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特表2023-504981PEM型の電気化学セルのためのシールアセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(54)【発明の名称】PEM型の電気化学セルのためのシールアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/00 20210101AFI20230201BHJP
   H01M 8/0276 20160101ALI20230201BHJP
   H01M 8/0286 20160101ALI20230201BHJP
   C25B 9/19 20210101ALI20230201BHJP
   C25B 9/60 20210101ALI20230201BHJP
【FI】
C25B9/00 A
H01M8/0276
H01M8/0286
C25B9/19
C25B9/60
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521049
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(85)【翻訳文提出日】2022-04-06
(86)【国際出願番号】 EP2020080901
(87)【国際公開番号】W WO2021104812
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2019/082449
(32)【優先日】2019-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519379879
【氏名又は名称】ヘラー・エレクトロライザー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Hoeller Electrolyzer GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【弁理士】
【氏名又は名称】池本 理絵
(72)【発明者】
【氏名】フラー,シュテファン
【テーマコード(参考)】
4K021
5H126
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021DB31
4K021DB53
4K021DC01
4K021DC03
5H126AA13
5H126BB06
5H126GG02
5H126GG18
5H126HH04
5H126JJ03
(57)【要約】
シールアセンブリは、金属プレート(7)と、その上に配置されたシール(18、19)と、を有し、シールは、プレート(7)上に配置された少なくとも1つの閉じたシールリングを形成する。本発明によれば、シール(18、19)を内側に支持する周方向に延びる内側支持構造(20、22)が形成され、シール(18、19)を外側に支持する外側支持構造(21、23)が形成され、内側支持構造及び外側支持構造が焼結金属から形成され、プレート(7)と材料結合的に接続されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属プレート(7)と、その上に配置されたシール(18)とを備え、前記シールが前記プレート(7)上に配置された少なくとも1つの閉じたシールリングを形成する、PEM型の電気化学セル(1)のための電解槽用のシールアセンブリにおいて、前記シール(18)を内側に支持する周方向に延びる内側支持構造(20)が形成され、及び/又は前記シール(18)を外側に支持する外側支持構造(21)が形成され、前記内側支持構造及び/又は前記外側支持構造が焼結金属から形成され、前記プレート(7)と材料結合的に接続されていることを特徴とする、シールアセンブリ。
【請求項2】
前記プレート(7)の両側にシール(18、19)が配置され、前記シールは、前記プレート(7)上に配置された少なくとも1つの閉じたシールリングを各側に形成し、前記プレート(7)の各側に、前記それぞれのシール(18、19)を内側に支持する周方向に延びる内側支持構造(20、22)が形成され、及び/又は前記それぞれのシールを外側に支持する外側支持構造(21、23)が形成され、前記内側支持構造及び/又は前記外側支持構造が焼結金属から形成され、前記プレート(7)と材料結合的に接続されていることを特徴とする、請求項1に記載のシールアセンブリ。
【請求項3】
前記プレート(7)が焼結金属からなり、かつ3Dプリントで作製されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシールアセンブリ。
【請求項4】
前記シール(18、19)は、前記内側支持構造と前記外側支持構造(21、22;22、23)の間に充填され、好ましくは少なくとも前記支持構造間の領域において前記プレート(7)に直接当接することを特徴とする、請求項1乃至3いずれか1項に記載のシールアセンブリ。
【請求項5】
前記シール(18、19)は、前記支持構造(20~23)を好ましくは完全に覆うことを特徴とする、請求項1乃至4いずれか1項に記載のシールアセンブリ。
【請求項6】
前記1つの、好ましくは各支持構造(20~23)がリング状に周方向に延びるビード(24)を有することを特徴とする、請求項1乃至5いずれか1項に記載のシールアセンブリ。
【請求項7】
前記支持構造(20~23)及び/又は前記シール(18)は、流路(3)が形成される領域では、それ以外の領域よりも平らに形成されているか、又は中断されていることを特徴とする、請求項6に記載のシールアセンブリ。
【請求項8】
前記互いに向き合う側の前記支持構造(20~23)が、互いに距離をおいてランプ状に延びて終わるように形成されていることを特徴とする、請求項1乃至7いずれか1項に記載のシールアセンブリ。
【請求項9】
一方のシール(19)は前記プレート(7)から離反する側で平坦に形成され、及び/又は他方のシール(18)は前記プレート(7)から離反する側でシールリップ(30)を有し、好ましくは波形に形成されていることを特徴とする、請求項1乃至8いずれか1項に記載のシールアセンブリ。
【請求項10】
前記シール(18、19)は、前記関連する支持構造(20~23)の製造後に射出成形により形成されていることを特徴とする、請求項1乃至9いずれか1項に記載のシールアセンブリ。
【請求項11】
前記プレート(7)は、フォイル区分によって形成されていることを特徴とする、請求項1乃至10いずれか1項に記載のシールアセンブリ。
【請求項12】
前記支持構造(20~23)は、3Dプリントで作製されていることを特徴とする、請求項1乃至11いずれか1項に記載のシールアセンブリ。
【請求項13】
前記支持構造(20~23)は、スクリーン印刷法で前記プレート(7)上に設けられていることを特徴とする、請求項1乃至12いずれか1項に記載のシールアセンブリ。
【請求項14】
前記支持構造(20~23)は、焼結によって形成されていることを特徴とする、請求項1乃至13いずれか1項に記載のシールアセンブリ。
【請求項15】
前記支持構造(20~23)は、焼結によって前記プレート(7)と接続されていることを特徴とする、請求項1乃至14いずれか1項に記載のシールアセンブリ。
【請求項16】
支持構造(20~23)は、支持体としてのプラスチックフォイルに設けられ、前記プラスチックフォイルは、前記プレート(7)上に配置され、焼結した場合に除去されることを特徴とする、請求項1乃至15いずれか1項に記載のシールアセンブリ。
【請求項17】
前記プレート(7)はチタンからなり、0.2~0.5mmの厚さ(26)を有することを特徴とする、請求項1乃至16いずれか1項に記載のシールアセンブリ。
【請求項18】
前記プレート(7)は特殊鋼からなり、厚さが0.1~0.2mmであることを特徴とする、請求項1乃至17いずれか1項に記載のシールアセンブリ。
【請求項19】
前記支持構造(20~23)は、前記プレートに対して垂直に0.2~1.2mmの延在(27)を有することを特徴とする、請求項1乃至18いずれか1項に記載のシールアセンブリ。
【請求項20】
前記支持構造(20~23)は、0.2~2.0mmのビード幅(28)を有するビード(24)として形成されていることを特徴とする、請求項1乃至19いずれか1項に記載のシールアセンブリ。
【請求項21】
前記ランプ状に延びて終わる前記支持構造(20~23)の部分(25)は、0.5~7mmの幅(31)を有することを特徴とする、請求項1乃至20いずれか1項に記載のシールアセンブリ。
【請求項22】
前記支持構造(20~23)は、1.5~15mmの平均的なビード間隔(29)を有することを特徴とする、請求項1乃至21いずれか1項に記載のシールアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セル、特に電気化学セルのスタック、殊にPEM型の電気化学セルのための、特に電解槽のためのシールアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
上記の種類の電気化学セルは、典型的には、複数のこの種のセルが直列に接続され、かつ積層体として配置されているスタックの形に組み立てられる。このようなスタックは、例えば燃料電池の分野では従来技術に属し、水素の触媒酸化により電気を生成するために用いられる。電解槽もこのようなスタック構成で使用でき、この電解槽を用いて、電気エネルギーと水を導入することによって水素と酸素が生成され、典型的にはそれらのうちの1つの成分、大抵は水素が中間貯蔵される。生成と貯蔵を可能な限り効果的にするために、可能な限り高い、例えば100barの動作圧力で動作させることができるようにスタックを形成する努力がなされている。なぜならその場合、生成されたガスを後から圧縮しなくて済むか、又は後からの圧縮を比較的少ないエネルギー消費量で行うことができるからである。電気化学セルの圧力が高ければ高いほど、積層体に作用する力が大きくなる。エンドプレートとタイロッドの強度をより大きく定めることにより機械的な力を吸収できる一方で、圧力の増加とともにセルの密封が問題になる。圧縮力の増加とともに、シールにかかる負荷が増加するが、シールが機能しなくなると、スタック全体が使用できなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このことを背景として、本発明は、PEM型の電気化学セルのための、特に電解槽のためのシールアセンブリを、シールが可能な限り高い圧力に耐えるように形成するという課題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題は、本発明によれば、請求項1に記載の特徴を有するシールアセンブリによって解決される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項、以下の説明、及び図面に記載されている。
【0005】
本発明によるPEM型の電気化学セル、特に電解槽のためのシールアセンブリは、金属プレートと、その上に配置されたシールとを有し、シールがプレート上に配置された少なくとも1つの閉じたシールリングを形成する。本発明によれば、シールを内側に支持する周方向に延びる内側支持構造と、シールを外側に支持する外側支持構造とが形成され、内側支持構造及び外側支持構造は焼結金属から形成され、かつプレートと材料結合的に接続されている。
【0006】
本発明による解決策の基本的な考え方は、典型的には媒体透過性の窪みを中央に有し、そこが、例えばガス拡散層としてのカーボンフリースを介在させて、イオン透過性気密膜(PEM膜)上に位置する、例えば穴あき金属板として形成されている金属プレート上で、シールを両側で支える支持構造を内へ向かってのみならず外へ向かっても設けるということである。本発明によれば、これらの支持構造は、焼結金属から形成され、プレートと材料結合的に接続されている。好ましくは、支持構造は、プレートと同じ金属から形成され、例えば焼結によってプレートと材料結合的に接続されている。
【0007】
シールが、最も単純な形態では、プレート上に配置された周方向に延びるシールリングである場合、このシールリングは、力が加えられた場合にシール材料が内側に移動することを防ぐ支持構造によって内へ向かって支持され、材料が外側に移動することを防ぐ外側支持構造によって外へ向かって支持される。したがって、シールは、支持構造間に、好ましくは形状結合的に保持され、それによって、そうでなければ面圧が高い場合に生じる流動挙動が効果的に阻止される。これらの支持構造は、シールの流動を防ぐだけでなく、さらに、金属プレートとそれに対して密封される相手面との間の最小限の間隔を保証する一種のスペーサを形成する。
【0008】
基本的に、シールの両側、すなわち内側と外側に支持構造を配置することが有利である。しかし、特に、反応ガスを圧縮して貯蔵するための電解槽では有利である高い内圧で電気化学セル、特にセルスタックを動作させる場合、支持構造のうちの1つのみ、特に有利には外側支持構造を設けることで十分であり、このようにして高い内圧に基づくシールの外側へのクリープに対するバリアが形成される。
【0009】
本発明の有利な一発展形態では、プレートの両側にシールが配置され、シールは、プレート上に配置された少なくとも1つの閉じたシールリングを各側に形成し、プレートの各側に、それぞれのシールを内側に支持する周方向に延びる内側支持構造が形成され、それぞれのシールを外側に支持する外側支持構造が形成され、内側支持構造及び外側支持構造が焼結金属から形成され、プレートと材料結合的に接続されている。この種のアセンブリは、シールがプレートの両側で安定化され、押圧力が高い場合のシールの流動挙動が阻止され、さらに相手面との最小限の間隔が保たれることを保証する。それぞれの相手面との関係で、支持構造はプレート及び相手面とチャンバ状の空間を形成し、この空間は、その中に配置されるシールリングを収容し、シールリングの押し付け、すなわち圧縮をこの空間の体積に制限する。
【0010】
本発明の有利な一実施形態では、プレート自体も焼結金属から形成され、好ましくは3Dプリント法で作製されている。この場合、プレート自体だけでなく、支持構造もこの方法で、好ましくはプレートのプリント時に1作業工程で製造できることが好ましい。
【0011】
シールリングを形成するシールは、好ましくは内側支持構造と外側支持構造との間の領域を完全に充填するように形成されることが有利である。その場合、シールが少なくとも支持構造間の領域で金属プレートに直接当接する場合が特に有利である。シールがプレートに緊密に当接することによって、一方ではシールのプレートへの付着が保証され、他方では良好で完全なシール作用が保証される。この領域に場合によって必要な接着促進剤を導入でき、その際、接着促進剤が支持構造の外側の領域、したがって活性セル構造に達するという危険はない。この接着促進剤は、膜に接触すると膜上の触媒を損傷又は破壊するため、その適用範囲を確実に局所に限定することが重要である。
【0012】
シールが支持構造を好ましくは完全に覆う場合が特に有利である。基本的に、支持構造間の領域のシールは、この領域の密封を確保するために、支持構造よりも格段に高く形成されることが企図されてはいるが、支持構造を覆うことには、シールが最大限圧縮された場合に、支持構造の上面と相手面との間に常にシール材料が存在する、すなわち追加の密封が保証されているという利点がある。さらに、支持構造をシール材料で覆うことにより、シールを付加的に支持材料に固定することもでき、それによってシールとプレート又はプレート上に配置された支持構造との間に密接な接続が形成される。
【0013】
支持構造がビードによって形成される場合が特に有利である。これがシールの周囲を完全に取り囲んで支持するリング状に周方向に延びるビードであることが有利である。ガスを導く流路の領域では、ビード及び/又はシールを中断するか、あるいは高さを低くすることができ、このことによって周方向に延びる領域全体にわたるシールの完全な支持が制限されることはない。なぜなら、このような流路の領域では支持がなくて済むからである。互いに向き合う側の支持構造が、互いに距離をおいてランプ状に延びて終わるように形成されていることが有利である。すなわち、内側支持構造、典型的にはビードは、外側支持構造の方向に斜めに、及び平らに延びて終わる領域を有し、外側支持構造は、斜めに、及び平らに延びて終わる、つまり内側支持構造に向かってランプ状の領域を有する。その場合、ランプ状の区分は互いに距離を置いて延びて終わり、それによりこれらの間に形成された領域には支持構造がなく、それによりここではシールが金属プレートに直接当接し得る。実施例をもとにして後から明らかにされるように、ランプ状の領域の上側と同様に、シールから離反した側では支持構造がはるかに急峻に延びて終わり得る。
【0014】
支持構造がこのようにランプ状に延びて終わることは、それによって画定される空間にシール材の可能な限り完全な充填を達成するため、及び支持構造の領域でもシールの良好な付着作用を確保するために特に有利である。
【0015】
最も単純な形態では、内側支持構造と外側支持構造との間に配置されたそのようなシールリングは、相手面に向いた側、すなわちプレートから離反した側が平坦に形成され得、その場合、シールリングが相手面に面状に当接する。そのような面状の当接は、シールの全面にわたって同じ力が膜に加えられるので、例えばイオン透過膜との当接のために有利である。特にプレートのもう一方の側では、シールが平面状の面ではなく、構造化して形成されている場合が有利である。それにより、シールは、有利にもプレートから離反した側にシールリップを備えることができ、シールリップは、好ましくはシール全体にわたって連続的に周方向に延びる。この場合、内側支持構造と外側支持構造との間で、相手面の方を向いたシールの側に、いわば同心リングのように設けられている複数のシールリップが形成される場合が有利である。シールのこの側を、横断面で少なくとも外に向いた側で波形に形成することもでき、それによっても支持構造間の領域に同心の当接面が生じる。
【0016】
プレート上で支持構造間に配置され、周方向に延びるシールリングを形成するシールは、有利にも支持構造の作製後にシールを上に射出成形することによって形成される。このようなシールは、例えばFKM(フッ素ゴム)から形成することができ、これは従来技術に属する。上への射出成形は、典型的には射出成形法で、すなわち金属プレートとその支持構造、及び区切りを形成するツール内で行われる。
【0017】
金属プレートは、フォイル区分、すなわち金属板区分によって形成されることが有利である。プレートをフォイルから分離することは、特に有利であり、このようなフォイルは、安価に入手でき、切断によって後の金属板区分を所望の寸法にすることができる。
【0018】
支持構造自体は、有利には3Dプリントで作製され、支持構造は、プレートに直接設けられるか、又はまずプラスチックからなる支持フォイルに設けられ、支持構造は焼結によってプレートと接続される。これらの支持構造が3Dプリントによって金属プレート上に設けられる場合、プリント中に材料が溶融し、すなわち載置すると直ぐに材料結合的に接続されるか、又はバインダとともに金属粉末を設け、後から焼結した場合にバインダが除去され、金属粉末が互いに、かつその下に位置する金属プレートと材料結合的に接続される。
【0019】
支持構造は、有利にも、かつ代替的に、スクリーン印刷法で設けることができ、これは特に大量生産で安価であるとともに生産性がよい。その場合、支持構造と金属プレートとの接続が焼結によって行われることが有利である。その場合、支持構造はスクリーン印刷により直接金属プレートに、又はスクリーン印刷により支持体としてのプラスチックフォイルに設けることができる。
【0020】
支持構造は、支持体としてのプラスチックフォイルを用いて設けられている場合、支持構造がプレートと接続される焼結時にプラスチックフォイルの除去が行われる。言うまでもなく、支持構造が両側に設けられている場合、これらは同時に又は別々の作業工程(まず一方の側、次にもう一方の側)で焼結することによってプレートと接続される。
【0021】
支持構造及びフォイルは、3Dプリントで1作業工程で作製されることが有利であり、その場合、フォイルを支持構造の金属部分のための結合剤から、又は別のプラスチック材料から形成することができ、その場合、このプラスチック材料は、支持体を形成するだけでなく、支持構造全体を覆い、焼結時に初めて除去される。
【0022】
支持構造が支持体としてのプラスチックフォイルに設けられる場合、これらの支持構造は、次に金属プレートに載置され、焼結によって金属プレートと接続される。その場合、典型的には、それぞれ、支持構造がプレートの一方の側でプラスチックフォイルに設けられ、次いで焼結によってプレートと接続される。
【0023】
シールアセンブリがPEM型の電解槽用に定められている場合、金属プレートは、チタンからなることが有利であり、厚さが0.2mm~0.5mmである。シールアセンブリが燃料電池用に企図されている場合、金属プレートが特殊鋼からなることが有利であり、厚さが0.1mm~0.2mmである。
【0024】
支持構造は、金属プレートと同じ材料から形成されることが有利である。
【0025】
支持構造は、一方では可能な限り平らに、かつ必要なだけ高く形成されるべきである。支持構造は、プレートに対して垂直の方向に約0.2mm~1.2mmにわたって延在することが好ましい。
【0026】
支持構造の横断面形状は様々であり得るが、典型的には、プレート上で片面に2つのビードが互いに距離をおいて配置され、これらの2つのビード間にシールが形成されている。これらのビードは、半円形、台形又は他の横断面を有することができ、ビード幅は、有利には0.2mm~2.0mmである。
【0027】
先に述べたように、支持構造が本来のビードの他にランプ状に延びて終わる部分を有する場合が有利であり、この部分の幅が0.5mm~7mmであり、本来のビードよりも格段に平らに形成されていることが有利である。その場合、ランプ状に延びて終わる部分は、互いに特定の間隔を有するように配置され、それによりこれらの部分間の領域においてシールが金属プレートに直接当接する。平均的なビード間隔、すなわち、本来の支持構造を形成するビードの長手方向中心線の間隔は有利には1.5mm~15mmである。本発明の意味における平均的な間隔とは、図3の下の方に示されている長手方向中心間の間隔である。
【0028】
上記の寸法は、特に、約100barまでの圧力で電解セルとして動作させることができる、例えば5~250個のセルのスタックのセルアセンブリのために有利である。
以下、本発明を図面に示された実施例をもとにして説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明によるシールアセンブリの上面図である。
図2】セル積層体の電解セルを通る断面を大きく拡大した模式図である。
図3】シール及び支持構造の領域における金属プレートの拡大した模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図をもとにして説明されるシールアセンブリは電気化学セルの一部であり、その構造は図2に模式的に示されている。以下に記載される実施形態は、電気エネルギーを用いて水から水素と酸素を生成するための電解セルのためのシールアセンブリに関するものである。言うまでもなく、他の媒体を使用する場合、又はプロセスを逆にした場合、(燃料電池)電気化学セルの基本構造は変わらないが、使用される材料に関してであれ、その配置に関してであれ、さまざまな変更が必要である。
【0031】
このような電気化学セルは、複数のこのようなセルが典型的には電気的に直列に接続され、上下に配置されたセル積層体、いわゆるスタックに組み立てられ、セル積層体は、張力要素によって機械的に保持され、セル積層体内には媒体を供給及び排出するための流路が設けられている。これらの流路は、積層体を垂直に貫通し、個々のセルを対応する媒体供給部又は排出部に連結する。このようなセル積層体の基本的な構造は従来技術に属し、したがってここでは詳細に説明されない。これに関連して、特に、しかし例示的に、このような構造について詳細に説明されている独国特許出願公開第102017108413号明細書を参照されたい。
【0032】
図2による断面図が明らかにするように、各セル1は、両側に流路を形成するように装備されたバイポーラプレート2を有する。流路3は、図2に示される上側に形成され、流路4は下側に形成される。上側は動作中に水と酸素を導く側であり、これに対して下側は水素を導く側である。図1に5で示されるセル1の活性領域において、エキスパンドメタルによって形成されているが、別の仕方で形成することもできるばね弾性要素6がバイポーラプレート2に隣接する。
【0033】
図2において、その上面でバイポーラプレート2に当接するこのばね弾性要素6は、下面でシールアセンブリ8の一部であるプレート7に当接する。このプレート7は、セル1の活性領域5、すなわち中央領域5において穴あき金属板として形成され、本来のシールアセンブリ8は縁領域に形成されている。プレート7は、活性領域5において、多孔質輸送層(PTL)と呼ばれる媒体透過層9に接する。このガス透過層はプロトン透過膜10の前にあり、プロトン透過膜は、セル1の活性領域5の裏側にもこのような媒体透過層11を備えている。膜10は、それ自体知られた仕方で、触媒として作用する電極で両側がコーティングされている。この媒体透過層11にもまた、図2に図示されないバイポーラプレート2が下側に隣接し、それに隣接する電解セルの一部をなす。セルの構造は、流路3及び4を通して媒体が供給又は排出され、厳密にはセル1の活性領域5における膜10まで面状に到達できるようになっている。
【0034】
しかしながら、部品6、7、9及び11は、反応物質を膜10の方へ導くか、又は膜の前で排出できるようにするために、媒体透過性である必要があるだけでなく、さらに、反応のために必要な電流を供給するために電気を伝導できなければならない。接触は、それぞれバイポーラプレート2を介して行われる。したがって、図示される実施形態では、バイポーラプレート2、ばね弾性要素6、プレート7、及び媒体透過層11はチタンから形成され、厳密にはバイポーラプレート2はエンボス加工された金属板によって、ばね弾性要素6はエキスパンドメタルのように形成された金属板によって、プレート7はチタンフォイルによって、及び媒体透過層11はチタン繊維から作製されたフェルトに似たニット生地によってなる。媒体透過層9は、カーボンフリース(Kohleflies)から形成されている。
【0035】
図1から見て取れるように、セル1の活性領域5は、流路形成、及びセル相互の取付けのために利用される縁12と区別することができる。この縁12には、セルの積層体を垂直に通って延びる流路13、14、15、及び16が形成され、これらの流路を介して媒体の供給と排出が行われる。さらに、クランプボルトを挿通するために設けられた孔17がコーナー領域に設けられ、セル積層体はクランプボルトによって互いに押し付けられて保持される。縁領域にタイロッドのためのさらなる孔を設けることができる。
【0036】
図1が明らかにするように、シールアセンブリ8は、縁12において周方向に延び、すなわち閉じたリングとして形成されている。この閉じたリングは、流路13~16を外側に取り囲む。さらに、このシールアセンブリは、それぞれ流路13~16を取り囲み、活性領域5を取り囲むそれ自体閉鎖されたリングを有する。後者のリングは、それぞれのセル1の流路3を、積層体内で垂直に延びる流路14及び16と接続するために、高さが部分的に低減されている。水の供給、及び発生する酸素の排出は流路14及び16を介して行われる。
【0037】
とりわけ流路4と、ばね弾性要素6における自由空間とによって形成される水素側の空間の接続は、流路13及び15に隣接する領域において、ここで水素を排出するための流路接続を作成するために、シール18を沈下させることによって行われる。これに対して、流路13~16を外側に取り囲む周方向に延びるシール18及び19は、一貫して当接するように形成され、それぞれのセルを外へ向かって密封する。
【0038】
このシールアセンブリ8は、図2及び図3が示すように、バイポーラプレート2に対して密封する図の上シール18と、膜10に対して密封する下シール19とを備える。これらのシール18、19は、フッ素ゴムからなり、上に射出成形されている。
【0039】
プレート7の上側のシール18は、周方向に延びる内側支持構造20によりそれぞれ内に向かって、すなわち流路13~16の方に取り囲まれ、外側支持構造21により外側に取り囲まれている。これに対応して、下側のシール19は、内側支持構造22と外側支持構造23とを有する。各支持構造(20~23)は、周方向に延びるビード24と、横向きにシール18又は19の下の領域内へつながるランプ状に延びて終わる領域25とからなる。各支持構造のランプ状の領域25は、ビード24のほぼ半分の高さで始まりプレート7まで、向かい側に位置するビード25に向かって延びて終わるように延在する。延びて終わる領域25間には自由空間が形成され、この自由空間においてシール18又は19がプレート7に直接当接する。
【0040】
図示された実施形態ではチタンフォイルからなるプレート7は、0.3mmの厚さ26を有する。プレートの両側に延在する支持構造20~23は、周方向に延びるそれぞれ1つのビード24を有し、ビードはプレート7に対して垂直に0.6mmの延在27を有する。図示された実施形態では、ビード24の幅28は1mmであり、ランプ状に延びて終わる部分25の幅31は1.5mmである。内側支持構造20と外側支持構造21及び内側支持構造22と外側支持構造23のビード24の平均的な間隔29は8mmである。
【0041】
図示された実施形態では、プレート7は、媒体透過性にするために、活性領域5に穴をあけて形成されたチタンフォイルから形成されている。上側の支持構造20及び21と下側の支持構造22及び23は、3Dプリントで作製され、同様にチタンからなる。相互の接続及びプレート7との結合は、焼結によって形成される。その場合、製造は、冒頭に記載されたように様々であり得る。
【0042】
プレート7が、その上に位置する支持構造20~23とともに形成された後に、射出成形法で上シール18と下シール19が作製される。その場合、シールは、延びて終わるランプ状の領域25間の領域において、プレート7に直接当接する。この変形形態では、シールはビード24を完全に覆う。下シール19が、支持構造22又は23のビード24から小さい距離をおいて離れたシール面としての平面状の下面を有するのに対して、上シール18は、横断面で波形の上面、すなわち密封面を有し、波谷は、ビード24の領域においてシールのほぼ上面の高さにあり、波の頂上は、波谷の高さに比べて格段に高い周方向に延びるシールリップ30を形成する。
【符号の説明】
【0043】
1 セル
2 バイポーラプレート
3 流路
4 流路
5 セルの活性領域
6 ばね弾性要素
7 プレート
8 シールアセンブリ
9 媒体透過層
10 膜
11 媒体透過層
12 プレート7の縁
13 垂直流路
14 垂直流路
15 垂直流路
16 垂直流路
17 孔
18 シール 上
19 シール 下
20 内側支持構造 上
21 外側支持構造 上
22 内側支持構造 下
23 外側支持構造 下
24 ビード
25 ランプ状に延びて終わる領域
26 プレート7の厚さ
27 ビード24の高さ
28 ビード24の幅
29 平均的なビード間隔
30 シールリップ
31 ランプ状に延びて終わる領域の幅
図1
図2
図3
【国際調査報告】