(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-07
(54)【発明の名称】亜鉛イオン電池用正極材、その調製方法及び使用
(51)【国際特許分類】
H01M 4/50 20100101AFI20230131BHJP
H01M 10/36 20100101ALI20230131BHJP
C01G 45/00 20060101ALI20230131BHJP
C01G 45/02 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
H01M4/50
H01M10/36 Z
C01G45/00
C01G45/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022534261
(86)(22)【出願日】2020-12-01
(85)【翻訳文提出日】2022-06-27
(86)【国際出願番号】 CN2020133159
(87)【国際公開番号】W WO2021110000
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】201911241432.0
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522222825
【氏名又は名称】リハブ (チンタオ) エナジー テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ルオ、ユンフェン
(72)【発明者】
【氏名】フ、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ルオ、シャオソン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、プ
【テーマコード(参考)】
4G048
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA02
4G048AA08
4G048AB01
4G048AB03
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK02
5H029AL11
5H029AM00
5H029CJ02
5H029HJ00
5H029HJ14
5H050AA19
5H050BA08
5H050CA05
5H050CB13
5H050GA02
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本開示は、亜鉛イオン電池用正極材、その調製方法及び使用を提供する。亜鉛イオン電池用正極材の調製方法は、炭酸マンガンに対して焼結処理を実行し、亜鉛イオン電池用正極材を取得するステップを含む。該方法は、炭酸マンガンを熱処理することにより、高性能の亜鉛イオン電池用正極材を取得することができ、且つ原料コストが低く、調製プロセスが簡単であり、工業生産に適する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸マンガンに対して焼結処理を実行し、亜鉛イオン電池用正極材を取得するステップを含む、
ことを特徴とする亜鉛イオン電池用正極材の調製方法。
【請求項2】
前記焼結処理を150~500℃で実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記焼結処理の実行時間は、0.5~20hである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記焼結処理の実行時間は、2~8hである、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法によって調製される、
ことを特徴とする亜鉛イオン電池用正極材。
【請求項6】
焼結後炭酸マンガン、焼結後二酸化マンガン及び焼結後三酸化二マンガンの内の少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項5に記載の亜鉛イオン電池用正極材。
【請求項7】
前記亜鉛イオン電池用正極材は、焼結後炭酸マンガン、焼結後二酸化マンガン又は焼結後三酸化二マンガンである、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の亜鉛イオン電池用正極材。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか1項に記載の亜鉛イオン電池用正極材を含む、
ことを特徴とする亜鉛イオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本開示は、2019年12月06日に中国国家知識産権局に提出された、特許出願番号が201911241432.0、出願名称が「亜鉛イオン電池用正極材、その調製方法及び使用」である中国特許出願の優先権を主張し、そのすべての内容は援用により本開示に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本開示は亜鉛イオン電池分野に関し、具体的に、本開示は亜鉛イオン電池用正極材、その調製方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0003】
亜鉛イオン電池は、近年開発された新型二次水系電池であり、高エネルギー密度、高電力密度、効率的で安全な放電過程、無毒で安価な電池材料、簡単な調製プロセス等という利点があり、大規模なエネルギー貯蔵等の分野で優れた使用価値及び開発の見通しがある。
【0004】
報告されている水系亜鉛イオン電池用正極材の中で、ほとんどマンガン酸リチウムと二酸化マンガンとが水系亜鉛イオン電池の正極材として使用されている。従来の水系亜鉛イオン電池における正極材である二酸化マンガンは、ほとんど水熱法、共沈殿法及び過マンガン酸カリウムを酸化剤として使用する液相法等の調製方法によって合成される。しかしながら、従来のマンガン酸リチウム正極材の比容量は低く、且つ原材料のコストが高い。水系亜鉛イオン電池二酸化マンガン正極材に用いられる水熱法、共沈殿法及び過マンガン酸カリウムを酸化剤として使用する液相法等の合成方法の調製プロセスが複雑であり、収率が低く、且つ原料のコストが高く、大規模な工業生産に役に立たない。
【0005】
従来の亜鉛イオン電池用正極材及びその調製方法について、さらに研究する必要があることが分かる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、関連技術における技術的問題の1つを少なくともある程度解決することを主旨とする。したがって、本開示の目的は、亜鉛イオン電池用正極材、その調製方法及び使用を提供することである。亜鉛イオン電池用正極材の調製方法は、炭酸マンガンを熱処理することにより、高性能の亜鉛イオン電池用正極材を取得することができ、且つ原料コストが低く、調製プロセスが簡単であり、工業生産に適する。該方法は、炭酸マンガンに対して焼結処理を実行し、亜鉛イオン電池用正極材を取得するステップを含む。該方法は異なる温度範囲で炭酸マンガンに対して焼結処理を実行し、得られた焼結製品はいずれも水系亜鉛イオン電池の正極材として使用されることができる。従来の水熱法、過マンガン酸カリウムによる酸化法等の方法によって調製して得られた二酸化マンガン正極材と比べて、本開示による方法は、原料コストがより低く、調製プロセスがより簡単であり、且つ製品はより優れた電気化学的性能を有し、比容量がより高い。
【0007】
また、本開示の上記実施例による亜鉛イオン電池用正極材の調製方法は、以下のような付加的な技術的特徴を備えてもよい。
【0008】
本開示のいくつかの実施例において、前記焼結処理は150~500℃で実行する。
【0009】
本開示のいくつかの実施例において、前記焼結処理の実行時間は0.5~20hである。
【0010】
本開示のいくつかの実施例において、前記焼結処理の実行時間は2~8hである。
【0011】
本開示の他の態様では、本開示は亜鉛イオン電池用正極材を提供する。本開示の実施例によれば、該亜鉛イオン電池用正極材は上記実施例の亜鉛イオン電池用正極材の調製方法によって調製されるものである。これにより、該亜鉛イオン電池用正極材は従来の水熱法、過マンガン酸カリウムによる酸化法等の方法によって調製して得られた二酸化マンガン正極材と比べて、より優れた電気化学的性能、より高い比容量を有し、且つ原料コストが低く、調製プロセスが簡単である。
【0012】
また、本開示の上記実施例による亜鉛イオン電池用正極材の調製方法は、以下のような付加的な技術的特徴を備えてもよい。
【0013】
本開示のいくつかの実施例において、前記亜鉛イオン電池用正極材は、焼結後炭酸マンガン、焼結後二酸化マンガン及び焼結後三酸化二マンガンの内の少なくとも1つを含む。
【0014】
本開示のいくつかの実施例において、前記亜鉛イオン電池用正極材は、焼結後炭酸マンガン、焼結後二酸化マンガン又は焼結後三酸化二マンガンである。
【0015】
本開示の別の態様では、本開示は亜鉛イオン電池を提供する。本開示の実施例によれば、該亜鉛イオン電池は上記実施例の亜鉛イオン電池用正極材をを備える。これにより、該亜鉛イオン電池は、以上で亜鉛イオン電池用正極材について記載されているすべての特徴及び利点を有し、ここで一々に繰り返さない。要するに、該亜鉛イオン電池は優れた容量及びサイクリング性能を備える。
【0016】
本開示の付加的な態様と利点は、部分的に以下の説明から示され、部分的に以下の説明から明らかになるか、又は本開示の実践によって了解される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本開示の上記及び/又は付加的な態様と利点とは、以下の図面を組み合わせた実施例の説明から明らかになり、容易に理解される。
【0018】
【
図1】実施例1~4において調製された亜鉛イオン電池用正極材のXRDテスト結果である。
【
図2】実施例1~4において調製された亜鉛イオン電池用正極材で作製した亜鉛イオン電池の電流密度が10mA/gである条件下でのサイクリング性能テスト結果である。
【
図3】実施例1~4において調製された亜鉛イオン電池用正極材で作製した亜鉛イオン電池の電流密度が50mA/gである条件下でのサイクリング性能テスト結果である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施形態を詳細に説明する。以下で説明される実施形態は例示的なものであり、本開示を説明するためにのみ使用され、本開示を制限するものとして理解されるべきではない。実施形態に具体的な技術又は条件が示されていない場合、当該分野の文献に記載されている技術又は条件に従うか、製品の仕様書に従って実行する。使用される試薬又は器具はメーカーが示されていない場合、すべて市場から入手できる従来の製品である。
【0020】
(亜鉛イオン電池用正極材の調製方法)
本開示の一態様では、本開示は亜鉛イオン電池用正極材の調製方法を提供する。本開示の実施形態によれば、該方法は、炭酸マンガンに対して焼結処理を実行し、亜鉛イオン電池用正極材を取得するステップを含む。該方法は異なる温度範囲で炭酸マンガンに対して焼結処理を実行し、得られた焼結製品はいずれも水系亜鉛イオン電池の正極材として使用されることができる。従来の水熱法、過マンガン酸カリウムによる酸化法等の方法によって調製して得られた二酸化マンガン正極材と比べて、本開示による方法は、原料コストがより低く、調製プロセスがより簡単であり、且つ製品はより優れた電気化学的性能を有し、比容量がより高い。
【0021】
発明者は、研究の結果、焼結温度の上昇に伴い、炭酸マンガン材料の構造が相転移し、焼結処理の温度と処理時間を制御することにより、材料構造の相転移を制御することができ、これにより、電気化学的性能に優れた新型正極材を取得する。
【0022】
本開示のいくつかの実施形態によれば、上記焼結処理は150~500℃で実行し、具体的に、焼結温度は150℃、180℃、200℃、230℃、250℃、290℃、320℃、340℃、370℃、420℃、460℃、500℃等であってもよい。上記温度条件下で炭酸マンガンに対して焼結処理を実行することにより、調製された正極材製品の性能を顕著に向上させることができる。
【0023】
本開示のいくつかの実施例によれば、焼結処理は150~320℃で実行し、具体的に、焼結温度は150℃、180℃、200℃、230℃、250℃、290℃、320℃等であってもよい。これにより、MnCO3焼結製品は依然としてMnCO3相であるが、焼結熱処理によって、焼結製品の性能は熱処理なしのMnCO3材料よりも顕著に優れる。
【0024】
本開示のいくつかの実施形態によれば、焼結処理は320~360℃で実行し、具体的に、焼結温度は320℃、330℃、340℃、350℃、360℃等であってもよい。これにより、MnCO3焼結製品はMnO2相が支配的である。発明者は、研究の結果、正極材で作製した亜鉛イオン電池として、MnCO3の焼結調製によるMnO2は水熱法の調製によるMnO2及び市販の電解MnO2よりも優れた比容量を有する。
【0025】
本開示のいくつかの実施形態によれば、焼結処理は360~500℃で実行し、具体的に、焼結温度は360℃、400℃、420℃、450℃、470℃、500℃等であってもよい。これにより、MnCO3焼結製品はMn2O3である。
【0026】
本開示のいくつかの実施形態によれば、前記焼結処理の時間は0.5~20h、例えば0.5h、1h、2h、5h、8h、10h、15h、20h等であってもよい。これにより、調製された正極材製品の性能をさらに向上させることができる。
【0027】
本開示のいくつかの実施形態によれば、焼結処理の実行時間は2~8h、例えば2h、3h、4h、5h、6h、7h、8h等であってもよい。これにより、調製された正極材製品の性能をさらに向上させることができる。
【0028】
本開示のいくつかの実施形態によれば、上記亜鉛イオン電池用正極材の調製方法は、焼結処理が完了した後に、焼結製品を研磨するステップをさらに含む。これにより、焼結製品を目標粒度に研磨することができ、具体的な目標粒度は特に限定されず、当業者は、実際の必要に応じて選択することができる。
【0029】
(亜鉛イオン電池用正極材)
本開示の他の態様では、本開示は亜鉛イオン電池用正極材を提供する。本開示の実施形態によれば、該亜鉛イオン電池用正極材は、上記実施形態の亜鉛イオン電池用正極材の調製方法によって調製されたものである。これにより、該亜鉛イオン電池用正極材は従来の水熱法、過マンガン酸カリウムによる酸化法等の方法によって調製して得られた二酸化マンガン正極材と比べて、より優れた電気化学的性能、より高い比容量を有し、且つ原料コストが低く、調製プロセスが簡単である。
【0030】
本開示のいくつかの実施形態によれば、上記亜鉛イオン電池用正極材は、焼結後炭酸マンガン、焼結後二酸化マンガン及び焼結後三酸化二マンガンの内の少なくとも1つを含む。具体的に、焼結後炭酸マンガンは市販の炭酸マンガンに対して150~350℃で焼結処理を実行することによって調製されることができ、焼結後二酸化マンガンは市販の炭酸マンガンに対して320~360℃で焼結処理を実行することによって調製されることができ、焼結後三酸化二マンガンは市販の炭酸マンガンに対して360~500℃で焼結処理を実行することによって調製されることができる。
【0031】
本開示のいくつかの実施形態によれば、上記亜鉛イオン電池用正極材は、焼結後炭酸マンガン、焼結後二酸化マンガン又は焼結後三酸化二マンガンである。
【0032】
(亜鉛イオン電池)
本開示の別の態様では、本開示は亜鉛イオン電池を提供する。本開示の実施形態によれば、該亜鉛イオン電池は上記実施形態の亜鉛イオン電池用正極材を含む。これにより、該亜鉛イオン電池は、以上で亜鉛イオン電池用正極材について記載されているすべての特徴及び利点を有し、ここで一々に繰り返さない。要するに、該亜鉛イオン電池は優れた容量及びサイクリング性能を備える。
【0033】
本開示の実施形態によれば、上記亜鉛イオン電池は正極シート、セパレータ、負極シート及び電解液を含む。具体的に、正極シートは、上記実施形態の亜鉛イオン電池用正極材、及び当該分野で一般的に見られる導電剤、結合剤等の補助材料を含む。負極シートは亜鉛箔又は銅メッシュ集電体をスラリーして調製した亜鉛粉末負極であってもよい。セパレータの具体的な種類は特に制限されず、電解液には硫酸亜鉛が支配的である水溶液が用いられる。
【0034】
以下、具体的な実施例を参照して本開示を説明し、説明する必要があることとして、これらの実施例は例示に過ぎず、任意の方式で本開示を制限するものではない。
【0035】
(実施例1)
(1)炭酸マンガンを原料として、箱型炉に入れて熱処理し、焼結温度が320℃であり、焼結時間が4hである。
【0036】
(2)室温まで冷却した後、材料を取り出して、瑪瑙乳鉢で研磨し、正極材を取得し、XRDによって検出された結果、該材料はMnCO3である。
【0037】
(3)電池正極シートの製造では、正極材:アセチレンブラック:PVDF=7:2:1の比率でホモジナイズし、その後、均一に攪拌された正極スラリーを導電性PEフィルムに均一に塗布し、オーブンに入れて真空乾燥し、乾燥温度が60℃であり、乾燥時間が10hである。
【0038】
(4)電池の組み立てでは、正極は上記ステップによって調製された正極材であり、負極は亜鉛箔であり、セパレータは、吸着性グラスファイバーフェルトセパレータ(AGMセパレータ)であり、電解液は、濃度が1.8mol/Lの硫酸亜鉛水溶液であり、
AGMセパレータを液体電解液に十分に浸漬した後に、上記正極材、負極Zn箔を組み合わせて、電池を組み立てる。
【0039】
(5)電池テストでは、
25℃の環境下で亜鉛イオン電池が10mA/g電流密度での比容量は277mA・h/gである。
【0040】
25℃の環境下で亜鉛イオン電池が50mA/g電流密度での比容量は173mA・h/gである。
【0041】
正極材のXRDテスト結果は
図1に示され、電池のサイクリング性能は
図2及び
図3に示される。
【0042】
(実施例2)
実施例1とほぼ同じ方法によって正極材を調製し、電池を製造してテストし、相違点は、焼結温度が340℃であり、XRDによって検出された結果、得られた正極材はMnO2であることである。
【0043】
電池テストでは、25℃の環境下で亜鉛イオン電池が10mA/g電流密度での比容量は282mA・h/gである。
【0044】
25℃の環境下で亜鉛イオン電池が50mA/g電流密度での比容量は187mA・h/gである。
【0045】
正極材のXRDテスト結果は
図1に示され、電池のサイクリング性能は
図2及び
図3に示される。
【0046】
(実施例3)
実施例1とほぼ同じ方法によって正極材を調製し、電池を製造してテストし、相違点は、焼結温度が370℃であり、XRDによって検出された結果、得られた正極材はMn2O3であることである。
【0047】
電池テストでは、25℃の環境下で亜鉛イオン電池が10mA/g電流密度での比容量は135mA・h/gである。
【0048】
25℃の環境下で亜鉛イオン電池が50mA/g電流密度での比容量は96mA・h/gである。
【0049】
正極材のXRDテスト結果は
図1に示され、電池のサイクリング性能は
図2及び
図3に示される。
【0050】
(実施例4)
実施例1とほぼ同じ方法によって正極材を調製し、電池を製造してテストし、相違点は、焼結温度が420℃であり、XRDによって検出された結果、得られた正極材はMn2O3であることである。
【0051】
電池テストでは、25℃の環境下で亜鉛イオン電池が10mA/g電流密度での比容量は110mA・h/gである。
【0052】
25℃の環境下で亜鉛イオン電池が50mA/g電流密度での比容量は95mA・h/gである。
【0053】
正極材のXRDテスト結果は
図1に示され、電池のサイクリング性能は
図2及び
図3に示される。
【0054】
(比較例1)
熱処理なしの市販のMnCO3を正極材として、実施例1と同じ方法に従って亜鉛イオン電池を製造してテストする。
【0055】
25℃の環境下で亜鉛イオン電池が10mA/g電流密度での比容量は85mA・h/gである。
【0056】
25℃の環境下で亜鉛イオン電池が50mA/g電流密度での比容量は73mA・h/gである。
【0057】
テスト結果から示すように、実施例1における熱処理されたMnCO3材料と比べて、熱処理なしのMnCO3で製造された亜鉛イオン電池の比容量が顕著に低く、これは、焼結処理によりMnCO3の結晶化度が低下し、さらに、マンガンイオンの抽出と挿入とが容易になり、これにより、より優れた比容量があるからであると考えられる。
【0058】
(比較例2)
1.7384gの過マンガン酸カリウム(0.011mol)と0.7437gの硫酸マンガン一水和物(0.0044mol)とを秤量し、80mLの脱イオン水に溶解し、2h磁気攪拌して均一な溶液を形成し、次に、該溶液を容積が100mLのステンレス鋼水熱反応器に移し、160℃で12h保持する。次に、生成物を真空濾過し、脱イオン水で洗浄し、60℃のオーブンで8h乾燥させ、MnO2正極材を取得する。該正極材に対して、実施例1と同じ方法に従って亜鉛イオン電池を製造してテストする。
【0059】
25℃の環境下で亜鉛イオン電池が10mA/g電流密度での比容量は156mA・h/gである。
【0060】
25℃の環境下で亜鉛イオン電池が50mA/g電流密度での比容量は120mA・h/gである。
【0061】
テスト結果から示すように、実施例2における焼結処理により調製されたMnO2材料と比べて、比較例2における水熱器によって調製されたMnO2材料で製造された亜鉛イオン電池の比容量が顕著に低下する。
【0062】
(比較例3)
市販の電解MnO2を正極材として、実施例1と同じ方法に従って亜鉛イオン電池を製造してテストする。
【0063】
25℃の環境下で亜鉛イオン電池が10mA/g電流密度での比容量は78mA・h/gである。
【0064】
25℃の環境下で亜鉛イオン電池が50mA/g電流密度での比容量は62mA・h/gである。
【0065】
テスト結果から示すように、実施例2における焼結処理により調製されたMnO2材料と比べて、比較例3における市販の電解MnO2で製造された亜鉛イオン電池の比容量が顕著に低下する。
【0066】
本明細書の説明において、「一実施形態」、「いくつかの実施形態」、「実施例」、「具体的な実施例」、又は「いくつかの実施例」という参照用語などの説明は、該実施形態又は実施例を組み合わせて説明した具体的な特徴、構造、材料又は特点が本開示の少なくとも1つの実施形態又は実施例に含まれる。本明細書において、上記の用語の例示的な叙述は必ずしも同じ実施形態又は実施例を指す必要がない。さらに、説明される具体的な特徴、構造、材料又は特点は任意の1つ又は複数の実施形態又は実施例において適切な方式で結合することができる。なお、矛盾がない場合、当業者は、本明細書に記載されている異なる実施形態又は実施例及び異なる実施形態又は実施例の特徴を結合及び組み合わせることができる。
【0067】
本開示の実施形態を以上で示し、説明したが、理解できることとして、上記実施形態は例示的なものであり、本開示を限定するものとして理解されるべきではなく、当業者は、本開示の範囲内で上記実施形態に対して変化、修正、置換及び変形を行うことができる。
【0068】
(付記)
(付記1)
炭酸マンガンに対して焼結処理を実行し、亜鉛イオン電池用正極材を取得するステップを含む、
ことを特徴とする亜鉛イオン電池用正極材の調製方法。
【0069】
(付記2)
前記焼結処理を150~500℃で実行する、
ことを特徴とする付記1に記載の方法。
【0070】
(付記3)
前記焼結処理の実行時間は、0.5~20hである、
ことを特徴とする付記1又は2に記載の方法。
【0071】
(付記4)
前記焼結処理の実行時間は、2~8hである、
ことを特徴とする付記1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0072】
(付記5)
付記1~4のいずれか1つに記載の方法によって調製される、
ことを特徴とする亜鉛イオン電池用正極材。
【0073】
(付記6)
焼結後炭酸マンガン、焼結後二酸化マンガン及び焼結後三酸化二マンガンの内の少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする付記5に記載の亜鉛イオン電池用正極材。
【0074】
(付記7)
前記亜鉛イオン電池用正極材は、焼結後炭酸マンガン、焼結後二酸化マンガン又は焼結後三酸化二マンガンである、
ことを特徴とする付記5又は6に記載の亜鉛イオン電池用正極材。
【0075】
(付記8)
付記5~7のいずれか1つに記載の亜鉛イオン電池用正極材を含む、
ことを特徴とする亜鉛イオン電池。
【国際調査報告】