(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-07
(54)【発明の名称】カルシウム感知受容体アゴニスト化合物及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 7/02 20060101AFI20230131BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20230131BHJP
A61P 5/18 20060101ALI20230131BHJP
A61P 5/20 20060101ALI20230131BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230131BHJP
【FI】
C07K7/02 ZNA
A61K38/08
A61P5/18
A61P5/20
A61P13/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022534636
(86)(22)【出願日】2020-12-08
(85)【翻訳文提出日】2022-06-07
(86)【国際出願番号】 CN2020134598
(87)【国際公開番号】W WO2021115272
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】201911250088.1
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522226498
【氏名又は名称】北京拓界生物医薬科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING TUO JIE BIOPHARMACEUTICAL CO. LTD.
【住所又は居所原語表記】Level 7, No.4 Building, No.9 Yi Ke Road, ZGC Life Science Park, Changping District, Beijing 102206 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100103230
【氏名又は名称】高山 裕貢
(72)【発明者】
【氏名】呉 方舟
(72)【発明者】
【氏名】張 瑾
(72)【発明者】
【氏名】高 菲
(72)【発明者】
【氏名】呉 然
(72)【発明者】
【氏名】廖 成
(72)【発明者】
【氏名】王 雷
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084BA01
4C084BA09
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZC061
4C084ZC062
4H045AA10
4H045BA09
4H045CA40
4H045EA27
4H045FA34
4H045GA25
(57)【要約】
本開示は、カルシウム感知受容体アゴニスト化合物及びその使用を提供する。具体的には、本開示は、ヒトカルシウム感知受容体(Calcium-sensing Receptor,CaSR)に対してアゴニスト作用を有することで血漿副甲状腺ホルモン及び血清カルシウムイオンレベルを低下させるとともに、原発性副甲状腺機能亢進症、二次性副甲状腺機能亢進症、腫瘍による高カルシウム血症などの代謝系疾患の治療に用いることができる一連のポリペプチドカルシウム感知受容体アゴニスト化合物及びその薬学的に許容可能な塩の医薬組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチド及びコンジュゲート基で構成される化合物又はその薬学的に許容可能な塩であって、前記ペプチドは、下記式(I)で表されるアミノ酸配列で構成され、
X
1-X
2-X
3-X
4-X
5-X
6-X
7 (I)
そのうち、
X
1はD-Cysであり、
X
2は、D-Phg、D-Phe(4-CH
3)、D-Phe(2-Cl)、D-Tyr、D-Trp、D-Ser、D-Arg又はD-Hisから選択され、
X
3はD-Argであり、
X
4は、D-Arg、D-Phg、D-Phe(4-CH
3)、D-2-Thi、D-Phe(4-NO
2)、D-2-NaI、D-hPhe、D-Abu、D-Tle、D-hLeu、D-Cha、D-Ser、D-Gln、D-Tyr、D-Ile、D-Ser、D-His、D-Val又はD-Chgから選択され、
X
5はD-Argであり、
X
6は、D-Ala、D-Abu、D-Ser又はGlyから選択され、
X
7はD-Argであり、
前記ペプチドと前記コンジュゲート基は、ジスルフィド結合によって共有結合され、
前記コンジュゲート基はL-Cysであり、且つ前記ペプチドのX
1の残基は、ジスルフィド結合によって前記コンジュゲート基と共有結合され、
前記ペプチドのN-末端X
1は、アセチル化によって修飾され、前記ペプチドのC-末端X
7は、アミド化によって修飾される、
化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
ペプチド及びコンジュゲート基で構成され、前記ペプチドは、下記式(I)で表されるアミノ酸配列で構成され、
X
1-X
2-X
3-X
4-X
5-X
6-X
7 (I)
そのうち、
X
1はD-Cysであり、
X
2は、D-Phg、D-Phe(4-CH
3)、D-Phe(2-Cl)、D-Tyr、D-Trp、D-Ser又はD-Hisから選択され、
X
3はD-Argであり、
X
4はD-Argであり、
X
5はD-Argであり、
X
6は、D-Ala、D-Abu、D-Ser又はGlyから選択され、
X
7はD-Argであり、
前記ペプチドと前記コンジュゲート基は、ジスルフィド結合によって共有結合され、
前記コンジュゲート基はL-Cysであり、且つ前記ペプチドのX
1の残基は、ジスルフィド結合によって前記コンジュゲート基と共有結合され、
前記ペプチドのN-末端X
1は、アセチル化によって修飾され、前記ペプチドのC-末端X
7は、アミド化によって修飾される、
請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項3】
ポリペプチド及びコンジュゲート基で構成され、前記ペプチドは、下記式(I)で表されるアミノ酸配列で構成され、
X
1-X
2-X
3-X
4-X
5-X
6-X
7 (I)
そのうち、
X
1はD-Cysであり、
X
2はD-Argであり、
X
3はD-Argであり、
X
4は、D-Arg、D-Phg、D-Phe(4-CH
3)、D-2-Thi、D-Phe(4-NO
2)、D-2-NaI、D-hPhe、D-Abu、D-Tle、D-hLeu、D-Chg、D-Ser、D-Cha、D-Gln、D-Tyr、D-His又はD-Valから選択され、
X
5はD-Argであり、
X
6は、D-Ala、D-Abu、D-Ser又はGlyから選択され、
X
7はD-Argであり、
前記ペプチドと前記コンジュゲート基は、ジスルフィド結合によって共有結合され、前記コンジュゲート基はL-Cysであり、且つ前記ペプチドのX
1の残基は、ジスルフィド結合によって前記コンジュゲート基と結合され、
前記ペプチドのN-末端X
1は、アセチル化によって修飾され、前記ペプチドのC-末端X
7は、アミド化によって修飾される、
請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項4】
ポリペプチド及びコンジュゲート基で構成され、前記ペプチドは、下記式(I)で表されるアミノ酸配列で構成され、
X
1-X
2-X
3-X
4-X
5-X
6-X
7 (I)
そのうち、
X
1はD-Cysであり、
X
2はD-Argであり、
X
3はD-Argであり、
X
4は、D-Phg、D-Phe(4-CH
3)、D-2-Thi、D-Phe(4-NO
2)、D-2NaI、D-hPhe、D-Abu、D-Tle、D-hLeu、D-Chg、D-Ser、D-Cha、D-Gln、D-Tyr、D-Ile、D-His又はD-Valから選択され、
X
5はD-Argであり、
X
6は、D-Ala、D-Abu、D-Ser又はGlyから選択され、
X
7はD-Argであり、
前記ペプチドと前記コンジュゲート基は、ジスルフィド結合によって共有結合され、
前記コンジュゲート基はL-Cysであり、且つ前記ペプチドのX
1の残基は、ジスルフィド結合によって前記コンジュゲート基と結合され、
前記ペプチドのN-末端X
1は、アセチル化によって修飾され、前記ペプチドのC-末端X
7は、アミド化によって修飾される、
請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項5】
ポリペプチド及びコンジュゲート基で構成され、前記ペプチドは、下記式(I)で表されるアミノ酸配列で構成され、
X
1-X
2-X
3-X
4-X
5-X
6-X
7 (I)
そのうち、
X
1はD-Cysであり、
X
2は、D-Argから選択され、
X
3はD-Argであり、
X
4は、D-Phe(4-CH
3)、D-2-Thi、D-Abu、D-hLeu又はD-Valから選択され、
X
5はD-Argであり、
X
6は、D-Ala又はD-Serから選択され、
X
7はD-Argであり、
前記コンジュゲート基はL-Cysであり、且つ前記ペプチドのX
1の残基は、ジスルフィド結合によって前記コンジュゲート基と共有結合され、
前記ペプチドのN-末端X
1は、アセチル化によって修飾され、前記ペプチドのC-末端X
7は、アミド化によって修飾される、
請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項6】
X
4は、D-Abu又はD-Valから選択され、好ましくはD-Abuである、
請求項5に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項7】
前記コンジュゲート基は、アセチル化される、
請求項1~6の何れか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項8】
前記式は、前記X
1の残基におけるメルカプト基含有基を介してジスルフィド結合によって他のメルカプト基含有アミノ酸配列に共有結合される、
請求項1~7の何れか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項9】
前記化合物は、以下の表に示される化合物から選択されることを特徴とする、
請求項1~8の何れか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩:
【表1】
【表2】
【請求項10】
請求項1~9の何れか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物。
【請求項11】
副甲状腺ホルモンレベルの異常に関連する疾患を治療するための医薬品の調製における、請求項1~9の何れか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩又は請求項10に記載の医薬組成物の使用。
【請求項12】
前記副甲状腺ホルモンレベルの異常に関連する疾患は、副甲状腺機能亢進症である、
請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記副甲状腺機能亢進症は、慢性腎疾患に罹患する被験者の二次性副甲状腺機能亢進症である、
請求項12に記載の使用。
【請求項14】
それを必要とする被験者において副甲状腺ホルモンレベルの異常に関連する疾患を治療する方法であって、前記方法は、前記被験者に治療的有効量の請求項1~9の何れか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩又は請求項10に記載の医薬組成物を投与することを含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、出願日が2019年12月09日の中国特許出願201911250088.1の優先権を主張する。また、上記中国特許出願の全文は、本願に援用されている。
【0002】
本開示は、生物医薬分野に属し、具体的にはヒトカルシウム感知受容体(CaSR)に対してアゴニスト作用を有する化合物及びその薬学的に許容可能な塩、それを含む組成物、並びに原発性副甲状腺機能亢進症、二次性副甲状腺機能亢進症及び高カルシウム血症などの関連する代謝系疾患の治療における使用に関する。
【背景技術】
【0003】
二次性副甲状腺機能亢進症は、慢性腎不全、腸吸収不良症候群、Fanconi症候群及び尿細管性アシドーシス、ビタミンD欠乏或いは抵抗性、並びに妊娠、授乳などの場合に、副甲状腺が低カルシウム血症、低マグネシウム血症又は高リン血症の刺激を長期間にわたって受けて過剰な副甲状腺ホルモンを分泌し、血中カルシウム、血中マグネシウムを上昇させ、血中リンを低下させる慢性代償性臨床表現であり、且つ副甲状腺過形成を伴う。長期の副甲状腺過形成は、最終的に機能的に自律的な腺腫の形成をもたらす。
【0004】
カルシウム感知受容体(Calsium-sensing Receptor,CaSR)とは、ヒト副甲状腺器官の細胞表面に分布するファミリーAのGタンパク質共役受容体(G-Protein Coupled Receptor,GPCR)である。副甲状腺ホルモンの分泌は、副甲状腺細胞表面のカルシウム感知受容体によって高度に調節されることで人体のミネラルの定常状態レベルを維持し、カルシウム感知受容体は、人体内のカルシウムイオン濃度の微妙な変化を連続的にモニタリングし、副甲状腺ホルモンの分泌レベルを変化させることによって対応する応答を行う。
【0005】
慢性腎疾患の患者において、体内でカルシウムイオン及びリンイオンの定常状態レベルを実現する必要があるため、副甲状腺ホルモンは、副甲状腺から連続的に分泌される。この副甲状腺ホルモンの連続的な分泌は、最初に適応的であるが、慢性腎疾患の進行に伴い、最終的に副甲状腺過形成及び体内で過度な副甲状腺ホルモンレベルを引き起こすとともに二次性副甲状腺機能亢進症の形成を誘発する。研究により、持続性二次性副甲状腺機能亢進症は、副甲状腺細胞表面のカルシウム感知受容体及びビタミンD受容体の欠失をもたらすことが示されている。疾患により誘発されるこれらの下流の病理学的効果は、体内のミネラルの恒常性調節に対する副甲状腺の調節不全に更につながる。
【0006】
カルシウム模倣薬は一般に、生理学的機能及び作用メカニズムがカルシウムイオンに類似し、副甲状腺細胞表面のカルシウム感知受容体を直接活性化できる化合物を意味する。シナカルセト塩酸塩は、Amgen社により開発された有機低分子カルシウム模倣薬であり、副甲状腺器官表面のカルシウム感知受容体を活性化し、副甲状腺ホルモンの分泌レベルを阻害することで、二次性副甲状腺機能亢進症などの関連する代謝系疾患を治療する目的を達成することができる。シナカルセト塩酸塩は、慢性腎疾患の透析患者の二次性副甲状腺機能亢進症を治療するために臨床的に承認され、1日に1~2回の頻度で患者に経口投与され、最大用量は、1回あたり90ミリグラムであってよい。シナカルセト塩酸塩は、二次性副甲状腺機能亢進症の患者の血漿副甲状腺ホルモンレベルを低下させる優れた治療効果を臨床的に示す。しかしながら、患者の使用中に、例えば胃腸の副作用に関連する悪心、嘔吐及び下痢などの、医薬品による明らかな副作用が観察されている。なお、シナカルセト塩酸塩の投与方式としての経口投与は、慢性腎疾患の透析患者にとって大きな負担であり、シナカルセト塩酸塩は、チトクロム450を阻害するとともにこれに関連する医薬品間の相互作用を誘発することができると証明されている。シナカルセト塩酸塩の使用に関連するこれらの副作用は、患者のコンプライアンス及び順応性をある程度低下させる。
【0007】
従って、副甲状腺細胞表面のカルシウム感知受容体を活性化することで副甲状腺ホルモンの分泌を低下させ、二次性副甲状腺機能亢進症などの関連する代謝系疾患を治療する治療効果を達成することができる、静脈注射によって投与できるカルシウム感知受容体アゴニスト化合物を開発することが期待される。このようなカルシウム感知受容体アゴニスト化合物は、慢性腎疾患の患者を治療するコンプライアンス及び順応性を顕著に向上させることができる。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、ペプチド及びコンジュゲート基で構成され、前記ペプチドが下記式(I)で表されるアミノ酸配列で構成され、
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7 (I)(SEQ ID NO:39)
そのうち、
X1はD-Cysであり、
X2は、D-Phg、D-Phe(4-CH3)、D-Phe(2-Cl)、D-Tyr、D-Trp、D-Ser、D-Arg、D-Trp又はD-Hisから選択され、
X3はD-Argであり、
X4は、D-Arg、D-Phg、D-Phe(4-CH3)、D-2-Thi、D-Phe(4-NO2)、D-2-NaI、D-hPhe、D-Abu、D-Tle、D-hLeu、D-Cha、D-Ser、D-Gln、D-Tyr、D-Ile、D-Ser、D-His、D-Val又はD-Chgから選択され、
X5はD-Argであり、
X6は、D-Ala、D-Abu、D-Ser又はGlyから選択され、
X7はD-Argであり、
前記ペプチドと前記コンジュゲート基は、ジスルフィド結合によって共有結合され、前記コンジュゲート基はL-Cysであり、且つ前記ペプチドのX1の残基は、ジスルフィド結合によって前記コンジュゲート基と共有結合され、
前記ペプチドのN-末端X1は、アセチル化によって修飾され、前記ペプチドのC-末端X7は、アミド化によって修飾される、化合物又はその薬学的に許容可能な塩を提供することを目的とする。
【0009】
1つの実施形態において、前述した化合物又はその薬学的に許容可能な塩は、前記一般式(I)のペプチドにおいて、
X1はD-Cysであり、
X2は、D-Phg、D-Phe(4-CH3)、D-Phe(2-Cl)、D-Tyr、D-Trp、D-Ser又はD-Hisから選択され、
X3はD-Argであり、
X4はD-Argであり、
X5はD-Argであり、
X6は、D-Ala、D-Abu、D-Ser又はGlyから選択され、
X7はD-Argであり、
前記ペプチドと前記コンジュゲート基は、ジスルフィド結合によって共有結合され、
前記コンジュゲート基はL-Cysであり、且つ前記ペプチドのX1の残基は、ジスルフィド結合によって前記コンジュゲート基と共有結合され、
前記ペプチドのN-末端X1は、アセチル化によって修飾され、前記ペプチドのC-末端X7は、アミド化によって修飾される。
【0010】
別の実施形態において、前述した化合物又はその薬学的に許容可能な塩は、前記一般式(I)のペプチドにおいて、
X1はD-Cysであり、
X2はD-Argであり、
X3はD-Argであり、
X4は、D-Arg、D-Phg、D-Phe(4-CH3)、D-2-Thi、D-Phe(4-NO2)、D-2-NaI、D-hPhe、D-Abu、D-Tle、D-hLeu、D-Chg、D-Ser、D-Cha、D-Gln、D-Tyr、D-His又はD-Valから選択され、
X5はD-Argであり、
X6は、D-Ala、D-Abu、D-Ser又はGlyから選択され、
X7はD-Argであり、
前記ペプチドと前記コンジュゲート基は、ジスルフィド結合によって共有結合され、
前記コンジュゲート基はL-Cysであり、且つ前記ペプチドのX1の残基は、ジスルフィド結合によって前記コンジュゲート基と結合され、
前記ペプチドのN-末端X1は、アセチル化によって修飾され、前記ペプチドのC-末端X7は、アミド化によって修飾される。
【0011】
別の実施形態において、前述した化合物又はその薬学的に許容可能な塩は、前記一般式(I)のペプチドにおいて、
X1はD-Cysであり、
X2はD-Argであり、
X3はD-Argであり、
X4は、D-Phg、D-Phe(4-CH3)、D-2-Thi、D-Phe(4-NO2)、D-2NaI、D-hPhe、D-Abu、D-Tle、D-hLeu、D-Chg、D-Ser、D-Cha、D-Gln、D-Tyr、D-Ile、D-His又はD-Valから選択され、
X5はD-Argであり、
X6は、D-Ala、D-Abu、D-Ser又はGlyから選択され、
X7はD-Argであり、
前記ペプチドと前記コンジュゲート基は、ジスルフィド結合によって共有結合され、
前記コンジュゲート基はL-Cysであり、且つ前記ペプチドのX1の残基は、ジスルフィド結合によって前記コンジュゲート基と結合され、
前記ペプチドのN-末端X1は、アセチル化によって修飾され、前記ペプチドのC-末端X7は、アミド化によって修飾される。
【0012】
別の実施形態において、前述した化合物又はその薬学的に許容可能な塩は、前記一般式(I)のペプチドにおいて、
X1はD-Cysであり、
X2は、D-Argから選択され、
X3はD-Argであり、
X4は、D-Phe(4-CH3)、D-2-Thi、D-Abu、D-hLeu又はD-Valから選択され、
X5はD-Argであり、
X6は、D-Ala又はD-Serから選択され、
X7はD-Argであり、
前記コンジュゲート基はL-Cysであり、且つ前記ペプチドのX1の残基は、ジスルフィド結合によって前記コンジュゲート基と共有結合され、
前記ペプチドのN-末端X1は、アセチル化によって修飾され、前記ペプチドのC-末端X7は、アミド化によって修飾される。
【0013】
いくつかの実施形態において、X4は、D-Abu又はD-Valから選択されるが、いくつかの他の実施形態において、X4はD-Abuから選択される。
【0014】
本開示は、両端が以下のように結合され、
R1-X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-R2 (II)
そのうち、
R1は、H、アルキル基、アセチル基、ホルミル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基、D-pGlu又はL-pGluであり、
R2は、-NH2又は-OHであり、
X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7は、前記一般式(I)と同様に定義される、一般式(II)を有する化合物又はその薬学的に許容可能な塩に更に関する。
【0015】
1つの実施形態において、前記R1はアセチル基から選択され、X1はD-Cysのアミノ酸残基から選択され、X2はD-Phg、D-Phe(4-CH3)、D-Phe(2-Cl)、D-Tyr、D-Trp、D-Ser、D-Arg又はD-Hisのアミノ酸残基から選択され、X3はD-Argのアミノ酸残基から選択され、X4はD-Arg、D-Phg、D-Phe(4-CH3)、D-2-Thi、D-Phe(4-NO2)、D-2-NaI、D-hPhe、D-Abu、D-Tle、D-hLeu、D-Cha、D-Ser、D-Gln、D-Tyr、D-Ile、D-Ser、D-His、D-Val又はD-Chgから選択され、X5はD-Argのアミノ酸残基から選択され、X6はD-Ala、D-Abu、D-Ser又はGlyのアミノ酸残基から選択され、X7はD-Argのアミノ酸残基から選択され、R2は-NH2から選択される、一般式(II)に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩を有する。
【0016】
1つの実施形態において、前記R1はアセチル基から選択され、X1はD-Cysのアミノ酸残基から選択され、X2はD-Phg、D-Phe(4-CH3)、D-Phe(2-Cl)、D-Tyr、D-Trp、D-Ser又はD-Hisのアミノ酸残基から選択され、X3はD-Argのアミノ酸残基から選択され、X4はD-Argのアミノ酸残基から選択され、X5はD-Argのアミノ酸残基から選択され、X6はD-Ala、D-Abu、D-Ser又はGlyのアミノ酸残基から選択され、X7はD-Argのアミノ酸残基から選択され、R2は-NH2から選択される、一般式(II)に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩を有する。
【0017】
1つの実施形態において、前記R1はアセチル基から選択され、X1はD-Cysのアミノ酸残基から選択され、X2はD-Argのアミノ酸残基から選択され、X3はD-Argのアミノ酸残基から選択され、X4はD-Arg、D-Phg、D-Phe(4-CH3)、D-2-Thi、D-Phe(4-NO2)、D-2NaI、D-hPhe、D-Abu、D-Tle、D-hLeu、D-Chg、D-Ser、D-Cha、D-Gln、D-Tyr、D-His又はD-Valのアミノ酸残基から選択され、X5はD-Argのアミノ酸残基から選択され、X6はD-Ala、D-Abu、D-Ser又はGlyのアミノ酸残基から選択され、X7はD-Argのアミノ酸残基から選択され、R2は-NH2から選択される、一般式(II)に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩を有する。
【0018】
1つの実施形態において、前記R1はアセチル基から選択され、X1はD-Cysのアミノ酸残基から選択され、X2はD-Argのアミノ酸残基から選択され、X3はD-Argのアミノ酸残基から選択され、X4はD-Phg、D-Phe(4-CH3)、D-2-Thi、D-Phe(4-NO2)、D-2NaI、D-hPhe、D-Abu、D-Tle、D-hLeu、D-Chg、D-Ser、D-Cha、D-Gln、D-Tyr、D-Ile、D-His又はD-Valのアミノ酸残基から選択され、X5はD-Argのアミノ酸残基から選択され、X6はD-Ala、D-Abu、D-Ser又はGlyのアミノ酸残基から選択され、X7はD-Argのアミノ酸残基から選択され、R2は-NH2から選択される、一般式(II)に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩を有する。
【0019】
1つの実施形態において、X1がD-Cysのアミノ酸残基から選択される場合、側鎖のジスルフィド結合によってX1の残基を第2のメルカプト基に結合させることを特徴とする、一般式(I)或(II)に記載の化合物又はその薬学的に許容可能な塩を有する。
【0020】
1つの実施形態において、前記化合物又はその薬学的に許容可能な塩は、以下の化合物から選択される。
【表1】
【0021】
上記表の構造式において、「Ac-c(C)」は、アミノ末端のD-システイン(c)がアセチル化され、ジスルフィド結合によってL-(C)の別のシステインと結合されることを表し、「r-NH2」は、カルボキシル末端のD-アルギニン(r)がアミド化されることを表す。
【0022】
本開示は、前記何れかの化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含み、薬学的に許容可能な担体を更に含む医薬組成物に更に関する。
【0023】
本開示は、被験者の副甲状腺ホルモンレベルを低下させ、二次性副甲状腺機能亢進症又は腫瘍による高カルシウム血症を治療するための医薬品の調製における、前記何れかの化合物又はその薬学的に許容可能な塩、及びその組成物の使用に更に関する。
【0024】
本開示により提供されるポリペプチド化合物は、両性化合物に属し、当業者は、公知の技術によって酸性又は塩基性化合物をそれと反応させて塩を形成することができる。
【0025】
本開示のポリペプチド化合物を含む医薬組成物は、非経口投与の方式によってこのような治療を必要とする患者を治療するために用いることができる。非経口投与経路は、皮下注射、筋肉内注射又は静脈内注射を選択することができる。本開示のポリペプチド化合物は、パッチによる頭皮投与などの経皮経路による投与を更に選択してもよく、イオン導入パッチ、又は経粘膜経路による投与を選択してもよい。このような医薬組成物及びその調製方法は、当該分野で公知であり、好ましい投与経路は、静脈内注射である。
【0026】
本開示により提供されるポリペプチド化合物は、固相合成方法によって調製され、合成担体は、Rink-amide-MBHA樹脂(西安藍暁科技)であり、合成中に使用されるアミノ酸誘導体のα-アミノ基は、Fmoc基(エフモック基)で保護され、アミノ酸の側鎖は、官能基によってシステイン側鎖のメルカプト基、グルタミン側鎖のアミノ基である保護基から選択され、ヒスチジン側鎖のイミダゾリル基は、Trt(トリチル基)で保護され、アルギニン側鎖のグアニジン基は、Pbf(2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル基)で保護され、トリプトファン側鎖のインドリル基は、Boc(tert-ブトキシカルボニル基)で保護され、チロシン側鎖のフェノール基、セリン側鎖の水酸基は、t-Bu(tert-ブチル基)で保護される。合成中、まず、ポリペプチドのC-末端アミノ酸残基のカルボキシル基をアミド結合の形態で高分子の不溶性Rink-amide MBHA樹脂に縮合し、25%の4-メチルピペリジンを含むN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液でα-アミノ基上のFmoc保護基を除去し、当該固相担体は、配列における次のアミノ酸誘導体と過剰状態で縮合してアミド結合を形成し、ペプチド鎖を延長する。縮合→洗浄→脱保護→洗浄→次のアミノ酸縮合の操作を繰り返すことで、合成されるポリペプチド鎖長が得られ、最後にトリフルオロ酢酸:水:トリイソプロピルシラン(90:5:5、v:v:v)の混合溶液を樹脂と反応させてポリペプチドを固相担体から切断し、更に凍結メチルtert-ブチルエーテルを沈降させた後にポリペプチド化合物の固体粗生成物を得る。ポリペプチド固体粗生成物を、0.1%のトリフルオロ酢酸を含むアセトニトリル/水の混合溶液で溶解した後、C-18逆相分取クロマトグラフィーカラムで精製分離してからポリペプチド化合物の精製品を得る。
【0027】
発明の詳細な説明
特に断りがない限り、特許請求の範囲及び明細書に使用される用語は、下記意味を有する。
【0028】
本開示のアミノ酸配列は、20種のアミノ酸の標準的な1文字又は3文字コードで表され、特に明記しない限り、本開示において、D-アミノ酸は、D-Serなどの標準的な3文字の前に接頭語「D-」を追加することを表し、又はsなどの対応する小文字で表され、L-アミノ酸は、L-Cysなどの標準的な3文字の前に接頭語「L-」を追加することを表し、又はCなどの対応する大文字で表される。1つの特定の例として、グリシンは、アキラルであり、「Gly」として表され、又は対応する大文字「G」で表される。
【0029】
アゴニストという用語は、検討されている受容体タイプを活性化する物質として定義される。
【0030】
本開示の文脈において使用されるカルシウム感知受容体アゴニストという用語は、カルシウム感知受容体を活性化できる物質又は配位子を指す。本開示において、治療という用語は、現在の症状又は疾患の進行又は重症度を阻害し、緩和し、停止させ、又は逆転させることを含む。
【0031】
本開示で使用される副甲状腺ホルモンは、副甲状腺によって産生される84個のアミノ酸のペプチド及びその分解生成物である。全長副甲状腺ホルモンを除き、血液にタンパク質分解及び他の代謝経路によって産生される様々な副甲状腺ホルモン断片が存在する。完全な副甲状腺ホルモン分子のアミノ末端1~34領域は、生物学的活性を有する。副甲状腺ホルモンレベルを測定する様々な方法は、業界で開発されており、当該分野で知られている。
【0032】
「天然に存在するアミノ酸」とは、20種の天然に存在する従来のアミノ酸(即ち、アラニン(Ala、A)、システイン(Cys、C)、アスパラギン酸(Asp、D)、グルタミン酸(Glu、E)、フェニルアラニン(Phe、F)、グリシン(Gly、G)、ヒスチジン(His、H)、イソロイシン(Ile、I)、リシン(Lys、K)、ロイシン(Leu、L)、メチオニン(Met、M)、アスパラギン(Asn、N)、プロリン(Pro、P)、グルタミン(Gln、Q)、アルギニン(Arg、R)、セリン(Ser、S)、スレオニン(Thr、T)、バリン(Val、V)、トリプトファン(Trp、W)及びチロシン(Tyr、Y))を指す。
【0033】
「天然に存在しないアミノ酸」とは、非天然にコードされるか又は任意の生物の遺伝暗号において発現されたアミノ酸を指す。それらは、例えば純粋に合成される化合物であってよい。実例として、D-2-アミノ酪酸(D-Abu)、3-シクロヘキシル-D-アラニン(D-Cha)、3-(2-チエニル)-D-アラニン(D-2-Thi)、2-ナフチル-D-アラニン(D-2-NaI)、D-フェニルグリシン(D-Phg)、D-2-クロロフェニルアラニン(D-Phe(2-Cl))、D-4-ニトロフェニルアラニン(D-Phe(4-NO2))、D-4-メチルフェニルアラニン(D-Phe(4-Me))、D-ホモフェニルアラニン(D-hPhe)、D-tert-ロイシン(D-Tle)、D-ホモロイシン(D-hLeu)、D-シクロヘキシルグリシン(D-Chg)を含むが、これらに限定されない。
【0034】
なお、C-末端カルボキシル基、N-末端アミノ基及び/又はそれらの側鎖官能基が化学的に修飾された天然アミノ酸又は非天然アミノ酸も含まれている。
【0035】
「XはA、B、又はCから選択される」、「XはA、B及びCから選択される」、「XはA、B又はCである」、「XはA、B及びCである」などの異なる用語は、意味が同じであり、即ちXはA、B、Cの何れか1種又は複数種であってもよいことを表す。
【0036】
本開示に記載の水素原子は、いずれもその同位体である重水素で置換されてもよく、本開示に係る実施例の化合物における何れかの水素原子は、いずれも重水素原子で置換されてもよい。
【0037】
「任意選択の」又は「任意選択で」とはその後に説明される事象又は状況が生じてもよいが、必ずしもそうであると限らないことを意味し、当該表現には当該事象又は状況が生じる場合と生じない場合を含む。例えば、「任意選択でアルキル基によって置換されたヘテロシクリル基」とはアルキル基が存在してもよいが、必ずしもそうであると限らないことを意味し、当該表現にはヘテロシクリル基がアルキル基によって置換される場合とヘテロシクリル基がアルキル基によって置換されない場合を含む。
【0038】
「置換された」とは基の1つ又は複数の水素原子、好ましくは最大5つまで、より好ましくは1~3つの水素原子が互いに独立して対応する数の置換基によって置換されることである。言うまでもないが、置換基は化学的に可能な部位にのみ位置し、当業者は過度の努力なしに(実験又は理論により)可能な又は不可能な置換を決定することができる。例えば、遊離水素を有するアミノ基又はヒドロキシ基が不飽和(例えば、オレフィン)結合を有する炭素原子と結合する場合は不安定になる可能性がある。
【0039】
「医薬組成物」とは本明細書に記載の1種又は複数種の化合物又は生理学的に/薬学的に許容可能な塩又はプロドラッグと他の化学成分の混合物と、生理学的に/薬学的に許容可能な担体及び賦形剤などの他の成分とを含むことを意味する。医薬組成物は、生体への投与を促進し、活性成分の吸収に寄与して更に生物学的活性を発揮するためのものである。
【0040】
「薬学的に許容可能な塩」とは本開示に係る化合物の塩であり、このような塩は哺乳動物の体内に使用される場合に安全性と有效性を有し、且つ所望の生物学的活性を有する。
【0041】
本明細書で使用される被験者とは、ヒト被験者又は動物被験者を指す。
【0042】
本明細書のメルカプト基含有基又はメルカプト基含有部分は、硫黄-水素結合を含み、生理的条件下で別のメルカプト基とジスルフィド結合を形成できる官能基を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】インビトロでのヒト赤血球に対する実施例の化合物12、13、17、19、29、31の溶血効果を示す。*:陽性対照(ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル),#:PBS緩衝液。
【0044】
【
図2】正常ラットの体内の副甲状腺ホルモンレベルの低下における3mg/kgの実施例の化合物13、17、31及びエテルカルセチド(AMG-416)の有効性を示す。
【0045】
【
図3】正常ラットの体内の血清カルシウムイオンレベルの低下における3mg/kgの実施例の化合物13、17、31及びエテルカルセチド(AMG-416)の有効性を示す。
【0046】
【
図4】5/6腎摘出ラットの体内の副甲状腺ホルモンレベルの低下における実施例の化合物17及びエテルカルセチド(AMG-416)の有効性を示す。
【0047】
【
図5】5/6腎摘出ラットの体内の血清カルシウムイオンレベルの低下における実施例の化合物17及びエテルカルセチド(AMG-416)の有効性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本開示をより詳細に説明するために、本明細書は、以下の発明を実施するための形態を提供するが、本開示の形態は、これらに限定されない。
1、実験試薬
【表2】
【0049】
【0050】
3、実施例
3.1 化合物1の化学合成
Prelude-X全自動ポリペプチド合成装置でFmoc/tBu合成ポリシーを用いて固相ペプチド合成を行い、Rink-amide MBHA樹脂(0.1 mmole)から開始し、カップリングは、N,N-ジメチルホルムアミドにおいて、HCTU及び4-メチルモルホリンで活性化された10当量のアミノ酸残基(HCTU、4-メチルモルホリンとアミノ酸残基の三者のモル比が1:2:1)を用いて室温で25分間行った。
【0051】
上記ペプチド-樹脂の合成を完了した後、90:5:5(v/v/v)のトリフルオロ酢酸:トリイソプロピルシラン:水及び2,2-ジピリジルジスルフィド(1 mmole)を含む溶液において、室温で、2時間に固相樹脂からのポリペプチドの切断、側鎖保護基の除去及びD-Cys側鎖のメルカプト基の活性化を同時に完了した。反応終了後に濾過し、トリフルオロ酢酸で樹脂を2回洗浄し、濾液を合併した後に大量の凍結メチルtert-ブチルエーテルを加えて固体を析出させ、遠心分離後に上清を除去してポリペプチド粗生成物を得て乾燥及び秤量を行った。
【0052】
上記で得られたポリペプチド粗生成物及びL-Cys(0.1 mmole)をPBS緩衝液(pH=7.4)に溶解し、室温で振とうして反応させ、超高速液体クロマトグラフィーによって実施例番号1の生成をモニタリングした。反応が完了した後に混合液にトリフルオロ酢酸(300 μL)を加えて反応をクエンチしてその後の精製に用いる。
【0053】
上記で得られた混合液を0.22 μmの膜で濾過した後、WATERS Prep150分取用逆相高速液体クロマトグラフィーシステムによって分離し、緩衝液は、A(0.1%のトリフルオロ酢酸、水溶液)及びB(0.1%のトリフルオロ酢酸、90%のアセトニトリル、水溶液)である。そのうち、分取用クロマトグラフィーカラムは、X-SELECT OBD C-18(WATERS)逆相クロマトグラフィーカラムであり、精製中にクロマトグラフの検出波長は、220 nmに設定され、流速は15 mL/minである。生成物に関連する留出物を収集して凍結乾燥した後に実施例番号1のポリペプチド精製品を得て、収率は45%である。ポリペプチド精製品について、分析用超高速液体クロマトグラフィー及び超高速液体クロマトグラフィー/質量分析計によって純度及び化合物の同一性を決定し、化合物の純度は96.78%であり、化合物の分子量は1109.60である。
【0054】
3.2 化合物2-38の化学合成
化合物1と類似する合成方法によって本開示の化合物2-38を合成するとともに、分析用超高速液体クロマトグラフィー及び超高速液体クロマトグラフィー/質量分析計によって合成ポリペプチドの純度及び分子量を決定し、具体的には、表1のように示される。
【表4】
【0055】
生物学的試験及び評価
以下、本開示の具体的な実施例を合わせて本開示を更に説明して解釈するが、これらの実施例は、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0056】
1、インビトロ、インビボの生物学的試験及び評価に必要な実験試薬
【表5】
【0057】
【0058】
3、試験例
3.1. ヒトカルシウム感知受容体(CaSR)に対する化合物1-38のアゴニスト活性
3.1.1 実験目的:当該試験例は、ヒトカルシウム感知受容体(CaSR)に対する化合物1-38のアゴニスト活性を測定することを目的とする。
【0059】
3.1.2 実験方法:
HEK293/CaSR安定形質転換細胞株(供給源:康龍化成)を完全培地(成分:DMEM,high glucose+10%のFBS+2 mMのGlutaMAX+1 XのPenicillin-Streptomycin+200 μg/mLのHygromycin B)で培養し、37℃、5%のCO2の環境で70%~90%コンフルエンスにインキュベートした。細胞株をTrypLEで消化した後に384ウェル細胞培養プレートに接種し、37℃、5%のCO2で一晩培養した。細胞の液置換を行った後、刺激緩衝液(HEPES 10 mM,MgCl2 0.5 mM,KCl 4.2 mM,NaCl 146 mM,グルコース5.5 mM,LiCl 50 mM,CaCl2 1.2 mM)及び異なる濃度の検出される実施例の化合物を加え、37℃で60分間インキュベートし、Cisbio IP-One Tb試薬キットの説明書におけるステップに応じて細胞中のIP-Oneの産生を検出した。各実施例の化合物の生データを収集した後にソフトウェアによってヒトカルシウム感知受容体における各々の検出される実施例のEC50値を計算するとともに、これに基づいてヒトカルシウム感知受容体に対する実施例のアゴニスト活性を評価する。
【0060】
3.1.3 実験データの処理方法:
EnVision検出器を利用してHTRFのシグナルを読み取り、励起波長は320 nmであり、発光波長は620 nm及び665 nmである。シグナル比率値(665 nm/620 nm*10,000)を計算するとともに、GraphPad Prism 6で4変数方程式を利用してシグナル比率とサンプル濃度に対して非線形フィッティングを行い、検出される実施例1-38のEC50値を得て、具体的な値は以下の表2に示される。
【0061】
【0062】
上記表において、エテルカルセチド及びエテルカルセチド類似体は、陽性対照として、特許文献WO2011014707に開示された方法によって調製される。
【0063】
本開示の実施例のかなりの部分は、ヒトカルシウム感知受容体のインビトロアゴニスト活性の評価においてEC50値が10 uMより低いことに対応する優れたインビトロ有効性を有する。
【0064】
3.2. ラット腹膜肥満細胞での化合物1-38のインビトロヒスタミン放出活性の評価
3.2.1 実験目的:ラット腹膜肥満細胞での検出される化合物1-38のインビトロヒスタミン放出レベルを評価する。
【0065】
3.2.2 実験方法及びデータ処理:
検出される実施例の一部のインビトロヒスタミン放出レベルを評価するために、洗浄緩衝液(5 U/mLのヘパリンを含む冷HBSS+25 mMのHEPES,pH 7.4)によってラット腹膜を洗浄してラット腹膜肥満細胞を分離した。分離後、細胞を遠心分離し、洗浄緩衝液を除去し、刺激緩衝液(HBSS+25 mMのHEPES+1 mMのCaCl2,pH 7.4)を加えて細胞を再懸濁させて2回洗浄した。105細胞/ウェルの密度で平板培養し(200 μL/ウェル)、それぞれ陽性対照Compound 48/80(最終濃度4 μg/mL)、検出される実施例の化合物(最終濃度10 μM)又はビヒクル対照を加え、37℃で15 minインキュベートした。遠心分離し、細胞上清を取り、LDN Histamine ELISA試薬キット(BAE-1000)の説明書に従って上清のヒスタミン濃度を検出した。具体的な値は、以下の表3に示される。
【0066】
【0067】
本開示の化合物のかなりの部分は、ラット腹膜肥満細胞のインビトロスタミン放出を有意でない程度に引き起こし、相対的なスタミン放出倍率がPBS緩衝液に対して1.50より低いという点で具体的に反映されている。驚くべきことに、いくつかの化合物におけるアミノ酸の置換は、エテルカルセチドに対してラット腹膜肥満細胞のインビトロスタミン放出レベルを低下させ、例えば実施例17、29、31及び32である。
【0068】
3.3. インビトロでのヒト赤血球に対する本開示の一部の化合物の溶血効果の評価
3.3.1 実験目的:インビトロでのヒト赤血球に対する本開示の一部化合物の溶血効果を評価する。
【0069】
3.3.2 実験方法及びデータ処理:
インビトロでの赤血球に対する本開示の化合物の溶血効果を評価するために、ヒト全血(100 μL)をリン酸塩緩衝液と均一に混合し、4℃条件下で10分間遠心分離した後に上清を廃棄した。PBS緩衝液(900 μL)で赤血球を再懸濁させた後に4℃条件下で10分間遠心分離した後に上清を廃棄し、上記ステップを1回繰り返した。検出される実施例の化合物を1×PBS緩衝液に溶解し、最終濃度は100 ug/mlである。それぞれ検出される実施例の化合物溶液、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル-100溶液及びPBS緩衝液を利用して赤血球を再懸濁させて37℃条件下で1時間インキュベートした。インキュベーション後、4℃条件下で10分間遠心分離して上清(100 μL)を抜き取り、96ウェルプレートに移した後に540 nmに吸光度を測定し、これに基づいてインビトロでの赤血球に対する検出される実施例の化合物の溶血効果を評価する。
【0070】
3.3.3 実験結果
本開示の一部の化合物12、13、17、19、29及び31について100 ug/mlの濃度で赤血球に対する明らかな溶血効果が観察されなかったことに対して、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル-100溶液について実験条件下で赤血球に対する明らかな溶血効果が観察されており、
図1に示される。
【0071】
3.4. 正常ラットモデルに本開示の一部の化合物を単回投与した後のインビボ薬効の評価
3.4.1 実験目的:正常ラットモデルに試験化合物を単回投与した後に血漿副甲状腺ホルモンレベルを低下させる有効性を評価する。
【0072】
3.4.2 実験方法及びデータ処理:
体重250~350グラムのSPF級の正常な成体ラット(Sprague Dawley,SD)を試験に選択し、動物室で通常の食餌に7日間戻した。ラットは、ランダムに群分けされ、1群あたり6匹であり、雌と雄が半々であり、それぞれ番号付けされた。実験を開始する前日、各ラットから540 μL採血し、血漿副甲状腺ホルモンレベル及び血清カルシウムイオン濃度を投与前の対照値として検出した。血漿分離方法は、K2-EDTAによって抗凝血化し、頸静脈から採血し、採取後に氷上に置いた後、全血を2~8℃条件下で6,800 rpmで6分間遠心分離し、血漿である上層を慎重に取り出し、2~8℃で保存した。血清分離方法は、頸静脈から採血し、全血を室温で1時間静置した後、室温で、3,500 rpmの回転速度で10分間遠心分離し、血清である上層を慎重に取り出し、室温で保存した。実験の前日から、動物を一晩絶食させ、水を自由に摂取させた。採血の翌日、実施例の化合物13、17、31及びエテルカルセチド(AMG-416)をリン酸塩緩衝液(Phosphate buffered saline,PBS,Gibco)に溶解し、静脈内注射によって各ラットに実施例の化合物13、17、31及び3 mg/kgのエテルカルセチド又は等体積のPBS緩衝溶液を投与し、その後、下記方法に従って採血して対応する指標を測定した。投与の1時間、2時間、4時間後にそれぞれ100 μL採血し、上記方法に従って血漿を分離し、Rat Intact PTH ELISA Kit(Quidel-Immunotopics,Cat.#:60-2500)を利用し、試薬キットの説明書に従って血漿副甲状腺ホルモンレベルの測定(ELISA:Enzyme-linked immunosorbent assay,酵素結合免疫吸着アッセイ)を行った。詳細なステップは、以下の通りである。試薬キットにより提供されるストレプトアビジンで事前に平板培養した反応ストリップを利用し、各ウェルに標準品、対照品又は血漿サンプルを25 μL加えた。1:1によりビオチン化されたラットの副甲状腺ホルモン抗体とラットの副甲状腺ホルモン/HRP結合抗体を混合し、各ウェルにこの混合溶液を100 μL加えた。封止フィルムで反応ストリップを封止し、アルミニウム箔で反応ストリップを包んで暗所で保存し、室温条件下で水平振とう機で220 rpmの回転速度で3 h振とうした。ウェル中の溶液を除去し、350 μLの洗浄作動液で各ウェルを洗浄し、再びウェル中の溶液を除去し、同様の方法で合計5回洗浄し、最後に各ウェル中の溶液を全て吸引した。各ウェルに150 μLのセイヨウワサビペルオキシダーゼELISA基質を加えた。封止フィルムで反応ストリップを封止し、アルミニウム箔で反応ストリップを包んで暗所で保存し、室温条件下で水平振とう機で180~220 rpmの回転速度で30 min振とうした。各ウェルに100 μLのELISA停止溶液を加え、室温条件下で水平振とう機で180~220 rpmの回転速度で1分間振とうした。ELISA停止溶液を加えた後の10 min内に、450ナノメートルに各ウェルの吸光度を読み取り、同時に620 nmの吸光度をバックグラウンドとして除去した。吸光度を測定するブランク対照として150 μLのセイヨウワサビペルオキシダーゼELISA基質と100 μLのELISA停止溶液を使用した。標準品の吸光度に応じて標準曲線を作成し、更に他のサンプルの吸光度と標準曲線を組み合わせて血漿副甲状腺ホルモンの実際の濃度を計算した。血清カルシウムイオン濃度の測定は、関連する試薬キットのステップに応じて行われた。
【0073】
3.4.3 実験結果
図2及び
図3に示すように、試験化合物13、17及び31は、3 mg/kgの用量で4時間以内に正常ラットの血漿副甲状腺ホルモンレベルを完全に低下させ、血清カルシウムイオンレベルも対応して低下した。
【0074】
3.5. 5/6腎摘出ラットモデルに本開示の一部の化合物を連続的に投与した後のインビボ薬効の評価
3.5.1 実験目的:5/6腎摘出ラットモデルに本開示の一部の化合物を連続的に投与した後に血漿副甲状腺ホルモンレベル及び血清カルシウムイオンレベルを低下させる有効性を評価する。
【0075】
3.5.2 実験方法及びテータ処理:
ラットに適応性飼養を行った後、麻酔下で、2/3左腎を外科的に切除し、1週間回復させた後、右腎を外科的に切除し、5/6腎摘出ラットモデルを構築した。2回目の手術後に、動物に2週間の正常飼育を行い、クレアチニン(CREA)及び血漿副甲状腺ホルモンレベルを検出するとともに、副甲状腺ホルモンレベルに基づき、生理食塩水群、化合物17の低用量群、化合物17の高用量群及びエテルカルセチド群を含む4群にランダムに分け、1群あたり10匹のラットである。ランダムに群分けされた後、生理食塩水群、化合物17の低用量群、化合物17の高用量群及びエテルカルセチド群にそれぞれ尾静脈から生理食塩水、1 mg/kgの化合物17、2 mg/kgの化合物17及び1 mg/kgのエテルカルセチドを投与し、1日1回投与し、28日間続けて投与した。投与期間に動物の体重、血漿副甲状腺ホルモンレベル、血清カルシウムイオンなどの指標を検出した。動物を群分けした後に投与の1日目を実験の1日目と記す。
【0076】
3.5.3 実験結果及び結論:
生理食塩水群と比べ、1 mg/kg及び2 mg/kgの化合物例17は、ラットの血漿副甲状腺ホルモンレベルを用量依存的に低下させることができ、1日目、14日目及び28日目に、6 h投与した後に各投与群は、いずれも副甲状腺ホルモンを非常に低いレベルに低下させることができ、14日目から、副甲状腺ホルモンの低下幅は、いずれも>90%である。投与期間に、1 mg/kgの化合物17の投与後の6 h及び16 hに血漿副甲状腺ホルモンレベルへの阻害の大きさは、同じ用量のエテルカルセチドと比べてやや優れるか又はそれに同等である(
図4)。血中カルシウムの低下は、このような医薬品のメカニズムに関連する作用であり、本回の研究において、1日目、14日目及び28日目の投与後、化合物17及びエテルカルセチドは、いずれも血中カルシウムの可逆的低下を誘発することができる。各治療群の14日目、28日目は、1日目と比べ、血中カルシウムの最小値に有意差がなく、これは、化合物17及びエテルカルセチドにより誘発された血中カルシウムの低下度合いが投与時間の延長とともに増加しなかったことを示唆している。1日目、14日目及び28日目に、化合物17による血中カルシウムの最大低下幅は、同じ用量のエテルカルセチドに同等であり、これは、化合物17とエテルカルセチドが血中カルシウムの低下において同等の活性を有することを示唆している(
図5)。化合物17による28日目の血清カルシウムイオンレベル低下における持久力は、同じ用量のエテルカルセチドより優れ、且つ有意差があることに留意すべきである。
【配列表】
【国際調査報告】