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特表2023-5051286-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンの固形製剤処方物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(54)【発明の名称】6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンの固形製剤処方物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/53 20060101AFI20230201BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230201BHJP
   A61K 9/36 20060101ALI20230201BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230201BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20230201BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20230201BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230201BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230201BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230201BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230201BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
A61K31/53
A61P35/00
A61K9/36
A61K47/32
A61K47/20
A61K47/24
A61K47/10
A61K47/34
A61K47/26
A61K47/14
A61K9/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022532676
(86)(22)【出願日】2020-12-01
(85)【翻訳文提出日】2022-05-31
(86)【国際出願番号】 EP2020084160
(87)【国際公開番号】W WO2021110697
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】62/942,417
(32)【優先日】2019-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008951
【氏名又は名称】アストラゼネカ・アクチエボラーグ
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ホルムグレン,アンデシュ
(72)【発明者】
【氏名】キーシャ,アンニカ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォン コルスヴァント,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】スカンツェ,ウルバン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA44
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC27
4C076DD04F
4C076DD07F
4C076DD09F
4C076DD47C
4C076DD63F
4C076DD67
4C076EE16Q
4C076EE23F
4C076FF09
4C076FF21
4C076FF36
4C076FF43
4C076FF63
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC64
4C086GA07
4C086GA08
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA34
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA02
4C086NA03
4C086ZB26
(57)【要約】
AZD4635を含む固形製剤処方物が記載される。固形処方物は、ポリマー性安定化剤(例えばポリビニルピロリドン)、イオン性界面活性剤(例えばドクサートナトリウム)及び非イオン性界面活性剤(例えばポロキサマー)を含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミン;
ポリマー性安定化剤;
イオン性界面活性剤;及び
非イオン性界面活性剤
を含む組成物でそれぞれ個々にコーティングされる複数の微結晶セルロースペレットを含む、固形製剤処方物。
【請求項2】
前記ポリマー性安定化剤がポリビニルピロリドンを含み;
前記イオン性界面活性剤がドクサートナトリウムを含み;
前記非イオン性界面活性剤がポロキサマー又はPEG化リン脂質を含む、請求項1に記載の処方物。
【請求項3】
前記ポリマー性安定化剤がポリビニルピロリドンK-30であり;
前記イオン性界面活性剤がドクサートナトリウムであり;
前記非イオン性界面活性剤がポロキサマー407である、
請求項1~2の何れか1項に記載の処方物。
【請求項4】
前記組成物がトレハロースをさらに含む、請求項1~3の何れか1項に記載の処方物。
【請求項5】
前記組成物がw/w%ベースで:
20~75%の6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンと;
1~20%のポリビニルピロリドンK-30と;
0.01~1.00%のドクサートナトリウムと;
20~60%のポロキサマー407と、
を含む、請求項1~4の何れか1項に記載の処方物。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の処方物であって、w/w%ベースで:
10~50%の微結晶セルロースと;
20~50%の6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンと;
0.1~10%のポリビニルピロリドンK-30と;
0.01~1.00%のドクサートナトリウムと;
10~40%のポロキサマー407と、
を含む、処方物。
【請求項7】
前記処方物が滑沢剤をさらに含む、請求項1~6の何れか1項に記載の処方物。
【請求項8】
前記滑沢剤がフマル酸ステアリルナトリウムを含む、請求項7に記載の処方物。
【請求項9】
請求項7~8の何れか1項に記載の処方物であって、w/w%ベースで:
25~40%の微結晶セルロースと;
25~45%の6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンと;
3~7%のPVP K30と;
0.05~0.50%のドクサートナトリウムと;
15~35%のポロキサマー407と;
0.01~0.5%のフマル酸ステアリルナトリウムと、
を含む、処方物。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1項に記載の処方物であって、w/w%ベースで:
30~35%の微結晶セルロースと;
33~39%の6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンと;
4.2~5.2%のPVP K30と;
0.2~0.3%のドクサートナトリウムと;
22~28%のポロキサマー407と;
0.15~0.25%のフマル酸ステアリルナトリウムと、
を含む、処方物。
【請求項11】
組成物でそれぞれ個々にコーティングされる複数の微結晶セルロースペレットを含む固形製剤処方物であって、前記組成物が基本的にw/w%ベースで:
54.44%の6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンと;
7.08%のPVP K30と;
0.38%のドクサートナトリウムと;
38.1%のポロキサマー407と、
からなる、固形製剤処方物。
【請求項12】
6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンを含む固形製剤処方物であって、ヒト対象への50mgの6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンの経口用量が1850ng・h/mL±30%のAUC0-48をもたらす、固形製剤処方物。
【請求項13】
6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンを含む固形製剤処方物であって、ヒト対象への50mgの6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンの経口用量が352ng/mL±30%のCmaxをもたらす、固形製剤処方物。
【請求項14】
6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンを含む固形製剤処方物であって、ヒト対象への50mgの6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンの経口用量が、1850ng・h/mL±30%のAUC0-48及び352ng/mL±30%のCmaxをもたらす、固形製剤処方物。
【請求項15】
請求項1~14の何れか1項に記載の処方物を含む、6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンの固形単位剤形であって、ゼラチンカプセル中に1~200mgの6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンを含む、固形単位剤形。
【請求項16】
請求項1~15の何れか1項に記載の処方物を含む、6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンの固形単位剤形であって、ゼラチンカプセル中に50、75又は100mgの6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンを含む、固形単位剤形。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アデノシンは多くの生理的機能を調整する。細胞内において、アデノシンは、エネルギー代謝、核酸代謝及びメチオニンサイクルに関与し;細胞外アデノシンは細胞間シグナル伝達に関わる。例えば、細胞外アデノシンは強力な免疫抑制剤であり、炎症及び感染中の過剰な免疫反応を防ぐ。アデノシンは、心血管系及び中枢神経系を含め、他の系でも作用する。
【背景技術】
【0002】
アデノシンの作用には、G-タンパク質共役受容体のファミリーが介在する。アデノシン受容体の少なくとも4種類のサブタイプ:A1R、A2aR、A2bR及びA3Rが同定されている。A1R及びA3サブタイプは、酵素アデニル酸シクラーゼの活性を阻害し、A2a及びA2bサブタイプが同酵素の活性を刺激し、それにより細胞において環状AMPのレベルを調整する。
【0003】
免疫系において、A2a及びA2bアデノシン受容体の会合は、過剰な免疫反応から組織を保護する重要な制御機構である。腫瘍において、この経路がハイジャックされ、抗腫瘍免疫を邪魔し、癌進行を促進する。さらに、多くの場合、腫瘍微小環境は、高レベルの細胞外アデノシンを含有する。従って、アデノシン受容体、特にA2aR及びA2bRが癌治療に対する標的として同定された。
【0004】
化合物1、6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンは次の構造:
【化1】
を有し、特許文献1で開示されている。化合物1は、癌の処置のための臨床試験における強力なA2aRアンタゴニストである。化合物1は、AZD4635又はHTL-1071としても知られる。
【0005】
化合物1は弱塩基性であり、トリアジン部分は1.78のpKaを示す。そのlogP値は2.8である。水性媒体中で、化合物1は可溶性が乏しく、溶解度は、中性pHでの5μg/mL未満から、pH1.2での29.8μg/mLの範囲であり;絶食時人工腸液中では、溶解度は5.8μg/mLである。
【0006】
溶解度が低いため、化合物1のバイオアベイラビリティは制限される。これは、ミックスアンドドリンク(mix-and-drink)形態での投与用の粉末として処方され得る。しかし、ミックスアンドドリンク(mix-and-drink)処方物は、投与が比較的複雑であり、患者にとっては不快な経験となる。従って、適切な薬物動態学的特性を維持しながら投与を容易にする化合物1の固形製剤処方物に対するニーズが依然としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2011/095625号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、固形製剤処方物は、6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンを含む組成物でそれぞれ個々にコーティングされた複数の微結晶セルロースペレットと;ポリマー性安定化剤と;イオン性界面活性剤と;非イオン性界面活性剤と、を含む。
【0009】
ポリマー性安定化剤は、ポリビニルピロリドンを含み得る。
【0010】
イオン性界面活性剤は、ドクサートナトリウムを含み得る。
【0011】
非イオン性界面活性剤は、ポロキサマー又はPEG化リン脂質を含み得る。
【0012】
いくつかの実施形態では、ポリマー性安定化剤は、ポリビニルピロリドンを含み得、イオン性界面活性剤はドクサートナトリウムを含み得、非イオン性界面活性剤はポロキサマー又はPEG化リン脂質を含み得る。
【0013】
ポリマー性安定化剤は、ポリビニルピロリドンK-30であり得る。
【0014】
イオン性界面活性剤は、ドクサートナトリウムであり得る。
【0015】
非イオン性界面活性剤は、ポロキサマー407であり得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、ポリマー性安定化剤はポリビニルピロリドンK-30であり得、イオン性界面活性剤はドクサートナトリウムであり得、非イオン性界面活性剤はポロキサマー407であり得る。
【0017】
本組成物は、トレハロースをさらに含み得る。
【0018】
本組成物は、w/w%ベースで:20~75%の6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンを含み得る。
【0019】
本組成物は、w/w%ベースで:1~20%のポリビニルピロリドンK-30を含み得る。
【0020】
本組成物は、w/w%ベースで:0.01~1.00%のドクサートナトリウムを含み得る。
【0021】
本組成物は、w/w%ベースで:20~60%のポロキサマー407を含み得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、本組成物は、w/w%ベースで:20~75%の6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンと;1~20%のポリビニルピロリドンK-30と;0.01~1.00%のドクサートナトリウムと;20~60%のポロキサマー407と、を含み得る。
【0023】
本処方物は、w/w%ベースで:10~50%の微結晶セルロースを含む。
【0024】
本処方物は、w/w%ベースで:20~50%の6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンを含み得る。
【0025】
本処方物は、w/w%ベースで:0.1~10%のポリビニルピロリドンK-30を含み得る。
【0026】
本処方物は、w/w%ベースで:0.01~1.00%のドクサートナトリウムを含み得る。
【0027】
本処方物は、w/w%ベースで:10~40%のポロキサマー407を含み得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、本処方物は、w/w%ベースで:10~50%の微結晶セルロースと;20~50%の6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンと;0.1~10%のポリビニルピロリドンK-30と;0.01~1.00%のドクサートナトリウムと;10~40%のポロキサマー407と、を含む。
【0029】
本処方物は、滑沢剤をさらに含み得る。滑沢剤としては、フマル酸ステアリルナトリウムが挙げられ得る。
【0030】
本処方物は、w/w%ベースで:25~40%の微結晶セルロースを含み得る。
【0031】
本処方物は、w/w%ベースで:25~45%の6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンを含み得る。
【0032】
本処方物は、w/w%ベースで:3~7%のPVP K30を含み得る。
【0033】
本処方物は、w/w%ベースで:0.05~0.50%のドクサートナトリウムを含み得る。
【0034】
本処方物は、w/w%ベースで:15~35%のポロキサマー407を含み得る。
【0035】
本処方物は、w/w%ベースで:0.01~0.5%のフマル酸ステアリルナトリウムを含み得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、本処方物は、w/w%ベースで:25~40%の微結晶セルロースと;25~45%の6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンと;3~7%のPVP K30と;0.05~0.50%のドクサートナトリウムと;15~35%のポロキサマー407と;0.01~0.5%のフマル酸ステアリルナトリウムと、を含み得る。
【0037】
本処方物は、w/w%ベースで:30~35%の微結晶セルロースを含み得る。
【0038】
本処方物は、w/w%ベースで:33~39%の6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンを含み得る。
【0039】
本処方物は、w/w%ベースで:4.2~5.2%のPVP K30を含み得る。
【0040】
本処方物は、w/w%ベースで:0.2~0.3%のドクサートナトリウムを含み得る。
【0041】
本処方物は、w/w%ベースで:22~28%のポロキサマー407を含み得る。
【0042】
本処方物は、w/w%ベースで:0.15~0.25%のフマル酸ステアリルナトリウムを含み得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、本処方物は、w/w%ベースで:30~35%の微結晶セルロースと;33~39%の6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンと;4.2~5.2%のPVP K30と;0.2~0.3%のドクサートナトリウムと;22~28%のポロキサマー407と;0.15~0.25%のフマル酸ステアリルナトリウムと、を含み得る。
【0044】
別の態様では、固形製剤処方物は、組成物でそれぞれ個々にコーティングされる複数の微結晶セルロースペレットを含み、本組成物は、基本的に、w/w%ベースで:54.44%の6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンと;7.08%のPVP K30と;0.38%のドクサートナトリウムと;38.1%のポロキサマー407と、からなる。
【0045】
別の態様では、固形製剤処方物は、6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンを含み、ヒト対象への50mgの6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンの経口用量は1850ng・h/mL±30%のAUC0-48をもたらす。この固形製剤処方物は、6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンと;ポリマー性安定化剤と;イオン性界面活性剤と;非イオン性界面活性剤とを含む組成物でそれぞれ個々にコーティングされる複数の微結晶セルロースペレットを含み得る。ポリマー性安定化剤はポリビニルピロリドンを含み得る。イオン性界面活性剤はドクサートナトリウムを含み得る。非イオン性界面活性剤はポロキサマー又はPEG化リン脂質を含み得る。いくつかの実施形態では、ポリマー性安定化剤はポリビニルピロリドンを含み得、イオン性界面活性剤はドクサートナトリウムを含み得、非イオン性界面活性剤はポロキサマー又はPEG化リン脂質を含み得る。いくつかの実施形態では、本処方物は、w/w%ベースで:10~50%の微結晶セルロースと;20~50%の6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンと;0.1~10%のポリビニルピロリドンK-30と;0.01~1.00%のドクサートナトリウムと;10~40%のポロキサマー407と、を含む。
【0046】
別の態様では、固形製剤処方物は、6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンを含み、ヒト対象への50mgの6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンの経口用量は、352ng/mL±30%のCmaxをもたらす。この固形製剤処方物は、6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンと;ポリマー性安定化剤と;イオン性界面活性剤と;非イオン性界面活性剤とを含む組成物でそれぞれ個々にコーティングされる複数の微結晶セルロースペレットを含み得る。ポリマー性安定化剤はポリビニルピロリドンを含み得る。イオン性界面活性剤はドクサートナトリウムを含み得る。非イオン性界面活性剤は、ポロキサマー又はPEG化リン脂質を含み得る。いくつかの実施形態では、ポリマー性安定化剤はポリビニルピロリドンを含み得、イオン性界面活性剤はドクサートナトリウムを含み得、非イオン性界面活性剤はポロキサマー又はPEG化リン脂質を含み得る。いくつかの実施形態では、本処方物は、w/w%ベースで:10~50%の微結晶セルロースと;20~50%の6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンと;0.1~10%のポリビニルピロリドンK-30と;0.01~1.00%のドクサートナトリウムと;10~40%のポロキサマー407と、を含む。
【0047】
別の態様では、固形製剤処方物は、6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンを含み、ヒト対象への50mgの6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンの経口用量は、1850ng・h/mL±30%のAUC0-48及び352ng/mL±30%のCmaxをもたらす。この固形製剤処方物は、6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンと;ポリマー性安定化剤と;イオン性界面活性剤と;非イオン性界面活性剤とを含む組成物でそれぞれ個々にコーティングされる複数の微結晶セルロースペレットを含み得る。ポリマー性安定化剤はポリビニルピロリドンを含み得る。イオン性界面活性剤はドクサートナトリウムを含み得る。非イオン性界面活性剤はポロキサマー又はPEG化リン脂質を含み得る。いくつかの実施形態では、ポリマー性安定化剤はポリビニルピロリドンを含み得、イオン性界面活性剤はドクサートナトリウムを含み得、非イオン性界面活性剤はポロキサマー又はPEG化リン脂質を含み得る。いくつかの実施形態では、本処方物は、w/w%ベースで:10~50%の微結晶セルロースと;20~50%の6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンと;0.1~10%のポリビニルピロリドンK-30;0.01~1.00%のドクサートナトリウムと;10~40%のポロキサマー407と、を含む。
【0048】
別の態様では、6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンの固形単位剤形は、ゼラチンカプセル中に1~200mgの6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンを含む。6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンの固形単位剤形は、50、75又は100mgの6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンを含み得る。
【0049】
他の特徴、目的及び利点は、説明及び図面から、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1図1は、粉砕した(右のバー)及び再分散した(左のバー)APIの粒径分布を示すグラフである。
図2図2は、2つの異なるナノ懸濁処方物に対する粒径分布を示すグラフである。
図3図3は、4つの異なる錠剤処方物からの%API放出を示すグラフである。
図4A-4C】図4A~4Cは、処方物1(図4A)、処方物3(図4b)及び処方物4C(図4C)の、イヌにおけるAPI血漿濃度の時間経過を示すグラフである。
図5図5は、例えば処方物8aのカプセルの調製のための工程のフローチャートである。
図6A-6D】図6A~6Dは、処方物1(図6A)、処方物8b(図6B)、処方物8a(図6C)及び処方物7b(図6D)の、イヌにおけるAPI血漿濃度の時間経過を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
化合物1の固形製剤処方物が本明細書中に記載される。固形製剤処方物は、経口投与に適切であり、対象において所望の薬物動態学的挙動をもたらすような、適切な品質、例えば可溶性及び吸収性を提供する。
【0052】
発明者は、次のものを含む、有効な固形処方物を作製するための複数のストラテジーを調べた:
-従来からの即時放出錠剤。薬物曝露全体は、化合物1の溶解度が低いことによって制限され;実現可能ではないと考えられる。
-塩形態/共結晶:塩スクリーンは、強酸との塩の形成しか示さず、次にこれは水との接触時に急速に解離した。共結晶形成分子のスクリーンは、適切な共結晶形態の同定においてうまくいかなかった。
-脂質処方物:化合物1は中性分子であり、脂溶性ではない。脂質スクリーンは、真の脂質性処方物を作製するために適切な賦形剤中で顕著な溶解性を示さなかった。
-メソポーラスシリカ処方物:このような処方物は、適切な溶媒中でのAPIの適切な溶解度及び非晶質安定性を要する。化合物1の溶解度は不適切である。
-噴霧乾燥非晶質固形分散物:化合物1は、噴霧乾燥に適切な溶媒中で溶解度が限定的である。
-加熱溶融押出非晶質固形分散物:スクリーニングは、低薬物負荷レベルでこのような固形分散物の安定性を示した。微量溶解(microdissolution)及び溶解は、結晶性化合物1と比較して、化合物1の持続的及び増加した放出を示した。
-結晶性ナノ粒子:ナノ結晶化合物1で不溶性コアをコーティングした。表面積を増加させることにより、溶解速度が向上することが示された。
【0053】
加熱溶融押出非晶質固形分散処方物及び結晶性ナノ粒子処方物を下記のようにさらに開発した。
【実施例
【0054】
実施例1:第1a相処方物
第1a相試験のために、ミックスアンドドリンク(mix-and-drink)処方物(処方物1)を開発した。化合物1を湿式ビーズ粉砕して、ミクロン未満の粒径にした。一連のポリマー性、非イオン性及びイオン性界面活性剤/ナノ懸濁安定化系を評価した。ナノ懸濁物を固形生成物に変換するための方法として噴霧乾燥を選択した。懸濁物の再構成において、APIナノ粒子の凝集を防ぎ、粒子の急速溶解特性を維持するために、噴霧乾燥前に、ナノ懸濁処方物にマトリクス形成剤としてスクロースを添加した。経口懸濁物用の5.5%w/w化合物1粉末を得るために、噴霧乾燥工程での使用のための1.0%w/w懸濁物を開発した。投与前に、2mg/mLシメチコンを含有する水の中で乾燥粉末を再構成した。
【0055】
【表1】
【0056】
実施例2:処方物2ナノ懸濁物
実施例2A:実現可能性試験
最初にドクサートナトリウムを添加し、次いでPVP K30を溶解させ、次いで化合物1を添加し、その後平床式セラミック容器ミル中で粉砕してナノサイズの懸濁物にすることによって、スラリーを作製した。図1を参照されたい。この実験から、この処方物を使用して化合物1をナノサイズの粒子に粉砕することが可能であったことが示された。
【0057】
【表2】
【0058】
これはまた、マトリクス形成剤としてトレハロースを使用して、懸濁物でMCCコアを噴霧コーティング可能であったことも証明した(しかし工程は困難)。噴霧コーティングしたペレットの再分散物は、粉砕後の懸濁物と同じ粒径分布を示した。
【0059】
実施例2B:粒径分布
処方物3及び処方物1のナノ懸濁物に対する粒径分布を比較した。図2を参照されたい。処方物3の平均粒径はより小さく、処方物1よりも単分散性であった。
【0060】
【表3】
【0061】
処方物3は、100mgの化合物1を使用して、USP2条件、pH1.2、2%SDS、50rpm下で、急速(10分で>90%)且つ完全(98%)に溶解することが分かった。
【0062】
実施例2C:押出成形物
表4A~4Dに従う一連の押出成形錠剤処方物を調製した。対応する錠剤1~4の絶食時人工腸液(FaSSIF V2)中での溶解プロファイルを図3で示す。
【0063】
【表4】
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
【0066】
押出成形物粒径(μm):D0.5=47.6;D0.9=194
錠剤崩壊時間<1分
【0067】
【表7】
【0068】
錠剤1~4は、30分以内に70%未満の放出及び90分以内に最大~80%の放出を達成した。図3参照。
【0069】
実施例3:イヌ試験1
処方物1(図4A)及び処方物3(図4B)及び処方物4C(図4C)の薬物動態パラメーターをイヌにおいて比較した。処方物4Cは、不良で一貫性のない薬物動態を示した。処方物1及び3に対する結果を表4でまとめ、処方物3:処方物1に対する相対比として表す。
【0070】
【表8】
【0071】
処方物3の曝露は、処方物1と比較してより低かった。可能性のある原因は次のものであると推測された:
・吸収を限定する溶解速度低下につながる胃及び小腸における処方物3の凝集。
・処方物1の賦形剤が化合物1のさらなる可溶化をもたらし、それにより細胞壁への輸送が増加した(Ullevi効果)。
・処方物1の賦形剤が化合物1の吸収を促進した。
【0072】
実施例4:ペレットに対する工程の流れ
図5は、コーティングされた微結晶ペレットの製造のための工程の流れ、及び、該当する場合は、その後のカプセルへのペレットの充填を例示する。最初に、API(化合物1)は、任意選択的なPIN粉砕工程において乾燥粉砕され得る。次に、スラリーを形成させるために、粉砕された化合物1を水、イオン性界面活性剤及びポリマー性安定化剤と混合した。スラリーを湿式粉砕し、ナノ懸濁物を得た。次に、ナノ懸濁物をさらなる水及び非イオン性界面活性剤と混合した。次に、流動床コーティング工程において、微結晶セルロースを得られた懸濁物でコーティングした。次に、ペレットをそのまま使用し得るか、又は必要に応じてカプセル中での充填のためにさらに処理し得る。カプセル充填のために、カプセル詰め込み前にペレットを滑沢剤(例えばフマル酸ステアリルナトリウム又はステアリン酸マグネシウム)と混ぜた。
【0073】
実施例5:処方物5のペレット
DSPE-PEG2000とポロキサマー407を交換し、成分の比率を調整して、処方物3に基づいてペレット処方物(処方物5)を開発した。次に、微結晶セルロースをコーティングすることにより、処方物5をペレットに成形した。
【0074】
【表9】
【0075】
実施例6:微結晶セルロースナノペレット
実施例4の方法に従い、コーティング懸濁物を調製し(処方物6)、そのまま(処方物7a)又はトレハロースとともに(処方物7b)、の何れかで、流動床コーティング工程において微結晶セルロースをコーティングした(Vivapur 350、粒径およそ450μm)。粉砕されたAPIに対する適切な粒径は、粒子D90<5μm及びD50<2μm及びそれより小さい。
【0076】
【表10】
【0077】
【表11】
【0078】
処方物8a及び8bに従い、処方物7a及び7bのペレットを滑沢剤(フマル酸ステアリルナトリウム)と混ぜ、ゼラチンカプセル中に充填し、封入し、カプセルあたりの化合物1の用量を50mgとした。
【0079】
【表12】
【0080】
実施例7:イヌ試験2
ナノ懸濁物としての、処方物1、処方物8aのカプセル、処方物8bのカプセル及び処方物7bの薬物動態学的特性をイヌにおいて測定した(経口投与、オメプラゾールで前処置したイヌ)。結果を表9(AUC、処方物1と比較してFrel%として表す)及び表10(Cmax、処方物1と比較して%として表す)でまとめる。図6A(処方物1)、図6B(処方物8b)、図6C(処方物8a)及び図6D(処方物7b)において時間経過を示す。
【0081】
【表13】
【0082】
【表14】
【0083】
両カプセル処方物8a及び8bの相対的AUCは、処方物1にと比較して、>0.7であり、相対的Cmaxは、処方物1と比較して、>0.7であった。処方物8aは、8bよりも高いAUCを示した。さらに、処方物8bは、50℃の温度で保管した場合、分解を示した。処方物8aのペレットは処方物8bよりも小さい粒子に再分散された。処方物8aをヒト相対バイオアベイラビリティ試験に進めた。
【0084】
実施例8:ヒト相対バイオアベイラビリティ試験
絶食状態のヒト対象へのAZD4635ナノ懸濁物(処方物1)の投与後、全ての対象において投与後0.25時間の第1の試料採取時間点から血漿AZD4635濃度を定量可能であった。その後、濃度は投与後24~48時間まで定量可能なままであった。投与後0.5時間~2時間で最大血漿濃度となった(中央値tmax1時間)。Cmax、AUC0-t及びAUCの幾何平均(CV%)値は、それぞれ276ng/mL(16.7)、1670ng・h/mL(29.4)及び1760ng・h/mL(29.8)であった(表11参照)。
【0085】
絶食状態のヒト対象へのAZD4635固形経口カプセル処方物(処方物8aカプセル)の投与後、投与後0.25時間~0.5時間で血漿AZD4635濃度を定量可能であった。その後、濃度は投与後48時間の最終試料採取の機会まで定量可能なままであった。投与後1時間~2時間で最大血漿濃度となった(中央値tmax1.5時間)。Cmax、AUC0-t及びAUCの幾何平均(CV%)値は、それぞれ352ng/mL(31.0)、1850ng・h/mL(28.3)及び1940ng・h/mL(29.0)であった(表11参照)。
【0086】
max及びAUC0-48に基づくAZD4635の相対的バイオアベイラビリティはそれぞれ128%及び110%であった。Cmax及びAUC0-48に対する幾何平均比(GMR)の統計学的比較は、それぞれ126.71%(90%信頼区間[CI]:111.12%~144.48%)及び110.21%(104.33%~116.42%)であり、これは、固形経口カプセル処方物(処方物8a)に対するピーク及び総曝露レベルが、ナノ懸濁物(処方物1)よりも平均27%及び10%高かったことを示す。吸収速度は固形処方物に対してより高く、その結果、ピーク濃度がより高くなった。
【0087】
【表15】
【0088】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内に含まれる。
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5
図6-1】
図6-2】
【国際調査報告】