(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-06
(54)【発明の名称】抗PD-L1抗体製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20230130BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230130BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230130BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230130BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20230130BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230130BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20230130BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230130BHJP
A61K 38/46 20060101ALI20230130BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230130BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230130BHJP
C12N 9/26 20060101ALN20230130BHJP
【FI】
A61K39/395 M
A61P31/00
A61P35/00
A61P29/00
A61K47/22
A61K47/26
A61K47/34
A61K9/08
A61K38/46
A61P43/00 121
C07K16/28 ZNA
C12N9/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022534224
(86)(22)【出願日】2020-12-07
(85)【翻訳文提出日】2022-07-28
(86)【国際出願番号】 US2020063620
(87)【国際公開番号】W WO2021118930
(87)【国際公開日】2021-06-17
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヒュイ, アダ
(72)【発明者】
【氏名】チュー-シモニ, ジュディス
【テーマコード(参考)】
4B050
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B050CC03
4B050KK15
4B050LL01
4C076AA12
4C076BB16
4C076CC05
4C076CC07
4C076CC27
4C076CC31
4C076DD09F
4C076DD51Z
4C076DD60Q
4C076DD67D
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4C076FF14
4C076FF16
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4C076FF65
4C084AA01
4C084AA02
4C084CA53
4C084DC22
4C084MA16
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB111
4C084ZB261
4C084ZB321
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4C084ZC751
4C085AA14
4C085AA16
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4C085CC21
4C085CC23
4C085DD14
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4C085DD62
4C085EE03
4C085EE07
4C085GG04
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
【要約書】
本発明は、皮下投与用の液体薬学的製剤といった、抗PD-L1抗体を含む液体薬学的製剤を提供する。本発明は、このような製剤を作製するための方法及び同製剤を使用する方法も提供する。
【選択図】
図9B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約100g/Lから約150g/Lの濃度のモノクローナル抗PD-L1抗体、約15mMから約25mMの濃度のヒスチジンアセテート、約200mMから約280mMの濃度のスクロース、約0.04%(w/v)から約0.08%(w/v)の濃度のポリソルベート、約5mMから約15mMの濃度のメチオニン、及び約5.6から約6.0のpHを含む液体薬学的製剤であって、モノクローナル抗体が、
(a)以下を含む軽鎖可変領域:
(1)アミノ酸配列RASQDVSTAVA(配列番号l)を含むHVR-L1;
(2)アミノ酸配列SASFLYS(配列番号2)を含むHVR-L2;
(3)アミノ酸配列QQYLYHPAT(配列番号3)を含むHVR-L3;及び
(b)以下を含む重鎖可変領域:
(1)アミノ酸配列GFTFSDSWIH(配列番号4)を含むHVR-H1;
(2)アミノ酸配列AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号5)を含むHVR-H2;
(3)アミノ酸配列WPGGFDY(配列番号6)を含むHVR-H3
を含む、液体薬学的製剤。
【請求項2】
製剤中のモノクローナル抗体が、約120g/Lから約130g/Lの濃度である、請求項1に記載の液体薬学的製剤。
【請求項3】
製剤中のモノクローナル抗体が、約125g/Lの濃度である、請求項1に記載の液体薬学的製剤。
【請求項4】
ヒスチジンアセテートが、約17mMから約22mMの濃度である、請求項1から3のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤。
【請求項5】
ヒスチジンアセテートが、約20mMの濃度である、請求項1から3のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤。
【請求項6】
スクロースが、約220mMから約260mMの濃度である、請求項1から5のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤。
【請求項7】
スクロースが、約240mMの濃度である、請求項1から5のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤。
【請求項8】
pHが約5.8である、請求項1から7のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤。
【請求項9】
製剤中のポリソルベートが、ポリソルベート20である、請求項1から8のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤。
【請求項10】
ポリソルベートが、約0.05%(w/v)から約0.07%(w/v)の濃度である、請求項1から9のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤。
【請求項11】
ポリソルベートが、約0.06%(w/v)の濃度である、請求項1から9のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤。
【請求項12】
メチオニンが、約10mMの濃度である、請求項1から11のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤。
【請求項13】
ヒアルロニダーゼ酵素をさらに含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤。
【請求項14】
ヒアルロニダーゼ酵素が、組み換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)である、請求項13に記載の液体薬学的製剤。
【請求項15】
ヒアルロニダーゼ酵素が、約1000U/mlから約3000U/mlの濃度である、請求項13又は14に記載の液体薬学的製剤。
【請求項16】
ヒアルロニダーゼ酵素が、約2000U/mlの濃度である、請求項13又は14に記載の液体薬学的製剤。
【請求項17】
約100g/Lから約150g/Lの濃度のモノクローナル抗PD-L1抗体、約15mMから約25mMの濃度のヒスチジンアセテート、約200mMから約280mMの濃度のスクロース、約0.01%(w/v)から約0.03%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び約5.3から約5.7のpHを含む液体薬学的製剤であって、モノクローナル抗体が、
(a)以下を含む軽鎖可変領域:
(1)アミノ酸配列RASQDVSTAVA(配列番号l)を含むHVR-L1;
(2)アミノ酸配列SASFLYS(配列番号2)を含むHVR-L2;
(3)アミノ酸配列QQYLYHPAT(配列番号3)を含むHVR-L3;及び
(b)以下を含む重鎖可変領域:
(1)アミノ酸配列GFTFSDSWIH(配列番号4)を含むHVR-H1;
(2)アミノ酸配列AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号5)を含むHVR-H2;
(3)アミノ酸配列WPGGFDY(配列番号6)を含むHVR-H3
を含む、液体薬学的製剤。
【請求項18】
製剤中のモノクローナル抗体が、約120g/Lから約130g/Lの濃度である、請求項17に記載の液体薬学的製剤。
【請求項19】
製剤中のモノクローナル抗体が、約125g/Lの濃度である、請求項17に記載の液体薬学的製剤。
【請求項20】
ヒスチジンアセテートが、約17mMから約22mMの濃度である、請求項17から19のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤。
【請求項21】
ヒスチジンアセテートが、約20mMの濃度である、請求項17から19のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤。
【請求項22】
スクロースが、約220mMから約260mMの濃度である、請求項17から21のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤。
【請求項23】
スクロースが、約240mMの濃度である、請求項17から21のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤。
【請求項24】
pHが約5.5である、請求項17から23のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤。
【請求項25】
製剤中のポリソルベートが、ポリソルベート20である、請求項17から24のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤。
【請求項26】
ポリソルベートが、約0.02%(w/v)の濃度である、請求項17から25のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤。
【請求項27】
対象に投与される前にヒアルロニダーゼ酵素と混合される、請求項17から26のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤。
【請求項28】
ヒアルロニダーゼ酵素が、組み換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)である、請求項27に記載の液体薬学的製剤。
【請求項29】
混合物中のヒアルロニダーゼ酵素の濃度が、約1000U/mlから約3000U/mlである、請求項27又は28に記載の液体薬学的製剤。
【請求項30】
混合物中のヒアルロニダーゼ酵素の濃度が、約2000U/mlである、請求項27又は28に記載の液体薬学的製剤。
【請求項31】
モノクローナル抗体が、事前の凍結乾燥に供されない、請求項1から30のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤。
【請求項32】
モノクローナル抗体がヒト化抗体である、請求項1から31のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤。
【請求項33】
モノクローナル抗体が、配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む、請求項1から32のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤。
【請求項34】
モノクローナル抗体が完全長抗体である、請求項1から33のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤。
【請求項35】
モノクローナル抗体がIgG1抗体である、請求項34に記載の液体薬学的製剤。
【請求項36】
モノクローナル抗体が、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖とを含む、請求項1から35のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤。
【請求項37】
モノクローナル抗体が、ガラスバイアル又は金属合金の容器中で保管される、請求項1から36のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤。
【請求項38】
金属合金が、316Lスレンレス鋼又はハステロイである、請求項37に記載の液体薬学的製剤。
【請求項39】
2-8℃で少なくとも6カ月間安定している、請求項1から38のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤。
【請求項40】
2-8℃で少なくとも12カ月間安定している、請求項1から38のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤。
【請求項41】
2-8℃で少なくとも24カ月間安定している、請求項1から38のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤。
【請求項42】
製剤中の抗体が、保管後にその生物活性の少なくとも約80%を保持している、請求項39から41のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤。
【請求項43】
生物活性が、PD-L1への抗体結合により測定される、請求項42に記載の液体薬学的製剤。
【請求項44】
無菌である、請求項1から43のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤。
【請求項45】
対象に投与するために適している、請求項1から44のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤。
【請求項46】
皮下投与用である、請求項1から45のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤。
【請求項47】
請求項1から46のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤を保持する容器を備える製造品。
【請求項48】
容器が、ガラスバイアル又は金属合金の容器である、請求項47に記載の製造品。
【請求項49】
金属合金が、316Lスレンレス鋼又はハステロイである、請求項48に記載の製造品。
【請求項50】
請求項1から46のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤を保持する容器を備えるキット。
【請求項51】
有効量の、請求項1から46のいずれか一項に記載の液体薬学的製剤を対象に投与することを含む、対象における疾患又は障害を治療する方法であって、疾患又は障害が、感染症、がん、及び炎症性疾患からなる群から選択される、方法。
【請求項52】
疾患又は障害ががんである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
がんが、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、尿路上皮癌、及び乳がんからなる群から選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
乳がんがトリプルネガティブ乳がんである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
対象がヒトである、請求項51から54のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年12月9日出願の米国仮出願第62/945,730号の優先的利益を主張し、その内容全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
ASCIIテキストファイルによる配列表の提出
ASCIIテキストファイルでの以下の提出内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる:コンピュータ可読形態(computer readable form:CRF)の配列表(ファイル名:146392049940SEQLIST.TXT、記録日:2020年11月22日、サイズ:9KB)。
【0003】
技術分野
本発明は、皮下投与用の液体薬学的製剤といった、抗PD-L1抗体を含む液体薬学的製剤を提供する。本発明は、このような製剤を作製するための方法及び同製剤を使用する方法も提供する。
【背景技術】
【0004】
抗体の薬学的使用は、過去数年の間に増加した。多くの場合、このような抗体は、静脈内(IV)経路を介して注射されるか又は注入される。残念ながら、静脈内経路を介して投与することのできる抗体の量は、抗体の物理化学的性質によって、特に、適切な液体製剤中におけるその溶解度及び安定性によって、及び輸液の容量によって、制限される。代替的な投与経路は、皮下又は筋肉内注射である。これら注射経路は、注射される最終溶液中に高いタンパク質濃度を必要とする(Shire,S.J.,Shahrokh、Z.et al,”Challenges in the development of high protein concentration formulations”,J.Pharm.Sci.2004;93(6):1390-1402;Roskos,L.K.,Davis C.G.et al,”The clinical pharmacology of therapeutic antibodies”,Drug Development Research 2004;61(3):108-120)。容量を増加させるため、及びそれにより治療用量を増加させるために、抗体製剤を注射することのできる間質腔を増加させるために、1つ又は複数のグリコサミノグリカナーゼ酵素を使用することが提示された(国際公開第2006/091871号)。
【0005】
皮下注射用の治療的に活性な抗体の、高濃度の且つ安定した薬学的製剤を提供することが望まれている。皮下注射の利点は、医師が短期間の介入で患者に実施できることである。さらに患者は、自分で皮下注射を実施する訓練をすることができる。通常、皮下経路を介した注射は、概ね2mlに制限される。複数用量を必要とする患者については、複数単位用量の製剤を、体表面の複数部位に注射することができる。現在、皮下投与に適切な高濃度の且つ安定した薬学的抗PD-L1抗体製剤は市場にない。したがって、このような、皮下注射用の治療的に活性な抗体の、高濃度の且つ安定した薬学的製剤を提供することが望まれている。非経口薬の皮下組織への注射は、通常、この皮下(SC)組織中の水伝導度に対する粘弾性の抵抗と、注射時に生成される背圧のため(Aukland K.and Reed R.,”Interstitial-Lymphatic Mechanisms in the control of Extracellular Fluid Volume”,Physiology Reviews”,1993;73:1-78)、及び痛みの知覚のために、2ml未満の容量に制限される。
【0006】
高濃度タンパク質製剤の調製は極めて困難であり、各タンパク質は異なる凝集挙動を有するため、各製剤を使用される特定のタンパク質に適合させる必要がある。凝集物は、少なくとも一部の事例において、治療用タンパク質の免疫原性を引き起こすことが疑われている。タンパク質又は抗体凝集物に対する免疫原性反応は、治療用タンパク質又は抗体を無効にする中和抗体をもたらす可能性がある。タンパク質凝集物の免疫原性は、皮下注射に関連する最大の問題であり、それにより投与を繰り返すことは免疫応答のリスクを上昇させると考えられている。
【0007】
PD-L1は、多くのがんに過剰発現され、しばしば予後不良に関連付けられる(Okazaki T et al.,Intern.Iramim.2007 19(7):813)(Thompson RH et al.,Cancer Res 2006、66(7):3381)。興味深いことに、腫瘍浸潤Tリンパ球の大半は、正常組織中のTリンパ球及び末梢血Tリンパ球とは対照的に、PD-1を主に発現し、このことは、腫瘍反応性T細胞でのPD-1の上方制御が抗腫瘍免疫応答障害に寄与しうることを示している(Blood 2009 114(8):1537)。これは、T細胞活性化の減衰及び免疫監視の回避をもたらす、PD-1発現T細胞と相互作用するPD-L1発現腫瘍細胞によって媒介されるPD-L1シグナル伝達の利用に起因していると思われる(Sharpe et al.,Nat Rev 2002)(Keir ME et al.,2008 Annu.Rev.Immunol.26:677)。したがって、PD-L1/PD-1相互作用の阻害により、CD8+ T細胞媒介性の腫瘍死滅が増強されうる。
【0008】
治療標的PD-1、並びにPD-1との相互作用によりシグナル伝達する他の分子、例えば、プログラム死リガンド1(PD-L1)及びプログラム死リガンド2(PD-L2)は、極めて興味深い分野である。PD-L1シグナル伝達の阻害は、がん並びに急性及び慢性(例えば持続性)感染症を含む感染症の治療のためのT細胞免疫を向上させる手段として提示された。静脈内注入用に使用することのできる抗PD-L1抗体の製剤は開示されている(米国特許出願公開第2016/0319022号参照)。しかしながら、皮下注射に適切な抗PD-L1抗体に最適な製剤は未開発であるので、満たされていない大きな医療ニーズが存在している。
【0009】
特許出願、特許公報、及びUniProtKB/Swiss-Prot受託番号を含む、本明細書に引用されるすべての引用文献は、各個々の参考文献が参照により援用されることが具体的且つ個別に示されるかのように、参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。
【発明の概要】
【0010】
一態様において本明細書に提供されるのは、約100g/Lから約150g/Lの濃度のモノクローナル抗PD-L1抗体、約15mMから約25mMの濃度のヒスチジンアセテート、約200mMから約280mMの濃度のスクロース、約0.04%(w/v)から約0.08%(w/v)の濃度のポリソルベート、約5mMから約15mMの濃度のメチオニン、及び約5.6から約6.0のpHを含む液体薬学的製剤であり、ここで、モノクローナル抗体は、
(a)以下を含む軽鎖可変領域:
(1)アミノ酸配列RASQDVSTAVA(配列番号l)を含むHVR-L1;
(2)アミノ酸配列SASFLYS(配列番号2)を含むHVR-L2;
(3)アミノ酸配列QQYLYHPAT(配列番号3)を含むHVR-L3;及び
(b)以下を含む重鎖可変領域:
(1)アミノ酸配列GFTFSDSWIH(配列番号4)を含むHVR-H1;
(2)アミノ酸配列AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号5)を含むHVR-H2;
(3)アミノ酸配列WPGGFDY(配列番号6)を含むHVR-H3
を含む。いくつかの実施態様では、製剤中のモノクローナル抗体は、約120g/Lから約130g/Lの濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中のモノクローナル抗体は、約125g/Lの濃度である。いくつかの実施態様では、ヒスチジンアセテートは、約17mMから約22mMの濃度である。いくつかの実施態様では、ヒスチジンアセテートは、約20mMの濃度である。いくつかの実施態様では、スクロースは、約220mMから約260mMの濃度である。いくつかの実施態様では、スクロースは、約240mMの濃度である。いくつかの実施態様では、pHは約5.8である。いくつかの実施態様では、製剤中のポリソルベートは、ポリソルベート20である。いくつかの実施態様では、ポリソルベートは、約0.05%(w/v)から約0.07%(w/v)の濃度である。いくつかの実施態様では、ポリソルベートは、約0.06%(w/v)の濃度である。いくつかの実施態様では、メチオニンは、約10mMの濃度である。いくつかの実施態様では、製剤は、ヒアルロニダーゼ酵素をさらに含む。いくつかの実施態様では、ヒアルロニダーゼ酵素は、組み換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)である。いくつかの実施態様では、ヒアルロニダーゼ酵素は、約1000U/mlから約3000U/mlの濃度である。いくつかの実施態様では、ヒアルロニダーゼ酵素は、約2000U/mlの濃度である。
【0011】
一態様において本明細書に提供されるのは、約100g/Lから約150g/Lの濃度のモノクローナル抗PD-L1抗体、約15mMから約25mMの濃度のヒスチジンアセテート、約200mMから約280mMの濃度のスクロース、約0.01%(w/v)から約0.03%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び約5.3から約5.7のpHを含む液体の薬学的製剤であり、ここで、モノクローナル抗体は、
(a)以下を含む軽鎖可変領域:
(1)アミノ酸配列RASQDVSTAVA(配列番号l)を含むHVR-L1;
(2)アミノ酸配列SASFLYS(配列番号2)を含むHVR-L2;
(3)アミノ酸配列QQYLYHPAT(配列番号3)を含むHVR-L3;及び
(b)以下を含む重鎖可変領域:
(1)アミノ酸配列GFTFSDSWIH(配列番号4)を含むHVR-H1;
(2)アミノ酸配列AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号5)を含むHVR-H2;
(3)アミノ酸配列WPGGFDY(配列番号6)を含むHVR-H3
を含む。いくつかの実施態様では、製剤中のモノクローナル抗体は、約120g/Lから約130g/Lの濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中のモノクローナル抗体は、約125g/Lの濃度である。いくつかの実施態様では、ヒスチジンアセテートは、約17mMから約22mMの濃度である。いくつかの実施態様では、ヒスチジンアセテートは、約20mMの濃度である。いくつかの実施態様では、スクロースは、約220mMから約260mMの濃度である。いくつかの実施態様では、スクロースは、約240mMの濃度である。いくつかの実施態様では、pHは約5.5である。いくつかの実施態様では、製剤中のポリソルベートは、ポリソルベート20である。いくつかの実施態様では、ポリソルベートは、約0.02%(w/v)の濃度である。いくつかの実施態様では、製剤は、対象に投与される前に、ヒアルロニダーゼ酵素と混合される。いくつかの実施態様では、ヒアルロニダーゼ酵素は、組み換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)である。いくつかの実施態様では、混合物中のヒアルロニダーゼ酵素の濃度は、約1000U/mlから約3000U/mlである。いくつかの実施態様では、混合物中のヒアルロニダーゼ酵素の濃度は、約2000U/mlである。
【0012】
上述の態様又は本明細書に記載される実施態様のうちのいくつかの実施態様では、モノクローナル抗体は、事前の凍結乾燥に供されない。上述の態様又は本明細書に記載される実施態様のうちのいくつかの実施態様では、モノクローナル抗体は、ヒト化抗体である。上述の態様又は本明細書に記載される実施態様のうちのいくつかの実施態様では、モノクローナル抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む。上述の態様又は本明細書に記載される実施態様のうちのいくつかの実施態様では、モノクローナル抗体は、完全長抗体である。上述の態様又は本明細書に記載される実施態様のうちのいくつかの実施態様では、モノクローナル抗体は、IgG1抗体である。上述の態様又は本明細書に記載される実施態様のうちのいくつかの実施態様では、モノクローナル抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。上述の態様又は本明細書に記載される実施態様のうちのいくつかの実施態様では、モノクローナル抗体は、ガラスバイアル又は金属合金の容器に保管される。上述の態様又は本明細書に記載される実施態様のうちのいくつかの実施態様では、金属合金は、316Lスレンレス鋼又はハステロイである。上述の態様又は本明細書に記載される実施態様のうちのいくつかの実施態様では、製剤は、2-8℃で少なくとも6カ月安定である。上述の態様又は本明細書に記載される実施態様のうちのいくつかの実施態様では、製剤は、2-8℃で少なくとも12カ月安定である。上述の態様又は本明細書に記載される実施態様のうちのいくつかの実施態様では、製剤は、2-8℃で少なくとも24カ月安定である。上述の態様又は本明細書に記載される実施態様のうちのいくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、保管後、その生物活性の少なくとも約80%を保持する。上述の態様又は本明細書に記載される実施態様のうちのいくつかの実施態様では、生物活性は、PD-L1への抗体結合により測定される。上述の態様又は本明細書に記載される実施態様のうちのいくつかの実施態様では、製剤は無菌である。上述の態様、又は本明細書に記載される実施態様のうちのいくつかの実施態様では、製剤は、対象に投与するために適切である。上述の態様又は本明細書に記載される実施態様のうちのいくつかの実施態様では、製剤は、皮下投与のためのものである。
【0013】
本明細書にさらに提供されるのは、上述の態様又は実施態様のいずれかの液体薬学的製剤を保持する容器を含む製造品である。いくつかの実施態様では、容器は、ガラスバイアル又は金属合金の容器である。いくつかの実施態様では、金属合金は、316Lスレンレス鋼又はハステロイである。
【0014】
本明細書にさらに提供されるのは、上述の態様又は実施態様のいずれかの液体薬学的製剤を保持する容器を含むキットである。
【0015】
本明細書にさらに提供されるのは、有効量の、上述の態様又は実施態様のいずれかの液体薬学的製剤を対象に投与することを含む、対象の疾患又は障害を治療する方法であり、ここで、患又は障害は、感染症、がん、及び炎症性疾患からなる群から選択される。いくつかの実施態様では、疾患又は障害はがんである。いくつかの実施態様では、がんは、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、尿路上皮癌、及び乳がんからなる群から選択される。いくつかの実施態様では、乳がんは、トリプルネガティブ乳がんである。いくつかの実施態様では、対象はヒトである。
【0016】
本明細書に記載される様々な実施態様の特性のうちの1つ、いくつか、又はすべてを組み合わせて、本発明の他の実施態様を形成することができることを理解されたい。本発明のこれら及び他の態様は、当業者に明らかであろう。本発明のこれら及び他の実施態様は、後述される詳細な説明によりさらに記載される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本特許又は出願ファイルには、カラーで作成された少なくとも1つの図面が含まれている。1つ又は複数のカラー図面を含む本特許又は特許出願公開のコピーは、申請に応じて、必要な手数料を支払うことにより、特許庁から提供されるであろう。
【0018】
【
図1A】複数回の凍結融解サイクル後の、様々な原体(DS)製剤の高分子量種のレベル(HMWS)を示している。
【
図1B】複数回の凍結融解サイクル後の、様々な原体(DS)製剤のイオン交換クロマトグラフィー(IEC)の主ピークのパーセンテージを示している。
【
図1C】複数回の凍結融解サイクル後の、様々な原体(DS)製剤の非還元キャピラリー電気泳動-SDS(NR CE-SDS)のプレピーク合計を示している。
【
図2A】25℃で1カ月後までの、様々なDS製剤の酸性種のレベルを示している。
【
図2B】25℃で1カ月後までの、様々なDS製剤の塩基性種のレベルを示している。
【
図2C】25℃で1カ月後までの、様々なDS製剤のHMWSのレベルを示している。
【
図3A】25℃で3カ月後までの、医療品(DP)製剤のHMWSのレベルを示している。
【
図3B】25℃で3カ月後までの、医療品(DP)製剤のSECの主ピークのパーセンテージを示している。
【
図4A】25℃で3カ月後までの、DP製剤中の酸性種のレベルを示している。
【
図4B】25℃で3カ月後までの、DP製剤中の塩基性種のレベルを示している。
【
図5A】25℃で3カ月後までの、DP製剤中のプレピークのパーセンテージを示している。
【
図5B】25℃で3カ月後までの、DP製剤のNR CE-SDSの主ピークのパーセンテージを示している。
【
図6A】40℃で1カ月後までの、DP製剤中のHMWSのレベルを示している。
【
図6B】40℃で1カ月後までの、DP製剤中のSECの主ピークのパーセンテージを示している。
【
図6C】40℃で1カ月後までの、DP製剤中のNR CE-SDSプレピーク合計を示している。
【
図7A】40℃で1カ月後までの、DP製剤中の酸性種のレベルを示している。
【
図7B】40℃で1カ月後までの、DP製剤中の塩基性種のレベルを示している。
【
図7C】40℃で1カ月後までの、DP製剤中のIECの主ピークのパーセンテージを示している。
【
図8A】様々なDP製剤中の40℃でのポリソルベート20の安定性を示している。
【
図8B】様々なDP製剤中の25℃で最大3カ月間のポリソルベート20の安定性を示している。
【
図9A】25℃で最大3カ月間の、様々なDP製剤を用いたrHuPH20活性アッセイを示している。
【
図9B】25℃で最大3カ月間の、様々なDP製剤を用いたrHuPH20活性アッセイを示している。
【
図10A】24時間振盪された、異なる濃度のポリソルベートを含む製剤中のrHuPH20活性を示している。
【
図10B】24時間振盪された、異なる濃度のポリソルベートを含む製剤中のrHuPH20活性を示している。室温での振盪下において、ポリソルベートの濃度が高いほど、rHuPH20活性のレベルが高く維持された。
【
図11】5℃と25℃との間の温度での様々なDP製剤の粘性を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
I.定義
本発明を詳細に説明する前に、本発明が特定の組成物又は生物学的系に限定されず、それらが言うまでもなく多種多様であることを理解されたい。本明細書で使用される専門用語が特定の実施態様を説明することのみを目的としており、限定することを意図していないことも理解されたい。本明細書及び特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、別途内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「分子」への言及は、2つ以上のこのような分子の組み合わせを任意に含むといった具合である。
【0020】
本明細書で使用される「約」という用語は、当業者であれば容易に理解するそれぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」が付く値又はパラメータへの言及は、その値又はパラメータ自体を対象とする実施態様を含む(且つ説明する)。
【0021】
本明細書に記載される本発明の態様及び実施態様は、態様及び実施態様「を含む(comprising)」、「からなる(consisting)」、及び「から本質的になる(consisting essentially of)」を含むと理解される。
【0022】
「薬学的製剤」という用語は、活性成分の生物活性が有効になるような形態であり、且つ製剤が投与される対象に許容できないほどに有毒である追加の成分を含有しない調製物を指す。このような製剤は、無菌である。「薬学的に許容される」賦形剤(ビヒクル、添加剤)は、対象哺乳動物に適度に投与されて、用いられる有効用量の活性成分を提供することができるものである。
【0023】
「無菌」製剤は、無菌であるか、又はすべての生存微生物及びそれらの胞子を含まないか、又は本質的に含まない。
【0024】
「凍結」製剤は、0℃未満の製剤である。一般に、凍結製剤はフリーズドライされておらず、また、事前又は事後に凍結乾燥されない。一部の実施態様では、凍結製剤は、(ステンレス鋼タンク中での)保管のための凍結原体又は(最終的なバイアル構成における)凍結医療品を含む。
【0025】
「安定した」製剤は、内部のタンパク質が保管時にその物理安定性及び/若しくは化学安定性並びに/又は生物活性を本質的に保持する製剤である。いくつかの実施態様では、製剤は、保管時にその物理及び化学安定性、並びにその生物活性を本質的に保持する。保管期間は、一般に、製剤の意図される貯蔵寿命に基づいて選択される。タンパク質安定性を測定するための種々の分析技術が当技術分野で利用可能であり、例えば、Peptide and Protein Drug Delivery,247-301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs.(1991)及びJones,A.Adv.Drug Deliver}’ Rev.10:29-90(1993)に概説されている。安定性は、選択された期間について選択された温度で測定することができる。安定性は、凝集体形成の評価(例えば、サイズ排除クロマトグラフィーを使用した評価、濁度の測定による評価及び/又は目視検査による評価);陽イオン交換クロマトグラフィー、イメージキャピラリー等電点電気泳動(icIEF)又はキャピラリーゾーン電気泳動を使用して電荷不均一性を評定することによる;アミノ末端又はカルボキシ末端配列分析;質量分析;還元抗体とインタクトな抗体とを比較するSDS-PAGE分析;ペプチドマップ(例えばトリプシン又はLYS-C)分析;抗体の生物活性又は抗原結合機能を評価することなどを含む、多種多様な方法において定性的及び/又は定量的に評価することができる。不安定性は、凝集、脱アミド化(例えばAsn脱アミド化)、酸化(例えばMet酸化)、異性化(例えばAsp異性化)、クリッピング/加水分解/断片化(例えばヒンジ領域断片化)、スクシンイミド形成、不対システイン、N-末端伸長、C-末端プロセシング、グリコシル化変化などのうちの1つ又は複数を含みうる。
【0026】
タンパク質は、それが、色及び/若しくは透明度の目視検査時に、又はUV光散乱若しくはサイズ排除クロマトグラフィーによって測定されたときに、凝集、沈殿、及び/又は変性の兆候をほとんど又は全く示さない場合、薬学的製剤中で「その物理安定性を保持する」。
【0027】
タンパク質は、所与の時点での化学安定性が、タンパク質が以下に定義されるその生物活性を依然として保持しているとみなされるようなものである場合、薬学的製剤中で「その化学安定性を保持する」。化学安定性は、タンパク質の化学的に変成した形態を検出及び定量化することによって評定することができる。化学変成は、サイズ変更(例えばクリッピング)を含んでもよく、例えばサイズ排除クロマトグラフィー、SDS-PAGE及び/又はマトリックス支援レーザー脱離イオン化/飛行時間型質量分析(MALDI/TOF MS)を使用して評価することができる。他の種類の化学変成には、例えば、イオン交換クロマトグラフィー又はicIEFにより評価することのできる電荷変化(例えば脱アミド化の結果として起こる)が含まれる。
【0028】
抗体は、所与の時点での抗体の生物活性が、アッセイ(例えば、抗原結合アッセイ)で決定した場合に薬学的製剤が調製された時点で呈される生物活性の少なくとも約60%(アッセイの誤差内)である場合、薬学的製剤中で「その生物活性を保持する」。抗体の他の「生物活性」アッセイは、本明細書で以下に詳述される。
【0029】
本明細書で使用されるモノクローナル抗体の「生物活性」には、抗原に結合して、in vitro又はin vivoで測定することのできる測定可能な生物学的応答をもたらす抗体の能力が含まれる。
【0030】
本明細書では、「脱アミド化された」モノクローナル抗体は、その1つ又は複数のアスパラギン残基が、例えばアスパラギン酸又はイソ-アスパラギン酸に誘導体化されているものである。
【0031】
本明細書では、「酸化された」モノクローナル抗体は、その1つ又は複数のトリプトファン残基及び/又は1つ又は複数のメチオニンが酸化されているものである。
【0032】
本明細書では、「糖化された」モノクローナル抗体は、その1つ又は複数のリジン残基が糖化されているものである。
【0033】
「脱アミド化しやすい」抗体は、脱アミド化する傾向のあることが判明した1つ又は複数の残基を含むものである。
【0034】
「酸化しやすい」抗体は、酸化する傾向のあることが判明した1つ又は複数の残基を含むものである。
【0035】
「凝集しやすい」抗体は、特に凍結及び/又は振盪時に、1つ又は複数の他の抗体分子と凝集することが判明したものである。
「断片化しやすい」抗体は、例えばそのヒンジ領域で、2つ以上の断片に切断されることが判明したものである。
【0036】
「脱アミド化、酸化、凝集、又は断片化を低減する」とは、異なる製剤で製剤化されたモノクローナル抗体と比較して、脱アミド化、酸化、凝集、若しくは断片化を防止するか、又はその量を低減することを意図している。
【0037】
製剤化される抗体は、本質的に純粋であり、望ましくは本質的に均一(例えば、夾雑タンパク質などを含まない)でありうる。「本質的に純粋な」抗体は、組成物中のタンパク質の総重量に基づいて少なくとも約90重量%、好ましくは少なくとも約95重量%の抗体を含む組成物を意味し、「本質的に均一な」抗体は、組成物中のタンパク質の総重量に基づいて少なくとも約99重量%の抗体を含む組成物を意味する。
【0038】
「等張」とは、目的とする製剤がヒト血液と本質的に同じ浸透圧を有することを意味する。等張製剤は、通常、約250~350mOsmの浸透圧を有する。等張性は、例えば、蒸気圧浸透圧計又は氷結型浸透圧計を使用して測定することができる。
【0039】
本明細書で使用される「バッファー」は、その酸-塩基コンジュゲート成分の作用によりpHの変化に抵抗する緩衝溶液を指す。いくつかの実施態様では、本発明のバッファーは、約4.5から約7.0の範囲、好ましくは約5.6から約7.0、例えば5.6から6.9、5.7から6.8、5.8から6.7、5.9から6.6、5.9から6.5、6.0、6.0から6.4、又は6.1から6.3の範囲のpHを有する。一実施態様では、バッファーは、pH5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、又は7.0を有する。例えば、リン酸ナトリウムは、この範囲でpHを制御するバッファーの一例である。
【0040】
本明細書で使用される「界面活性剤」は、表面活性剤、例えば非イオン性界面活性剤を指す。本明細書における界面活性剤の例には、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20及びポリソルベート80);ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188);トリトン;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ラウリル硫酸ナトリウム;オクチルグルコシドナトリウム;ラウリルスルホベタイン、ミリスチルスルホベタイン、リノレイルスルホベタイン、又はステアリルスルホベタイン;ラウリルサルコシン、ミリスチルサルコシン、リノレイルサルコシン、又はステアリルサルコシン;リノレイルベタイン、ミリスチルベタイン、又はセチルベタイン;ラウロアミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、リノールアミドプロピルベタイン、ミリスタミドプロピルベタイン、パルミドプロピルベタイン、又はイソステアラミドプロピルベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル);ミリスタミドプロピルジメチルアミン、パルミドプロピルジメチルアミン、又はイソステアラミドプロピルジメチルアミン;メチルココイルタウリン酸ナトリウム又はメチルオレイルタウリン酸二ナトリウム;並びにMONAQUATTMシリーズ(Mona Industries,Inc.,Paterson,N.J.);ポリエチルグリコール、ポリプロピルグリコール、並びにエチレン及びプロピレングリコールのコポリマー(例えばPluronics、PF68など)などが含まれる。一実施態様では、本明細書における界面活性剤は、ポリソルベート20である。
【0041】
薬理学的な意味において、本発明との関連では、抗体の「治療的有効量」は、抗体が有効である治療のための、障害の予防又は治療に有効な量を指す。「障害」は、抗体を用いた治療から恩恵を受けるであろういずれかの状態である。これには、哺乳動物を問題の障害に罹患しやすくするような病的状態を含む、慢性及び急性の障害又は疾患が含まれる。
【0042】
「防腐剤」は、例えば、細菌作用を本質的に低減させ、したがって多目的製剤の生産を容易にするために製剤に任意選択的に含めることのできる化合物である。可能な防腐剤の例には、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ヘキサメトニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド(アルキル基が長鎖化合物であるアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリドの混合物)及びベンゼトニウムクロリドが含まれる。他の種類の防腐剤には、芳香族アルコール、例えばフェノール、ブチル、及びベンジルアルコール、アルキルパラベン、例えばメチル又はプロピルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾールが含まれる。一実施態様では、本明細書における防腐剤は、ベンジルアルコールである。
【0043】
本明細書で使用される「治療」という用語は、臨床病理学の過程で治療される個体又は細胞の自然な経過を変えるように設計された臨床的介入を指す。治療の望ましい効果には、疾患進行速度の低下、病状の改善若しくは緩和、及び寛解、又は予後の改善が含まれる。例えば、個体は、がん性細胞の増殖の低減(若しくはその破壊)、疾患に起因する症状の減少、疾患に罹患した者の生活の質の向上、疾患を治療するために必要な他の薬物の用量の減少、疾患の進行の遅延、及び/又は個体の生存期間の延長を含むがこれらに限定されない、がんに関連する1つ又は複数の症状が軽減又は排除された場合に、「治療」が成功する。
【0044】
本明細書で使用される「疾患の進行を遅延させる」は、疾患(例えばがん)の発症を延期し、妨害し、減速し、遅らせ、安定させ、且つ/又は延ばすことを意味する。このような遅延は、病歴及び/又は治療される個体に応じて様々な期間のものでありうる。当業者に明らかであるように、十分な又は著しい遅延は、個体が疾患を発症しないという点で、予防を事実上包含しうる。例えば、転移の発症といった末期がんを遅延させることができる。
【0045】
「有効量」は、特定の障害の測定可能な改善又は予防の達成に必要な少なくとも最小の量である。本明細書における有効量は、患者の病状、年齢、性別、及び体重、並びに個体における所望の応答を誘発する抗体の能力といった因子に応じて異なりうる。有効量はまた、治療上有益な効果が治療のいずれかの毒性の又は有害な影響を上回るものである。予防的使用の場合、有益な又は所望の結果には、疾患の生化学的、組織学的、及び/又は挙動的症状、その合併症、並びに疾患の発症中に現れる合併症及び中間的な病理学的表現型を含む、疾患のリスクの排除又は低減、疾患の重症度の軽減、又は疾患の発生の遅延などの結果が含まれる。治療的使用の場合、有益な又は所望の結果には、疾患に起因する1つ又は複数の症状の軽減、疾患に罹患している者の生活の質の向上、疾患の治療に必要な他の薬物の用量の低減、別の薬物の効果の増強、例えばターゲティングを介するもの、疾患の進行の遅延、及び/又は生存期間の延長といった臨床結果が含まれる。がん又は腫瘍の場合、有効量の薬物は、がん細胞の数を減少させ;腫瘍サイズを縮小し;がん細胞の末梢器官への浸潤を阻害し(即ち、ある程度遅らせ、望ましくは停止し);腫瘍の転移を阻害し(即ち、ある程度遅らせ、望ましくは停止し)、腫瘍の増殖をある程度阻害し、且つ/又は障害に関連する症状のうちの1つ又は複数をある程度軽減することに効果を有しうる。有効量は、1回又は複数回の投与で投与することができる。本発明の目的のために、薬物、化合物、又は医薬組成物の有効量は、予防的処置又は治療的処置を直接又は間接的に達成するのに十分な量である。臨床分野において理解されるように、薬物、化合物、又は薬学的組成物の有効量は、別の薬物、化合物、又は薬学的組成物と併せて達成されてもされなくてもよい。したがって、「有効量」は、1つ又は複数の治療剤の投与との関連で考慮されてよく、単剤は、1つ又は複数の他の薬剤と併せて、望ましい結果が達成されうるか、又は達成される場合、有効量で与えられるとみなされうる。
【0046】
本明細書で使用される「と併せて」は、1つの治療を、別の治療様式に加えて適用することを指す。したがって、「と併せて」は、個体に対し、他の治療様式の適用前、適用中、又は適用後の、1つの治療様式の適用を指す。
【0047】
「障害」は、哺乳動物を問題の障害に罹患しやすくする病理学的状態を含む慢性及び急性障害又は疾患を含むがこれらに限定されない、処置から恩恵を受けるであろういずれかの状態である。
【0048】
「細胞増殖性障害」及び「増殖性障害」という用語は、ある程度の異常な細胞増殖を伴う疾患を指す。一実施態様では、細胞増殖性障害は、がんである。一実施態様では、細胞増殖性障害は、腫瘍である。
【0049】
本明細書で使用される「腫瘍」は、悪性であるか又は良性であるかを問わず、すべての腫瘍性細胞成長及び増殖と、すべての前がん性及びがん性細胞及び組織を指す。用語「がん」、「がん性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」及び「腫瘍」は、本明細書において言及されるとき互いに排他的ではない。
【0050】
「がん」及び「がん性」という用語は、制御されていない細胞成長を典型的に特徴とする哺乳動物における生理学的状態を指すか、又は説明する。がんの例には、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病又はリンパ性悪性腫瘍が含まれるが、これらに限定されない。このようながんのより具体的な例には、扁平上皮がん(例えば、上皮細胞扁平上皮がん)、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺癌及び肺の扁平上皮癌を含む肺がん、腹膜がん、肝細胞がん、胃腸がん及び胃腸間質がんを含む胃がん(gastric or stomach cancer)、膵臓がん、膠芽細胞腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、尿路がん、肝細胞癌、乳がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜癌又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓がん又は腎がん、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝臓癌、肛門癌、陰茎癌、黒色腫、表在拡大型黒色腫、悪性黒子型黒色腫、末端性黒子性黒色腫、結節型黒色腫、多発性骨髄腫及びB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽細胞性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非開裂細胞性NHL、巨大病変NHL、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、及びワルデンストレームマクログロブリン血症を含む)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ヘアリー細胞白血病、慢性骨髄芽球性白血病、及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、並びに母斑症に関連する異常な血管増殖、浮腫(例えば脳腫瘍に関連するもの)、メーグス症候群、脳がん、並びに頭頚部がん、及び関連転移が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施態様では、本発明の抗体による治療に適するがんには、乳がん、結腸直腸がん、直腸がん、非小細胞肺がん、膠芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎細胞がん、前立腺がん、肝がん、膵臓がん、軟組織肉腫、カポジ肉腫、カルチノイド癌、頭頚部がん、卵巣がん、中皮腫、及び多発性骨髄腫が含まれる。いくつかの実施態様では、がんは、小細胞肺がん、膠芽細胞腫、神経芽細胞腫、黒色腫、乳癌、胃がん、結腸直腸がん(CRC)、及び肝細胞癌から選択される。いくつかの実施態様では、がんは、非小細胞肺がん、結腸直腸がん、神経膠芽腫及び乳癌(これらのがんの転移型を含む)から選択される。
【0051】
化学療法剤は、がんの治療に有用な化学物質である。化学療法剤の例には、チオテパ及びシクロホスファミド(シトキサン(商標登録))のようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類;ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパのようなアジリジン類;アルトレートアミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド及びトリメチロメラミンを含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビロール、MARINOL(登録商標));ベータ-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成アナログトポテカン(ハイカムチン(登録商標)、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレチン、及び9-アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成アナログを含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;ドゥオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンジスタチン;クロランブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードのようなナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンのようなニトロソウレア;抗生物質、例えばエネジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンガンマ1I及びカリケアマイシンオメガI1(例えばNicolaou et.al.,Angew.Chem Intl.Ed.Engl.,33:183-186(1994)を参照のこと);CDP323、経口アルファ-4インテグリン阻害剤;ダイネマイシンAを含むダイネマイシン;エスペラマイシン;並びにネオカルチノスタチン発色団及び関連する色素タンパクエネジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン類、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン(登録商標)、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、ドキソルビシンHClリポソーム注射(DOXIL(登録商標))、リポソームドキソルビシンTLC D-99(MYOCET(登録商標))、ペグ化リポソームドキソルビシン(CAELYX(登録商標))及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マーセロマイシン、マイトマイシンCのようなマイトマイシン、マイコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗剤、例えばメトトレキセート、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、テガフール(UFTORAL(登録商標))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、エポチロン及び5-フルオロウラシル(5-FU);コンブレタスタチン;葉酸アナログ、例えばデノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート;プリンアナログ、例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロキシウリジン;アンドロゲン類、例えばカルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎剤、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸リプレニッシャー、例えばフロリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルフォルミチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシノイド類、例えばメイタンシン及びアンサミトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products、Eugene、Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフラン;スピロゲルマニウム;テニュアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン類(特にT-2毒素、ベラクリンA、ロリジンA及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology、Princeton、N.J.)、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤(ABRAXANETM)及びドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhome-Poulene Rorer、Antony、France);クロランブシル;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;プラチナ薬剤、例えばシスプラチン、オキサリプラチン(例えばELOXATIN(登録商標))及びカルボプラチン;チューブリン重合が微小管を形成するのを妨げるビンカ、例えばビンブラスチン(VELBAN(登録商標))、ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標))、ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標))及びビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトキサントロン;ロイコボリン;ノバントロン;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロナート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド(ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標));ビスホスホネート、例えばクロドロネート(例えばBONEFOS(登録商標)又はOSTAC(登録商標))、エチドロン酸(DIDROCAL(登録商標))、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロン酸(AREDIA(登録商標))、チルドロネート(SKELID(登録商標))、又はリセドロネート(ACTONEL(登録商標))を含む);トロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に異常な細胞増殖に関係するシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えばPKC-アルファ、Raf、H-Ras及び上皮増殖因子レセプター(EGF-R)(例えばエルロチニブ(TarcevaTM));及び細胞増殖を低減するVEGF-A;ワクチン、例えばTHERATOPE(登録商標)ワクチン及び遺伝子治療ワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン及びVAXID(登録商標)ワクチン;トポイソメラーゼ1阻害剤(例えばLURTOTECAN(登録商標));rmRH(例えばABARELIX(登録商標));BAY439006(ソラフェニブ;Bayer);SU-11248(スニチニブ、SUTENT(登録商標)、Pfizer);ペリホシン、COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブ又はエトリコキシブ)、プロテオゾーム阻害剤(例えば、PS341);ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標));CCI-779;チピファルニブ(R11577);オラフェニブ、ABT510;BCL-2阻害剤、例えばオブリメルセンナトリウム(GENASENSE(登録商標));ピクサントロン;EGFR阻害剤;チロシンキナーゼ阻害剤;セリン-スレオニンキナーゼ阻害剤ー、例えばラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標));ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、例えばロナファーニブ(SCH6636、SARASARTM);及び上述したもの薬学的に許容される塩類、酸類又は誘導体、並びに、上記のうちの2つ以上の組み合わせ、例えば、CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾロンの併用療法の略称)、及びFOLFOX(5-FU及びロイコボリンと組み合わせたオキサリプラチン(ELOXATINTM)を用いる治療計画の略称)、及び上記いずれかの薬学的に許容される塩類、酸類又は誘導体類;並びに上記の2つ以上の組み合わせが含まれる。
【0052】
本明細書に定義される化学療法剤は、がんの成長を促進できるホルモンの作用を調節、低減、遮断又は阻害するように働く、「抗ホルモン剤」又は「内分泌治療剤」を含む。それらはそれ自体がホルモンであってよく、限定しないが、抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM)を含み、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びFARESTON.cndot.トレミフェン;副腎のエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)酢酸メゲストロール、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、フォルメスタニー、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール、及びARIMIDEX(登録商標)アナストロゾール;及び抗アンドロゲン、例えばフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド及びゴセレリン;並びにトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に接着細胞の増殖に関与しているシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えばPKC-アルファ、Raf、及びH-Ras;リボザイム、例えばVEGF発現阻害剤(例えばANGIOZYME(登録商標)リボザイム)及びHER2発現阻害剤;遺伝子治療ワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン及びVAXID(登録商標)ワクチンなどのワクチン;PROLEUKIN(登録商標)rIL-2;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;ビノレルビン及びエスペラミシン(米国特許第4675187号を参照のこと)、及び上記いずれかの薬学的に許容される塩類、酸類及び誘導体類;並びに上記の2つ以上の組み合わせを含む。
【0053】
本明細書で使用されるとき、「成長阻害剤」は、in vitro又はin vivoのいずれかで細胞の成長を阻害する化合物又は組成物を指す。一実施態様では、増殖阻害剤は、抗体が結合する抗原を発現する細胞の増殖を予防又は低減する成長阻害抗体である。別の実施態様では、増殖阻害剤は、S期の細胞の割合を著しく減少させるものでありうる。増殖阻害剤の例には、細胞周期進行(S期以外の場所で)を遮断する薬剤、例えば、G1停止及びM期停止を誘導する薬剤が含まれる。古典的なM期遮断薬には、ビンカ(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン、及びトポイソメラーゼII阻害剤、例えば、ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンが含まれる。またG1を停止させるこれらの薬剤は、S期停止にも波及し、例えば、DNAアルキル化剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びアラ-Cである。さらなる情報は、Mendelsohn and Israel,eds.,The Molecular Basis of Cancer,Chapter 1,entitled ”Cell cycle regulation,oncogenes,and antineoplastic drugs” by Murakami et al.(W.B.Saunders,Philadelphia,1995)の、例えばp.13に見出すことができる。タキサン(パクリタキセル及びドセタキセル)は、いずれもイチイ由来の抗がん薬である。ヨーロッパイチイ由来のドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)の半合成類似体である。パクリタキセル及びドセタキセルは、チューブリンダイマー由来の微小管の集合を促進し、脱重合を妨害することによって微小管を安定させ、細胞内での有糸分裂を阻害する。
【0054】
「放射線療法」とは、正常に機能する能力又は細胞を完全に破壊する能力を制限するように細胞に十分な損傷を誘導するための指向性ガンマ線又はベータ線の使用を意味する。線量及び治療期間を決定するために、当技術分野で既知の方法が多く存在することが理解されるだろう。典型的な治療は1回の投与として与えられ、典型的な線量は、1日あたり10から200単位(グレイ)の範囲である。
【0055】
治療の目的のための「対象」又は「個体」は、哺乳動物に分類される任意の動物を指し、ヒト、及び家畜(domestic and farm animals)、及び動物園、スポーツ、又はペットの動物、例えば犬、馬、猫、牛などを含む。いくつかの実施態様では、哺乳動物はヒトである。
【0056】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、具体的には、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及びそれらが所望の生物活性を呈する限り抗体断片を包含する。
【0057】
「単離」抗体とは、その自然環境の成分から同定及び分離され、且つ/又は回収された抗体である。その自然環境の夾雑物成分は、抗体の試験的、診断的、又は治療的使用を妨害するであろう物質であり、それには、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性又は非タンパク質性溶質が含まれる。いくつかの実施態様において、抗体は、(1)例えばローリー法で測定した場合抗体の95重量%を超えるまで、及びいくつかの実施態様においては99重量%を超えるまで、(2)例えばスピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15残基のN末端又は内部アミノ酸配列を得るために十分な程度まで、或いは(3)例えばクーマシーブルー又は銀染色を使用した還元又は非還元条件下でのSDS-PAGEにより均一になるまで精製される。単離抗体は、抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組み換え細胞内にin situ抗体を含む。しかしながら、通常、単離抗体は、少なくとも1つの精製工程によって調製される。
【0058】
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、1つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合しており、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。また、各重鎖と軽鎖は、一定の間隔で鎖内ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は、一端に可変ドメイン(VH)を有し、その後に複数の定常ドメインが続く。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)を、他端に定常ドメインを有する。軽鎖の定常ドメインは重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間の界面を形成すると考えられる。
【0059】
「定常ドメイン」という用語は、抗原結合部位を含有する可変ドメインである免疫グロブリンの他の部分と比較して、より保存されたアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子の部分を指す。定常ドメインは、重鎖のCH1、CH2及びCH3ドメイン(総称して、CH)と、軽鎖のCHL(又はCL)ドメインとを含有する。
【0060】
抗体の「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインは、「VH」と称されることがある。軽鎖の可変ドメインは、「VL」と称されることがある。これらドメインは、一般に、抗体の最も可変性の高い部分であり、抗原結合部位を含有する。
【0061】
「可変」という用語は、可変ドメインの特定の部分の配列が抗体間で大きく異なり、且つ各特定の抗体のその特定の抗原に対する結合及び特異性において使用されるという事実を指す。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体に均一に分布しているのではない。これは、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの両方における、超可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々が、ベータ-シート構造を接続し、場合によってはベータ-シート構造の一部を形成するループを形成する3つのHVRによって接続された、大部分がベータシート立体配置を取る4つのFR領域を含む。各鎖内のHVRは、FR領域によって近接して一緒に保持され、他方の鎖からのHVRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institute of Health,Bethesda,Md.(1991)参照)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与していないが、抗体の抗体依存性細胞毒性への関与といった様々なエフェクター機能を呈する。
【0062】
任意の哺乳動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパ(「κ」)及びラムダ(「λ」)と呼ばれる2つの明らかに異なる型のうちの一方に割り当てることができる。
【0063】
本明細書で使用される場合、IgGの「アイソタイプ」又は「サブクラス」という用語は、それらの定常領域の化学的及び抗原的特性によって定義される免疫グロブリンのサブクラスのうちのいずれかを意味する。
【0064】
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)は、異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには5つの主なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2にさらに分けられてもよい。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、γ、ε、γ、及びμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元構成は周知であり、例えば、Abbas et al.Cellular and Mol.Immunology,4th ed.(W.B.Saunders,Co.,2000)に一般に記載されている。抗体は、抗体と1種以上の他のタンパク質又はペプチドとの共有結合又は非共有結合によって形成される、より大きい融合分子の一部でありうる。
【0065】
「完全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全抗体」という用語は、本明細書において互換的に使用され、以下に記載のように、その実質的にインタクトな形態の抗体を指すのであって、抗体断片を指すのではない。これら用語は、具体的には、Fc領域を含有する重鎖を含む抗体を指す。
【0066】
本明細書における目的のための「ネイキッド抗体」は、細胞傷害性部分又は放射標識にコンジュゲートされていない抗体である。
【0067】
「抗体断片」は、好ましくはその抗原結合領域を含む、インタクトな抗体の一部分を含む。いくつかの実施態様では、本明細書に記載の抗体断片は、抗原結合断片である。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片;ダイアボディ;直鎖状抗体;単鎖抗体分子;並びに抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれる。
【0068】
抗体のパパイン消化により、各々が単一の抗原結合部位を有する「Fab」断片と、容易に結晶化するその能力を反映して命名された残りの「Fc」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片が生成される。ペプシン処理は、F(ab’)2断片をもたらし、これは、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋することができる。
【0069】
「Fv」は、完全な抗原結合部位を含有する最小の抗体断片である。一実施態様では、二本鎖Fv種は、密接に非共有結合した1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインのダイマーからなる。単鎖Fv(scFv)種において、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインとは、軽鎖及び重鎖が二本鎖Fv種における構造に類似の「ダイマー」構造で会合することができるように、可動性ペプチドリンカーによって共有結合することができる。各可変ドメインの3つのHVRが相互作用してVH-VLダイマーの表面上の抗原結合部位を画定するのは、この立体配置においてである。集合的に、6つのHVRが抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的なHVRを3つしか含まないFvの半分)であっても、結合部位全体より低い親和性であるが、抗原を認識し、それに結合する能力を有する。
【0070】
Fab断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含有し、軽鎖定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab’断片は、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に、抗体ヒンジ領域由来の1つ又は複数のシステインを含む数個の残基が付加されている点でFab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインの1つ又は複数のシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’の本明細書における呼称である。F(ab’)2抗体断片は、元々は、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として生成されたものである。抗体断片の他の化学的カップリングも既知である。
【0071】
「単鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらドメインは単一ポリペプチド鎖内に存在する。一般に、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これにより、scFvが抗原結合に望ましい構造を形成することが可能になる。scFvの概説については、例えば、Pluckthun,in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York,1994),pp.269-315を参照されたい。
【0072】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する抗体断片を指し、これら断片は、同じポリペプチド鎖内の軽鎖可変ドメイン(VL)に接続した重鎖可変ドメイン(VH)(VH-VL)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、これらドメインは別の鎖の相補的ドメインと対形成することを余儀なくされ、2つの抗原結合部位が作られる。ダイアボディは二価又は二重特異性でありうる。ダイアボディは、例えば、EP404,097;国際公開第1993/01161号;Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003);及びHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)にさらに詳しく記載されている。トリアボディ及びテトラボディは、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)にも記載されている。
【0073】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一の抗体の集団から得られる抗体を指し、例えば、その集団を構成する個々の抗体は、少量で存在しうる、あり得る変異、例えば、天然に存在する変異を除いて同一である。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。一部の実施態様では、このようなモノクローナル抗体は、典型的には、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、標的結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列からの単一の標的結合ポリペプチド配列の選択を含むプロセスによって得られたものである。例えば、この選択プロセスは、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、又は組み換えDNAクローンのプールといった複数のクローンからの特有のクローンの選択でありうる。選択された標的結合配列は、例えば、標的への親和性を改善し、標的結合配列をヒト化し、細胞培養物におけるその生成を改善し、in vivoでのその免疫原性を低減し、多重特異性抗体を作製するなどのためにさらに改変できること、及び改変された標的結合配列を含む抗体も本発明のモノクローナル抗体であることを理解されたい。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、それらが典型的には他の免疫グロブリンにより汚染されていないという点で有利である。
【0074】
修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られているという抗体の特徴を示し、抗体を何か特定の方法により作製しなければならないと解釈されるものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えばハイブリドーマ法(例えば、Kohler and Milstein,Nature,256:495-97(1975);Hongo et al.,Hybridoma,14(3):253-260(1995)、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988);Hammerling et al.,in:Monoclonal and T-Cell Hybridomas 563-681(Elsevier、N.Y.,1981)、組み換えDNA法(米国特許第4816567号を参照)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clackson et al.,Nature,352:624-628(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992);Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004);Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004);Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472(2004);及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1-2):119-132(2004)を参照)、及びヒト免疫グロブリン配列をコードする免疫グロブリン遺伝子座又は遺伝子の一部又は全部を有する動物においてヒト又はヒト様抗体を生成するための技術(例えば、国際公開第1998/24893号;国際公開第1996/34096号;国際公開第1996/33735号;国際公開第1991/10741号;Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551(1993);Jakobovits et al.,Nature 362:255-258(1993);Bruggemann et al.,Year in Immunol.7:33(1993);米国特許第5545807号;同第5545806号;同第5569825号;同第5625126号;同第5633425号;及び同第5661016号;Marks et al.,Bio/Technology 10:779-783(1992);Lonberg et al.,Nature 368:856-859(1994);Morrison,Nature 368:812-813(1994);Fishwild et al.,Nature Biotechnol.14:845-851(1996);Neuberger,Nature Biotechnol.14:826(1996);及びLonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65-93(1995)を参照)を含む様々な技術によって作製されうる。
【0075】
本明細書においてモノクローナル抗体は、「キメラ」抗体、即ち、重鎖及び/又は軽鎖の一部分は特定の種に由来する抗体又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一若しくは相同であるが、1つ又は複数の鎖の残りの部分は別の種に由来する抗体又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一若しくは相同である、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、並びに、所望の生物活性を呈するものである限りそのような抗体の断片を、特に含む(例えば、米国特許第4816567号;及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855(1984)を参照のこと)。キメラ抗体には、抗体の抗原結合領域が、例えばマカクザルを目的の抗原で免疫化することによって生成された抗体に由来しているPRIMATIZED(登録商標)抗体が含まれる。
【0076】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小の配列を含有するキメラ抗体である。一実施態様では、ヒト化抗体は、レシピエントのHVR由来の残基が、所望の特異性、親和性、及び/又は能力を有するマウス、ラット、ウサギ、若しくは非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)のHVR由来の残基により置き換えられるヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基により置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含んでもよい。これら修飾を加えて、抗体の性能をさらに洗練させることができる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には、2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、超可変ループのすべて又は実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FRのうちのすべて又は実質的にすべてがヒト免疫グロブリン配列のFRである。ヒト化抗体は、任意選択的に、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのFcの少なくとも一部も含む。さらなる詳細については、例えば、Jones et al.,Nature 321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988);及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)を参照されたい。また、例えば、Vaswani and Hamilton,Ann.Allergy,Asthma & Immunol.1:105-115(1998);Harris,Biochem.Soc.Transactions 23:1035-1038(1995);Hurle and Gross,Curr.Op.Biotech.5:428-433(1994);並びに米国特許第6,982,321号及び同7,087,409号も参照されたい。
【0077】
「ヒト抗体」は、ヒトによって生成された抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体、及び/又は本明細書に開示されヒト抗体を作製するための技術のいずれかを使用して作製された抗体である。このヒト抗体の定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーを含む当技術分野で既知の様々な技術を使用して生成することができる。Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581(1991)。Cole et al.,Monoclonal antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985);Boerner et al.,J.Immunol.,147(1):86-95(1991)に記載されている方法も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である。van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.,5:368-74(2001)も参照されたい。ヒト抗体は、抗原曝露に応答してそのような抗体を生成するように改変されているが、その内因性遺伝子座が無効化されているトランスジェニック動物、例えば、免疫化されたキセノマウスに抗原を投与することによって調製することができる(例えば、XENOMOUSETM技術に関する米国特許第6,075,181及び6,150,584を参照されたい)。例えば、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されるヒト抗体に関するLi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)も参照されたい。
【0078】
「種依存性抗体」は、第2の哺乳動物種由来の抗原のホモログに対する結合親和性より第1の哺乳動物種由来の抗原に対して強い結合親和性を有する抗体である。通常、種依存性抗体は、ヒト抗原に「特異的に結合」する(例えば、約1×10-7M以下、約1×10-8M以下、又は約1×10-9M以下の結合親和性(Kd)の値を有する)が、ヒト抗原に対する結合親和性よりの少なくとも約50分の1、又は少なくとも約500分の1、又は少なくとも約1000分の弱さの、第2の非ヒト哺乳動物種由来の抗原のホモログに対する結合親和性を有する。種依存性抗体は、上記に定義された様々な種類の抗体のうちのいずれかとすることができるが、ヒト化抗体又はヒト抗体でもよい。
【0079】
本明細書で使用されるとき、用語「超可変領域」、「HVR」、又は「HV」は、配列が超可変性であり、且つ/又は構造的に画定されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。通常、抗体は、VHに3個(H1、H2、H3)、VLに3個(L1、L2、L3)、計6個のHVRを含む。天然抗体において、H3及びL3が6つのHVRのうち最も高い多様性を呈し、特にH3が抗体に優れた特異性を与える上で特有の役割を果たすと考えられる。例えば、Xu et al.,Immunity 13:37-45(2000);Johnson and Wu,in Methods in Molecular Biology 248:1-25(Lo,ed.,Human Press,Totowa,N.J.,2003)を参照されたい。実際、重鎖のみからなる天然に存在するラクダ科の抗体は、軽鎖の非存在下で機能的であり、安定している。例えば、Hamers-Casterman et al.,Nature 363:446-448(1993);Sheriff et al.,Nature Struct.Biol.3:733-736(1996)を参照されたい。
【0080】
複数のHVR描写が本明細書で使用され、本明細書に包含される。Kabat相補性決定領域(CDR)は、配列可変性に基づいており、最も一般的に使用されている(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。Chothiaは、代わりに構造的ループの位置に言及している(Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。AbM HVRは、Kabat HVRとChothia構造的ループとの間の折衷物を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデル化ソフトウェアによって使用される。「接触」HVRは、利用可能な複合体結晶構造の分析に基づく。これらHVRの各々に由来する残基を以下に記載する。
【0081】
【0082】
HVRは、以下の「拡張HVR」を含みうる:VLの24-36又は24-34(L1)、46-56又は50-56(L2)及び89-97又は89-96(L3)、並びにVHの26-35(H1)、50-65又は49-65(H2)及び93-102、94-102、又は95-102(H3)。可変ドメイン残基は、これらの定義の各々について、Kabatら(上記参照)に従って番号付けされる。
【0083】
「フレームワーク」又は「FR」残基は、本明細書で定義されるHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0084】
「Kabatにおけるような可変ドメイン残基番号付け」又は「Kabatにおけるようなアミノ酸位置番号付け」という用語、及びそれらの変形は、Kabatら(上掲)における抗体の編集物の重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインに使用される番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを使用して、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFR若しくはHVRの短縮、又はそれへの挿入に対応するより少ないアミノ酸又は追加のアミノ酸を含有しうる。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入(Kabatによる残基52a)を含み、重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatによる残基82a、82b、及び82cなど)を含みうる。残基のKabat番号付けは、所与の抗体に対して、抗体の配列と「標準の」Kabat番号付けされた配列とを相同領域において整列させることによって決定されうる。
【0085】
Kabat番号付けシステムは一般に、可変ドメイン内の残基(概ね、軽鎖の残基1-107及び重鎖の残基1-113)を指すときに使用される(例えば、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest.5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。「EU番号付けシステム」又は「EUインデックス」は、一般に、免疫グロブリン重鎖定常領域の残基について言及するときに使用される(例えば、Kabat et al.,上掲に報告されるEUインデックス)。「KabatにおけるようなEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基の番号付けを指す。
【0086】
「直鎖状抗体」という表現は、Zapata et al.(1995 Protein Eng,8(10):1057-1062)に記載される抗体を指す。簡潔には、これら抗体は、相補的軽鎖ポリペプチドと一緒に一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む。直鎖状抗体は、二重特異性又は単一特異性でありうる。
【0087】
本明細書で使用される「に特異的に結合する」又は「に特異的」という用語は、生体分子を含む分子の異種集団の存在下で標的の存在を決定するものである、測定可能且つ再現可能な相互作用、例えば標的と抗体との間の結合を指す。例えば、標的(エピトープでありうる)に特異的に結合する抗体は、他の標的に結合するよりも高い親和性、結合力で、より容易に、及び/又はより長い持続時間この標的に結合する抗体である。一実施態様では、抗体が無関係の標的に結合する程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定した場合、抗体の標的への結合の約10%未満である。一部の実施態様では、標的に特異的に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、又は≦0.1nMの解離定数(Kd)を有する。一部の実施態様では、抗体は、異なる種由来のタンパク質間で保存されるタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。別の実施態様では、特異的結合は、排他的結合を含むことができるが、それを必要としない。
【0088】
II.抗体の製剤化及び調製
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載される抗PD-L1抗体を含む液体薬学的製剤、例えば皮下投与用の液体薬学的製剤である。いくつかの実施態様では、製剤は、抗PD-L1抗体(例えば、モノクローナル抗体)、スクロース、バッファー、及び界面活性剤を含み、この製剤のpHは約5.0から約6.5である。いくつかの実施態様では、製剤は、メチオニンをさらに含む。いくつかの実施態様では、製剤中の本明細書に記載される抗PD-L1抗体は、約100g/Lから約150g/Lの濃度である。いくつかの実施態様では、バッファーは、ヒスチジン(例えば、ヒスチジンアセテート)である。いくつかの実施態様では、製剤中のバッファーは、約15mMから約25mMの濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中のスクロースは、約200mMから約280mMである。いくつかの実施態様では、製剤中の界面活性剤は、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)である。いくつかの実施態様では、製剤中のポリソルベートは、約0.005%(w/v)から約0.08%(w/v)の濃度である。いくつかの実施態様では、製剤は、約5mMから約15mMの濃度のメチオニンを含む。いくつかの実施態様では、製剤は、約5.0から約6.3のpHを有する。いくつかの実施態様において本明細書に提供されるのは、約100g/Lから約150g/Lの濃度の本明細書に記載される抗PD-L1抗体、約15mMから約25mMの濃度のヒスチジンアセテート、約200mMから約280mMの濃度のスクロース、約0.04%(w/v)から約0.08%(w/v)の濃度のポリソルベート、約5mMから約15mMの濃度のメチオニン、及び約5.6から約6.0のpHを含む液体薬学的製剤である。いくつかの実施態様では、製剤は、ヒアルロニダーゼ酵素(例えば、組み換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPh20))をさらに含む。いくつかの実施態様では、製剤は、約1000U/mlから約3000U/mlの濃度のヒアルロニダーゼ酵素(例えば、rHuPh20)を含む。いくつかの実施態様では、製剤は無菌である。いくつかの実施態様では、製剤は、対象に投与するために適している。いくつかの実施態様では、製剤は、皮下投与用である。
【0089】
いくつかの実施態様において本明細書に提供されるのは、約100g/Lから約150g/Lの濃度の本明細書に記載される抗PD-L1抗体、約15mMから約25mMの濃度のヒスチジンアセテート、約200mMから約280mMの濃度のスクロース、約0.01%(w/v)から約0.03%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び約5.3から約5.7のpHを含む液体薬学的製剤である。いくつかの実施態様では、製剤は無菌である。いくつかの実施態様では、製剤は、対象に投与するために適している。いくつかの実施態様では、製剤は、皮下投与用である。
【0090】
いくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、-20℃で少なくとも約6カ月間、少なくとも約12カ月間、少なくとも約18カ月間、少なくとも2年間、少なくとも3年間、又は少なくとも4年間安定している。いくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、2-8℃で少なくとも約6カ月間、少なくとも約12カ月間、少なくとも約18カ月間、少なくとも2年間、又は少なくとも3年間安定している。いくつかの実施態様では、保管後、抗体は、保管前に、即ち、薬学的製剤が調製された時点で呈していたその生物活性(例えば、標的への結合、又は治療効力)の少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%を保持している。
【0091】
一部の実施態様では、製剤は、約40℃で少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、14、21、28日、又はそれより多い日数にわたって安定である。一部の実施態様では、製剤は、約40℃で少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8週、又はそれより多い週数にわたって安定している。一部の実施態様では、製剤は、約25℃で少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24ヶ月、又はそれより多い月数にわたって安定している。一部の実施態様では、製剤は、約5℃で少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24ヶ月、又はそれよりも多い月数にわたって安定している。一部の実施態様では、製剤は、約-20℃で少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48ヶ月、又はそれより多い月数にわたって安定している。一部の実施態様では、製剤は、5℃又は-20℃で少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48カ月、又はそれより多い月数にわたって安定している。さらに、いくつかの実施態様では、製剤は、製剤の凍結(例えば、-20℃、-40℃又は-70℃への)及び融解、例えば1、2、3、4、又は5サイクルの凍結及び融解後に安定している。
【0092】
A.抗PD-L1抗体
いくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、抗PD-L1抗体である。PD-L1(プログラム細胞死1リガンド1)、別名PDL1、B7-H1、B7-4、CD274、及びB7-Hは、膜貫通タンパク質であり、PD-1とのその相互作用はT細胞活性化及びサイトカイン生成を阻害する。いくつかの実施態様では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体は、ヒトPD-L1に結合する。本明細書に記載される製剤を使用して製剤化することのできる抗PDL1抗体の例は、PCT特許出願国際公開第2010/077634号、米国特許第8,217,149号、及び米国特許出願公開第2016/0319022号に記載されており、これらは参照により本明細書に援用される。
【0093】
いくつかの実施態様では、抗PD-L1抗体は、PD-L1とPD-1との間の結合及び/又はPD-L1とB7-1との間の結合を阻害することができる。いくつかの実施態様では、抗PD-L1抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施態様では、抗PD-L1抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、及び(Fab’)2断片からなる群から選択される抗体断片である。いくつかの実施態様では、抗PD-L1抗体は、完全長抗体である。いくつかの実施態様では、抗PD-L1抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの実施態様では、抗PD-L1抗体は、ヒト抗体である。
【0094】
国際公開第2010/077634号、米国特許第8,217,149号、及び米国特許出願公開第2016/0319022号に記載される抗PD-L1抗体は、本明細書に記載される製剤中で製剤化されうる。
【0095】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載される製剤中の抗PD-L1抗体は:
(a)以下を含む軽鎖可変領域:
(1)アミノ酸配列RASQDVSTAVA(配列番号1)を含むHVR-L1;
(2)アミノ酸配列SASFLYS(配列番号2)を含むHVR-L2;
(3)アミノ酸配列QQYLYHPAT(配列番号3)を含むHVR-L3;及び
(b)以下を含む重鎖可変領域:
(1)アミノ酸配列GFTFSDSWIH(配列番号4)を含むHVR-H1;
(2)アミノ酸配列AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号5)を含むHVR-H2;
(3)アミノ酸配列WPGGFDY(配列番号6)を含むHVR-H3
を含む。
【0096】
さらなる実施態様では、本明細書に記載される製剤中の抗PD-L1抗体は、重鎖及び軽鎖配列を含み、ここで:
(a)重鎖可変領域配列は、重鎖可変領域配列:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号8)に対して少なくとも85%配列同一性を有するか、又は
(b)軽鎖可変領域配列は、軽鎖可変領域配列:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIK(配列番号7)に対して少なくとも85%配列同一性を有する。
【0097】
いくつかの実施態様では、製剤中の前記モノクローナル抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む。いくつかの実施態様では、製剤中の前記モノクローナル抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有する軽鎖可変領域と、配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する重鎖可変領域とを含む。
【0098】
なおさらなる具体的な一態様では、本抗体は、ヒト又はマウス定常領域をさらに含む。さらなる態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、及びIgG4からなる群から選択される。さらに詳細な態様では、ヒト定常領域は、IgG1である。さらなる態様では、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、及びIgG3からなる群から選択される。さらなる態様では、マウス定常領域は、IgG2Aである。さらに詳細な態様では、抗体は、低減された又は最小のエフェクター機能を有する。さらに詳細な態様では、最小のエフェクター機能は、「エフェクターなしのFc変異」又は非グリコシル化に起因する。さらなる実施態様では、エフェクターなしのFc変異は、定常領域内のN297A又はD265A/N297A置換である。
【0099】
さらなる実施態様では、本明細書に記載される製剤中の抗PD-L1抗体は、重鎖及び軽鎖配列を含み、ここで:
(a)重鎖配列は、重鎖配列:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号10)に対して少なくとも85%の配列同一性を有するか、又は
(b)軽鎖配列は、軽鎖配列:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号9)に対して少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0100】
いくつかの実施態様において提供されるのは、重鎖及び軽鎖配列を含み、軽鎖配列が、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する、単離された抗PD-L1抗体である。いくつかの実施態様において提供されるのは、重鎖及び軽鎖配列を含み、重鎖配列が、配列番号10のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する、単離された抗PD-L1抗体である。いくつかの実施態様において提供されるのは、重鎖及び軽鎖配列を含み、軽鎖配列が、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有し、重鎖配列が、配列番号10のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する、単離された抗PD-L1抗体である。
【0101】
いくつかの実施態様において提供されるのは、重鎖及び軽鎖を含み、軽鎖が配列番号9のアミノ酸配列を含み、重鎖が配列番号10のアミノ酸配列を含む、単離された抗PD-L1抗体である。
【0102】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載される製剤中の抗PD-L1抗体は:
(a)以下を含む軽鎖可変領域:
(1)アミノ酸配列RASQDVSTAVA(配列番号1)を含むHVR-L1;
(2)アミノ酸配列SASFLYS(配列番号2)を含むHVR-L2;
(3)アミノ酸配列QQYLYHPAT(配列番号3)を含むHVR-L3;及び
(b)以下を含む重鎖可変領域:
(1)アミノ酸配列GFTFSDSWIH(配列番号4)を含むHVR-H1;
(2)アミノ酸配列AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号5)を含むHVR-H2;
(3)アミノ酸配列WPGGFDY(配列番号6)を含むHVR-H3
を含む。いくつかの実施態様では、抗PD-L1抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを含む。いくつかの実施態様では、製剤中の前記モノクローナル抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有する軽鎖可変領域と、配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する重鎖可変領域とを含む。
【0103】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載される製剤中の抗PD-L1抗体は:
(a)以下を含む軽鎖可変領域:
(1)アミノ酸配列RASQDVSTAVA(配列番号1)を含むHVR-L1;
(2)アミノ酸配列SASFLYS(配列番号2)を含むHVR-L2;
(3)アミノ酸配列QQYLYHPAT(配列番号3)を含むHVR-L3;及び
(b)以下を含む重鎖可変領域:
(1)アミノ酸配列GFTFSDSWIH(配列番号4)を含むHVR-H1;
(2)アミノ酸配列AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号5)を含むHVR-H2;
(3)アミノ酸配列WPGGFDY(配列番号6)を含むHVR-H3
を含む。いくつかの実施態様では、抗PD-L1抗体は重鎖及び軽鎖配列を含み、ここで、軽鎖配列は、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する。いくつかの実施態様において提供されるのは、重鎖及び軽鎖配列を含み、重鎖配列が、配列番号10のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する、単離された抗PD-L1抗体である。いくつかの実施態様において提供されるのは、重鎖及び軽鎖配列を含み、軽鎖配列が、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有し、重鎖配列が、配列番号10のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する、単離された抗PD-L1抗体である。
【0104】
いくつかの実施態様では、単離された抗PD-L1抗体は、酸化されたモノクローナル抗体である。いくつかの実施態様では、製剤中の酸化されたモノクローナル抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。いくつかの実施態様では、製剤中の酸化されたモノクローナル抗体は、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、ここで、W33、W50、又はW101のうちの1つ又は複数は酸化されている。いくつかの実施態様では、製剤中の酸化されたモノクローナル抗体は、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、ここで、M253及びM429のうちの1つ又は複数は酸化されている。いくつかの実施態様では、酸化されたモノクローナル抗体は、保管前に、即ち、薬学的製剤が調製された時点で呈していたその生物活性(例えば、標的への結合、又は治療効力)の少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%を保持している。
【0105】
いくつかの実施態様では、単離された抗PD-L1抗体は、糖化されたモノクローナル抗体である。いくつかの実施態様では、製剤中の糖化されたモノクローナル抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖と、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖とを含む。いくつかの実施態様では、製剤中の糖化されたモノクローナル抗体は、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、ここで、リジンのうちの1つ又は複数は糖化されている。いくつかの実施態様では、製剤中の糖化されたモノクローナル抗体は、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、ここで、K65は糖化されている。
【0106】
いくつかの実施態様では、単離された抗PD-L1抗体は、非グリコシル化されている。
【0107】
いくつかの実施態様では、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブ(TECENTRIQ(登録商標))である。
【0108】
本明細書における実施態様のうちのいずれにおいても、単離された抗PDL1抗体は、ヒトPDL1、例えば、UniProtKB/Swiss-Prot受託番号Q9NZQ7.1に示されるヒトPD-L1、又はそのバリアントに結合することができる。
【0109】
またさらなる実施態様において提供されるのは、本明細書に記載される抗体のうちのいずれかをコードする単離核酸である。いくつかの実施態様では、核酸は、前述の抗PD-L1抗体のいずれかをコードする核酸の発現に適したベクターをさらに含む。またさらなる特定の態様では、ベクターは、核酸の発現に適した宿主細胞内にある。またさらに具体的な態様では、宿主細胞は、真核細胞又は原核細胞である。またさらに具体的な態様では、真核細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)などの哺乳動物細胞である。
【0110】
抗体又はその抗原結合断片は、当技術分野において既知の方法を使用して、例えば発現に適した形態の先述の抗PD-L1抗体又は抗原結合断片のいずれかをコードする核酸を含む宿主細胞を、そのような抗体又は断片を生成するために適した条件下で培養すること、及び抗体又は断片を回収することを含む方法により、作製することができる。
【0111】
B.抗体の調製
一般に、研究、試験、及び臨床における使用のための抗体を調製するための様々な方法論は、当技術分野で十分に確立されている。製剤中の抗体は、抗体を生成するための当技術分野で利用可能な技術を使用して調製され、その例示的方法は、国際公開第2010/077634号、米国特許第8,217,149号、及び米国特許出願公開第2016/0319022号に記載されている。
【0112】
C.生物学的に活性な抗体
上述のように生成された抗体は、1つ又は複数の「生物活性」アッセイに供されて、治療的観点から有益な特性を有する抗体を選択するか、又は抗体の生物活性を保持する製剤及び条件を選択することができる。抗体は、意図された抗原に結合するその能力について試験されうる。例えば、抗PD-L1抗体の場合、抗体の抗原結合特性は、PD-L1に結合する能力を検出するアッセイで評価することができる。いくつかの実施態様では、抗体の結合性、例えば、飽和結合、ELISA、及び/又は競合アッセイ(例えばRIA)によって決定されうる。また、抗体は、例えば治療薬としてのその有効性を評価するために、他の生物活性アッセイに供されうる。このようなアッセイは、当技術分野で既知であり、抗体の標的抗原及び意図される使用に依存する。例えば、抗体によるPD-L1遮断の生物学的効果は、CD8+T細胞、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)マウスモデル、及び/又は同系腫瘍モデル、例えば、米国特許第8,217,149号に記載のもので評価することができる。
【0113】
目的とする抗原上の特定のエピトープに結合する抗体(例えば、例示的な抗PDL1抗体のPD-L1への結合を遮断する抗体)についてスクリーニングするために、常套的なクロスブロッキングアッセイ、例えば、Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Ed Harlow and David Lane(1988)に記載されるアッセイを実施することができる。代替的に、例えば、Champe et al.,J.Biol.Chem.270:1388-1394(1995)に記載されるようなエピトープマッピングを、抗体が目的とするエピトープに結合するかどうかを決定するために実施することができる。
【0114】
D.製剤の調製
目的の抗体を調製した後(例えば、本明細書に開示されているように製剤化することができる抗体を製造するための技術は、以下に詳述され、また当技術分野で既知である)、それを含む薬学的製剤が調製される。一部の実施態様では、製剤化される抗体は、事前凍結乾燥に供されておらず、本明細書における目的の製剤は、水性製剤である。一部の実施態様では、製剤は皮下投与用である。一部の実施態様では、抗体は、完全長抗体である。一実施態様では、製剤中の抗体はF(ab’)2などの抗体断片であり、この場合、完全長抗体には起こりえない問題(例えば、抗体のFabへのクリッピング)に対応する必要が生じうる。製剤中に存在する抗体の治療的有効量は、例えば、所望の投与量及び1つ又は複数の投与様式を考慮することによって決定される。約100g/Lから約150g/L、又は約110g/Lから約140g/L、又は約120g/Lから約130g/Lが、製剤中における本明細書に記載される抗体の例示的濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、約100g/Lから約150g/Lの濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、約110g/Lから約140g/Lの濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、約120g/Lから約130g/Lの濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、約100g/Lの濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、約105g/Lの濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、約110g/Lの濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、約115g/Lの濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、約120g/Lの濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、約125g/Lの濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、約130g/Lの濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、約135g/Lの濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、約140g/Lの濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、約145g/Lの濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、約150g/Lの濃度である。100g/Lから150g/L、又は110g/Lから140g/L、又は120g/Lから130g/Lが、製剤中の本明細書に記載される抗体の例示的濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、100g/Lから150g/Lの濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、110g/Lから140g/Lの濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、120g/Lから130g/Lの濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、100g/Lの濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、105g/Lの濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、110g/Lの濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、115g/Lの濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、120g/Lの濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、125g/Lの濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、130g/Lの濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、135g/Lの濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、140g/Lの濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、145g/Lの濃度である。いくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、150g/Lの濃度である。
【0115】
pH緩衝溶液中に抗体を含む液体薬学的製剤が調製される。本発明のバッファーは、約5.0から約6.5の範囲のpHを有する。一部の実施態様では、pHは約5.3から約6.0の範囲であるか、pHは約5.6から約6.0の範囲であるか、pHは約5.7から約5.9の範囲であるか、pHは約5.3から約5.7の範囲であるか、pHは約5.4から約5.6の範囲であるか、pHは約5.5から約5.8の範囲であるか、pHは約5.0から約6.0の範囲であるか、pHは約5.1から約5.8の範囲であるか、pHは約5.2から約5.8の範囲であるか、pHは約5.3から約5.8の範囲であるか、又はpHは約5.4から約5.8の範囲である。本発明の一部の実施態様では、製剤は、5.2又は約5.2のpHを有する。本発明の一部の実施態様では、製剤は、5.3又は約5.3のpHを有する。本発明の一部の実施態様では、製剤は、5.4又は約5.4のpHを有する。本発明の一部の実施態様では、製剤は、5.5又は約5.5のpHを有する。本発明の一部の実施態様では、製剤は、5.6又は約5.6のpHを有する。本発明の一部の実施態様では、製剤は、5.7又は約5.7のpHを有する。本発明の一部の実施態様では、製剤は、5.8又は約5.8のpHを有する。本発明の一部の実施態様では、製剤は、5.9又は約5.9のpHを有する。本発明の一部の実施態様では、製剤は、6.0又は約6.0のpHを有する。この範囲内でpHを制御するバッファーの例には、ヒスチジン(例えばL-ヒスチジン)又は酢酸ナトリウムが含まれる。一部の実施態様では、バッファーは、約15mMから約25mMの濃度でヒスチジンアセテート又は酢酸ナトリウムを含有する。一部の実施態様では、バッファーは、約15mMから約25mM、約16mMから約25mM、約17mMから約25mM、約18mMから約25mM、約19mMから約25mM、約20mMから約25mM、約21mMから約25mM、約22mMから約25mM、約15mM、約16mM、約17mM、約18mM、約19mM、約20mM、約21mM、約22mM、約23mM、約24mM、又は約25mMの濃度でヒスチジンアセテート又は酢酸ナトリウムを含有する。一部の実施態様では、バッファーは、約15mMから約25mMの濃度でヒスチジンアセテートを含有する。本発明の一部の実施態様では、バッファーは、約15mMから約25mM、約16mMから約25mM、約17mMから約25mM、約18mMから約25mM、約19mMから約25mM、約20mMから約25mM、約21mMから約25mM、約22mMから約25mM、約15mM、約16mM、約17mM、約18mM、約19mM、約20mM、約21mM、約22mM、約23mM、約24mM、又は約25mMの濃度でヒスチジンアセテート又は酢酸ナトリウムを含有する。本発明の一部の実施態様では、バッファーは、約20mMの濃度でヒスチジンアセテートを含有する。一実施態様では、バッファーは、約20mMの量の、pH5.0のヒスチジンアセテートである。一実施態様では、バッファーは、約20mMの量の、pH5.1のヒスチジンアセテートである。一実施態様では、バッファーは、約20mMの量の、pH5.2のヒスチジンアセテートである。一実施態様では、バッファーは、約20mMの量の、pH5.3のヒスチジンアセテートである。一実施態様では、バッファーは、約20mMの量の、pH5.4のヒスチジンアセテートである。一実施態様では、バッファーは、約20mMの量の、pH5.5のヒスチジンアセテートである。一実施態様では、バッファーは、約20mMの量の、pH5.6のヒスチジンアセテートである。一実施態様では、バッファーは、約20mMの量の、pH5.7のヒスチジンアセテートである。一実施態様では、バッファーは、約20mMの量の、pH5.8のヒスチジンアセテートである。一実施態様では、バッファーは、約20mMの量の、pH5.9のヒスチジンアセテートである。一実施態様では、バッファーは、約20mMの量の、pH6.0のヒスチジンアセテートである。一実施態様では、バッファーは、約20mMの量の、pH6.1のヒスチジンアセテートである。一実施態様では、バッファーは、約20mMの量の、pH6.2のヒスチジンアセテートである。一実施態様では、バッファーは、約20mMの量の、pH6.3のヒスチジンアセテートである。一実施態様では、バッファーは、約20mMの量の、pH6.4のヒスチジンアセテートである。一実施態様では、バッファーは、約20mMの量の、pH6.5のヒスチジンアセテートである。一実施態様では、バッファーは、20mMの量の、pH5.0のヒスチジンアセテートである。一実施態様では、バッファーは、20mMの量の、pH5.1のヒスチジンアセテートである。一実施態様では、バッファーは、20mMの量の、pH5.2のヒスチジンアセテートである。一実施態様では、バッファーは、20mMの量の、pH5.3のヒスチジンアセテートである。一実施態様では、バッファーは、20mMの量の、pH5.4のヒスチジンアセテートである。一実施態様では、バッファーは、20mMの量の、pH5.5のヒスチジンアセテートである。一実施態様では、バッファーは、20mMの量の、pH5.6のヒスチジンアセテートである。一実施態様では、バッファーは、20mMの量の、pH5.7のヒスチジンアセテートである。一実施態様では、バッファーは、20mMの量の、pH5.8のヒスチジンアセテートである。一実施態様では、バッファーは、20mMの量の、pH5.9のヒスチジンアセテートである。一実施態様では、バッファーは、20mMの量の、pH6.0のヒスチジンアセテートである。一実施態様では、バッファーは、20mMの量の、pH6.1のヒスチジンアセテートである。一実施態様では、バッファーは、20mMの量の、pH6.2のヒスチジンアセテートである。一実施態様では、バッファーは、20mMの量の、pH6.3のヒスチジンアセテートである。一実施態様では、バッファーは、20mMの量の、pH6.4のヒスチジンアセテートである。一実施態様では、バッファーは、20mMの量の、pH6.5のヒスチジンアセテートである。
【0116】
製剤は、約200mMから約280mMの量のスクロースをさらに含む。いくつかの実施態様では、製剤中のスクロースは、約210mMから約280mM、約220mMから約280mM、約230mMから約280mM、約240mMから約280mM、約200mMから約270mM、約200mMから約260mM、約200mMから約240mM、約210mMから約270mM、約220mMから約260mM、約230mMから約250mM、又は約235mMから約245mMである。いくつかの実施態様では、製剤中のスクロースは、約200mM、約210mM、約220mM、約230mM、約235mM、約240mM、約245mM、約250mM、約260mM、約270mM、又は約280mMである。いくつかの実施態様では、製剤中のスクロースは、約240mMである。製剤は、200mMから280mMの量のスクロースをさらに含む。いくつかの実施態様では、製剤中のスクロースは、210mMから280mM、220mMから280mM、230mMから280mM、240mMから280mM、200mMから270mM、200mMから260mM、200mMから240mM、210mMから270mM、220mMから260mM、230mMから250mM、又は235mMから245mMである。いくつかの実施態様では、製剤中のスクロースは、200mM、210mM、220mM、230mM、約235mM、240mM、245mM、250mM、260mM、270mM、又は280mMである。いくつかの実施態様では、製剤中のスクロースは、240mMである。
【0117】
いくつかの実施態様では、界面活性剤が抗体製剤に付加される。例示的な界面活性剤には、非イオン性界面活性剤、例えば、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、80など)又はポロキサマー(例えば、ポロキサマー188など)が含まれる。付加される界面活性剤の量は、界面活性剤が製剤化された抗体の凝集を低減し、及び/又は製剤中の粒子の形成を最小化し、及び/又は吸着を低減する量である。例えば、界面活性剤は、約00.005%(w/v)から約0.08%(w/v)の量で製剤中に存在しうる。いくつかの実施態様では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、約0.005%から約0.07%、約0.005%から約0.065%、約0.005%から約0.06%、約0.01%から約0.08%、約0.015%から約0.08%、約0.02%から約0.08%、約0.01%から約0.03%、約0.01%から約0.025%、約0.01%から約0.02%、約0.015%から約0.03%、約0.02%から約0.03%、約0.015%から約0.025%、約0.02%から約0.04%、約0.05%から約0.08%、約0.055%から約0.08%、約0.06%から約0.08%、約0.05%から約0.07%、約0.05%から約0.065%、約0.055%から約0.065%、約0.06%から約0.07%、約0.06%から約0.065%、約0.055%から約0.06%、又は約0.055%から約0.07%である。一部の実施態様では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、約0.02%(w/v)である。一部の実施態様では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、約0.06%(w/v)である。一部の実施態様では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.02%(w/v)である。一部の実施態様では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.06%(w/v)である。一部の実施態様では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.01%又は約0.01%の量で製剤中に存在する。一部の実施態様では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.015%又は約0.015%の量で製剤中に存在する。一部の実施態様では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.02%又は約0.02%の量で製剤中に存在する。一部の実施態様では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.025%又は約0.025%の量で製剤中に存在する。一部の実施態様では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.03%又は約0.03%の量で製剤中に存在する。一部の実施態様では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.05%又は約0.05%の量で製剤中に存在する。一部の実施態様では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.055%又は約0.055%の量で製剤中に存在する。一部の実施態様では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.06%又は約0.06%の量で製剤中に存在する。一部の実施態様では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.065%又は約0.065%の量で製剤中に存在する。一部の実施態様では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、0.07%又は約0.07%の量で製剤中に存在する。
【0118】
いくつかの実施態様では、メチオニンが抗体製剤に付加される。いくつかの実施態様では、製剤中のメチオニンは、約1mMから約20mM、約5mMから約15mM、約6mMから約14mM、約7mMから約13mM、約8mMから約12mM、約9mMから約11mM、約8mMから約13mM、約8mMから約11mM、約8mMから約10mM、約9mMから約13mM、約9mMから約12mM、又は約9mMから約10mMである。一部の実施態様では、製剤中のメチオニンは、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM又は約15mMである。特定の実施態様では、製剤中のメチオニンは、約10mMである。いくつかの実施態様では、製剤中のメチオニンは、1mMから20mM、5mMから15mM、6mMから14mM、7mMから13mM、8mMから12mM、9mMから11mM、8mMから13mM、8mMから11mM、8mMから10mM、9mMから13mM、9mMから12mM、又は9mMから10mMである。一部の実施態様では、製剤中のメチオニンは、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM又は15mMである。特定の実施態様では、製剤中のメチオニンは、10mMである。
【0119】
一部の実施態様では、ヒアルロナン分解酵素(即ちヒアルロニダーゼ)又はヒアルロナン合成阻害剤が、本明細書に記載される抗体製剤に付加されるか、投与前に本明細書に記載される抗体製剤と混合されるか、又は本明細書に記載される抗体製剤と共投与される。ヒアルロナン(ヒアルロン酸;HA)は、主に哺乳動物の結合組織、皮膚、軟骨、及び滑液中に存在するグリコサミノグリカンである。結合組織中において、ヒアルロナンに関連付けられる水和の水分は、組織間に水和したマトリックスを生成する。HAは、多くの細胞の細胞外マトリックス中、特に軟結合組織中に見られる。ヒアルロニダーゼは、ヒアルロナンを分解する酵素である。
【0120】
グリコサミノグリカン(GAG)は、細胞外マトリックス(ECM)の複雑な線状多糖類である。GAGは、N-置換ヘキソサミンとウロン酸(ヒアルロナン(HA)の場合、コンドロイチン硫酸(CS)、コンドロイチン(C)、デルマタン硫酸(DS)、ヘパラン硫酸(HS)とヘパリン(H))、又はガラクトース(ケラタン硫酸(KS)の場合)の二糖構造を繰り返すことを特徴とする。HAを除いて、すべてがコアタンパク質に共有結合して存在する。GAGとそれらのコアタンパク質とは、構造的にプロテオグリカン(PG)と呼ばれる。
【0121】
HAは、多くの細胞の細胞外マトリックス中、特に軟結合組織中に見られる。HAには、例えば水及び血漿タンパク質ホメオスタシスにおいて、様々な生理的機能が割り当てられている(Laurent T.C.et al,FASEB J.,1992;6:2397-2404)。HAの生成は、増殖細胞において増大し、有糸分裂に関与していると思われる。HAの生成は、ロコモーション及び細胞移動にも関係していると思われる。HAは、細胞の調節、発達、及び分化に重要な役割を果たすと考えられる(Laurent et al,上掲)。HAは、臨床医学において広く使用されてきた。その組織保護及びレオロジー特性は、眼科外科手術において有用であることが証明された(例えば白内障外科手術中に角膜内皮を保護するために)。また、ヒアルロナンタンパク質の相互作用は、細胞外マトリックス又は「基質」の構造に関与している。
【0122】
ヒアルロニダーゼは、動物界全体に見られる概して中性又は酸活性の酵素の群である。ヒアルロニダーゼは、基質の特異性、及び作用機序に関して異なっている(国際公開第2004/078140号)。ヒアルロニダーゼには以下3つの一般的なクラスが存在する:
1.主な最終生成物として四糖及び六糖を有するエンド-ベータ-N-アセチルヘキソサミニダーゼである、哺乳動物型ヒアルロニダーゼ,(EC3.2.1.35)。加水分解性活性及びトランスグリコシダーゼ活性の両方を有し、ヒアルロナン及びコンドロイチン硫酸(CS)、通常C4-S及びC6-Sを分解することができる。
2.細菌性ヒアルロニダーゼ(EC4.2.99.1)は、ヒアルロナンを、様々な度合で、CS及びDSへと分解する。それらは、主に二糖の最終生成物を生成するベータ脱離反応により作用するエンド-ベータ-N-アセチルヘキソサミニダーゼである。
3.ヒル、他の寄生生物、及び甲殻類由来のヒアルロニダーゼ(EC3.2.1.36)は、ベータ 1-3結合の加水分解を通して四糖及び六糖の最終生成物を生成するエンド-ベータ-グルクロニダーゼである。
【0123】
哺乳動物ヒアルロニダーゼは、2つの群:中性活性酵素及び酸活性酵素にさらに分割することができる。ヒトゲノム、HYAL1、HYAL2、HYAL3、HYAL4、HYALP1及びPH20/SPAM1中に6つのヒアルロニダーゼ様遺伝子が存在する。HYALP1は、偽遺伝子であり、HYAL3は、いずれかの既知の基質に対する酵素活性を保持していることが示された。HYAL4は、コンドロイチナーゼであり、ヒアルロナンに対する活性をほとんど呈さない。HYAL1は、原型的な酸活性酵素であり、PH20は、原型的な中性活性酵素である。酸活性ヒアルロニダーゼ、例えばHYAL1及びHYAL2は、通常、中性のpH(即ちpH7)において触媒活性を有さない。例えば、HYALlは、pH4.5を超えるとin vitroで触媒活性をほとんど有さない(Frost I.G.and Stern,R.,”A microtiter-based assay for hyaluronidase activity not requiring specialized reagents”,Anal.Biochemistry,1997;251:263-269)。HYAL2は、in vitroで極めて低い比活性を有する酸活性酵素である。
【0124】
ヒアルロニダーゼ様酵素は、また、通常ヒトHYAL2及びヒトPH20といったグリコシルホスファチジルイノシトールアンカーを介して原形質膜にロックされるもの(Danilkovitch-Miagkova et al,Proc.Natl.Acad.Sci.U SA,2003;100(8):4580-4585;Phelps et al,Science 1988;240(4860):1780-1782)、及び通常ヒトHYAL1など可溶型であるもの(Frost,I.G.et al,”Purification,cloning,and expression of human plasma hyaluronidase”,Biochem.Biophys.Res.Commun.1997;236(1):10-15)を特徴とする。しかしながら、種によってばらつきがある:例えばウシPH20は、極めて緩く原形質膜に結合し、ホスホリパーゼ感受性アンカーを介して固定されない(Lalancette et al,Biol Reprod.,2001;65(2):628-36)。ウシヒアルロニダーゼのこのような独特の特性は、可溶型ウシ精巣ヒアルロニダーゼ酵素の、臨床使用のための抽出物としての使用(WydaseTM、HyalaseTM)を可能にした。他のPH20種は、通常洗剤又はリパーゼを使用せずには溶解しない脂質アンカー酵素である。例えば、ヒトPH20は、GPI アンカーを介して原形質膜に固定される。脂質アンカーをポリペプチド中に導入しないであろうヒトPH20 DNAコンストラクトを作製する試みにより、触媒的に不活性な酵素,又は溶解しない酵素がもたらされた(Arming et al,Eur.J.Biochem.,1997;1;247(3):810-4)。天然に存在するマカク精子ヒアルロニダーゼは、可溶型と膜結合型両方の形態で見られる。64kDaの膜結合形態はpH7.0で酵素活性を保持するが、54kDa形態はpH4.0でのみ活性である(Cherr et al,Dev.Biol、1996;10;175(1):142-53)。したがって、PH20の可溶型形態は、中性条件下で酵素活性を欠くことが多い。
【0125】
国際公開第2006/091871号及び米国特許第7,767,429号の教示にしたがって、少量の可溶型ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)は、皮下組織への治療薬の投与を容易にするために、製剤中に導入することができる。細胞外空間においてHAを素早く脱重合することにより、sHASEGPは間質の粘性を低下させ、それにより水伝導度が上昇し、より大きな容量を安全且つ快適に組織中に投与することが可能になる。間質粘性の低下を通してsHASEGPにより誘導された水伝導度の上昇により、分散がより大きくなり、SC投与される治療薬の全身バイオアベイラビリティの増大が可能になる。
【0126】
皮下組織に注射されると、sHASEGPによるHAの脱重合は、SC組織中の注射部位に局所化される。実験事実によれば、sHASEGPは、マウスにおける13から20分の半減期で、間質腔内で局所的に不活性化され、CD-Iマウスへの単回の静脈内投与後に血中に全身性吸収は検出されない。血管区画内において、sHASEGPは、最大0.5mg/kgの用量で、マウス及びカニクイザルにおいてそれぞれ2.3分及び5分の半減期を実証する。sHASEGPの迅速なクリアランスは、SC組織内でのHA基質の連続的合成と組み合わせて、共注射される他の分子に関して一過性の局所的に活性な浸透強化が得られ、その効果は投与後24から48時間以内に完全に可逆的である(Bywaters G.L.,et al,”Reconstitution of the dermal barrier to dye spread after Hyaluronidase injection”,Br.Med.J.,1951;2(4741):1178-1183)。
【0127】
局所分散液に対する効果に加えて、sHASEGPは吸収エンハンサーとしても作用する。16キロダルトン(kDa)より大きな巨大分子は、拡散を介して毛細管を通した吸収から大部分が排除され、流入領域リンパ節を介してほとんどが吸収される。したがって、例えば治療抗体(分子量約150kDa)といった皮下投与された巨大分子は、その後の血管区画への吸収のために流入領域リンパ管に到達する前に、間質マトリックスを横断しなければならない。局所分散を増大させることにより、sHASEGPは、多くの巨大分子の吸収の速度(Ka)を上昇させる。これにより、sHASEGPの非存在下において、SC投与と比較して、ピーク血中濃度(Cmax)の上昇と、場合によってはバイオアベイラビリティの上昇がもたらされる(Bookbinder L.H.,et al,”A recombinant human enzyme for enhanced interstitial transport of therapeutics”,J.Control.Release 2006;114:230-241)。
【0128】
動物起源のヒアルロニダーゼ生成物は、主に他の共投与薬物の分散及び吸収を増大させるため、並びに皮下注入法(大容量での流体のSC注射/点滴)のために、60年以上にわたり臨床的に使用されている(Frost G.I.,”Recombinant human hyaluronidase(rHuPH20):an enabling platform for subcutaneous drug and fluid administration”,Expert Opinion on Drug Delivery,2007;4:427-440)。ヒアルロニダーゼの作用機序の詳細は、以下の文献に詳述されている:Duran-Reynolds F.,”A spreading factor in certain snake venoms and its relation to their mode of action”,CR Soc Biol Paris,1938;69-81;Chain E.,”A mucolytic enzyme in testes extracts”,Nature 1939;977-978;Weissmann B.,”The transglycosylative action of testicular hyaluronidase”,J.Biol.Chem.,1955;216:783-94;Tammi,R.,Saamanen,A.M.,Maibach,H.I.,Tamrni M.,”Degradation of newly synthesized high molecular mass hyaluronan in the epidermal and dermal compartments of human skin in organ culture”,J.Invest.Dermatol.1991;97:126-130;Laurent,U.B.G.,Dahl,L.B.,Reed,R.K.,”Catabolism of hyaluronan in rabbit skin takes place locally,in lymph nodes and liver”,Exp.Physiol.1991;76:695-703;Laurent,T.C.and Fraser,J.R.E.,”Degradation of Bioactive Substances:Physiology and Pathophysiology”,Henriksen,J.H.(Ed)CRC Press,Boca Raton,FL;1991.pp.249-265;Harris,E.N.,et al,”Endocytic function,glycosaminoglycan specificity,and antibody sensitivity of the recombinant human 190-kDa hyaluronan receptor for endocytosis(HARE)”,J.Biol.Chem.2004;279:36201-36209;Frost,G.I.,”Recombinant human hyaluronidase(rHuPH20):an enabling platform for subcutaneous drug and fluid administration”,Expert Opinion on Drug Delivery,2007;4:427-440。EU加盟国において承認されたヒアルロニダーゼ生成物には、Hylase(登録商標)「Dessau」及びHyalase(登録商標)が含まれる。米国において承認された動物起源のヒアルロニダーゼ生成物には、VitraseTM、HydaseTM、及びAmphadaseTMが含まれる。
【0129】
ヒアルロニダーゼ生成物の安全性及び有効性は広く確立された。同定された最も重大な安全性のリスクは過敏症及び/又はアレルゲン性であり、これは、動物由来の調製物の純度の不足に関連していると考えられる(Frost,G.I.,”Recombinant human hyaluronidase(rHuPH20):an enabling platform for subcutaneous drug and fluid administration”,Expert Opinion on Drug Delivery,2007;4:427-440)。動物由来のヒアルロニダーゼの承認された投与量に関して、英国、ドイツ国及び米国間で差があることに注意されたい。英国では、皮下又は筋肉内注射へのアジュバントとしての通常用量は、1500単位であり、注射に直接追加される。米国では、この目的で使用される通常用量は150単位である。皮下注入法では、ヒアルロニダーゼは、比較的大容量の流体の皮下投与に援用するために使用される。英国では、1500単位のヒアルロニダーゼは、通常、皮下使用のための各500から1000mlの流体と共に与えられる。米国では、皮下注入溶液1リットルにつき150単位が適正であると考えられている。ドイツ国では、150から300単位がこの目的のために適正であると考えられている。英国では、局所麻酔の拡散が、1500単位の追加により加速される。ドイツ国及び米国では、この目的のために150単位が適正であると考えられている。投与量の差にも関わらず(英国での投与量は米国の投与量の10倍大きい)、米国及び英国においてそれぞれ市販されている動物由来のヒアルロニダーゼ生成物の安全性プロファイルに明らかな差は報告されていない。2005年12月2日、Halozyme Therapeutics Inc.は、組み換えヒトヒアルロニダーゼ、rHuPH20(HYLENEXTM)の注射可能な製剤について、FDAから承認を受けた。FDAは、以下の条件のSC投与に関し、150単位の用量でのHYLENEXTMを承認した:
-注射される他の薬物の吸収及び分散を増大させるためのアジュバントとして
-皮下注入法のため
-放射線不透剤の再吸収を向上させるためのSC尿路造影の付加物として。
【0130】
その法規情報の一部として、rHuPH20は、以前に承認された動物由来のヒアルロニダーゼ調製物と同じ、注射される他の薬物の分散及び吸収を強化する特性を保持することが、但し改善された安全性プロファイルで、確立された。特に、組み換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)の使用は、動物由来のヒアルロニダーゼと比較して、動物の病原体による汚染と、伝染性の海綿状脳症の潜在的リスクを最小化する。
【0131】
可溶型ヒアロロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、その調製のための方法及び薬学的組成物におけるその使用は、国際公開第2004/078140号に記載されている。以下に概説する詳細な実験作業は、特許請求される本製剤が、驚くべきことに好ましい保管安定性を有し、保険局による承認のために必要なすべての要件を満たすことを示した。
【0132】
本発明による製剤中のヒアルロニダーゼ酵素は、例えば活性物質の吸収(透過エンハンサーとしてのその作用)を増大させることにより、抗PD-L1抗体の体循環への送達を強化すると考えられる。ヒアルロニダーゼ酵素はまた、SC間質組織の細胞外成分であるヒアルロナンの可逆的加水分解により皮下適用経路を介して、治療的抗PD-L1抗体の体循環への送達を増加させると考えられる。皮下組織中のヒアルロナンの加水分解は、SC組織の間質腔内のチャネルを一次的に開き、それにより治療的抗PD-L1抗体の体循環への送達を向上させる。加えて、投与は、ヒトの痛みの軽減と、容量由来のSC組織の膨張の低減を示す。
【0133】
ヒアルロニダーゼは、局所的に投与されると、その効果全体を局所的に有する。換言すれば、ヒアルロニダーゼは、不活性化され、数分で局所的に代謝されて、全身性の又は長期にわたる影響を有することが認められなかった。血流に入ったときヒアルロニダーゼが数分以内で急速に不活性化されることにより、異なるヒアルロニダーゼ生成物間に同等な体内分布研究を実施する可能性が現実的に排除される。ヒアルロニダーゼ生成物は遠隔部位で作用できないので、このような特性はまた、全体的な安全性の懸念のあらゆる可能性を最小化する。本発明によるすべてのヒアルロニダーゼ酵素の統一的特徴は、化学構造、種源、組織源、又は同じ種及び組織から供給された医療品のバッチの差に関係なく、ヒアルロナンを脱重合するそれらの能力である。これらは、異なる構造を有しているにも関わらずそれらの活性が同じ(力価を除く)であるという事実において珍しい。本発明の製剤によるヒアルロニダーゼ酵素は、本明細書に記載される安定した薬学的製剤中の抗PD-L1抗体の分子完全性に対して有害作用を有さないことを特徴とする。さらに、ヒアルロニダーゼ酵素は、抗PD-L1抗体の体循環への送達を調節するだけであり、全身に吸収された抗PD-L1抗体の治療効果を提供するか、又はそれに寄与する特性を保持しない。ヒアルロニダーゼ酵素は、全身的にバイオアベイラブルではなく、本発明による安定した薬学的製剤の推奨される保管条件で抗PD-L1抗体の分子完全性に悪影響を及ぼさない。したがって、ヒアルロニダーゼ酵素は、本発明による抗PD-L1抗体製剤中の添加物と考慮される。治療効果を発揮することはないため、ヒアルロニダーゼ酵素は、治療的に活性な抗PD-L1抗体とは別の薬学的形態の一構成物を表す。本発明による複数の適切なヒアルロニダーゼ酵素は、先行技術に既知である。いくつかの実施態様では、酵素は、ヒトヒアルロニダーゼ酵素、例えばrHuPH20として知られる酵素である。rHuPH20は、N-アセチルグルコサミンのCi位置とグルクロン酸のC4位置との間のβ-1,4結合の加水分解によりヒアルロナンを脱重合する中性及び酸活性β-1,4グリコシルヒドロラーゼのファミリーのメンバーである。ヒアルロナンは、皮下間質組織などの結合組織、及び臍帯及び硝子体液といった一部の特殊組織の細胞内基質に認められる多糖類である。ヒアルロナンの加水分解は、間質組織の粘性を一次的に低下させ、注射された液体又は局所的な濾出液若しくは滲出液の分散を促進し、したがってそれらの吸収を容易にする。ヒアルロニダーゼの効果は、局所的で、24から48時間以内に起こる組織ヒアルロナンの完全な再構成と可逆的である(Frost,G.I.,”Recombinant human hyaluronidase(rHuPH20):an enabling platform for subcutaneous drug and fluid administration”,Expert Opinion on Drug Delivery,2007;4:427-440)。ヒアルロナンの加水分解を通した結合組織の透過性の上昇は、共投与された分子の分散及び吸収を増大させるその能力について、ヒアルロニダーゼの有効性と相関している。
【0134】
ヒトゲノムは、複数のヒアルロニダーゼ遺伝子を含有する。PH20遺伝子産物だけが、生理的細胞外条件下で有効なヒアルロニダーゼ活性を保持して展着剤として作用し、酸活性ヒアルロニダーゼはこの特性を有さない。rHuPH20は、初めて且つ唯一の、治療的使用のために現在利用可能な組み換えヒトヒアルロニダーゼ酵素である。ヒトゲノムは、複数のヒアルロニダーゼ遺伝子を含有し;PH20遺伝子産物だけが生理的細胞外条件下で有効なヒアルロニダーゼ活性を保持し、展着剤として作用する。天然に存在するヒトPH20タンパク質は、原形質膜にそれを固定するカルボキシ末端のアミノ酸に結合する脂質アンカーを有する。Halozymeにより開発されたrHuPH20酵素は、脂質結合を担うカルボキシ末端にそのようなアミノ酸を欠くトランケートされた欠損株である。ウシ精巣調製物中に認められるタンパク質に類似した可溶型の中性pH-活性酵素を生じさせる。rHuPH20タンパク質は、分泌の過程においてN末端から除去される35アミノ酸シグナルペプチドで合成される。成熟rHuPH20タンパク質は、いくつかのウシヒアルロニダーゼ調製物中に認められるものとオルソロガスな真正のN末端アミノ酸配列を含有する。
【0135】
PH20ヒアルロニダーゼは、動物由来のPH20及び組み換えヒトrHuPH20を含め、N-アセチルグルコサミンのC1位置とグルクロン酸C4の位置との間のβ-1,4結合の加水分解により、ヒアルロナンを脱重合する。四糖は、最小の消化産物である(Weissmann,B.,”The transglycosylative action of testicular hyaluronidase”,J.Biol.Chem.,1955;216:783-94)。このN-アセチルグルコサミン/グルクロン酸構造は、組み換え生物学的生成物のN-結合グリカン中には認められず、したがってrHuPH20は、それを用いて製剤化された抗体のグリコシル化に影響を及ぼさないであろう。rHuPH20酵素自体は、モノクローナル抗体中に認められるものと同様のコア構造を有する分子1つあたり6個のN-結合グリカンを保持する。予想されるように、これらN-結合型構造は時間が経過しても変化せず、このことは、これらN-結合グリカン構造上にrHuPH20の酵素活性がないことを確認するものである。rHuPH20の短い半減期及びヒアルロナンの一定の合成により、組織上の酵素の作用は短く局所的なものになる。
【0136】
本発明による皮下製剤中の添加物であるヒアルロニダーゼ酵素は、組み換えDNA技術を使用することにより調製されうる。このようにして、確実に、常に同じタンパク質(同一のアミノ酸配列)が得られ、組織からの抽出中に共精製される夾雑タンパク質によって引き起こされるアレルギー反応が回避される。いくつかの実施態様では、本発明による製剤に使用されるヒアルロニダーゼ酵素は、ヒト酵素、例えばrHuPH20である。rHuPH20(HYLENEXTM)のアミノ酸配列は、周知であり、CAS登録番号757971-58-7の下に入手可能である。およその分子量は61kDaである(米国特許第7,767,429号も参照のこと)。
【0137】
天然源哺乳物ヒアルロニダーゼとヒト及び他の哺乳動物由来のPH-20 cDNAクローンとの間で複数の構造的及び機能的比較が実施された。PH-20遺伝子は、組み換え産物rHuPH20のために使用される遺伝子である;しかしながら組み換え医療品は、PH-20遺伝子によってコードされる完全なタンパク質の447アミノ酸切除型である。アミノ酸配列に関する構造類似性は、いずれの比較においても60%を上回ることは稀である。機能的比較は、rHuPH20の活性が、以前に承認されているヒアルロニダーゼ生成物の活性と極めて類似していることを示す。この情報は、ヒアルロニダーゼの起源に関係なく、過去50年間の臨床所見と一貫しており、ヒアルロニダーゼの単位の臨床安全性及び有効性は同等である。本発明による抗PD-L1抗体SC製剤におけるrHuPH20の使用は、より高い容量の医療品の投与を可能にし、アテゾリズマブなどの皮下投与される抗PD-L1抗体の体循環への吸収を高める可能性がある。
【0138】
少量の可溶型ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)を使用することにより治療用タンパク質及び抗体の皮下注射を容易にすることが提示された;国際公開第2006/091871号参照。このような可溶型ヒアルロニダーゼ糖タンパク質の付加(組み合わせ製剤として又は共投与による)により、治療薬の皮下組織への投与が容易になることが示された。細胞外空間においてヒアルロナンHAを素早く脱重合することにより、sHASEGPは間質の粘性を低下させ、それにより水伝導度が上昇し、より大きな容量を安全且つ快適に皮下組織中に投与することが可能になる。間質粘性の低下を通してsHASEGPにより誘導された水伝導度の上昇により、分散がより大きくなり、SC投与される治療薬の全身バイオアベイラビリティの増大が可能になる。
【0139】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載される製剤は、有効量の少なくとも1つのヒアルロニダーゼ酵素(例えばrHuPH20)を、例えば約1000U/mlから約5000U/mlの量で含む。いくつかの実施態様では、ヒアルロニダーゼ酵素(例えば、rHuPH20)は、製剤中に、約1000U/mlから約4000U/mlの濃度で存在する。いくつかの実施態様では、ヒアルロニダーゼ酵素(例えば、rHuPH20)は、製剤中に、約1000U/mlから約3000U/mlの濃度で存在する。いくつかの実施態様では、ヒアルロニダーゼ酵素(例えば、rHuPH20)は、製剤中に、約1000U/mlから約2000U/mlの濃度で存在する。いくつかの実施態様では、ヒアルロニダーゼ酵素(例えば、rHuPH20)は、製剤中に、約2000U/mlから約4000U/mlの濃度で存在する。いくつかの実施態様では、ヒアルロニダーゼ酵素(例えば、rHuPH20)は、製剤中に、約2000U/mlから約3000U/mlの濃度で存在する。いくつかの実施態様では、ヒアルロニダーゼ酵素(例えば、rHuPH20)は、製剤中に、約1500U/mlから約3000U/mlの濃度で存在する。いくつかの実施態様では、ヒアルロニダーゼ酵素(例えば、rHuPH20)は、製剤中に、約1500U/mlから約2500U/mlの濃度で存在する。いくつかの実施態様では、ヒアルロニダーゼ酵素(例えば、rHuPH20)は、製剤中に、約1500U/mlから約2000U/mlの濃度で存在する。いくつかの実施態様では、ヒアルロニダーゼ酵素(例えば、rHuPH20)は、製剤中に、約2000U/mlから約2500U/mlの濃度で存在する。いくつかの実施態様では、ヒアルロニダーゼ酵素(例えば、rHuPH20)は、製剤中に、約1750U/mlから約2250U/mlの濃度で存在する。いくつかの実施態様では、ヒアルロニダーゼ酵素(例えば、rHuPH20)は、製剤中に、約1900U/mlから約2100U/mlの濃度で存在する。いくつかの実施態様では、ヒアルロニダーゼ酵素(例えば、rHuPH20)は、製剤中に、約1950U/mlから約2050U/mlの濃度で存在する。いくつかの実施態様では、ヒアルロニダーゼ酵素(例えば、rHuPH20)は、製剤中に、約2000U/mlの濃度で存在する。いくつかの実施態様では、ヒアルロニダーゼ酵素(例えば、rHuPH20)は、製剤中に、1000U/mlから4000U/mlの濃度で存在する。いくつかの実施態様では、ヒアルロニダーゼ酵素(例えば、rHuPH20)は、製剤中に、1000U/mlから3000U/mlの濃度で存在する。いくつかの実施態様では、ヒアルロニダーゼ酵素(例えば、rHuPH20)は、製剤中に、1000U/mlから2000U/mlの濃度で存在する。いくつかの実施態様では、ヒアルロニダーゼ酵素(例えば、rHuPH20)は、製剤中に、2000U/mlから4000U/mlの濃度で存在する。いくつかの実施態様では、ヒアルロニダーゼ酵素(例えば、rHuPH20)は、製剤中に、2000U/mlから3000U/mlの濃度で存在する。いくつかの実施態様では、ヒアルロニダーゼ酵素(例えば、rHuPH20)は、製剤中に、1500U/mlから3000U/mlの濃度で存在する。いくつかの実施態様では、ヒアルロニダーゼ酵素(例えば、rHuPH20)は、製剤中に、1500U/mlから2500U/mlの濃度で存在する。いくつかの実施態様では、ヒアルロニダーゼ酵素(例えば、rHuPH20)は、製剤中に、1500U/mlから2000U/mlの濃度で存在する。いくつかの実施態様では、ヒアルロニダーゼ酵素(例えば、rHuPH20)は、製剤中に、2000U/mlから2500U/mlの濃度で存在する。いくつかの実施態様では、ヒアルロニダーゼ酵素(例えば、rHuPH20)は、製剤中に、1750U/mlから2250U/mlの濃度で存在する。いくつかの実施態様では、ヒアルロニダーゼ酵素(例えば、rHuPH20)は、製剤中に、1900U/mlから2100U/mlの濃度で存在する。いくつかの実施態様では、ヒアルロニダーゼ酵素(例えば、rHuPH20)は、製剤中に、1950U/mlから約2050U/mlの濃度で存在する。いくつかの実施態様では、ヒアルロニダーゼ酵素(例えば、rHuPH20)は、製剤中に、2000U/mlの濃度で存在する。
【0140】
ヒアルロニダーゼ酵素を含む本発明の液体薬学的製剤は、皮下注射に特に適している。当業者であれば、抗PD-L1抗体及びヒアルロニダーゼ酵素を含むこのような製剤が、単一の組み合わせ製剤の形態での投与のため又は代替的には、皮下注射の直前に混合することができる2つの別々の製剤の形態での投与のために提供されうることを明確に理解する。代替的には、抗PD-L1抗体及びヒアルロニダーゼ酵素は、身体の異なる部位、例えば互いに直接隣接する部位に、別々の注射として投与することができる。本発明による製剤中に存在する治療剤を、例えばまずヒアルロニダーゼ酵素を、続いて抗PD-L1抗体製剤を注射することによる連続注入として、注射することも可能である。これら注射は、逆の順序で、即ちまず抗PD-L1抗体製剤を注射し、続いてヒアルロニダーゼ酵素を注射することにより、実施することもできる。抗PD-L1抗体及びヒアルロニダーゼ酵素が別々の注射として投与される場合、それらタンパク質の一方又は両方は、従属請求項に指定される濃度の緩衝剤、1つ又は複数の安定剤及び非イオン性界面活性剤と共に提供される必要があるが、但しヒアルロニダーゼ酵素は除く。この場合ヒアルロニダーゼ酵素は、例えばpH約6.5、100から150mMのNaCl及び0.01から0.1%(w/v)のポリソルベート20又はポリソルベート80のL-ヒスチジン/HClバッファー中において提供することができる。一実施態様では、抗PD-L1抗体は、本明細書に指定される濃度の緩衝剤、1つ又は複数の安定剤及び非イオン性界面活性剤と共に提供される。
【0141】
上記のように、ヒアルロニダーゼ酵素は、抗PD-L1抗体製剤中のさらなる添加物と考慮されうる。ヒアルロニダーゼ酵素は、抗PD-L1抗体製剤の製造時に抗PD-L1抗体製剤に加えても、注射の直前に加えてもよい。代替的には、ヒアルロニダーゼ酵素は、別個の注射として提供されうる。別個の注射として提供される場合、ヒアルロニダーゼ酵素は、別個のバイアル中において提供することができ、それは皮下注射が行われる前に適切な希釈剤で再構成されなければならない凍結乾燥形態であるか、又は製造者により提供される液体製剤でありうる。抗PD-L1抗体製剤とヒアルロニダーゼ酵素とは、別々のエンティティとして調達することができるか、又は両方の注射成分とそれらを皮下投与するための適切な説明書とを含むキットとして提供することもできる。それら製剤の一方又は両方の再構成及び/又は投与の適切な説明書を提供することもできる。
【0142】
したがって本発明は、両方の注射成分とそれらを皮下投与するための適切な説明書とを含むキットの形態で、薬学的に活性の抗PD-L1抗体の高濃度且つ安定した薬学的製剤又はこのような抗体と適切な量の少なくとも1つのヒアルロニダーゼ酵素との混合物からなる薬学的組成物も提供する。
【0143】
本発明のさらなる態様は、本発明による液体薬学的製剤を含む注射装置に関する。このような製剤は、本明細書に概説した薬学的に活性の抗PD-L1抗体又はこのような抗体分子と適切な添加物との混合物からなってよく、加えて、組み合わせ製剤として又は共投与される別個の製剤としてヒアルロニダーゼ酵素を含みうる。
【0144】
いくつかの実施態様において本明細書に提供されるのは、約100g/Lから約150g/Lの濃度の本明細書に記載されるモノクローナル抗PD-L1抗体、約15mMから約25mMの濃度のヒスチジンアセテート、約200mMから約280mMの濃度のスクロース、約0.04%(w/v)から約0.08%(w/v)の濃度のポリソルベート、約5mMから約15mMの濃度のメチオニン、約1000U/mlから約3000U/mlの濃度のヒアルロニダーゼ酵素を含む、pH約5.6から約6.0の液体薬学的製剤である。いくつかの実施態様では、製剤は無菌である。いくつかの実施態様では、製剤は、対象に投与するために適している。いくつかの実施態様では、製剤は、皮下投与用である。
【0145】
いくつかの実施態様において本明細書に提供されるのは、約125g/Lの濃度の本明細書に記載されるモノクローナル抗PD-L1抗体、約20mMの濃度のヒスチジンアセテート、約240mMの濃度のスクロース、約0.06%(w/v)の濃度のポリソルベート20、約10mMの濃度のメチオニン、約2000の濃度のrHuPH20、及び約5.8のpHを含む液体薬学的製剤である。いくつかの実施態様では、製剤は無菌である。いくつかの実施態様では、製剤は、対象に投与するために適している。いくつかの実施態様では、製剤は、皮下投与用である。
【0146】
いくつかの実施態様において本明細書に提供されるのは、約100g/Lから約150g/Lの濃度の本明細書に記載されるモノクローナル抗PD-L1抗体、約15mMから約25mMの濃度のヒスチジンアセテート、約200mMから約280mMの濃度のスクロース、約0.01%(w/v)から約0.03%(w/v)の濃度のポリソルベート、及び約5.3から約5.7のpHを含む液体薬学的製剤である。いくつかの実施態様では、製剤は、対象に投与される前に、ヒアルロニダーゼ酵素と混合される。いくつかの実施態様では、混合物中のヒアルロニダーゼ酵素の濃度は、約1000U/mlから約3000U/mlである。いくつかの実施態様では、製剤は無菌である。いくつかの実施態様では、製剤は、対象に投与するために適している。いくつかの実施態様では、製剤は、皮下投与用である。
【0147】
いくつかの実施態様において本明細書に提供されるのは、約125g/Lの濃度の本明細書に記載されるモノクローナル抗PD-L1抗体、約20mMの濃度のヒスチジンアセテート、約240mMの濃度のスクロース、約0.02%(w/v)の濃度のポリソルベート20、及び約5.5のpHを含む液体薬学的製剤である。いくつかの実施態様では、製剤は、対象に投与される前にrHuPH20と混合される。いくつかの実施態様では、rHuPH20の混合物中濃度は約2000U/である。いくつかの実施態様では、製剤は無菌である。いくつかの実施態様では、製剤は、対象に投与するために適している。いくつかの実施態様では、製剤は、皮下投与用である。
【0148】
一実施態様では、製剤は、上記で定義された薬剤(例えば、抗体、バッファー、スクロース、及び/又は界面活性剤)を含み、ベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、クロロブタノール、及びベンゼトニウムClといった1つ又は複数の防腐剤を本質的に含まない。別の実施態様では、防腐剤が製剤中に含まれてもよく、具体的には、製剤は、複数回投与量の製剤である。防腐剤の濃度は、約0.1%から約2%の範囲、例えば約0.5%から約1%の範囲とすることができる。1つ又は複数の他の薬学的に許容される担体、賦形剤、又は安定剤、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に記載されるものが製剤中に含まれていてよいが、但し、それらは製剤の所望の特性に悪影響を及ぼさないことを条件とする。許容される担体、賦形剤又は安定剤は、用いられる投与量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、以下を含む:追加の緩衝剤;共溶媒;アスコルビン酸とメチオニンとを含む抗酸化剤;EDTAなどのキレート剤;金属錯体(例えばZn-タンパク質複合体);ポリエステルなどの生分解性ポリマー、及び/又は塩形成対イオン。本明細書の例示的な薬学的に許容される担体には、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)などの介在性薬物分散剤、例えばrHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International社)などのヒト可溶性PH20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質がさらに含まれる。rHuPH20を含む、一部の例示的なsHASEGP及び使用方法は、米国特許出願公開第2005/0260186号及び同第2006/0104968号に記載されている。一態様では、sHASEGPは、1つ又は複数の追加のグリコサミノグリカナーゼ、例えばコンドロイチナーゼと組み合わせられる。
【0149】
本明細書の製剤は、治療される特定の適応症のために必要な2つ以上のタンパク質、例えば、他のタンパク質に悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものも含有しうる。例えば、抗体は、それが抗PD-L1である場合、別の薬剤(例えば、化学療法剤、及び抗腫瘍性剤)と組み合わせてもよい。
【0150】
いくつかの実施態様では、製剤中の抗体の物理的安定性、化学的安定性、又は生物活性が評価又は測定される。本明細書の実施例に記載される当技術分野で既知の任意の方法を、製剤中の抗体の安定性及び生物活性を評価するために使用されてよい。例えば、製剤中の抗体の安定性は、限定されないが、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC又はSE-HPLC)、画像化キャピラリー等電点電気泳動法(ICIEF)、ペプチドマッピング、小容量光遮蔽法(HIAC)アッセイ、及びキャピラリー電気泳動(CE)技術、例えばCE-ドデシル硫酸ナトリウム(CE-SDS)及びCE-グリカン分析により測定することができる。いくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、-20℃で、少なくとも約6カ月、少なくとも約8カ月、少なくとも約10カ月、少なくとも約12カ月、少なくとも約14カ月、少なくとも約16カ月、少なくとも約18カ月、少なくとも約20カ月、少なくとも約21カ月、少なくとも約22カ月、少なくとも約23カ月、少なくとも約24カ月、少なくとも約3年、又は少なくとも約4年間安定している。いくつかの実施態様では、製剤中の抗体は、2℃から8℃(例えば、5℃)で、少なくとも約6カ月、少なくとも約8カ月、少なくとも約10カ月、少なくとも約12カ月、少なくとも約14カ月、少なくとも約16カ月、少なくとも約18カ月、少なくとも約20カ月、少なくとも約21カ月、少なくとも約22カ月、少なくとも約23カ月、又は少なくとも約24カ月間安定している。いくつかの実施態様では、抗体(即ち、抗体モノマー)の安定性は、保管後の製剤において、サイズ排除クロマトグラフィーにより測定される。いくつかの実施態様では、抗体(即ち、抗体モノマー)の安定性は、保管後の製剤において、画像化キャピラリー等電点電気泳動法により測定される。いくつかの実施態様では、総タンパク質(例えば、抗体及び凝集物を含む)と比較した場合の製剤中の抗体モノマーのパーセントは、-20℃で少なくとも約6カ月、少なくとも約12カ月、少なくとも約18カ月、又は少なくとも約24カ月保管した後で、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%又は約95%を上回る。いくつかの実施態様では、(例えば、抗体及び凝集物を含む)と比較した場合の製剤中の抗体モノマーのパーセントは、2℃から8℃(例えば、5℃)で少なくとも約6カ月、少なくとも約12カ月、少なくとも約18カ月、又は少なくとも約24カ月保管した後で、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%又は約95%を上回る。いくつかの実施態様では、(例えば、抗体及び凝集物を含む)と比較した場合の製剤中の抗体モノマーのパーセントは、室温(例えば、約15℃から25℃)で、少なくとも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約6時間、少なくとも約8時間、少なくとも約10時間、少なくとも約12時間、少なくとも約14時間、少なくとも約16時間、少なくとも約18時間、少なくとも約20時間、又は少なくとも約24時間振盪した後で、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%又は約95%を上回る。いくつかの実施態様では、製剤中の総凝集物(例えば、高分子量種及び低分子量種)のパーセントは、-20℃で少なくとも約6カ月、少なくとも約12カ月、少なくとも約18カ月、又は少なくとも約24カ月保管した後で、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、又は約10%のいずれかを下回る。いくつかの実施態様では、製剤中の総凝集物(例えば、高分子量種及び低分子量種)のパーセントは、2℃から8℃(例えば、5℃)で少なくとも約6カ月、少なくとも約12カ月、少なくとも約18カ月、又は少なくとも約24カ月保管した後で、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、又は約10%のいずれかを下回る。いくつかの実施態様では、製剤中の総凝集物(例えば、高分子量種及び低分子量種)のパーセントは、室温(例えば、約15℃から25℃)で少なくとも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約6時間、少なくとも約8時間、少なくとも約10時間、少なくとも約12時間、少なくとも約14時間、少なくとも約16時間、少なくとも約18時間、少なくとも約20時間、又は少なくとも約24時間振盪した後で、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、又は約10%のいずれかを下回る。本明細書の実施態様のいずれにおいても、安定した製剤は、ガラスバイアル、金属合金の容器、又は静注用(IV)バッグ中で保管することができる。いくつかの実施態様では、金属合金は、316Lスレンレス鋼又はハステロイである。
【0151】
in vivo投与に使用される製剤は、無菌であるべきである。これは、製剤の調製前又は調製後の無菌濾過膜を通す濾過によって容易に達成される。
【0152】
III.抗体製剤の治療及び投与の方法
製剤は、抗体を用いた治療を必要とする哺乳動物、例えばヒトに対して、静脈内投与(ボーラスとして又は一定期間にわたる連続的注入による)、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑膜内、髄腔内、口腔内、局所又は吸入経路による投与などの既知の方法に従って投与される。一実施態様では、製剤は、静脈内投与により哺乳動物に投与される。このような目的のために、製剤は、例えば、シリンジを使用して又は静脈ラインを介して注射されうる。一実施態様では、製剤は、皮下投与により哺乳動物に投与される。
【0153】
抗体の適切な投与量(「治療的有効量」)は、例えば、治療される状態、状態の重症度及び経過、抗体が予防目的で投与されるか又は治療目的で投与されるか、以前の療法、患者の病歴及び抗体への応答、使用される抗体の種類、並びに担当医の裁量に依存するだろう。抗体は、一度に又は一連の治療にわたって患者に適切に投与され、診断時から任意の時点で患者に投与されうる。抗体は、唯一の治療として又は問題の状態の治療に有用な他の薬物若しくは療法とともに投与されうる。
【0154】
一般的な提案として、ヒトに投与される抗体の治療的有効量は、単回投与であるか複数回投与であるかに関わらず、約0.01から約50mg/kg/患者体重kgの範囲であろう。いくつかの実施態様では、使用される抗体は、例えば、毎日約0.01から約45mg/kg、約0.01から約40mg/kg、約0.01から約35mg/kg、約0.01から約30mg/kg、約0.01から約25mg/kg、約0.01から約20mg/kg、約0.01から約15mg/kg、約0.01から約10mg/kg、約0.01から約5mg/kg、又は約0.01から約1mg/kgである。いくつかの実施態様では、抗体は、15mg/kgで投与される。しかしながら、他の投薬レジメンが有用でありうる。一実施態様では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体は、21日間サイクルの第1日目に、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg又は約1400mg の用量でヒトに投与される。用量は、点滴など、単回用量又は複数回用量(例えば、2回又は3回用量)で投与されてうる。併用療法において投与される抗体の用量は、単剤治療と比較して減らされる場合がある。この治療の進行は、従来の技術によって、容易にモニタリングされる。
【0155】
本明細書に記載される抗PD-L1抗体を含有する製剤は、様々なin vitro及びin vivoでの診断的及び治療的用途に使用することができる。例えば、抗体を含有する製剤は、疾患又は障害(例えば、PD-1とPD-L1との相互作用によって媒介される疾患又は障害)を治療するために、対象又は個体に投与されうる。
【0156】
いくつかの実施態様では、疾患又は障害はがんである。いくつかの実施態様では、がんは、局所進行性又は転移性である。いくつかの実施態様では、がんは、固形腫瘍、血液のがん、膀胱がん、脳のがん、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、胃(gastric)がん、神経膠腫、頭部がん、白血病、肝がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がん)、リンパ腫、骨髄腫、頚部がん、卵巣がん、黒色腫、膵臓がん、腎がん、唾液腺がん、胃(stomach)がん、胸腺細網がん、甲状腺がん、及び頭頚部の扁平上皮癌からなる群から選択される。いくつかの実施態様では、がんは、非小細胞肺がんである。いくつかの実施態様では、がんは、小細胞肺がんである。いくつかの実施態様では、がんは、尿路上皮癌である。いくつかの実施態様では、がんは、乳がんである。いくつかの実施態様では、乳がんは、トリプルネガティブ乳がんである。いくつかの実施態様では、治療される対象又は個体は、PD-L1陽性がん細胞(例えば、IHCにより検出される)を有する。
【0157】
いくつかの実施態様では、疾患又は障害は、感染症である。いくつかの実施態様では、感染症は、持続感染である。いくつかの実施態様では、感染症は、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染、蠕虫感染症、又は原虫感染症である。いくつかの実施態様では、ウイルス感染は、サイトメガロウイルスエプスタイン・バーウイルス、B型肝炎、C型肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、インフルエンザ、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトTリンパ球向性ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、及び/又はライノウイルスからなる群から選択される。いくつかの実施態様では、細菌感染は、ヘリコバクター属種、マイコバクテリウム属種、ポルフィロモナス属種、クラミジア属種、サルモネラ属種、リステリア属種、連鎖状球菌種、ヘモフィルス属種、ナイセリア属種、クレブシエラ属種、ボレリア属種、バクテロイデス属種、及びトレポネーマ属種からなる群から選択される。いくつかの実施態様では、原虫感染症は、リーシュマニア属種、熱帯熱マラリア原虫、住血吸虫属種、トキソプラズマ属種、トリパノソーマ属種、及び条虫属種からなる群から選択される。いくつかの実施態様では、真菌感染は、ブラストミセス症、コクシジオイデス症、ヒストプラズマ症、カンジダ症、クリプトコックス症、アスペルギルス症、ムコール症及びニューモシスチス症からなる群から選択される。
【0158】
いくつかの実施態様では、疾患又は障害は、炎症性疾患である。いくつかの実施態様では、炎症性疾患は、急性散在性脳脊髄炎、アディソン病、アルツハイマー病、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、関節炎、ベーチェット病、ベルジェ病、水疱性類天疱瘡、セリアック病、シャーガス病、胆管炎、クローン病、皮膚筋炎、1型糖尿病、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、移植片対宿主病、グレーブス病、ギランバレー症候群、橋本病、蕁麻疹、高IgE症候群、特発性血小板減少性紫斑病、紅斑性狼瘡、ループス腎炎、多発性硬化症、重症筋無力症、臓器移植片拒絶反応、パーキンソン病、天疱瘡、悪性貧血、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、レイノー症候群、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、側頭動脈炎、甲状腺炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、脈管炎、及びウエゲナー肉芽腫症からなる群から選択される。
【0159】
いくつかの実施態様では、抗体を含有する製剤は、疾患又は障害を治療するために、別の治療剤と併せて対象又は個体に投与されうる。例えば、がんを治療するために、本明細書に記載される抗PD-L1抗体製剤は、別の抗がん治療(例えば、化学療法又は異なる抗体治療)と併せて投与されうる。
【0160】
IV.製造品又はキット
本発明の他の実施態様では、本発明の液体薬学的製剤を保持する容器を備える製造品又はキットが提供され、任意選択的にその使用説明書を提供する。適切な容器には、例えば、ボトル、バイアル、袋、及びシリンジが含まれる。容器は、ガラス、プラスチック(ポリ塩化ビニル若しくはポリオレフィンなど)、又は金属合金(ステンレス鋼若しくはハステロイなど)といった様々な材料から形成されうる。例示的な容器は、300ccの金属合金容器(例えば、-20oCでの保管用)である。別の例示的容器は、10-50ccのガラスバイアル(例えば、2-8℃での保管用)でありうる。例えば、容器は、10cc、15cc、20cc、又は50ccのガラスバイアルでもよい。容器は製剤を保持し、容器の上又は容器に関連付けられたラベルは使用の説明を表示することができる。製造品は、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用に関する説明を有する添付文書を含む、商業的観点及び使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含みうる。いくつかの実施態様では、製造品は、1つ又は複数の別の薬剤(例えば、化学療法剤及び抗新生物薬)をさらに含む。1つ又は複数の薬剤に適した容器には、例えば、ボトル、バイアル、袋、及びシリンジが含まれる。
【0161】
本明細書は、当業者が本発明を実施することを可能にするために十分なものであるとみなされる。本明細書に示されて説明されるもの以外に、本発明の様々な修正が、前述の記載から当業者には明らかであり、それらは特許請求の範囲に含まれる。本明細書に引用されるすべての公報、特許、及び特許出願は、あらゆる目的のために参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。
【0162】
本発明は、以下の実施例を参照することによってより十分に理解されるであろう。しかしながら、実施例は、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載される実施例及び実施態様が例示のみを目的とすること、及びそれを考慮して様々な修正又は変更が当業者に示唆され、それらが本出願の精神及び範囲と、特許請求の範囲内に含まれるべきであることが理解されよう。
【実施例】
【0163】
実施例1:原体(DS)製剤の安定性
DS試験のため、製剤を、スレンレス鋼のミニ缶に充填し、適切な保管条件に置いて、アテゾリズマブの凍結貯蔵を評価し、安定性を促進した。試験用のDSを製剤化するために、アテゾリズマブの限外濾過ダイアフィルトレーションプールを適切な緩衝系(例えばヒスチジンアセテート、ヒスチジン塩酸塩、アルギニンを含むヒスチジンアセテート)へと緩衝交換し、次いでポリソルベート20、及びメチオニンを限外濾過ダイアフィルトレーション材料に加え、DSを製剤化した。
【0164】
複数回の凍結融解サイクル後のDS安定性
図1A-1Cは、複数回の凍結融解サイクル後の様々なDS製剤の、高分子量種のレベル(HMWS)(
図1A)、イオン交換クロマトグラフィー(IEC)の主ピークのパーセンテージ(
図1B)、及び非還元キャピラリー電気泳動-SDS(NR CE-SDS)のプレピーク合計(
図1C)を示している。すべての製剤は、150mg/ml又は125mg/mlのアテゾリズマブ(図中、150mg又は125mgと示される)、20mMのヒスチジンアセテート(HA)又はヒスチジン塩酸塩(HCl)、10mMのメチオニン、及び0.06%(w/v)のポリソルベート20を含んでいた。別途記載のない限り、すべての製剤は、pH5.5であった。低いスクロース濃度(例えば100mM)を含有する製剤は、高いタンパク質濃度での複数回の凍結融解サイクルを通して安定性を維持するためには不十分であった。これら実験の結果として、5回の凍結/融解(F/T)サイクルをサポートするために、ヒスチジンアセテート又はヒスチジン塩酸塩から構成される製剤に240mMのスクロース濃度が選択された。
【0165】
25℃でのDS安定性
図2A-2Cは、25℃で1カ月後までの、様々なDS製剤の酸性種のレベル(
図2A)、塩基性種(
図2B)及びHMWS(
図2C)を示している。すべての製剤は、125mg/mlのアテゾリズマブ(図中、125mgと示される)、20mMのヒスチジンアセテート(HA)又はヒスチジン塩酸塩(HCl)、10mMのメチオニン、及び0.06%(w/v)のポリソルベート20を含んでいた。IECは、pH5.5の製剤において、より低いパーセンテージの酸性と、より高いパーセンテージの塩基性を示した。
【0166】
実施例2:医療品(DP)製剤の安定性
DP安定性試験のために、製剤を、ガラスバイアルに充填し、適切な保管条件に置いて、異なる緩衝系及び添加物におけるアテゾリズマブの安定性を評価した。製剤化するために、アテゾリズマブの限外濾過ダイアフィルトレーションプールを、適切な緩衝系(例えばヒスチジンアセテート、ヒスチジン塩酸塩、アルギニンを含むヒスチジンアセテート)へと緩衝交換し、次いでポリソルベート20、メチオニン及び組み換えヒトヒアルロニダーゼを限外濾過ダイアフィルトレーション材料に加え、DPを製剤化した。
【0167】
25℃でのDP安定性
図3A-3Bは、25℃で3カ月後までのDP製剤の、HMWSのレベル(
図3A)及びSECの主ピークのパーセンテージ(
図3B)を示している。すべての製剤は、125mg/mlのアテゾリズマブ(図中、125mgと示される)、20mMのヒスチジンアセテート又はヒスチジン塩酸塩、240mMのスクロース、10mMのメチオニン、0.06%のポリソルベート20、及び2000U/mlの組み換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)を含んでいた。pH5.8のヒスチジンアセテートを含む製剤は、他の2つの製剤と比較して、より高いSECの主ピークのパーセンテージを有していた(
図3B)。pH5.5のヒスチジン塩酸塩を含む製剤は、他の2つの製剤と比較して、より高いパーセンテージのHMWSを有していた(
図3A)。全体として、ヒスチジンアセテート製剤は、ヒスチジン塩酸塩製剤と比較したとき、SECによる分解がやや遅かった。
【0168】
図4A-4Bは、25℃で3カ月後までのDP製剤における、酸性種のレベル(
図4A)及び塩基性種のレベル(
図4B)を示している。すべての製剤は、125mg/mlのアテゾリズマブ(図中、125mgと示される)、20mMのヒスチジンアセテート又はヒスチジン塩酸塩、240mMのスクロース、10mMのメチオニン、0.06%のポリソルベート20、及び2000U/mlの組み換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)を含んでいた。全体として、3つすべての製剤間のIECの主ピーク分解率は同様であった。しかしながら、酸性種及び塩基性種の形成は、3つの製剤間で異なっていた。pH5.8のヒスチジンアセテートを含む製剤は、他の2つの製剤と比較して、より低いパーセンテージの塩基性種を有していた(
図4B)。ヒスチジンアセテートを含む製剤は、ヒスチジン塩酸塩を含む製剤と比較して、より高いパーセンテージの酸性種を有していた(
図4A)。
【0169】
図5A-5Bは、25℃で3カ月後までの、DP製剤中のプレピーク(
図5A)とNR CE-SDSの主ピーク(
図5B)のパーセンテージを示している。すべての製剤は、125mg/mlのアテゾリズマブ(図中、125mgと示される)、20mMのヒスチジンアセテート又はヒスチジン塩酸塩、240mMのスクロース、10mMのメチオニン、0.06%のポリソルベート20、及び2000U/mlの組み換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)を含んでいた。
【0170】
40℃でのDP安定性
図6A-6Cは、40℃で1カ月後までの、DP製剤中のHMWSのレベル(
図6A)、SECの主ピークのパーセンテージ(
図6B)、及びNR CE-SDSプレピーク合計(
図6C)を示している。すべての製剤は、150mg/ml又は125mg/mlのアテゾリズマブ(図中、150mg又は125mgと示される)、200-240mMのスクロース、10mMのメチオニン、0.06%のポリソルベート20、及び2000U/mlの組み換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)を含んでいた。125mg/mlのアテゾリズマブ及びヒスチジンアセテートを含む製剤は、他の製剤より少ないHMWS(
図6A)、高い主ピークのパーセンテージ(
図6B)、及び低いNR-CE SDSプレピークの合計(
図6C)を有していた。タンパク質濃度の上昇と共に、HMWSも増大した。pHの観点からは、pH(例えば5.8)が高いほどHMWSの形成と断片化が減少した。アルギニンの付加も、HMWSの増大に寄与した。アルギニンは溶解度を上昇させうるが、アテゾリズマブの物理的安定性(例えばHMWSの増大)を維持することはできなかった。
【0171】
図7A-7Cは、40℃で1カ月後までの、DP製剤中の酸性種のレベル(
図7A)、塩基性種のレベル(
図7B)、及びIECの主ピークのパーセンテージ(
図7C)を示している。すべての製剤は、150mg/ml又は125mg/mlのアテゾリズマブ(図中、150mg又は125mgと示される)、200-240mMのスクロース、10mMのメチオニン、0.06%のポリソルベート20、及び2000U/mlの組み換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)を含んでいた。ヒスチジンアセテートバッファーを含む製剤は、ヒスチジン塩酸塩バッファー又はヒスチジンアセテート + アルギニンバッファーを含む製剤と比較して、より高レベルの酸性種を有していた(
図7A)。pH5.8の125mg/mlのアテゾリズマブ及びヒスチジンアセテートを含む製剤は、他の製剤と比較して、より低いレベルの塩基性種を有していた(
図7B)。
【0172】
提示された製品安定性の結果に基づいて、pH5.8の125mg/mlのアテゾリズマブ及びヒスチジンアセテートを含む製剤が、アテゾリズマブの製剤化のために選択された。
【0173】
実施例3:ポリソルベート20の安定性
図8A-8Bは、様々なDP製剤中の最大3カ月間の40℃(
図8A)及び25℃(
図8B)でのポリソルベート20の安定性を示している。すべての製剤は、125mg/mlのアテゾリズマブ(図中、125mgと示される)、20mMのヒスチジンアセテート又はヒスチジン塩酸塩、240mMのスクロース、10mMのメチオニン、0.06%のポリソルベート20、及び2000U/mlの組み換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)を含んでいた。ポリソルベート20は、他の2つの製剤と比較したとき、3カ月後、40℃及び25℃の両方で、ヒスチジンアセテートを含むpH5.8の製剤中により少ない分解を示した。
【0174】
上述した25℃での実験のデータを使用して、25℃での6カ月後のポリソルベート20損失の理論的量を計算した。以下の表に示すように、ポリソルベート20は、他の2つの製剤と比較して、ヒスチジンアセテートを含むpH5.8の製剤中において、6カ月後により少ない分解を示すと予想される。
【0175】
アテゾリズマブの製品安定性に加えて、ヒスチジンアセテートから構成されるpH5.8の製剤は、最も効果的にポリソルベート20の安定性を維持した。
【0176】
実施例4:rHuPH20の活性
図9A-9Bは、25℃で最大3カ月間の、様々なDP製剤を用いたrHuPH20活性アッセイを示している。すべての製剤は、150mg/ml又は125mg/mlのアテゾリズマブ(図中、150mg又は125mgと示される)、20mMのヒスチジンアセテート又はヒスチジン塩酸塩、240mMのスクロース、10mMのメチオニン、0.06%のポリソルベート20、及び2000U/mlの組み換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)を含んでいた。pH5.8のヒスチジンアセテートを含む製剤は、pH5.5のヒスチジンアセテートを含む製剤より高いレベルにrHuPH20活性を維持した。pHの上昇は、25CでのrHuPH20の安定性も上昇させた。ヒスチジン塩酸塩から構成される製剤は、促進条件において、他の製剤と比較したときにrHuPH20のよりよい安定性を提供した(
図9B)が、ヒスチジン塩酸塩はアテゾリズマブに適さなかった。ヒスチジンアセテートから構成される製剤について、促進条件でrHuPH20活性の若干の低下が観察されたが、これは5℃での保管には観察されなかった。結果として、ヒスチジンアセテートから構成されるpH5.8の製剤が、アテゾリズマブのために選択された。
【0177】
図10A-10Bは、24時間振盪された、異なる濃度のポリソルベートを含む製剤中のrHuPH20活性を示している。室温での振盪下において、ポリソルベートの濃度が高いほど、rHuPH20活性のレベルが高く維持された。振盪によるrHuPH20の損失を防ぐために、最低0.03%(w/v)のポリソルベート20が必要である。ポリソルベート20の放出基準及び貯蔵寿命の間に可能なポリソルベートの分解を考慮して、0.06%(w/v)というポリソルベート20のレベルが製剤のために選択された。
【0178】
実施例5:医療品(DP)製剤の粘性
図11は、5℃と25℃との間の温度での様々なDP製剤の粘性を示している。すべての製剤は、127-128mg/mlのアテゾリズマブ、20mMのヒスチジンアセテート又はヒスチジン塩酸塩、240mMのスクロース、10mMのメチオニン、0.06%のポリソルベート20、及び2000U/mlの組み換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)を含んでいた。ヒスチジン塩酸塩を含む製剤は、評価されたすべての温度で最も高い粘性を有していた。
【0179】
これら実施例に記載された製剤のスクリーニングに基づいて、125mg/mlのアテゾリズマブ、20mMのヒスチジンアセテート、240mMのスクロース、10mMのメチオニン、0.06%のポリソルベート20、2000U/mlの組み換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)を含むpH5.8のDP製剤が、皮下投与用のアテゾリズマブ製剤のために選択された。
【配列表】
【国際調査報告】