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特表2023-504835非接触システムおよび当該非接触システムの電磁妨害を低減する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-07
(54)【発明の名称】非接触システムおよび当該非接触システムの電磁妨害を低減する方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/3296 20190101AFI20230131BHJP
   G06F 1/3206 20190101ALI20230131BHJP
   G06F 1/3287 20190101ALI20230131BHJP
   G06F 1/324 20190101ALI20230131BHJP
   G06F 1/3237 20190101ALI20230131BHJP
   H04B 5/02 20060101ALI20230131BHJP
   G06F 15/78 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
G06F1/3296
G06F1/3206
G06F1/3287
G06F1/324
G06F1/3237
H04B5/02
G06F15/78 517
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533476
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(85)【翻訳文提出日】2022-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2020084641
(87)【国際公開番号】W WO2021110921
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】19306592.7
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520414848
【氏名又は名称】タレス・ディス・デザイン・サービシズ・エス・ア・エス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デュバル,バンジャマン
(72)【発明者】
【氏名】フルカン,オリビエ
(72)【発明者】
【氏名】モロー,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ファブレ,ローラン
【テーマコード(参考)】
5B011
5B062
5K012
【Fターム(参考)】
5B011DA12
5B011EA10
5B011EB06
5B011GG06
5B011LL11
5B011LL13
5B062AA05
5B062AA08
5B062HH02
5B062HH04
5K012AC08
5K012AC10
5K012AE10
5K012AE13
(57)【要約】
本発明は、電磁界を介したリーダとの非接触通信のために構成され、電源、電流モニタ、演算を行うために構成されたハードウェアプロセッサを含む処理システム、動的余剰電流ローダ、クロック生成器を含む非接触電子システムに関し:- 前記電流モニタは、電磁界から処理システムへ電源によって提供され得る最大電流Imaxを決定するように構成され、- 前記電流モニタは、前記ハードウェアプロセッサの実行段階中に、前記決定された最大電流Imaxと、処理システムによって引き出された電流Iplatformとを比較するように構成され、- 前記動的余剰電流ローダは、処理システムによって引き出された電流Iplatformが決定された最大電流Imaxよりも低いときに、Imax-Iplatformに等しい余剰電流Iextraをロードするように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁界を介するリーダとの非接触通信のために構成され、電源(203)、電流モニタ(205)、演算を行うように構成されたハードウェアプロセッサ(202)を含む処理システム(201)、動的余剰電流ローダ(206)、およびクロック生成器(204)、を含む非接触電子システム(200)であって、
前記電流モニタは、電磁界から処理システムへ電源によって提供され得る最大電流Imaxを決定するように構成され、
前記電流モニタは、前記ハードウェアプロセッサの実行段階中に、前記決定された最大電流Imaxと、処理システムによって引き出された電流Iplatformとを比較するように構成され、
前記動的余剰電流ローダは、処理システムによって引き出された電流Iplatformが決定された最大電流Imaxよりも低いときに、Imax-Iplatformに等しい余剰電流Iextraをロードするように構成される、非接触電子システム(200)。
【請求項2】
前記ハードウェアプロセッサ(202)が、電源の崩壊を防止するために、前記決定された最大電流Imaxに応じてその電力消費を低減するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ハードウェアプロセッサ(202)が、その動作電圧を低減することによってその電力消費を低減するように構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ハードウェアプロセッサ(202)が、前記ハードウェアプロセッサの内部ブロックを非活性化することによって、その電力消費を低減するように構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記ハードウェアプロセッサ(202)が、その動作周波数を低減することにより、その電力消費を低減するように構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
処理システムによって引き出された電流Iplatformが決定された最大電流Imaxよりも高い場合に、前記クロック生成器(204)が、電源の崩壊を防ぐために、クロック生成器によって処理システムに提供されるクロックを少なくとも1サイクル停止するように構成される、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記電流モニタ(205)が、前記決定された最大電流Imaxと処理システムによって引き出された前記電流(Iplatform)との間の前記比較を連続的に行うように構成され、前記動的余剰電流ローダ(206)が、前記実行段階の終了まで、前記余剰電流(Iextra)を連続的にロードするように構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
電磁界を介するリーダとの非接触通信のために構成され、電源(203)、電流モニタ(205)、演算を行うように構成されたハードウェアプロセッサ(202)を含む処理システム(201)、動的余剰電流ローダ(206)、およびクロック生成器(204)、を含む非接触電子システム(200)の電磁妨害を低減するための方法であって、前記非接触電子システム(200)によって行われる、
前記電流モニタによって、電磁界から処理システムへ電源によって提供される最大電流Imaxを決定すること(S1)、
前記電流モニタによって、前記ハードウェアプロセッサの実行段階において、前記決定された最大電流Imaxと、処理システムによって引き出された電流Iplatformとを比較すること(S2)、
処理システムによって引き出された電流Iplatformが決定された最大電流Imaxより低いときに、前記動的余剰電流ローダによってImax-Iplatformに等しい余剰電流Iextraをロードすること(S3)
を含む、方法。
【請求項9】
電源の崩壊を防止するために、前記ハードウェアプロセッサによって、前記決定された最大電流Imaxに応じてその電力消費を低減すること(S4)を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ハードウェアプロセッサが、その動作電圧を低減することによってその電力消費を低減する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ハードウェアプロセッサが、前記ハードウェアプロセッサの内部ブロックを非活性化することによってその電力消費を低減する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記ハードウェアプロセッサが、その動作周波数を低減することにより、その電力消費を低減する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
処理システムによって引き出された電流Iplatformが決定された最大電流Imaxよりも高い場合に、電源の崩壊を防ぐために、前記クロック生成器によって、クロック生成器によって処理システムに提供されるクロックを少なくとも1サイクル停止すること(S5)を含む、請求項8から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記決定された最大電流Imaxと処理システムによって引き出された前記電流(Iplatform)との間の前記電流モニタによる前記比較と、前記実行段階の終了まで動的余剰電流ローダによる前記余剰電流(Iextra)の前記ローディングとを連続的に行うことを含む、請求項8から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つのコンピュータのメモリに直接ロード可能なコンピュータプログラム製品であって、前記製品がコンピュータ上で走らされるときに請求項8から14のいずれか一項に記載のステップを行うためのソフトウェアコード命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触通信の分野に関し、より詳細には、デバイスのプロセッサの動作中にデバイスとリーダとの間に電磁妨害を生じさせることを回避する非接触デバイスおよび対応する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示すように、RFID搭載スマートカードのような非接触デバイスは、リーダとの通信段階(図1のRXとTX)とCPU計算の段階(図1のEXE)を交互に繰り返す。このようなデバイスのCPU計算時の電流消費(Iplatform)は、集中的である場合もあれば、そうでない場合もあるCPUの活動に応じて大きく変動する可能性がある。このような電力消費の変動は頻繁に発生し、非接触デバイスの電磁放射RFの変動を誘発する可能性がある。このような変動は、デバイスの次の通信段階がまだ開始されていない時に、リーダによって通信の試行であると誤解される可能性がある。
【0003】
したがって、CPUの計算段階中に、非接触デバイスとRFリーダ間のRF通信と干渉する可能性のある電磁放射を発生させない非接触デバイスおよび関連する方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的のために、第1の態様によれば、本発明は、したがって、電磁界を介するリーダとの非接触通信のために構成され、電源、電流モニタ、演算を行うように構成されたハードウェアプロセッサを含む処理システム、動的余剰電流ローダ、およびクロック生成器、を含む非接触電子システムに関し:
- 前記電流モニタは、電磁界から処理システムへ電源によって提供され得る最大電流Imaxを決定するように構成され、
- 前記電流モニタは、前記ハードウェアプロセッサの実行段階中に、前記決定された最大電流Imaxと、処理システムによって引き出された電流Iplatformとを比較するように構成され、
- 前記動的余剰電流ローダは、処理システムによって引き出された電流Iplatformが決定された最大電流Imaxよりも低いときに、Imax-Iplatformに等しい余剰電流Iextraをロードするように構成される。
【0005】
このようなシステムは、処理システムの電流消費の変動にもかかわらず、システムによって引き起こされる電磁障害を大幅に低減することを可能にする。
【0006】
前記ハードウェアプロセッサは、電源の崩壊を防止するために、前記決定された最大電流Imaxに応じてその電力消費を低減するように構成されてもよい。
【0007】
前記ハードウェアプロセッサは、例えば、その動作電圧を低減することによって、前記ハードウェアプロセッサの内部ブロックを非活性化することによって、またはその動作周波数を低減することによって、その電力消費を低減するように構成されてもよい。
【0008】
処理システムによって引き出された電流Iplatformが決定された最大電流Imaxよりも高いときに、前記クロック生成器は、電源の崩壊を防ぐために、クロック生成器によって処理システムに提供されるクロックを少なくとも1サイクル停止するように構成されてもよい。
【0009】
そうすることによって、処理システムの電流消費のさらなる増加が防止され、電源の崩壊がさらに防止される。
【0010】
実施形態において、前記電流モニタは、前記決定された最大電流Imaxと処理システムによって引き出された前記電流Iplatformとの間の前記比較を連続的に行うように構成され、前記動的余剰電流ローダは、前記実行段階の終了まで、前記余剰電流Iextraを連続的にロードするように構成される。
【0011】
これにより、処理システムの電流消費の変動にもかかわらず、システムによってロードされる総電流を、全ての実行段階において、決定された最大電流Imaxに等しく、一定に保つことができる。
【0012】
第2の態様によれば、本発明は、電磁界を介するリーダとの非接触通信のために構成され、電源、電流モニタ、演算を行うように構成されたハードウェアプロセッサを含む処理システム、動的余剰電流ローダ、およびクロック生成器を含む非接触電子システムの電磁妨害を低減するための方法であって、前記非接触電子システムによって行われる:
- 前記電流モニタによって、電磁界から処理システムへ電源によって提供される最大電流Imaxを決定すること、
- 前記電流モニタによって、前記ハードウェアプロセッサの実行段階において、前記決定された最大電流Imaxと、処理システムによって引き出された電流Iplatformとを比較すること、
- 処理システムによって引き出された電流Iplatformが決定された最大電流Imaxより低いときに、前記動的余剰電流ローダによってImax-Iplatformに等しい余剰電流Iextraをロードすること
を含む。
【0013】
第2の態様による方法は:電源の崩壊を防止するために、前記ハードウェアプロセッサによって、前記決定された最大電流Imaxに応じてその電力消費を低減することを含み得る。
【0014】
前記ハードウェアプロセッサは、例えば、その動作電圧を低減することによって、前記ハードウェアプロセッサの内部ブロックを非活性化することによって、またはその動作周波数を低減することによって、その電力消費を低減することができる。
【0015】
処理システムによって引き出された電流Iplatformが決定された最大電流Imaxよりも高いときに、第2の態様による方法は:電源の崩壊を防ぐために、前記クロック生成器によって、クロック生成器によって処理システムに提供されるクロックを少なくとも1サイクル停止することを含み得る。
【0016】
第2の態様による方法は:前記決定された最大電流Imaxと処理システムによって引き出された前記電流Iplatformとの間の前記電流モニタによる前記比較と、前記実行段階の終了まで動的余剰電流ローダによる前記余剰電流Iextraの前記ローディングとを連続的に行うステップを含み得る。
【0017】
このような方法は、上述した電子システムと同じ利点を有する。
【0018】
第3の態様によれば、本発明は、少なくとも1つのコンピュータのメモリに直接ロード可能なコンピュータプログラム製品であって、前記製品がコンピュータ上で走らされるときに本発明の第2の態様による方法のステップを行うためのソフトウェアコード命令を含むコンピュータプログラム製品に関する。
【0019】
前述の目的および関連する目的を達成するために、1つ以上の実施形態は、以下に完全に説明され、特に特許請求の範囲に記載された特徴を含む。
【0020】
以下の説明および添付の図面は、特定の例示的な態様を詳細に示し、実施形態の原理を採用することができる様々な方法のほんの一部を示すものである。他の利点および新規の特徴は、図面と併せて考慮すると、以下の詳細な説明から明らかになり、開示された実施形態は、全てのそのような態様およびそれらの同等物を含むことが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、先行技術による非接触システムの通信段階およびCPU計算を示す概略図である。
図2図2は、本発明の実施形態による非接触電子システムの概略図である。
図3図3は、本発明の実施形態による非接触電子システムの電磁妨害を低減するための方法を示す概略図である。
図4図4は、最大電流を決定するための実施形態を示す概略図である。
図5図5は、電磁界Hの強さが異なる場合に決定される最大電流Imaxの値の例を示す図である。
図6図6は、図5の異なる電磁界強度に対する余剰電流Iextraの変化の例を示す図である。
図7図7は、本発明によるプロセッサの実行段階における結果としての電流消費の例を示す図である。
図8図8は、本発明による電流モニタリングを行うための電流モニタのアーキテクチャを示す概略図である。
図9図9は、本発明による電流モニタリングを行うための電流モニタのアーキテクチャを示す概略図である。
図10図10は、処理システムの実行段階におけるIvdcおよびIplatformの変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
第1の態様によれば、本発明は、電磁界を介してリーダと非接触通信するように構成された非接触電子システムに関する。このような非接触電子システムは、例えば、パスポートなどの電子身分証明書、または決済カードなどのスマートカードであってもよい。
【0023】
図2に示すように、非接触電子システム200は、演算を行うように構成されたハードウェアプロセッサ202を含む処理システム201と、リーダから提供される電磁界からエネルギーを収穫し、処理システムに電力を提供する電源203と、処理システムにクロック信号を提供するクロック生成器204とを含む。処理システムは、1つ以上のメモリ、バス、入出力インターフェースなど、通常のデジタルシステムの追加コンポーネントを含んでもよい。
【0024】
プロセッサによる演算の実行がリーダとの電磁妨害を引き起こすのを避けるために、本発明の主な考え方は、プロセッサの実行段階の間、非接触電子システムの総電流消費を一定にすることである。そのようにするために、図2に示すように、非接触電子システム200は、電流モニタ205と動的余剰電流ローダ206も含む。
【0025】
このような電流モニタは、電磁界から処理システムへ電源によって提供できる最大電流を決定し;次に、この最大電流と比較して処理システムによって実際に引き出される電流を監視するために使用されてもよい。
【0026】
動的余剰電流ローダは、プロセッサによって実行される演算やそれらの電力消費に関係なく、電源から引き出される合計電流を一定にするために、処理システムによって引き出される電流に加えて、電源から余剰電流を引き出すために使用することができる。
【0027】
以下の段落では、図3に示すような、非接触電子システムの電磁妨害を低減するための、本発明の第2の態様による方法のステップをより詳細に説明する。
【0028】
第1のステップS1において、電流モニタは、電磁界から処理システムへ電源によって提供される最大電流Imaxを決定する。
【0029】
最大電流Imaxを測定するために、電源は、クランプ回路を含む。第1の測定ステップS101において、処理システムは、処理システムの電力消費を最小化するために、処理システム自体を静止モードにすることができる。そして、電源は、処理システムに最小限の電流を提供し、残りの全てをクランプ回路に提供する。処理システムによって引き出される電流を最小にするために、処理システムをオフにすることもある。次に、図4に示すように、第2の測定ステップS102の間、電子システムは、クランプ回路を通る電流Iclampをゼロに等しくなるまで減少させる余剰電流Iextraを徐々に増加させてもよい。処理システムに提供可能な最大電流Imaxは、そのときの余剰電流の値である。
【0030】
最大電流Imaxのこのような測定は、ハードウェアプロセッサの実行段階の開始時またはそれ以前に、例えば電子システムの起動段階の間に行うことができる。また、ウォッチドッグの中断のおかげで実行段階中に定期的に、または電磁界強度の修正を示すイベントの後に、Imaxを再評価することも可能である。
【0031】
場合によっては、リーダの電磁界は、電子システムにその最大電力消費よりも多くの電力を提供するのに十分な強度を持つことがある。そのような場合、第2の測定ステップS102の間のある時点で、余剰電流Iextraは、電流がまだクランプ回路を通って流れている間、処理システムの事前定義された最大可能電流消費を超えることになる。そのような場合、第2の測定ステップは終了し、電磁界から引き出され得る実際の最大電流が測定されていなくても、最大電流Imaxは、処理システムの事前定義された最大可能電流消費量よりも大きい事前定義された値に設定されてもよい。
【0032】
図5の表は、電磁界Hの異なる強さに対して決定された最大電流Imaxの値を示している。表の最後の2つの値に対して、電磁界は、プロセッサの活動が何であれ電子システムに十分なエネルギーを提供するのに十分強く、最大電流Imaxは事前定義された値10.5mAに設定される。図5の異なる電磁界強度に対するこの最初のステップの間の余剰電流Iextraの変化を図6に示す。余剰電流Iextraは、測定時の電磁界強度に対応する図5に示すImaxの値に到達するまで徐々に増加する。
【0033】
第1のステップS1の最後において、第1のステップ中に処理システムがオフになっていた場合には、再び処理システムをオンにすることができる。
【0034】
第2のステップS2において、実行段階の間、電流モニタは、図2に示すように、決定された最大電流Imaxと、Iplatformと呼ばれる、処理システムによって実際に引き出された電流とを比較する。
【0035】
そして、動的余剰電流ローダは、ImaxとIplatformとの比較結果に応じてアクションを行ってもよい。
【0036】
第3のステップS3において、処理システムによって引き出された電流Iplatformが、決定された最大利用可能電流Imaxよりも低い場合、動的余剰電流ローダは、Imax-Iplatformと等しい余剰電流Iextraをロードする。これを行うために、電流モニタは、Iextraを計算して動的余剰電流ローダに提供してもよいし、電流モニタは、ImaxとIplatformの両方を動的余剰電流ローダに提供してIextraを決定させることもできる。
【0037】
決定された最大電流Imaxと処理システムによって引き出された電流Iplatformとの間の前記電流モニタによるこのような比較と、動的余剰電流ローダによる前記余剰電流Iextraのローディングとは、実行段階の終了まで連続的に行われてもよい。このようにすることで、電子システムの総電流消費は、プロセッサの全ての実行段階に沿って一定に保たれ得る。
【0038】
その結果のプロセッサの実行段階における電流消費を図7に示す。実行段階の大部分において、電流消費は、プロセッサのIplatformと表記される電流消費の値にかかわらず、Imaxに等しくなる。その結果、このような実行段階中のプロセッサの電磁放射はほぼ一定であり、リーダとの通信に対する電磁妨害が大幅に低減される。
【0039】
実行段階の最後において、処理システムを再びオフにし、電磁界から引き出された電流を全てクランプ回路に流してもよい。
【0040】
処理システムによって引き出される電流と電源によって提供される最大電流は知られているので、処理システムが電流を引きすぎて電源崩壊を引き起こすことを防ぐようにシステムを構成することもできる。
【0041】
そのようにするために、第4のステップS4において、ハードウェアプロセッサは、処理システムによって引き出された電流Iplatformが提供可能な決定された最大電流Imaxよりも高いときに生じ得る電源の崩壊を防止するために、前記決定された最大電流Imaxに応じてその電力消費を低減してもよい。電力消費を低減するために、ハードウェアプロセッサは、例えば、動作電圧の低減、動作周波数の低減、または複数の実行コアを有するプロセッサの場合にはその処理ユニットなどの内部ブロックの一部の非活性化をもたらす省エネルギーモードに移行することができる。プロセッサは、過剰消費を認識するために、電流モニタからImaxの値を取得し、自身の電力消費を監視することができる。あるいは、電流モニタまたは動的余剰電流ローダから送信されるImaxおよびIplatformまたはIextraのメッセージまたは値によって警告されてもよい。
【0042】
さらに、処理システムによって引き出された電流Iplatformが、処理システムに提供することができる決定された最大電流Imaxよりも高いとき、第5ステップS5において、クロック生成器は、電源の崩壊を防ぐために、処理システムに提供するクロックを少なくとも1サイクル停止してもよい。そうすることで、プロセッサを減速させ、最終的に電流消費Iplatformを減少させることができる。クロック生成器は、電流モニタまたは動的余剰電流ローダによってそうするように指示されてもよい。
【0043】
第4ステップと第5ステップは、電源の崩壊を防ぐための2つの異なる方法である。これらは同時に行われてもよい。
【0044】
このような電流モニタリングを行うための電流モニタのアーキテクチャの一例を図8および図9に示す。このようなアーキテクチャは、信号Ivdc=Iplatform+Iextraを生成し、Ivdc<ImaxのときにIextraを増加させ、Ivdc>ImaxのときにIextraを減少させる余剰電流Iextraの調節ループを含んでいる。IvdcとImaxの値に直接働きかける代わりに、電流モニタは、nを事前定義された値として、より低い強度のIvdc/nとImax/nの複製を生成してもよい。
【0045】
図10は、処理システムの実行段階におけるIvdcとIplatformの変化の一例を示す図である。この例では、Imaxは6.2mAに設定されている。最初のステップでは、Iplatformは非常に小さく、IvdcがImaxに達するまでIextraが徐々に増加する。次に、第2ステップでは、Iplatformは1mAから6mAの間で変動するが、Iextraは継続的に適応されるため、Ivdcをほぼ一定に保つことができる。Ivdcの小さな変動は、余剰電流をロードしない場合のIplatformの変動よりも、はるかに少ない電磁妨害しか発生させない。この図では、IplatformがわずかにImaxを超えることが5回あった。そのたびにクロック生成器がプロセッサに提供するクロックを停止させ、IplatformとIvdcのさらなる上昇と電源の崩壊を効果的に防いでいる。
【0046】
第3の態様によれば、本発明は、少なくとも1つのコンピュータのメモリに直接ロード可能なコンピュータプログラム製品であって、前記製品がコンピュータ上で走らされるとき、上記で説明した方法のステップを行うためのソフトウェアコード命令を含むコンピュータプログラム製品に関するものである。
【0047】
これらの特徴に加えて、本発明の第2および第3の態様による方法およびコンピュータプログラムは、上記で説明した他の任意の特徴を行うために構成されてもよいし、あるいは、上記で説明した他の任意の特徴を含んで構成されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】