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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(54)【発明の名称】処置方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20230201BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230201BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230201BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230201BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20230201BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20230201BHJP
   A61P 25/32 20060101ALI20230201BHJP
   A61P 25/34 20060101ALI20230201BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P43/00 111
A61P25/28
A61P25/00
A61P25/30
A61P25/36
A61P25/32
A61P25/34
A61P43/00 121
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022531002
(86)(22)【出願日】2020-11-25
(85)【翻訳文提出日】2022-07-25
(86)【国際出願番号】 US2020062400
(87)【国際公開番号】W WO2021108691
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】62/941,542
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507401225
【氏名又は名称】イントラ-セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INTRA-CELLULAR THERAPIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】バノーバー,キンバリー
(72)【発明者】
【氏名】デイビス,ロバート イー
(72)【発明者】
【氏名】リ,ポン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA022
4C084ZA152
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA15
4C086ZC20
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、中枢神経系との関与に有用なホスホジエステラーゼ1(PDE1)の阻害剤に関する。本開示は、さらに、ドパミンD1受容体細胞内経路に関連する状態、疾患または障害、例えば、注意、認知、記憶および/または抑制処理の欠如を特徴とする状態、疾患または障害の治療のためのホスホジエステラーゼ1(PDE1)の阻害剤の投与に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドパミンD1受容体細胞内経路に関連する状態、疾患または障害、例えば、注意、認知、記憶および/または抑制処理の欠如を特徴とする状態、疾患または障害の予防および/または治療のための方法であって、該方法が該予防および/または治療を必要とする対象体にPDE1阻害剤(すなわち、式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIで示される化合物)の薬学的有効量を投与することを含む、方法。
【請求項2】
状態、疾患または障害が、注意、認知、記憶および/または抑制処理の欠如を特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
状態、疾患または障害が、摂食障害(例えば、神経性食欲不振症、神経性大食症、過食性障害、異食症、反芻障害、回避性/制限性摂食障害、排出性障害、夜間摂食障害、他の特定される食行動障害または摂食障害(OSFED))、物質使用障害(例えば、嗜癖(例えば、アンフェタミン、コカイン、オピエートおよび/またはニコチンなどの刺激物質嗜癖)、アルコール依存症)、強迫性障害(例えば、点検、汚染、精神的汚染、溜め込み、反芻、侵入思考、対称性/秩序)、注意欠如多動症(ADHD)、早漏症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、ギャンブル障害(例えば、ギャンブル嗜癖、強迫性病的賭博)、トゥレット症候群および/または衝動制御・素行症群(例えば、反抗挑戦性障害、素行症、間欠性爆発性障害、窃盗症、放火症)から選択される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
抑制処理障害の治療方法であって、該方法が該治療を必要とする患者にPDE1阻害剤(すなわち、式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIで示される化合物)の薬学的有効量を投与することを含む、方法。
【請求項5】
患者が、ドパミンD1受容体細胞内経路に関連する状態、疾患または障害に罹患している、請求項4記載の方法。
【請求項6】
患者が、摂食障害(例えば、神経性食欲不振症、神経性大食症、過食性障害、異食症、反芻障害、回避性/制限性摂食障害、排出性障害、夜間摂食障害、他の特定される食行動障害または摂食障害(OSFED))、物質使用障害(例えば、嗜癖(例えば、アンフェタミン、コカイン、オピエートおよび/またはニコチンなどの刺激物質嗜癖)、アルコール依存症)、強迫性障害(例えば、点検、汚染、精神的汚染、溜め込み、反芻、侵入思考、対称性/秩序)、注意欠如多動症(ADHD)、早漏症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、ギャンブル障害(例えば、ギャンブル嗜癖、強迫性病的賭博)、トゥレット症候群および/または衝動制御・素行症群(例えば、反抗挑戦性障害、素行症、間欠性爆発性障害、窃盗症、放火症)から選択される状態、疾患または障害に罹患している、請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
PDE1阻害剤が、
(A) 遊離形態、塩形態またはプロドラッグ形態(そのエナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体を含む)の、式I:
【化1】
[式中、
(i) R1は、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチル)であり;
(ii) R4は、HまたはC1-4アルキルであり、R2およびR3は、独立して、HまたはC1-4アルキル(例えば、R2およびR3は共にメチルであるか、または、R2はHであり、R3はイソプロピルである)、アリール、ヘテロアリール、(場合によってはヘテロ)アリールアルコキシ、または(場合によってはヘテロ)アリールアルキルであるか;または
2は、Hであり、R3およびR4は一緒になってジメチレン架橋、トリメチレン架橋またはテトラメチレン架橋を形成し(好ましくは、R3およびR4が一緒になってシス配置を有しており、例えば、R3およびR4を担持している炭素がそれぞれR配置およびS配置を有している);
(iii) R5は、例えばハロアルキルで置換されている、置換ヘテロアリールアルキルであるか;または
5は、式Iのピラゾロ部分の窒素の1つに結合しており、式A:
【化2】
(式中、X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり、R8、R9、R11およびR12は、独立して、Hまたはハロゲン(例えば、ClまたはF)であり、R10は、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリール(例えば、ハロゲンで置換されていてもよいピリジル(例えば、ピリダ-2-イル)、またはチアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾール-4-イル))、ジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、アリールカルボニル(例えば、ベンゾイル)、アルキルスルホニル(例えば、メチルスルホニル)、ヘテロアリールカルボニル、またはアルコキシカルボニルであり;ただし、X、YまたはZが窒素である場合、それぞれ、R8、R9またはR10は存在しない)
で示される部分であり;
(iv) R6は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えば、ベンジル)、アリールアミノ(例えば、フェニルアミノ)、ヘテロアリールアミノ、N,N-ジアルキルアミノ、N,N-ジアリールアミノ、またはN-アリール-N-(アリールアルキル)アミノ(例えば、N-フェニル-N-(1,1'-ビフェン-4-イルメチル)アミノ)であり;
(v) nは0または1であり;
(vi) nが1である場合、Aは、-C(R1314)-である(ここで、R13およびR14は、独立して、HまたはC1-4アルキル、アリール、ヘテロアリール、(場合によってはヘテロ)アリールアルコキシまたは(場合によってはヘテロ)アリールアルキルである)];
(B) 遊離形態、塩形態またはプロドラッグ形態の、式II:
【化3】
[式中、
(i) Xは、C1-6アルキレン(例えば、メチレン、エチレンまたはプロパ-2-イン-1-イレン)であり;
(ii) Yは、単結合、アルキニレン(例えば、-C≡C-)、アリーレン(例えば、フェニレン)またはヘテロアリーレン(例えば、ピリジレン)であり;
(iii) Zは、H、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリール(例えば、ピリジル、例えば、ピリダ-2-イル)、ハロ(例えば、F、Br、Cl)、ハロC1-6アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、-C(O)-R1、-N(R2)(R3)、または、NもしくはOからなる群から選択される少なくとも1個の原子を含有していてもよいC3-7シクロアルキル(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル、またはモルホリニル)であり;
(iv) R1は、C1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、-OHまたは-OC1-6アルキル(例えば、-OCH3)であり;
(v) R2およびR3は、独立して、HまたはC1-6アルキルであり;
(vi) R4およびR5は、独立して、H、C1-6アルキル、または1個以上のハロ(例えば、フルオロフェニル、例えば、4-フルオロフェニル)、ヒドロキシ(例えば、ヒドロキシフェニル、例えば、4-ヒドロキシフェニルまたは2-ヒドロキシフェニル)またはC1-6アルコキシで置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)であり;
(vii) ここで、X、YおよびZは、独立して、1個以上のハロ(例えば、F、ClまたはBr)、C1-6アルキル(例えば、メチル)、ハロC1-6アルキル(例えば、トリフルオロメチル)で置換されていてもよく、例えば、Zは、1個以上のハロ(例えば、6-フルオロピリダ-2-イル、5-フルオロピリダ-2-イル、6-フルオロピリダ-2-イル、3-フルオロピリダ-2-イル、4-フルオロピリダ-2-イル、4,6-ジクロロピリダ-2-イル)、ハロC1-6アルキル(例えば、5-トリフルオロメチルピリダ-2-イル)またはC1-6アルキル(例えば、5-メチルピリダ-2-イル)で置換されている、ヘテロアリール、例えばピリジルであるか、または、Zは、1個以上のハロ(例えば、4-フルオロフェニル)で置換されている、アリール、例えばフェニルである];
(C) 遊離形態または塩形態の、式III:
【化4】
[式中、
(i) R1は、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(ii) R2およびR3は、独立して、HまたはC1-6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(iii) R4は、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(iv) R5は、独立して-C(=O)-C1-6アルキル(例えば、-C(=O)-CH3)およびC1-6-ヒドロキシアルキル(例えば、1-ヒドロキシエチル)から選択される1個以上の基で置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)であり;
(v) R6およびR7は、独立して、H、または、独立してC1-6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)およびハロゲン(例えば、FまたはCl)から選択される1個以上の基で置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)、例えば、非置換フェニル、または1個以上のハロゲン(例えば、F)で置換されているフェニル、または1個以上のC1-6アルキルおよび1個以上のハロゲンで置換されているフェニル、または1個のC1-6アルキルおよび1個のハロゲンで置換されているフェニル、例えば、4-フルオロフェニルまたは3,4-ジフルオロフェニルまたは4-フルオロ-3-メチルフェニルであり;
(vi) nは、1、2、3または4である];
(D) 遊離形態または塩形態の、式IV:
【化5】
[式中、
(vi) R1は、C1-4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)、または-NH(R2)(ここで、R2は、ハロ(例えば、フルオロ)で置換されていてもよいフェニル、例えば4-フルオロフェニルである)であり;
(vii) X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり;
(viii) R3、R4およびR5は、独立して、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチル)であるか;または、R3は、Hであり、R4およびR5は一緒になってトリメチレン架橋を形成し(好ましくは、R4およびR5は一緒になってシス配置を有しており、例えば、R4およびR5を担持している炭素はそれぞれR配置およびS配置を有している)、
(ix) R6、R7およびR8は、独立して、
H、
1-4アルキル(例えば、メチル)、
ヒドロキシで置換されているピリダ-2-イル、または
-S(O)2-NH2
であり;
ただし、X、Yおよび/またはZがNである場合、それぞれ、R6、R7および/またはR8は存在しない;また、X、YおよびZがすべてCである場合、R6、R7またはR8の少なくとも1つは-S(O)2-NH2、またはヒドロキシで置換されているピリダ-2-イルである];
(E) 遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態(そのエナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体を含む)の、式1a:
【化6】
[式中、
(iv) R2およびR5は、独立して、Hまたはヒドロキシであり、R3およびR4は一緒になってトリメチレン架橋またはテトラメチレン架橋を形成している[好ましくは、R3およびR4を担持している炭素がそれぞれR配置およびS配置を有している]か;または、R2およびR3はそれぞれメチルであり、R4およびR5はそれぞれHであるか;または、R2、R4およびR5はHであり、R3はイソプロピルであり[好ましくは、R3を担持している炭素はR配置を有している];
(v) R6は、(ハロ置換されていてもよい)フェニルアミノ、(ハロ置換されていてもよい)ベンジルアミノ、C1-4アルキル、またはC1-4アルキルスルフィドであり;例えば、フェニルアミノまたは4-フルオロフェニルアミノであり;
(vi) R10は、C1-4アルキル、メチルカルボニル、ヒドロキシエチル、カルボン酸、スルホンアミド、(ハロ置換またはヒドロキシ置換されていてもよい)フェニル、(ハロ置換またはヒドロキシ置換されていてもよい)ピリジル(例えば、6-フルオロピリダ-2-イル)、またはチアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾール-4-イル)であり;
XおよびYは、独立して、CまたはNである];
(F) 遊離形態または塩形態の、式V:
【化7】
[式中、
(iv) R1は、-NH(R4)であり(ここで、R4は、ハロ(例えば、フルオロ)で置換されていてもよいフェニル、例えば、4-フルオロフェニルである);
(v) R2は、HまたはC1-6アルキル(例えば、メチル、イソブチルまたはネオペンチル)であり;
(vi) R3は、-SO2NH2または-COOHである];および/または
(G) 遊離形態または塩形態の、式V:
【化8】
[式中、
(iv) R1は、-NH(R4)であり(ここで、R4は、ハロ(例えば、フルオロ)で置換されていてもよいフェニル、例えば、4-フルオロフェニルである);
(v) R2は、HまたはC1-6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(vi) R3は、H、ハロゲン(例えば、ブロモ)、C1-6アルキル(例えば、メチル)、ハロゲンで置換されていてもよいアリール(例えば、4-フルオロフェニル)、ハロゲンで置換されていてもよいヘテロアリール(例えば、6-フルオロピリダ-2-イルまたはピリダ-2-イル)、またはアシル(例えば、アセチル)である]
から選択される化合物である、上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、以下のもの:
【化9】
のいずれかから選択される、上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
PDE1阻害剤が、モノアミン再取り込み阻害剤(例えば、ドパミン再取り込み阻害剤、セロトニン再取り込み阻害剤および/またはエピネフリン再取り込み阻害剤)と組み合わせて投与される、上記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9いずれかに記載の方法において投与するための、薬学的有効量のPDE1阻害剤およびモノアミン再取り込み阻害剤(例えば、ドパミン再取り込み阻害剤、セロトニン再取り込み阻害剤および/またはエピネフリン再取り込み阻害剤)を含む医薬組み合わせ療法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本国際特許出願は、2019年11月27日に出願された米国仮出願第62/941,542号(その内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)の優先権および利益を主張する。
【0002】
開示の技術分野
当該分野は、中枢神経系との関与に有用なホスホジエステラーゼ1(PDE1)の阻害剤に関する。当該分野はまた、ドパミンD1受容体細胞内経路に関連する状態、疾患または障害、例えば注意、認知、記憶および/または抑制処理の欠如を特徴とする状態、疾患または障害の治療のためのホスホジエステラーゼ1(PDE1)の阻害剤の投与に関する。
【背景技術】
【0003】
開示の背景
ホスホジエステラーゼ(PDE)の11のファミリーが同定されているが、Ca2+/カルモジュリン依存性ホスホジエステラーゼ(CaM-PDE)であるファミリーIのPDEのみが、カルシウムおよび環状ヌクレオチド(例えば、cAMPおよびcGMP)シグナル伝達経路を媒介することが示されている。3つの既知のCaM-PDE遺伝子であるPDE1A、PDE1BおよびPDE1Cは、全て中枢神経系組織において発現している。PDE1Aは、脳全体において発現しており、海馬のCA1~CA3層および小脳においては高レベルで発現し、線条体においては低レベルで発現している。PDE1Aは、肺および心臓においても発現している。PDE1Bは、主に、線条体、歯状回、嗅索および小脳において発現しており、その発現は高レベルのドパミン作動性神経支配を有する脳領域と相関している。PDE1Bは主に中枢神経系において発現しているが、心臓でも検出されることがある。PDE1Cは、主に、嗅上皮、小脳顆粒細胞および線条体において発現している。PDE1Cは、心臓および血管平滑筋においても発現している。
【0004】
環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼは、細胞内cAMPおよびcGMPシグナル伝達を、これらの環状ヌクレオチドをそれぞれの不活性5'一リン酸エステル(5'AMPおよび5'GMP)に加水分解することにより減少させる。CaM-PDEは、特に大脳基底核または線条体として知られている脳の領域内で、脳細胞におけるシグナル伝達の媒介において重要な役割を果たしている。例えば、NMDA型グルタミン酸受容体活性化および/またはドパミンD2受容体活性化により、細胞内カルシウム濃度が上昇し、カルモジュリン依存性キナーゼII(CaMKII)およびカルシニューリンなどのエフェクターが活性化され、CaM-PDEが活性化され、cAMPおよびcGMPが減少する。一方、ドパミンD1受容体活性化により、カルシウム依存性ヌクレオチドシクラーゼが活性化され、cAMPおよびcGMPが増加する。これらの環状ヌクレオチドは、次に、DARPP-32(ドパミンおよびcAMP調節性リン酸化タンパク質)およびcAMP応答エレメント結合タンパク質(CREB)などの下流シグナル伝達経路エレメントをリン酸化するプロテインキナーゼA(PKA;cAMP依存性プロテインキナーゼ)および/またはプロテインキナーゼG(PKG;cAMP依存性プロテインキナーゼ)を活性化する。
【0005】
したがって、CaM-PDEは、大脳基底核(線条体)におけるドパミン調節性および他の細胞内シグナル伝達経路に影響を与えることができ、該細胞内シグナル伝達経路としては、一酸化窒素、ノルアドレナリン作動性、ニューロテンシン、CCK、VIP、セロトニン、グルタミン酸(例えば、NMDA受容体、AMPA受容体)、GABA、アセチルコリン、アデノシン(例えば、A2A受容体)、カンナビノイド受容体、ナトリウム利尿ペプチド(例えば、ANP、BNP、CNP)およびエンドルフィンの細胞内シグナル伝達経路が挙げられるがこれらに限定されない。
【0006】
ホスホジエステラーゼ(PDE)活性、特にホスホジエステラーゼ1(PDE1)活性は、脳組織において、自発運動活性および学習および記憶の調節因子として機能している。PDE1は、好ましくは神経系における、細胞内シグナル伝達経路の調節のための治療標的であり、該細胞内シグナル伝達経路としては、ドパミンD1受容体、ドパミンD2受容体、一酸化窒素、ノルアドレナリン作動性、ニューロテンシン、CCK、VIP、セロトニン、グルタミン酸(例えば、NMDA受容体、AMPA受容体)、GABA、アセチルコリン、アデノシン(例えば、A2A受容体)、カンナビノイド受容体、ナトリウム利尿ペプチド(例えば、ANP、BNP、CNP)またはエンドルフィンの細胞内シグナル伝達経路が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、PDE1Bの阻害は、cGMPおよびcAMPを分解から保護することによってドパミンD1アゴニストの効果を増強するように作用し、同様に、PDE1活性を阻害することによってドパミンD2受容体シグナル伝達経路を阻害する。
【0007】
メチルフェニデートまたはモダフィニルなどのドパミン調節剤は、動物モデルにおける文脈的恐怖の増強された消滅を介して、そしてより最近では、ヒトにおける恐怖消滅学習の増強を介して、認知機能を改善することが観察されている。最近の研究では、健康なヒトにおいて、恐怖消滅課題中に両側前島に対するメチルフェニデートの減衰効果も観察された。メチルフェニデートおよびモダフィニルは、ストップシグナル課題中に、抑制能力を改善し、前頭回の活性化を増加させることも示されている。
【0008】
しかしながら、そのような薬物は、認知の欠損に対処する一方で、制限的な副作用を伴う。例えば、メチルフェニデートなどの一般的に使用される薬物は、一部の患者にとって習慣性がある場合がある。抑制性制御障害の治療を含む、認知の治療に対する満たされていない大きなニーズが残っている。
【発明の概要】
【0009】
開示の概要
本明細書で提供されるのは、ドパミンD1受容体細胞内経路に関連する状態、疾患または障害、例えば、注意、認知、記憶および/または抑制処理の欠如を特徴とする状態、疾患または障害を治療するための治療方法である。例えば、ADHDおよびPTSDなどの障害は、一部には、反応の抑制または「停止する」という信号を受けた後に反応を行わないようにする能力に重要な脳領域である前頭回の抑制処理および反応性の障害を特徴としている。本発明者らは、本明細書に開示されるPDE1阻害剤が、領域選択的および課題特異的に脳活動化を調節することを予想外に見出した。本明細書に開示されているPDE1阻害剤の投与は、メチルフェニデートで見られる反応と同様に、前頭回の活性化を増大させ、認知の改善と一致することから、注意、認知、記憶および/または抑制処理の欠如を特徴とする幅広い障害における臨床的有効性が示唆された。
【0010】
したがって、第一の態様において、本開示は、ドパミンD1受容体細胞内経路に関連する状態、疾患または障害、例えば、注意、認知、記憶および/または抑制処理の欠如を特徴とする状態、疾患または障害の予防および/または治療のための方法であって、該方法が該予防および/または治療を必要とする対象体にPDE1阻害剤(すなわち、式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIで示される化合物)の薬学的有効量を投与することを含む、方法を提供する。該実施態様のいくつかの態様において、該方法は、さらに、ドパミン再取り込み阻害剤の投与を含む。該実施態様の特定の態様において、ドパミンD1受容体細胞内経路に関連する状態、疾患または障害は、摂食障害(例えば、神経性食欲不振症、神経性大食症、過食性障害、異食症、反芻障害、回避性/制限性摂食障害、排出性障害、夜間摂食障害、他の特定される食行動障害または摂食障害(OSFED))、物質使用障害(例えば、嗜癖(例えば、アンフェタミン、コカイン、オピオイドおよび/またはニコチンなどの刺激物質嗜癖)、アルコール依存症)、強迫性障害(例えば、点検、汚染、精神的汚染、溜め込み、反芻、侵入思考、対称性/秩序)、注意欠如多動症(ADHD)、早漏症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、ギャンブル障害(例えば、ギャンブル嗜癖、強迫性病的賭博)、トゥレット症候群および/または衝動制御・素行症群(例えば、反抗挑戦性障害、素行症、間欠性爆発性障害、窃盗症、放火症)である。
【0011】
第2の態様において、本開示は、抑制処理障害の治療方法であって、該方法が該治療を必要とする対象体にPDE1阻害剤(すなわち、式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIで示される化合物)の薬学的有効量を投与することを含む、方法を提供する。
【0012】
いくつかの実施態様において、本開示は、PDE1阻害剤(例えば、式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIで示される化合物)およびドパミン再取り込み阻害剤(例えば、メチルフェニデート)を含む組み合わせ療法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本開示によるPDE1阻害剤の投与後の恐怖根絶課題中のヒト背側前島において測定された脳活動を示す。
【0014】
図2図2は、本開示によるPDE1阻害剤の投与後のストップシグナル課題中のヒト下前頭回において測定された脳活動を示す。
【0015】
図3図3は、本開示によるPDE1阻害剤投与後のストップシグナル課題中のヒト背外側前頭前皮質において測定された脳活動を示す。
【0016】
図4図4は、本開示によるPDE1阻害剤投与後のストップシグナル課題中のヒト背側前帯状皮質において測定された脳活動を示す。
【0017】
図5図5は、本開示によるPDE1阻害剤投与後のストップシグナル課題中のヒト前島において測定された脳活動を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
開示の詳細な説明
開示の方法において用いるための化合物
一の実施態様において、本明細書に記載の治療および予防の方法において用いるためのPDE1阻害剤は、選択的PDE1阻害剤である。
【0019】
PDE1阻害剤
一の実施態様において、本発明は、本明細書に記載の治療および予防の方法において用いるためのPDE1阻害剤が、遊離形態、塩形態またはプロドラッグ形態(そのエナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体を含む)の、式I:
【化1】
[式中、
(i) R1は、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチル)であり;
(ii) R4は、HまたはC1-4アルキルであり、R2およびR3は、独立して、HまたはC1-4アルキル(例えば、R2およびR3は共にメチルであるか、または、R2はHであり、R3はイソプロピルである)、アリール、ヘテロアリール、(場合によってはヘテロ)アリールアルコキシ、または(場合によってはヘテロ)アリールアルキルであるか;または
2は、Hであり、R3およびR4は一緒になってジメチレン架橋、トリメチレン架橋またはテトラメチレン架橋を形成し(好ましくは、R3およびR4が一緒になってシス配置を有しており、例えば、R3およびR4を担持している炭素がそれぞれR配置およびS配置を有している);
(iii) R5は、例えばハロアルキルで置換されている、置換ヘテロアリールアルキルであるか;または
5は、式Iのピラゾロ部分の窒素の1つに結合しており、式A:
【化2】
(式中、X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり、R8、R9、R11およびR12は、独立して、Hまたはハロゲン(例えば、ClまたはF)であり、R10は、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリール(例えば、ハロゲンで置換されていてもよいピリジル(例えば、ピリダ-2-イル)、またはチアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾール-4-イル))、ジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、アリールカルボニル(例えば、ベンゾイル)、アルキルスルホニル(例えば、メチルスルホニル)、ヘテロアリールカルボニル、またはアルコキシカルボニルであり;ただし、X、YまたはZが窒素である場合、それぞれ、R8、R9またはR10は存在しない)
で示される部分であり;
(iv) R6は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えば、ベンジル)、アリールアミノ(例えば、フェニルアミノ)、ヘテロアリールアミノ、N,N-ジアルキルアミノ、N,N-ジアリールアミノ、またはN-アリール-N-(アリールアルキル)アミノ(例えば、N-フェニル-N-(1,1'-ビフェン-4-イルメチル)アミノ)であり;
(v) nは0または1であり;
(vi) nが1である場合、Aは、-C(R1314)-である(ここで、R13およびR14は、独立して、HまたはC1-4アルキル、アリール、ヘテロアリール、(場合によってはヘテロ)アリールアルコキシまたは(場合によってはヘテロ)アリールアルキルである)]
で示される化合物であることを提供する。
【0020】
別の実施態様において、本発明は、本明細書に記載の方法において用いるためのPDE1阻害剤が、遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態(そのエナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体を含む)の、式1a:
【化3】
[式中、
(i) R2およびR5は、独立して、Hまたはヒドロキシであり、R3およびR4は一緒になってトリメチレン架橋またはテトラメチレン架橋を形成している[好ましくは、R3およびR4を担持している炭素がそれぞれR配置およびS配置を有している]か;または、R2およびR3はそれぞれメチルであり、R4およびR5はそれぞれHであるか;または、R2、R4およびR5はHであり、R3はイソプロピルであり[好ましくは、R3を担持している炭素はR配置を有している];
(ii) R6は、(ハロ置換されていてもよい)フェニルアミノ、(ハロ置換されていてもよい)ベンジルアミノ、C1-4アルキル、またはC1-4アルキルスルフィドであり;例えば、フェニルアミノまたは4-フルオロフェニルアミノであり;
(iii) R10は、C1-4アルキル、メチルカルボニル、ヒドロキシエチル、カルボン酸、スルホンアミド、(ハロ置換またはヒドロキシ置換されていてもよい)フェニル、(ハロ置換またはヒドロキシ置換されていてもよい)ピリジル(例えば、6-フルオロピリダ-2-イル)、またはチアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾール-4-イル)であり;
XおよびYは、独立して、CまたはNである]
であることを提供する。
【0021】
別の実施態様において、本発明は、本明細書に記載の治療および予防の方法において用いるためのPDE1阻害剤が、遊離形態、塩形態またはプロドラッグ形態の、式II:
【化4】
[式中、
(i) Xは、C1-6アルキレン(例えば、メチレン、エチレンまたはプロパ-2-イン-1-イレン)であり;
(ii) Yは、単結合、アルキニレン(例えば、-C≡C-)、アリーレン(例えば、フェニレン)またはヘテロアリーレン(例えば、ピリジレン)であり;
(iii) Zは、H、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリール(例えば、ピリジル、例えば、ピリダ-2-イル)、ハロ(例えば、F、Br、Cl)、ハロC1-6アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、-C(O)-R1、-N(R2)(R3)、または、NもしくはOからなる群から選択される少なくとも1個の原子を含有していてもよいC3-7シクロアルキル(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル、またはモルホリニル)であり;
(iv) R1は、C1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、-OHまたは-OC1-6アルキル(例えば、-OCH3)であり;
(v) R2およびR3は、独立して、HまたはC1-6アルキルであり;
(vi) R4およびR5は、独立して、H、C1-6アルキル、または1個以上のハロ(例えば、フルオロフェニル、例えば、4-フルオロフェニル)、ヒドロキシ(例えば、ヒドロキシフェニル、例えば、4-ヒドロキシフェニルまたは2-ヒドロキシフェニル)またはC1-6アルコキシで置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)であり;
(vii) ここで、X、YおよびZは、独立して、1個以上のハロ(例えば、F、ClまたはBr)、C1-6アルキル(例えば、メチル)、ハロC1-6アルキル(例えば、トリフルオロメチル)で置換されていてもよく、例えば、Zは、1個以上のハロ(例えば、6-フルオロピリダ-2-イル、5-フルオロピリダ-2-イル、6-フルオロピリダ-2-イル、3-フルオロピリダ-2-イル、4-フルオロピリダ-2-イル、4,6-ジクロロピリダ-2-イル)、ハロC1-6アルキル(例えば、5-トリフルオロメチルピリダ-2-イル)またはC1-6アルキル(例えば、5-メチルピリダ-2-イル)で置換されている、ヘテロアリール、例えばピリジルであるか、または、Zは、1個以上のハロ(例えば、4-フルオロフェニル)で置換されている、アリール、例えばフェニルである]
で示される化合物であることを提供する。
【0022】
さらに別の実施態様において、本発明は、本明細書に記載の治療および予防の方法において用いるためのPDE1阻害剤が、遊離形態または塩形態の、式III:
【化5】
[式中、
(i) R1は、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(ii) R2およびR3は、独立して、HまたはC1-6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(iii) R4は、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(iv) R5は、独立して-C(=O)-C1-6アルキル(例えば、-C(=O)-CH3)およびC1-6-ヒドロキシアルキル(例えば、1-ヒドロキシエチル)から選択される1個以上の基で置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)であり;
(v) R6およびR7は、独立して、H、または、独立してC1-6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)およびハロゲン(例えば、FまたはCl)から選択される1個以上の基で置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)、例えば、非置換フェニル、または1個以上のハロゲン(例えば、F)で置換されているフェニル、または1個以上のC1-6アルキルおよび1個以上のハロゲンで置換されているフェニル、または1個のC1-6アルキルおよび1個のハロゲンで置換されているフェニル、例えば、4-フルオロフェニルまたは3,4-ジフルオロフェニルまたは4-フルオロ-3-メチルフェニルであり;
(vi) nは、1、2、3または4である]
で示される化合物であることを提供する。
【0023】
さらに別の実施態様において、本発明は、本明細書に記載の治療および予防の方法において用いるためのPDE1阻害剤が、遊離形態または塩形態の、式IV:
【化6】
[式中、
(i) R1は、C1-4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)、または-NH(R2)(ここで、R2は、ハロ(例えば、フルオロ)で置換されていてもよいフェニル、例えば4-フルオロフェニルである)であり;
(ii) X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり;
(iii) R3、R4およびR5は、独立して、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチル)であるか;または、R3は、Hであり、R4およびR5は一緒になってトリメチレン架橋を形成し(好ましくは、R4およびR5は一緒になってシス配置を有しており、例えば、R4およびR5を担持している炭素はそれぞれR配置およびS配置を有している)、
(iv) R6、R7およびR8は、独立して、
H、
1-4アルキル(例えば、メチル)、
ヒドロキシで置換されているピリダ-2-イル、または
-S(O)2-NH2
であり;
(v) ただし、X、Yおよび/またはZがNである場合、それぞれ、R6、R7および/またはR8は存在しない;また、X、YおよびZがすべてCである場合、R6、R7またはR8の少なくとも1つは-S(O)2-NH2、またはヒドロキシで置換されているピリダ-2-イルである]
であることを提供する。
【0024】
別の実施態様において、本発明は、本明細書に記載の方法において用いるためのPDE1阻害剤が、遊離形態または塩形態の、式V:
【化7】
[式中、
(i) R1は、-NH(R4)であり(ここで、R4は、ハロ(例えば、フルオロ)で置換されていてもよいフェニル、例えば、4-フルオロフェニルである);
(ii) R2は、HまたはC1-6アルキル(例えば、メチル、イソブチルまたはネオペンチル)であり;
(iii) R3は、-SO2NH2または-COOHである]
であることを提供する。
【0025】
別の実施態様において、本発明は、本明細書に記載の方法において用いるためのPDE1阻害剤が、遊離形態または塩形態の、式VI:
【化8】
[式中、
(i) R1は、-NH(R4)であり(ここで、R4は、ハロ(例えば、フルオロ)で置換されていてもよいフェニル、例えば、4-フルオロフェニルである);
(ii) R2は、HまたはC1-6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(iii) R3は、H、ハロゲン(例えば、ブロモ)、C1-6アルキル(例えば、メチル)、ハロゲンで置換されていてもよいアリール(例えば、4-フルオロフェニル)、ハロゲンで置換されていてもよいヘテロアリール(例えば、6-フルオロピリダ-2-イルまたはピリダ-2-イル)、またはアシル(例えば、アセチル)である]
であることを提供する。
【0026】
一の実施態様において、本開示は、本明細書に記載の方法において用いるためのPDE1阻害剤(例えば、式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIで示される化合物)の投与であって、該阻害剤が、下記の化合物:
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
である、投与を提供する。
【0027】
一の実施態様において、本発明は、炎症または炎症関連疾患もしくは障害の治療または予防のためのPDE1阻害剤の投与であって、該阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、下記の化合物:
【化13】
である、投与を提供する。
【0028】
さらに別の実施態様において、本発明は、炎症または炎症関連疾患もしくは障害の治療または予防のためのPDE1阻害剤の投与であって、該阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、下記の化合物:
【化14】
である、投与を提供する。
【0029】
さらに別の実施態様において、本発明は、炎症または炎症関連疾患もしくは障害の治療または予防のためのPDE1阻害剤の投与であって、該阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、下記の化合物:
【化15】
である、投与を提供する。
【0030】
さらに別の実施態様において、本発明は、炎症または炎症関連疾患もしくは障害の治療または予防のためのPDE1阻害剤の投与であって、該阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、下記の化合物:
【化16】
である、投与を提供する。
【0031】
さらに別の実施態様において、本発明は、炎症または炎症関連疾患もしくは障害の治療または予防のためのPDE1阻害剤の投与であって、該阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、下記の化合物:
【化17】
である、投与を提供する。
【0032】
一の実施態様において、上記の式(例えば、式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVI)のいずれかで示される選択的PDE1阻害剤は、cGMPのホスホジエステラーゼ媒介(例えば、PDE1媒介、特にPDE1B媒介)加水分解を阻害する化合物であり、例えば、好ましい化合物は、遊離形態または塩形態で、固定化金属親和性粒子試薬PDEアッセイにて、1μM未満、好ましくは500nM未満、好ましくは50nM未満、好ましくは5nM未満のIC50を有する。
【0033】
他の実施態様において、本発明は、本明細書に記載の方法による治療のためのPDE1阻害剤の投与であって、該阻害剤が、下記の化合物:
【化18】
である、投与を提供する
【0034】
本明細書に記載の方法および治療における使用に適しているPDE1阻害剤のさらなる例は、国際公開第2006133261号(A2);米国特許第8,273,750号;米国特許第9,000,001号;米国特許第9,624,230号;国際公開第2009075784号(A1);米国特許第8,273,751号;米国特許第8,829,008号;米国特許第9,403,836号;国際公開第2014151409号(A1)、米国特許第9,073,936号;米国特許第9,598,426号;米国特許第9,556,186号;米国特許出願公開第2017/0231994号(A1)、国際公開第2016022893号(A1)、および米国特許出願公開第2017/0226117号(A1)に見ることができる(それぞれ、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)。
【0035】
本明細書に記載の方法および治療における使用に適しているPDE1阻害剤のさらにさらなる例は、国際公開第2018007249号(A1);米国特許出願公開第2018/0000786号;国際公開第2015118097号(A1);米国特許第9,718,832号;国際公開第2015091805号(A1);米国特許第9,701,665号;米国特許出願公開第2015/0175584号(A1);米国特許出願公開第2017/0267664号(A1);国際公開第2016055618号(A1);米国特許出願公開第2017/0298072号(A1);国際公開第2016170064号(A1);米国特許出願公開第2016/0311831号(A1);国際公開第2015150254号(A1);米国特許出願公開第2017/0022186号(A1);国際公開第2016174188号(A1);米国特許出願公開第2016/0318939号(A1);米国特許出願公開第2017/0291903号(A1);国際公開第2018073251号(A1);国際公開第2017178350号(A1);米国特許出願公開第2017/0291901号(A1);国際公開第2018/115067号;米国特許出願公開第2018/0179200号(A);米国特許出願公開第20160318910号(A1);米国特許第9,868,741号;国際公開第2017/139186号(A1);国際公開第2016/040083号;米国特許出願公開第2017/0240532号;国際公開第2016033776号(A1);米国特許出願公開第2017/0233373号;国際公開第2015130568号;国際公開第2014159012号;米国特許第9,034,864号;米国特許第9,266,859号;国際公開第2009085917号;米国特許第8,084,261号;国際公開第2018039052号;米国特許出願公開20180062729号;および国際公開第2019027783号に見ることができる(それぞれ、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)。出典明示により本明細書の一部とされる文書の記載が本開示における記載と矛盾するか、または互換性がない場合には、本開示の記載が支配的であると理解されなければならない。出典明示により本明細書の一部とされる文書の記載が本開示における記載と矛盾するかまたは相容れない場合には、本開示の記載が支配的であると理解されるものとする。
【0036】
PDE1阻害剤のさらに別の例および好適な使用方法は、国際出願PCT/US2019/033941号および米国仮出願第62/789,499に開示されている(これらは両方とも出典明示により本明細書の一部とする)。
【0037】
別段の指定がない場合、または文脈から明らかでない場合、本明細書における以下の用語は、以下の意味を有する:
【0038】
(a) 「選択的PDE1阻害剤」とは、本明細書で用いられる場合、PDE1の阻害に対して他のPDEアイソフォームの阻害よりも少なくとも100倍の選択性を有するPDE1阻害剤をいう。
【0039】
(b) 「アルキル」とは、本明細書で用いられる場合、飽和または不飽和炭化水素部分であり、好ましくは飽和であり、好ましくは1~6個の炭素原子を有しており、直鎖または分枝鎖であってよく、例えばハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ヒドロキシまたはカルボキシで、モノ置換、ジ置換またはトリ置換されていてもよい。
【0040】
(c) 「シクロアルキル」とは、本明細書で用いられる場合、飽和または不飽和非芳香族炭化水素部分であり、好ましくは飽和であり、好ましくは3~9個の炭素原子を含んでおり、それらのうち少なくともいくつかが非芳香族単環式または二環式または架橋の環状構造を形成しており、例えばハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ヒドロキシまたはカルボキシで、置換されていてもよい。シクロアルキルがNおよびOおよび/またはSから選択される1個以上の原子を含んでいてもよい場合、該シクロアルキルはヘテロシクロアルキルであってもよい。
【0041】
(d) 「ヘテロシクロアルキル」とは、特記しない限り、飽和または不飽和非芳香族炭化水素部分であり、好ましくは飽和であり、好ましくは3~9個の炭素原子を含んでおり、それらのうち少なくともいくつかが非芳香族単環式または二環式または架橋の環状構造を形成しており、少なくとも1個の炭素原子がN、OまたはSに置き換わっており、該ヘテロシクロアルキルは、例えばハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ヒドロキシまたはカルボキシで、置換されていてもよい。
【0042】
(e) 「アリール」とは、本明細書で用いられる場合、単環式または二環式芳香族炭化水素であり、好ましくはフェニルであり、例えばアルキル(例えば、メチル)、ハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、ヒドロキシ、カルボキシ、またはさらなるアリールもしくはヘテロアリール(例えば、ビフェニルまたはピリジルフェニル)で置換されていてもよい。
【0043】
(f) 「ヘテロアリール」とは、本明細書で用いられる場合、芳香環を構成する原子の1個以上が炭素ではなくて硫黄または窒素である芳香族部分であり、例えばピリジルまたはチアジアゾリルであり、例えばアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシまたはカルボキシで、置換されていてもよい。
【0044】
本開示化合物、例えば本明細書に記載のPDE1阻害剤は、遊離形態または塩形態で、例えば酸付加塩として、存在し得る。本明細書では、特記しない限り、「本開示化合物」などの文言は、何らかの形態の化合物、例えば遊離形態または酸付加塩形態の化合物、または化合物が酸性置換基を含有する場合には塩基付加塩形態の化合物を包含すると解されるべきである。本開示化合物は、医薬品としての使用を目的としているので、薬学的に許容される塩が好ましい。医薬用途に適さない塩は、例えば遊離の本開示化合物またはそれらの薬学的に許容される塩の単離または精製に有用であり得、したがって、該塩も包含される。
【0045】
本開示化合物は、場合によっては、プロドラッグ形態でも存在し得る。プロドラッグ形態は、体内で本開示化合物に変換される化合物である。例えば、本開示化合物がヒドロキシ置換基またはカルボキシ置換基を含有する場合、これらの置換基は、生理学的に加水分解可能で許容されるエステルを形成し得る。本明細書で用いる場合、「生理学的に加水分解可能で許容されるエステル」とは、生理学的条件下で加水分解可能であり、自体が投与されるべき用量で生理学的に許容される酸(ヒドロキシ置換基を有する本開示化合物の場合)またはアルコール(カルボキシ置換基を有する本開示化合物の場合)を生成する、本開示化合物のエステルを意味する。したがって、本開示化合物がヒドロキシ基を含有する場合、例えば化合物-OHである場合、該化合物のアシルエステルプロドラッグ、すなわち、化合物-O-C(O)-C1-4アルキルは、体内で加水分解して、一方では生理学的に加水分解可能なアルコール(化合物-OH)を形成し、他方では酸(例えば、HOC(O)-C1-4アルキル)を形成することができる。別法として、本開示化合物がカルボン酸を含有する場合、例えば化合物-C(O)OHである場合、該化合物の酸エステルプロドラッグ、化合物-C(O)O-C1-4アルキルは、加水分解して、化合物-C(O)OHおよびHO-C1-4アルキルを形成することができる。したがって、理解されるように、この用語は、慣用の医薬プロドラッグ形態を包含する。
【0046】
別の実施態様において、本開示は、さらに、PDE1阻害剤をドパミン再取り込み阻害剤と併せて、それぞれが遊離形態または薬学的に許容される塩形態で、薬学的に許容される担体と混合して含む医薬組成物を提供する。用語「組み合わせ」とは、本明細書で用いられる場合、PDE1阻害剤とドパミン再取り込み阻害剤との同時(simultaneous)、連続(sequential)または同時期(contemporaneous)投与を包含する。別の実施態様において、本開示は、このような化合物を含有する医薬組成物を提供する。いくつかの実施態様において、PDE1阻害剤とドパミン再取り込み阻害剤の組み合わせにより、ドパミン再取り込み阻害剤を、単独の単剤療法として投与した場合に有効であろう量よりも低い量で投与することができる。
【0047】
本開示化合物を使用する方法
別の実施態様において、本願は、ドパミンD1受容体細胞内経路に関連する状態、疾患または障害、例えば、注意、認知、記憶および/または抑制処理の欠如を特徴とする状態、疾患または障害の予防および/または治療のための方法であって、該予防および/または治療を必要とする対象体にPDE1阻害剤(すなわち、式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIで示される化合物)の薬学的有効量を投与することを含む、方法[方法1]を提供する。
【0048】
さらなる方法は以下のとおり提供される:
【0049】
1.1 状態、疾患または障害が、注意、認知、記憶および/または抑制処理の欠如を特徴とする、方法1。
【0050】
1.2 状態、疾患または障害が、摂食障害(例えば、神経性食欲不振症、神経性大食症、過食性障害、異食症、反芻障害、回避性/制限性摂食障害、排出性障害、夜間摂食障害、他の特定される食行動障害または摂食障害(OSFED))、物質使用障害(例えば、嗜癖(例えば、アンフェタミン、コカイン、オピエートおよび/またはニコチンなどの刺激物質嗜癖)、アルコール依存症)、強迫性障害(例えば、点検、汚染、精神的汚染、溜め込み、反芻、侵入思考、対称性/秩序)、注意欠如多動症(ADHD)、早漏症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、ギャンブル障害(例えば、ギャンブル嗜癖、強迫性病的賭博)、トゥレット症候群および/または衝動制御・素行症群(例えば、反抗挑戦性障害、素行症、間欠性爆発性障害、窃盗症、放火症)から選択される、いずれかの上記方法。
【0051】
1.3 状態、疾患または障害が、摂食障害(例えば、神経性食欲不振症、神経性大食症、過食性障害、異食症、反芻障害、回避性/制限性摂食障害、排出性障害、夜間摂食障害、他の特定される食行動障害または摂食障害(OSFED))である、いずれかの上記方法。
【0052】
1.4 摂食障害が、神経性食欲不振症、神経性大食症、過食性障害、異食症、反芻障害、回避性/制限性摂食障害、排出性障害、夜間摂食障害、他の特定される食行動障害および/または摂食障害(OSFED)である、上記の方法。
【0053】
1.5 状態、疾患または障害が、物質使用障害(例えば、嗜癖(例えば、アンフェタミン、コカイン、オピエートおよび/またはニコチンなどの刺激物質嗜癖)、アルコール依存症)である、いずれかの上記方法。
【0054】
1.6 物質乱用障害が、嗜癖(例えば、アンフェタミン、コカイン、オピエートおよび/またはニコチンなどの刺激物質嗜癖)またはアルコール依存症である、上記の方法
【0055】
1.7 状態、疾患または障害が、強迫性障害(OCD)(例えば、点検OCD、汚染OCD、精神的汚染OCD、溜め込みOCD、反芻OCD、侵入思考OCD、対称性/秩序OCD)である、いずれかの上記方法。
【0056】
1.8 強迫性障害が、点検OCD、汚染OCD、精神的汚染OCD、溜め込みOCD、反芻OCD、侵入思考OCD、および/または対称性/秩序OCDである、上記の方法。
【0057】
1.9 状態、疾患または障害が注意欠如多動症(ADHD)である、いずれかの上記方法。
【0058】
1.10 状態、疾患または障害が早漏症である、いずれかの上記方法。
【0059】
1.11 状態、疾患または障害が心的外傷後ストレス障害(PTSD)である、いずれかの上記方法。
【0060】
1.12 状態、疾患または障害がギャンブル障害(例えば、ギャンブル嗜癖、強迫性病的賭博)である、いずれかの上記方法。
【0061】
1.13 ギャンブル障害がギャンブル嗜癖または強迫性病的賭博である、上記の方法。
【0062】
1.14 状態、疾患または障害がトゥレット症候群である、いずれかの上記方法。
【0063】
1.15 状態、疾患または障害が、衝動制御・素行症群(例えば、反抗挑戦性障害、素行症、間欠性爆発性障害、窃盗症、放火症)である、いずれかの上記方法。
【0064】
1.16 衝動制御・素行症が、反抗挑戦性障害、素行症、間欠性爆発性障害、窃盗症および/または放火症である、上記の方法。
【0065】
1.17 PDE1阻害剤が約0.01~約20mg/kg、例えば、約0.1~約5mg/kg、例えば、約1mg/kgの量で投与される、上記の方法のいずれか。
【0066】
1.18 PDE1阻害剤が経口投与される、上記の方法のいずれか。
【0067】
1.19 PDE1阻害剤が注射により投与される、上記の方法のいずれか。
【0068】
1.20 PDE1阻害剤がさらなる治療剤とともに投与される、上記の方法のいずれか。
【0069】
1.21 PDE1阻害剤が、モノアミン再取り込み阻害剤(例えば、ドパミン再取り込み阻害剤、セロトニン再取り込み阻害剤および/またはノルエピネフリン再取り込み阻害剤)とともに投与される、上記の方法のいずれか。
【0070】
1.22 PDE1阻害剤が、4-ヒドロキシ-1-メチル-4-(4-メチルフェニル)-3-ピペリジル-4-メチルフェニルケトン、アドラフィニル、アマンタジン、アトモキセチン、アンホネル酸、アミネプチン、アミトリプチリン、アモキサピン、ベンズトロピン、ブプロピオン、ヒドロキシブプロピオン、ブトリプチリン、クロルフェナミン、シタロプラム、クロミプラミン、コカエチレン、デシプラミン、デスメチルシタロプラム、デスメチルセルトラリン、デスメチルシブトラミン、デスオキシピプラドロール、デスベンラファキシン、デキストロアンフェタミン、デキストロメタンフェタミン、ジデスメチルシブトラミン、ジフェンヒドラミン、ドスレピン、ドキセピン、デュロキセチン、エスシタロプラム、エトペリドン、フェモキセチン、フルオレノール、フルオキセチン、フルボキサミン、GBR-12783、GBR-12935、GBR-13069、GBR-13098、GYKI-52895、イミプラミン、インダトラリン、イプリンドール、イオメトパン、レボミルナシプラン、ロフェプラミン、マプロチリン、マジンドール、メジホキサミン、メタフィット、メチレンジオキシピロバレロン(MDPV)、メチルフェニデート、エチルフェニデート、ミアンセリン、ミルナシプラン、ミルタザピン、モダフィニル、アルモダフィニル、ネファゾドン、ネホパム、ニソキセチン、ノミフェンシン、ノルフルオキセチン、ノルトリプチリン、オキサプロチリン、パロキセチン、プロトリプチリン、レボキセチン、リムカゾール、RTI-229、セルトラリン、シブトラミン、トラゾドン、トリミプラミン、バノキセリン、ベンラファキシン、ビラゾドン、ビロキサジン、ボルチオキセチン、ジメリジン、木瓜エキス(Chaenomeles speciose extract)、および/またはオロキシリンAのうち1つ以上とともに投与される、上記の方法のいずれか。
【0071】
1.23 PDE1阻害剤が、アトモキセチン、レボキセチン、ニソキセチン、デスベンラファキシン、ベンラファキシン、デュロキセチン、ミルナシプラン、フルオキセチン、セルトラリン、シタロプラム、エスシタロプラム、ブプロピオン、および/またはノミフェンシンのうち1つ以上とともに投与される、上記の方法のいずれか。
【0072】
1.24 PDE1阻害剤が、ドパミン再取り込み阻害剤とともに投与される、上記の方法のいずれか。
【0073】
1.25 PDE1阻害剤が、4-ヒドロキシ-1-メチル-4-(4-メチルフェニル)-3-ピペリジル-4-メチルフェニルケトン、アルトロパン、アンホネル酸、アミネプチン、BTCP、3C-PEP、DBL-583、ジフルオロピン、GBR-12783、GBR-12935、GBR-13069、GBR-13098、GYKI-52895、イオメトパン、メチルフェニデート、エチルフェニデート、モダフィニル、アルモダフィニル、RTI-229、バノキセリン、アドラフィニル、アマンタジン、ベンズトロピン、ブプロピオン、フルオレノール、メジホキサミン、メタフィット、リムカゾール、ベンラファキシン、木瓜エキス(Chaenomeles speciose extract)、オロキシリンA、またはそれらの組み合わせから選択されるドパミン再取り込み阻害剤とともに投与される、上記の方法のいずれか。
【0074】
1.26 PDE1阻害剤が、ノルエピネフリン・セロトニン再取り込み阻害剤とともに投与される、上記の方法のいずれか。
【0075】
1.27 PDE1阻害剤が、遊離形態または塩形態の、式VII:
【化19】
[式中、
1およびR2は、独立して、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
3は、n-C2-4アルキル(例えば、エチルまたはn-プロピル)、またはヒドロキシで置換されていてもよい-O-C1-4アルキル(例えば、メトキシまたはエトキシ)である]
で示されるノルエピネフリン・セロトニン再取り込み阻害剤とともに投与される、上記の方法のいずれか。
【0076】
1.28 PDE1阻害剤が、
【化20】
で示されるノルエピネフリン・セロトニン再取り込み阻害剤とともに投与される、上記の方法のいずれか。
【0077】
1.29 PDE1阻害剤が、式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIのいずれかで示される化合物である、上記の方法のいずれか。
【0078】
1.30 PDE1阻害剤が、式Iaで示される化合物である、上記の方法のいずれか。
【0079】
1.31 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
で示される化合物である、上記の方法のいずれか。
【0080】
1.32 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化25】
で示される化合物である、上記の方法のいずれか。
【0081】
1.33 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化26】
で示される化合物である、上記の方法のいずれか。
【0082】
1.34 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化27】
で示される化合物である、上記の方法のいずれか。
【0083】
1.35 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化28】
で示される化合物である、上記の方法のいずれか。
【0084】
1.36 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化29】
で示される化合物である、上記の方法のいずれか。
【0085】
1.37 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化30】
で示される化合物である、上記の方法のいずれか。
【0086】
1.38 患者がヒトである、上記の方法のいずれか。
【0087】
本開示は、さらに、ドパミンD1受容体細胞内経路に関連する状態、疾患または障害、例えば、注意、認知、記憶および/または抑制処理の欠如を特徴とする状態、疾患または障害の予防および/または治療のための方法において用いるための、例えば方法1以降のいずれかにおいて用いるためのPDE1阻害剤を提供する。
【0088】
本開示は、さらに、ドパミンD1受容体細胞内経路に関連する状態、疾患または障害、例えば、注意、認知、記憶および/または抑制処理の欠如を特徴とする状態、疾患または障害の予防および/または治療のための方法において用いるための医薬、例えば、方法1以降のいずれかにおいて用いるための医薬の製造におけるPDE1阻害剤の使用を提供する。
【0089】
本発明は、さらに、PDE1阻害剤、例えば、式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIで示される化合物のいずれかを含む、方法1以降のいずれかにおいて用いるための医薬組成物。
【0090】
別の実施態様において、本願は、抑制処理障害を治療するための方法であって、該治療を必要とする患者に、PDE1阻害剤(すなわち、式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIで示されるPDE1阻害剤)の薬学的に許容される量を投与することを含む、方法(方法2)を提供する。
【0091】
さらなる方法は以下のとおり提供される:
【0092】
2.1 患者が、ドパミンD1受容体細胞内経路に関連する状態、疾患または障害に罹患している、方法2。
【0093】
2.2 患者が、摂食障害(例えば、神経性食欲不振症、神経性大食症、過食性障害、異食症、反芻障害、回避性/制限性摂食障害、排出性障害、夜間摂食障害、他の特定される食行動障害または摂食障害(OSFED))、物質使用障害(例えば、嗜癖(例えば、アンフェタミン、コカイン、オピエートおよび/またはニコチンなどの刺激物質嗜癖)、アルコール依存症)、強迫性障害(例えば、点検、汚染、精神的汚染、溜め込み、反芻、侵入思考、対称性/秩序)、注意欠如多動症(ADHD)、早漏症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、ギャンブル障害(例えば、ギャンブル嗜癖、強迫性病的賭博)、トゥレット症候群および/または衝動制御・素行症群(例えば、反抗挑戦性障害、素行症、間欠性爆発性障害、窃盗症、放火症)から選択される状態、疾患または障害に罹患している、いずれかの上記方法。
【0094】
2.3 患者が、摂食障害(例えば、神経性食欲不振症、神経性大食症、過食性障害、異食症、反芻障害、回避性/制限性摂食障害、排出性障害、夜間摂食障害、他の特定される食行動障害または摂食障害(OSFED))に罹患している、いずれかの上記方法。
【0095】
2.4 摂食障害が、神経性食欲不振症、神経性大食症、過食性障害、異食症、反芻障害、回避性/制限性摂食障害、排出性障害、夜間摂食障害、他の特定される食行動障害および/または摂食障害(OSFED)である、上記の方法。
【0096】
2.5 患者が、物質使用障害(例えば、嗜癖(例えば、アンフェタミン、コカイン、オピエートおよび/またはニコチンなどの刺激物質嗜癖)、アルコール依存症)に罹患している、いずれかの上記方法。
【0097】
2.6 物質乱用障害が、嗜癖(例えば、アンフェタミン、コカイン、オピエートおよび/またはニコチンなどの刺激物質嗜癖)またはアルコール依存症である、上記の方法。
【0098】
2.7 患者が、強迫性障害(OCD)(例えば、点検OCD、汚染OCD、精神的汚染OCD、溜め込みOCD、反芻OCD、侵入思考OCD、対称性/秩序OCD)に罹患している、いずれかの上記方法。
【0099】
2.8 強迫性障害が、点検OCD、汚染OCD、精神的汚染OCD、溜め込みOCD、反芻OCD、侵入思考OCD、および/または対称性/秩序OCDである、上記の方法。
【0100】
2.9 患者が注意欠如多動症(ADHD)に罹患している、いずれかの上記方法。
【0101】
2.10 患者が早漏症に罹患している、いずれかの上記方法。
【0102】
2.11 患者が心的外傷後ストレス障害(PTSD)に罹患している、いずれかの上記方法。
【0103】
2.12 患者がギャンブル障害(例えば、ギャンブル嗜癖、強迫性病的賭博)に罹患している、いずれかの上記方法。
【0104】
2.13 ギャンブル障害がギャンブル嗜癖または強迫性病的賭博である、上記の方法。
【0105】
2.14 状態、疾患または障害がトゥレット症候群である、いずれかの上記方法。
【0106】
2.15 患者が、衝動制御・素行症群(例えば、反抗挑戦性障害、素行症、間欠性爆発性障害、窃盗症、放火症)に罹患している、いずれかの上記方法。
【0107】
2.16 衝動制御・素行症が、反抗挑戦性障害、素行症、間欠性爆発性障害、窃盗症および/または放火症である、上記の方法。
【0108】
2.17 PDE1阻害剤が、約0.01~約20mg/kg、例えば、約0.1~約5mg/kg、例えば、約1mg/kgの量で投与される、上記の方法のいずれか。
【0109】
2.18 PDE1阻害剤が経口投与される、上記の方法のいずれか。
【0110】
2.19 PDE1阻害剤が注射により投与される、上記の方法のいずれか。
【0111】
2.20 PDE1阻害剤が、さらなる治療剤とともに投与される、上記の方法のいずれか。
【0112】
2.21 PDE1阻害剤が、モノアミン再取り込み阻害剤(例えば、ドパミン再取り込み阻害剤、セロトニン再取り込み阻害剤および/またはノルエピネフリン再取り込み阻害剤)とともに投与される、上記の方法のいずれか。
【0113】
2.22 PDE1阻害剤が、4-ヒドロキシ-1-メチル-4-(4-メチルフェニル)-3-ピペリジル-4-メチルフェニルケトン、アドラフィニル、アマンタジン、アトモキセチン、アンホネル酸、アミネプチン、アミトリプチリン、アモキサピン、ベンズトロピン、ブプロピオン、ヒドロキシブプロピオン、ブトリプチリン、クロルフェナミン、シタロプラム、クロミプラミン、コカエチレン、デシプラミン、デスメチルシタロプラム、デスメチルセルトラリン、デスメチルシブトラミン、デスオキシピプラドロール、デスベンラファキシン、デキストロアンフェタミン、デキストロメタンフェタミン、ジデスメチルシブトラミン、ジフェンヒドラミン、ドスレピン、ドキセピン、デュロキセチン、エスシタロプラム、エトペリドン、フェモキセチン、フルオレノール、フルオキセチン、フルボキサミン、GBR-12783、GBR-12935、GBR-13069、GBR-13098、GYKI-52895、イミプラミン、インダトラリン、イプリンドール、イオメトパン、レボミルナシプラン、ロフェプラミン、マプロチリン、マジンドール、メジホキサミン、メタフィット、メチレンジオキシピロバレロン(MDPV)、メチルフェニデート、エチルフェニデート、ミアンセリン、ミルナシプラン、ミルタザピン、モダフィニル、アルモダフィニル、ネファゾドン、ネホパム、ニソキセチン、ノミフェンシン、ノルフルオキセチン、ノルトリプチリン、オキサプロチリン、パロキセチン、プロトリプチリン、レボキセチン、リムカゾール、RTI-229、セルトラリン、シブトラミン、トラゾドン、トリミプラミン、バノキセリン、ベンラファキシン、ビラゾドン、ビロキサジン、ボルチオキセチン、ジメリジン、木瓜エキス(Chaenomeles speciose extract)、および/またはオロキシリンAのうち1つ以上とともに投与される、上記の方法のいずれか。
【0114】
2.23 PDE1阻害剤が、アトモキセチン、レボキセチン、ニソキセチン、デスベンラファキシン、ベンラファキシン、デュロキセチン、ミルナシプラン、フルオキセチン、セルトラリン、シタロプラム、エスシタロプラム、ブプロピオン、および/またはノミフェンシンのうち1つ以上とともに投与される、上記の方法のいずれか。
【0115】
2.24 PDE1阻害剤がドパミン再取り込み阻害剤とともに投与される、上記の方法のいずれか。
【0116】
2.25 PDE1阻害剤が、4-ヒドロキシ-1-メチル-4-(4-メチルフェニル)-3-ピペリジル-4-メチルフェニルケトン、アルトロパン、アンホネル酸、アミネプチン、BTCP、3C-PEP、DBL-583、ジフルオロピン、GBR-12783、GBR-12935、GBR-13069、GBR-13098、GYKI-52895、イオメトパン、メチルフェニデート、エチルフェニデート、モダフィニル、アルモダフィニル、RTI-229、バノキセリン、アドラフィニル、アマンタジン、ベンズトロピン、ブプロピオン、フルオレノール、メジホキサミン、メタフィット、リムカゾール、ベンラファキシン、木瓜エキス(Chaenomeles speciose extract)、オロキシリンA、またはそれらの組み合わせから選択されるドパミン再取り込み阻害剤とともに投与される、上記の方法のいずれか。
【0117】
2.26 PDE1阻害剤がノルエピネフリン・セロトニン再取り込み阻害剤とともに投与される、上記の方法のいずれか。
【0118】
2.27 PDE1阻害剤が、遊離形態または塩形態の、式VII:
【化31】
[式中、
1およびR2は、独立して、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
3は、n-C2-4アルキル(例えば、エチルまたはn-プロピル)、またはヒドロキシで置換されていてもよい-O-C1-4アルキル(例えば、メトキシまたはエトキシ)である]
で示されるノルエピネフリン・セロトニン再取り込み阻害剤投与される、上記の方法のいずれか。
【0119】
2.28 PDE1阻害剤が、
【化32】
で示されるノルエピネフリン・セロトニン再取り込み阻害剤とともに投与される、上記の方法のいずれか。
【0120】
2.29 PDE1阻害剤が、式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIのいずれかで示される化合物である、上記の方法のいずれか。
【0121】
2.30 PDE1阻害剤が、式Iaで示される化合物である、上記の方法のいずれか。
【0122】
2.31 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
で示される化合物である、上記の方法のいずれか。
【0123】
2.32 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化37】
で示される化合物である、上記の方法のいずれか。
【0124】
2.33 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化38】
で示される化合物である、上記の方法のいずれか。
【0125】
2.34 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化39】
で示される化合物である、上記の方法のいずれか。
【0126】
2.35 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化40】
で示される化合物である、上記の方法のいずれか。
【0127】
2.36 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化41】
で示される化合物である、上記の方法のいずれか。
【0128】
2.37 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化42】
で示される化合物である、上記の方法のいずれか。
【0129】
2.38 患者がヒトである、上記の方法のいずれか。
【0130】
本開示は、さらに、抑制処理障害の治療のための方法において用いるための、例えば方法2以降のいずれかにおいて用いるためのPDE1阻害剤を提供する。
【0131】
本開示は、さらに、抑制処理障害の治療のための方法において用いるための医薬、例えば方法2以降のいずれかにおいて用いるための医薬の製造におけるPDE1阻害剤の使用を提供する。
【0132】
本発明は、さらに、PDE1阻害剤、例えば式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIで示される化合物のいずれかを含む、方法2以降のいずれかにおいて用いるための医薬組成物を提供する。
【0133】
PDE1阻害剤との組み合わせ療法
いくつかの実施態様において、PDE1阻害剤は、他の治療様式と組み合わせて投与される。したがって、上記の療法に加えて、ドパミンD1受容体細胞内経路に関連する状態、疾患または障害、例えば、注意、認知、記憶および/または抑制処理の欠如を特徴とする状態、疾患または障害の治療のためにより多くの薬学的な療法を患者に提供することもできる。例えば、そのような状態、疾患または障害に罹患している患者は、本明細書に記載の療法に加えて、モノアミン再取り込み阻害剤(例えば、ドパミン再取り込み阻害剤、セロトニン再取り込み阻害剤、および/またはノルエピネフリン再取り込み阻害剤)とともに投与され得る。組み合わせ療法の特定の形態には、PDE1阻害剤の使用が含まれる。
【0134】
組み合わせは、PDE1阻害剤および1つ以上のさらなる治療剤を含む単一の組成物または薬理学的製剤を投与することによって、あるいは一方の組成物がPDE1阻害剤を含み、他方がさらなる治療剤を含む2つの異なる組成物または製剤を別々に、同時に、または連続的に投与することによって、達成することができる。PDE1阻害剤を用いた治療は、数分から数週間の範囲の間隔で他の薬剤の投与に先行しても後続してもよい。他の薬剤および発現構築物を別々に細胞に適用する実施態様において、一般的に、該薬剤および該発現構築物が依然として細胞に対して有利な複合効果を発揮することができるように、各送達の間にかなりの時間が経過しないようにする。いくつかの実施態様において、いくつかの実施態様において、典型的には、互いに約12~24時間以内、より好ましくは互いに約6~12時間以内に両方の様式で細胞に接触させることが考えられ、約12時間だけの遅延時間が最も好ましい。しかしながら、状況によっては、治療期間を大幅に延長することが望ましく、それぞれの投与の間に数日(2、3、4、5、6または7)から数週間(1、2、3、4、5、6、7または8)が経過する場合もある。
【0135】
また、PDE1阻害剤またはさらなる治療剤のいずれかを2回以上投与することが望まれることも考えられる。これに関して、様々な組み合わせを使用することができる。例示として、PDE1阻害剤が「A」であり、さらなる治療剤が「B」である場合、合計3回および4回の投与に基づく以下の配列が例示される:
【化43】
【0136】
本明細書に記載のモノアミン再取り込み阻害剤は、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤、セロトニン再取り込み阻害剤およびドパミン再取り込み阻害剤を含み、ノルエピネフリントランスポーター、セロトニントランスポーターおよびドパミントランスポーターのうち1つ以上の阻害に対して単一、二重または三重の機能を有するものを含む。本発明において用いることができるモノアミントランスポーターの非限定的な例としては、アトモキセチン、レボキセチン、ニソキセチン、デスベンラファキシン、ベンラファキシン、デュロキセチン、ミルナシプラン、フルオキセチン、セルトラリン、シタロプラム、エスシタロプラム、ブプロピオンおよび/またはノミフェンシンが挙げられる。さらなるモノアミントランスポーターは、国際公開第2016/154027号および米国特許第10,188,758号に開示されている(これらは両方とも出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)。
【0137】
さらなる例として、本明細書に記載のドパミン再取り込み阻害剤は、選択的または非選択的ドパミン再取り込み阻害剤を含む。いくつかの実施態様において、ドパミン再取り込み阻害剤は、二重ノルエピネフリン再取り込み阻害剤およびドパミン再取り込み阻害剤である。本発明において用いることができるドパミン再取り込み阻害剤の非限定的な例としては、4-ヒドロキシ-1-メチル-4-(4-メチルフェニル)-3-ピペリジル-4-メチルフェニルケトン、アルトロパン、アンホネル酸、アミネプチン、BTCP、3C-PEP、DBL-583、ジフルオロピン、GBR-12783、GBR-12935、GBR-13069、GBR-13098、GYKI-52895、イオメトパン、メチルフェニデート、エチルフェニデート、モダフィニル、アルモダフィニル、RTI-229、バノキセリン、アドラフィニル、アマンタジン、ベンズトロピン、ブプロピオン、フルオレノール、メジホキサミン、メタフィット、リムカゾール、ベンラファキシン、木瓜エキス(Chaenomeles speciose extract)、オロキシリンA、またはそれらの組み合わせが挙げられる。他の組み合わせも同様に考えられる。いくつかの具体的な薬剤を以下に記載する。
【0138】
したがって、様々な実施態様において、本開示はまた、例えば方法1以降のいずれかに従って、ドパミンD1受容体細胞内経路に関連する状態、疾患または障害、例えば、注意、認知、記憶および/または抑制処理の欠如を特徴とする状態、疾患または障害の予防および/または治療のための方法においてそれを必要とする患者に投与するための、または、例えば方法2以降のいずれかに従って、抑制処理障害を治療するための、薬学的有効量のPDE1阻害剤(例えば、式I、II、III、IV、Vおよび/またはVIで示される化合物)およびモノアミン再取り込み阻害剤(例えば、ドパミン再取り込み阻害剤、セロトニン再取り込み阻害剤、および/またはノルエピネフリン再取り込み阻害剤)を含む、医薬組み合わせ[組み合わせ1]療法を提供する。
【0139】
例えば、本開示は、以下の組み合わせを提供する:
【0140】
1.1 患者が、ドパミンD1受容体細胞内経路に関連する状態、疾患または障害に罹患している、組み合わせ1。
【0141】
1.2 患者が、摂食障害(例えば、神経性食欲不振症、神経性大食症、過食性障害、異食症、反芻障害、回避性/制限性摂食障害、排出性障害、夜間摂食障害、他の特定される食行動障害または摂食障害(OSFED))、物質使用障害(例えば、嗜癖(例えば、アンフェタミン、コカイン、オピエートおよび/またはニコチンなどの刺激物質嗜癖)、アルコール依存症)、強迫性障害(例えば、点検、汚染、精神的汚染、溜め込み、反芻、侵入思考、対称性/秩序)、注意欠如多動症(ADHD)、早漏症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、ギャンブル障害(例えば、ギャンブル嗜癖、強迫性病的賭博)、トゥレット症候群および/または衝動制御・素行症群(例えば、反抗挑戦性障害、素行症、間欠性爆発性障害、窃盗症、放火症)から選択される状態、疾患または障害に罹患している、いずれかの上記の組み合わせ。
【0142】
1.3 患者が、摂食障害(例えば、神経性食欲不振症、神経性大食症、過食性障害、異食症、反芻障害、回避性/制限性摂食障害、排出性障害、夜間摂食障害、他の特定される食行動障害または摂食障害(OSFED))に罹患している、いずれかの上記の組み合わせ。
【0143】
1.4 摂食障害が、神経性食欲不振症、神経性大食症、過食性障害、異食症、反芻障害、回避性/制限性摂食障害、排出性障害、夜間摂食障害、他の特定される食行動障害および/または摂食障害(OSFED)である、上記の組み合わせ。
【0144】
1.5 患者が、物質使用障害(例えば、嗜癖(例えば、アンフェタミン、コカイン、オピエートおよび/またはニコチンなどの刺激物質嗜癖)、アルコール依存症)に罹患している、いずれかの上記の組み合わせ。
【0145】
1.6 物質乱用障害が、嗜癖(例えば、アンフェタミン、コカイン、オピエートおよび/またはニコチンなどの刺激物質嗜癖)またはアルコール依存症である、上記の組み合わせ。
【0146】
1.7 患者が、強迫性障害(OCD)(例えば、点検OCD、汚染OCD、精神的汚染OCD、溜め込みOCD、反芻OCD、侵入思考OCD、対称性/秩序OCD)に罹患している、いずれかの上記の組み合わせ。
【0147】
1.8 強迫性障害が、点検OCD、汚染OCD、精神的汚染OCD、溜め込みOCD、反芻OCD、侵入思考OCD、および/または対称性/秩序OCDである、上記の組み合わせ。
【0148】
1.9 患者が注意欠如多動症(ADHD)に罹患している、いずれかの上記の組み合わせ。
【0149】
1.10 患者が早漏症に罹患している、いずれかの上記の組み合わせ。
【0150】
1.11 患者が心的外傷後ストレス障害(PTSD)に罹患している、いずれかの上記の組み合わせ。
【0151】
1.12 患者がギャンブル障害(例えば、ギャンブル嗜癖、強迫性病的賭博)に罹患している、いずれかの上記の組み合わせ。
【0152】
1.13 ギャンブル障害がギャンブル嗜癖または強迫性病的賭博である、上記の組み合わせ。
【0153】
1.14 状態、疾患または障害がトゥレット症候群である、いずれかの上記の組み合わせ。
【0154】
1.15 患者が、衝動制御・素行症群(例えば、反抗挑戦性障害、素行症、間欠性爆発性障害、窃盗症、放火症)に罹患している、いずれかの上記の組み合わせ。
【0155】
1.16 衝動制御・素行症が反抗挑戦性障害、素行症、間欠性爆発性障害、窃盗症および/または放火症である、上記の組み合わせ。
【0156】
1.17 PDE1阻害剤が、約0.01~約20mg/kg、例えば、約0.1~約5mg/kg、例えば、約1mg/kgの量で投与される、上記の組み合わせのいずれか。
【0157】
1.18 PDE1阻害剤が経口投与される、上記の組み合わせのいずれか。
【0158】
1.19 PDE1阻害剤が注射により投与される、上記の組み合わせのいずれか。
【0159】
1.20 モノアミン再取り込み阻害剤が、ドパミン再取り込み阻害剤、セロトニン再取り込み阻害剤またはノルエピネフリン再取り込み阻害剤のうち1つ以上である、上記の組み合わせのいずれか。
【0160】
1.21 モノアミン再取り込み阻害剤が、4-ヒドロキシ-1-メチル-4-(4-メチルフェニル)-3-ピペリジル-4-メチルフェニルケトン、アドラフィニル、アマンタジン、アトモキセチン、アンホネル酸、アミネプチン、アミトリプチリン、アモキサピン、ベンズトロピン、ブプロピオン、ヒドロキシブプロピオン、ブトリプチリン、クロルフェナミン、シタロプラム、クロミプラミン、コカエチレン、デシプラミン、デスメチルシタロプラム、デスメチルセルトラリン、デスメチルシブトラミン、デスオキシピプラドロール、デスベンラファキシン、デキストロアンフェタミン、デキストロメタンフェタミン、ジデスメチルシブトラミン、ジフェンヒドラミン、ドスレピン、ドキセピン、デュロキセチン、エスシタロプラム、エトペリドン、フェモキセチン、フルオレノール、フルオキセチン、フルボキサミン、GBR-12783、GBR-12935、GBR-13069、GBR-13098、GYKI-52895、イミプラミン、インダトラリン、イプリンドール、イオメトパン、レボミルナシプラン、ロフェプラミン、マプロチリン、マジンドール、メジホキサミン、メタフィット、メチレンジオキシピロバレロン(MDPV)、メチルフェニデート、エチルフェニデート、ミアンセリン、ミルナシプラン、ミルタザピン、モダフィニル、アルモダフィニル、ネファゾドン、ネホパム、ニソキセチン、ノミフェンシン、ノルフルオキセチン、ノルトリプチリン、オキサプロチリン、パロキセチン、プロトリプチリン、レボキセチン、リムカゾール、RTI-229、セルトラリン、シブトラミン、トラゾドン、トリミプラミン、バノキセリン、ベンラファキシン、ビラゾドン、ビロキサジン、ボルチオキセチン、ジメリジン、木瓜エキス(Chaenomeles speciose extract)、および/またはオロキシリンAのうち1つ以上である、上記の組み合わせのいずれか。
【0161】
1.22 モノアミン再取り込み阻害剤が、アトモキセチン、レボキセチン、ニソキセチン、デスベンラファキシン、ベンラファキシン、デュロキセチン、ミルナシプラン、フルオキセチン、セルトラリン、シタロプラム、エスシタロプラム、ブプロピオン、および/またはノミフェンシンのうち1つ以上である、上記の組み合わせのいずれか。
【0162】
1.23 モノアミン再取り込み阻害剤がドパミン再取り込み阻害剤である、上記の組み合わせのいずれか。
【0163】
1.24 ドパミン再取り込み阻害剤が、4-ヒドロキシ-1-メチル-4-(4-メチルフェニル)-3-ピペリジル-4-メチルフェニルケトン、アルトロパン、アンホネル酸、アミネプチン、BTCP、3C-PEP、DBL-583、ジフルオロピン、GBR-12783、GBR-12935、GBR-13069、GBR-13098、GYKI-52895、イオメトパン、メチルフェニデート、エチルフェニデート、モダフィニル、アルモダフィニル、RTI-229、バノキセリン、アドラフィニル、アマンタジン、ベンズトロピン、ブプロピオン、フルオレノール、メジホキサミン、メタフィット、リムカゾール、ベンラファキシン、木瓜エキス(Chaenomeles speciose extract)、オロキシリンA、またはそれらの組み合わせから選択される、上記の組み合わせのいずれか。
【0164】
1.25 モノアミン再取り込み阻害剤がノルエピネフリン・セロトニン再取り込み阻害剤である、上記の組み合わせのいずれか。
【0165】
1.26 モノアミン再取り込み阻害剤が、遊離形態または塩形態の、式VII:
【化44】
[式中、
1およびR2は、独立して、HまたはC1-4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
3は、n-C2-4アルキル(例えば、エチルまたはn-プロピル)、またはヒドロキシで置換されていてもよい-O-C1-4アルキル(例えば、メトキシまたはエトキシ)である]
で示されるノルエピネフリン・セロトニン再取り込み阻害剤である、上記の組み合わせのいずれか。
【0166】
1.27 モノアミン再取り込み阻害剤が、
【化45】
で示されるノルエピネフリン・セロトニン再取り込み阻害剤である、上記の組み合わせのいずれか。
【0167】
1.28 PDE1阻害剤が、式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIのいずれかで示される化合物である、上記の組み合わせのいずれか。
【0168】
1.29 PDE1阻害剤が式Iaで示される化合物である、上記の組み合わせのいずれか。
【0169】
1.30 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化46】
【化47】
【化48】
【化49】
で示される化合物である、上記の組み合わせのいずれか。
【0170】
1.31 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化50】
で示される化合物である、上記の組み合わせのいずれか。
【0171】
1.32 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化51】
で示される化合物である、上記の組み合わせのいずれか。
【0172】
1.33 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化52】
で示される化合物である、上記の組み合わせのいずれか。
【0173】
1.34 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化53】
で示される化合物である、上記の組み合わせのいずれか。
【0174】
1.35 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化54】
で示される化合物である、上記の組み合わせのいずれか。
【0175】
1.36 PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、
【化55】
で示される化合物である、上記の組み合わせのいずれか。
【0176】
1.37 該組み合わせがヒトに投与される、上記の組み合わせのいずれか。
【0177】
本開示化合物の製造方法
本開示のPDE1阻害剤およびそれらの薬学的に許容される塩は、米国特許第8,273,750号、米国特許出願公開第2006/0173878号、米国特許第8,273,751号、米国特許出願公開第2010/0273753号、米国特許第8,697,710号、米国特許第8,664,207号、米国特許第8,633,180号、米国特許第8,536,159号、米国特許出願公開第2012/0136013号、米国特許出願公開第2011/0281832号、米国特許出願公開第2013/0085123号、米国特許出願公開第2013/0324565号、米国特許出願公開第2013/0338124号、米国特許出願公開第2013/0331363号、国際公開第2012/171016号および国際公開第2013/192556号に記載および例示されているような方法を使用して、また、それらと同様の方法によって、および化学技術分野で知られている方法によって、製造することができる。このような方法としては、以下に記載の方法が挙げられるが、これらに限定されない。これらのプロセスの出発物質は、市販されていない場合には、既知の化合物の合成方法と同様または類似の技術を用いる化学技術から選択される手順によって製造され得る。
【0178】
種々のPDE1阻害剤およびその出発物質は、米国特許出願公開第2008-0188492号(A1)、米国特許出願公開第2010-0173878号(A1)、米国特許出願公開第2010-0273754号(A1)、米国特許出願公開第2010-0273753号(A1)、国際公開第2010/065153号、国際公開第2010/065151号、国際公開第2010/065151号、国際公開第2010/065149号、国際公開第2010/065147号、国際公開第2010/065152号、国際公開第2011/153129号、国際公開第2011/133224号、国際公開第2011/153135号、国際公開第2011/153136号、国際公開第2011/153138に記載されている方法を使用して製造することができる。本明細書で引用されている参考文献はすべて、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【0179】
さらなるPDE1阻害剤および関連する方法は、米国仮出願第62/833,481に開示されている(出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)。さらなる関連PDE1阻害剤および関連する方法は、国際公開第2018/049417に開示されている(出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)。
【0180】
本開示化合物には、それらのエナンチオマー、ジアステレオマーおよびラセミ体、ならびにそれらの多形体、水和物、溶媒和物および複合体が含まれる。本開示の範囲内のいくつかの個々の化合物は、二重結合を含み得る。本開示における二重結合の表現は、二重結合のE異性体およびZ異性体の両方を含むことを意味する。さらに、本開示の範囲内のいくつかの化合物は、1つ以上の不斉中心を含み得る。本開示は、光学的に純粋な立体異性体のいずれか、および立体異性体の組み合わせの使用を含む。
【0181】
本開示化合物がその安定な同位体および不安定な同位体を包含することも意図されている。安定な同位体は、同じ種(すなわち、元素)の豊富な核種と比較して、1個のさらなる中性子を含有する非放射性同位体である。このような同位体を含む化合物の活性は保持され、このような化合物は非同位体類似体の薬物動態を測定するための有用性も有すると考えられる。例えば、本開示化合物のある位置の水素原子を重水素(非放射性の安定な同位体)に置き換えることができる。既知の安定な同位体の例としては、重水素、13C、15N、18Oが挙げられるが、これらに限定されない。別法として、同じ種(すなわち、元素)の豊富な核種と比較して、さらなる複数の中性子を含有している放射性同位体である不安定な同位体、例えば123I、131I、125I、11C、18Fは、I、CおよびFの対応する豊富な種と置き換わってもよい。本開示の化合物の有用な同位体の別の例は、11C同位体である。これらの放射性同位体は、本開示の化合物の放射線画像処理および/または薬物動態学的研究に有用である。
【0182】
融点は無補正であり、(dec)は分解を示す。温度は摂氏(℃)で示される;特記しない限り、操作は、室温または周囲温度で、すなわち18~25℃の範囲の温度で行われる。クロマトグラフィーとは、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーを意味し;薄層クロマトグラフィー(TLC)は、シリカゲルプレートで行われる。NMRデータは、内部標準としてのテトラメチルシラン(TMS)に対して百万分率(ppm)で表される主要な診断用プロトンのデルタ値で示される。シグナル形状の慣用の略語が使用される。結合定数(J)は、Hzで表される。質量スペクトル(MS)について、同位体分割によって複数の質量スペクトルピークが生じる分子については最小質量の主要イオンが報告される。溶媒混合物の組成は、体積百分率または体積比として示される。NMRスペクトルが複雑な場合には、診断信号のみが報告される。
【0183】
「治療」および「治療すること」という用語は、状況に応じて、疾患の症状の治療または寛解、ならびに疾患の原因の治療を含むものと理解されるべきである。
【0184】
治療方法について、「有効量」という語は、特定の疾患または障害を治療するための治療有効量を包含することを意図している。
【0185】
「患者」という用語は、ヒトまたは非ヒト(すなわち、動物)患者を含む。特定の実施態様において、本開示は、ヒトおよび非ヒトの両方を包含する。別の実施態様において、本開示は、非ヒトを包含する。他の実施態様において、該用語はヒトを包含する。
【0186】
本開示で使用される場合、「含む」という用語は、制限がない(open-ended)ことを意図しており、未記載のさらなる要素または方法ステップを排除しない。
【0187】
本開示の実施に用いられる用量は、もちろん、例えば治療される特定の疾患または状態、使用される特定の本開示化合物、投与様式、および所望の療法に応じて変化する。本開示化合物は、経口、非経口、経皮、または吸入を含む好適な経路によって投与され得るが、好ましくは経口投与される。一般に、例えば上記のような疾患の治療に対する、満足のいく結果は、約0.01~2.0mg/kgのオーダーの用量で経口投与により得られることが示されている。したがって、大きな哺乳動物、例えばヒトでは、PDE1阻害剤の両方の経口投与のための指示された一日量は、約0.50~300mgの範囲であり、好都合には1日1回投与されるか、または1日2~4回の分割用量で投与されるか、または徐放性剤形で投与される。したがって、経口投与用の単位剤形は、例えば、薬学的に許容される希釈剤または担体と一緒に本開示化合物約0.2~150または300mg、例えば約0.2または2.0~10、25、50、75、100、150または200mgを含むことができる。
【0188】
特に方法1以降または2以降のいずれかにおける使用または投与のための、本開示化合物は、必要に応じて、より高い用量で投与することができる。このような方法のためのPDE1阻害剤の投与は、1日約50mg~1000mgの範囲であり得ることが想定される。例えば、方法1以降~6以降のいずれかによる状態のためにPDE1阻害剤を投与されている患者は、式I、Ia、II、III、IV、Vおよび/またはVIで示されるPDE1阻害剤を1日50mg~1000mg、1日50mg~900mg、1日50mg~800mg、1日50mg~700mg、1日50mg~600mg、1日50mg~500mg、1日50mg~400mg、1日50mg~350mg、1日50mg~300mg、1日50mg~250mg、1日50mg~200mg、1日50mg~150mg、または1日50mg~100mgの量で投与され得る。
【0189】
本開示化合物は、経口、非経口(静脈内、筋肉内または皮下)または経皮を含む満足のいく経路によって投与することができるが、好ましくは経口投与される。特定の実施態様において、例えばデポー製剤での、本開示化合物は、好ましくは非経口投与され、例えば注射によって投与される。
【0190】
本開示化合物および本開示の医薬組成物は、1つ以上のさらなる治療剤と組み合わせて、特に個々の薬剤が単剤療法として使用される場合よりも低い用量で、使用されて、慣用の単剤療法で一般的に生じる望ましくない副作用を引き起こすことなく組み合わせた薬剤の治療活性を増強することができる。したがって、本開示化合物は、疾患を治療するのに有用な他の薬剤と、同時に(simultaneously)、別々に、連続して、または同時期に(contemporaneously)投与することができる。別の例では、副作用は、本開示化合物を遊離形態または塩形態の1つ以上のさらなる治療剤と組み合わせて投与する(ここで、(i)第2の治療剤または(ii)本開示化合物と第2の治療剤の両方の用量が、薬剤/化合物が単剤療法として投与される場合よりも低い)ことによって軽減または最小化することができる。非限定的な例として、このようなさらなる治療剤としては、ACE阻害剤、アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト、カルシウムチャネル遮断薬などを挙げることができる。
【0191】
治療的使用に言及する場合の「同時に(simultaneously)」という用語は、2つ以上の活性成分を同一投与経路によって同時またはほぼ同時に投与することを意味する。
【0192】
治療的使用に言及する場合の「別々に」という用語は、2つ以上の活性成分を異なる投与経路によって同時またはほぼ同時に投与することを意味する。
【0193】
本開示化合物を含む医薬組成物は、慣用の希釈剤または賦形剤、およびガレヌス製剤技術分野で知られている技術を使用して調製することができる。したがって、経口剤形としては、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤などを挙げることができる。
【実施例
【0194】
実施例1: ヒトの脳におけるPDE1阻害剤の関与の判定
本開示によるPDE1阻害剤が、恐怖条件付け課題の消滅フェーズにおいて、背側前島(dAI)における血中酸素濃度依存的機能的磁気共鳴画像(BOLD-fMRI)シグナルの変化を誘発するかどうかを決定するために、健康なヒト個体を対象に無作為化二重盲検プラセボ対照被験者内研究を実施した。これらの効果を検証するために、化合物1を健康なヒト患者に投与した。化合物1(ITI-214)を以下に示す:
【化56】
【0195】
該島は、身体感覚を感情に変換する、心と身体のつながりに不可欠な小さな脳領域である。前島反応性は重要な事象の予期と関連しており、前島活動の増大は不安と関連している。恐怖条件付けおよび消滅を含む条件付けは、学習中の脳活動である。本明細書に開示されているPDE1阻害剤が、動物モデルにおいて、ドパミンを増強し、学習を増強することは以前から知られている。この仮説を検証するために、中立的な抽象的画像(CSplus)を悲鳴と繰り返しペアにする。該課題は、短い慣らし期間、恐怖獲得および恐怖消滅の3つの要素で構成された。無条件刺激とペアにならない中立的刺激(CSminus)を対照として使用する。
【0196】
患者に、プラセボ、または化合物1の1mgもしくは10mgの単回経口用量を投与した。次いで、3テスラでのBOLD-fMRIスキャン中の脳活動を測定した。fMRI解析はすべてAFNIで行った。dAI、IFG、および事前に指定されたその他の領域の関心領域(ROI)分析は、Rの線形混合モデルを用いて計算された。各被験者の脳の反応はfMRIスキャンで測定され、図1にまとめられている。示されるように、本試験では、化合物1の投与により、恐怖消滅の間の島活動がわずかに弱められた。
【0197】
本開示によるPDE1阻害剤が、ストップシグナル課題中に下前頭回(IFG)におけるBOLD-fMRIシグナルの変化を誘発するかどうかを決定するための追加試験を実施した。下前頭回は、反応の抑制、または停止するようにシグナルを送った後に反応の遂行を控える能力に重要な脳領域である。ストップシグナル課題は、抑制処理に対する行動および神経反応を測定する方法である。
【0198】
患者に再び、プラセボ、または化合物1の1mgもしくは10mgの単回経口用量を投与した。次いで、3テスラでのBOLD-fMRIスキャン中の脳活動を測定した。この研究では、参加者に視覚的および/または音声的な合図と2つのボタンが提供される。被験者は、画面上に「X」が表示されたら左ボタンを、「O」が表示されたら右ボタンをできるだけ早く押すように指示される。また、参加者は、音が聞こえたらどちらのボタンも押さないように指示され、これが停止試行になる。課題中に提供される停止試行には、易試行と難試行という2種類がある。易試行は、視覚的な「X」または「O」と同時に提供される音の合図で構成されていて、反応の抑制が容易になる。難試行は、少し遅れて提供される音で構成されていて、音の処理および反応の抑制が困難になる。IFGにおける脳活動は、各被験者においてfMRIスキャンで測定され、図2にまとめられている。示されるように、化合物1(1mg)の投与により、易試行(correcteasy)および難試行(correcthard)のどちらの間でも、正しく抑制された停止試行中に下前頭回の活性化が有意に上昇した。
【0199】
背外側前頭前皮質(図3)、背側前帯状皮質(図4)、前島(図5)において、下前頭回で観察された活動と同様の活動増加のパターンが観察された。この一貫性が、該知見への信用性を与える。
【0200】
化合物1は、前臨床モデルにおいて精神運動活動亢進を伴わずに認知能力を改善し、ヒトにおいて認知能力を改善すること、および前頭回の活性化を増大させることが予測された。化合物1(1mg)はまた、ADHDなどの障害における認知の改善およびPTSDなどの障害における抑制処理の改善と一致して、前頭回の活性化を増加させた。これらの結果は、化合物1の作用機序と一致する中枢神経系関与および認知処理の増強の証拠を提供し、抑制処理障害に関連する一連の障害の治療に潜在的な有用性を示している。
【0201】
提供された例の代替的な組み合わせおよび変形は、本開示に基づいて明らかになるであろう。記載された実施態様の多くの可能な変形のすべてについて具体例を提供することは不可能であるが、そのような組み合わせおよび変形は、最終的に発行される請求項となり得る。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】