(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-07
(54)【発明の名称】耐熱性及びテープ付着性に優れた電気亜鉛めっき鋼板用コーティング組成物、これを用いて表面処理された鋼板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 175/04 20060101AFI20230131BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20230131BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230131BHJP
C09D 183/06 20060101ALI20230131BHJP
C09D 133/00 20060101ALI20230131BHJP
C23C 28/00 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
C09D175/04
C09D5/02
C09D7/61
C09D183/06
C09D133/00
C23C28/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022534308
(86)(22)【出願日】2020-11-25
(85)【翻訳文提出日】2022-06-06
(86)【国際出願番号】 KR2020016788
(87)【国際公開番号】W WO2021118114
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】10-2019-0165438
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(71)【出願人】
【識別番号】513243815
【氏名又は名称】ノル コイル コーティングズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ジョ、 デュ-フワン
(72)【発明者】
【氏名】バン、 チャン-ソク
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ガ-ビョン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、 ウク-ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】カン、 キュン-ソ
【テーマコード(参考)】
4J038
4K044
【Fターム(参考)】
4J038CG121
4J038DG001
4J038DL052
4J038HA446
4J038JC22
4J038JC32
4J038JC38
4J038KA04
4J038KA05
4J038KA06
4J038KA09
4J038MA10
4J038NA04
4J038NA11
4J038PA19
4J038PB06
4J038PC02
4K044AA06
4K044AB02
4K044BA10
4K044BA11
4K044BA14
4K044BA21
4K044BB03
4K044BC02
4K044BC11
4K044CA18
4K044CA53
(57)【要約】
本発明は、優れた耐熱性、耐腐食性、耐化学性はもちろん、シャシ(chassis)に用いられるテープ付着性に優れた電気亜鉛めっき鋼板用コーティング組成物を提供するものであり、詳細には、本発明はシラン;シリカゾル;ポリウレタン樹脂、アクリル系エマルション樹脂またはこれらの混合物;腐食防止用添加剤;及び水を含み、上記シランは、4官能シラン及び3官能シランを含む、電気亜鉛めっき鋼板用コーティング組成物、これを用いて表面処理された鋼板及びその製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラン;
シリカゾル;
ポリウレタン樹脂、アクリル系エマルション樹脂またはこれらの混合物;
腐食防止用添加剤;及び
水を含み、
前記シランは、4官能シラン及び3官能シランを含む、電気亜鉛めっき鋼板用コーティング組成物。
【請求項2】
前記電気亜鉛めっき鋼板用コーティング組成物の総重量を基準に、
前記シラン5~20重量%;
前記シリカゾル2~10重量%;
前記ポリウレタン樹脂、アクリル系エマルション樹脂またはこれらの混合物10~50重量%;
前記腐食防止用添加剤0.1~2.0重量%;及び
残部の水を含む、請求項1に記載の電気亜鉛めっき鋼板用コーティング組成物。
【請求項3】
前記シランは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、及び3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-ウルレイドプロピルアルコキシシラン(3-Ureidopropyltrialkoxysilane)、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(3-Isocynatepropyltriethoxy silane)、及びトリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(Tris-(trimethoxysilylpropyl)isocyanurate)からなる群から選択される一つ以上である、請求項1に記載の電気亜鉛めっき鋼板用コーティング組成物。
【請求項4】
前記3官能シランの含有量は、4官能シランの含有量より多い、請求項1に記載の電気亜鉛めっき鋼板用コーティング組成物。
【請求項5】
前記シリカゾルは、ナノサイズシリカが水分散されたシリカゾルである、請求項1に記載の電気亜鉛めっき鋼板用コーティング組成物。
【請求項6】
前記シリカゾルは酸性シリカゾルである、請求項1に記載の電気亜鉛めっき鋼板用コーティング組成物。
【請求項7】
前記ポリウレタン樹脂またはアクリル系エマルション樹脂は、カチオン系またはノニオン系である、請求項1に記載の電気亜鉛めっき鋼板用コーティング組成物。
【請求項8】
前記ポリウレタン樹脂のNCO%は1~5%である、請求項1に記載の電気亜鉛めっき鋼板用コーティング組成物。
【請求項9】
前記腐食防止用添加剤は、Al、Ti、Mo、V、Mn、Mg、P及びZrからなる群から選択される一つ以上の金属の塩である、請求項1に記載の電気亜鉛めっき鋼板用コーティング組成物。
【請求項10】
電気亜鉛めっき鋼板;及び
前記鋼板上に請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物がコーティング及び硬化して形成されたコーティング層を含む、電気亜鉛めっき鋼板。
【請求項11】
電気亜鉛めっき鋼板の一面に請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物をコーティングする段階を含む、電気亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項12】
前記コーティングする段階後に150~180℃の温度で硬化させる段階をさらに含む、請求項11に記載の電気亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性及びテープ付着性に優れた電気亜鉛めっき鋼板用コーティング組成物、これを用いて表面処理された鋼板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気亜鉛めっき鋼板は、映像家電のシャシ(chassis)及び家電製品の外板材として多く用いられている。従来には、映像家電シャシのプレス加工後、電線及びその他の付属品の固定のために、ボルトを用いて部品をシャシに固定する方式が行われてきたが、最近では、工程の単純化及び効率化のために、シャシに部品を固定する方式が両面テープを用いる方式にほとんど切り替えられている実情である。
【0003】
一方、現在まで電気亜鉛めっき鋼板の表面処理は、酸(acid)値が高いポリオレフィン樹脂または水分散型ウレタン樹脂とともにシリカを用いており、このような方式の表面処理剤は、製造上及び使用上の利便性よって広く用いられてきた。
【0004】
しかし、酸値が高いポリオレフィン樹脂または水分散型ウレタン樹脂は、シャシ固定に用いられる両面テープとの付着性が良好でないという欠点があり、電気亜鉛めっき鋼板の上塗り塗装後の乾燥のために250℃以上の熱処理を行う過程において、塗装されていない部分の耐熱性が低くて、黄変が発生するという問題点がある。
【0005】
例えば、韓国公開特許第2010-0026125号のように、接着テープを用いて鋼板を接着する技術が研究されているが、鋼板のコーティング層自体のテープ付着性を向上させた技術については研究が不十分な実情にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、優れた耐熱性、耐腐食性、耐化学性はもちろん、シャシ(chassis)に用いられるテープ付着性に優れた電気亜鉛めっき鋼板用コーティング組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によると、本発明はシラン;シリカゾル;ポリウレタン樹脂、アクリル系エマルション樹脂またはこれらの混合物;腐食防止用添加剤;及び水を含み、上記シランは、4官能シラン及び3官能シランを含む、電気亜鉛めっき鋼板用コーティング組成物を提供する。
【0008】
本発明の他の一態様によると、本発明は電気亜鉛めっき鋼板;及び上記鋼板上に、本発明の電気亜鉛めっき鋼板用コーティング組成物がコーティング及び硬化して形成されたコーティング層を含む電気亜鉛めっき鋼板を提供する。
【0009】
本発明のまた他の一態様によると、本発明は、電気亜鉛めっき鋼板の一面に本発明の電気亜鉛めっき鋼板用コーティング組成物をコーティングする段階を含む、電気亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電気亜鉛めっき鋼板用コーティング組成物は、鋼板の表面に形成されためっき層との密着性に優れ、さらに耐熱性、耐腐食性及び耐化学性はもちろん、シャシ(chassis)に用いられるテープ付着性に優れ、また数回のコーティング層形成及び乾燥工程なしに1回のコーティング層形成及び乾燥によって上記のような特性が与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例及び比較例の耐熱性の評価結果に対するグラフである。
【
図2】実施例及び比較例のテープ付着性の評価結果に対するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付された図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。しかしながら、本発明の実施形態は、様々な形態に変更することができ、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0013】
本発明は、優れた耐熱性、耐腐食性、耐化学性はもちろん、シャシ(chassis)に用いられるテープに対する付着性に優れた電気亜鉛めっき鋼板用コーティング組成物を提供するものである。
【0014】
詳細には、本発明はシラン;シリカゾル;ポリウレタン樹脂、アクリル系エマルション樹脂またはこれらの混合物;腐食防止用添加剤;及び水を含み、上記シランは、4官能シラン及び3官能シランを含む、電気亜鉛めっき鋼板用コーティング組成物を提供するものである。
【0015】
より詳細には、本発明は、電気亜鉛めっき鋼板用コーティング組成物の総重量を基準に、シラン5~20重量%;シリカゾル2~10重量%;ポリウレタン樹脂、アクリル系エマルション樹脂またはこれらの混合物10~50重量%;腐食防止用添加剤0.1~2.0重量%;及び残部の水を含む、電気亜鉛めっき鋼板用コーティング組成物を提供する。
【0016】
上記シランは、鋼板とシリカ、またはシリカ間を結合させる役割を果たし、鋼板上に形成されたコーティング層のテープ付着性を高める役割を果たす。上記シランは、電気亜鉛めっき鋼板用コーティング組成物の総重量を基準に5~20重量%含まれ、5重量%未満の場合には、コーティング層の耐熱性、耐溶剤性、耐化学性及びテープ付着性などの全体物性が低下し、20重量%以上添加すると、コーティング層の硬度が上昇してコーティング層の表面にクラックが発生するため、耐食性及び加工部耐食性などが脆弱になる。
【0017】
さらに、上記シランは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、及び3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-ウルレイドプロピルアルコキシシラン(3-Ureidopropyltrialkoxysilane)、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(3-Isocynatepropyltriethoxy silane)、及びトリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(Tris-(trimethoxysilylpropyl)isocyanurate)からなる群から選択される1つ以上を用いることができるが、これに制限されるものではなく、2つ以上を用いる場合には、2つ以上のシランが加水分解縮合物であることができる。
【0018】
好ましくは、上記テープ付着性の向上のためには、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、ウレイド基のシランを1つまたは2つ以上混合して用いることが好ましく、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、及び3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-ウルレイドプロピルアルコキシシラン(3-Ureidopropyltrialkoxysilane)、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(3-Isocynatepropyltriethoxy silane)、及びトリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(Tris-(trimethoxysilylpropyl)isocyanurate)からなる群から2つ以上のシランを用いてテープ付着性を向上させることができる。
【0019】
さらに、本発明のシランは、4官能シラン及び3官能シランを混合して用いることが好ましい。4官能シランのみを用いてコーティング層を形成する場合、シランの有機官能基が存在せず、テープ付着性が不良となり、さらにコーティング層の硬度が上昇して最終コーティング層が割れやすい。また、溶液の分子量が極大化して溶液の安定性が劣るという問題が生じることがある。一方、3官能シランのみを用いると、乾燥速度及び後硬化速度が顕著に劣り、これによってロールコーティング時にロールに組成物が付着する現象が発生する。その結果、スタッキング(Stacking)時にブロッキング現象が発生しやすい。
【0020】
但し、上記4官能シランと3官能シランを混合して用いる場合、3官能シランの含有量が4官能シランの含有量より多いことが好ましい。4官能シランの含有量が3官能シランより多い場合、有機官能基が少なくなってテープ付着性が不良しやすくなるためである。
【0021】
上記3官能シランは、X-Si-(OR)3の構造式を有することができ(ここで、Xはビニル基(Vinyl)、エポキシ基(Epoxy)、アミノ基(Amino)、メタクリロキシ基(Methacryloxy)、またはメルカプト基(Mercapto)のいずれか一つであることができ、Rは水素、メチル(Methyl)、エチル(Ethyl)、またはプロピル(Propyl)のいずれか一つであることができる)、上記構造式において、X基はコーティング層の樹脂と有機成分との化学結合を誘導してコーティング層の付着性及びテープ付着性を向上させる役割を果たすことができ、R基は無機成分との結合を促進させる役割を果たすことができる。
【0022】
一方、上記シリカゾルは、鋼板の耐食性及び上記コーティング組成物の安定性を強化させるために用いられる。上記シリカゾルは、電気亜鉛めっき鋼板用コーティング組成物の総重量を基準に2~10重量%用いることができ、2重量%未満の場合には、上記組成物の耐食性及びコーティング組成物の安定性が低下し、10重量%を超えると、上記組成物によって形成されるコーティング層の耐化学性及び加工性が低下して、素材加工時の脱脂工程でコーティング層の脱膜などの問題が発生しやすく、鋼板の加工時にコーティング層が割れるという問題が発生する可能性がある。
【0023】
このとき、上記シリカゾルは、ナノサイズシリカが水分散したシリカゾルであることができ、ナノサイズのシリカを用いると、溶液の安定性、最終形成されたコーティング層の耐食性及びコーティング層の耐スクラッチ性が向上することができ、例えば、平均粒径が5~20nmであるナノシリカを用いることができる。
【0024】
さらに、上記シリカゾルは酸性のシリカゾルであることができ、上記シリカゾルが塩基性である場合には、シランの加水分解縮合反応によるゾル-ゲル反応が進行しにくいという問題が発生するおそれがある。
【0025】
このとき、シランは低温の酸性状態で次のように結晶化及び縮合反応が進行される。
【化1】
【0026】
詳細には、上記(1)のように酸性雰囲気(pH<2.5)でアルコキシ基の酸素がカチオンに帯電した粒子[H
3O]
+を攻撃する。
【化2】
【0027】
これは、上記(2)のような反応式で表すことができ、その後には、下記(3)のように縮合反応が起こる。
【化3】
【0028】
上記(2)及び(3)の反応のようにシランの縮合反応は、2段階のSn2反応に進行され、加水分解反応が縮合反応より速く起きて順に反応が行われる。したがって、本発明では、シランの加水分解及び縮合反応のために、酸性シリカゾルを用いることが好ましい。
【0029】
一方、本発明のポリウレタン樹脂、アクリル系エマルション樹脂またはこれらの混合物は水分散したものであることができ、これにより鋼板の耐化学性、耐腐食性及び表面再コーティング性を付与することができ、水溶液の貯蔵安定性及び機械的特性のために、カチオン系またはノニオン系を用いることができる。このとき、上記ポリウレタン樹脂、アクリル系エマルション樹脂またはこれらの混合物は、電気亜鉛めっき鋼板用コーティング組成物の総重量を基準に10~50重量%、好ましくは10~30重量%用いることが好ましい。上記含有量が10重量%未満の場合には、コーティング層の加工性が劣ってプレス作業時にパウダリング及び素材破断が生じることがあり、加工部の耐食性が脆弱になることがあり、50重量%を超える場合には、耐熱性、テープ付着性及び耐溶剤性などの物性が脆弱になることがある。
【0030】
さらに、上記ポリウレタン樹脂は、アクリルポリオール、ポリエチレンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオールなどと、ジイソシアネート(Diisocyanate)、鎖(Chain)延長剤、及び第3級アミンなどの親水性官能基を用いて水分散して用いることができ、上記ジイソシアネートは、p-フェニレンジイソシアネート(p-phenylene diisocyanate)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(1,6-Hexamethylene diisocyanate)、トルエンジイソシアネート(Toluene diisocyanate)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(1,5Naphthalene diisocyanate)、イソホロンジイソシアネート(Isophorone diisocyanate)、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4-Diphenylmethane diisocyanate)、及びシクロヘキシルメタンジイソシアネート(Cyclohexylmethane diisocyanate)からなる群から選択される少なくとも一つのジイソシアネートであり、好ましくは上記ジイソシアネートは、鋼板に耐熱性及び耐紫外線性を付与するために、脂環族ジイソシアネートを用いることができる。
【0031】
また、上記ポリウレタン樹脂は、250℃×1時間の耐熱性を付与するために、水分散性ウレタン樹脂の合成時のプレポリマーの遊離NCO%を1~5%、好ましくは2~3%とすることができる。遊離NCO%が5%を超えると、最終水分散性ポリウレタン樹脂のウレア(Urea)基が多くなって耐熱性が脆弱になり、1%以下であると、水分散性ポリウレタンの分子量が小さくなって耐食性、耐化学性などの物性が脆弱になる可能性がある。
【0032】
さらに、本発明は、鋼板の腐食防止のための腐食防止用添加剤を含むことができる。上記腐食防止用添加剤は、金属の有機酸塩、無機酸塩または水酸化物であることができ、例えば、上記腐食防止用添加剤は、Al、Ti、Mo、V、Mn、Mg、P及びZrからなる群から選択される1つ以上の金属の塩を用いることができる。また、例えば、上記塩はリン酸塩、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩または水酸化物であることができるが、これに制限されるものではなく、好ましくはTi、Zr、V、P、Moの無機酸塩とリン酸変性物を組み合わせて用いることができる。
【0033】
上記腐食防止用添加剤は、電気亜鉛めっき鋼板用コーティング組成物の総重量を基準に0.1~2重量%含まれることができ、好ましくは0.1~1重量%であることができる。上記腐食防止用添加剤の含有量が0.1重量%未満の場合には、鋼板の耐食性向上の効果が僅かであり、2重量%を超える場合には、コーティング組成物のゲル化が進行して溶液安定性が減少することがある。
【0034】
さらに、本発明の電気亜鉛めっき鋼板用コーティング組成物は、有機溶媒、表面形成用添加剤及び水などをさらに含むことができる。
【0035】
上記有機溶媒は、コーティング組成物の溶液の安定性、作業性などのために用いられることができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、N-ブタノールなどのアルコール類またはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジアセトンアルコール、アセチルアセトンなどの親水性有機溶媒を用いることができるが、これに制限されるものではない。上記有機溶媒は、総組成物を基準に5~15重量%含まれることができ、好ましくは5~10重量%含まれることができる。有機溶媒が5重量%未満含まれると、コーティング組成物の溶液の安定性が劣り、溶液の乾燥速度が遅くなる。また、有機溶媒が15重量%を超えて含まれると、ロール作業時に溶剤の揮発により作業性に多くの問題を発生させ、硬化過程で揮発される溶剤による有害蒸気問題などの発生の原因となる。
【0036】
さらに、上記表面形成用添加剤としては、消泡剤、レベリング剤などを添加することができ、電気亜鉛めっき鋼板用コーティング組成物の総重量を基準に1~6重量%、好ましくは1~5重量%、さらに好ましくは1~2重量%含まれることができ、水は上記電気亜鉛めっき鋼板用コーティング組成物の固形分が5~30重量%となるように添加することができる。上記固形分が5重量%未満の場合には、粘度が高くて作業性が良好でない問題が生じることがあり、30重量%を超える場合には、逆に粘度が低すぎて目標の塗膜厚さを得ることができない問題が生じることがある。
【0037】
一方、本発明は、電気亜鉛めっき鋼板用コーティング組成物によって、コーティング層が形成された電気亜鉛めっき鋼板を提供する。
【0038】
詳細には、本発明は電気亜鉛めっき鋼板;及び上記鋼板上に本発明の電気亜鉛めっき鋼板用コーティング組成物がコーティング及び硬化して形成されたコーティング層を含む電気亜鉛めっき鋼板を提供することができ、上記組成物の塗布による1コーティングによってプライマーなしにコーティング層を形成するとともに、優れた耐熱性、耐腐食性、耐化学性及びテープ付着性を有する鋼板が得られる。
【0039】
一方、上記コーティング層は0.1~2.0μmの厚さで形成されることができ、厚さが0.1μm未満の場合には、十分な物性を示すことができないという問題が生じることがあり、2.0μmを超える場合には、耐指紋鋼板に求められる表面電気導電性が良好でないという問題が生じることがある。したがって、映像家電用パネルとして用いるために、最も好ましくは0.5~1.5μmが適切である。
【0040】
さらに、本発明は、上記電気亜鉛めっき鋼板を製造する方法を提供する。
【0041】
詳細には、本発明は、電気亜鉛めっき鋼板の一面に本発明の電気亜鉛めっき鋼板用コーティング組成物をコーティングする段階を含む電気亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供する。
【0042】
上記コーティングは、ロールコーティング、バーコーティングなどのコーティング方法によって行われることができるが、これに制限されるものではなく、一定厚さでコーティング層を形成することができる方法であれば、どのような方法も用いられることができる。
【0043】
さらに、上記コーティング層は熱処理によって硬化されることができ、例えば、コーティングの段階後に150~180℃の温度で硬化させる段階をさらに行うことができる。このとき、上記硬化させる段階の温度が150℃未満の場合には、十分な乾燥が起こらず塗膜の形成が難しく、硬化温度が180℃を超える場合には、十分な硬化は起こるが、エネルギーが多くかかるという欠点が生じることがある。
【実施例】
【0044】
以下、具体的な実験例を挙げて本発明をより詳細に説明する。下記実施例は、本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【0045】
(実施例)
攪拌機、還流冷却器、温度計、漏斗(Dropping Funnel)及び窒素注入器が付着した4つ口フラスコに組成物の総重量を基準にシランを添加し、上記シランに酢酸、シリカゾル(pH4、平均粒径12nm、SiO220重量%)及びイオン交換水の混合物を2時間常温でゆっくり滴下する。このとき、発熱に注意して上記フラスコの温度が30℃を超えないように温度を調節しながら滴下する。
【0046】
滴下が完了した後、常温で24時間撹拌する。これから、シリカシランの透明な共重合体が含まれた溶液が得られた。
【0047】
上記溶液にイオン交換水、水分散ポリウレタン樹脂(固形分30重量%)、エタノール、腐食防止剤としてバナジウム塩(アンモニウムメタバナデート)及びジルコニウム塩(ヘキサフルオロジルコン酸)とともに、リン酸、レベリング剤としてエタノール、及び消泡剤としてポリシロキサンジメチルポリシロキサンを加えて30分間攪拌した後、30ミクロンのろ過フィルターで包装した。製造された組成物の具体的な成分及び成分の含有量を組成物の総重量を基準として表1に示した。
【0048】
【0049】
*残部には、イオン交換水が含まれる。
*S1)テトラエトキシシラン;S2)ビニルトリエトキシシラン;S3)3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン;S4)3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン;S5)N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン;S6)3-アミノプロピルトリメトキシシラン;S7)3-アミノプロピルトリエトキシシラン;S8)3-ウルレイドプロピルアルコキシシラン(3-Ureidopropyltrialkoxysilane);S9)3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(3-Isocynatepropyltriethosy silane);R1)カチオン系水分散ポリウレタン樹脂(ポリカーボネートポリオール);R2)カチオン系水分散ポリウレタン樹脂(ポリエステルポリオール);R3)ノニオン系水分散ポリウレタン樹脂(ポリカーボネートポリオール);R4)ノニオン系アクリルエマルション
【0050】
(実験例)
厚さが0.5mmの電気亜鉛めっき鋼板に、上記実施例1-6及び比較例1-4を20±2g/m2になるようにバーコーターを用いてコーティングした。製造されたコーティング鋼板の耐熱性、耐腐食性、テープ付着性及び耐化学性を評価し、評価方法は以下のとおりであり、各評価結果を表2に示した。
【0051】
[耐熱性]
耐熱性試験は、オーブン温度250℃で1時間測定した。
1=試験前後の色差値(ΔE)5.0未満
2=試験前後の色差値(ΔE)5.0以上、6.0未満
3=試験前後の色差値(ΔE)6.0以上、7.0未満
4=試験前後の色差値(ΔE)7.0以上、8.0未満
5=試験前後の色差値(ΔE)8.0以上、9.0未満
6=試験前後の色差値(ΔE)9.0以上
【0052】
[耐腐食性]
(1)S.S.T平面部の試験
5%NaCl、35℃120時間試験して白錆発生を観察した。
1=白錆発生面積が全面積の5%未満
2=白錆発生面積が全面積の5%以上、10%未満
3=白錆発生面積が全面積の10%以上、30%未満
4=白錆発生面積が全面積の30%以上、60%未満
5=白錆発生面積が全面積の60%以上
(2)S.S.T加工部の試験
エリクセン試験(6mm)を施行した後、5%NaCl、35℃、48時間行って白錆発生を観察した。
1=白錆発生面積が加工部面積の5%未満
2=白錆発生面積が加工部面積の5%以上、10%未満
3=白錆発生面積が加工部面積の10%以上、30%未満
4=白錆発生面積が加工部面積の30%以上、60%未満
5=白錆発生面積が加工部面積の60%以上
【0053】
[テープ付着性(接着性)]
テープ付着性は、3M社のテープを用い、試験テープの幅は20mm、テープの長さは100mmサイズとした。試験片は、テープ付着前にアルコールで洗浄した後、テープを80g重りを吊り下げて常温及び60℃で評価した。等級は、常温及び60℃でテープを付着した後、12日経過した時のテープ剥離長さの平均を測定して評価した。
1=剥離長さ5mm未満
2=剥離長さ5mm以上、6mm未満
3=剥離長さ6mm以上、7mm未満
4=剥離長さ7mm以上、8mm未満
5=剥離長さ8mm以上、10mm未満
6=剥離長さ10mm以上
【0054】
[耐化学性]
耐化学性は、重アルカリ脱脂剤である日本パーカのPALKLIN N364Sを用い、2%水溶液を製造して素地を沈積し、超音波機器に入れて5分間超音波脱脂を進行した。
1=塗膜剥離面積0%
2=塗膜剥離面積0%超過、10%未満
3=塗膜剥離面積10%以上、20%未満
4=塗膜剥離面積20%以上、30%未満
5=塗膜剥離面積30%以上、40%未満
6=塗膜剥離面積40%以上
【0055】
【0056】
その結果、表2に示したように、実施例1~6は耐熱性、耐腐食性、テープ付着性及び耐化学性がすべて優れたものと表れたのに対し、比較例1~4は耐熱性、耐腐食性、テープ付着性及び耐化学性の一つ以上の特性が劣化したものと示された。
【0057】
特に、実施例1及び5と比較例1及び2の温度による耐熱性及びテープ接着性を
図1及び2にそれぞれ示し、
図1及び2に示したように、本発明の組成物は耐熱性に優れ、常温及び60℃においてもテープ付着性が維持されることが確認できた。
【0058】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【国際調査報告】