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特表2023-505137ピノセンブリンジヒドロカルコン及びその組成物並びに農薬としてのそれらの使用
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  • 特表-ピノセンブリンジヒドロカルコン及びその組成物並びに農薬としてのそれらの使用 図1
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  • 特表-ピノセンブリンジヒドロカルコン及びその組成物並びに農薬としてのそれらの使用 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(54)【発明の名称】ピノセンブリンジヒドロカルコン及びその組成物並びに農薬としてのそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   A01N 35/02 20060101AFI20230201BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20230201BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
A01N35/02
A01N25/02
A01P3/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022532706
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(85)【翻訳文提出日】2022-07-26
(86)【国際出願番号】 IL2020051239
(87)【国際公開番号】W WO2021111437
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】102019000022740
(32)【優先日】2019-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522048786
【氏名又は名称】メタボリック インサイツ エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】METABOLIC INSIGHTS LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パニック、ダビデ
(72)【発明者】
【氏名】コルマン、イド
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011BB05
4H011DA13
4H011DC05
4H011DD03
4H011DD04
4H011DE15
4H011DE17
(57)【要約】
ピノセンブリンジヒドロカルコン又はその農業的に許容され得る塩を有効農薬成分として含む組成物が提供される。植物、植物器官、植物部分又は植物繁殖材料への植物病原体の侵襲の事例を防除するため、予防するため、低減するため、又は根絶するための方法がさらに提供され、その方法は、植物、植物部分、植物器官若しくは植物繁殖材料又は前記植物の周囲の土壌に、農薬有効量の、ピノセンブリンジヒドロカルコン又はそれを含む農薬組成物を含む活性な作用物質を適用する工程を含み、前記植物病原体は、Fusarium及びSclerotiniaから選択されるSclerotiniaceae科の属;Pythiaceae科のPeronosporales;Agaricomycetes綱のBasidiomycota;並びにEnterobacteriales及びPseudomonadalesから選択されるGamma Proteobacteriumの目から選択されるメンバーである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物、植物器官、植物部分又は植物繁殖材料への植物病原体の侵襲の事例を防除するため、予防するため、低減するため、又は根絶するための方法であって、前記方法は、植物、植物部分、植物器官若しくは植物繁殖材料又は前記植物の周囲の土壌に、農薬有効量のピノセンブリンジヒドロカルコン、又は農薬有効量のピノセンブリンジヒドロカルコンを含む農薬組成物を適用する工程を含み、
前記植物病原体は、Fusarium及びSclerotiniaから選択されるSclerotiniaceae科の属;Pythiaceae科のPeronosporales;Agaricomycetes綱のBasidiomycota;並びにEnterobacteriales及びPseudomonadalesから選択されるGamma Proteobacteriumの目から選択されるメンバーである、方法。
【請求項2】
前記植物病原体が、Fusarium属のメンバーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Fusarium属の植物病原体が、Fusarium oxysporum、Fusarium avenaceum、Fusarium bubigeum、Fusarium circinatum、Fusarium crookwellense、Fusarium culmorum、Fusarium graminearum、Fusarium langsethiae、Fusarium poae、Fusarium proliferatum、Fusarium solani、Fusarium sporotrichioides、Fusarium tricinctum、Fusarium venenatum、Fusarium verticillioides及びFusarium virguliformeから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記植物病原体が、Sclerotinia属のメンバーである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記Sclerotinia属の植物病原体が、Sclerotinia sclerotiorum、Sclerotinia borealis、Sclerotinia bulborum(Wakker)Sacc.、Sclerotinia homoeocarpa F.T.Benn.、Sclerotinia minor Jagger、Sclerotinia ricini、Sclerotinia sclerotiorum(Lib.)de Bary、Sclerotinia spermophila Noble、Sclerotinia sulcate、Sclerotinia trifoliorum Erikss.及びSclerotinia veratriから選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記植物病原体が、Pythiaceae科のメンバーである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記Pythiaceae科の植物病原体が、Pythium属のメンバーである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記Pythium属の植物病原体が、Pythium aphanidermatum、Pythium acanthicum、Pythium acanthophoron、Pythium acrogynum、Pythium adhaerens、Pythium amasculinum、Pythium anandrum、Pythium angustatum、Pythium apleroticum、Pythium aquatile、Pythium aristosporum、Pythium arrhenomanes、Pythium attrantheridium、Pythium bifurcatum、Pythium boreale、Pythium buismaniae、Pythium butleri、Pythium camurandrum、Pythium campanulatum、Pythium canariense、Pythium capillosum、Pythium carbonicum、Pythium carolinianum、Pythium catenulatum、Pythium chamaehyphon、Pythium chondricola、Pythium citrinum、Pythium coloratum、Pythium conidiophorum、Pythium contiguanum、Pythium cryptoirregulare、Pythium cucurbitacearum、Pythium cylindrosporum、Pythium cystogenes、Pythium debaryanum、Pythium delicense、Pythium destruens、Pythium diclinum、Pythium dimorphum、Pythium dissimile、Pythium dissotocum、Pythium echinulatum、Pythium emineosum、Pythium erinaceum、Pythium flevoense、Pythium folliculosum、Pythium glomeratum、Pythium graminicola、Pythium grandisporangium、Pythium guiyangense、Pythium helicandrum、Pythium helicoides、Pythium heterothallicum、Pythium hydnosporum、Pythium hypogynum、Pythium indigoferae、Pythium inflatum、Pythium insidiosum、Pythium intermedium、Pythium irregulare、Pythium iwayamae、Pythium jasmonium、Pythium kunmingense、Pythium litorale、Pythium longandrum、Pythium longisporangium、Pythium lutarium、Pythium macrosporum、Pythium mamillatum、Pythium marinum、Pythium marsupium、Pythium mastophorum、Pythium megacarpum、Pythium middletonii、Pythium minus、Pythium monospermum、Pythium montanum、Pythium multisporum、Pythium myriotylum、Pythium nagaii、Pythium nodosum、Pythium nunn、Pythium oedochilum、Pythium okanoganense、Pythium oligandrum、Pythium oopapillum、Pythium ornacarpum、Pythium orthogonon、Pythium ostracodes、Pythium pachycaule、Pythium pachycaule、Pythium paddicum、Pythium paroecandrum、Pythium parvum、Pythium pectinolyticum、Pythium periilum、Pythium periplocum、Pythium perniciosum、Pythium perplexum、Pythium phragmitis、Pythium pleroticum、Pythium plurisporium、Pythium polare、Pythium polymastum、Pythium porphyrae、Pythium prolatum、Pythium proliferatum、Pythium pulchrum、Pythium pyrilobum、Pythium quercum、Pythium radiosum、Pythium ramificatum、Pythium regulare、Pythium rhizo-oryzae、Pythium rhizosaccharum、Pythium rostratifingens、Pythium rostratum、Pythium salpingophorum、Pythium scleroteichum、Pythium segnitium、Pythium speculum、Pythium spinosum、Pythium splendens、Pythium sterilum、Pythium stipitatum、Pythium sulcatum、Pythium terrestris、Pythium torulosum、Pythium tracheiphilum、Pythium ultimum、Pythium ultimum var.ultimum、Pythium uncinulatum、Pythium undulatum、Pythium vanterpoolii、Pythium viniferum、Pythium violae、Pythium volutum、Pythium zingiberis及びPythium zingiberumから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記植物病原体が、Agaricomycetes綱のメンバーである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記植物病原体が、Cantharellales目のメンバーである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記Cantharellales目の植物病原体が、Ceratobasidiaceae科のメンバーである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記Ceratobasidiaceae科の植物病原体が、Rhizoctonia属のメンバーである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記Rhizoctonia属の植物病原体が、Rhizoctonia solani、Rhizoctonia bataticola、Rhizoctonia carotae、Rhizoctonia cerealis、Rhizoctonia crocorum、Rhizoctonia fragariae、Rhizoctonia goodyerae-repentis、Rhizoctonia oryzae及びRhizoctonia ramicolaから選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記植物病原体が、Enterobacteriales目のメンバーである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記植物病原体が、Enterobacteriaceae科のメンバーである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記Enterobacteriaceae科の植物病原体が、Pectobacterium属のメンバーである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記Pectobacterium属の植物病原体が、Pectobacterium caratovorum及びPectobacterium aroidearumから選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記植物病原体が、Pseudomonadales目のメンバーである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記Pseudomonadales目の植物病原体が、Pseudomonadaceae科のメンバーである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記Pseudomonadaceae科の植物病原体が、Pseudomonas属のメンバーである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記Pseudomonas属の植物病原体が、Pseudomonas aeroginosa及びPseudomonas syringaeから選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ピノセンブリンジヒドロカルコン又はその組成物が、噴霧、浸漬、包帯、コーティング、ペレッティング又は浸すことによって前記植物、植物部分、植物器官若しくは植物繁殖材料又は前記植物の周囲の土壌に適用される、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物が、ピノセンブリンジヒドロカルコンを10ppm~2000ppm、例えば、100~500ppm及び100、200、300ppmの濃度で含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
ピノセンブリンジヒドロカルコン又はその農業的に許容され得る塩を有効農薬成分として含む、農薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2019年12月2日出願のイタリア特許出願第102019000022740号に対する優先権の利益を主張する。この特許出願の内容は、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【0002】
[技術分野]
本発明は、概して、農業利用のための殺真菌特性及び殺菌特性を有する化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
植物病原体及び植物病は、現代農業の生産性に対して大きな課題となっている。
【0004】
Fusarium属種は、子嚢菌綱の系統学的系列に属する糸状菌の大きな属である。Fusariumの多くの種は、植物に対して病原性であり、経済的に重要な植物、主に野菜の萎凋(wilt)又は「腐れ(rot)」のような深刻な病気の原因となる。さらに、Fusarium種は、穀類に感染して、トウモロコシにおいて頭枯れ(head blight)及び穂腐れ(ear rot)を引き起こし、ある特定の条件下においてマイコトキシンを蓄積させる(J.E.E.Jenkins,Y.S.Clark and A.E.Buckle,1998)。
【0005】
土壌伝染性植物病原体は、農業作物に対して重大な被害をもたらす。植物病原性真菌であるRhizoctonia属種は、担子菌綱の系統学的系列に属し、ブラウンパッチ、実生の立ち枯れ病、根腐れ及び腹腐れなどの広範囲の商業的に重大な植物病の原因となる。植物におけるすべてのリゾクトニア病及びその後の二次感染は、防除が難しい(Erlacher et al.,2014)。Rhizoctonia属種の適切な防除は、イネ及び各種野菜などの様々な農業作物の生産性にとって極めて重要である。
【0006】
Pythium属種は、タバコ、トマト、マスタード、トウガラシ及びクレソンの実生の広範な「立ち枯れ病」(「dumpling off」病)の原因となる卵菌綱と呼ばれる真核微生物の系統学的系列に属する植物病原性の真菌様生物である(Martin&Loper,2010)。
【0007】
Sclerotinia属種は、子嚢菌綱の系統学的系列に属する植物病原性真菌である。Sclerotinia属種は、多くの植物宿主(そのほとんどが野菜である)において白カビ病と呼ばれる病気の原因となる(ANR publication 8042.Sclerotinia diseases-ISBN 978-1-60107-220-7)。
【0008】
Pectobacterium carotovorumは、栽培中、輸送中及び貯蔵中に多くの野菜(キャベツ、ジャガイモ、タマネギ、ラディッシュなど)において軟腐病を引き起こし、主に収穫後の貯蔵中にかなりの経済的損害をもたらす、Gamma Proteobacteriaの系統学的系列に属する細菌性の植物病原体である(Lee et al.,2013)。
【0009】
Pseudomonas属種は、系統発生系列のGamma Proteobacteriaにも属する植物病原菌属である。Pseudomonas属種は、経済的に重要な作物植物及び果樹において、パースニップ及びトマトにおける髄壊死、イネにおける褐色斑点病及び葉鞘褐色腐敗病、アーモンドにおける細菌性かいよう病(bacteial canker)、並びにオリーブにおけるオリーブがんしゅ病(olive knot disease)などの葉及び茎の病変をもたらす(Moore L.W.,1988;Hofte M.and De Vos P.,2006)。作物植物におけるPseudomonas属種の管理について種々の方法が試験され、それらの方法としては、栽培上の管理、宿主抵抗性、微生物アンタゴニストによる生物学的防除、及び化学的防除が挙げられる。それらのいずれも完全な防除はできない。
【0010】
これらの病気から作物を保護する目的で利用可能な活性成分の数は、病原体の抵抗性が高まっていること、気候条件が不安定であること、及び規制圧力が高まっていることに起因して、年々減少している。新規の化学分子に基づく新しい活性成分が、作物保護の解決法を開発するための有望な手段となる。
【発明の概要】
【0011】
1つの態様において、本発明は、ピノセンブリンジヒドロカルコン又はその農業的に許容され得る塩を有効農薬成分として含む農薬組成物に関する。
【0012】
別の態様において、本発明は、植物、植物器官、植物部分又は植物繁殖材料への植物病原体の侵襲又はその事例を防除するため、予防するため、低減するため、又は根絶するための方法を提供し、その方法は、植物、植物器官若しくは植物繁殖材料、又は前記植物の周囲の土壌に、下記で述べる実施形態のうちのいずれか1つにおいて定義されるような、農薬有効量のピノセンブリンジヒドロカルコン又は病害に対して有効量のピノセンブリンジヒドロカルコンを含む農薬組成物を適用する工程を含み、前記植物病原体は、Fusarium及びSclerotiniaから選択されるSclerotiniaceae科の属;Pythiaceae科のPeronosporales;Agaricomycetes綱のBasidiomycota;並びにEnterobacteriales及びPseudomonadalesから選択されるGamma Proteobacteriumの目から選択されるメンバーである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、Fusarium oxysporum接種の3週間後の生存パーセンテージとして測定された、3つの独立した実験におけるキュウリ実生の生存に対するピノセンブリンジヒドロカルコン(PDC)の効果を示している。は、p値<0.05を意味し、**は、p値が<0.01であることを意味し、***は、p値が<0.001であることを意味する。製剤3-実施例7を参照のこと。
図2図2は、Fusarium oxysporum接種の3週間後の生存パーセンテージとして測定された、3つの独立した実験におけるキュウリ実生の生存に対するピノセンブリンジヒドロカルコン(PDC)の効果を示している。は、p値<0.05を意味し、**は、p値が<0.01であることを意味し、***は、p値が<0.001であることを意味する。製剤3-実施例7を参照のこと。
図3図3は、Fusarium oxysporum接種の3週間後の生存パーセンテージとして測定された、3つの独立した実験におけるキュウリ実生の生存に対するピノセンブリンジヒドロカルコン(PDC)の効果を示している。は、p値<0.05を意味し、**は、p値が<0.01であることを意味し、***は、p値が<0.001であることを意味する。製剤3-実施例7を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明によれば、ピノセンブリンジヒドロカルコンは、Sclerotiniaceae科の2つの属;Pythiaceae科のPeronosporales;Agaricomycetes綱のBasidiomycota;及びGamma Proteobacteriaの2つの異なる目に対する強力な農薬であることが見出された。
【0015】
ピノセンブリンジヒドロカルコンは、カルコンC-グリコシドというクラスのメンバーである。CAS登録では、ピノセンブリンジヒドロカルコンを、以下の別名:1-プロパノン、3-フェニル-1-(2,4,6-トリヒドロキシフェニル)、3-フェニル-1-(2,4,6-トリヒドロキシフェニル)-1-プロパノン及び2’,4’,6’-トリヒドロキシジヒドロカルコンも有する3-フェニル-1-(2,4,6-トリヒドロキシフェニル)プロパン-1-オンとして特定している。CAS登録番号は、1088-08-0である。
【0016】
したがって、本発明は、1つの態様において、ピノセンブリンジヒドロカルコン又はその農業的に許容され得る塩を有効農薬成分として含む農薬組成物に関する。
【0017】
ある特定の実施形態において、農薬組成物は、農業的に好適な又は農業的に許容され得る溶媒又は可溶化剤をさらに含む。
【0018】
ある特定の実施形態において、農業的に許容され得る溶媒又は可溶化剤は、ピノセンブリンジヒドロカルコンを溶解又は可溶化できる水混和性溶媒である。
【0019】
ある特定の実施形態において、ピノセンブリンジヒドロカルコンを溶解又は可溶化できる水混和性溶媒は、極性溶媒、例えば、アルコール、ケトン、ラクトン、ケトアルコール、グリコール、グリコエーテル、アミド、アルカノールアミン、スルホキシド及びピロリドンである。
【0020】
いくつかの実施形態において、上記組成物は、非イオン性界面活性剤をさらに含む。この界面活性剤の非限定的な例は、ポリソルベート型界面活性剤、例えば、TWEEN(登録商標)20、TWEEN(登録商標)40、TWEEN(登録商標)60及びTWEEN(登録商標)80、又はポリエチレンオキシド-エーテル界面活性剤、例えば、BRIJ(登録商標)35、BRIJ(登録商標)58及びBRIJ(登録商標)93である。
【0021】
特定の実施形態において、上記組成物は、ジメチルスルホキシド又はエタノールから選択される溶媒、及びTWEEN(登録商標)20(ポリソルベート20)であるポリソルベート型非イオン性界面活性剤を含む。
【0022】
別の態様において、本発明は、植物、植物器官、植物部分又は植物繁殖材料への植物病原体の侵襲又はその事例を防除するため、予防するため、低減するため、又は根絶するための方法を提供し、その方法は、植物、植物器官若しくは植物繁殖材料又は前記植物の周囲の土壌に、農薬有効量のピノセンブリンジヒドロカルコン、又は上記実施形態のいずれか1つの農薬有効量のピノセンブリンジヒドロカルコンを含む農薬組成物若しくは農薬製剤を適用する工程を含み、前記植物病原体は、Fusarium及びSclerotiniaから選択されるSclerotiniaceae科の属;Pythiaceae科のPeronosporales;Agaricomycetes綱のBasidiomycota;並びにEnterobacteriales及びPseudomonadalesから選択されるGamma Proteobacteriumの目から選択されるメンバーである。
【0023】
本発明の処置方法は、例えば、萎凋又は腐れ;トウモロコシにおける頭枯れ及び穂腐れ;ブラウンパッチ;根腐れ及び腹腐れ;タバコ、トマト、マスタード、トウガラシ及びクレソンの実生の立ち枯れ病;野菜などの多くの植物宿主における白カビ;多くの野菜(キャベツ、ジャガイモ、タマネギ、ラディッシュなど)における軟腐病;パースニップ及びトマトにおける髄壊死;イネにおける褐色斑点病及び葉鞘褐色腐敗病、アーモンドにおける細菌性かいよう病;並びにオリーブにおけるオリーブがんしゅ病のような病気に対して有用である。
【0024】
ある特定の実施形態において、植物病原体は、Fusarium属のメンバー、例えば、Fusarium oxysporum、Fusarium avenaceum、Fusarium bubigeum、Fusarium circinatum、Fusarium crookwellense、Fusarium culmorum、Fusarium graminearum、Fusarium langsethiae、Fusarium poae、Fusarium proliferatum、Fusarium solani、Fusarium sporotrichioides、Fusarium tricinctum、Fusarium venenatum、Fusarium verticillioides及びFusarium virguliformeである。
【0025】
ある特定の実施形態において、植物病原体は、Fusarium oxysporumである。
【0026】
ある特定の実施形態において、植物病原体は、Sclerotinia属のメンバー、例えば、Sclerotinia sclerotiorum、Sclerotinia borealis、Sclerotinia bulborum(Wakker)Sacc.、Sclerotinia homoeocarpa F.T.Benn.、Sclerotinia minor Jagger、Sclerotinia ricini、Sclerotinia sclerotiorum(Lib.)de Bary、Sclerotinia spermophila Noble、Sclerotinia sulcate、Sclerotinia trifoliorum Erikss.及びSclerotinia veratriである。
【0027】
ある特定の実施形態において、植物病原体は、Sclerotinia sclerotiorumである。
【0028】
ある特定の実施形態において、植物病原体は、Pythiaceae科のメンバーである。
【0029】
ある特定の実施形態において、Pythiaceae科の植物病原体は、Pythium属のメンバー、例えば、Pythium aphanidermatum、Pythium acanthicum、Pythium acanthophoron、Pythium acrogynum、Pythium adhaerens、Pythium amasculinum、Pythium anandrum、Pythium angustatum、Pythium apleroticum、Pythium aquatile、Pythium aristosporum、Pythium arrhenomanes、Pythium attrantheridium、Pythium bifurcatum、Pythium boreale、Pythium buismaniae、Pythium butleri、Pythium camurandrum、Pythium campanulatum、Pythium canariense、Pythium capillosum、Pythium carbonicum、Pythium carolinianum、Pythium catenulatum、Pythium chamaehyphon、Pythium chondricola、Pythium citrinum、Pythium coloratum、Pythium conidiophorum、Pythium contiguanum、Pythium cryptoirregulare、Pythium cucurbitacearum、Pythium cylindrosporum、Pythium cystogenes、Pythium debaryanum、Pythium delicense、Pythium destruens、Pythium diclinum、Pythium dimorphum、Pythium dissimile、Pythium dissotocum、Pythium echinulatum、Pythium emineosum、Pythium erinaceum、Pythium flevoense、Pythium folliculosum、Pythium glomeratum、Pythium graminicola、Pythium grandisporangium、Pythium guiyangense、Pythium helicandrum、Pythium helicoides、Pythium heterothallicum、Pythium hydnosporum、Pythium hypogynum、Pythium indigoferae、Pythium inflatum、Pythium insidiosum、Pythium intermedium、Pythium irregulare、Pythium iwayamae、Pythium jasmonium、Pythium kunmingense、Pythium litorale、Pythium longandrum、Pythium longisporangium、Pythium lutarium、Pythium macrosporum、Pythium mamillatum、Pythium marinum、Pythium marsupium、Pythium mastophorum、Pythium megacarpum、Pythium middletonii、Pythium minus、Pythium monospermum、Pythium montanum、Pythium multisporum、Pythium myriotylum、Pythium nagaii、Pythium nodosum、Pythium nunn、Pythium oedochilum、Pythium okanoganense、Pythium oligandrum、Pythium oopapillum、Pythium ornacarpum、Pythium orthogonon、Pythium ostracodes、Pythium pachycaule、Pythium pachycaule、Pythium paddicum、Pythium paroecandrum、Pythium parvum、Pythium pectinolyticum、Pythium periilum、Pythium periplocum、Pythium perniciosum、Pythium perplexum、Pythium phragmitis、Pythium pleroticum、Pythium plurisporium、Pythium polare、Pythium polymastum、Pythium porphyrae、Pythium prolatum、Pythium proliferatum、Pythium pulchrum、Pythium pyrilobum、Pythium quercum、Pythium radiosum、Pythium ramificatum、Pythium regulare、Pythium rhizo-oryzae、Pythium rhizosaccharum、Pythium rostratifingens、Pythium rostratum、Pythium salpingophorum、Pythium scleroteichum、Pythium segnitium、Pythium speculum、Pythium spinosum、Pythium splendens、Pythium sterilum、Pythium stipitatum、Pythium sulcatum、Pythium terrestris、Pythium torulosum、Pythium tracheiphilum、Pythium ultimum、Pythium ultimum var.ultimum、Pythium uncinulatum、Pythium undulatum、Pythium vanterpoolii、Pythium viniferum、Pythium violae、Pythium volutum、Pythium zingiberis及びPythium zingiberumである。
【0030】
ある特定の実施形態において、植物病原体は、Agaricomycetes綱のメンバーである。
【0031】
ある特定の実施形態において、Agaricomycetes綱の植物病原体は、Cantharellales目のメンバーである。
【0032】
ある特定の実施形態において、Cantharellales目の植物病原体は、Ceratobasidiaceae科のメンバーである。
【0033】
ある特定の実施形態において、Ceratobasidiaceae科の植物病原体は、Rhizoctonia属のメンバー、例えば、Rhizoctonia solani、Macrophomina phaseolinaとしても知られるRhizoctonia bataticola、Fibulorhizoctonia carotaeとしても知られるRhizoctonia carotae、Rhizoctonia cerealis、Thanatophytum crocorumとしても知られるRhizoctonia crocorum、Rhizoctonia fragariae、Ceratobasidium cornigerumとしても知られるRhizoctonia goodyerae-repentis、Waitea circinateとしても知られるRhizoctonia oryzae及びCeratorhiza ramicolaとしても知られるRhizoctonia ramicolaである。
【0034】
ある特定の実施形態において、植物病原体は、Rhizoctonia solaniである。
【0035】
ある特定の実施形態において、植物病原体は、Enterobacteriales目のメンバーである。
【0036】
ある特定の実施形態において、Enterobacteriales目の植物病原体は、Enterobacteriaceae科のメンバーである。
【0037】
ある特定の実施形態において、Enterobacteriaceae科の植物病原体は、例えば、Pectobacterium caratovorum及びPectobacterium aroidearumなどの、Pectobacterium属のメンバーである。
【0038】
ある特定の実施形態において、植物病原体は、Pseudomonadales目のメンバーである。
【0039】
ある特定の実施形態において、Pseudomonadales目の植物病原体は、Pseudomonadaceae科のメンバーである。
【0040】
ある特定の実施形態において、Pseudomonadaceae科の植物病原体は、Pseudomonas属のメンバー、例えば、Pseudomonas aeroginosa及びPseudomonas syringaeである。
【0041】
本発明の農薬組成物は、有効農薬成分の適用を容易にするために製剤に製剤化され得る。
【0042】
上記製剤の非限定的な例は、懸濁剤濃縮物(SC)、カプセル懸濁剤(CS)、水分散性顆粒剤(WG)、乳化性濃縮物(EC)、水和剤(wettable powder)(WP)、可溶性(液体)濃縮物(SL)及び水溶剤(soluble powder)(SP)であり得る。
【0043】
この製剤は、少なくとも1つの溶媒若しくは可溶化剤、アジュバント、キャリア、希釈剤及び/又は界面活性剤をさらに含み得る。
【0044】
アジュバントの非限定的な例は、アクチベーターアジュバント、例えば、陽イオン性、陰イオン性又は非イオン性界面活性剤;農薬製品の活性を改善できる油及び窒素ベースの肥料である。油は、イネ科雑草を防除するために使用される、作物油、例えば、パラフィン又はナフサベースの石油、乳化可能な石油ベースの油に基づく作物油濃縮物、及び種子油(通常、綿実油、亜麻仁油、大豆油又はヒマワリ油)から得られる植物油濃縮物であり得る。窒素ベースの肥料は、硫酸アンモニウム又は尿素-硝酸アンモニウムであり得る。
【0045】
可溶化剤又は溶媒の非限定的な例は、石油ベースの溶媒、上述の油、脂肪酸の液体混合物、エタノール、グリセロール及びジメチルスルホキシドである。農業的に許容され得る溶媒又は可溶化剤は、ピノセンブリンジヒドロカルコンを溶解又は可溶化できる水混和性溶媒、例えば、極性溶媒、例えば、アルコール、ケトン、ラクトン、ケトアルコール、グリコール、グリコエーテル、アミド、アルカノールアミン、スルホキシド及びピロリドンであり得る。
【0046】
キャリアの非限定的な例は、沈降シリカ、コロイドケイ酸、アタパルジャイト、陶土、タルク、カオリン及びそれらの組み合わせである。
【0047】
上記農薬製剤は、希釈剤、例えば、ラクトース、デンプン、尿素、水溶性無機塩及びそれらの組み合わせをさらに含み得る。
【0048】
上記農薬製剤は、例えば、ポリソルベート型非イオン性界面活性剤、スチレンアクリル分散剤ポリマー、酸性樹脂共重合体ベースの分散剤、ポリカルボン酸カリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムブレンド、ジイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸縮合物のナトリウム塩、リグニンスルホン酸塩及びそれらの組み合わせなどの1つ以上の界面活性剤をさらに含み得る。
【0049】
ピノセンブリンジヒドロカルコン又はそれを含む組成物若しくは製剤は、上記実施形態のうちのいずれか1つの方法において、噴霧、浸漬、包帯、コーティング、ペレッティング又は浸すことによって植物又はその一部、器官若しくは植物繁殖材料に適用され得る。
【0050】
本発明のある特定の実施形態によると、ピノセンブリンジヒドロカルコンを含む組成物又は製剤におけるピノセンブリンジヒドロカルコンの濃度は、10~2000百万分率(ppm;1ppmは、乾燥した形態のとき、1kgあたり1mgのピノセンブリンジヒドロカルコン、又は液体の形態のとき、1mg/Lに等しい)の範囲内であり得る。
【0051】
ある特定の実施形態において、ピノセンブリンジヒドロカルコンを含む組成物又は製剤におけるピノセンブリンジヒドロカルコンの濃度は、10~2000、10~1500、10~1000、10~900、10~800、10~700、10~600、10~500、10~400、10~300、10~200、10~100、10~90、10~80、10~70、10~60、10~50、10~40、10~30、10~20、20~2000、20~1500、20~1000、20~900、20~800、20~700、20~600、20~500、20~400、20~300、20~200、20~100、20~90、20~80、20~70、20~60、20~50、20~40、20~30、20~20.30~2000、30~1500、30~1000、30~900、30~800、30~700、30~600、30~500、30~400、30~300、30~200、30~100、30~0、30~100、30~90、30~80、30~70、30~60、30~50、30~40、40~2000、40~1500、40~1000、40~900、40~800、40~700、40~600、40~500、40~400、40~300、40~200、40~100、40~90、40~80、40~70、40~60、40~50、50~2000、50~1500、50~1000、50~900、50~800、50~700、50~600、50~500、50~400、50~300、50~200、50~100、50~90、50~80、50~70、50~60、60~2000、60~1500、60~1000、60~900、60~800、60~700、60~600、60~500、60~400、60~300、60~200、60~100、60~90、60~80、60~70、70~2000、70~1500、70~1000、70~900、70~800、70~700、70~600、70~500、70~400、70~300、70~200、70~100、70~90、70~80、80~2000、80~1500、80~1000、80~900、80~800、80~700、80~600、80~500、80~400、80~300、80~200、80~100、80~90、90~2000、90~1500、90~1000、90~900、90~800、90~700、90~600、90~500、90~400、90~300、90~200、90~100、100~2000、100~1500、100~1000、100~900、100~800、100~700、100~600、100~500、100~400、100~300、100~200、200~2000、200~1500、200~1000、200~900、200~800、200~700、200~600、200~500、200~400、200~300、300~2000、300~1500、300~1000、300~900、300~800、300~700、300~600、300~500、300~400、400~2000、400~1500、400~1000、400~900、400~800、400~700、400~600、400~500、500~2000、500~1500、500~1000、500~900、500~800、500~700、500~600、600~2000、600~1500、600~1000、600~900、600~800、600~700、700~2000、700~1500、700~1000、700~900、700~800、800~2000、800~1500、800~1000、800~900、900~2000、900~1500、900~1000、1000~2000又は1000~1500ppmの範囲内であり得る。
【0052】
特に、ピノセンブリンジヒドロカルコンを含む組成物又は製剤におけるピノセンブリンジヒドロカルコンの濃度は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、1000、1500又は2000ppmであり得る。
【0053】
定義
本明細書中で使用される用語「農薬」とは、植物、植物器官、植物部分、植物繁殖材料又は前記植物の周囲の土壌における植物病原体の侵襲又はその事例を防除する、予防する、低減する、又は根絶するのに有効な化合物のことを指し、それらには、抗菌剤、殺真菌剤、除草剤及び殺虫剤が含まれる。
【0054】
本明細書中の用語「有効農薬成分」とは、農薬として有効な化合物のことを指す。
【0055】
本明細書中で使用される用語「植物器官」とは、葉、茎、根及び繁殖構造のことを指す。
【0056】
本明細書中で使用される用語「植物部分」とは、挿し木若しくは塊茎などの栄養性植物材料;葉、花、樹皮又は茎のことを指す。
【0057】
本明細書中で使用される用語「植物繁殖材料」とは、種子、根、果実、塊茎、鱗茎、根茎、又は植物の一部のことを指す。
【0058】
本明細書中で使用される用語「農薬有効量」とは、植物、植物器官、植物部分、植物繁殖材料又は前記植物の周囲の土壌における植物病原体の侵襲又はその事例を防除する、予防する、低減する、又は根絶するのに有効な農薬の量のことを指す。
【0059】
用語「綱」、「目」、「科」、「属」及び「種」は、藻類、真菌類及び植物に対する国際命名規約のArt3.1に従って本明細書中で使用される。
【0060】
請求項において使用される用語「~を含む」は、「オープンエンド」であり、記載のエレメント又はそれらの構造若しくは機能の等価物に加え、記載されていない他の任意のエレメントを意味する。それは、本明細書中以後列挙される意味に限定されると解釈されるべきでなく;他のエレメント又は工程を排除しない。それは、述べられている特徴、整数、工程又は構成要素の存在を言及されているとおりに明示していると解釈される必要があるが、1つ以上の他の特徴、整数、工程若しくは構成要素又はそれらの群の存在又は追加を排除しない。したがって、「x及びzを含む組成物」という表現の範囲は、化合物x及びzだけからなる組成物に限定されるべきでない。また、「工程x及びzを含む方法」という表現の範囲は、これらの工程だけからなる方法に限定されるべきでない。
【0061】
本明細書中で使用されるとき、用語「及び/又は」は、列挙されている関連項目の1つ以上の任意の組み合わせ及びすべての組み合わせを含む。別段定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての用語(専門用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する分野の当業者が通常理解している意味と同じ意味を有する。通常使用される辞書に定義されている用語などの用語は、本明細書及び関連技術の文脈におけるそれらの意味と一致した意味を有すると解釈されるべきであって、理想的な意味又は過度に正式な意味として本明細書中で明確に定義されない限り、そのように解釈されるべきでない。周知の機能又は構成は、簡潔及び/又は明確にするために詳細に記載されていないかもしれない。
【0062】
別段示されない限り、本明細書において使用されるすべての数字は、すべての場合において用語「約」によって修飾されていると理解されるべきである。具体的に述べられていない限り、本明細書中で使用されるとき、用語「約」は、当該分野において通常許容される範囲内、例えば平均値の2標準偏差以内と理解される。1つの実施形態において、用語「約」は、その用語とともに使用されている報告されている数値の10%以内、好ましくは、報告されている数値の5%以内を意味する。例えば、用語「約」は、述べられている値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%又は0.01%以内とすぐに理解され得る。他の実施形態において、用語「約」は、例えば使用される実験手法に応じて、より大きな変動の許容を意味し得る。特定の値の前記変動は、当業者によって理解される変動であり、本発明の文脈の範囲内である。例示として、「約1~約5」という数値範囲は、約1~約5という明示的に記載されている値を含むだけでなく、その記載の範囲内の個々の値及び部分範囲も含むと解釈されるべきである。したがって、この数値範囲に含まれるのは、2、3及び4などの個々の値、並びに例えば1~3、2~4及び3~5といった部分範囲、並びに個々に1、2、3、4、5又は6である。この同じ原理が、最小値又は最大値としてただ1つの数値を記載している範囲にも当てはまる。文脈から他のことが明らかでない限り、本明細書中に提供されるすべての数値が用語「約」によって修飾される。他の類似の用語(例えば、「実質的に」、「一般に」、「最大」など)も、ある用語又は値をそれが絶対的でないように修飾していると解釈されるべきである。そのような用語は、それらが修飾する状況及び用語によって、それらの用語が当業者によって理解されるように定義される。これは、少なくとも、値を測定するために用いられる所与の実験、手法又は機器に対して予想される実験誤差、技術誤差及び機器誤差の程度を含む。
【0063】
ここから、本発明を以下の非限定的な例によって例証する。
【実施例
【0064】
略語の一覧:
RPM-毎分回転数
RCF-相対遠心力
CFU-コロニー形成単位
PDBC-20ug/mlクロラムフェニコールを含むポテトデキストロースブロス
PDAC-20ug/mlクロラムフェニコールを含むポテトデキストロース寒天
PDAT 12ug/mlテトラサイクリンを含むポテトデキストロース寒天
DMSO-ジメチルスルホキシド
LB-溶原ブロス
LBA-寒天を含む溶原ブロス
SCH-Schmittner培地
2:PDBC-滅菌蒸留水によって2倍希釈されたPDBC
PDA-ポテトデキストロース寒天
PDBT-12ug/mlテトラサイクリンを含むポテトデキストロースブロス
【0065】
実施例1.Fusarium oxysporumに対するピノセンブリンジヒドロカルコンの生物活性のマイクロプレートベースアッセイ
要旨:
希釈された精製済みピノセンブリンジヒドロカルコンをマイクロプレートウェルに加え、調製したばかりの胞子懸濁液と混合し、凍結胞子から始めたその真菌の成長をプレートリーダー及び目視検査によってモニターした。
【0066】
背景:
Fusariumは、子嚢菌綱に属する真菌であり、土壌伝染性の病原体である。Fusariumの大量の胞子の産生はかなり容易であり、-20℃の液体の60%グリセロール中で生存することから、新鮮な胞子を実験ごとに調製するのではなく、凍結胞子のストックをこのスクリーニングにおいて使用することに決めた。
【0067】
目的:
Fusariumの生存及び成長に対する種々の化合物の効果を測定すること。
【0068】
以下の材料、方法及び装置を使用した:
【0069】
材料:PDAC(Becton,Dickinson and Company,NJ,US)、PDBC(Becton,Dickinson and Company,NJ,US)、DMSO(Fisher Scientificの一部であるJ.T.Baker,US)。
【0070】
装置:プレートリーダー、遠心機、振盪機、インキュベーター
【0071】
方法:
Fusarium胞子懸濁液の調製:
1)成長中のfusariumの寒天ブロックをPDACプレートの中央のPDACの上に置き、25℃で9日間生育する。
2)そのプレートを冷蔵庫内で少なくとも1時間冷却する。
3)冷蔵した30mlの滅菌60%グリセロール溶液を50mlチューブに加える。
4)菌糸及び胞子を含む寒天を1枚のプレートからメスで小片に切断し、それらを30mlの60%グリセロールが入った50mlチューブに入れる。
5)3000RPMで1分間振盪する。
6)プロセス全体において胞子を氷上で維持する。
7)その液体を新しい50ml滅菌チューブに移す。約25mlが回収されるはずである。
8)その胞子懸濁液を16層のガーゼ布で清浄な滅菌50mlチューブに直接濾過して、菌糸を廃棄する。
9)胞子濃度を計算し(40×10倍率で×10希釈度したものを数える)、冷却された滅菌60%グリセロール溶液で希釈して、2×10胞子/mlを得る。
10)1mlの胞子懸濁液を1.5mlチューブに等分する。各等分によって、スクリーニング用のプレート20枚分が取れるはずである。
11)その胞子懸濁液を-20℃で保存する。
【0072】
スクリーニング用の胞子懸濁液の調製:
1)1mlの凍結胞子懸濁液を冷凍庫から取り出し、氷上で解凍する。
2)200ulの胞子懸濁液を、20mlの冷蔵PDBCと50mlチューブ内で混合して、2000胞子/ml懸濁液を生成する。
3)この量を使用して、1ウェルあたり100個の胞子を含む4枚のマイクロプレートのスクリーニングを行う。
【0073】
スクリーニング実験用のマイクロプレートの準備:
1)DMSO中の精製済み1%ピノセンブリンジヒドロカルコンの原液を冷凍庫から取り出し、卓上で解凍する。
2)1ulの1%ピノセンブリンジヒドロカルコンの原液を取り、39ulの水で250ppmに希釈する。
3)3)マルチピペットを用いて、10ulの希釈済み(250ppm)ピノセンブリンジヒドロカルコン溶液をマイクロプレートのウェルに入れる。
4)4)マルチピペットを用いて、激しく混合された40ulの胞子懸濁液接種材料をマイクロプレートのウェルに加える。
5)プレートを透明のシーラーで密封する。
6)プレートを2000RPMで10分間振盪して、上記材料を菌糸懸濁液と混合する。
7)プレートを1000RCFで1秒間遠心し、停止して、プレートの底に液体を集める。
8)マイクロプレートをプレートリーダーで読み出すまで、それを卓上で維持する。
9)プレートリーダーを用いてプレートを読み出す。
10)プレートを卓上に集める。
11)集めたプレートを、布カバー付きのプラスチックボックスに入れ、そのボックスを25℃のインキュベーター内に置く。
【0074】
プレートの読み出し:
1)プレートの読み出しをさらに3日、行う:アッセイ開始の3日後、7日後、14日後及び21日後。
2)各読み出し値と時間ゼロにおける読み出し値との吸光度の差を計算する。
3)各経過時点における各ウェルの成長阻害のパーセンテージを計算する。コントロールプレートのDMSO処置の結果を100%成長として使用する。
4)結果:実施例7を参照のこと。
【0075】
実施例2.Rhizoctonia Solaniに対するピノセンブリンジヒドロカルコンの生物活性のマイクロプレートベースアッセイ
要旨:
希釈された精製済みピノセンブリンジヒドロカルコンをマイクロプレートウェルに加え、50ulの菌糸懸濁液と混合し、混合された菌糸から始めたその真菌の成長をプレートリーダー及び目視検査によってモニターした。
【0076】
以下の材料、方法及び装置を使用した:
【0077】
材料:PDAC(Becton,Dickinson and Company,NJ,US製)、PDBC(Becton,Dickinson and Company,NJ,US製)、DMSO(Fisher Scientificの一部であるJ.T.Baker,US製)
【0078】
装置:プレートリーダー、遠心機、振盪機、インキュベーター
【0079】
方法:
Rhizoctonia solani菌糸の接種材料の調製:
1)Rhizoctoniaを90mmペトリプレート内のPDAC上で生育して、1~4日以内に成長中の菌糸を得る。
2)50mlのPDBC培地を250ml滅菌エルレンマイヤーフラスコに加える。
3)固形培地をメスでいくつかの小片に切断し、それらをエルレンマイヤーフラスコに入れる。
4)培養物を2~4日間、振盪機を用いて27℃及び150RPMで生育する。
5)液体を廃棄し、菌糸を空のペトリ皿にあける。
6)メスを用いて菌糸を多数の小片に切断し、それらを、50mlのPDBC培地が入った250ml滅菌エルレンマイヤーフラスコに入れる。
7)培養物を含む4本のボトルを調製し、27℃で3日間、150RPMで振盪して生育する。
8)培養物を冷蔵庫内で1時間冷却する。
9)冷培養物を250mlビーカーにあける。
10)20mlの冷PDBCを加える。
11)ブレンダーを用いて2分間、ブレンダーを数回上下させ、氷上にて最大速度で培養物を混合する。
12)混合物を氷上で維持する。
13)約5mlのブレンド混合物を氷上の15mlチューブに移す。
14)15mlチューブ内の培養物を氷上で2分間ホモジナイズする。
15)5mlの数バッチを上記のようにホモジナイズして、必要な量を調製する(5mlのホモジナイズされた培養物から約100mlの接種材料ができるだろう)。
16)ホモジネートの一部を10倍希釈して、ホモジネートの濃度をチェックする。懸濁液の濃度は4×10CFU/mlであるべきである(10倍希釈された濃度は4000CFU/mlであるべきである)。
17)接種材料ストックを、PDBCで20ml中に1mlにて1:20希釈するか、又は2000CFU/mlという最終濃度を調製するために必要な希釈度を計算する。各ウェル内の量は、100CFUであるべきである。
【0080】
活性実験に向けたマイクロプレートの準備:
1)DMSO中の精製済み1%ピノセンブリンジヒドロカルコンの原液を冷凍庫から取り出し、卓上で解凍する。
2)1ulの1%ピノセンブリンジヒドロカルコンの原液を取り、39ulの水で250ppmに希釈する。
3)マルチピペットを用いて、10ulの希釈済み(250ppm)ピノセンブリンジヒドロカルコン溶液をマイクロプレートのウェルに入れる。
4)マルチピペットを用いて、激しく混合された40ulの胞子懸濁液接種材料をマイクロプレートのウェルに加える。
5)プレートを透明のシーラーで密封する。
6)プレートを2000RPMで10分間振盪して、ピノセンブリンジヒドロカルコンを菌糸懸濁液と混合する。
7)プレートを1000RCFで1秒間遠心し、停止して、プレートの底に液体を集める。
8)マイクロプレートをプレートリーダーで読み出すまで、それを卓上で維持する。
9)プレートリーダーを用いてプレートを読み出す。
10)プレートを卓上に集める。
11)集めたプレートを、布カバー付きのプラスチックボックスに入れ、そのボックスを27℃のインキュベーター内に置く。
【0081】
プレートのスクリーニング:
1)さらに3日、プレートをスクリーニングする:アッセイ開始の3日後、7日後、14日後及び21日後。
2)各スクリーニングと時間ゼロにおける読み出しとの吸光度の差を計算する。
3)各時点における各ウェルの成長阻害のパーセンテージを計算する。コントロールプレートのDMSO処置の結果を100%成長として使用する。
4)結果:実施例7を参照のこと。
【0082】
実施例3.Pythium aphanidermatumに対するピノセンブリンジヒドロカルコンの生物活性のマイクロプレートベースアッセイ
要旨:
希釈された精製済みピノセンブリンジヒドロカルコンをマイクロプレートウェルに加え、50ulのPDBC懸濁液中の遊走子と混合し、遊走子から始めたその真菌の成長をプレートリーダー及び目視検査によってモニターした。
【0083】
以下の材料、方法及び装置を使用した:
【0084】
材料:
SCH、PDBC(Becton,Dickinson and Company,NJ,US製)、DMSO(Fisher Scientificの一部であるJ.T.Baker,US製)
【0085】
装置:
プレートリーダー、遠心機、振盪機、インキュベーター
【0086】
方法:
Pythium菌糸の接種材料の調製:
1)Pythium aphanidermatumを90mmペトリプレート内のSCH上で生育して、胞子形成中の菌糸を得る。各プレートから50mlの遊走子懸濁液が得られ、そこから96ウェルプレート10枚分が取れる。
2)60mlの滅菌HOを250ml滅菌エルレンマイヤーフラスコに加える。
3)2枚のプレートの固形培地をメスで12片に(プレート1枚につき)切断し、それらをエルレンマイヤーフラスコに入れる(固形片は水で覆われているべきである)。
4)17℃で一晩、菌糸に胞子形成させる。
5)エルレンマイヤーフラスコを手で振盪して、遊走子を懸濁する。
6)懸濁液を16層ガーゼで50mlチューブに濾過する。
7)その懸濁液を滅菌500mlボトルに移す。
8)固体を廃棄し、エルレンマイヤーフラスコを次亜塩素酸塩で消毒する。
9)遊走子懸濁液を氷上で冷却する。
10)懸濁液中の遊走子の濃度を評価する(濃度は1000~4000胞子/mlの範囲内であるべきである)。
11)必要に応じて、懸濁液を500ml滅菌ボトル内において、滅菌された冷蔵蒸留HOで希釈する。
12)(懸濁液と)同体積の2倍濃縮された滅菌冷蔵PDBCを加えて、500~2000胞子/ml接種材料を得る。この希釈によって、各ウェルにおいて25~100遊走子という量がもたらされる。
13)遊走子懸濁液接種材料を氷上で維持する。
【0087】
活性実験に向けたマイクロプレートの準備:
1)DMSO中の精製済み1%ピノセンブリンジヒドロカルコンの原液を冷凍庫から取り出し、卓上で解凍する。
2)1ulの1%ピノセンブリンジヒドロカルコンの原液を取り、39ulの水で250ppmに希釈する。
3)マルチピペットを用いて、10ulの希釈済み(250ppm)ピノセンブリンジヒドロカルコン溶液をマイクロプレートのウェルに入れる。
4)マルチピペットを用いて、激しく混合された40ulの胞子懸濁液接種材料をマイクロプレートのウェルに加える。
5)プレートを透明のシーラーで密封する。
6)プレートを2000RPMで10分間振盪して、ピノセンブリンジヒドロカルコンを菌糸懸濁液と混合する。
7)プレートを1000RCFで1秒間遠心し、停止して、プレートの底に液体を集める。
8)マイクロプレートをプレートリーダーで読み出すまで、それを卓上で維持する。
9)プレートリーダーを用いてプレートを読み出す。
10)プレートを卓上に集める。
11)集めたプレートを、布カバー付きのプラスチックボックスに入れ、そのボックスを27℃のインキュベーター内に置く。
【0088】
プレートのスクリーニング:
1)プレートをさらに3日、読み出す:アッセイ開始の3日後、7日後、14日後及び21日後。
2)各読み出し値と時間ゼロにおける読み出し値との吸光度の差を計算する。
3)各時点における各ウェルの成長阻害のパーセンテージを計算する。コントロールプレートのDMSO処置の結果を100%成長として使用する。
4)結果:実施例7を参照のこと。
【0089】
実施例4.Sclerotinia sclerotiorumに対するピノセンブリンジヒドロカルコンの生物活性のマイクロプレートベースアッセイ
要旨:
希釈された精製済みピノセンブリンジヒドロカルコンをマイクロプレートウェルに加え、50ulの菌糸懸濁液と混合し、ブレンドされた菌糸から開始した真菌の成長を、目視検査によってモニターした。
【0090】
背景:
Sclerotinia sclerotiorumは、子嚢菌綱に属する真菌であり、土壌伝染性の病原体である。Sclerotinia sclerotiorumの大量の胞子の産生は難しいため、このスクリーニングでは接種のために胞子ではなく菌糸を使用することに決めた。
【0091】
以下の材料、方法及び装置を使用した:
【0092】
材料:PDAC(Becton,Dickinson and Company,NJ,US製)、PDBC(Becton,Dickinson and Company,NJ,US製)、DMSO(Fisher Scientificの一部であるJ.T.Baker,US製)
PDBC(PDBは、Becton,Dickinson and Company,NJ,US製であり;クロラムフェニコールは、Thermo Fisher Scientificの一部であるAlfa Aesar製である)、PDA(Becton,Dickinson and Company,NJ,US製)、PDAT(PDAは、Becton,Dickinson and Company,NJ,US製であり;テトラサイクリンは、Thermo Fisher Scientificの一部であるAlfa Aesar製である)、PDBT(PDBは、Becton,Dickinson and Company,NJ,US製であり;テトラサイクリンは、Thermo Fisher Scientificの一部であるAlfa Aesar製である)、DMSO(Fisher Scientificの一部であるJ.T.Baker,US製)
【0093】
装置:遠心機、振盪機、インキュベーター
【0094】
方法:
Sclerotinia sclerotiorum菌糸の接種材料の調製:
1)Sclerotinia sclerotiorumをチューブ内のPDA上で21℃において4日間生育する。
2)寒天ブロックを移し、Sclerotinia sclerotiorumを90mmペトリ皿内のPDAT上で21℃において生育して、3日以内に成長中の菌糸を得る。
3)50mlのPDBT培地を250ml滅菌スクエアフラスコに加える。
4)固形培地をメスで15個の極小片(1×5mm)に切断し、それらをスクエアフラスコに入れる。
5)培養物を2日間、振盪機を用いて21℃、130RPMで生育する。
6)液体を廃棄し、菌糸を空のペトリ皿にあける。
7)メスを用いて菌糸を多数の小片に切断し(寒天片の使用を回避する)、それらを、50mlのPDBT培地を含む250ml滅菌スクエアフラスコに入れる。
8)分散された菌糸を迅速に成長させるために、21℃で2日間、130RPMで振盪しながら生育する。
9)培養物を冷蔵庫内で1時間冷却する。
10)冷培養物を50mlチューブにあける。
11)混合物を氷上で維持する。
12)約5mlのブレンド混合物を氷上の15mlチューブに移す。
13)15mlチューブ内の培養物を氷上で2分間ホモジナイズする。
14)5mlの数バッチを上記のようにホモジナイズして、必要な量を調製する(5mlのホモジナイズされた培養物から約50mlの接種材料ができるだろう)。
15)ホモジネートの一部を10倍希釈して、ホモジネートの濃度をチェックする。懸濁液の濃度は、2×10CFU/mlであるべきである(10倍希釈された濃度は2000CFU/mlであるべきである)。
16)接種材料ストックを、PDBCで20ml中に2mlにて1:10希釈するか、又は2000CFU/mlという最終濃度を調製するために必要な希釈度を計算する。最終的な菌糸数は、各ウェル内において100CFUであるべきである。
【0095】
活性実験に向けたマイクロプレートの準備:
1)DMSO中の精製済み1%ピノセンブリンジヒドロカルコンの原液を冷凍庫から取り出し、卓上で解凍する。
2)1ulの1%ピノセンブリンジヒドロカルコンの原液を取り、39ulの水で250ppmに希釈する。
3)マルチピペットを用いて、10ulの希釈済み(250ppm)ピノセンブリンジヒドロカルコン溶液をマイクロプレートのウェルに入れる。
4)マルチピペットを用いて、激しく混合された40ulの胞子懸濁液接種材料をマイクロプレートのウェルに加える。
5)プレートを透明のシーラーで密封する。
6)プレートを2000RPMで10分間振盪して、ピノセンブリンジヒドロカルコンを菌糸懸濁液と混合する。
7)プレートを1000RCFで1秒間遠心し、停止して、プレートの底に液体を集める。
8)すべてのマイクロプレートのインキュベーションの準備が整うまで、プレートを実験台上に集める。
9)マイクロプレートをプラスチックボックスに入れ、そのボックスを21℃のインキュベーター内に置く。
【0096】
プレートのスクリーニング:
1)プレートを5日、スクリーニングする:接種の4、7、14及び21日後。
2)ランプを使用して真菌の成長に対する化合物の効果を経時的に視覚的に評価する。
3)カバーを取り除いた後、カバーに液体(内側からの)が付着している場合は、その液体を60℃の加熱ブロックによって蒸発させた後、プレートをスクリーニングする。
4)各ウェルの菌糸の成長を、コントロールプレートウェル(有効な殺真菌剤又は0.5%DMSO溶液を含むウェル)の菌糸の成長と比較する。
5)結果を専用の形式で記述する:清澄なウェル=3(菌糸の成長なし)、正常な菌糸の構造=1(正常な成長)、不確定=2(予想外のタイプの中実構造又は当該範囲の部分的な被覆)。
6)結果:実施例7を参照のこと。
【0097】
実施例5.Pseudomonas syringaeに対するピノセンブリンジヒドロカルコンの生物活性のマイクロプレートベースアッセイ
要旨:
希釈された精製済みピノセンブリンジヒドロカルコンをマイクロプレートウェルに加え、100ulの凍結細菌懸濁液と混合し、その細菌の増殖を目視検査によってモニターした。
【0098】
背景:
Pseudomonasは、グラム陰性の桿菌である。60%グリセロールの凍結細菌ストックを接種材料としてスクリーニング実験に使用した。
【0099】
以下の材料、方法及び装置を使用した:
【0100】
材料:LB(Becton,Dickinson and Company,NJ,US製)、LBA(Becton,Dickinson and Company,NJ,US製)、DMSO(Fisher Scientificの一部であるJ.T.Baker,US製)
【0101】
装置:遠心機、振盪機、インキュベーター
【0102】
方法:
Pseudomonas懸濁液の調製:
1)PseudomonasをLBAプレート上で28℃において2日間生育して、シングルコロニーを得る。
2)滅菌されたつま楊枝を用いて、5mlのLBを含む50ml滅菌チューブにシングルコロニーを移し、28℃及び150RPMで24生育する。
3)チューブを冷蔵庫内で1時間冷却する。
4)そのチューブに7.5mlの滅菌された冷蔵グリセロール溶液を加えて、60%グリセロール溶液を得る。
5)十分にではあるが穏やかに混合する。
6)100ulの60%グリセロール中の細菌懸濁液を1.5mlチューブに等分する。
7)60%グリセロール中の細菌懸濁液を-20℃で保存する。
【0103】
スクリーニングに向けたPseudomonas懸濁液の調製:
1)100ulの凍結Pseudomonas懸濁液を含む1.5mlチューブを冷凍庫から取り出し、氷上で解凍する。
2)40mlの冷蔵LBを含む50mlチューブをフード内で調製する。
3)40ulの細菌懸濁液を40mlの冷蔵LBと50mlチューブ内で混合する。この量は、10枚のマイクロプレートの活性スクリーニングにとって十分な量である。
4)この懸濁液をスクリーニング実験に使用する。
【0104】
活性実験に向けたマイクロプレートの準備:
1)DMSO中の精製済み1%ピノセンブリンジヒドロカルコンの原液を冷凍庫から取り出し、卓上で解凍する。
2)1ulの1%ピノセンブリンジヒドロカルコンの原液を取り、39ulの水で250ppmに希釈する。
3)マルチピペットを用いて、10ulの希釈済み(250ppm)ピノセンブリンジヒドロカルコン溶液をマイクロプレートのウェルに入れる。
4)マルチピペットを用いて、激しく混合された40ulの細菌懸濁液接種材料をマイクロプレートのウェルに加える。
5)プレートを透明のシーラーで密封する。
6)プレートを2000RPMで10分間振盪して、ピノセンブリンジヒドロカルコンを細菌懸濁液と混合する。
7)プレートを1000RCFで1秒間遠心し、停止して、プレートの底に液体を集める。
8)プレートをカバー付きのプラスチックボックスに入れ、そのボックスを28℃のインキュベーター内に置く。
【0105】
マイクロプレートのスクリーニング:
1)マイクロプレートを5日、スクリーニングする:接種の3、5、7、14及び21日後。
2)ランプを使用して、細菌の増殖を視覚的に評価する。
3)スクリーニングに向けてプレートを準備する:プレートを2000RPMで2分間振盪して、細菌を懸濁し、次いで、プレートを1000RCFで数秒間遠心する。
4)カバーを取り除いた後、マイクロプレートをスクリーニングする。
5)各ウェルの透明度をコントロールウェル(コントロール殺菌剤又は0.5%DMSO溶液を含むウェル)の透明度と比較する。結果を専用の形式で記述する:清澄=3(細菌の増殖なし)、混濁=1(正常な細菌の増殖)、不確定=2(0.5%DMSO溶液中の増殖と比べて非常に低い濁度)。
6)結果:実施例7を参照のこと。
【0106】
実施例6.Pectobacterium carotovorumに対するピノセンブリンジヒドロカルコンの生物活性のマイクロプレートベースアッセイ
要旨:
希釈された精製済みピノセンブリンジヒドロカルコンをマイクロプレートウェルに加え、50ulの凍結細菌懸濁液と混合し、その細菌の増殖を目視検査によってモニターした。
【0107】
背景:
Pectobacterium carotovorumは、グラム陰性の桿菌で、主要な植物病原体であり、多くの農業作物に多大な損害をもたらす。60%グリセロール中の凍結細菌ストックを、スクリーニング実験用の接種材料として使用した。
【0108】
目的:
Pectobacterium carotovorumの生存及び成長に対する種々の化合物の効果を測定すること。
【0109】
材料:LB(Becton,Dickinson and Company,NJ,US製)、LBA(Becton,Dickinson and Company,NJ,US製)、DMSO(Fisher Scientificの一部であるJ.T.Baker,US製)
【0110】
装置:遠心機、振盪機、インキュベーター
【0111】
方法:
Pectobacterium懸濁液の調製:
1)PectobacteriumをLBAプレート上で28℃において2日間生育して、シングルコロニーを得る。
2)滅菌されたつま楊枝を用いて、5mlのLBを含む50ml滅菌チューブにシングルコロニーを移し、28℃、150RPMで24生育する。
3)チューブを冷蔵庫内で1時間超、冷却する。
4)そのチューブに7.5mlの滅菌された冷蔵グリセロール溶液を加えて、60%グリセロール溶液を得る。
5)十分にではあるが穏やかに混合する。
6)100ulの60%グリセロール中の細菌懸濁液を1.5mlチューブに等分する。各アリコートは、10枚のマイクロプレートのスクリーニングにとって十分な量をもたらすはずである。
7)60%グリセロール中の細菌懸濁液を-20℃で保存する。
【0112】
スクリーニングに向けたPectobacterium懸濁液の調製:
1)凍結Pectobacterium懸濁液(100ulを含む)の1.5mlチューブを冷凍庫から取り出し、氷上で解凍する。
2)滅菌水で8倍希釈された40mlの冷蔵LBブロスが入った50mlチューブをフード内で調製する。
3)8ulの細菌懸濁液を40mlの冷蔵された希釈済みLBブロスと50mlチューブ内で混合して、成長培地が入った使用準備済のPectobacterium懸濁液を生成する。
4)氷上で維持する。
5)この懸濁液をスクリーニング実験に使用する。
【0113】
スクリーニング実験に向けたマイクロプレートの準備:
1)DMSO中の精製済み1%ピノセンブリンジヒドロカルコンの原液を冷凍庫から取り出し、卓上で解凍する。
2)1ulの1%ピノセンブリンジヒドロカルコンの原液を取り、39ulの水で250ppmに希釈する。
3)3)マルチピペットを用いて、10ulの希釈済み(250ppm)ピノセンブリンジヒドロカルコン溶液をマイクロプレートのウェルに入れる。
4)マルチピペットを用いて、激しく混合された40ulの細菌懸濁液接種材料をマイクロプレートのウェルに加える。
5)プレートを透明のシーラーで冷凍庫密封する。
6)プレートを2000RPMで10分間振盪して、上記材料を細菌懸濁液と混合する。
7)プレートを1000RCFで1秒間遠心し、停止して、プレートの底に液体を集める。
8)プレートを、カバー付きのプラスチックボックスに入れ、そのボックスを28℃のインキュベーター内に置く。
【0114】
マイクロプレートのスクリーニング:
1)マイクロプレートを5日、スクリーニングする:接種の3、5、7、14及び21日後。
2)ランプを使用して、細菌の増殖を視覚的に評価する。
3)スクリーニングに向けてプレートを準備する:プレートを2000RPMで2分間振盪して、細菌を懸濁し、次いで、プレートを1000RCFで1秒間遠心する。
4)カバーを取り除いた後、マイクロプレートにおける細菌増殖の目視評価を行う。
5)各ウェルの透明度をコントロールウェル(有効な殺菌剤又は0.5%DMSO溶液を含むウェル)の透明度と比較する。
6)結果を専用の形式で記述する:清澄=3(細菌の増殖なし)、混濁=1(正常な細菌の増殖)、不確定=2(0.5%DMSO溶液中の増殖と比べて非常に低い濁度)。
7)結果:実施例7を参照のこと。
【0115】
実施例7.実施例1~6のプロトコルに基づくインビトロ実験の結果
インビトロスクリーニングマトリックス
ピノセンブリンジヒドロカルコンを、11の農業病原体(下記の表に示されるような)に対してスクリーニングした。生物活性値は、%を単位とし、標的病原体を根絶する可能性を反映する。
【0116】
生物活性の相対値計算のルール(最大値からの%を単位として表現される)
a.Puccinia sorghi、Phytophthora infestans-活性グレード(1/2/3)×反復数/12(最大値3×4=12)100
b.Pseudomonas syringae、Rhizoctonia solani、Fusarium oxysporum、Pythium aphanidermatum-活性グレード(1/2/3)×反復数×活性の日数/252(最大値3×4×21=252)100
c.Botrytis cinerea-活性グレード(1/2/3)×反復数×活性の日数/168(最大値3×4×14=168)100
d.Pectobacterium carotovorum-活性グレード(1/2/3)×反復数×活性の日数/84(最大値3×4×7=168)100
【0117】
【表1】
【0118】
まとめると、ピノセンブリンジヒドロカルコンは、以下の病原体に対して効果的な農薬である:Fusarium oxysporum(初めての肯定的な結果が、下記の植物内での結果の項に提供されている)、Rhizoctonia solani、Pythium aphanidermatum、Sclerotinia sclerotiorum、Pectobacterium carotovorum及びPseudomonas syringae。
【0119】
実施例8.植物内検証のための製剤調製
製剤3(主成分)用の方法
ピノセンブリンジヒドロカルコンを、0.1%の濃度になるように水に溶解し、NaCOの25%溶液でpHをpH=7.0に調整した。実験にとって望ましい濃度(100、200及び300ppm)が得られるように、その製剤を成長培地で希釈した。
【0120】
実施例9.Fusarium oxysporumに感染したキュウリ実生のピノセンブリンジヒドロカルコン処置の植物内検証
以下の材料、方法及び装置を使用した:
【0121】
プロトコル名:Fusarium oxysporum感染及び化合物の有効性試験のためのキュウリ実生カップシステム
【0122】
接種システムの準備:
1)オートクレーブ可能なプラスチックシートを使用する。ビーカーの内側のサイズにぴったり合うようにそのプラスチックシートを切断する。そのプラスチックシートに6つの穴を開ける。
2)3つの1000ulチップを使用して、そのプラスチックシートをビーカー内の液体培地表面から5mm上の高さで保持する。
3)50mlの蒸留水を加える。
4)0.5%の標準的な肥料を加える。
5)布及び輪ゴムを用いてそのビーカーを覆う。
6)121℃で30分間オートクレーブする。
7)フード内で感染システムを冷却し、布製の蓋を開けて、支持プラスチックシートの3つの穴に3日齢の3~4つの発芽中のキュウリ実生を入れる。
8)ビーカーを布製の蓋で覆う。
9)感染システムを22℃の育成室内に2日間置く。
10)実生が5日齢になったら、上記病原体を接種する。1mlの病原体接種材料を成長培地に加える。
11)接種システムを、12時間明期、24℃体制であるインキュベーター内に21日間置く。
12)約21日後、実生の枯死率をチェックする(未処置の実生の約100%が枯れるはずである)。枯死した実生の数を記録する。
【0123】
キュウリ新芽の準備:
1)正方形の透明カバー付きプラスチックプレート[12×12cm]を使用する。
2)寒天水溶液(water agar)2%を調製する。8gの寒天を500mlボトルに入れ、400mlの蒸留水を加える。
3)121℃で30分間オートクレーブする。
4)50mlの寒天水溶液2%をその正方形プレートに加え、それを覆う。
5)寒天を冷却する。
6)20個のキュウリ種子を各プレートに播く。
7)プレートを27℃のインキュベーター内に3日間置く。
8)実生が3日齢になったら、十分に成長した新芽を実験に使用する。この段階において、新芽の約80%が、分岐した長い根を有するはずである。
9)寒天から新芽を引き抜く。根に寒天が残っていてはいけない。
【0124】
Fusarium遊走子懸濁液の調製:
1)FusariumのPDATブロックをPDATプレートの中央に置き、25℃で8日間生育する。
2)そのプレートを冷蔵庫内で約1時間冷却する。
3)菌糸及び胞子を含む寒天を1枚のプレートからメスで8片に切断し、それらを50ml滅菌チューブに入れる。
4)25mlの冷蔵滅菌水をそのチューブに加える。
5)3000RPMで1分間振盪する。
6)プロセスの間、胞子を氷上で維持する。
7)その液体を新しい50ml滅菌チューブに移す。約25mlが回収されるはずである。
8)胞子懸濁液を16層のガーゼ布で清浄な滅菌50mlチューブに直接濾過して、菌糸を廃棄する。約20mlが回収されるはずである。
9)胞子濃度を計算し、冷滅菌水で希釈して、2×10胞子/mlストックを得る。
10)その胞子懸濁液ストックを水で希釈して、接種胞子懸濁液(500又は1000胞子/ml)を得る。
11)上記実生の根に感染させるために直ちに使用する。50mlの培地に1mlの胞子懸濁液を使用する。
12)処方されたピノセンブリンカルコンを所望の濃度となるように培地に加える。
【0125】
Fusarium接種材料の調製:
1)Fusariumの遊走子を準備する。
2)顕微鏡下で計数し、遊走子の濃度を計算する。
3)遊走子懸濁液を冷滅菌水で希釈して、所望の濃度である500遊走子/mlを得る。
4)植物に感染させるために直ちに使用する。
【0126】
感染の21日後に、結果を評価した。各処置は、それぞれ3つの実生を含む3~4つのカップを含んだ。各ポットを視覚的評価によって別々に評価し、処置の平均(3~4つのカップの平均)を計算した。
【0127】
処置:
ピノセンブリンジヒドロカルコンを異なる濃度(100、200及び300ppm)で評価し、実施例7に記載されたように処方した。
【0128】
植物内検証実験の統計解析:
感染植物における化合物の効果をコントロール植物(感染させたが処置は行わなかった)と比べて評価するために、データをスチューデントのt検定によって解析し、p値を計算した。各実験の最小反復数は、3であった。p<0.05の場合、結果を有意とみなした。
【0129】
結果:本発明者らは、育成室内の制御された環境下で3回の独立した実験を行い、ピノセンブリンジヒドロカルコン(PDC)がキュウリ実生においてFusarium oxysporumを予防及び防除する可能性を推定した(図1~3)。PDCは、実施されたすべての実験において非常にうまく機能し、非常に良好な有効性を示した。感染の3週間後のFusarium病の予防及び防除におけるピノセンブリンジヒドロカルコンの有効性の範囲は、100ppm及び200ppmにおいて66~100%であり、300ppmにおいて88~100%であった。
【0130】
実施例11~15.さらなる植物内実験
これらの実験は、Rhizoctonia solani、Pseudomonas syringae、Pectobacterium carotovorum Pythium aphanidermatum及びFusarium oxysporumに対するピノセンブリンジヒドロカルコンの殺虫活性を評価するために行われる。
【0131】
実施例11.Rhizoctonia solaniに感染したキュウリ実生のピノセンブリンジヒドロカルコン処置の植物内検証
手順:
接種システムの準備:
1)オートクレーブ可能なプラスチックシートを使用する。ビーカーの内側のサイズにぴったり合うようにそのプラスチックシートを切断する。そのプラスチックシートに6つの穴を開ける。
2)3つの1000ulチップを使用して、そのプラスチックシートをビーカーの50mlの表面から5mm上の高さで保持する。
3)50mlの蒸留水を加える。
4)0.5%の標準的な肥料(250ul)を加える。
5)布及び輪ゴムを用いてそのビーカーを覆う。
6)(121℃で)30分間オートクレーブする。
7)フード内で感染システムを冷却し、布製の蓋を開けて、支持プラスチックシートの3つの穴に2日齢の3つの発芽中のキュウリ実生を入れる。
8)ビーカーを布製の蓋で覆う。
9)感染システムを27℃の育成室内に1日間置く。
10)実生が4日齢になったら、Rhizoctonia solaniを接種する。
11)接種:2mlを接種し、菌糸が根に付着するまで十分に培地を混合する。
12)カップを100RPMで常時振盪する。
13)接種の場合、最終濃度が1重量%になるように水で希釈された液体培地において10日間生育したRhizoctoniaを使用する。ピノセンブリンジヒドロカルコンを所望の濃度まで培地に加える。
14)コントロール群の場合、2mlの水を使用する。
15)27℃、12時間の明期である育成室内の振盪機(100RPM)上に7日間、接種システムを置く。
16)7日後、枯れた実生の数を記録し、生存率を計算し、コントロール群と比較する。
【0132】
キュウリ新芽の準備:
1)正方形の透明カバー付きプラスチックプレート[12×12cm]を使用する。
2)寒天水溶液1%を調製する。4gの寒天を500mlボトルに入れ、400mlの蒸留水を加える。
3)(121℃で)30分間オートクレーブする。
4)50mlの寒天水溶液1%をその正方形プレートに加え、それを覆う。
5)寒天を冷却する。
6)底となるプレートの片側にマークを付ける。
7)20個のキュウリ種子を各プレートに入れる。それらの種子を3列に並べ、その種子のとがった面が底のマークに面するように固体内へ押し込む。
8)プレートを27℃のインキュベーター内に2日間置く。
9)実生が2日齢になったら、十分に成長した新芽を実験に使用する。この段階において、新芽の約90%が、分岐した長い根を有するはずである。
10)新芽を引き抜くことによって、寒天から新芽を切断する。根に寒天が残っていてはいけない。
【0133】
Rhizoctonia solani接種材料の調製:
1)Rhizoctoniaを液体培地において10日間生育する。
2)菌糸を回収し、それを水に入れ、ブレンダーを用いて菌糸のサイズを小さくする。
3)最終濃度が1重量%になるように水で希釈する。
4)植物に感染させるために直ちに使用する。
【0134】
実施例12.Pseudomonas syringaeに感染したトマト実生のピノセンブリンジヒドロカルコン処置の植物内検証
手順:
Pseudomonas懸濁液の調製:
1)5mlのLBが入った50ml滅菌チューブを準備する。
2)冷凍庫からの50ulのPseudomonasストックを入れる。
3)チューブを蓋でしっかりと閉める。
4)150RPMの振盪機にチューブを置き、27℃で16時間生育する。
5)ジャガイモ切片に感染させるために直ちに使用する。
6)水で1:10希釈された培養物の懸濁液を調製する。
【0135】
接種に向けたトマト実生の準備:
1)30日齢のトマト実生を使用する。
2)その実生を小型ポットに植える。
3)1週間後、トマト実生の葉に感染させる。
【0136】
ピノセンブリンジヒドロカルコンの適用:
1)接種前に所望の濃度で水に溶解された試験される化学物質を適用し、ドラフト内で約3時間、それが乾くのを待つ。コントロール処置として水を使用する。
【0137】
トマト実生の葉への細菌の接種:
1)1mlのPseudomonas懸濁液をスプレーとして各トマト実生に適用する(シリンジスプレーツールを用いて)。
2)その細菌を25℃のインキュベーター内でトマト実生に感染させる。
3)トマト実生の葉は、接種の約5日後に感染するはずである。
4)コントロール群には水を噴霧する。
5)斑の数を数えることにより、当該化合物の処置の効果を評価し、コントロール群と比較する。
【0138】
実施例13.Pectobacterium carotovorumに感染したジャガイモ実生における植物内検証
手順:
Pectobacterium懸濁液の調製:
1)5mlのLBが入った50ml滅菌チューブを準備する。
2)冷凍庫からの50ulのPectobacteriumストックを入れる。
3)チューブを蓋でしっかりと閉める。
4)150RPMの振盪機にチューブを置き、27℃で16時間生育する。
5)ジャガイモ切片に感染させるために直ちに使用する。
6)水で1:10希釈された培養物の懸濁液を調製する。
【0139】
接種に向けたジャガイモ塊茎の準備:
1)滅菌された2枚の紙を清浄なチップボックスに入れる。
2)滅菌条件において作業する。
3)滅菌蒸留水を加えて、紙を湿らせる。20ml(紙は最大限に湿っているべきであるが、さらに水が滴り落ちない)。
4)4~8℃においてビニール袋内で維持された、スーパーマーケットから入手した小さいジャガイモ塊茎を使用する。
5)滅菌メスを用いて、ジャガイモの表面上に非常に小さな切れ目を作る。
6)4つの小さいジャガイモをそのボックスの中の湿った紙の上に置く。
7)プレートを蓋で覆う。
【0140】
ピノセンブリンジヒドロカルコンの適用:
1)接種前に所望の濃度で水に溶解された試験される化学物質を適用し、ドラフト内で約3時間、それが乾くのを待つ。コントロール処置として水を使用する。
【0141】
ジャガイモへの細菌の接種:
1)1mlのPectobacterium懸濁液を1つのボックス内の4つのジャガイモに噴霧する(シリンジスプレーツールを用いて)。
2)皿を覆う。
3)その細菌を25℃のインキュベーター内でジャガイモに感染させる。
4)ジャガイモは、約5日後に感染するはずである。それらは、軟らかくなり、黒くなるはずである。
【0142】
実施例14.Pythium aphanidermatumに感染したキュウリ実生のピノセンブリンジヒドロカルコン処置の植物内検証
手順:
接種システムの準備:
1)オートクレーブ可能なプラスチックシートを使用する。ビーカーの内側のサイズにぴったり合うようにそのプラスチックシートを切断する。そのプラスチックシートに6つの穴を開ける。
2)3つの1000ulチップを使用して、そのプラスチックシートをビーカーの50mlの表面から5mm上の高さで保持する。
3)50mlの蒸留水を加える。
4)250ulの標準的な肥料を50mlの培地に加える。
5)布及び輪ゴムを用いてそのビーカーを覆う。
6)121℃で30分間オートクレーブする。
7)フード内で感染システムを冷却し、布製の蓋を開けて、支持プラスチックシートの3つの穴に3つの発芽中(3日齢)のキュウリ実生を入れる。
8)ビーカーを布で覆う。
9)感染システムを22℃の育成室内に2日間置く。
10)実生が5日齢になったら、上記病原体を接種する。1mlのPythium接種材料を成長培地に加える。所望の濃度になるまでピノセンブリンジヒドロカルコンを培地に加える。
11)コントロール群の場合、2mlの水を使用する。
12)接種システムを、12時間明期/暗期体制である27℃のインキュベーター内に7日間置く。
13)7日後、枯れた実生の数を記録し、生存率をコントロール群と比較する。
【0143】
キュウリ新芽の準備:
1)正方形の透明カバー付きプラスチックプレート[12×12cm]を使用する。
2)寒天水溶液2%を調製する。8gの寒天を500mlボトルに入れ、400mlの蒸留水を加える。
3)121℃で30分間オートクレーブする。
4)50mlの寒天水溶液2%をその正方形プレートに加え、それを覆う。
5)寒天を冷却する。
6)20個のキュウリ種子を各プレートに播く。
7)プレートを27℃のインキュベーター内に3日間置く。
8)実生が3日齢になったら、十分に成長した新芽を実験に使用する。この段階において、新芽の約80%が、分岐した長い根を有するはずである。
9)寒天から新芽を引き抜く。根に寒天が残っていてはいけない。
【0144】
Pythium遊走子懸濁液の調製:
1)Pythiumを90mmペトリプレート内のSchmittner固形培地上で生育して、胞子形成中の菌糸を得る。約8日以内に、各プレートから25mlの遊走子懸濁液が得られる。
2)60mlの滅菌HOを250ml滅菌エルレンマイヤーフラスコに加える。
3)2枚のプレートの固形培地をメスで12片に(プレート1枚につき)切断し、それらをエルレンマイヤーフラスコに入れる(固形片は水で覆われているべきである)。
4)17℃で一晩、菌糸に胞子形成させる。
5)翌日、エルレンマイヤーフラスコを手で振盪して、遊走子を懸濁する。
6)懸濁液を16層ガーゼで50mlチューブに濾過する。
7)遊走子懸濁液を氷上で冷却する。遊走子の濃度は、1000~4000胞子/mlであるべきである。
【0145】
Pythium接種材料の調製:
1)Pythium遊走子を準備する。
2)顕微鏡下で計数し、遊走子の濃度を計算する。
3)遊走子懸濁液を冷滅菌水で希釈して、所望の濃度である500遊走子/mlを得る。植物に感染させるために直ちに使用する。
【0146】
実施例15.GH(温室)条件下における、Fusarium感染に感染したキュウリ実生のピノセンブリンジヒドロカルコン処置の植物内検証
概要:Fusariumを別々に増やし、次いで、適正な齢において、トレーに置かれた土壌におけるキュウリ実生に病原体菌糸を感染させる。接種の約7、14及び21日後に、病気の重症度を観察する。Fusariumを接種する約24時間前に、植物をピノセンブリンジヒドロカルコンで処置する。接種の約21日後に、病気の重症度を解析する。
【0147】
Fusarium接種材料の調製:
1)10mlのキヌア種子を100mlボトルに入れる。50mlチューブを使用して、その体積を計測する。
2)10mlの滅菌蒸留水を加える。
3)冷蔵庫内で24時間、種子に水を吸収させる。
4)24時間後、ボトルの上部に発芽用布(birthing cloth)を置き、上部の青い蓋をゆるく閉める。
5)(121℃で)40分間オートクレーブする[液体サイクル]。
6)フード内で冷却させ、蓋を取り除く。
7)PDACプレート上で生育したFusariumの小塊を接種する。
8)発芽用布及び蓋を戻す。
9)真菌の名称及び日付を記載する。
10)固相生育ボトルを27℃のインキュベーター内に置く。
11)8~10日後、Fusariumは、植物に接種される準備が整うはずである。
12)fusarium菌糸をホモジナイズする:
A.250mlビーカー及びスティックブレンダーを使用して、混合物を調製する。
B.100mlの水を加える。
C.1gのFusarium固相培養物を加えて、1%菌糸懸濁液を得る。
D.氷上で2分間、高速でホモジナイズする。
E.ホモジナイズされた菌糸懸濁液を滅菌水で希釈して、0.5%菌糸懸濁液を得る。
F.ホモジナイズされた希釈済み菌糸懸濁液(0.5%)を直ちに使用して、土壌系における実生に接種する。
【0148】
土壌系における植物の接種:
1)実生トレー内の苗床からのキュウリの実生を使用する。実生は、6日齢(播種後)であって実際の第一葉が出る前か出たばかりのものであるべきである。
2)キュウリ実生が入ったトレーを灌水システム下の温室の台に置いて(温度20±27℃、光を補わない)、実生の発芽を可能にし、過剰な水は、円錐形のトレーから自由に出ていくはずである。
3)播種から6日目に、処置を適用するべきである(処方されたピノセンブリンジヒドロカルコン)。処置の24時間後に接種を行うべきである。各植物を6mlの製剤で処置し、同様に、接種の際の実生への体積は6mlであるべきである。処置及び接種は、根圏に均等に分布すると予想される。
4)トレーに実験番号のしるしを付け、実験ページの処置及び接種の日付を更新する。
【0149】
生育及び解析:
2)肥料(40ppm)を補充し、トレー下灌水(below tray irrigation)を用いて、キュウリを7、14及び21日間生育する。7日目に、すべての植物を100mlトレーに移動して、さらなる植物の成長を可能にする。
3)7、14及び21日目に病気の発生を追跡調査する。
4)実生/植物が乾燥するまで、実生の子葉は、黄色くなるはずである(病気の症状)。
5)病気の実生及び枯れた実生の計数は、接種の7、14、21日後に行うべきである。
6)各処置あたりの乾燥した/枯れた植物のパーセンテージを計算する。
7)以下の処置が本実験に含められる:処方されたピノセンブリンジヒドロカルコン、産業用の参照製品、ブランク(水)。
【0150】
[参考文献]
Erlacher A., Cardinale M., Grosch R., Grube M., Berg G. The impact of the pathogen Rhizoctonia solani and its beneficial counterpart Bacillus amyloliquefaciens on the indigenous lettuce microbiome. Front Microbiol. 2014; 5: 175.
Hofte M. and De Vos P. Plant pathogenic pseudomonas species. Gnanamanickam S.S. (ed.), Plant-Associated Bacteria, 2006; 507-533.
Jenkins J.E.E., Clark Y.S. and Buckle A.E. Fusarium diseases of cereals. Research Review 4. October 1988.
Frank N. Martin & Joyce E. Loper. Soilborne Plant Diseases Caused by Pythium spp.: Ecology, Epidemiology, and Prospects for Biological Control. Critical Reviews in Plant Sciences, 1999; 18:111-181.
Dong Hwan Lee, Jeong-A Lim, Juneok Lee, Eunjung Roh, Kyusuk Jung, Minseon Choi, Changsik Oh, Sangryeol Ryu, Jongchul Yun, Sunggi Heu. Characterization of genes required for the pathogenicity of Pectobacterium carotovorum subsp. carotovorum Pcc21 in Chinese cabbage. Microbiology. 2013 Jul; 159(Pt 7): 1487-1496.
Moore. L.W. Pseudomonas syringae: disease and ice nucleation activity. Ornamentals Northwest Newsletter. (1988) 12:4-16.
図1
図2
図3
【国際調査報告】