLASS TECHNOLOGIES (SUZHOU) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】79 Huoju Road, Science & Technology Industrial Park, Suzhou New District, Suzhou, Jiangsu 215009, China
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ シャオ
(72)【発明者】
【氏名】フオン ホー
(72)【発明者】
【氏名】ニン ダー
【テーマコード(参考)】
4F100
4G059
【Fターム(参考)】
4F100AA01C
4F100AA01H
4F100AA20B
4F100AA20C
4F100AD00A
4F100AG00A
4F100AK01B
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4F100AK25B
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4F100YY00A
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4G059AA01
4G059AB11
4G059AC16
4G059FA15
4G059FA27
4G059FB01
4G059GA01
4G059GA02
4G059GA04
4G059GA07
4G059GA11
(57)【要約】
合計厚さt≦300μmを有する折りたたみカバー物品であって、破壊することなく最小曲げ半径r≦20mmに曲げられることができ、且つ鉛筆硬度HR≧HBを有し、且つ、厚さ5μm≦t1≦150μmを有するガラスまたはガラスセラミック基板と、合計厚さ5μm≦t2≦150μmを有するポリマー層および/またはコーティングと
を含み、各々20mm幅の前記折りたたみカバー物品について、前記折りたたみカバー物品がその幅に対して垂直な方向に沿って曲げられる際に破壊される場合、
a) 最長の線状の延びL≧5mmを有する突出物の数が10未満であり、且つ/または
b) 最長の線状の延びL<5mmを有する突出物の数が50未満である、前記折りたたみカバー物品が記載される。ディスプレイの基板またはカバー、壊れやすいセンサ、指紋センサモジュールまたは薄膜電池、半導体パッケージまたは折りたたみディスプレイの用途における折りたたみカバー物品の使用も記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合計厚さt≦300μm、好ましくはt≦250μm、より好ましくはt≦200μm、特にt≦150μm、特に好ましくはt≦100μm、特により好ましくはt≦85μm、最も好ましくはt≦70μm、50μm、40μm、30μm、20μm、または10μmを有する折りたたみカバー物品であって、破壊することなく最小曲げ半径r≦20mm、好ましくはr≦15mm、より好ましくはr≦10mm、特にr≦8mm、特に好ましくはr≦6mm、特により好ましくはr≦5mm、最も好ましくはr≦4mm、3mm、2mm,または1.5mmに曲げることができ、且つ鉛筆硬度HR≧HBを有し、且つ、
厚さ5μm≦t1≦150μmを有するガラスまたはガラスセラミック基板と、
合計厚さ5μm≦t2≦150μmを有するポリマー層および/または硬質材料のコーティングと
を含み、各々20mm幅の前記折りたたみカバー物品について、前記折りたたみカバー物品がその幅に対して垂直な方向に沿って曲げられる際に破壊される場合、
a) 最長の線状の延びL≧5mmを有する突出物の数が10未満、好ましくは8未満、より好ましくは6未満、特に5未満、特により好ましくは4未満、および最も好ましくは3未満であり、且つ/または
b) 最長の線状の延びL<5mmを有する突出物の数が50未満、好ましくは40未満、より好ましくは30未満、特に25未満、特により好ましくは20未満、および最も好ましくは15未満である、
前記折りたたみカバー物品。
【請求項2】
前記ガラスまたはガラスセラミック基板が強化されており、且つr1≦100000×t1/CS、好ましくはr1≦80000×t1/CS、より好ましくはr1≦70000×t1/CS、最も好ましくはr1≦60000×t1/CSのミリメートルでの最小曲げ半径r1を有し、ここでCSは前記ガラスまたはガラスセラミック基板の両表面上で測定されたMPaでの圧縮応力である、請求項1に記載の折りたたみカバー物品。
【請求項3】
CT≦700MPa、好ましくはCT≦500MPa、より好ましくはCT≦300MPa、特に好ましくはCT≦100MPa、最も好ましくはCT≦50MPaであり、ここでCTは前記ガラスまたはガラスセラミック基板の中央面におけるMPaでの内部応力である、請求項2に記載の折りたたみカバー物品。
【請求項4】
前記ガラスまたはガラスセラミック基板が、イオン交換層の深さDoL≧1μm、好ましくはDoL≧2μm、より好ましくはDoL≧3μm、且つ/またはDoL≦t1/2、好ましくはDoL≦30μm、より好ましくはDoL≦20μmを有する、請求項2または3に記載の折りたたみカバー物品。
【請求項5】
前記ガラスまたはガラスセラミック基板が2点曲げ強さBS≧700MPa、好ましくはBS≧800MPa、より好ましくはBS≧1000MPa、最も好ましくはBS≧1200MPaを有する、請求項2から4までのいずれか1項に記載の折りたたみカバー物品。
【請求項6】
各々20mm幅の前記折りたたみカバー物品について、前記折りたたみカバー物品が、前記ガラスまたはガラスセラミック基板、またはより薄いポリマー層および/または硬質材料のコーティングを有する側で凸側に、その幅に対して垂直な方向に沿って曲げられる際に破壊される場合、最長の線状の延びL≧5mmを有する突出物の数は、10未満、好ましくは8未満、より好ましくは6未満、特に5未満、特により好ましくは4未満、および最も好ましくは3未満である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の折りたたみカバー物品。
【請求項7】
各々20mm幅の前記折りたたみカバー物品について、前記折りたたみカバー物品が、前記ガラスまたはガラスセラミック基板、またはより薄いポリマー層および/または硬質材料のコーティングを有する側で凸側に、その幅に対して垂直な方向に沿って曲げられる際に破壊される場合、最長の線状の延びL<5mmを有する突出物の数は、50未満、好ましくは45未満、より好ましくは40未満、特に35未満、特により好ましくは30未満、および最も好ましくは20未満である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の折りたたみカバー物品。
【請求項8】
前記折りたたみカバー物品が、ガラスまたはガラスセラミック基板、またはより薄いポリマー層および/または硬質材料のコーティングを有する側で凸側に、半径4cmを有するポリプロピレンの半環の凹側上に設置され、次いでボール直径0.07mmおよび重量6gを有するボールペンによって、25cmの高さから打ち当てられ、その試験後に物品全体が一体のままである、請求項1から7までのいずれか1項に記載の折りたたみカバー物品。
【請求項9】
前記折りたたみカバー物品の20mm×70mmの試料について、前記折りたたみカバー物品が、前記ガラスまたはガラス基板、またはより薄いポリマー層および/または硬質材料のコーティングを有する側で凹側に、半径2.8cmを有するステンレス鋼の円筒上に設置され、次いでボール直径0.7mmおよび重量6gを有するボールペンによって、10cmの高さから打ち当てられる場合、小さな突出物に起因する重量損失の量は10%未満、好ましくは9%未満、より好ましくは8%未満、特に7%未満、特に好ましくは6%未満、最も好ましくは5%未満である、請求項1から8までのいずれか1項に記載の折りたたみカバー物品。
【請求項10】
前記折りたたみカバー物品が、前記ガラスまたはガラス基板、またはより薄いポリマー層および/または硬質材料のコーティングを有する側で下向きに、大理石のステージ上に平らに設置され、次いで32.5gのステンレス鋼のボールによって40cmの高さから打ち当てられ、物品全体が一体のままである、請求項1から9までのいずれか1項に記載の折りたたみカバー物品。
【請求項11】
前記ガラスまたはガラスセラミック基板が、合計厚さt3p≧1μm、好ましくはt3p≧5μm、より好ましくはt3p≧10μm、特に好ましくはt3p≧20μm、最も好ましくはt3p≧40μm、および/またはt3p≦150μmを有するポリマー層またはポリマー多層と貼り合わせられている、請求項1から10までのいずれか1項に記載の折りたたみカバー物品。
【請求項12】
前記ポリマー層またはポリマー多層が、ヤング率Ep≦10GPa、好ましくはEp≦7GPa、より好ましくはEp≦6GPa、特に好ましくはEp≦5GPa、最も好ましくはEp≦4GPa、3GPa、または2GPa、および/またはEp≧0.1GPa、好ましくはEp≧0.2GPa、より好ましくはEp≧0.3GPa、特に好ましくはEp≧0.4GPa、最も好ましくはEp≧0.5GPaを有する、請求項11に記載の折りたたみカバー物品。
【請求項13】
前記ポリマー層またはポリマー多層が、パリレン、TPU、PC、PS、PES、PEEK、PA、PAI、PI、PMMA、PDMSまたはそれらの組み合わせから選択されるポリマー製である、請求項11または12に記載の折りたたみカバー物品。
【請求項14】
前記ガラスまたはガラスセラミック基板の少なくとも1つの表面が、合計厚さt3c≧1μm、好ましくはt3c≧5μm、より好ましくはt3c≧10μm、さらに好ましくはt3c≧15μm、最も好ましくはt3c≧20μm、および/またはt3c≦150μmを有する硬質材料のコーティングまたは硬質材料の多層コーティングでコーティングされている、請求項1から13までのいずれか1項に記載の折りたたみカバー物品。
【請求項15】
前記硬質材料のコーティングまたは硬質材料の多層コーティングが、ヤング率Eh≧1GPa、好ましくはEh≧2GPa、より好ましくはEh≧4GPa、および/またはEh≦15GPa、好ましくはEh≦13GPa、より好ましくはEh≦11GPa、最も好ましくはEh≦9GPaを有する、請求項14に記載の折りたたみカバー物品。
【請求項16】
前記硬質材料のコーティングまたは硬質材料の多層コーティングが、有機ポリマー材料、例えばアクリレートおよびそれらの変性された形態、または無機と有機とのハイブリッドポリマー材料、例えばポリシロキサンおよびそれらの変性された形態、無機ナノ粒子を有するPMMA、エポキシとシロキサンとのハイブリッド製である、請求項14または15に記載の折りたたみカバー物品。
【請求項17】
前記折りたたみカバー物品が、前記ポリマー層および/または前記硬質材料のコーティングと貼り合わせられた側の上で8H未満の鉛筆硬度を有する、請求項1から16までのいずれか1項に記載の折りたたみカバー物品。
【請求項18】
前記折りたたみカバー物品が、破壊高さHa≧Hg×2、好ましくはHa≧Hg×3、より好ましくはHa≧Hg×4、さらに好ましくはHa≧Hg×5、さらに好ましくはHa≧Hg×6、さらに好ましくはHa≧Hg×7、さらに好ましくはHa≧Hg×8、特に好ましくはHa≧Hg×9、最も好ましくはHa≧Hg×10を有し、ここでHgは前記ガラス基板の破壊高さであり、前記破壊高さはペン落下試験において特定され、その際、前記折りたたみカバー物品は、ガラスまたはガラスセラミック基板の側、またはより薄いポリマー層および/または硬質材料のコーティングを有する側で下向きに、上部から下部へと25μmのOCA、50μmのPET、25μmのOCA、50μmのPETおよび30cmの大理石で構成されるステージ上に設置され、且つ前記ステージの上部のOCA層に結合され、且つ前記ペンはボール直径0.5mmおよび重量13gを有するボールペンである、請求項1から17までのいずれか1項に記載の折りたたみカバー物品。
【請求項19】
前記折りたたみカバー物品が、破壊荷重Fab≧2Fgb、好ましくはFab≧5Fgb、より好ましくはFab≧10Fgb、さらに好ましくはFab≧20Fgb、さらに好ましくはFab≧40Fgb、さらに好ましくはFab≧60Fgb、特に好ましくはFab≧80Fgb、最も好ましくはFab≧100Fgbを有し、ここでFgbは前記ガラス基板の破壊荷重であり、前記破壊荷重はP180のサンドペーパープレス試験において特定され、その際、前記折りたたみカバー物品は、前記ガラスまたはガラスセラミック基板の側、またはより薄いポリマー層および/または硬質材料のコーティングを有する側で、鋼板上に設置され、且つ他の表面は、直径3mmを有する鋼ロッドによって、その平らな前面で破壊されるまで負荷をかけられ、ここでP180タイプのサンドペーパーが前記鋼ロッドの平らな前面に取り付けられ、且つサンドペーパーの研磨側は前記折りたたみカバー物品の上部表面と接触している、請求項1から18までのいずれか1項に記載の折りたたみカバー物品。
【請求項20】
前記折りたたみカバー物品が、少なくとも前記ガラス基板の破壊加重に2を乗じた、好ましくは5を乗じた、より好ましくは10を乗じた、さらに好ましくは20を乗じた、特に好ましくは50を乗じた、特により好ましくは100を乗じた、特にさらに好ましくは150を乗じた、および最も好ましくは200を乗じた破壊高さを有し、ここで前記破壊高さはサンドペーパーボール落下試験において特定され、その際、前記ガラス物品は、そのガラスの側、またはより薄いポリマー層および/または硬質材料のコーティングを有する側で、鋼板上に設置され、且つ他の表面は、上から落とされる4.5gのアクリルボールによって破壊するまで負荷がかけられ、ここでP180タイプのサンドペーパーが前記折りたたみカバー物品の上部表面上に設置され、且つ前記サンドペーパーの研磨側が前記折りたたみカバー物品の上部表面と接触している、請求項1から19までのいずれか1項に記載の折りたたみカバー物品。
【請求項21】
前記ガラスまたはガラスセラミック基板が、前記ポリマー層および/または硬質材料のコーティングによって覆われて完全に封じられている、請求項1から20までのいずれか1項に記載の折りたたみカバー物品。
【請求項22】
ディスプレイの基板またはカバー、壊れやすいセンサ、指紋センサモジュールの基板またはカバー、半導体パッケージ、薄膜電池の基板またはカバー、折りたたみディスプレイの用途における、請求項1から21までのいずれか1項に記載の折りたたみカバー物品の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディスプレイの基板またはカバー、壊れやすいセンサ、指紋センサモジュールまたは薄膜電池、半導体パッケージまたは折りたたみディスプレイの用途における折りたたみカバー物品に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、技術が発達するにつれ、消費者機器、例えばTV、携帯電話などのカバー物品は、その透過特性、軽量性、靭性の増加などに起因して徐々にガラスを使用している。光学的な透過性および熱安定性はフレキシブルディスプレイ用途にとって重要な特性であることが多い。さらに、フレキシブルディスプレイは、特にタッチスクリーン機能を有し且つ/または折りたたむことできるフレキシブルディスプレイについて、小さな曲げ半径での破損に対する耐性を含む高い耐疲労性および耐穿刺性を有するべきである。
【0003】
従来のフレキシブルガラス材料は、フレキシブル基板および/またはディスプレイ用途のための多くの必要な特性を提供する。しかしながら、これらの用途のためにガラス材料を利用するための取り組みは、これまで主に成功していない。一般に、どんどん小さくなる曲げ半径を達成するために、ガラス基板は非常に低い厚さレベル(<25μm)に製造され得る。これらの「薄い」ガラス基板は、限定的な耐穿刺性を抱えている。同時に、より厚いガラス基板(>150μm)はより良好な耐穿刺性を有して製造できるが、それらの基板は曲げに際する適した疲労耐性および機械的な信頼性に欠ける。
【0004】
さらに、審美的な観点に起因して、カバー物品はドーム形状または円弧形状に折りたためる必要がある。折りたたみ電子機器用途のための折りたたみガラス基板は、ポリマーフィルムよりも透過性、安定性および摩耗耐性における改善を提供する一方で、耐衝撃性によって制限されることがある。より具体的には、折りたたみガラス基板についての耐衝撃性の懸念は、衝撃または曲げに供された際の基板および/または下にある電子部品に対する損傷において現れることがある。
【0005】
当該技術分野におけるガラス製の折りたたみカバー物品については、一般に化学強化されている。しかしながら、化学強化された折りたたみガラスが破壊する際、蓄積された引張エネルギーが主にクラックおよび突出物(projection)によって放散され、それが損傷を引き起こすか、またはユーザーを傷付けることがある。クラックによって作り出された新たな表面エネルギーは非常に限定的であるので、突出物は不可避であると思われ、従って、破壊の際の突出物を低減することが望ましい。破壊の間に解放される引張エネルギーを放散させるための効率的なアプローチは、他の材料、つまりポリマーを導入することであることが判明した。その際、引張エネルギーは、ポリマー膜の剥離、力が集中した領域の周りのポリマー膜の塑性変形、小さなガラス片の間のポリマー膜の粘弾性変形などによって放散され得る。しかし、典型的なポリマーは非常に低い硬度を有する。従って、引掻耐性であるように充分な硬度を有する折りたたみカバー物品を提供することが望ましい。そこで、折りたたみカバー物品の硬度を高めるために硬質材料のコーティングを導入することが提案された。しかしながら、小さい曲げ半径に達する場合、硬質材料のコーティングについては柔軟性が問題となりかねない。概して、ポリマー層の厚さおよび硬質コーティングは柔軟性および機械的特性にとって全て本質的であり、小さな厚さは解放された引張エネルギーを放散させるための充分な保護または結合を提供できないことがあり、大きな厚さは、小さな曲げ半径に達する場合に大きな歪みをみちびき且つ硬質コーティングの破損を引き起こすことがあった。従って、充分な硬度および柔軟性を有し、曲げまたは衝撃に際して破壊する場合の突出物も低減できる折りたたみカバー物品を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、本質的にガラス基板製であり、曲げまたは衝撃に際して破壊する場合の突出物を低減する折りたたみカバー物品を提供することである。
【0007】
本発明のさらなる課題は、ガラス基板上に施与されて折りたたみカバー物品の破砕性を制御する一方で、超薄フレキシブルディスプレイカバーの望ましい機械的特性、例えば柔軟性を維持またはさらには改善する、最適化されたポリマー/硬質コーティング層を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は、以下の技術的解決策によって解決される。
【0009】
本発明の1つの態様において、合計厚さt≦300μm、好ましくはt≦250μm、より好ましくはt≦200μm、特にt≦150μm、特に好ましくはt≦100μm、特により好ましくはt≦85μm、最も好ましくはt≦70μm、50μm、40μm、30μm、20μm、10μm、またはそれらの値の任意の2つを端点として有する範囲内の合計厚さtを有する、折りたたみカバー物品が提供される。例えば、前記折りたたみカバー物品は、300μm~10μm、または300μm~20μm、または300μm~30μm、または300μm~40μm、または300μm~50μm、または300μm~70μm、または300μm~85μm、または300μm~100μm、または300μm~150μm、または300μm~200μm、または300μm~250μm、または250μm~10μm、または200μm~10μm、または150μm~10μm、または100μm~10μm、または85μm~10μm、または70μm~10μm、または50μm~10μm、または40μm~10μm、または30μm~10μm、または20μm~10μmの範囲の厚さtを有し得る。前記折りたたみカバー物品は、破壊することなく、最小曲げ半径r≦20mm、好ましくはr≦15mm、より好ましくはr≦10mm、特にr≦8mm、特に好ましくはt≦6mm、特により好ましくはt≦5mm、最も好ましくはt≦4mm、3mm、2mmまたは1.5mmに曲げることができ、且つ鉛筆硬度HR≧HBを有する。前記折りたたみカバー物品は、厚さ5μm≦t1≦150μmを有するガラスまたはガラスセラミック基板、および合計厚さ5μm≦t2≦150μmを有するポリマー層および/または硬質材料のコーティングを含む。各々20mm幅の折りたたみカバー物品について、前記折りたたみカバー物品がその幅に対して垂直な方向に沿って曲げる際に破壊される場合、最長の線状の延び(linear extension)L≧5mmを有する突出物の数は10未満、好ましくは8未満、より好ましくは6未満、特に5未満、特により好ましくは4未満、および最も好ましくは3未満であり、且つ/または最長の線状の延びL<5mmを有する突出物の数は50未満、好ましくは40未満、より好ましくは30未満、特に25未満、特により好ましくは20未満、および最も好ましくは15未満である。
【0010】
本発明の発明者らは、ガラスに比したポリマー層の低いヤング率ゆえに、中立面がシフトし、曲げの間に最外層に大きな歪みが起きることを見出した。柔軟性は維持するが折りたたみカバーガラス物品の化学強化された超薄ガラスからの危険な突出物を大々的に減らすために、典型的な厚さt≦300μm、好ましくはt≦250μm、より好ましくはt≦200μm、特にt≦150μm、特に好ましくはt≦100μm、特により好ましくはt≦85μm、最も好ましくはt≦70μm、50μm、40μm、30μm、20μm、10μm、またはそれらの値の任意の2つを端点として有する範囲を有する。例えば、前記折りたたみカバー物品は、300μm~10μm、または300μm~20μm、または300μm~30μm、または300μm~40μm、または300μm~50μm、または300μm~70μm、または300μm~85μm、または300μm~100μm、または300μm~150μm、または300μm~200μm、または300μm~250μm、または250μm~10μm、または200μm~10μm、または150μm~10μm、または100μm~10μm、または85μm~10μm、または70μm~10μm、または50μm~10μm、または40μm~10μm、または30μm~10μm、または20μm~10μmの範囲の厚さtを有し得る。前記ガラスまたはガラスセラミック基板の厚さt1は5μm≦t1≦150μmであるべきであり、且つ前記ポリマー層および/または硬質材料のコーティングの合計厚さは5μm≦t2≦150μmであるべきである。
【0011】
ポリマー層がない場合、10mm×20mmの面積の超薄ガラスまたはガラスセラミック基板は曲げの間に破砕源の周りで数十以上の個々の片に破壊することがあるが、本発明で提案されるようなポリマー/硬質コーティング層があれば、ガラスの破砕性および破砕後の個々の破片の数がほんのいくつかの片へと大幅に低減され得る。
【0012】
本発明のさらに好ましい実施態様において、ガラスまたはガラスセラミック基板は強化され、且つr1≦100000×t1/CS、好ましくはr1≦80000×t1/CS、より好ましくはr1≦70000×t1/CS、最も好ましくはr1≦60000×t1/CSのミリメートルでの最小曲げ半径r1を有し、ここでCSは前記ガラスまたはガラスセラミック基板の両表面上で測定されたMPaでの圧縮応力である。
【0013】
本発明のさらに好ましい実施態様において、ガラスまたはガラスセラミック基板は内部応力CT≦700MPa、好ましくはCT≦500MPa、より好ましくはCT≦300MPa、特に好ましくはCT≦100MPa、最も好ましくはCT≦50MPaを有し、ここでCTは前記ガラスまたはガラスセラミック基板の中央面におけるMPaでの内部応力である。
【0014】
ガラス基板が化学強化される場合、折りたたみカバー基板の破壊挙動が、イオン交換深さDoLおよびイオン交換工程によって生じる内部引張応力CTによって影響されることが判明したことは意外であった。本発明のさらに好ましい実施態様において、前記ガラスまたはガラスセラミック基板は化学強化されており、且つイオン交換層の深さDoL≧1μm、好ましくはDoL≧2μm、より好ましくはDoL≧3μm、且つ/またはDoL≦t1/2、好ましくはDoL≦30μm、より好ましくはDoL≦20μmを有する。
【0015】
本発明のさらに好ましい実施態様において、前記ガラスまたはガラスセラミック基板は2点曲げ強さBS≧700MPa、好ましくはBS≧800MPa、より好ましくはBS≧1000MPa、最も好ましくはBS≧1200MPaを有する。
【0016】
本発明のさらに好ましい実施態様において、各々20mm幅の折りたたみカバー物品について、前記折りたたみカバー物品が、前記ガラスまたはガラスセラミック基板、またはより薄いポリマー層および/または硬質材料のコーティングを有する側で凸側に、その幅に対して垂直な方向に沿って曲げられる際に破壊する場合、最長の線状の延びL≧5mmを有する突出物の数は、10未満、好ましくは8未満、より好ましくは6未満、特に5未満、特により好ましくは4未満、および最も好ましくは3未満である。
【0017】
本発明のさらに好ましい実施態様において、各々20mm幅の折りたたみカバー物品について、前記折りたたみカバー物品が、前記ガラスまたはガラスセラミック基板、またはより薄いポリマー層および/または硬質材料のコーティングを有する側で凸側に、その幅に対して垂直な方向に沿って曲げられる際に破壊する場合、最長の線状の延びL<5mmを有する突出物の数は、50未満、好ましくは45未満、より好ましくは40未満、特に35未満、特により好ましくは30未満、および最も好ましくは20未満である。
【0018】
本発明のさらに好ましい実施態様において、前記折りたたみカバー物品が、ガラスまたはガラスセラミック基板、またはより薄いポリマー層および/または硬質材料のコーティングを有する側で凸側に、半径4cmを有するポリプロピレンの半環の凹側上に設置され、次いでボール直径0.7mmおよび重量6gを有するボールペンによって、25cmの高さから打ち当てられる場合、その試験後に物品全体が一体のままである。
【0019】
本発明のさらに好ましい実施態様において、折りたたみカバー物品の20mm×70mmの試料について、前記折りたたみカバー物品が、前記ガラスまたはガラス基板、またはより薄いポリマー層および/または硬質材料のコーティングを有する側で凹側に、半径2.8cmを有するステンレス鋼の円筒上に設置され、次いでボール直径0.7mmおよび重量6gを有するボールペンによって、10cmの高さから打ち当てられる場合、小さな突出物に起因する重量損失の量は10%未満、好ましくは9%未満、より好ましくは8%未満、特に7%未満、特に好ましくは6%未満、最も好ましくは5%未満である。
【0020】
本発明のさらに好ましい実施態様において、前記折りたたみカバー物品が、前記ガラスまたはガラス基板、またはより薄いポリマー層および/または硬質材料のコーティングを有する側で下向きに、大理石のステージ上に平らに設置され、次いで32.5gのステンレス鋼のボールによって40cmの高さから打ち当てられる場合、物品全体が一体のままである。
【0021】
本発明のさらに好ましい実施態様において、前記ガラスまたはガラスセラミック基板は、ポリマー層またはポリマー多層と、150μm、120μm、100μm、85μm、70μm、50μm、40μm、30μm、20μm、10μm、5μm、1μm、またはそれらの値の任意の2つを端点として有する範囲の合計厚さt3pで貼り合わせられる。例えば、前記ポリマー層および/またはポリマー多層は、150μm~5μm、または150μm~10μm、または150μm~20μm、または150μm~30μm、または150μm~40μm、または150μm~50μm、または150μm~70μm、または150μm~85μm、または150μm~100μm、または150μm~120μm、または150μm~1μm、または120μm~1μm、または100μm~1μm、または85μm~1μm、または70μm~1μm、または50μm~1μm、または40μm~1μm、または30μm~1μm、または20μm~1μm、または10μm~1μm、または5μm~1μmの範囲の合計厚さt3pを有し得る。
【0022】
本発明のさらに好ましい実施態様において、前記ポリマー層またはポリマー多層は、10GPa、7GPa、6GPa、5GPa、4GPa、3GPa、2GPa、0.5GPa、0.4GPa、0.3GPa、0.2GPa、0.1GPa、またはそれらの値の任意の2つを端点として有する範囲のヤング率Epを有する。例えば、前記ポリマー層またはポリマー多層は、10GPa~0.2GPa、または10GPa~0.3GPa、または10GPa~0.4GPa、または10GPa~0.5GPa、または10GPa~2GPa、または10GPa~3GPa、または10GPa~4GPa、または10GPa~5GPa、または10GPa~6GPa、または10GPa~7GPa、または10GPa~0.1GPa、または7GPa~0.1GPa、または6GPa~0.1GPa、または5GPa~0.1GPa、または4GPa~0.1GPa、または3GPa~0.1GPa、または2GPa~0.1GPa、または0.5GPa~0.1GPa、または0.4GPa~0.1GPa、または0.3GPa~0.1GPa、または0.2GPa~0.1GPa範囲内のヤング率Epを有し得る。
【0023】
本発明のさらに好ましい実施態様において、前記ポリマー層またはポリマー多層は、限定されずに、パリレン、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリカーボネート(PC)、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)またはそれらの組み合わせから選択されるポリマー製である。
【0024】
本発明のさらに好ましい実施態様において、前記ガラスまたはガラスセラミック基板の少なくとも1つの表面は、150μm、120μm、100μm、85μm、70μm、50μm、40μm、30μm、20μm、10μm、5μm、1μm、またはそれらの値の任意の2つを端点として有する範囲内の合計厚さt3cを有する硬質材料のコーティングまたは硬質材料の多層コーティングで被覆される。例えば、前記硬質材料のコーティングまたは硬質材料の多層コーティングは、150μm~5μm、または150μm~10μm、または150μm~20μm、または150μm~30μm、または150μm~40μm、または150μm~50μm、または150μm~70μm、または150μm~85μm、または150μm~100μm、または150μm~120μm、または150μm~1μm、または120μm~1μm、または100μm~1μm、または85μm~1μm、または70μm~1μm、または50μm~1μm、または40μm~1μm、または30μm~1μm、または20μm~1μm、または10μm~1μm、または5μm~1μmの範囲の合計厚さt3cを有し得る。
【0025】
本発明のさらに好ましい実施態様において、前記硬質材料のコーティングまたは硬質材料の多層コーティングは、15GPa、13GPa、11GPa、9GPa、7GPa、4GPa、2GPa、1GPaまたはそれらの値の任意の2つを端点として有する範囲内のヤング率Ehを有する。例えば、前記硬質材料のコーティングまたは硬質材料の多層コーティングは、15GPa~2GPa、または15GPa~4GPa、または15GPa~7GPa、または15GPa~9GPa、または15GPa~11GPa、または15GPa~13GPa、または15GPa~1GPa、または13GPa~1GPa、または11GPa~1GPa、または9GPa~1GPa、または7GPa~1GPa、または4GPa~1GPa、または2GPa~1GPa範囲のヤング率Ehを有し得る。
【0026】
本発明の好ましい実施態様において、前記硬質材料のコーティングまたは硬質材料の多層コーティングは、限定されずに、有機ポリマー材料、例えばアクリレートおよびそれらの変性された形態、または無機と有機とのハイブリッドポリマー材料、例えばポリシロキサンおよびそれらの変性された形態、無機ナノ粒子を有するPMMA、エポキシとシロキサンとのハイブリッド製である。
【0027】
本発明のさらに好ましい実施態様において、折りたたみカバー物品は、前記ポリマー層および/または前記硬質材料のコーティングと貼り合わせられた側の上で8H未満の鉛筆硬度を有する。
【0028】
本発明のさらに好ましい実施態様において、前記折りたたみカバー物品は、破壊高さHa≧Hg×2、好ましくはHa≧Hg×3、より好ましくはHa≧Hg×4、さらに好ましくはHa≧hg×5、さらに好ましくはHa≧Hg×6、さらに好ましくはHa≧Hg×7、さらに好ましくはHa≧Hg×8、特に好ましくはHa≧Hg×9、最も好ましくはHa≧Hg×10を有し、ここでHgはガラス基板の破壊高さであり、前記破壊高さはペン落下試験において特定され、その際、折りたたみカバー物品は、前記ガラスまたはガラスセラミック基板の側、またはより薄いポリマーおよび/または硬質材料のコーティングを有する側で下向きに、上部から下部へと25μmのOCA、50μmのPET、25μmのOCA、50μmのPETおよび30cmの大理石で構成されるステージ上に設置され、前記ステージの上部のOCA層に結合され、且つ前記ペンは直径0.5mmおよび重量13gを有するボールペンである。
【0029】
本発明の好ましい実施態様において、前記折りたたみカバー物品は、破壊荷重Fab≧2Fgb、好ましくはFab≧5Fgb、より好ましくはFab≧10Fgb、さらに好ましくはFab≧20Fgb、さらに好ましくはFab≧40Fgb、さらに好ましくはFab≧60Fgb、特に好ましくはFab≧80Fgb、最も好ましくはFab≧100Fgbを有し、ここでFgbは前記ガラス基板の破壊荷重であり、前記破壊荷重はP180のサンドペーパープレス試験において特定され、その際、前記折りたたみカバー物品は、前記ガラスまたはガラスセラミック基板の側、またはより薄いポリマー層および/または硬質材料のコーティングを有する側で鋼板上に設置され、且つ他の表面は、直径3mmを有する鋼ロッドによって、その平らな前面で破壊されるまで負荷をかけられ、ここでP180タイプのサンドペーパーが前記鋼ロッドの平らな前面に取り付けられ、且つサンドペーパーの研磨側は前記折りたたみカバー物品の上部表面と接触している。
【0030】
本発明の好ましい実施態様において、前記折りたたみカバー物品は、少なくとも前記ガラス基板の破壊加重に2を乗じた、好ましくは5を乗じた、より好ましくは10を乗じた、さらに好ましくは20を乗じた、特に好ましくは50を乗じた、特により好ましくは100を乗じた、特にさらに好ましくは150を乗じた、および最も好ましくは200を乗じた破壊高さを有し、ここで前記破壊高さはサンドペーパーボール落下試験において特定され、その際、前記ガラス物品は、そのガラスまたはガラスセラミックの側、またはより薄いポリマー/コーティングを有する側で鋼板上に設置され、且つ他の表面は、上から落とされる4.5gのアクリルボールによって破壊するまで負荷がかけられ、ここでP180タイプのサンドペーパーが前記折りたたみカバー物品の上部表面上に設置され、且つ前記サンドペーパーの研磨側が前記折りたたみカバー物品の上部表面と接触している。
【0031】
本発明の他の態様において、ディスプレイの基板またはカバー、壊れやすいセンサ、指紋センサモジュールの基板またはカバー、半導体パッケージ、薄膜電池の基板またはカバー、折りたたみディスプレイの用途における、先述の請求項のいずれかに記載の折りたたみカバー物品の使用において折りたたみカバー物品を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1a~1mは、本発明の実施態様による折りたたみカバー物品、並びに当該技術分野における比較用折りたたみカバー物品の断面図である。
【
図2】
図2は、2PBの外折り下での折りたたみカバー物品の試験の例示的な図である。
【
図3】
図3a~3kは、2PBの外折りの際に破壊された
図1a~1jに示される折りたたみカバー物品の例1~10の例示的な図である。
【
図4】
図4a~4cは、2PBdの外折りの際に破壊された
図1k~1mに示される折りたたみカバー物品の比較例1~3の例示的な図である。
【
図5】
図5は、2PBの内折り下での折りたたみカバー物品の試験の例示的な図である。
【
図6】
図6a~6kは、2PBの内折りの際に破壊された
図1a~1jに示される折りたたみカバー物品の例1~10の例示的な図である。
【
図7】
図7a~7cは、2PBの内折りの際に破壊された
図1k~1mに示される折りたたみカバー物品の比較例1~3の例示的な図である。
【
図8】
図8は、外折りのペン落下下での折りたたみカバー物品の試験の例示的な図である。
【
図9】
図9a~9kは、2PBの外折りのペン落下の際の
図1a~1jに示される折りたたみカバー物品の例1~10の例示的な図である。
【
図10】
図10a~10cは、外折りのペン落下の際に破壊された
図1k~1mに示される折りたたみカバー物品の比較例1~3の例示的な図である。
【実施例】
【0033】
本発明の好ましい実施態様
本発明の対象、特徴および利点を、添付の図面を参照して以下に記載される実施例および実施態様によってより詳細に説明する。図面において、同様または対応する要素は同じ参照番号で示される。
【0034】
図1a~1jは、本発明による折りたたみカバー物品、および当該技術分野における比較用折りたたみカバー物品の断面図を示す。以下に本発明による例および比較例を紹介する。以下の例において、ガラス基板はSCHOTT AGから市販の銘柄AS 87 ecoアルミノシリケートガラスである超薄ガラス(UTG)であり、ヤング率73.3GPaおよび鉛筆硬度9Hを有する。ガラス基板は種々のガラス、例えばシリケートガラス、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラスなどで製造され得ることに留意すべきである。
【0035】
本発明による以下の例は、単に好ましい例を示すに過ぎない。しかしながら、以下に記載されるとおり、折りたたみカバー物品は、異なる数の層/コーティングを、1つの側/2つの側の上に含むこともできる。
【0036】
例1:
図1aは、ガラス基板200、および前記ガラス基板200上にCVD法によって施与されたパリレン層300を含む折りたたみカバー物品1を示す。この例において、前記ガラス基板200は厚さt2g=0.07mmを有し、且つ前記パリレン層300は8~10μmの範囲の厚さt3pを有し且つ2~3GPaの範囲のヤング弾性率Epを有する。
【0037】
例2:
図1bは、ガラス基板201、および前記ガラス基板201上にスロットダイ法によって施与された硬質材料のコーティング301を含む折りたたみカバー物品1を示す。この例において、前記ガラス基板201は厚さt2g=0.07mmを有し、且つ前記硬質材料のコーティング301はナノ粒子(例えばSiO
2粒子)を有するPMMA、またはエポキシとシロキサンとのハイブリッドから選択されるポリマー製であり、4~6GPaの範囲のヤング弾性率Epを有する。前記硬質材料のコーティング301は19~22μmの範囲の厚さt3cを有する。
【0038】
例3:
図1cは、ガラス基板202、および前記ガラス基板202上にロール・ツー・ロールマイクログラビア法によって施与されたポリイミド(PI)層302および硬質材料のコーティング312を含む折りたたみカバー物品1を示す。この例において、前記ガラス基板202は厚さt2g=0.07mmを有し、且つ前記硬質材料のコーティング312は、PMMA、またはPMMAとシロキサンとのハイブリッド化材料から選択されるポリマー製であり、4~6GPaの範囲のヤング率Ep2を有する。前記PI層302は5~8GPaの範囲のヤング率Ep1および50μmの厚さt3pを有する。前記硬質材料のコーティングは10μmの厚さt3cを有する。
【0039】
例4-1:
図1dは、ガラス基板203、および前記ガラス基板203上にスピンコーティング法によって施与された硬質材料のコーティング305を含む折りたたみカバー物品1を示す。この場合、前記ガラス基板203の端部は前記硬質材料のコーティング303によって封じられている。この例において、前記ガラス基板203は厚さt2g=0.07mmを有し、且つ前記硬質材料のコーティング303はSiO
2ナノ粒子を有するポリメチルメタクリレートのポリマー製である。前記硬質材料のコーティング303は、スピンコーティング法によって前記ガラス基板203上に30μmの厚さt3cで施与され、且つ3.16GPaのヤング率Ecを有する。
【0040】
例4-2:
図1eは、ガラス基板204、および前記ガラス基板204上にスピンコーティング法によって施与された硬質材料のコーティング304を含む折りたたみカバー物品1を示す。この場合、前記ガラス基板204の端部は前記硬質材料のコーティング304によって封じられていない。この例において、前記ガラス基板204は厚さt2g=0.07mmを有し、且つ前記硬質材料のコーティング304はSiO
2ナノ粒子を有するポリメチルメタクリレートのポリマーである。前記硬質材料のコーティング304は、スピンコーティング法によって前記ガラス基板204上に30μmの厚さt3cで施与され、且つ3.16GPaのヤング率Ecを有する。
【0041】
例5
例5において、折りたたみカバー物品1は
図1bに示される例2と同じ構造を有し、硬質材料のコーティングが2~3GPaの範囲のヤング率を有することにおいてのみ異なる。
【0042】
例6
図1fは、ガラス基板205、および前記ガラス基板205上に施与された硬質材料のコーティング305、ポリイミド(PI)層315および光学用透明粘着(OCA)コーティング325を含む折りたたみカバー物品1を示す。この場合、前記硬質材料のコーティング305はSiO
2ナノ粒子を有するポリメチルメタクリレートのポリマー製であり、且つ前記OCAコーティング325はTesaによって製造されるTesa(登録商標)69401として市販されているOCA製である。この例において、前記ガラス基板205は厚さt2g=0.07mmを有し、且つ前記硬質材料のコーティング305は厚さ10μmを有し、且つ前記PI層315は厚さ50μmを有し且つ5~8GPaの範囲のヤング率Epを有する。前記OCAコーティング325は0.001GPa未満のヤング率Ecおよび25μmの厚さt3cを有する。
【0043】
例7
図1gは、ガラス基板206、および前記ガラス基板206上に施与された硬質材料のコーティング306、光学用透明粘着(OCA)コーティング316、およびPET層326を含む折りたたみカバー物品1を示す。この場合、前記硬質材料のコーティング306はSiO
2ナノ粒子を有するポリメチルメタクリレートのポリマー製であり、且つ前記OCAコーティング326はTesaによって製造されるTesa(登録商標)69401として市販されているOCA製である。この例において、前記ガラス基板206は厚さt2g=0.07mmを有し、且つ前記硬質材料のコーティング306は厚さ30μmを有する。前記OCA層316は、厚さ25μm、および0.001GPaからの範囲のヤング率Epを有する。前記PET層326は25μmの厚さt3cを有する。
【0044】
例8
図1hは、ガラス基板208、および前記ガラス基板208の片側上にスピンコーティング法によって施与された硬質材料のコーティング308を含む折りたたみカバー物品1を示す。前記ガラス基板208の他の側の上には、感圧粘着(PSA)コーティング318およびポリエチレンテレフタレート(PET)層328が備えられている。この場合、ガラス基板208はSCHOTT AS87 ecoとして市販のガラス製であり、厚さ70μmを有する。前記硬質材料のコーティング308は厚さ25μmを有する。前記PSAコーティング318は、厚さ25μmを有し、且つ前記PET層318は厚さ25μmを有する。
【0045】
例9
図1iは、ガラス基板209、および前記基板209にOCAコーティング309と共に結合された透明ポリイミド(CPI)層319を含む折りたたみカバー物品1を示す。この例において、前記ガラス基板209は酸エッチングによって段階的に薄くされており、且つ前記ガラス基板209の薄くされた部分がOCAコーティング309で充填されている。前記ガラス基板209はその最も薄い位置で厚さt1=50μmを有し、その薄くされた部分以外では、前記ガラス基板209は厚さ145μmを有する。前記ガラス基板209の薄くされた部分に充填されたOCAコーティング309の部分以外では、前記OCAコーティング309は厚さ25μmを有する。さらに、前記CPI層319は厚さ50μmを有する。この場合、前記ガラス基板209は、そのガラス基板が全般的には大きな厚さを有するにしても、その最も薄い位置で良好な折りたたみ性を有し、従って折りたたみカバー物品1は良好な折りたたみ性を有する。
【0046】
例10
図1jは、ガラス基板210、および前記ガラス基板210に結合された透明ポリイミド(CPI)層310を含む折りたたみカバー物品1を示す。この例において、前記ガラス基板209は前記CPI層310によって完全に封じられており、カプセル構造を形成する。前記ガラスは厚さt1=70μmを有し、且つ前記CPI層310は厚さ50μmを有する。
【0047】
比較例1:
図1kは、ポリマー層またはコーティングを有さないガラス基板200’を含む折りたたみカバー物品1’を示す。
【0048】
比較例2:
図1lは、ガラス基板201’、および前記ガラス基板201’上にPVDまたはCVD法によって施与されたパリレン層301’を含む折りたたみカバー物品1’を示す。この例において、前記ガラス基板は厚さt2’g=0.07mmを有し、且つ前記パリレン層301’は3~5μmの範囲の厚さtpを有し且つ2~3GPaの範囲のヤング弾性率Epを有する。
【0049】
比較例3:
図1mは、ガラス基板202’、および前記ガラス基板202’上にディップコーティング法によって施与された硬質材料の2つのコーティング302’を含む折りたたみカバー物品1’を示す。この例において、前記ガラス基板202’は厚さt2’g=0.07mmを有し、且つ硬質材料のコーティング302’の各々は、PMMA、またはPMMAとシロキサンとのハイブリッド化材料から選択されるポリマー製であり、4~6GPaの範囲のヤング率Ep2および5μmの厚さt2を有する。
【0050】
上記の例において、比較しやすくするために、ガラス基板、硬質材料のコーティング、PET層、PI層、CPI層、PSA層およびOCAについての材料は、特段定義されない限り、それぞれ同じであることに留意すること。さらに、前記ガラス基板の厚さt1は一般に、そのガラス基板が一定の厚さを有さない場合、その最も薄い位置のものを意味する。
【0051】
試験1: 2PBの外折り
図2は、2PBの外折り下で破壊された折りたたみカバー物品1、1’の試験の例示的な図を示す。この試験は、折りたたみカバー物品1、1’を把持する2つの固定具を用いて実施され、前記ポリマー層/コーティングが前記固定具の方に向いている。前記ガラス基板1、1’がその両側上にポリマー層および/またはコーティングを施与されている場合、曲げる際、単数または複数の前記ポリマー層および/またはコーティングの厚さがより大きい側が前記固定具の方に向いている。この試験において、前記固定具は1cm×1cmのグリッドを有するカッティング台の60cm上に設置され、その結果を、
図1a~1mに示される折りたたみカバー物品1、1’の20mm×70mm×0.07mmの試料に関して、
図3a~3kおよび4a~4cにそれぞれ示す。
図3a~3kおよび4a~4cから、ポリマー層および/またはコーティングの厚さが大きい場合、2PBの外折り後の破壊から生じる突出物の数が少ないことが判断できる。詳細には、例1~10および比較例1~3についての具体的な突出物の数を表1に記載する。
【0052】
【0053】
試験2: 2PBの内折り
図5は、2PBの内折り下での折りたたみカバー物品1、1’の試験の例示的な図を示す。この試験は、折りたたみカバー物品1、1’を把持する2つの固定具を用いて実施され、ガラス基板が前記固定具の方に向いている。前記ガラス基板1、1’がその両側上にポリマー層および/またはコーティングを施与されている場合、曲げる際、単数または複数の前記ポリマー層および/またはコーティングの厚さがより小さい側が前記固定具の方に向いている。この試験において、前記固定具は1cm×1cmのグリッドを有するカッティング台の60cm上に設置され、その結果を、
図1a~1mに示される折りたたみカバー物品1、1’の20mm×70mm×0.07mmの試料に関して、
図6a~6kおよび7a~7cにそれぞれ示す。
図6a~6kおよび7a~7cから、ポリマー層および/またはコーティングの厚さが大きい場合、2PBの内折り後の破壊から生じる突出物の数が少ないことが判断できる。詳細には、例1~10および比較例1~3についての具体的な突出物の数を表2に記載する。
【0054】
【0055】
試験3: 外折りのペン落下
図8は、外折りのペン落下下での折りたたみカバー物品1、1’の試験の例示的な図を示す。この試験は、折りたたみカバー物品1、1’の試料の上に10cmの高さから落下される重量6gおよび長さ0.7mmのペンを用いて実施され、前記ポリマー層および/またはコーティングが前記ペンの方に向いており、長さ3mmの2つのテープによって固定される試料の2つの端部で半径2.8cmを有するローラー上に固定されている。前記ガラス基板1、1’がその両側上にポリマー層および/またはコーティングを施与されている場合、単数または複数の前記ポリマー層および/またはコーティングの厚さがより大きい側が前記ペンの方に向いている。この試験において、小さな片を収集することは難しいので、テープに付着された前記試料の2つの端部を試験後に収集して計量した。重量損失は以下のように定義される:
【数1】
【0056】
図1a~1mに示される折りたたみカバー物品1、1’の試料について、試験結果を
図9a~9kおよび
図10a~10cにそれぞれ示す。
図9a~9kおよび10a~10cから、ポリマー層および/またはコーティングの厚さが大きい場合、外折りのペン落下後の破壊から生じる重量損失が少ないことが判断できる。詳細には、例1~10および比較例1~3についての具体的な重量損失を表3に記載する。
【0057】
【0058】
好ましい実施態様が上記に記載される。しかしながら、本開示の主旨および様々な原理から本質的に逸脱することなく、本開示の上述の実施態様に対して多くの変更および修正を行うことができる。本願において、全てのそのような変更および修正は、この開示の範囲内に含まれ、且つ以下の特許請求の範囲によって保護されることが意図されている。
【国際調査報告】