(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(54)【発明の名称】機密データへの生体認証アクセスを制御するシステムを備える腕時計
(51)【国際特許分類】
G06F 21/62 20130101AFI20230201BHJP
G06F 21/32 20130101ALI20230201BHJP
G04G 21/02 20100101ALI20230201BHJP
G04G 99/00 20100101ALI20230201BHJP
【FI】
G06F21/62
G06F21/32
G04G21/02 Z
G04G99/00 B
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022533114
(86)(22)【出願日】2020-11-20
(85)【翻訳文提出日】2022-06-02
(86)【国際出願番号】 EP2020082819
(87)【国際公開番号】W WO2021110427
(87)【国際公開日】2021-06-10
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591260638
【氏名又は名称】チソット・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】フランツィ,エドアルド
【テーマコード(参考)】
2F002
【Fターム(参考)】
2F002AA12
2F002AC01
2F002BB00
2F002GA04
(57)【要約】
本発明は、腕時計のメモリ要素に記録された少なくとも1つの機密データ(28)へのアクセスを制御する方法であって、該メモリ要素は、一般データ(31)および該腕時計(100)の機能によるアクセスが、該腕時計の装着者の認証を要する該機密データ(28)という、2つのデータカテゴリを含み、
該腕時計(100)の該機能へのアクセスを承認するため、該腕時計(100)の該装着者を認証するステップ(9)と、
該メモリ要素に記録された該機密データ(28)または該一般データ(31)の少なくとも1つの使用を要する、該腕時計の該機能の1つを選択するステップ(10)と、
該機能が要する該少なくとも1つのデータが属するカテゴリを判定するステップ(12)と、
該少なくとも1つのデータが、該機密データ(28)のカテゴリに含まれる場合に、該装着者の皮膚の部位内に含まれる少なくとも1つの生体認証情報要素から、該腕時計(100)の装着者の識別を検証するステップ(15)と、
該腕時計の該装着者の識別が承認されると、該機能により該少なくとも1つの機密データを使用することを許可するステップ(27)とを含む、方法に関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腕時計のメモリ要素に記録された少なくとも1つの機密データ(28)へのアクセスを制御する方法であって、前記メモリ要素は、一般データ(31)および前記腕時計(100)の機能によるアクセスが、前記腕時計の装着者の認証を要する前記機密データ(28)という、2つのデータカテゴリを含み、
前記腕時計(100)の前記機能へのアクセスを承認するため、前記腕時計(100)の前記装着者を認証するステップ(9)と、
前記メモリ要素に記録された前記機密データ(28)または前記一般データ(31)の少なくとも1つの使用を要する、前記腕時計の前記機能の1つを選択するステップ(10)と、
前記機能が要する前記少なくとも1つのデータが属するカテゴリを判定するステップ(12)と、
前記少なくとも1つのデータが、前記機密データ(28)のカテゴリに含まれる場合に、該装着者の皮膚の部位内に含まれる少なくとも1つの生体認証情報要素から、前記腕時計(100)の装着者の識別を検証するステップ(15)と、
前記腕時計の前記装着者の識別が承認されると、前記機能により前記少なくとも1つの機密データを使用することを許可するステップ(27)とを含む、方法。
【請求項2】
前記判定ステップ(12)は、前記データの、前記機密データカテゴリ(28)、または前記一般データカテゴリ(31)に対する関連付けを定義する、前記データへのアクセスに対する判定基準値を推定するサブステップ(13)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記判定ステップ(12)は、前記推定されたアクセス判断基準値と、参照基準値とを比較するサブステップ(14)を含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記検証ステップ(15)は、前記腕時計(100)内に含まれた少なくとも1つのマルチスペクトル皮膚生体認証センサ(7)により、前記センサ(7)に隣接した、前記装着者の皮膚の部位の複数の画像を取得するサブステップ(16)を含み、前記画像は該皮膚の部位に含まれる前記少なくとも1つの生体認証情報要素を含む、請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記検証ステップ(15)は、前記皮膚の部位の前記撮影画像内に含まれた前記少なくとも1つの生体認証情報要素からデジタル識別要素を生成するサブステップ(17)を含む、請求項1から4に記載の方法。
【請求項6】
前記検証ステップ(15)は、前記装着者の前記認証を想定して生成されたデジタル識別要素を検証するサブステップ(23)を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記生体認証情報要素は、血管網または該皮膚の肌理に関する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
腕時計(100)のメモリ要素に記録された少なくとも1つの機密データへのアクセスを制御し、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法を実行するシステムであって、互いに接続された、処理ユニット(2)と、マルチスペクトル皮膚生体認証センサ(7)と、入力インタフェース(34)と、視覚情報報知インタフェース(4)と、一般データ(31)および前記機密データ(28)という2つのデータカテゴリを含む前記メモリ要素(6)とを備えるシステム。
【請求項9】
請求項8に記載のシステム(1)を備える、特に機械式スマートウォッチ(100)である腕時計(100)。
【請求項10】
処理ユニット(2)により実行されると、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法のステップ(10から27)を実行するためのプログラムコード命令を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腕時計であって、当該腕時計のメモリ要素に記録された機密データへのアクセスを生体認証により制御するシステムを有する腕時計に関する。より具体的には、本発明は、腕時計のメモリ要素に記録された少なくとも1つの機密データへのアクセスを制御する方法と、当該方法を実行するシステムとを網羅する。
【0002】
本発明はさらに、コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0003】
装着者が利用できる機能群を有する腕時計がある。当該機能は、同装着者の個人データの参照、あるいは金融機関サービス、商用サービス(オンラインショップ、電子決済利用業者)、またはeメールサービスかインスタントメッセージへのアクセスを可能とし得る。ここで、本明細書における課題は、腕時計の装着者が認証されると、それがだれであれ、腕時計の機能へのアクセスが可能となるという点にある。具体的には、腕時計が盗まれると、前記装着者の個人および機能データにアクセス可能となる場合が挙げられる。
【0004】
これに対するソリューション、即ち従来技術の課題の解決が求められることが理解できよう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は腕時計のメモリ要素に記録された機密データへのアクセスを制御する、安全で、信頼でき、かつロバストなソリューションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、腕時計のメモリ要素に記録された少なくとも1つの機密データへのアクセスを制御する方法において、該メモリ要素は、一般データおよび該腕時計の機能によるアクセスが、該腕時計の装着者の認証を要する該機密データという、2つのデータカテゴリを含み、方法は、
該腕時計の該機能へのアクセスを承認するため、該腕時計の該装着者を認証するステップと、
該メモリ要素に記録された該機密データまたは該一般データの少なくとも1つの使用を要する、該腕時計の該機能の1つを選択するステップと、
該機能が要する該少なくとも1つのデータが属するカテゴリを判定するステップと、
該少なくとも1つのデータが、該機密データのカテゴリに含まれる場合に、該装着者の皮膚の部位内に含まれる少なくとも1つの生体認証情報要素から、該腕時計の装着者の識別を検証するステップと、
該腕時計の該装着者の識別が確認されると、該機能により該少なくとも1つの機密データを使用することを許可するステップとを含む。
【0007】
別の実行形態において、
該判定ステップは、該データの、該機密データカテゴリ、または該一般データカテゴリに対する関連付けを定義する、該データへのアクセスに対する判定基準値を推定するサブステップを含み、
該判定ステップは、該推定されたアクセス判断基準値と、参照基準値とを比較するサブステップを含み、
該検証ステップは、該腕時計内に含まれた少なくとも1つのマルチスペクトル皮膚生体認証センサにより、該センサに隣接した、該装着者の皮膚の部位の複数の画像を取得するサブステップを含み、該画像は該皮膚の部位に含まれる該少なくとも1つの生体認証情報要素を含み、
該検証ステップは、該皮膚の部位の該撮影画像内に含まれた該少なくとも1つの生体認証情報要素からデジタル識別要素を生成するサブステップを含み、
該検証ステップは、該装着者の該認証を想定して生成されたデジタル識別要素を検証するサブステップを含み、
該生体認証情報要素は、血管網または該皮膚の肌理に関する。
【0008】
本発明はさらに、腕時計のメモリ要素に記録された少なくとも1つの機密データへのアクセスを制御し、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法を実行するシステムであって、互いに接続された、処理ユニットと、マルチスペクトル皮膚生体認証センサと、入力インタフェースと、視覚情報報知インタフェースと、一般データおよび該機密データという2つのデータカテゴリを含む該メモリ要素とを備えるシステムに関する。
【0009】
本発明はさらに、上記システムを備える、特に機械式スマートウォッチである腕時計に関する。
【0010】
処理ユニットにより実行されると、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法のステップを実行するためのプログラムコード命令を含む、コンピュータプログラム。
【0011】
以下の説明により、例示的であり非限定的に、その他特徴および利点が明らかになる。説明は次の添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実行形態に係る、腕時計であって、そのメモリ要素に記録された少なくとも1つの機密データへのアクセスを制御するシステムを備える、腕時計の概略図を示す。
【
図2】本発明の実行形態に係る、腕時計のメモリ要素に記録された少なくとも1つの機密データへのアクセスを制御する方法に関するフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1において、腕時計であって、そのメモリ要素に記録された少なくとも1つの機密データへのアクセスを制御するシステム1を有する腕時計が示されている。好ましくは、当該腕時計100は機械式スマートウォッチであって、腕時計ケースなどの本体と、この本体を、例えば装着者の手首に装着可能とする、バンドなどの装着要素とを備える。より具体的には、この腕時計100は、非限定的、および/または非消尽的に、
ハードウェアおよびソフトウェア資源、具体的には、特に一般データ31および機密データ28という2つのデータカテゴリを含むメモリ要素3と協働する、少なくとも1つのプロセッサを含む処理ユニット2と、
第1アナログ表示部、ならびに第2デジタルおよび/または英数字表示部が設けられた、ハイブリッドディスプレイ文字盤などの視覚情報報知インタフェース4と、
例えば視覚情報報知インタフェース4内に含まれる、キーボードまたはタッチインタフェースなどの入力インタフェース5と、
少なくとも1つの撮像センサ8aと、300から1,100nmの間に含まれる波長の照射光を発光することが可能で、さらにレーザー式であり得る少なくとも1つのマルチスペクトル光源8bと、少なくとも1つの熱画像センサ8cとを含むマルチスペクトル皮膚生体認証センサ7と、を備える。
【0014】
本発明の本実行形態において、機密データ28は、腕時計100の装着者の個人/機密/専用データであり、それに対する当該腕時計100の所与の機能によるアクセスには、装着者の認証が必要となる。一方、一般データは、装着者に関連し得る所謂「公開」データであり、所与の機能により自由にアクセスできる。例えば、機密データ28は、装着者の個人情報のような機密情報(金融機関情報、氏名、住所、生年月日、体重、年齢、性別、心拍数、睡眠覚醒周期など)を含む、画像、ビデオ、ドキュメント(例えば、テキスト、スプレッドシート、XMLなどの形式)に関するデジタルファイルを含み得る。これら機密データ28はさらに、暗号/解読鍵、証明書、認証コード、パスワード、および個人コードを含み得る。
【0015】
この腕時計100において、処理ユニット2は特に、視覚情報報知インタフェース4と、入力インタフェース5と、さらにマルチスペクトル生体認証センサ7とに接続される。そして、電子デバイス100の本体、および/または装着要素内に、マルチスペクトル生体認証センサ7が配置されることが理解されたい。
【0016】
この腕時計100は、認証済み装着者の識別が、装着者が気づかないように、すなわち腕時計100の装着者による直接的介入/対話を一切介さないで、したがって腕時計を装着している間中、制御されることを保証するように構成される。そして、装着者の認証が、具体的には皮膚の血管網または当該皮膚の肌理など、本装着者の皮膚内に含まれる少なくとも1つの生体認証情報要素に基づいて、装着者に意識されるおよび気づかれることなく行われる。装着者の身体を覆う皮膚は、異なる深度に存する皮膚の各部位が、異なる波長(スペクトル)での吸光および反射特性に関して、自然に目視することができないという点で、当業者が容易に想到しないような独自性がある。皮膚は簡潔に表現すると、「上皮」と呼ばれる、半透明で表面に存在する層と、その上皮の下の、「真皮」と呼ばれる層から形成される。真皮は、特に血管(または血管網)を含む。血管内ではヘモグロビンが、例えば760から930nmの間に含まれる、長近赤外波長に対して高反射となる。本明細書においては、これにより、装着者の皮膚の血管網の顕在化および強調が可能となる。すなわち、皮膚を形成する上皮と真皮という部位間で、吸光スペクトルは、電磁波長に応じて均一ではない。したがって、皮膚の外観および色は、これら現象の複雑な絡み合いによるものである。そこで、主に凹みまたは窪みなどで形成される、該装着者の皮膚の肌理のような生体認証情報要素を強調または顕在化することが望ましい場合、凹みの底から影の効果を消す傾向がある近赤外波長に限定された光源により、皮膚の照明が保証され得る。実際、これら近赤外波長によると、真皮上の、そして上皮を通じた反射による逆投影効果が得られる。一方、皮膚の照明を、典型的には、紫(400nm)から黄橙(600nm)までにかかる波長帯である、赤とは異なる色スペクトルによる光源で行うと、皮膚のこれら凹みの底に影がでることで、凹みが強く強調可能となる。なお、皮膚内に含まれた生体認証情報要素の識別は、好ましくは照明を行わずに熱画像センサ8cを使用することで向上され得る。例えば、皮膚の肌理を強調する際、特に本装着者の皮膚の対象部位に毛が生えている場合に、熱画像センサ8cを使用することで皮膚の肌理の凹みを顕在化可能となる。凹みは一般的に周辺の皮膚よりも高温となり、毛は当該周辺の皮膚よりも低温であるためである。したがって、この構成では、このようなそれぞれの温度の差により、毛が皮膚の肌理から熱的に区別できる。
【0017】
なお、強調または顕在化すべき生体認証情報要素によっては、所与の波長による照明下で、熱画像を撮影してもよい。
【0018】
したがって、本発明の原理によると、必要であれば、所要の生体認証情報要素の画像を撮影するため、異なる複数の波長で照明できる、該装着者の皮膚の部位内に含まれた少なくとも1つの生体認証情報から、装着者の認証が実行できることが理解されたい。したがって、異なる複数の波長による照明により、または例えば熱画像の撮影が実行される場合は照明無しで、これら画像に含まれる当該生体認証情報要素を強調できる。
【0019】
この腕時計において、腕時計100の処理ユニット2のメモリ要素3は、機密データ28および一般データ31と、さらにこれらデータをこれら2つの機密、一般というカテゴリのいずれかに分類するためのパラメータを含む。これらメモリ要素3はさらに、装着者の皮膚に関連し、装着者の皮膚の部位に関連する画像内に含まれた少なくとも1つの生体認証情報要素を特徴付け可能な画像デジタル処理アルゴリズム29を含む。このメモリ要素3はさらに、デジタル識別要素および参照用デジタル識別要素を生成するためのアルゴリズム30を含む。
【0020】
図2に示すように、システム1は、腕時計の、一般データ31および上述の機密データ28という2つのデータカテゴリを含むメモリ要素に記録された、少なくとも1つの機密データに対するアクセスを制御する方法を実行するように構成される。
【0021】
本方法は、腕時計100の機能を使用するためのアクセスを承認するように、同腕時計100の装着者を認証するステップ9を含む。すなわち、この認証ステップ9は、腕時計の装着者を、同腕時計100の全ての機能を使用できるようにアクセス可能となるように、確実に認証可能とする。具体的には、装着者と入力インタフェース34との間の対話を通じて、装着者が認証コードまたは暗号の入力することで、自身の識別を証明できるようにする。
【0022】
さらに、これら機能は、装着者と本腕時計100の入力インタフェース5との間の対話を通じて、当該機能が起動/選択されると、腕時計100の処理ユニット2により実行される処理アルゴリズムにより実行され得ることが理解されたい。このように実行されるこれらアルゴリズムは、一般データ31および/または機密データ28の使用を要する。本明細書において非限定的および非消尽的に呈される例では、腕時計のこれら機能は、画像またはビデオ編集機能、ワードプロセッシング機能、金融機関サービスに接続する機能、商用サービス(オンラインショップ、電子商取引利用店舗)に接続する機能、eメールまたはインスタントメッセージサービスに接続する機能に関し得る。
【0023】
方法はこの認証ステップ9の後に、メモリ要素内に記録された、上述の機密データ28または一般データ31の少なくとも1つの使用を要する、腕時計の上述の機能の1つを選択するステップ10を含む。このステップ10において、同機能は視覚的報知インタフェース4に表示された腕時計の全機能から、装着者と本腕時計100の入力インタフェース5との間の対話を通じて選択される。上述したように、このような対話はさらに、処理ユニット2による処理アルゴリズムの実行に寄与する。これは特に、本明細書において当該アルゴリズム実行に必要な、メモリ要素3に記録された少なくとも1つのデータから、当該機能を実行することを目的としたものである。
【0024】
方法はその後、当該機能が要する少なくとも1つのデータが属するカテゴリを決定するステップ12を含む。このステップ12は、当該データの機密データカテゴリ28または一般データカテゴリ31に対する関連付けを定義する、当該データへのアクセスの判断基準値を推定するサブステップ13を含む。このサブステップ13は、アクセス判断基準値、すなわち当該データに基づく、機能の性質または種類および当該データに対する分類パラメータを取得するための、処理ユニット2による演算処理を実行する段階を含む。当該パラメータは、対応するデータに関連付けられて、腕時計の処理ユニットのメモリ要素に記録される。このパラメータは、当該データが、機密データ28または一般データ31というカテゴリのいずれに関連付けられるかを定義する。したがって、このようなデータは、腕時計の異なる機能の性質または種類に応じて、当該機能の実行のために必要である可能性が高い。
【0025】
したがって、このパラメータは、画像などのデータが、腕時計の所与の機能について機密データであり、別の機能については一般データであると定義可能にし得る。したがって、このことから、データ項目のこれら2つのカテゴリのいずれに関連付けられるかは、その使用を要する機能に関連することが理解されよう。
【0026】
判定ステップ12は、その後、当該推定されたアクセス判定基準値と参照基準値とを比較するサブステップ14を含む。ここで、機能が要する少なくとも1つのデータは、アクセス判断基準値が参照基準値以上であれば、機密データ28のカテゴリに属する。一方、アクセス判断基準値が参照基準値未満であれば、当該少なくとも1つのデータは、一般データのカテゴリに属する。
【0027】
方法は、次に、当該少なくとも1つのデータが機密データ28のカテゴリに属する場合、本装着者の皮膚の部位に含まれる少なくとも1つの生体認証情報要素から、腕時計100の装着者の識別を検証するステップ15を含む。当該ステップ15は、選択された機能の完遂のため、使用する必要のある少なくとも1つのデータが、機密データ28に関連付けると判定された後に、体系的に実行される。すなわち同ステップは特に、処理ユニット2が、腕時計100の装着者が現状、腕時計の所有者であるかを確認出来るように実行される。本ステップ15は、センサ7により、装着者の皮膚の部位の複数の画像を取得するサブステップ16を含む。当該皮膚の部位は、当該センサ7に隣接しており、当該画像は、この皮膚の部位に含まれる上記少なくとも1つの生体認証情報要素を含む。このサブステップ16は、異なる波長に合わせて皮膚の部位を照明する段階17を含む。より具体的には、この段階17において、処理ユニット2は、マルチスペクトル生体認証センサ7、特に光源8bを制御して、本明細書において検出対象である、皮膚における上述の少なくとも1つの特有の生体認証情報要素を強調または顕在化させるのに適した特定の波長で、皮膚の部位に向けて照射光を発光させる。取得サブステップ16は、照明が設定されると、上記少なくとも1つの生体認証情報要素を強調または顕在化させる可能性の高い少なくとも1つの波長で照明された当該皮膚の部位の画像を撮影する段階18を含む。この段階18において、処理ユニット2は、光源8bの起動/停止と同期して、マルチスペクトル皮膚生体認証センサ7、特に撮像センサ8aを所与の波長にて制御し、これにより、少なくとも1つの波長で照明した皮膚の部位に関する少なくとも1つの画像を撮影する。
【0028】
取得サブステップ16はさらに、皮膚の部位の少なくとも1つの熱画像を撮影する段階19を含んでもよい。好ましくは、当該段階19は、照明無しで実行されるが、別の形態では、少なくとも1つの所与の波長で部位が照明されてもよい。当然、この波長は強調または顕在化すべき生体認証情報要素に依存する。この段階19は、照明17および撮影118段階の前または後に実行され得る。
【0029】
検証ステップ15は、その後、皮膚の部位の撮影画像内に含まれている該少なくとも1つの生体認証情報要素から、デジタル識別要素を生成するサブステップ20を含む。当該サブステップ20は、当該皮膚の部位に関連した画像内に含まれる該生体認証情報要素を特徴づける段階21を含む。この段階21において、処理ユニット2は撮影画像を処理するアルゴリズム29を実行する。これは各画像内で、それに含まれるこれら上記少なくとも1つの生体認証情報要素の特定/検出を目的としている。上述のように、これは例えば、装着者の当該皮膚の部位内に含まれた、皮膚の肌理、または血管網に関する情報要素であり得る。例えば、処理ユニット2によるこれらアルゴリズム29、30の実行は、これら画像を複数セグメントに分割する処理を含み得る。本明細書において、各撮影画像は、装着者の皮膚の部位の全体図となるものであるため、上記少なくとも1つの生体認証情報要素の識別について、画像の各領域間で関連の度合いが異なり得ることが理解されよう。当該分割処理は、これら画像に対して、処理対象セグメントを抽出し、処理されない部分を削除することに寄与する。これらアルゴリズム29により、その後、特定される該少なくとも1つの特定の生体認証情報要素に関する特徴を含むこれら画像セグメントに対し、皮膚の部位の局地的領域で索引作成することを含み得る。これにより、部位の各当該局地的領域について、当該領域の形態種別に応じて、適切な処置が実行可能となる。ここで、これらアルゴリズム29は、これら画像の各セグメントを、これら各画像の画素が持つ情報を強調する処理を行う。具体的には、処理、変換、および検出型の画像分析動作が行われる。次に、これらアルゴリズム29は、フィルタリング、および特徴抽出またはベクトル化動作を実行する。これにより、上記少なくとも1つの識別および抽出済みの生体認証情報要素に関する画像データを、パラメータ型データ、典型的には例えば指数またはパーセントで表された相対的数値に変換する。
【0030】
本明細書において、異なる照明下または照明無しで、皮膚の同一の部位を表す複数の画像を撮影することは、この特徴付け段階21の精度および効率向上に寄与することを理解されたい。
【0031】
生成サブステップ20は、続いて、上記少なくとも1つの生体認証情報要素の特徴付けから、デジタル識別要素を設計する段階22を含む。この段階22において、処理ユニット2は、アルゴリズム30を実行する。これは特に、特徴付け段階21にて得られた、上記少なくとも1つの生体認証情報項目に関連するパラメータ型データの処理を目的とした、当該デジタル識別要素の生成するものである。
【0032】
検証ステップ15は、その後、装着者の識別確認を想定して生成されたデジタル識別要素を認証するサブステップ23を含む。この認証サブステップ23は、処理ユニット2が、生成されたデジタル識別要素と、参照デジタル識別要素とを比較する段階24を含む。本方法において、参照デジタル識別要素は、装着者が完全に認証され、その識別が確認された段階で生成され得る。しがたって、この参照デジタル識別要素を定義するステップ11において、検証ステップ15において実行される撮影および生成サブステップ16および20と同様のサブステップが発生する。本方法において、腕時計100の装着者が認証されると、処理ユニット2はこの定義ステップ11を実行して、得られた参照デジタル識別要素を処理ユニット2のメモリ要素3に記録する。したがって、この参照デジタル識別要素は、処理ユニット2により自動で決定され得る。あるいは装着者による同参照デジタル識別要素の定義を補助することを目的とした調整処理において、装着者に設定され得る。
【0033】
この比較段階24は、生成されたデジタル識別要素が参照デジタル識別要素に対して、実質的に異なる、または異なる場合、装着者25の認証を失敗とするサブ段階を含む。この場合、処理ユニット2は、この機能を完遂するための処理アルゴリズムの実行を停止する。さらに、腕時計100へのアクセス、特に本腕時計の機能へのアクセスが制限される。この際、腕時計の装着者は、認証ステップ9が改めて実行されると、装着者と入力インタフェース34との間の対話を通じて、認証コードまたは暗号を入力することで自身の識別を証明するよう、再度認証が促される。事実、腕時計100の装着および所有者が、腕時計をその時点で保持していない可能性があるのである。
【0034】
比較段階24はさらに、デジタル識別要素が参照デジタル識別要素と略同一、または同一である場合に、装着者の認証を成功とするサブ段階26を含む。この場合、本方法において、識別が認証された腕時計の装着者に対し、機密データ28のカテゴリに含まれる上記少なくとも1つのデータの使用を許可するステップ27が実行される。このステップ27において、処理ユニット2はメモリ要素6に記録されたデータから、同機能を完遂することを目的とした処理アルゴリズムの実行を進める。
【0035】
本発明はさらに、腕時計100の処理ユニット2により実行されると、本法のステップ10から27を実行するためのプログラムコード命令を含むコンピュータプログラムを網羅する。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腕時計のメモリ要素に記録された少なくとも1つの機密データ(28)へのアクセスを制御する方法であって、前記メモリ要素は、一般データ(31)および前記腕時計(100)の機能によるアクセスが、前記腕時計の装着者の認証を要する前記機密データ(28)という、2つのデータカテゴリを含み、
前記腕時計(100)の前記機能へのアクセスを承認するため、前記腕時計(100)の前記装着者を認証するステップ(9)と、
前記メモリ要素に記録された前記機密データ(28)または前記一般データ(31)の少なくとも1つの使用を要する、前記腕時計の前記機能の1つを選択するステップ(10)と、
前記機能が要する前記少なくとも1つのデータが属するカテゴリを判定するステップ(12)と、
前記選択された機能の完遂のために使用する必要のある前記少なくとも1つのデータの関連付けの前記判定後に体系的に実行される、前記少なくとも1つのデータが、前記機密データ(28)のカテゴリに含まれる場合に、該装着者の皮膚の部位内に含まれる少なくとも1つの生体認証情報要素から、前記腕時計(100)の装着者の識別を検証するステップ(15)と、
前記腕時計の前記装着者の識別が承認されると、前記機能により前記少なくとも1つの機密データを使用することを許可するステップ(27)とを含み、
前記ステップ12は、前記データの、前記機密データカテゴリ(28)、または前記一般データカテゴリ(31)に対する関連付けを定義する、前記データへのアクセスに対する判定基準値を推定するサブステップ(13)を含み、該サブステップ(13)は、前記アクセス判断基準値、すなわち当該データに基づく、前記機能の性質または種類および当該データに対する分類パラメータを取得するための、処理ユニット(2)による演算処理を実行する段階を含み、このパラメータは、当該データが、機密データ(28)または一般データ(31)というカテゴリのいずれに関連付けられるかを定義し、したがって、このようなデータは、前記腕時計の異なる機能の性質または種類に応じて、当該機能の実行のために必要である可能性が高い、方法。
【請求項2】
前記判定ステップ(12)は、前記推定された判断基準値と、参照基準値とを比較するサブステップ(14)を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記検証ステップ(15)は、前記腕時計(100)内に含まれた少なくとも1つのマルチスペクトル皮膚生体認証センサ(7)により、前記センサ(7)に隣接した、前記装着者の皮膚の部位の複数の画像を取得するサブステップ(16)を含み、前記画像は該皮膚の部位に含まれる前記少なくとも1つの生体認証情報要素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記検証ステップ(15)は、前記皮膚の部位の前記撮影画像内に含まれた前記少なくとも1つの生体認証情報要素からデジタル識別要素を生成するサブステップ(17)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記検証ステップ(15)は、前記装着者の前記認証を想定して生成されたデジタル識別要素を検証するサブステップ(23)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記生体認証情報要素は、血管網または該皮膚の肌理に関する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
腕時計(100)のメモリ要素に記録された少なくとも1つの機密データへのアクセスを制御し、請求項1に記載の方法を実行するシステム(1)であって、互いに接続された、処理ユニット(2)と、マルチスペクトル皮膚生体認証センサ(7)と、入力インタフェース(5)と、視覚情報報知インタフェース(4)と、一般データ(31)および前記機密データ(28)という2つのデータカテゴリを含む前記メモリ要素(6)とを備えるシステム。
【請求項8】
請求項7に記載のシステム(1)を備える、特に機械式スマートウォッチ(100)である腕時計(100)。
【請求項9】
処理ユニット(2)により実行されると、請求項1に記載の方法のステップ(10から27)を実行するためのプログラムコード命令を含む、コンピュータプログラム。
【国際調査報告】