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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-06
(54)【発明の名称】組織牽引装置、システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/02 20060101AFI20230130BHJP
【FI】
A61B17/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533374
(86)(22)【出願日】2020-12-01
(85)【翻訳文提出日】2022-07-27
(86)【国際出願番号】 US2020062691
(87)【国際公開番号】W WO2021113232
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】62/943,885
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】リー、ダニー
(72)【発明者】
【氏名】アンガー、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】スラティ、アン
(72)【発明者】
【氏名】ラリベルテ、キャスリーン エム.
(72)【発明者】
【氏名】リアズ、タルハ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレオッティ、トレイシー
(72)【発明者】
【氏名】シム、ローサ
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス サラザール、フアン シー.
(72)【発明者】
【氏名】リーデル、キャロライン
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア-コルデロ、ホセ エル.
(72)【発明者】
【氏名】ウェールズ、ライアン ブイ.
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160AA20
4C160MM32
(57)【要約】
本発明は、医療機器の分野に関する。特に、本発明は、たとえば内視鏡的組織剥離のための組織牽引装置に関する。たとえば、組織牽引装置は、対向可能な複数のジョーを含む第1クリップを含む。装置は、第1の端、第2の端、該第1の端および該第2の端の間の長さ、を有しかつ長手方向軸に沿って延びている牽引バンドを含む。バンドは、第1の端において第1の開口を有する。第2の開口は、バンドの第2の端に設けられる。第1クリップの対向可能なジョーのうちの第1ジョーは、第1の開口を通して配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向可能なジョーを含む第1クリップと、
第1の端、第2の端、及び前記第1の端及び前記第2の端の間の長さ、を有し、かつ長手方向軸に沿って延びる牽引バンドであって、
前記第1の端における第1の開口と、
前記第2の端における第2の開口と、を含む前記牽引バンドと、
を備え、
前記第1クリップの前記対向可能なジョーのうちの第1ジョーが、前記第1の開口を貫通して配置される、組織牽引装置。
【請求項2】
前記第2の開口が、前記長手方向軸に沿って前記第1の開口に向かって延びている、請求項1に記載の組織牽引装置。
【請求項3】
前記第2の開口が、前記牽引バンドの前記第1の端の外径よりも大きい直径を有する、請求項1または2に記載の組織牽引装置。
【請求項4】
前記牽引バンドの前記第2の端が、配備時形態において、前記対向可能なジョーのうちの第2ジョーから離れる方向に延長可能である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組織牽引装置。
【請求項5】
前記第1の開口と前記第2の開口との間において前記牽引バンドに沿って第3の開口をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組織牽引装置。
【請求項6】
前記第2の開口を通って、少なくとも部分的に配置可能な第2クリップをさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の組織牽引装置。
【請求項7】
前記第1クリップの前記第1ジョーが、前記牽引バンドに隣接する前記第1ジョーから径方向に延びる壁をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の組織牽引装置。
【請求項8】
第1の端、第2の端、及び前記第1の端及び前記第2の端の間の長さ、を有し且つ長手方向軸に沿って延びている牽引バンドと、
前記牽引バンドの前記第1の端に連結された第1コネクタ本体と、前記牽引バンドの前記第2の端に連結された第2コネクタ本体と、
前記牽引バンドから離れる方向に前記第1コネクタ本体から延びている第1フィラメントと、前記第2コネクタ本体から前記牽引バンドから離れる方向に延びている第2フィラメントと、
各フィラメントに形成されたループと、
を備える、組織牽引装置。
【請求項9】
前記第1コネクタ本体または前記第2コネクタ本体のうちの一方がルーメンをさらに含み、かつ、前記第1フィラメント及び前記第2フィラメントの一方が前記ルーメン内に延びている、請求項8に記載の組織牽引装置。
【請求項10】
前記第1コネクタ本体および前記第2コネクタ本体の一方に前記フィラメントを連結するように構成された前記ルーメン内で、可逆的に延伸可能なロッドをさらに含む、請求項9に記載の組織牽引装置。
【請求項11】
前記フィラメントが、前記ルーメン内で延伸可能な中央部と、前記ルーメンの外部へ延伸可能なループを備える2つの端とを含む、請求項9または10に記載の組織牽引装置。
【請求項12】
前記フィラメントの第1ループは、クリップによって係合されて組織に固定されるように構成されており、前記フィラメントの第2ループは、張引されて前記第1コネクタ本体および前記第2コネクタ本体の一方から前記フィラメントを離脱するように構成される、請求項11に記載の組織牽引装置。
【請求項13】
前記中央部hs、前記ルーメン内で固定要素に連結される、請求項11または12に記載の組織牽引装置。
【請求項14】
前記牽引バンドの外周囲に配置されるオーバーチューブをさらに含む、請求項8~13のいずれか1項に記載の組織牽引装置。
【請求項15】
開口を有するクリップをさらに備え、前記フィラメントのうちの1本は、前記開口を通過して延びており、前記フィラメントは、前記開口よりも大きな幅を有する球根状部を有する請求項8~14のいずれか1項に記載の組織牽引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、医療機器の分野に関する。特に、本発明は、たとえば組織剥離などの内視鏡的手術のための組織牽引装置およびこれに関連する使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡的組織切除/剥離法を正確かつ効率的に行うことには、標的組織の境界を剥離するときの牽引を維持する能力が含まれる。牽引システムは、標的組織に付与される張力を維持または調整することができない場合があり、標的組織について医療専門家の視野を遮ったり、付属器具に干渉したりする場合がある。これらの問題は、手術時間、複雑さ、および穿孔または出血のリスクの増加の直接の原因となる場合がある。
【0003】
これらの考慮事項を念頭に置いた場合、本発明の組織牽引装置および関連するその使用方法における改善が有用な場合がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、その様々な態様において、一般に医療機器に関し、より詳細には、組織牽引装置、牽引方法、および関連する送達システムに関する。本明細書に記載のものを含む本発明の実施形態によって、可視化、手術時間、および手術の複雑さなどの、組織切除法に関する問題を低減し得る。一態様では、組織牽引装置は、対向可能なジョーを含む第1クリップを含む。装置は、第1の端、第2の端、該第1の端及び該第2の端間の長さ、を有して長手方向軸に沿って延びている牽引バンドを含む。バンドは、第1の端における第1の開口を有する。第2の開口は、バンドの第2の端にある。第1クリップの対向可能なジョーのうちの第1ジョーは、第1の開口を通って配置される。
【0005】
本明細書またはその他の様々な実施形態では、第2の開口は、長手方向軸に沿って第1の開口に向かって延びていてもよい。第2の開口は、牽引バンドの第1の端の外径よりも大きい直径を有していてもよい。牽引バンドの第2の端は、配備時形態において、対向可能なジョーのうちの第2ジョーから離れる方向に延伸可能であってもよい。第3の開口は、第1の開口と第2の開口との間の牽引バンドに沿っていてもよい。第2クリップは、第2の開口を通過して、少なくとも部分的に配置され得る。第1クリップの第1ジョーは、牽引バンドに隣接する第1ジョーからほぼ径方向に延びている壁を含んでもよい。
【0006】
一態様では、組織牽引装置は、第1の端、第2の端、該第1の端及び該第2の端の間の長さ、を有して長手方向軸に沿って延びている牽引バンドを含む。第1コネクタ本体は、牽引バンドの第1の端に連結され、第2コネクタ本体は、牽引バンドの第2の端に連結される。第1フィラメントは、牽引バンドから離れる方向に第1コネクタ本体から延びており、第2フィラメントは、牽引バンドから離れる方向に第2コネクタ本体から延びている。ループが、各フィラメントにおいて形成されている。
【0007】
本明細書に記載されているか、またはその他の様々な実施形態では、第1コネクタ本体または第2コネクタ本体のうちの1つはルーメンをさらに含み、フィラメントのうちの1本はルーメン内に延びている。ロッドは、ルーメン内で可逆的に延びており、第1コネクタ本体および第2コネクタ本体のうちの一方にフィラメントを連結するように構成されている。フィラメントは、ルーメン内で延伸可能な中央部と、ルーメンの外部へ延伸可能なループを含む2つの端とを含む。フィラメントの第1ループは、クリップによって係合されて組織に固定され、フィラメントの第2ループは、引っ張られて第1コネクタ本体および第2コネクタ本体のうちの1つからフィラメントを離脱するように構成される。中央部は、ルーメン内で固定要素に連結され得る。オーバーチューブは、牽引バンドの外周囲に配置される。フィラメントのうちの1本は、開口よりも長い幅を有する球根状部を有するフィラメントの開口を通って延びる。
【0008】
一態様では、標的組織を切除する方法は、牽引バンドの第1の端を標的組織に連結することを含んでもよい。牽引バンドの第2の端は、別の組織に連結され得る。標的組織を含む体管腔に通気し、それによって牽引バンドの張力を高めてもよい。標的組織は切除してもよい。
【0009】
本明細書に記載されているか、またはその他の様々な実施形態では、体管腔から吸引し、それによって標的組織と他の組織との間の距離を縮めてもよい。体管腔を換気し、それによって標的組織と他の組織との間の距離を縮めてもよい。牽引バンドの中央部は、第3組織に連結されてもよい。牽引バンドは、他の組織から離脱されてもよい。
【0010】
模式図であって、縮尺どおりに描かれることが意図されてはいない添付の図面を参照しながら、本開示の非限定的な実施形態を例として説明する。たとえば、装置は、詳細を識別できるように拡大され得るが、たとえば送達カテーテルまたは内視鏡の作業チャンネル内に合わせることに関して縮小することが意図される。図において、それぞれの同一のまたはほぼ同一の図示された構成要素は、通常、単一の数字で表されている。明確にするために、すべての構成要素がすべての図でラベル付けされているわけでもなく、また当業者が本発明を理解できるようにするために図解が必要でない場合、各実施形態のすべての構成要素が示されているわけでもない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態にかかる、体管腔内に配備された組織牽引装置を示す図。
図2A】本発明の一実施形態にかかる、クリップのジョーに配置された牽引バンドを有する組織牽引装置を示す図。
図2B】シース内に配置された、図2Aの組織牽引装置を示す図。
図2C】送達のために、図2Bのシースに対して遠位側にある、図2Aおよび図2Bの組織牽引装置を示す図。
図2D】標的組織に向けられているクリップを備えた、図2A図2Cの組織牽引装置を示す図。
図2E】標的組織に係合したクリップと、牽引バンドの開口に向けられている第2クリップとを備えた、図2A図2Dの組織牽引装置を示す図。
図2F】別の組織に係合した第2クリップを備えた、図2A図2Eの組織牽引装置を示す図。
図3A】本発明の一実施形態にかかる、クリップのジョーに配置された牽引バンドを有する組織牽引装置を示す図。
図3B】本発明の一実施形態にかかる、クリップのジョーに配置された牽引具を有する組織牽引装置を示す図。
図3C】本発明の一実施形態にかかる牽引バンドを示す図。
図3D】本発明の一実施形態にかかる牽引バンドを示す図。
図3E】本発明の一実施形態にかかる牽引バンドを示す図。
図3F】本発明の一実施形態にかかる牽引バンドを示す図。
図4】本発明の一実施形態にかかる組織牽引装置を示す図。
図5A】本発明の一実施形態にかかるコネクタ本体を示す図。
図5B】本発明の一実施形態にかかる、フィラメントを備えたコネクタ本体の断面図を示す図。
図5C】本発明の一実施形態にかかる、体菅腔内に送達されるコネクタ本体を含む組織牽引装置を示す図。
図5D】本発明の一実施形態にかかる、マンドレルの外周囲でループに形成されているコネクタ本体のフィラメントを示す図。
図6A】本発明の一実施形態にかかる、結び目を備えたフィラメントを示す図。
図6B】本発明の一実施形態にかかる、牽引バンドの端から延びているフィラメントを備えた牽引バンドを示す図。
図6C】コネクタ本体の外部へ延びているフィラメントを示す図。
図6D】本発明の一実施形態にかかる、コネクタ本体から延びて固定要素に連結されたフィラメントを示す図。
図6E】本発明の一実施形態にかかる、フィラメントに圧着されたシャフトを示す図。
図6F】本発明の一実施形態にかかる、フィラメントの加熱形成された球根状部を示す図。
図6G】本発明の一実施形態にかかる、クリップのジョーの開口を通って延びているフィラメントを示す図。
図7】本発明の一実施形態にかかる、体管腔内に送達された組織牽引装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
なお、図面は、本発明の典型的または例示的な実施形態のみを示している。したがって図面は本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。次に、添付図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【0013】
本明細書で使用される場合、「近位端」は、患者への装置の挿入時に、装置に沿って医療専門家の最も近くに位置する装置の端部を意味し、「遠位端」は、移植、位置決めまたは送達時に、装置に沿って医療専門家から最も遠くに位置する装置または物体の端部を意味する。
【0014】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「ある(a)(an)」、および「その(the)」は、文脈上、そうでないとする明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、用語「または(or)」は、文脈上そうでないとする明確な指示がない限り、一般に、「および/または」を含むその意味で用いられる。
【0015】
なお、本明細書における、「一実施形態」、「いくつかの実施形態」、「他の実施形態」などへの言及は、記載された実施形態が、1つ以上の特定の要素、構造、および/または特徴を含んでもよいことを示す。しかしながら、このような記載は、必ずしもすべての実施形態が特定の要素、構造、および/または特徴を含むことを意味しない。さらに、一実施形態に関して特定の要素、構造、および/または特徴が記載されている場合、明示的に説明されているか否かにかかわらず、そうでないと明確に記載されていない限り、そのような要素、構造、および/または特徴が他の実施形態にも用いられてもよいものと解すべきである。
【0016】
本明細書におけるすべての数値は、明示されているか否かにかかわらず、用語「約」によって修飾されているものとする。用語「約」は、一般に、当業者が、数値の文脈において、記載された数値に相当する(たとえば同じ機能または結果を有する)とみなす一定範囲の数のことをいう。多くの場合、用語「約」は、最も近い有効数字に丸めた数を含んでもよい。用語「約」の他の使用(すなわち、数値以外の文脈で)は、特に記載のない限り、明細書の文脈から理解され、明細書の文脈と矛盾しないそれらの通常かつ慣用的な定義を有することが想定される。端点による数値範囲の記載は、端点を含めてその範囲内のすべての数を含む(たとえば1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、および5を含む)。
【0017】
発明を実施するための形態は、必ずしも縮尺どおりではなく、例示的な実施形態を示すものであり、かつ本発明の範囲を限定するものではない本図面を参照して読まれるべきである。
【0018】
消化管および胆道の両方または一方に沿った医療処置を含む多くの医療処置は、体内での除去の対象となる組織(たとえば「標的組織」)にアクセスするために医療機器を利用する。たとえば、現在のいくつかの医療処置(たとえば内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD:endoscopic submucosal dissection)、内視鏡的粘膜切除術(EMR:endoscopic mucosal resection)、経口内視鏡的筋層切開術(POEM:Peroral Endoscopic Myotomy)、胆嚢摘出術、ビデオ下胸腔鏡手術(VATS:Video‐Assisted Thoracoscopic Surgery))では、医師は、病変部位にアクセスしてそれを除去するために、内視鏡または類似の医療機器を利用し得る。さらに、このような手術の一環として、医師は、標的組織部位にアクセスすることと、同時に、その内部を通過して切除装置を配備して標的組織を切除することと、の双方を可能にする内視鏡を利用し得る。さらに、いくつかの場合には、内視鏡は、医師が組織剥離/切除法を可視化して実行するのを支援する要素を組み込んでもよい。たとえば、一部の内視鏡は、内視鏡がナビゲートされて標的組織部位に隣接して配置される際に体管腔を照射して可視化または照射もしくは可視化するように設計された、照明およびカメラのうちの少なくともいずれか一方を含み得る。さらに、一部の内視鏡は、その内部を通って切除装置、把持部材、把持部材の送達カテーテル、または他の付属装置が配備されて使用されるルーメン(たとえば作業チャンネル)も含んでもよい。追加的又は代替的に、X線透視などのさらなる可視化方法を採用し得る。
【0019】
医師は、体内(たとえば消化管内、腹腔内、胸腔内など)から病変部位を切除することにさらに熟練してきているが、現在の牽引方法は、医師にとって依然として非効率的であり得る。たとえば、いくつかの場合には、組織を係合して操作するための可視化および能力が不十分なため、組織剥離法にかかる時間が長引く可能性がある。困難な場合があるEMR/ESDの態様は、切除中および切除後の組織皮弁の位置決めおよび操作(たとえば牽引)である。一部のEMR/ESD法では、医師は、組織牽引の手段を提供するために別の機器を用いてもよい。このような方法には、複数の装置交換および長時間にわたる手術が含まれる場合がある。このようなシステムは、標的組織に付与される張力を維持または調整することができない場合および非効率的なまたは一貫性のない方法で標的組織に加えられる張力を維持または調整する場合のうちの少なくともいずれか一方であり得る。
【0020】
図1では、組織牽引装置の一実施形態が、標的組織104と他の組織138との間に送達されて張力を付与するものとして示されている。牽引バンド114は、同牽引バンド114の第1の端で第1クリップ112に連結されている。第1クリップ112は、切除のために標的組織104に連結されている。牽引バンド114の第2の端は第2クリップ111に連結されている。第2クリップ111は、牽引バンド114に張力がかかるように他の組織138に連結されている。切除器具120は、内視鏡106を介して標的組織104に向かって送達される。標的組織104を切除する際に、牽引バンド114は第1クリップ112および標的組織104を第2クリップ111に向かって引き、内視鏡106、ツール120、および標的組織104の間の可視化を維持する。
【0021】
図2Aでは、本発明に係る牽引バンド200の実施形態の一例が示されている。牽引バンド200は、第1の端201、第2の端202及び両端201,202において牽引バンド200の長手方向軸に沿って延びる長さを有する。第1の端201は第1の開口204を含む。牽引バンド200は、クリップ230に連結されている。クリップ230は、互いに対向する第1のジョー231および第2のジョー232を含む。実施形態では、クリップ230は使い捨ての止血クリップであってもよく、他の実施形態では、クリップ230は再利用可能なクリップであってもよい。第1ジョー231は、牽引バンド200の第1の開口204を貫通して配置される。第1の開口204は、第1のジョー231の一部の外周囲とほぼ一致する内径を有する。いくつかの実施形態では、第1の開口204の内径は、第1ジョー231の外径よりも小さくてもよいが、第1ジョー231を収容するために伸長可能であり得る。したがって、牽引バンド200は、摩擦嵌合によって第1ジョー231に接続され得る。ジョー231、232は、ジョー231、232から径方向に延びている壁を有する中央部234を含む。中央部234は、牽引バンド200の第1の端201に対して遠位側において隣接する。中央部234は、牽引バンド200が第1ジョー231に沿って移動することを防止する。牽引バンド200の第2の端202は、第2の開口206を含む。第2の開口206は、第1の開口204の直径よりも大きい直径を有し、また、第1の端201の幅よりも大きい。実施形態では、第2の開口206の直径は、使い捨て止血クリップおよび再利用可能なクリップのうちの少なくともいずれか一方の少なくとも一部を収容するサイズであり得る(図2E~2F参照)。牽引バンド200は、第1の端201と第2の開口206との間に延びている直線部208によって、第2の端202が、ジョー231、232から離れる方向に延びるようにクリップ230に連結される。
【0022】
図2Bを参照すると、図2Aのクリップ230および牽引バンド200は、シース250内に装填され得る。牽引バンド200は、牽引バンド200がシース250の軸sに沿ってほぼ平行をなして延びるとともに第1ジョー231よりもシース250の軸sから径方向に離れるように、クリップ230の第1ジョー231に連結される。クリップ230は、シース250内で、ジョー231、232、および牽引バンド200の第2の端202が遠位側を向くように方向付けられる。牽引バンド200は、牽引バンド200がジョー231、232によって損傷されることがないように、シース250内でジョー231、232の外側に配置される。図2Bに示す向きで、クリップ230および牽引バンド200は、牽引バンド200がもつれることなくほぼ直線的な向きを維持するように、シース250内を移動させられ得る。代替的には、牽引バンド200は、牽引バンド200とシース250との間の摩擦が低減するように、シース250内でジョー231とジョー232との間に向けられてもよい。
【0023】
図2Cを参照すると、シース250がクリップ230および牽引バンド200から後退される、及びクリップ230および牽引バンド200がシース250の外部へ遠位方向に移動されるうちの少なくともいずれか一方である。いくつかの実施形態では、シース250は静止して維持されており、クリップ230および牽引バンド200は、遠位方向に延伸され得る。ジョー231、232は、組織係合と配備とのために遠位方向に向けられており、牽引バンド200の第2の端202は、第2の端202が視認できるとともに、手術の妨げにならないように、またはジョー231、232によって損傷されないように、ジョー231、232から離れる方向に向けられている。
【0024】
図2Dを参照すると、クリップ230は、ジョー231、232が標的組織240に係合するように、標的組織240に向けられて送達される。シース250およびクリップ230を可視化して標的組織240に向けるために、内視鏡252、または他の可視化および/または送達器具を使用し得る。クリップ230は、牽引バンド200の第2の端202が、ジョー231、232および標的組織240のうちの少なくともいずれか一方から離れる方向に延びる状態で牽引バンド200が配置されるように、位置決めされ得る(すなわち、回転される、延長されるなど)。牽引バンド200は、図2D図2Eに示すように、牽引バンド200が、ジョー231、232から離れた牽引バンド200の第2の端202の重量を支えるのに十分な剛性を有する部分を少なくとも有していてもよい。実施形態では、より剛性の高い部分は、牽引バンド200と一体をなしていてもよく、他の実施形態では、より剛性の高い部分は、牽引バンド200に取り付け可能な別の構成要素であってもよい。
【0025】
図2Eを参照すると、クリップ230は、牽引バンド200の第2の端202が、ジョー231、232および標的組織240から離れる方向に向けられるように標的組織240に係合している。第2クリップ234は、標的組織240の近傍に導入される。第2クリップ234は、第2クリップ234のジョー236が、牽引バンド200の第2の開口206に係合することができるように、牽引バンド200の第2の端202にそのジョー236を向けることができる。第2の開口206は、第2の開口206が第1の開口204よりも容易に視認できるとともに係合可能なように、第1の開口204よりも大きい。
【0026】
図2Fでは、第2クリップ234は、牽引バンド200の第2の端202と係合しながら別の組織242に送達されてもよい。牽引バンド200の第1の端201は、第1クリップ230を介して標的組織240に対してほぼ固定されているため、牽引バンド200は、第1の端201から離れる方向に第2の端202を引っ張る第2クリップ242によって標的組織240に張力を付与することができる。
【0027】
図3A図3Bでは、第3の開口313を含む組織牽引装置の牽引バンド300の実施形態が示されている。牽引バンド300の第1の端301にある第1の開口311は、クリップ330のジョー331の外周囲に配置される。牽引バンド300の第2の端302は、第2の開口312を有する。第2の開口312は、牽引バンド300の長手方向軸lに沿って第1の開口311に向かって延びている。牽引バンド300は、クリップ330から離れる方向に第2の端302が向けられるように方向付けられる。図3Bを参照すると、牽引バンド300は、第3の開口313も含んでもよい。第3の開口313は、第1の開口311に向かって、牽引バンド300の長手方向軸lに沿って第2の開口312とほぼ平行をなして延びている。第2の開口312および第3の開口313は、1つ以上の追加のクリップまたは他の医療器具によって係合されてもよい。第2,第3の開口312、313の長さは、バンド300の長手方向にほぼ沿って、第2の端302から、第1の開口311に近接する第1の端301まで延びている。
【0028】
図3C図3Fを参照すると、牽引バンド300の実施形態は、牽引バンド300を通る様々な開口を含んでもよい。たとえば、図3Cでは、第1の開口311は、第1クリップのジョーの少なくとも一部を収容するための、牽引バンド300の第1の端301にあるほぼ円形の開口311であってもよい。第2の開口312は、牽引バンド300の第2の端302にあって、第2の端302から、第1の開口311に近接する第1の端301まで、バンド300の長手方向にほぼ沿って延びていてもよい。第2の開口312は、牽引バンド300の長手方向軸lに沿って第1の開口312に向かって延びているスロットであってもよい。第1の開口311は、第2の開口312のスロットの端の直径よりも小さい直径を有していてもよい。第1の開口311は、手術に先立って、第1クリップに牽引バンド300を予め装填しておくことによって第1クリップに連結するために使用されてもよい。第2の開口312は、第1クリップが体内に送達された後に、第2クリップによって係合されてもよい。図3Dにおいて、牽引バンド300は、1つ以上のクリップによって係合され、1つ以上のクリップに取り付けられて予め装填された牽引バンド300の長手方向軸lに沿って延びている開口311を1つのみ含んでもよい。図3Eにおいて、牽引バンド300の第1の開口311は、第1の端301にあって、長手方向軸lに沿って牽引バンド300の第2の端302に向かって部分的に延びていてもよい。第2の開口312は、第2の端302にあって、長手方向軸lに沿って第1の端301に向かって部分的に延びていてもよい。図3Fにおいて、図3Eの実施形態が、長手方向軸lに沿って延び、第1の開口部311と第2開口部312との間の第3の開口313をさらに含んでもよい。第4の開口314は、第3の開口313とほぼ平行をなして第1の開口311と第2の開口312との間に延びていてもよい。牽引バンド300の開口のいずれかは、クリップおよび追加の医療器具のうちの少なくともいずれか一方に係合されて、配置する、方向づける、及び/又は、牽引バンド300における張力の大きさまたは角度を調整する。
【0029】
図4では、第1の端401および第2の端402を有する牽引バンド400を含む牽引装置の実施形態が示されている。牽引バンド400は、両端401、402間に弾性を有し、かつ伸長可能な本体404を含む。長尺状管状中空体整合部材408は、弾性体404上に少なくとも部分的に延び得る。整合部材408は、装置の操作中にスコープ、他のイントロデューサシース、またはカテーテルの作業チャンネル内で牽引バンド400の位置合わせ及び方向付けのうちの少なくともいずれか一方をし得る。整合部材408は、弾性体404と作業チャンネルとの間の摩擦を低減し得る。複数のジョー432を含むクリップ430は、そのジョー432のうちの一方が、第1コネクタ本体411を介して牽引バンド400の第1の端401に連結されている。第2コネクタ本体412は、牽引バンド400の第2の端402に連結されている。フィラメント420は、牽引バンド400から離れる方向に第2コネクタ本体412から延びている。ループ424は、フィラメント420の端部に形成される。フィラメント420は、ネック部422によって第2コネクタ本体412からループ424まで延びている。ネック部422は、医療専門家が器具でループ424を可視化して操作するのがより容易になるように、コネクタ本体412からループ424をさらに遠くに延び得る。組織牽引装置は、送達装置のハンドルを操作することによって、医療専門家が送達装置450によって送達され得る。クリップ430は、クリップ430が連結された牽引バンド400の第1の端401を組織に送達するために、医療専門家によって使用され得る。ループ424は、追加のクリップなどの別の装置によって係合されてもよい。追加のクリップは、牽引バンド400の第2の端402が第1の端401から離れる方向に延びるように、別の生体構造または組織の別の部分にループ424を固定するために移動させてもよい。この形態では、牽引バンド400は、図4に示されている牽引バンド400の弛緩状態と比較して、より大きな軸方向の張力を受ける。図4の組織牽引装置は、上記の図1の装置とほぼ同様に使用し得る。
【0030】
図5Aでは、第1の端515、第2の端516、およびその内部を貫通するルーメン518を有するコネクタ本体510(限定する意図はないが、代わりにボビンと呼んでもよい)の実施形態が示されている。コネクタ本体510は、第1の端515よりも第2の端516で、より大きな直径を有している。牽引バンドおよび整合部材のうちの少なくともいずれか一方は、第1の端515よりも大きな外径を有するとともに、第2の端516より小さな外径を有しているため、牽引バンドおよび整合部材のうちの少なくともいずれか一方は、第1の端515の周囲に配置されているが第2の端516を超えて延びていない。コネクタ本体510は、第1の端515および第2の端516の直径よりも小さな直径を有するサドル領域519を含む。サドル領域519は、コネクタ本体510に摩擦連結するために牽引バンド整合部材のうちの少なくともいずれか一方のための領域を設け得る(たとえば、サドル領域519と第1の端515との間にある、サドル領域519の一部または全体に沿ったサドル領域519は、牽引バンドまたは整合部材にコネクタ本体を結合するための接着剤の塗布のための領域などであってもよい)。第2の端516は、端と比較してワーキングチャンネル、装置、または生体構造との摩擦を低減させる非侵襲的曲面を含んでもよい。コネクタ本体510は、たとえば、牽引バンドの捩じれが最小限であるように、コネクタ本体510がコネクタ本体510および牽引バンドのうちの少なくともいずれか一方の長手方向軸を中心として自由に回動するように、牽引バンドの開口、空洞、またはルーメンを介して牽引バンドに対して回動可能に連結されてもよい。
【0031】
図5Bを参照すると、ルーメン518を含むコネクタ本体510の実施形態の断面図が示されている。フィラメント520の第1の端521およびフィラメント520の第2の端522のそれぞれにループを有するフィラメント520がルーメン518内に配置されている。フィラメントは、ルーメン518を貫通して延びている中央部523を含む。フィラメント520の第1および第2の端521、522は、コネクタ本体510の同じ側でルーメン518の外方に延びている。ルーメン518に準ずるように寸法設定されたカニューレ526(たとえば、両者が確実に係着するように、ほぼ同様な直径および長さ)が、ルーメン518内に摺動自在に配置される。カニューレ526は、ルーメン518内でカニューレ526に沿って延びている中央部523によって、ルーメン518内のフィラメント520の中央部523を一時的に連結する。中央部523の少なくとも一部は、カニューレ526と、ルーメン518内の連結体本体510との間に挟まれてもよい。図5Cを参照すると、連結体本体510は牽引バンド500に連結される。使用時には、牽引バンド500の第1の端501は第1クリップ530によって標的組織540に連結され、牽引バンド500の第2の端502は第2クリップ534によって別の組織542に連結される。第2クリップ534は、フィラメントの第1の端521でループを係合することによって、他の組織540に牽引バンド500を連結し得る。この位置で、第2の端522のループは、コネクタ本体510から自由にぶら下がったままにしてもよい。本明細書全体に亘って説明されるように、牽引バンド500は、標的組織540と他の組織542との間に延ばされ得る。フィラメント520の中央部523をコネクタ本体510に連結しているカニューレ526は、カニューレ526および中央部523がルーメン518から離脱することなく牽引バンド500に張力を付与するように十分に堅くルーメン518に嵌合され得る。フィラメント523は、固定された第1の端521および張力を付与された第2の端522が、ルーメン518からカニューレ526および中央部523を取り外すように、フィラメント520の第2の端522のループを係合するとともに第2の端522を引っ張る器具によってコネクタ本体510から離脱され得る。両端521,522の間に延びているフィラメント520の部分とルーメン518の部分とは、長さがほぼ等しくてもよく、または長さが互いに異なっていてもよい。フィラメント520のこれらの部分の様々な長さによって、生体構造に両端521、522のうちの1つを取り付けるための好ましい長さを医師が選択することを可能にしてもよい。装置は、体内に留置して自然に消滅させてもよく、または装置の一部または全部を手術後に体内から取り除いてもよい。
【0032】
図5Dを参照すると、コネクタ本体510からフィラメント520が延びているコネクタ本体510の実施形態が示されている。コネクタ本体510の外側のフィラメント520の一部が、マンドレル560の外周囲でループ状に形成されている。
【0033】
図6A図6Gでは、フィラメント620の実施形態は、様々な方法で装置に連結され得る。図6Aは、装置に結び付けられる、装置内に埋め込まれる、または装置に対して球根状停止部を設け得る、一端に結び目628を有するフィラメント620を示す。図6Bは、牽引バンド600の各端から延びている2本のフィラメント620を備える牽引バンド600を示す。フィラメントは、それぞれ、牽引バンド600内に埋め込まれた結び目628を含む。フィラメント620の1つ以上の結び目628は、たとえば、結び目628の外周囲に牽引バンド600をオーバーモールドすることによって牽引バンド600内に埋め込まれてもよい。図6Cは、コネクタ本体610のルーメン618の外側に延びているフィラメント620を備えたコネクタ本体610を示す。フィラメント620は、たとえば、結び目によってコネクタ本体610に連結されてもよい。図6Dは、コネクタ本体610のルーメン618を通過して延びているフィラメント620の中央部623を備えたコネクタ本体610を示す。中央部623は、中央部に連結された固定要素629が、ルーメン618を通過して移動することができないように、ルーメン618の少なくとも一部の直径よりも大きい直径を有する固定要素629に連結されている。中央部623は、固定要素629に、結び付けられる、ループ状に巻き付けられる、溶接される、または別様に取りつけられている。図6Eは、フィラメント620に連結された球根状体627を備えたフィラメント620の端部を示す。球根状体627は、球根状体627がフィラメント620を装置に固定するように、別の装置の開口またはルーメンの直径よりも大きくてもよい。球根状体627は、圧着、溶融、溶接、または別様にフィラメント620に球根状体627を固着させることによって、フィラメント620に連結されてもよい。図6Fは、球根状部626を有するフィラメント620の端部を示す。球根状部626は、球根状部626がフィラメント620を装置に固定するように、別の装置の開口または内腔の直径よりも大きくてもよい。球根状部626は、より大きな直径の球根状部626へと形成されること、および追加の材料がフィラメント620の外周囲に形成されることのうちの少なくともいずれか一方となるように、少なくとも部分的にフィラメントを溶融することによって形成されてもよい。球根状部626の比率は、図示されたものとは異なっていてもよい。たとえば、球根状部は、その幅とほぼ等しい長さを有していてもよい。クリップは、クリップのジョーの開口を通って延びているフィラメントによって、フィラメント端(ループを含んでもよい)に連結されてもよい。たとえば、図6Gは、クリップ630のジョー631のうちの一方を貫通する開口635を備えたクリップ630を示す。球根状部626を有するフィラメント620は、開口635を通って延びている。球根状部626は、球根状体626を変形させるために十分な力を付与することなくフィラメント620を少なくとも1つの方向に開口635から引き出すことができないように、開口635よりも大きい直径を有する。
【0034】
図7では、体管腔770内での組織牽引システムの実施形態が示されている。牽引バンド700は、第1クリップ730によって一端で標的組織740に取り付けられ、牽引バンド700は、第2クリップ732によって第2の端で体管腔770の組織742の別の部分に取り付けられている。牽引バンド700は、医療専門家が、切断器具782で標的組織の周囲により容易にアクセスし得ること、および、(たとえばスコープ780を介して)生体構造または装置をより容易に可視化し得ることのうちの少なくともいずれか一方となるように、標的組織740に張力をかけることによって、標的組織740を切除するために切断器具782を操作している医療専門家を支援し得る。体管腔770の標的組織740と他の組織742とがそれぞれに対して移動する場合、牽引バンド700の張力を調整してもよい。張力は、体管腔の容積を増加させて、標的組織740と他の組織742とを分離させ、それによって牽引バンド700の張力を増加させるように、体管腔770に流体(たとえば、スコープ780の作業チャンネルを通した大気、COなど)を吹き込むことによって増加させてもよい。張力は、体管腔の容積を減少させ、標的組織740と他の組織742とをより接近させ、それによって牽引バンド700の張力を減少させるように、体管腔770から(たとえば、スコープ780の作業チャンネルを通して)、流体またはガス(大気、COなど)を吸引、または受動的に換気することによって減少させてもよい。牽引装置の送達前、送達中、または送達後に、通気または吸引のいずれかを体管腔に用い得る。
【0035】
様々な実施形態では、クリップは、回動する、または牽引バンドを中心として回動するために回動可能であり得る。クリップは、手術前、手技中、および手技後のうちの少なくともいずれか一つにおいて再配置可能であり得る。クリップは、単回使用クリップ(すなわち再配置可能ではない)であり得る。組織の切除などの医療処置は、張力が付与されている1つ以上の組織に連結された牽引装置を用いて実施され得る。手術中および手術後のうちの少なくともいずれか一方において、フィラメント、牽引バンド、整合部材、ネック部、および/またはループなどの装置の一部を切断することによって張力を解放し得る。組織牽引装置および関連する器具の例には、限定するものではないが、2019年10月18日に出願された、「Filament Cutting Devices, Systems, and Methods」と題された整理番号第8150.0674Z号の米国仮特許出願および、2020年5月13日に出願された、「Tissue Traction Bands and Methods for Tissue Traction」と題された米国特許出願第15/930620号(これらはいずれも、あらゆる目的のためにそれらのすべてが参照によって本願に組み込まれる)が含まれる。
【0036】
様々な実施形態では、牽引装置は、フィラメントを含まなくてもよく、1本のフィラメントを含んでもよく、または複数のフィラメントを含んでもよい。牽引バンドは、所望の長さを超えて牽引バンドが伸長することを防止するために、牽引バンドの両端間で延びている内部フィラメントを含んでもよい。牽引装置のフィラメントは、様々な形状および直径を有し得る1つ以上のループを含む、またはそれらまで延びる、またはそれらに連結されてもよい。
【0037】
様々な実施形態では、フィラメントは、ループ、フック、アンカー、結び目、バーブ、アイレット、それらの組み合わせなどの様々な形状を含み得る。様々な実施形態では、フィラメントは、ポリマーストランド(たとえば、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、熱可塑性エラストマー(TPE:thermoplastic elastomer)を含む弾性ポリマー、ポリイソプレン、シリコーンなど)、金属線(たとえば、ステンレス鋼、チタン、コバルトクロム、ニチノールなど)、および/または天然繊維(たとえば、綿、羊毛、絹など)を含み得る。フィラメントは、牽引バンドおよび周辺組織における張力の量を制限する安全機能として、あらかじめ定められた負荷で故障するように構成された材料強度を有し得る。フィラメントが他のフィラメントに対して視覚的に区別できるように、1本以上のフィラメントは、視覚的に標識し得る。たとえば、フィラメントは、医療専門家が、標的組織、固定組織、第2固定組織への固定のため、コネクタ本体から離脱させるためなどに選択されたフィラメントを容易に識別することができるように、色、パターン、または放射線不透過性を変更してもよい、
様々な実施形態では、牽引バンドおよび牽引バンドの弾性体のうちの少なくともいずれか一方は、柔軟材料または半柔軟材料(たとえば、熱可塑性エラストマー(TPE)、REZILIENT(商標)Rx15A、MEDALIST(商標)MD‐16110、ポリエチレンテレフタレート(PET:polyethylene terephthalate)、弾性ポリマー、ゴム、プラスチックなど)を含有し得る。牽引バンドは長尺状円筒管であってもよく、中空または中実に形成されてもよい。材料は、医療処置に関連する他の装置の材料と比較して、より低いデュロメータおよびより低い引張弾性率を備えた弾性であってもよい。透明または不透明な材料を使用してもよい。
【0038】
様々な実施形態では、組織引き込み装置を組み立てる工程のうちのいくつかは患者の体外で行ってもよく、組織牽引装置を組み立てる工程のうちの他のものは患者の体内で行ってもよい。本明細書に記載の工程は、必ずしも特定の順序およびタイミングまたは順序もしくはタイミングで行われるとは限らない。
【0039】
本明細書の装置、システムおよび方法の様々な実施形態で使用される医療器具は、図示および説明されたものに限定されるものではなく、様々な医療器具(たとえば、切除要素、生検針、注射針、はさみ、把持器、クリップなど)を含んでもよい。
【0040】
様々な実施形態では、医療専門家によって切除される標的組織の下および周囲のアクセス領域は可視化されてもよい。可視化は、光学的、透視的、超音波的などであってもよい。標的組織の下および周囲の領域の可視化は、医療専門家がアクセス領域に医療器具を操作して標的組織を切除するにあたり、十分には適切に示されない場合がある。医療専門家は、手術ためにアクセス領域を示す長さおよび張力のうちの少なくともいずれか一方で、標的組織および固定組織まで組織牽引装置またはシステムを送達して配備し得る。医療専門家は、標的組織またはアクセス領域の可視化に基づいてシステムの長さまたは張力を調整してもよい。
【0041】
様々な実施形態では、フィラメントは、クリップ、アンカー、ねじ、ピンなどの、組織に組織牽引装置を係合するように構成された様々な異なる留め具で係合されてもよい。たとえば、組織牽引装置での使用が企図されるクリップは、ハンドルアセンブリによる作動時に閉鎖/固定構成に移動するように構成された付勢開放形態を含んでもよい。さらに、またはあるいは、開示された組織牽引装置での使用が企図される組織クリップは、近位側のハンドルアセンブリによって、遠位端のエフェクタの作動(たとえば圧迫)時に開放形態に移動するように構成された付勢閉鎖形態を含んでもよい。さらに、またはあるいは、取り外し可能/離脱可能な組織クリップ以外の留め具、たとえば再配置不能クリップを、開示された組織牽引装置の取り付け部材を体管腔の壁に固定/係合するために使用してもよい。留め具の例は、限定するものではないが、2020年5月13に出願され、「Tissue Clip Devices, Systems, and Traction Methods」と題された米国特許出願第15/930604号、2019年10月30日に出願され、「Clip Devices, Systems, and Methods for Engaging Tissue」と題された米国特許出願第16/668341号、および2018年3月19日に出願され、2018年9月20日に公開され、「Tissue Retraction Device and Delivery System」と題された米国特許出願公開第US2018/0263614号で説明されているもの(あらゆる目的のためにそれらのすべてが参照によって本願に組み込まれる)を含んでもよい。
【0042】
様々な実施形態では、組織を引き込む方法は、組織牽引装置を標的組織に送達することを含み得る。牽引バンドの第1の端から延びている第1フィラメントおよびコネクタ本体のうちの少なくともいずれか一方は、標的組織に取り付けられ得る。牽引バンド装置の第2の端から延びている第2フィラメントおよびコネクタ本体の双方または一方は、別の組織に取り付けられ得る。標的組織は切除され得る。組織牽引装置によって標的組織に付与される組織牽引装置の張力および長さのうちの少なくともいずれか一方は調整されてもよい。1本以上のフィラメントと標的組織とは、クリップによって係合されてもよい。1本以上のフィラメントと他の組織とは、クリップによって係合され得る。標的組織の下のアクセス領域は可視化されてもよく、いずれかの装置の位置は、可視化されたアクセス領域に基づいて調整され得る。
【0043】
様々な実施形態では、標的組織を切除する方法は、牽引バンドの第1の端を標的組織に連結することを含んでもよい。牽引バンドの第2の端は、別の組織に連結されてもよい。標的組織を含む体管腔は通気されてもよく、それによって牽引バンドの張力を高めてもよい。標的組織は切除されてもよい。体管腔は吸引されてもよく、それによって標的組織と他の組織との間の距離を縮めてもよい。体管腔は換気されてもよく、それによって標的組織と他の組織との間の距離を縮めてもよい。牽引バンドの中央部は、第3組織に連結されてもよい。牽引バンドは、他の組織から離脱されてもよい。
【0044】
本明細書において開示および請求されている装置および方法または装置もしくは方法のすべては、過度の実験を要することなく、本開示に照らして製造および実行することができる。本発明の装置および方法は、好ましい実施形態に関して記載されているが、本発明の概念、趣旨および範囲から逸脱することなく、本装置および方法または本装置もしくは方法に、また本明細書に記載の方法の工程または工程の順序に、変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。当業者に明らかなすべてのそのような同様な代替物および変更は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の主旨、範囲および概念の範囲内と見なされる。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図7
【国際調査報告】