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特表2023-505145オリゴヌクレオチド合成装置およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(54)【発明の名称】オリゴヌクレオチド合成装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07H 21/00 20060101AFI20230201BHJP
【FI】
C07H21/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022532754
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(85)【翻訳文提出日】2022-07-21
(86)【国際出願番号】 EP2020084324
(87)【国際公開番号】W WO2021110773
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】19212971.6
(32)【優先日】2019-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522187708
【氏名又は名称】バッヘン・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・エミシェガー
(72)【発明者】
【氏名】ブラニスラフ・デュゴヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】マリオ・ジョーカー
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・シュタウス
【テーマコード(参考)】
4C057
【Fターム(参考)】
4C057AA10
4C057BB02
4C057CC03
4C057MM01
(57)【要約】
本発明は、オリゴヌクレオチドおよび関連する化合物を合成するための装置および方法を提供する。特に、本発明は、そのようなオリゴマーを合成するための装置中に供給される試薬を効果的に製造することを可能とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリゴヌクレオチド自動合成装置であって:
e)液体導管(9)を介して廃棄物容器(7)に接続された反応槽(6)と;
f)反応槽(6)に液体試薬を送るための液体供給部(19)と;
g)反応槽(6)を通過させることなく液体供給部(19)から廃棄物容器(7)中へ液体流を移動させるバイパス導管(11)と;
h)制御部(8)と
を含み、液体供給部(19)は:
b-1)少なくとも1つの混合装置(5)と、
b-2)該少なくとも1つの混合装置に接続された少なくとも2つの液体供給ライン(1、2)であって、各液体供給ラインは、nが1から25の間の整数であるn個の液体入口(i1-n、i2-n)を有する少なくとも1つの液体導管(l1、l2)、および少なくとも1つのポンプ(p1、p2)を含む、少なくとも2つの液体供給ラインと
を含む、前記オリゴヌクレオチド自動合成装置。
【請求項2】
少なくとも少なくとも1つの混合装置(5)および少なくとも2つの液体供給ライン(1、2)のうちの1つの内面は、耐酸性材料から作製される、および/または耐酸性被膜を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
少なくとも少なくとも1つの混合装置(5)および少なくとも2つの液体供給ライン(1、2)のうちの1つの内面は、耐酸性合金から作製される、および/または耐酸性高分子被膜を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
液体供給部(19)は、少なくとも1つの混合装置(5)に接続された第3の液体供給ライン(3)をさらに含み、前記第3の液体供給ライン(3)は、n個の液体入口(i3-n)を有する少なくとも1つの液体導管(l3)および少なくとも1つの液体ポンプ(p3)を含み、ここで、nは1から25の間の整数である、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
少なくとも1つの混合装置(5)は、スタティックミキサを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
少なくとも1つの混合装置(5)の下流に位置付けられ、混合装置(5)から出てくる液体の少なくとも1つの性質を決定するn個のセンサ(s1~sn)をさらに含み、ここで、nは1以上の整数である、請求項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
センサ(s1~sn)の少なくとも1つによって提供される少なくとも1つの計測値は、液体供給部(19)に含まれる1つまたはそれ以上のポンプの活動を調整するためのフィードバック信号として使用される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
センサ(s1~sn)の少なくとも1つによって提供される少なくとも1つの計測値は、液体流を反応槽(6)中に移動させるか、または反応槽(6)を通過させずに廃棄物容器(7)中に移動させるかを制御するために使用される、請求項6または7に記載の装置。
【請求項9】
少なくとも1つの混合装置(5)の上流の少なくとも2つの液体供給ライン(1、2)の各々に一体化される少なくとも1つの流量センサ(24)をさらに含み、前記流量センサによって提供される少なくとも1つの計測値は、少なくとも1つのポンプ(p1、p2)のうちの1つまたはそれ以上の活動を調整するためのフィードバック信号として使用される、請求項1~8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
液体供給部(19)は、少なくとも1つの熱交換器(13)をさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
導電率センサ、温度センサ、およびUV吸収センサを含む、請求項6~10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
反応槽(6)は、充填カラム反応器またはバッチ式反応器である、請求項1~11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
反応槽を廃棄物容器に接続する液体導管(9)からの流れを、ポンプ(17)によって反応槽(6)へ戻すよう移動させる再循環回路をさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
再循環回路は、その入口(i1-n、i2-n)の1つおよび多方弁(12)を介して液体導管(9)へ接続された少なくとも2つの液体供給ライン(1、2)のうちの1つに含まれ、そのポンプ(p1、p2)は、反応槽と廃棄物容器を接続する液体導管(9)から少なくとも1つの混合装置(5)を介して反応槽中に戻る流体の再循環を駆動することができる、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
カップリングサイクルを少なくとも2回反復させるオリゴヌクレオチドを合成する手順を実行し、該手順は、各カップリングサイクルに対し酸性脱保護試薬の組成を個別に定める、請求項2~14のいずれか1項に記載の装置の使用。
【請求項16】
ビルディングブロックカップリングサイクルを繰り返すことによって自動的にオリゴヌクレオチド鎖を組み立てる方法であって、各ビルディングブロックカップリングサイクルにおいて以下の工程1から工程6:
1.固体支持体に結合するnmerのオリゴヌクレオチドであって、組み込まれるビルディングブロックに含まれる第2の反応基と反応することによってオリゴヌクレオチド主鎖を伸長させることができる第1の反応基を含み、ここで、nは1以上の整数である、オリゴヌクレオチドを供給する工程;
2.nmerのオリゴヌクレオチドの第1の反応基と反応することができる第2の反応基を含み、一時的な酸感受性保護基でブロックされた第1の反応基をさらに含む組み込まれるビルディングブロックを供給する工程;
3.nmerのオリゴヌクレオチドの第1の反応基が、組み込まれるビルディングブロックの第2の反応基に結合することが可能な条件下で、組み込まれるビルディングブロックにnmerのオリゴヌクレオチドを接触させ、さらに伸長しないよう一時的な酸感受性保護基によってブロックされた、保護されかつ伸長したnmerのオリゴヌクレオチドを生成する工程;
4.少なくとも2つの液体組成物を混合することによって酸性脱保護試薬を製造する工程;
5.工程3の保護されかつ伸長したnmerのオリゴヌクレオチドを、工程4の酸性脱保護試薬に接触させ、それによって伸長したnmerのオリゴヌクレオチドから一時的な酸感受性保護基を切断する工程;および
6.伸長したnmerのオリゴヌクレオチドから脱保護試薬および可溶性切断産物を除去し、その後のカップリサイクルにおける工程1でnmerのオリゴヌクレオチドとして使用する工程
が改めて行われる、前記方法。
【請求項17】
脱保護試薬の組成は、少なくとも2つのカップリングサイクルで異なる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
脱保護試薬の組成は、各カップリングサイクルに対し個別に定められる、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
脱保護試薬中の酸の含有量は、各カップリングサイクルに対し個別に0.1%(w/w)から50%(w/w)の酸の範囲から選択される、請求項16~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
酸感受性の一時的な保護基は、トリチル型の保護基である、請求項16~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
第1の反応基は水酸基である、請求項16~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
第2の反応基は、ホスホロアミダイト基およびH-ホスホン酸モノエステル基からなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
工程3は、亜リン酸トリエステル基の形成が可能な条件下でビルディングブロックとnmerのオリゴヌクレオチドを接触させることと、結果として得られた化合物を酸化試薬または硫化試薬と混合して亜リン酸トリエステル基をリン酸トリエステル基またはチオリン酸トリエステル基にそれぞれ変換することとを含む、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、工業規模または実験室規模でのオリゴマー合成の分野に関する。オリゴマー、特にオリゴヌクレオチドおよび関連する高分子を合成するための改善された方法および装置が開示される。特に、本発明は、そのようなオリゴマーを合成するための装置に供給される試薬の効率的な製造を可能にする。
【背景技術】
【0002】
オリゴヌクレオチドおよび関連するオリゴマーは、一般的に用いられるホスホロアミダイト法を含む様々な合成戦略によって製造される。合成戦略は、一般的に、モノマービルディングブロックまたはオリゴマービルディングブロック、例えばヌクレオシドホスホロアミダイトの、成長するオリゴマー鎖への段階的な付加を含む。通常、成長するオリゴマー鎖はヌクレオチドまたはそれらの類似体で構成され、例えばリボース部分の水酸基を介して固体支持体に固定される。オリゴマー鎖上の反応性基は、意図せぬ反応を起こさないよう適切な保護基によってブロックされる。例えば、成長するオリゴヌクレオチド鎖は、3’水酸基を介して固体支持体に固定され、かつ反応を起こさないようリボース部分の水酸基部分および塩基部分の外環アミノ基をブロックするために、表1に挙げられるような保護基を担持することができる。
【0003】
【表1】
【0004】
一般的に、化学的なオリゴヌクレオチドの反復的合成法は、通常、鎖の伸長に関与しない塩基/塩基類似体およびリボース/リボース類似部分に配置される官能基に対する第1のタイプの保護基の使用、ならびに主鎖の伸長を制御するための第2のタイプの一時的な保護基の使用に依拠する。一時的な保護基は、ビルディングブロックの二重挿入またはビルディングブロック部位の多量体化を避けるために、付加されるビルディングブロック上に配置される。第1および第2のタイプの保護基は互いに直交し、これは、他方のタイプの保護基に影響を与えない条件下で一方のタイプを除去することが可能であることを意味する。一般的に、第1のタイプの保護基はアルカリ性条件下で切断可能であり、鎖の組立が完了した時点で初めて除去されるという点において「不変」である。第2のタイプの一時的な保護基は酸性条件下で切断可能であり、合成サイクルごとに1回除去される。したがって、カップリングサイクルは、保護されたビルディングブロックをオリゴヌクレオチド主鎖の非保護末端に連結させ、その後、続くカップリングサイクルに備えるために、こうして伸長したオリゴヌクレオチドを脱保護する工程を含む。
【0005】
ホスホロアミダイトオリゴヌクレオチド合成の場合、合成サイクルは、通常、5’水酸基の選択的脱保護から始まる。これは、脱保護試薬DR、通常はDMT基を除去可能な脱トリチル化試薬と共に固体支持体をインキュベートすることで達成される。次に、成長するオリゴヌクレオチド鎖を、適切に保護されたヌクレオシドホスホロアミダイトを含むカップリング試薬CRおよび活性化試薬と共にインキュベートする。次いで、カップリング反応から生じた三配位亜リン酸トリエステルを、酸化試薬ORを用いて酸化してリン酸トリエステルを生成する。ホスホロチオアートまたはホスホロジチオアート合成の場合、硫化試薬SRを用い、酸化の代わりに硫化が行われ、ホスホロチオアートトリエステルを生成する。キャッピング工程は、ブロッキング試薬BRとも称されるキャッピング試薬と共に固体支持体をインキュベートして樹脂上のあらゆる未反応基を
ブロックすることで、続くカップリング段階における配列欠失の発生を防止する工程を含む。他の場合において、三配位亜リン酸トリエステルの酸化の前または後にキャッピングを行うことができる。各工程の間で、処理溶媒、典型的にはアセトニトリルまたはトルエンを用いて樹脂を洗浄することができる。成長するオリゴヌクレオチド鎖は、考えられる任意の方法で、例えば、外環アミンを介して、またはリボース/リボース類似部分の水酸基を介して、固体支持体に固定される。また、5’-ホスホロアミダイトが付加される逆5’-3’オリゴヌクレオチド合成といった、ホスホロアミダイト合成の変形例が開示されている。
【0006】
ホスホナートオリゴヌクレオチド合成の場合、DMTといった一時的な酸感受性保護基を有するヌクレオシドH-ホスホナートモノエステルが使用される。ヌクレオシド間のH-ホスホナートジエステル結合は、鎖の組立の終了時に酸化される。使用される反応条件に依存し、ホスホジエステル結合、ホスホロチオアート結合、ホスホロセレノアートまたはホスホロアミダート類似体をこの工程で生成することができる。
【0007】
使用される厳密な手順に依存し、上記の試薬の組成は変化する可能性がある。表2は、一般的に使用される組成の非限定的な概要である。
【0008】
【表2】
【0009】
特許文献1および特許文献2は、オリゴヌクレオチド製造装置を開示する。市販の自動オリゴヌクレオチド合成装置は、脱保護溶液DS、酸化溶液OS、および硫化溶液SSが予め作られてタンクに入った状態で提供され、1つまたはそれ以上のポンプ回路によって合成反応器に利用されるよう構成される。ブロッキング溶液BSは、2つの予め作られた溶液をインラインで混合することにより製造される。カップリング溶液CSは、アセトニトリル中のホスホロアミダイトの溶液を、活性化剤の溶液と組み合わせることによって合成装置内で混合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US2008/0058512
【特許文献2】US5,681,534
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、この設計は、特定のカップリングサイクル用に、例えば脱保護剤の濃度を変えることによって試薬組成を「微調整」することができないという欠点がある。さらに、大規模なタンク群を用意する必要があり、合成のスケールアップは、タンクの容量によって制限される。これらの問題を克服するために、本発明は、全ての試薬をインライン混合によってオンデマンドで製造することができる、改良されたオリゴヌクレオチド合成装置を提供する。純粋な液体試薬は、各貯蔵容器から直接系内に供給することができる。液体以外の試薬は、濃縮された原液として系内に供給することができる。さらなる改良点として、本発明は、カラムベッド反応器の代わりにバッチ式反応器を含むオリゴヌクレオチド合成装置を提供し、それによって、合成方法を実行し制御するためのさらなる選択肢をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0012】
1つの特定の態様において、本発明は、各カップリングサイクルに対し脱保護試薬の組成を定めることによって脱保護試薬の組成を「微調整」する方法を提供する。脱保護工程は、例えば脱プリン化に起因するオリゴヌクレオチド中間体の酸触媒による劣化を回避することと、保護基の効率的な除去を達成することとの間の微妙なバランスを維持する必要がある旨が、以前に報告されている。この課題を解決するために、様々な脱保護組成物が比較されており、例えば、Septakは、3%のDCAまたは3%のTCAではなく15%のDCAを使用することを教示している(Nucleic Acids Research、1996年、24巻、15号、3053~3058ページ)。しかし、本発明者らの知る限り、オリゴヌクレオチドの自動合成法は、全て、所与の合成の全てのサイクルにおいて同一の脱保護剤の使用に依拠する。一方、本発明は、各カップリングサイクルに対し脱保護試薬の組成を個別に調整するための装置および方法を提供する。
【0013】
したがって、本発明の1つの実施形態は、オリゴヌクレオチド自動合成装置であって:
a)液体導管を介して廃棄物容器に接続された反応槽と;
b)反応槽に液体試薬を送るための液体供給部と;
c)反応槽を通過させることなく液体供給部から廃棄物容器中へ液体流を移動させることをバイパス導管と;
d)制御部と
を含み、液体供給部は:
b-1)少なくとも1つの混合装置と
b-2)少なくとも1つの混合装置に接続された少なくとも2つの液体供給ラインであって、各液体供給ラインは、nが1から25の間の整数であるn個の液体入口を有する少なくとも1つの液体導管、および少なくとも1つの液体ポンプを含む、少なくとも2つの液体供給ラインと
を含む、オリゴヌクレオチド自動合成装置に関する。
【0014】
したがって、本発明の別の態様は、オリゴマー合成装置であって:
a)液体導管を介して廃棄物容器に接続された反応槽と;
b)反応槽に液体試薬を送るための液体供給部と;
c)反応槽を通過させることなく液体供給部から廃棄物容器中へ液体流を移動させるバイパス導管と;
d)制御部と
を含み、液体供給部は:
b-1)少なくとも1つの混合装置と、
b-2)少なくとも1つの混合装置に接続された少なくとも4つの上流液体供給ラインであって、各上流液体供給ラインは、nが1から25の間の整数であるn個の液体入口を有する1つの液体導管、および1つの液体ポンプを含む、少なくとも4つの上流液体供給ラインと;
b-3)nが1以上の整数であるn個のセンサとを含み、これらのセンサは、混合装置の下流に位置付けられ、混合装置から出てくる液体の少なくとも1つの性質を決定し、センサによって提供される少なくとも1つの計測値は、1つまたはそれ以上の液体ポンプの活動を調整するためのフィードバック信号として使用される、オリゴマー合成装置に関する。
【0015】
好ましくは、装置は、オリゴヌクレオチド、特にリボ核酸、2’-デオキシリボ核酸、オリゴヌクレオチドホスホロチオアート、ゼノ核酸、および関連する分子の固相合成に使用される。一部の実施形態において、装置は、ホスホロアミダイト法による固相合成方法に使用される。
【0016】
以下の図およびそれらの説明は、例示のみを目的として提供され、特許請求の範囲を限定すると解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】4つの液体供給ラインを有するオリゴマー自動合成装置に関する基本的な実施形態である。
図2】再循環導管を追加で含む装置に関するさらなる実施形態である。
図3】液体供給ラインの1つが再循環回路として機能する装置に関するさらなる実施形態である。
図4】貯蔵槽を有する装置に関するさらなる実施形態である。
図5】多岐管を含む装置に関する別の実施形態である。
図6】2つの混合装置および多岐管を含む装置に関する別の実施形態である。
図7】2つの液体供給ラインを有する装置に関するさらなる実施形態である。
図8】2つの液体供給ラインおよび再循環回路を有する装置に関する別の実施形態である。
図9】追加のセンサが混合装置の下流に配置される、図7の装置に関する実施形態である。
図10】液体供給ラインを2つのみ有する、図3の装置に関する実施形態である。
図11】液体供給ラインを3つのみ有する、図2の装置に関する実施形態である。
図12】3つの液体供給ラインを有し、液体供給ラインのうちの1つが再循環回路として機能する装置に関する別の実施形態である。
図13】液体供給ラインを3つのみ有する、図3の装置に関するさらなる実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」という表現は、例えばホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、ジアステレオマーとして純粋なホスホロチオアート、ホスホロアミダート、ホスホロジアミダート、ヒ酸ジエステル、およびホスホロセレノアートにおいてみられるような、ホスホロジエステル部分または類似構造によって結合する少なくとも2つのヌクレオチド単位を含む任意のオリゴマーに関する最も一般的な意味で使用される。天然のヌクレオシド単位は、通常、リボースまたは2’-デオキシリボース部分、ならびにアデニン、グアニン、シトシン、チミン、およびウラシルから選択される核酸塩基を含む。本明細書で使用されるヌクレオシド単位という表現は、天然のヌクレオシドだけでなく、人工化合物も包含する。後者は、リボース/リボース類縁部分中に置換基、例えば-F、-OMe(-O-CH3)、もしくはメトキシエチル(-O-CH2-CH2-O-CH3、MOE、-O-メトキシエチルとしても知られる)置換基を担持することができるか、またはリボースは、2’水酸基と4’炭素を連結するさらなるメチレン架橋で修飾されるか、またはリボース部分は、ペントース(例えば、アラビノース)もしくはヘキソースといった別の環状単糖類によって、非環状単糖類(例えば、トレオース)によって、もしくは例えばシクロヘキセン、トレオニノール、セリノール、もしくはグリコールといった代替の構造によって置換される。本明細書において、これらの物質は、全て「リボース類似体」と称される。同様に、人工ヌクレオシドは、非標準塩基、核酸塩基の人工類似体、または脱塩基部位を呈することができる。デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)以外のオリゴヌクレオチドの非限定的な例は、ロック核酸(LNA)、アミノLNA、拘束エチル核酸類似体(cET)、架橋化核酸(BNA)、トリシクロDNA、アンロック核酸(UNA)、ホスホロアミダイトモルホリノオリゴヌクレオチド(PMO)、iRNA、dsRNA、およびオリゴヌクレオチドホスホロチオアート、ならびにそれらの誘導体および類似体である。
【0019】
本明細書で使用される、「液体供給部」という表現は、反応器(反応槽)に投入される液体試薬を提供するよう機能する本発明にかかる装置の部品を意味するよう使用される。特に、液体供給部は、1つまたはそれ以上の液体入口、貯蔵槽または液体タンク、液体導管、ポンプ、バルブ、液体混合装置、熱交換器、多岐管、およびセンサを含むことができる。
【0020】
本明細書で使用される、「液体供給ライン」という表現は、液体ポンプ、および1つまたはそれ以上の液体容器に接続された1つまたはそれ以上の液体入口を含む液体導管を意味するよう使用される。バルブによって各液体入口と導管の間の流体の連絡を調節することができる。したがって、液体供給ラインは、1つまたはそれ以上の液体入口/容器から下流の装置へ制御された液体流を提供することができる。ポンプおよびバルブは、局所制御部および/または中央制御部によって制御される。一部の実施形態において、各液体供給ラインは、1個から25個の間の、好ましくは3個から10個の間の入口を有する。そのような1つまたはそれ以上の入口は、分岐液体導管に接続され、次いで多数の貯蔵槽に接続されている。各液体供給ラインの最も外側の入口は、処理工程間でラインをガス抜きすることができるよう、処理溶媒および液体窒素の供給源に接続されている。
【0021】
一部の実施形態において、装置の液体供給部は、混合装置に接続された第3の液体供給ラインをさらに含む。第3の液体供給ラインは、n個の液体入口を有する少なくとも1つの液体導管および少なくとも1つの液体ポンプを含み、ここで、nは1から25の間の整数である。
【0022】
本文書全体を通して用いられるように、本装置の2つの部品は、それらの部品が互いに供給を受ける場合、「接続されている」と言うことができる。例えば、一方の部品から他方の部品へ液体を通すことができる液体導管によって、部品を接合することができる。
【0023】
液体入口は、不活性ガス中でその中身を保持するよう構成される貯蔵槽に接続されている。例えば、槽は、真空源に接続することができる制御可能なバルブ、および窒素といった不活性ガスの供給源に接続することができる第2の制御可能なバルブを含むことができる。自動不活化の場合、貯蔵槽は、電子式または機械式圧力制御装置をさらに含むことができ、バルブを自動で操作することができる。手動不活化の場合、貯蔵槽は、圧力測定器および手動で制御されるバルブを含むことができる。
【0024】
貯蔵槽は、任意の適切な材料、例えば金属、エナメル、またはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、およびポリエーテルエーテルケトンといった高分子から作製することができる。好ましくは、貯蔵槽が曝露される試薬に対して本質的に不活性な材料が選択される。その内容物に依存し、様々な貯蔵槽を異なる材料から作製することができる。好ましくは、材料は、医薬品、化粧品、ならびに/または食品および飲料の製造に適用される規則に準拠する、すなわち、材料は、適正製造規範(GMP:good manufacturing practices)に適合する。さらに、静電着火のリスクを最小限に抑えるため、導電性材料を使用することができる。一部の実施形態において、貯蔵槽は、ステンレス鋼もしくはHASTELLOY(登録商標)合金、または導電性高分子で被覆された金属から作製される。貯蔵槽の大きさは、意図される合成規模に従って選択することができ、その内容物に依存し、異なる大きさの貯蔵槽を同時に使用することができる。一部の実施形態において、貯蔵槽は、約1リットル(L)から40立方メートル、例えば1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、150、200、550、770、990、1120、1300、1500Lの内容積を有することができる。一部の実施形態において、一部の貯蔵槽は、約10から40リットルの内容積を有することができる。一部の実施形態において、処理溶媒用、例えばアセトニトリルおよびトルエン用の貯蔵槽は、容積が20から40立方メートルの槽であってよい。特定の保護ヌクレオシドホスホロアミダイトの溶液といった他の試薬は、容積が約1または5リットルのはるかに小さい貯蔵槽中に用意される。
【0025】
当業者は、前述の液体供給部と共に任意の反応槽を使用することができることを理解するであろう。反応槽は、任意の適切な材料、例えば金属、ガラス、エナメル、またはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、およびポリエーテルエーテルケトンといった高分子から作製することができる。好ましくは、反応槽が曝露される試薬に対して本質的に不活性であり、かつ適正製造規範(GMP)に準拠する材料が選択される。さらに、静電着火のリスクを最小限に抑えるため、導電性材料を使用することができる。反応槽の大きさおよび寸法は、意図される合成規模に従って選択することができる。例えば、最大内容積が5、10、30、40、50、60、70、75、80、90、100、150または200リットルのカラム反応器を使用することができる。さらなる例として、最大内容積が5、10、30、40、50、60、70、75、80、90、100、150、200、250、300、450、600または650リットルのバッチ式反応器を使用することができる。さらなる例として、内容積が100または200mlの反応器を使用することができる。本発明の一部の実施形態において、反応槽の内容積は、約30~250リットル、好ましくは約40~200リットル、最も好ましくは約40~150リットルである。本明細書で使用される「約」という表現は、与えられる値のプラスマイナス10%の偏差が可能であることを示す。
【0026】
例えば、固相オリゴヌクレオチド合成は、通常、成長するオリゴヌクレオチド鎖が拘束される固体支持体が充填されたカラム反応器を使用して行われる。通常、カラム反応器は、底部フリットおよび頂部フリットを含むことができ、その間に固体支持体が充填される。最適な第1の保護ヌクレオチドを支持体に付着させた、または付着させない固体支持体が、様々な販売業者から入手することができる。
【0027】
特に、カラム反応器を使用する場合、ポンプを使用して試薬混合物をカラムで循環させることが有用である場合がある。したがって、一部の実施形態において、本装置は、反応槽と廃棄物容器を接続する液体導管から反応槽中へ戻るよう、ポンプを使用して流れを移動させる再循環回路をさらに含む。再循環回路は、装置の液体供給ラインの1つに一体化される。この場合、再循環回路は、その入口の1つおよび多方弁を介して液体導管へ接続された液体供給ラインの1つに含まれ、ポンプは、反応槽と廃棄物容器を接続する液体導管から混合装置を介して反応槽中に戻る流体の再循環を駆動することができる。再循環回路は、カラムを通る液体流の方向を反転させることができるよう配置される。例えば、カラム反応器は、液体が反応器を通って進行方向および反対方向に流れるだけでなく反応器を完全に迂回することを可能にするバルブ組立体を介して液体供給部に接続されている。
【0028】
代替案として、本発明者らは、バッチ式反応器を使用することができることを見出した。この反応器は、反応器内の支持体を保持するための底部フリットまたはろ布、混合装置、および反応器の内面をすすぐための1つまたはそれ以上のスプレーボールまたはノズルを含むことができる。回転式もしくは固定式のスプレーボールまたはノズルを使用することができ、スプレーボールまたはノズルは反応槽の頂部に位置付けられ、かつ液体供給源に接続されている。当業者は、混合される材料に依存し、例えば使用される支持体の物理的堅牢性の観点から、混合装置を習慣的に選択するであろう。例えば、回転するインペラを含む攪拌機を使用することができる。そのようなインペラは、反応槽内の液体の軸流、混合流、または放射状流を生じさせる乱流混合器であってもよい。既知のインペラとして、船舶型プロペラ、ピッチブレードタービン、フラットブレードタービン、およびフラットブレードパドルが挙げられる。バッフルブレードの使用は、混合を改善させるのに有用である。代わりに、または加えて、液体全体を気体でバブリングすることによって混合を達成することができる。代わりに、または加えて、例えばポンプ回路を使用して液体を循環させることによって混合を達成することができる。当業者は、通常、発泡を回避しつつ、反応媒体内で物質が効率的に分布するよう混合手段を選択するだろう。反応槽内で固体支持体を使用する場合、反応槽および攪拌ブレードは、好ましくは、剪断力を最小限に抑えるよう設計される。好ましくは、混合装置の動作は、制御部によって制御される。バッチ式反応器は、好ましくは、保護雰囲気中で動作するよう構成される。例えば、バッチ式反応器の反応槽は、真空源に接続することができる第1の制御可能なバルブ、窒素といった不活性ガスの供給源に接続することができる第2の制御可能なバルブ、および電子式または機械式圧力制御装置を含むことができる。好ましくは、バルブは自動的に操作され、制御部で制御される。温度制御を容易にするため、バッチ式反応器はジャケット付き反応器であってよい。バッチ式反応器の使用は、充填カラム反応器と比べ、固体材料のサンプリングが可能である点、反応器全体で反応条件をより均一にすることができる点でいくつかの利点を有する。
【0029】
したがって、本発明の別の実施形態は、バッチ式反応器内で合成が行われることを特徴とするオリゴヌクレオチド固相合成装置に関する。一部の実施形態において、当該反応器は、混合装置、反応器の内面をすすぐための1つまたはそれ以上のスプレーボールまたはノズルを含み、保護ガス中で動作するよう構成される。
【0030】
当業者は、装置全体を通して液体流を制御するために様々なバルブ、好ましくは自動バルブを使用することができることを十分理解するだろう。例えば、反応槽に流入するまたは反応槽から流出する液体流は、流入液体導管および流出液体導管に一体化されるバルブによって制御することができる。
【0031】
当業者は、最低で2つの流入液体、例えば3または4つの流入液体を混合して1つの均一な溶液にすることを可能にする任意の混合装置を本発明で使用することができることを理解するだろう。したがって、当業者は、混合効果、大きさ、および圧力損失の観点から特定の装置の状況に適合するよう混合装置を選択するだろう。混合装置は、少なくとも2つの流入流を連続して統合する一連の混合ティーまたは混合クロスから構成されるか、またはそれを含む。混合装置は、1つまたはそれ以上の混合ティーまたはTバルブ、および熱交換器を含むことができる。混合装置は、スタティックミキサを含むことができる。混合装置は、少なくとも2つの入口および1つの出口を有するスタティックミキサから構成されるか、またはそれを含む。一部の実施形態において、混合装置は、多方弁、例えばTバルブおよびスタティックミキサから構成されるか、またはそれを含む。多方弁およびスタティックミキサは、いくつかの流れがバルブによって統合され、次いでスタティックミキサへ誘導されるよう配置される。混合装置は、少なくとも2つの液体供給ラインの液体流を混合し、混合された流れをスタティックミキサまたは熱交換器中に移動させる多岐管から構成されるか、またはそれを含む。混合液の加熱または冷却を可能にするよう、混合装置に覆いをかけることができる。
【0032】
一実施形態において、少なくとも混合装置の内面および液体供給ラインの1つの内面は、耐酸性材料から作製される。これは、少なくとも、液体入口の少なくとも1つからポンプを経て混合装置を含めて混合装置までの、1つの液体供給ラインの内面は、耐酸性材料から作製されるか、または耐酸性材料で被覆されることを意味する。本明細書で使用される「耐酸性」は、材料が酸性溶液に対して、例えばトルエン中の50%DCA(ジクロロ酢酸)と200ppmの水との溶液に対して耐性を有することが認められるか、または本質的に不活性であることを意味する。200ppmの水を含む100%DCA溶液を使用して耐酸性を評価することもできる。2018年3月以降のDIN50905-4に説明されているような十分に確立された手順を用いて、材料の耐酸性を試験することができる。酸を含む液体に曝された際に局所腐食の兆候を示さず、材料の損失が0.01mm/年を下回る金属材料を耐酸性材料に分類することができる。曝される酸溶液中に多量の溶出物または抽出物を放出しない金属材料を耐酸性材料に分類することができる。溶出物や抽出物の量は、規制当局によって制定されたガイドラインに準じて医薬品成分として許容されない、検出可能な汚染を合成されるオリゴマーに生じさせる場合、多量であると考えられる。合成されたオリゴヌクレオチド中に検出される量の浸出物または抽出物を放出しない場合、材料は、耐酸性、例えば、200ppmの水を含むトルエン中の50%DCA(ジクロロ酢酸)の溶液に対する耐性、または100%DCAに対する耐性を有すると考えることができる。一実施形態において、少なくとも混合装置の内面および液体供給ラインの1つの内面は、耐酸性合金から作製される。さらに、少なくとも混合装置の内面および液体供給ラインの1つの内面は、耐酸性高分子被膜またはガラス被膜を含むことができる。例えば、耐酸性材料は、高い耐性を有するニッケル系合金、高分子被膜、およびガラスライニングからなる群から選択される。適切な高分子被膜は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、またはエチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)を含む。適切なニッケル系合金は、例えば、HASTELLOY(登録商標)C-4、C22、C-2000、およびC276合金を含み、これらは、材料番号/金属および合金のための統一採番システム(UNS:Unified Numbering System for Metals and Alloys)によって、それぞれ2.4610/N06455、2.4602/N06022、2.4675/N06200、および2.4819/N10276で識別される。
【0033】
本発明にかかる装置は、n個のセンサをさらに含むことができ、ここで、nは1以上の整数であり、センサは、混合装置の下流に位置付けられ、混合装置から出てくる液体の少なくとも1つの性質を決定する。
n個のセンサは、混合装置から出てくる液体の組成の分析を助け、それによって制御部に信号を送ることができる。例えば、センサの少なくとも1つによって提供される少なくとも1つの計測値を、液体供給部に含まれる1つまたはそれ以上のポンプの活動を調整するためのフィードバック信号として使用することができる。これにより、所与の設定値を達成し、かつ維持するよう液体ポンプから混合装置への流れを調節することが可能となる。したがって、センサは、各液体供給ラインのポンプを制御するフィードバックループの一部であってよい。加えて、または代わりに、装置は、混合装置の上流の各液体供給ラインに一体化される、例えばポンプと混合装置の間に位置付けられる少なくとも1つの流量センサを含むことができ、センサによって提供される少なくとも1つの計測値は、1つまたはそれ以上のポンプの活動を調節するためのフィードバック信号として使用される。さらに、少なくとも1つのセンサによって提供される少なくとも1つの計測値は、液体流を反応槽中に移動させるか、反応槽を通過させることなく廃棄物容器中に移動させるかを制御するために使用される。一部の実施形態において、センサの数nは、1、2、3、および4からなる群から選択される。当業者は、様々なセンサがこれに適することを理解し、想定される合成化学に依存して適切なセンサを選択するだろう。一部の実施形態において、n個のセンサは、赤外分光光度計、密度センサ、屈折計、導電率センサ、温度センサ、インピーダンスセンサ、UV/Vis吸収センサからなる群から独立して選択される。一部の実施形態において、n個のセンサは、赤外分光光度計、屈折計、密度センサ、導電率センサ、温度センサ、インピーダンスセンサ、UV/Vis吸収センサからなる群から独立して選択され、n個のセンサの少なくとも1つは赤外分光光度計である。一部の実施形態において、n個のセンサは、赤外分光光度計、屈折計、密度センサ、導電率センサ、温度センサ、インピーダンスセンサ、UV/Vis吸収センサからなる群から独立して選択され、n個のセンサの少なくとも1つは密度センサである。反応槽を廃棄物容器に接続する液体導管に、さらなるセンサを一体化させることができる。センサは、赤外分光光度計、密度センサ、屈折計、導電率センサ、温度センサ、インピーダンスセンサ、UV/Vis吸収センサからなる群から選択される。一実施形態において、装置は、導電率センサ、温度センサ、およびUV吸収センサを含むことができ、これらのセンサは、混合装置の下流に位置付けられ、混合装置から出てくる液体の少なくとも1つの性質を決定する。
【0034】
液体供給部は、少なくとも1つの熱交換器をさらに含むことができる。熱交換器は、混合装置とn個のセンサ(s1からsn)のうちの最初のセンサの間に位置付けられるか、または熱交換器は、混合装置の一部であってよい。
【0035】
好ましくは、液体供給ラインに一体化される液体ポンプは、試薬に曝される表面が不活性であるよう設計される。ポンプの少なくとも1つが耐腐食性表面(したがって、特に上記で定義された「耐酸性」表面)、例えばHASTELLOY合金またはポリテトラフルオロエチレン製の表面を有することが好ましい。液体供給ライン内での使用に特に適する液体ポンプは、最小の脈動で一定の流れをもたらし、液体流量を滑らかに変動させることを可能にする。例えば、ダイヤフラムポンプを使用することができる。本発明の一部の実施形態において、各ポンプは、最大で50L/分、80L/分、100L/分、200L/分、または300L/分の最大流量を供給することができる。一部の実施形態において、ポンプの1つは、100L/分の最大流量を供給すると同時に、他のポンプは、60L/分の最大流量を供給することができる。一実施形態において、第1および第2の液体供給ラインのポンプp1およびp2は、10ml/分を供給し、第3の液体供給ラインのポンプp3は、約50ml/分の圧送力を有する。
【0036】
制御部は、とりわけ、装置のポンプおよび自動バルブの動作を制御し、操作者からだけでなくシステムのセンサ(n個のセンサおよび/またはさらなるセンサ)からの信号を受信することができる。制御部は、監視制御およびデータ取得(SCADA:supervisory control and data acquisition)制御システムアーキテクチャの場合のように、制御の各階層レベルを形成する複数の装置を含むことができる。例えば、制御部は、周辺装置からデータを収集し、周辺装置に制御コマンドを送信する1つまたはそれ以上の遠隔監視コンピュータ、ならびに遠隔端末装置(RTU)、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)およびGUIパネルなどのユーザインタフェースといった1つまたはそれ以上の周辺装置を含むことができる。PLCおよび監視SCADAソフトウェアは、特に、温度、圧力、レベル、重量、位置、または濃度のセンサといったフィールドセンサから入力を受信することができる。1つまたはそれ以上のSCADA監視コンピューティングプラットフォームは、加えて、製造実行システム(MES:manufacturing execution system)と相互作用することができ、MESは、次に、企業資源計画(ERP:enterprise resource planning)システムと相互作用することができる。さらに、1つまたはそれ以上のSCADA監視コンピューティングプラットフォームは、特定の処理パラメータ、例えば脱保護試薬の組成に関するセンサデータを専用のデータベースに送信することによって、ロギングタスクを実行することができる。一部の実施形態において、制御部は、ポンプおよびバルブの動作を制御するセンサおよびアクタと共に、少なくとも1つのSCADAシステムおよび少なくとも1つのPLCを含む。代わりに、局所制御部は、混合部の下流のセンサから受信された信号に依存し、ポンプの機能を調節することができる。したがって、局所制御部は、中央制御部の監督下に置かれても、または独立していてもよい。
【0037】
好ましくは、制御部は、カップリングサイクルを少なくとも2回反復する合成手順の実行を制御するよう構成され、手順は、各カップリングサイクルに対し酸性脱保護試薬の組成を個別に定義し、制御部は、それに応じて内表面が耐酸性材料から作製される少なくとも1つの液体供給ラインを通る試薬流を移動させる。制御部は、ユーザが処理工程の順序、および特に各カップリングサイクルに対しカップリング試薬の組成を定めることを可能にする。この合成手順を実行する際、制御部は、各カップリングサイクルにおいて脱保護試薬が特定の組成となるようバルブおよびポンプの動作を管理することができ、かつフィールドセンサからの、例えば混合装置上流の流量センサから、または混合装置と反応槽の間に位置付けられたセンサから得られた信号によって組成を制御することができる。
【0038】
一部の実施形態において、本発明にかかる装置、または少なくともその露出表面は、曝される試薬に対して本質的に不活性な材料で作製される。一部の実施形態において、装置、または少なくともその露出表面は、ステンレス鋼、HASTELLOY(登録商標)合金、または高分子被覆金属で作製される。好ましくは、材料は、医薬品、化粧品、ならびに/または食品および飲料の製造に適用される規則に準拠する、すなわち、材料は、適正製造規範(GMP)に適合する。一部の実施形態において、少なくとも混合装置ならびに装置の1つのライン、すなわち、1つまたはそれ以上の液体入口、バルブ、およびポンプを含む1つの液体導管であって、混合装置の入口で終わる、液体導管の露出表面は、耐酸性合金または耐酸性高分子被膜といった耐酸性材料から作製され、装置の他の部分はステンレス鋼から作製される。
【0039】
本発明にかかる装置の操作は、下記の工程を含むことができる。説明のために図4を参照して工程を説明するが、教示を図4の特定の装置に限定すると解釈するべきではない。さらに、合成戦略に応じて他の試薬を使用することができると理解されるべきである。したがって、以下の一連の工程は、1つの特定のカップリングサイクルにおける、可能性のある1つの定型の一例に過ぎない。
【0040】
1)液体供給ラインを設置する
【表3】
常温で固体であり、原液として供給する必要がある試薬を含有しない限り、全ての槽は純粋な液体を含むことに留意されたい。
【0041】
2)脱トリチル化溶液を製造する
液体は、槽v1-3およびv2-2から混合装置5へ流れる。まず廃棄物容器7へ流れを移動させ、目的の混合物が得られるとすぐに反応槽(6)へ流れを移動させる。
3)槽v1-1およびv2-1からのアセトニトリルでライン1および2、混合チャンバ、ならびに反応槽を洗い流す。
4)保護ヌクレオシドホスホロアミダイト1でカップリング溶液を製造する
液体は、槽v3-2およびv4-3から混合装置5へ流れる。まず廃棄物容器7へ流れを移動させることができ、目的の混合物が得られるとすぐに反応槽6へ流れを移動させる。液体導管9からライン4および混合装置5を介して反応槽6へカップリング溶液を再循環させる。
5)槽v2-1、v3-1およびv4-1からのアセトニトリルでライン2、3および4、混合チャンバ、ならびに反応槽を洗い流す。
6)酸化溶液を製造する
液体は、槽v1-4、v4-5およびv3-nから混合装置5へ流れる。まず廃棄物容器7へ流れを移動させ、目的の混合物が得られるとすぐに反応槽6へ流れを移動させる。
代替法として:硫化溶液を製造する
液体は、槽v4-4およびv3-nから混合装置5へ流れる。まず廃棄物容器7へ流れを移動させ、目的の混合物が得られるとすぐに反応槽6へ流れを移動させる。
反応中、ライン2を介して再循環を行う。
7)槽v2-1、v1-1、v4-1およびv3-1(酸化)またはv2-1、v4-1およびv3-1(硫化)からのアセトニトリルでライン2および1、4、3(酸化)または4、3(硫化)、混合チャンバ、ならびに反応槽を洗い流す。
8)ブロッキング(キャッピングとしても知られる)溶液を製造する
液体は、槽v1-2、v4-2、v3-nおよびv2-1から混合装置5へ流れる。まず廃棄物容器7へ流れを移動させ、目的の混合物が得られるとすぐに反応槽6へ流れを移動させる。反応中、ライン2を介して再循環を行う。
9)槽v1-1、v2-1、v3-1およびv4-1からのアセトニトリルでライン1、2、3および4、混合チャンバ、ならびに反応槽を洗い流す。
【0042】
上記の工程からわかるように、出発原料が液体でなく、溶液として供給する必要がある場合を除き、全ての試薬を純粋な液体から混合することができる。手順上の利点とは別に、これは、使用する試薬の安定性、ひいては処理の安定性を高める。
【0043】
本明細書は、脱保護溶液、酸化溶液、および硫化溶液からなる群から独立して選択される少なくとも1つの溶液をインライン混合によって製造する、上記で詳述された装置を用いる有利なオリゴマー合成方法をさらに開示する。上記で詳述された装置を用いるさらに有利なオリゴマー合成方法において、脱保護溶液、ブロッキング溶液、酸化溶液、および硫化溶液からなる群から独立して選択される少なくとも2つの溶液が、インライン混合によって製造される。他の実施形態において、脱保護溶液、ブロッキング溶液、酸化溶液、および硫化溶液からなる群から独立して選択される少なくとも3つの溶液が、インライン混合によって製造される。
【0044】
本発明の装置は、カップリングサイクルを少なくとも2回反復するオリゴヌクレオチド合成手順を実行するために使用することができ、手順は、各カップリングサイクルに対し酸性脱保護試薬の組成を個別に定める。
【0045】
本発明の装置に関して上述された説明および定義は、本発明の方法に関しても同様に適用可能であり、その逆もまた同様である。好ましくは、本方法は、自動的に行われる。
【0046】
本明細書で使用される、「自動的に」という表現は、人が介入することなく、また人が常在して制御することなく機械的に実行される方法を説明する。これは、合成方法の工程が、上記で詳述したように、制御部によって管理されることを意味することがある。しかし、特定の状況下で人による介入を可能にするか、または要求すらするよう、装置および/または制御部を構成することができる。これは、例えば、処理パラメータが特定の予め定められた範囲から外れるといった予測できない事態が発生した場合に起こる可能性がある。さらに、例えば、人の制御下で、および/または人が介入して特定の重要な工程を実行しながら自動的にカップリングサイクルを一定の回数行うことができることが有利な場合がある。
【0047】
本明細書で詳述される方法の工程は、正確に記載される順序で実行することができる。しかし、当業者は、工程の順序は場合によって異なる可能性があることを理解する。本明細書で使用される「以下の工程1からxが行われる」という表現は、必ずしも示された順序ではないが、工程1からxの各工程が行われる方法を意味する。
【0048】
本明細書で使用される「カップリングサイクル」、「ビルディングブロック付加サイクル」、「反復高分子合成処理サイクル」、「伸長サイクル」、および「合成サイクル」という表現は、同義語であり、合成中に1つのビルディングブロックによって高分子鎖、例えばオリゴヌクレオチド鎖を伸長させるのに必要な工程に関する。通常、1回の合成サイクルは、保護されていない高分子鎖をカップリングに供給する工程、およびビルディングブロックを高分子鎖にカップリングする工程を少なくとも含む。保護基されていない高分子鎖を供給する工程は、一時的な保護基の除去、分離、および高分子鎖の洗浄を含む。
【0049】
1つの好ましい実施例において、本発明は、ビルディングブロックカップリングサイクルを繰り返すことによって自動的にオリゴヌクレオチド鎖を組み立てる方法であって、各ビルディングブロックカップリングサイクルにおいて以下の工程1から工程6:
1.固体支持体に結合するnmerのオリゴヌクレオチドであって、組み込まれるビルディングブロックに含まれる第2の反応基と反応することによってオリゴヌクレオチド主鎖を伸長させることができる第1の反応基を含み、ここで、nは1以上の整数である、オリゴヌクレオチドを供給する工程;
2.nmerのオリゴヌクレオチドの第1の反応基と反応することができる第2の反応基を含み、一時的な酸感受性保護基でブロックされた第1の反応基をさらに含む、組み込まれるビルディングブロックを供給する工程;
3.nmerのオリゴヌクレオチドの第1の反応基が、組み込まれるビルディングブロックの第2の反応基に結合することが可能な条件下で、組み込まれるビルディングブロックにnmerのオリゴヌクレオチドを接触させ、さらに伸長しないよう一時的な酸感受性保護基によってブロックされた、保護されかつ伸長したnmerのオリゴヌクレオチドを生成する工程;
4.少なくとも2つの液体組成物を混合することによって酸性脱保護試薬を製造する工程;
5.工程3の保護されかつ伸長したnmerのオリゴヌクレオチドを、工程4の酸性脱保護試薬に接触させ、それによって伸長したnmerのオリゴヌクレオチドから一時的な酸感受性保護基を切断する工程;および
6.伸長したnmerのオリゴヌクレオチドから脱保護試薬および可溶性切断産物を除去し、その後のカップリサイクルにおける工程1でnmerのオリゴヌクレオチドとして使用する工程
が改めて行われる、方法に関する。
【0050】
上記の「nmerのオリゴヌクレオチドを供給する」という表現は、可能性のある最も広い意味で理解される。反応の初期に、工程1は、固体支持体に固定され、かつ主鎖の伸長を阻止する一時的な酸感受性保護基を担持するヌクレオシドを供給する工程を含むことができる。そのような固定されたヌクレオシドの一部は市販されている。次いで、酸性脱保護試薬と共にインキュベーションすることによって一時的な保護基を除去することができ、その後に脱水/洗浄工程が続き、nmerのオリゴヌクレオチドが得られる。他の場合において、オリゴヌクレオチド鎖の組立は、固体支持体に結合するより長鎖のオリゴヌクレオチドで既に開始している可能性がある。各カップリングサイクルの間で、工程1は、先行するカップリングサイクルの工程5および工程6と、すなわち伸長したnmerのオリゴヌクレオチドからの一時的な保護基の切断と、部分的に重複することができ、かつ続くカップリング工程に使用するために、先行するカップリングサイクルで脱保護されかつ伸長したnmerのオリゴヌクレオチドの状態を整えるためにすすぎ工程をさらに含むことができる。
【0051】
当業者は、制御多孔質ガラス(CPG:controlled pore glass)および架橋ポリスチレンビーズから作製された支持体を含む、数多くの固体支持体をオリゴヌクレオチドの合成に使用することができることを十分理解する。第1のオリゴヌクレオチドを固体支持体に固定するためのリンカーも、同様に当分野でよく知られている。
ホスホジエステル結合によって結合する単糖部分由来の主鎖を有するオリゴヌクレオチドを合成する場合、第1の反応基は、水酸基、好ましくは、例えばリボース部分の5’水酸基といった一級水酸基であってよい。しかし、第1の反応基は、目下のオリゴヌクレオチド構造の主鎖形成に関与する任意の反応基であってよい。
【0052】
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド主鎖」という表現は、核酸塩基/核酸塩基類似体が連結する骨格をもたらす、ホスホジエステル結合/ホスホジエステル類似結合およびリボース/リボース類似部分の繰り返し鎖を意味するよう使用される。通常、第1の反応基はオリゴヌクレオチド主鎖の一方の端部に位置し、第2の反応基はオリゴヌクレオチドの他方の端部に位置する。
【0053】
「ビルディングブロックを供給する」という表現は、可能性のある最も広い意味で理解される。組み込まれるビルディングブロックは、ヌクレオチド鎖に組み込まれる任意のヌクレオシドまたはヌクレオシド類似体を含むことができる。ビルディングブロックは、グリコシド結合またはそのような結合の類似物を介して結合する脱塩基部位、核酸塩基、または核酸塩基類似体を含むことができる。ビルディングブロックは、単量体であっても、オリゴマーであってもよい、すなわち、ビルディングブロックは、オリゴヌクレオチド自体であってもよい。ビルディングブロックは、コレステロールといった非ヌクレオシド修飾をさらに含むことができる。ビルディングブロックは、nmerのオリゴヌクレオチドの第1の反応基と反応することができる第2の反応基を含む。第2の反応基は、ホスホロアミダイト基、例えば3’-O-(N,N-ジイソプロピルホスホロアミダイト)基またはH-ホスホン酸モノエステルであってもよい。さらに、ビルディングブロックは、一時的な保護基によって反応しないようブロックされた第1の反応基を含む。ビルディングブロックに含まれる第1の反応基は、nmerのオリゴヌクレオチド上の対応する位置に存在する化学部分と同一である。ビルディングブロックの第1の反応基をブロックする酸感受性保護基は、トリチル型保護基、例えば、トリフェニルメチル(トリチル)、4-モノメトキシトリチル(MMT)、4,4’-ジメトキシトリチル(DMT)、9-フェニルキサンテン-9-イル(ピキシル)、または9-(p-メトキシフェニル)キサンチン-9-イル(MOX)であってよい。
【0054】
一部の実施形態において、第1の反応基は、水酸基、好ましくは一級水酸基、例えばリボース/リボース類似部分の5’水酸基であり、第2の反応基は、ホスホロアミダイト基、例えば、3’-O-(N,N-ジイソプロピルホスホロアミダイト)基である。さらなる実施形態において、第1の反応基は、水酸基、好ましくは一級水酸基、例えばリボース/リボース類似部分の5’水酸基であり、第2の反応基は、ホスホン酸モノエステル基である。
【0055】
当業者は、nmerのオリゴヌクレオチドの第1の反応基をビルディングブロックの第2の反応基と反応させるために必要とされる条件を十分理解する。例えば、1H-テトラゾール、5-エチルチオ-1H-テトラゾールといった酸性アゾール触媒を使用し、無水溶媒、一般的にはアセトニトリル中でnmerのオリゴヌクレオチドをビルディングブロックに接触させることによって亜リン酸トリエステル基の形成を誘導することができる。当分野で一般的であるように、保護されかつ伸長したnmerのオリゴヌクレオチドは、次いで、亜リン酸トリエステル基を硫化試薬または酸化試薬に曝すことによって保護される。さらなる例として、第2の反応基がホスホン酸モノエステル基である場合、活性化剤として、塩化ピバロイル、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルホニルクロリド(TPS-Cl)、および他の化合物を使用することができる。
【0056】
本方法は、少なくとも2つの液体組成物を混合することにより、各カップリングサイクルで新たに酸性脱保護試薬を製造することを想定する。したがって、各カップリングサイクルに対し脱保護試薬の組成を個別に定めることができる。これにより、例えば酸の含有量を、各カップリングサイクルで生じる特定の状況に適応させることが可能となる。例えば、プリン塩基は、ピリミジン塩基よりも容易にオリゴヌクレオチドから切断され、脱塩基部位が残される。いわゆる脱プリンは、オリゴヌクレオチド鎖の中央部よりも端部でより容易に起こる。したがって、一時的な保護基を除去する条件を各工程で最適化できることは有利である。これにより、本手順は、不要な副反応を最小限に抑え、合成時に組み立てられた粗オリゴヌクレオチド鎖の純度を最大限に高めることを可能にする。
【0057】
本発明にかかる方法の一部において、脱保護試薬の組成は、少なくとも2つのカップリングサイクル間で異なる。脱保護試薬の組成は、特に、酸の含有量に関して異なることがある。例えば、サイクル回数と共に酸の濃度を増大させることができる。一実施形態において、脱保護試薬中の酸の含有量は、各カップリングサイクルに対し個別に0.1%(w/w)から50%(w/w)の範囲の酸から選択される。例えば、脱保護試薬中の酸の濃度は、0.1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50%(w/w)とすることができる。多くの場合、脱保護試薬中の酸の濃度は、0.5から20%の範囲のDCAから選択することができる。脱保護試薬中に含有される酸は、DCAおよびTCAから選択することができ、好ましくはDCAである。脱保護試薬中の酸の含有量は、各カップリングサイクルに対し、溶媒中の0.1%(w/w)から50%(w/w)の範囲のDCAから個別に選択することができる。脱保護試薬中の酸の含有量は、各カップリングサイクルに対し、溶媒中の0.1%(w/w)から20%(w/w)の範囲のTCAから個別に選択することができる。好ましい溶媒はトルエンである。
【0058】
純粋なDCAの流れと溶媒の流れを本発明の混合装置内で配合することによって脱保護試薬を製造することができる。純粋な酸の代わりに、溶媒中の各酸の濃縮溶液を使用し、逐次液体、例えば溶媒と混合することによって希釈することができる。例えば、トルエン中の50%のDCAの溶液を原液として供給することができ、トルエンと配合して目的の濃度とすることができる。代わりに、TCA溶液を使用することができる。脱保護溶液は、通常、トルエンといった溶媒中でDCAといった酸を希釈することによって作られるが、脱保護試薬は、カチオン捕捉剤といったさらなる成分を含むことができる。脱保護試薬は、脱保護反応完了後、固体支持体から排出させることによって、および/または洗浄工程によって除去される。脱保護試薬は、処理溶媒、例えばアセトニトリルで洗い流すことによって置き換えられる。
【0059】
本発明の以下の態様が同様に開示される:
1.オリゴマー合成装置であって:
a)液体導管を介して廃棄物容器に接続された反応槽と;
b)反応槽に液体試薬を送るための液体供給部と;
c)反応槽を通過させることなく液体供給部から廃棄物容器中へ液体流を移動させるバイパス導管と;
d)主制御部と
を含み、液体供給部は:
b-1)少なくとも1つの混合装置と、
b-2)少なくとも1つの混合装置に接続された少なくとも4つの上流液体ラインであって、各上流液体ラインは、nが1から25の間の整数であるn個の液体入口を有する1つの液体導管、および1つの液体ポンプを含む、少なくとも4つの上流液体ラインと;
b-3)nが1以上の整数であるn個のセンサとを含み、これらのセンサは、混合装置の下流に位置付けられ、混合装置から出てくる液体の少なくとも1つの性質を決定し、センサによって提供される少なくとも1つの計測値は、1つまたはそれ以上の液体ポンプの活動を調整するためのフィードバック信号として使用される、オリゴマー合成装置。
2.主制御部は、n個のセンサから入力を受け、1つまたはそれ以上のポンプからの液体流を調整する、態様1に記載の装置。
3.ポンプは、センサから入力を受ける局所制御部によって制御される、態様1または2に記載の装置。
4.混合装置は、液体導管を介して反応槽に接続されている、態様1から3のいずれか1つに記載の装置。
5.混合装置は、液体導管を介して多岐管に接続され、多岐管は、液体導管を介して反応槽に接続されている、態様1から3のいずれか1つに記載の装置。
6.多岐管は、液体ポンプによって液体入口から流入液体を供給する少なくとも1つの液体導管にさらに接続されている、態様5に記載の装置。
7.液体供給部は、少なくとも1つの熱交換器をさらに含み、好ましくは、熱交換器の少なくとも1つは、混合部とn個のサンサのうちの最初のセンサの間に位置付けられる、態様1から6のいずれか1つに記載の装置。
8.反応槽は、充填カラム反応器またはバッチ式反応器である、態様1から7のいずれか1つに記載の装置。
9.混合装置の内面および少なくとも1つの液体ラインは、耐腐食性材料、好ましくはHASTELLOY合金またはポリテトラフルオロエチレンから作製される、態様1から8のいずれか1つに記載の装置。
10.n個のセンサは、赤外分光光度計、密度センサ、屈折計、導電率センサ、温度センサ、インピーダンスセンサ、UV/Vis吸収センサからなる群から独立して選択される、態様1から9のいずれか1つに記載の装置。
11.ポンプによって混合部およびn個のセンサを介して液体導管から反応槽中に流れを移動させる再循環回路をさらに含む、態様1から10のいずれか1つに記載の装置。
12.ポンプによって混合部およびn個のセンサを介して液体導管から反応槽中に流れを移動させる再循環回路をさらに含み、液体ラインの1つは、当該液体ラインのポンプと共に、その入口の1つおよび三方弁を介して液体導管に接続され、再循環ラインとして機能する、態様1から10のいずれか1つに記載の装置。
13.オリゴヌクレオチド固相合成装置であって、バッチ式反応器の内部で合成を行うためのバッチ式反応器を含む、オリゴヌクレオチド固相合成装置。
14.オリゴヌクレオチド合成方法であって、態様1から13のいずれか1つに記載の装置を使用する、オリゴヌクレオチド合成方法。
15.脱保護溶液、ブロック溶液、酸化溶液、および硫化溶液からなる群から独立して選択される少なくとも2つの溶液が、液体ライン中でインライン混合によって製造される、態様14に記載の方法。
【0060】
図の説明
図1は、本発明にかかる装置の基本的な実施形態を示す。装置の液体供給部19は、第1の液体供給ライン1、第2の液体供給ライン2、第3の液体供給ライン3、および第4の液体供給ライン4の4つの液体供給ラインに接続された混合装置5を含むことができる。各液体供給ラインは、ポンプ(それぞれ(p1)、(p2)、(p3)、または(p4))、液体導管(それぞれ(l1)、(l2)、(l3)、または(l4))、およびn個の入口(それぞれ(i1-1からi1-n)、(i2-1からi2-n)、(i3-1からi3-n)、および(i4-1からi4-n))を含み、ここで、nは1以上の整数である。各液体入口と導管の間の流体接続は、バルブ10によって調整することができる。液体供給ライン1、2、3、4は、明確化のために点線の囲みで強調されている。混合装置5の入口までの液体導管(それぞれ(l1)、(l2)、(l3)、または(l4))の全長は、各液体供給ラインに属すると考えられることが理解される。混合装置5は、液体供給ライン1、2、3、4からのいずれかの流れを統合し、それらを混合して1つの均一な溶液をもたらす。均一な溶液は、n個のセンサ(s1からsn)を含む液体導管20を通って反応槽6中に導かれ、ここで、nは1以上の整数である。センサは、溶液の組成に関連するフィードバック信号を制御部8に送ることができる。制御部8は、フィードバック信号を使用してラインのポンプ(それぞれ(p1)、(p2)、(p3)、または(p4))の流れを調整する。センサを通過する溶液の組成が所与の設定間隔で不安定でない限り、溶液は反応装置中に向かわずに、自動三方弁12およびバイパス導管11を介して廃棄物容器7中に誘導される。ポンプp1、p2、p3、p4に加え、制御部8は、導管11、20を通る流体流、および反応槽と廃棄物容器7を接続する液体導管9を通る液体流を制御する。それによって、制御部8は、反応槽の内容物と共にインキュベートする液体およびインキュベート時間を決定することができる。
【0061】
図2は、本発明の装置に関するさらなる実施形態を示し、図1に関する全ての所見が図2に適用される。前述の構成要素に加え、ポンプ17を有する液体再循環導管16が三方弁12を介して液体導管9に接続されている。この配置により、混合装置5およびn個のセンサ(s1からsn)を有する液体導管20を介して反応槽6から出てくる所与の溶液を、反応槽6へ戻すよう循環させることが可能となる。三方弁12およびポンプ17の動作は、制御部8によって制御される。再循環導管16に追加の液体入口18を設けることで柔軟性をもたらすことができる。
【0062】
図3は、本発明の装置に関するさらなる実施形態を示し、図1に関する全ての所見が図3に適用される。前述の構成要素に加え、混合装置5と最初のセンサs1の間の液体導管20に熱交換機13が一体化される。これにより、センサからより信頼性の高い計測値が得られるよう溶液の温度を調整し、かつ反応槽6内の試薬の温度を調整することが可能となる。さらに、反応槽の下流の液体導管9にさらなるセンサ23が一体化される。このセンサも、同様に、反応槽内部の事象と相関する信号を制御部に送る。本実施形態の第2の液体供給ライン2は、センサ23と廃棄物容器7の間に位置付けられる三方弁12を介してその入口の1つが液体導管9に接続され、二重の機能を果たす。この配置により、図2に示される専用の再循環導管およびポンプを必要とせずに、液体導管l2、混合装置5、およびn個のセンサ(s1からsn)を有する液体導管20を介して反応槽6から出てくる所与の液体を、反応槽6へ戻すよう循環させることが可能となる。三方弁12およびポンプp2の動作は、制御部8によって制御される。
【0063】
図4は、本発明の装置に関するさらなる実施形態を示し、図3に関する全ての所見が図4に適用される。各々4つの貯蔵槽(それぞれ(v1-1からv1-4)、(v3-1からv3-4)、(v4-1からv4-4))およびn-4個の入口(それぞれ(i1-5からi1-n)、(i3-5からi3-n)、(i4-5からi4-n))を有する3つの液体供給ライン1、3、4が示され、ここで、nは7に等しいか、または7より大きい整数である。上記図3に関して説明されたように、第2の液体供給ライン2は、液体供給ラインと再循環導管の二重の機能を果たす。第2の液体供給ライン2は、2つの貯蔵槽(v2-1)、(v2-2)およびn-2個の入口(i2-3からi2-n)と共に示され、ここで、nは5に等しいか、または5より大きい整数である。液体供給部19は、熱交換器13および2つのセンサ(s1)、(s2)を含む。
【0064】
図5は、本発明の装置に関するさらなる実施形態を示す。装置の液体供給部19は、4つの液体供給ライン1、2、3、4に接続された混合装置5を含むことができる。各液体供給ラインは、ポンプ(それぞれ(p1)、(p2)、(p3)、または(p4))、液体導管(それぞれ(l1)、(l2)、(l3)、または(l4))、およびn個の入口(それぞれ(i1-1からi1-n)、(i2-1からi2-n)、(i3-1からi3-n)、(i4-1からi4-n))を含み、ここで、nは1以上の整数である。各液体入口と導管の間の流体接続は、バルブ10によって調整することができる。混合装置5から出る混合された溶液は、液体導管21を介して多岐管14へ送られる。熱交換器13およびセンサ(s1)が液体導管21に一体化される。センサ(s1)は、液体供給ラインのポンプ(p1)、(p2)、(p3)または(p4)の動作を調整する信号を局所制御部15に送る。局所制御部15は、制御部8に制御されてもよく、または独立していてもよい。多岐管14は、各々がポンプ17および2つの液体入口18を含む4つの追加の液体導管にさらに接続されている。多岐管から出る液体流は、液体導管22を通って、反応槽6へ送られる。追加の熱交換器13およびセンサ23は、液体導管22に一体化される。他の構成要素は、全て、図3を基準として配置される。
【0065】
図6は、図5と同様の本発明の装置に関するさらなる実施形態を示す。多岐管14は、各々が4つの液体供給ライン1、2、3、4に接続された2つの混合装置5からの流入を受ける。
【0066】
図7は、2つの液体供給ラインを有する装置に関するさらなる実施形態を示す。図7の装置は、図1に関して説明された装置に本質的に対応するが、液体供給ライン1、2を2つのみ含み、混合装置5の下流に配置されるセンサを含まない。
【0067】
図8は、2つの液体供給ラインおよび再循環回路を有する装置に関する別の実施形態を示す。図8の装置は、図7に関して説明された装置に本質的に対応するが、液体再循環導管16および液体ポンプ17を含む再循環回路をさらに含む。図8に示される再循環回路は、追加の液体入口18も含む。
【0068】
さらに、図1の実施形態は、各液体ポンプp1、p2の下流でかつ混合装置5の上流に配置される2つの液体供給ライン1、2のそれぞれに配置される液体流量センサ24を含む。
【0069】
図9は、液体供給ライン1、2を2つのみ有する図1の装置の実施形態を示す。2つのさらなる液体ライン3、4が除かれる以外、図1に関して与えられた説明が図9に示される実施形態にも適用される。
【0070】
図10は、図3に関して説明された装置であるが、液体供給ラインを2つのみ有する装置の実施形態を示す。
【0071】
図11は、液体供給ラインを3つのみ有する図2の装置の実施形態を示す。液体供給ライン1、2の数が低減される以外、図2の実施形態に関する説明が図11の実施形態にも適用される。
【0072】
図12は、液体供給ラインのうちの1つが再循環回路として機能する3つの液体供給ラインを有する装置に関する別の実施形態を示す。図12の実施形態は、センサおよび第4の液体供給ラインが除かれる以外、図3に関して説明された実施形態と同様である。
【0073】
図13は、液体供給ラインが3つのみ有する図3の装置に関するさらなる実施形態を示す。図12の実施形態と異なり、センサs1~snだけでなくセンサ23が設けられる。
【符号の説明】
【0074】
1 液体供給ライン1
i1-1 ライン1の入口番号1
i1-2 ライン1の入口番号2
i1-3 ライン1の入口番号3
i1-4 ライン1の入口番号4
i1-n ライン1の入口番号n
p1 ライン1の液体ポンプ
l1 ライン1の液体導管
2 液体供給ライン2
i2-1 ライン2の入口番号1
i2-2 ライン2の入口番号2
i2-3 ライン2の入口番号3
i2-4 ライン2の入口番号4
i2-n ライン2の入口番号n
p2 ライン2の液体ポンプ
l2 ライン2の液体導管
3 液体供給ライン3
i3-1 ライン3の入口番号1
i3-2 ライン3の入口番号2
i3-3 ライン3の入口番号3
i3-4 ライン3の入口番号4
i3-n ライン3の入口番号n
p3 ライン3の液体ポンプ
l3 ライン3の液体導管
4 液体供給ライン4
i4-1 ライン4の入口番号1
i4-2 ライン4の入口番号2
i4-3 ライン4の入口番号3
i4-4 ライン4の入口番号4
i4-n ライン4の入口番号n
p4 ライン4の液体ポンプ
l4 ライン4の液体導管
v1-n ライン1の貯蔵槽番号n
v2-n ライン2の貯蔵槽番号n
v3-n ライン3の貯蔵槽番号n
v4-n ライン4の貯蔵槽番号n
5 混合装置
6 反応槽
7 廃棄物容器
8 制御部
9 制御可能な液体導管
10 バルブ
11 バイパス導管
s1 センサ1
s2 センサ2
sn センサn
12 三方弁
13 熱交換器
14 多岐管
15 局所制御部
16 液体再循環導管
17 液体ポンプ
18 液体入口
19 液体供給部
20 混合装置と反応槽の間の液体導管
21 混合装置と多岐管の間の液体導管
22 多岐管と反応槽の間の液体導管
23 センサ
24 流量センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】