(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(54)【発明の名称】皮下投与のための抗CD38抗体の製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20230201BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230201BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230201BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230201BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20230201BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230201BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230201BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230201BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230201BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230201BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230201BHJP
C07K 16/30 20060101ALN20230201BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K47/18
A61K47/10
A61K47/26
A61P7/00
A61P35/00
A61P37/06
A61P29/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P43/00 111
C12N15/13 ZNA
C07K16/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533413
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(85)【翻訳文提出日】2022-07-29
(86)【国際出願番号】 US2020063452
(87)【国際公開番号】W WO2021113739
(87)【国際公開日】2021-06-10
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507363864
【氏名又は名称】サノフィ-アベンティス・ユー・エス・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】トマ・バレエ
(72)【発明者】
【氏名】キラン・バンガリ
(72)【発明者】
【氏名】ラヴィ・チャリ
(72)【発明者】
【氏名】シルヴァン・ユイエ
(72)【発明者】
【氏名】ベルナルド・ペレス-ラミレス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァスコ・フィリペ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076BB16
4C076CC07
4C076CC27
4C076DD51
4C076DD51G
4C076DD67
4C076DD67Q
4C076EE23
4C076EE23F
4C076FF16
4C076FF17
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4C076FF61
4C076FF63
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4C084NA05
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4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC412
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG04
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
それを必要とする対象への皮下投与に好適である抗CD38抗体の製剤が提供される。製剤は、高濃度の抗体、粘度低下剤、安定化剤、緩衝剤および界面活性剤を含む。ある特定の実施形態では、溶液の粘度は高くても25mPa・sであり、溶液のpHは5.9~7.0である。ある特定の実施形態では、抗CD38抗体はイサツキシマブである。製剤はヒトにおいて多発性骨髄腫を含むCD38+血液悪性腫瘍、ならびに自己免疫性および炎症性の疾患を処置するのに有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも100mg/mLの抗CD38抗体を含む製剤であって、
抗CD38抗体は、それぞれ配列番号1~3に示すアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域(CDR)、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む可変重鎖領域(VH)、ならびにそれぞれ配列番号4~6に示すアミノ酸配列を含む3つのCDR、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む可変軽鎖領域(VL)を含み、
製剤は粘度低減剤、安定剤、緩衝剤および界面活性剤を含み、
製剤は5.9~7.0のpHおよび20℃で高くても25mPa・sの粘度を有する、製剤。
【請求項2】
粘度低減剤は90~150mMのArg-Clである、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
粘度低減剤は90~125mMのArg-Clである、請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
粘度低減剤は110mMのArg-Clである、請求項2に記載の製剤。
【請求項5】
界面活性剤はポロキサマー188である、請求項1~4のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項6】
界面活性剤は0.4(w/v)%ポロキサマー188である、請求項1~5のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項7】
緩衝剤はヒスチジンである、請求項1~6のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項8】
緩衝剤は9mMのヒスチジンである、請求項1~7のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項9】
粘度低減剤は90~150mMのLys-Acである、請求項1に記載の製剤。
【請求項10】
粘度低減剤は125mMのLys-Acである、請求項9に記載の製剤。
【請求項11】
界面活性剤はポリソルベート80である、請求項9または10に記載の製剤。
【請求項12】
界面活性剤は0.04(w/v)%ポリソルベート80である、請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
125~155mg/mLの抗CD38抗体を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項14】
140mg/mLの抗CD38抗体を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項15】
安定剤はスクロースである、請求項1~14のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項16】
安定剤は2(w/v)%スクロースである、請求項1~15のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項17】
pHは5.9~7.0である、請求項1~16のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項18】
pHは6.2~6.3である、請求項17に記載の製剤。
【請求項19】
140mg/mLの抗CD38抗体を含む製剤であって、
抗CD38抗体は、それぞれ配列番号1~3に示すアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域(CDR)、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む可変重鎖領域(VH)、ならびにそれぞれ配列番号4~6に示すアミノ酸配列を含む3つのCDR、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む可変軽鎖領域(VL)を含み、
製剤は9mMのヒスチジン、110mMのArg-Cl、2(w/v)%スクロースおよび0.4(w/v)%ポロキサマー188を含み、
製剤は6.2~6.3のpHおよび20℃で高くても14mPa・sの粘度を有する、製剤。
【請求項20】
140mg/mLの抗CD38抗体を含む製剤であって、
抗CD38抗体は、それぞれ配列番号1~3に示すアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域(CDR)、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む可変重鎖領域(VH)、ならびにそれぞれ配列番号4~6に示すアミノ酸配列を含む3つのCDR、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む可変軽鎖領域(VL)を含み、
製剤は、125mMのLys-Ac、2(w/v)%スクロースおよび0.04(w/v)%ポリソルベート80を含み、
製剤は6.2のpHおよび20℃で高くても14mPa・sの粘度を有する、製剤。
【請求項21】
皮下投与のために好適である、請求項1~20のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項22】
皮下投与は多量の皮下投与である、請求項21に記載の製剤。
【請求項23】
抗CD38抗体のVHは配列番号7に示すアミノ酸配列を含み、抗CD38抗体のVLは配列番号8に示すアミノ酸配列を含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項24】
抗CD38抗体はイサツキシマブである、請求項1~23のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項25】
治療的有効量の請求項1~24のいずれか1項に記載の製剤を含む滅菌容器を含む、パッケージされた医薬製品。
【請求項26】
治療的有効量の請求項1~24のいずれか1項に記載の製剤を含むデバイス。
【請求項27】
製剤を含むシリンジ、シリンジドライバーおよび注入ポンプからなる群から選択される、請求項26に記載のデバイス。
【請求項28】
シリンジはプレフィルドシリンジである、請求項27に記載のデバイス。
【請求項29】
CD38
+細胞の存在または活性によって特徴付けられる疾患または状態を処置する方法であって、それを必要とする対象に請求項1~8または13~19のいずれか1項に記載の製剤の有効量を投与することを含み、製剤は皮下投与される、方法。
【請求項30】
CD38
+細胞の存在または活性によって特徴付けられる疾患または状態はCD38
+血液悪性腫瘍である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
CD38
+細胞の存在または活性によって特徴付けられる疾患または状態は自己免疫性または炎症性の疾患または状態である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
CD38
+血液悪性腫瘍を処置する方法であって、それを必要とする対象に請求項1~8または13~19のいずれか1項に記載の製剤の有効量を投与することを含み、製剤は皮下投与される、方法。
【請求項33】
製剤は140mg/mLの抗CD38抗体を含み、
抗CD38抗体は、それぞれ配列番号1~3に示すアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域(CDR)、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む可変重鎖領域(VH)、ならびにそれぞれ配列番号4~6に示すアミノ酸配列を含む3つのCDR、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む可変軽鎖領域(VL)を含み、
製剤は9mMのヒスチジン、110mMのArg-Cl、2(w/v)%スクロースおよび0.4(w/v)%ポロキサマー188を含み、
製剤は6.2または6.3のpHおよび20℃で高くても14mPa・sの粘度を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
製剤は皮下注入によって投与される、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
皮下注入は多量の皮下注入である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
対象はヒトであり、多量の皮下注入は5~10mLである、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
CD38
+血液悪性腫瘍は多発性骨髄腫である、請求項32~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
多発性骨髄腫は再発した/難治性の多発性骨髄腫である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
コルチコステロイド、プロテアソーム阻害剤、免疫調節薬、化学療法薬およびこれらの組合せからなる群から選択される1つまたはそれ以上の薬剤を対象に投与することをさらに含む、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
化学療法薬はシタラビン、ダウノルビシン、ダウノマイシン、ドキソルビシン、リポソームドキソルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、ゲムツズマブ、クロファラビン、クラドリビン、ヒドロキシ尿素、エトポシド、メルファラン、シクロホスファミド、ビンクリスチンおよびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
プロテアソーム阻害剤はカルフィルゾミブ、ボルテゾミブ、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
免疫調節薬はサリドマイド、レナリドマイド、ポマリドミドおよびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
コルチコステロイドはデキサメタゾンである、請求項39に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年12月5日に出願の米国仮特許出願第62/944,082号の優先権を主張し、その全開示をここに参照によって本明細書に組み入れる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出されている配列表を含有し、その全体をここに参照によって組み入れる。2020年12月4日に作成された前記ASCIIコピーは712533_SA9-295PC_ST25.txtと命名され、サイズは9,675バイトである。
【0003】
本開示は、疾患の処置で有益な抗体の製剤に関する。より具体的には、それは、多発性骨髄腫を含むがん、ならびにCD38+細胞が役割を果たす他の疾患および状態を処置するための皮下投与で使用するのに好適な抗CD38抗体の製剤に関する。
【背景技術】
【0004】
CD38は、長いC末端細胞外ドメインおよび短いN末端細胞質ドメインを有する45kDaのII型膜貫通糖タンパク質である。CD38タンパク質は、NAD+の環状のADPリボース(cADPR)への変換を触媒することができ、さらにcADPRをADPリボースに加水分解することもできる二官能性エクトエンザイムである。
【0005】
多くの血液悪性腫瘍および様々な血液悪性腫瘍に由来する細胞系において、CD38は上方制御される。さらに、血液系のほとんどの初期の多能性幹細胞は、CD38-である。血液悪性腫瘍におけるCD38発現および慢性リンパ球性白血病(CLL)における疾患進行とのその相関は、CD38を抗体療法のための魅力的な標的にする。
【0006】
CD38+細胞は、多くの自己免疫性疾患、例えば関節リウマチおよびエリテマトーデス、ならびにリポ多糖(LPS)または敗血症誘発性の急性腎臓損傷を含む、様々な他の疾患および状態と関連することも報告されている(非特許文献1)。
【0007】
CD38を特異的に認識する抗CD38抗体は、以前に、例えば特許文献1に記載されている。しかし、これらの抗体は、単剤として使用されてCD38+発現細胞とインキュベートされる場合、アポトーシスを誘導することができない。
【0008】
モノクローナル抗CD38抗体が、特許文献2に記載されている。
【0009】
細胞傷害剤、例えばシタラビン、ビンクリスチン、シクロホスファミドおよびメルファランと組み合わせたこれらの特異的抗CD38抗体の使用が、特許文献3、特許文献4、特許文献5および特許文献6で報告されている。
【0010】
特許文献7、特許文献8および特許文献9、特許文献10も、38SB19のヒト化バージョン(SAR650984またはイサツキシマブとしても知られる)の使用を記載する。再発した/難治性の多発性骨髄腫を有する患者の処置のためのポマリドミドおよびデキサメタゾンと組み合わせたイサツキシマブのフェーズ3臨床試験(NCT02990338)はそのプライマリーエンドポイントを近年満たし、無進行生存を延長した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際特許出願WO2006/099875
【特許文献2】国際特許出願WO2008/047242
【特許文献3】国際特許出願WO2010/061357
【特許文献4】国際特許出願WO2010/061358
【特許文献5】国際特許出願WO2010/061359
【特許文献6】国際特許出願WO2010/061360
【特許文献7】国際特許出願WO2015/066450
【特許文献8】国際特許出願WO2012/076663
【特許文献9】国際特許出願WO2014/089416
【特許文献10】国際特許出願WO2014/159911
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Shu Bら、Cell Signal(2018)42:249~58頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の態様は、対象への皮下投与に好適である抗CD38抗体の製剤に関する。有利なことに、本明細書に開示される製剤は、多量の皮下注入を含む注射または注入のいずれかによる皮下投与のために好適である。製剤は、CD38発現細胞によって特徴付けられる疾患または状態の処置で使用することができる。そのような疾患および状態としては、CD38を発現する固形腫瘍、例えば前立腺がん、様々な血液悪性腫瘍、例えば非ホジキンリンパ腫(NHL)、多発性骨髄腫(MM)、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(B細胞ALL)および/または慢性リンパ球性白血病(CLL)が限定されずに挙げられる。そのような疾患および状態としては、関節リウマチおよび全身エリテマトーデスを含む自己免疫性疾患、ならびにリポ多糖(LPS)または敗血症誘発性の急性腎臓損傷が限定されずにさらに挙げられる。
【0014】
ある特定の実施形態では、本開示は、高濃度の抗体、5.9~7.0のpHおよび20℃で高くても25mPa・sの粘度を含む抗CD38抗体の製剤に関する。
【0015】
ある特定の実施形態では、本開示は、少なくとも100mg/mLの抗CD38抗体、粘度低減剤、安定剤、緩衝剤および界面活性剤を含み、5.9~7.0のpHおよび20℃で高くても25mPa・sの粘度を有する製剤に関する。
【0016】
本開示のある態様は、少なくとも100mg/mLの抗CD38抗体を含む製剤であって、
抗CD38抗体は、それぞれ配列番号1~3に示すアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域(CDR)、CDR-H1、CDR2-H2およびCDR-H3を含む可変重鎖領域(VH)、ならびにそれぞれ配列番号4~6に示すアミノ酸配列を含む3つのCDR、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む可変軽鎖領域(VL)を含み、
製剤は、粘度低減剤、安定剤、緩衝剤および界面活性剤を含み、
製剤は5.9~7.0のpHおよび20℃で高くても25mPa・sの粘度を有する、製剤に関する。
【0017】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は90~150mMのArg-Clである。
【0018】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は90~125mMのArg-Clである。
【0019】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は110mMのArg-Clである。
【0020】
ある特定の実施形態では、界面活性剤はポロキサマー188である。
【0021】
ある特定の実施形態では、界面活性剤は0.4(w/v)%ポロキサマー188である。
【0022】
ある特定の実施形態では、緩衝剤はヒスチジンである。
【0023】
ある特定の実施形態では、緩衝剤は9mMのヒスチジンである。
【0024】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は90~150mMのLys-Acである。
【0025】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は125mMのLys-Acである。
【0026】
ある特定の実施形態では、界面活性剤はポリソルベート80である。
【0027】
ある特定の実施形態では、界面活性剤は0.04(w/v)%ポリソルベート80である。
【0028】
ある特定の実施形態では、製剤は125~155mg/mLの抗CD38抗体を含む。
【0029】
ある特定の実施形態では、製剤は140mg/mLの抗CD38抗体を含む。
【0030】
ある特定の実施形態では、安定剤はスクロースである。
【0031】
ある特定の実施形態では、安定剤は2(w/v)%スクロースである。
【0032】
ある特定の実施形態では、pHは5.9~7.0である。
【0033】
ある特定の実施形態では、pHは5.9~6.5である。
【0034】
本開示のある態様は、140mg/mLの抗CD38抗体を含む製剤であって、抗CD38抗体は、それぞれ配列番号1~3に示すアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域(CDR)、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む可変重鎖領域(VH)、ならびにそれぞれ配列番号4~6に示すアミノ酸配列を含む3つのCDR、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む可変軽鎖領域(VL)を含み、
製剤は9mMのヒスチジン、110mMのArg-Cl、2(w/v)%スクロースおよび0.4(w/v)%ポロキサマー188を含み、
製剤は6.2のpHおよび20℃で高くても14mPa・sの粘度を有する、製剤に関する。
【0035】
本開示のある態様は、140mg/mLの抗CD38抗体を含む製剤であって、抗CD38抗体は、それぞれ配列番号1~3に示すアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域(CDR)、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む可変重鎖領域(VH)、ならびにそれぞれ配列番号4~6に示すアミノ酸配列を含む3つのCDR、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む可変軽鎖領域(VL)を含み、
製剤は、125mMのLys-Ac、2(w/v)%スクロースおよび0.04(w/v)%ポリソルベート80を含み、
製剤は6.2のpHおよび20℃で高くても14mPa・sの粘度を有する、製剤に関する。
【0036】
ある特定の実施形態では、製剤は、多量の皮下注入を含む注射または注入のいずれかによる皮下投与のために好適である。
【0037】
ある特定の実施形態では、抗CD38抗体のVHは配列番号7に示すアミノ酸配列を含み、抗CD38抗体のVLは配列番号8に示すアミノ酸配列を含む。
【0038】
ある特定の実施形態では、抗CD38抗体はイサツキシマブである。
【0039】
本開示のある態様は、治療的有効量の本開示の製剤を含む滅菌容器を含むパッケージされた医薬製品に関する。
【0040】
本開示のある態様は、治療的有効量の本開示の製剤を含むデバイスに関する。
【0041】
ある特定の実施形態では、デバイスは、例えば製剤を含むシリンジ、シリンジドライバーおよび注入ポンプであってよい。
【0042】
ある特定の実施形態では、シリンジはプレフィルドシリンジである。
【0043】
本開示のある態様は、CD38+細胞の存在または活性によって特徴付けられる疾患または状態を処置する方法であって、それを必要とする対象に本開示の製剤の有効量を投与することを含み、製剤は皮下投与される、方法である。
【0044】
ある特定の実施形態では、CD38+細胞の存在または活性によって特徴付けられる疾患または状態は、CD38+血液悪性腫瘍である。
【0045】
ある特定の実施形態では、CD38+細胞の存在または活性によって特徴付けられる疾患または状態は、自己免疫性または炎症性の疾患または状態である。
【0046】
本開示のある態様は、CD38+血液悪性腫瘍を処置する方法であって、それを必要とする対象に本開示の製剤の有効量を投与することを含み、製剤は皮下投与される、方法である。
【0047】
本開示のある態様は、CD38+血液悪性腫瘍を処置する方法であって、それを必要とする対象に少なくとも100mg/mLの抗CD38抗体を含む抗CD38抗体の製剤の有効量を投与することを含み、
抗CD38抗体は、それぞれ配列番号1~3に示すアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域(CDR)、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む可変重鎖領域(VH)、ならびにそれぞれ配列番号4~6に示すアミノ酸配列を含む3つのCDR、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む可変軽鎖領域(VL)を含み、
製剤は、粘度低減剤、安定剤、緩衝剤および界面活性剤を含み、
製剤は5.5~7.0のpHおよび20℃で高くても25mPa・sの粘度を有し、製剤は皮下投与される、方法である。
【0048】
本開示のある態様は、CD38+血液悪性腫瘍を処置する方法であって、それを必要とする対象に140mg/mLの抗CD38抗体を含む抗CD38の製剤の有効量を投与することを含み、
抗CD38抗体は、それぞれ配列番号1~3に示すアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域(CDR)、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む可変重鎖領域(VH)、ならびにそれぞれ配列番号4~6に示すアミノ酸配列を含む3つのCDR、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む可変軽鎖領域(VL)を含み、
製剤は9mMのヒスチジン、110mMのArg-Cl、2(w/v)%スクロースおよび0.4(w/v)%ポロキサマー188を含み、
製剤は6.2のpHおよび20℃で高くても14mPa・sの粘度を有し、製剤は皮下投与される、方法である。
【0049】
ある特定の実施形態では、本方法は、それを必要とする対象に140mg/mLの抗CD38抗体を含む製剤の有効量を投与することを含み、
抗CD38抗体は、それぞれ配列番号1~3に示すアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域(CDR)、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む可変重鎖領域(VH)、ならびにそれぞれ配列番号4~6に示すアミノ酸配列を含む3つのCDR、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む可変軽鎖領域(VL)を含み、
製剤は9mMのヒスチジン、110mMのArg-Cl、2(w/v)%スクロースおよび0.4(w/v)%ポロキサマー188を含み、
製剤は6.3のpHおよび20℃で高くても14mPa・sの粘度を有し、製剤は皮下投与される。
【0050】
ある特定の実施形態では、製剤は皮下注入によって投与される。
【0051】
ある特定の実施形態では、製剤は皮下注入によって投与される。
【0052】
ある特定の実施形態では、皮下注入は、例えば>2mLから30mLの多量の皮下注入である。
【0053】
ある特定の実施形態では、CD38+血液悪性腫瘍を処置する方法は、C38+血液がんを処置するのに好適な1つまたはそれ以上のさらなる薬剤を対象に投与することをさらに含む。一部の実施形態では、他の薬剤は、例えばコルチコステロイド(例えば、デキサメタゾン)、化学療法薬、プロテアソーム阻害剤、免疫調節薬またはこれらの組合せである。
【0054】
ある特定の実施形態では、化学療法薬は、例えば、シタラビン、ダウノルビシン、ダウノマイシン、ドキソルビシン、リポソームドキソルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、ゲムツズマブ、クロファラビン、クラドリビン、ヒドロキシ尿素、エトポシド、アムサクリン、FLT3阻害剤、例えばギルテリチニブ、5-アザシチジン、デシタビン、メルファラン、シクロホスファミドまたはビンクリスチン、またはこれらの組合せである。
【0055】
ある特定の実施形態では、免疫調節薬は、例えばサリドマイド、レナリドマイドまたはポマリドミド、またはこれらの組合せである。
【0056】
ある特定の実施形態では、プロテアソーム阻害剤は、例えば、イキサゾミブ、カルフィルゾミブまたはボルテゾミブ、またはこれらの組合せである。
【0057】
ある特定の実施形態では、CD38+血液悪性腫瘍を処置する方法は、本明細書に規定される皮下投与のために製剤化したイサツキシマブおよび異なるクラスの化合物、例えば免疫調節薬またはプロテアソーム阻害剤などからの2つ以上のさらなる薬剤を対象に投与することを含む。
【0058】
ある特定の実施形態では、CD38+血液悪性腫瘍は多発性骨髄腫である。ある特定の実施形態では、多発性骨髄腫は再発した/難治性の多発性骨髄腫である。一部の実施形態では、患者は多発性骨髄腫のためのレナリドマイドおよびプロテアソーム阻害剤を含む少なくとも2つの以前の療法を受けており、最後の療法中または最後の療法の完了後に疾患進行を示していた。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】示されたバッファー系におけるイサツキシマブの熱ストレス(上パネル)および振盪ストレス(下パネル)の後の≧10μmおよび≧25μmの亜可視的粒子の数を表す一連のグラフである。2w 40℃、40℃で2週間;4w 40℃、40℃で4週間;Cit、クエン酸バッファー;His、ヒスチジンバッファー;Pho、リン酸バッファー;Ace、酢酸バッファー。
【
図2】40℃での熱ストレスの後の可溶性凝集体(サイズ排除クロマトグラフィー(SE-HPLC)を使用して測定したときの高分子量凝集体(HMW))のパーセンテージを表すグラフである。2w 40℃、40℃で2週間;4w 40℃、40℃で4週間;Cit、クエン酸バッファー;His、ヒスチジンバッファー;Pho、リン酸バッファー;Ace、酢酸バッファー。
【
図3】示されたpHおよび濃度の値を有するヒスチジンバッファーにおける、40℃での熱ストレスの後のサイズ排除クロマトグラフィー(SE-HPLC)を使用して測定したときの可溶性凝集体(高分子量凝集体(HMW))のパーセンテージを表すグラフである。1M 40℃、40℃で1カ月。
【
図4】示されたpHおよび濃度の値を有するヒスチジンバッファーにおける、40℃での振盪ストレスの後の弱カチオン交換分析を使用して測定したときのイサツキシマブの酸性形パーセンテージを表すグラフである。1M 40℃、40℃で1カ月。
【
図5】示された濃度でのアルギニン-Cl pH6.0における200mg/mLのイサツキシマブの粘度を表すグラフである。
【
図6A】アルギニン-HClバッファーpH6.3の濃度の範囲にわたって150mg/mLのイサツキシマブの粘度を表すグラフである。はめ込みは、アルギニン-HClのより高い濃度での詳細を示す。
【
図6B】アルギニン-HClバッファーpH6.3の濃度の範囲にわたって180mg/mLのイサツキシマブの粘度を表すグラフである。はめ込みは、アルギニン-HClのより高い濃度での詳細を示す。
【
図7A】150mMのアルギニン-HClバッファーにおけるpHの範囲にわたって150mg/mLのイサツキシマブの粘度を表すグラフである。
【
図7B】200mMのアルギニン-HClにおけるバッファーpHの範囲にわたって150mg/mLのイサツキシマブの粘度を表すグラフである。
【
図8】pH5.5、5.9、6.2および7.0(T=20℃)におけるmAb濃度の関数としてプロットした粘度を表すグラフである。適合度:ムーニーに基づく式。
【
図9】mAb濃度126、140、147および154g/L(T=20℃)でのpHの関数としてプロットした粘度を表すグラフである。
【
図10】mAb濃度126、143および154g/L(pH=6.2)での温度の関数としてプロットした粘度を表すグラフである。
【
図11】mAb濃度142および152g/L(pH=5.9)での温度の関数としてプロットした粘度を表すグラフである。
【
図12】mAb濃度140g/L(pH=6.2、T=20℃)でのアルギニン濃度の関数としてプロットした粘度を表すグラフである。
【
図13】製剤F4-1~F4-16(それぞれ、ラン1~ラン16、n=2、平均)でイサツキシマブのHP-SEC分析を使用して検出した相対的単量体含有量を表すグラフである;T0:無処置、T-mech:機械的ストレス、T-5×FT:5回の冷凍/解凍サイクル、T-1m_40℃:40℃で1カ月。
【
図14】製剤F10-1~F10-16(それぞれ、ラン1~ラン16、n=2、平均)でイサツキシマブのHP-SEC分析を使用して検出した相対的単量体含有量を表すグラフである;T0:無処置、T-mech:機械的ストレス、T-5×FT:5回の冷凍/解凍サイクル、T-1m_40℃:40℃で1カ月。
【
図15】製剤F4-1~F4-16(それぞれ、ラン1~ラン16、n=2、平均)でイサツキシマブのHP-SEC分析を使用して検出した全ての凝集体(HMWS)の相対的含有量を表すグラフである;T0:無処置、T-mech:機械的ストレス、T-5×FT:5回の冷凍/解凍サイクル、T-1m_40℃:40℃で1カ月。
【
図16】製剤F10-1~F10-16(それぞれ、ラン1~ラン16、n=2、平均)でイサツキシマブのHP-SEC分析を使用して検出した全ての凝集体(HMWS)の相対的含有量を表すグラフである;T0:無処置、T-mech:機械的ストレス、T-5×FT:5回の冷凍/解凍サイクル、T-1m_40℃:40℃で1カ月。
【
図17】製剤F4-1~F4-16(それぞれ、ラン1~ラン16、n=2、平均)でイサツキシマブのHP-SEC分析を使用して検出した全ての断片(LMWS)の相対的含有量を表すグラフである;T0:無処置、T-mech:機械的ストレス、T-5×FT:5回の冷凍/解凍サイクル、T-1m_40℃:40℃で1カ月。
【
図18】製剤F10-1~F10-16(それぞれ、ラン1~ラン16、n=2、平均)でイサツキシマブのHP-SEC分析を使用して検出した全ての断片(LMWS)の相対的含有量を表すグラフである;T0:無処置、T-mech:機械的ストレス、T-5×FT:5回の冷凍/解凍サイクル、T-1m_40℃:40℃で1カ月。
【
図19】製剤F4-1~F4-16(それぞれ、ラン1~ラン16、n=2、平均)でイサツキシマブの毛管等電点電気泳動(cIEF)分析から得られた酸性ピーク含有量を表すグラフである;T0:無処置、T-1m_40℃:40℃で1カ月。
【
図20】製剤F10-1~F10-16(それぞれ、ラン1~ラン16、n=2、平均)でイサツキシマブのcIEF分析から得られた酸性ピーク含有量を表すグラフである;T0:無処置、T-1m_40℃:40℃で1カ月。
【
図21】40℃/75%r.h.での1カ月の保存の後の製剤F4-1~F4-16およびF10-1~F10-16(それぞれ、ラン1~ラン16、n=2、平均)でイサツキシマブのcIEF分析から得られた単量体ピーク含有量の相対面積の喪失[%]を表すグラフである。
【
図22】実施例5に記載されるように示されたイサツキシマブの製剤またはNaCl対照を皮下注入されたミニブタにおける血漿コルチゾールを表すグラフである。
【
図23】実施例5に記載されるように示されたイサツキシマブの製剤またはNaCl対照を皮下注入されたミニブタにおける血漿サブスタンスPを表すグラフである。
【
図24】実施例6に記載されるように第I群のミニブタ個体1~5における経時的なイサツキシマブの血清濃度を表すグラフである。
【
図25】実施例6に記載されるように第II群のミニブタ個体6~10における経時的なイサツキシマブの血清濃度を表すグラフである。
【
図26】実施例6に記載されるように第III群のミニブタ個体11~15における経時的なイサツキシマブの血清濃度を表すグラフである。
【
図27】実施例6に記載されるように第IV群のミニブタ個体16~20における経時的なイサツキシマブの血清濃度を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本明細書で、対象への皮下投与に好適である抗CD38抗体の製剤が提供される。有利なことに、本明細書に開示される製剤は、多量の皮下注入を含む注射または注入のいずれかによる皮下投与のために好適である。製剤は、CD38発現細胞によって特徴付けられる疾患または状態の処置で使用することができる。そのような疾患および状態には、様々な血液悪性腫瘍、例えば非ホジキンリンパ腫(NHL)、多発性骨髄腫(MM)、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(B細胞ALL)および/または慢性リンパ球性白血病(CLL)が限定されずに含まれる。そのような疾患および状態には、関節リウマチおよび全身エリテマトーデスを含む自己免疫性疾患、ならびにリポ多糖(LPS)または敗血症誘発性の急性腎臓損傷が限定されずにさらに含まれる。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される製剤は、高濃度の抗体、5.5~7.0のpHおよび20℃で高くても25mPa・sの粘度を含む。本明細書で提供される一部の実施形態では、製剤は水性の製剤である。
【0061】
「血液悪性腫瘍」は、血液、骨髄およびリンパ節を冒すがんのタイプである。その3つは免疫系を通して緊密に連結しているので、3つのうちの1つを冒す疾患は他のものを同様に冒す可能性がある。血液悪性腫瘍には、非ホジキンリンパ腫(NHL)(例えば、バーキットリンパ腫(BL)およびT細胞リンパ腫(TCL)を含む)、多発性骨髄腫(MM)、慢性リンパ球性白血病(CLL)(例えば、B細胞慢性リンパ球性白血病(B-CLL)および毛様細胞白血病(HCL)など)、B細胞およびT細胞急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、ホジキンリンパ腫(HL)ならびに慢性骨髄性白血病(CML)が含まれる。一部の実施形態では、血液悪性腫瘍はCD38+血液悪性腫瘍である。
【0062】
したがって、「CD38+血液悪性腫瘍」は、上述のようにがん細胞がCD38を発現する血液悪性腫瘍である。CD38+細胞は、関節リウマチおよび全身エリテマトーデスを含む多くの自己免疫性および炎症性の疾患および障害、ならびにLPSまたは敗血症誘発性急性腎臓損傷を含む他の状態に関与することも報告されている。
【0063】
CD38+血液悪性腫瘍には、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、多発性骨髄腫(MM)、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(B細胞ALL)および/または慢性リンパ球性白血病(CLL)が含まれる。一部の実施形態では、CD38+血液悪性腫瘍はMMである。一部の実施形態では、CD38+血液悪性腫瘍は、再発したおよび/または難治性の多発性骨髄腫である。
【0064】
「抗体」は、2つの重鎖がジスルフィド結合によって互いに連結し、各重鎖はジスルフィド結合によって軽鎖に連結する、天然または従来の抗体であってよい。2種類の軽鎖、ラムダ(λ)およびカッパ(κ)がある。抗体分子の機能的活性を決定する5つの主要な重鎖クラス(または、アイソタイプ)がある:IgM、IgG、IgA、IgDおよびIgE。さらに、免疫グロブリンサブクラス(または、サブアイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2がよく特徴付けられ、機能的専門化を付与することが公知である。各鎖は、異なる配列ドメインを含有する。軽鎖は2つのドメインまたは領域、可変ドメイン(VL)および定常ドメイン(CL)を含む。重鎖は4つのドメイン、可変ドメイン(VH)および3つの定常ドメイン(CH1、CH2およびCH3、CHと総称される)を含む。軽(VL)および重(VH)鎖両方の可変領域は、抗原への結合認識および特異性を決定する。軽(CL)および重(CH)鎖の定常領域ドメインは、重要な生物学的特性、例えば抗体鎖会合、分泌、経胎盤移動性、補体結合性およびFc受容体(FcR)への結合性を付与する。Fvフラグメントは、1つの軽鎖および1つの重鎖の可変部分を含む免疫グロブリンのFabフラグメントのN末端部分である。抗体の特異性は、抗体結合部位と抗原決定基の間の構造的相補性に存在する。抗体結合部位は、主に超可変または相補性決定領域(CDR)からの残基で構成される。時折、非超可変またはフレームワーク領域(FR)からの残基が、全体のドメイン構造、したがって結合部位に影響する。
【0065】
「相補性決定領域」または「CDR」は、天然の免疫グロブリン結合部位の天然のFv領域の結合特異性および親和性を一緒に規定するアミノ酸配列を指す。免疫グロブリンの軽鎖および重鎖は、CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3およびCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3とそれぞれ呼ばれる3つのCDRを各々有する。従来の抗体の抗原結合部位は、したがって、重鎖および軽鎖V領域の各々からのCDRセットを含む6つのCDRを含む。
【0066】
免疫グロブリン軽鎖または重鎖に関するCDR/FRの定義は、カバットの定義(worlwideweb.bioinf.org.uk/abs/)に基づいて与えられる。
【0067】
抗体は、天然に存在しない抗体、例えば、モノクローナル抗体、キメラ抗体またはヒト化抗体であってもよい。本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」または「mAb」は、特異的抗原に向けられた単一のアミノ酸組成の抗体分子を指し、任意の特定の方法による抗体の生成を必要とすると解釈するべきでない。モノクローナル抗体はB細胞またはハイブリドーマの単一のクローンによって生成することができるが、組換え体であってもよく、すなわち、タンパク質工学によって生成することもできる。
【0068】
用語「ヒト化抗体」は、最初に全体的にまたは部分的に非ヒト起源であり、ヒトでの免疫応答を回避または最小にするために、例えば重鎖および軽鎖のフレームワーク領域のある特定のアミノ酸を置き換えるように改変された抗体を指す。ヒト化抗体の定常ドメインは、例えば、ヒトのCHおよびCLドメインであってよい。ある実施形態では、ヒト化抗体はヒト起源の定常ドメインを有する。
【0069】
一部の実施形態では、本開示による抗CD38抗体は、配列番号1で示すアミノ酸配列を含むCDR-H1、アミノ酸配列配列番号2を含むCDR-H2およびアミノ酸配列配列番号3を含むCDR-H3を含む重鎖、ならびに、配列番号4で示すアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号5で示すアミノ酸配列を含むCDR-L2および配列番号6で示すアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖を含む。
CDR-H1 DYWMQ (配列番号1)
CDR-H2 TIYPGDGDTGYAQKFQG (配列番号2)
CDR-H3 GDYYGSNSLDY (配列番号3)
CDR-L1 KASQDVSTVVA (配列番号4)
CDR-L2 SASYRYI (配列番号5)
CDR-L3 QQHYSPPYT (配列番号6)
【0070】
一部の実施形態では、前記抗体は、配列番号7で示すアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)を含む。
【0071】
一部の実施形態では、前記抗体は、配列番号8で示すアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。
【0072】
一部の実施形態では、前記抗体は、配列番号7で示すアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号8で示すアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。
QVQLVQSGAEVAKPGTSVKLSCKASGYTFTDYWMQWVKQRPGQGLEWIGTIYPGDGDTGYAQKFQGKATLTADKSSKTVYMHLSSLASEDSAVYYCARGDYYGSNSLDYWGQGTSVTVSS
(配列番号7)
DIVMTQSHLSMSTSLGDPVSITCKASQDVSTVVAWYQQKPGQSPRRLIYSASYRYIGVPDRFTGSGAGTDFTFTISSVQAEDLAVYYCQQHYSPPYTFGGGTKLEIKR
(配列番号8)
【0073】
一部の実施形態では、本開示による抗CD38抗体はイサツキシマブである。イサツキシマブの重鎖(HC)は、配列番号9で示すアミノ酸配列を含み、イサツキシマブの軽鎖(LC)は、配列番号10で示すアミノ酸配列を含む。
QVQLVQSGAEVAKPGTSVKLSCKASGYTFTDYWMQWVKQRPGQGLEWIGTIYPGDGDTGYAQKFQGKATLTADKSSKTVYMHLSSLASEDSAVYYCARGDYYGSNSLDYWGQGTSVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
(配列番号9)
DIVMTQSHLSMSTSLGDPVSITCKASQDVSTVVAWYQQKPGQSPRRLIYSASYRYIGVPDRFTGSGAGTDFTFTISSVQAEDLAVYYCQQHYSPPYTFGGGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
(配列番号10)
【0074】
一部の実施形態では、この抗体は、CD38+血液悪性腫瘍、例えば再発したおよび/または難治性のMMを含む多発性骨髄腫(MM)、またはMMのために1つまたはそれ以上の以前の療法を受けているMM患者の処置で使用するためのものである。
【0075】
本開示との関連で、本明細書で使用される用語「処置する」または「処置」は、そのような用語が適用される障害もしくは状態、またはそのような障害もしくは状態の1つもしくはそれ以上の症状を回復させること、緩和すること、その進行を抑制すること、または予防することを意味する。ある特定の実施形態では、本明細書で使用される用語「処置する」または「処置」は、そのような用語が適用される障害もしくは状態、またはそのような障害もしくは状態の1つもしくはそれ以上の症状を回復させること、緩和すること、またはその進行を抑制することを意味する。
【0076】
本明細書で使用される用語「CD38+血液悪性腫瘍を処置する」は、腫瘍のCD38+悪性細胞の増殖および/または前記CD38+腫瘍からの転移の進行の抑制を意味する。そのような処置は、腫瘍増殖の退行、すなわち測定可能な腫瘍のサイズの減少に導くこともできる。
【0077】
本開示との関連で抗体の「治療的有効量」は、本明細書に開示される前記CD38+血液悪性腫瘍を処置する抗体の十分な量を意味する。
【0078】
ある特定の実施形態では、対象へ皮下投与される抗体の前記治療的有効量は、1用量あたり500mg~2000mgの抗体の用量である。
【0079】
ある特定の実施形態では、対象へ投与される抗体の前記治療的有効量は、1用量あたり1000mgの抗体である。ある特定の実施形態では、対象へ投与される抗体の前記治療的有効量は、1用量あたり1400mgの抗体である。ある特定の実施形態では、対象へ投与される抗体の前記治療的有効量は、1用量あたり1600mgの抗体である。
【0080】
本明細書で使用されるように、用語「対象」は哺乳動物を指す。ある特定の実施形態では、用語「対象」はヒトを指す。
【0081】
本開示の抗体は、週1回(QW)、2週間に1回(Q2W)、または週1回および2週間に1回の組合せで投与することができる。一部の実施形態では、抗体は4週間に1回投与される。
【0082】
例えば、抗体は、4週の間に週1回(サイクル1)、続いて隔週に1回(例えば、以降の各4週サイクルの1日目および15日目に)、500mg~1400mgの用量で対象に投与することができる。
【0083】
一部の実施形態では、1000mgの抗体が4週の間に週1回対象に投与され(サイクル1)、その後1000mgの抗体が以降の各4週サイクルの1日目および15日目に対象に投与される。
【0084】
一部の実施形態では、1000mgの抗体が隔週に1回対象に投与される。
【0085】
一部の実施形態では、1400mgの抗体が4週の間に週1回対象に投与され(サイクル1)、その後1400mgの抗体が以降の各4週サイクルの1日目および15日目に対象に投与される。
【0086】
一部の実施形態では、1400mgの抗体が隔週に1回対象に投与される。一部の実施形態では、抗体は、1週または2週の各投与の間の間隔による間欠プログラムに従って投与することができ、この間隔は前の投与への許容度によって1~2週長くすることができる。
【0087】
本明細書で使用される「サイクル」は、4暦週、すなわち28日を指す。「週1回」の投与は、7日おきに1回を意味する。「2週間に1回」の投与は、14日おきに1回を意味する。1サイクルに1回または4週おきに1回の投与は、28日おきに1回を意味する。
【0088】
一部の実施形態では、抗体投与のサイクル数は2~50、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、25、30、35、45、50サイクルであってよい。
【0089】
発明の製剤
本開示は、抗CD38抗体のある特定の製剤を提供する。一部の実施形態では、製剤は液体製剤である。ある特定の実施形態では、そのような製剤(抗体製剤)は、抗CD38抗体による処置を必要とする対象への投与に好適である。
【0090】
有利なことに、本開示の抗体製剤は、多量の皮下注入を含む注射または注入のいずれかにより対象に皮下投与することができる。
【0091】
ある特定の実施形態では、本開示は、高濃度の抗体、5.5~7.0のpHおよび20℃で高くても25mPa・sの粘度を含む抗CD38抗体の製剤に関する。
【0092】
ある特定の実施形態では、本開示は、少なくとも100mg/mLの抗CD38抗体、粘度低減剤、安定剤、緩衝剤および界面活性剤を含む製剤であって、5.5~7.0のpHおよび20℃で高くても25mPa・sの粘度を有する製剤に関する。
【0093】
一部の実施形態では、少なくとも100mg/mLの抗CD38抗体を含む抗体の製剤であって、
抗CD38抗体は、それぞれ配列番号1~3に示すアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域(CDR)、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む可変重鎖領域(VH)、ならびにそれぞれ配列番号4~6に示すアミノ酸配列を含む3つのCDR、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む可変軽鎖領域(VL)を含み、
製剤は、粘度低減剤、安定剤、緩衝剤および界面活性剤を含み、
製剤は5.5~7.0のpHおよび20℃で高くても25mPa・sの粘度を有する、製剤が提供される。
【0094】
ある特定の実施形態では、製剤は125~155mg/mLの抗CD38抗体を含む。
【0095】
ある特定の実施形態では、製剤は140mg/mLの抗CD38抗体を含む。
【0096】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は90~150mMのArg-Clである。
【0097】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は90~130mMのArg-Clである。
【0098】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は110mMのArg-Clである。
【0099】
ある特定の実施形態では、安定剤はスクロースである。
【0100】
ある特定の実施形態では、水性製剤は125~155mg/mLの抗CD38抗体、90~150mMのArg-Clおよびスクロースを含む。
【0101】
ある特定の実施形態では、製剤は140mg/mLの抗CD38抗体、90~150mMのArg-Clおよびスクロースを含む。
【0102】
ある特定の実施形態では、製剤は125~155mg/mLの抗CD38抗体、90~130mMのArg-Clおよびスクロースを含む。
【0103】
ある特定の実施形態では、製剤は125~155mg/mLの抗CD38抗体、110mMのArg-Clおよびスクロースを含む。
【0104】
ある特定の実施形態では、製剤は140mg/mLの抗CD38抗体、90~130mMのArg-Clおよびスクロースを含む。
【0105】
ある特定の実施形態では、製剤は140mg/mLの抗CD38抗体、110mMのArg-Clおよびスクロースを含む。
【0106】
ある特定の実施形態では、製剤は2(w/v)%のスクロースを含む。
【0107】
ある特定の実施形態では、製剤は125~155mg/mLの抗CD38抗体、90~150mMのArg-Clおよび2(w/v)%のスクロースを含む。
【0108】
ある特定の実施形態では、製剤は140mg/mLの抗CD38抗体、90~130mMのArg-Clおよび2(w/v)%のスクロースを含む。
【0109】
ある特定の実施形態では、製剤は140mg/mLの抗CD38抗体、110mMのArg-Clおよび2(w/v)%のスクロースを含む。
【0110】
ある特定の実施形態では、製剤は界面活性剤を含む。
【0111】
ある特定の実施形態では、界面活性剤はポロキサマー188である。
【0112】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は90~150mMのArg-Clであり、安定剤はスクロースであり、界面活性剤はポロキサマー188である。
【0113】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は90~150mMのArg-Clであり、安定剤は2(w/v)%スクロースであり、界面活性剤はポロキサマー188である。
【0114】
ある特定の実施形態では、溶液は125~155mg/mLの抗CD38抗体、90~150mMのArg-Cl、2(w/v)%のスクロースおよびポロキサマー188を含む。
【0115】
ある特定の実施形態では、溶液は140mg/mLの抗CD38抗体、90~150mMのArg-Cl、2(w/v)%のスクロースおよびポロキサマー188を含む。
【0116】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は90~130mMのArg-Clであり、安定剤はスクロースであり、界面活性剤はポロキサマー188である。
【0117】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は110mMのArg-Clであり、安定剤はスクロースであり、界面活性剤はポロキサマー188である。
【0118】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は90~125mMのArg-Clであり、安定剤は2(w/v)%スクロースであり、界面活性剤はポロキサマー188である。
【0119】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は110mMのArg-Clであり、安定剤は2(w/v)%スクロースであり、界面活性剤はポロキサマー188である。
【0120】
ある特定の実施形態では、溶液は125~155mg/mLの抗CD38抗体、90~125mMのArg-Cl、2(w/v)%のスクロースおよびポロキサマー188を含む。
【0121】
ある特定の実施形態では、溶液は125~155mg/mLの抗CD38抗体、110mMのArg-Cl、2(w/v)%のスクロースおよびポロキサマー188を含む。
【0122】
ある特定の実施形態では、溶液は140mg/mLの抗CD38抗体、90~125mMのArg-Cl、2(w/v)%のスクロースおよびポロキサマー188を含む。
【0123】
ある特定の実施形態では、溶液は140mg/mLの抗CD38抗体、110mMのArg-Cl、2(w/v)%のスクロースおよびポロキサマー188を含む。
【0124】
ある特定の実施形態では、製剤は0.4(w/v)%のポロキサマー188を含む。
【0125】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は90~150mMのArg-Clであり、安定剤はスクロースであり、界面活性剤は0.4(w/v)%のポロキサマー188である。
【0126】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は90~150mMのArg-Clであり、安定剤は2(w/v)%スクロースであり、界面活性剤は0.4(w/v)%のポロキサマー188である。
【0127】
ある特定の実施形態では、溶液は125~155mg/mLの抗CD38抗体、90~150mMのArg-Cl、2(w/v)%のスクロースおよび0.4(w/v)%のポロキサマー188を含む。
【0128】
ある特定の実施形態では、溶液は140mg/mLの抗CD38抗体、90~150mMのArg-Cl、2(w/v)%のスクロースおよび0.4(w/v)%のポロキサマー188を含む。
【0129】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は90~125mMのArg-Clであり、安定剤はスクロースであり、界面活性剤は0.4(w/v)%のポロキサマー188である。
【0130】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は110mMのArg-Clであり、安定剤はスクロースであり、界面活性剤は0.4(w/v)%のポロキサマー188である。
【0131】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は90~125mMのArg-Clであり、安定剤は2(w/v)%スクロースであり、界面活性剤は0.4(w/v)%のポロキサマー188である。
【0132】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は110mMのArg-Clであり、安定剤は2(w/v)%スクロースであり、界面活性剤は0.4(w/v)%のポロキサマー188である。
【0133】
ある特定の実施形態では、溶液は125~155mg/mLの抗CD38抗体、90~125mMのArg-Cl、2(w/v)%のスクロースおよび0.4(w/v)%のポロキサマー188を含む。
【0134】
ある特定の実施形態では、溶液は125~155mg/mLの抗CD38抗体、110mMのArg-Cl、2(w/v)%のスクロースおよび0.4(w/v)%のポロキサマー188を含む。
【0135】
ある特定の実施形態では、溶液は140mg/mLの抗CD38抗体、90~125mMのArg-Cl、2(w/v)%のスクロースおよび0.4(w/v)%のポロキサマー188を含む。
【0136】
ある特定の実施形態では、溶液は140mg/mLの抗CD38抗体、110mMのArg-Cl、2(w/v)%のスクロースおよび0.4(w/v)%のポロキサマー188を含む。
【0137】
ある特定の実施形態では、製剤は緩衝剤を含む。
【0138】
ある特定の実施形態では、緩衝剤はヒスチジンである。
【0139】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は90~150mMのArg-Clであり、安定剤はスクロースであり、界面活性剤はポロキサマー188であり、緩衝剤はヒスチジンである。
【0140】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は90~150mMのArg-Clであり、安定剤は2(w/v)%スクロースであり、界面活性剤はポロキサマー188であり、緩衝剤はヒスチジンである。
【0141】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は90~150mMのArg-Clであり、安定剤は2(w/v)%のスクロースであり、界面活性剤は0.4(w/v)%のポロキサマー188であり、緩衝剤はヒスチジンである。
【0142】
ある特定の実施形態では、溶液は125~155mg/mLの抗CD38抗体、90~150mMのArg-Cl、2(w/v)%のスクロース、0.4(w/v)%のポロキサマー188およびヒスチジンを含む。
【0143】
ある特定の実施形態では、溶液は140mg/mLの抗CD38抗体、90~150mMのArg-Cl、2(w/v)%のスクロース、0.4(w/v)%のポロキサマー188およびヒスチジンを含む。
【0144】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は90~125mMのArg-Clであり、安定剤はスクロースであり、界面活性剤はポロキサマー188であり、緩衝剤はヒスチジンである。
【0145】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は110mMのArg-Clであり、安定剤はスクロースであり、界面活性剤はポロキサマー188であり、緩衝剤はヒスチジンである。
【0146】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は90~125mMのArg-Clであり、安定剤は2(w/v)%スクロースであり、界面活性剤はポロキサマー188であり、緩衝剤はヒスチジンである。
【0147】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は110mMのArg-Clであり、安定剤は2(w/v)%スクロースであり、界面活性剤はポロキサマー188であり、緩衝剤はヒスチジンである。
【0148】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は90~125mMのArg-Clであり、安定剤は2(w/v)%のスクロースであり、界面活性剤は0.4(w/v)%のポロキサマー188であり、緩衝剤はヒスチジンである。
【0149】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は110mMのArg-Clであり、安定剤は2(w/v)%のスクロースであり、界面活性剤は0.4(w/v)%のポロキサマー188であり、緩衝剤はヒスチジンである。
【0150】
ある特定の実施形態では、溶液は125~155mg/mLの抗CD38抗体、90~125mMのArg-Cl、2(w/v)%のスクロース、0.4(w/v)%のポロキサマー188およびヒスチジンを含む。
【0151】
ある特定の実施形態では、溶液は125~155mg/mLの抗CD38抗体、110mMのArg-Cl、2(w/v)%のスクロース、0.4(w/v)%のポロキサマー188およびヒスチジンを含む。
【0152】
ある特定の実施形態では、溶液は140mg/mLの抗CD38抗体、90~125mMのArg-Cl、2(w/v)%のスクロース、0.4(w/v)%のポロキサマー188およびヒスチジンを含む。
【0153】
ある特定の実施形態では、溶液は140mg/mLの抗CD38抗体、110mMのArg-Cl、2(w/v)%のスクロース、0.4(w/v)%のポロキサマー188およびヒスチジンを含む。
【0154】
ある特定の実施形態では、緩衝剤は9mMのヒスチジンである。
【0155】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は90~150mMのArg-Clであり、安定剤はスクロースであり、界面活性剤はポロキサマー188であり、緩衝剤は9mMのヒスチジンである。
【0156】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は90~150mMのArg-Clであり、安定剤は2(w/v)%のスクロースであり、界面活性剤はポロキサマー188であり、緩衝剤は9mMのヒスチジンである。
【0157】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は90~150mMのArg-Clであり、安定剤は2(w/v)%のスクロースであり、界面活性剤は0.4(w/v)%のポロキサマー188であり、緩衝剤は9mMのヒスチジンである。
【0158】
ある特定の実施形態では、溶液は125~155mg/mLの抗CD38抗体、90~150mMのArg-Cl、2(w/v)%のスクロース、0.4(w/v)%のポロキサマー188および9mMのヒスチジンを含む。
【0159】
ある特定の実施形態では、溶液は140mg/mLの抗CD38抗体、90~150mMのArg-Cl、2(w/v)%のスクロース、0.4(w/v)%のポロキサマー188および9mMのヒスチジンを含む。
【0160】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は90~125mMのArg-Clであり、安定剤はスクロースであり、界面活性剤はポロキサマー188であり、緩衝剤は9mMのヒスチジンである。
【0161】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は110mMのArg-Clであり、安定剤はスクロースであり、界面活性剤はポロキサマー188であり、緩衝剤は9mMのヒスチジンである。
【0162】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は90~125mMのArg-Clであり、安定剤は2(w/v)%のスクロースであり、界面活性剤はポロキサマー188であり、緩衝剤は9mMのヒスチジンである。
【0163】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は110mMのArg-Clであり、安定剤は2(w/v)%のスクロースであり、界面活性剤はポロキサマー188であり、緩衝剤は9mMのヒスチジンである。
【0164】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は90~125mMのArg-Clであり、安定剤は2(w/v)%のスクロースであり、界面活性剤は0.4(w/v)%のポロキサマー188であり、緩衝剤は9mMのヒスチジンである。
【0165】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は110mMのArg-Clであり、安定剤は2(w/v)%のスクロースであり、界面活性剤は0.4(w/v)%のポロキサマー188であり、緩衝剤は9mMのヒスチジンである。
【0166】
ある特定の実施形態では、溶液は125~155mg/mLの抗CD38抗体、90~125mMのArg-Cl、2(w/v)%のスクロース、0.4(w/v)%のポロキサマー188および9mMのヒスチジンを含む。
【0167】
ある特定の実施形態では、溶液は125~155mg/mLの抗CD38抗体、110mMのArg-Cl、2(w/v)%のスクロース、0.4(w/v)%のポロキサマー188および9mMのヒスチジンを含む。
【0168】
ある特定の実施形態では、溶液は140mg/mLの抗CD38抗体、90~125mMのArg-Cl、2(w/v)%のスクロース、0.4(w/v)%のポロキサマー188および9mMのヒスチジンを含む。
【0169】
ある特定の実施形態では、溶液は140mg/mLの抗CD38抗体、110mMのArg-Cl、2(w/v)%のスクロース、0.4(w/v)%のポロキサマー188および9mMのヒスチジンを含む。
【0170】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は90~150mMのLys-Acである。
【0171】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は125mMのLys-Acである。
【0172】
ある特定の実施形態では、製剤は125~155mg/mLの抗CD38抗体、90~150mMのLys-Acおよびスクロースを含む。
【0173】
ある特定の実施形態では、製剤は140mg/mLの抗CD38抗体、90~150mMのLys-Acおよびスクロースを含む。
【0174】
ある特定の実施形態では、製剤は125~155mg/mLの抗CD38抗体、125mMのLys-Acおよびスクロースを含む。
【0175】
ある特定の実施形態では、製剤は140mg/mLの抗CD38抗体、125mMのLys-Acおよびスクロースを含む。
【0176】
ある特定の実施形態では、製剤は125~155mg/mLの抗CD38抗体、90~150mMのLys-Acおよび2(w/v)%のスクロースを含む。
【0177】
ある特定の実施形態では、製剤は140mg/mLの抗CD38抗体、90~150mMのLys-Acおよび2(w/v)%のスクロースを含む。
【0178】
ある特定の実施形態では、製剤は125~155mg/mLの抗CD38抗体、125mMのLys-Acおよび2(w/v)%のスクロースを含む。
【0179】
ある特定の実施形態では、製剤は140mg/mLの抗CD38抗体、125mMのLys-Acおよび2(w/v)%のスクロースを含む。
【0180】
ある特定の実施形態では、製剤は界面活性剤を含む。
【0181】
ある特定の実施形態では、界面活性剤はポリソルベート80である。
【0182】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は90~150mMのLys-Acであり、安定剤はスクロースであり、界面活性剤はポリソルベート80である。
【0183】
ある特定の実施形態では、製剤は125~155mg/mLの抗CD38抗体、90~150mMのLys-Ac、スクロースおよびポリソルベート80を含む。
【0184】
ある特定の実施形態では、製剤は140mg/mLの抗CD38抗体、90~150mMのLys-Ac、スクロースおよびポリソルベート80を含む。
【0185】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は90~150mMのLys-Acであり、安定剤は2(w/v)%のスクロースであり、界面活性剤はポリソルベート80である。
【0186】
ある特定の実施形態では、製剤は125~155mg/mLの抗CD38抗体、90~150mMのLys-Ac、2(w/v)%のスクロースおよびポリソルベート80を含む。
【0187】
ある特定の実施形態では、製剤は140mg/mLの抗CD38抗体、90~150mMのLys-Ac、2(w/v)%のスクロースおよびポリソルベート80を含む。
【0188】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は125mMのLys-Acであり、安定剤はスクロースであり、界面活性剤はポリソルベート80である。
【0189】
ある特定の実施形態では、製剤は125~155mg/mLの抗CD38抗体、125mMのLys-Ac、スクロースおよびポリソルベート80を含む。
【0190】
ある特定の実施形態では、製剤は140mg/mLの抗CD38抗体、125mMのLys-Ac、スクロースおよびポリソルベート80を含む。
【0191】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は125mMのLys-Acであり、安定剤は2(w/v)%のスクロースであり、界面活性剤はポリソルベート80である。
【0192】
ある特定の実施形態では、製剤は125~155mg/mLの抗CD38抗体、125mMのLys-Ac、2(w/v)%のスクロースおよびポリソルベート80を含む。
【0193】
ある特定の実施形態では、製剤は140mg/mLの抗CD38抗体、125mMのLys-Ac、2(w/v)%のスクロースおよびポリソルベート80を含む。
【0194】
ある特定の実施形態では、界面活性剤は0.04(w/v)%のポリソルベート80である。
【0195】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は90~150mMのLys-Acであり、安定剤はスクロースであり、界面活性剤は0.04(w/v)%のポリソルベート80である。
【0196】
ある特定の実施形態では、製剤は125~155mg/mLの抗CD38抗体、90~150mMのLys-Ac、スクロースおよび0.04(w/v)%のポリソルベート80を含む。
【0197】
ある特定の実施形態では、製剤は140mg/mLの抗CD38抗体、90~150mMのLys-Ac、スクロースおよび0.04(w/v)%のポリソルベート80を含む。
【0198】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は90~150mMのLys-Acであり、安定剤は2(w/v)%スクロースであり、界面活性剤は0.04(w/v)%のポリソルベート80である。
【0199】
ある特定の実施形態では、製剤は125~155mg/mLの抗CD38抗体、90~150mMのLys-Ac、2(w/v)%のスクロースおよび0.04(w/v)%のポリソルベート80を含む。
【0200】
ある特定の実施形態では、製剤は140mg/mLの抗CD38抗体、90~150mMのLys-Ac、2(w/v)%のスクロースおよび0.04(w/v)%のポリソルベート80を含む。
【0201】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は125mMのLys-Acであり、安定剤はスクロースであり、界面活性剤は0.04(w/v)%のポリソルベート80である。
【0202】
ある特定の実施形態では、製剤は125~155mg/mLの抗CD38抗体、125mMのLys-Ac、スクロースおよび0.04(w/v)%のポリソルベート80を含む。
【0203】
ある特定の実施形態では、製剤は140mg/mLの抗CD38抗体、125mMのLys-Ac、スクロースおよび0.04(w/v)%のポリソルベート80を含む。
【0204】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は125mMのLys-Acであり、安定剤は2(w/v)%のスクロースであり、界面活性剤は0.04(w/v)%のポリソルベート80である。
【0205】
ある特定の実施形態では、製剤は125~155mg/mLの抗CD38抗体、125mMのLys-Ac、2(w/v)%のスクロースおよび0.04(w/v)%のポリソルベート80を含む。
【0206】
ある特定の実施形態では、製剤は140mg/mLの抗CD38抗体、125mMのLys-Ac、2(w/v)%のスクロースおよび0.04(w/v)%のポリソルベート80を含む。
【0207】
ある特定の実施形態では、製剤のpHは5.9~7.0である。
【0208】
ある特定の実施形態では、製剤のpHは5.9~6.5である。
【0209】
ある特定の実施形態では、製剤のpHは6.2である。
【0210】
一部の実施形態では、製剤は140mg/mLの抗CD38抗体を含み、抗CD38抗体は、それぞれ配列番号1~3に示すアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域(CDR)、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む可変重鎖領域(VH)、ならびにそれぞれ配列番号4~6に示すアミノ酸配列を含む3つのCDR、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む可変軽鎖領域(VL)を含み、
製剤は9mMのヒスチジン、110mMのArg-Cl、2(w/v)%のスクロースおよび0.4(w/v)%のポロキサマー188を含み、
製剤は6.2~6.3のpHおよび20℃で高くても14mPa・sの粘度を有する。
【0211】
本開示のある態様は、140mg/mLの抗CD38抗体を含む製剤であって、抗CD38抗体は、それぞれ配列番号1~3に示すアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域(CDR)、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む可変重鎖領域(VH)、ならびにそれぞれ配列番号4~6に示すアミノ酸配列を含む3つのCDR、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む可変軽鎖領域(VL)を含み、
製剤は、125mMのLys-Ac、2(w/v)%のスクロースおよび0.04(w/v)%のポリソルベート80を含み、
製剤は6.2のpHおよび20℃で高くても14mPa・sの粘度を有する、製剤に関する。
【0212】
前述の態様および実施形態の各々により、ある特定の実施形態では、抗CD38抗体のVHは配列番号7に示すアミノ酸配列を含む。
【0213】
前述の態様および実施形態の各々により、ある特定の実施形態では、抗CD38抗体のVLは配列番号8に示すアミノ酸配列を含む。
【0214】
前述の態様および実施形態の各々により、ある特定の実施形態では、抗CD38抗体のVHは配列番号7に示すアミノ酸配列を含み、抗CD38抗体のVLは配列番号8に示すアミノ酸配列を含む。
【0215】
前述の態様および実施形態の各々により、ある特定の実施形態では、抗CD38抗体はイサツキシマブである。
【0216】
前述の態様および実施形態の各々により、製剤は、水、例えば注射用水(WFI)を、他の成分の指定された濃度を達成するのに十分な量でさらに含む。
【0217】
前述の態様および実施形態の各々により、ある特定の実施形態では、製剤は皮下投与のために好適である。例えば、製剤は無菌であってよい。ある特定の実施形態では、製剤の成分を組み合わせて溶液を形成することができ、その後溶液を滅菌濾過して無菌の製剤を提供することができる。
【0218】
ある特定の実施形態では、完成した製剤は、溶存酸素を実質的に含まない。例えば、製剤は窒素ガスで平衡化させ、その後窒素雰囲気下で密封することができる。
【0219】
さらに前述の態様および実施形態の各々により、ある特定の実施形態では、製剤は安定性の向上のための少なくとも1つのさらなる賦形剤または成分、例えば保存剤をさらに含むことができる。
【0220】
パッケージされた医薬製品
本開示のある態様は、本開示の製剤の単一用量を含む滅菌容器を含むパッケージされた医薬製品に関する。好適な滅菌容器には、限定されずに、バイアル、アンプル、ボトル、バッグ、小袋、プレフィルドシリンジ、シリンジドライバー、注入ポンプ、ならびにシリンジドライバーおよび/または注入ポンプと一緒の使用のために適合させた容器が含まれる。好適な容器には、使い捨ての容器および多重使用容器が含まれる。ある特定の実施形態では、容器は、使い捨ての容器、例えば単一用量に対応する量の抗体を含有するバイアルである。
【0221】
本明細書で使用されるシリンジドライバーは、シリンジのプランジャーを係合して、シリンジの内容物が所望の速度で送達されるようにそれを前方および/または後方に軸方向に駆動するように構築および配置された、機械的または空気圧デバイスを指す。シリンジドライバーは当技術分野で公知であり、例えば、限定されずに、米国特許第5,064,413号;5,449,345号;5,954,695号;6,428,509号;6,645,177号;7,195,610号;8,231,576号;および8,814,830号で開示されるデバイスが含まれ、その全ての内容を参照によって本明細書に組み入れる。
【0222】
注入ポンプは当技術分野で周知であり、例えば、Baxter Colleague CXE容積測定注入ポンプ、およびCane Cronoポンプが含まれる。
【0223】
本開示のある態様は、治療的有効量の本開示の製剤を含むデバイスに関する。ある特定の実施形態では、デバイスは、例えば製剤を含むシリンジ、シリンジドライバーおよび注入ポンプであってよい。ある特定の実施形態では、シリンジはプレフィルドシリンジである。
【0224】
一部の実施形態では、本開示の抗体製剤は、固定量フォーマットで提供される。そのような製剤は、例えばバイアルまたはアンプルで、またはそれとして提供することができる。例えば、一部の実施形態では、本開示の抗体製剤は約10mL~約20mLの量で提供される。一部の実施形態では、本開示の抗体製剤は約10mL~約15mLの量で提供される。一部の実施形態では、本開示の抗体製剤は約10mL~約12.5mLの量で提供される。例えば、140mg/mLの抗体を含む製剤のある実施形態では、10mLのそのような製剤を含有するバイアルは1400mgの抗体を含有する。
【0225】
処置方法
本開示の製剤は、CD38+細胞の存在または活性によって特徴付けられる疾患または状態を処置する方法で使用することができる。そのような疾患または状態には、限定されずに、CD38+血液悪性腫瘍、自己免疫性の疾患または状態、炎症性の疾患または状態、およびLPSまたは敗血症誘発性の腎臓の損傷または機能障害を含めることができる。本方法は、それを必要とする対象に本明細書で提供される製剤化された抗体の有効量を投与することを一般的に必要とし、投与することは、場合により多量の(例えば、10mL以上の)皮下注入による皮下注射または注入による。ある特定の実施形態では、対象はヒトである。
【0226】
本開示のある態様は、それを必要とするヒト対象でCD38+血液悪性腫瘍を処置する方法であって、少なくとも100mg/mLの抗CD38抗体を含む製剤の有効量を前記ヒト対象に投与することを含み、
抗CD38抗体は、それぞれ配列番号1~3に示すアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域(CDR)、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む可変重鎖領域(VH)、ならびにそれぞれ配列番号4~6に示すアミノ酸配列を含む3つのCDR、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む可変軽鎖領域(VL)を含み、
製剤は、粘度低減剤、安定剤、緩衝剤および界面活性剤を含み、
製剤は5.7~7.0のpHおよび20℃で高くても25mPa・sの粘度を有し、投与は皮下投与することである、方法である。
【0227】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は90~150mMのArg-Clである。
【0228】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は90~130mMのArg-Clである。
【0229】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は110mMのArg-Clである。
【0230】
ある特定の実施形態では、界面活性剤はポロキサマー188である。
【0231】
ある特定の実施形態では、界面活性剤は0.4(w/v)%ポロキサマー188である。
【0232】
ある特定の実施形態では、緩衝剤はヒスチジンである。
【0233】
ある特定の実施形態では、緩衝剤は9mMのヒスチジンである。
【0234】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は90~150mMのLys-Acである。
【0235】
ある特定の実施形態では、粘度低減剤は125mMのLys-Acである。
【0236】
ある特定の実施形態では、界面活性剤はポリソルベート80である。
【0237】
ある特定の実施形態では、界面活性剤は0.04(w/v)%ポリソルベート80である。
【0238】
ある特定の実施形態では、製剤は125~155mg/mLの抗CD38抗体を含む。
【0239】
ある特定の実施形態では、製剤は140mg/mLの抗CD38抗体を含む。
【0240】
ある特定の実施形態では、安定剤はスクロースである。
【0241】
ある特定の実施形態では、安定剤は2(w/v)%のスクロースである。
【0242】
ある特定の実施形態では、製剤のpHは5.9~7.0である。
【0243】
ある特定の実施形態では、製剤のpHは5.9~6.5である。
【0244】
ある特定の実施形態では、製剤のpHは6.2である。
【0245】
ある特定の実施形態では、製剤のpHは6.3である。
【0246】
本開示のある態様は、それを必要とするヒト対象でCD38+血液悪性腫瘍を処置する方法であって、140mg/mLの抗CD38抗体を含む製剤の有効量を前記ヒト対象に投与することを含み、
抗CD38抗体は、それぞれ配列番号1~3に示すアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域(CDR)、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む可変重鎖領域(VH)、ならびにそれぞれ配列番号4~6に示すアミノ酸配列を含む3つのCDR、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む可変軽鎖領域(VL)を含み、
製剤は9mMのヒスチジン、110mMのArg-Cl、2(w/v)%スクロースおよび0.4(w/v)%ポロキサマー188を含み、
製剤は6.2のpHおよび20℃で高くても14mPa・sの粘度を有し、投与は皮下投与することである、方法である。
【0247】
本開示のある態様は、それを必要とするヒト対象でCD38+血液悪性腫瘍を処置する方法であって、140mg/mLの抗CD38抗体を含む製剤の有効量を前記ヒト対象に投与することを含み、
抗CD38抗体は、それぞれ配列番号1~3に示すアミノ酸配列を含む3つの相補性決定領域(CDR)、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む可変重鎖領域(VH)、ならびにそれぞれ配列番号4~6に示すアミノ酸配列を含む3つのCDR、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む可変軽鎖領域(VL)を含み、
製剤は、125mMのLys-Ac、2(w/v)%スクロースおよび0.04(w/v)%ポリソルベート80を含み、
製剤は6.2のpHおよび20℃で高くても14mPa・sの粘度を有し、投与は皮下投与することである、方法である。
【0248】
上の方法の各々によるある特定の実施形態では、皮下投与することは、1回またはそれ以上の回数の皮下注射を含む。
【0249】
上の方法の各々によるある特定の実施形態では、皮下投与することは、1回またはそれ以上の回数の皮下注入を含む。
【0250】
上の方法の各々によるある特定の実施形態では、皮下投与することは、1回またはそれ以上の回数の多量の皮下注入を含む。
【0251】
本明細書で使用されるように、「多量の注入」は5mL以上の注入量を指す。ある特定の実施形態では、「多量の注入」は、約5~10mL、約10~15mL、約15~20mL、約20~25mLまたは約25~30mLの注入量を指す。ある実施形態では、「多量の注入」は約5~10mLの注入量を指す。ある実施形態では、「多量の注入」は約10~15mLの注入量を指す。ある実施形態では、「多量の注入」は約15~20mLの注入量を指す。ある実施形態では、「多量の注入」は約20~25mLの注入量を指す。ある実施形態では、「多量の注入」は約25~30mLの注入量を指す。
【0252】
驚くべきことに、本明細書で提供される組成物の多量の注入が、ヒトにおけるCD38+血液悪性腫瘍を含むCD38+細胞の存在および/または活性によって特徴付けられる疾患または状態を処置するためにイサツキシマブなどの抗CD38抗体の治療的有効量の全身送達を達成するのに有効であることが見出された。驚くべきことに、本明細書で提供される抗体製剤は、ヒアルロニダーゼなどの分散剤の不在下でミニブタに皮下投与したときに少なくとも89%の生物学的利用能を実証した。したがって、生物学的分散剤を含まない製剤が本明細書で提供される。代わりの実施形態では、1つまたはそれ以上の生物学的分散剤をさらに含む製剤が本明細書で提供される。
【0253】
実施例6で開示されるように、ミニブタへの30分にわたる1動物あたり1800mgでのイサツキシマブの単回静脈内(IV)注入の後、投与後の完全な672時間のサンプリング期間にわたる平均AUC(AUClast)は、364,000時間*μg/mLであった。0.5、1または2mL/分の流速でのミニブタへの1動物あたり1806mgのイサツキシマブの単回皮下(SC)注入の後、投与後の完全な672時間のサンプリング期間にわたる平均AUC(AUClast)は、それぞれ326,000、565,000および369,000時間*μg/mLであった。さらに、0.5~2mL/分の流速でのSC注入による1動物あたり1806mg(140mg/mLの溶液)の用量で与えられたときのミニブタにおけるイサツキシマブの絶対SC生物学的利用能は、少なくとも89%であった。
【0254】
本明細書で使用されるように、「対象」および/または「それを必要とする対象」は、CD38+血液悪性腫瘍を有するかまたはCD38+血液悪性腫瘍を有することが疑われる個体である。本明細書で使用されるように、「対象」は患者を指すこともできる。
【0255】
本開示による対象は、男性または女性であってよい。
【0256】
一部の実施形態では、対象は、CD38発現血液悪性腫瘍を処置するのに好適な1つまたはそれ以上の薬剤または療法で以前に処置されている。以前の抗がん療法は、例えば、コルチコステロイド(例えば、デキサメタゾン)、化学療法薬、プロテアソーム阻害剤、免疫調節薬、放射線療法、骨髄および/または幹細胞移植および免疫療法であってよい。
【0257】
「化学療法薬」は、例えば血液悪性腫瘍を処置するために使用される細胞傷害剤であり、例えば、限定されずに、シタラビン(シトシンアラビノシドまたはara-C)およびアントラサイクリン薬(ダウノルビシンおよび/またはダウノマイシン、ドキソルビシンおよびリポソームドキソルビシン、イダルビシンおよびミトキサントロンなど)、ゲムツズマブ、クロファラビン、クラドリビン、ヒドロキシ尿素、エトポシド、アムサクリン、FLT3阻害剤、および脱メチル化剤(5-アザシチジンおよびデシタビン)、メルファラン、シクロホスファミドおよびビンクリスチンが含まれる。
【0258】
プロテアソーム阻害剤には、例えば、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブおよびイキサゾミブが含まれる。免疫調節薬には、例えば、サリドマイド、レナリドマイドおよびポマリドミドが含まれる。
【0259】
「放射線療法」または「放射線」は、がん細胞を除去するために使用される高エネルギー放射線を指す。放射線療法は、骨髄または末梢血幹細胞移植の前に使用されてもよい。
【0260】
「骨髄および/または幹細胞移植」は、高い用量の化学療法薬(複数可)および/または放射線療法によって破壊された幹細胞を修復することを目指した細胞移植を指す。幹細胞の供与源には、骨髄、末梢血または臍帯血が含まれる。移植される幹細胞の供与源により、手順は骨髄移植(BMT)または末梢血幹細胞移植(PBSCT)または臍帯血移植(UCBT)に区別することができる。
【0261】
さらに、骨髄および/または幹細胞移植は自家幹細胞移植および/または同種異系移植を指すことができる。
【0262】
「自家移植」では、対象の自身の幹細胞は、その人が処置(高用量の化学療法薬(複数可)および/または放射線)を受ける間に彼または彼女の骨髄または末梢血から取り出され、冷凍され、保存される。「パージ」と呼ばれるプロセスは、試料中の任意のがん細胞を除去しようと試みるために使用することができる。その後、幹細胞が処置の後に対象の血液に再注入される。
【0263】
「同種異系移植」は、マッチさせたドナーからの移植である。同種異系骨髄移植の利点は、ドナーからの移植された細胞が、白血病細胞を外来として検出することができ、それらを除去する新規の免疫系を確立することができるということである。同種異系移植の欠点は、マッチするドナーの限界および副作用である。
【0264】
「免疫療法」は、疾患の原因である悪性腫瘍細胞を攻撃する対象の免疫系の刺激を指す。これは、例えば、腫瘍細胞を破壊すべき標的として認識するように対象自身の免疫系を訓練する場合、がんワクチンを投与することによる対象の免疫化を通して、または治療抗体によって腫瘍細胞を破壊するように対象の免疫系を動員する場合は、薬物としての治療抗体の投与を通して実行することができる。
【0265】
開示との関連で、対象は血液悪性腫瘍のために以前に処置されているが、再発しており、および/または難治性であった。
【0266】
一部の実施形態では、対象は多発性骨髄腫を患う。一部の実施形態では、対象は再発したおよび/または難治性の多発性骨髄腫を有する。
【0267】
「再発した」は、以前に処置されているが、進行してさらなる処置の開始を必要とするが、プライマリー難治性のまたは再発したおよび難治性の疾患のための判定基準を満たしていない、血液悪性腫瘍などの疾患または状態を指す。
【0268】
「難治性」は、プライマリーまたはサルベージ療法の間非応答性である(療法の間最小の応答を達成するのに失敗するかまたは進行性の疾患を発症する)か、または最後の療法の60日以内に進行する疾患または状態を指す。
【0269】
再発した難治性の疾患は、サルベージ療法(例えば、第一線の療法による処置が失敗した後に投与される療法)の間非応答性であるか、またはそれらの目下の疾患経過が進行する前のある時点で最小以上の応答を達成した患者で最後の療法の60日以内に進行する疾患である。
【0270】
プライマリー難治性の疾患は、いかなる療法でも最小以上の応答をこれまで達成しなかった患者で非応答性である疾患である。
【0271】
一部の実施形態では、対象はボルテゾミブおよび/またはレナリドマイドで以前に処置されている。
【0272】
一部の実施形態では、対象は自家幹細胞移植(ASCT)を以前に受けている。
【0273】
一部の実施形態では、対象は自家移植から6カ月以内に再発した。
【0274】
投薬量および投与
一部の実施形態では、本明細書で提供される製剤化された抗体は、患者に投与される抗体の量が体のサイズにも体重にも基づいて調整されないように「フラットな用量」で投与される。一部の実施形態では、患者に投与されるフラットな用量は、1000~1800mgの抗体を含む。一部の実施形態では、フラットな用量は1000mgである。一部の実施形態では、フラットな用量は1400mgである。
【0275】
一部の実施形態では、製剤化された抗体、例えば固定された用量の抗体は、固定された量で患者に投与される。例えば、一部の実施形態では、本開示の抗体製剤は約10~約20mLの量で投与される。一部の実施形態では、本開示の抗体製剤は約10~約15mLの量で投与される。一部の実施形態では、本開示の抗体製剤は約10mL~約12.5mLの量で投与される。一部の実施形態では、本開示の抗体製剤は約10mL~約11mLの量で投与される。一部の実施形態では、本開示の抗体製剤は約10mL~約10.5mLの量で投与される。
【0276】
一部の実施形態では、本明細書で提供される製剤化された抗体の用量は、約10~約60分にわたって皮下に投与される。一部の実施形態では、製剤化された抗体の用量は、約20~約40分にわたって皮下に投与される。一部の実施形態では、製剤化された抗体の用量は、約10分にわたって皮下に投与される。一部の実施形態では、製剤化された抗体の用量は、約20分にわたって皮下に投与される。一部の実施形態では、製剤化された抗体の用量は、約30分にわたって皮下に投与される。一部の実施形態では、製剤化された抗体の用量は、約40分にわたって皮下に投与される。一部の実施形態では、製剤化された抗体の用量は、約50分にわたって皮下に投与される。一部の実施形態では、製剤化された抗体の用量は、約60分にわたって皮下に投与される。
【0277】
一部の実施形態では、皮下投与は、抗体の注入のある特定の速度で起こる。例えば、製剤は、有意な漏出も有意な不快感もなしで最小の時間で所望の用量の完全な送達を達成するのに好適な速度で皮下に投与することができる。そのような速度は、例えば、約0.1mL/分~約1.5mL/分の範囲であってよい。一部の実施形態では、注入速度は0.8mL/分である。一部の実施形態では、速度は1mL/分である。一部の実施形態では、速度は1.2mL/分である。一部の実施形態では、速度は1.5mL/分である。
【0278】
一部の実施形態では、注入の初速は注入の全期間維持することができる。他の実施形態では、注入速度は、注入期間中に上か下に、または上下に調整することができる。
【0279】
一部の実施形態では、抗CD38抗体は単独で投与される。他の実施形態では、抗CD38抗体は、CD38+血液がんを処置するのに好適な別の薬剤と一緒に投与される。一部の実施形態では、他の薬剤は、コルチコステロイド(例えば、デキサメタゾン)、化学療法薬、プロテアソーム阻害剤、免疫調節薬またはこれらの組合せである。
【0280】
CD38+血液がんを処置するのに好適な別の薬剤と一緒に投与される場合、抗CD38抗体および他の薬剤(複数可)は同時に、または別々に(例えば、ある期間にわたって逐次的に)投与することができる。抗CD38抗体および他の薬剤(複数可)は、同じかまたは異なる投与経路によって投与することができる。抗CD38抗体および他の薬剤(複数可)が同じ投与経路によって投与される場合、それらは同じかまたは異なる投与部位によって投与することができる。
【0281】
デキサメタゾンなどのコルチコステロイドは、様々な炎症性、自己免疫性およびアレルギー性の状態を処置するために使用される。それは、直接的な薬剤として(例えば、多発性骨髄腫で)、または他の薬剤(例えば、免疫調節薬、化学療法薬およびプロテアソーム阻害剤)と組み合わせてがんの処置でも使用される。デキサメタゾンなどのコルチコステロイドは、化学療法薬(複数可)の副作用(例えば、吐き気および炎症)を打ち消すために使用することもできる。デキサメタゾンなどのコルチコステロイドは、抗体の注入による注入反応(IR)の潜在的リスクおよび/または重症度を低減する前投薬として使用することもできる。デキサメタゾンは、通常、経口投与される。
【0282】
ポマリドミドは、多発性骨髄腫細胞の増殖および生存を阻害する複数の細胞作用を有するサリドマイド類似体および免疫調節薬であり、骨髄腫細胞増殖を促進することができる骨髄微小環境からの間質支持をブロックし;さらに、ポマリドミドは、ナチュラルキラー(NK)細胞を刺激することによって、および調節T細胞を阻害することによって骨髄腫細胞への免疫応答を増強する強い免疫調節作用を有する。ポマリドミドは通常、経口投与される。
【0283】
本開示との関連で、医師は疾患応答を評価することができ、したがって投与レジメンを調整することができる。
【0284】
他の実施形態では、抗CD38抗体は、1つまたはそれ以上の生物学的分散剤と一緒に投与される。生物学的分散剤と一緒に投与される場合、抗CD38抗体および他の薬剤(複数可)は同時に、または別々に(例えば、ある期間にわたって逐次的に)投与することができる。抗CD38抗体および他の薬剤(複数可)は、同じかまたは異なる投与経路によって投与することができる。抗CD38抗体および他の薬剤(複数可)が同じ投与経路によって投与される場合、それらは同じかまたは異なる投与部位によって投与することができる。
【0285】
抗体の投与の前に、対象はモノクローナル抗体の投与で通常観察される注入反応(IR)のリスクおよび/または重症度を低減するために前投薬を受ける。前投薬は、例えば、モンテルカスト、アセトアミノフェン、ラニチジン、ジフェニルドラマミン、デキサメタゾンまたはこれらの組合せを含むことができる。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体の連続4回の投与の後に対象がIRを経験しない場合、前投薬を中止することができる。
【0286】
「疾患応答」は、血液悪性腫瘍および病期診断のための標準の判定基準に従って決定することができる。血液悪性腫瘍、特にCD38+血液悪性腫瘍の疾患応答を評価する方法は、当業者に公知である。例えば、疾患応答を評価する方法には、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンス状態およびInternational Myeloma Working Group Response Criteria(それぞれ、Oken等、J.Clin.Oncol.1982;5(6):649~655頁およびKumar等、Lancet Oncol.2016;17(8):328~346頁を参照する)などのパフォーマンス状態評価が含まれる。疾患応答を評価する方法には、疾患マーカーの数量化、骨髄生検および/または吸引、形質細胞腫の放射線画像化、骨格の調査、Mタンパク質数量化(血清および/または24時間尿)および血清遊離軽鎖レベルまたは尿軽鎖レベル、血清β2-ミクログロブリン、リンパ節生検、放射線腫瘍評価(X線、コンピュータ断層撮影法(CT)スキャン、PETスキャンまたは磁気共鳴画像化(MRI)による)および芽球数測定を含む血球数測定も含めることができる。評価方法のこのリストは、非限定的であると理解すべきである。
【0287】
疾患応答の評価から得られる結果に基づいて、根底にある疾患のための標準の判定基準によって疾患応答を次に層化し、完全応答もしくは完全緩解(CR)、部分応答(PR)、安定疾患(SD)または進行性疾患(PD)に分類することができる。
【0288】
応答評価との関連で使用される「マーカー」は、血清および/または血漿マーカー、例えばC反応性タンパク質(CRP)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)、IL-6、IL-1βまたはIFNを含むことができる。マーカーはCD38などの細胞表面マーカーを含むこともできる。
【0289】
多発性骨髄腫を有する対象で疾患応答を評価する技術には、例えば、骨髄生検および/または吸引、形質細胞腫の放射線画像化、骨格調査、Mタンパク質数量化および血清β2-ミクログロブリンの測定が含まれる。
【0290】
疾患応答評価は、循環腫瘍細胞(末梢血)の上の受容体密度および受容体占有率、骨髄中の芽球および形質細胞の上の受容体密度および受容体占有率、ならびにヒト抗薬物抗体(ADA)のレベルをさらに含むことができる。
【0291】
この開示で引用される全ての特許および公開された特許出願の全内容を、参照によって本明細書に組み入れる。
【0292】
本開示は、以下の非限定的実施例を参照してさらに理解される。実施例は、例示目的のために、および本開示のある特定の実施形態を記載するために下に示されている。特許請求の範囲は、いかなる形であれ本明細書に示す実施例によって限定されない。
【実施例】
【0293】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物の作製方法および使用方法についての完全な開示および記載を当業者に提供するために示され、発明者が彼らの発明と考えるものの範囲を限定するものではない。使用される数字(例えば、量、温度など)に関して正確を期するように努めた。
【実施例1】
【0294】
初期スクリーニング
初期の製剤開発行為は、イサツキシマブに適合し、皮下注射のために適するオスモル濃度および粘度を維持しつつその安定性を強化する賦形剤およびそれらの組合せを特定するために、バッファー-pH系、熱安定剤、界面活性剤ならびに粘度低減剤のスクリーニングを含んだ。
【0295】
バッファーおよびpH系の選択
バッファーおよびpH系を特定するために、イサツキシマブの安定性を16個の異なるバッファー-pH系で評価した。バッファー-pH系(表1)は、目的のpH範囲でのそれらの緩衝能力に基づいて試験した。
【0296】
【0297】
バッファー-pH系は、イサツキシマブの凝集に及ぼすそれらの影響に関して、5mg/mLの濃度のイサツキシマブの液体製剤における振盪および熱ストレスの後の可視的および亜可視的粒子ならびに可溶性凝集体(高分子量種HMW)の形成に関して評価した。
【0298】
表2に示すように、可視的粒子へのイサツキシマブの凝集は、pHおよびバッファー系に依存することが見出された。5.5~6.5の範囲のpHを有するヒスチジンバッファー系は、振盪ストレスの下で最も高い安定性を示し(ストレスの後により少ない可視的粒子を示した)、pH5.0~7.0以内のクエン酸バッファー系およびpH5.5、6.5および7.0のクエン酸バッファーは熱ストレスの後に最も高い安定性を示した(2週間のストレスの後により少ない可視的粒子を示した)。興味深いことに、6.5~7.4の範囲のpHのリン酸バッファー系は、1週間の熱ストレスの後に最も高い熱安定性を示したが、2週間の熱ストレスの後にいくつかの可視的粒子を有し、試験した全てのバッファー系の中では振盪ストレスの下でイサツキシマブの最も低い安定性を示した。
【0299】
【0300】
振盪ストレスおよび熱ストレスの後の≧10μmおよび≧25μmの亜可視的粒子の数は、暗黒化(LO)によって測定した。
図1に示すように、振盪および熱ストレスの下で、リン酸バッファーは、亜可視的粒子の最も高いレベルを示した。ヒスチジンおよび酢酸バッファー系は亜可視的粒子の最も低いレベルを示し、イサツキシマブのより高い安定性を示した。
【0301】
可溶性凝集体(HMW)は、様々なpHのクエン酸、ヒスチジン、リン酸、コハク酸および酢酸バッファーでの熱ストレスの後に、サイズ排除クロマトグラフィー(SE-HPLC)によって観察した。
図2に示すように、クエン酸、リン酸およびコハク酸バッファー系は可溶性凝集体のより高い増加を示し、pHが高いほど可溶性凝集体(HMW)含有量がより高くなることを示す一般的傾向が観察された。これは、7.0を超えるpHで特に有意だった。振盪ストレスは、可溶性凝集体にいかなる影響も及ぼさないようだった。
【0302】
イサツキシマブ安定性へのpHの影響は、スクロースおよびポリソルベート80の存在下でヒスチジンバッファーでさらに研究した。表3に示す製剤中の5mg/mLの濃度でのイサツキシマブを40℃で1カ月間インキュベートし、HMWをSE-HPLCによって測定した。
【0303】
【0304】
HMWは、SE-HPLCによって観察した。
図3に示すように、pH6.5と比較してpH6.0のヒスチジンバッファーでの40℃で1カ月の熱ストレスの後に、より少ない可溶性凝集体(HMW)があった。
【0305】
40℃で1カ月間の表3に示す製剤での5mg/mLのイサツキシマブのインキュベーションの後に、イサツキシマブの酸性アイソフォームのレベルをWCX(週カチオン交換)によって測定した。
図4に示すように、pH6.0のヒスチジン製剤は、40℃で1カ月後のpH6.5と比較してイサツキシマブの酸性形のレベルのより小さい増加を示した。
【0306】
これらの結果はpHおよびバッファー系がイサツキシマブの安定性に影響を及ぼすことを示し、pH6.0前後のpHはpH6.5より安定していた。
【0307】
粘度低減賦形剤の選択
イサツキシマブの皮下送達を可能にするために、20℃で25cP未満の粘度の高い濃度を開発することができるかどうか決定するために、粘度低減賦形剤による様々な製剤条件を試験した。
【0308】
抗体を濃縮し、試験製剤に製剤化した。生じた製剤のタンパク質濃度はSoloVPE機器で分光的に確認し、最終溶液のpHを測定した。
【0309】
【0310】
全ての試料の粘度は、RheoSense Initium機器により20℃でその自動方法を使用して測定した。これは、機器がセンサーのための圧の望ましい範囲で作動するのに適当な剪断速度を自動的に決定する。剪断速度が10,000s-1を超えなかったので、ずり減粘などの非ニュートン作用は無視できるとみなされる。
【0311】
図5は、0、50、100および200mMのL-アルギニン-Clの存在下でのpH6.0の200mg/mLのイサツキシマブの溶液の粘度(cP)を示す。予備的測定は、アルギニン-Clが濃度依存的に有効な粘度低減賦形剤であることを示した;アルギニン-Cl濃度の増加は粘度の低下と相関した。
【0312】
様々な濃度のイサツキシマブのための様々なpH、粘度低減剤による40個を超える異なる製剤を試験した。結果は、表4に示す。
【0313】
粘度に及ぼすアルギニン-Clの濃度の影響を、10mMのヒスチジンおよび2%スクロースの存在下でイサツキシマブの2つの濃度、150mg/mL(
図6A)および180mg/mL(
図6B)について
図6Aおよび6Bに示す。
【0314】
アルギニン-Clの濃度に加えて、イサツキシマブの粘度に及ぼすpHの顕著な影響が観察された。
図7Aおよび7Bは、150mMのアルギニン-Cl(
図7A)および200mMアルギニン-Cl(
図7B)に関するpHの関数としての粘度を示す。
【0315】
驚くべきことに、
図7Aおよび7Bに示す結果は、粘度とpHの間の逆の関係、すなわち、粘度の増加はpHの低下と関連することを示す。pH≦5.7で粘度の急激な増加があった。この逆の関係は、タンパク質溶液で通常予想および観察されるものの反対である。さらに、この予想外の影響は、抗体濃度の増加でさらに増幅された(
図8)。
【0316】
少なくとも100mMのアルギニン-Cl濃度は、150mg/mLのイサツキシマブの粘度を20cp未満に低減し、180mg/mLのイサツキシマブの粘度を40cp未満に低減することが示された。さらに、5.7未満のpHでの粘度の急激な増加によって実証される通り、pHは粘度に有意な影響を及ぼすことが示された。同時に、イサツキシマブの安定性に及ぼすpHの影響を考慮しなければならなかった。
図3および4で実証されるように、6.0に近いpH値のヒスチジンバッファー系は、1カ月の熱ストレスの後にpH6.5のバッファー系と比較して少ないHMWをもたらした。
【実施例2】
【0317】
粘度研究
手元の実施例1に記載される試験の結果により、および皮下投与のために潜在的に好適な高濃度(例えば、少なくとも100mg/mL)のイサツキシマブを含有する製剤に到達することを目的として、いくつかの製剤を調製して、より詳細に研究した。タンパク質濃度、pH、粘度低減剤の濃度および温度などの異なるパラメータが、溶液中のタンパク質の粘度に影響することができた。製剤粘度に及ぼすタンパク質濃度、pH、アルギニン濃度の影響を評価するために、いくつかの実験を実行した。表5は、試験したパラメータおよび値範囲を示す。医薬品が冷凍状態(5±3℃)で保存されることを考慮して、温度の影響も検査した。
【0318】
【0319】
製造プロセスに固有である抗体濃度もしくは粘度低減剤濃度またはpHの変動をmAb溶液が示す場合を含む、20℃で25cP未満の粘度を達成するために、目標濃度を140mg/mLに設定した。実際、各賦形剤の実際のおよび目標組成物の間のそのような変動は、ドナン効果のために、または最終医薬品中の賦形剤レベルに影響を及ぼすかもしれない賦形剤の計量または他の製造工程(例えば、濾過)における精度のために、混合工程の間にUF/DFで一般的に観察される。
【0320】
高い濃度でのmAbの溶液は、高い粘度を示す傾向がある。20℃で25mPa・s未満の粘度を有するイサツキシマブの高濃度液体製剤を開発することができるかどうか決定するために、アルギニンを粘度低減剤として選択した。
【0321】
この試験は、3群で実行した。第1の群では、粗いpHおよび濃度を検査した。第2の群では、緻密なpHおよび濃度を検査した。第3の群では、アルギニン濃度を検査した。
【0322】
試験の第1の群では、粘度に及ぼすイサツキシマブ濃度、pHおよび温度の影響を研究した。試験のこの群のために7つの製剤を調製した。詳細な組成を測定された値と一緒に、表6に示す。
【0323】
【0324】
0.4w/v%でのP188の濃度は、界面活性剤なしの製剤と比較して正の安定性作用を示した。2%の濃度のスクロースは、オスモル濃度を等張性の近くに維持しつつ十分な安定性を可能にした。
【0325】
試験の第2の群では、20℃における粘度に及ぼすイサツキシマブ濃度およびpHの影響を研究した。合計32個の製剤を調製した。抗体の4つの標的濃度(126、140、147および154g/L)および8つの標的pH値(5.5、5.7、5.9、6.2、6.5、6.7、6.9、7.0)で溶液を調製した。詳細な組成を測定された値と一緒に、表7に示す。
【0326】
【0327】
試験の第3の群では、アルギニン濃度を90から150mMの間で変化させた。5つの製剤の詳細な組成を、入手可能な場合測定された値と一緒に表8に示す。
【0328】
【0329】
試験の第1群については、全ての試料の粘度は、5、10、15、20、25および30℃においてRheosense m-VROC粘度計で決定した。各試料および各温度のために、流速は最大流速の50%で選択され、250~2500s-1の剪断速度につながった。ニュートンの挙動が、全ての試料について仮定された。
【0330】
試験の第2群については、全ての試料の粘度は、20℃においてRheosense m-VROC粘度計で決定した。各試料のために、流速は、プライミングフェーズの間に機器によって決定された最大流速の50%で選択された。これは、250~2500s-1の剪断速度につながった。全ての試料について、ニュートンの挙動が仮定された。
【0331】
試験の第3群については、全ての試料の粘度は、20℃においてRheosense m-VROC粘度計で決定した。各試料のために、流速は、プライミングフェーズの間に機器によって決定された最大流速の50%で選択された。これは、1200~1600s-1の剪断速度につながった。全ての試料について、ニュートンの挙動が仮定された。
【0332】
濃度の関数としての粘度
pH5.5では、粘度は、126mg/mLの濃度で16mPa・sから154mg/mLで54mPa・sに増加した。pH7.0では、粘度は同じ濃度範囲で5.8mPa・sから11mPa・sに増加した。全ての条件で、データは以下のムーニー式を使用してあてはめた:
【数1】
(式中、η
solvは溶媒の粘度であり、[η]はタンパク質の固有の粘度であり、Kは「クラウディング係数」であり、Sは「形状係数」である。フィッティングパラメータは、[η]およびK/Sであった。η
solv=1.26mPa・sのために固定値を使用し、それは20℃での製剤バッファーの粘度に対応した)。
【0333】
図8に示すように、イサツキシマブ溶液の粘度は、mAb濃度の増加と一緒に増加した。
【0334】
pHの関数としての粘度
図9は、第2群でm-VROCで得られたデータを示し、粘度はイサツキシマブの5つの濃度(126、140、147および154mg/mL)についてpHの関数としてプロットした。
図9に示すように、イサツキシマブ溶液の粘度は、pHの増加に伴って低下した。
【0335】
pH6.2では、粘度は、試験した抗体の濃度範囲にわたって25mPa・s未満だった。粘度は、5.9以上の全てのpH値で25mPa・s未満だった。しかし、調査したうちでより低いpH値(5.5および5.7)で、粘度は147g/L以上のmAb濃度で25mPa・sより高かった。
【0336】
温度の関数としての粘度
第1群では、調査した製剤の粘度は、5~30℃の温度の関数として測定された。
図10および
図11に示すように、粘度は温度の上昇に伴って低下した。アレニウスフィットを使用して、製剤の活性化エネルギーを決定した(表9)。理論値を計算するために、ムーニー式による20℃のデータのフィットと合わせて値を使用した。
図10に示すように、モデルは実験データと一致した。
【0337】
【0338】
活性化エネルギーは、イサツキシマブの濃度の増加とともに増加した。活性化エネルギーは、pH5.9~6.2で減少した。より低い程度で、活性化エネルギーはpH6.2~6.8で増加した。溶液中で移動するために、mAbはその隣接しているものから逃避しなければならず、したがって、ここでEaと規定される最小エネルギーを必要とする。mAbがこのエネルギーを獲得できる確率は、ボルツマン法則によるexp(-Ea/RT)に比例し、したがって、mAbの移動性に反比例する粘度は、粘度=exp(+Ea/RT)の式に従う。
【0339】
pH6.2の製剤の場合、143および126mg/mLのmAb濃度で、粘度は5~30℃の温度範囲で25mPa・s未満に保たれた。154mg/mLでは、5℃で記録された値は25mPa・sよりわずかに高かった。
【0340】
pH5.9の製剤の場合、142mg/mLのイサツキシマブの粘度は、5℃で約25mPa・sであった。
【0341】
アルギニン濃度の関数としての粘度
予備的研究は、150mg/mLのイサツキシマブの製剤では(界面活性剤なし)、粘度は0~100mMのアルギニンで60mPa・sから16mPa・sに低下し、100~200mMのアルギニンで12mPa・sに低下しただけだったことを示した。
【0342】
本研究では、90から150mMのアルギニン濃度を、90、100、115、125および150mMのポイントで試験した。粘度は、アルギニン濃度の上昇に伴って低下した(
図12)。値は11から9mPa・sに低下し、予備的研究で得た傾向を確認した。
【0343】
試験したアルギニン濃度の範囲(90~150mM)では、粘度は2mPa・s未満変動した。
【実施例3】
【0344】
安定性
この実施例は、2セットの製剤を5℃での安定性試験および40℃/75%相対湿度の加速安定性試験、ならびに凍結融解および振盪ストレス試験研究に供した一連の安定性研究を記載する。
【0345】
試験した製剤は、表10および表11に要約される。
【0346】
【0347】
【0348】
凍結融解ストレスは、Epsilon1-6CC凍結融解単位(Martin Christ GmbH、Osterode、Germany)を使用して実行した。試料は、凍結融解ストレスにかけた。
【0349】
各製剤(F4およびF10)からの1バイアルをフリーズドライヤーに入れ、以下のパラメータによりサイクルを実行した:速度、0.1℃/分;凍結温度、-30℃;解凍温度、25℃;サイクル数、5;およびホールドオン温度時間、60分。5サイクルの後、可視粒子について試料を検査し、ホモジナイズした。
【0350】
各製剤の1バイアルを水平振盪プラットホーム(IKA、KS4000 IC)の上へマウントし、25℃および300rpmで21日間ストレスをかけた。T-mech試料を、T-1カ月時点と一緒に分析した。
【0351】
試料のオスモル濃度は、Gonotec Osmomat 3000(Gonotec、Berlin、Germany)を使用して、氷点低下方法によって測定した。機器の作動の前に、300および400mOsmol/kgのMilli-Q水および2つのオスモル濃度標準を含んでいた三点較正を実行した。
【0352】
Tecan Safire2プレートリーダー(Tecan Austria GmbH、Grodig、Austria)の上の96ウェルプレート(Corning Incorporation、NY、USA)で実行したUV分光法によって、タンパク質濃度を決定した。試料は、150mg/mLの溶液から1mg/mLのタンパク質濃度に重量的に希釈した。希釈係数は、バランスプリントアウトから計算した。各データポイントのために、測定誤差を最小にするために200μLの溶液を充填した3つのウェル(n=3)を測定した。測定細胞の温度は、25℃に設定した。希釈バッファーをブランクスペクトルとして測定した。測定の後、280nmで得られた吸光度値を経路長で補正し、対応するブランクで引き算した。280nmでの計算されたモル吸光係数(εモル)224,320M-1cm-1を、吸光係数(ε)の計算のために使用した。280nmでの吸光度値に基づいてタンパク質濃度を決定するために、1.548mL mg-1cm-1の計算された吸光係数(ε)を使用した。
【0353】
バイアルは、弱い手動の放射撹拌の下で、欧州薬局方(第8版;モノグラフ2.9.20)により約3750ルクスで白いバックグラウンドの前で5秒間、および黒いバックグラウンドの前で5秒間、可視的粒子の有無について検査した。検査は、2人の訓練された検査員によって独立して実行された。
【0354】
観察された可視的粒子を分類するために、「Deutscher Arzneimittel-Codex」(DAC 2006)を基礎とした数字スコアを使用した(0、5秒以内に可視的粒子がない;1、5秒以内にわずかな可視的粒子;2、5秒以内に中間数の可視的粒子;10、直接可視的な多数の粒子)。生成物におそらく非固有である線維様構造および粒子は、数字スコアによって説明していない。
【0355】
高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HP-SEC)
試料分析の前に、HP-SECカラムの性能をBioRadゲル濾過標準(サイログロブリン、ガンマグロブリン、オボアルブミン、ミオグロビンおよびビタミンB12を含有する)で試験した。凍結乾燥材料を500μLのMilli-Q水で可溶化し、続いて移動相での10倍希釈(最終タンパク質濃度3.6mg/mL)によって標準を調製した。系適合性試験をゲル濾過標準(BioRad)を注射することによって各シーケンスの初めに実行し、ガンマグロブリンとオボアルブミンピークの間のUSP分解能を計算することによって調査した。40μLの保存溶液を160μLの溶液A(アセトニトリルのない移動相)と混合することによって、50mg/mLの保存液試料を1.5mLポリプロピレン管(エッペンドルフ)の中で5倍に希釈し、10.0mg/mLのタンパク質濃度をもたらした。
【0356】
加速安定性/ストレス試験の間に潜在的に形成する可能性のあるより大きな不溶性粒子によるHP-SECカラムのブロックを回避するために、希釈の後に試料を18,000rcfで5分間遠心分離し、上清をHPLCバイアルに移した。試料を撹拌し、分析までオートサンプラーの中で5℃で保存した。
【0357】
HP-SEC分析のために以下のパラメータを使用した:
機器:Ultimate 3000(Dionex)
カラム:非晶質シリカカラムProSEC 300S;300mm
セキュリティガード:ガードカラム50mm×7.5mm
流速:0.3mL/分
移動相:90%の100mMリン酸、pH7.2、300mMのNaClO4+10%のACN
検出:280nmおよび214nmでのUV
カラムオーブン:25℃
試料冷却:5~8℃
注射量:5.0mg/mL試料は10μL、ブランクおよびSEC標準は10μL
分析時間:90分
【0358】
毛細管等電点電気泳動(cIEF)
PrinCE微量注入器(Convergent Bioscience、Toronto、Canada)に接続したiCE280機器で、画像化毛細管等電点電気泳動(cIEF)を実行した。従来のcIEFで実施されるように固定された検出時点を過ぎて焦点の分子種を溶出する代わりに、画像化cIEFでは、分子は全体のIEF毛細管にわたって検出される。そうするために、280nmの波長の紫外線をUV透過毛細管に焦点を合わせ、電荷結合素子(CCD)カメラの助けによって定期的な間隔で画像を捕捉した。
【0359】
分析の前に、融合したシリカコーティングされた(FC)カートリッジを機器使用説明書に従って設置した。アノードレザバーを0.08Mリン酸(0.1%メチルセルロース中、電解質キット、ProteinSimple)で充填し、カソードレザバーを0.1M水酸化ナトリウム(0.1%メチルセルロース中、電解質キット、ProteinSimple)で充填した。ヘモグロビン標準(iCE280 System Suitability Kit、ProteinSimple)を測定することによって、系の性能を検査した。ヘモグロビン標準溶液の等電点電気泳動を、製造業者に従って実行した(前集束:1500Vで1分;集束:3000Vで4.5分)。
【0360】
2360μLのMilli-Q水、1400μLの1%メチルセルロース、160μLのPharmalyte pH3~10、20μLのpIマーカー7.05および20μLのpIマーカー9.50を混合することによって、20個の試料のためのMaster Mixを調製した。Master Mixをボルテキシングによってホモジナイズし、5,000rcfで短時間遠心分離した。混合物は0.45μmシリンジPVDFフィルターユニット(Millex-GV、Millipore)で濾過した。
【0361】
20μLの保存溶液(C=50mg/mL)を対応する製剤バッファーの30μLと混合することによって、試料を20.0mg/mLのタンパク質濃度に前希釈した。200μLの全量および0.2mg/mLのタンパク質濃度を得るために、20.0mg/mLの前希釈試料の2μLを198μLのMaster Mixと混合して、cIEF分析のための最終試料を調製した。
【0362】
1500Vで1分間の前集束と、続く3000Vで8分間の集束によって、DPの等電点電気泳動を実行した。紫外吸収画像は、ソフトウェアChromPerfect(第5.5.6版)を使用して分析した。
【0363】
視覚検査の結果
視覚検査は、2人の独立したオペレーターによって実行された。凍結融解後の試料溶液は、不均質(S-Schlieren*、相分離)とマークされた。安定性試験の間、全試験製剤で、可視的粒子含有量および濁度の主要な変化は観察されなかった。
【0364】
オスモル濃度測定の結果は、表12に示される。T0で、オスモル濃度は275~418mOsmol/kgの範囲で変動した。F10製剤は、F4製剤より高いオスモル濃度値を示した。40℃/75%相対湿度での保存は、試験試料でオスモル濃度に影響しなかった。
【0365】
【0366】
【0367】
T0での粘度測定の結果は、F10製剤がF4製剤よりわずかに高い粘度を示すことを示した。最も高い粘度は、製剤F4-8(20℃の1000s-1で30.03cP)およびF10-8(20℃の1000s-1で34.13cP)で測定された。両方の製剤のセット(F4およびF10)で、ラン8は最も高いタンパク質濃度(154mg/mL)、最も低いpH(5.9)および最も高いスクロース濃度(24mg/mL)を含有した。
【0368】
紫外分光学によるタンパク質濃度決定の結果は、表14および表15で提供される。T0で、タンパク質濃度は124~156mg/mLの範囲で変動した。試験製剤中のタンパク質濃度は、40℃/75%相対湿度で保存の間安定したままだった。
【0369】
【0370】
【0371】
タンパク質種の分子量および相対量を特徴付けるために、ドデシル硫酸ナトリウムゲル電気泳動(SDS-PAGE)を使用した。分離された種の相対量は、検出されたタンパク質バンドの光学濃度を測定することによってSDS-PAGEゲルから計算した。非還元および還元条件の下の全ての検出されたタンパク質種の相対量および分子量は、表16および表17にそれぞれ見出される。
【0372】
【0373】
【0374】
単量体、凝集体および断片について調査するために、高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HP-SEC)を実行した。4つの凝集体種(HMW1、HMW2、HMW3およびHMW4)および2つの断片種(LMW1およびLMW2)を割り当てた。
【0375】
T0で、製剤F4およびF10中の相対単量体含有量は、98.5~99.0%の範囲で変動した。40℃/75%相対湿度での保存は、全試験試料中の単量体含有量の減少につながった。40℃/75%相対湿度で1カ月間の保存の後の試験製剤中の単量体含有量は、96.2~97.2%の範囲で変動した;この時点で最も低い単量体含有量は、製剤F4-2で見出された。反復凍結融解サイクルは相対単量体含有量にほとんど影響しなかったが、機械的ストレスは小さな低下(97.7~98.2%)につながった。
図13および
図14を参照する。
【0376】
ほとんど全ての試料および時点について、HMW1の相対含有量は0.15%の定量限界未満であって、同様にほとんど全ての試料および時点について、HMW2の相対含有量は0.15%の定量限界未満であった。
【0377】
HMW3の相対含有量は、T0で0.7~0.9%の範囲であった。40℃/75%相対湿度で1カ月の保存の後、HMW3含有量は1.1~1.5%に増加した。HMW3含有量の最大の増加は、F4-14、F10-5、F10-12およびF10-14試料で観察されたが、最小の増加は製剤F4-1およびF4-7試料で観察された。反復凍結融解サイクルはHMW3相対含有量の増加をもたらさなかったが、機械的ストレスは0.9~1.2%へのHMW3のわずかな増加につながった。
【0378】
ほとんど全ての試料および時点について、HMW4の相対含有量は0.15%の定量限界未満であった。
【0379】
全ての凝集体(HMWS)の合計は、ピーク≧0.15%相対面積で計算した。T0で、凝集体(HMWS)の全含有量は0.6~1.2%の範囲であった。40℃/75%相対湿度での保存は、全試験製剤中のHMWS含有量の著しい増加につながった。40℃/75%相対湿度で1カ月間の保存の後の相対HMWS含有量は、1.1~1.9%の範囲で変動した。HWM種の最小の増加は製剤F4-7で観察され、最大の増加は製剤F4-2およびF10-14で観察された。凍結融解の後にHMWS含有量の実質的な変化は観察されず、0.9~1.3%のHWMS含有量につながる機械的ストレスへの曝露の後に小さい増加だけが検出された。
図15および
図16を参照する。
【0380】
T0で、断片LMW1の含有量は約0.3であった。40℃/75%相対湿度での保存は、全試験試料中のLMW1含有量の増加につながった。相対LMW1含有量は40℃/75%相対湿度で1カ月間の保存の後に最も高く、1.1~1.5%の範囲で変動した。凍結融解はLMW1含有量に影響しなかった。機械的ストレスは、LMW1含有量の小さな増加につながった。
【0381】
T0で、全ての試験製剤について、断片LMW2の相対含有量は定量限界(≧0.15%)未満であった。40℃/75%相対湿度での2週間および1カ月間の保存は、LMW2含有量の小さな増加につながり、最高値はT-1m_40℃で観察された(0.3~0.5%)。
【0382】
全てのLMWSの含有量の合計は、ピーク≧0.15%で計算した。T0で、全LMWS含有量は全試験製剤で約0.3%であった。凍結融解はLMWS含有量に影響しなかったが、機械的ストレスはLMWS含有量の小さな増加(0.7~0.9%)につながった。40℃/75%相対湿度での保存は、特に遅い時点でより著しい増加につながった(
図17および
図18)。最大の増加はT-1m_40℃で観察され、ここで全LMWS含有量は1.4~1.8%の範囲で変動した。
【0383】
T0で、毛細管等電点電気泳動(cIEF)によって測定された主ピークの相対含有量は70.3~74.0%であった。40℃/75%相対湿度で1週間、2週間および1カ月間の保存の後に、主ピークの相対含有量の段階的低下が検出された。最大の減少は製剤F10-8で観察された(T-1m_40℃で55.4%)。全ての製剤について全ての安定性時点で、主ピークのpIは約8.2で安定していた。
【0384】
T0で、酸性種の相対含有量は約17.9~20.9%の範囲で変動した。40℃/75%相対湿度での保存は、酸性種含有量の著しい増加につながった。最大の増加はT-1m_40℃の時点で観察され、値は30.4~36.9%の間であった。最大の増加は製剤F10-8で観察されたが、製剤F4-7は最小の増加を示した。データのグラフ表示を、
図19および
図20に示す。
【0385】
T0で、8.1~9.5%の塩基性ピーク含有量が観察された。安定性試験の間、塩基性ピーク含有量は、ほとんどの時点で全ての製剤で比較的安定していた。T-1m_40℃では、塩基性ピーク含有量は7.1~9.1%の範囲で変動した。
【0386】
40℃/75%相対湿度で保存の後、毛細管等電点電気泳動(cIEF)データは、全ての製剤について主ピーク含有量を犠牲にして酸性種含有量の増加を示した。F4製剤は、
図21に示すように40℃/75%相対湿度で1カ月の保存の後の主ピーク相対含有量の低下がより小さく、F10製剤より優れた化学的安定性を示した。40℃/75%相対湿度で1カ月間の保存の後、F4製剤は9.5~13.9%の範囲の単量体ピーク損失を示したが、F10製剤は14.7~17.3%の範囲の単量体ピーク損失を示した。
【実施例4】
【0387】
安定性
110mMアルギニン-HCl、9mMヒスチジン、2%スクロース、0.4%ポロキサマー188、pH6.2で製剤化された140mg/mLのイサツキシマブで実行された安定性研究の結果が提供される。
【0388】
結果
-20℃±5℃での安定性
表18に示すように、-20℃±5℃で1カ月間の保存の後、試験した全ての品質属性、可視的粒子、色、乳白光の程度、SECおよびcGEによる純度、UVによるタンパク質濃度、ADCCおよびCDCバイオアッセイによる力価、暗黒化による粒状物質およびpHは安定していた。
【0389】
icIEFによる電荷不均一性は、出発材料と比較していかなる有意な変化も示さなかった。
【0390】
+5℃±3℃での安定性(長期保存条件)
表19および表20に示すように、+5℃±3℃で1、3、6、9および12カ月間の保存の後、試験した全ての品質属性、可視的粒子、SECおよびcGEによる純度、UVによるタンパク質濃度、CDCバイオアッセイによる力価、暗黒化による粒状物質およびpHは、少なくとも12カ月間安定していた。
【0391】
色、乳白光の程度およびicIEFによる電荷不均一性は、出発材料と比較して少なくとも12カ月間いかなる有意な変化も示さなかった。
【0392】
+25℃±2℃/60%±5%RH(加速保存条件)での安定性
表21に示すように、+25℃±2℃で6カ月間の保存の後、試験した全ての品質属性(可視的粒子、SECによる純度、UVによるタンパク質濃度、ADCCおよびCDCバイオアッセイによる力価、暗黒化による粒状物質およびpH)は、少なくとも6カ月間安定していた。
【0393】
+25℃±2℃で6カ月の後、色および乳白光の程度の両方で変化は観察されなかった。
【0394】
+25℃±2℃で6カ月の後、icIEFによる電荷不均一性プロファイルの変化が以下の通りに観察された:酸性アイソフォームの9%の増加と一緒の主アイソフォーム含有量の9%の低下が観察された。
【0395】
cGEによる純度における主ピークのわずかな低下(-2%)は、低分子種の合計の増加(+2%)と相関しているのが観察された。
【0396】
SECによる単量体純度のわずかな低下(-1.7%)が観察された。
【0397】
他の全てのパラメータは、出発材料と比較していかなる有意な変化も示さなかった。
【0398】
+40℃±2℃/75%±5%RH(ストレス条件)での安定性
表22に示すように、ストレス条件下で1カ月後に以下の変化が観察された:
icIEFによる電荷不均一性プロファイルの変化が以下の通りに観察された:酸性形の15%の増加と主に相関した主アイソフォーム含有量の14%の低下。
【0399】
cGEによる純度における主ピークのわずかな低下(-2%)は、低分子種の合計の増加(+2%)と相関しているのが観察された。
【0400】
SECによる凝集体のパーセンテージは一定していた。
【0401】
結論
この安定性研究の結果は、110mMアルギニン-HCl、9mMヒスチジン、2%スクロース、0.4%ポロキサマー188、pH6.2で製剤化された140mg/mLのイサツキシマブが、-20℃で少なくとも1カ月間、および+5℃±3℃で少なくとも12カ月間安定していることを示す。
【0402】
【0403】
【0404】
【0405】
【0406】
【実施例5】
【0407】
ミニブタにおけるIn Vivo研究
この実施例は、皮下注射によって投与されたイサツキシマブの製剤でミニブタが処置された試験を記載する。その良好に許容される適合性のために、および意図されたヒト投与経路の非臨床評価のためにそれが一般的に使用されるので、皮下局所寛容性のこの研究のための試験モデルとしてミニブタを選択した。
【0408】
4つの製剤(F1、F2、F4およびF10)および陰性対照として食塩水(0.9%塩化ナトリウム)を8匹のミニブタ(1歳の雌、20~25kg)で試験し、試験群につき4匹の動物であった。各動物は2つの製剤および陰性対照の注射を受け、各注射の間の回復期間は3週間であった。組織逆圧モニタリングのために逆圧キャプター(RSB5 Subminiature Load Cell 50LB/200N)を備えたシリンジポンプ(Harvard Apparatus Model「22」)を使用して、バタフライ27G針のついたカテーテルによって投与を横腹部に実行した。
【0409】
注入の間、疼痛評価のために一般挙動、発声および視覚パラメータを中心に動物を観察した。注入シリンジ圧および漏出の証拠もモニタリングした。皮膚変化のために注射部位を観察し、サブスタンスPおよびコルチゾールのために血漿分析を実行した。5日目に10%NBFに皮膚生検を収集した。
【0410】
注射の間と後に疼痛症状を5日間記録した。注射に沿っておよび続く90分間に採取された血液に、疼痛マーカーを投薬した。注射時点でとられた皮膚試料で、次に組織病理学試験を実行した。組織病理学に関して、全ての製剤は良好に寛容された。
【0411】
イサツキシマブの全ての溶液は、イサツキシマブ溶液の同じ前製剤化バッチから調製した。このバッチは、20mMのヒスチジンおよび5%スクロースで30mg/mL、pH6で製剤化されていた。
【0412】
研究ミニブタ試験のために試験した全ての製剤は、表23に記載される。
【0413】
【0414】
各製剤の調製のために、バッファー(スクロースおよび界面活性剤なし)を限外濾過によって交換し、目標製剤より高い値へ抗体を濃縮した。濃度の最初の調整の後、最終製剤を得るために濃縮した賦形剤溶液(限外濾過バッファーに溶解させた濃縮したスクロースおよび界面活性剤)を加えた。
【0415】
試験した限外濾過バッファーは、表24に示す。
【0416】
【0417】
最終製剤の記録された値は、表25に示す。
【0418】
【0419】
合計8匹の1歳雌ミニブタを試験で使用した。各製剤は4匹の動物で試験し、それぞれ30分のうちに18mLの量を受けた(0.6mL/分)。試験は5日続き、その間疼痛マーカーおよび症状を記録した。5日の終わりに、組織病理学のために皮膚の8mmディスクを採取した(生検)。
【0420】
製剤F2およびF4を先ずミニブタで試験した。21日のラグタイムの後、製剤F1およびF10を同じ8匹のミニブタで次に試験した。最後に、第2のラグタイムの後、食塩水を同じ8匹のミニブタで試験した。
【0421】
各製剤/食塩水について、試験を以下の通りに実行した:
・4匹のミニブタ(食塩水では8匹)への溶液の注射
・注入の間:以下のパラメータの生記録:
〇遠隔測定法の測定(ECG)
〇シリンジ逆圧(組織逆圧の計算のため)
〇疼痛マーカー(コルチゾール、サブスタンスP、血液に投薬-定期的な血液サンプリングが必要)
〇疼痛症状(ひっかく、こする、騒音、発赤)、および注入からの水腫のサイズ。
・注入後:
〇注入の終了から90分間の疼痛マーカー
〇5日間の疼痛症状(ひっかく、こする、発赤)(視覚検査、恣意的単位)
〇試料組織(5日後の皮膚生検)の組織病理学
【0422】
疼痛に関する主な結果は、表26に要約する。
【0423】
【0424】
表26では、血漿コルチゾールだけが疼痛マーカーとして報告された。全ての製剤で測定したサブスタンスPのレベルは、経時的に変化しなかった。注射の後に血漿コルチゾールの増加が記録された。各製剤の4匹のミニブタで計算された平均値の最大値は、表26に報告される。その平均の最大値は、F10で得られた。全ての製剤について、4匹の試験動物の間に血漿コルチゾールのレベルの変動があった。
【0425】
F10のための疼痛症状の数も4つの製剤で最も高く、最も高い血漿コルチゾールレベルを有した(
図22)。F2は疼痛症状の2番目に高い数を有し、最も高いサブスタンスPレベルを有した(
図23)。F1およびF2の両方が劣る抗体安定性を有したとの知見は、表26に示されなかった。
【0426】
4つの製剤の注射の間、漏出およびほぼ一定のシリンジ逆圧は観察されなかった。
【0427】
組織病理学に関する主な結果は、表27に要約する。
【0428】
【0429】
真皮および皮下組織は、製剤間で意味のある差を示さなかった。製剤F2は、製剤F1(25%)、F4(25%)、F10(0%)または食塩水(25%)と比較して骨格筋変化のより高い発生率(100%)を示した。
【実施例6】
【0430】
ミニブタでの第2のin vivo研究
この実施例に記載される試験の目的は、3つの異なる流速を使用したミニブタへの皮下注入による単一の投与の後の、イサツキシマブの局所寛容性および血漿薬物動態を調査することであった。さらに、異なる皮下注入の後のイサツキシマブの生物学的利用能を評価するために、動物の1つの群に1回静脈内投薬した。
【0431】
試験試料、IV注入のためのイサツキシマブ500mg/25mL(20mg/mL)およびSC注入のためのイサツキシマブ140mg/mL(実施例5の製剤F4)を使用した。注射用食塩水(0.9%NaCl)を第2、3および4群のための陰性対照品として使用した。
【0432】
試験は、Ellegaard GottingenミニブタA/S、DK-4261 Dalmose、Denmarkからの20匹の雌Gottingen SPF(特定病原体未感染)ミニブタで実行した。動物は、到着時20~25kgの体重で注文した。15日間5日の順化期間を含む)の前処置期間を可能にし、その間、不良状態のいかなる動物も排除するために動物を毎日観察した。全ての観察を記録した。
【0433】
表28に示すように動物を4つの処置群に無作為化した:
【0434】
【0435】
静脈内注入のために、処置の開始の9日前に耳静脈カテーテルを6匹の動物(5+1スペア)に植え込んだ。これらの動物のうちの5匹を第1群(IV注入群)に割り当てた;最後の動物は皮下群の1つに含まれた。
【0436】
全ての投与は、Baxter Colleague CXE測容注入ポンプを使用して実行した。Baxter Colleague CXEポンプは、半硬質容器、硬質容器、フレキシブルIVバッグおよびベント付きシリンジから注入することが可能である。投与の間、試験および陰性対照品は無菌のガラス注入ボトルに入れられた。
【0437】
-処置の初日は1日目と指定した。
-1日目、第1群、植え込まれた耳静脈カテーテルにより3mL/分の流速でイサツキシマブの単一用量(1800mg/動物)を30分注入によって与えた。
-1日目、第2、3および4群、バタフライ針のついた皮下カテーテルによってイサツキシマブの単一用量(1806mg/動物)をそれぞれ0.5、1および2mL/分の流速で与えた。バタフライ針は、膝部の直前の左下腹部に置いた。
-8日目、第2、3および4群、バタフライ針のついた皮下カテーテルによって食塩水の単一用量(陰性対照)をそれぞれ0.5、1および2mL/分の流速で与えた。バタフライ針は、膝部の直前の右下腹部に置いた。
-投与量は第1群で90mLおよび第2~4群で12.9mLであった。
-注入の間、第2~4群の皮下注射部位を漏出について観察した。
-皮下注射部位は注入処置の間に生じる局所腫脹の縁に沿ってマークし、必要に応じて再マークした。
-SC注入のための針サイズは23Gであった。
【0438】
不健康およびいかなる挙動変化の全ての徴候は、毎日記録した。標準からのいかなる逸脱も記録した。投与の間、ストレス、不快感または疼痛のいかなる徴候も重点的に、動物を一般的挙動およびいかなる発声についても観察した。
【0439】
第2~4群については、出血、紅斑、腫脹(小疱形成、サイズを表示)および堅さについて皮下注射部位を投与日から毎日観察したが、他の徴候を排除しなかった。投与日に、注入の前および注入の終了時、その後投与の終わりから15分(±2分)、30分(±2分)、1時間(±3分)、2時間(±6分)および4時間(±12分)の後に注射部位を観察した。
その後、局所反応が10日目から観察されなかったので、注射部位を17日目まで毎日観察した。パラメータは、以下の格付けシステムにより評価した:0-存在しない;1-最小;2-わずか;3-中等度;および4-著しい。
【0440】
薬物動態のための血液試料
1日目に開始して、血液試料を全ての動物からとった。血液採取は、以下の時点に実行した:処置前、注入の終了から2分以内、注入の終わりから1(±3分)、4(±12分)、24(±1時間12分)、48(±2時間24分)、72、96、168、192、264、336、504および672時間の後(72時間±3時間の寛容性)。
【0441】
薬物動態学的(Pk)分析は、Pharsight Corporation、Mountain View、CA、USAによるソフトウェアPhoenix WinNonlin6.3版を使用して実行した。適当な場合、WinNonlin血漿モデル(静脈内注入および脈管外投与モデル)を使用した非コンパートメント分析を実行した。
【0442】
薬物動態学的計算のために、各個々の動物からの血漿濃度-時間データを使用した。個々の動物のためのパラメータ推定値に加えて、適当な場合、記述的統計(例えば、平均、標準偏差および変動係数)を報告した。各動物の全てのパラメータは、1日目の処置の後の血漿中の個々の試験品濃度から生成された。個々の薬物動態学的パラメータの決定のために、定量限界未満の濃度はゼロとして扱った。平均濃度の決定のために、定量限界未満の試料はゼロとして扱った。
【0443】
パラメータは、名目上の用量レベルを使用して推定した。公称から15%を超える時間逸脱が実証されなかったので、パラメータは公称サンプリング時間を使用して推定した。1日目の投与前濃度は、ゼロに設定した。
【0444】
記述的統計(平均、標準偏差、適用可能な場合)および薬物動態学的パラメータは、3つの有効桁まで報告した。変動係数は、小数位なしで報告した。
【0445】
イサツキシマブのために以下のPKパラメータを推定した:
・Cmax-観察された最大濃度、
・tmax-最大濃度の時間、
・Clast-最後の測定可能な濃度、
・tlast-最後の測定可能な濃度の時間、
・AUC0~24時間-0から24時間までの血漿濃度-時間曲線下の面積を、線形台形公式を使用した非コンパートメント分析によって計算した、
・AUC0~72時間-0から72時間までの血漿濃度-時間曲線下の面積を、線形台形公式を使用した非コンパートメント分析によって計算した、
・AUC0~168時間-0から168時間までの血漿濃度-時間曲線下の面積を、線形台形公式を使用した非コンパートメント分析によって計算した、
・AUC0~t-tは最後の測定可能な濃度の時間である0からtまで計算した血漿濃度-時間曲線下の面積は、線形台形公式を使用した非コンパートメント分析によって計算した、
・IV注入と比較したSC注入の生物学的利用能を、AUC0~24時間、AUC0~72時間、AUC0~168時間AUC0~tを使用して評価した。
【0446】
さらなるパラメータ(すなわち、t1/2z、Vz.、CL)を、IV経路について計算した。
【0447】
SC注射部位(第2~4群)からの皮膚生検の収集
8日目および29日目の両日に、組織病理学のために6mm生検パンチを使用して深さ概ね7~10mmの3つの皮膚生検を第2~4群の全ての動物の左皮下注入部位(試験品部位)からとった。注入の間に動物をモニタリングできるように、8日目の収集は食塩水(陰性対照)の投与の後に実行した。
【0448】
8日目に収集した生検(生検番号1~3)は、注入領域の頭側半分からとった。生検番号1は背側の領域から、生検番号2は中央領域から、生検番号3は腹側部分から収集した。29日目に収集した生検は、注入領域の尾側の半分から同様に収集した。さらに、投与領域の外側からの未処置対照(生検番号4)は、両日に全ての動物の同じ領域から収集した。
【0449】
15日目および36日目の両日に、皮膚生検を第2~4群の全ての動物の右皮下注入部位(食塩水部位)から同様に収集した。
【0450】
15日目に収集した生検(生検番号5~7)は、注入領域の頭側半分からとった。生検番号5は背側の領域から、生検番号6は中央領域から、生検番号7は腹側部分から収集した。36日目に収集した生検は、注入領域の尾側の半分から同様に収集した。さらに、投与領域の外側からの未処置対照(生検番号8)は、両日に全ての動物の同じ領域から収集した。
【0451】
各動物からの各生検を別々の容器に入れ、リン酸バッファー中性4%ホルムアルデヒドで固定した。
【0452】
結果
試験試料関連の臨床徴候は、動物のいずれでも観察されなかった。
【0453】
3匹の動物(番号4、第1群、ならびに番号6および7、第2群)では、皮膚は1日目および2日目に触ると温かいようであった。しかし、影響を及ぼされた動物の数は低かったので、これは偶発的な所見とみなされた。
【0454】
全ての群で、注入部位における局所反応を注入日に評価した。他の日には、スコアが得られなかった。
【0455】
1日目(イサツキシマブ)の第2群(0.5mL/分)で、わずかな紅斑が全ての動物で主に注入部位で注目され、注入の終了から最初の2時間以内に最小から中等度の腫脹(小疱形成)が3匹の動物で観察された。さらに、3匹の動物は注入の終了から最初の15分以内に最小の出血があった。
【0456】
8日目(0.5mL/分の食塩水)の第2群で、最小の紅斑が全ての動物で主に注入部位で注目され、注入の終了から最初の2時間以内に最小から中等度の腫脹(小疱形成)が2匹の動物で観察された。さらに、最小の出血が注入の終了後に3匹の動物で観察された。
【0457】
1日目(イサツキシマブ)の第3群(1mL/分)で、最小からわずかな紅斑が4匹の動物で注入の終了から最初の4時間以内に注入部位で観察され、最小から著しい腫脹(小疱形成)が3匹の動物で見られ、注入の終了から4時間後までにサイズが減少した。最小の出血、および1匹の動物ではわずかな出血が、注入の終了から最初の30分以内に3匹の動物で観察された。
【0458】
8日目(1mL/分の食塩水)に第3群で、最小からわずかな紅斑が全ての動物で注入の終了から最初の4時間以内に注入部位で観察され、1匹の動物は投与後に最小から中等度の腫脹(小疱形成)を有し、注入の終了から2時間後までにサイズが減少した。最小の出血、および1匹の動物ではわずかな出血が、注入の終了から最初の15分以内に全ての動物で観察された。
【0459】
1日目(イサツキシマブ)の第4群(2mL/分)で、最小からわずかな紅斑(1匹の動物では中等度)が4匹の動物で注入の終了から最初の2時間以内に注入部位で観察され、最高で著しい腫脹(小疱形成)が投与後の動物で見られ、注入の終了から4時間後までにサイズが減少した。2匹の動物は注入の終わりに最小の出血を示した。
【0460】
8日目(2mL/分の食塩水)に第4群で、最小の(2例ではわずかな)紅斑が全ての動物で注入の終了から最初の30分以内に主に注入部位で観察され、最高で中等度の腫脹(小疱形成)が投与後の2匹の動物で見られ、注入の終了から1時間後までにサイズが減少した。注入の終わりに2匹の動物で最小の出血が観察された。
【0461】
注入の間に漏出の徴候は観察されなかった。
【0462】
【0463】
薬物動態
経時的なイサツキシマブの個々の血漿濃度は、
図24~27に示す。
【0464】
血漿レベルデータの非コンパートメント薬物動態学的分析は、Phoenix WinNonlin6.3版の薬物動態学ソフトウェアを使用して実行した。
【0465】
【0466】
定量化下限(LLOQ)未満であった第4群雌ではSC注入の終わりに、第3群雌ではSC注入から1時間後に採取された単一の試料を除いて、イサツキシマブは注入の終わり以降に収集された試験の全ての血漿試料で定量化可能であった。全ての投与前試料中の濃度は、LLOQ未満であった。SCおよびIV経路について、プロファイルは脈管外および静脈内投与とそれぞれ一貫していた。全体として、PKパラメータで観察された変動性はIV注入で低く、SC注入では低いから中等度であった。
【0467】
ミニブタへの30分間の1動物あたり1800mgのイサツキシマブの単回IV注入の後、最大血漿レベルが全ての動物で注入期間の終わりに全て観察された。0.5、1または2mL/分の流速でのミニブタへの1動物あたり1806mgのイサツキシマブの単回SC注入の後、注入の終わりから96、192および168時間後に中央最大血漿レベルがそれぞれ観察された。しかし、個々のTmax値は48~264時間の範囲内であって、SC注入速度との関係を示さなかった。
【0468】
ミニブタへの30分間の1動物あたり1800mgのイサツキシマブの単回IV注入の後、投与後の完全な672時間のサンプリング期間にわたる平均AUC(AUClast)は、364,000時間*μg/mLであった。0.5、1または2mL/分の流速でのミニブタへの1動物あたり1806mgのイサツキシマブの単回SC注入の後、投与後の完全な672時間のサンプリング期間にわたる平均AUC(AUClast)は、それぞれ326,000、565,000および369,000時間*μg/mLであった。AUClast値は各SC群で全般的に類似しており、曝露に注入速度が影響を及ぼさないことを示唆した。
【0469】
この試験条件の下で、0.5、1または2mL/分の流速でミニブタへSC注入によって与えられるとき、イサツキシマブの絶対SC生物学的利用能は、考慮したAUC間隔の各々で試験された3つの流速で広く類似していた。投与後の完全な672時間のサンプリング期間のAUC(AUClast)を使用して計算したとき、生物学的利用能はAUC区間の増加とともに増加し、0.5、1および2mL/分の流速で0.89、1.55および1.01のF値にそれぞれ到達した。1mL/分で注入した群では、推定された高いF値は、この群で注目されたより高い変動性に関連していた;明らかなより高い曝露を示した2/5の動物の寄与。
【0470】
全体として、0.5~2mL/分の流速でのSC注入による1動物あたり1806mg(140mg/mLの溶液)の用量で与えられたときのミニブタにおけるイサツキシマブの絶対SC生物学的利用能は少なくとも89%であったと結論付けられた。
【0471】
皮膚生検の顕微鏡検査
注射部位皮膚生検の顕微鏡検査で、いかなる皮下群においても処置関連の変化は観察されなかった。顕微鏡所見は主に単核細胞の最小の病巣の浸潤および最小の病巣表皮痂皮であって、皮下投与群の間で所見の発生率および形態に差はなかった。同様に、投与群(同じ注入速度)の中の食塩水(陰性対照)処置注射部位を試験試料処置注射部位と比較した場合、所見は類似しているとみなされた。全ての顕微鏡所見は、Gottingenミニブタの皮膚における周知の偶発的バックグラウンド変化であるとみなされた。
【0472】
考察
イサツキシマブは、1動物あたり1800mgの投与量および3mL/分の流速での静脈内注入(20mg/mLの溶液として)によって、または1動物あたり1806mgの投与量および0.5、1または2mL/分の流速の皮下注入として(実施例5の製剤F4の140mg/mLの溶液として)与えた場合、雌Gottingenミニブタに与えたとき、臨床的および組織病理学的に非常によく許容された。
【0473】
全ての群の皮下注射部位における局所反応は、注入日にその部位で観察されただけだった。
【0474】
紅斑および出血の発生率および重症度スコアは、試験した3つの皮下流速(0.5、1および2mL/分)の間で同等であり、イサツキシマブおよび食塩水陰性対照で類似していた。しかし、注入部位での腫脹(小疱形成)は、0.5mL/分と比較して1mL/分および2mL/分で注入されたイサツキシマブでより鮮明であった。これは、おそらく単一の部位に注射された大きな量に関係した物理的現象であって、重症度は注入部位からの流体の一定の除去速度の注入時間に反比例していた。さらに、腫脹は食塩水の注入の後よりイサツキシマブの注入の後に顕著であった。食塩水の注入の後の腫脹は、全ての3つの流速で同等だった。
【0475】
注射部位皮膚生検の顕微鏡検査で、いかなる皮下群においても処置関連の変化は観察されなかった。
【0476】
ミニブタへの30分間の1動物あたり1800mgのイサツキシマブの単回IV注入の後、最大血漿レベルが全ての動物で注入期間の終わりに全て観察された。0.5、1または2mL/分の流速でのミニブタへの1動物あたり1806mgのイサツキシマブの単回SC注入の後、注入の終わりから96、192および168時間後に中央最大血漿レベルがそれぞれ観察された。しかし、個々のTmax値は48~264時間の範囲内であって、SC注入速度との関係を示さなかった。
【0477】
ミニブタへの30分間の1動物あたり1800mgのイサツキシマブの単回IV注入の後、投与後の完全な672時間のサンプリング期間にわたる平均AUC(AUClast)は、364,000時間*μg/mLであった。0.5、1または2mL/分の流速でのミニブタへの1動物あたり1806mgのイサツキシマブの単回SC注入の後、投与後の完全な672時間のサンプリング期間にわたる平均AUC(AUClast)は、それぞれ326,000、565,000および369,000時間*μg/mLであった。AUClast値は各SC群で全般的に類似しており、曝露に注入速度が影響を及ぼさないことを示唆した。
【0478】
この試験条件の下で、0.5、1または2mL/分の流速でミニブタへSC注入によって与えられるとき、実施例4のF4で製剤化されたイサツキシマブの絶対SC生物学的利用能は、考慮したAUC区間の各々で試験された3つの流速で広く類似していた。投与後の完全な672時間のサンプリング期間のAUC(AUClast)を使用して計算したとき、生物学的利用能はAUC区間の増加とともに増加し、0.5、1および2mL/分の流速で0.89、1.55および1.01のF値にそれぞれ到達した。1mL/分で注入した群では、推定された高いF値は、この群で注目されたより高い変動性に関連していた;明らかなより高い曝露を示した2/5の動物の寄与。
【実施例7】
【0479】
ヒトにおける皮下イサツキシマブのフェーズ1b研究
この実施例は、再発した/難治性の多発性骨髄腫(RRMM)を有する患者における、ポマリドミドおよびデキサメタゾンと併用した皮下および静脈内のイサツキシマブの薬物動態、安全性および効力を調査するための多施設非盲検フェーズ1b研究を記載する。
【0480】
本研究は、イサツキシマブのSC投与を初めて調査するように設計されていた。さらに、SC製剤は、IV投与のために使用される製剤と同じでなかった。ポマリドミドおよびデキサメタゾンと併用されるイサツキシマブSCは、上で指摘した以前の研究におけるのと類似の患者集団で投与された。イサツキシマブSCに対する安全性およびPKの調査を可能にするために、この研究はイサツキシマブIV投与を有するコホートも含んでいた。
【0481】
この研究のプライマリーエンドポイントは、(i)静脈内投与された(IV)イサツキシマブに対する注入ポンプを使用して皮下投与された(SC)イサツキシマブの安全性および許容度(局所注射部位の許容度を含む)を評価すること;ならびに(ii)ポマリドミドおよびデキサメタゾンと併用してSCおよびIV投与されるときのイサツキシマブの薬物動態を評価することである。この研究の二次エンドポイントは、(i)イサツキシマブSCおよびIVの絶対生物学的利用能の推定;(ii)SC投与対IV投与の後の骨髄吸引液からの形質細胞中のイサツキシマブのCD38受容体占有率(RO)を測定すること;ならびに(iii)イサツキシマブSC/IV投与の効力を評価することを含んでいた。
【0482】
本研究は、5コホートの協力者を含んでいた。患者は、コホート1a(SC 1000mg投与量)または1b(IV)に無作為化された(2:1の無作為化比)。コホート1aでのイサツキシマブSCの安全性、PKおよびROデータの評価の後、さらなる協力者がコホート2aまたは2bに無作為化され(2:1の無作為化比)、イサツキシマブSCのより高い投与量はコホート2a(1400mg投与量)で、コホート2bでは同じIV投与量であった。コホート2aおよび2bの全ての患者が処置のサイクル1を完了すると、イサツキシマブSCおよびIVの投与の後の安全性、PKおよびROデータの最終レビューを行った。推奨されたフェーズ2投与量(RP2D)レベルの確認の後、さらなる22人の患者をコホート2cに動員し、この投与量レベルでイサツキシマブSCを投与した。表31は、コホート別の処置をさらに詳細に記載する。
【0483】
【0484】
ポマリドミドおよびデキサメタゾンと併用して、イサツキシマブを週1回4週間(サイクル1)、ならびに各以降のサイクルの1日目および15日目に投与した。各サイクルは、期間が28日間であった。全ての研究協力者は、疾患進行、許容されない有害反応または中止の他の理由まで処置を継続した。
【0485】
コホート1a、2aおよび2cは皮下(SC)注入により、140mg/mLのイサツキシマブ、9mMのヒスチジン、110mMのアルギニン一塩酸塩、2(w/v)%スクロースおよび0.4(w/v)%ポロキサマー188を含むイサツキシマブの製剤pH6.2を受けた。コホート1a、2aおよび2cは、28日サイクルごとに1日目から21日目に4mgのポマリドミドを経口的に(p.o.);ならびに28日サイクルごとに1、8、15および22日目に4mgのデキサメタゾンを経口的にさらに受けた。
【0486】
コホート1bおよび2bは、20mg/mLのイサツキシマブ、20mMのヒスチジン、10(w/v)%スクロースおよび0.02(w/v)%ポリソルベート80を含むイサツキシマブの異なる製剤pH6.0を静脈内(IV)注入によって受けた。コホート1bおよび2bは、28日サイクルごとに1日目から21日目に4mgのポマリドミドを経口的に(p.o.);ならびに28日サイクルごとに1、8、15および22日目に4mgのデキサメタゾンを経口的にさらに受けた。
【0487】
コホート1aおよびコホート2aのサイクル1(最初の4週間)からの安全性、PKおよびROデータは、コホート2aまたは2cに進む前にそれぞれレビューされた。
【0488】
コホート1(a/b)および2(a/b)で収集される安全性、PKおよびROデータのレビューは、最適なSCイサツキシマブ投与量RP2Dの選択を裏付けるために使用された。
【0489】
80%SC生物学的利用能を仮定しても、イサツキシマブ濃度(28日目のトラフ血漿濃度[Ctrough])が、クリニックで安全であることが示された、10mg/kgでのIV投与および20mg/kgよりずっと低いIVの後に観察される28日目の濃度に類似した範囲内にあることを実証したPKモデル化およびシミュレーションに基づいて、初回投与量として1000mgのイサツキシマブ投与量が選択された。1000mgより低い投与量は、イサツキシマブのPK非線形性のために初回投与量として考えられなかった。
【0490】
SCイサツキシマブの1400mg投与量の選択は、IVデータ(n=127)で構築された集団PKモデルに基づく。このモデルは、絶対生物学的利用能2:50%を仮定して、QWx4/Q2Wとして投与される1400mgのSCイサツキシマブが、Ctroughを10mg/kgのIV QWx4/Q2Wの後に到達するレベルより上に維持することを示した。PK/PD分析は、4週後のCtroughが応答(客観的応答率、IV投与)の有意な予測因子であることを実証した。
【0491】
患者選定基準は、以下を含む:
標準の判定基準に基づいて多発性骨髄腫(MM)と以前に診断され、International Myeloma Working Group(IMWG)判定基準により応答の後にMMが再発したので処置を目下必要とする患者。
【0492】
レナリドマイドおよびプロテアソーム阻害剤を含む少なくとも2つの以前の療法を受け、最後の療法中にまたは最後の療法の完了後に疾患進行を示していた患者;ならびに
以下の少なくとも1つとして規定される測定可能な疾患を有する患者:
・≧0.5g/dL(≧5g/L)の血清Mタンパク質;
・≧200mg/24時間の尿Mタンパク質;および
・血清遊離軽鎖(FLC)アッセイ:FLCアッセイ≧10mg/dL(≧100mg/L)および異常な血清FLC比(<0.26または>1.65)が含まれた。
【0493】
以下のバイオマーカー分析のために骨髄および血液試料を収集した:
・イサツキシマブのCD38受容体占有率を骨髄吸引液からの形質細胞で測定し、PKおよび臨床応答のパラメータと相関させる。スクリーニング時およびサイクル2の1日目(投与前)に骨髄試料を収集した。RP2DイサツキシマブSC投与量が選択されると(コホート1a/bおよびコホート2a/bだけ)、この試料収集は停止された。
・骨髄吸引液において次世代シークエンシングによって最小の残留疾患(MRD)を調査し、臨床応答のパラメータと相関させた。
骨髄試料は、全ての協力者についてスクリーニング時に、および完全応答(CR)または非常に優れた部分的応答(VGPR)の最大確定応答の時に収集した。スクリーニング時の試料は、VGPR以上に到達する協力者のために分析するだけであった。
・イサツキシマブ干渉を除くアッセイを使用して、免疫電気泳動および免疫固定アッセイにおけるMタンパク質調査に対する潜在的イサツキシマブ干渉を血清試料で調査した。
【配列表】
【国際調査報告】