(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-06
(54)【発明の名称】抗CLEC-1A抗体及びその抗原結合性断片
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230130BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230130BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230130BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230130BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230130BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230130BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230130BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230130BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230130BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230130BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
A61K39/395 N
A61K45/00
A61P35/00
A61P29/00
A61P31/00
A61P31/04
A61K48/00
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533579
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(85)【翻訳文提出日】2022-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2020084770
(87)【国際公開番号】W WO2021110990
(87)【国際公開日】2021-06-10
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517118478
【氏名又は名称】オーエスイー・イミュノセラピューティクス
(71)【出願人】
【識別番号】507421289
【氏名又は名称】ナント・ユニヴェルシテ
【氏名又は名称原語表記】NANTES UNIVERSITE
(71)【出願人】
【識別番号】507241492
【氏名又は名称】アンスティトゥート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシャルシュ・メディカル・(インセルム)
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エリゼ・シフォロー
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・ポワリエ
(72)【発明者】
【氏名】アリアヌ・ドゥセル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルジニー・テプニエ
(72)【発明者】
【氏名】カロリーヌ・マリー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァネッサ・ゴーティエ
(72)【発明者】
【氏名】サブリナ・パンガム
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB321
4C084ZB322
4C084ZC751
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB11
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA42
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、免疫療法の分野に関する。本発明は、新しい特異的抗CLEC-1A化合物、特に抗体を提供する。本発明の化合物は、CLEC-1A受容体に特異的に結合し、CLEC-1Aのその内因性リガンドへの結合と拮抗することができる。本発明の化合物の使用は、有害な状態を治療するために有用であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトC型レクチン様受容体-1メンバーA受容体(CLEC-1A受容体)の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片であって、
・アミノ酸配列がそれぞれ、
- 配列番号57、配列番号65、配列番号73、配列番号81、配列番号89又は配列番号97、特に、配列番号65、配列番号81、又は配列番号97のVHCDR1、及び
- 配列番号59、配列番号67、配列番号75、配列番号83、又は配列番号91、特に、配列番号67、配列番号75、又は配列番号83のVHCDR2、及び
- 配列番号61、配列番号69、配列番号77、配列番号85、又は配列番号93、特に、配列番号69、配列番号77、又は配列番号85のVHCDR3
から選択される3個のVHCDRを含む抗体重鎖可変ドメイン、並びに
・アミノ酸配列が、
- 配列番号4、配列番号12、配列番号20、配列番号28、又は配列番号36、特に、配列番号12、配列番号20、又は配列番号28のVLCDR1、及び
- 配列番号6、配列番号14、配列番号22、配列番号30、又は配列番号38、特に、配列番号14、配列番号22、又は配列番号30のVLCDR2、及び
- 配列番号8、配列番号16、配列番号24、配列番号32、又は配列番号40、特に、配列番号16、配列番号24、又は配列番号32のVLCDR3
から選択される3個のVLCDRを含む抗体軽鎖可変ドメイン
を含む抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項2】
・配列番号65、配列番号81、又は配列番号97で記載されたアミノ酸配列を含むか又はそれからなるVHCDR1、及び
・配列番号67、又は配列番号75、又は配列番号83で記載されたアミノ酸配列を含むか又はそれからなるVHCDR2、及び
・配列番号69、又は配列番号77、又は配列番号85で記載されたアミノ酸配列を含むか又はそれからなるVHCDR3、及び
・配列番号12、又は配列番号20、又は配列番号28で記載されたアミノ酸配列を含むか又はそれからなるVLCDR1、及び
・配列番号14、又は配列番号22、又は配列番号30で記載されたアミノ酸配列を含むか又はそれからなるVLCDR2、及び
・配列番号16、又は配列番号24、又は配列番号32で記載されたアミノ酸配列を含むか又はそれからなるVLCDR3
から選択される、少なくとも1個のCDRドメイン、特に、6個のCDRドメインを含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項3】
二次壊死細胞及び/若しくは腫瘍細胞、並びに/又は二次壊死細胞及び/若しくは腫瘍細胞の細胞内含有物への、ヒトCLEC-1Aの細胞外ドメインの結合、特に、ヒト免疫グロブリン、特にヒトIgGのFc断片と融合したヒトCLEC-1A受容体の細胞外ドメインを含む融合タンパク質の結合と拮抗する、請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項4】
抗体重鎖可変ドメインが、
- それぞれ配列番号57、配列番号59、及び配列番号61、又は
- それぞれ配列番号65、配列番号67、及び配列番号69、又は
- それぞれ配列番号73、配列番号75、及び配列番号77、又は
- それぞれ配列番号81、配列番号83、及び配列番号85、又は
- それぞれ配列番号89、配列番号91、及び配列番号93、又は
- それぞれ配列番号97、配列番号75、及び配列番号77
の配列のVHCDR1、VHCDR2、及びVHCDR3を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項5】
抗体軽鎖可変ドメインが、
- それぞれ配列番号4、配列番号6、及び配列番号8、又は
- それぞれ配列番号12、配列番号14、及び配列番号16、又は
- それぞれ配列番号20、配列番号22、及び配列番号24、又は
- それぞれ配列番号28、配列番号30、及び配列番号32、又は
- それぞれ配列番号36、配列番号38、及び配列番号40
の配列のVLCDR1、VLCDR2、及びVLCDR3を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項6】
(a)抗体重鎖可変ドメインが、それぞれ配列番号57、配列番号59、及び配列番号61の配列のVHCDR1、VHCDR2、及びVHCDR3を含み、抗体軽鎖可変ドメインが、それぞれ配列番号4、配列番号6、及び配列番号8の配列のVLCDR1、VLCDR2、及びVLCDR3を含むか、又は
(b)抗体重鎖可変ドメインが、それぞれ配列番号65、配列番号67、及び配列番号69の配列のVHCDR1、VHCDR2、及びVHCDR3を含み、抗体軽鎖可変ドメインが、それぞれ配列番号12、配列番号14、及び配列番号16の配列のVLCDR1、VLCDR2、及びVLCDR3を含むか、又は
(c)抗体重鎖可変ドメインが、それぞれ配列番号73、配列番号75、及び配列番号77の配列のVHCDR1、VHCDR2、及びVHCDR3を含み、抗体軽鎖可変ドメインが、それぞれ配列番号20、配列番号22、及び配列番号24の配列のVLCDR1、VLCDR2、及びVLCDR3を含むか、又は
(d)抗体重鎖可変ドメインが、それぞれ配列番号81、配列番号83、及び配列番号85の配列のVHCDR1、VHCDR2、及びVHCDR3を含み、抗体軽鎖可変ドメインが、それぞれ配列番号28、配列番号30、及び配列番号32の配列のVLCDR1、VLCDR2、及びVLCDR3を含むか、又は
(e)抗体重鎖可変ドメインが、それぞれ配列番号89、配列番号91、及び配列番号93の配列のVHCDR1、VHCDR2、及びVHCDR3を含み、抗体軽鎖可変ドメインが、それぞれ配列番号36、配列番号38、及び配列番号40の配列のVLCDR1、VLCDR2、及びVLCDR3を含むか、又は
(f)抗体重鎖可変ドメインが、それぞれ配列番号97、配列番号75、及び配列番号77の配列のVHCDR1、VHCDR2、及びVHCDR3を含み、抗体軽鎖可変ドメインが、それぞれ配列番号20、配列番号22、及び配列番号24の配列のVLCDR1、VLCDR2、及びVLCDR3を含む、
請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項7】
抗体重鎖可変ドメインが、配列番号55、配列番号63、配列番号71、配列番号79、配列番号87、又は配列番号95で記載されたアミノ酸配列を含むか又はそれからなる、請求項1から6のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項8】
抗体軽鎖可変ドメインが、配列番号2、配列番号10、配列番号18、配列番号26、配列番号34、又は配列番号42で記載されたアミノ酸配列を含むか又はそれからなる、請求項1から7のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項9】
- 配列番号55で記載されたアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなる重鎖可変ドメイン及び配列番号2で記載されたアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなる軽鎖可変ドメイン、又は、
- 配列番号63で記載されたアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなる重鎖可変ドメイン及び配列番号10で記載されたアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなる軽鎖可変ドメイン、又は、
- 配列番号71で記載されたアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなる重鎖可変ドメイン及び配列番号18で記載されたアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなる軽鎖可変ドメイン、又は、
- 配列番号79で記載されたアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなる重鎖可変ドメイン及び配列番号26で記載されたアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなる軽鎖可変ドメイン、又は、
- 配列番号87で記載されたアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなる重鎖可変ドメイン及び配列番号34で記載されたアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなる軽鎖可変ドメイン、又は、
- 配列番号95で記載されたアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなる重鎖可変ドメイン及び配列番号42で記載されたアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなる軽鎖可変ドメイン
を含むか又はそれらからなり、
- より詳細には、重鎖可変ドメインが配列番号95で記載されたアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなり、軽鎖可変ドメインが配列番号42で記載されたアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなり、又は、重鎖可変ドメインが配列番号63で記載されたアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなり、軽鎖可変ドメインが配列番号10で記載されたアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなり、又は、重鎖可変ドメインが配列番号79で記載されたアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなり、軽鎖可変ドメインが配列番号26で記載されたアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなる、請求項1から8のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項10】
抗体が、組換え抗体、キメラ抗体、又はヒト化抗体、特にヒトIgG1、IgG2、IgG3、若しくはIgG4定常領域を含む抗体である、請求項1から9のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項11】
少なくとも1E-07M、より詳細には少なくとも1E-08Mの親和定数(KD)でヒトCLEC-1Aに結合する、請求項1から10のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項12】
in vivo及び/又はin vitroで使用した場合、陰性対照と比較した、骨髄系細胞、特に、樹状細胞及び/又はマクロファージによる腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用の調節、特に増加と相関し、特に腫瘍細胞の食作用が、陰性対照と比較して少なくとも10%増加している、請求項1から11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合性断片を含むか又はそれからなるポリペプチドをコードする核酸分子又は核酸分子の組合せであって、前記核酸分子又は核酸分子の組合せが、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88、配列番号90、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98及び/又は配列番号99からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含み、前記核酸分子又は核酸分子の組合せが、請求項1から12のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合性断片の少なくとも6個のCDRドメインをコードする、核酸分子又は核酸分子の組合せ。
【請求項14】
第1の治療薬及び少なくとも1つの第2の治療薬を含む化合物の組合せであって、
i)第1の治療薬が、請求項1から12のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合性断片、又は
ヒトC型レクチン様受容体-1メンバーA受容体(CLEC-1A受容体)の細胞外ドメインに特異的に結合し、ヒトCLEC-1A受容体への結合について、配列番号71を含むか若しくはそれからなる重鎖可変ドメイン及び配列番号18を含むか若しくはそれからなる軽鎖可変ドメインを含むか若しくはそれらからなる抗体、特に配列番号121を含むか若しくはそれからなる重鎖ドメイン及び配列番号128を含むか若しくはそれからなる軽鎖ドメインを含むか若しくはそれらからなる抗体と競合し、ヒトCLEC-1のアンタゴニストである抗体若しくはその抗原結合性断片、又は
ヒトC型レクチン様受容体-1メンバーA受容体(CLEC-1A受容体)の細胞外ドメインに特異的に結合し、ヒトCLEC-1A受容体への結合について、配列番号63を含むか若しくはそれからなる重鎖可変ドメイン及び配列番号10を含むか若しくはそれからなる軽鎖可変ドメインを含むか若しくはそれらからなる抗体、特に配列番号120を含むか若しくはそれからなる重鎖ドメイン及び配列番号127を含むか若しくはそれからなる軽鎖ドメインを含むか若しくはそれらからなる抗体と競合し、ヒトCLEC-1のアンタゴニストである抗体若しくはその抗原結合性断片、又は
ヒトC型レクチン様受容体-1メンバーA受容体(CLEC-1A受容体)の細胞外ドメインに特異的に結合し、in vivo及び/若しくはin vitroで使用した場合、陰性対照と比較した、特に陰性対照と比較して少なくとも10%の、骨髄系細胞、特に、樹状細胞及び/若しくはマクロファージによる腫瘍細胞及び/若しくは二次壊死細胞の食作用の調節、特に増加と相関する、抗体若しくはその抗原結合性断片
であり、並びに、
ii)少なくとも1つの第2の治療薬が、特に、第1の治療薬及び第2の治療薬の同時、個別、又は連続使用のために、腫瘍標的化抗体又はその抗原結合性断片、特に腫瘍標的化モノクローナル抗体又はその抗原結合性断片、より詳細には、マクロファージの食作用能力を活性化及び/又は増強する腫瘍標的化モノクローナル抗体又はその抗原結合性断片、更により詳細には、アレムツズマブ、アテゾリズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、ハーセプチン、パニツムマブ、リツキシマブ、トラスツズマブ、抗PDL-1抗体、及び抗CD47抗体からなる群から選択されるモノクローナル抗体、及び/又は抗PD1抗体及び抗SIRPa抗体からなる群から選択される別の抗体又はモノクローナル抗体、及び/又は化学療法薬、特に抗増殖性、アポトーシス促進性、細胞周期停止、及び/若しくは分化誘導効果を有する細胞毒性剤、より詳細には、細胞毒性抗体、アルキル化剤、アントラサイクリン、代謝拮抗剤、抗微小管剤、トポイソメラーゼ阻害剤、アルカロイド、ブレオマイシン、抗悪性腫瘍薬、シクロホスファミドからなる群から選択される細胞毒性剤からなるリストから選択される、
化合物の組合せ。
【請求項15】
骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージによる食作用能力の増加が疾患又は障害を改善するか又は予防する、疾患又は障害、特にヒトの疾患又はヒトの障害の予防及び/又は治療で使用するための、請求項1から12のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合性断片、又は請求項13に記載の核酸分子若しくは核酸分子の組合せ、又は請求項14に記載の組合せ、又は請求項14に規定の第1の治療薬。
【請求項16】
患者における食作用の誘導が疾患又は状態を改善するか又は予防する、疾患又は状態の治療において使用するための、請求項1から12のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合性断片、又は請求項13に記載の核酸分子若しくは核酸分子の組合せ、又は請求項14に記載の組合せ、又は請求項14に規定の第1の治療薬。
【請求項17】
がん、特に液性がん又は固形がん、より詳細には、リンパ腫、結腸直腸がん、中皮腫、又は肝細胞癌、炎症性疾患、慢性感染症又は敗血症を有する患者の治療のための、請求項1から12のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合性断片、又は請求項13に記載の核酸分子若しくは核酸分子の組合せ、又は請求項14に記載の組合せ、又は請求項14に規定の第1の治療薬。
【請求項18】
特に、同時、個別、又は連続投与のための化学療法薬、放射線治療薬、免疫治療薬(腫瘍標的化モノクローナル抗体等)、細胞治療薬(CAR-T細胞等)、免疫抑制剤、アポトーシス促進剤、抗生物質、標的化がん治療、及び/又はプロバイオティックを含む第1の医薬を、それを必要とする患者に投与する、併用治療において使用するための、請求項1から12のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合性断片、又は請求項13に記載の核酸分子若しくは核酸分子の組合せ、又は請求項14に記載の組合せ、又は請求項14に規定の第1の治療薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫療法の分野に関する。本発明は、新たな特異的抗CLEC-1A化合物、特に抗体を提供する。本発明の化合物はCLEC-1Aに特異的に結合することができ、ヒトCLEC-1Aのアンタゴニストであり、特に、CLEC-1Aのリガンド、詳細にはその内因性リガンドの少なくとも1つへのCLEC-1Aの結合と拮抗する。本発明の化合物の使用は、限定されるものではないががんを含む有害な状態を治療するのに有用であり得る。
【背景技術】
【0002】
患者の免疫系を利用する免疫療法治療は個別化医療の新時代の先駆けであり、重篤な病気を有する患者における治癒反応に希望を与えるものである。細胞性免疫は、限定されるものではないが、がん、自己免疫疾患及びアレルギー疾患のような疾患を排除又は予防することができる。療法の最近の発展には、疾患により焦点を当てた、より効果的な反応をもたらす細胞工学、疾患ターゲティング、及び患者の免疫系の調節が挙げられる。これらの戦略のうち、免疫チェックポイント阻害剤又は活性化剤を用いる免疫療法は、これらの疾患に対する不可欠な武器、より具体的にはがんに対する治療のための不可欠な武器になっている。T細胞又は樹状細胞等の免疫系細胞によって発現される場合が多いが、一部のがん細胞によっても発現されるこれらの分子は、患者の免疫応答を増強し、病原性細胞に対する免疫細胞応答を維持又は開始する。免疫チェックポイントとは、自己寛容を維持するのに極めて重要であり、付随する組織損傷を最小化する、免疫系にもともと備わっている多くの阻害経路を指す。
【0003】
C型レクチン受容体(CLR)は、膜貫通型及び可溶性受容体の大きなファミリーである。これらの受容体は、病原体又は自己タンパク質における多種多様なグリカンを認識することができる1つ又は複数の炭水化物認識ドメインを含有する。これらの受容体では、グリカン認識はCa2+に依存性である。それにもかかわらず、多くの関連するCLRが炭水化物を認識する(ただし、Ca2+とは無関係に)ことができ、これらの受容体はC型レクチン様受容体(CTLR)と呼ばれる。これらの受容体は、自然免疫及び適応免疫の両方を結びつけるその役割が特に興味深い。CTLRは主に単球、マクロファージ、樹状細胞(DC)、及び好中球等の骨髄系統の細胞によって発現される。CTLRは、内部移行及びT細胞に対する提示のための抗原取り込み受容体として機能するだけでなく複数のシグナル伝達経路もトリガーし、NF-κB、I型インターフェロン(IFN)、及び/又はインフラマソーム活性化をもたらす。抗原を提示し、細胞活性化と抑制の間のバランスを確保するその能力により、CTLRは、がん、自己免疫疾患又はアレルギーを含む多種多様な疾患を治療する魅力的な薬理学的標的として浮上してきた。CTLR調節は、疾患管理の有望な戦略となるように思われるが、内因性リガンドを同定する試み及び免疫における内因性リガンドの役割を解明する努力が依然として必要である。
【0004】
これらのCTLRのうち、CLEC-1と名付けられた(ただし、頭字語CLEC1、CLEC1A、CLEC-1A、CLEC1受容体、CLEC1A受容体及びCLEC-1A受容体でも引用される)特定のメンバーは特に興味深い。C型レクチン様受容体-1(CLEC-1)が同定されて数年になるが、下流のシグナル伝達及びリガンドは依然として特徴付けられていないままである。ヒト及びげっ歯類では、CLEC1は単球、DC、及びマクロファージ等の骨髄系細胞によって発現されるが、内皮細胞によっても発現される。CLEC-1発現は炎症誘発性刺激によって減少し、TGFβによって増強される。興味深いことに、CLEC-1は主に細胞内、具体的にはヒト内皮細胞及び好中球で発現されることが見出された。これは、細胞表面発現には特定の条件が必要なことを示唆している。
【0005】
近年、本発明者らは、CLEC-1Aがヒト血液中の古典的DC(cDC)並びに単球及びDCの小さなサブセットによって細胞表面で発現され、免疫抑制性サイトカインTGFβによって増強されることを初めて示した(国際公開公報第2018/073440号を参照のこと)。本発明者らは、ヒトCLEC-1AがM2型腫瘍促進性マクロファージ、胸水中皮腫及び卵巣腫瘍腹水由来の骨髄系細胞によって発現されることを示した。本発明者らは、CLEC-1が骨髄系細胞において抑制性受容体として作用し、IL12p40発現並びに下流のTh1及びTh17 in vivo応答を妨げることをげっ歯類及びヒトの両方で実証した。
【0006】
本発明者らはまた、抗hCLEC-1A抗体をCLEC-1Aのアンタゴニストとして使用するとヒトT細胞増殖及びヒトIFN-ガンマが増加することも示した。本発明者らはまた、CLEC-1が欠損しているマウスは、肝細胞癌マウスモデルにおいて腫瘍増殖に対する抵抗性がより良好であり、生存率の上昇を示すことも実証した。したがって、細胞表面受容体としてのCLEC-1Aは、臨床現場で抗腫瘍免疫を増強するための有用な治療ツールとなる可能性がある。
【0007】
この文脈において、本発明者らは、ヒトCLEC-1Aの細胞外ドメインを認識し、これに特異的に結合する、ヒトCLEC-1Aのアンタゴニストであり、特に、CLEC-1Aのリガンド、具体的には内因性リガンドの少なくとも1つへのCLEC-1Aの結合と拮抗するのに適し、in vivo及び/又はin vitroで使用した場合、骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージによる腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用の調節、特に増加と相関する抗CLEC-1A化合物、特に抗CLEC-1A抗体を初めて提供する。
【0008】
本発明の例に示されているように、in vivo及び/又はin vitroで使用した場合、骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージによる腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用の調節、特に増加と相関する能力を有する抗CLEC-1A化合物、特に抗CLEC-1A抗体が初めて提供される。本発明の実施例のいくつかで使用される、CLEC-1Aに結合し、ヒトCLEC-1Aのアンタゴニストである、先行技術(国際公開公報第2018/073440A1号及びRoblesら(Blood advances 2017)の論文)に開示された抗CLEC-1A抗体と比べて、本発明の任意の実施形態による抗体は、in vitroで使用した場合、免疫系の細胞による腫瘍細胞の食作用の調節、特に増加と相関することが本記載において示される。CLEC-1Aと相互作用する腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞は、CLEC-1A発現骨髄系細胞による食作用を回避する。本発明の抗体は、CLEC-1Aと、通常はCLEC-1A発現細胞と相互作用する腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の間の機能的相互作用を妨げる形でCLEC-1Aと相互作用する。そのような機能的相互作用は、腫瘍細胞が食作用を回避するのを妨げる。本発明において示されるように、本発明の実施例のいくつかで使用される、先行技術(国際公開公報第2018/073440A1号及びRoblesらの論文(Blood advances 2017))に開示されたアンタゴニスト抗CLEC-1A抗体は、骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージによる腫瘍細胞の食作用の調節と相関しない。腫瘍細胞の食作用の調節は、本発明による化合物が実施例に存在する場合に示されるのみである。CLEC-1A発現骨髄系細胞、特にCLEC-1A発現樹状細胞及び/又はマクロファージは、本発明によるアンタゴニスト化合物が存在する場合、腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用能を発揮することを妨げられない。樹状細胞及び/又はマクロファージを含む特に骨髄系細胞の食作用能力と関連して、本発明のアンタゴニスト化合物が投与されるといくつかの極めて有利な生物学的効果が達せられる。CLEC-1Aの適切なアンタゴニストである本発明の抗体は、樹状細胞及び/又は活性化マクロファージのようなマクロファージの食作用能力の調節、特に増加と相関する。抗CLEC1A化合物、特に本発明の抗CLEC-1A抗体の投与は、CLEC-1Aの、腫瘍細胞により発現されるその標的(そのリガンドの少なくとも1つ)への結合と拮抗することによって、樹状細胞及び/又はマクロファージによる腫瘍細胞及び/又はがん細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用の増強と相関する。CLEC-1A発現マクロファージ又は樹状細胞がCLEC-1Aの1つのリガンドを発現する細胞と相互作用すると、これらのマクロファージ又は樹状細胞の食作用能力は阻害又は低減される。CLEC-1Aのリガンドを発現する腫瘍細胞は、マクロファージ及び樹状細胞によって発揮される食作用を回避する。本発明の実施例に示されるように、本明細書に開示された抗CLEC1A抗体が投与されると、腫瘍細胞とのCLEC-1A相互作用と拮抗することによってマクロファージ及び樹状細胞の食作用能力の阻害が取り除かれ、それによりマクロファージ及び樹状細胞による腫瘍細胞の食作用をもたらす。
【0009】
骨髄系細胞による腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用に対する影響に加えて、本発明の抗体は、T細胞の増殖及び/又はT細胞の活性化も調節し得、特に増強又は増加させ得る。
【0010】
本明細書に記載された抗体は、組換え生産系で効率的に生産することができ、本明細書で上記に開示された機能的特徴を示すキメラ又は(完全)ヒト化抗体の、更なる開発のために十分な量での提供を可能にする。
【0011】
その上、本発明の抗体はin vitroでマウスCLEC-1Aタンパク質と交差反応しないため、本発明の抗体は、マウスオルソログと比較してヒトCLEC-1Aに対する特異的親和性を有する。更に、本発明の実施例に示されるように、本発明の抗CLEC-1A化合物、特に抗CLEC-1A抗体は、ヒト細胞の細胞膜で発現されるCLEC-1Aの細胞外ドメインにin vitroで特異的に結合する。
【0012】
本発明の一実施形態では、本発明の抗体は、骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/若しくはマクロファージによって発現されるCLEC-1Aと、二次壊死細胞及び/若しくは、がんを有する若しくはがんを発症している宿主に存在する腫瘍細胞のような腫瘍細胞の間の相互作用、並びに/又は二次壊死細胞及び/若しくは腫瘍細胞の細胞内内容物との相互作用を破壊する。本発明者らは、CLEC-1Aのリガンドが損傷細胞又は腫瘍細胞によって発現又は過剰発現され得(ただし、必ずしもこれらの細胞の膜でではない)、それ故に抗腫瘍免疫に関与し、免疫細胞によって誘導される腫瘍細胞死を改善し得ることを究明した。
【0013】
それ故に、抗体は:
- ヒトCLEC-1A、特にヒト細胞の細胞膜で発現されるCLEC-1Aに特異的に結合する、
- 特に、CLEC-1Aのリガンドの少なくとも1つ、特にその内因性リガンドの1つへのCLEC-1Aの結合と拮抗することに適したヒトCLEC-1Aのアンタゴニストである;
- 本明細書で上記に開示された機能的特徴を示す抗体の、更なる開発のために十分な量での提供を可能にする、相当な収量で回収され得る;並びに
- in vivo及び/又はin vitroで使用した場合、骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージによる腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用の調節、特に増加と相関する
という証拠を本発明者らが提供する抗体が提供される。
【0014】
前記化合物は、骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージによる腫瘍細胞の食作用を増加させることによって疾患の転帰を改善するための、具体的には、特に樹状細胞及び/又はマクロファージによって発揮される食作用が改善される必要があるいくつかの疾患又は有害な状態の予防及び/又は治療における使用、より具体的には、腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用、好ましくは骨髄系細胞による食作用活性の調節、特に樹状細胞及び/又はマクロファージの食作用能力の改善に適している。
【0015】
前記化合物は、具体的には、いくつかの疾患の予防及び/又は治療における使用、特にT細胞の活性化及び/又は増殖を増強することによる特にT細胞応答の調節にも適している可能性がある。
【0016】
本発明の特定の実施形態では、抗CLEC-1A化合物は、骨髄系由来サプレッサー細胞の総数を減少させ、それにより、限定されるものではないが免疫抑制性骨髄系細胞のような免疫抑制細胞の減少をもたらすのに適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開公報第2018/073440号
【特許文献2】国際公開第96/34103号パンフレット
【特許文献3】国際公開第94/04678号パンフレット
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Roblesら(Blood advances 2017)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
したがって、本発明の第1の態様では、ヒトC型レクチン様受容体-1メンバーA受容体(CLEC-1A受容体)の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片であって、
・アミノ酸配列がそれぞれ、
- 配列番号57、配列番号65、配列番号73、配列番号81、配列番号89、又は配列番号97、特に、配列番号65、配列番号81、又は配列番号97のVHCDR1、及び
- 配列番号59、配列番号67、配列番号75、配列番号83、又は配列番号91、特に、配列番号67、配列番号75、又は配列番号83のVHCDR2、及び
- 配列番号61、配列番号69、配列番号77、配列番号85、又は配列番号93、特に、配列番号69、配列番号77、又は配列番号85のVHCDR3
から選択される3個のVHCDRを含む抗体重鎖可変ドメイン、並びに
・アミノ酸配列が、
- 配列番号4、配列番号12、配列番号20、配列番号28、又は配列番号36、特に、配列番号12、配列番号20、又は配列番号28のVLCDR1、及び
- 配列番号6、配列番号14、配列番号22、配列番号30、又は配列番号38、特に、配列番号14、配列番号22、又は配列番号30のVLCDR2、及び
- 配列番号8、配列番号16、配列番号24、配列番号32、又は配列番号40、特に、配列番号16、配列番号24、又は配列番号32のVLCDR3
から選択される3個のVLCDRを含む抗体軽鎖可変ドメイン
を含む抗体又はその抗原結合性断片を開示する。
【0020】
この実施形態による抗体又はその抗原結合性断片は、ヒトCLEC-1Aに拮抗するのに適していて、この受容体に対するその結合特性は特異的である。更に、限定はしないが哺乳動物細胞株等の、異なる細胞株での産生によって達成される産生収量は、薬物候補開発の目的に適している。
【0021】
本発明者等は、それぞれ重鎖可変ドメインCDR及び軽鎖可変ドメインCDRの組合せを含む、いくつかの抗CLEC-1A抗体を合成した。したがって、本発明の第2の態様では、
・抗体重鎖可変ドメインが、
- それぞれ配列番号57、配列番号59、及び配列番号61、又は
- それぞれ配列番号65、配列番号67、及び配列番号69、又は
- それぞれ配列番号73、配列番号75、及び配列番号77、又は
- それぞれ配列番号81、配列番号83、及び配列番号85、又は
- それぞれ配列番号89、配列番号91、及び配列番号93、又は
- それぞれ配列番号97、配列番号75、及び配列番号77
の配列のVHCDR1、VHCDR2、及びVHCDR3を含み、及び/又は、
・抗体軽鎖可変ドメインが、
- それぞれ配列番号4、配列番号6、及び配列番号8、又は
- それぞれ配列番号12、配列番号14、及び配列番号16、又は
- それぞれ配列番号20、配列番号22、及び配列番号24、又は
- それぞれ配列番号28、配列番号30、及び配列番号32、又は
- それぞれ配列番号36、配列番号38、及び配列番号40
の配列のVLCDR1、VLCDR2、及びVLCDR3を含む、抗体又はその抗原結合性断片を提供する。
【0022】
別の態様では、本発明は、ヒトC型レクチン様受容体-1メンバーA受容体(CLEC-1A受容体)の細胞外ドメインに特異的に結合し、in vivo及び/又はin vitroで使用した場合、陰性対照と比較した、陰性対照と比較して、詳細には少なくとも10%、より詳細には少なくとも20%の、骨髄系細胞、特に、樹状細胞及び/又はマクロファージによる腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用の調節、特に増加と相関する、抗体又はその抗原結合性断片に関する。
【0023】
別の態様では、本発明は、特に、樹状細胞及び/若しくはマクロファージによって発揮される食作用が改善される必要があり、並びに/又は樹状細胞及び/若しくはマクロファージの食作用能力の改善が疾患又は有害な状態を治療する、疾患又は有害な状態の治療で使用するための、本明細書で開示した抗CLEC-1A抗体、又はCLEC-1Aアンタゴニスト化合物に関する。
【0024】
別の態様では、本発明は、疾患又は障害の予防及び/又は治療において使用するための、上述の特異的抗CLEC-1A化合物に関し、骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージによる食作用能力の調節が、特に腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用を調節することによって疾患又は障害の結果を改善する可能性があり、前記抗CLEC-1A化合物は、ヒトCLEC-1A及びCLEC-1Aリガンド発現細胞、特にCLEC-1Aリガンドを発現する腫瘍細胞又はがん細胞及び/又は二次壊死細胞との間の相互作用のアンタゴニストである。前記抗体は、フローサイトメトリー又は顕微鏡を含む、本発明の実施例で記載したような食作用アッセイを使用して特定することができる。本発明のより詳細な実施形態では、前記抗体又はその抗原結合性断片は、陰性対照と比較して、がん細胞及び/又は二次壊死細胞の骨髄系細胞、特に、樹状細胞及び/又はマクロファージによる食作用を、陰性対照と比較して詳細に少なくとも10%、より詳細には少なくとも20%増強することができる。特定の実施形態では、食作用は以下の実験によって評価することができる:
マクロファージ(Mφ)は、単核球からM-CSF(100ng/mL)で5日間生成する。
マクロファージ(Mφ)は、次に抗CLEC1化合物で2時間沈殿させ、その後、「Eat-me」シグナルを提示する非ホジキンリンパ腫(Raji;CD20+)及び抗CD20mAb(リツキシマブ)それぞれ10ng/mLと共に4時間培養する。
食作用分析は顕微鏡によって実施し、食作用のパーセンテージは、全マクロファージ中のpHrodo(pHrodo-SE、Thermofisher社)陽性Raji細胞のパーセンテージによって算出する。
【0025】
別の態様では、本発明は、T細胞が有害な効果を及ぼす疾患又は障害の予防及び/又は治療において使用するための上述の特異的抗CLEC-1A化合物に関し、前記抗CLEC-1A化合物は、ヒトCLEC-1Aと二次壊死細胞、及び/又は腫瘍細胞、及び/又はがんを有する、若しくはがんを発症している宿主中に、及び/若しくは透過化二次壊死細胞の細胞内含有物中に、及び/若しくは透過化腫瘍細胞の細胞内含有物中に存在する腫瘍細胞との間の相互作用のアンタゴニストである。
【0026】
別の態様では、本発明は、有効量の本発明の特異的抗CLEC-1A化合物、特に本明細書で開示した任意の実施形態による抗CLEC1A抗体又はその抗原結合性断片を、それを必要とする患者に投与することを含み、特に、前記抗CLEC-1A化合物を、従来の治療又は本明細書で定義した少なくとも1つの第2の治療薬と同時、別個、又は連続して投与する、骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージの食作用能力を増加させる方法に関する。
【0027】
別の態様では、本発明は、がんの治療、特に液性がん又は固形がんの治療において、より詳細にはリンパ腫、結腸直腸がん、中皮腫、又は肝細胞癌の治療において使用するための、上述の特異的抗CLEC-1A化合物に関する。
【0028】
本発明の別の態様では、第1の治療化合物としてCLEC-1Aアンタゴニスト化合物、特に本明細書で定義した抗CLEC-1A抗体若しくは抗原結合性断片、及び抗腫瘍標的化抗体、特にマクロファージ、特にM1マクロファージの食作用能力を活性化及び/若しくは増強するのに適した抗腫瘍標的化抗体、又は化学療法薬からなる群から選択される少なくとも1つの第2の治療化合物を含む、治療化合物の組合せに関する。本発明者等は、前記組合せががんの治療に特に適していることを示した。本発明の実施例で例示したように、これらの組合せは、がんの治療において相乗効果を発揮し、腫瘍増殖、腫瘍体積の劇的な低下、及び/又は生存率の改善をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0029】
したがって、「二次壊死細胞」又は「二次壊死している細胞」という表現は、過凝縮クロマチン(核濃縮)、並びに核断片化(核崩壊)、並びにおそらく細胞質膜の破裂、活性化カスパーゼ-3の放出、更に細胞質の膨張及びリソソーム膜の透過化の可能性といった更なる特徴によって特徴づけられる細胞変化の段階に進行した細胞(本明細書で開示したような細胞株を含む)を定義する。二次壊死している細胞は、アポトーシス過程が自己消化性壊死の結果に、すなわち細胞崩壊という自己消化過程に進行している細胞である。「二次壊死細胞」又は「二次壊死している細胞」という表現は、アポトーシス細胞におけるこの特定の段階のマーカーを参照することによって同様に適切に定義することができ、二次壊死細胞を初期アポトーシス細胞又は一次壊死細胞から区別することもできるマーカーは公知であり、使用されている。前記マーカーには、標識結合アネキシンV及びヨウ化プロピジウム(PI)が含まれ:初期アポトーシス細胞はアネキシンV陽性及びPI陰性(アネキシン+/PI-)であることが知られており、一方後期アポトーシス細胞はアネキシンV陽性及びPI陽性、すなわち、アネキシン/PI二重陽性(アネキシン+/PI +)であることが知られている。これらのマーカーは、後期アポトーシス細胞を指示するために当技術分野で時々使用されている。本明細書で使用したように、透過化細胞は、細胞内又はオルガネラ内抗原に接近することができる細胞である。透過化は、抗体の細胞膜を介した侵入を可能にし、それによって、本発明の抗CLEC1A化合物のこれらの細胞の細胞内含有物への結合を可能にし、CLEC-1Aは細胞の細胞内区画内で発現するが、細胞膜上では発現しない。
【0030】
「内因性リガンド」とは、CLEC-1A受容体と同じ種に由来するか又は同じ生物内のリガンドと理解するべきであり、例えば、内因性ヒトCLEC-1Aリガンドは、ヒトCLEC-1A受容体のヒトリガンドであり、内因性マウスCLEC-1Aリガンドは、マウスCLEC-1A受容体のマウスリガンドである。
【0031】
本明細書で使用したように、「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、又は組換え抗体を意味する。
【0032】
本明細書で使用したように、「モノクローナル抗体」は、異なるアミノ酸配列の抗体の混合物を含有する「ポリクローナル」抗体調製物とは対照的に、共通の重鎖及び共通の軽鎖アミノ酸配列を共有する抗体である抗体分子の調製物を意味するものである。モノクローナル抗体は、ファージ、細菌、酵母、又はリボソームディスプレイのようないくつかの公知の技術によって、及びハイブリドーマ由来の抗体によって例示される古典的な方法によって、生成することができる。したがって、「モノクローナル」という用語は、1つの核酸クローンから得られた抗体全てを意味するために使用される。
【0033】
本発明の抗体には、組換え抗体が含まれる。本明細書で使用したように、「組換え抗体」という用語は、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現される抗体等の、組換え手段によって産生、発現、生成、若しくは単離される抗体、組換えコンビナトリアル抗体ライブラリーから単離される抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子によってトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離される抗体、又は、特定の免疫グロブリン遺伝子配列(ヒト免疫グロブリン遺伝子配列等)が他のDNA配列と共に組み立てられる、他の任意の方法で産生、発現、生成、若しくは単離される抗体を意味する。組換え抗体には、例えば、キメラ抗体及びヒト化抗体が含まれる。
【0034】
本明細書で使用したように、「キメラ抗体」は、マウス等の哺乳動物種の生殖系列から得られた可変ドメインの配列が、ヒト等の別の哺乳動物種の生殖系列から得られた定常ドメインの配列にグラフトされている抗体を意味する。
【0035】
本明細書で使用したように、「ヒト化抗体」は、マウス等の別の哺乳動物種の生殖細胞系列から得られたCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされている抗体を意味する。
【0036】
一実施形態では、本発明の抗体はヒト化抗体である。一実施形態では、本発明の抗体は組換え抗体である。一実施形態では、本発明の抗体はキメラ抗体である。一実施形態では、本発明の抗体は組換えキメラ抗体である。一実施形態では、本発明の抗体は組換えヒト化抗体である。本発明の抗体は、脱免疫化されていてもよい。「脱免疫化」とは、抗体が本発明の抗体と類似の構造を共有するが、抗体の構造が、抗体の構造中のT細胞によって認識される公知のエピトープを除去することによって、望ましくないT細胞応答の可能性を低下させるように改変されることと理解されたい。
【0037】
本明細書で使用したように、「抗体の抗原結合性断片」は、抗体の一部、すなわち、おそらくその天然の形態で、CLEC-1Aに対して抗原結合能力を示す、本発明の抗体の構造の一部に対応する分子を意味し、このような断片は特に、対応する4本鎖抗体の抗原結合特異性と比較して、CLEC-1Aに対して同じ又は実質的に同じ抗原結合特異性を示す。有利なことに、抗原結合性断片は対応する4本鎖抗体と同様の結合親和性を有する。しかし、対応する4本鎖抗体に関して抗原結合親和性が低下している抗原結合性断片も本発明に包含される。抗原結合能力は、抗体と標的断片との間の親和性を測定することによって判定することができる。これらの抗原結合性断片は、抗体の「機能的断片」と呼ばれることもある。
【0038】
本明細書で使用したように、「CLEC-1」という用語は、当技術分野でのその一般的な意味を有し、特に哺乳動物種のC型レクチン様受容体-1、より詳細にはヒトCLEC-1を意味する。CLEC-1は、CLEC-2、DECTIN-1、CLEC-9A、MICL、MAH、及びLOX-1等のC型レクチン様受容体(CTLR)のDECTIN-1クラスターに属する。
【0039】
本明細書で使用したように、「CLEC-1A」という用語は、哺乳動物種のCLEC-1A、好ましくはヒトCLEC-1Aに関する。ヒトCLEC-1Aの参照配列は、寄託番号Q8NC01 Uniprotに関連した配列に対応する。好ましくは、「ヒトCLEC-1」又は「ヒトCLEC-1A」又は「ヒトCLEC-1受容体」又は「ヒトCLEC-1A受容体」という用語は、51267NCBI寄託番号によって参照されるCLEC1A遺伝子によってコードされ、Q8NC01 Uniprot寄託番号によって参照されるアミノ酸配列のタンパク質を意味する。本明細書では、用語CLEC-1A、CLEC1A、CLEC1、CLEC-1、Clec1、Clec-1、Clec1A、及びClec-1Aは交換可能に使用され、いずれも寄託番号Q8NC01 Uniprotに関連した配列に対応するヒトCLEC-1A受容体に対応する哺乳動物のCLEC1受容体、そのオルソログタンパク質、又はその相同タンパク質を指定する。特に、CLEC-1Aは、配列番号109のアミノ酸配列を有するタンパク質である。特に、CLEC-1Aの細胞外ドメインは、配列番号108のアミノ酸配列を有するタンパク質である。
【0040】
本明細書で使用したように、「CLEC-1アンタゴニスト」という用語は、当技術分野でのその一般的な意味を有し、CLEC-1の生物学的活性をブロック、抑制、又は低下させる、天然又は合成の任意の化合物を意味する。特に、CLEC-1アンタゴニストは、CLEC-1とそのリガンドの少なくとも1つとの間の相互作用を阻害する。特に、CLEC-1アンタゴニストは、T細胞応答を増強し、特にT細胞増殖及び/又はIFNガンマ等のサイトカイン合成を増加させる。CLEC-1アンタゴニストは、CLEC-1の生物学的活性をブロック、抑制、又は低下させる、天然又は合成の任意の化合物を意味することもある。特に、CLEC-1アンタゴニストは、受容体CLEC-1とそのリガンドの少なくとも1つ、より詳細にはそのリガンドの全てとの間の相互作用を阻害する。より詳細には、CLEC-1アンタゴニストは、受容体CLEC-1又はそのリガンドのいずれか1つに結合することができる。
【0041】
本明細書で使用したように、「CLEC-1アンタゴニスト」又は「CLEC-1のアンタゴニスト」は、CLEC-1Aに結合し、抗体、抗体の抗原結合性断片、抗原結合抗体模倣体、抗体の抗原結合性断片若しくは完全抗体を含む高分子、小さな有機化合物、限定はしないが、CLEC-1Aの細胞外ドメインの少なくとも1つの断片のようなタンパク質、又はCLEC-1Aの機能的同等物の群から選択される化合物に対応することができ、前記断片は、ペプチドのような別の分子又は抗体のような別のタンパク質の断片と組み合わせることができ、CLEC-1Aの細胞外ドメインの断片の構造を安定化させて、CLEC-1Aの細胞外ドメインの少なくとも1つの断片を含む融合タンパク質を提供することができる。前記融合タンパク質は、例えば、CLEC-1Aの細胞外ドメインの断片、及びリンカーペプチド、タグ、抗体のFc部分を含んでいてもよい。
【0042】
抗体のアンタゴニスト能力は、本発明の実施例、特に本発明によるCLEC-1Aのアンタゴニストが腫瘍細胞の骨髄系細胞による食作用を調節する、すなわち増加させる能力を有する、実施例1で開示した適切な実験によって評価することができる。特に、(i)アンタゴニスト抗体候補を含まない同じ結合実験と比較して、CLEC-1Aの細胞外ドメインの、特に、ヒト免疫グロブリン、特にヒトIgGのFc断片と融合したヒトCLEC-1A受容体の細胞外ドメインを含む融合タンパク質の、二次壊死細胞及び/又は腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の細胞内含有物、特に透過化RAJI細胞及び/又はアポトーシスPBMCへの結合を低下させる場合、並びに(ii)アンタゴニスト化合物を含まない同じ実験と比較して、腫瘍細胞の骨髄系細胞による食作用を増加させる場合、抗体又はその抗原結合性断片は、CLEC-1A、特にヒトCLEC-1Aのアンタゴニストと考えることができる。陰性実験と比較して、結合が少なくとも1log、より詳細には少なくとも2log、最も好ましくは少なくとも3log低下した場合に、結合の低下と考えられる。食作用が少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも30%上昇した場合に、腫瘍細胞の食作用の増加と考えられる。
【0043】
本発明の抗体及び抗原結合性断片は、構造的特徴に従って定義することができる。抗体の抗原結合性断片は、CDR(相補性決定領域)と呼ばれる超可変ドメイン又は抗原の認識部位、すなわち、CLEC-1Aの細胞外ドメインを包含するその一部を含む断片である。
【0044】
4本鎖免疫グロブリンの各軽鎖及び重鎖可変ドメイン(それぞれVL及びVH)は、それぞれVL-CDR1(又はLCDR1)、VL-CDR2(又はLCDR2)、VL-CDR3(又はLCDR3)、及びVH-CDR1(又はHCDR1)、VH-CDR2(又はHCDR2)、VH-CDR3(又はHCDR3)と呼ばれる3個のCDRを有する。
【0045】
当業者は、参照番号付けシステム等のこの点に関して記載された標準的な定義を参照することによって、KABATの番号付けシステムを参照することによって、又はIMGT「collier de perle」アルゴリズムを適用することによって、抗体の様々な領域/ドメインの位置を決定することができる。この点に関して、本発明の配列の定義について、領域/ドメインの境界は、参照したシステムそれぞれによって変化し得ることに注意されたい。したがって、本発明で定義した領域/ドメインは、抗体の可変ドメインの全長配列内の関心のある配列の長さ又は位置の約+/-10%の変動を示す配列を包含する。
【0046】
本発明の特定の実施形態では、抗体のCDRドメインは、Kabat命名法に従って指定される。本発明の別の特定の実施形態では、抗体のCDRドメインは、IMGT命名法に従って指定される。言い換えれば、本発明の抗体又はその抗原結合性断片のいずれか又は全てのCDRドメインは、Kabat命名法によって定義されていてもよく、本発明の抗体又はその抗原結合性断片のいずれか又は全てのCDRドメインは、IMGT命名法によって定義されていてもよい。より詳細には、本発明の抗体又はその抗原結合性断片の全CDRドメインは、Kabat命名法によって定義されている。
【0047】
したがって、4本鎖免疫グロブリンの構造に基づいて、抗原結合性断片は、利用可能なデータベース及び先行技術における抗体の配列との比較によって、特にこれらの配列における機能ドメインの位置の比較によって定義することができ、フレームワーク及び定常ドメインの位置は、様々なクラスの抗体、特にIgG、特に哺乳動物のIgGについて明確に定義されていることに注意されたい。このような比較には、抗体の3次元構造に関するデータも含まれる。
【0048】
本発明の特定の実施形態を例示するために、前記抗体のCDRを含む可変ドメインを含有する抗体の抗原結合性断片は、Fv、dsFv、scFv、Fab、Fab'、F(ab')2を包含する。Fv断片は、疎水性相互作用によって一緒に関連している抗体のVLドメイン及びVHドメインからなり、dsFv断片では、VH:VLヘテロ二量体はジスルフィド結合によって安定化されており、scFv断片では、VLドメイン及びVHドメインは可動性ペプチドリンカーを介して相互に接続されているため、単鎖タンパク質を形成する。Fab断片は、抗体のパパイン消化によって得ることができる単量体断片であり、ジスルフィド結合を介して一緒に結合したL鎖全体及びH鎖のVH-CH1断片を含む。F(ab')2断片は、ヒンジジスルフィドの下で抗体をペプシン消化することによって生成することができ、2つのFab'断片、更に免疫グロブリン分子のヒンジ領域の一部を含む。Fab'断片は、ヒンジ領域中のジスルフィド結合を切断することによって、F(ab')2断片から得ることができる。F(ab')2断片は二価であり、すなわち、天然の免疫グロブリン分子のように、2つの抗原結合部位を含み、一方、Fv(Fabの可変部分を構成するVH:VL二量体)、dsFv、scFv、Fab、及びFab'断片は一価であり、すなわち、単一の抗原結合部位を含む。本発明のこれらの基本的な抗原結合性断片を一緒に組み合わせて、ダイアボディ、トリボディ、又はテトラボディ等の多価の抗原結合性断片を得ることができる。これらの多価抗原結合性断片も本発明の一部である。
【0049】
本明細書で使用したように、「二重特異性」抗体という用語は、第1の抗原に特異的である少なくとも1つの領域(例えば、第1の抗体の可変領域から得られる)、及び第2の抗原に特異的である少なくとも1つの第2の領域(例えば、第2の抗体の可変領域から得られる)を有することによって、2つの異なる抗原を認識する抗体を意味する。二重特異性抗体は、2つの標的抗原に特異的に結合するため、多重特異性抗体の一種である。2つ以上の異なる抗原を認識する多重特異性抗体は、組換えDNA法によって生成することができ、又は任意の便利な方法によって化学的に生成される抗体を含むが、これらに限定されない。二重特異性抗体には、全抗体、又は抗体のコンジュゲート、又は2つの異なる抗原を認識することができるポリマー型の抗体が含まれる。二重特異性抗体には、二価の特性を保持するために還元及び再形成された抗体、並びにBiME(二重特異性マクロファージ増強抗体)、BiTE(二重特異性T細胞エンゲージャー)、DART(二重親和性リターゲティング)、DNL(ドックアンドロック)、DVD-Ig(二重可変ドメイン免疫グロブリン)等の、各抗原に対していくつかの抗原認識部位を有することができるように化学的に結合された抗体が含まれる。
【0050】
抗体について本明細書で開示した実施形態は全て、必要に応じて変更を加えて、本発明による任意の化合物、特に抗原結合抗体断片、ヒト化抗体、及びキメラ抗体、及び組換え抗体に置き換えられる。
【0051】
本発明の以下の説明では、抗CLEC-1A化合物という用語は、ヒト化されているかどうか、キメラであるかどうか、組換えであるかどうかに関わらず、抗体、抗原結合性断片、又はそのような抗体若しくはその抗原結合性断片を含む高分子のいずれかを意味する。抗CLEC-1A抗体という用語を使用する場合、本発明の特定の実施形態に関して明記されている場合を除いて、同じ化合物がこの用語に包含される。
【0052】
「特異的抗CLEC-1A抗体」は、CLEC-1Aに対して特異的結合を示し、別の化合物に対して特異的結合を示さない化合物であり、結合は、それぞれの場合において、限定はしないが、ビアコア分析、ブリッツ分析、ELISAアッセイ、又はスキャッチャードプロット等の当技術分野で公知の方法によって検出可能である。特異的「抗CLEC-1A化合物」は、それでもCLEC-1A以外の別の化合物と交差反応する可能性があり、特異性の概念は、親和性は低いが、抗体がCLEC-1A以外のその他のポリペプチドと交差反応する可能性があることを排除しない。したがって、特異的抗CLEC-1A化合物はまた、CLEC-1Aに対して高い結合親和性を示すが、それにも関わらず、別の化合物に対して低い結合親和性を示す抗体として定義することができる。
【0053】
抗体及びそれらの抗原結合性断片
第1の態様では、以下を含むヒトC型レクチン様受容体-1メンバーA受容体(CLEC-1A受容体)の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片を開示する:
・アミノ酸配列がそれぞれ、
- 配列番号57、配列番号65、配列番号73、配列番号81、配列番号89、又は配列番号97、特に、配列番号65、配列番号81、又は配列番号97のVHCDR1、及び
- 配列番号59、配列番号67、配列番号75、配列番号83、又は配列番号91、特に、配列番号67、配列番号75、又は配列番号83のVHCDR2、及び
- 配列番号61、配列番号69、配列番号77、配列番号85、又は配列番号93、特に、配列番号69、配列番号77、又は配列番号85のVHCDR3
から選択される3個のVHCDRを含む抗体重鎖可変ドメイン、並びに
・アミノ酸配列が、
- 配列番号4、配列番号12、配列番号20、配列番号28、配列番号36、特に、配列番号12、配列番号20、又は配列番号28のVLCDR1、及び
- 配列番号6、配列番号14、配列番号22、配列番号30、又は配列番号38、特に、配列番号14、配列番号22、又は配列番号30のVLCDR2、及び
- 配列番号8、配列番号16、配列番号24、配列番号32、又は配列番号40、特に、配列番号16、配列番号24、又は配列番号32のVLCDR3
から選択される3個のVLCDRを含む抗体軽鎖可変ドメイン。
【0054】
本発明の別の実施形態では、以下を含むヒトC型レクチン様受容体-1メンバーA受容体(CLEC-1A受容体)の細胞外ドメインに特異的に結合する抗体又はその抗原結合性断片を開示する:
・アミノ酸配列がそれぞれ、
配列番号57、配列番号65、配列番号73、配列番号81、配列番号89、配列番号97、又は配列番号103、特に、配列番号73、配列番号81、又は配列番号97のVHCDR1、及び
配列番号59、配列番号67、配列番号75、配列番号83、配列番号91、又は配列番号105、特に、配列番号75、又は配列番号83のVHCDR2、及び
配列番号61、配列番号69、配列番号77、配列番号85、配列番号93、又は配列番号107、特に、配列番号77、又は配列番号85のVHCDR3
から選択される3個のVHCDRを含む抗体重鎖可変ドメイン、並びに
・アミノ酸配列が、
配列番号4、配列番号12、配列番号20、配列番号28、配列番号36、又は配列番号49、特に、配列番号20、又は配列番号28のVLCDR1、及び
配列番号6、配列番号14、配列番号22、配列番号30、配列番号38、又は配列番号51、特に、配列番号22、又は配列番号30のVLCDR2、及び
配列番号8、配列番号16、配列番号24、配列番号32、配列番号40、又は配列番号53、特に、配列番号24、又は配列番号32のVLCDR3から選択される3個のVLCDRを含む抗体軽鎖可変ドメイン。
【0055】
本発明の特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合性断片は、以下のCDRドメインを含む:
- 配列番号65、配列番号81、又は配列番号97で記載されたアミノ酸配列を含むか又はそれからなるVHCDR1、及び
- 配列番号67、又は配列番号75、又は配列番号83で記載されたアミノ酸配列を含むか又はそれからなるVHCDR2、及び
- 配列番号69、又は配列番号77、又は配列番号85で記載されたアミノ酸配列を含むか又はそれからなるVHCDR3、及び
- 配列番号12、又は配列番号20、又は配列番号28で記載されたアミノ酸配列を含むか又はそれからなるVLCDR1、及び
- 配列番号14、又は配列番号22、又は配列番号30で記載されたアミノ酸配列を含むか又はそれからなるVLCDR2、及び
- 配列番号16、又は配列番号24、又は配列番号32で記載されたアミノ酸配列を含むか又はそれからなるVLCDR3。
【0056】
本発明の特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合性断片は、以下のCDRドメインを含む:
- 配列番号73、配列番号81、又は配列番号97で記載されたアミノ酸配列を含むか又はそれからなるVHCDR1、及び
- 配列番号75又は配列番号83で記載されたアミノ酸配列を含むか又はそれからなるVHCDR2、及び
- 配列番号77又は配列番号85で記載されたアミノ酸配列を含むか又はそれからなるVHCDR3、及び
- 配列番号20又は配列番号28で記載されたアミノ酸配列を含むか又はそれからなるVLCDR1、及び
- 配列番号22又は配列番号30で記載されたアミノ酸配列を含むか又はそれからなるVLCDR2、及び
- 配列番号24又は配列番号32で記載されたアミノ酸配列を含むか又はそれからなるVLCDR3。
【0057】
この実施形態による抗体は、樹状細胞による腫瘍細胞の食作用を増強するのに特に適している。この特定の定義による抗体は、治療での使用に適したヒトCLEC-1Aに対して親和性を有し、同時に、その他のCLEC-1A抗体と比較して、特に本発明の実施例で使用した対照抗CLEC-1A抗体と比較して(
図1-3を参照)、樹状細胞による腫瘍細胞の食作用能力に対して同じ濃度でより良い効果を有する。
【0058】
特定の実施形態では、抗体重鎖可変ドメインは、
それぞれ配列番号57、配列番号59、及び配列番号61、又は
それぞれ配列番号65、配列番号67、及び配列番号69、又は
それぞれ配列番号73、配列番号75、及び配列番号77、又は
それぞれ配列番号81、配列番号83、及び配列番号85、又は
それぞれ配列番号89、配列番号91、及び配列番号93、又は
それぞれ配列番号97、配列番号75、及び配列番号77の配列のVHCDR1、VHCDR2、及びVHCDR3を含む。
【0059】
CDRドメインのこれらの組合せはそれぞれ、例示された抗体15E3、11H11、5D1、6C5、10F4、及び14H9それぞれの重鎖に存在するCDRドメインに対応する。
【0060】
特定の実施形態では、抗体軽鎖可変ドメインは、
それぞれ配列番号4、配列番号6、及び配列番号8、又は
それぞれ配列番号12、配列番号14、及び配列番号16、又は
それぞれ配列番号20、配列番号22、及び配列番号24、又は
それぞれ配列番号28、配列番号30、及び配列番号32、又は
それぞれ配列番号36、配列番号38、及び配列番号40の配列のVLCDR1、VLCDR2、及びVLCDR3を含む。
【0061】
CDRドメインのこれらの組合せはそれぞれ、例示された抗体15E3、11H11、5D1、及び14H9(いずれも同じCDR VLCDRを共有する)、6C5、及び10F4それぞれの軽鎖に存在するCDRドメインに対応する。
【0062】
本発明の特定の実施形態では、抗体重鎖可変ドメインは、それぞれ配列番号97、配列番号75、及び配列番号77の配列のVHCDR1、VHCDR2、及びVHCDR3を含み、抗体軽鎖可変ドメインは、それぞれ配列番号20、配列番号22、及び配列番号24の配列のVLCDR1、VLCDR2、及びVLCDR3を含む。この定義による抗体は、特にin vitro及び/又はin vivoにおいて、骨髄系細胞、特に樹状細胞又はマクロファージによる腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用を調節、特に増強するのに特に適している可能性がある。
【0063】
本発明の特定の実施形態では、抗体重鎖可変ドメインは、それぞれ配列番号81、配列番号83、及び配列番号85の配列のVHCDR1、VHCDR2、及びVHCDR3を含み、抗体軽鎖可変ドメインは、それぞれ配列番号28、配列番号30、及び配列番号32の配列のVLCDR1、VLCDR2、及びVLCDR3を含む。この定義による抗体は、特にin vitro及び/又はin vivoにおいて、骨髄系細胞、特に樹状細胞又はマクロファージによる腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用を調節、特に増強するのに特に適している可能性がある。
【0064】
本発明の特定の実施形態では、抗体重鎖可変ドメインは、それぞれ配列番号65、配列番号67、及び配列番号69の配列のVHCDR1、VHCDR2、及びVHCDR3を含み、抗体軽鎖可変ドメインは、それぞれ配列番号12、配列番号14、及び配列番号16の配列のVLCDR1、VLCDR2、及びVLCDR3を含む。この定義による抗体は、特にin vitro及び/又はin vivoにおいて、骨髄系細胞、特に樹状細胞又はマクロファージによる腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用を調節、特に増強するのに特に適している可能性がある。
【0065】
本発明の特定の実施形態では、抗体重鎖可変ドメインは、それぞれ配列番号89、配列番号91、及び配列番号93の配列のVHCDR1、VHCDR2、及びVHCDR3を含み、抗体軽鎖可変ドメインは、それぞれ配列番号36、配列番号38、及び配列番号40の配列のVLCDR1、VLCDR2、及びVLCDR3を含む。この定義による抗体は、特にin vitro及び/又はin vivoにおいて、骨髄系細胞、特に樹状細胞又はマクロファージによる腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用を調節、特に増強するのに特に適している可能性がある。
【0066】
本発明の特定の実施形態では、抗体重鎖可変ドメインは、それぞれ配列番号73、配列番号75、及び配列番号77の配列のVHCDR1、VHCDR2、及びVHCDR3を含み、抗体軽鎖可変ドメインは、それぞれ配列番号20、配列番号22、及び配列番号24の配列のVLCDR1、VLCDR2、及びVLCDR3を含む。この定義による抗体は、特にin vitro及び/又はin vivoにおいて、骨髄系細胞、特に樹状細胞又はマクロファージによる腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用を調節、特に増強するのに特に適している可能性がある。
【0067】
別の特定の実施形態では、抗体重鎖可変ドメインは、配列番号55、配列番号63、配列番号71、配列番号79、配列番号87、又は配列番号95で記載されたアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。これらの重鎖可変ドメインはそれぞれ、例示された抗体15E3、11H11、5D1、6C5、10F4、及び14H9の重鎖可変ドメインに対応する。
【0068】
別の特定の実施形態では、抗体軽鎖可変ドメインは、配列番号2、配列番号10、配列番号18、配列番号26、配列番号34、又は配列番号42で記載されたアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。これらの軽鎖可変ドメインはそれぞれ、例示された抗体15E3、11H11、5D1、6C5、10F4、及び14H9の軽鎖可変ドメインに対応する。
【0069】
別の特定の実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合性断片は、
- 配列番号55で記載されたアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなる重鎖可変ドメイン及び配列番号2で記載されたアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなる軽鎖可変ドメイン、又は、
- 配列番号63で記載されたアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなる重鎖可変ドメイン及び配列番号10で記載されたアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなる軽鎖可変ドメイン、又は、
- 配列番号71で記載されたアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなる重鎖可変ドメイン及び配列番号18で記載されたアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなる軽鎖可変ドメイン、又は、
- 配列番号79で記載されたアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなる重鎖可変ドメイン及び配列番号26で記載されたアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなる軽鎖可変ドメイン、又は、
- 配列番号87で記載されたアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなる重鎖可変ドメイン及び配列番号34で記載されたアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなる軽鎖可変ドメイン、又は、
- 配列番号95で記載されたアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなる重鎖可変ドメイン及び配列番号42で記載されたアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなる軽鎖可変ドメインを含む。
【0070】
重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインのこれらの組合せはそれぞれ、例示された抗体15E3、11H11、5D1、6C5、10F4、14H9、及び21H1の重鎖及び軽鎖可変ドメインに対応する。
【0071】
別の特定の実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合性断片は、それぞれ例示した抗体14H9の重鎖及び軽鎖可変ドメインに対応する、配列番号95で記載されたアミノ酸配列を含むか又はそれからなる重鎖可変ドメイン及び配列番号42で記載されたアミノ酸配列を含むか又はそれからなる軽鎖可変ドメインを含む。この定義による抗体は、特にin vitro及び/又はin vivoにおいて、骨髄系細胞、特に樹状細胞又はマクロファージによる腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用を調節、特に増強するのに特に適している可能性がある。
【0072】
別の特定の実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合性断片は、それぞれ例示した抗体6H5の重鎖及び軽鎖可変ドメインに対応する、配列番号79で記載されたアミノ酸配列を含むか又はそれからなる重鎖可変ドメイン及び配列番号26で記載されたアミノ酸配列を含むか又はそれからなる軽鎖可変ドメインを含む。この定義による抗体は、特にin vitro及び/又はin vivoにおいて、骨髄系細胞、特に樹状細胞又はマクロファージによる腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用を調節、特に増強するのに特に適している可能性がある。
【0073】
別の特定の実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合性断片は、それぞれ例示した抗体11H11の重鎖及び軽鎖可変ドメインに対応する、配列番号63で記載されたアミノ酸配列を含むか又はそれからなる重鎖可変ドメイン及び配列番号10で記載されたアミノ酸配列を含むか又はそれからなる軽鎖可変ドメインを含む。この定義による抗体は、特にin vitro及び/又はin vivoにおいて、骨髄系細胞、特に樹状細胞又はマクロファージによる腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用を調節、特に増強するのに特に適している可能性がある。
【0074】
別の特定の実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合性断片は、それぞれ例示した抗体10F4の重鎖及び軽鎖可変ドメインに対応する、配列番号87で記載されたアミノ酸配列を含むか又はそれからなる重鎖可変ドメイン及び配列番号34で記載されたアミノ酸配列を含むか又はそれからなる軽鎖可変ドメインを含む。この定義による抗体は、特にin vitro及び/又はin vivoにおいて、骨髄系細胞、特に樹状細胞又はマクロファージによる腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用を調節、特に増強するのに特に適している可能性がある。
【0075】
別の特定の実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合性断片は、それぞれ例示した抗体5D1の重鎖及び軽鎖可変ドメインに対応する、配列番号71で記載されたアミノ酸配列を含むか又はそれからなる重鎖可変ドメイン及び配列番号18で記載されたアミノ酸配列を含むか又はそれからなる軽鎖可変ドメインを含む。この定義による抗体は、特にin vitro及び/又はin vivoにおいて、骨髄系細胞、特に樹状細胞又はマクロファージによる腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用を調節、特に増強するのに特に適している可能性がある。
【0076】
様々な抗体分子及び断片は、限定はしないが、IgA、分泌型IgA、IgE、IgG、及びIgM等の一般的に知られている免疫グロブリンクラス(アイソタイプ)のいずれかから得ることができる。IgGサブクラスも当業者にはよく知られており、限定はしないが、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む。本発明の特定の実施形態では、抗体の可変領域は、IGg1、IgG2、IgG3、又はIgG4定常領域のような抗体定常領域と関連することができる。これらの定常領域は、Fc受容体に対するそれらの結合能力を改変するために、当技術分野で知られている方法によって更に変異又は改変することができる。特定の実施形態では、本発明による抗体又はその抗原結合性断片は、ヒト化モノクローナル抗体であり、特に、抗体軽鎖定常ドメインは、ヒトカッパ軽鎖定常ドメインから得られ、特に、軽鎖定常ドメインは、例えば、配列番号111のヌクレオチド配列によってコードされる配列番号112の配列を含むか又はそれからなり、抗体重鎖定常ドメインは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4重鎖定常ドメインから得られ、特に抗体重鎖定常ドメインは、配列番号113(ヒトFc IgG1)、配列番号114(ヒトFc IgG2)、配列番号115(ヒトFc IgG4)、配列番号116(マウスFcG1)、又は配列番号117(マウスFcG4、例えば、配列番号118のヌクレオチド配列によってコードされる)のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0077】
別の実施形態では、抗体又はその抗原結合性断片は、少なくとも約1×10-6M、1×10-7M、1×10-8M、1×10-9M、1×10-10M、1×10-11M、1×10-12M、又はそれ以上の親和性でヒトCLEC-1Aに結合し、及び/又はヒトCLEC-1A受容体以外の別の化合物に対するその親和性よりも少なくとも2倍高い親和性で標的に結合する。特定の実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合性断片は、少なくとも1E-07M、より詳細には少なくとも1E-08Mの親和定数(KD)でヒトCLEC-1Aに結合する。特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合性断片は、同じ結合条件でのCLEC-1aに対する対照抗CLEC-1A抗体の結合と比較して、1log、より詳細には2log、最も好ましくは3logを上回る親和性でヒトCLEC-1Aに結合する。結合実験は、本発明の実施例で開示したいずれか1つの結合実験によって進めることができる。
【0078】
特定の実施形態では、抗CLEC-1A化合物は、本発明による最大シグナルの50%に達する化合物の有効用量(ED50)が、ヒトCLEC-1Aに対して1500ng/ml未満のED50値である場合、CLEC-1A特異的である。ED50は、当技術分野で知られている方法に従って、又は
図4で例示したサイトメトリーのように、本発明の実施例で開示した方法によって、判定することができる。特定の実施形態では、本明細書において上記で定義したような抗CLEC-1A抗体とヒトCLEC-1Aとの間の結合は、結合アッセイにおいて最大シグナルの50%に達する化合物の有効用量(EC50)が、1200ng/ml未満、より詳細には800ng/ml未満、更により詳細には400ng/ml未満である場合、特異的であると考えることができる。このような能力は、例えば、本発明の実施例に例示した方法によって評価することができる。
【0079】
別の特定の実施形態では、本発明による特異的な抗CLEC-1A化合物は、ヒトCLEC-1Aに対して、1ng/mlと1000ng/mlとの間、より詳細には5ngmlと1500ng/mlとの間、より詳細には800ng/mlを含む、ED50値(EC50値とも呼ばれる)を有する。EC50は、当技術分野で知られている方法に従って、又は本発明の実施例で開示した方法によって、例えば、
図4で例示し、実施例2で生じたデータに関して開示した方法に従って、判定することができる。
【0080】
「ED50」という用語は、本明細書で使用したように、生物学的又は生化学的機能(例えば、CLEC-1Aの機能又は活性)を50%誘発する化合物(例えば、抗CLEC-1A化合物)の有効性の基準を意味する。例えば、EC50は、CLEC-1Aの活性を半分誘発するために必要な抗CLEC-1A化合物の量を示す。すなわち、抗CLEC-1A化合物の最大有効濃度の半分(50%)(50%ED又はED50)である。ED50は、in vitroでの50%の有効性に必要な薬物の濃度を表す。ED50は、例えば、用量反応曲線を作成し、Fc-CLECへのCLEC-1A結合に対する異なる濃度の抗CLEC-1A化合物の効果を調べることによって、当技術分野で公知の技術によって判定することができる。方法は、例えば、本発明の実施例で開示されている。
【0081】
本発明では、アンタゴニスト抗体が存在している結合競合アッセイにおいて、抗CLEC-1A化合物が、CLEC-1Aに対するFc-CLEC-1Aタンパク質のKD値より1log上回って、好ましくは2log上回って、より好ましくは3log上回って、最も好ましくは4log上回って増加を誘導する場合、抗CLEC-1A化合物はCLEC-1Aのアンタゴニストであると考えることもできる。この実験は、ブリッツ法又はELISAによって、例えば、本発明の実施例で例示した実験条件で実施することができる。
【0082】
ヒト化抗体である抗体又はその抗原結合性断片はまた、可変鎖(VH及び/又はVL)の定常領域に存在するアミノ酸残基を、標準的な定義及び番号付けに従ってヒト抗体において対応する位置を有するヒトアミノ酸残基で置換することによって得ることができ、置換レベルは前記フレームワーク領域の残基の1%から80%であり、より好ましくは1%から50%であり、更により好ましくは1%から20%であり、特に1%から18%である。前記定常領域には、特にKABAT番号付けを参照することによって特定された、4本鎖抗体で定義されたフレームワーク領域(FR)の定常領域が含まれる。
【0083】
抗CLEC-1A抗体は、公知の方法によってヒト化することができる。例として、本明細書で開示したCDRの異なる組合せは、ヒト重鎖可変ドメイン及び/又は軽鎖可変ドメインにグラフトすることができる。本発明のキメラ、ヒト化及び/又は脱免疫化抗体は、非修飾抗体のような任意のクラスの免疫グロブリンに属していてもよい。好ましくは、それらは、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4等のIgGクラスのサブクラスに属する。
【0084】
抗体の可変領域を適切なリンカー又は別の抗体の定常領域と組み合わせることによる、組換え抗体(若しくはその抗原結合性断片)又はキメラ抗体を調製するための方法は、当技術分野でよく知られている。
【0085】
本発明にまた包含されるのは、抗体又はその抗原結合性断片、特に、可変重鎖ドメインとして配列番号71のアミノ酸配列及び軽鎖可変ドメインとして配列番号18のアミノ酸配列を含む抗体と競合し、特に、CLEC-1A受容体への結合について本発明の実施例で例示したキメラ抗体5D1であり、CLEC-1Aのその標的への結合と拮抗する、キメラ若しくはヒト化抗体又はその抗原結合性断片である。
【0086】
特に、本発明の抗体又はその抗原結合性断片は、ヒトC型レクチン様受容体-1メンバーA受容体(CLEC-1A受容体)の細胞外ドメインに特異的に結合し、ヒトCLEC-1A受容体への結合について、配列番号71を含むか若しくはそれからなる重鎖可変ドメイン及び配列番号18を含むか若しくはそれからなる軽鎖可変ドメインを含むか又はそれらからなる抗体、特に配列番号121を含むか若しくはそれからなる重鎖ドメイン及び配列番号128を含むか若しくはそれからなる軽鎖ドメインを含むか又はそれらからなる抗体と更に競合し、ヒトCLEC-1のアンタゴニストであり、特に二次壊死細胞及び/又は腫瘍細胞によって発現されるそのリガンド(特に、その標的)の少なくとも1つへの、ヒトCLEC-1Aの結合、特にヒトCLEC-1Aの細胞外ドメインの結合と特に拮抗する。
【0087】
特に、本発明の抗体又はその抗原結合性断片は、ヒトC型レクチン様受容体-1メンバーA受容体(CLEC-1A受容体)の細胞外ドメインに特異的に結合し、ヒトCLEC-1A受容体への結合について、配列番号63を含むか若しくはそれからなる重鎖可変ドメイン及び配列番号10を含むか若しくはそれからなる軽鎖可変ドメインを含むか又はそれらからなる抗体、特に配列番号120を含むか若しくはそれからなる重鎖ドメイン及び配列番号127を含むか若しくはそれからなる軽鎖ドメインを含むか又はそれらからなる抗体と更に競合し、ヒトCLEC-1のアンタゴニストであり、特に二次壊死細胞及び/又は腫瘍細胞によって発現されるそのリガンド(特に、その標的)の少なくとも1つへの、ヒトCLEC-1Aの結合、特にヒトCLEC-1Aの細胞外ドメインの結合と特に拮抗する。
【0088】
本発明のより詳細な実施形態では、前記抗体又はその抗原結合性断片はまた、陰性対照と比較して、がん細胞及び/又は二次壊死細胞の骨髄系細胞、特に、樹状細胞及び/又はマクロファージによる食作用を、特に、陰性対照と比較して少なくとも10%、より詳細には少なくとも20%増強することができる。特に、前記抗体又はその抗原結合性断片は、in vivo及び/又はin vitroで使用した場合、陰性対照と比較した、骨髄系細胞、特に、樹状細胞及び/又はマクロファージによる腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用の調節、特に増加と相関し、特に腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用は、陰性対照と比較して少なくとも10%、より詳細には少なくとも20%増加する。
【0089】
交差競合する抗体(又は化合物)及びCLEC-1A受容体を認識する抗体(又は化合物)は、例えば、ある抗体が別の抗体の標的抗原への結合をブロックする能力を示すことによって、例えば、競合的結合アッセイによって、イムノアッセイ等の日常的な技術を使用して特定することができる。競合的結合は、本発明の実施例で記載したようなアッセイを使用して判定することができる。特に、競合的結合は、実施例10で例示した方法を使用して判定することができ、His-CLEC1に対する抗体相互作用及び競合は、ELISAによって調査する。試験した抗CLEC-1A化合物が、前記抗体(又は化合物)の1つを欠如している陽性対照と比較して、その他の抗体の結合を少なくとも50%、少なくとも60%、詳細には少なくとも70%、より詳細には少なくとも80%低下させる場合、交差競合が存在し、逆も同様である。
【0090】
機能的特徴を示し、CLEC-1Aに特異的に結合するか、又はCLEC-1Aの特定の部分を含むアンタゴニスト化合物。
本発明はまた、
(i)骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/若しくはマクロファージ(より詳細には、ヒト樹状細胞及び/若しくはヒトマクロファージ)による腫瘍細胞の食作用の調節、特に増強と相関し、並びに
(ii)T細胞、特にヒトT細胞の増殖の調節、特に増強と相関し、並びに/又は
(iii)T細胞、特にヒトT細胞の活性化の調節、特に増強と相関する
CLEC-1Aのアンタゴニスト化合物であって、
アンタゴニスト化合物が、ポリペプチド、ペプチド、抗体、それらの抗原結合性断片、抗原結合抗体模倣体、CLEC-1A、特にヒトCLEC-1Aの機能的同等物、又は有機分子からなる群から選択され、
アンタゴニスト化合物が、ヒトC型レクチン様受容体-1メンバーA受容体(「CLEC-1A」又は「CLEC-1A受容体」)の細胞外ドメインに結合し、ヒトCLEC-1A受容体への結合について、配列番号63を含むか若しくはそれからなる重鎖可変ドメイン及び配列番号10を含むか若しくはそれからなる軽鎖可変ドメインを含むか又はそれらからなる抗体、特に配列番号120を含むか若しくはそれからなる重鎖ドメイン及び配列番号127を含むか若しくはそれからなる軽鎖ドメインを含むか又はそれらからなる抗体と競合し、ヒトCLEC-1のアンタゴニストであり、特に二次壊死細胞及び/又は腫瘍細胞によって発現されるそのリガンド(特に、その標的)の少なくとも1つへの、ヒトCLEC-1Aの結合、特にヒトCLEC-1Aの細胞外ドメインの結合と特に拮抗する、アンタゴニスト化合物に関する。
【0091】
アンタゴニスト化合物は、特に、抗体若しくは抗原結合性断片、又は抗原結合抗体模倣体である。
【0092】
特定の実施形態では、CLEC-1Aのアンタゴニスト化合物は、
(i)骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/若しくはマクロファージ(より詳細にはヒト樹状細胞及び/若しくはヒトマクロファージ)による腫瘍細胞の食作用の調節、特に増強と相関し、並びに
(ii)T細胞、特にヒトT細胞の増殖の調節、特に増強と相関し、並びに/又は
(iii)T細胞、特にヒトT細胞の活性化の調節、特に増強と相関し、
アンタゴニスト化合物は、ポリペプチド、ペプチド、抗体、それらの抗原結合性断片、抗原結合抗体模倣体、CLEC-1A、特にヒトCLEC-1Aの機能的同等物、又は有機分子からなる群から選択され、
アンタゴニスト化合物は、ヒトC型レクチン様受容体-1メンバーA受容体(「CLEC-1A」又は「CLEC-1A受容体」)の細胞外ドメインに結合し、ヒトCLEC-1A受容体への結合について、配列番号71を含むか若しくはそれからなる重鎖可変ドメイン及び配列番号18を含むか若しくはそれからなる軽鎖可変ドメインを含むか又はそれらからなる抗体、特に配列番号121を含むか若しくはそれからなる重鎖ドメイン、及び配列番号128を含むか若しくはそれからなる軽鎖ドメインを含むか又はそれからなる抗体と競合し、ヒトCLEC-1のアンタゴニストであり、特に二次壊死細胞及び/又は腫瘍細胞によって発現されるそのリガンド(特に、その標的)の少なくとも1つへの、ヒトCLEC-1Aの結合、特にヒトCLEC-1Aの細胞外ドメインの結合と特に拮抗する。
【0093】
アンタゴニスト化合物は特に、抗体若しくは抗原結合性断片、又は抗原結合抗体模倣体である。
【0094】
アンタゴニスト化合物は特に、キメラ、ヒト化、完全ヒト化抗体及びそれらの断片等、脱免疫化抗体及びそれらの抗原結合性断片等の抗体、抗体の抗原結合性断片、抗原結合抗体模倣体、抗体の抗原結合性断片又は完全抗体を含む高分子、小さな有機化合物、限定はしないが、CLEC-1Aの細胞外ドメインの少なくとも1つの断片を含むタンパク質又はペプチドのようなタンパク質、又はCLEC-1Aの機能的同等物の群から選択され、このような断片は、CLEC-1A受容体の細胞外ドメインの断片の構造を安定化させて、CLEC-1Aの細胞外ドメインの少なくとも1つの断片を含む融合タンパク質を提供する、ペプチド又は抗体のような別のタンパク質の断片のような別の分子と組み合わせることができる。このような融合タンパク質は、例えば、CLEC-1A受容体の細胞外ドメインの断片、及びリンカーペプチド、タグ、抗体のFc部分を含んでいてもよい。特定の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号108のCLEC-1Aの細胞外ドメインの少なくとも10個の連続したアミノ酸残基の断片を含むことができ、特に、融合タンパク質は、CLEC-1の細胞外ドメインの少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%を含むCLECタンパク質の断片、特に、配列番号108(EC-CLEC1)で記載した配列中の少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の連続したアミノ酸を含むか又はそれらからなる、特に配列番号108のアミノ酸配列を含む、CLEC1タンパク質の断片を含むことができる。本発明の特定の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号108の少なくとも10個の連続したアミノ酸残基の部分と少なくとも90%の同一性を有する部分を含むことができる。特定の実施形態では、CLEC-1Aの機能的同等物は、本発明の説明で例示したFc-CLEC-1A、より詳細には、配列番号110のFC-CLEC-1Aである。特定の実施形態では、アンタゴニスト化合物は、本明細書において上記で開示した任意のアンタゴニスト抗CLEC-1A抗体である。特定の実施形態では、アンタゴニスト化合物は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む抗CLEC-1A抗体であり、重鎖可変ドメインは、配列番号95又は配列番号79又は配列番号63のアミノ酸配列からなる群から選択され、軽鎖可変ドメインは、配列番号42又は配列番号26又は配列番号10のアミノ酸配列からなる群から選択される。
【0095】
本発明はまた、本明細書で記載した特異的抗CLEC-1A受容体化合物の少なくとも一部をコードする遺伝子構築物に関する。
【0096】
このために、本発明はまた、本明細書で開示した化合物の定義のいずれか1つによる化合物をコードする核酸分子に関する。言い換えると、核酸分子は、抗体又はその抗原結合性断片の少なくとも6個のCDRドメインをコードする。したがって、本発明による核酸分子は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88、配列番号90、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号99、 配列番号100、配列番号102、配列番号104、及び/又は配列番号106から選択することができるが、ただし、核酸分子は、本明細書で開示した任意の実施形態による抗体又はその抗原結合性断片の少なくとも6個のCDRドメインをコードし、
より詳細には、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88、配列番号90、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、及び/又は配列番号99から選択することができるが、但し、核酸分子は、本明細書で開示した任意の実施形態による抗体又はその抗原結合性断片の少なくとも6個のCDRドメインをコードする。
【0097】
本発明はまた、第1の核酸分子及び第2の核酸分子の組合せに関することができる。可変重鎖ドメインをコードする第1の核酸分子は、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88、配列番号90、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号99、配列番号100、配列番号102、配列番号104、及び/又は配列番号106からなる群から選択することができ、より詳細には、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88、配列番号90、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、及び/又は配列番号99からなる群から選択することができる。
【0098】
可変軽鎖ドメインをコードする第2の核酸分子は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号48、配列番号50、及び配列番号52からなる群から選択することができ、より詳細には、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号44、及び/又は配列番号45からなる群から選択することができる。
【0099】
第1及び第2の核酸分子の組合せは、本明細書で開示した任意の実施形態による、抗体又はその抗原結合性断片の少なくとも6個のCDRドメインをコードする。
【0100】
このような核酸分子は、例えば、宿主細胞内のコードされた配列の発現に適した、プラスミドのような発現ベクター内に挿入することができる。
【0101】
化合物の組合せ
本発明はまた、第1の治療薬及び少なくとも1つの第2の治療薬を含む化合物の組合せに関する。
【0102】
好ましい実施形態では、第1の治療薬は、本明細書で開示した任意の実施形態による抗体又はその抗原結合性断片である。別の実施形態では、第1の治療化合物はまた、限定はしないが、CLEC-1Aに結合し、抗体、抗体の抗原結合性断片、抗原結合抗体模倣体、抗体の抗原結合性断片若しくは完全抗体を含む高分子、小さな有機化合物、限定はしないが、CLEC-1Aの細胞外ドメインの少なくとも1つの断片、特にCLEC-1Aの細胞外ドメイン、又は本明細書で定義した、配列番号110のアミノ酸配列に対応するFc-CLEC-1タンパク質のようなタンパク質の群から選択される化合物のような、本明細書で定義したCLEC-1Aアンタゴニストであってもよい。少なくとも1つの第2の治療薬は、化学療法薬、抗hCD20-hIgG1、抗hEGFR-hIgG1、抗hHER2-hIgG1を含む腫瘍標的化抗体若しくはその抗原結合性断片、特に腫瘍標的化モノクローナル抗体若しくはその抗原結合性断片、より詳細には、マクロファージの食作用能力を活性化及び/若しくは増強する腫瘍標的化モノクローナル抗体若しくはその抗原結合性断片、更により詳細には、アレムツズマブ、アテゾリズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ等の抗hEGFR-hIgG1腫瘍標的化モノクローナル抗体、ハーセプチン、パニツムマブ、リツキシマブ等の抗hCD20-hIgG1腫瘍標的化モノクローナル抗体、抗hHER2-hIgG1モノクローナル腫瘍標的化トラスツズマブ、抗PDL-1抗体、及び抗CD47抗体からなる群から選択されるモノクローナル抗体、又は抗PD1抗体及び抗SIRPa抗体からなる群から選択される別の抗体若しくはモノクローナル抗体;及び/又は化学療法薬、特に抗増殖性、アポトーシス促進性、細胞周期停止、及び/若しくは分化誘導効果を有する細胞毒性剤、より詳細には、細胞毒性抗体、アルキル化剤、アントラサイクリン、代謝拮抗剤、抗微小管剤、トポイソメラーゼ阻害剤、アルカロイド、ブレオマイシン、抗悪性腫瘍薬、シクロホスファミドからなる群から選択される細胞毒性剤、からなるリストから選択される。
【0103】
腫瘍標的化抗体は、腫瘍特異的膜タンパク質を認識し、細胞シグナル伝達をブロックし、Fc駆動の自然免疫応答を介して腫瘍殺傷を誘導する、治療用モノクローナル抗体として定義することができる。
【0104】
本発明の特定の実施形態では、第1の治療薬は、本明細書で開示したそのCDRドメインによって定義される抗体であり、第2の治療薬は、リツキシマブ、又は抗PD1抗体、抗PDL-1抗体、抗CD47抗体、及び抗SIRPa抗体からなる群から選択される別の抗体又はモノクローナル抗体である。特定の実施形態では、第1の治療薬は、
- ヒトC型レクチン様受容体-1メンバーA受容体(CLEC-1A受容体)の細胞外ドメインに特異的に結合し、ヒトCLEC-1A受容体への結合について、配列番号71を含むか若しくはそれからなる重鎖可変ドメイン及び配列番号18を含むか若しくはそれからなる軽鎖可変ドメインを含むか又はそれらからなる抗体、特に配列番号121を含むか若しくはそれからなる重鎖ドメイン及び配列番号128を含むか若しくはそれからなる軽鎖ドメインを含むか又はそれらからなる抗体と競合し、ヒトCLEC-1のアンタゴニストである、抗体又はその抗原結合性断片、及び
- ヒトC型レクチン様受容体-1メンバーA受容体(CLEC-1A受容体)の細胞外ドメインに特異的に結合し、ヒトCLEC-1A受容体への結合について、配列番号63を含むか若しくはそれからなる重鎖可変ドメイン及び配列番号10を含むか若しくはそれからなる軽鎖可変ドメインを含むか又はそれらからなる抗体、特に配列番号120を含むか若しくはそれからなる重鎖ドメイン及び配列番号127を含むか若しくはそれからなる軽鎖ドメインを含むか又はそれらからなる抗体と競合し、ヒトCLEC-1のアンタゴニストである、抗体又はその抗原結合性断片、及び
- ヒトC型レクチン様受容体-1メンバーA受容体(CLEC-1A受容体)の細胞外ドメインに特異的に結合し、in vivo及び/又はin vitroで使用した場合、陰性対照と比較した、特に陰性対照と比較して少なくとも10%の、骨髄系細胞、特に、樹状細胞及び/又はマクロファージによる腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用の調節、特に増加と相関する、抗体又はその抗原結合性断片、からなる群から選択されるアンタゴニスト化合物であり、並びに、
第2の治療薬は本明細書で上記又は下記で定義したリストから選択される。
【0105】
化学療法薬は、従来の細胞毒性剤、すなわち、曝露後のDNA複製、有糸分裂等への干渉を通じて不可逆的な致死的病変を誘導する化合物であってもよい。これらの薬剤は、抗増殖性、アポトーシス促進性、細胞周期停止、及び分化誘導効果を有する可能性がある。これらの薬剤は、アルキル化剤(シスプラチン、クロラムブシル、プロカルバジン、カルムスチン)、アントラサイクリン及びその他の細胞毒性抗生物質、代謝拮抗剤(すなわち、メトトレキサート、シタラビン、ゲムシタビン)、抗微小管剤(すなわち、ビンブラスチン、パクリタキセル、ドセタキセル)、トポイソメラーゼ阻害剤(すなわち、エトポシド、ドキソルビシン)、アルカロイド(すなわち、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、カンプトテシン)、又はブレオマイシン(DNA鎖へのチミジンの取り込みを阻害する)からなる群から優先的に選択される。
【0106】
本発明者等は、CLEC-1Aのアンタゴニスト、特にCLEC-1Aの抗体アンタゴニストを別の治療薬、特にリツキシマブと組み合わせた組合せ使用が、マクロファージ、特にM1マクロファージの食作用能力を増強するので、抗CLEC-1Aアンタゴニスト化合物は、同時、別個、又は連続して投与された第2の治療薬の治療効果を増強するのに適していることを示した。
【0107】
本発明の別の実施形態では、CLEC-1Aタンパク質の少なくとも1つの断片又はCLEC1の機能的同等物を含む第1の治療薬及び少なくとも1つの第2の治療薬を含む化合物の組合せを提供し、
第1の治療薬は、本明細書で定義したCLEC-1Aタンパク質の断片、特にCLEC-1Aの細胞外ドメインの少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%を含むCLEC-1Aタンパク質の断片、特に、配列番号108(EC-CLEC1)で記載した配列中の少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の連続したアミノ酸を含むか若しくはそれからなる、特に配列番号108のアミノ酸配列を含むCLEC1Aタンパク質の断片、又は本明細書で定義したCLEC-1Aタンパク質の断片を含む融合タンパク質、又はおそらく配列番号133のヌクレオチド配列によってコードされる配列番号110で記載されたアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなるFc-CLEC1タンパク質、又は本明細書で以下に定義したCLEC-1Aの機能的同等物であってもよく、並びに
第2の治療薬は、腫瘍標的化抗体若しくはその抗原結合性断片、特に腫瘍標的モノクローナル抗体若しくはその抗原結合性断片、より詳細には、マクロファージの食作用能力を活性化及び/又は増強する腫瘍標的化モノクローナル抗体若しくはその抗原結合性断片、更により詳細には、アレムツズマブ、アテゾリズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、ハーセプチン、パニツムマブ、リツキシマブ、トラスツズマブ、抗PDL-1抗体、及び抗CD47抗体からなる群から選択されるモノクローナル抗体、又は抗PD1抗体及び抗SIRPa抗体からなる群から選択される別の抗体若しくはモノクローナル抗体、からなるリストから選択される。
【0108】
CLEC-1の機能的同等物には、CLEC-1のリガンドを捕捉することができる可溶性受容体を形成するために、CLEC-1のリガンドに結合し、CLEC-1の細胞外ドメインの全部又は一部を含む分子が含まれるが、これらに限定されない。したがって、機能的同等物には、可溶型のCLEC-1が含まれる。これらのタンパク質の適切な可溶型、又はその機能的同等物は、例えば、膜貫通ドメインが化学的、タンパク質分解的、又は組換え的方法によって除去されたタンパク質の切断型を含んでいてもよい。特に、機能的同等物は、対応するタンパク質の全長に亘って、対応するタンパク質と少なくとも80%の同一性、より詳細には少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、更により詳細には少なくとも99%の同一性を有する配列からなる。本明細書で使用したように、「対応するタンパク質」という用語は、本発明の機能的同等物が同様の機能を有するタンパク質を意味する。本発明の提示において参照される同一性のパーセンテージは、比較する配列の全体的なアラインメントに基づいて、すなわち、例えば、Needleman及びWunsch 1970のアルゴリズムを使用して、それらの全長に亘る配列のアラインメントについて判定される。この配列比較は、例えば、10.0に等しいパラメータ「Gap open」、0.5に等しいパラメータ「Gap Extend」、及びマトリックス「BLOSUM62」を用いることによって、needleソフトウェアを使用して行うことができる。needle等のソフトウェアは、ワールドワイド・ウェブサイトebi.ac.ukで「needle」という名称で利用することができる。本明細書で使用したような「機能的に同等な断片」という用語はまた、CLEC-1のリガンドに結合するCLEC-1の任意の断片又は断片の集合体を意味することができる。したがって、本発明は、CLEC-1の少なくとも1つのリガンドへのCLEC-1の結合を阻害することができるポリペプチド、特に機能的同等物を提供し、このポリペプチドは、CLEC-1の細胞外ドメインの少なくとも一部の配列に対応する配列を有する連続したアミノ酸を含み、この部分はCLEC-1のリガンドに結合する。一部の実施形態では、ポリペプチド、特に機能的同等物は、CLEC-1の細胞外ドメインに対応する。
【0109】
一部の実施形態では、CLEC-1の機能的同等物は、異種ポリペプチドに融合させて、融合タンパク質を形成する。本明細書で使用したように、「融合タンパク質」は、異種ポリペプチド(すなわち、同じポリペプチド以外のポリペプチド)に作動可能に連結した本発明の機能的同等物の全部又は一部(典型的には、生物学的に活性がある)を含む。融合タンパク質内で、「作動可能に連結した」という用語は、本発明の機能的同等物及び異種ポリペプチドが互いにインフレームで融合していることを示すものである。異種ポリペプチドは、本発明の機能的同等物のN末端又はC末端に融合することができる。
【0110】
一部の実施形態では、CLEC-1の機能的同等物は、免疫グロブリン定常ドメイン(Fc領域)に融合させて、イムノアドヘシンを形成する。イムノアドヘシンは、ヒト抗体の有用な化学的及び生物学的特性の多くを有することができる。イムノアドヘシンは、適切なヒト免疫グロブリンヒンジ及び定常ドメイン(Fc)配列に連結した、所望の特異性を有するヒトタンパク質配列から構築することができるので、目的の結合特異性は、ヒト成分全体を使用して達成することができる。このようなイムノアドヘシンは、患者に対する免疫原性が最小限であり、慢性的な、又は反復する使用のために安全である。一部の実施形態では、Fc領域は天然配列のFc領域である。一部の実施形態では、Fc領域はバリアントFc領域である。更に別の実施形態では、Fc領域は機能的Fc領域である。本明細書で使用したように、「Fc領域」という用語は、天然配列のFc領域及びバリアントFc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化する可能性があるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、Cys226又はPro230の位置のアミノ酸残基から、そのカルボキシル末端までの区間と定義される。イムノアドヘシンの接着部分及び免疫グロブリン配列部分は、最小のリンカーによって連結されていてもよい。免疫グロブリン配列は、典型的には免疫グロブリン定常ドメインであるが、必ずしも必要ではない。本発明のキメラ中の免疫グロブリン部分は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4サブタイプ、IgA、IgE、IgD、又はIgMから得ることができるが、典型的にはIgG1又はIgG4である。一部の実施形態では、イムノアドヘシンのCLEC-1の機能的同等物及び免疫グロブリン配列部分は、最小のリンカーによって連結されている。本明細書で使用したように、「リンカー」という用語は、本発明のポリペプチドと免疫グロブリン配列部分とを連結する少なくとも1個のアミノ酸の配列を意味する。このようなリンカーは、立体障害を防ぐために有用であり得る。一部の実施形態では、リンカーは4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30個のアミノ酸残基を有する。しかし、上限は重要ではないが、例えば、このようなポリペプチドの生物薬剤学的生産に関する利便性のために選択される。リンカー配列は、天然に生じる配列又は天然に生じない配列であってもよい。治療目的で使用する場合、リンカーは、イムノアドヘシンが投与される対象において典型的には免疫原性がない。リンカー配列の1つの有用な群は、国際公開第96/34103号パンフレット及び国際公開第94/04678号パンフレットに記載されている重鎖抗体のヒンジ領域から得られたリンカーである。その他の例は、ポリアラニンリンカー配列である。
【0111】
本発明のポリペプチドは、当業者に明らかであるように、任意の適切な手段によって産生することができる。本発明に従って使用するのに十分な量のポリペプチドを産生するために、本発明のポリペプチドを含有する組換え宿主細胞を適切な条件下で培養することによって、発現を都合よく達成することができる。特に、ポリペプチドは、組換え手段によって、コードする核酸分子からの発現によって産生される。多種多様な異なる宿主細胞において、ポリペプチドをクローニングして発現するシステムはよく知られている。組換え形態で発現する場合、ポリペプチドは、特に、宿主細胞においてコードする核酸からの発現によって産生される。特定のシステムの個々の要件に応じて、任意の宿主細胞を使用することができる。適切な宿主細胞には、細菌、哺乳類細胞、植物細胞、酵母、及びバキュロウイルス系が含まれる。異種ポリペプチドの発現のために当技術分野で利用可能な哺乳動物細胞株には、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、及びその他多くが含まれる。細菌の操作及び増殖は容易であるため、細菌も組換えタンパク質の産生のための好ましい宿主である。一般的な好ましい細菌宿主は、大腸菌(E coli)である。
【0112】
本発明のポリペプチド、それらの断片、及び本発明による融合タンパク質は、限定はしないが、グリコシル化(例えば、N-結合型又はO-結合型グリコシル化)、ミリスチル化、パルミチル化、アセチル化、及びリン酸化(例えば、セリン/スレオニン又はチロシン)等の翻訳後修飾を示すことができる。
【0113】
特定の実施形態では、第1の治療薬及び少なくとも1つの第2の治療薬を含む化合物の組合せは、
おそらく配列番号133のヌクレオチド配列によってコードされる、配列番号110で記載されたアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなるFc-CLEC1タンパク質又はその機能的同等物、及び
アレムツズマブ、アテゾリズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、ハーセプチン、パニツムマブ、リツキシマブ、トラスツズマブ、特にリツキシマブからなる群から選択されるモノクローナル抗体を含む。
【0114】
特定の実施形態では、治療薬は、疾患の治療において同時、別個、又は連続して投与することができる。
【0115】
本発明はまた、本明細書で定義した第1の治療薬、特に、より詳細には、本明細書で開示した任意の実施形態による抗体又はその抗原結合性断片であるCLEC-1Aアンタゴニストを、単独で、又は第2の治療薬と組み合わせて、それを必要とする患者に投与することができる製剤に薬学的に許容される医薬に適したビヒクルと共に含む医薬組成物に関する。これらは、特に等張性の滅菌生理食塩水溶液(リン酸一ナトリウム若しくはリン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、若しくは塩化マグネシウム等、又はそのような塩の混合物)、又は場合に応じて、滅菌水若しくは生理食塩水を添加すると、注射液を構成することができる乾燥した、特に凍結乾燥した組成物であってもよい。
【0116】
本発明はまた、化学療法薬、放射線治療薬、免疫治療薬(腫瘍標的化モノクローナル抗体等)、細胞治療薬(CAR-T細胞等)、免疫抑制剤、アポトーシス促進剤、抗生物質、標的化がん治療、及び/又はプロバイオティックを含む医薬の使用を含む別の治療との併用治療で使用するために、それを必要とする患者に、特に、同時、別個、又は連続して投与するための、本明細書で定義した第1の治療薬、特に、より詳細には、本明細書で開示した任意の実施形態による抗体又はその抗原結合性断片であるCLEC-1Aアンタゴニストを、単独で、又は第2の治療薬と組み合わせて、及び/又は本明細書で定義した薬学的に適切なビヒクルと共に含む医薬組成物に関する。
【0117】
本発明はまた、本明細書で定義したような治療有効量の第1の治療薬、特に本明細書で開示した任意の実施形態による抗体又はその抗原結合性断片であるCLEC-1Aアンタゴニストを対象に投与することを含む、それを必要とするヒト対象におけるがんを治療する方法であって、前記第1の治療薬が従来の治療と組み合わせて使用される方法に関する。
【0118】
本明細書で使用したように、「標準的又は従来の治療」という用語は、がんを罹患している対象に通常投与されるがんの任意の治療(薬物、放射線療法等)を意味する。
【0119】
特に、第1の治療薬は、化学療法薬、放射線治療薬、免疫治療薬(腫瘍標的モノクローナル抗体等)、細胞治療薬(CAR-T細胞等)、免疫抑制剤、アポトーシス促進剤、抗生物質、標的化がん療法、及び/又はプロバイオティクスと組み合わせて使用される。
【0120】
本発明はまた、がんの治療に使用するための、本明細書で開示した抗CLEC1A抗体及び抗原結合性断片、並びに本明細書で開示したアンタゴニスト化合物の使用に関する。「がん」という用語は、当技術分野でその一般的な意味を有し、体の他の部分に侵入又は拡散する可能性のある異常な細胞増殖を伴う一群の疾患を意味する。「がん」という用語は、原発性及び転移性がんの両方を更に含む。本発明の方法及び組成物によって治療され得るがんの例には、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食道、胃腸、歯肉、頭部、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、首、卵巣、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌、又は子宮のがんが含まれるが、これらに限定されない。更に、がんは具体的には以下の組織学的型であってもよいが、これらに限定はされない:新生物、悪性;癌腫、癌腫、未分化;巨細胞及び紡錘細胞癌;小細胞癌;乳頭癌;扁平上皮癌;リンパ上皮腫癌;基底細胞癌;毛母癌;移行上皮癌;乳頭状移行上皮癌;腺癌;ガストリノーマ、悪性;胆管細胞癌;肝細胞癌;複合肝細胞癌胆管細胞癌;小柱腺癌;腺様嚢胞癌;腺腫性ポリープ内の腺癌;腺癌、家族性大腸腺腫症;固形癌;カルチノイド腫瘍、悪性;細気管支-肺胞性腺癌;乳頭腺癌;嫌色素性癌;好酸性癌;酸親和性腺癌;好塩基性癌;明細胞腺癌;顆粒細胞癌;濾胞状腺癌;乳頭及び濾胞状腺癌;非被包型硬化性癌;副腎皮質癌;子宮内膜癌;皮膚付属器癌;アポクリン腺癌;皮脂腺癌;耳道腺癌;粘膜表皮癌;嚢胞腺癌;乳頭状嚢胞腺癌;乳頭状漿液性嚢胞腺癌;粘液性嚢胞腺癌;粘液性腺癌;印環細胞癌;浸潤性乳管癌;髄様癌;小葉癌;炎症性癌;パジェット病、乳房;腺房細胞癌;腺扁平上皮癌;扁平上皮化生がある腺癌;胸腺腫、悪性;卵巣間質腫瘍、悪性;テコーマ、悪性;顆粒膜細胞腫、悪性;及びロブラストーマ(roblastoma)、悪性;セルトリ細胞癌;ライディッヒ細胞腫瘍、悪性;脂質細胞腫瘍、悪性;パラガングリオーマ、悪性;乳房外パラガングリオーマ、悪性;クロム親和性細胞腫;血管球血管肉腫;悪性メラノーマ;メラニン欠乏性メラノーマ;表在拡大型メラノーマ;巨大色素性母斑内悪性メラノーマ;類上皮細胞メラノーマ;青色母斑、悪性;肉腫;線維肉腫;線維組織球腫、悪性;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児型横紋筋肉腫;肺胞横紋筋肉腫;間質肉腫;混合腫瘍、悪性;ミュラー管
混合腫瘍;腎芽腫;肝芽腫;癌肉腫;間葉腫、悪性;ブレンナー腫瘍、悪性;葉状腫瘍、悪性;滑膜肉腫、中皮腫、悪性;ジスゲルミノーマ;胎児性癌;奇形腫、悪性;卵巣甲状腺腫、悪性;絨毛癌;中腎腫、悪性;血管肉腫;血管内皮肉腫、悪性;カポジ肉腫;血管周囲細胞腫、悪性;リンパ管肉腫;骨肉腫;隣接骨皮質肉腫;軟骨肉腫;軟骨芽細胞腫、悪性;間葉性軟骨肉腫;骨巨細胞腫;ユーイング肉腫;歯原性腫瘍、悪性;エナメル上皮腫歯牙肉腫;エナメル上皮腫、悪性;エナメル上皮線維肉腫;松果体腫、悪性;脊索腫;グリオーマ、悪性;脳室上衣腫;星細胞腫;原形質性星細胞腫;線維性星細胞腫;星状芽細胞腫;グリオブラストーマ;乏突起膠腫;乏突起膠芽腫;原始神経外胚葉性腫瘍;小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽細胞腫;網膜芽細胞腫;嗅神経腫瘍;髄膜腫、悪性;神経線維肉腫;神経鞘腫、悪性;顆粒細胞腫瘍、悪性;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキンリンパ腫;傍肉芽腫;悪性リンパ腫、小リンパ球性;悪性リンパ腫、巨細胞、びまん性;悪性リンパ腫、濾胞性;菌状息肉症;他の指定非ホジキンリンパ腫;悪性組織球症;多発性骨髄腫;マスト細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞性白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;マスト細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄性肉腫;及びヘアリー細胞白血病。
【0121】
一部の実施形態では、対象は、胆管がん、膀胱がん、骨がん、脳及び中枢神経系がん、乳がん、キャッスルマン病、子宮頸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、食道がん、胆嚢がん、胃腸カルチノイド腫瘍、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、腎臓がん、咽頭及び下咽頭がん、肝臓がん、肺がん、中皮腫、形質細胞腫、鼻腔及び副鼻腔がん、鼻咽頭がん、神経芽腫、口腔及び口腔咽頭がん、卵巣がん、膵臓がん、陰茎がん、下垂体がん、前立腺がん、網膜芽腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、皮膚がん、胃がん、精巣がん、胸腺がん、甲状腺がん、膣がん、外陰がん、及び子宮がんからなる群から選択されるがんに罹患している。
【0122】
本発明はまた、特に、骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージの食作用能力が関与している、本明細書で開示した抗CLEC1A抗体及び抗原結合性断片、並びに本明細書で開示したアンタゴニスト化合物の、有害な状態又は疾患の予防的治療を含む治療において使用するための使用に関する。特定の実施形態では、疾患又は状態は、がん、特に上記に挙げたがん、より詳細には、液性がん、固形がん、リンパ腫、結腸直腸がん、中皮腫、又は肝細胞癌からなる群から選択される。
【0123】
本発明はまた、特に、樹状細胞の食作用能力の刺激が状態又は疾患を改善するか、又は治療することができる、本明細書で開示した抗CLEC1A抗体及び抗原結合性断片、並びに本明細書で開示したアンタゴニスト化合物の、有害な状態又は疾患の予防的治療を含む治療において使用するための使用に関する。特定の実施形態では、疾患又は状態は、がん、特に上記に挙げたがん、より詳細には、液性がん、固形がん、リンパ腫、結腸直腸がん、中皮腫、又は肝細胞癌からなる群から選択される。
【0124】
本発明はまた、本明細書で開示した抗CLEC1A抗体及び抗原結合性断片、並びに本明細書で開示したアンタゴニスト化合物の、骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージの食作用能力を増加させることによって改善又は予防されやすい任意の疾患又は状態の予防的治療を含む治療において使用するための使用に関する。特に、疾患又は状態は、がん、特に上記に挙げたようながん、より詳細には、液性がん、固形がん、リンパ腫、結腸直腸がん、中皮腫、又は肝細胞癌からなる群から選択される。
【0125】
本発明はまた、本明細書で開示した抗CLEC1A抗体及び抗原結合性断片、並びに本明細書で開示したアンタゴニスト化合物の、特に、T細胞が関与し、T細胞の増殖が関与している、有害な状態又は疾患の予防的治療を含む治療において使用するための使用に関する。特定の実施形態では、疾患又は状態は、がん、特に上記に挙げたようながん、より詳細には、液性がん、固形がん、リンパ腫、結腸直腸がん、中皮腫、又は肝細胞癌からなる群から選択される。
【0126】
本発明はまた、有効量の本明細書で定義したような第1の治療薬、特に、本明細書で開示した任意の実施形態による抗CLEC1A抗体又はその抗原結合性断片をそれを必要とする患者に投与することを含み、特に、前記第1の治療薬を、従来の治療又は本明細書で定義した少なくとも1つの第2の治療薬と同時、別個、又は連続して投与する、骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージの食作用能力を増加させる方法に関する。
【0127】
本発明はまた、医薬の製造のための、本明細書で定義した第1の治療薬、特に本明細書で開示した任意の定義による抗CLEC-1Aアンタゴニスト化合物、より詳細には、本明細書で開示した任意の実施形態による抗CLEC1A抗体又はその抗原結合性断片の使用に関する。特に、本発明は、がん、特に上記に挙げたがん、より詳細には液性がん、固形がん、リンパ腫、結腸直腸がん、中皮腫、又は肝細胞癌を治療及び/又は予防するための医薬の製造において使用するための、このような抗CLEC-1Aアンタゴニスト化合物の使用に関する。
【0128】
本発明はまた、治療量の本明細書で定義した第1の治療薬、特に本明細書で開示した任意の定義による抗CLEC-1Aアンタゴニスト化合物、より詳細には、本明細書で開示した任意の実施形態による抗CLEC1A抗体又はその抗原結合性断片をそれを必要とする患者に投与することによって、疾患を治療又は予防するための方法に関する。特に、本発明は、がん、特に上記に挙げたがん、より詳細には、液性がん、固形がん、リンパ腫、結腸直腸がん、中皮腫、又は肝細胞癌を治療又は予防するための方法に関する。
【0129】
本発明はまた、本明細書で定義した化合物、組成物、及び化合物の組合せの使用、特に疾患又は障害を予防又は治療するための使用に関する。したがって、骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージによる食作用能力の増加が疾患又は障害を改善するか又は予防する、疾患又は障害、特にヒトの疾患又はヒトの障害の予防及び/又は治療において使用するための、本発明のアンタゴニスト化合物、特に本発明の抗体若しくはその抗原結合断片、又は本発明による核酸分子若しくは核酸分子の組合せ、又は本発明による化合物の組合せを提供する。
【0130】
患者における食作用の誘導が疾患又は状態を改善するか又は予防する、疾患又は状態の治療に使用するための、本発明のアンタゴニスト化合物、特に本発明の抗体若しくはその抗原結合断片、又は本発明による核酸分子若しくは核酸分子の組合せ、又は本発明による化合物の組合せも提供する。
【0131】
がん、特に液性がん若しくは固形がん、より詳細にはリンパ腫、結腸直腸がん、中皮腫、若しくは肝細胞癌、炎症性疾患、慢性感染、又は敗血症を有する患者の治療のために、本発明のアンタゴニスト化合物、特に本発明の抗体若しくはその抗原結合断片、又は本発明による核酸分子若しくは核酸分子の組合せ、又は本発明による化合物の組合せも提供する。
【0132】
特に、同時、別個、又は連続して投与するための、化学療法薬、放射線治療薬、免疫治療薬(腫瘍標的化モノクローナル抗体等)、細胞治療薬(CAR-T細胞等)、免疫抑制剤、アポトーシス促進剤、抗生物質、標的化がん治療、及び/又はプロバイオティックを含む第1の医薬をそれを必要とする患者に投与する、併用治療において使用するための本発明のアンタゴニスト化合物、特に本発明の抗体若しくはその抗原結合断片、又は本発明による核酸分子若しくは核酸分子の組合せ、又は本発明による化合物の組合せも提供する。
【0133】
引用した使用の特定の実施形態では、本発明のアンタゴニストは、
- ヒトC型レクチン様受容体-1メンバーA受容体(CLEC-1A受容体)の細胞外ドメインに特異的に結合し、ヒトCLEC-1A受容体への結合について、配列番号71を含むか若しくはそれからなる重鎖可変ドメイン及び配列番号18を含むか若しくはそれからなる軽鎖可変ドメインを含むか又はそれらからなる抗体、特に配列番号121を含むか若しくはそれからなる重鎖ドメイン及び配列番号128を含むか若しくはそれからなる軽鎖ドメインを含むか又はそれらからなる抗体と競合し、ヒトCLEC-1のアンタゴニストである、抗体又はその抗原結合断片、並びに
- ヒトC型レクチン様受容体-1メンバーA受容体(ヒトCLEC-1A受容体)の細胞外ドメインに特異的に結合し、ヒトCLEC-1A受容体への結合について、配列番号63を含むか若しくはそれからなる重鎖可変ドメイン及び配列番号10を含むか若しくはそれからなる軽鎖可変ドメインを含むか又はそれらからなる抗体、特に配列番号120を含むか若しくはそれからなる重鎖ドメイン及び配列番号127を含むか若しくはそれからなる軽鎖ドメインを含むか又はそれらからなる抗体と競合し、ヒトCLEC-1のアンタゴニストである、抗体又はその抗原結合断片、並びに
ヒトC型レクチン様受容体-1メンバーA受容体(ヒトCLEC-1A受容体)の細胞外ドメインに特異的に結合し、in vivo及び/又はin vitroで使用した場合、陰性対照と比較した、特に陰性対照と比較して少なくとも10%の、骨髄系細胞、特に、樹状細胞及び/又はマクロファージによる腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用の調節、特に増加と相関する、抗体又はその抗原結合断片からなる群から選択することができる。
【0134】
【0135】
【0136】
HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3の任意の組合せを本発明において検討する。
【0137】
【0138】
【0139】
table 3(表3)から選択される1個の重鎖可変ドメインとtable 4(表4)から選択される1個の軽鎖可変ドメインの任意の組合せを本発明で検討する。
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
table 5(表5)から選択される1個の重鎖可変ドメインとtable 5(表5)から選択される1個の軽鎖可変ドメインの任意の組合せを本発明で検討する。特定の実施形態では、同じ参照名を共有している重鎖及び軽鎖の組合せを検討する。
【0146】
以下の図面及び実施例は、当業者に本発明の製造方法及び使用方法の完全な開示及び説明を提供するために提示されており、本発明者等が発明と見なす範囲を限定するものではなく、以下の実験が実施される全て又は唯一の実験であることを表すものでもない。本発明は、その特定の実施形態を参照して説明しているが、本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、同等物を置き換えることができることを当業者は理解すべきである。更に、特定の状況、材料、物質の組成、方法、方法のステップ又は複数のステップを、本発明の目的、精神、及び範囲に適合させるために、多くの改変を行うことができる。このような改変は全て、本明細書に添付された特許請求の範囲内にあるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【
図1】WO2018073440A1及びRoblesら(Blood advances、2017)に開示された抗CLEC-1A抗体に相当する先行技術の抗CLEC-1A抗体(αCLEC-1対照mAb)、並びにアイソタイプ対照抗体(hIG4)と比較した、本発明によるキメラ抗体(5D1、6C5、11H11、14H8及び15E3)の存在下の腫瘍細胞(非ホジキンリンパ腫細胞(Raji細胞)(A)及び非小細胞肺がん(NSCLC)(B))の食作用アッセイを示す図である。食作用の比率は、腫瘍細胞を貪食したClec-1遮断TGFb-DCの頻度を、PBS又は使用したmAbのアイソタイプによるhIgG4対照に対して正規化して決定された。A:Raji細胞でのアッセイ;B:非小細胞肺がん細胞でのアッセイ。
【
図2】WO2018073440A1及びRoblesら(Blood advances、2017)に開示された抗CLEC-1A抗体に相当する先行技術の抗CLEC-1A抗体(αCLEC-1対照mAb)、並びに本発明の抗CLEC-1A抗体(マウス抗体5D1A5並びにキメラ抗体14H9及び6C5)の存在下で遮断されたTGFb-DCによるUV処理肝細胞癌モデル腫瘍細胞の食作用アッセイを示す図である。hIgG4アイソタイプ対照抗体が使用された。食作用の比率は、腫瘍細胞を貪食したClec-1遮断TGFb-DCの頻度を、PBS又は使用したmAbのアイソタイプによるhIgG4対照に対して正規化して決定された。
【
図3】種々の腫瘍標的化抗体(リツキシマブ、セツキシマブ又はトラスツズマブ)と結合した、WO2018073440A1及びRoblesら(Blood advances、2017)に開示された抗CLEC-1A抗体に相当する先行技術の抗CLEC-1A抗体(αCLEC-1対照mAb)により得られた結果と比較した、本発明のキメラ抗CLEC-1A抗体(6C5、14H9)の存在下のマクロファージによる腫瘍細胞の食作用アッセイを示す図である。hIgG4アイソタイプ対照抗体が使用された。食作用の比率は、アイソタイプ抗体対照により観察された結果と比較した貪食された細胞の頻度を正規化して決定された。A;非ホジキンリンパ腫のモデルであるRaji細胞でのアッセイ。B.結腸直腸がんのモデル。C.乳がんのモデル。
【
図4】
図7及び
図9からのIC50決定を示す表である。IC50は、各マウス抗hCLEC1抗体に関するこのアッセイでシグナルの50%を阻害するのに必要とされる濃度を指す。
【
図5】FACSによるFc-CLEC1透過処理Raji相互作用に関する抗CLEC1抗体のアンタゴニスト活性試験を示す図である:種々の抗CLEC1抗体が用量反応についてテストされた:15E3、5D1、6C5、14H9、11H11(本発明のキメラ抗CLEC-1A抗体)並びに陰性対照のアイソタイプIgG1及び自家製陽性対照キメラ抗CLEC1(非アンタゴニスト)。曲線は、抗CLEC1抗体との競合後のRaji細胞における10nMでのFc-CLEC1-A488の結合のパーセンテージを表す。
【
図6】
図5に示された実験から出されたIC50決定を示す図である。IC値は、各キメラ抗hCLEC1抗体に関するこのアッセイでシグナルの50%を阻害するのに必要とされる濃度を指す。陽性対照は、自家製キメラ抗CLEC1抗体である。
【
図7】FACSによるFc-CLEC1透過処理PBMC相互作用に関する抗CLEC1抗体(本発明のキメラ抗CLEC-1A抗体15E3、5D1、6C5、14H9を含む)のアンタゴニスト活性試験を示す図である。曲線は、抗hCLEC1抗体と競合後のPBMCにおける10nMでのFc-CLEC1-A488の結合のパーセンテージを示す。
【
図8】
図7の実験からのIC50決定を示す図である。IC値は、各キメラ抗hCLEC1抗体に関するこのアッセイでシグナルの50%を阻害するのに必要とされる濃度を指す。
【
図9】本発明のキメラ抗CLEC-1A抗体15E3、5D1、6C5、14H9、11H11を含む選択された抗CLEC-1A抗体の、HEK細胞における生産性を示す図である。抗体は、本発明の実施例に開示された組合せ特異的重鎖及び軽鎖可変ドメインに相当する。
【
図10】本発明のキメラ抗CLEC-1A抗体15E3、5D1、6C5、14H9、11H11を含む選択された抗CLEC-1A抗体の、HEK及びCHO細胞における生産性を示す図である。抗体は、本発明の実施例に開示された組合せ特異的重鎖及び軽鎖可変ドメインに相当する。「nd」は、指定された細胞株における指定された抗体の生産性データがないことに相当する。
【
図11】各マウス抗hCLEC1抗体とヒトCLEC-A-hisの間の結合アッセイから決定されたED50を示す図である。クローンIDは、本発明の明細書に開示されている重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインの特定の組合せに相当する。ED50は、各抗CLEC1A抗体に関するこのアッセイで最大ODシグナルの50%に達するのに必要とされる濃度を指す。
【
図12】ELISAによるキメラCLEC1A抗体(15E3、5D1、6C5、14H9)の結合試験を示す図である。曲線は、異なる濃度(ng/ml)でのキメラ抗CLEC1A抗体のHis-CLEC1への結合を表す:陽性対照キメラ抗CLEC1A(非アンタゴニスト対照)、15E3、5D1、6C5、14H9キメラ抗体。
【
図13】
図12からのED50決定を示す図である;ED50は、各キメラ抗hCLEC1A 抗体に関するこのアッセイで最大シグナルの50%に達するのに必要とされる濃度を指す。
【
図14】ELISAによるキメラCLEC1抗体11H11の結合試験を示す図である。曲線は、異なる濃度(ng/ml)でのキメラ抗CLEC1抗体11H11のHis-CLEC1への結合を表す;陽性対照は自家製キメラ抗CLEC1抗体である。
【
図15】
図14からのED50決定を示す図である; ED50は、各キメラ抗hCLEC1A 抗体に関するこのアッセイで最大シグナルの50%に達するのに必要とされる濃度を指す。
【
図16】Blitzにより測定されたヒトCLEC-A-his組換えタンパク質に対する本発明の抗CLEC1マウス抗体の結合親和性(KD)、親和性定数(ka)及び解離定数(kd)を示す図である。
【
図17】Blitzにより測定されたヒトCLEC-A-his組換えタンパク質に対する本発明の抗CLEC1キメラ抗体の結合親和性(KD)、親和性定数(ka)及び解離定数(kd)を示す図である。
【
図18】ELISAによるフローサイトメトリー(FACS)による、ヒトU266細胞株における本発明のマウスCLEC1抗体の結合試験のED50決定を示す図である。ED50は、各抗CLEC1抗体に関するこのアッセイでシグナルの50%に達するのに必要とされる濃度を指す。
【
図19】ELISAによるフローサイトメトリー(FACS)による、ヒトU266細胞株における本発明のキメラCLEC1抗体の結合試験を示す図である:A:染色されたU266のパーセンテージを表す;B:用量反応に対する種々の抗体の平均蛍光強度(MFI)を表す。
【
図20】ELISAによるフローサイトメトリー(FACS)による、ヒトU266細胞株における本発明のキメラCLEC1抗体の結合試験を示す図である(A)。結果は、U266細胞における本発明によるキメラ抗体のEC50結合を示す。Bは、曲線からのEC50決定を示す表である;EC50は、各キメラ抗hCLEC1抗体に関するこのアッセイでシグナルの50%に達するのに必要とされる濃度を指す。
【
図21】FACSサイトメトリーによって分析されたCHO細胞における本発明のキメラ抗CLEC-1A抗体の結合を示す図である:A:用量反応に対する染色されたCHO細胞のパーセンテージを表す;B:用量反応に対する種々の抗体の平均蛍光強度(MFI)を表す。
【
図22】
図21から出されたEC50値を示す表である。EC50は、各抗CLEC1抗体に関するこのアッセイでシグナルの50%に達するのに必要とされる濃度を指す。
【
図23】ELISAによるHis-CLEC1相互作用に関する抗CLEC1抗体の競合活性試験を示す図である。種々の抗CLEC1抗体が、競合相手については1μg/mL、及び負荷抗体については10ng/mL~2μg/mLでテストされた:15E3、5D1、6C5、14H9、11H11(本発明のキメラ抗CLEC1A抗体)並びに陰性対照のアイソタイプIgG1及び陽性対照キメラ抗CLEC1(非アンタゴニスト)。ヒストグラムは、抗CLEC1抗体と競合後のHis-CLEC1への結合を表す。
【
図24】本発明による選択された抗体(11H11)を用いたELISAによる、His-CLEC-1A相互作用に関する抗CLEC1抗体の競合活性試験を示す図である。11H11抗CLEC1抗体は1μg/mLでテストされ、負荷抗体は10ng/mL~2μg/mLで添加された:11H11(A)、5D1(B)、15E3(C)、14H9(D)、6C5(E)(本発明のキメラ抗CLEC1A抗体)。
【0148】
材料及び方法
新規の抗ヒトCLECモノクローナル抗体の調製、選択及び特徴付け
マウスをHis Clec-1(His Tag(#1704-CL R&D Systems社、ミネアポリス、USA)を有する組換えヒトCLEC-1タンパク質)又はFc-Clec(N末端ドメインでヒト免疫グロブリンIgG1の定常断片と融合した組換えヒトCLEC-1タンパク質- Ose Immunotherapeutics社、ナント、フランス)で免疫し、モノクローナル抗体を古典的手法に従って得た。免疫プロトコルはDiaclone SAS(ブザンソン、フランス)によって行った:組換えHis-Clecタンパク質-又は組換えFc-Clec-を使用して3匹のBALB/c株マウスを免疫した。タンパク質1マイクログラムを、最初の3回の注射については1週間に1日及び2回の最後の注射については2週間に1日、足蹠に投与した。42日時点の5回目の注射を神経節細胞を採取する前のブースターとしてみなした。神経節細胞をマウス骨髄腫X63/AG.8653と融合させてハイブリドーマを得た。組換えHis-Clec-1タンパク質(#1704-CL、R&D System社)及びClec-Fc(C末端ドメインでヒトIgG1と融合した組換えヒトCLEC-1タンパク質)に特異的に結合する、並びにヒト骨髄腫U266細胞の表面でClecタンパク質に特異的に結合する分泌されたモノクローナル抗体の能力に従って、ハイブリドーマを最初にスクリーニングした。選択後、ハイブリドーマをクローニングし、DMEM完全培地で培養した。グリシン0.1M pH 2.8溶出バッファーを用いたプロテインAクロマトグラフィー(Diaclone社、ブザンソン、フランス))における親和性によって上清を精製した。精製した精製抗体の活性を、Clec-1ヒトタンパク質に対してはELISA及びU266細胞に対してはフローサイトメトリーアッセイで測定した。
【0149】
ELISAによるヒトHis-Clec、ヒトClec-Fc及びマウスFc-Clec結合
活性ELISAアッセイのために、組換えHis-Clec(#1704-CL R&D Systems社、ミネアポリス、USA)-又は組換えヒトClec-Fc(Ose Immunotherapeutics社、ナント)-を炭酸塩バッファー(pH 9.2)中2μg/mlでプラスチックに固定化し、精製抗体を添加して結合を測定した。インキュベーション及び洗浄後、ペルオキシダーゼ標識ロバ抗マウスIgG(#715-036-151、Jackson Immunoresearch社、USA)を添加し、従来の方法によって顕色した。
マウスでの交差特異性について、組換えマウスClec-Fc(N末端でマウスIgG1の定常断片と融合した組換えマウスClec、Ose Immunotherapeutics社、ナント)を炭酸塩バッファー(pH 9.2)中2μg/mlでプラスチックに固定化し、精製抗体を添加して結合を測定した。インキュベーション及び洗浄後、ヤギ抗マウスIgGカッパ鎖(#115-005-174、Jackson Immunoresearch社、USA)とそれに続いてペルオキシダーゼ標識ロバ抗ヤギIgG(#705-035-147、Jackson Immunoresearch社、USA)を添加し、従来の方法によって顕色した。
【0150】
BLITZによるClec-1のバイオセンサー親和性測定
Blitzシステム(Fortebio、#C22-2 No 61010-1、Molecular Devices社、サンノゼ、USA)を用いて分析を行った。組換えHis-Clec(#1704-CL R&D Systems社、ミネアポリス、USA)をNi-NTAバイオセンサー(Fortebio、#18-0029)に2分間、10μg/mlで固定化した。精製抗体20μg/mlの3分 120秒の結合期間(ka)とそれに続く10分 120秒(kd)の解離期間の後、値を測定して親和性定数(KD)を決定した。
【0151】
細胞蛍光測定によるヒトU266骨髄腫におけるClec-1結合アッセイ
ヒトU266骨髄腫における抗Clec-1の結合を測定するために、細胞を最初に低温PSE(2%の加熱不活性化ウシ血清、2mM EDTAを含むリン酸緩衝生理食塩水)中で洗浄し、氷上で30分間インキュベートして細胞代謝を遅らせた。次いで、濃度範囲の抗体を氷上で30分間インキュベートし、細胞を低温PSEで洗浄した後、5μg/mlのAlexa 647標識ヤギ抗マウスIgG(#A21236; Fisher Scientific社、イルキルシュ、フランス)を用いて氷上で30分間染色した。試料をCytoFlexサイトフルオロメーター(Beckman Coulter France社、ヴィルパント)で分析した。
【0152】
FACS(フローサイトメトリー)によるアンタゴニスト活性
競合アッセイのために、Fc-Clec-1(Ose Immunotherapeutics社、ナント、フランス)をAlexa Fluor 488(Alexa Fluor(登録商標)488 Microscale Protein Labeling Kit #A30006、Fisher Scientific社、イルキルシュ、フランス)と結合させた。
透過処理(#554714 CytoFix/Cytopermキット、BD Biosciences社、ル ポン ド クレ、フランス)及びFcブロック(#564220、BD Biosciences社)したバーキットリンパ腫Raji細胞はClec-1リガンドを発現し、Alexa488-Fc-Clec-1と10nM又は20nMでインキュベーションした後にこれを検出することができる。透過処理(#554714 CytoFix/Cytopermキット、BD Biosciences社、ル ポン ド クレ、フランス)のために、細胞を最初に低温PSE中で洗浄し、氷上で低温Cytofix試薬中20分間インキュベートし、Perm Washバッファー中で洗浄した(水中1/10)。Fcブロックのために、細胞を次いでPerm Wash Bufferに50倍希釈したヒトFc-ブロックする(#564220、BD Biosciences社)と室温で30分間インキュベートした。
競合を測定するために、異なる濃度の精製抗Clec抗体を、Alexa488-Fc-Clec-1とPerm Washバッファー中、室温で15分間プレインキュベートした。プレインキュベートした混合物を次いで、氷上で30分間、透過処理しFcブロックしたRaji細胞でインキュベートした。細胞における結合を次いで、低温PBS中PFA 2%によって氷上で10分間固定し、CytoFlexサイトフルオロメーター(Beckman社 Coulter France社、ヴィルパント)で分析した。
競合も、UV照射下で18時間処理後に同じくリガンドを発現することができるUV前処理プロアポトーシスヒトPBMCで測定した。UV処理後、細胞を最初に低温PSE中で洗浄し、次いでPSEに50倍希釈したヒトFcブロックを用いて室温で30分間ブロックし、次いで氷上に置き換えた。異なる濃度の精製抗Clec抗体を、異なる濃度のAlexa488-Fc-Clec-1とPSE中、室温で15分間プレインキュベートした。プレインキュベートした混合物を次いで、氷上で30分間、Fcブロック/SAB(#34005-100、Invitrogen社、イルキルシュ、フランス)プロアポトーシスPBMCでインキュベートした。細胞における結合を次いで、低温PBS中PFA 2%によって氷上で10分間固定し、CytoFlexサイトフルオロメーター(Beckman社 Coulter France社、ヴィルパント)で分析した。
【0153】
抗ヒト抗clec Mabのヌクレオチド及びアミノ酸配列のRace PCR
抗clecクローンのVH及びVL領域を、5' RACE PCR技術(Sigma社 照会番号3353621001)を使用して配列決定した。簡単には、全RNAをTrizol法によって抽出し、逆転写し、得られたcDNAを、dATP及び末端トランスフェラーゼ酵素を使用して分子の5'末端でポリアデニル化した。最初の35サイクルのPCR反応は、オリゴdTアンカープライマー及びHerculase酵素(Agilent社 照会番号600679)を用いる定常領域結合プライマーを使用して行った。2回目の35サイクルPCRは、ネステッドPCRアンカープライマー及び定常領域のネステッドプライマーを使用して行った。得られたPCR産物を次いで大腸菌(E. Coli)にTAクローニングし、アンピシリン及びX-galで選択後、得られた白色コロニーを、ネステッドPCRアンカープライマー及び定常領域のネステッドプライマーを使用してPCRによってスクリーニングし、配列決定したcDNAに挿入した。ヌクレオチド配列及び推定アミノ酸配列を
図x及び配列表に示す。
【0154】
キメラ抗Clec抗体の調製及び特徴付け
キメラ抗clecについて、マウス抗Clec抗体の重鎖の可変配列(VH)を、hIgG4のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ドメインを含有するpcDNA3.4ヒトG4m発現プラスミド(OSE Immunotherapeuticsプラスミド)にEcoRVによってクローニングし、S228Pで変異させてヒンジ領域を安定化した。マウス抗Clec抗体の軽鎖(VL)の可変配列は、ヒトCLカッパを含有するpcDNA3.4 CLIg-hカッパ発現プラスミド(OSE immunotherapeuticsプラスミド)にBsiWIによってクローニングした。
本発明者らはリポフェクタミン法によって、最初にCOS細胞へ、VH-hFcG4mを含有するプラスミドをVL-CLkを含有するプラスミドとコトランスフェクトした。48~72時間インキュベーションした後、上清を回収した。最初のスクリーニングのために、それらをサンドイッチELISAによって定量し、Clec-his ELISAに対する活性アッセイでテストした。
次いでHEKフリースタイル細胞へ、本発明者らは、VH-hFcG4m及びVL-CLhkを含有する同じプラスミドをリポフェクタミン法によってコトランスフェクトした。6日インキュベーションした後、上清を回収し、クエン酸0.1M pH3溶出バッファーを用いたプロテインAクロマトグラフィー(HiTrap、GeHealthcare社)での親和性によって精製した。精製抗体をPBSに透析し、濃縮した。それらをUVナノドロップによって定量し、いくつかのテストでテストした:ELISA及びBlitz(Forte Bio社)でのClec-hisに対する活性アッセイ、U266細胞(Clecが細胞の表面に存在する)に対する活性アッセイ、透過処理PBMC及びRaji細胞を用いたアンタゴニストアッセイ。
【0155】
キメラ抗CLEC1抗体の調製、特徴付け及び生産:
方法 組換えタンパク質ヒトCLEC1-His(R&D Systems社 照会番号1704-CL)又はFc-hCLEC1(OSE Immunotherapeutics社)を使用してマウスを免疫して、この抗原に対するマウスモノクローナル抗体を生成した。筋肉内注射を5匹の麻酔下BALB/c成体マウスの足蹠に投与した。全てのマウス実験は、国のガイドラインに従って行った。免疫化のプロトコルに従ってマウスを免疫し、初回の注射後、1μgの最低5回の注射を42日まで種々の時点で行った。骨髄腫と融合してハイブリドーマを生成する前、これらのマウスは弱まるたびにブースターを受けた。興味深いハイブリドーマのスクリーニングは、mAbの生産に使用する前に、以下に述べるように結合アッセイ及びアンタゴニストアッセイを用いて行った。この免疫化作戦は、6種類のアンタゴニストマウス抗体を選択する結果になった。6種類のクローン(14H9-F3、5D1-A5、11H11-G11、10F4-H2、6C5-A4、15E3-G3)のVH及びVL領域を、5' RACE PCR技術を使用して配列決定した。アミノ酸配列及びCDRの説明は配列表に開示されている。
抗CLEC1 Abの重鎖の構築のために、可変ドメインVH配列を合成し、fabアーム交換を防ぐためにS228P変異させたヒトIgG4のヒトFcを含有するpcDNA3.4-hIgG4m発現プラスミド(Ose Immunotherapeutics社)にEcoRVによってクローニングした。抗CLEC1 Abの軽鎖の構築のために、可変ドメインVLを合成し、ヒトCLカッパを含有するpcDNA3.4-CLIghk発現プラスミド(Ose Immunotherapeutics社)にBsiWIによってクローニングした。本発明者らはリポフェクタミン法によって、哺乳動物HEK細胞へ、VH-hFcG4mを含有するプラスミドをVL-CLカッパを含有するプラスミドとコトランスフェクトした。5~6日インキュベーションした後、上清を回収し、サンドイッチELISAアッセイによって定量した。上清は、クエン酸0.1M pH3溶出バッファーを用いたプロテインAクロマトグラフィー(HiTrap、GeHealthcare社)での親和性によって精製することができた。精製抗体をPBSに透析し、濃縮した。それらをUV(A280nm)によって定量し、ELISAアッセイでのHis-CLEC1に対する活性アッセイでテストした。
【0156】
上清中の定量抗体のためのサンドイッチELISA
定量ELISAアッセイのために、ロバ抗ヒトIgG、Fc特異的(Jackson Immunoresearch社; USA;照会番号709-005-098)を、ホウ酸塩バッファー(pH9)中1.3μg/mlでプラスチックに固定化し、抗体を含有する上清を添加して結合を測定し、標準的な抗体と比較した。インキュベーション及び洗浄後、マウス抗ヒトカッパ抗体(Ose Immunotherapeutics社、照会番号NaM76-5F3)を添加し、ペルオキシダーゼ標識ロバ抗マウスIgG抗体(Jackson Immunoresearch社; USA;照会番号715-036-151)によって検出した。ELISAの顕色は従来の方法によって行った。
【0157】
ヒト抗CLEC-1AのELISA活性アッセイ
活性ELISAアッセイのために、組換えhCLEC-His(R et D systems社;照会番号1704-CL)を2μg/mlでプラスチックに固定化し、抗体又は精製抗体を含有する上清を添加して結合を測定した。インキュベーション及び洗浄後、ペルオキシダーゼ標識ロバ抗ヒトIgG(Jackson immunoresearch社 照会番号709-035-149)を添加し、従来の方法によって顕色した。
【0158】
細胞蛍光測定によるU266細胞におけるClec-his結合アッセイ
U266細胞における抗clecの結合を測定するために、1/200で希釈したヒトFc Receptor Binding Inhibitor(BD pharmingen社;USA;照会番号564220)を最初に室温で添加し30分間おいて、U266細胞のヒトFc受容体をブロックしてバックグラウンドを低減した。次いで、抗体を4℃で30分間インキュベートし、洗浄した後、PE標識抗ヒトIgG Fc(Biolegend社;USA;照会番号409303)で4℃、15分間染色した。試料をcitoflex(Beckman coulter社)で分析した。
【0159】
細胞蛍光測定によるCHO-Clec-1細胞(Clec-1発現レンチウイルスを形質導入した細胞)におけるClec結合アッセイ
CHO-Clec-1細胞における抗clecの結合を測定するために、1/200で希釈したヒトFc Receptor Binding Inhibito(BD pharmingen社;USA;照会番号564220)を最初に室温で添加し30分間おいて、CHO-Clec-1細胞のヒトFc受容体をブロックしてバックグラウンドを低減した。次いで、抗体4℃で30分間インキュベートし、洗浄した後、PE標識抗ヒトIgG Fc(Biolegend社;USA;照会番号409303)で4℃、15分間染色した。試料をcitoflex(Beckman coulter社)で分析した。
【0160】
ヒトCLEC-His組換えタンパク質における抗Clec抗体のBlitzによる親和性分析
Clec-His組換えタンパク質(R et D systems;照会番号1704-CL)をNINTAバイオセンサーに固定化し、示された抗体を20μg/mlで添加した。120秒の結合期間(ka)とそれに続く120秒の解離期間(kd)の後、値を推定して親和性定数(KD)を決定した。
【0161】
食作用アッセイ
Miltenyi社により提供されたClassical Monocytes Isolationキットを使用して、単球を健康なボランティアの細胞除去療法から磁気選別によって単離した。次いで、未成熟樹状細胞(iDC)を生成するために、単球をヒト組換えGM-CSF(CellGenix社)50ng/mL及びヒト組換えIL-4(CellGenix社)20ng/mLと6~7日間培養した。ヒト組換えTGFb(PeproTech社)50ng/mLを用いて、iDCを免疫寛容DCに2日間極性化した。これは、これらのTGFb-DCによるClec-1の過剰発現をもたらす。極性化中に抗体を10μg/mLで添加した。「Eat-me」シグナルを提供する10ng/mLの抗CD20 mAb(リツキシマブ)と共に、TGFβ-DCを非ホジキンリンパ腫(Raji)と1:1比で培養した;裸NSCLC細胞(A549)をTGFβ-DCと5時間培養した。フローサイトメトリーによって食作用を分析し、ドナーごとに対照抗体条件に対して正規化した。
マクロファージ(MΦ)を、M-CSF(100ng/mL)を用いて単球から5日間生成した。1:2比の非ホジキンリンパ腫(Raji;CD20+)、又は結腸癌(DLD-1;EGFR2+)、又は乳がん(SK-BR3;Her2+)のいずれか+/-「Eat-me」シグナルを提供するそれぞれ10ng/mLの抗CD20 mAb(リツキシマブ)、抗EGFR mAb(セツキシマブ)、又は抗Her2 mAb(トラスツズマブ)のいずれかと、MΦを2時間培養した。フローサイトメトリーによって食作用分析を行い、全CPDe450+細胞におけるCPDe670+細胞のパーセンテージによって食作用のパーセンテージを算出した。結果は、Raji細胞を貪食したM1のパーセンテージに食作用性細胞の蛍光強度中央値を乗じて表し、リツキシマブ濃度に従って示した。
目視アッセイのために、マクロファージを上記のように生成した。MΦを抗CLEC1キメラmAbと2時間プレインキュベートし、次いで、「Eat-me」シグナルを提供するそれぞれ10ng/mLの非ホジキンリンパ腫(Raji;CD20+)+抗CD20 mAb(リツキシマブ)と4時間培養した。目視によって食作用分析を行い、食作用のパーセンテージは、全マクロファージにおけるpHrodo(pHrodo-SE、Thermofisher社)陽性Rajiのパーセンテージによって算出した。
腫瘍細胞株、Raji(Bリンパ腫)CSCLC細胞、結腸直腸がん細胞及び乳がん細胞Huh7(肝細胞癌)を蛍光色素で染色して、食作用アッセイで細胞を特徴付けた。簡単には、製造者の指示(Life Technologies社)に従って、腫瘍細胞をCell Proliferation Dye eFluor 670と15分間インキュベートし、洗浄した後、UV処理した。次いで、細胞をUV、150mJ/cm2で処理し、一晩インキュベートしてClec-1リガンド発現をもたらすアポトーシス誘導プログラムをトリガーした。
TGFb-DC及び腫瘍細胞株を採取し、番号を付け、1個の腫瘍細胞に2個のDC比で5時間インキュベートし、このプロセス中に抗体を10μg/mLで添加した。食作用をCPD-eFluor670陽性TGFb-DCでフローサイトメトリーによって評価した。
【0162】
本発明の実施例では、特に記載された場合を除き、抗CLEC-1A対照抗体はアンタゴニスト特性を持たない自家製抗体である。
【実施例】
【0163】
(実施例1)
本発明のマウス及びキメラ抗hCLEC1Aアンタゴニスト抗体並びに先行技術に開示された抗hCLEC1Aアンタゴニスト抗体の樹状細胞腫瘍食作用に対する生物活性 -
図1~
図2
方法
a)TGFb組換えタンパク質を用いて極性化した単球由来樹状細胞(DC)の生成
Miltenyi社により提供されたClassical Monocytes Isolationキットを使用して、単球を健康なボランティアの細胞除去療法から磁気選別によって単離した。次いで、未成熟樹状細胞(iDC)を生成するために、単球をヒト組換えGM-CSF(CellGenix社)50ng/mL及びヒト組換えIL-4(CellGenix社)20ng/mLと6~7日間培養した。ヒト組換えTGFb(PeproTech社)50ng/mLを用いて、iDCを免疫寛容DCに2日間極性化した。これは、これらのTGFb-DCによるClec-1の過剰発現をもたらす。極性化中に抗体を10μg/mLで添加した。
b)UV処理アポトーシス腫瘍細胞株の生成
腫瘍細胞株、Raji(Bリンパ腫) NSCLC細胞、結腸直腸がん細胞、乳がん細胞又はHuh7(肝細胞癌)を蛍光色素で染色して、食作用アッセイで細胞を特徴付けた。簡単には、製造者の指示(Life Technologies社)に従って、腫瘍細胞をCell Proliferation Dye eFluor 670と15分間インキュベートし、洗浄した後、UV処理した。次いで、細胞をUV、150mJ/cm
2で処理し、一晩インキュベートしてClec-1リガンド発現をもたらすアポトーシス誘導プログラムをトリガーした。
c)食作用アッセイ
TGFb-DC及び腫瘍細胞株を採取し、番号を付け、1個の腫瘍細胞に2個のDC比で5時間インキュベートし、このプロセス中に抗体を10μg/mLで添加した。食作用を、CPD-eFluor670陽性TGFb-DCでフローサイトメトリーによって評価した。
【0164】
結果
図1は、対照条件に対して正規化したTGFb-DCによるUV処理腫瘍細胞の食作用を示している。がんの2つの異なるモデル、リンパ腫(
図1A)及び非小細胞肺がん(
図1B)では、本発明のアンタゴニストキメラ5D1、14H9、6C5、11H11及び15E3抗体が腫瘍細胞の食作用を増加させたのに対し、先行技術の対照抗体(国際公開公報第2018/073440A1号及びRoblesら(Blood advances、2017)に開示された)は、腫瘍細胞を貪食するDC能力にいかなる有意な変化も誘導しなかった。
図2は、がんの肝細胞癌モデルにおける対照条件に対して正規化したTGFb-DCによるUV処理腫瘍細胞の食作用を示している。本発明による3つの抗体(マウス抗体5D1-A5、キメラ抗体14H9、及び6C5)は、先行技術の抗体とは対照的にDCによる腫瘍細胞の食作用を増加させる。
この実施例は、先行技術の抗体(国際公開公報第2018/073440A1号及びRoblesら(Blood advances、2017)に開示された)とは対照的に、樹状細胞による腫瘍細胞の食作用を増加させる本発明の抗体の能力を実証するものである。
【0165】
(実施例2)
本発明の抗hCLEC-1Aアンタゴニスト抗体又は先行技術の抗hCLEC1Aアンタゴニスト抗体と腫瘍標的化抗体:リツキシマブ、セツキシマブ又はトラスツズマブとの組合せの生物活性 -
図3
方法
マクロファージ(MΦ)を、M-CSF(100ng/mL)を用いて単球から5日間生成した。1:1比の非ホジキンリンパ腫(Raji;CD20+)、又は結腸癌(DLD-1;EGFR2+)、又は乳がん(SK-BR3;Her2+)のいずれか+/-「Eat-me」シグナルを提供するそれぞれ10ng/mLの抗CD20 mAb(リツキシマブ)、抗EGFR mAb(セツキシマブ)、又は抗Her2 mAb(トラスツズマブ)のいずれかと、MΦを2時間培養した。フローサイトメトリー、及びRaji細胞については顕微鏡によって食作用を分析し、ドナーごとに対照抗体条件に対して正規化し、又は分析に応じて貪食された細胞のパーセンテージとして示した。*p<0.05
フローサイトメトリーによって食作用分析を行い、全CPDe450+細胞におけるCPDe670+細胞のパーセンテージによって食作用のパーセンテージを算出した。結果は、Raji細胞を貪食したM1のパーセンテージに食作用性細胞の蛍光強度中央値を乗じて表し、リツキシマブ濃度に従って示した。
【0166】
結果:食作用アッセイは、先行技術の抗体(国際公開公報第2018/073440A1号及びRoblesら(Blood advances、2017)に開示された)と比較して、リツキシマブと本発明の抗CLEC-1A抗体の組合せの存在下、M1マクロファージがRaji細胞を貪食できることを示している。同じ結果が、2つの他のがんモデルについて示されている;マクロファージによる結腸直腸がん腫瘍細胞の食作用は、セツキシマブと本発明の抗CLEC-1A抗体の組合せを投与すると増加する;及びマクロファージによる乳がん腫瘍細胞の食作用は、トラスツズマブと本発明の抗CLEC-1A抗体の組合せを投与すると増加する。本発明の抗CLEC-1A抗体と第2の抗腫瘍抗体との組合せは、マクロファージM1の食作用能力を増強する。それ故に、本発明の抗CLEC-1Aアンタゴニスト抗体の使用は腫瘍標的化抗体の治療効果を増強することが示される。
この例は、先行技術の抗体(国際公開公報第2018/073440A1号及びRoblesら(Blood advances、2017)に開示された)とは対照的に、腫瘍標的化抗体と組み合わせた本発明の抗体の、マクロファージによる腫瘍細胞の食作用を増加させる能力を実証するものである。
【0167】
(実施例3)
アンタゴニストアッセイを使用したCLEC1-リガンドとマウス又はキメラ抗hCLEC1抗体の間の競合試験 -
図4~
図8
方法 CLEC1リガンドを発現した透過処理Raji(CytoFix/cytopermキット、BD Biosciences社)における競合を測定するために、透過処理Rajiに特異的に結合したFc-CLEC1標識A488を使用した。競合を測定するために、10nM又は20nMのFc-CLEC1標識A488を、異なる濃度でRT、15分間、マウス抗hCLEC1と混合し、次いでこれらの細胞に4℃で添加し30分間おいた。インキュベーション及び洗浄後、PFA 2%をウェルに添加して細胞を4℃で10分間固定し、CytoFlex(Beckman社)サイトフルオロメーターで分析して、Fc-CLEC1標識の阻害を検出した。PMBCにおける競合を測定するために、本発明者らはUVによって18時間前処理したヒトPBMCを使用して、CLEC1リガンドを発現するアポトーシスPBMCを得た。Fc-CLEC1標識A488は、アポトーシスUV処理PBMCに特異的に結合した。競合を測定するために、10nMのFc-CLEC1標識A488を、異なる濃度でRT、15分間、マウス抗hCLEC1と混合し、次いでこれらの細胞に4℃で添加し30分間おいた。インキュベーション及び洗浄後、PFA 2%をウェルに添加して細胞を4℃で10分間固定し、CytoFlex(Beckman社)サイトフルオロメーターで分析して、Fc-CLEC1標識の阻害を検出した。
【0168】
結果:
図4~
図8は、アイソタイプ対照又は自家製非アンタゴニスト抗CLEC1対照(対照+抗Clec1)と比べた、本発明のマウス及びキメラ抗hCLEC1抗体のアンタゴニスト活性を示している。10nMのFc-CLEC1は、Fc-アイソタイプ-A488対照と比べて透過処理Raji又はアポトーシスPBMCに特異的に結合することができた(
図4及び
図5参照)。実際に、11種類のテスト抗体(マウス及びキメラ抗体を包含する)は、細胞におけるFc-CLECの結合を阻害しなかったアイソタイプ対照又は非アンタゴニスト抗体と比べて、透過処理Raji又はアポトーシスPBMCにおいてFc-CLECのそのリガンドに対する相互作用を用量依存的にブロックすることができた。11種類の抗体の間では、IC50は全てについて類似しており(
図6及び
図8参照)、阻害プロファイル曲線は類似していた(
図7参照)。
したがって、テストした本発明のマウス及びキメラ抗体は全て、CLEC-11と通常はCLEC-1Aに結合する細胞の間の結合を妨げることができ、それによりこれらの抗体がCLEC-1Aとそのリガンドの1つの間の結合と拮抗できることを示している。故に、この実施例は、本発明の抗体がヒトCLEC-1のアンタゴニストであることを示すものである。
【0169】
(実施例4)
キメラ抗CLEC1抗体の生産 -
図9及び
図10
本発明者らは、哺乳動物HEK細胞及びCHO細胞へ、それぞれリポフェクタミン法又はポリエチレンイミン(PEI)によって、VH-hFcG4mを含有するプラスミドをVL-CLカッパを含有するプラスミドとコトランスフェクトした。5~6日インキュベーションした後、上清を回収し、サンドイッチELISAアッセイによって定量した。上清は、クエン酸0.1M pH3溶出バッファーを用いたプロテインAクロマトグラフィー(HiTrap、GeHealthcare社)での親和性によって精製することができた。精製抗体をPBSに透析し、濃縮した。それらをUV(A280nm)によって定量した。
図9及び
図10に示すように、本発明の抗体は異なる生産性で良好に発現された(使用したシグナルペプチド:IgKリーダー)。
図9及び
図10に示すように、6C5及び15E3キメラ抗体はHEK細胞で生産収量が高く、6C5はCHO細胞で生産収量が高かった。NDは、いくつかの抗体に関する生産アッセイがないことに相当する。
この例は、本発明の抗体が組換え生産系で効率的に生産され得ることを示すものである。
【0170】
(実施例5)
ELISAによるモノクローナル抗hCLEC1抗体のCLEC1結合アッセイ -
図11~
図15
方法:抗hCLEC1抗体の結合活性をELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)によって評価した。ELISAアッセイのために、組換えhCLEC1-His(R&D Systems社 照会番号1704-CL)を炭酸塩バッファー(pH9.2)中2μg/mlでプラスチックに固定化し、精製抗体を異なる濃度で添加して結合を測定した。インキュベーション及び洗浄後、ペルオキシダーゼ標識ロバ抗マウスIgG鎖(Jackson Immunoresearch社;照会番号715-036-151)を添加し、従来の方法によって顕色した。第2のELISAアッセイを、2μg/mlのCLEC1-Fc(OSE Immunotherapeutics社)の固定化により上記のように行った。第3のELISAアッセイを行ってマウスCLEC1との交差反応性を見た。上記のように、ELISAは、His-Clecの代わりに炭酸塩バッファー中2μg/mlのマウスFc-CLEC1(OSE Immunotherapeutics社)の固定化により行った。精製抗体を異なる濃度で添加して結合を測定した。インキュベーション及び洗浄後、ヤギ抗マウスIgGカッパ鎖(Jackson Immunoresearch社;照会番号115-005-174)、次いでペルオキシダーゼ標識ロバ抗ヤギIgG(Jackson Immunoresearch社; 照会番号705-035-147)を添加し、従来の方法によって顕色した。対照抗体は市販の抗CLEC-1A抗体である。
【0171】
結果:
図11~
図15に示すように、ELISAによって測定した場合のCLEC1-Hisにおける種々のマウス及びキメラ抗CLEC1抗体の結合活性は、全ての抗体についてED50又はEC50が異なる結合活性を示した。本発明の全てのマウス及びキメラ抗CLEC-1A抗体は、CLEC-Hisに対する特異的結合活性を誘発する。ELISAによって測定した場合のCLEC1-Hisにおけるキメラ抗CLEC1抗体の結合活性は、全ての抗体についてEC50が異なる結合活性を示した。本発明のキメラ抗体15E3、5D1、14H9及び6C5は、CLEC-Hisに対する結合活性が良好であった(
図13及び
図15参照)。
この実施例は、本発明の抗体がヒトCLEC-1Aに対して特異的親和性を有することを実証するものである。
【0172】
(実施例6)
抗hCLEC1抗体親和性試験 -
図16及び
図17
抗hCLEC1抗体の親和性を、Blitzシステム(Forte Bio社、C22-2 No 61010-1)を用いて測定した。CLEC1-His組換えタンパク質(R&D Systems社 照会番号1704-CL)を、ヒスチジンテイルによって10μg/mlでNi-NTAバイオセンサー(Forte Bio社、18-0029)に30秒間固定化した。
マウス抗CLEC1抗体(
図16)及びキメラ抗CLEC-1A抗体(
図17)を、20μg/mL(飽和濃度)で120秒間結合させた。抗体の解離をキネティクスバッファー中で120秒間行った。結合定数(ka)及び解離定数(kd)を算出するBlitz pro 1.2ソフトウェアを用いて解析を行い、親和性定数KD(ka/kd)を決定した。
【0173】
結果 抗CLEC1抗体(マウス及びchimeric)は、Blitzでは良好な親和性定数(範囲2~10nM)を有した。これは、バイアコア親和性分析より1log劣る場合が多かった。21B1-E10又は11H11-G11のような一部の抗体はHisCLECタンパク質において、結合定数が高く、解離定数が低い、1nMに近い良好なKD定数を有した。本発明のマウス抗体は、KD値が全て対照抗体より低かった(
図16参照)。抗CLEC1キメラ抗体は、Blitzでは範囲10~100nM)の親和性定数を有した。これは、バイアコア親和性分析より1log劣る場合が多かった。5D1又は14H9のような一部の抗体はマウスクローンと同じように、結合定数が良く、解離定数が低い、10nMに近いKD親和性定数を保った(
図17参照)。
【0174】
(実施例7)
フローサイトメトリーによる本発明のマウス抗体を含む種々の抗hCLEC1抗体を比較するためのヒトU266細胞株におけるCLEC1結合アッセイ -
図18
方法:ヒトU266細胞株(ブロッキングFcRに対するFcブロックを用いてプレブロックした)における抗CLEC1の結合を測定するために、異なる濃度の抗体を4℃で30分間インキュベートし、洗浄した後、PE標識抗マウスIgG(Jackson Immunoresearch社;照会番号715-116-151)で4℃、30分間染色した。試料をCytoflexサイトフルオロメーター(Beckman Coulter社)で分析した。抗CLEC1のMFIを全ての抗CLEC1抗体間で比較し、染色細胞のパーセンテージを全ての条件で分析した。
【0175】
結果:結果は、クローン14H9-F3及び5D1-A5に関する強い結合(高いMFI)を示している。クローン11H11-G11、10F4-H2、6C5-A4及び15E3-G3は、U266 CLEC1にうまく結合した。自家製対照抗体と比較して、本発明の抗体のED50は、この自家製対照抗CLEC-1A抗体と比較してはるかに低い。
本発明の本マウス抗体はそれ故に、その標的に対してはるかに親和性が高い。
この例は、本発明のマウス抗体が、自家製対照抗CLEC-1A抗体とは対照的に、ヒト細胞の細胞膜で発現されるヒトCLEC-1Aに特異的に結合することを示すものである。
【0176】
(実施例8)
フローサイトメトリーによるキメラ抗hCLEC1抗体を比較するためのヒトU266細胞株におけるClec1結合アッセイ -
図19及び
図20
方法:ヒトU266細胞株(ブロッキングFcRに対するFcブロックを用いてプレブロックした)における抗CLEC1の結合を測定するために、異なる濃度の抗体を4℃で30分間インキュベートし、洗浄した後、PE標識抗ヒトIgG(Biolegend社;照会番号409304)で4℃、30分間染色した。試料をCytoflexサイトフルオロメーター(Beckman Coulter社)で分析した。抗CLEC1のMFIを全ての抗CLEC1抗体間で比較し、染色細胞のパーセンテージを全ての条件で分析した。
【0177】
結果:結果は、マウス抗CLEC1クローン(14H9/5D1)で得られた結果と類似した、本発明の全てのテストしたキメラ抗体に関する強い結合(高いMFI及び高いパーセンテージの陽性細胞)を示している。
この例は、本発明のキメラ抗体が、自家製対照抗CLEC-1A抗体とは対照的に、ヒト細胞の細胞膜で発現されるヒトCLEC-1Aに特異的に結合することを示すものである。
【0178】
(実施例9)
フローサイトメトリーによるキメラ抗hCLEC1抗体を比較するためのヒトCHO細胞株におけるCLEC-1A結合アッセイ -
図21及び
図22
方法:細胞蛍光測定によるCHO-Clec-1細胞(Clec-1発現レンチウイルスを形質導入した細胞)におけるCLEC-1A結合アッセイ
CHO-Clec-1細胞における抗clecの結合を測定するために、1/200で希釈したヒトFc Receptor Binding Inhibitor(BD pharmingen社;USA;照会番号564220)を最初に室温で添加し30分間おいて、CHO-Clec-1細胞のヒトFc受容体をブロックしてバックグラウンドを低減した。次いで、抗体を4℃で30分間インキュベートし、洗浄した後、PE標識抗ヒトIgG Fc(Biolegend社;USA;照会番号409303)で4℃、15分間染色した。試料をcitoflex(Beckman coulter社)で分析した。
【0179】
結果 結果は、本発明の全てのテストしたキメラ抗体に関する強い結合(高いMFI及び高いパーセンテージの陽性細胞)を示している。
この実施例は、本発明のキメラ抗体が、自家製対照抗CLEC-1A抗体とは対照的に、ヒト細胞の細胞膜で発現されるヒトCLEC-1Aに特異的に結合することを示すものである。
【0180】
(実施例10)
種々の抗CLEC-1A抗体間のHis-CLEC-1Aへの結合をめぐる交差競合。
図23及び
図24
方法 競合ELISAアッセイのために、組換えHis-CLEC1(#1704-CL R&D Systems社、ミネアポリス、USA)を炭酸塩バッファー(pH 9.2)中2μg/mlでプラスチックに固定化し、精製コンペティター抗体又はビオチン化負荷抗体を、それぞれ1μg/mL又はビオチン化mAbのEC50に応じて10ng/mL~2μg/mLで添加してCLEC1への結合を測定した。インキュベーション及び洗浄後、ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジンを添加し、従来の方法によって顕色した。対照抗CLEC1抗体は、国際公開公報第2018/073440A1号及びRoblesら(Blood advances、2017)に開示された抗CLEC-1A抗体に相当する。
【0181】
結果
図23に示されているように、先行技術の抗体は、His-CLEC-1Aへの結合をめぐっていずれの本発明の抗体とも交差競合しない。実際に、His-CLEC-1Aへの5D1、6C5、11H11、14H9及び15E3の結合は、先行技術の抗体の存在によって影響を受けず、特に5D1又は11H11のどちらとも交差競合しない。したがって、本発明の抗体は、先行技術の抗CLEC-1A抗体(国際公開公報第2018/073440A1号及びRoblesら(Blood advances、2017)に開示された)と同じCLEC-1Aでの局在化に結合しない。
図24に示されているように、His-CLEC-1Aへの交差競合結合を、選択した本発明の抗体(11H11)と本発明の5つの抗体(15E3、5D1、6C5、14H9、11H11)の間で行った。5つのテスト抗体は、His-CLEC-1Aへの結合をめぐって11H11と交差競合することが示されている。これは、該抗体が全て、類似した結合局在化を共有していることを示すものである。
【配列表】
【国際調査報告】