(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(54)【発明の名称】ペロブスカイト半導体装置における金属酸化物ナノ粒子電子輸送層
(51)【国際特許分類】
C01G 35/00 20060101AFI20230201BHJP
C01G 33/00 20060101ALI20230201BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20230201BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20230201BHJP
H10K 30/50 20230101ALN20230201BHJP
【FI】
C01G35/00 C ZNM
C01G33/00 A
B82Y30/00
B82Y40/00
H01L31/04 112Z
H01L31/04 166
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022531043
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(85)【翻訳文提出日】2022-07-25
(86)【国際出願番号】 US2020062483
(87)【国際公開番号】W WO2021108754
(87)【国際公開日】2021-06-03
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522187568
【氏名又は名称】キュービックピーブイ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】アーウィン,マイケル デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ヒギンス,マリッサ リン
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,ニコラス チャールズ
【テーマコード(参考)】
4G048
5F151
【Fターム(参考)】
4G048AA02
4G048AB02
4G048AB04
4G048AC06
4G048AC08
4G048AD03
4G048AE08
5F151AA11
(57)【要約】
一般式M2O5を有する金属酸化物コアと、該金属酸化物コアを取り囲むアルキルシロキサンリガンドと、を有し、ここでMは、タンタル(V)またはニオブ(V)のいずれかである、ナノ粒子。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物ナノ粒子であって、
一般式がM
2O
5の金属酸化物コアであって、ここで、Mはタンタル(V)またはニオブ(V)である、金属酸化物コアと、
前記金属酸化物コアに結合されたアルキルシロキサンリガンドと、
を有する、金属酸化物ナノ粒子。
【請求項2】
前記アルキルシロキサンリガンドは、イソブチルシロキサン、アリルシロキサン、ビニルシロキサン、n-プロピルシロキサン、n-ブチルシロキサン、sec-ブチルシロキサン、tert-ブチルシロキサン、フェニルシロキサン、n-オクチルシロキサン、イソオクチルシロキサンn-ドデシルシロキサン、4-(トリメチルシリル)フェニルシロキサン、パラ-トリルシロキサン、4-フルオロフェニルシロキサン、4-クロロフェニルシロキサン、4-ブロモフェニルシロキサン、4-ヨードフェニルシロキサン、4-シアノフェニルシロキサン、ベンジルシロキサン、メチルシロキサン、エチルシロキサン、4-(トリフルオロメチル)フェニルシロキサン、4-アンモニウムブチルシロキサン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の金属酸化物ナノ粒子。
【請求項3】
アルキルシロキサンリガンドは、少なくとも1つの他のナノ粒子のアルキルシロキサンリガンドに架橋されている、請求項1に記載の金属酸化物ナノ粒子。
【請求項4】
前記金属酸化物コアは、Ti、Zr、Hf、Cr、Mo、W、V、またはそれらの任意の組合せからなる群から選択された金属でドープされている、請求項1に記載の金属酸化物ナノ粒子。
【請求項5】
前記金属コアは、Ta
2O
5を有する、請求項1に記載の金属酸化物ナノ粒子。
【請求項6】
前記金属コアは、Nb
2O
5を有する、請求項1に記載の金属酸化物ナノ粒子。
【請求項7】
金属(V)酸化物ナノ粒子を製造する方法であって、
金属(V)アルコキシドおよびアルキルカルボン酸を第1の溶液に添加して、金属(V)酸化物ナノ粒子コアを形成するステップと、
前記金属(V)酸化物ナノ粒子コアおよびアルコキシアルキルシランを第2の溶液に添加するステップと、
前記第2の溶液に水酸化アンモニウムを導入するステップと、
前記第2の溶液に塩化水素を導入するステップと、
を有する、方法。
【請求項8】
前記金属(V)アルコキシドは、Ti、Zr、Hf、Cr、Mo、W、V、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択された金属でドープされている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記アルコキシアルキルシランは、トリ(アルコキシ)イソブチルシラン、トリ(アルコキシ)アリルシラン、トリ(アルコキシ)ビニルシラン、トリ(アルコキシ)-n-プロピルシラン、トリ(アルコキシ)-n-ブチルシラン、トリ(アルコキシ)-sec-ブチルシラン、トリ(アルコキシ)-tert-ブチルシラン、トリ(アルコキシ)フェニルシラン、トリ(アルコキシ)-n-オクチルシラン、トリ(アルコキシ)イソオクチルシラントリ(アルコキシ)-n-ドデシルシラン、トリ(アルコキシ)-4-(トリメチルシリル)フェニルシラン、トリ(アルコキシ)-p-トリルシラン、トリ(アルコキシ)-4-フルオロフェニルシラン、トリ(アルコキシ)-4-クロロフェニルシラン、トリ(アルコキシ)-4-ブロモフェニルシラン、トリ(アルコキシ)-4-ヨードフェニルシラン、トリ(アルコキシ)-4-シアノフェニルシラン、トリ(アルコキシ)ベンジルシラン、トリ(アルコキシ)メチルシラン、トリ(アルコキシ)エチルシラン、トリ(アルコキシ)-4-(トリフルオロメチル)フェニルシラン、トリ(アルコキシ)-4-アンモニウムブチルシラン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選定される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記アルコキシアルキルシランのアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert-ブトキシ基、フェノキシ基、またはこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記アルコキシアルキルシランは、アンモニウム基により終端化されている、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記アルコキシアルキルシランは、ビス-(アルコキシシリ)(alkoxysily)アルカンであり、
当該方法により、架橋金属(V)酸化物ナノ粒子が形成される、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記金属(V)アルコキシドは、一般式M(OR)
5であり、ここでMは、タンタル(V)またはニオブ(V)であり、ORは、メトキシド、エトキシド、n-プロポキシド、イソプロポキシド、n-ブトキシド、イソ-ブトキシド、sec-ブトキシド、tert-ブトキシド、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の溶液および前記第2の溶液は、各々、水、n-プロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、2-メチルブタン-2-オール、およびこれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも1つの溶媒を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
前記アルキルカルボン酸は、イソ酪酸である、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
さらに、
前記金属(V)アルコキシドおよび前記アルキルカルボン酸の溶液を遠心分離し、前記金属(V)酸化物ナノ粒子コアを分離するステップ、
を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項17】
前記遠心分離するステップは、1分以上15分以下の時間にわたり、5,000~15,000rpmで実施される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記金属(V)酸化物ナノ粒子は、アルキルシロキサンリガンドにより結合される、請求項7に記載の方法。
【請求項19】
前記アルキルシロキサンリガンドは、イソブチルシロキサン、アリルシロキサン、ビニルシロキサン、n-プロピルシロキサン、n-ブチルシロキサン、sec-ブチルシロキサン、tert-ブチルシロキサン、フェニルシロキサン、n-オクチルシロキサン、イソオクチルシロキサンn-ドデシルシロキサン、4-(トリメチルシリル)フェニルシロキサン、パラ-トリルシロキサン、4-フルオロフェニルシロキサン、4-クロロフェニルシロキサン、4-ブロモフェニルシロキサン、4-ヨードフェニルシロキサン、4-シアノフェニルシロキサン、ベンジルシロキサン、メチルシロキサン、エチルシロキサン、4-(トリフルオロメチル)フェニルシロキサン、4-アンモニウムブチルシロキサン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記アルキルシロキサンリガンドは、イソブチルシロキサンである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記金属(V)酸化物ナノ粒子は、タンタル(V)またはニオブ(V)を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項22】
金属酸化物ナノ粒子であって、
タンタル(V)およびニオブ(V)を含む金属酸化物コアと、
前記金属酸化物コアに結合されたアルキルシロキサンリガンドと、
を有する、金属酸化物ナノ粒子。
【請求項23】
前記金属酸化物コアは、Ti、Zr、Hf、Cr、Mo、W、V、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択された金属でドープされている、請求項22に記載の金属酸化物ナノ粒子。
【請求項24】
前記アルキルシロキサンリガンドは、イソブチルシロキサン、アリルシロキサン、ビニルシロキサン、n-プロピルシロキサン、n-ブチルシロキサン、sec-ブチルシロキサン、tert-ブチルシロキサン、フェニルシロキサン、n-オクチルシロキサン、イソオクチルシロキサンn-ドデシルシロキサン、4-(トリメチルシリル)フェニルシロキサン、パラ-トリルシロキサン、4-フルオロフェニルシロキサン、4-クロロフェニルシロキサン、4-ブロモフェニルシロキサン、4-ヨードフェニルシロキサン、4-シアノフェニルシロキサン、ベンジルシロキサン、メチルシロキサン、エチルシロキサン、4-(トリフルオロメチル)フェニルシロキサン、4-アンモニウムブチルシロキサン、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項22に記載の金属酸化物ナノ粒子。
【請求項25】
前記アルキルシロキサンリガンドは、イソブチルシロキサンである、請求項22に記載の金属酸化物ナノ粒子。
【請求項26】
前記アルキルシロキサンリガンドは、少なくとも1つの他のナノ粒子のアルキルシロキサンリガンドに架橋されている、請求項22に記載の金属酸化物ナノ粒子。
【請求項27】
前記金属コアは、Ta
2O
5およびNb
2O
5を有する、請求項22に記載の金属酸化物ナノ粒子。
【請求項28】
前記アルキルシロキサンリガンドの少なくとも一部は、官能基により終端化されている、請求項22に記載の金属酸化物ナノ粒子。
【請求項29】
前記アルキルシロキサンリガンドの少なくとも一部は、アンモニウム基により終端化されている、請求項28に記載の金属酸化物ナノ粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、「ペロブスカイト半導体装置における金属酸化物ナノ粒子電子輸送層」と題する2019年11月27日に出願された米国仮特許出願第62/941,066号の優先権を主張する出願であり、その内容は、その全体が参照により本願に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
太陽エネルギーまたは放射線から電力を生成する光起電力(PV)技術の使用は、例えば、電源、低放射またはゼロ放射、パワーグリッドから独立した発電、耐久性のある物理的構造(可動部品なし)、安定した信頼性の高いシステム、モジュール式構造、比較的迅速な設置、安全な製造および使用、ならびに良好な世論および使用の許容を含む、多くの利点を提供し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
PVは、光に晒された際に電力を発生する光活性層として、ペロブスカイト材料の層を導入し得る。PV装置内の追加の層は、光活性層からの電荷の輸送を支援し得る。電荷輸送層の選択は、PV装置の特性および耐久性に影響を及ぼす可能性がある。
【0004】
本開示の特徴および利点は、当業者には容易に理解される。当業者には、多くの変更を行うことが可能であるが、そのような変更は、本発明の思想の範囲内である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ある実施形態では、ナノ粒子は、一般式M2O5を有する金属酸化物コアと、金属酸化物コアを取り囲むアルキルシロキサンリガンドと、を有し、ここでMは、タンタル(V)またはニオブ(V)のいずれかである。
【0006】
ある実施形態では、金属(V)酸化物ナノ粒子を製造する方法は、水とアルコールを含む溶液中で、金属(V)アルコキシドとアルキルカルボン酸とを反応させ、金属(V)酸化物ナノ粒子コアを形成するステップを有する。アルコールを含む溶媒に、金属(V)酸化物ナノ粒子コアおよびアルコキシアルキルシランが導入される。金属(V)酸化物ナノ粒子コアおよびアルコキシアルキルシランを含むアルコールを含む溶媒中に、水酸化アンモニウムが導入される。水酸化アンモニウムを導入した後、金属(V)酸化物ナノ粒子コアおよびアルコキシアルキルシランを含むアルコールを含む溶媒中に、塩化水素が導入され、金属(V)酸化物ナノ粒子が形成される。
【0007】
ある実施形態では、半導体装置は、ペロブスカイト材料の層と、金属(V)酸化物ナノ粒子の層とを有する。金属(V)酸化物ナノ粒子には、アルキルシロキサンリガンドに取り囲まれた、一般式M2O5を有する金属(V)酸化物コアが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示のある実施形態による、活性層を含む典型的な光起電性(PV)セルの概略図である。
【
図2】本開示のある実施形態による、一例のPV装置の部材を示す様式化された図である。
【
図3】本開示のある実施形態による、一例の装置の部材を示す様式化された図である。
【
図4】本開示のある実施形態による、一例の装置の部材を示す様式化された図である。
【
図5】
図5は、ルドルスデン-ポッパーペロブスカイトの構成を示す様式化された図である。
【
図6】本開示のある実施形態による、アルキルアンモニウムカチオンが添加されたペロブスカイト材料の構成を示す様式化された図である。
【
図7】本開示のある実施形態による、1-ブチルアンモニウム表面層を有するペロブスカイト材料の構成を示す様式化された図である。
【
図8】本開示のある実施形態による、複数のバルキーな有意カチオンの表面層を有するペロブスカイト材料の構成を示す様式化された図である。
【
図8A】本開示のある実施形態による、複数のバルキーな有機カチオンの表面層を有するペロブスカイト材料の構成を示す様式化された図である。
【
図9】本開示のある実施形態による、1-ブチルアンモニウム(「BAI」)表面コーティングの有無におけるペロブスカイト材料を撮影した画像の比較を示した図である。
【
図10】本開示のある実施形態による、1-ブチルアンモニウム(「BAI」)表面コーティングの有無におけるペロブスカイト材料を撮影した画像の比較を示す様式化された図である。
【
図11A】本開示のある実施形態による、ペロブスカイト材料の表面に適用され得る各種種ペリレンモノイミドおよびジイミドを示す図である。
【
図11B】本開示のある実施形態による、ペロブスカイト材料の表面に適用され得る各種ペリレンモノイミドおよびジイミドを示す図である。
【
図11C】本開示のある実施形態による、ペロブスカイト材料の表面に適用され得る各種ペリレンモノイミドおよびジイミドを示す図である。
【
図11D】本開示のある実施形態による、ペロブスカイト材料の表面に適用され得る各種ペリレンモノイミドおよびジイミドを示す図である。
【
図12】本開示のある実施形態による、ペリレンモノイミドアンモニウムカチオンが添加されたペロブスカイト材料の構成を示す様式化された図である。
【
図13】本開示のある実施形態による、ホルムアミジニウムヨウ化鉛ペロブスカイト材料の結晶格子に組み込まれた1,4-ジアンモニウムブタンの構成を示す様式化された図である。
【
図14】本開示のある実施形態による、各種濃度の1,4-ジアンモニウムブタンを有するペロブスカイトのX線回折(XRD)ピークを示す図である。
【
図15】本開示のある実施形態による、各種濃度の1,4-ジアンモニウムブタンを有するペロブスカイト材料サンプルの経時変化画像を示す図である。
【
図16】本開示のある実施形態による、ポリアンモニウムアルキルカチオンの構成を示す図である。
【
図16A】本開示のある実施形態による、ホルムアミジニウムヨウ化鉛ペロブスカイト材料の結晶格子に組み込まれた1,8ジアンモニウムオクタンの構成を示す様式化された図である。
【
図16B】本開示のある実施形態による、ホルムアミジニウムヨウ化鉛ペロブスカイト材料の結晶格子に組み込まれたビス(4-アミノブチル)-アンモニウムの構成を示す様式化された図である。
【
図16C】本開示のある実施形態による、ホルムアミジニウムヨウ化鉛ペロブスカイト材料の結晶格子に組み込まれたトリス(4-アミノブチル)-アンモニウムの構成を示す様式化された図である。
【
図17】本開示のある実施形態による、特定の有機分子の構造示す図である。
【
図18】本開示のある実施形態による、特定の有機分子の構造示す図である。
【
図19】本開示のある実施形態による、特定の有機分子の構造示す図である。
【
図20】本開示のある実施形態による、特定の有機分子の構造示す図である。
【
図21】本開示のある実施形態による、特定の有機分子の構造示す図である。
【
図22】本開示のある実施形態による、特定の有機分子の構造示す図である。
【
図23】本開示のある実施形態による、特定の有機分子の構造示す図である。
【
図24】本開示のある実施形態による、特定の有機分子の構造示す図である。
【
図25】本開示のある実施形態による、特定の有機分子の構造示す図である。
【
図26】本開示のある実施形態による、特定の有機分子の構造示す図である。
【
図27】本開示のある実施形態による、特定の有機分子の構造示す図である。
【
図28】本開示のある実施形態による、特定の有機分子の構造示す図である。
【
図29】本開示のある実施形態による、ペロブスカイト材料のX線回折パターンを示す図である。
【
図30】本開示のある実施形態による、ペロブスカイト材料の無機金属ハロゲン化物サブ格子の厚さの様式化された構成を示す図である。
【
図31】本開示のある実施形態による、ペロブスカイト材料光起電装置の光学およびフォトルミネセンス画像を示す図である。
【
図32】本開示のある実施形態による、ペロブスカイト材料光起電装置の電力出力曲線を示す図である。
【
図33】本開示のある実施形態による、ペロブスカイト材料光起電装置の電流-電圧(I-V)走査を示す図である。
【
図34】本開示のある実施形態による、ペロブスカイト材料光起電装置の開回路電圧(Voc)、短絡電流密度(Jsc)、充填率(FF)、および電力変換効率(PCE)についてのボックスプロットを示す図である。
【
図35】本開示のある実施形態による、ペロブスカイト材料光起電装置の外部量子効率(EQE)曲線を示す図である。
【
図36】本開示のある実施形態による、ペロブスカイト材料光起電装置のアドミタンス分光プロットを示す図である。
【
図37】本開示のある実施形態による、ペロブスカイト材料装置の様式化された図である。
【
図38】本開示のある実施形態による、ペロブスカイト材料装置の様式化された図である。
【
図39】本開示のある実施形態による、ペロブスカイト材料装置の様式化された図である。
【
図40】本開示のある実施形態による、ペロブスカイト材料装置の様式化された図である。
【
図41】本開示のある実施形態による、ペロブスカイト材料装置の様式化された図である。
【
図42】本開示のある実施形態による、金属酸化物ナノ粒子コアを形成する反応の様式化された図である。
【
図43】本開示のある実施形態による、リガンド交換反応の様式化された図である。
【
図44】本開示のある実施形態による、金属ナノ粒子架橋反応の様式化された図である。
【
図45】本開示のある実施形態による、いくつかの金属酸化物ナノ粒子の様式化された図である。
【
図46】本開示のある実施形態による、ペロブスカイト材料の表面上の金属酸化物ナノ粒子の様式化された図である。
【
図47】本開示のある実施形態による、ペロブスカイト材料の表面上のアンモニウム官能化金属酸化物ナノ粒子の様式化された図である。
【
図48】本開示のある実施形態による、ペロブスカイト材料光起電装置の開回路電圧(Voc)、短絡電流密度(Jsc)、充填率(FF)、および電力変換効率(PCE)についてのボックスプロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
有機、非有機、および/またはハイブリッドのPVと互換性のあるPV技術の各種態様における改良は、有機PVと他のPVの両方のコストをさらに低下させることが期待される。例えば、ペロブスカイト太陽電池のようなある太陽電池では、酸化ニッケル界面層のような、コスト効率が良く安定性の高い新規な代替部材を利用し得る。また、各種太陽電池は、化学添加剤および他の材料を含むことが有意であり、これらの材料は、特に、現在存在する従来のオプションに比べて、コスト効果が高く、耐久性がある。
【0010】
本開示は、全般に、日射から電気エネルギーを形成する際の、光起電力セルにおける物質の組成、機器、および材料の使用方法に関する。より具体的には、本開示は、光活性物質および他の物質の組成物、ならびに機器、使用方法、およびそのような物質の組成物の形成に関する。
【0011】
また、本開示のある実施形態による材料の一部または全部は、任意の有機または他の電子装置に有意に使用されてもよく、いくつかの例には、これに限られるものではないが、バッテリ、電界効果トランジスタ(FET)、発光ダイオード(LED)、非線形光学装置、メムリスタ、キャパシタ、整流器、および/または整流アンテナが含まれる。
【0012】
ある実施形態では、本開示は、PVおよび他の同様の装置(例えば、バッテリ、ハイブリッドPV電池、マルチ接合PV、FET、LED、X線検出器、ガンマ線検出器、フォトダイオード、CCDなど)を提供してもよい。いくつかの実施形態では、そのような装置は、改良された活性材料、界面層(IFL)、および/または1つ以上のペロブスカイト材料を含んでもよい。ペロブスカイト材料は、PVまたは他の装置の各種態様の1または2以上に組み込まれてもよい。ある実施形態によるペロブスカイト材料は、一般式がCMX3であってもよい。ここで、Cは、1以上のカチオン(例えば、アミン、アンモニウム、ホスホニウム、第1族金属、第2族金属、および/または他のカチオンまたはカチオン様化合物)を含み、Mは、1以上の金属(例えばBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Cd、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Hg、Sn、Ge、Ga、Pb、In、Tl、Sb、Bi、Ti、Zn、Cd、Hg、およびZrを含む)を含み、Xは、1以上のアニオンを含む。以下、各種実施形態によるペロブスカイト材料について、より詳細に説明する。
【0013】
(光起電力セルおよび他の電子装置)
図1に示すような太陽電池の一例を参照して、あるPVの実施形態について説明する。ある実施形態による一例のPVアーキテクチャは、実質的に基板-アノード-IFL-活性層-IFL-カソードの形態であってもよい。一部の実施形態の活性層は、光活性であってもよく、および/または光活性材料を含んでもよい。当該技術分野で知られるように、他の層および材料をセル内で利用してもよい。さらに、「活性層」と言う用語の使用は、明示的または暗示的に、任意の他の層の特性を制限しまたは定めることを意味するものではないことが留意される。例えば、ある実施形態では、IFLの一方または両方は、それらが半導体であり得る限り、活性であってもよい。特に、
図1を参照すると、様式化された一般的なPVセル1000が示されており、PV内のいくつかの層の高い界面特性が示されている。PV1000は、ペロブスカイト材料のPV実施形態のような、いくつかのPV装置に適用可能な一般的なアーキテクチャを表す。PVセル1000は、透明基板層1010を有し、該透明基板層1010は、ガラス(または日射に対して同様に透明な材料)であってもよく、太陽放射線は、層を通って透過することができる。いくつかの実施形態の透明層は、スーパーストレートまたは基板(例えば、
図2の基板層3901と同様)とも称され、これは、ガラス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリイミド、PMMA、PET、PEN、カプトン、または石英のような、各種硬質または可撓性の材料の1つ以上を含んでもよい。一般に、「基板」という用語は、製造の際に、その上に装置が成膜される材料を表す際に使用される。光活性層1040は、電子ドナーまたはp型材料、および/または電子アクセプタまたはn型材料、および/またはp型およびn型の両方の材料特性を示す両極性半導体、および/またはn型またはp型の特性を示さない真性半導体から構成されてもよい。光活性層1040は、ある実施形態では、本願に記載されるペロブスカイト材料であってもよい。
図1に示されるように、活性層または光活性層1040は、2つの導電性電極層1020および1060の間に挟まれる。
図1において、電極層1020は、スズドープ酸化インジウム(ITO材料)または本願に記載される他の材料のような、透明導電体であってもよい。他の実施形態では、第2の基板1070および第2の電極1060は、透明であってもよい。前述のように、いくつかの実施形態の活性層は、必ずしも光活性である必要はない。ただし、
図1に示す装置では、光活性である。電極層1060は、アルミニウム材料もしくは他の金属、または炭素のようなの他の導電性材料であってもよい。当技術分野で知られるように、他の材料を使用してもよい。またセル1010は、
図1の例に示すように、界面層(IFL)1030を含む。IFLは、電荷分離を支援してもよい。他の実施形態では、IFL1030は、多層IFLを含んでもよく、これは、以下により詳細に説明される。また、電極1060に隣接するIFL1050があってもよい。また、いくつかの実施形態では、電極1060に隣接するIFL1050は、多層IFL(これもまた以下に詳細に説明される)であり、またはその代わりに、多層IFLを含んでもよい。いくつかの実施形態によるIFLは、特性が半導体であってもよく、真性、両極性、p型、またはn型のいずれであってもよく、または特性が誘電体であってもよい。ある実施形態では、装置のカソード側のIFL(例えば、
図1に示すようなIFL1050)は、p型であってもよく、装置のアノード側のIFL(例えば、
図1に示すようなIFL1030)は、n型であってもよい。しかしながら、他の実施形態では、カソード側IFLは、n型であり、アノード側IFLは、p型であってもよい。セル1010は、電極1060および1020と、バッテリ、モータ、キャパシタ、電力グリッド、または他の電気負荷のような放電ユニットとにより、電気リードに取り付けられてもよい。
【0014】
本開示の各種実施形態では、特に、活性材料(正孔輸送層および/または電子輸送層を含む)、界面層、および全体的な装置設計を含む、太陽電池および他の装置の各種態様において、改良された材料および/または設計が提供される。
【0015】
(界面層)
ある実施態様では、本開示により、薄膜被覆IFLを含む、PV内の1つ以上の界面層の有意な材料および設計が提供される。薄膜被覆IFLは、本願に記載の各種実施形態による、PVの1つ以上のIFLに使用されてもよい。
【0016】
各種実施形態では、装置は、必要な場合、任意の他の2つの層および/または材料の間に界面層を有してもよい。ただし、装置は、任意の界面層を含む必要はない。例えば、ペロブスカイト材料装置は、0、1、2、3、4、5、またはそれ以上の界面層を含んでもよい(例えば、
図2の一例の装置は、5つの界面層3903、3905、3907、3909、および3911を含む)。界面層は、2つの層または材料の間で電荷輸送および/または収集を高める、任意の好適な材料を含んでもよい。これは、いったん電荷が界面層に隣接する材料の1つから遠ざかるように輸送された際に、電荷再結合の可能性を抑止しまたは低減するのことを支援してもよい。また、界面層は、その基板を物理的および電気的に均質化して、基板の粗さ、誘電率、接着、欠陥の発生または消滅における変化(例えば、電荷トラップ、表面状態)を形成してもよい。好適な界面材料は、Ag、Al、Au、B、Bi、Ca、Cd、Ce、Co、Cu、Fe、Ga、Ge、H、In、Mg、Mn、Mo、Nb、Ni、Pt、Sb、Sc、Si、Sn、Ta、Ti、V、W、Y、Zn、Zr;上記金属の任意の炭化物(例えば、SiC、Fe
3C、WC、VC、MoC、NbC)、上記金属の任意のシリサイド(例えば、Mg
2Si、SrSi
2、Sn
2Si);インジウムスズ酸化物、アルミニウムドープ亜鉛酸化物(AZO)、カドミウム酸化物(CdO)、およびフッ素ドープスズ酸化物(FTO)のような透明導電性酸化物(「TCO」)を含む、上記金属の任意の酸化物(例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、SnO
2、ZnO、NiO、ZrO
2、HfO
2);前記金属の任意の硫化物(例えば、CdS、MoS
2、SnS
2);前記金属の任意の窒化物(例えば、GaN、Mg
3N
2、TiN、BN、Si
3N
4);前記金属の任意のセレン化物(例えば、CdSe、FeSe
2、ZnSe);前記金属の任意のテルル化物(例えば、CdTe、TiTe
2、ZnTe);前記金属の任意のリン化物(例えば、InP、GaP、GaInP);前記金属の任意のヒ素化物(例えば、CoAs
3、GaAs、InGaAs、NiAs);前記金属の任意のアンチモン化物(例えば、AlSb、GaSb、InSb);前記金属の任意のハロゲン化物(例えば、CuCl、CuI、BiI
3);前記金属の任意の疑似ハロゲン化物(例えば、CuSCN、AuCN、Fe(SCN)
2;前記金属の任意の炭酸塩(例えば、CaCO
3、Ce
2(CO
3)
3);官能化または非官能化アルキルシリル基;グラファイト;グラフェン;フラーレン;カーボンナノチューブ;本願の他の箇所に記載の任意のメソポーラス材料および/または界面材料;ならびにそれらの組み合わせ(ある実施形態では、組み合わせ材料のバイレイヤ、トリレイヤ、またはマルチ層を含む)の任意の1つ以上を有してもよい。ある実施形態では、界面層はペロブスカイト材料を含んでもよい。さらに、界面層は、本願に記載の任意の界面材料のドープされた実施形態を含んでもよい(例えば、YドープZnO、Nドープ単一壁カーボンナノチューブ)。また、界面層は、前記材料の3つを有する化合物(例えば、CuTiO
3、Zn
2SnO
4)、または前記材料の4つを有する化合物(例えば、CoNiZnO)を含んでもよい。前述の列挙した材料は、平面状、メソポーラス、またはその他のナノ構造形態(例えば、ロッド、球、フラワー、ピラミッド)、またはエアロゲル構造で存在してもよい。
【0017】
まず前述のように、1または2以上のIFL(例えば、
図1に示すIFL2626、2627の一方または両方)は、自己組織化単層膜(SAM)または薄膜として、本開示の光活性有機化合物を含んでもよい。本開示の光活性有機化合物がSAMとして適用される場合、これは結合基を有し、この結合基を介して、アノードおよびカソードのいずれかまたは両方の表面に、共有結合的に、または他の方法で結合される。ある態様の結合基は、COOH、SiX
3(ここで、Xは、Si(OR)
3およびSiCl
3のような三元ケイ素化合物を形成するのに適した任意の部分であってもよい)、SO
3、PO
4H、OH、CH
2X(ここで、Xは、グループ17のハロゲン化基を有してもよい)、およびOのいずれか1つ以上を有してもよい。結合基は、電子求引性部分、電子ドナー部分、および/またはコア部分に共有結合され、あるいはその他の方法で結合されてもよい。結合基は、厚さの単一分子(またはある実施形態では、複数の分子)の方向性有機層を形成するように、電極表面に取り付けられてもよい(例えば、複数の光活性有機化合物がアノードおよび/またはカソードに結合される)。前述のように、SAMは、共有結合の相互作用を介して取り付けられてもよいが、ある実施形態では、イオン結合、水素結合、および/または分散力(すなわち、ファンデルワールス)相互作用を介して、取り付けられてもよい。さらに、特定の実施形態では、光暴露の際に、SAMが双性イオン励起状態に入り、これにより、高分極IFLが形成されてもよい。これは、活性層から電極(例えば、アノードまたはカソードの一方)に、電荷キャリアを誘導してもよい。ある実施形態では、この強化された電荷キャリア注入は、活性層の断面を電子的に研磨し、従って、それぞれの電極(例えば、アノードへの正孔、カソードへの電子)に向かう電荷キャリアドリフト速度を増加させることにより、達成されてもよい。ある態様のアノード適用の分子は、調整可能な化合物を有し、これは、コア部分に結合した一次電子ドナー部分を含み、コア部分は、電子求引性部分に結合され、結合基に結合される。ある実施形態によるカソード用途において、IFL分子は、コア部分に結合した電子不足部分を含む、調整可能な化合物を有し、これは、電子ドナー部分に結合され、結合基に結合される。光活性有機化合物がそのような実施形態によるIFLとして使用される場合、これは、光活性特性を保持してもよいが、ある実施形態では、これは、光活性である必要はない。
【0018】
ある実施形態の薄膜IFLにおいて、金属酸化物を使用してもよく、これは、半導体金属酸化物、例えば、NiO、SnO2、WO3、V2O5、またはMoO3を含んでもよい。第2の(例えば、n型の)活性材料が、Al2O3を含む薄膜被覆IFLで被覆されたTiO2を有するような実施形態では、例えば、Al(NO3)3・xH2Oのような前駆体材料、またはAl2O3をTiO2に成膜させるのに適した任意の他の材料で形成することができ、その後、熱アニーリングおよび色素コーティングが実施される。代わりにMoO3コーティングが使用される一実施形態では、コーティングは、Na2Mo4・2H2Oのような前駆体材料で形成されてもよく、一実施形態によるV2O5コーティングは、NaVO3のような前駆体材料で形成されてもよく、一実施形態によるWO3コーティングは、NaWO4・H2Oのような前駆体材料で形成されてもよい。前駆体材料(例えば、Al(NO3)3・xH2O)の濃度は、TiO2または他の活性材料上に成膜された膜の最終膜厚(ここではAl2O3の膜厚)に影響を及ぼし得る。従って、前駆体材料の濃度を調整することは、最終的な膜厚を制御できる方法であり得る。例えば、より大きな膜厚は、より大きな前駆体材料濃度から生じ得る。金属酸化物コーティングを含むPV装置において、より大きな膜厚は、必ずしも、より大きなPCEをもたらすとは限られない。従って、ある実施形態の方法は、約0.5から10.0mMの範囲の濃度を有する前駆体材料を用いて、TiO2(または他のメソポーラス)層をコーティングするステップを有する。他の実施形態は、約2.0から6.0mMの範囲の濃度、または他の実施形態では、約2.5~5.5mMの濃度を有する前駆体材料で層をコーティングするステップを有してもよい。
【0019】
さらに、本願ではAl2O3および/またはアルミナと称するが、アルミナの形成の際には、アルミニウムおよび酸素の各種比率が使用され得ることが留意される。従って、本願に記載のある実施形態は、Al2O3を参照して説明されるが、そのような記載は、酸素中のアルミニウムの必要な比率を規定することを意図するものではない。むしろ、実施形態は、任意の1または2以上のアルミニウム酸化物化合物を含んでもよく、各々は、AlxOyによるアルミニウム酸化物比を有してもよい。ここでxは、約1から100の間の任意の整数または非整数であってもよい。ある態様において、xは、約1と3との間であってもよい(ここでも、整数である必要はない)。同様に、yは、0.1から100の間の任意の整数または非整数であってもよい。ある実施形態では、yは、2~4の間であってもよい(ここでも、整数である必要はない)。また、各種実施形態において、アルミナのアルファ、ガンマ、および/またはアモルファスの形態のような、AlxOyの各種結晶形態が存在してもよい。
【0020】
同様に、本願では、NiO、MoO3、WO3、およびV2O5と称されるが、そのような化合物は、その代わりにまたはこれに加えて、それぞれ、NixOy、MoxOy、WxOy、およびVxOyとして表されてもよい。MoxOyおよびWxOyの各々に関して、xは、約0.5から100の間の任意の値、整数または非整数であってもよく、ある実施形態では、約0.5から1.5の間であってもよい。同様に、yは、約1から100の間の任意の値、整数または非整数であってもよい。ある実施形態では、yは、約1から4の間の任意の値であってもよい。VxOyに関して、xは、約0.5から100の間の任意の値、整数または非整数であってもよく、ある実施形態では、約0.5から1.5の間であってもよい。同様に、yは、約1~100の間の任意の値、整数または非整数であり、特定の実施形態では、約1から10の間の整数または非整数であってもよい。ある実施形態では、xおよびyは、非化学量論比である値を有してもよい。本開示において、化学量論的形式で記載された任意のIFL材料は、上記の例のような非化学量論的形式においても存在してもよいことが留意される。
【0021】
ある実施形態では、IFLは、チタン酸塩を含んでもよい。ある実施形態では、チタン酸塩は、一般式がM’TiO3であってもよい。ここで、M’は、任意の2+のカチオンを含む。ある態様では、M’は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ni、Zn、Cd、Hg、Cu、Pd、Pt、Sn、またはPbのカチオン形態を有してもよい。ある態様では、IFLは、チタン酸塩の単一の種類を含んでもよく、他の態様では、IFLは、チタン酸塩の2つ以上の異なる種類を含んでもよい。一実施形態では、チタン酸塩は、一般式SrTiO3を有する。他の実施形態では、チタン酸塩は、一般式BaTiO3を有してもよい。さらに別の実施形態では、チタン酸塩は、一般式CaTiO3を有してもよい。
【0022】
説明のためであって、いかなる限定も意味するものではないが、チタン酸塩は、ペロブスカイト結晶構造を有し、ペロブスカイト材料(例えば、ヨウ化メチルアンモニウム鉛(MAPbI3)およびヨウ化ホルムアミジニウム鉛(FAPbI3))の成長変換プロセスを強くシードする。また、チタン酸塩は、一般に、強誘電体挙動、十分な電荷キャリア移動度、光透過性、整合エネルギーレベル、および高誘電率のような、他のIFL仕様も満たす。
【0023】
他の実施態様では、IFLは、ジルコン酸塩を含んでもよい。ある実施形態では、ジルコン酸塩は、一般式がM’ZrO3であってもよい。ここで、M’は、任意の2+カチオンを含む。ある態様では、M’は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ni、Zn、Cd、Hg、Cu、Pd、Pt、Sn、またはPbのカチオン形態を有してもよい。ある実施形態では、IFLは、ジルコン酸塩の単一の種類を含んでもよく、他の実施態様では、IFLは、ジルコン酸塩の2つ以上の異なる種類を含んでもよい。一実施形態では、ジルコン酸塩は、一般式SrZrO3を有する。別の実施形態では、ジルコン酸塩は、一般式BaZrO3を有してもよい。さらに別の実施形態では、ジルコン酸塩は、一般式CaZrO3を有してもよい。
【0024】
説明のためであって、いかなる限定も意味するものではないが、ジルコン酸塩は、ペロブスカイト結晶構造を有し、ペロブスカイト材料(例えば、MAPbI3、FAPbI3)成長変換プロセスを強力にシードする。また、ジルコン酸塩は、一般に、強誘電挙動、十分な電荷キャリア移動度、光透過性、整合エネルギーレベル、および高誘電率のような、他のIFL仕様を満たす。
【0025】
他の実施態様では、IFLは、スズ酸塩を含んでもよい。ある実施形態では、スズ酸塩は、一般式がM’SnO3、またはM’2SnO4であってもよい。ここで、M’は、任意の2+カチオンを含む。ある態様では、M’は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ni、Zn、Cd、Hg、Cu、Pd、Pt、Sn、またはPbのカチオン形態を有してもよい。ある実施形態では、IFLは、スズ酸塩の単一の種類を含んでもよく、他の実施態様では、IFLは、スズ酸塩の2つ以上の異なる種類を含んでもよい。一実施形態では、スズ酸塩は、一般式SrSnO3を有する。別の実施態様では、スズ酸塩は、一般式BaSnO3を有してもよい。さらに別の実施形態では、スズ酸塩は、一般式CaSnO3を有してもよい。
【0026】
説明のためであって、いかなる限定も意味するものではないが、スズ酸塩は、ペロブスカイト結晶構造を有し、ペロブスカイト材料(例えば、MAPbI3、FAPbI3)成長変換プロセスを強力にシードする。スズ酸塩は、一般に、強誘電体挙動、十分な電荷キャリア移動度、光透過性、整合エネルギーレベル、および高誘電率のような、他のIFL仕様も満たす。
【0027】
他の実施態様では、IFLは、鉛酸塩を含んでもよい。ある実施形態では、鉛酸塩は、一般式M’PbO3であってもよく、ここで、M’は、任意の2+カチオンを含む。ある態様では、M’は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ni、Zn、Cd、Hg、Cu、Pd、Pt、Sn、またはPbのカチオン形態を含んでもよい。ある実施形態では、IFLは、単一の種類の鉛酸塩を含んでもよく、他の実施態様では、IFLは、2種以上の異なる種類の鉛酸塩を含んでもよい。一実施形態では、鉛酸塩は、一般式SrPbO3を有する。他の実施態様では、鉛酸塩は、一般式BaPbO3を有してもよい。さらに別の実施態様では、鉛酸塩は、一般式CaPbO3を有してもよい。さらに別の実施形態では、鉛酸塩は、一般式PbIIPbIVO3を有してもよい。
【0028】
説明のためであって、いかなる限定も意味するものではないが、鉛酸塩は、ペロブスカイト結晶構造を有し、ペロブスカイト材料(例えば、MAPbI3、FAPbI3)の成長変換プロセスを強力にシードする。また、鉛酸塩は、一般に、強誘電挙動、十分な電荷キャリア移動度、光透過性、整合エネルギーレベル、および高誘電率のような、他のIFL仕様も満たす。
【0029】
さらに、他の実施態様では、IFLは、一般式がM’[ZrxTi1-x]O3のジルコン酸塩とチタン酸塩の組合せを含んでもよい。ここで、、Xは、0より大きく1より小さく、M’は、任意の2+カチオンを含む。ある態様では、M’は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ni、Zn、Cd、Hg、Cu、Pd、Pt、Sn、またはPbのカチオン形態を含んでもよい。ある実施形態では、IFLは、ジルコン酸塩の単一の種類を含んでもよく、他の実施態様では、IFLは、ジルコン酸塩の2つ以上の異なる種類を含んでもよい。一実施態様では、ジルコン酸塩/チタン酸塩の組合せは、一般式Pb[ZrxTi1-x]O3を有する。別の実施形態では、ジルコン酸塩/チタン酸塩の組合せは、一般式Pb[Zr0.52Ti0.48]O3を有する。
【0030】
説明のためであって、いかなる限定も意味するものではないが、ジルコン酸塩/チタン酸塩の組み合わせは、ペロブスカイト結晶構造を有し、ペロブスカイト材料(例えば、MAPbI3、FAPbI3)の成長変換プロセスを強力にシードする。ジルコン酸塩/チタン酸塩の組み合わせは、一般に、強誘電挙動、十分な電荷キャリア移動度、光透過性、整合エネルギーレベル、および高誘電率のような、他のIFL仕様も満たす。
【0031】
他の実施形態では、IFLは、ニオブ酸塩を含んでもよい。ある実施形態では、ニオブ酸塩は、一般式M’NbO3であってもよい。ここで、M’は、任意の+カチオンを含む。ある実施形態では、M’は、Li、Na、K、Rb、Cs、Cu、Ag、Au、Tl、アンモニウム、またはHのカチオン形態を含んでもよい。ある実施形態では、IFLは、ニオブ酸塩の単一の種類を含んでもよく、他の実施態様では、IFLは、ニオブ酸塩の2つ以上の異なる種類を含んでもよい。一実施形態では、ニオブ酸塩は、一般式LiNbO3を有する。別の実施形態では、ニオブ酸塩は、一般式NaNbO3を有してもよい。さらに別の実施態様では、ニオブ酸塩は、一般式AgNbO3を有してもよい。
【0032】
説明のためであって、いかなる限定も意味するものではないが、説明のために、ニオブ酸塩は、一般に、圧電挙動、非線形光学分極率、光弾性、強誘電性挙動、ポッケルス効果、十分な電荷キャリア移動度、光透過性、整合エネルギーレベル、および高誘電率のような、IFL仕様を満たす。
【0033】
一実施態様では、ペロブスカイト材料装置は、SrTiO3被覆ITO基板上にPbI2をキャスティングすることにより、形成されてもよい。PbI2は、浸漬プロセスによりMAPbI3に変換されてもよい。このプロセスについては、以下に詳細に説明する。この結果生じるPbI2のMAPbI3への変換は、SrTiO3を含まない基板での調製と比べて、より完全である(光学分光法による観測)。
【0034】
本願に記載の界面材料は、さらに、ドープされた組成物を含んでもよい。界面材料の(例えば、電気的、光学的、機械的)特性を変更するため、化学量論的または非化学量論的材料は、1ppb%から50mol%の範囲の量で、1つ以上の元素(例えば、Na、Y、Mg、N、P)でドープされてもよい。界面材料のある例には、NiO、TiO2、SrTiO3、Al2O3、ZrO2、WO3、V2O5、MO3、ZnO、グラフェン、およびカーボンブラックが含まれる。これらの界面材料の想定されるドーパントの例には、Li、Na、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Nb、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、Sn、In、B、N、P、C、S、As、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物(例えば、シアン化物、シアン酸塩、イソシアン酸塩、雷酸塩、チオシアネート、イソチオシアネート、アジド、テトラカルボニルコバルト酸塩、カルバモイルジシアノメタニド、ジシアノニトロソメタニド、ジシアナミド、およびトリシアノメタニド)、およびその任意の酸化状態のAlが含まれる。ドープされた界面材料という表現は、界面材料化合物中の成分元素の比率を限定することを意図するものではない。
【0035】
ある実施形態では、異なる材料から製造された複数のIFLは、互いに隣接して配置され、複合IFLが形成されてもよい。この構成は、2つの異なるIFL、3つの異なるIFL、またはより多くの異なるIFLを有してもよい。結果として生じるマルチレイヤIFLまたは複合IFLは、単一材料のIFLの代わりに使用されてもよい。例えば、複合IFLには、IFL 3903、IFL 3905、IFL 3907、IFL 3909、またはIFL 3911のような、
図2の例に示された任意のIFLを使用されてもよい。複合IFLは、単一材料のIFLとは異なるものの、マルチレイヤIFLを有するペロブスカイト材料PVセルのアセンブリは、単一材料IFLのみを有するペロブスカイト材料PVセルのアセンブリと実質的に異ならない。
【0036】
一般に、複合IFLは、IFLに適するな、本願に記載の任意の材料を用いて製造されてもよい。一実施態様では、IFLは、Al2O3の層と、ZnOまたはM:ZnOの層(ドープ化ZnO、例えば、Be:ZnO、Mg:ZnO、Ca:ZnO、Sr:ZnO、Ba:ZnO、Sc:ZnO、Y:ZnO、Nb:ZnO)とを含む。一実施形態では、IFLは、ZrO2の層と、ZnOまたはM:ZnOの層とを含む。特定の実施態様では、IFLは、複数の層を含む。ある実施態様では、マルチレイヤIFLは、通常、導体層、誘電体層、および半導体層を有する。特定の実施形態では、層は、例えば、導体層、誘電体層、半導体層、誘電体層、および半導体層を繰り返してもよい。マルチレイヤIFLの例には、ITO層、Al2O3層、ZnO層、第2のAl2O3層を有するIFL;ITO層、Al2O3層、ZnO層、第2のAl2O3層、および第2のZnO層を有するIFL;ITO層、Al2O3層、ZnO層、第2のAl2O3層、第2のZnO層、および第3のAl2O3層を有するIFL;ならびに所望の性能特性を達成する上で必要な数の層を有するIFLが含まれる。前述のように、特定の化学量論比の記載は、各種実施形態によるIFL層における成分元素の比を限定することを意図するものではない。
【0037】
複合IFLとして2つ以上の隣接IFLを配置することは、ペロブスカイト材料PVセルにおける単一のIFLを上回り、単一のIFLにおける各IFL材料からの寄与が活用されてもよい。例えば、ITO層、Al2O3層、およびZnO層を有するアーキテクチャにおいて、ITOは導電性電極であり、Al2O3は誘電体材料であり、ZnOはn型半導体であり、ZnOは良好な電子輸送特性(例えば、移動度)を示す電子アクセプタとして機能する。さらに、Al2O3は、物理的にロバストな材料であり、ITOに良好に接着し、表面欠陥(例えば、電荷トラップ)をキャッピングすることにより表面を均質化し、暗電流の抑制により装置ダイオードの特性を改善する。
【0038】
また、あるペロブスカイト材料PVセルは、2つ以上のペロブスカイト光活性層を有する、いわゆる「タンデム型」PVセルを有してもよい。例えば、
図2の光活性材料3908および3906の両方が、ペロブスカイト材料であってもよい。そのようなタンデム型PVセルでは、
図2のIFL3907(すなわち、再結合層)のような、2つの光活性層間の界面層は、マルチレイヤ、または複合IFLを含んでもよい。ある実施形態では、タンデム型PV装置の2つの光活性層の間に挟まれた層は、電極層を含んでもよい。
【0039】
タンデム型PV装置は、上部から底部に向かって、または底部から上部に向かって記載された、以下の層を有してもよい:第1の基板、第1の電極、第1の界面層、第1のペロブスカイト材料、第2の界面層、第2の電極、第3の界面層、第2のペロブスカイト材料、第4の界面層、および第3の電極。ある実施態様では、第1および第3の界面層は、正孔輸送界面層であってもよく、第2および第4の界面層は、電子輸送界面層であってもよい。他の実施態様では、第1および第3の界面層は、電子輸送界面層であってもよく、第2および第4の界面層は、正孔輸送界面層であってもよい。さらに別の実施形態では、第1および第4の界面層は、正孔輸送界面層であってもよく、第2および第3の界面層は、電子輸送界面層であってもよい。他の実施態様では、第1および第4の界面層は、電子輸送界面層であってもよく、第2および第3の界面層は、正孔輸送界面層であってもよい。タンデム型PV装置では、第1および第2のペロブスカイト材料は、異なるバンドギャップを有してもよい。ある実施形態では、第1のペロブスカイト材料は、ホルムアミジニウム臭化鉛(FAPbBr3)であってもよく、第2のペロブスカイト材料は、ホルムアミジニウムヨウ化鉛(FAPbI3)であってもよい。他の実施形態では、第1のペロブスカイト材料は、メチルアンモニウム臭化鉛(MAPbBr3)であってもよく、第2のペロブスカイト材料は、ホルムアミジニウムヨウ化鉛(FAPbI3)であってもよい。他の実施形態では、第1のペロブスカイト材料は、メチルアンモニウム臭化鉛(MAPbBr3)であってもよく、第2のペロブスカイト材料は、メチルアンモニウムヨウ化鉛(MAPbI3)であってもよい。
【0040】
(ペロブスカイト材料)
ペロブスカイト材料は、PVまたは他の装置の1つ以上の態様に組み込まれてもよい。ある実施形態によるペロブスカイト材料は、一般式がCwMyXzであってもよい。ここで、Cは、1つ以上のカチオン(例えば、アミン、アンモニウム、ホスホニウム、第1族金属、第2族金属、および/または他のカチオンまたはカチオン様化合物)を有し、Mは、1つ以上の金属(例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Cd、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Hg、Sn、Ge、Ga、Pb、In、Tl、Sb、Bi、Ti、Zn、Cd、Hg、およびZrを含む)を有し、Xは、1つ以上のアニオンを有し、w、y、およびzは、1から20の間の実数を表す。ある態様では、Cは、1以上の有機カチオンを有してもよい。ある実施形態では、各有機カチオンCは、各金属Mよりも大きくてもよく、各アニオンXは、カチオンCおよび金属Mの両方と結合されてもよい。特定の実施形態では、ペロブスカイト材料は、一般が式CMX3であってもよい。
【0041】
ある態様では、Cは、アンモニウム、一般式が[NR4]+の有機カチオンを有してもよい。ここで、R基は、同じまたは異なる基であってもよい。好適なR基には、これに限られるものではないが、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル基、またはその異性体;任意のアルカン、アルケン、またはアルキンCxHy、ここで、x=1~20、y=1~42、環状、分枝鎖、または直鎖;アルキルハライド、CxHyXz、x=1~20、y=0~42、z=1~42、X=F、Cl、Br、またはI;任意の芳香族基(例えば、フェニル、アルキルフェニル、アルコキシフェニル、ピリジン、ナフタレン);環内に少なくとも1つの窒素が含まれる環状錯体(例えば、ピリジン、ピロール、ピロリジン、ピペリジン、テトラヒドロキノリン);任意の硫黄含有基(例えば、スルホキシド、チオール、アルキルスルフィド);任意の窒素含有基(ニトロキシド、アミン);任意のリン含有基(例えば、リン酸塩);任意のホウ素含有基(例えば、ホウ酸);任意の有機酸(例えば、酢酸、プロパン酸);エステルまたはそのアミド誘導体;α、β、γおよびより大きな誘導体を含む任意のアミノ酸(例えば、グリシン、システイン、プロリン、グルタミン酸、アルギニン、セリン、ヒスチジン、5-アンモニウム吉草酸);任意のケイ素含有基(例えば、シロキサン);ならびに任意のアルコキシまたは反応基、-OCxHy、ここでx=0~20、y=1~42である、が含まれる。
【0042】
特定の実施形態では、Cは、ホルムアミジニウム、一般式[R2NCRNR2]+の有機カチオンを有してもよい。ここで、R基は、同じまたは異なる基であってもよい。好適なR基には、これに限られるものではないが、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル基またはその異性体;任意のアルカン、アルケン、またはアルキンCxHy、ここで、x=1~20、y=1~42、環状、分枝鎖、または直鎖;アルキルハライド、CxHyXz、x=1~20、y=0~42、z=1~42、X=F、Cl、Br、またはI;任意の芳香族基(例えば、フェニル、アルキルフェニル、アルコキシフェニル、ピリジン、ナフタレン);環内に少なくとも1つの窒素が含まれる環状錯体(例えば、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ピリミジン(アゾリジニリデンメチル)ピロリジン、トリアゾール);任意の硫黄含有基(例えば、スルホキシド、チオール、アルキルスルフィド);任意の窒素含有基(ニトロキシド、アミン);任意のリン含有基(例えば、リン酸);任意のホウ素含有基(例えば、ホウ酸);任意の有機酸(酢酸、プロパン酸)、およびそのエステルまたはアミド誘導体;α、β、γおよびより大きな誘導体を含む任意のアミノ酸(例えば、グリシン、システイン、プロリン、グルタミン酸、アルギニン、セリン、ヒスチジン、5-アンモニウム吉草酸);任意のケイ素含有基(例えば、シロキサン);ならびに任意のアルコキシまたは反応基、-OCxHy、ここでx=0~20、y=1~42;が含まれる。
【0043】
【化1】
式1は、上記のように、[R
2NCRNR
2]
+の一般式を有するホルムアミジニウムカチオンの構造を示す。式2は、ペロブスカイト材料中のカチオン「C」として機能し得る、いくつかのホルムアミジニウムカチオンの構造の例を示す。
【0044】
【化2】
特定の実施形態では、Cは、グアニジウム、一般式が[(R
2N)
2C=NR
2]
+の有機カチオンを有してもよい。ここで、R基は、同じまたは異なる基であってもよい。好適なR基には、これに限られるものではないが、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル基またはその異性体;任意のアルカン、アルケン、またはアルキンC
xH
y、ここでx=1~20、y=1~42、環状、分枝鎖、または直鎖;アルキルハライドCxHyXz、x=1~20、y=0~42、z=1~42、X=F、Cl、Br、またはI;任意の芳香族基(例えば、フェニル、アルキルフェニル、アルコキシフェニル、ピリジン、ナフタレン);環内に少なくとも1つの窒素を含む環状錯体(例えば、オクタヒドロピリミド[1,2-a]ピリミジン、ピリミド[1,2-a]ピリミジン、ヘキサヒドロイミダゾ[1,2-a]イミダゾール、ヘキサヒドロイミジン-2-イミン;任意の硫黄含有基(例えば、スルホキシド、チオール、アルキルスルフィド);任意の窒素含有基(ニトロキシド、アミン);任意のリン含有基(リン酸);任意のホウ素含有基(例えば、ホウ酸);任意の有機酸(酢酸、プロパン酸)、およびそのエステルまたはアミド誘導体;α、β、γ、およびより大きな誘導体を含む任意のアミノ酸(例えば、グリシン、システイン、プロリン、グルタミン酸、アルギニン、セリン、ヒスチジン、5-アンモニウム吉草酸);任意のケイ素含有基(例えば、シロキサン);ならびに任意のアルコキシまたは反応基、-OC
xH
y、ここでx=0~20、y=1~42が含まれる。
【0045】
【化3】
式3には、上記のように[(R
2N)
2C=NR
2]
+の一般式を有するグアニジウムカチオンの構造を示す。式4には、ペロブスカイト材料中のカチオン「C」として機能し得るいくつかのグアニジウムカチオンの構造の例を示す。
【0046】
【化4】
特定の実施形態では、Cは、エテンテトラミンカチオン、一般式[(R
2N)
2C=C(NR
2)
2]
+の有機カチオンを有してもよい。ここで、R基は、同じまたは異なる基であってもよい。好適なR基には、これに限られるものではないが、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル基またはその異性体;任意のアルカン、アルケン、またはアルキンC
xH
y、ここでx=1~20、y=1~42、環状、分枝鎖、または直鎖;アルキルハライドC
xH
yX
z、x=1~20、y=0~42、z=1~42、X=F、Cl、Br、またはI;任意の芳香族基(例えば、フェニル、アルキルフェニル、アルコキシフェニル、ピリジン、ナフタレン);環内に少なくとも1つの窒素が含まれる環状錯体(例えば、2-ヘキサヒドロピリミジン-2-イリデンヘキサヒドロピリミジン、オクタヒドロピラジン[2,3-b]ピラジン、ピラジノ[2,3-b]ピラジン、キノキサリノ[2,3-b]キノキサリン);任意の硫黄含有基(例えば、スルホキシド、チオール、アルキルスルフィド);任意の窒素含有基(ニトロキシド、アミン);任意のリン酸含有基(リン酸);ホウ素含有基(例えば、ホウ酸);任意の有機酸(例えば、酢酸、プロパン酸)、およびそのエステルまたはアミド誘導体;α、β、γ、およびより大きな誘導体を含む任意のアミノ酸(例えば、グリシン、システイン、プロリン、グルタミン酸、アルギニン、セリン、ヒスチジン、5-アンモニウム吉草酸);任意のケイ素含有基(例えば、シロキサン);ならびに任意のアルコキシまたは反応基、-OC
xH
y、ここでx=0~20、y=1~42;が含まれる。
【0047】
【化5】
式5には、上記のように[(R
2N)
2C=C(NR
2)
2]
+の一般式を有するエテンテトラミンカチオンの構造を示す。式6には、ペロブスカイト材料中のカチオン「C」として機能し得る、いくつかのエテンテトラミンイオンの構造の例を示す。
【0048】
【化6】
特定の実施形態では、Cは、イミダゾリウムカチオン、一般式[CRNRCRNRCR]
+の芳香族、環状有機カチオンを有してもよい。ここで、R基は、同じまたは異なる基であってもよい。好適なR基には、これに限られるものではないが、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル基またはその異性体;アルカン、アルケンまたはアルキンC
xH
y、ここでx=1~20、y=1~42、環状、分枝鎖または直鎖;ハロゲン化アルキル、C
xH
yX
z、x=1~20、y=0~42、z=1~42、X=F、Cl、Br、またはI;任意の芳香族基(例えば、フェニル、アルキルフェニル、アルコキシフェニル、ピリジン、ナフタレン);環内に少なくとも1つの窒素が含まれる環状複合体(例えば、2-ヘキサヒドロピリミジン-2-イリデンヘキサヒドロピリミジン、オクタヒドロピラジノ[2,3-b]ピラジン、ピラジノ[2,3-b]ピラジン、キノキサリノ[2,3-b]キノキサリン);任意の硫黄含有基(例えば、スルホキシド、チオール、アルキルスルフィド);任意の窒素含有基(ニトロキシド、アミン);任意のリン含有基(リン酸);任意のホウ素含有基(例えば、ホウ酸);任意の有機酸(例えば、酢酸、プロパン酸)、およびエステルまたはそのアミド誘導体;α、β、γ、およびより大きな誘導体を含む任意のアミノ酸(例えば、グリシン、システイン、プロリン、グルタミン酸、アルギニン、セリン、ヒスチジン、5-アンモニウム吉草酸);任意のケイ素含有基(例えば、シロキサン);ならびに任意のアルコキシまたは反応基、-OC
xH
y、ここでx=0~20、y=1~42;が含まれる。
【0049】
特定の実施形態では、Cは、ピリジウムカチオン、一般式[CRCRCRCRNR]+の芳香族、環状有機カチオンを有してもよい。ここで、R基は、同一じまたは異なる基であってもよい。好適なR基には、これに限られるものではないが、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル基またはその異性体;アルカン、アルケンまたはアルキンCxHy、ここでx=1~20、y=1~42、環状、分枝鎖または直鎖;ハロゲン化アルキルCxHyXz、ここでx=1~20、y=0~42、z=1~42、X=F、Cl、Br、またはI;任意の芳香族基(例えば、フェニル、アルキルフェニル、アルコキシフェニル、ピリジン、ナフタレン);環内に少なくとも1つの窒素が含まれる環状複合体(例えば、2-ヘキサヒドロピリミジン-2-イリデンヘキサヒドロピリミジン、オクタヒドロピラジノ[2,3-b]ピラジン、ピラジノ[2,3-b]ピラジン、キノキサリノ[2,3-b]キノキサリン);任意の硫黄含有基(例えば、スルホキシド、チオール、アルキルスルフィド);任意の窒素含有基(ニトロキシド、アミン);任意のリン含有基(リン酸);任意のホウ素含有基(例えば、ホウ酸);任意の有機酸(例えば、酢酸、プロパン酸)、およびエステルまたはそのアミド誘導体;α、β、γ、およびより大きな誘導体を含む任意のアミノ酸(例えば、グリシン、システイン、プロリン、グルタミン酸、アルギニン、セリン、ヒスチジン、5-アンモニウム吉草酸);任意のケイ素含有基(例えば、シロキサン);および任意のアルコキシまたは反応基、-OCxHy、ここでx=0~20、y=1~42;が含まれる。
【0050】
【化7】
ある態様では、Xは、1以上のハロゲン化物を含んでもよい。ある態様では、Xは、この代わりに、またはこれに加えて、第16族アニオンを含んでもよい。特定の実施形態では、第16族アニオンは、酸化物、硫化物、セレン化物、またはテルル化物であってもよい。ある態様では、Xは、この代わりに、またはこれに加えて、1以上の擬ハロゲン化物(例えば、シアン化物、シアン酸塩、イソシアン酸塩、雷酸塩、チオシアネート、イソチオシアネート、アジド、テトラカルボニルコバルト酸塩、カルバモイルジシアノメタニド、ジシアノニトロソメタニド、ジシアナミド、およびトリシアノメタニド)を含んでもよい。
【0051】
ある態様では、ペロブスカイト材料は、一般式CMX3を有してもよい。ここで、Cは、前記カチオン、第1族金属、第2族金属、および/または他のカチオンまたはカチオン様化合物の1または2以上を含み、Mは、1つ以上の金属(例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Cd、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Hg、Sn、Ge、Ga、Pb、In、Tl、Sb、Bi、Ti、Zn、Cd、Hg、およびZrを含む)を有し、Xは、1つ以上の前記アニオンを含む。
【0052】
別の実施形態では、ペロブスカイト材料は、一般式C’M2X6を有してもよい。ここで、C’は、2+の電荷を有するカチオンを有し、これは、前記カチオン、ジアンモニウムブタン、第1族金属、第第2族金属、および/または他のカチオンまたはカチオン様化合物
の1または2以上を含む。Mは、1以上の金属(例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Cd、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Hg、Sn、Ge、Ga、Pb、In、Tl、Sb、Bi、Ti、Zn、Cd、Hg、およびZrを含む)を有し、Xは、上記アニオンの1また、1または2以上を有する。
【0053】
別の実施形態では、ペロブスカイト材料は、一般式C’MX4を有してもよい。ここでC’は、2+の電荷を有するアニオンを含み、これは、前述のカチオン、ジアンモニウムブタン、第1族金属、第第2族金属、および/または他のカチオンまたはカチオン様化合物の1または2以上を有する。Mは、1つ以上の金属(例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Cd、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Hg、Sn、Ge、Ga、Pb、In、Tl、Sb、Bi、Ti、Zn、Cd、Hg、およびZrを含む)を有し、Xは、前述のアニオンの1または2以上を有する。そのような実施形態では、ペロブスカイト材料は、2D構造を有してもよい。
【0054】
一実施態様では、ペロブスカイト材料は、一般式C3M2X9を有してもよい、ここで、Cは、前述のカチオン、第1族金属、第2族金属、および/または他のカチオンもしくはカチオン様化合物の1または2以上を有する。Mは、1つ以上の金属(例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Cd、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Hg、Sn、Ge、Ga、Pb、In、Tl、Sb、Bi、Ti、Zn、Cd、Hg、およびZrを含む)を有し、Xは、前述のアニオンの1または2以上を有する。
【0055】
一実施態様では、ペロブスカイト材料は、一般式CM2X7を有してもよい。ここで、Cは、前述のカチオン、第1族金属、第2族金属、および/または他のカチオンまたはカチオン様化合物の1または2以上を有し、Mは、1つ以上の金属(例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Cd、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Hg、Sn、Ge、Ga、Pb、In、Tl、Sb、Bi、Ti、Zn、Cd、Hg、およびZrを含む)を有し、Xは、前述のアニオンの1または2以上を有する。
【0056】
一実施態様では、ペロブスカイト材料は、一般式C2MX4を有してもよい。ここで、Cは、前述のカチオン、第1族金属、第2族金属、および/または他のカチオンもしくはカチオン様化合物の1または2以上を有する。Mは、1つ以上の金属(例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Cd、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Hg、Sn、Ge、Ga、Pb、In、Tl、Sb、Bi、Ti、Zn、Cd、Hg、およびZrを含む)を有し、Xは、前述のアニオンの1または2以上を有する。
【0057】
また、ペロブスカイト材料は、混合イオン式を有してもよい。ここで、C、MまたはXは、2つ以上の化学種を含み、例えば、Cs0.1FA0.9Pb(I0.9Cl0.1)3;Rb0.1FA0.9Pb(I0.9Cl0.1)3、Cs0.1FA0.9PbI3;FAPb0.5Sn0.5I3;FA0.83Cs0.17Pb(I0.6Br0.4)3;FA0.83Cs0.12Rb0.05Pb(I0.6Br0.4)3およびFA0.85MA0.15Pb(I0.85Br0.15)3を有する。
【0058】
(複合ペロブスカイト材料装置設計)
ある実施形態では、本開示は、1つ以上のペロブスカイト材料を含む、PVおよび他の同様の装置(例えば、バッテリ、ハイブリッドPV電池、FET、LED、非線形光学系(NLO)、導波路など)の複合設計を提供してもよい。例えば、1つ以上のペロブスカイト材料は、ある実施形態の第1および第2の活性材料(例えば、
図3の活性材料3906aおよび3908a)の一方または両方として機能してもよい。より一般的には、本開示のある実施形態は、1つ以上のペロブスカイト材料を含む活性層を有するPVまたは他の装置を提供する。そのような実施形態では、ペロブスカイト材料(すなわち、任意の1つ以上のペロブスカイト材料を含む材料)は、各種アーキテクチャの活性層に使用されてもよい。さらに、ペロブスカイト材料は、活性層の任意の1つ以上の部材(例えば、電荷輸送材料、メソポーラス材料、光活性材料、および/または界面材料、これらの各々は、以下に詳細に記載される)の機能を果たしてもよい。ある実施形態では、同じペロブスカイト材料が、複数のそのような機能を有してもよい。ただし、他の実施形態では、複数のペロブスカイト材料が装置に含まれ、各ペロブスカイト材料は、1つ以上のそのような機能を果たしてもよい。特定の実施形態では、ペロブスカイト材料がどのような役割を果たす場合でも、これは、各種状態で装置中に調製され、および/または存在してもよい。例えば、ある実施形態では、これは、実質的に固体であってもよい。装置内(例えば、メソポーラス層、界面層、電荷輸送層、光活性層、もしくは他の層のような装置の別の部材上、および/または電極上)に、溶液または懸濁液がコーティングされ、またはこれは、別の方法で堆積されてもよい。ある実施形態では、ペロブスカイト材料は、(例えば、薄膜固体物としての蒸着により)装置の別の部材の表面上に、in-situ形成されてもよい。ペロブスカイト材料を含む層を形成する任意の他の適切な手段が使用されてもよい。
【0059】
一般に、ペロブスカイト材料装置は、第1の電極と、第2の電極と、ペロブスカイト材料を含む活性層と、を有してもよく、活性層は、第1の電極と第2の電極との間に少なくとも部分的に配置される。一部の実施形態では、第1の電極は、アノードおよびカソードの一方であってもよく、第2の電極はアノードおよびカソードの他方であってもよい。特定の実施形態において、活性層は、電荷輸送材料、液体電解質、メソポーラス材料、光活性材料(例えば、色素、シリコン、テルル化カドミウム、硫化カドミウム、セレン化カドミウム、銅インジウムガリウムセレン化物、ヒ素化ガリウム、リン化ゲルマニウムインジウム、半導体ポリマー、その他の光活性材料)、および界面材料の1つ以上を含む、任意の1つ以上の活性層部材を有してもよい。これらの活性層成分の任意の1または2以上は、1つ以上のペロブスカイト材料を有してもよい。ある実施形態では、活性層部材の一部または全部は、全体的にまたは部分的に、サブ層として配置されてもよい。例えば、活性層は、界面材料を含む界面層、メソポーラス材料を含むメソポーラス層、および電荷輸送材料を含む電荷輸送層の1つ以上を有してもよい。さらに、界面層は、ある実施形態では、活性層の任意の2つ以上の他の層の間、および/または活性層部材と電極との間に含まれてもよい。本願における層という表現は、最終配置(例えば、装置内で別々に定義可能な、各材料の実質的に別個の部分)を含んでもよく、および/または層という表現は、各層における材料の後続の相互混合の可能性がある場合でも、装置の構成中の配置を意味してもよい。ある実施形態では、層は、不連続であって、実質的に連続した材料を有してもよい(例えば、層は、
図2に様式的に示されているようなものであってもよい)。
【0060】
ある実施形態では、ペロブスカイト材料装置は、電界効果トランジスタ(FET)であってもよい。FETペロブスカイト材料装置は、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極、誘電体層、および半導体層を有してもよい。ある実施形態では、FETペロブスカイト材料装置の半導体層は、ペロブスカイト材料であってもよい。
【0061】
ある実施形態によるペロブスカイト材料装置は、必要な場合、1つ以上の基板を含んでもよい。一部の実施形態では、第1および第2の電極の一方または両方が基板上に被覆され、または電極が実質的に基板と活性層との間に配置されるように、その他の方法で基板上に配置されてもよい。各種実施形態において、装置の組成物(例えば、基板、電極、活性層および/または活性層成分)の材料は、全体的にまたは部分的に、剛性または可撓性のいずれかであってもよい。ある実施形態では、電極は、基板として作用してもよく、これにより、別の基板の必要性が排除される。
【0062】
さらに、特定の実施形態によるペロブスカイト材料装置は、必要な場合、反射防止層または反射防止コーティング(ARC)を含んでもよい。また、ペロブスカイト材料装置は、本開示のある実施形態に関して上述した添加物の任意の1または2以上のような、任意の1つ以上の添加物を含んでもよい。
【0063】
ペロブスカイト材料装置に含まれ得る各種材料の一部の記載は、
図2を参照して部分的になされている。
図2は、ある実施形態によるペロブスカイト材料装置3900の様式化された図である。装置3900の各種部材は、連続する材料を有する別個の層として示されているが、
図2は、様式化された図であり、従って、それによる実施形態は、そのような別個の層、および/または前述した「層」の使用と一致する、実質的に混合された非連続層を含んでもよいことが理解される。装置3900は、第1および第2の基板3901、3913を有する。第1の基板3901の内表面上には、第1の電極3902が配置され、第2の基板3913の内面表上には、第2の電極3912が配置される。活性層3950は、2つの電極3902および3912の間に挟まれる。活性層3950は、メソポーラス層3904、第1および第2の光活性材料3906、3908、電荷輸送層3910、およびある界面層を有する。さらに、
図2には、実施形態による例示的な装置3900が示されており、活性層3950のサブ層は、界面層により分離され、さらに、界面層は、各電極3902および3912上に配置される。特に、第2、第3、および第4の界面層3905、3907、および3909は、それぞれ、メソポーラス層3904、第1の光活性材料3906、第2の光活性材料3908、および電荷輸送層3910の間に配置される。第1および第5の界面層3903および3911は、それぞれ、(i)第1の電極3902とメソポーラス層3904の間、(ii)電荷輸送層3910と第2の電極3912の間に、配置される。従って、
図2に示す一例の装置のアーキテクチャは、基板-電極-活性層-電極-基板として特徴付けられてもよい。活性層3950のアーキテクチャは、界面層-メソポーラス層-界面層-光活性材料-界面層-光活性材料-界面層-電荷輸送層-界面層として特徴付けられてもよい。前述のように、ある実施形態では、界面層は存在しなくてもよく、あるいは、1または2以上の界面層は、全てではないが一部は、活性層の部材および/または装置の部材の間にのみ含まれてもよい。
【0064】
第1および第2の基板3901、3913の一方または両方のような基板は、可撓性であっても、剛性であってもよい。2つの基板が含まれる場合、少なくとも1つは、電磁(EM)放射線(例えば、紫外、可視光、または赤外放射線)に対して透明または半透明である必要がある。必ずしも必要ではないが、1つの基板が含まれる場合、装置の一部において、EM放射を活性層3950に接触することが可能となる限り、基板は、同様に透明または半透明であってもよい。好適な基板材料には、ガラス、サファイア、酸化マグネシウム(MgO)、マイカ、ポリマー(例えば、PEN、PET、PEG、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、PMMA、ポリアミド、ビニル、カプトン)、セラミックス、カーボン、複合材料(例えば、ファイバーガラス、ケブラー、炭素繊維)、織物(例えば、綿、ナイロン、絹、羊毛)、木材、乾燥壁、タイル(例えば、セラミック、複合材料、または粘土)、金属、鋼、銀、金、アルミニウム、マグネシウム、コンクリート、およびこれらの組み合わせの1つ以上が含まれる。
【0065】
前述のように、電極(例えば、
図2の電極3902および3912の一方)は、アノードまたはカソードのいずれかであってもよい。一部の実施形態では、一方の電極は、カソードとして機能し、他方の電極は、アノードとして機能してもよい。電極3902および3912の一方または両方は、リード、ケーブル、ワイヤ、または装置3900へのおよび/もしくは装置3900からの電荷輸送を可能にする他の手段に結合されてもよい。電極は、任意の導電性材料で構成されてもよく、少なくとも1つの電極は、EM放射線に対して透明または半透明である必要があり、および/またはEM放射線が活性層3950の少なくとも一部と接触することが可能となるように配置される。好適な電極材料には、インジウムスズ酸化物またはスズドープインジウム酸化物(ITO);フッ素ドープスズ酸化物(FTO);カドミウム酸化物(CdO);亜鉛インジウムスズ酸化物(ZITO);アルミニウム亜鉛酸化物(AZO);アルミニウム(Al);金(Au);銀(Ag);カルシウム(Ca);クロム(Cr);銅(Cu);マグネシウム(Mg);チタン(Ti);鋼;炭素(およびそれらの同素体);ドープ化炭素(例えば、窒素ドープ);コア-シェル構造(例えば、シリコン-カーボンコア-シェル構造)のナノ粒子;およびそれらの組み合わせの任意の1つ以上を含んでもよい。
【0066】
メソポーラス材料(例えば、
図2のメソポーラス層3904に含まれる材料)は、任意のポア含有材料を含んでもよい。ある実施形態では、ポアは、約1から約100nmの範囲の直径を有してもよく、他の実施態様では、ポア直径は、約2から約50nmの範囲であってもよい。好適なメソポーラス材料は、本願の他の箇所に記載される任意の界面材料および/またはメソポーラス材料;アルミニウム(Al);ビスマス(Bi);セリウム(Ce);ハフニウム(Hf);インジウム(In);モリブデン(Mo);ニオブ(Nb);ニッケル(Ni);シリコン(Si);チタン(Ti);バナジウム(V);亜鉛(Zn);ジルコニウム(Zr);上記金属の任意の1つ以上の酸化物(例えば、アルミナ、セリア、チタニア、酸化亜鉛、ジルコニアなど);上記金属の任意の1つ以上の硫化物;上記金属の任意の1つ以上の窒化物;ならびにこれらの任意の組み合わせの1つ以上を含む。ある実施形態では、IFLとして本願に記載の任意の材料は、メソポーラス材料であってもよい。他の実施態様では、
図2に示す装置は、メソポーラス材料層を含まず、メソポーラスではない薄膜または「コンパクトな」IFLのみを含んでもよい。
【0067】
光活性材料(例えば、
図2の第1または第2の光活性材料3906、3908)は、シリコン(例えば、多結晶シリコン、単結晶シリコン、またはアモルファスシリコン)、テルル化カドミウム、硫化カドミウム、セレン化カドミウム、銅インジウムガリウムセレン化物、銅インジウムセレン化物、銅亜鉛スズ硫化物、ヒ素化ガリウム、ゲルマニウム、ゲルマニウムインジウムリン化物、インジウムリン化物、1つ以上の半導体ポリマー(例えば、ポリチオフェン(例えば、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)およびその誘導体、またはP3HT);ポリヘプタデカニルカルバゾールジチエルベンゾチアジアゾールおよびその誘導体(例えば、PCDTBT)のような、カルボゾール系コポリマー;ポリシクロペンタジチオフェン-ベンゾチアジアゾールおよびその誘導体(例えば、PCPDT)、ポリベンゾジチオフェニル-チエノチオフェンジイルおよびその誘導体(例えば、PTB6、PTB7、PTB7-th、PCE-10)のような、他のコポリマー;ポリ(トリアリールアミン)化合物およびその誘導体(例えばPTAA);ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体(例えば、MDMO-PPV、MEH-PPV)、およびそれらの組み合わせ;の1つ以上のような、任意の光活性化合物を含んでもよい。
【0068】
特定の実施形態では、光活性材料は、この代わりに、またはこれに加えて、色素(例えば、N719、N3、他のルテニウム系色素)を含んでもよい。ある態様では、(何らかの組成の)色素は、別の層(例えば、メソポーラス層および/または界面層)上にコーティングされてもよい。一部の実施形態では、光活性材料は、1つ以上のペロブスカイト材料を含んでもよい。ペロブスカイト材料含有光活性物質は、固体形態であってもよく、または一部の実施形態では、ペロブスカイト材料を含む懸濁液または溶液を有する色素の形態であってもよい。そのような溶液または懸濁液は、他の色素と同様の方法で他の装置部材上にコーティングされてもよい。ある実施形態では、固体ペロブスカイト含有材料は、任意の適切な手段(例えば、気相成膜、溶液堆積、固体材料の直接配置)により、成膜されてもよい。各種実施形態による装置は、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上の光活性化合物(例えば、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上のペロブスカイト材料、色素、またはそれらの組み合わせ)を含んでもよい。複数の色素または他の光活性材料を含む特定の実施形態では、2つ以上の色素または他の光活性材料の各々は、1つ以上の界面層により分離されてもよい。ある実施形態では、複数の色素および/または光活性化合物は、少なくとも部分的に混合されてもよい。
【0069】
電荷輸送材料(例えば、
図2の電荷輸送層3910の電荷輸送材料)は、固体状態の電荷輸送材料(すなわち、用語的にラベル化された固体電解質)を含んでもよく、または液体電解質および/またはイオン液体を含んでもよい。液体電解質、イオン液体、および固体電荷輸送材料は、いずれも電荷輸送材料と称され得る。本願で使用される「電荷輸送材料」とは、電荷キャリアを収集し、および/または電荷キャリアを輸送できる、任意の材料、固体、液体、またはその他を表す。例えば、ある実施形態によるPV装置では、電荷輸送材料は、電荷キャリアを電極に輸送できてもよい。電荷キャリアは、正孔(その輸送により、電荷輸送材料は、「正孔輸送材料」と適切にラベル付けされる)および電子を含んでもよい。電荷輸送材料の配置に依存して、PVまたは他の装置におけるカソードまたはアノードのいずれかに関して、正孔はアノードに向かって、電子はカソードに向かって、輸送される。ある実施形態による電荷輸送材料の適切な例は、ペロブスカイト材料;I
-/I
3
-;Co錯体;ポリチオフェン(例えば、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)およびその誘導体、またはP3HT);ポリヘプタデカニルカルバゾールジチエニルベンゾチアジアゾール、およびおよびその誘導体(例えば、PCDTBT)のような、カルバゾール系コポリマー;ポリシクロペンタジチオフェン-ベンゾチアジアゾールおよびその誘導体(例えば、PCTBPDT)、ポリベンゾジチオフェニル-チエノチオフェンジイルおよびその誘導体(例えば、PTB6、PTB7、PTB7-th、PCE-10)のような、他のコポリマー;ポリ(トリアリールアミン)化合物およびその誘導体(例えば、PTAA);スピロ-OMeTAD;ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体(例えば、MDMO-PPV、MEH-PPV);フラーレンおよび/またはフラーレン誘導体(例えば、C60、PCBM);カーボンナノチューブ;グラファイト;グラフェン;カーボンブラック;アモルファス炭素;グラッシーカーボン;炭素繊維;およびそれらの組み合わせ;の1または2以上を有してもよい。特定の実施形態では、電荷輸送材料は、電荷担体(電子または正孔)を収集することができ、および/または電荷担体を輸送することができる、固体または液体の任意の材料を含んでもよい。従って、ある実施形態の電荷輸送材料は、n型またはp型活性、両極性、および/または真性半導体材料であってもよい。電荷輸送材料は、装置の電極の1つに近接して配置されてもよい。ある実施形態では、これは、電極に隣接して配置されてもよいが、他の実施形態では、電荷輸送材料と電極の間に界面層が配置されてもよい(例えば、
図2に示されている第5の界面層3911)。特定の実施形態では、電荷輸送材料の種類は、それが近接する電極に基づいて選択されてもよい。例えば、電荷輸送材料が正孔を収集および/または輸送する場合、アノードに正孔を輸送するよう、アノードに近接されてもよい。しかしながら、電荷輸送材料は、代わりにカソードに近接して配置され、電子をカソードに輸送するように選択または構成されてもよい。
【0070】
前述のように、各種実施形態による装置は、必要な場合、任意の他の2つの層および/または材料の間に界面層を含んでもよい。ただし、ある実施形態による装置は、任意の界面層を含む必要はない。従って、例えば、ペロブスカイト材料装置は、0、1、2、3、4、5、またはそれ以上の界面層を含んでもよい(例えば、
図2の一例の装置は、5つの界面層3903、3905、3907、3909、および3911を含む)。界面層は、前述の実施形態による薄膜コーティング界面層を含んでもよい(例えば、アルミナおよび/または他の金属酸化物粒子、および/または酸化チタン/金属酸化物バイレイヤ、および/または本願の他の箇所に記載の薄膜コーティング界面層による他の化合物を含む)。ある実施形態による界面層は、2つの層または材料の間の電荷輸送および/または収集を強化する任意の適切な材料を含んでもよい。これは、いったん電荷が界面層に隣接する材料の1つから遠ざかるように輸送された際に、電荷再結合の可能性を防止しまたは低減することを支援する。好適な界面材料は、他の箇所に記載の任意のメソポーラス材料および/または界面材料;Ag、Al、Au、B、Bi、Ca、Cd、Ce、Co、Cu、Fe、Ga、Ge、H、In、Mg、Mn、Mo、Nb、Ni、Pt、Sb、Sc、Si、Sn、Ta、Ti、V、W、Y、Zn、Zr、前記金属の任意の炭化物(例えばSiC、Fe
3C、WC);前記金属の任意のシリサイド(例えばMg
2Si、SrSi
2、Sn
2Si);前記金属の任意の酸化物(例えばアルミナ、シリカ、チタニア、SnO
2、ZnO);前記金属の任意の硫化物(例えば、CdS、MoS
2、SnS
2);前記金属の任意の窒化物(例えば、Mg
3N
2、TiN、BN、Si
3N
4);前記金属の任意のセレン化物(例えば、CdSe、FeSe
2、ZnSe)、前記金属の任意のテルル化物(例えば、CdTe、TiTe
2、ZnTe)、前記金属の任意のリン化物(例えば、InP、GaP)、前記金属の任意のヒ素化物(例えば、CoAs
3、GaAs、InGaAs、NiAs)、前記金属の任意のアンチモン化物(例えば、AlSb、GaSb、InSb)、前記金属の任意のハロゲン化物(例えば、CuCl、CuI、BiI
3);前記金属の任意の擬ハロゲン化物(例えば、CuSCN、AuCN
2);前記金属の任意の炭酸塩(例えば、CaCO
3、Ce
2(CO
3)
3);官能化または非官能化アルキルシリル基;グラファイト;グラフェン;フラーレン;カーボンナノチューブ;他の箇所に記載の任意のメソポーラス材料および/または界面材料;ならびにそれらの組み合わせ(ある実施形態では、バイレイヤ、トリレイヤ、または組み合わせ材料のマルチレイヤを含む);の任意の1つ以上を含んでもよい。ある実施例では、界面層は、ペロブスカイト材料を含んでもよい。さらに、界面層は、本願に記載の任意の界面材料(例えば、YドープZnO、Nドープ単一壁カーボンナノチューブ)のドープされた実施形態を含んでもよい。また、界面層は、前述の材料の3つを有する化合物(例えば、CuTiO
3、Zn
2SnO
4)、または前述の材料の4つを有する化合物(例えば、CoNiZnO)を含んでもよい。
【0071】
一例として、
図3には、
図2に示すペロブスカイト材料装置3900と同様の構造を有するペロブスカイト材料装置3900aの実施形態を示す。
図3は、ある実施形態によるペロブスカイト材料装置3900aの様式化された図である。装置3900aの各種部材は、連続する材料を含む別個の層として図示されているが、
図3は、様式化された図であることが理解される必要がある。従って、それによる実施形態は、前述した「層」の使用と一致する、そのような別個の層、および/または実質的に混合された不連続層を含んでもよい。
図3は、活性層3906aおよび3908aを含む。ある実施形態では、活性層3906aおよび3908aの一方または両方は、
図2に関して前述した任意のペロブスカイト光活性材料を含んでもよい。他の実施形態では、活性層3906aおよび3908aの一方または両方は、本願に記載される任意の光活性材料、例えば、薄膜半導体(例えば、CdTe、CZTS、CIGS)、光活性ポリマー、色素増感光活性材料、フラーレン、小分子光活性材料、ならびに結晶質および多結晶質半導体材料(例えば、シリコン、GaAs、InP、Ge)を含んでもよい。さらに他の実施形態では、活性層3906aおよび3908aの一方または両方は、発光ダイオード(LED)、電界効果トランジスタ(FET)、薄膜電池層、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。一実施形態において、活性層3906aおよび3908aの一方は、光活性材料を有し、他方は、発光ダイオード(LED)、電界効果トランジスタ(FET)、薄膜電池層、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。例えば、活性層3908aは、ペロブスカイト材料光活性層を有し、活性層3906bは、電界効果トランジスタ層を有してもよい。
図3に示される他の層、例えば層3901a、3902a、3903a、3904a、3905a、3907a(すなわち、再結合層)、3909a、3910a、3911a、3912a、および3913aは、
図2に関して記載されたような、そのような対応する層に類似していてもよい。
【0072】
また、ある実施形態では、ペロブスカイト材料は、3つ以上の活性層を有してもよい。一例として、
図4には、
図2に示すペロブスカイト材料装置3900と同様の構造を有するペロブスカイト材料装置3900bの実施形態を示す。
図3は、ある実施形態によるペロブスカイト材料装置3900bの様式化された図である。装置3900bの各種部材は、隣接する材料を含む別個の層として図示されているが、
図4は、様式化された図であることに留意する必要がある。従って、それによる実施形態は、前述の「層」の使用と一致する、そのような別個の層、および/または実質的に混合された非隣接層を含んでもよい。
図4は、活性層3904b、3906b、および3908bを含む。ある実施形態では、活性層3904b、3906b、および3908bの1つ以上は、
図2に関して前述した任意のペロブスカイト光活性材料を含んでもよい。他の実施形態では、活性層3904b、3906b、および3908bの1つ以上は、本願に記載の任意の光活性材料、例えば、薄膜半導体(例えば、CdTe、CZTS、CIGS)、光活性ポリマー、色素増感光活性材料、フラーレン、小分子光活性材料、ならびに結晶質および多結晶半導体材料(例えば、シリコン、GaAs、InP、Ge)を含んでもよい。さらに他の実施形態では、活性層3904b、3906b、および3908bのうちの1つ以上は、発光ダイオード(LED)、電界効果トランジスタ(FET)、薄膜電池層、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。一実施形態において、活性層3904b、3906b、および3908bの活性層の1つ以上は、光活性材料を有し、他方は、発光ダイオード(LED)、電界効果トランジスタ(FET)、薄膜電池層、またはそれらの組み合わせを有してもよい。例えば、活性層3908aおよび3906bはいずれも、ペロブスカイト材料光活性層を含んでもよく、活性層3904bは、電界効果トランジスタ層を含んでもよい。
図3に示された他の層、例えば、層3901b、3902b、3903b、3904b、3905b(すなわち、再結合層)、3907b(すなわち、再結合層)、3909b、3910b、3911b、3912b、および3913bは、
図2に関して記載された、そのような対応する層と類似していてもよい。
【0073】
一例の装置のさらに様式化された描写に関して、ペロブスカイト装置の別のより具体的な例示的実施形態が説明される。これらの描写の様式化された性質は、同様に、ある実施形態では、
図1乃至4の任意の1または2以上により構成される装置の種類を限定することは意図しない。すなわち、
図1乃至4に示されているアーキテクチャは、任意の適切な手段(本願の他の箇所で明示的に議論されている手段、および本開示の利益により当業者に明らかとなる他の適切な手段、の両方を含む)に従って、本開示の他の実施形態のBHJ、電池、FET、ハイブリッドPV電池、直列マルチセルPV、並列マルチセルPV、および他の同様の装置を提供するように適合されてもよい。
【0074】
(ペロブスカイト材料活性層の形成)
前述のように、ある実施形態では、活性層中のペロブスカイト材料は、一般式CMX3-yX’y(0≧y≧3)を有してもよい。ここで、Cは、1以上のカチオン(例えば、アミン、アンモニウム、第1族金属、第2族金属、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、エテンテトラミン、ホスホニウム、イミダゾリウム、および/または他のカチオンまたはカチオン様化合物)を含み、Mは、1以上の金属(例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Cd、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Hg、Sn、Ge、Ga、Pb、In、Tl、Sb、Bi、Ti、Zn、Cd、Hg、およびZr)を含み、XおよびX’は、1以上のアニオンを含む。一実施態様では、ペロブスカイト材料は、CPbI3-yClyを含んでもよい。ある実施形態では、ペロブスカイト材料は、2つ以上のアニオンまたは3つ以上のアニオンを有してもよい。特定の実施形態では、ペロブスカイト材料は、2以上の金属、または3以上の金属を含んでもよい。ある実施形態では、ペロブスカイト材料は、2つ以上のカチオンまたは3つ以上のカチオンを含んでもよい。
【0075】
ある実施形態では、活性層中のペロブスカイト材料は、一般式C1-xC’xMX3(0≧x≧1)を有してもよい。ここで、CおよびC’は、1または2以上のカチオン(例えば、アミン、アンモニウム、第1族金属、第2族金属、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、エテンテトラミン、ホスホニウム、イミダゾリウム、および/または他のカチオンンまたはカチオン様化合物)を含み、Mは、1または2以上の金属(例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Cd、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Au、Hg、Sn、Ge、Ga、Pb、In、Tl、Sb、Bi、Ti、Zn、Cd、Hg、およびZr)を含み、Xは、1以上のアニオンを含む。
【0076】
ある実施形態では、活性層中のペロブスカイト材料は、一般式CM1-zM’zX3(0≧z≧1)を有してもよい。ここで、Cは、1または2以上のカチオン(例えば、アミン、アンモニウム、第1族金属、第2族金属、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、エテンテトラミン、ホスホニウム、イミダゾリウム、および/または他のカチオンまたはカチオン様化合物)を含み、MおよびM’は、1または2以上の金属(例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Cd、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Au、Hg、Sn、Ge、Ga、Pb、In、Tl、Sb、Bi、Ti、Zn、Cd、Hg、およびZr)を含み、Xは、1または2以上のアニオンを含む。
【0077】
ある実施形態では、活性層中のペロブスカイト材料は、一般式C1-xC’xM1-zM’zX3-yX’y(0≧x≧1;0≧y≧3;0≧z≧1)を有してもよい。ここで、CおよびC’は、1または2以上のカチオン(例えば、アミン、アンモニウム、第1族金属、第2族金属、ホルムアミジニウム、グアニジニウム、エテンテトラミン、ホスホニウム、イミダゾリウム、および/または他のカチオンもしくはカチオン様化合物)を含み、MおよびM’は、1または2以上の金属(例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Cd、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Hg、Sn、Ge、Ga、Pb、In、Tl、Sb、Bi、Ti、Zn、Cd、Hg、およびZr)を含み、XおよびX’は、1または2以上のアニオンを含む。特定の実施形態では、ペロブスカイト材料は、例えば、ブレードコーティング法、ドロップキャスティング法、スピンキャスティング法、スロットダイ印刷法、スクリーン印刷法、またはインクジェット印刷法により、以下に記載される工程を用いて、PV装置内の活性層として基板層上に成膜されてもよい。
【0078】
まず、鉛ハロゲン化物前駆体インクが形成される。ある量のハロゲン化鉛は、制御された雰囲気環境において、清潔で乾燥した容器内に集められてもよい(例えば、グローブ含有ポート孔を備えた制御雰囲気ボックスでは、空気のない環境での材料操作ができる)。好適なハロゲン化鉛には、これに限られるものではないが、ヨウ化鉛(II)、臭化鉛(II)、塩化鉛(II)、フッ化鉛(II)が含まれる。ハロゲン化鉛は、ハロゲン化鉛の単一種を含んでもよく、またはハロゲン化鉛混合物を正確な比率で含んでもよい。特定の実施形態では、ハロゲン化鉛混合物は、ヨウ化物、臭化物、塩化物、またはフッ化物の0.001~100モル%の任意の二元、三元、または四元比を有してもよい。一実施態様では、ハロゲン化鉛混合物は、約10:90mol:molの比で、塩化鉛(II)およびヨウ化鉛(II)を含んでもよい。他の実施態様では、ハロゲン化鉛混合物は、約5:95、約7.5:92.5、または約15:85mol対molの比で、塩化鉛(II)およびヨウ化鉛(II)を含んでもよい。
【0079】
あるいは、ハロゲン化鉛塩と共に、またはその代わりに、他の鉛塩前駆体を用い、前駆体インクを形成してもよい。好適な前駆体塩は、鉛(II)または鉛(IV)と、以下のアニオンとの任意の組み合わせを有してもよい:硝酸塩、亜硝酸塩、カルボキシレート、酢酸塩、アセトニルアセトネート、ギ酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、リン酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、テトラ(ペルフルオロフェニル)ホウ酸塩、ヒドリド、酸化物、過酸化物、水酸化物、窒化物、ヒ酸塩、亜ヒ酸塩、過塩素酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、クロム酸塩、次クロム酸塩、ヨウ素酸塩、臭素酸塩、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、シアン化物、シアン酸塩、イソシアン酸塩、雷酸塩、チオシアネート、イソチオシアネート、アジド、テトラカルボニルコバルト酸塩、カルバモイルジシアノメタニド、ジシアノニトロソメタニド、ジシアナミド、トリシアノメタニド、アミド、および過マンガン酸塩。
【0080】
前駆体インクは、さらに、前記アニオンの塩として、鉛(II)塩または鉛(IV)塩を、以下の金属イオンBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Cd、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Hg、Sn、Ge、Ga、Pb、Pb、In、Tl、Sb、Bi、Ti、Zn、Cd、Hg、およびZrに対して、モル比で0~100%で有してもよい。
【0081】
次に、溶媒が容器に添加され、鉛固体が溶解され、ハロゲン化鉛前駆体インクが形成されてもよい。好適な溶媒には、これに限られるものではないが、乾燥N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、アルキル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジアルキルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ホルムアミド、tert-ブチルピリジン、ピリジン、アルキルピリジン、ピロリジン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、およびこれらの組み合わせが含まれる。一実施態様では、鉛固体は、乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解される。鉛固体は、約20~150℃の間の温度で溶解されてもよく、一実施形態では、鉛固体は、約85℃で溶解される。ある実施形態では、鉛固体は、溶液を形成するために必要な限り、溶解されてもよく、これは、最大約72時間にわたって実施されてもよい。得られた溶液は、ハロゲン化鉛前駆体インクのベースを形成する。ある実施形態では、ハロゲン化鉛前駆体インクは、約0.001Mから約10Mの間のハロゲン化鉛濃度を有してもよい。一実施態様では、ハロゲン化鉛前駆体インクは、約1Mのハロゲン化鉛濃度を有する。
【0082】
必要な場合、特定の添加剤をハロゲン化鉛前駆体インクに添加して、最終的なペロブスカイトの結晶性および安定性に影響を及ぼしてもよい。ある実施形態では、ハロゲン化鉛前駆体インクは、さらに、アミノ酸(例えば、5-アミノ吉草酸、ヒスチジン、グリシン、リジン)、アミノ酸ハロゲン化水素(例えば、5-アミノ吉草酸塩酸塩)、IFL表面改質(SAM)剤(例えば前述のもの)、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。ハロゲン化鉛前駆体インクに適したアミノ酸には、これに限られるものではないが、α-アミノ酸、β-アミノ酸、γ-アミノ酸、δ-アミノ酸、およびそれらの任意の組合せが含まれ得る。一実施態様では、ハロゲン化鉛前駆体インクに塩化ホルムアミジニウムが添加されてもよい。他の実施形態では、前述の任意のカチオンのハロゲン化物が使用されてもよい。ある実施形態では、添加剤の組合せは、例えば、塩化ホルムアミジニウムおよび5-アミノ吉草酸塩酸塩の組合せを含む、ハロゲン化鉛前駆体インクに添加されてもよい。
【0083】
説明のためであって、任意の特定の機構の理論に拘束されるものではないが、塩化ホルムアミジニウムおよび5-アミノ吉草酸は、それらがペロブスカイト装置の1段階製造において添加剤またはカウンターカチオンとして使用される場合、ペロブスカイトPV装置の安定性を改善することが見出されている。また、PbCl2の形態の塩化物は、2段階法において、PbI2前駆体溶液に添加されると、ペロブスカイトPV装置の特性が改善されることが認められている。ハロゲン化鉛前駆体溶液(例えば、PbI2)に、塩化ホルムアミジニウムおよび/または5-アミノ吉草酸塩酸塩を直接添加することにより、2段階のペロブスカイト薄膜成膜プロセスが改善され、単一材料の有する利点を両方で利用し得ることが認められている。同様に、塩化ホルムアミジニウム、5-アミノ吉草酸塩酸塩、またはPbCl2をハロゲン化鉛前駆体溶液に添加することにより、他のペロブスカイト成膜プロセスが改善されてもよい。
【0084】
塩化ホルムアミジニウムおよび/または5-アミノ吉草酸塩酸塩を含む添加剤は、得られるペロブスカイト材料の所望の特性に応じて、各種濃度でハロゲン化鉛前駆体インクに添加されてもよい。一実施態様では、添加剤は、約1nM~約1Mの濃度で添加されてもよい。別の実施態様では、添加剤は、約1μM~約1Mの濃度で添加されてもよい。別の実施態様では、添加剤は、約1μM~約1mMの濃度で添加されてもよい。
【0085】
必要な場合、特定の実施形態では、ハロゲン化鉛前駆体インクに水が添加されてもよい。説明用であり、特定の理論または機構に限定されるものではないが、水の存在は、ペロブスカイト薄膜結晶成長に影響を及ぼす。通常の環境下では、水は、空気から蒸気として吸収され得る。しかしながら、特定の濃度で、ハロゲン化鉛前駆体インクに水を直接添加することにより、ペロブスカイトPVの結晶化度を制御することができる。好適な水には、蒸留水、脱イオン水、または実質的に汚染物質(鉱物を含む)を含まない他の水源が含まれる。光I-V掃引に基づき、ペロブスカイトPV光-電力変換効率は、水の添加により、完全に乾燥した装置と比較して、ほぼ3倍になることが認められている。
【0086】
水は、得られるペロブスカイト材料の所望の特性に応じて、各種濃度でハロゲン化鉛前駆体インクに添加されてもよい。一実施態様では、水は、約1nL/mL~約1mL/mLの濃度で添加されてもよい。別の実施態様では、水は、約1μL/mL~約0.1mL/mLの濃度で添加されてもよい。別の実施態様では、水は、約1μL/mL~約20μL/mLの濃度で添加されてもよい。
【0087】
次に、ハロゲン化鉛前駆体インクを所望の基板上に堆積してもよい。好適な基板層は、本開示の前述の任意の基板層を含んでもよい。前述のように、ハロゲン化鉛前駆体インクは、これに限られるものではないが、ドロップキャスティング法、スピンキャスティング法、スロットダイ印刷法、スクリーン印刷法、またはインクジェット印刷を含む各種手段を介して、堆積されてもよい。特定の実施形態では、ハロゲン化鉛前駆体インクは、約5秒~約600秒の期間、約500rpm~約10,000rpmの速度で基板にスピンコートされてもよい。一実施形態では、ハロゲン化鉛前駆体インクは、約3000rpmで約30秒間、基板にスピンコートされてもよい。ハロゲン化鉛前駆体インクは、約0%相対湿度から約50%相対湿度の湿度範囲において、周囲雰囲気で基板上に堆積されてもよい。その後、ハロゲン化鉛前駆体インクは、実質的に水を含まない雰囲気、すなわち、相対湿度が30%未満の雰囲気で乾燥され、薄膜が形成されてもよい。
【0088】
次に、薄膜は、約20℃~約300℃の温度で、最大約24時間、熱アニールされてもよい。一実施態様では、薄膜は、約50℃の温度で約10分間熱アニールされてもよい。次に、0.001M~10Mの間の濃度の溶媒または溶媒の混合物(例えば、DMF、イソプロパノール、メタノール、エタノール、ブタノール、クロロホルム、クロロベンゼン、ジメチルスルホキシド、水)および塩(例えば、メチルアンモニウムヨウ化物、ホルムアミジニウムヨウ化物、グアニジニウムヨウ化物、1,2,2-トリアミノビニルアンモニウムヨウ化物、5-アミノ吉草酸ヨウ化水素酸塩)を含む溶液に、前駆体膜を浸漬またはリンスする変換プロセスにより、ペロブスカイト材料活性層が完成されてもよい。また、特定の実施形態では、薄膜は、本段落の第1行目と同じ方法で熱的にポスト処理されてもよい。
【0089】
ある実施態様では、鉛塩前駆体を基板上に堆積させ、鉛塩薄膜を形成してもよい。基板は、周囲温度にほぼ等しい温度を有してもよく、または0℃~500℃の間の制御された温度を有してもよい。鉛塩前駆体は、従来から知られた各種方法により、堆積されてもよい。これには、これに限られるものではないが、スピンコーティング法、スロットダイ印刷法、インクジェット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、スパッタリング法、PE-CVD法、熱蒸着法、スプレーコーティング法が含まれる。特定の実施形態では、鉛塩前駆体の堆積は、シートツーシートまたはロールツーロールの製造方法を含んでもよい。鉛塩前駆体の堆積は、大気圧(例えば、高度および雰囲気条件に応じて約1気圧)または大気圧もしくは周囲圧力よりも低い圧力(例えば、1mTorr~500mTorr)の、各種雰囲気において実施されてもよい。堆積雰囲気は、周囲空気、制御された湿度環境(例えば、ガスの0~100g H2O/m3)、純アルゴン、純窒素、純酸素、純水素、純ヘリウム、純ネオン、純クリプトン、純CO2、または前述のガスの任意の組み合わせを含んでもよい。制御された湿度環境は、絶対湿度または%相対湿度が一定値に保持される環境、または絶対湿度または%相対湿度が所定の設定点または所定の機能に従って変化する環境を含んでもよい。特定の実施形態では、堆積は、0%以上50%以下の%相対湿度を有する制御された湿度環境において行われてもよい。他の実施形態では、堆積は、0g H2O/mガス以上、20g H2O/mガス以下のガスを含む制御された湿度環境において行われてもよい。
【0090】
鉛塩前駆体は、液体、気体、固体、または溶液、懸濁液、コロイド、フォーム、ゲル、またはエアロゾルのような、これらの状態の組み合わせであってもよい。ある実施形態では、鉛塩前駆体は、1つ以上の溶媒を含有する溶液であってもよい。例えば、鉛塩前駆体は、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、アルキル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジアルキルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ホルムアミド、tert-ブチルピリジン、ピリジン、アルキルピリジン、ピロリジン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、およびそれらの組み合わせの1つ以上を有してもよい。鉛塩前駆体は、単一の鉛塩(例えば、ヨウ化鉛(II)、チオシアン酸鉛(II))、または本願に開示の任意の組み合わせ(例えば、PbI2+PbCl2;PbI2+Pb(SCN)2)の1または2以上を含んでもよい。また鉛塩前駆体は、アミノ酸(例えば、5-アミノ吉草酸ヨウ化水素酸塩)、1,8-ジヨードオクタン、1,8-ジチオオクタン、ハロゲン化ホルムアミジニウム、酢酸、トリフルオロ酢酸、ハロゲン化メチルアンモニウム、または水のような、1つ以上の添加剤を有してもよい。ハロゲン化鉛前駆体インクは、実質的に水を含まない雰囲気、すなわち、相対湿度が30%未満の雰囲気において乾燥され、薄膜が形成されてもよい。次に、薄膜は、約20℃~約300℃の温度で、最大約24時間、熱アニールされてもよい。アニールは、周囲圧力(例えば、高度および大気条件に応じて、約1気圧)、または大気圧もしくは周囲圧力よりも低い圧力(例えば、1mTorr~500mTorr)の、各種雰囲気下で実施されてもよい。アニール雰囲気は、周囲空気、制御された湿度環境(例えば、ガスの0~100gのH2O/m3)、純アルゴン、純窒素、純酸素、純水素、純ヘリウム、純ネオン、純クリプトン、純CO2、または前述のガスの任意の組み合わせを有してもよい。制御された湿度環境は、絶対湿度または%相対湿度が一定値に保持された環境、または絶対湿度または%相対湿度が所定の設定点または所定の機能に従って変化する環境を含んでもよい。特定の実施形態では、アニールは、0%以上50%以下の%相対湿度を有する制御された湿度環境において行われてもよい。他の実施形態では、熱処理は、0g H2O/m3ガス以上かつ20g H2O/m3ガス以下の制御された湿度環境におい行われてもよい。
【0091】
鉛塩前駆体が堆積された後、第2の塩前駆体(例えば、ヨウ化ホルムアミジニウム、チオシアン酸ホルムアミジニウム、チオシアン酸グアニジニウム)が、鉛塩薄膜上に堆積されてもよい。ここで、鉛塩薄膜は、周囲温度とほぼ等しい温度を有し、または0℃~500℃の間の制御された温度を有してもよい。ある実施形態では、第2の塩前駆体は、周囲温度で、または約25℃から125℃の間の高温で堆積されてもよい。第2の塩前駆体は、従来から知られる各種方法により堆積されてもよく、これには、これに限られるものではないが、スピンコーティング法、スロットダイ印刷法、インクジェット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、スパッタリング法、PE-CVD法、熱蒸着法、またはスプレーコーティング法が含まれる。第2の塩前駆体の堆積は、周囲圧力(例えば、高度および大気条件に応じて、約1気圧)または大気圧もしくは周囲圧力よりも低い圧力(例えば、1mTorr~500mTorr)の、各種大気中で実施されてもよい。堆積雰囲気は、周囲空気、制御された湿度環境(例えば、ガスの0~100g H2O/m3)、純アルゴン、純窒素、純酸素、純水素、純ヘリウム、純ネオン、純クリプトン、純CO2、または前述のガスの任意の組み合わせを含んでもよい。制御された湿度環境は、絶対湿度または%相対湿度が一定値に保持され環境、または絶対湿度または%相対湿度が所定の設定点または所定の機能に従って変化する環境を含んでもよい。特定の実施形態では、堆積は、0%以上50%以下の%相対湿度を有する制御された湿度環境において行われてもよい。他の実施形態では、堆積は、0g H2O/m3ガス以上、20g H2O/m3ガス以下の制御された湿度環境において行われてもよい。
【0092】
ある態様では、第2の塩前駆体は、1つ以上の溶媒を含有する溶液であってもよい。例えば、第2の塩前駆体は、乾燥N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、アルキル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジアルキルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ホルムアミド、tert-ブチルピリジン、ピリジン、アルキルピリジン、ピロリジン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、およびそれらの組み合わせの1つ以上を有してもよい。
【0093】
鉛塩前駆体および第2の塩前駆体の堆積後、基板は、アニールされてもよい。基板をアニールすることにより、鉛塩前駆体および第2の塩前駆体が、ペロブスカイト材料(例えば、FAPbI3、GAPb(SCN)3、FASnI3)に変換されてもよい。アニオンは、周囲圧力(例えば、高度および大気条件に応じて、約1気圧)、または大気圧もしくは周囲圧力よりも低い圧力(例えば、1mTorr~500mTorr)の、各種大気中で実施されてもよい。アニール雰囲気は、周囲空気、制御された湿度環境(例えば、ガスの0~100g H2O/m3)、純アルゴン、純窒素、純酸素、純水素、純ヘリウム、純ネオン、純クリプトン、純CO2、または前述のガスの任意の組み合わせを有してもよい。制御された湿度環境は、絶対湿度または%相対湿度が一定値に保持される環境、または絶対湿度または%相対湿度が所定の設定点または所定の機能に従って変化する環境を含んでもよい。特定の実施形態では、アニールは、0%以上50%以下の相対湿度を有する制御された湿度環境において行われてもよい。他の実施形態では、アニールは、0g H2O/m3ガス以上、20g H2O/m3ガス以下のガスを含む制御された湿度環境において行われてもよいる。ある実施形態では、アニールは、50℃以上300℃以下の温度で行われてもよい。別段の記載がない限り、本願に記載の任意のアニールまたは堆積工程は、前述の条件下で実施されてもよい。
【0094】
例えば、特定の実施形態では、以下のプロセスにより、FAPbI3ペロブスカイト材料が形成されてもよい。まず、スピンコーティング法またはスロットダイ印刷法により、無水DMF中に溶解されたPbI2対PbCl2の約90:10のモル比を有するハロゲン化鉛(II)前駆体が基板上に堆積され得る。ハロゲン化鉛前駆体インクは、実質的に水を含まない雰囲気、すなわち、相対湿度が30%未満の雰囲気中で、約1時間(+15分)乾燥され、薄膜が形成され得る。その後、薄膜は、約50℃(+10℃)の温度で約10分間、熱アニールされ得る。他の実施形態では、ハロゲン化鉛前駆体は、インクジェット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、スパッタリング法、PE-CVD法、原子層堆積法、熱蒸着法、またはスプレーコーティング法により、成膜されてもよい。次に、スピンコーティング法またはスロットダイ印刷法により、無水イソプロピルアルコールに溶解された25~60mg/mL濃度のホルムアミジニウムヨウ化物を含むホルムアミジニウムヨウ化物前駆体が、ハロゲン化鉛薄膜上に成膜されてもよい。他の実施形態では、ヨウ化ホルムアミジニウム前駆体は、インクジェット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、スパッタリング法、PE-CVD法、原子層堆積法、熱蒸着法、またはスプレーコーティング法により、堆積されてもよい。ハロゲン化鉛前駆体およびヨウ化ホルムアミジニウム前駆体が成膜された後、基板は、約25%の相対湿度(約4~7gのH2O/m3空気)、および約125℃~200℃の間でアニールされ、ヨウ化ホルムアミジニウム鉛(FAPbI3)ペロブスカイト材料が形成されてもよい。
【0095】
別の実施形態では、ペロブスカイト材料は、C’CPbX3を含んでもよく、ここでC’は、1つ以上の第1族金属(すなわち、Li、Na、K、Rb、Cs)である。特定の実施形態では、M’は、セシウム(Cs)であってもよい。別の実施形態では、C’は、ルビジウム(Rb)であってもよい。別の実施態様ではは、C’は、ナトリウム(Na)であってもよい。別の実施形態では、C’は、カリウム(K)であってもよい。さらに他の実施形態では、ペロブスカイト材料は、C’vCwPbyXzを有してもよく、ここで、C’は、1つ以上の第1族金属であり、v、w、y、およびzは、1~20の実数を表す。特定の実施形態では、ペロブスカイト材料は、以下に記載される工程を使用して、例えば、ドロップキャスティング法、スピンキャスティング法、グラビアコーティング法、ブレードコーティング法、リバースグラビアコーティング法、スロットダイ印刷法、スクリーン印刷法、またはインクジェット印刷法により、基板層上にPV装置内の活性層として成膜されてもよい。
【0096】
まずハロゲン化鉛溶液が形成される。清浄で乾燥した容器内の制御された雰囲気中で、ある量のハロゲン化鉛が収集されてもよい。好適なハロゲン化鉛には、これに限られるものではないが、ヨウ化鉛(II)、臭化鉛(II)、塩化鉛(II)、フッ化鉛(II)が含まれる。ハロゲン化鉛は、ハロゲン化鉛の単一種を含んでもよく、またはハロゲン化鉛の混合物を正確な比率で含んでもよい。一実施態様では、ハロゲン化鉛は、ヨウ化鉛(II)を含んでもよい。特定の実施形態では、ハロゲン化鉛の混合物は、ヨウ化物、臭化物、塩化物、またはフッ化物の0.001~100モル%の任意の二元、三元、または四元比を有してもよい。一実施態様では、ハロゲン化鉛混合物は、約10:90mol:molの比で塩化鉛(II)およびヨウ化鉛(II)を含んでもよい。他の実施態様では、ハロゲン化鉛混合物は、約5:95、約7.5:92.5、または約15:85mol:molの比で、塩化鉛(II)およびヨウ化鉛(II)を含んでもよい。
【0097】
あるいは、ハロゲン化鉛塩と共にまたはその代わりに、他の鉛塩前駆体を使用して、鉛塩溶液を形成してもよい。好適な前駆体鉛塩は、鉛(II)または鉛(IV)と、以下のアニオンとの任意の組み合わせを有してもよい:硝酸塩、亜硝酸塩、カルボキシレート、酢酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、リン酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、テトラ(ペルフルオロフェニル)ホウ酸塩、ヒドリド、酸化物、過酸化物、水酸化物、窒化物、ヒ酸塩、亜ヒ酸塩、過塩素酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、クロム酸塩、次クロム酸塩、ヨウ素酸塩、臭素酸塩、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、シアン化物、シアン酸塩、イソシアン酸塩、雷酸塩、チオシアネート、イソチオシアネート、アジド、テトラカルボニルコバルト酸塩、カルバモイルジシアノメタニド、ジシアノニトロソメタニド、ジシアナミド、トリシアノメタニド、アミド、および過マンガン酸塩。
【0098】
鉛塩溶液は、さらに、上記アニオンの塩として、以下の金属イオンBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Cd、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Hg、Sn、Ge、Ga、Pb、Pb、In、Tl、Sb、Bi、Ti、Zn、Cd、Hg、およびZrに対して、0~100%のモル比で、鉛(II)または鉛(IV)塩を有してもよい。
【0099】
次に、溶媒を容器に添加し、ハロゲン化鉛固体を溶解させ、ハロゲン化鉛溶液が形成されてもよい。好適な溶媒には、これに限られるものではないが、乾燥N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、アルキル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジアルキルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ホルムアミド、tert-ブチルピリジン、ピリジン、アルキルピリジン、ピロリジン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、およびこれらの組み合わせが含まれる。一実施態様では、鉛固体は、乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解される。ハロゲン化鉛固体は、約20℃~約150℃の温度で溶解されてもよい。一実施態様では、ハロゲン化鉛固体は、約85℃で溶解する。ハロゲン化鉛固体は、溶液を形成するために必要である限り、溶解されてもよく、これは、最大約72時間にわたって行われてもよい。得られた溶液は、ハロゲン化鉛前駆体インクのベースを形成する。ある実施形態では、ハロゲン化鉛前駆体インクは、約0.001M~約10Mのハロゲン化鉛濃度を有してもよい。一実施態様では、ハロゲン化鉛前駆体インクは、約1Mのハロゲン化鉛濃度を有する。ある実施形態では、ハロゲン化鉛溶液は、さらに、アミノ酸(例えば、5-アミノ吉草酸、ヒスチジン、グリシン、リジン)、アミノ酸ハロゲン化水素(例えば、5-アミノ吉草酸塩酸塩)、IFL表面改質(SAM)剤(例えば、明細書における前述のもの)、またはそれらの組み合わせを有してもよい。
【0100】
次に、第1族の金属ハロゲン化物溶液が形成される。第1族金属ハロゲン化物のある量が、清浄で乾燥した容器内の制御された雰囲気中で収集されてもよい。好適な第1族金属ハロゲン化物には、これに限られるものではないが、ヨウ化セシウム、臭化セシウム、塩化セシウム、フッ化セシウム、ヨウ化ルビジウム、臭化ルビジウム、塩化ルビジウム、フッ化ルビジウム、ヨウ化リチウム、臭化リチウム、塩化リチウム、フッ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、臭化ナトリウム、フッ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、フッ化カリウムが含まれる。第1族の金属ハロゲン化物は、第1族の金属ハロゲン化物の単一種を含んでもよく、または第1族の金属ハロゲン化物の混合物を正確な比率で含んでもよい。一実施態様では、第1族金属ハロゲン化物は、ヨウ化セシウムを含んでもよい。別の実施形態では、第1族金属ハロゲン化物は、ヨウ化ルビジウムを含んでもよい。別の実施態様では、第1族金属ハロゲン化物は、ヨウ化ナトリウムを含んでもよい。別の実施形態では、第1族金属ハロゲン化物は、ヨウ化カリウムを含んでもよい。
【0101】
あるいは、第1族金属ハロゲン化物塩と共に、またはその代わりに、他の第1族金属塩前駆体を使用して、第1族金属塩溶液を形成してもよい。好適な前駆体第1族金属塩は、第1族金属と、以下のアニオンの任意の組み合わせを有してもよい:硝酸塩、亜硝酸塩、カルボキシレート、酢酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、リン酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、テトラ(ペルフルオロフェニル)ホウ酸塩、ヒドリド、酸化物、過酸化物、水酸化物、窒化物、ヒ酸塩、亜ヒ酸塩、過塩素酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、クロム酸塩、次クロム酸塩、ヨウ素酸塩、臭素酸塩、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、シアン化物、シアン酸塩、イソシアン酸塩、雷酸塩、チオシアネート、イソチオシアネート、アジド、テトラカルボニルコバルト酸塩、カルバモイルジシアノメタニド、ジシアノニトロソメタニド、ジシアナミド、トリシアノメタニド、アミド、および過マンガン酸塩。
【0102】
次に、溶媒を容器に添加して、第1族金属ハロゲン化物固体を溶解させ、第1族金属ハロゲン化物溶液が形成されてもよい。好適な溶媒には、これに限られるものではないが、乾燥N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、アルキル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジアルキルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ホルムアミド、tert-ブチルピリジン、ピリジン、アルキルピリジン、ピロリジン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、およびこれらの組み合わせが含まれる。一実施態様では、鉛固体は、乾燥ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解される。第1族金属ハロゲン化物固体は、約20~約150℃の温度で溶解されてもよい。一実施態様では、第1族金属ハロゲン化物固体は、室温(すなわち、約25℃)で溶解されてもよい。第1族金属ハロゲン化物固体は、溶液を形成するために必要な限り、溶解されてもよく、これは、最大約72時間にわたって行われてもよい。得られた溶液は、第1族金属ハロゲン化物溶液を形成する。ある実施形態では、第1族金属ハロゲン化物溶液は、約0.001M~約10Mの間の第1族金属ハロゲン化物濃度を有してもよい。一実施態様では、第1族金属ハロゲン化物溶液は、約1Mの第1族金属ハロゲン化物濃度を有する。ある態様では、第1族金属ハロゲン化物溶液は、さらに、アミノ酸(例えば、5-アミノ吉草酸、ヒスチジン、グリシン、リジン)、アミノ酸ハロゲン化水素酸(例えば、5-アミノ吉草酸塩酸塩)、IFL表面改質(SAM)剤(例えば、明細書における前述のもの)、またはそれらの組み合わせを有してもよい。
【0103】
次に、ハロゲン化鉛溶液と第1族金属ハロゲン化物溶液を混合して、薄膜前駆体インクを形成する。ハロゲン化鉛溶液および第1族金属ハロゲン化物溶液は、得られる薄膜前駆体インクがハロゲン化鉛のモル濃度の0%から25%の間の第1族金属ハロゲン化物のモル濃度を有するような比率で混合されてもよい。特定の実施形態では、薄膜前駆体インクは、ハロゲン化鉛のモル濃度の1%の第1族金属ハロゲン化物のモル濃度を有してもよい。特定の実施形態では、薄膜前駆体インクは、ハロゲン化鉛のモル濃度の5%の第1族金属ハロゲン化物のモル濃度を有してもよい。特定の実施形態では、薄膜前駆体インクは、ハロゲン化鉛のモル濃度の10%の第1族金属ハロゲン化物のモル濃度を有してもよい。特定の実施形態では、薄膜前駆体インクは、ハロゲン化鉛のモル濃度の15%の第1族金属ハロゲン化物のモル濃度を有してもよい。特定の実施形態では、薄膜前駆体インクは、ハロゲン化鉛のモル濃度の20%の第1族金属ハロゲン化物のモル濃度を有してもよい。特定の実施形態では、薄膜前駆体インクは、ハロゲン化鉛のモル濃度の25%の第1族金属ハロゲン化物のモル濃度を有してもよい。ある実施形態では、ハロゲン化鉛溶液および第1族金属ハロゲン化物溶液は、混合中あるいは混合後に、撹拌または撹拌されてもよい。
【0104】
次に、薄膜前駆体インクは、所望の基板上に堆積されてもよい。好適な基板層は、本開示の前述の任意の基板層を含んでもよい。前述のように、薄膜前駆体インクは、これに限られるものではないが、ドロップキャスティング法、スピンキャスティング法、グラビアコーティング法、ブレードコーティング法、リバースグラビアコーティング法、スロットダイ印刷法、スクリーン印刷法、またはインクジェット印刷法を含む、各種手段を介して成膜されてもよい。特定の実施形態では、薄膜前駆体インクは、約5秒~約600秒の期間にわたって、約500rpm~約10,000rpmの速度で基板上にスピンコートされてもよい。一実施形態では、薄膜前駆体インクは、約3000rpmで約30秒間、基板上にスピンコートされてもよい。薄膜前駆体インクは、約0%相対湿度から約50%相対湿度の湿度範囲で、周囲雰囲気で基板上に成膜されてもよい。次に、薄膜前駆体インクは、実質的に水を含まない雰囲気、すなわち、相対湿度が30%未満、または7g H2O/m3未満において乾燥され、薄膜が形成されてもよい。
【0105】
次に、薄膜は、約20℃~約300℃の温度で、最大約24時間にわたって、熱アニールされてもよい。一実施態様では、薄膜は、約50℃の温度で約10分間熱アニールされてもよい。次に、0.001M~10Mの濃度の溶媒または溶媒の混合物(例えば、DMF、イソプロパノール、メタノール、エタノール、ブタノール、クロロホルム、クロロベンゼン、ジメチルスルホキシド、水)および塩(例えば、ヨウ化メチルアンモニウム、ヨウ化ホルムアミジニウム、ヨウ化グアニジニウム、1,2,2-トリアミノビニルアンモニウムヨウ化物、5-アミノ吉草酸ヨウ化水素酸塩)を含む塩溶液で、前駆体膜を浸漬またはリンスする変換プロセスにより、ペロブスカイト材料活性層が完成されてもよい。また、特定の実施形態では、ペロブスカイト材料薄膜は、本段落の第1行目と同じ方法で、熱的にポストアニールされてもよい。
【0106】
ある実施形態では、塩溶液は、清浄な乾燥した容器における制御された雰囲気中で、塩を収集にすることにより、調製されてもよい。好適な塩には、これに限られるものではないが、ヨウ化メチルアンモニウム、ヨウ化ホルムアミジニウム、ヨウ化グアニジニウム、ヨウ化イミダゾリウム、ヨウ化エテンテトラミン、1,2,2-トリアミノビニルアンモニウムヨウ化物、および5-アミノ吉草酸ヨウ化水素酸塩が含まれる。他の好適な塩は、前述の「ペロブスカイト材料」という名称の章に記載された任意の有機カチオンを含んでもよい。この塩は、単一種の塩を含んでもよく、または正確な比率で塩混合物を含んでもよい。一実施態様では、塩は、ヨウ化メチルアンモニウムを含んでもよい。別の実施形態では、塩は、ヨウ化ホルムアミジニウムを含んでもよい。次に、容器に溶媒を添加して、塩固体を溶解させ、塩溶液が形成されてもよい。好適な溶媒には、これに限られるものではないが、DMF、アセトニトリル、イソプロパノール、メタノール、エタノール、ブタノール、クロロホルム、クロロベンゼン、ジメチルスルホキシド、水、およびこれらの組み合わせが含まれる。一実施態様では、ヨウ化ホルムアミジニウム塩固体がイソプロパノールに溶解される。塩固体は、約20~約150℃の温度で溶解してもよい。一実施形態では、塩固体は、室温(すなわち、約25℃)で溶解する。塩固体は、溶液を形成するために必要な限り、溶解されてもよく、これは、最大約72時間にわたって行われてもよい。得られた溶液は、塩溶液を形成する。ある実施形態では、塩溶液は、約0.001M~約10Mの間の塩濃度を有してもよい。一実施態様では、塩溶液は、約1Mの塩濃度を有する。
【0107】
例えば、ヨウ化鉛(II)溶液、ヨウ化セシウム溶液、およびヨウ化メチルアンモニウム(MA)塩溶液による前述の方法を用いて、CsiMA1-iPbI3の一般式を有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは0と1の間の数に等しい。別の例として、ヨウ化鉛(II)溶液、ヨウ化ルビジウム溶液、およびヨウ化ホルムアミジニウム(FA)塩溶液を使用することにより、一般式RbiFA1-iPbI3を有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは0と1の間の数に等しい。別の例として、ヨウ化鉛(II)溶液、ヨウ化セシウム溶液、およびヨウ化ホルムアミジニウム(FA)塩溶液を使用することにより、一般式CsiFA1-iPbI3を有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは0と1の間の数に等しい。別の例として、ヨウ化鉛(II)溶液、ヨウ化カリウム溶液、およびヨウ化ホルムアミジニウム(FA)塩溶液を使用することにより、一般式KiFA1-iPbI3を有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは0と1の間の数に等しい。別の例として、ヨウ化鉛(II)溶液、ヨウ化ナトリウム溶液、およびヨウ化ホルムアミジニウム(FA)塩溶液を使用することにより、一般式NaiFA1-iPbI3有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは0と1の間の数に等しい。別の例として、ヨウ化鉛(II)鉛-塩化物(II)混合溶液、ヨウ化セシウム溶液、およびヨウ化ホルムアミジニウム(FA)塩溶液を使用することにより、一般式CsiFA1-iPbI3-yClyを有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは0と1の間の数に等しい。ここで、iは、0と1の間の数に等しく、yは、0と3の間の数を表す。
【0108】
特定の実施形態では、前述のハロゲン化鉛溶液は、モルベースでPbI2対PbCl2が90:10の比を有してもよい。前術の方法により、ハロゲン化鉛溶液にヨウ化セシウム(CsI)溶液を添加し、10mol% CsIを有する薄膜前駆体インクが形成されてもよい。FAPbI3ペロブスカイト材料は、前述の方法により、この薄膜前駆体溶液を用いて製造されてもよい。前述のように、CsI溶液を介したセシウムイオンの添加により、塩化物アニオンおよびセシウム原子がFAPbI3結晶格子に組み込まれるようになる。この場合、塩化物イオンを添加せずに、前述のようにセシウムまたはルビジウムイオンを添加した場合と比較して、格子収縮の程度が大きくなり得る。下記の表1には、10mol%ルビジウムおよび20mol%塩化物(例えば、10mol%PbCl2)を含むFAPbI3ペロブスカイト材料、10mol%のセシウムを含むFAPbI3ペロブスカイト材料、ならびに20mol%の塩化物とともに10mol%のセシウムを含むFAPbI3ペロブスカイト材料、の格子パラメータを示す。ここで、mol%濃度は、ハロゲン化鉛溶液中の鉛原子に対する添加剤の濃度を表す。表1に見られるように、セシウムおよび塩化物を含むFAPbI3ペロブスカイト材料は、他の2つのペロブスカイト材料サンプルよりも小さな格子パラメータを有する。
【0109】
【表1】
また、データは、ルビジウム、セシウムおよび/または塩化物を添加したFAPbI
3ペロブスカイト材料は、Pm3-m立方晶構造を有することを示す。最大で10mol%のRbおよび10mol%のCl、または10mol%のCs、または10mol%のCsおよび10mol%のClを含むFAPbI
3ペロブスカイトは、立方晶Pm3-m立方晶構造を維持することが観測された。
図29には、表1に示された各サンプルに対応するX線回折パターンを示す。表2乃至表4には、表1に示した3つのペロブスカイト材料のX線回折ピークおよび強度を示す。データは、リガクミニフレックス600において、CuKα放射線源を使用して、1.5゜の2θ/分の走査速度、周囲条件で収集した。
【0110】
【0111】
【0112】
【表4】
表5には、Cu-Kα放射線下での格子定数=6.3375Åを有する立方晶Pm3-m材料の形状的に予測されるX線回折パターンを示す。データから分かるように、10mol%のRbおよび10mol%のCl、10mol%のCs、ならびに10%のCsおよび10%のClを含むように形成されたペロブスカイト材料は、立方晶Pm3-mペロブスカイト材料に対して予想されたパターンと一致する回折パターンを有する。
【0113】
【表5】
(増強ペロブスカイト)
いわゆる「層状」2Dペロブスカイトは、前述のメチルアンモニウムおよびホルムアミジニウムカチオンよりも長いアルキル鎖を有する有機カチオンを用いて、ペロブスカイトが処方される場合に形成されることが知られている。層状2Dペロブスカイトには、ルドルスデン-ポッパー相、Dion-Jacobson相、およびAurivillius相のような構造が含まれる。例えば、前述のメチルアンモニウムまたは他のカチオンの代わりに、1-ブチルアンモニウムを置換することにより、「1段階」法(本願には記載されていない)においてペロブスカイトを形成する間に、ルドルスデン-ポッパー2Dペロブスカイトが生じ得る。そのようなペロブスカイトでは、1-ブチルアンモニウムは、ペロブスカイトが完全な結晶格子を形成することを防ぎ、代わりにペロブスカイトは、単結晶構造の厚さを有するペロブスカイトの「シート」に形成される。
図5には、1-ブチルアンモニウムカチオン5510を有するルドルスデン-ポッパーペロブスカイト5500の構造を示す。
図5から分かるように、ブチルアンモニウムカチオン5510の「尾部」の結果、ペロブスカイト材料の鉛およびヨウ化物部分と、他の鉛およびヨウ化物構造との間に分離が生じ、2Dペロブスカイトの「シート」が得られる。従って、ペロブスカイトのルドルスデン-ポッパーの形態が望ましくない場合、ペロブスカイト材料の形成中の1-ブチルアンモニウムまたはベンジルアンモニウムのような「バルキーな」有機カチオンの導入は、好ましくない。
【0114】
しかしながら、ペロブスカイト材料をアニールする前に、希釈した1-ブチルアンモニウム溶液の量を添加すると、
図6に示すようなペロブスカイトが得られ得る。
図6には、表面不動態化のため、アルキルアンモニウムカチオンの添加を伴うペロブスカイト材料2000の実施形態を示す。示された実施形態では、ホルムアミジニウムヨウ化鉛(FAPbI
3)ペロブスカイト材料2010の表面は、表面に1-ブチルアンモニウムカチオン2020を有するように示されている。ある実施例では、1-ブチルアンモニウムカチオン、または本願に記載の他の「バルキーな」有機カチオンは、ペロブスカイト材料の結晶格子の表面近くのペロブスカイト材料中に拡散し得る。特定の実施形態では、1-ブチルアンモニウムカチオン、または本願に記載の他の「バルキーな」有機カチオンは、結晶格子表面または粒界から、ペロブスカイト材料内に向かって、50nm以下で存在し得る。ペロブスカイト材料の近傍または表面に、1-ブチルアンモニウムのような「バルキーな」有機カチオンを含有させると、本願に開示のペロブスカイト材料の「理想的な」化学量論から逸脱したペロブスカイト材料の一般式が得られる。例えば、そのような有機カチオンの含有により、ペロブスカイト材料は、本願に記載の一般式CMX
3に対して、準化学量論的または超化学量論的な一般式を有し得る。この場合、ペロブスカイト材料の一般式は、C
xM
yX
zで表される。ここで、x、yおよびzは実数である。ある実施形態では、ペロブスカイト材料は、一般式C’
2C
n-1M
nX
3n+1を有してもよい。ここで、nは整数である。例えば、n=1の場合、ペロブスカイト材料は、一般式C’
2MX
4を有し、n=2の場合、ペロブスカイト材料は、一般式C’
2CM
2X
7を有し、n=3の場合、ペロブスカイト材料は、一般式C’
2C
2M
3X
10を有し、n=4の場合、ペロブスカイト材料は、一般式C’
2C
3M
4X
13を有し、以下同様である。
図30に示すように、n値は、ペロブスカイト材料の無機金属ハロゲン化物サブ格子の厚さを示す。一般式C’
2C
n-1M
nX
3n+1を有するペロブスカイト材料の相は、バルキーな有機カチオンがペロブスカイト材料の結晶格子に拡散し、また侵入した領域において形成されてもよい。例えば、そのような相は、本願に開示のバルキーな有機カチオンを含むように形成されたペロブスカイト材料の結晶格子表面(例えば、表面または粒界)から、50ナノメートル以内に存在してもよい。
【0115】
1-ブチルアンモニウムイオンの炭素「尾部」は、他の分子を表面から効果的に遠ざけておくことにより、ペロブスカイトの表面に保護特性を提供することができる。ある実施形態では、1-ブチルアンモニウムイオンのアルキル基「尾部」は、ペロブスカイト材料の表面から離して、または表面に対して平行に配向されてもよい。特に、1-ブチルアンモニウムの「尾部」は、疎水特性を有し、水分子がペロブスカイトの表面に接触することが抑止され、ペロブスカイト材料2010の表面が環境中の水分から保護される。また、1-ブチルアンモニウムカチオンは、表面および任意の粒界または欠陥を、ペロブスカイト材料2010で不動態化するように機能してもよい。不動態化とは、ペロブスカイト材料2010の表面または粒界での電荷の蓄積または「トラップ状態」を防止する電気的特性を表す。ペロブスカイト材料2010の一部を不動態化するように機能することにより、1-ブチルアンモニウムにより、ペロブスカイト材料2010への、およびペロブスカイト材料2010からの改善された電荷移動が容易化され、光活性層の電気特性が改善され得る。
【0116】
ある態様では、1-ブチルアンモニウムの代わりに、またはそれと組み合わせて、他の有機カチオンが適用されてもよい。ペロブスカイト材料の表面を不動態化するように機能し得る他の「バルキーな」有機カチオンの例には、これに限られるものではないが、エチルアンモニウム、プロピルアンモニウム、n-ブチルアンモニウム;ペリレンn-ブチルアミン-イミド;ブタン-1,4-ジアンモニウム;1-ペンチルアンモニウム;1-ヘキシルアンモニウム;ポリ(ビニルアンモニウム);フェニルエチルアンモニウム;ベンジルアンモニウム;3-フェニル-1-プロピルアンモニウム;4-フェニル-1-ブチルアンモニウム;1,3-ジメチルブチルアンモニウム;3,3-ジメチルブチルアンモニウム;1-ヘプチルアンモニウム;1-オクチルアンモニウム;1-ノニルアンモニウム;1-デシルアンモニウム;および1-イコサニルアンモニウムが含まれる。また、カチオン種に加えて、1または2以上のヘテロ原子を含む尾部を有するバルキーな有機カチオンでは、ヘテロ原子は、ペロブスカイト材料結晶格子と配位し、結合し、または一体化されてもよい。ヘテロ原子は、水素または炭素を除き、窒素、硫黄、酸素、またはリンを含む、尾部の任意の原子であってもよい。
【0117】
「バルキーな」有機カチオンの他の例には、アンモニウム基、ホスホニウム基、または「ペロブスカイト材料のCサイト」表面に統合され得る他のカチオン基で官能化された、以下の分子が含まれてもよい:ベンゼン、ピリジン、ナフタレン、アントラセン、キサンテン、フェナトレン、テトラセンクリセン、テトラフェン、ベンゾ[c]フェナトレン、トリフェニレン、ピレン、ペリレン、コランヌレン、コロネン、置換ジカルボン酸イミド、アニリン、N-(2-アミノエチル)-2-イソインドール-1,3-ジオン、2-(1-アミノエチル)ナフタレン、2-トリフェニレン-O-エチルアミンエーテル、ベンジルアミン、ベンジルアンモニウム塩、N-n-ブチル-N’-4-アミノブチルペリレン-3,4,9,10-ビス(ジカルボキシイミド)、1-(4-アルキルフェニル)メタンアミン、1-(4-アルキル-2-フェニル)エタンアミン、1-(4-アルキルフェニル)メタンアミン、1-(3-アルキル-5-アルキルフェニル)メタンアミン、1-(3-アルキル-5-アルキル-2-フェニル)エタンアミン、1-(4-アルキル-2-フェニル)エタンアミン、2-エチルアミン-7-アルキル-ナフタレン、2-エチルアミン-6-アルキル-ナフタレン、1-エチルアミン-7-アルキル-ナフタレン、1-エチルアミン-6-アルキル-ナフタレン、2-メチルアミン-7-アルキル-ナフタレン、2-メチルアミン-6-アルキル-ナフタレン、1-メチルアミン-7-アルキル-ナフタレン、1-メチルアミン-6-アルキル-ナフタレン、N-n-アミノアルキル-N’-4-アミノブチルペリレン-3,4,9,10-ビス(ジカルボキシイミド)、1-(3-ブチル-5-メトキシブチルフェニル)メタンアミン、1-(4-ペンチルフェニル)メタンアミン、1-[4-(2-メチルペンチル)-2-フェニル]エタンアミン、1-(3 -ブチル-5-ペンチル-2-フェニル)エタンアミン、2-(5-[4-メチルペンチル]-2-ナフチル)エタンアミン、N-7-トリデシル-N’-4-アミノブチルペリレン-3,4,9,10-ビス(ジカルボキシイミド)、N-n-ヘプチル-N’-4-アミノブチルペリレン-3,4,9,10-ビス(ジカルボキシイミド)、2-(6-[3-メトキシルプロピル]-2-ナフチル)エタンアミン。
図17乃至28には、特定の実施形態によるこれらの有機分子の構造を示す。
図17および18に関し、各「R基」、R
xは、H、R’、Me、Et、Pr、Ph、Bz、F、Cl、Br、I、NO
2、OR’、NR’
2、SCN、CN、N
3、SR’のいずれかであってもよく、ここで、R’は、任意のアルキル、アルケニル、またはアルキニル鎖であってもよい。また、示されたRx基の少なくとも1つは、(CH
2)
nEX
yまたは(CH
2)
nC(EX
y)
2であってもよく、ここで、nおよびy=0、1、2、またはそれ以上であり、nおよびyは、等しくても異なってもよく、Eは、C、Si、O、S、Se、Te、N、P、As、またはBからなる群から選択され、Xは、ハロゲン化物または擬ハロゲン化物であり、例えば、F、Cl、Br、I、CN、SCN、またはHである。さらに、
図19に関し、示された分子は、各示されたアミンの任意のハロゲン化水素、例えば、ベンジルアンモニウム塩を含み、ここで、示されたX基は、F、Cl、Br、I、SCN、CN、または任意の他の擬ハロゲン化物であってもよい。他の非ハロゲン化物の許容可能なアニオンには、硝酸塩、亜硝酸塩、カルボキシレート、酢酸塩、アセトニルアセトネート、ギ酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、リン酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、テトラ(ペルフルオロフェニル)ホウ酸塩、ヒドリド、酸化物、過酸化物、水酸化物、窒化物、ヒ酸塩、亜ヒ酸塩、過塩素酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、クロム酸塩、次クロム酸塩、ヨウ素酸塩、臭素酸塩、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、シアン化物、シアン酸塩、イソシアン酸塩、雷酸塩、チオシアネート、イソチオシアネート、アジド、テトラカルボニルコバルト酸塩、カルバモイルジシアノメタニド、ジシアノニトロソメタニド、ジシアナミド、トリシアノメタニド、アミド、および過マンガン酸塩が含まれ得る。また、好適なR基には、これに限られるものではないが、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル基またはその異性体;アルカン、アルケンまたはアルキンC
xH
y、ここで、x=1~20、y=1~42、環状、分枝鎖または直鎖;ハロゲン化アルキル、C
xH
yX
z、x=1~20、y=0=42、z=1~42、X=F、Cl、Br、またはI;任意の芳香族基(例えば、フェニル、アルキルフェニル、アルコキシフェニル、ピリジン、ナフタレン);環内に少なくとも1つの窒素が含まれる環状錯体(例えば、ピリジン、ピロール、ピロリジン、ピペリジン、テトラヒドロキノリン);任意の硫黄含有基(例えば、スルホキシド、チオール、アルキルスルフィド);任意の窒素含有基(ニトロキシド、アミン);任意のリン含有基(例えばリン酸);任意のホウ素含有基(例えば、ホウ酸);任意の有機酸(例えば、酢酸、プロパン酸);およびそのエステルまたはアミド誘導体;α、β、γ、およびより大きな誘導体を含む任意のアミノ酸(例えば、グリシン、システイン、プロリン、グルタミン酸、アルギニン、セリン、ヒスチジン、5-アンモニウム吉草酸);任意のケイ素含有基(例えば、シロキサン);ならびに任意のアルコキシまたは反応基、-OC
xH
y、ここでx=0~20、y=1~42;が含まれ得る。
【0118】
また、ある実施形態では、バルキーな有機カチオンは、ペロブスカイト材料における粒界および表面欠陥を不動態化してもよい。
図7には、バルクのペロブスカイト材料3010の表面および粒界3015の両方を不動態化する1-ブチルアンモニウム3020を有するペロブスカイト材料層3000の実施例を示す。また、前述のように、これらのイオンのアルキル尾部は、疎水性層を形成してもよい。これは、水および他の極性種と反発し、そのような化学種がペロブスカイト材料の表面に到達することを妨げる。
図7に示すように、バルキーな有機カチオンの「尾部」は、ペロブスカイト材料層3000の表面または粒界3015とは、化学的に結合(例えば、共有結合またはイオン結合)されなくてもよい。本願で使用される任意のバルキーな有機カチオンの「尾部」は、バルキーな有機カチオンの非イオン性炭素構造を表す。例えば、1-ブチルアンモニウムの尾部は、ブチル基であり、ベンジルアンモニウムの尾部は、ベンジル基である。
【0119】
また、バルキーな有機カチオンの尾部では、ペロブスカイト材料の表面または粒界に関する他の配列を想定してもよい。通常、バルキーな有機カチオンのカチオン性「頭部」は、50ナノメートルを超えて、ペロブスカイト材料の表面または粒界を拡散することはない。尾部は、ペロブスカイト材料と弱く相互作用し、ペロブスカイト材料の結晶粒表面から離れて配向される。尾部は、ペロブスカイト材料の結晶粒表面との分子間相互作用(例えば、双極子-双極子または水素結合)を有し、尾部がペロブスカイト材料の結晶粒表面に向かって配向される配置が得られてもよい。ある実施形態では、ペロブスカイト材料内に存在するあるバルキーな有機カチオンの尾部は、ペロブスカイト材料の表面または粒界と相互作用しなくてもよく、ペロブスカイト材料における他のバルキーな有機カチオンの尾部は、ペロブスカイト材料の表面または粒界と相互作用してもよい。尾部は、少なくとも1つの電子孤立対を有するヘテロ原子またはアニオン(すなわち、両性イオン)を有し、これは、ペロブスカイト材料中に存在する金属原子(例えば、Pb、Sn、Ge、In、Bi、Cu、Ag、Au)を介して、ペロブスカイト材料の結晶粒表面と共有結合的に相互作用してもよい(例えば、配位共有結合)。また、尾部は、本願に記載のジアンモニウムブタンのようなカチオン種を含んでもよく、これは、少なくとも2つの「C」カチオンサイト(ホルムアミジニウムなど)で置換することにより、ペロブスカイト材料に組み込まれてもよい。また、カチオン種を含む尾部は、2Dペロブスカイト材料の2つの層を架橋し、ペロブスカイト材料の結晶粒表面にわたって配置され、または非イオン性尾部に関して記載された方法と同様の方法で、同様にペロブスカイト材料の結晶粒表面から遠ざかるように配向されてもよい。別の実施態様では、イミダゾリウムカチオンのような十分にバルキーな尾部を有するバルキーな有機カチオンは、ペロブスカイト材料中に拡散せず、単にペロブスカイト表面または粒界に存在してもよい。
【0120】
また、他の実施形態では、長さまたはサイズが異なる尾部基を有するバルキーな有機カチオンをペロブスカイトに適用して、ペロブスカイト材料における粒界および表面欠陥を不動態化してもよい。
図8には、ペロブスカイト材料層4000の実施例を示す。これは、1-ブチルアンモニウム4020、1-ノニルアンモニウム4021、1-ヘプチルアンモニウム4022、および1-ヘキシルアンモニウム4023の組み合わせを有し、バルクペロブスカイト材料4010の表面および粒界4015の両方を不動態化する。特定の実施形態では、前述のアルキルアンモニウム化合物の任意の混合物は、前述のペロブスカイト材料に適用されてもよい。
図8には、ペロブスカイト材料層4000の実施例を示す。これは、1-ブチルアンモニウム4020、1-ノニルアンモニウム4021、1-ヘプチルアンモニウム4022、および1-ヘキシルアンモニウム4023の組み合わせを有し、バルクペロブスカイト材料4010の表面および粒界4015の両方を不動態化する。特定の実施形態では、前述のアルキルアンモニウム化合物の任意の混合物は、本願に記載のペロブスカイト材料に適用されてもよい。ある態様では、バルキーな有機カチオンは、ベンジル基を含んでもよい。
図8Aには、ペロブスカイト材料層45500の実施例を示す。これは、バルクペロブスカイト材料4510の表面および粒界4515の両方を不動態化するベンジル基を含む、各種バルキーな有機カチオンを有する。
【0121】
前述のように、ペロブスカイト材料に1-ブチルアンモニウム表面コーティングを加えると、湿潤環境において、ペロブスカイトの高温耐久性が高まることが示されている。
図9には、1-ブチルアンモニウム(「BAI」)表面コーティングを含む場合、および含まない場合における48日間にわたるペロブスカイト材料で撮影された画像の比較を示す。両ペロブスカイト材料は、同じ組成を有し、85℃の温度および55%の相対湿度を有する環境に48日間曝露された。写真から分かるように、1-ブチルアンモニウム表面コーティングを有しないペロブスカイト材料は、環境への曝露の1日後に色が著しく薄くなっており、これは、ペロブスカイト材料が大きく劣化したことを示している。1-ブチルアンモニウム表面コーティングを有するペロブスカイト材料は、48日間にわたって、色の薄色化が緩やかであり、48日後も暗い部分が残留している。これは、高温環境に対する長期曝露の間、1‐ブチルアンモニウム表面コーティングを有するペロブスカイト材料は、1‐ブチルアンモニウム表面コーティングを有しないペロブスカイト材料よりもロバストであることを示唆するものである。
【0122】
図10には、1-ブチルアンモニウム(「BAI」)表面コーティングを含む場合、および含まない場合における7日間にわたるペロブスカイト材料で撮影された画像の比較を示す。両ペロブスカイト材料は、同じ組成を有し、85℃の温度および55%の相対湿度を有する環境に7日間曝露された。写真から分かるように、1-ブチルアンモニウム表面コーティングを有しないペロブスカイト材料は、環境への曝露の1日後に色が著しく薄くなっており、これは、ペロブスカイト材料が著しく劣化したことを示している。1-ブチルアンモニウム表面コーティングを有するペロブスカイト材料は、7日後にもほとんど色変化を示さない。これは、高温高湿環境に対する長期曝露中に、1‐ブチルアンモニウム表面コーティングを有するペロブスカイト材料が、完全には損傷しなかったことを示している。
【0123】
他の実施態様では、1-ブチルアンモニウムに関して示したように、ペリレンn-ブチルアミン-イミドがペロブスカイト材料の表面に適用されてもよい。
図11A乃至11Dには、本開示によるペロブスカイト材料の表面に適用され得る、各種ペリレンモノイミドおよびジイミドを示す。
図12には、表面不動態化用のアルキルアンモニウムカチオンを伴うペロブスカイト材料2500の実施形態を示す。示された実施形態では、ヨウ化ホルムアミニウム鉛(FAPbI
3)ペロブスカイト材料2510の表面は、表面にペリレンn-ブチルアミン-イミド2520を有するように示されている。
図6に示す1-ブチルアンモニウムと同様、ペリレンn-ブチルアミン-イミドイオンの炭素「尾部」は、他の分子を表面から効果的に遠ざけることにより、ペロブスカイトの表面に保護特性を提供してもよい。特に、ペリレンn-ブチルアミン-イミド「尾部」は、疎水性特性を有し、これにより、ペロブスカイトの表面に水分子が接触することが抑制され、ペロブスカイト材料2510の表面が環境中の水分から保護される。また、ペリレンn-ブチルアミン-イミドカチオンは、ペロブスカイト材料2510の表面および任意の粒界または欠陥を不動態化するように機能してもよい。ペロブスカイト材料2510の一部を不動態化するように機能することにより、ペリレンn-ブチルアミン-イミドは、ペロブスカイト材料2510へのおよびペロブスカイト材料2510からの改善された電荷移動を促進し、光活性層の電気特性が改善されてもよい。
【0124】
以下、ペロブスカイト材料をアニールする前に1-ブチルアンモニウムを成膜する方法の一例について説明する。
【0125】
まず、鉛ハロゲン化物前駆体インクが形成される。清浄で乾燥された容器の、制御された雰囲気環境において(例えば、グローブ含有ポート孔を有する制御された雰囲気ボックスでは、空気を含まない環境での物質の操作が可能)、ある量のハロゲン化鉛が収集される。好適なハロゲン化鉛には、これに限られるものではないが、ヨウ化鉛(II)、臭化鉛(II)、塩化鉛(II)、フッ化鉛(II)が含まれる。ハロゲン化鉛は、ハロゲン化鉛の単一種を含んでもよく、またはハロゲン化鉛の混合物を正確な比率で含んでもよい。特定の実施形態では、ハロゲン化鉛の混合物は、ヨウ化物、臭化物、塩化物、またはフッ化物の0.001~100モル%の任意の二元、三元、または四元比を含んでもよい。一実施態様では、ハロゲン化鉛混合物は、約10:90mol:molの比で塩化鉛(II)およびヨウ化鉛(II)を含んでもよい。他の実施態様では、ハロゲン化鉛混合物は、約5:95、約7.5:92.5、または約15:85mol:molの比で塩化鉛(II)およびヨウ化鉛(II)を含んでもよい。
【0126】
あるいは、ハロゲン化鉛塩と共に、またはその代わりに他の鉛塩前駆体を使用して、前駆体インクを形成してもよい。好適な前駆体塩は、鉛(II)または鉛(IV)と、以下のアニオンとの任意の組み合わせを有してもよい:硝酸塩、亜硝酸塩、カルボキシレート、酢酸塩、アセトニルアセトネート、ギ酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、リン酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、テトラ(ペルフルオロフェニル)ホウ酸塩、ヒドリド、酸化物、過酸化物、水酸化物、窒化物、ヒ酸塩、亜ヒ酸塩、過塩素酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、クロム酸塩、次クロム酸塩、ヨウ素酸塩、臭素酸塩、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、シアン化物、シアン酸塩、イソシアン酸塩、雷酸塩、チオシアネート、イソチオシアネート、アジド、テトラカルボニルコバルト酸塩、カルバモイルジシアノメタニド、ジシアノニトロソメタニド、ジシアナミド、トリシアノメタニド、アミド、および過マンガン酸塩。
【0127】
前駆体インクは、さらに、上記アニオンの塩として、以下の金属イオンBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Fe、Cd、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Hg、Sn、Ge、Ga、In、Tl、Sb、Bi、Ti、Zn、Cd、Hg、およびZrに対して、0から100%のモル比において、鉛(II)または鉛(IV)の塩を有してもよい。
【0128】
次に、溶媒を添加して、鉛固体を溶解させ、ハロゲン化鉛前駆体インクを形成してもよい。好適な溶媒には、これに限られるものではないが、乾燥N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、アルキル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジアルキルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ホルムアミド、tert-ブチルピリジン、ピリジン、アルキルピリジン、ピロリジン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、アルキルニトリル、アリールニトリル、アセトニトリル、アルコキシアルコール、アルコキシエタノール、2-メトキシエタノール、グリコール、プロピレングリコール、エチレングリコール、およびそれらの組み合わせが含まれる。一実施態様では、鉛固体は、乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解される。鉛固体は、約20から約150℃の温度で溶解してもよい。ある態様では、溶媒は、さらに、2-メトキシエタノールおよびアセトニトリルを含んでもよい。ある態様では、2-メトキシエタノールおよびアセトニトリルは、約25:75から約75:25、または少なくとも25:75の体積比で添加されてもよい。ある態様では、溶媒は、体積ベースで、約1:100から約1:1、または約1:100から約1:5の、DMFに対する2-メトキシエタノールおよびアセトニトリルの比を有してもよい。ある態様では、溶媒は、体積ベースで、DMFに対して少なくとも約1:100の2-メトキシエタノールおよびアセトニトリルの比を有してもよい。一実施形態では、鉛固体は、約85℃で溶解する。鉛固体は、溶液を形成するために必要な時間にわたって溶解されてもよく、これは、最大約72時間にわたって行われてもよい。得られた溶液は、ハロゲン化鉛前駆体インクのベースを形成する。ある実施形態では、ハロゲン化鉛前駆体インクは、約0.001Mから約10Mのハロゲン化鉛濃度を有してもよい。一実施態様では、ハロゲン化鉛前駆体インクは、約1Mのハロゲン化鉛濃度を有する。
【0129】
必要な場合、ハロゲン化鉛前駆体インクにある添加剤を添加して、最終的なペロブスカイトの結晶性および安定性に影響を与えてもよい。ある実施形態では、ハロゲン化鉛前駆体インクは、さらに、アミノ酸(例えば、5-アミノ吉草酸、ヒスチジン、グリシン、リジン)、アミノ酸ハロゲン化水素(例えば、5-アミノ吉草酸塩酸塩)、IFL表面修飾(SAM)剤(例えば、明細書に記載の前述のもの)、またはそれらの組み合わせをさらに含んでもよい。一実施態様では、ハロゲン化鉛前駆体インクに塩化ホルムアミジニウムが添加されてもよい。他の実施形態では、本願に記載の任意のカチオンのハロゲン化物が使用されてもよい。ある実施形態では、例えば、塩化ホルムアミジニウムおよび5-アミノ吉草酸塩酸塩の組合せを含む添加剤の組合せが、ハロゲン化鉛前駆体インクに添加されてもよい。
【0130】
塩化ホルムアミジニウムおよび/または5-アミノ吉草酸塩酸塩を含む添加剤は、得られるペロブスカイト材料の所望の特性に応じて、ハロゲン化鉛前駆体インクに各種濃度で添加されてもよい。一実施態様では、添加剤は、約1nMから約1Mの濃度で添加されてもよい。他の実施態様では、添加剤は、約1μMから約1Mの濃度で添加されてもよい。他の実施態様では、添加剤は、約1μMから約1mMの濃度で添加されてもよい。
【0131】
ある実施態様では、第1族金属ハロゲン化物溶液が形成され、ハロゲン化鉛前駆体インクに添加される。清浄で乾燥した容器内の制御された雰囲気環境において、第1族金属ハロゲン化物の量が収集されてもよい。好適な第1族金属ハロゲン化物には、これに限られるものではないが、ヨウ化セシウム、臭化セシウム、塩化セシウム、フッ化セシウム、ヨウ化ルビジウム、臭化ルビジウム、塩化ルビジウム、フッ化ルビジウム、ヨウ化リチウム、臭化リチウム、塩化リチウム、フッ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化ナトリウム、フッ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、フッ化カリウムが含まれる。第1族の金属ハロゲン化物は、単一種類の第1族の金属ハロゲン化物を含んでもよく、または第1族の金属ハロゲン化物の混合物を正確な比率で含んでもよい。一実施態様では、第1族金属ハロゲン化物は、ヨウ化セシウムを含んでもよい。別の実施形態では、第1族金属ハロゲン化物は、ヨウ化ルビジウムを含んでもよい。別の実施態様では、第1族金属ハロゲン化物は、ヨウ化ナトリウムを含んでもよい。別の実施形態では、第1族金属ハロゲン化物は、ヨウ化カリウムを含んでもよい。
【0132】
あるいは、第1族金属ハロゲン化物塩と共に、またはその代わりに、他の第1族金属塩前駆体を使用して、第1族金属塩溶液を形成してもよい。好適な前駆体第1族金属塩は、第1族金属塩と、以下のアニオンの任意の組み合わせを有してもよい:硝酸塩、亜硝酸塩、カルボキシレート、酢酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、リン酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、テトラ(ペルフルオロフェニル)ホウ酸塩、ヒドリド、酸化物、過酸化物、水酸化物、窒化物、ヒ酸塩、亜ヒ酸塩、過塩素酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、クロム酸塩、次クロム酸塩、ヨウ素酸塩、臭素酸塩、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、シアン化物、シアン酸塩、イソシアン酸塩、雷酸塩、チオシアネート、イソチオシアネート、アジド、テトラカルボニルコバルト酸塩、カルバモイルジシアノメタニド、ジシアノニトロソメタニド、ジシアナミド、トリシアノメタニド、アミド、および過マンガン酸塩。
【0133】
次に、容器に溶媒を添加して、第1族金属ハロゲン化物固体を溶解させ、第1族金属ハロゲン化物溶液を形成してもよい。好適な溶媒には、これに限られるものではないが、乾燥N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、アルキル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジアルキルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ホルムアミド、tert-ブチルピリジン、ピリジン、アルキルピリジン、ピロリジン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、およびこれらの組み合わせが含まれる。
一実施態様では、鉛固体は、乾燥ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解される。第1族金属ハロゲン化物固体は、約20℃から約150℃の間の温度で溶解されてもよい。一実施態様では、第1族金属ハロゲン化物固体は、室温(すなわち、約25℃)で溶解される。第1族金属ハロゲン化物固体は、溶液を形成するために必要な時間で溶解されてもよく、これは、最大約72時間にわたって行われてもよい。得られた溶液は、第1族金属ハロゲン化物溶液を形成する。ある実施形態では、第1族金属ハロゲン化物溶液は、約0.001Mから約10Mの間の第1族金属ハロゲン化物濃度を有してもよい。一実施態様では、第1族金属ハロゲン化物溶液は、約1Mの第1族金属ハロゲン化物濃度を有する。ある態様では、第1族金属ハロゲン化物溶液は、さらに、アミノ酸(例えば、5-アミノ吉草酸、ヒスチジン、グリシン、リジン)、アミノ酸ハロゲン化水素(例えば、5-アミノ吉草酸塩酸塩)、IFL表面修飾(SAM)剤(例えば、明細書に記載の前述のもの)、またはそれらの組み合わせを有してもよい。
【0134】
次に、ハロゲン化鉛溶液と第1族金属ハロゲン化物溶液が混合され、薄膜前駆体インクが形成される。ハロゲン化鉛溶液および第1族金属ハロゲン化物溶液は、得られる薄膜前駆体インクが、ハロゲン化鉛のモル濃度の0%から25%の間の第1族金属ハロゲン化物のモル濃度を有するような比で、混合されてもよい。特定の実施形態では、薄膜前駆体インクは、ハロゲン化鉛のモル濃度の1%である第1族金属ハロゲン化物のモル濃度を有してもよい。特定の実施形態では、薄膜前駆体インクは、ハロゲン化鉛のモル濃度の5%である第1族金属ハロゲン化物のモル濃度を有してもよい。特定の実施形態では、薄膜前駆体インクは、ハロゲン化鉛のモル濃度の10%である第1族金属ハロゲン化物のモル濃度を有してもよい。特定の実施形態では、薄膜前駆体インクは、ハロゲン化鉛のモル濃度の15%である第1族金属ハロゲン化物のモル濃度を有してもよい。特定の実施形態では、薄膜前駆体インクは、ハロゲン化鉛のモル濃度の20%である第1族金属ハロゲン化物のモル濃度を有してもよい。特定の実施形態では、薄膜前駆体インクは、ハロゲン化鉛のモル濃度の25%である第1族金属ハロゲン化物のモル濃度を有してもよい。ある実施形態では、ハロゲン化鉛溶液および第1族金属ハロゲン化物溶液は、混合中または混合後に、撹拌されてもよい。
【0135】
特定の実施形態では、必要な場合、ハロゲン化鉛前駆体インクに水が添加されてもよい。ある態様では、溶媒は、さらに、2-メトキシエタノールおよびアセトニトリルを有してもよい。ある態様では、2-メトキシエタノールおよびアセトニトリルは、約25:75から約75:25、または少なくとも25:75の体積比で添加されてもよい。ある態様では、溶媒は、体積ベースで、約1:100から約1:1、または約1:100から約1:5のDMFに対する2-メトキシエタノールおよびアセトニトリルの比を有してもよい。ある態様では、溶媒は、体積ベースで、DMFに対して、少なくとも約1:100の2-メトキシエタノールおよびアセトニトリルの比を有してもよい。説明のためであり、記載を特定の理論または機構に限定するものではないが、水分の存在は、ペロブスカイト薄膜結晶の成長に影響を及ぼす。通常の環境下では、水分は、空気から蒸気として吸収され得る。しかしながら、特定の濃度のハロゲン化鉛前駆体インクに水を直接添加することにより、ペロブスカイトPVの結晶化度を制御することができる。好適な水には、蒸留水、脱イオン水、または実質的に汚染物質(鉱物を含む)を含まない他の水源が含まれる。光I-V掃引に基づき、ペロブスカイトPV光-電力変換効率は、水の添加により、完全に乾燥した装置と比較してほぼ3倍になることが分かった。
【0136】
水は、得られるペロブスカイト材料の所望の特性に応じて、各種濃度でハロゲン化鉛前駆体インクに添加され得る。一実施態様では、水は、約1 nL/mLから約1mL/mLの濃度で添加されてもよい。他の実施態様では、水は、約1μL/mLから約0.1mL/mLの濃度で添加されてもよい。他の実施態様では、水は、約1μL/mLから約20μL/mLの濃度で添加されてもよい。
【0137】
次に、ハロゲン化鉛前駆体インクまたは薄膜前駆体インクは、所望の基板上に堆積されてもよい。好適な基板層は、前述の任意の基板層を含んでもよい。前述のように、ハロゲン化鉛前駆体インクまたは薄膜前駆体インクは、各種手段を介して堆積され、これには、これに限られるものではないが、ドロップキャスティング法、スピンキャスティング法、ブレードコーティング法、スロットダイ印刷法、スクリーン印刷法、またはインクジェット印刷法が含まれる。特定の実施形態では、ハロゲン化鉛前駆体インクまたは薄膜前駆体インクは、約5秒から約600秒の期間にわたって、約500rpmから約10,000rpmの速度で基板上にスピンコートされてもよい。一実施形態では、ハロゲン化鉛前駆体インクまたは薄膜前駆体インクを、約3000rpmで約30秒間、基板上にスピンコートされてもよい。ある実施形態では、前駆体インクの複数の後続の成膜を実施し、薄膜層が形成されてもよい。ハロゲン化鉛前駆体インクまたは薄膜前駆体インクは、周囲雰囲気の約0%の相対湿度から約50%の相対湿度の範囲において、基板上に堆積されてもよい。次に、ハロゲン化鉛前駆体インクまたは薄膜前駆体インクが、実質的に水を含まない雰囲気、すなわち、相対湿度が30%未満の雰囲気中で乾燥され、薄膜が形成されてもよい。
【0138】
ハロゲン化鉛前駆体または薄膜前駆体の堆積後、前述のバルキーな有機カチオン(例えば、ベンジルアンモニウム、フェニルエチルアンモニウム、エチルアンモニウム、プロピルアンモニウム、n-ブチルアンモニウム;ブタン-1,4-ジアンモニウム;1-ペンチルアンモニウム;1-ヘキシルアンモニウム;ポリ(ビニルアンモニウム);フェニルエチルアンモニウム;3-フェニル-1-プロピルアンモニウム;4-フェニル-1-ブチルアンモニウム;1,3-ジメチルブチルアンモニウム;3,3-ジメチルブチルアンモニウム;1-ヘプチルアンモニウム;1-オクチルアンモニウム;1-ノニルアンモニウム;1-デシルアンモニウム;1-イコサニルアンモニウム;または本願に記載のまたは
図17乃至
図28に記載の任意の他のバルキーなカチオン)の塩溶液が薄膜に設置され、鉛塩前駆体および第2の塩前駆体の堆積が生じてもよい。バルキーな有機塩には、前述のカチオンの任意の、ハロゲン化物、硝酸塩、亜硝酸塩、カルボキシレート、酢酸塩、アセトニルアセトネート、ギ酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、リン酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、テトラ(ペルフルオロフェニル)ホウ酸塩、ヒドリド、酸化物、過酸化物、水酸化物、窒化物、ヒ酸塩、亜ヒ酸塩、過塩素酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、クロム酸塩、次クロム酸塩、ヨウ素酸塩、臭素酸塩、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、シアン化物、シアン酸塩、イソシアン酸塩、雷酸塩、チオシアネート、イソチオシアネート、アジド、テトラカルボニルコバルト酸塩、カルバモイルジシアノメタニド、ジシアノニトロソメタニド、ジシアナミド、トリシアノメタニド、アミド、および/または過マンガン酸塩が含まれ得る。バルキーな有機カチオン塩溶液は、アルコール、乾燥アセトニトリル、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、アルキル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジアルキルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ホルムアミド、tert-ブチルピリジン、ピリジン、アルキルピリジン、ピロリジン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、およびこれらの組み合わせのような溶媒に、バルキーな有機カチオン塩を溶解させることにより、形成されてもよい。特定の実施形態では、バルキーな有機カチオン塩は、イソプロピルアルコールに溶解されてもよい。特定の実施形態では、バルキーな有機カチオン塩溶液は、0.0001Mから1.0Mの濃度のバルキーな有機カチオン塩を有してもよい。他の実施態様では、バルキーな有機カチオン塩溶液は、0.01Mから0.1Mの濃度のバルキーな有機カチオン塩を有してもよい。特定の実施形態にでは、バルキーな有機カチオン塩溶液は、0.02から0.05Mの間の濃度のバルキーな有機カチオン塩を有してもよい。特定の実施形態では、バルキーな有機カチオン塩溶液は、約0.05Mの濃度のバルキーな有機カチオン塩を有してもよい。バルキーな有機カチオン塩溶液は、溶液成膜に関し本願に記載の任意の方法により、ペロブスカイト材料前駆体薄膜上に堆積されてもよい。これらの方法は、スプレーコーティング法、ドロップキャスティング法、スピンキャスティング法、ブレードコーティング法、スロットダイ印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、またはインクジェット印刷法を含み得る。一実施態様では、バルキーな有機カチオン塩は、ヨウ化1-ブチルアンモニウムヨウ化物であってもよい。別の実施態様では、バルキーな有機カチオン塩は、ヨウ化ベンジルアンモニウムであってもよい。さらに別の実施形態では、バルキーな有機カチオン塩は、ヨウ化フェニルエチルアンモニウムであってもよい。
【0139】
次に、薄膜は、最大約24時間にわたって、約20℃から約300℃の温度で、熱アニールされてもよい。一実施態様では、薄膜は、約50℃の温度で約10分間、熱アニールされてもよい。次に、ペロブスカイト材料活性層は、変換プロセスにより、完成されてもよい。ここでは、前駆体フィルムは、0.001Mから10Mの濃度の溶媒または溶媒混合物(例えば、アセトニトリル、DMF、イソプロパノール、メタノール、エタノール、ブタノール、クロロホルム、クロロベンゼン、ジメチルスルホキシド、水)および塩(例えば、ヨウ化メチルアンモニウム、ヨウ化ホルムアミジニウム、ヨウ化グアニジニウム、1,2,2-トリアミノビニルアンモニウムヨウ化物、5-アミノ吉草酸ヨウ化水素酸塩)を含む溶液で浸漬され、またはリンスされる。また、特定の実施形態では、薄膜は、本段落の第1行目と同じ方法で、熱的にポストアニールされてもよい。
【0140】
ある実施形態では、薄膜が成膜されアニールされた後、鉛塩薄膜上に、第2の塩前駆体(例えば、ヨウ化ホルムアミジニウム、チオシアン酸ホルムアミジニウム、またはチオシアン酸グアニジニウム)が成膜されてもよい。ここで、薄膜は、周囲温度とほぼ等しい温度を有してもよく、または0℃から500℃の間の制御された温度を有してもよい。第2の塩前駆体は、周囲温度、または約25℃から125℃の間の高温で成膜されてもよい。第2の塩前駆体は、公知の各種方法により成膜されてもよく、これには、これに限られるものではないが、スピンコーティング法、ブレードコーティング法、スロットダイ印刷法、インクジェット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、スパッタリング法、PE-CVD法、熱蒸着法、またはスプレーコーティング法が含まれる。ある実施形態では、第2の塩溶液の複数の後続の成膜が実施され、薄膜層が形成されてもよい。ある態様では、第2の塩前駆体は、1または2以上の溶媒を含有する溶液であってもよい。例えば、第2の塩前駆体は、乾燥アセトニトリル、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、アルキル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジアルキルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ホルムアミド、tert-ブチルピリジン、ピリジン、アルキルピリジン、ピロリジン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、およびそれらの組み合わせの1または2以上を含んでもよい。
【0141】
ある実施形態では、本願に記載の任意のバルキーな有機カチオン塩は、第2の塩溶液の成膜前に、第2の塩溶液と組み合わされてもよい。特定の実施形態では、前述のように、バルキーな有機カチオン塩溶が調製され、第2の塩溶液の成膜前に、第2の塩溶液と混合されてもよい。例えば、バルキーな有機カチオン塩溶液は、0.0001Mから1.0Mの間の濃度のバルキーな有機カチオン塩を有してもよい。他の実施態様では、バルキーな有機カチオン塩溶液は、0.01Mから0.1Mの間の濃度のバルキーな有機カチオン塩を有してもよい。特定の実施形態では、バルキーな有機カチオン塩溶液は、0.02から0.05Mの間の濃度のバルキーな有機カチオン塩を有してもよい。特定の実施形態では、バルキーな有機カチオン塩溶液は、約0.05Mの濃度のバルキーな有機カチオン塩を有してもよい。他の実施形態では、バルキーな有機カチオン塩溶液は、ハロゲン化鉛前駆体インクまたは薄膜前駆体インクの成膜後に形成されたハロゲン化鉛薄膜上に成膜されてもよい。別の実施形態では、バルキーな有機カチオン塩溶液は、第2の塩溶液の成膜後に、ペロブスカイト前駆体薄膜上に成膜されてもよい。
【0142】
最後に、ペロブスカイト材料前駆体薄膜を有する基板がアニールされてもよい。基板をアニールすることにより、鉛塩前駆体および第2の塩前駆体は、バルキーな有機カチオンの表面不動態化層を有するペロブスカイト材料(例えば、FAPbI3、GAPb(SCN)3、FASnI3)に変換され得る。アニール処理は、周囲圧力(例えば、高度および大気条件に応じて、約1気圧(760Torr))、または大気圧もしくは周囲圧力未満(例えば、1mTorrから500mTorr)の各種雰囲気で実施されてもよい。アニール雰囲気は、周囲空気、制御された湿度環境(例えば、0~100g H2O/m3のガス)、純アルゴン、純窒素、純酸素、純水素、純ヘリウム、純ネオン、純クリプトン、純CO2、または前述のガスの任意の組み合わせを有してもよい。制御された湿度環境は、絶対湿度もしくは%相対湿度が一定値に保持される環境、または絶対湿度もしくは%相対湿度が所定の設定点もしくは所定の機能により変化する環境を含んでもよい。特定の実施形態では、アニール処理は、0%以上50%以下の相対湿度を有する、制御された湿度環境において行われてもよい。他の実施形態では、アニール処理は、0g H2O/m3ガス以上かつ20g H2O/m3ガス以下の制御された湿度環境において行われてもよい。ある実施形態では、アニール処理は、50℃以上300℃以下の温度で行われてもよい。
【0143】
例えば、特定の実施形態では、FAPbI3ペロブスカイト材料は、以下のプロセスにより形成されてもよい。まず、スピンコーティング法、ブレードコーティング法、またはスロットダイ印刷法により、無水DMF中に溶解されたPbCl2に対するPbI2の比がモル比で約90:10のハロゲン化鉛(II)前駆体が基板上に成膜されてもよい。実質的に水を含まない雰囲気、すなわち、相対湿度が30%未満、または17gのH2O/m3ガス未満の雰囲気において、ハロゲン化鉛前駆体インクは、約1時間(+15分)乾燥され、薄膜が形成されてもよい。その後、薄膜は、約50℃(+10℃)の温度で、約10分間熱アニールされてもよい。他の実施形態では、ハロゲン化鉛前駆体は、インクジェット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ブレードコーティング法、スパッタリング法、PE-CVD法、原子層成膜法、熱蒸着法、またはスプレーコーティング法により、成膜されてもよい。次に、ハロゲン化鉛薄膜上に、イソプロピルアルコール中に0.05Mの濃度を有する1-ブチルアンモニウム塩溶液が成膜されてもよい。次に、スピンコーティングまたはブレードコーティングにより、ハロゲン化鉛薄膜上に、無水イソプロピルアルコールに溶解された15から100mg/mL濃度のホルムアミジニウムヨウ化物を含むホルムアミジニウムヨウ化物前駆体が成膜されてもよい。他の実施形態では、ヨウ化ホルムアミジニウム前駆体は、インクジェット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、スロットダイ印刷法、スパッタリング法、PE-CVD法、原子層成膜法、熱蒸着法、またはスプレーコーティング法により、成膜されてもよい。次に、約25%の相対湿度(約4~7gのH2O/m3ガス)および約100℃から200℃の間で、基板がアニールされ、1-ブチルアンモニウムの表面層を有するヨウ化ホルムアミジニウム鉛(FAPbI3)ペロブスカイト材料が形成されてもよい。別の実施形態では、ヨウ化ホルムアミジニウム前駆体の成膜後に形成された薄膜上に、1-ブチルアンモニウム塩溶液が成膜されてもよい。別の実施形態では、1-ブチルアンモニウム塩溶液は、ハロゲン化鉛前駆体インクの成膜の前に、ハロゲン化鉛前駆体インクと組み合わされてもよい。さらに別の実施態様では、1-ブチルアンモニウム塩溶液は、ホルムアミジニウムヨウ化物前駆体の成膜の前に、ホルムアミジニウムヨウ化物前駆体と組み合わされてもよい。さらに別の実施形態では、1-ブチルアンモニウム塩溶液は、ヨウ化ホルムアミジニウム前駆体の成膜後であって、薄膜および基板をアニールする前に、薄膜上に成膜されてもよい。さらに別の実施形態では、1-ブチルアンモニウム塩溶液は、薄膜および基板のアニール後、薄膜上に成膜されてもよい。
【0144】
他の実施形態では、ヨウ化鉛(II)溶液、ヨウ化セシウム溶液、ヨウ化メチルアンモニウム(MA)塩溶液、および1-ブチルアンモニウム塩溶液を用い、前述の方法を用いて、1-ブチルアンモニウムの表面層を有する、CsiMA1-iPbI3の一般式を有するペロブスカイト材料が得られる。ここで、iは、0から1の間の数に等しい。別の例として、ヨウ化鉛(II)溶液、ヨウ化ルビジウム溶液、ヨウ化ホルムアミジニウム(FA)塩溶液、および1-ブチルアンモニウム塩溶液が使用され、1-ブチルアンモニウム層の表面層を有し、RbiFA1-iPbI3の一般式を有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは、0と1との間の数に等しい。別の例として、ヨウ化鉛(II)溶液、ヨウ化セシウム溶液、ヨウ化ホルムアミジニウム(FA)塩溶液、および1-ブチルアンモニウム塩溶液を用い、前述の方法を用いて、1-ブチルアンモニウム層の表面層を有し、CsiFA1-iPbI3の一般式を有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは、0から1の間の数に等しい。別の例として、ヨウ化鉛(II)溶液、ヨウ化カリウム溶液、ヨウ化ホルムアミジニウム(FA)塩溶液、および1-ブチルアンモニウム塩溶液を使用することにより、1-ブチルアンモニウム層の表面層を有し、KiFA1-iPbI3の一般式を有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは、0と1との間の数に等しい。別の例として、ヨウ化鉛(II)溶液、ヨウ化ナトリウム溶液、ヨウ化ホルムアミジニウム(FA)塩溶液、および1-ブチルアンモニウム塩溶液を使用することにより、1-ブチルアンモニウム層の表面層を有し、NaiFA1-iPbI3の一般式を有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは、0と1との間の数に等しい。別の例として、ヨウ化鉛(II)鉛-塩化物(II)混合溶液、ヨウ化セシウム溶液、ヨウ化ホルムアミジニウム(FA)塩溶液、および1-ブチルアンモニウム塩溶液を使用することにより、1-ブチルアンモニウム層の表面層を有し、CsiFA1-iPbI3-yClyの一般式を有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは、0から1の間の数に等しく、yは、0から3の間の数を表す。
【0145】
他の実施態様では、FAPbI3ペロブスカイト材料は、以下の方法により形成されてもよい。まず、スピンコーティング法、ブレードコーティング法、またはスロットダイ印刷法により、無水DMF中に溶解したPbCl2に対するPbI2のモル比が約90:10のハロゲン化鉛(II)前駆体インクが、基板上に成膜され得る。実質的に水を含まない雰囲気、すなわち、相対湿度が30%未満または17gのH2O/m3未満の雰囲気において、約1時間(+15分)、ハロゲン化鉛前駆体インクが乾燥され、薄膜を形成されてもよい。その後、約50℃(+10℃)で約10分間熱アニールされてもよい。別の実施形態では、ハロゲン化鉛前駆体は、インクジェット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、スパッタリング法、PE-CVD法、原子層成膜法、熱蒸着法、またはスプレーコーティング法により、成膜されてもよい。次に、スピンコーティング法またはブレードコーティング法により、無水イソプロピルアルコールに溶解した15~60mg/mLの濃度のホルムアミジニウムヨウ化物を含むホルムアミジニウムヨウ化物前駆体がハロゲン化鉛薄膜上に成膜されてもよい。他の実施形態では、ヨウ化ホルムアミジニウム前駆体は、インクジェット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、スロットダイ印刷法、スパッタリング法、PE-CVD法、原子層成膜法、ブレードコーティング法、熱蒸着法、またはスプレーコーティング法により、成膜されてもよい。ハロゲン化鉛前駆体およびヨウ化ホルムアミジニウム前駆体を成膜した後、ペロブスカイト材料前駆体薄膜上に、イソプロピルアルコール中に0.04Mの濃度を有するベンジルアンモニウム塩溶液が堆積されてもよい。次に、約25%の相対湿度(約4~7gのH2O/m3ガス)および約100~200℃の間で、基板がアニールされ、ベンジルアンモニウムの表面層を有する、ヨウ化ホルムアミジニウム鉛(FAPbI3)ペロブスカイト材料が形成されてもよい。特定の実施形態では、ヨウ化ホルムアミジニウム前駆体の成膜の前に、ハロゲン化鉛薄膜上にベンジルアンモニウム塩溶液が堆積されてもよい。別の実施形態では、ベンジルアンモニウム塩溶液は、ハロゲン化鉛前駆体インクの堆積の前に、ハロゲン化鉛前駆体インクと組み合わされてもよい。さらに別の実施形態では、ベンジルアンモニウム塩溶液は、ホルムアミジニウムヨウ化物前駆体の成膜の前に、ホルムアミジニウムヨウ化物前駆体と組み合わされてもよい。ある実施形態では、得られたペロブスカイト材料は、表面から離れたバルク材料中に立方晶構造を有してもよい。ペロブスカイト材料の表面近傍にバルキーな有機カチオンが存在する場合、ペロブスカイト材料の表面近傍に、非立方晶の結晶構造が得られ得る。
【0146】
他の実施形態では、前述の方法を用い、ヨウ化鉛(II)溶液、ヨウ化セシウム溶液、ヨウ化メチルアンモニウム(MA)塩溶液、および1-ブチルアンモニウム塩溶液を用いて、ベンジルアンモニウムの表面層を有し、CsiMA1-iPbI3の一般式を有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは、0から1の間の数に等しい。別の例として、前述の方法を用い、ヨウ化鉛(II)溶液、ヨウ化ルビジウム溶液、ヨウ化ホルムアミジニウム(FA)塩溶液、およびベンジルアンモニウム塩溶液を用いて、ベンジルアンモニウム層の表面層を有し、RbiFA1-iPbI3の一般式を有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは、0から1の間の数に等しい。別の例として、前述の方法を用い、ヨウ化鉛(II)溶液、ヨウ化セシウム溶液、ヨウ化ホルムアミジニウム(FA)塩溶液、およびベンジルアンモニウム塩溶液を用いて、ベンジルアンモニウム層の表面層を有し、CsiFA1-iPbI3の一般式を有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは、0と1との間の数に等しい。別の例として、前述の方法を用い、ヨウ化鉛(II)溶液、ヨウ化カリウム溶液、ヨウ化ホルムアミジニウム(FA)塩溶液、およびベンジルアンモニウム塩溶液を用いて、ベンジルアンモニウム層の表面層を有し、KiFA1-iPbI3の一般式を有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは、0と1との間の数に等しい。別の例として、前述の方法を用い、ヨウ化鉛(II)溶液、ヨウ化ナトリウム溶液、ヨウ化ホルムアミジニウム(FA)塩溶液、およびベンジルアンモニウム塩溶液を用いて、ベンジルアンモニウムrの表面層を有し、NaiFA1-iPbI3の一般式を有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは、0と1との間の数に等しい。別の例として、前述の方法を用い、ヨウ化鉛(II)-塩化鉛(II)混合液、ヨウ化セシウム溶液、ヨウ化ホルムアミジニウム(FA)塩溶液、およびベンジルアンモニウム塩溶液を用いて、ベンジルアンモニウム層の表面層を有し、CsiFA1-iPbI3-yClyの一般式を有するペロブスカイト材料が得られてもよい。ここで、iは、0から1の間の数であり、yは、0から3の間の数を表す。
【0147】
以下、ベンジルアンモニウムによりペロブスカイト材料を製造する方法について説明する。まず、PbI2、PbCl2、およびヨウ化セシウム(CsI)をDMFおよびDMSO溶媒の混合物に溶解することにより、ヨウ化鉛前駆体インクを調製する。ヨウ化鉛前駆体を調製するため、CsIをDMSO中に溶解することにより、1.5MのCsI/DMSO溶液を調製する。CsI/DMSO溶液は、特定の実施形態では、室温で1時間から2.5時間の間、1.0mLの無水DMSO当たり1.5mmolのCsIの割合で、DMSO内でCsIを撹拌することにより、CsI/DMSO溶液が調製され得る。次に、PbI2、PbCl2、および無水DMF溶媒の溶液に、前述のCsI溶液が添加され、1.28MのPb2+溶液が形成される。Cs対Pbの比は、1:10であり、およびI対Clの比は、9:1である。特定の実施形態では、CsI溶液の各93.8μLに対して、1.26mmolのPbI2、0.14mmolのPbCl2、および1.0mLの無水DMF溶媒を含む容器に、CsI溶液を添加することにより、1.28MのPb2+溶液が調製されてもよい。Pb2+溶液は、50℃から100℃の温度で1.5時間から2.5時間の間、混合され、冷却され、ヨウ化鉛前駆体インクが形成される。特定の実施形態では、Pb2+溶液は、85℃で2時間撹拌された後、室温環境で1時間溶液を撹拌することにより冷却されてもよい。ある態様では、ヨウ化鉛前駆体インクは、ヨウ化鉛前駆体インクの堆積の前に、濾過されてもよい。特定の実施形態では、ヨウ化鉛前駆体インクを濾過するため、0.2μmのフィルタを使用されてもよい。
【0148】
無水イソプロパノール(IPA)にFAIおよびBzAI塩を溶解することにより、ホルムアミジニウムヨウ化物(FAI)溶液およびベンジルアンモニウムヨウ化物(BzAI)溶液が調製される。それぞれ、0.2MのFAI溶液および0.05MのBzAI溶液が形成される。特定の実施形態では、FAI溶液およびBzAI溶液の両方は、以下のコーティングプロセスの間、75℃に保持されてもよい。
【0149】
次に、ヨウ化鉛前駆体インクが基板上に堆積され、その後アニールされ、ヨウ化鉛膜が形成される。特定の実施形態では、酸化ニッケル(NiO)薄膜層で被覆された基板上に、45℃に保持されたヨウ化鉛前駆体インクがブレードコーティングされ、その後、50℃で10分間アニールされ、ヨウ化鉛膜が形成されてもよい。
【0150】
次に、ペロブスカイト材料層を形成するため、まず、ヨウ化鉛膜が、BzAI溶液の1コートで下塗りされ、その後FAI溶液の3コートで下塗りされる。BzAI溶液およびFAI溶液の各被覆の堆積に引き続き、以下のコーティングを成膜する前に、被覆が乾燥される。特定の実施形態では、BzAIおよびFAIの両方の溶液は、各それぞれの被覆の堆積中に45℃に保持されてもよい。第3のFAIコーティングが堆積された後、基板およびコーティングがアニールされ、ペロブスカイト材料層が形成されてもよい。特定の実施形態では、第3のFAIが堆積された後、基板が直ちに157℃で5分間加熱され、ペロブスカイト材料層がアニールされる。
【0151】
前述の方法は、いくつかの利点を有する。例えば、FAI溶液の堆積の前にBzAI溶液をヨウ化鉛膜に堆積させることにより、2Dペロブスカイト材料の形成による3DのFAPbI
3ペロブスカイト材料の成長用の中間テンプレートが提供され得る。BzAIがヨウ化鉛薄膜と反応して、中間の2Dペロブスカイト材料相が形成されてもよい。FAI溶液の堆積後にFAIと反応した場合、2D相中のBzA
+カチオンは、FA
+カチオンと完全にまたは部分的に置換され、3DのFAPbI
3骨格が形成される。また、BzAIは、3DのFAPbI
3ペロブスカイト材料中の結晶欠陥を不動態化し得る。前述のプロセスにより形成されたFAPbI
3薄膜のフォトルミネセンス強度は、BzAIを含まないプロセスにより形成されたFAPbI
3薄膜のフォトルミネセンス強度に比べて、より明るい(高い)。
図31には、本願に記載されるように、BzAIを添加せずに形成されたペロブスカイト材料光起電装置3105と、BzAIを用いて形成されたペロブスカイト材料光起電装置3110との両方の光学(吸光度)およびフォトルミネセンス像を示す。
図31には、ペロブスカイト材料光起電装置3110の光学画像は、より暗くより高い光吸光度を示し、ペロブスカイト材料光起電装置3110のフォトルミネセンス画像は、ペロブスカイト材料光起電装置3105よりも明るいことが示唆される。また、電力出力は、BzAIが導入されたペロブスカイト材料光起電装置からの方が大きいことが観測されている。
図32には、光起電装置3105のような、BzAIを含まない光起電装置に対応する電力出力曲線3205、および光起電装置3110のような、本願に記載のBzAIを含む光起電装置に対応する電力出力曲線3210を示す。
図32に示された電力出力測定値は、定常状態特性を示すため、100mW/cm
2、AM1.5Gの照明の下、30秒間の暗測定を挟む180秒間にわたって、最大電力点で測定された。
図32から分かるように、製造中にBzAIを導入した光起電力装置は、BzAIを含まない光起電力装置(15.0mW/cm
2、770 mV、および19.5mA/cm
2)よりも、単位面積当たりの電力(16.0mW/cm
2)が大きく、電圧が高く(785 mV)、単位面積当たりの電流が大きい(20.3mA/cm
2)。
図33には、サンプル「5r」ラインとしてラベル付けされた、BzAIなしで製造されたペロブスカイト材料光起電装置、およびサンプル「10r」ラインとしてラベル付けされた、BzAIありで製造されたペロブスカイト材料光起電装置の電流-電圧(I-V)の走査3320を示す。
図33から分かるように、BzAIを用いて製造されたペロブスカイト材料光起電装置は、BzAIを用いずに製造されたペロブスカイト材料光起電装置よりも、バイアス電圧の範囲にわたってより大きな電流を生成する。また、
図34には、BzAIを用いずに製造された6つのペロブスカイト材料光起電装置(サンプル5、r=リバーススキャン、f=フォワードスキャン、およびs=定常状態測定)と、BzAIを用いて製造された6つのペロブスカイト材料光起電装置(サンプル10)の、開回路電圧(Voc)、短絡電流密度(Jsc)、充填率(FF)、および電力変換効率(PCE)のボックスプロットを示す。
図35には、BzAIなしで製造された6つのペロブスカイト材料光起電装置(プロット3505)、およびBzAIありで製造された6つのペロブスカイト材料光起電装置(プロット3510)の外部量子効率(EQE)を示す。
図35の各EQE曲線を積分することにより、単位mA/cm
2でのJscが推算され、これは、BzAIを用いて製造されたペロブスカイト材料装置では、BzAIなしで製造されたペロブスカイト材料装置よりも高いJsc(EQE曲線下の面積)を示すことを示している。最後に、
図36には、BzAIなしで製造されたペロブスカイト材料光起電性装置のアドミタンス分光プロット3605、およびBzAIを用いて製造されたペロブスカイト材料光起電性装置のアドミタンス分光プロット3610を示す。アドミタンス分光プロット3610には、ベンジルアンモニウムを含まないサンプル装置のアドミタンス分光プロット3605と比較した場合、ベンジルアンモニウムを含むサンプル装置の抑制されたイオンマイグレーションが示されている。過剰なイオンマイグレーションは、ペロブスカイト材料装置の特性および耐久性に悪影響を及ぼすことが知られており、これは、ペロブスカイト材料光起電装置にベンジルアンモニウムが含まれると、装置の特性および耐久性が向上し得ることを示すものである。
【0152】
(ジアンモニウムブタンカチオン強化ペロブスカイト)
ペロブスカイト材料の結晶構造への1,4-ジアンモニウムブタン、または後述する他のポリアンモニウム有機化合物の導入により、その材料の特性は、改善され得る。一実施態様では、以下に示すように、1,4-ジアンモニウムブタンをFAPbI3ペロブスカイトに添加することにより、有意な特性を有するペロブスカイト材料が提供され得る。ある実施形態では、1,4-ジアンモニウムブタンは、前述の方法において、バルキーな有機カチオン塩の代わりに1,4-ジアンモニウムブタン塩を用いて、ペロブスカイト材料に導入されてもよく、1,4-ジアンモニウムブタン塩(または本願に記載の他の有機ポリアンモニウム塩)の添加は、ペロブスカイト製造方法の任意の段階で、行われてもよい。このバルキーな有機カチオン塩の添加については、前述のように記載されている。1,4-ジアンモニウムブタンのような有機カチオンをペロブスカイト材料の結晶構造に導入すると、ペロブスカイト材料の一般式が、本願に記載のペロブスカイト材料の「理想的な」化学量論からずれる結果となり得る。例えば、そのような有機カチオンを含有させると、ペロブスカイト材料には、一般式FAPbI3に対して、化学量論的または超化学量論的な式が得られ得る。この場合、ペロブスカイト材料の一般式は、CxMyXzで表されてもよい。ここで、x、yおよびzは、実数である。
【0153】
一実施態様では、1,4-ジアンモニウムブタン塩溶液は、堆積前にハロゲン化鉛前駆体インク溶液に添加されてもよい。ある実施形態では、1,4-ジアンモニウムブタン塩は、0.001mol%から50mol%の濃度で、ハロゲン化鉛前駆体インク溶液に添加されてもよい。ある実施形態では、1,4-ジアンモニウムブタン塩は、0.1mol%から20mol%の濃度で、ハロゲン化鉛前駆体インク溶液に添加されてもよい。特定の実施形態では、1,4-ジアンモニウムブタン塩は、1mol%から10mol%の濃度で、ハロゲン化鉛前駆体インク溶液に添加されてもよい。
【0154】
別の実施形態では、1,4-ジアンモニウムブタン塩は、前述のように、ホルムアミジニウム塩溶液をハロゲン化鉛前駆体薄膜と接触させる前に、ホルムアミジニウム塩溶液に添加されてもよい。特定の実施形態では、1,4-ジアンモニウムブタン塩は、0.001mol%から50mol%の濃度でヨウ化ホルムアミジニウム塩溶液に添加されてもよい。ある実施形態では、1,4-ジアンモニウムブタン塩は、0.1mol%から20mol%の濃度でヨウ化ホルムアミジニウム塩溶液に添加されてもよい。特定の実施形態では、1,4-ジアンモニウムブタン塩は、1mol%から10mol%の濃度でヨウ化ホルムアミジニウム塩溶液に添加されてもよい。
【0155】
他の実施形態では、1,4-ジアンモニウムブタン塩前駆体溶液は、ハロゲン化鉛前駆体インクの堆積後に形成されたハロゲン化鉛薄膜に、またはホルムアミジニウム塩溶液の堆積後にペロブスカイト前駆体薄膜に堆積されてもよい。特定の実施形態では、1,4-ジアンモニウムブタン塩前駆体溶液は、0.001mol%から50mol%の濃度を有してもよい。ある実施形態では、1,4-ジアンモニウムブタン塩前駆体溶液は、0.1mol%から20mol%の濃度を有してもよい。特定の実施形態では、1,4-ジアンモニウムブタン塩前駆体溶液は、1mol%から10mol%の濃度を有してもよい。
【0156】
1,4-ジアンモニウムブタンを含むペロブスカイト材料を成膜する一方法は、基板上に鉛塩前駆体を堆積し、鉛塩薄膜を形成するステップと、第1の有機カチオン塩を含む有機カチオン塩前駆体を前記鉛塩薄膜上に堆積し、ペロブスカイト前駆体薄膜を形成するステップと、を有する。鉛塩前駆体または有機カチオン塩前駆体は、1,4-ジアンモニウムブタン塩を含んでもよく、または1,4-ジアンモニウムブタン塩前駆体は、鉛塩薄膜またはペロブスカイト前駆体薄膜上に堆積されてもよい。最後に、基板およびペロブスカイト前駆体薄膜がアニールされ、1,4-ジアンモニウムブタンを含むペロブスカイト材料が形成されてもよい。鉛塩前駆体および有機カチオン塩前駆体は、ペロブスカイト薄膜を生成するために使用される、本願に記載の任意の溶液を有してもよい。
【0157】
1,4-ジアンモニウムブタンにおいて、アンモニウム基間の長さは、ホルムアミジニウムヨウ化鉛ペロブスカイト材料の結晶格子におけるホルムアミジニウムカチオン間の長さとほぼ同じである。従って、1,4-ジアンモニウムブタンは、FAPbI3材料の形成中に、2つのホルムアミジニウムイオンと置換されてもよい。別の実施形態では、ペロブスカイト材料の形成中に、ハロゲン化鉛前駆体インクに他のアルキルポリアンモニウム塩が添加されてもよい。例えば、1,8ジアンモニウムオクタン、ビス(4-アミノブチル)アミン、およびトリス(4-アミノブチル)アミンが添加されてもよい。また、1,4-ジアンモニウムブタンを含むポリアンモニウムポリカチオンは、バルキーな有機カチオンに関して前述した機構と同様の機構により、バルキーな有機カチオンと同じ利点を提供し得る。
【0158】
図13は、ペロブスカイト材料を製造するプロセスの間、1,4-ジアンモニウムブタン塩の添加の効果が、得られるペロブスカイト7000に及ぼす影響を示す、様式化された図である。
図13に示すように、1,4-ジアンモニウムブタンカチオン7020は、ペロブスカイト材料結晶格子中の2つのホルムアミジニウムカチオン7010と置換されてもよい。FAPbI
3ペロブスカイトでは、ホルムアミジニウムカチオン間の間隔は、約6.35Åである。1,4-ジアンモニウムブタンカチオンの長さは、約6.28Åであり、差はわずか0.07Åである。従って、1,4-ジアンモニウムブタンカチオンは、ペロブスカイト結晶格子の特性または構造を大きく変化させることなく、ペロブスカイト結晶格子に置換することができる。ある実施形態では、ペロブスカイト材料への1,4-ジアンモニウムブタンカチオンの添加により、ペロブスカイト材料の特性および安定性が高められてもよい。1,4-ジアンモニウムブタンカチオンは、ペロブスカイト材料内の剛性構造として機能し、その構造的および化学的耐久性を高める。例えば、ある実施態様では、1,4-ジアンモニウムブタンカチオンを有するペロブスカイト材料は、1,4-ジアンモニウムブタンカチオンを含まないペロブスカイト材料と比較して、優れた乾燥熱安定性を示し得る。また、1,4-ジアンモニウムブタンカチオンを添加したペロブスカイト材料は、ペロブスカイト材料の発光スペクトルにおける青色シフトを示し得る。ある実施形態では、1,4-ジアンモニウムブタンカチオンは、0から20mol%の間の濃度でホルムアミジニウム塩溶液に添加されてもよい。他の実施態様では、1,4-ジアンモニウムブタンカチオンは、1から5mol%の間の濃度でホルムアミジニウム塩溶液に添加されてもよい。特定の実施形態では、1,4-ジアンモニウムブタンカチオンは、5mol%の濃度でホルムアミジニウム塩溶液に添加される。
【0159】
実験的証拠は、ペロブスカイト材料に対して最大20%の1,4-ジアンモニウムブタンの添加では、格子パラメータがあまりシフトしないことを示している。
図14には、0mol%、5mol%、10mol%および20mol%の1,4-ジアンモニウムブタンヨウ化物(「DABI」)を有するペロブスカイトのX線回折ピークを示す。各濃度において、主要ピークは同じ点で生じ、ペロブスカイト材料の格子パラメータは、1,4-ジアンモニウムブタンを0mol%と20mol%の間の濃度で加えても、あまり変化しないことが示されている。1、4‐ジアンモニウムブタンの添加は、Cu‐Kα放射線で13°2θ未満の小さな強度の回折を形成し、これは、少量の2Dのまたは層状のペロブスカイト相を示唆する。
【0160】
図15には、85℃の温度、0%の相対湿度で7日間曝露された、0mol%、1mol%、2.5mol%および5mol%のペロブスカイトサンプルの画像を提供する。0mol%のDABIを有するペロブスカイト材料は、1日後に顕著な明るい色を示し、7日後にはさらに顕著な黄変を示す。これは、試験条件に曝露された1日後に、0mol%のDABIを有するペロブスカイト材料が大きく劣化したことを示す。1mol%、2.5mol%および5mol%のペロブスカイト材料サンプルは、全て7日後も暗いままであり、1mol%のDABIの添加は、ペロブスカイト材料のいわゆる「乾熱」安定性を大きく高めることが示されている。
【0161】
また、ペロブスカイト材料への1,4-ジアンモニウムブタンの添加の結果、1,4-ジアンモニウムブタンを含まないペロブスカイト材料と比較した場合、ペロブスカイト材料から見られるフォトルミネセンスのわずかな青色シフトが生じる。この青色シフトは、1,4-ジアンモニウムブタンの添加により生じるペロブスカイト材料内のトラップ状態の不動態化に起因する。この青色シフトは、ペロブスカイト材料への1、4‐ジアンモニウムブタンの添加により、ペロブスカイト材料の結晶構造が変化せずに、ペロブスカイト材料の結晶格子の欠陥密度が減少することを示している。例えば、1,4-ジアンモニウムブタンを含まないFAPbI3ペロブスカイト材料と比べて、1,4-ジアンモニウムブタンが20モル%添加されたFAPbI3ペロブスカイト材料に認められる青色シフトは、1,4-ジアンモニウムブタンを含まないときの1.538eVから、20mol%の1,4-ジアンモニウムブタンを含む1.552eVまで、0.014eVの変化であることが観測されている。
【0162】
他の実施形態では、ペロブスカイト材料の形成中に、他のアンモニウム錯体が添加されてもよい。例えば、
図16には、3つのアンモニウム化合物、1,8-ジアンモニウムオクタン、ビス(4-アミノブチル)-アンモニウム、およびトリス(4-アミノブチル)-アンモニウムを示すが、これらは、1,4-ジアンモニウムブタンカチオンに関する前述の方法と同じ方法で、ペロブスカイト材料に添加されてもよい。1,8-ジアンモニウムオクタンは、前述のように、ペロブスカイト材料の形成中に導入された場合、FAPbI
3ペロブスカイト材料結晶格子の2つのホルムアミジニウムカチオン(「Aサイト」)の空間を占有してもよい。ビス(4-アミノブチル)-アンモニウムは、前述のようにペロブスカイト材料の形成中に導入された際に、FAPbI
3ペロブスカイト材料結晶格子の3つのAサイトの空間を占めてもよい。トリス(4-アミノブチル)-アンモニウムは、前述のようにペロブスカイト材料の形成中に導入された際に、FAPbI
3ペロブスカイト材料結晶格子の4つのAサイトの空間を占めてもよい。
図16A~
図16Cには、
図16に示す3つのアンモニウム化合物のFAPbI
3ペロブスカイト材料結晶格子に対する導入の、様式化された図を提供する。
図16Aは、FAPbI
3ペロブスカイト材料結晶格子7100への1,8-ジアンモニウムオクタンの導入の様式化された図である。
図16Aに示すように、1,8-ジアンモニウムオクタンカチオン7120は、ペロブスカイト材料結晶格子中の2つのホルムアミジニウムカチオン7110と置換されてもよい。
図16Bは、FAPbI
3ペロブスカイト材料結晶格子7200へのビス(4-アミノブチル)-アンモニウムの導入の様式化された図である。
図16Bに示すように、ビス(4-アミノブチル)-アンモニウムカチオン7220は、ペロブスカイト材料結晶格子中の3つのホルムアミジニウムカチオン7210と置換されてもよい。
図16Cは、FAPbI
3ペロブスカイト材料結晶格子7300へのトリス(4-アミノブチル)-アンモニウムの導入の様式化された図である。
図16cに示されるように、トリス(4-アミノブチル)-アンモニウムカチオン7320は、ペロブスカイト材料結晶格子中の4つのホルムアミジニウムカチオン7310と置換されてもよい。他の実施形態では、2から20個の炭素原子を有する炭素鎖を有するアルキルジアンモニウム錯体が、ペロブスカイト材料に添加されてもよい。ある態様では、アンモニウム錯体の組合せがペロブスカイト材料に添加されてもよい。
【0163】
(タンタルおよびニオブの酸化物ナノ粒子)
ある態様では、本開示を通して記載の界面層(IFL)は、金属酸化物ナノ粒子の層であってもよい。金属(V)酸化物ナノ粒子は、一般式M2O5を有する金属(V)酸化物コアを含む。特に、ニオブ(V)およびタンタル(V)の酸化物ナノ粒子の両方が、ペロブスカイト材料PV装置における電子輸送材料層に利用されてもよい。
【0164】
通常、各種光起電装置において、金属酸化物は電子輸送層(ETL)として機能する。しかしながら、これまで金属酸化物は、ペロブスカイト材料PVにおいて限定的な利用性しかない。これらの成膜には、しばしば高いアニール温度または酸化条件が必要となるが、これには、金属酸化物の成膜の前に堆積された任意のペロブスカイト材料を不安定化または劣化させる可能性があるためである。金属酸化物ナノ粒子は、装置製造から酸化物形成を分離する。金属酸化物ナノ粒子は、ペロブスカイト材料装置の製造前に製造され、各種溶媒に溶解し得る。可溶性金属酸化物ナノ粒子は、湿式合成法により調製され、安定な配位子で官能化され、可溶性金属酸化物インクが形成され得る。これは、マイルドな条件下、低温で処理可能であり、予め成膜されたペロブスカイト材料層に対する損傷を低減しまたは排除する。タンタル(V)酸化物とニオブ(V)酸化物の両方は、それらの極めて低いイオン化電位(真空で-8eV)のため、ペロブスカイト材料PVセル中の電子輸送層用の理想的な金属酸化物であり、装置動作中のカソードからの正孔を効果的にブロックすることができる。
【0165】
図37は、特定の実施形態による、金属(V)酸化物ナノ粒子ETLが導入されたペロブスカイト材料装置3700の様式化された図である。ペロブスカイト材料装置3700は、基板3711および3712、電極3721および3722、IFL3732、ペロブスカイト材料層3741、ならびにETL層3731を有する。基板3711および3712は、本願に記載の任意の基板材料を有してもよく、電極3721および3722は、本願に記載の任意の電極材料を有してもよく、IFL3732は、本願に記載の任意のIFL材料を有してもよい。ある実施形態では、ペロブスカイト材料層3741は、本願に記載の任意のペロブスカイト材料を含んでもよい。特定の実施形態では、ペロブスカイト材料3741は、有機「C」カチオンとして、ホルムアミジニウムのみを含む、本願に記載のペロブスカイト材料を有してもよい。特定の実施形態では、ペロブスカイト材料3741は、本願に記載のような、バルキーなカチオン含有ホルムアミジニウムヨウ化鉛ペロブスカイトであってもよい。別の特定の実施形態では、ペロブスカイト材料3741は、本願に記載のような、ジアンモニウムブタンを含有するホルムアミジニウムヨウ化鉛ペロブスカイトであってもよい。ETL層3731は、本願にさらに記載のような金属(V)ナノ粒子を含み、また、IFLとして好適な任意の他の材料を含んでもよい。特定の実施形態では、ETL層3731は、酸化タンタル(V)ナノ粒子、酸化ニオブ(V)ナノ粒子、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。他の実施態様では、ETL層3731は、タンタル(V)およびニオブ(V)の合金を含むナノ粒子を含んでもよく、そのようなナノ粒子は、(Nb
xTa
1-x)
2O
5として表される一般式を有してもよい。ここで、xは、ゼロから1の間の数である。ある実施形態では、ETL層3731は、追加の界面層(IFL)を含んでもよい。ある実施形態では、ETL層3731は、成膜前に、金属(V)酸化物ナノ粒子を溶媒中に溶解して製造された金属(V)酸化物ナノ粒子インクを、ブレードコーティング、ドロップキャスティング、スピンキャスティング、スロットダイ印刷、グラビアコーティング、リバースグラビアコーティング、スクリーン印刷、またはインクジェット印刷することにより、成膜されてもよい。
【0166】
図38は、特定の実施形態による、金属(V)酸化物ナノ粒子ETLが導入されたペロブスカイト材料装置3800の様式化された図である。ペロブスカイト材料装置3800は、基板3811および3812、電極3821および3822、正孔輸送層(HTL)3832、ペロブスカイト材料層3841、およびフラーレンIFL3831、ならびに金属(V)酸化物ナノ粒子層3851を有する。基板3811および3812は、本願に記載の任意の基板材料を有してもよく、電極3821および3822は、本願に記載の任意の電極材料を有してもよく、HTL 3832は、正孔輸送(p型)特性を有する本願に記載の任意のIFL材料を有してもよい。ある実施形態では、ペロブスカイト材料層3841は、本願に記載の任意のペロブスカイト材料を含んでもよい。特定の実施形態では、ペロブスカイト材料3841は、有機「C」カチオンとしてホルムアミジニウムのみを含む、本願に記載のペロブスカイト材料を含んでもよい。特定の実施形態では、ペロブスカイト材料3841は、本願に記載のように、バルキーなカチオン含有ホルムアミジニウムヨウ化鉛ペロブスカイトであってもよい。別の特定の実施形態では、ペロブスカイト材料3841は、本願に記載のように、ジアンモニウムブタンを含むホルムアミジニウムヨウ化鉛ペロブスカイトであってもよい。フラーレン層3831は、本願に記載の任意のフラーレンを含み、これには、これに限られるものではないが、C60およびC60の官能化誘導体が含まれる。金属(v)酸化物ナノ粒子層3851は、本願に記載のような金属(V)ナノ粒子を含み、特定の実施形態は、酸化タンタル(V)ナノ粒子、酸化ニオブ(V)ナノ粒子、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。ある実施形態では、金属(v)酸化物ナノ粒子層3851は、成膜前に、金属(V)酸化物ナノ粒子を溶媒中に溶解して生成した金属(V)酸化物ナノ粒子インクを、ブレードコーティング、ドロップキャスティング、スピンキャスティング、スロットダイ印刷、グラビアコーティング、リバースグラビアコーティング、スクリーン印刷、またはインクジェット印刷することにより、成膜されてもよい。
【0167】
図39は、特定の実施形態による、金属(V)酸化物ナノ粒子ETLが導入されたペロブスカイト材料装置3900の様式化された図である。ペロブスカイト材料装置3900は、酸化アルミニウム(Al
2O
3)層3911、ガラス層3912、ITO層3922、クロム層3923、アルミニウム層3921、HTL3932、ペロブスカイト材料層3941、ETL3931、および金属(V)酸化物ナノ粒子層3951を有する。ITO層3922、Cr層3923、およびAl層3921は、本願の他の図に関して示された任意の電極層と同様、電極として機能する。HTL3932は、正孔輸送(p型)特性を有する、本願に記載の任意のIFL材料を含んでもよい。ある実施形態では、ペロブスカイト材料層3941は、本願に記載の任意のペロブスカイト材料を含んでもよい。特定の実施形態では、ペロブスカイト材料3941は、有機「C」カチオンとして、ホルムアミジニウムのみを含む、本願に開示のペロブスカイト材料を含んでもよい。特定の実施形態では、ペロブスカイト材料3941は、本願に記載のように、バルクカチオン含有ホルムアミジニウムヨウ化鉛ペロブスカイトであってもよい。別の特定の実施形態では、ペロブスカイト材料3941は、本願に記載のように、ジアンモニウムブタンを含有するホルムアミジニウムヨウ化鉛ペロブスカイトであってもよい。ETL3931は、電子輸送(n型)特性を有する本願に記載の任意のIFL材料を有してもよい。金属(v)酸化物ナノ粒子層3951は、本願に記載のように、金属(V)ナノ粒子を含み、特定の実施形態では、酸化タンタル(V)ナノ粒子、酸化ニオブ(V)ナノ粒子、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。ある実施形態では、金属(v)酸化物ナノ粒子層3851は、成膜前に、金属(V)酸化物ナノ粒子を溶媒中に溶解して生成した金属(V)酸化物ナノ粒子インクを、ブレードコーティング、ドロップキャスティング、スピンキャスティング、スロットダイ印刷、グラビアコーティング、リバースグラビアコーティング、スクリーン印刷、またはインクジェット印刷することにより、成膜されてもよい。
【0168】
図40は、特定の実施形態による、金属(V)酸化物ナノ粒子ETLが導入されたペロブスカイト材料装置4100の様式化された図である。ペロブスカイト材料装置4100は、酸化アルミニウム(Al
2O
3)層4111、ガラス層4112、ITO層4122、クロム層4123、アルミニウム層4121、Al
2O
3層4132、NiO層4133、ペロブスカイト材料層4141、C60のIFL4131、および金属(V)酸化物ナノ粒子層4151を有する。ITO層4122、およびCr層4123、およびAl層4121は、本願の他の図に関して示された任意の電極層と同様の方法で、電極として機能する。NiO層4133およびAl
2O
3層4132は、ともに
図38のHTL3832にと同様のHTLとして機能してもよい。ある実施形態では、ペロブスカイト材料層4141は、本願に記載の任意のペロブスカイト材料を含んでもよい。特定の実施形態では、ペロブスカイト材料4141は、有機「C」カチオンとしてホルムアミジニウムのみを含む、本願に記載のペロブスカイト材料を含んでもよい。特定の実施形態では、ペロブスカイト材料4141は、本願に記載のように、バルキーなカチオン含有ホルムアミジニウムヨウ化鉛ペロブスカイトであってもよい。別の特定の実施形態では、ペロブスカイト材料4141は、本願に記載のような、ジアンモニウムブタンを含有するホルムアミジニウムヨウ化鉛ペロブスカイトであってもよい。C60のIFL4131は、C60分子およびC60の官能化誘導体を含んでもよい。金属(v)酸化物ナノ粒子層4151は、本願に記載のように、金属(V)ナノ粒子を含み、特定の実施形態では、酸化タンタル(V)ナノ粒子、酸化ニオブ(V)ナノ粒子、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。ある実施形態では、金属(v)酸化物ナノ粒子層4151は、成膜前に、金属(V)酸化物ナノ粒子を溶媒中に溶解して生成した金属(V)酸化物ナノ粒子インクを、ドロップキャスティング、スピンキャスティング、スロットダイ印刷、スクリーン印刷、またはインクジェット印刷することにより、成膜されてもよい。
【0169】
図41は、特定の実施形態による、金属(V)酸化物ナノ粒子ETLが導入されたペロブスカイト材料装置4200の様式化された図である。ペロブスカイト材料装置4200は、Al
2O
3層4211、ガラス層4212、ITO層4222、クロム層4223、アルミニウム層4221、HTL4232、ペロブスカイト材料層4241、ETL4231、および金属(V)酸化物ナノ粒子層4251を有する。ITO層4222、Cr層4223、およびAl層4221は、本願の他の図に関して示された任意の電極層と同様の方法で、電極として機能する。HTL4232は、正孔輸送(p型)特性を有する、本願に開示の任意のIFL材料を有してもよい。ある実施形態では、ペロブスカイト材料層4241は、本願に記載の任意のペロブスカイト材料を含んでもよい。特定の実施形態では、ペロブスカイト材料4241は、有機「C」カチオンとしてホルムアミジニウムのみを含む、本願に記載のペロブスカイト材料を含んでもよい。特定の実施形態では、ペロブスカイト材料4241は、本願に記載のように、バルキーなカチオン含有ホルムアミジニウムヨウ化鉛ペロブスカイトであってもよい。別の特定の実施形態では、ペロブスカイト材料4241は、本願に記載のように、ジアンモニウムブタンを含有するホルムアミジニウムヨウ化鉛ペロブスカイトであってもよい。ETL4231は、電子輸送(n型)特性を有する、本願に記載の任意のIFL材料を有してもよい。金属(v)酸化物ナノ粒子層4251は、本願に記載のような、金属(V)酸化物ナノ粒子を含み、特定の実施形態では、酸化タンタル(V)ナノ粒子、酸化ニオブ(V)ナノ粒子、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。ある実施形態では、金属(v)酸化物ナノ粒子層4251は、成膜前に、金属(V)酸化物ナノ粒子を溶媒中に溶解して生成した金属(V)酸化物ナノ粒子インクを、ブレードコーティング、ドロップキャスティング、スピンキャスティング、グラビアコーティング、リバースグラビアコーティング、スロットダイ印刷、スクリーン印刷、またはインクジェット印刷することにより、成膜されてもよい。特定の実施形態では、ETL4231は、電子輸送材料であり、ペロブスカイト材料層4241からは迅速に電子を抽出するものの、正孔を効果的にブロックしてもよい。そのような配置では、金属(V)酸化物ナノ粒子層4251は、ETL4231がブロックしない正孔をブロックしてもよい。
【0170】
ある態様では、金属(v)酸化物ナノ粒子層は、本開示に記載の任意のIFL層として使用されてもよい。例えば、金属(v)酸化物ナノ粒子は、
図1、2、3、または4に示される任意のIFLの全体または一部として利用されてもよい。ある態様では、金属(v)酸化物ナノ粒子は、本願に記載されるように、マルチレイヤIFLの単一層中に含まれてもよい。本開示の金属(v)酸化物ナノ粒子は、ペロブスカイト材料PV装置中のペロブスカイト材料層に隣接して配置されてもよい。例えば、本開示の金属(v)酸化物ナノ粒子は、
図1のIFL1050、
図2のIFL3909もしくはCTL3910(またはその両方の組み合わせ)、
図3のIFL3909aもしくはCTL3910a(またはその両方の組み合わせ)、または
図4のIFL3909bもしくはCTL3910b(またはその両方の組み合わせ)として利用されてもよい。金属(v)酸化物粒子、特に、酸化タンタル(V)ナノ粒子および酸化ニオブ(V)ナノ粒子を合成し、成膜する方法は、以下に記載される。
【0171】
図42には、金属(V)酸化物ナノ粒子コアを調製する一例の反応を示す。金属(V)酸化物ナノ粒子コアは、有機酸の存在下、金属(V)アルコキシド前駆体(M(OR)
5)および水から合成される。ある態様では、有機酸は、アルキルカルボン酸であってもよい。特定の実施形態では、金属は、タンタル(V)またはニオブ(V)であってもよい。ある実施形態では、金属(V)アルコキシド前駆体は、メトキシド、エトキシド、n-プロポキシド、イソプロポキシド、および(n、iso、sec、またはtert)-ブトキシド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。特定の実施形態では、金属(V)アルコキシド前駆体は、金属(V)エトキシド(M(OEt)
5)であってもよい。
図42に示す実施形態では、有機酸はイソ酪酸であり、反応はn-プロパノール溶液中で行われる。しかしながら、他の実施形態では、任意のアルコールが使用され、これには、これに限られるものではないが、n-ブタノール、2-ブタノール、2-メチルブタン-2-オールが含まれる。また、アルコール溶液は、水を含んでも含まなくてもよい。
図42に示すように、得られた金属(V)酸化物ナノ粒子コア4310は、2つの金属原子に対して5つの酸素原子の比を有する。しかしながら、
図42のナノ粒子の表面に示された2つの金属原子に対する5つの酸素原子の比は、一例を示す目的のみのために示されていることに留意する必要がある。ナノ粒子の表面は、内部および外部の不純物、バルク構造と比較した表面構造における不一致、または表面ドーピングのため、不規則であっても、「完全な」化学量論から逸脱してもよいことが理解される必要がある。金属(V)酸化物ナノ粒子コア4310の表面で、水素原子が酸素原子と結合してもよく、有機リガンドは、表面で金属原子と結合されてもよい。
図42に示される態様では、イソ酪酸リガンドは、ナノ粒子コア4310の表面で金属原子と結合する。ある態様では、ナノ粒子コアは、以下に記載のリガンド交換プロセスの前に、溶液中に残留してもよい。他の態様では、ナノ粒子コアを形成する反応の完了後、ナノ粒子コアは、従来の任意の方法により、単離されてもよい。例えば、ナノ粒子コアを単離する1つの方法は、n-プロパノール溶液におけるナノ粒子の懸濁液を遠心分離して、ナノ粒子コアを溶液から分離するステップと、ナノ粒子コアを別々に溶媒に溶解するステップと、溶液に沈殿促進化合物を添加し、ナノ粒子コアを沈殿させるステップと、沈殿したナノ粒子コアを遠心分離して、これらを溶液から分離するステップと、を有してもよい。ある態様では、分離されたナノ粒子コアは、別の溶媒に溶解され、沈殿され、再度遠心分離され、ナノ粒子コアがさらに洗浄されてもよい。特定の実施形態では、ナノ粒子コアは、5000~15000rpmで1~15分間、遠心分離され、分離後にヘキサン溶液に溶解され、ヘキサン溶液に添加された酢酸メチルにより沈殿されてもよい。ある実施形態では、ナノ粒子コアは、10000rpmで10分間、遠心分離され、分離後にヘキサン溶液に溶解され、ヘキサン溶液に添加された酢酸メチルにより、沈殿されてもよい。
【0172】
図42に示すように、ナノ粒子コア4310の合成後、次に、イソ酪酸リガンドは、
図43に示すように、アルキルシロキサンリガンドと交換されてもよい。特定の実施形態では、アルキルシロキサンリガンドは、イソブチルシロキサンであってもよい。まず、アルコール溶液中で、ナノ粒子コアが1または2以上のトリアルコキシアルキルシランと混合される。特定の実施形態では、トリアルコキシアルキルシランは、トリメトキシ(イソブチル)シランである。他の実施形態では、トリアルコキシアルキルシランは、トリ(アルコキシ)イソブチルシラン、トリ(アルコキシ)アリルシラン、トリ(アルコキシ)ビニルシラン、トリ(アルコキシ)-n-プロピルシラン、トリ(アルコキシ)-n-ブチルシラン、トリ(アルコキシ)-sec-ブチルシラン、トリ(アルコキシ)-tert-ブチルシラン、トリ(アルコキシ)フェニルシラン、トリ(アルコキシ)-n-オクチルシラン、トリ(アルコキシ)イソオクチルシラントリ(アルコキシ)-n-ドデシルシラン、トリ(アルコキシ)-4-(トリメチルシリル)フェニルシラン、トリ(アルコキシ)-p-トリルシラン、トリ(アルコキシ)-(4)-フルオロフェニルシラン、トリ(アルコキシ)-4-クロロフェニルシラン、トリ(アルコキシ)-4-ブロモフェニルシラン、トリ(アルコキシ)-4-ヨードフェニルシラン、トリ(アルコキシ)-4-シアノフェニルシラン、トリ(アルコキシ)ベンジルシラン、トリ(アルコキシ)メチルシラン、トリ(アルコキシ)エチルシラン、トリ(アルコキシ)-4-(トリフルオロメチル)フェニルシラン、トリ(アルコキシ)-4-アンモニウムブチルシラン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。ここで、「アルコキシ」は、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、tert-ブトキシ、またはフェノキシ基である。また、トリアルコキシアルキルシランとして、前述の化合物のオルトおよびメタ異性体を含む任意の異性体が選択されてもよい。
図43に示す実施形態では、アルコール溶液は、n-プロパノール溶液である。他の実施態様では、アルコール溶液は、任意のアルコールを含んでもよく、これには、これに限られるものではないが、n-ブタノール、2-ブタノール、および2-メチルブタン-2-オールが含まれる。また、アルコール溶液は、アルコールに加えて水を含んでもよく、あるいは水を含まなくてもよい。
【0173】
次に、水酸化アンモニウム(NH4OH)を溶液に添加した後、HCl水溶液を添加して、リガンド交換を完了させる。ある実施形態では、溶液を通してHClガスが散布されてもよい。リガンド交換反応が完了すると、金属(V)ナノ粒子4400が形成され、溶液から沈殿する。特定の実施形態では、アルキルシロキサンリガンドは、イソブチルシロキサンであってもよい。(前述のような)選択されたトリアルコキシアルキルシランに応じて、得られるアルキルシロキサンリガンドは、イソブチルシロキサン、アリルシロキサン、ビニルシロキサン、n-プロピルシロキサン、n-ブチルシロキサン、sec-ブチルシロキサン、tert-ブチルシロキサン、フェニルシロキサン、n-オクチルシロキサン、イソオクチルシロキサンn-ドデシルシロキサン、4-(トリメチルシリル)フェニルシロキサン、パラ-トリルシロキサン、4-フルオロフェニルシロキサン、4-クロロフェニルシロキサン、4-ブロモフェニルシロキサン、4-ヨードフェニルシロキサン、4-シアノフェニルシロキサン、ベンジルシロキサン、メチルシロキサン、エチルシロキサン、4-(トリフルオロシル)フェニルシロキサン、4-アンモニウムブチルシロキサン、およびその組み合わせからなる群から選択されてもよい。アルキルシロキサンリガンドは、対応するトリアルコキシアルキルシランのオルトまたはメタ異性体が選択された場合、上記化合物の任意のオルトおよびメタ異性体を有してもよい。アルキルシロキサンリガンドは、PV溶液系の処理および成膜方法において使用される有機溶媒中で十分な溶解性を提供し、PV装置で使用されるペロブスカイト材料と適合する高い電子特性を有する金属(V)ナノ粒子を提供することが観測されている。例えば、アルキルシロキサンリガンド組成物は、前駆体インクの溶解度を最大化し、装置の直列抵抗を最小化するように定められる。形成後、ナノ粒子は、遠心分離により単離され、逆溶媒で1回以上洗浄されてもよい。洗浄の後、ナノ粒子は、乾燥され、その後貯蔵され、または有機溶媒に溶解されてもよい。特定の態様では、乾燥金属(V)酸化物ナノ粒子は、クロロベンゼンに溶解され、ナノ粒子インクが形成されてもよい。
【0174】
ある態様では、金属(V)酸化物ナノ粒子は、
図44に示す反応により架橋されてもよい。
図44に示すように、アルキルシロキサン-置換ナノ粒子は、1または2以上のアルコキシルアルキルシランと反応し、アルキルシロキサンリガンドが架橋されてもよい。金属(V)酸化物ナノ粒子の架橋は、ビス-アルコキシルアルキルシランのような、2つ(またはそれ以上)の結合基を有する分子を用いることにより、またはアルケン基(例えば、ビニルまたはアリル)のラジカル開始重合により、行うことが可能である。架橋は、ロバストなマトリックスにおいてナノ粒子をリンクしてもよい。架橋ナノ粒子の利点には、熱安定性の向上、ならびにペロブスカイト材料の光活性層を劣化させ得る私の水分および他の化合物の浸透に対する耐性が含まれ、これにより装置特性の劣化を遅らせ、装置の寿命を長くすることができる。ある態様では、金属(V)酸化物ナノ粒子の架橋は、溶液中で行われてもよい。これらの態様において、二量体または三量体の架橋ナノ粒子が形成され、より高いレベルの架橋により、架橋ナノ粒子の溶解度が抑制されてもよい。他の態様では、金属(V)酸化物ナノ粒子の架橋は、ナノ粒子の成膜後(例えば、ペロブスカイト材料層への成膜後)に実施されてもよい。そのような実施形態では、ナノ粒子が既に成膜されており、この段階では溶解度が問題とはならないため、任意の程度の架橋を達成し得る。
【0175】
リガンド交換中の各種アルコキシルアルキルシランの選択は、金属(V)酸化物ナノ粒子の電子特性を変化させてもよい。
図45には、異なるアルキルシロキサンリガンドを有する、いくつかの金属(V)ナノ粒子を示す。
図45に見られるように、あるアルキルシロキサンリガンドは、より多くの電子を引き出し、一部のものは、より多くの電子を供与し、一部は、電子供与も、電子求引もしない。ここで、電子供与および電子求引とは、リガンドが、金属(V)酸化物ナノ粒子コアから電子を供与するか、引き出すかを表す。より電子供与性のリガンドは、より多くのn型金属(V)酸化物ナノ粒子で生じ、より電子求引性のリガンドは、より多くのp型金属(V)酸化物ナノ粒子で生じる。リガンドの選択により、金属(V)酸化物ナノ粒子層の電子特性を微調整することができ、特定のペロブスカイト材料組成およびバンドギャップに対して、金属(V)酸化物ナノ粒子層の電子特性を微調整することができる。また、金属(V)酸化物ナノ粒子は、さらに、金属エトキシド前駆体中に他の金属を含めることにより、調整されてもよい。金属エトキシド前駆体は、タンタルおよびニオブと同様の特性を有する他の金属を含んでもよく、あるいは他の金属でドープされてもよい。例えば、金属エトキシド前駆体は、Ti、Zr、またはHfでドープされ、よりp型の酸化物ナノ粒子が形成されてもよい。あるいは、Cr、Mo、またはWをドープすることにより、よりn型の酸化物ナノ粒子が形成されてもよい。ある実施形態では、金属酸化物コアは、金属でドープされてもよい。例えば、ある実施形態では、金属酸化物コアは、Ti、Zr、Hf、Cr、Mo、W、V、またはそれらの任意の組み合わせでドープされてもよい。
【0176】
より短いアルキル基(例えば、ビニル)は、ナノ粒子間により大きな導電性を提供する一方、より長いアルキル基(例えば、オクチル)は、より顕著な疎水性を提供し、光活性層から水を反発するように作用し得る。ある実施形態では、アルコキシルアルキルシランのアルキル基は、官能化されていてもよい。例えば、アルキル基は、
図47に示すように、アンモニウム基で終端化され、これは、ペロブスカイト材料格子の表面での「C」サイト(例えば、アンモニウム、ホルムアミジニウム、または一般式CMX
3、または本願に記載の他のペロブスカイト材料の式における「C」として、ペロブスカイト材料に組み込まれた他のカチオン)空孔の不動態化を提供してもよい。
【0177】
図46には、ペロブスカイト材料4620の表面に配置された金属(V)ナノ粒子4610の様式化された図を提供する。
図47には、ペロブスカイト材料4720の表面に配置されたアンモニウム官能化リガンドを有する金属(V)ナノ粒子4710の様式化された図を提供する。金属(V)ナノ粒子のアンモニウム基4711は、ペロブスカイト材料4720の表面の未配位サイト4721を充填することにより、ペロブスカイト材料の表面を不動態化し、良好な電子性能および安定性がもたらされてもよい。
【0178】
金属(V)酸化物ナノ粒子が導入されたペロブスカイト材料装置は、本願に開示の方法により構築されてもよい。電極、IFL、およびペロブスカイト材料層のようなPINアーキテクチャのペロブスカイト材料装置の個々の層は、本願に開示の方法により、または従来の方法により成膜されてもよい。金属(V)酸化物ナノ粒子は、金属(V)酸化物ナノ粒子インクをブレードコーティング、ドロップキャスティング、スピンキャスティング、スロットダイ印刷、スクリーン印刷、またはインクジェット印刷することにより、ペロブスカイト材料層または装置内の他の層に成膜されてもよい。
【0179】
以下、酸化タンタル(V)ナノ粒子をペロブスカイト材料PV装置に取り入れる方法の特定の実施形態について説明する。まず、透明導電性酸化物(例えば、ITO、FTO、または本願に開示の任意の他の透明電極材料)で、ガラス基板がパターン化され得る。次に、ドロップキャスティング法、スピンキャスティング法、グラビアコーティング法、ブレードコーティング法、リバースグラビアコーティング法、スロットダイ印刷法、スクリーン印刷法、またはインクジェット印刷法により、正孔輸送層、Al2O3およびNiOが、順次成膜される。Al2O3とNiOの層が成膜された後、これらは、アニールされてもよい。次に、予め堆積された正孔輸送層上に、ペロブスカイト材料が成膜される。ある実施形態では、本願に記載の2段階ペロブスカイト法が使用されてもよい。特定の実施形態では、本願に記載のように、ペロブスカイト前駆体に塩化物を導入する2段階ペロブスカイト法を用いて、正孔輸送層の上部にCsxFA1-xPbI3-yClyペロブスカイト材料層が成膜されてもよい。また、ある態様では、本願に記載の方法により、ベンジルアンモニウムを含むバルキーな有機カチオンがペロブスカイト材料中に取り込まれてもよい。成膜の後、ペロブスカイト材料は、本願に開示のペロブスカイトの成膜方法に関する記載のように、アニールされてもよい。
【0180】
次に、金属(V)酸化物ナノ粒子インクが層スタック上に堆積される。ある実施形態では、金属(V)酸化物ナノ粒子インクは、不活性環境のような制御された雰囲気環境で堆積されてもよい。特定の実施形態ではペロブスカイト材料層上に、タンタル(V)酸化物ナノ粒子インクまたはニオブ(V)酸化物ナノ粒子インクが堆積されてもよい。金属(V)ナノ粒子は、前述の方法により形成されてもよい。金属(V)ナノ粒子インクは、ブレードコーティング法、ドロップキャスティング法、ブレードコーティング法、スピンキャスティング法、グラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、スロットダイ印刷法、スクリーン印刷法、またはインクジェット印刷法により、堆積されてもよい。金属(V)酸化物ナノ粒子溶液は、厚さ1nmから100nmの間の金属(V)酸化物ナノ粒子層が形成されるように堆積されてもよい。ある態様では、金属(V)酸化物ナノ粒子溶液は、厚さが20nmから60nmの間の金属(V)酸化物ナノ粒子層が形成されるように堆積されてもよい。特定の実施形態では、金属(V)酸化物ナノ粒子溶液は、厚さが約40nmの金属(V)酸化物ナノ粒子層が形成されるように堆積されてもよい。基板の平方メートル当たり、0.1Lから0.2Lの間の金属(V)酸化物ナノ粒子インクが、堆積されてもよく、特定の実施形態では、基板の平方メートル当たり、0.16Lの金属(V)酸化物ナノ粒子インクが堆積されてもよい。
【0181】
ある態様では、スピンコーティング法により、クロロベンゼンの単位mL当たり約1mgのタンタル(V)酸化物ナノ粒子からクロロベンゼンの単位mL当たり約10mgのタンタル(V)酸化物ナノ粒子の間の濃度で、クロロベンゼン中に酸化タンタル(V)ナノ粒子を含む、タンタル(V)酸化物ナノ粒子インクが、ペロブスカイト材料層上に堆積されてもよい。特定の実施形態では、スピンコーティング法により、クロロベンゼンの単位mL当たり約4mgのタンタル(V)酸化物ナノ粒子の濃度で、クロロベンゼン中にタンタル(V)酸化物ナノ粒子を含むタンタル(V)酸化物ナノ粒子インクが、ペロブスカイト材料層上に堆積されてもよい。他の実施形態では、ブレードコーティング法により、クロロベンゼンの単位mL当たり約1mgのタンタル(V)酸化物ナノ粒子から、10mgのタンタル(V)酸化物ナノ粒子との間の濃度で、クロロベンゼン中にタンタル(V)酸化物ナノ粒子を含むタンタル(V)酸化物ナノ粒子インクが、ペロブスカイト材料層上に堆積されてもよい。特定の実施形態では、ブレードコーティング法により、クロロベンゼンの単位mL当たり約4mgの濃度で、クロロベンゼン中にタンタル(V)酸化物ナノ粒子を含むタンタル(V)酸化物ナノ粒子インクが、ペロブスカイト材料層上に堆積される。ブレードコーティングにより、金属(V)酸化物ナノ粒子インクが堆積される場合、ブレードの高さは1100μmから1400μmの間に設定されてもよい。ある実施形態では、金属(V)酸化物ナノ粒子溶液は、ペロブスカイト材料層上に堆積する前に、濾過されてもよい。
【0182】
堆積後、金属(V)酸化物ナノ粒子層は、アニールされてもよい。一部の実施形態では、アニールは、50℃から140℃の間の温度で、3から20分間にわたり、実施されてもよい。特定の実施形態では、アニールは、50℃から80℃の間の温度で4から10分間、実施されてもよい。特定の実施形態では、アニールは、約55℃の温度で約5分間実施される。
【0183】
次に、金属(V)酸化物ナノ粒子層上に、C60層が堆積されてもよい。C60層の堆積の後、C60層上には、Cr、Al、もしくはCuのような1もしくは2以上の金属電極層、またはバソクプロイン(BCP)のような1もしくは2以上の有機電極層が、成膜されてもよい。電極層の成膜後、上部「シーリング」層または封止層が成膜され、PV装置への他の環境汚染物質の侵入によって生じる水分および損傷から、装置が保護されてもよい。
【0184】
図48には、Ta
2O
5ナノ粒子電子輸送層を含まずに製造されたいくつかのペロブスカイト材料光起電性装置、およびTa
2O
5ナノ粒子電子輸送層を含むように製造されたいくつかのペロブスカイト材料光起電性装置における、開回路電圧(Voc)、短絡電流密度(Jsc)、充填率(FF)、および電力変換効率(PCE)のボックスプロットを示す。ここで、Ta
2O
5ナノ粒子電子輸送層を有する装置は、
図40に示す装置の構造を有し、Ta
2O
5ナノ粒子は、イソブチルシロキサンリガンドを含む。Ta
2O
5ナノ粒子電子輸送層を含まない各ペロブスカイト材料装置では、電子輸送層を除く装置の他の各層は、Ta
2O
5ナノ粒子電子輸送層を有するペロブスカイト材料光起電装置の層と同じであった。
図48から分かるように、Ta
2O
5ナノ粒子電子輸送層を有する装置は、Ta
2O
5ナノ粒子電子輸送層を含まない装置と比べて、改善された開回路電圧(Voc)、短絡電流密度(Jsc)、充填率(FF)、および電力変換効率を示した。特に、Ta
2O
5ナノ粒子電子輸送層の添加により、平均Vocは、0.95Vから1.03Vに増加し、最大Vocは、1.02Vから1.14Vに増加することが観測された。また、Ta
2O
5ナノ粒子電子輸送層を組み込んだ装置では、平均FFは、64から68に増加し、最高FFは、69から73に増加した。電流は、あまり変化することが観察されなかったため、VocおよびFFのこれらの変化は、平均PCEを12%から13.5%に増加させる結果となった。
【0185】
従って、本発明は、前述の目的および利点、ならびにそれらに固有の利点を好適に達成するように適合される。前述の特定の実施形態は、一例に過ぎない。すなわち、本発明は、本願の示唆の利点を得る当業者にとって明らかな、異なる等価な方法で修正され、実施されてもよい。さらに、記載された構成または設計の細部が、添付の特許請求の範囲の記載を除き、限定されることを意図するものではない。従って、前述の特定の一例の実施形態は、変更または修正されてもよく、そのような全ての変更が、本発明の範囲および思想内に含まれることは明らかである。特に、本願に記載の各値の範囲(「約aから約b」、または等価な「約aからb」、または等価な「約a~b」)は、それぞれの値の範囲のべき乗集合(全てのサブセットの集合)を参照しており、値のより広い範囲内に包含される各範囲が記載されていることが理解される。また、請求項中の用語は、特許権者による別段の明示的および明確な定義がない限り、明白で一般的な意味を有する。
【国際調査報告】