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特表2023-504822ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマーを調製するプロセス
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  • 特表-ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマーを調製するプロセス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-07
(54)【発明の名称】ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマーを調製するプロセス
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/68 20060101AFI20230131BHJP
   C08G 65/40 20060101ALI20230131BHJP
   B01D 63/02 20060101ALI20230131BHJP
   B01D 69/04 20060101ALI20230131BHJP
   B01D 69/06 20060101ALI20230131BHJP
   B01D 69/08 20060101ALI20230131BHJP
   B01D 61/28 20060101ALI20230131BHJP
   A61M 1/18 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
B01D71/68
C08G65/40
B01D63/02
B01D69/04
B01D69/06
B01D69/08
B01D61/28
A61M1/18 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533396
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(85)【翻訳文提出日】2022-07-29
(86)【国際出願番号】 EP2020084709
(87)【国際公開番号】W WO2021110954
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】62/944,121
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】20162138.0
(32)【優先日】2020-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バトナーガル, アトゥール
(72)【発明者】
【氏名】トーマス, デーヴィッド ビー.
【テーマコード(参考)】
4C077
4D006
4J005
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077BB02
4C077CC06
4C077EE01
4C077LL05
4D006GA06
4D006GA13
4D006HA02
4D006JA13C
4D006JB06
4D006MA01
4D006MA02
4D006MA03
4D006MA21
4D006MC40
4D006MC45
4D006MC47
4D006MC49
4D006MC59
4D006MC61
4D006MC62
4D006MC63X
4D006MC81
4D006MC87
4D006MC88
4D006NA05
4D006NA40
4D006NA52
4D006PA01
4D006PB09
4D006PC47
4J005AA24
4J005BA00
4J005BB01
4J005BB02
(57)【要約】
本発明は、生体液を浄化するための膜であって、1つの特定のジヒドロキシモノマーに基づく少なくとも1種のポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマーを含む膜に関する。本発明は、生体液の浄化方法であって、少なくとも、この膜を通した濾過工程を含む浄化方法及びそのような膜を調製するためのポリマー溶液であって、このPAESを含むポリマー溶液にも関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体液を浄化するための膜であって、式(I):
【化1】
(式中、
- 各Rは、各位置において独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキルであり、及び
- Rは、1~10個の炭素原子を有するアルキル又は5~8個の炭素原子を有するシクロアルキルである)
の繰り返し単位(RPAES)を含む少なくとも1種のポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマーを含み、前記PAESの重量平均分子量(Mw)は、移動相として塩化メチレンを使用するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって決定される70,000g/モル~200,000g/モルの範囲である、膜。
【請求項2】
前記PAESポリマーは、前記PAESポリマー中の総モル数を基準として少なくとも60モル%の式(I)の繰り返し単位(RPAES)を含む、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
0.1重量%未満の4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン(BPS)及び4,4’-イソプロピリデンジフェノール(BPA)を含有する、請求項1又は2に記載の膜。
【請求項4】
平らなシート;場合により3mm超の直径を有する管状膜である管状膜;0.5~3mmに含まれる直径を有するキャピラリー膜;又は0.5mm未満の直径を有する中空繊維の形態である、請求項1~3のいずれか一項に記載の膜。
【請求項5】
- 溶媒中における、
- 少なくとも、式(II):
【化2】
(式中、Rは、1~5個の炭素原子を有するアルキルである)
のモノマー(a1)を含む少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシモノマー(a)、
- 4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCPDS)及び4,4’-ジフルオロジフェニルスルホン(DFDPS)からなる群から選択される少なくとも1種のジハロゲン化合物を含む少なくとも1種の芳香族ジハロゲンスルホンモノマー(b)、
- 少なくとも1種の炭酸塩成分
の反応混合物(R)での縮合によって得られる、請求項1~4のいずれか一項に記載の膜。
【請求項6】
前記芳香族ジヒドロキシモノマー(a)は、芳香族ジヒドロキシモノマーの総モルを基準として少なくとも50モル%のモノマー(a1)を含む、請求項5に記載の膜。
【請求項7】
モノマー(b)は、芳香族ジハロゲンスルホンモノマーの総モルを基準として少なくとも50モル%の4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCPDS)を含む、請求項5又は6に記載の膜。
【請求項8】
前記溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルスルホン(DMS)、ジフェニルスルホン(DPS)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、ジエチルスルホキシド、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、テトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド、テトラヒドロチオフェン-1-モノオキシド、N-メチルピロリドン(NMP)、N-ブチルピロリドン(NBP)、N-エチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,Nジメチルアセトアミド(DMAC)、テトラヒドロフラン(THF)、クロロベンゼン、アニソール、クロロホルム、ジクロロメタン(DCM)、スルホラン及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項5~7のいずれか一項に記載の膜。
【請求項9】
モノマー(a)対(b)のモル比は、1.01~1.05である、請求項5~8のいずれか一項に記載の膜。
【請求項10】
前記PAESは、前記ポリマー中の総モル数を基準として1モル%未満のスルホン化された繰り返し単位を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の膜。
【請求項11】
生体液の浄化方法であって、少なくとも、請求項1~10のいずれか一項に記載の膜を通した濾過工程を含む浄化方法。
【請求項12】
前記生体液は、血液である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
体外回路によって行われる、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記体外回路は、血液透析器を含み、及び前記膜は、中空繊維の円筒状束の形態である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
膜を調製するためのポリマー溶液であって、
a)少なくとも、式(I):
【化3】
(式中、Rは、1~5個の炭素原子を有するアルキルである)
の繰り返し単位(RPAES)を含むポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマー、及び
b)極性溶媒
を含むポリマー溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年12月5日出願の米国仮特許出願第62/944,121号及び2020年3月10日出願の欧州特許出願公開第20162138.0号の優先権を主張するものであり、これらの出願のそれぞれの全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、生体液を浄化するための膜であって、1つの特定のジヒドロキシモノマーに基づく少なくとも1種のポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマーを含む膜に関する。本発明は、生体液の浄化方法であって、少なくとも、この膜を通した濾過工程を含む浄化方法及びそのような膜を調製するためのポリマー溶液であって、このPAESを含むポリマー溶液にも関する。
【背景技術】
【0003】
ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマーは、卓越した加水分解安定性と組み合わされた優れた機械的性質及び熱的性質のため、種々の用途分野、例えば医療市場において、膜などの製造に利用されている。PAESは、少なくとも1つのスルホン基(-SO2-)と、少なくとも1つのエーテル基(-O-)と、少なくとも1つのアリーレン基とを含有するポリマーを表すために使用される総称である。
【0004】
商業的に重要なPAESの群には、本明細書でポリスルホン、略してPSUとして特定されるポリスルホンポリマーが含まれる。PSUポリマーは、ジヒドロキシモノマーであるビスフェノールA(BPA)と、ジハロゲンモノマー、例えば4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)との縮合に由来する繰り返し単位を含有する。そのようなPSUポリマーは、Solvay Specialty Polymers USA LLCからUDEL(登録商標)の商標で市販されている。そのようなPSUポリマーの繰り返し単位の構造は、以下に示される。
【化1】
【0005】
PSUポリマーは、ガラス転移温度が高く(例えば、約185℃)、高い強度及び靱性を示す。
【0006】
PAESの別の重要な群には、ポリエーテルスルホンポリマー、略してPESが含まれる。PESポリマーは、ジヒドロキシモノマーであるビスフェノールS(BPS)と、ジハロゲンモノマー、例えば4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)との縮合に由来する。そのようなPESポリマーは、Solvay Specialty Polymers USA LLCからVERADEL(登録商標)の商標で市販されている。そのようなPESポリマーの繰り返し単位の構造は、以下に示される。
【化2】
【0007】
BPA及びBPSは、1960年代以降、プラスチックボトル並びに食品及び飲料の缶などの多くの物品中に存在している工業用化学物質である。それぞれBPA及びBPSに基づくPSU及びPESポリマーは、例えば、血液などの生体液と接触して使用される膜を調製するためにも頻繁に使用される。近年、BPA及びBPSの安全性について懸念が高まっている。そのため、BPS及びBPAと異なるモノマーに基づく高分子材料が必要とされている。
【0008】
本発明で説明される膜は、BPA及びBPSを含まないPAESポリマーに基づく。より正確には、本発明のPAESは、好ましくは、テトラアルキル化ビスフェノールF、例えば内分泌かく乱の可能性が低いか又は全くないテトラメチルビスフェノールF(TMBPF)に基づく。
【0009】
米国特許出願公開第2014/0113093号明細書(Solvay)は、特定の芳香族ジオールに由来するPAESポリマーを記載しており、これは、エストロゲン受容体に対する結合親和性が弱く、食品及び医薬品産業によく適しており、有利にはヒトの健康に対するリスクが低い。この文献は、テトラアルキル化ビスフェノールFの使用を記載していない。
【0010】
Sundellらの論文(Polymer(2014),55(22),5623-5634)は、酸素/窒素ガス分離のための、テトラメチルビスフェノールF(TMBPF)に基づくポリマーの合成、酸化及び架橋を記載している。
【0011】
Sundellらの論文(International Journal of Hydrogen Energy(2012),37(12),9873-9881)は、高性能アルカリ燃料電池用の四級アンモニウムポリ(エーテルスルホン)に基づく自己架橋アルカリ電解質膜に関し、特に炭酸カリウム、ジメチルスルホキシド及びトルエンの存在下でTMBPF及びDCDPSからテトラメチルビスフェノールFポリスルホンを合成することを記載している。
【0012】
しかしながら、これらの論文は、生体液を浄化するための膜を調製するためのそのようなポリマーの使用を記載していない。特に、これらの文献は、生体液の浄化方法であって、少なくとも、そのような膜を通した濾過工程を含む浄化方法を記載していない。
【0013】
国際公開第2018/079733号パンフレット(Mitsui)は、半透膜と、その少なくとも片側に配置された多孔質基材とを含む正浸透膜に関する。半透膜は、プロトン酸基含有芳香族ポリエーテル樹脂を含む。実施例8のコポリマーは、DMSO/トルエン溶媒ブレンド中において、40モル%のジスルホン化DCDPS及び60モル%のDCDPSをTMBPFと縮合することによって得られる。しかしながら、そのようなコポリマーは、分子量が低すぎるため、膜の調製には不適切である。
【0014】
国際公開第17096140号パンフレット(GE)は、概して、中空繊維膜を製造するために使用されるポリマーブレンドに関する。このポリマーブレンドは、双性イオン基を含む少なくとも1種のポリマーを含む。米国特許出願公開第2019/106545号明細書(Fresenius)は、ポリスルホン-ウレタンコポリマーに関し、またこのコポリマーを膜(例えば、紡糸中空糸膜又は平坦膜)に組み込むための方法が開示されている。米国特許出願公開第2014/113093号明細書(Solvay)は、エストロゲン活性が低下した新規ポリマーに関する。この発明は、そのようなポリマーを含有する組成物及びそのようなポリマーから製造された物品に更に関する。これらの3つの文献のいずれも、本発明によるポリマーを記載していない。
【発明の概要】
【0015】
本開示の一態様は、生体液を浄化するための膜であって、式(I):
【化3】
(式中、
- 各Rは、各位置において独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキルであり、及び
- Rは、1~10個の炭素原子を有するアルキル又は5~8個の炭素原子を有するシクロアルキルである)
の繰り返し単位(RPAES)を含むポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマーを含む膜に関する。
【0016】
そのような膜を調製するために使用されるPAESは、好ましくは、
- 溶媒中における、
- 少なくとも、式(III):
【化4】
(式中、各Rは、各位置において独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキルであり、及びRは、1~10個の炭素原子を有するアルキル又は5~8個の炭素原子を有するシクロアルキルである)
のモノマー(a1)を含む少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシモノマー(a)、
- 4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCPDS)及び4,4’-ジフルオロジフェニルスルホン(DFDPS)からなる群から選択される少なくとも1種のジハロゲン化合物を含む少なくとも1種の芳香族ジハロゲンスルホンモノマー(b)、
- 少なくとも1種の炭酸塩成分
の反応混合物(R)での縮合から誘導される。
【0017】
本発明の別の態様は、生体液の浄化方法であって、少なくとも、本明細書に記載の膜を通した濾過工程を含む浄化方法である。生体液は、好ましくは、血液である。方法は、好ましくは、体外回路、例えば血液透析器によって行われる。
【0018】
本発明の更なる態様は、膜を調製するためのポリマー溶液であって、本明細書に開示されるPAESを含むポリマー溶液である。
【0019】
本発明の第4の態様は、生物学的流体、好ましくは血液を浄化するための膜を調製するための、本明細書に記載のPAESポリマーの使用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明によるポリマーを用いて得られた膜の写真である(スケール50μm)。
図2】Solvay Specialty Polymers USA.LLCから市販されているポリマーであるUdel(登録商標)P3500を用いて得られた膜の写真である(スケール50μm)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明者らは、内分泌かく乱の可能性が低いか又は全くない特定のジヒドロキシモノマーを使用して、適切な一連の特性(特に分子量)を有するPAESポリマーを問題なく調製することができ、これを、その後、生体液の浄化に使用するための膜を調製するために使用できることを見出した。そのため、そのようなモノマーが組み込まれたPAESポリマーは、低下したエストロゲン活性を示すことから、これらは、人の健康に対するリスクが低い。
【0022】
本出願では、
- いずれの記載も、特定の実施形態に関連して記載されているとしても、本開示の他の実施形態に適用可能であり、且つそれらと交換可能であり、
- 要素又は成分が、列挙された要素若しくは成分のリストに含まれ、且つ/又はリストから選択されると言われる場合、本明細書で明示的に企図される関連する実施形態では、要素又は成分は、個別の列挙された要素若しくは成分のいずれか1つでもあり得るか、又は明示的に列挙された要素若しくは成分の任意の2つ以上からなる群からも選択され得、要素又は成分のリストに列挙されたいかなる要素又は成分も、このようなリストから省略され得ることが理解されるべきであり、
- 本明細書での端点による数値範囲のいかなる列挙も、列挙された範囲内に包含される全ての数並びに範囲の端点及び均等物を含む。
【0023】
「(コ)ポリマー」又は「ポリマー」という表現は、本明細書では、実質的に100モル%の同じ繰り返し単位を含有するホモポリマー及び少なくとも50モル%、例えば少なくとも約60モル%、少なくとも約65モル%、少なくとも約70モル%、少なくとも約75モル%、少なくとも約80モル%、少なくとも約85モル%、少なくとも約90モル%、少なくとも約95モル%又は少なくとも約98モル%の同じ繰り返し単位を含むコポリマーを指定するために用いられる。
【0024】
ポリマーPAES
本開示に記載のポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマーは、式(I):
【化5】
(式中、
- 各Rは、各位置において独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキルであり、及び
- Rは、1~10個の炭素原子を有するアルキル又は5~8個の炭素原子を有するシクロアルキルである)
の繰り返し単位(RPAES)を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、PAESポリマーは、PAESポリマー中の総モル数を基準として少なくとも50モル%の繰り返し単位(RPAES)を含む。
【0026】
したがって、本発明のPAESポリマーは、ホモポリマー又はコポリマーであり得る。コポリマーである場合、これは、ランダム、交互又はブロックコポリマーであり得る。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、PAES中の繰り返し単位の少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%又は全ては、式(I)の繰り返し単位(RPAES)である。好ましくは、本発明のPAESポリマーは、PAESポリマー中の総モル数を基準として60モル%を超える繰り返し単位(RPAES)を含む。
【0028】
本発明のPAESポリマーは、好ましくは、式(II):
【化6】
(式中、各Rは、各位置において独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキルであり、好ましくは各位置においてメチルである)
の繰り返し単位(RPAES)を含む。
【0029】
本発明の好ましい実施形態によれば、PAES中の繰り返し単位の少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%又は全ては、式(II)の繰り返し単位(RPAES)である。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態では、PAESは、式(I)又は(II)の(RPAES)繰り返し単位と異なる繰り返し単位(R*PAES)を含む。
【0031】
PAESが、式(I)又は(II)の(RPAES)繰り返し単位と異なる繰り返し単位(R*PAES)を含む場合、この追加の繰り返し単位は、例えば、スルホン化され得る。ポリマーが、ジスルホン化DCDPSの縮合から得られるスルホン化繰り返し単位(R*PAES)を含む場合、これらの繰り返し単位の総モル数は、PAESポリマーの総モル数を基準として40モル%未満、例えば30モル%未満、25モル%未満、20モル%未満、15モル%未満又は10モル%未満である。
【0032】
いくつかの別の実施形態では、PAESは、式(I)又は(II)の(RPAES)繰り返し単位と異なる繰り返し単位(R*PAES)を含み得るが、ただし、その場合、スルホン化された繰り返し単位のモル割合は、PAESポリマーの総モル数を基準として1モル%未満、0.5モル%未満又は0.1モル%未満であることを条件とする。
【0033】
いくつかの実施形態では、本開示のPAESポリマーは、式(I)又は(II)の繰り返し単位(RPAES)と、PAESポリマーの総モル数を基準として40モル%未満、30モル%未満、25モル%未満、20モル%未満、15モル%未満、10モル%未満、1モル%未満、0.5モル%未満、更に0.1モル%未満のスルホン化された繰り返し単位とを含む。
【0034】
本開示に記載のPAESポリマーは、
- 溶媒中における、
- 少なくとも、式(III):
【化7】
(式中、各Rは、各位置において独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキルであり、及びRは、1~10個の炭素原子を有するアルキル又は5~8個の炭素原子を有するシクロアルキルである)
のモノマー(a1)を含む少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシモノマー(a)、
- 4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCPDS)及び4,4’-ジフルオロジフェニルスルホン(DFDPS)からなる群から選択される少なくとも1種のジハロゲン化合物を含む少なくとも1種の芳香族ジハロゲンスルホンモノマー(b)、
- 少なくとも1種の炭酸塩成分
の反応混合物(R)での縮合によって得ることができる。
【0035】
モノマー(a1)は、好ましくは、式(IV):
【化8】
(式中、各Rは、各位置において独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキルであり、好ましくは各位置においてメチルである)
に従う。
【0036】
上の式(I)~(IV)において、Rは、好ましくは、各位置においてメチルである。
【0037】
一実施形態によれば、本開示に記載のPAESは、芳香族ジヒドロキシモノマーの総モルを基準として少なくとも50モル%のモノマー(a1)を含む芳香族ジヒドロキシモノマー(a)の縮合から得られる。例えば、芳香族ジヒドロキシモノマー(a)の少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%又は少なくとも99モル%は、モノマー(a1)を含む。好ましい実施形態によれば、芳香族ジヒドロキシモノマー(a)は、モノマー(a1)から本質的なる。
【0038】
一実施形態によれば、本開示に記載のPAESは、芳香族ジハロゲンスルホンモノマーの総モルを基準として少なくとも50モル%の4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCPDS)を含む芳香族ジハロゲンスルホンモノマー(b)の縮合から得られる。例えば、芳香族ジハロゲンスルホンモノマー(b)の少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%は、DCDPSを含む。
【0039】
好ましい実施形態によれば、芳香族ジハロゲンスルホンモノマー(b)は、DCPDSから本質的になる。
【0040】
モノマー(a)対(b)のモル比は、0.9~0.1で変化し得る。例えば、(a)対(b)のモル比は、1.01~1.05で変化し得る。
【0041】
本明細書に記載のPAESを調製するために使用される溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルスルホン(DMS)、ジフェニルスルホン(DPS)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、ジエチルスルホキシド、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、テトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド、テトラヒドロチオフェン-1-モノオキシド、N-メチルピロリドン(NMP)、N-ブチルピロリドン(NBP)、N-エチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,Nジメチルアセトアミド(DMAC)、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、ベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、アニソール、クロロホルム、ジクロロメタン(DCM)、スルホラン及びこれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0042】
本発明のPAESポリマーが、スルホン化された繰り返し単位、例えばスルホン化DCDPSに由来する繰り返し単位を含む場合(この場合、スルホン化DCDPSに由来する繰り返し単位のモル割合が40モル%未満であることを条件とする)、溶媒は、好ましくは、ジメチルスルホン(DMS)、ジフェニルスルホン(DPS)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、ジエチルスルホキシド、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、テトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド、テトラヒドロチオフェン-1-モノオキシド、N-メチルピロリドン(NMP)、N-ブチルピロリドン(NBP)、N-エチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,Nジメチルアセトアミド(DMAC)、テトラヒドロフラン(THF)、ベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、アニソール、クロロホルム、ジクロロメタン(DCM)、スルホラン及びこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくはスルホラン又はNMPである。
【0043】
本明細書に記載の縮合プロセスは、アルカリ金属炭酸水素塩の群、例えば炭酸水素ナトリウム(NaHCO)及び炭酸水素カリウム(KHCO)の群において又はアルカリ金属炭酸塩、例えば炭酸水素カリウム(KCO)及び炭酸ナトリウム(NaCO)の群において選択される炭酸塩成分の存在下で行うことができる。好ましくは、本発明のプロセスは、炭酸カリウム(KCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)又は両方のブレンドの存在下で行われる。一実施形態によれば、本発明のプロセスは、例えば、約100μm未満、例えば45μm未満、30μm未満又は20μm未満の体積平均粒子サイズを有する無水KCOなど、低粒子サイズのアルカリ金属炭酸塩の存在下で行われる。好ましい実施形態によれば、本発明のプロセスは、約100μm未満、例えば45μm未満、30μm未満又は20μm未満の体積平均粒子サイズを有するKCOを、反応混合物中の塩基成分の総重量を基準として50重量%以上含む炭酸塩成分の存在下で行われる。使用される炭酸塩の体積平均粒子サイズは、例えば、クロロベンゼン/スルホラン(60/40)中の粒子の懸濁液でMalvernのMastersizer2000を使用して決定することができる。
【0044】
炭酸成分:ジヒドロキシモノマー(a)のモル比は、1.0~1.2、例えば1.01~1.15又は1.02~1.1であり得る。炭酸成分:ジヒドロキシモノマー(a)のモル比は、好ましくは、1.05以上、例えば1.06又は1.08である。
【0045】
縮合反応により、反応混合物の成分は、通常、同時に反応する。反応は、好ましくは、一段階で行われる。これは、モノマー(a)の脱プロトン化並びにモノマー(a)及び(b)間の縮合反応が中間生成物の分離なしの単一の反応段階で行われることを意味する。
【0046】
本発明のプロセスの一実施形態によれば、縮合は、極性非プロトン性溶媒と、水と共沸混合物を形成する溶媒との混合物中で実施される。水と共沸混合物を形成する溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン等などの芳香族炭化水素が挙げられる。それは、好ましくは、トルエン又はクロロベンゼンである。共沸混合物形成溶媒及び極性非プロトン性溶媒は、典型的には、約1:10~約1:1、好ましくは約1:5~約1:1の重量比で使用される。水は、共沸混合物形成溶媒と共に共沸混合物として反応生成混合物から連続的に除去され、その結果、実質的に無水の状態が重合中に維持される。共沸混合物形成溶媒、例えばクロロベンゼンは、反応で形成された水が除去された後、典型的には蒸留によって反応混合物から除去され、極性非プロトン性溶媒中に溶解していたPAESが残る。
【0047】
好ましくは、反応混合物(R)は、水と共沸混合物を形成する物質を含まない。
【0048】
いくつかの実施形態では、プロセスは、転化率(C)が少なくとも95%であるようなものである。
【0049】
反応混合物の温度は、約150℃~約350℃、好ましくは約210℃~約300℃に約1時間~15時間維持される。
【0050】
反応混合物は、必要な縮合度に到達するまでこの温度範囲内で重縮合される。重縮合時間は、出発モノマーの性質及び選択される反応条件に応じて、0.1~10時間、好ましくは0.2~4時間又は0.5~2時間であり得る。
【0051】
無機成分、例えば塩化ナトリウム若しくは塩化カリウム又は過剰の塩基は、PAESの単離前又は後に溶解及び濾過、ふるい分け又は抽出などの適切な方法によって除去することができる。
【0052】
ある実施形態によれば、縮合終了時のPAESの量は、PAES及び極性非プロトン性溶媒の総重量を基準として少なくとも30重量%、例えば少なくとも35重量%、又は少なくとも37重量%、又は少なくとも40重量%である。
【0053】
反応の終わりに、PAESポリマーは、PAES溶液を得るために他の成分(塩、塩基、...)から分離される。例えば、PAESポリマーを他の成分から分離するために濾過を使用することができる。その後、PAES溶液は、そのまま工程(b)で使用され得るか、又は代わりに、PAESは、例えば、凝固若しくは溶媒揮発分除去によって溶媒から回収され得る。
【0054】
本明細書に記載のPAESポリマーは、その重量平均分子量(Mw)によって特徴付けることができる。本明細書に記載のPAESは、その重量平均分子量(Mw)が70,000g/モル~200,000g/モル、例えば75,000g/モル~190,000g/モル又は80,000g/モル~180,000g/モルの範囲である点で有利に特徴付けることができる。
【0055】
PAESの重量平均分子量(Mw)は、移動相として塩化メチレンを使用するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって決定される。
【0056】

本発明の膜は、生体液、好ましくは血液を浄化するために使用される。
【0057】
膜は、好ましくは、0.1重量%未満の4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン(BPS)及び4,4’-イソプロピリデンジフェノール(BPA)を含有する。
【0058】
「膜」という用語は、その通常の意味で本明細書において使用され、即ち、膜は、その膜と接触する化学種の浸透を緩和する、個別の、通常、薄い界面を意味する。この界面は、分子的に均一であり得る(即ち構造が完全に均一であり得る)か(稠密膜)、又は化学的若しくは物理的に不均一であり得、例えば有限寸法のボイド、孔又は細孔を含有し得る(多孔質膜)。
【0059】
本発明によれば、膜は、典型的には、平均細孔径及び空隙率(即ち膜全体における多孔質の割合)によって特徴付けることができる微多孔質膜である。
【0060】
本発明の膜は、20~90%の重量空隙率(%)を有することができ、且つ細孔を含み、前記細孔の少なくとも90体積%は、5μm未満の平均細孔径を有する。膜の重量空隙率は、膜の総体積で割った細孔の容積と定義される。
【0061】
厚さ全体にわたって一様な構造を有する膜は、一般に、対称膜として知られており、厚さ全体にわたって細孔が均一に分布していない膜は、一般に、非対称膜として知られている。非対称膜は、薄い選択的な層(厚さ0.1~1μm)と、支持体としての役割を果たし、且つこの膜の分離特性にほとんど影響を及ぼさない高多孔質の厚い層(厚さ100~200μm)とで特徴付けられる。
【0062】
膜は、平らなシートの形態又は管状の形態であり得る。
【0063】
管状の膜は、その寸法に基づいて、3mm超の直径を有する管状膜;0.5mm~3mmに含まれる直径を有するキャピラリー膜;及び0.5mm未満の直径を有する中空繊維に分類される。キャピラリー膜は、中空繊維とも呼ばれる。
【0064】
中空繊維は、表面積が大きいコンパクトなモジュールが必要とされる用途で特に有利である。
【0065】
本発明の膜は、従来の公知の膜調製方法のいずれを利用しても、例えば溶液流延又は溶液紡糸法によって製造され得る。
【0066】
好ましくは、本発明による膜は、液相で行われる相転換法によって調製され、前記方法は、
(i)本明細書に記載のPAESと極性溶媒とを含むPAESポリマー溶液を調製する工程、
(ii)前記溶液を処理して膜にする工程;
(iii)前記膜を非溶媒浴に接触させる工程
を含む。
【0067】
本発明の膜は、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として少なくとも1重量%、例えば少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%又は少なくとも30重量%の量で本明細書に記載のPAESを含み得る。
【0068】
本発明の膜は、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として50重量%を超える量、例えば55重量%超、60重量%超、65重量%超、70重量%超、75重量%超、80重量%超、85重量%超、90重量%超、95重量%超又は99重量%超の量で本明細書に記載のPAESを含み得る。
【0069】
一実施形態によれば、本発明の膜は、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として1~99重量%、例えば3~96重量%、6~92重量%又は12~88重量%の範囲の量で本明細書に記載のPAESを含み得る。
【0070】
本発明の膜は、本明細書に記載のPAESと異なる少なくとも1種のポリマー、例えば別のスルホンポリマー、例えばポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)若しくはポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)、例えばポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)、ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)、ポリ(エーテルケトン)(PEK)若しくはPEEKとポリ(ジフェニルエーテルケトン)とのコポリマー(PEEK-PEDEKコポリマー)、ポリエーテルイミド(PEI)及び/又はポリカーボネート(PC)を更に含み得る。別のポリマー成分は、ポリビニルピロリドン及び/又はポリエチレングリコールであり得る。
【0071】
本発明の膜は、溶剤、充填剤、滑沢剤、離型剤、帯電防止剤、難燃剤、防曇剤、つや消し剤、顔料、染料及び蛍光増白剤などの少なくとも1種の非ポリマー系成分も更に含み得る。
【0072】
生体液の浄化方法
浄化方法は、少なくとも、本明細書に記載の膜を通した濾過工程を含む。
【0073】
好ましくは、浄化方法は、体外回路で実行されるヒト生体液(好ましくは血液産物(例えば、全血、血漿、分画血液成分又はこれらの混合物))を浄化するための方法である。方法を実行するための体外回路は、上述した少なくとも1つの膜を含む少なくとも1つの濾過装置(又はフィルタ)を含む。
【0074】
本明細書で意図されているように、体外回路を通した血液浄化方法は、拡散による血液透析(FD)、血液濾過(HF)、血液濾過透析(HDF)及び血液濃縮を含む。HFでは、血液は、限外濾過によって濾過されるが、HDFでは、血液は、FDとHFとの組み合わせによって濾過される。
【0075】
体外回路を通した血液浄化方法は、典型的には、血液透析器(即ちFD、HF又はHFDのいずれか1つを実行するように設計されている機器)によって実行される。そのような方法では、血液は、尿素、カリウム、クレアチニン及び尿酸のような廃棄溶質及び廃棄液から濾過され、それにより廃棄溶質及び廃棄液を含まない血液が得られる。
【0076】
典型的には、血液浄化方法を実行するための血液透析器は、膜の中空繊維の円筒状束を含み、前記束は、両端を有し、これらは、それぞれいわゆるポッティングコンパウンドに固定されており、ポッティングコンパウンドは、通常、束の末端を一体に保持する接着剤としての役割を果たす高分子材料である。ポッティングコンパウンドは、当技術分野で公知であり、これらとしては、特にポリウレタンが挙げられる。圧力勾配を適用することにより、血液は、血液ポートを介して膜の束を通してポンプ送液され、濾過生成物(「透析液」)は、フィルタの周囲の空間を通してポンプ送液される。
【0077】
膜を調製するためのポリマー溶液
本発明の一態様は、膜を調製するためのポリマー溶液であって、
a)少なくとも、式(I):
【化9】
(式中、
- 各Rは、各位置において独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキルであり、及び
- Rは、1~10個の炭素原子を有するアルキル又は5~8個の炭素原子を有するシクロアルキルである)
の繰り返し単位(RPAES)を含むポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマー;及び
b)少なくとも1種の極性溶媒
を含むポリマー溶液に関する。
【0078】
溶液中のポリマー(PAES)の全濃度は、この溶液の総重量を基準として少なくとも8重量%、好ましくは少なくとも12重量%である。典型的には、この溶液中のポリマー(PAES)の濃度は、この溶液(SP)の総重量を基準として50重量%を超えず、好ましくは40重量%を超えず、より好ましくは30重量%を超えない。
【0079】
用語「溶媒」は、その通常の意味で本明細書において用いられ、即ち、それは、別の物質(溶質)を溶解させて分子レベルで一様に分散した混合物を形成することができる物質を意味する。高分子溶質の場合、得られる混合物が透明であり、且つ系中で相分離が見られない場合の溶媒中のポリマーの溶液を意味することが一般的である。相分離は、ポリマー凝集体の形成が原因で溶液が濁るか又は曇るようになる、多くの場合に「曇点」と言われる点であると解釈される。
【0080】
例示的な溶媒は、特許出願国際公開第2019/048652号パンフレット(Solvay Specialty Polymers USA)に記載されている。
【0081】
溶液中の溶媒の全濃度は、この溶液の総重量を基準として少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも30重量%であり得る。典型的には、この溶液中の溶媒の濃度は、この溶液の総重量を基準として70重量%を超えず、好ましくは65重量%を超えず、より好ましくは60重量%を超えない。
【0082】
溶液は、造核剤及び賦形剤などの追加の成分を含有し得る。
【0083】
溶液は、細孔形成剤、特にポリビニルピロリドン(PVP)及び少なくとも200の分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)も含有し得る。
【0084】
参照により本明細書に援用されるいずれかの特許、特許出願及び刊行物の開示が、それが用語を不明確にし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0085】
ここで、以下の非限定的な実施例において例示的な実施形態を説明する。
【実施例
【0086】
ここで、本開示を以下の実施例に関連してより詳細に記載するが、それらの目的は、例示的であるにすぎず、本開示の範囲を限定することを意図しない。
【0087】
出発物質
テトラメチルビスフェノールF、TCI Americaから市販
DCDPS(4,4’-ジクロロジフェニルスルホン)、Solvay Specialty Polymers USA,LLCから市販
CO3、Aldrichから市販
スルホラン、Aldrichから市販
DMI(1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)、TCI Americaから市販
クロロベンゼン、Aldrichから市販
DMSO(ジメチルスルホキシド)、Fisherから市販
Udel(登録商標)P3500、Solvay Specialty Polymers USA,LLCから市販
DSDCDPS(ジスルホン化4,4’-ジクロロジフェニルスルホン)、Akron Polymer Systemsから市販
【0088】
ポリマーの調製
実施例1
オーバーヘッド撹拌機と、窒素浸漬管と、還流冷却器付きのdean-starkトラップとを備えた1Lの樹脂フラスコに115.358g(0.450モル)のテトラメチルビスフェノールF、129.223g(0.450モル)のDCPDS、65.302g(0.473モル)のKCO及び494.11gのスルホランを入れた。撹拌及び窒素の流れを確立し、反応混合物を窒素で15分間パージした後、200℃の目標内部温度で外部オイルバスにより加熱を開始した。重合反応の副生成物である水は、反応器から連続的に留去し、dean-starkトラップで回収した。200℃に達した後、所望のMwに到達するまで反応をその温度で保持した。所望の分子量に到達した後、30~60分間かけて1g/分の速度で反応混合物を通してガス状塩化メチルを吹き込むことによって重合を停止した。反応混合物を317.64gのスルホランで希釈した。希釈したポリマー溶液を、加圧下で2.7μmのグラスファイバーフィルターパッドを通して濾過し、塩を除去した。ポリマー溶液を1:5のポリマー溶液対非溶媒の比率でメタノール又はメタノール/アセトン(1:1)中に析出させて、白色固体を得た。その後、単離した白色固体を同じ非溶媒で6回洗浄し、真空濾過し、100℃の真空オーブン中で12時間乾燥した。分子量は、GPCにより測定した。
【0089】
実施例2
重合は、実施例1の通りに行ったが、重合は、より低いMwで停止した。
【0090】
実施例3
添加量が以下の通りであることを除き、実施例1の通りに重合を行った。
・テトラメチルビスフェノールF-179.445g(0.700モル)
・DCDPS-201.013g(0.700モル)
・炭酸カリウム-101.581(0.735モル)
・スルホラン-494.107g
【0091】
目標のMwに達した後、768.61gのスルホランを添加して希釈し、その後、濾過、凝固、洗浄及び乾燥を行った。
【0092】
実施例4
オーバーヘッド撹拌機と、窒素浸漬管と、還流冷却器付きのdean-starkトラップとを備えた1Lの樹脂フラスコに170.66g(0.666モル)のテトラメチルビスフェノールF、191.172g(0.0.666モル)のDCPDS、96.607g(0.699モル)のK2CO3及び313.28gのDMIを入れた。撹拌及び窒素の流れを確立し、反応混合物を窒素で15分間パージした後、195℃の目標内部温度で外部オイルバスにより加熱を開始した。重合反応の副生成物である水は、反応器から連続的に留去し、dean-starkトラップで回収した。195℃に達した後、所望のMwに到達するまで反応をその温度で保持した。所望の分子量に到達した後、30~60分間かけて1g/分の速度で反応混合物を通してガス状塩化メチルを吹き込むことによって重合を停止した。反応混合物を714.86gのDMIで希釈した。希釈したポリマー溶液を、加圧下で2.7μmのグラスファイバーフィルターパッドを通して濾過し、塩を除去した。ポリマー溶液を1:5のポリマー溶液対非溶媒の比率でメタノール又はメタノール/アセトン(1:1)中に析出させて、白色固体を得た。その後、単離した白色固体を同じ非溶媒で6回洗浄し、真空濾過し、100℃の真空オーブン中で12時間乾燥した。
【0093】
実施例5
オーバーヘッド撹拌機と、窒素浸漬管と、還流冷却器付きのdean-starkトラップとを備えた1Lの樹脂フラスコに179.445g(0.700モル)のテトラメチルビスフェノールF、201.013g(0.700モル)のDCPDS、101.581g(0.735モル)のK2CO3及び329.40gNMPを入れた。撹拌及び窒素の流れを確立し、反応混合物を窒素で15分間パージした後、195℃の目標内部温度で外部オイルバスにより加熱を開始した。重合反応の副生成物である水は、反応器から連続的に留去し、dean-starkトラップで回収した。195℃に達した後、所望のMwに到達するまで反応をその温度で保持した。所望の分子量に到達した後、30~60分間かけて1g/分の速度で反応混合物を通してガス状塩化メチルを吹き込むことによって重合を停止した。反応混合物を988.21gのNMPで希釈した。希釈したポリマー溶液を、加圧下で2.7μmのグラスファイバーフィルターパッドを通して濾過し、塩を除去した。ポリマー溶液を1:5のポリマー溶液対非溶媒の比率でメタノール又はメタノール/アセトン(1:1)中に析出させて、白色固体を得た。その後、単離した白色固体を同じ非溶媒で6回洗浄し、真空濾過し、100℃の真空オーブン中で12時間乾燥した。
【0094】
実施例6
オーバーヘッド撹拌機と、窒素浸漬管と、還流冷却器付きのバレットトラップとを備えた1Lの樹脂フラスコに153.81g(0.600モル)のテトラメチルビスフェノールF、430.67gのクロロベンゼン及び73.43gのDMSOを入れた。撹拌及び窒素の流れを確立し、反応混合物を窒素で15分間パージした後、外部オイルバスにより加熱を開始した。温度が約40℃に到達した後、94.84gの苛性アルカリ水溶液(約50重量%)、続いて260.34gのDMSOを反応器に添加した。水/クロロベンゼンを継続的に除去しながら、内部温度をゆっくりと約150℃まで上げた。反応の水を全て除去した後、172.30gのクロロベンゼン中の172.30gのDCDPSの溶液を反応器にゆっくりと添加した。添加が完了した後、反応温度を165~170℃まで上げ、高分子量に達するまで保持した。ガス状塩化メチルで60分間重合を停止させた後、クロロベンゼンで希釈した。希釈したポリマー溶液を、加圧下で2.7μmのグラスファイバーフィルターパッドを通して濾過し、塩を除去した。ポリマー溶液を1:5のポリマー溶液対非溶媒の比率でメタノール又はメタノール/アセトン(1:1)中に析出させて、白色固体を得た。その後、単離した白色固体を同じ非溶媒で6回洗浄し、真空濾過し、100℃の真空オーブン中で12時間乾燥した。
【0095】
DMSO/トルエン中での実施例7
この実施例は、国際公開第2018/079733号パンフレット(Mitsui)の実施例8によるポリマーの調製を示す。
【0096】
オーバーヘッド撹拌機と、窒素浸漬管と、還流冷却器付きのdean-starkとを備えた1Lの樹脂フラスコに57.68g(0.225モル)のテトラメチルビスフェノールF、38.77g(0.135モル)のDCPDS、44.21g(0.090モル)のジスルホン化DCDPS、38.87g(0.2813モル)のKCO、535.2gのDMSO及び178.40gのトルエンを入れた。窒素の流れを確立し、反応器の内容物を130℃まで加熱した。共沸脱水を12時間行った。dean-starkトラップから水を除去し、この時間中にトルエンを反応器に戻した。12時間後、トルエンを留去し、反応混合物の温度を160℃に到達させた。重合を160℃で12時間行った。12時間後、反応器を合計570gのトルエンで希釈した。少量の反応液を濾過し、GPC測定に使用した。
【0097】
NMP中での実施例8 - 10モル%のジスルホン化DCDPS
オーバーヘッド撹拌機と、窒素浸漬管と、還流冷却器付きのdean-starkトラップとを備えた1Lの樹脂フラスコに128.14g(0.500モル)のテトラメチルビスフェノールF、129.22g(0.450モル)のDCPDS、24.56g(0.050モル)のジスルホン化DCDPS、73.94g(0.535モル)のKCO、300.05gのNMPを入れた。反応器の内容物を窒素で15分間パージした後、190℃まで加熱した。約18時間後、反応を150gのNMPでクエンチし、塩化メチルガスで30分間停止した。これを更に941gのNMPで希釈した。ポリマー混合物を濾過し、1:10(ポリマー溶液:塩溶液)の比率で5%NaCl水溶液中に凝固させた。これを5%の塩化ナトリウム塩水溶液で4~5回洗浄し、濾過し、120℃の真空オーブン中で乾燥させた。少量の濾過した反応液をGPC測定に使用した。
【0098】
スルホラン中での10モル%のジスルホン化DCDPSの実施例9
オーバーヘッド撹拌機と、窒素浸漬管と、還流冷却器付きのdean-starkトラップとを備えた1Lの樹脂フラスコに128.14g(0.500モル)のテトラメチルビスフェノールF、129.22g(0.450モル)のDCPDS、24.56g(0.050モル)のジスルホン化DCDPS、73.94g(0.535モル)のKCO、368.24gのスルホランを入れた。反応器の内容物を窒素で15分間パージした後、225℃まで加熱した。約8時間後、反応を150gのスルホランでクエンチし、塩化メチルガスで30分間停止した。これを更に941gのスルホランで希釈し、熱いうちに濾過した。1:10(ポリマー溶液:塩溶液)の比率で5%NaCl水溶液中に凝固させた。これを5%の塩化ナトリウム塩水溶液で4~5回洗浄し、濾過し、120℃の真空オーブン中で乾燥させた。少量の濾過した反応液をGPC測定に使用した。
【0099】
スルホラン中での20モル%のジスルホン化DCDPSの実施例10
DSDCPDSのモル数が0.100モル(20モル%)であり、DCDPSが0.400モルであり、スルホランが383.55gであったことを除いて、実施例9と同じ合成プロセスに従ってポリマーを得た。反応時間は、約14時間であった。
【0100】
スルホラン中での30モル%のジスルホン化DCDPSの実施例11
DSDCPDSのモル数が0.150モル(30モル%)であり、DCDPSが0.350モルであり、スルホランが398.85gであったことを除いて、実施例9と同じ合成プロセスに従ってポリマーを得た。反応時間は、約15時間であった。
【0101】
スルホラン中での40モル%のジスルホン化DCDPSの実施例12
DSDCPDSのモル数が0.200モル(40モル%)であり、DCDPSが0.300モルであり、スルホランが414.16gであったことを除いて、実施例9と同じ合成プロセスに従ってポリマーを得た。反応時間は、17時間であった。
【0102】
ポリマーの特性評価
分子量の決定
塩化メチレンを移動相として用いて、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を実施した。Agilent Technologies製のガードカラム付きの2つの5μmの混合Dサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)カラムを分離のために用いた。254nmの紫外線検出器を、クロマトグラムを得るために使用する。1.5ml/分の流量及び移動相中の0.2w/v%溶液の20μLの注入量を選択した。
【0103】
較正は、Agilent Technologiesから入手したポリスチレンの10個の狭い較正標準を使用して行った(ピーク分子量範囲:371000~580)。
【0104】
較正曲線:
1)タイプ:相対的な、狭い較正標準による較正
2)フィット:3次回帰。
【0105】
積分及び計算:Waters製のEmpower Pro GPCソフトウェアを使用して、データ、較正及び分子量計算を取得する。ピーク積算開始点及び終了点は、ベースライン全体上の有意な差からマニュアルで決定する。
【0106】
ジスルホン化DCDPSを使用して製造したコポリマーについて、Agilent Technologiesのガードカラムと共に2つのMiniMIX-D SECカラムを使用した。移動相は、0.1MのLiBrを含むDMAcであった。クロマトグラムを得るために270nmのUV検出器セットを用いた。0.3mL/分の流量及び0.2%w/v濃度で5μlの注入量を使用した。
【0107】
較正は、Agilent Technologiesから入手したポリスチレンの10個の狭い較正標準を使用して行った(ピーク分子量範囲:364,000~580)。
【0108】
較正曲線:
1)タイプ:相対的な、狭い較正標準による較正
2)フィット:3次回帰。
【0109】
積分及び計算:Waters製のEmpower3 GPCソフトウェアを使用して、データ、較正及び分子量計算を取得する。ピーク積算開始点及び終了点は、ベースライン全体上の有意な差からマニュアルで決定する。
【0110】
溶液粘度
25w/w%のポリマー溶液をHPLCグレードのN’N-ジメチルアセトアミド中で調製した。ポリマー溶液の粘度は、MV-DINとステーターとを有するThermoHaakeセンサーシステムと、ThermoHaake DC-30循環槽によって制御される温度容器とを備えたThermoHaake Viscotester VT550によって測定した。装置の較正は、認定された粘度標準を使用して行った。溶液の粘度は、40℃及び30s-1のせん断速度で測定した。
【0111】
DSC
DSCを用いてガラス転移温度(Tg)を決定した。DSC実験は、TA Instrument Q100を用いて実施した。DSC曲線は、20℃/分の加熱及び冷却速度で25℃~320℃において試料を加熱し、冷却し、再加熱し、且つ次いで再冷却することによって記録した。全てのDSC測定値は、窒素パージ下で取った。報告されるTg及びTm値は、特に明記しない限り、2回目の加熱曲線を使用して規定した。
【0112】
結果
以下のデータ表は、得られたMw、溶液粘度及びガラス転移温度をまとめている。
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
【0115】
膜の調製
以下の手順を使用して、2つの平坦膜を調製した。
【0116】
膜#1:実施例2(本発明の実施例)から得たポリマーの20重量%NMP溶液を、2.7μmシリンジフィルターを通して濾過した。6ミルのドローバーでガラスプレート上に手作業で膜をキャストした。キャスト膜を、室温に維持されている水浴中に沈めた。形成した膜をガラス板から剥がした。膜を別の浴に1時間浸すことにより、新鮮な脱イオン水で洗浄した。その後、これらを、きれいな脱イオン水が入っているサンプル瓶内に保管した。
【0117】
膜#2:ポリマーとしてUdel(登録商標)P3500を使用した膜(比較例)を同様に調製した。
【0118】
SEMによって画像を得る前に、膜サンプルを軽くたたいて乾燥し、次いで液体窒素中に1分間浸漬した。その後、サンプルを破砕した。破砕したサンプルをアルミニウムスタブに入れ、その後、AuPdでスパッタコーティングした。これらの膜の横断面の写真を図1及び図2に示す。
【0119】
本発明のポリマーから製造した膜の形態は、構造において、Udel P3500を使用して製造したものに同等である。
【0120】
接触角
膜の接触角は、ASTM D5946-09に従ってKRUESS EASYDROP機器を用いて測定した。
【0121】
【表3】
図1
図2
【国際調査報告】