(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(54)【発明の名称】脂肪族二酸及び脂肪族ジオールからのポリエステルカーボネート、並びにそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 63/64 20060101AFI20230201BHJP
C08G 63/83 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
C08G63/64
C08G63/83
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022532772
(86)(22)【出願日】2020-12-15
(85)【翻訳文提出日】2022-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2020086099
(87)【国際公開番号】W WO2021122514
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520204744
【氏名又は名称】コベストロ・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・アンド・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】エジュル ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ホイアー ヘルムート ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】ベルタン アナベル
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA08
4J029AB01
4J029AB04
4J029AE01
4J029BD03A
4J029BD04A
4J029BD06A
4J029BD07A
4J029BD09A
4J029BD09B
4J029BD10
4J029BF30
4J029BH01
4J029CA05
4J029CA06
4J029CB05A
4J029CB06A
4J029CC06A
4J029CD03
4J029CD07
4J029CF19
4J029DA15
4J029HC05A
4J029HC05B
4J029JA091
4J029JA121
4J029JB131
4J029JB171
4J029JC231
4J029JC291
4J029JF021
4J029JF031
4J029JF051
4J029JF131
4J029JF141
4J029JF151
4J029JF161
4J029KD02
4J029KD07
4J029KE02
4J029KE05
(57)【要約】
本発明は、脂肪族二酸及び脂肪族ジオールを基礎としてポリエステルカーボネートを調製する方法、並びに該方法に従って調製されたポリエステルカーボネート、並びに該ポリエステルカーボネートを含有する成形物及び成形体に関する。本発明による方法は、後続のポリエステルカーボネートを形成する全ての構造要素が第1の方法工程において既にモノマーとして存在し、かつ2つの触媒が使用される直接合成である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融エステル交換によりポリエステルカーボネートを製造する方法であって、
(i)少なくとも、少なくとも1つの線状脂肪族ジカルボン酸及び/又は少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸と少なくとも1つのジアリールカーボネートとを、少なくとも1つの脂肪族ジヒドロキシ化合物及び第1の触媒及び/又は第2の触媒の存在下で反応させる工程と、
(ii)方法工程(i)から得られた混合物を、前記第1の触媒及び前記第2の触媒の存在下で、少なくとも縮合時に脱離した化学的化合物を除去しながら、更なる縮合に供する工程と、
を含み、ここで、
前記第1の触媒が、少なくとも1つの第三級窒素塩基であり、
前記第2の触媒が、少なくとも1つの塩基性アルカリ金属塩であり、かつ、
方法工程(ii)におけるアルカリ金属カチオンの割合が、方法工程(i)において使用された全ての成分に対して0.0008重量%~0.0030重量%である、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの脂肪族ジヒドロキシ化合物は、シクロヘキサン-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,3-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,2-ジメタノール、シクロヘキサン-1,3-ジメタノール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、テトラヒドロフラン-2,5-ジメタノール、並びにイソマンニド、イソイジド、及びイソソルビド等の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの脂肪族ジヒドロキシ化合物は、イソソルビドであることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの線状脂肪族ジカルボン酸及び/又は前記少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸は、一般式(1):
【化1】
(式中、
Aは、R
3を表し、ここで、
R
3は、3個~16個の炭素原子、好ましくは3個~8個の炭素原子、より好ましくは3個~6個の炭素原子、更に好ましくは3個又は4個の炭素原子を有する線状アルキレン基を表し、このアルキレン基は、任意に一置換又は多置換されている場合があり、又は、
Aは、式(Ia)若しくは式(Ib):
【化2】
の一方を表し、ここで、
Bは、それぞれの場合に独立して、CH
2基、O、又はSを表し、
R
1は、それぞれの場合に独立して、単結合又は1個~10個の炭素原子を有するアルキレン基、好ましくは単結合又は1個~9個の炭素原子を有するアルキレン基、より好ましくは単結合又は1個~8個の炭素原子を有するアルキレン基、同様に好ましくは単結合又は1個~5個の炭素原子を有するアルキレン基、特に好ましくは単結合を表し、かつ、
R
2は、それぞれの場合に独立して、1個~10個の炭素原子、好ましくは1個~9個の炭素原子、より好ましくは1個~8個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、
nは、0から3の間、好ましくは0から2の間、特に好ましくは0から1の間の数、非常に特に好ましくは1であり、
mは、0から6の間、好ましくは0から3の間、特に好ましくは0から2の間の数、非常に特に好ましくは0であり、かつ「*」は、式(1)におけるカルボン酸基が存在する位置を示す)によって表されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
R
3は、-CH
2-CH
2-CH
2-、-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-、-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-、-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-、-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-、-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-、-CH
2-C(CH
3)
2-CH
2-、-CH
2-CH(CH
3)-CH
2-C(CH
3)
2-、-CH
2-C(CH
3)
2-CH
2-CH(CH
3)-、及び-CH(CH
3)-CH
2-CH
2-C(CH
3)
2-から選択され、かつ前記脂環式ジカルボン酸は、水素化二量体脂肪酸、又は式(IIa)、(IIb):
【化3】
の化合物、若しくはそれらの混合物であり、ここで、
Bは、それぞれの場合に独立して、CH
2基、又はO及びSからなる群より選択されるヘテロ原子を表し、かつnは、0から3の間の数であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸は、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのジアリールカーボネートは、式(2):
【化4】
(式中、R、R’、及びR’’は、それぞれ独立して、同一又は異なる場合があり、水素、任意に分岐したC
1~C
34アルキル、C
7~C
34アルキルアリール、C
6~C
34アリール、ニトロ基、カルボニル含有基、カルボキシル含有基、又はハロゲン基を表す)の化合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのジアリールカーボネートは、ジフェニルカーボネートであることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の触媒は、グアニジンから誘導される塩基、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、1,5,7-トリアザビシクロ[5.4.0]デカ-5-エン、及びこれらの物質の混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の触媒は、方法工程(i)において用いられる全ての成分に対して、0.002重量%~0.1重量%の量で用いられることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の触媒は、ナトリウムフェノキシド、リチウムフェノキシド、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸リチウム、及びそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
縮合時に脱離した化学的化合物を、方法工程(ii)において減圧によって除去することを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法により得られ得るポリエステルカーボネート。
【請求項14】
請求項13に記載のポリエステルカーボネートを含む成形コンパウンド。
【請求項15】
請求項13に記載のポリエステルカーボネートを含む成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族二酸、好ましくは脂環式二酸及び脂肪族ジオールから出発してポリエステルカーボネートを製造する方法、該方法によって製造されたポリエステルカーボネート自体、該ポリエステルカーボネートを含む成形コンパウンド、並びに該ポリエステルカーボネートを含む成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル、ポリカーボネート、及びポリエステルカーボネートは、良好な機械的特性、並びに熱変形及び風化に対する良好な安定性を有することが知られている。使用されるモノマーに応じて、各ポリマーグループは、この種の材料を特徴付ける或る特定の重要な特性を有している。例えば、ポリカーボネートは特に良好な機械的特性を有し、一方、ポリエステルは、多くの場合、より優れた化学安定性を有する。ポリエステルカーボネートは、選択されたモノマーに応じて、上記グループの両方からの特性プロファイルを示す。
【0003】
芳香族ポリカーボネート又はポリエステルは、多くの場合、良好な特性プロファイルを有するが、これらは経年変化又は風化に対する安定性に欠点を示す。例えば、紫外光の吸収は、これらの熱可塑性材料の黄変、時には、脆化をもたらす。脂肪族ポリカーボネート及びポリエステルカーボネートは、この点で、より良い特性、特に、経年変化及び/又は風化に対するより良い安定性、及びより良い光学特性(例えば透過性)を有する。
【0004】
脂肪族ポリカーボネート又はポリエステルカーボネートの欠点は、多くの場合、その低いガラス転移温度である。したがって、脂環式アルコールを(コ)モノマーとして使用することが有利である。このような脂環式アルコールの例は、TCDアルコール(トリシクロデカンジメタノール)、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、及び、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールベースのバイオベースジオール、例えば、イソソルビド及びその異性体であるイソマンニド及びイソイジドである。ガラス転移温度を更に上げるために、(コ)モノマーとして、脂環式酸、例えば、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸若しくはシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、又は対応するナフタレン誘導体も使用可能である。反応物の選択に応じて、その後、ポリエステル又はポリエステルカーボネートが得られる。本出願は、原材料、すなわちイソソルビド及び脂肪族二酸、好ましくは脂環式二酸の、例えば、対応するポリエステルカーボネートへの直接的な転化に関する。シクロヘキサンジカルボン酸及びイソソルビドのポリエステルは、非特許文献1に記載されているが、本発明は、好ましくは、ポリエステルカーボネートに関する。
【0005】
ポリエステルカーボネートは、例えば、対応するエステル含有モノマーとジオールとのエステル交換により工業スケールで製造される。例えば、二酸のジメチルエステルから出発して、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールとシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸とのポリエステルが製造される(このポリエステルとポリカーボネートとのブレンド:DuPontのXyrex(商標))。
【0006】
しかし、エステル交換反応に関して、フェニルエステルはその脂肪族類似体よりも著しく反応性が高い。特許文献1及び特許文献2には、中間工程としてのフェニルエステルを有するポリエステルカーボネートの製造方法が記載されている。
【0007】
特許文献1の実施例1には、二酸をフェノールと直接反応させて対応するエステルを形成することが記載されている。特許文献1の実施例2では、ジメチルエステルがフェノールと反応される。しかし、フェニルエステル製造の両バリエーションに関する収率は更に向上可能である。その後に、ポリエステルカーボネートが製造される。
【0008】
特許文献2には、溶媒中での、ホスゲンを使用したジフェニルエステルの製造が記載されている。脂肪族ポリエステルカーボネートを形成するためのその後の反応はホスゲンの使用を含まないため、ホスゲン法とエステル交換法とをプラントの同じ部分で併用することは非常に不利である。したがって、特許文献2に記載された方法も最適ではない。
【0009】
非特許文献2には、シクロヘキサンジカルボン酸及びイソソルビドベースのポリエステルが、シクロヘキサン二酸又はシクロヘキサンジメチルエステルから得られず(又は非常に低い分子量しか得られない)、シクロヘキサンジカルボン酸の酸塩化物からしか製造できないことが記載されている。
【0010】
芳香族ポリエステルカーボネートの簡単な調製は、例えば、特許文献3において記載されている。これは、直接合成又はワンポット合成、すなわち、後続のポリエステルカーボネートを形成する全ての構造要素が既に合成の開始時にモノマーとして存在している合成を記載している。この場合に、ビスフェノールA等の芳香族ジヒドロキシ化合物、カルボン酸ジエステル、及び芳香族二酸又は線状脂肪族二酸がモノマーとして使用される。この文献は芳香族ポリエステルカーボネートの調製に限定されているため、縮合反応において、形成されるフェノールを除去しながら、300℃の温度を使用することが可能である。脂肪族ポリエステルカーボネートを調製する場合には、そのような温度の使用は不可能である。それというのも、脂肪族ジオールは、そのような熱応力に曝されると脱離及び/又は熱分解を受ける傾向があるからである。しかしながら、同時に、所望の高分子量に成長するには高い温度が必要である。この場合に特に明らかなのは、脂肪族ジオールと芳香族ジオールとの反応性の違いである。例えば、イソソルビドがポリマーに完全に組み込まれることはめったになく、それよりも、選択される反応条件に応じて重合反応の間に最大25%のイソソルビドが失われることが文献から知られている。したがって、芳香族ジオールについての反応条件を脂肪族ジオールに転用することが直ちに可能ではない。これは特に、特許文献3における重縮合(方法工程(ii)に対応する)の反応時間が、より高い温度では、本発明に従って観察される反応時間よりもかなり長いという事実から明らかである。また、この文献には、実施例において非常に少量のアルカリ金属イオンを触媒として使用すること、及び全体部分において非常に広い範囲の量を使用することが記載されている。さらに、別の触媒として第四級窒素塩基が使用される。これらは、一般的に、反応系に通常残留する低揮発性の塩である。得られたジエステルは、その後、芳香族アルコール(フェノール等)と反応されて、ポリエステルカーボネートが形成される。フェノールは脂肪族アルコールよりはるかに高い酸度を有する。
【0011】
同様に、特許文献4及び特許文献5では、芳香族構造単位及び相応して高温が使用される。上述の理由から、そこでの教示を脂肪族構造単位に転用することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3026074号
【特許文献2】欧州特許出願公開第3248999号
【特許文献3】国際公開第01/32742号
【特許文献4】特開平04-345616号
【特許文献5】独国特許出願公開第2438053号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Oh et al., in Macromolecules 2013, 46, 2930-2940
【非特許文献2】Kricheldorf et al., (Macromol. Chem. Phys 2010, 211, 1206-1214)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、この従来技術を起点として、本発明の課題は、特に簡単であり、同時に適切な分子量を有するポリエステルカーボネートをもたらす、溶融エステル交換により脂肪族二酸、好ましくは脂環式二酸及び脂肪族ジオールからポリエステルカーボネートを製造する方法を提供することであった。この文脈において、「簡単」とは、特に、機器への出費をわずかしか必要とせず、少ない工程、特に精製工程を含み、及び/又は、したがって経済的に、そしてまた環境的に有利である方法を意味すると理解されるべきである。
【0015】
適切なモル質量とは、それぞれの場合にウベローデ粘度計を使用してジクロロメタン中で5g/lの濃度において25℃で測定された1.17~1.35、好ましくは1.18~1.32、特に好ましくは1.20~1.31の相対溶液粘度を有するポリマーを意味すると理解される。ウベローデ粘度計を用いた相対溶液粘度の測定は、当業者に知られている。これは、本発明によれば、好ましくは、DIN51562-3;1985-05に従って実施される。この測定では、測定対象のポリエステルカーボネートの通過時間をウベローデ粘度計によって測定した後に、ポリマー溶液とその溶媒との粘度差を測定する。このために、純粋な溶媒であるジクロロメタン、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンの測定を通じてウベローデ粘度計を初期較正する(常に3回以上9回以下の測定を行う)。その後、溶媒であるジクロロメタンを用いて実際の較正を行う。次に、ポリマー試料を秤量し、ジクロロメタン中に溶解し、次いでこの溶液についてフロータイムを3回測定する。フロータイムの平均値をHagenbach補正し、相対溶液粘度を算出する。
【0016】
溶液粘度が上記範囲を上回ると、熱可塑性物質の加工が困難となる。溶液粘度が低すぎると、不十分な機械的特性及び熱的特性がもたらされる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の課題のうちの少なくとも1つ、好ましくは全てが本発明によって解決された。驚くべきことに、後続のポリエステルカーボネートを形成する全ての構造要素が既に合成の開始時にモノマーとして存在している直接合成又はワンポット合成において、溶融エステル交換により脂肪族二酸、好ましくは脂環式二酸及び脂肪族ジオールからポリエステルカーボネートを合成することが可能であることが判明した。
【0018】
しかしながら、これには、2つの特別に選択された触媒の混合物を使用することが必要であり、反応混合物中のアルカリ金属カチオンの割合が或る特定の範囲内にあることも必要であることが明らかになった。第一に、従来技術の記載された先入観にもかかわらず、脂肪族ジカルボン酸、好ましくは脂環式ジカルボン酸、脂肪族ジヒドロキシ化合物(本発明によれば脂肪族ジオールとも呼ばれる)、及びジアリールカーボネートの反応についても直接合成が機能することは驚くべきことであった。この場合に、脂肪族二酸、好ましくは脂環式二酸及び脂肪族ジオールの様々なモル比を使用しても、適切なモル質量を有するポリマーを達成することが可能であった。しかしながら、脂肪族二酸、好ましくは脂環式二酸及び脂肪族ジオールの特定のモル比が特に有利である。
【0019】
重合反応の成功の鍵となるのは、触媒混合物中の触媒の総量ではなく、むしろアルカリ金属カチオンの割合であることは更に驚くべきことであった。これにより、特に簡単である、すなわち、機器への出費をわずかしか必要とせず、少ない工程、特に精製工程を含み、したがって経済的に、そしてまた環境的に有利である、脂肪族二酸、好ましくは脂環式二酸及び脂肪族ジオールからポリエステルカーボネートに至ることを可能にする方法を見つけ出すことにつながった。さらに、負圧を適用することによって、本発明による第三級窒素塩基、特にDMAPを系から取り出すことができる場合に有利であることが判明した。これにより、触媒を効果的かつ容易に系から取り出すことが可能となる。
【0020】
本発明のポリエステルカーボネートを製造する方法を、以下に示されるように、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸、イソソルビド、及びジフェニルカーボネートの反応によって概略的に記載することができる:
【化1】
触媒
(これらの特定の3つの出発物質を挙げたのは、純粋に本発明を解説する目的のためであり、限定するものと理解されるべきではない)。
【0021】
本発明による直接合成においては、最初に、漏れ出る二酸化炭素によって、ガスの発生が観察された。ガスの発生がほとんど収まった後に混合物から試料を採取すると、既にオリゴマーが形成されていることを分析により実証することができる。これらのオリゴマーは、更なる工程において縮合されて、本発明のポリエステルカーボネートを形成する。さらに、本発明のポリエステルカーボネートは、2工程法を介して製造された欧州特許出願公開第3026074号に記載されるポリエステルカーボネートよりも、1H NMRにおいてより多くの末端フェニル基を示すことが観察された。本発明による実施例において僅かな過剰のイソソルビドが使用されたが、それでも末端フェニル基が形成した。特にポリマーの高い加工温度で末端OH基が加水分解的に不安定であり、エステル交換反応を引き起こす可能性があり、また熱安定性を低下させる可能性もあるため、これらは有利である。
【0022】
したがって、本発明は、溶融エステル交換によりポリエステルカーボネートを製造する方法であって、
(i)少なくとも1つの脂肪族ジカルボン酸及び/又は少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸と少なくとも1つのジアリールカーボネートとを、少なくとも1つの脂肪族ジヒドロキシ化合物及び第1の触媒及び/又は第2の触媒の存在下で反応させる工程と、
(ii)方法工程(i)から得られた混合物を、第1の触媒及び第2の触媒の存在下で、少なくとも縮合時に脱離した化学的化合物を除去しながら、更なる縮合に供する工程と、
を含み、ここで、
第1の触媒が、少なくとも1つの第三級窒素塩基であり、
第2の触媒が、少なくとも1つの塩基性アルカリ金属塩であり、かつ、
方法工程(ii)におけるアルカリ金属カチオンの割合が、方法工程(i)において使用された全ての成分に対して0.0008重量%~0.0030重量%である、方法を提供する。
【0023】
本発明はまた、溶融エステル交換によりポリエステルカーボネートを製造する方法であって、
(i)少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸と少なくとも1つのジアリールカーボネートとを、少なくとも1つの脂肪族ジヒドロキシ化合物及び第1の触媒及び/又は第2の触媒の存在下で反応させる工程と、
(ii)方法工程(i)から得られた混合物を、第1の触媒及び第2の触媒の存在下で、少なくとも縮合時に脱離した化学的化合物を除去しながら、更なる縮合に供する工程と、
を含み、ここで、
第1の触媒が、少なくとも1つの第三級窒素塩基であり、
第2の触媒が、少なくとも1つの塩基性アルカリ金属塩であり、かつ、
方法工程(ii)におけるアルカリ金属カチオンの割合が、方法工程(i)において使用された全ての成分に対して0.0008重量%~0.0030重量%である、方法を提供する。
【0024】
本発明の方法工程(ii)におけるアルカリ金属カチオンの割合は、それぞれの場合に方法工程(i)において使用される全ての成分に対して、好ましくは0.0009重量%~0.0025重量%、より好ましくは0.0010重量%~0.0020重量%である。
【0025】
好ましい実施形態においては、方法工程(i)において、第1の触媒及び第2の触媒が存在する。
【0026】
第1の触媒の一部及び/又は第2の触媒の一部を方法工程(i)において使用し、次に残りを方法工程(ii)において使用することも可能である。
【0027】
しかしながら、第1の触媒及び/又は第2の触媒の総量を方法工程(i)において使用することが好ましい。両方の触媒の総量を方法工程(i)において使用することが最も好ましい。
【0028】
本発明によれば、方法工程(i)は、少なくとも1つの線状脂肪族ジカルボン酸及び/又は少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸と少なくとも1つのジアリールカーボネートとの反応を少なくとも含む。しかしながら、本発明によれば、少なくとも1つの脂肪族ジヒドロキシ化合物の存在は、更なる反応が除外され得ないことを意味する。しかしながら、本発明によれば、ガスの発生がほとんど止んだことが観察されるまで方法工程(i)が進行した後に初めて、方法工程(ii)を、例えば、負圧を適用して縮合時に脱離した化学的化合物を除去することによって開始することが好ましい。しかしながら、既に上記のように、本発明によれば、方法工程(i)と方法工程(ii)との間の明確な分離を達成することが必ずしも可能であるとは限らない場合がある。
【0029】
方法工程(i)
本発明の方法は、直接合成又はワンポット合成と呼ばれる。それというのも、方法工程(i)において、後続のポリエステルカーボネートを形成する全ての構造要素が既にモノマーとして存在しているからである。これは、好ましくは、本発明によれば、ジヒドロキシ化合物、線状脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸、及び/又はジアリールカーボネートが1つだけより多く存在する場合であっても、全ての脂肪族ジヒドロキシ化合物、全ての線状脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸、そしてまた全てのジアリールカーボネートがこの工程において存在することを意味する。したがって、本発明によれば、方法工程(ii)においてポリエステルカーボネートに縮合される全てのモノマーが、方法工程(i)の間に既に存在していることが好ましい。同様に、本発明は、少量の少なくとも1つのジアリールカーボネートが方法工程(ii)において追加的に添加される実施形態を包含する。これを選択的に使用して、形成されるポリエステルカーボネートの末端OH基含有量を低下させることができる。このようなアプローチは、例えば、特開2010-077398号において記載されている。しかしながら、後続のポリエステルカーボネートを形成する全ての構造要素が方法工程(i)において既にモノマーとして存在し、更なる構造要素を添加しないためには、この場合に、方法工程(ii)において少量で添加される少なくとも1つのジアリールカーボネートは、方法工程(i)において存在する少なくとも1つのジアリールカーボネートと同じであることが必要である。したがって、こういった意味で、この方法は、依然として直接合成又はワンポット合成と呼ばれ得る。
【0030】
さらに、本発明は、方法工程(i)における芳香族ジヒドロキシ化合物及び/又は芳香族ジカルボン酸の存在を除外するものではない。しかしながら、これらは、好ましくは少量でのみ存在する。方法工程(i)においては、芳香族ジヒドロキシ化合物が、それぞれの場合に使用されるジヒドロキシ化合物の総モル量に対して、最大20mol%、より好ましくは最大10mol%、非常に特に好ましくは最大5mol%の含有量で更に存在することが特に好ましい。方法工程(i)においては、芳香族ジカルボン酸が、任意にまた芳香族ジヒドロキシ化合物に加えて、それぞれの場合に使用されるジカルボン酸の総モル量に対して、最大20mol%、より好ましくは最大10mol%、非常に特に好ましくは最大5mol%の含有量で更に存在することが同様に特に好ましい。これらの場合に、本発明によれば、生成物を脂肪族ポリエステルカーボネートと呼ぶことが依然として好ましい。しかしながら、方法工程(i)において芳香族ジヒドロキシ化合物を使用しないことが特に好ましい。また、方法工程(i)において芳香族ジカルボン酸を使用しないことも好ましい。同様に、方法工程(i)において芳香族ジヒドロキシ化合物も芳香族ジカルボン酸も使用しないことが好ましい。
【0031】
これらの追加の芳香族ジヒドロキシ化合物は、好ましくは、ビスフェノールA、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(DOD)、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル(DODエーテル)、ビスフェノールB、ビスフェノールM、及びビスフェノール(I)~ビスフェノール(III):
【化2】
(これらの式(I)~式(III)において、R’は、それぞれの場合に、C
1~C
4アルキル、アラルキル、又はアリール、好ましくはメチル又はフェニル、非常に特に好ましくはメチルを表す)からなる群より選択される。
【0032】
これらの追加の芳香族ジカルボン酸は、好ましくは、イソフタル酸、テレフタル酸、フランジカルボン酸、及びナフタレン-2,6-ジカルボン酸からなる群より選択される。少量のこれらの芳香族二酸が、脂肪族ポリエステルカーボネートによる水の吸収を減少させ得ることが知られている。
【0033】
本発明によれば、方法工程(i)において、少なくとも1つの脂肪族ジヒドロキシ化合物が使用される。この少なくとも1つの脂肪族ジヒドロキシ化合物は、好ましくは、シクロヘキサン-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,3-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,2-ジメタノール、シクロヘキサン-1,3-ジメタノール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、テトラヒドロフラン-2,5-ジメタノール、並びにイソマンニド、イソイジド、及びイソソルビド等の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールからなる群より選択される。あらゆる所望の混合物を使用することもできる。少なくとも1つの脂肪族ジヒドロキシ化合物は、非常に特に好ましくは、イソソルビドである。
【0034】
同様に、方法工程(i)において、少なくとも1つの線状脂肪族ジカルボン酸及び/又は少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸が本発明に従って使用される。好ましくは、少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸が使用される。また好ましくは、少なくとも1つの線状脂肪族ジカルボン酸が使用される。また好ましくは、線状脂肪族ジカルボン酸及び脂環式ジカルボン酸の混合物が使用される。
【0035】
少なくとも1つの線状脂肪族ジカルボン酸及び/又は少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸は、一般式(1):
【化3】
(式中、
Aは、R
3を表し、ここで、
R
3は、3個~16個の炭素原子、好ましくは3個~8個の炭素原子、より好ましくは3個~6個の炭素原子、更に好ましくは3個又は4個の炭素原子を有する線状アルキレン基を表し、このアルキレン基は、任意に一置換又は多置換されている場合があり、又は、
Aは、式(Ia)若しくは式(Ib):
【化4】
の一方を表し、ここで、
Bは、それぞれの場合に独立して、CH
2基、O、又はSを表し、
R
1は、それぞれの場合に独立して、単結合又は1個~10個の炭素原子を有するアルキレン基、好ましくは単結合又は1個~9個の炭素原子を有するアルキレン基、より好ましくは単結合又は1個~8個の炭素原子を有するアルキレン基、同様に好ましくは単結合又は1個~5個の炭素原子を有するアルキレン基、特に好ましくは単結合を表し、かつ、
R
2は、それぞれの場合に独立して、1個~10個の炭素原子、好ましくは1個~9個の炭素原子、より好ましくは1個~8個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、
nは、0から3の間、好ましくは0から2の間、特に好ましくは0から1の間の数、非常に特に好ましくは1であり、
mは、0から6の間、好ましくは0から3の間、特に好ましくは0から2の間の数、非常に特に好ましくは0であり、かつ「*」は、式(1)におけるカルボン酸基が存在する位置を示す)によって表されることが特に好ましい。
【0036】
したがって、R1が単結合を表す場合、R1は、0個の炭素原子を含むことが理解されるであろう。
【0037】
本発明によれば、「線状アルキレン基」及び「線状(脂肪族)ジカルボン酸」という用語は、それぞれ「脂環式アルキレン基」及び「脂環式ジカルボン酸」と区別するために使用される。線状の変異体はいかなる環系も含まない。しかし、例えば線状アルキレン基を表すR3は、任意選択で置換されてもよい。結果として、線状アルキレン基は、最も広い意味において「分岐」を表すものである場合がある。したがって、本発明によれば、「線状アルキレン基」という用語は、「分岐アルキレン基」をも好ましくは包含する。しかし、これらはいずれにせよ環系を含まない。
【0038】
AがR3を表す場合、好ましくは、R3は、3個~16個の炭素原子、好ましくは3個~8個の炭素原子、より好ましくは3個~6個の炭素原子、更に好ましくは3個又は4個の炭素原子を有する線状アルキレン基を表し、このアルキレン基は任意選択で一置換又は多置換されてもよい。好ましくは、このアルキレン基は、好ましくは1個~5個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキレン基で置換されてもよい。特に好ましくは、線状アルキレン基は、非置換であるか、又は1個~5個の炭素原子、好ましくは1個~4個の炭素原子、より好ましくは1個~3個の炭素原子を有する少なくとも1個のアルキレン基で置換されている。線状アルキレン基は、置換されている場合、少なくとも1個の第三級炭素原子、更に任意選択で少なくとも1個の第四級炭素原子を有するであろう。特に好ましくは、線状アルキレン基R3は、非置換であるか、又は1個~3個のアルキレン基で置換されている。2つ以上の置換が存在する場合、置換は、線状アルキレン基R3の1つの炭素原子上(1個の第四級炭素原子をもたらす)、又は2つ以上の炭素原子上(2個の第三級炭素原子をもたらす)に存在してもよい。更に好ましくは、線状アルキレン基R3は、非置換であるか、又は1個~3個のメチル基で置換されている。非常に特に好ましくは、R3は、-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-、-CH2-C(CH3)2-CH2-、-CH2-CH(CH3)-CH2-C(CH3)2-、-CH2-C(CH3)2-CH2-CH(CH3)-、及び-CH(CH3)-CH2-CH2-C(CH3)2-から選択される。同様に好ましくは、R3は、-CH2-CH2-CH2-CH2-、-CH2-C(CH3)2-CH2-、-CH2-CH(CH3)-CH2-C(CH3)2-、-CH2-C(CH3)2-CH2-CH(CH3)-、及び-CH(CH3)-CH2-CH2-C(CH3)2-から選択される。非常に特に好ましくは、R3は、-CH2-C(CH3)2-CH2-(3,3-ジメチルグルタル酸)を表す。
【0039】
Aが式(Ia)又は式(Ib)の一方を表す場合、好ましくは、
Bは、それぞれの場合に独立して、CH2基、O又はS、好ましくはCH2基を表し、
R1は、それぞれの場合に独立して、単結合、又は1個~10個の炭素原子を有する線状アルキレン基、特に好ましくは単結合を表し、
R2は、それぞれの場合に独立して、1個~10個の炭素原子、好ましくは1個~9個の炭素原子、より好ましくは1個~8個の炭素原子を有する線状アルキレン基を表し、
nは、0~3、好ましくは0~2、特に好ましくは0~1、非常に特に好ましくは1の数であり、
mは、0~6、好ましくは0~3、特に好ましくは0~2、非常に特に好ましくは0の数であり、「*」は、式(1)におけるカルボン酸基が存在する位置を示す。
【0040】
式(Ia)及び式(Ib)において、2つのR2が、1つの炭素原子上にそれぞれ存在してもよく、そうでなければ、1つのR1-*及び1つのR2が1つの炭素原子上にそれぞれ存在してもよいことは、mについての数から既に見て取れる。また、ただ1つの置換基R1-*又はR2が1つの炭素原子上に常に存在してもよい。
【0041】
特に、好ましくは、脂環式ジカルボン酸は、水素化二量体脂肪酸、又は式(IIa)若しくは式(IIb)の化合物、又はこれらの混合物である。水素化二量体脂肪酸は、当業者に知られている。特に、これが異なる化合物の混合物であり得ることが知られている。この混合物は、脂環式化合物及び線状化合物も含み得る。本発明によれば、これらは、少なくとも1つの線状脂肪族ジカルボン酸及び少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸の使用によって実現される。
【0042】
したがって、本発明の線状脂肪族及び/又は脂環式ジカルボン酸として、水素化二量体脂肪酸を使用することが好ましい。
【0043】
少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸は、化学式(IIa)、化学式(IIb):
【化5】
(式中、
Bは、それぞれの場合に独立して、炭素原子又は、O及びSからなる群より選択されるヘテロ原子、好ましくはCH
2基、又はO及びSからなる群より選択されるヘテロ原子を表し、nは、0~3の数である)の化合物又はこれらの混合物から好ましく選択される。更に好ましくは、Bは、炭素原子又はO、好ましくはCH
2基又はOを表し、nは0~3、好ましくは0又は1の数である。
【0044】
少なくとも1つの線状脂肪族ジカルボン酸は、特に好ましくは、2,2,4-トリメチルアジピン酸、2,4,4-トリメチルアジピン酸、2,2,5-トリメチルアジピン酸及び3,3-ジメチルグルタル酸からなる群より選択される。非常に特に好ましくは、3,3-ジメチルグルタル酸である。
【0045】
少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸は、特に好ましくは、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、テトラジヒドロフラン-2,5-ジカルボン酸、テトラジヒドロジメチルフラン-2,5-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,4-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,5-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,6-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,7-ジカルボン酸、及び水素化二量体脂肪酸からなる群より選択される。また、少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸は、好ましくは、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、テトラジヒドロフラン-2,5-ジカルボン酸、テトラジヒドロジメチルフラン-2,5-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,4-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,5-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,6-ジカルボン酸、及びデカヒドロナフタレン-2,7-ジカルボン酸からなる群より選択される。任意の所望の混合物を使用してもよい。非常に特に好ましくは、これは、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、又はシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸である。
【0046】
特に、更に好ましくは、線状脂肪族ジカルボン酸及び脂環式ジカルボン酸の混合物が使用される。特に好ましくは、少なくとも1つの線状脂肪族ジカルボン酸は、2,2,4-トリメチルアジピン酸、2,4,4-トリメチルアジピン酸、2,2,5-トリメチルアジピン酸及び3,3-ジメチルグルタル酸からなる群より選択され、少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸は、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、テトラジヒドロフラン-2,5-ジカルボン酸、テトラジヒドロジメチルフラン-2,5-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,4-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,5-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,6-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,7-ジカルボン酸、及び水素化二量体脂肪酸からなる群より選択される。3,3-ジメチルグルタル酸と、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸又はシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸との混合物が特に好ましい。
【0047】
本発明によれば、方法工程(i)において、少なくとも1つのジアリールカーボネートも使用される。少なくとも1つのジアリールカーボネートは、好ましくは、式(2):
【化6】
(式中、R、R’、及びR’’は、それぞれ独立して、同一又は異なる場合があり、水素、任意に分岐したC
1~C
34アルキル、C
7~C
34アルキルアリール、C
6~C
34アリール、ニトロ基、カルボニル含有基、カルボキシル含有基、又はハロゲン基を表す)の化合物からなる群より選択される。少なくとも1つのジアリールカーボネートは、好ましくは、ジフェニルカーボネート、4-tert-ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-tert-ブチルフェニル)カーボネート、ビフェニル-4-イルフェニルカーボネート、ジ(ビフェニル-4-イル)カーボネート、4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニルフェニルカーボネート、ジ[4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル]カーボネート、ビス(メチルサリチル)カーボネート、ビス(エチルサリチル)カーボネート、ビス(プロピルサリチル)カーボネート、ビス(2-ベンゾイルフェニル)カーボネート、ビス(フェニルサリチル)カーボネート、及び/又はビス(ベンジルサリチル)カーボネートである。特に、少なくとも1つのジアリールカーボネートは、好ましくは、ジフェニルカーボネート、4-tert-ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-tert-ブチルフェニル)カーボネート、ビフェニル-4-イルフェニルカーボネート、ジ(ビフェニル-4-イル)カーボネート、4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニルフェニルカーボネート、及び/又はジ[4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル]カーボネートである。少なくとも1つのジアリールカーボネートは、特に好ましくは、ジフェニルカーボネートである。
【0048】
さらに、本発明によれば、方法工程(i)において、第1の触媒及び/又は第2の触媒が存在する。
【0049】
第1の触媒は、第三級窒素塩基である。この第1の触媒は、好ましくは、グアニジンから誘導される塩基、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、ヘキサメチルホスホルイミド(hexamethylphosphorimide)トリアミド、1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリジン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロデカ-5-エン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、DBN、エチルイミダゾール、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ塩基)、ピリジン、TMG、及びこれらの物質の混合物から選択される。更に好ましくは、第1の触媒は、グアニジンから誘導される塩基、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン、及び1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンから選択される。4-ジメチルアミノピリジンを使用することが特に好ましい。
【0050】
第1の触媒は、好ましくは、それぞれの場合に方法工程(i)において使用される全ての成分に対して、0.002重量%~0.10重量%の量で、より好ましくは、0.005重量%~0.050重量%の量で、特に好ましくは、0.008重量%~0.030重量%の量で使用される。
【0051】
方法工程(ii)において存在するアルカリ金属カチオンは、好ましくは、リチウムカチオン、カリウムカチオン、ナトリウムカチオン、セシウムカチオン、及びそれらの混合物である。
【0052】
使用される第2の触媒は、弱酸(25℃で3から7の間のpKa)の有機又は無機のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩である。適切な弱酸は、例えば、カルボン酸、好ましくはC2~C22カルボン酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、オレイン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、安息香酸、4-メトキシ安息香酸、3-メチル安息香酸、4-tert-ブチル安息香酸、p-トルエン酢酸、4-ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、ポリカルボン酸の部分エステル、例えばコハク酸のモノエステル、分岐状脂肪族カルボン酸、例えば、2,2-ジメチルプロパン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、2,2-ジメチブタン酸、及び2-エチルヘキサン酸である。
【0053】
適切な有機塩及び無機塩は、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸リチウム、オレイン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、並びにBPAの二ナトリウム塩、二カリウム塩、及び二リチウム塩である、又はそれらから誘導される。炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、及び対応するオレイン酸塩を使用することも可能である。フェノール類、特にフェノールの対応する塩の使用が更に可能である。これらの塩を、個別に又は混合物として使用することができる。
【0054】
第2の触媒は、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、ナトリウムフェノキシド、リチウムフェノキシド、安息香酸ナトリウム、安息香酸リチウム、塩化リチウム、リチウムアセチルアセトナート、及び炭酸セシウム、並びにこれらの物質の混合物からなる群より選択される。ナトリウムフェノキシド、リチウムフェノキシド、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸リチウム、塩化リチウム、及び/又はリチウムアセチルアセトナートを使用することが特に好ましい。塩化リチウムは、好ましくは、水溶液として、例えば15%の溶液の形で使用される。
【0055】
第2の触媒はまた、好ましくは、水酸化ナトリウム、ナトリウムフェノキシド、安息香酸ナトリウム、及び炭酸セシウム、並びにこれらの物質の混合物からなる群より選択される。ナトリウムフェノキシド、水酸化ナトリウム、及び/又は安息香酸ナトリウムを使用することが特に好ましい。安息香酸ナトリウムは、好ましくは、水溶液として、例えば15%の溶液の形で使用される。
【0056】
方法工程(i)において存在する全ての脂肪族ジヒドロキシ化合物と方法工程(i)における反応前に方法工程(i)において存在する全ての脂環式ジカルボン酸とのモル比は、好ましくは1:0.6~1:0.05、より好ましくは1:0.5~1:0.15、非常に特に好ましくは1:0.4~1:0.2であることが判明した。
【0057】
特に有利な機械的特性、良好な耐化学薬品性、及び良好な加工特性を達成するために、後続のポリエステルカーボネートにおける脂肪族ジヒドロキシ化合物と脂環式ジカルボン酸との比が高すぎない(すなわち、組み込まれる脂環式ジカルボン酸の含有量が低すぎない)ことが好ましい。
【0058】
さらに、本発明の方法工程(i)は、好ましくは、以下の工程(ia)~工程(ic)の少なくとも1つ、より好ましくは全てを含む:
【0059】
(ia)方法工程(i)において存在する全ての成分、すなわち、少なくとも1つの線状脂肪族ジカルボン酸及び/又は少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸、少なくとも1つのジアリールカーボネート、及び少なくとも1つの脂肪族ジヒドロキシ化合物を少なくとも、少なくとも1つの触媒の存在下で溶融する工程。これは、好ましくは、不活性ガス雰囲気下、好ましくは窒素下及び/又はアルゴン下で行われる。工程(ia)は、好ましくは、溶媒の不存在下で行われる。「溶媒」という用語は、この文脈において、当業者に知られている。「溶媒」という用語は、本発明によれば、好ましくは、方法工程(i)及び方法工程(ii)のいずれにおいても化学反応を受けない化合物を意味すると理解される。例外は、反応によって形成される化合物(例えば、ジフェニルカーボネートが少なくとも1つのジアリールカーボネートとして使用される場合のフェノール)である。当然ながら、出発化合物における微量の溶媒の存在を排除することはできない。この起こり得る事態は、好ましくは本発明の対象に含まれるべきである。しかしながら、本発明によれば、そのような溶媒を添加する能動的な工程を避けることが好ましい。
【0060】
(ib)混合物、好ましくは工程(ia)から得られた溶融物を加熱する工程。工程(ia)と工程(ib)とは重複する場合もある。それというのも、工程(ia)において溶融物を生ずるには同様に加熱が必要となり得るからである。加熱は、好ましくは、最初は150℃~180℃の温度である。
【0061】
(ic)混合物、好ましくは工程(ib)から得られた混合物を、好ましくは撹拌により、混合エネルギーを導入しながら反応させる工程。この場合にも、工程(ic)は工程(ib)と重複する場合がある。それというのも、加熱により既に混合物の反応が開始している場合があるからである。この場合に、溶融物は、好ましくは、標準圧力下で、工程(ib)によって150℃から180℃の間の温度に既に加熱されている。選択される触媒に応じて、温度は160℃~200℃の範囲内に留まることができる。一方で、工程(ic)における温度は、観察される反応性に応じて、200℃~300℃、好ましくは210℃~260℃、より好ましくは215℃~240℃に段階的に高められる。反応性は、当業者に既知のように、ガスの発生から推定され得る。この工程においては、原則的により高い温度も可能であるが、より高い温度では二次反応(例えば、変色)が発生する可能性がある。したがって、より高い温度はあまり好ましくはない。ガスの発生がほとんど止むまで、混合物を標準圧力下で撹拌する。本発明によれば、これらの条件下で、少なくとも1つのカルボン酸と少なくとも1つのジアリールカーボネートとの反応から形成されるアリールアルコール(例えば、ジフェニルカーボネートを使用する場合にはフェノール)を、既に部分的に除去することが可能である。
【0062】
本発明によれば、少なくとも1つのジヒドロキシ化合物が同様にこの時点までに既に反応し始めていることも観察された。これは、少なくとも1つのジヒドロキシ化合物と少なくとも1つのジアリールカーボネートとの反応からのカーボネート単位及び/又は少なくとも1つのジヒドロキシ化合物と少なくとも1つのジカルボン酸との反応からのエステル単位を含むオリゴマーの検出によって実証された。
【0063】
したがって、本発明によれば、方法工程(ii)を実施する前に、方法工程(i)から得られる混合物が、少なくとも1つのジヒドロキシ化合物と少なくとも1つのジアリールカーボネートとの反応からのカーボネート単位及び/又は少なくとも1つのジヒドロキシ化合物の反応からのエステル単位を含むオリゴマーを含むことが好ましい。
【0064】
工程(ic)における反応時間は、出発材料の量に依存する。好ましくは、工程(ic)における反応時間は、0.5時間から24時間の間、好ましくは0.75時間から5時間の間、より好ましくは1時間から3時間の間である。好ましくは、ガスの発生がほとんど収まることが保証される反応時間が選択されるべきである(上記の反応スキームを参照)。
【0065】
本発明によれば、方法工程(i)において存在する全ての脂肪族ジヒドロキシ化合物及び方法工程(i)において存在する全ての線状脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸の合計と方法工程(i)における反応前に方法工程(i)において存在する全てのジアリールカーボネートとのモル比が、1:0.4~1:1.6、好ましくは1:0.5~1:1.5、更に好ましくは1:0.6~1:1.4、より好ましくは1:0.7~1:1.3、特に好ましくは1:0.8~1:1.2、非常に特に好ましくは1:0.9~1:1.1であることが好ましい。当業者は、出発材料の純度に即して適切な最適比を選択することができる。
【0066】
方法工程(ii)
方法工程(ii)において、方法工程(i)から得られた混合物を、少なくとも縮合時に脱離した化学的化合物を除去しながら、更なる縮合に供する。本発明の文脈において、「更なる」縮合という表現は、少なくとも幾らかの縮合が方法工程(i)において既に起こっていることを意味すると理解されるべきである。これは、好ましくは、アリールアルコールの脱離を伴う、少なくとも1つの線状脂肪族ジカルボン酸及び/又は少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸と少なくとも1つのジアリールカーボネートとの反応である。しかしながら、オリゴマーへの更なる縮合も既に起こっていることが好ましい(方法工程(i)を参照)。
【0067】
方法工程(i)において第1の触媒のみ又は第2の触媒のみを使用した場合に、方法工程(i)において使用されなかった触媒を方法工程(ii)において添加する。
【0068】
「縮合」という用語は当業者に知られている。これは、好ましくは、(同じ物質又は異なる物質の)2つの分子が化合してより大きな分子が形成されるとともに、化学的に単純な物質の分子が脱離する反応を意味すると理解される。縮合時に脱離したこの化合物は方法工程(ii)において除去される。縮合時に脱離した化学的化合物を方法工程(ii)において減圧によって除去することが好ましい。したがって、本発明の方法が、方法工程(i)において形成された脂環式ジエステルを下回る、少なくとも1つの脂肪族ジヒドロキシ化合物を下回る、及び少なくとも1つのジアリールカーボネートを下回る沸点を有する揮発性物質を、方法工程(i)での反応の間に、任意に段階的な減圧によって除去することを特徴とすることが好ましい。この場合に、種々の揮発性物質を除去する場合には、段階的な除去が好ましい選択肢である。揮発性物質を可能な限り完全に除去するためにも、段階的な除去を選ぶことが好ましい。揮発性物質は、縮合時に脱離した化学的化合物(複数の場合もある)である。
【0069】
段階的な減圧は、例えば、塔頂温度(overhead temperature)が下がったらすぐに圧力を下げることによって行うことができ、こうして、縮合時に脱離した化学的化合物の連続的な除去が保証される。1mbar、好ましくは1mbar未満の圧力に達したら、所望の粘度に至るまで縮合を続ける。これは、例えば、トルクを監視することによって行うことができる。つまり、所望の撹拌器のトルクに達したら重縮合を止める。
【0070】
方法工程(ii)における縮合生成物の取り出しは、好ましくは200℃~280℃、より好ましくは210℃~260℃、特に好ましくは220℃~250℃の温度で行われる。取り出す間の真空は、更に好ましくは500mbar~0.01mbarである。真空を下げることにより段階的な取り出しを行うことが特に好ましい。非常に特に好ましくは、最終段階における真空は10mbar~0.01mbarである。
【0071】
本発明の更なる態様においては、開示された全ての組合せ及び好ましい事項において本発明の上記の方法によって得られるポリエステルカーボネートが提供される。本発明のポリエステルカーボネートは、全ての種類の成形品にそのまま加工することができる。他の熱可塑性物質及び/又はポリマー添加剤と共に熱可塑性成形コンパウンドに加工することもできる。本発明により、成形コンパウンド及び成形品が更に提供される。
【0072】
ポリマー添加剤は、好ましくは、難燃剤、ドリップ防止剤、難燃助剤、煙抑制剤、潤滑及び離型剤、核剤、帯電防止剤、導電性添加剤、安定剤(例えば、加水分解安定剤、熱老化安定剤及び紫外線安定剤、及び更にエステル交換防止剤)、流動促進剤、相溶化剤、染料及び顔料、耐衝撃性改良剤及び更に充填剤及び補強剤からなる群より選択される。
【0073】
熱可塑性成形コンパウンドは、例えば、ポリエステルカーボネート及び他の成分を混合し、得られた混合物を、既知の方法で、慣用の装置、例えば、内部混練機、押出機、及び二軸スクリューシステムで、好ましくは200℃~320℃の温度で溶融コンパウンド化(melt-compounding)及び溶融押出しを行うことにより製造してもよい。この方法は、本発明の文脈において概してコンパウンド化という。
【0074】
したがって、「成形コンパウンド」という用語は、組成物の成分が溶融コンパウンド化され、溶融押出しされたときに得られる生成物を意味すると理解される。
【0075】
本発明のポリエステルカーボネートから、又は該ポリエステルカーボネートを含む熱可塑性成形コンパウンドから得られる成形品は、例えば、射出成形、押出し及びブロー成形法により製造することができる。別の加工の形態は、予め製造されたシート又はフィルムからの熱成形による成形品の製造である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
本発明の実施形態0~実施形態25を以下に記載する。
【0077】
0.溶融エステル交換によりポリエステルカーボネートを製造する方法であって、
(i)少なくとも、少なくとも1つの線状脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸と少なくとも1つのジアリールカーボネートとを、少なくとも1つの脂肪族ジヒドロキシ化合物及び第1の触媒及び/又は第2の触媒の存在下で反応させる工程と、
(ii)方法工程(i)から得られた混合物を、第1の触媒及び第2の触媒の存在下で、少なくとも縮合時に脱離した化学的化合物を除去しながら、更なる縮合に供する工程と、
を含み、ここで、
第1の触媒が、少なくとも1つの第三級窒素塩基であり、
第2の触媒が、少なくとも1つの塩基性アルカリ金属塩であり、かつ、
方法工程(ii)におけるアルカリ金属カチオンの割合が、方法工程(i)において使用された全ての成分に対して0.0008重量%~0.0030重量%である、方法。
【0078】
1.溶融エステル交換によりポリエステルカーボネートを製造する方法であって、
(i)少なくとも、少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸と少なくとも1つのジアリールカーボネートとを、少なくとも1つの脂肪族ジヒドロキシ化合物及び第1の触媒及び/又は第2の触媒の存在下で反応させる工程と、
(ii)方法工程(i)から得られた混合物を、第1の触媒及び第2の触媒の存在下で、少なくとも縮合時に脱離した化学的化合物を除去しながら、更なる縮合に供する工程と、
を含み、ここで、
第1の触媒が、少なくとも1つの第三級窒素塩基であり、
第2の触媒が、少なくとも1つの塩基性アルカリ金属塩であり、かつ、
方法工程(ii)におけるアルカリ金属カチオンの割合が、方法工程(i)において使用された全ての成分に対して0.0008重量%~0.0030重量%である、方法。
【0079】
2.少なくとも1つの脂肪族ジヒドロキシ化合物が、シクロヘキサン-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,3-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,2-ジメタノール、シクロヘキサン-1,3-ジメタノール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、テトラヒドロフラン-2,5-ジメタノール、並びにイソマンニド、イソイジド、及びイソソルビド等の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールからなる群より選択されることを特徴とする、実施形態0又は1に記載の方法。
【0080】
3.少なくとも1つの脂肪族ジヒドロキシ化合物が、イソソルビドであることを特徴とする、実施形態2に記載の方法。
【0081】
少なくとも1つの線状脂肪族ジカルボン酸及び/又は少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸は、一般式(1):
【化7】
(式中、
Aは、R
3を表し、ここで、
R
3は、3個~16個の炭素原子、好ましくは3個~8個の炭素原子、より好ましくは3個~6個の炭素原子、更に好ましくは3個又は4個の炭素原子を有する線状アルキレン基を表し、このアルキレン基は、任意に一置換又は多置換されている場合があり、又は、
Aは、式(Ia)若しくは式(Ib):
【化8】
の一方を表し、ここで、
Bは、それぞれの場合に独立して、CH
2基、O、又はSを表し、
R
1は、それぞれの場合に独立して、単結合又は1個~10個の炭素原子を有するアルキレン基、好ましくは単結合又は1個~9個の炭素原子を有するアルキレン基、より好ましくは単結合又は1個~8個の炭素原子を有するアルキレン基、同様に好ましくは単結合又は1個~5個の炭素原子を有するアルキレン基、特に好ましくは単結合を表し、かつ、
R
2は、それぞれの場合に独立して、1個~10個の炭素原子、好ましくは1個~9個の炭素原子、より好ましくは1個~8個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、
nは、0から3の間、好ましくは0から2の間、特に好ましくは0から1の間の数、非常に特に好ましくは1であり、
mは、0から6の間、好ましくは0から3の間、特に好ましくは0から2の間の数、非常に特に好ましくは0であり、かつ「*」は、式(1)におけるカルボン酸基が存在する位置を示す)によって表されることを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0082】
4.R3が、-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-、-CH2-C(CH3)2-CH2-、-CH2-CH(CH3)-CH2-C(CH3)2-、-CH2-C(CH3)2-CH2-CH(CH3)-、及び-CH(CH3)-CH2-CH2-C(CH3)2-から選択されることを特徴とする、実施形態3に記載の方法。
【0083】
5.少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸が、化学式(IIa)、(IIb):
【化9】
(式中、Bは、それぞれの場合に独立して、炭素原子、又はO及びSからなる群より選択されるヘテロ原子、好ましくはCH
2基、又はO及びSからなる群より選択されるヘテロ原子を表し、かつnは、0から3の間の数である)の化合物、又はそれらの混合物から選択されることを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0084】
6.少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸が、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、テトラジヒドロフラン-2,5-ジカルボン酸、テトラジヒドロジメチルフラン-2,5-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,4-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,5-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,6-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,7-ジカルボン酸、及び水素化二量体脂肪酸からなる群より選択されることを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0085】
7.式(Ia)及び式(Ib)におけるBが、CH2基を表すことを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0086】
8.少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸が、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、及びこれらの脂肪族ジカルボン酸の混合物からなる群より選択されることを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0087】
9.少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸が、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸であることを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0088】
10.少なくとも1つのジアリールカーボネートが、式(2):
【化10】
(式中、R、R’、及びR’’は、それぞれ独立して、同一又は異なる場合があり、水素、任意に分岐したC
1~C
34アルキル、C
7~C
34アルキルアリール、C
6~C
34アリール、ニトロ基、カルボニル含有基、カルボキシル含有基、又はハロゲン基を表す)の化合物からなる群より選択されることを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0089】
11.少なくとも1つのジアリールカーボネートが、ジフェニルカーボネートであることを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0090】
12.第1の触媒が、グアニジンから誘導される塩基、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、及びこれらの物質の混合物からなる群より選択されることを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0091】
13.第1の触媒が、4-ジメチルアミノピリジンであることを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0092】
14.第1の触媒及び第2の触媒が、方法工程(i)において存在することを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0093】
15.第1の触媒が、方法工程(i)において使用される全ての成分に対して、0.002重量%~0.1重量%の量で使用されることを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0094】
16.方法工程(i)において存在する全ての脂肪族ジヒドロキシ化合物と方法工程(i)における反応前に方法工程(i)において存在する全ての線状脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸、好ましくは脂環式ジカルボン酸とのモル比が、1:0.6~1:0.05であることを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0095】
17.方法工程(i)において存在する全ての脂肪族ジヒドロキシ化合物及び方法工程(i)において存在する全ての線状脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸、好ましくは脂環式ジカルボン酸の合計と方法工程(i)における反応前に方法工程(i)において存在する全てのジアリールカーボネートとのモル比が、1:0.4~1:1.6であることを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0096】
18.方法工程(ii)におけるアルカリ金属カチオンが、リチウムカチオン、カリウムカチオン、ナトリウムカチオン、セシウムカチオン、及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0097】
19.第2の触媒が、ナトリウムフェノキシド、リチウムフェノキシド、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸リチウム、及びそれらの混合物からなる群より選択され、好ましくは、ナトリウムフェノキシド、水酸化ナトリウム、安息香酸ナトリウム、及びそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、実施形態18に記載の方法。
【0098】
20.方法工程(ii)を、210℃~280℃の範囲内の温度で実施することを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0099】
21.方法工程(ii)においてポリエステルカーボネートに縮合される全てのモノマーが、方法工程(i)の間に既に存在していることを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0100】
22.縮合時に脱離した化学的化合物を、方法工程(ii)において減圧によって除去することを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0101】
23.実施形態0~22のいずれかに記載の方法により得られ得るポリエステルカーボネート。
【0102】
24.実施形態23に記載のポリエステルカーボネートを含む成形コンパウンド。
【0103】
25.実施形態23に記載のポリエステルカーボネートを含む成形品。
【実施例】
【0104】
使用される材料:
シクロヘキサンジカルボン酸:シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸;CAS 1076-97-7 99%;東京化成工業株式会社(日本)、略してCHDA。元素分析によれば、CHDAには1ppm未満のナトリウムが含まれていた。
【0105】
ジフェニルカーボネート:ジフェニルカーボネート、99.5%、CAS 102-09-0;Acros Organics(ベルギー、ヘール)、略してDPC。
【0106】
4-ジメチルアミノピリジン:4-ジメチルアミノピリジン;98.0%以上;purum;CAS 1122-58-3;Sigma-Aldrich(ドイツ、ミュンヘン)、略してDMAP。
【0107】
イソソルビド:イソソルビド(CAS:652-67-5)、99.8%、Polysorb PS A;Roquette Freres(フランス、レストロン62136);略してISB。
【0108】
安息香酸ナトリウム:安息香酸ナトリウム(CAS 532-32-1);Sigma-Aldrich(ドイツ、ミュンヘン)。
【0109】
3,3-ジメチルグルタル酸:(CAS 4839-46-7)ABCR GmbH(ドイツ、カールスルーエ)。
【0110】
水酸化リチウム(LiOH):(CAS 1310-66-3);Sigma-Aldrich(ドイツ、ミュンヘン)。
【0111】
分析法:
溶液粘度
溶液粘度の決定:相対溶液粘度(ηrel;相対ηとも呼ばれる)を、ウベローデ粘度計を使用してジクロロメタン中で5g/lの濃度において25℃にて決定した。測定はDIN51562-3;1985-05に従って実施された。この測定では、測定対象のポリエステルカーボネートの通過時間をウベローデ粘度計によって測定した後に、ポリマー溶液とその溶媒との粘度差を測定した。このために、純粋な溶媒であるジクロロメタン、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンの測定を通じてウベローデ粘度計を初期較正する(常に3回以上9回以下の測定を行う)。その後、溶媒であるジクロロメタンを用いて実際の較正を行う。次に、ポリマー試料を秤量し、ジクロロメタン中に溶解し、次いでこの溶液についてフロータイムを3回測定する。フロータイムの平均値をHagenbach補正し、相対溶液粘度を算出する。
【0112】
実施例1:10ppmのNa
17.20g(0.10mol)のシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、29.83g(0.204mol)のイソソルビド、64.30g(0.3mol)のジフェニルカーボネート、0.0111gのDMAP(4-ジメチルアミノピリジン;出発材料CHDA、DPC、及びISBに対して100ppm)、及びおよそ10ppmのNaに相当する50.2μlの安息香酸ナトリウムの水溶液(141.4g/l)を、短行程分離機を備えたフラスコに入れた。脱気及び窒素による真空の解放を4回行うことにより、混合物から酸素を除去した。混合物を溶融し、撹拌しながら標準圧力で160℃に加熱した。混合物を160℃で50分間、175℃で50分間、190℃で30分間、及び205℃で50分間撹拌した。この操作の間に、二酸化炭素が継続的に発生する。CO2の発生が止んだら、浴温度を220℃に調整する。更に20分後に、負圧を適用する。30分間かけて圧力を10mbarに下げる。この操作の間に、フェノールを連続的に除去する。混合物を10mbarで約10分間撹拌する。次に、圧力を1mbar(およそ0.7mbar)未満に下げ、更に10分間縮合を続ける。その後、混合物の処理を止めた。
【0113】
1.258の相対ηの溶液粘度を有する淡褐色のポリマーが得られた。
【0114】
使用される安息香酸ナトリウム及びDMAPの量のみを変えて、実施例1について記載されるようにして、その他の実施例(Ex.)及び比較例(Comp.)を製造した。データを表1にまとめる。それぞれの場合に、使用される成分の重量に対するDMAP及びアルカリ金属のppmでの重量割合が示されている。
【0115】
全ての場合において、方法工程(i)において、両方の触媒を添加した。触媒は反応混合物中に完全に残る。DMAP及びアルカリ金属の比率は、方法工程(i)において使用される全ての成分に基づいている。
【0116】
【0117】
実施例1~実施例4は、本発明の方法が、所望のポリエステルカーボネートを所望の粘度ウィンドウ内で提供することを示している。アルカリイオンの含有量が低すぎると、比較例1及び比較例2に示されるように、分子量の不十分な増加しか達成することができない。アルカリの含有量が高すぎると、比較例3に示されるように、これは、実質的にもはや加工することができない粘度をもたらす。触媒を1つだけしか使用しないと(比較例4)、この場合も得られる粘度は低すぎる。
【0118】
本発明により使用される負圧;
実施例4
103.2g(0.60mol)のシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、176.35g(1.206mol)のイソソルビド、385.8g(1.80mol)のジフェニルカーボネート、0.0666gのDMAP(4-ジメチルアミノピリジン;出発材料CHDA、DPC、及びISBに対して100ppm)、及び安息香酸ナトリウムの水溶液の形の30ppmのナトリウム(実施例1と同じ濃度)を、短行程分離機を備えたフラスコに入れた。脱気及び窒素による真空の解放を4回行うことにより、混合物から酸素を除去した。混合物を溶融し、撹拌しながら標準圧力で180℃に加熱した。出発材料が完全に溶融したら、混合物を20分間撹拌する。これに続いて、25分間かけて240mbarに減圧する。40分間かけて圧力を140mbarに下げる。この操作の間に、フェノールを連続的に留去する。反応混合物における真空を窒素により解放し、混合物を確認して、CO2の発生がまだ起こっているかどうかを確かめる。CO2の発生が止んだら、縮合段階(段階2)を開始する(この時点でまだCO2の発生が観察され得る場合には、それが止むまで待つ;この時点で更に100ppmのDMAPを加えることができる。これが必要となるのは、この触媒が最初の段階で完全に除去された場合であり、これは停滞した重縮合段階によって裏付けられ得る)。圧力を140mbarに調整し、浴温度を105℃に調整する。15分間かけて圧力を70mbarに下げる。この後、圧力を50分間かけて1mbarに下げ、浴温度を240℃に上昇させる。1mbar及び240℃で、混合物を更に20分間撹拌する。溶融物が撹拌器に引き上げられたときは、これを撹拌器から取り除き、溶融物に戻す。これを行うには、混合物における真空を一時的に解放しなければならない。1.32の相対ηを有する淡褐色の重縮合物が得られる。
【0119】
実施例4は、本発明の方法が、負圧の適用により、段階1における反応時間を大幅に短縮し得ることを示している。使用される量がより多いにもかかわらず、段階1を大幅に短縮することができた。
【0120】
実施例5:3,3-ジメチルグルタル酸
24.63g(0.1685mol)のイソソルビド、8.01g(0.05mol)の3,3-ジメチルグルタル酸、46.36g(0.2165mol)のジフェニルカーボネート、100ppm(0.079g)のDMAP、及び30ppmのLi(ストック溶液(100.00g/L)によるLiOHの水溶液として→0.078mL)を、短行程分離機を備えた三ツ口フラスコに入れた。脱気及び窒素による真空の解放を4回行うことにより、フラスコの内容物から酸素を除去した。混合物を160℃に加熱し、溶融した。溶融後に、混合物を160℃で45分間撹拌した。次に、温度を1.5時間かけて段階的に225℃に高めた。30分間かけて圧力を500mbarに下げた。この操作の間に、フェノールを連続的に除去した。温度を235℃に高め、圧力を2時間かけてゆっくりと0.1mbarに下げた。235℃及び0.1mbarで10分間撹拌した後に、反応を止め、溶融物を取り出した。
【0121】
1.256の溶融粘度及び121℃のガラス転移温度を有する淡色のポリマー溶融物が得られた。
【0122】
実施例6:3,3-ジメチルグルタル酸及びシクロヘキサンジカルボン酸の混合物
29.83g(0.2040mol)のイソソルビド、8.01g(0.05mol)の3,3-ジメチルグルタル酸、8.60g(0.050mol)のシクロヘキサンジカルボン酸、64.30g(0.30mol)のジフェニルカーボネート、100ppm(0.0111g)のDMAP、及び安息香酸ナトリウム(0.0069g)としての10ppmのNaを、短行程分離機を備えた三ツ口フラスコに入れた。脱気及び窒素による真空の解放を4回行うことにより、フラスコの内容物から酸素を除去した。混合物を160℃に加熱し、溶融した。溶融後に、混合物を160℃で15分間撹拌した。温度を175℃に高め、この温度で75分間撹拌を続けた。次に、更に100ppm(0.0111g)のDMAPを加え、混合物を175℃で更に30分間撹拌した。ガスの発生が止んだ後に、温度を1.5時間かけて段階的に220℃に高めた。この操作の間に、フェノールを連続的に除去した。次に、温度を230℃に高め、圧力を1時間かけて段階的に1mbarに下げた。混合物を1mbarで更に10分間撹拌した後に、溶融物を取り出した。
【0123】
1.24の相対ηの溶液粘度を有する淡色のポリマー溶融物が得られた。
【0124】
実施例5及び実施例6は、線状脂肪族ジカルボン酸によっても、線状脂肪族ジカルボン酸及び脂環式ジカルボン酸の混合物によっても、所望の加工可能な粘度を有するポリエステルカーボネートが得られることを示している。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融エステル交換によりポリエステルカーボネートを製造する方法であって、
(i)少なくとも、少なくとも1つの線状脂肪族ジカルボン酸及び/又は少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸と少なくとも1つのジアリールカーボネートとを、少なくとも1つの脂肪族ジヒドロキシ化合物及び第1の触媒及び/又は第2の触媒の存在下で反応させる工程と、
(ii)方法工程(i)から得られた混合物を、前記第1の触媒及び前記第2の触媒の存在下で、少なくとも縮合時に脱離した化学的化合物を除去しながら、更なる縮合に供する工程と、
を含み、ここで、
前記第1の触媒が、少なくとも1つの第三級窒素塩基であり、
前記第2の触媒が、少なくとも1つの塩基性アルカリ金属塩であり、かつ、
方法工程(ii)におけるアルカリ金属カチオンの割合が、方法工程(i)において使用された全ての成分に対して0.0008重量%~0.0030重量%である、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの脂肪族ジヒドロキシ化合物は、シクロヘキサン-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,3-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,2-ジメタノール、シクロヘキサン-1,3-ジメタノール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、テトラヒドロフラン-2,5-ジメタノール、並びにイソマンニド、イソイジド、及びイソソルビド等の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの脂肪族ジヒドロキシ化合物は、イソソルビドであることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの線状脂肪族ジカルボン酸及び/又は前記少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸は、一般式(1):
【化1】
(式中、
Aは、R
3を表し、ここで、
R
3は、3個~16個の炭素原子、好ましくは3個~8個の炭素原子、より好ましくは3個~6個の炭素原子、更に好ましくは3個又は4個の炭素原子を有する線状アルキレン基を表し、このアルキレン基は、任意に一置換又は多置換されている場合があり、又は、
Aは、式(Ia)若しくは式(Ib):
【化2】
の一方を表し、ここで、
Bは、それぞれの場合に独立して、CH
2基、O、又はSを表し、
R
1は、それぞれの場合に独立して、単結合又は1個~10個の炭素原子を有するアルキレン基、好ましくは単結合又は1個~9個の炭素原子を有するアルキレン基、より好ましくは単結合又は1個~8個の炭素原子を有するアルキレン基、同様に好ましくは単結合又は1個~5個の炭素原子を有するアルキレン基、特に好ましくは単結合を表し、かつ、
R
2は、それぞれの場合に独立して、1個~10個の炭素原子、好ましくは1個~9個の炭素原子、より好ましくは1個~8個の炭素原子を有する
アルキル基を表し、
nは、0から3の間、好ましくは0から2の間、特に好ましくは0から1の間の数、非常に特に好ましくは1であり、
mは、0から6の間、好ましくは0から3の間、特に好ましくは0から2の間の数、非常に特に好ましくは0であり、かつ「*」は、式(1)におけるカルボン酸基が存在する位置を示す)によって表されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
R
3は、-CH
2-CH
2-CH
2-、-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-、-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-、-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-、-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-、-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-CH
2-、-CH
2-C(CH
3)
2-CH
2-、-CH
2-CH(CH
3)-CH
2-C(CH
3)
2-、-CH
2-C(CH
3)
2-CH
2-CH(CH
3)-、及び-CH(CH
3)-CH
2-CH
2-C(CH
3)
2-から選択され、かつ前記脂環式ジカルボン酸は、水素化二量体脂肪酸、又は式(IIa)、(IIb):
【化3】
の化合物、若しくはそれらの混合物であり、ここで、
Bは、それぞれの場合に独立して、CH
2基、又はO及びSからなる群から選択されるヘテロ原子を表し、かつnは、0から3の間の数であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸は、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのジアリールカーボネートは、式(2):
【化4】
(式中、R、R’、及びR’’は、それぞれ独立して、同一又は異なる場合があり、水素、任意に分岐したC
1~C
34アルキル、C
7~C
34アルキルアリール、C
6~C
34アリール、ニトロ基、カルボニル含有基、カルボキシル含有基、又はハロゲン基を表す)の化合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのジアリールカーボネートは、ジフェニルカーボネートであることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の触媒は、グアニジンから誘導される塩基、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、1,5,7-トリアザビシクロ[5.4.0]デカ-5-エン、及びこれらの物質の混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の触媒は、方法工程(i)において使用される全ての成分に対して、0.002重量%~0.1重量%の量で使用されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の触媒は、ナトリウムフェノキシド、リチウムフェノキシド、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸リチウム、及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
縮合時に脱離した化学的化合物を、方法工程(ii)において減圧によって除去することを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法により得られ得るポリエステルカーボネート。
【請求項14】
請求項13に記載のポリエステルカーボネートを含む成形コンパウンド。
【請求項15】
請求項13に記載のポリエステルカーボネートを含む成形品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族二酸、好ましくは脂環式二酸及び脂肪族ジオールから出発してポリエステルカーボネートを製造する方法、該方法によって製造されたポリエステルカーボネート自体、該ポリエステルカーボネートを含む成形コンパウンド、並びに該ポリエステルカーボネートを含む成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル、ポリカーボネート、及びポリエステルカーボネートは、良好な機械的特性、並びに熱変形及び風化に対する良好な安定性を有することが知られている。使用されるモノマーに応じて、各ポリマーグループは、この種の材料を特徴付ける或る特定の重要な特性を有している。例えば、ポリカーボネートは特に良好な機械的特性を有し、一方、ポリエステルは、多くの場合、より優れた化学安定性を有する。ポリエステルカーボネートは、選択されたモノマーに応じて、上記グループの両方からの特性プロファイルを示す。
【0003】
芳香族ポリカーボネート又はポリエステルは、多くの場合、良好な特性プロファイルを有するが、これらは経年変化又は風化に対する安定性に欠点を示す。例えば、紫外光の吸収は、これらの熱可塑性材料の黄変、時には、脆化をもたらす。脂肪族ポリカーボネート及びポリエステルカーボネートは、この点で、より良い特性、特に、経年変化及び/又は風化に対するより良い安定性、及びより良い光学特性(例えば透過性)を有する。
【0004】
脂肪族ポリカーボネート又はポリエステルカーボネートの欠点は、多くの場合、その低いガラス転移温度である。したがって、脂環式アルコールを(コ)モノマーとして使用することが有利である。このような脂環式アルコールの例は、TCDアルコール(トリシクロデカンジメタノール)、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、及び、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールベースのバイオベースジオール、例えば、イソソルビド及びその異性体であるイソマンニド及びイソイジドである。ガラス転移温度を更に上げるために、(コ)モノマーとして、脂環式酸、例えば、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸若しくはシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、又は対応するナフタレン誘導体も使用可能である。反応物の選択に応じて、その後、ポリエステル又はポリエステルカーボネートが得られる。本出願は、原材料、すなわちイソソルビド及び脂肪族二酸、好ましくは脂環式二酸の、例えば、対応するポリエステルカーボネートへの直接的な転化に関する。シクロヘキサンジカルボン酸及びイソソルビドのポリエステルは、非特許文献1に記載されているが、本発明は、好ましくは、ポリエステルカーボネートに関する。
【0005】
ポリエステルカーボネートは、例えば、対応するエステル含有モノマーとジオールとのエステル交換により工業スケールで製造される。例えば、二酸のジメチルエステルから出発して、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールとシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸とのポリエステルが製造される(このポリエステルとポリカーボネートとのブレンド:DuPontのXyrex(商標))。
【0006】
しかし、エステル交換反応に関して、フェニルエステルはその脂肪族類似体よりも著しく反応性が高い。特許文献1及び特許文献2には、中間工程としてのフェニルエステルを有するポリエステルカーボネートの製造方法が記載されている。
【0007】
特許文献1の実施例1には、二酸をフェノールと直接反応させて対応するエステルを形成することが記載されている。特許文献1の実施例2では、ジメチルエステルがフェノールと反応される。しかし、フェニルエステル製造の両バリエーションに関する収率は更に向上可能である。その後に、ポリエステルカーボネートが製造される。
【0008】
特許文献2には、溶媒中での、ホスゲンを使用したジフェニルエステルの製造が記載されている。脂肪族ポリエステルカーボネートを形成するためのその後の反応はホスゲンの使用を含まないため、ホスゲン法とエステル交換法とをプラントの同じ部分で併用することは非常に不利である。したがって、特許文献2に記載された方法も最適ではない。
【0009】
非特許文献2には、シクロヘキサンジカルボン酸及びイソソルビドベースのポリエステルが、シクロヘキサン二酸又はシクロヘキサンジメチルエステルから得られず(又は非常に低い分子量しか得られない)、シクロヘキサンジカルボン酸の酸塩化物からしか製造できないことが記載されている。
【0010】
芳香族ポリエステルカーボネートの簡単な調製は、例えば、特許文献3において記載されている。これは、直接合成又はワンポット合成、すなわち、後続のポリエステルカーボネートを形成する全ての構造要素が既に合成の開始時にモノマーとして存在している合成を記載している。この場合に、ビスフェノールA等の芳香族ジヒドロキシ化合物、カルボン酸ジエステル、及び芳香族二酸又は線状脂肪族二酸がモノマーとして使用される。この文献は芳香族ポリエステルカーボネートの調製に限定されているため、縮合反応において、形成されるフェノールを除去しながら、300℃の温度を使用することが可能である。脂肪族ポリエステルカーボネートを調製する場合には、そのような温度の使用は不可能である。それというのも、脂肪族ジオールは、そのような熱応力に曝されると脱離及び/又は熱分解を受ける傾向があるからである。しかしながら、同時に、所望の高分子量に成長するには高い温度が必要である。この場合に特に明らかなのは、脂肪族ジオールと芳香族ジオールとの反応性の違いである。例えば、イソソルビドがポリマーに完全に組み込まれることはめったになく、それよりも、選択される反応条件に応じて重合反応の間に最大25%のイソソルビドが失われることが文献から知られている。したがって、芳香族ジオールについての反応条件を脂肪族ジオールに転用することが直ちに可能ではない。これは特に、特許文献3における重縮合(方法工程(ii)に対応する)の反応時間が、より高い温度では、本発明に従って観察される反応時間よりもかなり長いという事実から明らかである。また、この文献には、実施例において非常に少量のアルカリ金属イオンを触媒として使用すること、及び全体部分において非常に広い範囲の量を使用することが記載されている。さらに、別の触媒として第四級窒素塩基が使用される。これらは、一般的に、反応系に通常残留する低揮発性の塩である。得られたジエステルは、その後、芳香族アルコール(フェノール等)と反応されて、ポリエステルカーボネートが形成される。フェノールは脂肪族アルコールよりはるかに高い酸度を有する。
【0011】
同様に、特許文献4及び特許文献5では、芳香族構造単位及び相応して高温が使用される。上述の理由から、そこでの教示を脂肪族構造単位に転用することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3026074号
【特許文献2】欧州特許出願公開第3248999号
【特許文献3】国際公開第01/32742号
【特許文献4】特開平04-345616号
【特許文献5】独国特許出願公開第2438053号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Oh et al., in Macromolecules 2013, 46, 2930-2940
【非特許文献2】Kricheldorf et al., (Macromol. Chem. Phys 2010, 211, 1206-1214)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、この従来技術を起点として、本発明の課題は、特に簡単であり、同時に適切な分子量を有するポリエステルカーボネートをもたらす、溶融エステル交換により脂肪族二酸、好ましくは脂環式二酸及び脂肪族ジオールからポリエステルカーボネートを製造する方法を提供することであった。この文脈において、「簡単」とは、特に、機器への出費をわずかしか必要とせず、少ない工程、特に精製工程を含み、及び/又は、したがって経済的に、そしてまた環境的に有利である方法を意味すると理解されるべきである。
【0015】
適切なモル質量とは、それぞれの場合にウベローデ粘度計を使用してジクロロメタン中で5g/lの濃度において25℃で測定された1.17~1.35、好ましくは1.18~1.32、特に好ましくは1.20~1.31の相対溶液粘度を有するポリマーを意味すると理解される。ウベローデ粘度計を用いた相対溶液粘度の測定は、当業者に知られている。これは、本発明によれば、好ましくは、DIN51562-3;1985-05に従って実施される。この測定では、測定対象のポリエステルカーボネートの通過時間をウベローデ粘度計によって測定した後に、ポリマー溶液とその溶媒との粘度差を測定する。このために、純粋な溶媒であるジクロロメタン、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンの測定を通じてウベローデ粘度計を初期較正する(常に3回以上9回以下の測定を行う)。その後、溶媒であるジクロロメタンを用いて実際の較正を行う。次に、ポリマー試料を秤量し、ジクロロメタン中に溶解し、次いでこの溶液についてフロータイムを3回測定する。フロータイムの平均値をHagenbach補正し、相対溶液粘度を算出する。
【0016】
溶液粘度が上記範囲を上回ると、熱可塑性物質の加工が困難となる。溶液粘度が低すぎると、不十分な機械的特性及び熱的特性がもたらされる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の課題のうちの少なくとも1つ、好ましくは全てが本発明によって解決された。驚くべきことに、後続のポリエステルカーボネートを形成する全ての構造要素が既に合成の開始時にモノマーとして存在している直接合成又はワンポット合成において、溶融エステル交換により脂肪族二酸、好ましくは脂環式二酸及び脂肪族ジオールからポリエステルカーボネートを合成することが可能であることが判明した。
【0018】
しかしながら、これには、2つの特別に選択された触媒の混合物を使用することが必要であり、反応混合物中のアルカリ金属カチオンの割合が或る特定の範囲内にあることも必要であることが明らかになった。第一に、従来技術の記載された先入観にもかかわらず、脂肪族ジカルボン酸、好ましくは脂環式ジカルボン酸、脂肪族ジヒドロキシ化合物(本発明によれば脂肪族ジオールとも呼ばれる)、及びジアリールカーボネートの反応についても直接合成が機能することは驚くべきことであった。この場合に、脂肪族二酸、好ましくは脂環式二酸及び脂肪族ジオールの様々なモル比を使用しても、適切なモル質量を有するポリマーを達成することが可能であった。しかしながら、脂肪族二酸、好ましくは脂環式二酸及び脂肪族ジオールの特定のモル比が特に有利である。
【0019】
重合反応の成功の鍵となるのは、触媒混合物中の触媒の総量ではなく、むしろアルカリ金属カチオンの割合であることは更に驚くべきことであった。これにより、特に簡単である、すなわち、機器への出費をわずかしか必要とせず、少ない工程、特に精製工程を含み、したがって経済的に、そしてまた環境的に有利である、脂肪族二酸、好ましくは脂環式二酸及び脂肪族ジオールからポリエステルカーボネートに至ることを可能にする方法を見つけ出すことにつながった。さらに、負圧を適用することによって、本発明による第三級窒素塩基、特にDMAPを系から取り出すことができる場合に有利であることが判明した。これにより、触媒を効果的かつ容易に系から取り出すことが可能となる。
【0020】
本発明のポリエステルカーボネートを製造する方法を、以下に示されるように、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸、イソソルビド、及びジフェニルカーボネートの反応によって概略的に記載することができる:
【化1】
触媒
(これらの特定の3つの出発物質を挙げたのは、純粋に本発明を解説する目的のためであり、限定するものと理解されるべきではない)。
【0021】
本発明による直接合成においては、最初に、漏れ出る二酸化炭素によって、ガスの発生が観察された。ガスの発生がほとんど収まった後に混合物から試料を採取すると、既にオリゴマーが形成されていることを分析により実証することができる。これらのオリゴマーは、更なる工程において縮合されて、本発明のポリエステルカーボネートを形成する。さらに、本発明のポリエステルカーボネートは、2工程法を介して製造された欧州特許出願公開第3026074号に記載されるポリエステルカーボネートよりも、1H NMRにおいてより多くの末端フェニル基を示すことが観察された。本発明による実施例において僅かな過剰のイソソルビドが使用されたが、それでも末端フェニル基が形成した。特にポリマーの高い加工温度で末端OH基が加水分解的に不安定であり、エステル交換反応を引き起こす可能性があり、また熱安定性を低下させる可能性もあるため、これらは有利である。
【0022】
したがって、本発明は、溶融エステル交換によりポリエステルカーボネートを製造する方法であって、
(i)少なくとも1つの脂肪族ジカルボン酸及び/又は少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸と少なくとも1つのジアリールカーボネートとを、少なくとも1つの脂肪族ジヒドロキシ化合物及び第1の触媒及び/又は第2の触媒の存在下で反応させる工程と、
(ii)方法工程(i)から得られた混合物を、第1の触媒及び第2の触媒の存在下で、少なくとも縮合時に脱離した化学的化合物を除去しながら、更なる縮合に供する工程と、
を含み、ここで、
第1の触媒が、少なくとも1つの第三級窒素塩基であり、
第2の触媒が、少なくとも1つの塩基性アルカリ金属塩であり、かつ、
方法工程(ii)におけるアルカリ金属カチオンの割合が、方法工程(i)において使用された全ての成分に対して0.0008重量%~0.0030重量%である、方法を提供する。
【0023】
本発明はまた、溶融エステル交換によりポリエステルカーボネートを製造する方法であって、
(i)少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸と少なくとも1つのジアリールカーボネートとを、少なくとも1つの脂肪族ジヒドロキシ化合物及び第1の触媒及び/又は第2の触媒の存在下で反応させる工程と、
(ii)方法工程(i)から得られた混合物を、第1の触媒及び第2の触媒の存在下で、少なくとも縮合時に脱離した化学的化合物を除去しながら、更なる縮合に供する工程と、
を含み、ここで、
第1の触媒が、少なくとも1つの第三級窒素塩基であり、
第2の触媒が、少なくとも1つの塩基性アルカリ金属塩であり、かつ、
方法工程(ii)におけるアルカリ金属カチオンの割合が、方法工程(i)において使用された全ての成分に対して0.0008重量%~0.0030重量%である、方法を提供する。
【0024】
本発明の方法工程(ii)におけるアルカリ金属カチオンの割合は、それぞれの場合に方法工程(i)において使用される全ての成分に対して、好ましくは0.0009重量%~0.0025重量%、より好ましくは0.0010重量%~0.0020重量%である。
【0025】
好ましい実施形態においては、方法工程(i)において、第1の触媒及び第2の触媒が存在する。
【0026】
第1の触媒の一部及び/又は第2の触媒の一部を方法工程(i)において使用し、次に残りを方法工程(ii)において使用することも可能である。
【0027】
しかしながら、第1の触媒及び/又は第2の触媒の総量を方法工程(i)において使用することが好ましい。両方の触媒の総量を方法工程(i)において使用することが最も好ましい。
【0028】
本発明によれば、方法工程(i)は、少なくとも1つの線状脂肪族ジカルボン酸及び/又は少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸と少なくとも1つのジアリールカーボネートとの反応を少なくとも含む。しかしながら、本発明によれば、少なくとも1つの脂肪族ジヒドロキシ化合物の存在は、更なる反応が除外され得ないことを意味する。しかしながら、本発明によれば、ガスの発生がほとんど止んだことが観察されるまで方法工程(i)が進行した後に初めて、方法工程(ii)を、例えば、負圧を適用して縮合時に脱離した化学的化合物を除去することによって開始することが好ましい。しかしながら、既に上記のように、本発明によれば、方法工程(i)と方法工程(ii)との間の明確な分離を達成することが必ずしも可能であるとは限らない場合がある。
【0029】
方法工程(i)
本発明の方法は、直接合成又はワンポット合成と呼ばれる。それというのも、方法工程(i)において、後続のポリエステルカーボネートを形成する全ての構造要素が既にモノマーとして存在しているからである。これは、好ましくは、本発明によれば、ジヒドロキシ化合物、線状脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸、及び/又はジアリールカーボネートが1つだけより多く存在する場合であっても、全ての脂肪族ジヒドロキシ化合物、全ての線状脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸、そしてまた全てのジアリールカーボネートがこの工程において存在することを意味する。したがって、本発明によれば、方法工程(ii)においてポリエステルカーボネートに縮合される全てのモノマーが、方法工程(i)の間に既に存在していることが好ましい。同様に、本発明は、少量の少なくとも1つのジアリールカーボネートが方法工程(ii)において追加的に添加される実施形態を包含する。これを選択的に使用して、形成されるポリエステルカーボネートの末端OH基含有量を低下させることができる。このようなアプローチは、例えば、特開2010-077398号において記載されている。しかしながら、後続のポリエステルカーボネートを形成する全ての構造要素が方法工程(i)において既にモノマーとして存在し、更なる構造要素を添加しないためには、この場合に、方法工程(ii)において少量で添加される少なくとも1つのジアリールカーボネートは、方法工程(i)において存在する少なくとも1つのジアリールカーボネートと同じであることが必要である。したがって、こういった意味で、この方法は、依然として直接合成又はワンポット合成と呼ばれ得る。
【0030】
さらに、本発明は、方法工程(i)における芳香族ジヒドロキシ化合物及び/又は芳香族ジカルボン酸の存在を除外するものではない。しかしながら、これらは、好ましくは少量でのみ存在する。方法工程(i)においては、芳香族ジヒドロキシ化合物が、それぞれの場合に使用されるジヒドロキシ化合物の総モル量に対して、最大20mol%、より好ましくは最大10mol%、非常に特に好ましくは最大5mol%の含有量で更に存在することが特に好ましい。方法工程(i)においては、芳香族ジカルボン酸が、任意にまた芳香族ジヒドロキシ化合物に加えて、それぞれの場合に使用されるジカルボン酸の総モル量に対して、最大20mol%、より好ましくは最大10mol%、非常に特に好ましくは最大5mol%の含有量で更に存在することが同様に特に好ましい。これらの場合に、本発明によれば、生成物を脂肪族ポリエステルカーボネートと呼ぶことが依然として好ましい。しかしながら、方法工程(i)において芳香族ジヒドロキシ化合物を使用しないことが特に好ましい。また、方法工程(i)において芳香族ジカルボン酸を使用しないことも好ましい。同様に、方法工程(i)において芳香族ジヒドロキシ化合物も芳香族ジカルボン酸も使用しないことが好ましい。
【0031】
これらの追加の芳香族ジヒドロキシ化合物は、好ましくは、ビスフェノールA、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(DOD)、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル(DODエーテル)、ビスフェノールB、ビスフェノールM、及びビスフェノール(I)~ビスフェノール(III):
【化2】
(これらの式(I)~式(III)において、R’は、それぞれの場合に、C
1~C
4アルキル、アラルキル、又はアリール、好ましくはメチル又はフェニル、非常に特に好ましくはメチルを表す)からなる群から選択される。
【0032】
これらの追加の芳香族ジカルボン酸は、好ましくは、イソフタル酸、テレフタル酸、フランジカルボン酸、及びナフタレン-2,6-ジカルボン酸からなる群から選択される。少量のこれらの芳香族二酸が、脂肪族ポリエステルカーボネートによる水の吸収を減少させ得ることが知られている。
【0033】
本発明によれば、方法工程(i)において、少なくとも1つの脂肪族ジヒドロキシ化合物が使用される。この少なくとも1つの脂肪族ジヒドロキシ化合物は、好ましくは、シクロヘキサン-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,3-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,2-ジメタノール、シクロヘキサン-1,3-ジメタノール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、テトラヒドロフラン-2,5-ジメタノール、並びにイソマンニド、イソイジド、及びイソソルビド等の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールからなる群から選択される。あらゆる所望の混合物を使用することもできる。少なくとも1つの脂肪族ジヒドロキシ化合物は、非常に特に好ましくは、イソソルビドである。
【0034】
同様に、方法工程(i)において、少なくとも1つの線状脂肪族ジカルボン酸及び/又は少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸が本発明に従って使用される。好ましくは、少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸が使用される。また好ましくは、少なくとも1つの線状脂肪族ジカルボン酸が使用される。また好ましくは、線状脂肪族ジカルボン酸及び脂環式ジカルボン酸の混合物が使用される。
【0035】
少なくとも1つの線状脂肪族ジカルボン酸及び/又は少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸は、一般式(1):
【化3】
(式中、
Aは、R
3を表し、ここで、
R
3は、3個~16個の炭素原子、好ましくは3個~8個の炭素原子、より好ましくは3個~6個の炭素原子、更に好ましくは3個又は4個の炭素原子を有する線状アルキレン基を表し、このアルキレン基は、任意に一置換又は多置換されている場合があり、又は、
Aは、式(Ia)若しくは式(Ib):
【化4】
の一方を表し、ここで、
Bは、それぞれの場合に独立して、CH
2基、O、又はSを表し、
R
1は、それぞれの場合に独立して、単結合又は1個~10個の炭素原子を有するアルキレン基、好ましくは単結合又は1個~9個の炭素原子を有するアルキレン基、より好ましくは単結合又は1個~8個の炭素原子を有するアルキレン基、同様に好ましくは単結合又は1個~5個の炭素原子を有するアルキレン基、特に好ましくは単結合を表し、かつ、
R
2は、それぞれの場合に独立して、1個~10個の炭素原子、好ましくは1個~9個の炭素原子、より好ましくは1個~8個の炭素原子を有する
アルキル基を表し、
nは、0から3の間、好ましくは0から2の間、特に好ましくは0から1の間の数、非常に特に好ましくは1であり、
mは、0から6の間、好ましくは0から3の間、特に好ましくは0から2の間の数、非常に特に好ましくは0であり、かつ「*」は、式(1)におけるカルボン酸基が存在する位置を示す)によって表されることが特に好ましい。
【0036】
したがって、R1が単結合を表す場合、R1は、0個の炭素原子を含むことが理解されるであろう。
【0037】
本発明によれば、「線状アルキレン基」及び「線状(脂肪族)ジカルボン酸」という用語は、それぞれ「脂環式アルキレン基」及び「脂環式ジカルボン酸」と区別するために使用される。線状の変異体はいかなる環系も含まない。しかし、例えば線状アルキレン基を表すR3は、任意選択で置換されてもよい。結果として、線状アルキレン基は、最も広い意味において「分岐」を表すものである場合がある。したがって、本発明によれば、「線状アルキレン基」という用語は、「分岐アルキレン基」をも好ましくは包含する。しかし、これらはいずれにせよ環系を含まない。
【0038】
AがR3を表す場合、好ましくは、R3は、3個~16個の炭素原子、好ましくは3個~8個の炭素原子、より好ましくは3個~6個の炭素原子、更に好ましくは3個又は4個の炭素原子を有する線状アルキレン基を表し、このアルキレン基は任意選択で一置換又は多置換されてもよい。好ましくは、このアルキレン基は、好ましくは1個~5個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキル基で置換されてもよい。特に好ましくは、線状アルキレン基は、非置換であるか、又は1個~5個の炭素原子、好ましくは1個~4個の炭素原子、より好ましくは1個~3個の炭素原子を有する少なくとも1個のアルキレン基で置換されている。線状アルキレン基は、置換されている場合、少なくとも1個の第三級炭素原子、更に任意選択で少なくとも1個の第四級炭素原子を有するであろう。特に好ましくは、線状アルキレン基R3は、非置換であるか、又は1個~3個のアルキレン基で置換されている。2つ以上の置換が存在する場合、置換は、線状アルキレン基R3の1つの炭素原子上(1個の第四級炭素原子をもたらす)、又は2つ以上の炭素原子上(2個の第三級炭素原子をもたらす)に存在してもよい。更に好ましくは、線状アルキレン基R3は、非置換であるか、又は1個~3個のメチル基で置換されている。非常に特に好ましくは、R3は、-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-、-CH2-C(CH3)2-CH2-、-CH2-CH(CH3)-CH2-C(CH3)2-、-CH2-C(CH3)2-CH2-CH(CH3)-、及び-CH(CH3)-CH2-CH2-C(CH3)2-から選択される。同様に好ましくは、R3は、-CH2-CH2-CH2-CH2-、-CH2-C(CH3)2-CH2-、-CH2-CH(CH3)-CH2-C(CH3)2-、-CH2-C(CH3)2-CH2-CH(CH3)-、及び-CH(CH3)-CH2-CH2-C(CH3)2-から選択される。非常に特に好ましくは、R3は、-CH2-C(CH3)2-CH2-(3,3-ジメチルグルタル酸)を表す。
【0039】
Aが式(Ia)又は式(Ib)の一方を表す場合、好ましくは、
Bは、それぞれの場合に独立して、CH2基、O又はS、好ましくはCH2基を表し、
R1は、それぞれの場合に独立して、単結合、又は1個~10個の炭素原子を有する線状アルキレン基、特に好ましくは単結合を表し、
R2は、それぞれの場合に独立して、1個~10個の炭素原子、好ましくは1個~9個の炭素原子、より好ましくは1個~8個の炭素原子を有する線状アルキル基を表し、
nは、0~3、好ましくは0~2、特に好ましくは0~1、非常に特に好ましくは1の数であり、
mは、0~6、好ましくは0~3、特に好ましくは0~2、非常に特に好ましくは0の数であり、「*」は、式(1)におけるカルボン酸基が存在する位置を示す。
【0040】
式(Ia)及び式(Ib)において、2つのR2が、1つの炭素原子上にそれぞれ存在してもよく、そうでなければ、1つのR1-*及び1つのR2が1つの炭素原子上にそれぞれ存在してもよいことは、mについての数から既に見て取れる。また、ただ1つの置換基R1-*又はR2が1つの炭素原子上に常に存在してもよい。
【0041】
特に、好ましくは、脂環式ジカルボン酸は、水素化二量体脂肪酸、又は式(IIa)若しくは式(IIb)の化合物、又はこれらの混合物である。水素化二量体脂肪酸は、当業者に知られている。特に、これが異なる化合物の混合物であり得ることが知られている。この混合物は、脂環式化合物及び線状化合物も含み得る。本発明によれば、これらは、少なくとも1つの線状脂肪族ジカルボン酸及び少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸の使用によって実現される。
【0042】
したがって、本発明の線状脂肪族及び/又は脂環式ジカルボン酸として、水素化二量体脂肪酸を使用することが好ましい。
【0043】
少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸は、化学式(IIa)、化学式(IIb):
【化5】
(式中、
Bは、それぞれの場合に独立して、炭素原子又は、O及びSからなる群から選択されるヘテロ原子、好ましくはCH
2基、又はO及びSからなる群から選択されるヘテロ原子を表し、nは、0~3の数である)の化合物又はこれらの混合物から好ましく選択される。更に好ましくは、Bは、炭素原子又はO、好ましくはCH
2基又はOを表し、nは0~3、好ましくは0又は1の数である。
【0044】
少なくとも1つの線状脂肪族ジカルボン酸は、特に好ましくは、2,2,4-トリメチルアジピン酸、2,4,4-トリメチルアジピン酸、2,2,5-トリメチルアジピン酸及び3,3-ジメチルグルタル酸からなる群から選択される。非常に特に好ましくは、3,3-ジメチルグルタル酸である。
【0045】
少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸は、特に好ましくは、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、テトラヒドロフラン-2,5-ジカルボン酸、テトラジヒドロジメチルフラン-2,5-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,4-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,5-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,6-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,7-ジカルボン酸、及び水素化二量体脂肪酸からなる群から選択される。また、少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸は、好ましくは、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、テトラヒドロフラン-2,5-ジカルボン酸、テトラジヒドロジメチルフラン-2,5-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,4-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,5-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,6-ジカルボン酸、及びデカヒドロナフタレン-2,7-ジカルボン酸からなる群から選択される。任意の所望の混合物を使用してもよい。非常に特に好ましくは、これは、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、又はシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸である。
【0046】
特に、更に好ましくは、線状脂肪族ジカルボン酸及び脂環式ジカルボン酸の混合物が使用される。特に好ましくは、少なくとも1つの線状脂肪族ジカルボン酸は、2,2,4-トリメチルアジピン酸、2,4,4-トリメチルアジピン酸、2,2,5-トリメチルアジピン酸及び3,3-ジメチルグルタル酸からなる群から選択され、少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸は、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、テトラヒドロフラン-2,5-ジカルボン酸、テトラジヒドロジメチルフラン-2,5-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,4-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,5-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,6-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,7-ジカルボン酸、及び水素化二量体脂肪酸からなる群から選択される。3,3-ジメチルグルタル酸と、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸又はシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸との混合物が特に好ましい。
【0047】
本発明によれば、方法工程(i)において、少なくとも1つのジアリールカーボネートも使用される。少なくとも1つのジアリールカーボネートは、好ましくは、式(2):
【化6】
(式中、R、R’、及びR’’は、それぞれ独立して、同一又は異なる場合があり、水素、任意に分岐したC
1~C
34アルキル、C
7~C
34アルキルアリール、C
6~C
34アリール、ニトロ基、カルボニル含有基、カルボキシル含有基、又はハロゲン基を表す)の化合物からなる群から選択される。少なくとも1つのジアリールカーボネートは、好ましくは、ジフェニルカーボネート、4-tert-ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-tert-ブチルフェニル)カーボネート、ビフェニル-4-イルフェニルカーボネート、ジ(ビフェニル-4-イル)カーボネート、4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニルフェニルカーボネート、ジ[4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル]カーボネート、ビス(メチルサリチル)カーボネート、ビス(エチルサリチル)カーボネート、ビス(プロピルサリチル)カーボネート、ビス(2-ベンゾイルフェニル)カーボネート、ビス(フェニルサリチル)カーボネート、及び/又はビス(ベンジルサリチル)カーボネートである。特に、少なくとも1つのジアリールカーボネートは、好ましくは、ジフェニルカーボネート、4-tert-ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-tert-ブチルフェニル)カーボネート、ビフェニル-4-イルフェニルカーボネート、ジ(ビフェニル-4-イル)カーボネート、4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニルフェニルカーボネート、及び/又はジ[4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル]カーボネートである。少なくとも1つのジアリールカーボネートは、特に好ましくは、ジフェニルカーボネートである。
【0048】
さらに、本発明によれば、方法工程(i)において、第1の触媒及び/又は第2の触媒が存在する。
【0049】
第1の触媒は、第三級窒素塩基である。この第1の触媒は、好ましくは、グアニジンから誘導される塩基、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、ヘキサメチルホスホルイミド(hexamethylphosphorimide)トリアミド、1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリジン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロデカ-5-エン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、DBN、エチルイミダゾール、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ塩基)、ピリジン、TMG、及びこれらの物質の混合物から選択される。更に好ましくは、第1の触媒は、グアニジンから誘導される塩基、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン、及び1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンから選択される。4-ジメチルアミノピリジンを使用することが特に好ましい。
【0050】
第1の触媒は、好ましくは、それぞれの場合に方法工程(i)において使用される全ての成分に対して、0.002重量%~0.10重量%の量で、より好ましくは、0.005重量%~0.050重量%の量で、特に好ましくは、0.008重量%~0.030重量%の量で使用される。
【0051】
方法工程(ii)において存在するアルカリ金属カチオンは、好ましくは、リチウムカチオン、カリウムカチオン、ナトリウムカチオン、セシウムカチオン、及びそれらの混合物である。
【0052】
使用される第2の触媒は、弱酸(25℃で3から7の間のpKa)の有機又は無機のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩である。適切な弱酸は、例えば、カルボン酸、好ましくはC2~C22カルボン酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、オレイン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、安息香酸、4-メトキシ安息香酸、3-メチル安息香酸、4-tert-ブチル安息香酸、p-トルエン酢酸、4-ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、ポリカルボン酸の部分エステル、例えばコハク酸のモノエステル、分岐状脂肪族カルボン酸、例えば、2,2-ジメチルプロパン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、2,2-ジメチブタン酸、及び2-エチルヘキサン酸である。
【0053】
適切な有機塩及び無機塩は、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸リチウム、オレイン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、並びにBPAの二ナトリウム塩、二カリウム塩、及び二リチウム塩である、又はそれらから誘導される。炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、及び対応するオレイン酸塩を使用することも可能である。フェノール類、特にフェノールの対応する塩の使用が更に可能である。これらの塩を、個別に又は混合物として使用することができる。
【0054】
第2の触媒は、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、ナトリウムフェノキシド、リチウムフェノキシド、安息香酸ナトリウム、安息香酸リチウム、塩化リチウム、リチウムアセチルアセトナート、及び炭酸セシウム、並びにこれらの物質の混合物からなる群から選択される。ナトリウムフェノキシド、リチウムフェノキシド、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸リチウム、塩化リチウム、及び/又はリチウムアセチルアセトナートを使用することが特に好ましい。塩化リチウムは、好ましくは、水溶液として、例えば15%の溶液の形で使用される。
【0055】
第2の触媒はまた、好ましくは、水酸化ナトリウム、ナトリウムフェノキシド、安息香酸ナトリウム、及び炭酸セシウム、並びにこれらの物質の混合物からなる群から選択される。ナトリウムフェノキシド、水酸化ナトリウム、及び/又は安息香酸ナトリウムを使用することが特に好ましい。安息香酸ナトリウムは、好ましくは、水溶液として、例えば15%の溶液の形で使用される。
【0056】
方法工程(i)において存在する全ての脂肪族ジヒドロキシ化合物と方法工程(i)における反応前に方法工程(i)において存在する全ての脂環式ジカルボン酸とのモル比は、好ましくは1:0.6~1:0.05、より好ましくは1:0.5~1:0.15、非常に特に好ましくは1:0.4~1:0.2であることが判明した。
【0057】
特に有利な機械的特性、良好な耐化学薬品性、及び良好な加工特性を達成するために、後続のポリエステルカーボネートにおける脂肪族ジヒドロキシ化合物と脂環式ジカルボン酸との比が高すぎない(すなわち、組み込まれる脂環式ジカルボン酸の含有量が低すぎない)ことが好ましい。
【0058】
さらに、本発明の方法工程(i)は、好ましくは、以下の工程(ia)~工程(ic)の少なくとも1つ、より好ましくは全てを含む:
【0059】
(ia)方法工程(i)において存在する全ての成分、すなわち、少なくとも1つの線状脂肪族ジカルボン酸及び/又は少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸、少なくとも1つのジアリールカーボネート、及び少なくとも1つの脂肪族ジヒドロキシ化合物を少なくとも、少なくとも1つの触媒の存在下で溶融する工程。これは、好ましくは、不活性ガス雰囲気下、好ましくは窒素下及び/又はアルゴン下で行われる。工程(ia)は、好ましくは、溶媒の不存在下で行われる。「溶媒」という用語は、この文脈において、当業者に知られている。「溶媒」という用語は、本発明によれば、好ましくは、方法工程(i)及び方法工程(ii)のいずれにおいても化学反応を受けない化合物を意味すると理解される。例外は、反応によって形成される化合物(例えば、ジフェニルカーボネートが少なくとも1つのジアリールカーボネートとして使用される場合のフェノール)である。当然ながら、出発化合物における微量の溶媒の存在を排除することはできない。この起こり得る事態は、好ましくは本発明の対象に含まれるべきである。しかしながら、本発明によれば、そのような溶媒を添加する能動的な工程を避けることが好ましい。
【0060】
(ib)混合物、好ましくは工程(ia)から得られた溶融物を加熱する工程。工程(ia)と工程(ib)とは重複する場合もある。それというのも、工程(ia)において溶融物を生ずるには同様に加熱が必要となり得るからである。加熱は、好ましくは、最初は150℃~180℃の温度である。
【0061】
(ic)混合物、好ましくは工程(ib)から得られた混合物を、好ましくは撹拌により、混合エネルギーを導入しながら反応させる工程。この場合にも、工程(ic)は工程(ib)と重複する場合がある。それというのも、加熱により既に混合物の反応が開始している場合があるからである。この場合に、溶融物は、好ましくは、標準圧力下で、工程(ib)によって150℃から180℃の間の温度に既に加熱されている。選択される触媒に応じて、温度は160℃~200℃の範囲内に留まることができる。一方で、工程(ic)における温度は、観察される反応性に応じて、200℃~300℃、好ましくは210℃~260℃、より好ましくは215℃~240℃に段階的に高められる。反応性は、当業者に既知のように、ガスの発生から推定され得る。この工程においては、原則的により高い温度も可能であるが、より高い温度では二次反応(例えば、変色)が発生する可能性がある。したがって、より高い温度はあまり好ましくはない。ガスの発生がほとんど止むまで、混合物を標準圧力下で撹拌する。本発明によれば、これらの条件下で、少なくとも1つのカルボン酸と少なくとも1つのジアリールカーボネートとの反応から形成されるアリールアルコール(例えば、ジフェニルカーボネートを使用する場合にはフェノール)を、既に部分的に除去することが可能である。
【0062】
本発明によれば、少なくとも1つのジヒドロキシ化合物が同様にこの時点までに既に反応し始めていることも観察された。これは、少なくとも1つのジヒドロキシ化合物と少なくとも1つのジアリールカーボネートとの反応からのカーボネート単位及び/又は少なくとも1つのジヒドロキシ化合物と少なくとも1つのジカルボン酸との反応からのエステル単位を含むオリゴマーの検出によって実証された。
【0063】
したがって、本発明によれば、方法工程(ii)を実施する前に、方法工程(i)から得られる混合物が、少なくとも1つのジヒドロキシ化合物と少なくとも1つのジアリールカーボネートとの反応からのカーボネート単位及び/又は少なくとも1つのジヒドロキシ化合物の反応からのエステル単位を含むオリゴマーを含むことが好ましい。
【0064】
工程(ic)における反応時間は、出発材料の量に依存する。好ましくは、工程(ic)における反応時間は、0.5時間から24時間の間、好ましくは0.75時間から5時間の間、より好ましくは1時間から3時間の間である。好ましくは、ガスの発生がほとんど収まることが保証される反応時間が選択されるべきである(上記の反応スキームを参照)。
【0065】
本発明によれば、方法工程(i)において存在する全ての脂肪族ジヒドロキシ化合物及び方法工程(i)において存在する全ての線状脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸の合計と方法工程(i)における反応前に方法工程(i)において存在する全てのジアリールカーボネートとのモル比が、1:0.4~1:1.6、好ましくは1:0.5~1:1.5、更に好ましくは1:0.6~1:1.4、より好ましくは1:0.7~1:1.3、特に好ましくは1:0.8~1:1.2、非常に特に好ましくは1:0.9~1:1.1であることが好ましい。当業者は、出発材料の純度に即して適切な最適比を選択することができる。
【0066】
方法工程(ii)
方法工程(ii)において、方法工程(i)から得られた混合物を、少なくとも縮合時に脱離した化学的化合物を除去しながら、更なる縮合に供する。本発明の文脈において、「更なる」縮合という表現は、少なくとも幾らかの縮合が方法工程(i)において既に起こっていることを意味すると理解されるべきである。これは、好ましくは、アリールアルコールの脱離を伴う、少なくとも1つの線状脂肪族ジカルボン酸及び/又は少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸と少なくとも1つのジアリールカーボネートとの反応である。しかしながら、オリゴマーへの更なる縮合も既に起こっていることが好ましい(方法工程(i)を参照)。
【0067】
方法工程(i)において第1の触媒のみ又は第2の触媒のみを使用した場合に、方法工程(i)において使用されなかった触媒を方法工程(ii)において添加する。
【0068】
「縮合」という用語は当業者に知られている。これは、好ましくは、(同じ物質又は異なる物質の)2つの分子が化合してより大きな分子が形成されるとともに、化学的に単純な物質の分子が脱離する反応を意味すると理解される。縮合時に脱離したこの化合物は方法工程(ii)において除去される。縮合時に脱離した化学的化合物を方法工程(ii)において減圧によって除去することが好ましい。したがって、本発明の方法が、方法工程(i)において形成された脂環式ジエステルを下回る、少なくとも1つの脂肪族ジヒドロキシ化合物を下回る、及び少なくとも1つのジアリールカーボネートを下回る沸点を有する揮発性物質を、方法工程(i)での反応の間に、任意に段階的な減圧によって除去することを特徴とすることが好ましい。この場合に、種々の揮発性物質を除去する場合には、段階的な除去が好ましい選択肢である。揮発性物質を可能な限り完全に除去するためにも、段階的な除去を選ぶことが好ましい。揮発性物質は、縮合時に脱離した化学的化合物(複数の場合もある)である。
【0069】
段階的な減圧は、例えば、塔頂温度(overhead temperature)が下がったらすぐに圧力を下げることによって行うことができ、こうして、縮合時に脱離した化学的化合物の連続的な除去が保証される。1mbar、好ましくは1mbar未満の圧力に達したら、所望の粘度に至るまで縮合を続ける。これは、例えば、トルクを監視することによって行うことができる。つまり、所望の撹拌器のトルクに達したら重縮合を止める。
【0070】
方法工程(ii)における縮合生成物の取り出しは、好ましくは200℃~280℃、より好ましくは210℃~260℃、特に好ましくは220℃~250℃の温度で行われる。取り出す間の真空は、更に好ましくは500mbar~0.01mbarである。真空を下げることにより段階的な取り出しを行うことが特に好ましい。非常に特に好ましくは、最終段階における真空は10mbar~0.01mbarである。
【0071】
本発明の更なる態様においては、開示された全ての組合せ及び好ましい事項において本発明の上記の方法によって得られるポリエステルカーボネートが提供される。本発明のポリエステルカーボネートは、全ての種類の成形品にそのまま加工することができる。他の熱可塑性物質及び/又はポリマー添加剤と共に熱可塑性成形コンパウンドに加工することもできる。本発明により、成形コンパウンド及び成形品が更に提供される。
【0072】
ポリマー添加剤は、好ましくは、難燃剤、ドリップ防止剤、難燃助剤、煙抑制剤、潤滑及び離型剤、核剤、帯電防止剤、導電性添加剤、安定剤(例えば、加水分解安定剤、熱老化安定剤及び紫外線安定剤、及び更にエステル交換防止剤)、流動促進剤、相溶化剤、染料及び顔料、耐衝撃性改良剤及び更に充填剤及び補強剤からなる群から選択される。
【0073】
熱可塑性成形コンパウンドは、例えば、ポリエステルカーボネート及び他の成分を混合し、得られた混合物を、既知の方法で、慣用の装置、例えば、内部混練機、押出機、及び二軸スクリューシステムで、好ましくは200℃~320℃の温度で溶融コンパウンド化(melt-compounding)及び溶融押出しを行うことにより製造してもよい。この方法は、本発明の文脈において概してコンパウンド化という。
【0074】
したがって、「成形コンパウンド」という用語は、組成物の成分が溶融コンパウンド化され、溶融押出しされたときに得られる生成物を意味すると理解される。
【0075】
本発明のポリエステルカーボネートから、又は該ポリエステルカーボネートを含む熱可塑性成形コンパウンドから得られる成形品は、例えば、射出成形、押出し及びブロー成形法により製造することができる。別の加工の形態は、予め製造されたシート又はフィルムからの熱成形による成形品の製造である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
本発明の実施形態0~実施形態25を以下に記載する。
【0077】
0.溶融エステル交換によりポリエステルカーボネートを製造する方法であって、
(i)少なくとも、少なくとも1つの線状脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸と少なくとも1つのジアリールカーボネートとを、少なくとも1つの脂肪族ジヒドロキシ化合物及び第1の触媒及び/又は第2の触媒の存在下で反応させる工程と、
(ii)方法工程(i)から得られた混合物を、第1の触媒及び第2の触媒の存在下で、少なくとも縮合時に脱離した化学的化合物を除去しながら、更なる縮合に供する工程と、
を含み、ここで、
第1の触媒が、少なくとも1つの第三級窒素塩基であり、
第2の触媒が、少なくとも1つの塩基性アルカリ金属塩であり、かつ、
方法工程(ii)におけるアルカリ金属カチオンの割合が、方法工程(i)において使用された全ての成分に対して0.0008重量%~0.0030重量%である、方法。
【0078】
1.溶融エステル交換によりポリエステルカーボネートを製造する方法であって、
(i)少なくとも、少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸と少なくとも1つのジアリールカーボネートとを、少なくとも1つの脂肪族ジヒドロキシ化合物及び第1の触媒及び/又は第2の触媒の存在下で反応させる工程と、
(ii)方法工程(i)から得られた混合物を、第1の触媒及び第2の触媒の存在下で、少なくとも縮合時に脱離した化学的化合物を除去しながら、更なる縮合に供する工程と、
を含み、ここで、
第1の触媒が、少なくとも1つの第三級窒素塩基であり、
第2の触媒が、少なくとも1つの塩基性アルカリ金属塩であり、かつ、
方法工程(ii)におけるアルカリ金属カチオンの割合が、方法工程(i)において使用された全ての成分に対して0.0008重量%~0.0030重量%である、方法。
【0079】
2.少なくとも1つの脂肪族ジヒドロキシ化合物が、シクロヘキサン-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,3-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,2-ジメタノール、シクロヘキサン-1,3-ジメタノール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、テトラヒドロフラン-2,5-ジメタノール、並びにイソマンニド、イソイジド、及びイソソルビド等の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールからなる群から選択されることを特徴とする、実施形態0又は1に記載の方法。
【0080】
3.少なくとも1つの脂肪族ジヒドロキシ化合物が、イソソルビドであることを特徴とする、実施形態2に記載の方法。
【0081】
少なくとも1つの線状脂肪族ジカルボン酸及び/又は少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸は、一般式(1):
【化7】
(式中、
Aは、R
3を表し、ここで、
R
3は、3個~16個の炭素原子、好ましくは3個~8個の炭素原子、より好ましくは3個~6個の炭素原子、更に好ましくは3個又は4個の炭素原子を有する線状アルキレン基を表し、このアルキレン基は、任意に一置換又は多置換されている場合があり、又は、
Aは、式(Ia)若しくは式(Ib):
【化8】
の一方を表し、ここで、
Bは、それぞれの場合に独立して、CH
2基、O、又はSを表し、
R
1は、それぞれの場合に独立して、単結合又は1個~10個の炭素原子を有するアルキレン基、好ましくは単結合又は1個~9個の炭素原子を有するアルキレン基、より好ましくは単結合又は1個~8個の炭素原子を有するアルキレン基、同様に好ましくは単結合又は1個~5個の炭素原子を有するアルキレン基、特に好ましくは単結合を表し、かつ、
R
2は、それぞれの場合に独立して、1個~10個の炭素原子、好ましくは1個~9個の炭素原子、より好ましくは1個~8個の炭素原子を有する
アルキル基を表し、
nは、0から3の間、好ましくは0から2の間、特に好ましくは0から1の間の数、非常に特に好ましくは1であり、
mは、0から6の間、好ましくは0から3の間、特に好ましくは0から2の間の数、非常に特に好ましくは0であり、かつ「*」は、式(1)におけるカルボン酸基が存在する位置を示す)によって表されることを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0082】
4.R3が、-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-、-CH2-C(CH3)2-CH2-、-CH2-CH(CH3)-CH2-C(CH3)2-、-CH2-C(CH3)2-CH2-CH(CH3)-、及び-CH(CH3)-CH2-CH2-C(CH3)2-から選択されることを特徴とする、実施形態3に記載の方法。
【0083】
5.少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸が、化学式(IIa)、(IIb):
【化9】
(式中、Bは、それぞれの場合に独立して、炭素原子、又はO及びSからなる群から選択されるヘテロ原子、好ましくはCH
2基、又はO及びSからなる群から選択されるヘテロ原子を表し、かつnは、0から3の間の数である)の化合物、又はそれらの混合物から選択されることを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0084】
6.少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸が、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、テトラジヒドロフラン-2,5-ジカルボン酸、テトラジヒドロジメチルフラン-2,5-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,4-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,5-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,6-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,7-ジカルボン酸、及び水素化二量体脂肪酸からなる群から選択されることを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0085】
7.式(Ia)及び式(Ib)におけるBが、CH2基を表すことを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0086】
8.少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸が、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、及びこれらの脂肪族ジカルボン酸の混合物からなる群から選択されることを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0087】
9.少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸が、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸であることを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0088】
10.少なくとも1つのジアリールカーボネートが、式(2):
【化10】
(式中、R、R’、及びR’’は、それぞれ独立して、同一又は異なる場合があり、水素、任意に分岐したC
1~C
34アルキル、C
7~C
34アルキルアリール、C
6~C
34アリール、ニトロ基、カルボニル含有基、カルボキシル含有基、又はハロゲン基を表す)の化合物からなる群から選択されることを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0089】
11.少なくとも1つのジアリールカーボネートが、ジフェニルカーボネートであることを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0090】
12.第1の触媒が、グアニジンから誘導される塩基、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、及びこれらの物質の混合物からなる群から選択されることを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0091】
13.第1の触媒が、4-ジメチルアミノピリジンであることを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0092】
14.第1の触媒及び第2の触媒が、方法工程(i)において存在することを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0093】
15.第1の触媒が、方法工程(i)において使用される全ての成分に対して、0.002重量%~0.1重量%の量で使用されることを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0094】
16.方法工程(i)において存在する全ての脂肪族ジヒドロキシ化合物と方法工程(i)における反応前に方法工程(i)において存在する全ての線状脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸、好ましくは脂環式ジカルボン酸とのモル比が、1:0.6~1:0.05であることを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0095】
17.方法工程(i)において存在する全ての脂肪族ジヒドロキシ化合物及び方法工程(i)において存在する全ての線状脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸、好ましくは脂環式ジカルボン酸の合計と方法工程(i)における反応前に方法工程(i)において存在する全てのジアリールカーボネートとのモル比が、1:0.4~1:1.6であることを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0096】
18.方法工程(ii)におけるアルカリ金属カチオンが、リチウムカチオン、カリウムカチオン、ナトリウムカチオン、セシウムカチオン、及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0097】
19.第2の触媒が、ナトリウムフェノキシド、リチウムフェノキシド、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸リチウム、及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、ナトリウムフェノキシド、水酸化ナトリウム、安息香酸ナトリウム、及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、実施形態18に記載の方法。
【0098】
20.方法工程(ii)を、210℃~280℃の範囲内の温度で実施することを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0099】
21.方法工程(ii)においてポリエステルカーボネートに縮合される全てのモノマーが、方法工程(i)の間に既に存在していることを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0100】
22.縮合時に脱離した化学的化合物を、方法工程(ii)において減圧によって除去することを特徴とする、上述の実施形態のいずれかに記載の方法。
【0101】
23.実施形態0~22のいずれかに記載の方法により得られ得るポリエステルカーボネート。
【0102】
24.実施形態23に記載のポリエステルカーボネートを含む成形コンパウンド。
【0103】
25.実施形態23に記載のポリエステルカーボネートを含む成形品。
【実施例】
【0104】
使用される材料:
シクロヘキサンジカルボン酸:シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸;CAS 1076-97-7 99%;東京化成工業株式会社(日本)、略してCHDA。元素分析によれば、CHDAには1ppm未満のナトリウムが含まれていた。
【0105】
ジフェニルカーボネート:ジフェニルカーボネート、99.5%、CAS 102-09-0;Acros Organics(ベルギー、ヘール)、略してDPC。
【0106】
4-ジメチルアミノピリジン:4-ジメチルアミノピリジン;98.0%以上;purum;CAS 1122-58-3;Sigma-Aldrich(ドイツ、ミュンヘン)、略してDMAP。
【0107】
イソソルビド:イソソルビド(CAS:652-67-5)、99.8%、Polysorb PS A;Roquette Freres(フランス、レストロン62136);略してISB。
【0108】
安息香酸ナトリウム:安息香酸ナトリウム(CAS 532-32-1);Sigma-Aldrich(ドイツ、ミュンヘン)。
【0109】
3,3-ジメチルグルタル酸:(CAS 4839-46-7)ABCR GmbH(ドイツ、カールスルーエ)。
【0110】
水酸化リチウム(LiOH):(CAS 1310-66-3);Sigma-Aldrich(ドイツ、ミュンヘン)。
【0111】
分析法:
溶液粘度
溶液粘度の決定:相対溶液粘度(ηrel;相対ηとも呼ばれる)を、ウベローデ粘度計を使用してジクロロメタン中で5g/lの濃度において25℃にて決定した。測定はDIN51562-3;1985-05に従って実施された。この測定では、測定対象のポリエステルカーボネートの通過時間をウベローデ粘度計によって測定した後に、ポリマー溶液とその溶媒との粘度差を測定した。このために、純粋な溶媒であるジクロロメタン、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンの測定を通じてウベローデ粘度計を初期較正する(常に3回以上9回以下の測定を行う)。その後、溶媒であるジクロロメタンを用いて実際の較正を行う。次に、ポリマー試料を秤量し、ジクロロメタン中に溶解し、次いでこの溶液についてフロータイムを3回測定する。フロータイムの平均値をHagenbach補正し、相対溶液粘度を算出する。
【0112】
実施例1:10ppmのNa
17.20g(0.10mol)のシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、29.83g(0.204mol)のイソソルビド、64.30g(0.3mol)のジフェニルカーボネート、0.0111gのDMAP(4-ジメチルアミノピリジン;出発材料CHDA、DPC、及びISBに対して100ppm)、及びおよそ10ppmのNaに相当する50.2μlの安息香酸ナトリウムの水溶液(141.4g/l)を、短行程分離機を備えたフラスコに入れた。脱気及び窒素による真空の解放を4回行うことにより、混合物から酸素を除去した。混合物を溶融し、撹拌しながら標準圧力で160℃に加熱した。混合物を160℃で50分間、175℃で50分間、190℃で30分間、及び205℃で50分間撹拌した。この操作の間に、二酸化炭素が継続的に発生する。CO2の発生が止んだら、浴温度を220℃に調整する。更に20分後に、負圧を適用する。30分間かけて圧力を10mbarに下げる。この操作の間に、フェノールを連続的に除去する。混合物を10mbarで約10分間撹拌する。次に、圧力を1mbar(およそ0.7mbar)未満に下げ、更に10分間縮合を続ける。その後、混合物の処理を止めた。
【0113】
1.258の相対ηの溶液粘度を有する淡褐色のポリマーが得られた。
【0114】
使用される安息香酸ナトリウム及びDMAPの量のみを変えて、実施例1について記載されるようにして、その他の実施例(Ex.)及び比較例(Comp.)を製造した。データを表1にまとめる。それぞれの場合に、使用される成分の重量に対するDMAP及びアルカリ金属のppmでの重量割合が示されている。
【0115】
全ての場合において、方法工程(i)において、両方の触媒を添加した。触媒は反応混合物中に完全に残る。DMAP及びアルカリ金属の比率は、方法工程(i)において使用される全ての成分に基づいている。
【0116】
【0117】
実施例1~実施例4は、本発明の方法が、所望のポリエステルカーボネートを所望の粘度ウィンドウ内で提供することを示している。アルカリイオンの含有量が低すぎると、比較例1及び比較例2に示されるように、分子量の不十分な増加しか達成することができない。アルカリの含有量が高すぎると、比較例3に示されるように、これは、実質的にもはや加工することができない粘度をもたらす。触媒を1つだけしか使用しないと(比較例4)、この場合も得られる粘度は低すぎる。
【0118】
本発明により使用される負圧;
実施例4
103.2g(0.60mol)のシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、176.35g(1.206mol)のイソソルビド、385.8g(1.80mol)のジフェニルカーボネート、0.0666gのDMAP(4-ジメチルアミノピリジン;出発材料CHDA、DPC、及びISBに対して100ppm)、及び安息香酸ナトリウムの水溶液の形の30ppmのナトリウム(実施例1と同じ濃度)を、短行程分離機を備えたフラスコに入れた。脱気及び窒素による真空の解放を4回行うことにより、混合物から酸素を除去した。混合物を溶融し、撹拌しながら標準圧力で180℃に加熱した。出発材料が完全に溶融したら、混合物を20分間撹拌する。これに続いて、25分間かけて240mbarに減圧する。40分間かけて圧力を140mbarに下げる。この操作の間に、フェノールを連続的に留去する。反応混合物における真空を窒素により解放し、混合物を確認して、CO2の発生がまだ起こっているかどうかを確かめる。CO2の発生が止んだら、縮合段階(段階2)を開始する(この時点でまだCO2の発生が観察され得る場合には、それが止むまで待つ;この時点で更に100ppmのDMAPを加えることができる。これが必要となるのは、この触媒が最初の段階で完全に除去された場合であり、これは停滞した重縮合段階によって裏付けられ得る)。圧力を140mbarに調整し、浴温度を105℃に調整する。15分間かけて圧力を70mbarに下げる。この後、圧力を50分間かけて1mbarに下げ、浴温度を240℃に上昇させる。1mbar及び240℃で、混合物を更に20分間撹拌する。溶融物が撹拌器に引き上げられたときは、これを撹拌器から取り除き、溶融物に戻す。これを行うには、混合物における真空を一時的に解放しなければならない。1.32の相対ηを有する淡褐色の重縮合物が得られる。
【0119】
実施例4は、本発明の方法が、負圧の適用により、段階1における反応時間を大幅に短縮し得ることを示している。使用される量がより多いにもかかわらず、段階1を大幅に短縮することができた。
【0120】
実施例5:3,3-ジメチルグルタル酸
24.63g(0.1685mol)のイソソルビド、8.01g(0.05mol)の3,3-ジメチルグルタル酸、46.36g(0.2165mol)のジフェニルカーボネート、100ppm(0.079g)のDMAP、及び30ppmのLi(ストック溶液(100.00g/L)によるLiOHの水溶液として→0.078mL)を、短行程分離機を備えた三ツ口フラスコに入れた。脱気及び窒素による真空の解放を4回行うことにより、フラスコの内容物から酸素を除去した。混合物を160℃に加熱し、溶融した。溶融後に、混合物を160℃で45分間撹拌した。次に、温度を1.5時間かけて段階的に225℃に高めた。30分間かけて圧力を500mbarに下げた。この操作の間に、フェノールを連続的に除去した。温度を235℃に高め、圧力を2時間かけてゆっくりと0.1mbarに下げた。235℃及び0.1mbarで10分間撹拌した後に、反応を止め、溶融物を取り出した。
【0121】
1.256の溶融粘度及び121℃のガラス転移温度を有する淡色のポリマー溶融物が得られた。
【0122】
実施例6:3,3-ジメチルグルタル酸及びシクロヘキサンジカルボン酸の混合物
29.83g(0.2040mol)のイソソルビド、8.01g(0.05mol)の3,3-ジメチルグルタル酸、8.60g(0.050mol)のシクロヘキサンジカルボン酸、64.30g(0.30mol)のジフェニルカーボネート、100ppm(0.0111g)のDMAP、及び安息香酸ナトリウム(0.0069g)としての10ppmのNaを、短行程分離機を備えた三ツ口フラスコに入れた。脱気及び窒素による真空の解放を4回行うことにより、フラスコの内容物から酸素を除去した。混合物を160℃に加熱し、溶融した。溶融後に、混合物を160℃で15分間撹拌した。温度を175℃に高め、この温度で75分間撹拌を続けた。次に、更に100ppm(0.0111g)のDMAPを加え、混合物を175℃で更に30分間撹拌した。ガスの発生が止んだ後に、温度を1.5時間かけて段階的に220℃に高めた。この操作の間に、フェノールを連続的に除去した。次に、温度を230℃に高め、圧力を1時間かけて段階的に1mbarに下げた。混合物を1mbarで更に10分間撹拌した後に、溶融物を取り出した。
【0123】
1.24の相対ηの溶液粘度を有する淡色のポリマー溶融物が得られた。
【0124】
実施例5及び実施例6は、線状脂肪族ジカルボン酸によっても、線状脂肪族ジカルボン酸及び脂環式ジカルボン酸の混合物によっても、所望の加工可能な粘度を有するポリエステルカーボネートが得られることを示している。
【国際調査報告】