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特表2023-504789陰イオン重合によるポリアミドの調製方法およびそれにより調製されるポリアミド
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  • 特表-陰イオン重合によるポリアミドの調製方法およびそれにより調製されるポリアミド 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-07
(54)【発明の名称】陰イオン重合によるポリアミドの調製方法およびそれにより調製されるポリアミド
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/18 20060101AFI20230131BHJP
【FI】
C08G69/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022530924
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(85)【翻訳文提出日】2022-05-26
(86)【国際出願番号】 KR2020017021
(87)【国際公開番号】W WO2021112495
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】10-2019-0161889
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヒェ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジンソ
(72)【発明者】
【氏名】クォン、キュンゴ
(72)【発明者】
【氏名】ド、スン ホェ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドキョン
【テーマコード(参考)】
4J001
【Fターム(参考)】
4J001DA01
4J001DB01
4J001EA02
4J001EA03
4J001EA05
4J001EA07
4J001EA08
4J001EE04D
4J001EE08D
4J001EE18D
4J001EE37D
4J001EE43E
4J001EE53E
4J001EE57D
4J001EE58E
4J001EE65D
4J001EE82D
4J001FA03
4J001FB01
4J001FC01
4J001GA02
4J001GA12
4J001GB02
4J001GB05
4J001GB06
4J001GB16
4J001GD08
4J001JA04
4J001JA05
4J001JA07
4J001JA10
4J001JA15
4J001JA17
4J001JC01
(57)【要約】
本発明は、陰イオン重合によるポリアミドの調製方法およびそれによって調製されたポリアミドに関するものである。本発明の具体例によるポリアミドの調製方法により、容易に超高分子量を有するポリアミドを調製し得る。また、本発明の具体例による超高分子量を有するポリアミドは、機械的物性、特に耐衝撃強度に優れる。したがって、本発明の具体例による超高分子量を有するポリアミドは、電子機器用素材、産業用パイプ素材、建築土木用素材、3Dプリンター用素材、繊維用素材、被覆素材、工作機械用素材、医療用素材、航空用素材、太陽光素材、電池用素材、スポーツ用素材、家電用素材、家庭用素材、および化粧品用素材からなる群より選ばれる部品素材用として効果的に使用され得る。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合触媒、活性化剤および分子量調節剤の存在下で、ラクタムに陰イオン重合を行って、重量平均分子量が100000g/mol~200000g/molであるポリアミドを調製する、ポリアミドの調製方法であって、
前記ラクタム全体100重量部に対して、前記活性化剤の含有量が0.002重量部~20重量部であり、前記分子量調節剤の含有量が0.01重量部~10重量部である、ポリアミドの調製方法。
【請求項2】
前記ラクタムが、ラウロラクタム、カプロラクタム、ピペリジノン、ピロリドン、エナントラクタムおよびカプリルラクタムからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載のポリアミドの調製方法。
【請求項3】
前記ラクタムが、ラウロラクタム、カプロラクタムまたはそれらの混合物である、請求項2に記載のポリアミドの調製方法。
【請求項4】
前記ラクタムが、プロピオラクタム、バレロラクタム、ヘプタノラクタム、オクタノラクタム、ノナノラクタム、デカノラクタム、ウンデカノラクタムおよびドデカノラクタムからなる群より選択される少なくとも1つをさらに含む、請求項2に記載のポリアミドの調製方法。
【請求項5】
前記重合触媒が、アルカリ金属として、金属水素化物、金属水酸化物および金属アルコキシドからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載のポリアミドの調製方法。
【請求項6】
前記重合触媒が金属水素化物であり、前記金属水素化物が水素化ナトリウムである、請求項5に記載のポリアミドの調製方法。
【請求項7】
前記重合触媒が、化学式1で表されるシリカ系化合物をさらに含む、請求項1に記載のポリアミドの調製方法。
[化学式1]
Si-(R)
〔式中、nは1~4の自然数であり、Rは水素、アルキル、アルコキシおよび芳香族から選択される少なくとも1つであり、前記アルキルおよび前記アルコキシは炭素数が1~12である。〕
【請求項8】
前記シリカ系化合物が、有機シリケート、無機シリケート、シラン、シリカおよびシリカゲルからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項7に記載のポリアミドの調製方法。
【請求項9】
前記ラクタム全体100重量部に対して、前記重合触媒の総含有量が0.001重量部~20重量部である、請求項1に記載のポリアミドの調製方法。
【請求項10】
前記活性化剤が、単一活性基を有する二酸化炭素(CO)、ベンゾイルクロリド、N-アセチルカプロラクタム、N-アセチルラウロラクタムおよびオクタデシルイソシアネート(ODI)、ならびに二重活性基を有するトルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソフタロイル-ビス-ラウロタクタム(IBL)、およびイソフタロイル-ビス-カプロラクタム(ICL)からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載のポリアミドの調製方法。
【請求項11】
前記活性化剤が、二酸化炭素、トルエンジイソシアネートまたはオクタデシルイソシアネートである、請求項10に記載のポリアミドの調製方法。
【請求項12】
前記分子量調節剤が、エチレンビス(ステアリン酸アミド)(EBS)、アミン化合物、ウレア化合物およびジウレア化合物からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載のポリアミドの調製方法。
【請求項13】
前記分子量調節剤が、エチレンビス(ステアリン酸アミド)である、請求項12に記載のポリアミドの調製方法。
【請求項14】
前記ラクタムの前記陰イオン重合が、0.5~180分間行われる、請求項1に記載のポリアミドの調製方法。
【請求項15】
前記ラクタムの前記陰イオン重合が、180℃~300℃の温度範囲で行われる、請求項1に記載のポリアミドの調製方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の調製方法により調製され、100000g/mol~200000g/molの重量平均分子量を有するポリアミド。
【請求項17】
車両用素材、電子機器用素材、産業用パイプ素材、建築土木用素材、3Dプリンター用素材、繊維用素材、被覆素材、工作機械用素材、医療用素材、航空用素材、太陽光素材、電池用素材、スポーツ用素材、家電用素材、家庭用素材、および化粧品用素材からなる群より選ばれる部品素材用である、請求項16に記載のポリアミド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陰イオン重合によるポリアミドの調製方法およびそれにより調製されるポリアミドに関するものである。具体的に、本発明は、陰イオン重合により超高分子量を有するポリアミドを調製する方法およびその方法により調製される超高分子量を有するポリアミドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドとは、主鎖にアミド(-CO-NH-)単位を含む重合体のことを指す。ポリアミドは、それぞれ同じ反応基(例えば、-NHまたは-COOH)を2個含有する2官能性の2つの異なる単量体単位から調製されるか、もしくは、それぞれアミノ基1個およびカルボキシル基1個を含有するかまたはこれらの基を形成し得る2官能性の1つの単量体単位から調製され得る。例えば、ポリアミドは、ジアミンのジカルボン酸との重縮合反応、アミノカルボン酸の重縮合反応、またはラクタムの開環重合によって調製され得る。
【0003】
ポリアミドは、分子構造によって脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、脂環式ポリアミドに分類され、中でも脂肪族ポリアミドはナイロン、芳香族ポリアミドはアラミドと総称されることもある。
一般に、ポリアミドは、剛性、耐摩擦、耐摩耗、耐油、耐溶剤性などの物性に優れ、溶融成形が容易であるため、衣服素材用、産業資材用繊維、エンジニアリングプラスチック等として広く用いられている。
【0004】
一方、従来の陰イオン重合によりポリアミドを調製する場合、現実的に重量平均分子量が100000g/molを超えるポリアミドを調製することは難しいとされている。例えば、特許文献1には、二重活性基を有する分子量調節剤の存在下で、陰イオン重合によりポリアミドを調製する方法が開示されている。該方法により調製されるポリアミドは、20000g/mol~100000g/mol範囲の重量平均分子量を有する。
【0005】
仮に、従来の陰イオン重合を用いたポリアミドの調製方法において、単に重合時間を増やしてポリアミドの分子量を増加させようとすると、ゲル化が発生し得る。
したがって、ゲル化を防止しながら超高分子量を有するポリアミドの調製方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国特許公開第10-2019-0061898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、陰イオン重合により超高分子量を有するポリアミドを調製する方法を提供することである。
本発明の他の目的は、前記方法により調製される超高分子量を有するポリアミドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的を達成するための一具体例により、重合触媒、活性化剤および分子量調節剤の存在下でラクタムの陰イオン重合により、重量平均分子量が100000g/mol~200000g/molであるポリアミドを調製する方法であって、ラクタム全体100重量部に対して、活性化剤の含有量が0.002重量部~20重量部であり、分子量調節剤の含有量が0.01重量部~10重量部である、ポリアミドの調製方法が提供される。
【0009】
具体的に、ラクタムは、ラウロラクタム、カプロラクタム、ピペリジノン、ピロリドンエナントラクタムおよびカプリルラクタムからなる群より選択される少なくとも1つを含み得る。好ましくは、ラクタムがラウロラクタム、カプロラクタムまたはその混合物であり得る。
また、ラクタムは、プロピオラクタム、バレロラクタム、ヘプタノラクタム、オクタノラクタム、ノナノラクタム、デカノラクタム、ウンデカノラクタムおよびドデカノラクタムからなる群より選択される少なくとも1つをさらに含み得る。
【0010】
重合触媒は、アルカリ金属として、金属水素化物、金属水酸化物および金属アルコキシドからなる群より選択される少なくとも1つを含み得る。好ましくは、重合触媒が金属水素化物であり、より好ましくは、重合触媒が水素化ナトリウムであり得る。
【0011】
好ましくは、重合触媒が、化学式1で表されるシリカ系化合物をさらに含み得る。
[化学式1]
Si-(R)
前記化学式1において、nは1~4の自然数であり、Rは水素、アルキル、アルコキシおよび芳香族から選択される少なくとも1つであり、ここで前記アルキルおよび前記アルコキシは炭素数が1~12である。
【0012】
好ましくは、シリカ系化合物が、有機シリケート、無機シリケート、シラン、シリカおよびシリカゲルからなる群より選択される少なくとも1つを含み得る。
本発明の具体的な実施例において、ラクタム全体100重量部に対して重合触媒の総含有量が0.001重量部~20重量部であり得る。
【0013】
一方、活性化剤は、単一活性基を有する二酸化炭素(CO)、ベンゾイルクロリド、N-アセチルカプロラクタム、N-アセチルラウロラクタム、オクタデシルイソシアネート(ODI)と、二重活性基を有するトルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソフタロイル-ビス-ラウロタクタム(IBL)、およびイソフタロイル-ビス-カプロラクタム(ICL)とからなる群より選択される少なくとも1つを含み得る。好ましくは、活性化剤が、二酸化炭素、トルエンジイソシアネートまたはオクタデシルイソシアネートであり得る。
【0014】
また、分子量調節剤は、エチレンビス(ステアリン酸アミド)(EBS)、アミン化合物、ウレア化合物およびジウレア化合物からなる群より選択される少なくとも1つを含み得る。好ましくは、分子量調節剤が、エチレンビス(ステアリン酸アミド)であり得る。
【0015】
本発明の具体的な実施例において、ラクタムの陰イオン重合は、0.5~180分間行われ得る。
さらに、ラクタムの陰イオン重合は、180℃~300℃の温度範囲で行われ得る。
本発明の他の具体例により、前記調製方法により調製され、100000g/mol~200000g/molの重量平均分子量を有するポリアミドが提供される。
【0016】
本発明の具体例によるポリアミドは、車両用素材、電子機器用素材、産業用パイプ素材、建築土木用素材、3Dプリンター用素材、繊維用素材、被覆素材、工作機械用素材、医療用素材、航空用素材、太陽光素材、電池用素材、スポーツ用素材、家電用素材、家庭用素材、および化粧品用素材からなる群より選択される部品素材用として使用され得る。
【発明の効果】
【0017】
本発明の具体例によるポリアミドの調製方法により、容易に超高分子量を有するポリアミドを調製し得る。
本発明の具体例による超高分子量を有するポリアミドは、機械的物性、特に耐衝撃強度に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施例1、実施例2および比較例1のポリアミド重合速度およびトルク値を示すグラフである。
図2図2は、実施例1および比較例1のポリアミドから調製された成形体の常温耐衝撃強度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
本発明の一具体例により、重合触媒、活性化剤および分子量調節剤の存在下で、ラクタムの陰イオン重合により重量平均分子量が100000g/mol~200000g/molであるポリアミドを調製する方法であって、ラクタム全体100重量部に対して、活性化剤の含有量が0.002重量部~20重量部であり、分子量調節剤の含有量が0.01重量部~10重量部である、ポリアミドの調製方法が提供される。
【0020】
[単量体]
本発明の一具体例によるポリアミドは、ラクタムの陰イオン重合によって調製される。したがって、ラクタムは、ポリアミドを調製するための単量体として使用される。具体的に、ラクタムは、環内に炭素原子4個~12個を含むものであり、ラウロラクタム、カプロラクタム、ピペリドン、ピロリドン、ピロリドン、エナントラクタム、およびカプリルラクタムからなる群より選択される少なくとも1つを含み得るが、これらに特に限定されるものではない。好ましくは、ラクタムが、ラウロラクタム、カプロラクタムまたはその混合物であり得る。
【0021】
また、ラクタムは、プロピオラクタム、バレロラクタム、ヘプタノラクタム、オクタノラクタム、ノナノラクタム、デカノラクタム、ウンデカノラクタム、およびドデカノラクタムからなる群より選択される少なくとも1つをさらに含み得るが、これらに特に限定されるものではない。
【0022】
[重合触媒]
ここで、重合触媒は、単量体であるラクタムの陰イオン形成を許容する化合物である。具体的に、重合触媒はアルカリ金属として、金属水素化物、金属水酸化物、および金属アルコキシドからなる群より選択される少なくとも1つを含み得る。
【0023】
例えば、金属水素化物は、水素化ナトリウムおよび水素化カリウムを含み、金属水酸化物は水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムを含み、金属アルコキシドは、カリウムt-ブトキシドおよびアルミニウムイソプロポキシドを含み得る。
【0024】
より具体的に、重合触媒は、ナトリウムカプロラクタマート、カリウムカプロラクタマート、ブロミドマグネシウムカプロラクタマート、クロリドマグネシウムカプロラクタマート、マグネシウム-ビス-カプロラクタマート、水素化ナトリウム、ナトリウム金属、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムプロポキシド、ナトリウムブトキシド、水素化カリウム、金属カリウム、水酸化カリウム、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムプロポキシド、およびカリウムブトキシドからなる群より選択される少なくとも1つを含み得るが、これらに特に限定されるものではない。
【0025】
好ましくは、重合触媒は金属水素化物であり、より好ましくは、重合触媒は水素化ナトリウムであり得る。
【0026】
本発明の具体例において、重合触媒は、選択的に化学式1で表されるシリカ系化合物をさらに含み得る。
[化学式1]
Si-(R)
〔式中、nは1~4の自然数であり、Rは水素、アルキル、アルコキシ、および芳香族から選択される少なくとも1つであり、ここで前記アルキルおよび前記アルコキシは炭素数が1~12である。〕
【0027】
本発明の具体例において、シリカ系化合物は、有機シリケート、無機シリケート、シラン、シリカ、およびシリカゲルからなる群より選択される少なくとも1つを含み得るが、これらに特に限定されるものではない。
【0028】
このような重合触媒は、固体状または溶液として使用されて良く、重合触媒を固体状で使用することが好ましい。重合触媒は、好ましくは、触媒が溶解し得るラウロラクタム溶融物に添加される。これらの重合触媒は、特に迅速な反応を引き起こし、それによって本発明によるポリアミドのための調製プロセスの効率を増加し得る。
【0029】
本発明の好ましい一実施例において、重合触媒は、ラクタム全体100重量部に対して0.001重量部~20重量部の総含有量で使用され得る。ラクタム全体100重量部に対する重合触媒の総含有量は、好ましくは0.005重量部~10重量部であり、より好ましくは0.01重量部~5重量部であり得る。重合触媒が0.001重量部未満で使用されると、重合が十分に行われないか、または反応速度が低下するという問題が生じ得る。また、重合触媒が20重量部を超えると、生成するポリアミドの分子量が低下し得る。
【0030】
[活性化剤]
本発明において、活性化剤は、ポリアミド分子量および重合速度を向上させる役割をし、分子量調節剤とともに重合途中のゲル化を防止して、超高分子量ポリアミドの生成を可能にする。
【0031】
本発明の具体例において、活性化剤は、単一活性基を有する二酸化炭素(CO)、ベンゾイルクロリド、N-アセチルカプロラクタム、N-アセチルラウロラクタム、オクタデシルイソシアネートと、二重活性基を有するトルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフタロイル-ビス-ラウロラクタム、およびイソフタロイル-ビス-カプロラクタムとからなる群より選択される少なくとも1つを含み得るが、これらに特に限定されるものではない。好ましくは、活性化剤は、二酸化炭素、トルエンジイソシアネートまたはオクタデシルイソシアネートであり得る。
【0032】
本発明の好ましい一実施例において、活性化剤は、ラクタム全体100重量部に対して0.002重量部~20重量部の含有量で使用され得る。ラクタム全体100重量部に対する活性化剤の含有量は、好ましくは0.005重量部~10重量部であり、より好ましくは0.01重量部~5重量部であり得る。活性化剤が0.002重量部未満で使用されると、重合が十分に行われないため、低分子量のポリアミドが調製されるか、または反応速度が低下する問題が発生し得る。また、活性化剤が20重量部を超えると、ゲル化が生じ得る。
【0033】
[分子量調節剤]
本発明において、分子量調節剤は、ポリアミドの分子量を調節する役割を果たし、活性化剤とともに重合途中のゲル化を防止して、超高分子量ポリアミドの生成を可能にする。
本発明の具体例において、分子量調節剤は、エチレンビス(ステアリン酸アミド)(ETB)、アミン化合物、ウレア化合物、およびジウレア化合物からなる群より選択される少なくとも1つを含み得るが、これらに特に限定されるものではない。好ましくは、分子量調節剤は、エチレンビス(ステアリン酸アミド)であり得る。
【0034】
本発明の好ましい一実施例において、分子量調節剤は、ラクタム全体100重量部に対して0.01重量部~10重量部の含有量で使用され得る。ラクタム全体100重量部に対する活性化剤の含有量は、好ましくは0.05重量部~7重量部であり、より好ましくは0.1重量部~5重量部であり得る。分子量調節剤が0.01重量部未満で使用されると、ゲル化(架橋、分岐反応)の問題が生じ得る。また、分子量調節剤が10重量部を超えると、ポリアミドの分子量が低下する問題が生じ得る。
【0035】
[重合条件]
本発明の具体例において、ラクタムの陰イオン重合条件は特に限定されず、本発明が属する技術分野に公知の条件を採用し得る。
本発明の好ましい一実施例において、陰イオン重合は0.5~180分間行われ得るが、この範囲に特に限定されるものではない。陰イオン重合時間は、投入される化合物の量、反応器のサイズおよび形状に応じて適宜調整し得る。
本発明の好ましい一実施例において、前記陰イオン重合は180℃~300℃の温度範囲で行われ得る。より好ましくは、陰イオン重合は200℃~280℃の温度範囲で行われ得る。
【0036】
[ポリアミド]
本発明の他の具体例により、前記調製方法により調製され、100000g/mol~200000g/mol、好ましくは100000g/mol超過200000g/mol以下の重量平均分子量を有するポリアミドが提供される。
本発明の具体例によるポリアミドは、その分子量が非常に大きいため、それにより調製される成形体は、機械的物性、特に耐衝撃強度に優れる。
【0037】
したがって、本発明の具体例によるポリアミドは、車両用素材、電子機器用素材、産業用パイプ素材、建築土木用素材、3Dプリンター用素材、繊維用素材、被覆素材、工作機械用素材、医療用素材、航空用素材、太陽光素材、電池用素材、スポーツ用素材、家電用素材、家庭用素材、および化粧品用素材からなる群より選択されることを特徴とする部品素材用として使用され得る。
【実施例
【0038】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。ただし、以下の実施例は本発明を例示するためのものであるのみ、本発明の範囲がこれらにのみ限定されるものではない。
実施例1
フラスコを真空状態で70℃に維持してフラスコ内の水分を除去した。フラスコにかかっている真空を解除した後、ラウロラクタム(LL)50g、水素化ナトリウム(NaH)0.03g、エチレンビス(ステアリン酸アミド)(EBS)0.30gを入れ、真空下で温度を165℃まで上げた。反応温度を240℃に設定し、窒素ガスを入れながら前記原料が溶融しながら発生する水素ガスを除去した。トルエンジイソシアネート(TDI)0.04gを注入して20分間反応させた。20分経過後、ギ酸水溶液(ギ酸:蒸留水=1:1、v/v)50mlをフラスコに入れて反応を終了し、重合したポリアミド48gを得た。
【0039】
実施例2
TDI0.17gを注入したことを除いては、実施例1と同様に行って、ポリアミド50gを調製した。
【0040】
実施例3
フラスコを真空状態で70℃に維持してフラスコ内の水分を除去した。フラスコにかかっている真空を解除した後、ラウロラクタム(LL)50g、水素化ナトリウム(NaH)0.03g、エチレンビス(ステアリン酸アミド)(EBS)0.25gを入れ、真空下で温度を165℃まで上げた。反応温度を240℃に設定し、窒素ガスを入れながら前記原料が溶融しながら発生する水素ガスを除去した。ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)0.04gを注入して30分間反応させた。30分経過後、ギ酸水溶液(ギ酸:蒸留水=1:1、v/v)50mlをフラスコに入れて反応を終了し、重合したポリアミド48gを得た。
【0041】
実施例4
フラスコを真空状態で70℃に維持してフラスコ内の水分を除去した。フラスコにかかっている真空を解除した後、ラウロラクタム(LL)50g、水素化ナトリウム(NaH)0.03g、エチレンビス(ステアリン酸アミド)(EBS)0.25gを入れ、真空下で温度を165℃まで上げた。反応温度を240℃に設定し、窒素ガスを入れながら前記原料が溶融しながら発生する水素ガスを除去した。オクタデシルイソシアネート(ODI)0.15gを注入して30分間反応させた。30分経過後、ギ酸水溶液(ギ酸:蒸留水=1:1、v/v)50mlをフラスコに入れて反応を終了し、重合したポリアミド47gを得た。
【0042】
実施例5
フラスコを真空中で70℃に維持してフラスコ内の水分を除去した。フラスコにかかっている真空を解除した後、ラウロラクタム(LL)50g、水素化ナトリウム(NaH)0.03g、エチレンビス(ステアリン酸アミド)(EBS)0.30g、テトラエチルオルトシリケート(tetraethyl orthosilicate;TEOS)0.07gを入れ、真空下で温度を165℃まで上げた。反応温度を240℃に設定し、窒素ガスを入れながら前記原料が溶融しながら発生する水素ガスを除去した。二酸化炭素(CO)ガス0.02gを注入して30分間反応させた。30分経過後、ギ酸水溶液(ギ酸:蒸留水=1:1、v/v)50mlをフラスコに入れて反応を終了し、重合したポリアミド48gを得た。
【0043】
実施例6
TDIの代わりにCOを0.15g注入したことを除いては、実施例1と同様に行ってポリアミド47gを調製した。
【0044】
実施例7
ラウロラクタムの代わりにカプロラクタム(CL)50g、NaH0.05g、EBS0.52g、およびTDI0.07gを用いたことを除いては、実施例1と同様に行ってポリアミド49gを調製した。
【0045】
実施例8
ラウロラクタムの代わりにカプロラクタム(CL)50g、NaH0.05g、EBS0.52g、およびTDI0.03gを用いたことを除いては、実施例1と同様に行ってポリアミド48gを調製した。
【0046】
実施例9
ラウロラクタム31.8gと、カプロラクタム(CL)18.2g、NaH0.04g、EBS0.38gおよびTDI0.05gとを用いたことを除いては、実施例1と同様に行ってポリアミド47gを調製した。
【0047】
実施例10
ラウロラクタム31.8gと、カプロラクタム(CL)18.2g、NaH0.04g、EBS0.38gおよびCO0.03gとを用いたことを除いては、実施例1と同様に行ってポリアミド46gを調製した。
【0048】
比較例1
TDIを使用しないことを除いては、実施例1と同様に行ってポリアミド50gを調製した。
【0049】
比較例2
EBSを使用しないことを除いては、実施例1と同様に行ってポリアミド46gを調製した。
【0050】
前記実施例1~5と比較例1~2の反応物を下記表1に示す。
試験例
(1)重量平均分子量(Mw)
実施例と比較例で得られたポリアミド樹脂について、GPCおよびブルックフィールド(Brookfield)粘度計を用いて測定した。GPC展開液としてはTFEを用いた。樹脂をHFIP溶液に溶解してサンプルを調製した。測定結果を下記表1に示す。
【0051】
(2)耐衝撃強度
実施例と比較例で得られたポリアミド樹脂についてISO 179/1eAに基づくシャルピー衝撃試験(notched charpy impact strength)により耐衝撃強度を測定した。測定試験片は、射出機を用いて長さ80mm、厚さ10mmで作製した。23±2℃の温度範囲で2.9m/sの衝撃速度で測定した。測定結果を図2に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
表1から確認できるように、本発明の具体例によるポリアミドの調製方法により、単一または二重活性基を有する活性化剤と分子量調節剤とを用いて、重量平均分子量が100000g/mol~200000g/molであるポリアミドを容易に調製し得る。調製されるポリアミドの重量平均分子量は、図1に示すように、トルク値(すなわち、撹拌負荷)により比較することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の具体例による超高分子量を有するポリアミドは、機械的物性、特に耐衝撃強度に優れる。したがって、本発明の具体例による超高分子量を有するポリアミドは、車両用素材、電子機器用素材、産業用パイプ素材、建築土木用素材、3Dプリンター用素材、繊維用素材、被覆素材、工作機械用素材、医療用素材、航空用素材、太陽光素材、電池用素材、スポーツ用素材、家電用素材、家庭用素材、および化粧品用素材からなる群より選択される部品素材用として効果的に使用され得る。
図1
図2
【国際調査報告】