(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-07
(54)【発明の名称】低分子量ポリテトラフルオロエチレン微粉末を調製するための押出プロセス
(51)【国際特許分類】
C08J 3/12 20060101AFI20230131BHJP
C08L 27/18 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
C08J3/12 A CEW
C08L27/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516620
(86)(22)【出願日】2020-09-19
(85)【翻訳文提出日】2022-05-12
(86)【国際出願番号】 IB2020058754
(87)【国際公開番号】W WO2021053628
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】201911037711
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522100682
【氏名又は名称】グジャラート フルオロケミカルズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】チャウハン ラジーヴ
(72)【発明者】
【氏名】カプール ディーパク
(72)【発明者】
【氏名】バーン サンジャイ
(72)【発明者】
【氏名】ソニ ナヴィン
(72)【発明者】
【氏名】パワール アモル
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA24
4F070AB22
4F070AB23
4F070AB24
4F070AB26
4F070DA05
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4J002BD151
4J002GB00
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4J002GH01
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4J002GM00
(57)【要約】
本発明は、低分子量PTFE微粉末を調製するための押出プロセスに関し、PTFE組成物を押出機に導入するステップと、押出機に熱処理を施すステップと、PTFE組成物を押出機で押し出して、熱と剪断力により分子量を低下させるステップと、ペレタイザーの中で、冷却して、ペレット化してPTFEの顆粒を形成するステップと、PTFEの顆粒をミリング法により粒度を小さくして、低分子量PTFE微粉末を形成するステップと、を含む。また、本発明は、高分子量PTFEを分解して低分子量ポリテトラフルオロエチレン微粉末を製造するための押出プロセスに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低分子量PTFE微粉末を調製するための押出プロセスであって、
a.PTFEフィード材料を導入するステップと、
b.前記押出プロセスの間に熱及び剪断力を加えるステップと、
c.熱と剪断力を使用してポリマーを分解するためにPTFEフィードを押し出し、異なる溶融粘度の低分子量PTFEを取得するステップと、
d.ペレタイザーの中で冷却し、ペレット化してPTFEの顆粒を形成するステップと、
e.ミリング法によりPTFE微粉末顆粒の粒径を小さくして、低分子量PTFEを製造するステップと、
を含む、押出プロセス。
【請求項2】
低分子量PTFE微粉末は、高分子PTFEの分解によって製造される、請求項1に記載の押出プロセス。
【請求項3】
前記フィード材料は、任意の形態の粉末又はペレットで、焼結、リサイクル、又はバージンの、ホモポリマー又は変性の、懸濁又はエマルジョン、あるいはそれらの組み合わせであり得、これらが押出機に供給される、請求項1に記載の押出プロセス。
【請求項4】
前記押し出しが550℃以下の温度で行われ、前記押出機内の様々なゾーンの押出機温度は、好ましくは200~550℃の間に保たれる、請求項1に記載の押出プロセス。
【請求項5】
前記ミリング法は、メカニカルミリング法若しくはエアジェットミリング法、又は他のミリング法からなる、請求項1に記載の押出プロセス。
【請求項6】
請求項1記載の押出プロセスによって製造された低分子ポリテトラフルオロエチレン微粉末であって、380℃における溶融粘度が300000ポアズ以下である、低分子ポリテトラフルオロエチレン微粉末。
【請求項7】
平均粒径[D50]が1000μm未満である、請求項6に記載の低分子ポリテトラフルオロエチレン微粉末。
【請求項8】
融点が315~335℃の範囲である、請求項6に記載の低分子ポリテトラフルオロエチレン微粉末。
【請求項9】
比表面積が8m
2/g以下である、請求項6に記載の低分子ポリテトラフルオロエチレン微粉末。
【請求項10】
w/w基準で、含水率が0.1%未満で、純度が99.9%以上である、請求項6に記載の低分子ポリテトラフルオロエチレン微粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の明細書は、本発明及びそれが実施される方法を説明する。
【0002】
本発明は、高分子材料の微粉末を調製するためのプロセスに関する。より具体的には、本発明は、低分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)微粉末を調製するためのプロセスに関する。より具体的には、本発明は、低分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)微粉末を調製するための押出プロセスによるポリマー分解に関する。
【背景技術】
【0003】
PTFE微粉末は低分子量PTFEであり、主として、ポリマー、コーティング剤、塗料、ゴム、化粧品、ワックス、インク、接着剤、グリース、及び潤滑剤の添加剤として使用されている。
【0004】
PTFE微粉末は、以下のような優れた特性を備えており、要求の厳しい様々な用途で選ばれている材料である。
1.低摩擦係数
2.エンジニアリングポリマーにおける摩耗特性の改善
3.インク及びコーティング剤の耐摩擦性の向上
4.耐腐食性
5.優れた耐薬品性及び耐熱性
6.非粘着性及び離型性の向上
7.ドリップ防止
【0005】
高分子量PTFEは、このように優れた特性を有するが、他の材料の改質材として分散又は混合して使用されることはほとんどない。その理由は、分散又は混合時に発生する剪断力により、これらの粉体がフィブリル化するためである。その結果、混合物の粘度が著しく上昇し、組成物及び混合物の均一な混合が不可能となる。したがって、塗料、印刷インク、コーティング剤、工業用仕上げ剤、グリース組成物への分散又は混合には、低分子量PTFEの微粒子又は粉末が適している。したがって、低分子量PTFEに対するニーズはますます高まっている。
【0006】
従来技術では、低分子量PTFE粉末は、典型的に、高分子量PTFE粉末から、ガンマ線源又は電子ビームからの高エネルギー電子の照射、又は高温熱処理などの分解方法によって製造されてきた。また、低分子量PTFE微粉末は、直接重合技術によって製造されている。
【0007】
低分子量PTFE粉末は、以下の3つのプロセスで製造されていた。
a.電子ビーム又はガンマ線を用いて高分子量PTFEを低分子量PTFEに分解する照射プロセス
b.低分子量PTFEを製造するための直接重合
c.高分子量PTFEを低分子量PTFEに分解するための熱処理
【0008】
従来技術では、「Polytetrafluoroethylene resins that can be processed by shaping, shaped products thereof, and processes for producing the resins and shaped products」と題する特許文献1に、PTFEを照射してPTFE樹脂を製造するプロセスが開示されている。
【0009】
「Directly polymerized low molecular weight granular polytetrafluoroethylene」と題する特許文献2は、直接重合低分子量PTFEを開示している。攪拌された反応容器内で、加圧されたテトラフルオロエチレンを懸濁重合することにより、低分子量、粒状ポリテトラフルオロエチレン又は変性ポリテトラフルオロエチレンを製造するプロセスである。重合は、水性媒体中で、フリーラジカル開始剤、及びテロゲンの存在下で行われる。反応容器は重合中に十分に撹拌され、ポリテトラフルオロエチレン又は変性ポリテトラフルオロエチレンを凝固させることができる。約1x106Pa・S未満の溶融粘度を有する低分子量粒状ポリテトラフルオロエチレン又は変性ポリテトラフルオロエチレンは、反応容器から直接単離される。この特許における低分子ポリテトラフルオロエチレン又は変性ポリテトラフルオロエチレン粉末は、約1×106Pa・S未満の溶融粘度、約8m2/g未満の比表面積、約3重量ppm以下の抽出可能フッ化物レベル、及び約5以下の多分散性指数で示される狭い分子量分布を有している。低分子粉末の粒子は、約2~約40マイクロメートルの重量平均粒径を有し、粉末は、約1マイクロメートル未満の粒径を有する粒子を実質的に含まない。このようにして製造された低分子材料は、インク、コーティング剤、グリース、潤滑剤、及びプラスチックなどの他の材料への添加剤として使用するのに適している。
【0010】
低分子量PTFEの製造に用いられる照射(a)及び熱処理(c)は、様々な望ましくないフッ素含有パー及びポリフルオロアルキル物質(PFAS)、特に世界中の多くの規制当局によって使用が制限されているPFOAを発生させていた。これらのプロセスは、一般的にオープンな条件(空気の存在)で実施されるため、環境汚染を引き起こし、作業者への労働災害の原因となる。直接重合法(b)で製造された材料は、PTFE微粉末の限られた用途に使用するのに適していることが判明した。
【0011】
したがって、低分子量PTFE微粉末を制御された環境で、よりクリーンなプロセスを用いて製造し、微粉末の用途のほとんどに対応する幅広い製品を得るためのプロセスに対する強いニーズがあった。
【0012】
本発明は、このようなニーズを満たし、従来技術の欠点を克服するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第9266984号明細書
【特許文献2】米国特許第7176265号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の主な目的は、低分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)微粉末を調製するための押出プロセスによるポリマー分解方法を提供することで、前述の問題点を克服することである。
【0015】
本発明の他の目的は、低分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)微粉末を製造するために、押出成形法によるクリーンで安全なポリマー分解方法を提供することである。
【0016】
本発明の他の目的は、リサイクルされたPTFE廃棄物を用いて低分子量PTFE微粉末を製造する方法を提供することである。
。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、低分子量PTFE微粉末及びそれを調製するための押出プロセスに関する。
【0018】
本発明の一態様によれば、以下の押出プロセスが提供される。この方法は、
a.PTFEフィード材料を導入するステップと、
b.押出プロセスの間に熱及び剪断力を加えるステップと、
c.押出機内でPTFEフィードを押し出して、異なる溶融粘度を有する低分子量PTFEを得るステップと、
d.ペレタイザーの中で冷却し、ペレット化してPTFEの顆粒を形成するステップと、e.ミリング法によりPTFE微粉末顆粒の粒径を小さくして、粉末を形成するステップと、
を含む。
【0019】
高分子量PTFEフィード材料は、PTFEのリサイクル、焼結、バージン、変性、懸濁、エマルジョン形態、又はそのようなタイプの組み合わせで構成され得る。PTFEフィードは、任意の形態の粉末又はペレットであり得、これは、押出機への供給を容易にするために、予備プレス又は予備焼結を必要とし得る。
【0020】
押出機の設計、スクリュー速度、及び温度プロファイルは、低分子PTFE微粉末の様々な目標溶融粘度を達成するためのプロセス条件を一緒に定義した。
【0021】
低分子PTFE微粉末の最終溶融粘度に応じて、様々な用途で使用する製品の米国FDAステータスが達成される場合がある。
【0022】
ペレタイザーから来る低分子PTFE顆粒は、生成物から任意の揮発性物質/不純物を除去するために追加の加熱ステップを必要とする場合がある。
【0023】
本発明の一態様によれば、3,00,000ポアズ以下の溶融粘度を有する低分子量PTFE粉末が開示される。
【0024】
一実施形態において、低分子量PTFE微粉末は、平均粒径[D50]が1000μm以下であってもよい。
【0025】
一実施形態において、低分子量PTFE微粉末は、比表面積(SSA)が8m2/g未満であってもよい。
【0026】
本発明の別の一態様によれば、低分子量PTFE微粉末は、0.1%未満の含水率を有し、純度は99.9%以上である。
【0027】
本発明の利点及び特徴をさらに明確にするために、添付の図面に示されているその特定の実施形態を参照することによって、本発明のより具体的な説明を提供する。これらの図面は、本発明の典型的な実施形態のみを描いており、したがって、その範囲を限定するものとはみなされないことが理解される。本発明は、添付図面を用いて、追加の特異性及び詳細とともに、記載され、説明される。
【0028】
主題についての上記及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明及び添付の図面に関して、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】低分子量ポリテトラフルオロエチレン微粉末を調製するためのプロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の原理の促進及び理解のために、ここで、図面に例示された実施形態を参照し、特定の言語を用いて同じものを説明する。それにもかかわらず、本発明の範囲の限定は、それによって意図されないことが理解され、図示されたシステムにおけるそのような変更及びさらなる修正も、そこに図示されたような本発明の原理のさらなる応用も、本発明に関連する当業者に通常想起し得るものとして企図される。以下に説明するのは、本発明のいくつかの代表的な実施形態である。その幅広い局面における本発明は、特定の詳細及び代表的な方法に限定されるものではない。例示的な例が、提供される実施形態及び方法に関連して、この節で説明される。
【0031】
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a、an)」及び「その(the)」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の指示対象を含むことに注意されたい。したがって、例えば、「1つの化合物」を含む組成物への言及は、2つ以上の化合物の混合物を含む。また、用語「又は」は、内容が明らかにそうでないことを指示しない限り、「及び/又は」を含む意味で一般的に採用されることに留意されたい。
【0032】
様々な量の「%」又は「%w/w」による表現は、特に指定しない限り、溶液又は組成物の全重量に対する割合を意味する。引用された全ての文献は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。任意の文献の引用は、特許請求される発明の従来技術としての利用可能性に関するいかなる決定に関しても容認するものでない。
【0033】
前述の一般的な説明及び後述の詳細な説明は、本発明の説明であり、それを制限することを意図していないことは、当業者には理解されよう。
【0034】
本明細書を通じて「1つの態様」、「別の態様」又は同様の言語への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通じて「一実施形態において」、「別の実施形態において」という句、及び類似の言語が出現する場合、全てが同じ実施形態を指す場合もあるが、必ずしもそうではない。
【0035】
用語「備える」、「備えている」、又はそれらの他の活用形は、非排他的な包含を対象とすることを意図され、そのため、ステップのリストからなるプロセス又は方法がそれらのステップのみを含むのではなく、明示的にリストされていない他のステップ又はプロセス又は方法に固有の他のステップを含み得る。
【0036】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、この発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で提供されるシステム、方法、及び例は、例示に過ぎず、限定することを意図していない。
【0037】
本発明は、高分子量PTFE組成物から低分子量ポリテトラフルオロエチレン微粉末を調製するための押出プロセスに関するものである。ここで、ポリテトラフルオロエチレン組成物は、「PTFE」と定義される。
【0038】
好ましくは、PTFEフィードは、任意の形態の粉末又はペレットで、焼結、又はバージン、若しくはリサイクル、ホモポリマー又は変性、懸濁又はエマルジョン又はそれらの組み合わせから選択される材料から構成され得る。
【0039】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照して以下で詳細に説明する。
【0040】
したがって、
図1は、高分子量PTFE組成物から低分子量ポリテトラフルオロエチレン微粉末を製造するためのプロセスを示す。
【0041】
本発明の一態様によれば、低分子量PTFE微粉末を調製するための押出プロセス提供され、この方法は、以下のステップ、すなわち、
a)PTFEフィード材料を導入するステップと、
b)押出プロセスの間に熱及び剪断力を加えるステップと、
c)押出機内でPTFEフィードを押し出して、異なる溶融粘度を有する低分子量PTFEを取得するステップと、
d)ペレタイザーの中で冷却し、ペレット化してPTFEの顆粒を形成するステップと、e)ミリング法によりPTFE微粉末顆粒の粒径を小さくして、粉末を形成するステップと、
を含む。
【0042】
一実施形態において、PTFEフィード材料は、任意の形態の粉末又はペレットで、焼結、リサイクル、又はバージン、ホモポリマー又は変性、懸濁又はエマルジョン、あるいはそれらの組み合わせであり得る。PTFEフィードは、押出機に供給される。PTFEフィード材料は、押出機への供給を容易にするために、予備プレス又は予備焼結を必要とする場合がある。
【0043】
一実施形態において、熱及び剪断力が押出プロセスで使用される。押し出しは、好ましくは550℃以下の温度で行うべきである。
【0044】
一実施形態において、様々な溶融粘度及び他の特性を有するPTFE製品を得るために、スクリュー設計単軸スクリュー又は二軸スクリュー、共回転又は逆回転)、温度条件及び1分当たりスクリュー回転数(RPM)を含む押出機形状の異なる組み合わせが提供され得る。
【0045】
一実施形態において、押出機は、単軸スクリュー又は二軸スクリュー、共回転又は逆回転、又は他のタイプの押出機であってもよい。低分子PTFE微粉末の目標溶融粘度を達成するためには、プロセス条件として定義される押出機の設計、スクリュー速度、及び加熱要素の温度が必要である。低分子量PTFE微粉末の最終溶融粘度と米国FDAにより、様々な用途で使用するための製品のステータスを達成することができる。
【0046】
PTFE組成物は、ホッパーから押出機に導入することができる。押出機は、加熱・冷却システムを有する密閉バレル内に、シャフトに取り付けられた2本の噛み合い式スクリューから構成される。スクリューは、フィードセクション、トランジションセクション、計量セクションの3つの主要セクションから構成されている。フィードセクションは、PTFEフィード組成物をトランジションセクションに搬送する役割を担う。トランジションセクションは、PTFE組成物の溶融が行われるスクリューの部分である。計量セクションは、押出機の吐出口に向けて溶融物を供給する。また、真空を脱揮のために押出機に適用することもできる。
【0047】
押出機の内部では、電気ヒーターによって、押出機の温度を好ましくは200~550℃の範囲に維持することができる。
【0048】
一実施形態において、回転スクリューと押出機温度は、ポリマーの溶融を助け、PTFE組成物の均質な溶融物を調製することができる。PTFEの分子量の減少は、押出機内の剪断、温度、及びトルクによって、引き起こされる可能性がある。
【0049】
最後に、溶融PTFE組成物は、圧力によって成形されたダイを通して押し出される。一般に、ダイは、アダプタを介して押出機に取り付けられることがある。好ましくは、溶融PTFEは、ストランドの形態でダイから押し出されることがある。
【0050】
押出機を通して押し出した後、押し出された溶融PTFEのストランドは、ペレタイザーで顆粒を形成するために、冷却され、切り刻まれてもよい。冷却及びペレット化は、本実施形態によれば、PTFEの顆粒を形成するためにペレタイザーの中で行われてもよい。
【0051】
一実施形態において、ペレタイザーから来る低分子PTFE顆粒は、製造物から任意の揮発性物質/不純物を除去するために追加の加熱ステップを必要とする場合がある。
【0052】
ペレット化に続いて、顆粒は、さらに粉砕方法に供されてもよい。PTFE顆粒のミリングは、PTFE微粉末顆粒の粒径を小さくして、様々な粒径分布(D50が1000μm未満)の粉末を形成するために行われることがある。所望の粒径の低分子量PTFE微粉末を製造するために、粉砕方法が使用されてもよい。
【0053】
一実施形態において、ミリング法は、メカニカルミリング及び/又はエアジェットミリング、又はそれらの他の方法であってもよい。
【0054】
(溶融粘度)
本発明の一態様によれば、3,00,000ポアズ以下の溶融粘度を有する低分子量PTFE粉末が開示される。
【0055】
上記溶融粘度は、ASTM D1238に従って、ダイ径2.095のフローテスター(製造:Dynisco)を用いて測定された。その値は、試験片5gを380℃で5分間予熱し、その温度を維持したまま2.16kgの負荷をかけて測定することで、測定したものであってもよい。
【0056】
(粒径)
一実施形態において、低分子量PTFE微粉末は、平均粒径[D50]が1000μm以下であってもよい。
【0057】
D50分析:粒度分析は、粒径分析装置(製造:Sympatec Helos KR)により、レーザー回折法(圧力:0.5bar、Copt:2~15%)ASTM D4894に準じて行うことができる。
【0058】
(比表面積)
一実施形態において、低分子量PTFE微粉末は、比表面積(SSA)が8m2/g未満であってもよい。
【0059】
比表面積は、BETによって、表面分析器(製造:Smart Instrument)を、キャリアガスとして窒素30%、ヘリウム70%の混合ガス、冷却材として液体窒素と共に用いて測定することができる。
【0060】
(純度)
一実施形態において、低分子量PTFEの純度は、99.9%以上であってもよい。
【0061】
(押出機温度)
一実施形態において、押出機温度は、200~550℃の間に維持されてもよい。
【0062】
(融点)
一実施形態において、低分子量PTFE粒子の融点は、315℃~335℃の範囲であってもよい。
【0063】
押出機内の温度は、温度コントローラによって測定されてもよく、低分子量PTFE粒子の融点は、ASTM D4591によって、示差走査熱量計を使用して測定されてもよい。ここで、約3mgの低分子量PTFE粉末を圧着したアルミパンに入れ、温度を50mL/分の窒素流量下で、240℃から380℃の温度範囲まで10℃/minで昇温してもよい。融点は、上記で定義された範囲における吸熱ピークの最大値として定義する。
【0064】
本発明は、本発明の範囲内での多数の変更及び変形例が当業者には明らかであるので、例示のみを意図する以下の実施例においてより具体的に説明される。特に断らない限り、以下の実施例で報告された全てのパーツ、パーセント、及び比率は重量基準であり、実施例で使用された全ての試薬は、化学サプライヤから取得したか、又は入手可能である。
【0065】
以下の実施例は、本発明の基本的な方法論及び汎用性を説明するものである。
【実施例】
【0066】
低分子量PTFE微粉末の以下のバッチ(実施例1、2及び3)を本発明に従って調製する。それらの特性を、市販の製品の特性と比較する。
【0067】
【0068】
本発明は、その精神又は本質的な特徴から逸脱することなく、他の具体的な形態でも具現化することができる。したがって、本実施形態は、全ての点で例示的であり、制限的ではないと考えられる。
【0069】
本発明の利点は、以下の通りである。
・本発明の主な利点は、低分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)微粉末を製造するための押出プロセスを用いたクリーンで安全なポリマー分解方法を提供することである。
・本発明のさらなる別の利点は、リサイクルされたPTFE廃棄物を使用して低分子量PTFE微粉末を製造するプロセスを提供することである。
・本発明のさらなる別の利点は、様々な用途に使用するために、米国FDAステータスを有する低分子量を製造することである。
【0070】
図面及び前述の説明は、実施形態の例を示すものである。当業者は、記載された要素の1つ又は複数が、単一の機能的要素に十分に組み合わされ得ることを理解するであろう。あるいは、特定の要素は、複数の機能要素に分割されてもよい。ある実施形態からの要素は、別の実施形態に追加されてもよい。例えば、本明細書に記載されたプロセスの順序は、変更されてもよく、本明細書に記載される方法に限定されない。
【0071】
さらに、任意のフロー図の行為は、示された順序で実施される必要はなく、また、全ての行為が必ずしも実施される必要はない。また、他の行為に依存しない行為については、他の行為と並行して実施することができる。実施形態の範囲は、これらの具体例によって決して限定されるものではない。明細書で明示的に示されているか否かにかかわらず、構造、寸法、材料の使用方法の違いなど、多数の変形例が可能である。実施形態の範囲は、少なくとも、以下の特許請求の範囲によって与えられるのと同じくらい広い。
【0072】
特定の実施形態に関して、メリット、他の利点、及び問題に対する解決策を上述してきた。しかしながら、メリット、利点、問題に対する解決策、及び、任意のメリット、利点、又は解決策を生じさせ得る任意の構成要素、又はより顕著にし得る任意の構成要素は、いずれか又は全ての請求項の重要な、必須の、又は不可欠な特徴又は構成要素として解釈されるべきでない。
【国際調査報告】