(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(54)【発明の名称】光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 9/02 20060101AFI20230201BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20230201BHJP
G02C 7/10 20060101ALN20230201BHJP
【FI】
C09K9/02 C ZNM
C09K11/06
G02C7/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533323
(86)(22)【出願日】2020-12-03
(85)【翻訳文提出日】2022-07-12
(86)【国際出願番号】 EP2020084371
(87)【国際公開番号】W WO2021110794
(87)【国際公開日】2021-06-10
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508157886
【氏名又は名称】コンセジョ スペリオール デ インベスティガショネス シエンティフィカス
(71)【出願人】
【識別番号】516375001
【氏名又は名称】ファンダシオ インスティテュット カタラ デ ナノシエンシア イ ナノテクノロジア (アイシーエヌ2)
(71)【出願人】
【識別番号】518170756
【氏名又は名称】ウニヴェルシタット アウトノマ デ バルセロナ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITAT AUTONOMA DE BARCELONA
【住所又は居所原語表記】Edifici A(Rectorat),Campus universitari s/n,08193 Bellaterra(Cerdanyola del Valles)(ES)
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘルナンド カンポス,ジョルディ
(72)【発明者】
【氏名】ロッシーニ,クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】オタエギ ラバナル,ジャウメ ラモン
(72)【発明者】
【氏名】ルイス モリナ,ダニエル
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BE01
2H006BE02
(57)【要約】
本発明は、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物であって、a)近赤外(NIR)放射を吸収し、NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子、特に金属金ナノ粒子、b)1種以上の相変化材料(PCM)であって、b1)クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができるPCM、及びb2)クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができないPCM、からなる群から選択される1種以上のPCM、c)1種以上の色素であって、c1)PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができる色素、及びc2)PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができない色素からなる群から選択される1種以上の色素を含む、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物、並びにそれを含有する物品に関する。本発明はまた、その調製のためのプロセス並びに治療、化粧品、診断、光学部品、及び偽造防止技術におけるその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物であって、
a)近赤外放射(NIR)を吸収し、NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子、
b)1種以上の相変化材料(PCM)であって、
b1)クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができるPCM、及び、
b2)クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができないPCM、
からなる群から選択される1種以上のPCM、
c)1種以上の色素であって、
c1)前記PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができる色素、及び、
c2)前記PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができない色素、
からなる群から選択される1種以上の色素、
を含み、
-前記PCMがクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができず(b2)、前記PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、前記色素がその色特性又は発光特性を変更することができない(c2)場合、前記光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物が、発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤からなる群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータをさらに含む、
又は代替的に、
-少なくとも前記PCMがクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる(b1)、又は前記PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに前記色素がその色特性若しくは発光特性を変更することができる(c1)場合、前記光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物が、(d)発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤からなる群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを任意選択で含み、
前記ナノ粒子(a)が、近赤外放射(NIR)を吸収し、前記NIR放射を熱に変換することができる金属金ナノ粒子である、
光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物。
【請求項2】
a)NIR放射を吸収し、前記NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子、
b)クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる1種以上のPCM(PCM)(b1)、
c)前記PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができない1種以上の色素(c2)、及び、
任意選択で、d)発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤からなる群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータ、
a)NIR放射を吸収し、前記NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子、
b)クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができない1種以上のPCM(PCM)(b2)、
c)前記PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができる1種以上の色素(c1)、及び、
任意選択で、d)発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤からなる群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータ、
a)NIR放射を吸収し、前記NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子、
b)クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる1種以上のPCM(PCM)(b1)、
c)前記PCMが固体状態と液体状態(c1)との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができる1種以上の色素、及び、
任意選択で、d)発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤からなる群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータ、
並びに、
a)NIR放射を吸収し、前記NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子、
b)クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができない1種以上のPCM(PCM)(b2)、
c)前記PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができない1種以上の色素(c2)、及び
d)発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤からなる群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータ、
からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ナノ粒子(a)が、600nm~2200nmのNIR放射を吸収することができる、請求項1又は2のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項4】
前記ナノ粒子の粒径が5~500nmである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ナノ粒子の量が、PCM1mg当たり0.00005mg~0.5mgである、請求項1から4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ナノ粒子が、ナノスフェア、ナノスター、ナノダンベル、ナノチューブ、ナノシェル、ナノロッド、ナノケージ、ナノハーフシェル、ナノドーム及びナノピラミッドからなる群から選択される形態である、請求項1から5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ナノ粒子が、ナノスフェア、ナノシェル及びナノロッドからなる群から選択される形態である、特にナノシェルである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
-前記PCMが、酸含有化合物、アミン含有化合物、硫黄含有化合物、アルコール含有化合物及びそれらの混合物からなる群から選択されるクロミックプロモータ若しくはフルオロクロミックプロモータとして作用することができるPCM(b1)である、
又は代替的に、
-前記PCMが、(C
8-C
52)アルカン系PCM、(C
14-C
50)アルケン系PCM、(C
14-C
50)アルキン系PCM及びそれらの混合物からなる群から選択される、クロミックプロモータ若しくはフルオロクロミックプロモータとして作用することができないPCM(b2)である、
請求項1から7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
-前記PCMが、酸含有化合物、アミン含有化合物、硫黄含有化合物、アルコール含有化合物及びそれらの混合物からなる群から選択される、クロミックプロモータ若しくはフルオロクロミックプロモータとして作用することができるPCM(b1)である、
又は代替的に、
-前記PCMが、1種以上の(C
8-C
52)アルカン系PCMから選択される、クロミックプロモータ若しくはフルオロクロミックプロモータとして作用することができないPCM(b2)である、
請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記色素が、凝集/近接状態に応じてその色特性及び/若しくは発光特性を変化させる色素、感温性色素、並びに媒体粘度/剛性に応じてその色特性及び/若しくは発光特性を変化させる色素からなる群から選択される、前記PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性若しくは発光特性を変更することができる色素(c1)である、
又は代替的に、
前記色素が、電荷移動色素(レドックス色素)、pH応答性色素、極性依存性色素、pH感受性ルミネセンス色素及びレドックスルミネセンス剤からなる群から選択される、前記PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性発光特性を変更することができない色素(c2)である、
請求項1から9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記クロミックプロモータ若しくはフルオロクロミックプロモータが、酸、塩基、水素結合化合物、電子移動化合物、それらの混合物からなる群から選択される発色剤である、
又は代替的に、
前記クロミックプロモータ若しくはフルオロクロミックプロモータが、共鳴エネルギー移動消光剤、三重項消光剤、電子移動消光剤及びそれらの混合物からなる群から選択される発光消光剤である、
又は代替的に、
前記クロミックプロモータ若しくはフルオロクロミックプロモータが、一重項、三重項増感剤、蛍光共鳴エネルギー移動増感剤及び電子移動増感剤並びにそれらの混合物からなる群から選択される発光活性化剤である、
請求項1から10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
医薬有効成分及び活性酸素種からなる群から選択される1種以上の追加の成分をさらに含む、請求項1から11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物、1種以上のポリマー、及び任意選択で1種以上の賦形剤を含む、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス自立膜。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか1項に記載の組成物、又は代替的に、請求項13に記載の自立膜を含む、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス物品。
【請求項15】
(A)光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンスコーティングされた物品であって、
基板と、
前記基板の表面上に堆積された光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンスコーティングと、
を含み、
前記コーティングが、請求項1から12のいずれか1項に記載の組成物、及び任意選択で1種以上のポリマーを含む、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンスコーティングされた物品、
(B)光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス埋め込み物品であって、
多孔質基板と、
前記多孔質基板に埋め込まれた、請求項1から12のいずれか1項に記載の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物と、
任意選択で、1種以上の追加の外部コーティングと、
を含む、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス埋め込み物品、
並びに、
(C)請求項13に記載の1種以上の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス自立膜を含む、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス自立膜含有物品、
からなる群から選択される、請求項14に記載の物品。
【請求項16】
光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物が、
a)近赤外放射(NIR)を吸収し、NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子、
b)1種以上の相変化材料(PCM)であって、
b1)クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができるPCM、及び、
b2)クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができないPCM、
からなる群から選択される1種以上のPCM、
c)1種以上の色素であって、
c1)前記PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができる色素、及び、
c2)前記PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができない色素、
からなる群から選択される1種以上の色素、
を含み、
前記PCMがクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができず(b2)、前記PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに前記色素がその色特性又は発光特性を変更することができない(c2)場合、前記光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物が、発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤からなる群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータをさらに含む、
又は代替的に、
少なくとも前記PCMがクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる(b1)、又は前記PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに前記色素がその色特性又は発光特性を変更することができる(c1)場合、前記光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物が、(d)発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤からなる群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを任意選択で含む、
光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物の光学部品への使用、
又は代替的に、
前記光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物、1種以上のポリマー、及び任意選択で1種以上の賦形剤を含む、光誘起サーモクロミック自立膜又はサーモルミネセンス自立膜の光学部品への使用、
又は代替的に、
前記光誘起サーモクロミック若しくはサーモルミネセンス組成物又は自立膜を含む、光誘起サーモクロミック物品又はサーモルミネセンス物品の光学部品への使用。
【請求項17】
光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物が、
a)近赤外放射(NIR)を吸収し、NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子、
b)1種以上の相変化材料(PCM)であって、
b1)クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができるPCM、及び、
b2)クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができないPCM、
からなる群から選択される1種以上のPCM、
c)1種以上の色素であって、
c1)前記PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができる色素、及び、
c2)前記PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができない色素、
からなる群から選択される1種以上の色素を含み、
前記PCMがクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができず(b2)、前記PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに前記色素がその色特性又は発光特性を変更することができない(c2)場合、前記光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物が、発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤からなる群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータをさらに含む、
又は代替的に、
少なくとも前記PCMがクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる(b1)、又は前記PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに前記色素がその色特性又は発光特性を変更することができる(c1)場合、前記光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物が、(d)発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤からなる群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを任意選択で含む、
光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物の偽造防止技術への使用、
又は代替的に、
前記光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物、1種以上のポリマー、及び任意選択で1種以上の賦形剤を含む、光誘起サーモクロミック自立膜又はサーモルミネセンス自立膜の偽造防止技術への使用、
又は代替的に、
前記光誘起サーモクロミック若しくはサーモルミネセンス組成物又は自立膜を含む、光誘起サーモクロミック物品又はサーモルミネセンス物品の偽造防止技術への使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年12月5日に出願された欧州特許出願EP19383086.6の利益を主張する。
【0002】
本発明は、光活性機能性材料に関する。特に、本発明は、ナノ粒子、相変化材料(Phase change materials:PCM)及び色素を含有する光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物並びにそれらを含む物品に関する。本発明は、その調製プロセス並びに治療、化粧品、診断及び光学部品(レンズ)における使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
光活性機能材料、特に光応答性クロミック材料及び発光性材料は、光刺激に応答することができるスマートシステムである。これらの材料は、他の分野の中でも、光学部品、電子機器、医学及びイメージングなどの多種多様な分野における用途に提案されている。これらの機能性材料の重要な構成要素はフォトクロミックユニットであり、フォトクロミックユニットは典型的には、別個の吸収及び/又は発光スペクトルを有する、異なる状態間で相互変換することができる有機光異性化性化合物(例えば、アゾベンゼン、スピロピランなど)からなる。結果として、それらの色及び/又は蛍光は、2つの状態(異性体)のうちの1つの吸収/発光特性が異なる場合、照明の下で変化する。代替的に、フォトクロムは、非光異性化性フルオロフォアにカップリングされて、フォトクロムの2つの異性体形のうちの1つにおける、操作された発色団間相互作用(例えば、光誘起エネルギー又は電子移動)を介して、ルミネセンス変調を行うことができる。いずれの場合も、光スイッチング性材料を得るために分子光スイッチが必要である。
【0004】
さらに最近には、蛍光変調ユニットの光応答を高エネルギーUV域から無害の可視-近赤外(NIR)スペクトル域に移動させるために、多くの研究が行われている。NIR応答性光スイッチング性色素は、それらの基本的な材料機能性(例えば疲労耐性又は最終的な破壊読出しの抑制)を改善できるだけでなく、生物医学用途(即ち、より少ない組織の光損傷、生物学的環境におけるより深い光透過)又は太陽エネルギー関連用途(日射のNIR部分を利用)にも関連がある。現在、NIR応答性スイッチング性材料は、i)(簡単明瞭ではないが)直接的な分子設計及びより低い周波数で吸収する光スイッチの合成、ii)色素若しくはスイッチ増感剤の多光子吸収;又はiii)NIR吸収(光誘起電子移動、三重項、一重項)増感剤の使用若しくはナノ粒子のアップコンバートによって実現される。
【0005】
しかし、フォトクロム系機能性材料は、正確な時間及び空間制御を用いた遠隔的かつ非侵襲的な刺激である、外部刺激として光を使用するという固有の利点を有し、これらの材料、特にNIR域で活性となるように開発された材料は、いくつかの欠点を抱えている。上述の方法の欠点を以下に挙げる。
それらはなお、合成が複雑で時間がかかる、及び/又はスイッチングユニットを作動させるために高い励起パワー密度を必要とする。
それらは、直接又は増感異性化性分子(シス-トランス又は開環/閉鎖反応)を含み、特定の種類の分子(例えば特にスピロピラン、クロメン、アゾベンゼン、ジアリールエテン)に対する色/蛍光調節剤の選択を制限する。このことは、市販のフォトクロムの入手可能性がかなり限定されている長波長応答系(例えばNIR)が必要な場合には、さらに明白である。
それらの光誘起操作は、限定された光異性化確率及び/又は効率(低い量子収率)を示すことが多いためで、最適とはほど遠い。
特に有害なUV放射が使用される場合、連続照明(直接励起)下で無視できない光劣化作用が引き起こされる。
固体状態での使用時、又は固体マトリックス中への分散時に、フォトクロムの光誘起挙動におけるさらなる有害な作用が溶液に対して認められることが多い(例えば、フォトクロミック性能を抑制するマトリックス作用)。
系の状態の変更及び監視の両方に光が必要であるため、材料の色及び/又は発光の測定時に望ましくないフォトクロム相互変換が生じるおそれがあり、このことはいくつかの用途では厳しい制約(即ち、破壊読出し)となるおそれがある。
【発明の概要】
【0006】
したがって、技術水準において既知であるものから、NIR光スイッチング性クロミック材料及び発光性材料を調製するための改善されたプロセスを提供する必要性が、依然として存在する。
【0007】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物を通じて、高効率光スイッチング性材料を提供している。特に、本発明者らは、本発明の組成物が、本技術分野の技術水準において開示された組成物よりも高い吸収率、光安定性及びスペクトル同調性を示すことを見出した。これらの組成物は、NIR放射を吸収し、NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子、特に金属金ナノ粒子、1種以上のPCM、及び1種以上の色素を含む。
【0008】
特に、本発明者らは、NIR放射を吸収し、近赤外放射を熱に変換することができるナノ粒子、特に金属金ナノ粒子を、PCMと組合わせて使用することにより、低エネルギー(即ち、NIR)及び低パワー密度放射によって本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物を励起した後の、PCMの(固体から液体への)相変化を促進できることを見出した。本発明のPCMのこの相変化(即ち、溶融/固化)は、色又は発光変化を生じる色素の吸収/発光特性を変化させる。
【0009】
さらに、本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物はまた、低エネルギー放射(即ち、NIR)の使用及びNIR範囲の波長でのナノ粒子、特に金属金ナノ粒子の活性化のために有利であり、これにより、フォトクロミック色素の直接光励起を誘起する高エネルギー放射(即ち、有害なUV)の使用に伴う、本技術分野の技術水準で開示されている望ましくない光化学プロセスが回避される。したがって、低エネルギー放射を使用すると、組成物成分の劣化が防止されることによって、これらの材料の有効寿命が確実に延長される。
【0010】
本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物に含まれる色素(クロム化合物及び/又は発光化合物の両方)の挙動は、色素、PCM、ナノ粒子の種類及び/若しくは濃度、励起パワー密度並びに/又は追加のクロミックプロモータ若しくはフルオロクロミックプロモータの存在を変化させることによって調整することができる。本発明の目的のために、色素の挙動とは、色/発光の種類、動力学的応答及び/又は色/発光強度を指す。
【0011】
本発明の組成物はまた、NIR吸収ナノ粒子、特に金属ナノ粒子の含有量が低く、NIR吸収ナノ粒子の分布が均一である。このことは、材料の最終的な色に影響を与えず、全ての組成物における色又は発光の変化の均質性及び強度を維持できるようにするため有利である。
【0012】
要約すると、本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物の利点は、組成物の成分の組み合わせ、及び色/発光の変化のためのトリガー剤としてのナノ粒子、特に金属金ナノ粒子の使用に関連付けることができる。本明細書では、これらの利点を以下に挙げる。
NIR放射を吸収し、NIR放射をトリガーユニットとして熱に変換することができる調整可能なナノ粒子、特に金属金ナノ粒子、及びそれを含有する光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物の調製は、NIR吸収分子色素及びそれを含有する組成物の調製よりも容易である。
本発明の組成物中に存在する、NIR放射を吸収し、NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子、特に金属金ナノ粒子は、有機色素よりも高い吸収率、光安定性、光熱効率及び容易なスペクトル調整性の利点があり、低出力NIR放射の使用により、固体から液体へのPCMの状態の変化(溶融)を引き起こすことを可能にする。
本発明の組成物は、吸収/発光変調のための直接又は増感光異性化を考慮せず、低い光異性化量子収率、光劣化、エネルギー/電子移動スキームの破壊読出し又は複雑な設計などのフォトクロムに関連する典型的な問題を回避し、色又は発光光スイッチを構築するためのより広範な色素へのアクセスを提供する。
トリガーユニットを(NIRにおける吸収によって)色/発光変化色素からデカップリングすることにより、最終用途でのUVフィルタの使用が可能となり、確実に色素がはるかに高度に保護され、耐疲労性が低下される(材料がより持続性となる)。
本発明の範囲外にあり、本技術分野の技術水準で開示されている標準T型フォトクロミック材料に起こることと反対に、本発明の組成物では、光活性化状態は、温度が高いほどより好ましい。このことは、温度が上昇するにつれて平衡が非光活性化状態にシフトする標準T型フォトクロミック材料を使用することによっては達成できない。
【0013】
したがって、本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、実施例に開示される実験データで示されるように、本技術分野の技術水準と比較して複数の利点を有する。主に、それらは調整可能な迅速で明瞭な光応答並びに色及び/又は発光の強い変化を有する。
【0014】
したがって、本発明の第1の態様は、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物であって、a)近赤外放射(NIR)を吸収し、NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子、b)1種以上の相変化材料(PCM)であって、b1)クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができるPCM、及びb2)クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができないPCM、からなる群から選択される1種以上のPCM、c)1種以上の色素であって、c1)PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができる色素、及びc2)PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができない色素、からなる群から選択される1種以上の色素、を含み、PCMがクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができず(b2)、PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色素がその色特性又は発光特性を変更することができない(c2)場合、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物が、発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤からなる群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータをさらに含む、又は代替的に、少なくともPCMがクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる(b1)、又はPCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色素がその色特性又は発光特性を変更することができる(c1)場合、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物が、(d)発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤からなる群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを任意選択で含み、ナノ粒子(a)が、近赤外放射(NIR)を吸収し、NIR放射を熱に変換することができる金属金ナノ粒子である、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物に関する。
【0015】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様に記載の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物、1種以上のポリマー、及び任意選択で1種以上の賦形剤を含む、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス自立膜に関する。
【0016】
本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様に記載の組成物、又は代替的に、本発明の第2の態様に記載の自立膜を含む、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス物品に関する。
【0017】
本発明の第4の態様は、光学部品での使用に関し、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物が、a)近赤外放射(NIR)を吸収し、NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子、特に金属金ナノ粒子、b)1種以上の相変化材料(PCM)であって、b1)クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができるPCM、及びb2)クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができないPCM、からなる群から選択される1種以上のPCM、c)1種以上の色素であって、c1)PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができる色素、及びc2)PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができない色素、からなる群から選択される1種以上の色素、を含み、PCMがクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができず(b2)、PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色素がその色特性又は発光特性を変更することができない(c2)場合、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物が、発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤からなる群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータをさらに含む、又は代替的に、少なくともPCMがクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる(b1)、又はPCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色素がその色特性又は発光特性を変更することができる(c1)場合、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物が、(d)発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤からなる群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを任意選択で含む、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物の光学部品での使用、又は代替的に、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物、1種以上のポリマー、及び任意選択で1種以上の賦形剤を含む、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス自立膜の光学部品での使用、又は代替的に、光誘起サーモクロミック若しくはサーモルミネセンス組成物又は自立膜を含む、光誘起サーモクロミック物品又はサーモルミネセンス物品の光学部品での使用に関する。
【0018】
本発明の第5の態様は、偽造防止技術のための使用に関し、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物が、a)近赤外放射(NIR)を吸収し、NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子、特に金属金ナノ粒子、b)1種以上の相変化材料(PCM)であって、b1)クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができるPCM、及びb2)クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができないPCM、からなる群から選択される1種以上のPCM、c)1種以上の色素であって、c1)PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができる色素、及びc2)PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができない色素、からなる群から選択される1種以上の色素、を含み、PCMがクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができず(b2)、PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色素がその色特性又は発光特性を変更することができない(c2)場合、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物が、発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤からなる群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータをさらに含む、又は代替的に、少なくともPCMがクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる(b1)、又はPCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色素がその色特性又は発光特性を変更することができる(c1)場合、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物が、(d)発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤からなる群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを任意選択で含む、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物の偽造防止技術のための使用、又は代替的に、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物、1種以上のポリマー。及び任意選択で1種以上の賦形剤を含む、光誘起サーモクロミック自立膜又はサーモルミネセンス自立膜の偽造防止技術のための使用、又は代替的に、光誘起サーモクロミック若しくはサーモルミネセンス組成物又は自立膜を含む、光誘起サーモクロミック物品又はサーモルミネセンス物品の偽造防止技術のための使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本出願において本明細書で使用される全ての用語は、別途記載しない限り、当分野で既知であるような通常の意味で理解されるものとする。本出願で使用する他のより具体的な用語は、後述の通りであり、明示的に定義された定義がより広い定義を提供しない限り、明細書及び請求項全体に均一に適用されるものである。
【0020】
本発明の目的のために、全ての所与の範囲は、範囲の下端点及び上端点の両方を含む。温度、時間、重量などの所与の範囲は、特に明記しない限り、近似値とみなすべきである。
【0021】
上述のように、本発明は、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物に関する。「光誘起」という用語は、その効果が光の作用によって誘起されるという事実を指す。本発明の目的のために、色変化又は発光変化は、光の照射、特にNIR放射の照射によって誘起される。「サーモクロミック」という用語は、温度変動に応答してそれらの色(色相)を変化させる又は変化させることができる組成物を指す。したがって、本発明の目的のために、「光誘起サーモクロミック」組成物は、照射、特にNIRの照射によって促進される温度の変動によってその吸収スペクトル(色)を変化させる又は変化させることができる組成物を指す。さらに、「サーモルミネセンス」という用語は、温度変動に応答してそれらの発光能力を変化させる又は変化させることができる組成物を指す。したがって、本発明の目的のために、「光誘起サーモルミネセンス」組成物は、照射、特にNIRの照射によって促進される温度の変動によってその発光を変化させる又は変化させることができる組成物を指す。
【0022】
一実施形態では、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、
a)NIR放射を吸収し、NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子、特に金属金ナノ粒子、
b)固体及び/又は液体状態でクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる1種以上のPCM(b1)、
c)PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができない1種以上の色素(c2)、
任意選択で、d)発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤からなる群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータ、
a)NIR放射を吸収し、NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子、特に金属金ナノ粒子、
b)固体及び/又は液体状態でクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができない1種以上のPCM(b2)、
c)PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができる1種以上の色素(c1)、並びに、
任意選択で、d)発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤からなる群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータ、
a)NIR放射を吸収し、NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子、特に金属金ナノ粒子、
b)固体及び/又は液体状態でクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる1種以上のPCM(b1)、
c)PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができる1種以上の色素(c1)、
任意選択で、d)発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤からなる群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータ、並びに、
a)NIR放射を吸収し、NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子、特に金属金ナノ粒子、
b)固体及び/又は液体状態でクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができない1種以上のPCM(b2)、
c)PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができない1種以上の色素(c2)、並びに、
d)発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤からなる群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータ、
からなる群から選択される。
【0023】
一実施形態では、本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、
a)NIR放射を吸収し、NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子、特に金属金ナノ粒子、
b)固体及び/又は液体状態でクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる1種以上のPCM(b1)、
c)PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができない1種以上の色素(c2)、並びに、
任意選択で、d)発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤からなる群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを含む。
【0024】
一実施形態では、本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、
a)NIR放射を吸収し、NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子、特に金属金ナノ粒子、
b)固体及び/又は液体状態でクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができない1種以上のPCM(b2)、
c)PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができる1種以上の色素(c1)、並びに、
任意選択で、d)発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤からなる群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを含む。
【0025】
一実施形態では、本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、
a)NIR放射を吸収し、NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子、特に金属金ナノ粒子、
b)固体及び/又は液体状態でクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる1種以上のPCM(b1)、
c)PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができる1種以上の色素(c1)、並びに、
任意選択で、d)発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤からなる群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを含む。
【0026】
一実施形態では、本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、
a)NIR放射を吸収し、NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子、特に金属金ナノ粒子、
b)固体及び/又は液体状態でクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができない1種以上のPCM(b2)、
c)PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができない1種以上の色素(c2)、並びに、
d)発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤からなる群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを含む。
【0027】
材料組成
【0028】
ナノ粒子
【0029】
本発明の組成物は、NIR放射を吸収し、NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子、特に金属金ナノ粒子を含む。上で開示されているように、これらのナノ粒子は、NIR放射を吸収し、近赤外放射を熱エネルギー(熱)に変換することができ、これによりPCMの状態を固体状態から液体状態に変化させることができる。
【0030】
本発明の目的のために、NIR放射を吸収し、NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子は、600nm~2200nmの波長を有するNIR放射を吸収する。一実施形態では、NIR放射を吸収し、NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子は、650nm~1600nmの波長を有するNIR放射を吸収する。一実施形態では、NIR放射を吸収し、NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子は、700nm~1200nmの波長を有するNIR放射を吸収する。一実施形態では、NIR放射を吸収し、近赤外放射を熱に変換することができるナノ粒子は、700nm~900nmの波長を有するNIR放射を吸収する。特定の実施形態では、NIR放射を吸収し、NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子は、830nmの波長を有するNIR放射を吸収する。
【0031】
一実施形態では、NIR放射を吸収し、近赤外放射を熱に変換することができるナノ粒子は、NIR放射を吸収し、近赤外放射を熱に変換することができる非金属ナノ粒子である。
【0032】
一実施形態では、NIR放射を吸収し、NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子は、NIR放射を吸収し、NIR放射を熱に変換することができる金属ナノ粒子(MP)である。本発明の目的のために、「NIR放射を吸収し、NIR放射を熱に変換することができる金属ナノ粒子」、「NIR吸収金属ナノ粒子」及び「NIR吸収MP」という用語は同じ意味を有し、互換的に使用される。省略形「MP」は金属ナノ粒子を表す。
【0033】
本発明の組成物における、NIR吸収MP、特に金属金ナノ粒子の存在が有利なのは、以下のことができるためである:
-MPが含まれている材料に対するMPの色寄与を最小化又は排除することができる、
-色素を励起させずにMPのNIRの選択的照射により、MPの光劣化を防止することができる、
-材料又は基板に有害な影響を生じない低エネルギー放射を使用することができる、
-大量のMPを使用することなく、NIR放射を照射することによって高い光熱効果効率を達成することができる、
-材料中又はより深い生体組織中での発色/発光スイッチを作動させることができる、(他の材料成分によって吸収されない)高透過性の放射を使用することができる。
【0034】
一実施形態では、組成物は、5~500nmの粒径を有するNIR吸収MPを含む。一実施形態では、組成物は、5~100nmの粒径を有するNIR吸収MPを含む。組成物は、50~90nmの粒径を有するNIR吸収MPを含む。「粒径」という用語は、nm単位で測定された粒子のサイズを指す。測定は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)や走査型電子顕微鏡(TEM)を用いた顕微鏡測定などの従来の分析手法により、適切な装置によって行った。本発明において、粒径は、動的光散乱(DLS、zサイザ)技術によって測定した。次いで、汎用モデルを使用してこのデータを分析し、球状粒子形状と仮定して、散乱パターンを生成した粒子のサイズを計算する。「粒径分布」又は「PSD」という用語は同じ意味を有し、互換的に使用される。それらは、調製された粒子のサイズの分布を指す。
【0035】
一実施形態では、本発明の組成物は、金属が、金、白金、銀、パラジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、ロジウム、レニウム、モリブデン、銅、鉄、ニッケル、スズ、ベリリウム、コバルト、アンチモン、クロム、マンガン、ジルコニウム、スズ、亜鉛、タングステン、チタン、バナジウム、ランタン、セリウム、それらの合金、それらの酸化物、及びそれらの混合物からなる群から選択されるNIR吸収MPを含む。一実施形態では、本発明の組成物は、金属が、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、それらの合金、それらの酸化物、及びそれらの混合物からなる群から選択されるNIR吸収MPを含む。一実施形態では、本発明の組成物は、金属が金、白金、銀、パラジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、ロジウム、レニウム、モリブデン、鉄、ニッケル、スズ、ベリリウム、コバルト、アンチモン、クロム、マンガン、ジルコニウム、スズ、亜鉛、タングステン、チタン、バナジウム、ランタン、セリウム、それらの合金、それらの酸化物、及びそれらの混合物からなる群から選択されるNIR吸収MPを含む。一実施形態では、本発明の組成物は、金属が、金、白金、パラジウム、銀、アルミニウム、それらの合金、それらの酸化物、及びそれらの混合物からなる群から選択されるNIR吸収MPを含む。特定の実施形態では、本発明の組成物は、金属が、金、その酸化物、及びそれらの混合物であるNIR吸収MPを含む。特定の実施形態では、本発明の組成物は、金属が、銀、その酸化物、及びそれらの混合物であるNIR吸収MPを含む。
【0036】
本明細書で使用する場合、「ナノ粒子」という用語は、ナノスケールの寸法、即ち5~500nmの直径を有し、任意のサイズ、形状又は形態を有する粒子を指す。本明細書で使用する場合、ナノ粒子という用語は、球状ナノ粒子及び非球状ナノ粒子を含み得る。一実施形態では、本発明の組成物は、ナノスフェア、ナノスター、ナノダンベル、ナノチューブ、ナノシェル、ナノロッド、ナノケージ、ナノハーフシェル、ナノドーム及びナノピラミッドからなる群から選択される形態のNIR吸収ナノ粒子を含む。一実施形態では、本発明の組成物は、ナノスフェア、ナノシェル及びナノロッドからなる群から選択される形態のNIR吸収ナノ粒子を含む。一実施形態では、本発明の組成物は、ナノシェルの形態のNIR吸収ナノ粒子を含む。
【0037】
「ナノシェル」という用語は、シェルがコアの少なくとも一部を取り囲む別個のコア-シェル構造を特徴とする種類のナノ粒子である。ナノシェルのコアは、中空(即ち、空である又は気体で満たされている)であってもよく、又はシェルの液体若しくは固体とは異なる液体(水性、油など)若しくは固体(即ち、ポリマー)で充填されていてもよい。
【0038】
「ナノスフェア」という用語は、球状又は略球状の固体構造を特徴とするタイプのナノ粒子を指す。
【0039】
「ナノロッド」という用語は、固体構造及び異なる長さの縦軸及び横軸を有する異方性ロッド様形状を特徴とするタイプのナノ粒子を指す。
【0040】
一実施形態では、本発明の組成物は、NIR吸収MPが金ナノシェルである組成物である。
【0041】
一実施形態では、本発明の組成物は、PCM1mg当たり0.00005mg~0.5mg、特にPCM1mg当たり0.00024mg~0.15mgの量のNIR吸収MPを含む。したがって、本発明の組成物は、低含有量のナノ粒子を含み、これにより、最終材料のコストが低減され、NIR吸収MPの色に由来するMPを含有する材料の光学的変動を最小化又は排除できるようになるため有利である。
【0042】
PCM
【0043】
本発明の組成物は、1種以上の相変化材料(本明細書では以下、PCM)を含む。上述したように、PCMは高い溶融潜熱を示す物質であり、溶融時及び固化時にそれぞれ大量のエネルギーを貯蔵及び放出する。本発明の目的のために、「PCM」という用語は、熱の吸収時に固体状態から液体状態に変化することができ、熱の放出によって液体状態から固体状態に変化することができる材料を指す。
【0044】
本発明の組成物は、(b)b1)クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができるPCM、及びb2)クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができないPCMからなる群から選択される、1種以上のPCMを含む。
【0045】
一実施形態では、組成物は、クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる1種以上のPCM(b1)を含む。「クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる」という用語は、色特性及び/又は発光特性(吸収/発光バンドの位置及び強度)の変化を開始させ、色特性又は発光特性の変化速度を調節することができる化合物を指す。一実施形態では、組成物は、クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる1種以上のPCM(b1)を含む。一実施形態では、組成物は、アルカン含有PCM、アルケン含有PCM及びアルキン含有PCM以外である、クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる1種以上のPCM(b1)を含む。一実施形態では、組成物は、酸含有化合物、アミン含有化合物、硫黄含有化合物、アルコール含有化合物及びそれらの混合物からなる群から選択される、クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる1種以上のPCM(b1)を含む。一実施形態では、組成物は、酸含有化合物、アミン含有化合物、チオール含有化合物、硫酸塩含有化合物、スルホン酸塩含有化合物及びそれらの混合物からなる群から選択される硫黄含有化合物、アルコール含有化合物及びそれらの混合物からなる群から選択される、クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる1種以上のPCM(b1)を含む。
【0046】
一実施形態では、組成物は、(C1-C30)-アルキル-COOH、(C1-C30)-アルキル-COO(C1-C30)アルキル、(C1-C30)-アルキル-OH、(C1-C30)-アルキル-O-(C1-C30)アルキル、(C1-C20)-アルキル-NH2、(C1-C20)-アルキル-NH((C1-C20)アルキル)2、(C1-C20)-アルキル-N((C1-C20)アルキル)3、(C1-C20)-アルキル-NH-CO-(C1-C20)-アルキル、(C1-C20)-アルキル-N(CO-(C1-C20)-アルキル)2、(C2-C30)-アルケニル-COOH、(C2-C30)-アルケニル-COO(C2-C30)アルケニル、(C2-C30)-アルケニル-OH、(C2-C30)-アルケニル-O-(C2-C30)アルケニル、(C2-C20)-アルケニル-NH2、(C2-C20)-アルケニル-NH((C2-C20)アルケニル)2、(C2-C20)-アルケニル-N((C2-C20)アルケニル)3、(C2-C20)-アルケニル-NH-CO-(C2-C20)-アルケニル、(C2-C20)-アルケニル-N(CO-(C2-C20)-アルケニル)2、(C1-C30)-アルキル-O-(C2-C30)アルケニル、(C2-C30)-アルケニル-O-(C1-C30)アルキル、(C1-C20)-アルキル-NH-CO-(C2-C20)-アルケニル、(C2-C20)-アルケニル-NH-CO-(C1-C20)-アルキル、(C1-C20)-アルキル-N(CO-(C2-C20)-アルケニル)2、(C2-C20)-アルケニル-N(CO-(C1-C20)-アルキル)2,C2-C30)-アルキニル-COOH、(C2-C30)-アルキニル-COO(C2-C30)アルキニル、(C2-C30)-アルキニル-OH、(C2-C30)-アルキニル-O-(C2-C30)-アルキニル、(C2-C20)-アルキニル-NH2、(C2-C20)-アルキニル-NH((C2-C20)アルキニル)2、(C2-C20)-アルキニル-N((C2-C20)アルキニル)3、(C2-C20)-アルキニル-NH-CO-(C2-C20)-アルキニル、(C2-C20)-アルキニル-N(CO-(C2-C20)-アルキニル)2、(C1-C30)-アルキル-O-(C2-C30)-アルキニル、(C2-C30)-アルキニル-O-(C1-C30)-アルキル、(C5-C20)-アルキル-NH-CO-(C2-C20)-アルキニル、(C2-C20)-アルキニル-NH-CO-(C1-C20)-アルキル、(C1-C20)-アルキル-N(CO-(C2-C20)-アルキニル)2、(C2-C20)-アルキニル-N(CO-(C1-C20)-アルキル)2、トリグリセリド及びそれらの異性体からなる群から選択される、クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる1種以上のPCM(b1)を含む。
【0047】
一実施形態では、組成物は、(C4-C30)-アルキル-COOH、(C1-C30)-アルキル-COO(C1-C30)アルキル、(C8-C30)-アルキル-OH、(C1-C30)-アルキル-O-(C1-C30)アルキル、(C5-C20)-アルキル-NH2、(C1-C20)-アルキル-NH((C1-C20)アルキル)2、(C1-C20)-アルキル-N((C1-C20)アルキル)3、(C5-C20)-アルキル-NH-CO-(C1-C20)-アルキル、(C1-C20)-アルキル-N(CO-(C1-C20)-アルキル)2、(C4-C30)-アルケニル-COOH、(C2-C30)-アルケニル-COO(C2-C30)アルケニル、(C8-C30)-アルケニル-OH、(C2-C30)-アルケニル-O-(C2-C30)アルケニル、(C5-C20)-アルケニル-NH2、(C2-C20)-アルケニル-NH((C2-C20)アルケニル)2、(C2-C20)-アルケニル-N((C2-C20)アルケニル)3、(C5-C20)-アルケニル-NH-CO-(C2-C20)-アルケニル、(C2-C20)-アルケニル-N(CO-(C2-C20)-アルケニル)2、(C1-C30)-アルキル-O-(C2-C30)アルケニル、(C2-C30)-アルケニル-O-(C1-C30)アルキル、(C5-C20)-アルキル-NH-CO-(C2-C20)-アルケニル、(C5-C20)-アルケニル-NH-CO-(C1-C20)-アルキル、(C1-C20)-アルキル-N(CO-(C2-C20)-アルケニル)2、(C2-C20)-アルケニル-N(CO-(C1-C20)-アルキル)2,C4-C30)-アルキニル-COOH、(C2-C30)-アルキニル-COO(C2-C30)アルキニル、(C8-C30)-アルキニル-OH、(C2-C30)-アルキニル-O-(C2-C30)アルキニル、(C5-C20)-アルキニル-NH2、(C2-C20)-アルキニル-NH((C2-C20)アルキニル)2、(C2-C20)-アルキニル-N((C2-C20)アルキニル)3、(C5-C20)-アルキニル-NH-CO-(C2-C20)-アルキニル、(C2-C20)-アルキニル-N(CO-(C2-C20)-アルキニル)2、(C1-C30)-アルキル-O-(C2-C30)-アルキニル、(C2-C30)-アルキニル-O-(C1-C30)-アルキル、(C5-C20)-アルキル-NH-CO-(C2-C20)-アルキニル、(C5-C20)-アルキニル-NH-CO-(C1-C20)-アルキル、(C1-C20)-アルキル-N(CO-(C2-C20)-アルキニル)2、(C2-C20)-アルキニル-N(CO-(C1-C20)-アルキル)2、トリグリセリド及びそれらの異性体からなる群から選択される、クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる1種以上のPCM(b1)を含む。
【0048】
一実施形態では、本発明の組成物は、クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる1種以上のPCM(b1)が、群(C4-C30)-アルキル-COOH及びその異性体から選択される組成物である。一実施形態では、本発明の組成物は、クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる1種以上のPCM(b1)が、ドデカン酸、ステアリン酸及びそれらの混合物からなる群から選択される組成物である。一実施形態では、本発明の組成物は、クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる1種以上のPCM(b1)が、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル及びアラキジン酸メチル並びにそれらの異性体からなる、群(C1-C30)-アルキル-COO(C1-C30)アルキルから選択される組成物である。一実施形態では、本発明の組成物は、クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる1種以上のPCM(b1)が、(C8-C30)-アルキル-OHである組成物である。「アルキル-OH」という用語は、明細書又は特許請求の範囲で規定された数の炭素原子を含有し、水素原子の少なくとも1つがヒドロキシル基で置換されている飽和、分枝又は直鎖炭化水素を指す。一実施形態では、本発明の組成物は、クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる1種以上のPCM(b1)が、(C8-C30)-アルキル-OH及びその異性体、例えば1-テトラデカノール、1-ヘキサデカノール、1-ヘプタデカノール、1-オクタデカノール又はそれらの混合物から選択される組成物である。一実施形態では、本発明の組成物は、クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる1種以上のPCM(b1)が、(C8-C30)-アルキル-OH、例えば1-テトラデカノール、1-ヘキサデカノール又はそれらの混合物から選択される組成物である。一実施形態では、本発明の組成物は、クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる1種以上のPCM(b1)が、(C1-C20)-アルキル-NH2、(C1-C20)-アルキル-NH-(C1-C20)アルキル、(C1-C20)-アルキル-N((C1-C20)アルキル)2、(C5-C20)-アルキル-NH-CO-(C1-C20)-アルキル、(C1-C20)-アルキル-N(CO-(C1-C20)-アルキル)2及びそれらの異性体からなる群から選択される組成物である。一実施形態では、本発明の組成物は、クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる1種以上のPCM(b1)が、(C1-C20)-アルキル-NH2、例えば1-ヘキサデシルアミン、1-オクタデシルアミン及びそれらの混合物である組成物である。一実施形態では、本発明の組成物は、クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができるPCM(b1)が1-オクタデシルアミンである組成物である。一実施形態では、本発明の組成物は、トリグリセリドであるクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる1種以上のPCM(b1)を含む。一実施形態では、本発明の組成物は、クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる1種以上のPCM(b1)が、トリノナン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル及びトリステアリン酸グリセリルからなる群から選択されるトリグリセリドである組成物である。「トリグリセリド」という用語は、グリセロールと、特にCH2(OCO(C1-C30)アルキル)-CH(OCO(C1-C30)アルキル)-CH2(OCO(C1-C30)アルキル)から選択される1、2又は3つの脂肪酸とから誘導されるエステルを指す。各「アルキル」という用語は、独立して、明細書又は特許請求の範囲で規定された数の炭素原子を含む飽和直鎖又は分枝炭化水素鎖を指す。
【0049】
本発明の組成物は、クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができない1種以上のPCM(b2)を含む。「クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができない」という用語は、色若しくは発光の変化を開始させることができない、変化の速度を改善することができない、及び/又はクロミック若しくはフルオロクロミックダイナミックレンジを増大させることができない化合物を指す。一実施形態では、組成物は、アルカン系PCM、アルケン系PCM、アルキン系及びそれらの混合物からなる群から選択されるクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができない1種以上のPCM(b2)を含む。一実施形態では、組成物は、(C8-C52)アルカン系PCM、(C14-C50)アルケン系PCM、(C14-C50)アルキン系PCM及びそれらの混合物からなる群から選択される、クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができない1種以上のPCM(b2)を含む。一実施形態では、組成物は、(C10-C52)アルカン系PCM、(C16-C50)アルケン系PCM、(C16-C50)アルキン系及びそれらの混合物からなる群から選択される、クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができない1種以上のPCM(b2)を含む。一実施形態では、組成物は、(C10-C52)アルカン系PCM、(C16-C50)アルケン系PCM(例えば1-ヘキサデセン、エイコセン)、(C16-C50)アルキン系PCM(例えば1-ヘキサデシン)、(C16-C50)アルケン系PCM及び2つ以上のアルキン(ジエン)又はアルキン官能基を含有する(C16-C50)アルキン系PCM並びにそれらの混合物からなる群から選択される、クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができない1種以上のPCM(b2)を含む。一実施形態では、組成物は、(C10-C52)アルカン系PCMである、クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができない1種以上のPCM(b2)を含む。「アルカン」という用語は、明細書又は特許請求の範囲で規定された数の炭素原子を含有する飽和分枝又は直鎖炭化水素を指す。「アルケン」という用語は、明細書又は特許請求の範囲で規定された数の炭素原子を含有し、少なくとも1つの炭素二重結合を有する分枝又は直鎖炭化水素を指す。「アルキン」という用語は、明細書又は特許請求の範囲で規定された数の炭素原子を含み、少なくとも1つの炭素三重結合を有する分枝又は直鎖炭化水素を指す。一実施形態では、本発明の組成物は、テトラデカン、ペンタデカン、エイコサン(EC)、テトラコサン、ヘキサコサン、オクタコサン(OC)、ノナコサン、トリアコンタン、ドトリアコンタン、トリトリアコンタン、テトラコンタン、テトラテトラテトラコンタン、ペンタコンタン及びテトラペンタコンタンからなる群から選択される、クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができない1種以上のPCMを含む組成物である。特に、本発明の組成物は、エイコサン(EC)及びオクタコサン(OC)からなる群から選択される、クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができない1種以上のPCMを含む。
【0050】
色素
【0051】
本発明の光誘起サーモクロミック組成物は、c1)PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができる色素、及びc2)PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができない色素からなる群から選択される、1種以上の色素(c)を含む。
【0052】
本発明の目的のために、「色素」という用語は、色特性又は発光特性を有する任意の物質を指し、着色物質、ルミネセンス(即ち、蛍光物質又はリン光物質)、並びに着色及び/又はルミネセンス(即ち、蛍光発光及び/又はリン光発光)となることができる物質を意味する。
【0053】
できる(capable)色素
【0054】
一実施形態では、本発明の組成物は、PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができる色素(b1)を含む。用語「PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができる色素」は、PCMが固体状態から液体状態に、液体状態から固体状態に、又はその両方に本質的に変化するときに、着色、変色、色の変化、ルミネセンス消光(例えば蛍光消光若しくはリン光消光)、ルミネセンス活性化(例えば、蛍光活性化若しくはリン光活性化)、又はルミネセンス(即ち、蛍光若しくはリン光)の変化を示すことができる色素を指す。これは、これらの色素が、発色、変色、着色の変化、発光消光(例えば、蛍光消光若しくはリン光消光)、発光活性化(例えば、蛍光活性化若しくはリン光活性化)又は発光の変化(すなわち、蛍光若しくはリン光)を示す能力を、クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータの存在を必要とすることなく、それ自体で有することを意味する。
【0055】
-色変化色素
【0056】
光誘起サーモクロミック組成物は、凝集/近接状態及び/又は温度に応じて色が変化する色素の群から選択される1種以上の色素を含む。凝集/近接状態に応じて色が変化する色素は、非凝集状態とは異なる色を示すJ凝集体及びH凝集体を形成する色素から選択される。これらの色素の例としては、限定されないが、多環芳香族炭化水素及びシアニン色素が挙げられる。
【0057】
-ルミネセンス変化色素
【0058】
光誘起サーモルミネセンス組成物は、1種以上のルミネセンス剤を含む。一般に、「ルミネセンス剤」という用語は、放射による励起への曝露中に、先に吸収されたUV、可視又はNIR放射の形態でエネルギーを放出することができる任意の化合物を指す。発光は、蛍光又はリン光であり得るが、これに限定されない。
【0059】
一実施形態では、光誘起サーモルミネセンス組成物は、凝集/近接状態に応じてそのルミネセンスを変化させる色素及び粘度/剛性依存発光を有する色素の群から選択される1種以上の色素を含む。
【0060】
凝集/近接状態に応じて色が変化する色素は、J凝集体及びH凝集体を形成する色素、凝集誘起発光(AIE)色素、凝集誘起消光(ACQ)色素、並びにエキシマを形成する色素の群から選択される。これらの色素の例としては、限定されないが、多環芳香族炭化水素、例えばペリレン、ピレン、アントラセン、ルブレン、ローダミンB塩基(RhB)、テトラフェニルエテン(TPE)及びそれらの誘導体、例えば9,10-ジメチルアントラセン、9,10-ジフェニルアントラセン、9,10-ジシアノアントラセン(DCA)及び1,3,6,8-テトラフェニルピレンが挙げられる。
【0061】
一実施形態では、光誘起サーモルミネセンス組成物は、発光が媒体の粘度/剛性に依存する1種以上のルミネセンス剤を含む組成物である。一実施形態において、光誘起サーモルミネセンス組成物は、1種以上のルミネセンス剤が{[5´-(p-ヒドロキシフェニル)-2,2´-ビチエニル-5-イル]-メチリデン}-プロパンジニトリル(NIAD-4)及びTPEである組成物である。
【0062】
できない(Uncapable)色素
【0063】
一実施形態では、本発明の組成物は、PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができない色素(b2)を含む。用語「PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができない色素」は、PCMが固体状態から液体状態に、液体状態から固体状態に、又はその両方に本質的に変化するときに、着色、変色、着色の変化、ルミネセンス消光(例えば蛍光消光若しくはリン光消光)、ルミネセンス活性化(例えば、蛍光活性化若しくはリン光活性化)、又はルミネセンス(即ち、蛍光若しくはリン光)の変化を示すことが本質的にできない色素を指す。このことは、これらの色素が、本質的に、着色、変色、着色の変化、発光消光、発光活性化又は発光の変化をそれ自体で示す能力を有さないが、クロム又はフルオロクロミックプロモータの存在下で、着色、変色、着色の変化、ルミネセンス消光、ルミネセンス活性化又はルミネセンスの変化を示す能力を本質的に有していないことを意味する。
【0064】
-色変化色素
【0065】
一実施形態では、光誘起サーモルミネセンス組成物は、電荷移動色素(レドックス色素)、pH応答色素、極性依存色素からなる群から選択される1種以上の色素を含む。
【0066】
一実施形態では、光誘起サーモクロミック組成物は、1種以上のpH応答性色素を含む。pH応答性色素の例としては、スピロラクトン色素、スピロピラン色素、スピロオキサジン色素、フルオラン色素及びクロメン色素であるが、これらに限定されない。これらの色素は、発色剤との、又は固体若しくは液体状態で発色剤として作用することができるPCMとの水素結合相互作用又は酸塩基反応が生じると、自身の色を変化させる。
【0067】
一実施形態では、光誘起サーモクロミック組成物は、1種以上のレドックス色素を含む。レドックス色素の例としては、メチレンブルー、メチルビオロゲン、アズールB、酢酸チオニン塩、サフラニンO及びニュートラルレッドが挙げられるが、これらに限定されない。これらの色素は、発色剤(電子供与体/受容体)との、又は固体若しくは液体状態で発色剤として作用することができるPCMとの電荷移動錯体の形成時に、自身の色を変化させる。
【0068】
-ルミネセンス変化色素
【0069】
一実施形態では、光誘起サーモルミネセンス組成物は、電荷移動色素(レドックス色素)、pH応答性色素、極性依存性色素、pH感受性ルミネセンス色素及びレドックスルミネセンス剤からなる群から選択される1種以上のルミネセンス剤を含む。
【0070】
一実施形態では、光誘起サーモルミネセンス組成物は、1種以上のルミネセンス剤がpH感受性ルミネセンス剤である組成物である。一実施形態では、光誘起サーモルミネセンス組成物は、1種以上の光誘起サーモルミネセンス組成物がフルオレセイン、ローダミン6G、RhB及び誘導体(例えば、クマリン及びフルオランの誘導体)からなる群から選択されるpH感受性ルミネセンス剤である組成物である。
【0071】
一実施形態では、光誘起サーモルミネセンス組成物は、1種以上のルミネセンス剤がレドックスルミネセンス色素である組成物である。一実施形態では、光誘起サーモルミネセンス組成物は、1種以上のルミネセンス剤が、多環式芳香族炭化水素の誘導体からなる群から選択されるレドックスルミネセンス剤である組成物である。一実施形態では、光誘起サーモルミネセンス組成物は、1種以上のルミネセンス剤が、電子供与体又は受容体との相互作用時にその発光を変化させる、RhB、ペリレンジイミド(PDI)、N,N´-ビス(sec-ブチル)-1,6,7,12テトラ-(4-tert-ブチルフェノキシ)ペリレン-3,4:9,10-テトラカルボン酸ジイミド(PTDI)及びDCAからなる群から選択されるものである。
【0072】
適切な色素及び色プロモータ又はフルオロクロミックプロモータ、光学特性の光誘起変化に適切なそれらの量及び特定の実験条件は、調製される色素及び組成物、自立膜又は物品の種類に従って当業者が容易に決定することができる。例えば、本発明の組成物は、色素としてのRhB及び酸性プロモータ、又は代替的に酸性PCMを含み、光誘起ルミネセンスはPCMの液体状態で行われる。
【0073】
一実施形態では、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、上で定義した1種以上の色素を、組成物の0.005~5重量%の量で含む。一実施形態では、光誘起組成物は、上で定義した1種以上の色素を、組成物の0.1~5重量%の、特に組成物の1.4~3重量%の量で含むサーモクロミック組成物である。一実施形態では、光誘起組成物は、上で定義した1種以上の色素を、組成物の0.01~2.5重量%の量で含む、サーモルミネセンス組成物である。「重量パーセンテージ(%)」という用語は、総重量に対する組成物の各成分のパーセンテージを指す。本発明の組成物は、材料中に均一に分布され、均一な色を与える低含有量の色素を含有する。
【0074】
発色剤
【0075】
本発明の光誘起サーモクロミック組成物は、1種以上の発色剤を含むことができる。特に、PCMがクロミックプロモータとして作用することができず(b2)、PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに色素がその色特性又は発光特性を変更できない(c2)場合、光誘起サーモクロミック又はサーモクロミック組成物は、発色剤である1種以上のクロミックプロモータをさらに含む。PCMがクロミックプロモータとして作用することができる(b1)、又はPCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに色素が色特性を変更することができる(c1)場合でも、光誘起サーモクロミック組成物は、任意選択で、(d)発色剤である1種以上のクロミックプロモータを含む。「発色剤」という用語は、色素の着色/変色など、色素の色特性の変化を引き起こすことができる化合物を指す。
【0076】
発色剤は、発色剤がPCM(b1)であってもなくても、その固体状態又は液体状態で色素と相互作用する。色変化を誘発する相互作用の種類は、水素結合、酸塩基反応(プロトン移動)及び/又は電子移動の範囲内であり得る。
【0077】
一実施形態では、組成物は、酸、塩基、水素結合化合物、電子移動化合物又はそれらの混合物からなる群から選択される発色剤を含む。本発明に適した酸発色剤の例としては、限定されないが、酸、アルコール及びそれらの混合物が挙げられる。
【0078】
本発明に適した塩基発色剤の例としては、限定されないが、アミン及びその混合物が挙げられる。本発明に適した水素結合化合物の例としては、限定されないが、酸、アルコール、アミン及びそれらの混合物が挙げられる。本発明に適した電子移動化合物の例としては、限定されないが、チオール、アミン及びそれらの混合物が挙げられる。
【0079】
一実施形態では、発色剤は、上で定義した親油性「発色剤」である。「親油性」、「疎水性」及び「非極性」という用語は同じ意味を有し、互換的に使用される。それらは、水にではなく中性非極性溶媒に可溶性である化合物を指す。水中の親油性分子は、水中に再分散可能なだけで溶解しない凝集体を形成できることが多い。
【0080】
当業者に周知であるように、化合物が親水性である又は親油性であるかを決定するのに有用なパラメータは、その分配係数(P)を決定することである。分配(P)係数は、平衡状態にある2つの非混和性相の混合物中の特定の化合物の濃度の比である。通常、選択される溶媒の1つは水であり、第2の溶媒はオクタノールなどの疎水性である。疎水性有効成分は高いオクタノール/水分配係数を有し、親水性化合物は低いオクタノール/水分配係数を有する。log P値は、親油性/親水性の尺度としても既知である。特定のpHにおける溶媒中の非イオン化溶質の濃度の比の対数は、log Pと呼ばれる。log P値は、親油性の尺度としても既知であり:
【0081】
【0082】
式中、「溶質」は有効成分である。
【0083】
本発明の目的のために、化合物は、log P値が2.4以上である「親油性」と考えられる。
【0084】
一実施形態では、発色剤は、PCMドデカン酸、ステアリン酸、1-テトラデカノール、1-ヘキサデカノール、ドデシルホスホン酸、p-ヒドロキシ安息香酸オクチル、ビスフェノールAから選択される。
【0085】
ハロクロミック色素の場合、発色剤(プロトンを供与/受容することができる)と色素(プロトンを受容/供与することができる)との間のプロトン交換は、色素の色変化を引き起こす。一実施形態では、本発明の光誘起サーモクロミック組成物は、PCMドデカン酸、ステアリン酸、1-テトラデカノール、1-ヘキサデカノール、ドデシルホスホン酸、p-ヒドロキシ安息香酸オクチル、ビスフェノールAから選択される発色剤を含む。水素結合相互作用を確立したときに自身の色を変化させる色素については、色素と発色剤との間のこれらの相互作用の形成が発色を誘起する。電子移動によって電荷移動錯体を形成するときに自身の色を変化させる色素については、色素と電子供与体/受容体との相互作用が発色を生じる。
【0086】
一実施形態では、光誘起サーモクロミック組成物は、本発明で定義するような1種以上の発色剤を、組成物の0.1~15重量%の、特に組成物の1~10重量%の量で含む。
【0087】
発光活性化剤
【0088】
本発明の光誘起サーモルミネセンス組成物は、1種以上の発光活性化剤を含むことができる。特に、PCMがフルオロクロミックプロモータとして作用することができず(b2)、PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに色素がその発光特性を変更できない(c2)場合、光誘起サーモルミネセンス組成物は、発光活性化剤である1種以上のフルオロクロミックプロモータをさらに含む。PCMがフルオロクロミックプロモータとして作用することができる(b1)、又はPCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに色素がその発光特性を変更することができる(c1)場合であっても、光誘起サーモルミネセンス組成物は、任意選択で、(d)発光活性化剤である1種以上のフルオロクロミックプロモータを含むことができる。「発光活性化剤」という用語は、色素の発光増強を引き起こすことができる化合物を指す。
【0089】
一実施形態では、クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータは、一重項、三重項増感剤、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)増感剤及び電子移動増感剤、並びにそれらの混合物からなる群から選択される発光活性化剤である。
【0090】
一実施形態では、発光活性化剤は、ベンゾフェノン、ペリレン、ピレン、シアニン及びボラジアザインダセン(BODIPY)誘導体、白金オクタエチルポルフィリン、パラジウムテトラアントラポルフィリンからなる群から選択される。
【0091】
一実施形態では、光誘起サーモルミネセンス組成物は、本発明で定義するような1種以上の発光活性化剤を、組成物の0.001~10重量%の量で含む。一実施形態では、光誘起サーモルミネセンス組成物は、本発明で定義するような1種以上の発光活性化剤を、組成物の0.001~10重量%の、組成物の0.01~9重量%の量で含む。
【0092】
発光消光剤
【0093】
本発明の光誘起サーモルミネセンス組成物は、1種以上の発光消光剤を含むことができる。特に、PCMがフルオロクロミックプロモータとして作用することができず(b2)、PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに色素がその発光特性を変更できない(c2)場合、光誘起サーモルミネセンス組成物は、発光消光剤である1種以上のフルオロクロミックプロモータをさらに含む。PCMがフルオロクロミックプロモータとして作用することができる(b1)、又はPCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに色素がその発光特性を変更することができる(c1)場合であっても、光誘起サーモルミネセンス組成物は、任意選択で、(d)発光消光剤である1種以上のフルオロクロミックプロモータを含むことができる。「発光消光剤」という用語は、色素の発光の阻害を引き起こすことができる化合物を指す。発光の阻害を誘起する相互作用の種類は、エネルギー及び/又は電子移動によって媒介される。
【0094】
一実施形態では、発光消光剤は、RET消光剤、三重項消光剤、電子移動消光剤及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0095】
一実施形態では、発光消光剤は、ペリレン、ピレン、アントラセン、アミン及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0096】
一実施形態では、本発明で定義する発光消光剤は、組成物の0.001~0.5重量%の量である。一実施形態では、本発明で定義する発光消光剤は、組成物の0.005~0.1重量%の量である。
【0097】
カプセル
【0098】
一実施形態では、本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、カプセルを含む。一実施形態では、本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、ナノカプセル及びマイクロカプセルから選択されるカプセルを含む。「マイクロカプセル」という用語は、マイクロスケール寸法を有する、即ち0.20μmを超える直径を有し、任意の形状又は形態を有するカプセルを指す。一実施形態では、本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、SEMによって測定された0.21~400μmの粒径を有する、本明細書で定義するマイクロカプセルを含む。一実施形態では、本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、SEM又はマスターサイザによって測定した0.5μm~5μmの粒径を有する、上で定義したようなカプセルを含む。
【0099】
「ナノカプセル」という用語は、ナノスケールの寸法、即ち20~200nm未満の直径を有し、任意の形状又は形態を有するカプセルを指す。一実施形態では、本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、SEM、透過型電子顕微鏡(TEM)及びDLSによって測定した30nm~150nmの粒径を有する、上で定義したナノカプセルを含む。ナノカプセルは有利である、なぜなら、ナノカプセルによって、透明性を必要とする光学用途に好適である透明材料(例えば、一旦、ポリマー剤と組合わされた膜形成材料)を得ることができるためである。ナノカプセルはまた、生物医学用途で使用できるようになるため有利である。小型化されているため、細胞膜から進入することが可能となる。
【0100】
一実施形態では、本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、コアシェルマイクロカプセル、コアシェルナノカプセル、固体脂質マイクロ粒子及び固体脂質ナノ粒子の群から選択されるカプセルを含む。
【0101】
一実施形態では、本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、コアシェルマイクロカプセル又はコアシェルナノカプセルを含む。「コアシェルカプセル」という用語は、コアとコアの少なくとも一部を取り囲むシェルとによって形成されたカプセルを指す。
【0102】
一実施形態では、本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、コアが1種以上のコア形成材料を含むコアシェルマイクロカプセル又はコアシェルナノカプセルを含む。一実施形態では、本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、コアがコア形成材料として本明細書で定義するような1種以上のPCMを含む、コアシェルマイクロカプセル又はコアシェルナノカプセルを含む。本発明のための適切なコア形成材料の例としては、限定されないが、エイコサン、ステアリン酸及びそれらの混合物が挙げられる。
【0103】
本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、シェルが有機ポリマーシェル材料及び無機ポリマーシェル材料からなる群から選択される1種以上のポリマーシェル材料を含む、コアシェルマイクロカプセル又はコアシェルナノカプセルを含む。本発明に適切な有機ポリマーシェル材料の例としては、限定されないが、直鎖又は架橋ポリ(メチルメタクリレート)、ポリスチレン、ポリアミド、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド及びそれらの混合物が挙げられる。本発明に適切な無機ポリマーシェル材料の例としては、限定されないが、SiO2、TiO2、VO2及びそれらの混合物が挙げられる。この組織構造は特に有利である、なぜなら、シェルがコア材料、特にPCMを封じ込め、その拡散を回避して、再現性のある色又は発光の変化を可能にするからである。
【0104】
一実施形態では、本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、固体脂質マイクロ粒子又は固体脂質ナノ粒子を含む。「固体脂質粒子」又は「SLP」という用語は、固体脂質コアマトリックスを有するカプセルを指す。「脂質」という用語は、本明細書ではより広い意味で使用され、トリグリセリド(例えばトリステアリン)、アルカン(例えばエイコサン)、ジグリセリド(例えばベヘン酸グリセロール)、モノグリセリド(例えば、モノステアリン酸グリセロール)、脂肪酸(例えばステアリン酸)、ステロイド(例えばコレステロール)及びワックス(例えばパルミチン酸セチル)を含む。このことは、SLPが固体脂質コアマトリックスを取り囲むシェル材料を有さないことを意味する。この組織構造は、特に有利である、なぜなら、処理をより容易にすることができるが、液体状態のマトリックス形成剤、特にPCMの拡散及び漏れを回避するためにポリマー材料を用いた追加の処理(例えばコーティング又は埋め込みなど)を必要とするからである。
【0105】
一実施形態では、本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、SLPであって、1種以上のPCMを含むSLPを含む。本発明に適切なPCMの例としては、限定されないが、エイコサン、ステアリン酸及びそれらの混合物が挙げられる。
【0106】
一実施形態では、本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、SLPを含み、SLPは、限定されないが、ポリスチレン(PS)、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルイミド及びそれらの混合物を含む、1種以上の適切な熱可塑性ポリマーを更に含む。これらの組成物は、色又は発光の不可逆性変化を有することができるようにする熱可塑性ポリマーを含む。
【0107】
一実施形態では、本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、SLPを含み、SLPは、本明細書で定義される1種以上のPCMと、上で定義した1種以上の熱可塑性ポリマーとの混合物を含み、熱可塑性ポリマーの含有量は、SLPの重量の50%以上である。
【0108】
一実施形態では、本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、カプセルを含み、カプセルは、ナノ粒子、PCM、1種以上の色素、及び必要に応じて1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを内部に含む。これらのカプセルを含む本発明の組成物は有利である、なぜなら、ナノ粒子とPCMとの間を密着させることができるからである。したがって、カプセルは、コーティング又は膜を調製するためのインク又は塗料として使用することができる。カプセルは、異なる性質のポリマー材料の膜又はコーティングに埋め込まれ得る。
【0109】
一実施形態では、本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、カプセルを含み、カプセルは、PCM、1種以上の色素、及び必要に応じて、1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを内部に含む。このことは、ナノ粒子がカプセル内部にないが、以下に定義するコーティング、自立膜若しくは埋め込まれた物品の一部を形成する賦形剤若しくはビヒクル中に均一に分布していること、又は代替的に、ナノ粒子が、シェル内の若しくはシェルに付着したシェル形成材料として、シェル材料中に存在することを意味する。例えば、ナノ粒子は、カプセルが埋め込まれた自立膜材料中に均一に分布させることができる。これらのカプセルを含む本発明の組成物は有利である、なぜなら、カプセルを含有する異なる材料の膜又はコーティングを得ることができるからである。さらに、ポリマーコーティング又は膜中に均一に分布したカプセルによって、ナノ粒子、特にMPによって発生した熱が迅速に全てのカプセルに到達し、迅速な色又は発光の変化を誘起させることができる。
【0110】
一実施形態では、上で定義したカプセルを含む本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、外部相と、この相に懸濁された本発明で定義したカプセルとを含む、懸濁組成物の形態である。一実施形態では、外部相は、水、有機溶媒及びそれらの混合物からなる群から選択される1種以上の溶媒を含む。一実施形態では、外部相は、水、メタノール、エタノール、アセトン、ヘキサン、ジメチルホルムアミド及びそれらの混合物からなる群から選択される1種以上の溶媒、特に水を含む。一実施形態では、本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、上で定義した懸濁液組成物の形態であり、カプセルが、ナノ粒子、PCM、1種以上の色素、及び必要に応じて1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを内部に含む。一実施形態では、本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、水懸濁組成物の形態であり、カプセルがPCM、1種以上の色素、及び必要に応じて、1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを内部に含む。これは、ナノ粒子がカプセル内部にはないが、外部相に均一に分布している、又はシェルの一部を形成している、又はカプセルのシェル材料上に堆積していることを意味する。上述の懸濁液、特に水懸濁液の調製のためのプロセスも本発明の一部である。
【0111】
一実施形態では、上で定義したカプセルを含む本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、乾燥粉末組成物の形態である。一実施形態では、本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、乾燥粉末組成物の形態であり、カプセルが、ナノ粒子、PCM、1種以上の色素、及び必要に応じて1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを内部に含む。一実施形態では、本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、乾燥粉末組成物の形態であり、カプセルが、PCM、1種以上の色素、及び必要に応じて1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを内部に含む。これは、ナノ粒子がカプセル内部にはないが、カプセルの外側の粉末中に存在する、又はシェルの一部を形成している、又はカプセルのシェル材料上に堆積していることを意味する。これは、上で定義した懸濁液を噴霧乾燥、凍結乾燥又は溶媒蒸発条件下に供して、懸濁液の溶媒を除去することを含む、上述の乾燥粉末組成物の調製のためのプロセスの一部でもある。
【0112】
一実施形態では、本発明の組成物は、医薬有効成分及び活性酸素種からなる群から選択される追加の成分をさらに含む。存在する場合、これらの成分は一般に、本発明の組成物の一部を形成する1種以上のPCMと混合される。
【0113】
成分に関して本発明で定義した光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物について上で定義した全ての実施形態は、本発明で定義するカプセル、水懸濁液及び乾燥粉末組成物にも適用される。
【0114】
光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス自立膜
【0115】
上で開示したように、本発明の第2の態様は、本発明で定義するような光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物、1種以上のポリマー、及び任意選択で1種以上の賦形剤を含む、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス自立膜に関する。
【0116】
本明細書で使用する場合、「自立膜」という用語は、物理的に安定した形状を有し、そのキャスト表面で寸法安定性があり、その表面積の大部分にわたって支持する必要なしに、キャスト表面から除去することができる膜を指す。
【0117】
本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス自立剛性又は可撓性膜は、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物が所望の形状を形成できるようにする、1種以上の賦形剤を任意選択で含む。適切な賦形剤及びその量は、調製される形成された材料の種類に従って、当業者が容易に決定することができる。適切な賦形剤は、MP及びカプセルの凝集を防止するための安定剤であることができる。これらの光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス自立膜の調製は、本技術において既知の方法によって行うことができる。一般に、自立膜の調製は、押出、伸長、射出成形、キャスティング、インサイチュ重合、スプレーコーティング、スピンコーティング、ドクターブレードコーティング及びロールツーロールコーティングの使用を意味する。自立膜は、例えば膜を剥離する、又は基板を溶解することによって、基板から除去される。
【0118】
成分に関して本発明で定義した光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物について上で定義した全ての実施形態は、本発明の第2の態様の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス自立膜にも適用される。光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス自立膜は、最終用途に使用することができる材料/組成物と考えられる。
【0119】
光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス物品
【0120】
上で開示したように、本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様で定義した光誘起サーモクロミック若しくはサーモルミネセンス組成物、又は代替的に、本発明の第2の態様で定義した光誘起サーモクロミック若しくはサーモルミネセンス自立膜を含む、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス物品に関する。
【0121】
光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス物品は、最終用途に使用することができる材料/組成物と考えられる。
【0122】
一実施形態では、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス物品は、基板と、基板の表面上に堆積された光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンスコーティングと、を含むコーティングされた物品(A)であり、そのコーティングは、本発明で定義するような組成物、及び任意選択で1種以上のコーティング形成剤を含む。「コーティングされた物品」という用語は、コーティング組成物によって形成された1つ以上の層によって被覆された基板を含む物品を指す。一実施形態では、コーティングされた物品は、単層、二層及び多層コーティングされた物品から選択される。本発明の目的のために、サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物による基板のコーティングは、任意の表面をコーティングするための当分野で既知のいずれの方法によっても行うことができる。本発明のための適切な基板の例としては、限定されないが、非多孔質基板及び多孔質基材多孔質基板が挙げられる。光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンスコーティング組成物は、任意選択で、1種以上のコーティング形成剤を含む。適切な賦形剤及びその量は、コーティングされている基板の種類に従って、当業者が容易に決定することができる。一実施形態では、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス物品は、ガラス、ポリマーシート、織物材料、セルロース系材料及び木材、透明又は不透明基板、並びに湾曲又は平坦基板からなる群から選択される基板を含む。
【0123】
一実施形態では、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス物品は、多孔質基板と、多孔質基板に埋め込まれた本発明の第1の態様で定義されるような光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物と、任意選択で1種以上の追加の外部コーティングと、を含む埋め込まれた物品(B)である。「埋め込まれた物品」という用語は、細孔の内部に光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物を含有する多孔質基板によって形成された物品を指す。特に、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、基板の表面に堆積されて、細孔を貫通する。本発明の目的のために、「多孔質基板」という用語は、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンスが基板を通過できるようにする複数の細孔又は貫通細孔を有する基板を指し、ここで組成物は細孔の形態をとる。これらの物品は有利である、なぜなら、基板の細孔が光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物(特に、SLPの形態である又は非構造材料としてのこれらの組成物)の拡散を防止するからである。本発明の目的のために、本発明の埋め込まれた物品の調製プロセスは、当分野で既知のいずれの方法によっても実施することができる。本発明のための適切な方法の例としては、限定されないが、キャスティング、インサイチュ重合(ポリマーマトリックスの場合、必要に応じて)、スプレーコーティング、スピンコーティング、ドクターブレードコーティング及び基板含浸が挙げられる。光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス物品は、任意選択で、1種以上の賦形剤又は担体を含むことができる。適切な賦形剤又は担体並びにその量は、埋め込まれる基板の種類に従って、当業者が容易に決定することができる。光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス物品は、任意選択で、1つ以上の追加の外部コーティングを含む埋め込まれた物品である。これらの追加の外部コーティングは、特に防水コーティング、耐食性コーティング、耐傷性コーティングであることができる。これらの追加の外部コーティングの調製のための組成物及びプロセスは、調製されている外部コーティングの種類に従って当業者によって容易に決定することができる。本発明のこれらの埋め込まれた物品は有利である、なぜなら、均一に分散された低濃度のナノ粒子を使用して、基板全体の色又は発光を均一に変化させることができるからである。
【0124】
本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、多種多様な基板、特に多孔質基板をコーティングするためのその汎用性及び有用性のために有利である。一実施形態では、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス多孔質基板は、織物系基板、ポリアミド系基板、ポリエステル系基板、セルロース系基板及びそれらの混合物からなる群から選択される。一実施形態では、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス多孔質基板は、紙、紙幣、木材及び綿からなる群から選択される。
【0125】
一実施形態では、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス物品は、本発明で定義する1つ以上の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス自立膜を含む自立膜含有物品である。膜について上で定義した「自立」という用語の定義は、それを含有する「物品」にも適用される。
【0126】
光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンスコーティングされた物品、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス埋め込み物品及び自立膜含有物品の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンスコーティングは、基板の表面を被覆することができる、又は代替的に2つ以上の表面(若しくは層)の間、例えばガラス若しくはポリマーシートの間に挟持されることができる。
【0127】
一実施形態では、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス物品は、SEM、TEM及びDLS法によって測定される20~150nmの粒径を有するナノカプセルを含む、透明な光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物又は自立膜を含む。本発明の透明な光誘起サーモクロミック若しくはサーモルミネセンス組成物又は自立膜は有利である、なぜなら、それらが、最終物品も透明でもある(即ち、基板も透明であることを意味する)場合に、光学部品分野において有用であり得るからである。代替的に、不透明な基板上の、本発明の透明な光誘起サーモクロミック若しくはサーモルミネセンス組成物又は自立膜は、その態様を変えることなく、コーティングされた物品の外観が膜を通して見えるようにするのに有用である。
【0128】
一実施形態では、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス物品は、カプセルを含む光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物を含み、ナノ粒子、1種以上のPCM、1種以上の色素、及び必要に応じて1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータはカプセルの内部にある。
【0129】
一実施形態では、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス物品は、カプセルを含む光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物を含み、1種以上のPCM、1種以上の色素、及び必要に応じて1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータはカプセルは内部にあり、ナノ粒子は、コーティング、埋め込み材料若しくは自立膜の一部を形成するか、又は代替的にシェルの一部を形成する、賦形剤及び/若しくは担体中に分散されている。
【0130】
一実施形態では、本発明の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス基板は、表面に堆積された、又は表面に埋め込まれた、又は0.01μm~1000μmの厚さを有する自立膜を形成する、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンスコーティングを含む。これは有利である、なぜなら、NIR誘起サーモクロミック特性又はサーモルミネセンス特性の機能性を最終物品に与えるからである。
【0131】
低エネルギー放射(NIR)によるナノ粒子の照射によって促進される温度の上昇によって誘起される、上で定義した本発明の物品の色又は発光の変化は、急速、均一かつ強力である。この変化は可逆的又は不可逆的であり得る。
【0132】
一実施形態では、上で定義した光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス物品中のナノ粒子の分布は、基板1mm2当たりナノ粒子0.000008~0.00014mgである。
【0133】
成分に関連して本発明で定義する光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物及び形成材料について上で定義した全ての実施形態は、本発明の第3の態様の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス物品にも適用される。
【0134】
光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物の調製
【0135】
これは、本発明の第1の態様の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物の調製のためのプロセスの一部でもある。
【0136】
光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物がカプセルを含まない実施形態では、プロセスは、1種以上の色素、及び必要に応じて、1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを用いてPCMの溶液を調製することと、このように得られた溶液を本発明で定義するナノ粒子と混合することと、を含む。
【0137】
光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物が本発明で定義するカプセルとして構造化される実施形態では、プロセスは、技術水準で既知のいずれかの方法によってカプセルを調製することを含む。
【0138】
一実施形態では、カプセルは、ナノ粒子、1種以上のPCM、1種以上の色素、及び必要に応じて、1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを内部に含む、SLPカプセルである。このプロセスは、乳化/冷却プロセス、自然乳化(自発的乳化)/溶媒置換プロセス、エマルジョン-溶媒蒸発、又は代替的に熱間押出プロセス、特に乳化/冷却プロセスを実施することを含む。一例として、SLPカプセルを含む組成物の調製のための一般的な手順のより詳細な説明を提供する。最初に、色素、及び必要に応じて1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータは、その溶融状態でPCMに溶解される(任意選択で、ナノ粒子及び界面活性剤などのさらなる賦形剤を含めることができる)。続いて、このように得られた有機相を、水及び界面活性剤などの1種以上の賦形剤によって形成された水相と混合する。乳化プロセスは、当分野で既知の任意の方法、例えば高エネルギー又は低エネルギー法によって行われる。高エネルギー法では、均質化は、撹拌、高剪断均質化、超音波処理、膜濾過又は高圧均質化によって行われる。低エネルギー法としては、自然乳化法及び転相法が挙げられる。エマルジョンが得られた後(液滴サイズは乳化法によって変わる)、5℃に維持された水溶液に移して、PCMの冷却及び凍結を誘起する。
【0139】
一実施形態では、カプセルは、ナノ粒子、1種以上のPCM、1種以上の色素、及び必要に応じて、1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを内部に含む、コア-シェルカプセルである。その調製のためのプロセスは、界面重合プロセス、ラジカル重合プロセス、コアセルベーションプロセス、インサイチュ重合プロセス及び溶媒蒸発/相分離プロセス、特に相分離/シェル形成プロセスを実施することを含む。一例として、コア-シェルカプセルを含む組成物の調製の一般的な手順のより詳細な説明を提供する。最初に、シェル形成材料(シェルポリマー);1種以上の色素、必要に応じて、1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータ及びPCMを揮発性の非水混和性有機溶媒に溶解させる(任意選択で、ナノ粒子及び界面活性剤などの1種以上の賦形剤を含めることができる)。続いて、このように得られた有機相を、水及び1種以上の賦形剤、例えば界面活性剤によって形成された水相と混合する。乳化プロセスは、高エネルギー法又は低エネルギー法によって行われる。高エネルギー法では、均質化は、撹拌、高剪断均質化、超音波処理、膜濾過又は高圧均質化によって行われる。低エネルギー法としては、自然乳化法及び転相法が挙げられる。エマルジョンが得られた後(液滴サイズは乳化法によって変わる)、有機溶媒が蒸発されて、PCM液滴の周囲でのシェル形成材料(シェルポリマー)の析出が引き起こされ、溶媒の蒸発が生じる間に固化する。
【0140】
一実施形態では、カプセルは、1種以上のPCM、1種以上の色素、及び、必要に応じて、1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを内部に含む、SLP又はコアシェルカプセルである。この場合、プロセスは、上で開示したプロセスの後に、上で開示したが、PCM、1種以上の色素、及び必要に応じて1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを含むカプセルを調製することと、第2に、先行ステップで得られたカプセルを本発明のナノ粒子と混合することと、を含む。
【0141】
一実施形態において、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物が懸濁液の形態であり、プロセスは、上で開示したカプセルの水中での調製を含み、カプセルが合成後に残ったままであるか、又はカプセルを粉末から再分散させることができる。
【0142】
一実施形態において、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物が乾燥粉末組成物の形態であり、このプロセスは、例えば水などの適切な媒体中で上で開示したプロセスを行うこと、及び凍結乾燥又は噴霧乾燥によって先に得られた水懸濁液をさらに乾燥させることを含む。
【0143】
一実施形態では、上で定義した本発明の組成物の調製のためのプロセスは、NIR放射を吸収し、NIRを熱に変換することができるナノ粒子を調製する先行ステップをさらに含む。一実施形態では、上で定義した本発明の組成物の調製のためのプロセスは、テンプレート法によってナノ粒子を調製する先行ステップをさらに含む。テンプレートは、自己テンプレート界面活性剤、油滴又は固体粒子によって与えられ得る。
【0144】
金属粒子の場合、プロセスは、テンプレートの内部又は周囲の金属塩を還元し、光化学的に(照射)、熱的に、電気化学的に、超音波処理又は化学物質(例えばアミン)によって金属塩を還元することを含む。一実施形態において、テンプレートは、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)の液滴によって作製される。一実施形態では、テンプレートは、サーモクロミック/サーモルミネセンス組成物を含有するコア-シェルカプセル又はSLPである。一実施形態では、上で定義した本発明の組成物の調製のためのプロセスは、水中(APTES)型懸濁液による金属(金など)ナノシェルのワンポット合成を含む、ナノ粒子を調製する先行ステップをさらに含む。特に、金ナノシェル(AuNS)は、水中のAPTESナノ液滴の存在下で塩化金酸を還元することによって調製される。APTESナノ液滴は、金ナノシェルのテンプレートとして作用する。HAuCl4を添加すると、液滴と水との間の界面に移動する。還元剤(NaBH4)を添加すると、金が還元されてナノシェル構造が形成される。AuNSを安定化するためには、ウシ血清アルブミンなどの安定剤を迅速に添加することが必要である。適切な方法、反応条件及び試薬、並びにその量は、MPの粒径、形状及び金属の種類に従って当業者が容易に決定することができる。
【0145】
NIRを熱に変換することができる非金属粒子の場合、例えば半導体ポリマーナノ粒子及びシアニン色素ナノ粒子の場合、プロセスは、エマルジョン-溶媒置換法及びエマルジョン-溶媒蒸発を含む。
【0146】
適切な方法、反応条件及び試薬、並びにその量は、PCMの組成及び構造の形態に従って当業者が容易に決定することができる。
【0147】
光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス自立膜の調製
【0148】
これは光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物を含む、本発明の第2の態様の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス自立膜の調製のためのプロセスの一部でもある。
【0149】
適切な方法、反応条件及び試薬、並びにその量は、形成される物品並びにPCMの組成及び構造に従って当業者が容易に決定することができる。
【0150】
一実施形態では、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、ナノ粒子、1種以上のPCM、1種以上の色素、及び必要に応じて1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを内部に含有するカプセル中で構造化され、物品は、ポリマー材料などの1種以上の賦形剤をさらに含み、プロセスは、
1)カプセル懸濁液をポリマー材料(ポリマー又はモノマー種)と混合するステップ、
2)先行ステップで得られた混合物を基板上に、特に、スピンコーティング、スプレーコーティング、キャスティング、インクジェット印刷、ドクターブレードコーティング、ロールツーロール及び塗装によって堆積させるステップ、
3)先行ステップで得られた基板を乾燥又は硬化させて、コート基板を得るステップ、
4)基板から(基板から剥離する、又は基板を溶解することによって)除去して、他の箇所への適用に好適な膜を得るステップ、
を含む。
【0151】
一実施形態では、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、1種以上のPCM、1種以上の色素、及び必要に応じて1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを内部に含むカプセル中で構造化され、物品は、ポリマー材料などの1種以上の賦形剤をさらに含み、プロセスは、
1)カプセル懸濁液をポリマー材料及びナノ粒子と混合するステップ、
2)先行ステップで得られた混合物を基板上に堆積させるステップ、
3)先行ステップで得られた基板を乾燥又は硬化させて、コート基板を得るステップ、
4)基板から(基板から剥離する、又は基板を溶解することによって)除去して、他の箇所への適用に好適な膜を得るステップ、
を含む。
【0152】
一実施形態では、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、1種以上のPCM、1種以上の色素、及び必要に応じて1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを内部に含むカプセル中で構造化され、物品は、ポリマー材料などの1種以上の賦形剤をさらに含み、プロセスは、
1)カプセル懸濁液をポリマー材料のモノマー種及びナノ粒子と混合するステップ、
2)先行ステップで得られた混合物を基板上に堆積させるステップ、
3)先行ステップで得られた基板を硬化させて、コート基板を得るステップ、
4)基板から(基板から剥離する、又は基板を溶解することによって)除去して、他の箇所への適用に好適な膜を得るステップ、
を含む。
【0153】
本発明の膜形成は、当分野において開示された任意の方法により行うことができる。一般に、膜形成は、予め形成された溶解コーティング材料からの溶媒蒸発、ポリマーナノ粒子分散液の融着、及びモノマーの重合によって行うことができる。
【0154】
光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス物品の調製
【0155】
これは光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物を含む、本発明の第3の態様の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス物品の調製のためのプロセスの一部でもある。
【0156】
一実施形態では、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物がカプセル内で構造化されておらず、そのプロセスは、
1)ナノ粒子の水溶液を基板上に堆積させるステップ、
2)このように得られた基板を乾燥させるステップ、
3)PCMの融点より高い温度で、1種以上の色素、及び必要に応じて1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを含有するPCMの液体混合物を、先行ステップで得られた基板上に堆積させるステップ、
4)先行ステップで得られた基板を冷却するステップ、
5)任意選択で、ポリマー材料の添加によって、先行ステップで得られた基板を1つ以上の追加のコーティング層で被覆するステップ、
を含む。
【0157】
一実施形態において、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物がカプセル内で構造化されておらず、そのプロセスは、
1)PCMの融点より高い温度で、ナノ粒子、1種以上の色素、及び必要に応じて1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを含有するPCMの液体混合物を、加熱されたプレート上に積層されている、基板上に堆積させるステップ、
2)先行ステップで得られた基板を冷却するステップ、
3)任意選択で、ポリマー材料の添加によって、先行ステップで得られた基板を1つ以上の追加のコーティング層で被覆するステップ、
を含む。
【0158】
一実施形態において、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物がカプセル内で構造化されておらず、そのプロセスは、
1)ナノ粒子を含む懸濁液を基板上に堆積させるステップ、
2)先行ステップで得られた基板を乾燥させるステップ、
3)PCM、1種以上の色素、及び必要に応じて前記1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを含む乾燥粉末組成物を堆積させるステップ、
4)任意選択で、ポリマー材料の添加によって、先行ステップで得られた基板を1つ以上の追加のコーティング層で被覆するステップ、
を含む。
【0159】
一実施形態において、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物がカプセル内で構造化されておらず、そのプロセスは、
1)PCM、ナノ粒子、1種以上の色素、及び必要に応じて前記1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを含む乾燥粉末組成物を堆積させるステップ、
2)任意選択で、ポリマー材料の添加によって、先行ステップで得られた基板を1つ以上の追加のコーティング層で被覆するステップ、
を含む。
【0160】
一実施形態では、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物が、PCM、ナノ粒子、1種以上の色素、及び必要に応じて1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを含むカプセル中で構造化されており、そのプロセスは、
1)カプセルを含有する懸濁液を基板上に堆積させるステップ、
2)先行ステップで得られた基板を乾燥させるステップ、
3)任意選択で、ポリマー材料の添加によって、先行ステップで得られた基板を1つ以上の追加のコーティング層で被覆するステップ、
を含む。
【0161】
一実施形態において、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物が、PCM、ナノ粒子、1種以上の色素、及び必要に応じて1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを含むカプセル中で構造化されており、そのプロセスは、
1)カプセルを含有する乾燥粉末組成物を基板上に堆積させるステップ、
2)任意選択で、ポリマー材料の添加によって、先行ステップで得られた基板を1つ以上の追加のコーティング層で被覆するステップ、
を含む。
【0162】
一実施形態において、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物が、PCM、1種以上の色素、及び必要に応じて1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを含むが、ナノ粒子を含まないカプセル中で構造化されており、そのプロセスは、
1)ナノ粒子の懸濁液を基板上に堆積させるステップ、
2)このように得られた基板を乾燥させるステップ、
3)先行ステップで得られた基板上にカプセルを含有する懸濁液を堆積させるステップ、
4)このように得られた基板を乾燥させるステップ、
5)任意選択で、ポリマー材料の添加によって、先行ステップで得られた基板を1つ以上の追加のコーティング層で被覆するステップ、
又は代替的に
1)カプセルを含有する懸濁液を基板上に堆積させるステップ、
2)このように得られた基板を乾燥させるステップ、
3)先行ステップで得られた基板上にナノ粒子の溶液を堆積させるステップ、
4)このように得られた基板を乾燥させるステップ、
5)任意選択で、ポリマー材料の添加によって、先行ステップで得られた基板を1つ以上の追加のコーティング層で被覆するステップ、
又は代替的に
1)カプセル及びナノ粒子を含有する懸濁液を基板上に堆積させるステップ、
2)このように得られた基板を乾燥させるステップ、
3)任意選択で、ポリマー材料の添加によって、先行ステップで得られた基板を1つ以上の追加のコーティング層で被覆するステップ、
又は代替的に
1)シェルの一部を形成するナノ粒子又はカプセルの外側部分のナノ粒子を含有する乾燥粉末組成物を、基板上に堆積させるステップ、
2)任意選択で、ポリマー材料の添加によって、先行ステップで得られた基板を1つ以上の追加のコーティング層で被覆するステップ、
又は代替的に
1)シェルの一部を形成するナノ粒子又はカプセルの外側部分のナノ粒子を含有する懸濁液を、基板上に基板上に堆積させるステップ、
2)このように得られた基板を乾燥させるステップ、
3)任意選択で、ポリマー材料の添加によって、先行ステップで得られた基板を1つ以上の追加のコーティング層で被覆するステップ、
を含む。
【0163】
一実施形態では、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、印刷技術を使用することによって基板上に堆積される。一般に、ナノ粒子懸濁液及びPCM混合物(1種以上の色素、及び必要に応じて1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータをさらに含有する)は、同じ又は2つの分離した連続ステップで印刷される。
【0164】
一実施形態では、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、ナノ粒子、1種以上のPCM、1種以上の色素、及び必要に応じて1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを内部に含有するカプセル中で構造化されており、物品は、ポリマー材料などの1種以上の賦形剤をさらに含み、プロセスは、
1)カプセル懸濁液をポリマー材料(ポリマー又はモノマー種でさえ)と混合するステップ、
2)先行ステップで得られた混合物を基板上に、特に、スピンコーティング、スプレーコーティング、キャスティング、インクジェット印刷、ドクターブレードコーティング、ロールツーロール及び塗装によって堆積させるステップ、
3)先行ステップで得られた基板を乾燥又は硬化させて、コート基板を得るステップ、
を含む。
【0165】
一実施形態では、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、1種以上のPCM、1種以上の色素、及び必要に応じて1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを内部に含むカプセル中で構造化されており、物品は、ポリマー材料などの1種以上の賦形剤をさらに含み、プロセスは、
1)カプセル懸濁液をポリマー材料及びナノ粒子と混合するステップ、
2)先行ステップで得られた混合物を基板上に堆積させるステップ、
3)先行ステップで得られた基板を乾燥又は硬化させて、コート基板を得るステップ、
を含む。
【0166】
一実施形態では、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、1種以上のPCM、1種以上の色素、及び必要に応じて1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを内部に含むカプセル中で構造化されており、物品は、ポリマー材料などの1種以上の賦形剤をさらに含み、プロセスは、
1)カプセル懸濁液をポリマー材料のモノマー種及びナノ粒子と混合するステップ、
2)先行ステップで得られた混合物を基板上に堆積させるステップ、
3)先行ステップで得られた基板を硬化させて、コート基板を得るステップ、
を含む。
【0167】
本発明のコーティング形成は、当分野において開示された任意の方法により行うことができる。一般に、コーティング形成は、予め形成された溶解コーティング材料からの溶媒蒸発、ポリマーナノ粒子分散液の融着、及びモノマーの重合によって行うことができる。
【0168】
一実施形態では、本発明の組成物が上で定義される1種以上の追加の成分を含む場合、プロセスは、上で開示したプロセスのいずれかを実施し、追加の成分をPCMとさらに混合することを含む。
【0169】
本発明の第1の態様の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物、本発明の自立膜及び物品について上で開示した実施形態は全て、その調製のプロセスにも適用される。
【0170】
光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物の用途
【0171】
本発明の組成物、自立膜及び物品の使用も本発明の一部である。
【0172】
本発明の第4の態様は、治療、化粧品、診断、及び光学部品におけるその使用に関する。
【0173】
カプセル内、特にSLPの形態のナノカプセル内及びコア-シェルカプセル内に構造化された光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、造影剤として有用である。「造影剤」という用語は、ラベルとして使用される、又は任意の造影技術において特定の構造を強調する任意の物質を指す。本発明の目的のために、主な造影剤は、NIR放射によって誘起されるPCMの溶融時にルミネセンスを変化させるルミネセンス変化剤(NIR照射時)である。この用途は、高分解能蛍光顕微鏡法に有用であり得る。これはまた、生体組織へのNIR照射をより深く透過させるために有利である。
【0174】
カプセル、特にSLPの形態のナノカプセル内に構造化された光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、薬物送達系として有用である。一実施形態において、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は1種以上の医薬有効成分をさらに含んでおり、それらの組成物は治療に有用である。実際に、SLPからの有効成分の送達は、NIRの照射によってSLPのPCMを溶融することによって行われる。光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物からの有効成分の送達は、NIR光の照射によって誘起される温度を監視することによって制御/変更/延長することができる。
【0175】
光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、光学部品の分野においても有用である。したがって、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物であって、
a)近赤外放射(NIR)を吸収し、NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子、特に金属金ナノ粒子、b)1種以上の相変化材料(PCM)であって、b1)クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができるPCM及びb2)クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができないPCMからなる群から選択される、1種以上のPCM、c)1種以上の色素であって、c1)PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができる色素、及びc2)PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができない色素からなる群から選択される1種以上の色素を含み、PCMがクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができず(b2)、PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに色素がその色特性又は発光特性を変更することができない(c2)場合、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物が、発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤からなる群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータをさらに含む、又は代替的に、-少なくともPCMがクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる(b1)、又は、PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色素がその色特性又は発光特性を変更することができる(c1)場合、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物が、(d)発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤からなる群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを任意選択で含む、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物の、光学部品における使用、又は代替的に、-光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物、1種以上のポリマー、及び任意選択で、1種以上の賦形剤を含む光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス自立膜の、光学部品における使用、又は代替的に、-光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物、又は自立膜を含む、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス物品の、光学部品における使用も、本発明の一部である。
【0176】
一実施形態では、透明である光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、光学フィルタのための透明膜の調製、又はとりわけスマートガラス、自動車用ガラス、設備/建物の窓、鏡などのスマートガラスの調製に有用であり得る。NIR放射の検出にも有用である。一実施形態では、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、人工虹彩として光学(医療)機器の一部を形成することができる。光学医療機器の例としては、人工眼及びソフトレンズが挙げられる。
【0177】
本発明の組成物、自立膜及び物品の偽造防止技術における使用も、本発明の一部である。本発明の第5の態様は、組成物光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物であって、a)近赤外放射(NIR)を吸収し、NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子、特に金属金ナノ粒子、b)1種以上の相変化材料(PCM)であって、b1)クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができるPCM及びb2)クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができないPCMからなる群から選択される、1種以上のPCM、c)1種以上の色素であって、c1)PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができる色素、及びc2)PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができない色素からなる群から選択される1種以上の色素を含み、-PCMがクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができず(b2)、PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色素がその色特性又は発光特性を変更することができない(c2)場合、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物が、発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤からなる群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータをさらに含む、又は代替的に、少なくともPCMがクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる(b1)、又はPCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに色素がその色特性又は発光特性を変更することができる(c1)場合、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物が、(d)発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤からなる群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを任意選択で含む、光誘起サーモクロミック若しくはサーモルミネセンス組成物の、偽造防止技術のための使用、又は代替的に、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物、1種以上のポリマー及び任意に1種以上の賦形剤を含む、光誘起サーモクロミック自立膜又はサーモルミネセンス自立膜の、偽造防止技術のための使用、又は代替的に、光誘起サーモクロミック若しくはサーモルミネセンス組成物又は自立膜を含む、光誘起サーモクロミック物品又はサーモルミネセンス物品の、偽造防止技術のための使用に関する。特に、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物は、高付加価値製品の包装用のスマートラベル、公的文書の不可視透かし及びNIR読み取り可能な不可視タガントに有用であり得る。
【0178】
本明細書に開示した光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物、本発明の自立膜及び物品について上で開示した実施形態は全て、治療、化粧品、診断、光学部品及び偽造防止技術にも適用される。
【0179】
明細書及び特許請求の範囲を通じて、「含む(comprise)」という用語及びその用語の変形は、他の技術的特徴、添加物、成分又はステップを除外することを意図していない。さらに、「含む(comprise)」という用語は、「からなる(consisting of)」の場合を含む。本発明の追加の目的、利点及び特徴は、明細書を検討することにより当業者に明らかになるか、又は本発明の実施により習得され得る。以下の実施例は例示のために提供されるものであり、本発明を限定することを意図するものではない。さらに、本発明は、本明細書に記載の特定の好ましい実施形態の全ての考えられる組合わせを網羅している。
【実施例】
【0180】
省略形
【0181】
ACQ:凝集起因消光
AIE:凝集誘起発光
APTES:3-アミノプロピル)トリエトキシシラン
AuNSs:金ナノシェル
AuNRs:金ナノロッド
BA:ビスフェノールA
CV:クリスタルバイオレットラクトン
DA:ドデカン酸
DCA:9,10-ジシアノアントラセン
DMA:N,N-ジメチルアニリン
EC:エイコサン
HD:1-ヘキサデカノール
MCs:マイクロカプセル
MNPs:金属ナノ粒子
MS:ステアリン酸メチル
nanoSLPs:固体脂質ナノ粒子
NIAD-4:{[5´-(p-ヒドロキシフェニル)-2,2´-ビチエニル-5-イル]-メチリデン}-プロパンジニトリル
NIR:近赤外放射
NPs:ナノ粒子
OC:オクタコサン
ODA:1-オクタデシルアミン
PCMs:相変化材料
PDI:ペリレンジイミド
PES:ポリエーテルスルホン
PR:プラムレッド
PS:ポリスチレン
PTDI:N,N´-ビス(sec-ブチル)-1,6,7,12テトラ-(4-tert-ブチルフェノキシ)ペリレン-3,4:9,10テトラカルボン酸ジイミド
PVA:ポリビニルアルコール
RhB:ローダミンB
RT:室温
SA:ステアリン酸
SiMCs:シリカマイクロカプセル
SLPs:固体脂質粒子
TD:1-テトラデカノール
Tg:ガラス転移温度
Tm:溶融温度
Tm:X PCMの溶融温度
TPE:テトラフェニルエテン
UV:紫外線
【0182】
一般考慮事項
【0183】
蛍光変化を伴う本発明の全ての実施例について、発光スペクトルは、PTI Quantamaster蛍光光度計又はAndor ICCDカメラを分光器に連結した特注の分光蛍光光度計によって記録した。UV光(355nm)又は可視光(450nm)を使用して蛍光剤を励起し、その蛍光を観察する。サンプル温度は、サンプルホルダーの温度を変化させることによって制御した。温度依存性蛍光測定では、サンプルをPCMのTmの上下に維持しながら、サンプルに好適な励起波長を照射する。NIR照射は、NIRレーザ(λexc=830nm、150mW、ビーム直径=3mm)を用いて行った。NIR依存性蛍光測定では、蛍光活性化に好適なNIR照射及びUV/Vis光をサンプルに同時に照射した。時間依存蛍光実験は、NIR照射の停止前、停止中(定常状態に達するまで)及び停止後に、色素の発光極大時の蛍光を測定することによって行った。
【0184】
蛍光の変動の測定は、以下の式を適用して行われる。
【0185】
【0186】
式中、FI irradiated及びFI darkはそれぞれ、NIR照射下及びNIR照射なしの(発光バンドの数学的積分によって計算した)蛍光発光強度である。
【0187】
色変化サンプルを含む本発明の全ての実施例について、膜/紙の反射率スペクトルを測定することによって特徴付けした。温度依存性実験を行い、使用したPCMのTmの上下で反射率スペクトルを決定した。NIR照射前後の色素のλmax(可視領域)における反射率を測定することによって、色変化に対するNIR照射効果を監視した。時間依存反射率実験は、NIR照射の停止前、停止中(定常状態に達するまで)及び停止後に、色素の吸収極大における反射率を測定することによって行った。
【0188】
金ナノ粒子を使用する場合の膜又は紙の色の変動の測定は、以下の式を適用して行われる。
【0189】
【0190】
式中、F(R)irradiated及びF(R)はそれぞれ、NIR照射下及びNIR照射なしの(Kubelka-Munkの式によりF(R)値に変換された)拡散反射強度である。F(R)AuNPは、AuNP(即ち、AuNR又はAuNS)によって与えられた拡散反射強度である。
【0191】
金ナノ粒子(AuNP)
【0192】
ナノシェルの形態の金ナノ粒子(AuNS)
【0193】
1.光誘起サーモルミネセンス組成物を包含する基板/コーティング/膜
【0194】
1.1.ナノシェル(AuNS)の形態の金ナノ粒子の調製
【0195】
APTES10μLを水4.60mLと撹拌しながら(530rpm)10~20秒間混合して、AuNSを調製した。次いで、40mM HAuCl4水溶液320μLを添加し、APTESの水への溶解性が低いため、黄色エマルジョンを得た。HAuCl4/APTES混合物を30秒間撹拌し、続いてNaBH4の0.1M水性懸濁液400μLを添加した。NaBH4の添加後、混合物の色が深緑色に変化し、ウシ血清アルブミン0.1M水溶液400μLを添加してAuNSを安定化した。
【0196】
1.2.組成
【0197】
本発明の光誘起サーモルミネセンス組成物を包含する基板/コーティング/膜の組成(実施例1~15)を以下の表に開示する。
【0198】
表1は、本発明の光誘起サーモルミネセンス基板/コーティング/膜の一部を形成する基板、PCM及び蛍光剤の種類(実施例1~15)を開示している。
【0199】
【0200】
1.3.調製プロセス
【0201】
光誘起サーモルミネセンス組成物を包含する紙の場合
【0202】
一般手順1
【0203】
実施例1:AuNS(0.34mg/mL)の水溶液をセルロース紙(3×1cm2)に、水の基板への漏出を避けて滴下した。水の蒸発後、TD(PCM、Tm=38℃)中のRhB(20mg/mL)の溶融溶液(0.05g)を、表面全体を被覆する活性紙に滴下した。添加中、(加熱プレートを使用して)紙をTm
TDよりも上に維持して、PCMの急速な凝固を回避し、紙の細孔を通じて拡散できるようにした。最終材料は、紙シート全体に均一に分布したAuNS及びTD/RhBの溶液(15mg)を含有していた。対照実験として、AuNSを含まない紙を同じプロトコルで調製した。
【0204】
本発明の実施例2、3、4、5、6及び7の光誘起サーモルミネセンス組成物を包含する紙を、表1に明記した成分を使用した点を除いて、実施例1について上で定義した一般手順に従って調製した。
【0205】
一般手順2
【0206】
実施例8:実施例8の光誘起サーモルミネセンス組成物を包含する紙を、PTDI(TD中0.11mg/mL)及びDMA(TD中7.6mg/mL)の混合物をRhBに替えた点を除いて、実施例1の一般プロセスに従って調製した。最終材料は、紙表面全体に均一に分布したAuNS及びTD/DMA/PTDIの溶液(16mg)を含有する。対照実験として、AuNSを含まない紙を同じプロトコルで調製する。
【0207】
本発明の実施例9の光誘起サーモルミネセンス組成物を包含する紙を、表1に明記した成分を使用した点を除いて、実施例8について上で定義した一般手順2に従って調製した。
【0208】
光誘起サーモルミネセンス組成物を埋め込むポリマーマトリックスで作製した自立膜の場合:
【0209】
一般手順3
【0210】
実施例10:膜は、実施例4の光誘起サーモルミネセンス組成物(TPE@EC)のSLPを埋め込むポリマーマトリックス(PVA)で作製する。
1)SLPの調製:SLPは乳化冷却法によって調製する。最初に、溶融(>Tm
EC、60℃)TPE@EC溶液(3.9mg/mL又は1mM、0.65mL又は0.5g)を、界面活性剤PVA(200mg/mL)を含有する予熱(>Tm
EC、60℃)水相(20mL)と混合し、Ultra-Turrax(登録商標)高剪断ホモジナイゼーション(3000rpm、5分、60℃)によって乳化して、TPE@ECマイクロ液滴(15~20μm)を得る。エマルジョンを調製したら、これを急速に水溶液(30mL)中に移し、氷浴中で予冷する。PCMは急速に凝固して、TPE@EC SLPを生じる。SLPを凝集によって水から分離し、デカンテーションによって冷清浄水(30mL)で2回洗浄する。その後、懸濁液を凍結した後、凍結乾燥によってSLPを単離する。
2)膜調製:先行ステップの得られたSLP(150mg)を、PVA4-88(20重量%)の水溶液(1mL)及び先に調製した懸濁液AuNS(0.34mg/mL)0.25mLに分散させる。混合物をボルテックス混合によって均質化し、基板(表面3×2cm2)上にキャストする。水を室温にて48時間蒸発させ、その後、SLP及びAuNSが埋め込まれたPVA膜を得る。AuNSを含まない対照膜は、AuNSを添加しない点を除いて、同じ手順で得られる。
【0211】
本発明の実施例11の光誘起サーモルミネセンスコート基板を、表1にそれぞれ明記された成分を使用した点を除いて、実施例10について上で定義した一般手順3に従って調製した。
【0212】
一般手順4
【0213】
実施例12:膜は、実施例5の混合物のナノSLP(TPE@OC)を埋め込むポリマーマトリックス(PVA)で作製する。膜は、SLPの小型化のために透明である。
1)nanoSLPの調製:nanoSLPは乳化冷却法によって調製する。最初に、溶融(>Tm
OC、80℃)TPE@OC溶液4mg/mL又は10mM、1.27mL又は1.00g)を、界面活性剤PVA(100mg/mL)を含有する予熱(>Tm
OC、80℃)水相(10mL)と混合し、超音波ホモジナイゼーション(Branson超音波処理装置、100%振幅、2分)によって乳化し、TPE@OCナノ液滴(50~400nm)を得る。エマルジョンを調製したら、これを急速に水溶液(20mL)中に移し、氷浴中で予冷する。PCMは急速に凝固して、TPE@EC SLPを生じる。
2)膜調製:得られた懸濁液(0.05mL、SLP濃度=33mg/mL)を、撹拌しながら均質化したPVA4-88(20重量%)の水溶液(1mL)及び先に調製したAuNS(0.34mg/mL)0.25mLで希釈し、基板/モールド上にキャストする。水を室温にて48時間蒸発させ、その後、SLP及びAuNSが埋め込まれたPVA膜を得る。AuNSを含まない対照膜は、同じ手順で、AuNSを添加せずに得られる。
【0214】
一般手順5
【0215】
実施例13:膜は、混合物TPE@MSのPE@MS_SiMCを埋め込むポリマーマトリックス(PVA)で作製される。
1)マイクロカプセル調製:TPE@MSのSiMCは、相分離/シェル形成によって調製する。EtOH(0.25mL)中のヒドロキシル-シリケートプレポリマー(1g)、TPE(1.5mg)及びMS(300mg)の溶液を、40℃にて混合物を撹拌することによって調製する。均質溶液が得られたら、これを40℃の水と混合し、Ultra-Turrax(登録商標)高剪断ホモジナイゼーション(6000rpm)によって20分間乳化する。その後、NH3水溶液(25%)1mLを添加し、溶液を10分間穏やかに撹拌(1000rpm、磁気撹拌)する。次いで、溶液を撹拌せずに1時間放置し、カプセルを沈降によって回収し、水で洗浄する。最後に、カプセルを室温にて12~24時間乾燥させる。
2)膜調製:得られたマイクロカプセルをPVA4-88(20重量%)の水溶液(3.3mL)及び予め調製したAuNS懸濁液(0.34mg/mL)0.83mLと混合し、撹拌して均質化し、基板/モールド上にキャストする。水を室温にて24~48時間蒸発させ、その後、SiMC及びAuNSが埋め込まれたPVA膜を得る。AuNSを含まない対照膜は、同じ手順で、AuNSを添加せずに得られる。
【0216】
光誘起不可逆性サーモルミネセンス組成物を包含する紙の場合
【0217】
一般手順6
【0218】
実施例14:紙は、DA及びRhBを含有するPSナノ粒子で構成されている。
1)PS NPの調製:PS(0.5g)、DA(50mg)及びRhB塩基(ポリマーに対して10.2重量%)を磁気撹拌しながらジクロロメタン(5mL)に溶解させる。全ての成分が溶解したら、続いて最終有機混合物を、先に調製したSDS水溶液(10mL、0.5重量%)に添加する。混合物を室温にて60分間予備乳化(T18 Ultra-Turrax(登録商標)IKA、1000rpm)する。形成されたプレエマルジョンを120秒間、超音波処理(Branson超音波処理装置、70%振幅、30秒パルスオン、10秒パルスオフ)して、ナノエマルジョンを生成する。得られた混合物をバイアルに移し、有機溶媒を室温にて一晩蒸発させ、ポリマーの析出並びにNPへの色素及び蛍光発色剤の封入を生じさせた。
2)紙の調製:AuNS(0.024mg/ml)を含有する水(60mg/ml)にPS NP粉末を分散させ、紙の表面(1×1cm2)に滴下(0.25ml)して、NP(15mg/cm2)及びAuNSの均一な分布を得る。対照実験として、AuNSを含まない紙を同じプロトコルで調製する。
【0219】
本発明の実施例15の光誘起サーモルミネセンスコート基板を、表1に明記した成分を使用した以外、実施例14について上で定義した一般手順6に従って調製した。
【0220】
1.4.結果
【0221】
本発明の光誘起サーモルミネセンス組成物(実施例1~15)に600nm~1200nmの波長のNIR放射を照射したときの蛍光変化における効果を、以下の表2及び表3に示す。蛍光は、それぞれの吸収極大に近い組成物に照射することによって測定される。
【0222】
表2及び表3は、NIR照射時の蛍光活性化(オフ/オン実施例)及び消光(オン/FF実施例)における効果及びその効果の可逆性を示す。
【0223】
【0224】
【0225】
2.光誘起サーモクロミックコート基板組成を包含する基板/コーティング/膜
【0226】
2.1.組成
【0227】
本発明の光誘起サーモクロミックコート基板(実施例16~25)の組成を表4に開示する。
【0228】
表4は、本発明の光誘起サーモクロミックコート基板の基板の種類、PCM及び色素形成部分の種類を開示している(実施例16~25)。表4は、PCM構造の存在も開示している。
【0229】
【0230】
2.2.調製プロセス
【0231】
光誘起サーモクロミック組成物を包含する紙の場合
【0232】
一般手順7
【0233】
実施例16:実施例16の光誘起サーモクロミック組成物を包含する紙を、実施例1について上で定義した一般手順1に従って調製した。水の蒸発後、TD(Tm=38℃)中のBA(47mg/mL)及びCV(12mg/mL)の溶融溶液(0.05g)を、表面全体を被覆する活性紙に滴下する。最終材料は、紙表面全体に均一に分布したAuNS及びTD/BA/CV(23mg)の溶液を含む。対照実験として、AuNSを含まない紙を同じプロトコルで調製する。
【0234】
一般手順8
【0235】
実施例17:
-マイクロカプセルの調製:(BA+CV)@TDのPES MCは、相分離/溶媒蒸発によって調製する。混合物を室温で撹拌することによって、CHCl3(5mL)中のPES(250mg)、CV(7mg)、BA(28mg)及びTD(500mg)の溶液を調製する。均質溶液が得られたら、これを界面活性剤の水溶液(PVA、200mg/mL)と混合し、Ultra-Turrax(登録商標)高剪断ホモジナイゼーション(5000rpm)によって15分間乳化する。この時間の後、CHCl3を回転蒸発器で蒸発させ、PES MC(15~20μm)を得る。
-紙の調製:上でで得られたAuNSを紙シート(3×1cm2)上に堆積させる。水を蒸発させると、得られた[CV+BA]@TD@PES_MC懸濁液(75mg MC/mL)(0.2mL)を先のセルロース紙に滴下する。対照実験として、AuNSを含まない紙を同じプロトコルで調製する。
【0236】
本発明の実施例18、19及び20の光誘起サーモクロミックコート基板を、表4に明記した成分を使用した以外、実施例17について上で定義される一般手順8に従って調製した。
【0237】
光誘起サーモクロミック組成物を埋め込むポリマーマトリックスによって作製された自立膜
【0238】
一般手順9
【0239】
実施例21:
-マイクロカプセルの調製:PES MCを、実施例17について一般手順8に開示したプロセスに従って調製した。
-膜調製:得られた[CV+BA]@TD@PES_MC懸濁液(75mg MC/mL)を、PVA4-88(20重量%)の水溶液(3.3mL)及び予め調製したストックAuNS懸濁液(0.34mg/mL)0.83mLと混合し、撹拌して均質化し、基板/モールド上にキャストする。水を室温で24~48時間蒸発させ、その後、MC及びAuNSが埋め込まれたPVA膜を得る。AuNSを含まない対照膜は、同じ手順で、AuNSを添加せずに得られる。
【0240】
本発明の実施例22、23、24及び25の光誘起サーモクロミックコーティング/膜は、表4に明記した成分を使用した以外、実施例21について上で定義した一般手順9に従って調製した。
【0241】
2.3.結果
【0242】
本発明の光誘起サーモクロミック組成物(実施例16~25)に600nm~1200nmの波長の赤外光を照射したときの色変化における効果を、以下の表5及び表6に示す。
【0243】
表5及び表6は、NIR照射時の色外観(オン/FF実施例)及び消失(オフ/オン)における効果及びその効果の可逆性を示す。
【0244】
【0245】
【0246】
上で開示した結果は、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物が、改善されたサーモクロミック及びサーモルミネセンス挙動を有する光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンスコート基板の調製に有用であることを示している。特に、600nm~1200nmの波長の光を選択的に吸収することができる光熱金属ナノ粒子、1種以上のPCM、及び1種以上の色素、又は代替的に1種以上の蛍光剤を含む、本発明の組成物に、低出力密度及び低エネルギー放射を照射すると、機能性材料の実現性及び可逆性を損なわずに、高速で均一な強い色変化又は蛍光変化を有することができるようになる。
【0247】
ナノロッド(AuNR)の形態の金ナノ粒子
【0248】
3.光誘起サーモルミネセンス組成物を包含する基板/コーティング/膜
【0249】
3.1.ナノロッド(AuNR)の形態の金ナノ粒子の調製
【0250】
AuNR(直径9~15nm、長さ55~65nm、水中に分散、吸収極大850nm、正に帯電)は、Alfa Aesarから購入した。
【0251】
3.2.組成
【0252】
本発明のAuNRを含有する光誘起サーモルミネセンス及び光誘起サーモクロミック組成物を包含する基板/コーティング(実施例26~27)の組成を以下の表7に開示する。
【0253】
【0254】
3.3.調製プロセス
【0255】
光誘起サーモルミネセンス組成物を包含する紙の場合
【0256】
一般手順10
【0257】
実施例26:実施例26の光誘起サーモルミネセンス組成物包含する紙を、AuNSをAuNRに替えた以外、実施例1の一般的なプロセスに従って調製した。最終材料は、紙シート全体に均一に分布したAuNR及びTD/RhBの溶液(15mg)を含有する。対照実験として、AuNRを含まない紙を同じプロトコルで調製する。
【0258】
一般手順11
【0259】
実施例27実施例27の光誘起サーモクロミック組成物を包含する紙を、BA(47mg/mL)及びCV(12mg/mL)をRhBに替えた以外、実施例26について定義した一般手順10に従って調製した。最終材料は、紙表面全体に均一に分布したAuNR及びTD/BA/CV(23mg)の溶液を含む。対照実験として、AuNRを含まない紙を同じプロトコルで調製する。
【0260】
3.4.結果
【0261】
600nm~1200nmの波長のNIR放射の照射による、本発明の光誘起サーモルミネセンス組成物の照射時の蛍光変化における効果(実施例26)及び光誘起サーモクロミック組成物の照射時の色変化における効果(実施例27)を、以下の表8及び表9に示す。
【0262】
表8及び表9に、NIR照射による蛍光出現(オフ/オン、実施例26)及び色消失(オン/オフ、実施例27)に対する効果とその効果の可逆性を示す。
【0263】
【0264】
【0265】
完全を期すために、本発明の様々な態様を以下の番号付けされた項に記載する。
【0266】
項1.
光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物であって、
a)近赤外放射(NIR)を吸収し、NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子、
b)1種以上の相変化材料(PCM)であって、
b1)クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができるPCM、及び、
b2)クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができないPCM、
からなる群から選択される1種以上のPCM、
c)1種以上の色素であって、
c1)PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができる色素、及び、
c2)PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができない色素、
からなる群から選択される1種以上の色素、
を含み、
PCMがクロミックプロモータとして作用することができず(b2)、PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色素がその色特性又は発光特性を変更できない(c2)場合、光誘起サーモクロミック又はサーモクロミック組成物は、発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤から成る群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータをさらに含む、
又は代替的に、
少なくともPCMがクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる(b1)、又はPCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色素がその色特性又は発光特性を変更することができる(c1)場合、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物が、(d)発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤からなる群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータを任意選択で含む、
光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物。
【0267】
項2.
a)NIR放射を吸収し、NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子、
b)クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる1種以上のPCM(PCM)(b1)、
c)PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができない1種以上の色素(c2)、及び、
任意選択で、d)発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤からなる群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータ、
a)NIR放射を吸収し、NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子、
b)クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができない1種以上のPCM(PCM)(b2)、
c)PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができる1種以上の色素(c1)、及び、
任意選択で、d)発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤からなる群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータ、
a)NIR放射を吸収し、NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子、
b)クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができる1種以上のPCM(PCM)(b1)、
c)PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができる1種以上の色素(c1)、及び、
任意選択で、d)発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤からなる群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータ、
並びに、
a)NIR放射を吸収し、NIR放射を熱に変換することができるナノ粒子、
b)クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができない1種以上のPCM(PCM)(b2)、
c)PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに、色特性又は発光特性を変更することができない1種以上の色素(c2)、及び、
d)発色剤、発光消光剤及び発光活性化剤からなる群から選択される1種以上のクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータ、
からなる群から選択される項1に記載の組成物。
【0268】
項3.
ナノ粒子(a)が600nm~2200nmのNIR放射を吸収することができる、項1又は2のいずれか1項に記載の組成物。
【0269】
項4.
ナノ粒子(a)が金属ナノ粒子である、項1から3のいずれか1項に記載の組成物。
【0270】
項5.
金属ナノ粒子の粒径が5~500nmである、項4に記載の組成物。
【0271】
項6.
金属ナノ粒子の量が、PCM1mg当たり0.00005mg~0.5mgである、項4又は5のいずれか1項に記載の組成物。
【0272】
項7.
金属ナノ粒子が、ナノスフェア、ナノスター、ナノダンベル、ナノチューブ、ナノシェル、ナノロッド、ナノケージ、ナノハーフシェル、ナノドーム及びナノピラミッドからなる群から選択される形態である、項4から6のいずれか1項に記載の組成物。
【0273】
項8.
金属ナノ粒子の金属が、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、それらの合金、それらの酸化物、及びそれらの混合物からなる群から選択される、項4から7のいずれか1項に記載の組成物。
【0274】
項9.
PCMが、酸含有化合物、アミン含有化合物、硫黄含有化合物、アルコール含有化合物及びそれらの混合物からなる群から選択されるクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができるPCM(b1)である、
又は代替的に、
PCMが、(C8-C52)アルカン系PCM、(C14-C50)アルケン系PCM、(C14-C50)アルキン系PCM及びそれらの混合物からなる群から選択されるクロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータとして作用することができないPCM(b2)である、
項1から8のいずれか1項に記載の組成物。
【0275】
項10.
色素が、凝集/近接状態に応じてその色特性及び/若しくは発光特性を変化させる色素、感温性色素、並びに媒体粘度/剛性に応じて色特性及び/若しくは発光特性を変化させる色素からなる群から選択される、PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに色特性又は発光特性を変更することができる色素(c1)である、
又は代替的に、
色素が、電荷移動色素(レドックス色素)、pH応答性色素、極性依存性色素、pH感受性ルミネセンス色素及びレドックスルミネセンス剤からなる群から選択される、PCMが固体状態と液体状態との間で変化するときに色特性又は発光特性を変更することができない色素(c2)である、
項1から9のいずれか1項に記載の組成物。
【0276】
項11.
クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータが、酸、塩基、水素結合化合物、電子移動化合物、それらの混合物からなる群から選択される発色剤である、
又は代替的に、
クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータが、共鳴エネルギー移動消光剤、三重項消光剤、電子移動消光剤及びそれらの混合物からなる群から選択される発光消光剤である、
又は代替的に、
クロミックプロモータ又はフルオロクロミックプロモータが、一重項、三重項増感剤、蛍光共鳴エネルギー移動増感剤及び電子移動増感剤並びにそれらの混合物からなる群から選択される発光活性化剤である、
項1から10のいずれか1項に記載の組成物。
【0277】
項12.
医薬有効成分及び活性酸素種からなる群から選択される1種以上の追加の成分をさらに含む、項1から11のいずれか1項に記載の組成物。
【0278】
項13.
項1から12のいずれか1項に記載の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物、1種以上のポリマー、及び任意選択で1種以上の賦形剤を含む、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス自立膜。
【0279】
項14.
項1から12のいずれか1項に記載の組成物、又は代替的に、項13に記載の自立膜を含む光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス物品。
【0280】
項15.
(A)光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンスコーティングされた物品であって、
基板と、
基板の表面上に堆積された光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンスコーティングと、
を含み、
コーティングが、項1から12のいずれか1項に記載の組成物、及び任意選択で1種以上のポリマーを含む、
光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンスコーティングされた物品、
(B)光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス埋め込み物品であって、
多孔質基板と、
多孔質基板に埋め込まれた、項1から12のいずれか1項に記載の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス組成物と、
任意選択で、1種以上の追加の外部コーティングと、
を含む光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス埋め込み物品、
並びに、
(C)項13に記載の1種以上の光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス自立膜を含む、光誘起サーモクロミック又はサーモルミネセンス自立膜含有物品、
からなる群から選択される項14に記載の物品。
【国際調査報告】