(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(54)【発明の名称】ナチュラルキラー細胞を製造する方法およびその組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0783 20100101AFI20230201BHJP
【FI】
C12N5/0783
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022531631
(86)(22)【出願日】2020-11-24
(85)【翻訳文提出日】2022-07-26
(86)【国際出願番号】 US2020061984
(87)【国際公開番号】W WO2021108389
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】10-2019-0157727
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】513205259
【氏名又は名称】エヌケーマックス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NKMAX CO., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク,ソンウ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨンマン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ジェソブ
(72)【発明者】
【氏名】カン,ヨンミ
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065BD09
4B065BD12
4B065CA44
(57)【要約】
ナチュラルキラー細胞を製造する方法が開示される。方法は、末梢血単核細胞(PBMC)を血液試料から単離すること;CD56+細胞および/またはCD3-/CD56+細胞のうちの少なくとも1つをPBMCから単離すること;ならびにCD56+細胞および/またはCD3-/CD56+細胞のうちの少なくとも1つをフィーダー細胞の組合せと共にサイトカインの存在下で共培養することを含む。方法は、CD56+細胞および/またはCD3-/CD56+細胞を凍結させかつ解凍することをさらに含み得る。がんを処置するための組成物もまた開示される。組成物は、開示される方法により製造されるCD56+ナチュラルキラー細胞およびサイトカインを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養においてナチュラルキラー細胞を拡大増殖させる方法であって、
CD56+細胞を血液試料から単離すること;
前記単離されたCD56+細胞をIL-21の存在下で第1の期間にわたり共培養すること;
前記第1の期間後に前記共培養されたCD56+細胞を凍結させること;
前記凍結されたCD56+細胞を解凍すること;および
前記解凍されたCD56+細胞をIL-21の存在下で第2の期間にわたり共培養することを含む、方法。
【請求項2】
前記凍結されたCD56+細胞を-100℃よりも低い温度で貯蔵することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記凍結されたCD56+細胞を解凍の前に1日よりも長く貯蔵することをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記単離されたCD56+細胞が、凍結の前に13~16日にわたり共培養される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記単離されたCD56+細胞が、IL-21の存在下で、1つまたは複数の照射されたフィーダー細胞と共に共培養される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記解凍されたCD56+細胞が、IL-21の存在下で、1つまたは複数の照射されたフィーダー細胞と共に共培養される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
1つまたは複数のフィーダー細胞が、照射されたジャーカット(Jurkat)細胞、照射されたエプスタイン・バーウイルス形質転換リンパ芽球様細胞株(EBV-LCL)細胞、K562細胞およびPBMCからなる群から選択される1つまたは複数である、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記CD56+細胞が、約1:1~100のCD56+細胞と前記フィーダー細胞との比で共培養される、請求項5~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記CD56+細胞が、約1:2のCD56+細胞とフィーダー細胞との比で共培養される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記CD56+細胞が、約1:5~1:30のCD56+細胞とフィーダー細胞との比で共培養される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記CD56+細胞が、約1:10のCD56+細胞とフィーダー細胞との比で共培養される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記CD56+細胞が、約1:30のCD56+細胞とフィーダー細胞との比で共培養される、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記CD56+細胞が、約1:1~100のCD56+細胞とフィーダー細胞との比で共培養される、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
IL-21が、前記第1および/または第2の期間の間に10~100ng/mLの濃
度で添加される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
IL-21が、前記第1および/または第2の期間の間に20~80ng/mLの濃度で添加される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
IL-21が、前記第1および/または第2の期間の間に30~70ng/mLの濃度で添加される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
IL-21が、前記第1および/または第2の期間の間に1回よりも多く添加される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
培養においてナチュラルキラー細胞を拡大増殖させる方法であって、
CD56+を血液試料から単離すること;
前記CD56+細胞を1つまたは複数のフィーダー細胞と共にIL-21の存在下で共培養すること;
前記CD56+細胞を凍結させること;
前記凍結されたCD56+細胞を解凍すること;および
前記解凍されたCD56+細胞を拡大増殖させることを含む、方法。
【請求項19】
前記CD56+細胞を-100℃よりも低い温度で凍結させる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記凍結されたCD56+細胞を1日より長く、かつ10年より短い期間にわたり貯蔵することをさらに含む、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記CD56+細胞が、凍結の前に13~16日にわたり共培養される、請求項18~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
1つまたは複数のフィーダー細胞が、照射されたジャーカット(Jurkat)細胞、照射されたエプスタイン・バーウイルス形質転換リンパ芽球様細胞株(EBV-LCL)細胞、K562細胞およびPBMCからなる群から選択される1つまたは複数である、請求項18~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記CD56+細胞が、約1:1~100のCD56+細胞とフィーダー細胞との比で共培養される、請求項18~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
IL-21が、10~100ng/mLの濃度で添加される、請求項18~23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
IL-21が、1回よりも多く添加される、請求項18~24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
ナチュラルキラー細胞の細胞傷害性を増加させる方法であって、
前記ナチュラルキラー細胞を提供すること;
前記ナチュラルキラー細胞を凍結させること;
前記凍結されたナチュラルキラー細胞を解凍すること;および
前記解凍されたナチュラルキラー細胞を1つまたは複数のフィーダー細胞と共にIL-21の存在下で共培養すること
を含む、方法。
【請求項27】
前記凍結されたナチュラルキラー細胞を-100℃よりも低い温度で貯蔵することをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記凍結されたナチュラルキラー細胞を解凍前に1日よりも長く貯蔵することをさらに含む、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
1つまたは複数のフィーダー細胞が、照射されたジャーカット(Jurkat)細胞、照射されたエプスタイン・バーウイルス形質転換リンパ芽球様細胞株(EBV-LCL)細胞、K562細胞およびPBMCからなる群から選択される1つまたは複数である、請求項26~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記解凍されたナチュラルキラー細胞が、約1:1~100のCD56+細胞とフィーダー細胞との比で共培養される、請求項26~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
IL-21が、10~100ng/mLの濃度で添加される、請求項26~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
IL-21が、1回よりも多く添加される、請求項26~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
対象を処置する方法であって、
CD56+細胞を前記対象から収集すること;
前記CD56+細胞を1つまたは複数のフィーダー細胞と共にIL-21の存在下で共培養すること;
前記共培養されたCD56+細胞を少なくとも1日にわたり凍結させること;
前記凍結されたCD56+細胞を解凍すること;
前記解凍されたCD56+細胞を拡大増殖させること;および
前記拡大増殖されたCD56+細胞を前記対象に投与することを含み、前記第2の拡大増殖からの前記細胞の細胞傷害性が凍結の前の前記共培養されたCD56+細胞の細胞傷害性の少なくとも80%である、方法。
【請求項34】
前記凍結されたCD56+細胞を-100℃よりも低い温度で貯蔵することをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記凍結されたCD56+細胞を解凍の前に1日よりも長く貯蔵することをさらに含む、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
前記単離されたCD56+細胞が、凍結の前に13~16日にわたり共培養される、請求項33~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記解凍されたCD56+細胞を拡大増殖させることが、前記解凍されたCD56+を1つまたは複数の照射されたフィーダー細胞と共にIL-21の存在下で共培養することを含む、請求項33~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
1つまたは複数のフィーダー細胞が、照射されたジャーカット(Jurkat)細胞、照射されたエプスタイン・バーウイルス形質転換リンパ芽球様細胞株(EBV-LCL)細胞、K562細胞およびPBMCからなる群から選択される1つまたは複数である、請求項33~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記CD56+細胞が、約1:1~100のCD56+細胞とフィーダー細胞との比で
共培養される、請求項33~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
IL-21が、前記第1および/または第2の期間の間に10~100ng/mLの濃度で添加される、請求項33~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
IL-21が、前記第1および/または第2の期間の間に1回よりも多く添加される、請求項33~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
患者からの末梢血単核細胞(PBMC)に由来する有効量のCD56+細胞を含む組成物であって、前記CD56+細胞が、
末梢血単核細胞(PBMC)を血液試料から単離すること;
CD56+細胞を前記PBMCから単離すること;
前記CD56+細胞を1つまたは複数のフィーダー細胞と共に1つまたは複数のサイトカインの存在下で共培養すること;
前記CD56+細胞を凍結させること;
前記凍結されたCD56+細胞を解凍すること;および
前記解凍されたCD56+細胞を1つまたは複数のフィーダー細胞と共に1つまたは複数のサイトカインの存在下で共培養することにより調製される、組成物。
【請求項43】
患者からの末梢血単核細胞(PBMC)に由来する有効量のCD56+細胞;
IL-2;および
IL-21を含む、細胞組成物。
【請求項44】
末梢血単核細胞(PBMC)に由来するCD56+細胞の第1の集団;
氷;および
IL-2、
IL-21、を含む組成物であって、
解凍された場合に、前記CD56+細胞がCD56+細胞の第2の集団の少なくとも80%の細胞傷害性を有し、CD56+細胞の前記第2の集団が凍結されていない、組成物。
【請求項45】
培養においてナチュラルキラー細胞を拡大増殖させる方法であって、
PBMCを提供すること;
前記PBMCをIL-21の存在下で第1の期間にわたり共培養すること;
前記第1の期間の後の前記共培養されたPBMCを凍結させること;
前記凍結されたPBMCを解凍すること;および
前記解凍されたPBMCをIL-21の存在下で第2の期間にわたり共培養することを含む、方法。
【請求項46】
フィーダー細胞に対するPBMCの比が1:0.5:0.5である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
請求項1ではなく、請求項45に従属する、請求項2~17のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
注射準備済みの溶液中で凍結させることをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項49】
前記細胞傷害性が、凍結無しでの拡大増殖(IL-21有りおよび無し)と凍結有りかつ第1の工程においてIL-21+で共培養された拡大増殖との比較であり、前記凍結有りでの拡大増殖の平均細胞傷害性が前記凍結無しの97.7%である、請求項33または34に記載の方法。
【請求項50】
前記細胞傷害性が、凍結無しでの拡大増殖(IL-21有りおよび無し)と凍結有りかつ第1の工程においてIL-21+で共培養しなかった拡大増殖との比較であり、前記凍結有りでの拡大増殖の平均細胞傷害性が前記凍結無しでの拡大増殖の81.4%である、請求項33または34に記載の方法。
【請求項51】
IL-21が、凍結の前および後の両方において添加され、かつ平均細胞傷害性が凍結無しでの拡大増殖の114%である、請求項33または34に記載の方法。
【請求項52】
IL-2;
5~10%のDMSO;
90~95%のFBS;および
任意選択的にCD56+細胞であるNK細胞
を含む、組成物。
【請求項53】
凍結された固体である、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
前記NK細胞が前記組成物の細胞集団の少なくとも90%である、請求項52に記載の組成物。
【請求項55】
IL-2;
5~10%のDMSO;
80~95%のHartman溶液;
1~10%のヒト血清アルブミン;および
NK細胞を含む、組成物。
【請求項56】
CryoStor溶液をさらに含む、請求項52~55のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ナチュラルキラー細胞の製造、貯蔵および/またはナチュラルキラー細胞自体に関する。
【背景技術】
【0002】
ナチュラルキラー細胞(NK細胞)は、先天免疫細胞の一種であり、酵素、例えばパーフォリンおよびグランザイムを用いてまたはFas-FasL相互作用により非特異的にがんを殺傷し、ウイルスおよび細菌などを認識して殺傷し、病原体を殺傷することが公知である。がん患者の場合、これらのNK細胞のがん細胞細胞傷害性における減少は、様々な種類のがん、例えば肺がん(Carrega P, et al., Cancer,
2008: 112: 863-875)、肝臓がん(Jinushi M, et al., J Hepatol., 2005: 43; 1013-1020)、乳がん(Bauernhofer T, et al., Eur J Immunol.,
2003: 33: 119-124)、子宮がん(Mocchegiani E.,
et al., Br j Cancer., 1999: 79: 244-250)、および血液がん(Tajima F., et al, Lekemia 1996: 10: 478-482)などの開始と関連付けられることが報告されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本出願は、高純度のナチュラルキラー細胞を製造する方法、ならびに高純度のナチュラルキラー細胞およびサイトカインを含むがんを処置するための細胞治療用組成物に関する。本明細書に開示される任意の特徴、構造、または工程は、本明細書に開示される任意の他の特徴、構造、もしくは工程を用いる置換えもしくは組合せ、または省略が可能である。さらに、本開示を要約する目的のために、本発明のある特定の態様、利点、および特徴が本明細書に記載されている。必ずしも任意または全てのそのような利点が、本明細書に開示される発明の任意の特定の実施形態にしたがって達成されるわけではないことが理解されるべきである。本開示の個々の態様は本質的または不可欠なものではない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一部の実施形態において、培養においてナチュラルキラー細胞を拡大増殖させる方法が開示される。当該方法は、CD56+細胞を血液試料から単離すること;単離されたCD56+細胞をIL-21(およびフィーダー細胞)の存在下で第1の期間にわたり共培養すること;第1の期間後に共培養されたCD56+細胞を凍結させること;凍結されたCD56+細胞を解凍すること;ならびに解凍されたCD56+細胞をIL-21(およびフィーダー細胞)の存在下で第2の期間にわたり共培養することを含む。
【0005】
本明細書において提供される任意の実施形態の方法および/または本明細書に開示される任意の方法は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含み得る。前記方法は、凍結されたCD56+細胞を-100℃よりも低い温度で貯蔵することをさらに含み得る。前記方法は、凍結されたCD56+細胞を解凍の前に1日よりも長く貯蔵することをさらに含み得る。単離されたCD56+細胞は、凍結前に13~16日(または9~25日)にわたり共培養され得る。単離されたCD56+細胞は、1つまたは複数の照射されたフィーダー細胞と共にIL-21の存在下で共培養され得る。解凍されたCD56+細胞は、1つまたは複数の照射されたフィーダー細胞と共にIL-21の存在下で共培養され得る。1つまたは複数のフィーダー細胞は、照射されたジャーカット(Jurkat)細胞、照射されたエプスタイン・バーウイルス形質転換リンパ芽球様細胞株(Epstein-Barr virus transformed lymphocyte continuous line;EBV-LCL)細胞、K562細胞およびPBMC(例えば、自己PBMCを含む)からなる群から選択される1つまたは複数であり得る。CD56+細胞は、約1:1~100のCD56+細胞とフィーダー細胞との比で共培養され得る。一部の実施形態において、任意のフィーダー細胞が、第1、第2、または第1および第2の拡大増殖のために(例えば、Il-21の使用と共に)使用され得る。CD56+細胞は、約1:1、1:2、1:5、1:10、1:20、1:30または1:100のCD56+細胞とフィーダー細胞との比で共培養され得る。一部の実施形態において、これらの比はKL1/EBVLCLについてのものであり、他のフィーダー細胞について、例えば1:1~1:10が使用され得る。IL-21は、第1および/または第2の期間の間に、10~100ng/mLの濃度で添加され得る。IL-21は、第1および/または第2の期間の間に、20~80ng/mLの濃度で添加され得る。IL-21は、第1および/または第2の期間の間に、30~70ng/mLの濃度で添加され得る。IL-21は、第1および/または第2の期間の間に1回よりも多く添加され得る。
【0006】
一部の実施形態において、培養においてナチュラルキラー細胞を拡大増殖させる方法が提供される。当該方法は、CD56+を血液試料から(例えば、PBMC、新鮮または凍結、臍帯血、および/または血液試料からCD56+、CD56+CD3-、およびCD3-細胞が単離された血液から)単離すること;CD56+細胞を1つまたは複数のフィーダー細胞と共にIL-21の存在下で共培養すること;CD56+細胞を凍結させること;凍結されたCD56+細胞を解凍すること;ならびに解凍されたCD56+細胞を(再び、任意の種類の適切なフィーダー細胞と共に)拡大増殖させることを含む。
【0007】
任意の実施形態の方法および/または本明細書に開示される任意の方法は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含み得る。CD56+細胞を凍結させることは、-100℃よりも低い温度で行われ得る。前記方法は、凍結されたCD56+細胞を1日より長く、かつ10年より短い期間にわたり貯蔵することをさらに含み得る。CD56+細胞は、凍結の前に13~16(または9~25)日にわたり共培養され得る。1つまたは複数のフィーダー細胞は全ての実施形態において限定されず、照射されたジャーカット(Jurkat)細胞、照射されたエプスタイン・バーウイルス形質転換リンパ芽球様細胞株(EBV-LCL)細胞、K562細胞、mb15-k562、mb21-k562フィーダー細胞、HuT78、および/またはPBMCのうちの少なくとも1つからなる群から選択される1つまたは複数であり得る。CD56+細胞は、約1:1~100のCD56+細胞とフィーダー細胞との比で共培養され得る。IL-21は、10~100ng/mLの濃度で添加され得る。IL-21は、1回よりも多く添加され得る。一部の実施形態において、NK細胞は任意のフィーダー細胞種と共に使用され得るが、但し、IL-21が凍結前に使用され、かつ次に凍結からの解凍後に再刺激過程が後続する。
【0008】
一部の実施形態において、ナチュラルキラー細胞の細胞傷害性を増加させる方法が開示される。当該方法は、前記ナチュラルキラー細胞を提供すること;前記ナチュラルキラー細胞を凍結させること;凍結されたナチュラルキラー細胞を解凍すること;および解凍されたナチュラルキラー細胞を1つまたは複数のフィーダー細胞と共にIL-21の存在下で共培養することを含む。任意選択的に、ナチュラルキラー細胞を凍結させる前に、ナチュラルキラー細胞は、フィーダー細胞およびIL-21と共に共培養(拡大増殖)され得る。
【0009】
任意の先行するパラグラフの方法および/または本明細書に開示される任意の方法は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含み得る。前記方法は、凍結されたナチュラルキラー細胞を-100℃よりも低い温度で貯蔵することをさらに含み得る。前記方法は、凍結されたナチュラルキラー細胞を解凍前に1日よりも長く貯蔵することをさらに含み得る。
1つまたは複数のフィーダー細胞は、照射されたジャーカット(Jurkat)細胞、照射されたエプスタイン・バーウイルス形質転換リンパ芽球様細胞株、照射されたジャーカット(Jurkat)細胞、照射されたエプスタイン・バーウイルス形質転換リンパ芽球様細胞株(EBV-LCL)細胞、K562細胞、mb15-k562、mb21-k562フィーダー細胞、HuT78、および/またはPBMCからなる群から選択される1つまたは複数である。解凍されたナチュラルキラー細胞は、約1:1~100のCD56+細胞とフィーダー細胞との比で共培養され得る。IL-21は、10~100ng/mLの濃度で添加され得る。IL-21は、1回よりも多く添加され得る。
【0010】
一部の実施形態において、対象を処置する方法が開示される。当該方法は、CD56+細胞を対象から収集すること;CD56+細胞を1つまたは複数のフィーダー細胞と共にIL-21の存在下で共培養すること;共培養されたCD56+細胞を少なくとも1日にわたり凍結させること;凍結されたCD56+細胞を解凍すること;解凍されたCD56+細胞を拡大増殖させること;および拡大増殖されたCD56+細胞を対象に投与することを含み、第2の拡大増殖からの細胞の細胞傷害性は、凍結の前の共培養されたCD56+の細胞傷害性の少なくともX%である。
【0011】
任意の先行するパラグラフの方法および/または本明細書に開示される任意の方法は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含み得る。前記方法は、凍結されたCD56+細胞を-100℃よりも低い温度で貯蔵することをさらに含み得る。前記方法は、凍結されたCD56+細胞を解凍の前に1日よりも長く貯蔵することをさらに含み得る。単離されたCD56+細胞は、凍結の前に13~16(または9~25)日にわたり共培養され得る。解凍されたCD56+細胞を拡大増殖させることは、解凍されたCD56+を1つまたは複数の照射されたフィーダー細胞と共にIL-21の存在下で共培養することを含み得る。1つまたは複数のフィーダー細胞は、照射されたジャーカット(Jurkat)細胞、照射されたエプスタイン・バーウイルス形質転換リンパ芽球様細胞株(EBV-LCL)細胞、K562細胞、mb15-k562、mb21-k562フィーダー細胞、HuT78、および/またはPBMCからなる群から選択される1つまたは複数であり得る。CD56+細胞は、約1:1~100のCD56+細胞とフィーダー細胞との比で共培養され得る。IL-21は、10~100ng/mLの濃度で第1および/または第2の期間の間に添加され得る。IL-21は、第1および/または第2の期間の間に1回よりも多く添加され得る。
【0012】
一部の実施形態において、組成物が提供される。当該組成物は、患者からの末梢血単核細胞(PBMC)に由来する有効量のCD56+細胞を含む。CD56+細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)を血液試料から単離すること;CD56+細胞をPBMCから単離すること;CD56+細胞を1つまたは複数のフィーダー細胞と共に1つまたは複数のサイトカインの存在下で共培養すること;CD56+細胞を凍結させること;凍結されたCD56+細胞を解凍すること;および解凍されたCD56+細胞を1つまたは複数のフィーダー細胞と共に1つまたは複数のサイトカインの存在下で共培養することにより調製される。
【0013】
一部の実施形態において、細胞組成物が開示される。当該細胞組成物は、患者からの末梢血単核細胞(PBMC)に由来する有効量のCD56+細胞;IL-2;およびIL-21を含む。
【0014】
一部の実施形態において、組成物が開示される。当該組成物は、末梢血単核細胞(PBMC)に由来するCD56+細胞の第1の集団;氷;IL-2;およびIL-21を含む。解凍された場合に、CD56+細胞はCD56+細胞の第2の集団の少なくとも80%の細胞傷害性を有し、CD56+細胞の第2の集団は凍結されていない。
【0015】
一部の実施形態において、培養においてナチュラルキラー細胞を拡大増殖させる方法が提供される。当該方法は、CD56+細胞を血液試料から単離すること;単離されたCD56+細胞をIL-21の存在下で第1の期間にわたり共培養すること;第1の期間の後の共培養されたCD56+細胞を凍結させること;凍結されたCD56+細胞を解凍すること;および解凍されたCD56+細胞をIL-21の存在下で第2の期間にわたり共培養することを含み得る。
【0016】
一部の実施形態において、培養においてナチュラルキラー細胞を拡大増殖させる方法が提供される。当該方法は、CD56+を血液試料から単離すること;CD56+細胞を1つまたは複数のフィーダー細胞と共にIL-21の存在下で共培養すること;CD56+細胞を凍結させること;凍結されたCD56+細胞を解凍すること;および解凍されたCD56+細胞を拡大増殖させることを含む。
【0017】
一部の実施形態において、ナチュラルキラー細胞の細胞傷害性を増加させる方法が提供され、前記方法は、前記ナチュラルキラー細胞を提供すること;前記ナチュラルキラー細胞を凍結させること;凍結されたナチュラルキラー細胞を解凍すること;および解凍されたナチュラルキラー細胞を1つまたは複数のフィーダー細胞と共にIL-21の存在下で共培養することを含む。
【0018】
一部の実施形態において、対象を処置する方法が提供され、前記方法は、CD56+細胞を対象から収集すること;CD56+細胞を1つまたは複数のフィーダー細胞と共にIL-21の存在下で共培養すること;共培養されたCD56+細胞を少なくとも1日にわたり凍結させること;凍結されたCD56+細胞を解凍すること;解凍されたCD56+細胞を拡大増殖させること;および拡大増殖されたCD56+細胞を対象に投与することを含み、第2の拡大増殖からの細胞の細胞傷害性は、凍結の前の共培養されたCD56+の細胞傷害性の少なくとも80%である。
【0019】
一部の実施形態において、組成物が提供され、前記組成物は、患者からの末梢血単核細胞(PBMC)に由来する有効量のCD56+細胞を含み、CD56+細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)を血液試料から単離すること;CD56+細胞をPBMCから単離すること;CD56+細胞を1つまたは複数のフィーダー細胞と共に1つまたは複数のサイトカインの存在下で共培養すること;CD56+細胞を凍結させること;凍結されたCD56+細胞を解凍すること;および解凍されたCD56+細胞を1つまたは複数のフィーダー細胞と共に1つまたは複数のサイトカインの存在下で共培養することにより調製される。
【0020】
一部の実施形態において、細胞組成物が提供され、前記細胞組成物は、患者からの末梢血単核細胞(PBMC)に由来する有効量のCD56+細胞;IL-2;およびIL-21を含む。
【0021】
一部の実施形態において、組成物が提供され、前記組成物は、末梢血単核細胞(PBMC)に由来するCD56+細胞の第1の集団;氷;およびIL-2、IL-21を含む。解凍された場合に、CD56+細胞はCD56+細胞の第2の集団の少なくとも80%の細胞傷害性を有し、CD56+細胞の第2の集団は凍結されていない。
【0022】
一部の実施形態において、培養においてナチュラルキラー細胞を拡大増殖させる方法が提供され、前記方法は、PBMCを提供すること;PBMCをIL-21の存在下で第1の期間にわたり共培養すること;第1の期間の後の共培養されたPBMCを凍結させること;凍結されたPBMCを解凍すること;および解凍されたPBMCをIL-21の存在
下で第2の期間にわたり共培養することを含む。
【0023】
一部の実施形態において、組成物は、IL-2;5~10%のDMSO;90~95%のFBS;および任意選択的にCD56+細胞であるNK細胞を含む。一部の実施形態において、それはCryoStor溶液をさらに含む。一部の実施形態において、組成物は、再拡大増殖前の凍結された細胞用である。
【0024】
一部の実施形態において、組成物は、IL-2;5~10%のDMSO;80~95%のHartman溶液;1~10%のヒト血清アルブミン;およびNK細胞を含む。一部の実施形態において、それはCryoStor溶液をさらに含む。一部の実施形態において、組成物は、注射前の凍結された細胞用である。
【0025】
様々な実施形態が添付の図面において実例的な目的のために描写されるが、実施形態の範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。さらには、異なる開示される実施形態の様々な特徴を組み合わせて、本開示の部分である追加の実施形態を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、IL21処理(凍結前および任意選択的に凍結後)にしたがって細胞を拡大増殖させるための再拡大増殖実験の設計および実施形態を描写する。
【
図2A】
図2Aおよび
図2Bは、IL21の有りおよび無しでの細胞拡大増殖の間の集団倍加レベル(PDL)の比較を描写する。(
図2A)ドナー1、(
図2B)ドナー2。
【
図2B】
図2Aおよび
図2Bは、IL21の有りおよび無しでの細胞拡大増殖の間の集団倍加レベル(PDL)の比較を描写する。(
図2A)ドナー1、(
図2B)ドナー2。
【
図4A】
図4Aおよび
図4Bは、IL21有りおよび無しでの細胞再刺激方法の間の集団倍加レベル(PDL)の比較を描写する。(
図4A)ドナー1、(
図4B)ドナー2。
【
図4B】
図4Aおよび
図4Bは、IL21有りおよび無しでの細胞再刺激方法の間の集団倍加レベル(PDL)の比較を描写する。(
図4A)ドナー1、(
図4B)ドナー2。
【
図6】
図6は、K562細胞に対する、IL-21有りで拡大増殖されたNK細胞(IL-21+)の細胞傷害活性を描写する。
【
図7】
図7は、K562細胞に対する、IL-21無しで拡大増殖されたNK細胞(IL-21-)の細胞傷害活性を描写する。
【
図8】
図8は、K562細胞に対する、IL-21有りで拡大増殖され、IL-21有りで再刺激されたNK細胞(IL-21+/+)の細胞傷害活性を描写する。
【
図9】
図9は、K562細胞に対する、IL-21有りで拡大増殖され、IL-21無しで再刺激されたNK細胞(IL-21+/-)の細胞傷害活性を描写する。
【
図10】
図10は、K562細胞に対する、IL-21無しで拡大増殖され、IL-21有りで再刺激されたNK細胞(IL-21-/+)の細胞傷害活性を描写する。
【
図11】
図11は、K562細胞に対する、IL-21無しで拡大増殖され、IL-21無しで再刺激されたNK細胞(IL-21-/-)の細胞傷害活性を描写する。
【
図12B】
図12Bは、NK細胞の阻害およびケモカイン受容体の表現型の比較を描写する。
【
図13A】
図13Aは、IL-21有りで拡大増殖され、IL-21有りで再拡大増殖(IL-21+/+)されたNK細胞、およびIL-21無しで拡大増殖され、IL-21無しで再拡大増殖(IL-21-/-)されたNK細胞の集団倍加レベル(PDL)のグラフを示す。
【
図13B】
図13Bは、IL-21有りで拡大増殖され、IL-21有りで再拡大増殖(IL-21+/+)されたNK細胞、およびIL-21有りで拡大増殖され、IL-21無しで再拡大増殖(IL-21+/-)されたNK細胞の集団倍加レベル(PDL)のグラフを示す。
【
図14A】
図14Aは、IL-21有りで拡大増殖(第1の刺激)され、少なくとも2回再拡大増殖(第2および第3の刺激)されたNK細胞の集団倍加レベル(PDL)のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
任意の優先権出願に対する参照による組込み
本出願は、2020年8月7日に出願された米国仮出願第63/062694号、および2019年11月29日に出願された韓国特許出願第10-2019-0157727号の利益を主張し、これらの各々の開示は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0028】
NK細胞が凍結保存およびそれからの回復を経ることを補助する方法が開発され、本明細書において提供される。CD56+細胞が最初に(初期拡大増殖の間に)フィーダー細胞と共にIL-21の存在下で共培養された場合に、CD56+細胞は凍結および解凍後に成功裏に拡大増殖され得ることが見出された。IL-21を使用することにより、高純度のCD56+ NK細胞を結果としてもたらすことができ、驚くべきことに、それらは特に高い細胞傷害性を保持する。さらには、NK細胞が解凍された後に、それらは(IL-21無しで、またはよりいっそう有利には、追加のIL-21の存在下で)さらに拡大増殖され得る。そのため、凍結前過程(例えば第1の拡大増殖)におけるIL-21は、後の時点における優れた再拡大増殖を可能とし得る。また、結果としてもたらされる製造物は、2回の拡大増殖、および1回の凍結の後であっても、驚くべきことに高い細胞傷害性を保持し、これは、IL-21が第1の拡大増殖の間に使用されるだけでなく、第2の拡大増殖の間にも使用される場合にさらに増強される。一部の実施形態において、この凍結および再拡大増殖過程は、複数回(各回に、任意選択的に再拡大増殖の間のIL-21の別のラウンドを伴う)繰り返され得る。
【0029】
一部の実施形態において、培養においてナチュラルキラー細胞を拡大増殖させる方法が提供される。方法は、PBMCを提供すること;PBMCをIL-21の存在下で第1の期間にわたり共培養すること;第1の期間の後の共培養されたPBMCを凍結させること;凍結されたPBMCを解凍すること;および解凍されたPBMCをIL-21の存在下で第2の期間にわたり共培養することを含む。一部の実施形態において、フィーダー細胞に対するPBMCの比は1:0.5:0.5である。一部の実施形態において、比は、(例えば、CD56+の代替として)PBMCについて約1:0.5:0.5~1:10:10であり得る。一部の実施形態において、CD56+細胞について、比は、例えば、10または20で掛け算される(例えば、1:1~100のCD56+細胞とフィーダー細胞)。一部の実施形態において、拡大増殖はCD56+またはCD56+/CD3-細胞
から為される。
【0030】
一部の実施形態によれば、高純度のNK細胞を製造する方法は、CD56+細胞および/またはCD3-/CD56+細胞から選択される細胞をフィーダー細胞と共に第1のサイトカイン、例えばIL-21の存在下で共培養すること(「第1の培養工程」または「第1の拡大増殖工程」);共培養された細胞を凍結させること(「凍結工程」);凍結された細胞を解凍すること(「解凍工程」);および解凍された細胞を、任意選択的にさらにIL-21と共に、添加されたフィーダー細胞と共に共培養すること(「第2の培養工程」または「第2の拡大増殖工程」)を含み得る。各工程は本明細書においてより詳細に記載される。開示される方法にしたがって製造されるCD3-/CD56+細胞は、より高い純度およびより高い抗がん活性だけでなく、他の区別的な特徴を呈することができ、例えば異なる表面マーカーまたは活性化された受容体、例えば、CD16、CD25、CD27、CD28、CD69、CD94/NKG2C、CD94/NKG2E、CD266、CD244、NKG2D、KIR2S、KIR3S、Ly94D、NCRs、IFN-a、IFN-b、CXCR3、CXCR4、CX3CR1、CD62LおよびCD57からの1つまたは複数を有し得る。
【0031】
本明細書において使用される場合、「工程」は、過程の部分であり、次の「工程」が始まり得る前に1つの「工程」が完了されることを要求しない。記載されなければ、工程は、適宜、オーバーラップする時間的期間においてまたは同時に提供されてもよい。当然ながら、1つの工程が事象(例えば凍結)の前に起こり、かつ別の工程が同じ事象の後に起こる場合、オーバーラップは無い(例えば、第1のIL-21インキュベーションおよび第2のIL-21インキュベーション)。
【0032】
本明細書において、「CD56+細胞」という用語は、「CD56+ NK細胞」、または「CD56+ナチュラルキラー細胞」と交換可能に使用することができ、「CD3-/CD56+細胞」という用語は、「CD3-/CD56+ NK細胞」と交換可能に使用することができる。CD56+細胞またはCD3-/CD56+細胞は、細胞表面上にCD56糖タンパク質が発現される細胞、またはさらに、CD3糖タンパク質が発現されないがCD56糖タンパク質が発現される細胞を含み得る。同じ種類の免疫細胞であっても、細胞表面に結合したCDタイプおよび発現率において差異を有することがあり、そのため、その機能は異なることがある。
【0033】
一部の実施形態において、CD56+細胞またはCD3-/CD56+細胞は以下の工程により得られる:末梢血単核細胞(PBMC)を血液試料から単離すること(「第1の単離工程」);CD56+細胞およびCD3-/CD56+細胞からなる群から選択される細胞を末梢血単核細胞から単離すること(「第2の単離工程」)。
【0034】
本明細書において、「血液試料」は、末梢血の全血または白血球アフェレーシスを使用して末梢血から単離された白血球であってもよいがこれらに限定される必要はない。さらに、末梢血は、正常なヒト、がんのリスクを有する患者、またはがん患者から得られ得るが、末梢血の供給源はこれらに限定されない。
【0035】
本明細書において、「白血球アフェレーシス」という用語は、収集された血液から白血球を選択的に取り出し(単離し)、次に血液を患者に再び与える方法を指すことができ、一部の実施形態において、該方法により単離された白血球は、追加の方法、例えばFicoll-Hypaque密度勾配法を伴わずに使用されてもよい。
【0036】
本明細書において、「末梢血単核細胞」という用語は、「PBMC」、「単核細胞」と交換可能に使用することができ、抗がん免疫療法のために一般に使用される末梢血から単
離された単核細胞を指すことができる。末梢血単核細胞は、収集されたヒト血液から公知の方法、例えばFicoll-Hypaque密度勾配法を使用して得られてもよい。
【0037】
一部の実施形態において、末梢血単核細胞は自己のものであり得るが、同種異系末梢血単核細胞もまた、本明細書に記載の方法にしたがって抗がん免疫療法用の高純度のNK細胞を製造するために使用され得る。さらに、一部の実施形態において、末梢血単核細胞は、正常なヒトから得られ得るが、末梢血単核細胞はまた、がんのリスクを有する患者および/またはがん患者から得られ得る。
【0038】
一部の実施形態において、血液試料からのCD56+ナチュラルキラー細胞の単離のための第2の単離工程は、CD56マイクロビーズおよびCD3マイクロビーズからなる群から選択される少なくとも1つ、または機器、例えばCliniMACSs、フローサイトメトリー細胞選別機、もしくはMACS Separator、磁気選別システムなどを使用する単離方法を使用して行われ得る。
【0039】
例えば、CD56マイクロビーズおよび/またはCD3マイクロビーズを使用する単離方法は、CD56マイクロビーズをPBMCに添加し、次に非特異的結合を除去することにより行うことができ、またはCD3マイクロビーズをPBMCに添加して特異的結合を除去し、次にCD56マイクロビーズを再び添加して非特異的結合を除去することにより行うことができる。一部の事例において、CD56+細胞および/またはCD3-/CD56+細胞をPBMCから単離することを通じて、T細胞または他の非ナチュラルキラー細胞が除去され得る。
【0040】
本明細書において、「フィーダー細胞」という用語は、分裂および増殖しないが、様々な代謝物を産生する代謝活性を有し、そのため、標的細胞の増殖を助ける細胞を指すことができる。
【0041】
一部の実施形態において、フィーダー細胞は、照射されたジャーカット(Jurkat)細胞、照射されたエプスタイン・バーウイルス形質転換リンパ芽球様細胞株(EBV-LCL)細胞、PBMC、HFWT、RPMI 1866、Daudi、MM-170、K562、またはK562(例えば、K562-mbIL-15-41BBリガンド)を標的化することにより遺伝子改変された細胞からなる群から選択される少なくとも1つであり得る。例えば、1つの実施形態において、フィーダー細胞は、照射されたジャーカット(Jurkat)細胞およびEBV-LCL細胞であり得る。一部の実施形態において、本明細書において提供されるように、NK細胞がIL-21の存在下で最初に拡大増殖され、次に凍結され、解凍され、次に再拡大増殖に供された場合に、再拡大増殖を可能とする限り、任意のフィーダー細胞種が使用され得る。
【0042】
本明細書において、「ジャーカット(Jurkat)細胞」または「ジャーカット(Jurkat)細胞株」という用語は、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のArthur Weiss博士により開発された血液がん(不死化された急性T細胞白血病)細胞株を指すことができる。様々なケモカイン受容体が発現され、IL-2を産生する能力を有するジャーカット(Jurkat)細胞は、抗がん免疫療法用のフィーダー細胞の可能な候補として一般に考慮されておらず、その理由は、ナチュラルキラー細胞活性化阻害因子であるMHCクラスIがその細胞表面上に高発現されるからである。ジャーカット(Jurkat)細胞はATCCから入手することができる(ATCC TIB-152)。
【0043】
本明細書において、「EBV-LCL細胞」または「EBV-LCL細胞株」という用語は、エプスタイン・バーウイルス形質転換リンパ芽球様細胞株(EBV-LCL)(D.M. Koelle et al., J Clin Invest, 1993:91: 961-968)を指し、これは試験管中でヒトB細胞をエプスタイン・バーウイルスに感染させることにより作製されるB細胞株である。EBV-LCL細胞は、PBMCにEBVを感染させる過程においてサイクロスポリンAを添加する方法により一般の研究室において直接的に調製および使用され得る。一部の実施形態において、EBV-LCL細胞は、以下の工程により調製され得る。30×106個のPBMCを9mLの培養培地に加え、混合物をT25培養フラスコに加え、次に9mLのEBV上清を加える。80μLのサイクロスポリンA(50μg/mL)を加え、次に37℃で培養する。7日の培養後に、上清の半分を除去し、新鮮な培養培地を加え、次に40μLのサイクロスポリンAを加える。同じ過程を7日毎に1回、28日の培養まで繰り返すことができる。細胞株は28日の培養後に使用可能であり得、この時点の後に、細胞株は、サイクロスポリンAを加えることなく培養培地中で培養され得る。
【0044】
ジャーカット(Jurkat)細胞およびEBV-LCL細胞は、照射後にフィーダー細胞として使用され得る。
【0045】
一部の実施形態において、投与の前に、方法は、拡大増殖された細胞を注射準備済み(ready-to-inject)の溶液中で2回目の凍結に供することをさらに含み得る。
【0046】
一部の実施形態において、照射されたジャーカット(Jurkat)細胞および照射されたEBV-LCL細胞は、1:0.1~5、1:0.1~4、1:0.1~3、1:0.1~2、1:0.1~1.5、1:0.5~1.5、1:0.75~1.25、0.1~5:1、0.1~4:1、0.1~3:1、0.1~2:1、0.1~1.5:1、0.5~1.5:1または0.75~1.25:1の含有量比で含まれ得る。例えば、照射されたジャーカット(Jurkat)細胞および照射されたEBV-LCL細胞は、1:1の含有量比で含まれ得る。
【0047】
一部の実施形態において、照射されたジャーカット(Jurkat)細胞および照射されたEBV-LCL細胞は、50~500、50~400、50~300、50~200、50~150、70~130、80~120または90~110Gyの照射で処理することにより得られ得る。例えば、照射されたジャーカット(Jurkat)細胞および/または照射されたEBV-LCL細胞は、ジャーカット(Jurkat)細胞および/またはEBV-LCL細胞を100Gyの照射で処理することにより得られ得る。
【0048】
本明細書において、「サイトカイン」という用語は、「第1のサイトカイン」、または「第2のサイトカイン」と交換可能に使用することができ、NK細胞に分化するように末梢血単核細胞を誘導するために使用可能な免疫活性化合物を指すことができる。一部の実施形態において、サイトカインは(第1の拡大増殖および第2の拡大増殖の両方、ならびに任意のさらなるラウンドの拡大増殖のために)IL-21である。
【0049】
本明細書において使用される場合、「共培養」および「拡大増殖」という用語は交換可能であり、拡大増殖された細胞の集団を結果としてもたらすためにNK細胞が培養されることを表す。「再拡大増殖」という用語は、1ラウンドの共培養または拡大増殖がNK細胞について既に行われていることを表す。一部の実施形態において、共培養または拡大増殖は、フィーダー細胞およびサイトカイン、例えばIL-21の存在下で行われる。本明細書の一部の状況において、「培養」という用語が「共培養」の短縮表現として使用される。
【0050】
一部の実施形態において、サイトカインは、インターロイキン-2(IL-2)、IL-15、IL-21、FMS様チロシンキナーゼ3リガンド(Flt3-L)、幹細胞因
子(SCF)、IL-7、IL-18、IL-4、I型インターフェロン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、およびインスリン様増殖因子1(IGF 1)であり得るがこれらに限定されない。
【0051】
一部の実施形態において、第1のサイトカインは、IL-2、IL-21、IL-15、FMS様チロシンキナーゼ3リガンド(Flt3-L)、幹細胞因子(SCF)、IL-7、IL-18、IL-4、I型インターフェロン、GM-CSF、インスリン様増殖因子1(IGF 1)、またはこれらの任意の組合せであり得る。一部の実施形態において、第2のサイトカインは、IL-2、IL-21、IL-15、FMS様チロシンキナーゼ3リガンド(Flt3-L)、幹細胞因子(SCF)、IL-7、IL-18、IL-4、I型インターフェロン、GM-CSF、インスリン様増殖因子1(IGF 1)、またはこれらの任意の組合せであり得る。例えば、第2のサイトカインはIL-21であり得る。一部の実施形態において、1つより多くのサイトカインが、本明細書において提供される工程のうちの1つまたは複数を通じて存在し得る。一部の実施形態において、Il-21およびIL-2の両方が、拡大増殖の第1および第2のラウンド(または任意のその後のラウンド)のうちの少なくとも1つにおいて存在する。追加的に、本明細書において提供される様々な実施形態が拡大増殖の様々なラウンドの各々におけるサイトカイン(例えばIL-21)の繰返しの使用も伴う場合、そのようなサイトカインは、1回目(または第1のラウンドもしくは工程の間)および2回目(例えば再拡大増殖工程の間)に用いられ得る。そのため、一部の実施形態において、第1のサイトカイン(例えばIL-21)は、共培養の第1のラウンドおよび第2のラウンドの両方のために使用され得る。これはまた、例えば、第1のサイトカインおよび第2のサイトカインの両方がIL-21である第1のサイトカインおよび第2のサイトカインとして代替的に記載され得る。
【0052】
NK細胞を製造する方法
図1は、様々な例示的なフィーダー細胞を使用してNK細胞を拡大増殖させる一部の方法を図示するフローチャートである。一部の実施形態において、CD56+細胞またはCD3-/CD56+細胞は、フィーダー細胞と共にIL-21の存在下で共培養することにより拡大増殖される。フィーダー細胞は、任意の種類のフィーダー細胞、例えば、ジャーカット(Jurkat)細胞およびEBV-LCL細胞(「タイプ1」)、K562細胞(「タイプ2」)またはPBMC(「タイプ3」)であり得る。一部の実施形態において、細胞は、培養の17日目もしくは約17日目(または16~21もしくは9~25日目のいずれかの時点)に収集され、製造された細胞は本明細書中で「IL21+.」と称され得る。凍結保存も第2の培養工程も伴わないそのような細胞拡大増殖過程は、本明細書中で「元々の過程」と称され得る。一部の実施形態において、細胞は、14日目もしくは約14日目(または14~18もしくは9~25日目のいずれかの時点)に収集され、凍結保存に供される。凍結保存前の培養は、本明細書中で「第1の培養工程」または「第1の拡大増殖工程」または「第1の共培養工程」と称され得る。凍結保存された細胞は、解凍され、フィーダー細胞と共にIL-21の存在下で(「IL-21+/+」)またはIL-21の非存在下で(「IL-21+/-」)再び共培養して拡大増殖され得る。そのような第2の拡大増殖過程は、「第2の培養工程」または「再刺激過程」または「第2の共培養工程」または第2の拡大増殖工程と称され得る。細胞は、培養の17日目もしくは約17日目(または16~21もしくは9~25日目のいずれかの時点)に収集され得る。一部の実施形態において、さらなる再拡大増殖または再刺激工程またはサイクルが行われ得る。
図14Bに示されるように、一部の実施形態において、第1の刺激、続いて2またはより多くの再刺激工程が存在し得る。
【0053】
一部の実施形態において、CD56+細胞またはCD3-/CD56+細胞は、フィーダー細胞と共にIL-21の存在無しに共培養することにより拡大増殖される。典型的には、これは、IL-21有りの初期培養工程後の培養工程において適用される。フィーダ
ー細胞は、NK細胞用の任意の種類のフィーダー細胞であり得、これには、例えば、ジャーカット(Jurkat)細胞およびEBV-LCL細胞(「タイプ1」)、K562細胞(「タイプ2」)またはPBMC(「タイプ3」)が含まれる。一部の実施形態において、細胞は、培養の17日目もしくは約17日目(または16~21日目)に収集され、製造された細胞は本明細書中で「IL21-.」と称され得る。一部の実施形態において、細胞は、14日目もしくは約14日目(または14~18日目)に収集され、凍結保存に供される。凍結保存された細胞は、解凍され、フィーダー細胞と共にIL-21の存在下で(「IL-21-/+」)またはIL-21の非存在下で(「IL-21-/-」)再び共培養して拡大増殖され得る。そのような第2の拡大増殖過程は「第2の培養工程」または「再刺激過程」と称され得る。細胞は、培養の17日目もしくは約17日目(または16~21もしくは9~25日目)に収集され得る。本明細書に詳述されるように、第1の拡大増殖におけるIL-21の使用は、NK細胞の凍結および解凍、ならびに任意選択的に追加のIL-21を伴う(これは、例えば細胞傷害性の向上といったいっそうさらなる利益を有する)その後の優れた拡大増殖を可能とする。
【0054】
第1の培養(拡大増殖または共培養)工程
第1の培養工程は、サイトカインを1回または複数回、培養の0~6日目の間に添加することを含み得る。1つより多くのサイトカインが使用され得る(例えばIL-2も用いられ得る)。例えば、第1の培養工程は、サイトカインの1つまたは両方を1回、培養の0日目および3日目の各々に添加することを含み得る。
【0055】
フィーダー細胞および第1のサイトカインと共に共培養する場合、0~6日目の間の1回または複数回の別のサイトカインのさらなる添加を伴う培養は、優れた増殖および/または抗がん活性を呈し得る。一部の実施形態において、14日のサイクル中の6日間のフィーダー細胞および追加のサイトカインの添加を伴う培養は、優れた増殖および/または抗がん活性を呈し得る。一部の実施形態において、IL-21は、少なくとも1回、ならびに任意選択的に凍結の前および後に、使用される。一部の実施形態において、IL-2がさらなるサイトカインとして含まれ得る。
【0056】
一部の実施形態において、第1のサイトカイン(例えば、IL-21)は、10~1,000、10~500、10~100、20~100、30~100、40~100、50~100、または10~50ng/mLの濃度で使用され得る。一部の実施形態において、追加のサイトカインは、50~1,000、50~900、50~800、50~700、50~600、50~550、100~550、150~550、200~550、250~550、300~550、350~550、400~550、または450~550IU/mLの濃度で使用され得る。一部の実施形態において、濃度は約50ng/mlである。
【0057】
NK細胞を増殖させる従来の方法は、高濃度の様々なサイトカインを利用する。反対に、本明細書に記載のNK細胞を増殖させる方法の一部の実施形態において、高い収率および高い純度を有するNK細胞が、低い濃度の1つのサイトカインのみを使用して増殖され得る。
【0058】
一部の実施形態において、共培養(培養、拡大増殖(再拡大増殖を含む))は、末梢血単核細胞ならびにフィーダー細胞(例えば、ジャーカット(Jurkat)細胞およびEBV-LCL細胞)を1:1~100、1:1~90、1:1~80、1:1~70、1:10~65、1:20~65、1:30~65、1:40~65、1:50~65または1:55~65の混合比で含めることにより行われ得る。一部の実施形態において、共培養は、末梢血単核細胞ならびにフィーダー細胞(例えば、ジャーカット(Jurkat)細胞およびEBV-LCL細胞)を様々な混合比で含めることにより行われ得る。一部の実施形態において、比は、(例えば、CD56+の代替として)PBMCについて約1:0.5:0.5~1:10:10であり得る。一部の実施形態において、CD56+細胞について、比は、例えば10または20で掛け算される(例えば、1:1~100のCD56+細胞とフィーダー細胞)。
【0059】
共培養は培地中で行うことができ、当該技術分野においてNK細胞への末梢血単核細胞の誘導および増殖のために一般に使用される任意の好適な培地が、限定無くそのような培地として使用され得る。例えば、RPMI-1640、DMEM、x-vivo10、x-vivo20、またはcellgro SCGM培地がそのような培地として使用され得る。追加的に、培養条件、例えば温度は、当該技術分野において公知の末梢血単核細胞の任意の好適な培養条件に従い得る。
【0060】
一部の実施形態において、第1の培養工程は、0~45、0~42、0~40、0~30、0~20、0~19、0~18、0~17、0~16、0~15または0~14日にわたり行われ得る。
【0061】
凍結工程
第1の培養工程からの培養および提供されたナチュラルキラー細胞は、培地中に収集および懸濁され、その後に凍結および凍結保存され得る。一部の実施形態において、培地は、FBSおよび/またはDMSOを含み得る。例えば、培地は、90%のFBSおよび10%のDMSO、または90~95%のFBSおよび5~10%のDMSOを含み得る。一部の実施形態において、他の許容される凍結保存剤、例えばCryoStor溶液(CS10、CS5)など、または他の成分、例えばスクロースもしくはグリセロールが含められ得る。一部の実施形態において、好適な保存剤は、DMSO、グリセロール、エチレングリコール、スクロース、トレハロース、デキストロース、またはポリビニルピロリドンなどを含む。一部の実施形態において、IL-2および/またはヒト血清アルブミンが存在し得る。
【0062】
一部の実施形態において、凍結保存は、提供されたナチュラルキラー細胞を、イソプロピルアルコールを含む凍結保存容器に移し、凍結保存容器中のナチュラルキラー細胞を超低温冷凍機中で終夜凍結させ、ナチュラルキラー細胞を-192℃またはより低い温度で保存することを含み得る。一部の実施形態において、凍結されたナチュラルキラー細胞は、-10℃もしくはより低い温度、-20℃もしくはより低い温度、-50℃もしくはより低い温度、-70℃もしくはより低い温度、-100℃もしくはより低い温度、-150℃もしくはより低い温度、-192℃もしくはより低い温度、または-200℃もしくはより低い温度で凍結されて保存され得る。一部の実施形態において、凍結されたナチュラルキラー細胞は、1日もしくはより長く、2日もしくはより長く、3日もしくはより長く、7日もしくはより長く、14日もしくはより長く、30日もしくはより長く、60日もしくはより長く、または180日もしくはより長く(先行する値の任意の2つの間の任意の範囲を含む)にわたり保存され得る。一部の実施形態において、温度は-135C~-196Cである。一部の実施形態において、細胞は、0.5、1、2、3、4、または5年(先行する値の任意の2つの間の任意の範囲を含む)にわたり貯蔵される。
【0063】
一部の実施形態において、提供されるナチュラルキラー細胞は、速度制御冷凍機(controlled rate freezer;CRF)を使用して冷却および/または凍結され得る。一部の実施形態において、凍結されたナチュラルキラー細胞は、液体窒素下で保存され得る。
【0064】
一部の実施形態において、提供されるナチュラルキラー細胞は、速度制御冷凍機(CRF)を使用して冷却および/または凍結され得る。一部の実施形態において、これは、遅
い速度で(例えば、1~8時間、例えば、1、2、3、4、5、6、7もしくは8時間またはより長い)行われ得る。それはまた、イソプロピルアルコールを使用することにより手動で緩徐に凍結され得、その場合、NK細胞のバイアルはクライオ容器(例えばNalgene Mr. Frosty)に入れられ、-70℃で終夜貯蔵される。翌日、細胞は液体窒素(LN2)に移される。
【0065】
解凍工程
凍結されたナチュラルキラー細胞は、任意の好適な方法を使用して凍結保存後に解凍され得る。一部の実施形態において、凍結/凍結保存されたナチュラルキラー細胞は、水浴を使用して、例えば37℃で、解凍され得る。一部の実施形態において、凍結されたナチュラルキラー細胞は、1時間もしくはより長く、2時間もしくはより長く、5時間もしくはより長く、または10時間にわたり解凍され得る。一部の実施形態において、過程は、水またはビーズ浴中で実行される。一部の実施形態において、解凍過程は、凍結させた状態(例えば、液体窒素)から取り出した後にできるだけ迅速にまたはその直後に行われる。
【0066】
一部の実施形態において、凍結されたナチュラルキラー細胞は、10分以内に37Cの水浴中で解凍することができ、その場合、凍結されたバイアルまたはバッグは、解凍過程を加速させるために振盪され得る。一部の実施形態において、細胞はまた、機器、例えばヒートブロック、バイアル用の自動化細胞解凍機器(例えばThawStar、Biocision)、またはバッグ用の解凍機器(例えば、VIA Thaw、GE healthcare)を使用して解凍され得る。
【0067】
第2の培養(第2の共培養、第2の拡大増殖、または再拡大増殖、または任意のその後の培養工程)工程
細胞は最初に第1の培養工程においてIL-21で処理され、第2の拡大増殖工程がそれにより可能となる。そのため、方法は、1つの拡大増殖工程だけでなく、2つの拡大増殖工程(例えば、1つまたは複数の再拡大増殖工程)を含み得る。好ましくは、第2の拡大増殖工程は、試料が凍結され、何らかの時間的期間にわたり貯蔵され、次に解凍された後に行われる。
【0068】
第2の培養工程の間に、解凍されたナチュラルキラー細胞は、1回または複数回のフィーダー細胞の添加と共に培養され得る。
【0069】
一部の実施形態において、フィーダー細胞は、培養の14日のサイクル(または9~25日のサイクル)の間に1回または複数回、添加され得る。
【0070】
一部の実施形態において、14日のサイクルの間の1回または複数回のフィーダー細胞の添加を伴う培養は、凍結および解凍後に優れた増殖および/または抗がん活性を呈し得るだけでなく、持続された細胞増殖を維持することができ、その結果、ナチュラルキラー細胞が臨床使用のために十分な量で製造される。
【0071】
一部の実施形態において、第2の培養工程は、第2のラウンドのサイトカイン(例えば、追加のIL-21またはIL-21に加えて他のサイトカイン)を添加することを含み得る。
【0072】
一部の実施形態において、第2の培養工程は、培養の0~6日目の間に1回または複数回、その後のラウンドのサイトカインを添加することを含み得る。
【0073】
本明細書の他の箇所におけるサイトカインの任意の記載は、第2の培養工程のためのサ
イトカインに適用され得る。例えば、一部の実施形態において、第2のサイトカインは、10~1,000、10~500、10~100、20~100、30~100、40~100、50~100、もしくは10~50ng/mLの濃度で使用され得、かつ/または追加のサイトカインは、50~1,000、50~900、50~800、50~700、50~600、50~550、100~550、150~550、200~550、250~550、300~550、350~550、400~550、もしくは450~550IU/mLの濃度で使用され得る。第2の拡大増殖のために使用されるサイトカインは好ましくはIL-21である。
【0074】
一部の実施形態において、組成物は、再拡大増殖前の凍結された細胞の組成物であり、IL-2;5~10%のDMSO;90~95%のFBS;および任意選択的にCD56+細胞であるNK細胞を含み得る。一部の実施形態において、組成物は、凍結された固体である。一部の実施形態において、NK細胞は、組成物の細胞集団の少なくとも90%である。一部の実施形態において、それはCryoStor溶液をさらに含む。一部の実施形態において、組成物は、再拡大増殖前の凍結された細胞用である。
【0075】
一部の実施形態において、組成物は、再拡大増殖前の凍結された細胞用の組成物であり、IL-2;5~10%のDMSO;80~95%のHartman溶液;1~10%のヒト血清アルブミン;およびNK細胞を含み得る。一部の実施形態において、それはCryoStor溶液をさらに含む。一部の実施形態において、組成物は、注射前の凍結された細胞用である。
【0076】
一部の実施形態において、培養においてナチュラルキラー細胞を拡大増殖させる方法は、CD56+細胞を血液試料から単離すること;単離されたCD56+細胞をIL-21の存在下で第1の期間にわたり共培養すること;第1の期間の後の共培養されたCD56+細胞を凍結させること;凍結されたCD56+細胞を解凍すること;および解凍されたCD56+細胞をIL-21の存在下で第2の期間にわたり共培養することを含み得る。
【0077】
一部の実施形態において、方法は、凍結されたCD56+細胞を-100℃よりも低い温度で貯蔵することをさらに含み得る。一部の実施形態において、凍結されたCD56+細胞は、-10℃もしくはより低い温度、-20℃もしくはより低い温度、-50℃もしくはより低い温度、-70℃もしくはより低い温度、-150℃もしくはより低い温度、-192℃もしくはより低い温度、または-200℃もしくはより低い温度で貯蔵されてもよい。一部の実施形態において、凍結されたCD56+細胞は、解凍前に1日よりも長く貯蔵され得る。一部の実施形態において、凍結されたCD56+細胞は、2日もしくはより長く、3日もしくはより長く、7日もしくはより長く、14日もしくはより長く、30日もしくはより長く、60日もしくはより長く、または180日もしくはより長く(先行する値の任意の2つの間の任意の範囲を含む)にわたり貯蔵され得る。一部の実施形態において、細胞は、解凍された場合に生存可能である限りの長さの期間にわたり凍結され得る。
【0078】
一部の実施形態において、単離されたCD56+細胞は、凍結の前に13~16日にわたり共培養され得る。例えば、単離されたCD56+細胞は、凍結の前に14または15日にわたり共培養され得る。一部の実施形態において、共培養または拡大増殖は、適切な任意の時間にわたり行われ得る。一部の実施形態において、共培養または拡大増殖(再拡大増殖を含む)は、9~25日、例えば、10~24、11~23、13~22、14~21、14~18、14~16日などにわたり為され得る。これらの時間枠は、本明細書において提供される任意の拡大増殖および/または再拡大増殖期間(他の細胞に関する実施形態を含む)に適用され得る。
【0079】
一部の実施形態において、単離されたCD56+細胞は、1つまたは複数の照射されたフィーダー細胞と共にIL-21の存在下で共培養され得る。一部の実施形態において、解凍されたCD56+細胞は、1つまたは複数の照射されたフィーダー細胞と共にIL-21の存在下で共培養され得る。1つまたは複数のフィーダー細胞は、照射されたジャーカット(Jurkat)細胞、照射されたエプスタイン・バーウイルス形質転換リンパ芽球様細胞株(EBV-LCL)細胞、K562細胞、mb15-k562、mb21-k562フィーダー細胞、HuT78、および/またはPBMCからなる群から選択される1つまたは複数を含み得るがこれらに限定されない。一部の実施形態において、拡大増殖は、PBMC、CD56+および/またはCD56+CD3-細胞を用いて行われる。一部の実施形態において、CD56+細胞は、約1:1~100のCD56+細胞とフィーダー細胞との比で共培養され得る。例えば、CD56+細胞は、約1:2、1:5、1:10、1:30または1:100のCD56+細胞とフィーダー細胞との比で共培養され得る。
【0080】
一部の実施形態において、IL-21は、10~100ng/mLの濃度で第1および/または第2の期間の間に添加され得る。例えば、IL-21は、20~80ng/mL、30~70ng/mL、または40~60ng/mLの濃度で第1および/または第2の期間の間に添加され得る。一部の実施形態において、IL-21は、第1および/または第2の期間の間に1回よりも多く添加され得る。
【0081】
一部の実施形態において、培養においてナチュラルキラー細胞を拡大増殖させる方法は、CD56+を血液試料から単離すること;CD56+細胞を1つまたは複数のフィーダー細胞と共にIL-21の存在下で共培養すること;CD56+細胞を凍結させること;凍結されたCD56+細胞を解凍すること;および解凍されたCD56+細胞を拡大増殖させることを含み得る。
【0082】
一部の実施形態において、CD56+細胞は、-100℃よりも低い温度で凍結され得る。一部の実施形態において、CD56+細胞は、-10℃もしくはより低い温度、-20℃もしくはより低い温度、-50℃もしくはより低い温度、-70℃もしくはより低い温度、-150℃もしくはより低い温度、-192℃もしくはより低い温度、または-200℃もしくはより低い温度で凍結され得る。一部の実施形態において、凍結されたCD56+細胞は、解凍前に1日よりも長く貯蔵され得る。一部の実施形態において、凍結されたCD56+細胞は、2日もしくはより長く、3日もしくはより長く、7日もしくはより長く、14日もしくはより長く、30日もしくはより長く、60日もしくはより長く、または180日もしくはより長く(先行する値の任意の2つの間の任意の範囲を含む)にわたり貯蔵され得る。例えば、凍結されたCD56+細胞は、1日より長く、かつ10年より短い期間にわたり貯蔵されてもよい。
【0083】
一部の実施形態において、CD56+細胞は、凍結の前に13~16日にわたり共培養され得る。例えば、CD56+細胞は、凍結の前に14または15日にわたり共培養され得る。一部の実施形態において、共培養または拡大増殖(再拡大増殖を含む)は、9~25日、例えば、10~24、11~23、13~22、14~21、14~18、14~16日などにわたり為され得る。これらの時間枠は、本明細書において提供される任意の拡大増殖および/または再拡大増殖期間(他の細胞に関する実施形態を含む)に適用され得る。
【0084】
一部の実施形態において、1つまたは複数のフィーダー細胞は、照射されたジャーカット(Jurkat)細胞、照射されたエプスタイン・バーウイルス形質転換リンパ芽球様細胞株(EBV-LCL)細胞、K562細胞およびPBMCからなる群から選択される1つまたは複数であり得る。CD56+細胞は、約1:1~100のCD56+細胞とフ
ィーダー細胞との比で共培養され得る。例えば、CD56+細胞は、約1:2、1:5、1:10、1:30または1:100のCD56+細胞とフィーダー細胞との比で共培養され得る。
【0085】
一部の実施形態において、IL-21は、10~100ng/mLの濃度で添加され得る。例えば、IL-21は、20~80ng/mL、30~70ng/mL、または40~60ng/mLの濃度で添加され得る。一部の実施形態において、IL-21は、1回よりも多く添加され得る。
【0086】
一部の実施形態において、ナチュラルキラー細胞の細胞傷害性を増加させる方法は、前記ナチュラルキラー細胞を提供すること;前記ナチュラルキラー細胞を凍結させること;凍結されたナチュラルキラー細胞を解凍すること;および解凍されたナチュラルキラー細胞を1つまたは複数のフィーダー細胞と共にIL-21の存在下で共培養することを含み得る。
【0087】
一部の実施形態において、方法は、凍結されたナチュラルキラー細胞を-100℃よりも低い温度で貯蔵することをさらに含み得る。一部の実施形態において、凍結されたナチュラルキラー細胞は、-10℃もしくはより低い温度、-20℃もしくはより低い温度、-50℃もしくはより低い温度、-70℃もしくはより低い温度、-150℃もしくはより低い温度、-192℃もしくはより低い温度、または-200℃もしくはより低い温度で貯蔵されてもよい。一部の実施形態において、凍結されたナチュラルキラー細胞は、解凍前に1日よりも長く貯蔵され得る。一部の実施形態において、凍結されたナチュラルキラー細胞は、2日もしくはより長く、3日もしくはより長く、7日もしくはより長く、14日もしくはより長く、30日もしくはより長く、60日もしくはより長く、または180日もしくはより長く(先行する値の任意の2つの間の任意の範囲を含む)にわたり貯蔵され得る。一部の実施形態において、細胞は、解凍された際に細胞のいずれかが生存可能なままである限りの長さにわたり貯蔵される。
【0088】
一部の実施形態において、1つまたは複数のフィーダー細胞は、照射されたジャーカット(Jurkat)細胞、照射されたエプスタイン・バーウイルス形質転換リンパ芽球様細胞株(EBV-LCL)細胞、K562細胞およびPBMCからなる群から選択される1つまたは複数であり得る。一部の実施形態において、解凍されたナチュラルキラー細胞は、約1:1~100のナチュラルキラー細胞とフィーダー細胞との比で共培養され得る。
【0089】
一部の実施形態において、IL-21は、10~100ng/mLの濃度で添加され得る。例えば、IL-21は、20~80ng/mL、30~70ng/mL、または40~60ng/mLの濃度で添加され得る。一部の実施形態において、IL-21は、1回よりも多く添加され得る。
【0090】
一部の実施形態において、ナチュラルキラー細胞を製造する方法は、以下の工程:凍結工程;解凍工程;およびフィーダー細胞の添加を伴う共培養を含む第2の培養工程を繰り返すことを含み得る。
【0091】
一部の実施形態において、
図14A(データ曲線の上のバーの時点)に示されるように、再刺激または再拡大増殖の1つより多くのサイクルが適用され得る。一部の実施形態において、第1の刺激、続いて細胞培養、続いて凍結(任意選択的)、続いて第2の刺激(再刺激)、続いて第2の細胞培養工程、続いて凍結(任意選択的)、続いて第3の刺激(第2の再刺激)、続いて別の培養工程が為される。IL-21は、本明細書において提供されるような刺激工程の各々において使用され得る。任意選択的な凍結工程は、細胞の全体、または細胞の画分に適用され得る。一部の実施形態において、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはより多くのラウンドの刺激(例えば、1ラウンドの刺激および次に1、2、3、4、5、6、7、8、9またはより多くのラウンドの再刺激)が為される。再刺激の各々の後に、別の細胞培養/拡大増殖工程が為され得る。一部の実施形態において、細胞培養または再拡大増殖の各々は、9~25日にわたり為され得る。各細胞培養工程に続いて凍結工程が為され得る。一部の実施形態において、過程は、所望されるだけ多くの回数繰り返される、a)刺激(または再刺激)、続いてb)細胞培養、続いてc)凍結(任意選択的)、続いてd)解凍(任意選択的)のサイクルであり得る。一部の実施形態において、IL-21の量は10~100ng/mL、例えば、50ng/mLである。
図14Aにおける刺激/再刺激は、細胞へのIL-21の添加を表す。
【0092】
一部の実施形態において、本明細書において提供される任意の過程は、1つまたは複数の凍結工程を含み得る。
【0093】
一部の実施形態において、本明細書において提供されるNK細胞に関する任意の実施形態は、天然のNK細胞の他に、遺伝子改変されたNK細胞を含み得る。
【0094】
がんを処置するための細胞治療用組成物
一部の実施形態によれば、がんの処置用の細胞治療用組成物は末梢血由来CD56+ NK細胞を含み得る。細胞は、少なくとも第1のラウンドがIL-21の存在下で為される少なくとも2ラウンドの拡大増殖を経たものである、またはその結果である。
【0095】
本明細書において、「末梢血由来」という用語は、細胞が「末梢血の全血」または「白血球アフェレーシスを使用して末梢血から単離された白血球」に由来することを意味し得る。末梢血由来CD56+ NK細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)由来CD56+ NK細胞と交換可能に使用され得る。
【0096】
一部の実施形態において、サイトカインは、18~180,000、20~100,000、50~50,000、50~1,000、50~900、50~800、50~700、50~600、50~550、100~550、150~550、200~550、250~550、300~550、350~550、400~550、450~550IU/mLの濃度で使用され得る。サイトカインがこれらの範囲内で使用される場合、それは、がん処置組成物に含まれるNK細胞のアポトーシスを抑制し、NK細胞の抗がん活性を増加させ得る。
【0097】
一部の実施形態において、組成物は、IL-2を(例えば、IL-21に加えて)追加のサイトカインとして含み得る。
【0098】
一部の実施形態において、CD56+ NK細胞は、本明細書の他の箇所に記載されるように得られ得る。例えば、CD56+ NK細胞は、フィーダー細胞(例えば照射されたジャーカット(Jurkat)細胞および照射されたEBV-LCL細胞)と共培養することにより得られ得る。一部の実施形態において、CD56+ NK細胞と全細胞との比(純度)は、85%もしくはより高い%、90%もしくはより高い%、95%もしくはより高い%、または98%もしくはより高い%であり得る。
【0099】
一部の実施形態において、がんは、血液がん、胃がん、膵臓がん、胆管癌、結腸がん、乳がん、肝臓がん、卵巣がん、肺がん、腎臓がん、前立腺がんまたは神経芽腫であり得るがこれらに限定されない。一部の実施形態において、方法は、例えば、神経変性疾患および急性感染症における、同種異系NK細胞療法に適用され得る。
【0100】
一部の実施形態において、組成物は、T細胞を含まなくてもよく、または微量のみのT細胞を含んでもよい。例えば、組成物中のT細胞と全細胞との比は、15%未満、10%未満、5%未満、2%未満、1%未満またはより低い%であり得る。
【0101】
本明細書において、「T細胞」という用語は、胸腺に由来するリンパ球であって、以前に遭遇した抗原を「記憶」して情報をB細胞に提供することができ、それにより、抗体の産生を促し、細胞免疫系において重要な役割を果たすものを指す。これらのT細胞は、異なる抗原間の非常に小さい差異を区別して同種異系抗原に対する免疫応答を誘導できるので、自己療法が可能であるが、同種異系療法のための使用には制限があり得る。よって、T細胞を含まない細胞治療用組成物は同種移植のために好適であり得る。
【0102】
本明細書において、「細胞治療剤」という用語は、一連の行為、例えば細胞および組織の機能を回復させるためまたは他の方法により細胞の生物学的特徴を変化させるためのインビトロでの自己、同種異系、および異種生細胞の増殖およびスクリーニングを通じて、処置、診断、および予防のために使用される医薬を指す。細胞治療剤は、米国において1993年からおよび韓国において2002年から医療用製造物として規制されている。これらの細胞治療剤は、大きくは2つの分野に分類することができ、これは第1に、組織再生または臓器機能の回復のための幹細胞治療剤、第2に、免疫応答の調節、例えばインビボでの免疫応答の阻害または免疫応答の増強のための免疫細胞治療剤である。
【0103】
本明細書に記載の細胞治療用組成物の投与経路は、組成物が標的組織に達する限り、任意の好適な経路であり得る。投与は、非経口投与、例えば、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、または皮内投与であり得るがこれらに限定されない。
【0104】
本明細書に記載の細胞治療用組成物は、細胞療法のために好適なまたは一般に使用される薬学的に許容される担体と共に好適な形態に製剤化され得る。「薬学的に許容される」は、ヒト身体に投与された場合に、生理学的に許容され、かつアレルギー性反応、例えば胃腸障害、もしくはめまいなど、またはそれに類似した反応を一般に引き起こさない組成物を指す。薬学的に許容される担体は、例えば、非経口投与担体、例えば水、好適な油、食塩水、ならびに水性グルコースおよびグリコールなどを含むことができ、安定化剤および保存剤をさらに含むことができる。好適な安定化剤としては、抗酸化剤、例えば亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、またはアスコルビン酸、スクロース、またはアルブミンなどが挙げられる。好適な保存剤としては、DMSO、グリセロール、エチレングリコール、スクロース、トレハロース、デキストロース、またはポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0105】
細胞治療用組成物はまた、細胞治療剤が標的細胞へと移動し得る任意のデバイスにより投与され得る。
【0106】
細胞治療用組成物は、疾患の処置のための治療有効量の細胞治療剤を含み得る。「治療有効量」という用語は、研究者、獣医師、医師、または他の臨床医により考慮される組織系、動物、またはヒトにおける生物学的または医学的応答を誘導する活性成分または細胞治療用組成物の量を意味し、処置されるべき疾患または障害の症状の軽減を誘導する量を含む。細胞治療用組成物に含まれる細胞治療剤は、所望される効果にしたがって変化し得ることは当業者に明らかである。したがって、細胞治療剤の最適な含有量は、当業者により容易に決定され得、様々な要因、例えば疾患の種類、疾患の重症度、組成物に含有される他の成分の含有量、製剤の種類、ならびに患者の年齢、体重、全般的健康状態、性別、および食事、投与時間、投与経路、組成物の分泌比(secretion ratio)、処置期間、ならびに同時に使用される薬物にしたがって調整され得る。要因の全てを考慮することにより副作用無しで最小量により最大の効果を得る能力を有する量を含めるこ
とが重要である。例えば、細胞治療用組成物は、1×106~5×108細胞/kg体重の細胞治療剤を含み得る。
【0107】
一部の実施形態において、細胞治療用組成物のNK細胞は、それらの凍結前の集団と比較して50%もしくはより高い%、60%もしくはより高い%、70%もしくはより高い%、80%もしくはより高い%、85%もしくはより高い%、90%もしくはより高い%、93%もしくはより高い%、95%もしくはより高い%、または98%もしくはより高い%の細胞傷害性を有し得る。
【0108】
一部の実施形態において、組成物は、患者からの末梢血単核細胞(PBMC)に由来する有効量のCD56+細胞を含み得る。CD56+細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)を血液試料から単離すること;CD56+細胞をPBMCから単離すること;CD56+細胞を1つまたは複数のフィーダー細胞と共に1つまたは複数のサイトカインの存在下で共培養すること;CD56+細胞を凍結させること;凍結されたCD56+細胞を解凍すること;および解凍されたCD56+細胞を1つまたは複数のフィーダー細胞と共に1つまたは複数のサイトカインの存在下で共培養することにより調製され得る。
【0109】
一部の実施形態において、CD56+細胞の有効量は、1×106~5×108細胞/kg体重であり得る。
【0110】
一部の実施形態において、細胞組成物は、患者からの末梢血単核細胞(PBMC)に由来する有効量のCD56+細胞;IL-2;およびIL-21を含み得る。
【0111】
一部の実施形態において、組成物は、末梢血単核細胞(PBMC)に由来するCD56+細胞の第1の集団;氷;IL-2およびIL-21を含み得る。解凍された場合に、CD56+細胞はCD56+細胞の第2の集団の少なくとも80%の細胞傷害性を有し、CD56+細胞の第2の集団は凍結されていない。一部の実施形態において、細胞傷害性は、少なくとも85、90、95、96、97、98、または99%である。
【0112】
一部の実施形態において、凍結無しでの拡大増殖(IL21有りおよび無し、IL21+またはIL21-)と凍結有りかつ第1の工程におけるIL21+との共培養有りでの拡大増殖を比較した場合、凍結有りでの拡大増殖の平均細胞傷害性は凍結無しの97.7%であった(表C:83%~131%の範囲)。一部の実施形態において、凍結無しでの拡大増殖(IL21有りおよび無し、IL21+またはIL21-)と凍結有りかつ第1の工程におけるIL21+との共培養無しでの拡大増殖(IL21--、IL21-+)を比較した場合、凍結有りでの拡大増殖の平均細胞傷害性は凍結無しでの拡大増殖の少なくとも81.4%であり得る(表D、61%~83%の範囲)。IL21を凍結有りでの拡大増殖の両方の工程において添加した場合(IL21++)、平均細胞傷害性は凍結無しでの拡大増殖の114%であった(表C、98%~131%の値)。そのため、一部の実施形態において、IL21+/+(72%)対IL21-/+(45%)は、第1の拡大増殖においてIL21有りかつ第2の工程においても同様の場合、細胞傷害性は、第1の工程においてIL21無しの場合よりも60%高いことを表す。そのため、一部の実施形態において、第1の拡大増殖におけるIL21の存在は、60%より高い、第2の、凍結後の拡大増殖を可能とする。IL21+/-(62%)対IL21-/-(46.1%)について、第1の工程においてIL21有りの第1の拡大増殖であるが第2の工程においてはそうでない場合、細胞傷害性は、第1の工程におけるIl21無しの場合よりも少なくとも35%高いものであり得ることをそれは意味する。
【0113】
一部の実施形態において、細胞傷害性は、凍結無しでの拡大増殖(IL21有りおよび無し)と凍結有りかつ第1の工程におけるIL21+との共培養有りでの拡大増殖との比
較であり、凍結有りでの拡大増殖の平均細胞傷害性は凍結無しの97.7%である。一部の実施形態において、細胞傷害性は、凍結無しでの拡大増殖(IL21有りおよび無し)と凍結有りかつ第1の工程におけるIL21+との共培養無しでの拡大増殖との比較であり、凍結有りでの拡大増殖の平均細胞傷害性は凍結無しでの拡大増殖の81.4%である。一部の実施形態において、IL21が凍結の前および後の両方に添加され、平均細胞傷害性は凍結無しでの拡大増殖の114%である。
【0114】
一部の実施形態において、その後の再拡大増殖を可能とする共拡大増殖の間の初期IL21処理の優れた性質は、以下の表A~Dにおける結果と合致したものであり得る:
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0115】
NK細胞の培養、拡大増殖(再拡大増殖を含む)の任意の実施形態において、共培養(
培養、拡大増殖(再拡大増殖を含む))の開始時の培養物中の末梢血単核細胞の数は、1×104~1×1015個の細胞の範囲内である。一部の実施形態において、共培養の開始時の培養物中の末梢血単核細胞の数は、1×104~5×104個の細胞、5×104~1×105個の細胞、1×105~5×105個の細胞、5×105~1×106個の細胞、1×106~1×107個の細胞、1×107~1×108個の細胞、1×108~1×109個の細胞、1×109~1×1010個の細胞、1×1011~1×1012個の細胞、1×1012~1×1013個の細胞、1×1013~1×1014個の細胞、または1×1014~1×1015個の細胞の範囲内である。一部の実施形態において、第1または初期拡大増殖の開始時の培養物中の末梢血単核細胞の数は、1×104~5×104個の細胞、5×104~1×105個の細胞、1×105~5×105個の細胞、5×105~1×106個の細胞、1×106~1×107個の細胞、1×107~1×108個の細胞、1×108~1×109個の細胞、1×109~1×1010個の細胞、1×1011~1×1012個の細胞、1×1012~1×1013個の細胞、1×1013~1×1014個の細胞、または1×1014~1×1015個の細胞の範囲内である。一部の実施形態において、再拡大増殖の開始時の培養物中の末梢血単核細胞の数は、1×104~5×104個の細胞、5×104~1×105個の細胞、1×105~5×105個の細胞、5×105~1×106個の細胞、1×106~1×107個の細胞、1×107~1×108個の細胞、1×108~1×109個の細胞、1×109~1×1010個の細胞、1×1011~1×1012個の細胞、1×1012~1×1013個の細胞、1×1013~1×1014個の細胞、または1×1014~1×1015個の細胞の範囲内である。本発明の方法は、従来のアプローチよりも大きいNK細胞の拡大増殖を提供し得る。そのため、上記の実施形態のいずれかにおいて、共培養(培養、拡大増殖(再拡大増殖を含む))の開始時の培養物中の末梢血単核細胞の数は、例えば、治療的使用および/または凍結保存のための、類似した数のNK細胞を提供するためにNK細胞を拡大増殖させる(例えば、サイトカイン、例えばIL-21および/またはIL-2無しで拡大増殖させる)ための従来のアプローチにおいては使用が困難な細胞の数である。
【0116】
本明細書に開示されるように、本開示の方法は、一部の実施形態において、治療的使用、例えば、免疫療法のために好適なNK細胞を提供する。一部の実施形態において、本開示の方法は、治療的使用のために有効にその後の解凍および拡大増殖が可能なNK細胞の凍結保存を提供する。そのため、NK細胞を培養しまたは拡大増殖(再拡大増殖を含む)させるための任意の実施形態において、NK細胞は拡大増殖されて、治療的使用のための拡大増殖されたNK細胞の1つの集団、および凍結保存のための別の集団が製造される。一部の実施形態において、凍結保存されたNK細胞は、治療的使用および/またはさらなる凍結保存のために後に解凍および再拡大増殖される。
【0117】
NK細胞を培養しまたは拡大増殖(再拡大増殖を含む)させるための任意の実施形態において、拡大増殖または再拡大増殖の終了時のNK細胞の数は、治療的使用のために有効なNK細胞の数よりも多い。一部の実施形態において、過剰なNK細胞は、将来的な使用、例えば、将来的な解凍、拡大増殖およびそれを必要とする患者への投与のために凍結保存される。一部の実施形態において、NK細胞は、療法、例えば、免疫療法のために使用されるまたは使用されるべきNK細胞の数よりも少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、もしくはより大きい%、または先行する値の任意の2つの間の範囲内のパーセンテージだけ多い細胞数の程度まで拡大増殖または再拡大増殖される。
【0118】
NK細胞を培養しまたは拡大増殖(再拡大増殖を含む)させるための任意の実施形態において、方法は、凍結-解凍-拡大増殖サイクルを繰り返すことを含み得る。一部の実施形態において、方法は、凍結-解凍-拡大増殖サイクルを1、2、3、4、5、6、7、
8またはより多くの回数繰り返すことを含む。
【0119】
凍結保存されたNK細胞の組成物であって、NK細胞が、解凍後に、それらの生物学的活性、例えば、細胞傷害性を保持する、組成物もまた本明細書において提供される。一部の実施形態において、凍結保存されたNK細胞は、解凍および再拡大増殖後に、それらの生物学的活性、例えば、細胞傷害性を保持する。一部の実施形態において、凍結保存されたNK細胞の組成物は、本明細書に開示される、NK細胞を培養しまたは拡大増殖(再拡大増殖を含む)させる方法のいずれかにより調製される。一部の実施形態において、組成物は、少なくとも80%、85%、90%、95%、97%またはより多くのNK細胞である免疫細胞の集団を含む。組成物は、好適な凍結保存培地を含有し得る。一部の実施形態において、組成物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)および血清(例えば、FBS、ヒト血清)を含む。一部の実施形態において、組成物は、1~15%、2~15%、5~15%、5~10%、または約10%のDMSOを含む。一部の実施形態において、組成物は、少なくとも90%のNK細胞を含む凍結保存された免疫細胞の集団、10%のDMSOおよび90%のFBSからなるまたは含む。一部の実施形態において、NK細胞は、対象から得られたPBMCに由来する。一部の実施形態において、組成物は、少なくとも90%のNK細胞を含む凍結保存された免疫細胞の集団、5~10%のDMSOおよび90~95%のFBSからなるまたは含む。一部の実施形態において、NK細胞は、対象から得られたPBMCに由来する。一部の実施形態において、それはCryoStor溶液をさらに含む。
【0120】
がんを予防または処置する方法
一部の実施形態において、がんを予防または処置する方法が提供される。方法は、末梢血由来CD56+ナチュラルキラー細胞およびサイトカインを含む抗がん用細胞治療用組成物を対象に投与することを含む。一部の実施形態において、細胞は、少なくとも第1の拡大増殖過程がIL-21の存在下で行われる2回の拡大増殖過程の結果である。
【0121】
「対象」という用語は、処置、観察、または試験の対象となる哺乳動物、好ましくはヒトを指す。対象は、血液がん、胃がん、膵臓がん、胆管癌、結腸がん、乳がん、肝臓がん、卵巣がん、肺がん、腎臓がん、前立腺がんまたは神経芽腫の患者であり得るがこれらに限定されない。
【0122】
一部の実施形態において、成人の場合、細胞治療用組成物は、1日に1回~数回で投与され得る。細胞治療用組成物は、1日毎にまたは2~180日の間隔で投与され得る。組成物に含まれる細胞治療剤は、体重1kg当たり1×106~1×1011個の末梢血由来CD56+ナチュラルキラー細胞、例えば、約1×106~1×108個のNK細胞を含み得る。一部の実施形態において、細胞治療用組成物中の末梢血由来CD56+ナチュラルキラー細胞は少なくとも約90%純粋である。一部の実施形態において、サイトカインは、約50~50,000IU/mlの範囲内の濃度のIL-2である。
【0123】
一部の実施形態において、細胞治療用組成物は、細胞療法のために好適なまたは一般に使用される薬学的に許容される担体と共に好適な形態に製剤化され得る。「薬学的に許容される」は、ヒト身体に投与された場合に、生理学的に許容され、かつアレルギー性反応、例えば胃腸障害、もしくはめまいなど、またはそれに類似した反応を一般に引き起こさない組成物を指す。薬学的に許容される担体は、例えば、非経口投与担体、例えば水、好適な油、食塩水、水性グルコース、グリコール、基礎化合物、例えばHartman溶液、または生理食塩水溶液およびplasmalyte Aのような代替物などを含むことができ、安定化剤および保存剤をさらに含むことができる。好適な安定化剤としては、抗酸化剤、例えば亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、またはアスコルビン酸、スクロース、アルブミン、またはヒト血清アルブミンなどが挙げられる。好適な保存剤としては、DMSO、グリセロール、エチレングリコール、スクロース、トレハロース、デキストロース、またはポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0124】
一部の実施形態において、細胞治療用組成物は、任意の好適な方法、例えば直腸、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、胸骨内、経皮、外用、眼内、または皮内経路を通じた投与により投与され得る。一部の実施形態において、組成物に含まれるNK細胞は、同種異系、すなわち、処置されている対象以外のヒトから得られたものであり得る。一部の実施形態において、該ヒトは、正常なヒトまたはがん患者であり得る。一部の実施形態において、組成物に含まれるNK細胞は、自己、すなわち、処置されている対象から得られたものであり得る。
【0125】
一部の実施形態において、本明細書に開示されるNK細胞および本明細書に開示されるNK細胞を含む細胞治療用組成物は、がん以外の疾患または状態を処置するために使用され得る。NK細胞は、例えば、T細胞の調節により、免疫系の調節において重要な役割を果たすことが報告されており、そのため、NK細胞を有する細胞治療用組成物は、免疫系と関連付けられる状態を処置するために投与され得る。例えば、細胞治療用組成物は、神経変性障害(例えばアルツハイマー病およびパーキンソン病)または自己免疫疾患(例えば関節リウマチ、多発性硬化症、乾癬、脊椎関節症、SLE、シェーグレン症候群、全身性硬化症)を処置するために投与され得る。
【0126】
一部の実施形態において、対象を処置する方法は、CD56+細胞を対象から収集すること;CD56+細胞を1つまたは複数のフィーダー細胞と共にIL-21の存在下で共培養すること;共培養されたCD56+細胞を少なくとも1日にわたり凍結させること;凍結されたCD56+細胞を解凍すること;解凍されたCD56+細胞を拡大増殖させること;および拡大増殖されたCD56+細胞を対象に投与することを含むことができ、第2の拡大増殖からの細胞の細胞傷害性は、凍結の前の共培養されたCD56+の細胞傷害性の少なくとも80%(例えば、少なくとも80、85、90、95、または97%)である。
【0127】
一部の実施形態において、方法は、凍結されたCD56+細胞を-100℃よりも低い温度で貯蔵することをさらに含み得る。一部の実施形態において、凍結されたCD56+細胞は、-10℃もしくはより低い温度、-20℃もしくはより低い温度、-50℃もしくはより低い温度、-70℃もしくはより低い温度、-150℃もしくはより低い温度、-192℃もしくはより低い温度、または-200℃もしくはより低い温度で貯蔵されてもよい。一部の実施形態において、凍結されたCD56+細胞は、解凍前に1日よりも長く貯蔵され得る。一部の実施形態において、凍結されたCD56+細胞は、2日もしくはより長く、3日もしくはより長く、7日もしくはより長く、14日もしくはより長く、30日もしくはより長く、60日もしくはより長く、または180日もしくはより長く(先行する値の任意の2つの間の任意の範囲を含む)にわたり貯蔵され得る。
【0128】
一部の実施形態において、CD56+細胞は、凍結の前に13~16日にわたり共培養され得る。例えば、CD56+細胞は、凍結の前に14または15日にわたり共培養され得る。一部の実施形態において、共培養または拡大増殖(再拡大増殖を含む)は、9~25日、例えば、10~24、11~23、13~22、14~21、14~18、14~16日などにわたり為され得る。これらの時間枠は、本明細書において提供される任意の拡大増殖および/または再拡大増殖期間(他の細胞に関する実施形態を含む)に適用され得る。
【0129】
一部の実施形態において、解凍されたCD56+細胞を拡大増殖させることは、解凍されたCD56+を1つまたは複数の照射されたフィーダー細胞と共にIL-21の存在下
で共培養することを含む。1つまたは複数のフィーダー細胞は、照射されたジャーカット(Jurkat)細胞、照射されたエプスタイン・バーウイルス形質転換リンパ芽球様細胞株(EBV-LCL)細胞、K562細胞およびPBMCからなる群から選択される1つまたは複数である。一部の実施形態において、CD56+細胞は、約1:1~100のCD56+細胞とフィーダー細胞との比で共培養され得る。例えば、CD56+細胞は、約1:2、1:5、1:10、1:30または1:100のCD56+細胞とフィーダー細胞との比で共培養され得る。
【0130】
一部の実施形態において、IL-21は、10~100ng/mLの濃度で第1および/または第2の期間の間に添加され得る。例えば、IL-21は、20~80ng/mL、30~70ng/mL、または40~60ng/mLの濃度で第1および/または第2の期間の間に添加され得る。一部の実施形態において、IL-21は、第1および/または第2の期間の間に1回よりも多く添加され得る。
【0131】
一部の実施形態において、IL-21は、ヒトNK細胞のためにヒトIL-21である。
【0132】
本明細書において提供される一部の実施形態は、以下のような特徴および利点を含む:
(a)ナチュラルキラー細胞を製造する方法。
(b)ナチュラルキラー細胞は、凍結保存の後であっても臨床使用のために十分な量で製造され得るので、がんの予防および処置の、特には、ナチュラルキラー細胞を使用する同種異系療法の効果を増強することが可能である。
(c)2回の拡大増殖(IL-21有りの少なくとも1回目、および任意選択的に同様に第2の拡大増殖)の結果としてもたらされる細胞の細胞傷害性は、IL-21無しの拡大増殖(1回、および2回でさらに大きく)を受けた細胞よりも驚くべきほどに優れる。一部の実施形態において、細胞は、1~50mLのクライオバイアル、または10~100mLのクライオバッグ中にある。
【実施例】
【0133】
以下の実施例は、ある特定の具体的な特徴および/または実施形態の実例を示すために提供される。これらの実施例は、本開示を、記載される特定の特徴または実施形態に限定するものと解釈されるべきではない。
【0134】
高純度NK細胞製造方法の比較試験を、LCL+KL-1タイプのフィーダー細胞を使用してIL-21処理有りおよび無しで行った。本実施例において議論される任意の他のフィーダー細胞は、予言的な実施例として提供される。
【0135】
2つの製造方法におけるIL-21の有効性を検証する:1)元々の方法;これは、単離されたCD56+細胞を14~17日にわたり異なる種類のフィーダー細胞と共にIL-21の処理下または非処理下で培養することを伴った(但し、その後の再拡大増殖は無し)。2)再刺激方法;これは、元々の方法からの凍結保存された拡大増殖されたNK細胞を異なる種類のフィーダー細胞と共にIL-21の処理下または非処理下で培養することを伴った。異なる種類のフィーダー細胞および製造方法を表1および
図1に示し、これはNK細胞拡大増殖のための一般的なフィーダー細胞の代表であると理解される。
【表5】
【0136】
本実施例により提供される結果は、一般に比の範囲にわたるフィーダー細胞、貯蔵時間、およびIl-21が存在する中での追加の成分(例えば追加のサイトカイン)の代表的なものであることが理解される。
【0137】
実施例1:出発材料の単離および元々の方法
末梢血単核細胞(PBMC)をヒト血液から得た。単離されたPBMCをCD56+細胞選択のために使用した。PBMCを、1.077g/mLのFicollを用いる密度勾配遠心分離により単離し、PBSで数回洗浄し、CD56マイクロビーズ試薬と共にAutoMACS Rinsing Solution(Miltenyi Biotec、Germany)を用いて再懸濁した。製造者の使用説明書(Miltenyi Biotec、Germany)にしたがって磁気活性化細胞選別(MACS)システムを使用することによりCD56+細胞を選択した。CD56+選択細胞を初期NK細胞培養培地に50ng/mLのIL-21の有りまたは無しで再懸濁した。懸濁された細胞を、100Gyで照射されたフィーダー細胞、LCL+KL-1、K562またはPBMCを添加した後の培養フラスコに播種し、次に37℃、5%のCO2で6または7日間培養した。各フィーダータイプを用いる細胞培養のための特有の条件は以下の表に示される通りである。
【表6】
【0138】
培養6または7日目に、細胞を培養フラスコから遠心分離により収集し、細胞数を評価した。細胞をNK細胞培養培地に再懸濁し、培養バッグに播種し、次に37℃、5%のCO2で17または18日まで培養した。3または4日毎に、細胞を新たな培地で継代した。
【0139】
実施例2:D14の細胞の凍結保存
培養14または15日目に、細胞を培養バッグから遠心分離により収穫し、細胞数を評価した。細胞を、90%のFBS、10%のDMSOを含有し、500IU/mLのIL-2有りまたは無しの培地に再懸濁し、バイアル中に5.0~10.0×106細胞/mLの濃度でアリコート化し、次に細胞を-196℃液体窒素タンクで1週、1、3、6、12、24か月およびより長期にわたり凍結保存した。
【0140】
実施例3:再刺激方法の凍結された細胞の解凍および細胞培養
元々の方法からのクライオ保存された細胞を37℃の水浴中で解凍し、各フィーダー細胞条件用の補充物を含有し、50ng/mLのIL-21有りまたは無しの初期NK細胞培養培地に再懸濁した。懸濁された細胞を、100Gyで照射されたフィーダー細胞、LCL+KL-1、K562または自己PBMCを添加した後の培養フラスコに播種し、次に37℃、5%のCO2で6または7日間培養した。この過程を再刺激方法と呼んだ。培養6または7日目に、細胞を培養フラスコから遠心分離により収集し、細胞数を評価した。細胞をNK細胞培養培地に再懸濁し、培養バッグに播種し、次に37℃、5%のCO2で17または18日まで培養した。3または4日毎に、細胞を新たな培地で継代した。総細胞培養期間は、D0の元々の方法から再刺激過程を通じて最終収穫まで31~33日を要した。
【0141】
実施例4:集団倍加レベルおよび細胞増殖
6つの異なる条件に従うNK細胞培養を、CD56+細胞を使用して、
図1および表3に示される実験設計に基づいて実行した。それは、フィーダー細胞としての照射されたLCLおよびKL-1と共培養されたNK細胞としての、実験設計タイプ1の結果を示す。過程のための特定の条件は、表3に示される通りである。
【表7】
【0142】
NK細胞の細胞拡大増殖率を、播種細胞数と比べた拡大増殖倍数により、および3.32(logN - logNo)(ここで、Nは各継代の終わりの細胞の数であり、Noは最初にプレーティングされた細胞の数である)として算出される各継代日における集団倍加レベル(PDL)により評価した。あらゆる培養工程におけるNK細胞の数は、細胞をトリパンブルーで染色することにより評価した。
【0143】
2人の異なるドナーからの製造バッチをPDLおよび拡大増殖倍数について比較した。表4、表5、および
図2A~3Bに示されるように、IL-21有りの元々の方法による1人のドナーからのNK細胞のPDLおよび拡大増殖倍数は、IL-21無しよりも高い増殖率であることが示された。しかし、他のドナーからのバッチは両方の条件において類似した増殖率を示した。
【表8】
【表9】
【0144】
元々の方法からのD14における凍結保存された細胞を、フィーダー細胞と共にIL-21の処理または非処理により再刺激し、17または18日まで培養した。総細胞培養期間は、D0の元々の方法から再刺激過程を通じて最終収穫まで31~33日を要した(
図1に示される)。
【0145】
2人のドナーからのいくつかの製造バッチをPDLおよび拡大増殖倍数について比較した。表6、表7、および
図4A~5Bに示されるように、IL-21有りでの再刺激方法のNK細胞のPDLおよび拡大増殖倍数は、IL-21無しの条件よりも高い増殖率を提供した。そのため、IL-21は、特に第1のラウンドの拡大増殖において、より有効なその後の拡大増殖工程を可能とするために非常に有用である。
【0146】
ドナー2からのNK細胞は、元々の方法においてIL-21有りおよび無しの間で増殖率における差異を実証しなかったが、再刺激方法によるIL-21条件における増殖率は
、31日目においてIL-21無しの条件よりも高いことが示された。
【表10】
【表11】
【0147】
実施例5:NK細胞の純度
NK細胞は、CD56を発現し、CD3を欠くことが公知である。拡大増殖の前ならびに元々の方法および再刺激方法による拡大増殖の後のNK細胞の純度を調べるために、フローサイトメトリー分析を適用した。NK細胞を抗CD56-FITCおよび抗CD3-
PEの蛍光色素標識抗体で染色し、次にフローサイトメトリーを使用することにより分析した。
【0148】
NK細胞培養が両方の条件(IL-21処理有りおよび無し)において元々の方法および再刺激方法により進行するにつれて、NK細胞(CD56+CD3-)の割合は、2人の異なるドナーからの拡大増殖されたNK細胞において急速に増加し、31日目において99%を上回った(表7)。他の細胞種の細胞表面マーカー、例えばCD3+、CD20+、およびCD14+は、最終培養段階において非常に低い集団であることが示された(表8)。
【表12】
【表13】
【0149】
実施例6 NK細胞の細胞傷害機能
腫瘍標的細胞株に対するNK細胞の細胞傷害性を蛍光定量的細胞傷害性アッセイにより評価した。NK細胞を、Calcein AMで染色されたK-562細胞と10:1、3:1、1:1、および0.5:1のE:T比で4時間、光保護下で共培養した。10%のFBSまたは2%のtriton X100を含有するRPMI1640を標的細胞に加えて、自発放出および最大放出を提供した。Calcein放出アッセイのために、標的細胞とのNK細胞のインキュベーション後の上清を回収し、その蛍光を、SpectraMax M2マイクロプレートリーダー(Molecular devices、Sa
n Jose、CA)を使用して評価する。特異的溶解パーセントを、式[(試験放出-自発放出)/(最大放出-自発放出)]×100を使用して算出する。
【0150】
元々の方法および再刺激方法による培養されたNK細胞の細胞傷害性を、NK感受性標的である標準的なK-562細胞株を使用して試験した。IL-21有りおよび無しの条件での元々の方法からの拡大増殖された細胞は、低いE:T比(1:1および0.5:1)においてさえK-562に対して強い細胞傷害活性を発揮した(
図6~7)。しかし、再刺激方法によるNK細胞の細胞傷害活性は、IL-21処理有りおよび無しの異なる条件において異なるレベルを示した。元々の方法および再刺激方法の両方についてのIL-21処理によるNK細胞は、他の条件よりも強い細胞傷害活性を発揮した(
図8~11)。
【0151】
しかし、元々の条件および再刺激条件の両方についてのIL-21非処理条件によるNK細胞は、0.05:1~3:1のE:T比で減少した細胞傷害活性であった。また、10:1のE:T比においてIL-21処理条件よりも低いレベルの細胞傷害性を示した。
【0152】
IL-21処理有りでの拡大増殖されたNK細胞は、K-562細胞株に対して非常に強力な細胞傷害性を示し、元々の方法および再刺激方法により製造された両方のNK細胞において類似した細胞傷害性であった(
図6~11)。
図6は、K562細胞に対する、IL-21有りで拡大増殖されたNK細胞(IL-21+)の細胞傷害活性を示す。
図7は、K562細胞に対する、IL-21無しで拡大増殖されたNK細胞(IL-21-)の細胞傷害活性を示す。
図8は、K562細胞に対する、IL-21有りで拡大増殖され、IL-21有りで再刺激されたNK細胞(IL-21+/+)の細胞傷害活性を示す。
図9は、K562細胞に対する、IL-21有りで拡大増殖され、IL-21無しで再刺激されたNK細胞(IL-21+/-)の細胞傷害活性を示す。
図10は、K562細胞に対する、IL-21無しで拡大増殖され、IL-21有りで再刺激されたNK細胞(IL-21-/+)の細胞傷害活性を示す。
図11は、K562細胞に対する、IL-21無しで拡大増殖され、IL-21無しで再刺激されたNK細胞(IL-21-/-)の細胞傷害活性を示す。
図12Aは、NK細胞の活性化受容体の表現型の比較を示す。
図12Bは、NK細胞の阻害およびケモカイン受容体の表現型の比較を示す。
【0153】
表面マーカー発現
NK細胞機能は、それらの表面上に発現される活性化受容体および阻害受容体の間の均衡により微細に調節される。活性化[CD16、NKp30、NKp46、NKp44、NKG2D、2B4(CD244)、NKG2C、CRACC]または阻害NK受容体[NKG2A、KIR:CD158a(KIR2DL1)、CD158b(KIR2DL2/L3)、CD158e(KIR3DL1)]の発現レベルを表現型的に特徴付けるために、ケモカイン受容体(CXCR3、CXCR4)、または接着分子(CD62L)を、ゲーティングされたCD56+ NK細胞において拡大増殖の前(0日目;D0)ならびにIL-21処理有りでの17~18日間の元々の(旧)過程および再刺激過程による拡大増殖の後に分析した。表面受容体発現レベルを、試料中のNK細胞の受容体陽性サブセットのパーセンテージとして算出した。元々の過程および再刺激過程の各段階におけるNK細胞を各マーカーの蛍光色素標識された抗体で染色し、次にフローサイトメトリーを使用することにより分析する。
【0154】
4人の異なるドナーについてタイプ1実験においてIL-21処理有りでの元々の過程および再刺激過程により培養された開始および最終段階(D0、D17、およびD32)からの細胞について表面受容体発現レベルを分析した。表面受容体発現レベルを、試料中のNK細胞の受容体陽性サブセットのパーセンテージとして算出した。
【0155】
活性化受容体の中で、CD16、NKp30、NKp46、NKp44、NKG2D、およびCRACCの発現レベルは、元々の過程(旧)により製造されたNK細胞の拡大増殖の間に増加し、再刺激過程(新)による拡大増殖されたNK細胞と類似していた一方、NKG2Cおよび2B4の発現レベルは、両方の方法による培養拡大増殖の後に変化がなかった(
図6)。阻害受容体、CD158aおよびCD158eの発現は、両方の過程(旧および新)による培養で概しては変化しないままであったが、NKG2AおよびCD158bの割合は有意に増加した(
図12A~B)。分析された全ての阻害受容体発現レベルは、両方の方法により製造されたNK細胞において類似していた。ケモカイン受容体、例えばCXCR3およびCXCR4の発現も評価した。
【0156】
CXCR3+ NK細胞の頻度は、類似した発現レベルと共に両方の方法(旧および新)によるNK細胞拡大増殖の間に有意に増加した一方、CXCR4+ NK細胞の頻度は、両方の方法による培養拡大増殖後に減少しており、新たな方法により製造されたNK細胞においてわずかにより大きい減少であった(
図12A~B)。CD62Lの発現レベルは、両方の方法による拡大増殖されたNK細胞においてわずかに増加していた。
【0157】
これらの結果により実証されるように、1つのセットは再拡大増殖手順を経たという事実にもかかわらず、IL21+およびIL21+/+で拡大増殖された細胞の性質は類似している。
【0158】
実施例7:IL-21濃度
様々なIL-21濃度について、タイプ1実験設計(IL21+のみ、再刺激は行わない)の10、30、50、および100ng/mLのIL-21有りでのRPMI培地中の10%のFBS、500IU/mLのIL-2、20μg/mLのゲンタマイシンを含有する初期NK細胞培養培地中に、単離されたCD56+細胞を再懸濁した。
【0159】
実施例8:IL-21濃度
1:10:10(CD56+細胞:LCL:KL-1)、および1:20:20、1:30:30(IL21+のみ、再刺激は行わない)において異なる比のフィーダー細胞を用いてタイプ1実験を行った。
【0160】
実施例9
この非限定的な実施例は、IL-21は、凍結-解凍を伴うCD56+およびCD3-/CD56+ NK細胞の拡大増殖を増強することを示す。
【0161】
(1)CD56+ナチュラルキラー細胞(NK細胞)の調製-1
最初に、血液PBMCをFicoll密度勾配(Ficoll-Hypaque密度勾配法)を使用して単離した。PBMCを以下の1-1または1-2にしたがってさらに処理した。
【0162】
1-1. CD56+細胞単離
PBMCをMACS緩衝液(1×PBS+0.5%のHSA)の添加により懸濁し、CD56マイクロビーズ(Miltenyi Biotec)を加えて1~20μL/1.0×107個のPBMCを得、5~30分間2~8℃でインキュベートした。インキュベーション後に、MACS緩衝液を加えて混合し、混合物を遠心分離(600×g)して細胞を沈殿させた。遠心分離後に、上清を除去し、MACS緩衝液を加えて細胞を再懸濁し、細胞を、カラムに連結されたMACS分離器に加えた。MACS緩衝液をカラムに通過させて非特異的結合を除去した。カラムをMACS分離器から分離し、15mLのコニカルチューブに移し、MACS緩衝液を加えて、カラムに付着したCD56+細胞を単離させた。
【0163】
1-2. CD3-/CD56+細胞単離
CD3-/CD56+細胞を以下のように単離した。PBMCをMACS緩衝液(1×PBS+0.5%のHSA)の添加により懸濁し、CD3マイクロビーズ(Miltenyi Biotec)を加えて1~20μL/1.0×107個のPBMCを得、5~30分間2~8℃でインキュベートした。インキュベーション後に、MACS緩衝液を加えて混合し、混合物を遠心分離(600×g)して細胞を沈殿させた。遠心分離後に、上清を除去し、MACS緩衝液を加えて細胞を再懸濁し、細胞を、カラムに連結されたMACS分離器に加えた。MACS緩衝液をカラムに通過させてCD3-細胞を回収した。
【0164】
回収されたCD3-細胞にMACS緩衝液(1×PBS+0.5%のHSA)を加えてCD3-細胞を再懸濁し、CD56マイクロビーズ(Miltenyi Biotec)を加えて1~20μL/1.0×107個のCD3-細胞を得、2~8℃で5~30分間インキュベートした。インキュベーション後に、MACS緩衝液を加えて混合し、混合物を遠心分離(600×g)して細胞を沈殿させた。遠心分離後に、上清を除去し、MACS緩衝液を加えて細胞を再懸濁し、細胞を、カラムに連結されたMACS分離器に加えた。MACS緩衝液をカラムに通過させて非特異的結合を除去した。カラムをMACS分離器から分離し、15mLのコニカルチューブに移し、MACS緩衝液を加えて、カラムに付着したCD3-/CD56+細胞を単離させた。
【0165】
1-3.一次培養
1-1および1-2からの分離されたCD56+細胞またはCD3-/CD56+細胞を各々、インキュベーター中で、100Gyの照射により以前に調製されたフィーダー細胞(ジャーカット(Jurkat)細胞、およびEBV-LCL細胞)と共にそれぞれ500IU/mLおよび50ng/mLの濃度のIL-2およびIL-21の存在下で、10%のFBSを含むRPMI-1640培地中、37℃、5%のCO2で共培養した。
【0166】
6日目に、細胞を1.0×105~2.0×106/mLで350mLの標準的なバッグに接種し、さらに4日間培養し、10日目に細胞を1.0×105~2.0×106細胞/mLで1Lのバッグに接種し、さらに4日間培養した。この時、比(CD56+細胞またはCD3-/CD56+細胞):(ジャーカット(Jurkat)細胞):(EBV-LCL細胞)はインキュベーションの間に1:30:30である。
【0167】
1-4.凍結および解凍後の二次培養
培養1(1-3)の14日目に、培養された細胞を、90%のFBSおよび10%のDMSOを含有する溶液に懸濁し、-192℃またはより低い温度で凍結して貯蔵し、培養スケジュールにしたがって37℃の一定温度の水浴中で解凍した。
【0168】
次に、10%のFBSを含有するRPMI-1640に、それぞれ500IU/mLおよび50ng/mLの濃度のIL-2およびIL-21を、100Gyで照射されたフィーダー細胞(ジャーカット(Jurkat)細胞およびEBV-LCL細胞)と共に加えた。培地中に置いた後に、それを37℃、5%のCO2インキュベーター中で共培養した。
【0169】
解凍および培養後6日目に、細胞を(1.0×105~2.0×106/mLで350mLのバッグに接種し、さらに4日間インキュベートし、10日目に細胞を1.0×105~2.0×106細胞/mLで1Lの標準的なバッグに接種し、さらに4日間培養した。
【0170】
解凍後14日目までの培養において細胞の増殖を持続させるために、細胞を、100G
yで照射されたフィーダー細胞(ジャーカット(Jurkat)細胞およびEBV-LCL細胞)と共にそれぞれ500IU/mLおよび50ng/mLの濃度のIL-2およびIL-21の存在下で共培養した。細胞を、10%の添加されたFBSを含有するRPMI-1640培地中、インキュベーター中37℃、5%のCO2で培養した。
【0171】
解凍後20日目に、細胞を1Lのバッグに1.0×105~2.0×106細胞/mLで接種し、続いて4日間さらに培養し、解凍後の培養の24日目に、細胞を1Lのバッグに1.0×105~2.0×106個の細胞/mLで接種し、4日間さらに培養した。
【0172】
最後に、解凍後の培養の28日目に、細胞を1Lのバッグに1.0×105~2.0×106個の細胞/mLで接種し、続いて3~6日間さらに培養した。この時、(CD56+細胞またはCD3-/CD56+細胞):(ジャーカット(Jurkat)細胞):(EBV-LCL細胞)を1:30:30の比で培養した。
【0173】
(2)CD56+ナチュラルキラー細胞の調製-2
1-4におけるサイトカインを添加する工程を除いて、(1)と同じ方式でナチュラルキラー細胞を調製した。
【0174】
(3)比較例。サイトカイン処理工程を除外したナチュラルキラー細胞の調製
1-3および1-4におけるサイトカイン(IL-21)を添加する工程を除いて、(1)と同じ方式でナチュラルキラー細胞を調製した。
【0175】
(4)NK細胞増殖能力の確認
(1)~(3)の方法により培養されたNK細胞の増殖能力を測定した。
図13Aに見ることができるように、一次培養の間にサイトカイン処理を行わなかった場合(IL-21 -/-)(上記(3)を参照)、凍結および解凍過程後に臨床応用のための十分な数のNK細胞は製造されないことが見出された(
図13A)。他方、細胞をサイトカインで処置した場合(IL-21 +/+;上記(1)を参照)、凍結および解凍過程後であっても臨床応用のために十分な数でNK細胞が製造され、これらの結果は、凍結および解凍過程後にサイトカイン処理した場合だけではなかった。凍結および解凍後に細胞をサイトカインで処理しなかった場合(IL-21 +/-;上記(2)を参照)、凍結および解凍後にサイトカインで処理された場合と同様に良好にNK細胞は拡大増殖された(
図13B)。
【0176】
実施例10
様々な拡大増殖および凍結および再凍結過程の一部の実施形態のさらなる結果を
図14Aおよび
図14Bに示す。
図14Aは、結果としてもたらされたPDL(集団倍加レベル)を示し、拡大増殖の間の異なる期間の一部の実施形態を描写する。
図14Bは、該実施例についての結果としてもたらされた拡大増殖倍数を描写する。
【0177】
この実施例では、NK細胞は、少なくとも1回の凍結後に複数回、刺激または拡大増殖され得るのかどうか、およびNK細胞の増殖は、単純に維持されるのではなく、停止および再開され得るのかどうかを分析する。NK細胞を最初に14日培養した。NK細胞をIL-21(50ng/mL)およびフィーダー細胞で2回、最初の6日の期間(0~6日目)の間に3日の間隔で処理した。
【0178】
この第1の14日の拡大増殖後に細胞を90日間凍結し、次に解凍してさらに14日間培養した。NK細胞を再びIL-21(50ng/mL)およびフィーダー細胞で2回、この第2の拡大増殖の間の最初の6日の期間(0~6日目)の間に3日の間隔で処理した。
【0179】
細胞を3回目にIL-21(50ng/mL)およびフィーダー細胞で2回、この第2の拡大増殖の間の最初の6日の期間(0~6日目)の間に3日の間隔で再刺激することにより細胞を最後に18日間、再培養した。
【0180】
NK細胞の拡大増殖を46日の培養にわたりモニターした。
図14Aおよび
図14Bに示されるように、フィーダー細胞およびIL-21で2回またはより多く処理された場合、細胞を凍結した後であっても、NK細胞は各刺激後に著しい拡大増殖を呈した。
【0181】
用語
例示的な実施形態の以上の記載は、実例および説明の目的のためにのみ提示されたものであり、網羅的であることも、開示される正確な形態に本発明を限定することも意図されない。多くの改変およびバリエーションが上記の教示に照らして可能である。上記に開示される実施形態の特有の特徴および態様の様々な組合せまたは部分的組合せを行うことができ、それらは依然として本発明の1つまたは複数に入ることが想定される。さらに、実施形態と関連した任意の特定の特質、態様、方法、特性、特徴、質、属性、または要素などの本明細書の開示は、本明細書に記載される全ての他の実施形態において使用され得る。よって、開示される実施形態の様々な特徴および態様は、開示される発明の種々の態様を形成するために互いに組み合わせまたは置換することができることが理解されるべきである。そのため、本明細書に開示される本発明の範囲は、上記の特定の開示される実施形態に限定されるべきではないことが意図される。さらに、本発明は様々な改変、および代替的な形態が可能であるが、その特有の例が図面に示され、本明細書に詳細に記載されている。しかしながら、本発明は、開示される特定の形態または方法に限定されず、その反対に、本発明は、記載される様々な実施形態および添付の請求項の精神および範囲に入る全ての改変、均等物、および代替物をカバーすることが理解されるべきである。本明細書に開示される任意の方法は、記載される順序で行われる必要はない。本明細書に開示される方法は、実施者により為されるある特定の行為を含むが、それらはまた、明示的または暗示的のいずれかでの、それらの行為の任意の第三者の指示を含むことができる。本明細書に開示される範囲はまた、任意および全ての重複、部分的範囲、およびそれらの組合せを包含する。
【0182】
実施形態は、当業者が本発明および様々な実施形態を利用することを促進するように本発明の原理およびそれらの実際的応用を説明するために選択および記載されており、特定の使用に適するような様々な改変が想定される。以上の記載およびそこに記載される例示的な実施形態以外の、添付の請求項によりその発明が定義される代替的な実施形態が当業者に明らかとなるであろう。
【0183】
条件的な表現、例えば「~できる」(can)、「~し得る」(could)、「~の可能性がある」(might)、または「~であってもよい」(may)は、他に特に記載されないか、または使用された文脈内で他に理解されなければ、ある特定の実施形態はある特定の特徴、要素、および/または工程を含むが、他の実施形態はそれを含まないことを伝えることが一般に意図される。そのため、そのような条件的な表現は、特徴、要素、および/または工程が1つまたは複数の実施形態のために何らかの意味で要求されることを含意することは一般に意図されない。
【0184】
「含む」(comprising)、「含む」(including)、および「有する」などの用語は同義であり、包含的にオープンエンドの様式で使用され、追加の要素、特徴、行為、および操作などを除外しない。また、「または」という用語は、包含的な意味(排他的な意味ではない)で使用され、そのため、例えば、要素のリストを接続するために使用される場合、「または」という用語は、リスト中の要素の1つ、一部、または全
てを意味する。
【0185】
本明細書に開示される範囲はまた、任意および全ての重複、部分的範囲、およびそれらの組合せを包含する。「~まで」、「少なくとも~」、「~より多い」、「~より少ない」、および「~の間」などの表現は、記載される数を含む。
【0186】
「おおよそ」、「約」、および「実質的に」などの用語により先行される数は、本明細書において使用される場合、記載される数(例えば、約10%=10%)を含み、依然として所望の機能を行いまたは所望の結果を達成する記載される量に近い値も表す。例えば、「おおよそ」、「約」、および「実質的に」という用語は、記載される量の10%以内、5%以内、1%以内、0.1%以内、および0.01%以内の量を指すことができる。
【0187】
「一般に」という用語は、本明細書において使用される場合、特定の値、量、または特徴を主に含むまたは主にその傾向がある値、量、または特徴を表す。例として、ある特定の実施形態において、「一般に均一な」という用語は、正確に均一から20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、1%未満、0.1%未満、および0.01%未満だけ逸脱した値、量、または特徴を指す。
【0188】
本明細書に開示される範囲はまた、任意および全ての重複、部分的範囲、およびそれらの組合せを包含する。「~まで」、「少なくとも~」、「~より多い」、「~より少ない」、および「~の間」などの表現は、記載される数を含む。「約」または「おおよそ」などの用語により先行される数は、記載される数を含む。例えば、「約5.0cm」は「5.0cm」を含む。
【0189】
一部の実施形態は、模式図との関連で記載されている。しかしながら、模式図は縮尺通りに描かれていないことが理解されるべきである。距離は単に実例的なものであり、図示されるデバイスの実際の寸法および配置に対する正確な関係性を必ずしも持たない。
【0190】
本開示の目的のために、ある特定の態様、利点、および新規の特徴が本明細書に記載される。必ずしも全てのそのような利点が任意の特定の実施形態にしたがって達成され得るわけではないことが理解されるべきである。そのため、例えば、本開示は、本明細書において教示または示唆され得るような他の利点を必ずしも達成することなく本明細書において教示されるような1つの利点または利点の群を達成する方式で具現化または実行され得ることを当業者は認識する。
【0191】
さらに、実例的な実施形態が本明細書に記載されているが、同等の要素、改変、省略、組合せ(例えば、様々な実施形態にわたる態様の組合せ)、適合および/または変更を有する任意および全ての実施形態の範囲が、本開示に基づいて当業者により認められる。請求項における限定は、請求項において用いられた表現に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書または出願手続きの間に記載された例に限定されず、これらの例は非排他的であるとして解釈されるべきである。さらに、開示される過程および方法の行為は、行為の再順序付けおよび/または追加の行為の挿入および/または行為の欠失を含めて、任意の方式で改変されてもよい。したがって、本明細書および実施例は実例的なものとしてのみ考慮され、真の範囲および精神は請求項およびそれらの均等の全範囲により指し示されることが意図される。
【国際調査報告】