(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-07
(54)【発明の名称】N-アシル-ホモセリンラクトンの類似体及びそれを含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
C07D 333/36 20060101AFI20230131BHJP
C07C 235/74 20060101ALI20230131BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230131BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20230131BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230131BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230131BHJP
A61K 31/381 20060101ALI20230131BHJP
A61K 31/164 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
C07D333/36
C07C235/74 CSP
A61P1/04
A61P17/06
A61P17/00
A61P29/00
A61K31/381
A61K31/164
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523614
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(85)【翻訳文提出日】2022-05-20
(86)【国際出願番号】 EP2020079913
(87)【国際公開番号】W WO2021078952
(87)【国際公開日】2021-04-29
(32)【優先日】2019-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】518059934
【氏名又は名称】ソルボンヌ・ユニヴェルシテ
【氏名又は名称原語表記】SORBONNE UNIVERSITE
(71)【出願人】
【識別番号】511142062
【氏名又は名称】アンスティチュート ナショナル デ ラ サンテ エ デ ラ レシェルシュ メディカル(アンセルム)
(71)【出願人】
【識別番号】507139834
【氏名又は名称】アシスタンス ピュブリック-オピト ドゥ パリ
(71)【出願人】
【識別番号】511134470
【氏名又は名称】セントレ ナショナル デ ラ ルシェルシェ サイエンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】522159750
【氏名又は名称】エコール・ノルマル・シュペリウール
【氏名又は名称原語表記】ECOLE NORMALE SUPERIEURE
【住所又は居所原語表記】45 rue d’Ulm,75230 PARIS CEDEX 05(FR)
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セクシク,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】グリル,ジャン-ピエール
(72)【発明者】
【氏名】マレ,ジャン-モーリス
(72)【発明者】
【氏名】レイントー,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ランドマン,セシリア
(72)【発明者】
【氏名】ペイロット,アガト
(72)【発明者】
【氏名】ブロット,ロイック
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BB02
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA66
4C086ZA89
4C086ZB11
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206GA03
4C206GA30
4C206GA31
4C206KA17
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA66
4C206ZA89
4C206ZB11
4H006AA01
4H006AB22
4H006BJ20
4H006BJ50
4H006BM72
4H006BN20
4H006BR10
4H006BV24
(57)【要約】
本発明は、N-アシル-ホモセリンラクトン(AHL)の類似体及びそれを含む医薬組成物に関する。本発明はまた、上皮の炎症性疾患の治療におけるそれらの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式Iを有し、上皮の炎症性疾患の治療に使用するため化合物:
【化1】
式中、
- X、Y、Z及びWは、互いに独立して、炭素原子又はS、N及びOから選択されるヘテロ原子であり、但し、XはOとは異なり、
- X、Y、Z及びWは、互いに独立して、Cl、F、Br及びIから選択されるハロゲン、又は直鎖若しくは分岐鎖のC
1~C
4アルキル基で場置換されていてもよく、
- x、y、z、及びwは、互いに独立して、0又は1であり、但し、
3≦x+y+z+w≦4であり、
- Rは、H又は直鎖若しくは分岐鎖のC
1~C
4アルキル基、又はヒドロキシル基(OH)又はアジド基(N
3)を表し、
- ------は、単結合又は二重結合(シス又はトランス)を表し、
- R’は、H又は直鎖若しくは分岐鎖のC
1~C
4アルキル基を表す。
【請求項2】
以下からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物:
- 以下の式I-1の(D/L)-3-オキソ-C
12アミノチオラクトン((D/L)-3-オキソ-C
12-HTL):
【化2】
- 以下の式I-2の(S,S)-3-オキソ-C
12アミノシクロヘキサノール((S,S)-3-オキソC
12-ACH):
【化3】
- 以下の式I-3の(S)-3-オキソ-C12アミノチオラクトン(S)-3-オキソ-C12-HTL):
【化4】
- 以下の式I-4の(R,S)-3-オキソ-C12-アミノシクロヘキサノール:
【化5】
- 以下の式I-5の3-オキソ-C12-アミノシクロヘキサノール:
【化6】
- 以下の式I-6の3-オキソ-C12-アミノクロロフェノール:
【化7】
【請求項3】
前記腸の炎症性疾患の治療に使用するための、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
乾癬の治療に使用するための、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項5】
以下の一般式Iを有する少なくとも1つの化合物と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と、を含む、医薬組成物:
【化8】
式中、
- X、Y、Z及びWは、互いに独立して、炭素原子又はS、N及びOから選択されるヘテロ原子であり、但し、XはOとは異なり、
- X、Y、Z及びWは、互いに独立して、Cl、F、Br及びIから選択されるハロゲン、又は直鎖若しくは分岐鎖のC1~C4アルキル基で置換されていてもよく、
- x、y、z、及びwは、互いに独立して、0又は1であり、但し、
3≦x+y+z+w≦4であり、
- Rは、H又は直鎖若しくは分岐鎖のC
1~C
4アルキル基、又はヒドロキシル基(OH)又はアジド基(N
3)を表し、
- R’は、H又は直鎖若しくは分岐鎖のC
1~C
4アルキル基を表し、
- ------は、単結合又は二重結合(シス又はトランス)を表す。
【請求項6】
式Iの前記少なくとも1つの化合物が、以下からなる群から選択される、請求項5に記載の医薬組成物:
- 式I-1の(D/L)-3-オキソ-C12-アミノチオラクトン((D/L)-3オキソC12-HTL):
【化9】
- 以下の式I-2の(S,S)-3-オキソ-C12-アミノシクロヘキサノール(S,S)3-オキソ-C12-ACH):
【化10】
- 以下の式I-3の(S)-3-オキソ-C12アミノチオラクトン((S)-3-オキソ-C12-HTL):
【化11】
- 以下の式I-4の(R,S)-3-オキソ-C12-アミノシクロヘキサノール:
【化12】
- 以下の式I-5の3-オキソC12-アミノシクロヘキサノール:
【化13】
- 以下の式I-6の3-オキソC12-アミノクロロフェノール:
【化14】
【請求項7】
前記上皮の炎症性疾患の治療に使用するための、請求項5又は6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記腸の炎症性疾患の治療に使用するための、請求項5又は6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記乾癬の治療に使用するための、請求項5又は6に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N-アシル-ホモセリンラクトン(AHL)の類似体及びそれを含む医薬組成物に関する。
【0002】
本発明はまた、上皮の炎症性疾患の治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
上皮の炎症性疾患は、消化管と皮膚の両方に影響を及ぼす。
【0004】
実際、これらの器官は外部媒体と直接接触しており、それらの微生物叢は特異的である。
【0005】
炎症性皮膚疾患は乾癬を含む。
【0006】
慢性炎症性腸疾患(IBD)は、2つの主要な疾患であるクローン病(CD)、及び腸の損傷をもたらす腸粘膜の慢性炎症及び腸癌のリスク増加(結腸については一般集団と比較して4倍、小腸については40倍)を特徴とする潰瘍性大腸炎(UC)によって表される。
【0007】
IBDは若年者に影響を及ぼし、先進国ではその発生率が比較的高い(100,000人/年当たり8から15人)ため、社会経済的帰結が重要である。
【0008】
長期リスクは欧州では1%と推定され、CD及びUCは依然として不治の疾患である。
【0009】
生物学的薬剤の拡大を含むIBDの治療の最近の進歩は、多くのIBD患者の迅速な臨床的寛解及び生活の質の改善をもたらした。
【0010】
しかし、これらの強力な免疫抑制療法は必ずしも有効ではなく、費用がかかり、重篤な副作用を誘発する可能性がある。
【0011】
したがって、限定された毒性及び高い費用効果で寛解を誘導及びび維持するためのより生理学的なアプローチが必要とされている。
【0012】
CDは、消化管の全ての部分に先験的に影響を及ぼし得るが、回腸、結腸及び肛門により頻繁に影響を及ぼす。この疾患は、壁内炎症、すなわち消化管壁の異なる層に影響を及ぼし、狭窄及び瘻孔などの重篤な合併症を患者に引き起こす可能性がある。
【0013】
UCは、直腸、及び結腸の末端部に影響を及ぼす。生じる炎症は、通常、腸粘膜及び粘膜下組織に限定される。
【0014】
IBDの病態生理は複雑であり、まだよく理解されていないが、環境的原因、遺伝的素因、免疫障害、バリア機能の欠陥、及び腸内細菌叢:微生物叢のディスバイオシスと呼ばれる不均衡を含む複数の因子が明らかに関与している。
【0015】
腸内微生物叢は、炎症の制御及びバリア機能の調節において重要な役割を果たす。抗微生物ペプチド又は粘液分泌の刺激などのバリア強化のいくつかの機構が記載されているが、傍細胞透過性の制御における重要な役割を果たすタイトジャンクションの透過性に対する共生微生物叢の影響を分析した研究はほとんどない。
【0016】
クオラムセンシング(QS)は、化学メッセンジャーとして作用し、自己誘導物質(AI)と呼ばれる周囲環境への小さな拡散性分子の分泌に基づく、細菌コロニー内の個体間のコミュニケーションの様式である。
【0017】
クオラムセンシングは、媒体中に存在する細菌の密度及びそれらの直接環境中のシグナル分子の濃度に基づく。媒体中の分子の量はコロニーの状態を直接反映しており、個体数が少ない場合、自己誘導物質の濃度も低いが、細胞密度が増加すると、分子の濃度は、1つ又は複数の細菌表現型が変化する閾値を越えるまで順に増加する。この閾値はクオラムと呼ばれる。センシングという用語は、適切な受容体を介して媒体中の分子を検出する細菌の能力を指し、したがって分子は分泌されて検出されるので、自己誘導物質いう名称である。
【0018】
N-アシル-ホモセリンラクトン(AHL)を含むクオラムセンシングは、多くの生態系のグラム陰性菌に記載されている細菌間コミュニケーションの様式である。
【0019】
これらの分子はまた、「界間対話」において、宿主細胞に効果を発揮することができる。しかし、腸生態系におけるAHL型の分子の存在は、これまであまり報告されていない。
【0020】
腸内微生物叢は、我々の消化管に存在する全ての微生物(細菌、酵母、古細菌及びウイルス)を含み、1000種に分けられる1014の細菌(ヒト細胞数の約10倍であるが、この比率は議論の対象である)を含む。宿主とその腸内微生物叢との間の関係は、両者に相互に利益をもたらすので、共生的である。宿主は食物塊を介して栄養素を提供し、一方、微生物叢は、生理学的性質(炭水化物及び脂質の代謝、胆汁酸の変換など)、免疫(免疫系の「教育」)の多くの機能を果たすが、共生微生物叢による腸空間の占有が病原性種によるコロニー形成を防止するため、生態学的機能も果たす。
【0021】
成人個体の微生物叢は独特であるが、主要な共通の特徴が、正常微生物叢状態における健康な微生物叢を説明するために同定されている。支配的な微生物又はコアマイクロバイオームは4つの門からなり、ファーミキューテス門(Firmicutes)及びバクテロイデス門(Bacteroidetes)は強く示され、程度は低いがアクチノバクテリア門(Actinobacteria)及びプロテオバクテリア門(Proteobacteria)が示される。
【0022】
特定の状況では、通常存在する細菌集団の提示の不均衡が出現することがあり、これはディスバイオシスである。したがって、IBDにはディスバイオシスの状態が存在することが示されており、これは確かにこれらの病態の発症における重要な要素であるが、発症機序はまだ解明されていない。このディスバイオシスは、微生物組成(バクテロイデス門(Bacteroidetes)及びファーミキューテス門(Firmicutes)の減少、特にクロストリジウム属(Clostridia)の有意な喪失、ガンマプロテオバクテリア(Gamma proteobacteria)の増加、並びにAIEC及びフソバクテリウム(Fusobacterium)などの新しい群の出現)及び微生物叢の機能(アミノ酸代謝並びにSCFA及び酪酸塩の生合成の減少、酸化ストレスの増加など)の変化を伴う多様性の喪失を特徴とする。
【0023】
上記のように、QSは細菌の種間コミュニケーションに関与するが、宿主-微生物叢(界間)の関係にも関与する可能性がある。これは、海洋生態系及び様々な根圏で記載されているが、エルシニア(Yersinia)などの一部の胃腸病原体でも記載されている。後者は、少なくとも8つの異なるAHLを分泌することができ、他の細菌集団によって産生されるAHLに対して感受性にする2つのLuxI/LuxR相同系を有する。他の種は、SdiA受容体(AHLシンターゼに関連しないLuxR相同受容体であり、したがってAHL自体を合成することなくAHLを感知することができる種に存在する)を有すると記載されている。
【0024】
ますます多くの研究が、ヒト宿主細胞に対するAHL、特に病原体緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)によって産生される3-オキソ-C12 HSLの影響を調査している。
【0025】
この分子は、それ自体で病原性因子として作用することによって宿主の免疫応答を調節し、NF-κBの発現を介して免疫細胞及び炎症促進性サイトカインの誘導によって炎症応答をもたらす可能性があることが示されている。真核細胞へのAHLの進入は、Ritchieらによって2007年に実証された(非特許文献1)。
【0026】
したがって、腸内微生物叢におけるQSの分子の検出に注目が集まっており、2型の自己誘導性QSの分子(AI-2)の合成は、9つの共生種及び健康な対象の糞便において報告されているが、AHL(AI-1)に関する研究は、依然として稀である。新生児の便におけるAHLの存在は、生物発光によって実証された。
【0027】
本発明者らは、腸生態系におけるいくつかのAHLを同定することができ、そのうちの1つは炎症性フレア中にIBD患者において失われる、以下の式Bの3-オキソ-C
12:2-HSLであった。
【化1】
【0028】
本発明者らは、このAHLが健康な微生物叢に関連することを示した。
【0029】
現在までに、2つの「天然」AHL、以下の式Aの3-オキソ-C
12-HSL:
【化2】
及び式Bの3-オキソ-C
12:2-HSL(非特許文献2に開示される活性物質)は、抗炎症効果及びタイトジャンクションに対する作用を有する分子として公知であり、記載されている。
【0030】
これらの2つの分子(病原体によって産生される3-オキソ-C12-HSL及び健康な微生物叢に関連する3-オキソ-C12:2-HSL)は両方とも腸生態系の真核細胞に作用する。
【0031】
しかし、「天然」AHLは安定性に乏しい分子である。AHLの分解は、2つの異なる副生成物をもたらす可能性があり、一方では、ラクトン頭部の加水分解は、新しいアルコール官能基及びカルボン酸を有するAHLの開環形態を生成し(この分子は本明細書では3-オキソ-C12-HSと命名される)、他方では、分子の再配列は、テトラミン酸と呼ばれる新しい分子を与えることができる。AHLの開環形態への変換は、水性媒体中での自然加水分解によって起こり得るか、又は哺乳動物の腸上皮によって分泌される酵素、特にパラオキソナーゼ(PON1、2及び3)によって触媒され得る。
【0032】
AHLの安定性の問題に加えて、細菌受容体によるこれらの分子の認識は問題がある。AHLは主に細菌のために細菌によって分泌される化合物であり、したがって、細菌はAHLに対する受容体を有し、その活性化が表現型の改変をもたらす反応のカスケードをもたらすことに留意すべきである。とりわけ、緑膿菌(P.aeruginosa)では、その天然リガンドが3-オキソ-C12-HSLであるLasR AHLに対する受容体の活性化は、下流のバイオフィルム形成及びピオシアニンなどのいくつかの病原性因子の分泌増加をもたらす。
【0033】
細菌受容体のこの活性化は、特にIBDにおける炎症に対するAHLの直接使用を妨げるので、問題がある。特定の細菌株の病原性を活性化するリスクは、あまりにも重要な望ましくない効果である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0034】
【非特許文献1】Ritchie AJ,Jansson A,Stallberg J,Nilsson P,Lysaght P,Cooley MA,The Pseudomonas aeruginosa Quorum-Sensing Molecule N-3-(Oxododecanoyl)-L-Homoserine Lactone Inhibits T-Cell Differentiation and Cytokine Production by a Mechanism Involving an Early Step in T-Cell Activation,Infect Immun.2005;73:1648-1655,doi:10.1128/IAI.73.3.1648-1655,2005
【非特許文献2】Inter-kingdom effect on epithelial cells of the N-Acyl homoserine lactone 3-oxo-C12:2,a major quorum-sensing molecule from gut microbiota,Landman C,Grill JP,Mallet JM,Marteau P,Humbert L,Le Balc’h E,Maubert MA,Perez K,Chaara W,Brot L,Beaugerie L,Sokol H,Thenet S,Rainteau D,Seksik P,Quevrain E;Saint Antoine IBD Network,PLoS One,20129;13(8):e0202587 doi:10.1371/journal.pone.0202587.eCollection2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
これに関連して、本発明は、天然AHLの生体模倣分子(天然AHLの類似体)を提供することを目的とし、その構造修飾は以下を目的とする。
-安定性を増加させること、
-毒性を制限すること、
-治療用分子としての直接使用を可能にすること、
-生物学的活性を調節すること、
-宿主に対する影響を研究することを可能にすること、
-治療目的のために特性を利用すること。
【課題を解決するための手段】
【0036】
この目的のために、本発明は、以下の一般式Iを有し、上皮の炎症性疾患の治療に使用するためのものである化合物を提供する:
【化3】
式中、
- X、Y、Z及びWは、互いに独立して、炭素原子又はS、N及びOから選択されるヘテロ原子であり、但し、XはOとは異なり、
- X、Y、Z及びWは、互いに独立して、Cl、F、Br及びIから選択されるハロゲン、又は直鎖若しくは分岐鎖のC
1~C
4アルキル基で場置換されていてもよく、
- x、y、z、及びwは、互いに独立して、0又は1であり、但し、
3≦x+y+z+w≦4であり、
- Rは、H又は直鎖若しくは分岐鎖のC
1~C
4アルキル基、又はヒドロキシル基(OH)又はアジド基(N
3)を表し、
- ------は、単結合又は二重結合(シス又はトランス)を表し、
-R’は、H又は直鎖若しくは分岐鎖のC
1~C
4アルキル基を表す。
【0037】
上皮の炎症性疾患は、より具体的には、炎症性腸疾患又は乾癬である。
【0038】
好ましくは、式Iの化合物は、以下からなる群から選択される:
- 以下の式I-1の(D/L)-3オキソC
12アミノチオラクトン((D/L)-3オキソC
12-HTL):
【化4】
- 以下の式I-2の(S,S)-3-オキソC
12-アミノシクロヘキサノール(S,S)3-オキソC
12-ACH):
【化5】
- 以下の式I-3の(S)-3-オキソC
12アミノチオラクトン((S)-3オキソC
12-HTL):
【化6】
- 以下の式I-4の(R,S)-3-オキソC
12-アミノシクロヘキサノール:
【化7】
- 以下の式I-5の3-オキソC
12-アミノシクロヘキサノール:
【化8】
- 以下の式I-6の3-オキソC
12-アミノクロロフェノール:
【化9】
【0039】
本発明はまた、以下の一般式Iを有する少なくとも1つの化合物と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と、を含む、医薬組成物を提供する:
【化10】
- X、Y、Z及びWは、互いに独立して、炭素原子又はS、N及びOから選択されるヘテロ原子であり、但し、XはOとは異なり、
- X、Y、Z及びWは、互いに独立して、Cl、F、Br及びIから選択されるハロゲン、又は直鎖若しくは分岐鎖のC
1~C
4アルキル基で場置換されていてもよく、
- x、y、z、及びwは、互いに独立して、0又は1であり、但し、
3≦x+y+z+w≦4であり、
- Rは、H又は直鎖若しくは分岐鎖のC
1~C
4アルキル基、又はヒドロキシル基(OH)又はアジド基(N
3)を表し、
- R’は、H又は直鎖若しくは分岐鎖のC
1~C
4アルキル基を表し、
- ------は、単結合又は二重結合(シス又はトランス)を表す。
【0040】
好ましくは、本発明の医薬組成物において、式Iの少なくとも1つの化合物は、以下からなる群から選択される:
- 式I-1の(D/L)-3-オキソC
12-アミノチオラクトン((D/L)-3オキソ-C
12-HTL):
【化11】
- 以下の式I-2の(S,S)-3-オキソC
12アミノシクロヘキサノール(S,S)3-オキソC
12-ACH):
【化12】
- 以下の式I-3の(S)-3-オキソC
12アミノチオラクトン((S)-3オキソC
12-HTL):
【化13】
- 以下の式I-4の(R,S)-3-オキソC
12-アミノシクロヘキサノール:
【化14】
- 以下の式I-5の3-オキソC
12-アミノシクロヘキサノール:
【化15】
- 以下の式I-6の3-オキソC
12-アミノクロロフェノール:
【化16】
【0041】
本発明による医薬組成物は、好ましくは、上皮の炎症性疾患、より具体的には腸の炎症性疾患又は乾癬の治療に使用するためのものである。
【0042】
添付の図面に関連してなされる以下の説明的な説明を読むことにより、本発明はよりよく理解され、他の利点及び特徴がより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明で使用される式I-1の(D,L)-3オキソC
12アミノチオラクトンの存在下でのIL-1βによるCaco-2/TC7細胞の刺激の結果を棒グラフ形式で示す図である。
【
図2】天然分子C4-HSL及び3-オキソ-C12-HSL並びに本発明で使用される式I-1の分子に関連する細菌レポーター株上のLasR受容体の活性化曲線を示す図である。
【
図3】本発明で使用される式I-2の(S,S)-3-オキソC
12アミノシクロヘキサノール(S,S)-3-オキソC
12-ACH)の存在下でのIL-1βによるCaco-2/TC7細胞の刺激の結果を棒グラフ形式で示す図である。
【
図4】本発明で使用される漸増用量の式I-2の(S,S)3-オキソC
12アミノシクロヘキサノール(S,S)3-オキソC
12-ACH)の存在下でIL-17及びTNF-αによって刺激されたヒトケラチノサイトによるIL-8分泌の阻害曲線を表す図である。
【
図5】本発明で使用される式I-2の漸増用量の(S,S)-3-オキソC
12-アミノシクロヘキサノール(S,S)-3-オキソC
12-ACH)の存在下で、CD2、CD3及びCD28によって刺激されたヒトリンパ球によるIL-2分泌の阻害曲線を示す図である。
【
図6】天然の3-オキソ-C
12HSL分子及び本発明で使用される式I-2の分子に関連する細菌レポーター株上のLasR受容体の活性化曲線を示す図である。
【
図7】本発明で使用される式I-3の(S)-3-オキソC
12アミノチオラクトン((S)-3オキソC
12-HTL)の存在下でのIL-1βによるCaco-2/TC7細胞の刺激の結果を棒グラフ形式で示す図である。
【
図8】本発明で使用される式I-2の(S,S)-3-オキソC
12アミノシクロヘキサノール((S,S)-3オキソC
12-ACH)の存在下でのIFN-γ/LPSの組合せによるRaw264.7マウス細胞の刺激の結果を棒グラフ形式で示す図である。
【
図9】本発明で使用される式I-4の(R,S)-3-オキソC
12アミノシクロヘキサノール(R,S)-3-オキソC
12-ACH)の存在下でのIL-1βによるCaco-2/TC7細胞の刺激の結果を棒グラフ形式で示す図である。
【
図10】本発明で使用される式I-4の(R,S)3-オキソC
12-ACH)の存在下でのIFN-γ/LPSの組合せによるRaw264.7マウス細胞の刺激の結果を棒グラフ形式で示す図である。
【
図11】天然分子3-オキソ-C
12-HSL及び本発明で使用される式I-4の(R,S)-3-オキソC
12-アミノシクロヘキサノールに関連する細菌レポーター株上のLasR受容体の活性化曲線を示す図である。
【
図12】本発明で使用される式I-6の3-オキソC
12-アミノクロロフェノールの存在下でのIL-1βによるCaco-2/TC7細胞の刺激の結果を棒グラフ形式で示す図である。
【
図13】本発明で使用される式I-6の3-オキソC
12-アミノクロロフェノールの存在下でのIFN-γ/LPSの組合せによるRaw264.7マウス細胞の刺激の結果を棒グラフ形式で示す図である。
【
図14】天然分子3-オキソ-C
12-HSL及び本発明で使用される式I-6の3-オキソC
12-アミノクロロフェノールに関連する細菌レポーター株上のLasR受容体の活性化曲線を示す図である。
【
図15】刺激条件下(LPS10ng/mL、IFN-γ20U/mL)でのRaw264.7マウス細胞による23種のサイトカインの分泌をヒートマップとして示す図である(対照に対して正規化)。
【
図16】ヒストグラム形式で示す図であり、 上は、3-オキソ-C
12:2-HSLの存在下でLPS及びインターフェロンγによって刺激されたRaw264.7.7マウス細胞によって分泌されたTNFαの量である。 下は、PCAの存在下でLPS及びインターフェロンγによって刺激されたRaw264.7マウス細胞によって分泌されたTNFαの量である。
【
図17】目的の3つのサイトカインであるRantes、TNFα、IL1-βについて、定量的PCRによりメッセンジャーRNAを測定して得られた遺伝子発現の結果を示す図である。
【
図18】刺激されたCaco-2/TC7細胞に対するAHL3オキソC
12-HSL(A)及び3オキソC
12:2-HSL(B)処理の細胞傷害性をヒストグラム形式で示す図である。異なる反復実験の平均値(n≧3)±SEMである。
【
図19】基礎(A、B)又は刺激(C、D)状態のRaw264.7マウス細胞に対するAHL3-オキソ-C
12-HSL(A、C)及び3-オキソ-C
12:2-HSL(B、D)処理の細胞傷害性をヒストグラム形式で示す図である。異なる反復実験の平均値(n=3)±SEM刺激である。
【
図20】Caco-2/TC 7(左)及びRaw264.7(右)細胞株における刺激条件下でのLDH分泌をヒストグラム形式で示す図である。複数の反復実験の平均値(n≧6)±SEMである。
【
図21】Caco-2/TC7(A)及びRaw264.7(B)細胞株における刺激条件下でのLDH分泌をヒストグラム形式で示す図である。複数の反復実験の平均値(n≧6)±SEMである。
【
図22】Caco-2/TC7(A)及びRaw264.7(B)細胞株における刺激条件下でのLDH分泌をヒストグラム形式で示す図である。複数の反復実験の平均値(n≧8)±SEMである。
【
図23】対照分子又は3オキソC12-HSL及び3オキソC
12:2-HSL AHLの漸増用量の存在下での18時間のインキュベーション後の大腸菌K12株の比較生存率をヒストグラム形式で示す図である。異なる反復実験の平均値(n=6)±SEMである。
【
図24】対照分子又は100μMの分子の存在下での18時間のインキュベーション後の大腸菌K12株の比較生存率をヒストグラム形式で示す図である。異なる反復実験の平均値(n=6)±SEMである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は、より良好な安定性、遅延した細菌認識及びより低い毒性を有しながら、腸内で産生される天然AHLのものと少なくとも同等の抗炎症活性及びタイトジャンクションに対する作用を有するN-アシル-ホモセリンラクトン(AHL)の合成生体模倣類似体の発見に基づいている。
【0045】
本発明で使用される化合物が類似体である、腸で産生される天然AHLは、3-オキソ-C12-HSL及び-オキソ-C12:2-HSLである。
【0046】
本発明者らは、これらの天然AHLを3つの目的の領域にセグメント化した。
-ラクトンホモセリンヘッド
-炭素鎖の3番目の炭素でケトンを形成するオキソ置換
-炭素数10~16のアシル鎖。
【0047】
更に、AHLのL-エナンチオマーは活性形態である(D-エナンチオマーの活性はない)。
【0048】
次いで、本発明者らは、このようにして得られた類似体のヒト及びマウス細胞に対する生物学的活性、安定性及び細菌認識に対する、これらの3つの目的の領域の各々の様々な化学基による改変の影響を研究した。
【0049】
次いで、本発明者らは、炭素鎖の長さが10個から最大16個の炭素原子であってもよく、最適な長さが14個の炭素原子であり、低い立体障害の化学基の付加のみを許容することを発見した。C3位におけるラクトン基の存在は、除去又はアセタールへの変換がAHLの抗炎症活性を阻害するので必要である。頭部基は、サイズを過度に大きくせず、水素結合を提供することができる化学基を保持する軽微な修飾のみを許容することができる。
【0050】
したがって、上皮の炎症性疾患、特に腸の炎症性疾患及び乾癬の治療のために本発明で使用される化合物は、以下の一般式Iを有する:
【化17】
式中、
- X、Y、Z及びWは、互いに独立して、炭素原子又はS、N及びOから選択されるヘテロ原子であり、但し、XはOとは異なり、
- X、Y、Z及びWは、互いに独立して、Cl、F、Br及びIから選択されるハロゲン、又は直鎖若しくは分岐鎖のC
1~C
4アルキル基で場置換されていてもよく、
- x、y、z、及びwは、互いに独立して、0又は1であり、但し、
3≦x+y+z+w≦4であり、
- Rは、H又は直鎖若しくは分岐鎖のC
1~C
4アルキル基、又はヒドロキシル基(OH)又はアジド基(N
3)を表し、
-R’は、H又は直鎖若しくは分岐鎖のC
1~C
4アルキル基を表し、
- ------は、単結合又は二重結合(シス又はトランス)を表す。
【0051】
式Iのこれらの化合物は、薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて使用して、医薬組成物を形成することができる。
【0052】
医薬組成物は、ゲル、クリーム、バームなどの固体又は液体又は半固体形態の任意の投与形態に製剤化することができ、経口、直腸、静脈内又は局所投与することができる。
【0053】
この医薬組成物は、特に、上皮の炎症性疾患、特に腸の炎症性疾患及び乾癬の治療を意図する。
【0054】
上皮の炎症性疾患の治療に使用するための好ましい化合物は以下の化合物である。
【0055】
これらの化合物の第1は、以下の式I-1の(D/L)-3オキソC12アミノチオラクトン(D/L)-3オキソC
12-HTL)である:
【化18】
【0056】
式I-1の化合物は、ラクトン頭部がチオラクトン基によって置換されている天然の3-オキソ-C12 HSLに対応する。
【0057】
本発明で使用される式I-1の(D/L)-3オキソC
12アミノチオラクトンの存在下でのIL-1βによるCaco-2/TC7細胞の刺激の結果を棒グラフ形式で示す
図1に示すように、DMSOと比較して、この化合物は、ヒトCaco-2/TC7腸細胞株(腸上皮の細胞)において、天然の3-オキソ-C
12 HSLの活性と同等の活性を示し、100μM用量で後者よりも活性である。
【0058】
図2は、天然分子C4-HSL及び3-オキソ-C
12-HSL並びに本発明で使用される式I-1の分子に関連する細菌レポーター株上のLasR受容体の活性化曲線を示す。
【0059】
この
図2から、式I-1のラセミ体は、天然分子3-オキソ-C
12-HSLに対して125nM対9nMのEC
50で、及び天然分子C
4-HSLに対して認識なし(EC
50>1000μM)で、遅延認識能力を示すことが分かる。
【0060】
第2のこれらの化合物は、以下の式I-2の(S,S)3-オキソC
12アミノシクロヘキサノール((S,S)3オキソC
12-ACH)である:
【化19】
【0061】
式I-2の化合物は、ラクトン頭部が(S,S)-アミノシクロヘキサノール基によって置換されている3-オキソ-C12 HSLに対応する。
【0062】
本発明で使用される式I-2の(S,S)-3-オキソC
12アミノシクロヘキサノール((S,S)-3-オキソC
12-ACH)の存在下でのIL-1BによるCaco-2/TC7細胞の刺激の結果を棒グラフ形式で示す
図3から、この化合物は、ヒトCaco-2/TC7腸細胞株において1~50μM範囲で天然3-オキソ-C
12 HSLの活性と同等の活性を示すことが分かる。本発明で使用される式I-2の(S,S)3-オキソC
12アミノシクロヘキサノール((S,S)3-オキソC
12-ACH)の漸増用量の存在下でIL-17及びTNF-αによって刺激されたヒトケラチノサイトによるIL-8分泌の阻害曲線を示す
図4に見られるように、この化合物は、111nMの相対EC
50及び参照化合物ベタメタゾンの存在下で得られた阻害の39%に相当する最大阻害を示し、これにより、人体の様々な器官から生じるいくつかの細胞株に対するこの分子の抗炎症効果の一般化を示すことが可能になる。
【0063】
本発明で使用される式I-2の(S,S)-3-オキソC
12-アミノシクロヘキサノール((S,S)-3-オキソC
12-ACH)の漸増用量の存在下で、CD2、CD3及びCD28によって刺激されるヒトリンパ球によるIL-2分泌の阻害曲線を示す
図5から、この化合物は、89.9nMの相対EC
50及び基準化合物ベタメタゾンの存在下で得られた阻害の46%に相当する最大阻害を示すことが分かり、これは、この分子の抗炎症効果が、人体の様々な器官から生じるいくつかの細胞株に一般化されることを裏付けている。
【0064】
図4及び
図5から、式A及び式Bの天然のAHLは試験の範囲内で不活性であることも分かるが、その結果は
図4及び
図5に示されており、これは本発明で使用される式Iの分子の優位性を実証している。
【0065】
天然の3-オキソ-C
12HSL分子及び本発明で使用される式I-2の分子に関連する細菌レポーター株上のLasR受容体の活性化曲線を示す
図6から、式I-2の化合物のEC
50は165nMである。したがって、式I-2の化合物は、式I-1の化合物よりも更に遅延認識能力を有する。
【0066】
最後に、式I-2のこの分子も加水分解に耐性であり、開環形態(酵素的及び自発的の両方)を与える。
【0067】
図8は、式I-2の(S,S)-3-オキソC
12アミノチオラクトン((S,S)-3オキソC
12-ACH)の存在下でのIFN-γ/LPSの組合せによるRaw264.7マウス細胞の刺激の結果を棒グラフ形式で示す。この図は、1~50μMの濃度範囲の全ての用量で、式I-2の化合物が参照分子3-オキソ-C
12-HSLよりも活性であることを示す。
【0068】
第3の化合物は、以下の式I-3の(S)-3-オキソC
12アミノチオラクトン((S)-3オキソC
12-HTL)である:
【化20】
【0069】
式I-3の化合物は、ラクトン頭部がチオラクトン基によって置換されている3-オキソ-C12 HSLに対応する。
【0070】
式I-3の(S)-3-オキソC
12アミノチオラクトン((S)-3オキソC
12-HTL)の存在下でのIL-1βによるCaco-2/TC7細胞の刺激の結果を棒グラフ形式で示す
図7に示すように、本発明で使用される式I-3の分子で観察される効果は、天然の3-オキソ-C
12-HSL分子で観察される効果と同様であり、特に5μMで炎症分泌が27%減少した。
【0071】
第4の化合物は、以下の式I-4の(R,S)-3-オキソC12-アミノシクロヘキサノールである:
【化21】
【0072】
図9は、本発明で使用される式I-4の(R,S)-3-オキソC
12アミノシクロヘキサノール((R,S)-3-オキソC
12-ACH)の存在下でのIL-1βによるCaco-2/TC7細胞の刺激の結果を棒グラフ形式で示す。
【0073】
図9から、ヒト腸細胞株Caco-2/TC7において、1~50μMの範囲で天然の3-オキソ-C
12 HSLの活性と同等の活性が見られる。
【0074】
図10は、本発明で使用される式I-4の(R,S)3-オキソC
12-ACHの存在下でのIFN-γ/LPSの組合せによるRaw264.7マウス細胞の刺激の結果を棒グラフ形式で示す。
【0075】
図10から、Raw264.7マウスマクロファージ株において、分子は、1~50μMの範囲で天然の3-オキソ-C
12 HSLよりも高い活性を示すことが分かる。
【0076】
図11は、天然分子3-オキソ-C
12-HSL及び本発明で使用される式I-4の(R,S)3-オキソC
12-アミノシクロヘキサノールに関連する細菌レポーター株上のLasR受容体の活性化曲線を示す。
図11から分かるように、式I-4の(R,S)-3-オキソC
12-アミノシクロヘキサノールは、EC
50が200μMである。したがって、式I-4の化合物は、天然のAHLと比較して非常に遅延した認識能力を有する。
【0077】
第5の化合物は、以下の式I-5の3-オキソC
12-アミノシクロヘキサノールである:
【化22】
【0078】
式I-5の化合物は、ラクトン頭部がアミノシクロヘキサノール基によって置換されている3-オキソ-C12 HSLに対応する。
【0079】
第6の化合物は、以下の式I-6の3-オキソC
12-アミノクロロフェノールである:
【化23】
【0080】
式I-6の化合物は、ラクトン頭部がアミノクロロフェノール基によって置換されている3-オキソ-C12 HSLに対応する。
【0081】
図12は、本発明で使用される式I-6の3-オキソC
12-アミノクロロフェノールの存在下でのIL-1βによるCaco-2/TC7細胞の刺激の結果を棒グラフ形式で示す。
【0082】
図12から、ヒト腸細胞株Caco-2/TC7において、分子は、10~100μMの範囲で天然の3-オキソ-C
12 HSLの活性よりも有意に高い活性を示すことが分かる。
【0083】
図13は、本発明で使用される式I-6の3-オキソC
12-アミノクロロフェノールの存在下でのIFN-γ/LPSの組合せによるRaw264.7マウス細胞の刺激の結果を棒グラフ形式で示す。
【0084】
図から分かるように、式I-6の分子は、Raw264.7マウスマクロファージ株において、10~50μMの範囲で天然の3-オキソ-C12 HSLの活性よりも有意に高い活性を示す。
【0085】
図14は、天然分子3-オキソ-C
12-HSL及び本発明で使用される式I-6の3-オキソC
12-アミノクロロフェノールに関連する細菌レポーター株上のLasR受容体の活性化曲線を示す。
【0086】
図から分かるように、式I-6の分子のEC50は1000μMを超える。式I-6の分子は、天然のAHL及び本発明で使用される式I-1~I-5の分子と比較して最も遅延した認識能力を有する。
【実施例】
【0087】
1.生物学で使用される実験手順及びプロトコル
【0088】
・ ペニシリン-ストレプトマイシン抗生物質、非必須アミノ酸(NEAA)及びL-グルタミンはInvitrogen(Thermo Fisher Scientific、米国ウォルサム)から入手した。ダルベッコリン酸(DPBS 10X)で緩衝した生理食塩水、高グルコース細胞培養培地(DMEM GlutaMAX 4.5g/Lグルコース)、DMEM、及びフェノールレッドを含まないDMEMはGibco(Thermo Fisher Scientific、米国マサチューセッツ州ウォルサム)から入手した。ウシ胎児血清はGE Healthcare(Life Sciences、米国ユタ州サウス・ローガン)から入手した。
【0089】
・ 2-ヒドロキシキノリン(CAS[59-31-4])、3オキソC12-HSL分子、及び滅菌DMSOは、Sigmaから購入した。分子3オキソC12:2-HSLは、必要に応じてDiverchim(フランス、ロワシー=アン=フランス)によって合成した。
【0090】
・ 全ての吸光度及び発光試験は、Molecular Devices(登録商標)のSpectraMax M5分光計で読み取った。
【0091】
1.1.細胞培養
【0092】
1.1.1.Caco-2/TC7細胞株
【0093】
・ Caco-2細胞株は、ヒト結腸腺癌に由来し、小腸の上皮を裏打ちする腸細胞の細胞培養モデルを表す。Caco-2/TC7細胞株は、正常なヒト腸細胞の形態学的及び機能的特徴の大部分をかなりの程度均一に再生するCaco-2細胞のクローン集団である。
【0094】
・ Caco-2/TC7細胞は、細胞がコンフルエンスに達すると増殖停止をもたらす接触阻害特性を示し、これにより細胞単層の確立が可能になる。指数増殖期(播種からコンフルエンスまで)の間、細胞は未分化のままである。コンフルエンスでは、細胞は自発的に(分化誘導物質の非存在下で)分化し、漸進的に極性化することができる。増殖関連機構である分化過程は、コンフルエンスの終了時(増殖曲線の定常期)に最大となる。
【0095】
・ 細胞は、微絨毛を含み、ヒドロラーゼなどの特徴的な腸細胞性酵素を有する頂極で刷子縁を発達させる。
【0096】
・ 公開された文献に従って、本発明者らの実験におけるCaco-2/TC7細胞を、6ウェルプラスチック培養プレートに105細胞/ウェル(10~12×103細胞/cm2に相当)で播種した。細胞を、20%熱不活性化ウシ胎児血清、1%非必須アミノ酸NEAA及び1%ペニシリンストレプトマイシンを補充したグルコースに富む培地(DMEM GlutaMAX培地中の高グルコース4.5g/lグルコース)中で維持した。細胞を、10%CO2/空気雰囲気中、37℃で増殖させた。培地を毎日交換した。これらの条件下で、細胞は6日目にコンフルエントになった。17日目に細胞を血清飢餓にし、18日目に使用した。
【0097】
1.1.2.Raw264.7細胞株
【0098】
・ Raw264.7細胞株は、エーベルソン白血病ウイルスによって形質転換された細胞株に由来するマクロファージ型のマウス細胞からなり、BALB/cマウスから提供されたものである。この細胞株は、インビトロでマクロファージのモデルとして非常に頻繁に使用される。Raw264.7細胞は、食作用及び飲作用が可能であり、抗体依存性細胞傷害性によって標的細胞を死滅させることができ、広範囲の炎症性サイトカイン並びに一酸化窒素(NO)を分泌する。更に、Raw264.7細胞は非常に便利な細胞株であり、細胞は急速に増殖し、小さな直径のウェルを認識し、コンフルエンス前に使用されるべきである。これらの条件により、化合物スクリーニングに有利な株となる。
【0099】
細胞を継代13と26の間に使用した。
【0100】
・ 使用したRaw264.7細胞は、ATCCバンクからのものである。細胞を、10%熱不活性化ウシ胎仔血清及び1%L-グルタミンを200mMまで補充したDMEM中で増殖させ、5%CO2/空気雰囲気下で37℃で維持した。培地を2日ごとに交換した。
【0101】
1.1.3.細菌レポーター株大腸菌pSB1075
【0102】
・ クオラムセンシングの細菌レポーター株を使用して、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)AHL受容体(LasR)によって認識され、活性化を誘導する分子の能力を研究した。したがって、大腸菌(Escherichia coli)pSB1075株を使用した。
【0103】
・ 腸内細菌である大腸菌(Escherichia coli)は、AHLを天然に産生せず、AHLを認識することができるオーファン受容体も有していない。この生物発光株をプラスミドpSB1075の添加によって改変した。このプラスミドは、テトラサイクリン耐性及び緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来のLasR AHL受容体の発現の両方をコードする遺伝子、並びにLasRプロモーターに由来する融合遺伝子及びフォトラブダス・ルミネセンス(Photorhabdus luminescence)由来のluxCDABE遺伝子を含む。細菌株を、5μg/mlテトラサイクリンを補充したLB培地中で増殖させて選択圧をかけ、所望の株のみが増幅されるようにした。プラスミドに含まれる融合遺伝子は、LasR受容体が活性化されたときに生物発光を発する能力を細菌に与え、分子スクリーニングのためのロバストな試験をユーザに提供する。緑膿菌(P.aeruginosa)のLasR受容体は、長鎖AHL、特にその天然パートナーである3オキソC12-HSLの認識によく適しており、最も高い生物発光応答を引き起こす。対照的に、C4-HSLなどの短鎖AHLは生物発光の放出を誘導しない。
【0104】
・ 簡潔には、5μg/mlテトラサイクリンを補充した10mlのLB培地中で0日目に細菌培養を開始し、70rpmで撹拌しながら37℃で24時間維持した。1日目に、5μg/mlテトラサイクリンを補充した10mlのLB培地で1:100(P1)に培養液を希釈し、70rpmで撹拌しながら37℃で24時間維持した。2日目に、実験を行い、5μg/mlテトラサイクリン(P2)を補充したLB培地で1:10に即時希釈した細菌懸濁液を黒色不透明96ウェルプレートに分注し、得られた発光が終点で読み取られるまで、一定範囲のAHL濃度又は対照と共に4時間インキュベートした。全ての実験を3連で行った。
【0105】
1.1.4.殺菌剤の用量
【0106】
・ 0日目に大腸菌(E.coli)のK12株を寒天上で増殖させ、1日目にコロニーをLYBHI液体細菌培養培地に移した。2日目に、コロニーをLYBHI培地で1:100に希釈し、18時間増幅した後、不透明な96ウェルプレートに移した。各ウェルには、LYBHI、対照、又は漸増用量の試験分子及び細菌を分布させた。600nmでの吸光度を、開始時(t=0)及び18時間のインキュベーション後に読み取った。生の吸光度値を、細菌を含まない溶液の吸光度を用いて補正した。全ての実験を2回行い、それぞれ4回繰り返した。
【0107】
1.2.哺乳動物細胞における分子の生物学的活性の評価
【0108】
1.2.1.サイトカインによるCaco-2/TC7の刺激
【0109】
・ Caco-2/TC7細胞を100,000細胞/ウェルで6ウェルプレートに播種し、18日間増殖させた。17日目に細胞を血清飢餓にし、これは、細胞培地をウシ胎仔血清非含有培地と交換し、18日目に使用したことを意味する。
【0110】
・ 刺激培地は、「飢餓培地」と呼ばれる培地、すなわち100μMの2-HQを含み、ウシ胎仔血清(DMEM GlutaMAX、1%NEAA、1%ペニシリン-ストレプトマイシン)を含まない培地で構成されていた。細胞を、0.1%DMSO(陰性対照)を含有する刺激培地、又は所望の濃度で試験化合物を含有する刺激培地2mlと共に、炎症促進性サイトカインの存在下又は非存在下で、37℃で18時間インキュベートして炎症を誘導した。炎症を誘導するために、それぞれ25ng/mlのIL-1β又は50ng/mlのTNF-αとIFN-γの組み合わせのいずれかを使用した。18時間後、上清を回収し、-80℃で保存した後、ELISA試験による分析を行った。細胞を1mlのPBS 1X/ウェルで洗浄し、1%Triton X-100を含有する100μlのPBS 1Xに溶解した。掻爬することによって細胞を回収し、-80℃で保存した後、タンパク質を定量した。LDHの投与は、凍結直前に行った。
【0111】
・ 細胞に対する全ての実験を3連で行った。
【0112】
1.2.2.LPS及びIFN-γによるRaw264.7の刺激
【0113】
・ Raw264.7細胞を、75,000細胞/ウェルで12ウェルプレートに、又は40,000細胞/ウェルで24ウェルプレートに播種して、培養の3日後に80~90%のコンフルエンスに達した。刺激のために、細胞を、LPS(10ng/ml)及びIFN-γ(20U/ml)の存在下又は非存在下で、0.1%DMSO(陰性対照)又は所望の濃度で試験化合物を含有する750μL(それぞれ500μL)の100μM2-HQ富化細胞培地共に37℃で6時間インキュベートして、炎症を確立した。6時間後、上清を回収し、-80℃で保存した後、ELISA試験による分析を行った。掻爬することによって細胞を回収し、100μLのPBS 1X/ウェル中で、-80℃で保存した後、総タンパク質を定量した。LDHの投与は、凍結直前に行った。
【0114】
・ 全ての実験を3連で行った。
【0115】
1.2.3.細胞溶解物中のタンパク質濃度の測定
【0116】
・ 細胞溶解物中の総タンパク質濃度を、製造業者(Uptima-Interchim、フランス、モントルソン)の指示に従って、ビシンコニン酸(BCA)及びウシ血清アルブミン(BSA)であるタンパク質のアッセイ試薬を使用して決定した。
【0117】
1.2.4.ELISAによるヒトサイトカインの定量
【0118】
・ 細胞によって産生された炎症促進性サイトカインIL-8のレベルを、R&D Systems(米国ミネソタ州ミネアポリス)によって提供される市販のIL-8ELISA検出キット(Duoset Human C X CL8/IL-8、参照番号DY208)を製造業者の指示に従って使用して、細胞上清及び/又は細胞溶解物中で決定した。
【0119】
・ 全てのサイトカインレベルを、対応する細胞溶解物において決定されたタンパク質含有量に対して最初に正規化した。次いで、実験を比較するために、100%応答として活性化対照条件(DMSO+サイトカイン)を使用して実験を更に正規化することができた。
【0120】
1.2.5.マウスサイトカインの定量
【0121】
・ 細胞によって産生されたIL-6マウスサイトカインのレベルを、BD Biosciences(米国カリフォルニア州サンノゼ、参照番号555240)から市販されている「BD OptEIAマウスIL-6ELISAセット」を使用して、細胞上清又は溶解物中で決定した。全てのELISAキットを製造者の指示に従って使用した。
【0122】
・ サイトカイン率を、対応する細胞溶解物中で決定されたタンパク質含量に対して最初に正規化した。実験を比較するために、100%応答として活性化対照条件(DMSO+サイトカイン)を使用することによって、実験を更に正規化することができた。
【0123】
1.2.6.細胞傷害性試験
【0124】
・ 試験化合物及び対照の細胞傷害性は、炎症促進性サイトカインの存在下又は非存在下で、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の放出試験で評価し、これは、細胞上清中のこの酵素の放出を追跡し、膜損傷及び細胞死の良い指標である。化合物は、その分泌されたLDH率が10%を超えた場合、細胞傷害性とみなされた。
【0125】
・ 2つの方法であるピルビン酸/NADH溶液(Sigma)を用いた測定、又はRoche(Sigma-Aldrich)の細胞傷害性検出キットPLUS(LDH)を用いた測定を使用して試験を行うことができる。
【0126】
・ ピルビン酸/NADH法のために、60mlの0.1M PBS(pH7.4)中の4.1mgピルビン酸(0.62mM)及び7.7mg NADH(0.18mM)を用いてピルビン酸/NADH溶液を調製した。
【0127】
・ 上清中のLDH濃度を測定するために、800μLのNADHをプラスチックキュベット中の200μLの上清に添加し、340nmでの吸光度の減少を1分間監視した。細胞溶解物中のLDH濃度を測定するために、800μLのNADHをプラスチックキュベット中の10μLの上清及び190μLの0.1M PBSに添加し、340nmでの吸光度の減少を1分間監視した。上清中に放出されたLDHのパーセンテージを、上清と細胞溶解物の補正された勾配の比率として計算した。
【0128】
・ 細胞傷害性検出キットPLUS(LDH-Roche-参照番号04744934001)を使用して、吸収ベース及び比色試験によって細胞上清及び溶解物中のLDHレベルを決定し、製造業者の指示に従って実施した。細胞傷害性のパーセンテージは、以下の式を用いて確立することができた。
【0129】
【0130】
1.3.細菌レポーター株大腸菌pSB1075に対する分子の生物学的活性
【0131】
・ 大腸菌(Escherichia coli)は、AHLを天然に産生しない。この生物発光株は、テトラサイクリン耐性及びLasR AHL受容体の発現をコードする遺伝子、並びにLasRプロモーターとフォトラブダス・ルミネセンス(Photorhabdus luminescence)のluxCDABE遺伝子との融合遺伝子を含むプラスミドpSB1075の添加によって開発された。
【0132】
・ 1日目に、細菌株の1/100希釈液(P1)を、5μg/mlテトラサイクリンを含有するLB培地(圧力選択性)中、撹拌下(70rpm)しながら37℃で24時間増殖させた。2日目に、P1を同じ培地で1:10に希釈してP2を得た。黒色の96ウェルプレートに、200μLのP2及び10μLの短鎖化合物(陰性対照としては培地、水及びDMSO、陽性対照としてはC4-HSL、並びに所望の濃度の試験試料)を入れた。プレートを70rpmで撹拌しながら37℃で4時間インキュベートした。次いで、発光をマイクロプレートリーダで全ての波長(積分時間200ms)で読み取った。
【0133】
・ 競合アッセイについては、培養プロトコルは同様であったが、細菌を最初に1、10又は100nMの3オキソC12-HSLと共に異なる期間(1、2、6又は16時間)プレインキュベートした後、希釈してP2を得た。その後、試験化合物を所望の濃度で用いて、従来のプロトコルに従ってインキュベーションを継続した。
【0134】
1.4.統計解析
【0135】
・ 全てのデータは、n回の独立した実験の平均±SEMとして表され、ガウス分布について試験された。統計学的有意性は、スチューデント検定t、一元配置分散分析、二元配置分散分析、又はクラスカル・ワリス検定によって、データセットに応じて、事後検定(チューキー又はダン多重比較検定)と組み合わせて試験した。p<0.05の場合、差を有意とみなした。全ての統計分析は、Prism6.0、GraphPadソフトウェアを使用して行った。
【0136】
2.化学における材料及び方法
【0137】
・ 特に明記しない限り、全ての反応は乾燥ガラス器具中アルゴン雰囲気下で行った。試薬は、商業的供給業者Sigma-Aldrich及びTCI Chemicalsから購入し、更に精製することなく使用した。
【0138】
・ フラッシュクロマトグラフィは、ArMen製の自動化SPOTプラットフォーム上に搭載されたCHROMABOND(登録商標)Flash(Macherey-Nagel、ドイツ、デューレン)の予め包装されたシリカゲルカラム(40~63μmの不規則なSiO2シリカゲル)で行った。
【0139】
・ 薄層クロマトグラフィは、シリカゲル60F254(Millipore、Merck)でコーティングされたアルミニウムシートで行い、過マンガン酸カリウム(KMnO4)、シリカ上のヨウ素、ブロモクレゾールグリーン又はUV光(254nm又は365nm)下で明らかにした。
【0140】
2.1.N-アシルホモセリンラクトン及びそれらの類似体における原子の番号付けに関する規則
【0141】
・ AHL分子及びそれらの類似体に採用される原子の番号付けは以下の通りである。
【化24】
【0142】
2.2天然AHL、中間体及び非天然類似体の合成及び物理化学的特性評価のための実験手順
【0143】
・ メルドラム3a-b酸誘導体(GP1)の一般的な調製手順
【0144】
・ 適切なカルボン酸(1.0当量)をジクロロメタン(DCMと表示)(1.5ml/mmol酸)に室温で溶解した。DCC(1.1当量)、DMAP(1.05当量)、及びメルドラム酸(1.0当量)を混合物に順次添加した。反応混合物をアルゴン雰囲気下、室温で一晩撹拌した。反応を1:1のEtOAc/シクロヘキサン混合物中のTLCで監視し、ヨウ素で明らかにした。
【0145】
・ 反応の完了後、反応混合物を濾過して沈殿したDCUを除去し、濾過残渣をジクロロメタンで十分に洗浄した。濾液を回収し、溶媒を真空下で除去した。得られた油状物をEtOAcで希釈し、有機相をHCl 1Mで抽出し(2回)、水相をEtOAcで洗浄した(2回)。合わせた有機相をMgSO4で乾燥させた後、真空下で溶媒を除去する。油状物の形態で得られた粗生成物を次のステップに直接使用した。
【0146】
・ 2,2-ジメチル-5-(1-オキソデシル)-1,3-ジオキサン-4,6-ジオン3a[182359-65-5]
【化25】
【0147】
・ GP1により収率94%で調製。1H RMN(300MHz,CDCl3):δ:12-3.03(m,2H,C(4)H2),1.74(s,6H,OC(CH3)2O),1.45-1:24(m,14H C(5)H2~C(11)H2),0.91~0.86(m,3H,C(12)H3)。13C RMN(75MHz、CDCl3):δ198.32(C(3))、170.57(エステル)、160.18(エステル)、104.74(OC(CH3)2O)、91.23、35.74、31.83、29.37、26.76、26.15、22.65、14.08(C(12))。Rf(1:3 EtOAc/Cychex):0.22。
【0148】
・ 2,2-ジメチル-5-(1-オキソデシル)-1,3-ジオキサン-4,6-ジオン3bアジド
【化26】
【0149】
GP1により収率87%で調製。1H RMN(300MHz、クロロホルム-d):3.24(t,J=6.9Hz,2H,C(12)H),3:08-3:02(m,2H,C(4)H2),2.12(s,1H,C(2)H),1.72(s,6H,C(CH3)2),1.62-1.54(m,4H,C(5)H2及びC(6)H2,1.31-1.28(m,10H,C(7)H2~C(11)H2)。13C RMN(75MHz,CDCl3):δ198.33(ケトン),170.68(エステル),160.30(エステル),104.88(C2),91.36(OC(CH3)2O),51.56(C12,43.87(C4),35.82(C5),29.37,29.17,28.92,26.91((CH3)2),26.77,26.20,23.91。Rf(1:3EtOAc/Cychex):0.25。
【0150】
・ メルドラム4a-b酸誘導体(GP2)のメタノリシスの一般的手順
【0151】
・ メルドラム3a-c酸誘導体(1.0当量)を過剰のメタノールに溶解し、反応フラスコにアルゴン雰囲気下で還流装置を取り付けた。反応物を還流で2時間加熱し、次いで、加熱を停止し、混合物を自然に室温まで冷却させ、一晩撹拌した。反応の進行に続いて、EtOAc/シクロヘキサン混合物中で1:1のTLCを行い、ヨウ素で明らかにした。完了したら、溶媒を真空下で除去し、油状生成物を以下のステップでそのままで使用した。
【0152】
・ 3-オキソドデカン酸メチル4a[76835-64-8]
【化27】
【0153】
・ GP2により収率96%で調製。1H RMN(300MHz,CDCl3)δ3.75(s,3H,OC H3),3.46(s,2H,C(2)H2),2.54(t,J=7.4Hz,2H,C(4)H2),1.59(d,J=7.4Hz,2H,C(5)H2),1.28(s,12H,C(6)H2~C(11)H2),0.92~0.87(m,3H,C(12)H3)。13C RMN(75MHz,CDCl3):δ202.86(C3),167.70(C1),52.31(OCH3),49.01,43.09,31.85,29.39,29.34,29.24,29.00,23.47,22.66,14:09(C12)。Rf(1:3 EtOAc/Cychex):0.55。
【0154】
・ 酸12-アジド-3-オキソドデカン酸のメチルエステル4b[1421598-01-7]
【化28】
【0155】
・ GP2により収率81%で調製。1H RMN(300MHz,CDCl3):δ3.71(s,3H,OC H3),3.42(s,2H,C(2)H2),3.22(t,J=6.9Hz,2H,C(12)H2),2.50(t,J=7.3Hz,2H,C(4)H2),01.55(q,J=6.8Hz,2H,C(5)H2),1.27(t,J=4.7Hz,12H,C(6)H2~C(11)H2)。13C RMN(75MHz,CDCl3):202.85,167.77,52.40,51.56,49.11,43.12,29.36,29.30,29.14,29.02,28.91,26.77,23.50。Rf(1:3 EtOAc/シクロヘキサン):0.6.
【0156】
・ 位置C3 5a-b(GP3)にアセタールを導入するための一般的な手順
【0157】
・ エステル3-ケトメチル4a-b(1.0当量)をトルエン(約1ml/mmolエステル)に希釈し、カンファースルホン酸(0.2当量)、トリメチルオルトホルマート(5.0当量)、及びエチレングリコール(8.9当量)を連続的に添加した。反応混合物を80℃に3時間加熱し、自然に冷却させ、室温で一晩撹拌した。反応後、EtOAc/シクロヘキサン1:6混合物中でTLCを行い、ヨウ素で明らかにした。完了したら、トルエンを真空下で除去し、得られた油状物をDCMに溶解した。有機相を飽和NaHCO3溶液(3回)で抽出し、水相をDCMで洗浄した。合わせた有機相をMgSO4で乾燥させ、真空下で溶媒を除去した。
【0158】
・ 必要に応じて、油状生成物を、1:8~1:2 EtOAc/シクロヘキサンの溶出勾配を使用するシリカカラムでのフラッシュクロマトグラフィによって精製した。
【0159】
・ 酸2-ノニル-1,3-ジオキソラン-2-酢酸のメチルエステル5a[109873-29-2]
【化29】
【0160】
GP3により収率95%で調製。1H RMN(300MHz,CDCl3):δ04:01-3.95(m,4H,OCH2CH2O),3.70(s,3H,OCH3),2.67(s,2H,C(2)H2),1.83-1.76(m,2H,C(4)H2),1.41-1:36(m,2H,C(5)H2),1.28(d,J=5.4Hz,12H,C(6)H2~C(11)H2),0.91-0.85(m,3H,C(12)H3)。13C RMN(75MHz,CDCl3):δ170.05(C1),109.41(C3),65.10(ケタール),51.72(OCH3),42.42,37.75,31.88,29.68,29.56,29.51,29.29,23.51,22.67,14.10(C12)。Rf(1:8EtOAc/Cychex):0.31。
【0161】
・ 酸2-(9-アジド)ノニル-1,3-ジオキソラン-2-酢酸のメチルエステル5b
【化30】
【0162】
・ GP3により収率93%で調製。1H RMN(300MHz,CDCl3):δ04:00-3.93(m,4H,OCH2CH2O),3.67(d,J=0.9Hz,3H,OCH3),3.23(t,J=6.9Hz,2H,C(12)H2),2.64(s,2H,C(2)H2),1.80-1.74(m,2H,C(4)H2),1.61-1.55(m,2HC(5)H2),1.28(d,J=5.3Hz,12H,C(6)H2~C(11)H2)。13C RMN(75MHz,CDCl3):δ170.15(C1),109.49(C3),65.22(アセタール),51.87(OCH3),51.59(C12),42.52,37.81,29.71,29.51,29.45,29.20,28.93,26.79,23.56。Rf(1:4EtOAc/Cychex):0.45。
【0163】
メチルエステル6a-b(GP4)の塩基性加水分解の一般手順
【0164】
・ ケタール保護メチルエステル5a-b(1.0当量)をTHF(1.25ml/mmolエステル)に溶解し、NaOH 1M溶液(約2.5当量)を添加した。反応混合物を3時間還流した。
【0165】
・ 反応の進行に続いて、1:8のEtOAc/シクロヘキサン中のTLCを行い、ヨウ素で明らかにした。
【0166】
・ 完了したら、反応混合物を室温に冷却した後、HCl 1Mを用いてpHを4~5に固定した。有機相をDCMで抽出した(3回)。合わせた有機相をMgSO4で乾燥させ、真空下で溶媒を除去して、所望の生成物を油状物として得た。
【0167】
・ 酸2-ノニル-1,3-ジオキソラン-2-酢酸6a[596104-60-8]
【化31】
【0168】
・ GP4により収率95%で調製。1H RMN(300MHz,CDCl3):δ10.93(s,1H,OH),4:06-3.99(m,4H,OCH2CH2O),2.72(s,2H,C(2)H2),1.85-1.78(m,2H,C(4)H2),1.43-1.37(m,2H,C(5)H2)1.29(d,J=5.2Hz,12H,C(6)H2~C(11)H2),0.92-0.87(m,3H,C(12)H3)。13C RMN(75MHz,CDCl3):δ174.61(C1),109.32(C3),65.10(OCH2CH2O),42.36(C2),37.61(C4),31.88,29.65,29.51,29.30,26.91,23.51,22.67,14.10(C12)。通常のTLC条件下では移動しない。
【0169】
・ 酸2-(9-アジド)ノニル-1,3-ジオキソラン-2-酢酸6b[1421598-02-8]
【化32】
【0170】
・ GP4により収率97%で調製。1H RMN(300MHz,CDCl3):δ8.77(s,1H,OH),4.07~3.93(m,4H,OCH2CH2O),3.24(t,J=6.9Hz,2H,C(12)H2),2.68(s,2H,C(2)H2),1.95~1.82(m,2H,C(4)H2),1.61~1.55(m,2H,C(5)H2),1.29(d,J=6.5Hz,12H,C(6)H2~C(11)H2)。13C RMN(75MHz,CDCl3)δ174.32(C1),109.42(C3),65.21(アセタール),51.59(C12),42.50,37.66,29.68,29.51,29.45,29.20,28.93,26.19,23.56。通常のTLC条件下では移動しない。
【0171】
・ 様々頭部基機能(GP5)を有するEDC及びDMAPを使用したケトアミドの一般的な調製
【0172】
・ 一般的な頭部基の場合、ケタール保護カルボン酸6a(1.0当量)をDCM(約7ml/mmol酸)に溶解し、以下を順次添加した:EDC(1.2当量)、DMAP(1.7当量)及び適切なアミノ頭部基(1.3当量)。
【0173】
・(S)-(-)-(α)-アミノ-(γ)ブチロラクトンの場合、ケタール保護された酸6a-b(1.0当量)及びEDC(1.1当量)をアルゴン雰囲気下でDCM(約2ml/mmol基質)に溶解し、室温で20分間撹拌した。次いで、DCM(約2ml/mmol基質)中の塩酸塩(S)-(-)-(α)-アミノ-(γ)ブチロラクトン(1.3当量)及びDMAP(1.7当量)を添加した。反応物をアルゴン雰囲気下、室温で12~22時間撹拌した。
【0174】
・ 反応の進行に続いて、EtOAc/シクロヘキサン混合物中でTLCを行い、頭部基の性質に応じて、ヨウ素、UV光、過マンガン酸カリウム又はブロモクレゾールグリーンを用いて確認した。反応が完了したら、追加のDCM(13ml/mmol基質)を添加し、有機相をHCl 1M(3回)で洗浄した。相を分離し、合わせた有機相をMgSO4で乾燥させ、真空中で溶媒を除去して、所望の化合物を油状物として得た。必要に応じて、生成物をシリカカラムでのフラッシュクロマトグラフィによって精製した。
【0175】
・(S)-(-)-(α)-アミノ-(γ)ブチロラクトン(GP5)からケトアミドを調製するためのECD及びEt3Nを使用する代替手順
DCM(約6ml/mmol基質)中の(S)-(-)-(α)-アミノ-(γ)塩酸塩ブチロラクトン(0.91当量)の溶液を撹拌した。Et3N(1.0当量)、保護された酸6a(1.0当量)及びEDC(1.37当量)を連続的に添加した。反応混合物を室温で40時間撹拌した。
【0176】
・ 反応後、EtOAc/Cychex1:2中でTLCを行い、ヨウ素、過マンガン酸カリウム及びUV光で明らかにした。完了したら、混合物を真空下で蒸発乾固した。残渣を水(8ml/mmol基質)とEtOAc(17ml/mmol基質)に分配し、有機相をNaHCO3の飽和溶液(2回)及びブライン(2回)で連続的に洗浄した。有機層をMgSO4上で乾燥させ、蒸発乾固させて、所望の化合物を油状物として得た。必要に応じて、生成物をシリカカラムでのフラッシュクロマトグラフィによって精製することができる。
【0177】
・(S)-2-(2-ノニル-1,3-ジオキソラン-2-イル)-N-(2-オキソテトラヒドロフラン-3-イル)アセトアミド7a[182359-61-1]
【化33】
【0178】
GP5及びGP5ビスによってそれぞれ収率88%及び91%で調製
【0179】
・ 1H RMN(300MHz,CDCl3):δ6.99(d,J=6.3Hz,1H,NH),04.58(ddd,J=11.6,8.6,6.3Hz,1H,CαH),4.46(td,J=9.1,1.3Hz,1H,HA),4.27(ddd,J=11.2,9.1,5.9Hz,1H,HB),4.11~3.96(m,4H,OCH2CH2O),2.80(dddd,J=12.5,8.7,5.9,1.3Hz,1H,HD),2.64(s,2H,C(2)H2),2.13(dtd,J=12.5,11.3,8.8Hz,1H,HC),1.71-1.65(m,2H,C(4)H2),1.39-1.33(m,2H,C(5)H2),1.27(d,J=7.0Hz,12H,C(6)H2~C(11)H2),0.91-0.84(m,3H,C(12)H3)。13C RMN(75MHz,CDCl3):δ175.35(C1),169.95(エステル),109.76(C3),66.06(CHA HB),65.25(CH2アセタール),65.12(CH2アセタール),49.11(CH),44.33,37.66,32.02,30.53(C HC HD),29.82,29.67,29.65,29.45,29.85,22.82,14.26(C12)。Rf(4:1 EtOAc/Cychex):0.35。HRMS(ESI):C18H31NO5Na([M+Na]+)について計算された正確な質量:362.2094。実測値364.2095。
【0180】
・ 12-アジド-3-(1,3-ジオキソラン)-N-((3S)-テトラヒドロ-2-オキソ-3-フラニル)ドデカンアミド7b
【化34】
【0181】
・ GP5により収率69%で調製。1H RMN(300MHz,CDCl3:δ99(d,J=6.4Hz,1H,NH),4.57(ddd,J=11.6,8.7,6.4Hz,1H,CαH),4.45(td,J=9.1,1.3Hz,1H,HA),4.26(ddd,J=11.1,9.1,5.9Hz,1H,HB),4.08-3.95(m,4H,OCH2CH2O),3.24(t,J=6.9Hz,2H,C(12)H2),2.84~2.73(m,1H,HD),2.63(s,2H,C(2)H2),2.13(dtd,J=12.5,11.4,8.9Hz,1H,HC),1.71~1.65(m,2H,C(4)H2),1.63~1.53(m,2H,C(5)H2),1:38-1:28(m,12H,C(6)H2~C(11)H2).13C RMN(75MHz,CDCl3):175.33(C1),169.90(エステル),109.71(C3),66.03(CHAHB),65.23(CH2アセタール),65.11(CH2アセタール),51.60(C12),49.07(CH),44.31,37.60,30.41(CHCHD),29.72,29.48,29.45,29.21,28.94,26.80,23.77。Rf(2:1EtOAc/シクロヘキサン):0.20。HRMS(ESI):C18H30N4O4Na([M+Na]+)について計算された正確な質量:405.2108。実測値:405.2110。
【0182】
・ 2-ノニル-N-(3-テトラヒドロ-2-オキソ-3-チエニル)-1,3-ジオキサラン-2-アセトアミド7f
【化35】
【0183】
・ 改変GP5により収率53%で調製。1H RMN(300MHz,CDCl3):δ6.89(d,J=6.6Hz,1H,NH),4.56(dt,J=13.1,6.7Hz,1H,CαH),4.10~3.93(m,4H,OCH2CH2O),03:34(td,J=11.7,5.1Hz,1H,HB),3.22(ddd,J=11.4,7.1,1.3Hz,1H,HA),2.86(dddd,J=12.1,6.7,5.1,1.4Hz,1H,HC),2.61(s,2H,C(2)H2),1.92(dq,J=12.4,7.0Hz,1H,HD),1.70-1.62(m,2H,C(4)H2),1:38-1:32(m,2H,C(5)H2),1.23(s,12H,C(6)H2~C(11)H2),0.90~0.81(m,3H,C(12)H3)。13C RMN(75MHz,CDC3):δ205.32(C=O),169.79(C1,109.75(C3),65.17(OCH2CH2O),65.03(OCH2CH2O),59.27(CH),44.36(C2),37.59,31.96,31.92,29.77,29.60,29.59,29.39,27.59,23.79,22.76,14:21(C12)。Rf(1:1EtOAc/Cychex):0.31。HRMS(ESI)C18H31NO4SH([M+H]+)について計算された正確な質量:358.2047。実測値:358.2047。
【0184】
・ 2-ノニル-N-(3(S)-テトラヒドロ-2-オキソ-3-チエニル)-1,3-ジオキサラン-2-アセトアミド7g[429675-24-1]
【化36】
【0185】
・ GP5ビスにより収率64%で調製。1H RMN(300MHz,CDCl3):δ6.89(d,J=6.6Hz,1H,NH),4.56(dt,J=13.1,6.7Hz,1H,H),4.10~3.93(m,4H,OCH2CH2O),03:34(td,J=11.7,5.1Hz,1H,HB),3.22(ddd,J=11.4,7.1,1.3Hz,1H,HA),2.86(dddd,J=12.1,6.7,5.1,1.4Hz,1H,HC),2.61(s,2H,C(2)H2),1.92(dq,J=12.4,7.0Hz,1H,HD),1.70~1.62(m,2H,C(4)H2),1:38-1:32(m,2H,C(5)H2),1.23(s,12H,C(6)H2~C(11)H2),0.90~0.81(m,3H,C(12)H3)。1C RMN(75MHz,CDCl3):δ205.32(C=O),169.79(C),109.75(C3),65.17(OCH2CH2O),65.03(OCH2CH2O),59.27(CH),44.36(C2),37.59,31.96,31.92,29.77,29.60,29.59,29.39,27.59,23.79,22.76,14:21(C12)。Rf(1:1 EtOAc/Cychex):0.31。HRMS(ESI):C18H31NO4SH([M+HA]+)について計算された正確な質量:358.2047。実測値:358.2047。
【0186】
・ N-((1S,2S)-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-2-(2-ノニル-1,3-ジオキサラン-2-イル)アセトアミド7h
【化37】
【0187】
・ GP5により収率54%で調製。1H RMN(300MHz,CDCl3):δ6.47(d,J=7.5Hz,1H,NH),3.96(p,J=3.7,3.1Hz,4H),3.66-3.53(m,1H,NHCHC(OH)H),3.28(td,J=9.9,4.3Hz,1H,NHCH),2.63-2.49(m,2H,C(2)H2),2.01(ddd,J=11.9,4.9,2.5Hz,1H,NHCHC(H)Heq.),1.89(dq,J=14.3,4.6,3.3Hz,1H,NHCHC(H)Hax),1.73-1.59(m,4H,C(4)H2及びNHCHCH(OH)CH2),1.35-1.27(m,2H,C(5)H2),1.21(s,16H,C(6)H2~C(11)H2及びNHCHCH2CH2CH2CH2C(OH)H),0.83(t,J=6.7Hz,3H,C(12)H3)。13C RMN(75MHz,CDCl3):δ170.95(C1),109.89(C3),75.31(CHOH),65.04(ケタール),65.02(ケタール),55.45(NHCH),44.56(C2),37.51,34.35,31.92(C4),31.44(C5),29.73,29.58,29.55,29.35,24.62,24.62,24.06,23.71,22.72,14.16(C12)。Rf(2:1EtOAc/Cychex):0.15。MS(ESI):C20H37NO4Na([M+Na]+)について計算した正確な質量:355.52。実測値:378.1。
【0188】
・ N-((1S,2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル)-2-(2-ノニル-1,3-ジオキソラン-2-イル)アセトアミド7i
【化38】
【0189】
・ GP5により収率51%で調製。1H RMN(300MHz,CDCl3):δ6.70(d,J=8.1Hz,1H,NH),4:01-3,96(m,4H,ケタール),3.95-3.87(m,2H,NHCHC(OH)H及びNHCH),2.56(d,J=2.7Hz,2H,C(2)H2),2:37(s,1H),1.71-1.57(m,7H),01:38(ddd,J=14.3,6.9,4.0Hz,4H),1.24(d,J=2.2Hz,12H,C(6)H2~C(11)H2),0.89~0.83(m,3H,C(12)H3)。13C RMN(75MHz,CDCl3):δ169.32(C1),110.03(C3),69.52(CHOH),65.09(ケタール),50.78(NHCH),44.75(C2),37.52,31.99,31.53,29.83,29.64,29.43,27.37,23.80,23.48,22.79,20.45,14.23(C12)。Rf(3:1 EtOAc/Cychex):0.26。HRMS(ESI):C20H37NO4Na([M+Na]+)について計算した正確な質量:378.2615。実測値:378.2615。
【0190】
・ N-(5-クロロ-2-ヒドロキシフェニル)-2-(2-ノニル-1,3-ジオキソラン-2-イル)アセトアミド7m
【化39】
【0191】
・ GP5により収率37%で調製。1H RMN(300MHz,CDCl3):δ8.78(s,1H,OH),8.67(s,1H,NH),7.07(dd,J=8.7,12.5Hz,1H,芳香族),6.98(d,J=2.5Hz,1H,芳香族),6.94(d,J=8.7Hz,1H,芳香族),4.07(s,4H,OCH2CH2O),2.80(s,2H,C(2)H2),1.75-1.69(m,2H,C(4)H2),1.43-1.36(m,2H,C(5)H2),1.28-1.25(m,12H,C(6)H2~C(11)H2),0.90-0.85(m,3H,C(12)H3)。13C RMN(75MHz,CDCl3):δ169.75(C1),147.68(COH),127.04(NHC),126.73(CCl),124.94(芳香族),121.94(芳香族),121.17(芳香族)109.77(C3),65.29(アセタール),44.67(C2),37.65,32.01,29.73,29.62,29.42,23.80,22.81,14.25(C12)。Rf(1:4EtOAc/Cychex):0.14。HRMS(ESI):C20H30ClNO4H([M+H+])について計算された正確な質量:384.1936。実測値:384.1936。
【0192】
・ 末端アジドカルボン酸の合成手順
【0193】
・ 適切なブロモカルボン酸(1.0当量)及びアジ化ナトリウム(1.5当量)をDMF(5ml/mmolカルボン酸)に溶解した。反応混合物を60℃に加熱し、アルゴン雰囲気下で一晩撹拌した。終了後、溶媒を減圧下で除去した。得られた油状物を、EtOAc、H
2O及びブラインの1:1:1(v/v/v)混合物に溶解した。有機相をEtOAc(3回)で抽出し、半飽和ブライン(2回)で洗浄した後、MgSO
4で乾燥させる。溶媒を真空下で除去して、生成物を油状物として得た。
【化40】
【0194】
・ 酸10-アジドデカン酸14[186788-32-9]
【化41】
【0195】
・ 定量的収率で調製。1H RMN(300MHz,CDCl3):δ3.24(t,J=6.9Hz,2H,C(10)H2),2:33(t,J=7.5Hz,2H,C(2)H2),1.60(dt,J=10.1,6.9Hz,4H,C(3)H2及びC(9)H2),1.30(m,10H,C(4)H2~C(8)H2)。13C RMN(75MHz,CDCl3):δ180.31(酸),51.59(C10),34.18(C2),29.36,29.23,29.19,29.11,28.94,26.80,24.76。
【0196】
・ アセタール保護基を除去するための一般的手順(GP6)
【0197】
・ AHL前駆体又は保護類似体(1.0当量)をTFA(4ml/mmol基質)及び水(1ml/mmol基質)に溶解した。溶解度を改善するために、必要に応じてDCMを添加することができる(最大10ml/mmol基質)。EtOAc/CycHex中のTLC分析が出発試薬の完全な消費を示すまで(一晩)、反応混合物をアルゴン雰囲気下、室温で撹拌した。pHが4~5に安定するまで飽和NaHCO3溶液及びNaHCO3を添加することによって反応を停止させ、有機相をDCMで抽出した(3回)。合わせた有機相をMgSO4で乾燥させ、真空下で溶媒を除去した。必要に応じて、生成物をシリカカラムでのフラッシュクロマトグラフィによって精製することができる。
【0198】
・ N-(3(S)-オキソドデカノイル)ホモセリンラクトン1(=15a)[168982-69-2]
【化42】
【0199】
・ GP6により収率98%で調製。1H RMN(300MHz,CDCl3):δ7.68(d,J=6.6Hz,1H,NH),4.59(ddd,J.=11.5,8.7,6.6Hz,1H,CαH),4.48(dt,J=9.1,1.4Hz,1H,HA),4.27(ddd,J=11.1,9.1,6.0Hz,1H,HB),3.47(s,2H,C(2)H2),2.76(dddd,J=12.6,8.8,6.0,1.4Hz,1H,HC),2.52(t,J.=7.3Hz,2H,C(4)H2),2:30-2:15(m,1H,HD),01.57(d,J=6.9Hz,2H,C(5)H2),1.26(t,J=3.1Hz,12H,C(6)H2~C(11)H2),0.90-0.85(m,3H,C(12)H3)。13C RMN(75MHz,CDCl3):206.77(C3),174.85(エステル),166.44(C1),65.99(CHAHB),49.19(Cα),48.12,44.12,31.99,30.04,29.52,29.47,29.38,29.13,23.51,22.80,14.24(C12)。Rf(2:1EtOAc/Cychex):0.35。HRMS(ESI):C16H27NO4Na([M+Na]+)について計算された正確な質量:320.1832。実測値:320.1834。
【0200】
・ 12-アジド-3-オキソ-N-((3S)-テトラヒドロ-2-オキソ-3-フラニル)ドデカンアミド15b[1175052-13-7]
【化43】
【0201】
・ GP6により収率87%で調製。1H RMN(300MHz,CDCl3):δ7.61(d,J=4.9Hz,1H,NH),4.58(ddd,J=11.5,8.7,6.5Hz,1H,CαH),4.47(dt,J=9.1,1.5Hz,1H,HA),4.27(ddd,J=11.0,9.3,6.1Hz,1H,HB),3.46(s,2H,C(2)H2),3.25(t,J=6.9Hz,2H,C(12)H2),2.76(dddd,J=12.6,8.7,6.0,1.5Hz,1H,HD),2.52(t,J=7.3Hz,2H,C(4)H2),2.22(dtd,J=12.5,11.2,8.9Hz,1H,HC),1.59(t,J=6.6Hz,2H,C(5)H2),1:37-1:27(m,12H,C(6)H2~C(11)H2)。13C RMN(75MHz,CDCl3):δ210.56(C3),168.45(エステル),165.97(C1),65.99(CHAHB),51.61(C12),49.21,48.19,44.06,30.06(CHCHD),29.35,29.33,29.18,29.06,28.96,26.81,23.45。HRMS(ESI):C16H26N4O4Na([M+Na]+)について計算された正確な質量:361.1846。実測値:361.1848。
【0202】
・ 3-オキソ-N-(テトラヒドロ-2-オキソ-3-チエニル)-ドデカンアミド15f[663883-93-0]
【化44】
【0203】
・ 定量的収率でGP6によって調製した。1H RMN(300MHz,CDCl3):δ7.47(s,1H,NH),4.58(dt,J=13.2,6.8Hz,1H,CαH),3.45(s,2H,C(2)H2),3.40-3.22(m,2H,CHAHB),2.86(dddd,J=12.2,6.7,5.1,1.5Hz,1H,HD),2.52(t,J=7.4Hz,2H,C(4)H2),2.01(dq,J=12.4,7.1Hz,1H,HC)1.62-1.55(m,2H,C(5)H2),1.26(t,J=2.8Hz,12H,C(6)H2~C(11)H2),0.91-0.84(m,3H,C(12)H3)。13C RMN(75MHz,CDCl3):δ206.76(C3),204.67(チオエステル),166.39(C1),59.40(Cα),48.34,44.09,31.99,31.66,29.52,29.47,29.38,29.13,27.62,23.50,22.80,14.24(C12)。HRMS(ESI):C16H27NO3Na([M+Na]+)について計算された正確な質量:336.1604。実測値336.1605。
【0204】
・ 3-オキソN-[(3S)-テトラヒドロ-2-オキソ-3-チエニル]-ドデカンアミド15g[177158-29-1]
【化45】
【0205】
・ 定量的収率でGP6によって調製した。1H RMN(300MHz,CDCl3):δ7.48(d,J=6.6Hz,1H,NH),4.58(dt,J=13.3,6.6Hz,1H,CαH),3.45(s,2H,C(2)H2),3.35(td,J=11.5,5.1Hz,1H,CHA),3.25(ddd,J=11.5,7.1,1.5Hz,1H,CHB),2.84(dddd,J=12.4,6.7,5.1,1.5Hz,1H,HD),2.52(t,J=7.3Hz,2H,C(4)H2),2.01(dq,J=12.4,7.1Hz,1H,HC)1.57(t,J=7.3Hz,2H,C(5)H2),1.25(t,J=3.1Hz,12H,C(6)H2~C(11)H2),0.91-0.82(m,3H,C(12)H3)。13C RMN(75MHz,CDCl3):δ206.72(C3),204.71(チオエステル),166.36(C1),59.36(Cα),48.41(CS),44.06(C2),31.98,31.64,29.51,29.47,29.37,29.12,27.61,23.48,22.79,14.24(C12)。HRMS(ESI):C16H27NO3SH([M+H]+)について計算された正確な質量:314.1784。実測値:314.1785。
【0206】
・ N-[(1S,2S)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]-3-オキソ-ドデカンアミド15h[886755-19-7]
【化46】
【0207】
・ GP6により収率54%で調製。1H RMN(300MHz,CDCl3):δ7.17(d,J=7.4Hz,1H,NH),3.65(dddd,J=11.2,9.1,7.4,4.3Hz,1H,NHCHC(OH)Hax),3.41(s,2H,C(2)H2),3:38-3:27(m,1H,NHCH),2.51(t,J=7.3Hz,2H,C(4)H2),2.9~1.99(m,1H,NHCHC(H)Heq),1.95(tdd,J=7.4,3.9,2.3Hz,1H,NHCHC(H)Hax),1.71(ddt,J=8.8,5.6,2.7Hz,2HNHCHCH(OH)CH2),1.56(p,J=6.9Hz,2H,C(5)H2),1.36-1.16(m,16H,C(6)H2~C(11)H2及びNHCHCH2CH2CH2CH2C(OH)H,0.90-0.81(m,3H,C(12)H3)。13C RMN(75MHz,CDCl3):δ207.55(C3),167.37(C1),75.24(CHOH),55.88(NHCH),48.60,44.08(C2),34.39,31.97,31.38,29.50,29.46,29.36,29.11,24.67,24.10,23.48,22.78,14.22(C12)。HRMS(ESI):C18H33NO3Na([M+Na]+)について計算された正確な質量:334.2353。実測値334.2353。
【0208】
・ N-[(1S,2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]-3-オキソ-ドデカンアミド15i[897031-37-7]
【化47】
【0209】
・ GP6により収率67%で調製。1H RMN(300MHz,CDCl3):δ7.25-7.14(m,1H,NH),3.98(ddd,J=8.2,6.2,2.7Hz,1H,NHCH),3.92(dt,J=5.8,2.6Hz,1H,NHCHC(OH)Heq),3.40(d,J=1.5Hz,2H,C(2)H2),2.52(t,J=7.3Hz,2H,C(4)H2),2.20-2.08(m,2H),1.68-1.53(m,6H),1.42(ttd,J=11.5,5.5,5.0,2.8Hz,2H),1.26(d,J=3.5Hz,12H,C(6)H2~C(11)H2),0.91-0.83(m,3H,C(12)H3)。13C RMN(75MHz,CDCl3):δ207.31(C3),165.84(C1),69.38(COH),51.23(NHCH),49.17,44.07,31.99,31.51,29.52,29.48,29.38,29.15,27.32,23.52,23.44,22.79,20.43,14.23(C12)。Rf(3:1EtOAc/CycHex)=0.38。HRMS(ESI):C18H33NO3H([M+H]+)について計算された正確な質量:312.2533。実測値:312.2534。
【0210】
・ N-(5-クロロ-2-ヒドロキシフェニル)-3-オキソドデカンアミド15m[663883-68-9]
【化48】
【0211】
・ GP6により収率98%で調製。1H RMN(300MHz,MeOD-d4):δ8:01(d,J=2.5Hz,1H,芳香族H),6.94(dd,J=8.6,2.6Hz,1H,芳香族H),6.84~6.76(m,1H,芳香族H),3.64(dd,J=5.5,3.3Hz,1H,C(2)H-フォーム-エノール),2.60(t,J=7.3Hz,2H,C(4)H2),1.59(p,J=7.2Hz,2H,C(5)H2),1.34-1.26(m,12H,C(6)H2~C(11)H2),0.92~0.87(m,3H,C(12)H3)。13C RMN(75MHz,MeOD-d4):δ207.41(C3),167.64(C1),147.59(COH),128.30(芳香族C),125.51(芳香族CH),124.91(芳香族C),122.45(芳香族CH),116.95(芳香族CH),43.99(C2),33.03(C4),30.57,30.53,30.40,30.13,24.45,23.72,14.43(C12)。HRMS(ESI):C18H26ClNO3H([M+H]+)について計算された正確な質量:340.1654。実測値340.1663。
【0212】
3.本発明の化合物の抗炎症効果
【0213】
目的の化合物の特性を評価するために、マウスマクロファージ株、RAW264.7を使用した。
【0214】
炎症に対する効果を評価するために、細胞を炎症促進性カクテル(インターフェロン-γ(IFN-γ、20U/mL)及びリポ多糖(LPS、10ng/mL))の添加で処理したか、又は処理しなかった。細胞の上清に23種のサイトカインの分泌を投与することによる多重分析によって炎症状態を評価した。ヒートマップの結果を
図15に示し、これは、刺激条件下(LPS10ng/mL、IFN-γ20U/mL)でのRAW264.7によるサイトカインの分泌を示す(対照に対して正規化されている)。
【0215】
これらの結果は、50μM PCAの存在下でのサイトカインの産生の減少を全体的に可視化することを可能にする。本発明の化合物によって産生が調節されたサイトカインは、インターロイキン-1β(IL-1β)、IL-2、IL-6、IL-12、RANTES、TNFα、炎症促進性サイトカインである。これらのタンパク質の減少は用量依存的であり、50μM PCAの存在下で最大の効果が観察された。
【0216】
これを説明するために、TNF-αについて観察された結果(多重分析の結果)を示す2つのヒストグラム(第1は3オキソC12:2で、第2はPCAで)を
図16に示す(上段:3オキソC
12:2の存在下でLPS及びインターフェロン-γによって刺激されたRAW264.7によって分泌されたTNFα、及び下段:PCAの存在下でLPS及びインターフェロン-γによって刺激されたRAW264.7によって分泌されたTNFα)。
【0217】
いくつかの遺伝子発現結果の確認は、特に、目的の3つのサイトカインであるRantes、TNFα、IL1-βについて、定量的PCRによってメッセンジャーRNAを測定することによって行った。結果を
図17に示す図に示す。
【0218】
したがって、本発明者らは、タンパク質レベル及びmRNA発現の両方で、マクロファージ型の細胞に対する化合物の抗炎症効果を観察する。
【0219】
4 本発明の化合物の毒性の測定
【0220】
4.1 真核細胞に対する化合物の毒性の測定
【0221】
LDH(乳酸デヒドロゲナーゼ)分泌の測定試験を使用して、試験化合物及び対照化合物の細胞傷害性を評価した。この試験は、細胞内コンパートメントに残るLDHの量と比較した、それらの上清中の細胞によって分泌されたLDHの量の測定に基づく。この比率は、細胞が受ける膜損傷、したがって化合物の細胞傷害性の指標を提供する。比率が10%より高い場合、化合物は毒性であると考えられる。
【0222】
2つの方法を使用してこの試験を実施した:即時的に調製したピルビン酸/NADH溶液を使用するか、又は製造業者Roche(Sigma-Aldrich)からの細胞傷害性検出キットPLUS(LDH)を使用して測定した。
【0223】
ピルビン酸/NADH法:60mlの0.1M PBS(pH7.4)中、4.1mgのピルビン酸(0.62mM)及び7.7mgのNADH(0.18mM)を用いて調製したピルビン酸/NADH溶液。
【0224】
上清中のLDH濃度を測定するために、800μLのNADHをプラスチック分光分析キュベット中の200μLの上清に添加し、最終溶液の吸光度の減少を340nmで1分間読み取った。細胞溶解物中のLDH濃度を測定するために、800μLのNADHをプラスチック分光分析キュベット中の10μLの細胞溶解物及び190μLの0.1M PBSに添加し、最終溶液の吸光度の減少を340nmで1分間読み取った。次いで、分泌されたLDHのパーセンテージを、上清及び細胞溶解物(それぞれ)の吸光度の減衰勾配の比によって計算した。
【0225】
細胞傷害性検出キット
PLUS(LDH)法:製造業者の指示に従って実施した吸光度試験。次いで、分泌されたLDHのパーセンテージを以下の式によって計算した:
【数2】
【0226】
4.2 細菌株に対する化合物の毒性を測定する方法
【0227】
大腸菌(E.coli)K12株をD0で寒天ゲル上で培養し、次いで、選択したコロニーをD1で液体細菌培養LYBHI培地に移した。2日目に、このコロニーをLYBHI培地で1:100に希釈し、増殖のために18時間維持した後、不透明な96ウェルプレートに分配した。各ウェルには、以下のものが分布していた:LYBHI培地、細菌培養、及び試験化合物又は対照化合物。ウェルの吸光度をt0及びt18時間で600nmで読み取った。生の吸光度値を、細菌又は化合物を含まないLYBHI培地のみを含むウェルの吸光度に対して補正した。
【0228】
4.3 真核細胞に関する結果
【0229】
a.天然AHL3オキソC12-HSL及び3オキソC12:2-HSL
【0230】
図18は、Caco-2/TC7細胞株において、炎症促進性サイトカインの存在下及び非存在下において、2つの分子が1~100μMの濃度範囲で良好に耐容されることを示し、測定された細胞傷害性は、3オキソC
12-HSLについては2.5%を超えず、3オキソC
12:2-HSLについては1.5%を超えない。比較すると、活性化対照(DMSO 0.1%及びサイトカイン)の毒性は約4%である。
【0231】
図19は、Raw264.7マウス細胞株において、分泌されたLDHの増加が両方のAHLについて50μMという早期に観察され、100μM濃度で10%を超える細胞傷害性を有したことを示す。この現象は、基礎条件及び刺激条件で観察され、したがって分子の毒性に起因する。これは、マクロファージ株に関する残りの研究において1~50μM用量を使用することを正当化する。
【0232】
b.(D/L)-3オキソC12-HTL(式I-1)及び(S)-3オキソC12-HTL(式I-3)
【0233】
図20に見られるように、これらの2つのチオラクトン頭部化合物のいずれも、2つの細胞株に対して毒性を示さず、最高濃度でも10%未満のLDH分泌を有した。
【0234】
c.(S,S)-3オキソC12-ACH(式(I-2)及び(R,S)-3オキソC12-ACH(式(I-4)
【0235】
図21に示されるように、両化合物は低濃度で細胞傷害性ではないが、(R,S)-3オキソC
12-ACH分子は、より高い濃度(≧50μM)でLDH分泌の増加を示す。Caco-2/TC7上皮細胞では、10%マークを超えることなく、100μMで9%の分泌が観察される。この効果は、(S,S)-3オキソC
12-ACHジアステレオマーほど有意ではない。
【0236】
この観察結果は、Raw264.7マクロファージ株において見出され、一貫して、(R,S)-3オキソC12-ACHの存在下で分泌されたLDHは、全ての濃度で、(S,S)-3オキソC12-ACHの存在下で分泌されたLDHよりも大きい。(R,S)-3オキソC12-ACH分子はまた、50μMで毒性である。
【0237】
d.3オキソC12-アミノクロロフェノール(式I-6)
【0238】
分子は、
図22に示すように、試験した濃度のいずれにおいても、いずれの株に対しても毒性ではない。
【0239】
4.4 細菌株に関する結果
【0240】
a.天然AHL3オキソC12-HSL及び3オキソC12:2-HSL
【0241】
3オキソC
12-HSL及び3オキソC
12:2-HSL AHLを、1~100μMの範囲における殺菌効果について試験した。18時間のインキュベーション後に毒性作用は観察されず、記録された吸光度は、LYBHI培地単独及び0.1% DMOSの存在下での吸光度と同一であり、
図23を参照されたい。
【0242】
4.5 細菌株に関する結果
【0243】
a.(D/L)-3オキソC12-HTL(式I-1)、(S)-3オキソC12-HTL(式I-3)、(S,S)-3オキソC12-ACH(式I-2)、(R,S)-3オキソC12-ACH(式I-4)及び3オキソC12-アミノクロロフェノール(式I-6)類似体
【0244】
全ての濃度及び試験した全ての分子間で有意差は観察されなかったので、最大濃度(100μM)のみを
図24に示す。
【0245】
一般に、天然又は合成の化合物は、大腸菌(E.coli)K12株に対して殺菌性ではない。
【国際調査報告】