(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(54)【発明の名称】多結晶立方晶窒化ホウ素複合材料
(51)【国際特許分類】
C22C 29/16 20060101AFI20230201BHJP
C22C 27/04 20060101ALI20230201BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20230201BHJP
B22F 1/05 20220101ALI20230201BHJP
C22C 1/051 20230101ALI20230201BHJP
C04B 35/5831 20060101ALI20230201BHJP
B23K 20/12 20060101ALN20230201BHJP
【FI】
C22C29/16 A
C22C27/04 101
B22F1/00 P
B22F1/05
B22F1/00 N
C22C1/05 M
B22F1/00 R
C04B35/5831
B23K20/12 344
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022533128
(86)(22)【出願日】2020-11-25
(85)【翻訳文提出日】2022-06-02
(86)【国際出願番号】 EP2020083340
(87)【国際公開番号】W WO2021110506
(87)【国際公開日】2021-06-10
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517007574
【氏名又は名称】エレメント シックス (ユーケイ) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ゴーシュ サントーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス スアレス テレサ
(72)【発明者】
【氏名】アンデシン スティグ オーケ
【テーマコード(参考)】
4E167
4K018
【Fターム(参考)】
4E167BG05
4E167BG06
4E167BG13
4E167BG15
4K018AC01
4K018AD14
4K018BA08
4K018BA09
4K018BA20
4K018BC12
4K018EA11
4K018KA14
(57)【要約】
本開示は、摩擦撹拌接合で使用する多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)複合材料に関する。PCBN複合材料は、バインダマトリックス材料中にタングステン(W)、レニウム(Re)及びアルミニウム(Al)を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立方晶窒化ホウ素(cBN)微粒子60~90体積%と、バインダマトリックス材料40~10体積%とを含む多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)複合材料であって、前記cBN微粒子が分散し、前記バインダマトリックス材料が耐火金属であるタングステン(W)及びレニウム(Re)の合金90~99質量%を含み、酸化物以外の形態のアルミニウム(Al)0.5~10質量%を更に含む、多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)複合材料。
【請求項2】
前記バインダ相が前記cBN粒子上に界面層を更に含み、前記界面層がAl、又はそのホウ化物若しくは窒化物を含む、請求項1に記載のPCBN複合材料。
【請求項3】
前記界面層が前記cBN粒子の表面の少なくとも50%を覆う、請求項2に記載のPCBN複合材料。
【請求項4】
前記界面層が、Al、B及びNを含む反応層であり、窒化アルミニウム及び/又はホウ化アルミニウムを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
【請求項5】
前記反応層の組成がその厚さを通じて変化する、請求項4に記載のPCBN複合材料。
【請求項6】
Alを含む前記界面層が100~250nmの範囲、好ましくは170~190nmの範囲の平均厚さを有する、請求項2~5のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
【請求項7】
前記複合材料の全酸素含有量が、ここに記載されたように測定して、3%未満、好ましくは2%未満、好ましくは1%未満、好ましくは0.5%未満、好ましくは0.3%未満である、請求項1~6のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
【請求項8】
65~75体積%のcBN微粒子及び25~30体積%のバインダマトリックスを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
【請求項9】
前記cBN微粒子が8~20μmの範囲の平均粒子サイズを有する、請求項1~8のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
【請求項10】
前記W-Re合金の組成が72質量%~77質量%のタングステン(W)、及びそれに対応する28質量%~23質量%のReである、請求項1~9のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
【請求項11】
前記W-Re合金の粒子が、3~5μmの範囲の平均粒子径を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
【請求項12】
前記バインダマトリックス材料内にWC不純物を更に含み、前記不純物が前記PCBN複合材料の1質量%未満の量で存在する、請求項1~11のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
【請求項13】
前記バインダマトリックス材料にレニウム-アルミニウム合金を更に含む、請求項1~12のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
【請求項14】
前記cBN微粒子が、ここに記載された通りに測定して、0.40~0.70の範囲のシャープネスを有する、請求項1~13のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
【請求項15】
ここに記載されるような音速方法を用いて得られる500~560GPaのヤング率を有する、請求項1~14のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
【請求項16】
8~9km/秒の音速を有する、請求項1~15のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
【請求項17】
耐火金属のタングステン(W)及びレニウム(Re)を含み、酸化物以外の形態であるAlのマトリックス前駆体粉末0.5~10質量%を更に含むマトリックス前駆体粉末を提供する工程と;
cBN微粒子を含む立方晶窒化ホウ素(cBN)粉末を提供する工程と、
前記マトリックス前駆体粉末及び前記cBN粉末を混合する工程と;
前記混合したマトリックス前駆体粉末及びcBN粉末を圧縮して成形体を形成する工程と;
800℃~1150℃の温度で前記成形体のガスを抜く工程と;
1300℃~1600℃の温度、少なくとも3.5GPaの圧力で前記成形体を焼結して請求項1のPCBN複合材料を形成する工程と、
を含む多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)複合材料を製造する方法。
【請求項18】
前記複合材料が請求項2~16のいずれか1項に記載される通りである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記マトリックス前駆体粉末がW、Re、及びAlの別々の微粒子を含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記マトリックス前駆体粉末が、プレアロイされるか、又は塗膜と別の塗膜などの分離相として、W及びReを組み合わせた微粒子を含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項21】
前記混合工程が、露出した金属又はWC表面を有さない混合容器を用いて、前記マトリックス前駆体粉末及び前記cBN粉末を混合することを含む、請求項17~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記混合工程が、ポリマーであるか又はポリマーコーティングした混合ポットにおいて、前記マトリックス前駆体粉末及び前記cBN粉末を混合することを含む、請求項17~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
以下の:
前記cBN及びアルミニウム粉末を共に添加するサブ工程と;
800rpmで2分間、次に1200rpmで2分間、容器中で混合するサブ工程と;
前記タングステン-レニウム粉末の半分を前記cBN及びアルミニウム粉末に添加するサブ工程と;
800rpmで2分間、次に1200rpmで2分間、容器中で混合するサブ工程と;
前記タングステン-レニウム粉末の残りの半分を前記cBN及びアルミニウム粉末に添加するサブ工程と;
800rpmで2分間、次に1200rpmで2分間、容器中で混合するサブ工程と、を含む、請求項17~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記焼結工程が、1500℃の温度で焼結することを含む、請求項17~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記焼結工程が、4.0~6.0GPaの範囲の圧力で焼結することを含む、請求項17~24のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タングステン(W)と、レニウム(Re)と、高圧及び高温(HPHT)条件下で形成される立方晶窒化ホウ素(cBN)微粒子とを含む複合材料に関する。本開示は更に、鋼、ニッケル合金及び他の高融点合金の摩擦撹拌接合用プローブ又はツール材料としての複合材料の応用と、摩耗及び破断を低減させる観点から、既存のプローブよりはるかに高い性能を有するプローブとに関する。本開示は更に、このような複合材料を作製する方法、及びこのような材料を含むプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
摩擦撹拌接合(FSW)は、接合させる隣接した2つのワークピースに回転するツールを押しつけ、ツールの回転によりワークピースの摩擦及び粘性加熱を引き起こす技術である。混錬すると、広範囲の変形が塑性領域に沿って起こる。塑性領域を冷却すると、ワークピースが溶接継手に沿って接合される。ワークピースが固相のままであるため、このプロセスは、技術的に溶接プロセスというよりむしろ鍛造プロセスであるが、慣例に関わらず、溶接又は摩擦撹拌接合と呼ばれ、その慣例は以下の通りである。
低温金属のFSWの場合、ツール/ツールホルダ全体が一体に成形されたツール鋼であり得、その場合「プローブ」と呼ばれることが多い。ツールが鋼などの高温合金を溶接する場合、ツールは2つ以上のパーツであることが多く、この材料と直接接触する末端要素が溶接される。これは「パック」又は「ツールインサート」と呼ばれることが多く、ツールの残りは「ツールホルダ」であり、パックをしっかりと保持し、FSW機に適合する。従ってツールパック及びツールホルダは共に「ツール」又は「ツールアセンブリ」を構成する。典型的には、ショルダ及び撹拌ピンが形成されるようにツールパックが成形され、多くは逆方向のらせんが面に刻まれ、回転中に金属をピンの方に引き寄せ、金属をピンで形成される穴に押し流す。
一般的に、FSW操作は多くの工程、例えば:
a)ツールがワークピースと接触する点から、加熱、軟化したワークピースにショルダまでピンが完全に埋め込まれる点まで挿入する工程(別名、貫入工程)、
b)ツールが接合されるワークピース間の線に沿って横に動くツールの移動、
c)ツールをワークピースから引き上げる又は移動させる引き抜き工程、
を含む。
主に溶接を形成する段階であるツールの移動は、通常一定の条件下で実施され、典型的にこれらの条件は回転速度、貫入の条件、移動速度等である。
【0003】
FSW方法は1991年に接合・溶接研究所(TWI)により開発され、国際公開第93/10935号に記載されている。TWIはこの技術の使用を許諾しており、アルミニウム(Al)合金で作られたパーツを溶接するのに最も使用されているが、銅(Cu)、鉛(Pb)及びマグネシウム(Mg)など、他の低融点金属にも使用される。
国際公開第2004/101205号は、特に高圧高温(HPHT)条件下で製造された超研磨材料を含むFSWツールを主張している。具体的に、多結晶ダイヤモンド(PCD)及び多結晶窒化ホウ素(PCBN)が主張されている。
ゼネラル・エレクトリック社は、鋼及び他の材料のFSWのためにタングステン系耐火金属合金を使用することに関する特許(米国特許出願公開第2004/238599号明細書)を出願している。
FSWは金属を接続する確立された方法である。しかしながら、現在、FSWツール又はプローブ材料が、接合温度でその必須の性質を保持し、接合した金属と化学的に相互作用しないという必要条件のために、FSWは典型的に比較的低い融点を有する金属にのみ好適である。FSWによる鋼及び他の高融点金属の接合は、例えばAl及びCuのような低融点金属の場合に用いられる鋼プローブの使用では、実行できないためである。
鋼及び他の高融点金属のFSW接合を技術的に、商業的に実行可能にするため、最近では必須の性質を保持し、鉄環境下、1000℃超の温度で形成した材料を使用してFSWプローブを開発する傾向がある。好適なツールは、少なくともある程度温度によるが、ツールがプロセス中に受ける負荷により、開発するのが困難であった。一般的にこれらのツールは、限られたライフサイクルを有することが分かっている。更に、これらのツールは、成形するのが難しい高価な材料から製造されることが多く、結果としてツールは高価である。現在、このようなツールの寿命は、ツールあたりの溶接のメートル換算で測定することが多く、ツールを使用するコストはメートルあたりのアメリカドル換算で測定し、ツールコストをメートル単位のツール寿命で割る。2000年代初期又はそれ以前から鋼の摩擦撹拌接合に関する多くの利点の知識があったにも関わらず、現在利用可能なツールが高価で、信頼性がなく、寿命が限定されると考えられるため、その使用は非常に限定されていた。
【0004】
例えばHPHT法を使用して作製される多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)をプローブ材料として使用することは、当技術分野で説明されている。W、Re、Mo、これらの合金及び他の耐火金属の使用に関する実質的な研究もある。これらの方法(PCBN及び耐火金属)のどちらも異なるデメリットを有する。
・PCBNはこの用途で必要であるよりもはるかに耐摩耗であるが、その破壊靭性は理想的に必要であるよりも低い。この用途は、ワークピースが最初に冷たく、ワークピース及びツール間の接触点が比較的小さい場合に、2つのピース間の接合箇所でプローブをワークピースに貫入することを含む。このように、この工程は高い力及び迅速な加熱を含み、ツールに激しく圧力をかけ、損傷させる場合がある。その後の移動中に、ツールも回転しているため、ツールは相当な環状の力も受け、亀裂伝播が生じ得る。
・W、Mo及びReなどの耐火金属は十分な破壊靭性を有するが、商業的に実行可能なプローブに必要な耐摩耗性を欠き、主な破損のメカニズムは摩耗である。更に重要なことに、このような金属で作製されるプローブは、使用中に変形する傾向がある。
実質的な化学的不活性と、FSWの使用中に必要とされる形状とを保持すると同時に、W、Mo又はReの靭性及び強度をPCBNの向上した耐摩耗性と組み合わせた材料が長年にわたって必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の第1の態様において、60~90体積%の立方晶窒化ホウ素(cBN)微粒子及び40~10体積%のバインダマトリックス材料を含む多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)複合材料を提供する。cBN微粒子は分散し、バインダマトリックス材料は耐火金属であるタングステン(W)及びレニウム(Re)の合金90~99質量%を含み、酸化物以外の形態のアルミニウム(Al)0.5~10質量%を更に含む。
任意に、バインダ相はcBN粒子上に界面層を更に含み、界面層はAl、又はそのホウ化物もしくは窒化物を含む。
任意に、界面層はcBN粒子表面の少なくとも50%を覆う。
任意に、界面層はAl、B及びNを含む反応層であり、窒化アルミニウム及び/又はホウ化アルミニウムを含む。
反応層の組成はその厚さを通して変わり得る。
任意に、Alを含む界面層は、本明細書に記載される方法を用いて測定されるように、100~250nm、好ましくは170~190nmの範囲の平均厚さを有する。
任意に、複合材料の全酸素含有量は、本明細書に記載されるように測定して、3%未満、好ましくは2%未満、好ましくは1%未満、好ましくは0.5%未満、好ましくは0.3%未満である。
【0006】
PCBN材料は、70体積%のcBN微粒子及び30体積%のバインダマトリックスを含んでよい。好ましくは、PCBN複合材料は65~75体積%のcBN微粒子及び25~35体積%のバインダマトリックスを含む。
任意に、cBN微粒子は、本明細書に記載されるように測定して、8~20μmの範囲の平均粒子径を有する。
任意に、タングステン-レニウム合金の組成は、72質量%~77質量%のタングステン(W)、及びそれに対応する28質量%~23質量%のReである。タングステン-レニウム合金は、90質量%のタングステン及び10質量%のレニウム、又は80質量%のタングステン及び20質量%のレニウム、又は74質量%のタングステン及び26質量%のレニウム、又は70質量%のタングステン及び30質量%のレニウム、又は60質量%のタングステン及び40質量%のレニウム、又は50質量%のタングステン及び50質量%のレニウムを含んでよい。
任意に、W-Re合金粒子は、本明細書に記載されるように測定して、3~5μmの範囲の平均粒子径を有する。
PCBN材料は、バインダマトリックス材料にレニウム-アルミニウム合金を含んでよい。
PCBN複合材料はバインダマトリックス材料内にWC不純物を更に含んでよく、この不純物はPCBN複合材料の1質量%未満の量で存在する。
PCBN複合材料は、音速の測定値に基づき、また本明細書に記載されるように計算した500~560GPaのヤング率を有してよい。
cBN微粒子は0.40~0.70の範囲のシャープネスを有してよく、シャープネスは本明細書に記載されるように測定される。
PCBN複合材料は、本明細書に記載されるように測定して、8~9km/秒の音速を有してよい。
【0007】
本発明の第2の態様において、多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)複合材料を製造する方法を提供する。この方法は、
・耐火金属であるタングステン(W)及びレニウム(Re)を含み、酸化物以外の形態であるAlのマトリックス前駆体粉末0.5~10質量%を更に含むマトリックス前駆体粉末を提供する工程と;
・立方晶窒化ホウ素(cBN)微粒子を含むcBN粉末を提供する工程と;
・マトリックス前駆体粉末及びcBN粉末を混合する工程と;
・混合したマトリックス前駆体粉末及びcBN粉末を圧縮して成形体を形成する工程と;
・温度800℃~1150℃で成形体のガスを抜く工程と;
・1300℃~1600℃の温度、少なくとも3.5GPaの圧力で成形体を焼結して本発明の第1の態様に従ってPCBN複合材料を形成する工程と、
を含む。
任意に、マトリックス前駆体粉末はW、Re及びAlの別々の粒子を含む。或いは、マトリックス前駆体粉末はプレアロイされているか、又は塗膜と別の塗膜などの分離相として、W及びReを組み合わせた微粒子を含む。
混合工程は、露出した金属又はWC表面を有さない混合容器を用いて、マトリックス前駆体粉末及びcBN粉末を混合することを含んでよい。
混合工程は、ポリマーであるか又はポリマーコーティングした混合ポットにおいて、マトリックス前駆体粉末及びcBN粉末を混合することを含んでよい。
混合工程は、ブレード付き混合機を使用して、マトリックス前駆体粉末及びcBN粉末を混合することを含んでよく、混合機の混合ブレードはポリマーでコーティングされる。或いは、混合工程は、ブレードレス混合機を使用して、マトリックス前駆体粉末及びcBN粉末を混合することを含んでよい。
【0008】
任意に、この方法は以下の、
・cBN及びアルミニウム粉末を共に添加するサブ工程と;
・800rpmで2分間、次に1200rpmで2分間、容器で混合するサブ工程と;
・タングステン-レニウム粉末の半分をcBN及びアルミニウム粉末に添加するサブ工程と;
・800rpmで2分間、次に1200rpmで2分間、容器で混合するサブ工程と;
・タングステン-レニウム粉末の残りの半分をcBN及びアルミニウム粉末に添加するサブ工程と;
・800rpmで2分間、次に1200rpmで2分間、容器で混合するサブ工程と、
を含む。
任意に、焼結工程は温度1500℃で焼結することを含む。
任意に、焼結工程は4.0~6.0GPaの範囲の圧力で焼結することを含む。
任意に、バインダマトリックス材料は、98質量%のタングステン-レニウム合金及び2質量%のアルミニウム化合物を含む。
【0009】
本発明の第3の態様において、摩擦撹拌接合する鉄合金用の摩擦撹拌接合ツールを提供する。動作中のツールは回転軸を中心に回転し、該ツールはショルダ、及び頂点からショルダまで伸びる撹拌ピンを含む。動作中のツールは溶接1メートルあたり3μm未満の平均摩耗率を有し、該摩耗率は本明細書に記載されるように測定される。好ましくは、摩擦撹拌接合ツールは本発明の第1の態様に従ってPCBN複合材料を含む。本発明の第3の態様の他の任意の及び/又は好ましい特徴は、請求項2~16でも挙げられる。
本発明の第4の態様において、摩擦撹拌接合する鉄合金用の摩擦撹拌接合ツールを提供する。動作中のツールは回転軸を中心に回転し、該ツールはショルダ、及び頂点からショルダまで伸びる撹拌ピンを含む。動作中のツールは1μm/(m.mm)未満の平均摩耗率比(wear rate ratio)を有し、これは1μm/溶接1メートル/ピンの長さ1mmである。好ましくは、摩擦撹拌接合ツールは本発明の第1の態様に従ってPCBN複合材料を含む。本発明の第4の態様の他の任意の及び/又は好ましい特徴は、請求項2~16でも挙げられる。
本発明の第5の態様において、摩擦撹拌接合する鉄合金用の摩擦撹拌接合ツールを提供する。動作中のツールは回転軸を中心に回転し、該ツールはショルダ、及び頂点からショルダまで伸びる撹拌ピンを含む。動作中のツールは、光学顕微鏡下で確認できる脆性破壊を起こすことなく、10回を超える貫入に耐えるように製造、構成され、摩耗率は本明細書に記載されるように測定される。好ましくは、摩擦撹拌接合ツールは本発明の第1の態様に従ってPCBN複合材料を含む。本発明の第5の態様の他の任意の及び/又は好ましい特徴は、請求項2~16でも挙げられる。
本発明の第6の態様において、摩擦撹拌接合する鉄合金用の摩擦撹拌接合ツールを提供する。動作中のツールは回転軸を中心に回転し、該ツールはショルダ、及び頂点からショルダまで伸びる撹拌ピンを含み、ツールは本発明の第1の態様に従って多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)材料を更に含む。好ましくは、摩擦撹拌接合ツールは本発明の第1の態様に従ってPCBN複合材料を含む。本発明の第6の態様の他の任意の及び/又は好ましい特徴は、請求項2~16でも挙げられる。
【0010】
典型的に、ピンの長さは溶接部の意図した深さの95%であり、6mm厚の鋼におけるルートフローのない全層突合せ溶接に関して、ピンの長さは5.7mmである。多くのFSWプロセスパラメータは、何らかの方法で下記のようにピンの長さに対応する。便宜上、またツール開発及び試験の標準サイズであるため、議論の中心は6mmの溶接部用ツール、つまり5.7mmのピンの長さを有するツールであり、他のツールサイズに対処する倍率は後に挙げる。
本発明のツールインサートは、光学顕微鏡下で視認できるチッピング又はクラックなどの任意の脆性損傷が起こることなく、少なくとも10、20、30、50、100回の貫入に耐えることができる。
任意に、本発明のツールインサートは、使用中の平均摩耗率比が低い。摩耗率(WR、μm/m)は、ツールインサートの中心部(ツールの頂点)を横切って、ピンの長さLの1.5倍に等しい直径(例えば5.7mmのピンの場合、1.5×L=1.5×5.7mm=8.55mmの直径)まで軸方向で測定した平均摩耗(μm)として測定され、完了した試験溶接部1メートルあたりの数字として示される。摩耗は先端から軸方向に見てへこんでいないため、直径1.5Lの円筒内のツールインサートから失われた材料の総体積を取ることと同等であり、これを直径1.5Lの円筒に変換する。平均摩耗はこの円筒の長さであり、摩耗率(WR)は全溶接部の長さで割った数字である。
ツールに関する精密条件はピンのサイズによって変わるため、本発明により可能な摩耗率及び閾値も、ツールインサートのピンのサイズによって変わる。従って、すべてのツールサイズに関する数字を示すため、摩耗率(WR)をピンの長さで割って摩耗率比(WRR、μm/{m.mm})を表す。従って、摩耗率比は、移動した溶接部1メートルあたり測定される摩耗率(μm)をピンの長さmmで割った比である。一例として、本発明の材料は深さ6mmの溶接部1メートルあたり、<0.3μmの摩耗率を示し、0.3/5.7=0.053のWRRを示す。
従って、平均摩耗率比は好ましくは1.0μm/(m.mm)未満であり、好ましくは0.5、0.2、0.1、0.05μm/(m.mm)未満である。
【0011】
以下、添付図を参照し、単に例を用いて本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、摩擦撹拌接合ツールの部分側面図を示す。
【
図2】
図2は、
図1のツール、ツールホルダ、及びツールをツールホルダに固定する固定カラーを含むツールアセンブリの側面図である。
【
図3】
図3は、主な相を示すツール材料のX線回析トレースである。
【
図5】
図5は、ツールの微細構造の走査型電子顕微鏡(SEM)写真であり、倍率500Xである。
【
図6】
図6は、ツールの微細構造のSEM写真であり、倍率1000Xである。
【
図7】
図7は、類似のcBN粒子間の距離をどのように測定したかを示す概略図である。
【
図8】
図8は、ツール材料のcBN粒子径分布を示すグラフである。
【
図9】
図9は、ツール材料のcBN粒子間距離を示すグラフであり、最近隣距離d(μm)として表す。
【
図10】
図10は、ツールの微細構造と比較するため、公知のTiN/AlのPCBN材料の微細構造を倍率2000Xで示したSEM写真である。
【
図11】
図11は、
図16に示すTiN/AlのPCBN材料のcBN粒子径分布を示すグラフである。
【
図12】
図12は、TiN/AlのPCBN材料のcBN粒子間距離を示すグラフであり、最近隣距離d(μm)として表す。
【
図13】
図13は、ツールの微細構造内におけるcBN粒子のSEM写真であり、倍率15,000Xである。
【
図14】
図14は、cBN粒子を少なくとも部分的に覆う反応層を示す
図13のSEM写真を処理した複製である。
【
図15】
図15は、反応層の厚さを計算する目的で抽出した反応層のみを示す
図13のSEM写真を処理した複製である。
【
図17】
図17は、ヌープ硬さくぼみの処理済のSEM写真であり、倍率1000Xである。
【
図18】
図18は、焼結PCBN材料を作製する例示的な方法を示すフローチャートである。
【
図19】
図19は、補助的で任意のサブ工程を含む
図18の例示的な方法を示すフローチャートである。
【
図20】
図20は、焼結材料におけるcBN粒子の粒子シャープネスを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
形状
図1及び
図2に、FSWツールインサート10を大まかに示す。ツールインサート10は回転軸12を有し、FSWの間、その軸を中心として回転する。(なお、この回転軸は、主にツールインサートに機械加工される非対称の線パターンのため、回転対称の軸ではない。)使用中、ツールホルダ14にツールインサート10を焼きばめする。固定カラー16はツールホルダ14上の適当な位置にツールインサート10を固定する。なお、これは一般的な型のツールホルダの例であるが、本発明は使用するツールホルダの種類と関係はない。
ツールインサート10は撹拌ピン18、ショルダ20及び胴体部分(図示せず)を含み、すべてが軸に配置される。撹拌ピン18、ショルダ20及び胴体部分はすべて一体に形成される。
撹拌ピン18は丸い頂点22からショルダ20まで伸びる。この実施形態において、ショルダ20は実質的に円筒状であり、撹拌ピン18の円形基部よりも大きな直径を有する。撹拌ピン18は、頂点22からショルダ20まで伸びるらせんが特徴である。従って、撹拌ピン18は一般的に横から見ると円錐である。らせんは軸方向に面する平面経路24を有する。使用中、ツールの回転により、らせんがショルダ22の縁から中心まで、その後撹拌ピン18の長さまでワークピース材料を流し、ワークピース材料を撹拌ゾーン内で移動させ、ツールが移動するにつれてピンが形成する空隙を充填する。このような流れは、得られる溶接部における均質な微細構造を促進することが理解される。ツールインサート10の機能面26は放射状に向いている。
いくつかのトリフラット28がらせんに提供される。各トリフラット28は平面経路24のエッジ面取りである。この例において、3組のトリフラット28が提供され、各組が3つのトリフラット28を有し、この特定のツール10に合計9つのトリフラット28が作製される。各組は回転軸12の周囲を約120度の間隔をあけて位置している。各組において、トリフラット28はらせん上で軸方向に間隔をあけて位置し、つまり回転軸12に沿って間隔をあけるが、らせん上に位置する。
ショルダ20は軸方向に伸びて胴体部分と接触する。胴体部分はツールホルダ14と一体になるように構成される。出願人の同時係属出願である英国特許出願公開第1819835.8号明細書にツールホルダ及びそれに対応して成形したツールの一例を挙げている。例えば、胴体部分は6角形の横断面を有してよい。
【0014】
組成
材料の観点から、本発明によるツール材料の例となる組成を表1に示す。
【表1】
表1
X線回析(XRD)を使用すると、
図3及び
図4に示すように、複合材料内で特定される主な相はcBN及びW-Re合金であった。しかし、Re-Al合金及びAlNのピークも観察された。
【0015】
走査型電子顕微鏡(SEM)を使用し、微細構造を視覚的に捕捉した。
図5及び
図6を参照のこと。続いて、微細構造を特徴づけた。粒子径、及び本明細書で「最近隣距離(Near Neighbour Distance)d」と呼ぶcBN粒子間距離を倍率500X及び1000Xで撮影したSEM写真から測定した。測定法を
図7に示し、更に以下に説明する。
最近隣距離は「バインダの平均自由行程」の表現と類似している。炭化物に関する文献で広く用いられる用語であり、材料が室温まで冷却した後に測定する。恐らく、バインダの微細構造を特徴づける単一の最も重要なパラメータである。バインダの厚さの度合いであり、バインダ組成及び微粒子径の両方によって決まる。名目上、すべてがバインダ層により互いに離れていると想定される微粒子の平均間隔に基づくものであり、微粒子間に任意のバインダ相が無い、隣接する炭化物微粒子の存在を考慮に入れてよい(Exner,H.E,Gurland,J.,POWDER METALLURGY,13(1970)20-31,“A review of parameters influencing some mechanical properties of tungsten carbide-cobalt alloys”)。
【0016】
日本電子のJSM6610シリーズ走査電子顕微鏡(登録商標)を使用して、画像を捕捉した。サンプルを作動距離7mmに置き、加速電圧を10kVに設定した。ImageJ画像分析ソフトウェア及び「ウォーターシェッド」画像処理法を使用して、粒子径を測定した。
簡潔に述べると、
・SEM画像バイナリを作る工程;
・10ミクロン間隔で画像にグリッド線を付与する工程、
・線に沿って粒子径を測定する工程、
を使用して粒子径を測定した。
粒子径を33枚の顕微鏡写真から採取し、合計30,000超の粒子径サンプルを測定した。cBN粒子径を円相当径(ECD)として表す。結果を
図8に示す。平均cBN粒子径は9μmであった。
同様の粒子間距離、つまり最近隣距離も分析し、結果を
図9に示す。cBN粒子間距離は0.1から2.0μmであることを示す。
比較目的のため、及び最近隣距離の数的限界を理解するため、Ct1291とした第2のcBN材料を分析した。Ct1291の組成を表2に示す。
【表2】
表2
Ct1291の微細構造、cBN粒子径分布及び最近隣距離をそれぞれ
図10、
図11、12に示す。平均粒子径1~2μmでは、平均最近隣距離dは0.3μmであり、個別の結果は0.1から2.0μmで変化した。
【0017】
焼結ツール材料に戻る。前駆体粉末におけるアルミニウムの存在により、cBN粒子は、焼結cBN粒子の表面に窒化アルミニウム及び/又は二ホウ化アルミニウム(AlN/AlB
2)の反応層(つまり塗膜)を有することが分かった。反応層の厚さは使用するHPHT焼結条件が反映されるが、その測定をより詳細に以下に記載する。複合材料の靭性及び摩耗抵抗の改善は反応層に起因する。以下により詳細に記載するように、反応層により複合材料はFSWにおいて特に好適に使用されると提案されている。
塗膜の利点は、焼結材料の機械的性質を強化すると考えられることである。cBN微粒子及びW-Reバインダ間の強力な結合を確実にすることにより、材料の靭性(W-Reを支持するcBN)及び耐摩耗性(cBNがW-Reにより保持、支持される)のどちらも強化することができる。粒子間クラックを止めることも考えられる。
塗膜は複合物の熱伝導率を低減させることもできる。熱伝導率は材料中のcBNの体積分率に左右されるが、これはcBNがW-Reバインダよりはるかに高い熱伝導率を有するためである。しかし、cBNの熱伝導率への効果は、小さなcBN微粒子を用いることにより、またcBN微粒子上の塗膜により変えることができ、微粒子間の熱接続性(thermal connectivity)は悪くなる(界面層における異なるフォノン構造)。熱伝導率が低いほど、ツールに奪われる熱は少ないため、このツールを用いることで、ワークピースを良好に加熱する結果が得られる。特に、Al反応で形成した塗膜は、任意の以前の金属塗膜より化学的に不規則であろう。
分析の目的のため、反応層を例えば
図13及び
図14で特定し、反応層の厚さを測定し得るために、ソフトウェアを用いて視覚的にcBN粒子から分離した。例えば
図15を参照のこと。
図16に示すように、反応層の平均厚さは180nmであり、個別の結果は0.1μm~1.6μmであった。
【0018】
ヤング率及び音速
試験するツールの3つのバッチそれぞれのヤング率は、縦音速を測定し、各ツールの密度を計算して計算した。ツールの密度をアルキメデスの原理を用いて計算した。
ヤング率 Y=ρv
2
(式中、ρは固体の密度であり、vは音速である)
結果を表3に示す。
【表3】
表3
【0019】
ヌープ硬さ
図17に示すように、材料のヌープ微小硬さを鏡面研磨表面上、荷重1kg、保持時間15秒下で測定した。少なくとも16のくぼみを測定して材料の平均微小硬さを得た。
ヌープ硬さ:
【数1】
(式中、HKはヌープ硬さGPa、Pは印加した荷重Kg、dは対角線の長さである)
ヌープ硬さの結果を表4に示す。
【表4】
表4
ツール材料の平均ヌープ硬さは16.9±3.5GPaである。結果の変動はこの種の複合材料につきものであり、バインダが優位な領域又はcBNが優位な領域のどちらにくぼみをつけるかによるものである。
【0020】
製造方法
図18及び19は、ツールの焼結PCBN材料を製造する例示的な方法を示す。
図19は
図18と同じプロセスを示すが、任意の混合サブ工程を追加する。以下の番号は
図18及び
図19と一致する。
S1.マトリックス前駆体粉末をcBN及びバインダの体積パーセント比70:30で提供した。
S2.cBN粉末をW-Re及びAl(金属)バインダ粉末に添加した。cBN粉末におけるcBN微粒子の平均径は8~20μmである。cBNの径分布は一峰性又は多峰性(二峰性を含む)でよい。バインダの組成は、W-Reが98質量%、Alが2質量%であった。添加するアルミニウムの量はcBN粒子の推定表面積を考慮して、確実に少なくとも部分的に被覆するようにする。
W-Re混合物内におけるタングステンのレニウムに対する割合は、任意に95:5、90:10、80:20、74:26、70:30、60:40、50:50の比率である。
【0021】
粉末を以下の順序に従って混合した。
S3.cBN粉末及びアルミニウム粉末を800rpmで2分間、次に1200rpmで2分間混合した;
S4.次に、W-Re粉末混合物の半分をcBN粉末に添加した、
S5.粉末を800rpmで2分間、次に1200rpmで2分間混合した;
S6.次に、残りのW-Re粉末混合物をcBN-W-Re混合物に添加した、
S7.粉末を800rpmで2分間、次に1200rpmで2分間混合した。
ブレードレス乾燥粉末混合機であるSpeedMixer(登録商標)を使用して、前駆体粉末を混合した。この方法を使用する利点は、摩擦摩鉱と異なり、粉砕媒体による不純物が回避されることである。従来、摩擦摩鉱は、マトリックス前駆体微粒子を所望のサイズに破壊するだけでなく、マトリックス前駆体微粒子及びcBN微粒子を密接に混合、分散するために用いられる。通常、摩擦摩鉱は炭化タングステンボールを用いて実施される。摩擦摩鉱を使用して作製する焼結PCBN材料は、8質量%までの炭化タングステン、典型的に2質量%から6質量%の炭化タングステンを含有し得る。これらの微粒子は、特にハードターニングなどの用途において、PCBN材料の性質に対して有害作用を有することが知られている。更に、摩擦摩鉱中の炭化タングステンの焼付きは制御されないため、異なるバッチは異なる径分布を有する炭化タングステンを異なる量で含有する場合があり、ツール用途で使用される場合、焼結PCBN材料の性能が予測できなくなる。
【0022】
この方法の別の利点は、cBN粒子の破砕がないことである。この効果は、複合材料内の焼結cBN粒子が、摩擦摩鉱後に焼結したものよりシャープネスが大きいことである。シャープネスは、材料の完全性及び靭性を強化することもできる。以下、シャープネスをより詳細に説明する。
更に、ブレードレス混合方法は、前駆体粉末の反応性を低下させて、より安全に取り扱えるようする。最後に、前駆体粉末の純度が高いほど(著しく汚染が少ない)、焼結PCBNの強度は高くなる。
焼結前後のcBN粒子のシャープネスは主に混合方法により決定されるため、粒子のシャープネスを使用する混合方法の指標として用いることができる。ブレードレス乾燥混合機を使用した混合により、摩擦摩鉱で成形したものと比較して異なる粒子シャープネスを有するcBN粒子が作製される。粒子シャープネスをどのように計算するかの詳細は以下に記載する。24000超の粒子を500X倍率で撮影したSEM写真から分析した。ImageJソフトウェアを分析に使用し、平均真円度は0.62±0.1であった。結果の範囲を
図20に示す。本明細書において、1ミクロン未満の小さな粒子径では正確な測定ではないため、真円度は1ミクロン超の粒子径に基づいている。
溶媒の超音波混合又は乾燥音響混合を、上記ブレードレス混合の代替案として使用することができる企図される。そのため、焼結複合材料に見られる不純物の濃度は4質量%未満であり、3質量%、又は2質量%、又は1質量%未満とすることができる。炭化タングステン不純物を回避することができるが、原料の前駆体粉末から生じる微量の鉄不純物が依然として存在する場合がある。
ブレードレス混合、超音波混合及び乾燥音響混合はいずれも、摩擦摩鉱と比較して早く、効率的な混合方法を提供し、焼結PCBN材料を調製する時間が大きく削減されるという利点がある。
【0023】
S8.その後、混合粉末を成形体に圧縮した。最終焼結中に確実に体積変化が最小となるように、前圧縮が必要である。密度が焼結前に最大にならなければ、収縮が増加して焼結中の圧力低下を引き起こす場合があり、cBNの六方晶窒化ホウ素(hBN)への変換、及びサンプルのクラックが引き起こされる。
S9.ニオブなどの耐火金属で形成した「缶」としても知られる筐体に成形体を導入した。その後、混合物を含有する缶を真空炉(Torvac)に置き、真空下、高温条件に付した。この工程は混合物から過剰な酸素を除去した後、焼結を補助する。900℃から1150℃の温度でガス放出を実施した。ガス放出は、完成した複合材料において高密度を達成するのに重要な因子である。ガス放出を行わなければ、焼結の質が低下する。ガス放出は、ガスが放出される材料の量に応じて、一晩、最低8時間行われることが多い。
S10.ガス放出後、まだガス放出条件下で缶を密封し、続いて混合物を含有する缶をHPHTカプセル内に置いた。
S11.その後、混合物を含有する缶を完全焼結のために高圧力、高温条件に付した。焼結温度は1300℃~1600℃であり、圧力は少なくとも3.5GPaであった。通常、焼結圧力は4.0~6.0GPa、好ましくは5.0~5.5GPaである。焼結温度は好ましくは約1500℃である。完全焼結により、マトリックス材料に分散したcBN微粒子を含む多結晶材料が形成される。
焼結プロセス後、圧力を徐々に周囲条件まで低下させた。完全に焼結した複合材料を室温まで放冷後、摩擦撹拌接合に好適なツールに成形した。
【0024】
酸素レベル
酸素は、ツールインサートの性能に有害である。酸化物形態でない限り、Al添加剤はツール性能に有益である。同様に、ツールインサートを焼結するのに使用される原料中の酸素汚染、又は動作温度(>600℃)にある間に、ツールが大気酸素に暴露されることも有害である。
多くの他の材料と同様に、PCBN中の酸素測定は、測定に影響する大気汚染を避ける必要がある。SEMにおけるエネルギー分散型X線分析(EDS)、又は原子イオン化技術により実現することができる。
好ましくは、複合材料の全酸素含有量は3%未満、好ましくは2%未満、好ましくは1%未満、好ましくは0.5%未満、好ましくは0.3%未満である。
【0025】
試験方法
反応層の厚さ測定方法
・スケールバーを使用してSEM画像を較正する工程;
・グレイスケールの閾値を特定する技術を用いて反応層を特定する工程;
・画像をバイナリ化して、cBN粒子に付着する反応層のみを強調する工程;
・横及び縦方向のどちらも100nm間隔でグリッドを付与する工程、
・両方向の厚さを測定する工程、
を使用した。
【0026】
ピーク比計算に関するXRD手順
以下の条件下、Philips X’pert(Xpert)(登録商標)X線回折装置でXRD研究を行った。
【表5】
表5
XRDピーク下面積比を計算し、材料の組成を下記表に示すように決定した。
【表6】
表6
【0027】
音速測定
走査型音響顕微鏡(SAM)を非破壊方法として使用して、故障前の部品の欠陥を検出、定量し、また材料の音速を決定する。
以下の条件下、Kramer Sonic Industries GmbHのKSIv400(登録商標)SAM機を使用した。
【表7】
表7
【0028】
ツールインサートの性能試験
任意に、ツールは使用中の平均摩耗率比が低く、破損することなく、多数の貫入サイクルに耐えることができる。摩耗率は、ツールの中心領域(ツールの頂点)を横切って、ピンの長さに等しい直径まで軸方向で測定される平均摩耗率として測定され、仕上げた溶接部1メートルあたりの数字として示される(例えば、試験溶接部の長さメートルで割る)。
ツールの性能を特徴づける観点から、通常ツールは、摩耗又はクラックの2つのメカニズムのうちの1つにより機能しなくなる。摩耗は、ツールの表面特徴の実質的な損失を引き起こし、金属をピンの下方に送り、移動しながらツールの後ろの空隙を満たす。クラックはツールの形状を実質的に悪化させる。初期ソースが何であれ、典型的にクラックはピンへの環状の荷重下で起こり、最後にはピンの基部を囲み、ピンの切断を引き起こす。クラックの2つの原因は特定されており、主要な原因はツールを冷たいワークピースに貫入する間の高い局地的な荷重であり、2つ目がツールホルダへのツールの据え付けが悪いことである。このように、ツール寿命の主要なパラメータは、以下の通りである。
・(溶接部の質が摩耗又は破断により著しく悪影響を受ける前の)溶接されるメートル数。上記の通り、クラックが起きなければ、ここでの主な問題はツールの摩耗率であり、これは主にツール材料の特性である。高性能ツールの寿命試験は非常に高価であるため、より実用的な試験は所定の長さの溶接部にわたる摩耗率を測定することであり、その方法をここでは採用する。
・クラック、結果として故障を引き起こし得るワークピースへの貫入数。ワークピースの予加熱、又はパイロット穴をあけるなど、いくつかの公知の方法で、貫入中に作用する力を軽減させることができる。試験の目的で、貫入のために任意の特別な準備又は軽減技術を行うことなく、室温でワークピースに貫入することにより貫入を完了する。
【0029】
摩耗率測定のための標準FSW試験
摩耗率試験をまず6mmの溶接用に設計されたツールについて記載し、その後他のツールサイズについて法則化する。ツールのピンの長さは、意図した溶接の深さの95%であり、従って6mmの溶接深さ(DW)について、ツールのピンの長さ(L)は5.7mmである。6mmのツールへの言及は、意図した溶接深さDW、従って5.7mmのピンを有するツールを指す。
ツールをツールホルダに取り付け、FSWの条件を適用するのに好適なフライス盤に取り付ける。この条件は、主に6mm深さの溶接部を作製するのに好適なツールを試験するためのものであるが、他のツールサイズに合わせて調整する方法を挙げる。
ワークピースはDH36鋼である。簡潔に、試験は溶接前に別々の2つの板材を必要とせず、単一の板材の領域内で行うことができる。試験の重要な要素とならないように、典型的に板材の厚さは約8mmと必要以上に大きくする。試験を通してツールをわずかに傾け、0~5度、典型的に2度の角度で移動方向にピンを前方に突き出す。
Arのシールドガスを試験中に適当な位置に維持し、ツール及びワークピースが溶接中に大気酸素と接触することを回避する。
【0030】
FSWの基本変数(一貫して標準SI単位を前提とする)は、
L=ピンの長さ(m)
v=移動速度(m/秒)
ω=ツールの回転率
である。
この運転は3つの力を印加して駆動される。
FA=軸荷重(N)
FT=移動力(N)
FR=回転力(N.m)
ツールの回転率は、プロセスの開始中に変更される。
挿入:冷たいツールを800rpmで回転させ、ワークピースにゆっくりと安全な方法で移動させて、貫入を90~120秒で完了させる。
移動:ツール回転率を200rpmまで下げ、ツールを0.3m/分又は0.005m/秒で移動させる。
引抜:ツールの回転は移動のために継続する。ツールが十分に冷えて酸化のリスクが回避されるまでアルゴンパージガスは維持される。この点は強調する必要がある。引抜後のクールダウン中、効果が不十分な不活性ガス(典型的にアルゴン)パージを使用することで起こるツールインサートの酸化は、摩耗率を実質的に増加させる場合があり、10倍超で増える可能性がある。
【0031】
貫入数の測定(貫入寿命)
ツールを上記のように貫入した後、引き抜き、繰り返す前に最低1m移動させ、貫入の総数をカウントする。ワークピースを予熱する、又は同軸もしくは角度のあるパイロット穴をあけるなどの技術を使用することにより、貫入力を軽減させず、最初に室温でワークピースの平面に実施する。より典型的に、貫入試験及び摩耗試験を組み合わせるために、下記摩耗のための溶接試験は、約2メートルの部分で完了する。貫入の正確な条件は、当業者の一般的な技術を用いて最適化することができ、ツール先端への衝撃荷重(摩擦加熱による力及び熱衝撃の組合せ)を最小化し、ツールの貫入寿命を最大にする。
本発明のツールインサートは、光学顕微鏡検査下でツールインサート上に視認することができるチッピング又はクラックなど、任意の脆性損傷を起こすことなく、少なくとも10、20、30、50、100回の貫入に耐えることができる。
一方、先行技術のツールは最初の貫入後、特に貫入を緩和させない場合、機能しなくなることが知られており、一般に5回を超える貫入に耐えられない。
【0032】
ツールの摩耗率測定
典型的に、ツールインサートの最大摩耗率は、カーブしてツールインサートのショルダに続くピンの基部で見られる。摩耗率を測定するため、ツールインサート間を比較するために、プロトコールの確立が必要であった。これは、以前に体系的に報告された測定ではないためであり、今まで多くのFSWツールが鋼ですぐに機能しなくなっているためである。
摩耗率は特定の他の試験パラメータと相関関係にあるため、試験の他の条件を明記又は最適化する必要がある。特定の実用的な開始パラメータは以下の通りであるが、当業者はパラメータの最適化によりツールインサートの寿命をわずかに改善することができ、このような最適化は試験のために予想される。ツールの移動は主に溶接部を形成し、摩耗を生じる段階であり、ピンの長さ、ツールの回転速度、及び移動速度に関する一定の条件下で実施される。機械の移動がワークピースに対して正確に調整されるなら、このプロセスは位置制御下で実施することができるが、ワークピースの小さなゆがみを許容するために、当業者は印加する力を制御することが一般的により適当であると理解するであろう。これは局所的なワークピースの変化に対する応答性を与える。いずれにしても、ツールの移動が開始されると、条件は溶接の終わりまで、移動の間基本的に一定のままである。これらの条件は、本明細書では「定常状態運転」とみなされる。
【0033】
以下のプロトコールは安定し、信頼できることが分かっている。目的としては、ツールに対する摩耗による材料損失を測定すること、この数字を溶接部の長さ1メートルあたりの平均線摩耗率として示すことである。試験の感受性を最大にするため、ツールインサートの回転軸を中心とした直径が1.5×ピンの長さと等しい円に測定を制限する。原理上、ツールから摩耗による体積損失を測定する方法はいくつかあるが、ツールはへこみを有さないため、最も簡単な方法は3D光学顕微鏡を使用することであり、使用前、及び試験中一定期間ごとに回転軸に沿ってツールの先端を撮影する。3D画像から、差分画像を生成することができ、この画像はツール使用の結果として、画像における様々な面間の高度差を示し、この計算から、ピンの長さと等しい直径により定義された円内において、画像中の各点で回転軸と平行方向に沿った高度変化を示す。これは材料損失の全体積を示し、これを円の面積で割って平均摩耗率が得られ、溶接部の長さで割って溶接部1メートルあたりの摩耗率が得られる。
明確にするため、理想を言えば、mm及びμmなどの任意の他の副次的単位よりむしろメートル及び秒に基づく基本のSI単位を使用してすべての比率計算を終えたいが、この分野におけるパラメータ値のスケールでは実行できない。従って、以下の単位がこの明細書を通して遵守される。
ピンの長さL(mm)
摩耗(μm)
摩耗率(WR)(μm/m)
摩耗率比(WRR)(μm/(m.mm))
1分あたりのサイクルの回転率
ツールが実質的に摩耗するほど、ツール及びワークピース間の相互作用の効率が悪くなるほど、ツールの摩耗率は上昇し得る。成形に使用するプロセス(例、粉砕)によってツールが任意の表面損傷を有する場合、最初から摩耗率が人工的に高くも成り得る。更に、摩耗の正確な測定を確実に行うために、本明細書で予測される低レベルの摩耗では、溶接部のメートル数を超えて摩耗を測定する必要がある。貫入数の数字がそれほど高くなければ、摩耗は貫入数に著しく影響を受けない。
従って、溶接1.8mあたり1回以下のツール挿入を使用して、最低9.5m(例、名目上10m)の溶接(DW)、一般的に35m未満(これは単に実用限界であるが)に対して試験を実施する必要があり、最初に著しく摩耗が促進された証拠があるなら、主な摩耗測定前に名目上2m(少なくとも1.8m、2.2m未満)の試験前溶接を完了させて、ツールの表面層を除去する。
【0034】
FSWの主な動因は溶接の質及びツールの寿命である。これらはツール周辺のワークピース帯(溶接帯)が熱くなり過ぎる稼働条件と直接関係し、これによりツールの過剰な化学摩耗及び溶接帯の熱間割れが引き起こされ、溶接が不十分となる。反対に、冷たすぎる溶接帯で稼働すると可塑性が悪くなり、ツールに高い力がかかり、溶接部に破断及びボイドを引き起こす可能性がある。更に、移動速度を落とすことは、ツールへの横力を低減する場合があるが、横力は回転抵抗が優位であるため、著しく摩耗率を低下させない。代わりにワークピースにおける滞留時間を増加させ、これは化学摩耗を増加させる。その結果、最適な溶接の条件は、ツールの最低摩耗の条件と本質的に同じである。上記溶接パラメータは、溶接を始動する優れた開始点を提供するが、溶接プロセスを最適にし、ツールの摩耗率(1メートルあたり)を最小化するのに変動させる必要がある場合がある。
目的の摩耗率は、上記正確な条件、又はボイド及び熱間割れを有さない優れた質の溶接が得られる条件を最適化したもののどちらかを用いて達成される最小摩耗率(WRM)である。本発明の材料は、1.0μm/(m.mm)未満、好ましくは0.5、0.2、0.1、0.05μm/(m.mm)未満の平均摩耗率比を有する。
【0035】
先行技術及び6mmの溶接用試験ツール
先行技術の出版物の大部分は、6mmの溶接に好適なツールの試験を報告しており、30mの後、ツールのらせんの主な特徴がピンの基部で完全に失われる範囲で、ツールの実質的な摩耗を示す。これらのツールの画像から、ピンの長さの直径である円内で失われる総材料を推定することができ、これを用いて比較のための大まかな摩耗率を計算することができる。6mmツールの値は摩耗率が20μm/m、摩耗率比が>3である。反対に、本発明のツールインサートは、約0.05の摩耗率を示す。
【0036】
ツールサイズ間の調整
性能試験は、6mmの溶接用に設計されたツールについて最も都合よく行われるが、その結果を他のツールサイズにあわせて調整することができると理解することは重要である。分析的方法を適用することによりいくつかの領域で裏付けることができるが、調整は主に経験的観察に基づくものである。計算機モデル化もFSWプロセスの発展下にあるが、一般的に溶接のすべての態様を予測するのにはまだ十分でない。従って、結局、現時点で経験的観察は、基本設計の最も重要な一因である。また、類似の結果を達成するため、ツールインサートの機械的設計又は形状を6mmのツールの設計から簡単に調整することができることが一般的に見出されている。従って、具体的な定義された特徴の単独の設計及びサイズに関する知識は十分である。便宜上、この特徴はピンの長さLであり;実際には全体的なスケールの長さとしても作用する。
従って、FSWにおける基本変数は(一貫して標準SI単位を前提とする)
L=ピンの長さ(m)
v=移動速度(m/秒)
ω=ツールの回転率
である。
この運転は3つの力を印加して駆動される。
FA=軸荷重(N)
FT=移動力(N)
FR=回転力(N.m)
熱を引き起こすワークピース上の仕事は、主に回転力から生じ、FR.ωにより示される。原則として、更なる加熱はFT.vに起因するが、一般的にはるかに小さい。軸力FAによる仕事はないが、これはすべての運動がこの力と直角であるためである。
【0037】
パラメータモデル
6mmのツールに関する試験パラメータの標準セットは、
D
W
=6mm
L=0.95DW (1)
L=ピンの長さ(m)=0.0057m (5.7mm)
v=移動速度(m/秒)=0.005m/秒 (0.3m/分)
ω=ツールの回転率=200rpm
であり、
これを達成する力は典型的に、
FA=軸荷重(N)=3800N (3.8kN)
FT=移動力(N)=1000N (1kN)
FR=回転力(N.m)=確認を要する
である。
典型的に、移動率は、
L.v=定数=2.85*10-5m2/秒 (2)
のように、Lに反比例する。
従って、DW=12mmの用途に関してLが2倍となれば、典型的に移動率は0.0025m/秒まで半分になる。
典型的に、ツール回転率ωは、
ω=ω6.L/L6^(1/3) (3)
として、近似的に変化する。
式中、下付きの6は6mmの溶接深さに関するパラメータ値を指す。
力もおおよそL^(3/2)に従って比例する。
これらの関係は、当業者が2mm~30mmのツールサイズに関する初期試験パラメータを好適に設定すること、これらの初期値から、ツールインサートの低摩耗率に関する試験を最適化することを可能にする。
【0038】
最後に、最小摩耗率を有する利点はなく、摩耗率ゼロは非物質的であると同時に、最小摩耗率がどれだけであるかを予測する明らかな方法はない。実際は、測定可能なことに対する実用的な閾値があり、試験が30m、平均摩耗測定が5μmに限定されるなら、測定した摩耗率の実用的な下限は0.17μm/摩耗mである。このように、いくつかの実施形態において、0.17μm/摩耗mの好ましい下限がある。
当業者は、本明細書で挙げられる手順を使用して、任意の所定のFSWツールに関する摩耗率及び貫入寿命を決定することができる。
【0039】
粒子のシャープネス測定
・画像を8ビットグレイスケールに変換する工程、
・閾値技術を使用して、0~255グレイスケール内にcBN粒子を特定する工程、
・画像をバイナリ化する工程、
・ウォーターシェッド画像処理技術を使用して、粒子を分離する工程、
・ソフトウェアを使用して、粒子の面積、また外周を計算する工程、
・以下の式:
【数2】
を使用して、粒子の真円度、つまりシャープネスを決定する工程、
を行う。
【0040】
実施形態を参照して本発明を具体的に示し、説明してきたが、当業者は添付の特許請求の範囲で定められる本発明の範囲を逸脱することなく、形状や細部の様々な変更を行うことができることを理解するであろう。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立方晶窒化ホウ素(cBN)微粒子60~90体積%と、
前記cBN微粒子が分散しているバインダマトリックス材料40~10体積%と
からなる多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)複合材料であって、
前記cBN微粒子が8~20μmの範囲の平均粒子サイズを有し、前記バインダマトリックス材料が耐火金属であるタングステン(W)及びレニウム(Re)の合金90~99質量%を含み、酸化物以外の形態のアルミニウム(Al)
を更に含
み、前記バインダ相が前記cBN粒子上に界面層を含み、前記界面層がAlのホウ化物又は窒化物を含み、前記アルミニウム(Al)が前記バインダマトリックス材料の2~10質量%の量で存在し、前記界面層が100~250nmの範囲の平均厚さを有することを特徴とする、多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)複合材料。
【請求項2】
前記界面層が前記cBN粒子の表面の少なくとも50%を覆う、請求項
1に記載のPCBN複合材料。
【請求項3】
前記界面層が、Al、B及びNを含む反応層であり、窒化アルミニウム及び/又はホウ化アルミニウムを含む、請求項1~
2のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
【請求項4】
前記反応層の組成がその厚さを通じて変化する、請求項
3に記載のPCBN複合材料。
【請求項5】
Alを含む前記界面層
が170~190nmの範囲の平均厚さを有する、請求項
1~
4のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
【請求項6】
前記複合材料の全酸素含有量が、ここに記載されたように測定して、3%未満、好ましくは2%未満、好ましくは1%未満、好ましくは0.5%未満、好ましくは0.3%未満である、請求項1~
5のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
【請求項7】
65~75体積%のcBN微粒子及び25~30体積%のバインダマトリックスを含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
【請求項8】
前記W-Re合金の組成が72質量%~77質量%のタングステン(W)、及びそれに対応する28質量%~23質量%のReである、請求項1~
7のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
【請求項9】
前記W-Re合金の粒子が、3~5μmの範囲の平均粒子径を有する、請求項1~
8のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
【請求項10】
前記バインダマトリックス材料内にWC不純物を更に含み、前記不純物が前記PCBN複合材料の1質量%未満の量で存在する、請求項1~
9のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
【請求項11】
前記バインダマトリックス材料にレニウム-アルミニウム合金を更に含む、請求項1~
10のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
【請求項12】
前記cBN微粒子が
、0.40~0.70の範囲のシャープネスを有
し、前記シャープネスがここに記載された通りに測定される、請求項1~
11のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
【請求項13】
ここに記載されるような音速方法を用いて得られ
、計算される500~560GPaのヤング率を有する、請求項1~
12のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
【請求項14】
8~9km/秒の音速を有する、請求項1~
13のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
【請求項15】
耐火金属のタングステン(W)及びレニウム(Re)を含み、酸化物以外の形態であるAlのマトリックス前駆体粉末
2~10質量%を更に含むマトリックス前駆体粉末を提供する工程と;
cBN微粒子を含む立方晶窒化ホウ素(cBN)粉末を提供する工程と、
前記マトリックス前駆体粉末及び前記cBN粉末を混合する工程と;
前記混合したマトリックス前駆体粉末及びcBN粉末を圧縮して成形体を形成する工程と;
800℃~1150℃の温度で前記成形体のガスを抜く工程と;
1300℃~1600℃の温度、少なくとも3.5GPaの圧力で前記成形体を焼結して請求項1のPCBN複合材料を形成する工程と、
を含む
請求項1に記載の多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)複合材料を製造する方法。
【請求項16】
前記複合材料が請求項2~
14のいずれか1項に記載される通りである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記マトリックス前駆体粉末がW、Re、及びAlの別々の微粒子を含む、請求項
15又は
16に記載の方法。
【請求項18】
前記マトリックス前駆体粉末が、プレアロイされるか、又は塗膜と別の塗膜などの分離相として、W及びReを組み合わせた微粒子を含む、請求項
15又は
16に記載の方法。
【請求項19】
前記混合工程が、露出した金属又はWC表面を有さない混合容器を用いて、前記マトリックス前駆体粉末及び前記cBN粉末を混合することを含む、請求項
15~
18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記混合工程が、ポリマーであるか又はポリマーコーティングした混合ポットにおいて、前記マトリックス前駆体粉末及び前記cBN粉末を混合することを含む、請求項
15~
19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
以下の:
前記cBN及びアルミニウム粉末を共に添加するサブ工程と;
800rpmで2分間、次に1200rpmで2分間、容器中で混合するサブ工程と;
前記タングステン-レニウム粉末の半分を前記cBN及びアルミニウム粉末に添加するサブ工程と;
800rpmで2分間、次に1200rpmで2分間、容器中で混合するサブ工程と;
前記タングステン-レニウム粉末の残りの半分を前記cBN及びアルミニウム粉末に添加するサブ工程と;
800rpmで2分間、次に1200rpmで2分間、容器中で混合するサブ工程と、を含む、請求項
15~
20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記焼結工程が、1500℃の温度で焼結することを含む、請求項
15~
21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記焼結工程が、4.0~6.0GPaの範囲の圧力で焼結することを含む、請求項
15~
22のいずれか1項に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
実施形態を参照して本発明を具体的に示し、説明してきたが、当業者は添付の特許請求の範囲で定められる本発明の範囲を逸脱することなく、形状や細部の様々な変更を行うことができることを理解するであろう。
次に、本発明の好ましい態様を示す。
1. 立方晶窒化ホウ素(cBN)微粒子60~90体積%と、バインダマトリックス材料40~10体積%とを含む多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)複合材料であって、前記cBN微粒子が分散し、前記バインダマトリックス材料が耐火金属であるタングステン(W)及びレニウム(Re)の合金90~99質量%を含み、酸化物以外の形態のアルミニウム(Al)0.5~10質量%を更に含む、多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)複合材料。
2. 前記バインダ相が前記cBN粒子上に界面層を更に含み、前記界面層がAl、又はそのホウ化物若しくは窒化物を含む、上記1に記載のPCBN複合材料。
3. 前記界面層が前記cBN粒子の表面の少なくとも50%を覆う、上記2に記載のPCBN複合材料。
4. 前記界面層が、Al、B及びNを含む反応層であり、窒化アルミニウム及び/又はホウ化アルミニウムを含む、上記1~3のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
5. 前記反応層の組成がその厚さを通じて変化する、上記4に記載のPCBN複合材料。
6. Alを含む前記界面層が100~250nmの範囲、好ましくは170~190nmの範囲の平均厚さを有する、上記2~5のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
7. 前記複合材料の全酸素含有量が、ここに記載されたように測定して、3%未満、好ましくは2%未満、好ましくは1%未満、好ましくは0.5%未満、好ましくは0.3%未満である、上記1~6のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
8. 65~75体積%のcBN微粒子及び25~30体積%のバインダマトリックスを含む、上記1~7のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
9. 前記cBN微粒子が8~20μmの範囲の平均粒子サイズを有する、上記1~8のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
10. 前記W-Re合金の組成が72質量%~77質量%のタングステン(W)、及びそれに対応する28質量%~23質量%のReである、上記1~9のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
11. 前記W-Re合金の粒子が、3~5μmの範囲の平均粒子径を有する、上記1~10のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
12. 前記バインダマトリックス材料内にWC不純物を更に含み、前記不純物が前記PCBN複合材料の1質量%未満の量で存在する、上記1~11のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
13. 前記バインダマトリックス材料にレニウム-アルミニウム合金を更に含む、上記1~12のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
14. 前記cBN微粒子が、ここに記載された通りに測定して、0.40~0.70の範囲のシャープネスを有する、上記1~13のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
15. ここに記載されるような音速方法を用いて得られる500~560GPaのヤング率を有する、上記1~14のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
16. 8~9km/秒の音速を有する、上記1~15のいずれか1項に記載のPCBN複合材料。
17. 耐火金属のタングステン(W)及びレニウム(Re)を含み、酸化物以外の形態であるAlのマトリックス前駆体粉末0.5~10質量%を更に含むマトリックス前駆体粉末を提供する工程と;
cBN微粒子を含む立方晶窒化ホウ素(cBN)粉末を提供する工程と、
前記マトリックス前駆体粉末及び前記cBN粉末を混合する工程と;
前記混合したマトリックス前駆体粉末及びcBN粉末を圧縮して成形体を形成する工程と;
800℃~1150℃の温度で前記成形体のガスを抜く工程と;
1300℃~1600℃の温度、少なくとも3.5GPaの圧力で前記成形体を焼結して上記1のPCBN複合材料を形成する工程と、
を含む多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)複合材料を製造する方法。
18. 前記複合材料が上記2~16のいずれか1項に記載される通りである、上記17に記載の方法。
19. 前記マトリックス前駆体粉末がW、Re、及びAlの別々の微粒子を含む、上記17又は18に記載の方法。
20. 前記マトリックス前駆体粉末が、プレアロイされるか、又は塗膜と別の塗膜などの分離相として、W及びReを組み合わせた微粒子を含む、上記17又は18に記載の方法。
21. 前記混合工程が、露出した金属又はWC表面を有さない混合容器を用いて、前記マトリックス前駆体粉末及び前記cBN粉末を混合することを含む、上記17~20のいずれか1項に記載の方法。
22. 前記混合工程が、ポリマーであるか又はポリマーコーティングした混合ポットにおいて、前記マトリックス前駆体粉末及び前記cBN粉末を混合することを含む、上記17~21のいずれか1項に記載の方法。
23. 以下の:
前記cBN及びアルミニウム粉末を共に添加するサブ工程と;
800rpmで2分間、次に1200rpmで2分間、容器中で混合するサブ工程と;
前記タングステン-レニウム粉末の半分を前記cBN及びアルミニウム粉末に添加するサブ工程と;
800rpmで2分間、次に1200rpmで2分間、容器中で混合するサブ工程と;
前記タングステン-レニウム粉末の残りの半分を前記cBN及びアルミニウム粉末に添加するサブ工程と;
800rpmで2分間、次に1200rpmで2分間、容器中で混合するサブ工程と、を含む、上記17~22のいずれか1項に記載の方法。
24. 前記焼結工程が、1500℃の温度で焼結することを含む、上記17~23のいずれか1項に記載の方法。
25. 前記焼結工程が、4.0~6.0GPaの範囲の圧力で焼結することを含む、上記17~24のいずれか1項に記載の方法。
【国際調査報告】