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特表2023-504731タウオパチーを処置するためのペプチド組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-06
(54)【発明の名称】タウオパチーを処置するためのペプチド組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/17 20060101AFI20230130BHJP
   A61K 38/39 20060101ALI20230130BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230130BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230130BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230130BHJP
   A61K 31/445 20060101ALI20230130BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230130BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20230130BHJP
   C07K 9/00 20060101ALI20230130BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20230130BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20230130BHJP
【FI】
A61K38/17
A61K38/39
A61K45/00
A61P25/28
A61P25/00
A61K31/445
A61P43/00 121
A61K38/10
A61P43/00
C07K9/00 ZNA
C07K14/00
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533577
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(85)【翻訳文提出日】2022-07-14
(86)【国際出願番号】 EP2020084746
(87)【国際公開番号】W WO2021110976
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】19306582.8
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20305925.8
(32)【優先日】2020-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518100421
【氏名又は名称】アクソルティス・ファーマ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マニュエル・ブラン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ゴドフラン
(72)【発明者】
【氏名】ジュリエット・ル・ドゥース
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA18
4C084BA19
4C084BA26
4C084BA41
4C084CA28
4C084CA59
4C084DA40
4C084MA02
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA57
4C084MA59
4C084MA63
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA151
4C084ZA152
4C084ZA161
4C084ZA162
4C084ZC201
4C084ZC202
4C084ZC751
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC21
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA56
4C086MA57
4C086MA59
4C086MA63
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZC20
4C086ZC75
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA16
(57)【要約】
本発明は、SCO-Spondin由来のペプチドを全身経路を通して患者に投与することを用いる、アルツハイマー病等のタウオパチーの処置に関する。前記ペプチドは、アミノ酸配列X1-W-S-A1-W-S-A2-C-S-A3-A4-C-G-X2を有し、式中、A1、A2、A3、及びA4は、1~5個のアミノ酸からなるアミノ酸配列からなり、X1及びX2は、1~6個のアミノ酸からなるアミノ酸配列からなるか、又はX1及びX2は不在である。N末端アミノ酸をアセチル化すること、C末端アミノ酸をアミド化すること、又はN末端アミノ酸をアセチル化し、C末端アミノ酸をアミド化することが可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全身経路を通して対象に投与される、タウオパチーの処置における使用のための、アミノ酸配列
X1-W-S-A1-W-S-A2-C-S-A3-A4-C-G-X2(配列番号1)
のペプチドであって、式中、
- A1、A2、A3、及びA4が、1~5個のアミノ酸からなるアミノ酸配列からなり、
- X1及びX2が、1~6個のアミノ酸からなるアミノ酸配列からなるか、又はX1及びX2が不在であり、
- N末端アミノ酸をアセチル化すること、C末端アミノ酸をアミド化すること、又はN末端アミノ酸をアセチル化し、C末端アミノ酸をアミド化することが可能である、
ペプチド。
【請求項2】
アミノ酸配列
W-S-A1-W-S-A2-C-S-A3-A4-C-G(配列番号2)
の、請求項1に記載の使用のためのペプチドであって、式中、
A1、A2、A3、及びA4が、1~5個のアミノ酸からなるアミノ酸配列からなる、
使用のためのペプチド。
【請求項3】
直鎖状ペプチドであるか、又は、配列番号1及び2のペプチド式に存在するシステインがジスルフィド架橋を形成している酸化ペプチドであるか、又は直鎖状ペプチド及び酸化ペプチドの両方の混合物である、請求項1又は2に記載の使用のためのペプチド。
【請求項4】
- A1が、G、V、S、P、及びA、好ましくはG、Sから選択され、
- A2が、G、V、S、P、及びA、好ましくはG、Sから選択され、
- A3が、R、A、及びV、好ましくはR、Vから選択され、並びに/又は
- A4が、S、T、P、及びA、好ましくはS、Tから選択される、
請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のためのペプチド。
【請求項5】
A1及びA2がG及びSから独立して選択される、及び/又はA3-A4がR-S又はV-S又はV-T又はR-Tから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のためのペプチド。
【請求項6】
配列番号3~63の配列からなる群から選択される配列のペプチドである、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のためのペプチド。
【請求項7】
直鎖状にされた形態であるか、環化した形態であるか、又は両者の混合物である、配列番号3の配列のペプチドである、請求項6に記載の使用のためのペプチド。
【請求項8】
タウオパチーが、アルツハイマー病(AD)、進行性核上性麻痺(PSP)、ピック病等のタウ陽性の前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症、大脳皮質基底核変性症、ニーマン・ピック病C型、ボクサー認知症を含む慢性外傷性脳症、及び脳炎後パーキンソニズムからなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のためのペプチド。
【請求項9】
タウオパチーがアルツハイマー病(AD)である、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のためのペプチド。
【請求項10】
対象におけるタウの凝集の低減又は破壊、対象におけるタウタンパク質の低減、リン酸化したタウタンパク質のレベルの低減を誘導する、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のためのペプチド。
【請求項11】
静脈内経路、腹腔内経路、鼻腔内経路、皮下経路、筋肉内経路、舌下経路、又は経口経路を介して患者に投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のためのペプチド。
【請求項12】
対象が十分量のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤でも処置される、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のためのペプチド。
【請求項13】
ペプチドが全身経路を通して対象に投与される、タウオパチーを処置するための方法において使用するための、請求項1~7のいずれか一項に記載のペプチド及びアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の組み合わせ。
【請求項14】
少なくとも1つのSCO-Spondin由来のペプチド、及びアセチルコリンエステラーゼ阻害剤、好ましくはDPZ、及び薬学的に許容可能なビヒクル、担体、又は賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項15】
全身経路を通して対象に投与される、タウオパチーの処置に使用するための、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1~7のいずれか一項に記載のペプチド及び薬学的に許容可能なビヒクル又は賦形剤を含む治療量の組成物を、全身経路を通して対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象におけるタウオパチーを処置する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルツハイマー病(AD)等のタウオパチーの処置のためのペプチド、ペプチド組成物、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タウオパチーは、タウタンパク質の病理学的凝集に関連する神経変性障害の一クラスである。タウは、中枢神経系において豊富で軸索において主に発現する微小管関連タンパク質である。タウタンパク質は、ニューロンでの微小管ネットワークの安定化において役割を有し得る。タウの過剰な又は異常なリン酸化は、疾患の進行の主な原因であると考えられているタウの凝集を生じさせ得る。
【0003】
タウのリン酸化は、微小管へのタウの結合の制御において重要な正常な代謝プロセスであり、常に脳内で起きている。加齢及び神経変性疾患の両方で、タウは過剰リン酸化され得、そして、組織における検出可能な原線維の蓄積として凝集し得る。
【0004】
タウオパチーとしては、例えば、アルツハイマー病(AD)、進行性核上性麻痺(PSP)、ピック病等のタウ陽性の前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症、大脳皮質基底核変性症、ニーマン・ピック病C型、ボクサー認知症を含む慢性外傷性脳症、脳炎後パーキンソニズムが含まれる。AD等の一部のタウオパチーでは、タウの凝集に加えて、アミロイドβペプチドの凝集が見られる。
【0005】
タウオパチーの治療選択肢は非常に限られている。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(AChEI)(ドネペジル、ガランタミン、及びリバスチグミン)は、ADの対症療法の中心であり、シナプスにおけるアセチルコリンの破壊を阻害することによって、アセチルコリンの利用可能性を増大させる。しかし、一部の患者は時間とともに、処置に応答しなくなるか又は処置の利益を受けなくなる。更に、一部の患者は副作用を受けることがある。その結果、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤が禁忌である患者がいる。したがって、タウオパチーの革新的な治療選択肢に対する大きなメディカルニーズが存在する。
【0006】
SCO-Spondin由来のペプチドが、それらの神経再生特性について、特に、インビトロでの細胞生存及び神経突起伸長を改善するそれらの能力について記載されている。脊髄損傷の処置のためのSCO-spondin由来のペプチドの使用は、動物モデルにおいて調べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO99/03890
【特許文献2】US6,995,140
【特許文献3】WO2018146283
【特許文献4】WO2017/051135
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Carsten Hennegesら、Journal of Alzheimer's Disease 52 (2016)、1065~1080
【非特許文献2】Bart Sheehan、Therapeutic Advances in Neurological Disorders 2012、5(6)、349~358
【非特許文献3】www.rxlist.com/aricept-drug.htm#indications
【非特許文献4】Biophysical Journal、第95巻、2008年11月、4879~4889
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、タウオパチーの及び/又はタウタンパク質が病理に関与する障害の処置に有用な組成物及び方法を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、タウオパチーの並びに/又はアミロイドβタンパク質及びタウタンパク質が病理に関与する障害の処置に有用な組成物及び方法を提供することである。
【0011】
別の目的は、アルツハイマー病(AD)、進行性核上性麻痺(PSP)、ピック病等のタウ陽性の前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症、大脳皮質基底核変性症、ニーマン・ピック病C型、ボクサー認知症を含む慢性外傷性脳症、脳炎後パーキンソニズムの処置に有用な組成物及び方法を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、対象における、タウタンパク質の凝集を低減若しくは破壊する、タウタンパク質を低減させる、並びに/又はタウタンパク質の過剰な及び/若しくは異常なリン酸化を低減させるための組成物及び方法を提供することである。更に別の目的は、タウタンパク質、例えば、増大した若しくは病理学的なタウタンパク質レベル、並びに/又はタウタンパク質の凝集、並びに/又はタウタンパク質の過剰な及び/若しくは異常なリン酸化を特徴とする又は少なくとも部分的にこれを原因とする疾患又は障害に罹患している対象にとって有利であり得る、そのような組成物及び方法を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、更にアミロイドβプラークの形成に干渉し得る、アミロイドβの凝集を予防し得る、及び/又は既に形成されたアミロイドβ蓄積体若しくはアミロイドβ凝集体を脱重合させ得る、そのような組成物及び方法を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、タウオパチーの処置のための活性成分の全身投与に適合する組成物及び方法を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤が禁忌である患者におけるタウオパチーの処置において有用な組成物及び方法を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、患者におけるタウオパチーの処置において有用な組成物及び方法を、タウオパチーの処置に適応である別の薬剤と組み合わせて提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、SCO-Spondin由来のペプチドがタウオパチーの処置に有用であり得るという、予想外の発見をした。特に、本発明者らは、SCO-Spondin由来のペプチドがタウ、特にそのリン酸化を調節し、タウタンパク質の蓄積又はタウタンパク質の凝集を低減させるという、予想外の発見をした。加えて、本発明者らは、この有利な効果がペプチドの全身投与を通して得られることを実証した。更に、本発明者らは、本発明に従った組成物又は方法が、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤での処置が禁忌である患者にとって、又は更にアセチルコリンエステラーゼ阻害剤に対して耐性のケースで、有利であり得ることを発見した。
【0018】
全身投与は、この特定の状況において、本発明のペプチドにとって予想外に効率的である。全身投与は、処置対象の患者にとってより安全であり、より都合が良いため、タウが調節されていない部位での直接的な投与又はCSFへの直接的な投与(髄腔内若しくは脳内注射)よりも大きな利点がある。この投与様式の重要な又は有利な態様は、これが、医療専門家による所定の患者への経時的な反復投与を可能にすることである。ペプチドは、灌流を介するものを含む注射又は注入を通して容易に投与することができる。本発明者らはまた、全身投与後のこれらのペプチドの生物学的利用能又は病変レベルでの生物学的効果が、過度に大量のペプチドの投与を必要としないことも見出した。予想外に、ペプチド(ネイティブな又は未修飾の)は、全身投与後に生物学的効果を発揮する。また、予想外に、ペプチドの半減期が非常に短い(サルでは約12分、ヒトでは約19分)にもかかわらず、CNSで生物学的効果が見られる。また、予想外に、この非常に短い半減期にもかかわらず、ペプチドを毎日又は2日ごとに投与した場合に、ペプチドの効能が見られた。
【0019】
本明細書において、タウオパチーを処置するためのSCO-Spondin由来のペプチドを含む組成物が記載される。この使用によって、細胞内のタウタンパク質の総レベル、リン酸化したタウタンパク質のレベル、タウの凝集、又はこれらの組み合わせの低減が可能となる。この使用によって、毒性タウオリゴマーの低減、並びにタウオパチー及びその進行の処置又は減速又は予防が可能となる。
【0020】
本明細書において、禁忌とされない限り、全ての開示される特徴は、「使用のための組成物」、「使用方法」、及び「医薬の製造のための前記ペプチドの使用」である様々な主題に適用される。
【0021】
一態様において、本発明は、対象におけるタウオパチーを処置するための、使用のための少なくとも1つのSCO-Spondin由来のペプチドを含む組成物、及び少なくとも1つのSCO-Spondin由来のペプチドを投与する工程を含む方法に関する。当該使用及び方法は、有効量又は十分量の少なくとも1つのSCO-Spondin由来のペプチドを対象に投与する工程を含み得る。一実施形態において、少なくとも1つのSCO-Spondin由来のペプチドの全身投与が行われる。
【0022】
別の態様において、本発明は、対象におけるタウの凝集を低減若しくは破壊する、及び/又は前記対象におけるタウオパチーを処置するための、使用のための少なくとも1つのSCO-Spondin由来のペプチドを含む組成物、並びに、少なくとも1つのSCO-Spondin由来のペプチドを投与する工程を含む方法に関する。当該使用及び方法は、有効量又は十分量の少なくとも1つのSCO-Spondin由来のペプチドを対象に投与する工程を含み得る。一実施形態において、少なくとも1つのSCO-Spondin由来のペプチドの全身投与が行われる。
【0023】
別の態様において、本発明は、対象におけるタウタンパク質及び/若しくはタウタンパク質の過剰リン酸化を低減させる、並びに/又は前記対象におけるタウオパチーを処置するための、使用のための少なくとも1つのSCO-Spondin由来のペプチドを含む組成物、及び少なくとも1つのSCO-Spondin由来のペプチドを投与する工程を含む方法に関する。当該使用及び方法は、有効量又は十分量の少なくとも1つのSCO-Spondin由来のペプチドを対象に投与する工程を含み得る。一実施形態において、少なくとも1つのSCO-Spondin由来のペプチドの全身投与が行われる.
【0024】
別の態様において、本発明は、対象への全身投与を通してのタウオパチーの処置における使用のための少なくとも1つのSCO-Spondin由来のペプチドを含む組成物に関する。別の態様において、本発明は、全身経路を通して少なくとも1つのSCO-Spondin由来のペプチドを対象に投与する工程を含む、タウオパチーを処置するための方法に関する。
【0025】
別の態様において、本発明は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤が禁忌である、又は忍容性がない若しくはもはや忍容性がない、又は十分に活性でない、又はもはや活性でない対象を処置するための、使用のための少なくとも1つのSCO-Spondin由来のペプチドを含む組成物、及び少なくとも1つのSCO-Spondin由来のペプチドを投与する工程を含む方法に関する。
【0026】
別の目的では、本発明は、タウオパチーを処置するための医薬組成物を製造するための、少なくとも1つのSCO-Spondin由来のペプチドの使用に関する。一実施形態において、組成物は、全身投与のためのものである。一実施形態において、組成物は、全身投与のための薬学的賦形剤又はビヒクルを含む。
【0027】
これらの異なる態様の一部の実施形態において、タウオパチーは、アルツハイマー病(AD)、進行性核上性麻痺(PSP)、ピック病等のタウ陽性の前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症、大脳皮質基底核変性症、ニーマン・ピック病C型、ボクサー認知症を含む慢性外傷性脳症、及び脳炎後パーキンソニズムからなる群から選択される。
【0028】
これらの異なる態様の一実施形態において、タウオパチーはADである。ADは、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(例えばドネペジル)での処置が禁忌である、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤での処置が十分に活性でない若しくはもはや活性でない、患者がアセチルコリンエステラーゼ阻害剤に対する耐性を示した、又は患者がアセチルコリンエステラーゼ阻害剤に対する不耐性を示したものであり得る。
【0029】
一実施形態において、使用は、更に、アミロイドβプラークの形成に干渉し得、アミロイドβの凝集を予防し得、及び/又は既に形成されたアミロイドβ蓄積体若しくはアミロイドβ凝集体を脱重合させ得る。
【0030】
一実施形態において、対象はまた、十分量のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤で処置される。
【0031】
別の目的では、本発明は、タウオパチーを処置するための方法における使用のための、少なくとも1つのSCO-Spondin由来のペプチドと、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、好ましくはDPZとの組み合わせに関するものであり、ここでペプチドは、全身経路を通して対象に投与される。両活性成分の投与は、特に、別個、同時、又は連続的であり得る。
【0032】
別の目的では、本発明は、少なくとも1つのSCO-Spondin由来のペプチド、及びアセチルコリンエステラーゼ阻害剤、好ましくはDPZ、及び薬学的に許容可能なビヒクル、担体、又は賦形剤を含む医薬組成物に関する。好ましくは、組成物は、全身経路を通しての投与に適している。一実施形態において、組成物は、タウオパチーの処置に使用するためのものであり、前記組成物は、全身経路を通して対象に投与される。
【発明を実施するための形態】
【0033】
タウオパチー
本明細書において詳述される組成物及び方法は、タウオパチーを処置するために使用することができる。
【0034】
一部の実施形態において、本明細書において詳述される組成物及び方法は、タウオパチーを処置するために、タウタンパク質を調節する。タウは、微小管に結び付きこれを安定化させるタンパク質である。タウはまた、微小管関連タンパク質タウ(MAPT)とも呼ばれる。タウタンパク質はまた、チューブリンと相互作用して、微小管を安定化させ、微小管へのチューブリンのアセンブリを促進し得る。6つのタウアイソフォームが存在する。タウタンパク質は中枢神経系のニューロンで豊富であり、また、中枢神経系(CNS)のアストロサイト及びオリゴデンドロサイトにおいて非常に低いレベルで発現する。タウタンパク質は、ニューロン内の微小管ネットワークの安定化において役割を有し得る。
【0035】
タウの過度なリン酸化(過剰リン酸化)及び異常なリン酸化を含む、タウの変化したリン酸化は、タウタンパク質の微小管での組織化、蓄積、及び/又は凝集を破壊し得る。一部の実施形態において、タウ凝集体は適正に機能しない。例えば、タウ凝集体は、微小管を適正に安定化させない。タウ凝集体としては、例えば、PHF-タウ(対合したらせん状フィラメント)、NFT(神経原線維変化)、及びグリオ原線維(gliofibrillary)変化が含まれる。タウ凝集体はまた、単量体又は高分子量の多量体及びオリゴマーとして記載され得る。タウ凝集体は不溶性であり得る。タウ凝集体は、脳に存在し得る。タウタンパク質は、腫脹したニューロン内に封入体の形で蓄積し得る。オリゴマー種へのタウの凝集は、タウオパチーと呼ばれる様々な病理をもたらし得、疾患の進行の主な原因であり得る。
【0036】
タウオパチーは、タウの変化したリン酸化及び/又はタウの病理学的凝集に関連する神経変性疾患の一クラスである。
【0037】
本明細書において詳述される組成物及び方法は、タウタンパク質のレベルを阻害する若しくは低減させ得るか、細胞内の総タウタンパク質レベルを阻害する若しくは低減させ得るか、リン酸化したタウタンパク質のレベルを阻害する若しくは低減させ得るか、タウタンパク質の凝集を阻害する若しくは低減させる若しくは破壊し得るか、又はこれらの組み合わせであり得る。レベルは、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約98%低減し得る。タウの凝集は、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約98%低減し得る。
【0038】
本明細書において詳述される組成物及び方法は、タウオパチーを処置するために、タウタンパク質のレベルを阻害する若しくは低減させ得るか、細胞内の総タウタンパク質レベルを阻害する若しくは低減させ得るか、リン酸化したタウタンパク質のレベルを阻害する若しくは低減させ得るか、タウタンパク質の凝集を阻害する若しくは低減させる若しくは破壊し得るか、又はこれらの組み合わせであり得る。
【0039】
「全身投与」は、投与されたペプチド又はペプチド化合物の大部分又は十分量がこのような投与の後に血液循環に達する、あらゆる投与態様又は経路を意味する。髄腔内投与、及び、ペプチドを血液循環に標的化しない全ての全身的投与手段は排除される。本発明の全身投与経路は、「血液を標的とした全身投与経路」に適格である。
【0040】
ペプチド("peptide"又は"peptides"又は"peptide(s)")の投与又は使用は一般的な表現であり、本発明は、1つの単一ペプチド又は2つ以上の単一ペプチドの投与又は使用、すなわち、本開示に従った少なくとも2つのペプチドの投与又は使用を包含する。したがって、本開示において、単数形又は複数形は、そうでないことが示されていない限り限定されず、毎回、1つの単一ペプチド又は少なくとも2つのペプチドを包含し得る。同じことが、「ペプチド」と互換的に使用され得る同様の表現「ペプチド化合物」にも当てはまる。
【0041】
「処置」は、ある量の本発明に従ったペプチド化合物を対象に送達することを意味する。本明細書において使用されるこれらの用語は、望ましくない生理学的状態、障害、若しくは疾患を減速させる(減らす)こと、又は有利な若しくは所望の臨床結果を得ることを目的とする、治療を指す。本発明の目的では、有利な又は所望の臨床結果としては、限定はしないが、症候の軽減;状態、障害、又は疾患の程度の減弱;状態、障害、又は疾患の状況の安定化(すなわち悪化させないこと);発病の遅延、又は状態、障害、若しくは疾患の進行の減速;状態、障害、又は病状の改善;及び、検出可能な若しくは検出不可能な寛解(部分寛解若しくは完全寛解)、又は、状態、障害、若しくは疾患の向上若しくは改善が含まれる。処置としてまた、処置を受けていない場合の予想される寿命と比較して寿命を延ばすことが含まれる。用語「処置」には、疾患を予防すること、抑制すること、抑止すること、改善させること、又は完全に取り除くことが含まれる。疾患の予防は、疾患の発病の前に本発明の組成物を対象に投与することを伴い得る。疾患の抑制は、疾患の誘発後であるがその臨床的所見の前に本発明の組成物を対象に投与することを伴い得る。疾患の抑止又は改善は、疾患の臨床的所見の後に本発明の組成物を対象に投与することを伴い得る。一実施形態において、有利な又は所望の臨床結果としては、記憶喪失及び/又は認知機能障害に対する有利な効果、例えば、減退、遅延、又は部分的若しくは完全な回復が含まれる。
【0042】
用語「阻害する」は、阻害剤の不存在下とは対照的に阻害剤の存在下で活性が低下する又は予防されることを意味する。用語「阻害」は、生体分子又はポリペプチドの発現又は活性をなくす又は最小化する、プロセスの低減若しくは下方調節、又はプロセスのための刺激の除去を指す。阻害は、直接的又は間接的であり得る。阻害は特異的であり得、すなわち、阻害剤は生体分子又はポリペプチドを阻害し、他のものは阻害しない。
【0043】
「有効量」、「十分量」、及び「治療有効量」等の類似の用語は、別段の定義がない限り、本明細書において互換的に使用され、また、所望の治療結果を達成するために必要な期間にわたり効果的な、本発明の1つ又は複数のペプチドの投与量を意味する。有効投与量は当業者によって決定され得、個体の病状、年齢、性別、及び体重、並びに、薬剤の、個体において所望の応答を引き起こす能力等の因子に従って変化し得る。本明細書において使用されるこの用語は、対象において所望のインビボ効果をもたらすために有効な量も指す。治療有効量は、1つ又は複数の投与(例えば、組成物は、疾患の進行の任意の段階で、症候の前若しくは後等に、予防的処置として若しくは治療的に投与され得る)、適用、又は投与量で投与され得、特定の製剤、組み合わせ、又は全身投与経路に限定することを意図したものではない。ペプチドを対象の処置の過程の様々な時点で投与し得ることは、本開示の範囲内である。使用される投与時間及び投与量は、処置の目標(例えば、処置と予防)、対象の状態等のいくつかの因子に依存し、また、当業者によって容易に決定され得る。治療有効量はまた、物質のあらゆる毒性の又は有害な影響を治療上有利な効果が上回る量でもある。「予防有効量」は、所望の予防的結果を達成するために必要な投与量で、及び期間にわたり、有効な量を指す。典型的には、予防用量は、疾患の早期段階の前に、又は当該段階で対象において使用されるため、予防有効量は治療有効量よりも少なくてよい。ペプチドの量を個別に考える場合、及び/又は別の活性成分との組み合わせを考える場合、「有効量」、「十分量」はまた、異なるペプチドの組み合わせも考慮し得、これを理由として、例えば、組み合わせ中の1つ又は2つの薬剤の用量は、組み合わされた効果又は相乗効果の結果によって減らすことができる。
【0044】
本明細書において使用される用語「含む(comprise(s))」、「含む(include(s))」、「有する(having)」、「有する(has)」、「できる」、「含有する(contain(s))」、及びこれらの変形は、更なる作用又は生成物、例えば、ペプチド、化合物、又は薬剤の可能性を排除しない、オープンエンドの移行句、表現、又は語であることが意図される。単数形「a」、「及び」、及び「the」は、文脈から別段のことが明らかに示されない限り、複数形の言及を含む。本開示はまた、明確に示されていてもいなくても、本明細書において提示される実施形態又は要素を「含む」、当該実施形態又は要素「からなる」、及び当該実施形態又は要素「から基本的になる」他の実施形態も検討する。
【0045】
「患者又は対象」は、動物、特に、ヒトを含む哺乳動物を意味する。一実施形態において、対象はヒトである。他の実施形態において、対象は、大型動物若しくは家畜、コンパニオンアニマル(例えば、ネコ、イヌ)、又はスポーツアニマル(例えばウマ)である。
【0046】
本発明のペプチドと組み合わせて使用され得る「アセチルコリンエステラーゼ阻害剤」としては、ドネペジル、ガランタミン、及びリバスチグミン、又は規制当局によって承認されているあらゆる他のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤が含まれる。一実施形態において、このような阻害剤、特にドネペジルは、NX210と、NX218と、又はNX210及びNX218(SCO-Spondin由来のペプチド)の両方と組み合わせて使用される。
【0047】
本明細書において使用される場合、「同時に」又は「同時の」は、2つの作用剤が並行して投与されることを意味するために使用され、一方、「組み合わせて」という用語は、これらが同時投与されない場合には、これらの両方が同一の時間枠内で治療的に作用するために利用可能となる時間枠内で「連続的に」投与されることを意味するために使用される。したがって、「連続的に」又は「連続的な」投与では、最初に投与された作用剤の循環中半減期が、両作用剤を治療有効量で並行して存在させるものであるという条件で、一方の作用剤は、他方の作用剤が提供された後5分、10分、又は数時間以内に投与され得る。成分の投与の間の時間遅延は、成分の正確な性質、それらの間の相互作用、及びそれらのそれぞれの半減期に依存して変化する。「個別に」又は「個別の」は、1つの作用剤の投与と他方の作用剤の投与との間の間隔が大きい、すなわち、数時間、数日間、数週間、又は数か月間であることを意味するために本明細書において使用され、これは、最初に投与された作用剤が、第2の作用剤が投与された時には血液循環中にもはや治療有効量では存在しないケースを含み得る。
【0048】
SCO-Spondin由来のペプチド
「SCO-Spondin」は、中枢神経系に特異的な糖タンパク質であり、脊椎動物の全て、脊索前方からヒトまでにおいて存在する。これは、第三脳室蓋に位置する特定の器官である交連下器官によって分泌される細胞外マトリクスの分子として知られている。これは、サイズの大きな分子である。これは、4500を超えるアミノ酸からなり、特に26のTR又はTSRパターンを含む様々な保存されたタンパク質パターンを含む、マルチモジュラー構成を有する。TSRパターンから始まるSCO-Spondin由来のある特定のペプチドが神経細胞又はニューロン細胞において生物学的活性を有することは公知である(特に、WO99/03890において記載されている)。
【0049】
「TSR又はTRパターン」は、保存されたアミノ酸であるシステイン、トリプトファン、及びアルギニンのアラインメントに基づくおよそ55~60残基からなるタンパク質ドメインである。これらのパターンは、凝固に関与する分子であるTSP-1(トロンボスポンジン1)において最初に単離された。これらのパターンはその後、SCO-Spondin等の多くの他の分子において記載された。実際、このトロンボスポンジン1型単位(TSR)は、これまでに研究された及び以前に言及された全てのタンパク質において、約55~60のアミノ酸(AA)を含み、システイン(C)、トリプトファン(W)、セリン(S)、グリシン(G)、アルギニン(R)、及びプロリン(P)のような、これらアミノ酸の一部は、高度に保存されている。
【0050】
SCO-Spondinペプチド又はペプチド化合物は、本発明(本発明の様々な目的、例えば、使用のためのペプチド又は組成物、使用方法、処置方法、医薬を製造するためのペプチドの使用等)の実施において使用される。
【0051】
特に、本発明は、配列
X1-W-S-A1-W-S-A2-C-S-A3-A4-C-G-X2(配列番号1)
のペプチドを使用し、
式中、
A1、A2、A3、及びA4は、1~5個のアミノ酸からなるアミノ酸配列からなり、
2つのシステインはジスルフィド架橋を形成しているか又は形成しておらず、
X1及びX2は、1~6個のアミノ酸からなるアミノ酸配列からなるか、又はX1及びX2は不在であり、
N末端アミノ酸をアセチル化すること(例えば、H3CCOHN-を有するようにすること)、C末端アミノ酸をアミド化すること(例えば、-CONH2を有するようにすること)、又はN末端アミノ酸のアセチル化及びC末端アミノ酸のアミド化の両方を行うことが可能である。
【0052】
一実施形態において、配列番号1の式において、X1又はX2又はX1及びX2の両方は不在である。一実施形態において、X1及び/又はX2が不在である場合、N末端のWはアセチル化されており、及び/又はC末端のGはアミド化されている。好ましくは、X1及びX2の両方は不在であり、N末端のWはアセチル化されており、そしてC末端のGはアミド化されている。
【0053】
特に、本発明は、配列
W-S-A1-W-S-A2-C-S-A3-A4-C-G(配列番号2)
のペプチドを使用し、式中、
A1、A2、A3、及びA4は、1~5個のアミノ酸からなるアミノ酸配列からなり、
2つのシステインは、ジスルフィド架橋を形成しているか又は形成していない。
【0054】
配列番号1及び2の式の一実施形態において、ペプチドは直鎖状ペプチドであるか、又は、配列番号1及び2のペプチド式に存在するシステインは、ジスルフィド架橋を形成していない(還元形態)。
【0055】
別の実施形態において、配列番号1及び2のペプチド式に存在する2つのシステインは、ジスルフィド架橋を形成している(酸化形態)。
【0056】
好ましくは、配列番号1及び2の式において、A1、A2、A3、及び/又は好ましくはA4は、好ましくは1つ又は2つのアミノ酸からなり、更に好ましくは1つのアミノ酸からなる。
【0057】
好ましくは、A1は、G、V、S、P、及びA、更に好ましくはG、Sから選択される。
【0058】
好ましくは、A2は、G、V、S、P、及びA、更に好ましくはG、Sから選択される。
【0059】
好ましくは、A3は、R、A、及びV、更に好ましくはR、Vから選択される。
【0060】
好ましくは、A4は、S、T、P、及びA、更に好ましくはS、Tから選択される。
【0061】
好ましくは、A1及びA2は、G及びSから独立して選択される。
【0062】
好ましくは、A3-A4は、R-S又はV-S又はV-T又はR-Tから選択される。
【0063】
好ましくは、X1、X2、A1、A2、A3、及びA4は、システインを含まない。
【0064】
X1が、1~6個のアミノ酸からなるアミノ酸配列である場合、アミノ酸は任意のアミノ酸であり、好ましくは、V、L、A、P、及びこれらの任意の組み合わせから選択される。
【0065】
X2が、1~6個のアミノ酸からなるアミノ酸配列である場合、アミノ酸は任意のアミノ酸であり、好ましくは、L、G、I、F、及びこれらの任意の組み合わせから選択される。
【0066】
一実施形態において、配列番号1又は2のペプチドは、A1及びA2がG及びSから独立して選択され、A3-A4がR-S又はV-S又はV-T又はR-Tから選択されているものである。特定の様式において、このペプチドは、更にアセチル化及び/又はアミド化される。一実施形態において、ペプチドは直鎖状ペプチドであるか、又は、システインはジスルフィド架橋を形成していない。別の実施形態において、ペプチドは、ジスルフィド架橋を形成している2つのシステインを有する(C末端の環化)。別の実施形態において、本発明において使用されるペプチド又は全身経路を通して患者に投与されるペプチドは、酸化ペプチド及び直鎖状ペプチドの両形態を含む。
【0067】
本発明の目的では、用語「アミノ酸」は、天然アミノ酸及び非天然アミノ酸の両方を意味し、天然から非天然への変化を含むアミノ酸の変化は、元のペプチドの機能又は有効性を維持しながら、当業者によって通常通りに行われ得る。「天然アミノ酸」は、天然タンパク質で見られるL型のアミノ酸、すなわち、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリンを意味する。「非天然アミノ酸」は、D型の前述のアミノ酸、並びに、ホモ型のある特定のアミノ酸、例えば、アルギニン、リジン、フェニルアラニン、及びセリン、並びに、ノル型のロイシン又はバリンを意味する。この定義はまた、アルファ-アミノ酪酸、アグマチン、アルファ-アミノイソ酪酸、サルコシン、スタチン、オルニチン、デスアミノチロシン等の他のアミノ酸も含む。ペプチド配列を記載するために使用される命名法は、アミノ末端が左側に示されカルボキシ末端が右側に示される1文字コードを使用する国際命名法である。ダッシュ「-」は、配列のアミノ酸を繋ぐ一般的なペプチド結合を示す。
【0068】
一実施形態において、本発明に従ったペプチド、例えば、配列番号1~63の配列のペプチドのいずれか1つは、N末端のアセチル化、C末端のアミド化、又はN末端のアセチル化及びC末端のアミド化の両方を含む。
【0069】
異なる実施形態において、本発明は、以下のアミノ酸配列(Table 1(表1))から基本的になる又はこれからなるポリペプチドの使用に関する。
【0070】
【表1】
【0071】
一実施形態において、Table 1(表1)で開示されている配列番号3~34の配列のペプチドは直鎖状ペプチドであるか、又は、システインはジスルフィド架橋を形成していない(還元型ペプチド)。別の実施形態において、前述の表で開示されている配列番号3~34の配列のペプチドは、ジスルフィド架橋を形成するように酸化された2つのシステインを有する(酸化ペプチド)。別の実施形態において、本発明において使用されるペプチド又は全身経路を通して患者に投与されるペプチドは、同一のペプチド配列の酸化ペプチド及び直鎖状ペプチドという両方の形態を含む。更に別の実施形態において、本発明において使用されるペプチド又は全身経路を通して患者に投与されるペプチドは、配列番号3~34の配列から選択されるこれらの異なるペプチドの少なくとも2つの混合物を含み、ここで、混合物は、少なくとも2つの直鎖状ペプチドの混合物、又は少なくとも2つの酸化ペプチドの混合物、又は同一のアミノ酸配列を例えば有する少なくとも1つの直鎖状ペプチド及び少なくとも1つの酸化ペプチドの混合物であり得る。
【0072】
好ましい実施形態において、ペプチドは、アミノ酸配列W-S-G-W-S-S-C-S-R-S-C-G(配列番号3)からなる。一実施形態において、ペプチドは直鎖状ペプチドであるか、又はシステインはジスルフィド架橋を形成していない(NX210と呼ばれる還元形態)。別の実施形態において、ペプチドは、ジスルフィド架橋を形成するように酸化された2つのシステインを有し(酸化形態)、これはNX218と呼ばれる。別の実施形態において、本発明において使用されるペプチド又は全身経路を通して患者に投与されるペプチドは、酸化形態及び還元形態の両方を含む。
【0073】
配列番号1のペプチドの一実施形態において、
- X1は、水素原子若しくはP若しくはA-P若しくはL-A-P若しくはV-L-A-Pであり、及び/又は
- X2は、水素原子若しくはL若しくはL-G若しくはL-G-L若しくはL-G-L-I若しくはL-G-L-I-Fである。
【0074】
異なる実施形態において、本発明はしたがって、以下のアミノ酸配列(Table 2(表2))からなる又はこれから基本的になるポリペプチドの使用に関する。
【0075】
【表2】
【0076】
一実施形態において、Table 2(表2)で開示されている配列番号35~63の配列のペプチド、若しくはTable 1(表1)及びTable 2(表2)で開示されている配列番号3~63の配列のペプチドは、直鎖状ペプチドであるか、又はシステインはジスルフィド架橋を形成していない(還元型ペプチド)。別の実施形態において、ペプチドは、ジスルフィド架橋を形成するように酸化された2つのシステインを有する(酸化ペプチド)。別の実施形態において、本発明において使用されるペプチド又は全身経路を通して患者に投与されるペプチドは、同一のペプチド配列の酸化ペプチド及び直鎖状ペプチドという両方の形態を含む。更に別の実施形態において、本発明において使用されるペプチド又は全身経路を通して患者に投与されるペプチドは、配列番号35~63又は3~63の配列から選択されるこれらの異なるペプチドの少なくとも2つの混合物を含み、ここで、混合物は、少なくとも2つの直鎖状ペプチドの混合物、又は少なくとも2つの酸化ペプチドの混合物、又は同一のアミノ酸配列を例えば有する少なくとも1つの直鎖状ペプチド及び少なくとも1つの酸化ペプチドの混合物であり得る。
【0077】
配列番号3~63の配列のペプチドの各々は、アセチル化、アミド化、又はアセチル化及びアミド化をされていてよい。
【0078】
本発明において、本発明において使用されるペプチド又は全身経路を通して患者に投与されるペプチドは、これらのアミノ酸配列で規定される。使用されるペプチドは、本明細書において開示されている1つのペプチド、又は本明細書において開示されている少なくとも2つのペプチドの混合物であり得る。混合物はまた、同一の又は異なるアミノ酸配列の直鎖状ペプチド及び酸化ペプチドの混合物も包含する。100%純度のペプチドを本発明に従って使用する場合、ペプチドが、80%を超える、好ましくは85%を超える、更に好ましくは90%を超える、また更に好ましくは95、96、97、98、又は99%以上の純度を有することが可能であり、このことを本発明は包含する。所望のペプチド化合物を精製するために、例えばクロマトグラフィーによる従来の精製方法を使用することができる。
【0079】
一実施形態において、本発明において使用されるペプチド又は全身経路を通して患者に投与されるペプチドは、酸化ペプチド(Op)及び直鎖状ペプチド(Lp)という両方の形態を、例えば類似の量又は異なる量で含み、例えば(数での%)、Op:10、20、25、30、40、50、60、70、80、又は90%であり、100%までの残りはLpである。組み合わされた酸化ペプチド及び直鎖状ペプチドは、同一の配列又は異なる配列のものであってよい。例えば、配列番号3の配列の酸化形態及び直鎖状形態のペプチドは、例えば上記で開示した割合で組み合わされる(NX210及びNX218)。同様のことが、配列番号4~34及び35~63の配列のペプチドのいずれか1つにも適用される。
【0080】
本発明において使用される医薬組成物は、活性成分として、これまでに記載したペプチド又はペプチド混合物、例えば、酸化形態及び直鎖状形態の、異なるアミノ酸組成のペプチド又は同一のアミノ酸組成のペプチドと、1つ又は複数の薬学的に許容可能なビヒクル、担体、又は賦形剤とを含む。
【0081】
本発明に従ったペプチド化合物は、医薬組成物において、又は医薬の製造において使用することができる。これらの組成物又は医薬において、活性成分は、様々な形態で、すなわち、溶液、通常は水性溶液の形態で、又は凍結乾燥形態で、又はエマルジョンの形態で、又は全身投与経路に適したあらゆる他の薬学的に及び生理学的に許容可能な形態で、組成物に組み込むことができる。
【0082】
本発明の重要な特徴に従うと、ペプチド化合物、又はこれを含有する組成物は、全身経路を通して投与される。以下の注射又は投与経路:静脈内、腹腔内、鼻腔内、皮下、筋肉内、舌下、経口、及びこれらの組み合わせが特に言及され得る。
【0083】
静脈内経路では、注射、すなわち、注射装置を使用する(例えば、シリンジ、ポンプを使用する)投与、又は重力による灌流が選択され得る。
【0084】
皮下経路では、組成物は、ボーラスとして皮下組織に投与される。注射部位は、上腕の外側区域、腹部の肋骨縁から腸骨稜まで、大腿前部、背部、又は臀部であり得る。
【0085】
鼻腔内経路又は経鼻経路では、経鼻吹送(組成物が、特にガス、粉末、若しくは蒸気を使用して鼻に吹き込まれる)、経鼻吸入、又は経鼻滴下が選択され得る。
【0086】
本明細書において開示されているペプチドの1つ又は複数を含有する組成物は、無菌である。これらの組成物は、ペプチドを血液循環内に送達させる投与に適している。血液循環への送達は、血液循環内への十分量のペプチドの送達であり、この十分量は、CNSにおける有利な効果と相関している。言い換えると、血液循環への送達は、血液循環内への十分量のペプチドの送達、並びにCNS内への十分な「薬学的効果」及び/又は本明細書において以下で規定される「認知機能の改善」の送達である。「薬学的効果」は、本明細書において開示されているように、タウタンパク質のレベルを阻害する若しくは低減させること、細胞内の総タウタンパク質レベルを阻害する若しくは低減させること、リン酸化したタウタンパク質のレベルを阻害する若しくは低減させること、タウタンパク質の凝集を阻害する若しくは低減させる若しくは破壊すること、又はこれらの組み合わせを含み得る。一部の実施形態において、医薬組成物中の活性成分は、(1)本明細書において開示されている直鎖状ペプチド、(2)本明細書において開示されている酸化ペプチド、(3)NX210、(4)NX218、又は(5)上記で開示したような、量が同様の若しくは同様ではない、直鎖状ペプチド及び酸化ペプチドの混合物、例えば特にNX210及びNX218からなる。
【0087】
活性成分は、従来の薬学的支持体、担体、賦形剤、又はビヒクルとの混合物として単位投与形態で、動物及び人間に投与することができる。適切な単位投与形態は、経口経路形態、例えば、錠剤、ゲルカプセル、粉末、顆粒、及び経口懸濁液又は溶液;舌下及び口腔内投与形態、エアロゾル;インプラント;皮下、経皮、局所的、腹腔内、筋肉内、静脈内、皮下、経皮、及び鼻腔内投与形態;並びに直腸投与形態を含む。
【0088】
好ましくは、医薬組成物は、血流内に活性成分を送達するために注射され得る液体製剤のために薬学的に許容可能な担体、賦形剤、又はビヒクルを含有する。これらは、特に、即使用可能な(ready to use)溶液、例えば、等張溶液、無菌溶液、生理食塩水(リン酸一ナトリウム若しくはリン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、若しくは塩化マグネシウム、及びこれらに類するもの、又はこのような塩の混合物)、或いは、ケースに応じて滅菌水又は生理食塩水を添加すると注射可能溶液の構成を可能にする、乾燥組成物、特に凍結乾燥組成物であり得る。
【0089】
注射可能な使用に適した薬学的形態としては、無菌の水性溶液又は分散液;ごま油、ピーナッツ油、又は水性プロピレングリコールを含む製剤;及び無菌の注射可能溶液又は分散液を即時調製するための無菌粉末が含まれる。全てのケースにおいて、形態は無菌でなければならず、容易に注射することが可能である限りの流体でなければならない。形態は、製造及び保存の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌等の微生物の汚染作用から保護されなければならない。
【0090】
無菌の注射可能溶液は、適切な溶媒中に所要の量の活性ポリペプチドを組み込み、その後、濾過滅菌することによって調製される。
【0091】
製剤されると、溶液は、投薬製剤に適合する様式で、且つ治療上有効な量で投与される。製剤は、上記の注射可能溶液のタイプ等の様々な投与形態で容易に投与されるが、薬剤放出カプセル等も利用することができる。
【0092】
水性溶液中での適切な投与では、例えば、溶液は必要に応じて適切に緩衝されるべきであり、液体の希釈物はまず、十分な生理食塩水又はグルコースで等張にされる。これらの特定の水性溶液は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、及び腹腔内投与に特に適している。この点について、利用可能な無菌の水性媒体は、本開示に照らして当業者に明らかとなろう。静脈内注射又は筋肉内注射等の注射での投与のために製剤された本発明の化合物に加えて、他の薬学的に許容可能な形態としては、例えば、経口投与のための錠剤又は他の固形剤;リポソーム製剤;徐放カプセル;並びに、現在使用されている、及び血流中に活性成分を送達する、あらゆる他の形態が含まれる。
【0093】
患者の体重(kg)当たりのペプチドの質量で表される1用量は、約1μg/kg~約1g/kg、特に約10μg/kg~約100mg/kg、例えば約50μg/kg~約50mg/kgの範囲であり得る。
【0094】
投薬レジメンは、単回投与又は反復投与を含み得る。一実施形態に従うと、反復投与は、処置期間にわたり、処置1日当たり1用量、例えば、毎日又は2日若しくは3日ごとに1用量を投与することを含み得る。別の実施形態に従うと、反復投与は、処置期間にわたり、処置1日当たり少なくとも2用量、例えば、1日当たり2用量、3用量、又はそれを超える用量を投与することを含み得る。これらの実施形態において、処置期間は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、15日、20日、25日、30日、35日、40日、45日、又はそれを超える日数(例えば、最大6か月)であり得る。処置は、患者がある「期間」にわたりこの処置からの「利益」を維持するように設計される。「利益」は、上記の「薬学的効果」又は「認知機能の改善」を含み得る。この「期間」は、投薬レジメンに、並びに、患者自身、例えば、病気の重症度及びレジメン用量に対する患者の応答性に依存し得る。「認知機能の改善」は、「部分的な認知機能の回復」及び「完全な認知機能の回復」を含む。認知機能の回復は、対象において記憶変更の部分的回復が見られる場合、前記「部分的」なものであり、処置前の対象の最初の状況に対して、記憶の著しい改善があるものの、これは健康な対象よりは著しく低いままである。「完全な回復」は、対象が記憶を回復したこと、又は記憶レベルが健康な対象と大きく異ならないことを意味する。
【0095】
認知機能の改善は、MMSE(Mini-Mental State Examination;Carsten Hennegesら、Journal of Alzheimer's Disease 52 (2016)、1065~1080を参照されたい)、及び/又は、ADAS-cog(Alzheimer's Disease Assessment Scale;Bart Sheehan、Therapeutic Advances in Neurological Disorders 2012、5(6)、349~358を参照されたい)を使用して、対象において測定することができる。
【0096】
MMSEは、トータルスコアが正常(30)から重度機能障害(0)までの範囲の、30の項目からなる簡単な試験である。質問は7つのカテゴリーにグループ分けされており、各サブスコアは、認知機能の具体的な態様、すなわち、時間についての見当識(スコア範囲は0~5)、場所についての見当識(スコア範囲は0~5)、記銘力(スコア範囲0~3)、注意力及び集中力(逆に数えていく又はスペルしていく、スコア範囲0~5)、再生(スコア範囲0~3)、言語(スコア範囲0~8)、並びに描画(スコア範囲0~1)を表している。本明細書において使用され得るMMSE基準(ADのスペクトラム)は、軽度AD(MMSE 21~26点)、軽中度AD(MMSE 15~20点)、中等度/重度(MS/S)AD(MMSE<15点)である。
【0097】
ADAS-cogは、臨床試験において認知能力を測定するために広く使用されており、記憶、見当識、視空間能力、言語、及び行為を含む複数の認知領域を測定する。単語再生課題(スコア範囲0~10)、物品呼称及び指差し(スコア範囲0~5)、口頭命令に従う(スコア範囲0~5)、構成行為(スコア範囲0~5)、概念行為(スコア範囲0~5)、見当識(スコア範囲0~8)、単語認識課題(スコア範囲0~12)、口頭言語能力(スコア範囲0~5)、口頭言語の理解(スコア範囲0~5)、喚語困難(スコア範囲0~5)、並びに課題指示の再生(スコア範囲0~5)。
【0098】
一実施形態において、MMSE基準又はADAS-cogは、本明細書において開示されている組成物での処置を開始する前に対象で測定され、次いで、同一の対象がその後、プロトコルの間若しくは処置を停止した後のいずれか、又は、プロトコルの間、プロトコルを停止した後、及び処置のないラグ時間の後に、この基準を1回又は複数回(少なくとも2回)測定される。
【0099】
有利には、基準の測定は、進行中の処置を継続するか、又は、部分的改善であっても完全な改善であっても認知機能の十分な改善を基準が示している場合には処置を停止するか、又は、処置を停止した後のラグ期間後に改善が消えた場合には処置を再開するかを決定するために行われる。
【0100】
一実施形態において、この「薬学的効果」又は「認知機能の改善」はある特定の期間継続し、この期間はモニタリング可能又は予測可能である(例えば、経験又は実務に基づいて)。一部の患者において、このような処置を連続的に行うこと、例えば、第1の処置、処置のない期間(ラグ期間)、及び第2の又はそれ以降の処置を行うことが有利であり得、この連続した処置及びラグ期間は、患者の寿命と共に又はそれについての患者の要求に従って増やすことができる。投薬レジメンはこうして、最初の又は第1に適用される投薬レジメン、処置のない期間(回復期間)、第2の投薬レジメン、第2の回復期間、場合によってそれに続く第3の投薬レジメン、そして第3の回復期間等を含み得る。連続的な投薬レジメンは、上記で開示した通りである。
【0101】
本発明の投薬レジメンに従った処置の利益を患者が維持している「期間」又はラグ期間(回復期間と呼ぶことができる)は、例えば上記に記載されたMMSE法及びADAS-cog法を使用して、又は類似のケースでの経験に基づいて、患者自身でモニタリングすることができる。(認知機能の改善又は別の利益、例えば、タウタンパク質のレベル、細胞内の総タウタンパク質レベル、リン酸化したタウタンパク質のレベルの阻害若しくは低減、又はタウタンパク質の凝集の阻害若しくは低減若しくは破壊、又はこれらの組み合わせを患者が経験する)このラグ期間又は回復期間は、少なくとも14日間、又は、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、若しくは7か月以上継続し得る。
【0102】
一実施形態において、用量は、灌流によって投与される。灌流は、1日に数分間、数十分間、数時間、及び最大24時間継続し得る。
【0103】
本発明に従った使用、及び本発明の処置方法は、対象において、ある量の本発明に従ったペプチド化合物の送達を可能にすること、及びタウオパチーに対する好ましい効果を得ること、並びに/又は、タウタンパク質の凝集の低減若しくは破壊、タウタンパク質レベルの低減、及び/若しくはタウタンパク質の過剰リン酸化の低減、及び異常なリン酸化の低減の1つ若しくは複数を得ることを特徴とし得る。
【0104】
一実施形態において、処置の使用又は処置方法は、機能の回復を助ける又は導く効果を有し、つまり、患者は、タウオパチー、並びに/又はタウタンパク質の凝集、タウタンパク質レベルの増大、タウタンパク質の過剰なリン酸化、及び異常なリン酸化の1つ若しくは複数の結果失われた機能の全て又は一部を回復する。
【0105】
一実施形態において、処置の使用又は方法は、タウオパチー、並びに/又はタウタンパク質の凝集、タウタンパク質レベルの増大、タウタンパク質の過剰なリン酸化、及び異常なリン酸化の1つ若しくは複数に起因する機能喪失を止める又は阻害する効果を有する。
【0106】
一実施形態において、本発明は、本明細書において開示されているタウオパチーを処置するための方法において使用するための、本発明の少なくとも1つのSCO-Spondin由来のペプチドと、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、好ましくはドネペジル(DPZ)との組み合わせに関するものであり、ここで、ペプチドは全身経路を通して対象に投与される。両活性成分の投与は、特に、別個、同時、又は連続的であり得る。活性成分の組み合わせは、処置の有効性又は利益に対する相乗効果を有し得る。
【0107】
一実施形態において、DPZは、標準治療、特に以下(www.rxlist.com/aricept-drug.htm#indications)に従って、対象に投与される:
- 軽度から軽中度のアルツハイマー病における投与:ARICEPT(登録商標)の推奨される開始投与量は、1日に1回夜、就寝の直前に5mgの投与である。軽度から軽中度のアルツハイマー病を有する患者におけるARICEPT(登録商標)の推奨される最大投与量は、1日当たり10mgである。10mgの用量は、患者が5mgの1日用量を4~6週間にわたり受けるまでは投与されるべきではない。
- 軽中度から重度のアルツハイマー病における投与:ARICEPT(登録商標)の推奨される開始投与量は、1日に1回夜、就寝の直前に5mgの投与である。軽中度から重度のアルツハイマー病を有する患者におけるARICEPT(登録商標)の推奨される最大投与量は、1日当たり23mgである。10mgの用量は、患者が5mgの1日用量を4~6週間にわたり受けるまでは投与されるべきではない。1日当たり23mgの用量は、患者が10mgの1日用量を少なくとも3か月間にわたり受けるまでは投与されるべきではない。
【0108】
例えばDPZと本発明のペプチド、例えばNX210、NX218、又はNX210+NX218とでの相乗効果のケースでは、DPZ等のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の用量、及び/又はペプチドの用量は、単一の分子のための用量と比較して低減していてよい。DPZの用量はしたがって、DPZ及び本発明のペプチドが同一の対象に投与される(同時に又は連続的に)場合、標準治療よりも減少していてよい。DPZの用量(部分用量)は、例えば3mg/日以下であり得、特に、2.5、2、1.5、若しくは1mg/日以下であり得る。投薬又は投与レジメンは、0.5~3、0.5~2.5、0.5~2、0.5~1.5、又は0.5~1mg/日であり得る。これらの間隔において、最小値0.5は、0.6、0.7、0.8、0.9、又は1で置き換えられても良い。
【0109】
一実施形態において、本発明のSCO-Spondin由来のペプチド、及びアセチルコリンエステラーゼ阻害剤、好ましくはドネペジル(DPZ)は、同一の患者において個別に使用される。特に、本発明のSCO-Spondin由来のペプチドは、第1選択治療としてアセチルコリンエステラーゼ阻害剤、好ましくはDPZでまず処置された患者におけるタウオパチーの第2選択治療として使用される。この第1選択治療は標準治療であり得る。上記を参照されたい。本発明はしたがって、本明細書において開示されているタウオパチーを処置するための方法における使用のための、本発明の少なくとも1つのSCO-Spondin由来のペプチドとアセチルコリンエステラーゼ阻害剤、好ましくはDPZとの組み合わせに関するものであり、ここで、ペプチドは、全身経路を通して、前記阻害剤で事前に処置された対象又は患者に投与される。
【0110】
代替として、第2選択治療は、本発明のSCO-Spondin由来のペプチドとアセチルコリンエステラーゼ阻害剤、好ましくはドネペジル(DPZ)との組み合わせで行われる。「組み合わせ」は、作用剤の同時の又は連続的な投与を含み得る。一実施形態において、部分用量の本発明のSCO-Spondin由来のペプチド及び/又はアセチルコリンエステラーゼ阻害剤、好ましくはドネペジル(DPZ)が使用される。
【0111】
方法は、以下のように更に記載され得る:
- 前記アセチルコリンエステラーゼ阻害剤での治療的処置を受けた患者を選択する工程であって、好ましくは、当該阻害剤を使用する治療プロトコル(好ましくは、標準的な又は承認された治療プロトコル)に従って患者が処置された、工程、
- 患者が処置にもはや応答しない及び/又は前記処置に対する不耐性を示しているフェーズに患者があることを場合によって判定する工程、
- 本発明に従った組成物、又は直前で定義した組み合わせを使用する本発明の治療的処置又は治療プロトコルを、前記患者に行う工程であって、この処置が、上記で開示した少なくとも1つの投薬レジメンを含み得、上記で開示したように、投薬レジメンの後に回復期間、及び場合によって第2の投薬レジメン、第2の回復期間等が続き得る、工程。
【0112】
一実施形態において、本方法は、
- それを必要とする患者に、前記アセチルコリンエステラーゼ阻害剤での治療的処置を行う工程であって、好ましくは、当該阻害剤を使用する治療プロトコルに従って患者が処置される工程、
- 患者が処置にもはや応答しない及び/又は前記処置に対する不耐性を示しているフェーズに患者があることを場合によって判定する工程、
- 前記患者に、本発明に従った組成物又は直前で定義した組み合わせを使用する本発明の治療的処置又は治療プロトコルを行う工程であって、この処置が、上記で開示した少なくとも1つの投薬レジメンを含み得、上記で開示したように、投薬レジメンの後に回復期間、及び場合によって第2の投薬レジメン、第2の回復期間等が続き得る、工程
を含む。
【0113】
完全性を理由として、本発明の様々な態様が、数字を付した以下の項で示され、記載される特徴は、本発明の他の態様、例えば、「使用のための」及び「医薬を製造するための使用」にも適用される。
【0114】
項1.治療量のSCO-Spondin由来のペプチド及び薬学的に許容可能なビヒクル又は賦形剤を、全身経路を通して対象に投与する工程を含む、対象におけるタウオパチーを処置する方法。
【0115】
項2.治療量のSCO-Spondin由来のペプチド及び薬学的に許容可能なビヒクル又は賦形剤を、全身経路を通して対象に投与する工程を含む、対象におけるタウの凝集を低減又は破壊する方法。
【0116】
項3.治療量のSCO-Spondin由来のペプチド及び薬学的に許容可能なビヒクル又は賦形剤を、全身経路を通して対象に投与する工程を含む、対象におけるタウタンパク質を低減させる方法。
【0117】
項4.方法が、少なくとも1つの処置期間及び少なくとも1つの回復期間を含み、処置期間が、少なくとも1つの投薬レジメンを対象に投与する工程を含み、且つ、回復期間が、処置のない期間である、項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【0118】
項5.リン酸化したタウタンパク質のレベルが低減する、項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【0119】
項6.総タウタンパク質レベルが低減する、項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【0120】
項7.レベルが少なくとも10%低減する、項5又は6に記載の方法。
【0121】
項8.レベルが少なくとも50%低減する、項7に記載の方法。
【0122】
項9.レベルが少なくとも80%低減する、項8に記載の方法。
【0123】
項10.タウの凝集が低減する、項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【0124】
項11.タウの凝集が少なくとも10%低減する、項10に記載の方法。
【0125】
項12.タウの凝集が少なくとも50%低減する、項11に記載の方法。
【0126】
項13.タウの凝集が少なくとも80%低減する、項12に記載の方法。
【0127】
項14.認知機能の改善が得られる、項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【0128】
項15. SCO-spondin由来のペプチドが、配列番号1又は2の配列のペプチドからなる群から選択される、項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【0129】
項16. SCO-spondin由来のペプチドが、配列番号3~63の配列のペプチドからなる群から選択される、項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【0130】
項17.十分量のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を対象に投与する工程を更に含む、項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【0131】
項18.アセチルコリンエステラーゼ阻害剤がDPZである、項17に記載の方法。
【0132】
項19.
- アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、好ましくはDPZでの治療的処置を受けた患者を選択する工程、次いで、
- 患者が処置にもはや応答しない及び/又は前記処置に対する不耐性を示しているフェーズに患者があることを場合によって判定する工程、
- 治療量のSCO-Spondin由来のペプチド及び薬学的に許容可能なビヒクル若しくは賦形剤、又は上記で定義した組み合わせを全身経路を通して対象に投与することを含む治療的処置を前記患者に行う工程
を含む、(1)対象におけるタウオパチーを処置する、(2)対象におけるタウの凝集を低減若しくは破壊する、又は(3)対象におけるタウタンパク質を低減させる方法。
【0133】
項20.
- アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、好ましくはDPZでの治療的処置を、それを必要とする患者に行う工程、次いで、
- 患者が処置にもはや応答しない及び/又は前記処置に対する不耐性を示しているフェーズに患者があることを場合によって判定する工程、
- 治療量のSCO-Spondin由来のペプチド及び薬学的に許容可能なビヒクル若しくは賦形剤、又は上記で定義した組み合わせを全身経路を通して対象に投与することを含む治療的処置を前記患者に行う工程
を含む、(1)対象におけるタウオパチーを処置する、(2)対象におけるタウの凝集を低減若しくは破壊する、又は(3)対象におけるタウタンパク質を低減させる方法。
【0134】
項21.
- MMSE法及び/又はADAS-cog法を例えば使用して、患者の最初の認知機能状況を判定する工程、
- 治療量のSCO-Spondin由来のペプチド及び薬学的に許容可能なビヒクル若しくは賦形剤、又は上記で定義した組み合わせを全身経路を通して対象に投与することを含む治療的処置を前記患者に行う工程、
- 治療的処置の間に、同一の方法、すなわちMMSE法及び/又はADAS-cog法を例えば使用して、患者の処置過程の認知機能状況を判定する工程、
- 処置過程の認知機能処置状況を前記患者の最初の認知機能状況と比較する工程、
- 場合によって、認知機能が部分的に若しくは完全に改善したケースでは処置を止めることを、又は認知機能の改善が見られないか若しくは不十分である(部分改善も完全な改善も達成されない)ケースでは処置を続行することを決定する工程
を含む、項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【0135】
項22.処置を続行する決定がなされた場合には、
- 治療的処置の間に、同一の方法、すなわちMMSE法及び/又はADAS-cog法を例えば使用して、患者の処置過程の認知機能状況を判定する工程、
- 処置過程の認知機能処置状況を前記患者の最初の認知機能状況と比較する工程、
- 場合によって、認知機能が部分的に若しくは完全に改善したケースでは処置を止めることを、又は認知機能の改善が見られないか若しくは不十分である(部分的改善も完全な改善も達成されない)ケースでは処置を続行することを決定する工程
を更に含む、項21に記載の方法。
【0136】
項23.処置を止める決定がなされた場合には、
- 処置をしない期間の後に、MMSE法及び/又はADAS-cog法を例えば使用して、前記患者の更なる認知機能状況を判定する工程、
- 更なる認知機能処置状況を、前記患者の最初の認知機能状況と、及び/又は処置過程の認知機能状況と比較する工程、
- 状況が最初の状況よりも依然として良いケース、若しくは処置を止めた時点の状況と大きく異ならないケースでは、何もしないことを、又はそうではないケースでは、本発明に従った更なる処置期間を、場合によって決定する工程
を更に含む、項21又は22に記載の方法。
【0137】
項24.タウオパチーが、アルツハイマー病(AD)、進行性核上性麻痺(PSP)、ピック病等のタウ陽性の前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症、大脳皮質基底核変性症、ニーマン・ピック病C型、ボクサー認知症を含む慢性外傷性脳症、及び脳炎後パーキンソニズムからなる群から選択される、項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【0138】
項25.タウオパチーがアルツハイマー病(AD)である、項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【0139】
項26. SCO-spondin由来のペプチドが、対象に静脈内投与、動脈内投与、又は腹腔内投与される、項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【0140】
項27.アミロイドβプラークの形成が阻害される若しくは低減する、アミロイドβの凝集が予防される若しくは低減する、及び/又は既に形成されたアミロイドβ蓄積体若しくはアミロイドβ凝集体が脱重合する、項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【0141】
項28.アミロイドベータ1-42が阻害されるか若しくは低減し、タウタンパク質の過剰リン酸化が阻害されるか若しくは低減する、項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【0142】
項29.ペプチドが、NX210、NX218、又はNX210及びNX218の混合物である、項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【0143】
本発明をここで、図面を参照して非限定的な例を使用して、更に詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0144】
図1】Aβ25-35によって誘発されたマウスにおける空間ワーキングメモリ障害に対するNX210又はNX218のIP投与(2mg/kgを1日1回)の効果を示す図である。プラットフォームに到達するまでにかかった時間を、5日間の訓練の間に判定した。用量は、1kg当たりのmg数で表されている。nは群当たり11~12に等しい。データは、プラットフォームを見つけるまでにかかった時間(秒)として表されている。2元配置ANOVAと、その後のテューキーの多重比較検定とによって、Aβ25-35/Vhc群に対してns(有意性なし)、***又は###又は□□□p<0.001である。
図2】Aβ25-35によって誘発されたマウスにおける空間ワーキングメモリ障害に対するNX210又はNX218のIP投与(2mg/kgを1日1回)の効果を示す図である。各四分区間で過ごした時間をプローブ試験の間に判定した。用量は、1kg当たりのmg数で表されている。nは群当たり11~12に等しい。データは、3つの他の四分区間で過ごした時間の平均パーセンテージと比較した、標的四分区間で過ごした時間のパーセンテージとして表されている。2元配置ANOVAと、その後のテューキーの多重比較検定とによって、Aβ25-35/Vhc群に対してns(有意性なし)、***p<0.001である。
図3】Aβ25-35によって誘発されたマウス脳における生化学的変化(Aβ1-42及びリン酸化したタウのレベル)に対する、NX210又はNX218のIP投与(2mg/kgを1日1回)の効果を示す図である。用量は、1kg当たりのmg数で表されている。nは群当たり5~6に等しい。データは、コントロール群(Sc.Aβ/Vhc群)に対するパーセンテージとして表されている。一元配置ANOVAと、その後のダネットの検定とによって、Aβ25-35/Vhc群に対してns(有意性なし)、***p<0.001である。
図4】Aβ25-35によって誘発されたマウスにおける短期の記憶障害に対する、活性用量若しくは準活性用量のNX210若しくはNX218(0.1~2mg/kgを1日1回、IP)、又は活性用量若しくは準活性用量のDPZ(0.25~1mg/kgを1日1回、PO)、又は準活性用量のNX210若しくはNX218と準活性用量のDPZとの組み合わせ(NX210及びNX218は0.1mg/kg、IP、及びDPZは0.25mg/kg、PO)の投与の効果を示す図である。用量は、1kg当たりのmg数で表されている。nは群当たり12に等しい。データは、交替行動(alternation)のパーセンテージとして表されている。一元配置ANOVAと、その後のダネットの検定とによって、Aβ25-35/Vhc群に対してns(有意性なし)、***p<0.001である。
図5】Aβ25-35によって誘発されたマウスにおける長期の記憶障害に対する、活性用量若しくは準活性用量のNX210若しくはNX218(0.1~2mg/kgを1日1回、IP)、又は活性用量若しくは準活性用量のDPZ(0.25~1mg/kgを1日1回、PO)、又は準活性用量のNX210若しくはNX218と準活性用量のDPZとの組み合わせ(NX210及びNX218は0.1mg/kg、IP、及びDPZは0.25mg/kg、PO)の投与の効果、すなわち、停留セッションの間に測定されたステップスルー潜時(STL)を示す図である。用量は、1kg当たりのmg数で表されている。nは群当たり12に等しい。データは秒で表されている。クラスカル・ウォリス検定と、その後のダンの多重比較検定とによって、Aβ25-35/Vhc群に対してns(有意性なし)、**p<0.01、及び***p<0.001である。
図6】Aβ25-35によって誘発されたマウスにおける短期の記憶障害に対する、NX210又はNX218(D11に開始して2mg/kgを1日1回)の投与の効果を示す図である。用量は、1kg当たりのmg数で表されている。nは群当たり6に等しい。データは、経時的な交替行動のパーセンテージとして表されている(D08-15-22-29)。一元配置ANOVAと、その後のダネットの検定とによって、Aβ25-35/D11 vhc群に対してns(有意性なし)、***p<0.001(Sc.Aβ/D11 vhcでは*、Aβ25-35/D11 NX210 IP 2では$、そしてAβ25-35/D11 NX218 IP 2では)である。
図7】Aβ25-35によって誘発されたマウスにおける短期の記憶障害に対する、NX218(2mg/kgをIPで1日1回、120日間(第4群))の投与、又は増大用量のNX218(2mg/kgをIPで1日1回、44日目~78日目まで、次いで、4mg/kgを1日1回、79日目から99日目まで、次いで、8mg/kgを1日1回、100日目から113日目まで)で置き換えられた、DPZ(1mg/kgを経口で1日1回、43日間)(第5群)の投与、又は準活性用量のNX218(0.1mg/kgをIPで1日1回、120日間)及びDPZ(0.25mg/kgを経口で1日1回、120日間)の組み合わせ(第6群)の投与、又はNX218(2mg/kgをIPで1日1回、11日目から38日目まで28日間(第3群))での一時的な処置の長期の効果を示す図である。データは、経時的な交替行動のパーセンテージとして表されている。nは群当たり5~6に等しい。一元配置ANOVAと、その後のダネットの検定とによって、Aβ25-35 vhc群(第2群)に対してns(有意性なし)、**p<0.01、***p<0.001である。
図8】サルにおけるNX210のIV投与(10mg/kgのNX 210のボーラスIV注射)後の、PKプロファイルを示す図である。NX218(NX210の環状形態)のサル血漿中濃度の平均(ng/mL)が、十進法対数スケールでy軸にプロットされている。
【実施例
【0145】
緒言:
アルツハイマー病(AD)及び関連するタウオパチーは、最も多い加齢性神経変性障害であるが、根治的処置はいまだ存在していない。所定の薬剤は認知症の症候を一時的に減速させるだけであり、疾患の経過を変えることはできない。結果として、新規な処置を同定することが急務である。
【0146】
実施例は、タウオパチーモデルを使用している。このモデルでは、マウスに、01日目(D01)に、Aβ25-35ペプチド(又はシャム動物ではスクランブルAβペプチド(Sc.Aβ))を脳室内(ICV)注射した。この重度の動物モデルは、ヒトタウオパチーの生理病理学及び進行に関与する特異的バイオマーカー(脳アミロイドベータ1-42及び過剰リン酸化したタウタンパク質の蓄積を含む)の変化、並びに患者が経験する強力な認知機能障害(記憶喪失)を再現する(Mauriceら、1996、1998、2013;Meunierら、2006)。
【0147】
SCO-spondin由来のペプチドを伴うこの用量応答研究において、処置は、Aβ25-35ペプチドをNX210、NX218、又はビヒクル(Vhc、H2O)と注射した1時間後(疾患早期のモデルとして)又は10日後(疾患後期のモデルとして)に開始した。NX210、NX218、及びビヒクルは、1日1回又は1日おきに(2日ごとに1回)、腹腔内(IP)投与した。NX210及びNX218の合成は、実施例1及び2に記載されている。
【0148】
更に、NX210又はNX218と標準治療との組み合わせを行った(アセチルコリンエステラーゼの阻害剤、ここではドネペジル、DPZ)。このために、潜在的な相乗的治療効果を研究するために、準活性用量のNX210又はNX218ペプチドを準活性用量のDPZと組み合わせた。
【0149】
最後に、NX218及び/又はDPZに基づく処置の長期の効果を評価する研究を行った。
【0150】
(実施例1)
NXペプチドの合成
配列番号1、2の配列のペプチド又は配列3~63のいずれかのペプチド、特に実施例の節で使用されるペプチド、例えばNX210(配列番号3)の製造プロセスは、N-α-Fmoc(側鎖)で保護されたアミノ酸をペプチドのアセンブリにおけるビルディングブロックとして適用する固相ペプチド合成に基づく。利用するプロトコルは、MBHA樹脂上での、MPPAリンカーに結合したC末端グリシンがN-α-Fmocで保護されたアミノ酸のカップリングと、その後の、Fmocカップリング/脱保護のシーケンスからなる。樹脂へのペプチドのアセンブリの後、樹脂からのペプチドの切断及びアミノ酸の側鎖の脱保護を同時に行う工程が行われる。
【0151】
粗ペプチドを沈殿させ、濾過し、そして乾燥させる。分取逆相クロマトグラフィーによる精製の前に、ペプチドを、アセトニトリルを含有する水性溶液に溶解する。溶液中の精製ペプチドを濃縮し、その後、イオン交換工程を行って、ペプチドをその酢酸塩の形態で得る。
【0152】
当業者は、合成の更なる詳細についてはUS6,995,140及びWO2018146283を、また、本明細書において開示されているペプチドの酸化形態についてはWO2017/051135を参照することができ、これらは全て、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0153】
当業者は更に、N末端及びC末端を修飾又は保護されたペプチドを含む、本発明の開示されるペプチドのいずれかを生産するための標準的な方法を利用することができる。N末端及びC末端それぞれでのペプチドのアセチル化及び/又はアミド化に関して、当業者は、標準的な技術、例えば、同様に参照によって組み込まれるBiophysical Journal、第95巻、2008年11月、4879~4889において記載されている技術を参照することができる。
【0154】
(実施例2)
環状NXペプチドの合成
配列W-S-G-W-S-S-C-S-R-S-C-Gのポリペプチドをヒト血清アルブミン(HSA)に1:1の比率で添加し、1~3時間、室温で空気中で撹拌しながらインキュベートした。HPLCを使用することによって、本発明者らは、2つのシステインがジスルフィド架橋によって連結されているポリペプチド配列W-S-G-W-S-S-C-S-R-S-C-Gに対応しているピークの形成を観察した。沈殿によってアルブミンを除去した後、生成物を次いで精製し、HPLCによって分析した。アルブミンの量が少ないほど排除が容易であることは分かっているが、異なる比率のアルブミン及び配列W-S-G-W-S-S-C-S-R-S-C-Gに対応するポリペプチドの使用は、環化率及び環化の最終収量への影響を可能にする。環化した化合物は、NX218である。
【0155】
当業者は、合成の更なる詳細について、WO2017051135を参照することができる。この文献は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0156】
(実施例3)
NX210及びNX218の用量応答の有効性
認知機能評価:
a.自発的交替行動の成績(Y迷路)
25-35ペプチドのICV注射の7日後(D08)に、全ての動物を、空間ワーキングメモリの指標である、Y迷路での自発的交替行動の成績について試験した(短期記憶試験)。各マウスを1つのアームの端に置き、8分間のセッションの間、迷路の中を自由に移動させた。交替行動は、3つのアーム全てに続けて進入することとして定義される。最大交替行動数は、したがって、アームへの進入の総数から2を差し引いたものであり、交替行動のパーセンテージは、(実際の交替行動数/最大交替行動数)×100として計算される。このパラメータとしては、交替行動のパーセンテージ(記憶の指標)が含まれる(Mauriceら、1996、1998;Meunierら、2006)。
【0157】
【表3】
Table 1. Aβ25-35によって誘発されたマウスにおける短期記憶障害に対する、NX210又はNX218ペプチドのIP投与(0.1-1-2-3.75mg/kgを1日1回又は1日おきに(1/2d))の効果。用量は、1kg当たりのmg数で表されている。nは群当たり12に等しい。データは、交替行動のパーセンテージとして表されている。一元配置ANOVAと、その後のダネットの検定とによって、Aβ25-35/Vhc群に対してns(有意性なし)、***p<0.001である。
【0158】
NX210(1、2、及び3.75mg/kg)又はNX218(1、2、及び3.75mg/kg)の1日1回又は1日おきの投与は、空間的短期ワーキングメモリ障害を有意に回復させた。完全な回復は、NX210では2及び3.75mg/kgで、NX218では1、2、及び3.75mg/kgで達成され、これは、損傷のないシャム動物(Sc.Aβ/Vhc)に類似のレベルであった。このことは、このAD/タウオパチー動物モデルで見られた認知機能障害(短期記憶喪失)への対抗におけるNX210及びNX218ペプチドの両方の強力な有効性を示している(Table 1(表3))。
【0159】
NX210(0.1mg/kg)又はNX218(0.1mg/kg)の1日1回の投与は、Aβ25-35によって誘発される短期記憶障害を妨げないため、0.1mg/kgをこれらの2つの化合物の準活性用量として設定し(Table 1(表3))、標準治療との組み合わせ研究(実施例4)を準備することができる。
【0160】
b.ステップスルー型受動回避試験(STPA)
Y迷路試験の後、同一の動物に、文脈長期記憶の指標であるステップスルー型受動回避(STPA)試験も行った(Aβ25-35ペプチドのICV注射の8日及び9日後、それぞれD09及びD10)。装置は、ギロチン式の扉によって隔てられた2つの区画からなる箱(明区画及び暗区画)で構成される。ショック発生器スクランブラーを使用して暗区画にフットショックを送ることができる。初日(トレーニングセッション)に、ギロチン式の扉が最初は閉じた状態の明区画に各マウスを置く。5秒後、扉を上げる。マウスが暗区画に進入し、その全ての足をグリッド床に置いたら、扉は閉まり、フットショックが3秒間送られる。このトレーニングセッションの24時間後、停留試験(ここではフットショックは行われない)を行う。具体的には、各マウスを、扉が閉まった状態の明区画に再び置く。5秒後、扉が上がる。ステップスルー潜時(STL)と呼ばれる、マウスが暗区画に入るまでにかかった時間を、300秒まで記録する。脱出潜時(EL)と呼ばれる、マウスが暗区画を出るまでにかかった時間を、300秒まで記録する(Mauriceら、1996、1998;Meunierら、2006)。
【0161】
【表4】
Table 2. Aβ25-35によって誘発されたマウスにおける長期の記憶障害に対する、NX210又はNX218のIP投与(0.1-1-2-3.75mg/kgを1日1回又は1日おきに(1/2d))の効果:停留セッションの間に測定されたステップスルー潜時(STL)。用量は、1kg当たりのmg数で表されている。nは群当たり12に等しい。データは秒で表されている。クラスカル・ウォリス検定と、その後のダンの多重比較検定とによって、Aβ25-35/Vhc群に対してns(有意性なし)、***p<0.001である。
【0162】
【表5】
Table 3. Aβ25-35によって誘発されたマウスにおける長期の記憶障害に対する、NX210又はNX218のIP投与(0.1-1-2-3.75mg/kgを1日1回又は1日おきに(1/2d))の効果:停留セッションの間に測定された脱出潜時(EL)。用量は、1kg当たりのmg数で表されている。nは群当たり12に等しい。データは秒で表されている。クラスカル・ウォリス検定と、その後のダンの多重比較検定とによって、Aβ25-35/Vhc群に対してns(有意性なし)、**p<0.01、及び***p<0.001である。
【0163】
NX210(2及び3.75mg/kg)又はNX218(1、2、及び3.75mg/kg)の1日1回又は1日おきの投与は、文脈長期記憶障害(STL及びEL)を完全に回復させ、これは、損傷のないシャム動物(Sc.Aβ/Vhc)に類似のレベルに達した。この用量効果は、このタウオパチーモデルで見られた認知機能障害(長期の記憶障害)への対抗におけるNX210及びNX218の両方の強力な有効性を示している(Table 2(表4)~Table 3(表5))。
【0164】
NX210又はNX218(0.1mg/kg)の1日1回の投与は、文脈長期記憶障害(STL及びEL)を妨げず、0.1mg/kgが両化合物の準活性用量であることを裏付けている(Table 2(表4)~Table 3(表5))。
【0165】
c.モリス水迷路での場所学習-参照記憶試験(MWM)
Y迷路の後に、及びSTPA試験を行う代わりに、一部の動物には、空間ワーキングメモリ障害を評価するためのモリス水迷路(MWM)試験を行った(D09からD14まで6日間の試験)。この絶対的に標準的な試験は、外部から合図できる部屋(シンク、対比的な壁紙、棚)に置かれた、濁水で満たされた円形のプールで構成される。プラットフォームは、習得の間は水面下に沈められている。トレーニングは、D09からD13の間に行われる、5日間にわたる1日当たり3回のスイムで構成され、トライアル間隔は20分間である。各マウスは、プラットフォームを見つけるために90秒間泳いでよく、プラットフォームで20秒間滞在してよい。
【0166】
プローブ試験(PT)を、D14の最後のスイムの24時間後に行う。PTでは、プラットフォームは取り除かれ、各動物は60秒間泳いでよい。各マウスの出発位置は、均衡する秩序で、プラットフォームの位置から離れた2つの位置の1つに対応している。PTの間、プラットフォームのある四分区間は「標的」と名付けられ、他の四分区間(対面、右隣、及び左隣)は「その他」と名付けられる。各四分区間で過ごした時間を記録する。結果を、3つの他の四分区間で過ごした時間の平均パーセンテージと比較した、標的四分区間で過ごした時間のパーセンテージとして表す。
【0167】
毎日、第1の(スイム1)、第2の(スイム2)、第3の(スイム3)、第4の(スイム4)、及び第5の(スイム5)トライアルの間の、プラットフォームを見つけるまでの潜時をモニタリングし、この6日間の実験において平均した(Mauriceら、2013)。
【0168】
【表6】
Table 4. Aβ25-35によって誘発されたマウスにおける空間ワーキングメモリ障害に対するNX210又はNX218のIP投与(2mg/kgを1日1回)の効果:プラットフォームに到達するまでにかかった時間を、5日間の訓練の間に判定した。用量は、1kg当たりのmg数で表されている。nは群当たり11~12に等しい。データは、プラットフォームを見つけるまでにかかった時間(秒)として表されている。2元配置ANOVAと、その後のテューキーの多重比較検定とによって、Aβ25-35/Vhc群に対してns(有意性なし)、***p<0.001である。
【0169】
【表7】
Table 5. Aβ25-35によって誘発されたマウスにおける空間ワーキングメモリ障害に対するNX210又はNX218のIP投与(2mg/kgを1日1回)の効果:各四分区間で過ごした時間をプローブ試験の間に判定した。用量は、1kg当たりのmg数で表されている。nは群当たり11~12に等しい。データは、3つの他の四分区間(その他)で過ごした時間の平均パーセンテージと比較した、標的四分区間(標的)で過ごした時間のパーセンテージとして表されている。2元配置ANOVAと、その後のテューキーの多重比較検定とによって、Aβ25-35/Vhc群に対してns(有意性なし)、***p<0.001である。
【0170】
NX210又はNX218の投与は、モリス水迷路の結果によって示されているように、このモデルにおいて学習プロファイル及び空間的長期記憶障害を有意に回復させた(Table 4(表6)~Table 5(表7)、及び図1図2)。トレーニングの2日目(D10)には、NX210又はNX218で処置したマウスは、隠されたプラットフォームの位置を、損傷のないシャムマウス(Sc.Aβ/Vhc)と同程度に効率的に記憶していた。有利な効果は、5日間のトレーニング試験の全期間にわたり維持されている(Table 4(表6)及び図1)。
【0171】
空間記憶に対する有利な効果を、プラットフォームを取り除いた試験であるプローブ試験(D14)によって確認した。この試験では、NX210又はNX218で処置したマウスは、総スイム時間の約40%を標的四分区間(すなわち、取り除かれたプラットフォームの位置)で過ごし、これは、プラットフォームの位置の記憶において、損傷のないシャムマウス(Sc.Aβ/Vhc)に匹敵していた。逆に、Aβ25-35/Vhcマウスはプラットフォームの場所を記憶しておらず、したがって、それらのスイム時間のおよそ25%を各四分区間で過ごした(Table 5(表7)及び図2)。
【0172】
このことは、再び、このタウオパチーモデルで見られた認知機能障害(空間ワーキングメモリ障害)への対抗におけるNX210及びNX218の両方の強力な有効性を示している。
【0173】
生化学的及び組織学的評価:
a.脳バイオマーカーの評価
病理学的バイオマーカーに対するNX210又はNX218処置の潜在的な生物学的効果を評価するために、Sc.Aβ/Vhc群(n=6)、Aβ25-35/Vhc群(n=6)、Aβ25-35/NX210 IP 2mg/kg群(n=5)、及びAβ25-35/NX218 IP 2mg/kg群(n=5)のマウスを、毎日の化合物投与(1日1回)及びAβ25-35ペプチドのICV注射の10日後(D11)に麻酔下で屠殺した。
【0174】
各マウスで、脳を素早く取り出し、氷冷した金属プレート上で、2つの片側海馬、2つの片側前頭皮質、及び残り部分の脳に解剖した。それぞれを回収した直後に、脳サンプルをドライアイスで凍結し、-80℃で保存した。解凍した後、脳構造を、50mMのTris-150mMのNaClバッファー、pH7.5中で解離させ、20秒間超音波処理した。遠心分離した後、タンパク質を含有する上清を使用して、製造者の指示に従ってELISAアッセイを行った(以下を参照されたい)。
- Aβ1-42(アミロイド-ベータ1-42)では、左海馬、Cloud-Clone Corp.社のELISAキット、参照番号:CEA946Mu、バッチ:L190107385を使用する
- pTau(リン酸化したタウタンパク質)では、左海馬、Fisher Scientific社のELISAキット、参照番号:10591255、バッチ:187860001を使用する
【0175】
全てのアッセイで、吸光度を450nmで読み取り、特異的な標準曲線を使用して各サンプル濃度を計算した。全てのサンプルは2回ずつ試験し、これら2回の平均を計算に使用した。
【0176】
【表8】
Table 6. Aβ25-35によって誘発されたマウス脳における生化学的変化(Aβ1-42及びリン酸化したタウのレベル)に対する、NX210又はNX218のIP投与(2mg/kgを1日1回)の効果。用量は、1kg当たりのmg数で表されている。nは群当たり5~6に等しい。データは、コントロール群(Sc.Aβ/Vhc群)に対するパーセンテージとして表されている。一元配置ANOVAと、その後のダネットの検定とによって、Aβ25-35/Vhc群に対してns(有意性なし)、***p<0.001である。
【0177】
このタウオパチーモデルにおいて、Aβ25-35/Vhc群と比較すると、NX210(2mg/kg)又はNX218(2mg/kg)の1日1回、10日間の投与は、驚くべきことに、また有意に、AD及び他のタウオパチーの進行に典型的に関与するいくつかの脳バイオマーカー、例えばアミロイドベータ1-42(Aβ1-42)及び過剰リン酸化したタウタンパク質(pTau)を減少させた(Table 6(表8)及び図3)。実際、Aβ1-42及びpTauのレベルは、健康なシャム動物のレベルに類似していた(それぞれ、NX210処置群及びNX218処置群の両方、並びにNX218処置群について)。
【0178】
b.組織学的研究
AD/タウオパチーを有する患者において生じる周知の病理学的事象である、このモデルにおけるニューロンの喪失(Mauriceら、2013によって記載されている)を測定するために、海馬ニューロンを、シャムマウス、Aβ25-35/ビヒクルマウス、及びAβ25-35/NX210処置マウスの脳で数えた。
【0179】
これを行うために、NX210(IP)又はビヒクル(IP)の毎日の化合物投与及びAβ25-35又はスクランブルペプチドのICV注射の14日後(D15)に、マウスをケタミン/キシラジンによって麻酔し、次いで、流体の流れが澄明になるまでリン酸緩衝溶液(PBS、5ml/分で15ml、pH7.4)で、その後、固視微動がなくなるまで4%パラホルムアルデヒド溶液(PFA、5ml/分で25ml)で、経心腔的に灌流した。脳を慎重に取り出し、4℃の4%PFA中で24~48時間維持した。脳を次いで、一連のエタノール勾配浴に通して脱水して水を取り除き、次いで、ワックスを浸透させた。最後に、浸透させた脳をワックスブロックに包埋し、5±1μmで切片化した。動物当たり9個の脳切片でクレシルバイオレット(CV)染色を行い、各冠状断を100μmずつ離して、CA1錐体ニューロンを計数した。
【0180】
【表9】
Table 7. Aβ25-35を注射したマウスで見られたニューロンの喪失に対するNX210(2mg/kgを1日1回)のIP投与の効果。データは、分析区域の長さにわたる核の数の比率として、及びコントロール(Sc.Aβ/Vhc)に対するパーセンテージとして表されている。一元配置ANOVAと、その後のダネットの検定とによって、Aβ25-35/Vhc群に対して*p<0.05、及び***p<0.001である。
【0181】
NX210(2mg/kg)は、Aβ25-35ペプチドを注射したマウスの海馬で見られたニューロンの喪失を有意に予防する(Table 7(表9))。Aβ25-35/Vhcマウスではわずか82パーセントの錐体ニューロンが残っていた(シャムマウスと比較して)のに対し、NX210で処置した後では93パーセントであった。
【0182】
(実施例4)
NX210又はNX218との組み合わせ標準治療
ドネペジル(DPZ)等のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤は、アルツハイマー病又はタウオパチーに罹患している患者のための現在の標準治療である。これらの化合物に対する有効性応答は予測不可能であり、有効性の喪失は時間とともに見られる。用量の増大は一時的な選択肢にすぎず、それは、投与量のこの増大に伴う副作用が患者によってあまり忍容されないためである(Hommaら、2009;Jacksonら、2004)。最終的には、患者はしたがって、患者に対する処置を止めることになり、患者は一つの治療解決策も施されないまま放置されることになる。
【0183】
認知機能の評価:
a.自発的交替行動の成績(Y迷路)
25-35ペプチドのICV注射の7日後(D08)、全ての動物を、空間ワーキングメモリの指標である、Y迷路における自発的交替行動の成績について試験した(短期記憶試験、方法論の詳細については、実施例3を参照されたい)。
【0184】
【表10】
Table 8. Aβ25-35によって誘発されたマウスにおける短期記憶障害に対する、活性用量若しくは準活性用量のNX210若しくはNX218(0.1~2mg/kgを1日1回、IP)、又は活性用量若しくは準活性用量のDPZ(0.25~1mg/kgを1日1回、PO)、又は準活性用量のNX210若しくはNX218と準活性用量のDPZとの組み合わせ(NX210及びNX218は0.1mg/kg、IP、及びDPZは0.25mg/kg、PO)の投与の効果。用量は、1kg当たりのmg数で表されている。nは群当たり12に等しい。データは、交替行動のパーセンテージとして表されている。一元配置ANOVAと、その後のダネットの検定とによって、Aβ25-35/Vhc群に対してns(有意性なし)、***p<0.001である。
【0185】
準活性用量では、NX210(0.1mg/kg)、NX218(0.1mg/kg)、又はDPZ(0.25mg/kg)の1日1回の投与は、Aβ25-35によって誘発された空間的短期ワーキングメモリ障害を妨げない(Table 8(表10)及び図4、実施例3も参照されたい)。
【0186】
驚くべきことに、本発明者らは、準活性用量のNX210又はNX218(0.1mg/kg、IP)と、準活性用量のDPZ(0.25mg/kg、PO)との組み合わせが、Aβ25-35によって誘発された空間的短期ワーキングメモリ障害を有意に及び完全に回復させることを示し(Table 8(表10)及び図4)、これは、タウオパチーに関連する認知機能障害に対する薬剤間の相乗的な治療効果を示している。
【0187】
b.ステップスルー型受動回避試験(STPA)
25-35ペプチドのICV注射の8日及び9日後(それぞれD09及びD10)に、動物を、ステップスルー型受動回避(STPA)試験で、文脈長期記憶の成績について試験した(方法の詳細については実施例3を参照されたい)。
【0188】
【表11】
Table 9. Aβ25-35によって誘発されたマウスにおける長期の記憶障害に対する、活性用量若しくは準活性用量のNX210若しくはNX218(0.1~2mg/kgを1日1回、IP)、又は活性用量若しくは準活性用量のDPZ(0.25~1mg/kgを1日1回、PO)、又は準活性用量のNX210若しくはNX218と準活性用量のDPZとの組み合わせ(NX210及びNX218は0.1mg/kg、IP、及びDPZは0.25mg/kg、PO)の投与の効果:停留セッションの間に測定されたステップスルー潜時(STL)。用量は、1kg当たりのmg数で表されている。nは群当たり12に等しい。データは秒で表されている。クラスカル・ウォリス検定と、その後のダンの多重比較検定とによって、Aβ25-35/Vhc群に対してns(有意性なし)、**p<0.01、及び***p<0.001である。
【0189】
【表12】
Table 10. Aβ25-35によって誘発されたマウスにおける長期の記憶障害に対する、活性用量若しくは準活性用量のNX210若しくはNX218(0.1~2mg/kgを1日1回、IP)、又は活性用量若しくは準活性用量のDPZ(0.25~1mg/kgを1日1回、PO)、又は準活性用量のNX210若しくはNX218と準活性用量のDPZとの組み合わせ(NX210及びNX218は0.1mg/kg、IP、及びDPZは0.25mg/kg、PO)の投与の効果:停留セッションの間に測定された脱出潜時(EL)。用量は、1kg当たりのmg数で表されている。nは群当たり12に等しい。データは秒で表されている。クラスカル・ウォリス検定と、その後のダンの多重比較検定とによって、Aβ25-35/Vhc群に対してns(有意性なし)、*p<0.05及び***p<0.001である。
【0190】
準活性用量では、NX210(0.1mg/kg)、NX218(0.1mg/kg)、又はDPZ(0.25mg/kg)の1日1回の投与は、Aβ25-35によって誘発された文脈長期記憶障害を妨げない(STL及びEL、Table 9(表11)~Table 10(表12)及び図5、実施例3も参照されたい)。
【0191】
驚くべきことに、本発明者らは試験において、準活性用量のNX210又はNX218(0.1mg/kg、IP)と、準活性用量のDPZ(0.25mg/kg、PO)との組み合わせが、Aβ25-35によって誘発された長期の記憶障害を有意に及び完全に回復させることを示している(STL及びEL、Table 9(表11)~Table 10(表12)及び図5)。この結果は、タウオパチーに関連する認知機能障害に対する、NX210又はNX218とアセチルコリンエステラーゼの阻害剤(ここではドネペジル)との組み合わせの相乗的な有利な効果を裏付けている。
【0192】
(実施例5)
NX210又はNX218の後期の有効性
認知機能の評価:
a.自発的交替行動の成績(Y迷路)
タウオパチーのAβ25-35マウスモデルにおいて、Aβ25-35ペプチドのICV注射の10日後(D11)に、生理病理学は、Y迷路及びSTPA試験で見られる高い認知機能障害(実施例3、Table 1(表3)-Table 2(表4)-Table 3(表5)、ビヒクル群)によって、並びに2つの病理学的な脳バイオマーカーであるアミロイドベータ1-42(Aβ1-42)及び過剰リン酸化したタウタンパク質(pTau)の大きな変化(実施例3、Table 6(表8)及び図3、ビヒクル群)によって示されるように、既に非常に後期である。
【0193】
SCO-Spondin由来のペプチドNX210及びNX218の有効性を、したがって、この後期の生理病理学的状況の間に評価した。具体的には、NX210、NX218、又はビヒクルの投与をD11に開始し、実験の終わりまで1日1回繰り返した。
【0194】
全ての動物を、短期記憶の指標である、Y迷路における自発的交替行動の成績について(方法の詳細については実施例3を参照されたい)、D08(すなわち処置前の値)から、そして週に1回、3週間にわたり(D15、D22、D29)試験した。
【0195】
【表13A】
【表13B】
Table 11. Aβ25-35によって誘発されたマウスにおける短期記憶障害に対する、NX210又はNX218(D11に開始して2mg/kgを1日1回)の投与の効果。用量は、1kg当たりのmg数で表されている。nは群当たり6に等しい。データは、経時的な交替行動のパーセンテージとして表されている(D08-15-22-29)。一元配置ANOVAと、その後のダネットの検定とによって、Aβ25-35/Vhc群に対してns(有意性なし)、***p<0.001である。
【0196】
D08(処置前の値)では、Sc.Aβ/D11 vhc(シャム)群と比較すると、全てのAβ25-35群において、強力な記憶障害が同様に見られた(Table 11(表13)及び図6)。
【0197】
D15に、NX210又はNX218(2mg/kg)の5回の毎日の投与は、Aβ25-35によって誘発された空間的短期ワーキングメモリ障害を回復させる傾向を既に示していた(NX210及びNX218でそれぞれp値=0.19及び0.09、Table 11(表13)及び図6)。12日間の処置の後のD22では、NX210又はNX218の投与はワーキングメモリ障害を有意に回復させた(Table 11(表13)及び図6)。最後に、19日間の処置の後のD29に、NX210又はNX218の投与は、このタウオパチーモデルで見られた記憶障害を完全に回復させた(シャム群と比較してそれぞれ97%及び91%、Table 11(表13)及び図6)。
【0198】
結論として、NX210及びNX218は、非常に進行した病態生理学的段階(発病の後期)で処置を開始しても、このタウオパチーモデルの認知機能障害及び記憶障害を完全に回復させることができた。
【0199】
(実施例6)
NX218及び/又はDPZに基づく処置の長期の効果
NX218処置の、認知機能の回復を長期にわたり維持する能力、及びDPZがその活性を失った場合の第2選択治療として機能する能力を調べるために、長期の研究(120日間)を、タウオパチーのAβ25-35マウスモデルにおいて行った。
【0200】
以下に記載するように、マウスを、群当たり5~6頭の動物を有する6つの処置群に割り当てた。
【0201】
【表14】
【0202】
1日目(D01)に、アミロイド毒性を引き起こすため(Aβ25-35)又は引き起こさないため(Sc.Aβ)に、Sc.Aβ又はAβ25-35ペプチドをICV注射した。
【0203】
コントロール群:
- D01からD120まで、群1及び2のマウスに、ビヒクル(注射用の水)を1日1回(o.d.)、IP投与した。
【0204】
試験化合物NX218:
- D11からD38まで、群3のマウスに、2mg/kgのNX218をo.d.でIP投与した(マウスは、D01からD10まではビヒクルで処置されなかった)。
- D01からD120まで、群4のマウスに、2mg/kgのNX218をo.d.でIP投与した。
【0205】
試験化合物NX218によってレスキューされたDPZ:
- D01から、群5のマウスに、活性用量(1mg/kg)のDPZを、その効果がなくなるまで、o.dで強制給餌によってPO投与した。その有効性はD36に消えた。DPZをD43まで投与し、次いで、D44からD78まで、1日1回のIP投与を通して、DPZを活性用量(2mg/kg)のNX218に置き換えた。
- D79からD99まで、更に高い用量(4mg/kg)のNX218をo.d.でIP投与した。
- D100からD113まで、更に高い用量(8mg/kg)のNX218をo.d.でIP投与した。
- D114から動物を屠殺するまで、NX218の投与を止めた。
【0206】
DPZと組み合わせた試験化合物NX218:
- D01からD120まで、群6のマウスに、それらのそれぞれの準活性用量のNX218及びDPZを同時投与した:
〇 NX218:IP、o.d.、0.1mg/kg
〇 DPZ:PO、o.d.、0.25mg/kg
【0207】
認知機能の評価:
全ての群に、D08(Aβ25-35ペプチド注射の7日後)に開始した毎週1回の行動試験を行って、化合物の効果をモニタリングした。
【0208】
D08、D15、D22、D29、D36、D43、D50、D57、D64、D71、D78、D85、D92、D99、D106、D113、及びD120の、Y迷路(YM、実施例3に記載した空間短期メモリ/ワーキングメモリの評価)における自発的交替行動手順。結果をTable 12(表15)及び図7に示す。
【0209】
【表15A】
【表15B】
【表15C】
【表15D】
Table 12. Aβ25-35によって誘発されたマウスにおける短期記憶障害に対する、NX218(2mg/kgをIPで1日1回、120日間(第4群))の投与、又は増大用量のNX218(2mg/kgをIPで1日1回、44日目~78日目まで、次いで、4mg/kgを1日1回、79日目から99日目まで、次いで、8mg/kgを1日1回、100日目から113日目まで)で置き換えられた、DPZ(1mg/kgを経口で1日1回、43日間)(第5群)の投与、又は、準活性用量のNX218(0.1mg/kgをIPで1日1回、120日間)及びDPZ(0.25mg/kgを経口で1日1回、120日間)の組み合わせ(第6群)の投与、又はNX218(2mg/kgをIPで1日1回、11日目から38日目まで28日間(第3群))での一時的な処置の長期の効果。データは、経時的な交替行動のパーセンテージとして表されている。nは群当たり5~6に等しい。一元配置ANOVAと、その後のダネットの検定とによって、Aβ25-35 vhc群(第2群)に対してns(有意性なし)、**p<0.01、***p<0.001である。
【0210】
120日間のフォローアップで、2mg/kgのNX218で処置したマウス(群3及び群4)は、D36までしか効率的ではないDPZ(群5)とは対照的に、有効性の喪失を全く伴わずに、完全な且つ持続した回復を示した。
【0211】
既に分かっている病理及び認知機能障害をD11からD38までNX218ペプチドで一時的に処置されたマウス(群3)は、YMで見られた記憶の変化を完全に回復させた。更に、NXペプチドを再投与することなく利益はD120まで維持され、このことは、一時的な対症療法効果(DPZ等の市販薬でのような)よりもむしろ、その疾患修飾効果(病理(すなわち認知機能障害)の進行を大きく修飾する又は逆転させるための、疾患の病原性経路の標的化)を強調している。
【0212】
4週間の処置後のDPZ耐性(37%の変化)の後、NX218処置(群5)は、記憶喪失を最長17週間にわたり完全に回復させた(NXペプチド投与の時間及び用量に応じて53%~80%の間の変化)。
【0213】
NX218+DPZで処置したマウス(群6)は、空間的短期ワーキングメモリ障害の完全な且つ持続した回復(ビヒクルで処置したマウスでは35~49%、及びスクランブルAβ群では73~80%であるのに対し、研究に伴って71%~80%の変化)を、有効性の喪失を伴うことなく、最長17週間にわたり示した。
【0214】
(実施例7)
動物における薬物動態学
予備のインビトロ実験は、NX210がラット血漿中での酸化によってNX218に迅速に変換されることを示した。したがって、動物におけるNX210 PKは、その環状形態NX218の測定によってフォローされる。まず、ラットにおける予備PK研究を、血漿中のNX218を検出するための方法を検証するために行い、次いで、実験を繰り返して更にロバストなPK研究を行うことによってサルに転換した。全てのPK研究は、0.9%のNaClをビヒクルとして用いて行った。
【0215】
ラットにおける予備PK研究:
試験した4頭のラットにおいて、NX218は濃度が迅速に低下し、49mg/kgのNX210を低速ボーラスIV注射した3時間後からは定量することができなくなった(データは示していない)。この研究は、動物血漿中のNX218の同定が実行可能であることを示した。
【0216】
サルにおけるPK研究:
試験した3頭のサルにおいて、10mg/kgのNX210をボーラスIV注射した後の異なる日(D22、D37、及びD51)に行った反復試験の後、データは再現可能であった。NX218の濃度は、注射の30分後まで迅速に低下した(図8)。半減期はおよそ12分であると評価され(Table 13(表16))、したがって、ラット及びイヌで見られた半減期と同一の範囲内にあり(データは示していない)、反復投与についての一貫性は高かった。
【0217】
【表16】
AUC:曲線下面積、CL:総クリアランス、Cmax:最大濃度、t1/2:終末相消失半減期、Tmax:Cmaxに達するまでの時間、Vss:定常状態での分布容積
NX218についてのサル血漿中PKパラメータの平均の要約統計量(利用可能な場合には±標準偏差)
【0218】
(実施例8)
健康なヒト対象における薬物動態学
動物におけるように、健康なヒト対象におけるNX210のPK研究を、その環状形態であるNX218の測定に従って行った。6人の健康な対象に、12分間のIV注入を介して、10mg/kg用量を投与した。t1/2を3人の患者のデータに基づいて評価した(以下の表を参照されたい)。半減期はおよそ19分間であると評価され(Table 14(表17))、したがって、動物で見られた半減期と同一の範囲内であった。
【0219】
【表17】
AM=算術平均、SD=標準偏差、Min=最小、Max=最大、GM=幾何学的平均;
CV :変動係数
Kel :クリアランス速度定数
AUC:曲線下面積
Cmax:最大濃度
t1/2:終末相消失半減期
Tmax: Cmaxに達するまでの時間
CV%= SD/AM×100に等しい算術CV、
a: AUClast/AUC∞比が<0.80の、又はR2値<0.80に調整された3人の対象がおり、したがって、彼らのKel、t1/2、及びAUC∞は報告不可能であり、要約統計量に含まれていない。
【0220】
(参考文献)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
2023504731000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-08-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全身経路を通して対象に投与される、タウオパチーの処置における使用のための、アミノ酸配列
X1-W-S-A1-W-S-A2-C-S-A3-A4-C-G-X2(配列番号1)
のペプチドであって、式中、
- A1、A2、A3、及びA4が、1~5個のアミノ酸からなるアミノ酸配列からなり、
- X1及びX2が、1~6個のアミノ酸からなるアミノ酸配列からなるか、又はX1及びX2が不在であり、
- N末端アミノ酸をアセチル化すること、C末端アミノ酸をアミド化すること、又はN末端アミノ酸をアセチル化し、C末端アミノ酸をアミド化することが可能である、
ペプチド。
【請求項2】
アミノ酸配列
W-S-A1-W-S-A2-C-S-A3-A4-C-G(配列番号2)
の、請求項1に記載のペプチドであって、式中、
A1、A2、A3、及びA4が、1~5個のアミノ酸からなるアミノ酸配列からなる、
プチド。
【請求項3】
直鎖状ペプチドであるか、又は、配列番号1及び2のペプチド式に存在するシステインがジスルフィド架橋を形成している酸化ペプチドであるか、又は直鎖状ペプチド及び酸化ペプチドの両方の混合物である、請求項1又は2に記載のペプチド。
【請求項4】
- A1が、G、V、S、P、及びAから選択され、
- A2が、G、V、S、P、及びAから選択され、
- A3が、R、A、及びVから選択され、並びに/又は
- A4が、S、T、P、及びAから選択される、
請求項1~3のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項5】
- A1が、G、Sから選択され、
- A2が、G、Sから選択され、
- A3が、R、Vから選択され、及び/又は
- A4が、S、Tから選択される、
請求項4に記載のペプチド。
【請求項6】
A1及びA2がG及びSから独立して選択される、及び/又はA3-A4がR-S又はV-S又はV-T又はR-Tから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項7】
配列番号3~63の配列からなる群から選択される配列のペプチドである、請求項1~6のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項8】
直鎖状にされた形態であるか、環化した形態であるか、又は両者の混合物である、配列番号3の配列のペプチドである、請求項7に記載のペプチド。
【請求項9】
タウオパチーが、アルツハイマー病(AD)、進行性核上性麻痺(PSP)、ピック病等のタウ陽性の前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症、大脳皮質基底核変性症、ニーマン・ピック病C型、ボクサー認知症を含む慢性外傷性脳症、及び脳炎後パーキンソニズムからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項10】
タウオパチーがアルツハイマー病(AD)である、請求項1~8のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項11】
対象におけるタウの凝集の低減又は破壊、対象におけるタウタンパク質の低減、及び/又はリン酸化したタウタンパク質のレベルの低減を誘導する、請求項1~10のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項12】
静脈内経路、腹腔内経路、鼻腔内経路、皮下経路、筋肉内経路、舌下経路、又は経口経路を介して患者に投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項13】
対象が十分量のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤でも処置される、請求項1~12のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項14】
ペプチドが全身経路を通して対象に投与される、タウオパチーの処置において使用するための、請求項1~8のいずれか一項に記載のペプチド及びアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の組み合わせ。
【請求項15】
少なくとも1つのSCO-Spondin由来のペプチド、及びアセチルコリンエステラーゼ阻害剤、好ましくはDPZ、及び薬学的に許容可能なビヒクル、担体、又は賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項16】
全身経路を通して対象に投与される、タウオパチーの処置に使用するための、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
全身経路を通してタウオパチーを処置するための医薬の製造のための、請求項1~8のいずれか一項に記載のペプチドの使用。
【国際調査報告】