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特表2023-505018層システムを製造するためのコーティングシステムを動作させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(54)【発明の名称】層システムを製造するためのコーティングシステムを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/54 20060101AFI20230201BHJP
   G02B 1/11 20150101ALI20230201BHJP
   G02C 7/00 20060101ALN20230201BHJP
【FI】
C23C14/54 F
G02B1/11
G02C7/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526086
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-06-07
(86)【国際出願番号】 EP2020087007
(87)【国際公開番号】W WO2021123154
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】102019135195.2
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514073189
【氏名又は名称】ローデンシュトック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェルシュリヒト,リュディガー
(72)【発明者】
【氏名】ラドゥンツ,ステファン
【テーマコード(参考)】
2H006
2K009
4K029
【Fターム(参考)】
2H006BA01
2H006BA03
2K009AA02
2K009DD01
4K029AA09
4K029AA24
4K029BA42
4K029BA43
4K029BB02
4K029BC07
4K029EA01
(57)【要約】
本発明は、層システム(10)を製造するためのコーティングシステム(100)を動作させるための方法であって、(i)コーティング設備(102)内で層システム(10)をコーティングするステップ(S100)と、(ii)光学測定システム(104)における前記層システム(10)のスペクトル実測プロット(90)を決定するステップ(S102)と、(iii)シミュレーション対象測定プロット(98)を前記実測プロット(90)に適合させることによって実データセット(Dat_ist)を決定するステップ(S110)と、(iv)前記実データセット(Dat_ist)を使用する前記層システム(10)のシミュレーションによる前記シミュレーション対象測定プロット(98)から、計算実層パラメータ(96)として実層パラメータ(96)を決定するステップ(S112)と、(v)前記実データセット(Dat_ist)および前記計算実層パラメータ(96)を少なくとも決定システム(108)に出力するステップ(S114)と、(vi)品質要件データを提供するステップ(S118)と、(vii)少なくとも前記実データセット(Dat_ist)、前記計算実層パラメータ(96)、および前記品質要件データの比較に基づいて、前記決定システム(108)における前記層システム(10)の承認(S122、S124)を決定するステップ(S120)と、を含む方法に関する。本発明は、同様に、層システム(10)を製造するためのコーティングシステム(100)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
層システム(10)を製造するためのコーティングシステム(100)を動作させる方法であって、
(i)コーティング設備(102)内で層システム(10)をコーティングするステップ(S100)と、
(ii)光学測定システム(104)における前記層システム(10)のスペクトル実測プロット(90)を決定するステップ(S102)と、
(iii)シミュレーション対象測定プロット(98)を前記実測プロット(90)に適合させることによって実データセット(Dat_ist)を決定するステップ(S110)と、
(iv)前記実データセット(Dat_ist)を使用する前記層システム(10)のシミュレーションによる前記シミュレーション対象測定プロット(98)から、計算実層パラメータ(96)として実層パラメータ(96)を決定するステップ(S112)と、
(v)前記実データセット(Dat_ist)および前記計算実層パラメータ(96)を少なくとも決定システム(108)に出力するステップ(S114)と、
(vi)品質要件データを提供するステップ(S118)と、
(vii)少なくとも前記実データセット(Dat_ist)、前記計算実層パラメータ(96)、および前記品質要件データの比較に基づいて、前記決定システム(108)における前記層システム(10)の承認(S122、S124)を決定するステップ(S120)と
を含む方法。
【請求項2】
(i)前記実測プロット(90)から前記層システム(10)の残留反射色の色値(88)を計算するステップ(S104)と、
(ii)前記実測プロット(90)および前記計算された色値(88)をファイリングデータベース(210)にファイルするステップ(S106)と、
(iii)前記層システム(10)の前記完成したコーティングの設計を有する対象データセット(Dat_soll)を設計データベース(200)および前記実測プロット(90)からシミュレーションコンピュータ(106)にロードするステップ(S108)と、
(iv)前記シミュレーションコンピュータ(106)内で前記シミュレーション対象測定プロット(98)を前記実測プロット(90)に適合させることによって前記実データセット(Dat_ist)を決定するステップ(S110)と、
(v)前記実データセット(Dat_ist)および前記計算実層パラメータ(96)を前記決定システム(108)および前記ファイリングデータベース(210)に出力するステップ(S114)と、
(vi)少なくとも前記実データセット(Dat_ist)、前記計算実層パラメータ(96)、および前記品質要件データの比較のために使用される、前記基準データベース(220)から前記層システム(10)の承認基準をロードするステップ(S116)と、
(vii)承認(S122、S124)の決定を前記ファイリングデータベース(210)において文書化するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記承認基準は、特に、前記実データセット(Dat_ist)および/または前記計算実層パラメータ(96)および/または前記実測プロット(90)との比較に使用される、要件が導出される、少なくとも許容可能および/または非許容可能な層パラメータを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記品質要件データは、層システム(10)の前記対象データセット(Dat_soll)の公差値を含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記決定システム(108)における前記層システム(10)の承認を決定するステップは、特に人工知能方法を使用することによる、自動的なソフトウェアベースの承認決定を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも前記対象データセット(Dat_soll)と前記基準データベース(220)からの承認基準との比較に基づいて、コーティング設備(102)内で層システム(10)のコーティングを決定するステップをさらに含む、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記計算実層パラメータ(96)は、前記実測プロット(90)の外側の波長範囲内、特にUV波長範囲内の反射値、および/または異なる入射角での反射値を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
コーティングシステム(102)内の層システム(10)のコーティングは、干渉型層システム(10)が基板(22)の少なくとも1つの表面(24)上に堆積されることを含み、
前記層システム(10)は、少なくとも4つの連続する層パケット(42、44、46、48、50)のスタック(40)を含み、各層パケット(42、44、46、48、50)は、1対の第1および第2の個別層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)を含み、前記第1の個別層(11、13、15、17、19)は各々第1の光学的厚さ(t1)を有し、前記第2の個別層(12、14、16、18、20)は各々、前記第1の光学的厚さ(t1)とは異なる第2の光学的厚さ(t2)を有し、
前記基板により近い前記それぞれの第1の個別層(11、13、15、17、19)の屈折率(n1)は、前記基板からより離れた前記スタック(40)の前記それぞれの第2の個別層(12、14、16、18、20)の屈折率(n2)よりも大きく、
前記層システム(10)は、残留反射色の輝度(L*)、色度(C*)、および色相角(h)を有し、
前記層システム(10)の表面法線(70)に対して0°および30°の限界値を有する視角(AOI)の間隔における前記残留反射色の色相角(h)の変化量(Δh)は、前記視角(AOI)の間隔における前記色度(C*)の変化量(ΔC*)よりも小さく、
-少なくとも、高屈折率の第1の個別層(11、13、15、17、19)の第1の材料および低屈折率の第2の個別層(12、14、16、18、20)の第2の材料と、前記個別層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)を含む所望の層パケット(42、44、46、48、50)の数と、前記個別層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の厚さの開始値とを含む層設計を定義するステップと、
-少なくとも0°および30°の前記限界値を有する視角(AOI)の間隔の限界値における、輝度(L*)、色度(C*)、および色相角(h)を含む目標色値を定義するステップと、
-最適化目標に達するまで前記個別層厚(d_ist_11、...、d_ist_20)を変化させるための最適化方法を実行するステップと
が実行される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
0°および30°の限界値を有する前記視角(AOI)の間隔における色相角(h)は、最大で15°変化し、好ましくは最大で10°変化し、および/または
0°から前記層システム(10)上の前記表面法線(70)に対して少なくとも30°から最大45°までの間の上限値を有する限界視角(θ)までの視角(AOI)の第2の間隔における色相角(h)の変化の量(Δh)は、前記視角(AOI)の第2の間隔における前記色度(C*)の変化量(ΔC*)よりも小さく、前記限界視角(θ)における前記色度(C*)の量は少なくとも2であり、特に、前記第2の間隔における前記色相角(h)は、最大で20°変化し、好ましくは最大で15°変化し、および/または
0°および30°の前記限界値を有する前記視角(AOI)の間隔における明所反射力(Rv)は、最大で1.5%、好ましくは最大で1.2%であり、
0°および30°の前記限界値を有する前記視角(AOI)の間隔における暗所反射力(Rv´)は、最大で1.5%、好ましくは最大で1.2%である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記層システム(10)のスペクトル実測プロット(90)の決定のために、光学測定システム(104)内の前記層システム(10)においてスペクトル反射測定が実行される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記実測プロット(90)からの前記層システム(10)の残留反射色の色値(88)の計算は、前記残留反射色の輝度(L*)、色度(C*)、および色相角(h)が前記実測プロット(90)から決定されることをさらに含む、請求項2から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記シミュレーションコンピュータ(106)内でシミュレーション対象測定プロット(98)を前記実測プロット(90)に適合させることによる実データセット(Dat_ist)の決定は、
(i)前記層システム(10)の製造のための前記コーティング設備(102)において設定されたそれぞれの設備実層厚(d_ist_11、...、d_ist_20)を有する1つ以上の個別層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)からなる前記層システム(10)における実測プロット(90)として、縦座標値および横座標値を有する少なくとも1つのスペクトル測定プロットを検出するステップであって、前記1つ以上の個別層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)は、前記少なくとも1つのコーティング設備(102)の対象データセット(DAT_soll)にしたがって製造され、前記対象データセット(DAT_soll)は、前記1つ以上の個別層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)に割り当てられた、前記1つ以上の個別層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の少なくとも前記設備実層厚(d_ist_11、...、d_ist_20)を含む、ステップ(S200)と、
(ii)特に前記実測プロット(90)の重要なスペクトル点について、割り当て基準にしたがって前記層システム(10)の実測プロット(90)を、1つ以上の個別層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)から形成された、対象層システム(10_soll)に基づく、縦座標値および横座標値を有する対象データセット(DAT_soll)の対象測定プロット(92)に割り当てるステップであって、前記対象データセット(DAT_soll)は、前記それぞれの個別層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)に割り当てられた前記1つ以上の個別層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の既知の対象層厚(d_soll_11、...、d_soll_20)のうちの少なくとも1つを含む、ステップ(S202)と、
(iii)統計的な選択方法による割り当て基準について安定した結果が達成されるまで、シミュレーション実測プロット(94)における前記実測プロット(90)が少なくとも近似される、前記実測プロット(90)の少なくとも1つのスペクトル間隔(82)における前記1つ以上の個別層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の少なくともシミュレーション実層厚(g_ist_11、...、g_ist_20)の変化と、前記それぞれの個別層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)に割り当てられた少なくとも最終シミュレーション実層厚(g_ist_11、...、g_ist_20)を有する最終シミュレーション実データセット(Dat_ist_sim)の受信とによる反復方法にしたがって、前記シミュレーション実測プロット(94)を生成するステップであって、前記対象層厚(d_soll_11、...、d_soll_20)は、前記シミュレーション実層厚(g_ist_11、...、g_ist_20)の開始値として使用される、ステップ(S204)と、
(iv)統計的な選択方法による割り当て基準について安定した結果が達成されるまで、シミュレーション対象測定プロット(98)における前記対象測定プロット(92)が少なくとも近似される、前記対象測定プロット(92)の少なくとも1つのスペクトル間隔(82)におけるそれぞれの個別層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)に割り当てられた前記1つ以上の個別層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の少なくとも前記シミュレーション対象層厚(g_soll_11、...、g_soll_20)を変化させることと、前記それぞれの個別層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)に割り当てられた少なくとも最終シミュレーション対象層厚(g_soll_11、...、g_soll_20)を有する最終シミュレーション対象データセット(DAT_soll_sim)の受信とによる反復方法にしたがって、シミュレーション対象測定プロット(98)を生成するステップであって、前記シミュレーション実層厚(g_ist_11、...、g_ist_20)は、前記シミュレーション対象層厚(g_soll_11、...、g_soll_20)の開始値として使用される、ステップ(S206)と
をさらに含み、
前記反復方法は、1つ以上のスペクトル間隔(82、84、86)で実行され、各後続の間隔(84、86)は前記前の間隔(82、84)を含む、請求項2から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記実データセット(Dat_ist)を使用する前記層システム(10)のシミュレーションによる計算実層パラメータ(96)の決定は、
前記最終シミュレーション対象データセット(DAT_soll_sim)を有する前記最終シミュレーション対象層厚(g_soll_11、...、g_soll_20)から決定される、新しい設備実層厚(d_ist_11、...、d_ist_20)の決定のために少なくとも1つ以上の補正実層厚(d_korr_11、...、d_korr_20)を有するさらなる層システム(10_n+1)を堆積するための新しい設備データセット(Dat_ist+1)として、前記少なくとも1つのコーティング設備(102)の前記最終シミュレーション対象データセット(DAT_soll_sim)を提供するステップ(S208)をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13のうちの少なくとも1つに記載の方法を使用して層システム(10)を製造するためのコーティングシステム(100)であって、少なくとも
-光学素子(80)のための層システム(10)で基板(22)をコーティングするためのコーティング設備(102)と、
-前記コーティング設備(102)を制御し、シミュレーションコンピュータ(106)と通信するための制御コンピュータ(110)と、
-前記層システム(10)のスペクトル分解実測プロット(90)を決定するための光学測定装置(104)と、
-前記層システム(10)の光計算および最適化のためのシミュレーションソフトウェア(107)がインストールされたシミュレーションコンピュータ(106)と、
-対象データセット(Dat_soll)を記憶するための設計データベース(200)と、
-実測プロット(90)、実データセット(Dat_ist)、計算実層パラメータ(96)、および承認決定を記憶するためのファイリングデータベース(210)と、
-承認基準の記憶のための基準データベース(220)と、
-層システム(10)の承認のための決定システム(108)と
を含む、コーティングシステム(100)。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか一項に記載の層システム(10)を製造するための少なくとも1つのコーティングシステム(100)を動作させる方法のためのコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラム製品は、コンピュータシステム(106)上で実行可能であり、前記コンピュータシステム(106)に特に請求項1に記載の方法を実行させるプログラム命令を含む、少なくとも1つのコンピュータ可読記憶媒体を含み、前記方法は、
(i)コーティング設備(102)内で層システム(10)をコーティングするステップ(S100)と、
(ii)光学測定システム(104)における前記層システム(10)のスペクトル実測プロット(90)を決定するステップ(S102)と、
(iii)シミュレーション対象測定プロット(98)を実測プロット(90)に適合させることによって実データセット(Dat_ist)を決定するステップ(S110)と、
(iv)前記実データセット(Dat_ist)を使用する前記層システム(10)のシミュレーションによる前記シミュレーション対象測定プロット(98)から、計算実層パラメータ(96)として実層パラメータ(96)を決定するステップ(S112)と、
(v)前記実データセット(Dat_ist)および前記計算実層パラメータ(96)を少なくとも決定システム(108)に出力するステップ(S114)と、
(vi)品質要件データを提供するステップ(S118)と、
(vii)少なくとも前記実データセット(Dat_ist)、前記計算実層パラメータ(96)、および前記品質要件データの比較に基づいて、前記決定システム(108)における前記層システム(10)の承認(S122、S124)を決定するステップ(S120)と
を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項16】
特に請求項1に記載の、層システム(10)を製造するための少なくとも1つのコーティングシステム(100)を動作させるための方法を実行するためのコンピュータ可読プログラム命令を含む、データ処理プログラムを実行するためのデータ処理システム(124)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層システムを製造するためのコーティングシステムを動作させる方法に関する。本発明はまた、層システムを製造するためのコーティングシステム、コーティングシステムを動作させる方法のコンピュータプログラム製品、および層システムを製造するためのコーティングシステムを動作させる方法を実行するためのデータ処理システムにも関する。
【背景技術】
【0002】
基礎となるコーティングプロセスを有する製造環境で実施されるコーティング方法は、通常、コーティングバッチごとにばらつきを有する。これらのばらつきは、たとえば真空チャンバの壁上のコーティング材料の堆積物、コーティング設備にコーティング材料を投入するときのオペレータの影響、コーティング設備に設置された様々な構成要素の摩耗および断裂などにより、コーティング設備の状態がわずかに変化するという事実による。
【0003】
ほとんどのコーティングバッチについて測定された反射プロットは、通常、製造監視ツールに記憶される。これらのプロットは、Rm(平均反射力、Rv(視覚反射率)、およびそれらの色値に関して製造監視ツール内で評価されることが可能であり、対応する値を保存することができる。透過値、クロスカット値などのような他の入力値についても同様である。異なる層の変形例では、たとえば、品質関連変数は、承認の観点から間接的に決定されることが可能である。
【0004】
特許文献1から知られるものなど、干渉型反射防止コーティングを有する既知の光学素子は、通常、非特許文献1にしたがって計算される、およそ1%の光反射度を有する。残っている残留反射の色は、視角が変化したときに大きな変動を示す可能性がある。変動は、可視色域全体に及ぶ可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016/110339号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】標準DIN EN ISO13666:2013-10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、品質に関連する態様を含む、層システムを製造するためのコーティングシステムを動作させる方法を提供することである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、コーティングシステム、ならびにこのような方法を実行するためのコンピュータプログラム製品およびデータ処理システムを提供することである。
【0009】
目的は、独立請求項の特徴によって解決される。本発明の好ましい構成および利点は、さらなる請求項、説明、および図面から得られる。
【0010】
本発明は、光学素子の製造に特に有用である。本発明による方法は、光学素子およびコーティングの製造にも多層システムの堆積にも限定されないことが理解されるべきである。同様に、層システムが堆積される基板は、必要に応じて透明であっても不透明であってもよい。
【0011】
さらに、本発明は、基板上に堆積されて層厚を有する個別層からなる層システムに使用することができる。これは、個別層と基板との間に配置されている接着促進剤層および/または保護層で覆われている個別層を排除するものではない。可能な接着促進剤層および/または保護層は、1つの個別層を有する層システムの試験された特性に対して影響を及ぼさないか、または少なくとも有意な影響を及ぼさない。
【0012】
あるいは、層システムは、基板上で互いに重ねて堆積され、個別層が各々互いに同じであっても異なってもよい層厚を有する、いくつかの個別層から形成されることが可能である。ここでも、接着促進剤層は、基板に最も近い個別層と基板との間に配置されることが可能であり、および/または層システムは保護層で覆われることが可能である。可能な接着促進剤層および/または保護層は、いくつかの個別層を有する層システムの試験された特性に対して影響を及ぼさないか、または少なくとも有意な影響を及ぼさない。
【0013】
任意選択的に、基板と層システム、たとえば硬質塗料、プライマ塗料、緩衝塗料などのような従来の塗料システムとの間に、接着促進剤として中間層が提供されることも可能である。
【0014】
別途明記されない限り、本開示で使用される用語は、ドイツ規格協会(German Institute for Standardisation e.V)の標準DIN EN ISO13666:2013-10(EN ISO13666:2012(D/E))およびDIN EN ISO11664-4:2012-06(EN ISO11664-4:2011)の意味の範囲内で理解されるべきである。
【0015】
標準DIN EN ISO13666:2013-10のセクション4.2によれば、可視光、可視放射、または可視波長範囲という用語は、人間に光感覚を直接引き起こすことができる光放射を指す。可視放射は一般に、400nm~780nmの波長範囲を指す。
【0016】
本開示の範囲内で、可視放射は、好ましくは、人間の目の最大感度に対応する、400nmまたは460nm~700nmの波長範囲を指すことができる。同時に、フィルタ特性およびエッジ急峻度の構成のための設計の柔軟性を高めることができる。
【0017】
標準DIN EN ISO13666:2013-10のセクション15.1によれば、スペクトル反射力、反射力、または反射率という用語は、特定の波長(λ)の入射放射束に対するそれぞれの材料または表面またはコーティングによって反射されたスペクトル放射束の比を指す。
【0018】
この場合、反射率は、個々の部分層の反射率ではなく、そのいくつかの高屈折および低屈折部分層を有するコーティング全体の反射率を指す。
【0019】
本発明の第1の態様によれば、層システムを製造するためのコーティングシステムを動作させる方法であって、
(i)コーティング設備内で層システムをコーティングするステップと、
(ii)光学測定システムにおける層システムのスペクトル実測プロットを決定するステップと、
(iii)シミュレーション対象測定プロットを実測プロットに適合させることによって実データセットを決定するステップと、
(iv)実データセットを使用する層システムのシミュレーションによるシミュレーション対象測定プロットから、計算実層パラメータとして実層パラメータを決定するステップと、
(v)実データセットおよび計算実層パラメータを少なくとも決定システムに出力するステップと、
(vi)品質要件データを提供するステップと、
(vii)少なくとも実データセット、計算実層パラメータ、および品質要件データの比較に基づいて、決定システムにおける層システムの承認を決定するステップと
を含む方法が提案される。
【0020】
有利には、本発明による方法は、品質に関連する態様の下でコーティングシステムの動作の自己制御フィードバックモードを可能にする。
【0021】
決定システムは、別個のプロセッサとして設計されることが可能である。しかしながら、決定システムはまた、たとえば、別個のハードウェアとしてではなく、コーティングシステムの制御コンピュータ上のプロセスとして実装されることも可能である。
【0022】
実測プロットは、光学測定システム内で製造された層システムのスペクトル測定によって決定されることが可能である。
【0023】
コーティングシステムの実データセットはシミュレーション対象測定プロットを実測プロットに適合させることによって決定されるので、実データセットは、製造された層システムから逆算されたコーティングシステムのコーティングパラメータを含むことができる。
【0024】
実層パラメータは、実データセットを用いて層システムをシミュレートすることによって、シミュレーション対象測定プロットから計算されることが可能である。
コーティングシステムの対象データセットは、設計データベース内にあってもよく、製造されるコーティングの元の設計(コーティングパラメータ)を含むことができる。そして対象データセットは、1つ以上の個別層に割り当てられた1つ以上の個別層の少なくとも設備実層厚を含むことができる。
【0025】
対象測定プロットを有する対象データセットは、最適なコーティングのための対象データを包含する。スペクトル分解光学測定に加えて、このデータは、可視スペクトル範囲内の色値L*、C*、およびh*、および/または定義される任意の間隔における平均化または重み付けされた透過値および/または反射値などの定義された計算可能なスペクトル変数など、他の対象変数を含むこともできる。
【0026】
さらに、対象データセットは、小さいものから大きいものまで入れ子になったコーティング固有のスペクトル間隔を包含する。可能な限り最大の指定間隔は、最大スペクトル視野範囲を反映する。間隔の数は自由に選択することができる。対象データセットは、コーティングの光学レイアウトを明確に固定する特徴的なスペクトル点を包含する。
【0027】
対象測定プロットは、製造される層システムのスペクトル対象データを包含することができる。
対象層厚は、製造される層システムの対象層厚を含むことができる。
シミュレーション実データセットは、反復最適化方法で決定された層システムの個別層のうちの1つの少なくとも1つのシミュレーション実層厚、または層システムのいくつかの個別層のシミュレーション実層厚を含む。シミュレーション実データセットは、対象測定プロットへのシミュレーション対象測定プロットの逆算のために使用される。
【0028】
シミュレーション実測プロットは、少なくとも1つのシミュレートされたスペクトル測定プロットを含み、これは、実測プロットとして実行された光学測定との可能な限り最良の一致を表す。
シミュレーション実測プロットにおける実測プロットは、シミュレーション実層厚によって少なくとも近似される。
【0029】
シミュレーション対象データセットは、反復最適化方法で決定されたいくつかの個別層の少なくともシミュレーション対象層厚、またはシミュレーション対象セットにわたってオフセットした対象測定プロットとの可能な限り最良の一致を有する1つの個別層のシミュレーション対象層厚を含む。このデータセットの調整された1つ以上のシミュレーション対象層厚は、以下のコーティングバッチのプロセスパラメータを表す。
【0030】
この目的のために、シミュレーション対象データセットは、理想的な層および/または理想的なプロセスのためのシミュレートされた層システムの調整された計算パラメータ、理想的な屈折率値および理想的な堆積条件などの材料特性、ならびにコーティング形状、層厚制御などのような設備パラメータを含む。
【0031】
シミュレーション対象測定プロットは、対象測定プロットとシミュレーション実測プロットとの間の可能な限り最良の一致を表す少なくとも1つのシミュレートされたスペクトル測定プロットを含む。
【0032】
シミュレーション対象測定プロットにおける対象測定プロットは、シミュレーション対象層厚によって少なくとも近似される。
【0033】
設備データセットは、層システムがいくつかの個別層から形成される場合には、コーティング設備で調整されたいくつかの個別層の少なくとも実層厚、または層システムが1つの個別層のみから形成される場合には、コーティング設備で調整された1つの個別層の実層厚を含む。
【0034】
設備実層厚は、コーティング設備で調整された、製造される層システムの層厚であってもよい。
補正実層厚は、次の層システムを製造するために、最終シミュレーション対象データセットを用いて最終シミュレーション対象層厚から決定される新しい設備実層厚を表すことができる。
【0035】
承認基準は、たとえば、規格、特許出願、実用新案、登録特許などのような特許権であってもよい。特許権は、たとえば、請求項の特徴に基づく。請求項の特徴は、数値を導出することができ、自動的にチェックすることができる特徴を含む。承認基準は、たとえば、数値で表すことができる請求項の特徴を有する規格および/または特許明細書が記憶され得る基準データベースにある。
【0036】
しかしながら、承認基準は、スペクトル的に検証可能な変数、公差パラメータ、またはコーティングパラメータのばらつきによる指定された光学データの遵守など、他の特徴を有利に含むこともできる。
【0037】
したがって、承認基準は、特に、実データセットおよび/または計算実層パラメータおよび/または実測プロットとの比較に使用される、要件が導出される、少なくとも許容可能および/または非許容可能な層パラメータを含むことができる。
【0038】
品質要件データは承認基準に基づいて定義されることが可能であり、品質要件データは、層システムの対象データセットの公差値を含むことができる。
【0039】
このようにして、機器の状態のため、または測定が複雑すぎるために直接決定することができない承認決定のためのパラメータを使用することができる。こうして効率的なソフトウェアベースの品質保証が実行され得る。
【0040】
品質要件データは、特に基準データベースからロードされることが可能である。
任意選択的に、層システムの残留反射色の色値もまた実測プロットから計算されることが可能である。
【0041】
コーティングシステムは、たとえば光学素子のための層システムを製造するために好ましく使用されることが可能である。この場合、スペクトル測定プロットは、特に可視範囲内にある波長範囲にわたるスペクトル反射プロットの測定を含み、シミュレーション対象測定プロットは、同じ波長範囲内のシミュレートされたスペクトル反射プロットに対応する。
【0042】
コーティングの分野は、規制によってますます制限されており、これはとりわけ規格によって指定されるが、特許によっても指定される。たとえば、紫外スペクトル範囲内のコーティングの異なる特性を保護する多数の特許がある。
【0043】
新しいコーティングの開発段階の間、およびこれらの新しいコーティングのバッチを製造する製品ライフサイクル中のその後の両方において、これらの規制の準拠を監視することが重要である。これを監視することは、以前のように試験値をチェックおよび文書化するこことだけでなく、これらの規制の不適合の場合の開発段階中のコーティングまたは製造プロセスにおけるコーティングバッチの不承認も意味する。
【0044】
コーティングプロセス中の光学層の補正のために光学インラインまたはオンライン監視を用いて従来のコーティング設備で機能する既知の方法とは対照的に、本発明による方法は、次のコーティング実行(実行n+1)のために前のコーティング実行(実行n)のデータから擬似的に「死後」に補正提案を抽出することができる。加えて、個々の光学層の相互の厚さの比を維持することができる。
【0045】
加えて、対象プロットに対する「任意」補正はないが、既存の層厚比を考慮したインテリジェント補正があり、したがって、主な層特性が維持される。最後になったが、CE承認などのような法的根拠もまた有利に満たされ維持されることが可能である。
【0046】
本発明による方法は、ソフトウェアベースのプロセスによるこのような承認決定を有利に可能にする。この承認決定は、記憶された試験ルーチンに基づいて自動的に行われることが可能である。これらの試験ルーチンは、たとえば、規格、出願、実用新案、登録特許などのような特許権を含むことができる承認基準に基づいて、品質要件データをチェックする。
【0047】
特許権は、たとえば、請求項の特徴に基づく。数値を導出することができる請求項の特徴は、自動的にチェックされることが可能である。このソフトウェアベースの品質保証は、たとえば、規格および/または特許明細書が、数値的に表すことができるその請求項の特徴とともに記憶され得る基準データベースを含む。
【0048】
しかしながら、承認基準は、スペクトル的に検証可能な変数、公差パラメータ、またはコーティングパラメータのばらつきによる指定された光学データの遵守など、他の特徴を有利に含むこともできる。
【0049】
その層構造が知られている完成した層システムは、基準データベースに包含された特徴との適合性についてチェックされることが可能である。層システム上の反射測定など、測定値から導出することができない特徴、またはそのデータが入手不可能な特徴をチェックできるようにするために、ソフトウェアを使用して測定をシミュレートすることができる。ソフトウェアベースの品質保証は、このシミュレーションステップを含む。
【0050】
シミュレーションと既存の測定とを比較することにより、記述の信頼性を保証することができる。
【課題を解決するための手段】
【0051】
有利な実施形態によれば、方法は、少なくとも以下のステップも含むことができる。
(i)実測プロットから層システムの残留反射色の色値を計算するステップと、(ii)実測プロットおよび計算された色値をファイリングデータベースにファイルするステップと、(iii)層システムの完成したコーティングの設計を有する対象データセットを設計データベースおよび実測プロットからシミュレーションコンピュータにロードするステップと、(iv)シミュレーションコンピュータ内でシミュレーション対象測定プロットを実測プロットに適合させることによって実データセットを決定するステップと、(v)実データセットおよび計算実層パラメータを決定システムおよびファイリングデータベースに出力するステップと、(vi)少なくとも実データセット(Dat_ist)、計算実層パラメータ(96)、および品質要件データの比較のために使用される、基準データベースから層システムの承認基準をロードするステップと、(vii)承認の決定をファイリングデータベースにおいて文書化するステップ。
【0052】
たとえば、設計は、少なくとも:高屈折率の第1の個別層の第1の材料および低屈折率の第2の個別層の第2の材料と、個別層を有する所望の層パケットの数と、個別層の厚さの開始値とを含むことができる。
【0053】
本発明による方法の有利な実施形態によれば、承認基準は、特に、実データセットおよび/または計算実層パラメータおよび/または実測プロットとの比較に使用される、要件が導出される、少なくとも許容可能および/または非許容可能な層パラメータを含むことができる。
【0054】
このようにして、規制基準または規範基準は、承認プロセスに含まれることが可能である。特に、その仕様が設備関連パラメータから導出され得ないこれらの基準を使用することができる。
【0055】
本発明による方法の有利な実施形態によれば、品質要件データは、層システムの対象データセットの公差値を含むことができる。これにより、一定の光学測定値を有するコーティングバッチを製造すること、または設備パラメータが変化した場合に早い段階で適切な補正を行うことが可能である。
【0056】
本発明による方法の有利な実施形態によれば、決定システムにおける層システムの承認を決定するステップは、特に人工知能方法を使用することによる、自動的なソフトウェアベースの承認決定を含むことができる。本発明による方法は、ソフトウェアベースのプロセスを通じて高度な自動化による承認決定を有利に可能にする。承認決定は、記憶された試験ルーチンに基づいて自動的に行われることが可能である。試験ルーチンは、たとえば、絶えず変化する基準データベースに基づく知識に基づいて、自動的に適合され、さらに開発されることが可能である。
【0057】
本発明による方法の有利な実施形態によれば、コーティング設備内で層システムのコーティングを決定するステップは、少なくとも対象データセットと基準データベースからの承認基準との比較に基づいて行われることが可能である。
【0058】
このような承認決定は、開発中の設計プロセスにおいて早期に行われることが可能であり、これによって製造コストを節約することができ、これは後に使用することができない可能性がある。
【0059】
本発明による方法の有利な実施形態によれば、計算実層パラメータは、実測プロットの外側の波長範囲内、特にUV波長範囲内の反射値、および/または異なる入射角での反射値を含むことができる。このような手順は、承認基準に基づく品質要件データの導出された変数に基づいている。
【0060】
このようにして、機器の状態のため、または測定が複雑すぎるために直接決定することができない承認決定のためのパラメータを使用することができる。こうして効率的なソフトウェアベースの品質保証が実行され得る。
【0061】
本発明による方法の有利な実施形態によれば、コーティングシステム内の層システムのコーティングは、基板の少なくとも1つの表面上に堆積されることを含むことができる。
【0062】
ここで、層システムは、少なくとも4つの連続する層パケットのスタックを含むことができ、各層パケットは、1対の第1および第2の個別層を含み、第1の個別層は各々第1の光学的厚さを有し、第2の個別層は各々、第1の光学的厚さとは異なる第2の光学的厚さを有する。基板により近いそれぞれの第1の個別層の屈折率は、基板からより離れたスタックのそれぞれの第2の個別層の屈折率よりも大きくてもよい。
【0063】
特に、干渉型層システムは、反射低減または反射増強層システムとして設計されることが可能である。
【0064】
層システムは、残留反射色の輝度L*、色度C*、および色相角hを有することができ、層システム上の表面法線に対して0°および30°の限界値を有する視角の間隔における残留反射色の色相角hの変化量Δhは、視角の間隔における色度C*の変化量ΔC*よりも小さい。
【0065】
ここで、以下のステップが実行される。
-少なくとも、高屈折率の第1の個別層の第1の材料および低屈折率の第2の個別層の第2の材料と、個別層を含む所望の層パケットの数と、個別層の厚さの開始値とを含む層設計を定義するステップと、
-少なくとも0°および30°の限界値を有する視角の間隔の限界値における、輝度L*、色度C*、および色相角hを含む目標色値を定義するステップと、
-最適化目標に達するまで個別層厚を変化させるための最適化方法を実行するステップ。
【0066】
間隔の限界値における目標色値は、同じになるかまたは類似するように有利に選択されることが可能である。
特に、異なる残留反射色の色相角の最大偏差を指定することができる。
層システムは、有利には、4つまたは5つの層パケットを有することができる。5つより多くの層パケットが提供されることも可能である。
【0067】
色度は、彩度と呼ばれることも可能である。色相角は、色角度と呼ばれることも可能である。
有利には、部分層の層厚を変化させることにより、色安定層システムを提供することができ、その残留反射色は、より大きい視角の変化があったとしても、変化しないかまたはほんのわずかしか変化しない。
【0068】
好ましくは、色安定残留反射色は、広い視角範囲にわたって色度と色相角との適切な組合せを通じて達成することができる。
【0069】
基板により近い、スタック内の層のスタックの第1の部分層は、同じ第1の材料から形成されることが可能である。基板からより離れた第2の部分層もまた、第1の部分層の第1の材料とは異なる同じ第2の材料から形成されることが可能である。
【0070】
この場合、第2の部分層のものに匹敵する屈折特性を有する第3の材料で作られた機能層が、第1の部分層と第2の部分層との間の基板から最も離れた層パケット内に配置されることを前提とすることができる。計算目的のために、機能層は、任意選択的に第2の部分層に割り当てられることが可能である。あるいは、スタック内の第1の部分層の材料を変化させることもできる。同様に、第2の部分層が形成される材料がスタック内で変化することを、代替的に前提とすることができる。
【0071】
有利には、視角の上限における色度は、最大で16の値を有することができ、および/または視角の間隔内の色度の最大値は、最大で16である。これにより、色相角の縁部だけでなく、残留反射の高い色恒常性を有する全ての反射色の実現が可能になる。
【0072】
本発明による方法の有利な実施形態によれば0°および30°の限界値を有する視角の間隔における色相角hは、最大で15°変化することができ、好ましくは最大で10°変化することができ、
および/または0°から層システムの表面法線に対して少なくとも30°から最大45°までの間の上限値を有する限界視角θまでの視角の第2の間隔における色相角hの変化の量Δhは、視角の第2の間隔における色度C*の変化量ΔC*よりも小さくてもよく、限界視角θにおける色度C*の量は少なくとも2であってもよい。
特に、第2の間隔における色相角hは、最大で20°変化することができ、好ましくは最大で15°変化することができ、
および/または0°および30°の限界値を有する視角の間隔における明所反射力Rvは、最大で1.5%、好ましくは最大で1.2%であってもよく、
および/または0°および30°の限界値を有する視角の間隔における暗所反射力Rv´は、最大で1.5%、好ましくは最大で1.2%であってもよい。
明所反射力は、昼間視力での人間の目の分光感度を考慮しており、暗所反射力は、夜間視力での人間の目の分光感度を考慮している。
光学系の残留反射の色印象は、広範囲の視角にわたって観察者に取って完全にまたはほとんど変化しないままである。
色安定残留反射色は、視角により大きな変化があったとしても有利に得られる。
第1の部分層は、高屈折材料から有利に形成されることが可能である。
【0073】
好ましくは、第1の部分層は、化合物Ta、TiO、ZrO、Al、Nd、Pr、PrTi0、La、Nb、YO3、HfO、InSn酸化物、Si、MgO、CeO、ZnS、および/またはこれらの修飾物、特に、これらの他の酸化状態および/またはシランおよび/またはシロキサンとのこれらの混合物のうちの1つ以上からなることができる。
【0074】
これらの材料は、眼鏡レンズのコーティング用など、光学素子で使用するための高い古典的な屈折率を有する材料として知られている。
しかしながら、高屈折部分層は、部分層全体の屈折率が1.6超、好ましくは少なくとも1.7、より好ましくは少なくとも1.8、特に好ましくは少なくとも1.9である限り、SiOまたは他の低屈折材料も含有することができる。
第2の部分層は、低屈折材料から有利に形成されることが可能である。
【0075】
低屈折部分層は、純粋な形態の、またはそのフッ素化誘導体を有するAl、シラン、シロキサンが添加された材料MgF、SiO、SiO、SiOのうちの少なくとも1つを含むことができる。しかしながら、低屈折部分層はまた、SiOとAl2との混合物を含むこともできる。低屈折部分層は好ましくは、少なくとも80重量%のSiO、最も好ましくは少なくとも90重量%のSiOを含有することができる。
【0076】
低屈折部分層の屈折率は、好ましくは最大で1.55、好ましくは最大で1.48、最も好ましくは最大で1.4である。
屈折率に関するこの情報は、25°Cの温度および550nmの使用される光強度の基準波長での通常条件に関する。
【0077】
異なる屈折率を有する層状材料の典型的な例は、1.46の屈折率を有する二酸化ケイ素(SiO)、1.7の屈折率を有する酸化アルミニウム(AI)、2.05の屈折率を有する二酸化ジルコニウム(ZrO)、2.1の屈折率を有する酸化プラセオジムチタン(PrTiO)、各々2.3の屈折率を有する酸化チタン(TiO)および硫化亜鉛(ZnS)である。これらの値は、コーティング方法および層厚に応じて最大10%まで変化する可能性のある平均値を表す
【0078】
通例の光学ガラスは、1.5から2.0の間の屈折率を有する。したがって、MgF、SiOなどの1.5未満の屈折率を有する層状材料は、光学ガラスと組合せて低屈折材料と呼ばれ、ZrO、PrTiO、TiO、ZnSなどの2.0を超える屈折率を有する層状材料は、光学ガラスと組み合わせて高屈折材料と呼ばれる。
【0079】
第1および第2の部分層の高屈折材料と低屈折材料との間の屈折率の差は、コーティング方法および層厚に応じて、好ましくは少なくとも0.2から少なくとも0.5である。
【0080】
このタイプのコーティングに使用される材料は、たとえばPVD法(PVD=物理蒸着(Physical Vapor Deposition))またはCVD法(CVD=化学蒸着(Chemical Vapor Deposition))を使用して光学において基板上に堆積される典型的な材料である。
【0081】
光学素子の好ましい構成によれば、少なくとも第1の部分層は同じ第1の材料から形成されることが可能であり、第2の部分層は、少なくとも主に同じ第2の材料から形成されることが可能である。
【0082】
任意選択的に、第2の部分層は、同じ第2の材料から形成され、基板から最も離れた層パケット内でのみ、第1の部分層と第2の部分層との間に機能層を有することができる。機能層は、低屈折性であってもよく、必要であれば、計算目的のために第2の部分層に追加されてもよい。
【0083】
本発明による方法の有利な実施形態によれば、層システムのスペクトル実測プロットの決定のために、光学測定システム内の層システム上でスペクトル反射測定が実行されることが可能である。スペクトル反射測定から、さらに適切な層パラメータが、シミュレーション計算によって好ましく決定されることが可能である。
【0084】
本発明による方法の有利な実施形態によれば、実測プロットからの層システムの残留反射色の色値の計算は、残留反射色の輝度L*、色度C*、および色相角hが実測プロットから決定されることを、さらに含むことができる。
【0085】
本発明による方法の有利な実施形態によれば、シミュレーションコンピュータ内でシミュレーション対象測定プロットを実測プロットに適合させることによる実データセットの決定は、
(i)層システムを製造するためのコーティング設備において設定されたそれぞれの設備実層厚を有する1つ以上の個別層からなる層システムにおける実測プロットとして、縦座標値および横座標値を有する少なくとも1つのスペクトル測定プロットを検出するステップであって、1つ以上の個別層は、少なくとも1つのコーティング設備の対象データセットにしたがって製造され、対象データセットは、1つ以上の個々のものに割り当てられた、1つ以上の個別層の少なくとも設備実層厚を含む、ステップと、
(ii)特に実測プロットの重要なスペクトル点について、割り当て基準にしたがって層システムの実測プロットを、1つ以上の個別層から形成された、対象層システムに基づく、縦座標値および横座標値を有する対象データセットの対象測定プロットに割り当てるステップであって、対象データセットは、それぞれの個別層に割り当てられた1つ以上の個別層の既知の対象層厚のうちの少なくとも1つを含む、ステップと、
(iii)統計的な選択方法による割り当て基準について安定した結果が達成されるまで、シミュレーション実測プロットにおける実測プロットが少なくとも近似される、実測プロットの少なくとも1つのスペクトル間隔における1つ以上の個別層の少なくともシミュレーション実層厚の変化と、それぞれの個別層に割り当てられた少なくとも最終シミュレーション実層厚を有する最終シミュレーション実データセットの受信とによる反復方法にしたがって、シミュレーション実測プロットを生成するステップであって、対象層厚は、シミュレーション実層厚の開始値として使用される、ステップと、
(iv)統計的な選択方法による割り当て基準について安定した結果が達成されるまで、シミュレーション対象測定プロットにおける対象測定プロットが少なくとも近似される、対象測定プロットの少なくとも1つのスペクトル間隔におけるそれぞれの個別層に割り当てられた1つ以上の個別層の少なくともシミュレーション対象層厚を変化させることと、それぞれの個別層に割り当てられた少なくとも最終シミュレーション対象層厚を有する最終シミュレーション対象データセットの受信とによる反復方法にしたがって、シミュレーション対象測定プロットを生成するステップであって、シミュレーション実層厚は、シミュレーション対象層厚の開始値として使用される、ステップと
をさらに含むことができ、
【0086】
反復方法は、1つ以上のスペクトル間隔で実行され、各後続の間隔は前の間隔を含む。
実測プロットの重要な点は、試験されている層システムの実測プロットと一致する層システムの目標設計を見出し、次いで測定プロットの水平および/または横方向変位の形態の第1の近似にこれを使用するために、有利に使用されることが可能である。
【0087】
対象測定プロットを有する対象データセットは、最適なコーティングのための対象データを包含する。スペクトル分解光学測定に加えて、このデータは、可視スペクトル範囲内の色値L*、C*、およびh*、および/または定義される任意の間隔における平均化または重み付けされた透過値および/または反射値などの定義された計算可能なスペクトル変数など、他の対象変数を含むこともできる。スペクトル的に計算可能な変数の例は、視界、ならびにIR-A/IR-Bおよび/またはUV-A/UV-B範囲であってもよい。
【0088】
さらに、対象データセットは、小さいものから大きいものまで入れ子になったコーティング固有のスペクトル間隔を包含する。最大の指定間隔は、最大スペクトル視野範囲を反映する。間隔の数は自由に選択することができる。対象データセットは、コーティングの光学レイアウトを明確に固定する特徴的なスペクトル点を包含する。
【0089】
実測プロットは、少なくとも実行された光学測定のデータを含む。設備データセットは、層システムがいくつかの個別層から形成される場合には、コーティング設備で調整されたいくつかの個別層の少なくとも実層厚、または層システムが1つの個別層のみから形成される場合には、コーティングシステムで調整された1つの個別層の実層厚を含む。
【0090】
シミュレーション実測プロットは、少なくとも1つのシミュレートされたスペクトル測定プロットを含み、これは、実測プロットとして実行された光学測定との可能な限り最良の一致を表す。
【0091】
実シミュレーションデータセットは、反復最適化方法で決定された層システムの個別層のうちの1つの少なくとも実シミュレーション層厚、または層システムのいくつかの個別層の実シミュレーション層厚を含む。
【0092】
シミュレーション対象測定プロットは、対象測定プロットとシミュレーション実測プロットとの間の可能な限り最良の一致を表す少なくとも1つのシミュレートされたスペクトル測定プロットを含む。
【0093】
シミュレーション対象データセットは、反復最適化方法で決定されたいくつかの個別層の少なくともシミュレーション対象層厚、またはシミュレーション対象データセットにわたってオフセットした対象測定プロット間の可能な限り最良の一致を有する1つの個別層のシミュレーション対象層厚を含む。このデータセットの調整された1つ以上のシミュレーション対象層厚は、次のコーティングバッチのプロセスパラメータを表す。
【0094】
この目的のために、シミュレーション対象データセットは、理想的な層および/または理想的なプロセスのためのシミュレートされた層システムの調整された計算パラメータ、理想的な屈折率値および理想的な堆積条件などの材料特性、ならびにコーティング形状、層厚制御などのようなシステムパラメータを含む。
【0095】
一方では、シミュレーション対象データセットは、実測プロットとシミュレーション実測プロットとの間の光学的差異を相関させ、コーティングバッチごとの形態学的および技術的偏差などのシステム関連偏差、ならびに取り扱いの差異などの非システム関連偏差を考慮に入れる。他方では、シミュレーション実データセットは、対象測定プロットへのシミュレーション対象測定プロットの逆算のために使用される。
【0096】
本発明による方法は、コーティング設備上に堆積された、層システムの実測プロットが、シミュレーションコンピュータのシミュレーションソフトウェアにロードされることを前提とする。
【0097】
前のステップからのスケーリングされた暫定的な1つ以上の層厚に基づいて、最適化方法は、限られたスペクトル間隔で開始する。この限られたスペクトル間隔は、コーティングに固有であり、対象データセットの間隔リストからの第1の候補として対象測定プロットに割り当てられた対象データセットに記憶される。
【0098】
この最適化方法の一部として、層システムが単層から形成されるときは1つの個別層の層厚が、または層システムがいくつかの個別層から形成されるときはいくつかの個別層の層厚が決定され、これは、第1の近似において基礎となるシミュレーション対象測定プロットを有する実測プロットを記述する。
【0099】
このステップの後、1つ以上の層厚の第2の前提的なセットが提供される。制限が必要ないとき、この第2のシミュレーション実データセットは、第1の暫定的なシミュレーション実データセットと同一である。
【0100】
ここで、最適化方法は、対象データセットの間隔リストからのさらなるスペクトル間隔ごとに適用される。現在実行している最適化方法は、前の最適化方法のシミュレーション実データセットのセットを常に使用する。
【0101】
典型的には、適合されたシンプレックスアルゴリズムを最適化方法として使用することができるが、他の既知のシミュレーション方法もまた適切であろう。このような最適化方法のシミュレーションソフトウェアは、様々な製造業者から市販されており、たとえば市販のシミュレーションソフトウェア「Essential MacLeod」、またはたとえば光学層を生成するための他の既知のシミュレーションソフトウェアがある。
【0102】
全ての間隔反復が実行されると、実測プロットのスペクトルデータが良好に一致して近似され、第1の最終シミュレーション実測プロット、およびシミュレーション実層厚の対応するセットもある。これら2セットのパラメータは、一時的に記憶されるシミュレーション実データセットを形成する。
【0103】
これらのステップは、統計的な選択方法が安定した結果を生み出すまで繰り返される。プロット全体は好ましくは、この目的のために、特に、たとえばカイ二乗偏差などに関して考慮されることが可能である。
【0104】
本発明による方法の有利な実施形態によれば、実データセットを使用する層システムのシミュレーションによる計算実層パラメータの決定は、最終シミュレーション対象データセットを有する最終シミュレーション対象層厚から決定される、新しい設備実層厚を決定するための少なくとも1つ以上の補正実層厚を有するさらなる層システムを堆積するための新しい設備データセットとして、少なくとも1つのコーティング設備の最終シミュレーション対象データセットを提供するステップをさらに含むことができる。
【0105】
実測プロットのスペクトルデータが可能な限り良好に一致して近似されると、最終シミュレーション対象データセットは、1つ以上のシミュレーション実層厚で生成されることが可能である。新しい設備データセットを用いると、元々望まれていた対象データセットにより良く対応するさらなる層システムを、コーティング設備上で製造することができる。
【0106】
本発明の、特に独立したさらなる態様によれば、上述の方法を使用して層システムを製造するためのコーティングシステムであって、少なくとも
光学素子のための層システムで基板をコーティングするためのコーティング設備と、コーティング設備を制御し、シミュレーションコンピュータと通信するための制御コンピュータと、層システムのスペクトル分解実測プロットを決定するための光学測定装置と、層システムの光計算および最適化のためのシミュレーションソフトウェアがインストールされたシミュレーションコンピュータと、対象データセットを記憶するための設計データベースと、実測プロット、実データセット、計算実層パラメータ、および承認決定を記憶するためのファイリングデータベースと、承認基準の記憶のための基準データベースと、層システムの承認のための決定システムと
を含むコーティングシステムが提案される。
【0107】
このようにして、コーティングシステムは、上述のような本発明による方法によるコーティングシステムを効果的に動作させるために必要とされる全ての必要な構成要素を含む。その結果、層システムを製造するためのコーティング設備を、より効果的かつ迅速に動作させることができる。これは、コーティング設備の動作中に相当な節約の可能性をもたらす。
【0108】
コーティング設備は、たとえば、様々なコーティング源、スクリーン、ガラスホルダ、ポンプなど、基板をコーティングするための関連する集合体を有する真空チャンバを含む。
【0109】
有利には、コーティングシステムは、本発明の第1の態様による方法を使用して、自己制御フィードバックモードで動作されることが可能である。
【0110】
コーティング設備の制御コンピュータは、コーティング設備でコーティングプロセスを制御し、コーティング設備との通信を引き継ぐ。このコンピュータは、少なくとも自動データ交換のためのネットワーク接続を含むことができる。
【0111】
光学基板および適用された層システムからなる光学素子を反射する、スペクトル分解測定信号は、光学測定装置に記録されることが可能である。このいわゆる実測プロットは、データタプルからなる二次元データセットとして、たとえばナノメートル単位の波長、%単位の反射率として提供されることが可能である。これらのデータは、「スペクトルデータ」と呼ばれる。
【0112】
シミュレーションソフトウェアは、シミュレーションコンピュータにインストールされる。
シミュレーションソフトウェアは、光学測定装置によって生成されたデータセットを少なくとも読み込むことができるコンピュータプログラムである。シミュレーションソフトウェアは、コーティング設備からデータセットを読み込んで出力することもできる。
【0113】
ソフトウェアは、設計データベースからの入力によって動作し、たとえば設計データベースから対象データセットを読み出して、新たに計算されたシミュレーションデータセットをファイリングデータベースにファイルする。さらに、ソフトウェアは、市販のシミュレーションプログラム、たとえば「Essential MacLeod」に見られるように、少なくとも1つの任意の最適化/適合アルゴリズムを実装する。
【0114】
各コーティング設備および各コーティングプロセスについて得られたシミュレーション対象データセットは、ファイリングデータベースは、ファイリングデータベースに記憶され、後の時点で再び読み出されることが可能である。加えて、データベースは、全ての記憶されたコーティングプロセスの関連する対象データセットを包含する。
【0115】
関連する承認基準は、最新の規制に応じた基準データベース、特許データベースの検索、開発および販売の局面に応じた定義などに記憶される。
【0116】
別個のプロセッサとして設計され得る決定システムは、少なくとも実データセット、計算実層パラメータ、および品質要件データの比較に基づいて層システムのリリースに関する決定を行い、ファイリングデータベース内で決定を文書化する。
【0117】
しかしながら、決定システムはまた、たとえば、別個のハードウェアとしてではなく、コーティングシステムの制御コンピュータ上のプロセスとして実装されることも可能である。
【0118】
本発明の、特に独立したさらなる態様によれば、層システムを製造するためのコーティングシステムを動作させる方法のためのコンピュータプログラム製品が提案され、コンピュータプログラム製品は、コンピュータシステム上で実行され、コンピュータシステムに方法を実行させるプログラム命令を含む、少なくとも1つのコンピュータ可読記憶媒体を含み、方法は、
(i)コーティング設備内で層システムをコーティングするステップと、(ii)光学測定システムにおける層システムのスペクトル実測プロットを決定するステップと、(iii)シミュレーション対象測定プロットを実測プロットに適合させることによって実データセットを決定するステップと、(iv)実データセットを使用する層システムのシミュレーションによるシミュレーション対象測定プロットから、計算実層パラメータとして実層パラメータを決定するステップと、(v)実データセットおよび計算実層パラメータを少なくとも決定システムに出力するステップと、(vi)品質要件データを提供するステップと、(vii)少なくとも実データセット、計算実層パラメータ、および品質要件データの比較に基づいて、決定システムにおける層システムの承認を決定するステップと
を含む。
品質要件データは、特に基準データベースからロードされることが可能である。
任意選択的に、層システムの残留反射色の色値もまた実測プロットから計算されることが可能である。
【0119】
加えて、計算された反射プロット、特に角度依存の反射プロットが生成され、決定に使用されることが可能である。計算実層パラメータは、実測プロットの外側の波長範囲内、特にUV波長範囲内の反射値、および/または異なる入射角での反射値を含むことができる。このような手順は、承認基準に基づく品質要件データの導出された変数に基づいている。このようにして、機器の状態のため、または測定が複雑すぎるために直接決定することができない承認決定のためのパラメータを使用することができる。
【0120】
コンピュータプログラム製品は、モジュール方式で層システムを製造するためのコーティングシステムを動作させるためのソフトウェアを提供することができ、広範なデータ処理システムにアクセス可能にすることができる。コンピュータプログラム製品は、コーティング設備の制御プログラムと結合されたプロセスレシピプログラムとして有利に使用されることが可能である。
【0121】
有利には、コーティングシステムまたはコーティング設備のシステムは、本発明の第1の態様による方法を使用して、コンピュータプログラム製品によって自己制御フィードバックモードで動作されることが可能である。
【0122】
本発明の、特に独立したさらなる態様によれば、データ処理プログラムを実行するためのデータ処理システムが提案され、これは、特に上述のような、層システムを製造するための少なくとも1つのコーティングシステムを動作させるための方法を実行するためのコンピュータ可読プログラム命令を含む。
【0123】
データ処理システムは、好ましくは、シミュレーションコンピュータ、ならびに設計データベース、ファイリングデータベース、基準データベースを含むことができるが、任意選択的に、コーティング設備の制御コンピュータも含むことができる。
【0124】
有利には、本発明の第1の態様による方法を使用するデータ処理システムによって、コーティングシステムまたはコーティング設備のシステムは、自己制御フィードバックモードで動作されることが可能である。
【0125】
さらなる利点は、以下の図面の説明から得られる。図は、本発明の例示的な実施形態を示す。図は、本発明の例示的な実施形態を示す。図、説明、および請求項は、組み合わせた多数の特徴を含む。当業者はまた、便宜上、特徴を個別に考慮し、これらをさらに有意義な組み合せに組み合わせる。
以下に例示的に示す。
【図面の簡単な説明】
【0126】
図1】本発明の例示的な実施形態による、光学素子の層システムを製造するためのコーティングシステムを動作させるための方法のシーケンスである。
図2】本発明の例示的な実施形態による、コーティングシステムのブロック図である。
図3】本発明の方法による承認基準を有する表である。
図4】本発明の例示的な実施形態による、基板上に5つの層パケットの層システムを有する光学素子を示す。
図5】本発明の方法による、シミュレーション対象測定プロットを実測プロットに適合させることによって実データセットを決定するためのフローチャートである。
図6】280nm~800nmまでの波長範囲における実測プロットと対象測定プロットとの比較による光の垂直入射を用いた、本発明による層システムの反射率プロットである。
図7図6の反射率プロットの拡大図である。
図8】対象測定プロットとスケーリングされたシミュレーション対象測定プロットとの比較による光の垂直入射を用いた層システムの反射率プロットである。
図9】380nm~580nmの第1のスペクトル間隔に適合された対象測定プロットとシミュレーション対象測定プロットとの比較による光の垂直入射を用いた層システムの反射率プロットである。
図10】380nm~780nmのより大きいスペクトル間隔に適合された対象測定プロットとシミュレーション対象測定プロットとの比較による光の垂直入射を用いた層システムの反射率プロットである。
図11】280nm~800nmまでの全波長範囲にわたって適合された実測プロットとシミュレーション対象測定プロットとの比較による光の垂直入射を用いた層システムの反射率プロットである。
【発明を実施するための形態】
【0127】
図中、同じタイプの、または同じ効果を有する構成要素は、同じ参照符号で指定される。図は、単に例を示しており、限定として理解されるべきではない。
【0128】
以下で「左」、「右」、「上」、「下」、「前」、「背後」、「後」などの用語と共に使用される方向を示す用語は、単に図の理解を向上させるために役立つものであり、決して一般性を限定するように意図するものではない。図示される構成要素および要素、その設計および使用は、当業者の考慮事項に応じて変化することができ、それぞれの用途に適合することができる。
【0129】
図1は、本発明の例示的な実施形態による、光学素子80の層システム10を製造するためのコーティングシステム100を動作させるための方法のシーケンスを示す。
【0130】
ステップS100において、方法は、コーティング設備102内の層システム10のコーティングを含む。システム構成要素は、図2に示されるコーティングシステム100のブロック図に見ることができる。
【0131】
コーティングが完了するとすぐに、ステップS102において、層システム10のスペクトル実測プロット90が光学測定システム104内で決定されることが可能である。この目的のために、コーティングされた光学素子80がコーティング設備から取り出され、実測プロット90を記録するためにそこでスペクトル反射が測定される。たとえば、光学素子80は、図4において層システム10として指定されている。例示的な実測プロット90が、図6および図7に示されている。
【0132】
任意選択的に、層システム10の残留反射色の色値88は、ステップS104において実測プロット90から決定されることが可能であり、実測プロット90および計算された色値88は、ステップS106においてファイリングデータベース210にファイルされることが可能である。残留反射色の色値88は、規格にしたがってスペクトル反射(λ,R(λ))のデータから計算される。たとえば、残留反射色の輝度L*、色度C*、および色相角hは、実測プロットから決定される。
【0133】
次にステップS108において、設計データベース200および実測プロット90からの層システム10の対象データセットDat_sollがシミュレーションコンピュータ106にロードされる。実測プロット90は、対象プロットとしてロードされることが可能である。加えて、完成したコーティングの設計が、対象データセットDat_sollとして設計データベース200で照会される。
【0134】
ステップS110において、シミュレーション対象測定プロット98をシミュレーションコンピュータ106内で実測プロット90に適合させることによって、実データセットDat_istが決定される。このようなシミュレーション対象測定プロット98は、たとえば、図8から図10に示されている。層システム10の基礎となる設計の物理的な個別層厚は、実測プロット90が可能な限り最良の方法で満たされるまで、妥当な限界内で変化する。
【0135】
ステップS112において、実データセットDat_istを用いて層システム10をシミュレートすることによって、シミュレーション対象測定プロット98から計算実層パラメータ96として実層パラメータ96が決定される。ここでシミュレーションは、異なる入射角での反射プロット、分光計の測定範囲外のスペクトル範囲での反射など、実測プロット90として元の反射測定からアクセス不可能な追加のパラメータを取得するために使用されることが可能である。したがって、計算実層パラメータ96は、たとえば、実測プロット90の外側の波長範囲内、特にUV波長範囲内の反射値、および/または異なる入射角での反射値を含むことができる。
【0136】
次に、ステップS114において、実データセットDat_ist、計算実層パラメータ96が、決定システム108およびファイリングデータベース210に出力される。スペクトル反射の生データ(λ,R(λ,))、ならびにそこから計算された色値は、ファイリングデータベース210に記憶される。
【0137】
ステップS116において、層システム10の承認基準が、基準データベース220から決定システム108内にロードされる。ステップS118において、決定システム108には、特に基準データベース220から決定システム108内にロードされた、品質要件データが提供される。基準データベース220は、全てのコーティングについて正または負の基準を含むことができる。
【0138】
承認基準は、特に、実データセットDat_istおよび/または計算実層パラメータ96および/または実測プロット90との比較に使用されることが可能な、要件が導出される、許容可能および/または非許容可能な層パラメータを含むことができる。
品質要件データは、層システム10の対象データセットDat_sollの公差値も含むことができる。
【0139】
次に、ステップS120において、少なくとも実データセットDat_ist、計算実層パラメータ96、および品質要件データの比較に基づいて、決定システム108において層システム10の承認S122、S124について決定され、たとえば、S122は許可を意味することができ、S124は拒絶を意味することができる。計算されたパラメータは、目標値および定義された公差と比較されることが可能である。コーティングバッチが定義された品質要件データに対応するか否かについて、自動的なソフトウェアベースの承認決定が続く。
【0140】
したがって、決定システム108における層システム10の承認に関する決定は、便宜上、自動的なソフトウェアベースの承認決定を含むことができる。特に、承認は、人工知能方法を使用して行うことができる。
【0141】
次に、決定S122、S124は、ファイリングデータベース210内で文書化される。
あるいは、決定システム108は、少なくとも対象データセットDat_sollと基準データベース220からの承認基準との比較に基づいて、コーティング設備102内でコーティングが実行される前に、計画された層システム10が既存の承認基準に基づいて承認を受信する機会を有するか否かを事前に決定することができる。
【0142】
図2は、本発明の例示的な実施形態による、コーティングシステム100のブロック図を示す。コーティングシステム100は、図1に記載された方法で層システム10を製造するために使用される。
【0143】
コーティングシステム100は、基板22を光学素子80のための層システム10でコーティングするためのコーティング設備102と、さらに、コーティング設備102を制御し、シミュレーションコンピュータ106と通信するための制御コンピュータ110とを含む。
【0144】
コーティングされた光学素子80は、層システム10のスペクトル分解実測プロット90を決定するために、光学測定装置104に搬送されることが可能である。
設計データベース200は、層システム10からの対象データセットDat_sollを記憶するために使用される。
コーティングシステム100は、層システム10の光計算および最適化のためのシミュレーションソフトウェア107がインストールされるシミュレーションコンピュータ106をさらに含む。
【0145】
光学素子80のための層システム10を製造するための少なくとも1つのコーティング設備102を動作させるための本発明の第1の態様による方法のためのコンピュータプログラム製品は、シミュレーションコンピュータ106上に実装され、コンピュータプログラム製品は少なくとも1つのコンピュータ可読記憶媒体を含み、これは、コンピュータシステム106上で実行可能であり、コンピュータシステム106に方法を実行させる、プログラム命令を含む。
【0146】
コンピュータプログラム製品は、特に、データ処理システム124のシミュレーションコンピュータ106上で本発明の第1の態様による方法を実行するための、本発明の独立した態様と見なすことができる。
【0147】
少なくともシミュレーションコンピュータ106およびシミュレーションソフトウェア107を含むデータ処理システム124は、光学素子80のための層システム10を製造するためのコーティング設備102を動作させるための方法を実行するためのコンピュータ可読プログラム命令を含む、データ処理プログラムを実行するために使用される。
【0148】
データ処理システム124は、シミュレーションコンピュータ106を使用する本発明の第1の態様による方法を実行するための、本発明の独立した態様と見なすことができる。
ファイリングデータベース202は、実測プロット90、実データセットDat_ist、計算実層パラメータ96、および承認決定を記憶するために使用される。
【0149】
最後に、コーティングシステム100には、層システム10の承認のために決定システム108によってロードされ得る、承認基準を記憶するための基準データベース220がある。決定システム108は、これらの承認基準に基づいて製造された層システム10を承認すべきか否かを決定する。承認基準および品質要件データの両方を、基準データベース220にファイルすることができる。
【0150】
図3は、本発明の方法による承認基準を有する表を示す。個々の承認基準は、たとえば1.1、1.2、1.3、1.4など、表中で連続的に番号付けされている。各基準について、基準を説明するための長文T1~T4、および数値的に検証可能な形態N1からN4ならびに基準が参照する要件R1からR4が列挙されている。
【0151】
たとえば、基準は、光学応用の特許明細書の個々の請求項の特徴を含むことができ、これらは以下の例に列挙されている。数値的にチェック可能な形態の個々の特徴は、簡単な比較アルゴリズムを使用して自動的にチェックされることが可能である。





【表1】






図4は、本発明の例示的な実施形態による、基板22上、たとえば眼鏡レンズ上に層システム10を有する光学素子80の一例を示す。干渉型層システム10は、基板22の少なくとも1つの表面24上に配置される。層システム10は、本発明の第1の態様による自己制御およびフィードバック方法を用いて有利に製造されることが可能である。
【0152】
基板22上の最下層として、層システム10は、たとえばスタック40の接着性を改善するために、および/または基板22のスクラッチ保護として、通常の方法で単層または多層中間層30を有することができる。この中間層30は通常の方法で、たとえば準化学量論的な低屈折金属酸化物、クロム、シラン、またはシロキサンからなることができる。中間層30は、光学特性のさらなる検討には関係しない。中間層、たとえば、プライマ塗料などのような従来の塗料システムもまた、基板と層システムとの間の接着促進剤として提供されることが可能である。
【0153】
図5では、たとえば、スタック40の5つの層パケット42、44、46、48、50が、中間層30上に次々に配置される。
【0154】
少なくとも4つ、この例では5つの連続する層パケット42、44、46、48、50のスタック40が中間層30上に配置され、各層パケット42、44、46、48、50は、1対の第1の個別層11、13、15、17、19および第2の個別層12、14、16、18、20を有する。
【0155】
基板に最も近い層パケット42は、基板により近い個別層11および基板からより離れた個別層12を含み、次の層パケット44は、基板により近い個別層13および基板からより離れた個別層14を含み、後続の層パケット46は、基板により近い個別層15および基板からより離れた個別層16を含み、続く層パケット48は、基板により近い個別層17および基板からより離れた個別層18を含み、基板から最も離れた層パケット50は、基板により近い個別層19および基板からより離れた個別層20を含む。
【0156】
基板から最も離れた層パケット50は、任意選択的に、基板により近い部分層19と基板からより離れた部分層20との間に機能層34を有することができ、これはたとえば、導電率を高めるため、機械的応力を均等化するため、および/または拡散障壁として作用することができる。この機能層34は、低屈折材料から形成されることが可能であり、アルミニウムなど、他の金属酸化物と合金化されることも可能である。光学特性の計算目的およびシミュレーション目的のために、機能層34は、基板から最も離れた最上層パケット50の低屈折部分層20に追加されることが可能であり、または、たとえば比較的薄い層厚の場合、ことによると無視される可能性がある。
【0157】
各層パケット42、44、46、48、50において、対応する第1の個別層11、13、15、17、19は各々第1の光学的厚さt1を有し、対応する第2の個別層12、14、16、18、20は各々、それぞれの層パケット42、44、46、48、50の第1の光学的厚さt1とは異なる第2の光学的厚さt2を有する。
【0158】
基板により近いそれぞれの第1の個別層11、13、15、17、19の屈折率n1は、基板からより離れたスタック40のそれぞれの第2の個別層12、14、16、18、20の屈折率n2よりも大きい。層システム10は、残留反射色の輝度L*、色度C*、および色相角hを有し、層システム10の表面法線70に対して0°および30°の限界値を有する視角AOIの間隔における残留反射色の色相角hの変化量Δhは、視角AOIの間隔における色度C*の変化量ΔC*よりも小さい。
【0159】
層システムは、表面法線70から測定して、0°から最大30°などの臨界角までの視角AOIで観察者によって視認される。
【0160】
層システム10を設計するために、以下のステップが有利に実行される。
-少なくとも、高屈折率の第1の個別層11、13、15、17、19の第1の材料および低屈折率の第2の個別層12、14、16、18、20の第2の材料と、個別層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20を含む所望の層パケット42、44、46、48、50の数と、個別層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20の厚さの開始値とを含む層設計を定義するステップと、
-少なくとも0°および30°の限界値を有する視角AOIの間隔の限界値における、輝度L*、色度C*、および色相角hを含む目標色値を定義するステップと、
-最適化目標に達するまで個別層厚d_ist_11、...、d_ist_20を変化させるための最適化方法を実行するステップ。
【0161】
基板22は、プラスチック材料、たとえば、特に眼鏡レンズ用の透明プラスチック材料である。
【0162】
本開示の文脈において、眼鏡レンズという用語は、特に、標準DIN EN ISO13666:2013-10のセクション8.1.13によるコーティングされた眼鏡レンズを指し、したがって、特にその特性の1つ以上を変化させるために1つ以上の表面コーティングが施された眼鏡レンズを指す。
【0163】
好ましくは、このような眼鏡レンズは、眼鏡(補正ありおよびなし)、サングラス、スキーゴーグル、作業用ゴーグル、ならびにヘッドマウントディスプレイ装置(いわゆる「ヘッドマウントディスプレイ」)に関連する眼鏡として特に有利に使用されることが可能である。
【0164】
本開示の文脈において、眼鏡レンズという用語は、半完成眼鏡レンズ製品、特に標準DIN EN ISO13666:2013-10のセクション8.4.2による眼鏡レンズブランクまたは眼鏡レンズ半完成製品、したがって、光学仕上げ表面を1つだけ有するレンズブランクまたはブランクをさらに含むことができる。
【0165】
図4の構成に基づいて、基板22の反対面26は、任意選択的に、コーティングなしまたは保護コーティングのみの、さらなる類似または同一の層システム10を有することができる(図示せず)。
【0166】
基板により近い個別層11、13、15、17、19の各々は、好ましくは同一の第1の材料から形成される。第1の材料は好ましくは、第1の屈折率n1を有する高屈折材料である。
【0167】
基板からより離れた個別層12、14、16、18、20の各々は、好ましくは同一の第2の材料から形成される。第2の材料は好ましくは、第2の屈折率n2を有する低屈折材料である。屈折率n1は屈折率n2よりも大きく、屈折率n1、n2の差は、好ましくは少なくとも0.2、好ましくは最大で0.5である。
【0168】
第1の個別層11、13、15、17、19および第2の個別層12、14、16、187、20の順序は、各層パケット42、44、46、48、50内で、基板により近いそれぞれの第1の個別層11、13、15、17、19が常に個別層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20のうちのより屈折率の高いものであり、基板からより離れたそれぞれの第2の個別層12、14、16、18、20が常により屈折率の低いものであるように、スタック40内で同じままである。
【0169】
特に、より高屈折個別層11、13、15、17、19は高屈折材料の層であり得、低屈折個別層12、14、16、18、20は低屈折材料の層であり得る。
【0170】
スタック40内の層パケット42、44、46、48、50は、それぞれの厚さ、および/またはそれぞれの層パケット42、44、46、48、50内の個別層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20の厚さにおいてのみ異なっている。
【0171】
スタック40は、たとえば層システム10をケアするのに役立つ、カバー層32を用いてそれ自体既知の方法で閉じられる。カバー層32は、スタック40の最上層パケット50の最後の光学的に関連する個別層20に適用され、たとえばフッ素含有分子を含有することができる。カバー層32は通常、撥水および撥油機能などの特性を含む改善されたケア特性をスタック40に与え、表面エネルギーは通常、15mN/m未満である。
【0172】
カバー層32は、もはや層システム10の光学特性のさらなる検討には関係しない。
層システム10のスタック40の光学特性は、既知の計算方法および/または最適化方法を使用する計算によってシミュレートされることが可能である。次に層システム10は、層パケット42、44、46、48、50の個々の部分層60、62の特定の層厚で製造される。
【0173】
光学層システム10の製造の間、層システム10の光学特性は、部分層60、62の製造中に調整される。たとえば、以下に簡単にまとめられた、国際公開第2016/110339号パンフレットから知られる方法を使用することができる。既知の方法を用いて、使用される材料が同じままであっても層厚のみを変更することにより、材料システムにおいてミラーリングまたは反射低減などの様々な光学効果を達成することができる。しかしながら、他の方法を使用することもまた可能である。
【0174】
国際公開第2016/110339号パンフレットに記載されるように、同じ材料を維持しながら層パケット厚を変化させることにより、特に反射低減効果のために、異なる反射率を達成することができる。これは、パラメータσを最小化または最適化することによって達成される。そして、パラメータσは、個別層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20の層厚、または層42、44、46、48の4つのスタック(図示せず)またはスタック40内の図5による層42、44、46、48、50の5つのスタックの各々の個別層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20の光学的厚さt1、t2の比の関数である。
【0175】
特定の波長λにおいて、FWOT(全波光学厚(full wave optical thickness))とも呼ばれる層の光学的厚さtは、

によって決定され、ここでdは個別層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20の層厚であり、λは設計波長であり、nは屈折率である。
【0176】
反射率Rとパラメータσとの積が1未満になるように調整される場合、スタック40による反射低減効果は、スタック40の事前決定可能な反射率Rに対して達成されることが可能である。
・σ<1
反射力としても知られる反射率Rは、ここではエネルギー変数としての光ビームの入射強度に対する反射の比を記述する。反射率Rは、380nm~800nmまでの光の範囲にわたって便宜上平均化され、100%に関連する。
【0177】
このような条件R・σ<1は、層システム10を製造するための方法の最適化の境界条件として設定されることが可能である。
【0178】
層パケット42、44、46、48、50の第1および第2の個別層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20の光学的厚さt1、t2は、パラメータσが最適化方法によって、好ましくは変動計算によって決定されるという点で、決定される。
【0179】
スタック40内に5つの層パケット42、44、46、48、50がある場合のそれぞれの個別層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20の厚さは、好ましくは、層42、44、46、48、50のそれぞれのスタックの高屈折の第1の個別層11、13、15、17、19の第1の光学的厚さt1と低屈折の第2の個別層12、14、16、18、20の第2の光学的厚さt2との商V(i=1、2、3、4、5とする)に依存して形成される。
【0180】
有利な実施形態では、図4による層システム10において、5つの連続する層パケット42、44、46、48、50を有するスタック40のパラメータσは、

の関係から決定されることが可能であり、ここで、i=2から最大数5までの実行回数である。
【0181】
指数i=1、2、3、4、5は、基板22上の層パケット42、44、46、48、50のシーケンスを表す。したがって、vは基板に最も近い層パケット42を表し、vは基板から最も離れた層パケット50を表す。
【0182】
DIN EN ISO11664-4:2012-06(EN ISO11664-4:2011)に示されるように、デカルト座標内のいわゆるCIE-L*a*b*色空間(略してCIELab色空間)において知覚色を指定することが知られている。
【0183】
L*はCIELab輝度であり、a*、b*はCIELab座標であり、C*はCIELab色度であり、habはCIELab色相角である。
【0184】
L*軸は、0~100までの値を有する色の輝度(輝度値)を記述する。L*軸は、a*b*平面に垂直なゼロ点にある。全ての無彩色(グレーの濃淡)が黒色(L*=0)および白色(L*=100)の終点の間に包含されるので、これは中性グレー軸と呼ぶこともできる。
【0185】
緑色および赤色はa*軸上で互いに対向しており、b*軸は青色と黄色との間に延びている。相補的な色調は、その中央で180°反対であり、すなわち、座標原点a*=0、b*=0はグレーである。
【0186】
a*軸は、ある色の緑色成分または赤色成分を記述し、負の値は緑色を表し、正の値は赤色を表す。b*軸は、ある色の青色成分または黄色成分を記述し、負の値は青色を表し、正の値は黄色を表す。
【0187】
a*値はおよそ-170~+100までの範囲であり、b*値は-100~+150までの範囲であり、最大値は、中程度の輝度の特定の色調でのみ達成される。CIELab色体は、中程度の輝度範囲にその最大範囲を有するが、これは色範囲に応じて高さおよびサイズが異なる。
【0188】
CIELab色相角habは、a*およびb*の両方が正のときには0°~90°の間、b*が正でa*が負のときには90°~180°の間、a*およびb*の両方が負のときには180°~270°の間、b*が負でa*が正のときには270°~360°の間でなければならない。
【0189】
CIE-L*C*h色空間(略してCIELCh色空間)の場合、CIELab色空間のデカルト座標は極座標に変換される。円筒座標C*(色度、相対彩度、中心でのL軸からの距離)およびh(色相角、CIELab色相環における色相の角度)が指定される。CIELab輝度L*は変化しないままである。
色相角hは、a*軸およびb*軸から得られる。



ここで、色相角hは、干渉型層システム10の残留反射の色を表す。
色度C*は以下のようになる。


色度C*は、色深度とも呼ばれる。
【0190】
個別層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20の層厚d_soll_11、...、d_soll_20を定義するために、最適化目標に達するまで個別層厚d_soll_11、...、d_soll_20を変化させるための最適化方法が実行される。次いで最適化プロセスは、最適化目標(色安定性)に達するまで個別層厚d_soll_11、...、d_soll_20を変化させる。
【0191】
0°および30°の限界値を有する視角AOIの間隔では、色相角hは、最大で15°、好ましくは最大で10°変化することができる。0°から層システム10の表面法線70に対して少なくとも30°から最大45°までの間の上限値を有する限界視角θまでの視角AOIの第2の間隔における色相角hの変化の量Δhは、視角AOIの第2の間隔における色度C*の変化量ΔC*よりも小さく、限界視角θにおける色度C*の量は、少なくとも2であり、特に、第2の間隔における色相角hは、最大で20°変化し、好ましくは最大で15°変化する。
【0192】
0°および30°の限界値を有する視角AOIの間隔における明所反射力Rvは、有利には、最大で1.5%、好ましくは最大で1.2%であり得る。
0°および30°の限界値を有する視角AOIの間隔における暗所反射力Rv´は、有利には、最大で1.5%、好ましくは最大で1.2%であり得る。
【0193】
図5は、本発明の方法による、シミュレーション対象測定プロット98を実測プロット90に合させることによって実データセットDat_istを決定するためのフローチャートを示す。
【0194】
方法は、シミュレーションコンピュータ106内で実行され、ステップS200において、層システム10での実測プロット90として縦座標値および横座標値を有する少なくとも1つのスペクトル測定プロットを検出するステップを含み、これは、それぞれの設備実層厚d_ist_11、...、d_ist_20を有する1つ以上の個別層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20からなる。1つ以上の個別層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20は、コーティング設備102の対象データセットDat_sollにしたがって製造される。対象データセットDat_sollは、少なくとも、1つ以上の個別層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20の設備実層厚d_ist_11、...、d_ist_20を含み、これらは1つ以上の個別層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20に割り当てられる。
【0195】
ステップS202において、層システム10の実測プロット90は、特に実測プロット90の重要なスペクトル点について、割り当て基準にしたがって、1つ以上の個別層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20から形成された、対象層システム10_sollに基づく、縦座標値および横座標値を有する対象データセットDAT_sollの対象測定プロット92に割り当てられる。対象データセットDAT_sollは、それぞれの個別層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20に割り当てられた1つ以上の個別層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20の既知の対象層厚d_soll_11、...、d_soll_20のうちの少なくとも1つを含む。
【0196】
ステップS204において、シミュレーション実測プロット94は、シミュレーション実測プロット94における実測プロット90が少なくとも近似される、実測プロット90の少なくとも1つのスペクトル間隔82における1つ以上の個別層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20の少なくともシミュレーション実層厚g_ist_11、...、g_ist_20の変化と、それぞれの個別層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20に割り当てられた少なくとも最終シミュレーション実層厚g_ist_11、...、g_ist_20を有する最終シミュレーション実データセットDat_ist_simの受信とによる反復方法にしたがって生成される。これは、統計的な選択方法による割り当て基準について安定した結果が達成されるまで実行される。対象層厚d_soll_11、...、d_soll_20は、シミュレーション実層厚g_ist_11、...、g_ist_20の開始値として使用される。
【0197】
ステップS206において、シミュレーション対象測定プロット98は、シミュレーション対象測定プロット98における対象測定プロット92が少なくとも近似される、対象測定プロット92の少なくとも1つのスペクトル間隔82におけるそれぞれの個別層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20に割り当てられた1つ以上の個別層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20の少なくともシミュレーション対象層厚g_soll_11、...、g_soll_20を変化させることと、それぞれの個別層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20に割り当てられた少なくとも最終シミュレーション対象層厚g_soll_11、...、g_soll_20を有する最終シミュレーション対象データセットDAT_soll_simの受信とによる反復方法にしたがって生成される。これは、統計的な選択方法による割り当て基準について安定した結果が達成されるまで実行される。シミュレーション実層厚g_ist_11、...、g_ist_20は、シミュレーション対象層厚g_soll_11、...、g_soll_20の開始値として使用される。
【0198】
この反復方法は、1つ以上のスペクトル間隔82、84、86で実行され、各後続の間隔84、86は前の間隔82、84を含む。
【0199】
実データセットDat_istを使用する層システム10のシミュレーションによる計算実層パラメータ96の決定は、最終シミュレーション対象データセットDAT_soll_simを有する最終シミュレーション対象層厚g_soll_11、...、g_soll_20から決定される、新しい設備実層厚d_ist_11、...、d_ist_20として少なくとも1つ以上の補正実層厚d_korr_11、...、d_korr_20を有するさらなる層システム10_n+1をステップS208において堆積するための新しい設備データセット Dat_ist+1として、少なくとも1つのコーティング設備102の最終シミュレーション対象データセットDAT_soll_simを提供するステップを、便宜上さらに含むことができる。
【0200】
図6は、280nm~800nmまでの波長範囲における実測プロット90(実線)と対象測定プロット92(点線)との比較による、本発明による層システム10の反射率プロットを示し、図7は、図6からの反射率プロットの拡大図を示す。対象測定プロット92は、極値比較によって、実測プロット90に対する対象測定プロット92としてデータベース106から決定された。強いピーク変位は、280nm~380nmの間のより低い波長範囲、および380nm~680nmの波長範囲の図7の拡大図に見ることができる。
【0201】
図8は、対象測定プロット92(点線)とスケーリングされたシミュレーション対象測定プロット98(実線)との比較による、層システム10の反射率プロットを示す。これにより、シミュレーション対象測定プロット98の水平変位が生じた。完全な層システム10は、プロセスにおいてスケーリングされ、すなわち、得られた個別層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20の全ての物理的な層厚g_soll_11、...、g_soll_20を包含するベクトルにスケーリング係数122が乗算され、すなわち、各個別層11、12、13、14、15、16、17、18、19、20が同じスケーリング係数122によってより厚くまたは薄くされた。
【0202】
図9は、380nm~580nmの第1のスペクトル間隔82に適合された対象測定プロット92とシミュレーション対象測定プロット98との比較による、層システム10の反射率プロットを示す。反復最適化方法としてシンプレックスアルゴリズムを使用した。物理的な層厚g_soll_11、...、g_soll_20を変化させることにより、前のステップからのシミュレーション対象測定プロット98を可能な限り正確に380nm~580nmの間隔で対象測定プロット92にマッピングする最適化目標で、アルゴリズムを開始した。結果は、選択された間隔82における2つの測定プロット92、98の非常に良好な近似である。
【0203】
図10は、380nm~780nmのより大きいスペクトル間隔84に適合された対象測定プロット92とシミュレーション対象測定プロット98との比較による、層システム10の反射率プロットを示す。この時間シンプレックス最適化を380nm~780nmまでのより大きい間隔84で適用した。層厚の関係は考慮しなかった。400nm付近のより低い波長範囲では、2つの測定プロット92、98間の一致の質はわずかに劣るが、580nm~680nmのより高い波長範囲ではより良好である。
【0204】
図11は、280nm~800nmまでの間隔86としての全波長範囲にわたって適合された対象測定プロット92とシミュレーション対象測定プロット98との比較による、層システム10の反射率プロットを示す。この時間シンプレックス最適化を280nm~800nmまでのより大きい間隔86で適用した。層厚の関係は考慮しなかった。2つの測定プロット92、98間の一致の質は、480nm~580nmの中間波長範囲ではわずかに低下しているが、280nm~800nmまでの全波長範囲では、平均してより良好である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2022-06-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
層システム(10)を製造するために自己制御フィードバックモードでコーティングシステム(100)を動作させるための方法であって、
(i)コーティング設備(102)内で層システム(10)をコーティングするステップ(S100)と、
(ii)光学測定システム(104)における前記層システム(10)のスペクトル実測プロット(90)を決定するステップ(S102)と、
(iii)前記層システム(10)の完成したコーティングの設計を有する対象データセット(Dat_soll)を、設計データベース(200)および前記実測プロット(90)からシミュレーションコンピュータ(106)にロードするステップ(S108)と、
(iv)前記シミュレーションコンピュータ(106)内で、シミュレーション対象測定プロット(98)を実測プロット(90)に適合させることによって実データセット(Dat_ist)を決定するステップ(S110)と、
(v)前記シミュレーションコンピュータ(106)内で、前記実データセット(Dat_ist)を使用する前記層システム(10)のシミュレーションによる前記シミュレーション対象測定プロット(98)から、計算実層パラメータ(96)として実層パラメータ(96)を決定するステップ(S112)と、
(vi)プロセッサの形態で、または前記コーティングシステム(100)の制御コンピュータ(110)上で、前記実データセット(Dat_ist)および前記計算実層パラメータ(96)を少なくとも決定システム(108)に、およびファイリングデータベース(210)に出力するステップ(S114)と、
(vii)少なくとも前記実データセット(Dat_ist)、前記計算実層パラメータ(96)、および前記品質要件データの比較に使用される、基準データベース(220)からの層システム(10)の承認基準に基づいて、品質要件データを提供するステップ(S118)と、
(viii)少なくとも前記実データセット(Dat_ist)、前記計算実層パラメータ(96)、および前記品質要件データの比較に基づいて、前記決定システム(108)における前記層システム(10)の承認(S122、S124)を決定するステップ(S120)と
を含む方法。
【請求項2】
(i)前記実測プロット(90)から前記層システム(10)の残留反射色の色値(88)を計算するステップ(S104)と、
(ii)前記実測プロット(90)および前記計算された色値(88)を前記ファイリングデータベース(210)にファイルするステップ(S106)と、
(iii)承認(S122、S124)の決定を前記ファイリングデータベース(210)において文書化するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記承認基準は、特に、前記実データセット(Dat_ist)および/または前記計算実層パラメータ(96)および/または前記実測プロット(90)との比較に使用される、要件が導出される、少なくとも許容可能および/または非許容可能な層パラメータを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記品質要件データは、層システム(10)の前記対象データセット(Dat_soll)の公差値を含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記決定システム(108)における前記層システム(10)の承認を決定するステップは、特に人工知能方法を使用することによる、自動的なソフトウェアベースの承認決定を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも前記対象データセット(Dat_soll)と前記基準データベース(220)からの承認基準との比較に基づいて、コーティング設備(102)内で層システム(10)のコーティングを決定するステップをさらに含む、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記計算実層パラメータ(96)は、前記実測プロット(90)の外側の波長範囲内、特にUV波長範囲内の反射値、および/または異なる入射角での反射値を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
コーティングシステム(102)内の層システム(10)のコーティングは、干渉型層システム(10)が基板(22)の少なくとも1つの表面(24)上に堆積されることを含み、
前記層システム(10)は、少なくとも4つの連続する層パケット(42、44、46、48、50)のスタック(40)を含み、各層パケット(42、44、46、48、50)は、1対の第1および第2の個別層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)を含み、前記第1の個別層(11、13、15、17、19)は各々第1の光学的厚さ(t1)を有し、前記第2の個別層(12、14、16、18、20)は各々、前記第1の光学的厚さ(t1)とは異なる第2の光学的厚さ(t2)を有し、
前記基板により近い前記それぞれの第1の個別層(11、13、15、17、19)の屈折率(n1)は、前記基板からより離れた前記スタック(40)の前記それぞれの第2の個別層(12、14、16、18、20)の屈折率(n2)よりも大きく、
前記層システム(10)は、残留反射色の輝度(L*)、色度(C*)、および色相角(h)を有し、
前記層システム(10)の表面法線(70)に対して0°および30°の限界値を有する視角(AOI)の間隔における前記残留反射色の色相角(h)の変化量(Δh)は、前記視角(AOI)の間隔における前記色度(C*)の変化量(ΔC*)よりも小さく、
-少なくとも、高屈折率の第1の個別層(11、13、15、17、19)の第1の材料および低屈折率の第2の個別層(12、14、16、18、20)の第2の材料と、前記個別層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)を含む所望の層パケット(42、44、46、48、50)の数と、前記個別層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の厚さの開始値とを含む層設計を定義するステップと、
-少なくとも0°および30°の前記限界値を有する視角(AOI)の間隔の限界値における、輝度(L*)、色度(C*)、および色相角(h)を含む目標色値を定義するステップと、
-最適化目標に達するまで前記個別層厚(d_ist_11、...、d_ist_20)を変化させるための最適化方法を実行するステップと
が実行される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
0°および30°の限界値を有する前記視角(AOI)の間隔における色相角(h)は、最大で15°変化し、好ましくは最大で10°変化し、および/または
0°から前記層システム(10)上の前記表面法線(70)に対して少なくとも30°から最大45°までの間の上限値を有する限界視角(θ)までの視角(AOI)の第2の間隔における色相角(h)の変化の量(Δh)は、前記視角(AOI)の第2の間隔における前記色度(C*)の変化量(ΔC*)よりも小さく、前記限界視角(θ)における前記色度(C*)の量は少なくとも2であり、特に、前記第2の間隔における前記色相角(h)は、最大で20°変化し、好ましくは最大で15°変化し、および/または
0°および30°の前記限界値を有する前記視角(AOI)の間隔における明所反射力(Rv)は、最大で1.5%、好ましくは最大で1.2%であり、
0°および30°の前記限界値を有する前記視角(AOI)の間隔における暗所反射力(Rv´)は、最大で1.5%、好ましくは最大で1.2%である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記層システム(10)のスペクトル実測プロット(90)の決定のために、光学測定システム(104)内の前記層システム(10)においてスペクトル反射測定が実行される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記実測プロット(90)からの前記層システム(10)の残留反射色の色値(88)の計算は、前記残留反射色の輝度(L*)、色度(C*)、および色相角(h)が前記実測プロット(90)から決定されることをさらに含む、請求項2から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記シミュレーションコンピュータ(106)内でシミュレーション対象測定プロット(98)を前記実測プロット(90)に適合させることによる実データセット(Dat_ist)の決定は、
(i)前記層システム(10)の製造のための前記コーティング設備(102)において設定されたそれぞれの設備実層厚(d_ist_11、...、d_ist_20)を有する1つ以上の個別層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)からなる前記層システム(10)における実測プロット(90)として、縦座標値および横座標値を有する少なくとも1つのスペクトル測定プロットを検出するステップであって、前記1つ以上の個別層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)は、前記少なくとも1つのコーティング設備(102)の対象データセット(DAT_soll)にしたがって製造され、前記対象データセット(DAT_soll)は、前記1つ以上の個別層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)に割り当てられた、前記1つ以上の個別層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の少なくとも前記設備実層厚(d_ist_11、...、d_ist_20)を含む、ステップ(S200)と、
(ii)特に前記実測プロット(90)の重要なスペクトル点について、割り当て基準にしたがって前記層システム(10)の実測プロット(90)を、1つ以上の個別層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)から形成された、対象層システム(10_soll)に基づく、縦座標値および横座標値を有する対象データセット(DAT_soll)の対象測定プロット(92)に割り当てるステップであって、前記対象データセット(DAT_soll)は、前記それぞれの個別層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)に割り当てられた前記1つ以上の個別層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の既知の対象層厚(d_soll_11、...、d_soll_20)のうちの少なくとも1つを含む、ステップ(S202)と、
(iii)統計的な選択方法による割り当て基準について安定した結果が達成されるまで、シミュレーション実測プロット(94)における前記実測プロット(90)が少なくとも近似される、前記実測プロット(90)の少なくとも1つのスペクトル間隔(82)における前記1つ以上の個別層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の少なくともシミュレーション実層厚(g_ist_11、...、g_ist_20)の変化と、前記それぞれの個別層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)に割り当てられた少なくとも最終シミュレーション実層厚(g_ist_11、...、g_ist_20)を有する最終シミュレーション実データセット(Dat_ist_sim)の受信とによる反復方法にしたがって、前記シミュレーション実測プロット(94)を生成するステップであって、前記対象層厚(d_soll_11、...、d_soll_20)は、前記シミュレーション実層厚(g_ist_11、...、g_ist_20)の開始値として使用される、ステップ(S204)と、
(iv)統計的な選択方法による割り当て基準について安定した結果が達成されるまで、シミュレーション対象測定プロット(98)における前記対象測定プロット(92)が少なくとも近似される、前記対象測定プロット(92)の少なくとも1つのスペクトル間隔(82)におけるそれぞれの個別層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)に割り当てられた前記1つ以上の個別層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)の少なくとも前記シミュレーション対象層厚(g_soll_11、...、g_soll_20)を変化させることと、前記それぞれの個別層(11、12、13、14、15、16、17、18、19、20)に割り当てられた少なくとも最終シミュレーション対象層厚(g_soll_11、...、g_soll_20)を有する最終シミュレーション対象データセット(DAT_soll_sim)の受信とによる反復方法にしたがって、シミュレーション対象測定プロット(98)を生成するステップであって、前記シミュレーション実層厚(g_ist_11、...、g_ist_20)は、前記シミュレーション対象層厚(g_soll_11、...、g_soll_20)の開始値として使用される、ステップ(S206)と
をさらに含み、
前記反復方法は、1つ以上のスペクトル間隔(82、84、86)で実行され、各後続の間隔(84、86)は前記前の間隔(82、84)を含む、請求項2から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記実データセット(Dat_ist)を使用する前記層システム(10)のシミュレーションによる計算実層パラメータ(96)の決定は、
前記最終シミュレーション対象データセット(DAT_soll_sim)を有する前記最終シミュレーション対象層厚(g_soll_11、...、g_soll_20)から決定される、新しい設備実層厚(d_ist_11、...、d_ist_20)の決定のために少なくとも1つ以上の補正実層厚(d_korr_11、...、d_korr_20)を有するさらなる層システム(10_n+1)を堆積するための新しい設備データセット(Dat_ist+1)として、前記少なくとも1つのコーティング設備(102)の前記最終シミュレーション対象データセット(DAT_soll_sim)を提供するステップ(S208)をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13のうちの少なくとも1つに記載の方法を使用して、自己制御フィードバックモードで層システム(10)を製造するためのコーティングシステム(100)であって、少なくとも
-光学素子(80)のための層システム(10)で基板(22)をコーティングするためのコーティング設備(102)と、
-前記コーティング設備(102)を制御し、シミュレーションコンピュータ(106)と通信するための制御コンピュータ(110)と、
-前記層システム(10)のスペクトル分解実測プロット(90)を決定するための光学測定装置(104)と、
-前記層システム(10)の光計算および最適化のためのシミュレーションソフトウェア(107)がインストールされたシミュレーションコンピュータ(106)と、
-対象データセット(Dat_soll)を記憶するための設計データベース(200)と、
-実測プロット(90)、実データセット(Dat_ist)、計算実層パラメータ(96)、および承認決定を記憶するためのファイリングデータベース(210)と、
-承認基準の記憶のための基準データベース(220)と、
-層システム(10)の承認のための決定システム(108)と
を含む、コーティングシステム(100)。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか一項に記載の層システム(10)を製造するために自己制御フィードバックモードで少なくとも1つのコーティングシステム(100)を動作させる方法のためのコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラム製品は、コンピュータシステム(106)上で実行可能であり、前記コンピュータシステム(106)に特に請求項1に記載の方法を実行させるプログラム命令を含む、少なくとも1つのコンピュータ可読記憶媒体を含み、前記方法は、
(i)コーティング設備(102)内で層システム(10)をコーティングするステップ(S100)と、
(ii)光学測定システム(104)における前記層システム(10)のスペクトル実測プロット(90)を決定するステップ(S102)と、
(iii)シミュレーション対象測定プロット(98)を実測プロット(90)に適合させることによって実データセット(Dat_ist)を決定するステップ(S110)と、
(iv)前記実データセット(Dat_ist)を使用する前記層システム(10)のシミュレーションによる前記シミュレーション対象測定プロット(98)から、計算実層パラメータ(96)として実層パラメータ(96)を決定するステップ(S112)と、
(v)前記実データセット(Dat_ist)および前記計算実層パラメータ(96)を少なくとも決定システム(108)に出力するステップ(S114)と、
(vi)品質要件データを提供するステップ(S118)と、
(vii)少なくとも前記実データセット(Dat_ist)、前記計算実層パラメータ(96)、および前記品質要件データの比較に基づいて、前記決定システム(108)における前記層システム(10)の承認(S122、S124)を決定するステップ(S120)と
を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項16】
特に請求項1に記載の、層システム(10)を製造するための少なくとも1つのコーティングシステム(100)を動作させるための方法を実行するためのコンピュータ可読プログラム命令を含む、データ処理プログラムを実行するためのデータ処理システム(124)。
【国際調査報告】