(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-06
(54)【発明の名称】放射線を発生させる装置及び方法
(51)【国際特許分類】
H01K 1/18 20060101AFI20230130BHJP
H01K 1/58 20060101ALI20230130BHJP
H01K 1/04 20060101ALI20230130BHJP
【FI】
H01K1/18
H01K1/58
H01K1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533515
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(85)【翻訳文提出日】2022-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2020084223
(87)【国際公開番号】W WO2021110721
(87)【国際公開日】2021-06-10
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517267802
【氏名又は名称】トリナミクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ファローフ,ゼバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ゼント,ロベルト
(57)【要約】
本発明は、具体的には赤外線スペクトル範囲内で、放射線(112)、特にパルス放射線(112)を発生させる装置(110)及び方法(210)に関する。さらに、本発明は、本方法(210)を実行するための実行可能な命令を含むコンピュータプログラム製品に関する。放射線(112)を発生させる装置(110)は:
- 少なくとも1つの放射線放出要素(116)であって、電流によって加熱されるときに放射線(112)を発生するように割り当てられている、少なくとも1つの放射線放出要素(116)と;
- マウント(128)であって、前記少なくとも1つの放射線放出要素(116)を担持し、前記マウント(128)又はその一部(134)が可動である、マウント(128)と;
- ヒートシンク(140)であって、前記マウント(128)と、前記マウント(128)によって接触されるときに前記マウント(128)によって担持される前記少なくとも1つの放射線放出要素(116)とを冷却するように割り当てられている、ヒートシンク(140)と、
を備える。
前記装置(110)、前記方法(210)、及び前記コンピュータプログラム製品は、特に、分光応用、特に赤外スペクトル範囲において使用されることができ、前記装置(110)は、好ましくは、照射源として使用されることができる。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線(112)を発生させる装置(110)であって、
前記装置(110)は:
- 少なくとも1つの放射線放出要素(116)であって、電流によって加熱されるときに放射線(112)を発生するように割り当てられている、少なくとも1つの放射線放出要素(116)と;
- マウント(128)であって、前記少なくとも1つの放射線放出要素(116)を担持し、前記マウント(128)又はその一部(134)が可動である、マウント(128)と;
- ヒートシンク(140)であって、前記マウント(128)と、前記マウント(128)によって接触されるときに前記マウント(128)によって担持される前記少なくとも1つの放射線放出要素(116)とを冷却するように割り当てられている、ヒートシンク(140)と、
を備える、装置(110)。
【請求項2】
前記放射線放出要素(116)は、金属フィラメント(114)、金属フィルム、グラファイトフィラメント、グラファイトフィルムのうちの少なくとも1つから選択される、加熱可能な要素であるか又はそれを含む、請求項1に記載の装置(110)。
【請求項3】
前記金属フィラメント(114)もしくは前記金属フィルムが、タングステンもしくはNiCrを含み、又は、前記グラファイトフィラメントもしくは前記グラファイトフィルムがグラファイトを含む、請求項2に記載の装置(110)。
【請求項4】
前記マウント(128)は、カンチレバー(148)、膜、又は可動電極(160)のうちの少なくとも1つから選択される可撓性又は可動性マイクロ電気機械構造体であるか、又はそれを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置(110)。
【請求項5】
前記マウント(128)は可撓性マウント(130)である、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置(110)。
【請求項6】
前記マウント(128)はバイメタル構造であるか又はそれを含む、請求項4又は5に記載の装置(110)。
【請求項7】
前記バイメタル構造は、前記少なくとも1つの放射線放出要素(116)によって提供される熱によって衝撃を受けたときに前記ヒートシンク(140)から離れるように設計されている、請求項6に記載の装置(110)。
【請求項8】
前記ヒートシンク(140)は、メタルブロック(150)又は前記装置(110)のベース(122)のうちの少なくとも1つから選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の装置(110)。
【請求項9】
前記ヒートシンク(140)を冷却するように割り当てられた冷却ユニット(152)をさらに備える、請求項1~8のいずれか1項に記載の装置(110)。
【請求項10】
ファブリペローキャビティをさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の装置(110)。
【請求項11】
放射線(112)を発生させる方法(210)であって、
以下のステップ:
a)マウント(128)を提供するステップであって、前記マウント(128)が少なくとも1つの放射線放出要素(116)を担持し、前記マウント(128)又はその一部(134)が可動である、ステップと;
b)電流を供給するステップであって、前記電流は、前記少なくとも1つの放射線放出要素(116)が放射線(112)を発生するように、前記少なくとも1つの放射線放出要素(116)を加熱する、ステップと;
c)前記電流を停止させるステップであって、それによって、前記少なくとも1つの放射線放出要素(116)が冷却する、ステップと;
d)前記マウント(128)又はその一部(134)がヒートシンク(140)に接触するように前記マウント(128)又はその一部(134)を移動させるステップであって、それによって、前記少なくとも1つの放射線放出要素(116)が冷却する、ステップと;
e)前記マウント(128)又はその一部(134)を、前記ヒートシンク(140)に接触している状態から取り外す、ステップと、
を含む、方法(210)。
【請求項12】
ステップe)の後に、前記方法(210)はステップb)によって再開され、それによって、放射線の連続パルス(112)が発生される、請求項11に記載の方法(210)。
【請求項13】
前記パルス放射線(112)は、ステップb)からe)を連続して実行するために使用される時間間隔の往復値に等しい変調周波数を含む、請求項12に記載の方法(210)。
【請求項14】
前記マウント(128)は、前記ヒートシンク(140)に接触している状態から、自立構成へと離され、前記自立構成は、前記マウント(140)又はその一部に電圧を印加することによって達成される、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法(210)。
【請求項15】
方法(210)が言及される請求項11~14のいずれか1項に記載の方法(210)を実行するための実行可能な命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線、特にパルス放射線、具体的には赤外スペクトル範囲内の放射線を発生させる装置及び方法に関し、発生された放射線は、好ましくは、熱放射源、特に白熱ランプ又は熱赤外線エミッタの放射スペクトルと類似の放射スペクトルを含み得る。さらに、本発明は、本方法を実行するための実行可能な命令を含むコンピュータプログラム製品に関する。本発明の装置、方法、及びコンピュータプログラム製品は、特に、分光用途、特に赤外スペクトル範囲における分光用途にて使用されることができ、該装置は、好ましくは、照射源として使用されることができる。しかしながら、さらなる種類の用途が考えられ得る。
【背景技術】
【0002】
赤外線スペクトル範囲内、具体的には1.5μm~15μmの波長で、放射線、特にパルス放射線を発生させる様々な装置及び方法が知られている。
【0003】
この目的のために、発光ダイオードなどの半導体、又は、レーザー、具体的に量子カスケードレーザーに基づく包括的で高価な放射線発生器を使用することができ、これによって、100Hz以上の変調周波数を可能にする。その結果、変調周波数は、特に1/fノイズの強い影響により、500Hz以上で特に感度が高くなるPbSセンサ又はPbSeセンサなどの赤外線センサの検出範囲にきちんと適合する。
【0004】
タングステン又はNiCrの低熱質量フィラメントを含むパルス可能な赤外線源によって安価で簡単な代替が提供される。この種のパルス可能な赤外線源は、2μm~20μmの波長範囲で放出するが、しかし、30Hzまでの変調周波数、より典型的には10Hzまでの変調周波数でのみパルス化でき、それによって、数100Kの温度変調を示すことができる。例として、この種のパルス可能な赤外線源は、HelioworksのEP-シリーズ又はEF-シリーズ(www.helioworks.comを参照)から、又はICx PhotonicsからのFLIR(www.amstechnologies.com/fileadmin/amsmedia/downloads/2533_IR_Broadband_Sources.pdfを参照)で入手可能である。このように、より高い変調周波数を実現するために、安価な赤外線源は、機械的なチョッパーホイールを使用することによって変調されるが、小型化された赤外線分光器に導入することは不可能である。
【0005】
本発明に関するさらなる技術的背景は、GB2502520A、EP0787282A1、WO2019/143294A1、EP0689229A2、及びJP2004206943Aのいずれか1つに見出すことができる。
【0006】
上述の方法及び装置によって示唆される利点にもかかわらず、放射線、特にパルス放射線、具体的には赤外線スペクトル範囲内のパルス放射線を発生させるための、特に分光応用において照射源として使用される簡単で費用効果が高く信頼できる装置及び方法に関して、依然として改善の余地が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】GB2502520A
【特許文献2】EP0787282A1
【特許文献3】WO2019/143294A1
【特許文献4】EP0689229A2
【特許文献5】JP2004206943A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明によって対処される問題は、放射線を発生させるための装置及び方法、ならびに該方法を実行するための実行可能な命令を含むコンピュータプログラム製品を特定することであり、これらは、このタイプの既知の装置及び方法の欠点を少なくとも実質的に回避する。
【0009】
特に1.5μmから15μmの波長範囲から選択される、具体的には赤外線スペクトル範囲の一部をカバーする広い波長範囲にわたって、放射線、特にパルス放射線を発生させるように割り当てられた費用効果が高く小型化された装置を提示することが特に望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この問題は、独立特許請求項の特徴を備えた本発明によって解決される。個別に又は組み合わせて実現されることができる本発明の有利な展開は、従属請求項及び/又は以下の明細書及び詳細な実施形態に示されている。
【0011】
本明細書で使用される場合、「有する」、「備える」、及び「含む」という用語、ならびにそれらの文法上の変形は、非排他的な方法で使用される。したがって、「AはBを有する」という表現、ならびに「AはBを備える」、又は「AはBを含む」という表現は、B以外に、Aは1つ以上のさらなる成分及び/又は構成要素を含むという事実、及びB以外に、他の成分及び/又は構成要素がAに存在しない場合の両方を指し得る。
【0012】
本発明の第1の態様では、放射線、特にパルス放射線、具体的には赤外線スペクトル範囲内のパルス放射線を発生させる装置が開示される。前記装置は:
- 少なくとも1つの放射線放出要素であって、前記放射線放出要素は、電流によって加熱されるときに放射線を発生するように割り当てられている、少なくとも1つの放射線放出要素と;
- マウントであって、前記マウントは、前記少なくとも1つの放射線放出要素を担持し、前記マウント又はその一部が可動である、マウントと;
- ヒートシンクであって、前記マウントと、前記マウントによって接触されたときに、前記マウントによって担持される前記少なくとも1つの放射線放出要素を冷却するように割り当てられる、ヒートシンクと、
を備える。
【0013】
一般的に使用されるように、「装置」という用語は、上記列挙された構成要素を含む物理的なユニットを指す。本明細書において、列挙された構成要素は、別々の構成要素であってよい。あるいは、2つ以上の構成要素が共通の構成要素に統合されてもよい。さらに、装置又はその少なくとも1つの構成要素は、さらなる装置にその一部として統合されてもよく、該さらなる装置は、好ましくは、以下により詳細に記載されるような分光器装置又はその一部であり得る。しかしながら、装置又はその一部を別のさらなる装置に少なくとも部分的に組み込むことも可能である。
【0014】
本明細書で使用される場合、「放射」という用語は、装置によって生成される光子の放射、好ましくは、放出された光子の波長が、具体的には赤外線スペクトル範囲を含むかなり広いスペクトル範囲をカバーするような態様で生成される、光子の放射を指す。一般に使用されるように、「赤外線スペクトル範囲」という用語は、780nm~1000μmをカバーする波長範囲を指し、1.5μm~3μmの波長範囲は「短波長赤外線」に割り当てられ、3μm~8μmの波長範囲は「中波長赤外線」に割り当てられ、一方、8μm~15μmの波長範囲は「長波長赤外線」に通常割り当てられる。具体的には、1μm、1.5μm、2μm、3μm、又は5μmから、8μm、15μm、50μm、又は100μmまでの波長範囲、すなわち短波長赤外線、中波長赤外線、及び任意で長波長赤外線をカバーする波長範囲が、本発明の目的には特に好ましい。
【0015】
本明細書でさらに使用される場合、「放射線を発生させる」という用語は、所望の効果が達成できるように本体に衝撃を加えることによって、本体から所望の波長範囲内の特定の波長を有する光子を放出する手順を指す。本発明に関して、本体は、所望の光子が放出される態様で少なくとも1つの放射線放出要素を加熱するように設計された電子を含む電流によって衝撃を加えられるように割り当てられた少なくとも1つの放射線放出要素であるか、又はそれを含む。
【0016】
本明細書で使用される場合、「放射線放出要素」という用語は、電流の印加によって、特に赤外線スペクトル範囲の少なくとも一部をカバーする放射線を発生させることが可能な熱放射源を指す。本明細書で使用される場合、「熱放射源」という用語は、特に可視スペクトル範囲及び赤外線スペクトル範囲の少なくとも一部における放射線を、熱プロセスで放出するように設計された照射源を指す。この目的のために、放射線放出要素は、放射線の効果的な発生に寄与するために、大きな表面を有していてよい。好ましくは、放射線放出要素は、したがって、具体的にはタングステン又はNiCrの少なくとも1つから選択される低電気伝導率を有する金属フィラメント又は金属フィルム、又は、やはり低電気伝導率を有するグラファイトを含むグラファイトフィラメント又はグラファイトフィルムを含むことができる。一般的に使用されるように、「フィラメント」という用語は、金属を含む糸状構造を指し、該糸状構造は、好ましくは、螺旋状の構造の形態で提供され、したがって、大きな表面積を提供し得る。特に、放射線放出要素は、熱赤外線エミッタであり得るか、又は熱赤外線エミッタを含み得る。本明細書で使用される場合、「熱赤外線エミッタ」という用語は、所望の放射線を放出するために割り当てられる放射線放出表面を含む微細加工された熱放射装置を指す。一例として、熱赤外線エミッタは、Axetris AG,Schwarzenbergstrasse 10,CH-6056 Kaegiswil,Switzerlandから「emirs50」の名で、LASER COMPONENTS GmbH,Werner-von-Siemens-Str.15 82140 Olching,Germanyから「熱赤外線エミッタ」として、又はHawkeye Technologies,181 Research Drive #8,Milford CT 06460,United Statesから「赤外線エミッタ」として入手することができる。しかしながら、さらなるタイプの熱赤外エミッタも可能である。
【0017】
放射線を発生させる目的のため、電流は、したがって、電流が所望の時間少なくとも1つの放射線放出要素に衝撃を加えられる態様で、印加されることができ、その後、光子のさらなる発生を終了させるためにスイッチを切ることができる。しかし、物理的な副作用として、熱は、少なくとも1つの放射線放出要素を介して、少なくとも1つの放射線放出要素を担持するマウントに放散され、したがって、両者とも電流によって加熱される。その結果、特にマウントの熱質量が大きいため、少なくとも1つの放射線放出要素は、さらなる光子の発生には低すぎて、それによって放射線の発生が終了する、少なくとも1つの放射線放出要素の温度ための冷却プロセスが配置されない限り、光子のさらなる発生を継続する。
【0018】
したがって、パルス放射線を発生させる装置を提供するためには、まず、光子の発生を終了させ、次に、一定時間後に光子の発生を再開できるように冷却プロセスを促進させることが望ましいであろう。したがって、「変調周波数」は、少なくとも1つの放射線放出要素に適用される単一の加熱プロセスとその後の冷却プロセスの両方をカバーする往復の時間として定義され得る。本明細書で使用される場合、この時間のうち、単一の加熱プロセスに使用される部分は、マウントがヒートシンクから切り離される「加熱段階」とも表されることができ、一方、この時間のうちのマウントがヒートシンクに結合される単一の冷却プロセスに使用される部分は、「冷却段階」と表されることもできる。上記に示したように、パルス放射線を発生させるための装置が、少なくとも1つの放射線放出要素のヒートシンクへの結合と切り離しの著しく改善された生起によって、高い変調周波数を示すことができることが好ましいであろう。ここで、変調周波数は、好ましくは、0.01Hz、0.1Hz、0.5Hz、1Hz、5Hz、10Hzから50Hz、100Hz、200Hz、250Hz、500Hz、1kHz以上の値を想定することができる。
【0019】
したがって、冷却プロセスを促進するためには、より効果的な冷却を提供することが望ましい。この目的のため、本発明による放射線発生装置は、ヒートシンクをさらに備える。一般的に使用されるように、「ヒートシンク」という用語は、ヒートシンクを囲む容積から熱の量を受け入れるために割り当てられる熱受容体を指す。この目的のために、熱受容体は、典型的には、十分な量の熱受容体積のうちの少なくとも1つを含むことができ、これは「冷熱質量」という用語でも表すことができ、少なくとも1つの熱受容材料と高い熱伝導率を有している。一般に、高い熱伝導率を使用すると、熱受容体積を減らすことができ、一方、高い熱受容体積を有すると、熱伝導率のより低い値でそれを行うことができる。一般的に使用されるように、「熱伝導率」という用語は、周囲の体積から熱を受容し伝達する熱受容材料の能力を指す。したがって、ヒートシンクは、好ましくは、メタルブロック又は装置のベースから選択されてよい。ここで、メタルブロックは、好ましくは、容易に入手でき、大きな熱伝導率を有することが知られている銅などの金属から選択されることができる。加えて、又は代替として、本発明による装置は、許容可能な熱伝導率を有する大きな熱受容体積を有し、したがって、ヒートシンクの目的に適しているベースを有することができる。
【0020】
本発明の特定の実施形態では、装置は、ヒートシンクを能動的又は受動的に冷却するように設計された冷却ユニットをさらに備え得る。一般的に使用されるように、「受動的に冷却する」という用語は、さらなるヒートシンク、又は、装置のベースなどのヒートシンクに取り付けられたさらなる本体、又は、熱の放散が本体の特に選択された形態によって及び/又は冷却されるべき本体の環境によって支持される配置など、この目的のためにエネルギーを使用せずに熱を受容することができるユニットに関する。これとは対照的に、「能動的に冷却する」という用語は、本体から遠ざかる方向に、熱を受け取る冷却剤、具体的にはガス又は液体を動かすために、追加のエネルギーを用いて本体を冷却するために割り当てられたユニット、ファン、又は熱電装置を指す。しかし、さらなる種類の冷却装置も可能である。
【0021】
所望の効果的な冷却を開始するために、本発明による放射線を発生させるための装置は、ヒートシンクが、マウントと、マウントが接触したときにマウントによって担持される少なくとも1つの放射線放出要素の両方を、冷却することができるように配置されている。しかしながら、マウントとヒートシンクの常時接触は、上述及び以下でより詳細に説明するように、所望の放射線を発生させるためにマウントによって担持される少なくとも1つの放射線放出要素の加熱を阻害する可能性があるため、不利である。
【0022】
したがって、加熱段階中に少なくとも1つの放射線放出要素の加熱を妨げることなく、冷却段階中に少なくとも1つの放射線放出要素の所望の効果的な冷却を開始するために、本発明による装置又はその一部によって含まれるマウントは、可動である。一般的に使用されるように、「可動」という用語は、本体全体又はそのそれぞれの部分が異なる時間に異なる空間位置を取り得ることを表す、本体又はその一部の特性を指す。その結果、第1の例では、本体全体は、第1の時間に第1の位置に、及び、第2の時間に第1の位置とは異なる第2の位置にあると想定することができる。代替的に又は追加的に、第2の例では、本体の特定の部分は、第1の時間に第1の位置に、及び、第2の時間に第1の位置とは異なる第2の位置にとあると想定することができ、一方、本体の他の部分は、第1の時間から第2の時間まで同じ位置に留まることができる。第1の例では、本体全体が可動であり、一方、第2の例では、本体は「可撓性」とみなすことができ、したがって、本体の一部が位置を変えることができるが、本体の他の部分は固定位置に留まることができる。
【0023】
したがって、第1の実施形態において、マウント全体は、ヒートシンクから分離されている第1の位置から、特にギャップだけ、ヒートシンクに接触している第2の位置まで、移動可能な可撓性マウントとして提供されることが可能である。代替的に又は追加的に、第2の実施形態において、マウントは、マウントの第1の部分が装置のベースに固定されることができ、一方、マウントの第2の部分が、ヒートシンクから分離されている第1の位置から、ヒートシンクに接触している第2の位置までの間で、特にギャップだけ、調整可能であるように配置される可撓性マウントとして提供されることができる。マウント全体又はマウントのそれぞれの部分が第1の位置と第2の位置との間で可動であるかどうかにかかわらず、マウント又はそのそれぞれの部分は、好ましくは、加熱段階中の第1の位置と、冷却段階中の第2の位置を想定することができ、したがって、マウント又はそのそれぞれの部分は、第1の位置と第2の位置との間で、逆に、第2の位置と第1の位置との間で、切り替え可能な「スイッチ」として機能し得る。その結果、少なくとも1つの放射線放出要素の所望の効果的な冷却は、マウント又はそのそれぞれの部分が、好ましくは、ヒートシンクに接触している第2の位置を想定し得る冷却段階中に行われることができ、それによって、少なくとも1つの放射線放出要素の加熱は、マウント又はそのそれぞれの部分が、好ましくは、ヒートシンクから分離されることができる第1の位置を想定し得る加熱段階中に行われ得る。その結果、マウント又はその一部の可動特性は、加熱プロセスと冷却プロセスを互いに妨げることなく行うことを可能にし、したがって、少なくとも1つの放射線放出要素の効果的な加熱及びその後の冷却に寄与することを可能にし、したがって、特に赤外線スペクトル範囲の一部をカバーする所望のパルス放射源を提供することができる。
【0024】
理論に拘束されることを望まないが、少なくとも1つの放射線放出要素の変調周波数は、一方では、少なくとも1つの放射線放出要素の熱質量によって制限され、他方では、少なくとも1つの放射線放出要素の熱伝導率によって制限され、熱質量及び熱伝導率の両方が、加熱プロセス及び冷却プロセスに影響を与える。加熱プロセスを促進するためには、少なくとも1つの放射線放出要素の小さな熱質量と、少なくとも1つの放射線放出要素の環境への低い熱伝導率は、加熱電力を低減するために望ましい。しかしながら、冷却プロセスのためには、少なくとも1つの放射線放出要素の環境への高い熱伝導率が望ましい。これらの相反する構造要求は、本発明による装置によって提供される特定の構造によって、特に、少なくとも1つの放射線放出要素を機械的に作動させ、ヒートシンクによって提供される大きな熱質量と熱接触させることによって、排除されることが可能である。マウントの小さな高温熱質量がヒートシンクの大きな低温熱質量に熱接触する結果、マウントとマウントによって担持される少なくとも1つの放射線放出要素の両方が急速に冷却される。
【0025】
第1の位置と第2の位置との間で、又はその逆の間で切り替え可能なスイッチを提供する目的のため、マウントは、好ましくは、少なくとも1つの放射線放出要素を担持する可動電極の形態で配置されることができ、一方、ヒートシンクは、固定電極の形態であって、装置のベース又はその一部によって任意に延設された形態をとるメタルブロックであり得る。ここで、可動電極は、加熱段階中にギャップによって固定電極から分離されることができ、一方、ギャップは、冷却段階中に、可動電極が固定電極に接触し、可動電極によって担持された少なくとも1つの放射線放出要素から可動電極を介してヒートシンクとして設計された固定電極へ、熱移動を発生させるように、閉じられることができる。可動電極を動かす目的のために、電圧が印加されてよく、該電圧は、電圧が可動電極を動かすために電圧を印加するか、又は可動電極を固定電極に接触する第2の位置に維持するために電圧を印加するかに依存して、冷却段階全体の間、又は少なくとも初期の冷却段階の間に、可動電極を固定電極に引っ張る静電気力を発生させることができる。代替案として、可動電極を固定電極に引っ張る静電気力を発生させ得る電圧は、可動電極をヒートシンクから離しておくために、加熱段階全体の間印加されてもよい。しかし、可動電極を動かすために割り当てられたさらなる配置も考えられる。
【0026】
特に好ましい実施形態では、少なくとも1つの放射線放出要素、ならびに少なくとも1つの放射線放出要素を担持するように割り当てられた可動性マウントは、マイクロ電気機械構造体(MEMS)であってもよく、又はそれを含んでいてもよい。この種の構造は、特に、費用効果が高い小型放射装置、特に費用効果の高い小型パルス放射装置を提供するように適合されることができる。この目的のために、本発明による装置で使用されるマウントは、好ましくは、マイクロ電気機械的に構造化された可動電極から選択されるだけでなく、代替的に、カンチレバー又は膜の少なくとも1つから選択され得る。一般的に使用されるように、「カンチレバー」という用語は、実質的に一次元に延設され、第1の端部で固定され、第2の端部で特定の範囲内で可動である可撓性の細長い舌部を指し、一方、「膜」という用語は、リムを有し、二次元に延設され、リムの第1の位置で固定され、リムの反対側の位置で特定の範囲内で可動である薄い構造体に関する。しかし、さらなるマイクロ電気機械構造体もまた可能であり得る。
【0027】
特定の実施形態では、膜は、発生した放射線をフィルタリングするための光学フィルタ、特に吸収フィルタ、特にハイパスフィルタ、ローパスフィルタ、もしくはバンドパスフィルタの少なくとも1つ、又はフォトニック結晶から選択される光学フィルタであるか、又はそれを含むことができる。例えば、バンドパスフィルタは、放射線放出要素の前に配置することができる。あるいは、フォトニック結晶が放射線放出要素の前に配置されることができる。一般的に使用されるように、「フォトニック結晶」という用語は、ナノ構造体内の光子の伝播に影響を与えるように設計され、特に少なくとも1つの不許可のエネルギーバンドが発生され得るように設計された周期的な光学ナノ構造体を指し、そこでは、光子の伝播が阻害される。その結果、フォトニック結晶は、不許可のエネルギーバンド内の波長に対するフィルタとして機能し得る。したがって、フォトニック結晶は、好ましくは、赤外線放射のフィルタリング及び/又はそれを所望の方向に向けるために使用され得る。一例として、上記に示したICx Photonicsによって製造されたFLIR装置に使用されているフォトニック結晶は、本装置に適合させることができる。しかしながら、さらなる種類の光学フィルタもまた可能である。
【0028】
加熱段階の間、マイクロ電気機械構造体は、マイクロ電気機械構造体が、特にメタルブロック又は装置のベースの少なくとも一方から選択されるヒートシンクに接触しないことを示す「自立構成」をとることができ、一方、冷却段階の間、マイクロ電気機械構造体は、ヒートシンクに接触し、マイクロ電気機械構造体によって担持された少なくとも1つの放射線放出要素からマイクロ電気機械構造体を通ってヒートシンクへの、所望の熱移動を発生することができる。ここで、マイクロ電気機械構造体を自立構成からヒートシンクに移動させるため又はマイクロ電気機械構造体をヒートシンクに接触する位置に維持するためのいずれかのために、初期の冷却段階の間に又は冷却段階全体の間は、マイクロ電気機械構造体に電圧を印加することが好ましい場合がある。代替案として、電圧は、マイクロ電気機械構造体をヒートシンクから離した状態に保つために、加熱段階全体の間は、印加されてもよい。しかしながら、マイクロ電気機械構造体を移動させること、及び/又は所望の位置に維持することは、別の方法で行うこともできる。
【0029】
特定の実施形態では、マイクロ電気機械構造体は、キャビティ、特にファブリペローキャビティに統合されてよい。具体的には、装置は、キャビティが提供され得るよう態様で形成され得るハウジングを含んでよい。一般的に使用されるように、「キャビティ」という用語は、線形光共振器を指し、共振器の長さは、共振器内で許容される波長を決定する。さらに、「ファブリペローキャビティ」という用語は、少なくとも2つの高反射性ミラーを含む特定の種類のキャビティを指し、少なくとも1つのミラーは小さな透過率を有し、このため、キャビティ内に捕捉されている放射線の一部が放出されて放射線としてキャビティを離れることを可能にする。この目的のために、装置は、平行に配置され、好ましくは互いに対して可動である少なくとも2つのミラーを含んでよく、それによって、装置によって放出される波長が決定される。その結果、この特定の実施形態は、有利に、フィルタリングされ、かつ調整可能な赤外線の放出の提供を可能にする。
【0030】
さらなる特定の実施形態では、マウントは、バイメタル構造であってもよく、又はバイメタル構造を含んでよい。一般的に使用されるように、「バイメタル構造」という用語は、好ましくはバイメタルストリップの形態で、一緒に接合された少なくとも2種の異なる金属を含む本体を指す。温度を変化させることにより、各金属の熱膨張率の差によって、バイメタル構造の一部が移動し、一方、別の部分は固定位置に保たれ得る。本発明による装置に関して、バイメタル構造は、したがって、好ましくは、バイメタル構造が熱によって衝撃を受けたときにヒートシンクから離れるように設計されることができ、ここで熱は、少なくとも1つの放射線放出要素によって提供され得る。バイメタル構造がマウントとして使用される特に適合された構成では、マウントは、したがって、外部トリガーを使用することを必要とせずに、加熱段階においてヒートシンクから自動的に離れ、一方、冷却段階においてヒートシンクに接触することができる。その結果、自己共振パルス赤外線エミッタがこの方法で提供されることができる。
【0031】
特に好ましい実施形態では、装置の少なくともいくつかの構成要素、特に放射線放出要素、マウント、及びマウントによって接触されるように設計されたヒートシンクの表面は、特に装置又はその少なくともいくつかの構成要素を過酷な環境などの環境から保護するため、好ましくは不活性ガスで満たされ、又は真空を有し得る容積によって構成されてよく、したがって、明確に定義された条件下での装置の作動を可能にする。ここで、容積は、閉じ込め体、好ましくは球状体を有し得、閉じ込め体は、好ましくは、特に発生された放射線の発光スペクトルに適合された材料を含むことができ、したがって、発生された放射線の大部分が閉じ込め体を通過することを可能にする。適切な材料は、ガラス又は溶融石英から選択されることができる。しかし、さらなる種類の保護的な構成も可能である。
【0032】
さらなる好ましい実施形態では、本発明による装置は、さらに、少なくとも1つの制御ユニットを含むことができる。本明細書で使用される場合、「制御ユニット」という用語は、一般に、装置に関連する少なくとも1つのパラメータ、特に加熱段階の持続時間、少なくとも1つの放射線放出要素に供給される電流の量、冷却段階の持続時間、マウントに印加される電圧の量、又は変調周波数、から選択される少なくとも1つのパラメータを制御するように設計されたユニットを指す。しかし、制御ユニットによって制御される他の種類のパラメータも考えられ得る。この目的のために、制御ユニットは、少なくとも1つの集積回路、例えば特定用途向け集積回路(ASIC)、少なくとも1つのフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、少なくとも1つのデジタル信号プロセッサ(DSP)、及び/又は、少なくとも1つのコンピュータ、好ましくは少なくとも1つのマイクロコンピュータ及び/又はマイクロコントローラなどの少なくとも1つのデータ処理装置であってよく、又はそれらを含んでいてもよい。追加の構成要素、例えば、少なくとも1つの前処理装置、及び/又はデータ取得装置、例えば、信号の受信及び/又は前処理のための少なくとも1つの装置、例えば、少なくとも1つのADコンバータ及び/又は1つのフィルタが含まれていてよい。さらに、制御ユニットは、少なくとも1つのデータ記憶装置を含むことができる。さらに、制御ユニットは、無線インターフェース及び/又は有線インターフェースなどの少なくとも1つのインターフェースを含むことができる。さらに、様々な目的のために電子通信ユニット、具体的にはスマートフォン又はタブレットによって既に含まれているデータ処理装置もまた、制御ユニットとして使用されることも可能である。さらに、分光器装置に既に含まれているデータ処理装置も、制御ユニットとして使用することができる。
【0033】
本発明のさらなる態様では、分光器装置が開示される。本発明によれば、分光器装置は:
- 照射源であって、物体のスペクトルを記録するために前記物体を照射するように割り当てられている、照射源と;
- 複数の放射線感受性センサを含む検出器アレイあって、少なくとも1つのセンサ信号を生成することによって、前記物体の前記スペクトルを記録するように割り当てられている、検出器アレイと;
- 分光器制御ユニットであって、前記少なくとも1つのセンサ信号から前記物体の前記スペクトルを決定するように割り当てられている、分光器制御ユニットと、
を有し、
前記照射源は、前記物体を照射するために本明細書に記載されるような放射線を発生させるための装置を備えている。
【0034】
結果として、「IRパルス発生器」とも表すことができる本発明による装置は、この好ましい実施形態において、統合された態様で分光器装置によって含まれ得る。しかしながら、代替案として、本発明による装置は、本明細書の他の箇所に記載されているように、好ましくは、特に照射源として使用されるために、任意の分光器装置に取り付け可能な別個のユニットとして提供されてよい。装置の実施形態に関係なく、装置は、特に、フーリエ変換(FT)赤外分光計において使用され得るパルス赤外放射を提供するために使用されてよい。しかしながら、本発明による装置のさらなる用途がさらに考えられ得る。
【0035】
本発明のさらなる態様では、具体的には赤外線スペクトル範囲内で、放射線、特にパルス放射線を発生させるための方法が開示される。本明細書に開示される方法は、以下のステップを含み、該ステップは、好ましくは、ステップa)から始まり、ステップe)で終わる所定の順序で実行されてよく、連続するステップは、少なくとも部分的に、同時に実行されてもよい。したがって、好ましい実施形態では、ステップc)は、このように、ステップd)の前に実行され得、それによって、電流は、マウント又はその一部がヒートシンクに接触するように移動され得る前に停止されてもよい。しかし、さらに好ましい実施形態では、ステップd)はステップc)によって後続され、したがって、マウント又はその一部は、電流が停止される前に、ヒートシンクに接触するように移動させられてよい。さらに、複数の放射パルスを発生させるために、本方法は、具体的には、ステップe)の後に、ステップb)によって方法の実行を再開することによって、再開されることができ、それによって、放射線の連続パルスを発生させることができる。さらに、ここには記載されていない追加のステップを実行することができる。
【0036】
本発明による方法は、以下のステップ:
a)マウントを提供するステップであって、前記マウントは少なくとも1つの放射線放出要素を担持し、前記マウント又はその一部が可動である、ステップと;
b)電流を供給するステップであって、前記電流は、前記少なくとも1つの放射線放出要素が放射線を発生させるように、前記少なくとも1つの放射線放出要素を加熱する、ステップと;
c)前記電流を停止させるステップであって、それによって、前記少なくとも1つの放射線放出要素が冷却する、ステップと;
d)前記マウント又はその一部がヒートシンクに接触するように、前記マウント又はその一部を移動させるステップであって、それによって、前記少なくとも1つの放射線放出要素が冷却する、ステップと;
e)前記マウントを前記ヒートシンクに接触している状態から取り外す、ステップと、
を有する。
【0037】
さらなる態様では、本発明は、本明細書の他の箇所に記載されるように、放射線を発生させるための方法を実行するための実行可能な命令を含むコンピュータプログラム製品に言及する。特に、実行可能な命令を含むコンピュータプログラム製品は、制御ユニットなどの電子装置、特に電子通信ユニット、具体的にはスマートフォン又はタブレット、又は分光器装置に、完全に又は部分的に統合されてよい。ここで、コンピュータプログラム製品は、様々な目的のためにスマートフォンによって既に含まれているデータ処理装置との関係で、本方法を実行することができる。一例として、本方法は、この目的のために、スマートフォン上で「アプリ」とも表されるアプリケーションとして実行されてよい。あるいは、コンピュータプログラム製品は、分光器装置によって既に含まれている分光器制御ユニットとの関係で、本方法を実行することが可能であってよい。さらに、さらなる種類の電子機器も考えられる。
【0038】
本発明による分光器装置、放射線発生方法、及びコンピュータプログラム製品に関するさらなる詳細については、本明細書の他の箇所で提供される放射線発生装置の説明を参照することができる。
【0039】
本明細書に開示される放射線を発生させるための装置及び方法は、従来技術よりもかなりの利点を有する。特に、本装置は、赤外線放射の発生、特に100Hz以上の変調周波数を有するパルス赤外線放射を発生させるように設計された、改良されているにも拘わらず製造が容易な、したがって費用効果が高い熱放射線源として使用されることが可能である。小さな熱質量を有する少なくとも1つの放射線放出要素を機械的に作動させ、それをヒートシンクによって提供される大きな熱質量と熱接触させることによって、少なくとも1つの放射線放出要素の小さな熱質量の急速加熱及び急速冷却の両方が、したがって、達成され得る。
【0040】
要約すると、本発明の文脈では、以下の実施形態が特に好ましいと考えられる:
実施形態1:放射線を発生させる装置であって、前記装置は:
- 少なくとも1つの放射線放出要素であって、電流によって加熱されるときに放射線を発生するように割り当てられている、少なくとも1つの放射線放出要素と;
- マウントであって、前記少なくとも1つの放射線放出要素を担持し、前記マウント又はその一部が可動である、マウントと;
- ヒートシンクであって、前記マウントと、前記マウントによって接触されるときに前記マウントによって担持される前記少なくとも1つの放射線放出要素を冷却するように割り当てられている、ヒートシンクと、
を備える、装置。
【0041】
実施形態2:前記放射線放出要素は、加熱可能な要素であるか、又はそれを含む、先行する実施形態による装置。
【0042】
実施形態3:前記加熱可能な要素は、金属フィラメント、金属フィルム、グラファイトフィラメント、グラファイトフィルムのうちの少なくとも1つから選択される、先行する実施形態による装置。
【0043】
実施形態4:前記金属フィラメント又は前記金属フィルムは、タングステン又はNiCrの少なくとも1つから選択される、先行する実施形態による装置。
【0044】
実施形態5:前記グラファイトフィラメント又は前記グラファイトフィルムは、グラファイトを含む、先行する2つの実施形態のうちのいずれか1つによる装置。
【0045】
実施形態6:前記放射線放出要素は、電流の印加によって加熱可能である、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる装置。
【0046】
実施形態7:前記マウントは、自立構成と前記ヒートシンクに接触している状態との間で切り替え可能である、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる装置。
【0047】
実施形態8:前記マウントは、可動性マウント及び可撓性マウントのうちの少なくとも1つから選択される、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる装置。
【0048】
実施形態9:前記マウントは、可撓性又は可動性マイクロ電気機械構造体であるか、又はそれを含む、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる装置。
【0049】
実施形態10:前記マイクロ電気機械構造体は、カンチレバー、膜、又は可動電極のうちの少なくとも1つから選択される、先行する実施形態による装置。
【0050】
実施形態11:前記マイクロ電気機械構造体は、キャビティに統合されている、先行する実施形態による装置。
【0051】
実施形態12:前記キャビティは、ファブリペローキャビティである、先行する実施形態による装置。
【0052】
実施形態13:前記マウントはバイメタル構造であるか、又はバイメタル構造を含む、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる装置。
【0053】
実施形態14:前記バイメタル構造は、前記少なくとも1つの放射線放出要素によって提供される熱によって衝撃を受けたときに前記ヒートシンクから離れるように設計されている、先行する実施形態による装置。
【0054】
実施形態15:前記ヒートシンクは、メタルブロック又は前記装置のベースのうちの少なくとも1つから選択される、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる装置。
【0055】
実施形態16:前記メタルブロックは、銅ブロックであるか、又は銅ブロックを含む、先行する実施形態による装置。
【0056】
実施形態17:前記ヒートシンクを冷却するための冷却ユニットをさらに備える、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる装置。
【0057】
実施形態18:前記冷却ユニットは、能動的冷却ユニット又は受動的冷却ユニットである、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる装置。
【0058】
実施形態19:前記能動的冷却ユニットは、冷却剤、ファン、又は熱電装置のうちの少なくとも1つを備える、先行する実施形態による装置。
【0059】
実施形態20:発生された放射線をフィルタリングするための少なくとも1つの光学フィルタをさらに備える、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる装置。
【0060】
実施形態21:前記光学フィルタは、吸収フィルタ又はフォトニック結晶のうちの少なくとも1つから選択される、先行する実施形態による装置。
【0061】
実施形態22:前記吸収フィルタは、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ、又はバンドパスフィルタから選択される、先行する実施形態による装置。
【0062】
実施形態23:不活性ガスで満たされ容積、又は真空をさらに含む、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる装置。
【0063】
実施形態24:前記装置の少なくともいくつかの構成要素、特に前記放射線放出要素、前記マウント、及び前記マウントによって接触されるように設計された前記ヒートシンクの表面が、前記容積によって含まれる、先行する実施形態による装置。
【0064】
実施形態25:前記容積は、閉じ込め体、好ましくは球状体を有する、先行する2つの実施形態のうちのいずれか1つによる装置。
【0065】
実施形態26:前記閉じ込め体は、前記発生された放射線の放出スペクトルに適合された材料を含む、先行する実施形態による装置。
【0066】
実施形態27:前記材料はガラス又は溶融石英から選択される、先行する実施形態による装置。
【0067】
実施形態28:前記装置は、790nm~1000μmの波長を有する放射線を発生させるように適合されている、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる装置。
【0068】
実施形態29:前記装置は、パルス放射線を発生させるように割り当てられている、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる装置。
【0069】
実施形態30:前記パルス放射線は、好ましくは少なくとも50Hz、100Hz、200Hz、250Hz、500Hz、1kHz又はそれ以上の変調周波数を示す、先行する実施形態による装置。
【0070】
実施形態31:制御ユニットをさらに含む、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる装置。
【0071】
実施形態32:前記制御ユニットは、前記装置に関連する少なくとも1つのパラメータを制御するように設計されている、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる装置。
【0072】
実施形態33:前記少なくとも1つのパラメータは、加熱段階の持続時間、前記少なくとも1つの放射線放出要素に供給される電流の量、冷却段階の持続時間、前記マウントに印加される電圧の量、又は変調周波数、から選択される、先行する実施形態のうちのいずれか1つによる装置。
【0073】
実施形態34:分光器装置であって、
- 照射源であって、物体のスペクトルを記録するために前記物体を照射するように割り当てられている、照射源と;
- 複数の放射線感受性センサを含む検出器アレイあって、少なくとも1つのセンサ信号を生成することによって、前記物体の前記スペクトルを記録するように割り当てられている、検出器アレイと;
- 分光器制御ユニットであって、前記少なくとも1つのセンサ信号から前記物体の前記スペクトルを決定するように割り当てられている、分光器制御ユニットと、
を有し、
前記照射源は、先行する実施形態のいずれか1つによる放射線を発生させる装置を備えている、分光器装置。
【0074】
実施形態35:前記放射線を発生させる装置は、統合された様式で前記分光器装置によって含まれる、先行する実施形態による分光器装置。
【0075】
実施形態36:分光器装置に関連する先行する実施形態のいずれか1つによる分光計装置。
【0076】
実施形態37:放射線を発生させる方法であって、以下のステップ:
a)マウントを提供するステップであって、前記マウントが少なくとも1つの放射線放出要素を担持し、前記マウント又はその一部が可動である、ステップと;
b)電流を供給するステップであって、前記電流は、前記少なくとも1つの放射線放出要素が放射線を発生するように、前記少なくとも1つの放射線放出要素を加熱する、ステップと;
c)前記電流を停止させるステップであって、それによって、前記少なくとも1つの放射線放出要素が冷却する、ステップと;
d)前記マウント又は前記その一部がヒートシンクに接触するように前記マウント又はその一部を移動させるステップであって、それによって、前記少なくとも1つの放射線放出要素が冷却する、ステップと;
e)前記マウント又はその一部を、前記ヒートシンクに接触している状態から取り外す、ステップと、
を含む、方法。
【0077】
実施形態38:ステップe)の後に、前記方法がステップb)によって再開され、それによって、放射線の連続パルスが発生される、先行する実施形態による方法。
【0078】
実施形態39:前記パルス放射線は、ステップb)からe)を連続して実行するために使用される時間間隔の往復値に等しい変調周波数を含む、先行する実施形態による方法。
【0079】
実施形態40:前記マウントは、ステップe)の間は、前記ヒートシンクに接触している状態から自立構成へと離される、方法に関連する先行する実施形態のいずれか1つによる方法。
【0080】
実施形態41:前記自立構成は、前記マウント又はその一部に電圧を印加することによって達成される、先行する実施形態による方法。
【0081】
実施形態42:前記ヒートシンクは冷却される、方法に関連する先行する実施形態のいずれか1つによる方法。
【0082】
実施形態43:前記ヒートシンクは、能動的又は受動的に冷却される、先行する実施形態による方法。
【0083】
実施形態44:前記ヒートシンクは、冷却剤、ファン、又は熱電装置のうちの少なくとも1つを用いて能動的に冷却される、先行する実施形態による装置。
【0084】
実施形態45:前記発生された放射線は、780nm~1000μmから選択される波長を有している、先行する実施形態による方法。
【0085】
実施形態46:方法に関連する先行する実施形態のいずれか1つによる方法を実行するための実行可能な命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【図面の簡単な説明】
【0086】
本発明のさらなる任意の詳細及び特徴は、従属請求項と関連して続く好ましい例示的な実施形態の説明から明らかである。この文脈では、特定の特徴は、単独で、又は特徴と組み合わせて実装されることができる。本発明は、例示的な実施形態に限定されるものではない。例示的な実施形態は、図に概略的に示されている。個々の図における同一の参照番字は、同一の要素又は同一の機能を有する要素、あるいは、機能に関して互いに対応する要素を指す。
【0087】
具体的には、その図は、以下の通りである。
【
図1】
図1A及び
図1Bは、本発明による放射線を発生させる装置の好ましい例示的な実施形態を示す図である。
【
図2】
図2A及び
図2Bは、本発明による放射線を発生させる装置のさらに好ましい例示的な実施形態を示す図である。
【
図3】本発明による放射線を発生させる方法の好ましい例示的な実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0088】
例示的な実施形態
図1A及び1Bのそれぞれは、本発明による放射線112を発生させる装置110の例示的な実施形態を非常に概略的に示している。本発明の範囲を限定することなく、金属フィラメント114が、放射線放出要素116として、
図1及び
図2の例示的な実施形態に使用されている。代替として、他の種類の放射線放出要素116、好ましくは金属フィルム、グラファイトフィラメント、又はグラファイトフィルム、特に上記でより詳細に説明したような熱赤外線エミッタ(ここでは示されず)の放射線放出表面もまた、
図1及び2の例示的な実施形態内の同様の方法で使用されることができる。
【0089】
図1A及び
図1Bのそれぞれにさらに概略的に示されているように、放射線放出要素116は、特にガラス又は溶融石英の球状体118によって保護されることができ、そこでは、具体的にはタングステン又はNiCrを含み得る金属フィラメント114が、好ましくは不活性ガスで満たされるか、又は真空を有する球状体118によって閉じ込められた容積120に配置されている。この例示的な実施形態では、球状体は、装置110のベース122に取り付けられている。しかしながら、他の種類の放射線放出要素116の保護も考えられる。
【0090】
所望の放射線112を発生させる目的のために、金属フィラメント114は、ここでは対応するリード126を介して電流源124によって提供される電流によって、金属フィラメント114の加熱がかなり広いスペクトル範囲、具体的には赤外線(IR)スペクトル範囲の一部をカバーする光子の放出を生じるように、衝撃を与えられる。一般的に使用されるように、IRスペクトル範囲は、780nm~1000μmの波長をカバーしており、ここでは、1.5μm~15μmの範囲又はその一部が特に好ましい場合がある。
【0091】
図1A及び1Bにさらに示されるように、本発明による装置100は、マウント128をさらに備え、マウント128は少なくとも1つの放射線放出要素116を担持する。本発明によれば、マウント128又はその一部は可動である。
図1の例示的な実施形態では、マウントは、可撓性マウント130として提供され、該可撓性マウント130は、可撓性マウント130の固定部分132が装置110のベース122に固定され、一方、可撓性マウント130の可撓性部分134が、
図1Aに示されるように、特にギャップ138だけヒートシンク140から分離される第1の位置136から、
図1Bに示されるように、ヒートシンク140に接触することによってヒートシンク140に結合される第2の位置142までの間で、調整可能であるように配置される。
図1Aと
図1Bとの比較から導き出され得るように、可撓性マウント130の可撓性部分134は、したがって、
図1Aに示される加熱段階中の第1の位置136と、
図1Bに示される冷却段階中の第2の位置142を想定することができ、したがって、第1の位置136と第2の位置142の間で、及びその逆の間で、切り替え可能な「スイッチ」として機能することができる。その結果、放射線放出要素116は、一方では
図1Aに示されるように、加熱段階中に加熱され、加熱段階中では、可撓性マウント130の可撓性部分134はギャップ138だけヒートシンク140から分離されている第1の位置136をとり、他方では
図1Bに示されるように、冷却段階中に効果的に冷却され、冷却段階では、可撓性マウント130の可撓性部分134はヒートシンク140に接触している第2の位置142をとる。その結果、可撓性マウント130の可撓性部分134は、互いに妨げることなく放射線放出要素116の加熱プロセス及び冷却プロセスの両方を実行することを可能にし、したがって、放射線放出要素116の効果的な加熱及びその後の冷却に寄与し、それによって、特に、赤外線スペクトル範囲の一部をカバーする所望のパルス放射源が提供される。
【0092】
可撓性マウント130の可撓性部分134を、自立構成をとる第1の位置136から、ヒートシンク140に接触させるために、又は可撓性マウント130の可撓性部分134がヒートシンク140に接触する位置142に可撓性マウント130を維持するために、第2の位置142へ移動させるため、電圧が、好ましくは初期冷却段階又は冷却段階全体で、可撓性マウント130に印加され得る。代替として、電圧は、加熱段階全体の間で、放射線放出要素116をヒートシンク140から分離された状態に維持するために、印加されてよい。
図1A及び1Bに示されるように、電圧は、電圧源144を使用することによって、及び少なくとも1つの対応するリード146を介して、概略的に示された実施形態において、可撓性マウント130に印加され得る。
【0093】
さらなる代替として、可撓性マウント130は、上記でより詳細に説明されているように、バイメタル構造(ここでは示されず)であってもよい。したがって、可撓性マウント130のバイメタル構造は、好ましくはバイメタルストリップの形態で、一緒に接合された少なくとも2種類の金属を含み得る。温度を変更することによって、各金属の熱膨張率の差は、好ましくは、バイメタル構造の固定部分132が装置110のベース126に維持され得る一方で、バイメタル構造の可撓性部分134の移動をもたらし得る。結果として、バイメタル構造は、好ましくは、放射線放出要素116によって提供される熱によって衝撃を受けたときにヒートシンク140から離れるように移動することができるように設計され得る。この種類の構成において、可撓性マウント130は、したがって、加熱段階の間は、ヒートシンク140から自動的に分離され、一方、冷却段階の間は、外部トリガーなしにヒートシンク140に接触することができ、したがって、自己共振パルス赤外線エミッタを提供し得る。
【0094】
図1A及び1Bに示されるような好ましい実施形態では、放射線放出要素116を担持する可撓性マウント130は、カンチレバー148の形態で配置されている。しかしながら、他の形態、特に膜(ここでは示されず)の形態もまた可能である。さらにこの実施形態では、ヒートシンク140は、メタルブロック150として、好ましくは、特に材料銅の高い熱伝導率のおかげで、可撓性マウント130を介して放射線放出要素116から大量の熱を受け取ることを可能にする銅ブロックとして構成される。しかしながら、かなりの熱伝導率を有する他の材料も、この目的のために使用されることができる。ヒートシンク140の冷却効果をさらに高めるために、ヒートシンク140は、冷却ユニット152と熱的に接触していてもよく、該冷却ユニットは、液体又は気体の冷却剤、ファン、又は熱電装置などの能動的冷却ユニット;又は例えばさらなるヒートシンク、装置110のベース122などのヒートシンク140に取り付けられたさらなる本体、又は熱の放散がヒートシンク140の特に選択された形態によって及び/又はヒートシンク140の環境によって担保される構成、などの受動的冷却ユニットであってもよい。冷却ユニットは、冷却制御ユニット154によって制御されてよい。
図1A及び
図1Bに概略的に示されるように、冷却制御ユニット154は、少なくとも電流源124と電圧源144と共に、制御ユニット156によって含まれてよい。しかしながら、さらなる配置が考えられる。
【0095】
さらに、装置110は、
図1A及び1Bに示されるような構成要素に加えて、キャビティ又は光フィルタなどのここに描かれていない少なくとも1つのさらなる構成要素を含み得る。ここで、マウントは、キャビティに統合されていてよく、キャビティは、線形光共振器を提供し、共振器の長さは、共振器内で許容される波長を決定するように適合される。特に、キャビティは、少なくとも2つの高反射ミラーを含むファブリペローキャビティであってよく、ミラーの少なくとも1つは小さな透過率を有し、したがって、キャビティに捕捉された放射線112の小さな部分が放出放射線112としてキャビティから出ることを可能にする。光学フィルタは、発生された放射線112をフィルタリングするために使用されることができ、光学フィルタは、吸収フィルタ、特にハイパスフィルタ、ローパスフィルタ、もしくはバンドパスフィルタから;又は本明細書の他の箇所に記載されているようなフォトニック結晶であり得る。その結果、キャビティ、特にファブリペローキャビティ、及び/又は光学フィルタを備える装置110は、フィルタリングされ、かつ、調整可能な赤外線の放出を提供することが可能である。
【0096】
さらなる好ましい実施形態(ここでは示されず)では、分光器装置は、好ましくは統合された様式で、本発明の装置110を含むことができ、制御装置156の機能は、分光器装置に既に存在する分光器制御装置によって提供されることができる。しかしながら、さらなる種類のアプリケーションもまた、可能であり得る。
【0097】
図2A及び
図2Bのそれぞれは、本発明による装置110のさらに好ましい例示的な実施形態を高度に概略的に示している。この実施形態では、マウント128の全体は、
図2Aに示されるように、第1の位置162から可動な可動電極160として提供されることができ、そこでは、マウント128は特にギャップ138だけ、ヒートシンク140から分離されており、
図2Bに示されているように、第2の位置166でヒートシンク140として使用される固定電極164に可動電極160を引っ張る静電力を発生し得る電圧を印加することにより、可動電極160はいまやヒートシンク140に接触することによってヒートシンク140に結合される。
【0098】
特に、適切な接点材料が、接点の溶融、融解又は溶接なしに、装置110の高温動作のために、この特定の実施形態で使用される。可動電極160を、固定電極166に及び/又は固定電極166から、結合及び/又は分離するために、電気接続が必要とされないため、酸化アルミニウムなどの1000℃超の動作温度を有する金属酸化物層が使用され得る。シリコンはマウント128に有利な高い電気抵抗を提供するため、さらに好適な材料はシリコンであり得る。
【0099】
図2A及び
図2Bに概略的に示される実施形態に関するさらなる詳細については、上記に提供された
図1A及び
図1Bに示される実施形態の説明を参照することができる。
【0100】
しかしながら、
図1又は
図2に示される本発明による装置110の好ましい例示的な実施形態の他に、装置110のさらなる実施形態も考えられることを、ここに記しておく。
【0101】
図3は、本発明による放射線112を発生させる方法210の好ましい例示的な実施形態を示している。
【0102】
提供するステップ212においては、マウント128は、方法210のステップa)に従って提供され、マウント128は放射線放出要素116を担持し、マウント128又はマウント128の可撓性部分134は可動である。
【0103】
加熱するステップ214においては、マウント128は、方法210のステップb)に従って電流によって加熱され、電流は、放射線放出要素116が所望の放射線112を発生するように放射線放出要素116を加熱する。
【0104】
終了するステップ216においては、電流は、方法210のステップc)に従って終了され、それによって放射線放出要素116はゆっくりと冷却を開始する。
【0105】
冷却するステップ218においては、マウント128又はマウント128の可撓性部分134の可動であるいずれかが、方法210のステップd)に従って移動され、それがヒートシンク140に接触し、それによって放射線放出要素116が急速に冷却する。
【0106】
代替の実施形態(ここでは示されず)では、マウント128又はマウント128の可撓性部分134の可動であるいずれかが、まず、方法210のステップd)に従う態様で冷却ステップ218で移動され、それがヒートシンク140に接触し、それによって、放射線放出要素116がゆっくりと冷却を開始する。その後でのみ、電流が、方法210のステップc)に従って、終了するステップ216で終了される。
【0107】
終了するステップ216及び冷却するステップ218が実行される順序に関係なく、電流は、方法200のステップe)に従って、取り外しステップ220で終了され、マウント128又はマウント128の可撓性部分134の可動であるいずれかが、ヒートシンク140接触した状態から取り外され、それによって、放射線放出要素116のさらなる冷却が停止される。
【0108】
図3に示される方法210の特に好ましい実施形態では、方法210は、ステップb)による加熱するステップ214を再び行うことによって、ステップe)による取り外しステップ210の後に再開され、この方法で、放射線112の連続パルスを発生することが可能である。特に、変調周波数をパルス放射線112に割り当てることができ、変調周波数は、ステップb)~e)を連続して行うために使用される時間間隔の往復値に等しい。
【符号の説明】
【0109】
110 装置
112 放射線
114 金属フィラメント
116 放射線感受性要素
118 球状体
120 容積
122 ベース
124 電流源
126 リード
128 マウント
130 可撓性マウント
132 固定位置
134 可撓性部分
136 第1の位置
138 ギャップ
140 ヒートシンク
142 第2の位置
144 電圧源
146 リード
148 カンチレバー
150 メタルブロック
152 冷却ユニット
154 冷却制御ユニット
156 制御ユニット
160 可動電極
162 第1の位置
164 固定電極
166 第2の位置
210 方法
212 提供するステップ
214 加熱するステップ
216 終了するステップ
218 冷却するステップ
220 取り外しステップ
【国際調査報告】