IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ネステ オイル オサケ ユキチュア ユルキネンの特許一覧

特表2023-504849バイオベースの材料をアップグレードするための方法およびアップグレードされた材料
<>
  • 特表-バイオベースの材料をアップグレードするための方法およびアップグレードされた材料 図1
  • 特表-バイオベースの材料をアップグレードするための方法およびアップグレードされた材料 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-07
(54)【発明の名称】バイオベースの材料をアップグレードするための方法およびアップグレードされた材料
(51)【国際特許分類】
   C10G 3/00 20060101AFI20230131BHJP
   C07C 9/08 20060101ALI20230131BHJP
   C07C 1/20 20060101ALI20230131BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230131BHJP
【FI】
C10G3/00 Z
C07C9/08
C07C1/20
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533653
(86)(22)【出願日】2020-11-26
(85)【翻訳文提出日】2022-08-03
(86)【国際出願番号】 EP2020083466
(87)【国際公開番号】W WO2021110524
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】20196063
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505081261
【氏名又は名称】ネステ オサケ ユキチュア ユルキネン
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オヤラ、アンチ
(72)【発明者】
【氏名】ミュッリョヤ、ユッカ
(72)【発明者】
【氏名】マッコネン、ヤーナ
(72)【発明者】
【氏名】ファン デ ベルデ、ロジエ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイミソン、ジョン
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
4H129
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC26
4H006BA14
4H006BA18
4H006BA26
4H006BA36
4H006BE20
4H039CA19
4H039CB10
4H039CB20
4H129AA01
4H129BA11
4H129BB05
4H129BC15
4H129KA08
4H129KA12
4H129KD26Y
4H129NA23
(57)【要約】
バイオベースの材料をアップグレードするための方法が提供され、該方法は、バイオベースの新鮮なフィード材料を提供するためにバイオ-再生可能なオイルおよび/または脂肪を前処理する工程、バイオ-プロパン組成物を提供するために、バイオベースの新鮮なフィード材料を水素化する工程、その後の分離を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオベースの材料をアップグレードするための方法であって、
(A)バイオベースの新鮮なフィード材料の総計の重量に対して2wt.-%~60wt.-%のグリセロール当量を有するバイオ再生可能なオイルおよび/または脂肪のバイオベースの新鮮なフィード材料を提供する工程、
(B)水素化処理された流出物を得るために、前記バイオベースの新鮮なフィード材料および任意には希釈剤を含む水素化処理フィードを、金属硫化物触媒および水素(H2)の存在下でHDOを含む水素化処理へと付す工程であって、前記水素化処理フィードがS元素として算出されて10~10000wt.-ppmの硫黄含有化合物を含む工程、
(C)H2、バイオプロパン、H2O、H2S、CO2、およびCOを含む気体の水素化処理された材料、ならびにパラフィン系炭化水素を含む液体の水素化処理された材料を提供するように、前記水素化処理された流出物を気-液分離に付す工程、
(D)任意の第2の水素化処理の後に、前記液体の水素化処理された材料を分画に付し、および、少なくともディーゼルおよび/またはケロシン範囲のパラフィン系炭化水素材料を回収する工程、
(E)H2SおよびCO2の枯渇した気体ストリームを得るために、前記気体の水素化処理された材料をH2SおよびCO2を除去するための精製工程に付す工程、
(F)乾燥されたH2SおよびCO2の枯渇した気体ストリームを得るために、前記H2SおよびCO2の枯渇した気体ストリームを、H2回収および乾燥に付す工程、
(G)バイオ-プロパン気体組成物を回収するために、前記乾燥されたH2S、CO2およびH2の枯渇した気体ストリームを分画し、および任意には、液化されたバイオ-プロパン組成物を得るために前記バイオ-プロパン気体組成物を圧縮する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記バイオベースの新鮮なフィード材料が、少なくとも3wt.-%、好ましくは少なくとも4wt.-%、より好ましくは少なくとも5wt.-%、さらにより好ましくは少なくとも6wt.-%、最も好ましくは少なくとも7wt.-%、または少なくとも8wt.-%であるグリセロール当量を有し、および/または
前記バイオベースの新鮮なフィード材料が、55wt.-%以下、好ましくは50wt.-%以下、または45wt.-%以下、または40wt.-%以下、または35wt.-%以下、または30wt.-%以下、または25wt.-%以下、または20wt.-%以下であるグリセロール当量を有し、および/または
前記バイオベースの新鮮なフィード材料が、4wt.-%~50wt.-%、好ましくは6wt.-%~40wt.-%、または7wt.-%wt.-%~30wt.-%であるグリセロール当量を有する請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記水素化処理フィードが、S元素で算出されて、10~1000wt.-ppm、好ましくは10~500wt.-ppm、より好ましくは10~300wt.-ppmの硫黄含有化合物を含む請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記工程(D)において、水素異性化を含む第2の水素化処理の後に前記液体の水素化処理された材料を分画に付すこと、および、少なくともディーゼルおよび/またはケロシン範囲のイソ-パラフィン系炭化水素材料を回収することを含む請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程(A)が、前記バイオベースの新鮮なフィード材料を製造するために、オイルおよび/または脂肪中の汚染物質を減少させるために、再生可能なオイルおよび/または脂肪を前処理する工程(A’)を含む請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記精製工程(E)が、気体の水素化処理された材料から除去されたH2Sを回収し、および回収されたH2Sを水素化処理フィードへとリサイクルする工程(E’)をさらに含む請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記バイオ-プロパン気体組成物および/または液化されたバイオ-プロパン組成物が、少なくとも90wt.-%、少なくとも91wt.-%、少なくとも92wt.-%、少なくとも93wt.-%、少なくとも94wt.-%、少なくとも95wt.-%、少なくとも96wt.-%、または少なくとも97wt.-%のプロパン含有量を有する請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
脱水素化された流出物を得るために、前記バイオ-プロパン気体組成物および/または前記液化されたバイオ-プロパン流出物の少なくとも一部を、触媒脱水素化を含む変換に付し、続いて、任意の精製の後に、バイオ-プロパン組成物を得るために、前記脱水素化された流出物中の少なくともバイオ-プロパンを回収することを含む請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
バイオ-プロピレン組成物の少なくともバイオ-プロピレンおよび/またはバイオ-プロピレン組成物のバイオ-プロピレンの少なくとも誘導体、任意には他の(共)モノマーと共に、バイオ-ポリマーを製造するために(共)重合することをさらに含む請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
40℃で1200~1500kPaの蒸気圧および15℃で495~520kg/m3の密度を有する液化されたバイオ-プロパン組成物であって、
少なくとも94wt.-%のバイオ-プロパン、
最大で2000wt.-ppmのCO2
最大で1000wt.-ppmのCO、
S元素として算出されて、最大で15wt.-ppmのS含有化合物、
最大で1500wt.-ppmの不飽和炭化水素、
最大で5.5wt.-%の3つ以上の炭素原子を有する炭化水素(C3+炭化水素)、ここで、(液化されたバイオプロパン組成物に対して)最大1.4wt.-%が、5つ以上の炭素原子を有する炭化水素であり、
および、任意には、最大で1500wt.-ppm、好ましくは最大で1000wt.-ppm、より好ましくは最大で800wt.-ppm、さらにより好ましくは最大で500wt.-ppmであるプロピレン
を含むバイオ-プロパン組成物。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか1つに記載の方法によって製造される、請求項10記載の液化されたバイオ-プロパン組成物。
【請求項12】
バイオベースの材料をアップグレードするための方法であって、
(A)バイオベースの新鮮なフィード材料の総重量に対して2wt.-%~60wt.-%のグリセロール当量を有するバイオ再生可能なオイルおよび/または脂肪のバイオベースの新鮮なフィード材料を提供する工程、
(B)水素化処理された流出物を得るために、バイオベースの新鮮なフィード材料および任意には希釈剤を含む水素化処理フィードを金属硫化物触媒および水素(H2)の存在下でHDOを含む水素化処理へと付す工程であって、前記水素化処理フィードがS元素として算出されて10~10000wt.-ppmの硫黄含有化合物を含む工程、
(C)H2、バイオプロパン、H2O、H2S、CO2、およびCOを含む気体の水素化処理された材料、ならびにパラフィン系炭化水素を含む液体の水素化処理された材料を提供するように、前記水素化処理された流出物を気-液分離に付す工程、
(D)任意の第2の水素化処理の後に、前記液体の水素化処理された材料を分画に付し、および、少なくともディーゼルおよび/またはケロシン範囲のパラフィン系炭化水素材料を回収する工程、
(E)H2SおよびCO2の枯渇した気体ストリームを得るために、前記気体の水素化処理された材料をH2SおよびCO2を除去するための精製工程に付す工程、
(F)乾燥されたH2SおよびCO2の枯渇した気体ストリームを得るために、前記H2SおよびCO2の枯渇した気体ストリームを、H2回収および乾燥に付す工程、
(G)バイオ-プロパン気体組成物を回収するために、前記乾燥されたH2S、CO2およびH2の枯渇した気体ストリームを分画し、および任意には、液化されたバイオ-プロパン組成物を得るために前記バイオ-プロパン気体組成物を圧縮する工程、
(H)バイオ-プロピレンを含む脱水素化流出物を得るために、バイオ-プロパンガス組成物および/または液化されたバイオ-プロパン組成物の少なくとも一部を、触媒的脱水素を含む変換に付す工程、
(I)該脱水素化流出物から、バイオ-プロピレン組成物を回収し、および任意には精製する工程
を含む方法。
【請求項13】
少なくとも1つのバイオ-プロピレン誘導体を得るために、前記バイオ-プロピレン組成物の少なくとも一部を誘導体化することをさらに含み、好ましくは、前記少なくとも1つのバイオ-プロピレン誘導体が、バイオ(メタ)アクリル酸、バイオアクリロニトリル、バイオアクロレインおよびバイオ-プロピレンオキシドからなる群より選ばれる請求項12記載の方法。
【請求項14】
バイオポリマー組成物を得るために、前記回収されたバイオ-プロピレン組成物の少なくとも一部および/またはその誘導体および、任意にはコモノマーおよび/または添加剤を含む混合物を(共)重合することをさらに含む請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法により得られるバイオポリマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオベースの材料を有益なバイオベースの製品へとアップグレードするための方法に関する。特には、本発明は、オイルおよび/または脂肪からバイオプロパンを製造するための方法に関する。本発明は、さらに、バイオベースの材料をアップグレードすることにより得られるアップグレードされた材料に関する。より特には、本発明は、天然の(再生可能な、バイオベースの)オイルおよび/または脂肪を水素化に付し、水素化処理された材料を精製し、およびバイオプロパン組成物を分離する方法に関する。バイオプロパン組成物は、バイオモノマーまたはバイオポリマーへとさらに処理(アップグレード)され得る。
【背景技術】
【0002】
近年、化学的プロセスの持続可能性がより大きな問題となってきている。世界中で、従来の(化石)材料を再生可能な(バイオベースの)材料と置き換えるための努力がなされている。
【0003】
プロパンは、従来、粗油から蒸留によって、または粗油を処理する付加価値連鎖のあいだに(例えば分解反応における副生成物として)製造されてきた化学品のうちの一つである。化石源からプロパンを製造するための技術は、十分に確立されている。さらに、このような材料は通常、粗油の炭素数分布とは顕著に異なる炭素数分布を有する酸素化物(酸素含有有機化合物)を顕著な量含んでいるので、これらのプロセスは、再生可能な材料へと容易く移転できない。例えばディーゼルまたはガソリン範囲にあるバイオベースの燃料成分を製造することにおいていくつかの成功例が達成されている。
【0004】
バイオ再生可能なオイルおよび/または脂肪は、グリセリドを含み、それぞれのグリセリド(例えばモノ-、ジ-、トリグリセリドの)分子は、グリセロール骨格を含む。水素化によって、このグリセロール骨格は、通常、バイオプロパンへと変換される。バイオプロパンは、現在、燃料として市場に出ている。
【0005】
一方、プロピレンは、例えば、それぞれ毎年約2700kt、9000kt、および60000kt消費されているアクリル酸、プロピレンオキシド、およびポリプロピレンなどのいくつかの高生産量化学物質のためのベース材料である。アクリル酸は、主に、高吸収材、コーティングおよびペイントの製造に使用される。プロピレンオキシドは、例えばブタンジオール、ポリエーテルポリオール、およびプロピレングリコールなどのいくつかの高生産量化学物質のための前駆体として使用される。ポリプロピレン(PP)は、第二番目に最も共通の熱可塑性ポリマーであり、例えば包装、輸送、建築、消費財、電子機器などの多くの適用例において見出される。
【0006】
現在の主なプロピレン製造は、化石材料に基づいており、そして、大規模な分解施設を必要とするものである。
【0007】
バイオベースのポリプロピレン、プロピレンオキシド、またはアクリル酸を製造するための現在使用可能な方法は、工業規模での製造のためには限られた有益性しかない。
【0008】
特許文献1は、プロパンおよびプロピレンを含む混合物を製造するためにオイル/脂肪(バイオナフサ)を熱分解する/スチームクラッキングすること、アクリル酸およびプロピオン酸を形成するための混合物の気相酸化、およびその後の重合を含む、吸水性ポリマー粒子を製造するための方法を記載している。
【0009】
特許文献2は、再生可能なプロパンの分離および精製のためのプロセスを記載している。
【0010】
特許文献3は、主にプロピレンおよびエチレンを形成するために遊離脂肪酸(FAA)をスチームクラッキングする方法を記載している。
【0011】
特許文献4は、バイオマスのポリマーへの変換のための方法であって、バイオマス由来の炭化水素のスチームクラッキングおよびその後の、スチームクラッキングによって得られたオレフィンの重合を含む方法を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2014/079785号
【特許文献2】国際公開第2017/045791号
【特許文献3】欧州特許出願公開第2290034号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2011/0230632号明細書
【発明の概要】
【0013】
グリセロール等価部位を含むバイオ再生可能なオイルおよび/または脂肪のバイオベースの新鮮なフィード材料を、金属硫化物触媒上で水素化処理に付すことによってパラフィン系液体炭化水素を製造することは、多量の気体反応生成物の生成を含む。
【0014】
これらの気体反応生成物の例としては、例えば、バイオベースの新鮮なフィード材料に存在する有機酸素化物から水素化処理(HDO)によって開裂されたH2O、バイオベースの新鮮なフィード中に含まれる脂肪酸などのC3+有機酸素化物の脱カルボニル化および脱炭酸(以下ではしばしば、デカーブ(decarb)と簡便に称されている)によって開裂されたCOおよびCO2、グリセロール等価部位に主に由来するプロパン、新鮮なフィードを希釈するために使用されるまたはそれから得られる例えば脂肪酸または炭化水素などの有機酸素化物のクラッキング生成物、いくつかのバイオベースの新鮮なフィード材料中に存在するまたは水素化処理(HDO)触媒を硫黄化された形態に維持するために添加された有機硫黄含有化合物からの水素化脱硫によって開裂されたH2S、および典型的にはバイオベースの新鮮なフィード材料中に存在する有機窒素含有化合物からの水素化脱窒によって開裂されたNH3などが挙げられる。追加で、気体の水素化処理された材料は、顕著な量の未使用の(未反応の)水素(H2)を含み得る。
【0015】
典型的には、バイオベースの新鮮なフィード材料の完全な脱酸素化が好ましく、それによって例えばディーゼル燃料および航空グレードケロシンのための厳しい仕様などを満たす高品質のパラフィン系炭化水素製品が達成される。これは、多量の(高価な)H2を必要とし、プロセスエコノミーに関する懸念を生じさせる。したがって、従来的には、デカーブ反応の発生は、バイオベースの新鮮なフィード材料を処理する際にむしろ有益なものであると考えられてきた。例えば、米国特許出願公開第20070010682号明細書は、HDOに対してデカーブ反応が有利である条件を利用して脱酸素化を行い、これによってH2消費が減少されているプロセスが提案されている。
【0016】
しかしながら、デカーブ反応は、ディーゼルおよびケロシン範囲の炭化水素の収率を低下させ得る、炭素原子が1つ減少された鎖長を有する炭化水素を得ているという欠点を有している。数人の著者らは、水素化処理リアクターからの気体流出物中に含まれる軽質炭化水素を水蒸気改質によってH2および酸化炭素へと変換し、そしてH2をHDO工程へとリサイクルし(例えば米国特許出願公開第20090250376号明細書など)、これによって総計の水素消費量を低減させることを提案している。しかしながら、これもまた、有益な炭素-炭素結合の分解を含んでおり、そしてさらに、HDOリアクターへとフィードする前にH2の面倒な精製を必要とする。
【0017】
さらに、デカーブ反応が、脱酸素化のあいだHDOに対して有利である場合、多量の酸化炭素が気体の水素化処理された材料に形成される。気体の水素化処理された材料におけるバイオプロパンに対する気体不純物レベルが高くなると、より面倒な精製プロセスが、バイオプロパン組成物が高価値の適用例において、例えば、バイオプロパンへの接触脱水素のためなどの触媒プロセスのためのフィードとして使用され得るような十分な純度を達成するために必要とされる。また、高い不純物レベルを含むバイオプロパンガス組成物を圧縮することは、より困難であり得、および例えば高いエネルギー消費などを含み得る。
【0018】
金属硫化物触媒およびデカーブ反応が好ましい反応条件を使用するバイオベースの材料の水素化処理(HDO)に係るさらなる困難は、硫化カルボニル、COSの形成の増大されえたリスクである。COSは、天然で石油留分中に見出され、数多くの石油化学プロセスにおいて問題となるものである。プロパンおよびCOSが同様の沸点を有するため、分離(例えば蒸留による)の後でおいてでさえも、およそ90%の石油化学COSがプロパン留分中に通常見出される。
【0019】
バイオベースのサンプルは、初めはCOSを含んでいない。しかしながら、COSは、CO2がH2Sと反応してCOSおよびH2Oを生じる際に、以下の平衡式にしたがって発生される:
【0020】
最終的にプロパン組成物中にあるCOSは、したがって、CO2およびH2Sを生成するための加水分解に供され得る。H2SおよびCOSの両方は、プロパンの接触転換などの高価値な適用例における面倒な汚染物質であり得る。金属硫化物触媒およびデカーブ反応条件を使用するバイオベースの材料のHDOによって得られる気体の水素化処理された材料は、通常、多量のH2SおよびCO2を含み、したがって、平衡式(1)の平衡をCOSに向かうように傾ける。気体ストリームに存在するH2Oは、平衡を左に傾けることを助けるかもしれない。しかしながら、H2Oもまた、バイオプロパン組成物中の望ましくない汚染物質である。
【0021】
本発明は、バイオベースの材料を有益なバイオベースの製品へとアップグレードするための改良された方法に関する。該方法は、バイオベースの新鮮なフィード材料中の有益な炭素-炭素結合の減少された開裂を含み、この結果、高品質な液体および気体炭化水素製品の高い収率をもたらす。これは、添付の請求の範囲による方法によって達成される。
【0022】
特には、バイオ再生可能なオイルおよび/または脂肪をアップグレードするための改良された方法を提供することが、本発明の目的である。バイオプロパンの製造のための改良された方法、および、該バイオプロパンをモノマー材料またはポリマー材料の製造プロセスに適用するための方法を提供すること、ならびに、モノマー材料および/またはポリマー材料を提供することが追加の目的である。
【0023】
本発明は、一またはそれ以上の以下の項目に関連する。
【0024】
1.バイオベースの材料をアップグレードするための方法であって、
(A)バイオベースの新鮮なフィード材料の総計の重量に対して2wt.-%~60wt.-%のグリセロール当量を有するバイオ再生可能なオイルおよび/または脂肪のバイオベースの新鮮なフィード材料を提供する工程、
(B)水素化処理された流出物を得るために、バイオベースの新鮮なフィード材料および任意には希釈剤を含む水素化処理フィードを、金属硫化物触媒および水素(H2)の存在下でHDOを含む水素化処理へと付す工程であって、該水素化処理フィードがS元素として算出されて10~10000wt.-ppmの硫黄含有化合物を含む工程、
(C)H2、バイオプロパン、H2O、H2S、CO2、およびCOを含む気体の水素化処理された材料、ならびにパラフィン系炭化水素を含む液体の水素化処理された材料を提供するように、該水素化処理された流出物を気-液分離に付す工程、
(D)任意の第2の水素化処理の後に、該液体の水素化処理された材料を分画に付し、および、少なくともディーゼルおよび/またはケロシン範囲のパラフィン系炭化水素材料を回収する工程、
(E)H2SおよびCO2の枯渇した気体ストリームを得るために、該気体の水素化処理された材料をH2SおよびCO2を除去するための精製工程に付す工程、
(F)乾燥されたH2SおよびCO2の枯渇した気体ストリームを得るために、該H2SおよびCO2の枯渇した気体ストリームを、H2回収および乾燥に付す工程、
(G)バイオ-プロパン気体組成物を回収するために、該乾燥されたH2S、CO2およびH2の枯渇した気体ストリームを分画し、および任意には、液化されたバイオ-プロパン組成物を得るために該バイオ-プロパン気体組成物を圧縮する工程
を含む方法。
【0025】
水素化処理フィード中および/またはバイオベースの新鮮なフィード中の、S元素として算出された硫黄含有量は、EN ISO 20846にしたがって測定され得る。
【0026】
2.該バイオベースの新鮮なフィード材料が、少なくとも3wt.-%、好ましくは少なくとも4wt.-%、より好ましくは少なくとも5wt.-%、さらにより好ましくは少なくとも6wt.-%、最も好ましくは少なくとも7wt.-%、または少なくとも8wt.-%であるグリセロール当量を有する項目1に記載の方法。
【0027】
3.該バイオベースの新鮮なフィード材料が、55wt.-%以下、好ましくは50wt.-%以下、または45wt.-%以下、または40wt.-%以下、または35wt.-%以下、または30wt.-%以下、または25wt.-%以下、または20wt.-%以下であるグリセロール当量を有し、および/または
該バイオベースの新鮮なフィード材料が、4wt.-%~50wt.-%、好ましくは6wt.-%~40wt.-%、または7wt.-%wt.-%~30wt.-%であるグリセロール当量を有する項目1または2に記載の方法。
【0028】
4.該水素化処理フィードが、S元素で算出されて、10~1000wt.-ppm、好ましくは10~500wt.-ppm、より好ましくは10~300wt.-ppm、さらにより好ましくは10~200wt.-ppm、最も好ましくは20~100wt.-ppmの硫黄含有化合物を含む項目1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0029】
5.該工程(D)において、水素異性化を含む第2の水素化処理の後に該液体の水素化処理された材料を分画に付すこと、および、少なくともディーゼルおよび/またはケロシン範囲のイソ-パラフィン系炭化水素材料、特には自動車ディーゼル燃料のEN 590要件を満たすディーゼル範囲のイソ-パラフィン系炭化水素材料、および/または、航空タービン燃料の要件を満たす、ASTM D7566-16b、Annex A2を満たすケロシン範囲のイソ-パラフィン系炭化水素材料を回収することを含む項目1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0030】
6.該工程(D)において、該液体の水素化処理された材料を分画に付すこと、および、少なくともディーゼルおよび/またはケロシン範囲のイソ-パラフィン系炭化水素材料、特には自動車ディーゼル燃料のEN 590要件を満たすディーゼル範囲のイソ-パラフィン系炭化水素材料、および/または、航空タービン燃料の要件を満たす、ASTM D7566-16b、Annex A2を満たすケロシン範囲のイソ-パラフィン系炭化水素材料を回収することを含み、該工程(B)における該水素化処理が、さらに水素異性化を含む項目1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0031】
7.該精製工程(E)が、気体の水素化処理された材料から除去されたH2Sを回収し、および回収されたH2Sを該水素化処理工程(B)へとリサイクルする工程(E’)をさらに含む項目1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0032】
これらの実施形態において、このような回収されたH2Sは、水素化処理フィード中に特異的な範囲の硫黄含有化合物の部分であるとして算出され(S元素として算出されて、10~10000wt.-ppm)、および水素化工程(B)へと水素と共におよび/または別々に、コフィードされ得る。
【0033】
8.該バイオ-プロパン気体組成物が、少なくとも90wt.-%、少なくとも91wt.-%、少なくとも92wt.-%、少なくとも93wt.-%、少なくとも94wt.-%、少なくとも95wt.-%、少なくとも96wt.-%、または少なくとも97wt.-%のプロパン含有量を有する項目1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0034】
9.該液化されたバイオ-プロパン組成物が、少なくとも90wt.-%、少なくとも91wt.-%、少なくとも92wt.-%、少なくとも93wt.-%、少なくとも94wt.-%、少なくとも95wt.-%、少なくとも96wt.-%、または少なくとも97wt.-%のプロパン含有量を有する項目1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0035】
10.脱水素化された流出物を得るために、該バイオ-プロパン気体組成物および/または該液化されたバイオ-プロパン流出物の少なくとも一部を、触媒脱水素化を含む変換に付し、続いて、任意の精製の後に、バイオ-プロパン組成物を得るために、該脱水素化された流出物中の少なくともバイオ-プロパンを回収することを含む項目1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0036】
11.該バイオ-プロパン気体組成物および/または該液化されたバイオ-プロパン組成物の少なくとも一部が、化石プロパン組成物(気体または液体)と共に、総計のプロパン組成物(液体および/または気体)が少なくとも0.1%、好ましくは少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、特に好ましくは約100%の再生可能含有量を有するように、触媒脱水素化を含む変換に付される項目10記載の方法。
【0037】
再生可能な含有量は、以下に記載されるように14C分析(14C同位体の含有量)によって測定可能である。総計のプロパン組成物とは、バイオ-プロパン気体組成物、液化されたバイオ-プロパン組成物、化石プロパン気体組成物および転換に付される液化された化石プロパン組成物の総計の材料を意味している。好ましくは、結果として得られるバイオ-プロパン組成物は、上述の総計のプロパン組成物と同じ再生可能の含有量を有している。
【0038】
12.バイオ-プロピレン組成物の少なくともバイオ-プロピレンおよび/またはバイオ-プロピレン組成物のバイオ-プロピレンの少なくとも誘導体、任意には他の(共)モノマーと共に、バイオ-ポリマーを製造するために(共)重合することをさらに含む項目10または11記載の方法。
【0039】
(共)重合はまた、プロピレンまたは化石起源の他の(共)モノマーの使用も含む。この関連で、バイオポリマーとは、得られたポリマーが、14C分析(ASTM D6866)によって測定可能な、少なくともいくらかの生物起源炭素含有量、好ましくは少なくとも0.1%、好ましくは少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、を有することを意味している。
【0040】
13.該工程(A)が、バイオベースの新鮮なフィード材料を製造するために、バイオ-再生可能なオイルおよび/または脂肪を、オイルおよび/または脂肪中の汚染物質を減少させるために前処理する工程(A’)を含む項目1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0041】
14.該前処理する工程(A’)が、バイオベースの新鮮なフィード材料を製造するために、オイルおよび/または脂肪中のS、Nおよび/またはPを含む汚染物質を減少させる工程であり、および/または、該前処理する工程(A’)が、バイオベースの新鮮なフィード材料を製造するために、オイルおよび/または脂肪中の金属含有汚染物質を減少させる工程である項目1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0042】
好ましくは、前処理工程は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Si、Al、Fe、Zn、Cu、Mn、Cd、Pb、As、Cr、Ni、V、Snのうちの一または複数の含有量を減少させる。
【0043】
15.該前処理する工程(A’)が、洗浄、脱ガム、漂白、蒸留、分画、レンダリング、加熱処理、蒸発、ろ過、吸着、水素化脱酸素、遠心分離、または沈降から選択される一または複数を含む項目13または14記載の方法。
【0044】
上記の前処理方法は、触媒を汚染する可能性のあるS、N、Pの汚染物質、および例えばSi含有不純物などのメタロイド汚染物質を含む金属汚染物質(金属および/または金属化合物)を除去するための簡単かつ有効な方法である。
【0045】
16.該バイオベースの新鮮なフィード材料の前処理工程が、部分的水素化、部分的脱酸素化、加水分解およびトランスエステル化の少なくとも一つを含む項目13~15のいずれか1つに記載の方法。
【0046】
17.該バイオベースの新鮮なフィード材料が、グリセロールおよび/またはグリセロールの脂肪酸エステルを含む項目1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0047】
18.該バイオベースの新鮮なフィード材料が、該バイオ再生可能なオイルおよび/または脂肪の加水分解および/またはトランスエステル化によって製造される項目1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0048】
19.該分画工程(G)が、低温分画および/または昇圧蒸留を含む項目1~18のいずれか1つに記載の方法。
【0049】
20.該バイオベースの新鮮なフィード材料が、最大で500ppm、好ましくは最大で300ppm、最大で200ppm、最大で100ppm、最大で60ppm、最大で50ppm、最大で40ppm、最大で35ppm、最大で30ppm、最大で25ppm、最大で20ppm、最大で15ppm、最大で10ppm、または最大で5ppmである総計の硫黄含有量を有する項目1~19のいずれか1つに記載の方法。
【0050】
22.該バイオベースの新鮮なフィード材料が、最大で300ppm、好ましくは最大で200ppm、最大で100ppm、最大で80ppm、最大で50ppm、最大で40ppm、最大で35ppm、最大で30ppm、最大で25ppm、最大で20ppm、最大で15ppm、最大で10ppm、または最大で5ppmである総計のリン含有量を有する項目1~21のいずれか1つに記載の方法。
【0051】
23.該バイオベースの新鮮なフィード材料が、最大で400ppm、好ましくは最大で300ppm、最大で200ppm、最大で100ppm、最大で60ppm、最大で40ppm、最大で35ppm、最大で30ppm、最大で25ppm、最大で20ppm、最大で15ppm、最大で10ppm、または最大で5ppmである総計の窒素含有量を有する項目1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0052】
上記の汚染物質の含有量は、比較的簡単な手順でかなり低い量まで減らすことができる。これにより、汚染物質の量が少ないバイオプロパン組成物を製造することができ、したがって、より高価値の製品にアップグレードされることに特に適している。
【0053】
前処理は、適用される場合、汚染物質の大部分を除去するのに適しているが、さらに高い純度を達成するために、プロパンフィードからそのような汚染物質をさらに除去することが望ましい場合がある。
【0054】
24.水素化処理工程(B)における水素処理フィードが、パラフィン系の炭化水素を含む希釈剤を含む項目1~23のいずれか1つに記載の方法。
【0055】
以下に記載されるように、希釈剤は、水素化のあいだ、特には水素脱酸素のあいだの温度制御に特に適切である。
【0056】
25.該希釈剤が、該水素化処理工程からのリサイクルされたパラフィン系炭化水素、バイオ合成ガスのフィッシャー・トロプシュ法によって得られる再生可能な炭化水素、および化石ベースの炭化水素のうちの少なくとも一つを含む項目24記載の方法。
【0057】
26.該希釈剤が該水素化処理工程からのリサイクルされたパラフィン系炭化水素を含む項目24または25記載の方法。
【0058】
27.該水素化処理フィードが、バイオベースの新鮮なフィード材料の少なくとも2wt.-%、好ましくは少なくとも3wt.-%、少なくとも4wt.-%、少なくとも5wt.-%、少なくとも6wt.-%、少なくとも7wt.-%、少なくとも8wt.-%、少なくとも9wt.-%、少なくとも10wt.-%、少なくとも11wt.-%、少なくとも12wt.-%、少なくとも15wt.-%、少なくとも20wt.-%、少なくとも25wt.-%、少なくとも50wt.-%、少なくとも75wt.-%、少なくとも90wt.-%、少なくとも95wt.-%、または少なくとも99wt.-%含む項目24~26のいずれか1つに記載の方法。
【0059】
28.該水素化処理フィードが、99wt.-%以下、好ましくは90wt.-%以下、75wt.-%以下、50wt.-%以下、40wt.-%以下、35wt.-%以下、30wt.-%以下、25wt.-%以下、20wt.-%以下、15wt.-%以下、または10wt.-%以下のバイオベースの新鮮なフィード材料を含む項目24~27のいずれか1つに記載の方法。
【0060】
29.該希釈液が、水素化処理工程からのリサイクルされたパラフィン系炭化水素を含み、および、該水素化処理フィードが、水素化処理工程からのリサイクルされたパラフィン系炭化水素を少なくとも10wt.-%、好ましくは少なくとも25wt.-%、少なくとも40wt.-%、少なくとも50wt.-%、少なくとも60wt.-%、少なくとも70wt.-%、少なくとも75wt.-%、少なくとも80wt.-%、少なくとも85重量%、少なくとも90wt.-%、または少なくとも92wt.-%含む項目24~28のいずれか1つに記載の方法。
【0061】
水素化処理工程からのリサイクルされた生成物は、好ましくは炭化水素であるが、同様に、部分的にしか脱酸素されていない物質であってもよい。
【0062】
30.該希釈剤が、水素化処理工程からのリサイクルされたパラフィン系炭化水素を含み、および、水素化処理フィードは、98wt.-%以下、95wt.-%以下、92wt.-%以下、90wt.-%以下、85wt.-%以下、80wt.-%以下、70wt.-%以下、60wt.-%以下、40wt.-%以下、または25wt.-%以下の水素化処理工程からのリサイクルされたパラフィン系炭化水素を含む項目24~29のいずれか1つに記載の方法。
【0063】
31.該分画工程(G)が、少なくともバイオプロパンを、好ましくは蒸留または蒸発技術を使用して、より重質な炭化水素製品(C3+炭化水素)から分離する工程を含む項目1~30のいずれか1つに記載の方法。
【0064】
32.H2回収工程(F)が、H2S、CO2およびH2に枯渇した気体ストリームを得るために、膜分離技術を用いて、H2SおよびCO2に枯渇した気体ストリームから少なくとも水素を分離することを含む項目1~31のいずれか1つに記載の方法。
【0065】
33.
40℃で1200~1500kPaの蒸気圧および15℃で495~520kg/m3の密度を有する液化されたバイオ-プロパン組成物であって、
少なくとも94wt.-%のバイオ-プロパン、
最大で2000wt.-ppmのCO2
最大で1000wt.-ppmのCO、
S元素として算出されて、最大で15wt.-ppmのS含有化合物、
最大で1500wt.-ppmの不飽和炭化水素、
最大で5.5wt.-%の3つ以上の炭素原子を有する炭化水素(C3+炭化水素)、ここで、(液化されたバイオプロパン組成物に対して)最大1.4wt.-%が、5つ以上の炭素原子を有する炭化水素である
を含むバイオ-プロパン組成物。

液化されたバイオプロパン組成物は、完全に再生可能なバイオプロパン組成物であってもよく、また、再生可能な材料と化石材料とのブレンドであるバイオ-プロパン組成物であってもよい。液化されたバイオ-プロパン組成物は、好ましくは、少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、または約100%の生物起源炭素含有量(後述する)を有する。
【0066】
34.項目33に記載の液化されたバイオ-プロパン組成物であって、
40℃で1250~1450kPa、好ましくは1300~1430kPaの蒸気圧を有し;および/または
15℃で500~515kg/m3、より好ましくは500~510kg/m3の密度を有し;および/または
少なくとも95wt.-%のバイオプロパン、好ましくは少なくとも96wt.-%のバイオプロパンを含み;および/または
最大で1800wt.-ppm、好ましくは最大で1500wt.-ppm、より好ましくは最大で1000wt.-ppm、さらに好ましくは最大で500wt.-ppmのCO2(二酸化炭素)を含み;および/または
最大で500wt.-ppm、好ましくは最大で100wt.-ppm、より好ましくは最大で50wt.-ppmのCO(一酸化炭素)を含む
バイオ-プロパン組成物。
【0067】
CO2の含有量は、ASTM D2505に準拠して測定することができる。COの含有量は、ASTM D 2504に準拠して測定されてもよい。S元素として算出されるバイオプロパン中のS含有化合物(H2SまたはCOSなど)の含有量は、ASTM D 6667に準拠して測定され得る。40℃での蒸気圧は、EN ISO 8973に準拠して測定することができる。15℃における密度は、EN ISO 8973に準拠して測定され得る。
【0068】
35.最大で100wt.-ppm、好ましくは最大で70wt.-ppm、より好ましくは最大で50wt.-ppmのH2Oを含む、項目33に記載の液化されたバイオ-プロパン組成物。
【0069】
水の含有量は、ASTM D 5454に準拠して測定され得る。
【0070】
36.最大で5mg/m3、好ましくは最大で2mg/m3のアンモニアを含む項目33~35のいずれか1つに記載の液化されたバイオ-プロパン組成物。
【0071】
アンモニアの含有量は、以下の原理でドレーゲル管を用いて測定され得る:ドレーゲル検出器ポンプは、100cm3の揚水量を有する。分析される材料は、ドレーゲルポンプから吸引され、および、サンプルチューブ内の化学物質と反応して着色化合物を形成する。分析された試料の等価濃度が、着色領域が終了した目盛から読み取られる。装置および器具:サンプルシリンダー、ドレーゲル社製ガス検知器ポンプ、ドレーゲル社製アンモニア管2/a(2~30ppm)、ドレーゲル社製アンモニア管5/a(5~70/50~600ppm)、サンプルバッグ Tedlar(登録商標)2リットル(ガス用)、金属製フィッティング付きサンプルバッグ Tedlar(登録商標)5リットル(LPG用)。
【0072】
37.最大で2000wt.-ppmのメタン、好ましくは最大で1500wt.-ppmのメタン、より好ましくは最大で1000wt.-ppmのメタンを含む項目33~36のいずれか1つに記載の液化されたバイオ-プロパン組成物。
【0073】
38.最大で2.0wt.-%のエタン、好ましくは最大で1.5wt.-%のエタンを含む項目33~37のいずれか1つに記載の液化されたバイオ-プロパン組成物。
【0074】
39.S元素として算出されて、10wt.-ppm以上、好ましくは5wt.-ppm以上のS含有化合物を含む項目33~38のいずれか1つに記載の液化されたバイオ-プロパン組成物。
【0075】
41.最大で1000wt.-ppmの不飽和炭化水素、好ましくは最大で500wt.-ppm、より好ましくは最大で250wt.-ppmの不飽和炭化水素を含む項目33~40のいずれか1つに記載の液化されたバイオ-プロパン組成物。
【0076】
42.最大で4.5wt.-%のC3+炭化水素を含む項目33~41のいずれか1つに記載の液化されたバイオ-プロパン組成物。
【0077】
43.5以上炭素原子を有する炭化水素を最大で1.4wt.-%、好ましくは最大で1.0wt.-%、より好ましくは最大で0.7wt.-%、さらに好ましくは最大で0.5wt.-%含む項目33~42のいずれか1つに記載の液化されたバイオ-プロパン組成物。
【0078】
メタン、エタン、プロパン、C3+炭化水素、5以上の炭素原子を有する炭化水素、および/または不飽和炭化水素の含有量は、ASTM D 2163に準拠して測定され得る。
【0079】
44.項目36~43のいずれか1つに記載の方法によって製造される、項目33~43のいずれか1つに記載の液化されたバイオ-プロパン組成物。
【0080】
45.バイオベースの材料をアップグレードするための方法であって、
(A)バイオベースの新鮮なフィード材料の総重量に対して2wt.-%~60wt.-%のグリセロール当量を有するバイオ再生可能なオイルおよび/または脂肪のバイオベースの新鮮なフィード材料を提供する工程、
(B)水素化処理された流出物を得るために、バイオベースの新鮮なフィード材料および任意には希釈剤を含む水素化処理フィードを金属硫化物触媒および水素(H2)の存在下でHDOを含む水素化処理へと付す工程であって、該水素化処理フィードがS元素として算出されて10~10000wt.-ppmの硫黄含有化合物を含む工程、
(C)H2、バイオプロパン、H2O、H2S、CO2、およびCOを含む気体の水素化処理された材料、ならびにパラフィン系炭化水素を含む液体の水素化処理された材料を提供するように、該水素化処理された流出物を気-液分離に付す工程、
(D)任意の第2の水素化処理の後に、該液体の水素化処理された材料を分画に付し、および、少なくともディーゼルおよび/またはケロシン範囲のパラフィン系炭化水素材料を回収する工程、
(E)H2SおよびCO2の枯渇した気体ストリームを得るために、該気体の水素化処理された材料をH2SおよびCO2を除去するための精製工程に付す工程、
(F)乾燥されたH2SおよびCO2の枯渇した気体ストリームを得るために、該H2SおよびCO2の枯渇した気体ストリームを、H2回収および乾燥に付す工程、
(G)バイオ-プロパン気体組成物を回収するために、該乾燥されたH2S、CO2およびH2の枯渇した気体ストリームを分画し、および任意には、液化されたバイオ-プロパン組成物を得るために該バイオ-プロパン気体組成物を圧縮する工程、
(H)バイオ-プロピレンを含む脱水素化流出物を得るために、バイオ-プロパンガス組成物および/または液化されたバイオ-プロパン組成物の少なくとも一部を、触媒的脱水素を含む変換に付す工程、
(I)該脱水素化流出物から、バイオ-プロピレン組成物を回収し、および任意には精製する工程
を含む方法。
【0081】
46.少なくとも1つのバイオモノマーを得るために、バイオ-プロピレン組成物の少なくとも一部を誘導体化することをさらに含む項目45記載の方法。
【0082】
47.該バイオモノマーが、バイオアクリル酸、バイオアクリロニトリル、バイオアクロレインおよびバイオプロピレンオキシドからなる群より選ばれる少なくとも一つのバイオモノマーである含む項目46記載の方法。
【0083】
48.誘導体化が、酸化およびアンモニア酸化の少なくとも一つを含み、ここで酸化が、好ましくは気相酸化によって行われる項目46または47記載の方法。
【0084】
49.バイオポリマー組成物を得るために、回収されたバイオ-プロピレン組成物の少なくとも一部および/またはその誘導体および、任意にはコモノマーおよび/または添加剤を含む混合物を(共)重合することをさらに含む項目45~48のいずれか1つに記載の方法。
【0085】
この混合物は、プロピレンおよび/または他の(共)モノマーおよび/または化石起源の添加物をさらに含んでいてもよい。
【0086】
50.該重合が、重合触媒の存在下で行われる項目49記載の方法。
【0087】
51.重合が、重合開始剤によって開始される項目49または50記載の方法。
【0088】
52.該工程(D)を含む項目49~51のいずれか1つに記載の方法。
【0089】
53.衛生用品を製造するために該ポリマーがさらに加工される項目49~52のいずれか1つに記載の方法。
【0090】
54.建築材料を製造するために該ポリマーがさらに加工される項目49~52のいずれか1つに記載の方法。
【0091】
55.包装材料を製造するために該ポリマーがさらに加工される項目49~52のいずれか1つに記載の方法。
【0092】
56.コーティング組成物を製造するために該ポリマーがさらに加工される項目49~52のいずれか1つに記載の方法。
【0093】
57.ペイントを製造するために該ポリマーがさらに加工される項目49~52のいずれか1つに記載の方法。
【0094】
58.例えばパネルなどの装飾材料を製造するために該ポリマーがさらに加工される項目49~52のいずれか1つに記載の方法。
【0095】
59.例えば車の内装部品などの自動車の内装を製造するために該ポリマーがさらに加工される項目49~52のいずれか1つに記載の方法。
【0096】
60.ゴム組成物を製造するために該ポリマーがさらに加工される項目49~52のいずれか1つに記載の方法。
【0097】
61.タイヤを製造するために該ポリマーがさらに加工される項目49~52のいずれか1つに記載の方法。
【0098】
62.トナーを製造するために該ポリマーがさらに加工される項目49~52のいずれか1つに記載の方法。
【0099】
63.パーソナルケア用商品を製造するために該ポリマーがさらに加工される項目49~52のいずれか1つに記載の方法。
【0100】
64.コンピューター用品を製造するために該ポリマーがさらに加工される項目49~52のいずれか1つに記載の方法。
【0101】
65.電子デバイスを製造するために該ポリマーがさらに加工される項目49~52のいずれか1つに記載の方法。
【0102】
66.該バイオポリマー組成物が、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン-コポリマー(EPM)、またはエチレン-プロピレン-ジエン-コポリマー(EPDM)を含む項目1~65のいずれか1つに記載の方法。
【0103】
67.任意には他の成分と共に、該ポリマーから、例えばフィルム、成形品、コーティング組成物、コーティング、包装、建築材料、ゴム組成物、タイヤ、タイヤの一部、またはガスケットなどのポリマー製品を形成する工程をさらに含む項目66記載の方法。
【0104】
68.該バイオモノマーが、バイオアクリル酸、そのエステルまたはその塩からなる群より選択される少なくとも一つのバイオモノマーである項目68記載の方法。
【0105】
69.アクリルポリマーを製造するために、バイオアクリル酸、そのエステルまたは塩を、任意には共重合可能なモノマーおよび/または添加剤の存在下で、重合する工程を含む項目68記載の方法。
【0106】
本文脈において、アクリル酸(およびアクリルポリマー)は、任意のタイプのアクリル系モノマーおよびポリマー、例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸塩、および(メタ)アクリロニトリルに基づくものを含むことを意味する。
【0107】
70.該アクリルポリマーが吸水性ポリマーである項目69記載の方法。
【0108】
71.衛生用品を製造するために、該ポリマーがさらに加工される項目69または70記載の方法。
【0109】
72.該衛生用品がおむつである項目71記載の方法。
【0110】
73.該衛生用品が衛生ナプキンである項目71記載の方法。
【0111】
74.該衛生用品が失禁ドローシートである項目71記載の方法。
【0112】
75.コーティングまたは塗料を製造するために、アクリルポリマーをさらなる成分と混合する工程をさらに含む項目71記載の方法。
【0113】
76.バイオモノマーがプロピレンオキシドである項目46~52のいずれか1つに記載の方法。
【0114】
77.例えばポリエーテル、ポリエーテルポリオール、ポリエステル、ポリウレタン、またはポリマーもしくはオリゴマー界面活性剤などのポリマーを製造するために、任意には共重合可能なモノマーおよび/または添加剤の存在下で、酸化プロピレンを重合する工程を含む項目76記載の方法。
【0115】
78.バイオモノマーがバイオブタジエンであり、および、誘導体化が、バイオブタジエンを製造するためのバイオプロピレン材料を変換する工程を含み、任意には、バイオブタジエンを精製する工程をさらに含む項目46~52のいずれか1つに記載の方法。
【0116】
79.変換工程が、ハイドロリフォーミング工程である項目78記載の方法。
【0117】
80.例えばポリブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR、HNBR)、アクリロニトリルブタジエン-スチレンゴム(ABS)またはスチレンブタジエンゴム(SBR)などのポリマーを製造するために、バイオブタジエンを、任意には共重合可能なモノマーおよび/または添加剤の存在下で、重合する工程を含む項目78または79記載の方法。
【0118】
81.項目49~81のいずれか1つに記載の方法により得られるバイオポリマー組成物。
【図面の簡単な説明】
【0119】
図1図1は、本発明の方法の一実施形態を図示するフローチャートである。
図2図2は、本発明によるバイオプロパン組成物をさらに処理する一実施形態を図示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0120】
以下において、本発明は、実施形態を参照してより詳細に説明される。本発明は、実施形態に限定される訳ではない。むしろ、実施形態は、発明がどのように実施に供され得るかという好ましい例を示している。
【0121】
本発明において使用される用語および表現が以下に記載される。
【0122】
用途「不純物(impurities)」は、バイオプロパン組成物中において有害または望ましくない、および/またはそれらを処理するあいだに有害である不純物を意味している。これらの不純物は、通常、新鮮なフィードオイルまたは脂肪中に溶解されている、および/またはミセル化されているまたは化学的に結合している、金属、金属化合物、リン、リン化合物、窒素、窒素化合物、硫黄および硫黄を含む化合物、および酸素含有化合物を含む。
【0123】
用語「バイオ再生可能なオイルおよび/または脂肪を前処理する(pre-treating bio-renewable oil(s) and/or fat(s))」は、不純なオイル/脂肪の精製を目的とする従来のプロセスまたは従来の複数のプロセスの組み合わせ、すなわち不純物の除去を意味する。好ましい前処理は、不純物の減少された含有量をもたらす、脱ガム、漂白、加熱処理、遠心分離、ろ過、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0124】
用語「脱ガム(degumming)」は、不純なオイル/脂肪が、酸、水および焼灼剤を用いて、高温で、高せん断混合で処理される精製プロセスを意味する。形成されたガムは、続いて、オイル状材料から、好ましくは遠心分離によって分離され得、および材料は乾燥され得る。
【0125】
用語「漂白(bleaching)」は、不純なオイル/脂肪に酸および水が添加され、そして得られた組成物が吸着剤材料(例えば活性白土など)と共に、高温および減圧下(例えば真空など)で混合される。その後、オイル/脂肪は、乾燥され、および該吸着剤から典型的にはろ過によって分離される。
【0126】
用語「脱臭(deodorization)」は、オイルが、不純物および/または遊離脂肪酸を除去するために、減圧下の高温で、およびスチームストリッピングを用いて処理される精製プロセスを意味する。
【0127】
用語「脂肪およびオイルの加水分解(hydrolysis of fat(s) and oil(s))」は、主にモノ-、ジ-、トリグリセリドを含むオイルおよび/または脂肪流が、例えば高温および水を用いて、脂肪酸およびグリセロールに分解するために加水分解されるプロセスを意味する。
【0128】
前処理の文脈における用語「加熱処理(heat treatment)」は、不純なオイル/脂肪が、可溶な不純物の全てまたは一部が、その後例えばろ過や他の任意の方法によって取り除かれる不溶な材料に転換されるように高温で加熱される精製プロセスを意味する。
【0129】
用語「水素化処理(hydrotreatment)」、しばしば水素処理(hydroprocessing)とも称されるが、該用語は、有機材料を水素分子を用いて処理する触媒プロセスを意味する。好ましくは、水素化処理は、有機酸素化合物から水として酸素を除去する(すなわち水素化脱酸素(HDO))、有機硫黄化合物から硫化水素(H2S)として硫黄を除去する(すなわち水素化脱硫(HDS))、有機窒素化合物からアンモニア(NH3)として窒素を除去する(すなわち水素化脱窒素(HDN))、ハロゲンを除去する、例えば有機塩素化合物から塩酸(HCl)として塩素を除去する(すなわち水素化脱塩素(HDCl))、脱メタル化によって金属を除去する、および新鮮なフィード中に存在する任意の不飽和結合を水素化する。本明細書中で使用される場合、水素化処理は、水素化異性化をも含むことを意味する。
【0130】
用語「水素化脱酸素(hydrodeoxygenation)」(HDO)は、触媒の影響下で、水素分子を用いた有機分子からの水としての酸素の除去を意味する。
【0131】
用語「脱酸素(deoxygenation)」は、例えば脂肪酸誘導体、アルコール、ケトン、アルデヒド、またはエーテルなどの有機分子からの、上述した任意の手段による、または脱炭酸または脱カルボニル化による、酸素の除去を意味する。
【0132】
本発明において、用語「バイオベースの新鮮なフィード材料の総計の重量に対して算出されるグリセロール当量(glycerol-equivalent content calculated relative to the total weight of the bio-based fresh feed material)」は、バイオベースの新鮮なフィード材料中のグリセロールおよび/またはグリセロールベース部位の含有量を意味し、および、全てのグリセロール(またはグリセロールベースの)部位(すなわち、遊離のグリセロール中および/またはモノグリセリド、ジグリセリド、またはトリグリセリド中のグリセロール部位、および/または、例えば部分的に脱酸素化されたグリセロール(例えば1-プロパノール、2-プロパノール、1,2-プロパンジオール、または1,3-プロパンジオールおよびそれらのエステルなど)のグリセロールベース部位)が、脱プロトン化されたグリセロール(M=89.07g/mol)として存在していたとして算出される。換言すると、グリセロール当量は、以下にしたがって算出され得る。
グリセロール当量=
(グリセロールベース部位のモル量[mol])×89.07g/mol/
(バイオベースの新鮮なフィード材料の総計の重量[g])
【0133】
用語「バイオベース(bio-based)」または「バイオ再生可能な(bio-renewable)」は、再生可能な供給源由来の材料の存在を意味する。再生可能なまたは生物学的起源の炭素原子は、化石由来の炭素原子と比較してより多くの数の不安定な放射性炭素(14C)を含む。したがって、12Cおよび14C同位体の比を分析することによって、再生可能なまたは生物学的起源または原料由来の炭素化合物と化石起源または原料由来の炭素化合物とを区別することが可能である。したがって、該同位体の特定の比が、再生可能な炭素化合物を同定するための「タグ(tag)」として使用され得、それらを非再生可能な炭素化合物から区別し得る。同位体比は、化学反応のあいだにおいて変化しない。生物学的または再生可能な起源由来の炭素の含有量を分析するための適切な方法としては例えば、DIN 51637、ASTM D6866、またはEN 16640などが挙げられる。本明細書中で使用されるように、生物学的または再生可能な起源由来の炭素の含有量は、生物起源炭素含有量として表され、これは、ASTM D6866にしたがって測定される、材料中の全炭素(TC)の重量パーセントとしての材料中の生物起源炭素の量を意味している。完全に生物起源である生成物中の全炭素含有量の生物起源炭素の含有量は約100パーセントであり得る。本発明におけるバイオベースの新鮮なフィード材料、水素化されたフィード、希釈剤、バイオプロパン、バイオプロピレンおよび/またはバイオポリマーの生物起源炭素含有量は、生成物の処理において生物起源の成分以外の他の炭素の成分が使用された場合、より低くなるが、好ましくは少なくとも5パーセントである。
【0134】
本発明において、用語「バイオベース(bio-based)」または「バイオ再生可能な(bio-renewable)」または「バイオ(bio-)」は、一般的に、材料の少なくとも一部が再生可能な材料である、すなわち、ASTM D 6866による材料中の全炭素(TC)の重量パーセントとしての生物起源炭素含有量を有していることを意味している。好ましくは、「バイオ」材料の生物起源炭素含有量は、少なくとも5パーセント、より好ましくは少なくとも10パーセント、少なくとも20パーセント、少なくとも40パーセント、少なくとも50パーセント、少なくとも75パーセント、少なくとも90パーセント、または約100パーセントである。
【0135】
バイオベースの新鮮なフィード材料の生物起源炭素含有量は、より好ましくは少なくとも50パーセント、少なくとも75パーセント、少なくとも90パーセント、および特に好ましくは約100パーセントである。
【0136】
バイオプロピレン組成物、バイオモノマーおよび/またはバイオポリマーの生物起源炭素含有量は、少なくとも0.1パーセント、少なくとも0.5パーセント、少なくとも1パーセント、少なくとも2パーセント、少なくとも5パーセント、少なくとも10パーセント、少なくとも20パーセント、少なくとも40パーセント、より好ましくは少なくとも50パーセント、少なくとも75パーセント、少なくとも90パーセント、または約100パーセントである。
【0137】
用語「任意には(optionally)」または「任意の(optional)」は、存在するかもしれないが、本発明を実施するために必ず必要ではない特性、特徴、または工程を意味する。
【0138】
本明細書中において参照される全ての試験方法規格は、出願時において入手可能な最新のバージョンである。
【0139】
以下、本発明の方法が、それぞれのプロセス工程、および原料、中間体生成物および最終生成物に関する好ましい実施形態を参照しながらさらにより詳細に記載されるであろう。本発明は、好ましい実施形態に限られない一方、実施形態において言及された任意の数値または条件は、それぞれまたは他の好ましい実施形態と組み合わされて、本発明の一般的なプロセスと組み合わせられてもよい。
【0140】
バイオ再生可能なオイルおよび/または脂肪のバイオベースの新鮮なフィード
本発明の方法は、バイオ再生可能なオイルおよび/または脂肪のバイオベースの新鮮なフィード材料を提供する工程、すなわち準備工程(A)を提供する。
【0141】
バイオ再生可能なオイルおよび/または脂肪(バイオ再生可能なフィードストックとも称される)は、オイルおよび/または脂肪を含む、般的に遊離脂肪酸および/またはグリセリド、例えば植物(plant)オイル/脂肪、植物(vegetable)オイル/脂肪、動物性オイル/脂肪、魚油/脂肪、および海藻オイル/脂肪、他の微生物プロセス起源のオイル/脂肪、例えば他の微生物プロセス起源の遺伝子操作されたオイル/脂肪、および遺伝子操作された植物オイル/脂肪などを含む生物学的な原料成分由来のフィードストックを意味する。そのような材料の成分、例えばアルキルエステル(典型的にはC1 C5アルキルエステル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、ブチル、sec-ブチルエステルなど)などがまた使用され得る。バイオ再生可能な(および「バイオベース」の)オイルおよび/または脂肪は、特には化石オイルを除いている。
【0142】
本発明において、前処理工程によってバイオベースの新鮮なフィード材料に変換されたバイオ再生可能な原料(バイオ再生可能なオイル/脂肪)を使用することが可能である。あるいは、既に前処理されたバイオベースの新鮮なフィード材料を採用することも可能であり、また、バイオベースの新鮮なフィード材料として、(粗製の、すなわち生産されたままの)バイオ再生可能なオイルおよび/または脂肪を採用することも可能である。本発明においては、バイオベースの新鮮なフィード材料(またはフィードストック)がしばしば参照されるが、この用語は、特に断らない限り、(前処理されていない)バイオ再生可能なフィードストックおよび前処理されたバイオ再生可能なフィードストックの両方を包含し得る。
【0143】
バイオ再生可能なオイルおよび/または脂肪は、さらに、単一の種類のオイル、単一の種類の脂肪、異なるオイルの混合物、異なる脂肪の混合物、オイルおよび/または脂肪の混合物、脂肪酸、グリセロール、および上述されたものの混合物を包含する。
【0144】
これらのオイルおよび/または脂肪は、典型的には、脂肪酸のエステル、グリセリド、すなわち脂肪酸のグリセロールエステル、リン脂質、糖脂質、スフィンゴ脂質などを含むC10~C24脂肪酸および/またはその誘導体を含む。グリセリドとしては、特には、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドを挙げることができる。
【0145】
典型的なバイオベースの新鮮なフィード材料は、グリセリド、すなわちエステル結合を介して1、2または3個の脂肪酸が結合されたグリセロールを含む原料(またはフィードストック)であるグリシド系原料(またはフィードストック)である。バイオベースの新鮮なフィード材料(またはフィードストック)はまた、(遊離の)グリセロールを含み得る。
【0146】
本発明において、バイオ再生可能なオイルおよび/または脂肪のバイオベースの新鮮なフィード材料は、2~60wt.-%のグリセロール当量の部位を含む(すなわち、2~60wt.-%のグリセロール当量を有する)。所定のグリセロール当量を有するこの種のフィードストックを選択することによって、または、所定の含有量に達していないフィードストックに遊離のグリセロールを添加することによりグリセロール当量を調整することによって、または、異なるグリセロール当量を有するフィードストックを混合することによって、気体の水素化処理された材料中の不純物に対するバイオプロパンの比が増大され得、また、酸素に富んだグリセロール部位の発熱水素化処理反応による過度の温度上昇が制御され得る。
【0147】
脱炭酸反応(および脱カルボニル反応)は、一般により高い水素化処理温度でより進み、および、下記で説明されるように、本発明ではそのようなデカーブ反応は望ましくないため、本発明においては温度制御が重要である。
【0148】
グリシド原料(バイオ再生可能なオイル/脂肪)としては、好ましくは、C10~C28脂肪酸のトリグリセリド、およびそれらのモノ-、ジグリセリドのバリアントが挙げられる。
【0149】
バイオベースの新鮮なフィード材料としてまたはその起源として使用可能な植物オイルの例としては、これらに限定される訳ではないが、菜種油(rapeseed oil)、菜種油(canola oil)、大豆油(soybean oil)、ヤシ油、ヒマワリ油、パーム油、パーム核油、ピーナッツ油、亜麻仁油、ゴマ油、トウモロコシ油、ケシ種子油、綿実油、大豆油(soy oil)、トール油、コーン油、ヒマシ油、ジャトロファ油、ホホバ油、オリーブオイル、亜麻仁油、カメリア油、サフラワー油、ババス油、アビシニアガラシ油、および米ぬか油、または上述したオイルの留分または残渣、例えばパームオレイン、パームステアリン、パーム脂肪酸蒸留物(PFAD)、精製トール油、トール油脂酸、トール油不ケン化物、トール油ピッチ(TOP)、および植物由来の使用済み食用油などが挙げられる。
【0150】
バイオベースの新鮮なフィード材料またはその起源として使用可能な動物性脂肪の例としては、これらに限定される訳ではないが、獣脂、ラード、イエローグリース、ブラウングリース、魚脂、鶏脂、および動物起源の使用済み食用油などが挙げられる
【0151】
使用可能なオイルおよび/または脂肪のさらなる例としては、藻類脂質、真菌類脂質、および細菌脂質を含む微生物オイルなどが挙げられる。
【0152】
前処理
本発明の方法は、前処理工程(A’)を含み得る。
【0153】
例えば動物ベースの脂肪または植物オイル、特には微生物オイルなどのバイオ再生可能なオイルおよび/または脂肪の使用に関する典型的な問題は、それらが顕著な量の例えば金属、リン、硫黄、窒素および酸素などの不純物を含む傾向があるということである。不純物は、例えば、水素化処理工程においてまたはその後のバイオプロパン組成物の処理において、例えば触媒毒および/またはコーク前駆体の形などで問題を引き起こす可能性がある。金属、リン、硫黄、窒素および酸素化合物の沈殿は、精製プロセスにおいて、触媒の不活性化および/またはリアクター触媒床の目詰まりをもたらし得る。
【0154】
したがって、オイル/脂肪製品からこれらの望ましくない成分を除去するための前処理工程(A’)(前洗浄)を使用することが有益であり得る。例えば、水脱ガム、ソフト脱ガム、酸脱ガム、湿式漂白、乾式漂白、蒸発および蒸留などの一般的な処理方法が、バイオ再生可能なオイルおよび/または脂肪の(粗)材料から不純物(汚染物質)の大部分を除去するために適切である。
【0155】
前処理においては、任意の従来の装置が使用され得る。例えば蒸発を含む前処理は、一またはそれ以上のエバポレーター、例えば1つ、または2つ、または3つ以上の連続して配置された薄膜蒸発器、落下薄膜蒸発器、ショートパス蒸発器、プレート分子スチル、または薄膜蒸発を用いる他のエバポレーターなどの使用を含み得る。
【0156】
前処理工程はまた(または排他的に)、グリセリドの加水分解/トランスエステル化工程、およびそれゆえ、グリセロールおよび脂肪酸の生成工程を含む。
【0157】
化石材料(主に炭化水素材料)とは異なり、バイオ再生可能なオイルおよび/または脂肪は、ほぼ排他的に酸素化物材料(例えばグリセリドなど)からなり、および、上述の不純物は、化石材料からよりもはるかに容易に、すなわち単純な前処理工程により、そのような酸素化物材料から除去され得るため、前処理工程(A’)は、特に有益であり得る。
【0158】
したがって、本発明の方法は、高純度のバイオプロパン組成物が簡便な手段を用いて製造され得るという利点を提供することができる。さらに、そのような高純度のバイオプロパンは、その後の様々なアップグレーディングプロセス、特に、少量の不純物および/または触媒毒のみが許容されるプロセスにおいて利用され得る。
【0159】
このような金属不純物が、水素化処理工程におけるデカーブ反応を促進し得、これは本発明においては好ましくないため、本発明においては、金属不純物の量を低減する前処理を行うことが特に好ましい。新鮮なフィード中のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の量は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の元素として算出されて、10wt.-ppm未満、好ましくは5wt.-ppm未満、およびより好ましくは1wt.-ppm未満であり得る。また、新鮮なフィード中の他の金属の量は、金属元素として算出されて、10wt.-ppm未満、好ましくは5wt.-ppm未満、より好ましくは1wt.-ppm未満であり得る。
【0160】
さらに、バイオプロパン組成物から得られるさらにアップグレードされた材料であっても、(より少ないキャリーオーバーのため)低い触媒毒を有し、したがって、例えば触媒プロセスにおいてその有効利用を可能にする。
【0161】
前処理は、同様に、部分的な水素化を含んでいても(またはそれからなっていても)よい。特には、前処理は、バイオ再生可能なオイルおよび/または脂肪に含まれる二重結合の(部分的または完全な)水素化を含み得る。二重結合は水素化処理において大きな発熱反応をもたらすため、このような手順は、後続の水素化処理工程(B)における温度制御にさらに寄与し得る。
【0162】
水素化処理
本発明の方法は、水素化処理された流出物を提供するための、バイオベースの新鮮なフィード材料、任意の希釈剤を含む水素化処理フィードを、金属硫化物触媒および水素(H2)の存在下でHDOを含む水素化処理に付す水素化処理ステップ(B)を含む。
【0163】
水素化処理フィード(水素化処理に付されるフィードストック)は、少なくとも2wt.-%、例えば、少なくとも3wt.-%、少なくとも4wt.-%、少なくとも5wt.-%、少なくとも6wt.-%、少なくとも7wt.-%、少なくとも8wt.-%、少なくとも9wt.-%、少なくとも10wt.-%、少なくとも11wt.-%、少なくとも12wt.-%、少なくとも15wt.-%、少なくとも20wt.-%、少なくとも25wt.-%、少なくとも50wt.-%、少なくとも75wt.-%、少なくとも90wt.-%または少なくとも95wt.-%のバイオベースの新鮮なフィード材料(またはフィードストック)を含み得る。水素化処理フィードはまた、完全にバイオベースの新鮮なフィード材料であってもよく、または、99wt.-%以下、例えば90wt.-%以下、75wt.-%以下、50wt.-%以下、40wt.-%以下、35wt.-%以下、30wt.-%以下、25wt.-%以下、20wt.-%以下、15wt.-%以下、または10wt.-%以下のバイオベースの新鮮なフィード材料を含んでいてもよい。好ましくは、水素化処理フィード中のバイオベースの新鮮なフィード材料および希釈剤の合計量は、95wt.-%以上、より好ましくは98wt.-%以上、99wt.-%以上、または99.5wt.-%以上である。バイオベースの新鮮なフィード材料および希釈剤に加えて、金属硫化物触媒の活性を維持するための任意的な追加の硫黄源が利用されてもよい。本発明においては、水素化処理工程(B)において使用される水素(H2)は、水素化処理フィード中のバイオベースの新鮮なフィード材料および/または希釈剤の量を算出する際には含まれない。
【0164】
より少ない量のバイオベースの新鮮なフィード材料を有する水素化処理フィードは、温度制御に関して有利であり得る。すなわち、バイオベースの新鮮なフィード材料の触媒的水素化処理は発熱反応であり、これは、バイオベースの新鮮なフィード材料(またはフィードストック)の希釈剤(例えば、酸素を含まない材料、または触媒的水素化処理条件のあいだに発熱反応を起こしにくい材料)、好ましくはパラフィン系炭化水素を含む希釈剤との混合が、温度上昇または(局所的な)過熱を回避し得ることを意味している。水素化処理のあいだの高温はデカーブ反応を促進するため、希釈剤の使用は、そのような望ましくない反応の発生を低減させるのに役立ち得る。一方、温度制御は、希釈以外の他の方法によって、例えばリアクターデザインによってもまた円滑に進められ得る。
【0165】
混合または希釈は、例えば鉱物起源の希釈剤(化石希釈剤)を用いて、生物起源の材料(例えば、バイオベースの新鮮なフィード材料以外のバイオ再生可能な材料など)を用いて、または例えば本工程の触媒的水素化処理などからのリサイクルされたパラフィン系炭化水素生成物を用いて、行われ得る。さらに、前処理が行われる場合、混合/希釈は、前処理前、前処理後、または前処理前および前処理後の両方で行われ得る。少なくとも前処理の後(好ましくは前処理の後のみ)の、および/または、水素化処理工程の直前の混合/希釈が、プロセス効率の観点から好ましい。触媒的水素化処理からのリサイクルされたパラフィン系炭化水素生成物が希釈剤として使用される場合、それは、水素化処理フィードの、少なくとも10wt.-%、または少なくとも25wt.-%、少なくとも40wt.-%、少なくとも50wt.-%、少なくとも60wt.-%、少なくとも70wt.-%、少なくとも75wt.-%、少なくとも80wt.-%、少なくとも85wt.-%、少なくとも90wt.-%または少なくとも92wt.-%を形成し得る。リサイクルされたパラフィン系炭化水素はまた、水素化処理フィードの、98wt.-%以下、例えば95wt.-%以下、92wt.-%以下、90wt.-%以下、85wt.-%以下、80wt.-%以下、70wt.-%以下、60wt.-%以下、40wt.-%以下、または25wt.-%以下を形成し得る。希釈剤が化石炭化水素原料の場合、同様の量が適用され得る。さらに、希釈剤が化石炭化水素とリサイクルされたパラフィン系炭化水素生成物との混合物の場合、同様の量(総計量)が適用され得る。混合希釈剤が適用される場合(すなわち、化石含有量も再生可能な含有量も0でない)、希釈剤中の化石含有量(0%の生物起源炭素含有量を有する化石材料の含有量として算出して)が、90wt.-%、好ましくは80wt.-%、70wt.-%以下、60wt.-%以下、50wt.-%以下、40wt.-%以下、30wt.-%以下、20wt.-%以下、1wt.-%以下であることが好ましい。
【0166】
例えばバイオベースの新鮮なフィード材料の水素化処理された流出物への水素化脱酸素などを含む水素化処理は、水素分子が他の成分と反応する、または成分が水素分子および固体触媒の存在下で分子変換される様々な反応を含み得る。反応としては、これらに限定される訳ではないが、水素化、水素化脱酸素、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱金属、水素化分解、および水素化異性化などが挙げられる。
【0167】
水素化処理条件が飽和のパラフィン系炭化水素を提供するように選択されることが好ましい。
【0168】
本発明の水素化処理は、金属硫化物触媒の存在下で行われ、および、以下の反応のうちの一またはそれ以上を含み得る:
1)水素化脱酸素(HDO)、酸素結合の水素化-酸素をH2Oとして除去する、
2)酸素がCO2の形で除去される脱炭酸、および
3)酸素がCOの形で除去される脱カルボニル化。
【0169】
従来、水素化処理プロセスにおけるデカーブ反応(脱炭酸および/または脱カルボニル化)の発生は、この酸素除去ルートが(高価な)水素の消費量を低減させるために好ましいものであると考えられてきた。しかしながら、本発明者らは、多くのデカーブ反応の結果として形成される二酸化炭素が、水素化処理またはその後の分離および/または精製工程のあいだに硫化水素(硫化された触媒の活性を確保するために水素化処理工程において存在する)と反応し、硫化カルボニル(COS)を生成し得ることを発見した。硫化カルボニルの存在は、それがプロパンの沸点と同様の沸点を有し、およびしたがって、COSが、従来の工業規模の技術を使用してプロパンから分離されることはほぼ困難であり得るため、本発明において特に問題である。
【0170】
好ましくは、水素化処理はHDOを含む。
【0171】
水素化処理/水素化脱酸素のための多くの条件が、当業者に知られている。本発明によるバイオベースの新鮮なフィード材料の水素化処理は、金属硫化物触媒の存在下で行われる。金属は、例えばMoまたはWなどのVI族金属の一または複数、または例えばCoまたはNiなどのVIII族非貴金属の一または複数であり得る。触媒は、例えばアルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、非晶質炭素、モレキュラーシーブス、またはそれらの組み合わせなどの任意の通常の担体上に担持され得る。通常、金属は金属酸化物として担体上に含浸または堆積されるであろう。それらは、次いで、通常、それらの硫化物へと変換されるであろう。水素化脱酸素のための典型的な触媒の例としては、アルミナまたはシリカに担持されているモリブデン含有触媒、NiMo、CoMo、またはNiW触媒が挙げられるが、他の多くの水素化脱酸素触媒が当該技術分野において既知であり、および、NiMoおよび/またはCoMo触媒と共に、それらと比較して開示されている。水素化脱酸素は、好ましくは、水素ガスの存在下、硫化NiMo触媒または硫化NiW触媒の影響下で行われる。好ましくは、水素化脱酸素は、金属硫化物触媒の存在下で行われ、ここで金属硫化物触媒は、CoMoを含まない。
【0172】
水素化処理は、1~200bar、好ましくは10~100bar、より好ましくは30~70barの水素圧力下、200~400℃、好ましくは230~370℃の温度で、および0.1h-1~3.0h-1、好ましくは0.2~2.0h-1の液体時空間速度で行われ得る。
【0173】
1~200bar(好ましくは10~100bar、より好ましくは30~70bar)の圧力(H2分圧)を提供するように水素化に対して水素(H2)をフィードすることによって、効率的なHDO、HDN、およびHDSが、デカーブ反応および/または分解反応を低いレベルに制御しながら確実とされ得る。
【0174】
硫化物触媒を用いる水素化処理工程(B)のあいだ、触媒の硫化状態は、好ましくは、バイオベースの新鮮なフィード材料への、および/または希釈剤への、および/または水素ガスと共にフィードされて、および/または別個に水素化処理リアクターへの、硫黄含有化合物の添加によって維持される。通常、硫黄はH2Sの形で添加されるが、例えば硫化物、ジスルフィド(例えばジメチルジスルフィド、DMDS)、ポリスルフィド、チオール、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェンおよびそれらの誘導体などの他の硫黄化合物の形で、単一の化合物として、またはこれらの化合物の2またはそれ以上の種類の混合物として、硫黄を添加することも可能である。硫黄含有鉱油希釈剤をバイオベースの新鮮なフィード材料と混合することもまた可能である。
【0175】
本発明の方法において、水素化処理フィード(水素化処理に付されるフィード)の硫黄含有量は、10~10000wt.-ppm(重量当たりのppm)、好ましくは10~1000wt.-ppm、より好ましくは10~500wt.-ppm、さらに好ましくは10~300wt.-ppm、さらにより好ましくは10~200wt.-ppm、および最も好ましくは20~100wt.-ppmである。硫黄含有量をこの範囲に調整することにより、デカーブ反応の発生が制御または抑制され得、および、フィード中のより低い硫黄含有量はまた、同様にCOSの発生も同様に制御または抑制するために有益である。すなわち、最小量の硫黄が十分な触媒活性を確保しながら(およびそれゆえデカーブ反応を促進するであろう高温を必要としない)、COSに変換され得る(大量の)H2Sの生成を抑制し得る最大量を超えなければ、水素化処理後にこの不純物を除去するための大変な努力がなされる必要がない。さらに、高い硫黄含有量は、水素化処理のあいだのデカーブ反応を促進する傾向がある。
【0176】
水素化脱酸素の効果的な条件は、好ましくは、水素化処理フィードの酸素含有量を1wt.-%未満、例えば0.5wt.-%未満または0.2wt.-%未満に低減する。
【0177】
水素化処理された流出物(粗材料)は、気体水素化処理された材料および液体水素化処理された材料をそれぞれ提供するために、気体流と液体流とに分離される。気体水素化処理された材料は、未使用の水素と共に、プロパンおよび不純物、例えばH2O、CO2、CO、COS、H2S、NH3、PH3、および軽質炭化水素のうちの一または複数などを含む。バイオベースの新鮮なフィード材料は、グリセロール等価部位を含むため、プロパンは主にグリセロール部位の水素化から得られ、脂肪酸または生成された炭化水素の分解からは、もしあるとしても、はるかに少ない程度で得られる。
【0178】
気-液分離
本発明の方法は、気-液分離工程(C)を含む。
【0179】
上述のように効果的な条件下での水素化脱酸素を行った後、プロパンは種々の気相成分の1つとして存在するであろう。気-液分離工程(C)において、水素化処理された流出物は、気体の水素化処理された材料と液体の水素化処理された材料とに分離される。気-液分離工程は、別工程として(流出物が水素化処理リアクターまたは反応ゾーンを離れた後)、および/または、例えば水素化処理リアクターまたは反応ゾーン内など水素化処理工程に組み込まれた工程として行われ得る。HDOのあいだに生成され、および新鮮なフィードから持ち越され得る水の大部分は、気-液分離ステップにおける例えばウォーターブーツを介して除去され得るが、典型的には微量が気体の水素化処理された材料中に取り込まれる。
【0180】
気体の水素化処理された材料は、少なくともH2、バイオプロパン、H2O、H2S、CO2、およびCOを含む。すなわち、本発明は、好ましくは、COおよびCO2の生成を最小限に抑える努力をしているが、本発明に係るバイオベースの新鮮なフィードの水素化処理において、その発生を回避することは困難である。
【0181】
従って、気体の水素化処理された材料は、バイオプロパン以外の水素化処理反応生成物、例えば、水素化および/またはデカーブ反応に由来するH2O、CO2、COなどを含むが、これらの副生成物の量は、COおよびH2OがCOおよびH2との平衡にある水-ガスシフト反応により、これらの反応タイプの程度を必ずしも表してはいないであろう。
【0182】
さらに、気体の水素化処理された材料は、バイオプロパンに加えて、例えばクラッキングの結果としての軽質炭化水素を含み得る。軽質炭化水素は、ガス状軽質炭化水素、すなわち、気-液分離工程の圧力および温度で気相にある炭化水素を含む。軽質炭化水素は、例えば、7個未満の炭素原子を有する炭化水素、すなわちC1~C6炭化水素であり得、これらとしては、これらに限定される訳ではないが、メタン、エタン、プロパン、ブタン、2-メチルプロパン、ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、2-メチルペンテン、3-メチルペンテン、2,3-ジメチルブタン、2,2-ジメチルブタンなどが挙げられる。軽質炭化水素に加えて、7個またはそれ以上の炭素原子を有する炭化水素、例えばC7~C10炭化水素もまた存在し得るが、それらは通常、多くて数十ppmでしか存在しないであろう。
【0183】
水素は、通常、気体の水素化処理された材料中に主成分として存在する。気体の水素化処理された材料は、少なくとも70mol-%の水素、例えば少なくとも75mol%の水素、少なくとも80mol-%の水素を含み得る。水素含有量は、95mol-%未満、例えば90mol-%未満などであり得る。
【0184】
バイオプロパンもまた、気体の水素化処理された材料中に存在し、および、その量は主に原料中のグリセロール当量に依存し、クラッキングの程度にはそれほど依存しない。水素化処理されたフィード中のバイオベースの新鮮なフィード材料の総重量に対して2wt.-%から60wt.-%のグリセロール当量を有するバイオ再生可能なオイルおよび/または脂肪であるバイオベースの新鮮なフィード材料を使用することは、気体の水素化処理された材料中のバイオプロパンの工業上実現可能な量を確実にするが、その含有量は、さらに希釈剤の量、および/または、オイルに対する水素比[Nl/l](水素化処理工程に供給される水素の体積[Nl]と水素化処理フィードの体積[l]とのあいだの比)に依存する。
【0185】
本発明は、バイオベースの新鮮なフィード中のグリセロール当量の簡便な調整を可能にする柔軟なプロセスを提供し、それによって、現行のまたは予測される市場の需要に最も合う比率でのディーゼルおよび/またはケロシンおよびバイオプロペンが得られる。
【0186】
本発明において、気体の水素化処理された材料は、好ましくは、少なくとも1mol-%のバイオプロパン、例えば少なくとも3mol%のバイオプロパンを含む。気体の水素化処理された材料は、同様に、25mol%以下、例えば、20mol%以下、または15mol%以下のバイオプロパンを含む。気体の水素化処理された材料が、バイオベースの新鮮なフィード材料の総計の重量に対して2wt.-%~60wt.-%のグリセロール当量を有するバイオ再生可能なオイルおよび/または脂肪のバイオベースの新鮮なフィード材料由来である場合、気体の水素化処理された材料の含有量は、しばしば25mol-%以下である。
【0187】
様々な実施形態において、気体の水素化処理された材料の温度は、5℃~95℃の間であり、圧力は、20bar~60barの間である。
【0188】
気-液分離から得られる液体の水素化処理された材料は、少なくともパラフィン系炭化水素を含む。これらのパラフィン系炭化水素の大部分は、3より大きい炭素数を有する(C3+炭化水素)であろう。
【0189】
気-液分離工程は、15℃~65℃、好ましくは20℃~60℃の温度で、および水素化処理工程の圧力と同じ圧力で行われ得る。一般的に、気-液分離工程のあいだの圧力は、1~200bar、好ましくは10~100bar、または30~70barであり得る。気-液分離工程における圧力が高いほど、および/または温度が低いほど、液体の水素化処理された材料中の凝縮された重質成分(例えば、C3+炭化水素)の量は多くなり、したがって、気体の水素化処理された材料中での量は少なくなる。
【0190】
液体の水素化処理された材料の分画
工程(D)は、液体の水素化処理された材料を、任意的な第2の水素化処理の後に分画に付すこと、および、少なくともディーゼルおよび/またはケロシン範囲のパラフィン系炭化水素材料、特には自動車ディーゼル燃料のEN 590要件を満たすディーゼル範囲のパラフィン系炭化水素材料、および/または、航空タービン燃料の要件を満たす、ASTM D7566-16b、Annex A2を満たすケロシン範囲のパラフィン系炭化水素材料を回収することを含む。
【0191】
第2の水素化処理は任意であり、および、必要に応じて、例えば、結果として得られる留分の酸素含有量の要件を満たすためなどに適用され得る。好ましくは、第2の水素化処理は、炭化水素材料(液体の水素化処理された材料)中のイソ-パラフィン含有量を増加させ、それによってディーゼルおよび/またはケロシン範囲のパラフィン系炭化水素材料の低温特性を改善するための水素異性化を含んでいる。
【0192】
分画は、任意の従来の手段を用いて行われ得る。
【0193】
工程(D)は、ケロシン範囲のパラフィン系炭化水素材料およびディーゼル範囲のパラフィン系炭化水素材料のうちの少なくとも一つ、特には自動車ディーゼル燃料のEN 590要件を満たすディーゼル範囲のパラフィン系炭化水素材料、および/または航空タービン燃料の要件を満たす、ASTM D7566-16b、Annex A2を満たすケロシン範囲パラフィン系炭化水素材料を提供する。
【0194】
工程(D)はまた、水分離の(サブ)工程を含み得る。水分離は、第2の水素化処理の後、または、分留の前に行われ得る。
【0195】
工程(D)は、工程(C)の後に行われるが、工程(E)、(F)、(G)の前に行われる必要は必ずしもない。工程(D)は、好ましくは、工程(E)、(F)、(G)と同時に行われる。
【0196】
気体の水素化処理された材料の精製
気体の水素化処理された材料の組成に依存して、それが水素から分離され、および乾燥される前に、精製工程(E)を行うべきである。
【0197】
精製工程(E)は、H2SおよびCO2に枯渇した気体流を得るために、少なくとも、気体の水素化処理された材料をH2SおよびCO2を除去するための精製に付すことを含む。好ましくは、精製工程(E)は、NH3を除去することをさらに含む。H2S、CO2、または、H2SおよびCO2の両方は、過剰なH2SおよびCO2を除去するために気体の水素化処理された材料をスウィートニングすることにより除去され得る。サワーガス(H2Sおよび/またはCO2を含む)は、膜分離による後続の水素回収において任意に使用される膜材料に対して有害であり得る。さらに、CO2に加えたH2Sの存在は、蒸留または分留によってはバイオプロパンから容易に分離できないCOSの形成をもたらし得る。COSの生成は平衡反応であるため、CO2およびH2Sの含有量を増加させることによって、および、H2Oの含有量を低下させることによって、COS側にシフトされる。したがって、乾燥前にCO2およびH2Sを除去することによって、COSの生成は抑制され得る。
【0198】
気体のスウィートニングは、好ましくは、H2Sの含有量を、1wt.-ppm以下、例えば、0.5wt.-ppm以下、または0.1wt.-ppm以下に低減させるべきである。さらに、気体のスウィートニングは、CO2の含有量を、3000wt.-ppm以下、例えば2000wt.-ppm以下、または1000wt.-ppm以下、または500wt.-ppm以下、または100wt.-ppm、または10wt.-ppm以下、例えば1wt.-ppm以下に、および、H2S含有量を、50wt.-ppm以下、10wt.-ppm以下、5wt.-ppm以下、例えば1wt.-ppm以下に低減させるべきである。
【0199】
気体は、H2SおよびCO2の両方を低減または除去する条件で、アミンスクラバーを使用して、または例えば精製所などで使用される他のユニットまたはプロセスを使用して、スウィートニングされ得る。
【0200】
工程(E)において気体の水素化処理された材料から除去されるH2Sは、金属硫化物触媒の活性を維持するための硫黄源として、回収され、および水素化処理工程(B)へと回リサイクルされ得る。これらの実施形態において、かかるリサイクルされたH2Sは、水素化処理フィード中の硫黄含有化合物の規定範囲の一部であるとして計算される(10~10000wt.-ppm、S元素として算出されて)。
【0201】
2回収および乾燥
本発明のプロセスは、工程(E)で提供されるH2SおよびCO2が枯渇したガス流を使用するH2回収および乾燥工程(F)を含む。
【0202】
本発明の方法において、乾燥は、H2回収の前に行なわれ得、または、乾燥は、H2回収の後に行われ得る。プロセス効率の観点から、乾燥はH2回収後に乾燥を行われることが好ましい。この方法であると、より小さな乾燥装置が必要とされ、より少ないスペースおよびより低い投資コストのみを必要とする。
【0203】
本発明において、少なくとも乾燥工程が精製工程(E)によって先行されていることが必須である。乾燥工程(またはサブ工程)は気体材料から水を除去するため、乾燥のあいだのCOSの形成のリスクを減少させるために、乾燥前にCO2およびH2Sの含有量が減少されていることが不可欠である。
【0204】
本発明において、プロパンの水素からの分離(すなわち、水素回収)は、選択的な膜を使用して好ましくは達成され(膜分離)、そして、この実施形態は以下に詳細に説明される。しかしながら、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、および、プロパンを水素から(および任意には、同時に他のガス状成分から)分離するための他の方法は、例えば低温蒸留またはスイング吸着などの任意の他の適切な方法を使用して達成され得る。
【0205】
工程a)
本発明の実施形態による水素を回収する(および同時にH2が枯渇した気体流を提供する)方法は、膜を提供する工程を含む。膜は、供給側および透過側を有する。膜は、水素の大部分を優先的に透過し、プロパンの大部分を拒むという点で、プロパンよりも水素に対して選択的であることによって機能する。存在する場合、一または複数のさらなるガスはCOおよび軽質炭化水素(プロパンと共に拒まれる)、H2O、CO2、H2SおよびNH3(拒まれるかまたは膜のタイプならびに例えば温度および圧力などの条件に依存して部分的にのみ拒まれる)からなる群より選択される。
【0206】
工程b)
膜分離は、少なくともプロパンおよび水素(H2)を含む気体流を、水素選択性である膜の供給側を通して通過させることを含む。膜透過の駆動力は、透過側と比較してより高い供給側の圧力によって提供される。例えば、供給側の圧力は、10bar以上、例えば20bar以上、または30bar以上、または40bar以上、または50bar以上などの圧力を含み得、および、透過側の圧力は、例えば5bar以下、または10bar以下、または20bar以下、または30bar以下などの供給側より少なくとも1barより低い圧力を含み得る。膜は、例えば酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ゼオライト、またはパラジウムなどの膜科学の技術分野でよく知られている高分子材料、セラミック材料または金属材料から作製され得、および、螺旋巻き膜、中空糸膜、チューブまたはプレートの形態であり得る。
【0207】
工程c)
膜分離段階の後、粗気体流に比べて水素が枯渇し、プロパンが富化された残余のストリームが供給側から引き出され得る。
【0208】
残余のストリームは、65mol%未満、例えば55mol%未満、40mol%未満、25mol%未満の水素を含み得る。残余のストリームはまた、5mol-%より多い水素、例えば10mol-%より多い水素を含み得る。通常、膜は、透過ストリーム中の水素のより高い純度をもたらすであろうことから、残余のストリーム中にいくらかの水素が残るように操作される。この非常に純度の高い水素は、本プロセスの任意の水素化処理工程に再利用され得る。
【0209】
残余のストリームはまた、15mol-%より多いプロパン、例えば25mol-%より多いプロパン、30mol-%より多いプロパンを含み得る。残余のストリームはまた、75mol-%未満のプロパン、例えば65mol-%未満のプロパン、または55mol-%未満のプロパンを含み得る。
【0210】
工程d)
膜分離段階の後、粗気体流に比べて水素に富み、およびプロパンに枯渇した透過流は、透過側から引き出され得る。
【0211】
膜分離を使用する本実施形態において、膜を透過する気体流の割合として定義される膜段カットが、少なくとも10%、例えば少なくとも15%、または少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも75%に相当し得ることが好ましい。段カットはまた、95%以下、例えば80%以下、70%以下、50%以下に相当し得る。段カットが高くなるほど、透過物中の水素の純度は低くなるであろう。透過流は、リサイクル水素ガスとして使用され得る。
【0212】
上述されるように、工程(F)は、乾燥段階(サブ工程)をさらに含む。乾燥は、任意の従来公知の化学的および/または物理的方法を用いて、例えば、水の吸着剤および/または吸収剤を用いて達成され得る。特に好ましい一実施形態は、モレキュラーシーブ脱水床を用いる乾燥を含む。
【0213】
分画および任意的な圧縮
工程(G)で得られる乾燥された、H2S、CO2およびH2が枯渇した気体流は、バイオプロパンガス組成物を回収するために分画工程(F)に送られる。
【0214】
工程(F)のあいだ、および分画のあいだまたは後に、バイオプロパンガス組成物(またはその前駆体)は、液体バイオプロパン組成物を提供するために圧縮され得る。
【0215】
乾燥されたH2S、CO2およびH2が枯渇した気体流は、膜分離段階に入る気体流と比較して、水素が枯渇し、およびプロパンが富化されており、および、プロパンから少なくとも水素を分離するために、低温分離および/または高圧蒸留等の蒸留による分画に付される。
【0216】
昇圧蒸留は、垂直温度勾配が存在する加圧蒸留塔で行われ得る。様々な実施形態において、昇圧蒸留は、昇圧蒸留が-100℃以上、例えば-85℃以上、-70℃以上、例えば0℃以上の温度で行われ得るという点で、低温分離と見なされ得る。蒸留塔の温度範囲は、好ましくは-70℃~130℃である。加圧蒸留塔の塔底(塔の塔底生成物がそこから取り出されるバルブにおいて測定される)は、80℃~130℃の温度を有し得る。
【0217】
昇圧蒸留は、好ましくは、水素ならびに例えばC1(メタン)およびC2(エタンおよびエチレン)などの他の軽質炭化水素、ならびに残渣のCO、CO2がバイオプロパンから分離され得るために、十分な理論プレートを確保するように行われる。カラムの下部において、バイオプロパンが、残渣のC4、C5、および高級炭化水素から分離される。これらは、少量のバイオプロパンと一緒にパージされ、再生可能なディーゼルプラントのディーゼル安定化セクションへと戻され得る。例えばこれらに限定される訳ではないが、プロパンに加えて、COおよびCO2および他のガス状軽質炭化水素などを含むさらなる気体種が存在する場合、条件が、結果として得られるプロパン組成物が好ましくは少なくとも90wt.-%のバイオプロパン含有量を有するように、さらなる気体種からプロパンを分離するために十分な理論プレートを確保するように提供されることが優位である。
【0218】
昇圧蒸留は、20bar(ゲージ)より高い圧力で、例えば25~40bar(ゲージ)の圧力で行われ得る。昇圧蒸留は、そのような圧力で、-70℃~130℃の間で行われ得る。例えば、0℃~130℃の間である。
【0219】
昇圧蒸留から得られるバイオプロパン組成物は、プロパン含有製品に配合されてもよい。より具体的には、バイオプロパンガス組成物は、液体バイオプロパン組成物を与えるように圧縮され得る。圧縮は、液体バイオプロパン組成物を与えるように分画後に実施されてもよく、または、例えば、少なくともプロパンが分画段階から取り出される段階で分画に使用される条件下でプロパンが液体段階である場合など、昇圧分画/蒸留のあいだに行われてもよい。
【0220】
換言すると、本発明は、バイオプロパンガス組成物および/または液状バイオプロパン組成物(通常、バイオプロパン組成物と称され得る)を提供する。
【0221】
本発明において、昇圧蒸留および任意的な圧縮段階から得られるバイオ-プロパン組成物は、好ましくは、さらなる配合の有無にかかわらず、90wt.-%である最小のプロパン含有量、および/または、最大で1500wt.-ppmである最大のプロピレン含有量を有する。組成物の残りは通常、例えばイソ-ブタン、ブタン、エタン、メタンなど軽質炭化水素であろう。例えば、得られたプロパンは、さらなる配合の有無にかかわらず、EN 589、DIN 51622、BS 4250またはHD 5プロパン仕様のうちの一または複数を満たし得る。
【0222】
好ましくは、昇圧蒸留(および任意的な圧縮段階)から得られるバイオ-プロパン組成物は、プロピレンをほとんど、または全く含まない。これは、バイオ-プロパンが、例えば全ての既存のオレフィンが水素化され、およびオレフィンが形成されないことを確実にするために、水素化処理の条件が十分に厳しかった場合など、そもそもプロピレンを含まない供給源から得られるという事実によって与えられ得る。バイオプロパン組成物のオレフィン含有量(例えばプロピレン含有量など)を低く保つ(またはオレフィンを含有しない)ことは、その後の触媒的アップグレードプロセスにおけるコーキング傾向を低減する。
【0223】
好ましくは、液化バイオプロパン組成物は、最大で1500wt.-ppm、好ましくは最大で1000wt.-ppm、より好ましくは最大で800wt.-ppm、さらにより好ましくは最大で500wt.-ppmのプロピレンを含む。
【0224】
本発明において、プロパン生成物は、プロピレンに脱水素される。
【0225】
分画段階で得られる水素は、少なくとも部分的に、任意には膜分離段階の透過物流とともに、水素化処理工程(B)にリサイクルされ得る。代替的に、または追加で、昇圧蒸留から得られる水素の一部は、水素を必要とする他の工程にリサイクルされ得る。
【0226】

好ましい膜分離プロセスで使用される膜は、水素を選択的に透過させるという点で、水素選択的である。様々な水素透過性膜が当該技術分野において知られており、およびいくつかの膜は、膜科学の技術分野でよく知られている高分子、セラミックまたは金属材料、例えばポリスルホン、ポリイミド、ポリアミド、酢酸セルロース、ゼオライトまたはパラジウムに基づくものである。膜は、任意の適切な形状およびサイズを有し得、例えば、螺旋巻き膜、中空糸膜、チューブ膜またはプレート膜の形態であり得る。プロパンに対する水素の実際の選択性は、膜を形成している材料、および供給側と透過側それぞれの温度および圧力を含むプロセス条件に依存する。
【0227】
膜材料および膜分離のための条件は、好ましくは、プロパンよりも水素に対して選択的である膜が、純粋な成分透過率比(vol/vol)として測定して、少なくとも5、例えば少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50、または少なくとも60である、プロパンよりも水素に対して選択性を示すように選択される。
【0228】
いくつかの実施形態において、供給側と透過側とを有する膜が提供され、この膜は、プロパンよりも水素に対して選択的である。75~90mol%のあいだの水素および5~10mol%のあいだのプロパンを含む粗気体流が、膜の供給側を横断して通過させられ、この結果残余の気体流および透過気体流が得られる。残余の気体流は、水素に枯渇しており(40~60mol%のあいだ)、および、プロパンに富化されている(30~50mol%のあいだ)。透過気体流は、水素に富化されており(96mol%より多い)、および、プロパンに枯渇している(0.5mol%未満)。この残余のストリームを、圧力によりさらに水素を分りするために、その後昇圧蒸留に付しことは、85mol%より多い併合された水素回収率を与える。
【0229】
プロパンの脱水素化
本発明のバイオプロパン組成物は、プロピレン組成物を製造するために、脱水素化工程に付され得る。
【0230】
本発明のバイオプロパン組成物は、低い不純物レベルを有し、および特には、脱水素化触媒の被毒不純物、およびコーク前駆体、およびコーク促進不純物を少量しか含まないため、バイオプロパン組成物は、脱水素化に非常によく適している。
【0231】
すなわち、本発明の発明者らは、コークが主に重質の(C3+)および硫黄含有の不純物により引き起こされるという共通の理解(これは化石ベースの処理に由来した)は不完全であり、および、バイオベースのプロピレン材料に直接関連づけることができないことを見出した。
【0232】
より具体的には、本発明者らは、驚くべきことに、通常、水素化処理されたバイオ材料中に顕著な量で存在するCOおよびCO2が、同様にコーキングの原因となり得ることを発見した。理論に縛られることは望まないが、これらの不純物のコーキング傾向は、例えばCOのCO2およびCへの不均化によって生じ、一方CO2は、例えば脱水素化などのさらなる処理段階の条件下でCOを生成し得ると考えられる。
【0233】
加えて、硫黄含有不純物の除去は、脱水素化に付される化石プロパンに関して既に知られていたが、本発明者らは、硫黄含有化合物に加えて、COおよびCO2の存在がCOSを生成し得ることを見出した。この不純物は、バイオプロパン組成物から容易に分離され得ず、したがって、組成物中に残存する。すなわち、上述したように、一般的な分画技術を用いると、通常、一般的な分画段階において、初めの材料のCOSの90wt.-%以上がバイオプロパン組成物に持ち越される。したがって、本発明では、分画段階に先立つ水素化処理および精製プロセスにおいて、COSの生成を回避し、COSの除去を促進するための方策を講じている。
【0234】
同様に、本発明は、メタロイド含有(特にはSi含有)不純物を含む金属含有不純物もコーキング傾向を促進すると考えられるため、これらの不純物を除去するための方策を講じている。
【0235】
したがって、触媒的脱水素化プロセスおよび他の触媒プロセスに極めて適したフィードが提供され得る。
【0236】
脱水素化プロセスにおいて、バイオプロパン組成物は、触媒と接触される。接触は、固定触媒床システム、移動触媒床システム、流動床システム、またはバッチ式操作、例えば攪拌リアクター中などで達成され得る。脱水素リアクターは、加熱を伴う一または複数の別個のリアクターゾーンを備え得る。バイオプロパンガス組成物は、上向き、下向き、または放射状の流れの形式いずれかで、触媒(例えば、触媒複合体)と接触され得る。プロパンは、触媒と接触される際に、液相、気液混合相、または気相中にあり得る。好ましくは、プロパンは気相にある。
【0237】
脱水素化条件は、好ましくは、150℃~820℃の温度、0.1~2530kPa(絶対圧)の圧力、および約0.01~約50h-1の液体時空間速度を含む。
【0238】
脱水素化は、より好ましくは540℃~650℃、さらに好ましくは560℃~630℃の温度で行われる。
【0239】
加えて、脱水素化は、より好ましくは0.4~500kPa(絶対圧)、さらに好ましくは0.5~400kPaの圧力で行われる。
【0240】
加えて、脱水素化は、より好ましくは約1~約30h-1、さらにより好ましくは約5~約25h-1の液体時空間速度で行われる。
【0241】
したがって、最も好ましい条件は、560℃~630℃の温度、0.5~400kPaの圧力、および約5~約25h-1の液体時間空間速度である。
【0242】
脱水素化触媒(または触媒複合体)は、高活性、高選択性、および良好な安定性を示すべきである。好ましい触媒複合体は、VIII族貴金属(好ましくはPtおよび/またはPd)および固体無機担体を含む。このような触媒複合体は、当業者によく知られている。他の好ましい触媒複合体は、VIII族貴金属(好ましくはCr)および固体無機担体を含む。特に好ましい触媒複合体としては、アルミナに担持された白金触媒およびアルミナに担持されたクロム触媒が挙げられる。例えば、米国特許出願公開第2015/259265号明細書および米国特許出願公開第2003/191351号明細書(両文献は参照により組み込まれる)に開示されている脱水素化触媒が好ましく使用され得る。
【0243】
脱水素化が完了した後、少なくともバイオ-プロピレン組成物が、脱水素化流出物から回収される。バイオ-プロピレン組成物を回収することは、例えば乾燥および/または分画などの通常知られている任意の手段を用いて達成され得る。
【0244】
バイオプロピレン組成物
用語「バイオ-プロピレン組成物(bio-propylene composition)」は、脱水素化流出物から回収される生成物を意味し、一方、用語「脱水素化流出物(dehydrogenation effluent)」は、脱水素化工程後に直接得られる生成物を意味する。本明細書で使用される場合、用語「脱水素化生成物(dehydrogenation product)」はまた、そのような脱水素化工程の後に直接得られる炭化水素の混合物も意味する。
【0245】
本発明のバイオ-プロパン組成物は非常に純度が高いため、バイオ-プロピレン組成物(および実際には既に、脱水素化流出物)も同様に非常に純度が高く、実際に有害な不純物がバイオ-プロピレン組成物に持ち越されることはない。したがって、バイオ-プロピレン組成物は、例えば触媒重合、触媒(部分的)酸化、触媒C-Cカップリング反応などの後続の触媒プロセスに特に適している。
【0246】
バイオ-プロピレン組成物のアップグレードまたは使用
本発明の実施形態を用いて得られる、または得られ得るバイオ-プロピレン組成物は、従来の石油化学、および高分子工業の原料として特に好適である。したがって、生産プロセスの大幅な改変を必要としないまま、既知の付加価値連鎖にプロピレンが添加され得る。
【0247】
例えば、バイオ-プロピレン組成物は、プロピレンの誘導体を与えるためにさらに修飾されてもよい。本発明にしたがい製造され得るプロピレン誘導体としては、特に、イソプロパノール、アクリロニトリル、プロピレンオキシド、アクリル酸、塩化アリル、オキソアルコール、クメン、アセトン、アクロレイン、ヒドロキノン、イソプロピルフェノール、4-ヘチルペンテン-1、アルキレート、ブチルアルデヒド、エチレン-プロピレンエラストマーおよびこれらの誘導体が挙げられる。プロピレンオキサイド誘導体としては、例えば、プロピレンカーボネート、アリルアルコール、イソプロパノールアミン、プロピレングリコール、グリコールエーテル、ポリエーテルポリオール、ポリオキシプロピレンアミン、1,4-ブタンジオール、およびそれらの誘導体などが挙げられる。塩化アリル誘導体としては、例えば、エピクロルヒドリン、およびエポキシ樹脂などが挙げられる。イソプロパノール誘導体としては、例えば、アセトン、酢酸イソプロピル、イソホロン、メタクリル酸メチル、およびそれらの誘導体などが挙げられる。ブチルアルデヒド誘導体としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸エステル、イソブタノール、イソブチルアセテート、n-ブタノール、n-ブチルアセテート、エチルヘキサノール、およびそれらの誘導体などが挙げられる。アクリル酸誘導体としては、例えば、アクリル酸エステル、およびそれらの誘導体などが挙げられる。
【0248】
バイオ-プロピレン組成物またはプロピレン誘導体は、ポリマーなどの次の生成物を提供するために、さらに、例えば重合などの追加のプロセスに付され得る。このようなポリマーの例としては、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、および高吸水性樹脂などの吸水性ポリマーなどが挙げられる。
【0249】
本発明のバイオ-プロピレン組成物は、広範な様々な用途において、および/またはこれらの用途で使用される材料を調製するために使用され得る。このような用途としては、例えば、家電製品、複合材料、自動車、包装、医療機器、農薬、冷媒、履物、紙、コーティング剤、接着剤、インク、医薬品、電気および電子機器、スポーツ用品、使い捨て品、塗料、繊維、高吸収剤、建築および建設、燃料、洗剤、家具、スポーツウェア、溶媒、可塑剤、ハイオクガソリン、合成ゴムおよび香水などが挙げられる。
【0250】
それらから得られるバイオ-プロピレン組成物および/またはバイオ-プロピレン誘導体は、ポリマー(バイオポリマー)を提供するために、さらに重合に付され得る。以下では、「プロペン(propene)」および「プロペン誘導体(propene derivatives)」に対して言及がなされるが、これは、バイオ-プロピレン組成物、バイオ-プロピレン組成物から得られる精製された(単離された)バイオ-プロピレン、および、製造されたままの、精製された、および/または単離された品質にあるバイオ-プロピレン誘導体をカバーすることが理解されるべきである。
【0251】
精製および重合
本発明の方法は、CO、CO2、またはジエン/アルキンの少なくとも1つを除去するために、プロピレンに富んだ脱水素化生成物(バイオ-プロピレン組成物)の少なくとも一部を精製処理に付すことをさらに含み得る。本発明の方法の利点は、CO、CO2、およびジエン/アルキンの低い総計の量、およびその結果の、プロピレンに富んだ脱水素化生成物からのCO、CO2、ジエン/アルキン、またはそれらの組み合わせの除去の低減された負担である。これは、プロピレンに富んだ脱水素化生成物の少なくとも一部が重合処理に付される実施形態において特に有利である。
【0252】
上述されるように、CO、CO2、およびジエン/アルキンは、重合触媒毒であり、およびしたがって重合プロセスにおいて好ましくない。重合処理に付される脱水素化生成物(バイオ-プロピレン組成物)の一部からの、CO、CO2、ジエン/アルキン、またはそれらの組み合わせの除去の負担が、大幅に軽減され得、潜在的には冗長でさえあり得る。
【0253】
しかしながら、実際には、重合処理に供される脱水素化生成物の一部は、例えば、予防措置として、または標準の手順からの逸脱を回避するために、通常、最初に精製処理に付される。いかなる場合でも、脱水素化生成物中のCO、CO2、および/またはジエン/アルキンのより低い不純物の量は、CO、CO2、またはジエン/アルキンの少なくとも1つを除去するための精製処理において使用され得る例えば吸収剤、吸着剤、反応剤、モレキュラーシーブおよび/または精製触媒などの活性物質の寿命を増大させ、および活性物質の再生頻度を減少させる。
【0254】
脱水素化生成物の少なくとも一部が付され得る精製処理は、CO、CO2、またはジエン/アルキンの少なくとも1つを除去するために適する任意の精製処理であり得る。そのような精製処理の例は、欧州特許出願公開第2679656号明細書、国際公開第2016/023973号、国際公開第2003/048087号、および米国特許出願公開第2010/331502号明細書に記載されており、これらは全て、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0255】
精製処理は、CO、CO2、またはジエン/アルキンの少なくとも1つを除去するために、脱水素化生成物の少なくとも一部を、例えば吸収剤、吸着剤、精製触媒、反応物、モレキュラーシーブ、またはそれらの組み合わせなどの活性材料と接触することを含み得る。任意には、精製処理は、脱水素化生成物の少なくとも一部を、酸素分子、水素分子、またはその両方の存在下で、活性材料と接触させることを含も得る。特定の実施形態において、精製処理は、脱水素化生成物の少なくとも一部を、活性物質を含む少なくとも1つの精製トレイン、または活性物質床の少なくとも1つを通過させることを含んでいる。接触は、単一の容器で行われてもよい。任意には、接触は、好ましくは直列に接続された複数の容器で行われてもよく、すなわち、これは、精製される脱水素化生成物部分が、さらなる精製のために1つの容器から次の容器へ受け渡されることを可能にする。
【0256】
活性材料としては、例えば、酸化銅または銅酸化物触媒、任意にはアルミナに担持されたPt、Pd、Ag、V、Cr、Mn、Fe、CoまたはNiの酸化物、任意にはアルミナに担持されたAu/CeO2、ゼオライト、特にはタイプAおよび/またはタイプXのゼオライト、アルミナベースの吸収剤または触媒、例えばSelexsorb(登録商標) COSまたはSelexord(登録商標) CDなど、アルミナ、アルミノケイ酸塩、アルミノリン酸塩またはそれらの混合物を含むモレキュラーシーブ、またはそれらの任意の組合せが挙げられる。活性物質は、国際公開第03/048087号の11頁12行~12頁3行;12頁18行~15頁29行、および/または、17頁21行~21頁2行に記載の吸着剤または吸着剤、および/または、21頁3行~22頁26行に記載のモレキュラーシーブを含み得る。活性物質は、精製触媒、または米国特許出願公開第2010/0331502号明細書、段落[0105]~[0116]に記載の触媒、または、モレキュラーシーブ、または米国特許出願公開第2010/0331502号明細書、段落[0117]~[0119]に記載のモレキュラーシーブを含み得る。活性材料は、精製触媒、または、国際公開第2016/023973号、段落[0061]、[0062]、[0063]、および/または[0064]に記載の触媒を含み得る。
【0257】
精製処理は、欧州特許出願公開第2679656号明細書、段落[0043]~[0082]に記載される精製処理であってもよい。精製処理は、米国特許出願公開第2010/0331502号明細書、段落[0092]~[0119]、および/または段落[0126]、および/または実施例2に記載の精製処理であってもよい。精製処理は、国際公開第2016/023973号、段落[0056]~[0067]に記載された精製処理であってもよい。精製処理は、国際公開第03/048087号の11頁12行~15頁29行、および/または16頁1行~21頁2行、および/または23頁14行~24頁13行、および/または実施例1または実施例2に記載の精製処理であってもよい。
【0258】
典型的には、不純物は、精製処理のあいだに活性材料を不活性化するか、または汚損する。したがって、活性材料は、その精製活性を少なくとも部分的に回復させるために再生され得る。活性材料を再活性化するために適する任意の再生プロセスが使用され得る。例えば、活性材料は、国際公開第2016/023973号、12頁3行~10行に記載のように、または欧州特許出願公開第2679656号明細書、段落[0108]~[0118]に記載のように、または国際公開第03/048087号、24頁14行~25頁32行に記載のように、再生され得る。例えば、CuO触媒は、CuO触媒をH2と接触させることにより再生され得る。CuO2触媒は、CuO2触媒を酸素分子と接触させることによって再生され得る。ゼオライト系モレキュラーシーブは、熱を適用し、およびゼオライト系モレキュラーシーブを例えば窒素流などの不活性ガス流と接触させることにより、再生され得る。
【0259】
精製処理は、少なくとも1つの以下の工程:i)酸素を除去するために、脱水素化生成物の少なくとも一部をCuO触媒と接触させる工程、ii)ジエン/アルキンを水素化によって除去するために、脱水素化生成物の少なくとも一部をH2と接触させる工程、iii)COを酸化によって除去するために、脱水素化生成物の少なくとも一部をCuO2触媒と接触させる工程、またはiv)CO2を除去するために、脱水素化生成物の少なくとも一部をゼオライト系モレキュラーシーブと接触させる工程、を含み得る。任意には、精製処理は、脱水素化生成物の少なくとも一部を例えばSelexorb(登録商標)などの不活性化アルミナ触媒と接触させることにより、例えばCOS、H2S、またはCS2の少なくとも1つなどの二次不純物を除去することを含み得る。
【0260】
本発明の方法は、ポリマーを形成するために、脱水素化生成物の少なくとも一部を重合処理に付すことを含み得る。重合処理に付される脱水素化生成物の部分は、脱水素化プロセスから直接的に、または前述のセクションで説明された精製処理から、得られ得る。任意には、重合処理に付される脱水素化生成物の部分は、前述のセクションで説明された精製処理に部分的に付されていてもよく、および部分的に脱水素化プロセスから直接的に得られていてもよい。
【0261】
上述されるように、製造工程または脱水素化工程において形成された脱水素化生成物中のCO、CO2、およびジエン/アルキンの少ない量により、脱水素化生成物またはその一部を重合前に精製処理に付すことは冗長であり得る。結果的に、本発明の方法は、さらなる精製無しにポリプロピレンを形成するために、脱水素化生成物のプロピレン留分(すなわち、バイオ-プロピレン組成物)を重合処理に付すことを含み得る。
【0262】
重合処理は、溶液重合、気相流動床重合、例えばバルク重合などのスラリー相重合、高圧重合、またはそれらの組み合わせを含み得る。重合処理は、一または複数の重合リアクターにおいて行われ得る。一または複数の重合リアクターの各々が複数の重合ゾーンを含んでいてもよい。重合ゾーンに供給されるフィードの組成は、ゾーン間で異なり得る。
【0263】
例えば、脱水素化生成物の異なる部分が、異なるゾーンに供給されてもよく、および、任意には、コモノマーが重合ゾーンの一または複数に供給されてもよい。重合ゾーンに供給されるコモノマーは、異なる重合ゾーンに対して異なるコモノマーであり得る。重合リアクターは、例えば、連続攪拌槽型リアクター、例えば気相流動層リアクターなどの流動層型リアクター、または水平または垂直配置の攪拌気相型リアクターであってもよい。
【0264】
好ましくは、重合処理は、触媒重合である。重合処理は、特には、ポリマーを形成するために、脱水素化生成物の少なくとも一部を、任意には水素分子の存在下で、重合触媒と接触させることを含み得る。好ましくは、接触は、一または複数の重合リアクターにおいて行われる。
【0265】
重合処理が触媒重合処理である実施形態において、形成されたポリマーの分子量は、使用された重合触媒に依存して、例えば、重合処理中の水素の存在によって、または反応温度を制御することによって、調整され得る。重合処理が触媒重合処理である実施形態において、多分散性は、好ましくは、使用される触媒によって主に制御される。重合処理は、単峰性、二峰性、または多峰性の分子量分布を有するポリマーを形成する重合処理であってもよい。二峰性または多峰性は、1つの反応媒体(すなわち、1つのリアクターまたは重合ゾーン)において二官能性触媒系を使用することによって、または、通常の触媒(すなわち、非二官能性)を用いるが反応媒体を変化させる(すなわち、種々のフィードを用いた複数の重合ゾーンまたは複数の重合リアクターの組み合わせ)ことによって達成され得る。重合処理中に形成されるポリマーの他の特性、例えば極性、不飽和の含有量および/または多分散性は、反応温度、圧力および滞留時間を制御することによって、または所定の位置、例えば重合リアクター内に任意に含まれる一または複数の重合ゾーンにおいて、所定の種類および量のコーおよび/またはターモノマーを重合処理に注入することによって、制御され得る。
【0266】
任意には、重合処理中に形成されるポリマーの密度、弾性率および他の特性は、重合処理にコモノマーまたは複数のモノマー、例えばエチレン(ポリプロピレン製造において)、プロピレン(ポリエチレン製造において)、1-ブテン、1-へキセン(1,5-ヘキサジエンも)、1-オクタン(1,7-オクタジエンも)および1-デセン(1,9-オクタジエンも)または高級αオレフィンまたはα-ωジエンのうちの少なくとも1つなどの組み合わせを導入することによって制御され得る。
【0267】
ある実施形態において、重合処理は、溶液を形成するために、脱水素化生成物の少なくとも一部を水素分子、および任意にはコモノマーとともに、例えばプロパン、プロペンまたはヘキサンなどの希釈剤中に溶解すること、および、ポリマーを形成するためにこの溶液を触媒と接触させることを含むスラリー重合処理であり得る。
【0268】
重合処理は、欧州特許出願公開第2679656号明細書、段落[0090]~[0097]に記載された重合処理であってもよい。重合処理は、米国特許出願公開第2010/0331502号明細書、段落[0050]~[0066]、および/または段落[0123]~[0125]、および/または実施例3に記載の重合処理であってもよい。重合処理は、国際公開第2016/023973号、段落[0006]~[0020]、および/または段落[0024]~[0043]に記載された重合処理であってもよい。方法は、米国特許出願公開第2010/0331502号明細書、段落[0092]~[0119]に記載の精製処理と重合処理との組合せを含んでいてもよい。したがって、ポリプロピレン(PP)、またはそのコポリマーもしくはターポリマーが、重合処理において形成される。例えばホモポリマー、高結晶性ホモポリマー、ランダムコポリマー、インパクトコポリマー、ブロックコ/ターポリマー、ヘテロ相コポリマー、またはそれらの組み合わせなどの種々の密度範囲および製品クラスのポリプロピレンが、プロピレン留分の重合処理において形成され得る。同様に、国際公開第99/24478号、国際公開第99/24479号、または国際公開第00/68315号に記載のプロセス条件および触媒が本発明において使用されてもよい。
【0269】
触媒重合のための重合触媒の例としては、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、メチルアルミノキサン(MAO)、トリ-n-ヘキシルアルミニウムなどのアルミニウムアルキル化合物を、例えば四塩化チタンなどの触媒上のチタンまたはバナジウムサイトを活性化するための助触媒活性剤として利用するZiegler型触媒が挙げられる。アルミニウムアルキル化合物が、反応媒体中の重合毒のスカベンジャーとして追加で使用され得る。
【0270】
本発明により使用され得る好ましい重合触媒は、さらに、参照によりその全体がここに組み込まれている欧州特許出願公開第0591224号明細書、欧州特許出願公開第1028985号明細書に記載されているものである。
【0271】
触媒重合のための重合触媒は、所望される場合またはプロセスによって必要とされる場合、担持されていてもよい。担体材料は、その上に活性部位および任意には内部ドナー、例えば安息香酸塩、フタル酸塩、ジエーテル、またはコハク酸塩が含浸されてもよい、二塩化マグネシウムまたはシリカ担体であり得る。追加で、外部ドナー、例えばp-エトキシ安息香酸エチル(PEEB)、ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)、ジイソプロピルジメトキシシラン(DIPS)、ジイソブチルジメトキシシラン、シクロヘキシルジメトキシメチルシラン(CHMMS)、ジシクロペンチルジメトキシシラン(DPDMS)、または例えばMe(EtO)3Si、Ph(EtO)3Si、Ph2(MeO)2Si、Ph2(EtO)2Si、Ph(EtO)3Siなどのアルコキシシランが重合処理に添加されてもよい。
【0272】
ある実施形態において、重合触媒は、立体修飾剤、例えば、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソブチルイソプロピルジメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、イソブチルメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、および/またはシクロヘキシルエチルメトキシシランであり得る。
【0273】
触媒重合のための重合触媒のさらなる例は、例えばカミンスキー型、組み合わせ型、束縛構造型、および後期遷移金属触媒型などの種々のタイプであるいわゆるシングルサイト触媒系である。
【0274】
重合触媒は、通常、2つのシクロペンタジエニル環またはシクロペンタジエニルに対するモノロバル等価物および環が直鎖および環状両方の種々のアルキル置換基を含むパーフルオロホウ素-芳香族化合物、有機アルミニウム化合物またはメチルアルミノキサンを含む、ジルコニウム、チタンまたはハフニウムのメタロセン錯体を含んでいてもよい。当該環は、架橋基によって互いに連結されていてもよい。代替的には、重合触媒は、チタンまたはジルコニウムのモノシクロペンタジエニル誘導体を含んでもよく、ここでシクロペンタジエニル環の炭素原子の1つが、架橋によって金属原子に追加で連結されている。重合触媒に含まれ得るこれらの錯体は、典型的には、当該錯体をメチルアルミノキサンと反応させることにより、または、非配位性アニオンとイオン性錯体を形成させることにより、重合触媒に変換される。他の錯体、例えばシクロペンタジエニル基4ケチミド錯体、シクロペンタジエニル基4シロキシル錯体、および/または非シクロペンタジエニル基4ホスフィンイミド錯体が、重合触媒の形成のために任意に使用され得る。
【0275】
触媒重合のための重合触媒のさらなるタイプは、例えばシリカ、アルミナ、チタニア、アルミノホスフェート、または酸化クロムおよび酸化ケイ素の混合物(CrO3/SiO2)が活性サイトを作るために使用され得る組み合わせなどの、高い表面積、広口の孔の酸化物担体に担持された六価クロムを含み得るフィリップスタイプ触媒である。
【0276】
重合触媒は、欧州特許出願公開第2679656号明細書、段落[0098]~[0107]に記載された重合触媒であってもよい。重合触媒は、米国特許出願公開第2010/0331502号明細書、段落[0067]~[0091]、および/または実施例1に記載された重合触媒であってもよい。重合触媒は、国際公開第2016/023973号、段落[0045]~[0055]に記載された重合触媒であってもよい。
【0277】
触媒重合処理において形成されるポリマーの特性、例えば分子量、分子量分布、長鎖分岐量、密度、粘度、結晶性、非晶質含有量、シアーシニング挙動、その他のレオロジーパラメータ、例えばコモノマー分布幅指標(CDBI)、コモノマー分布定数(CDC)などの組成分布指標、熱安定性、溶融温度、結晶化温度、メルトフローレート(MFR)およびその他などが、触媒の種類または触媒のタイプ(ハイブリッド型が利用可能であり、および、2つまたはそれ以上の異なる触媒を一または複数のリアクターに供給できるため)、コモノマーの種類、コモノマー含有量、追加のモノマーおよびそれらの種類および量などの選択によって影響を受け得る。
【0278】
重合プロセスの後、形成されたポリマーは、ポリマー材料を形成するためにさらに改質され得る。形成されたポリマーは、一または複数の押出工程またはコンパウンド工程を経て改質されてもよく、ここで任意には追加の成分が添加される。このような追加の成分は、例えば、安定化添加剤、例えばプラストマーまたはエラストマーなどの衝撃改良剤、一般な他のブレンド成分、例えばタルクなどのフィラー、ガラス繊維、炭素繊維、ナノクレーまたは他のナノ材料、カーボンブラック、核剤(重合処理または重合触媒の調製中にin-situで添加することも可能)、紫外線安定剤、顔料、有機過酸化物などの架橋剤または粘結剤、ステアリン酸カルシウムなどの酸捕捉剤、フルオロポリマーなどのポリマー加工助剤などである。反応性押出を介する重合処理の後に、例えばシランおよび/または無水マレイン酸などの追加のコモノマーまたは官能基が、任意には、形成されたポリマーに添加され得る。形成されたポリマーは、重合処理の後、変換におけるさらなる処理工程に付され得る。これらの任意の改良は、化石ベースのポリマー材料、特にはPEおよび/またはPP材料、ならびにこれらのポリマー材料由来の他の材料および成形品の全範囲の、バイオベースである(再生可能な)バージョンの少なくとも部分的な製造を可能にする。
【0279】
上述されるような、重合処理において形成されたポリマー、または形成されたポリマー由来のポリマー材料は、フィルム、シート、繊維、パイプ、プロファイル、ワイヤおよびケーブルのための押出加工、射出成形加工、ホットメルト紡糸、ブロー成形または押出ブロー成形加工、回転成形加工、溶融コーティング、カレンダー加工、成形加工、化学的および/または物理的発泡加工などの複数の加工によって最終部品または製品へと変換または成形され得る。重合処理において形成されたポリマー由来のポリマー材料は、これらの変換プロセスにおいて、化石ベースのポリマー材料の直接の代替物として使用され得る。重合処理において形成されたポリマー由来のポリマー材料は、任意には、他の種類のポリマー、フィラー、添加剤、またはそれらの組み合わせと混合され得、および、任意には、例えば他のポリマー材料、例えば化石ベースのポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、エチレンビニルアルコール、アルミニウムなどとの複合材料または多層構造中に含まれ得る。
【0280】
上述される最終部品または製品は、様々な用途で使用され得る。例えば、該最終部品または製品は、食品および非食品包装、フレキシブル包装、ヒートシール、薄肉包装、透明包装、危険物の包装、洗剤およびパーソナルケア用包装、界面活性剤の包装などを含む包装用途に使用されてもよい。該最終部品または製品は、キャップおよびクロージャー、玩具、ボトル、じょうろ、白物家電、エンジニアリング部品、木箱、カートリッジ、レジャー用品、家庭用品、パネルおよびプロファイル、蓋、靴の中敷、パイプクランプ、車のブーツ/トランクのライニング、ブラシ、コルク、インクカートリッジ、フリッパー、ブラシ、パンチング用コレクタートレイ、シール、ハンドグリップ、ガーデン家具、家庭用品、薄肉射出成形部品、共射出成形部品、食品容器、再利用可能容器、旅行かばん、アイスクリーム容器、乳製品容器、飲料カップ、ハイインパクト容器、高剛性容器、DVDボックスなど消費財用途に使用され得る。該最終部品または製品は、自動車用途、例えば、外装、内装、ボンネット下、バンパー、ボディパネル、トリム、ファシア、ダッシュボード、ドアクラッディング、気候制御または冷却システム、吸気マニホールドまたはバッテリーケース、計器パネルまたはソフトタッチコントロール、エアバッグカバー、ルーフピラーモールディング、フード下ベルトまたはホース、天候ストリップ、防振システム、ロッカーパネルまたはサイドモールディング、計器パネル、構造部品等の部品およびアセンブリなどに使用され得る。該最終部品または製品は、ワイヤおよびケーブル用途、例えば、ACまたはDCの超高、高、中電圧エネルギー伝送および配電用の絶縁、ジャケットまたは半導電性材料、データまたは通信ケーブルまたはジャケット、建築用電線またはケーブル、自動車用電線またはケーブル、光電池封止材などに使用され得る。該最終部品または製品は、多層パイプ、圧力パイプ、ガスパイプ、飲料水パイプ、工業用パイプ、廃水または下水パイプ、屋内配管または暖房、単層または多層の陸上または海上の石油またはガスパイプラインのコーティング、砂なし敷設用圧力パイプ、無掘設パイプ、ライニングおよびリリンング、波型工業用パイプ、継手、メカニカルジョイント圧縮継手、太陽熱吸収材などのパイプ用途に使用され得る。該最終部品または製品は、重荷重袋、ライナー、ごみ袋、キャリアバッグ、農業用フィルム、建築または建設用フィルム、重荷重シュリンクフィルム、照合シュリンクフィルム、微細シュリンクフィルム、食品包装フィルフォームシール(FFS)フィルムまたはバッグ、衛生用品包装フィルム、冷凍フィルム、衛生フィルム、エンボス剥離フィルム、ラミネートフィルム、ラベルフィルム、クリングフィルム、表面保護フィルム、シール層、シリアル包装、シリコン被覆フィルム、ストレッチフードなどのフィルム用途で使用され得る。該最終部品または製品は、不織布または技術用繊維、連続フィラメント、フィラメント糸、ラフィア、テープ、ストラッピングネット、バルク繊維などの繊維用途に使用され得る。該最終部品または製品が使用され得る他の用途としては、例えば、押出コーティング、ホットメルト接着剤、タイ層接着剤、医療用途、ルーフィング&ランプ;防水膜、カーペット、ゴム引き表面、人工芝、マスターバッチ用ベース樹脂およびコンパウンディングなどが挙げられる。
【0281】
実施例
バイオベースの新鮮なフィード
約40wt.-%の飽和C16脂肪酸、約50wt.-%の不飽和C18脂肪酸を含み、約10wt.-%のグリセロール当量を有する植物および動物オイルの混合物を含むトリグリセリドフィードが、漂白により元素不純物を除去するために、初めに前処理された。この後、前処理された原料流(バイオベースの新鮮なフィード原料)が希釈された。この希釈混合物が、水素化処理流出物を製造するために、以下で特定される条件下、水素化脱酸素(HDO)を通して処理された。この水素化処理された流出物が、バイオ-プロパン組成物およびディーゼル範囲のパラフィン系炭化水素を提供するために、分離および精製された。
【0282】
漂白
バイオ再生可能なオイル/脂肪材料が、従来の漂白プロトコルを用いて漂白された。2000ppmのクエン酸、0.2wt.-%の水、および1wt.-%の漂白土が、予熱されたバイオ再生可能なオイル/脂肪材料に添加され、続いて80℃で20分間混合され、減圧を用いて脱水され、および濾過された。漂白されたバイオ再生可能なオイル/脂肪材料中の不純物濃度が以下の表に示されている。
【0283】
【表1】
【0284】
水素化脱酸素-工程(B)
漂白されたバイオ再生可能なオイル/脂肪材料が、水素化処理されたフィードを生成するために、漂白されたバイオ再生可能なオイル/脂肪材料1w部に対して5w部のバイオベースのパラフィン系炭化水素を混合することにより希釈され、DMDS(ジメチルジスルフィド)を用いて20~100wt.-ppmのS(S元素として算出されて)を含むように調整され、金属硫化物触媒を用いて、285℃の温度、約50barのH2圧、および約0.5~1g/g×h-1の空間速度で、水素化脱酸素された。HDO流出物は、約40℃の温度で、反応器圧力で、ガス流および液体流とに分離され、および、パラフィン系炭化水素を得るために、液体流から水が分離され、捨てられた。
【0285】
液体流の異性化および分画
パラフィン系炭化水素が、従来の白金ベースの異性化触媒を用いて、および従来のプロセス条件で、水素化異性化に付された。得られたイソパラフィン系炭化水素材料が、分画に供された。自動車用ディーゼル燃料のEN 590要件を満たすディーゼル範囲の炭化水素材料が、バイオベースの新鮮なフィード材料の約83wt.-%に相当する量で回収された。
【0286】
気体流の精製-工程(D)
プロパンに富んだ気体流が、以下の条件下で、初めにアミン洗浄(工程(D))に付された:
-アミンフロー対ガスフロー、サワーガス1トン当たり5.8t/hのアミン溶液、
-アミン水溶液は、吸収材中のCO2吸収を促進するための400ppmのピペラジンを含む、50wt%のメチルジエチルアミン(MDEA)である、
-4MPaの処理圧力、
-ガス入口温度:約40℃、アミン入口温度:約60℃。
【0287】
得られたスイートガスとその後、水素選択性膜を通過させた(工程(E))。プロパンフィード(これはその後液体形状に圧縮された)を得るためにプロパン生成物が、30bargの昇圧で、および50℃で分離される前に、プロパンが富化された残余のストリームが次いで、水を除去するために、乾燥された(工程(E))。
【0288】
バイオベースの新鮮なフィードから精製されたバイオ-プロパンまでの上述の手順が、グリセロール当量、フィード硫黄レベルを含むフィード組成、HDO温度およびH2圧力、ならびに分離および精製パラメータを変えて、しかしながら毎回本発明の方法にしたがいながら、数回繰り返され、所望の特性を有するバイオ-プロパン組成物を得た。
【0289】
得られたバイオ-プロパン組成物、および以下の脱水素化試験に用いられた本発明バイオ-プロパンサンプルの平均の分析結果が以下の表Aに示されている。
【0290】
【表2】
【0291】
触媒脱水素化
脱水素化試験に使用されたプロパンサンプルは、標準の化石プロパン組成物、参照バイオ-プロパン組成物、および本発明によるバイオ-プロパン組成物を含んでいた。本発明によるバイオ-プロパン組成物は、上述の手順を用いて調製された。参照バイオ-プロパン組成物は、他の同様の手順を用いて調製されたバイオプロパンを代表するものであるが、より低いグリセロール当量をもつバイオ再生可能なオイル/脂肪材料から出発し、HDOステップにおいてデカーブ反応に有利な条件(高温、より低いH2圧を含む)を用いたものであった。
【0292】
当技術分野で既知のSn修飾白金触媒(例えば米国特許出願公開第2003/0191351号明細書に従って調製されたものなど)が、脱水素化実験において使用された。代替的には、例えば米国特許出願公開第2015/259265号明細書に従って調製されたようなものが使用されたCrベースの触媒が使用され得た。
【0293】
実験は、内径2.66cm、および直径4mmの熱電対ポケットを備えた石英固定床リアクターにおいて行われた。リアクターは、3ゾーンの炉中に設置され、およびリアクターの前後のラインおよびバイパスラインは200℃に加熱された。バイオ-プロパン組成物が、内部標準としての追加の5vol-%のN2と共に、ガスボンベからマスフローコントローラーを介してシステムに供給された。液体フィードのために、ガスボンベがN2で加圧され、およびマスフローコントローラーまたはHPLCポンプを用いて圧送された。
【0294】
触媒が、触媒質量の5倍のSiCで希釈された(例えば、5gの触媒に対して25gのSiC)。19gのSiC質量に相当する2cmのSiCの層が、触媒床の上に加えられた。
【0295】
以下の手順が使用された:
1.N2中50%のH2を用いて、550℃で2時間、触媒システムの還元
2.N2フラッシュ、および、オーブン温度の575℃である反応温度への変更
3.575℃での30分の反応
4.N2フラッシュ、および、オーブンを少なくとも30分間600℃である再生温度に変更
5.600℃で15分間、N2中1.5%のO2を用いて再生
6.N2フラッシュ、および、15分以上のオーブン温度の変更。
【0296】
最初のラン(dehy_1)および最後のラン(dehy_4)の間の触媒の失活を評価するために、工程3~6が4回繰り返された。実験全体が、標準偏差を得るために、各セットアップ当たり3回繰り返された。結果が以下の表Cに示されている。
【0297】
脱水素化リアクターへのプロパンが富化したフィード組成物が、以下のように分析された:
・希ガスがマイクロGCで測定された:Varian CP-4900、TCD、チャンネル1(H2、N2、CH4、CO):105℃、キャリヤガス Ar、カラム MS5A、チャンネル2(CO2、C24、C26):80℃、キャリヤガス He、カラム PPU、チャンネル3(C3およびC4化合物:80℃、キャリヤガス He、カラム Al23
・炭化水素組成が以下のGCで測定された:Shimadzu GC2010 Plus、FID、カラム Rt-Alumina BOND/MAPD、プログラム、キャリヤガス He、プログラム。70℃ 2分-4℃/分-140℃-10℃/分-230℃ 9分。
・硫黄化合物が以下の装置で測定された:Agilent 7890B、FPD、カラムGS Gaspro、キャリヤガス He、プログラム:100℃ 2.5分-15℃/分-220℃ 15分。
【0298】
モルフローおよび元素バランスは、以下の式を用いてGCの結果に基づき算出された。
【0299】
ここで、Qは、総量フロー(mol/dm+)、xiは、マイクロGCで測定された化合物iの体積分率、Vmはガスのモル体積(dm3/mol)、niは化合物iのモルフロー(mol/min)、Xiは転換率、Yiは収率である。
【0300】
再生において形成された炭素の量は、ガス分析計の結果を基に算出され、CO2濃度は、以下の式により炭素流に換算して算出された。
【0301】
【0302】
炭素流は、その後測定間隔に対して合計された。
【0303】
【0304】
リアクターへのフィードが、実験を開始する前に常に分析された。追加で、フィードストックが、GC/FIDを用いて別個に、少量の炭化水素化合物について分析された。全ての分析において、プロパン濃度が、100%から他の化合物を減じることによって算出された。恒久的なガスは、μ-GCを用いて分析された。
【0305】
【表3】
【0306】
表Bから理解され得るように、両方のバイオサンプルは、低い硫黄、C4’s、および不飽和の含有量、特に少ないC3H6を示した一方、化石プロパンは、より少ないC5+およびエタンの含有量を示した。本発明品と参考品の主な違いは、後者はCOを含んでおり、プロパンに対してCOおよびCO2のより高い割合を有していたことであった
【0307】
【表4】
【0308】
表Cの脱水素化触媒のコーキング結果からわかるように、参照バイオ-プロパン組成物は、脱水素化触媒上で最も特異的なコークを形成した。高いコーキング傾向は、本発明のバイオ-プロパン組成物と比較してより多いCOおよびCO2の含有量に起因すると推測される。一方、硫黄含有量の高い化石プロパンは、触媒を早く失活させ、両方のバイオ-プロパンと比較して、しかしながら特には本発明のバイオ-プロパンと比較して、著しく低いプロパンのプロピレンへの変換率をもたらした。一般に、触媒の不活性化(すなわち、dehy_1からdehy_4へのより低い変換率)は、同様により低い特異的なコーク値をもたらすことが観察され得る。実際、プロパン変換率を正規化した場合(表Bには示ささず)、本発明サンプルの特異的コーク形成は、化石サンプルよりも優れている。
【0309】
不飽和物(オレフィンおよびジオレフィンなど)およびC5+炭化水素(C5およびそれより重質)の正確な役割は、詳細には分析されなかったが、C3H6の存在を含む化石プロパン中の高い不飽和物含有量は、より速い触媒の不活性化に寄与しているかもしれず、したがって、より低い変換%をもたらしている。不飽和物は反応性が高く、および不要な副反応および二次反応を起こしやすく、これが形成されるコークの例えば構造および組成などに影響を及ぼし得、いわゆるハードコークの形成を導いているのかもしれない。驚くべきことに、バイオ-プロパンのより高いC5+含流量は、変換%をそれほど減少させず、触媒再生のあいだにより容易に除去されるコークの構造/組成が形成を反映している。
図1
図2
【国際調査報告】