(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(54)【発明の名称】遺伝子操作された微生物
(51)【国際特許分類】
C12N 1/21 20060101AFI20230201BHJP
C12P 19/04 20060101ALI20230201BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20230201BHJP
【FI】
C12N1/21 ZNA
C12P19/04
C12N15/31
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533350
(86)(22)【出願日】2020-12-03
(85)【翻訳文提出日】2022-07-29
(86)【国際出願番号】 EP2020084505
(87)【国際公開番号】W WO2021110856
(87)【国際公開日】2021-06-10
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2020-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522219722
【氏名又は名称】クロバイオ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】マルホール,ロス
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AF11
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA11
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA41X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA60
(57)【要約】
本発明は、セルロースの生産が増加するように修飾された、遺伝子操作された微生物、例えば細菌、および前記遺伝子操作された微生物を作製する方法に関する。本発明はまた、農業におけるこれらの遺伝子操作された微生物の使用にも関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースを生産するための遺伝子操作された微生物であって、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾され、bcsA遺伝子、bcsB遺伝子、bcsC遺伝子、bcsD遺伝子、およびccpAx遺伝子を含む外因性遺伝子によって修飾されている微生物。
【請求項2】
外因性cmcAx遺伝子および/または外因性bglAx遺伝子によってさらに修飾されている、請求項1に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項3】
bcsA遺伝子、bcsB遺伝子、bcsC遺伝子、bcsD遺伝子、および少なくともccpAx遺伝子を含む外因性核酸によって修飾されている、請求項1に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項4】
遺伝子が異種性である、前記の請求項のいずれか一項に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項5】
遺伝子がそれぞれ、K.キシリナス(K.xylinus)から単離されたものである、前記の請求項のいずれか一項に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項6】
根関連細菌である、請求項1から5のいずれか一項に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項7】
植物成長促進性根圏細菌である、請求項1から5のいずれか一項に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項8】
シュードモナス(Pseudomonas)属細菌である、請求項6または7に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項9】
遺伝子の発現が、細胞密度クオラムセンシング系によって調節される、請求項1から8のいずれか一項に記載の遺伝子操作された微生物。
【請求項10】
微生物におけるセルロースの生産を、参照微生物と比較して増加させる方法であって、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように微生物を修飾するステップを含み、微生物が、bcsA遺伝子、bcsB遺伝子、bcsC遺伝子、bcsD遺伝子、およびccpAx遺伝子を含む外因性遺伝子によって修飾される、前記方法。
【請求項11】
微生物が、外因性cmcAx遺伝子および/または外因性bglAx遺伝子によってさらに修飾される、請求項10に記載のセルロースの生産を増加させる方法。
【請求項12】
微生物が根関連細菌である、請求項10または11に記載のセルロースの生産を増加させる方法。
【請求項13】
微生物が、植物成長促進性根圏細菌である、請求項10または11に記載のセルロースの生産を増加させる方法。
【請求項14】
bcsオペロンと、cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、bglAx遺伝子、pgm遺伝子、galU遺伝子、cdgオペロン、およびdgc遺伝子のうちの少なくとも1つとを含む外因性核酸を含むベクターであって、任意選択で、bcsオペロンがbcsA遺伝子、bcsB遺伝子、bcsC遺伝子、およびbcsD遺伝子を含む、前記ベクター。
【請求項15】
セルロースを生産するための遺伝子操作された微生物を作製する方法であって、以下のステップ:
a)微生物を単離するステップ;および
b)bcsA遺伝子;bcsB遺伝子;bcsC遺伝子;bcsD遺伝子;cmcAx遺伝子;ccpAx遺伝子;bglAx遺伝子;pgm遺伝子;galU遺伝子;cdgオペロン;およびdgc遺伝子を含む群から選択される少なくとも1つの遺伝子を含む外因性核酸を含むベクターを、微生物に導入するステップ
を含む、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように微生物を修飾するステップを含む、前記方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法によって得ることができる、遺伝子操作された微生物。
【請求項17】
請求項1から9または請求項16のいずれか一項に記載の単離された遺伝子操作された微生物。
【請求項18】
請求項1から9または請求項16のいずれか一項に記載の遺伝子操作された微生物を含む集団。
【請求項19】
請求項18に記載の遺伝子操作された集団を含む組成物。
【請求項20】
組成物が、肥料および/またはバイオ肥料をさらに含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
植物根の周りの水分貯留を増加させる方法であって、遺伝子操作された微生物を、植物根の周辺の土壌に適用するステップを含み、前記微生物が、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾されている、前記方法。
【請求項22】
農業における水消費を減少させる方法であって、遺伝子操作された微生物を、植物根の周囲の土壌に適用するステップを含み、前記微生物が、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾されている、前記方法。
【請求項23】
炭素を捕捉する方法であって、遺伝子操作された微生物を、植物根の周囲の土壌に適用するステップを含み、前記微生物が、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾されており、前記炭素が前記微生物によってセルロースに変換される、前記方法。
【請求項24】
前記微生物が、外因性bcsオペロンによって遺伝子修飾されており、bcsオペロンがbcsA遺伝子、bcsB遺伝子、bcsC遺伝子およびbcsD遺伝子を含む、請求項21、22または23に記載の方法。
【請求項25】
遺伝子修飾された微生物の農業における使用であって、前記微生物が、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾されている、前記使用。
【請求項26】
植物根の周りの水分貯留を増加させるための、遺伝子修飾された微生物の使用であって、前記微生物が、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾されている、前記使用。
【請求項27】
遺伝子修飾された微生物の炭素捕捉における使用であって、前記微生物が、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾されており、前記炭素が微生物によってセルロースに変換される、前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースの生産が増加するように修飾された、遺伝子操作された微生物、例えば細菌、および前記遺伝子操作された微生物を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
干魃および極暑は、世界の農業生産に対する気候関連の最大の脅威である。気候の悪化は、突発的な大量の雨から長期にわたる干魃までに至る、より極端で予測不能な気象事象を意味する。これらの事象は作物収量に直接影響を及ぼす。雨が降った場合に、土壌は最大の吸収容量となり、作物は最大の取込み保持容量(uptake retention capacity)となる。残りの水は、劇的な気象事象ではかなりの量になる可能性があるが、利用されず、しばしば陸地から流出し、局地的な洪水につながる。水不足は世界の主要な懸念事項である。世界の水消費の70%は農業需要によるもので、2050年までに19%増加すると予想されている。水の消費は、世界の作物生産にとって主要な障害である。干魃が一般的である環境では、作物収量は少ない。環境干魃に対する作物の耐性を高めることにより、世界の作物供給の持続可能性を改善することが可能である。気候が暑いほど降雨はより散発的であるため、農家は継続的に土地を灌漑することを余儀なくされる。これには膨大な量の水が必要であるが、それは最終的には植物によって利用されずに蒸発することになる。干魃が起こりやすい気候で作物が受ける非生物的ストレスは、収量の減少および非効率的な水管理をもたらす。人口の増加および気候条件の悪化に伴い、水需要を軽減するための多くの戦略が提案されているが、今のところ、生物活性のある保水策を作物の水管理に使用した者はいない。これまでの戦略は、作物を直接的に遺伝子修飾すること、耐性を強化すること、または土壌に添加物を加えることに重点を置いてきた。しかし、これらのアプローチのいずれも、世界の作物生産における水不足の問題に対する有効な解決策を提供していない。作物の持続可能性は、人口増加および数十億もの人々の食糧源にとって不可欠である。作物は人間集団を養うだけでなく、食糧供給源として畜産業を支えている。このため、今ではこれまで以上に、我々の成長する世界を支えるために劇的な変化が必要であるが、この解決策は環境に優しく効率的でなければならない。
【0003】
セルロース
セルロースは、数百から数千数万ものβ(1→4)結合D-グルコース単位でできた直鎖からなる多糖である。セルロースは緑色植物、多くの形態の藻類および卵菌の一次細胞壁の重要な構造成分である。さらに、ある種の細菌、主にアセトバクター(Acetobacter)属、サルシナ・ベントリクリ(Sarcina ventriculi)属およびアグロバクテリウム(Agrobacterium)属は、セルロースを分泌することでバイオフィルムを堅くする。バクテリアセルロースは現在、繊維、化粧品および食品、ならびに医療用途を含む様々な商業用途のために生産されている。細菌におけるバクテリアセルロースの発現は、当技術分野において記載されている。例えば、中国特許出願CN108060112は、バクテリアセルロース産生性細菌株、特にアセトバクター・キシリナム(Acetobacter xylinum)におけるBcsBサブユニットの過剰発現を記載している。さらに、Buldumら(2018年)は、遺伝子修飾された大腸菌(Escherichia coli)におけるバクテリアセルロースの組換え生合成を記載している。一方、Floreaら(2016年)は、遺伝子ツールキットを使用したコマガタエイバクター・ラエティクス(Komagataeibacter rhaeticus)におけるバクテリアセルロース生産の工学的制御を記載している。
【0004】
炭素捕捉
農地での炭素隔離は、農業による炭素排出を減少させて、気候変動を緩和するための1つの方法である。二酸化炭素の大気中濃度は、排出を減少させるか、または大気から二酸化炭素を取り出して土壌中に貯蔵させることによって低下させることができる。草地および森林の農耕地(および放牧地)への長期的な転換は、世界中で土壌炭素の歴史的な損失をもたらしているが、劣化した土壌の復旧および土壌保全活動の広範な採用を通じて、土壌炭素が増加する大きな可能性がある。また、土壌の質の低下は、化学肥料の使用によっても悪化している。
【0005】
歴史的に、土地利用転換および土壌耕作は大気への温室効果ガス(GHG)の顕著な発生源であった。それらは温室効果ガス排出の約3分の1を占めると推定されている。しかし、農作業の改善は、農業または他の排出源からの排出を削減すること、および土壌に炭素を貯蔵することによって、気候変動の緩和に役立つ可能性がある。
【0006】
過去数世紀、特に過去数十年間の農業の発展は、実質的な土壌炭素貯蔵の枯渇を伴った。農業土壌は地球上で有数の炭素貯蔵源の1つであり、炭素隔離(CS)を拡大する可能性があり、したがって、CO2の大気中濃度の増加を緩和する有望な方法を提供する。土壌への炭素隔離の技術的可能性が大きいことは一般的に認められており、その可能性の大きさについてはある程度コンセンサスがある。世界の農耕地は、0.90から1.85PgC/年まで、すなわち「4p1000イニシアティブ:食糧安全保障および気候のための土壌(4p1000 Initiative:Soils for Food Security and Climate)」の目標の26~53%を隔離する可能性がある。
【0007】
同時に、このプロセスは、土壌、作物および環境の質、侵食および砂漠化の防止、ならびに生物多様性の強化に対して他の重要な利益も提供する。土地の劣化は作物収量を減少させるだけでなく、しばしば農業生態系の炭素含有量を減少させ、生物多様性を減少させる可能性がある。
【0008】
大気中のGHGの量が急増していることが原因で、地球の気候はかつてないほどの変化に遭遇している。大気中へのGHGの現在の放出を相殺するために、複数の戦略を考案する必要がある。CO2は、大気中のあらゆるGHGの中でも、地球温暖化への寄与が際立って大きい。土壌炭素隔離は、大気中のCO2量の増加を相殺する有望な方法である。部分的に分解された土壌および農業用土壌はいずれも、大気中のCO2レベルの上昇を最小限に抑える可能性がかなりある。地球規模でみると、土壌は、大気中に存在するかまたは植物に捕捉された炭素の2倍の炭素を保持することができる。温度、土壌水分およびCO2レベルの上昇は、土壌炭素隔離に影響する主要な気候要因である。土壌炭素隔離はまた、様々な土壌要因、すなわち、土性、土壌構造、土壌孔隙率、土壌圧縮、土壌鉱物学、および土壌微生物群落組成などによっても強く影響される。さらに、土地利用変化、植物残渣管理、農薬などの農業活動も、直接的(例えば、土壌に加えられる炭素の量を変更することにより)または間接的(例えば、土壌の凝集に影響を与え、それによって微生物の分解プロセスを促進することにより)に、土壌有機炭素(SOC)貯蔵に影響する。土壌炭素隔離は、急速に増加する大気中のGHGを相殺するだけでなく、土壌の質を改善して、食糧安全保障を推進する可能性がある。持続可能性が高く、環境に優しいアプローチであるため、これは持続可能な農業に重要な役割を果たす可能性がある。これは土壌健全性パラメーター(すなわち、土壌の保水力)を改善し、続いて作物生産を持続可能なベースで改善することによって、土壌の質を強化することができる。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑みて考案されたものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、根関連細菌などの微生物におけるセルロースの合成および分泌の原因となるタンパク質成分を過剰発現させて、植物根の周りの水分貯留の増加を達成することに基づく。植物根の周りの水分貯留のこの増加は、必要な水の灌漑量を減少させ、その結果、環境干魃に対する作物の耐性を改善すると考えられる。
【0011】
したがって、本発明は、最も広義には、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を参照微生物に比して過剰発現するように修飾された遺伝子操作された微生物を提供し、任意選択で、セルロースはバクテリアセルロースである。好ましくは、微生物(および参照微生物)は、根関連細菌などの細菌である。
【0012】
本発明の一側面では、セルロースを生産するための遺伝子操作された微生物であって、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾され、bcsA遺伝子、bcsB遺伝子、bcsC遺伝子、bcsD遺伝子、およびccpAx遺伝子を含む外因性遺伝子によって修飾された微生物が提供される。一部の態様では、微生物は、外因性cmcAx遺伝子および/または外因性bglAx遺伝子によってさらに修飾される。一部の態様では、微生物は、bcsA遺伝子、bcsB遺伝子、bcsC遺伝子、bcsD遺伝子、および少なくともccpAx遺伝子を含む外因性核酸によって修飾される。一部の態様では、遺伝子は異種性である。一部の態様では、遺伝子はそれぞれ、K.キシリナス(K.xylinus)から単離される。
【0013】
一部の態様では、遺伝子操作された微生物は細菌であり、任意選択で、根関連細菌である。一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、植物成長促進性根圏細菌である。一部の態様では、微生物はシュードモナス(Pseudomonas)属細菌である。一部の態様では、根圏細菌は、コマガタエイバクター・キシリナス(Komagataeibacter xylinus)(アセトバクター・キシリナム(Acetobacter xylinum)およびグルコンアセトバクター・キシリナス(Gluconacetobacter xylinus)としても知られる)ではない。一部の態様では、遺伝子の発現は、細胞密度クオラムセンシング系によって調節される。一部の態様では、クオラムセンシングオペロンが宿主細胞に挿入される(instered)。一部の態様では、クオラムセンシング系は、センサーキナーゼをコードする遺伝子および応答調節因子をコードする遺伝子を含む。さらなる態様では、クオラムセンシング系は、クオラムセンシングにより調節されるプロモーターをさらに含む。代替的な態様では、クオラムセンシング系は、シグナル伝達分子(オートインデューサー)をコードする遺伝子、および転写/応答調節因子をコードする遺伝子を含む。さらなる態様では、クオラムセンシング系は、クオラムセンシングにより調節されるプロモーターをさらに含む。
【0014】
一部の側面では、微生物におけるセルロースの生産を、参照微生物と比較して増加させる方法であって、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように微生物を修飾するステップを含み、微生物が、bcsA遺伝子、bcsB遺伝子、bcsC遺伝子、bcsD遺伝子、およびccp遺伝子を含む外因性遺伝子によって修飾されている方法が提供される。一部の態様では、微生物は、外因性cmc遺伝子および/または外因性bgl遺伝子によってさらに修飾される。一部の態様では、微生物は細菌であり、任意選択で、植物成長促進性根圏細菌である。
【0015】
本発明は、セルロースを生産するための遺伝子操作された微生物であって、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾された微生物を提供する。一部の態様では、遺伝子操作された微生物によって生産されるセルロースは、バクテリアセルロースである。一部の態様では、微生物は、セルロースシンターゼ複合体からの少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾される。一部の態様では、微生物は、セルロースシンターゼ複合体からのタンパク質のうち少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つを過剰発現するように修飾される。一部の態様では、セルロースシンターゼ複合体は、バクテリアセルロースシンターゼ複合体である。一部の態様では、セルロース生産は、遺伝子修飾された微生物において、参照微生物と比較して増加する。一部の態様では、参照微生物は、修飾された微生物と同じ種のものである。参照微生物は、修飾された微生物と同じ株であってもよい。一部の態様では、微生物は野生型微生物である。一部の態様では、同じ種または同じ株の参照微生物は、同じ種または同じ株の野生型微生物である。一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、細菌細胞、真菌細胞または藻類細胞から選択される。一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、細菌である。さらなる態様では、遺伝子操作された微生物は、根関連細菌である。
【0016】
一部の態様では、本発明の遺伝子操作された微生物は、セルロースシンターゼ複合体を過剰発現するように修飾される。一部の態様では、遺伝子修飾された微生物は、セルロースシンターゼ複合体からの少なくとも1つのタンパク質をコードする外因性核酸によって修飾される。他の態様では、セルロースシンターゼ複合体の少なくとも1つのタンパク質の過剰発現は、内因性セルロースシンターゼ複合体の少なくとも1つのタンパク質への転写および/または翻訳を増加させることによって達成される。
【0017】
一部の態様では、遺伝子修飾された微生物は、セルロースシンターゼ複合体からの少なくとも1つのタンパク質をコードする外因性核酸によって修飾される。一部の態様では、微生物は、セルロースシンターゼ複合体からのタンパク質のうち少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つをコードする外因性核酸によって修飾される。一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、bcsオペロンの以下の遺伝子のうち少なくとも1つによって修飾される:bcsA;bcsB;bcsC;および/またはbcsD。さらなる態様では、外因性核酸は、bcsオペロンを含む。別のさらなる態様では、bcsオペロンは、4つのタンパク質サブユニット、BcsA、BcsB、BcsC、およびBcsDをコードする。一部の態様では、外因性核酸は、以下の遺伝子またはオペロンのうちの少なくとも1つをさらに含む:cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子;bglAx遺伝子;pgm遺伝子;galU遺伝子;cdgオペロン;および/またはdgc遺伝子。一部の態様では、外因性核酸は、bcsオペロン、cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、およびbglAx遺伝子を含む。一部の態様では、外因性核酸は、bcsオペロン、cmc遺伝子、ccp遺伝子、bgl遺伝子、pgm遺伝子、galU遺伝子、cdgオペロンおよびdgc遺伝子を含む。一部の態様では、外因性核酸は、bcsオペロン、cmc遺伝子、ccp遺伝子、bgl遺伝子、pgm遺伝子、galU遺伝子、cdgオペロンおよびdgc遺伝子からなる。一部の態様では、bcsオペロン、cmc遺伝子、ccp遺伝子、bgl遺伝子、pgm遺伝子、galU遺伝子、cdgオペロン、および/またはdgc遺伝子はそれぞれ、K.キシリナスから単離される。
【0018】
一部の態様では、微生物は、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)およびバチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)から選択される。さらなる一態様では、微生物は、シュードモナス・フルオレッセンスである。別のさらなる態様では、微生物は、シュードモナス・フルオレッセンスSBW25である。別のさらなる態様では、微生物は、シュードモナス・フルオレッセンスF113である。別のさらなる態様では、微生物は、シュードモナス・フルオレッセンスCHA0である。別のさらなる態様では、微生物は、シュードモナス・フルオレッセンスPf-5である。別のさらなる態様では、微生物は、シュードモナス・フルオレッセンスFW300 N2E2である。
【0019】
一部の態様では、本発明の遺伝子操作された微生物によって生産されたセルロースは、細胞外に分泌される。さらなる一態様では、分泌されたセルロースは、細胞外にネットワークを形成する。一部の態様では、分泌されたネットワークは、植物根の周りに形成される。一部の態様では、分泌されたセルロースネットワークは、植物根の周りの水分貯留を増加させる。一部の態様では、植物は、穀類植物、トウモロコシ、イネ、コムギ、またはダイズである。
【0020】
本発明の第2の側面では、微生物におけるセルロースの生産を、参照微生物と比較して増加させる方法であって、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように微生物を修飾するステップを含む方法。一部の態様では、微生物は、セルロースシンターゼ複合体からの少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように修飾される。一部の態様では、参照微生物は、修飾された微生物と同じ種である。一部の態様では、参照微生物は、野生型微生物である。一部の態様では、同じ種の参照微生物は、同じ種の野生型微生物である。一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、セルロースシンターゼ複合体からの少なくとも1つのタンパク質をコードする外因性核酸によって修飾される。一部の態様では、セルロースシンターゼ複合体からの少なくとも1つのタンパク質をコードする外因性核酸は、微生物のゲノムに組み込まれる。一部の態様では、セルロースは、バクテリアセルロースである。一部の態様では、外因性核酸は、bcsオペロンを含む。さらなる態様では、ベクターの外因性核酸は、cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、bglAx遺伝子、pgm遺伝子、galU遺伝子、cdgオペロン、およびdgc遺伝子のうちの少なくとも1つをさらに含む。一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、細菌細胞、真菌細胞または藻類細胞から選択される。一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、細菌である。さらなる態様では、遺伝子操作された微生物は、根関連細菌である。
【0021】
本発明の第3の側面では、セルロースシンターゼ複合体からの少なくとも1つのタンパク質をコードする外因性核酸を含むベクターが提供される。一部の態様では、ベクターの外因性核酸は、bcsオペロンを含む。さらなる態様では、ベクターの外因性核酸は、cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、bglAx遺伝子、pgm遺伝子、galU遺伝子、cdgオペロン、およびdgc遺伝子の少なくとも1つをさらに含む。一部の態様では、ベクターの外因性核酸は、bcsオペロン、cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、およびbglAx遺伝子を含む。一部の態様では、ベクターの外因性核酸は、bcsオペロン、cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、bglAx遺伝子、pgm遺伝子、galU遺伝子、cdgオペロンおよびdgc遺伝子を含む。一部の態様では、ベクターの外因性核酸は、bcsオペロン、cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、bglAx遺伝子、pgm遺伝子、galU遺伝子、cdgオペロンおよびdgc遺伝子からなる。一部の態様では、bcsオペロン、cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、bglAx遺伝子、pgm遺伝子、galU遺伝子、cdgオペロン、および/またはdgc遺伝子はそれぞれ、K.キシリナスから単離される。一部の態様では、ベクターは、単離されたベクターである。一部の態様では、遺伝子は異種性である。
【0022】
第4の側面では、本発明は、セルロースを生産するための遺伝子操作された微生物を作製する方法であって、以下のステップ:
a)微生物を単離するステップ;および
b)本発明のベクターを微生物に導入するステップ
を含む、セルロースシンターゼ複合体からの少なくとも1つのタンパク質をコードする外来性核酸によって微生物を修飾するステップを含む方法を提供する。
【0023】
一部の態様では、微生物は、セルロースシンターゼ複合体由来のタンパク質のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つをコードする外因性核酸によって修飾される。一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、細菌細胞、真菌細胞または藻類細胞から選択される。一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、細菌である。さらなる態様では、遺伝子操作された微生物は、根関連細菌である。
【0024】
一部の態様では、本発明のベクターは、エレクトロポレーションによって微生物に導入される。一部の態様では、本発明のベクターは、トランスフェクションによって微生物に導入される。一部の態様では、セルロースシンターゼ複合体からの少なくとも1つのタンパク質をコードする外因性核酸は、微生物のゲノムに組み込まれる。一部の態様では、セルロースシンターゼ複合体からのタンパク質のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つが、微生物のゲノムに組み込まれる。一部の態様では、本発明のベクターは、その1つまたは複数の遺伝子のコピー数を増加させるために2つのコピー、3つのコピー、または4つのコピーなどが微生物のゲノムに組み込まれるように微生物に導入される。一部の態様では、セルロース生産は、遺伝子操作された微生物において、参照微生物と比較して増加する。一部の態様では、参照微生物は、同じ種または株のものである。一部の態様では、参照微生物は、野生型微生物である。一部の態様では、参照微生物は、同じ種または株の野生型微生物である。一部の態様では、セルロースは、バクテリアセルロースである。一部の態様では、セルロースシンターゼ複合体は、バクテリアセルロースシンターゼ複合体である。
【0025】
第5の側面では、セルロースを生産するための遺伝子操作された微生物を作製する方法によって得られる、遺伝子操作された微生物が提供される。別の側面では、本発明は、本発明の単離された遺伝子操作された微生物を提供する。本発明の代替的な一側面では、本発明の遺伝子操作された微生物を含む集団が提供される。一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、細菌細胞、真菌細胞または藻類細胞から選択される。一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、細菌である。さらなる態様では、遺伝子操作された微生物は、根関連細菌である。
【0026】
別の側面では、本発明は、本発明の微生物の遺伝子操作された集団を含む組成物を提供する。一部の態様では、組成物は、液体製剤中にあって植物に適用される。代替的な態様では、組成物は、接種物として植物に適用される。一部の態様では、接種材料は、泥炭ベースの製剤である。さらなる態様では、製剤は、畝間に蒔くための種子またはペレットをコーティングするために使用される。一部の態様では、本発明の遺伝子修飾された微生物は、マイクロビーズ中にあって植物に送達される。さらなる態様では、マイクロビーズは、アルギン酸マイクロビーズである。一部の態様では、組成物は、肥料および/またはバイオ肥料をさらに含む。一部の態様では、組成物は、栽植後に、ただし前記植物の収穫前に植物に適用される。一部の態様では、組成物は、植物の栽植前の土壌に適用される。一部の態様では、植物は、穀類植物、トウモロコシ、イネ、コムギ、またはダイズである。一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、細菌細胞、真菌細胞または藻類細胞から選択される。一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、細菌である。さらなる態様では、遺伝子操作された微生物は、根関連細菌である。
【0027】
別の側面では、本発明は、植物根の周りの水分貯留を増加させる方法であって、遺伝子操作された微生物を植物根の周囲の土壌に適用するステップを含み、微生物が、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾されている方法を提供する。一部の態様では、微生物は、本発明の遺伝子操作された微生物、本発明の単離された遺伝子操作された微生物、本発明の遺伝子操作された微生物の集団、または本発明の組成物から選択される。一部の態様では、植物は、穀類植物、トウモロコシ、イネ、コムギ、またはダイズである。一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、細菌細胞、真菌細胞または藻類細胞から選択される。一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、細菌である。さらなる態様では、遺伝子操作された微生物は、根関連細菌である。
【0028】
別の側面では、本発明は、農業における水消費を減少させる方法であって、遺伝子操作された微生物を植物根の周囲の土壌に適用するステップを含み、微生物が、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾されている方法を提供する。一部の態様では、微生物は、本発明の遺伝子操作された微生物、本発明の単離された遺伝子操作された微生物、本発明の遺伝子操作された微生物の集団、または本発明の組成物から選択される。一部の態様では、植物は、穀類植物、トウモロコシ、イネ、コムギ、またはダイズである。一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、細菌細胞、真菌細胞または藻類細胞から選択される。一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、細菌である。さらなる態様では、遺伝子操作された微生物は、根関連細菌である。
【0029】
別の側面では、本発明は、本発明の遺伝子操作された微生物か、本発明の単離された遺伝子操作された微生物か、本発明の遺伝子操作された微生物の集団か、または本発明の組成物かを含む植物を提供し、ここで、遺伝子操作された微生物、単離された遺伝子操作された微生物、または遺伝子操作された微生物の集団は、植物根に付随する。一部の態様では、植物は、穀類植物、トウモロコシ、イネ、コムギ、またはダイズである。一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、細菌細胞、真菌細胞または藻類細胞から選択される。一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、細菌である。さらなる態様では、遺伝子操作された微生物は、根関連細菌である。
【0030】
別の側面では、本発明は、炭素を捕捉する方法であって、遺伝子操作された微生物を植物根の周囲の土壌に適用するステップを含み、微生物が、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾されており、炭素は微生物によってセルロースに変換される方法を提供する。
【0031】
一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、本発明の微生物、本発明の単離された遺伝子操作された微生物、本発明の遺伝子操作された微生物の集団、または本発明の組成物である。一部の態様では、炭素は、植物から分泌される炭水化物として吸収され、炭水化物は、微生物によってセルロースに変換される。一部の態様では、セルロースの生産は、植物根の周りの水分貯留の増加をもたらす。一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、細菌細胞、真菌細胞または藻類細胞から選択される。一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、細菌である。さらなる態様では、遺伝子操作された微生物は、根関連細菌である。一部の態様では、微生物は、菌根菌(例えば、アーバスキュラー菌根菌、外生菌根菌、エリコイド菌根菌および/またはラン菌根菌)である。
【0032】
本発明の別の側面は、遺伝子修飾された微生物の農業における使用であって、微生物が、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾されている、使用を提供する。本発明の別の側面では、植物根の周りの水分貯留を増加させるための遺伝子修飾された微生物の使用であって、微生物が、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾されている、使用が提供される。本発明の別の側面は、遺伝子修飾された微生物の炭素捕捉における使用であって、微生物が、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾されており、炭素が微生物によってセルロースに変換される使用を提供する。一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、細菌細胞、真菌細胞または藻類細胞から選択される。一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、細菌である。さらなる態様では、遺伝子操作された微生物は、根関連細菌である。一部の態様では、本明細書に記載される方法および使用は、植物生存能力の増加をもたらす。
【0033】
一部の態様では、1つまたは複数の異種遺伝子を含む遺伝子修飾された微生物が提供され、ここで遺伝子は、bcsA遺伝子、bcsB遺伝子、bcsC遺伝子、bcsD遺伝子、cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、および/またはbglAx遺伝子を含む。一部の態様では、微生物は細菌である。さらなる態様では、微生物は、植物成長促進性根圏細菌である。
【0034】
一部の側面では、本発明は、セルロースを生産するための遺伝子操作された根関連細菌を提供し、ここで細菌は、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾される。一部の態様では、遺伝子操作された根関連細菌によって生産されるセルロースは、バクテリアセルロースである。一部の態様では、細菌は、セルロースシンターゼ複合体からの少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾される。一部の態様では、細菌は、セルロースシンターゼ複合体からのタンパク質のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つを過剰発現するように修飾される。一部の態様では、セルロースシンターゼ複合体は、バクテリアセルロースシンターゼ複合体である。一部の態様では、セルロース生産は、遺伝子修飾された細菌において、参照細菌と比較して増加する。一部の態様では、参照細菌は、修飾された細菌と同じ種のものである。参照細菌は、修飾された細菌と同じ株であってもよい。一部の態様では、細菌は、野生型細菌である。一部の態様では、同じ種または同じ株の参照細菌は、同じ種または同じ株の野生型細菌である。
【0035】
一部の態様では、本発明の遺伝子操作された根関連細菌は、セルロースシンターゼ複合体を過剰発現するように修飾される。一部の態様では、遺伝子修飾された細菌は、セルロースシンターゼ複合体からの少なくとも1つのタンパク質をコードする外因性核酸によって修飾される。他の態様では、セルロースシンターゼ複合体の少なくとも1つのタンパク質の過剰発現は、内因性セルロースシンターゼ複合体の少なくとも1つのタンパク質への転写および/または翻訳を増加させることによって達成される。
【0036】
一部の態様では、遺伝子修飾された根関連細菌は、セルロースシンターゼ複合体からの少なくとも1つのタンパク質をコードする外来性核酸によって修飾される。一部の態様では、細菌は、セルロースシンターゼ複合体由来のタンパク質のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つをコードする外因性核酸によって修飾される。一部の態様では、遺伝子操作された細菌は、bcsオペロンの以下の遺伝子のうちの少なくとも1つによって修飾される:bcsA;bcsB;bcsC;および/またはbcsD。さらなる態様では、外因性核酸は、bcsオペロンを含む。別のさらなる態様では、bcsオペロンは、4つのタンパク質サブユニット、BcsA、BcsB、BcsC、およびBcsDをコードする。一部の態様では、外因性核酸は、以下の遺伝子またはオペロンのうちの少なくとも1つを含む:cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子;bglAx遺伝子;pgm遺伝子;galU遺伝子;cdgオペロン;および/またはdgc遺伝子。一部の態様では、外因性核酸は、bcsオペロン、cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、およびbglAx遺伝子を含む。一部の態様では、外因性核酸は、bcsオペロン、cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、bglAx遺伝子、pgm遺伝子、galU遺伝子、cdgオペロンおよびdgc遺伝子を含む。一部の態様では、外因性核酸は、bcsオペロン、cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、bglAx遺伝子、pgm遺伝子、galU遺伝子、cdgオペロンおよびdgc遺伝子からなる。一部の態様では、bcsオペロン、cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、bglAx遺伝子、pgm遺伝子、galU遺伝子、cdgオペロン、および/またはdgc遺伝子はそれぞれ、K.キシリナス(K.xylinus)から単離される。
【0037】
一部の態様では、根関連細菌は、シュードモナス・フルオレッセンスおよびバチルス・メガテリウムから選択される。さらなる一態様では、根関連細菌は、シュードモナス・フルオレッセンスである。別のさらなる態様では、根関連細菌は、シュードモナス・フルオレッセンスSBW25である。別のさらなる態様では、根関連細菌は、シュードモナス・フルオレッセンスF113である。別のさらなる態様では、根関連細菌は、シュードモナス・フルオレッセンスCHA0である。別のさらなる態様では、根関連細菌は、シュードモナス・フルオレッセンスPf-5である。別のさらなる態様では、根関連細菌は、シュードモナス・フルオレッセンスFW300 N2E2である。
【0038】
一部の態様では、本発明の遺伝子操作された根関連細菌によって生産されたセルロースは、細胞外に分泌される。さらなる一態様では、分泌されたセルロースは、細胞外にネットワークを形成する。一部の態様では、分泌されたネットワークは、植物根の周りに形成される。一部の態様では、分泌されたセルロースネットワークは、植物根の周りの水分貯留を増加させる。一部の態様では、植物は、穀類植物、トウモロコシ、イネ、コムギ、またはダイズである。
【0039】
本発明の第2の側面では、根関連細菌におけるセルロースの生産を、参照根関連細菌と比較して増加させる方法であって、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように細菌を修飾するステップを含む方法。一部の態様では、細菌は、セルロースシンターゼ複合体からの少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように修飾される。一部の態様では、参照細菌は、修飾された細菌と同じ種のものである。一部の態様では、参照細菌は、野生型細菌である。一部の態様では、同じ種の参照細菌は、同じ種の野生型細菌である。一部の態様では、遺伝子操作された根関連細菌は、セルロースシンターゼ複合体からの少なくとも1つのタンパク質をコードする外来性核酸によって修飾される。一部の態様では、セルロースシンターゼ複合体からの少なくとも1つのタンパク質をコードする外因性核酸は、根関連細菌のゲノムに組み込まれる。一部の態様では、セルロースは、バクテリアセルロースである。一部の態様では、外因性核酸は、bcsオペロンを含む。さらなる態様では、ベクターの外因性核酸は、cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、bglAx遺伝子、pgm遺伝子、galU遺伝子、cdgオペロン、およびdgc遺伝子のうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0040】
本発明の第3の側面では、セルロースシンターゼ複合体からの少なくとも1つのタンパク質をコードする外因性核酸を含むベクターが提供される。一部の態様では、ベクターの外因性核酸は、bcsオペロンを含む。さらなる態様では、ベクターの外因性核酸は、cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、bglAx遺伝子、pgm遺伝子、galU遺伝子、cdgオペロン、およびdgc遺伝子のうちの少なくとも1つをさらに含む。一部の態様では、ベクターの外因性核酸は、bcsオペロン、cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、およびbglAx遺伝子を含む。一部の態様では、ベクターの外因性核酸は、bcsオペロン、cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、bglAx遺伝子、pgm遺伝子、galU遺伝子、cdgオペロンおよびdgc遺伝子を含む。一部の態様では、ベクターの外因性核酸は、bcsオペロン、cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、bglAx遺伝子、pgm遺伝子、galU遺伝子、cdgオペロンおよびdgc遺伝子からなる。一部の態様では、bcsオペロン、cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、bglAx遺伝子、pgm遺伝子、galU遺伝子、cdgオペロン、および/またはdgc遺伝子はそれぞれ、K.キシリナスから単離される。一部の態様では、ベクターは、単離されたベクターである。
【0041】
第4の側面では、本発明は、セルロースを生産するための遺伝子操作された根関連細菌を作製する方法であって、以下のステップ:
a)根関連細菌を単離するステップ;および
b)本発明のベクターを根関連細菌に導入するステップ
を含む、セルロースシンターゼ複合体からの少なくとも1つのタンパク質をコードする外来性核酸によって微生物を修飾するステップを含む方法を提供する。
【0042】
一部の態様では、細菌は、セルロースシンターゼ複合体からのタンパク質のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つをコードする外因性核酸によって修飾される。
【0043】
一部の態様では、本発明のベクターは、エレクトロポレーションによって根関連細菌に導入される。一部の態様では、本発明のベクターは、トランスフェクションによって根関連細菌に導入される。一部の態様では、セルロースシンターゼ複合体からの少なくとも1つのタンパク質をコードする外因性核酸は、根関連細菌のゲノムに組み込まれる。一部の態様では、セルロースシンターゼ複合体からのタンパク質のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つが、根関連細菌のゲノムに組み込まれる。一部の態様では、本発明のベクターは、その1つまたは複数の遺伝子のコピー数を増加させるために2つのコピー、3つのコピー、または4つのコピーなどが細菌のゲノムに組み込まれるように細菌に導入される。一部の態様では、セルロース生産は、遺伝子修飾された細菌において、参照細菌と比較して増加する。一部の態様では、参照細菌は、同じ種または株のものである。一部の態様では、参照細菌は、野生型細菌である。一部の態様では、参照細菌は、同じ種または株の野生型細菌である。一部の態様では、セルロースは、バクテリアセルロースである。一部の態様では、セルロースシンターゼ複合体は、バクテリアセルロースシンターゼ複合体である。
【0044】
第5の側面では、セルロースを生産するための遺伝子操作された根関連細菌を作製する方法によって得られる、遺伝子操作された根関連細菌を提供する。別の側面では、本発明は、本発明の単離された遺伝子操作された根関連細菌を提供する。本発明の代替的な一側面では、本発明の遺伝子操作された根関連細菌を含む細菌集団が提供される。
【0045】
別の側面では、本発明は、本発明の遺伝子操作された根関連細菌集団を含む細菌組成物を提供する。一部の態様では、組成物は、液体製剤中にあって植物に適用される。代替的な態様では、組成物は、細菌接種物として植物に適用される。一部の態様では、細菌接種材料は、泥炭ベースの製剤である。さらなる態様では、製剤は、畝間に蒔くための種子またはペレットをコーティングするために使用される。一部の態様では、本発明の遺伝子修飾された細菌は、マイクロビーズ中にあって植物に送達される。さらなる態様では、マイクロビーズは、アルギン酸マイクロビーズである。一部の態様では、細菌組成物は、肥料および/またはバイオ肥料をさらに含む。一部の態様では、細菌組成物は、栽植後に、ただし前記植物の収穫前に植物に適用される。一部の態様では、細菌組成物は、植物の栽植前の土壌に適用される。一部の態様では、植物は、穀類植物、トウモロコシ、イネ、コムギ、またはダイズである。
【0046】
別の側面では、本発明は、植物根の周りの水分貯留を増加させる方法であって、本発明の遺伝子操作された根関連細菌、本発明の単離された遺伝子操作された根関連細菌、本発明の遺伝子操作された根関連細菌の集団、または本発明の細菌組成物を、植物の周囲の土壌に適用するステップを含む方法を提供する。一部の態様では、植物は、穀類植物、トウモロコシ、イネ、コムギ、またはダイズである。
【0047】
別の側面では、本発明は、農業における水消費を減少させる方法であって、本発明の遺伝子操作された根関連細菌、本発明の単離された遺伝子操作された根関連細菌、本発明の遺伝子操作された根関連細菌の集団、または本発明の細菌組成物を、植物の周囲の土壌に適用するステップを含む方法を提供する。一部の態様では、植物は、穀類植物、トウモロコシ、イネ、コムギ、またはダイズである。
【0048】
別の側面では、本発明は、本発明の遺伝子操作された根関連細菌、本発明の単離された遺伝子操作された根関連細菌、本発明の遺伝子操作された根関連細菌の集団、または本発明の細菌組成物を含む植物を提供し、ここで遺伝子操作された根関連細菌、単離された遺伝子操作された根関連細菌、または遺伝子操作された根関連細菌の集団は、植物根に付随する。一部の態様では、植物は、穀類植物、トウモロコシ、イネ、コムギ、またはダイズである。
【0049】
別の側面では、本発明は、炭素を捕捉する方法であって、遺伝子操作された根関連細菌を植物根の周囲の土壌に適用するステップを含み、細菌が、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾されており、炭素が細菌によってセルロースに変換される方法を提供する。
【0050】
一部の態様では、遺伝子操作された根関連細菌は、本発明の根関連細菌、本発明の単離された遺伝子操作された根関連細菌、本発明の遺伝子操作された根関連細菌の集団、または本発明の細菌組成物である。一部の態様では、炭素は、植物から分泌される炭水化物として吸収され、炭水化物は、細菌によってセルロースに変換される。一部の態様では、セルロースの生産は、植物根の周りの水分貯留を増加させる。
【0051】
本発明の別の側面は、遺伝子修飾された根関連細菌の農業における使用であって、細菌が、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾されている、使用を提供する。本発明の別の側面では、植物根の周りの水分貯留を増加させるための遺伝子修飾された根関連細菌の使用であって、微生物が、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾されている、使用が提供される。本発明の別の側面は、遺伝子修飾された根関連細菌の炭素捕捉における使用であって、微生物が、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾されており、炭素が細菌によってセルロースに変換される使用を提供する。一部の態様では、本明細書に記載される方法および使用は、植物生存能力の増加をもたらす。
【0052】
一部の態様では、本明細書に記載される方法は、植物生存能力の増加をもたらす。
本発明の一部の態様では、根関連細菌は、1つまたは複数の異種遺伝子を含む外来性核酸によって遺伝子修飾され、その遺伝子はbcsA遺伝子、bcsB遺伝子、bcsC遺伝子、bcsD遺伝子、cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、およびbglAx遺伝子から選択される。
【0053】
一部の側面では、本発明は、セルロースを生産するための遺伝子修飾された細菌を提供し、ここで細菌は、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾され、遺伝子修飾された細菌は、外因性のbcsオペロンによって修飾され、bcsオペロンは、bcsA遺伝子、bcsB遺伝子、bcsC遺伝子、およびbcsD遺伝子を含む。一部の態様では、遺伝子修飾された細菌が提供され、ここで細菌は、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾され、遺伝子修飾された細菌は、1つまたは複数の異種遺伝子によって修飾され、遺伝子は、bcsA遺伝子、bcsB遺伝子、bcsC遺伝子、bcsD遺伝子、および任意選択でcmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、および/またはbglAx遺伝子を含む。一部の態様では、細菌は、コマガタエイバクター・キシリナス(アセトバクター・キシリナムおよびグルコンアセトバクター・キシリナスとしても知られる)ではない。
【0054】
本発明の一部の態様では、細菌は、1つまたは複数の異種遺伝子を含む外来性核酸によって遺伝子修飾され、その遺伝子はbcsA遺伝子、bcsB遺伝子、bcsC遺伝子、bcsD遺伝子、cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、およびbglAx遺伝子から選択される。
【0055】
一部の態様では、本発明は、セルロースを生産するための遺伝子操作された植物成長促進性根圏細菌を提供し、ここで根圏細菌は、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾される。一部の態様では、根圏細菌は、bcsオペロンを含む外因性核酸によって修飾され、ここでbcsオペロンは、bcsA遺伝子、bcsB遺伝子、bcsC遺伝子、およびbcsD遺伝子を含む。一部の態様では、外因性核酸は、少なくともccpAx遺伝子をさらに含む。一部の態様では、外因性核酸は、cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、および/またはbglAx遺伝子をさらに含む。一部の態様では、遺伝子は異種性である。本発明の一部の態様では、根圏細菌は、1つまたは複数の異種遺伝子を含む外因性核酸によって遺伝子修飾され、その遺伝子は、bcsA遺伝子、bcsB遺伝子、bcsC遺伝子、bcsD遺伝子、cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、およびbglAx遺伝子から選択される。
【0056】
一部の態様では、セルロースを生産するための遺伝子操作された植物成長促進性根圏細菌が提供され、ここで根圏細菌は、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾され、遺伝子修飾された根圏細菌は、1つまたは複数の異種遺伝子によって修飾され、ここで遺伝子は、bcsA遺伝子、bcsB遺伝子、bcsC遺伝子、bcsD遺伝子、および任意選択でcmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、および/またはbglAx遺伝子を含む。一部の態様では、根圏細菌は、コマガタエイバクター・キシリナス(アセトバクター・キシリナムおよびグルコンアセトバクター・キシリナスとしても知られる)ではない。
【0057】
本発明は、そのような組合せが明らかに許容できないか、または明白に回避される場合を除き、記載された側面および好ましい特徴の組合せを含む。
次に、本発明の原理を説明する態様および実験について、添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】P.フルオレッセンス、例えばP.フルオレッセンスSBW25の染色体の遺伝子座-6-への、目的のバクテリアセルロース遺伝子を含有するシャトルベクター(pEX18Ap)からの遺伝子クロスオーバーの描写。
【
図2】P.フルオレッセンスの染色体のattb部位(attB-5’TGAGTTCGAATCTCACCGCCTCCGCCATAT 3’)への、目的のバクテリアセルロース遺伝子を含有するMini CTX1ベクターからの遺伝子クロスオーバーの描写。
【
図3】セルロース合成遺伝子cmcAx、ccpAx、BcsA、BcsB、BcsC、BcsDおよびBglAx、ならびにレポーター遺伝子としてのGFPを含む構築物の描写。この特定の例では、構築物は、pBADプロモーターおよびpBADターミネーターも含む。
【
図4】シュードモナス・シンキサンタ(Pseudomonas synxantha)株2-79染色体-phzl/Rオペロンを含む構造の描写。b)宿主微生物、例えばシュードモナス・フルオレッセンスへの挿入を含む構築物の描写。
【
図5】シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)株KT2440染色体roxクオラムセンシング系を含む構築物の描写。b)
図5cに示されたroxS/roxRにより調節される遺伝子の上流領域を利用する、シュードモナスにおける組換えタンパク質生産のためのKT2440 QS系を含む構築物の描写。c)宿主微生物、例えばシュードモナス・フルオレッセンスへの挿入のための構築物の描写。
【発明を実施するための形態】
【0059】
次に、本発明の側面および態様を、添付の図面を参照しながら説明する。さらなる側面および態様は、当業者には明らかであろう。本文中で言及されるすべての文書は、参照によって本明細書に組み入れられる。
【0060】
本発明は、セルロースを生産するための遺伝子操作された微生物、例えば根関連細菌を提供し、ここで遺伝子操作された根関連細菌は、参照細菌、典型的には同じ種のものに比して、セルロース生産を増加させるように遺伝子修飾される。典型的には、遺伝子操作された根関連細菌は、セルロース、好ましくはセルロースシンターゼ複合体の合成および/または分泌のために必要なタンパク質を過剰発現するように修飾される。
【0061】
本明細書で使用される場合、1つまたは複数の「根関連」細菌は、植物根の表面で、または植物根の周囲で生息する1つまたは複数の細菌を指す。一部の態様では、微生物は、「根関連」であり、これは植物根の表面または植物根の周囲に生息する微生物を指す。さらなる態様では、根関連細菌は、根圏細菌である。根関連細菌は、植物と共生関係を築き、植物の成長を促進することがある。(そのような植物成長促進性根圏細菌はPGPRと呼ばれる)。理論には拘束されないが、根関連細菌はひとたび根から分離されると、細菌は生存能力を維持することができなくなり、そのため、より広い環境で生存する可能性は低く、その結果、遺伝子修飾された細菌の環境中での拡散が防止されることが予期される。
【0062】
根関連細菌の例としては、アグロバクテリウム・ラジオバクター(Agrobacterium(Agrobacterhim) radiohacter)、バチルス・アシドカルダームス(Bacillus acidocaldarms)、バチルス・アシドテレストリス(Bacillus acidoterrestris(acidoterresiris))、バチルス・アグリ(Bacillus agri)、バチルス・アイザワイ(Bacillus aizawai)、バチルス・アルボラクチス(Bacillus albolactis)、バチルス・アルカロフィラス(Bacillus alcalophilus)、バチルス・アルベイ(Bacillus alvei)、バチルス・アミノグルコシディカス(Bacillus aminoglucosidicus)、バチルス・アミノボランス(Bacillus aminovorans)、バチルス・アミロリティカス(Bacillus amylolyticus)(パエニバチルス・アミロリティカス(Paenibacillus(Paenibacilhis) amylolyticusとしても知られる)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens(amyloliquefacieris))、バチルス・アニュリノリティカス(Bacillus aneurinolyticus(aneiirinolyticus))、バチルス・アトロファエウス(Bacillus atrophaeus(atropkaeus))、バチルス・アゾトフォルマンス(Bacillus azotoformans)、バチルス・バディウス(Bacillus badius)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)(類義語:バチルス・エンドリスモス(Bacillus endorythmos)、バチルス・メデューサ(Bacillus medusa))、バチルス・キノスポルス(Bacillus chinosporus(chiiinosporus))、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・エンドパラシチクス(Bacillus endoparasiticus)、バチルス・ファスティディオスス(Bacillus fastidiosus)、バチルス・フィルムス(Bacillus firmus)、バチルス・クルスタキ(Bacillus kurstaki)、バチルス・ラクチコラ(Bacillus(Bacilhis) lacticola)、バチルス・ラシモルブス(Bacillus(Bacilhis) lacimorbus)、バチルス・ラシイス(Bacillus laciis)、バチルス・ラテロスポルス(Bacillus laterosporus(Iaierospoms))(ブレビバチルス・ラテロスポルス(Brevibacillus laterosporus)としても知られる)、バチルス・ロータス(Bacillus lautus)、バチルス・レミモルブス(Bacillus lemimorbus(leniimorbus))、バチルス・レニウス(Bacillus lenius)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・マロッカヌス(Bacillus maroccanus)、バチルス・メガテリウム、バチルス・メイエンス(Bacillus meiens)、バチルス・マイコイデス(Bacillus mycoides)、納豆菌(Bacillus natto)、バチルス・ネマトシダ(Bacillus nematocida)、バチルス・ニグリフィカンス(Bacillus nigrificans)、バチルス・ニグルム(Bacillus nigrum)、バチルス・パントセンティカス(Bacillus pantothenticus)、バチルス・パピラエ(Bacillus papillae)、バチルス・サイクロサッカロリティカス(Bacillus psychrosaccharolyticus)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・サイアメンシス(Bacillus siamensis)、バチルス・スミシー(Bacillus smithii)、バチルス・スファエリカス(Bacillus sphaericus)、枯草菌(Bacillus subtilis(subiilis))、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)、バチルス・ツミフラゲラツス(Bacillus tmiflagellatus)、ブラディリゾビウム・ジャポニクム(Bradyrhizobium japonicum)、ブレビバチルス・ブレビス(Brevibacillus brevis)、ブレビバチルス・ラテロスポルス(Brevibacillus laterosporus)(以前はバチルス・ラテロスポルス(Bacillus laterosporus))、クロモバクテリウム・サブツガエ(Chromobacterium subtsugae(suhisugae))、デルフチア・アシドボランス(Delflia acidovorans)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、リゾバクター・アンチビオチクス(Lysobacter antibioticus)、リソバクター・エンジモゲネス(Lysobacter enzymogenes)、パエニバシラス・アルベイ(Paenibacillus(Paenibacilhis) alvei)、パエニバシラス・ポリミキサ(Paenibacillus polymyxa)、乳化病菌(Paenibacillus popilliae)(以前はBacillus popilliae)、パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)、パスツリア・ペネトランス(Pasteuria penetrans)(以前はバチルス・ペネトランス(Bacillus penetrans))、パスツリア・ウスガエ(Pasteuria usgae)、ペクトバクテリウム・カロトボルム(Pectobacterium carotovorum)(以前はエルウィニア・カルトボード(Erwinia carotovord))、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス・オーレオファシエンス(Pseudomonas aureofaciens)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)(以前はバークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)として知られる)、シュードモナス・クロロラフィス(Pseudomonas chlororaphis)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・プロラジキス(Pseudomonas) proradix、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、シュードモナス・シリンガエ(Pseudomonas syringae)、セラチア・エントモフィラ(Serraiia entomophila)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)、ストレプトマイセス・コロンビエンシス(Streptomyces colombiensis)、ストレプトマイセス・ガルブス(Streptomyces galbus)、ストレプトマイセス・ゴシキエンシス(Streptomyces goshikiensis)、ストレプトマイセス・グリセオルーベンス(Streptomyces griseoviridis)、ストレプトマイセス・ラベンジュレ(Streptomyces lavendulae)、ストレプトマイセス・プラシヌス(Streptomyces prasinus)、ストレプトマイセス・サラセティカス(Streptomyces saraceticus)、ストレプトマイセス・ヴェネズエラエ(Streptomyces venezuelae)、キサントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris)、ゼノラブダス・ルミネッセンス(Xenorhabdus luminescens)、ゼノラブダス・ネマトフィラ(Xenorhabdus nematophila)、ロドコッカス・グロベルルス(Rhodococcus globerulus)AQ719(NRRL受託番号B-21663)、バチルス属AQ175(ATCC受託番号55608)、バチルス属AQ177(ATCC受託番号55609)、バチルス属AQ178(ATCC受託番号53522)およびストレプトマイセス属株NRRL受託番号B-30145が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
一部の態様では、細菌シュードモナス・フルオレッセンスまたはバチルス・メガテリウム。さらなる一態様では、細菌は、シュードモナス・フルオレッセンスである。好ましい側面では、細菌は、シュードモナス・フルオレッセンスSWB25である。別のさらなる態様では、細菌は、シュードモナス・フルオレッセンスF113である。別のさらなる態様では、細菌は、シュードモナス・フルオレッセンスCHA0である。別のさらなる態様では、細菌は、シュードモナス・フルオレッセンスPf-5である。別のさらなる態様では、細菌は、シュードモナス・フルオレッセンスFW300 N2E2である。
【0064】
根圏細菌は、宿主植物の根の表面、または表層細胞間隙に定着し、しばしば根粒を形成する。一部の態様では、根関連細菌は、植物成長促進性根圏細菌(PGPR)である。植物成長促進活性を示すPGPR属のいくつかの一般的な例には、以下のものがある:シュードモナス属(Pseudomonas)、アゾスピリラム属(Azospirillum)、バチルス属(Bacillus)など。他の既知のPGPRとしては、メソリゾビウム・シセリ(Mesorhizobium ciceri)、ブルクホルデリア・アンビファリア(Burkholderia ambifaria)、マイコバクテリウム・フレイ(Mycobacterium phlei)、およびG.ジアゾトロフィカス(G. diazotrophicus)が挙げられる。PGPRが、植物の根に定着して植物の成長を強化する土壌細菌を記述することは、当業者に公知である。PGPRは、植物に病原性効果を及ぼす細菌、例えば、有害な根圏細菌(DRB)を包含することを意図していない。根圏細菌の6種の株が、DRBとして同定されており、これらには以下のものが挙げられる:エンテロバクター属(Enterobacter)、クレブシエラ属(Klebsiella)、シトロバクター属(Citrobacter)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium)、アクロモバクター属(Achromobacter)、およびアルスロバクター属(Arthrobacter)。
【0065】
一部の態様では、細菌は、グラム陰性細菌である。一部の態様では、細菌は、シュードモナス属細菌である。一部の態様では、細菌は、コマガタエイバクター・キシリナス(アセトバクター・キシリナムおよびグルコンアセトバクター・キシリナスとしても知られる)ではない。
【0066】
一部の態様では、細菌は、以下のシュードモナス・フルオレッセンス株から選択される:シュードモナス・フルオレッセンスCHA0(CP043179.1)、シュードモナス・フルオレッセンスF113(CP003150.1);シュードモナス・フルオレッセンスFW300 N2E2(CP015225.1);シュードモナス・フルオレッセンスPf-275(CP031648.1);シュードモナス・フルオレッセンスPf-5(CP000076.1);シュードモナス・フルオレッセンスPf0-1(CP000094.2);シュードモナス・フルオレッセンスFR1(CP025738.1);シュードモナス・フルオレッセンスDR133(CP048607.1);およびシュードモナス・フルオレッセンス2P24(CP025542.1)。CHA0株およびPf-5株は、現在では、広く分布するグラム陰性の植物保護細菌である新規細菌種シュードモナス・プロテゲンス(Pseudomonas protegens)に属すると考えられている。しかし、当技術分野では、これらの特定の株(CHA0およびPf-5)は、シュードモナス・フルオレッセンスの株とも呼ばれる。このため、一部の例では、細菌は、シュードモナス・プロテゲンスであり、特に株CHA0およびPf-5に参照する場合にはそうである。さらなる一態様では、細菌は、シュードモナス・フルオレッセンスF113である。
【0067】
セルロース
一部の態様では、セルロースは、バクテリアセルロースである。一部の態様では、遺伝子修飾された微生物または細菌によって生産されたセルロースは、細胞外に分泌される。理論には拘束されないが、バクテリアセルロースは、植物セルロースとは異なる性質を有し、高い純度、強度、成形性および保水性の高さを特徴とすると考えられている。植物セルロースの保水値は60%前後であるのに対して、バクテリアセルロースの保水値はセルロース試料重量の1000%であることが示されている(Klemmら、2001年)。一部の態様では、分泌されたバクテリアセルロースは、植物根の周りにネットワークを形成する。一部の態様では、バクテリアセルロースネットワークは、海綿状ネットワークを形成する。一部の態様では、セルロースネットワークは、植物根の周りに生成される。
【0068】
本発明の遺伝子修飾された微生物または細菌によって生産されるバクテリアセルロースのネットワークは、水管理を容易にすることが予期される。典型的には、バクテリアセルロースネットワークは水を保持し、根が水を必要とする場合に浸透効果をもたらす。さらに、バクテリアセルロースネットワークは、土壌マイクロバイオームが増加する環境を作り出し、より健康な土壌および作物をもたらす可能性がある。さらに、バクテリアセルロースネットワークには、劇的な気象事象による局所的な洪水を防止する可能性がある。さらに、バクテリアセルロースネットワークは、バイオ肥料からの栄養素をより多量に根の周りに保持して、肥料の流出を防止するためのバイオスカフォールドとして作用する能力を有することが予期される。
【0069】
一部の態様では、バクテリアセルロースは水を保持する。水分貯留の増加は、作物の生存能力および収量の増加をもたらすことが予期される。さらなる態様では、バクテリアセルロースは、水分蒸発の減少を容易にする。水分蒸発の減少は、水の非効率な使用を減らすと考えられる。したがって、本発明の遺伝子修飾された微生物または細菌は、植物根系の周りに保持される水の量を増加させ、その結果、降雨減少および/または干魃の気候における作物の生存能力および収量を増加させることが予期される。一部の態様では、遺伝子操作された微生物、細菌または根関連細菌は、植物に栽植後に、ただし前記植物の収穫前に適用される。一部の態様では、遺伝子操作された微生物、細菌または根関連細菌は、植物の栽植前の土壌に適用される。一部の態様では、遺伝子操作された微生物、細菌または根関連細菌は、栽植前に植物の種子に適用される。
【0070】
「増加したセルロース生産」および「セルロース生産を増加させる」という用語は、本明細書において、遺伝子操作された微生物または細菌において生産される、それぞれ参照微生物または細菌、任意選択で同じ株または種のものと比較して、より多量のセルロースを記載するために使用される。一部の態様では、参照微生物は、同じ株または種の野生型微生物である。一部の態様では、参照細菌は、同じ株または種の野生型細菌である。セルロース生産の増加は、参照微生物または細菌と比較して、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍などであり得る。遺伝子操作された微生物または細菌によって生産されるセルロースの量は、セルロースバイオマスの乾燥および/または湿潤重量を測定する技術によって定量することができる。本発明の遺伝子操作された微生物または細菌は、セルロースバイオマスの乾燥および/または湿潤重量を、それぞれ参照微生物または細菌と比較して、増加させることが予期される。バクテリアセルロースは、Jozala A.F.ら、2014年(参照により組み入れられる)に記載された通りに定量することができる。例えば、バクテリアセルロースを収集し、蒸留水ですすぎ、60℃のNaOH 1Nに90分間浸漬することで、付着した細胞を除去することができる。次いで、バクテリアセルロースを蒸留水で洗浄し、50℃で24時間乾燥させて、バクテリアセルロース収量濃度をmg mL-1(BCの質量(mg)/培地の容積(mL))として評価することができる。
【0071】
セルロースの合成および分泌
バクテリアセルロースの合成は、ウリジン二リン酸(UDP-グルコース)の合成と、それに続くセルロースシンターゼによるグルコースの長い非分岐鎖への重合という、2つの主要な機構を伴う多段階プロセスである。
【0072】
本明細書に記載されるタンパク質は、セルロースの合成および/または分泌に関与するタンパク質である。一部の態様では、微生物または細菌は、セルロースの合成および/または分泌に関与するタンパク質のうちの少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種、少なくとも10種、少なくとも11種、または少なくとも12種を過剰発現するように修飾される。
【0073】
セルロース生合成および分泌のためのセルロースシンターゼ複合体をコードするバクテリアセルロース生合成(bcs)オペロンは、コマガタエイバクター・キシリナス(アセトバクター・キシリナムおよびグルコンアセトバクター・キシリナスとしても知られる)において最初に同定された。一部の態様では、微生物または細菌は、セルロースシンターゼ複合体からの少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾される。一部の態様では、微生物または細菌は、セルロースシンターゼ複合体からのタンパク質のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つまたは少なくとも4つを過剰発現するように修飾される。
【0074】
K.キシリナスは、セルロース生産菌種の中で最も効率的なバクテリアセルロース生産菌として同定されている。特に、コマガタエイバクター種によって生産されるバクテリアセルロースは、高い力学的強度、高い吸水能力、高い結晶性、および超微細で高純度の繊維ネットワーク構造を含むユニークな特性を示す(Vandammeら、1998年)。理論には拘束されないが、K.キシリナスのセルロース合成タンパク質による微生物、細菌または根関連細菌の遺伝子修飾は、増加した、より効率的なセルロース生産をもたらすと予期される。
【0075】
一部の態様では、遺伝的に操作された微生物、細菌または根関連細菌は、バクテリアセルロースシンターゼ複合体からの少なくとも1つのタンパク質をコードする外来性核酸によって遺伝子修飾される。一部の態様では、遺伝子操作された微生物、細菌または根関連細菌は、K.キシリナス由来のセルロースシンターゼ複合体からの少なくとも1つのタンパク質によって修飾される。本発明の目的に関して、セルロースシンターゼ複合体の構成要素について本明細書に記載する。
【0076】
本発明の目的に関して、「bcsオペロン」は、セルロースシンターゼ複合体を形成する4つのタンパク質サブユニット、BcsA、BcsB、BcsC、およびBcsDをコードする。内膜の細胞質面に位置するBcsAサブユニットは、ウリジン二リン酸グルコース(UDP-グルコース)の単量体をセルロースのβ-1,4-グルカン鎖へと重合させる原因となる触媒性β-1,4-グリコシルトランスフェラーゼドメインを保有する。触媒ドメインの活性は、バクテリアセルロース合成のアロステリック活性化因子であるビス-(3’→5’)-サイクリックジグアニル酸によって調節される。BcsBはペリプラズム中で単一のC末端膜貫通ヘリックスによってBcsAに結合し、そこでBcsAを安定化して、2つの糖結合ドメインを使用してグルカン鎖をペリプラズム空間に導く。ペリプラズムから細胞外環境へのバクテリアセルロースの分泌は、BcsCの作用を介して促進されると考えられ、これはその構造に基づき、K.キシリナスの外膜に孔を形成すると予測される。BcsCが外膜のポリンであるという見方に一致して、BcsCはin vivoで必須であるが、in vitroでのバクテリアセルロース合成には必須ではないことが観察されている。最終的に、バクテリアセルロースの結晶化は、4つのらせん状チャネルを含有する円柱状八量体ペリプラズムタンパク質であり、BcsCを介した排出の際に4つのグルカン鎖の水素結合を促進する、BcsDの作用によって達成される。さらに、K.キシリナスにおいて、BcsC変異体はセルロース繊維を生産することができないが、一方、BcsD変異体は野生型よりも約40%少量のセルロースを生産したことが示されている(Wongら、1990年)。バクテリアセルロースは、高い結晶化度指数によって、その植物対応物と区別される。特に、K.キシリナスは、セルロースIおよびセルロースIIとして知られるバクテリアセルロースの2つの結晶異形仮像を生産し、これはセルロースシンターゼ関連BcsDサブユニットを必要とする。このサブユニットは、セルロースの重合および結晶化を連結するものとして特徴付けられている。
【0077】
一部の態様では、本発明の遺伝子操作された微生物、細菌、または根関連細菌は、遺伝子bcsA、bcsB、bcsC、およびbcsDのうちの少なくとも1つを過剰発現するように修飾される。一部の態様では、本発明の遺伝子操作された微生物、細菌、または根関連細菌は、bcsA遺伝子およびbcsB遺伝子を過剰発現するように修飾される。一部の態様では、本発明の遺伝子操作された微生物、細菌、または根関連細菌は、bcsA遺伝子およびbcsB遺伝子のほか、bcsC遺伝子およびbcsD遺伝子のうちの少なくとも1つを過剰発現するように修飾される。さらなる態様では、本発明の遺伝子操作された微生物、細菌、または根関連細菌は、少なくともbcsA、bcsB、およびbcsDを過剰発現するように修飾される。一部の態様では、本発明の遺伝子操作された微生物、細菌、または根関連細菌は、bcsオペロンを過剰発現するように修飾される。さらなる態様では、bcsA、bcsB、bcsC、bcsD、およびbcsオペロンはそれぞれ、K.キシリナスから単離される。
【0078】
cmcAx(bcsZとしても知られる)は、bcsオペロンの上流に位置し、セルロース加水分解能力を有するエンド-β-1,4-グルカナーゼをコードする。外因性CmcAxは少量ではK.キシリナスのバクテリアセルロース生産を増強し、一方、cmcAxの内因性過剰発現はバクテリアセルロース収量を増加させることが示されている。理論には拘束されないが、CmcAxのセルロース加水分解活性はバクテリアセルロース生合成に対して調節効果を及ぼすことが予期される。一部の態様では、本発明の遺伝子操作された微生物、細菌、または根関連細菌は、cmcAx遺伝子を過剰発現するように修飾される。一部の態様では、微生物は、cmc遺伝子によって修飾される。さらなる態様では、cmcAx遺伝子は、K.キシリナスから単離される。
【0079】
ccpAx(bcsHとしても知られる)は、cmcAxと同じ上流オペロンに位置し、in vivoでのバクテリアセルロース生合成に必要なセルロース補完タンパク質(ccpAx)をコードする。CcpAxは、ペリプラズム中でBcsDと相互作用することが示されている。このユニークな機構が、K.キシリナスの極めて高い活性の理由の説明になると考えられる。一部の態様では、本発明の遺伝子操作された微生物、細菌、または根関連細菌は、ccpAx遺伝子を過剰発現するように修飾される。一部の態様では、微生物は、ccp遺伝子によって修飾される。さらなる態様では、ccpAx遺伝子は、K.キシリナスから単離される。
【0080】
BC合成オペロンの下流には、β-グルコシダーゼをコードするbglAx(bglxAとしても知られる)があり、β-グルコシダーゼは分泌されて、3つを上回るβ-1,4-グルコース単位(セロトリオース)を加水分解する能力を有する。この酵素は、細菌のセルロース生産に必須ではないが、bglAx遺伝子の破壊は細菌のセルロース生産を減少させることが示されている(Tajimaら、2001年;Kawanoら、2002年)。一部の態様では、本発明の遺伝子操作された微生物、細菌、または根関連細菌は、bglAx遺伝子を過剰発現するように修飾される。一部の態様では、微生物は、bgl遺伝子によって修飾される。さらなる態様では、bglAx遺伝子は、K.キシリナスから単離される。
【0081】
ホスホグルコムターゼは、celBとも呼ばれ、グルコース-1-リン酸(G-1-P)とグルコース-6-リン酸(G-6-P)との間の相互変換を触媒する。理論には拘束されないが、G-6-PのG-1-Pへの変換は、セルロースの生産を促進すると考えられている。ホスホグルコムターゼは細胞外セルロースの形成に必須であることが示されており、これはpgm変異体がセルロースを生産することができないためである。一部の態様では、本発明の遺伝子操作された微生物、細菌、または根関連細菌は、pgm遺伝子を過剰発現するように修飾される。さらなる態様では、pgm遺伝子は、K.キシリナスから単離される。
【0082】
UTP-グルコース-1-リン酸は、炭水化物代謝に関与する酵素であり、グルコース-1-リン酸(G-1-P)およびUTPからUDP-グルコースを合成する。UDP-グルコースは、セルロースの生産において重要な構成要素である。一部の態様では、本発明の遺伝子操作された微生物、細菌、または根関連細菌は、galU遺伝子を過剰発現するように修飾される。さらなる態様では、galU遺伝子は、K.キシリナスから単離される。
【0083】
ジグアニル酸シクラーゼは、GTP 2つを二リン酸2つとサイクリックGMPに変換する反応を触媒する酵素である。これを、dcg遺伝子またはcdgオペロンとして細菌細胞に導入することができる。cdgオペロンは、サイクリックジ-GMPホスホジエステラーゼ(pdeA)およびジグアニル酸シクラーゼ(dcg)を含む。ジグアニル酸シクラーゼはサイクリックジ-GMPの形成を触媒し、ホスホジエステラーゼAは分解を触媒する。理論には拘束されないが、サイクリックジ-GMPはバクテリアセルロース合成のアロステリック活性化因子であると考えられる。一部の態様では、本発明の遺伝子操作された微生物、細菌、または根関連細菌は、dcg遺伝子および/またはcdgオペロンを過剰発現するように修飾される。さらなる態様では、dcg遺伝子およびcdgオペロンはそれぞれ、K.キシリナスから単離される。
【0084】
一部の態様では、遺伝子操作された微生物、細菌、または根関連細菌は、以下のものを含む群から選択される、少なくとも1つまたは複数の遺伝子を過剰発現するように修飾される:bcsA遺伝子;bcsB遺伝子;bcsC遺伝子;bcsD遺伝子;cmcAx遺伝子;ccpAx遺伝子;bglAx遺伝子;pgm遺伝子;galU遺伝子;cdgオペロン;およびdgc遺伝子。
【0085】
一部の態様では、遺伝子操作された微生物、細菌、または根関連細菌は、bcsオペロンと、以下の遺伝子:
a)cmcAx遺伝子;
b)ccpAx遺伝子;
c)bglAx遺伝子;
d)pgm遺伝子;
e)galU遺伝子;
f)cdgオペロン;および/もしくは
g)dgc遺伝子
またはオペロンのうちの少なくとも1つとを過剰発現するように修飾される。
【0086】
さらなる態様では、遺伝子操作された微生物、細菌、または根関連細菌は、a)~g)によって記載される遺伝子またはオペロンのうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つをさらに含む。一部の態様では、遺伝子操作された微生物、細菌、または根関連細菌は、a)~g)の遺伝子およびオペロンをさらに含む。一部の態様では、遺伝子操作された微生物、細菌、または根関連細菌は、さらに、a)~g)の遺伝子およびオペロンからなる。一部の態様では、本発明の遺伝子修飾された微生物、細菌、または根関連細菌は、bcsオペロンと、少なくともcmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子およびbglAx遺伝子とを含む。一部の態様では、本発明の遺伝子修飾された微生物、細菌、または根関連細菌は、bcsオペロンと、少なくともcmc遺伝子、ccp遺伝子およびbgl遺伝子とを含む。一部の態様では、本発明の遺伝子修飾された微生物、細菌、または根関連細菌は、bcsオペロンと、少なくともcmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、およびbglAx遺伝子とからなる。一部の態様では、本発明の遺伝子修飾された微生物、細菌、または根関連細菌は、bcsオペロンと、少なくともcmc遺伝子、ccp遺伝子、およびbgl遺伝子とからなる。一部の態様では、遺伝子は異種性である。
【0087】
一部の態様では、BcsA、BcsB、BcsC、およびBcsDのすべてを含まない内因性bcsオペロンを含む微生物、細菌、または根関連細菌は、bcsオペロンの遺伝子のうちの少なくとも1つ(bcsA、bcsB、bcsC、bcsD)によって修飾され得る。典型的には、細菌は、通常は発現しないbcs遺伝子によって修飾される。例えば、シュードモナス・フルオレッセンスSBW25は、bcsオペロンのBcsA、BcsBおよびBcsCのみを発現し、このため、本発明によれば、BcsDを発現するように修飾される。一部の態様では、根関連細菌シュードモナス・フルオレッセンスSBW25は、bcsDを含む外因性核酸によって修飾される。
【0088】
理論には拘束されないが、bcsオペロンと、cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、bglAx遺伝子、pgm遺伝子、galU遺伝子、dcg遺伝子および/またはcdgオペロンの任意の組合せとが、宿主細菌におけるセルロースの合成および分泌を促進することが予期される。一部の態様では、本発明の遺伝子操作された微生物、細菌、または根関連細菌は、本明細書に記載される遺伝子またはオペロンのうち任意のものの複数のコピーを含み得る。
【0089】
一部の側面では、本発明は、セルロース合成遺伝子(好ましくは、cmcAX、ccpAX、bcsA、bcsB、bcsC、bscD、および/またはbglxA)を土壌中に存在する外来宿主に組み入れることに関する。一部の側面では、本発明は、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾された微生物を提供し、ここで遺伝子修飾された細菌は、1つまたは複数の異種遺伝子によって修飾され、遺伝子は、bcsA遺伝子、bcsB遺伝子、bcsC遺伝子、および/またはbcsD遺伝子を含む。一部の態様では、遺伝子は、bcsA遺伝子、bcsB遺伝子、bcsC遺伝子、およびbcsD遺伝子を含む。一部の態様では、遺伝子は、cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、および/またはbglAx遺伝子をさらに含む。
【0090】
一部の態様では、遺伝子修飾された細菌は、bcsオペロンを含む外因性核酸によって遺伝子修飾され、ここでbcsオペロンは、bcsA遺伝子、bcsB遺伝子、bcsC遺伝子、およびbcsD遺伝子を含む。一部の態様では、遺伝子修飾された細菌は、cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、およびbglAx遺伝子のうちの少なくとも1つを含む外因性核酸によってさらに修飾される。
【0091】
一部の側面では、本発明は、セルロースを生産するための遺伝子操作された微生物を提供し、ここで微生物は、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾され、遺伝子修飾された細菌は、少なくとも1つまたは複数の外因性遺伝子を過剰発現するように修飾され、外因性遺伝子は、bcsA遺伝子、bcsB遺伝子、bcsC遺伝子、bcsD遺伝子、および任意選択でccpAx遺伝子を含む群から選択される。一部の態様では、微生物は細菌であり、任意選択で根関連細菌である。一部の側面では、セルロースの生産をコードする1つまたは複数の異種遺伝子を含む、遺伝子操作された微生物が提供され、ここで遺伝子はbcsA、bcsB、bcsCおよび/またはbcsDである。一部の態様では、遺伝子は、bcsA、bcsB、bcsCおよびbcsDである。一部の態様では、遺伝子は、cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、および/またはbglAx遺伝子をさらに含む。一部の態様では、微生物は細菌である。さらなる態様では、微生物は、根関連細菌である。一部の態様では、遺伝子はそれぞれ、K.キシリナスから単離される。
【0092】
一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子をさらに含む。理論に拘束されることはないが、GFPを発現する宿主細胞を用意することは、環境中の遺伝子修飾された微生物(例えば、細菌)の追跡に役立つと考えられる。したがって、一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、セルロースの生産をコードする1つまたは複数の異種遺伝子を含み、ここで遺伝子はbcsA、bcsB、bcsCおよび/またはbcsDであり、GFPをコードする遺伝子をさらに含む。
【0093】
過剰発現
本発明の遺伝子操作された微生物、細菌または根関連細菌は、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾される。一部の態様では、本発明の遺伝子操作された微生物、細菌、または根関連細菌は、セルロースシンターゼ複合体からの少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように修飾される。
【0094】
「過剰発現」という用語は、本明細書で使用する場合、目的のタンパク質が、微生物または細菌において、それが参照微生物または参照細菌のそれぞれ、任意選択で、比較可能な野生型微生物または細菌のそれぞれ、典型的には同じ株または種のそれぞれにおいて発現されるレベルよりも高いレベルで発現されることである。過剰発現は、恒常的または誘導性発現を含み得るが、これらに限定されない。一部の態様では、微生物または細菌は、目的のタンパク質を内因性に発現せず、微生物または細菌細胞におけるそのタンパク質の任意の発現レベルは、本発明の目的に関して、そのタンパク質の「過剰発現」とみなされる。本発明において、「セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質の過剰発現」または「セルロースシンターゼ複合体からの少なくとも1つのタンパク質の過剰発現」という用語は、セルロースの合成に関与する少なくとも1つのタンパク質が、対応する参照微生物または細菌のそれぞれにおいて発現されるレベルよりも高いレベルで微生物または細菌において発現されることを意味する。一部の態様では、参照微生物は、野生型微生物である。一部の態様では、参照微生物は、修飾された微生物と同じ種のものである。参照微生物は、修飾された微生物と同じ菌株のものであってもよい。一部の態様では、参照微生物は、修飾された微生物と同じ株または種の野生型細菌である。一部の態様では、参照細菌は野生型細菌である。一部の態様では、参照細菌は、修飾された細菌と同じ種のものである。参照細菌は、修飾された細菌と同じ株のものであってもよい。一部の態様では、参照細菌は、修飾された細菌と同じ株または種の野生型細菌である。
【0095】
過剰発現は、当業者に公知の任意の方法で達成することができる。一般に、それは、遺伝子の転写/翻訳を増加させることによって、例えば、遺伝子のコピー数を増加させることによって、または遺伝子の発現に関連する調節配列もしくは部位を変更もしくは修飾することによって、達成することができる。例えば、過剰発現は、調節配列(例えば、プロモーター)に作動可能に連結された目的の遺伝子をコードするポリヌクレオチドの1つまたは複数のコピーを導入することによって、達成することができる。遺伝子を、高い発現レベルに到達させるために、強力な恒常的プロモーターおよび/または強力なユビキタスプロモーターに作動可能に連結させることができる。そのようなプロモーターは、内因性プロモーターまたは組換えプロモーターであり得る。または、発現が恒常的になるように調節配列を除去することも可能である。所与の遺伝子のネイティブ性プロモーターを、遺伝子の発現を増加させるかまたは遺伝子の恒常的発現を導く異種プロモーターで置換することができる。典型的には、CRISPR、TALEN、およびジンクフィンガーヌクレアーゼなどのゲノム編集方法を本発明に従って使用して、セルロース合成および/または分泌タンパク質の過剰発現を達成することができる。例えば、CRISPRゲノム編集を使用して調節配列を除去して、その結果、目的の遺伝子の恒常的発現をもたらすことができる。セルロース合成および/または分泌タンパク質(例えば、セルロースシンターゼ複合体のタンパク質およびその関連タンパク質)は、同じ条件下で培養した場合に、操作前の宿主細胞と比較して、宿主細胞によって、10%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、100%超、200%超、または300%超で過剰発現され得る。
【0096】
一態様では、セルロース合成および分泌遺伝子の過剰発現は、遺伝子の発現に関連する調節部位を変更または修飾することによって達成される。別の態様では、セルロース合成および分泌遺伝子の過剰発現は、セルロース合成および分泌遺伝子のコピー数を増加させることによって達成される。さらなる一態様では、微生物、細菌、または根関連細菌は、1つまたは複数のセルロース合成および分泌遺伝子を含む外因性核酸によって修飾される。一部の態様では、微生物または細菌は、1つまたは複数のセルロース合成および分泌遺伝子を含む1つまたは複数の別個の外因性核酸によって修飾される。一部の態様では、外因性核酸は、微生物または細菌内の自己複製プラスミドに組み入れられる。代替的な一態様では、外因性核酸は、微生物または細菌のゲノムに組み入れられる。一部の態様では、目的の遺伝子の発現は一過性である。一部の態様では、目的の遺伝子の発現は安定的である。
【0097】
過剰発現の検出は、当業者に公知の任意の方法で達成することができる。その例としては、ウエスタンブロット、qRT-PCR、およびフローサイトメトリーなどの手法によって、セルロースの合成のためのタンパク質(装置)、例えばセルロースシンターゼ複合体を検出すること、またはセルロースバイオマスの乾燥および/もしくは湿潤重量を決定するなどの手法によって、遺伝子操作された細菌によって生産されたセルロースの量を検出することが挙げられるが、それらには限定されない。
【0098】
一部の態様では、外因性核酸は、微生物、細菌、または根関連細菌に導入される。本明細書において、核酸は、K.キシリナスから単離されたbcsオペロンの遺伝子、cmcAx遺伝子;ccpAx遺伝子;bglxA遺伝子;pgm遺伝子;galU遺伝子;cdgオペロン;および/またはdgc遺伝子に対して、ならびにこれらの配列のうちのいずれか1つのRNA転写物に対して、前述の配列のうちのいずれか1つの断片に対して、またはこれらの配列もしくは断片のうちのいずれか1つの相補配列に対して、所定の度合いの配列同一性を有するヌクレオチド配列を有する任意の核酸(DNAまたはRNA)であり得る。所定の度合いの配列同一性は、少なくとも60%~100%の配列同一性であり得る。より好ましくは、所定の度合いの配列同一性は、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性のうちの1つであり得る。本明細書において、「外因性核酸」は、外来性である、例えば、その宿主細胞に対して内因性でないヌクレオチド配列を指す。
【0099】
「内因性」という用語は、ポリヌクレオチドまたはタンパク質に関しては、宿主細胞中に天然に存在するポリヌクレオチドまたはタンパク質を指す。
「異種性」という用語は、ポリヌクレオチドまたはタンパク質に関しては、宿主細胞に天然には存在しないポリヌクレオチドまたはタンパク質を指す。好ましい態様では、外因性核酸は異種核酸である。
【0100】
「組換え型の」という用語は、対象細胞、核酸、タンパク質またはベクターに関連して使用される場合、対象がその天然状態から修飾されたことを示す。したがって、例えば、組換え細胞は、細胞のネイティブ性(非組換え型)形態には見られない遺伝子を発現するか、または天然に見られるものとは異なるレベルもしくは異なる条件下でネイティブ性遺伝子を発現する。組換え核酸は、1つまたは複数のヌクレオチドの点でネイティブ性配列とは異なり、および/または異種配列、例えば発現ベクター中の異種プロモーターに作動可能に連結されている。組換えタンパク質は、1つまたは複数のアミノ酸の点でネイティブ性配列と異なっていてもよく、および/または異種配列と融合されていてもよい。操作された微生物または細菌は、組換え微生物または細菌と考えることができる。一態様では、微生物または細菌細胞は、セルロース合成および分泌のための装置、例えば、セルロースシンターゼ複合体をコードする外因性核酸配列を含む発現カセットまたはベクターを前記細胞に導入することによって遺伝子操作される。核酸配列は、微生物または細菌細胞における前記核酸の発現を導く1つまたは複数の制御配列に作動可能に連結されていてもよい。制御配列は、微生物または細菌細胞によって認識されるプロモーターを含み得る。プロモーターは、セルロースの合成のための装置の発現を媒介する転写制御配列を含有する。プロモーターは、微生物または細菌細胞において転写活性を示す任意のポリヌクレオチドであってもよく、変異型、短縮型およびハイブリッドプロモーターが挙げられる。プロモーターは、恒常的または誘導性プロモーター、好ましくは恒常的プロモーターであり得る。制御配列はまた、適切な転写開始、終結、およびエンハンサー配列も含み得る。一部の態様では、発現カセットは、転写プロモーターおよび転写ターミネーターに作動可能に連結された、セルロース合成および分泌のための装置をコードする核酸配列を含むか、またはそれらからなる。
【0101】
本明細書で使用される場合、「ベクター」は、外来性遺伝物質を細胞に導入するためのビヒクル(vehicle)として使用されるオリゴヌクレオチド分子(DNAまたはRNA)である。ベクターは、細胞内で外来性遺伝物質を発現させるための発現ベクターであってもよい。そのようなベクターは、発現させようとする遺伝子配列をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーター配列を含み得る。ベクターはまた、終止コドンおよび発現エンハンサーも含み得る。当技術分野で公知の任意の好適なベクター、プロモーター、エンハンサーおよび終止コドンは、本発明によることができる。好適なベクターとしては、プラスミド、バイナリーベクター、ウイルスベクター、および人工染色体(例えば、酵母人工染色体)が挙げられる。一部の態様では、本発明のベクターは、単離されたベクターである。本明細書で使用される場合、「発現カセット」は、宿主細胞において発現させようとする遺伝子および調節配列からなるベクターDNAの別個の構成要素である。発現カセットは、典型的には、1つまたは複数の遺伝子およびそれらの発現を制御する配列を含む。
【0102】
本明細書で使用される場合、「恒常的プロモーター」は、ほとんどの条件下および/またはほとんどの発生段階において活性であるプロモーターである。バイオテクノロジーで使用される発現ベクター中に恒常的プロモーターを使用することには、以下のようないくつかの利点がある:トランスジェニック細胞または生物を選択するために使用されるタンパク質の高レベルの生産;容易な検出および定量化を可能にする、レポータータンパク質またはスコア化可能マーカーの高レベルの発現;調節転写系の一部である転写因子の高レベルの生産;生体内で遍在性の活性を必要とする化合物の生産;ならびに発生のすべての段階で必要とされる化合物の生産。または、非恒常的プロモーターを使用することもできる。本明細書で使用される場合、「非恒常的プロモーター」は、ある特定の条件下で活性であるプロモーターである。諸態様では、プロモーターは誘導性プロモーターである。一部の態様では、誘導性プロモーターは、糖誘導性プロモーターである。一部の態様では、プロモーターは、アラビノース誘導性プロモーターである。
【0103】
好ましい態様では、ベクターは、微生物または細菌細胞に導入された場合にゲノムに組み込まれ、それが組み込まれた染色体と共に複製されるベクターである。一部の態様では、セルロース合成のための装置をコードする遺伝子の組込みは、染色体の非必須遺伝子座に組み込まれると考えられる。染色体の非必須遺伝子座の非限定的な例は、BAILEYら、1995年(参照によって組み入れられる)によって示される方法を使用した、SBW25の6.6Mbp染色体上の遺伝子座-6-(Rainey and Bailey、1996年)である。典型的には、目的の遺伝子の挿入は、部位特異的相同組換えによって媒介される。一部の態様では、目的の遺伝子の挿入は、CRISPRゲノム編集によって媒介される。典型的には、CRISPRノックインは、相同組換え修復(HDR)によって媒介される。理論には拘束されないが、新規遺伝子配列の発現および環境変動性による余剰的な代謝活性は、遺伝子修飾された細菌の環境中での制御されない増殖に対する安全策であることが予期される。例えば、増加した量のセルロースを生産する微生物または細菌は、植物根の中および周りで生育するというように、その増殖を支える環境でのみ生存し得る。遺伝子修飾された微生物または細菌が好ましくない環境で増殖する場合、増加した量のセルロースを生産するという余剰的な代謝負荷は、より広い環境における遺伝子修飾された微生物または細菌の生存能力の低下につながり、それによって遺伝子修飾された微生物または細菌の安全性を向上させると考えられる。
【0104】
カウンター選択マーカーを、発現系において使用してもよい。選択マーカーの一例としては、ベクターがsacBをコードするスクロース感受性系が挙げられる。好適なベクターの例としては、組換え組込みベクターまたは非組込みベクターが挙げられるが、これらには限定されない。ベクターの例としては、pGEX系列のベクター、pET系列のベクター、pEX系列のベクターが挙げられる。一部の態様では、pEX18Apベクターが使用される。一部の態様では、mini CTX1ベクターが使用される。一部の態様では、pFLP2ベクターが使用される。pFLP2は、望ましくない配列を取り除くために使用し得る除去ベクターである。一部の態様では、宿主微生物における挿入部位は、配列番号:1:TGAGTTCGAATCTCACCGCCTCCGCCATATによって規定されるattbである。
【0105】
本明細書において、「作動可能に連結された」という用語は、選択されたヌクレオチド配列および調節ヌクレオチド配列が、ヌクレオチドコード配列の発現を調節配列の影響下または制御下に置くような方法で共有結合性に連結される状況を含み得る。したがって、調節配列が、選択されたヌクレオチド配列の一部または全体を形成するヌクレオチドコード配列の転写を生じさせることができる場合、調節配列は、選択されたヌクレオチド配列に作動可能に連結されている。必要に応じて、その結果得られた転写物を、所望のタンパク質またはポリペプチドに翻訳することができる。
【0106】
一部の態様では、本発明による微生物は、配列番号2によって規定される核酸配列を有するcmcAx遺伝子によって修飾される。
一部の態様では、微生物は、配列番号2に対して少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の核酸配列同一性を有するcmcAx遺伝子によって修飾される。
【0107】
一部の態様では、本発明による微生物は、配列番号3によって規定される核酸配列を有するccpAx遺伝子によって修飾される。
一部の態様では、微生物は、配列番号3に対して少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の核酸配列同一性を有するccpAx遺伝子によって修飾される。
【0108】
一部の態様では、本発明による微生物は、配列番号4によって規定される核酸配列を有する、bcsA遺伝子、bcsB遺伝子、bcsC遺伝子およびbcsD遺伝子を含むbcsオペロンによって修飾される。
【0109】
一部の態様では、微生物は、配列番号4に対して少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の核酸配列同一性を有するbcsオペロンによって修飾される。
【0110】
一部の態様では、本発明による微生物は、配列番号5によって規定される核酸配列を有するgfp遺伝子によって修飾される。
一部の態様では、微生物は、配列番号5に対して少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の核酸配列同一性を有するgfp遺伝子によって修飾される。
【0111】
一部の態様では、本発明による微生物は、配列番号6によって規定される核酸配列を有するbglAx遺伝子によって修飾される。
一部の態様では、微生物は、配列番号6に対して少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の核酸配列同一性を有するbglAx遺伝子によって修飾される。
【0112】
一部の態様では、微生物は、配列番号2に対して少なくとも65%の核酸配列同一性を有するcmcAx遺伝子、配列番号3に対して少なくとも65%の核酸配列同一性を有するccpAx遺伝子、配列番号4に対して少なくとも65%の核酸配列同一性を有するbcsオペロン、配列番号5に対して少なくとも65%の核酸配列同一性を有するgfp遺伝子、および/または配列番号6に対して少なくとも65%の核酸配列同一性を有するbglAx遺伝子によって修飾される。
【0113】
一部の態様では、本発明による微生物は、配列番号7によって規定される核酸配列を有するPhlZクオラムセンシングプロモーターによって修飾される。
一部の態様では、微生物は、配列番号7に対して少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の核酸配列同一性を有するPhlZクオラムセンシングプロモーターによって修飾される。
【0114】
一部の態様では、本発明による微生物は、配列番号8によって規定される核酸配列を有するRoxクオラムセンシングプロモーターによって修飾される。
一部の態様では、微生物は、配列番号8に対して少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の核酸配列同一性を有するRoxクオラムセンシングプロモーターによって修飾される。
【0115】
一部の態様では、本発明による微生物は、配列番号9によって規定される核酸配列を有するAfmRクオラムセンシングプロモーターによって修飾される。
一部の態様では、微生物は、配列番号9に対して少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の核酸配列同一性を有するAfmRクオラムセンシングプロモーターによって修飾される。
【0116】
一部の態様では、本発明による微生物は、配列番号10によって規定される核酸配列を有するcmcAx遺伝子によって修飾される。
一部の態様では、微生物は、配列番号10に対して少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の核酸配列同一性を有するcmcAx遺伝子によって修飾される。
【0117】
一部の態様では、本発明による微生物は、配列番号11によって規定される核酸配列を有するccpAx遺伝子によって修飾される。
一部の態様では、微生物は、配列番号11に対して少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の核酸配列同一性を有するccpAx遺伝子によって修飾される。
【0118】
一部の態様では、本発明による微生物は、配列番号12によって規定される核酸配列を有するbcsA遺伝子によって修飾される。
一部の態様では、微生物は、配列番号12に対して少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の核酸配列同一性を有するbcsA遺伝子によって修飾される。
【0119】
一部の態様では、本発明による微生物は、配列番号13によって規定される核酸配列を有するbcsB遺伝子によって修飾される。
一部の態様では、微生物は、配列番号13に対して少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の核酸配列同一性を有するbcsB遺伝子によって修飾される。
【0120】
一部の態様では、本発明による微生物は、配列番号14によって規定される核酸配列を有するbcsC遺伝子によって修飾される。
一部の態様では、微生物は、配列番号14に対して少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の核酸配列同一性を有するbcsC遺伝子によって修飾される。
【0121】
一部の態様では、本発明による微生物は、配列番号15によって規定される核酸配列を有するbcsD遺伝子によって修飾される。
一部の態様では、微生物は、配列番号15に対して少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の核酸配列同一性を有するbcsD遺伝子によって修飾される。
【0122】
一部の態様では、本発明による微生物は、配列番号16によって規定される核酸配列を有するgfp遺伝子によって修飾される。
一部の態様では、微生物は、配列番号16に対して少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の核酸配列同一性を有するgfp遺伝子によって修飾される。
【0123】
一部の態様では、本発明による微生物は、配列番号17によって規定される核酸配列を有するbglAx遺伝子によって修飾される。
一部の態様では、微生物は、配列番号17に対して少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の核酸配列同一性を有するbglAx遺伝子によって修飾される。
【0124】
一部の態様では、微生物は、配列番号10に対して少なくとも65%の核酸配列同一性を有するcmcAx遺伝子、配列番号11に対して少なくとも65%の核酸配列同一性を有するccpAx遺伝子、配列番号12に対して少なくとも65%の核酸配列同一性を有するbcsA遺伝子、配列番号13に対して少なくとも65%の核酸配列同一性を有するbcsB遺伝子、配列番号14に対して少なくとも65%の核酸配列同一性を有するbcsC遺伝子、配列番号15に対して少なくとも65%の核酸配列同一性を有するbcsD遺伝子、配列番号16に対して少なくとも65%の核酸配列同一性を有するgfp遺伝子、および/または配列番号17に対して少なくとも65%の核酸配列同一性を有するbglAx遺伝子によって修飾される。さらなる態様では、配列番号7、配列番号8または配列番号9に対して少なくとも65%の核酸配列同一性を有するプロモーターは、配列番号10に対して少なくとも65%の核酸配列同一性を有するcmcAx遺伝子、配列番号11に対して少なくとも65%の核酸配列同一性を有するccpAx遺伝子、配列番号12に対して少なくとも65%の核酸配列同一性を有するbcsA遺伝子、配列番号13に対して少なくとも65%の核酸配列同一性を有するbcsB遺伝子、配列番号14に対して少なくとも65%の核酸配列同一性を有するbcsC遺伝子、配列番号15に対して少なくとも65%の核酸配列同一性を有するbcsD遺伝子、配列番号16に対して少なくとも65%の核酸配列同一性を有するgfp遺伝子、および/または配列番号17と少なくとも65%の核酸配列同一性を有するbglAx遺伝子に作動可能に連結される。
【0125】
一部の態様では、本発明による微生物は、配列番号18によって修飾される。
一部の態様では、微生物は、配列番号18に対して少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の核酸配列同一性を有する核酸によって修飾される。
上記の配列は任意の順序で組み合わせて使用することができる。
【0126】
クオラムセンシング系
一部の態様では、セルロース合成遺伝子の発現は、細胞密度クオラムセンシングプロモーターによって調節される。さらなる態様では、セルロース合成遺伝子の発現は、細胞密度クオラムセンシング系によって調節される。さらなる態様では、クオラムセンシング系は、恒常的プロモーターの制御下にある。さらなる態様では、クオラムセンシング系は、本明細書に開示される遺伝子の発現を制御するプロモーターを調節する。理論には拘束されないが、クオラムセンシング系の使用がセルロース合成遺伝子の発現を制御し、細菌が根圏に定着して濃度閾値に達すると、プロモーターのスイッチが入り、セルロース合成が始まることが予期される。
【0127】
クオラムセンシング(QS)は、遺伝子調節によって細胞集団密度を検出して応答する能力と定義される。一例として、細菌はクオラムセンシングを使用して、バイオフィルム形成、ビルレンス因子発現、運動性、生物発光、窒素固定、胞子形成などの表現型発現を調節することができ、これらはその挙動を調整する。この機能は、その近接環境における細菌集団の局所密度に基づく。一部の態様では、クオラムセンシングオペロンが宿主細胞に挿入される。
【0128】
いくつかの例として、グラム陽性細菌は、自己誘導ペプチド(AIP)を、シグナル伝達分子として働くオートインデューサーとして使用する。局所環境で高濃度のAIPが検出されると、AIPは受容体に結合して、キナーゼを活性化する。次いでキナーゼは転写因子をリン酸化し、次いで転写因子が遺伝子の転写を調節する。これは二成分系として知られる。したがって、一部の態様では、二成分系が使用される。一部の態様では、二成分系は、センサーキナーゼ(シグナル伝達分子を検出する)および応答調節因子(遺伝子発現を調節する)を含む。
【0129】
別の例では、グラム陰性細菌は、N-アシルホモセリンラクトン(AHL)をシグナル伝達分子として産生する。典型的には、これらのAHLは、転写因子に直接結合して、遺伝子発現を調節する。一部の態様では、一段階プロセスが使用される。一部のグラム陰性菌も、二成分系を利用することが知られている。
【0130】
一部の態様では、本明細書に開示される遺伝子は、細胞密度依存性自己誘導性プロモーターによって調節される。一部の態様では、本明細書に開示されるセルロース合成および/または分泌遺伝子は、細胞密度クオラムセンシングプロモーターの制御下にある。細菌が根圏に定着して閾値密度に達すると、セルロース合成遺伝子のスイッチが入ることが予期される。
【0131】
一部の態様では、クオラムセンシング系は、センサーキナーゼをコードする遺伝子および応答調節因子をコードする遺伝子を含む。さらなる態様では、クオラムセンシング系は、クオラムセンシングにより調節されるプロモーターをさらに含む。一部の態様では、センサーキナーゼをコードする遺伝子および応答調節因子をコードする遺伝子を含む核酸は、恒常的プロモーターに作動可能に連結される。さらなる態様では、RoxS/RoxRクオラムセンシング系が使用される。一部の態様では、RoxS/RoxRオペロンが宿主細胞に挿入される。代替的な態様では、クオラムセンシング系は、シグナル伝達分子(オートインデューサー)をコードする遺伝子、および転写/応答調節因子をコードする遺伝子を含む。さらなる態様では、クオラムセンシング系は、クオラムセンシングにより調節されるプロモーターをさらに含む。一部の態様では、シグナル伝達分子をコードする遺伝子および転写/応答調節因子をコードする遺伝子を含む核酸は、恒常的プロモーターに作動可能に連結される。さらなる態様では、PhzR/PhzIクオラムセンシング系が使用される。一部の態様では、PhzR/PhzIオペロンが宿主細胞に挿入される。
【0132】
一部の態様では、クオラムセンシング系は、標的遺伝子プロモーターを活性化する。さらなる態様では、応答調節因子は、標的遺伝子プロモーターに結合する。
QSに基づく自己誘導性プロモーター系、特に細菌のRoxS/RoxRクオラムセンシング(QS)系は、Meyers Aら、2019年に記載されている。RoxS/RoxRクオラムセンシング系は、センサーヒスチジンキナーゼ(RoxS)および応答調節因子(RoxR)によって形成される二成分系である。RoxSは、RoxRのリン酸化をもたらし、このリン酸化されたRoxRは、次いで、RoxR認識エレメントと推定されるものに結合することによって、本明細書に開示されるセルロース合成および分泌遺伝子の発現を調節することが予期される。一部の態様では、RoxS/RoxRクオラムセンシング系が、セルロース合成および分泌遺伝子の発現を制御するために使用される。一部の態様では、クオラムセンシング依存性RoxS/RoxRプロモーターが、セルロース合成および分泌遺伝子の発現を制御するために使用される。一部の態様では、roxクオラムセンシングにより調節されるプロモーターが、本明細書に記載される遺伝子の発現を制御するために使用される。一部の態様では、クオラムセンシング依存性RoxS/RosRプロモーターは、本明細書に開示される遺伝子をコードする核酸に作動可能に連結される。一部の態様では、プロモーターは、RoxR認識エレメントを含む。
【0133】
PhzR/PhzIクオラムセンシング系についても記載する。この系は、転写調節因子PhzRおよびAHLシンターゼPhzIを含む。一部の態様では、PhzR/PhzIクオラムセンシング系が、セルロース合成および分泌遺伝子の発現を制御するために使用される。一部の態様では、クオラムセンシング依存性PhzR/PhzIプロモーターが、セルロース合成および分泌遺伝子の発現を制御するために使用される。一部の態様では、phzクオラムセンシングにより調節されるプロモーターが、本明細書に記載される遺伝子の発現を制御するために使用される。一部の態様では、クオラムセンシング依存性PhzR/PhzIプロモーターは、本明細書に開示される遺伝子をコードする核酸に作動可能に連結される。
【0134】
さらなる態様では、クオラムセンシング系は、恒常的プロモーターの制御下にある。これは
図4および
図5に見ることができる。
一部の態様では、RhlR/RhlIクオラムセンシング系が、セルロース合成および分泌遺伝子の発現を制御するために使用される。一部の態様では、RhlR/RhlIオペロンが宿主細胞に挿入される。RhlI/R系では、rhlIがN-(ブタノイル)-ホモセリンラクトン(C4-HSL)の合成を導き、次いでこれがコグネイトRhlRと相互作用して、標的遺伝子の転写に影響を及ぼす。一部の態様では、クオラムセンシング依存性RhlR/RhlIプロモーターが、セルロース合成および分泌遺伝子の発現を制御するために使用される。一部の態様では、rhlクオラムセンシングにより調節されるプロモーターが、本明細書に記載される遺伝子の発現を制御するために使用される。一部の態様では、クオラムセンシング依存性RhlR/RhlIプロモーターは、本明細書に開示された遺伝子をコードする核酸に作動可能に連結される。
【0135】
一部の態様では、LuxI/LuxRクオラムセンシング系が、セルロース合成および分泌遺伝子の発現を制御するために使用される。一部の態様では、LuxI/LuxRオペロンは、宿主細胞に挿入される。一部の態様では、Lux/LuxRクオラムセンシング系が、セルロース合成および分泌遺伝子の発現を制御するために使用される。一部の態様では、クオラムセンシング依存性LuxI/LuxRプロモーターが、セルロース合成および分泌遺伝子の発現を制御するために使用される。一部の態様では、luxクオラムセンシングにより調節されるプロモーターが、本明細書に記載される遺伝子の発現を制御するために使用される。一部の態様では、クオラムセンシング依存性LuxI/LuxRプロモーターは、本明細書に開示された遺伝子をコードする核酸に作動可能に連結される。
【0136】
一部の態様では、AfmI/AfmRクオラムセンシング系が、セルロース合成および分泌遺伝子の発現を制御するために使用される。一部の態様では、AfmI/AfmRオペロンが宿主細胞に挿入される。一部の態様では、AfmI/AfmRクオラムセンシング系が、セルロース合成および分泌遺伝子の発現を制御するために使用される。一部の態様では、クオラムセンシング依存性AfmI/AfmRプロモーターが、セルロース合成および分泌遺伝子の発現を制御するために使用される。一部の態様では、afmクオラムセンシングにより調節されるプロモーターが、本明細書に記載される遺伝子の発現を制御するために使用される。一部の態様では、クオラムセンシング依存性AfmI/AfmRプロモーターは、本明細書に開示される遺伝子をコードする核酸に作動可能に連結される。
【0137】
理論に拘束されることは望まないが、クオラムセンシング系は、バイオセイフティー要素として作用する。本発明の遺伝子操作された微生物は、植物および細菌が有益な共生関係で生息することから、目的の植物の根圏環境に定着することが予期される。このバイオセイフティーシステムでは、セルロースの発現は、細菌濃度が高い場合にのみ達成される。したがって、本発明の遺伝子操作された微生物がその最適な根圏環境に存在しない場合には、セルロース遺伝子は発現されず、遺伝子操作された微生物は野生型株として作用すると考えられる。
【0138】
一部の態様では、異種セルロース合成および/または分泌遺伝子は、クオラムセンシング系によって調節される。一部の態様では、異種セルロース合成および/または分泌遺伝子は、クオラムセンシングにより調節されるプロモーターによって調節される。
【0139】
一部の態様では、クオラムセンシング系により調節されるプロモーターは、本発明の外因性遺伝子の1つ以上をコードする核酸に作動可能に連結され、前記遺伝子の発現はクオラムセンシング系によって調節される。一部の態様では、外因性遺伝子は、bcsA遺伝子;bcsB遺伝子;bcsC遺伝子;bcsD遺伝子;cmc遺伝子;ccp遺伝子;bgl遺伝子;pgm遺伝子;galU遺伝子;cdgオペロン;およびdgc遺伝子を含む。さらなる態様では、遺伝子は異種性である。
【0140】
組成物
一部の態様では、本発明の遺伝子修飾された微生物は、土壌に直接添加することができる接種物として植物に送達される。一部の態様では、本発明の遺伝子修飾された細菌は、土壌に直接添加することができる細菌接種物として植物に送達される。別の態様では、本発明の遺伝子修飾された微生物または細菌は、土壌に直接添加することができる液体製剤として植物に送達される。一部の態様では、微生物または細菌接種物は、泥炭ベースの製剤である。さらなる態様では、泥炭ベースの製剤は、畝間に蒔くための種子またはペレットをコーティングするために使用される。一部の態様では、本発明の遺伝子修飾された微生物または細菌は、マイクロビーズ中にて植物に送達される。さらなる態様では、マイクロビーズは、アルギン酸マイクロビーズである。これらのアルギン酸マイクロビーズは、微生物または細菌を封入して、それらを環境ストレスから保護し、土壌微生物がポリマーを分解するとそれらを徐々に土壌中に放出することが予期される。
【0141】
典型的には、本発明の遺伝子修飾された微生物または細菌は、バイオ肥料と組み合わせて適用することができる。本明細書で使用される場合、「バイオ肥料」は、宿主植物への一次栄養素の供給可能性を高めることによって植物成長を促進する、生きた微生物を含有する物質である。バイオ肥料は、窒素固定、リンの可溶化、および成長促進物質の合成による植物の成長促進によって、植物に栄養を加える。バイオ肥料は、生育土壌に対して有害な化学物質を含有しない。その例としては、根粒菌(Rhizobium)、アゾトバクター(Azotobacter)、アゾスピリラム(Azospirium)、およびラン藻(BGA)が挙げられる。他の例としては、パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)株P5またはシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)株P13などの株が挙げられ、これらは有機または無機リン酸源からリン酸塩を可溶化することが当技術分野で知られている。本発明の遺伝子修飾された微生物または細菌は、そのようなバイオ肥料と組み合わせて使用することができると予期される。一部の態様では、本発明の遺伝子修飾された微生物または細菌は、単一組成物中でバイオ肥料と組み合わせて土壌に投与することができる。一部の態様では、本発明の遺伝子修飾された微生物または細菌は、単一組成物中で複数のバイオ肥料と組み合わせて土壌に投与することができる。別の側面では、本発明の遺伝子修飾された微生物または細菌は、1つまたは複数のバイオ肥料と別々に投与される。
【0142】
一部の態様では、本発明の遺伝子修飾された微生物または細菌は、単一組成物中で肥料と組み合わせて植物に送達される。一部の態様では、本発明の遺伝子修飾された微生物または細菌は、単一組成物中で複数の肥料と組み合わせて植物に送達される。別の態様では、本発明の遺伝子修飾された微生物または細菌は、1つまたは複数の肥料と別々に投与される。本明細書で使用される場合、「肥料」は、植物の成長および収量を改善するために使用される天然または合成起源の任意の材料である。
【0143】
一部の態様では、本発明の組成物は、マイクロビーズ中にて植物に送達される。さらなる態様では、マイクロビーズは、アルギン酸マイクロビーズである。典型的には、アルギン酸塩は、様々な産業上の微生物学的目的のために微生物を封入するための、最も一般的なポリマー材料であるが、他の藻類多糖類を使用してもよい(Bashan,Yら、2002年)。アルギン酸塩調製物に伴う主な利点は、その無毒性(局所環境負荷への低減)、土壌中での分解性、土壌への細菌の緩徐放出、およびほぼ無限の貯蔵寿命である(Bashan Yら、2002年)。一部の態様では、マイクロビーズは、湿潤マイクロビーズとして適用される。一部の態様では、マイクロビーズは、乾燥マイクロビーズとして適用される。一部の態様では、マイクロビーズは、直径が100μm~500μmである。好ましい一態様では、マイクロビーズは、直径が100μm~200μmである。直径が100μmと500μmの間にあるマイクロビーズは、106 CFUビーズ-1を上回って保つことができると予期され、これは種子を接種するのに十分である。一部の態様では、本発明の組成物は、マクロビーズとして植物に送達される。さらなる態様では、マクロビーズは、アルギン酸マクロビーズである。アルギン酸マクロビーズは、マイクロビーズと同様に振る舞うことが予期される。一部の態様では、マクロビーズは、直径が1mm~5mmである。さらなる態様では、マクロビーズは、直径が1mm~3mmである。
【0144】
一部の態様では、微生物組成物または細菌組成物は、植物に栽植後に、ただし前記植物の収穫前に適用される。一部の態様では、微生物組成物または細菌組成物は、植物の栽植前に土壌に適用される。一部の態様では、植物は、作物植物である。一部の態様では、組成物は、畝間に蒔くための種子またはペレットをコーティングするために使用される。
【0145】
理論には拘束されないが、本発明による遺伝子操作された微生物、細菌、または根関連細菌は、種子への接種後に植物の根に定着し、植物成長の強化をもたらすことが予期される。以下のステップ:a)種子への接種、b)種子滲出液に応答した種子圏(種子の周囲の領域)での増殖、c)根表面への付着、およびd)発生中の根系の定着は、定着プロセスを概説する。
【0146】
一部の態様では、微生物または細菌は、乾燥調合物として貯蔵され、液体ブロスとして土壌に送達される。
方法
本発明の一側面では、植物根の周りの水分貯留を増加させる方法が提供される。本方法は、本発明の遺伝子操作された微生物、細菌、または根関連細菌を、植物の周囲の土壌に適用するステップを含む。一部の態様では、植物根の周りの水分貯留は、本発明の微生物を含まない同じ条件下にある同じ植物に比して増加する。一部の態様では、水分貯留の増加は、土壌含水量の増加によって測定することができる。土壌含水量は重量または容積ベースで計算することができる。例えば、重量含水率(θg)は、乾燥土壌の質量であり、土壌試料(mwet)を秤量し、資料を乾燥させて水分を除去した後に、乾燥土壌試料(mdry)を秤量して、次の式を使用することによって測定される:
【0147】
【0148】
または、土壌含水量を、土壌体積当たりの液体含水量である、体積含水量(θv)によって測定することもできる。体積は質量の密度に対する比(ρ)であり、次の式を使用して計算することができる:
【0149】
【0150】
一部の態様では、土壌含水量は、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍などに増加する。
本発明の別の側面は、農業における水消費を減少させる方法であって、本発明の遺伝子操作された微生物、細菌、または根関連細菌を、植物の周囲の土壌に適用するステップを含む方法を提供する。一部の態様では、農業における水消費の減少は、本発明の微生物を含まない同じ条件下にある同じ植物と比較して減少する。一部の態様では、農業に使用される水の量は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%などで減少する。
【0151】
植物
本発明の遺伝子修飾された微生物または細菌は、植物根系の周りに保持される水の量を増加させ、その結果、降雨減少および/または干魃の気候における作物の生存能力および収量を増加させることが予期される。保持される水の増加は、本発明の細菌を含まない同じ条件下(例えば、土壌)にある同じ植物に比してのものである。
【0152】
本発明の一部の態様では、植物は、穀類植物、トウモロコシ、イネ、コムギ、ダイズ、サトウキビ、トウモロコシ、ジャガイモ、トマト、タバコ、およびキャッサバである。さらなる態様では、植物は、穀類植物、トウモロコシ、イネ、コムギ、またはダイズである。
【0153】
本発明の一側面は、本発明の遺伝子操作された微生物、細菌または根関連細菌を含む植物を提供する。一部の態様では、植物は、本発明の単離された遺伝子操作された根関連細菌、本発明の遺伝子操作された根関連細菌の集団、または本発明の細菌組成物を含む。一部の態様では、遺伝子操作された根関連細菌、単離された遺伝子操作された根関連細菌、または遺伝子操作された根関連細菌の集団は、植物根に付随する。一部の態様では、遺伝子操作された根関連細菌は、植物根上で生育する。一部の態様では、遺伝子操作された微生物、細菌、または根関連細菌は、植物根の周囲の土壌中で生育する。
【0154】
炭素捕捉
本発明は、炭素を捕捉する方法であって、遺伝子操作された微生物を植物根の周囲の土壌に適用するステップを含み、微生物が、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾されており、炭素が微生物によってセルロースに変換される方法を提供する。
【0155】
一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、本発明による微生物、本発明の単離された遺伝子操作された微生物、本発明の遺伝子操作された微生物の集団、または本発明の組成物である。
【0156】
一部の態様では、炭素は、植物から分泌される炭水化物として吸収され、炭水化物は、微生物によってセルロースに変換される。一部の態様では、セルロースの生産は、植物根の周りの水分貯留を増加させる。
【0157】
一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、細菌細胞、真菌細胞または藻類細胞から選択される。一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、細菌である。さらなる態様では、遺伝子操作された微生物は、根関連細菌である。
【0158】
本発明による遺伝子操作された微生物、細菌または根関連細菌は、植物根の周りに炭素に富むセルロースを排出する。この分泌されたセルロースは、多くの容積の水を貯蔵するだけでなく、後述するように、かなりの量の炭素を隔離する。
【0159】
合成プロセスにおいて、微生物または細菌の体内で生成されたグルコース鎖は、細胞膜上に存在する小さな穴を通して押し出される。グルコース鎖は微小繊維を形成し、それはさらに凝集してセルロースリボンを形成する。これらのリボンは、繊維の間に多くの隙間があるウェブ状のネットワーク構造を生成する。バクテリアセルロースの十分に分離したナノ繊維は、表面積の拡大および高度に多孔性のマトリックスを生み出す。基本的な繊維構造はβ-1→4グルカン鎖からなり、分子式は(C6H10O5)nである。この鎖は水素結合でまとめられる。細菌のセルロース微小繊維は、植物の繊維の約100分の1の小ささである。バクテリアセルロースの繊維ネットワークは、整って配列された三次元ナノファイバーからなり、大きな表面積および高度の多孔性を有するヒドロゲルフィルムの形成をもたらす。植物セルロースのようにリグニンまたはヘミセルロースと結合していないことから、バクテリアセルロースはより純粋である。さらに、三次元ナノ繊維ネットワークは高い吸水能力および引っ張り強度を有する。
【0160】
植物の光合成の間に、大気中の二酸化炭素が吸収されて、炭水化物に変換されることが知られている。これらの炭水化物は次いで、根の滲出液中に排出される。そのような炭水化物としては、グルコース、フルクトース、アラビノースなどを含む多くの糖が挙げられる。これらの炭水化物は、土壌中での微生物生息のための炭素源として必須であり、細胞の増殖および成長を推進すると考えられる。植物において生産された糖のおよそ30%は周囲の土壌に分泌され、植物のマイクロバイオームに供給されると考えられている。
【0161】
植物の周囲の土壌中に見られる天然の細菌は、気候変動を遅らせる/減少させるための実質的な隔離事象をもたらさない。
本発明者は、驚いたことに、本発明による遺伝子操作された微生物、細菌および/または根関連細菌が、この排出されたグルコースを使用して増殖するだけでなく、それらが、これらの糖を代謝してバクテリアセルロースとして排出するように有利に操作されることを見出した。セルロースは、β-1,4-グリコシド結合および分子内水素結合によって構造的に形成されたグルコース分子で構成される。植物根の周囲の土壌中に捕捉されたこの炭素は、植物の健康状態の向上を直接的にもたらす(例えば、植物根の周りに水を保持することによって)。その結果、植物はより多くの二酸化炭素を吸収することができるようになり、このサイクルが進む。バクテリアセルロースは数カ月かけて分解可能であるので、炭素の隔離は、植物および微生物がより強く成長して、炭素を土壌中に維持するために使用され得る。これは、土壌から全く逸脱することのない循環的事象を形成すると考えられる。
【0162】
一部の態様では、セルロース生産の増加は、植物生存能力の増加をもたらす。この植物の生存能力の増加は、植物による大気中の炭素捕捉の増加および糖の生成をもたらし、この糖がセルロースに変換されて土壌中に炭素を隔離することが予期される。
【0163】
一部の態様では、微生物または細菌によるセルロースの生産は、周囲の土壌における炭素隔離の増加をもたらす。一部の態様では、捕捉される炭素は、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍などに増加する。捕捉される炭素の増加は、本発明の微生物を含まない同じ条件下にある同じ植物に比してのものである。一部の態様では、炭素は、大気中の炭素である。
【0164】
一部の態様では、植物から分泌される炭水化物は糖である。さらなる態様では、糖は、グルコース、フルクトース、および/またはアラビノースである。
【0165】
使用
一部の側面では、本発明は、遺伝子修飾された微生物の農業における使用であって、微生物が、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾されている、使用を提供する。
【0166】
別の側面では、本発明は、植物根の周りの水分貯留を増加させるための遺伝子修飾された微生物の使用であって、微生物が、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾されている、使用を提供する。
【0167】
別の側面では、本発明は、遺伝子修飾された微生物の炭素捕捉における使用であって、微生物が、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾されており、炭素が微生物によってセルロースに変換される使用を提供する。
【0168】
一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、本発明による微生物、本発明の単離された遺伝子操作された微生物、本発明の遺伝子操作された微生物の集団、または本発明の組成物である。
【0169】
一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、細菌細胞、真菌細胞または藻類細胞から選択される。一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、細菌である。さらなる態様では、遺伝子操作された微生物は、根関連細菌である。
【0170】
一部の態様では、微生物は、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾され、ここで遺伝子修飾された細菌は、bcsオペロンを含む外因性核酸によって修飾され、bcsオペロンは、bcsA遺伝子、bcsB遺伝子、bcsC遺伝子、およびbcsD遺伝子を含む。さらなる態様では、外因性核酸は、ccpAx遺伝子をさらに含む。一部の態様では、外因性核酸は、cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、およびbglAx遺伝子をさらに含む。さらなる態様では、遺伝子は異種性である。
【0171】
一部の態様では、微生物は、1つまたは複数の異種遺伝子によって遺伝子修飾され、ここで遺伝子は、以下のものから選択される:bcsA遺伝子、bcsB遺伝子、bcsC遺伝子、bcsD遺伝子、cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、およびbglAx遺伝子。一部の態様では、遺伝子はそれぞれ、K.キシリナスから単離される。一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、細菌であり、任意選択で、根関連細菌である。一部の態様では、遺伝子操作された微生物は、植物成長促進性根圏細菌である。
【0172】
前述の説明、または以下の番号付きの態様もしくは特許請求の範囲、または添付図面において開示される特徴は、それらの特定の形態で、または開示された機能を遂行するための手段、または開示された結果を得るための方法もしくはプロセスの観点から適宜表現されているが、それらは、別々に、またはそのような特徴の任意の組合せで、本発明をその多様な形態で実現するために利用することができる。
【0173】
本発明を、上記の例示的な態様に関連して説明してきたが、本開示が与えられると、当業者には多くの同等の修正および変形が明らかになるであろう。したがって、上記の本発明の例示的な態様は、例示的なものであり、限定的なものではないと考えられる。本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、記載された態様に対して様々な変更を行うことができる。
【0174】
誤解を避けるために記すと、本明細書で提供される理論的説明は、読者の理解を向上させる目的で提供されるものである。本発明者らは、これらの理論的説明のいずれにも拘束されることを望まない。
【0175】
本明細書で使用されるどのセクション見出しも、まとめる上での目的のためだけのものであり、記載される主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
以下の特許請求の範囲を含む本明細書の全体を通じて、文脈上別に要求されない限り、「含む(comprise)」および「含む(include)」という語、ならびに「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、および「含む(including)」などの変形物は、記載された整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群を含むことを意味するが、他の整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群を除外することは意味しないと理解される。
【0176】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明確に他を指示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。範囲は、本明細書では、「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値までと表現することができる。そのような範囲が表現される場合には、別の態様は、1つの特定の値から、および/または他の特定の値までを含む。同様に、値が近似値として表現される場合には、先行する「約」の使用によって、特定の値が別の態様を形成することが理解されるであろう。数値に関して、「約」という用語は任意選択的であり、例えば+/-10%を意味する。
【0177】
番号付き態様
1.セルロースを生産するための遺伝子操作された微生物であって、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾されている微生物。
2.セルロースがバクテリアセルロースである、態様1に記載の遺伝子操作された微生物。
3.セルロース生産が、遺伝子修飾された微生物において、参照微生物と比較して増加している、態様1または態様2に記載の遺伝子操作された微生物。
4.遺伝子修飾された微生物が、セルロースシンターゼ複合体からの少なくとも1つのタンパク質をコードする外因性核酸によって修飾されている、前記の態様のいずれか1つに記載の遺伝子操作された微生物。
5.外因性核酸がbcsオペロンを含む、前記の態様のいずれか1つに記載の遺伝子操作された微生物。
6.外因性核酸が、以下の遺伝子:
a)cmcAx遺伝子;
b)ccpAx遺伝子;
c)bglAx遺伝子;
d)pgm遺伝子;
e)galU遺伝子;
f)cdgオペロン;および/もしくは
g)dgc遺伝子
またはオペロンのうちの少なくとも1つをさらに含む、態様5に記載の遺伝子操作された微生物。
7.外因性核酸が、cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、およびbglAx遺伝子をさらに含む、態様5に記載の遺伝子操作された微生物。
8.bcsオペロン、cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、bglAx遺伝子、pgm遺伝子、galU遺伝子、cdgオペロン、および/またはdgc遺伝子が、K.キシリナスから単離されたものである、態様5~7のいずれか1つに記載の遺伝子操作された微生物。
9.微生物が細菌であり、任意選択で、シュードモナス・フルオレッセンスである、前記の態様のいずれか1つに記載の遺伝子操作された微生物。
10.セルロースが細胞外に分泌される、前記の態様のいずれか1つに記載の遺伝子操作された微生物。
11.分泌されたセルロースが、細胞外にネットワークを形成する、態様10に記載の遺伝子操作された微生物。
12.分泌されたセルロースネットワークが、植物根の周りの水分貯留を増加させる、態様11に記載の遺伝子操作された微生物。
13.植物が、穀類植物、トウモロコシ、イネ、コムギ、またはダイズである、態様12に記載の遺伝子操作された微生物。
14.微生物におけるセルロースの生産を、参照微生物と比較して増加させる方法であって、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように微生物を修飾するステップを含む方法。
15.微生物が、セルロースシンターゼ複合体からの少なくとも1つのタンパク質をコードする外因性核酸によって修飾される、態様14に記載のセルロースの生産を増加させる方法。
16.bcsオペロンと、cmcAx遺伝子、ccpAx遺伝子、bglAx遺伝子、pgm遺伝子、galU遺伝子、cdgオペロン、およびdgc遺伝子のうちの少なくとも1つとを含む外因性核酸を含むベクター。
17.セルロースを生産するための遺伝子操作された微生物を作製する方法であって、以下のステップ:
a)微生物を単離するステップ;および
b)bcsA遺伝子;bcsB遺伝子;bcsC遺伝子;bcsD遺伝子;cmcAx遺伝子;ccpAx遺伝子;bglAx遺伝子;pgm遺伝子;galU遺伝子;cdgオペロン;およびdgc遺伝子を含む群から選択される少なくとも1つの遺伝子を含む外因性核酸を含むベクターを、微生物に導入するステップ
を含む、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように微生物を修飾するステップを含む方法。
18.態様17の方法によって得ることができる、遺伝子操作された微生物。
19.態様1~13または態様18のいずれか1つに記載の、単離された遺伝子操作された微生物。
20.態様1~13または態様18のいずれか1つに記載の遺伝子操作された微生物を含む集団。
21.態様20に記載の遺伝子操作された集団を含む組成物。
22.組成物が、肥料および/またはバイオ肥料をさらに含む、態様21に記載の組成物。
23.植物根の周りの水分貯留を増加させる方法であって、遺伝子操作された微生物を、植物根の周辺の土壌に適用するステップを含み、微生物が、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾されている、方法。
24.微生物が、態様1~13または態様18のいずれか1つに記載の遺伝子操作された微生物、態様19に記載の単離された遺伝子操作された微生物、態様20に記載の遺伝子操作された微生物の集団、または態様21もしくは22に記載の組成物から選択される、態様23に記載の方法。
25.農業における水消費を減少させる方法であって、遺伝子操作された微生物を、植物根の周囲の土壌に適用するステップを含み、微生物が、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾されている、方法。
26.微生物が、態様1~13または態様18のいずれか1つに記載の遺伝子操作された微生物、態様19に記載の単離された遺伝子操作された微生物、態様20に記載の遺伝子操作された微生物の集団、または態様21もしくは22に記載の組成物から選択される、態様25に記載の方法。
27.態様1~13または態様18のいずれか1つに記載の遺伝子操作された微生物、態様19に記載の単離された遺伝子操作された微生物、態様20に記載の遺伝子操作された微生物の集団、または態様21もしくは22に記載の組成物を含む植物であって、遺伝子操作された微生物、単離された遺伝子操作された微生物、または遺伝子操作された微生物の集団が植物根に付随する、植物。
28.炭素を捕捉する方法であって、遺伝子操作された微生物を、植物根の周囲の土壌に適用するステップを含み、微生物が、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾されており、炭素が微生物によってセルロースに変換される、方法。
29.遺伝子操作された微生物が、態様1~13または態様18のいずれか1つに記載の微生物、態様19に記載の単離された遺伝子操作された微生物、態様20に記載の遺伝子操作された微生物の集団、または態様21もしくは22に記載の組成物である、態様28に記載の方法。
30.炭素が、植物から分泌される炭水化物として吸収され、炭水化物が微生物によってセルロースに変換される、態様28または態様29に記載の方法。
31.セルロースの生産が、植物根の周りの水分貯留の増加をもたらす、態様28~30のいずれか1つに記載の方法。
32.遺伝子修飾された微生物の農業における使用であって、微生物が、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾されている、使用。
33.植物根の周りの水分貯留を増加させるための、遺伝子修飾された微生物の使用であって、微生物が、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾されている、使用。
34.遺伝子修飾された微生物の炭素捕捉における使用であって、微生物が、セルロースの合成および/または分泌に関与する少なくとも1つのタンパク質を過剰発現するように遺伝子修飾されており、炭素が微生物によってセルロースに変換される、使用。
【実施例】
【0178】
実施例1
根関連細菌の操作
1.細菌株およびプラスミド
コマガタエイバクター・キシリナスDSM 2325は、DSMZ(Braunschweig、Germany)から得られる。例示的な細菌株およびプラスミドは表1に列記される。
【0179】
K.キシリナスは、発酵中に酢酸を生産するグラム陰性好気性細菌の一群である酢酸菌のメンバーである。K.キシリナスは、セルロースも生産するという点で、この群の中で例外的である。
【0180】
2.遺伝子操作
遺伝子操作の目的で、大腸菌(E.coli)TOP10細胞を使用する。大腸菌細胞を、ルリア-ベルターニ(LB)培地(Invitrogen、Carlsbad、CA)中で、37℃、225rpmのオービタル振盪下にて培養する。プラスミドの維持のために必要な場合には、LBに抗生物質(50μg/mlアンピシリン)を添加する。すべてのDNA操作は、標準プロトコール(Sambrook,J.、2001年)に従って実施される。
【0181】
シュードモナス・フルオレッセンス株SBW25(Rainey and Bailey、1996年)を、細菌生合成セルロース装置の挿入のための宿主として利用する。以前に示され(Rainey and Bailey、1996年)、方法が(BAILEYら、1995年)によって示されているように、SBW25の6.6Mbp染色体上の非必須遺伝子座-6-を選択する。-6-遺伝子座に隣接する2つの断片(約200bp)を、P.フルオレッセンスのゲノムDNAを用いるPCRを実施することによって増幅する;Promega社(Madison、WI)のゲノムDNA抽出キットを使用して、ゲノムDNAを調製する。上流および下流の隣接断片をPCRによって増幅する。K.キシリナス由来の-6-遺伝子座、bcsオペロン、pgm(ホスホグルコムターゼ)、galU(UTP-グルコース-1-リン酸)、cdgオペロン、およびdgc独立型遺伝子(表2)の上流および下流領域(Jangら、2019年)を、In-fusion HDクローニングキット(Clontech laboratories,Inc.、mountain view、CA)を使用して、pEX18ApベクターのEcoRI制限酵素部位にライゲートして、pEX-bcsベクターを得る。このプラスミドを、修飾pEX-bcsプラスミドの増幅および同定のために、大腸菌TOP10細胞に形質転換導入する。次いで、精製されたプラスミドを、bcs細菌生合成セルロース装置の発現のために、エレクトロポレーションによって、P.フルオレッセンスにおける-6-遺伝子座染色体部位に導入する。
【0182】
3.操作された株の増殖条件
P.フルオレッセンスにおける細菌生合成セルロース装置の発現が成功したことを視覚的に確認するために、以下の条件を使用する。これに続いて、モデル系におけるセルロース生産の最適化のために温室試験および圃場試験を使用する。3.0g/Lの肉エキス、10.0g/Lのペプトン(カゼインの酵素消化物)、5.0g/Lの塩化ナトリウム、pH 7を含有するフラスコを使用するすべてのセルロース合成実験に、普通ブイヨン培地を使用する。細胞を30℃の静置条件下で5日間インキュベートする。培地には最適化のために様々な炭水化物を添加する。このプロトコールのルーチンでの実験最適化を実行することで、特定の圃場条件に従って最良の結果を得るために特定のパラメーターを調整することができる。
【0183】
【0184】
【0185】
実施例2
遺伝子修飾された細菌の適用
遺伝子修飾された細菌を、現在市販されているバイオ肥料に添加される栄養源を含有する生分解性マイクロビーズ(マイクロボール)中にて送達する。
【0186】
本実施例では、アルギン酸マイクロビーズを使用して、本発明の遺伝子修飾された細菌を植物(または種子)に接種する方法を記載する。これらのアルギン酸マイクロビーズは、細菌を封入して、それらを環境ストレスから保護し、土壌微生物がポリマーを分解するとそれらを徐々に土壌中に放出する。原材料であるオオウキモ(Macrocystis pyrifera)は、太平洋に非常に豊富な再生可能海洋資源である。
【0187】
1.マイクロビーズ形成
マイクロビーズは、Bashanら、2002年に記載されているようなデバイス、または任意の他の好適なデバイスを使用して製造することができる。典型的には、製造されるマイクロビーズは、直径がおよそ100から200μmである。本発明の細菌を上記のように培養し、次いで、細菌懸濁液を2%アルギン酸ナトリウム(CICIMAR、La Paz、Mexico)と混合し、任意選択で、Caを含有しない脱脂乳もアルギン酸-細菌懸濁液に添加して、より生分解性であるビーズを製造してもよい。次いで、この懸濁液を市販の空気圧縮機を用いて10~15psiで加圧する。次いで、細菌懸濁液を直径(daimeter)222μmのキャピラリー流出口を通して強制的に通過させて、微小液滴の微細スプレーを生じさせる。次いで、このミストを、0.1M CaCl2を含有し、40rpmで回転させるステンレス鋼フラスコを使用して収集して、マイクロビーズを固化させる。次いで、マイクロビーズをCaCl2溶液中で30分間硬化させる。次いで、湿潤マイクロビーズをCaCl2溶液から抽出し、次いで、500mlの生理食塩水(0.85%(w/v)NaCl)中で無菌条件下にて4回すすぐ。任意選択で、細菌増殖を可能にするために、マイクロビーズを(増殖条件下で)細菌培養培地に移すこともできる。次いで、マイクロビーズを、ワットマン濾紙を使用する濾過によって懸濁液から分離し、500mlの生理食塩水で3回すすぐ。
【0188】
2.乾燥手順
任意選択で、マイクロビーズを、土壌、植物根、および/または種子に適用する前に乾燥させてもよい。この乾燥方法では、10gのマイクロビーズをペトリ皿の中の濾紙上に薄層として置き、38±1℃で48時間乾燥させる。次いで、乾燥マイクロビーズを、使用時まで、シリカゲルを入れた密封容器に収集しておくことができる。または、乾燥マイクロビーズを、標準的な凍結乾燥によって調製してもよい。
次いで、遺伝子修飾された根関連細菌を含む湿潤および/または乾燥マイクロビーズを、土壌、植物根、および/または種子に適用する。
【0189】
実施例3
根関連細菌の操作
1.細菌株とプラスミド
本方法では、コマガタエイバクター・キシリナスCGMCC 2955株およびMini CTX1ベクター、ならびに望ましくない配列を取り除くためのpFLP2除去ベクターを使用する。
【0190】
2.遺伝子操作
前と同じように、遺伝子操作の目的で、大腸菌TOP10細胞を使用する。大腸菌細胞を、ルリア-ベルターニ(LB)培地(Invitrogen、Carlsbad、CA)中で、37℃、225rpmのオービタル振盪下にて培養する。プラスミドの維持のために必要な場合には、LBに抗生物質(50μg/mlアンピシリン)を添加する。すべてのDNA操作は、標準プロトコール(Sambrook,J.、2001年)に従って実施される。
【0191】
シュードモナス株CHA0、F113、FW300 N2E2およびPf-5を、細菌生合成セルロース装置の挿入のための宿主として利用する。これらの株のゲノムにおける標的挿入部位は、attB部位(配列番号1:TGAGTTCGAATCTCACCGCCTCCGCCATAT)である。セルロース合成遺伝子(cmcAX、ccpAX、BcsA、BcsA、BcsC、BcsD、BglAX)を、Mini CTX1ベクターおよびpFLP2(Flpリコンビナーゼ)ベクターを使用して挿入する。本実施例では、GFPもレポーター遺伝子として挿入され、これは
図3に見ることができる。また、セルロースシンターゼ遺伝子発現を制御するプロモーターを調節するために、クオラムセンシングオペロンをシュードモナス株に加えることもできる(
図4参照)。クオラムセンシングオペロン、例えば、PhzI/PhzRオペロンは、恒常的プロモーターの制御下にある。
【0192】
3.方法
コンジュゲーション
レシピエントシュードモナス株、ならびに大腸菌ドナー株およびヘルパー株を、3mlのLB(抗生物質を適宜含む)中で、37℃で回転させながら約8時間増殖させた。各培養物の1ミリリットルを、微量遠心管中にて8,000×gで2分間遠心分離した。培養上清を吸引し、細胞ペレットを1mlのLB中に再懸濁させて、細胞懸濁液を遠心分離した。吸引、再懸濁、および遠心分離を繰り返した。上清を吸引して、細胞ペレットを35μlのLB中に再懸濁させた。細胞懸濁液をLB寒天上にスポットし、37℃で一晩インキュベートした。細胞をこすり取って、LB中に再懸濁させ、10倍で連続希釈を行い、各希釈物の100μlを、抗生物質(ゲンタマイシンまたはテトラサイクリン)を含むボーゲル-ボナー最小培地(VBMM;10mM三塩基性クエン酸ナトリウム、9.5mMクエン酸、57mMリン酸カリウム二塩基、17mMリン酸アンモニウムナトリウム、1mM硫酸マグネシウム、0.1mM塩化カルシウム、pH 7.0)寒天上に広げて、37℃で一晩インキュベートした。miniTn7の染色体組込みは、オリゴヌクレオチドプライマーを使用したPCRによって確認された。
【0193】
エレクトロポレーション
レシピエントのシュードモナス株を、37℃で回転させながら、2連で、3mlのLB中で約8時間増殖させた。次いで、この2つの3ml培養物をプールし、4つの微量遠心管に分注する。培養物を8,000×gで2分間遠心分離し、次いで各細胞ペレットを1mlの300mMスクロース中に再懸濁させて、2回遠心分離する。次いで、4つの細胞ペレットを再懸濁させ、プールして、合計300μlの300mMスクロースとする。100マイクロリットルの各懸濁液を、1mmギャップ幅のエレクトロポレーション用キュベットに移す。100ナノグラムのpFLP2プラスミドを各懸濁液に添加する。細胞のエレクトロポレーションを、Eppendorfエレクトロポレーター2510において1,800Vで行う。900マイクロリットルのLBを各エレクトロポレーション物に添加する。次いで、回収培養物を37℃で回転させながら1時間インキュベートする。培養物を10倍で連続希釈し、抗生物質(カルベニシリン)を含むLB寒天培地上に広げて、37℃で一晩インキュベートすることができる。
【0194】
Flp-FRT組換えによる抗生物質耐性カセットの除去
FRT組換え部位に隣接した染色体ゲンタマイシン耐性カセットを含有するレシピエントシュードモナス株に対して、pFLP2プラスミドによるエレクトロポレーションを行った。Flp組換えによるゲンタマイシン耐性カセットの除去についてスクリーニングするために、形質転換体を、カルベニシリンを含むLBおよびゲンタマイシンを含むLB上で画線培養した。カルベニシリンを含むLBから5%スクロースを含むLBまでに対して、ゲンタマイシン感受性形質転換体を画線培養した。pFLP2プラスミドを有する株はスクロース感受性であり、一方、プラスミドを喪失した株はスクロース耐性である。ゲンタマイシン耐性カセットの除去およびpFLP2プラスミドの喪失を確認するために、スクロース耐性コロニーを、LB、ゲンタマイシンを含むLB、およびカルベニシリンを含むLB上に画線培養した。
【0195】
実施例4
遺伝子修飾されたシュードモナス・フルオレッセンスの試験のためのプロトコール
1.実験デザイン
トウモロコシ(栽培品種Pioneer P7892)を、種子を使用して24セルモジュールトレイで栽培し、次いで、3~4葉期の時点で、同じ嵩密度で詰めた同じ重量の市販の砂壌土を含有する最大10Lのポットに、類似したサイズの植物を移植する。ポットに、9種類の接種処理物のうちのいずれか1つを接種する(表3)。対照接種物は、細菌を含まない同体積の増殖培地または他の培地を使用したモック接種物からなる。
【0196】
各接種処理物について、5つずつのポット反復物を使用する。これらを、温室栽培床の無作為化ブロックデザインで5つのブロック(9種の処理物のそれぞれが各ブロックに示される)に配置することで、分散分析(ANOVA)によってデータ解析を行うことを可能にする。環境データを、温室制御システムに取り込む(温度、相対湿度、日照、設定値)。
【0197】
ポットには、以下の2つの処理に従って毎日手で水を与え、葉が8~10枚に達した時点から、またはポット中の利用可能な栄養素を明らかに使い果たした時点から、ホーグランド液を週2回供給する。供給溶液は、圃場容水量に達するまでの灌漑処理に代わるものであり、供給量はすべての処理で同じであり、圃場容水量に達するまで水を補給する。害虫および病害は適切な殺菌剤および殺虫剤によって防除し得る。
【0198】
土壌水分貯留の予想される増加が植物の成長の増加につながるかどうかを決定するために、試験を、人工的な降雨環境での限られた給水条件下で実施する。保水能力の増加は、水が制限されない限り植物の成長に影響を与えないと考えられるため、「十分に水を与えた」対照処理と水が制限される処理とを比較する。
【0199】
1.毎日十分に水を与える。植物に、水が成長を制限することがないように、毎日または隔日に圃場容水量まで水を与える。水が制限されない場合、土壌水分貯留の増加の機序による接種物の効果は予期されない。他の機序による影響が認められる可能性はある。
【0200】
2.圃場容水量と成長を制限する土壌水分欠乏の間のサイクル。植物が完全に定着し、移植後にさらに2~3枚の葉の成長を示した後、それらに圃場容水量まで水を与え、次いで、対照植物が水不足の徴候(萎凋、縮葉病、十分に水を与えた植物と比較した気孔コンダクタンスの低下)を示すまで蒸散水損失によって乾燥させる。次いで、それらに再び圃場容水量まで水を与え、サイクルを繰り返す。保水能力の高いポットは、利用可能な水が枯渇するまでにより長く成長を維持するので、より長い非制限成長期間が予想される(成長速度の増加は蒸散も増加させるので、最終的には成長の増加は保水能力の増加と均衡することに留意されたい)。
【0201】
ポットを、幅1mの栽培床に30cm間隔で2列に並べて配置する。ガラス温室を昼夜25/20℃まで加熱し、昼夜16/8時間のサイクルで高圧ナトリウムランプによる補助照明を行う。トウモロコシの最適生育温度は、25℃(幅のある最適値では21℃~27℃)である。
【0202】
10回の反復試験を行う「シュードモナスなし」処理を除いて(すべての系統をこのベースラインと比較するため)、すべての処理について5つの反復試験用ポットを使用する。2通りの灌漑処理がある。
【0203】
ポットの総数=[(5回の反復試験×8種の接種)+(10回の反復試験×1つの接種)]×2通りの処理=100
栽培床面積=1×6m2および1×9m2(30cm×100、幅1mの栽培床に2列、2つまたは3つの「ブロック」を含有する栽培床に分割)。エッジ効果を減らすために、各列の端にガードプラント(計8つの植物)を設置する。
【0204】
【0205】
2.測定
保水能力:
保水能力は、ポットから採取した土壌および根を浸漬して土壌と根を混合し、試料を採取して重量含水率(乾燥前後の重量)を推定して、続いて漏斗に詰める、漏斗法を用いて測定する。漏斗の上部に水を加え、適用した水の質量および漏斗を通って流れる水の質量に基づいて、保持された水の量を記録する。これは、圃場容水量(自由排水後に保持される水)とオーブン乾燥土壌との間の総保水能力を算出することを可能にする迅速な方法である。この方法は、永久萎凋点とオーブン乾燥の間にある、土壌との結合が強固すぎるために植物には利用できないと考えられる水分を含む。または、土壌の水ポテンシャル(メガパスカル、MPa単位)を重量含水率(g g-1)に対してプロットした水分放出曲線を算出することもできる。後者の方法では、圃場容水量(-0.01MPa)と永久萎凋点(土壌の水ポテンシャル-1.4MPa)の間に保持される重量水分、すなわち植物が利用できる水分のみの算出が可能となる。ポット当たりの1回の測定=100。
【0206】
Fisher Scientific社から購入したセルロース粉末を様々な量で混合した土壌を使用することにより、漏斗法が、土壌セルロース含量に反応することを確認する。約20回の測定。
【0207】
根圏の微生物定着:
容水量実験による浸漬された土壌/根の最大10gの試料(収穫時のポット当たり1つの試料)を水または緩衝液と混合し、次いで濾過する。連続希釈液を適当な選択培地上に平板培養し、次いで25℃で48時間インキュベートする。コロニー形成単位(cfus)を計数し、cfuml-1を計算する。陽性対照は、(ポット接種時に行われる)抽出の直前に非接種土壌の試料に適用した接種物からなる。
【0208】
処理当たり3つの反復試験物および3つの連続希釈物+対照=(3つの反復試験×9種の接種×2通りの潅漑処理×3通りの希釈)+(8つの対照接種×3つの反復試験×3通りの希釈)=162+72=234プレート。
【0209】
土壌の炭素含有量:
収穫時に根圏から最大20gの土壌試料を採取し(容水量実験のために土壌/根を浸軟させる前に)、2mmでふるい分けることによって根の断片を取り除く。全有機炭素(TOC)を、炭酸塩を除去するために塩酸処理した後に、元素分析計によって測定する。
【0210】
ポット当たり1つの試料=100試料。セルロースを混ぜ合わせた土壌(容水量実験で得られたもの)についても陽性対照分析を行う=20試料。
【0211】
植物の健康状態:
a)植物成長の間に、植物の高さおよび葉の数を、農学的手法によって定義された方法を使用して毎週測定する。
【0212】
手短に述べると、高さは「土壌表面から、先端が下を向いている最上部の葉のアーチの最高点まで」と定義される。葉の数を、3通りの迅速な方法を使用して記録する:
1.輪生から生じた葉先の数。
【0213】
2.葉の数、これは最も低い葉から始まり、アーチ状になった最後の葉(葉の先端が下を向いている)で終わる。
3.頸領が認められる葉の数(すなわち、輪生から生じた葉)。
【0214】
b)葉のクロロフィル含有量を、標準葉(例えば、最上部のアーチ状の葉、1枚の葉当たり2つの読み取り)で、1週間間隔で葉クロロフィル計量器(CCM-200)を用いて測定し、標準曲線(アセトン抽出および分光光度計)を用いて検証する。3週間×200回の測定=600。
【0215】
c)植物の収穫時に、地上の全物質を切り刻んで袋に入れ、完全に乾燥するまで80℃で乾燥させる。植物当たりの乾燥重量を記録する(100回の測定)。
植物のミネラル含有量を、標準的な方法を用いて測定してもよい。
【0216】
参考文献
本発明および本発明が属する技術水準をより十分に説明および開示するために、多数の刊行物が上記に引用された。これらの参考文献の完全な引用を以下に提供する。これらの各参考文献の全体が、本明細書に組み入れられる。
BAILEY, M. J. et al. (1995) ‘Site directed chromosomal marking of a fluorescent pseudomonad isolated from the phytosphere of sugar beet; stability and potential for marker gene transfer.’, Molecular Ecology, 4(6), pp. 755-764. doi: 10.1111/j.1365-294X.1995.tb00276.x.
Bashan, Y., et al. (2002) ‘Alginate microbeads as inoculant carriers for plant growth-promoting bacteria’. Biol Fertil Soils, 35, 359-368.
Baynham, P. J. et al. (2006) ‘The Pseudomonas aeruginosa ribbon-helix-helix DNA-binding protein AlgZ (AmrZ) controls twitching motility and biogenesis of type IV pili’, Journal of Bacteriology, 188(1), pp. 132-140. doi: 10.1128/JB.188.1.132-140.2006.
Brautaset, T. et al. (1994) ‘Nucleotide sequence and expression analysis of the Acetobacter xylinum phosphoglucomutase gene’, Microbiology, 140(5), pp. 1183-1188. doi: 10.1099/13500872-140-5-1183.
Buldum, G. et al. (2018). ‘Recombinant biosynthesis of bacterial cellulose in genetically modified Escherichia coli’. Bioprocess Biosyst Eng; 41(2): 265-279. doi: 0.1007/s00449-017-1864-1.
Florea, M. et al. (2016). ‘Engineering control of bacterial cellulose production using a genetic toolkit and a new cellulose producing strain’. PNAS; 113(24): E3431-40.
Jang, W. D. et al. (2019) ‘Genomic and metabolic analysis of Komagataeibacter xylinus DSM 2325 producing bacterial cellulose nanofiber ’, Biotechnology and Bioengineering, (July), pp. 1-10. doi: 10.1002/bit.27150.
Jozala, A. F., et al. (2014) ‘Bacterial cellulose production by Gluconacetobacter xylinus by employing alternative culture media’. Appl Microbiol Biotechnol; 99(3): 1181-90. Doi: 1007/s00253-014-6232-3.
Kawano, S., et al. (2008). ‘Regulation of endoglucanase gene (cmcax) expression in Acetobacter xylinum’. J. Biosci. Bioeng. 106, 88-94. doi: 10.1263/jbb.106.88
Klemm, D. et al. (2001) ‘Bacterial synthesized cellulose - artificial blood vessels for microsurgery’, Progress in Polymer Science, 26(9), pp. 1561-1603. doi: 10.1016/S0079-6700(01)00021-1.
Koo, H. M. et al. (2000) ‘Cloning, sequencing, and expression of UDP-glucose pyrophosphorylase gene from acetobacter xylinum BRC5’, Bioscience, Biotechnology and Biochemistry, 64(3), pp. 523-529. doi: 10.1271/bbb.64.523.
Meyers A, Furtmann C, Gesing K, Tozakidis IEP, Jose J. 2019. Cell density-dependent auto-inducible promoters for expression of recombinant proteins in Pseudomonas putida. Microb Biotechnol 12:1003-1013
Rainey, P. B. and Bailey, M. J. (1996) ‘Physical and genetic map of the Pseudomonas fluorescens SBW25 chromosome’, Molecular Microbiology, 19(3), pp. 521-533. doi: 10.1046/j.1365-2958.1996.391926.x.
Ryngajllo, M. et al. (2019) ‘Comparative genomics of the Komagataeibacter strains-Efficient bionanocellulose producers’, MicrobiologyOpen, 8(5), pp. 1-25. doi: 10.1002/mbo3.731.
Sambrook, J., & R. (2001) ‘Molecular cloning: a laboratory manual’, Cold Spring Harbor Laboratory Press.
Standal, R., et al. (1994). ‘A new gene required for cellulose production and a gene encoding cellulolytic activity in Acetobacter xylinum are colocalized with the bcs operon’. J. Bacteriol. 176, 665-672.
Tajima, K., et al. (2001). ‘Cloning and sequencing of the beta-glucosidase gene from Acetobacter xylinum ATCC 23769’. DNA Res. 8, 263-269. doi: 10.1093/dnares/8.6.263.
Vandamme, E.J., et al. (1998). ‘Improved production of bacterial cellulose and its application potential’. Polymer Degradation and Stability. 59 (1-3): 93-99. doi:10.1016/S0141-3910(97)00185-7.
Walz, A. et al. (2002) ‘A gene encoding a protein modified by the phytohormone indoleacetic acid’, Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 99(3), pp. 1718-1723. doi: 10.1073/pnas.032450399.
Wong, H. C. et al. (1990) ‘Genetic organization of the cellulose synthase operon in Acetobacter xylinum’, Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 87(20), pp. 8130-8134. doi: 10.1073/pnas.87.20.8130.
標準的な分子生物学の技術については、Sambrook,J.、Russel,D.W. Molecular Cloning,A Laboratory Manual.第3版 2001、Cold Spring Harbor、New York:Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照
【配列表】
【国際調査報告】