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特表2023-505222免疫増強および腫瘍処置のための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(54)【発明の名称】免疫増強および腫瘍処置のための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 41/00 20200101AFI20230201BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230201BHJP
   A61K 31/409 20060101ALI20230201BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230201BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230201BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230201BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230201BHJP
【FI】
A61K41/00
A61P35/00
A61K31/409
A61P35/04
A61P37/04
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K47/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533442
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(85)【翻訳文提出日】2022-07-26
(86)【国際出願番号】 US2020063444
(87)【国際公開番号】W WO2021113734
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】62/945,053
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518055877
【氏名又は名称】ラクテン・メディカル,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア-グスマン ミゲル
(72)【発明者】
【氏名】フォン ジェリー
(72)【発明者】
【氏名】ソーン エイミー
(72)【発明者】
【氏名】シュ ミシェル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA11
4C084NA05
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB09
4C084ZB26
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA21
4C085AA25
4C085BB31
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB04
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA05
4C086NA05
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZB09
4C086ZB26
(57)【要約】
腫瘍、病変、またはがんを有する対象を処置するための組成物、組み合わせ、ならびに方法および使用が提供される。いくつかの局面において、方法および使用は、フタロシアニン色素、例えば、IR700とコンジュゲートされた、PD-L1に結合するターゲティング分子の投与を含む。いくつかの局面において、コンジュゲートの投与の後に、標的区域が、コンジュゲートの活性化のために適当な光の波長によって照射される。いくつかの局面において、照射は、PD-L1発現細胞の死滅を導く。提供された態様は、腫瘍、病変、またはがん、例えば、転移性腫瘍細胞、浸潤性腫瘍細胞、不均一な腫瘍、および/または他の治療に対して非応答性かつ/もしくは抵抗性である腫瘍の成長阻害、体積低下、および排除をもたらす。本開示は、免疫応答、例えば、抗腫瘍免疫応答または抗がん免疫応答の増強のための、腫瘍成長に対する応答のための、および腫瘍、病変、またはがんの有効な処置のための組成物、組み合わせ、方法、および使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを、免疫チェックポイント阻害剤による処置に対する感受性が低下している腫瘍細胞を含む腫瘍または病変を有する対象へ投与する工程;および
(b)600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で、対象における腫瘍または病変が位置している標的区域を照射する工程
を含む、腫瘍または病変を処置する方法であって、
照射の後に、腫瘍または病変の成長、サイズ、または生存能が低下または阻害される、
前記方法。
【請求項2】
(a)PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを、過去の免疫治療に対して低い応答を有した、非応答性であった、抵抗性であった、不応性であった、応答することに失敗した、または後に再発した腫瘍または病変を有する対象へ投与する工程;および
(b)600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で、腫瘍または病変が位置している標的区域を照射する工程
を含む、腫瘍または病変を処置する方法であって、
標的区域におけるPD-L1発現細胞の死滅をもたらす、前記方法。
【請求項3】
過去の免疫治療が免疫チェックポイント阻害剤による処置である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
対象が、PD-1/PD-L1遮断治療を含む過去の免疫治療に対する一次抵抗性または獲得抵抗性を有する、請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
(a)PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを、免疫チェックポイント阻害剤に関して未処置であるかまたは免疫チェックポイント阻害剤による処置を以前に受容したことがない対象へ投与する工程;および
(b)600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で、対象における腫瘍または病変が位置している標的区域を照射する工程
を含む、腫瘍または病変を処置する方法であって、
照射の後に、腫瘍または病変の成長、サイズ、または生存能が低下または阻害される、
前記方法。
【請求項6】
第1の腫瘍もしくは病変を処置するため、その成長を阻害するため、かつ/またはそのサイズを低下させるため、対象がコンジュゲートを投与され;前記方法が、第1の腫瘍または病変から遠位に位置する1つまたは複数の第2の腫瘍または病変の出現、成長、または確立を阻害、遅延、または防止する、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
(a)PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを、腫瘍または病変を有する対象へ投与する工程;および
(b)600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で、第1の腫瘍または病変の内部の標的区域を照射する工程
を含む、第1の腫瘍または病変を有する対象を免疫する方法であって、
第1の腫瘍または病変の成長が阻害され、かつ/またはそのサイズが低下し;処置された第1の腫瘍または病変から遠位に位置する1つまたは複数の第2の腫瘍または病変の出現、成長、または確立が阻害、遅延、または防止される、
前記方法。
【請求項8】
第2の腫瘍または病変が第1の腫瘍または病変の転移である、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
第1の腫瘍または病変の近傍におけるPD-L1発現細胞の死滅をもたらし、かつ/または免疫細胞応答を活性化し、それによって、第2の腫瘍または病変の出現、成長、または確立を阻害、遅延、または防止する、請求項6~8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
第2の腫瘍または病変が表現型的にかつ/または遺伝子型的に第1の腫瘍または病変と同一である、請求項6~9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
第2の腫瘍または病変が表現型的にかつ/または遺伝子型的に第1の腫瘍または病変と異なる、請求項6~9のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
第2の腫瘍または病変が第1の腫瘍または病変の転移に由来しない、請求項6または7記載の方法。
【請求項13】
PD-L1発現細胞またはPD-L1発現免疫細胞の死滅をもたらす、請求項1~12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
腫瘍または病変が腫瘍細胞を含み、該腫瘍細胞が免疫チェックポイントタンパク質を発現しないかまたは免疫チェックポイントタンパク質の低下した発現を有する、請求項1~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
免疫チェックポイントタンパク質が、PD-L1、PD-1、およびCTLA-4の中から選択される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
腫瘍細胞が、炎症刺激に応答してPD-L1を発現しない、請求項14または15記載の方法。
【請求項17】
炎症刺激がインターフェロンである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
腫瘍細胞が抗PD-L1抗体によって特異的に認識されない、請求項14~17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
腫瘍または病変がPD-L1陰性腫瘍細胞を含む、請求項1~18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
腫瘍または病変における腫瘍細胞の少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは95%、または少なくとも約40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは95%がPD-L1陰性腫瘍細胞である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
処置が腫瘍もしくは病変の再成長を遅延させるか、腫瘍もしくは病変に関連したがんの再発を防止するか、または腫瘍もしくは病変に関連したがんの寛解の期間を延長する、請求項1~20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
腫瘍もしくは病変の成長の阻害および/またはPD-L1発現細胞の死滅が、CD8+T細胞の存在に依存する、請求項1~21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
対象が、免疫チェックポイント阻害剤に対して未処置であるかまたは免疫チェックポイント阻害剤による処置を以前に受容したことがない、請求項1および6~22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
対象が免疫チェックポイント阻害剤によって以前に処置されたことがある、請求項1、2、および6~22のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
対象が、免疫チェックポイント阻害剤による以前の処置に対して低い応答を有した、非応答性であった、抵抗性であった、不応性であった、応答することに失敗した、または後に再発した、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記方法の実施に起因する腫瘍または病変の成長、サイズ、または生存能の阻害が、免疫チェックポイント阻害剤による以前の処置に起因する阻害と比較して、より大きい、請求項24または25記載の方法。
【請求項27】
免疫チェックポイント阻害剤がPD-L1、PD-1、またはCTLA-4の阻害剤である、請求項24~26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
免疫チェックポイント阻害剤がPD-1阻害剤である、請求項24~27のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
PD-1阻害剤が抗PD-1抗体である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
免疫チェックポイント阻害剤がPD-L1阻害剤である、請求項24~27のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
PD-L1阻害剤が抗PD-L1抗体である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
腫瘍もしくは病変および/または腫瘍もしくは病変の微小環境における免疫細胞の数または活性を増加させる、請求項1~31のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
標的区域が、PD-L1を発現する免疫細胞を含む、請求項1~32のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
PD-L1発現細胞が免疫細胞である、請求項2~32のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
免疫細胞が、単球、マクロファージ、樹状細胞(DC)、M2腫瘍関連マクロファージ(M2 TAM)、免疫寛容原性樹状細胞(tDC)、および骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)からなる群より選択される、請求項33または34記載の方法。
【請求項36】
免疫細胞が腫瘍、腫瘍微小環境、またはリンパ節に位置している、請求項33~35のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
コンジュゲートの投与の前に、対象が、CD8+T細胞浸潤の低い数またはレベルを有する腫瘍または病変を有する、請求項1~36のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
投与および照射の後に、腫瘍もしくは病変または腫瘍もしくは病変の微小環境における免疫細胞の数、レベル、または活性が増加する、請求項1~37のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
投与および照射の後に、腫瘍または病変におけるCD8+T細胞浸潤の数またはレベルが増加する、請求項37または38記載の方法。
【請求項40】
投与および照射の後に、腫瘍または病変の近傍における記憶T細胞の数またはレベルが増加する、請求項37~39のいずれか一項記載の方法。
【請求項41】
ターゲティング分子が、PD-L1に結合する抗体、抗原結合抗体断片、もしくは抗体様分子であるか、またはそれを含む、請求項1~40のいずれか一項記載の方法。
【請求項42】
ターゲティング分子が、抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合断片であるか、またはそれを含む、請求項41記載の方法。
【請求項43】
抗体または抗原結合断片が、アテゾリズマブ(MPDL3280A、Tecentriq、RG7446)、アベルマブ(Bavencio)、BCD-135、BGB-A333、BMS-936559(MDX-1105)、CBT-502(TQB-2450)、コシベリマブ(cosibelimab)(CK-301)、CS1001(WPB3155)、デュルバルマブ(MEDI4736、Imfinzi)、FAZ053、HLX20、INBRX-105、KN035、KN046、LDP、LY3300054、LY3415244、M7824(MSB0011359C)、MCLA-145、MSB2311、NM-01、REGN3504、SHR-1316(HTI-1088)、STI-3031(IMC-001、STI-A1015)、TG-1501、およびZKAB001(STI-A1014)からなる群より選択される抗体に由来する相補性決定領域(CDR)を含む、請求項42記載の方法。
【請求項44】
抗体または抗原結合断片が、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、KN035、またはCK-301に由来する相補性決定領域(CDR)を含む、請求項42または43記載の方法。
【請求項45】
抗体または抗原結合断片が、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、KN035、およびCK-301、またはそれらのバイオシミラー(biosimilar)、交換可能物(interchangeable)、バイオベター(biobetter)、コピーバイオロジカル(copy biological)、もしくはバイオジェネリック(biogeneric)、またはそれらの抗原結合断片からなる群より選択される、請求項42~44のいずれか一項記載の方法。
【請求項46】
抗体または抗原結合断片が、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、KN035、およびCK-301からなる群より選択される、請求項42~45のいずれか一項記載の方法。
【請求項47】
標的区域がリンパ節またはリンパ節の近傍である、請求項1~46のいずれか一項記載の方法。
【請求項48】
投与および照射の後に、対象が、持続的な応答、延長された無増悪生存期間、再発の低下した確率、および/または転移の低下した確率を示す、請求項1~47のいずれか一項記載の方法。
【請求項49】
フタロシアニン色素がSi-フタロシアニン色素である、請求項1~48のいずれか一項記載の方法。
【請求項50】
Si-フタロシアニン色素がIR700である、請求項49記載の方法。
【請求項51】
照射がコンジュゲートの投与の30分~96時間後に実施される、請求項1~50のいずれか一項記載の方法。
【請求項52】
照射がコンジュゲートの投与の24時間±4時間後に実施される、請求項1~51のいずれか一項記載の方法。
【請求項53】
標的区域が690±40nmの波長で照射される、請求項1~52のいずれか一項記載の方法。
【請求項54】
標的区域が50J/cm2もしくは約50J/cm2または100J/cmファイバー長もしくは約100J/cmファイバー長の線量で照射される、請求項1~53のいずれか一項記載の方法。
【請求項55】
腫瘍または病変が、結腸がん、結腸直腸がん、膵臓がん、乳がん、皮膚がん、肺がん、非小細胞肺がん、腎細胞がん、甲状腺がん、前立腺がん、頭頸部がん、胃腸がん、胃がん、小腸のがん、紡錘細胞悪性腫瘍、肝がん、肝臓がん、末梢神経のがん、脳がん、骨格筋のがん、平滑筋のがん、骨がん、脂肪組織のがん、子宮頸がん、子宮がん、生殖器のがん、リンパ腫、および多発性骨髄腫からなる群より選択されるがんに関連している、請求項1~54のいずれか一項記載の方法。
【請求項56】
前記方法の工程のうちの1つまたは複数が繰り返される、請求項1~55のいずれか一項記載の方法。
【請求項57】
コンジュゲートの投与が1回または複数回繰り返され、任意で、コンジュゲートの繰り返された各投与の後に照射工程が繰り返される、請求項56記載の方法。
【請求項58】
付加的な治療剤または抗がん処置を投与する工程をさらに含む、請求項1~57のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、「免疫増強および腫瘍処置のための方法(METHODS FOR ENHANCING IMMUNITY AND TUMOR TREATMENT)」という名称の2019年12月6日に出願された米国仮出願第62/945,053号に基づく優先権を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が組み入れられる。
【0002】
分野
本開示は、腫瘍、病変、またはがんを有する対象を処置するための組成物、組み合わせ、ならびに方法および使用に関する。いくつかの局面において、方法は、フタロシアニン色素、例えば、IR700とコンジュゲートされた、PD-L1に結合するターゲティング分子の、対象への投与を含む。いくつかの局面において、ターゲティング分子-フタロシアニン色素コンジュゲートの投与の後に、標的区域が、コンジュゲートのフタロシアニン色素の活性化のために適当な光の波長によって照射される。いくつかの局面において、照射は、PD-L1を発現する細胞の細胞死滅を導く。提供された態様は、腫瘍、病変、またはがん、例えば、転移性腫瘍細胞、浸潤性腫瘍細胞、不均一な腫瘍、および/または他の治療に対して抵抗性である腫瘍の成長阻害、体積低下、および排除をもたらす。本開示は、免疫応答、例えば、抗腫瘍免疫応答または抗がん免疫応答の増強、腫瘍成長に対する応答、および腫瘍、病変、またはがんの有効な処置のための組成物、組み合わせ、方法、および使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
背景
免疫チェックポイント阻害剤、低分子標的治療、およびその他の抗がん治療薬を含む、がんを処置するための多くの治療薬が、毎年、開発されている。しかしながら、一部の患者は、それらの治療薬に対して非応答性であり、がん患者の大多数が、処置の課程で受容する治療薬に対して、最終的には、非応答性または抵抗性を発症し、疾患進行およびがんに関係する死に至る。これらの臨床的課題を解決するための新規の組成物および方法が、緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
概要
PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートの、腫瘍または病変を有する対象への投与を含む、免疫細胞応答を活性化することによって、対象における腫瘍または病変を処置するための方法および使用が、本明細書において提供される。任意の態様のいくつかにおいて、コンジュゲートは、PD-L1に結合する抗体と、フタロシアニン色素IR700とを含む。任意の態様のいくつかにおいて、方法は、PD-L1発現細胞が位置している標的部位を照射する工程も含む。例えば、任意の態様のいくつかにおいて、標的区域は、600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で照射される。任意の態様のいくつかにおいて、方法および使用は、PD-L1を発現する細胞の死滅をもたらすか、または導く。任意の態様のいくつかにおいて、方法および使用は、腫瘍もしくは病変の成長の低下もしくは阻害、ならびに/または腫瘍転移および/もしくは新たに発生する腫瘍の低下もしくは阻害をもたらすか、または導く。
【0005】
PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを、腫瘍または病変を有する対象へ投与する工程;および600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で、PD-L1発現免疫細胞が位置している標的区域を照射する工程を含む、免疫細胞応答を活性化することによって対象における腫瘍または病変を処置するための方法および使用も、本明細書において提供される。任意の態様のいくつかにおいて、方法または使用は、PD-L1発現免疫細胞の死滅をもたらし、それによって、腫瘍または病変の成長を阻害する。
【0006】
PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを、免疫チェックポイント阻害剤による処置に対する感受性が低下している腫瘍細胞を含む腫瘍または病変を有する対象へ投与する工程;および600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で、対象における腫瘍または病変が位置している標的区域を照射する工程を含む、対象における腫瘍または病変を処置するための方法および使用であって、照射の後に、腫瘍または病変の成長、サイズ、または生存能が低下または阻害される、方法および使用も、本明細書において提供される。
【0007】
PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを、過去の免疫治療に対して低い応答を有した、非応答性であった、抵抗性であった、不応性であった、応答することに失敗した、または後に再発した腫瘍または病変を有する対象へ投与する工程;および600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で、腫瘍または病変が位置している標的区域を照射する工程を含む、腫瘍または病変を処置するための方法および使用も、本明細書において提供される。任意の態様のいくつかにおいて、方法および使用は、標的区域におけるPD-L1発現細胞の死滅をもたらす。
【0008】
腫瘍または病変のための過去の免疫治療に対して低い応答を有するかまたは非応答性である対象を処置するための方法および使用も、本明細書において提供される。任意の態様のいくつかにおいて、方法および使用は、腫瘍または病変のための過去の免疫治療に対して低い応答を有するかまたは非応答性である対象を同定する工程;(b)PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを、過去の免疫治療に対して低い応答を有するかまたは非応答性である腫瘍または病変を有する対象へ投与する工程;および(c)600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で、PD-L1発現細胞が位置している標的区域を照射する工程;を含む。任意の態様のいくつかにおいて、方法または使用は、PD-L1発現細胞の死滅をもたらし、それによって、腫瘍および/または腫瘍微小環境における免疫細胞の数または活性を増加させる。
【0009】
腫瘍または病変のための過去の免疫治療に対して低い応答を有した、非応答性であった、抵抗性/不応性であった、応答することに失敗した、または後に再発した対象を同定する工程;PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを、過去の免疫治療に対して低い応答を有した、非応答性であった、抵抗性/不応性であった、応答することに失敗した、または後に再発した腫瘍または病変を有する対象へ投与する工程;およびPD-L1発現細胞が位置している標的区域を照射する工程を含む、腫瘍または病変のための過去の免疫治療に対して低い応答を有するかまたは非応答性である対象を処置するための方法および使用も、本明細書において提供される。任意の態様のいくつかにおいて、照射は、600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で実施される。任意の態様のいくつかにおいて、方法または使用は、PD-L1発現細胞の死滅をもたらし、それによって、腫瘍および/または腫瘍微小環境における免疫細胞の数または活性を増加させる。
【0010】
抗がん剤を腫瘍または病変を有する対象へ投与する工程;PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを、対象へ投与する工程;および600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で、PD-L1発現免疫細胞が位置している標的区域を照射する工程を含む、腫瘍または病変を有する対象における抗がん剤に対する応答を増強するための方法および使用であって、単独の抗がん剤による処置による阻害と比較して、腫瘍または病変の成長のより大きい阻害をもたらす方法または使用も、本明細書において提供される。
【0011】
PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを、対象へ投与する工程;および600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で、PD-L1発現免疫細胞が位置している標的区域を照射する工程を含む、腫瘍または病変を有する対象における抗がん剤に対する応答を増強するための方法および使用であって、対象が抗がん剤を投与された後であり、方法または使用が、単独の抗がん剤による処置による阻害と比較して、腫瘍または病変の成長のより大きい阻害をもたらす、方法または使用も、本明細書において提供される。
【0012】
抗がん剤を対象へ投与する工程を含む、腫瘍または病変を有する対象における抗がん剤に対する応答を増強するための方法および使用であって、対象が、PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートの対象への投与;および600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長での、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量での、PD-L1発現免疫細胞が位置している標的区域の照射を含む処置を受容した後であり、方法または使用が、単独の抗がん剤による処置による阻害と比較して、腫瘍または病変の成長のより大きい阻害をもたらす、方法または使用も、本明細書において提供される。
【0013】
PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを、腫瘍または病変を有する対象へ投与する工程;および第1の腫瘍または病変の内部の標的区域を照射する工程を含む、第1の腫瘍または病変を有する対象を免疫するための方法および使用も、本明細書において提供される。任意の態様のいくつかにおいて、照射は、600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で実施される。任意の態様のいくつかにおいて、第1の腫瘍または病変の成長が阻害され、かつ/またはサイズが低下し;処置された第1の腫瘍または病変から遠位に位置する1つまたは複数の第2の腫瘍または病変の出現、成長、または確立が、阻害、遅延、または防止される。
【0014】
PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを、対象へ投与する工程;および600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で、対象における腫瘍または病変が位置している標的区域を照射する工程を含む、腫瘍または病変を有する対象の自然免疫応答を増強するための方法および使用も、本明細書において提供される。任意の態様のいくつかにおいて、対象の自然免疫応答が増強される。
【0015】
PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを、腫瘍または病変を有する対象へ投与する工程;および600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で、対象における腫瘍または病変が位置している標的区域を照射する工程を含む、腫瘍または病変における免疫細胞の数またはレベルを増加させるための方法および使用も、本明細書において提供される。任意の態様のいくつかにおいて、対象における腫瘍または病変における免疫細胞の数またはレベルが増加する。
【0016】
PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを、腫瘍または病変を有する対象へ投与する工程;および600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で、対象における腫瘍または病変が位置している標的区域を照射する工程を含む、不均一な腫瘍または病変を処置するための方法および使用も、本明細書において提供される。任意の態様のいくつかにおいて、対象における不均一な腫瘍または病変が処置される。任意の態様のいくつかにおいて、腫瘍または病変は、異なる型の腫瘍細胞または複数の異なる起源に由来する腫瘍細胞を含有する。
【0017】
PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを、腫瘍または病変を有する対象へ投与する工程;および600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で、対象における腫瘍または病変が位置している標的区域を照射する工程を含む、免疫抑制性の腫瘍または病変を処置する方法も、本明細書において提供される。任意の態様のいくつかにおいて、対象における免疫抑制性の腫瘍または病変が処置される。
【0018】
PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを、対象へ投与する工程;および標的区域を照射する工程を含む、抗がん免疫応答を発生させるため、対象を予防接種するための方法および使用であって、対象における腫瘍の出現もしくは成長の遅延もしくは阻害、または腫瘍の近傍におけるT記憶細胞の出現もしくは増加より選択される抗がん応答をもたらす方法または使用も、本明細書において提供される。任意の態様のいくつかにおいて、照射は、600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で実施される。任意の態様のいくつかにおいて、方法または使用は、PD-L1発現細胞またはPD-L1発現免疫細胞の死滅をもたらす。
【0019】
PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を、免疫チェックポイント阻害剤に関して未処置であるかまたは免疫チェックポイント阻害剤による処置を以前に受容したことがない対象へ投与する工程;および対象における腫瘍または病変が位置している標的区域を照射する工程を含む、コンジュゲートを投与するための方法および使用も、本明細書において提供される。任意の態様のいくつかにおいて、照射は、600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で実施される。任意の態様のいくつかにおいて、照射の後に、腫瘍または病変の成長、サイズ、または生存能が、低下または阻害される。
【0020】
任意の態様のいくつかにおいて、標的区域は、PD-L1発現細胞を含む。任意の態様のいくつかにおいて、PD-L1発現細胞は、免疫細胞である。任意の態様のいくつかにおいて、標的区域は、PD-L1を発現する免疫細胞を含む。任意の態様のいくつかにおいて、PD-L1発現細胞は、免疫細胞である。
【0021】
任意の態様のいくつかにおいて、自然免疫応答の増強は、活性化樹状細胞(DC)または抗原提示樹状細胞の増加を含む。任意の態様のいくつかにおいて、活性化DCは、CD80+および/またはCD40+の細胞表面表現型を示す。任意の態様のいくつかにおいて、抗原提示樹状細胞は、CD11b+CD103+CD11c+の細胞表面表現型を示す。
【0022】
任意の態様のいくつかにおいて、免疫細胞は、腫瘍内好中球である。任意の態様のいくつかにおいて、腫瘍内好中球は、CD11b+Ly6C-/lowLy6G+の細胞表面表現型を示す。任意の態様のいくつかにおいて、免疫細胞は、腫瘍内エフェクターT細胞である。任意の態様のいくつかにおいて、腫瘍内エフェクターT細胞は、CD3+CD8+PD-1-の細胞表面表現型を示す。
【0023】
任意の態様のいくつかにおいて、過去の免疫治療は、免疫チェックポイント阻害剤による処置である。任意の態様のいくつかにおいて、対象は、PD-1/PD-L1遮断を含む過去の免疫治療に対する一次抵抗性または獲得抵抗性を有する。
【0024】
任意の態様のいくつかにおいて、免疫抑制性の腫瘍または病変は、免疫チェックポイントタンパク質を発現する腫瘍細胞を含む。任意の態様のいくつかにおいて、免疫チェックポイントタンパク質は、PD-L1、PD-1、またはCTLA-4である。
【0025】
任意の態様のいくつかにおいて、抗がん剤は、チェックポイント阻害剤、免疫アジュバント、化学療法剤、放射線、および腫瘍細胞に結合する抗がんターゲティング分子を含む生物製剤より選択される。任意の態様のいくつかにおいて、抗がん剤は、抗体コンジュゲートである。任意の態様のいくつかにおいて、抗体コンジュゲートは、フタロシアニン色素、毒素、またはTLRアゴニストを含む。
【0026】
任意の態様のいくつかにおいて、対象は、第1の腫瘍または第1の病変を処置するためかつ/またはその成長を阻害するため、抗PD-L1コンジュゲートを投与され;方法は、1つもしくは複数の第2の腫瘍もしくは病変の出現または第1の腫瘍もしくは第1の病変の転移を阻害または遅延させる。任意の態様のいくつかにおいて、1つまたは複数の第2の腫瘍は、表現型的にかつ/または遺伝子型的に第1の腫瘍と異なる。任意の態様のいくつかにおいて、1つまたは複数の第2の腫瘍は、第1の腫瘍の転移に由来しない。任意の態様のいくつかにおいて、処置は、腫瘍もしくは病変の再成長を遅延させるか、腫瘍もしくは病変に関連したがんの再発を防止するか、または腫瘍もしくは病変に関連したがんの寛解の期間を延長する。
【0027】
任意の態様のいくつかにおいて、PD-L1発現免疫細胞は、単球、マクロファージ、樹状細胞(DC)、M2腫瘍関連マクロファージ(M2 TAM)、免疫寛容原性樹状細胞(tDC)、および骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)からなる群より選択される。任意の態様のいくつかにおいて、PD-L1発現免疫細胞は、腫瘍、腫瘍微小環境、またはリンパ節に位置している。任意の態様のいくつかにおいて、腫瘍または病変は、PD-L1陰性腫瘍細胞を含む。任意の態様のいくつかにおいて、腫瘍または病変における腫瘍細胞の40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは95%超、または約40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは95%超が、PD-L1陰性腫瘍細胞である。任意の態様のいくつかにおいて、腫瘍細胞は、抗PD-L1抗体によって特異的に認識されない。任意の態様のいくつかにおいて、腫瘍細胞は、免疫チェックポイントタンパク質を発現しないか、または免疫チェックポイントタンパク質の低下した発現を有する。任意の態様のいくつかにおいて、免疫チェックポイントタンパク質は、PD-L1、PD-1、およびCTLA-4の中から選択される。任意の態様のいくつかにおいて、腫瘍細胞は、炎症刺激に応答してPD-L1を発現しない。任意の態様のいくつかにおいて、炎症刺激は、インターフェロンである。
【0028】
任意の態様のいくつかにおいて、腫瘍または病変は、抗PD-L1治療に対して抵抗性である。任意の態様のいくつかにおいて、抗PD-L1治療は、抗PD-L1抗体による処置である。任意の態様のいくつかにおいて、本明細書に記載された方法は、抗PD-L1治療による阻害と比較して、腫瘍または病変の成長、サイズ、または生存能のより大きい阻害を含むか、またはもたらす。任意の態様のいくつかにおいて、腫瘍もしくは病変の成長の阻害および/またはPD-L1発現細胞の死滅は、CD8+T細胞の存在に依存する。
【0029】
任意の態様のいくつかにおいて、対象は、第1の腫瘍または病変を処置し、かつ/またはその成長を阻害し、かつ/またはそのサイズを低下させるため、コンジュゲートを投与される。任意の態様のいくつかにおいて、方法および使用は、第1の腫瘍または病変から遠位に位置する1つまたは複数の第2の腫瘍または病変の出現、成長、または確立を阻害、遅延、または防止する。
【0030】
任意の態様のいくつかにおいて、対象は、抗がん処置および/または免疫チェックポイント阻害剤によって以前に処置されたことがある。任意の態様のいくつかにおいて、対象は、免疫チェックポイント阻害剤によって以前に処置されたことがある。任意の態様のいくつかにおいて、対象は、抗がん処置および/または免疫チェックポイント阻害剤による以前の処置に対して低い応答を有した、非応答性であった、抵抗性/不応性であった、応答することに失敗した、または後に再発した。任意の態様のいくつかにおいて、対象は、免疫チェックポイント阻害剤による以前の処置に対して低い応答を有した、非応答性であった、抵抗性/不応性であった、応答することに失敗した、または後に再発した。任意の態様のいくつかにおいて、方法または使用の実施に起因する腫瘍成長の阻害は、抗がん処置および/または免疫チェックポイント阻害剤による以前の処置の結果としての腫瘍成長の阻害と比較して、より大きい。任意の態様のいくつかにおいて、方法または使用の実施に起因する腫瘍成長の阻害は、免疫チェックポイント阻害剤による以前の処置の結果としての腫瘍成長の阻害と比較して、より大きい。
【0031】
任意の態様のいくつかにおいて、処置された第1の腫瘍または病変から遠位に位置する第2の腫瘍または病変の成長または確立が、阻害または防止される。任意の態様のいくつかにおいて、第2の腫瘍または病変は、第1の腫瘍または病変の転移である。任意の態様のいくつかにおいて、本明細書に記載された方法は、第1の腫瘍もしくは病変の近傍におけるPD-L1発現細胞の死滅を含み、もしくはもたらし、かつ/または免疫細胞応答を活性化し、それによって、第2の腫瘍または病変の成長を阻害または防止する。任意の態様のいくつかにおいて、第2の腫瘍または病変は、表現型的にかつ/または遺伝子型的に第1の腫瘍または病変と同一である。任意の態様のいくつかにおいて、第2の腫瘍または病変は、表現型的にかつ/または遺伝子型的に第1の腫瘍または病変と異なる。任意の態様のいくつかにおいて、1つまたは複数の第2の腫瘍または第2の病変は、第1の腫瘍または病変の転移に由来しない。
【0032】
任意の態様のいくつかにおいて、対象は、免疫チェックポイント阻害剤によって以前に処置されたことがある。任意の態様のいくつかにおいて、対象は、免疫チェックポイント阻害剤による以前の処置に対して低い応答を有した、非応答性であった、抵抗性/不応性であった、応答することに失敗した、または後に再発した。任意の態様のいくつかにおいて、方法または使用の実施に起因する腫瘍成長の阻害は、免疫チェックポイント阻害剤による以前の処置の結果としての腫瘍成長の阻害と比較して、より大きい。任意の態様のいくつかにおいて、免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD-L1免疫治療である。
【0033】
任意の態様のいくつかにおいて、対象は、免疫チェックポイント阻害剤に関して未処置であるか、または免疫チェックポイント阻害剤による処置を以前に受容したことがない。任意の態様のいくつかにおいて、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-L1、PD-1、またはCTLA-4の阻害剤である。
【0034】
任意の態様のいくつかにおいて、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤である。任意の態様のいくつかにおいて、PD-1阻害剤は、抗PD-1抗体である。任意の態様のいくつかにおいて、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-L1阻害剤である。任意の態様のいくつかにおいて、PD-L1阻害剤は、抗PD-L1抗体である。
【0035】
任意の態様のいくつかにおいて、対象は、CD8+T細胞浸潤の低い数またはレベルを有する腫瘍または病変を有する。任意の態様のいくつかにおいて、コンジュゲートの投与の前に、対象は、CD8+T細胞浸潤の低い数またはレベルを有する腫瘍または病変を有する。任意の態様のいくつかにおいて、投与および照射の後に、腫瘍もしくは病変または腫瘍もしくは病変の微小環境における免疫細胞の数、レベル、または活性が、増加する。任意の態様のいくつかにおいて、投与および照射の後に、腫瘍または病変におけるCD8+T細胞浸潤の数またはレベルが、増加する。任意の態様のいくつかにおいて、投与および照射の後に、腫瘍または病変の近傍における記憶T細胞の数またはレベルが、増加する。
【0036】
任意の態様のいくつかにおいて、ターゲティング分子は、抗体もしくはその抗原結合断片であるか、またはそれを含む。任意の態様のいくつかにおいて、ターゲティング分子は、PD-L1に結合する抗体、抗体断片、または抗体様分子である。任意の態様のいくつかにおいて、ターゲティング分子は、抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合断片であるか、またはそれを含む。
【0037】
任意の態様のいくつかにおいて、抗体またはその抗原結合断片は、アテゾリズマブ(MPDL3280A、Tecentriq、RG7446)、アベルマブ(Bavencio)、BCD-135、BGB-A333、BMS-936559(MDX-1105)、CBT-502(TQB-2450)、コシベリマブ(cosibelimab)(CK-301)、CS1001(WPB3155)、デュルバルマブ(MEDI4736、Imfinzi)、FAZ053、HLX20、INBRX-105、KN035、KN046、LDP、LY3300054、LY3415244、M7824(MSB0011359C)、MCLA-145、MSB2311、NM-01、REGN3504、SHR-1316(HTI-1088)、STI-3031(IMC-001、STI-A1015)、TG-1501、ZKAB001(STI-A1014)からなる群より選択される抗体に由来する相補性決定領域(CDR)を含む。任意の態様のいくつかにおいて、抗体または抗原結合断片は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、KN035、またはCK-301に由来する相補性決定領域(CDR)を含む。任意の態様のいくつかにおいて、抗体または抗原結合断片は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、KN035、CK-301、またはそれらのバイオシミラー(biosimilar)、交換可能物(interchangeable)、バイオベター(biobetter)、コピーバイオロジカル(copy biological)、もしくはバイオジェネリック(biogeneric)、またはそれらの抗原結合断片からなる群より選択される。任意の態様のいくつかにおいて、抗体または抗原結合断片は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、KN035、CK-301からなる群より選択される。
【0038】
任意の態様のいくつかにおいて、標的区域は、腫瘍または病変の近傍である。任意の態様のいくつかにおいて、標的区域は、リンパ節またはリンパ節の近傍である。
【0039】
任意の態様のいくつかにおいて、投与および照射の後に、対象は、持続的な応答、延長された無増悪生存期間、再発の低下した確率、および/または転移の低下した確率を示す。
【0040】
任意の態様のいくつかにおいて、フタロシアニン色素は、Si-フタロシアニン色素である。任意の態様のいくつかにおいて、Si-フタロシアニン色素は、IR700である。
【0041】
任意の態様のいくつかにおいて、照射は、コンジュゲートの投与の30分~96時間後に実施される。任意の態様のいくつかにおいて、照射は、コンジュゲートの投与の24時間±4時間後に実施される。任意の態様のいくつかにおいて、標的区域は、690±40nmの波長で照射される。任意の態様のいくつかにおいて、標的区域は、50J/cm2もしくは約50J/cm2または100J/cmファイバー長もしくは約100J/cmファイバー長の線量で照射される。
【0042】
任意の態様のいくつかにおいて、腫瘍または病変は、結腸がん、結腸直腸がん、膵臓がん、乳がん、皮膚がん、肺がん、非小細胞肺がん、腎細胞がん、甲状腺がん、前立腺がん、頭頸部がん、胃腸がん、胃がん、小腸のがん、紡錘細胞悪性腫瘍、肝がん、肝臓がん、末梢神経のがん、脳がん、骨格筋のがん、平滑筋のがん、骨がん、脂肪組織のがん、子宮頸がん、子宮がん、生殖器のがん、リンパ腫、および多発性骨髄腫からなる群より選択されるがんに関連している。
【0043】
提供された方法のいずれかのうちのいくつかにおいて、方法の工程のうちの1つまたは複数が繰り返される。任意の態様のいくつかにおいて、コンジュゲートの投与は、1回または複数回繰り返される。任意の態様のいくつかにおいて、コンジュゲートの繰り返された各投与の後に照射工程が繰り返される。提供された方法のいずれかのうちのいくつかにおいて、方法は、付加的な治療剤または抗がん処置を投与する工程も含む。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1図1は、抗PD-L1抗体-IR700コンジュゲートを投与され、その後、690nmで、75、100、もしくは150J/cm2の線量で、光によって照射された(α-PD-L1-IR700+75、100、もしくは150J/cm2)、光による照射なしに抗PD-L1抗体-IR700コンジュゲートを投与された(α-PD-L1-IR700)、移植されたCT26腫瘍を有するマウス、または生理食塩水を投与された対照における経時的な平均腫瘍体積を示す。完全応答(CR)を達成したマウスの割合および百分率も示される。CRを達成したマウスを、図2A~2Bにおいて、第2の腫瘍によってチャレンジした。
図2A図2A~2Bは、CRを達成した、図1からのマウスにおける、第2のCT26腫瘍の移植によるチャレンジの後の経時的な群平均腫瘍体積(図2A)および個々の腫瘍体積(図2B)を示す。完全応答(CR)を達成したマウスの割合も示される。CRを達成したマウス(*:α-PD-L1-IR700+100J/cm2群からの1匹のCRマウスを除く)を、図3A~3Bにおいて、異なる型の第3の腫瘍によってチャレンジした。
図2B図2Aの説明を参照のこと。
図3A図3A~3Bは、CRを達成した、図2A~2Bからのマウスにおける、第3の4T1-EpCAM腫瘍の移植によるチャレンジの後の経時的な群平均腫瘍体積(図3A)および個々の腫瘍体積(図3B)を示す。完全応答(CR)を達成したマウスの割合および百分率も示される。
図3B図3Aの説明を参照のこと。
図4図4は、抗PD-L1抗体-IR700コンジュゲートを投与され、その後、690nmで、100J/cm2の線量で、光によって照射された(α-PD-L1-IR700 PIT)、もしくはさらにCD8細胞を枯渇させられた(α-PD-L1-IR700 PIT+CD8枯渇)、もしくは光によって照射されなかった(α-PD-L1-IR700)、もしくは光によって照射されず、CD8細胞を枯渇させられた(α-PD-L1-IR700+CD8枯渇)、移植されたCT26腫瘍を有するマウス、または生理食塩水を投与された対照における経時的な平均腫瘍体積を示す。完全応答(CR)を達成したマウスの割合および百分率も示される。
図5A図5A~5Fは、以下のような第2ラウンド腫瘍によってチャレンジされた、第1ラウンドCT26腫瘍および抗PD-L1-IR700 PITの後にCRを達成したマウスにおける、群平均腫瘍体積および個々の腫瘍体積を示す:(a)CT26(図5A(群平均)および5B(個々のマウス))、(b)4T1.WT(改変されていない親4T1細胞;図5C(群平均)および5D(個々のマウス))、ならびに(c)RENCAマウス腎臓腺がん(図5E(群平均)および5F(個々のマウス))。以前に処置されていない(未処置)マウスを、対照として、CT26腫瘍、4T1.WT腫瘍、またはRENCA腫瘍によってチャレンジした(図5A~5F)。群(a)からの、CRを達成したマウスを、図6A~6Bにおいて、異なる型の第3の腫瘍によってチャレンジした。
図5B図5Aの説明を参照のこと。
図5C図5Aの説明を参照のこと。
図5D図5Aの説明を参照のこと。
図5E図5Aの説明を参照のこと。
図5F図5Aの説明を参照のこと。
図6図6A~6Bは、CRを達成し、CT26腫瘍チャレンジを拒絶した、図5A~5Bからのマウスにおける、第3ラウンド4T1-EpCAM腫瘍の移植によるチャレンジの後のマウスにおける群平均腫瘍体積(図6A)および個々の腫瘍体積(図6B)を示す。
図7A図7Aは、基底レベル(IFNγなし)もしくはIFNγの存在下での、CT26細胞、もしくはPD-L1をコードする遺伝子のノックアウト(KO)を有するCT26細胞、または陰性対照におけるPD-L1発現を示す。
図7B図7Bは、抗PD-L1抗体-IR700コンジュゲートを投与され、その後、690nmで、75、100、もしくは150J/cm2の線量で、光によって照射された(α-PD-L1-IR700+75、100、もしくは150J/cm2)、光による照射なしに抗PD-L1抗体-IR700コンジュゲートを投与された(α-PD-L1-IR700)、移植されたCT26 PD-L1ノックアウト(KO)腫瘍を有するマウス、または生理食塩水を投与された対照における経時的な平均腫瘍体積を示す。
図7C図7Cは、抗PD-L1抗体-IR700コンジュゲートを投与され、その後、690nmで、75J/cm2の線量で、光によって照射された(α-PD-L1 PIT(75J/cm2))、光による照射なしに抗PD-L1抗体-IR700コンジュゲートを投与された(α-PD-L1-IR700)、または生理食塩水を投与された(対照)、CT26 PD-L1 KO腫瘍を保持するマウスの生存率を示す。
図8図8は、2日前に、抗PD-L1抗体-IR700コンジュゲートを投与され、その後、690nmで、100J/cm2の線量で、光によって照射された(PDL1 PIT)、光による照射なしに抗PD-L1抗体-IR700コンジュゲートを投与された(PDL1コンジュゲート)、または生理食塩水を投与された(対照)腫瘍における、腫瘍内のマクロファージ(CD11b+F4/80+細胞;左パネル)、樹状細胞(CD11c+細胞;中央パネル)、およびMDSC(CD11b+Ly6C+Ly6G-細胞;右パネル)の比率を示す。
図9図9は、2日前に、抗PD-L1抗体-IR700コンジュゲートを投与され、その後、690nmで、100J/cm2の線量で、光によって照射された(PDL1 PIT)、光による照射なしに抗PD-L1抗体-IR700コンジュゲートを投与された(PDL1コンジュゲート)、または生理食塩水を投与された(対照)腫瘍における、腫瘍内好中球(CD11b+Ly6C-/lowLy6G+細胞)の比率を示す。
図10図10A~10Cは、2日前に、抗PD-L1抗体-IR700コンジュゲートを投与され、その後、690nmで、100J/cm2の線量で、光によって照射された(PDL1 PIT)、光による照射なしに抗PD-L1抗体-IR700コンジュゲートを投与された(PDL1コンジュゲート)、または生理食塩水を投与された(対照)腫瘍における、活性化マーカーCD80+(図10A)およびCD40+(図10B)を示す樹状細胞(DC)、ならびに抗原提示DC(CD11b+CD103+CD11c+細胞;図10C)の比率を示す。
図11図11A~11Cは、8日前に、抗PD-L1抗体-IR700コンジュゲートを投与され、その後、690nmで、100J/cm2の線量で、光によって照射された(PDL1 PIT)、光による照射なしに抗PD-L1抗体-IR700コンジュゲートを投与された(PDL1コンジュゲート)、または生理食塩水を投与された(対照)腫瘍における、全CD8+T細胞(図11A)、消耗CD8+T細胞(図11B)、および「新たにプライミングされた」CD8+T細胞(図11C)の比率を示す。
図12図12は、光による照射なしに抗PD-L1抗体-IR700コンジュゲートを投与された(抗PD-L1-IR700コンジュゲート)、抗PD-L1コンジュゲートを投与され、その後、690nmで、100J/cm2の線量で、照射された(抗PD-L1 PIT)マウス、または生理食塩水対照における、反対側に移植された遠位の未照射のCT26腫瘍に対する経時的なアブスコパル効果を図示する。
図13A図13A~13Cは、抗PD-L1抗体-IR700コンジュゲートを投与され、その後、690nmで、75J/cm2の線量で、光によって照射された(α-PD-L1 PIT)、光による照射なしに抗PD-L1コンジュゲートを投与された(α-PD-L1-IR700コンジュゲート)、裸の(コンジュゲートされていない)抗PD-L1抗体を週2回投与された(α-PD-L1複数回投与;x軸の下に矢印で示される)、または生理食塩水を投与された(対照)、移植されたCT26腫瘍を有するマウスにおける経時的な平均腫瘍体積(図13A)、個々の腫瘍体積(図13B)、および生存率(図13C)を示す。完全応答(CR)を達成したマウスの割合も、図13Aおよび13Bに示される。
図13B図13Aの説明を参照のこと。
図13C図13Aの説明を参照のこと。
図14図14Aおよび14Bは、裸の抗PD-1抗体、裸の抗CTLA-4抗体、もしくは生理食塩水を投与された(図14A;x軸の下に矢印で示される抗体投与)、または抗PD-L1-IR700コンジュゲートを投与され、その後、690nmで、150J/cm2の線量で、光によって照射された(抗PD-L1 PIT)、光による照射なしに抗PD-L1-IR700コンジュゲートを投与された(抗PD-L1コンジュゲート)、裸の抗PD-L1抗体を週2回投与された(裸の抗PD-L1)、または生理食塩水を投与された(対照)(図14B)、移植されたLL/2マウス肺がん腫瘍を有するマウスにおける経時的な平均腫瘍体積を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
詳細な説明
例えば、免疫応答を活性化することによって、腫瘍、病変、またはがんを有する対象を処置するための組成物、組み合わせ、方法、および使用が、本明細書において提供される。いくつかの局面において、提供された態様は、フタロシアニン色素、例えば、IR700とコンジュゲートされた、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)に結合するターゲティング分子を含有するコンジュゲートの、対象への投与を含む。いくつかの局面において、提供された態様は、標的区域、例えば、標的区域、例えば、PD-L1を発現する細胞が存在するまたは存在し得る標的区域の照射を含む。いくつかの局面において、照射は、表面上にPD-L1を発現する細胞の死をもたらす。任意の態様のいくつかにおいて、提供されたコンジュゲート、組成物、組み合わせ、方法、および使用は、過去の治療的処置、例えば、過去の免疫調整剤処置および/または過去の抗がん治療的処置に対して、低い応答性を有する、実質的に非応答性である、失敗した、後に再発した、不応性である、かつ/または抵抗性である腫瘍、病変(例えば、がん性病変)、またはがんを有する対象を処置するために利用される。
【0046】
いくつかの局面において、フタロシアニン色素-ターゲティング分子コンジュゲート(例えば、IR700とコンジュゲートされた抗PD-L1)、および、いくつかのケースにおいて、付加的な治療剤が、提供された組成物、組み合わせ、方法、および使用において利用される。使用には、そのような方法、例えば、治療方法、および処置、例えば、処置計画におけるコンジュゲート、組成物、および組み合わせの使用、ならびに、そのような治療方法および処置を実施するための医薬の調製における、そのようなコンジュゲート、組成物、および組み合わせの使用が含まれる。腫瘍、病変、またはがんの処置において使用するための、そのようなコンジュゲート、組成物、および組み合わせも、提供される。いくつかの局面において、そのような使用は、本明細書に記載される方法および処置、例えば、治療方法または処置計画の実施を含む。いくつかの態様において、方法および使用は、例えば、本明細書に記載されるような光によって、標的区域、例えば、対象における腫瘍、病変、またはがんが位置している標的区域を照射する工程も含む。いくつかの態様において、方法および使用は、それによって、腫瘍、病変、またはがんを処置する。いくつかの局面において、処置される腫瘍、病変、またはがんには、例えば、原発性腫瘍および二次性または転移性の腫瘍細胞を含むがん、例えば、対象における二次性または転移性のがんが含まれる。いくつかの局面において、腫瘍、病変、またはがんには、原発性腫瘍または多発原発性腫瘍が含まれ得、転移性腫瘍細胞も含まれ得る。いくつかのケースにおいて、処置される対象は、原発性腫瘍、転移性腫瘍細胞、および/または浸潤性腫瘍細胞のうちの1つまたは複数を有し得る。
【0047】
いくつかの局面において、対象における免疫機能、例えば、局所免疫および/または全身免疫の増強、活性化、誘導、誘発、強化、または支持における、そのようなコンジュゲート、組成物、および組み合わせの方法および使用も提供される。いくつかの局面において、提供された態様は、腫瘍微小環境の細胞、例えば、非がん性細胞および/または免疫細胞、例えば、免疫抑制機能を有する免疫細胞を標的にすることができる。
【0048】
がん患者の処置における大きい課題のうちの1つが、治療薬に対するがんの応答性の欠如である。そのようながんを処置するための組成物および方法が、緊急に必要とされている。提供された態様は、いくつかの場合において、フタロシアニン色素-ターゲティング分子コンジュゲート、例えば、PD-L1ターゲティング分子とフタロシアニン色素(例えば、IR700)とを含有するコンジュゲートによる処置、およびその後の標的区域の光による照射(「光免疫治療」および「PIT」とも呼ばれる)が、腫瘍成長の実質的な阻害および/または処置に対する完全応答をもたらすという観察に基づく。
【0049】
いくつかの局面において、フタロシアニン色素-PD-L1ターゲティング分子コンジュゲートによる処置および光照射は、例えば、免疫抑制細胞、例えば、免疫抑制骨髄系細胞(例えば、骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)、免疫寛容原性樹状細胞(tDC)、M2腫瘍関連マクロファージ(M2 TAM))を排除することによって、免疫応答を活性化、誘導、増強、または強化することができる。いくつかの局面において、免疫抑制細胞の排除は、免疫応答、例えば、抗腫瘍免疫応答または抗がん免疫応答の活性化、誘導、増強、または強化をもたらす。いくつかの局面において、提供された態様は、多くの異なる腫瘍、病変、またはがんの型、例えば、異なる起源のがん型、または異なる表面抗原を発現するがん型、または類似の免疫抑制機序を共有するがんに適用され得るという利点を提供する。いくつかの局面において、提供された態様は、そのような免疫抑制機序を克服するために利用され得る。さらに、いくつかの局面において、提供された態様は、不均一である、例えば、様々な異なる型の腫瘍細胞またはがん細胞を含有する腫瘍、病変、またはがんの有効な処置を提供し得る。いくつかの局面において、提供された態様は、対象における局所免疫および/もしくは全身免疫の活性または全身免疫を誘導、活性化、または増強し、照射の標的区域以外の体内の他の場所に存在する腫瘍、病変、またはがん、例えば、転移した腫瘍もしくはがん、浸潤性の腫瘍もしくはがん、異なる部位の腫瘍もしくはがん、または異なる型の腫瘍、病変、もしくはがんの処置を可能にするという利点も提供する。他の利点には、転移性腫瘍細胞の位置を特定し、かつ/またはそれを直接的に照射する必要がない、転移性がんおよび/または浸潤性がんの処置が含まれる。
【0050】
提供された態様は、過去の治療的処置、例えば、免疫チェックポイント阻害剤、抗がん剤、または免疫抑制細胞に対する分子、例えば、抗PD-L1免疫治療に対して非応答性である腫瘍、病変、またはがんを処置するためにも使用され得る。提供された態様は、がんの処置における他の利点、例えば、過去の治療的処置、例えば、抗PD-L1処置に対して非応答性であるがんの有効な処置も提供する。
【0051】
本開示は、例えば、発生し得る異なる腫瘍またはがんに対する、対象における抗がん免疫または抗腫瘍免疫の増強における予想外の特色も提供する。提供された態様は、いくつかの状況において、フタロシアニン色素-ターゲティング分子コンジュゲート、例えば、抗PD-L1抗体-IR700コンジュゲートによるがんの処置およびその後の腫瘍の照射が、その特定の腫瘍の処置をもたらすのみならず、同一のまたは異なる型の後に発生する腫瘍の有効な処置ももたらすという観察に基づく。提供された態様は、免疫記憶応答を示す、対象が最初の腫瘍の処置の後に完全応答を有した後に導入された腫瘍の有効な処置;および/または照射の標的区域から遠位の腫瘍(例えば、転移した腫瘍もしくは異なる位置に存在する腫瘍)の有効な処置も提供する。提供された組成物、組み合わせ、方法、および使用は、がんに対する対象の免疫応答、例えば、全身免疫応答の増強または改善、例えば、処置後に発達し得る腫瘍に対して有効であり得る免疫記憶応答をもたらし得る。
【0052】
いくつかの局面において、フタロシアニン色素-ターゲティング分子コンジュゲート(例えば、抗PD-L1-IR700コンジュゲート)と組み合わせた、付加的な治療剤、例えば、免疫調整剤の投与を含む方法も提供される。
【0053】
提供された態様のいずれかのうちのいくつかにおいて、抗PD-L1コンジュゲートによる処置または抗PD-L1コンジュゲートの投与の後には、一般に、適当な光の波長による照射が行われる。そのような照射は、照射工程が方法において実施されないと特記されない限り、抗PD-L1コンジュゲートの処置および投与の一部と見なされる。いくつかのケースにおいて、そのような照射は、光免疫治療(PIT)と呼ばれる。
【0054】
本願において言及された特許書類、科学文献、およびデータベースを含む刊行物は、全て、個々の刊行物が各々個別に参照により組み入れられるのと同じ程度に、事実上、参照によりその全体が組み入れられる。本明細書に記載の定義が、参照により本明細書に組み入れられる特許、出願、公開された出願、およびその他の刊行物に記載の定義に反するまたはその他の方法で一致しない場合には、本明細書に記載の定義が、参照により本明細書に組み入れられる定義より優先される。
【0055】
本明細書において使用されるセクションの見出しは、系統立てるためのものに過ぎず、記載された主題を限定するものと解釈されてはならない。
【0056】
I. 抗PD-L1コンジュゲートによる処置の方法および抗PD-L1コンジュゲートの使用
いくつかの態様において、提供された方法および使用は、例えば、本明細書に記載されるように、抗PD-L1コンジュゲートの投与、および、光が色素を励起させ、表面上にPD-L1を発現する細胞の死滅をもたらすような、フタロシアニン色素と共に使用するために適当な光の波長による標的区域の照射を含む。そのような方法および使用は、免疫機能、例えば、局所免疫および/もしくは全身免疫の増強、活性化、誘導、誘発、強化、もしくは支持、病変(例えば、腫瘍)の低下もしくは排除、腫瘍成長の低下もしくは阻害、腫瘍細胞転移の低下、阻害、もしくは排除、またはそれらの任意の組み合わせをもたらす。
【0057】
表面抗原分類247(CD247)またはB7-H1としても公知のプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)は、免疫チェックポイントとして機能し、免疫応答をダウンレギュレートするタンパク質受容体である。PD-L1は、B細胞、NK細胞、およびT細胞において発現される免疫チェックポイントタンパク質、プログラム細胞死1(PD-1)のリガンドである(Shinohara et al.,1995,Genomics 23:704-6;Blank et al.,2007,Cancer Immunol Immunother 56:739-45;Finger et al.,1997,Gene 197:177-87;Pardoll,2012,Nature Reviews Cancer 12:252-264)。PD-L1は、活性化T細胞、B細胞、骨髄系細胞、マクロファージ、およびある種の型の腫瘍細胞において発現される。PD-L1は、腫瘍または腫瘍微小環境(TME)の近くにおいて免疫抑制を誘導するため、ある種の免疫細胞、例えば、単球、マクロファージ、樹状細胞(DC)、M2腫瘍関連マクロファージ(M2 TAM)、免疫寛容原性樹状細胞(tDC)、もしくは骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)、またはある種の腫瘍細胞において発現される。
【0058】
PD-1とPD-L1との複合体は、CD8+T細胞の増殖を阻害し、免疫応答を低下させる(Topalian et al.,2012,N Engl J Med 366:2443-54;Brahmer et al.,2012,N Engl J Med 366:2455-65)。PD-1の主要な役割は、感染に応答して起こる炎症中に末梢組織におけるT細胞の活性を限定すること、および自己免疫を限定することである(Pardoll,2012,Nature Reviews Cancer 12:252-264)。PD-1発現は、活性化T細胞において誘導され、PD-1の、内在性リガンドのうちの1つ、例えば、PD-L1との結合は、刺激性キナーゼを阻害することによって、T細胞活性化を阻害するよう作用する(Pardoll,2012,Nature Reviews Cancer 12:252-264)。PD-1は、TCR「ストップシグナル」を阻害するためにも作用する(Pardoll,2012,Nature Reviews Cancer 12:252-264)。PD-1は、制御性T(Treg)細胞において高度に発現されており、リガンドの存在下で増殖を増加させ得る(Pardoll,2012,Nature Reviews Cancer 12:252-264)。PD-L1のPD-1との結合は、免疫受容スイッチチロシンモチーフ(immunoreceptor tyrosine-based switch motif)(ITSM)を介したホスファターゼ(SHP-1またはSHP-2)との相互作用に基づき、阻害シグナルを伝達する。
【0059】
抗PD-L1抗体は、がん、例えば、非小細胞肺がん、メラノーマ、結腸直腸がん、腎細胞がん、膵臓がん、胃がん、卵巣がん、乳がん、および血液系腫瘍の処置のために使用されている(Brahmer et al.,N Engl J Med 366:2455-65;Ott et al.,2013,Clin Cancer Res 19:5300-9;Radvanyi et al.,2013,Clin Cancer Res 19:5541;Menzies & Long,2013,Ther Adv Med Oncol 5:278-85;Berger et al.,2008,Clin Cancer Res 14:13044-51)。いくつかの局面において、抗PD-L1抗体の使用は、PD-L1のPD-1との結合を阻止することによって、PD-1/PD-L1の免疫抑制効果の一部を低下させ得る。
【0060】
いくつかの局面において、しかしながら、提供された組成物、方法、および使用は、光が色素を励起させ、細胞の死滅をもたらすような、フタロシアニン色素と共に使用するために適当な光の波長による標的区域の照射の後に、細胞の表面上にPD-L1を発現する細胞を死滅させ、排除することによって、免疫機能、例えば、局所免疫および/または全身免疫をさらに増強、活性化、誘導、誘発、強化、または支持することができる。従って、表面上にPD-L1を発現する細胞、具体的には、免疫抑制機能を有する免疫細胞、例えば、M2腫瘍関連マクロファージ(M2 TAM)、免疫寛容原性樹状細胞(tDC)、または骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)の排除または死滅は、免疫機能、例えば、局所免疫および/または全身免疫、例えば、抗腫瘍免疫または抗がん免疫を増強、活性化、誘導、誘発、強化、または支持するために機能することができる。いくつかの局面において、提供された方法および使用は、腫瘍または病変へのリンパ球の浸潤を増強、活性化、誘導、リクルート、または支持することができる。いくつかの態様において、提供された方法および使用は、腫瘍内自然応答を活性化し、腫瘍内樹状細胞の活性化(例えば、活性化樹状細胞)の増加をもたらす。いくつかの局面において、提供された方法および使用は、適応免疫応答を活性化し、CD8+T細胞の浸潤の増加をもたらす。いくつかの態様において、提供された方法および使用は、腫瘍内の消耗CD8+T細胞の数の低下を導く。いくつかの態様において、提供された方法および使用は、新たにプライミングされたCD8+T細胞の腫瘍内浸潤の増加を導く。いくつかの態様において、提供された方法および使用は、例えば、非消耗エフェクター細胞、例えば、CD8+T細胞のより高いレベルもしくは数を有する、処置のための対象を選択することによって、かつ/または非消耗エフェクター細胞の活性もしくは応答を改善することによって、治療効果の改善をもたらすことができる。
【0061】
いくつかの局面において、提供された組成物、方法、および使用は、抗PD-L1免疫治療に対して抵抗性または不応性の腫瘍に適用され得る。腫瘍、例えば、固形腫瘍は、いくつかの機序、例えば、以下に限定されるわけではないが、不可逆的なT細胞消耗、不十分なT細胞プライミング、T細胞の代償性阻害シグナルのアップレギュレーションを導く腫瘍細胞免疫逃避(immunoediting)、免疫抑制性の腫瘍微小環境の作出、例えば、Treg、MDSC、腫瘍関連マクロファージ(例えば、M2マクロファージ)の浸潤の増加、腫瘍由来のサイトカインおよびケモカイン(例えば、TGF-β、CXCL8)のレベルの上昇、Th1型ケモカインのサイレンシング、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)生成、ならびに過剰の細胞外アデノシンによって、抗PD-L1治療に対する抵抗性を発達させ得る。提供された組成物、方法、および使用は、いくつかの腫瘍によって利用される1つまたは複数の抗PD-L1抵抗性機序の克服において有用である。
【0062】
さらに、コンジュゲートの投与およびその後の照射は、PD-L1を発現するがん細胞の直接的な死滅をもたらし、それによって、腫瘍成長の阻害または低下をもたらすこともできる。PD-L1ターゲティング分子-フタロシアニンコンジュゲートは、腫瘍細胞、または腫瘍もしくは腫瘍の微小環境(腫瘍微小環境;TMEとも呼ばれる)に存在する細胞、例えば、原発性腫瘍とは異なる位置の腫瘍細胞、転移した腫瘍、新たに発生する腫瘍細胞、および/または異なる型もしくは細胞表面抗原発現の腫瘍に、直接的または間接的に影響を与え、それらを死滅させることができる。従って、提供された組成物、方法、および使用は、細胞表面PD-L1を発現しない腫瘍細胞、過去の治療、例えば、過去の免疫調整剤治療に対して低い応答性を有する、もしくは実質的に非応答性である、失敗した、後に再発した、不応性である、かつ/または抵抗性である腫瘍、病変、またはがんに対しても、有効な処置を提供することができる。具体的な態様において、提供された組成物、方法、および使用は、抗PD-L1治療、抗PD-1治療、および/または抗CTLA-4治療に対して非応答性、抵抗性、または不応性である腫瘍または病変を処置することができる。
【0063】
いくつかの態様において、本明細書において提供された組成物、方法、および使用は、サイズがより大きく、より小さい腫瘍より大きい免疫抑制を示す腫瘍を処置するためにも有効である。そのような腫瘍は、他の処置に対して、例えば、免疫調整剤、例えば、免疫チェックポイント阻害剤による処置(例えば、抗PD-L1治療、抗PD-1治療、および/もしくは抗CTLA-4治療)に対して、低応答性または非応答性であり得る。そのようなケースにおいて、本明細書に記載された抗PD-L1コンジュゲートの投与およびその後の照射によって与えられる抗PD-L1光免疫治療は、いくつかのケースにおいて、他の免疫調整剤治療および/または抗がん治療によって有効に阻害されない、より大きい腫瘍の成長の阻害または実質的な低下において有効であり得る。いくつかの態様において、本明細書において提供された組成物、方法、および使用は、サイズがより大きく、抗PD-L1治療、抗PD-1治療、および/または抗CTLA-4治療に対して抵抗性である腫瘍を処置するために有効である。
【0064】
いくつかの局面において、免疫細胞応答を活性化することによって、対象における腫瘍または病変を処置する方法および使用が提供される。免疫細胞活性化は、直接的または間接的な活性化であり得る。いくつかの局面において、腫瘍または病変のための過去の免疫治療(例えば、抗PD-L1治療、抗PD-1治療、および/または抗CTLA-4治療)に対して低い応答を有する、非応答性であった、抵抗性であった、不応性であった、応答することに失敗した、または後に再発した対象を処置する方法および使用が提供される。いくつかの局面において、方法は、PD-L1に結合するターゲティング分子、例えば、抗PD-L1抗体と連結されたフタロシアニン色素、例えば、IR700を含むコンジュゲートを、腫瘍または病変を有する対象へ投与する工程を含む。いくつかの局面において、方法は、PD-L1発現細胞の死滅を導き、それによって、腫瘍または病変の成長を阻害することができるよう、600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で、PD-L1発現細胞、例えば、PD-L1発現免疫細胞が位置している標的区域を照射する工程も含む。いくつかの局面において、方法は、PD-L1発現細胞の死滅を導き、それによって、腫瘍もしくは病変および/または腫瘍もしくは病変の微小環境における免疫細胞の数または活性を増加させることもできる。
【0065】
いくつかの態様において、PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを投与された、腫瘍または病変を有する対象において、600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で、PD-L1発現免疫細胞が位置している標的区域を照射する工程を含む、免疫細胞応答を活性化することによって、対象における腫瘍または病変を処置する方法および使用が提供され、ここで、方法は、PD-L1発現細胞の死滅を導き、それによって、腫瘍または病変の成長を阻害する。いくつかの態様において、PD-L1発現細胞は、免疫細胞である。いくつかの態様において、PD-L1発現細胞は、腫瘍細胞である。
【0066】
いくつかの態様において、PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを投与された、過去の免疫治療に対して低い応答を有したかまたは非応答性であった腫瘍または病変を有する対象において、600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で、PD-L1発現免疫細胞が位置している標的区域を照射する工程を含む、腫瘍または病変のための過去の免疫治療に対して低い応答を有する、非応答性であった、抵抗性であった、不応性であった、応答することに失敗した、または後に再発した対象を処置する方法および使用が提供され、ここで、方法は、PD-L1発現細胞の死滅を導き、それによって、腫瘍および/または腫瘍微小環境における免疫細胞の数または活性を増加させる。任意の態様のいくつかにおいて、PD-L1発現細胞は、免疫細胞である。
【0067】
いくつかの態様において、腫瘍または病変を有する対象における抗がん剤に対する応答を増強する方法および使用が提供される。いくつかの局面において、方法は、抗がん剤を、腫瘍または病変を有する対象へ投与する工程を含む。いくつかの局面において、PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを、対象へ投与する工程。いくつかの局面において、単独の抗がん剤による処置による阻害と比較して、腫瘍または病変の成長のより大きい阻害を導く、600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で、PD-L1発現免疫細胞が位置している標的区域を照射する工程。
【0068】
いくつかの態様において、PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを、対象へ投与する工程;および600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で、PD-L1発現免疫細胞が位置している標的区域を照射する工程を含む、腫瘍または病変を有する対象における抗がん剤に対する応答を増強し、単独の抗がん剤による処置による阻害と比較して、腫瘍または病変の成長のより大きい阻害を導く方法および使用であって、対象が抗がん剤を投与された後である、方法および使用が提供される。
【0069】
いくつかの態様において、抗がん剤を対象へ投与する工程を含む、腫瘍または病変を有する対象における抗がん剤に対する応答を増強する方法および使用であって、対象が、PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートの対象への投与;および600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長での、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量での、PD-L1発現免疫細胞が位置している標的区域の照射を含む処置を受容した後であり、抗がん剤の投与および処置が、単独の抗がん剤による阻害と比較して、腫瘍または病変の成長のより大きい阻害を導く、方法および使用が提供される。
【0070】
いくつかの態様において、抗がん免疫応答を発生させるため、対象を予防接種または免疫する方法および使用が提供される。いくつかの局面において、抗がん免疫応答を発生させるための、対象の予防接種または免疫は、第1の腫瘍または病変の成長を阻害し、かつ/またはサイズを低下させることができ;例えば、処置された第1の腫瘍または病変から遠位に位置する、1つまたは複数の第2の腫瘍または病変の出現、成長、または確立を遅延または防止することもできる。いくつかの局面において、方法は、PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを、対象へ投与する工程を含む。いくつかの局面において、方法は、対象における腫瘍の出現もしくは成長の遅延もしくは阻害、または腫瘍の近傍におけるT記憶細胞の出現もしくは増加より選択される抗がん応答を導く、標的区域を照射する工程を含む。
【0071】
いくつかの態様において、PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを投与された対象において、標的区域を照射する工程を含む、抗がん免疫応答を発生させるため、対象を予防接種または免疫する方法および使用であって、対象における腫瘍の出現もしくは成長の遅延もしくは阻害、または腫瘍の近傍におけるT記憶細胞の出現もしくは増加より選択される抗がん応答を導く方法および使用が提供される。
【0072】
いくつかの態様において、方法の工程のうちの1つまたは複数は、繰り返される。いくつかの態様において、コンジュゲートの投与は、1回または複数回繰り返され、任意で、コンジュゲートの繰り返された各投与の後に、照射工程が繰り返される。いくつかの態様において、付加的な治療剤または抗がん処置を投与する工程をさらに含む。
【0073】
A. 抗がん免疫応答を刺激または増強する方法
いくつかの局面において、抗PD-L1コンジュゲートを含む組成物を利用する提供された方法および使用は、対象における免疫応答、例えば、全身免疫応答および/または局所免疫応答の増強をもたらすことができ、次に、それが、腫瘍、病変、またはがんの治療または処置に対する応答の増強をもたらし得る。いくつかの局面において、本明細書中の方法および使用は、抗PD-L1コンジュゲートの対象への投与、および、コンジュゲートの投与の後の、標的区域、例えば、PD-L1発現細胞が存在する標的区域、例えば、腫瘍、腫瘍の近傍、リンパ節、リンパ節の近傍、または腫瘍微小環境の照射を含む。
【0074】
いくつかの局面において、提供された態様は、腫瘍、病変、またはがんを有する対象における免疫応答、例えば、全身免疫応答を刺激、増強、活性化、誘導、誘発、ブースティング、強化、または支持することができる。いくつかの態様において、提供された方法および使用は、腫瘍、病変、またはがんを有する対象における全身免疫応答の増強をもたらす。「全身免疫応答」とは、免疫学的チャレンジ、例えば、腫瘍、病変、またはがんに関連したものに対して全身的に応答する、対象の免疫系の能力をさす。全身免疫応答には、対象の適応免疫系および/または自然免疫系の全身応答が含まれ得る。全身免疫応答には、対象の適応免疫系および/または自然免疫系からの抗腫瘍応答または抗がん応答が含まれ得る。いくつかの局面において、全身免疫応答には、異なる組織、例えば、血流、リンパ節、骨髄、脾臓、および/または腫瘍微小環境に及ぶ免疫応答が含まれ、いくつかのケースにおいて、組織および器官、ならびに組織および器官の様々な細胞および因子における協調的応答が含まれる。いくつかの態様において、提供された態様は、対象の自己の免疫系、例えば、適応免疫系および/または自然免疫系の抗がん免疫応答または抗腫瘍免疫応答を刺激、増強、活性化、誘導、誘発、ブースティング、強化、または支持することができる。いくつかの局面において、提供された方法および使用は、対象における自然免疫応答の増強をもたらすことができる。
【0075】
いくつかの局面において、提供された態様は、アブスコパル効果も示し得る。いくつかの局面において、「アブスコパル効果」とは、直接的に処置されない腫瘍または限局性の処置の部位から離れている腫瘍、例えば、遠位または転移性の腫瘍も処置され、例えば、腫瘍体積が低下する、処置効果をさす。
【0076】
いくつかの局面において、提供された態様は、腫瘍免疫をもたらし得る。そのような局面において、提供された態様は、新たな腫瘍の成長または転移を防止または妨害する。いくつかの態様において、提供された態様によってもたらされる腫瘍成長の阻害は、持続的な抗腫瘍応答を導く。いくつかの態様において、提供された態様によってもたらされる腫瘍成長の阻害は、延長された無増悪生存期間を導く。いくつかの態様において、提供された態様によってもたらされる腫瘍成長の阻害は、再発の低下した確率および/または転移の低下した確率を導く。いくつかの局面において、提供された態様は、処置された対象における同一の腫瘍型または異なる腫瘍型に対する免疫をもたらすことができる。いくつかの局面において、提供された態様は、異なる腫瘍系統に由来する腫瘍、即ち、処置された対象において発生するまたは発生する可能性がある異なる型の腫瘍の成長を阻害することができる。
【0077】
いくつかの局面において、標的区域は、PD-L1発現細胞を含む区域である。いくつかの態様において、PD-L1発現細胞は、免疫細胞である。任意の態様のいくつかにおいて、方法は、PD-L1発現細胞、例えば、PD-L1発現免疫細胞の死滅を導く。いくつかの態様において、PD-L1発現免疫細胞は、単球、マクロファージ、樹状細胞(DC)、M2腫瘍関連マクロファージ(M2 TAM)、免疫寛容原性樹状細胞(tDC)、および骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)からなる群より選択される。いくつかの態様において、PD-L1発現免疫細胞は、腫瘍、腫瘍微小環境、またはリンパ節に位置している。
【0078】
いくつかの局面において、提供された態様によって照射される標的区域は、腫瘍、例えば、原発性腫瘍、腫瘍、例えば、原発性腫瘍の近傍、または腫瘍微小環境(TME)である。いくつかの態様において、標的区域は、腫瘍の近く、または腫瘍の近位、または腫瘍もしくは腫瘍細胞の近傍である。いくつかの態様において、標的区域は、腫瘍である。いくつかの態様において、標的区域は、原発性腫瘍である。いくつかの態様において、標的区域は、二次腫瘍または転移した腫瘍である。いくつかの態様において、標的区域は、腫瘍微小環境である。
【0079】
いくつかの態様において、標的区域は、リンパ節またはリンパ節の近傍である。いくつかの態様において、標的区域は、例えば、PD-L1発現細胞を含有する、リンパ節、またはリンパ節の近傍である。いくつかの態様において、標的区域は、リンパ節である。いくつかの態様において、標的区域は、リンパ節の近傍である。
【0080】
いくつかの局面において、提供された態様は、1つもしくは複数の原発性の腫瘍もしくは病変、および/または1つもしくは複数の第2の腫瘍もしくは病変、例えば、転移性の腫瘍もしくは病変、もしくは異なる型の腫瘍もしくは病変に対する全身応答、例えば、全身免疫応答を刺激または増強することができる。
【0081】
いくつかの局面において、提供された態様は、いくつかのケースにおいて、PD-L1発現免疫細胞、例えば、免疫抑制機能を有し得るもの、例えば、単球、マクロファージ、樹状細胞(DC)、例えば、M2腫瘍関連マクロファージ(M2 TAM)、免疫寛容原性樹状細胞(tDC)、または骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)を除去することによって、対象の免疫応答、例えば、対象の抗がん免疫応答を刺激または増強する。いくつかの局面において、提供された態様は、PD-L1発現免疫抑制細胞、例えば、M2 TAM、tDC、またはMDSCを死滅させ、排除することによって、腫瘍、病変、またはがんを標的にする対象の免疫応答、例えば、全身免疫応答および/または局所免疫応答を刺激または増強する。本明細書において例示されるように、対象のCD8+T細胞の枯渇は、生理食塩水を投与された対照における成長と類似した腫瘍成長をもたらしたため、PD-L1-フタロシアニン色素コンジュゲートの投与および光照射の後の腫瘍成長の阻害は、対象のCD8+T細胞の存在および/または活性を必要とする。いくつかの局面において、免疫抑制細胞、例えば、M2 TAM、tDC、またはMDSC、例えば、PD-L1を発現するものは、対象の免疫細胞、例えば、CD8+T細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞の機能および/または活性を阻害する。免疫抑制細胞、例えば、PD-L1発現免疫抑制細胞、例えば、M2 TAM、tDC、またはMDSCを死滅させ、排除することによって、提供された態様は、対象の免疫応答を刺激し、増強することができる。本明細書において例示されるように、提供された態様によるそのような処置は、1つまたは複数の原発性腫瘍の成長の阻害、例えば、処置に対する完全応答、ならびに1つまたは複数の第2の腫瘍、例えば、同一のもしくは異なる型および/もしくは起源の第2の腫瘍、および/または異なる部位、例えば、原発性の腫瘍もしくは病変から遠位の部位に存在する第2の腫瘍の成長の阻害をもたらす。
【0082】
いくつかの局面において、腫瘍もしくは病変の成長の阻害、および/またはPD-L1発現細胞の死滅は、CD8+T細胞の存在に依存する。いくつかの態様において、投与の前に、対象は、CD8+T細胞浸潤の低い数またはレベルを有する腫瘍または病変を有する。いくつかの態様において、投与および照射の後に、腫瘍または腫瘍微小環境において、免疫細胞の数、レベル、または活性が増加する。いくつかの態様において、投与および照射の後に、腫瘍または病変におけるCD8+T細胞浸潤の数またはレベルが増加する。いくつかの態様において、投与および照射の後に、腫瘍の近傍における記憶T細胞の数が増加する。
【0083】
いくつかの局面において、刺激または増強される全身免疫応答には、対象における全身CD8+Tエフェクター細胞の数および/もしくは活性の増加、脾臓、末梢血、骨髄、もしくはリンパ節に由来する細胞を使用したCTLアッセイを使用して測定される腫瘍細胞に対する全身T細胞細胞傷害の増加、原発性もしくは二次性の(例えば、転移性の、もしくは新たな)腫瘍もしくは病変における腫瘍内CD8+Tエフェクター細胞の数、活性、および/もしくはプライミングの増加、全身CD8+T細胞活性化の増加、全身樹状細胞活性化の増加、原発性もしくは二次性の(例えば、転移性の、もしくは新たな)腫瘍もしくは病変における樹状細胞活性化の増加、原発性もしくは二次性の(例えば、転移性の、もしくは新たな)腫瘍もしくは病変における腫瘍内樹状細胞浸潤の増加、原発性もしくは二次性の(例えば、転移性の、もしくは新たな)腫瘍もしくは病変における新たなT細胞プライミングの増加、原発性もしくは二次性の(例えば、転移性の、もしくは新たな)腫瘍もしくは病変におけるT細胞多様性の増加、全身制御性T細胞の減少、原発性もしくは二次性の(例えば、転移性の、もしくは新たな)腫瘍もしくは病変における制御性T細胞の減少、全身骨髄系由来サプレッサー細胞の減少、原発性もしくは二次性の(例えば、転移性の、もしくは新たな)腫瘍もしくは病変における腫瘍内骨髄系由来サプレッサー細胞の減少、原発性もしくは二次性の(例えば、転移性の、もしくは新たな)腫瘍もしくは病変における腫瘍関連線維芽細胞もしくはがん関連線維芽細胞(CAF)の減少、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。いくつかの場合において、全身応答は、対象から血液、組織、細胞、またはその他の体液を採取し、炎症誘発性サイトカインの増加、免疫細胞活性化マーカーの増加もしくは出現、および/またはT細胞多様性を査定することによって査定され得る。いくつかの局面において、全身応答は、方法によって直接的または間接的に影響を受けた細胞をアッセイすることによって査定され得る。例えば、処置後4日目~28日目または対象における原発性腫瘍の照射の工程の後の任意の時点で、対象から細胞を収集することができる。
【0084】
いくつかの局面において、提供された態様は、腫瘍、病変、またはがんを有する対象における免疫応答、例えば、局所応答、例えば、局所免疫応答を刺激、増強、ブースティング、強化、または支持することができる。いくつかの態様において、提供された方法および使用は、腫瘍、病変、またはがんを有する対象における局所応答の増強をもたらす。「局所免疫応答」とは、免疫学的チャレンジ、例えば、腫瘍、病変、またはがんに関連したものに対する、組織または器官における免疫応答をさす。局所免疫応答には、適応免疫系および/または自然免疫系が含まれ得る。いくつかの局面において、局所免疫には、異なる組織、例えば、血流、リンパ節、骨髄、脾臓、および/または腫瘍微小環境において同時に起こる免疫応答が含まれる。
【0085】
いくつかの局面において、刺激または増強される局所免疫応答には、対象における腫瘍内CD8+Tエフェクター細胞(例えば、CD3+CD8+細胞)の数および/もしくは活性の増加、CD8+Tエフェクター細胞活性化の増加、腫瘍内樹状(CD11c+)細胞浸潤の増加、腫瘍内樹状細胞活性化(例えば、CD11c+CD80+および/もしくはCD11c+CD40+)の増加、腫瘍内抗原提示樹状細胞(CD11b+CD103+CD11c+)の増加、腫瘍内の新たなT細胞プライミング(例えば、CD3+CD8+PD1-細胞)の増加、腫瘍内T細胞多様性の増加、腫瘍内好中球(CD11b+Cy6C-/lowLy6G+細胞)の増加、腫瘍内マクロファージ(例えば、CD11b+F4/80+細胞)の減少、腫瘍内制御性T細胞(Treg)の減少、腫瘍内骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC;例えば、CD11b+Ly6C+Ly6G-細胞)の減少、腫瘍内の腫瘍関連線維芽細胞もしくはがん関連線維芽細胞(CAF)の減少、腫瘍内の消耗T細胞、例えば、消耗CD8+T細胞(例えば、PD-1+CTLA-4+CD3+CD8+細胞)の数および/もしくは活性の減少、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。いくつかの局面において、刺激または増強される局所免疫応答は、提供された態様のいずれかによってもたらされる。いくつかの局面において、局所免疫応答または自然免疫応答の指標となる、細胞、例えば、免疫細胞の細胞表面表現型が、表面上のマーカーの発現を検出するために使用され得る試薬、例えば、標識された抗体による染色によって査定され得る。いくつかの局面において、局所免疫応答または自然免疫応答の指標となる、細胞、例えば、免疫細胞の細胞表面表現型は、フローサイトメトリーを使用して検出される。
【0086】
いくつかのケースにおいて、局所応答、例えば、局所免疫応答は、対象から血液、組織またはその他の試料を採取し、腫瘍もしくはTMEにおける抗免疫細胞型の増加について査定し、かつ/または局所免疫活性化マーカーの増加もしくは出現を査定することによって査定され得る。いくつかの局面において、局所応答、例えば、局所免疫応答は、方法によって直接的または間接的に影響を受けた細胞をアッセイすることによって査定され得る。例えば、処置後4日目~28日目または対象における原発性腫瘍の照射の工程の後の任意の時点で、対象から細胞を収集することができる。
【0087】
いくつかの局面において、方法および使用は、付加的な治療剤、例えば、免疫調整剤、例えば、免疫チェックポイント阻害剤を投与する工程も含む。免疫調整剤は、コンジュゲートの投与の前に、同時に、または後に投与され得る。いくつかの局面において、付加的な治療剤、例えば、免疫調整剤の投与も、免疫応答、例えば、対象の全身免疫応答および/または局所免疫応答、例えば、抗がん応答または抗腫瘍応答の刺激、増強、活性化、誘導、強化、または支持に寄与し得る。例示的な付加的な治療剤、組成物、組み合わせ、方法、および使用には、本明細書、例えば、セクションVに記載されるものが含まれる。
【0088】
B. 抗PD-L1コンジュゲート治療のための腫瘍および病変
本明細書に記載された方法は、例えば、表面上にPD-L1を発現する細胞の、細胞死滅を達成するため、抗PD-L1コンジュゲートの投与、および、コンジュゲートのフタロシアニン色素部分を活性化するための光の波長による、対象における標的区域、例えば、腫瘍もしくは病変、腫瘍の近傍、リンパ節、リンパ節の近傍、または腫瘍もしくは病変の腫瘍微小環境(TME)の照射を含む。いくつかの態様において、本明細書において提供される方法および使用は、1つまたは複数の腫瘍または病変、例えば、1つもしくは複数の原発性の腫瘍もしくは病変(もしくは第1の腫瘍もしくは病変)、1つもしくは複数の二次性の腫瘍もしくは病変(もしくは第2の腫瘍もしくは病変)、1つもしくは複数の新たに発生する腫瘍もしくは病変、および/または1つもしくは複数の転移した腫瘍もしくは病変を有する対象の処置を含む。対象は、1つ、2つ、3つ、または3つを超える腫瘍を有し得る。そのような腫瘍は、1つまたは複数の組織または器官、例えば、1つの組織もしくは器官、2つの異なる組織もしくは器官、3つの異なる組織もしくは器官、または3つを超える異なる組織もしくは器官にあり得る。いくつかの局面において、処置される腫瘍のうちの1つまたは複数は、その腫瘍に含まれる細胞の表面上にPD-L1を発現する。いくつかの局面において、処置される腫瘍のうちの1つまたは複数は、PD-L1を発現しない細胞、低いPD-L1発現を有する細胞、またはPD-L1陰性である細胞を含有するか、それらから主に構成されるか、相当数のそれらを有するか、またはそれらから完全に構成される。いくつかの局面において、処置される腫瘍のうちの1つまたは複数は、PD1/PD-L1チェックポイント遮断に対して低下した応答を有する細胞、抵抗性である細胞、または抵抗性になる(即ち、抵抗性を獲得する)細胞を含有するか、それらから主に構成されるか、相当数のそれらを有するか、またはそれらから完全に構成される。
【0089】
いくつかの局面において、提供された態様によって処置される腫瘍または病変は、免疫チェックポイント阻害剤に関して未処置であるか、または免疫チェックポイント阻害剤による処置を以前に受容したことがなく、例えば、抗PD-1治療、抗PD-L1治療、および/または抗CTLA-4治療に対して未処置である。いくつかの態様において、腫瘍または病変は、抗PD-1処置を受容したことがない(それに対して未処置である)。いくつかの態様において、腫瘍または病変は、抗PD-L1処置を受容したことがない(それに対して未処置である)。いくつかの態様において、腫瘍または病変は、抗CTLA-4処置を受容したことがない(それに対して未処置である)。いくつかの態様において、提供された態様によって処置される腫瘍または病変を有する対象は、免疫チェックポイント阻害剤に関して未処置である。いくつかの態様において、処置される対象は、抗PD-1処置に対して未処置である。いくつかの態様において、処置される対象は、抗PD-L1処置に対して未処置である。いくつかの態様において、処置される対象は、抗CTLA-4処置に対して未処置である。免疫チェックポイント阻害剤、例えば、抗PD-1抗体による対象の処置は、腫瘍、その周辺、および/または全身におけるCD8+エフェクターT細胞消耗を導き得る。これは、CD8+T細胞の、腫瘍を認識し、腫瘍に局在化する能力の欠如を導くことができ、またはCD8+T細胞を、腫瘍もしくは腫瘍の近傍への局在化にも関わらず、無効にし、チェックポイント阻害剤(例えば、PD-1/PD-L1)抵抗性を導くことができる。従って、いくつかの場合において、提供された組成物、方法、または使用を利用する前に、免疫チェックポイント阻害剤治療(例えば、抗PD-1治療、抗PD-L1治療、および/または抗CTLA-4治療)を回避することによって、無効または不十分なCD8+エフェクターT細胞活性が軽減され得る。いくつかの態様において、本明細書中の処置に対する腫瘍または病変の応答は、まず、抗PD-L1コンジュゲートの投与によって腫瘍または病変を処置し、その後、照射し、その後、免疫チェックポイント阻害剤、例えば、PD-1、PD-L1、および/またはCTLA-4に対する治療(例えば、抗PD-1抗体、および抗PD-L1抗体、および/または抗CTLA-4抗体)によって腫瘍または病変を処置することによってもたらされる。いくつかの態様において、処置の方法は、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、抗PD-1、抗PD-L1、および/または抗CTLA-4)治療による処置を受容したことがない対象を選択する工程、ならびにそのような対象(即ち、そのような対象の腫瘍または病変)を抗PD-L1コンジュゲートによって処置し、その後、照射する工程を含む。
【0090】
いくつかの局面において、提供された態様によって処置するための腫瘍または病変は、結腸がん、結腸直腸がん、膵臓がん、乳がん、皮膚がん、肺がん、非小細胞肺がん、腎細胞がん、甲状腺がん、前立腺がん、頭頸部がん、胃腸がん、胃がん、小腸のがん、紡錘細胞悪性腫瘍、肝がん、肝臓がん、末梢神経のがん、脳がん、骨格筋のがん、平滑筋のがん、骨がん、脂肪組織のがん、子宮頸がん、子宮がん、生殖器のがん、リンパ腫、および多発性骨髄腫からなる群より選択されるがんに関連している。
【0091】
いくつかの局面において、提供された態様によって処置される腫瘍または病変には、1つまたは複数の原発性の(例えば、第1の)腫瘍または病変が含まれる。いくつかの局面において、原発性の腫瘍または病変には、対象における第1のまたは最初の腫瘍または病変が含まれ得る。いくつかの局面において、対象は、1つまたは複数の原発性の腫瘍または病変を有し得る。いくつかの態様において、原発性腫瘍は、固形腫瘍であってもよいし、リンパ腫であってもよいし、または白血病であってもよい。腫瘍は、肺、胃、肝臓、膵臓、乳腺、食道、頭頸部、脳、末梢神経、皮膚、小腸、結腸、直腸、肛門、卵巣、子宮、膀胱、前立腺、脂肪組織、骨格筋、平滑筋、血管、骨、骨髄、眼、舌、リンパ節、脾臓、腎臓、子宮頸部、男性生殖器、女性生殖器、精巣、または原発起源不明の腫瘍であり得る。
【0092】
いくつかの局面において、提供された態様によって処置される腫瘍または病変には、1つまたは複数の第2の腫瘍または病変、例えば、転移性の腫瘍もしくは病変、または新たに発生する腫瘍もしくは病変が含まれる。いくつかの局面において、1つまたは複数の第2の腫瘍または病変は、第1の腫瘍または病変の転移に由来する。いくつかの態様において、1つまたは複数の第2の腫瘍または病変は、第1の腫瘍または病変の転移に由来しない腫瘍である。いくつかの局面において、1つまたは複数の第2の腫瘍または病変は、表現型的にかつ/または遺伝子型的に第1の腫瘍または病変と異なる。いくつかの局面において、1つまたは複数の第2の腫瘍または病変は、表現型的に第1の腫瘍または病変と異なる。いくつかの局面において、1つまたは複数の第2の腫瘍または病変は、遺伝子型的に第1の腫瘍または病変と異なる。いくつかの局面において、1つまたは複数の第2の腫瘍または病変は、新たに発生する腫瘍または病変である。いくつかの局面において、1つまたは複数の第2の腫瘍または病変は、第1の腫瘍または病変と比較して、異なる起源に由来する。いくつかの局面において、1つまたは複数の第2の腫瘍または病変は、第1の腫瘍または病変と比較して、異なる器官または異なる細胞から発生する。いくつかの態様において、1つまたは複数の第2の腫瘍または病変は、固形腫瘍であってもよいし、リンパ腫であってもよいし、または白血病であってもよい。1つまたは複数の第2の腫瘍または病変は、肺、胃、肝臓、膵臓、乳腺、食道、頭頸部、脳、末梢神経、皮膚、小腸、結腸、直腸、肛門、卵巣、子宮、膀胱、前立腺、脂肪組織、骨格筋、平滑筋、血管、骨、骨髄、眼、舌、リンパ節、脾臓、腎臓、子宮頸部、男性生殖器、女性生殖器、精巣、または起源不明の腫瘍であり得る。
【0093】
いくつかの態様において、提供された抗PD-L1コンジュゲートの投与の後に、第1の腫瘍が照射され、第1の腫瘍の体積が低下する時に、第2の腫瘍または病変に対する免疫がもたらされる。そのような態様において、第1の腫瘍の体積は、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、もしくは100%、または少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、もしくは100%低下する。いくつかの態様において、第1の腫瘍の体積は、少なくとも50%または少なくとも約50%低下する。いくつかの態様において、第1の腫瘍の体積は、少なくとも75%または少なくとも約75%低下する。いくつかの態様において、第2の腫瘍または病変に対する免疫は、第1の腫瘍の処置の後に、第1の腫瘍が部分的または完全な応答(PRまたはCR)を達成する時に、もたらされる。いくつかの態様において、第2の腫瘍または病変に対する免疫は、第1の腫瘍の処置の後に、第1の腫瘍がCRを達成する時に、もたらされる。
【0094】
いくつかのケースにおいて、照射の標的区域は、原発性の腫瘍もしくは病変、または原発性の腫瘍もしくは病変の近傍であり得る。他のケースにおいて、照射の標的区域は、原発性の腫瘍または病変ではなく、PD-L1発現細胞が存在する異なる区域、例えば、リンパ節、または二次性の腫瘍もしくは病変、または二次性の腫瘍もしくは病変の近傍である。
【0095】
いくつかの局面において、抗PD-L1コンジュゲート処置および光照射を含む提供された態様による処置の後に、1つもしくは複数の原発性の腫瘍もしくは病変の成長が阻害されるか、1つもしくは複数の原発性の腫瘍もしくは病変の体積が低下するか、または腫瘍の成長および体積の両方が低下する。いくつかの局面において、抗PD-L1コンジュゲート処置および光照射を含む提供された態様による処置の後に、1つもしくは複数の二次性もしくは転移性の腫瘍もしくは病変の成長が阻害されるか、1つもしくは複数の二次性もしくは転移性の腫瘍もしくは病変の体積が低下するか、または腫瘍の成長および体積の両方が低下する。いくつかの局面において、提供された態様による処置は、腫瘍もしくは病変の再成長を遅延させるか、がんの再発を防止するか、または、がん、例えば、腫瘍もしくは病変に関連したがんの寛解の期間を延長し、1つもしくは複数の第2の腫瘍もしくは病変、例えば、原発性の腫瘍もしくは病変と比較して異なる型の第2の腫瘍もしくは病変の発生および/もしくは成長を防止もしくは阻害し、かつ/または転移の発生および/もしくは成長を防止もしくは阻害する。
【0096】
いくつかの態様において、対象は、第1の腫瘍または第1の病変を処置するためかつ/またはその成長を阻害するため、抗PD-L1コンジュゲートを投与され;方法は、1つもしくは複数の第2の腫瘍もしくは病変の出現または第1の腫瘍もしくは第1の病変の転移を阻害または遅延させる。
【0097】
いくつかの局面において、原発性の腫瘍または病変は、表面上にPD-L1を発現する細胞を含有する。いくつかの局面において、PD-L1を発現する細胞は、免疫細胞、例えば、免疫抑制細胞、例えば、M2 TAM、tDC、またはMDSCである。いくつかの局面において、PD-L1発現細胞は、腫瘍関連線維芽細胞またはがん関連線維芽細胞(CAF)である。いくつかのケースにおいて、PD-L1を発現する細胞は、腫瘍細胞またはがん細胞である。任意の態様のいくつかにおいて、処置される対象は、PD-L1発現細胞のうちの1つまたは複数、例えば、腫瘍、病変、またはがんに関連した1つまたは複数のPD-L1発現細胞を有する。
【0098】
いくつかの態様において、処置される腫瘍、病変、またはがんは、PD-L1を発現しない腫瘍細胞またはがん細胞を含有する。いくつかの態様において、腫瘍または病変は、PD-L1陰性腫瘍細胞を含む。いくつかの態様において、腫瘍または病変における腫瘍細胞の40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは95%超、または約40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは95%超が、PD-L1陰性腫瘍細胞である。いくつかの局面において、PD-L1陰性腫瘍細胞とは、表面上に検出可能なレベルのPD-L1を発現しない腫瘍細胞、または閾値レベル、例えば、検出可能な閾値レベルより低いレベルでPD-L1を発現する腫瘍細胞をさし得る。いくつかの態様において、PD-L1陰性腫瘍細胞には、抗PD-L1抗体によって特異的に認識されない腫瘍細胞が含まれる。いくつかのケースにおいて、PD-L1発現のレベルは、フローサイトメトリーによって決定される。いくつかの局面において、提供された態様は、例えば、免疫抑制細胞、例えば、M2 TAM、tDC、またはMDSCの排除、ならびに腫瘍細胞またはがん細胞を排除するための抗腫瘍応答または抗がん応答を発揮することができる免疫系のエフェクター細胞、例えば、CD8+T細胞の機能および/または活性の増強によって、腫瘍細胞またはがん細胞の間接的な死滅をもたらす。
【0099】
いくつかの態様において、処置される腫瘍、病変、またはがんは、PD-L1を発現する腫瘍細胞またはがん細胞を含有する。いくつかの局面において、抗PD-L1コンジュゲートの投与およびその後の光照射は、PD-L1を発現する細胞を間接的に死滅させることができる。いくつかの局面において、提供された態様は、PD-L1発現腫瘍細胞の直接的な死滅をもたらす。
【0100】
いくつかの態様において、本明細書において提供される方法および使用は、浸潤性腫瘍細胞を有する対象の処置、例えば、原発性腫瘍に起因する細胞が周囲の組織に浸潤した時の処置を含む。方法は、抗PD-L1コンジュゲートを、浸潤性腫瘍細胞を有する対象へ投与する工程、および、コンジュゲートの投与の後に、選択されたフタロシアニン色素のために適当な波長によって標的区域を照射する工程を含む。いくつかの態様において、方法は、コンジュゲートの投与の前に、同時に、または後に、免疫調整剤、例えば、免疫チェックポイント阻害剤を投与する工程を含む。いくつかの局面において、浸潤性腫瘍細胞とは、原発性腫瘍から発生し、原発性腫瘍を有する対象の体内の原発性腫瘍と同一の器官の周辺組織もしくは近隣の器官または体腔へ浸潤した細胞をさす。
【0101】
いくつかの場合において、本明細書において提供される方法および使用は、標的区域の照射を含む。いくつかの局面において、標的区域は、1つまたは複数の原発性腫瘍であり、浸潤性腫瘍細胞の一部または全部は、照射されず、そのような方法において、浸潤性腫瘍細胞の成長が阻害、低下、もしくは排除され、1つもしくは複数の浸潤性腫瘍の体積が低下するか、またはそれらの任意の組み合わせが起こる。いくつかの態様において、1つまたは複数の浸潤性腫瘍細胞に対する効果と共に、原発性腫瘍の成長も阻害、低下、もしくは排除され、1つまたは複数の原発性腫瘍の体積も低下する。
【0102】
いくつかの態様において、浸潤性腫瘍細胞は、固形腫瘍に含有されている。いくつかの態様において、浸潤性腫瘍細胞は、腹水、胸水、および脳脊髄液を含むが、これらに限定されるわけではない体液に含有されている。いくつかの態様において、浸潤性腫瘍細胞は、腹膜滲出液(腹水)、胸膜滲出液、および心膜滲出液を含むが、これらに限定されるわけではない体腔の滲出液に含有されている。
【0103】
いくつかの態様において、本明細書において提供された方法および使用は、1つまたは複数の原発性腫瘍を有し、かつ転移性腫瘍細胞も有する対象の処置を含む。方法は、抗PD-L1コンジュゲートを、原発性腫瘍および転移性腫瘍細胞を有する対象へ投与する工程、ならびに、コンジュゲートの投与の後に、選択されたフタロシアニン色素のために適当な波長によって標的区域を照射する工程を含む。そのような方法において、転移性腫瘍細胞の成長が阻害、低下、もしくは排除されるか、1つもしくは複数の転移性腫瘍の体積が低下するか、またはそれらの任意の組み合わせが起こる。
【0104】
本明細書において提供された方法および使用のいくつかの態様において、転移性腫瘍細胞は、原発性腫瘍から遠位にあり、転移性腫瘍細胞の一部または全部は、照射されず、例えば、直接的に照射されない。
【0105】
方法および使用のいくつかの態様において、標的区域、例えば、リンパ節または原発性の腫瘍もしくは病変を含有し、かつ/またはそれらの近傍にある標的区域のみが、照射される。いくつかの局面において、第2の腫瘍または病変、例えば、転移性の腫瘍または病変は、照射されない。
【0106】
いくつかの局面において、転移性腫瘍細胞は、原発性腫瘍から発生し、原発性腫瘍を有する対象の体内の遠位の組織または器官へ拡散した細胞を含む。転移性腫瘍細胞は、肺、胃、肝臓、膵臓、乳腺、食道、頭頸部、脳、末梢神経、皮膚、小腸、結腸、直腸、肛門、卵巣、子宮、膀胱、前立腺、脂肪組織、骨格筋、平滑筋、血管、骨、骨髄、眼、舌、リンパ節、脾臓、腎臓、子宮頸部、男性生殖器、女性生殖器、精巣、血液、骨髄、脳脊髄液、または任意のその他の組織もしくは器官の1つまたは複数の位置に位置していてよい。いくつかの態様において、転移性腫瘍細胞は、固形腫瘍に含有されている。いくつかの態様において、転移性腫瘍細胞は、循環腫瘍細胞であるか、または腫瘤に関連していない。
【0107】
いくつかの態様において、方法および使用は、コンジュゲートの投与の前に、同時に、または後に、免疫調整剤、例えば、チェックポイント阻害剤の投与を含む。いくつかの態様において、方法および使用は、本発明において提供されるコンジュゲートの投与の前に、同時に、または後に、第2のコンジュゲート、例えば、第2のイムノコンジュゲートの投与およびその後の照射を含む。いくつかの態様において、方法および使用は、1つまたは複数の付加的な抗がん処置、例えば、化学療法、抗血管新生治療、キナーゼ阻害剤、放射線治療、低分子治療、またはその他の処置、例えば、本明細書中の「組み合わせ治療」というタイトルのセクションに記載される任意の処置のうちの1つまたは複数の投与を含む。
【0108】
C. 過去の治療的処置に対して低応答性、不応性、または非応答性である腫瘍または腫瘍細胞を処置するための方法および組成物
いくつかの態様において、抗PD-L1コンジュゲート、即ち、フタロシアニン色素-ターゲティング分子コンジュゲートであって、ターゲティング分子がPD-L1に結合するコンジュゲート(例えば、抗PD-L1抗体-IR700コンジュゲート)を含有する組成物、ならびに、例えば、免疫調整剤、例えば、免疫チェックポイント阻害剤、および/または抗がん剤、例えば、腫瘍細胞もしくはがん細胞を間接的に標的にする抗がん剤による、1つまたは複数の過去の処置に対して、失敗した、低応答性であった、所望のレベルの応答を達成しなかった、所望のレベルより低いレベルの応答を達成した(例えば、不十分に応答性であった、もしくは治療的に有効でなかった)、または非応答性であった腫瘍またはがんの治療または処置のための、抗PD-L1コンジュゲートを含む方法および使用が提供される。いくつかの態様において、腫瘍またはがんは、抗PD-L1治療、抗PD-1治療、および/もしくは抗CTLA-4治療に対して所望のレベルより低いレベルの応答を達成したもの、または抵抗性であると予測されるものである。いくつかの態様において、腫瘍またはがんは、抗PD-L1治療に対して所望のレベルより低いレベルの応答を達成したもの、または抵抗性であると予測されるものである。いくつかの態様において、腫瘍またはがんは、抗PD-1治療に対して所望のレベルより低いレベルの応答を達成したもの、または抵抗性であると予測されるものである。いくつかの態様において、腫瘍またはがんは、抗CTLA-4治療に対して所望のレベルより低いレベルの応答を達成したもの、または抵抗性であると予測されるものである。
【0109】
がんには、原発性腫瘍または多発原発性腫瘍が含まれ、転移性腫瘍細胞、例えば、転移性がん;新たに発生する腫瘍もしくはがん;原発性腫瘍もしくは多発原発性腫瘍を含むがん;および/または浸潤性腫瘍細胞、例えば、浸潤性がんも含まれる。いくつかの局面において、提供された組成物、方法、使用、および組み合わせは、非炎症性腫瘍、例えば、原発性非炎症性腫瘍および二次性非炎症性腫瘍(例えば、転移性腫瘍)を、免疫調整剤またはその他の抗がん治療に対して感作することもできる。
【0110】
そのような方法および使用は、例えば、抗PD-L1コンジュゲートの、腫瘍または腫瘍細胞を有する対象への投与、ならびにその後の、フタロシアニン色素のための適当な光波長および線量を使用した、標的区域(例えば、PD-L1発現細胞が存在する部位)の照射を含む。いくつかの局面において、照射は、表面上に標的分子(例えば、PD-L1)を発現する細胞の照射依存性の溶解および死をもたらし、治療効果またはがんの処置をもたらす。いくつかのケースにおいて、PD-L1を発現する細胞、例えば、単球、マクロファージ、樹状細胞(DC)、M2腫瘍関連マクロファージ(M2 TAM)、免疫寛容原性樹状細胞(tDC)、または骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)、またはある種の腫瘍細胞が、死滅し、従って、急速に枯渇する。結果として、腫瘍細胞の壊死が起こり得る。
【0111】
いくつかの局面において、提供された態様によって処置される腫瘍、病変、またはがんには、例えば、免疫調整剤、例えば、免疫チェックポイント阻害剤、および/または抗がん剤、例えば、抗PD-L1治療、抗PD-1治療、または抗CTLA-4治療による1つまたは複数の過去の処置に対して、失敗した、低い応答性を有した、もしくは実質的に非応答性であった、低応答性であった、所望のレベルの応答を達成しなかった、所望のレベルより低いレベルの応答を達成した(例えば、不十分に応答性であった、もしくは治療的に有効でなかった)、後に再発した、不応性であった、かつ/または抵抗性であったものが含まれる。
【0112】
いくつかの態様において、提供された態様によって処置される対象は、抗がん処置および/または免疫チェックポイント阻害剤によって以前に処置されたことがあるものである。いくつかの態様において、提供された態様によって処置される対象は、免疫チェックポイント阻害剤によって以前に処置されたことがあるものである。いくつかの態様において、提供された態様によって処置される対象は、抗がん処置および/または免疫チェックポイント阻害剤による以前の処置に失敗した、または後に再発したものである。いくつかの態様において、提供された態様によって処置される対象は、免疫チェックポイント阻害剤による以前の処置に失敗した、または後に再発したものである。
【0113】
いくつかの態様において、方法の実施に起因する腫瘍成長の阻害は、抗がん処置および/または免疫チェックポイント阻害剤(例えば、抗PD-L1治療、抗PD-1治療、および/または抗CTLA-4治療)による以前の処置の結果としての腫瘍成長の阻害と比較して、より大きい。いくつかの態様において、方法の実施に起因する腫瘍成長の阻害は、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、抗PD-L1治療、抗PD-1治療、および/または抗CTLA-4治療)による以前の処置の結果としての腫瘍成長の阻害と比較して、より大きい。
【0114】
いくつかの局面において、がんが非応答性である過去の治療的処置には、抗がん剤の使用が含まれる。過去の抗がん剤は、化学療法剤、抗体処置、および/または放射線治療剤のうちの1つまたは複数であり得る。いくつかの態様において、過去の治療は、チェックポイント阻害剤、免疫アジュバント、化学療法剤、放射線、および腫瘍細胞に結合する抗がんターゲティング分子を含む生物製剤より選択される抗がん剤による治療である。いくつかの態様において、過去の治療は、抗体コンジュゲートである抗がん剤による治療である。いくつかの態様において、過去の治療は、フタロシアニン色素、毒素、またはTLRアゴニストを含む抗体コンジュゲートによる治療である。
【0115】
いくつかの局面において、がん、腫瘍、または腫瘍細胞が非応答性である過去の治療的処置は、(免疫チェックポイント遮断治療としても公知の)免疫チェックポイント阻害剤による処置であり得る。過去の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、またはそれらの組み合わせであり得る。過去の免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイントタンパク質、例えば、PD-1またはPD-L1に結合し、それを阻害する低分子阻害剤、抗体阻害剤、またはその他の分子であり得る。PD-1に対する例示的な抗体阻害剤には、ペムブロリズマブ(MK-3475、Keytruda)、ニボルマブ(OPDIVO)、セミプリマブ(LIBTAYO)、トリパリマブ(JS001)、HX008、SG001、GLS-010、ドスタルリマブ(TSR-042)、チスレリズマブ(BGB-A317)、セトレリマブ(JNJ-63723283)、ピジリズマブ(CT-011)、ゲノリムズマブ(APL-501、GB226)、BCD-100、セミプリマブ(REGN2810)、F520、シンチリマブ(IBI308)、GLS-010、CS1003、LZM009、カムレリズマブ(SHR-1210)、SCT-I10A、MGA012、AK105、PF-06801591、AMP-224、AB122、AMG 404、BI 754091、HLX10、JTX-4014、MEDI0680、Sym021、MGD019、MGD013、AK104、XmAb20717、RO7121661、CX-188、およびスパルタリズマブのいずれかが含まれるが、これらに限定されるわけではない。PD-L1に対する例示的な抗体阻害剤には、アテゾリズマブ(MPDL3280A、Tecentriq)、アベルマブ(Bavencio)、デュルバルマブ(MEDI4736、Imfinzi)、LDP、NM-01、STI-3031、KN035、LY3300054、M7824(MSB0011359C)、BMS-936559、MSB2311、BCD-135、BGB-A333、CBT-502、コシベリマブ(CK-301)、CS1001、FAZ053、MDX-1105、SHR-1316、TG-1501、ZKAB001、INBRX-105、MCLA-145、KN046、LY3415244、REGN3504、およびHLX20のいずれかが含まれ得るが、これらに限定されるわけではない。
【0116】
いくつかの局面において、処置される腫瘍、病変、またはがんには、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体による処置に対して抵抗性、不応性、または非応答性であった腫瘍またはがんが含まれる。いくつかの局面において、処置される腫瘍、病変、またはがんには、抗PD-L1抗体による処置に対して抵抗性、不応性、もしくは非応答性であった、または抗PD-L1抗体による処置に対して抵抗性、不応性、もしくは非応答性であると予測される腫瘍またはがんが含まれる。いくつかの局面において、処置される腫瘍、病変、またはがんには、抗PD-1抗体による処置に対して抵抗性、不応性、もしくは非応答性であった、または抗PD-1抗体による処置に対して抵抗性、不応性、もしくは非応答性であると予測される腫瘍またはがんが含まれる。
【0117】
いくつかの局面において、過去の処置は、抗CTLA-4抗体、例えば、イピリムマブ(YERVOY)、トレメリムマブ、AGEN1181、AGEN1884、ADU-1064、BCD-145、およびBCD-217による処置である。いくつかの局面において、処置される腫瘍、病変、またはがんには、抗CTLA-4抗体による処置に対して抵抗性、不応性、もしくは非応答性であった、または抗CTLA-4抗体による処置に対して抵抗性、不応性、もしくは非応答性であると予測される腫瘍またはがんが含まれる。
【0118】
いくつかの局面において、がん、腫瘍、または腫瘍細胞が非応答性である過去の治療的処置は、免疫調整剤、例えば、サイトカイン、例えば、アルデスロイキン(PROLEUKIN)、インターフェロンα-2a、インターフェロンα-2b(Intron A)、ペグインターフェロンα-2b(SYLATRON/PEG-Intron)、もしくはIFNAR1/2経路、IL-2/IL-2R経路を標的とするサイトカイン、またはアジュバント、例えば、ポリICLC(HILTONOL/イミキモド)、4-1BB(CD137;TNFRS9)、OX40(CD134)、OX40リガンド(OX40L)、トール様受容体2アゴニストSUP3、トール様受容体TLR3およびTLR4のアゴニスト、ならびにトール様受容体7(TLR7)経路を標的にするアジュバント、TNFRスーパーファミリーおよびTNFスーパーファミリーのその他のメンバー、その他のTLR2アゴニスト、TLR3アゴニスト、およびTLR4アゴニストによる処置であり得る。
【0119】
いくつかの局面において、がんが非応答性である過去の治療的処置には、免疫抑制細胞を標的にする治療剤の使用が含まれる。薬剤は、抗体、例えば、制御性T細胞を標的にする抗CD25抗体、例えば、バシリキシマブ(Simulect(登録商標))、ダクリズマブ、もしくはPC61;低分子阻害剤、またはそれらの組み合わせであり得る。免疫抑制細胞には、制御性T細胞、M2マクロファージ、腫瘍関連線維芽細胞、もしくはがん関連線維芽細胞(CAF)、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0120】
いくつかの場合において、提供された態様によって処置される腫瘍、病変、またはがんには、「非炎症性腫瘍」または「非炎症性がん」、例えば、免疫抑制表現型を有する腫瘍が含まれる。そのような非炎症性腫瘍は、腫瘍内CD8+Tエフェクター細胞の数および/もしくは活性の実質的な低下もしくは欠如、ならびに/または腫瘍内免疫抑制細胞の数および/もしくは活性の実質的な増加を含むが、これらに限定されるわけではない特徴を有し得る。いくつかのケースにおいて、非炎症性の腫瘍またはがんは、高い腫瘍変異負荷(TMB)、低い免疫応答性の指標となる免疫スコア、低い免疫応答性の指標となり得るプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)マーカーまたはプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)マーカーの状態(例えば、細胞表面発現)を有する。いくつかの場合において、非炎症性の腫瘍またはがんは、PD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤による単独治療に応答しない。
【0121】
いくつかの態様において、非炎症性の腫瘍またはがんは、本明細書に記載されるように、抗PD-L1コンジュゲートによって処置され得、その後、照射され得る。いくつかの態様において、抗PD-L1コンジュゲートおよびその後の照射と、免疫調整剤、例えば、免疫チェックポイント阻害剤とによる組み合わせ処置は、照射された原発性腫瘍および遠位腫瘍の両方の成長に対する増強された阻害効果をもたらす。
【0122】
さらに、免疫調整治療による処置、例えば、免疫チェックポイント阻害剤による処置に対して抵抗性である腫瘍について、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせられた、抗PD-L1コンジュゲートによる処置およびその後の光照射は、照射された原発性腫瘍および遠位腫瘍、原発性腫瘍および新たに発生する腫瘍、ならびに/または原発性腫瘍および異なる型の二次性腫瘍の両方の成長に対する増強された阻害効果をもたらすことができ、このことは、がんおよび腫瘍細胞の処置における免疫チェックポイント阻害剤に対する抗PD-L1光免疫治療の感作効果を示す。
【0123】
II. 方法において使用するためのコンジュゲートおよび組成物
いくつかの局面において、フタロシアニン色素と連結された、PD-L1に結合するターゲティング分子を含む抗PD-L1コンジュゲートを利用する組成物、組み合わせ、方法、または使用が提供される。いくつかの局面において、PD-L1に結合するターゲティング分子は、抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの態様において、ターゲティング分子は、PD-L1、例えば、免疫抑制細胞、例えば、M2 TAM、tDC、もしくはMDSC、および/またはある種の腫瘍細胞の、例えば、細胞表面に発現されたPD-L1に結合する。本明細書に記載されたコンジュゲートのいずれか、例えば、抗PD-L1コンジュゲートを含有する組成物、例えば、薬学的組成物、およびそのような組成物またはそのような抗PD-L1コンジュゲートを含有する組み合わせも提供される。いくつかの局面において、そのようなコンジュゲート、組成物、および組み合わせは、本明細書において提供される態様による治療または処置において使用するためのものである。
【0124】
いくつかの局面において、「抗PD-L1コンジュゲート」には、フタロシアニン色素と連結されたPD-L1結合分子を有するコンジュゲートが含まれる。PD-L1結合分子には、抗PD-L1抗体もしくは抗体断片(例えば、抗原結合断片)、またはPD-L1に結合するその他のタンパク質、ペプチド、もしくは低分子が含まれ得る。いくつかの局面において、例示的な抗PD-L1コンジュゲートは、抗体またはその抗原結合断片を含む。例示的な抗PD-L1コンジュゲートは、Si-フタロシアニン色素、例えば、IR700色素を含む。
【0125】
いくつかの態様において、PD-L1ターゲティング分子は、PD-L1を標的にするまたはPD-L1に結合する抗体またはその抗原結合断片、例えば、抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの局面において、PD-L1を標的にするまたはPD-L1に結合する例示的な抗体には、アテゾリズマブ(MPDL3280A、Tecentriq、RG7446))、アベルマブ(Bavencio)、BCD-135、BGB-A333、BMS-936559(MDX-1105)、CBT-502(TQB-2450)、コシベリマブ(CK-301)、CS1001(WPB3155)、デュルバルマブ(MEDI4736、Imfinzi)、FAZ053、HLX20、INBRX-105、KN035、KN046、LDP、LY3300054、LY3415244、M7824(MSB0011359C)、MCLA-145、MSB2311、NM-01、REGN3504、SHR-1316(HTI-1088)、STI-3031(IMC-001、STI-A1015)、TG-1501、ZKAB001(STI-A1014)、およびそれらの任意の抗原結合断片が含まれるが、これらに限定されるわけではない。例示的な抗PD-L1抗体には、MDX-1105(MEDAREX)、MEDI4736(Medimmune)、MPDL3280A(Genentech)、BMS-935559(Bristol-Myers Squibb)、およびMSB0010718C、ならびに上記のもののいずれかの抗原結合断片が含まれる。
【0126】
いくつかの態様において、ターゲティング分子は、抗PD-L1抗体の「相補性決定領域」または「CDR」を含む抗体または抗体断片、例えば、記載された抗体またはその抗原結合断片のいずれかであり得る。CDRは、典型的には、抗原のエピトープとの結合を担う。各鎖のCDRは、典型的には、CDR1、CDR2、およびCDR3と呼ばれ、N末端から開始して順番に番号付けられ、一般的に、特定のCDRが位置している鎖によっても同定される。従って、重鎖可変領域(VH)CDR3は、それが見出される抗体の重鎖の可変ドメインに位置し、軽鎖可変領域(VL)CDR1は、それが見出される抗体の軽鎖の可変ドメインに由来するCDR1である。異なる特異性、例えば、異なる抗原に対する異なる結合部位を有する抗体は、異なるCDRを有する。抗体間で変動するのは、CDRであるが、CDR内の限定された数のアミノ酸位置のみが、抗原結合に直接的に関与する。CDR内のこれらの位置は、特異性決定残基(SDR)と呼ばれる。
【0127】
特定のCDRまたはフレームワーク領域(FR、重鎖および軽鎖の可変領域の非CDR部分)の正確なアミノ酸配列の境界は、多数の公知のスキームのいずれか、例えば、Kabat et al.(1991),"Sequences of Proteins of Immunological Interest,"5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(「Kabat」ナンバリングスキーム);Al-Lazikani et al.,(1997)JMB 273,927-948(「Chothia」ナンバリングスキーム);MacCallum et al.,J.Mol.Biol.262:732-745(1996),"Antibody-antigen interactions:Contact analysis and binding site topography,"J.Mol.Biol.262,732-745."(「Contact」ナンバリングスキーム);Lefranc MP et al.,"IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains,"Dev Comp Immunol,2003,27(1):55-77(「IMGT」ナンバリングスキーム);Honegger A and Pluckthun A,"Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains:an automatic modeling and analysis tool,"J Mol Biol,2001,309(3):657-70(「Aho」ナンバリングスキーム);およびMartin et al.,"Modeling antibody hypervariable loops:a combined algorithm,"PNAS,1989,86(23):9268-9272(「AbM」ナンバリングスキーム)によって記載されたものを使用して決定され得る。
【0128】
いくつかの態様において、ターゲティング分子は、抗体断片であり得る。「抗体断片」とは、完全抗体が結合する抗原に結合する、完全抗体の一部分を含む、完全抗体以外の分子をさす。抗体断片の例には、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2;ダイアボディ;直鎖抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);重鎖可変領域のみの(VHH)シングルドメイン抗体;および抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれるが、これらに限定されるわけではない。その他の抗体断片または抗体断片から形成された多重特異性抗体には、多価scFv、二重特異性scFv、またはscFv-CH3二量体が含まれる。抗体断片は、完全抗体のタンパク質分解および組換え宿主細胞による産生を含むが、これらに限定されるわけではない、様々な技術によって作製され得る。
【0129】
いくつかの態様において、抗PD-L1コンジュゲートは、アテゾリズマブ(MPDL3280A、Tecentriq、RG7446)、アベルマブ(Bavencio)、BCD-135、BGB-A333、BMS-936559(MDX-1105)、CBT-502(TQB-2450)、コシベリマブ(CK-301)、CS1001(WPB3155)、デュルバルマブ(MEDI4736、Imfinzi)、FAZ053、HLX20、INBRX-105、KN035、KN046、LDP、LY3300054、LY3415244、M7824(MSB0011359C)、MCLA-145、MSB2311、NM-01、REGN3504、SHR-1316(HTI-1088)、STI-3031(IMC-001、STI-A1015)、TG-1501、およびZKAB001(STI-A1014)からなる群より選択される抗体に由来する相補性決定領域(CDR)を含む抗体またはその抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、抗PD-L1コンジュゲートは、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、KN035、またはCK-301の中から選択される抗体に由来するCDRを含む抗体またはその抗原結合断片を含む。
【0130】
任意の態様のいくつかにおいて、抗PD-L1コンジュゲートは、アテゾリズマブ(MPDL3280A、Tecentriq、RG7446)、アベルマブ(Bavencio)、BCD-135、BGB-A333、BMS-936559(MDX-1105)、CBT-502(TQB-2450)、コシベリマブ(CK-301)、CS1001(WPB3155)、デュルバルマブ(MEDI4736、Imfinzi)、FAZ053、HLX20、INBRX-105、KN035、KN046、LDP、LY3300054、LY3415244、M7824(MSB0011359C)、MCLA-145、MSB2311、NM-01、REGN3504、SHR-1316(HTI-1088)、STI-3031(IMC-001、STI-A1015)、TG-1501、ZKAB001(STI-A1014)、およびそれらの抗原結合断片の中から選択される抗体を含む。例示的な抗PD-L1抗体には、MDX-1105(MEDAREX)、MEDI4736(Medimmune)、MPDL3280A(Genentech)、BMS-935559(Bristol-Myers Squibb)、およびMSB0010718C、またはそれらの抗原結合断片が含まれる。いくつかの態様において、抗PD-L1コンジュゲートは、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、KN035、およびCK-301の中から選択される抗体、またはそれらの抗原結合断片を含む。
【0131】
いくつかの態様において、コンジュゲートの抗体は、本明細書に記載された抗PD-L1抗体のいずれか、例えば、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、KN035、もしくはCK-301、またはそれらの抗原結合断片のバイオシミラー、交換可能物、もしくはバイオベターである。そのような抗体には、本明細書に記載された抗PD-L1抗体のいずれか、例えば、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、KN035、もしくはCK-301、またはそれらの抗原結合断片のコピーバイオロジカルおよびバイオジェネリックも含まれる。
【0132】
いくつかの態様において、抗PD-L1抗体のターゲティング分子は、機能性のFc領域を含む。いくつかの態様において、抗PD-L1抗体であるターゲティング分子は、機能性のFc領域を含まない。いくつかの態様において、抗PD-L1抗体であるターゲティング分子は、ヒト化抗体である。いくつかの態様において、抗PD-L1抗体であるターゲティング分子は、完全ヒト抗体である。
【0133】
いくつかの局面において、提供された態様において利用される抗PD-L1コンジュゲートは、フタロシアニン色素を含む。いくつかの態様において、フタロシアニン色素は、ケイ素配位金属を含むフタロシアニン色素(Si-フタロシアニン色素)である。いくつかの態様において、フタロシアニン色素は、以下の式を含む:
[式中:
Lは、リンカーであり;
Qは、色素のターゲティング分子との接着のための反応基であり;
R2、R3、R7、およびR8は、任意で置換されたアルキルおよび任意で置換されたアリールの中から各々独立に選択され;
R4、R5、R6、R9、R10、およびR11は、水素、任意で置換されたアルキル、任意で置換されたアルカノイル、任意で置換されたアルコキシカルボニル、任意で置換されたアルキルカルバモイル、およびキレート配位子の中から各々独立に選択され、R4、R5、R6、R9、R10、およびR11のうちの少なくとも1つは水溶性基を含み;
R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、およびR23は、水素、ハロゲン、任意で置換されたアルキルチオ、任意で置換されたアルキルアミノ、および任意で置換されたアルコキシの中から各々独立に選択され;
X2およびX3は、各々独立に、任意でヘテロ原子が介在するC1~C10アルキレンである]。
【0134】
いくつかの態様において、フタロシアニン色素は、以下の式を含む:
[式中:
X1およびX4は、各々独立に、任意でヘテロ原子が介在するC1~C10アルキレンであり;
R2、R3、R7、およびR8は、任意で置換されたアルキルおよび任意で置換されたアリールから各々独立に選択され;
R4、R5、R6、R9、R10、およびR11は、水素、任意で置換されたアルキル、任意で置換されたアルカノイル、任意で置換されたアルコキシカルボニル、任意で置換されたアルキルカルバモイル、およびキレート配位子の中から各々独立に選択され、R4、R5、R6、R9、R10、およびR11のうちの少なくとも1つは水溶性基を含み;
R16、R17、R18、およびR19は、水素、ハロゲン、任意で置換されたアルキルチオ、任意で置換されたアルキルアミノ、および任意で置換されたアルコキシの中から各々独立に選択される]。
【0135】
本明細書において提供される方法および使用のいくつかの態様において、Si-フタロシアニン色素は、IRDye 700DX(IR700)である。いくつかの態様において、反応基を含有するフタロシアニン色素は、IR700 NHSエステル、例えば、IRDye 700DX NHSエステル(LiCor 929-70010、929-70011)である。いくつかの態様において、色素は、以下の式を有する化合物である:
【0136】
本明細書における目的のため、「IR700」、「IRDye 700」、または「IRDye 700DX」という用語は、例えば、反応基を介して、色素が、例えば、抗体とコンジュゲートされる時に上記式を含む。
【0137】
いくつかの態様において、本明細書中の方法によって使用するためのコンジュゲートには、PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたSi-フタロシアニン色素を含む抗PD-L1コンジュゲートが含まれる。いくつかの態様において、コンジュゲートは、抗PD-L1抗体-Si-フタロシアニン色素コンジュゲートである。いくつかの態様において、コンジュゲートは、抗PD-L1抗体-IR700コンジュゲートである。いくつかの態様において、コンジュゲートは、抗PD-L1抗体-IR700コンジュゲートであり、ここで、抗体は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、KN035、もしくはCK-301、またはそれらの抗原結合断片である。いくつかの態様において、コンジュゲートは、アテゾリズマブ-IR700コンジュゲートである。いくつかの態様において、コンジュゲートは、アベルマブ-IR700コンジュゲートである。いくつかの態様において、コンジュゲートは、デュルバルマブ-IR700コンジュゲートである。いくつかの態様において、コンジュゲートは、KN035-IR700コンジュゲートである。いくつかの態様において、コンジュゲートは、CK-301-IR700コンジュゲートである。
【0138】
III. 投与の方法および製剤
いくつかの態様において、抗PD-L1コンジュゲートは、全身投与されてもよいし、または処置すべき器官もしくは組織へ局所投与されてもよい。例示的な投与ルートには、局部、注射(例えば、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、腫瘍内、および静脈内)、経口、舌下、直腸、経皮、鼻腔内、膣、ならびに吸入のルートが含まれるが、これらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、抗PD-L1コンジュゲートは、静脈内投与される。いくつかの態様において、抗PD-L1コンジュゲートは、非経口投与される。いくつかの態様において、抗PD-L1コンジュゲートは、経口投与される。いくつかの態様において、コンジュゲートは、局所注射によって投与される。いくつかの態様において、コンジュゲートは、局部適用として投与される。
【0139】
抗PD-L1コンジュゲートを含む組成物は、例えば、腫瘍、例えば、がんを有する対象、または、例えば、手術を介して、腫瘍が以前に除去された対象へ、当技術分野において公知の任意の方法を使用して、局所投与または全身投与され得る。具体的な例が提供されるが、開示された薬剤の投与の代替的な方法が使用されてもよいことを当業者は理解するであろう。そのような方法には、例えば、処置を必要とする対象への数時間~数日の期間にわたる継続的な注入を提供するための、カテーテルまたは植込み型ポンプの使用が含まれ得る。
【0140】
いくつかの態様において、抗PD-L1コンジュゲートは、非経口手段、例えば、腫瘍への直接的な注射または注入によって、例えば、腫瘍内に投与される。いくつかの態様において、抗PD-L1コンジュゲートは、薬剤を腫瘍へ適用することによって、例えば、抗PD-L1コンジュゲートを含有する溶液に腫瘍を浸すことによって、または薬剤を腫瘍に注ぐことによって、腫瘍へ投与される。
【0141】
さらに、または、あるいは、抗PD-L1コンジュゲートは、腫瘍、例えば、がんを有する対象へ、全身投与、例えば、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、腹腔内投与、皮下投与、または経口投与され得る。
【0142】
抗PD-L1コンジュゲートを含有する組成物、例えば、薬学的組成物、ならびにそのような組成物の使用、例えば、治療的使用および/または医薬としての使用も、本明細書において提供される。いくつかの局面において、組成物は、抗PD-L1コンジュゲートと薬学的に許容される担体とを含む。いくつかの態様において、抗PD-L1コンジュゲートを含有する組成物は、提供された態様のいずれかによる処置または治療において使用するためのもの、例えば、疾患または状態の処置のため、疾患または状態を有する対象へ投与するためのものである。対象へ投与される抗PD-L1コンジュゲートの投薬量は、絶対的な制限を受けないが、組成物およびその活性成分の性質、ならびに望まれない副作用、例えば、薬剤に対する免疫応答、処置される対象、ならびに処置される状態の型、ならびに投与の様式に依存するであろう。一般的に、用量は、治療的に有効な量、例えば、所望の生物学的効果を達成するために十分な量、例えば、腫瘍のサイズ、例えば、体積および/もしくは重量を減少させるため、または腫瘍のさらなる成長を弱めるため、または腫瘍の望ましくない症状を減少させるため、有効な量であろう。
【0143】
いくつかの態様において、抗PD-L1コンジュゲートの投与のために使用される組成物は、企図される投与の型のために適切な従来の薬学的担体および賦形剤と共に、有効量の薬剤を含有する。例えば、いくつかの態様において、非経口製剤は、コンジュゲートの無菌の水性の溶液または懸濁液を含有し得る。いくつかの態様において、経口投与用の組成物は、緩衝剤、界面活性剤、チキソトロピック(thixotropic)剤、および風味剤を任意で含んでいてよい水性の溶液または懸濁液の中に、有効量の抗PD-L1コンジュゲートを含有し得る。
【0144】
いくつかの態様において、抗PD-L1コンジュゲート、または付加的な治療剤と組み合わせられたコンジュゲートは、薬学的に許容される緩衝液、例えば、薬学的に許容される担体または媒体を含有するものにおいて製剤化され得る。一般的に、薬学的に許容される担体または媒体、例えば、薬学的に許容される緩衝液に存在するものは、当技術分野において公知の任意のものであり得る。Remington's Pharmaceutical Sciences,by E.W.Martin,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,19th Edition(1995)は、1つまたは複数の治療用化合物の薬学的送達のために適当な組成物および製剤を記載している。薬学的に許容される組成物は、一般的に、規制当局またはその他の当局の承認を考慮して調製され、動物およびヒトにおいて使用するための一般的に認識されている薬局方に従って調製される。
【0145】
薬学的組成物は、化合物を投与するための担体、例えば、希釈剤、佐剤、賦形剤、または媒体を含み得る。適当な薬学的担体の例は、E.W.Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。そのような組成物は、患者への適切な投与のための形態を提供するために適当な量の担体と共に、一般的に、精製された形態で、治療的に有効な量の化合物を含有するであろう。そのような薬学的担体は、無菌の液体、例えば、水、ならびに油、例えば、石油、動物、植物、または合成に由来するもの、例えば、落花生油、大豆油、鉱油、およびゴマ油であり得る。薬学的組成物が静脈内投与される時には、水が典型的な担体である。生理食塩水溶液および水性ブドウ糖およびグリセロール溶液も、特に、注射可能溶液のため、液体担体として利用され得る。組成物は、活性成分と共に以下のものを含有し得る:希釈剤、例えば、乳糖、ショ糖、リン酸水素カルシウム、またはカルボキシメチルセルロース;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、およびタルク;ならびに結合剤、例えば、デンプン、天然ゴム、例えば、アラビアゴム、ゼラチン、グルコース、モラセス、ポリビニルピロリドン、セルロースおよびその誘導体、ポビドン、クロスポビドン、ならびに当業者に公知のその他のそのような結合剤。適当な薬学的賦形剤には、デンプン、グルコース、乳糖、ショ糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、白亜、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、およびエタノールが含まれる。組成物は、所望により、微量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤、例えば、酢酸、クエン酸ナトリウム、シクロデキストリン誘導体、モノラウリン酸ソルビタン、トリエタノールアミン酢酸ナトリウム(triethanolamine sodium acetate)、オレイン酸トリエタノールアミン、およびその他のそのような薬剤も含有し得る。
【0146】
いくつかの態様において、薬学的調製物は、液状、例えば、溶液、シロップ、または懸濁液であり得る。そのような液体調製物は、薬学的に許容される添加剤、例えば、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または硬化食用脂肪);乳化剤(例えば、レシチンまたはアラビアゴム);非水性媒体(例えば、アーモンド油、油性エステル、または分留植物油);および保存剤(例えば、メチル-p-ヒドロキシベンゾエートまたはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)によって、従来の手段によって調製され得る。いくつかのケースにおいて、薬学的調製物は、使用前に水またはその他の適当な媒体で再構成するための凍結乾燥形態で提示されてもよい。
【0147】
いくつかの態様において、薬学的に許容される緩衝液または担体の性質は、利用される具体的な投与モードに依存する。例えば、いくつかの態様において、非経口製剤は、薬学的かつ生理学的に許容される液体、例えば、水、生理学的生理食塩水、平衡塩溶液、水性ブドウ糖、またはグリセロールを媒体として含む注射可能液を含み得る。いくつかの態様において、固体組成物、例えば、粉末、丸剤、錠剤、またはカプセル剤の形態のための非毒性固体担体には、例えば、薬学的等級のマンニトール、乳糖、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムが含まれ得る。生物学的に中性の担体に加えて、投与される薬学的組成物は、いくつかの態様において、微量の非毒性補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、保存剤、およびpH緩衝剤、例えば、酢酸ナトリウムまたはモノラウリン酸ソルビタンを含有し得る。
【0148】
化合物は、経口投与のため、適当な薬学的調製物、例えば、溶液、懸濁液、錠剤、分散錠、丸剤、カプセル剤、粉末、徐放性製剤、またはエリキシル剤に製剤化されてもよいし、経皮パッチ調製物および乾燥粉末吸入器に製剤化されてもよい。典型的には、化合物は、当技術分野において周知の技術および手法を使用して、薬学的組成物に製剤化される(例えば、Ansel Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms,Fourth Edition,1985,126を参照すること)。一般的に、製剤化のモードは、投与ルートによって変わる。
【0149】
組成物は、当業者に公知の任意のルート、例えば、筋肉内、静脈内、皮内、病巣内、腹腔内注射、皮下、腫瘍内、硬膜外、鼻腔内、経口、膣、直腸、局部、局所、耳、吸入、頬側(例えば、舌下)、および経皮投与、または任意のルートによる投与のため、製剤化され得る。その他の投与モードも企図される。投与は、処置の場所に依って、局所的、局部的、または全身的であり得る。処置を必要とする区域への局所投与は、例えば、手術中の局所注入、例えば、手術後の創傷被覆と併用される、局部適用、注射、カテーテル、坐剤、またはインプラントによって達成され得るが、これらに限定されるわけではない。
【0150】
皮下、筋肉内、腫瘍内、静脈内、または皮内のいずれかの注射を一般的に特徴とする非経口投与が、本明細書において企図される。注射可能剤は、従来の形態で、液体の溶液もしくは懸濁液、注射前に液体に溶解もしくは懸濁させるために適当な固形、または乳濁液のいずれかとして調製され得る。適当な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、ブドウ糖、グリセロール、またはエタノールである。さらに、所望により、投与される薬学的組成物は、溶媒、例えば、pH緩衝剤、金属イオン塩、またはその他のそのような緩衝液の形態で、活性化剤も含有し得る。薬学的組成物は、その他の微量の非毒性補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、安定剤、可溶性増強剤、およびその他のそのような薬剤、例えば、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミン、およびシクロデキストリンも含有し得る。一定の投薬量レベルが維持されるような徐放系または持続放出系の植込み(例えば、米国特許第3,710,795号を参照すること)も、本明細書において企図される。そのような非経口組成物に含有される活性化合物のパーセンテージは、その具体的な性質にも、化合物の活性および対象の必要にも、高度に依存する。
【0151】
注射可能剤は、局所投与および全身投与のために設計される。非経口投与用の調製物には、注射するための準備ができている無菌溶液、使用直前に溶媒と組み合わせるための準備ができている無菌乾燥可溶性生成物、例えば、凍結乾燥粉末、例えば、皮下注射用錠剤、注射するための準備ができている無菌懸濁液、使用直前に媒体と組み合わせるための準備ができている無菌乾燥不溶性生成物、および無菌乳濁液が含まれる。溶液は、水性または非水性のいずれかであり得る。静脈内投与される場合、適当な担体には、生理学的生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ならびに増粘剤および可溶化剤、例えば、グルコース、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールを含有する溶液、ならびにそれらの混合物が含まれる。
【0152】
非経口調製物において使用される薬学的に許容される担体には、水性媒体、非水性媒体、抗微生物剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、局所麻酔薬、懸濁化剤および分散剤、乳化剤、封鎖剤またはキレート剤、ならびにその他の薬学的に許容される物質が含まれる。水性媒体の例には、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、等張ブドウ糖注射液、無菌水注射液、ブドウ糖加乳酸リンゲル注射液が含まれる。非水性非経口媒体には、植物由来の不揮発性油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、および落花生油が含まれる。複数用量容器にパッケージングされる非経口調製物には、静菌的または静真菌的な濃度の抗微生物剤、例えば、フェノールまたはクレゾール、水銀剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、p-ヒドロキシ安息香酸メチルエステルおよびプロピルエステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、ならびに塩化ベンゼトニウムが添加され得る。等張剤には、塩化ナトリウムおよびブドウ糖が含まれる。緩衝剤には、リン酸およびクエン酸が含まれる。
【0153】
静脈内投与される場合、適当な担体には、生理学的生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ならびに増粘剤および可溶化剤、例えば、グルコース、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールを含有する溶液、ならびにそれらの混合物が含まれる。
【0154】
組成物は、単回投与用に製剤化されてもよいし、または複数回投与用に製剤化されてもよい。薬剤は、直接投与用に製剤化されてもよい。組成物は、液体または凍結乾燥製剤として提供され得る。組成物が凍結乾燥形態で提供される場合、それは、適切な緩衝液、例えば、無菌生理食塩水溶液によって、使用直前に再構成され得る。
【0155】
組成物は、連続的に、間欠的に、または同一組成物で、他の生物学的に活性な薬剤と共に投与されてもよい。投与には、放出制御系、例えば、放出制御製剤、およびデバイスによる放出制御、例えば、ポンプによるものも含まれ得る。
【0156】
特定の症例において最も適当なルートは、多様な因子、例えば、疾患の性質、疾患の進行、疾患の重症度、および使用される具体的な組成物に依存する。例えば、組成物は、例えば、静脈内投与を介して、全身投与される。皮下法も利用され得るが、静脈内法と比較して、等価な生物学的利用率を確実にするためには、増加した吸収回数が必要となり得る。
【0157】
薬学的組成物は、各投与ルートのために適切な剤形に製剤化され得る。薬学的かつ治療的に活性な化合物およびその誘導体は、典型的には、単位剤形または複数投与剤形(multiple dosage form)に製剤化され、投与される。各単位用量は、必要とされる薬学的担体、媒体、または希釈剤と共に、所望の治療効果を生じるために十分な、予定された量の治療的に活性な化合物を含有する。単位剤形には、化合物または薬学的に許容されるその誘導体を、適当な量、含有する、錠剤、カプセル剤、丸剤、粉末、顆粒剤、無菌の非経口用の溶液または懸濁液、および経口用の溶液または懸濁液、ならびに油水乳濁液が含まれるが、これらに限定されるわけではない。単位用量型は、アンプルおよび注射器に含有されていてもよいし、または錠剤もしくはカプセルに個別にパッケージングされていてもよい。単位用量型は、分割されて投与されてもよいし、または複数個が投与されてもよい。複数用量型は、分離された単位用量型で投与される、単一の容器にパッケージングされた複数の同一の単位剤形である。複数用量型の例には、バイアル、錠剤もしくはカプセル剤の瓶、またはパイントもしくはガロンの瓶が含まれる。従って、複数用量型は、パッケージングにおいて分離されていない複数個の単位用量である。一般的に、0.005%~100%の範囲で活性成分を含有し、残りは非毒性担体から構成される剤形または組成物が、調製され得る。薬学的組成物は、各投与ルートのために適切な剤形に製剤化され得る。
【0158】
薬学的に活性な化合物の濃度は、所望の薬理学的効果を生じるために有効な量を注射が提供するよう調整される。正確な用量は、当技術分野において公知であるように、患者または動物の年齢、体重、および状態に依存する。単位用量非経口調製物は、アンプル、バイアル、または針付きの注射器にパッケージングされる。薬学的に活性な化合物を含有する液体溶液または再構成された粉末調製物の体積は、処置される疾患およびパッケージのために選択された具体的な製品によって変わる。当技術分野において公知であり、実施されているように、非経口投与用の調製物は、全て、無菌でなければならない。いくつかの態様において、組成物は、溶液、乳濁液、およびその他の混合物として投与するために再構成され得る凍結乾燥粉末として、提供され得る。それらは、固体またはゲルとして再構成され、製剤化されてもよい。凍結乾燥粉末は、前記の溶液のいずれかから調製され得る。
【0159】
無菌凍結乾燥粉末は、フタロシアニン色素-ターゲティング分子コンジュゲートを緩衝溶液に溶解させることによって調製され得る。緩衝溶液は、粉末、または粉末から調製された再構成された溶液の、他の薬理学的成分の安定性を改善する賦形剤を含有し得る。
【0160】
いくつかの態様において、溶液のその後の滅菌濾過、およびその後の当業者に公知の標準的な条件での凍結乾燥が、所望の製剤を提供する。簡単に説明すると、凍結乾燥粉末は、賦形剤、例えば、ブドウ糖、ソルビトール、果糖、コーンシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、ショ糖、またはその他の適当な薬剤を、適当な緩衝液、例えば、クエン酸、リン酸ナトリウムもしくはリン酸カリウム、または当業者に公知のその他のそのような緩衝液に溶解させることによって調製される。次いで、得られた混合物に、選択された酵素が添加され、それが溶解するまで攪拌される。得られた混合物が、滅菌濾過され、または微粒子を除去し、無菌性を確実にするために処理され、凍結乾燥のためのバイアルに分配される。各バイアルは、1回分(1mg~1g、一般的に、1~100mg、例えば、1~5mg)または複数回分の化合物を含有し得る。凍結乾燥粉末は、適切な条件、例えば、約4℃~室温で保管され得る。この凍結乾燥粉末の緩衝溶液による再構成は、非経口投与において使用するための製剤を提供する。正確な量は、処置される適応症および選択された化合物に依存する。そのような量は、経験的に決定され得る。
【0161】
いくつかの態様において、組成物のpHは、6~10、または約6~10、例えば、6~8、または約6~8、6.9~7.3、または約6.9~7.3、例えば、約pH7.1である。いくつかの態様において、薬学的に許容される緩衝液のpHは、少なくとも5、もしくは約5、少なくとも6、もしくは約6、少なくとも7、もしくは約7、少なくとも8、もしくは約8、少なくとも9、もしくは約9、または少なくとも10、もしくは約10であり、または7.1である。
【0162】
組成物は、単回投与用に製剤化されてもよいし、または複数回投与用に製剤化されてもよい。薬剤は、直接投与用に製剤化されてもよい。
【0163】
いくつかの態様において、本明細書において提供された組成物は、抗PD-L1コンジュゲートの直接投与のため、0.01mgもしくは約0.01mgから、3000mgもしくは約3000mg、0.01mgもしくは約0.01mgから、1000mgもしくは約1000mg、0.01mgもしくは約0.01mgから、500mgもしくは約500mg、0.01mgもしくは約0.01mgから、100mgもしくは約100mg、0.01mgもしくは約0.01mgから、50mgもしくは約50mg、0.01mgもしくは約0.01mgから、10mgもしくは約10mg、0.01mgもしくは約0.01mgから、1mgもしくは約1mg、0.01mgもしくは約0.01mgから、0.1mgもしくは約0.1mg、0.1mgもしくは約0.1mgから、2000mgもしくは約2000mg、0.1mgもしくは約0.1mgから、1000mgもしくは約1000mg、0.1mgもしくは約0.1mgから、500mgもしくは約500mg、0.1mgもしくは約0.1mgから、100mgもしくは約100mg、0.1mgもしくは約0.1mgから、50mgもしくは約50mg、0.1mgもしくは約0.1mgから、10mgもしくは約10mg、0.1mgもしくは約0.1mgから、1mgもしくは約1mg、1mgもしくは約1mgから、2000mgもしくは約2000mg、1mgもしくは約1mgから、1000mgもしくは約1000mg、1mgもしくは約1mgから、500mgもしくは約500mg、1mgもしくは約1mgから、100mgもしくは約100mg、1mgもしくは約1mgから、10mgもしくは約10mg、10mgもしくは約10mgから、2000mgもしくは約2000mg、10mgもしくは約10mgから、1000mgもしくは約1000mg、10mgもしくは約10mgから、500mgもしくは約500mg、10mgもしくは約10mgから、100mgもしくは約100mg、100mgもしくは約100mgから、2000mgもしくは約2000mg、100mgもしくは約100mgから、1000mgもしくは約1000mg、100mgもしくは約100mgから、500mgもしくは約500mg、500mgもしくは約500mgから、2000mgもしくは約2000mg、500mgもしくは約500mgから、1000mgもしくは約1000mg、および1000mgもしくは約1000mgから、3000mgもしくは約3000mgの範囲の量で製剤化される。いくつかの態様において、組成物の体積は、0.5mL~1000mL、例えば、0.5mL~100mL、0.5mL~10mL、1mL~500mL、1mL~10mL、例えば、少なくとも0.5mL、1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、10mL、15mL、20mL、30mL、40mL、50mL、もしくはそれ以上、または少なくとも約0.5mL、1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、10mL、15mL、20mL、30mL、40mL、50mL、もしくはそれ以上、または約0.5mL、1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、10mL、15mL、20mL、30mL、40mL、50mL、もしくはそれ以上、または0.5mL、1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、10mL、15mL、20mL、30mL、40mL、50mL、もしくはそれ以上であり得る。例えば、組成物は、100mgもしくは約100mgから、500mgもしくは約500mg、または200mgもしくは約200mgから、400mgもしくは約400mgの量の単回投与のため、製剤化される。いくつかの態様において、組成物は、500mgもしくは約500mgから、1500mgもしくは約1500mg、800mgもしくは約800mgから、1200mgもしくは約1200mg、または1000mgもしくは約1000mgから、1500mgもしくは約1500mgの量の単回投与のため、製剤化される。いくつかの態様において、組成物の体積は、10mLもしくは約10mLから、1000mLもしくは約1000mL、または50mLもしくは約50mLから、500mLもしくは約500mLであり;または組成物の体積は、少なくとも10mL、20mL、30mL、40mL、50mL、75mL、100mL、150mL、200mL、250mL、300mL、400mL、500mL、もしくは1000mL、または少なくとも約10mL、20mL、30mL、40mL、50mL、75mL、100mL、150mL、200mL、250mL、300mL、400mL、500mL、もしくは1000mLである。
【0164】
いくつかの態様において、製剤のバイアル含量の全体が、投与のために取り出されてもよいし、または複数回投与のため、複数回分に分割されてもよい。投与するための量の薬物が取り出された後に、その製剤は、所望により、さらに希釈されてもよく、例えば、水、生理食塩水(例えば、0.9%)、またはその他の生理学的溶液で希釈されてもよい。
【0165】
いくつかの態様において、提供された態様によって、抗PD-L1コンジュゲートと組み合わせて使用するための、付加的な治療剤、例えば、免疫調整剤または抗がん剤を含有する組成物も提供される。いくつかの局面において、付加的な治療剤は、例えば、前記の、公知のまたは標準的な製剤化ガイドラインに従って調製され得る。いくつかの態様において、免疫調整剤、抗がん剤、および/または抗PD-L1コンジュゲートは、別々の組成物として製剤化される。いくつかの態様において、免疫調整剤は、抗PD-L1コンジュゲートとは別の組成物として提供され、2つの組成物は別々に投与される。いくつかの態様において、抗がん剤は、抗PD-L1コンジュゲートとは別の組成物として提供され、2つの組成物は別々に投与される。組成物は、非経口送達(即ち、全身送達)のために製剤化され得る。例えば、組成物、または組成物の組み合わせは、皮下送達または静脈内送達のために製剤化される。薬剤、例えば、抗PD-L1コンジュゲートならびに免疫調整剤および/または抗がん剤は、異なる投与ルートによって投与され得る。
【0166】
いくつかの局面において、例示的な付加的な治療剤、例えば、免疫調整剤が、特定の治療剤について、単独治療のために指示される通り、またはその他の投与スケジュールおよび用量で投与され得る。抗PD-L1コンジュゲートおよび付加的な治療剤の投与を含む方法および使用のいくつかの態様において、付加的な治療剤は、推奨される用量および/または投与スケジュールで投与される。いくつかの態様において、例えば、抗PD-L1コンジュゲートが、腫瘍もしくはがんもしくはTMEを付加的な治療剤に対して感作する時、かつ/または抗PD-L1コンジュゲートと付加的な治療剤との組み合わせが、相乗的な応答をもたらす時、付加的な治療剤は、推奨される量より低い用量で、または交互スケジュールで、本明細書中の方法において投与され得る。
【0167】
IV. 抗PD-L1コンジュゲートと共に使用するための装置および照射方法
いくつかの局面において、提供された態様と共に使用され得る装置には、色素コンジュゲート組成物、例えば、フタロシアニン色素コンジュゲート(例えば、抗PD-L1コンジュゲート、例えば、本明細書に記載されたもの)と共に使用するために適当な光波長の波長で(いくつかのケースにおいて、放射線照射とも呼ばれる)照射を提供する光拡散装置が含まれる。照射装置は、光源(例えば、レーザー)、および光を関心対象の区域へ運搬するための手段(例えば、対象の隔離された区域または隔離された病変もしくは腫瘍を照射するための1つまたは複数のファイバー)を含み得る。
【0168】
いくつかの態様において、標的区域、例えば、腫瘍、腫瘍の近傍、リンパ節、リンパ節の近傍は、400nmもしくは約400nmから、900nmもしくは約900nm、例えば、500nmもしくは約500nmから、もしくは500nmもしくは約500nmから、900nmもしくは約900nm、例えば、600nmもしくは約600nmから、もしくは600nmもしくは約600nmから、850nmもしくは約850nm、例えば、600nmもしくは約600nmから、もしくは600nmもしくは約600nmから、740nmもしくは約740nm、例えば、660nmもしくは約660nmから、740nmもしくは約740nm、660nmもしくは約660nmから、710nmもしくは約710nm、660nmもしくは約660nmから、700nmもしくは約700nm、670nmもしくは約670nmから、690nmもしくは約690nm、680nmもしくは約680nmから、740nmもしくは約740nm、または690nmもしくは約690nmから、710nmもしくは約710nmの範囲内の波長の光によって照射される。いくつかの態様において、標的区域、例えば、腫瘍、腫瘍の近傍、リンパ節、リンパ節の近傍、または腫瘍微小環境は、600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nm、例えば、660nmまたは約660nmから、740nmまたは約740nmの波長の光によって照射される。いくつかの態様において、標的区域、例えば、腫瘍、腫瘍の近傍、リンパ節、リンパ節の近傍、または腫瘍微小環境は、少なくとも600nm、620nm、640nm、660nm、680nm、700nm、720nm、もしくは740nm、または少なくとも約600nm、620nm、640nm、660nm、680nm、700nm、720nm、もしくは740nm、例えば、690±50nmもしくは約690±50nm、または690±40nmもしくは約690±40nm、例えば、690nmもしくは約690nm、または680nmもしくは約680nmの波長の光によって照射される。
【0169】
本明細書において提供された方法および使用のいくつかの態様において、照射は、0.5cmまたは約0.5cmから、10cmまたは約10cmのディフューザー長を含む円筒形拡散ファイバーを使用して、1.8±0.2cmまたは約1.8±0.2cmの間隔で実施される。いくつかの態様において、光照射線量は、20J/cmファイバー長または約20J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長または約500J/cmファイバー長である。いくつかの態様において、腫瘍は、10mmもしくは約10mmを超える深さにあるか、または皮下腫瘍である。
【0170】
いくつかの態様において、提供された方法は、0.5cmまたは約0.5cmから、10cmまたは約10cmのディフューザー長を含む円筒形拡散ファイバーによる、1.8±0.2cmまたは約1.8±0.2cmの間隔での、100J/cmファイバー長もしくは約100J/cmファイバー長の光線量での、または400mW/cmもしくは約400mW/cmのフルエンス率での、対象における間質腫瘍である標的区域の照射を含む。いくつかの態様において、標的区域は、10mmもしくは約10mmを超える深さにある腫瘍であるか、または皮下腫瘍である。いくつかの態様において、円筒形拡散ファイバーは、1.8±0.2cmまたは約1.8±0.2cmの間隔で腫瘍内に設置されたカテーテルに置かれる。いくつかの態様において、カテーテルは、光透過性である。
【0171】
いくつかの態様において、標的区域、例えば、腫瘍、腫瘍の近傍、リンパ節、リンパ節の近傍、または腫瘍微小環境は、少なくとも1J/cm2もしくは少なくとも約1J/cm2、例えば、少なくとも10J/cm2もしくは少なくとも約10J/cm2、少なくとも30J/cm2もしくは少なくとも約30J/cm2、少なくとも50J/cm2もしくは少なくとも約50J/cm2、少なくとも100J/cm2もしくは少なくとも約100J/cm2、または少なくとも500J/cm2もしくは少なくとも約500J/cm2の光線量で照射される。いくつかの態様において、照射の線量は、1J/cm2もしくは約1J/cm2から、J/cm2もしくは約J/cm2、1J/cm2もしくは約1J/cm2から、500J/cm2もしくは約500J/cm2、5J/cm2もしくは約5J/cm2から、200J/cm2もしくは約200J/cm2、10J/cm2もしくは約10J/cm2から、100J/cm2もしくは約100J/cm2、または10J/cm2もしくは約10J/cm2から、50J/cm2もしくは約50J/cm2である。いくつかの態様において、標的区域は、少なくとも2J/cm2、5J/cm2、10J/cm2、25J/cm2、50J/cm2、75J/cm2、100J/cm2、150J/cm2、200J/cm2、300J/cm2、400J/cm2、もしくは500J/cm2、または少なくとも約2J/cm2、5J/cm2、10J/cm2、25J/cm2、50J/cm2、75J/cm2、100J/cm2、150J/cm2、200J/cm2、300J/cm2、400J/cm2、もしくは500J/cm2の線量で照射される。
【0172】
いくつかの態様において、標的区域は、表在性腫瘍である腫瘍である。いくつかの態様において、腫瘍は、10mm未満の厚さである。いくつかの態様において、照射は、表面照射のためのマイクロレンズチップ付きファイバーを使用して実施される。いくつかの態様において、光照射線量は、5J/cm2または約5J/cm2から、200J/cm2または約200J/cm2である。
【0173】
いくつかの態様において、標的区域、例えば、腫瘍、腫瘍の近傍、リンパ節、リンパ節の近傍、または腫瘍微小環境は、少なくとも1J/cmファイバー長または少なくとも約1J/cmファイバー長、例えば、少なくとも10J/cmファイバー長もしくは少なくとも約10J/cmファイバー長、少なくとも50J/cmファイバー長もしくは少なくとも約50J/cmファイバー長、少なくとも100J/cmファイバー長もしくは少なくとも約100J/cmファイバー長、少なくとも250J/cmファイバー長もしくは少なくとも約250J/cmファイバー長、または少なくとも500J/cmファイバー長もしくは少なくとも約500J/cmファイバー長の線量で照射される。いくつかの態様において、照射の線量は、1J/cmファイバー長もしくは約1J/cmファイバー長から、1000J/cmファイバー長もしくは約1000J/cmファイバー長、1J/cmファイバー長もしくは約1J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長、2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長、50J/cmファイバー長もしくは約50J/cmファイバー長から、300J/cmファイバー長もしくは約300J/cmファイバー長、10J/cmファイバー長もしくは約10J/cmファイバー長から、100J/cmファイバー長もしくは約100J/cmファイバー長、または10J/cmファイバー長もしくは約10J/cmファイバー長から、50J/cmファイバー長もしくは約50J/cmファイバー長である。いくつかの態様において、標的区域、例えば、腫瘍、腫瘍の近傍、リンパ節、リンパ節の近傍、または腫瘍微小環境は、少なくとも2J/cmファイバー長、5J/cmファイバー長、10J/cmファイバー長、25J/cmファイバー長、50J/cmファイバー長、75J/cmファイバー長、100J/cmファイバー長、150J/cmファイバー長、200J/cmファイバー長、250J/cmファイバー長、300J/cmファイバー長、400J/cmファイバー長、もしくは500J/cmファイバー長、または少なくとも約2J/cmファイバー長、5J/cmファイバー長、10J/cmファイバー長、25J/cmファイバー長、50J/cmファイバー長、75J/cmファイバー長、100J/cmファイバー長、150J/cmファイバー長、200J/cmファイバー長、250J/cmファイバー長、300J/cmファイバー長、400J/cmファイバー長、もしくは500J/cmファイバー長の線量で照射される。
【0174】
いくつかの態様において、提供された方法は、5J/cm2または約5J/cm2から、200J/cm2または約200J/cm2の光線量での、表面照射のためのマイクロレンズチップ付きファイバーによる、対象における表在性腫瘍である標的区域の照射を含む。いくつかの態様において、光照射線量は、50J/cm2または約50J/cm2である。
【0175】
いくつかのケースにおいて、PITを達成するためのヒト対象における照射の線量は、マウスにおいてPITのために必要とされるものより低くなり得ることが見出されている。例えば、いくつかのケースにおいて、インビボ腫瘍マウスモデルにおける50J/cm2または約50J/cm2(50J/cm2)の光線量測定(dosimetry)は、PITのために有効でなく、これは、ヒト患者について臨床的に観察され得るものとは対照的である。
【0176】
いくつかの態様において、フタロシアニン色素-ターゲティング分子コンジュゲートを含む組成物の投与の後の照射の線量は、660~740nm、もしくは約660~740nmの波長での、少なくとも1J/cm2もしくは少なくとも約1J/cm2、もしくは少なくとも1J/cmファイバー長もしくは少なくとも約1J/cmファイバー長、例えば、660~740nm、もしくは約660~740nmの波長での、少なくとも10J/cm2もしくは少なくとも約10J/cm2、もしくは少なくとも10J/cmファイバー長もしくは少なくとも約10J/cmファイバー長、660~740nm、もしくは約660~740nmの波長での、少なくとも50J/cm2もしくは少なくとも約50J/cm2、もしくは少なくとも50J/cmファイバー長もしくは少なくとも約50J/cmファイバー長、または660~740nm、もしくは約660~740nmの波長での、少なくとも100J/cm2もしくは少なくとも約100J/cm2、もしくは少なくとも100J/cmファイバー長もしくは少なくとも約100J/cmファイバー長である。いくつかの態様において、波長は660~710nmである。いくつかの態様において、フタロシアニン色素-ターゲティング分子コンジュゲートを含む組成物の投与の後の照射の線量は、690nmもしくは約690nmの波長での、少なくとも1.0J/cm2もしくは少なくとも約1.0J/cm2、もしくは少なくとも1J/cmファイバー長もしくは少なくとも約1J/cmファイバー長、例えば、690nmもしくは約690nmの波長での、少なくとも10J/cm2もしくは少なくとも約10J/cm2、もしくは少なくとも10J/cmファイバー長もしくは少なくとも約10J/cmファイバー長、690nmもしくは約690nmの波長での、少なくとも50J/cm2もしくは少なくとも約50J/cm2、もしくは少なくとも50J/cmファイバー長もしくは少なくとも約50J/cmファイバー長、または690nmもしくは約690nmの波長での、少なくとも100J/cm2もしくは少なくとも約100J/cm2、もしくは少なくとも100J/cmファイバー長もしくは少なくとも約100J/cmファイバー長、例えば、690nmもしくは約690nmの波長での、1.0~500J/cm2もしくは1.0~500J/cmファイバー長である。本明細書において提供されたコンジュゲートまたは組成物の投与の後の例示的な照射は、660nmまたは約660nmから、740nmまたは約740nmの波長での、少なくとも1J/cm2もしくは少なくとも約1J/cm2、または少なくとも1J/cmファイバー長もしくは少なくとも約1J/cmファイバー長の線量での、標的区域の照射を含む。
【0177】
いくつかの態様において、照射は、600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で実施される。いくつかの態様において、標的区域は、690±40nmの波長で照射される。いくつかの態様において、標的区域は、50J/cm2もしくは約50J/cm2または100J/cmファイバー長もしくは約100J/cmファイバー長の線量で照射される。
【0178】
いくつかの態様において、光またはレーザーは、色素分子、例えば、コンジュゲートを含有する細胞に、5秒または約5秒から、5分または約5分、適用され得る。例えば、いくつかの態様において、光またはレーザーは、色素分子を活性化するため、5秒、10秒、15秒、20秒、25秒、30秒、35秒、40秒、45秒、50秒、もしくは55秒、または約5秒、10秒、15秒、20秒、25秒、30秒、35秒、40秒、45秒、50秒、もしくは55秒、またはそのような値のいずれか2つの間の範囲内で適用される。いくつかの態様において、光またはレーザーは、1分、1.5分、2分、2.5分、3分、3.5分、4分、4.5分、もしくは5分、もしくは約1分、1.5分、2分、2.5分、3分、3.5分、4分、4.5分、もしくは5分、またはそれ以上、またはそのような値のいずれか2つの間の範囲内で適用される。いくつかの態様において、光またはレーザーが適用される時間の長さは、例えば、光またはレーザーのエネルギー、例えば、ワット数に依って変動し得る。例えば、より低いワット数を有する光またはレーザーは、色素分子を活性化するため、より長い時間、適用され得る。
【0179】
いくつかの態様において、光またはレーザーは、コンジュゲートの投与の30または約30分から、96または約96時間後に適用され得る。例えば、いくつかの態様において、光またはレーザーは、コンジュゲートの投与の30、35、40、45、50、もしくは55分後、もしくは約30、35、40、45、50、もしくは55分後、またはそのような値のいずれか2つの間の範囲内で適用される。いくつかの態様において、光またはレーザーは、コンジュゲートの投与の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30時間後、または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30時間後に適用され、またはそのような値のいずれか2つの間の範囲内で、例えば、20もしくは約20時間から、28もしくは約28時間、もしくは約24時間±4時間後に投与される。いくつかの態様において、光またはレーザーは、コンジュゲートの投与の1~24時間もしくは約1~24時間後、例えば、1もしくは約1時間から、12もしくは約12時間、12もしくは約12時間から、24もしくは約24時間、6もしくは約6時間から、12もしくは約12時間後に適用され、または24もしくは約24時間を超える時間の後に投与され得る。いくつかの態様において、光またはレーザーは、コンジュゲートの投与の36、48、72、もしくは96時間後、または約36、48、72、もしくは96時間後に適用される。いくつかの態様において、光またはレーザーは、コンジュゲートの投与の24時間±4時間または約24時間±4時間後に適用される。
【0180】
いくつかの態様において、標的区域、例えば、腫瘍、腫瘍の近傍、リンパ節、リンパ節の近傍、もしくは腫瘍微小環境、または対象は、1回または複数回、照射され得る。従って、照射は、1日で完了してもよいし、または同一のもしくは異なる投薬量で、複数の日に繰り返し行われてもよく、例えば、照射は、少なくとも2回もしくは約2回の異なる時点、3回もしくは約3回の異なる時点、4回もしくは約4回の異なる時点、5回もしくは約5回の異なる時点、もしくは10回もしくは約10回の異なる時点で行われてもよい。いくつかの態様において、繰り返される照射は、同一の日に行われてもよいし、連続する日に行われてもよいし、または1~3日毎、3~7日毎、1~2週間毎、2~4週間毎、1~2ヶ月毎、もしくはさらに長い間隔で行われてもよい。いくつかの態様において、複数回の照射、例えば、少なくとも2回、少なくとも3回、または少なくとも4回の照射、例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、または10回の別々の投与が実施される。
【0181】
いくつかの態様において、照射の線量または方法は、標的区域、例えば、腫瘍、腫瘍の近傍、リンパ節、リンパ節の近傍の型または形態に依って異なる。
【0182】
いくつかの態様において、照射は、「トップハット型(top hat)」照射量分布プロファイルを有する装置、例えば、WO2018/080952およびUS20180239074に記載されたものを利用する。
【0183】
V. 組み合わせ治療
いくつかの態様において、組み合わせ治療を含む方法および使用、ならびに組み合わせ、例えば、組み合わせ治療によって使用するための組み合わせも提供される。いくつかの局面において、組み合わせは、抗PD-L1コンジュゲートと、付加的な治療剤、例えば、免疫調整剤または抗がん剤とを含む。いくつかの態様において、そのような組み合わせ治療において抗PD-L1コンジュゲートのために使用されるターゲティング分子は、抗PD-L1抗体、またはPD-L1に結合する抗体断片である。いくつかの態様において、コンジュゲートは、Si-フタロシアニン色素、例えば、IR700色素と連結された、抗PD-L1抗体、またはPD-L1に結合する抗体断片である。いくつかの局面において、組み合わせ治療は、抗PD-L1コンジュゲートと、付加的な治療剤、例えば、免疫調整剤または抗がん剤との投与を含む。そのような方法において、原発性腫瘍、新たに発生する腫瘍、浸潤性腫瘍細胞、および転移性腫瘍細胞が、付加的な治療剤、例えば、免疫調整剤または抗がん剤による処置に対して感作される。そのような方法において、原発性腫瘍、新たに発生する腫瘍、浸潤性腫瘍細胞、および転移性腫瘍細胞の成長が、阻害され、低下し、もしくは排除され、かつ/または1つもしくは複数の腫瘍の体積が、低下する。
【0184】
そのような組み合わせ処置の結果としての感受性の増加には、腫瘍成長の阻害の低下、腫瘍細胞の浸潤および/もしくは転移の低下、腫瘍細胞死滅の増加、全身免疫応答の増加、新たなT細胞プライミングの増加、腫瘍内CD8+T細胞の多様性の増加、腫瘍内CD8+Tエフェクター細胞の数および/もしくは活性の増加、腫瘍内制御性T細胞の数および/もしくは活性の減少、腫瘍内骨髄系由来サプレッサー細胞の数および/もしくは活性の減少、腫瘍内の腫瘍関連線維芽細胞もしくはがん関連線維芽細胞(CAF)の数および/もしくは活性の減少、またはそれらの任意の組み合わせが含まれ得るが、これらに限定されるわけではない。
【0185】
いくつかの態様において、付加的な治療剤は、抗がん剤である。いくつかの態様において、抗がん剤は、化学療法剤、抗体処置、および放射線治療剤のうちの1つまたは複数であり得る。いくつかの態様において、付加的な治療剤は、チェックポイント阻害剤、免疫アジュバント、化学療法剤、放射線、および腫瘍細胞に結合する抗がんターゲティング分子を含む生物製剤より選択される抗がん剤である。
【0186】
いくつかの局面において、付加的な治療剤は、(免疫調整(immune modulating)剤とも呼ばれる)免疫調整(immunomodulatory)剤、例えば、免疫チェックポイント阻害剤である。いくつかの局面において、そのような組み合わせは、腫瘍、病変、またはがんの処置のために利用される。いくつかの態様において、方法は、抗PD-L1コンジュゲートの投与の前に、同時に、または後に、免疫調整剤、例えば、免疫チェックポイント阻害剤の投与を含む。
【0187】
いくつかの態様において、本明細書中のそのような組み合わせ治療において使用される付加的な治療剤、例えば、免疫調整剤には、アジュバント、免疫チェックポイント阻害剤、サイトカイン、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。組み合わせにおいて使用するためのサイトカインは、例えば、アルデスロイキン(PROLEUKIN)、インターフェロンα-2a、インターフェロンα-2b(Intron A)、ペグインターフェロンα-2b(SYLATRON/PEG-Intron)、またはIFNAR1/2経路、IL-2/IL-2R経路を標的にするサイトカインであり得る。組み合わせにおいて使用するためのアジュバントは、例えば、ポリICLC(HILTONOL/イミキモド)、4-1BB(CD137;TNFRS9)、OX40(CD134)、OX40リガンド(OX40L)、トール様受容体2アゴニストSUP3、トール様受容体TLR3およびTLR4のアゴニスト、ならびにトール様受容体7(TLR7)経路を標的にするアジュバント、TNFRスーパーファミリーおよびTNFスーパーファミリーのその他のメンバー、その他のTLR2アゴニスト、TLR3アゴニスト、およびTLR4アゴニストであり得る。
【0188】
いくつかの態様において、付加的な治療剤は、PD-1阻害剤、例えば、低分子、抗体、または抗原結合断片である免疫チェックポイント阻害剤である。例示的な抗PD-1抗体には、ペムブロリズマブ(MK-3475、Keytruda)、ニボルマブ(OPDIVO)、セミプリマブ(LIBTAYO)、トリパリマブ(toripalimab)(JS001)、HX008、SG001、GLS-010、ドスタルリマブ(dostarlimab)(TSR-042)、チスレリズマブ(tislelizumab)(BGB-A317)、セトレリマブ(cetrelimab)(JNJ-63723283)、ピディリズマブ(CT-011)、ゲノリムズマブ(genolimzumab)(APL-501、GB226)、BCD-100、セミプリマブ(REGN2810)、F520、シンチリマブ(sintilimab)(IBI308)、GLS-010、CS1003、LZM009、カムレリズマブ(camrelizumab)(SHR-1210)、SCT-I10A、MGA012、AK105、PF-06801591、AMP-224、AB122、AMG 404、BI 754091、HLX10、JTX-4014、MEDI0680、Sym021、MGD019、MGD013、AK104、XmAb20717、RO7121661、CX-188、およびスパルタリズマブ(spartalizumab)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0189】
いくつかの態様において、付加的な治療剤は、CTLA-4阻害剤、例えば、低分子、抗体、または抗原結合断片である免疫チェックポイント阻害剤である。任意の態様のいくつかにおいて、抗CTLA-4抗体は、イピリムマブ(YERVOY)、トレメリムマブ、AGEN1181、AGEN1884、ADU-1064、BCD-145、およびBCD-217からなる群より選択される。
【0190】
いくつかの態様において、付加的な治療剤は、CD25阻害剤、例えば、低分子、抗体、または抗原結合断片である。任意の態様のいくつかにおいて、抗CD25抗体は、バシリキシマブ(Simulect(登録商標))、ダクリズマブ、PC61からなる群より選択される。
【0191】
付加的な治療剤、例えば、チェックポイント阻害剤、アジュバント、またはサイトカインの投与は、抗PD-L1コンジュゲートの投与の前に、同時に、または後に投与され得る。例えば、方法は、免疫チェックポイント阻害剤の1回または複数回の投与、抗PD-L1コンジュゲートの投与、および、コンジュゲートの投与の後の、適当な光の波長による標的区域の照射を含み得る。方法は、まず、コンジュゲートを投与し、コンジュゲートの投与の後に、標的区域を照射し、次いで、コンジュゲートの投与の後に、または照射工程の後に、付加的な治療剤、例えば、免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含み得る。方法は、コンジュゲートの投与と同時の、付加的な治療剤、例えば、免疫チェックポイント阻害剤の投与、および、その後の標的区域の照射も含み得る。いくつかの態様において、付加的な治療剤、例えば、免疫チェックポイント阻害剤、アジュバント、またはサイトカインが1回または複数回投与された後に、抗PD-L1コンジュゲートが投与され、その後、標的区域が照射され、次いで、付加的な治療剤(同一のまたは異なる付加的な治療剤)が1回または複数回さらに投与される。
【0192】
VI. 定義
他に定義されない限り、本明細書において使用される全ての専門用語、記号、ならびにその他の技術用語および科学用語、または用語法は、全て、特許請求の範囲に記載された主題が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同一の意味を有するものとする。いくつかのケースにおいて、一般的に理解される意味を有する用語が、明確および/または容易な言及のため、本明細書において定義されるが、そのような定義の内含は、必ずしも、当技術分野において一般的に理解されるものとの実質的な違いを表すと解釈されるべきではない。
【0193】
本明細書において使用されるように、単数形「(a)」、「(an)」、および「(the)」には、前後関係が他のことを明白に示さない限り、複数形も含まれる。例えば、「(a)」または「(an)」は、「少なくとも1」または「1または複数」を意味する。本明細書に記載された局面および変動には、局面および変動「からなる」および/または「から本質的になる」が含まれることが理解される。
【0194】
本開示の全体において、特許請求の範囲に記載された主題の様々な局面が、範囲フォーマットで提示される。範囲フォーマットでの記載は、便宜および簡潔のためのものに過ぎず、特許請求の範囲に記載された主題の範囲に対する柔軟性のない制限として解釈されるべきではないことが理解されるべきである。従って、範囲の記載は、その範囲内の全ての可能な部分範囲および個々の数値を具体的に開示していると見なされるべきである。例えば、値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間にある各中間値、および記述された他の範囲、または記述された範囲の中間値が、特許請求の範囲に記載された主題に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、より小さい範囲に独立に含まれてよく、記述された範囲の具体的に除外される限度を条件として、特許請求の範囲に記載された主題に包含される。記述された範囲が限度の一方または両方を含む場合、含まれた限度の一方または両方を除外した範囲も、特許請求の範囲に記載された主題に含まれる。これは、範囲の幅に関わらず当てはまる。
【0195】
「約」という用語は、本明細書において使用されるように、この技術領域の当業者に容易に公知の、それぞれの値についての通常の誤差範囲をさす。本明細書において、「約」が付いた値またはパラメータの言及は、その値またはパラメータ自体に関する態様を含む(記載する)。例えば、「約X」との記載には、「X」の記載が含まれる。
【0196】
本明細書において使用されるように、「コンジュゲート」とは、光活性化可能色素と直接的または間接的に連結されたターゲティング分子、例えば、化学的コンジュゲートによって作製されたもの、およびその他の任意の方法によって作製されたものをさす。例えば、コンジュゲートとは、1つまたは複数のターゲティング分子、例えば、細胞表面タンパク質に結合するまたはそれを標的とするポリペプチドと、直接的または間接的に連結された、フタロシアニン色素、例えば、ケイ素フタロシアニン色素(Si-フタロシアニン色素)、例えば、IR700分子をさし得る。ターゲティング分子は、ペプチド、1つのポリペプチド、複数のポリペプチド、抗体、抗体の一部(抗原結合断片など)、または化学部分でありうる。
【0197】
本明細書において使用されるように、「抗PD-L1コンジュゲート」とは、PD-L1に結合するターゲティング分子を有するコンジュゲートをさす。抗PD-L1コンジュゲートは、PD-L1に結合する、抗体、抗原結合断片、低分子、ペプチド、ポリペプチド、またはその他の部分であるターゲティング分子を有し得る。
【0198】
本明細書において使用されるように、「抗体」とは、抗原、例えば、腫瘍特異的タンパク質のエピトープを特異的に認識し、それに結合する、免疫グロブリンの軽鎖または重鎖の可変領域を少なくとも含むポリペプチドをさす。抗体は、可変重鎖(VH)領域および可変軽鎖(VL)領域と呼ばれる可変領域を各々含む、重鎖および軽鎖から構成される。共に、VH領域およびVL領域は、抗体によって認識される抗原との結合を担う。「抗体」という用語には、完全抗体、および抗原結合を示す抗原結合抗体断片、例えば、Fab断片、Fab'断片、F(ab)'2断片、Fab'-SH断片、単鎖Fvタンパク質(「scFv」)、重鎖可変領域のみの(VHH)シングルドメイン抗体、およびジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」);ダイアボディ;直鎖抗体;および抗体断片から形成された多重特異性抗体も含まれる。その他の抗体断片または抗体断片から形成された多重特異性抗体には、多価scFv、二重特異性scFv、またはscFv-CH3二量体が含まれる。scFvタンパク質は、免疫グロブリンの軽鎖可変領域および免疫グロブリンの重鎖可変領域がリンカーによって結合している融合タンパク質であり、dsFvにおいては、鎖の会合を安定化するためのジスルフィド結合を導入するため、鎖が変異させられている。「抗体」という用語には、遺伝学的に改変された型、例えば、免疫グロブリンの修飾型、キメラ抗体、例えば、ヒト化マウス抗体、およびヘテロコンジュゲート抗体、例えば、二重特異性抗体も含まれる。Pierce Catalog and Handbook,1994-1995(Pierce Chemical Co.,Rockford,Ill.);Kuby,J.,Immunology,3rd Ed.,W.H.Freeman & Co.,New York,1997も参照すること。
【0199】
「VH」または「VH」との言及は、免疫グロブリン重鎖の可変領域、例えば、Fv、scFv、dsFv、またはFabのそれをさす。「VL」または「VL」との言及は、免疫グロブリン軽鎖の可変領域、例えば、Fv、scFv、dsFv、またはFabのそれをさす。
【0200】
「モノクローナル抗体」とは、Bリンパ球の単一のクローンによって、または単一の抗体の軽鎖および重鎖の遺伝子がトランスフェクトされた細胞によって産生される抗体である。モノクローナル抗体は、当業者に公知の方法によって、例えば、骨髄腫細胞と免疫脾細胞との融合からハイブリッド抗体形成細胞を作製することによって、作製される。モノクローナル抗体は、ヒト化モノクローナル抗体を含む。
【0201】
「特異的に結合する」とは、無関係のタンパク質、例えば、非腫瘍タンパク質、例えば、βアクチンとの結合と比べて、抗原、例えば、PD-L1と特異的に免疫学的に反応する、個々の抗体の能力をさす。例えば、PD-L1特異的結合剤は、インビトロまたはインビボで、実質的にPD-L1タンパク質のみに結合する。本明細書において使用されるように、「腫瘍特異的結合剤」という用語には、実質的にその調製物中の腫瘍特異的タンパク質のみに結合する腫瘍特異的抗体およびその他の薬剤が含まれる。
【0202】
「抗体-IR700分子」または「抗体-IR700コンジュゲート」とは、IR700とコンジュゲートされた抗体、例えば、腫瘍特異的抗体を含む分子をさす。いくつかの例において、抗体は、がん細胞の表面タンパク質に特異的に結合するヒト化抗体(例えば、ヒト化モノクローナル抗体)である。
【0203】
「抗原」とは、動物における抗体の産生またはT細胞応答を刺激することができる化合物、組成物、または物質、例えば、動物に注射または吸収される組成物(例えば、腫瘍特異的タンパク質を含むもの)をさす。抗原は、特異的な体液性または細胞性の免疫、例えば、異種抗原、例えば、開示された抗原によって誘導されるものの生成物と反応する。「エピトープ」または「抗原性決定基」とは、B細胞および/またはT細胞が応答する抗原の領域をさす。1つの態様において、T細胞は、エピトープがMHC分子と共に提示された時に、エピトープに応答する。エピトープは、連続アミノ酸から、またはタンパク質の三次折り畳みによって並置された非連続アミノ酸から、形成され得る。連続アミノ酸から形成されたエピトープは、典型的には、変性溶媒に曝された時に保持されるが、三次折り畳みによって形成されたエピトープは、典型的には、変性溶媒による処理によって失われる。エピトープは、典型的には、特有の空間的コンフォメーションで、少なくとも3個、より一般的には、少なくとも5個、約9個、または約8~10個のアミノ酸を含む。エピトープの空間的コンフォメーションを決定する方法には、例えば、X線結晶解析および核磁気共鳴が含まれる。
【0204】
抗原の例には、抗原性決定基を含有する、ペプチド、脂質、多糖、および核酸、例えば、免疫細胞によって認識されるものが含まれるが、これらに限定されるわけではない。いくつかの例において、抗原には、腫瘍特異的ペプチド(例えば、がん細胞の表面上に見出されるもの)またはその免疫原性断片が含まれる。
【0205】
「免疫調整剤」および「免疫調整治療」とは、サイトカイン、アジュバント、および免疫チェックポイント阻害剤などの、それぞれ、免疫系を調整する治療剤、ならびにそのような薬剤による処置をさす。
【0206】
「免疫チェックポイント阻害剤」とは、いくつかの型の免疫系細胞、例えば、T細胞、およびいくつかのがん細胞によって作られるある種のタンパク質を阻止する薬物の型をさす。これらのタンパク質は、免疫応答の抑制を助け、T細胞ががん細胞を死滅させないようにすることができる。これらのタンパク質が阻止された時に、免疫系に対する「ブレーキ」が解除され、T細胞は、よりよくがん細胞を死滅させ得るようになる。T細胞またはがん細胞に見出されるチェックポイントタンパク質の例には、PD-1/PD-L1およびCTLA-4/B7-1/B7-2が含まれる。いくつかの免疫チェックポイント阻害剤は、がんを処置するために使用されている。
【0207】
本明細書において使用されるように、組み合わせとは、2つ以上の項目の任意の関連をさす。組み合わせは、2つ以上の別々の項目、例えば、2つの組成物もしくは2つの集団であってもよいし、それらの混合物、例えば、2つ以上の項目の単一の混合物、またはそれらの任意の変動であってもよい。組み合わせの要素は、一般的に、機能的に関連しているか、または関係がある。
【0208】
本明細書において使用されるように、「組み合わせ治療」とは、単一の疾患を処置するため、2つ以上の治療剤、例えば、少なくとも2つまたは少なくとも3つの治療剤が対象に与えられる処置をさす。いくつかの態様において、各治療は、独立した薬学的効果をもたらすことができ、共に、相加的または相乗的な薬学的効果をもたらすことができる。
【0209】
本明細書において使用されるように、疾患または状態を有する対象の「処置」とは、対象の症状が、処置後に、部分的にもしくは完全に軽減されるかまたは静止状態であり続けることを意味する。従って、処置には、予防、治療、および/または治癒が包含される。予防とは、可能性のある疾患の防止、および/または症状の悪化もしくは疾患の進行の防止をさす。
【0210】
本明細書において使用されるように、「処置」とは、状態、障害、もしくは疾患、またはその他の適応症の症状が、寛解するかまたはその他の方法で有益に変更される様式を意味する。
【0211】
本明細書において使用されるように、「治療効果」とは、疾患もしくは状態の症状を変更し、典型的には、改善もしくは寛解させるか、または疾患もしくは状態を治癒させる、対象の処置に起因する効果を意味する。
【0212】
本明細書において使用されるように、処置による、例えば、薬学的組成物またはその他の治療薬の投与による、特定の疾患または障害の症状の寛解とは、組成物もしくは治療薬の投与が原因であり得るかまたはそれと関連付けられ得る、永久でも一時的でも、持続性でも一過性でもよい、症状の低下をさす。
【0213】
本明細書において使用されるように、「対象」という用語は、動物、例えば、哺乳動物、例えば、ヒトをさす。
【0214】
本明細書において使用されるように、「任意選択の」または「任意で」とは、その後に記載されるイベントまたは状況が、起こること、または起こらないこと、その記載には、そのイベントまたは状況が起こる場合および起こらない場合が含まれることを意味する。例えば、任意で置換された基とは、その基が置換されていないこと、または置換されていることを意味する。
【0215】
本明細書において使用されるように、「腫瘍」とは、細胞が必要以上に分裂する時または死滅すべき時に死滅しない時に生じる組織の異常な塊をさす。腫瘍は、良性(非がん)または悪性(がん)であり得る。
【0216】
本明細書において使用されるように、「病変」とは、異常組織の区域をさす。病変は、良性(非がん)または悪性(がん)であり得る。
【0217】
本明細書において使用されるように、「抗がん剤」とは、がんを止めるまたは防止するための処置のために使用される分子をさす。例には、化学的低分子、抗体、抗体コンジュゲート、免疫調整剤、またはそれらの任意の組み合わせが含まれ得るが、これらに限定されるわけではない。
【0218】
本明細書において使用されるように、「サプレッサー細胞」または「免疫サプレッサー細胞」とは、免疫エフェクター細胞、例えば、CD8+Tエフェクター細胞の機能を減少または阻害することができる細胞をさす。サプレッサー細胞の例には、制御性T細胞、M2マクロファージ、骨髄系由来サプレッサー細胞、腫瘍関連線維芽細胞、またはがん関連線維芽細胞が含まれ得るが、これらに限定されるわけではない。
【0219】
本明細書において使用されるように、「免疫抑制剤」とは、身体の免疫応答を減少させる薬剤をさす。それは、感染およびその他の疾患、例えば、がんに対抗する身体の能力を低下させる。
【0220】
本明細書において使用されるように、「処置に対して抵抗性」とは、疾患または病理学的状態が、処置に対して非応答性であるか、または不十分な効力を示し、従って、この処置が、その疾患または病理学的状態の処置において、有効でないかもしくは有効性を示さない、または所望のレベルと比較して効力が低下していることをさす。
【0221】
本明細書において使用されるように、「全身免疫応答」とは、免疫学的チャレンジ、例えば、腫瘍、病変、またはがんに関連したものに対して全身的に応答する、対象の免疫系の能力をさす。全身免疫応答には、対象の適応免疫系および/または自然免疫系の全身応答が含まれ得る。全身免疫応答には、異なる組織、例えば、血流、リンパ節、骨髄、脾臓、および/または腫瘍微小環境に及ぶ免疫応答が含まれ、いくつかのケースにおいて、組織および器官、ならびに組織および器官の様々な細胞および因子における協調的応答が含まれる。
【0222】
本明細書において使用されるように、「局所免疫応答」とは、免疫学的チャレンジ、例えば、腫瘍、病変、またはがんに関連したものに対する、組織または器官における免疫応答をさす。局所免疫応答には、適応免疫系および/または自然免疫系が含まれ得る。局所免疫には、異なる組織、例えば、血流、リンパ節、骨髄、脾臓、および/または腫瘍微小環境において同時に起こる免疫応答が含まれる。
【0223】
VII. 例示的な態様
提供される態様には、以下のものが含まれる:
1. (a)PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを、腫瘍または病変を有する対象へ投与する工程;および
(b)600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で、PD-L1発現免疫細胞が位置している標的区域を照射する工程
を含む、免疫細胞応答を活性化することによって対象における腫瘍または病変を処置する方法であって、
PD-L1発現免疫細胞の死滅をもたらし、それによって、腫瘍または病変の成長を阻害する、前記方法。
2. (a)腫瘍または病変のための過去の免疫治療に対して低い応答を有するかまたは非応答性である対象を同定する工程;
(b)PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを、過去の免疫治療に対して低い応答を有したかまたは非応答性であった腫瘍または病変を有する対象へ投与する工程;および
(c)600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で、PD-L1発現細胞が位置している標的区域を照射する工程
を含む、腫瘍または病変のための過去の免疫治療に対して低い応答を有するかまたは非応答性である対象を処置する方法であって、
PD-L1発現細胞の死滅をもたらし、それによって、腫瘍および/または腫瘍微小環境における免疫細胞の数または活性を増加させる、前記方法。
3. PD-L1発現細胞が免疫細胞である、態様2の方法。
4. (a)抗がん剤を、腫瘍または病変を有する対象へ投与する工程;
(b)PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを、対象へ投与する工程;および
(c)600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で、PD-L1発現免疫細胞が位置している標的区域を照射する工程
を含む、腫瘍または病変を有する対象における抗がん剤に対する応答を増強する方法であって、
単独の抗がん剤による処置による阻害と比較して、腫瘍または病変の成長のより大きい阻害をもたらす、前記方法。
5. PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを、対象へ投与する工程;および600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で、PD-L1発現免疫細胞が位置している標的区域を照射する工程を含む、腫瘍または病変を有する対象における抗がん剤に対する応答を増強する方法であって、
対象が抗がん剤を投与された後であり、方法が、単独の抗がん剤による処置による阻害と比較して、腫瘍または病変の成長のより大きい阻害をもたらす、
前記方法。
6. 抗がん剤を対象へ投与する工程を含む、腫瘍または病変を有する対象における抗がん剤に対する応答を増強する方法であって、
対象が、
PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートの対象への投与;および
600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長での、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量での、PD-L1発現免疫細胞が位置している標的区域の照射
を含む処置を受容した後であり、
該方法が、単独の抗がん剤による処置による阻害と比較して、腫瘍または病変の成長のより大きい阻害をもたらす、
前記方法。
7. 抗がん剤が、チェックポイント阻害剤、免疫アジュバント、化学療法剤、放射線、および腫瘍細胞に結合する抗がんターゲティング分子を含む生物製剤より選択される、態様4~6のいずれかの方法。
8. 抗がん剤が抗体コンジュゲートである、態様4~7のいずれかの方法。
9. 抗体コンジュゲートがフタロシアニン色素、毒素、またはTLRアゴニストを含む、態様7または8の方法。
10. (a)PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを、対象へ投与する工程;および
(b)標的区域を照射する工程
を含む、抗がん免疫応答を発生させるため、対象を予防接種する方法であって、
対象における腫瘍の出現もしくは成長の遅延もしくは阻害、または腫瘍の近傍におけるT記憶細胞の出現もしくは増加より選択される抗がん応答をもたらす、前記方法。
11. 照射が、600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で実施される、態様10の方法。
12. 標的区域がPD-L1発現細胞を含む、態様10または11の方法。
13. PD-L1発現細胞が免疫細胞である、態様12の方法。
14. PD-L1発現細胞またはPD-L1発現免疫細胞の死滅をもたらす、態様1~13のいずれかの方法。
15. 第1の腫瘍もしくは第1の病変を処置するためかつ/またはその成長を阻害するため、対象がPD-L1コンジュゲートを投与され;前記方法が、1つもしくは複数の第2の腫瘍もしくは病変の出現または第1の腫瘍もしくは第1の病変の転移を阻害または遅延させる、態様1~14のいずれかの方法。
16. 1つまたは複数の第2の腫瘍が表現型的にかつ/または遺伝子型的に第1の腫瘍と異なる、態様15の方法。
17. 1つまたは複数の第2の腫瘍が第1の腫瘍の転移に由来しない、態様15または16の方法。
18. 処置が腫瘍もしくは病変の再成長を遅延させるか、がんの再発を防止するか、またはがんの寛解の期間を延長する、態様1~17のいずれかの方法。
19. PD-L1発現免疫細胞が、単球、マクロファージ、樹状細胞(DC)、M2腫瘍関連マクロファージ(M2 TAM)、免疫寛容原性樹状細胞(tDC)、および骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)からなる群より選択される、態様1~18のいずれかの方法。
20. PD-L1発現免疫細胞が腫瘍、腫瘍微小環境、またはリンパ節に位置している、態様1~19のいずれかの方法。
21. 腫瘍または病変がPD-L1陰性腫瘍細胞を含む、態様1~20のいずれかの方法。
22. 腫瘍または病変における腫瘍細胞の40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは95%超、または約40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは95%超がPD-L1陰性腫瘍細胞である、態様21の方法。
23. 腫瘍もしくは病変の成長の阻害、および/またはPD-L1発現細胞の死滅が、CD8+T細胞の存在に依存する、態様1~22のいずれかの方法。
24. 対象が抗がん処置および/または免疫チェックポイント阻害剤によって以前に処置されたことがある、態様1~23のいずれかの方法。
25. 対象が免疫チェックポイント阻害剤によって以前に処置されたことがある、態様1~24のいずれかの方法。
26. 対象が抗がん処置および/または免疫チェックポイント阻害剤による以前の処置に失敗した、または後に再発した、態様24または25の方法。
27. 対象が免疫チェックポイント阻害剤による以前の処置に失敗した、または後に再発した、態様24~26のいずれかの方法。
28. 前記方法の実施に起因する腫瘍成長の阻害が、抗がん処置および/または免疫チェックポイント阻害剤による以前の処置の結果としての腫瘍成長の阻害と比較して、より大きい、態様24~27のいずれかの方法。
29. 前記方法の実施に起因する腫瘍成長の阻害が、免疫チェックポイント阻害剤による以前の処置の結果としての腫瘍成長の阻害と比較して、より大きい、態様24~28のいずれかの方法。
30. 投与の前に、対象が、CD8+T細胞浸潤の低いレベルを有する腫瘍または病変を有する、態様1~29のいずれかの方法。
31. 投与および照射の後に、腫瘍または腫瘍微小環境における免疫細胞の数、レベル、または活性が増加する、態様1~30のいずれかの方法。
32. 投与および照射の後に、腫瘍または病変におけるCD8+T細胞浸潤の数またはレベルが増加する、態様1~31の方法。
33. 投与および照射の後に、腫瘍の近傍における記憶T細胞の数が増加する、態様1~32の方法。
34. (a)PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを、対象へ投与する工程;および
(b)600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で、対象における腫瘍または病変が位置している標的区域を照射する工程
を含み、それによって、対象の自然免疫応答を増強する、
腫瘍または病変を有する対象の自然免疫応答を増強する方法。
35. 自然免疫応答の増強が活性化樹状細胞(DC)または抗原提示樹状細胞の増加を含む、態様34の方法。
36. 活性化DCがCD80+および/またはCD40+の細胞表面表現型を示す、態様35の方法。
37. 抗原提示樹状細胞がCD11b+CD103+CD11c+の細胞表面表現型を示す、態様35の方法。
38. (a)PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを、腫瘍または病変を有する対象へ投与する工程;および
(b)600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で、対象における腫瘍または病変が位置している標的区域を照射する工程
を含み、それによって、対象における腫瘍または病変における免疫細胞の数またはレベルを増加させる、
腫瘍または病変における免疫細胞の数またはレベルを増加させる方法。
39. 免疫細胞が腫瘍内好中球である、態様38の方法。
40. 腫瘍内好中球がCD11b+Ly6C-/lowLy6G+の細胞表面表現型を示す、態様39の方法。
41. 免疫細胞が腫瘍内エフェクターT細胞である、態様38の方法。
42. 腫瘍内エフェクターT細胞がCD3+CD8+PD-1-の細胞表面表現型を示す、態様41の方法。
43. (a)PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを、腫瘍または病変を有する対象へ投与する工程;および
(b)600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で、対象における腫瘍または病変が位置している標的区域を照射する工程
を含み、それによって、対象における不均一な腫瘍または病変を処置する、
不均一な腫瘍または病変を処置する方法。
44. 不均一な腫瘍または病変が、複数の異なる型の腫瘍細胞または複数の異なる起源に由来する腫瘍細胞を含む、態様43の方法。
45. (a)PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを、腫瘍または病変を有する対象へ投与する工程;および
(b)600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で、対象における腫瘍または病変が位置している標的区域を照射する工程
を含み、それによって、対象における免疫抑制性の腫瘍または病変を処置する、
免疫抑制性の腫瘍または病変を処置する方法。
46. 免疫抑制性の腫瘍または病変が、免疫チェックポイントタンパク質を発現する腫瘍細胞を含む、態様45の方法。
47. 免疫チェックポイントタンパク質がPD-L1、PD-1、またはCTLA-4である、態様46の方法。
48. (a)PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを、免疫チェックポイント阻害剤による処置に対する感受性が低下している腫瘍細胞を含む腫瘍または病変を有する対象へ投与する工程;および
(b)600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で、対象における腫瘍または病変が位置している標的区域を照射する工程
を含む、腫瘍または病変を処置する方法であって、
照射の後に、腫瘍または病変の成長、サイズ、または生存能が低下または阻害される
前記方法。
49. (a)PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを、過去の免疫治療に対して低い応答を有した、非応答性であった、抵抗性であった、不応性であった、応答することに失敗した、または後に再発した腫瘍または病変を有する対象へ投与する工程;および
(b)600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で、腫瘍または病変が位置している標的区域を照射する工程
を含む、腫瘍または病変を処置する方法であって、
標的区域におけるPD-L1発現細胞の死滅をもたらす、前記方法。
50. 過去の免疫治療が免疫チェックポイント阻害剤による処置である、態様2、3、14~33、48、および49のいずれかの方法。
51. 対象が、PD-1/PD-L1遮断治療を含む過去の免疫治療に対する一次抵抗性または獲得抵抗性を有する、態様2、3、14~33、および48~50のいずれかの方法。
52. (a)PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを、免疫チェックポイント阻害剤に関して未処置であるかまたは免疫チェックポイント阻害剤による処置を以前に受容したことがない対象へ投与する工程;および
(b)600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で、対象における腫瘍または病変が位置している標的区域を照射する工程
を含む、腫瘍または病変を処置する方法であって、
照射の後に、腫瘍または病変の成長、サイズ、または生存能が低下または阻害される、
前記方法。
53. 第1の腫瘍もしくは病変を処置するため、その成長を阻害するため、かつ/またはそのサイズを低下させるため、対象がコンジュゲートを投与され;前記方法が、第1の腫瘍または病変から遠位に位置する1つまたは複数の第2の腫瘍または病変の出現、成長、または確立を阻害、遅延、または防止する、態様15~33および48~52のいずれかの方法。
54. (a)PD-L1に結合するターゲティング分子と連結されたフタロシアニン色素を含むコンジュゲートを、腫瘍または病変を有する対象へ投与する工程;および
(b)600nmまたは約600nmから、850nmまたは約850nmの波長で、25J/cm2もしくは約25J/cm2から、400J/cm2もしくは約400J/cm2、または2J/cmファイバー長もしくは約2J/cmファイバー長から、500J/cmファイバー長もしくは約500J/cmファイバー長の線量で、第1の腫瘍または病変の内部の標的区域を照射する工程
を含む、第1の腫瘍または病変を有する対象を免疫する方法であって、
第1の腫瘍または病変の成長が阻害され、かつ/またはサイズが低下し;処置された第1の腫瘍または病変から遠位に位置する1つまたは複数の第2の腫瘍または病変の出現、成長、または確立が、阻害、遅延、または防止される、
前記方法。
55. 第2の腫瘍または病変が第1の腫瘍または病変の転移である、態様15~33、53、および54のいずれかの方法。
56. 第1の腫瘍もしくは病変の近傍におけるPD-L1発現細胞の死滅をもたらし、かつ/または免疫細胞応答を活性化し、それによって、第2の腫瘍または病変の出現、成長、または確立を阻害、遅延、または防止する、態様15~33および53~55のいずれかの方法。
57. 第2の腫瘍または病変が表現型的にかつ/または遺伝子型的に第1の腫瘍または病変と同一である、態様15~33および53~56のいずれかの方法。
58. 第2の腫瘍または病変が表現型的にかつ/または遺伝子型的に第1の腫瘍または病変と異なる、態様15~33および53~56のいずれかの方法。
59. 第2の腫瘍または病変が第1の腫瘍または病変の転移に由来しない、態様15~33、53、および54のいずれかの方法。
60. PD-L1発現細胞またはPD-L1発現免疫細胞の死滅をもたらす、態様1~59のいずれかの方法。
61. 腫瘍または病変が腫瘍細胞を含み、該腫瘍細胞が免疫チェックポイントタンパク質を発現しないかまたは免疫チェックポイントタンパク質の低下した発現を有する、態様1~60のいずれかの方法。
62. 免疫チェックポイントタンパク質がPD-L1、PD-1、およびCTLA-4の中から選択される、態様61の方法。
63. 腫瘍細胞が、炎症刺激に応答してPD-L1を発現しない、態様7~62のいずれかの方法。
64. 炎症刺激がインターフェロンである、態様63の方法。
65. 腫瘍細胞が抗PD-L1抗体によって特異的に認識されない、態様7~64のいずれかの方法。
66. 腫瘍または病変がPD-L1陰性腫瘍細胞を含む、態様1~65のいずれかの方法。
67. 腫瘍または病変における腫瘍細胞の少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは95%、または少なくとも約40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは95%がPD-L1陰性腫瘍細胞である、態様66の方法。
68. 処置が腫瘍もしくは病変の再成長を遅延させるか、腫瘍もしくは病変に関連したがんの再発を防止するか、または腫瘍もしくは病変に関連したがんの寛解の期間を延長する、態様1~67のいずれかの方法。
69. 腫瘍もしくは病変の成長の阻害および/またはPD-L1発現細胞の死滅がCD8+T細胞の存在に依存する、態様1~68のいずれかの方法。
70. 対象が免疫チェックポイント阻害剤に対して未処置であるかまたは免疫チェックポイント阻害剤による処置を以前に受容したことがない、態様1~69のいずれかの方法。
71. 対象が免疫チェックポイント阻害剤によって以前に処置されたことがある、態様1~69のいずれかの方法。
72. 対象が、免疫チェックポイント阻害剤による以前の処置に対して低い応答を有した、非応答性であった、抵抗性であった、不応性であった、応答することに失敗した、または後に再発した、態様71の方法。
73. 前記方法の実施に起因する腫瘍または病変の成長、サイズ、または生存能の阻害が、免疫チェックポイント阻害剤による以前の処置に起因する阻害と比較して、より大きい、態様71または72の方法。
74. 免疫チェックポイント阻害剤がPD-L1、PD-1、またはCTLA-4の阻害剤である、態様71~73のいずれかの方法。
75. 免疫チェックポイント阻害剤がPD-1阻害剤である、態様24~74のいずれかの方法。
76. PD-1阻害剤が抗PD-1抗体である、態様75の方法。
77. 免疫チェックポイント阻害剤がPD-L1阻害剤である、態様24~74のいずれかの方法。
78. PD-L1阻害剤が抗PD-L1抗体である、態様77の方法。
79. 腫瘍もしくは病変および/または腫瘍もしくは病変の微小環境における免疫細胞の数または活性を増加させる、態様1~78のいずれかの方法。
80. 標的区域が、PD-L1を発現する免疫細胞を含む、態様1~79のいずれかの方法。
81. PD-L1発現細胞が免疫細胞である、態様2~79のいずれかの方法。
82. 免疫細胞が、単球、マクロファージ、樹状細胞(DC)、M2腫瘍関連マクロファージ(M2 TAM)、免疫寛容原性樹状細胞(tDC)、および骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)からなる群より選択される、態様1~81のいずれかの方法。
83. 免疫細胞が腫瘍、腫瘍微小環境、またはリンパ節に位置している、態様1~82のいずれかの方法。
84. コンジュゲートの投与の前に、対象が、CD8+T細胞浸潤の低い数またはレベルを有する腫瘍または病変を有する、態様1~83のいずれかの方法。
85. 投与および照射の後に、腫瘍もしくは病変または腫瘍もしくは病変の微小環境における免疫細胞の数、レベル、または活性が増加する、態様1~84のいずれかの方法。
86. 投与および照射の後に、腫瘍または病変におけるCD8+T細胞浸潤の数またはレベルが増加する、態様84または85の方法。
87. 投与および照射の後に、腫瘍または病変の近傍における記憶T細胞の数またはレベルが増加する、態様84~86のいずれかの方法。
88. 対象における自然免疫応答を増強する、態様1~87のいずれかの方法。
89. 自然免疫応答の増強が活性化樹状細胞(DC)または抗原提示樹状細胞の増加を含む、態様88の方法。
90. 活性化DCがCD80+および/またはCD40+の細胞表面表現型を示す、態様89の方法。
91. 抗原提示樹状細胞がCD11b+CD103+CD11c+の細胞表面表現型を示す、態様89の方法。
92. 対象における腫瘍または病変における免疫細胞の数またはレベルを増加させる、態様1~91のいずれかの方法。
93. 免疫細胞が腫瘍内好中球である、態様92の方法。
94. 腫瘍内好中球がCD11b+Ly6C-/lowLy6G+の細胞表面表現型を示す、態様93の方法。
95. 免疫細胞が腫瘍内エフェクターT細胞である、態様92の方法。
96. 腫瘍内エフェクターT細胞がCD3+CD8+PD-1-の細胞表面表現型を示す、態様95の方法。
97. 対象における不均一な腫瘍または病変を処置する、態様1~96のいずれかの方法。
98. 不均一な腫瘍または病変が、複数の異なる型の腫瘍細胞または複数の異なる起源に由来する腫瘍細胞を含む、態様97の方法。
99. 対象における免疫抑制性の腫瘍または病変を処置する、態様1~98のいずれかの方法。
100. 免疫抑制性の腫瘍または病変が、免疫チェックポイントタンパク質を発現する腫瘍細胞を含む、態様99の方法。
101. 免疫チェックポイントタンパク質がPD-L1、PD-1、またはCTLA-4である、態様100の方法。
102. ターゲティング分子が、PD-L1に結合する抗体、抗原結合抗体断片、もしくは抗体様分子であるか、またはそれを含む、態様1~101のいずれかの方法。
103. ターゲティング分子が抗PD-L1抗体もしくはその抗原結合断片であるか、またはそれを含む、態様102の方法。
104. 抗体または抗原結合断片が、アテゾリズマブ(MPDL3280A、Tecentriq、RG7446)、アベルマブ(Bavencio)、BCD-135、BGB-A333、BMS-936559(MDX-1105)、CBT-502(TQB-2450)、コシベリマブ(CK-301)、CS1001(WPB3155)、デュルバルマブ(MEDI4736、Imfinzi)、FAZ053、HLX20、INBRX-105、KN035、KN046、LDP、LY3300054、LY3415244、M7824(MSB0011359C)、MCLA-145、MSB2311、NM-01、REGN3504、SHR-1316(HTI-1088)、STI-3031(IMC-001、STI-A1015)、TG-1501、およびZKAB001(STI-A1014)からなる群より選択される抗体に由来する相補性決定領域(CDR)を含む、態様103の方法。
105. 抗体または抗原結合断片がアテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、KN035、またはCK-301に由来する相補性決定領域(CDR)を含む、態様103または104の方法。
106. 抗体または抗原結合断片が、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、KN035、およびCK-301、またはそれらのバイオシミラー、交換可能物、バイオベター、コピーバイオロジカル、もしくはバイオジェネリック、またはそれらの抗原結合断片からなる群より選択される、態様103~105のいずれかの方法。
107. 抗体または抗原結合断片が、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、KN035、およびCK-301からなる群より選択される、態様103~106のいずれかの方法。
108. 標的区域がリンパ節またはリンパ節の近傍である、態様1~107のいずれかの方法。
109. 投与および照射の後に、対象が持続的な応答、延長された無増悪生存期間、再発の低下した確率、および/または転移の低下した確率を示す、態様1~108のいずれかの方法。
110. フタロシアニン色素がSi-フタロシアニン色素である、態様1~109のいずれかの方法。
111. Si-フタロシアニン色素がIR700である、態様110の方法。
112. 照射がコンジュゲートの投与の30分~96時間後に実施される、態様1~111のいずれかの方法。
113. 照射がコンジュゲートの投与の24時間±4時間後に実施される、態様1~112のいずれかの方法。
114. 標的区域が690±40nmの波長で照射される、態様1~113のいずれかの方法。
115. 標的区域が50J/cm2もしくは約50J/cm2または100J/cmファイバー長もしくは約100J/cmファイバー長の線量で照射される、態様1~114のいずれかの方法。
116. 腫瘍または病変が、結腸がん、結腸直腸がん、膵臓がん、乳がん、皮膚がん、肺がん、非小細胞肺がん、腎細胞がん、甲状腺がん、前立腺がん、頭頸部がん、胃腸がん、胃がん、小腸のがん、紡錘細胞悪性腫瘍、肝がん、肝臓がん、末梢神経のがん、脳がん、骨格筋のがん、平滑筋のがん、骨がん、脂肪組織のがん、子宮頸がん、子宮がん、生殖器のがん、リンパ腫、および多発性骨髄腫からなる群より選択されるがんに関連している、態様1~115のいずれかの方法。
117. 前記方法の工程のうちの1つまたは複数が繰り返される、態様1~116のいずれかの方法。
118. コンジュゲートの投与が1回または複数回繰り返され、任意で、コンジュゲートの繰り返された各投与の後に照射工程が繰り返される、態様117の方法。
119. 付加的な治療剤または抗がん処置を投与する工程をさらに含む、態様1~118のいずれかの方法。
【実施例
【0224】
VIII. 実施例
以下の実施例は、例示的な目的のために含まれるに過ぎず、本発明の範囲を限定するためのものではない。
【0225】
実施例1:抗PD-L1抗体-IRDye 700コンジュゲートの生成
この実施例は、抗PD-L1抗体10F.9G2と連結されたIRDye 700DX(IR700)を含有するコンジュゲートを調製する方法、従って、10F.9G2-IRDye 700DX(抗PD-L1-IR700またはα-PD-L1-IR700コンジュゲート)を作製する方法を記載する。
【0226】
10F.9G2モノクローナル抗体(mAb)を1×PBS(pH7.1)へ緩衝液交換し、次いで、8.2mg/mLに濃縮した。標的pH8.0~8.5を達成するため、mAb(16mg)を100mMリン酸ナトリウム(pH8.6)で3mg/mLに希釈した。IR700 NHSエステル(1mg、IR700;LI-COR Bioscience,Lincoln,NE)を、10g/Lの濃度でDMSOに可溶化した。次いで、1mgのIR700 NHSエステルと16mgのmAbとの標的色素mAb比のため、可溶化された色素をmAbに添加した。RTで2時間、コンジュゲーションを行った。20mMグリシンの標的バッチ濃度で1Mグリシンを添加することによって、反応を止めた。反応停止はRTで1時間行われた。およそ3000RPMでの、3サイクルまでの濃縮および希釈によって、Millipore 30kDa分子量カットオフAmicon遠心式フィルターを使用して、緩衝液交換を実施した。
【0227】
混合物をSephadex G50カラム(PD-10;GE Healthcare,Piscataway,NJ)を使用して精製した。UV-Vis系(8453 Value System;Agilent Technologies,Palo Alto,CA)によって595nmにおける吸収を測定することによって、Coomassie Plusタンパク質アッセイキット(Pierce Biotechnology,Rockford,IL)によってタンパク質濃度を決定した。各抗PD-L1抗体分子とコンジュゲートされたフルオロフォア分子の数を確認するため、UV-Vis系による吸収によって、IR700の濃度を測定した。1抗体当たりのIR700の数は、約3であった。
【0228】
分析用サイズ排除HPLC(SE-HPLC)によって、抗PD-L1-IR700コンジュゲートの純度を確認した。SE-HPLCは、ChemstationソフトウェアによってコントロールされたPDA検出器が装備されたAgilent 1100 HPLC系(Santa Clara,CA)を使用して実施された。SEクロマトグラフィは、1.0mL/分でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を使用して20分間溶出させられたShodex KW-803カラム(New Yok,NY)において実施された。抗PD-L1-IR700調製物は、SE-HPLCによって決定されたように、強い会合を示し、検出可能なmAb凝集物を含有しなかった。
【0229】
IR700コンジュゲートのインビトロ結合特徴を決定するため、Indo-Gen法を使用したコンジュゲートの125I標識を実施した。IR700コンジュゲーションによるmAbの最小の損失が観察された。免疫反応アッセイを以前に記載されたように実施した。簡単に説明すると、トリプシン処理後、1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するPBSに、2×106個の腫瘍細胞を再懸濁させた。125I-抗PD-L1-IR700(1mCi、0.2μg)を添加し、氷上で1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、ペレット化し、上清を捨て、細胞を2470 Wizardガンマカウンタ(Perkin Elmer,Shelton,CT)で計数した。過剰の未標識抗体(200μgの未標識抗体)の条件下で、細胞との非特異的結合を調査した。
【0230】
実施例2:抗PD-L1-IR700 PITはCT26腫瘍の成長を阻害する
この実施例は、光照射を伴う、または光照射なしの抗PD-L1抗体-IR700コンジュゲートの、原発性腫瘍に対する活性を記載する。
【0231】
6~8週齢のBALB/cマウスの右後方側腹部に、1×106個のCT26マウス結腸がん細胞を皮下接種した。同種移植腫瘍が約150mm3のサイズに成長した時(腫瘍移植後およそ6日目)、生理食塩水(100μL;対照)または前記の実施例1に実質的に記載されたように生成された抗PD-L1-IR700コンジュゲート(100μg)をマウスに投与した。コンジュゲートの投与の24時間後に、光免疫治療(PIT)群の腫瘍を、690nmで、75、100、または150J/cm2の線量で、照射した。腫瘍成長を24日間にわたり観察し、腫瘍体積を以下の式を使用して計算した:腫瘍体積=(幅×幅)×長さ/2。
【0232】
照射(PIT)と組み合わせられた抗PD-L1-IR700(α-PD-L1-IR700)を受容したマウスにおいては、生理食塩水、またはPITなしの単独の抗PD-L1-IR700コンジュゲートを受容した対照マウスにおける腫瘍成長阻害と比較して、腫瘍の成長が実質的に阻害された(図1;破線(PIT)と実線(対照)との比較)。PITなしの単独の抗PD-L1-IR700コンジュゲートを受容したマウスも、生理食塩水対照マウスと比較すると、腫瘍成長の中程度の低下を示した(図1;白丸と黒丸との比較)。
【0233】
腫瘍成長の調査に加えて、完全応答(CR)率を、処置群間で比較した。この実施例においては、CRを、100mm3未満の体積が少なくとも2週間持続した腫瘍として定義した。腫瘍移植の24日後に、100および150J/cm2で抗PD-L1-IR700 PITによって処置されたマウスの少なくとも50%がCRを達成したが、生理食塩水対照群には、CRを達成したマウスがいなかった。抗PD-L1-IR700 PITによって処置された群は、20%のみがCRを達成した、PITなしの単独の抗PD-L1-IR700コンジュゲートを受容したマウスより、多い数のCRを達成した(図1)。結果は、抗PD-L1-IR700 PIT処置が、原発性腫瘍の成長の実質的な阻害をもたらし、いくつかの光線量で照射を受容した時、半分を超えるマウスがCRを達成することを示した。
【0234】
実施例3:抗PD-L1-IR700 PITは第2のCT26腫瘍によってチャレンジされたマウスにおいて腫瘍成長を阻害する
この実施例は、第1の腫瘍の成長の成功した阻害の後、同一の腫瘍型の第2の腫瘍によってチャレンジされた動物における、過去の抗PD-L1-IR700コンジュゲート投与およびPITの効果を記載する。
【0235】
実施例2からの、PIT処置(3つの全ての光線量レベル)を伴う抗PD-L1-コンジュゲートによって処置された群および単独の抗PD-L1-コンジュゲートによって処置された群からの、CRを達成したマウスの反対側の側腹部に、最初の腫瘍移植後56日目に、同一の型の第2の腫瘍(1×106個のCT26マウス結腸がん細胞/マウス)を皮下移植した。対照群として、(以前に処置されていない)未処置マウスのサブセットに、同様の移植を行った。第2の腫瘍の成長をおよそ20日間にわたり観察し、腫瘍体積を以下の式を使用して計算した:腫瘍体積=(幅×幅)×長さ/2。
【0236】
抗PD-L1-IR700 PITを以前に受容し、次いで、反対側の側腹部への第2のCT26移植によって再チャレンジされたマウスにおいては、未処置対照マウスにおける腫瘍成長阻害と比較して、腫瘍の成長が実質的に阻害された(平均腫瘍体積を図示している図2A;個々のマウスを図示している図2B)。
【0237】
腫瘍成長の調査に加えて、完全応答(CR)率を、処置群間で比較した。第2の腫瘍移植の21日後に、(以前のPIT処置を伴う、またはPIT処置なしの)抗PD-L1-IR700コンジュゲートによって以前に処置された動物の100%がCRを達成した。対照的に、未処置対照マウスは、いずれも、CRを達成しなかった。結果は、(PITのための光照射を伴う、または光照射なしの)抗PD-L1-IR700コンジュゲートによって以前に処置されたマウスが、同一の型の第2の腫瘍を成功裏に拒絶することを示した。
【0238】
実施例4:抗PD-L1-IR700 PITは異なる型の第3の腫瘍によってチャレンジされたマウスにおいて成長を阻害する
この実施例は、第1の腫瘍の成長の成功した阻害および第1の腫瘍と同一の型の第2の腫瘍の拒絶の後、異なる腫瘍型の第3の腫瘍によってチャレンジされた動物における、過去のPITと組み合わせられた抗PD-L1-IR700コンジュゲート投与の効果を記載する。
【0239】
実施例3からの、PIT処置を伴う抗PD-L1-コンジュゲートによって処置された群(3つの全ての光線量レベル;*図2A中のα-PD-L1-IR700+100J/cm2群からの1匹のCRマウスを除く)および単独の抗PD-L1-コンジュゲートによって処置された群からの、CRを達成したマウスに、最初の腫瘍移植後104日目に、上皮細胞接着分子を過剰発現するよう改変された3×106個の4T1マウス乳腺がん細胞(CT26腫瘍細胞株と異なる組織に由来する同系BALB/cマウス腫瘍株)(4T1-EpCAM)を皮下移植した。(以前に処置されていない)未処置マウスのサブセットに、対照群と同様の移植を行った。第2の腫瘍成長をおよそ20日間にわたり観察し、腫瘍体積を以下の式を使用して計算した:腫瘍体積=(幅×幅)×高さ/2。
【0240】
驚くべきことに、抗PD-L1-IR700 PITを以前に受容し、同一の型の第2の腫瘍を拒絶し、次いで、4T1-EpCAM腫瘍によって再チャレンジされたマウスにおいては、光照射なしの抗PD-L1-IR700コンジュゲートのみによって以前に処置されたマウスと比較して、または未処置対照マウスと比較して、腫瘍の成長が阻害された(群平均腫瘍体積を図示している図3A;個々のマウスを図示している図3B)。さらに予想外に、100または150J/cm2 PITと組み合わせられた抗PD-L1-IR700コンジュゲートによって以前に処置された群においては、50%を超えるマウスが、CRを達成した(それぞれ、87%および66%)。光照射なし(PIT処置なし)の抗PD-L1 IR700のみによって以前に処置されたマウスおよび未処置対照群は、CRを全くもたらさなかった。結果は、驚くべきことに、光照射(PIT)を伴う抗PD-L1-IR700コンジュゲートによって以前に処置されたマウスが、異なる型の腫瘍の接種を成功裏に拒絶することを示した。
【0241】
実施例5:CD8細胞が、PD-L1 PITによって媒介される腫瘍拒絶のために必要とされる
この実施例は、インビボの抗PD-L1-IR700 PITの腫瘍成長に対する効果が、機能性のCD8+T細胞集団に依存することを記載する。
【0242】
BALB/cマウスの右後方側腹部に、1匹当たり1×106個のCT26細胞を皮下接種した。CD8+T細胞枯渇のため、腫瘍細胞接種後6日目および9日目に、抗CD8a抗体(BioXCell、クローン2.43、カタログ番号BP0061)(100μg/マウス)を腹腔内注射によってマウスに投与した。同種移植腫瘍が約150mm3のサイズに成長した時、抗PD-L1-IR700コンジュゲート(100μg)または生理食塩水対照をマウスに投与した。抗PD-L1-IR700コンジュゲートは、6日目および24時間後に投与され、PIT群のマウスの右側腹部の腫瘍が、690nmで100J/cm2の線量で照射された。
【0243】
図4に示されるように、光照射(PIT)を伴う抗PD-L1-IR700コンジュゲートによって処置されたイムノコンピテントマウスにおいては、対照の生理食塩水または光照射なしの抗PD-L1-IR700コンジュゲートのみと比較して、腫瘍の成長が実質的に阻害された。驚くべきことに、CD8+T細胞を枯渇させたマウスにおいては、抗PD-L1-IR700 PITの腫瘍阻害効果が完全に消失し(図4)、このことから、抗PD-L1-IR700 PIT処置の効果が、CD8+T細胞によって媒介されることが示された。さらに、CD8+T細胞枯渇なしに抗PD-L1-IR700 PITによって処置されたマウスの群における、CRを達成したマウスの数は、抗PD-L1-IR700 PITによって処置された、CD8+T細胞を枯渇させたマウスより、実質的に高かった(それぞれ、46.7%CR、6.7%CR)。結果は、抗PD-L1-IR700 PITの腫瘍成長阻害効果のために、CD8+T細胞が必要とされることを示した。
【0244】
実施例6:抗PD-L1-IR700 PITは、様々な腫瘍型によってチャレンジされたマウスにおいて腫瘍成長を遅延または拒絶する
この実施例は、第1の腫瘍の成長の成功した阻害の後の、様々な型の第2の腫瘍によってチャレンジされた動物における、抗PD-L1-IR700コンジュゲート投与およびPITの効果を記載する。
【0245】
ラウンド1:6~8週齢のBALB/cマウスの右後方側腹部に、1×106個のCT26細胞/マウスを皮下接種した。同種移植腫瘍が約150mm3のサイズに成長した時、抗PD-L1-IR700コンジュゲート(100μg)をマウスに投与した。コンジュゲートの投与の24時間後に、690nmで100J/cm2の線量で腫瘍を照射した。CRを達成した、抗PD-L1-IR700 PITによって処置されたマウスを収集し、腫瘍チャレンジのラウンド2のため、3つのサブグループに置いた。
【0246】
ラウンド2:3つのサブグループ(「CR」群)の各々において、マウスの反対側の側腹部に第2の腫瘍を移植した。3つのサブグループの各々は、以前に処置されておらず(「未処置」対照群)、対応サブグループと同一の腫瘍細胞を移植された対照マウス群も有していた。3つのサブグループに、以下のように第2の腫瘍を移植した:(a)CT26、(b)4T1.WT(改変されていない親/野生型4T1細胞)、および(c)RENCAマウス腎臓腺がん。第2の腫瘍の成長をおよそ20日間にわたり観察し、腫瘍体積を以下の式を使用して計算した:腫瘍体積=(幅×幅)×高さ/2。
【0247】
図5A(群平均)および5B(個々のマウス)に示されるように、ラウンド1において抗PD-L1-IR700 PITによって以前に処置された、ラウンド2においてCT26腫瘍を移植された動物は、ラウンド2において実質的な腫瘍成長阻害を示し、ラウンド2におけるCT26腫瘍によるチャレンジ後に、100%(7/7)のマウスがCRを達成した。対照的に、未処置対照動物においては、腫瘍成長が阻害されなかった。図5C(群平均)および5D(個々のマウス)に示されるように、ラウンド1において抗PD-L1-IR700 PITによって以前に処置された、ラウンド2において4T1.WT腫瘍を移植された動物は、腫瘍成長の実質的な阻害を示し、処置された動物8匹中6匹がCRを達成した。対照的に、ラウンド2において4T1.WT腫瘍を移植された対照未処置動物は、いずれも、CRを達成しなかった。
【0248】
抗PD-L1-IR700 PIT処置は、RENCA接種後に、0/8 CRを有した未処置動物と比較して、1/8のみのCRをもたらしたため、ラウンド1において抗PD-L1-IR700 PITによって以前に処置された、ラウンド2においてRENCAを移植された動物(図5E(群平均)および5F(個々のマウス))は、未処置対照群と比較して、腫瘍成長の極めてわずかな阻害のみを示した。CR達成後の様々な腫瘍チャレンジからのこれらの結果は、抗PD-L1-IR700コンジュゲートおよび光照射(PIT)によって以前に処置されたマウスが、同一の型またはある種の異なる腫瘍型の第2の腫瘍を成功裏に拒絶することを示した。
【0249】
実施例7:抗PD-L1-IR700 PITは、第3の4T1-EpCAM腫瘍によってチャレンジされたマウスにおいて成長を阻害する
実施例6からの、反対側の側腹部にCT26を移植され、CRを示した、ラウンド2のサブグループからの動物を、ラウンド3チャレンジに供した。
【0250】
ラウンド3:ラウンド2からのCT26群からのCRを達成した動物の右腋窩に、4T1-EpCAM腫瘍を移植した。対照として、(以前に処置されていない)未処置動物の右腋窩にも、4T1-EpCAM腫瘍を移植した。第3の腫瘍の成長をおよそ21日間にわたり観察し、腫瘍体積を以下の式を使用して計算した:腫瘍体積=(幅×幅)×高さ/2。
【0251】
図6A(群平均)および6B(個々のマウス)に示されるように、動物は、ラウンド3処置において、4T1-EpCAM腫瘍の実質的な阻害を示し、7匹中6匹の動物がCRを示した。対照的に、未処置動物は、より大きい腫瘍成長を示し、CRを達成した動物はいなかった。結果は、抗PD-L1-IR700コンジュゲートおよび光照射(PIT)によって以前に処置されたマウスが、異なる型の第3の腫瘍を成功裏に拒絶することを示した。
【0252】
実施例8:抗PD-L1-IR700 PITは、PD-L1ノックアウトを有するCT26腫瘍細胞の成長を阻害する
この実施例は、CRISPR-Cas9によって媒介される遺伝子破壊(ノックアウト)のため、PD-L1を発現しない腫瘍細胞に対する、抗PD-L1抗体-IR700コンジュゲートおよび光照射(PIT)の活性を記載する。
【0253】
PD-L1の発現を表現型的にノックアウトするため、PD-L1を標的にするガイドRNA(gRNA)を使用して、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)(CRISPR)/CRISPR関連タンパク質9(Cas9)によって、(PD-L1をコードする)CD274遺伝子の遺伝子破壊をCT26細胞に導入した。
【0254】
細胞におけるPD-L1の発現を誘導することができるインターフェロンγ(IFNγ)の非存在下(基底レベル)または存在下で、PD-L1ノックアウト(KO)を有する、または有しないCT26細胞において、PD-L1発現を査定した。図7Aに示されるように、CT26細胞は、予想通り、基底レベルのPD-L1を発現し、IFNγの存在下で、より高いレベルのPD-L1を発現した。PD-L1についてノックアウトされたCT26細胞(PD-L1 KO)においては、基底レベル(IFNγの非存在下)でも、IFNγの存在下でも、PD-L1発現が観察されなかった。
【0255】
6~8週齢のBALB/cマウスに、0日目に、PD-L1 KOを有するCT26細胞を、1×106個、皮下接種した。CT26 PD-L1 KO腫瘍が約150mm3のサイズに成長した時(腫瘍移植後およそ6日目)、生理食塩水(100μL;対照)または前記の実施例1に実質的に記載されたように生成された抗PD-L1-IR700コンジュゲート(100μg)をマウスへ投与した。コンジュゲートの投与の24時間後に、690nmで、75、100、または150J/cm2の線量で、光免疫治療(PIT)群の腫瘍を照射した。腫瘍成長をおよそ21日にわたり観察し、腫瘍体積を以下の式を使用して計算した:腫瘍体積=(幅×幅)×長さ/2。生存率もモニタリングした。
【0256】
抗PD-L1-IR700(α-PD-L1-IR700)の投与および様々な光線量での照射(PIT)は、生理食塩水またはPITなしの単独の抗PD-L1-IR700コンジュゲートを受容した対照マウスにおける腫瘍成長阻害と比較して、CT26 PD-L1 KO腫瘍の実質的な腫瘍成長阻害および生存率の増加をもたらした(図7Bおよび7C)。PITなしの単独の抗PD-L1-IR700コンジュゲートを受容したマウスも、生理食塩水対照マウスと比較すると、腫瘍成長の低下および生存率の増加を示した(図7Bおよび7C)。結果は、抗PD-L1-IR700 PIT処置が、PD-L1ノックアウトを有する腫瘍の成長の実質的な阻害をもたらすことを示し;これは、抗PD-L1-IR700 PIT処置の抗がん活性が、がん細胞を直接的に標的にし、死滅させることに、主として、よるのではないという観察と一致する。
【0257】
実施例9:抗PD-L1-IR700 PITは、インビボで、PD-L1を発現する細胞型を低下させる
この実施例は、インビボのPD-L1を発現する細胞集団に対する抗PD-L1-IR700 PITの刺激効果を記載する。
【0258】
BALB/cマウスにCT26腫瘍細胞を接種した。腫瘍がおよそ150mm3の平均体積に達した後、生理食塩水、単独の抗PD-L1-IR700コンジュゲート、または照射を伴う抗PD-L1-IR700コンジュゲート(抗PD-L1-IR700 PIT)によってマウスを処置した。コンジュゲートの投与の24時間後に、照射(PIT)群のマウスの腫瘍を、100J/cm2で690nmの光に曝した。照射の2時間後に、全ての群から腫瘍を切除し、単細胞懸濁物へと加工した。次いで、腫瘍内の単球、マクロファージ、好中球、骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)、および樹状細胞(DC)を同定するため、細胞マーカー、例えば、CD11b、CD11c、CD80、CD86、CD103、F4/80、Ly6C、Ly6G、およびMHCIIについて、懸濁細胞を染色した。アイソタイプ対照も染色のために使用した。染色された細胞を、フローサイトメトリーを使用して分析した。
【0259】
図8に示されるように、PD-L1-IR700 PIT(PDL1 PIT)によって処置された腫瘍保持マウスにおいては、腫瘍内のマクロファージ(CD11b+F4/80+細胞)、樹状細胞(CD11c+細胞)、およびMDSC(CD11b+Ly6C+Ly6G-細胞)の比率が、生理食塩水のみまたは抗PD-L1-IR700コンジュゲート(PDL1コンジュゲート;照射なし)を投与されたものと比較して、有意に減少し、そのことから、抗PD-L1-IR700 PITが、処置後直ちに複数の骨髄系細胞型を低下させることが示された。腫瘍内PD-L1発現免疫細胞である骨髄系細胞が、抗PD-L1 PITの後に低下するため、これらのデータは、抗PD-L1 PITが腫瘍内PD-L1発現免疫細胞を標的にし、死滅させることを示唆している。
【0260】
実施例10:抗PD-L1-IR700 PITはインビボで腫瘍内好中球のリクルートメントを引き起こす
前記の実施例9において採集され染色された腫瘍細胞を、CD11b+Cy6C-/lowLy6G+細胞として同定される好中球についても分析した。
【0261】
図9に示されるように、PD-L1-IR700 PIT(PDL1 PIT)によって処置されたマウスの腫瘍においては、生理食塩水のみまたは抗PD-L1-IR700コンジュゲート(PDL1コンジュゲート;照射なし)を投与されたものと比較して、腫瘍内好中球(CD11b+Cy6C-/lowLy6G+細胞)の比率が有意に増加した。好中球は炎症の部位にリクルートされるため、この結果は、抗PD-L1 PITが腫瘍において急速な炎症をもたらすことをを示唆している。
【0262】
実施例11:抗PD-L1-IR700 PITはインビボで自然免疫系を活性化する
この実施例は、インビボの樹状細胞活性化に対する抗PD-L1-IR700 PITの効果を記載する。
【0263】
BALB/cマウスにCT26腫瘍細胞を接種した。腫瘍がおよそ150mm3の平均体積に達した後、生理食塩水、単独の抗PD-L1-IR700コンジュゲート(PDL1コンジュゲート)、または照射を伴う抗PD-L1-IR700コンジュゲート(抗PDL1 PIT)によってマウスを処置した。コンジュゲートの投与の24時間後に、照射(PIT)群のマウスの腫瘍を100J/cm2で690nmの光に曝した。照射の2日後に、腫瘍を切除し、単細胞懸濁物へと加工した。次いで、腫瘍内樹状細胞(DC)を同定するため、細胞マーカー、例えば、CD11b、CD11c、CD40、CD80、CD86、CD103、およびMHCIIについて、懸濁細胞を染色した。アイソタイプ対照も染色のために使用された。染色された細胞を、フローサイトメトリーを使用して分析した。
【0264】
図10Aおよび10Bに示されるように、PD-L1-IR700 PIT(PDL1 PIT)によって処置されたマウスの腫瘍は、生理食塩水のみまたは照射なしの抗PD-L1-IR700コンジュゲート(PDL1コンジュゲート)を投与されたマウスの腫瘍と比較して、有意に増加したレベルの、CD80+マーカー(図10A)およびCD40+マーカー(図10B)によって示される活性化樹状細胞を含有した。CD40およびCD80は、サイトカイン産生を増強することによって、ナイーブT細胞および記憶T細胞を活性化し、樹状細胞を刺激する、T細胞活性化のための共刺激分子である。PD-L1-IR700 PIT(PDL1 PIT)によって処置されたマウスの腫瘍は、生理食塩水のみまたは抗PD-L1-IR700コンジュゲート(PDL1コンジュゲート;照射なし)を投与されたマウスの腫瘍と比較して、増加したレベルの抗原提示樹状細胞(CD103+CD11c+)も含有した(図10C)。総合すると、これらのデータは、抗PD-L1-IR700 PITが、インビボの腫瘍内自然免疫応答を活性化することを示している。
【0265】
実施例12:抗PD-L1-IR700 PITはインビボの非消耗腫瘍内エフェクターCD8+Tリンパ球を増加させる
この実施例は、インビボのエフェクターCD8+Tリンパ球の増大に対する抗PD-L1-IR700 PITの効果刺激を記載する。
【0266】
BALB/cマウスにCT26腫瘍細胞を接種した。腫瘍がおよそ150mm3の平均体積に達した後、生理食塩水、単独の抗PD-L1-IR700コンジュゲート、または照射を伴う抗PD-L1-IR700コンジュゲート(抗PD-L1-IR700 PIT)によってマウスを処置した。コンジュゲートの投与の24時間後に、照射(PIT)群のマウスの腫瘍を100J/cm2で690nmの光に曝した。照射の8日後に、全ての群から腫瘍を切除し、単細胞懸濁物へと加工した。次いで、細胞マーカー、例えば、CD3、CD45、CD8a、およびPD1について、懸濁細胞を染色した。アイソタイプ対照も染色のために使用した。染色された細胞を、フローサイトメトリーを使用して分析した。
【0267】
図11Aに示されるように、抗PD-L1コンジュゲートまたは抗PD-L1-IR700 PITによって処置されたマウスの腫瘍においては、生理食塩水のみを投与されたマウスの腫瘍と比較して、全CD8+T細胞の比率が増加した(P<0.05)。消耗についてのマーカーであるPD1を発現するCD8+T細胞の比率は、生理食塩水のみまたは抗PD-L1コンジュゲート(照射なし)を投与されたマウスに由来する腫瘍中よりも、抗PD-L1-IR700 PITによって処置された腫瘍において低かった(図11B)。対照的に、末梢免疫活性化に由来する新たにプライミングされたCD8+T細胞に相当するPD1-CD8+T細胞は、生理食塩水のみまたは抗PD-L1コンジュゲート(照射なし)を投与されたマウスに由来する腫瘍と比較して、抗PD-L1-IR700 PITによって処置された腫瘍において増加した(図11C)。これらのデータは、抗PD-L1 PITの局所的な処置が、全身適応免疫応答を活性化し得ることを示唆している。
【0268】
実施例13:抗PD-L1 PITは遠位腫瘍における抗がん応答を誘導する
この実施例は、直接的に照射されない遠位腫瘍の成長に対する抗PD-L1 PITの阻害効果を記載する。
【0269】
BALB/cマウスの左右両方の後方側腹部に、1匹当たり1×106個のCT26マウス結腸がん細胞を皮下接種した。両側の同種移植腫瘍が約150mm3の体積に成長した時、生理食塩水(100μL)または抗PD-L1-IR700コンジュゲート(100μg)をマウスへ投与した。コンジュゲートの投与の24時間後に、抗PD-L1 PIT群において、左側腹部の腫瘍を照射から遮蔽しながら、右側腹部の腫瘍を100J/cm2の線量で690nmで照射した。照射されていない腫瘍(遠位腫瘍)の成長を18日間にわたり観察し、腫瘍体積を以下の式を使用して計算した:腫瘍体積=(幅×長さ)×高さ/2。
【0270】
図12に示されるように、抗PD-L1 PITによって処置されたマウスの照射されていない反対側の遠位腫瘍は、生理食塩水によって処置された腫瘍または抗PD-L1-IR700コンジュゲート(照射なし)によって処置された腫瘍と比較して、腫瘍成長阻害を示した。(照射なしの)単独の抗PD-L1-IR700コンジュゲートを投与されたマウスも、生理食塩水対照と比較すると遠位腫瘍成長を示したが、単独のコンジュゲートの、遠位腫瘍成長を阻害する効果は、抗PD-L1-PITよりは低かった。これらのデータは、抗PD-L1 PITが、単独の抗PD-L1-IR700コンジュゲートによる処置と比較して、全身免疫応答を誘導し、アブスコパル効果、例えば、遠位の(照射されていない)腫瘍の成長の阻害を示し得るという所見を支持する。
【0271】
実施例14:抗PD-L1 PITは、裸の抗PD-L1抗体の多数回投与と比較して、腫瘍負荷低下の改善をもたらす
実施例1に実質的に記載されるように、マウスPD-L1と交差反応するヒト抗PD-L1抗体である抗PD-L1抗体、アベルマブ(BAVENCIO)を、IR700色素とコンジュゲートした。
【0272】
BALB/cマウス(6~8週齢)の右後方側腹部に、1×106個のCT26マウス結腸がん細胞を皮下接種した。同種移植腫瘍が約250mm3のサイズに成長した時(腫瘍移植後およそ6日目)、生理食塩水(100μL;対照)または抗PD-L1-IR700コンジュゲート(抗PD-L1-IR700;100μg)をマウスへ後眼窩投与した。コンジュゲートの投与の24時間後に、光免疫治療(PIT)群の腫瘍を、690nmで75J/cm2で照射した。比較のため、移植後6日目から開始して、週2回、全部で12回、10mg/kgの裸の(コンジュゲートされていない)抗PD-L1抗体を、別のマウス群へ、腹腔内注射によって投与した。全ての群について、経時的な腫瘍成長および生存率をモニタリングした。腫瘍体積を以下の式を使用して計算した:腫瘍体積=(幅×幅)×長さ/2。
【0273】
全てのマウス群についての経時的な平均腫瘍成長が、図13Aにプロットされ、個々のマウスについての腫瘍成長が、図13Bにプロットされる。図13Aおよび13Bに示されるように、照射を伴う抗PD-L1-IR700(α-PD-L1 PIT)を受容したマウスにおいては、生理食塩水、単独の抗PD-L1-IR700コンジュゲート(照射なし)、または裸の抗PD-L1抗体の複数回投与を受容した対照マウスにおける腫瘍成長阻害と比較して、腫瘍の成長が実質的に阻害された。裸の抗PD-L1抗体の複数回投与を受容したマウスの腫瘍は、生理食塩水対照マウスと比較して低下した、抗PD-L1-IR700コンジュゲートの単回投与を受容したマウスの腫瘍と類似した腫瘍成長速度を示した。
【0274】
腫瘍成長の調査に加えて、完全応答(CR)率を処置群間で比較した。この実施例においては、CRを、100mm3未満の体積が少なくとも2週間持続した腫瘍として定義した。研究の終わりまでに、抗PD-L1-IR700 PITによって処置されたマウス10匹中7匹、単独の抗PD-L1-IR700(照射なし)によって処置されたマウス10匹中2匹、裸の抗PD-L1抗体の複数回投与によって処置されたマウス10匹中1匹、生理食塩水のみによって処置されたマウス10匹中0匹が、CRを達成した(図13A)。
【0275】
抗PD-L1-IR700 PITを受容した腫瘍保持マウスの生存率は、全ての処置群の中で最も高い生存率を達成した(70%の生存率;図13C)。抗PD-L1コンジュゲート(照射なし)の単回投与を受容した腫瘍保持マウスの生存率は、裸の抗PD-L1抗体の複数回投与を投与されたマウスの生存率と類似していた(20%対30%;図13C)。生理食塩水群においては、24日を超えて生存した動物はいなかった(図13C)。
【0276】
これらの結果は、抗PD-L1-IR700 PITの単回処置が、裸の抗PD-L1抗体の複数回投与より、腫瘍負荷を低下させ、生存を促進するために効果的であることを示している。
【0277】
実施例15:抗PD-L1 PITは免疫抑制マウス腫瘍モデルにおいて腫瘍負荷を低下させる
アベルマブ(BAVENCIO)は、ヒトがんを処置するために使用されている抗PD-L1抗体である。アベルマブは、マウスPD-L1分子とも交差反応し、結合する。(アベルマブ-IR700による)抗PD-L1処置に対して抵抗性の腫瘍の処置のため、抗PD-L1-IR700 PITを、単独の抗PD-L1-IR700コンジュゲート(照射なし)および裸の抗PD-L1(アベルマブ)と比較した。
【0278】
C57Bl/6マウス(6~8週齢)の右後方側腹部に、5×105個のLL/2マウス肺がん細胞を皮下接種した。同種移植腫瘍が約150mm3のサイズに成長した時(移植後およそ8日目)、生理食塩水(100μL;対照)または抗PD-L1-IR700コンジュゲート(抗PD-L1-IR700;100μg)をマウスへ後眼窩投与した。コンジュゲートの投与の24時間後に、光免疫治療(PIT)群の腫瘍を690nmで150J/cm2で照射した。比較のため、移植後8日目から開始して、週2回、全部で6回、10mg/kgの裸の抗PD-L1抗体を、別のマウス群へ、腹腔内注射によって投与した。前記のように、全ての群について経時的な腫瘍成長をモニタリングした。
【0279】
付加的な実験において、前記のように生成されたLL/2腫瘍を保持するマウス(6~8週齢)へ、100μgの裸の抗PD-1抗体を6日目、10日目、および14日目に、裸の抗CTLA-4抗体を6日目、9日目、12日目、および15日目に、または生理食塩水(100μL;対照)を投与した。前記のように、全ての群について経時的な腫瘍成長をモニタリングした。
【0280】
図14Aおよび14Bに示されるように、裸の抗PD-1(図14A;白四角)、裸の抗CTLA-4(図14A;白三角)、または裸の抗PD-L1(図14B;白菱形)によって処置されたマウスにおけるLL/2腫瘍の成長は、生理食塩水を投与されたマウスの腫瘍(図14Aおよび14B;白丸)と区別不能であり、これらの腫瘍は、チェックポイント阻害剤治療に対して抵抗性であり、免疫抑制性であることが示された。対照的に、図14Bに示されるように、照射を伴う抗PD-L1-IR700(抗PD-L1 PIT)を受容したマウスにおいては、生理食塩水、単独の抗PD-L1-IR700コンジュゲート(照射なし)、または裸の抗PD-L1抗体の複数回投与を受容した対照マウスにおいて観察された腫瘍成長と比較して、免疫抑制性腫瘍の成長が実質的に阻害された(破線付きの黒菱形と、それぞれ、実線付きの白丸、黒菱形、および白菱形との比較)。さらに、裸の抗PD-L1抗体の複数回投与または抗PD-L1-IR700コンジュゲート(照射なし)の単回投与を受容したマウスの腫瘍は、生理食塩水によって処置された対照マウスの腫瘍と区別不能であった。
【0281】
総合すると、これらの結果は、抗PD-L1 PITが、抗PD-L1処置、抗PD-1処置、および抗CTLA-4処置に対して抵抗性の腫瘍の処置において有効であったことを示している。
【0282】
本発明は、例えば、本発明の様々な局面を例示するために提供された、具体的な開示された態様に、その範囲を限定されないものとする。記載された組成物および方法に対する様々な修飾が、本明細書中の説明および教示から明らかになるであろう。そのような変動は、本開示の真の範囲および本旨から逸脱することなく実施され得、本開示の範囲内に含まれるものとする。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14
【国際調査報告】